リアルタイムデュエル大会
エキストラステージ

製作者:プロたん




【現在の参加者一覧】

参加者1:御伽 龍児(残りライフ0/"混沌を制する者"パック選択)
参加者2:インセクター羽蛾(残りライフ0/"SHADOW OF INFINITY"パック選択)
参加者3:孔雀 舞(残りライフ0/"FORCE OF THE BREAKER"パック選択)
参加者4:ダイナソー竜崎(残りライフ0/"SOUL OF THE DUELIST"パック選択)
参加者5:奇術師パンドラ(残りライフ0/"プレミアムパック4"パック選択)
参加者6:謎の男子生徒(残りライフ0/"DUELIST PACK−ヘルカイザー編−"パック選択)
参加者7:海馬 瀬人(残りライフ0/選択パック不明)
参加者8:レアハンター(残りライフ0/"幻の召喚神"パック選択)



第21章 エキストラステージ

「とっとと起きろ! いつまで気を失っているつもりだ」
 高圧的な声が聞こえる。
「海馬……?」
 海馬瀬人。彼は僕を足蹴にして、気を失っている僕を起こしたようだった。
「……もっとまともな起こし方を頼むよ」
「フン……。ここまで辿り着けたから良かったものの、遅すぎる! いつまで待たせておく気だ……!」
 海馬は少しだけ怒りの表情を見せた。
 彼の言動から確信した。やはり、海馬は全てを分かっていた。海馬瀬人にとって、今の状況は「計画通り」であったのだ。
 リアルタイムデュエル大会。その真の敵を知った海馬は、一つの結論を出した。
 敵はこの心鎮壺に居座っている風水師。その風水師を倒すためには、海馬自身が心鎮壺に入らなくてはならない。そのためにはライフを0にすることが必要であると。
 そして、遊戯から聞いたもう一つの事実。

[遊戯の報告2]
 心鎮壺には容量制限がある。

 リアルタイムデュエル大会では、最後に残った一人以外の心がこの心鎮壺に集められる。その結果、風水師本人を含み8人分の心がひとつの心鎮壺の中に封印されることになる。
 心鎮壺は元々1人分の心だけを入れる壺。そこに8人分の心がある状態で無理がある状態と言える。
 もし、これにあと1人分の心が加わったら、この心鎮壺自体に何か影響を与えられるのではないだろうか?
 僕はそう結論付けて8人目のデュエリストと引き分けた。その結果、今、この心鎮壺には9人分の心があるのだ。
 だが、海馬瀬人は、こうなることも予想していたのではないだろうか?
 海馬は、ファイアー・ボールのカードで8人目のデュエリストにダメージを与え、僕の残骸爆破でトドメをさせるように仕組んだ。そして、海馬自身も心鎮壺の中に入るために「わざと」負けた。海馬には全てが予定調和であったように思えてならなかった。
 僕は、周囲を見渡した。
 ここは心鎮壺の中。
 そこには、どこまでも続く荒野の風景があった。
 見上げると、灰色の空が見える。空の一部がところどころ割れているように見えるのは、この心鎮壺に9人分の心がある弊害なのだろうか。
 そして、僕の周囲にはこのリアルタイムデュエル大会に参加した全員の姿が見える。その中には井守の姿もあったが、今の井守は本来の心を取り戻している状態だった。
 また、この心鎮壺の中にいる8人は「心」だけの状態で、その体は心鎮壺の外にある。そのためか、心鎮壺の中にいるみんなの体は半透明に透けて見えた。
 ただ、海馬だけはあまり透けていない気がするのは気のせいだろうか?
「ハハハハーーー! お前透けまくってるやんか! 存在感でも薄いのかぁ!?」
 ダイナソー竜崎が僕の姿を見て笑い飛ばす。
「存在感とか関係あるわけないだろう」
 僕はそう言い返したが、あまり自信がなかった。存在感と今の透け具合は関係ない。うん、そう信じることにしよう……。
「とにかく、あんたもモンスターを召喚しなさい」
 後ろで見ていた孔雀舞が僕を諭すように言った。
 周りを見渡せば、誰もがモンスターを召喚していた。
「どうやらここでもリアルタイムデュエル大会のルールが適用されているようね。ただ、一度ライフが0になっているからライフポイントは4000に戻っているし、それに場と手札のカードもリセットされてるみたい」
 僕は左腕を見た。そこには最初からあったのだろうか。陶器製のデュエルディスクがあった。
 そして、僕の右手はいつの間に5枚の手札を掴んでいた。

【現在の手札】
 デス・カンガルー
 シルフィード
 カオス・ソルジャー −開闢の使者−
 凡骨の意地
 大火葬

【現在の場】
 カードなし

【現在のライフポイント:4000】

 僕の手札の中には、最強クラスのカードと言われる「カオス・ソルジャー −開闢の使者−」があった。
 このカオス・ソルジャーを場に出すためには、墓地に光属性モンスター1体と闇属性モンスター1体が必要。墓地のカードを確認すると、墓地には30枚を超えるカードがあった。どうやら墓地のカードは継続されているようだった。
 それならば、迷う余地はない。僕は、墓地の光属性モンスターと闇属性モンスターを除外し、カオス・ソルジャー −開闢の使者−を特殊召喚した。
「ほう。中々のモンスターを引き当てたな……」
 僕の場に召喚されたモンスターを見て、海馬が言った。
 周囲を見渡すと、誰もがモンスターを召喚していた。
 海馬瀬人が召喚しているモンスターは、やはりというべきか彼の象徴とも言える青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)。しかも3体。海馬の選択したパックは "青眼の白龍伝説" に違いないだろう。
 海馬の場にはブルーアイズが3体。デュエル中以外ではモンスターを1体しか出せないルールに反しているが、羽蛾と竜崎がやったように、他のデュエリストに協力してもらって実現させたのだろう。
 とは言え、青眼の白龍を3枚引き当てるだけでも相当な運が必要ではないのだろうか。相変わらずとんでもない資質を秘めたデュエリストだ。僕は海馬瀬人がまた恐ろしくなった。
 続いて、インセクター羽蛾が召喚しているのは、攻撃力4000の幻魔皇ラビエル、攻撃力2800のデビルドーザー、攻撃力2400の終焉の王デミス。ダイナソー竜崎は、攻撃力3000のホルスの黒炎竜LV8、攻撃力2800のアームド・ドラゴンLV7。この2人は、最初にこの心鎮壺の中にやってきたこともあって、準備は万端だった。というか、やりたい放題だった。
 そして、孔雀舞は攻撃力2400の風帝ライザー。奇術師パンドラは攻撃力2500ブラック・マジシャンと攻撃力3500のブラック・マジシャン・ガール。エクゾディア使いのデュエリストは攻撃力2400の真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)。井守は攻撃力2800のサイバー・ツイン・ドラゴン。
 誰もが強力なモンスターを召喚していた。
 この空間では何が起こるかわからない。このくらいの準備はしていくべきだということか。
「準備はできたようだな。ならば行くぞ」
 海馬が言う。
「行くってどこにだよ? ここはどこを見渡しても荒野。行くあてなんかあるのかい?」
 僕が聞くと海馬は鼻で笑った。
「貴様、何のためにここに全員を集めたのだ」

[遊戯の報告2]
 心鎮壺には容量制限がある。

 そうか。今、この心鎮壺はいわゆる定員オーバーの状態。
 その証拠に、ここから見える空は、不自然に割れているではないか。
「あの空か……」
 見上げながら僕は言った。
「そうだ。あの空に向かって、モンスターで総攻撃を仕掛けるのだ。そうすれば、崩壊直前のこの景色を打ち破ることができる」
 僕達8人は互いに見合って、一斉に攻撃を仕掛けた。
「行け! カオス・ソルジャー −開闢の使者−! 攻撃力3000の2回攻撃で、あの空を切り開け!」
「ヒョヒョヒョ……我がラビエル様軍団は最強!」
「ワハハーー! ホルスとアームドのダブル攻撃や!」
「風帝ライザー! あの空を吹き飛ばしなさい!」
「我がマジシャン軍団は最強。師弟の絆を見せ付けてあげなさい! ブラック・バーニング・マジック!」
「今宵の獲物は月明かりに映える……。我がレッドアイズよ! 黒炎弾!」
「ボクだって行くぞ! サイバー・ツイン・ドラゴン! 2回攻撃しろ!」
「そして、オレの最強のしもべブルーアイズ! 滅びのバーストストリーム三連弾!! 最強! 無敵! ワハハハハハハハ!!」
 次々に放たれる攻撃で周囲は光に包まれる。
 これは、攻撃によるエフェクトだけが引き起こしたわけではない。この風景そのものが崩れ去っているのだ。
 ペラペラと紙切れのように荒野と灰色の空は崩れ去っていく。
 気付いた時には、僕達は一つの部屋に立っていた。
 学校の教室くらいの大きさ。天井はドーム状になっていて、部屋の中心に一筋の光が差し込んでいる。そう、これが心鎮壺の中の本当の姿……!
 そして――
「お前がこのリアルタイムデュエル大会の本当の首謀者だな……!」
 その部屋には、漆黒のローブを羽織った見慣れぬ男が背を向けて立っていた。
「まさかあの幻影を打ち破ってくるとは……! 計画は台無しだ!」
 憎しみを込めた低い声で男は言って、僕達を睨みつけた。
 その男の周りには、5体の龍が召喚されていた。最後の闘いが今、始まろうとしていた。



第22章 五龍

「もはや貴様達は生かしておけん。ここでその心を砕いてくれる!」
 5体の龍を従えた男は、僕達に向けて言った。
 この男こそが僕達が倒すべきあの風水師。みんなの心を戻すためにはこの男を倒さなければならないのだ。
「御託はいい。とっとと始めるんだな」
 海馬が一歩前に出て風水師を急かす。
「いいだろう。リアルタイムデュエル大会と同様、この闘いもまたゲームでなければならない。そのルールを説明させてもらおう」
 男は、ルールの説明を始めた。

[ルールEX1]
 基本的なルールはリアルタイムデュエル大会のものと同様。

「まず、基本はリアルタイムデュエル大会と同じだ。ターンの概念はなく、お互いの攻撃や守備が入り混じる。モンスター召喚のルールや制限も同じだ」

[ルールEX2]
 ライフが0になったプレイヤーは「心」を失う。

「リアルタイムデュエル大会とは異なり、お互いの目的が異なる。貴様ら8人はこの俺を倒し、この俺は貴様8人を倒す――これが目的だ。もちろん負けた奴は心を破壊されるがな……!」
 男は眉間にしわを寄せ、ニヤリと笑った。

[ルールEX3]
 心鎮壺の外から中に入る際、ライフが4000に戻る代わりに場と手札のカードは墓地に送られる。デッキと墓地のカードは維持される。

「これは気付いているとは思うが一応言っておく。貴様らがこの心鎮壺にやってくることで、貴様らの場と手札のカードはリセットされる。心鎮壺の外でどれだけ弱かろうが強力なカードがあろうが、一旦リセットされるのだ」

[ルールEX4]
 ゲームマスターはいつでもデュエルしている状態にある。

[ルールEX5]
 ゲームマスターは特別なデッキを使用する。

「8対1となる俺は圧倒的に不利な立場。そのために、この二つのルールを適用させてもらう」
 ルール中の「ゲームマスター」とは、「風水師の男」のことを指すのだろう。
「まず、俺だけはいつでもデュエルしている状態にある。このルールによって、デュエル中以外において俺が場に出せるカードの数に制限がなくなる」
 風水師の男の場を見ると、龍が5体が召喚されている。
 この男には、モンスターを同時に1体しか出せないという制限はなく、デュエル中以外でも魔法やモンスターの効果を使用できるのだ。
 ボスキャラらしく、準備は万全というわけだ。
「また、俺は『龍札』をモチーフにした特別なデッキを用いることができる」
 男の場に出ている5体の龍。それらは僕の見たことのない龍だった。市販されているカードには存在しないのだろう。
「そして、これらの五龍こそが! 貴様らを永遠の死へと導く最強の龍なのだ……!」
 その発言を合図にしたかのように、五体の龍がゆっくりと起き上がっていく。

水龍 水 ★★★★★
【ドラゴン族・効果】
自分フィールド上に「金龍」が存在する限り、「水龍」「木龍」「火龍」「土龍」「金龍」は戦闘では破壊されない。
攻撃力1900 守備力2700

木龍 風 ★★★★★
【ドラゴン族・効果】
自分フィールド上に「水龍」が存在する限り、1分毎に500ライフポイント回復する。
攻撃力2100 守備力2000

火龍 炎 ★★★★★
【ドラゴン族・効果】
自分フィールド上に「木龍」が存在する限り、相手フィールド上カード1枚を破壊する。この効果は1分に1度しか使用できない。
攻撃力2300 守備力1400

土龍 地 ★★★★★
【ドラゴン族・効果】
自分フィールド上に「火龍」が存在する限り、「水龍」「木龍」「火龍」「土龍」「金龍」以外の全てのモンスター効果を無効にする。
攻撃力2000 守備力2400

金龍 光 ★★★★★
【ドラゴン族・効果】
自分フィールド上に「土龍」が存在する限り、全ての魔法・罠カードの効果を無効にする。
攻撃力2200 守備力1800

「こいつらは……」
「龍一体の攻撃力は大したことはない。だが、全ての龍が集まることでとんでもない効果が発動している……!」
 五龍……これはハッキリ言って無敵じゃないか。
 攻撃力はそこそこだが、戦闘では破壊されない。効果で倒そうと思っても、モンスターの効果も魔法の効果も罠の効果も封じられる。だからと言って放っておけば、火龍の効果でこちらのカードが破壊され、木龍の効果でライフを回復される。
「いや、穴はあるで!」
 ダイナソー竜崎が何かに気付いたかのように声をあげた。
「この龍に攻撃を仕掛ければいいんや! 倒せはしないが戦闘ダメージを与えることはできる! お前のライフは4000。いずれ尽きるで!」
 その発言に男は笑った。
「ククク……。確かにダメージは受けるだろう。だが、木龍の効果を見ていないのか?」

木龍 風 ★★★★★
【ドラゴン族・効果】
自分フィールド上に「水龍」が存在する限り、1分毎に500ライフポイント回復する。
攻撃力2100 守備力2000

「そして、このルールを……」

[ルールEX4]
 ゲームマスターはいつでもデュエルしている状態にある。

「いつでもデュエル状態……。いつでもモンスター効果が使える……。まさか……!」
「そうだ。このリアルタイムデュエル大会が始まってから6時間で俺は木龍の効果が使える状態になった。それから今まで何時間が経過した? 約30時間だ! その間、俺のライフは1分毎に回復し続けてきた。したがって俺の今のライフポイントは――」
 500ライフ回復が1800回……。僕は唾を飲み込んだ。
「俺のライフポイントは――89万6500!」
「89万ですって……!」
「ふ、ふざけんな!」
「ハッハッハッ! この俺にダメージを与えても、かすり傷みたいなものだ。その間に火龍の起動効果で貴様らのモンスターを残らずせん滅してくれる!」

火龍 炎 ★★★★★
【ドラゴン族・効果】
自分フィールド上に「木龍」が存在する限り、相手フィールド上カード1枚を破壊する。この効果は1分に1度しか使用できない。
攻撃力2300 守備力1400

 絶望だった。
 モンスター効果も使えない。魔法効果も使えない。罠も使えない。戦闘ダメージを与えるにも相手ライフは89万。その間に僕達のモンスターは全滅。
 もう既に勝敗は決しているじゃないか。どうしようもないじゃないか。
 だが――
「フン……くだらん……」
 僕の隣にいる海馬。彼は笑っていた。
 まさか……この状況でも勝てる見込みがあるというのか? 信じられない……!
 いや、あるのだ。
 そう。これが普通のデュエルだったら、間違いなく僕達は負けている。だが、これはリアルタイムデュエル!
 僕だって今までこのリアルタイムデュエル大会を勝ち残ってきた。そのルールの裏に隠された「策」。これを見つけることは不可能ではない!
 僕はリアルタイムデュエル大会の全てのルールを思い出した。
 特にバトルに関わるルールを中心に思い出す。

[ルール05]
 モンスターのバトル中は、メインフェイズで行う処理(速攻魔法以外の魔法カードの使用、モンスターの通常召喚や表示形式の変更、カードのセットなど)が行えない。

[ルール06]
 攻撃を仕掛けたモンスターは、攻撃終了後1分間は攻撃を仕掛けられない。

[ルール07]
 通常召喚は1分に1度しか行えない。

[ルール08]
 罠は場に伏せてから30秒経過後に発動可能。

[ルール09]
 カード効果はOCGに準ずるが、カードによってはリアルタイムデュエルに対応する処理に変更される場合がある。

「そうか……!」
 そして、気付いた。
 ルールの中に、今の状況を打ち破る「策」が隠されていた。
 それは、「とんでもない」がお似合いの最強最悪の「策」だった。



 気が向いた方は、この先を読む前に以下のQ6を考えてみてくださいね。

 Q6:この状況を打ち破るとんでもない「策」とは?



第23章 雑魚が誇り高き獅子に触れることすら許されぬことを教えてやる

 風水師の男の場には5体の龍。その龍は互いをサポートしあって、戦闘で破壊されず、あらゆる特殊効果も無効化してしまう。
 一見無敵に見えるこの布陣。だが、僕はそれを打ち破る「策」を見つけた。
 僕は、デュエルディスクに置いてある「カオス・ソルジャー −開闢の使者−」のカードに手をかけた。
「ならば、せめてダメージだけでも与えてやるよ! カオス・ソルジャーで水龍を攻撃!」
 僕の攻撃宣言に従いカオス・ソルジャーは飛び上がり、水龍を斬りつける。
「カオス・ソルジャーの攻撃力は3000。それに対し、水龍の攻撃力1900。1100のダメージを受けてもらうよ!」
「ハッハッハッ! 俺のライフが89万6500から89万5400になっただけに過ぎん! 水龍も破壊されず、何も変わらん!」
 男は笑う。カオス・ソルジャーは1度だけ水龍を斬りつけて、僕の場へ舞い戻ろうとしていた。
 僕の隣にいた海馬が動き出した。
「それならば、このオレの攻撃を喰らうがいい! 1体目のブルーアイズ! 滅びのバーストストリーーーム!!」
 すかさず海馬が攻撃を仕掛ける。
 やはり、海馬は分かっている。この「策」を分かっている。
「ハッハッハッ……ハーーッハッハッハッ! 美しいものだな。散りゆく花火というものは……。貴様らがチマチマと俺のライフを削ろうとしている間、火龍の起動効果で1体ずつ破壊してくれるわ!」

火龍 炎 ★★★★★
【ドラゴン族・効果】
自分フィールド上に「木龍」が存在する限り、相手フィールド上カード1枚を破壊する。この効果は1分に1度しか使用できない。
攻撃力2300 守備力1400

「続け! 2体目のブルーアイズよ! 滅びのバーストストリーーーム!!」
 海馬は風水師を無視して攻撃を続ける。
「続いて3体目のブルーアイズの攻撃! ……さあ、俺の攻撃の後は、他の奴らも俺に続いて一人ずつ攻撃をしろ! ライフを削り取れ!」
 海馬は皆に向かって言った。
「風帝ライザーで攻撃!」
 3体目のブルーアイズの攻撃が終わる頃、孔雀舞の風帝ライザーの攻撃が炸裂する。
 風水師の男は、何かに気付いたかのようにニヤリと笑った。
「なるほど……俺の火龍の効果でモンスターが全滅する前に、俺のライフを削りきろうという作戦か……。だが、無駄なこと! 俺のライフを削るペースより、火龍で貴様らのモンスターを破壊させるペースの方が早い!」
「サイバー・ツイン・ドラゴンで攻撃だ!」
「無駄無駄。貴様らの攻撃が一通り終わったら、火龍の効果で1体ずつモンスターを焼き払ってやるよ……」
「我がレッドアイズの黒炎弾を喰らうがいい……」
「ブラック・マジック! ブラック・バーニング!」
「ホルスの黒炎竜の攻撃! アームド・ドラゴンの攻撃!」
 僕達が一通り攻撃を終えようとしていた頃、男のライフは1万程度しか減っていなかった。
「ハッハッハッ……ハーーッハッハッハッ! 貴様ら全員が力をあわせても89万のライフが88万になっただけに過ぎん! さあ、そろそろ俺の反撃に移らせてもらう! この虫野郎の攻撃が終わったらな!」
 虫野郎ことインセクター羽蛾は、風水師の男に指を付きつけてニヤリを笑みをこぼした。
「何勘違いしているんだ……ピョー!」
 竜崎のアームド・ドラゴンの攻撃に続いて、羽蛾のモンスター3体も順番に水龍に攻撃を仕掛けていく。
 羽蛾のモンスター3体が攻撃を終える頃、僕は言った。
「そうさ! まだ僕達のバトルは終わってはいない! 僕はカオス・ソルジャーで攻撃だ!」
「何! お前のカオス・ソルジャーはさっき攻撃したばかり。再び攻撃など……」

[ルール06]
 攻撃を仕掛けたモンスターは、攻撃終了後1分間は攻撃を仕掛けられない。

「1分経っただろう? 僕達8人のモンスターが順番に攻撃している間に、1分の時間が経過したのさ!」
 カオス・ソルジャーは水龍に斬りかかり、僕の場に戻ろうとする。それと同時に海馬が一歩前に出た。
「ワハハハハハ!! ブルーアイズ3体よ! 順番に攻撃するがいい!」
 ブルーアイズもまた最初の攻撃から1分が経過し、再び攻撃を仕掛けたのだ。
「滅びのバーストストリーーーーム!」
「ハ……ハッハッ……攻撃をし続けて、それが何になるというのだ。俺の火龍の起動効果を発動すれば貴様らのモンスターなど……」
「あんた! 自分で作ったルールくらい覚えておきなさいよ!」
 孔雀舞は風水師の男にビシリと指をさして言った。

[ルール05]
 モンスターのバトル中は、メインフェイズで行う処理(速攻魔法以外の魔法カードの使用、モンスターの通常召喚や表示形式の変更、カードのセットなど)が行えない。

「あんたの火龍の効果――それはいわゆる『起動効果』と呼ばれる効果。メインフェイズにしか使えない効果なのよ。だからこのバトルが終わるまでは使えないの!」
 風帝ライザーの攻撃が水龍に炸裂する。水龍はバラバラになったかと思えば、その特殊能力ですぐに元の形に戻る。
「でもボク達のバトルは終わらない! 続いてサイバー・ツイン・ドラゴンの攻撃!」
「そうです。私達14体のモンスターが順番に攻撃を仕掛けることで、バトルが途切れることはなくなるのですよ。ブラック・マジシャン達よ、順番に攻撃なさい!」
「そして、14体目のモンスターが攻撃を終える頃には、1体目のモンスターは次の攻撃が可能になる。つまり、永久にバトルが続くのだ。さあ、私のレッドアイズよ! 黒炎弾を放て!」
「ヒョヒョヒョ……ラビエル様攻撃の時間だぞぉ……。お前のライフが0になるまで何度でも攻撃をしてやるよ!」
「さあ、3週目突入! カオス・ソルジャー! 攻撃だ!」
 僕達の攻撃は続く。
 僕達の「策」。それは、モンスター攻撃のエフェクト時間を利用した永久バトルコンボ。
 このコンボを利用すれば、対戦相手はバトル以外の行動を取ることはできなくなる。だが、五龍の攻撃力はそれほど高くないため、純粋なバトルにおいては僕達のモンスターにはかなわない。
 もはや、この風水師の男は、何もできない。
「そ、ま、待て! 守備表示だ! 水龍は守備表示に変更だ!」
「見苦しい!」

[ルール05]
 モンスターのバトル中は、メインフェイズで行う処理(速攻魔法以外の魔法カードの使用、モンスターの通常召喚や表示形式の変更、カードのセットなど)が行えない。

 風水師の男はもはや表示形式の変更すらできない。このままダメージを受け続けるしかないのだ。
「雑魚が! 誇り高き獅子に触れることすら許されぬことを教えてやる! 滅びのバーストストリーム三連弾!!」
「風帝ライザーの攻撃!」
「サイバー・ツイン・ドラゴンの攻撃!」
「ブラック・マジシャンの攻撃! ブラック・マジシャン・ガールの攻撃!」
「真紅眼の黒竜の攻撃!」
「ホルスの黒炎竜の攻撃! アームド・ドラゴンの攻撃!」
「幻魔皇ラビエル様の攻撃! デビルドーザーの攻撃! 終焉の王デミスの攻撃!」
 立て続けに行われる攻撃……!
「カオス・ソルジャー! 4回目の攻撃だ! カオス・ブレード!」
「ブルーアイズの攻撃! 粉砕! 玉砕!! 大喝采!!!」
「このカードそのうち制限になりそうだけど、風帝ライザーで攻撃!」
「効果が無効になって1回しか攻撃できないけど、サイバー・ツイン・ドラゴンの攻撃だぞ!」
「ここまでブラック・マジシャンを使いこなせるとは、私は遊戯を超えたに違いない。さあマジシャン師弟の連続攻撃!」
「いっそのことエクゾディア使いからレッドアイズ使いになるのも悪くない。黒炎弾!」
「モグラがいるからワイの大型恐竜が活躍できんのや! 何とかしてくれ! ホルスとアームド・ドラゴンの攻撃!」
「ヒョヒョ……いつかのデュエルを思い出すけど、自分でやるのは爽ッ快ィーー! ラビエル様で攻撃! デビルドーザーで攻撃! デミスで攻撃!」
 なんだか途中から言いたい放題言いながら、みんなは次々に攻撃を仕掛けていく。
 とっくに風水師のライフは0よ――とでも言いたいところだが、あいにくこの風水師のライフは89万6500。そう簡単には0にはならない。
「というか1時間かかるんじゃないか! 頑張れカオス・ソルジャー! 5回目の攻撃!」
「1時間だと! おのれ。海馬コーポレーションの戦略会議の時間が削られるではないか。損害賠償を請求してくれるわ! 滅びのバーストストリーム!」
「どうせあんたのところ儲かってるからいいでしょ! 風帝ライザーの攻撃!」
「ああ、サイバー・エンド・ドラゴンの方がカッコ良かったかな……。サイバー・ツイン・ドラゴンの攻撃!」
「もちろん我が愛しのピケルも忘れてはいませんよ……。ブラック・マジック! ブラック・バーニング!」
「そう言えば私は海馬にすら勝った? つまり海馬よりも強い……! クク……レッドアイズの攻撃!」
「羽蛾、ワイが貸したレインボー・ドラゴンのカード! いい加減に返しや! ホルスとアームドで攻撃!」
「ヒョ? レインボー・ドラゴン? そんなカード見たこともないね! ラビエル様軍団の攻撃!」
 もはや、ライフポイント89万6500、戦闘耐性、効果耐性、カード破壊――これだけを兼ね備えた風水師の五龍でさえも単なる雑魚にしか見えなくなってくる。
「も、もうやめて……やめて……! やめてくれ……やめてくれ……やめてくれ……やめてくれぇぇぇーーーーーっ!!!!!」
 やはり、この「策」はとんでもなかった。
 相手が完全な悪者だからいいものの、これをやれば友達をなくすこと必至の最強最悪の「策」であろう。

 ――雑魚が! 誇り高き獅子に触れることすら許されぬことを教えてやる!

 海馬が放った台詞が僕の頭の中で繰り返された。



第24章 ちょっとだけ振り返って

 その後のことはもはや詳しく語る必要はないだろう。
 僕達は1時間以上をかけ風水師の男のライフを削り取った。その瞬間、僕達8人分の心に耐えられず、心鎮壺はひとりでに破壊された。
 心鎮壺が9人分の心を抱えていながら今まで壊れなかったのは、風水師の男の力によるものだったらしい。元々こんなにたくさんの心には耐えられなかったのだ。
 そして、心鎮壺が壊れたことにより、僕達8人の心は元の体に戻っていった。羽蛾も竜崎も舞もみんなの心が元に戻ったのだ。
 あの井守という男子生徒も……。
 ちょっとした興味本位から闇のゲームに手を出してしまった井守。そのために受けた罰ゲームは決して易しいものではなかった。
 だが、こうして心を取り戻したのだ。これからは、もう少しまともに生きてくれるだろう。
「おはよう。遊戯くん、御伽くん。今日はね、『龍札』のゲーム持って来たよー。心鎮壺も壊れたし多分安全だよ。今日はこれで遊ぼう!」
「開けちゃだめだーーーーーーー!!!」
「早くそのゲームをしまって来ーーーーーーーーーーーい!!!!!」
 ……ともあれ、僕達8人はこのリアルタイムデュエル大会で勝つことができたのだ。
 良かった良かった――そういうことにしておこう。



 GAME OVER
(リアルタイムデュエル大会 おしまい)











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