あとがき



 というわけで、カダール君の新たな物語を楽しんで頂けたでしょうか。

 様々語りたいことはあるのですが、取り留めもなくなってしまうので、一つのテーマに絞って語りたいと思います。「カダールくんの物語を書こうと思った動機」についてです。

 結論を先取りすれば、私がカダールという人物を魅力的に感じた、それだけのことです。

 私が物語を書く主な目的として、物語を書くという作業を通じて、新しいものを発見したいというのがあります。自分で書いた物語のはずなのに、自分でも書く前までは気付かなかった新しい感覚が自分の中に生まれている。執筆前と執筆後の心境の変化。その神秘的な作用を体験したいからこそ、私は筆を執り続けているようなものです。歌詞のフレーズで「あなたを通して見て、私の世界は変わった 全てが新しく見えた」というようなニュアンスのものがたまにありますが、それと似たような追体験を求めているのです。

 そういう体験を求める上で、カダールくんは魅力的なキャラクターでした。まさに興味深いキャラクターでした。冷笑的な口調で一見冷酷に見えるのに、芯には正しく在りたい・誰もが笑っていて欲しいという誠実な願いを持っていて、大変深いものを抱えているように感じられたのです。彼を通じて、または彼の視点を借りて、何か物語を書いてみたら、新しいものが得られるのではないかと思えたのです。

 二次創作とはそういう面を少なからず持っていると思います。その借りる題材に魅力を感じたから書くのです。そして、その題材について自分がより言及してみたら、さらにまた新しい発見があるのではないか。この作品について自分にしか感じられない何かを表現できるのではないか。好きなものをより深められるのではないか。そういった動機や期待があるから、二次創作に乗り出すのだと思います。

 また、二次創作というのは、自分の好きなことをより直接的に表現する場でもあると思います。ある作品のある部分が好きだから、その部分を受け継いだキャラを書こう。……というのをさらに踏み込んで、直接そのキャラ・世界観を借りて書いてしまおう、という試みなわけです。

 さらに、これにはもう一つの側面があると思うんです。それは自分以外の人が生み出したものというのは、自分が生み出したものよりも神秘的で深く思えるということです。自分で作ったキャラクターというのは、どうしても自分の手が入っていて、自分で生み出した経緯を覚えていて、陳腐で浅はかなものに思えてしまうことがあります。ですが、他の人のキャラはどういう事情で生み出されたかほとんど分からないことが多いです。いわば別の神が生み出した存在であること。なので、より深いものを持っているに違いないと、盲信しやすいのです。

 (もっとも、自分のキャラについても、別種の神秘的な作用を持っていると感じることができます。例えば作った登場人物に、無意識下のうちに自分のコンプレックスや憧れや興味ある人生観を盛り込んでしまっていることは、よくあることです。「気付かなかった自分の側面がそのキャラを通じて出てきた」、それだけでもとても神秘的な体験であると思います)

 話が多少脱線してしまいましたが、つまり私がカダール君を題材に書いた動機は、カダール君を通して物語を書いてみることで、何か新しいものを発見できると思ったからです。

 このスペースはあとがきなのですから、その結果も書きましょう。結果的に新しいものを得られたと思っています。

 ひとまず、カダールくんについて新しく分かったことについて。Kunaiさんのブログの登場人物紹介欄に好きなもの、嫌いなもの、という項目があります。これにカダール君の好き嫌いも書いてあったりしますが、ちょっとだけ引用させて頂きます。

 「嫌いなもの:敵  食:ピーマン,セロリ,グリーンピース,ナス,トマト」

 着目してほしいのは後ろの部分です。子どもが嫌いな料理がずらりと並んでますよね(笑)。つまり、カダールくんにはここに象徴されるように子どもっぽい部分があるってことです。これが執筆を始める前は、そこまでピンと来なかったのですが、今は結構分かる気がします。彼は子どものまま大人にならざるを得なかったんですよね。幼いときに彼は唐突に死んで、破滅の光として生まれ変わらされました。そのときに、様々なつらい思いをしたと思うんです。破滅の光として生まれ変われば、どうしても人の心の闇に一気に対面せざるを得ないのですから。それで彼は少なからず心を閉ざしてしまったのでしょう。それで冷笑的な表面的な態度が出来上がってしまったんだと思います。

 ですが、その成長はやはり無理があったのです。彼の中の子どもの部分を多く取り残したままで、生きざるを得なかったのです。だから、彼の中には純朴な正義感や家族への愛着などがしっかり残されています。好き嫌いもその一つですね。「味方は好き、敵は嫌い」というのも、子どもは素直にそう感じるものです。このような感じで、彼の奥に秘められた子どもっぽさ・童心というものに、私は改めて触れることができたと思います。

 その上で私自身について、何か感じるものがあったかというと、やはりあったかなと思います。こういうカダール君のような童心というのは、誰にでもあると思うんです。だけど、日常を過ごしていく中で、段々と諦めと割り切りを纏っていく中で、忘れていってしまいます。それでも子どもの頃の願いや憧れというのは、確かに純粋で自分の中の原点には変わりないのです。それを思い出し、目指そうと思ったときのカタルシス。最初からカダールくんのアイデンティティーの回復をテーマに書いたのですが、このカタルシスがここまで自分の中に響いてくるとは思いませんでした。

 そして、もう一つ感じた事は、二次創作のエネルギーというものです。私は正直な話、自分でゼロからキャラクターを作るのが苦手です。他人のキャラを解釈加えたり、深めてみたりする方が楽な変わった書き手です。ですから、今回のカダールくんのお話はきっと書きやすいだろうという算段もあって、書き出しました。ですが、それ以上の効果もありました。それはこのキャラクターはいい!と思ったキャラを書いていれば、自然と筆の乗りが良くなるということです。まして、このカダールくんは人から借りたキャラクターさんです。余計にないがしろにはできません。そういう意味で、満足いく物語を書くには、自分が愛したいキャラクターを題材にすること、キャラクターを愛していくことが大事なのだということを再確認させられました。愛せばそのキャラクターを引き立たせたいという気持ちが生まれて、物語も自然と前向きになるものなのです。「カダールくんはいいキャラ!」と感想掲示板で連呼していた私なのですから、この作品はまさに愛の成せる業となりました。それとこれからに向けては、もっと自分の生み出してきたキャラクターも愛していきたいなぁと思います。Kunaiさんのキャラクターたちが輝いて見えるのは、作者のKunaiさんから愛されているからという要素も非常に大きいと思いますし。

 以上がカダールくんの物語を書き終えて、感じた主なことです。最後に皆様へちょっとしたオススメをして、このあとがきを締めくくりたいと思います。

 本編とあとがきの書き方を見比べて、何か違和感を覚えた方は鋭い方です。些細なことなのですが、漢字の使い方が違っているのに気付いたでしょうか。今回、書き方を真似てみるという試みも含んでいたので、漢字の使い方もハピフラシリーズに準拠していたりします。私は新聞みたいな漢字の使い方をする派でして、『こと、くん、ため、きみ、できる(can)』などを平仮名で綴るようにしています。これは私は割りと小難しい表現を要所で使いたがるもので、平仮名をある程度多めにした方がそれが引き立つからです。ですが、今回は敢えて真似てみました。同時にキミワラの文章の書き方というのも少し意識してみました。モンスターの描写をある程度控えてみたり、心理描写を改行せず勢い良く書いてみたり。やはり、Kunaiさんの書き方は人物の心理描写をするには非常に適しているなーと思いました。この書き方だとすらすら心理を語りたくなって筆が進むのです。

 こういう風に人の書き方を真似てみると、読んでいるだけでは気付かない技術や配慮に気付けることがあります。いろいろな勉強にもなるので、皆様も何か好きな作品・尊敬する作品がありましたら、練習としてでもその書き方を意識してみるのも技術の向上などにつながるかもしれません。学ぶという言葉は、「まねぶ」という言葉から来ています。真似が最初の一歩とも言えるのです。皆様もこういう三次創作でも二次創作でもやってみれば、新たなことが学び取れるかもしれません(でも、パクりになってはいけないのです。掲載や投稿するときは、原作者に配慮して行わなくてはなりません)。

 ではでは、本当にこのあとがきを締めくくります。この度はKunaiさんも私みたいなサディスティックな面もある書き手に、カダールくんという純真な子を任せて、親心として心配なところも大いにあったのではないでしょうか(笑)。ですが、そんなとこも乗り越えて、この三次創作をすることにも快諾してくださったKunaiさんには感謝感謝です。このような貴重な機会を与えてくださって、重ねてお礼を申し上げます。また、この投稿に至ったのは、原作HPの方々が最近は何やら仲睦まじく三次創作をちらほら投稿して、見ごたえの在る結果を残している流れに感化されたからでもあります。そういった意味でも、和気藹々と接して温かい意見交換をしてくれている他作者の方々や、このスペースを提供して頂いているプロたんさんにもお礼を申し上げて、この後書きを閉じたいと思います。

2009/10/17(土) 村瀬 薫





デッキ紹介


『カダールデッキ・巡る竜の軌跡』

モンスター:魔法:罠
26:11:3

<モンスター>……26枚

《破壊竜ガンドラ》
《タイラント・ドラゴン》

《氷炎の双竜》×2
《デザート・ツイスター》×2
《ヘルカイザー・ドラゴン》
《エメラルド・ドラゴン》
《デス・ヴォルストガルフ》

《サファイアドラゴン》
《ブリザード・ドラゴン》×3
《ドル・ドラ》
《プロミネンス・ドラゴン》
《仮面竜》×3
《洞窟に潜む竜》
《軍隊竜》×3
《ボマー・ドラゴン》
《カードガンナー》
《クリボー》
《黄泉ガエル》

<魔法>……11枚

《生け贄の代償》×3
《未来融合−フューチャー・フュージョン》
《龍の鏡》
《おろかな埋葬》
《大嵐》
《亡骸の遺産》
《思い出のブランコ》
《突進》
《月の書》

<罠>……3枚
《聖なるバリア−ミラーフォース−》
《ガード・ブロック》
《サンダー・ブレイク》

<融合デッキ>……1枚
《F・G・D》


〜作者からの紹介〜

 今作の主人公カダールくんのデッキです。見た感じはごった煮の多属性ドラゴン族という感じかしら。

 ギミックとして最も注目してほしいのは、《未来融合−フューチャー・フュージョン》です。ドラゴン族は各種族の中でも、もっとも多種多様な属性を擁立している種族です。そのため、《F・G・D》を指定して《未来融合−フューチャー・フュージョン》を使えば、5枚の好きな属性を選んで墓地に落として肥やすことができます。この《おろかな埋葬》5枚分のことをできるコンボを生かしたのが、上記のデッキです。

 地・水・火・風が満遍なく組み込まれており、いずれも中堅上級である《氷炎の双竜》や《デザート・ツイスター》につなげるために機能します。また《仮面竜》と《軍隊竜》に代表されるように、比較的守備的なモンスターも多いですね。これは墓地を肥やすこともそうですが、生け贄確保のためでもあります。罠も少なめになっていて、《黄泉ガエル》の蘇生もしやすくなっており、上級モンスターが比較的多い構成ですが、そこまで生け贄には困りません。

 中堅の除外コスト特殊召喚モンスター2種で場を荒らしつつ、《F・G・D》などで一点突破を狙うのが勝ち筋となっています。




『アリアデッキ・大いなる流れ』

モンスター:魔法:罠
22:12:6

<モンスター>……22枚

《超古深海王シーラカンス》
《海竜−ダイダロス》

《ギガ・ガガギゴ》
《ジェノサイドキングサーモン》

《アトランティスの戦士》
《憑依装着−エリア》
《ガガギゴ》
《アビス・ソルジャー》
《レインボー・フィッシュ》
《水の精霊 アクエリア》
《深海王デビルシャーク》
《ヒゲアンコウ》
《光鱗のトビウオ》
《オイスターマイスター》
《マーメイド・ナイト》
《クリッター》
《ディープ・ダイバー》
《ペンギン・ソルジャー》
《水霊使いエリア》
《水晶の占い師》
《黄泉ガエル》
《スノーマンイーター》

<魔法>……12枚

《伝説の都 アトランティス》×3
《テラ・フォーミング》
《フィールドバリア》
《マジック・プランター》
《貪欲な壺》
《強欲なウツボ》
《サルベージ》
《ドーピング・フュージョン》
《団結の力》
《皆既日蝕の書》

<罠>……6枚

《激流葬》
《竜巻海流壁》
《グラヴィティ・バインド−超重力の網−》
《援護射撃》
《水霊術−「葵」》
《リビングデッド・ドロー》

<融合デッキ>……5枚

《アクア・ドラゴン》
《轟きの大海蛇》
《黒き人喰い鮫》
《深海に潜むサメ》
《レア・フィッシュ》


〜作者からの紹介〜

 今作の相手役のアリアちゃんのデッキです。まー、水属性のグッドスタッフと言える構成ではないでしょうか。

 このデッキのギミックは本編で披露したものが主なものです。《伝説の都 アトランティス》により、レベル5・レベル7モンスターが容易に召喚できること。《海竜−ダイダロス》の制圧力。《超古深海王シーラカンス》の展開力と、そこから《団結の力》と《皆既日蝕の書》のコンボ。全体的に奇襲性に特化したコンボが売りです。フィールド魔法で強化された攻撃力も決して侮れません。

 その他、手札補充も面白いのがポイントです。《アビス・ソルジャー》などで墓地を肥やせば、すぐに《サルベージ》に繋げられます。貧弱なモンスターばかり固まったら、《強欲なウツボ》で手札交換をしちゃいましょう。





前へ 戻る ホーム