6章・パーフェクトルール




(真崎杏子 視点)



「ごちそうさま〜!」

 私はそう言って、箸を置いた。

 周りを見てみると城之内だけが食べている。

 普段は、城之内の食べるスピードは速いハズなんだけど、今は城之内だけ食べるのが遅い。

 ――と言うのも、なかなか食べようとしなかったからで、さっきまでなにやら怯えた様子でお子様ランチとにらめっこしていたのだった。

 ちょっと前にみんなに言いくるめられて、今は仕方なく食べてはいるのだけれど…。

 まあ、お子様ランチ…だからねぇ…。食べる気にならないのも仕方ないか…。



「ねぇ、次はどこに行こうか?」

 レストランから出たところで、私はみんなに尋ねた。

「それじゃあさ、次はあそこに行こうよ!」

 そう言って遊戯が指差した先は、アーケードゲームコーナー…みたいなところだった。

「おっし、それじゃあ行くか!」

「うん。」

「ああ。」

 城之内に続いてみんなも頷き、6人全員一致でアーケードゲームコーナーに行くことになった。



 アーケードゲームコーナーに近づくにつれ、そこがアーケードゲームを取り扱っているわけではないことに気づく。

 ――そこは、どうやらデュエル場のようだった。

 ただし、普通のデュエルをやっているのではない。

 縦7マス、横7マスのフィールドをモンスターが移動している。

 フィールドバトル式のデュエルみたいだった。

「うわぁぁ、デュエルだよー!」

「よし、遊戯! 早速やってみるぜー!」

「うん!」

 遊戯と城之内を合図に、みんな勝手に方々に散っていく。

「ちょ、ちょっとー!」

 私の声も届かず、私は一人取り残されてしまった。

 ………。

 みんな、勝手に行動して…もう!

 私はちょっと苛立ちながらも、みんなの後に続こうとした。

 その時――

「あ、杏子ー!」

 思わぬ方向から声がかかる。

 あれ? そっちの方にはみんな行っていないはずだけど…。

 私は声の聞こえた方を振り向く。

 一人、手を振りながら私の方に駆けてくる。

 ちょっと派手な服装をした女性……

「舞さん!」

 私は思わず声に出していた。



「それじゃあ、プロモーションカードのために?」

「ああ、ネット上で、プロモーションカードをもらえるって情報が流れたからね…」

「へぇ〜。」

「それでも、今日限定ってワケじゃないから、やたらとデュエリストが押し寄せたりはしないんだけどさ。」

 どうやら舞さんはプロモーションカード目当てで来たみたい。

「まあそんなことはどうでもいいんだけどさ…」

 舞さんは空いているデュエルフィールドを指さした。

「せっかくだから、デュエル…しない? 杏子もさぁ結構強くなったんだろ?」

 デュエル…かぁ。舞さんとは久しぶりかも。

「うん、行こう。」

 私は頷いていた。



「それじゃあ、まずはルールからだね。ここで扱うルールは『パーフェクトルール』というものなんだ。」

 結構大きなデュエルフィールドでお互いに向き合いながら、私は説明を受けていた。

「パーフェクトルール?」

「うん、この7×7マスのフィールド上でモンスターを移動させるんだ。1ターンに1マスずつ移動させて、敵モンスターと重なったら戦闘開始。それで……」

 舞さんは説明を続ける。

 その説明の内容はだいたいこういったものだった…。



 ライフポイントはお互い4000。

 まずはモンスターの中から、「デッキリーダー」を決め、そのリーダーを中心にデュエルしていく。

 自分のターンに1枚だけ、カードをデッキリーダーの周囲のマスに出すことができる。

 場に出すカードはモンスターでも魔法でも罠でも、裏側でも表側でも構わない。

 モンスターを召喚する時には、そのモンスターのレベルと同じだけ召喚パワーを消費する。召喚パワーは毎ターン3ポイント回復する。

 そして、場のカードとデッキリーダーは、1ターンに1マスだけ移動することができる。ただし、守備表示のカードは移動できない。

 また、移動する時に表にすることもできる。魔法カードを表にするとその効果が発動される。

 カードを移動した時に、相手のカードに重なったら、どちらも表にしてバトル開始。負けた方は墓地へ送られる。

 もしそれが魔法カードだったら、無条件で墓地へ送られてしまう。

 さらに、デッキリーダーに攻撃できれば、直接攻撃扱いになる。

 そうして、ライフが0になったら負け。



「うーん、一気に説明されるとちょっと混乱しちゃうかも…」

「とりあえずやってみれば分かると思うから、デュエル開始しましょ。」

「うん。」

「まずは、デッキリーダーを決めなきゃね。攻撃力は関係ないから、好きなモンスターを選べばいいよ。あたしはもちハーピィね。」

「じゃあ私は…デュナミス・ヴァルキリアかな…」

「デッキリーダーによって特殊能力が違うからね…。それでいい?」

 デュナミス・ヴァルキリアの特殊能力は、周囲1マスの天使族モンスターの強化かぁ…。

「うん。これでいいわ!」



「よし! それじゃあデュエル開始!」

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【舞】
LP 4000
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【杏子】
LP 4000
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※ 【舞】【杏子】はそれぞれデッキリーダーを指す。また、杏子のカードは青色、舞のカードは赤色で表記する。



「じゃあ、あたしの先攻でいくわよ。」

 舞さんの先攻だ。

「あたしはカードを1枚場に出し、ターンエンド。」

 カードは裏側のまま場に出された。

 確か、これはモンスター、魔法、罠のどれかも分からないのよね…。

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【舞】
LP 4000
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攻撃表示
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【杏子】
LP 4000
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※ 黄色で表記したところは強調したい部分。



「私のターンね…」

 デッキからカードをドローする。

「私は――」

 えーっと、手札には、モンスターカードが3枚、魔法カードが1枚、罠カードが1枚ある…。

 そして、今の召喚パワーは4。つまり、レベル4以下のモンスターなら召喚できる。

 でも召喚せずに、魔法、罠カードを使えば召喚パワーは減らずに済むんだっけ…。それなら――

「私もカードを1枚場に出すわ。守備表示。」

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【舞】
LP 4000
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攻撃表示
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【杏子】
LP 4000
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守備表示
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「フフ…。お互い様子見…ってわけね…!」

「それじゃあ、あたしのターン!」

「あたしは、前のターン場に出したカードとデッキリーダーを進撃させるわ。」

 舞さんは手馴れた様子で操作していく。

 裏側のままのカードとデッキリーダーは1マスずつ前進する。

「そして、さらにカードを1枚場に出してターン終了よ。」

 その宣言と同時に、舞さんのデッキリーダーの斜め前にカードが1枚出された。

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【舞】
LP 4000
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攻撃表示
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攻撃表示
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【杏子】
LP 4000
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守備表示
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「私のターンね…」

 舞さんが場に出しているカードは2枚。

 しかしどちらのカードの正体も分からない。しかもモンスターかそれ以外かも分からない…。

 パーフェクトルール…かなり戦略性の高いデュエルだわ…!

「私はカードを1枚守備表示で場に出し、ターン終了…」

 とりあえず、私は守りを固めることにした。

 こういうのは布石が大事って言うからね…!

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【舞】
LP 4000
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攻撃表示
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攻撃表示
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守備表示
【杏子】
LP 4000
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守備表示
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「守ってばかりね…杏子!」

「………」

「フフ…。今、あなたのデッキリーダーとあたしの最前列のモンスターの距離は4マス…。でも…」

「…?」

 舞さんは含み笑いをする。

「…さぁて、あたしはこのカードを表側表示にして1マス進撃! そして、表側にしたカードは――フィールドカード『山』! 周囲2マスの地形は山に変わるわ!」

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【舞】
LP 4000
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攻撃表示
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発動!
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守備表示
【杏子】
LP 4000
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守備表示
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※ 山フィールドは灰色で表記。

 フィールドは徐々に盛り上がり、山をかたどっていく。

「山フィールドでは、鳥獣族モンスターの攻撃力は500ポイントアップする…」

「さらに――移動力も増大し、1ターンに2マス移動できるの!」

 1ターンに2マス…!

「フフ…それだけじゃないわ! 私のデッキリーダー――ハーピィ・レディはその特殊能力によって、1ターンに2マス移動できる…」

 デッキリーダーとモンスターがどちらも1ターンに2マス移動可能…。

 まさか…このターンで、デッキリーダーに直接攻撃を…!

「ハーピィちゃんの速攻攻撃を見せてあげる…!」

 舞さんは不敵な笑みを浮かべた。

「デッキリーダーを2マス前に進めたのち、ハーピィ・レディを召喚!」

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攻撃表示
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【舞】
LP 4000
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ハーピィ
攻撃表示
ATK 1800
DEF 1900
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守備表示
【杏子】
LP 4000
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守備表示
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 ハーピィから私のデッキリーダーまでの距離は2マス…。攻撃が届いてしまう!

「ハーピィ! 2マス進撃して、デッキリーダーに直接攻撃よ!」

 ハーピィ・レディは前傾姿勢でまっすぐに飛んでくる。

「フフ…まだまだ甘いわね杏子。すぐには攻撃されないと油断したあなたが悪いのよ!」

「ハーピィ・レディの攻撃! スクラッチ・クラッシュ!」

 ハーピィは空を舞い、足蹴りで攻撃を仕掛けてくる!

 でも――

「甘いのは舞さん…あなたよ!」

「何ですって!」

「罠カード発動! 人魚の涙!」

 ハーピィは、水の塊に閉じ込められ身動きが取れなくなる。

「この罠カードによって攻撃は無効――さらに、攻撃力は600ポイントダウンするわ!」

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????
攻撃表示
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【舞】
LP 4000
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ハーピィ
攻撃表示
ATK 1200
DEF 1900
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????
守備表示
【杏子】
LP 4000
人魚の涙
発動!
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「ふふっ、初めてだからって油断…したんじゃない? 舞さん!」

「フフフ…やるわね!」





微妙な後書き

パーフェクトルールを登場させてみました。
パーフェクトルールって言うのは…まあこれです。大体そのまんまです。

知らない人にとってみれば、多少難しいことを言っているように感じるかもしれませんが、要はフィールドバトルです。
・モンスターも魔法も罠もフィールドでは同じように扱う。
・1マスずつ移動して、敵と重なったら戦闘。
・敵のデッキリーダーに重なったら直接攻撃。
とりあえずはこれだけ分かればこれを読む分にはほとんど困らないと思います。

次回はこの続きです。
この2人、なんか対峙すると結構怖いかも…。




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