GX plus!
第二部
16話〜

製作者:カオスマンSPさん






第一部から登場している主要なキャラクター紹介

 光 神(カムイ)  15歳 男
武藤遊戯や、遊城十代に憧れ、デュエルアカデミア星海校に入学した、この小説の主人公。
デュエルの腕は、1年生の中でも高いと有名。
デッキは【E・HERO】を操り、多くの融合パターンを駆使し、相手に対して柔軟に対抗する。
また、幾何学的な模様の入った、どこかの民族衣裳みたいなものを身につけているが、彼の過去については、ほとんど分かっていない。


 黄泉 選理(センリ)  15歳 男
デュエルを通じてカムイと友人になった、カムイと同級生の青年。
『ゾンビ・マスター』を主軸とした【アンデット族】を操るが、切り札として『屍魔獣 ネクロ・キメラ』を組み込んでいる。
友好的な性格である一方、可愛い女の子には目が無い一面も併せ持っている。


 転羽 里奈(リナ)  16歳 女
デュエルをきっかけにして、カムイやセンリと友人になった、1年生の女の子。
初期は、少数のモンスターを装備魔法でパワーアップさせていくデッキだったが、レベルの低い魔法使い達で協力して戦うデッキに変わっていった。
自分の性格や容姿が、年不相応なほど子供っぽいことを少し気にしているような素振りを見せることもある。


 疾風 雷人  17歳 男
リナをめぐり、カムイをライバル視している、星海校の2年生。
この大会で、カムイに勝つことを目標にしている。
【電池メン】による、電光石火の速攻戦法を得意としている。


 早乙女 ナオ  14歳 男
小卒で入学しながらも、星海校の中でもトップクラスの実力を持つ2年生。
光天使と闇悪魔の力を併せ持つ【天魔神】を切り札にしているが、相手を速攻で倒すために、【ウォールバーン】の要素も併せ持っている。
ネコ耳のついた帽子をかぶり、エメラルドのように澄んだ緑色の目を持っていると言う特徴を持つ。











午前7時57分、デュエルアカデミア星海校・校長室にて……



……………
…………
………



「父さ……黒部校長。あと3分で、大会開始宣言の時間です。」
「うむ。そうだな。」
 デュエルアカデミア星海校の先生……黒部与一校長と、黒部剣一先生は、校長室の中で話し合っていた……


「……しかし……何故、今になって、本校との交流試合を?」
「……本来、この交流試合は、本校が申し込んだ事だ……。私は、それを承諾しただけにすぎん。」
「!……本校から!?」
 黒部先生は、校長の予想外の一言に驚いていた……


「しかし……本校は、前3年生が卒業したことで、勢いが落ちているとの噂がある……。その本校から、試合を申し込んでくるとは……妙ですね。」
「さすがだな、剣一。一瞬で妙な点を見つけるとはな。」
「ありがとう……校長。」





第十六話 スーパージェネックス開催!

午前7時59分……
決戦前夜に、夜通しデュエルをしていたカムイ達は、地べたにぐっすりと眠っていた……



3……2……1………









「全生徒諸君!これより30分後に、『スーパージェネックス』を開催する!開会式を行うので、本島中央のデュエルドーム・観戦席に集合するように!!」









「わわっ!い、いったい何スか!?」
 あまりに大きなアナウンスに、カムイはびっくりして飛び起きた!

「な、何て大音量のアナウンスなんだよ……。」
 センリは、両手で耳を押さえながら目を覚ました……。

「くっ……本当に爆音だったな……。」
「うち……まだ耳がキイキイ言っとるわ……」
「ミカ、大丈夫か?わいも、ちとビビってまったな……。」
「まったく……。アナウンサーも、もうちょっと周りの迷惑を考えたらどうかな……。」
 うるさいアナウンスによって目を覚ましたジュン、ミカ、エイジ、コウジは、不快そうな表情を浮かべていた……

「まったく、これで起きない奴は……」
「う〜ん……むにゃむにゃ……」
カムイの足元で、まるでネコのような体制で寝ていたリナが、何か寝言を発していた……



「……いたな。」
 センリは、寝ているリナを見て、呆れたように言った。

「おーい、リナー。早く起きないと、開会式に間に合わないッスよー。」
 カムイは、リナに声をかけると……

「ん〜、何なのさ〜。もうちょっと寝かせてよ〜。」
 リナは、まだ寝たりないのか、目をしょぼしょぼさせながら起き上がった。



「よし、これで全員起きたッスね。じゃあ、デュエルドームに行くッスよー!」

「「「「「「オーッ!!!」」」」」」



 カムイ達は、掛け声と右手を高く挙げ、デュエルドームに走っていった……。











その頃、デュエルアカデミア星海校の浜辺にて……



「……時間か。」
 爆音のアナウンスを聞き、小柄な赤髪の少女……ラケシスはすくっと立ち上がった。

「さて……どのように起こせばいい……。」
 ラケシスは、足元で寝ているクロートーとアトロポスをちらっと見た後、真っ黒なブーツを履いた足をあげ……

「……起きろ。」
 と言いながら、ブーツで思い切りクロートーとアトロポスの顔面を踏み付けた!



ドカッ!



「……起きたか、お前達。」
「ああ、お陰様でな。」
 ラケシスに踏み付けられた大柄な金髪の青年……アトロポスは、けろっとした表情で答えた。

「もう少しまともな方法で起こしてもらいたかったんですがね……。」
 青髪の青年……クロートーは、少し不満そうな顔で言った。


「……さて、アトロポス。我々の『目的』……分かってますよね?」
 クロートーが、眼鏡を上げながら言った。

「当然だぜ、クロートー。」
「ラケシスは?」
「……愚問だな。」
 ラケシスは、腕を組みながら冷たく言い放った。

「……まあ、いいでしょう。まずは一旦、中央のデュエルドームに行ってみましょう。……あまりルールを逸脱した行動をとると、怪しまれますからね。」
「そうだな。大会に参加しながら、『目的』を進めていけばいいからな。」
 アトロポスとクロートーは、自分達の『目的』を達成する段取りを考えていた……。

「……おい、ラケシス。デュエルドームに行くぞ。」
「分かっている。」
 アトロポスの呼び掛けに、ラケシスは軽く答えた。――トーンをほとんど変えずに。











午前8時30分……デュエルドームにて……



「全校生徒諸君。これより、デュエルアカデミア星海校全生徒参加の大会……『スーパージェネックス』を、開催する!」
 黒部校長は、全校生徒に見えるようにデュエルフィールドに立って、『スーパージェネックス』開催宣言をした!

「では、今から……この『スーパージェネックス』のルールを説明しよう!まず、デュエルドームの出口にて、大会参加の証……スターチップ1つと、それを収めるリストバンドを配布するので、忘れずに貰うように。」
 そう言いながら、黒部校長は、金色の星型のボタンみたいな物と、10個の星型の穴が開いた腕輪を、電光掲示板に表示した。

「そして……午前9時よりデュエルを開始し……明日の午後6時までに、10個のスターチップを集め、ここに戻ってきた者の上位3名が、デュエルアカデミア本校との対抗試合への参加資格を得る!……質問のある者は、挙手を……」
「はい。」
 校長先生の言葉に対して、1人の生徒が、挙手をしながら声をかけた。


「君は……『早乙女 ナオ』君か。何だね?」
「校長先生。スターチップを10個集める……と言っても、この学校の生徒は、だいたい1000人くらいですよね。それでは、デュエル相手が簡単に見つかって、1日もたたないうちにスターチップが10個集まってしまいそうなんですけど。」
 

「ふむ。そのような意見もあるだろうと想定していた。だが、安心したまえ。『スーパージェネックス』のルールでは、デュエル後、1時間の待機時間に入ることになっている。」
「……なるほど。それなら、デュエル可能な時間も制限される……。スターチップを効率よく手に入れる能力も、問われるわけですね。」
 ナオは、納得したかのような表情で、校長に話し掛けた。

「その通りだ。……では、大会開始3分前に、詳しいルールを書いたメールをDCT(デュエリストコミュニケーションツール)に送信するので、各自、作戦を考えるように!以上!」

おぉぉぉぉぉ!!

 デュエルドームに集まっていた全生徒は、出口に我先にと並び始めた……。








「なるほど。この大会は、いかに早くスターチップを集められるかの競争なんスね……。じゃあ、この大会は、みんな別行動でいいッスか!?」
「ああ、いいぜ!どっちが先に、スターチップを10個集めるか、競争だな!」
 カムイとセンリは、お互いに相手を激励した。












……………
…………
………

午前8時57分……

「なるほど……。これがこの大会のルールなんスね……。」
 カムイは、DCT(デュエリストコミュニケーションツール)に送信された、ルール説明のメールを確認しながら歩いていた。



1・デッキは1人1個、40枚以上でなければならない。

2・デュエル終了後1時間は、チャージタイムとなり、デュエルを行うことができない。

3・賭けるスターチップの個数は、デュエルを申し込んだ側が決めることができる。

4・チャージタイム以外に申し込まれたデュエルは、必ず承けなければならない。

5・デュエル以外の方法で、スターチップを手に入れてはならない。

6・デュエルを行ってもいい場所は、デュエルアカデミア星海校全域。

7・午前9時〜明日の午後6時まで大会が行われる。



「この中で特に重要なのは、3……デュエルを申し込んだ側が有利になるんスね……。」
 カムイは、相手を見かけたら、すぐさまデュエルを申し込む……そう言う作戦で行くことにした。


「はーっはっはっは!やっと見つけたぜぇ!カムイ!」
「ん?誰ッスか?」
 声のした方を見ると、1人の青年が立っていた。
その青年は、横しまの半袖と、黒いズボンを着ていた。

「俺の名は、佐寺(さてら)だぁ!カムイ!お前にデュエルを申し込むぜぇ!」
 佐寺と名乗ったデュエリストは、妙なテンションでカムイにデュエルを申し込んだ。

「ああ、いいッスよ!」
「スターチップは、当然のように1個賭けだぁ!」
「まあ……まだ始まったばかりだから、全員1個しか持ってないッスよね……」
 カムイは、苦笑いしながら、右手の腕輪にはめ込まれたスターチップを見た。
そして、デュエルディスクを構え……



「「……デュエル!」」



カムイLP 4000
佐寺LP 4000


『スーパージェネックス』の火蓋は、今切って落とされた!




第十七話 レーザー大砲発射!

カムイLP 4000
佐寺LP 4000

先行は、カムイだった。

「オレのターン、ドロー!手札から、『カードブロッカー』を召喚するッス!」
 カムイの場に、紫の鎧を着た、小さな戦士が現われた。

「『カードブロッカー』は、召喚・反転召喚・特殊召喚に成功したとき、守備表示になるんスよ!カードを2枚場に伏せ、ターンエンド!」
 カムイは、1ターン目は慎重にデュエルを進めた。

「俺のターンだぁ!ドロー!手始めに、カードを1枚場に伏せ……魔法カード、『名推理』を発動するぜぇ!」
 佐寺は、勢い良く『名推理』のカードを、魔法・罠ゾーンに表側表示で差し込んだ。

「カムイ!『名推理』の効果、分かってるかぁ?」
「ああ、オレが1〜12の中から好きな数字を宣言した後、佐寺がデッキをモンスターが出るまでめくって……モンスターのレベルと、オレが宣言した数が違ったら、そのモンスターを特殊召喚できるんスよね。……じゃあ、『8』を宣言するッスね。」
「いいのかぁ?後悔するなよ、カムイ!」
 佐寺は、デッキを上から順にめくり始めた。

1枚目……早すぎた埋葬(装備魔法)
2枚目……地獄の暴走召喚(速攻魔法)
3枚目……機械複製術(通常魔法)
4枚目……ビッグバン・シュート(装備魔法)

「(ん?何でわざわざ佐寺は、大量に魔法カードをデッキに入れてるんスかね……。)」
 カムイは、佐寺の特異なデッキ構築に、疑問を感じていた……。

5枚目……サテライト・キャノン(レベル5)

「はーっはっはっは!残念だが、ハズレだぁ!俺が特殊召喚するのは、レベル5の『サテライト・キャノン』だぜぇ!」
 そう言うと、佐寺の前に、巨大なレーザー衛星が、まるで大砲のような状態で現われた!

「……って、レーザー衛星が地上に横たわってるのって、かなり妙な光景だと思うんスけど……。」
「う、うるせえ!いいじゃねえか!俺の『サテライト・キャノン』はなぁ、レーザー衛星だからって、宇宙に浮かんでるわけじゃねえんだよ!!」
 佐寺は、カムイに痛い所を突っ込まれたのか、少々焦っていた。


サテライト・キャノン
光 レベル5
【機械族・効果】
このカードはレベル7以下のモンスターとの戦闘によっては破壊されない。
自分のエンドフェイズ毎に、このカードの攻撃力は1000ポイントアップする。
このカードが攻撃を行った場合、このカードの効果によってアップした攻撃力は
ダメージ計算後0に戻る。
攻撃力0 守備力0


「さらに俺はぁ、魔法カード、『機械複製術』を発動するぜぇ!分身しろぉ!『サテライト・キャノン』!」
 佐寺の前のレーザー衛星もとい、レーザー大砲が、1台から3台へと複製された!
本来レーザー衛星であるはずの『サテライト・キャノン』は、地上で使うにはかなり巨大に作られていたので、まだエネルギーをチャージしていないのに、相当な威圧感があった……。


機械複製術
通常魔法
自分フィールド上に存在する攻撃力500以下の機械族モンスター1体を選択して発動する。
デッキから同名カードを2枚まで特殊召喚する事ができる。


サテライト・キャノン×3 攻撃力0

「ぐっ……、1ターン目から、モンスターが3体も並んでしまったッスね……。」
 『サテライト・キャノン』3台の砲身ににらまれ、カムイは少したじろいでいた……。

「どうだぁ!『サテライト・キャノン』の攻撃力は今の所0だが……このカードを使えば、一気に攻撃力をアップさせれるぜぇ!俺は手札からぁ、通常魔法『チャージ』を発動だぁ!」
「ん?何スか!?そのカードは!?」
 初めて見るカードに、カムイは疑問を抱いていた。

「『チャージ』はなぁ、俺の場の『サテライト・キャノン』の攻撃力をエンドフェイズ時まで2000ポイントもアップさせる素晴らしい魔法なんだぜぇ!さらに俺は、『チャージ』にチェーンする形で、速攻魔法『連続魔法』を発動だぁ!」
「な……『連続魔法』ッスか!?」
 カムイは、佐寺がさらに『連続魔法』を発動したことに驚いていた。

「『連続魔法』の効果はなぁ、直前に発動した通常魔法の効果をコピーするんだぜぇ!手札をすべて捨てなければならない、致命的なデメリットがあるんだが、このターンで決めれば関係ねえぜ!よって、『サテライト・キャノン』の攻撃力は、『チャージ』が2回かかった事により、4000になるぜぇ!」
 佐寺は、自信満々に語り……

「太陽のエネルギーよ……『サテライト・キャノン』の下に集えぇぇぇぇぇぇ!!!」
 何故かいきなり、自分の右手を太陽にかざし始めた!


チャージ
通常魔法
自分フィールド上の「サテライト・キャノン」の攻撃力を、
エンドフェイズ時まで2000ポイントアップする。

連続魔法
速攻魔法
自分の通常魔法発動時に発動する事ができる。
手札を全て墓地に捨てる。
このカードの効果は、その通常魔法の効果と同じになる。


サテライト・キャノン×3 攻撃力0→2000→4000

「な……攻撃力4000が、場に3体も!?」
 カムイは、太陽のエネルギーが溜まって、砲身が輝きだした『サテライト・キャノン』3体に威圧感を覚えていた……。

「くらえぇぇぇぇ!!……佐寺クラッシャーーーー!!!……第一打ァ!」
 1体目の『サテライト・キャノン』から放たれたレーザー光線が、カムイの場の『カードブロッカー』に襲い掛かった!

「くっ!『カードブロッカー』の効果発動ッス!デッキの上から3枚のカードを墓地に送り、守備力を1500ポイントアップさせるッスよ!」
 カムイは、デッキの上から『フェザーマン』、『ネクロ・ガードナー』、『スパークマン』を墓地に送り、『カードブロッカー』の守備力を高めた。


カードブロッカー
地 レベル3
【戦士族・効果】
このカードは召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、守備表示になる。
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターが攻撃対象に選択された時、
このカードに攻撃対象を変更することができる。
このカードが攻撃対象になった時、自分のデッキのカードを上から3枚まで
墓地へ送る事ができる。
墓地へ送ったカード1枚につき、このカードの守備力はエンドフェイズ時まで
500ポイントアップする。
攻撃力400 守備力400


カードブロッカー 守備力400→1900

「はーっはっはっは!そんな紙切れみたいな守備力で、俺の佐寺クラッシャーを止められるかぁ!!」
 佐寺の言葉通り、強化された『カードブロッカー』の体は、まるで紙を燃やすかのように焼き切れてしまった……。

「……だが、『カードブロッカー』の頑張りは無駄にしないッスよ!伏せ罠カード、『ヒーロー・シグナル』を発動ッス!デッキから『E・HERO クレイマン』を守備表示で特殊召喚するッスよ!」
 カムイの場に、粘土で体が形成されたヒーローが、カムイを守るかのように守備表示で現われた。


ヒーロー・シグナル
通常罠
自分フィールド上のモンスターが戦闘によって破壊され
墓地へ送られた時に発動する事ができる。
自分の手札またはデッキから「E・HERO」という名のついた
レベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。

E・HERO クレイマン
地 レベル4
【戦士族】
攻撃力800 守備力2000


「はーっはっはっは!守備力2000なんざぁ、俺の佐寺クラッシャーの敵じゃねえよ!佐寺クラッシャーー!!!第二打ァ!」
 2体目の『サテライト・キャノン』の放つ光線により、『クレイマン』はあっさりと破壊された……。

「これで終わりだぁ!カムイ!佐寺クゥラァッシィャァァーーーー!!!!!第三打ァァァァァ!!!」
 佐寺は、血管が切れたかのような奇声を挙げ、カムイに止めをさそうとするが……

「……墓地の『ネクロ・ガードナー』の効果発動ッス!墓地のこのカードをゲームから除外し、攻撃を無効にするッスよ!」
 3体目の『サテライト・キャノン』から放たれたレーザー光線は、カムイの墓地から現われた『ネクロ・ガードナー』の魂にはばまれ、カムイにとどくことは無かった。


ネクロ・ガードナー
闇 レベル3
【戦士族・効果】
自分の墓地に存在するこのカードをゲームから除外して発動する。
相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする。
攻撃力600 守備力1300


「くっ……この大会で、俺の佐寺クラッシャーーー!!!を食らって倒れなかったのは、お前が初めてだぜぇ!!ターンエンドだぁ!このタイミングで、『チャージ』の効果が消え、『サテライト・キャノン』の攻撃力は0に戻るが……『サテライト・キャノン』の効果発動だぁ!太陽のエネルギーをチャージして、攻撃力を1000ポイントアップさせるぜぇ!」
 佐寺の場の『サテライト・キャノン』は、再びエネルギーをチャージして、砲心に光を蓄めていった。

サテライト・キャノン×3 攻撃力4000→0→1000



「やっとオレのターンッスね!ドロー!」
 カムイは、落ち着きを取り戻すために、頭に巻いているバンダナを締め直して……

「……手札から、魔法カード、『闇の量産工場』を発動ッス!墓地から、通常モンスター2体……『フェザーマン』と、『スパークマン』を手札に戻すッスよ!」
 カムイは、『カードブロッカー』の効果で墓地に送ったカードを捜し出し、手札に戻した。

「そしてオレは、魔法カード、『融合』を発動ッス!手札の『フェザーマン』、『スパークマン』、『バブルマン』を融合し……『E・HERO テンペスター』を融合召喚するッスよ!」
 カムイの手札の、風・光・水のヒーローが融合し……嵐の力を持つヒーローへと姿を変えた!

「『サテライト・キャノン』は、レベル7以下のモンスターとの戦闘では破壊されない効果を持ってたッスよね……。だが、『テンペスター』のレベルは8だから、普通に戦闘破壊できるんスよ!『テンペスター』で、『サテライト・キャノン』に攻撃ッス!カオス・テンペスト!!」
 『テンペスター』は、背中の翼から強烈な嵐を起こし、『サテライト・キャノン』を1体吹き飛ばした!

「ぐあぁっ!!」(佐寺LP 4000→2200)

「……カムイ!これで勝ったと思ったかぁ!?」
「ん?どういう事ッスか?」
 佐寺の言葉に、カムイは少し驚いた。

「俺はなぁ、『サテライト・キャノン』が戦闘破壊された時のために、このカードを伏せておいたんだよぉ!伏せ罠カード、『デブリ・ステーション』を発動だぁ!!!」
 そう言うと、佐寺の正面にいた『サテライト・キャノン』2体が突然爆発し……鉄屑となって、地面に散らばった!

「な……自分のモンスターを全滅させて、いったい何をする気なんスか!?」
「教えてやるぜぇ!『デブリ・ステーション』の効果はなぁ、俺の場の『サテライト・キャノン』を素材にして、新たな兵器を作り出せるんだぜぇ!!」
 『サテライト・キャノン』の破片が、佐寺の前に現われた妙なカプセルに収納されていき……

「完成だぁ!『サテライト・レーザー X−06S バルサム』!!!」
 佐寺の前の妙なカプセルが爆発して……3つの巨大なエネルギータンクと、2つの光をエネルギーに変える鏡の板を持ち、巨大な砲心を持つ兵器が、佐寺の目の前に設置された!

「くっ……『サテライト・レーザー X−06S バルサム』……相当巨大なモンスターッスね……。」
 佐寺の『サテライト・レーザー X−06S バルサム』の大きさは、カムイの場の『テンペスター』の高さの2倍以上あり、砲身は、カムイの顔面に向けられていた……

「『サテライト・レーザー X−06S バルサム』の元々の攻撃力は0だが……『デブリ・ステーション』の効果で、攻撃力が3000にまでアップするぜぇ!」
 『サテライト・レーザー X−06S バルサム』の周りに、光輝くオーラが発生し始めた!


デブリ・ステーション
通常罠
自分フィールド上に「サテライト・キャノン」が3体存在し、
その内の1体が戦闘破壊させた時に発動できる。
自分フィールド上の「サテライト・キャノン」をすべて破壊し、
エクストラデッキから「サテライト・レーザー X−06S バルサム」1体を特殊召喚する。
このカードの効果によって特殊召喚されたモンスターの攻撃力は3000ポイントアップする。
(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)


サテライト・レーザー X−06S バルサム 攻撃力0→3000

「くっ…ターン終了ッスね……。」



現在の状況
カムイ LP…4000
手札…1枚
   場…E・HERO テンペスター(攻撃力2800・攻撃表示)
      伏せカード1枚

佐寺 LP…2200
手札…0枚
  場…サテライト・レーザー X−06S バルサム(攻撃力3000・攻撃表示)


「俺のターン、ドロー!バトルだぁ!『サテライト・レーザー X−06S バルサム』で、『テンペスター』に攻撃だぁ!真・佐寺クラッシャーー!!!」
 『サテライト・レーザー X−06S バルサム』の砲身から強烈な光線が発生して……『テンペスター』を粉砕した!

「ぐっ!」(カムイLP 4000→3800)

「どうだぁ!俺はこれでターンエンドだが……『サテライト・レーザー X−06S バルサム』は、エンドフェイズ毎に、攻撃力が3000ポイントもアップするんだぜぇ!太陽のエネルギーよ……再び我が前に集えぇぇぇぇ!!」
 そう言うと、佐寺を太陽の光が包み込み……『サテライト・レーザー X−06S バルサム』の砲身が光輝き始めた!


サテライト・レーザー X−06S バルサム
光 レベル8
【機械族・融合・効果】
「サテライト・キャノン」+「サテライト・キャノン」+「サテライト・キャノン」
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。
自分のエンドフェイズ毎に、このカードの攻撃力は1000ポイントアップする。
このカードが攻撃を行った場合、このカードの効果によってアップした攻撃力は
ダメージ計算後0に戻る。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が越えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
攻撃力0 守備力2000


サテライト・レーザーX‐06S バルサム 攻撃力3000→6000

「な…攻撃力……6000ッスか!?」
 カムイは、『サテライト・レーザー X−06S バルサム』の圧倒的攻撃力に、少したじろいていた……。

「くっ!オレのターン、ドロー!モンスターを1体セットして、ターンエンド!」
 カムイは、あっさりとターンを終了した。

「俺のタァーーーンだぁぁぁぁぁ!!ドォロォーーー!!!カムイィィ!!守備表示でターンを稼ごうとしても、無駄だぜぇぇぇぇぇ!!バルサムは、貫通能力を持ってるからなあぁぁぁぁ!!!バルサムで、カムイの裏側守備表示モンスターに攻撃だぁぁぁぁぁぁ!真・佐寺クゥラァァッシィャァァァァーー!!!!!」
 佐寺は、発狂したかのような声を揚げて、カムイの裏守備モンスターに攻撃を行った!!

「くっ、伏せ罠カード、『ガード・ブロック』を発動ッス!この戦闘によって受けるオレへのダメージを0にし、カードを1枚ドローするッスよ!」
 カムイの場の裏守備モンスター……『フレンドッグ』は、『サテライト・レーザー X−06S バルサム』の放つ破壊光線に対してまったく抵抗できずに破壊され、貫通した光線がカムイを襲うが……不思議なバリアが『フレンドッグ』とカムイの間に現われ、光線を押さえ込んだ!!


ガード・ブロック
通常罠
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。


「ふう……危なかったッスね……。」
 カムイは、右腕で額の汗を拭いながら言った。
『サテライト・レーザー X−06S バルサム』の攻撃力は6000……
それに対して『フレンドッグ』の守備力はたったの1200……

 もしまともに食らっていたら、カムイは4800ポイントもの強大な貫通ダメージを受けて、敗北していた所だ……。

「『ガード・ブロック』の第2効果で、デッキからカードを1枚ドローするッス!さらに、戦闘破壊された『フレンドッグ』の効果発動ッス!オレの墓地から『E・HERO フェザーマン』と『融合』を手札に戻すッスよ!」
 カムイは、ドローしたカードを確認してから、慣れた手つきで墓地の『フェザーマン』と『融合』を手札に戻した。


フレンドッグ
地 レベル4
【機械族・効果】
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分の墓地から「E・HERO」と名のついたカード1枚と
「融合」魔法カード1枚を手札に加える。
攻撃力800 守備力1200


「ちっ……手札が一気に増えやがったなぁ!!バルサムの攻撃力は、攻撃後6000から3000にまでダウンするが……エンドフェイズになれば、すぐ6000に戻るぜぇ!カードを1枚場に伏せ、ターンエンドだぁ!!!」

サテライト・レーザー X−06S バルサム 攻撃力6000→3000→6000



現在の状況
カムイ LP…3800
手札…4枚
場…無し

佐寺 LP…2200
手札…1枚
場…サテライト・レーザー X−06S バルサム(攻撃力6000・攻撃表示)
     伏せカード1枚


「オレのターン、ドロー!手札から、魔法カード、『天使の施し』を発動ッス!カードを3枚ドローし、手札を2枚捨てるッスよ!」
 ドローしたカードを確認すると、カムイは……

「(『サテライト・レーザー X−06S バルサム』……貫通能力を持つ上に、攻撃力6000ッスか……。だが、今の手札なら!)……オレは、魔法カード、『融合』を発動ッス!手札の『フェザーマン』と『バーストレディ』を融合し、『E・HERO フレイム・ウィングマン』を融合召喚するッスよ!」
 カムイの場に、赤い鷹を両腕に取り込んだようなヒーローが現われ……

「まだ終わりじゃないッスよ!魔法カード、『融合回収』を発動して、墓地の『スパークマン』と、『融合』を手札に戻し……もう一度、『融合』を発動ッス!場の『フレイム・ウィングマン』と、手札の『スパークマン』を融合し……来い!『E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン』!!」
 カムイの場に、光の翼を持ち、太陽のような輝きを放つヒーローが現われた!

「『シャイニング・フレア・ウィングマン』は、墓地のE・HEROの数×300ポイント、攻撃力がアップするんスよ!オレの墓地のE・HEROは、『クレイマン』、『バブルマン』、『テンペスター』、『フェザーマン』、『バーストレディ』、『フレイム・ウィングマン』、『スパークマン』、『ワイルドマン』、『エッジマン』の9体!よって、攻撃力は2700ポイントもアップするッス!」

E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン 攻撃力2500→5200

「ちぃっ!『天使の施し』の効果で、墓地に『ワイルドマン』と『エッジマン』を送ってやがったのかぁ!だがなぁ、それでも俺のバルサムの攻撃力には及ばねえぜぇ!!」
「ああ……確かに、今の『シャイニング・フレア・ウィングマン』では、『サテライト・レーザー X−06S バルサム』は倒せないッスが……このカードを使えば、倒せるようになるんスよ!手札の『E・HERO キャプテン・ゴールド』を墓地に捨て、デッキから『摩天楼 −スカイスクレイパー−』を手札に加え、即発動させるッス!」
 そう言うと、場に近代的なビル街が現われ、その中の一番高いビルの頂上に、『シャイニング・フレア・ウィングマン』が飛び乗った!
そのビルは、頂上が『シャイニング・フレア・ウィングマン』から放たれる光によって照らされたことにより、まるで巨大な外灯のように見えた!

「『摩天楼 −スカイスクレイパー−』が場に存在するときにE・HEROが自分より強い相手に攻撃する場合、攻撃力が1000ポイントアップするんスよ!『E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン』の攻撃力は、墓地に『E・HERO キャプテン・ゴールド』が増えたことにより5500……摩天楼の効果が適用されれば、攻撃力が6500にまで上がって、『サテライト・レーザー X−06S バルサム』の6000を上回るッスよ!」


E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン
光 レベル8
【戦士族・融合・効果】
「E・HERO フレイム・ウィングマン」+「E・HERO スパークマン」
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードの攻撃力は、自分の墓地の「E・HERO」という名のついた
カード1枚につき300ポイントアップする。
このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、
破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。
攻撃力2500 守備力2100

摩天楼 −スカイスクレイパー−
フィールド魔法
「E・HERO」と名のつくモンスターが攻撃する時、
攻撃モンスターの攻撃力が攻撃対象モンスターの攻撃力よりも低い場合、
攻撃モンスターの攻撃力はダメージ計算時のみ1000ポイントアップする。


「よっしゃー!『シャイニング・フレア・ウィングマン』で、『サテライト・レーザー X−06S バルサム』に攻撃ッス!シャイニング・シュート!」
 ビルの高さを活かして、『シャイニング・フレア・ウィングマン』は、光に匹敵するかのような速度で『サテライト・レーザー X−06S バルサム』に突撃するが……

「甘いぜぇ!カムイ!伏せ罠カード、『攻撃の無力化』を発動だぁ!バルサムへの攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させるぜぇ!」
 『シャイニング・フレア・ウィングマン』と『サテライト・レーザー X−06S バルサム』の間に時空の渦が現われ、攻撃が無効になってしまった……。

「くっ…ターン終了ッスね……。」

「俺のターン、ドロー!!『摩天楼‐スカイスクレイパー』の効果は、攻撃を行うときだけ発動するんだったよなぁ!つまり、バルサムの攻撃で、『シャイニング・フレア・ウィングマン』を秒殺できるってわけだぁ!!粉砕しろぉ!!バルサム!!!真・佐寺クラッシャーー!!!」
 『サテライト・レーザー X−06S バルサム』の放つ破壊光線には、『シャイニング・フレア・ウィングマン』の攻撃力でも対抗できず、あっさりと破壊された……。

「ぐあぁっ!!」(カムイLP 3800→3300)

サテライト・レーザー X−06S バルサム 攻撃力6000→3000

「どうだぁ!これでお前の切り札はいなくなったぜぇ!!お前の手札は0枚……俺のバルサムの攻撃力を越えるモンスターを出せるかぁ!!?ターンエンドだぁ!このタイミングで、バルサムの攻撃力は6000に戻るぜぇ!!」

サテライト・レーザー X−06S バルサム 攻撃力3000→6000

「……オレのターン、ドロー!!」
 ドローしたカードを確認した瞬間、カムイの顔に笑みがこぼれた……。

「……オレは、手札から、『ミラクル・フュージョン』を発動ッス!墓地の『シャイニング・フレア・ウィングマン』と『キャプテン・ゴールド』を除外し……」
「なっ……お前の切り札は、『シャイニング・フレア・ウィングマン』じゃぁ無かったってぇのかぁ!!?」
 佐寺は、自分が切り札だと思っていた『シャイニング・フレア・ウィングマン』を除外したことに、驚いていた……。



「……来い……『E・HERO キャプテン・コロナ』!!!」
 カムイの場に……太陽の周りを覆うような、激しい輝きを放つオーラをまとったヒーローが現われた! 

「何ぃ!『シャイニング・フレア・ウィングマン』を上回る輝きを放つヒーローだとぉ!!」

「『キャプテン・コロナ』の攻撃力は、オレの墓地・除外ゾーンのE・HERO1種類につき、攻撃力が400ポイントアップするんスよ!墓地・除外ゾーンにあるE・HEROは10種類……『キャプテン・コロナ』の元々の攻撃力は3000……よって、攻撃力が7000になったッスよ!!」
 カムイがそう言うと、『キャプテン・コロナ』の放つ輝きがみるみる強力になり始めた!

「攻撃力……7000!!?バルサムの6000を上回っただとぉ!!!」
「いや……まだ終わりじゃないッスよ!『キャプテン・コロナ』の第2効果発動ッス!除外ゾーンの『キャプテン・ゴールド』をデッキに戻し……攻撃力を、『キャプテン・ゴールド』の攻撃力分……つまり、2100ポイントアップさせるッスよ!」
 『キャプテン・コロナ』は、『キャプテン・ゴールド』の魂がこもった深紅のマントを身に着け、攻撃力をさらに高めた!


E・HERO キャプテン・コロナ
光 レベル10
【戦士族・融合・効果】
『E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン』+『E・HERO キャプテン・ゴールド』
このモンスターの融合召喚は、上記のカードでしか行えず、融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードの攻撃力は、自分の墓地・除外ゾーンの『E・HERO』という名のついたカード1種類につき400ポイントアップする。
1ターン1度、自分の墓地・除外ゾーンに存在する『E・HERO キャプテン・ゴールド』及び
『E・HERO キャプテン・ゴールド』を融合素材とする融合モンスター1体をデッキに戻すことで、エンドフェイズ時まで、
このカードの攻撃力はこの効果によってデッキに戻したモンスターの攻撃力分だけアップする。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
攻撃力3000 守備力2500


E・HERO キャプテン・コロナ 攻撃力7000→6700→8800

「ばかなぁ!攻撃力……8800だとぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「よっしゃー!『キャプテン・コロナ』で、『サテライト・レーザー X−06S バルサム』に攻撃ッス!コロナティック・ノヴァ!!」
 『キャプテン・コロナ』は、右手についた、翼のような小手を光輝かせ……その小手を、光の速さに匹敵するかのような速度で突き出し、『サテライト・レーザー X−06S バルサム』のエネルギータンクを貫いた!
そして、エネルギータンクを貫かれた『サテライト・レーザー X−06S バルサム』は、激しい光を放ち……大爆発した!!


「ぐあぁぁぁぁぁ!!お、俺のバルサムがぁぁぁぁぁぁ!!!」(佐寺LP 2200→0)



「オレの勝ちッスね!佐寺!」
「ちっ……やるじゃねえかぁ!雷人がライバル視するだけのことはあるなぁ!!」
「え!?雷人って、オレのことをライバル視してるんスか!?」
 佐寺の言葉に、カムイは驚いた。

「でも……オレ、まだ雷人とはデュエルしたことがないんスよね……。いつのまにライバルになったんスかね……。」
「まあ、それは雷人に聞いたほうが早いと思うぜぇ!……っと!そう言やぁ、お前にスターチップをわたさなきゃぁならなかったなぁ!!」
 そう言いながら佐寺は、腕輪にはめ込んでいたスターチップを外し、カムイの手に渡して、立ち去っていった。









「佐寺!スターチップ、確かに受け取ったッスよ!」

スターチップ カムイ 1個→2個
 佐寺 1個→0個(失格)



「やあ、なかなかいいデュエルだったじゃないか、カムイ。」
「ん?誰ッスか?」
 声がした方を見ると、カジュアルな服を着た金髪の青年……黒部剣一先生が立っていた。

「あっ、黒部先生。オレのデュエル、見ててくれたんスか!?」
「ああ、見てたよ。この大会のパトロール中に、偶然見かけたからね。」
 黒部先生は、軽く答えた。

「……黒部先生。オレとデュエルしてくれないッスか?」
「え?」
 黒部先生は、少し驚いた様子でカムイを見た。

「ああ、いいよ。……と言いたい所だけど、ルール2、忘れてないかい?」
「あっ、そう言えば、そうだったッスね。」
 カムイは、自分のデュエルディスクを確認すると、ライフポイントが表示される部分に、「charge 58」と言う文字が浮かび上がっていた。



ルール2・デュエル終了後1時間は、チャージタイムとなり、デュエルを行うことができない。



「この表示が出ている間は、デュエルを行うことができないんだよ、カムイ。」
「1時間……長いッスよね。黒部先生。チャージタイムが終わるまで、木陰で休まないッスか?」
「まあ、いいんじゃないかな?今日は結構日差しが強いからね。」
 そう言いながら、カムイと黒部先生は、近くの大きな木の下に歩いていき、木の根元に座りこんだ。











一方、その頃……

「行け!『E?HERO マリシャス・エッジ』!『マシュマロン』を蜂の巣にしろ!!ニードル・バースト!!」
「ぐぁぁぁぁ……っ。」(一般デュエリストLP 2100→0)
 大柄な青年……アトロポスは、『マリシャス・エッジ』の攻撃でトドメを刺されたことによって気絶した一般デュエリストから、デッキを奪い取り、中身を確認した……。

「……ちっ、こいつでもねえか……。」
 望みのカードが無かったのか、アトロポスは、奪い取ったデッキを気絶している一般デュエリストの手に戻した。

「さて、クロートー達の様子はどうだ?」
 アトロポスは、ズボンのポケットから携帯電話みたいな物を取り出し、ボタンを押した。

ピッ。









「おい、クロートー。お前は何人デュエリストを倒したんだ?」
『ええ、3人くらいは、倒しましたね。』
「……で、見つかったのか?『あのカード』は?」
『いえ……天使族使い、悪魔族使いと思しきデュエリストを狙っているのですが……どちらも、持っていませんでしたね。』
「そうか。……俺もまだ、見つかってねえんだよ。見つけたら、連絡しろよ。」
『わかりました。それでは、また……。』

ピッ。









「……フェイト様は、この島のどこかにいる、『あのカード』を使うデュエリストを探せって言ってたんだよな……。」
 自分の任務を再確認したアトロポスは、右手で握り拳を作り、自分の肘の高さで、握った右手を開いた左手で受けとめるような動作を、パシッと音を立てながら行った。


「一体……誰が持っているんだ……『天魔神』を!!!」




第十八話 マグマと虫のコラボレーション!?

午前9時27分……


カムイがデュエルを終えた頃、リナは……

「ん〜、どっかにいないかな〜、まともそうなデュエリストは。」
 背が低くて可愛らしい女の子……リナは、辺りをキョロキョロしながらデュエリストを探していた……。

「おぉぃ……、お前、スターチップを持ってるよなぁぁぁぁ……。」
 リナの目の前に、不気味な声を出しながら、どこからともなく男が現われた。その男は、黒いTシャツと白いズボンを着ていて、髪の毛は妙に逆立ってツンツンしていた。

「俺は『池岡(いけおか)』だぁぁぁぁ……。俺とデュエルしてもらうぜぇぇぇ……。」
 池岡と名乗った男は、なぜか頬を引きつらせながらリナにデュエルを申し込んだ。

「な、何か変な奴にデュエル申し込まれちゃったよ……。逃げちゃおっかな……。」
 リナは、池岡に気付かれないように少しづつ後退りしていたが……

「逃げることはできねえぜぇぇぇ……。すでにルールは発動しているんだからなぁぁぁ……。」
「え゛……」
 池岡の言葉に、リナの表示が引きつった……。



ルール4・チャージタイム以外に申し込まれたデュエルは、必ず承けなければならない。



「ううっ、嫌だなあ……。よりによって初戦がこんな奴となんて……。」
 リナは、嫌々左手のデュエルディスクを構え……



「「デュエル!」」



リナLP 4000
池岡LP 4000


「あたしのターン、ドロー!」
 リナは、自分の小さな右手でデッキからカードをドローしてから、手札を確認した……。

「(うっ…ちょっと……手札悪いなあ……。)」
 リナの手札には、『ものマネ幻想師』と『ダークアイズ・イリュージョニスト』しかモンスターが存在しなかった……。
どちらも攻撃力が0なので、守備表示で様子見を行うしか無かった……。

「(……とりあえず、守備力の高い『ダークアイズ・イリュージョニスト』をセットして、様子見かなあ……。)モンスターを1体裏側守備表示で召喚してから、カードを2枚場に伏せて、ターンエンドね。」
 リナは、慎重にターンを終了した。

「俺のターンだぁぁぁぁ!ドロー!カードを2枚場に伏せ、ターンを終了するぜぇぇぇぇ……。」
 池岡は、モンスターを出さず、伏せカードのみを出して、ターンを終了した。



現在の状況
リナ LP…4000
   手札…3枚
   場…ダークアイズ・イリュージョニスト(裏側守備表示)
     伏せカード2枚

池岡 LP…4000
   手札…4枚
   場…伏せカード2枚



「(ううっ、不気味な奴……。早く終わらせたいなあ……。)あたしのターン、ドロー!」
 ドローしたカードを確認すると、リナは……

「(……『見習い魔術師』か……ちょっとこのモンスターじゃ攻撃に移れないなあ……。)……モンスターを裏側守備表示で召喚して、ターンを終了するね。」

「俺のターンだぁぁぁぁ。ドロー!!」
 リナの場に2体目のモンスターが現われた時から、池岡は不気味な表情を浮かべていた……。

「(お前への罰ゲームは、このカードで決定したな…)お前の場の2体のモンスターをリリースし……」
「え!?あたしのモンスターを無理矢理リリースするって……何でそんなことができるの!?」
 リナは、池岡の突然の一言に、目をぱちくりさせていた。

「紹介するぜぇぇぇぇ……。お前の場のモンスター2体をリリースし、お前の場に特殊召喚される最上級モンスター……『溶岩魔神 ラヴァ・ゴーレム』だぁぁぁぁ!」
 池岡がそう言うと、リナの場に、全身がドロドロの溶岩で覆われた巨大な怪物が現われ……首からぶら下がっている鉄格子に、リナが閉じ込められた!
さらに、『ラヴァ・ゴーレム』は、灼熱の両手で、リナの場の『ダークアイズ・イリュージョニスト』と『見習い魔術師』を握り潰した!

「ちょっ……何であたしが、こんな鳥かごみたいなのに閉じ込められなきゃなんな……」
 リナは、自分が閉じ込められた鉄格子に勢い良く手をかけようとしたが……

「い……あ、あわわっ!!」

ズテッ!!



 その鉄格子はソリッドビジョンだったため、リナに何の抵抗も及ぼさずにすり抜け、そのまま地面に顔面から転んでしまった……。


「…いっ……た〜〜……」
 リナは、顔を右手で押さえながら、痛そうに立ち上がった……。

「おぃぉぃ、何やってんだぁぁぁぁ……。ソリッドビジョンに触れるわけねえじゃねえかぁぁぁぁ!」
 池岡は、リナがすっ転んだことを嘲笑していた。

「それより、喜べよぉぉぉぉ……。攻撃力3000のモンスターをお前が操ることができるんだぞぉぉぉぉ……。」
「こ…こんな不気味なモンスターをもらって……喜べるわけ無いじゃん……。」
 リナは、右手をスカートの裾で拭いながら言った。

「さて……伏せカードをセットしておこうかぁぁぁぁ……。なぁに……『ラヴァ・ゴーレム』で俺にダイレクトアタックを食らわせば、俺に致命傷を負わせられるんだぜぇぇぇぇ!」
 池岡は、不気味に笑いながら、リナの攻撃を誘った。


「あ、あたしのターン、ドロー!」
「スタンバイフェイズに入ったなぁぁぁぁ……。ほらほらぁぁぁぁ……『ラヴァ・ゴーレム』の灼熱の体が溶けだし、お前のライフを削るぞぉぉぉぉ……。」
「え……!?」
 リナが驚いて上を見ると、『ラヴァ・ゴーレム』の体からマグマ(ソリッドビジョンだが)があふれ出て、リナに頭から浴びせられた!!

「きゃっ!……び、びっくりしたぁ……。」(リナLP 4000→3000)
 リナは思わず、左手のデュエルディスクを盾にして、『ラヴァ・ゴーレム』から発生したマグマを防ごうとしていた……。


溶岩魔神 ラヴァ・ゴーレム
炎 レベル8
【悪魔族・効果】
このカードを手札から出す場合、相手フィールド上のモンスター
2体を生け贄に捧げて相手フィールド上に特殊召喚しなければならない。
このカードはコントローラーのスタンバイフェイズ毎に、
コントローラーに1000ポイントのダメージを与える。
このモンスターを特殊召喚する場合、このターン通常召喚はできない。
攻撃力3000 守備力2500


「(でも……池岡の場にはモンスターが1体もいないんだよね……。じゃあ、この不気味なモンスターで攻撃しちゃおっかな……。)」
 リナは、少し悩んでから……

「あたしは……バトルフェイズに入るかんね!」
「ほぉぉぉ……いい度胸してるじゃねえかぁぁぁぁ……。」
 池岡は、笑いながら言い……

「ちなみに、俺の『ラヴァ・ゴーレム』の必殺技は『城之内ファイヤー』だ!高らかに攻撃宣言をしな!!」
「え゛……何それ。」
 リナは、池岡の予想外の一言に面食らったような表情を浮かべていた。



「さあ、どうしたぁぁぁぁ。攻撃しないのかぁぁぁぁ!」
「……まっ、いっか。『ラヴァ・ゴーレム』で、ダイレクトアタック!……城之内ファイヤー!!」
 リナが、右手の人差し指で池岡を差しながらそう言うと、『ラヴァ・ゴーレム』の口から灼熱の炎が池岡に向けて放たれた!

「伏せ罠カード発動…ってねぇぇぇぇ……。『光の護封壁』を発動だぁぁぁぁ……。ライフを3000ポイント払い……攻撃力3000以下の攻撃を無効にするぜぇぇぇぇ……。」(池岡LP 4000→1000)
 池岡とリナの間に巨大な光の壁が発生し、『ラヴァ・ゴーレム』の灼熱の炎をかき消した!


光の護封壁
永続罠
発動時1000の倍数のライフポイントを払う。
払った数値以下の攻撃力を持つ相手モンスターは攻撃できない。


「うっ…『光の護封壁』かあ……。これじゃあ攻撃が通んないよ……。カードを1枚場に伏せて、ターンエンドね……。」
 リナは、少し弱気な声でターンを終了した。

「俺のターン、ドロー!!手札から、『傀儡虫』を捨て、『ラヴァ・ゴーレム』のコントロールを、このターンの間だけ得るぜぇぇぇぇ……。」
 池岡がそう言うと、リナの場の『ラヴァ・ゴーレム』の頭に変な虫が取りつき……下を向き、懐にいるリナに向かって、大きく口を開けた!


傀儡虫
闇 レベル3
【昆虫族・効果】
このカードを手札から墓地に捨てる。
このターンのエンドフェイズ時まで、相手フィールド上に表側表示で存在する
悪魔族またはアンデット族モンスター1体のコントロールを得る。
攻撃力1000 守備力1000


「『ラヴァ・ゴーレム』!!奴を業火で焼き尽くせ!!城之内ファイヤー!!!!」
 池岡の言葉に反応し、『ラヴァ・ゴーレム』は、口から灼熱の炎をリナに向けて放った!

「ふ、伏せ罠カード、『ドレインシールド』を発動!!『ラヴァ・ゴーレム』の攻撃を無効にして、その攻撃力分、あたしのライフを回復するかんね!」
 そう言うと、リナの頭の上に、パラソルのような形のオーラが現われ、リナへと伸びる炎を、ライフポイントへと変換した!


ドレインシールド
通常罠
相手モンスター1体の攻撃を無効にし、
そのモンスターの攻撃力分の数値だけ自分のライフポイントを回復する。


リナLP 3000→6000

「ほお、なかなかやるじゃねえかぁぁぁぁ……。こうでなくちゃあおもしろくねえぜぇぇぇぇ……。モンスターを1体裏側守備表示で召喚し、ターンエンドだぁぁぁぁ……。」
 池岡は、相変わらず不気味な表情でターンを終えた。その瞬間、『ラヴァ・ゴーレム』の頭に取りついていた『傀儡虫』が燃え尽き、リナのモンスターへと戻った。

「うっ……正直、『ラヴァ・ゴーレム』には、戻ってきてほしく無かったんだけどなあ……。あたしのターン、ドロー!」
 リナは、ドローしたカードを確認すると……

「(!!……このカードなら!)」
「この瞬間、『ラヴァ・ゴーレム』の体が溶けだし、お前のライフを1000ポイント削るぞぉぉぉぉ……。」
 『ラヴァ・ゴーレム』の体からまたマグマが流れだしたが、リナは動じず……

「……伏せ罠カード、『ピケルの魔法陣』を発動して、このターンにあたしが受ける効果ダメージを、全部0にするかんね!」
 リナの周りに発生した不思議な魔法文字か書かれた円陣が、『ラヴァ・ゴーレム』からあふれ出たマグマからリナを守った!


ピケルの魔法陣
通常罠
このターンのエンドフェイズまで、
このカードのコントローラーへのカードの効果によるダメージは0になる。


「じゃあ、メインフェイズに入るね。……あたしは、このカードに賭けるかんね!手札から、『時の魔術師』を攻撃表情で召喚するね!」
 リナの場に、丸時計の体で、『当』と『ドクロ』のマークが入ったルーレットのついた妙な杖を持った魔法使いが現われた!

「『時の魔術師』の効果を発動するね!タイム・マジック!」
 リナがそう言うと、『時の魔術師』は、杖の先端についたルーレットの針を、勢い良く回し始めた!

「ほぉぉぉぉ……。何をする気だぁぁぁぁ……。」
「『時の魔術師』は、時空を操る魔術師……タイムルーレットが、『当』マークに止まったら、相手の場のモンスターが全滅して……『ドクロ』マークに止まったら、あたしの場のモンスターを全滅させて、そのモンスターの攻撃力の合計の半分だけ、あたしがダメージを受けるんだよ!」


時の魔術師
光 レベル2
【魔法使い族・効果】
コイントスで裏表を当てる。当たりは相手フィールド上モンスターを全て破壊する。
ハズレは自分フィールド上のモンスターを全て破壊する。
さらにこの効果によって破壊された自分のモンスター全ての攻撃力を合計し、
その半分のダメージを受ける。
この効果は1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに使用する事ができる。
攻撃力500 守備力400


「おぃぉぃ……。お前の場には、攻撃力3000の『ラヴァ・ゴーレム』がいるんだぜぇぇぇぇ……。『ドクロ』マークに止まっちまったら、1500もダメージを受けちまうんだぜぇぇぇぇ……。」
 池岡は、リナの自殺行為ともとれる行動を嘲笑していたが……

「へへっ、これ、な〜んだ?」
 リナは、いだずらっぽく舌を出しながら、自分の足元の魔法陣を指差した。

「何ぃぃぃぃ……。それがどうしたんだぁぁぁぁ……。」
「分からないの?あたしはこのターン、『ピケルの魔法陣』を発動してるんだよ。だから、失敗しても、あたしはダメージを受けないんだ。」
 リナは、笑いながら言った。

「……お願い!失敗して!!」
 リナは、『時の魔術師』に向かって、祈るように手を合わせていた……。
その間にも、ルーレットの針は、どんどん回転速度を落としていき……

「針が…止まる……」



ピコーン!



リナの願いに反して、ルーレットの針は、『当』のマークで止まっていた……。

「あっ……当たっちゃった……。」
 残念そうにしているリナの気持ちを知ってか知らずか、『時の魔術師』は、杖を振るい、池岡の場のモンスターの時を超高速で進めた!
すると、池岡の場に裏側守備表示で存在していたゴキブリのモンスター……『ゴキポン』がコロッと死に絶え、その死骸がみるみる内に腐食していった……。

「うぇぇぇぇ〜、ゴキブリが腐ってくなんて、気持ち悪すぎるよ〜!」
 時を進められたことによって見るも無残な姿になった『ゴキポン』を見てしまい、リナは顔が青ざめてしまった……。

「ちっ……『ゴキポン』は、戦闘破壊されねえと、効果が使えねえのは、残念だぜぇぇぇぇ……。で、お前のターンは終わりかぁぁぁぁ……?」
「う、うん……。ターンエンドね……。」
 


現在の状況
リナ LP…6000
   手札…3枚
   場…溶岩魔神 ラヴァ・ゴーレム(攻撃力3000・攻撃表示)
     時の魔術師(攻撃力500・攻撃表示)

池岡 LP…4000
   手札…2枚
   場…光の護封壁(永続罠・攻撃力3000以下のモンスターの攻撃を防ぐ)
     伏せカード2枚




「俺のターン、ドロー!!手札から、『スカラベの大群』を召喚するぜぇぇぇぇ……。」
 池岡の場に、茶色い変な虫が大量に現われた!

「ううっ……、何で池岡は、こんな不気味な虫ばっか使うのかなあ……。ちょうちょとかだったら、あたしも好きなんだけどなあ……。」
 リナは、池岡の場に次々と現われる虫モンスターに、気分が悪くなってきたみたいだ……。

「(でも……『スカラベの大群』の攻撃力は、あたしの『時の魔術師』と同じなんだよね……。あの虫がすぐにいなくなるなら、別にいいかな……。)」
 リナは、すぐに『スカラベの大群』が場から消えてくれるという淡い期待を持っていたが……

「さらに俺は、装備魔法『明鏡止水の心』を『スカラベの大群』に装備させるぜぇぇぇぇ……。」
「え゛……。」
 その期待は、甘いものだったとすぐに気付いた……。

「『明鏡止水の心』を装備したモンスターは、戦闘と、対象を取る効果によっては破壊されなくなるんだぜぇぇぇぇ!バトルだぁぁぁぁ!『スカラベの大群』!『時の魔術師』に攻撃しろ!!」
 そう言うと、『明鏡止水の心』の力に守られた、池岡の場のスカラベ達がモゾモゾとうごめいて、リナの『時の魔術師』を破壊した!


明鏡止水の心
装備魔法
装備モンスターが攻撃力1300以上の場合このカードを破壊する。
このカードを装備したモンスターは、
戦闘や対象モンスターを破壊するカードの効果では破壊されない。
(ダメージ計算は適用する)


「ひぃっ!ぜ、絶対、あんな虫のダイレクトアタックなんて、食らいたくないよ〜!」
「さあて、メインフェイズ2に入るぜぇぇぇぇ……。『スカラベの大群』の、本当の力を見せてやるぜぇぇぇぇ……。集まれ!スカラベ共!!」
 池岡の命令を受け、『スカラベの大群』は、池岡の場に1つの不気味な生命体のように集まっていった!

「『スカラベの大群』は、裏側守備表示で獲物を待ち構え……反転召喚すれば、その獲物を確実に仕留める恐怖のハンターなんだぜぇぇぇぇ!まあ……裏側守備表示になったことで、『明鏡止水の心』が外れちまうのは残念だがなぁぁぁぁ……。さあ……新たなモンスターを召喚してみろよぉぉぉぉ……!一瞬で消してやるからよぉぉぉ!!ターンエンドだぁぁぁぁ……!!」
 池岡は、不気味な声でリナを挑発しながらターンを終了した。


スカラベの大群
闇 レベル3
【昆虫族・効果】
このカードは1ターンに1度だけ裏側守備表示にする事ができる。
このカードが反転召喚に成功した時、
相手フィールド上のモンスター1体を破壊する。
攻撃力500 守備力1000


「うっ……あたしのターン、ドロー!」
 リナは、もういい加減にこのデュエルを終わらせたいと思っていた……。

「さぁぁぁぁ、『ラヴァ・ゴーレム』のマグマがお前のライフを削るぞぉぉぉぉ……。」
「そ、そんなこと……言われなくっても、分かってるよ……。」(リナLP 6000→5000)
 リナは、『ラヴァ・ゴーレム』のマグマを浴びながらも、ドローしたカードを確認した……。

「(……引いたカードは……『黒魔導師クラン』かあ……毎ターン、相手にダメージを与えてくれるんだけど、池岡の場には『スカラベの大群』があるから、すぐ破壊されちゃうよ……。)」
 リナは、今の手札で何ができるのか、必死に考えていた……。

「(どこかに無いかなあ……あたしのクランちゃんを守れるカードは……)」
 手札を隅々まで見渡していたリナは、ある1枚のカードに目が止まった……。

「(……『二重魔法』!!このカードで、池岡の墓地から魔法カードを使えば、なんとかなるかも……。でも、池岡の墓地に、魔法カードなんてあったっけ……。)」
 リナは、このデュエルの流れを思い出していた……。

「(あっ……そう言えば、1枚だけあったね……。池岡の墓地に、あのカードが!)……あたしは……『黒魔導師クラン』を攻撃表示で召喚するね!」
 リナの場に、黒ウサギの帽子をかぶり、細いピンク色のムチを持った幼女が現われた。

「ほぉぉぉぉ……。新たなモンスターを召喚したかぁぁぁぁ……。『スカラベの大群』にすぐ破壊されるのによぉぉぉぉ……。」
 池岡がそう言ったが、リナは動じず……

「へへっ、それはどうかな〜。手札から、魔法カード『二重魔法』を発動するね〜!」
「な、何だとぉぉぉぉ!!」

「手札の魔法カードを1枚捨てて、池岡の墓地の『明鏡止水の心』をもらって、すぐあたしのクランちゃんに装備させるかんね〜。」
 リナがそう言うと、クランの心がまるで清水のように澄み渡り……まるで聖少女と見紛うばかりの雰囲気を醸し出し始めた!!

「『明鏡止水の心』の効果、池岡はよ〜く分かってるよね!」
「ああ……装備したモンスターは、戦闘と、対象を取る効果によっては破壊されなくなる……つまり、『スカラベの大群』で破壊できねえって事だよなぁぁぁぁ!!」
「そっ。それに、クランちゃんの効果は、あたしのスタンバイフェイズ時に、相手の場のモンスターの数×300ポイントのダメージを与えることができるんだ〜。これであたしはターンエンドね。」



現在の状況
リナ LP…5000
   手札…1枚
   場…溶岩魔神 ラヴァ・ゴーレム(攻撃力3000・攻撃表示)
     黒魔導師クラン(攻撃力1200・攻撃表示)
     明鏡止水の心(黒魔導師クランに装備)

池岡 LP…1000
   手札…1枚
   場…スカラベの大群(守備力1000・裏側守備表示)
     光の護封壁(永続罠・攻撃力3000以下のモンスターの攻撃を防ぐ)
     伏せカード2枚


「お、俺のターン……ドロー!!(と、とにかく……『明鏡止水の心』を破壊しねえと……)モンスターを1体裏側守備表示で召喚し、ターンエンドだ!!」
 完全に余裕が無くなったのか、池岡は焦りながらターンを終了した。

「あたしのターン、ドロー!スタンバイフェイズ時に、クランちゃんの効果で、池岡の場のモンスターの数×300ポイント……つまり、600ダメージを与えるね〜!」
「だ…だがなぁぁぁぁ……お前も『ラヴァ・ゴーレム』の効果で、1000ポイントのダメージを受けるんだぜぇぇぇぇ……。」
 クランが池岡をムチで2回叩くのと同時に、『ラヴァ・ゴーレム』のマグマがリナに降り掛かって、お互いにライフが削られた。

リナLP 5000→4000
池岡LP 1000→400

「あたしは、魔法カード『天使の施し』を発動するね。カードを3枚ドローして、手札を2枚捨てるね。そして、カードを2枚場に伏せて、ターンエンドね〜。」



現在の状況
リナ LP…4000
   手札…0枚
   場…溶岩魔神 ラヴァ・ゴーレム(攻撃力3000・攻撃表示)
     黒魔導師クラン(攻撃力1200・攻撃表示)
     明鏡止水の心(黒魔導師クランに装備)
     伏せカード2枚

池岡 LP…400
   手札…1枚
   場…スカラベの大群(守備力1000・裏側守備表示)
     裏側守備表示モンスター1体
     光の護封壁(永続罠・攻撃力3000以下のモンスターの攻撃を防ぐ)
     伏せカード2枚


「お…俺の……ターン……ドロー!!手札から、速攻魔法『リロード』を発動だ!俺の手札をデッキに戻してデッキをシャッフルし、戻した枚数だけカードをドローするぜぇぇぇぇ!!」
 池岡は、自分の残り1枚の手札をデッキに戻し、何十回も念入りにシャッフルしてから、勢い良くデッキの1番上のカードをドローした。

「き、来たぁぁぁぁ!!!俺は……『イナゴの軍勢』を反転召喚して、効果発動だぁぁぁぁ!お前の伏せカードを破壊するぜぇぇぇぇ!」
「え?右か左か、どっちの伏せカードを破壊するの?破壊するカードを間違えたら、負けちゃうよ。」
 リナは、軽く笑いながら言った。

「さ〜あ、ど〜っちだ?」
「くっ……ひ、左だぁぁぁぁ!!!」
 池岡の場に大量のイナゴがどこからともなく現われ、リナの場に伏せられていた1枚のカード……『エンジェル・リフト』を食い荒らした!


イナゴの軍勢
闇 レベル3
【昆虫族・効果】
このカードは1ターンに1度だけ裏側守備表示にする事ができる。
このカードが反転召喚に成功した時、
相手フィールド上の魔法・罠カード1枚を破壊する。
攻撃力1000 守備力500

エンジェル・リフト
永続罠
自分の墓地に存在するレベル2以下のモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターがフィールド上から離れた時このカードを破壊する。


「あっちゃぁ……、これじゃあ、クランちゃんが破壊されちゃったら、復活させられないよ……。」
 リナは、残念そうにつぶやいた。

「当りだったようだなぁぁぁぁ!!これで心置きなく、新たなモンスターを出せるぜぇぇぇぇ!!伏せカードを2枚墓地に送り、出でよ!『オオアリクイクイアリ』!!!」
 池岡の場に伏せられていたカードを餌に、2メートル近くの大きさがある巨大なアリが池岡の場に現われた!

「『オオアリクイクイアリ』の効果発動だぁぁぁぁ!!『明鏡止水の心』を破壊しろ!!!」
 『オオアリクイクイアリ』は、クランに装備されていた『明鏡止水の心』を、バリバリと食べてしまった!


オオアリクイクイアリ
地 レベル5
【昆虫族・効果】
このカードは通常召喚できない。
自分フィールド上の魔法・罠カード2枚を
墓地に送った場合のみ特殊召喚する事ができる。
このカードは攻撃をするかわりに相手フィールド上の
魔法・罠カード1枚を破壊する事ができる。
攻撃力2000 守備力500


「さぁぁぁぁ、これでお前の『黒魔導師クラン』を守るカードは無くなったぜぇぇぇぇ。『スカラベの大群』を反転召喚し、効果発動だぁぁぁぁ!!『黒魔導師クラン』を破壊しろ!!!」
 池岡の場のスカラベ達がモゾモゾとうごめいて、クランに襲い掛かろうとしたが……

「……クランちゃんを守るものが無い?そんな事ないよ!速攻魔法、『君のためなら死ねる』を発動するかんね!!」
 リナがそう言うと、なんと、『ラヴァ・ゴーレム』が、クランの前で仁王立ちして、『スカラベの大群』の前に立ちはだかった!

「な…あ……有り得ぬぁいぃぃぃぃ………。元々俺の下部の『ラヴァ・ゴーレム』が、他の奴のためにその身を犠牲にするだとぉぉぉぉ!!!」
「だって、これが『君のためなら死ねる』の効果だもん。あたしの場のカードが破壊される効果が発動したとき、相手からもらったモンスターを破壊することで、その効果を無効にして、破壊できるんだ。」
 リナは、自信満々に答えた。


君のためなら死ねる
速攻魔法
「フィールド上のカードを破壊する効果」を持つ魔法・罠・効果モンスターの効果が発動した時、自分フィールド上に存在する相手のモンスターをリリースする事でその発動を無効にし破壊する。


「(本当は、このカード、あたしのデッキとの相性が微妙なんだけどな……。)」
 リナは、決戦前夜に、友達のミカと話したことを思い出した……。











「なるほどな。『君のためなら死ねる』……か。『水霊使いエリア』を守るために、『ガガギゴ』がその身を盾にして攻撃を防ぐ……なかなかいいイラストやないか。……で、リナちゃん。何でうちに、このカードを見せたくなかったんや?」
「え……だってさ、ミカに見せたら、すっごく欲しがるかなって思ったからね……。」
「ははっ、何言うとんのや。そんなうちが、人のカードを欲しがるような奴やと思っとったんか?」
 ミカは、リナの行動を笑い飛ばしながら言った。

「……まあ、一応言っとくとな、そのカードは、自分で奪い取ったモンスターやなくても、相手からもらったモンスターでも身代わりにできるんやで。」
「ふ〜ん。……でも、そんなことする人なんて、いるのかな〜。」
 リナは、ミカの言葉の意味が、よく分かっていなかったが……











「池岡のように、やっかいなモンスターを送り付ける戦術にも、使えたんだね……。」
 このデュエルを通して、ミカのアドバイスの実用性が、やっと分かった見たいだ……。

その間にも、『ラヴァ・ゴーレム』は、『スカラベの大群』と奮闘し、自らの命と引き替えに、スカラベを1匹残らず焼き尽くした!!

「お……俺に……打つ手は……無い……。」
 池岡は、相手にやられるくらいならせめて……と、自分のデッキの上に手を置いた……
つまり、サレンダー(投了)だ……。




「やったね!あたしの勝ちだね!」
 リナは、自分の勝利に大はしゃぎしていた……。

「ちっ……何で俺は、こんな奴に負けちまったんだ……。……スターチップ、受けとりやがれ!!」
と、池岡は、自分のスターチップを、リナに向けて投げ付け、そのまま逃げ出した!

「わわっ!あ、危ないなあ……直接手渡しすればいいのに……」
 リナは、池岡の投げたスターチップを、顔面スレスレでキャッチした。

スターチップ リナ 1個→2個
池岡 1個→0個(失格)









「はぁ……本当、嫌なデュエルだったなあ……。」
 リナは、今のデュエルで変な虫ばかり見せられて、気が滅入っていた……。

「でも……カムイ達も頑張ってるんだから、あたしが気落ちしてても、しょうがないよね……。」
 そう言いながら、リナは自分を元気づけ……

「よし!次は、もっとまともなデュエリストを探すように、努力しよっと!」
 気持ちをきっぱりと入れ替え、元気に歩き始めた……。




第十九話 リターンマッチ!LVソルジャーズ!

午前10時27分……


ピッ、ピッ、ピッ、ピーン!

「ん?この音は……」
「どうやら、チャージタイムが終わったみたいだね。」
 木の根元で座って休んでいたカムイと黒部先生は、デュエルディスクが発した音を聞くと、すぐさま立ち上がった。

「よっしゃー!リターンマッチ、始めるッスよ!」
 カムイは、左手のデュエルディスクを黒部先生に向けて構えながら言った。

「君の実力がどれほど上がったか、見せてもらうよ!」



「「……デュエル!!」」


黒部LP 4000
カムイLP 4000

「僕の先行みたいだね!ドロー!手札から、『ブレイズ・ガンナー LV4』を召喚するよ!」
 黒部先生の場に、赤い軍服を着、持ち主の身長と同じぐらいの長さの銃を持った小柄な兵士が現われた。

「『ブレイズ・ガンナー LV4』の効果発動だ!1ターンに1度、攻撃を行う代わりに、相手に300ポイントのダメージを与える!打て!ファイアショット!!」
 『ブレイズ・ガンナー LV4』は、持っていた銃を構え、カムイに向けて1発のエネルギー弾を放った!

「ぐっ!」(カムイLP 4000→3700)


ブレイズ・ガンナー LV4
炎 レベル4
【戦士族・効果】
相手ライフに300ポイントダメージを与える事ができる。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
この効果を発動する場合、このターンこのカードは攻撃する事ができない。
この効果を発動したターンのエンドフェイズ時にこのカードを墓地に送ることで、
自分の手札・デッキから『ブレイズ・ガンナー LV6』を1体特殊召喚する。
攻撃力1600 守備力600


「まだ終わりじゃないよ!手札から、魔法カード『レベルアップ!』を発動だ!進化しろ!『ブレイズ・ガンナー LV4』!!」
 そう言うと、『ブレイズ・ガンナー LV4』が成長し、持っていた銃も巨大になった!

「『ブレイズ・ガンナー LV4』は、『ブレイズ・ガンナー LV6』に進化した!さらに、『ブレイズ・ガンナー LV6』の効果発動!相手に500ポイントのダメージを与えるよ!レーザービット!」
 『ブレイズ・ガンナー LV6』は、地面に右ひざをつき、まるで狙撃主のような格好で、カムイに向けて赤いレーザー光線を放った!

「ぐあっ!い、1ターン目から、だいぶライフが削られちまったッスね……。」(カムイLP 3700→3200)
 カムイは、黒部先生の激しい攻撃に、驚いていた……。

「カードを1枚セットして、ターンを終了するよ。このタイミングで、『ブレイズ・ガンナー LV6』は『LV8』に進化する!」
 『ブレイズ・ガンナー LV6』の持っていた銃に、レーザーポインター、エネルギータンクなどのパーツが追加され……銃を持つ本人も、装備に負けないくらいの威圧感を放ち始めた!


ブレイズ・ガンナー LV6
炎 レベル6
【戦士族・効果】
相手ライフに500ポイントダメージを与える事ができる。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
この効果を発動する場合、このターンこのカードは攻撃する事ができない。
また、自分のフィールド上に他のモンスターが存在する限り、
相手はこのカードを攻撃対象に選択できない。
この効果を発動したターンのエンドフェイズ時にこのカードを墓地に送ることで、
自分の手札・デッキから『ブレイズ・ガンナー LV8』を1体特殊召喚する。
攻撃力2000 守備力900


ブレイズ・ガンナー LV8 攻撃力2400

「ぐっ……1ターン目からほとんど手札を浪費せずに、攻撃力2000越えのモンスターが出てきたッスね……。これが、『LV』の名を持つモンスターのやっかいな所なんスよね……。」
 カムイは、高速で黒部先生の場にレベル8のモンスターが出現したことに少し動揺していたが……

「……だが、攻撃力2400なら、今の手札でなんとかなるんスよ!オレのターン、ドロー!手札から、『E・HERO キャプテン・ゴールド』を捨て、デッキから『摩天楼 −スカイスクレイパー−』を手札に加えて、即発動させるッスよ!」
 カムイが、デュエルディスクのフィールドカードゾーンに、『摩天楼 −スカイスクレイパー−』のカードを勢い良く置くと、カムイと黒部先生の周りを、巨大なビル街が包み込んだ!

「『摩天楼 −スカイスクレイパー−』……カムイのE・HERO達が戦うには絶好の場所と言えるな!」
「ああ!さらにオレは、『E・HERO ワイルドマン』を召喚するッス!」
 カムイの場に、大きな刀を背負い、顔にペイントを行った野性的なヒーローが現われた。

「『ワイルドマン』の攻撃力は1500…『ブレイズ・ガンナー LV8』の攻撃力は2400……このままでは勝てないんスが……『摩天楼 −スカイスクレイパー−』の効果で、E・HEROが自分より攻撃力の高い相手に攻撃するとき、攻撃力が1000ポイントアップするんスよ!さらに、『ワイルドマン』は罠の効果を受けないから、安心して攻撃できるッスよ!」
 カムイは、自信満々に語った。


摩天楼 −スカイスクレイパー−
フィールド魔法
「E・HERO」と名のつくモンスターが攻撃する時、
攻撃モンスターの攻撃力が攻撃対象モンスターの攻撃力よりも低い場合、
攻撃モンスターの攻撃力はダメージ計算時のみ1000ポイントアップする。


「よっしゃー!『ワイルドマン』で、『ブレイズ・ガンナー LV8』に攻撃ッス!ワイルド・スラッシュ!」
 『ワイルドマン』は、ビル街をまるでムササビのように高速で跳び回って、『ブレイズ・ガンナー LV8』に攻撃しようとしたが……

「手札を1枚捨て、伏せ罠カード、『LVバリア』を発動だ!このターン、僕の場のLVと名の付いたモンスターは破壊されないよ!」
 『ブレイズ・ガンナー LV8』の前に不思議なオーラが現われ、『ワイルドマン』の切り掛かりの衝撃を和らげた!


LVバリア
通常罠
このターン、自分の場の『LV』と名のつくモンスターは破壊されない。


「……まあ、僕への戦闘ダメージは、普通に通るんだけどね。」(黒部先生LP 4000→3900)
「ぐっ……『ブレイズ・ガンナー LV8』を破壊できなかったのは、何かまずい気がするんスよね……。ターンを終了するッス。」
 カムイは、少し残念に思いながらターンを終了した。

現在の状況
カムイ LP…3200
   手札…4枚
    場…E・HERO ワイルドマン(攻撃力1500・攻撃表示)
      摩天楼 −スカイスクレイパー−(表側表示)

黒部先生 LP…3900
    手札…2枚
     場…ブレイズ・ガンナー LV8(攻撃力2400・攻撃表示)


「僕のターン、ドロー!『ブレイズ・ガンナー LV8』の効果発動だ!1ターンに1度、攻撃を行う代わりに、『ワイルドマン』の攻撃力を700ポイント下げ、カムイに700ポイントのダメージを与える!ハイパーランチャー!」
 黒部先生の言葉に反応し、『ブレイズ・ガンナー LV8』は、持っていた巨大な銃からレーザー光線を発射して、『ワイルドマン』の脇腹を射ぬいた!
そして、貫通したレーザーが、カムイに直撃した!

「ぐあっ!さ、さすがに700ポイントのダメージになると、無視できなくなるッスね……。」(カムイLP 3200→2500)

ワイルドマン 攻撃力1500→800


ブレイズ・ガンナー LV8
炎 レベル8
【戦士族・効果】
相手モンスター1体の攻撃力を700ポイント下げ、
相手ライフに700ポイントダメージを与える事ができる。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
この効果を発動する場合、このターンこのカードは攻撃する事ができない。
また、自分のフィールド上に他のモンスターが存在する限り、
相手はこのカードを攻撃対象に選択できない。
攻撃力2400 守備力1700


「さらに僕は、手札から『ミスティック・ソードマン LV2』を召喚するよ!」
 黒部先生の場に、白い服を着た小さな剣士が現われ……

「『ミスティック・ソードマン LV2』の攻撃力は900……そこまで高くないが、攻撃力が800まで下がった『ワイルドマン』を倒すには十分だよ!バトルだ!『ミスティック・ソードマン LV2』で、『ワイルドマン』に攻撃!神秘の剣・LV2!」
 脇腹を押さえ、苦痛に顔を歪めている『ワイルドマン』の体を、一刀両斬した!

「くっ……『ワイルドマン』が、一瞬で破壊されちまったッスね……。」(カムイLP 2500→2400)

「カードを1枚場に伏せ、ターンエンドだ。このタイミングで、『ミスティック・ソードマン LV2』の効果発動!『LV4』に進化だ!」
 『ミスティック・ソードマン LV2』は、背が少し高くなり、持っていたプレート状の剣が2本に増えた!


ミスティック・ソードマン LV2
地 レベル2
【戦士族・効果】
裏側守備表示のモンスターを攻撃した場合、
ダメージ計算を行わず裏側守備表示のままそのモンスターを破壊する。
このカードがモンスターを戦闘によって破壊したターンのエンドフェイズ時、
このカードを墓地に送る事で「ミスティック・ソードマン LV4」1体を
手札またはデッキから特殊召喚する。
攻撃力900 守備力0


「くっ!オレのターン、ドロー!」
 ドローしたカードを確認すると、カムイの表情は少し和らいだ。

「(よし……このカードを使えば、減ったライフが一気に回復するッスね!)手札から、魔法カード、『融合』を発動ッス!手札の『バーストレディ』と『バブルマン』を融合し……『E・HERO スチーム・ヒーラー』を融合召喚するッス!」
 炎を操るヒーローと、水を操るヒーローが、渦の中で1つになり……巨大な湯沸器と体が一体化したヒーローに変化した!

「なるほど……『スチーム・ヒーラー』か!だが、カムイ、先に言っておくけど、僕の場の『ブレイズ・ガンナー LV8』は、他のモンスターが場に存在するとき、攻撃されないよ!」
「だが、『ミスティック・ソードマン LV4』には普通に攻撃できるんスよね!『スチーム・ヒーラー』で、『ミスティック・ソードマン LV4』に攻撃ッス!」
 『スチーム・ヒーラー』は、右手に付いた湯気の噴射口を構えながら、『ミスティック・ソードマン LV4』に突進した!

「『スチーム・ヒーラー』の攻撃力は1800……『ミスティック・ソードマン LV4』の攻撃力は1900……よって、『摩天楼 −スカイスクレイパー−』の効果で、『スチーム・ヒーラー』の攻撃力が1000ポイントアップするッスよ!」
 カムイがそう言うと、『スチーム・ヒーラー』は、自分の体と一体化した湯沸器を激しく沸騰させ……大量の湯気を『ミスティック・ソードマン LV4』にぶつけた!

「ぐっ!」(黒部先生LP 3900→3000)

「さらに、『スチーム・ヒーラー』のモンスター効果発動ッス!戦闘で破壊したモンスターの攻撃力分だけ、オレのライフが回復するッスよ!」


E・HERO スチーム・ヒーラー
水 レベル5
【戦士族・融合・効果】
「E・HERO バーストレディ」+「E・HERO バブルマン」
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、
破壊したモンスターの攻撃力分だけ自分のライフポイントが回復する。
攻撃力1800 守備力1000


カムイLP 2400→4300

「『ブレイズ・ガンナー』で減らしたライフを一気に取り返すとは……やるじゃないか!」
「ああ!メインフェイズ2に入るッスよ!モンスターを1体セットして、カードを1枚場に伏せ、ターンエンド!」


現在の状況
カムイ LP…4300
   手札…0枚
    場…E・HERO スチーム・ヒーラー(攻撃力1800・攻撃表示)
      裏側守備表示モンスター1体
      摩天楼 −スカイスクレイパー−(表側表示)
      伏せカード1枚

黒部先生 LP…3000
    手札…1枚
     場…ブレイズ・ガンナー LV8(攻撃力2400・攻撃表示)
       伏せカード1枚


「僕のターン、ドロー!『ブレイズ・ガンナー LV8』の効果発動だ!『スチーム・ヒーラー』の攻撃力を700ポイント下げ、カムイに700ポイントのダメージを与える!ハイパーランチャー!」
 『ブレイズ・ガンナー LV8』の放った弾丸は、『スチーム・ヒーラー』の体の湯沸器に穴を開けた!
すると、その穴からまるで沸騰したヤカンのような音を点てながら、『スチーム・ヒーラー』は激しくひっくり反ってしまった!

「わわっ!……な、何でこんなに大きな音が出るんスか……。」(カムイLP 4300→3600)
 カムイは、『スチーム・ヒーラー』が発した大きな音に驚き、思わず両手で両耳を塞いでしまった……。

「ま、まあ……僕も、『スチーム・ヒーラー』に対して『ブレイズ・ガンナー LV8』の効果を発動したのはこれが初めてだから、こう言う大きな音がするとは思ってなかったんだけどね……。」
 黒部先生も、苦笑いしながら耳を塞いでいた……。

「……まあいい。僕は、手札から『サイレント・ソードマン LV3』を召喚するよ!」
 黒部先生の場に、藍色の服に身を包んだ小さな剣士が現われ……

「『サイレント・ソードマン LV3』をリリースし……伏せ罠カード、『レベル・ソウル』を発動だ!」
 ……即、フィールド上から姿を消した!

「『レベル・ソウル』……初めて聞くカードッスね……。いったいどんな効果なんスか?」
「教えておくよ!墓地の『LV』と名のつくモンスターを除外し、そのモンスターの進化形態を、召喚条件を無視して手札またはデッキから特殊召喚できるんだ!」
「なるほど!つまり、『レベルアップ!』と似たような効果なんスね!」
 カムイは、自分の前で手をポンと合わせ、納得したような表情をした。


レベル・ソウル
通常罠
自分フィールド上のモンスター1体をリリースして発動。
自分の墓地に存在する「LV」と名のつくモンスター1体をゲームから除外し、
そのカードに記されているモンスターを、召喚条件を無視して手札またはデッキから特殊召喚する。


「僕は……『レベル・ソウル』の効果で、『ツインソード・ファイター LV6』を除外する!」
「な……『ツインソード・ファイター LV6』?いつのまにそのカードを墓地に送ったんスか!?」
 カムイは、このデュエル中に、黒部先生がいつ手札を捨てたのか、思い出していた……。

「……まさか、『LVバリア』のコストで、墓地に送っていたんスか!?」
「その通りだよ、カムイ!……出ろ!『ツインソード・ファイター LV8』!!」
 黒部先生がそう言うと、墓地の『ツインソード・ファイター LV6』が輝きを放ち……その輝きが消えたとき、場に1人の剣士が現われた!
その剣士は、緑色の服に身を包み、両手に1メートル近くの剣を持っていた!

「『ツインソード・ファイター LV8』……攻撃力2800ッスか!?」
「バトルだ!『ツインソード・ファイター LV8』で、『スチーム・ヒーラー』に攻撃!ツインソード・スラッシュ!」
 『ブレイズ・ガンナー LV8』によって体を打ち抜かれ、攻撃力1100に下げられたうえ、仰向けに倒れてしまっている『スチーム・ヒーラー』は、『ツインソード・ファイター LV8』の右手に握られた剣から放たれる斬撃にまったく抵抗できず、真っ二つにされてしまった……。

「ぐあっ!な、なかなか強力な一撃ッスね……。」(カムイLP 3600→1900)

「まだだ!『ツインソード・ファイター LV8』は、1ターンに2回攻撃できる能力を持っている!返しの刄で、カムイの裏側守備表示モンスターに攻撃だ!」
 『ツインソード・ファイター LV8』は、左の剣で、カムイの場の裏側守備表示モンスター……『フレンドッグ』をまるで紙切れのように切り裂いた!


ツインソード・ファイター LV8
風 レベル8
【戦士族・効果】
このカードは通常召喚できない。『ツインソード・ファイター LV6』の効果でのみ特殊召喚できる。
このカードは一度のバトルフェイズ中に2回攻撃することができる。
攻撃力2800 守備力1600


「……『フレンドッグ』は、戦闘破壊された時、オレの墓地から『E・HERO』1体と『融合』を手札に戻すことができるんスよ!さらに、オレのモンスターが戦闘破壊されたことにより、伏せ罠カード、『ヒーロー・シグナル』を発動ッス!まずは『ヒーロー・シグナル』の効果で、デッキから『E・HERO フェザーマン』を特殊召喚し……『フレンドッグ』の効果で、墓地の『E・HERO バーストレディ』と『融合』を手札に戻すッスよー!」
 カムイは、デッキの中から『E・HERO フェザーマン』を場に出し、墓地の『E・HERO バーストレディ』と『融合』を慣れた手つきで手札に加えた。


フレンドッグ
地 レベル4
【機械族・効果】
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分の墓地から「E・HERO」と名のついたカード1枚と
「融合」魔法カード1枚を手札に加える。
攻撃力800 守備力1200

ヒーロー・シグナル
自分フィールド上のモンスターが戦闘によって破壊され
墓地へ送られた時に発動する事ができる。
自分の手札またはデッキから「E・HERO」という名のついた
レベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。


「何!一気に融合素材を揃えたのか!?……なら、カードを1枚場に伏せ、ターンエンドだ!」
 黒部先生は、次にカムイが取る行動を瞬時に見抜き、その攻撃を堪えるためのカードを伏せて、ターンを終了した。

「オレのターン、ドロー!手札から、魔法カード『融合』を発動ッス!場の『フェザーマン』と、手札の『バーストレディ』を融合し……『E・HERO フレイム・ウィングマン』を融合召喚するッスよ!」
 場の翼を持つヒーローと、炎を操るヒーローが融合し……翼と鷹の頭を腕に付けたヒーローが現われ、『摩天楼 −スカイスクレイパー−』にそびえ立つ一番高いビルに飛び乗った!

「くっ!やはり、そのヒーローを出してきたか!」
「ああ!黒部先生のライフは3000……『摩天楼 −スカイスクレイパー−』の効果で攻撃力を1000ポイント高めた『フレイム・ウィングマン』で、『ツインソード・ファイター LV8』を破壊すれば、戦闘ダメージと効果ダメージで、黒部先生のライフは0になるッスよ!」
 カムイは、まるで勝ちを確信したかのように話した。

「そうだな!……だが、僕の場に伏せられたカードが、攻撃を封じる罠カードだったら、どうだい?」
「ぐっ……そう言われても、ここで攻撃をためらったら、オレの負けになるんスよ!『フレイム・ウィングマン』で、『ツインソード・ファイター LV8』に攻撃ッス!スカイスクレイパー・シュート!!」
 『フレイム・ウィングマン』は、ビルの頂上から飛び降り、燃え盛る弾丸のように『ツインソード・ファイター LV8』に突撃したが……

「甘いぞ!カムイ!速攻魔法カード『神秘の中華なべ』を発動だ!『ツインソード・ファイター LV8』をリリースし、その攻撃力分だけ僕のライフを回復させる!」
 そう言うと、『ツインソード・ファイター LV8』の体が光のエネルギー状になり、黒部先生のライフに変換された!


神秘の中華なべ
速攻魔法
自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる。
生け贄に捧げたモンスターの攻撃力か守備力を選択し、
その数値だけ自分のライフポイントを回復する。


黒部先生LP 3000→5800

「ぐっ……一気にライフを回復されたッスね……。なら、『フレイム・ウィングマン』で、『ブレイズ・ガンナー LV8』に攻撃ッス!フレイム・シュート!!」
 『フレイム・ウィングマン』は、さっきまで『ツインソード・ファイター LV8』がいた場所で急ブレーキをかけ、体にまとった炎を右腕に集中させ、そのエネルギーを一気に『ブレイズ・ガンナー LV8』に向かって放出した!
その攻撃によって、『ブレイズ・ガンナー LV8』は一瞬で焼き尽くされた……。

「くっ……これで僕の場のモンスターは全滅か……。」(黒部先生LP 5800→5100)

「『フレイム・ウィングマン』のモンスター効果発動ッス!戦闘で破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを、相手プレイヤーに与えるんスよ!『ブレイズ・ガンナー LV8』の攻撃力は2400……よって、2400ダメージを受けてもらうッスよ!」
「くっ!」(黒部先生LP 5100→2700)

「よっしゃー!これで黒部先生の場のモンスターは全滅したッスよ!カードを1枚場に伏せ、ターンエンド!」


現在の状況
カムイ LP…1900
   手札…0枚
    場…E・HERO フレイム・ウィングマン(攻撃力2100・攻撃表示)
      摩天楼 −スカイスクレイパー−(表側表示)
      伏せカード1枚

黒部先生 LP…2700
    手札…0枚
     場…無し


「僕のターン、ドロー!……カードを1枚場に伏せて、ターンエンドだ。」
 場にカードが無いと言う圧倒的不利な状況に立たされているが、黒部先生はまだ余裕を保っているような表情を見せていた……。

「オレのターン、ドロー!手札から、『カードガンナー』を召喚ッス!」
 カムイの場に、手がレーザー砲見たいになった、小さな機械が現れた。

「『カードガンナー』の効果発動ッス!デッキの上からカードを3枚墓地に送り、攻撃力を1500ポイントアップさせるッスよ!」
 カムイは、デッキの上からカードを3枚取り出して、墓地に送った!


カードガンナー
地 レベル3
【機械族・効果】
自分のデッキのカードを上から3枚まで墓地へ送る事ができる。
墓地へ送ったカード1枚につき、このカードの攻撃力は
エンドフェイズ時まで500ポイントアップする。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
自分フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。
攻撃力400 守備力400


カードガンナー 攻撃力400→1900

「バトルフェイズに入るッスよ!まずは『カードガンナー』で、黒部先生にダイレクトアタック!」
 

「ぐっ!」(黒部先生LP 2700→800)

「よっしゃー!『フレイム・ウィングマン』でトドメッス!フレイム・シュート!!」
 『フレイム・ウィングマン』の右手から放たれる火炎放射が、黒部先生に直撃しそうになるが、黒部先生は微動だにせず……

「伏せ罠カード、『パワー・ウォール』を発動だ!デッキの上から21枚のカードを墓地に送り、『フレイム・ウィングマン』から受ける2100の戦闘ダメージを0にする!!」
 黒部先生がデッキの上から21枚のカードを取り出して『フレイム・ウィングマン』の攻撃にかざすと、21枚のカードのソリッドビジョンがバリアのように黒部先生の前を周回し、攻撃を防いだ!


パワー・ウォール
通常罠
自分が直接攻撃を受ける場合、自分のデッキの上からカードを任意の枚数墓地に送る事で、
自分が受ける戦闘ダメージを墓地に送ったカードの枚数×100ポイント少なくする。


「ぐっ……一気に墓地に大量のカードが送り込まれちまったッスね……。これでターンを終了するッス。」

カードガンナー 攻撃力1900→400


現在の状況
カムイ LP…1900
   手札…0枚
    場…E・HERO フレイム・ウィングマン(攻撃力2100・攻撃表示)
      カードガンナー(攻撃力400・攻撃表示)
      摩天楼 −スカイスクレイパー−(表側表示)
      伏せカード1枚

黒部先生 LP…800
    手札…0枚
     場…無し

カムイは、場でもライフポイントでも勝っているが、黒部先生の墓地に大量のカードが送られていることを不安に思っていた……。

「……僕のターン、ドロー!」
 ドローしたカードを確認した黒部先生は、目を大きく見開いた……。

「!!ま、まさか、ここであのカードを引いたんスか!?」
「ああ……。僕は、手札から『光の勇者(ライト・ブレイブ) LVX』を召喚する!」
 黒部先生は、のカードを勢い良くデュエルディスクに置くと、黒部先生の場に光の柱が現われ……その中には、一人の男が立っていた!
その男は、光り輝く純白の鎧を身につけ、黄金色の髪、真紅のマント……と、まさしく『勇者』と呼ぶにふさわしい威圧感だった……。

「『光の勇者』は、場と墓地に存在する『LV』と名のつく戦士族モンスターの数がそのまま、レベルと攻撃力になる!僕の墓地には、『パワー・ウォール』の効果を合わせて、墓地に11枚の戦士族モンスターが存在する!よって、『光の勇者』のレベルは12!攻撃力は3600だ!」
 『光の勇者』は、墓地に眠る仲間達の魂を胸に秘め、その身をまるで太陽のように輝かせた!


光の勇者(ライト・ブレイブ) LVX
光 レベル1
【戦士族・効果】
このモンスターは特殊召喚できない。
フィールド上と墓地に存在する『光の勇者(ライト・ブレイブ) LVX』以外の
『LV』と名のつく戦士族モンスター一体につき、このモンスターのレベルが1上がる。
このモンスターの攻撃力は、レベル×300ポイントとなる。
攻撃力? 守備力0


光の勇者……レベル12 攻撃力3600

「行くぞ!カムイ!『光の勇者』で、『カードガンナー』に攻撃!ブレイブ・オブ・バーンLV12!」
 『光の勇者』は、右手から激しい光を、『カードガンナー』に向けて放った!

「くっ!伏せ罠カード、発動!」









カッ!









 『光の勇者』が放った光が消えた跡には、『カードガンナー』の破片も残っていなかったが……

「……まだ勝負はついてないみたいだな。」
 黒部先生がボソッと呟くと、カムイが……

「あ……危なかったッスね……。オレは、伏せ罠カード、『ガード・ブロック』を発動していたんスよ……。このカードによって、オレが受ける戦闘ダメージは0になるッスよ!」
 カムイは、少し動揺しながら話した……。
この攻撃をまともに食らっていたら、カムイは3200のダメージを受け、一瞬で敗北していた所だからだ……。

「だが!『ガード・ブロック』の第二効果で、カードを1枚ドローして、『カードガンナー』の効果で、さらに1枚カードをドローするッスよ!」
「なるほど……。『カードガンナー』の攻撃力の低さからくる自分へのダメージを、『ガード・ブロック』で打ち消し、さらなるドローに繋げる……。なかなかやるじゃないか!」
「ああ!黒部先生の引きなら、ここで『光の勇者』を呼ぶと思っていたッスからね!」
 カムイは、自信満々に答えた。

「確かに……『光の勇者』は、僕の魂のカードと言えるからね。ピンチの時に現われ、みんなの期待を胸に秘め、戦う……まさに『勇者』と呼べる存在だからね。僕はこれでターンエンドだ。」

「オレのターン、ドロー!カードを2枚場に伏せ、『フレイム・ウィングマン』を守備表示に変更するッス!ターンエンド!」
 カムイは、手早くターンを終了した。

「(黒部先生なら……きっと、『あのカード』を、手札に呼び寄せてくるッス!)」
「僕のターン、ドロー!デッキの1番上のカードを墓地に送り、魔法カード『アームズ・ホール』を発動!」
 そう言うと、『光の勇者』の前に突然、腕一本が通せるぐらいの小さな穴が開いた!

「『アームズ・ホール』は、このターンの通常召喚の権利を失う代わりに、デッキまたは墓地から、装備魔法を1枚手札に加えることができるんだ!僕は当然……墓地から『光の剣』を手札に加え、『光の勇者』に装備させる!」
 『光の勇者』は、小さな穴に手を通し……その穴の中から、1本の光り輝く剣を手にした!
白銀でできたその剣は、『光の勇者』の魂に呼応し、強烈な輝きを放ち始めた!


アームズ・ホール
自分のデッキの一番上のカード1枚を墓地へ送り発動する。
自分のデッキまたは墓地から装備魔法カード1枚を手札に加える。
このカードを発動する場合、このターン自分はモンスターを
通常召喚する事はできない。


「『光の剣』は、光の戦士のみが装備できるカードだ!このカードを装備したモンスターの攻撃力は、自身のレベル×200の攻撃力と、貫通能力を得る!『光の勇者』のレベルは12……よって、攻撃力が2400ポイントアップする!」

光の勇者 攻撃力3600→6000

「これで終わりだ!『光の勇者』で、『フレイム・ウィングマン』に攻撃!エターナル・フェイズ・ノヴァ!!」
 『光の勇者』は、持っていた『光の剣』から極太の光線を放ち、『フレイム・ウィングマン』を破壊しようとしたが……

「くっ!速攻魔法、『サイクロン』を発動ッス!黒部先生の『光の剣』を破壊するッスよ!」
 突然の竜巻が、『光の勇者』の右腕に直撃し、思わず剣を弾き飛ばしてしまった!

「だが、『光の剣』には、特殊能力がある!このカードが相手の魔法・罠カードの効果で破壊され、墓地に送られたとき、このカードを手札に戻すことができる!」
 弾き飛ばされた『光の剣』は、黒部先生の前の地面にグサッと突き刺さった!


光の剣
装備魔法
このカードは、光属性の戦士族モンスターにのみ装備可能。
このカードを装備したモンスターの攻撃力は、装備したモンスターのレベル×200ポイントアップし、
守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が越えていれば、
その数値だけ相手プレイヤーに戦闘ダメージを与える効果を得る。
フィールド上で表側表示で存在するこのカードが相手の魔法・罠カードの効果によって破壊され、
墓地に送られた時、このカードを手札に戻す。


「……カムイ!『光の剣』を手放した所で、『光の勇者』の攻撃は止まるわけじゃないよ!」
 『光の勇者』は、右手から激しい光を放ち、『フレイム・ウィングマン』をあっさりと破壊してしまった……。

「くっ……オレの場のモンスターが、全滅しちまったッスね……。」
「どうだい?メインフェイズ2に入るよ!『光の勇者』に、『光の剣』を装備させなおして、ターンエンド!」
 『光の勇者』は、地面に刺さった『光の剣』を抜き取り、カムイに向かってその剣を構えた!


現在の状況
カムイ LP…1900
   手札…1枚
    場…摩天楼 −スカイスクレイパー−(表側表示)
      伏せカード1枚

黒部先生 LP…800
    手札…0枚
     場…光の勇者(ライト・ブレイブ) LVX(攻撃力6000・攻撃表示)
       光の剣(光の勇者に装備)


「……オレのターン、ドロー!手札から、魔法カード『戦士の生還』を発動ッス!」
「何!『戦士の生還』!?いったい何を回収するんだ!?」
「黒部先生!見せてあげるッスよ!このフィールド――摩天楼を守るヒーローを!!」
 カムイは、墓地の一番下に眠っているヒーローを取出し……

「行くッスよー!『E・HERO キャプテン・ゴールド』!」
 カムイが『キャプテン・ゴールド』のカードをデュエルディスクに置くと、金のスーツを来て、真っ赤なマントを身につけたヒーローが現われた!


E・HERO キャプテン・ゴールド
光 レベル4
【戦士族・効果】
このカードを手札から墓地に捨てる。
デッキから「摩天楼 −スカイスクレイパー−」1枚を手札に加える。
フィールド上に「摩天楼 −スカイスクレイパー−」が存在しない場合、
フィールド上のこのカードを破壊する。
攻撃力2100 守備力800


「『キャプテン・ゴールド』……攻撃力2100か!だが、『光の勇者』の攻撃力6000には遠く及ばないよ!」
「確かに……『光の剣』を持った『光の勇者』には、オレの『キャプテン・ゴールド』もかなわないッスね……。……だが!その剣を、『キャプテン・ゴールド』が手に入れたらどうッスかね!?」
「何!」
 黒部先生は、カムイの一言に驚いていた。いったい、何を仕掛けてくるのかと……。

「……伏せ罠カード、『力の集約』を発動ッス!!このカードで、『光の勇者』が持っている『光の剣』を、『キャプテン・ゴールド』に装備させるッスよ!!」
「な、何だと!?」
 『キャプテン・ゴールド』が手を高く挙げると、『光の勇者』が持っていた『光の剣』が引き寄せられていった!
そして、その剣は……『キャプテン・ゴールド』の右手に渡った!


力の集約
通常罠
フィールド上の表側表示モンスター1体を選択する。
フィールド上に存在する全ての装備カードを選択したモンスターに装備させる。
対象が正しくない場合は、その装備カードを破壊する。


キャプテン・ゴールド 攻撃力2100→2900
光の勇者 攻撃力6000→3600

「さらに、魔法カード『H―ヒートハート』を発動して、『キャプテン・ゴールド』の攻撃力を500ポイントアップさせるッスよー!」
 『キャプテン・ゴールド』は、手に入れた『光の剣』に闘志をたぎらせ、『光の勇者』に攻撃するタイミングを今か今かと待ち構えていた……。

キャプテン・ゴールド 攻撃力2900→3400

「よっしゃー!『キャプテン・ゴールド』で、『光の勇者』に攻撃ッス!キャプテン・スラッシャー!!」
「迎撃しろ!『光の勇者』!ブレイブ・オブ・バーンLV12!!」
 『光の剣』を構えて突撃する『キャプテン・ゴールド』に対し、『光の勇者』は、右手から激しい光を放った!

「『摩天楼‐スカイスクレイパー』の効果発動ッス!E・HEROが自分より攻撃力の高い相手に攻撃するとき、攻撃力が1000ポイントアップするんスよ!よって、『キャプテン・ゴールド』の攻撃力は、4400になるッスよ!!」
「!!」

キャプテン・ゴールド 攻撃力3400→4400
光の勇者 攻撃力3600


 『キャプテン・ゴールド』は、『光の勇者』の放った光線を真っ二つにし……そのまま『光の勇者』に斬劇を食らわせた!

「ぐあっ!くっ……僕の負けか……。」(黒部先生LP 800→0)




「よっしゃー!オレの勝ちッスね!黒部先生!」
「ああ……そうだね。まさか、『光の剣』を利用されて負けるなんて、思ってもみなかったよ。」
 黒部先生は、『光の剣』のカードを見ながら言った。

「……そうだ、カムイ。スターチップを渡さなければならなかったね。」
「あっ……そう言えば、賭ける個数を言ってなかったッスね……。この場合、どうすればいいんスか?」
 カムイは、頭を掻きながら言った。

「まあ……今回は特別だよ。今、賭けた個数を言ってもいいよ。」
「じゃあ……2個、賭けたってことでいいッスか?」
「いいよ。ほら、スターチップ2個だよ。」
 黒部先生は、ケースの中からスターチップを2個取出し、カムイの右手に渡した。


カムイ スターチップ2個→4個









「よっしゃー!これでスターチップ4個……勝ち抜けまで、もう少しッスね!黒部先生!オレ、絶対代表に選ばれるように頑張るッスよ!」
「ああ!頑張れよ!カムイ!」
 カムイと黒部先生は、握手をして、お互いを激励した……。











一方、その頃――

「ヒャァーッハッハッハッハッハ!ナーオー!今からテメエに、切り札を見せてやるぜぇ!」
「へえ。いったい何なんだろうね。早く見せてよ。」
 ネコ耳帽子の少年・早乙女ナオは、『悪魔部』の生徒・税羅(ぜいら)とデュエルしていた……


現在の状況(後攻1ターン目・税羅のターン)……

ナオ LP…4000
  手札…3枚
   場…デーモン・ソルジャー(攻撃表示)
     伏せカード2枚
税羅 LP…4000
  手札…6枚
   場…無し


「行くぜぇ!手札から、儀式魔法、『ゼラの儀式』を発動だぁ!手札の『ゼラの戦士』2体を生け贄に捧げ……『ゼラ』の降臨だぁ!」
 税羅の場に、巨大なかぎ爪を持った淡青色の体をした悪魔が現われた。


ゼラ
闇 レベル8
【悪魔族・儀式】
攻撃力2800 守備力2300


「そして手札から、魔法カード、『黙する死者』を発動し、墓地から『ゼラの戦士』を守備表示で復活させるぜぇ!さらに手札から、フィールド魔法、『万魔殿―悪魔の巣窟』を発動ぅ!」
 ナオと税羅の周りが、悪魔の気配が漂う不気味な空間へと姿を変えた!
そして、『ゼラの戦士』の姿は……

「ヒャァーッハッハッハッハッハ!『ゼラの戦士』は、悪魔の誘惑から逃れるために『天空の聖域』を探す旅に出ていたそうだが……残念ながら『万魔殿―悪魔の巣窟』に辿り着いちまって、悪魔の誘惑に負けちまったみてえだなぁ!」
 『ゼラの戦士』が頭を抱えて苦痛にもがいている姿を、ナオは黙って見ていた。


ゼラの戦士
地 レベル4
【戦士族・効果】
大天使の力を手に入れる事ができるという聖域を探し求める戦士。
邪悪な魔族からの誘惑から逃れるため、孤独な闘いの日々を送る。
攻撃力1600 守備力1600


「『ゼラの戦士』を生け贄に捧げ……いでよ!『デビルマゼラ』ぁ!」
 『ゼラの戦士』の腕は、……鋭い爪 となり、身も心も完全な悪魔へと変貌してしまった!

「真の悪魔と化した『デビルマゼラ』の力、見せてやるぜぇ!ナオの残り3枚の手札を全て叩き落としちまえぇ!」
 『デビルマゼラ』は、鋭いかぎ爪でナオの持っていた3枚のカード(ソリッドビジョンだが)を、あっさりと切り裂いてしまった!
 

ナオの手札 3枚→0枚


デビルマゼラ
闇 レベル8
【悪魔族・効果】
このカードは通常召喚できない。
このカードは「万魔殿−悪魔の巣窟−」が
フィールド上に存在し、自分フィールド上に表側表示で存在する
「ゼラの戦士」1体を生け贄に捧げた場合のみ特殊召喚できる。
このカードが特殊召喚に成功した場合、相手はランダムに手札を3枚捨てる。
この効果は自分フィールド上に「万魔殿−悪魔の巣窟−」が
存在しなければ適用できない。
攻撃力2800 守備力2300


「なるほど。攻撃力2800の悪魔が場に2体か。なかなかやるじゃないか。……で、攻撃するのかい?」
「あぁ!当然だぜぇ!大体よぉ、テメエみたいなガキが、悪魔部ナンバー1ってのが、気に食わねえんだよぉ!ちょっと強ぇぐらいでいい気になりやがって……」
 税羅は、ナオのことを恨みがましく睨み付けていた……

「終わりだ!ガキが!『デビルマゼラ』!『デーモン・ソルジャー』を破壊しろぉ!」
「……負けるのは君だよ。税羅君。」
 ナオは、小悪魔のような笑みを浮かべながらそう言った。

「伏せ罠カード、『ヘイト・バスター』を発動。……見せてやりなよ、『デーモン・ソルジャー』。君の覚悟をね。」
 ナオがそう言うと、『デーモン・ソルジャー』は、自分のマントを大きく広げた!
マントの中には……何十……いや、何百ものダイナマイトが、導火線に火を点けた状態で隠されていた!

「知ってるかい?『デーモン・ソルジャー』は、与えられた任務を確実にこなす事で有名なんだ。ボクが今回『デーモン・ソルジャー』に与えた任務は……強敵を道連れに自爆することだよ。」
ナオは、冷徹に言った。


デーモン・ソルジャー
闇 レベル4
【悪魔族】
デーモンの中でも精鋭だけを集めた部隊に所属する戦闘のエキスパート。
与えられた任務を確実にこなす事で有名。
攻撃力1900 守備力1600

ヘイト・バスター
通常罠
自分フィールド上に表側表示で存在する悪魔族モンスターが
攻撃対象に選択された時に発動する事ができる。
相手の攻撃モンスター1体と、攻撃対象となった自分モンスター1体を破壊し、
破壊した相手モンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。


「な……テ、テメエ……勝利のためなら、自分のモンスターを犠牲にしても構わねえってのか!?」
「何を言ってるんだい?君だって、勝利のために『ゼラの戦士』を『デビルマゼラ』に変貌させたじゃないか。」
「ぐっ……」
 税羅は、ナオの一言に、まったく反論できない様子だった……。

そう言っている間に、『デーモン・ソルジャー』のマントに仕込まれていたダイナマイトが大爆発し、『デーモン・ソルジャー』は、『デビルマゼラ』と共に消し飛んだ!!

「ぐ、ぐあぁぁぁ!お、俺の『デビルマゼラ』がぁぁぁぁ!」(税羅LP 4000→1200)
 税羅は、『デビルマゼラ』が消し飛んだことに絶叫していたが……

「まだ終わりじゃないよ。ボクの場の『デーモン・ソルジャー』が破壊されたことをトリガーに、伏せ罠カード、『ヘル・ブラスト』を発動するよ。」
 ナオがそう言うと、『デーモン・ソルジャー』が身につけていたダイナマイトの中で、爆発しなかった物が、『ゼラ』の足元に散らばった!

「『ヘル・ブラスト』の効果は、場の一番攻撃力の低いモンスターを1体破壊し、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを、お互いのプレイヤーに与えるんだ。つまり、君のライフは……。」
「ゼ…ゼ……ゼ………」
 税羅が絶句している間に、ダイナマイトが爆発して、『ゼラ』は跡形もなく消し飛んでしまった!

「0かあぁぁぁぁぁ!!」(税羅LP 1200→0)
「ゼルォァァァァァァ!!」(ナオLP 4000→2600)


ヘル・ブラスト
通常罠
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターが破壊され
墓地へ送られた時に発動する事ができる。
フィールド上の攻撃力が一番低い表側表示モンスター1体を破壊し、
お互いにその攻撃力の半分のダメージを受ける。









「さて、約束どおり、スターチップを2個もらうよ。」
「お……俺の『ゼラ』が……『デビルマゼラ』が……。」
 ナオは、言葉を失っている税羅から、2個のスターチップを手に入れた。

ナオ スターチップ2個→4個









「はあ……。さすがに1時間のチャージタイムは長すぎるなあ……。どうやって時間をつぶそうかな……。」
 ナオは、木の根元に座って、退屈さを紛らわそうとしていた……。

♪〜天使のよ〜うな〜〜悪魔のえ〜がお〜〜

「あっ、電話だ。……やっぱりいいよね、この曲。」
 ナオは、自分の肩にかけられた、ネコの顔を模したポーチから携帯電話を取り出し、少し着うた……『ミッドナイト・シャッフル』に聞き惚れていた……。

♪〜こ〜の街に〜〜あふれて〜

ピッ。

「はい、もしもし。」
『おはよう、お兄ちゃん。』
 携帯電話から、可愛らしい女の子……早乙女レイの声が聞こえてきた。

「やあ、レイ。そっちからかけるなんて、珍しいじゃないか。まだ大会は始まってないのかい?」
『う、うん。あと30分くらいで始まるんだ。だから今、デッキの最終調整をやってる所なの。』
「なるほどね。あと30分か。……でも、本校では、トーナメント方式で代表を決めるんだろ?1回も負けちゃダメなんて、大変だね。」
 ナオは、レイを心配させないように、軽く話した。

「まあ、ボクはけっこういいペースで勝ち進んでるから、レイも頑張れよ。」
『うん。今度合うときは、対抗試合の時だといいね。……ありがとう、お兄ちゃん。』
「ああ、こっちこそ、ありがとう。じゃあ切るよ。」

ピッ。









「……デュエルアカデミア本校……か。……いったい、どんな状態なのかな……。」
 ナオは、デュエルアカデミア本校の事、そして、そこにいるレイの事を考えながら、一眠りすることにした……。









【次回予告】

やっほ〜!『ネコ耳族』もといナオ君だよ〜。
あれ?話し方が何かおかしいって?まあ、予告内なんだから、気にしなくていいよ。
さ〜て、次回は、レイが所属するデュエルアカデミア本校のお話だよ!
レイの1回戦の対戦相手は……誰だろう?あのまつ毛が目立つ男子生徒は?

次回、『GX plus!』第二十話!

『復活のエリート君!めざせレギュラーうばえレギュラー!?』
負けるな、レイ!自分の実力を見せてやるんだ!!




第二十話 復活のエリート君!めざせレギュラーうばえレギュラー!?

一方その頃、デュエルアカデミア本校では……


「38……39……40!よし、これで完成ね!」
 微妙に青味がかかった黒いロングヘアーで、赤い制服を羽織り、黒い半ズボンをはき、茶色のベルトを緩く巻いたデュエルアカデミア本校に所属する2年生の女の子……早乙女レイは、自分のデッキの最終調整を行っていた……

「『自分のカードを大切にすれば、きっとデッキは答えてくれる』……か。ちゃんと答えてくれるかな……。」
 レイは、少し前に言われた言葉を思い出しながら、自分のデッキをシャッフルし、デュエルディスクにセットして……

「……ドロー!」
 デッキの一番上から、勢い良くカードを1枚引いた!

「……『恋する乙女』……。頑張ろうね!」
 レイは、右手に持った1枚のカード……『恋する乙女』に、やさしく微笑みかけた。









デュエルアカデミア……デュエル場に続く廊下にて……

「えーと、ボクの試合は……次の試合ね。で、剣山先輩は、ボクの次……。」
 レイは、デュエルアカデミアでの生活をサポートしてくれる、PDA(ポータブルデュエルアカデミア)に送信されたトーナメント表を確認しながら歩いていた。

「あっ、あの後ろ姿は……」
 レイの前方には、バンダナを頭に巻き、黄色い制服を着、がっちりとした体格の男子生徒が、とぼとぼと歩いていた……。
 レイは、その生徒の背後に駆け寄り……
「……おはよう、剣山先輩。」
と言いながら、いきなり膝カックンを男子生徒……ティラノ剣山に行った!

「ぐ、ぐわわっ!……い、いきなり何するザウルス……。」
 レイの突然の行動に、剣山は驚いていたが、その声は、どこか弱々しい感じだった……。

「……ねえ、剣山先輩。今日はボク、送ってもらったイヤリングを付けてみたんだけど……どう思う?」
 レイは、自分の耳に付いている、蜂蜜色した猫目石(キャッツアイ)のイヤリングを剣山に見せた。

「ん……まさか、十代のアニキから、これをもらったザウルス!?」
 剣山は、何かに弾かれるように、いきなりレイの両肩をつかみながら言った!

「きゃぁっ!……ち、違うよ。これは、ボクのお兄ちゃんから……」
「そうか……残念だドン。」
 剣山は、レイの肩をつかんだ手を力なく放し、落胆したかのような表情をし、歩き去っていった……。

「……剣山先輩……どうしちゃったのかな……。」
 肩を落として歩く剣山を、レイは少し心配に思っていた……









「アニキ……丸藤先輩……アニキ達が卒業してから、この学校に、熱いデュエルができる奴が、ほとんど居なくなってしまったザウルス……今の俺の心は……氷河時代に突入してるみたいだドン……。」
 剣山は、溜め息をつきながら、自分の心の内を語っていた……。









デュエルアカデミア、デュエル場にて……



「ではー、これより、交流試合の代表決定トーナメント……第3試合を開始するノーネ!」
 デュエル場中央にて、おかっぱ頭のイタリア人……クロノス教頭が、マイクを持ってアナウンスを行っていた。

「さーて、注目の第3試合の対戦者は……2年生唯一のトーナメント参加者、早乙女レイと〜、3年生の、五階堂宝山なノーネ!」

「よろしく、五階堂先輩。」
「……気に入らない。」
「え……?」
 五階堂の突然の一言に、レイは当惑していた。

「僕はなあ……本来、ティラノ剣山と同じようにレギュラーになるはずだったんだ!なぜなら、エド・フェニックス、ティラノ剣山、僕は第2期の初めの方に登場したんだからな!」
「ええっ?2期とか、レギュラーとか……一体どういうこと?」
 レイは、五階堂の言ってることの意味が、全然分からなかった……。

「レイ……お前を倒して、レギュラーの座を手に入れてやる!」









「鮫島校長、あの生徒は……」
「え、ええ……。あの生徒は、五階堂宝山君です。入学時から、オベリスク・ブルーに所属する実力者なのですが……」
 観客席の最前列で試合を見ていた鮫島校長とフェイト教諭は、五階堂について話し合っていた……。

「……プライドが高く、他者の心を顧みぬ発言をしてしまう……と言うことですね。」
「ま、まあ……平たく言えば、そうなりますかな……。」
 鮫島校長は、フェイト教諭の顔色を伺いながら、話した……。









「デュエルだ!レイ!」
「な、何だかよく分かんないけど……試合開始ってことね!」
 レイは、五階堂に言われるままに、デュエルディスクを構えて……

「「デュエル!!」」
 クロノスの試合開始宣言を聞かずに、デュエルを開始してしまった……。

「ナナッ、ま、まだ試合開始なんて言ってないノーネ……。」
 レイと五階堂に見事にスルーされてしまったクロノスは、少々寂しそうだった……。


「先行はやるよ。レイ。」
「う、うん……。ボクのターン、ドロー!」
 五階堂に言われるままに先手を取ることになったレイは、自分の6枚の手札を確認した……。

「……頑張って!『恋する乙女』!!」
 レイの場に、茶色のロングヘアーで、黄色いドレスに身を包んだ、可愛らしい女の子が現われた。

「(それから……ダメージを防ぐカードを伏せないといけないんだったよね、お兄ちゃん……。)」
 レイは、前日に兄からもらったアドバイスを、思い出していた……。









『いいかい?『恋する乙女』と、『キューピット・キス』のコンボで相手モンスターを洗脳する場合、ダメージを受けなければならないのは、相手に攻撃する時だけなのは分かってるよね?』
「……当然よ。一体ボクがこのカードを、どれだけ使ってると思ってるの?」
『分かってるならいいよ。つまり、攻撃される際は、別にダメージを受ける必要は無いんだ。だから、『和睦の使者』や『レインボー・ライフ』を入れれば、『恋する乙女』のコンボを活かせるようになると思うよ。』
「…そうなんだ。……やっぱり凄いよね、お兄ちゃん。」
『ん?どうしたんだい、レイ。』
 レイの突然の口調の変化を、ナオは不思議に思っていた。

「……だって、お兄ちゃんは、ボクのカードの有効な使い方を、短時間で見つけられるじゃない。それに比べて、ボクなんて……」
『それは違うよ、レイ。ボクとレイでは、デュエルへの考え方が少し違う……それだけだよ。』
「え……。」
 ナオの言葉に、レイは少し驚いた。

『……ま、まあ、いいじゃないか。とにかく、そんなに気を落すなよ。』
「う、うん……。そうだね、お兄ちゃん。」









「……伏せカードを2枚セットして、ターンエンド!」
「僕のターン、ドロー!……レイ!このターンで、デュエルを終わらせてやる!」
 五階堂は、レイに対して挑発的に語った。

「まずは魔法カード『おろかな埋葬』を発動!デッキの中から、『重装武者−ベン・ケイ』を墓地に送る!さらに手札から、魔法カード『アームズ・ホール』を発動!」
「え!?『アームズ・ホール』って……いったいどう言う効果なの?」
 レイは、大会前日に耳にしたカードを五階堂が使ったことに、驚いていた。

「教えてやるよ。このターンに通常召喚を行えなくなる代わりに、デッキの1番上のカードを墓地に送り、デッキまたは墓地から装備魔法を1枚手札に加えることができる!僕は、この効果によって、当然、最強の装備魔法……『早すぎた埋葬』を手札に加える!」
「そ、そう言う効果だったんだ……。(……お兄ちゃんが奨めるわけだよね……。)」
 レイは、『アームズ・ホール』の効果に、感心していた……。


アームズ・ホール
通常魔法
自分のデッキの一番上のカード1枚を墓地へ送り発動する。
自分のデッキまたは墓地から装備魔法カード1枚を手札に加える。
このカードを発動する場合、このターン自分はモンスターを
通常召喚する事はできない。


「手札に加えた『早すぎた埋葬』を、即、発動だ!僕のライフポイント800と引き替えに……蘇れ!『重装武者−ベン・ケイ』!!」(五階堂LP 4000→3200)
 五階堂の場に、大量の武器を背負い、両手に薙刀を持った武士が現われた。


早すぎた埋葬
装備魔法
800ライフポイントを払う。
自分の墓地からモンスターカードを1体選択して攻撃表示で
フィールド上に特殊召喚し、このカードを装備する。
このカードが破壊された時、装備モンスターを破壊する。


「さらにもう1枚『アームズ・ホール』を発動だ!デッキの1番上のカードを墓地に送り、デッキから『魔導師の力』を手札に加えるぜ!見せてやる!究極の一撃を!『重装武者−ベン・ケイ』に、『融合武器ムラサメブレード』、『神剣−フェニックス・ブレード』、『魔導師の力』を装備させる!」
 五階堂が3枚の装備魔法を『重装武者−ベン・ケイ』に装備させると、右手に不気味なオーラを放つ刀を、左手に柄が不死鳥のような形になった剣を持ち、全身から緑色のオーラを発し始めた!

「『重装武者−ベン・ケイ』は、通常の攻撃に加え、装備したカードの枚数分、追加攻撃が可能になる!『ベン・ケイ』に装備されたカードの枚数は4枚……よって、1ターンに5回攻撃が可能になる!」
「ええっ!?今の『ベン・ケイ』の攻撃力は……」
 レイは、恐る恐る『ベン・ケイ』の攻撃力を指折り数え始めた……。

「『ベン・ケイ』自身の500に……『神剣−フェニックス・ブレード』の300………『融合武器 ムラサメブレード』の800…………『魔導師の力』の…2000……で……………」
「そうだ!……攻撃力……3600!!」
 五階堂が自信満々に語ると、『ベン・ケイ』は両手に持った剣をまるで風車のように振り回し、自らの力をアピールした!


重装武者−ベン・ケイ
闇 レベル4
【戦士族・効果】
このカードは通常の攻撃に加えて、
このカードに装備された装備カードの数だけ、
1度のバトルフェイズ中に攻撃する事ができる。
攻撃力500 守備力800

魔導師の力
装備魔法
自分のフィールド上の魔法・罠カード1枚につき、
装備モンスターの攻撃力と守備力を500ポイントアップする。


「終わりだ!!『ベン・ケイ』で、『恋する乙女』に攻撃!真・重装乱舞!!!」
 『重装武者−ベン・ケイ』は、両手に持った剣を振り回しながら、『恋する乙女』に切り掛かった!

「て、手札から『ロックメイス』を捨てて……伏せ罠カード『レインボー・ライフ』を発動!このカードの効果で、このターンにボクが受けるダメージを、すべて回復に変えるよ!」
 『重装武者−ベン・ケイ』の激しい攻撃によって発生した攻撃の余波は、レイの周りに現われた虹色のオーラによって、殺人剣から活人剣……と、真逆の性質へと変化した!


レインボー・ライフ
通常罠
手札を1枚捨てる。
このターンのエンドフェイズ時まで、自分が受けるダメージは無効になり、
その数値分ライフポイントを回復する。


レイLP 4000→7200

「そして、『恋する乙女』の効果発動!『恋する乙女』は、攻撃表示でいる限り、戦闘では破壊されなくて……攻撃したモンスターに、を1つ乗せることができるんだよ!」
 レイがそう言うと、『ベン・ケイ』の心臓部分にハートマークが浮かび上がり、攻撃を行ったことを後悔するような表情を浮かべた!


恋する乙女
光 レベル2
【魔法使い族・効果】
このカードはフィールド上に表側攻撃表示で存在する限り、
戦闘によっては破壊されない。
このカードを攻撃したモンスターに乙女カウンターを1個乗せる。
攻撃力400 守備力300


「ちっ……『レインボー・ライフ』か……。『ベン・ケイ』の攻撃は1回で止めておくぜ!メインフェイズ2で、新たにカードを1枚場に伏せる!これにより、『ベン・ケイ』の攻撃力は4100にアップしたぜ!ターンエンド!」

重装武者−ベン・ケイ 攻撃力3600→4100


現在の状況
レイ LP…7200
   手札…2枚
   場…恋する乙女(攻撃力400・攻撃表示)
     伏せカード1枚

五階堂 LP…3200
    手札…0枚
    場…重装武者−ベン・ケイ(攻撃力4100・攻撃表示)
      早すぎた埋葬(ベン・ケイに装備)
      融合武器ムラサメブレード(ベン・ケイに装備)
      神剣−フェニックス・ブレード(ベン・ケイに装備)
      魔導師の力(ベン・ケイに装備)
      伏せカード1枚


「ボクのターン、ドロー!……手札の魔法カードを1枚捨てて、『二重魔法』を発動するよ!」
「何!『二重魔法』だと!?」
 レイが予想外なカードを使用したことに、五階堂は驚いていた。

「このカードの効果で、五階堂先輩の墓地にある……『アームズ・ホール』の効果を使わせてもらうよ!」
「な……」
 レイがそう言うと、五階堂の墓地に置かれていた『アームズ・ホール』が、光り輝きだした!

「デッキの1番上のカードを墓地に送って……『アームズ・ホール』の効果で、デッキから、装備魔法『キューピット・キス』を手札に加えて、『恋する乙女』に装備させるよ!」
 そう言うと、『恋する乙女』の髪に小さなエンジェルが

「いくよ!『恋する乙女』で、『ベン・ケイ』に攻撃!一途な思い!」
「ちっ!迎撃しろ!『ベン・ケイ』!」
 『ベン・ケイ』は、両手を広げて向かってくる『恋する乙女』を切り付けるのは忍びないのか、武器を背中に納め、素手で受け流した!

「きゃっ!」(レイLP 7200→3100)
「な、何のつもりだ!自分から攻撃してダメージを受けるなんて……馬鹿にしているのか!?」
 五階堂は、レイの行動の意味が分からず、当惑していた……。

「それは違うよ!『キューピット・キス』を装備したモンスターが乙女カウンターの乗ったモンスターに攻撃して逆にダメージを受けたとき、そのモンスターの攻撃力を得ることができるよ!」
 自分の攻撃を受け流された『恋する乙女』が涙をこぼすと……『ベン・ケイ』は自分が乙女に手を掛けたことを心から恥じ、せめてもの罪滅ぼしにと、『恋する乙女』の前に仁王立ちをし、五階堂に向けて武器を構えた!


キューピット・キス
装備魔法
乙女カウンターが乗っているモンスターを装備モンスターが攻撃し、
装備モンスターのコントローラーが戦闘ダメージを受けた場合、
ダメージステップ終了時に戦闘ダメージを与えたモンスターのコントロールを得る。


「お願い……通って!『ベン・ケイ』で、五階堂先輩にダイレクトアタック!」
 『ベン・ケイ』は、武器を振り回し、五階堂に攻撃しようとしたが……

「ちっ!速攻魔法『非常食』を発動!『ベン・ケイ』に装備された4枚のカードをすべて墓地に送り、僕のライフを4000回復させる!」
 『ベン・ケイ』の持っていた武器がすべて光の粒子となって、五階堂のライフに変換されてしまった!


非常食
速攻魔法
このカードを除く自分フィールド上の魔法または罠カードを墓地へ送る。
墓地へ送ったカード1枚につき、自分は1000ライフポイント回復する。


ベン・ケイ攻撃力 4100→500
五階堂LP 3200→7200

「ええっ!?『ベン・ケイ』の攻撃力が……」
 武器を失って攻撃力を大幅に落とした『ベン・ケイ』だが、それでも諦めずに、五階堂に渾身のアッパーを食らわせた!

「ぐあぁっ!」(五階堂LP 7200→6700)
 五階堂は、『ベン・ケイ』(ソリッドビジョンだが)に殴られたことにより、仰向けに激しくぶっ倒れた!
そして、殴られた頬を抑えながら起き上がり……

「ぶったね……親父にもぶたれたこと無いのに!」
と言いながら、『ベン・ケイ』を恨みがましく睨み付けていた!

「(ど……どうコメントしたらいいんだろう……。)」
 レイは、五階堂の突然の一言に、どう反応したらいいのか悩んでいた……。


「と、とりあえず……これでターンエンドね。」

「僕のターン、ドロー!手札から、『異次元の戦士』を召喚!」
 五階堂の場に、奇抜な衣裳に身を包み、機械のような軽装鎧を装備した赤髪の戦士が現われた。

「『異次元の戦士』の攻撃力は1200!バトルだ!『異次元の戦士』で、『恋する乙女』に攻撃!次・元・斬!!」
 『異次元の戦士』は、右手に持った謎の剣で、『恋する乙女』を切り付けた!

「うっ……。」(レイLP 3100→2300)
 レイは、『異次元の戦士』の空間を切り裂く剣によって発生した衝撃に、少しのけぞったが……。

「……でも、『恋する乙女』の効果で、『異次元の戦士』に乙女カウンターが1つ乗ったよ!」
 『恋する乙女』が『異次元の戦士』に向かってウインクをすると、『異次元の戦士』の左胸にハートマークが浮かび上がったが……

「……レイ。『異次元の戦士』の効果を知らないのか?『異次元の戦士』とバトルを行ったモンスターは、ダメージステップ終了時に、2人仲良くゲームから除外されるんだぜ!!」
「ええっ!?」
 五階堂がそう言うと、『異次元の戦士』は、姫を迎えにきた王子様のように地面にひざをついて、『恋する乙女』に面と向かって優しく片手を差し出した!
すると……『恋する乙女』は、『異次元の戦士』の優しさに逆に惚れてしまったのか、まるでお姫様のように『異次元の戦士』に手を引かれ、そのまま異次元へと続く穴に旅立ってしまった……。


異次元の戦士
地 レベル4
【戦士族・効果】
このカードがモンスターと戦闘を行った時、
そのモンスターとこのカードをゲームから除外する。
攻撃力1200 守備力1000


「あっ…『恋する乙女』が……いなくなっちゃった……。」
 レイは、自分のモンスターが場から消えてしまったことを、残念に思っていた……。

「どうだ!これでお前の『恋する乙女』はいなくなったぜ!僕の手札は0枚……これでターンエンドだ!!」


現在の状況
レイ LP…2300
   手札…1枚
   場…重装武者−ベン・ケイ(攻撃力500・攻撃表示)
     伏せカード1枚

五階堂 LP…6200
    手札…0枚
    場…無し


「ボクのターン、ドロー!……『ベン・ケイ』で、五階堂先輩にダイレクトアタック!」
 『ベン・ケイ』は、『恋する乙女』が消えたことの悲しみからか、渾身の右ストレートで五階堂の左頬を殴った!

「ぐあああぁっ!」(五階堂LP 6200→5700)
 五階堂は、相変わらず派手なリアクションを取り、左頬を抑えながら……

「に……二度もぶったね!親父にもぶたれた事無いのに!」


「メ、メインフェイズ2に入るよ……。モンスターを1体裏側守備表示で召喚して、ターンエンドね……。」
 レイは、五階堂の行動に本当に困惑しながらターンを終了した……。

「僕のターン、ドロー!……やっと来たぜ!手札増強カードがな!魔法カード『強欲な壺』を発動し、カードを2枚ドローするぜ!」
 五階堂は、待ち兼ねていたかのように『強欲な壺』を発動して手札を増やした。

「手札から、『不意打ち又佐』を召喚するぜ!」
 五階堂の場に、2本の刀を持ち、緑青色の鎧を着た武士が現われた。

「いくぜ!『不意打ち又佐』で、『ベン・ケイ』に攻撃!必殺・仕事人!!」
 『不意打ち又佐』は、素早く『ベン・ケイ』の死角に回り込み、急所を一突きし、手早く討ち取った!

「…っつ……ライフが……」(レイLP 2300→1500)
 レイは、度重なる五階堂の反撃で大幅にライフを削られたことで、少し弱気になっていた……。

「まだだ!『不意打ち又佐』は、1ターンに2回攻撃できる!裏側守備モンスターも討ち取れ!『不意打ち又佐』!!」
 『不意打ち又佐』は、左手に持った刀で、レイの場の裏側守備モンスター……『ミスティック・エッグ』を叩き割った!


不意打ち又佐
闇 レベル3
【戦士族・効果】
このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。
このカードは表側表示でフィールド上に存在する限り、
コントロールを変更する事はできない。
攻撃力1300 守備力800


「どうだ!これでレイの場のモンスターは全滅したぜ!ターンエン……」
「……それは違うよ!五階堂先輩のエンドフェイズ時に、墓地の『ミスティック・エッグ』の効果が発動するよ!『ミスティック・エッグ』は神秘の卵……何が生まれてくるのか分からない、無限の可能性を秘めているのよ!」
「おい!それって……卵としておかしいだろ!!」
 五階堂は、『ミスティック・エッグ』の卵としての矛盾に驚愕していた……。

「ま、まあ……だからこそ神秘的……ってことかな……。デッキから……『ミスティック・ベビー・ドラゴン』を特殊召喚!」
 そう言うと、レイの場で砕け散っていた卵の殻が再生した!
そして、その卵が光輝きながら孵化し……1体の緑色した子供のドラゴンが誕生した!


ミスティック・エッグ
光 レベル1
【天使族・効果】
このカードはリリースできない。
このカードが戦闘によって破壊され、墓地に送られた場合、
バトルフェイズ終了時に、墓地に存在するこのカードを守備表示で特殊召喚する。
相手ターンのエンドフェイズ時に、このカードを墓地に送り、
「ミスティック・ベビー」と名のつくモンスターが出るまで自分のデッキをめくり、
そのモンスターを特殊召喚する。
他のめくったカードはデッキに戻してシャッフルする。
攻撃力0 守備力0


ミスティック・ベビー・ドラゴン 攻撃力1200

「攻撃力1200!?そのドラゴンじゃあ、僕の『不意打ち又佐』は倒せないぜ!ターンエンド!」


現在の状況
レイ LP…1500
   手札…1枚
   場…ミスティック・ベビー・ドラゴン(攻撃力1200・攻撃表示)
     伏せカード1枚

五階堂 LP…5700
    手札…1枚
    場…不意打ち又佐(攻撃力1300・攻撃表示)

「ボクのターン、ドロー!手札から、『ミスティック・レボリューション』を発動するよ!このカードの効果で、『ミスティック・ベビー・ドラゴン』は、一人前のドラゴンに成長するよ!」
 『ミスティック・ベビー・ドラゴン』は急速に巨大化していき……立派な髭をたくわえ、巨大な翼を持った、真のドラゴンへと進化した!


ミスティック・ベビー・ドラゴン
光 レベル4
【ドラゴン族・効果】
相手ターンのエンドフェイズ毎に、このカードにミスティックカウンターを1つ乗せる。
このカードに乗ったミスティックカウンターの個数によって、以下の効果を得る。
(特殊召喚されたターンには、この効果を発動できない。)
1個:このカードの元々の攻撃力は倍になる。
2個:このカードをリリースすることで、自分の手札・デッキから
「ミスティック・ドラゴン」1体を特殊召喚する。
攻撃力1200 守備力700

ミスティック・レボリューション
通常魔法
自分フィールド上の「ミスティック・ベビー」と名のついたモンスター
1体を選択し、発動することができる。
選択したモンスターをリリースし、そのモンスターに記させたモンスター
1体を特殊召喚することができる。


ミスティック・ドラゴン 攻撃力3600

「攻撃力……3600だと!?」
「いくよ!『ミスティック・ドラゴン』で、『不意打ち又佐』に攻撃!ミスティア・フレイム!」
 『ミスティック・ドラゴン』が口から灼熱の火炎弾を放つと、『不意打ち又佐』は一瞬で焼き尽くされた!

「ぐあああぁぁぁぁ!!」(五階堂LP 5700→3400)

「どう!?『ミスティック・ドラゴン』の攻撃力は!?これでターンを終了するよ。」









「おおっ!かっこいい恐竜さんザウルス!俺もあのモンスターと、戦ってみたいドン!」
 最前列で試合を見ていた剣山は、周りの「ドラゴンだろ……。」と言う冷めたツッコミを無視して、レイの『ミスティック・ドラゴン』を見ていた……。








「くっ、僕のターン、ドロー!」
 ドローしたカードを確認すると、五階堂は……

「(『ミスティック・ドラゴン』……攻撃力3600か!だが、しょせんはモンスターだ!このモンスターの効果を使えば……)モンスターを1体裏側守備表示で召喚し、ターンエンドだ!」
 五階堂は、『ミスティック・ドラゴン』を破壊するための準備を整えるために、身長にターンを終了した。


現在の状況
レイ LP…1500
   手札…1枚
   場…ミスティック・ドラゴン(攻撃力3600・攻撃表示)
     伏せカード1枚

五階堂 LP…3400
    手札…1枚
    場…不意打ち又佐(攻撃力1300・攻撃表示)

「ボクのターン、ドロー!伏せておいた速攻魔法『スケープ・ゴート』を発動するよ!」
 レイの場に、青色、ピンク色、黄色、橙色の小さなわたあめみたいな羊が現われ、レイの場を埋め尽くした!

「このタイミングで『スケープ・ゴート』だと!?何をする気だ!?」
「見せてあげる!仲間との絆の強さを!装備魔法『団結の力』を、『ミスティック・ドラゴン』に装備させるよ!」
 レイがそう言うと、『ミスティック・ドラゴン』は羊達から力をもらい……元々高かった攻撃力をさらに高めた!

ミスティック・ドラゴン 攻撃力3600→7600


団結の力
装備魔法
自分のコントロールする表側表示モンスター1体につき、
装備モンスターの攻撃力と守備力を800ポイントアップする。


「バトルフェイズに入るよ!『ミスティック・ドラゴン』で、裏側守備モンスターに攻撃!メガ・ミスティア・フレイム!」
 『ミスティック・ドラゴン』が、先程より巨大な火炎弾を放つと、五階堂の場の裏側守備モンスター……『荒野の女戦士』は、あっと言う間に破壊された!

「……残念だったな!『荒野の女戦士』のモンスター効果発動!このモンスターが戦闘破壊されたとき、デッキから攻撃力1500以下の地属性・戦士族モンスターを攻撃表示で特殊召喚できる!僕は当然……『ならず者傭兵部隊』を特殊召喚するぜ!」
 五階堂の場に、がらの悪い荒くれ傭兵団が現われた!


荒野の女戦士
地 レベル4
【戦士族・効果】
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
デッキから攻撃力1500以下で地属性の戦士族モンスター1体を
自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
その後デッキをシャッフルする。
攻撃力1100 守備力1200


「……ターンエンドね……。」
 レイは、静かにターンを終了した。

「僕のターン、ドロー!『ならず者傭兵部隊』をリリ……」
 五階堂は、『ならず者傭兵部隊』の効果でレイの『ミスティック・ドラゴン』を破壊しようとしたが、当の『ならず者傭兵部隊』は、『ミスティック・ドラゴン』の放つ威圧感に腰が引けてしまっていた……。


ならず者傭兵部隊
地 レベル4
【戦士族・効果】
このカードをリリースして発動する。
フィールド上に存在するモンスター1体を破壊する。
攻撃力1000 守備力1000


「ど……どうした!?『ならず者傭兵部隊』!さっさと行けよ!!」
 五階堂は、怯える『ならず者傭兵部隊』を叱咤したが、何も起こらなかった……。

「無駄だよ。……『ミスティック・ドラゴン』は、自身を対象にする相手の魔法・罠・モンスター効果を受け付けないんだ。」
「な……そんな効果を持っていたのか!?」
 五階堂は、『ミスティック・ドラゴン』の予想外の効果に、驚いていた。


ミスティック・ドラゴン
光 レベル8
【ドラゴン族・効果】
このカードは、「ミスティック・ベビー・ドラゴン」または
「ミスティック・レボリューション」の効果でのみ特殊召喚できる。
このカードは、相手の魔法・罠・モンスター効果の対象にならない。
攻撃力3600 守備力2100


「(ちっ……スマートに行こうと思ったが……仕方がない!)まずは、『神剣−フェニックスブレード』の効果発動!墓地に眠る戦士族2体……『荒野の女戦士』と『不意打ち又佐』をゲームから除外し、このカードを手札に戻す!」
 五階堂は、墓地の戦士族のカード2枚を墓地から取り出してからレイに見せ、自分のポケットにしまった。


神剣−フェニックスブレード
装備魔法
戦士族のみ装備可能。
装備モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。
このカードが自分のメインフェイズ時に自分の墓地に存在する時、
自分の墓地の戦士族モンスター2体をゲームから除外する事でこのカードを手札に加える。


「さらに手札から、魔法カード『天使の施し』を発動!カードを3枚ドローし、手札を2枚捨てる!!」
 ドローしたカードを確認すると、五階堂は、嫌味な笑みをこぼした……。

「『ミスティック・ドラゴン』……攻撃力7600か。だが、僕がそいつを越える攻撃力を持つモンスターを作り出したら、どうする……?」
「ええっ!?たった3枚の手札で、そんなことが……」

「できるんだよ……それがな!装備魔法『グレード・ソード』を、『ならず者傭兵部隊』に装備させる!」
 『ならず者傭兵部隊』は、つばのあたりに不思議な紋章が刻まれた剣を手にした。

ならず者傭兵部隊 攻撃力1000→1300

「『グレード・ソード』を装備したモンスターをアドバンス召喚のためにリリースする場合……1体で2体分のリリースとなる!『グレード・ソード』を装備した『ならず者傭兵部隊』をリリースし……『ギルフォード・ザ・レジェンド』をアドバンス召喚!!」
 『グレード・ソード』を手にした『ならず者傭兵部隊』が場から消え去り……仮面をつけ、重厚な鎧を装備した1体の屈強の戦士が現われた!


グレード・ソード
装備魔法
戦士族のみ装備可能。
装備モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。
このカードを装備したモンスターをリリースして
戦士族モンスターをアドバンス召喚する場合、
このモンスター1体で2体分のリリースにする事ができる。


ギルフォード・ザ・レジェンド 攻撃力2600

「……でも、『ギルフォード・ザ・レジェンド』の攻撃力じゃあ、『団結の力』を装備したボクの『ミスティック・ドラゴン』は倒せないよ!」
「……レイ。『ギルフォード・ザ・レジェンド』が手にしている剣……見覚えが無いか?」
「えっ……無いんだけど。」
 レイは、五階堂の問いにキョトンとしながら答えた。

「……まあいい。教えてやる!『ギルフォード・ザ・レジェンド』の手にしている剣の名は……『伝説の剣』!!」
「そ、そのまんまな名前だね……。」
「う、うるさい!『伝説の剣』は、凡人が使った場合、攻撃力を300ポイントアップさせるだけだが……真の持ち主である『ギルフォード・ザ・レジェンド』が手にした場合、真の力を発揮する!」
 そう言うと、五階堂の墓地から、何枚もの装備魔法が浮かび上がってきた!



「『ギルフォード・ザ・レジェンド』は……『伝説の剣』の力によって、場の戦士族モンスターの剣に墓地に眠る装備魔法を、可能なかぎり吸収させる力を発揮する!ある剣は、邪悪なる者を切り裂く……『破邪の大剣−バオウ』!」
 『ギルフォード・ザ・レジェンド』の持っている、透き通るような剣に、不思議な雰囲気を漂わせる剣が吸収された!

ギルフォード・ザ・レジェンド 攻撃力2600→3100

「ある剣は、戦場に立つものが身につけると、所有者が死ぬまで離すことができない……『融合武器ムラサメブレード』!」
 新たに、不気味な雰囲気を漂わせる妖刀が吸収された!

ギルフォード・ザ・レジェンド 攻撃力3100→3900

「ある剣は、雷を呼び寄せ、その雷を自由に操ることができる……『稲妻の剣』!!」
 『ギルフォード・ザ・レジェンド』の剣に雷が落ち、混ざりあった武器が、均衡を取り戻した!

ギルフォード・ザ・レジェンド 攻撃力3900→4700

「ある鎧は、孤高の戦士のみが身につけることを許され、その鎧を外したとき、短時間の間、音速の剣筋を手に入れることができる……『アサルト・アーマー』!!」
 『ギルフォード・ザ・レジェンド』の全身を……灼熱のオーラが包み込んだ!

ギルフォード・ザ・レジェンド 攻撃力4700→5000

「ある魔力は、扱う武器、仕組んだ罠の数によって、その効力を大幅に高める……『魔導師の力』!!」
 そして……『ギルフォード・ザ・レジェンド』の持っていた剣は、持ち主の身長の5倍以上の長さと化した!!

ギルフォード・ザ・レジェンド 攻撃力5000→7300



 墓地にある武器という武器を吸収し尽くした『ギルフォード・ザ・レジェンド』の剣は……10メートル近くの長さを誇る超巨大な剣となり、刀身から緑色のオーラを激しく発生させていた!


ギルフォード・ザ・レジェンド
地 レベル8
【戦士族・効果】
このカードは特殊召喚できない。
このカードが召喚に成功した時、自分の墓地に存在する装備魔法カードを
可能な限り自分フィールド上の戦士族モンスターに装備する事ができる。
攻撃力2600 守備力2200


「ちょ、ちょっと待って!いつのまに『アサルト・アーマー』、『破邪の大剣−バオウ』、『稲妻の剣』なんて墓地に送ったの!?」
「1ターン目の『アームズ・ホール』と、さっきの『天使の施し』の効果でだ!墓地が増えることは、僕の『ギルフォード・ザ・レジェンド』にとって好都合だからな!!」
 五階堂は、笑いながら言った。

「『アサルト・アーマー』の効果発動だ!装備されたこのカードを墓地に送ることで、このターン、2回攻撃が可能になるぜ!さらに、手札の『デーモンの斧』を、『ギルフォード・ザ・レジェンド』に装備だ!!」
 『ギルフォード・ザ・レジェンド』の長剣から赤いオーラが発生して緑色のオーラと混じり合い……長剣から発せられるオーラの色が……すべてを破壊し尽くすかのような、漆黒の色へと姿を変えた!
そして……その剣の刀身には、悪魔の顔が浮かび上がった!


アサルト・アーマー
装備魔法
自分のモンスターカードゾーンに戦士族モンスター1体のみが
存在する場合に、そのモンスターに装備する事ができる。
装備モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。
装備されているこのカードを墓地に送る事で、このターン装備モンスターは
1度のバトルフェイズ中に2回攻撃をする事ができる。


ギルフォード・ザ・レジェンド 攻撃力7500→6700→8200

「こ…攻撃力……8200!?」
「バトルだ!まず一回目!『羊トークン』を破壊しろ!『ギルフォード・ザ・レジェンド』!!」
 『ギルフォード・ザ・レジェンド』が持っていた剣を振り下ろすと、ピンク色の『羊トークン』は、まるでわたあめのように消え去ってしまった……。

ミスティック・ドラゴン 攻撃力7600→6800

「あっ!……味方が減っちゃったから、『ミスティック・ドラゴン』の攻撃力が……」
「2回目だ!『ミスティック・ドラゴン』に攻撃!パーフェクト・ブレード!」
 『ギルフォード・ザ・レジェンド』は、10メートル以上はある大剣を軽がると振り回し……『ミスティック・ドラゴン』を頭から真っ二つにしてしまった!!

「きゃあぁぁぁぁ!!」(レイLP 1500→100)
 ここまでの攻撃力になると、ソリッドビジョンと言えども強烈な衝撃が襲うため、レイはたまらず吹っ飛ばされてしまった……。

「どうだ!攻撃力8200の『ギルフォード・ザ・レジェンド』!こいつを止められるか!?ターンエンドだ!!」


現在の状況
レイ LP…100
   手札…1枚
   場…羊トークン×3(守備力0・守備表示)
     裏側守備モンスター1体

五階堂 LP…3400
    手札…0枚
    場…ギルフォード・ザ・レジェンド(攻撃力8200・攻撃表示)
      破邪の大剣−バオウ(ギルフォード・ザ・レジェンドに装備)
      稲妻の剣(ギルフォード・ザ・レジェンドに装備)
      融合武器ムラサメブレード(ギルフォード・ザ・レジェンドに装備)
      魔導師の力(ギルフォード・ザ・レジェンドに装備)
      デーモンの斧(ギルフォード・ザ・レジェンドに装備)


「ボ……ボクのターン、ドロー……。モンスターを1体裏側守備表示で召喚して、ターンエンドね……。」
 レイは、震えながらモンスターをデュエルディスクにセットして、ターンを終えた。

「僕のターン、ドロー!……レイ。モンスターの壁を作って時間稼ぎしようとしているみたいだが……そんな壁、一瞬で破壊してやる!手札から、『阿修羅の御霊代』を召喚!」
 五階堂の場に、大量の手を持った、武神の魂が召喚された。

「『阿修羅の御霊代』の効果発動!このカードをリリースすることで、自分の場の戦士族モンスター1体は、装備したカードの数だけ、相手モンスターに攻撃可能となる!ギルフォードチェーーンジ!!」
 そう言うと……なんと、『ギルフォード・ザ・レジェンド』の腕の脇から、筋骨隆々の腕が左右に2本も生えてきて……右上の腕に『破邪の大剣−バオウ』を……真右の腕に『伝説の剣』を……右下の腕に『稲妻の剣』を……左上の腕に『デーモンの斧』を……左下の腕に『融合武器ムラサメブレード』を持った、まるで6本腕の阿修羅のような姿になった!!


阿修羅の御霊代
光 レベル4
【戦士族・効果】
このカードをリリースし、自分の場のモンスター1体を選択して発動する。
このターン、選択したモンスターは、装備したしたカードの数だけ
相手モンスターを攻撃する事ができる。
攻撃力1700 守備力1200


「ええっ!?……って…ことは……ボクの場のモンスターは……」
「そう……全滅だ!まず1発!」
 『ギルフォード・ザ・レジェンド』は、右上に持っていた『破邪の大剣−バオウ』を震うと、レイの場の『シャインエンジェル』をまるで紙切れのように切り裂いてしまった……。

「2発!」
 左上の『稲妻の剣』で、橙色の『羊トークン』を、焼き切り……

「3発!」
 左上の『デーモンの斧』で、黄色の『羊トークン』を真っ二つにし……

「最後だ!4発!!」
 左下の『融合武器ムラサメブレード』で、青色の『羊トークン』を切り裂いてしまった!!


「…あ……あっ………」
 レイは、腰が抜けてしまい、圧倒的攻撃力の『ギルフォード・ザ・レジェンド』を茫然と見つめていた……。

「(無理……だよ………勝てない…………よ…………。)」
 レイは、目に涙を浮かべ、このデュエルに対して、恐怖すら覚えていた……。









「……くっ……ぅぅっ………」
「ど、どうしました!?フェイト教諭!?」
 最前列でデュエルを見ていたフェイト教諭が突然うめき声を揚げながら頭を抱えているのを見て、鮫島校長は、心配そうに声をかけた……。

「い…いえ……、何でも…ありません……。……少々失礼します……。」
 フェイトは、頭を抱えながら、デュエル場を立ち去ってしまった……。



「くっ…まただ……。私の中から、圧倒的な破壊衝動が……!」
 フェイトは、自分のかばんの中から瓶詰の錠剤を取り出し、適当な量を摘んで、一気に飲み干した……。
「だ…だが……、まだレイの敗北が決まっていない状況でこれだ……。もし…レイの敗北を見てしまったら……いったい………どうなってしまうんだ…………。」









「これでターンエンドだ!さあ、サレンダーするなら今のうちだぜ!ターンエンドだ!」


現在の状況
レイ LP…100
   手札…1枚
   場…無し

五階堂 LP…3400
    手札…0枚
    場…ギルフォード・ザ・レジェンド(攻撃力8200・攻撃表示)
      破邪の大剣−バオウ(ギルフォード・ザ・レジェンドに装備)
      稲妻の剣(ギルフォード・ザ・レジェンドに装備)
      融合武器ムラサメブレード(ギルフォード・ザ・レジェンドに装備)
      魔導師の力(ギルフォード・ザ・レジェンドに装備)
      デーモンの斧(ギルフォード・ザ・レジェンドに装備)


「うっ……。」
 レイは、デッキを手でおおうように、静かに近付けた……サレンダーしようとしているのだ……。
それを見た1人の生徒は、観客席から上半身を乗り出して……









「……あきらめちゃダメだドン!レイ!!」
 最前列でずっと試合を見続けていた男子生徒……ティラノ剣山は、大声を揚げて、レイを応援した。

「何で……何であきらめようとするザウルス!俺は……この大会で、レイとなら熱いデュエルができると、楽しみにしてたドン!!」
「……もう、いいよ……。ボクは、剣山君との潰し合いなんて、やりたくなかったし……」
 レイは、剣山の制止を聞かず、サレンダーを行おうとした……。
それを見た剣山は、歯を食い縛って……

「……馬鹿野郎!!!レイが勝負をあきらめようとする姿……十代のアニキが見たら、なんて言うと思ってるザウルス!!」
「えっ……。」
 剣山の予想外の一言に、レイは驚いた。

「きっと……こう言うザウルス!!『デュエルをあきらめるお前なんて、嫌いだ!!』って!!」
「そ…そんな……」
「悔しいかドン!?悔しいなら、勝つにしても負けるにしても、最後の最後まであきらめちゃダメザウルス!!レイ!!」
「……い…嫌だ!ボクは…十代様に嫌われたくない!!」
 レイは、剣山の(脅迫まがいの)一言に後押しされ、すくっと立ち上がった!!

「……憧れる人……か。僕にも、かつてそんな奴がいた……。」
 五階堂は、ボソッとつぶやいた……。

「そいつは、僕が所属していた中等部を首席で卒業し、このデュエルアカデミアに、オベリスク・ブルーで入学した……。そいつは、僕にとって、憧れるべき対象でありながら、越えるべき壁だった……。」
「……まさか!その生徒って!!」
 レイは、その生徒に心当たりがあるのか、1人の生徒の名前をあげようとした……。

「やっと分かったろ?そいつの名前は、万」
「明日香先輩?」

ズテッ!


 レイの予想外の一言に、五階堂は思わずズッコケてしまった……。

「ちっがーーう!!!お前は知らないのか!?このデュエルアカデミアの元エース……一で始まり、万で終わる雷を!!」
「え?まさか……」
「そうだ!!」

「一!」

「十!」

「百!」

「千!」


「……万丈目サンダーーー!!!」


おおぉぉぉぉ!!!

サンダー!サンダー!万丈目サンダーーー!!!



「あ、相変わらずすごい人気だドン……。」
 剣山は、万丈目の人気が今だに続いていることを嬉しく思いながら、虚しさも感じていた……。

「(だが……今のデュエルアカデミアの生徒達は、十代のアニキ達卒業生の力に憧れるだけで、越えようとする意欲が、ほとんど感じられなくなってしまったドン……。レイちゃんも……十代のアニキのことを引き合いに出さないと、あきらめそうになっていたザウルス……。)」









「シ、シニョール五階堂……そろそろ1ターンの制限時間が過ぎてしまうのデスーガ……」
「うるさい!今一番盛り上がっている所なんだ!それに……僕はもう、ターンエンド宣言をした!!」
 五階堂は、審判のはずなのに何もしていないクロノスをあっさりとスルーしていた……。

「さあ、レイ!お前のターンだ!!」
「……ボクのターン、ドロー!!」
 ドローしたカードを確認すると、レイは目を見開いた……。

「(こ、このカードは!!)」
 レイは、大会の数日前のことを思い出していた……。











『……レイ。ボクがそっちに送った小包み、そろそろ届いたかい?』
「うん。ついさっき届いたところだよ、お兄ちゃん。」
『じゃあ、早く中身を見てみなよ。』
 レイは、自分が兄と呼んだ少年……ナオの言葉に従い、小包みを開けた。
その中には、小さなアクセサリーを入れるケースと、何かが入った封筒が、大切に収められていた……。
レイは、小さなケースを開けると……


「わぁ……きれいなイヤリング。」
 レイは、ケースの中に入っていた蜂蜜色のきれいな宝石がついたイヤリングに、思わずうっとりとしていた……。

『それは猫目石(キャッツアイ)のイヤリングだよ。レイに似合うと思ってね。……それともう1つ、小さな封筒が入ってるだろ?それも開けてみなよ。』
「うん。分かった。」
 封筒を開けると、分厚いプラスチックでできたカードプロテクターの中に、『天魔神 エンライズ』を始めとする複数枚のカード……が、厳重に収められていた!

「ええっ!?これって……。」
『そうだよ。ボクがよく使っている、『天魔神』のカードだよ。デッキバランスは難しくなるけど、効果は強力だよ!』
「でも……ボクに『天魔神』なんて、使いこなせるかな……。」
『まあ、入れるも入れないもレイの自由だよ。……大会、頑張れよ。』

ピッ。











「(今……ボクの墓地に送られたカードは……)」
 レイは、自分の墓地のカードを丁寧に確認した……。


――――――――――――――――――――――――――

ロックメイス(闇属性・悪魔族)
レインボー・ライフ(通常罠)
死者転生(通常魔法)
コーリング・ノヴァ(光属性・天使族)
二重魔法(通常魔法)
キューピット・キス(装備魔法)
ミスティック・エッグ(光属性・天使族)
ミスティック・ベビー・ドラゴン(光属性・ドラゴン族)
ミスティック・レボリューション(通常魔法)
スケープ・ゴート(速攻魔法)
ミスティック・ドラゴン(光属性・ドラゴン族)
団結の力(装備魔法)
シャインエンジェル(光属性・天使族)

――――――――――――――――――――――――――

「(……大丈夫!特殊召喚できる!)」
 レイは、自身に満ち溢れた声で……

「ボクは……墓地の光天使の『コーリング・ノヴァ』、『ミスティック・エッグ』、『シャインエンジェル』と、闇悪魔の『ロックメイス』をゲームから除外するよ!!」
「な……4体除外だと!?いったいどんなモンスターが……」
「見せてあげる!これが、光と闇の力を併せ持った、浄化の神……『天魔神 エンライズ』!!」
 レイの場の真上から、優しい……しかし、すべてを消し去るかのような光の柱が現われ……天空から、1体の天使が降臨した!
白い体に、溢れる力を押さえ付けるかのように二の腕と手、足に巻かれた漆黒の色をした布……腰まで届くかのような長い白髪……純白に見えるが、内側は陰りからか灰色になっている天使の翼……そして、腹に開いた、辺りの闇を吸収する、謎の空間へと繋がっているかのような穴(ホール)……

そのどれを取っても、この世の者とは思えない雰囲気を漂わせていた……。


「な……何なんだ!?そのカードは!?」
「『エンライズ』は、場のモンスター1体の心身を浄化する力を持っている……。いかなる攻撃力を持ったモンスターでもね……。『エンライズ』の効果発動!五階堂先輩の『ギルフォード・ザ・レジェンド』を、ゲームから除外するよ!!」
 『エンライズ』は、翼を広げ、腹に開いた穴(ホール)を全開にすると……攻撃力8200を誇る『ギルフォード・ザ・レジェンド』の体が見る見る内に真っ白な砂のようになり……その砂は、『エンライズ』の穴(ホール)に吸収されてしまった!!


天魔神 エンライズ
光 レベル8
【天使族・効果】
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の光属性・天使族モンスター3体と闇属性・悪魔族モンスター1体を
ゲームから除外した場合のみ特殊召喚する事ができる。
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体をゲームから除外する事ができる。
この効果を発動する場合、このターンこのカードは攻撃する事ができない。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
攻撃力2400 守備力1500


「な……う、嘘だ……。僕の『ギルフォード・ザ・レジェンド』が、一瞬で……」
 五階堂は、自分の場の『ギルフォード・ザ・レジェンド』が為す術もなく浄化されてしまったことを、悔しく思っていた……。

「五階堂先輩……このターンで、終わりにしてあげるよ!手札から、魔法カード『ティンクルスター・チェンジ』を発動!『天魔神 エンライズ』をリリースして……墓地の『ミスティック・ドラゴン』を、召喚条件を無視して特殊召喚!!」
 レイがそう言うと、『エンライズ』がその身を犠牲にして、8個の光輝く星を呼び寄せると……その星の輝きに導かれ、緑色の巨大なドラゴン……『ミスティック・ドラゴン』が蘇った!!


ティンクルスター・チェンジ
通常魔法
自分フィールド上の、レベル5以上のモンスター1体をリリースして発動する。
リリースしたモンスター以外で、リリースしたモンスターのレベルと
同じレベルのモンスター1体を墓地から召喚条件を無視して特殊召喚する。


「な…んだと!たった1枚のカードで、逆転され……」
「いくよ!『ミスティック・ドラゴン』で、五階堂先輩にダイレクトアタック!ミスティア・フレイム!!」
 『ミスティック・ドラゴン』は、自らの口にエネルギーを収束させ、そのエネルギーを、火炎弾という形で、五階堂にぶつけた!その衝撃で、五階堂のライフは、一気に0になった!!

「ぐああああぁぁぁぁ!!!」(五階堂LP 3400→0)









「え〜〜勝者〜〜早乙女レイなノーネ!!」
 何もしていなかったクロノスだが、最後だけはきちんと締め括った……。

「ちっ……負けちまったか!こんな中途半端な実力じゃあ、レギュラーには相応しくないってことか!!?」
 五階堂は、床に拳を叩きつけ、悔しそうにつぶやいた……。

「そ、そんなこと無いよ、五階堂先輩!……ボクだって、始めのうちに張り切りすぎちゃって、詰めを失敗しちゃうことがよくあるし……」
「違う!今のお前のデュエルは、レギュラーに相応しい、完全な逆転劇だった!!……これが、レギュラーとサブの致命的な差か……。」
「五階堂先輩……。」
 レイは、ふさぎ込む五階堂を、心配そうに見ていた……。

「……だが、忘れるな!いつか必ずお前を倒し、レギュラーの座を手に入れる!その時まで、首を洗って待っていろ!!」
「う、うん……。とにかく、いいデュエルだったよ!」
 レイは、自分の右手の人差し指と中指を合わせ、その2本の指で五階堂を指差した。
それを見た五階堂は軽く微笑み、デュエル場から立ち去っていった……。



「いやあ、素晴らしいデュエルでした。さすがフェイト教諭が推挙しただけのことはありますな。」
「……うぐっ……ぐっ……よ、良かった……いや…何とか、レイの勝利で終わったみたいですね……。」
 鮫島校長が感嘆の声をもらしている間に、フェイト教諭が、汗びっしょりになり、よろめきながら観戦席に戻ってきた……。

「だ……大丈夫ですか?保健室でしばらく休んだほうが……」
「え、ええ……そうしま…す…か……。」
 フェイト教諭は、鮫島校長の勧めに従い、観戦席を後にした……。

「(……いったい……フェイト教諭の身に何が……。早乙女君の恐怖に怯えていた姿を見てから、様子がおかしい……。)」
 鮫島校長は、フェイト教諭の不可解な様子を、疑問に思っていた……。









「……どうだった?これでボクは、十代様に嫌われないかな?剣山先輩。」
「ん。あ、ああ……多分、大丈夫だドン。」
 剣山は、レイに突然話し掛けられて、少し驚いていた……。

「(……レイちゃんがうらやましいドン。万丈目先輩を越えようとする意欲を持った、数少ない熱いデュエリストと戦えて……)」
剣山は、熱いデュエルを行っていた五階堂と、自分が戦えなかったことを、残念に思っていた……。

「(俺の1回戦の相手は……熱いデュエルができるのかドン?)」









【次回予告】

レイ「えーと……次の試合は、剣山先輩の出番ね。」
五階堂「……。」
レイ「ん?どうしたの?五階堂先輩?」
五階堂「いや……剣山の対戦相手は、はっきり言って、かなりやばいな……。」


次回、『GX plus!』第二十一話!

『止まらない?止められない!?敗北へのカウントダウン!!』


レイ「剣山先輩!急いで!……じゃなくって、焦らないで!!」
五階堂「レイ……その2つの応援、矛盾してるだろ……。」




第二十一話 止まらない?止められない!?敗北へのカウントダウン!!

「さあて、俺の対戦相手は……いったい誰ザウルス?」
 剣山は、自分のPDA(ポータブルデュエルアカデミア)を操作し、自分の対戦相手を確認していた……。

「……『外道(そとみち)』?初めて見る名前だドン……。いったい何者ザウルス?」
 まったく知らない男の名前を見て、剣山は不思議に思っていた……。

「よう、剣山。何やってんだ?」
「おっ、空野。ちょっと聞きたいことがあるザウルス。この、外道(そとみち)ってデュエリスト、見たことあるドン?」
 剣山は、後ろから話し掛けてきた、青い制服を着た男子生徒……空野大悟に、外道(そとみち)についての情報を聞こうとした。

「外道(そとみち)……オベリスク・ブルーの3年生か……。僕も一度、奴とデュエルしたことがある……。」
「なっ!そ、そいつはいったい、どんなデッキを使ってたザウルス!?」
「いや……詳しく語るわけにはいかないが……、1つだけ言えることがある……。」
 空野は、少し表情を曇らせながら話した……。

「ん?何ザウルス?」
「……奴の戦法を一言で表すなら……『外道(げどう)』……と言えるな。奴のデッキの前では……僕の『ホルスの黒炎竜』ですら、無力に感じてしまう……。」
 空野は、自分の右手を握り締め、悔しそうにつぶやいた……。

「空野……。」
「……気を付けろ、剣山。外道(そとみち)には、常識が通用しない……。」
「ああ……分かったドン。」
 剣山は、空野から受けたアドバイスを不安に思いながら、デュエル場に入っていった……。











デュエルアカデミア、デュエル場にて……

「……えー、これよりー、代表決定トーナメント……第4試合を開始するノーネ!」
 クロノスは、マイクを片手に、引き続き司会を行っていた。

「第4試合の組み合わせはー……デュエルアカデミアの現エース、ティラノ剣山とー、外道(そとみち)なノーネ!」

「シシシシシ!……ティラノ剣山よお!!……テメエは、デュエリストかぁ!!?」
 青い制服を着、銀ぶち眼鏡をかけた、細目でやつれた感じの男……外道(そとみち)は、不気味に笑いながら話した。

「なっ……それはどう言うことザウルス!!?」
「……教えてやるよ!俺様はなぁ、熱いデュエルをやろうとしねえ奴を、デュエリストとして認める気はねえんだよぉ!!テメエは、どうなんだぁ?」
 外道(そとみち)は、腕を組み、剣山を挑発するかのような声で話した。









「な、何なんだろう……あの男子生徒……。」
 観客席の最前列で、試合を観戦していたレイは、外道(そとみち)の話し方に少し嫌悪感を覚えていた……。

「おい、レイ。……隣、いいか?」
 青い制服を着た、ツンツンヘアーの男子生徒……五階堂は、嫌悪感で表情を歪めているレイに話し掛けた。

「あっ、五階堂先輩。先輩も、剣山先輩の試合を見にきたの?」
「まっ、まあ……そんなとこだな。」
 五階堂は、あさっての方向を向き、左頬を左の人差し指で掻きながら答えた。

「さて……。」
 五階堂は、レイの隣にナチュラルに座り……
「ティラノ剣山の対戦相手は……外道(そとみち)か。あいつとぶつかるとは、不運だな。」
と、外道(そとみち)の方を見ながらボソッとつぶやいた……。

「ねえ、五階堂先輩。剣山先輩の相手のこと、ボクに教えてくれる?」
「ああ……。僕もあいつと一度しか戦ったことがないが……そのデュエルを表現すると、自分の魂が削り落とされていくような感覚だな……。」
 五階堂は、表情を曇らせながら話した。

「……どう言うこと?」
「……すぐに分かる。」
 キョトンとするレイに、五階堂は声を低くして話した……。









「「デュエル!!」」

先攻は、外道(そとみち)だった。

「(オベリスク・ブルーの中でも屈指の実力者の空野にあそこまで言わせるあいつは……いったいどんなデュエルをするザウルス?)」
「俺様のターン!ドロー!!シシシシシ!来たぜ来たぜ!!テメエを全力を見極める最強の手札がなぁ!!カードを3枚場に伏せ……モンスターを1体セットするぜぇ!!ターンエンドだぁ!!」

「俺のターンザウルス!ドロー!!手札から、魔法カード『簡易融合』を発ドン!このカードは、ライフを1000払い、レベル5以下の融合モンスターを、融合素材を使わずに融合召喚できるドン!この効果で……」
「ちょぉっと待ったぁ!その前に……ライフを1000払い、伏せ罠カード『モンスターレジスター』を発動だぁ!!」(外道LP 4000→3000)
 そう言うと、外道(そとみち)の場に、大きな口を持った、レジの形をした生物が現われた!!

「なっ……そのカードは!!?」
「シシシシシ!!テメエも分かっているみてえだなぁ!!このカードの恐ろしさをよぉ!!」









「ご、五階堂先輩!あのカードは何なの!」
「あ…あれは……『モンスターレジスター』!」
 レイと五階堂も、外道(そとみち)が発動させたカードに、驚いていた……。

「も…『モンスター……レジスター』?」
「ああ……あのカードは、お互いのプレイヤーが、モンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚した時に、そのモンスターのレベルの数だけ、お互いのデッキの上からカードを墓地に送るんだが……」
「え?お互いにデッキが削られるんだったら、自分も不利になるだけだと思うんだけど……。」
「最後まで聞け!確かに、デッキ破壊はお互いに効果が及ぶが……あれを使用する外道(そとみち)は、デッキ構築の時点で、あのカードを活かす戦法が取れるんだ!!それに対して、剣山は対戦前に何も施すことができない……。事前にあのカードを使うことを知っていれば……。」
 五階堂は、自分の右手を固く握り締めながら話した……。

「ええっ!……五階堂先輩!何でそのことを、剣山先輩に教えてあげなかったの!?」
「む、無理に決まってるだろ!僕は今日、剣山と話しても合ってもいないんだぜ!!」
 五階堂は、レイの一言に少し焦りながら話した。









「…俺は……『簡易融合』の効果で、レベル5の『プラグティカル』を融合召喚するドン!!」(剣山LP 4000→3000)
 そう言うと、剣山の場に、どこからともなく全身紫色の恐竜が現われた。

「『プラグティカル』……レベル5かぁ?『モンスターレジスター』の効果で、俺様とテメエのデッキの上から5枚のカードを墓地に送るぜぇ!!」
 『モンスターレジスター』は、口から長い舌を出し……剣山と外道(そとみち)のデッキの上から5枚のカードを掴み取り、そのまま背中の引き出しにしまい込んでしまった!!


モンスターレジスター
永続罠
モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、お互いのプレイヤーは、デッキの上から
召喚・反転召喚・特殊召喚に成功したモンスターのレベルと同じ枚数のカードを墓地に送る。

簡易融合
通常魔法
1000ライフポイントを払う。
融合デッキからレベル5以下の融合モンスター1体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚した融合モンスターは攻撃する事ができず、
エンドフェイズ時に破壊する。
「簡易融合」は1ターンにつき1枚しか発動できない。
(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)

プラグティカル
地 レベル5
【恐竜族・融合】


「ぐっ……デッキが一気に5枚も削られちまったザウルス……。ここは、速攻で決めなきゃまずいドン!!さらに『プラグティカル』をリリースし……手札から、魔法カード『大進化薬』を発ドン!このカードは、お前のターンで数えて3ターンの間フィールドに残り続け、このカードが場にある限り、リリース無しでレベル5以上の恐竜族を召喚できるようになるザウルス!!」
 剣山がそう言うと、場に存在した『プラグティカル』が突然場から消え去り……跡には、3つの不思議なカプセルが現われた!!


大進化薬
通常魔法
自分フィールド上の恐竜族モンスター1体を生け贄に捧げて発動する。
このカードは発動後(相手ターンで数えて)3ターンの間フィールド上に残り続ける。
このカードがフィールド上に存在する限り、
恐竜族モンスターの召喚に生け贄は必要なくなる。


「『大進化薬』の効果で……出るドン!!『暗黒ドリケラトプス』!!」
 『暗黒ドリケラトプス』は、場に出た直後は肉体が衰弱しきっていたが……1つのカプセルを口にしたとたんに、突然肉体が活性化し、外道(そとみち)に向けて突撃する体勢を取り始めた!

「『暗黒ドリケラトプス』……レベル6かぁ!さあ、デッキ破壊の時間だぜぇ!!」
「それはお互い様だドン!お前のデッキも、どんどん削られていくザウルス!!」
 『モンスターレジスター』は、さらにお互いのデッキの上から6枚のカードを、削り取っていった……。

「とりあえず……カードを2枚セットしておくザウルス!行くドン!『暗黒ドリケラトプス』で、裏側守備モンスターに攻撃するザウルス!!」
 『暗黒ドリケラトプス』は、その巨体を活かして、外道(そとみち)の場の裏側守備表示モンスターに攻撃しようとするが……

「残念だったなあ!!伏せ罠カード『和睦の使者』を発動だぁ!!これでテメエの『暗黒ドリケラトプス』によって発生する戦闘ダメージを0にするぜえ!!!」
 攻撃によって、外道(そとみち)の場の裏側守備モンスター……『ニードルワーム』を表にすることには成功したが、『ニードルワーム』と『暗黒ドリケラトプス』の間に不思議なバリアが現われ、攻撃の衝撃を完全に打ち消してしまった……。


和睦の使者
通常罠
このカードを発動したターン、相手モンスターから受ける
全ての戦闘ダメージは0になる。
このターン自分モンスターは戦闘によっては破壊されない。


「テメエの攻撃によって、『ニードルワーム』のリバース効果が発動するぜぇ!!テメエのデッキをを5枚削るぜえ!!」
「ぐっ……まだデッキを破壊するザウルス!?」
 外道(そとみち)の場のピンク色で、頭に長い刺を持った芋虫……『ニードルワーム』は、剣山のデッキにモゾモゾと蠢きながら近付き……デッキのカードを5枚も(ソリッドビジョンだが)食い荒らしてしまった!


ニードルワーム
地 レベル2
【昆虫族・効果】
リバース:相手のデッキの上からカード5枚を墓地に送る。
攻撃力750 守備力600


「た、たった1ターンで、デッキが半分近く削られちまったザウルス……。俺は……さらにカードを1枚場に伏せ、ターンエンドン……。」
 剣山は、薄くなった自分のデッキを残念そうに見つめながら、ターンを終えた。


現在の状況
外道(そとみち) LP…3000
         デッキ残り枚数…23枚
         手札…2枚
         場…ニードルワーム(守備力600・守備表示)
           モンスターレジスター(表側表示)
           伏せカード1枚

剣山 LP…3000
   デッキ残り枚数…18枚
   手札…0枚
   場…暗黒ドリケラトプス(攻撃力2400・攻撃表示)
     大進化薬(残り2ターン)
     伏せカード3枚



「どうだぁ!?剣山よぉ!お互いのデッキを削ることで、勝利と敗北の狭間に近づいていくこの緊張感!!敗北寸前のシチュエーションで勝利する快感!!……この感覚、テメエも味わいてえよなあ!!!」
「あ……あまり、こう言う形でのギリギリの勝負は、共感できないドン……。」
 剣山は、外道(そとみち)の突然の言葉に、困惑していた……。

「俺様のターン!ドロー!!手始めに、魔法カード『貪欲な壺』を発動するぜぇ!!俺様の墓地から、『メタモルポット』、『サイバーポッド』、『闇の仮面』、『ニードルワーム』、『悪魔の偵察者』をデッキに戻し、カードを2枚ドローするぜえ!!」
「なっ……『モンスターレジスター』の効果で墓地に送られたカードを、そんな方法で利用するザウルス!?」
 剣山は、外道(そとみち)が発動させたカードに、驚いていた。


貪欲な壺
通常魔法
自分の墓地に存在するモンスター5体を選択し、
デッキに加えてシャッフルする。
その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。


外道(そとみち)のデッキ枚数 22枚→27枚→25枚


「これで俺様の手札は3枚に増えたぜえ!!手札から、魔法カード『浅すぎた墓穴』を発動するぜぇ!!このカードの効果はなあ、俺様とテメエが、自分の墓地からモンスターを1体裏側守備表示で特殊召喚する効果を持つ魔法カードなんだよお!!安心しな!!裏側守備表示での特殊召喚では、『モンスターレジスター』のデッキ破壊効果は発動しないんだからよお!!さあ、俺様は『レベルポット』を選ぶぜえ!!」
「(『レベルポット』……確か、やっかいなリバース効果を持っていたドン……。なら、俺は守備モンスターを無視してダイレクトアタックが可能な『ダークティラノ』を選んだほうがよさそうザウルス……。)」
 剣山は、『モンスターレジスター』によって墓地に送られたカードを確認して、どのモンスターを選ぶか、慎重に考えていた……。


浅すぎた墓穴
通常魔法
自分と相手はそれぞれの墓地からモンスターを1体選択し、
守備表示でフィールド上にセットする。


「俺は……『ダークティラノ』を選ぶドン!!」
 剣山がそう言うと、外道(そとみち)は目を見開いた!

「おいおいおい!!レベル7の『ダークティラノ』を選ぶのかぁ!!?その選択が、最悪の事態を招くことを、この伏せカードで証明してやるぜえ!!!」
「なっ……!!」
 剣山は、外道(そとみち)が自らの『浅すぎた墓穴』にチェーン発動したカードに、驚愕していた……。

「そうだぜぇ!!俺様が発動したカードは……『召喚制限−猛突するモンスター』だ!」
「『召喚制限−猛突するモンスター』!?いったいどんな効果を持っているザウルス!?」
「教えてやるぜえ!!『召喚制限−猛突するモンスター』が表側表示で場に存在するかぎり、特殊召喚されたモンスターはすべて表側攻撃表示になり、強制的に攻撃させられるんだよ!!……一応、リバース効果は発動するがなあ!!!」
 外道(そとみち)は、笑いながら答えた。


召喚制限−猛突するモンスター
永続罠
特殊召喚に成功したモンスターは表側攻撃表示になる。
そのモンスターが攻撃可能なモンスターだった場合、
そのターンに攻撃しなければならない。


「リ……リバース効果は発動するザウルス!!?」
「その通りだぜえ!!『レベルポット』のリバース効果発動だぁ!!手始めに、フィールド上のモンスターすべてをデッキに戻すぜえ!!」
 そう言うと、外道(そとみち)の場に裏側守備表示で特殊召喚された、土の色をした石ころのようなモンスター……『レベルポット』が、表側攻撃表示になったことで突然光り輝き、味方である『ニードルワーム』を巻き込んで……剣山の場の『暗黒ドリケラトプス』と、ついさっき場に特殊召喚された、オートゾックスな見た目の肉食恐竜……『ダークティラノ』を、光の粒子と化してしまおうとした!!

「ま、まずいドン!この効果をまともに食らったら……俺のデッキ枚数が一気に1ケタに陥っちまうザウルス!!伏せカード『神秘の中華なべ』を発ドン!!俺の場の『ダークティラノ』をリリースして、俺のライフを、その攻撃力分……2600ポイント回復するザウルス!!」
 剣山は、『レベルポット』の効果によって『ダークティラノ』が消え去る前に、自分の発動したカードによって、場から消し去った!!


ダークティラノ
地 レベル7
【恐竜族・効果】
相手のモンスターカードゾーンに守備表示モンスターしか存在しない場合、
このカードは相手プレイヤーに直接攻撃できる。
攻撃力2600 守備力1800

神秘の中華なべ
速攻魔法
自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる。
生け贄に捧げたモンスターの攻撃力か守備力を選択し、
その数値だけ自分のライフポイントを回復する。


剣山LP 3000→5600

「なるほどなあ!!自分の手でモンスターを排除することで、デッキ破壊を和らげやがったかあ!!だがなあ、『暗黒ドリケラトプス』は、まだフィールド上に残っちまってるぜえ!デッキに帰りやがれ!!」
 外道(そとみち)がそう言うと、場の『ニードルワーム』、『レベルポット』、『暗黒ドリケラトプス』が、デッキに戻ってしまった!


剣山のデッキ枚数 18枚→19枚
外道(そとみち)のデッキ枚数 25枚→27枚


「安心しなぁ!!ただデッキに戻しただけじゃあ、『レベルポット』はただの反則級のリセットカードで終わっちまうからなあ!!場のモンスターが消え去ったことで、手札補充のチャンスが与えられるぜえ!!この効果によってデッキに戻ったカードのレベルの合計分、デッキの上からカードをめくり、戻されたモンスターが1枚でもあれば、めくったカードをすべて手札に加えられるんだぜえ!!」
「ぐっ……手札補充って言っても、結局デッキが大幅に削られちまうだけだドン……。『暗黒ドリケラトプス』のレベルは6!よって、6枚のカードをめくるザウルス!!」
「俺様が戻した『ニードルワーム』と『レベルポット』のレベルは共に2……4枚のカードをめくるぜぇ!!」
 剣山と外道(そとみち)は、デッキを念入りにシャッフルして、剣山は6枚、外道(そとみち)は4枚のカードをデッキの上からめくった。


レベルポット
地 レベル2
【岩石族・効果】
リバース:お互いフィールド上モンスターカードを持ち主のデッキに加えてシャッフルする。
その後デッキに加えたモンスターのレベルの数だけ、お互いデッキの上からカードをめくる。
その中に、このカードの効果によってデッキに加わったカードと同名のカードが1枚でも存在する場合、
めくったカードをすべて手札に加える。
存在しなかった場合、めくったカードをすべて墓地に送る。
攻撃力500 守備力500


「よし!『暗黒ドリケラトプス』は、存在したドン!」
「ちっ……俺様は残念だが存在しなかったぜ!!」
 外道(そとみち)は、舌打ちをしながらめくったカードを墓地に送った。


剣山のデッキ枚数 19枚→13枚
   手札枚数 0枚→6枚
外道(そとみち)のデッキ枚数 27枚→23枚


「まだまだ俺様のデッキ破壊は終了しちゃいねえぜえ!!手札のモンスター1体をセットし……手札から、魔法カード『太陽の書』を発動して、俺様のモンスターの表示形式を裏側守備表示から表側攻撃表示に変更するぜぇ!!」
「ぐっ……また強力なリバース効果を発動させるザウルス!?」
 剣山は、息を飲み、どんなリバース効果が発動するのか警戒していた……。

「よく分かったなぁ!!俺様がリバースしたカードは……『サイバーポッド』だぜぇ!!!」
 外道(そとみち)の場に、機械でできた妙な壺が現われ……即、バラバラに砕け散った!!

「なっ……何でいきなり『サイバーポッド』が砕け散ったんだドン!?」
「教えてやるぜえ!!『サイバーポッド』のリバース効果……場のモンスターを全滅させ、お互いにデッキの上からカードを5枚めくり……その中のレベル4以下のモンスターすべてを表側攻撃表示または裏側守備表示で特殊召喚し、それ以外のカードを手札に加えることが可能な、強力な効果を持っているんだぜえ!!!」
 外道(そとみち)は、大きな声で答えた。


サイバーポッド
闇 レベル3
【岩石族・効果】
リバース:フィールド上のモンスターを全て破壊する。
お互いデッキの一番上からカードを5枚めくり、
その中のレベル4以下のモンスターカードを全て
表側攻撃表示または裏側守備表示でフィールド上に特殊召喚する。
それ以外のカードは全て手札に加える。
攻撃力900 守備力900


「さあ、俺様はカードを5枚めくるぜえ!テメエもめくりやがれ!!」
「ぐっ……(何か……まずい予感がするドン……。)5枚のカードをめくるザウルス!!」
 剣山と外道(そとみち)は、お互いにめくったカードを見せあった。

剣山のめくったカード…究極恐獣(レベル8)
           超伝導恐獣(レベル8)
           俊足のギラザウルス(レベル3)
           ジュラシックワールド(フィールド魔法)
           大噴火(通常罠)
外道(そとみち)のめくったカード…魔宮の賄賂(カウンター罠)
                 ニードルワーム(レベル2)
                 攻撃の無力化(カウンター罠)
                 レベルポット(レベル2)
                 強制脱出装置(通常罠)

剣山のデッキ枚数 13枚→8枚
   手札枚数 6枚→10枚
外道(そとみち)のデッキ枚数 23枚→18枚
         手札枚数 0枚→3枚


「俺がめくった中にあったレベル4以下のモンスターは、『俊足のギラザウルス』だけだドン!!こいつを、裏側守備表示で特殊召喚!!」
「俺は『ニードルワーム』と『レベルポット』をめくったぜえ!こいつらを、裏側守備表示で特殊召喚だ!」
 剣山と外道(そとみち)は、めくったカードを見せあい、それぞれ、レベル4以下のモンスターを自分のデュエルディスクに裏向きで置いた。
そして、それ以外のカードを手札に加えた。

「(よし!これであいつの手札には、魔法カードが無くなったザウルス!!やっと、デッキ破壊が止ま……)」
「……ると思ってやがるのかあ?」
 外道(そとみち)がそう言うと、裏側守備表示で場に特殊召喚された、ピンク色の芋虫のモンスター、茶色い石ころのようなモンスター、小型の恐竜モンスター……『ニードルワーム』、『レベルポット』、『俊足のギラザウルス』が、すべて表側攻撃表示になった!

「なっ……何でモンスターがいきなり表側攻撃表示になるんだドン!?」
「おいおいおい!!忘れるなよ!!俺様の場には『召喚制限−猛突するモンスター』が存在することをよぉ!!」
「ま……まずいドン!!今の俺のデッキ枚数で、『ニードルワーム』と『レベルポット』のリバース効果を食らったら……」
 剣山の表情が、一気に強ばった……。

「その通りだぜ!!さあ、俺様がモンスターをデッキに戻すから、テメエもモンスターをデッキに戻しな!!」
「ぐっ……『俊足のギラザウルス』のレベルは3……たった3枚デッキを削られるだけでも、一大事だドン……。」
 剣山は、不安そうな表情で、デッキに『俊足のギラザウルス』を加えて、シャッフルした。


剣山のデッキ枚数 8枚→9枚
外道(そとみち)のデッキ枚数 18枚→20枚


「俺は……『俊足のギラザウルス』のレベルの数……つまり、3枚のカードをめくるザウルス!!」
「俺様は、レベル2の『ニードルワーム』と、レベル2の『レベルポット』の合計……つまり、4枚カードをめくるぜぇ!!」
 剣山と外道(そとみち)は、めくったカードを見せあい、2人とも見せたカードを手札に加えた……。
どうやら、2人ともデッキに戻したカードをめくることに成功したみたいだ……。


剣山のデッキ枚数 9枚→6枚
   手札枚数 10枚→13枚
外道(そとみち)のデッキ枚数 20枚→16枚
         手札枚数 3枚→7枚


「次は『ニードルワーム』のリバース効果が発動するぜぇ!!デッキを5枚削り落とすぜえ!!」
 今度は、『ニードルワーム』の発射した針が剣山のデッキに直撃し……(ソリッドビジョンだが)5枚のカードを貫いた!!

「ぐわわぁっ!お、俺のデッキが、残り1枚に……もう後が無いドン……。」
 剣山は、たった1枚だけ残ったデッキを、歯を食い縛りながら見ていた……。

「どうだぁ!?テメエのデッキはあとわずか……だがなあもうテメエの手札には、勝利へのキーカードが埋まってるんだろうよお!!……余分なカードを、自分の手で墓地に送ってもらうぜぇ!!」
 そう言いながら、外道(そとみち)は、1枚の伏せカードを表にした……。

「伏せ罠カード……『バブル・クラッシュ』を発動だぁ!!」
「なっ……『バブル・クラッシュ』!!?」









「ま、まずい!!外道(そとみち)の奴、『バブル・クラッシュ』を伏せていたのか!?」
 観客席の最前列で試合を見ていた五階堂は、外道(そとみち)が発動させたカードに驚いて、思わず観客席から身を乗り出した。

「ね、ねえ、五階堂先輩。……『バブル・クラッシュ』って、どんな効果なの?」
 隣に座っていたレイは、五階堂に、外道(そとみち)が発動したカードの効果を質問していた。

「し、知らないのか!?まあいい……。『バブル・クラッシュ』の効果は、お互いのプレイヤーが、自分の場と手札のカードの枚数が合計5枚になるように、墓地に送らせる効果を持つ罠カードだ!」
「ええっ!剣山先輩の場と手札には、合計16枚のカードがあるんだよ!じゃあ……」
「ああ……11枚のカードを墓地に送らなければならない!!」
 五階堂は、表情を曇らせながら答えた……。









「俺様の手札は7枚、場のカードは3枚……よって、場の『モンスターレジスター』と『召喚制限−猛突するモンスター』、さらに3枚の手札を墓地に送るぜえ!!」
「お…俺の手札は13枚、場のカードは3枚……11枚の手札を墓地に送るドン……。」
 

バブル・クラッシュ
通常罠
このカードは手札とフィールド上カードの合計が
6枚以上のプレイヤーが存在する場合に発動する事ができる。
お互いのプレイヤーは、それぞれ自分フィールド上と
手札に残るカードの合計枚数が5枚になるように、
その他のカードをフィールド上と手札から選択して墓地へ送る。


「伏せカードを4枚セットするぜぇ!!俺様の場には伏せカードが4枚……テメエの大逆転劇を見せてもらうぜえ!!ターンエンドだぁ!!!」


現在の状況
外道(そとみち) LP…3000
         デッキ残り枚数…16枚
         手札…0枚
         場…伏せカード4枚

剣山 LP…5600
   デッキ残り枚数…1枚
   手札…2枚
   場…大進化薬(残り2ターン)
     伏せカード2枚


「お…俺の……ターン……。」
 長い長い外道(そとみち)のターンが終わって、やっと剣山のターンに移った……。

「(……このドローで、逆転のカードが引けないと、俺の負けザウルス……。だが……あいつの場には、魔法・罠を打ち消す『魔宮の賄賂』、攻撃を封じる『攻撃の無力化』が伏せられているドン……。打つ手がないザウルス……。)」
 剣山は、目を瞑り、たった1枚残ったデッキに手を伸ばそうとしたが、なかなか手が伸びなかった……。

「……剣山よぉ……。」
 不意に外道(そとみち)が、剣山に向かって話し掛けた。

「テメエ……自分のデッキに残っているカードを、信用してねえのかぁ?」
「こ…こんな状況……何を引いても同じだドン!」
「……甘ったれんじゃねえ!!何なんだぁ!?このデュエルアカデミアの生徒は、いつからこんな堕弱なデュエリストばかりになっちまったんだぁ!!?」
 外道(そとみち)は、今までの人を馬鹿にしたような発言と打って変わって、真剣な表情で話した……。

「なっ……それはどう言うことザウルス!?」
「教えてやるぜえ!!最近のデュエリストはよぉ、負けた時、『引きが悪かった』とか、『切り札を引けなかったから負けた』とか下らねえ屁理屈を並べる奴が増えてきやがってんだよ!!だからよぉ……俺様は、そんな下らねえ屁理屈を言わせねえために、相手に無理矢理にでもカードをドローさせる戦法を選んでんだよ!!」
 外道(そとみち)は、左手で握り拳を作り、その拳を勢い良く右手の手の平にぶつけ、威嚇するかのようにパチンと音を立てた!

「だが!それでデッキの中の切り札が墓地に送られたら……」
「墓地に送られたら…だぁ……?しゃらくせえ!!本当の切り札ならなぁ……たとえ墓地に送られてでも、何が何でも場に呼び戻したり、手札に戻す手段を確保しておくってのが道理って物だろうがぁ!!」


「……確かに……、自分の切り札が破壊されると、一気に崩れ去るデュエリストは、俺もよく見かけるザウルス……。」
 剣山は、ボソッとつぶやいた。

「いや……事実、俺もそうだったドン……。入学当初の俺は……1枚の魔法カードに頼り切ったデュエルで……進化の道を歩むことができなかったザウルス……。……だが!十代のアニキに出会ってから、俺は気付いたドン!飛び抜けたことができないままでは、己を磨くことができないと!!」


「……言うじゃねえか、剣山。なら、その言葉、このターンで証明してみなぁ!」
「ああ!俺のターン!!ドロー!!」
 剣山は、デッキに残った1枚のカードを勢い良く抜き取って、それを確認した……。

「……俺は、スタンバイフェイズ時に、伏せ罠カード『生存本能』を発ドン!墓地の『超伝導恐獣』、『ダークティラノ』、『暗黒ドリケラトプス』、『プラグティカル』、『セイバーザウルス』をゲームから除外して、俺のライフを2000ポイント回復させるザウルス!!」
 剣山は、自分の墓地に置かれた5枚の恐竜族を外道(そとみち)に見せ、自分のズボンのポケットにしまった。


生存本能
通常罠
自分の墓地に存在する恐竜族モンスターを任意の枚数選択しゲームから除外する。
除外した恐竜族モンスター1枚につき、自分は400ライフポイント回復する。


剣山LP 5600→7600

「なるほどなぁ、増えた墓地を利用して、『生存本能』の効果を活かしやがったかぁ!!……まさか、それで終わりじゃねえよなぁ!?」
「当たり前ザウルス!!メインフェイズ開始時に……手札から、魔法カード『大寒波』を発ドン!!」
 剣山が、『大寒波』のカードを勢い良くデュエルディスクに差し込むと、場に冷気が発生しはじめた!

「待ちなぁ!テメエが全力で攻めるように……俺様も全力で抵抗させてもらうぜぇ!『大寒波』にチェーンして、伏せ罠カード……『メタル・リフレクト・スライム』を発動だぁ!!」
「なっ……『魔宮の賄賂』を発動させないザウルス!?」
 外道(そとみち)の発動させたカードに、剣山は驚いた。

「そうだぜぇ。……『魔宮の賄賂』は、相手にカードを引かせることで、魔法・罠カードの発動を無効にする強力なカードだがなぁ……相手のデッキが0枚の時には発動できないデメリットがあるんだぜぇ!物が無くちゃあ、賄賂は送れねえからなぁ!!」
「な、なるほど……『魔宮の賄賂』には、そんなデメリットが存在したんだドン……。」
 剣山は、外道(そとみち)の言葉に納得した見たいだ。

「……だが!俺の攻めは、お前の守りをさらに上回るザウルス!『メタル・リフレクト・スライム』にチェーンし……ライフを半分払い、伏せ罠カード『異次元からの帰還』を発ドン!!」(剣山LP 7600→3800)
 そう言うと、剣山の頭上に、異次元と場をつなぐ、巨大な穴が現われた!!

「『異次元からの帰還』!?これがテメエの全力か!剣山!!」
「ああ!逆順処理に入るザウルス!さあ、恐竜さんの大行進だドン!場に舞い戻るザウルス!!『超伝導恐獣』!『ダークティラノ』!『暗黒ドリケラトプス』!『プラグティカル』!『セイバーザウルス』!」
 異次元と場をつなぐ巨大な穴が激しく光輝いたかと思えば……その穴から、大小さまざまな5匹の恐竜が、大きな地響きを起こして場に降り立った!
金属の鎧を身につけた巨大な恐竜、鋭い牙を持ったスマートな恐竜、鳥のような翼とくちばしを持った恐竜、頭と背中に刺を生やした全身青色の恐竜、尖った剣のような角を持った恐竜……と、剣山の場が、それぞれ異なった特徴を持つ恐竜軍団で埋め尽くされた!!


異次元からの帰還
通常罠
ライフポイントを半分払う。
ゲームから除外されている自分のモンスターを可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する。
エンドフェイズ時、この効果によって特殊召喚されたモンスターを全てゲームから除外する。


超伝導恐獣 攻撃力3300
ダークティラノ 攻撃力2600
暗黒ドリケラトプス 攻撃力2400
プラグティカル 攻撃力1900
セイバーザウルス 攻撃力1900

「次は『メタル・リフレクト・スライム』の効果だぜぇ!このカードは、発動後、守備力3000の壁となって、俺の場に特殊召喚されるぜぇ!!」
 外道(そとみち)の場に、剣山の恐竜軍団に匹敵するほどの大きさを持つ、液体金属でできた巨大なモンスターが現われ、恐竜軍団の前に立ちはだかった!


メタル・リフレクト・スライム
永続罠
このカードは発動後モンスターカード(水族・水・星10・攻0/守3000)となり、
自分のモンスターカードゾーンに守備表示で特殊召喚する。
このカードは攻撃する事ができない。(このカードは罠カードとしても扱う)


「最後は『大寒波』の効果だドン!次の俺のターンまで、すべての魔法・罠カードの発動、セットを封じるザウルス!!」
 すると、場を覆っていた冷気がさらに温度を下げ……剣山と外道(そとみち)の魔法・罠ゾーンを凍り付かせてしまった!!


大寒波
通常魔法
メインフェイズ1の開始時に発動する事ができる。
次の自分のドローフェイズ時まで、お互いに魔法・罠カードの
効果の使用及び発動・セットはできない。


「……『大寒波』のように急激に気温が下がることは、恐竜さんにとって、確かに厳しい環境だドン……。だが、それを乗り越えた恐竜さんは、さらに強くなるザウルス!!」
 そう言うと、剣山の場の恐竜軍団は激しい雄たけびをあげた!

「行くドン!!『超伝導恐獣』!!『メタル・リフレクト・スライム』を粉砕するザウルス!!」
 『超伝導恐獣』は、力強い突撃を放ち……外道(そとみち)を守る『メタル・リフレクト・スライム』を、大きな音を立てて粉砕した!!

「よし!『大寒波』の効果で、魔法・罠は使えなくなっているドン!!『ダークティラノ』!『暗黒ドリケラトプス』!『プラグティカル』!『セイバーザウルス』!トドメの一斉攻撃ザウルス!!」
 剣山の場の4体の恐竜達が外道(そとみち)に一斉に突撃し……一瞬でライフを削り取った!!

「ぐぁっ!や、やるじゃねえかぁ!!」(外道LP 3000→0)









「……剣山よぉ。安心したぜぇ。テメエなら、このデュエルアカデミアの中心として、デュエリストを名乗るに相応しい事が分かったからなぁ!!」
「いや……俺も安心したザウルス!お前が、熱いデュエルを好むデュエリストで!」
 剣山と外道(そとみち)は、お互いに顔を見合わせながら話した。

「だがなぁ、デュエルってえのは、常に全力勝負なんだからよぉ……いくら相手が女の子だろうが仲間だろうが、手加減すんじゃねえ……ぞ!!!」

バシッ!!

 そう言いながら外道(そとみち)は、剣山の背中を平手で激しく叩き、剣山を激励した!

「ぐわわっ!い、痛いザウルス……。」
 剣山は、叩かれた背中を痛そうにおさえていた……。









「よかった……剣山先輩が勝ってくれて……。」
 観客席で試合を見ていたレイは、両手をあわせて安心したかのような表情をしていた……。

「(でも……これで、ボクと剣山先輩の潰しあいが始まっちゃうんだ……。……ボクはいったい、どうすればいいんだろう……。)」
 レイは、次のデュエルに対し、複雑な気持ちになり、表情が暗くなっていた……。











次回予告
空野「次のデュエルは、剣山と早乙女レイのデュエルか……。お前は、どっちが勝つと思うか?」
五階堂「さあなあ……。レイが勝つと思うんだが……」
空野「何か不安要素があるのか?」
五階堂「ああ……。デュエルは、最終的には心の強さが物を言うからな……。」



次回、『GX plus!』第二十二話!

『勝利への気持ち? 剣山vsレイ!!』

空野「五階堂……お前、レイに勝ってもらいたいのか?」
五階堂「そ、そりゃあ、僕を倒すほどの実力を持っているから、勝ち進んでもらわないと困るだけだ!」
空野「……。」




第二十二話 勝利への気持ち? 剣山vsレイ!!

「ほう……次の試合は、遊城十代君の在校時代に、いろいろと関わりのあった2人のデュエルですか。いいデュエルになりそうですな。」
「そうみたいですね、鮫島校長。」
 観客席に座っている次の試合の始まりを静かに待っていた……。

「……そう言えば、聞くのを忘れていたのですが……レイは、どのようにして五階堂に勝利したのですか?」
「ええ……確か、『天魔神 エンライズ』と言うモンスターを特殊召喚し、効果で『ギルフォード・ザ・レジェンド』を除外し、その後『ティンクルスター・チェンジ』で墓地の『ミスティック・ドラゴン』を召喚条件を無視して特殊召喚し、そのまま決着を付けたのです。」
 鮫島校長は、長々と語った。

「……『天魔神』?」
 フェイト教諭は、ほんの少し眉を動かしながら話した。

「ええ。私も長年デュエルモンスターズに精通しているが……あのようなカードは今まで見たことがない。デュエルとは、奥の深い物ですなあ、フェイト教諭。」
「……失礼。どうやら、電話がかかってきたみたいなので……。」
 と言いながら、鮫島校長の問い掛けをスルーし、会場から歩き去っていった……。









「ふむ……こんな絶妙なタイミングで電話がかかってくるとは、不運ですね……。そろそろ試合が始まると言うのに……」
 鮫島校長は、観客席に一人取り残され、残念そうにぼやいていた……。











「えー、ではー……これより、準々決勝第2試合を始めるノーネ!」
 回が進むたびに、司会者としての役割が減ってきてしまっているクロノスは、ここ一番と言わんばかりに、大きく左手を振りながら声を出した。



「よし!やっと出番が回ってきたザウルス!」
 剣山は、気合いを入れるために、左手で握り拳を作り、その拳を勢い良く右手の手の平にぶつけた!

「……ん?レイちゃん……いったいどうしたんだドン?」
 剣山は、自分の正面に立っているレイが、不安そうな表情で何かを口籠もっている様子を、不思議に思っていた……。









「(どうしよう……ボクと剣山先輩の潰しあいが始まっちゃうよ……。負けたらそこで終わりなトーナメントだから……剣山先輩が勝ったら、ボクが代表になれなくて……ボクが勝ったら、剣山先輩が代表になれなくて……)」
 レイは、うつむきながら口元で両手をあわせ、剣山とのデュエルに不安を覚えていた……。

「……レイちゃん、どうしたザウルス?」
 剣山は、10センチほど腰を下ろし、レイと目線の高さをあわせ、顔を向かい合わせた。

「な…何でも……ないよ。ただ…剣山先輩とのデュエルは、決勝戦でやりたかったかな……。」
「……まあ、確かに、決勝の大舞台でデュエルするのもいいと思うドン。だが、俺はどんなデュエルでも、常に全力で勝負するザウルス!」
 剣山は、左腕に取り付けられたデュエルディスクを構え、デュエルを行う意志を示した。

「そ…そう言う意味じゃ……ないんだけど……」
「ん?……なら、どう言う意味ザウルス?」
 レイの一言を、剣山は疑問に思っていた……。

「だって……このトーナメントで決勝まで勝ち上がれなかったら、代表になれないよね……。だから、ここでどっちかが、代表になれなくなっちゃうから……。」
 レイは、少し表情を曇らせながら話した。









「あの二人……いったい何を話してるんだ?」
 五階堂は、レイと剣山が何を話しているのか、気になっていた。

「おいおいおい、まだ始まってねえのかぁ?剣山のデュエルはよぉ!」
 五階堂が座っている席の背後から、眼鏡をかけた男子生徒……外道(そとみち)が突然声をあげた。

「そ……外道(そとみち)か。確かに、まだデュエルは始まってないみたいだな……。」
 五階堂は、外道(そとみち)の突然の一言に驚いていた。

「それよりなぁ……剣山の対戦相手のあの女……デュエル前に、何弱気になってんだぁ?」
「さあ……なあ。剣山がお前に勝ってから、ずっとあの調子だ……。」
 五階堂は、右手をあごの近くに添えながら、心配そうな表情でレイを見ていた。

「何だぁ?それはつまり、あの女は、剣山とデュエルしたくねえって事なのかぁ!?」
「多分……な。レイと剣山は、見た感じ友達関係だからな……。」
「なぁ!?あの女、ダチとは真剣勝負ができねえってのかぁ!?甘ったれやがって!!」
 外道(そとみち)は、足で床を思い切り叩いて、威嚇するかのような大きな音を立てた。

「し、仕方ないだろ!レイはまだ2年生なんだぞ!だから……」
「2年生だからだぁ……確かに、あの女は一昨年に開催された、有り得ねぇほど理不尽だが、ある意味究極のサバイバル戦……『ジェネックス』に参加することは無かっただろうがなぁ……去年にも、熱いデュエルを推進する名目で行われた行事があるだろうがぁ!!」
「熱いデュエルを推進する……まさか、『デスクロージャーデュエル(デスデュエル)』の事か!?」
 五階堂は、少し強ばった表情で話した。

「あぁ!!あの行事では、『能力の低い生徒は問答無用で寮格下げ、その後もやる気が見られないようなら退学』……とか言う過酷なルールがあったよなぁ!!そんな環境を、あの女は甘ったれた心で過ごしてやがったのかぁ!!?」
「だ、だが!あのデュエルでは、人が倒れる事件が起きまくったんだぞ!そんな環境で、闘争心が……」
「……そんな物は結果論だ!その被害者が出る前なら、闘争心を研くことも、十分に可能だろうがぁ!!……それよりなぁ……あの女は、人が倒れた原因はデスデュエルだって事は知ってたのかぁ!?」
 外道(そとみち)は、五階堂の顔をガン見しながら話した。

「し、知らなかったんじゃないのか?もし知ってたら、あんな大量に被害者が出るわけ無いからな!」
「……なるほどなぁ。」
 外道(そとみち)は、腕を組みながら呆れたような表情をして答えた……。









「……行くドン!レイちゃん!」
「う、うん……。」
 レイは、剣山に言われるがままにデュエルディスクを構えて……


「「デュエル!!」」

「先行はもらうザウルス!ドロー!手札から、魔法カード『トレード・イン』を発ドン!手札のレベル8モンスター……『超伝導恐獣』を捨て、カードを2枚ドローするザウルス!」
 剣山は、自分の今行える最高の戦術を行うため、墓地に『超伝導恐獣』を送り込んだ。


トレード・イン
通常魔法
手札からレベル8のモンスターカードを1枚捨てる。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。


「まだ終わりじゃないザウルス!俺は、『セイバーザウルス』を召喚し……永続魔法『弱肉強食』を発ドン!」
「じゃ…『弱肉…強食』?それって、どんな効果なの?」
 剣山が発動したカードを、レイは不安に思っていた……。

「教えてやるドン!このカードが発動している間、1ターンに1度、俺の場の恐竜族モンスター1体をリリースすることで……リリースしたモンスターよりレベルの高い恐竜族モンスター1体を、墓地から特殊召喚できるザウルス!この効果で、『セイバーザウルス』をリリースし……出るドン!!『超伝導恐獣』!!」
 剣山がそう言うと、金属の鎧を身につけた巨大な金属でできた恐竜……『超伝導恐獣』が蘇り、その鋭い牙で、味方の『セイバーザウルス』に食らい付き、自らの餌にしてしまった!!


弱肉強食
永続魔法
1ターンに1度、自分の自分フィールド上の恐竜族モンスター1体をリリースする事で、
自分の墓地に存在する、リリースしたモンスター以上のレベルを持つ
恐竜族モンスター1体を選択して特殊召喚する。
この効果によって特殊召喚されたモンスターは、そのターン攻撃する事ができない。
この効果で特殊召喚したモンスターがフィールド上から離れた時、
このカードを破壊する。


「『弱肉強食』の効果によって特殊召喚されたモンスターは、特殊召喚されたターンに攻撃できないザウルス!カードを1枚場に伏せて、ターンエンドン!」

「…ボクのターン、ドロー……。」
 レイは、剣山の場の『超伝導恐獣』が、味方のモンスターを餌にしてしまった光景に少し恐怖を覚えながら、手札を確認した……。

「(『超伝導恐獣』……攻撃力3300か……。今のボクの手札じゃ、破壊できないよ……。)……モンスターをセットして、カードを1枚場に伏せるね。……ターンエンド……。」
 レイは、1枚のモンスターと1枚の魔法・罠カードをデュエルディスクにセットし、ターンを終えた。


現在の状況
剣山 LP…4000
   手札…3枚
   場…超伝導恐獣(攻撃力3300・攻撃表示)
     弱肉強食(表側表示)
     伏せカード1枚

レイ LP…4000
   手札…4枚
   場…裏守備モンスター1体
     伏せカード1枚


「俺のターンザウルス!ドロー!手札から、『猛進する剣角獣』を召喚するドン!!」
 剣山の場に、剣のような角を頭に付けた恐竜が現われた。

「行くドン!『猛進する剣角獣』で、裏守備モンスターに攻撃!」
 『猛突する剣角獣』は、その自慢の角で裏守備モンスター……『コーリング・ノヴァ』を貫き、そのままの勢いでレイに攻撃を加えた!

「いたたっ!」
 レイは、攻撃によって発生した衝撃に驚いてデュエルディスクを目の前で盾のように構えると、自分のライフが減っていたことに気付いた……。

レイLP 4000→3400

「あれ?な、何で守備表示のモンスターのバトルで、ボクのライフが削られるの!?」
「『猛進する剣角獣』には、貫通効果があるザウルス!レイちゃん!守っているだけじゃあ、デュエルに勝てないドン!」
 剣山は、自信満々に答えた。


猛進する剣角獣
地 レベル4
【恐竜族・効果】
守備表示モンスターを攻撃した時、
このカードの攻撃力が守備表示モンスターの守備力を越えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
攻撃力1400 守備力1200

「でも、ボクの『コーリング・ノヴァ』も効果を持ってるんだよ!このモンスターが戦闘破壊されたとき、デッキから光属性・天使族モンスター1体を特殊召喚することができるよ!この効果で……現われて!『ミスティック・エッグ』!」
 レイがそう言うと、オレンジ色の輪っかのような形の体をした『コーリング・ノヴァ』の全身が光輝き……デッキから、1つの不思議な卵が現れた!


コーリング・ノヴァ
光 レベル4
【天使族・効果】
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
デッキから攻撃力1500以下で光属性の天使族モンスター1体を
自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。
また、フィールド上に「天空の聖域」が存在する場合、
代わりに「天空騎士パーシアス」1体を特殊召喚する事ができる。
攻撃力1400 守備力800


「『ミスティック・エッグ』……守備表示だから、戦闘破壊しても意味無いザウルス……。だが、まだまだ俺の攻めは終わってないドン!メインフェイズ2に入るザウルス!『超伝導恐獣』の効果発ドン!俺の場の『猛進する剣角獣』をリリースし、レイちゃんに1000ポイントのダメージを与えるザウルス!スーパーコンダクター・キャノン!」
 『超伝導恐獣』は、『猛進する剣角獣』の体をエネルギーに変化させ……そのエネルギーを、プラズマ砲のように口から放出し、レイに直撃させた!

「きゃああぁぁ!!」(レイLP 3400→2400)


超伝導恐獣
光 レベル8
【恐竜族・効果】
自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる事で
相手ライフに1000ポイントダメージを与える。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
また、この効果を発動したターンこのモンスターは
攻撃宣言をする事ができない。
攻撃力3300 守備力1400


「へへん、どうザウルス?俺は、このデュエルに勝ってみせるドン!カードを1枚場に伏せ、ターンを終了するザウルス!」
「ちょっと待って!このタイミングで、『ミスティック・エッグ』の効果が発動するよ!この効果で……」
 レイは、そう言いながら、デッキの上から順番にカードをめくっていき……

「『ミスティック・エッグ』から孵化する子は……この子だよ!『ミスティック・ベビー・デビル』!」
 レイの場の『ミスティック・エッグ』が光りながら静かに割れると……その中から、コウモリのような羽を背中に付け、見るからに悪戯好きそうな顔した茶色な子悪魔が現われた!


ミスティック・エッグ
光 レベル1
【天使族・効果】
このカードはリリースできない。
このカードが戦闘によって破壊され、墓地に送られた場合、
バトルフェイズ終了時に、墓地に存在するこのカードを守備表示で特殊召喚する。
相手ターンのエンドフェイズ時に、このカードを墓地に送り、
「ミスティック・ベビー」と名のつくモンスターが出るまで自分のデッキをめくり、
そのモンスターを特殊召喚する。
他のめくったカードはデッキに戻してシャッフルする。
攻撃力0 守備力0


「おおっ!今回のベビーモンスターは、初めて見るドン!どんな効果を持ってるのか、楽しみザウルス!ターンエンドン!」

「……ボクのターン!ドロー!」
 レイがドローしたカードを確認した後に、剣山は……

「だが!防戦一方じゃあ、デュエルは面白くないドン!俺は、レイちゃんのスタンバイフェイズに、このカードを発動させるザウルス!!」
 剣山は、直前のターンに伏せたカードを、勢い良く表にした。









「何!剣山の奴……ここであのカードを使うのか!」
「……なるほどなぁ。『バトルマニア』かぁ!剣山の奴、最高のカードを使うじゃねえかぁ!」
 観客席で試合を見ていた五階堂と外道(そとみち)は、剣山の発動させたカードに驚いていた……。

「『バトルマニア』!?確かあのカードは、発動時に相手の場の表側表示モンスターがすべて攻撃表示になり……」
「攻撃可能なモンスターは、かならず攻撃しなければならない……ってわけだなぁ!」
 2人は、『バトルマニア』の効果の強力さを語り合っていた……。


バトルマニア
通常罠
相手ターンのスタンバイフェイズ時に発動する事ができる。
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターは全て攻撃表示になり、
このターン表示形式を変更する事はできない。
また、このターン攻撃可能な相手モンスターは攻撃しなければならない。


「ま、まずいぞ!レイの場の『ミスティック・ベビー・デビル』の攻撃力は500……剣山の場の『超伝導恐獣』の攻撃力は3300……このバトルが成立したら、レイの負けじゃないか!」
「そうだなぁ……。戦場に足を踏み入れた者は、逃げることも、戻ることもできない……まさしく究極の闘技場(バトルフィールド)!!」
「正気かよ!……戦闘狂(バトルマニア)とは、よく言った物だぜ!」









「(どうしよう……このままじゃあ、負けちゃうよ……。)」
 レイは、自分の口の前に右手を添え、不安そうな表情をしていたが……

「(でも、一つだけ分かったことがある……。剣山先輩は、このデュエルでボクに勝つために、いろんな戦略を立ててるから……その全力に答えてボクも全力でデュエルしないと……失礼だよね……。)」
 そう思いながらデュエルディスクを構え直し、剣山の目をまっすぐに見つめ直した。

「(おっ!レイちゃん、やっと本気を出したみたいザウルス!ここからが、本当の勝負だドン!!)」
 剣山は、軽く首を縦に振って、デュエルディスクを構え直した。

その時の剣山とレイは、遠目で見ると、まるでアイコンタクトを取っているみたいだった。



「……さあ、レイちゃん!この状況を、どう切り抜けるザウルス!?」
「いいよ!見せてあげる!手札から、装備魔法『成長の揺りかご』を、『ミスティック・ベビー・デビル』に装備させるよ!」
 そう言うと、レイの場の『ミスティック・ベビー・デビル』が、まるで絹のように優しい光を放つオーラに包まれた!
そして、その優しいオーラに包まれた『ミスティック・ベビー・デビル』は……気持ち良さそうに目を瞑り、小さな寝息をたて始めた……。

「い…いったい……どうしたんだドン?いきなり、レイちゃんの場のモンスターが、眠り始めたザウルス……。」
「剣山先輩。これが『成長の揺りかご』の効果だよ!このカードを装備した『ミスティック・ベビー』は、1ターンの間眠りに就くことで、『ミスティックカウンター』を1つ乗せることができるんだ。……寝る子は育つって、よく言うでしょ?」
 レイは、剣山に問い掛けるような話し方で答えた。


成長の揺りかご
装備魔法
「ミスティック・ベビー」と名のついたモンスターにのみ装備可能。
このカードを装備している限り、装備モンスターは戦闘によっては破壊されない(ダメージ計算は適用する)。
1ターンに1度、このカードを装備したモンスターにミスティックカウンターを1個乗せることができる。
この効果を発動するターン、装備モンスターは攻撃する事ができない。
装備モンスターがリリースされる事によってこのカードが墓地に送られた場合、このカードを手札に戻す。


「そして……『ミスティック・ベビー・デビル』は、ミスティックカウンターが1個以上乗っている時、攻撃力が倍になるんだ。ボクの『ミスティック・ベビー』達は、寝ることでも、成長のためのエネルギーを蓄えることができるんだから!」


ミスティック・ベビー・デビル
闇 レベル2
【悪魔族・効果】
自分の墓地にモンスターカードが送られる度に、このカードにミスティックカウンターを1つ乗せる。
このカードに乗ったミスティックカウンターの個数によって、以下の効果を得る。
(召喚・反転召喚・特殊召喚されたターンには、この効果を発動できない。)
1個:このカードの元々の攻撃力は倍になる。
2個:このカードをリリースすることで、自分の手札・デッキから
「ミスティック・デビル」1体を特殊召喚する。
攻撃力500 守備力700


ミスティック・ベビー・デビル 攻撃力500→1000

「ぐっ……俺の『バトルマニア』によって攻撃を強制されるモンスターは、攻撃することができるモンスターだけだドン……。攻撃能力を持たない眠ったベビーは、攻撃を行う必要が無いザウルス……。」
 剣山は、外面では悔しそうな表情をしていたが……

「(だが……さすがレイちゃんだドン……。自分の戦術を進めながら、俺の戦術を打ち破れるのは……。これだから、デュエルは面白いザウルス!)」
 内面では、レイとのデュエルに、面白みを感じていた……。



「ボクは……カードを1枚場に伏せて、ターンを終了するよ。」


現在の状況
剣山 LP…4000
   手札…3枚
   場…超伝導恐獣(攻撃力3300・攻撃表示)
     弱肉強食(表側表示)
     伏せカード1枚

レイ LP…2600
   手札…3枚
   場…ミスティック・ベビー・デビル(攻撃力1000・攻撃表示)
     成長の揺りかご(ミスティック・ベビー・デビルに装備)
     伏せカード2枚

「俺のターン、ドロー!手札から、『キラーザウルス』を捨て、デッキから、フィールド魔法『ジュラシックワールド』を手札に加え……即、発動させるドン!」
 剣山がそう言うと、デュエル場が突然、煙を吹く火山がそびえるジャングルへと変貌した!

「『ジュラシックワールド』が場にある間、場の恐竜族モンスターの攻撃力は300ポイントアップするザウルス!よって、『超伝導恐獣』の攻撃力は、3600ポイントになったドン!」
 剣山の言葉に反応し、『超伝導恐獣』は全身の鎧から電流を走らせ、雄猛びを上げた!


ジュラシックワールド
フィールド魔法
フィールド上に表側表示で存在する恐竜族モンスターは
攻撃力と守備力が300ポイントアップする。


超伝導恐獣 攻撃力3300→3600

「この攻撃が通れば、俺の勝ちザウルス!『超伝導恐獣』で、『ミスティック・ベビー・デビル』に攻撃!スーパーコンダクター・クラッシュ!」
 『超伝導恐獣』は、鈍重そうな外見に似合わないほどの素早さで、目を覚ましたばかりの『ミスティック・ベビー・デビル』に突撃するが……

「待って!剣山先輩の攻撃宣言時に……手札の『キーメイス』を捨てて、伏せ罠カード『レインボー・ライフ』を発動するよ!」
 そう言うと、レイの目の前に虹色のオーラが現われ……『超伝導恐獣』の攻撃によって放たれた破壊の力を、癒しの力へと変換した!


レインボー・ライフ
通常罠
手札を1枚捨てる。
このターンのエンドフェイズ時まで、自分が受けるダメージは無効になり、
その数値分ライフポイントを回復する。


レイLP 2600→5200

「モンスターカード、『キーメイス』が墓地に置かれた事で、『ミスティック・ベビー・デビル』に、ミスティックカウンターが1個乗ったよ!」
 『ミスティック・ベビー・デビル』は、強がりながら指先から小さな火花を散らし、『超伝導恐獣』を挑発していたが、低くか太い雄猛びを聞くと、小さく萎縮してしまった……。

「ぐっ……『成長の揺りかご』の効果で、戦闘破壊が不可能になっているみたいザウルス……。カードを1枚伏せ、ターンエンドン!」

「ボクのターン!ドロー!これで『ミスティック・ベビー・デビル』にミスティックカウンターが2つ乗ったから……一人前の悪魔に成長できるよ!現われて!『ミスティック・デビル』!」
 レイがそう言うと、場の小悪魔の体がみるみる大きくなり……頭に2本の角を生やし、巨大なコウモリ型の羽を背中に付け、全身を白骨のような鎧でおおった、堂々とした風格の悪魔へと姿が変わった!

「そして……役目を終えた『成長の揺りかご』は、別のベビーの成長をささえるために、手札に戻ってくるよ!」
 レイは、さっきまで『ミスティック・ベビー・デビル』に装備していた『成長の揺りかご』を右手でデュエルディスクから離し、手札に戻した。

「『ミスティック・デビル』……攻撃力2500ザウルス!?その攻撃力じゃあ、俺の『超伝導恐獣』は倒せないドン!」
「うん……確かに、ボクの『ミスティック・デビル』じゃあ、剣山先輩の『超伝導恐獣』は倒せないよね……。でも、次のターンには、きっと倒してみせるよ!手札から、『ミスティック・ベビー・ドラゴン』を召喚するね!」
 レイの場に、緑色の体をした小さなドラゴンが現われた。

「おっ!やっとかわいい恐竜さんが出てきたザウルス!」
「……剣山先輩。この子は、恐竜じゃなくてドラゴンなんだけど……。まあいいや。さらに、手札から、装備魔法『成長の揺りかご』を『ミスティック・ベビー・ドラゴン』に装備させて、効果を発動するよ!ミスティックカウンターを1つ乗せて、『ミスティック・ベビー・ドラゴン』を少し成長させるね!」
 『ミスティック・ベビー・ドラゴン』は、優しいオーラに包まれてスヤスヤと眠り、少し体が大きくなった!


ミスティック・ベビー・ドラゴン
光 レベル4
【ドラゴン族・効果】
相手ターンのエンドフェイズ毎に、このカードにミスティックカウンターを1つ乗せる。
このカードに乗ったミスティックカウンターの個数によって、以下の効果を得る。
(特殊召喚されたターンには、この効果を発動できない。)
1個:このカードの元々の攻撃力は倍になる。
2個:このカードをリリースすることで、自分の手札・デッキから
「ミスティック・ドラゴン」1体を特殊召喚する。
攻撃力1200 守備力700



「『ミスティック・ベビー・ドラゴン』は、さっきの『ミスティック・ベビー・デビル』と同じように、ミスティックカウンターが1つ以上乗っている時、攻撃力が倍になるんだ。これでターンエンドね。」


現在の状況
剣山 LP…4000
   手札…2枚
   場…超伝導恐獣(攻撃力3600・攻撃表示)
     ジュラシックワールド(表側表示)
     弱肉強食(表側表示)
     伏せカード2枚

レイ LP…2600
   手札…2枚
   場…ミスティック・デビル(攻撃力2500・攻撃表示)
     ミスティック・ベビー・ドラゴン(攻撃力2400・攻撃表示)
     成長の揺りかご(ミスティック・ベビー・ドラゴンに装備)
     伏せカード2枚


「俺のターン!(……とにかく、『成長の揺りかご』を破壊しない限り、レイちゃんのモンスターの進化を止めることができないドン……。)……ドロー!」
 ドローしたカードを確認すると、剣山は目を見開いた。

「手札から、速攻魔法『ダイナスタンプ』を発動!このカードを発動したターンに恐竜族モンスターが攻撃するとき……相手の場の魔法・罠カードを1枚破壊するザウルス!これで、『成長の揺りかご』を破壊することができるドン!」
 剣山は、自信満々に語った。


ダイナスタンプ
速攻魔法
このターン、自分フィールド上の恐竜族モンスターの攻撃宣言時、
相手フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する。


「バトルフェイズに入るドン!『超伝導恐獣』で、『ミスティック・ベビー・ドラゴン』に攻撃!その際に、『ダイナスタンプ』の効果で、『成長の揺りかご』を破壊するザウルス!」
 『超伝導恐獣』は、攻撃を行う前に地面を力強く踏み込むと、突然地割れが発生して、その衝撃によって、『ミスティック・ベビー・ドラゴン』を優しく包んでいた『成長の揺りかご』が破壊された!

「よし!これで『ミスティック・ベビー・ドラゴン』を戦闘破壊できるようになったザウルス!行くドン!『超伝導恐獣』!スーパーコンダクター・クラッシュ!」
 『超伝導恐獣』は、少し大きくなったとはいえ、まだ自身の半分程度の大きさの『ミスティック・ベビー・ドラゴン』を踏み潰そうとしたが……突然稲妻の壁が発生して、その攻撃を妨げた!

「なっ……何でいきなり稲妻が発生したんだドン!?」
「『ミスティック・デビル』の効果が発動したんだ。相手が攻撃した時、ボクのデッキの1番上のカードを墓地に送って……それがモンスターカードだったら、攻撃を無効にするんだよ!ボクの墓地に送られたカードは……モンスターカード、『シャインエンジェル』だから、剣山先輩の『超伝導恐獣』の攻撃が無効になったよ!」


ミスティック・デビル
闇 レベル8
【悪魔族・効果】
相手モンスターの攻撃宣言時、自分のデッキの1番上のカードを墓地に送る。
墓地に送られたカードがモンスターカードだった場合、
相手モンスター1体の攻撃を無効にする。
攻撃力2500 守備力1200


「ぐっ……今の手札では、何もできないザウルス……。ターンエンドン……。」
「エンドフェイズ時に、ボクの『ミスティック・ベビー・ドラゴン』にもう1つミスティックカウンターが乗ったよ。これでやっと、剣山先輩の『超伝導恐獣』に勝てるモンスターを出せるよ!」
 レイは、剣山に向けて自信満々に話した。

「ボクのターン、ドロー!メインフェイズに、『ミスティック・ベビー・ドラゴン』は、『ミスティック・ドラゴン』へと成長を遂げるよ!」
 そう言うと、『ミスティック・ベビー・ドラゴン』の体が光輝き、立派な髭をたくわえ、巨大な翼を持った、真のドラゴンへと成長した!

「攻撃力3600……俺の『超伝導恐獣』と並んだザウルス!?」
「どう?すごいでしょ!でもこのままじゃあ、剣山先輩の『超伝導恐獣』と相討ちしちゃうから……伏せ罠カード『和睦の使者』を発動するよ!」
 レイは、初めのターンからずっと伏せていたカードを表にすると、『ミスティック・ドラゴン』と『ミスティック・デビル』が、不思議なバリアに包まれた!

「いっくぞー!『ミスティック・ドラゴン』で、『超伝導恐獣』に攻撃!ミスティア・フレイム!」
 『ミスティック・ドラゴン』が口から火炎弾を放つのとほぼ同じタイミングで、『超伝導恐獣』が口からプラズマ弾を相手に向けて放った!
しかし、『ミスティック・ドラゴン』の放った火炎弾は『超伝導恐獣』に直撃して炸裂したが、『超伝導恐獣』の放ったプラズマ弾は『ミスティック・ドラゴン』を包んでいたバリアに阻まれ、直撃することは無かった……。
場に長い間蹂躙していた『超伝導恐獣』が破壊されたことにより、弱肉強食のバランスが崩れ……剣山の場の永続魔法『弱肉強食』も共に崩れ去った!


和睦の使者
通常罠
このカードを発動したターン、相手モンスターから受ける
全ての戦闘ダメージは0になる。
このターン自分モンスターは戦闘によっては破壊されない。


「まだ『ミスティック・デビル』の攻撃が残ってるよ!『ミスティック・デビル』で、剣山先輩にダイレクトアタック!ミスティア・ライトニング!」
 『ミスティック・デビル』は、両手から激しい稲妻を放ち、剣山にその稲妻を直撃させた!

「ぐううぅぅっ!!」(剣山LP 4000→1500)
 『ミスティック・デビル』の放つ電撃に、剣山はのけぞった。

「やった!やっと攻撃が通ったよ!」
「ぐうぅ……だが、攻撃が通ったことで、やっとこの伏せカードを発動できるドン!手札の『フロストザウルス』を捨て……伏せ罠カード『ダメージ・コンデンサー』を発動するザウルス!」
 剣山がそう言うと、場に巨大なガラス瓶みたいなものが現われ、その中に、剣山が受けた電撃が蓄まっていった!

「『ダメージ・コンデンサー』は、俺が受けた戦闘ダメージ以下の攻撃力を持つモンスター1体を、デッキから特殊召喚するカードだドン!」
「ええっ!剣山先輩が受けた戦闘ダメージは2500……高レベルのモンスターでも、特殊召喚できちゃうんだ……。」
 レイは、剣山が何を特殊召喚するのか、不安に思っていた……。

「俺が呼び出すカードは……これだドン!『クエイクザウルス』!!」
 そう言うと、剣山の場のガラス瓶が大きな音を立てて粉々になり……全身が薄い茶色で、太い4本の足を持った、いかにも鈍重そうだが、パワーに満ち溢れているような恐竜が現われた!

「『クエイクザウルス』は、歩くだけで地響きを起こせる程の重さを持っている恐竜さんだドン!その地響きによって、相手の場のモンスターを好きな数だけ、守備表示にできるザウルス!」
 『クエイクザウルス』は、重そうな足を持ち上げ、それを物凄い勢いで地面に叩きつけた!
すると、激しく地面が振動して、『ミスティック・ドラゴン』はその揺れに足を取られ、守備体勢を取らざるを得なくなった……。


クエイクザウルス
地 レベル6
【恐竜族・効果】
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、
フィールド上に表側表示で存在するモンスターを
任意の数だけ選択して表示形式を変更することができる。
攻撃力2300 守備力1800


「うっ……ボクの『ミスティック・ドラゴン』は、守備力はそこまで高くないから、『クエイクザウルス』の攻撃に耐えられないよ……。(でも、『ミスティック・デビル』の効果が成功すれば……。)……これでターンエンドね……。」


現在の状況
剣山 LP…1500
   手札…1枚
   場…クエイクザウルス(攻撃力2600・攻撃表示)
     ジュラシックワールド(表側表示)
     伏せカード1枚

レイ LP…5200
   手札…3枚
   場…ミスティック・デビル(攻撃力2500・攻撃表示)
     ミスティック・ドラゴン(守備力2100・守備表示)


「俺のターン!ドロー!……『クエイクザウルス』をリリースし、手札から『大進化薬』を発ドン!」
 剣山がそう言うと、突然『クエイクザウルス』の体が消え去り……3つの不思議なカプセルへと姿を変えた!


大進化薬
通常魔法
自分フィールド上の恐竜族モンスター1体を生け贄に捧げて発動する。
このカードは発動後(相手ターンで数えて)3ターンの間フィールド上に残り続ける。
このカードがフィールド上に存在する限り、
恐竜族モンスターの召喚に生け贄は必要なくなる。



「ええっ!剣山先輩の『クエイクザウルス』の攻撃力は2300もあったのに、リリースしちゃうんだ……。」
「違うザウルス!『ジュラシックワールド』の効果で、攻撃力は2600に上がっているドン!……と、それより、俺が『大進化薬』を発動した訳は……レイちゃんの『ミスティック・デビル』の攻撃妨害を物ともしない、究極に進化した恐竜さんを呼び出すためザウルス!『大進化薬』の効果で……出るドン!『究極恐獣』!!」
 剣山の場に、全身が黒い、鎧のような皮膚でおおわれ、鋭い牙を持った、まるで怪獣のような迫力を持つ恐竜が現われた!
そして、足元に落ちていた『大進化薬』のカプセルを1つ食べると……目の色が変わり、レイの場のモンスターを睨み付けた!


「究極に進化した恐竜さんは、稲妻の壁なんかで攻撃が止まることは無いザウルス!『究極恐獣』で、『ミスティック・デビル』に攻撃!アブソリュート・バイト!」
 『究極恐獣』は、剣山の攻撃宣言を聞いているのかいないのか、真っ先に大きく口を開いて、レイの場の『ミスティック・デビル』の首に食らい付こうとするが……

「ミ、『ミスティック・デビル』の効果を発動するよ!デッキの1番上のカードを墓地に送って、それがモンスターカードだったら、攻撃を無効にするんだよ!墓地に送られたカードは……モンスターカード、『天魔神 エンライズ』だから、『究極恐獣』の攻撃は無効になるよ!」
 『ミスティック・デビル』は、稲妻の壁を発生させ、『究極恐獣』の侵攻を妨害した!しかし……

「無駄ザウルス!『究極恐獣』は、相手の場のモンスターすべてに攻撃する効果を持っているんだドン!それは、たとえ攻撃が無効になっても適用されるザウルス!」
……と剣山が言ってる間に、『究極恐獣』は、今度は『ミスティック・デビル』を踏み潰そうとした!

「うっ……『ミスティック・デビル』の攻撃妨害効果は、強制だから、デッキの1番上を墓地に送らなきゃダメなんだ……。」
 レイは、嫌々デッキの上のカードを墓地に送った……。
墓地に送ったカードは、モンスターカード、『恋する乙女』だったので、再び稲妻の壁が発生したが、その壁を破ろうと、『究極恐獣』はさらに攻撃を行おうとしていた……。


「うっ…ゴメンね……『恋する乙女』……今回は、活躍させられそうにないよ……。」
 レイは、墓地に送られた『恋する乙女』のカードを確認すると、少し悲しそうな表情をした……。
しかし、『究極恐獣』はその様子を知ってか知らずか、今度は強靱な尻尾で『ミスティック・デビル』に攻撃を行った!

「ぼ…墓地に送られたカードは……魔法カード、『死者転生』だから、攻撃は無効にならないよ……。」
 その言葉通り、『究極恐獣』は、『ミスティック・デビル』の放った稲妻の壁を力任せにこじ開け、『ミスティック・デビル』を尾によって打ち払った!
『究極恐獣』の攻撃力は3300……それに対して『ミスティック・デビル』の攻撃力は2500……その差800ポイントが衝撃となって、レイのライフを削った!


「きゃあああぁぁぁ!!」(レイLP 5200→4400)
 ソリッドビジョンではあるが、あまりの衝撃によって、レイは張り倒されてしまった!
しかし、『究極恐獣』の攻撃はまだ止まらず、抵抗できない『ミスティック・デビル』に向かって大きく口を開き……そのまま残酷にもバリバリ食べてしまった!
 そのとんでもない光景を見たレイは涙目になって、腰を抜かしてしまった……。


「お…お願い……。もう…やめて……よ……。」
 『究極恐獣』の放った残酷なな攻撃を目の当たりにし、レイはか細い声で、涙ながらに訴えていた……。

「……レイちゃん……。」
 剣山は、レイのその様子を直視することができず、目を瞑りながら頭を下げ、歯を食い縛っていた……。


「……すまないザウルス……。『究極恐獣』の攻撃は、俺でも止めることはできないドン……。」
 剣山がそう呟くと、その言葉通り、『究極恐獣』は、まるで自我を失った怪物の様に『ミスティック・ドラゴン』の首に食らい付き、そのまま絶命させてしまった……。
その目に映るすべての獲物を破壊し尽くし、最後に残ったのは、『究極恐獣』ただ1体だった……。



「あ……あっ……」
 レイは、すべてを破壊し尽くした怪物――『究極恐獣』を、ただ茫然と眺めることしかできなかった……。

「……ターン…エンドン……。」
 剣山は、『究極恐獣』によって場が崩壊したことによって、恐怖におののくレイを目視できずに、目を瞑ったまま、ターンを終了した……。


「ボ…ボクの……ターン……。(神様……お願い……来て…来て…来て…来て…『天魔神 エンライズ』…『エンライズ』…『エンライズ』…『エンライズ』…は、もう墓地に行っちゃったから……、『死者転生』…『死者転生』…『死者転生』…『死者転生』……。)」
 レイは、恐怖を少しでも和らげようと、何かにすがるように引きたいカードの名前を、心の中で連呼していた……。

「……ドロー!」
 ドローしたカードを確認すると、レイの表情が少し和らいだ。

「て、手札を2枚捨てて、魔法カード『魔法石の採掘』を発動!この効果で、墓地の『死者転生』を手札に戻すよ!さらに、手札を1枚捨てて、魔法カード『死者転生』を発動して、墓地の『天魔神 エンライズ』を手札に加えるよ!」
 レイは、手札をすべて使いきってでも、もう何とかして『究極恐獣』を場から離れさせたくて、焦りながら墓地の『天魔神 エンライズ』を手札に戻した。


魔法石の採掘
通常魔法
手札を2枚捨てて発動する。
自分の墓地に存在する魔法カードを1枚手札に加える。

死者転生
通常魔法
手札を1枚捨てて発動する。
自分の墓地に存在するモンスター1体を手札に加える。


「そ、それから……墓地の光属性・天使族の『コーリング・ノヴァ』、『ミスティック・エッグ』、『キーメイス』、闇属性・悪魔族の『ミスティック・ベビー・デビル』をゲームから除外して……」
 レイは、震える手で墓地から4枚のカードを取り出して、自分のポケットにしまおうとしたが……

「……あっ!」
 あまりに手が震えすぎて、墓地から取り出したカードを足元に落としてしまった……。



「ご…ゴメンね……剣山先輩。」
 レイは、慌ててカードを拾い、自分のポケットに丁寧にしまった……。
レイのそんな様子を、剣山は悲しい目で見ていた……。

「……お願い!『究極恐獣』を倒して!『天魔神 エンライズ』!」
 3体の光天使と1体の闇悪魔の魂が天に捧げられたことにより……天から、破壊者に裁きを下すために、1体の天使が降臨した!
そして、降臨した瞬間に、翼を大きく広げ、腹に開いた謎の空間につながっているかのような穴(ホール)を全開にして……破壊の限りを尽くした『究極恐獣』を、何の抵抗もさせずに、場から浄化して、消し去ってしまった!


天魔神 エンライズ
光 レベル8
【天使族・効果】
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の光属性・天使族モンスター3体と闇属性・悪魔族モンスター1体を
ゲームから除外した場合のみ特殊召喚する事ができる。
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体をゲームから除外する事ができる。
この効果を発動する場合、このターンこのカードは攻撃する事ができない。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
攻撃力2400 守備力1500


「あ…ありがとう……『エンライズ』……。『究極恐獣』を消してくれて……。」
 レイは、ホッと胸を撫で下ろし、少し安心した声で……

「……ターンエンド……。」
と、静かに自分のターンを終えた。


現在の状況
剣山 LP…1500
   手札…0枚
   場…ジュラシックワールド(表側表示)
     大進化薬(残り2ターン)
     伏せカード1枚

レイ LP…4400
   手札…0枚
   場…天魔神 エンライズ(攻撃力2400・攻撃表示)


「俺の…ターン……ドロー!」
 ドローしたカードを確認すると、剣山は目を見開いた。

「(こ、このカードは!このカードを召喚すれば、俺の勝ちザウルス……。だが……)」
 剣山は、自分の伏せカードと手札を確認して、勝利を確信したが……

「(そんな……圧倒的な力で叩きのめして、いいのかドン?)」
 前のターンでのレイの様子を思い出すと、少し行動をためらってしまった……。









「剣山の奴……何でトドメをささねえんだぁ!?もう勝負は決まったような物なのによぉ!」
 観客席で試合を見ていた外道(そとみち)は、腕を組みながら剣山の方を睨み付けていた。

「…剣山は……もしかしたら、レイの事を心配してるんじゃないのか?あんな恐怖におののく様子をみたら、さすがに心配になるんじゃあ……」
「おいおいテメエ……今はデュエル中だぜ!相手を哀れむような態度は、真剣勝負に水をさすだけだろうがぁ!……この状況で、テメエならどうするんだぁ?」
 外道(そとみち)は、五階堂の目をガン見しながら話した。

「ぼ、僕なら手は抜かないぜ!相手が誰であろうとも全力で戦い……相手を馬鹿にしたようなデュエルは許せないのが、この僕の心情だ!」
「……そうだろうなぁ……。あの女とテメエのデュエルの時も、そんな感じだったからなぁ……。」









「(……外道の言う通りザウルス……。十代のアニキなら、この状況でも全力で戦うはずだドン……。)」
 剣山は、自分の両手で握りこぶしを作り……



「俺は……勝つザウルス!!…伏せ罠カード……『生存本能』を発動!俺は……この6体をゲームから除外し、ライフを2400ポイント回復するドン!!」
 そう言いながら、剣山は墓地から『セイバーザウルス』、『猛進する剣角獣』、『キラーザウルス』、『超伝導恐獣』、『フロストザウルス』、『クエイクザウルス』を取り出し、それらをレイに見せてから自分のズボンのポケットにしまった。


生存本能
通常罠
自分の墓地に存在する恐竜族モンスターを任意の枚数選択しゲームから除外する。
除外した恐竜族モンスター1枚につき、自分は400ライフポイント回復する。


剣山LP 1500→3900

「さらに俺は……手札から、『ディノインフィニティ』を召喚するドン!!」
 剣山は、デュエル場全体に響き渡るかのような大きな――何かを振り切ろうとしているような――声をあげながら『ディノインフィニティ』のカードを頭上に高く掲げ……勢い良くデュエルディスクに叩きつけた!
すると、剣山の場に、鋭い牙と、大きく歪曲した2本の角を持ち……全身が稲光のようなオーラに覆われた恐竜が姿を現わした!



「『ディノインフィニティ』の攻撃力は……ゲームから除外された恐竜族モンスターの数×1000ポイントになるザウルス!除外された恐竜族は……『生存本能』で除外した6枚と、『エンライズ』に除外された1枚で、合計7枚だドン!よって……『ディノインフィニティ』の攻撃力は、7000ポイントになるザウルス!!」
「こ…攻撃力……7…000?そんな……。」
 『ディノインフィニティ』は、異次元に送られた恐竜族の力を受け継ぎ……剣山の身長の5倍近くはありそうな巨体に変化していった!
そして、それほどの巨体になったことにより、『ディノインフィニティ』の、針のような牙を生やした口が、レイの顔の真っ正面に位置するようになった!
その間隔は、一秒もかからずにレイを頭から食らえるような距離で、レイは、目の前に迫る恐怖に茫然自失になっていた……。



「…あ……あっ……」
 レイは、『ディノインフィニティ』が喉からうめき声のような声を出すと、腰が抜けたように床にへたれ込み、少しずつだが、ガクガク震えながら後退りをしていた……。
そんな様子を直視できない剣山は、目を瞑りながら……

「……『ディノインフィニティ』で、『エンライズ』に攻撃!インフィニティ・ブラスター!!」
 『ディノインフィニティ』は、『エンライズ』の方を向いて、自分の口に、稲光のオーラのエネルギーを収束させ……一気に放出した!
『エンライズ』は、そのエネルギーの砲撃を受けとめ、最後までレイを守ろうと健闘したが、最終的には稲光のエネルギーによって左側の翼が削ぎ落とされ、そのまま大地に突っ伏してしまった……。

レイLP 4400→0









「えー、勝者ー、ティラノ剣……」
「そんな事は、どうだっていいザウルス!」
 剣山は、クロノスの勝利者の名前を呼ぶのをさえぎりながらレイの下に駆け寄り、片膝を床につけながらレイに話し掛けた。

「レ、レイちゃん!大丈夫ザウルス!?」
「う、うん。……剣山先輩、ゴメンね……。デュエル中に、カッコ悪い姿を見せちゃって……。」
 レイは、申し訳なさそうな表情で剣山に話し掛けた。

「……いや…悪いのは、俺の方ザウルス……。俺は……レイちゃんを恐がらせながら、圧倒的な力で叩きのめしてしまったドン……。」
 そう言いながら剣山は、目を瞑りながら歯を食い縛り……

「……ぐっ!!」
と言い、レイのすぐ隣を通って、逃げるようにデュエル場から走り去ってしまった……。




「……剣山先輩……。」
 レイは、すくっと立ち上がりはしたが、走り去っていく剣山を、黙って見ていることしかできなかった……。









「ふむ……いいデュエルだったのですが、剣山君の勝ちで終わりましたか……。」
 観客席でずっと試合を見ていた鮫島校長は、ボソッと呟いた。

「しかし……フェイト教諭は、いつまで電話をかけているのでしょう……。……デュエルの結末を聞いてから、全然戻ってきませんね……。」











一方その頃、フェイト教諭の部屋では……

「……と言うわけだ、アトロポス。デュエルアカデミア本校で、1枚の『天魔神』を確認した。」
『なるほど……。フェイト様。そのカードは、すでに回収を行ったのですか?』

「いや……まだだ。所有者は、後に星海校に連れていく予定だ。そこで、回収すればいい。……お前達も、残りの『天魔神』の所有者を探しておけ。」
『分かりました。かならず見つけて見せましょう。』

ピッ。



「…………。」
 フェイトは、真っ暗な部屋で少し考え事をし、稼働中のデュエルディスクから自分のデッキの中身を確認していた……。

「(待っていろ……お前達……。もう少しで……)」
 稼働中のデュエルディスクには、効果も攻守も書かれていない、謎の3枚のカードが置かれていた……。











次回予告
勇者「そ…そんな……。ボクが……負けた?」
魔王「ふはははは!お前のような臆病者が勇者だったとはな!これならば俺の目標達成の踏み台にしかならないな!」
勇者「ううっ…ダメだ……。体が…動かない……。」
魔王「それは、お前が弱いからだ!……だが、お前には、勝利のための犠牲になってもらうぞ!!」
勇者「えっ?…や……やめ……きゃああぁぁ!!」



次回、『GX plus!』第二十三話!


『希望?絶望?水色の眼に映るもの!』

五階堂「おい!上の予告、何なんだよ!全然今回と内容が違うじゃないか!」
空野「いや、それはよくある事だろうな……。予告のインパクトを強くして、それを次回でさらっと流す手法はな!」



第二十三話 希望?絶望?水色の眼に映るもの!

「……っ………ぐっ………」
 剣山は、苦虫を噛み潰したようなうめき声をあげながら、目を開いた……。

「ん?……周りが薄暗いザウルス……。ここはいったいどこだドン?」
 周りを見渡すと、四角く切られた石でできた床、壁、天井……そして、真紅のカーペットや、幅が1メートル近くある大きな玉座が置かれていた……。

「……!!あの2人は……いったい誰ザウルス!!?」
 玉座の辺りを見た剣山の目に、1人の少女と1人の男の姿が飛び込んだ。

少女の方は、白色の半袖Tシャツと青色のスカートを着、青色の小手、青色のすね当て、青色のブレストプレートを身につけていた……。
男の方は、黒いローブを被り、腕、首に、爬虫類の牙を紐に通してアクセサリーにした物を身につけて、両耳にも、爬虫類の骨がついたイヤリングを付けていた……。

その2人は、向かい合いながら何かを話していた……。









「何で……ボク達が戦わなきゃならないの……。」
「それは……必然な事なんだよ!この戦いを征し……俺は先へと進む!」
 戸惑う少女に、好戦的な男は戦いを申し込んできた……。

「…うっ…やるしか……無いみたいね……。」
「そうだ!デュエルディスクを構えろ!」
 男の脅迫に近い一言に気押され、少女は、自分の腰のベルトに引っ掛けていたデュエルディスクを自分の左腕に装備し、デッキをセットした。
対する男は、玉座の上に置かれていたデュエルディスクを手に取り、左腕に装備した。

少女のデュエルディスクは、丸い盾(バックラー)の様なデッキをセットする部分に、長剣(ソード)の様な形の、カードを置くための板がついた形状……
男のデュエルディスクは、丸い形のデッキをセットする部分に、爬虫類の上顎と下顎の形を模した形の、カードを置くための板がついた形状になっていた……。

そして、2人はデッキから5枚のカードを上から引き……

「「デュエル!!」」
 お互いがそう言った後、2人は自分のデュエルディスクに次々カードを置いていき、モンスターを次々と召喚していった!









「……!!」
 召喚されたモンスターを見ていた剣山は、突然目を見開いた。

「なっ……男の召喚したモンスターは、『超伝導恐獣』、『セイバーザウルス』、『竜脚獣ブラキオン』……女の子の召喚したモンスターは、『ミスティック・ドラゴン』……?」
 剣山は、男の召喚したモンスターに驚愕していた……。
――どのモンスターも、自分のデッキに入っているモンスターだったからだ……。

「あの男……俺と似ているデッキを使っているドン……。」
 そう呟いている間に、男はさらにカードを使用した。



「……『ジュラシックワールド』――発動!」
 そう言うと、部屋が突然ジャングルへと変化し、男の場の恐竜達が雄猛びをあげ、少女を威嚇した!

「『ジュラシックワールド』の効果で、俺の恐竜達は、攻撃力を300ポイント高めた!これで『超伝導恐獣』の攻撃力は3600!お前の『ミスティック・ドラゴン』に並んだ!!行け!『超伝導恐獣』!『ミスティック・ドラゴン』を叩き潰せ!!スーパーコンダクター・クラッシユ!!」
 『超伝導恐獣』は、体中に電流をまとわせて、『ミスティック・ドラゴン』に突撃し、爆音を立てて相討ちした……。

「これでお前の場にモンスターはいなくなった!『セイバーザウルス』!ダイレクトアタックだ!!」
 『ジュラシックワールド』によって攻撃力を高めた『セイバーザウルス』は、少女に全速力で突撃し、少女を大きく突き飛ばした!

「きゃあぁっっ!!」(少女LP 4000→1800)
 突き飛ばされた少女は、うつぶせ状態で、苦痛に表情を歪めていた……。
そして、床に手を付け、何とか立ち上がろうとするが……

「トドメだ!『竜脚獣ブラキオン』!」
 『竜脚獣ブラキオン』は、立ち上がろうとする少女を、背中から無慈悲に踏みにじった……。

「――っっ……」(少女LP 1800→0)









「俺の勝ちだ!……お前の実力がその程度だとはな……興醒めしたぜ。」
「そ…そんな……強すぎる…よ……。」
 少女は、デュエルで受けた苦痛が凄まじいのか、立ち上がることもできずに、男の落胆した様子の声を聞いていた……。

「まあいい……。お前には、俺のための、犠牲になってもらうぞ!」
 そう言いながら、男はデュエルディスクの2枚の板をはさみのように組み合わせ、少女の首を刈ろうとした!

「えっ?…や……やめ……」
 少女は、まったく体を動かせないのか、迫る男から逃げることができなかった……。









「や、やめるザウルス!」
 少女の身の危険を察知した剣山は、男の隣に駆け寄り、左手につかみ掛かった!

「……何のつもりだ?」
 左手をつかまれた男は、ボソッと呟いた。

「い…いくら何でも……やり過ぎだドン!抵抗できない女の子に追い打ちをかけるなんて……」
「それは……お前が言えた口なのか?……ティラノ剣山。」
「な……なぜ俺の名前を!?」
「……分かって当然だ。」
 そう言いながら、男は被っているフードを取り、自分の顔を剣山に見せ付けた……。
すると剣山は……まるで鏡を見ているような感覚に襲われた!

「そ…そんな……バカな……有り得ないザウルス!!」
 その男と剣山の顔が、瓜二つだったからだ!









「そう……俺はお前だ。仲間を憎み、恐怖で支配し、ねじ伏せた……な。」
 男は、剣山の首をつかみ、剣山と顔を見合わせた!











「ち、違うザウルス!!俺は、そんな奴じゃ……」

ドカッ!


 気が付くと、剣山は、デュエルアカデミア本校の購買部のパイプ椅子を、それにもたれかかっていた自分の身体ごと後ろに倒していた……。

「け、剣山先輩!大丈夫?」
 レイは、椅子を引っ繰り返して頭を床にぶつけた剣山に驚いて、剣山の下に駆け寄っていった。

「……レイちゃん。」
 剣山は、椅子から倒れたままの体勢で、レイを足元から見上げる形で話し掛けた。

「……どうしたの?汗びっしょりだよ。」
「いや……大丈夫だドン。」
 剣山は、ゆっくりと起き上がり、倒したパイプ椅子を元に戻し、座り直した。

「……剣山先輩……。ボクとのデュエルが終わってから、様子が変だよ……。」
 そう言いながら、レイは、右手を剣山の左肩にやさしく置き、剣山の顔をのぞき込んだ。
しかし、剣山は……



「う……うるさいザウルス!!」
と声を張り上げながら、力任せに左腕を上げ、レイの右手を払い除けた!

「きゃあああぁぁぁ!!」

 その行為によって、剣山の左手がレイの頬に当たり、レイは張り倒されてしまった……。
そしてその拍子に、左手に持っていた、弁当箱を包んだふろしきを、床に落としてしまった……。



「……本当は、俺の事なんて、心配していないんだろザウルス!あんな恐い思いをさせた俺の事なんて!」
 剣山は、レイに背中を向けながら、大声で話し……

「……そんな上辺だけの心配なら、してもらわない方がましだドン!!」
……自分の気持ちを吐き捨てるようにレイにぶつけた……。
すると、レイの右手がわなわなと震え……









パシッ!!

……と、剣山の首を右手で平手打ちした!



「な、何するド…ン………」
 剣山は、怒りながら後ろを向いたが、平手打ちをしたレイの目から涙がこぼれている様子を見ると、声を詰まらせた……。

「……どうして……どうしてそんな事言うの?」
 レイは、うつむき、声を震わせながら話した……。









「――バカァッ!!」
 一言そう叫び、剣山のいる部屋から、泣きながら走り去ってしまった……。











「(バカッ!……剣山先輩のバカッ!!)」
 レイは、デュエルアカデミアの廊下を、目を閉じ、前を見ずに走っていたら……

「え?……ちょっ…止まっ……」

ボカッ!

曲がり角から1人の少女が歩いてきたのに気付かず、お互いに強く頭をぶつけてしまった……。









「……っ痛〜〜……」
 レイは、自分の頭を押さえ、苦痛に表情を歪めていた。

「ご、ゴメンなさい……。大丈……」
 と、ぶつかった少女に詫びようとしたが、その少女の服装に驚いてしまった……。
その少女は、黒色のロングヘアーで、2つの紫のリボンを着け、すその辺りが白いフリルになっている黒いドレスを着、首、二の足に、フリルの付いたゴムバンドを着け、手首に黒い布を巻いていると言う、明らかにデュエルアカデミア本校の制服とは違った物だった……。

「ねえ……君って、この学校の生徒じゃ……」
「お願い!……ここでアタシに会ったこと、誰にも話さないで!」
 少女は、頭を下げて両手を胸の前で合わせ、レイにお願いした。

「……どうして?」
「……騒ぎを起こしたくないから……そうとしか言えないわ。」
 少女は、少し小さな声で話した。



「(もしかして……この子……)」
 レイは、何かを思い出し……少女の方を見た。

「……分かった。誰にも言わない。……でも、これだけは言わせて。」
「……何?」

「……ちゃんと、自分の思いは一途に伝えないと、相手に思いは伝わらないよ。」
「??」
 少女は、レイの突然の一言に、キョトンとした表情をしていたが……

「……ありがとう。」
 そう一言いい、廊下を走っていった……。











――数分後……デュエルアカデミア本校のリラックスルームにて……

「ひいぃぃぃ……辛いドン……。」
 剣山は、レイからもらった(と言うより、レイが置いていった)エビチリ弁当を食べながら、素直な感想を言った。

「(俺は……甘いザウルス……。)」
 しかし、心の中では、自分の心と弁当の味を対比させ、少し気落ちしていた……。
その時、剣山は、棚の上に置かれていたガラスケースに目が行った。

「……ん?おかしいドン……。何で」
 剣山は、人形が入っていたはずなのに、いつの間にか空っぽになっているガラスケースのそばに駆け寄った。

「……トランシーバー?何でこんな物がケースに入っているんだドン?」
 駆け寄った後、すぐさまガラスケースをカポッと持ち上げ、中のトランシーバーを手に取った。
すると……









ピピピピピ……ピピピピピ……

「ぐわわっ!な、何でいきなり着信音が鳴るザウルス!?」
 突然鳴りだしたトランシーバーに驚き、剣山は事の勢いでトランシーバーの通話ボタンを押した。

「はい、もしもし?」
『……剣山君?』
「……!!」
 剣山は、トランシーバーから聞こえてきた声に、また驚いた。……以前に、このデュエルアカデミアで聞いたことがある声だからだ……。

「……な、何の様ザウルス?」
『……話したいことがあるの。森の……アタシと別れた場所に、来てくれない?……あなたが剣山君なら、分かるはずよ……。』


ピッ。



「(まさか……そんなはずは無いドン!なぜ、あの子が……)」
 剣山は、まさかとは思いながら、半信半疑で森の中へと走っていった……。











「た…たしか……この辺りだったザウルス……。」
 途中で休まず、全力で走った剣山は、息を切らしながら森のある場所へと辿り着いた……。
その場所は、澄んだ水が蕩々と流れていて、周りの景色を、まるで鏡のように映し出していた……。

「さて……いったい、何の様ザウルス?――アリスちゃん!」
 剣山は、薄い水面に立っている、黒いドレスを着、水色の眼を持つ少女……アリスに話し掛けた。

「あなたを……助けるためよ。」
 アリスは、少しうつむきながら話した。

「た、助ける!?」
「……だって、剣山君……。3年生になってからのあなたは……、2年生までの、デュエルに希望を見出だすあなたとは違ったもの……。」
 アリスは、剣山に問い掛けるように話し……

「剣山君だけじゃない……。他の在校生も、新入生も、デュエルに対する思いが、目に見えて下がってきたの……。アタシは……、ガラスケースの中で、そんな様子を黙って見てるしかなかった……。」
うつむきながら、悔しそうな声で話していた……。


「……昨日の真夜中に、誰かがアタシの所にやってきたの……。その誰かは、アタシと外を隔てるガラスケースを取り払って……、アタシのお腹周りを片手でつかんで、そのまま持ち上げられたの……。」


「それから、その誰かがアタシの背中を触ったら、急に意識が遠くなって……気が付いたら、この状態で、床に横たわっていたの……。」


「その時……、アタシは思ったの。……これは、チャンスだって……。」
「チャンス……?」

「ええ……。これで、アタシと剣山君で、『希望のデュエル』ができるから……。」
「……無理ザウルス……。」
 アリスの言葉に対し、剣山はボソッと呟いた。

「俺なんかに……『希望のデュエル』ができるわけないドン!……仲間の気持ちも顧みず、力任せにねじ伏せ……相手に絶望を与えた、俺なんかに……」
「剣山君!」
 剣山が否定的な言葉を発している様子を見兼ねて、アリスは声をあげた。

「……アタシの知ってる剣山君は、そんな弱音は吐かないはずよ!…アタシの大好きな……剣山君は…………」
 アリスは、剣山からほんの少し目をそらしながら話した。

「アリスちゃん……。」
 アリスのそんな様子を見た剣山は、気持ちを落ち着かせて……


「……俺に、『希望のデュエル』ができるかどうかは、わからないザウルス……。」


「剣山君……。まだ、そんな……」
「違うザウルス!できないなんて、一言も言ってないドン!」
 剣山は、アリスの寂しそうな言葉を遮るように声を張り上げた。

「……正直、『希望のデュエル』がどんな物かは、俺にはよくわからないザウルス……。だが!どんなデュエルであっても、俺は全力で戦うドン!それが……『希望のデュエル』につながれば、いいと思うザウルス……。」
 剣山は、片手に握りこぶしを作りながら、自分の気持ちを語った。
その様子を見たアリスは、軽く微笑んで…

「……分かったわ。じゃあ、始めましょ。」
「おお!行くザウルス!!」









「「デュエル!!」」

先攻は、剣山だった。

「俺のターン!ドロー!手札から、『セイバーザウルス』を召喚するザウルス!さらにカードを1枚伏せ、ターンエンドン!!」
 剣山は、1ターン目は慎重にターンを終えた。

「アタシのターン、ドロー!……手札から、魔法カード『闇の誘惑』を発動。カードを2枚ドローして、手札の闇属性モンスターを1体ゲームから除外するわ。」
 アリスは、自分の手札をじっと見つめ、その内の1枚を自分のスカートのポケットにしまった。


闇の誘惑
通常魔法
自分のデッキからカードを2枚ドローし、その後手札から闇属性モンスター1体を
ゲームから除外する。手札に闇属性モンスターがない場合、手札を全て墓地へ送る。


「そして……モンスターを1体セットして、カードを3枚伏せて、ターンエンド。」


現在の状況
剣山 LP…4000
   手札…4枚
   場…セイバーザウルス(攻撃力1900・攻撃表示)
     伏せカード1枚
アリス LP…4000
    手札…2枚
    場…裏守備モンスター1体      
      伏せカード3枚


「俺のターン!ドロー!手札から、『暗黒ヴェロキ』を召喚するザウルス!」
 剣山の場に、黒色の皮膚を持った、小型の肉食恐竜が現われた。

「行くドン!『暗黒ヴェロキ』で、裏守備モンスターに攻撃!」
 『暗黒ヴェロキ』は、勢い良く突撃し、アリスの場の裏守備モンスター……『ドール・パーツ ブルー』を一撃で破壊した。

「……でも、『ドール・パーツ ブルー』が破壊されたことによって、この伏せカードが発動できるわ!伏せ罠カード『ネクロ・ドール・マイスター』を発動!この効果で、デッキから『ドール・パーツ ピンク』、『ドール・パーツ レッド』を守備表示で特殊召喚!」
 そう言うと、アリスの場に、所々ひび割れた、マネキンの胴体と脚部のようなものが現われた。


ネクロ・ドール・マイスター
通常罠
自分フィールド上の「ドール・パーツ」と名のつくモンスターが
戦闘で破壊された時発動できる。
自分のデッキにある「ドール・パーツ」と名のつくモンスター2体を
自分フィールド上に特殊召喚する。


「まだザウルス!『セイバーザウルス』で、『ドール・パーツ ピンク』に攻撃!」
 『セイバーザウルス』は、剣のような角で、マネキンの胴体――『ドール・パーツ ピンク』を突き崩した!

「カードを1枚伏せ、ターンエン……」
「待って!このタイミングで、伏せ罠カード『オーバーリミット』を発動するわ!ライフを500払って……この効果で、このターンに戦闘破壊された通常モンスター……『ドール・パーツ ブルー』、『ドール・パーツ ピンク』を守備表示で特殊召喚するわ!」(アリスLP 4000→3500)
 そう言うと、砕け散ったマネキンの頭部と胴体の破片がくっついていき……元の姿に再生した!


オーバーリミット
通常罠
500ライフポイントを払う。
このターン戦闘で破壊された攻撃力1000以下の通常モンスターを、
可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する。


「なるほど……。ターンエンドン。」

「アタシのターン、ドロー!伏せ罠カード『闇次元の開放』を発動!除外された、『ドール・パーツ ゴールド』を特殊召喚するわ!」
 アリスは、先程自分のスカートのポケットにしまっておいたカードを取り出してデュエルディスクに置くと、所々ひび割れた、マネキンの腕のようなものが現われた。


闇次元の開放
永続罠
ゲームから除外されている自分の闇属性モンスター1体を選択し、
自分フィールド上に特殊召喚する。
このカードがフィールド上から離れた時、
そのモンスターを破壊してゲームから除外する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。


「場に4体の『ドール・パーツ』が並んだ……?いったい何をする気ザウルス?」
「見せてあげるわ!アタシの『ドール・パーツ』達は、攻撃力・守備力は0で、レベルも1の通常モンスター……。でも、このカードを使えば、『ドール・パーツ』達は真の力を発揮するわ!」
 そう言いながら、アリスは、手札のカード1枚を剣山に見せた。









「『トライアングル・パワー』……発動!」

カッ!

 突然、アリスの場の『ドール・パーツ』4体に三角の光の帯が重なると……『ドール・パーツ』の周りに激しいオーラが発生して、攻撃力・守備力が大幅に上がった!


トライアングル・パワー
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する、
全てのレベル1通常モンスター(トークンを除く)の
元々の攻撃力と守備力は2000ポイントアップする。
エンドフェイズ時に自分フィールド上に存在する
レベル1通常モンスターを全て破壊する。


ドール・パーツ・ゴールド 攻撃力0→2000
ドール・パーツ・ピンク 攻撃力0→2000
ドール・パーツ・ブルー 攻撃力0→2000
ドール・パーツ・レッド 攻撃力0→2000

「行くわよ!アタシの場の『ドール・パーツ』達をすべて攻撃表示にして……『ドール・パーツ ゴールド』で、『暗黒ヴェロキ』に攻撃!」
 『ドール・パーツ ゴールド』は、油が切れた機械のようにギシギシと音を立てながら、『暗黒ヴェロキ』につかみかかった!

「ぐっ……『暗黒ヴェロキ』は、攻撃するときは攻撃力が400ポイントアップする代わりに、攻撃されるときは攻撃力が400ポイントダウンするドン……。」
 『暗黒ヴェロキ』は、2本の前脚を『ドール・パーツ ゴールド』につかまれ、そのまま地面に叩きつけられた!


暗黒ヴェロキ
地 レベル4
【恐竜族・効果】
このカードは相手モンスターに攻撃する場合、
ダメージステップの間攻撃力が400ポイントアップする。
このカードは相手モンスターに攻撃された場合、
ダメージステップの間攻撃力が400ポイントダウンする。
攻撃力1800 守備力300


「ぐっ……『暗黒ヴェロキ』の攻撃力は1400にダウンしちまったから、俺は600ポイントのダメージを受けるザウルス……。」(剣山LP 4000→3400)
 剣山は、残念そうに語った。

「次は『ドール・パーツ ピンク』で、『セイバーザウルス』に攻撃!」
 『ドール・パーツ ピンク』は、先程破壊された恨みともとれる体当たりを放ち、『セイバーザウルス』を打ち倒した!

「ぐっ!」(剣山LP 3400→3300)

「まだよ!『ドール・パーツ レッド』で、剣山君にダイレクトアタック!」
 『ドール・パーツ レッド』は、ギシギシと音を立てながら、剣山に渾身の蹴を剣山の腹に食らわせた!

「ぐうぅっ!!……さすがだドン!アリスちゃん!」(剣山LP 3300→1300)
 致命的な一撃を食らいながらも、剣山は面白みを感じているような表情でアリスと向き合っていた。

「(あの目……大丈夫!剣山君は、たとえ負けても、希望を失うデュエリストじゃ無い!)」
 アリスは、剣山の表情に少し安心しながら……



「……『ドール・パーツ ブルー』で、剣山君にダイレクトアタック!」
 『ドール・パーツ ブルー』は、口を開き、全身を使って剣山に突撃した!

「リバースカード、オープン!!」









「……さすがね、剣山君。」
「いや……アリスちゃんも、凄いザウルス!一瞬で、俺のライフがギリギリまで削られてしまったドン!」
 剣山は、伏せておいたカードを表にしながら、アリスに話し掛けていた。

「俺が発動させたカードは……『生存本能』!俺は、このカードで墓地の恐竜族モンスター……『暗黒ヴェロキ』と『セイバーザウルス』を除外し、ライフを800ポイント回復したザウルス!!」
 剣山は、自信満々に語った。


生存本能
通常罠
自分の墓地に存在する恐竜族モンスターを任意の枚数選択しゲームから除外する。
除外した恐竜族モンスター1枚につき、自分は400ライフポイント回復する。


剣山LP 1300→2100→100

「メインフェイズ2に入るわ。カードを1枚場に伏せて、ターンエンドね。このタイミングで、アタシの場の『ドール・パーツ』達は、『トライアングル・パワー』の効果で、破壊されるわ……。」
 アリスがそう語ると、4体の『ドール・パーツ』は、あふれ出る力に耐え切れず、粉々に砕け散ってしまった……。


現在の状況
剣山 LP…100
   手札…3枚
   場…伏せカード1枚
アリス LP…3500
    手札…1枚
    場…伏せカード1枚


「俺のターン!ドロー!……『俊足のギラザウルス』を、攻撃表示で特殊召喚するドン!」
 剣山の場に、小型の恐竜が素早く現われた。

「『俊足のギラザウルス』が、自身の効果で手札から特殊召喚された時、相手は墓地からモンスターを1体特殊召喚できるザウルス!さあ、アリスちゃん!どのモンスターを蘇生させるドン?」
「アタシは……『ドール・パーツ ピンク』を蘇生させるわ!」
 剣山の場に『俊足のギラザウルス』が出現したことに釣られて、アリスの場に、マネキンの胴体が現われた。


俊足のギラザウルス
地 レベル3
【恐竜族・効果】
このモンスターの召喚を特殊召喚扱いにする事ができる。
特殊召喚扱いにした場合、相手の墓地から相手は
モンスター1体を特殊召喚する事ができる。
攻撃力1400 守備力400


「さらに、『俊足のギラザウルス』をリリースし、『暗黒ドリケラトプス』を召喚するザウルス!」


「『暗黒ドリケラトプス』は、攻撃力2400で貫通能力を持つ、強力なモンスターだドン!『ドール・パーツ ピンク』の守備力は0……『暗黒ドリケラトプス』の攻撃が通れば、アリスちゃんに2400ポイントのダメージを与えることができるザウルス!」
 剣山は、自分が召喚した『暗黒ドリケラトプス』の効果を、長々と語った。


暗黒ドリケラトプス
地 レベル6
【恐竜族・効果】
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
このカードの攻撃力が守備表示モンスターの守備力を越えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
攻撃力2400 守備力1500


「バトルフェイズに入るドン!『暗黒ドリケラトプス』で、『ドール・パーツ ピンク』に攻撃!」
 『暗黒ドリケラトプス』は、その巨体を活かして、アリスの場の『ドール・パーツ ピンク』を叩き潰そうとしたが……

「待って!伏せ罠カード『ガード・ブロック』を発動!この効果で、『暗黒ドリケラトプス』の貫通ダメージを無効にして、カードを1枚ドローするわ!」
 そう言うと、アリスの正面に不思議なバリアが発生して、『暗黒ドリケラトプス』の攻撃によって発生した衝撃を無効にした!


ガード・ブロック
通常罠
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。


「ぐっ……俺はこれで、ターンを終了するザウルス……。」
 剣山は、少し残念そうにターンを終えた。

「(ゴメンね、剣山君……。アタシのコンボを成立させるためには、これ以上ライフを削るわけにはいかないの……。)……アタシのターン、ドロー!手札から、速攻魔法『手札断殺』を発動!お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地に送って、カードを2枚ドローするわ!」
 アリスと剣山は、自分の残り2枚の手札をすべて墓地に送り、新たにカードを2枚ドローした。


手札断殺
速攻魔法
お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする。


「そして……魔法カード『おろかな埋葬』を発動するわ!この効果で、デッキから『さまよいのビスクドール・アリス』を墓地に送るわ!」
 アリスは、自分の手札とデッキを見つめ、1枚のカードを捜し出して墓地に送った。


おろかな埋葬
通常魔法
自分のデッキからモンスター1体を選択して墓地へ送る。
その後デッキをシャッフルする。


「墓地に新たなカードを送った……?」
「ええ……。これで、揃ったわ……。やっと、この魔法カードを発動させる条件が!手札から、魔法カード……『終わりの始まり』――発動!」
 アリスは、手札に残ったたった1枚のカードを、小さな手で高く掲げ、大きな声を揚げ、デュエルディスクに差し込んだ!

「お……『終わりの始まり』!?」
「ええ……。このカードは、アタシの墓地に7体以上の闇属性モンスターが存在するとき、その内の5体を除外することで、デッキからカードを3枚ドローできるのよ!」
 アリスは、自信満々に語った。

「なっ……、3枚ドロー!?何て強力なカードだドン……。」
 剣山は、『終わりの始まり』の強力なドロー効果に感心していた……。


終わりの始まり
通常魔法
自分の墓地に闇属性モンスターが7体以上存在する場合に発動する事ができる。
自分の墓地に存在する闇属性モンスター5体をゲームから除外する事で、
自分のデッキからカードを3枚ドローする。


「アタシは……『さまよいのビスクドール・アリス』、『ドール・パーツ ゴールド』、『ドール・パーツ ピンク』、『ドール・パーツ ブルー』、『ドール・パーツ レッド』をゲームから除外して、カードを3枚ドローするわ!」
 アリスは、5枚のカードを剣山に見せてからスカートのポケットにしまい、カードを3枚ドローした。

「そして……これがアタシの切り札を高速召喚するための第2の布石よ!手札から、魔法カード『次元融合』を発動!」
「『次元融合』!?確か、そのカードは、2000ライフ払って、お互いに除外されたモンスターを……」
「可能なかぎり特殊召喚する魔法カードよ……。」(アリスLP 3500→1500)
 そう言いながらアリスは、先程スカートのポケットにしまったカードを取り出した。


次元融合
通常魔法
2000ライフポイントを払う。
お互いに除外されたモンスターをそれぞれのフィールド上に可能な限り特殊召喚する。


「戻ってきて!『さまよいのビスクドール・アリス』!『ドール・パーツ ゴールド』!『ドール・パーツ ピンク』!『ドール・パーツ ブルー』!『ドール・パーツ レッド』!みんな守備表示よ!」
「待つザウルス!俺も、『生存本能』の効果で、2体の恐竜さんを除外していたんだドン!出ろ!『セイバーザウルス』!『暗黒ヴェロキ』!!ここは、両方とも守備表示で行くザウルス!」
 アリスの発動させた『次元融合』によって、お互いの場に合計7体のモンスターが特殊召喚された!
しかし、アリスの場のモンスターは、剣山の場のどのモンスターにも及ばないが……

「これで……揃ったわ。手札から、魔法カード……『マリオネットの埋葬』を発動!」
「『マリオネットの埋葬』!?いったい何だドン!そのカードは!!」
 剣山は、アリスの発動させたカードに驚いていた……。

「このカードは、アタシの場に『さまよいのビスクドール・アリス』が存在するときに発動できるカードよ。この効果で、アタシの場の『ドール・パーツ ゴールド』、『ドール・パーツ ピンク』、『ドール・パーツ ブルー』、『ドール・パーツ レッド』をリリースすることで……デッキから、『ドールキメラ』を特殊召喚することができるのよ!」
 そう言うと、アリスの場の4体のマネキンの形をしたパーツが光の粒子となって消え去り……その粒子が一点に収束していき、1体の巨大な、朽ち果てた不気味なマネキンへと姿を変えた!
さらに……そのマネキンの背中には、新たな胴体と頭部が付着し、さらに不気味さを増した!


マリオネットの埋葬
通常魔法
「さまよいのビスクドール・アリス」が自分フィールド上にいる時、自分フィールド上の
「ドール・パーツ ゴールド」「ドール・パーツ ピンク」「ドール・パーツ ブルー」
「ドール・パーツ レッド」をリリースし、デッキから「ドールキメラ」を特殊召喚する。


「『ドールキメラ』は、元々の攻撃力は0だけど……墓地の『ドール・パーツ』と名のつくカード1枚につき、攻撃力が400ポイントアップするのよ!アタシの墓地に、『ドール・パーツ』は6体存在するから……攻撃力は2400にアップしたわ!」
 そう言うと、『ドールキメラ』をまとう不気味なオーラが強さを増し始めた!

ドールキメラ
闇 レベル5
【魔法使い族・効果】
このカードは通常召喚できず、「マリオネットの埋葬」の効果でのみ特殊召喚できる。
このカードは墓地の「ドール・パーツ」と名のつくカード1枚につき、
攻撃力が400ポイントアップする。
このカードが破壊される時、「ドール・パーツ」と名のつくカードを
2枚デッキから墓地に送ることで、破壊を無効にする。
攻撃力0 守備力0


ドールキメラ 攻撃力0→2400

「なっ……いつの間に、2枚の『ドール・パーツ』を余分に墓地に送ったザウルス!?」
「さっきの『手札断殺』の効果で、『ドール・パーツ ブルー』と『ドール・パーツ ピンク』を墓地に送っていたのよ。……と言うより、そこで墓地に送ってないと、『終わりの始まり』も発動できなかったでしょ。」
「そうだったのかドン……。あまりに自然すぎて、気付かなかったザウルス!!」
 剣山は、アリスの戦法に再び感心していた。

「行くわよ!『ドールキメラ』で、『暗黒ドリケラトプス』を攻撃!」
 『ドールキメラ』は、まるでマリオネットのようにギクシャクした動きで『暗黒ドリケラトプス』に突撃した!
しかし、攻撃力はどちらも2400だったため、『暗黒ドリケラトプス』も全力で『ドールキメラ』に突撃し、激しい音を立ててお互いに砕け散った!

「……でも、『ドールキメラ』は、簡単には破壊されないわ!デッキから、『ドール・パーツ』と名のつくカード2枚を墓地に送ることで、破壊を無効にするのよ!アタシは……『ドール・パーツ ゴールド』と『ドール・パーツ レッド』を墓地に送るわ!」
 アリスは、デッキから2枚のカードを捜し出し、墓地に送った。

「さらに……『ドールキメラ』は、墓地の『ドール・パーツ』の枚数×400ポイント攻撃力がアップする……その意味が分かるでしょ?」
「ああ……デッキ内に『ドール・パーツ』がある限り破壊を免れる……なかなかやっかいなモンスターだドン……。」
 剣山がそう呟くと、『ドールキメラ』の体に新たな手足が挿入され、攻撃力が高まった!

ドールキメラ 攻撃力2400→3200

「アタシは……これでターンエンドね。」


現在の状況
剣山 LP…100
   手札…2枚
   場…セイバーザウルス(守備力500・守備表示)
     暗黒ヴェロキ(守備力300・守備表示)
     伏せカード1枚
アリス LP…1500
    手札…1枚
    場…ドールキメラ(攻撃力3200・攻撃表示)
      さまよいのビスクドール・アリス(守備力1000・守備表示)


「俺のターンザウルス!ドロー!『暗黒ヴェロキ』をリリースし……出るドン!『クエイクザウルス』!!」
 そう言うと、剣山の場に、全身が薄い茶色で、太い4本の足を持った鈍重そうな恐竜が現われた!

「『クエイクザウルス』は、召喚・反転召喚・特殊召喚された時、場のモンスターを好きなだけ守備表示にできるザウルス!!この効果で……『ドールキメラ』を守備表示に変更するドン!!」
 『クエイクザウルス』が大きな足で地響きを起こすと……『ドールキメラ』はバランスを崩し、地にへたばる形になった!


クエイクザウルス
地 レベル6
【恐竜族・効果】
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、
フィールド上に表側表示で存在するモンスターを
任意の数だけ選択して表示形式を変更することができる。
攻撃力2300 守備力1800


ドールキメラ 守備力0

「しまった!『ドールキメラ』は、いくら攻撃力がアップしても守備力は0だから……」
「簡単に戦闘で勝てるようになるザウルス!行くドン!『セイバーザウルス』で、『ドールキメラ』に攻撃!」
 『セイバーザウルス』は勢い良く突撃し、大地にへばりつく『ドールキメラ』を粉々にした!

「うっ……『ドールキメラ』の効果発動!デッキから『ドール・パーツ ブルー』と『ドール・パーツ ピンク』を墓地に送って、破壊を無効にするわ!」
 アリスがそう言うと、『ドールキメラ』の背中にさらにマネキンの胴体と頭部が付着し、攻撃力を高めた!

ドールキメラ 攻撃力3200→4000

「だが!いくら攻撃力がアップしても、守備力は0のままザウルス!『クエイクザウルス』で、『ドールキメラ』に攻撃!」
 『クエイクザウルス』は、力強い突撃を放ち、『ドールキメラ』を粉砕した!

「まだよ!『ドールキメラ』の効果!デッキから『ドール・パーツ ゴールド』、『ドール・パーツ レッド』を墓地に送って、破壊を無効に!」
 そう言うと、『ドールキメラ』にさらに両腕と両足が付着して、攻撃力がとんでもない値に変化した!

ドールキメラ 攻撃力4000→4800

「攻撃力4800……ここからが正念場だドン!カードを2枚場に伏せ、ターンエンド!」
 剣山は、新たなカードを伏せ、ターンを終えた。

「アタシのターン!ドロー!」
 アリスは、ドローしたカードを確認して、少しだけ肩を落とした。

「(今のアタシの手札には、使用可能なカードが無い……。)……『ドールキメラ』を攻撃表示にして……」
 『ドールキメラ』は、自分の体をボロボロにした『クエイクザウルス』に、恨みを持っているかのように攻撃しようとしたが……

「このタイミングで、伏せ罠カード『威嚇する咆哮』を発ドン!このターンの攻撃宣言は行えなくなるザウルス!!」
 そう言うと、剣山の場の恐竜達が激しい雄猛びをあげ……『ドールキメラ』を威圧し、攻撃を躊躇わせた!


威嚇する咆哮
通常罠
このターン相手は攻撃宣言をする事ができない。


「『ドールキメラ』が……攻撃できない?これでターンエンドね……。」


現在の状況
現在の状況
剣山 LP…100
   手札…2枚
   場…セイバーザウルス(攻撃力1900・攻撃表示)
     クエイクザウルス(攻撃力2300・攻撃表示)
     伏せカード2枚
アリス LP…1500
    手札…2枚
    場…ドールキメラ(攻撃力4800・攻撃表示)
      さまよいのビスクドール・アリス(守備力1000・守備表示)


「俺のターン!ドロー!さらに伏せ罠カード『無謀な欲張り』を発動して、カードを2枚ドローするドン!」
 剣山は、ドローフェイズ時のドローと『無謀な欲張り』の効果で、一気に手札を4枚まで増やした。


無謀な欲張り
通常罠
カードを2枚ドローし、以後自分のドローフェイズを2回スキップする。


「行くザウルス!『セイバーザウルス』と『クエイクザウルス』をリリースし……これが俺のエースモンスター……『ダークティラノ』だドン!!」
 剣山の場の2体の恐竜が姿を消すと……茶色の皮膚をして、オートゾックスな見た目の肉食恐竜……『ダークティラノ』が、姿を現わした!

「これでやっと、発動条件を満たしたザウルス!手札から、魔法カード『貪欲な壺』を発ドン!!墓地の『暗黒ヴェロキ』、『セイバーザウルス』、『暗黒ドリケラトプス』、『クエイクザウルス』、『究極恐獣』をデッキに戻し、カードを2枚ドロー!」
「え!?いつの間に『究極恐獣』を墓地に……考えられるのは、アタシの『手札断殺』の効果で…ね……。」
 剣山は、デッキを念入りにシャッフルして、祈るようにカードを2枚ドローした。


貪欲な壺
通常魔法
自分の墓地に存在するモンスター5体を選択し、
デッキに加えてシャッフルする。
その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。


「(やっと来たドン!)まだまだ行くザウルス!手札から、装備魔法『進化する人類』を発ドン!『ダークティラノ』に装備させるザウルス!!」
「え!?どうして……」
 アリスは、剣山が取った行動に驚愕していた……。
なぜなら、『進化する人類』は、装備したモンスターの攻撃力を、発動者のライフが相手より上なら1000に、相手より下なら2400にする装備魔法……
そのため、元々の攻撃力が低いモンスターに装備させるのが自然だが……


進化する人類
装備魔法
自分のライフポイントが相手より下の場合、
装備モンスターの元々の攻撃力は2400になる。
自分のライフポイントが相手より上の場合、
装備モンスターの元々の攻撃力は1000になる。


「(『ダークティラノ』の元々の攻撃力は2600……今は剣山君のライフがアタシより少ないから、『進化する人類』の効果で攻撃力は2400にダウンしちゃうのに……。)」
「行くドン!『ダークティラノ』で、『ドールキメラ』に攻撃!レックス・ボンバー!!」
 『ダークティラノ』は、弱体化しながらも、果敢に攻撃力が倍の『ドールキメラ』に突撃した!

「攻撃力2400の『ダークティラノ』で、攻撃力4800の『ドールキメラ』に攻撃?どう言う……」
 アリスは、何かを思い出したのか、急に口が止まった……。



「2400……4800……まさか!剣山君の手札には!!」
「その通りザウルス!速攻魔法『バトル×2(バイツー)』を発ドン!!『進化する人類』によって元々の攻撃力が2400になった『ダークティラノ』の攻撃力を、倍にするザウルス!!」
 すると、剣山の『ダークティラノ』の体が突然巨大化し……『ドールキメラ』の攻撃力と並んだ!


バトル×2(バイツー)
速攻魔法
戦闘する相手モンスターの攻撃力が自分の攻撃モンスターの2倍以上の時、自分の攻撃モンスターの元々の攻撃力を2倍にする。


ダークティラノ 攻撃力2400→4800









「食らえぇぇぇ!!スーパー・レックス・ボンバー!!!」
 『ダークティラノ』は、巨大化した体のすべてを使い……『ドールキメラ』と、爆音を立てて相討ちした!

「くぅぅぅ!……『ドールキメラ』の破壊を無効にするための『ドール・パーツ』は、もうデッキに残っていないから、『ドールキメラ』は破壊されるわ……。でも、これで剣山君の場にモンスターは……」
 そう言っている間に、剣山の場に、墓地から伸びる謎の綱が現われた!



「そ…それは……?」
「『ダークティラノ』が戦闘破壊された時、俺はこのリバースカード……『命の綱』を発動させたんだドン!!俺の恐竜さんは不滅ザウルス!!手札をすべて捨て……蘇れ!『ダークティラノ』!!」
 そう言うと、剣山の墓地から、『命の綱』を手繰り寄せて『ダークティラノ』が、力を高めた状態で蘇った!


命の綱
通常罠
自分モンスターが戦闘によって墓地に送られた時に、手札を全て捨てて発動する。
そのモンスターの攻撃力を800ポイントアップさせて、フィールド上に特殊召喚する。


ダークティラノ 攻撃力2600→3400

「攻撃力3400……?でも、アタシの場には守備表示の『さまよいのビスクドール・アリス』がいるから、まだ凌げる……」
「いいや!『ダークティラノ』は、相手モンスターがすべて守備表示の場合、直接攻撃ができるドン!」
「ええっ!?」




「トドメの一撃ザウルス!!『ダークティラノ』で、アリスちゃんにダイレクトアタック!」









「(凄いわ……剣山君……。ライフポイントはたったの100なのに、どんなに強力なモンスターを出されても……打ちのめされず、最後までデュエルを諦めてない……。)」
 アリスは、剣山の粘り強さ・戦略を、素晴らしいものだと感じていた……。









「(勝っても負けても……最後まで諦めない……。それが……あの人に教えてもらった、『希望のデュエル』……)」









「――レックス・ボンバー!!!」

アリスLP 1500→0











「アリスちゃん……。これで……よかったのかドン?」
「ええ……よかったと思うわ。剣山君……素晴らしいデュエルを、ありがとう。」
 アリスは、剣山に微笑みながら話し掛けた。



「……剣山君。……少しの間……10秒くらい、目を瞑っててくれない?」
「え?どうしてザウルス?」
「いいから……お願い……。」
「あ、ああ……。」
 剣山は、アリスの言葉を不可解に感じながらも、言われるがままに目を瞑った。









「(ごめんなさい……剣山君……。)」
 アリスは、自分の右手に巻いた布に、1つの封筒を挟み込んで……









「(……さようなら……。)」
 自分の背中を触り、背中に貼られていた何かを、勢い良く剥がした……。









「……10秒たったドン……。アリスちゃ…ん……?」
 剣山が目を開けると、人としてのアリスの姿はなく、足に、人形としてのアリスがもたれかかっていた……。

「そんな……嘘ザウルス……。……何で、アリスちゃんは……」
 そう言いながら足元のアリス人形を両手で抱き抱えようとしたとき、1つの封筒を見つけた……。

「これは……いったい……」
 そう言いながら封筒を開けると、その中には1枚の手紙と1枚のカードが入っていた……。
剣山は、その手紙を開き、黙読した……。









―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
剣山君……。こんな別れ方になってしまって、ごめんなさい……。
でも……アタシは人形の精霊……あなたとは一緒にいられないの……。
……あなたとのデュエルは、本当に楽しかった……。
またいつか会える時が来るまで……このカードを、アタシだと思って、持っていってくれない……?
そうすれば、アタシと剣山君は、いつも一緒にいられるから……。
最後に、1つだけ言わせて……。
あなたは、強いところもあれば弱いところもあるけど……自分の弱い部分に打ちのめされないで……。
アタシは……自分の弱さに打ち勝てる強さを持つ剣山君が……大好きだから……。

アタシの大好きな人――剣山君へ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――









手紙を読み終えた後、剣山の目から涙が溢れてきた……。

「アリスちゃん……見守っていてほしいドン……。俺は……どんなに苦しくても、自分を見失いそうになっても……絶対、希望を捨てないザウルス!!」
 剣山は、アリス人形を両手で抱え、何かを振り切るかのようにそう叫んだ……。











デュエルアカデミア・デュエル場へと続く通路にて……

「……あっ、剣山先輩……。」
「レイちゃん……。」
 通路で出会った剣山とレイは、先程のことが後ろめたかったのか、少し戸惑いながら話し合った。

「……ゴメンなさい……。あの時、ボクは、剣山先輩の気持ちも顧みないで……」
「いや。……もう、あの時のことは、水に流した方がいいザウルス。元々あれは、俺の心の弱さから始まったことだドン。」
 剣山は、レイの弱気な言葉をさえぎり、やさしく話し掛けた。


「……剣山先輩。次の試合も、頑張ってね。」
「ああ!当然ザウルス!レイちゃんにも、俺の試合を、しっかりと見ていてほしいドン!」
 剣山は、自分の左手にデュエルディスクをつけ、意気揚揚とデュエル場へと歩いていった……。









「(強いなあ……剣山先輩は。……ボクも……頑張らないと……。)」
 レイは、そんな剣山の後ろ姿を、尊敬の眼差しで見つめていた……。











「(アリスちゃん……アリスちゃんが思い出させてくれたデュエルに希望を見いだす心……俺はもう、忘れないザウルス!!)」
 剣山は、デュエル場で待っていた対戦相手の下に歩いていき……
「……さあ!デュエルを始めるドン!」



第二十四話 蘇る死者

「食らえ!スカイスクレイパー・シュート!」
「キ…キ…キィィィィィィィ オ…オレの『スパイラルドラゴン』がぁぁぁぁぁ……ぜ……ぜん…め…めつめつめつ…」(海瀬LP 3100→0)

 カムイは、軽く海瀬と言うデュエリストを倒した……。











「さて、海瀬。スターチップを渡してもらうッスよ。」
「オレが…負けた… オレの最強を誇るデッキ…最強の『スパイラルドラゴン』… オレの戦術に非はなかった…全てにおいて完璧な手札が揃っていたはず… だが…負けた…」
「……?」
 カムイは、茫然とつっ立ちながら口にする海瀬の言葉の意味を、まったく理解できなかった……。

カムイ スターチップ4個→5個
海瀬 スターチップ1個→0個(失格)











「ふう……。たった1個しか手に入らなかったッスね……。これから1時間、デュエルは行えないんスよね……。」
 カムイは、ルールによるデュエルの誓約を、窮屈に考えていた……。

「それに……もう2時なんスよね……。売店も他の参加者に抑えられてるし……何か食べるものを用意しとく必要があったッスね……。」
 自分の持ち物を確認しながら、カムイはため息をついた……。



「……ん?なんスか?この食欲をそそるような匂いは……」
 カムイは、何かの匂いが発生している場所に、自然に――匂いに釣られているように思われないように――歩いていった。











「えーと……この辺りだと思うんスよね……。」
 カムイは、食欲をそそるような匂いの発生源を突き止めようと、慎重に辺りを見渡していた……。


「カムイ。こっちだこっち。」
「ん?誰ッスか?」
 声のした方を見ると、カッターシャツに黒色のベストを着た青年……コウジがいた。

「コウジ……いったい何をしてるんスか?」
「こっち来てみなよ。分かるからさ。」
 コウジに言われるままにカムイはついていくと、コウジのつれていった場所では、なぜかハヤシライスソースが4分目まで入った鍋が煮込まれていた……。

「コウジ……この鍋、いったい何なんスか?」
「ああ、ハヤシライスだよ。この匂いに釣られて、お腹を空かせたデュエリストをおびき寄せようと思ってね。」
「お、おびき寄せる……それって、人を昆虫扱いしてないッスか?」
 カムイは、コウジの懸命なのかはたまた愚策なのか、良く分からない作戦に、少し戸惑っていた……。









「……で、誰か来たんスか?」
「ああ、3人は来たよ。その内の1人は簡単に倒せたけどね。」
 コウジは、自信満々に語った。

「で、俺はコウジの手招きで飯を食わせてもらってるわけだ。」
「おっ、センリも来てたんスね。……で、もう1人は誰なんスかね……。」
 カムイは、あと1人の正体について疑問に思っていた……。


「もう1人かい?……そいつは、『お腹ペコペコでもう1歩も歩けないよ〜……。』とか言いながら僕の所に来たから、ハヤシライスを振る舞ってやったんだけど……もう食べるわ食べるわで、鍋の中のハヤシライスを半分くらいペロリと平らげてしまったからね……。」
 コウジは、少し何かを警戒するように話した。

「半分……相当多いッスよね。」
「だろ?」
 カムイは、誰のことなのか一瞬で推測したが、深くは追求せずに話を終えた。

と、カムイ達が楽しそうに会話している間に……









「……やっと見つけたぜぇぇぇぇ!!」
 白衣を着た男が、妙な叫び声をあげながら、木の上から落下してきた……。

「だ……大丈夫ッスか?」
 カムイは、木から落下して全身を強打した男の事を心配そうに見ていた……。

「お……おれは石谷(いしや)だ!ぐっ……カムイ!おれとデュエルし……」
「おいおい……。さっさと保健室行った方がいいんじゃねえのか?」
 よろめきながら立ち上がる石谷に対し、センリが話し掛けた。

「だ……大丈夫だ!」
「……とは言っても、オレ、今チャージタイムに入ってるから、デュエルできないんスよね……。」
 カムイは、少し残念そうに答えた。



ルール2・デュエル終了後1時間は、チャージタイムとなり、デュエルを行うことができない。



「な、何だとぉぉぉぉ!……誰かデュエル可能な奴はいねえのか!?」
「ああ、俺なら大丈夫だぜ。」
 センリは、さらえた皿をコウジに渡し、デュエルディスクを構えた。

「なるほど……お前の名前は!?」
「俺は……センリだ。」
 センリは、軽く答えた。

「スターチップは……2個掛けてもらうぜ!」
「分かったぜ!……さあ、デュエル開始だ!」
 センリと石谷は、お互いに向かい合ってデュエルディスクを構え……









「「デュエル!」」











「石谷……いったいどんなデッキを使うんスかね?」
「さあ……分からないな。……そうだ。ハヤシライスでも、今の内に食べておくかい?」
「ああ、そう言うなら、もらうッスね。」
 カムイは、コウジからハヤシライスが盛られた皿を受け取り、スプーンでハヤシライスをすくって口に運んだ。

「なるほど……。中々美味いッスね。」
「だろ?」
 コウジの作ったハヤシライスの味に、カムイは感心していた。











「……俺のターン、ドロー!」
先攻は、センリだった。

「……『ピラミッド・タートル』を、攻撃表示で召喚!」
 センリの場に、ピラミッド型の甲羅を背負った亀が、攻撃態勢を取りながら現れた。

「カードを2枚場に伏せ、ターンエンド!」

「(アンデット族……墓地利用デッキ使いか!お前にとって、おれのデッキは最悪の相性になるだろうぜ!)」
 石谷は、余裕の笑みを浮かべながら……

「おれのターン、ドロー!モンスターをセットし、カードを3枚場に伏せ、ターンエンド!」
 慎重にターンを終了した。


現在の状況
センリ LP…4000
    手札…3枚
    場…ピラミッド・タートル(攻撃力1200・攻撃表示)
      伏せカード2枚

石谷 LP…4000
   手札…2枚
   場…裏守備モンスター1体
     伏せカード3枚


「俺のターン、ドロー!手札から、『馬頭鬼』を攻撃表示で召喚するぜ!」
 そう言うと、新たに馬の頭をして、持ち手が骨でできた斧を持った妖怪みたいなモンスターが現れた。

「さらに俺は、伏せ罠カード……『最終突撃命令』を発動しておくぜ!」
 センリが、前のターンに伏せておいたカードを表にすると、場に何やら好戦的な空気が流れてきて、センリの場の『ピラミッド・タートル』と『馬頭鬼』が戦闘態勢を取り始めた!

「『最終突撃命令』が発動している間、場の表側表示モンスターは、すべて攻撃表示になるんだぜ!行くぜ!『ピラミッド・タートル』で、裏守備モンスターに攻撃!」
 『ピラミッド・タートル』は、全身を使って、石谷の場の裏守備モンスターに突撃しようとするが……

「待った!このタイミングで、おれは伏せ罠カード……『DNA定期健診』を発動するぜ!」
その裏守備モンスターの正面に、黄色、紫色、赤色、水色、黒色、緑色の球体が現れた!

「な、何だそれは!?」
「『DNA定期健診』は、お前にクイズを出すカードだぜ!お前は6つの属性の内から2つを選び、選んだ属性とおれの裏守備モンスターの属性が一致しなかった場合、おれが2枚ドロー……一致した場合、お前が2枚ドローできるんだぜ!」
 石谷は、『DNA定期健診』の効果を長々と語った。


DNA定期健診
通常罠
自分フィールド上に裏側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
相手はモンスターの属性を2つ宣言する。
選択したモンスターをめくって確認し宣言された属性だった場合、
相手はデッキからカードを2枚ドローする。
違った場合、自分はデッキからカードを2枚ドローする。


「なるほど……。なら俺は、地属性と闇属性を選ぶぜ!」
 そう言うと、黒色と紫色の球体が点灯し……赤色以外の球体が全て消え去った!

「残念だったな!おれの裏守備モンスターは……炎属性の『UFOタートル』だぜ!よって、カードを2枚ドローさせてもらうぜ!」
 石谷は、楽しそうにカードを2枚ドローした。

「……さらに、お前の『最終突撃命令』のおかげで、攻撃されることで表側表示になった『UFOタートル』は、攻撃表示になったぜ!『ピラミッド・タートル』の攻撃は止まらない……迎撃しろ!『UFOタートル』!」
「ちっ!」(センリLP 4000→3800)
 石谷の言葉通り、攻撃力1400の『UFOタートル』の体当たりによって、攻撃力1200の『ピラミッド・タートル』の甲羅は砕け散ってしまった……。


最終突撃命令
永続罠
このカードがフィールド上に存在する限り、
フィールド上に存在する表側表示モンスターは全て攻撃表示となり、表示形式は変更できない。


「だが、『ピラミッド・タートル』が戦闘破壊されたことによって、効果が発動するぜ!」
 センリがそう言うと、真っ二つに砕け散った『ピラミッド・タートル』の中から全身が頭蓋ででき、腹に赤色の球体を持った怪物……『龍骨鬼』が現れた!

「何ぃぃぃぃ!戦闘破壊したはずなのに、逆に大型モンスターが出て来たじゃねえか!お前、何しやがった!?」
「教えてやるぜ!『ピラミッド・タートル』が戦闘戦闘破壊された時の効果で、デッキから守備力2000以下のアンデット族モンスター……『龍骨鬼』を攻撃表示で特殊召喚したんだぜ!」
 センリは、自信満々に語った。


ピラミッド・タートル
地 レベル4
【アンデット族・効果】
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキから守備力2000以下のアンデット族モンスター1体を
自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。
攻撃力1200 守備力1400

龍骨鬼
闇 レベル6
【アンデット族・効果】
このカードと戦闘を行ったモンスターが戦士族・魔法使い族の場合、
ダメージステップ終了時にそのモンスターを破壊する。
攻撃力2400 守備力2000


「(ちっ……返り討ちに遭う事も、想定の範囲内だったって訳か!)おれは、2枚の伏せカード……『エレメンタル・アブソーバー』と、『DNA移植手術』を発動するぜ!」
 石谷が2枚の伏せカードを表にすると……センリの場に存在する4体のアンデット達の周りに赤色のオーラが現れ、さらに石谷の場に、赤色の棒でできたひし型の枠の様な物が4つ組み合わさった、不思議な装置が現れた!

「エ、『エレメンタル・アブソーバー』だと!どんな効果なんだ!?」
「『エレメンタル・アブソーバー』は、発動時に手札のモンスター1体をゲームから除外し……除外したモンスターと同じ属性のモンスターは、攻撃宣言を行えなくなるんだぜ!おれが除外したモンスターは、炎属性の『コマンド・ナイト』……よって、お前の炎属性モンスターは、攻撃宣言不可能になるぜ!」
 石谷は、自分の場に出現した謎の装置を指差しながら答えた。


エレメンタル・アブソーバー
永続罠
手札のモンスターカード1枚をゲームから除外する。
この効果によって除外したモンスターと同じ属性を持つ相手モンスターは、
このカードがフィールド上に存在する限り攻撃宣言をする事ができない。


「なるほど……。って事は、『DNA移植手術』で場のモンスターすべての属性を、炎属性に変えたわけだな。」
 センリは、右手を自分のあごの辺りに添えながら話した。


DNA移植手術
永続罠
発動時に1種類の属性を宣言する。
このカードがフィールド上に存在する限り、
フィールド上の全ての表側表示モンスターは自分が宣言した属性になる。


「これで攻撃不可能になっちまったか……。カードを1枚場に伏せ、ターンエンド!」
 センリは、残念そうにターンを終了した。

「おれのターン、ドロー!センリ!お前のアンデット族モンスターは、墓地が重要になるモンスターが多いんだろ!」
「まあ……それ位、俺の場のモンスターを見れば分かるよな。」
 センリは、当然だと言わんばかりの表情で石谷の言葉に返答した。


「……ならば、この魔法カードで、アンデット族が墓地に落ちるのを封じさせてもらうぜ!アンデット族を指定し、手札から、永続魔法……『DNA抹殺呪術』を発動!」
 石谷は、左手に持った手札から1枚のカードを右手に持ちかえ、左腕のデュエルディスクに差し込んだ。

「このカードが場に表側表示で存在する限り、発動時に宣言した種族のモンスターが墓地に送られる場合、墓地に行かずにゲームから除外されるようになるんだぜ!」
 石谷は、自分が発動した『DNA抹殺呪術』の効果を、笑いながら説明した。


DNA抹殺呪術
永続魔法
発動時に1つの種族を宣言する。
宣言した種族は、手札及びフィールドから墓地に送られる場合、
ゲームから除外される。


「くっ!俺のアンデット族が墓地に行かないのは、少々厳しいな……。」
「どうだ!だが、おれの『UFOタートル』は機械族だから、問題なく墓地に行くんだぜ!『UFOタートル』!『馬頭鬼』に攻撃しろ!」
 『UFOタートル』は、自分の甲羅のUFOに手足を引っ込め……無謀にも、自分より攻撃力の高い『馬頭鬼』に突撃した!

「なるほど。『UFOタートル』の効果を能動的に発動させるために、敗北覚悟で突撃させたか……。……迎撃しろ!『馬頭鬼』!!」
 『馬頭鬼』は、持っていた斧を力任せに振り下ろし、『UFOタートル』を、まるで蝿のように叩き落とした!

「ちっ……この程度なら許容範囲か……。」(石谷LP 4000→3700)
 石谷は、少し仰け反りながら話した。

「だが、これで『UFOタートル』の効果が発動するぜ!デッキから、攻撃力1500以下の炎属性モンスター……『超熱血球児』を攻撃表示で特殊召喚!」
 石谷がそう言うと、『UFOタートル』の甲羅のUFOの中から、1人のバットを持った野球選手が登場した。


UFOタートル
炎 レベル4
【機械族・効果】
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキから攻撃力1500以下の炎属性モンスター1体を
自分のフィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
攻撃力1400 守備力1200


「『超熱血球児』の元々の攻撃力は500だが……場の他の炎属性のライバルがいればいるほど自らの闘志を高め、攻撃力を1000ポイントアップするんだぜ!場の他の炎属性モンスターは、お前の場の、『DNA移植手術』によって炎属性に変化したアンデット族が2体いるよな!よって、『超熱血球児』の攻撃力は2000ポイントアップして、2500になったぜ!」
 そう言うと、『超熱血球児』は自らの闘志を表すように、目に炎を浮かべ……持っているバットで、右翼の『馬頭鬼』を指し、予告ホームランの格好を取った!

超熱血球児 攻撃力500→2500


超熱血球児
炎 レベル3
【戦士族・効果】
フィールド上にこのカード以外の炎属性モンスターが存在する場合、
このカードの攻撃力は1体につき1000ポイントアップする。
このカード以外の炎属性モンスターを墓地に送る度に、
相手プレイヤーに500ポイントダメージを与える。
攻撃力500 守備力1000


「行け!『超熱血球児』!『馬頭鬼』を破壊しろ!」
 『超熱血球児』は、自分でトスした野球ボールをバットで打つと、そのボールが、まるで火の玉のように燃え上がり、『馬頭鬼』に向かって弾丸のように飛んで行った!

「くっ、伏せ罠カード『和睦の使者』を発動するぜ!このカードの効果で、『超熱血球児』の攻撃によって発生する戦闘ダメージを0にするぜ!」
 センリがそう言うと、場の『龍骨鬼』と『馬頭鬼』が不思議なバリアに包まれ、火の玉の直撃を阻んだ!


和睦の使者
通常罠
このカードを発動したターン、相手モンスターから受ける
全ての戦闘ダメージは0になる。
このターン自分モンスターは戦闘によっては破壊されない。


「(『和睦の使者』は、攻撃を無効にする訳じゃねえから、『UFOタートル』の自爆特攻は防げないぜ……。)」
 センリは、『UFOタートル』の攻撃を防げずに、高攻撃力の『超熱血球児』を特殊召喚された事を残念に思っていた……。

「ちっ……通らなかったか!カードを1枚場に伏せ、ターンエンド!」
 石谷は、さらに1枚の伏せカードを場に出してターンを終了した。
2枚の永続罠と1枚の永続魔法と、ただでさえ魔法・罠ゾーンを圧迫している中、さらに1枚の伏せカードを出した事を、センリは不可解に思っていた……。


現在の状況
センリ LP…3800
    手札…3枚
    場…馬頭鬼(炎属性・攻撃力1700・攻撃表示)
      龍骨鬼(炎属性・攻撃力2400・攻撃表示)
      最終突撃命令(表側表示)

石谷 LP…3700
   手札…2枚
   場…超熱血球児(攻撃力2500・攻撃表示)
     エレメンタル・アブソーバー(炎属性指定)
     DNA移植手術(炎属性宣言)
     DNA抹殺呪術(アンデット族宣言)
     伏せカード1枚

「俺のターン、ドロー!」
 センリは、手札を確認して少し歯を食い縛った……。

「(石谷の『DNA移植手術』の効果で、俺が出すモンスターはすべて炎属性になって、『超熱血球児』の攻撃力アップに貢献してしまうな……。さらに、『DNA抹殺呪術』の効果で、俺のアンデット族モンスターは除外されるか……。厄介な布陣だぜ……。)」
 センリは、石谷の場のカードを的確に分析し、どのようにこの局面を凌ごうか考えていたが……



「(あまり無闇に動くのは危険だな……。)……ターンエンドだ。」
……するべき事が無いのか、何も行わずに、ターンを終えた。

「おれのターン、ドロー!……少々手札がダブついているな……。ここは軽く手札交換をさせてもらうぜ!手札から、速攻魔法『手札断札』を発動!さあ、おれが手札を2枚墓地に送ってカードを2枚ドローするから、お前もそうしな!」
 石谷は、手札でダブついていた『エレメンタル・アブソーバー』と『DNA抹殺呪術』を墓地送りにしてカードを2枚ドローした。
 それに対してセンリは、『ゴブリンゾンビ』と『ゴブリンのやりくり上手』を墓地送りにし(しかし、『ゴブリンゾンビ』はアンデット族モンスターだったため、『DNA抹殺呪術』によってゲームから除外されてしまったが)、カードを2枚ドローした。

「……おっと!いいカードを引いたぜ!手札から、装備魔法『アサルト・アーマー』を『超熱血球児』に装備させるぜ!」
 石谷がそう言うと、『超熱血球児』は、気合いを込めて全身から朱色のオーラを発生させた!











「『アサルト・アーマー』……。確か、戦士族のサポートカードとしては、中々強力な効果を持ってるよね、カムイ。」
「ああ……。戦士族モンスターのみに装備可能で、装備状態の『アサルト・アーマー』を墓地に送ることで、2回攻撃が可能になるんスよね。」
 カムイとコウジは、石谷の出したカードの効果を語り合っていた。


アサルト・アーマー
装備魔法
自分のモンスターカードゾーンに戦士族モンスター1体のみが
存在する場合に、そのモンスターに装備する事ができる。
装備モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。
装備されているこのカードを墓地に送る事で、このターン装備モンスターは
1度のバトルフェイズ中に2回攻撃をする事ができる。


「だが……センリの『龍骨鬼』は、戦士族・魔法使い族と戦闘を行った場合、ダメージステップ終了時に戦闘相手を破壊する効果を持ってるんスよね……。石谷には、何か対策があるんスか?」
 カムイは、腕を組みながら、石谷が何をする気なのか、疑問に思っていた……。











「『アサルト・アーマー』の効果を発動するぜ!このカードを墓地に送り、『超熱血球児』はこのターン、2回攻撃が可能になるぜ!さらに、手札から、装備魔法『竜魂の力(ドラゴニック・フォース)』を発動!『超熱血球児』に装備させるぜ!」
「なっ……また種族・属性に関係するカードか!」
 センリは、次々と登場するモンスター情報を変更するカードに、少しうんざりしていた。

「『竜魂の力』の効果で、『超熱血球児』の種族を戦士族からドラゴン族に変更するぜ!これでおれの『超熱血球児』は、『龍骨鬼』の効果を受けなくなるぜ!」
 石谷がそう宣言すると、『超熱血球児』のユニフォームとヘルメットに、『D』の形をした竜のマークが浮かび上がり……持っていたバットを強く握り締めた!


竜魂の力
装備魔法
戦士族のみ装備可能。装備モンスターはドラゴン族となり、
攻撃力・守備力がそれぞれ500ポイントアップする。


超熱血球児 攻撃力2500→3000

「行け!『超熱血球児』!『龍骨鬼』に攻撃!」
 『超熱血球児』は、左翼の『龍骨鬼』を目掛け、持っていた野球ボールを、バットで打ち込んだ!
『龍骨鬼』は、野球ボールに腹の赤色の球体を破壊され、そのまま崩れ落ちた……。

「くっ……戦士族じゃ無くなった『超熱血球児』との戦闘では、『龍骨鬼』の効果は発動しねえか……。」(センリLP 3800→3200)
 センリは、残念そうに話した。

「炎属性モンスターが1体減った事により、おれの『超熱血球児』の攻撃力は2000にダウンしたが、まだ終わりじゃないぜ!『アサルト・アーマー』の効果で、おれの『超熱血球児』は、追加攻撃が可能になるぜ!『馬頭鬼』を破壊しろ!」
 『超熱血球児』は、右翼の『馬頭鬼』にも野球ボールを打ち込み、斧と体を粉砕した!

「『DNA抹殺呪術』の効果で、俺の『馬頭鬼』はゲームから除外されるか……。」(センリLP 3200→2900)
 センリは、光の粒子となって消え去る『馬頭鬼』を見て、残念そうに話した……。

「どうだ!これでお前のモンスターは全滅したぜ!カードを1枚場に伏せ、ターンエンド!」
 石谷は、無謀にもさらにカードを場に伏せてターンを終えた。
これで石谷の魔法・罠ゾーンはすべて埋まってしまったことになるが……。


現在の状況
センリ LP…2900
    手札…4枚
    場…最終突撃命令(表側表示)

石谷 LP…3700
   手札…0枚
   場…超熱血球児(炎属性・ドラゴン族・攻撃力1000・攻撃表示)
     エレメンタル・アブソーバー(炎属性指定)
     DNA移植手術(炎属性宣言)
     DNA抹殺呪術(アンデット族宣言)
     竜魂の力(超熱血球児に装備)
     伏せカード1枚


「俺のターン!ドロー!手札から、速攻魔法『異次元からの埋葬』を発動!ゲームから除外された『馬頭鬼』、『龍骨鬼』を墓地に戻すぜ!」
 センリは、除外された2枚のカードを石谷に見せ、墓地に戻した。


異次元からの埋葬
速攻魔法
ゲームから除外されているモンスターカードを3枚まで選択し、
そのカードを墓地に戻す。


「さらに、墓地に存在する『馬頭鬼』の効果を発動するぜ!このカードをゲームから除外し、墓地の『龍骨鬼』を……」
「待ちな!『馬頭鬼』の効果にチェーンし、伏せ罠カード『輪廻独断』を発動!」
 石谷は、センリのこの一言に待ってましたと言わんばかりに反応し、5枚目の伏せカードを表にした。

「何!『輪廻独断』だと!?」
 センリは、石谷の発動したカードに驚いていた……。

「『輪廻独断』は、お互いの墓地のモンスターの種族を、発動時に宣言した種族に変更するカードなんだぜ!この効果で……おれは、戦士族を宣言するぜ!これで『馬頭鬼』の効果は、不発だ!」
 石谷は、笑いながら話した。


輪廻独断
永続罠
発動時に1種類の種族を選ぶ。
このカードがフィールド上に存在する限り、
お互いの墓地に存在するモンスターを選択した種族として扱う。

馬頭鬼
地 レベル4
【アンデット族・効果】
墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、
自分の墓地からアンデット族モンスター1体を特殊召喚する。
攻撃力1700 守備力800


「センリ!このタイミングで、『馬頭鬼』の効果で『龍骨鬼』を蘇生させようとしたのは……お前の手札に、『DNA移植手術』を破壊できるカードを引いたからだろ!『DNA移植手術』さえ破壊すれば、お前のモンスターは攻撃可能になるからな!」
「……中々いい読みをしてるじゃないか。」
 センリは、石谷の言葉に対し、軽く呟いた。



「……モンスターを1体セットし、カードを3枚場に伏せ、ターンエンドだ。」
 センリは、手札のカードすべてをデュエルディスクにセットし、静かにターンを終えた。

「おれのターン、ドロー!……センリ!どうやらこのデュエル、おれの勝ちのようだな!手札から、『コマンド・ナイト』を召喚するぜ!」
 石谷の場に、赤色の鎧を身につけた女戦士が現れた。


コマンド・ナイト
炎 レベル4
【戦士族・効果】
自分のフィールド上に他のモンスターが存在する限り、
相手はこのカードを攻撃対象に選択できない。
また、このカードがフィールド上に存在する限り、
自分の戦士族モンスターの攻撃力は400ポイントアップする。
攻撃力1200 守備力1900


「お前の場には、表側表示モンスターをすべて攻撃表示にしちまう『最終突撃命令』があるよな!それは、攻撃されることによって表側表示になる時も例外じゃねえ……。つまりお前は、自分で発動したカードで墓穴を掘ったわけだ!」
 石谷は、センリを指差しながら話した。

「攻撃表示になるなら、高攻撃力モンスターから攻撃するのが定石だぜ!『超熱血球児』!不様にも攻撃表示になる守備表示モンスターを破壊しろ!」
 『超熱血球児』は、センリの場の裏守備モンスターに向けて、野球ボールを打ち込んだが……



「……攻撃表示になる?それはどうかな?伏せ罠カード『ゴブリンのやりくり上手』を発動!」
 

「『ゴブリンのやりくり上手』だと!?それがどうした!!」
「……当然、これで終わりじゃないぜ。『ゴブリンのやりくり上手』にチェーンし、速攻魔法『非常食』を発動!『最終突撃命令』と『ゴブリンのやりくり上手』を墓地に送り、俺のライフを1000ポイント回復させるぜ!」(センリLP 2900→4900)
「な、何だとぉぉぉぉ!!」
 石谷は、予想外のカードの発動に、憤慨していた。


非常食
速攻魔法
このカードを除く自分フィールド上の魔法または罠カードを墓地へ送る。
墓地へ送ったカード1枚につき、自分は1000ライフポイント回復する。


「お、お前!さっき、魔法・罠カードを排除するカードを引いたかを尋ねた時、否定しなかったじゃねえか!嘘つきやがったな!?」
「嘘?……そんな物ついてないぜ?『俺の』魔法・罠カードを排除するカードを使ったじゃないか。」
 センリは、石谷の言葉に対してあっさりと答えた。

「……っと、次は『ゴブリンのやりくり上手』の処理だぜ。墓地の『ゴブリンのやりくり上手』の枚数……2枚+1枚のカードをドローし、手札を1枚デッキの1番下に戻すぜ!」


ゴブリンのやりくり上手
通常罠
自分の墓地に存在する「ゴブリンのやりくり上手」の枚数+1枚を
自分のデッキからドローし、自分の手札を1枚選択してデッキの一番下に戻す。


「なっ……いつの間に、『ゴブリンのやりくり上手』を2枚も墓地に送りやがった!?」
「1枚目は、石谷の『手札断札』の効果で墓地に送ったぜ。2枚目は……今の『非常食』のコストでだ。」
 センリは、軽く答えた。

「俺の場の『最終突撃命令』が無くなったことで、場のモンスターは攻撃表示にならないぜ!俺がセットしていたモンスターは、攻撃力1900、守備力1200の『闇竜の黒騎士(ブラックナイトオブ・ダークドラゴン)』だ!当然、『超熱血球児』の攻撃には耐えられないが……俺のライフは削られないぜ!」
 センリの言葉通り、ミイラ化した白いドラゴンを駆る、金で縁取られた鎧を身につけたミイラの騎士……『闇竜の黒騎士』は、守りの姿勢を崩さずに『超熱血球児』の打った野球ボールを受け、センリを守った。

「ぐっ……センリ……何て奴だ……。攻撃力1600の『コマンド・ナイト』で先に攻撃した場合、『最終突撃命令』を墓地に送らず、『闇竜の黒騎士』を攻撃表示に変化させて迎撃する……。『超熱血球児』で先に攻撃した場合、『最終突撃命令』を『非常食』で墓地に送り、『闇竜の黒騎士』を守備表示のままにしてライフを守る……。それに加え、ついでに『ゴブリンのやりくり上手』を発動して手札を増やす……。どう転んでも、このターンで決着はつかなかった訳か……。可愛い娘が好きそうな奴なのに、何て戦略家だ……。」
「……ほっとけ。」
 センリは、石谷の話した最後の一文に、腕を組みながら答えた。


「仕方がねえ!『コマンド・ナイト』で、ダイレクトアタック!」
 『コマンド・ナイト』は、持っている剣で、センリを切り付け、ライフを削り取った。

「ぐっ!」(センリLP 4900→3300)


「……ターン…エンド……。」
 石谷は、心底残念そうにターンを終えた。


現在の状況
センリ LP…3300
    手札…2枚
    場…伏せカード1枚

石谷 LP…3700
   手札…0枚
   場…超熱血球児(炎属性・ドラゴン族・攻撃力2000・攻撃表示)
     コマンド・ナイト(炎属性・攻撃力1600・攻撃表示)
     エレメンタル・アブソーバー(炎属性指定)
     DNA移植手術(炎属性宣言)
     DNA抹殺呪術(アンデット族宣言)
     竜魂の力(超熱血球児に装備)
     輪廻独断(戦士族宣言)


「俺のターン!ドロー!」
 ドローしたカードを確認したセンリの顔に、笑みがこぼれた。



「俺の勝ちだぜ。……石谷。」
「な、何ぃぃぃぃ!」
 センリの言葉に、石谷は思わず憤慨した。

「はっきり言うぜ?俺がこのカードを発動させる際に、恐れていたカードは……『輪廻独断』だ。さっきの『馬頭鬼』の様に、墓地の種族を変更されて蘇生を不発にされる事は相当な痛手だからな。」
 センリは、手札の1枚のカードを右手に持ちかえ、裏向きのまま石谷に見せ付けた。


「ま…まさか……お前も、墓地の種族を変更するカードをデッキに入れていたのか!?」
「ああ……。……見せてやるぜ!これが、俺のデッキの力を最大限に引き出すフィールド魔法――」











「――『アンデットワールド』……発動!!」











 センリが、右手に持っていたカードを、デュエルディスクのフィールド魔法ゾーンに置くと……センリと石谷の周りが、突然毒々しい紫色の空気が発生し……血の様に赤い沼地が広がり、死者や骸骨、怨霊がいたる所に散らばる、不気味な空間へと姿を変えた!
その光景は、一言で言い表わせば、『地獄』……と表現できるだろう……。


「な、何だこりゃぁぁぁぁ!」
「これが、俺のアンデット族の庭……『アンデットワールド』だ!『アンデットワールド』に足を踏み入れたモンスターは、すべて不死者と化すぜ!」
 センリがそう言うと、沼地から、気発した血赤色の沼気が発生し……その沼気を吸った、『コマンド・ナイト』と『超熱血球児』は、不死者――アンデット族と化した!
すると……石谷の場の、戦士族を指揮する力を持つ『コマンド・ナイト』は、自らを含む味方すべてがアンデット族と化した事で指揮力を失い……竜戦士の力を持っていた『超熱血球児』は、戦士の力を失ったことで『竜魂の力』の力を維持することができず、ユニフォームとヘルメットについた竜のマークが消え去った!


コマンド・ナイト 攻撃力1600→1200
超熱血球児 攻撃力2000→1500


「お……おれのモンスターが……弱体化しただとぉぉぉぉ!」
「それだけじゃないぜ!『アンデットワールド』は、墓地のモンスターをも、不死者に変化させる……。石谷の墓地には、戦闘破壊された『UFOタートル』がいるよな!……アンデット族になってもらうぜ!」
 その言葉通り、墓地に眠るモンスターまでも、沼地からのガスの影響を受け……『UFOタートル』の体が、まるでミイラのようにひからびてしまった!


アンデットワールド
フィールド魔法
このカードがフィールド上に存在する限り、
フィールド上及び墓地に存在する全てのモンスターをアンデット族として扱う。
また、このカードがフィールド上に存在する限り
アンデット族以外のモンスターのアドバンス召喚をする事はできない。


「これで……準備は整ったぜ!手札から、2枚目の『異次元からの埋葬』を発動!除外された『馬頭鬼』と『闇竜の黒騎士』を墓地に戻す!」
 センリはもう1度、除外された2枚のカードを石谷に見せ、墓地に戻した。


異次元からの埋葬
速攻魔法
ゲームから除外されているモンスターカードを3枚まで選択し、
そのカードを墓地に戻す。


「墓地に戻した『馬頭鬼』の効果を発動するぜ!このカードをゲームから除外し……墓地から、『闇竜の黒騎士』を召喚するぜ!」
 そう言うと、ミイラ化した白いドラゴンを駆る、金で縁取られた鎧を身につけたミイラの騎士が、地の底から蘇った!


「なっ……おれの『輪廻独断』の効果で、墓地のモンスターは戦士族に……」
「違うぜ。種族・属性を変更するカードは、後出ししたカードが優先される……。よって、場・墓地のモンスターの種族は、『アンデットワールド』の効果で、アンデット族になっているんだぜ!」
 焦る石谷を、センリが軽く諭した。


輪廻独断
永続罠
発動時に1種類の種族を選ぶ。
このカードがフィールド上に存在する限り、
お互いの墓地に存在するモンスターを選択した種族として扱う。











「『闇竜の黒騎士』……。あのモンスターが乗っているドラゴンに似た龍を、どこかで見たことあるッスね、コウジ。」
「確かに……。色的に、『青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)』の成長前の姿にも見えるね。」
 カムイとコウジは、センリが呼び出した『闇竜の黒騎士』の容姿について語り合っていた。











「『闇竜の黒騎士』の効果発動!石谷の墓地に存在する、戦闘破壊されたアンデット族……『UFOタートル』を攻撃表示で特殊召喚!」
 『闇竜の黒騎士』は、右手に持っている槍を掲げると……その槍の下に、戦闘で散った勇敢な不死者(?)――『UFOタートル』が集った!


闇竜の黒騎士
光 レベル4
【アンデット族・効果】
1ターンに1度、相手の墓地から戦闘によって破壊された
レベル4以下のアンデット族モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。
攻撃力1900 守備力1200


「そして……相手の墓地のアンデット族モンスターが、俺の場に特殊召喚されたことにより……この伏せカードを発動するぜ!!」
 センリがさらに1枚のカードを表にすると、そのカードから突然包帯が発生し……『コマンド・ナイト』と『DNA移植手術』を、まるでミイラのようにぐるぐる巻きにした!


「な……何を発動しやがった!」
「教えてやるぜ!俺が発動したカードは……『王墓の罠』!!相手の墓地のアンデット族モンスターが、俺の場に特殊召喚された時のみしか使えないが……効果は強力だぜ!何せ、場のカードを2枚も破壊できるんだからな!……空いた墓地のスペースを、場のカードを墓地送りにして埋め合わせる……って言えば分かりやすいだろ!!」
 センリの言葉通り、包帯でぐるぐる巻きにされた2枚のカードは、そのまま墓地へと引きずり込まれ、新たな墓地の肥やしとなった……。


王墓の罠
通常罠
相手の墓地に存在するアンデット族モンスターが
自分フィールド上に特殊召喚された時に発動する事ができる。
フィールド上のカード2枚を破壊する。


「仕上げだ!『UFOタートル』をリリースし……来い!『邪神機(ダークネスギア)−獄炎』!!」
 センリの場に、全身黒色の機械ででき、背中から紫色のガスを翼のように放出する、ジャッカルの様なモンスターが現れた!


邪神機−獄炎
光 レベル6
【アンデット族・効果】
このカードはリリースなしで召喚する事ができる。
この方法で召喚したこのカードは、エンドフェイズ時に
フィールド上にこのカード以外のアンデット族モンスターが
存在しない場合、墓地へ送られる。この効果によって墓地へ送られた時、
自分はこのカードの攻撃力分のダメージを受ける。
攻撃力2400 守備力1400


「さて……ここで場のおさらいだ。俺の場には、攻撃力1900の『闇竜の黒騎士』と、攻撃力2400の『邪神機−獄炎』……『DNA移植手術』が場から消え去ったことで、この2体は本来の属性……光属性として扱うぜ。」
「お……おれの場のモンスターは、『超熱血球児』1体……しかも、他に炎属性モンスターが存在しねえから、攻撃力500だ……。『エレメンタル・アブソーバー』は、炎属性モンスターの攻撃宣言を封じるが、お前の場に炎属性モンスターはいねえ……。『DNA抹殺呪術』にも『輪廻独断』にも、攻撃を防ぐ効果はねえ……。おれのライフは3000……負け…か……。」
 石谷は、自分の敗北を確信し、愕然とした……。


「終わりだ!『闇竜の黒騎士』で『超熱血球児』を破壊し……『邪神機−獄炎』で、ダイレクトアタック!!」
 『闇竜の黒騎士』は、持っている槍で、石谷の『超熱血球児』を貫き……『邪神機−獄炎』は、口から紫色のガスを石谷に吐きつけた!

「お…おれの……ライフが……。」(石谷LP 3700→2300→0)











「俺の勝ちだ。スターチップ2個を渡してもらうぜ。」
「ちっ……。カムイの周りに集まる奴は、何でこうもデュエルが強いんだ?」
 石谷は、悔しそうに自分のスターチップをすべてセンリに渡した。


センリ スターチップ2個→4個
石谷 スターチップ2個→0個(失格)


「……カムイ!おれが負けたからって、調子に乗るなよ!雷人は、おれよりかなり強いからな!」
「……確かに、2ヵ月近く前に、雷人のデュエルを1回見たことがあるんスけど、かなり強かったんスよね……。」
 カムイは、雷人のデュエルを観戦していた時の事を、腕を組みながら思い出していた……。

「なあ、カムイ。……雷人って、誰だ?」
「あれ、センリは知らなかったんスか?……『スーパージェネックス』の開催予告をされた日に、見たと思うんスけど。」
「もしかして……あの時、リナに蹴られてうずくまってた男の事か?」
「そうッスよ。」
 センリは、その時の事を思い出して、少し表情を強ばらせていた……。

「なるほど……。そんな事があったのか。……リナには、そんな事をする印象は無かったんだけどね……。」
「まあ……誰だってピンチになれば、それ位すると思うッスよ。」
 カムイは、不可解そうな表情をしているコウジを、軽く諭した。



「……覚えとけ!カムイ!おれは失格になったが……いずれ雷人が、お前の前に強敵として立ちはだかるぜ!その時までせいぜい勝ち残るんだな!じゃあな!!」
 石谷は、捨て台詞を吐いた後、着ていた白衣をひるがえし、走り去っていった……。











「なるほど……。雷人とのデュエル……なかなか面白そうッスね。」
「そう…なのか?まあ、頑張れよ、カムイ。」
 センリは、カムイの言う雷人がどんなデッキを使うのかは分からなかったが、カムイの期待している表情を見て、激励しておくことにした。


「……っと、コウジ。ハヤシライス、美味しかったッスよ!」
「そうだな。お陰で生き返ったぜ。ありがとな!」
 カムイとセンリは、昼ご飯を食べさせてくれたコウジにお礼をいい……

「よっしゃー!オレも、ガンガンスターチップを稼ぐッスよ!」
「俺もだぜ!次に合うのは、スターチップを10個集めた後だな、カムイ!」
 2人で顔を合わせて話し合い、お互いに別々の方向に歩き去っていった……。





















「……誰もいなくなったか。もうそろそろ、『ハヤシライスの匂いで、デュエリストをおびき寄せよう大作戦』は、やめにするかな……。」
 コウジは、ハヤシライスの鍋を片付けながらボソッと呟いた……。



ガサッ……。


「ん?誰だい?」
 音がした方を見ると、1人の少女が無表情でつっ立っていた……。
その少女は、赤色の髪だが、一部分が不自然に黒色になっていて、血石(ブラッドストーン)のイヤリングとブローチを身に付け、黒色のブーツを履き、黒色のドレスを着ていたが、ドレスには、何故か所々に赤い染みみたいなものが付着していた……。

「どうしたんだい?こんな所で。」
 コウジは、少女に対して軽く話し掛けたが……


「……妾とデュエルしろ。」
少女は、眉一つ動かさずに、一言そう言い、左手に装着しているデュエルディスクを構えた。



「(ん?あいつ……デュエルディスクの形が、僕達が使用しているのと全然違うな……。)」
 コウジは、少女の装着しているデュエルディスクの形を、珍しく思っていた。
そのデュエルディスクは、黒色の、鳥の翼の骨のような形をしたフレームに、赤色の、カードを置くプレート部分が張られているような形だった……。



「デュエルの前に、名前だけ聞いておこうか。名前は何だ?」
「ラケシスだ。」
 少女――ラケシスは、その一言だけで名前をコウジに教えた。

「ラケシス……か。いくぞ!」











「「デュエル!」」





















――30分後――



「な…何だっ……たんだ?……あの…モンスターは……。」
 コウジは、茫然としながら、地面にへたれ込んでいた……。


コウジ スターチップ 2個→0個(失格)


「(いや……冷静に考えれば……モンスターが可笑しかった訳じゃあ無い……。……可笑しかったのは……『あいつ』の方だ……)」
 コウジは、10分……いや、20分近くも異常なほどに激しく鼓動していた心臓を気遣うように右手で自分の心臓を抑えつけ、先程のデュエルの事を的確に分析してみようとした……。





















「――妾の血を糧に……敵を食らい尽くせ……。」










「――『深紅眼の(レッドアイズ)……血塊竜(ブラッディドラゴン)』……。」



第二十五話 レベル・ドラゴンの使い手

――バシュッ!!



 少女が自分の右腕を真横に挙げると……少女の傍らにいた、全身がどす黒い血糊のような色をし、鋭い4本の牙を持った不気味なドラゴンが、いきなり少女の右腕に噛み付いた!
すると、噛み付かれた部分から、黒色が少し混じった、赤色の『何か』が溢れだし……その『何か』を、ドラゴンがまるで吸血鬼のように吸い始めた!



「なぁぁ…っ……。」
 コウジは、表情一つ変えずに、自分の右腕を不気味なドラゴンに差し出した少女を見て、表情が青ざめてしまった……。


「ラ…ケシス……?そ…その……腕……大…丈夫な…のか……?」
 腰を抜かしながら話すコウジだったが、ラケシスは……

「……『ヴァリュアブル・アーマー』に攻撃。……ブラッディ・ファング。」
ラケシスは、コウジの言葉を聞いているのかいないのか、右腕から伝わってきた、赤色の『何か』を右手の指先から滴らせながら……コウジの場のカマキリ型モンスター……『ヴァリュアブル・アーマー』を指差した。
すると……不気味なドラゴンは、鋭い牙で『ヴァリュアブル・アーマー』に頭から食らい付き……そのまま無残にもバリバリと補食し、自らの血肉としてしまった!


「『深紅眼の血塊龍(レッドアイズ・ブラッディドラゴン)』は、戦闘破壊したモンスターを食らい、そのステータスを自らに吸収する事ができる……。『ヴァリュアブル・アーマー』は、レベル5・攻撃力2300・守備力800……。よって、『レッドアイズ・ブラッディドラゴン』のレベルは12、攻撃力は4750、守備力は2800になる……。」
 『レッドアイズ・ブラッディドラゴン』は、『ヴァリュアブル・アーマー』を食らい尽くした後に、低い呻き声みたいな物を出しながら、コウジを睨み付けていた……。



「……ターンエンド。」
 ラケシスは、不気味なドラゴン――『レッドアイズ・ブラッディドラゴン』――の攻撃終了を確認してから、静かにターンを終えた。

「ぼ……僕のターン、ドロー!……『ダーク・ヴァルキリア』を召喚する!」
 コウジの場に、背中に黒い翼を持ち、青色の軽装鎧を身につけた戦乙女が召喚された。

「さらに、手札から、速攻魔法『スペシャル・デュアル・サモン』を発動!『ダーク・ヴァルキリア』を再度召喚された状態にし、効果発動!魔力カウンターを1個乗せ、攻撃力を300ポイントアップさせる!」
 『ダーク・ヴァルキリア』は、自らの魔力で銀色の槍を精製し……その槍を、右手で構えた!


スペシャル・デュアル・サモン
速攻魔法
自分フィールド上に表側表示で存在するデュアルモンスター
1体を選択し、再度召喚した状態にする。このターンの
エンドフェイズ時、選択したデュアルモンスターを手札に戻す。


「『ダーク・ヴァルキリア』の効果発動!このモンスターに乗っている魔力カウンターを1個取り除き、『レッドアイズ・ブラッディドラゴン』を破壊する!」
 『ダーク・ヴァルキリア』は、右手に持った銀色の槍を、『レッドアイズ・ブラッディドラゴン』に向かって投げ付けた!
銀色の槍を食らった『レッドアイズ・ブラッディドラゴン』は、赤色か黒色か、よく分からない色の液体をぶちまけ、体を液状化させながら、大地に堕ちた……。


「なあぁっ……ソリッドビジョンのはずなのに、なんでここまでリアルなんだ……?」
 コウジは、『レッドアイズ・ブラッディドラゴン』のあまりにグロテスクな破壊され方に、さらに動揺した……。



「…………。」
 ラケシスは、右手をダラリと下げながら、破壊された『レッドアイズ・ブラッディドラゴン』を、表情一つ変えずに見ていた……。
すると、『レッドアイズ・ブラッディドラゴン』は、地面を這いずりながら、ラケシスの足元まで動いていき……鋭い牙で、ラケシスの左足首に、突然噛み付いた!



「!!」
 コウジは、またしてもラケシスが傷を負い、赤色の『何か』を溢れさせた事に目を見開いた……。

「……これが、『レッドアイズ・ブラッディドラゴン』の特殊能力だ。自身が破壊される時、妾の血……ライフポイントを、自身のレベルの100倍分食らい、死を免れる……。」
 ラケシスは、自らの左足首に食らい付く『レッドアイズ・ブラッディドラゴン』の身体が見る見る再生していく様子を見ながら、淡々と語った……。


深紅眼の血塊龍(レッドアイズ・ブラッディドラゴン)
闇 レベル7
【ドラゴン族・効果】
このカードは、このカードのレベル×100ポイントのライフを払わなければ攻撃できない。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、このカードが戦闘によって
破壊したモンスターのレベル・攻撃力・守備力分だけ、
このカードのレベル・攻撃力・守備力がアップする。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードが破壊される時、
このカードのレベル×100のライフポイントを支払い、破壊を無効にする。
攻撃力2400 守備力2000


「た……ターン……エンド……。エンドフェイズ時に、『ダーク・ヴァルキリア』は、僕の手札に戻る……。」

「……妾のターン、ドロー。1200ポイントのライフを払い、『レッドアイズ・ブラッディドラゴン』のダイレクトアタック。」
 ラケシスは、自らの右手を『レッドアイズ・ブラッディドラゴン』に差し出し……表情一つ変えずに、再度食らい付かせた!



「や……ヤバいって、ラケシス……。本当に、やめ……」
 恐怖で慌てふためくコウジを無視するかの様に、ラケシスは、右腕から赤色の『何か』がほとばしる様子を黙って見ていた……。
2度も『レッドアイズ・ブラッディドラゴン』の牙の餌食となったラケシスの腕は、肌が見えなくなるほど真っ赤に染まっていた……。

「……ブラッディ・ファング。」
 赤色の『何か』を吸った『レッドアイズ・ブラッディドラゴン』は、鋭い牙をむきながら、コウジを食らい尽くすかと近付いてきた!

「(そ…そうだ……忘れてた!最終的に、あの不気味なドラゴンのダイレクトアタックを食らうのは、僕だったんだ!あ……あんな奴の攻撃をまともに受けたら……………!)」
 コウジは、『深紅眼の血塊龍(レッドアイズ・ブラッディドラゴン)』のダイレクトアタックを食らった時の自分の様子を想像すると……『死』が迫っている事が頭を過り、心臓が異常なほど早く鼓動し始めた!
そう考えてる間にも、不気味なドラゴンがコウジの目の前に動き……大きく口を開いた!



「ぎ…ぎ……ぎ………ぎゃあぁぁぁぁ〜〜〜〜!!!!」
 コウジは、喉が潰れてしまうかのような叫び声を上げ……自らのライフポイントが0を指した……。





















「…な……何とも無い?何故……だ?」
 コウジは、『レッドアイズ・ブラッディドラゴン』の攻撃によって、ラケシスと同じように肉体的損傷を受けると覚悟していたが……まったく傷を負わなかった事に当惑していた……。


「……妾の勝ちだ。スターチップを渡してもらう。」
 ラケシスは、赤色の『何か』を滴らせた右腕を、腰が抜けて立ち上がれないコウジに向けながら、一歩一歩コウジのいる方向に歩いていった……。



「(『く、来る! 来る来る 来る来る来るぅ!! 助けてェェェ〜!!  ヒィィイヤアァァァ〜〜〜!!!』……なんて叫んだら、絶対人格疑われるだろうな……。)……ひ……。く…来るな……。」
 コウジは、頭の回路が混乱しているのか、妙なことを考えてしまった……。
その間にも、ラケシスはコウジの下に歩いていき……赤色の『何か』で濡らした指先で、コウジの首筋を軽く撫でた……。



「…っ……ぃぃ………ぁぁぁ……ぁぁ……」
 コウジは、まるで幽霊に肩を捕まれたように、全身から血の気が引き、その場で気絶してしまった……。











「…………。」
 ラケシスは、コウジの右手の下に歩み寄り、スターチップをはめ込んでいたデュエルグローブから、スターチップをすべて右手ではずし、自分の手に加えた。



「(……なぜだ………。なぜ……)」
 赤に染まった自分の右腕を見て、ラケシスはほんの少し淋しそうな目をし、歩き去っていった……。





















「(……あの時、確かに僕は、左の首筋を撫でられたはずだ……。だが……)」
 その言葉に続く形で、コウジは右手で、ラケシスに撫でられた首を拭って、何かが付いているか確認したが……

「(いくら手で拭っても、鏡で確認しても……赤い液体なんて、1滴も付いてない……。あれは……夢だったのか?)」
 あの体験が夢である――いや……あってほしい――と思いつつ、右手に付けたスターチップをはめ込む穴の付いたデュエルグローブを確認した……。

「(いや……。僕は、あいつに触れられ、スターチップを失った……。これは『夢』じゃない……。……紛れもない『現実』だ……。)」
 そう考えたが、一つだけ、不可解な事態が、頭の片隅に残っていた……。



――何故……彼女だけが、傷を負ったのか――



「(ラケシスの方は、『レッドアイズ・ブラッディドラゴン』の効果で傷を負っていたが……僕は、『レッドアイズ・ブラッディドラゴン』のダイレクトアタックを食らったにもかかわらず、傷を負わなかった…………。)」
 そう思い、コウジはおもむろにポケットに入ったDCT(デュエリストコミュニケーションツール)を取出し、ボタンを押した。



ピッ。



『おお、どうしたんや?コウジ。』
「エイジ……。調子はどうだ?」
 コウジは、DCTで、ジーパンにTシャツを着た青年――エイジに話し掛けた。

『ああ、別に大丈夫やで。今、スターチップは2個持っとるんや。』
「そうか……。エイジ。妙な奴を見つけなかったか?」
『ん?どんな奴や?』
 エイジは、明らかに疑問を抱いた声色で話した。

「確か……黒いドレスを着ているけど……まるで………を………た様な…………」
『何や?全然聞こえへんで?』
 エイジは、コウジの声が突然小さくなった事を、不思議に感じていた……。



「いや……。実は、はっきり言うと……身の毛がよだつかもしれないからね……。心の準備ができていないと……。」
『……ええで。言いいや。』
 エイジの唾を飲み込む音が聞こえたのを確認し、コウジが重い口を開いた。

「分かった……。そいつは……例えるなら……全身に…血しぶきを……浴びている感じ…で……、右腕と左足首に…大怪我を負っている……感じ…か?」
『……冗談やろ?』
 エイジは、コウジの言葉に当惑した……。

「……本気…だ。」
 コウジは、声を詰まらせながら話した……。

『……なるほどな。そんな感じの奴を見つけたら、電話するわ。』
「ああ……。頼む。」



ピッ。

 



















一方、エイジの方は……

「何の話やった?エイジ。」
 電話を終えたエイジに、巫女服の上着と学生服のスカートを着た女の子……ミカが話し掛けた。

「ああ、ミカ。……コウジが、恐い女を見たみたいや。」

「ん?どんな女なん?」
「……簡単に言えば……血まみれの女らしいな。」
「ち、血まみれ!?……恐いなあ。うち、見たくないわあ、そんな奴。」
 ミカは、エイジの言葉に少し身震いした。



「た…多分、見間違いかもしれへんで。ただの赤い斑点の柄やっただけかもしれへんし。」
「そ…そうやといいんやけどなあ……。墓地でよく見る『カードの精霊』にも、血まみれなのは誰もおらへんかったし……。」
「確かにな……。わいも見た事無いわ。精霊と幽霊は、まったくの別物やしな。」
 エイジとミカは、コウジが見た物の正体はいったい何なのか……真剣に考えていた……。











「貴方達……『カードの精霊』が見えるのですか?」
「ん?誰や?」
 エイジとミカが声のした方を見ると、1人の男が立っていた。
その男は、ヨレヨレのTシャツを着、青のジーパンをはいていると言う格好だった……。

「私ですか?私は『龍也』。このデュエルアカデミア星海校で、教師をやらせて頂いています。」
 龍也は、軽く笑みを浮かべながら答えた。

「龍也先生……聞いた事無いなあ、エイジ。」
「そうやな、ミカ。」
 エイジとミカは、お互いに顔を見合わせながら話した。

「まあ私は、特別授業担当の教師ですから。……ところで、貴方達。私とデュエルしませんか?」
「ん?何でなん?」
 龍也の言葉に、ミカは驚いて思わず口を開いた。

「……いえ、受けなくても結構ですが、受ける場合は当然、スターチップを賭けてもらいますよ。」
「……どうする?ミカ。」
「そうやなあ……。先生なんやから、めっちゃ強いんやろうなあ……。」
 エイジとミカは、龍也の挑戦を受けるか受けないか、慎重に考えていた……。



「ああ、一つ言っておきますが、私は1対2でも構いませんよ。それなら、いいデュエルになるでしょうから。」
 龍也は、不敵に微笑んだ。

「なっ……腹立つなあ、あいつ。うちらじゃ絶対勝てへんと思っとるわ!」
「ああ!あいつに、わいらの力、見せたろうな、ミカ!」
 エイジとミカは、龍也の言葉に腹を立て、デュエルディスクを構えた。

「分かりました。では、始めましょう。」
 2人の反応を見た龍也は、軽く会釈をして、デュエルディスクを構えた。











「「「――デュエル!」」」



――2対1デュエルの、オリジナルルール……

1・ターンは1人側→2人側A→2人側B→1人側……の流れで行われる。

2・1巡目はどのプレイヤーもバトルフェイズを行えない。

3・2人側は、パートナーがコントロールしているモンスターも、自分の場のモンスターとしてカウントすることができる。
ただし、攻撃宣言、アドバンス召喚のためのリリースは、自分がコントロールしているモンスターでしか行えない。

4・1人側は、初期ライフ8000で、2人側は、各プレイヤーの初期ライフは4000でスタートする。



「私の先攻です。ドロー。……『ホルスの黒炎竜 LV4』を召喚します。」
 龍也の場に、鳥の様な頭を持った小型のドラゴンが現れた。

「カードを2枚場に伏せ、ターンエンド。」
 

「うちのターン!ドロー!……モンスター1体と、カードを1枚セットして、ターンエンド!」
 次はミカのターン……ミカは、慎重にターンを終えた。

「わいのターンや!ドロー!……永続魔法『「A」細胞増殖装置』を発動や!」
 エイジの場に、不気味な細胞が入った不気味なカプセルが現れた。


「A」細胞増殖装置
永続魔法
自分のスタンバイフェイズ毎に相手フィールド上に
表側表示で存在するモンスター1体に、Aカウンターを1つ置く。


「なるほど……。エイジ君。貴方のデッキは、『エーリアン』デッキですか。」
「ん?何でわいの名前知っとるんや?」
 龍也に突然自分の名前を呼ばれたことを、エイジは少し不思議に思った。

「何を言っているのですか。エイジ君とミカさん……貴方達の会話を聞いていれば、名前くらい分かりますよ。」
「そ、そらそうやな……。モンスター1体と、カードを1枚セットしてターンエンドや。」
 そして最後はエイジのターン……エイジも、攻めの機会をうかがおうとしていた。


現在の状況
龍也 LP…8000
   手札…3枚
   場…ホルスの黒炎竜 LV4(攻撃力1600・攻撃表示)
     伏せカード2枚

ミカ LP…4000
   手札…4枚
   場…裏守備モンスター1体
     伏せカード1枚
エイジ LP…4000
    手札…3枚
    場…裏守備モンスター1体
      「A」細胞増殖装置(表側表示)
      伏せカード1枚


「私のターン、ドロー。……少々手札が悪いですね。手札のレベル8モンスター、『ホルスの黒炎竜 LV8』を捨て、魔法カード『トレード・イン』を発動。カードを2枚ドローします。」
 龍也は、手札で滞っていたカードを墓地に送って、デッキからカードを2枚ドローし、手札に加えた。


トレード・イン
通常魔法
通常魔法
手札からレベル8のモンスターカードを1枚捨てる。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。


「さらに、『ホルスの黒炎竜 LV4』をリリースし……手札から、魔法カード『レベルアップ!』を発動します。『ホルスの黒炎竜 LV4』の進化形態……『LV6』を攻撃表示で特殊召喚します。」
 龍也がそう言うと、『ホルスの黒炎竜 LV4』が閉じていた翼を輝かせ……片翼で体長と同じぐらいの長さを持つ翼を顕にした!


レベルアップ!
通常魔法
フィールド上に表側表示で存在する「LV」を持つ
モンスター1体を墓地へ送り発動する。
そのカードに記されているモンスターを、
召喚条件を無視して手札またはデッキから特殊召喚する。


「さらに、手札から『仮面竜』を召喚します。」
 龍也の場に、仮面を身に付けた小型のドラゴンが現れた。

「行きます。『ホルスの黒炎竜 LV6』で、ミカさんの場の裏守備モンスターに攻撃します。ブラック・フレイム。」
 『ホルスの黒炎竜 LV6』は、龍也の言葉を聞き、ミカの場の裏守備モンスターに向かって口から黒色の炎を吐き出したが……

「伏せ罠カード『和睦の使者』を発動するわ!この効果で、このターンの間、うちらの場のモンスターは、戦闘破壊されへんくなるで!」
 ミカの場の裏守備モンスター……『火霊使いヒータ』の正面に不思議なオーラが発生して……『ホルスの黒炎竜 LV6』の放った黒い炎を防いだ!


和睦の使者
通常罠
このカードを発動したターン、相手モンスターから受ける
全ての戦闘ダメージは0になる。
このターン自分モンスターは戦闘によっては破壊されない。


「『火霊使いヒータ』のリバース効果発動や!龍也先生の場の炎属性モンスター……『ホルスの黒炎竜 LV6』のコントロールを奪うで!」
 『火霊使いヒータ』が不思議な呪文を唱えると……『ホルスの黒炎竜 LV6』の目が虚ろになり、ミカの場へと向かっていった!


火霊使いヒータ
炎 レベル3
【魔法使い族・効果】
リバース:このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
相手フィールド上の炎属性モンスター1体のコントロールを得る。
攻撃力500 守備力1500


「なるほど。『火霊使いヒータ』でしたか。……メインフェイズ2に入ります。手札から、速攻魔法『超再生能力』を発動します。」
「ん?何なん?そのカード。」
 ミカは、龍也の発動させたカードの効果に対して質問した。

「このカードを発動させたターンのエンドフェイズ時に、このターン手札から捨てた、またはリリースしたドラゴン族1体につき、カードを1枚ドローできるのです。このターン、私は、『トレード・イン』で『ホルスの黒炎竜 LV8』を捨て、『レベルアップ!』で『ホルスの黒炎竜 LV4』をリリースしました。」
 龍也は、『超再生能力』の効果を長々と語った。


超再生能力
速攻魔法
エンドフェイズ時、自分がこのターン中に
手札から捨てた、または生け贄に捧げた
ドラゴン族モンスター1体につき、デッキからカードを1枚ドローする。


「私はこれで、ターンを終了します。エンドフェイズ時に、『超再生能力』の効果で、2枚ドロー。」
 龍也は、自分の場の上級モンスター……『ホルスの黒炎竜 LV6』が奪われたことに動揺した様子をまったく見せずに、ターンを終えた。


「うちのターン!ドロー!」

ドローしたカード……ハッピー・マリッジ

「(あっ……ちょっとよさげなカード引いてまったな……。)」
 予想外な好カードをドローしたミカは、少し手が止まった……。

「(どうしよかな……。『火霊使いヒータ』と『ホルスの黒炎竜 LV6』を墓地に送って、『憑依装着−ヒータ』を出せば安心やろうけど、モンスターの数を減らしてまうからなあ……。)」
 ミカは、自分の手札を確認しながら、何をしようか真剣に考えていた……。

「(『ホルスの黒炎竜 LV6』には、魔法は効果が無いで、この方法がいいかな……。)……行くで!手札から、装備魔法『ハッピー・マリッジ』を、『火霊使いヒータ』に装備させるわ!」
 ミカが、手札のカードを1枚デュエルディスクに差し込むと……『火霊使いヒータ』の服装が、突然ウエディングドレスへと変化し、攻撃力を高めた!


ハッピー・マリッジ
装備魔法
相手のモンスターが自分フィールド上に表側表示で存在する場合に発動する事ができる。
装備モンスターの攻撃力は、そのモンスターの攻撃力分アップする。


火霊使いヒータ 攻撃力500→2800

「バトルや!『火霊使いヒータ』で、『仮面竜』に攻撃!」
 『火霊使いヒータ』は、動き辛そうなウエディングドレス姿で必死に走り、『仮面竜』に炎の魔法をぶつけようとしたが……

「残念でしたね。ミカさんの攻撃宣言時に、伏せ罠カード……『ゴブリンのやりくり上手』を発動します。」
「ん?それがどうした……ん………?」
 ミカは、龍也の発動したカードの何処に残念がらせる要素があるのか分からず、少しキョトンとしていたが……龍也の2枚目の伏せカードを表にしたことで、その真意が分かった……。

「『ゴブリンのやりくり上手』にチェーンし、伏せ罠カード……『邪神の大災害』を発動します。」
「な、何やて!?」
 ミカが驚くと、場に突然、黒い大嵐が発生し始めた!

「逆順処理を行います。まずは『邪神の大災害』の効果で、場のすべての魔法・罠カードを破壊します。」
 龍也がそう言うと、ミカの場の『ハッピー・マリッジ』と、エイジの場の『「A」細胞増殖装置』と伏せ罠カード……『洗脳光線』が、龍也の場の『ゴブリンのやりくり上手』と共に黒い大嵐に巻き込まれ……『火霊使いヒータ』の服装が、元に戻ってしまった!


邪神の大災害
通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
フィールド上に存在する魔法・罠カードを全て破壊する。


「そして、『ゴブリンのやりくり上手』の効果を発動します。墓地の『ゴブリンのやりくり上手』の枚数……先程、で破壊された1枚+1枚のカードをドローし、手札を1枚デッキの1番下に戻します。」


ゴブリンのやりくり上手
通常罠
自分の墓地に存在する「ゴブリンのやりくり上手」の枚数+1枚を
自分のデッキからドローし、自分の手札を1枚選択してデッキの一番下に戻す。


「あ、あかへん……。『ハッピー・マリッジ』が破壊されてまったら、『火霊使いヒータ』の攻撃力が……」
 ミカの言葉通り、攻撃力を大幅に落とした『火霊使いヒータ』の炎の魔法は『仮面竜』にまったく通用せず……逆に『仮面竜』の体当たりをまともに食らい、返り打ちにあってしまった。

「うっ……。」(ミカLP 4000→3100)


「そして……『火霊使いヒータ』が場を離れた事によって、『ホルスの黒炎竜 LV6』が私の場に戻ってきます。」
 『火霊使いヒータ』の魔力から解き放たれた『ホルスの黒炎竜 LV6』は空高久舞い上がり……龍也の場に戻った!



「あっちゃあ……やってまった……。ゴメンな…エイジ……。」
 ミカは、自分の行動が裏目に出てしまった事を、残念に感じていた……。

「大丈夫や、ミカ!2人がかりなら、ちょっとした失敗くらい挽回可能や!」
 エイジは、残念そうなミカを励まそうと、軽く声をかけた。

「そうですね。私のターンの前に、まだエイジ君のターンがありますから。……気落ちして、チームワークを崩す事はありませんよ。」
「そ、そうやな……。メインフェイズ2に入るわ。モンスターと伏せカードを1枚ずつセットして、ターンエンドや。」
 ミカは、空になった自分の場を埋め合わせようと、新たに2枚のカードを出してターンを終えた。


「わいのターンや!ドロー!『エーリアン・ウォリアー』を攻撃表示で召喚!」
 エイジの場に、鋭い爪と牙を持ったエーリアンが現れた。

「行くで!『エーリアン・ウォリアー』で、『仮面竜』に攻撃!エーリアンズ・クロー!」
 『エーリアン・ウォリアー』は両手についた爪を振るい……『仮面竜』を引き裂いた!

「ぐぐっ……。」(龍也LP 8000→7600)

「……しかし、これで『仮面竜』の効果が発動します。このモンスターが戦闘破壊された時、デッキから攻撃力1500以下のドラゴン族を1体特殊召喚できるのです。この効果で……攻撃力1200の『アームド・ドラゴン LV3』を守備表示で特殊召喚しますよ。」
 そう言うと、黄色い皮膚をし、金属製の鎧を身に付けた小さなドラゴンが、龍也の場に現れた。


仮面竜
炎 レベル3
【ドラゴン族・効果】
このカードが戦闘によって破壊され墓地に送られた時、
デッキから攻撃力1500以下のドラゴン族モンスター1体を
自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。
その後デッキをシャッフルする。
攻撃力1400 守備力1100


「『アームド・ドラゴン LV3』?どっかで聞いたことあるな、ミカ。」
「そうやな。確か……プロデュエリストの誰かが使っとったなあ。」
 ミカとエイジは、顔を見合わせ、何かを思い出そうとしていた……。

「確か……『バンジョウメ』って名字やったっけ?」
「おおそうや。『バンジョウメ』や『バンジョウメ』。」
 ミカとエイジは、人物名を思い出したのか、納得した表情で話していた。

「ふふふ……。『バンジョウメ』ですか。中々面白いですね。」
 龍也は、軽く笑いながら答えた。

「……カードを1枚場に伏せ……ターンエンドや。」
 


現在の状況
龍也 LP…7600
   手札…4枚
   場…ホルスの黒炎竜 LV6(攻撃力2300・攻撃表示)
     アームド・ドラゴン LV3(攻撃力1200・攻撃表示)

ミカ LP…3100
   手札…2枚
   場…裏守備モンスター1体
     伏せカード1枚
エイジ LP…4000
    手札…2枚
    場…エーリアン・ウォリアー(攻撃力1800・攻撃表示)
      裏守備モンスター1体
      伏せカード1枚


「……龍也先生。もうわいはエンド宣言をしたんやけど……。」
「……す、すいません。私のターン、ドロー。」
 エイジに話し掛けられた龍也は、少しだけ慌てながら、カードをドローした。
「……スタンバイフェイズに入ります。スタンバイフェイズ時に、『アームド・ドラゴン LV3』は、『LV5』に進化します。」
 

アームド・ドラゴン LV3
風 レベル3
【ドラゴン族・効果】
自分のターンのスタンバイフェイズ時、表側表示のこのカードを墓地に送る事で
「アームド・ドラゴン LV5」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。
攻撃力1200 守備力900


「そして、メインフェイズ1に入り、『アームド・ドラゴン LV5』の効果を発動します。手札から、攻撃力2300の『ホルスの黒炎竜 LV6』を墓地に送り、エイジ君の場の攻撃力1800のモンスター……『エーリアン・ウォリアー』を破壊します。デストロイド・パイル。」
 『アームド・ドラゴン LV5』は、発達した腕で、エイジの場の『エーリアン・ウォリアー』を力任せに叩き潰した!


アームド・ドラゴン LV5
風 レベル5
【ドラゴン族・効果】
手札のモンスターカード1枚を墓地に送る事で、
そのモンスターの攻撃力以下の相手フィールド上表側表示モンスター1体を破壊する。
このカードがモンスターを戦闘によって破壊したターンのエンドフェイズ時、
このカードを墓地に送る事で「アームド・ドラゴン LV7」1体を
手札またはデッキから特殊召喚する。
攻撃力2400 守備力1700


「バトルフェイズに入ります。『ホルスの黒炎竜 LV6』で、ミカさんの場の裏守備モンスターに攻撃します。ブラック・フレイム。」
 『ホルスの黒炎竜 LV6』は、口に火炎弾を収束させ、ミカの場の裏守備モンスターに向かって発射しようとしたが……

「待った!このタイミングで、伏せ罠カード……『砂漠の光』を発動や!このカードの効果で、うちとエイジの場のモンスターを、すべて表側守備表示にするで!」
「なるほど。まさか、ミカさんの場の裏守備モンスターの正体は、『風霊使いウィン』ですか?」
「うっ……。やっぱ読まれとったわあ……。」
 ミカは、龍也の予想が的を射すぎていたことに動揺したが、ミカとエイジの場の裏守備モンスター……『風霊使いウィン』と『エーリアン・グレイ』が表側守備表示になって、姿を顕にした!


砂漠の光
通常罠
自分フィールド上に存在するモンスターを全て表側守備表示にする。


「ま、まあ多分、大丈夫やな。分かっとったって、絶対対策できるとは限らへんし……。まずは『風霊使いウィン』のリバース効果発動や!龍也先生の場の風属性モンスター……『アームド・ドラゴン LV5』のコントロールを奪うわ!」
「そして、『エーリアン・グレイ』のリバース効果で、『ホルスの黒炎竜 LV6』にAカウンターを乗せるで!」
 ミカとエイジが立て続けに話すと、『エーリアン・グレイ』は、『ホルスの黒炎竜 LV6』の首筋に、不気味な細胞を付着させ、緑色の髪の少女……『風霊使いウィン』が呪文を唱え、『アームド・ドラゴン LV5』を洗脳した!


風霊使いウィン
風 レベル3
【魔法使い族・効果】
リバース:このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
相手フィールド上の風属性モンスター1体のコントロールを得る。
攻撃力500 守備力1500

エーリアン・グレイ
光 レベル2
【爬虫類族・効果】
リバース:相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体に、
Aカウンターを1つ置く。Aカウンターが乗ったモンスターは、
「エーリアン」と名のついたモンスターと戦闘する場合、
Aカウンター1つにつき攻撃力と守備力が300ポイントダウンする。
また、リバースしたこのカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。
攻撃力300 守備力800


「しかし、『風霊使いウィン』を破壊してしまえば、『アームド・ドラゴン LV5』は私の場に戻ってきますよ。『ホルスの黒炎竜』で、『風霊使いウィン』に攻撃します。ブラック・フレイム。」
 『ホルスの黒炎竜 LV6』は、仲間を寝返らせた『風霊使いウィン』に向かって口を大きく開き、黒い火炎弾を放とうとした!

「待てや!わいは、龍也先生のモンスターにAカウンターが乗るこのタイミングを待っとったんや!伏せ罠カード……『デストラクト・サークル−A』を、『ホルスの黒炎竜 LV6』に対して発動や!」
 エイジが伏せていたカードを表にすると、『ホルスの黒炎竜 LV6』の、不気味な細胞が付着した首の周りに緑色の輪が発生し……細胞と共鳴し始めた!


デストラクト・サークル−A
通常罠
フィールド上に表側表示で存在するAカウンターが乗ったモンスター1体を破壊し、
お互いに1000ポイントダメージを受ける。


「さすが……と言いたい所ですが、現実とは時に残酷な物です。」
 そう言いながら、龍也は1枚のカードをデュエルディスクに差し込むと……龍也の体から朱色のオーラが発生して、緑色の輪を打ち砕いた!

「なっ……『デストラクト・サークル−A』が、無効化された!?」
「ええ。この速攻魔法『我が身を盾に』……によってね。このカードは、ライフを1500ポイント払うことで、場のモンスターを破壊する効果を含む相手の魔法・罠・モンスター効果を無効にし、破壊するのです。」
 その言葉通り、『ホルスの黒炎竜 LV6』は、まるで何事も無かったかの様に攻撃を続行し……『風霊使いウィン』を黒き炎で破壊した!


我が身を盾に
速攻魔法
相手が「フィールド上のモンスターを破壊する効果」を持つカードを発動した時、
1500ライフポイントを払う事でその発動を無効にし破壊する。


龍也LP 7600→6100

「『風霊使いウィン』が場を離れた事によって、『アームド・ドラゴン LV5』は私の場に戻ってきます。『アームド・ドラゴン LV5』で、エイジ君の場の『エーリアン・グレイ』に攻撃。」
 龍也の場に戻ってきた『アームド・ドラゴン LV5』は、右腕をブンブン振り回し……強烈な力のアッパーで、『エーリアン・グレイ』を殴り飛ばした!

「ぐっ……『エーリアン・グレイ』の効果発動や!リバースしたこのカードが戦闘破壊された場合、カードを1枚ドローできるんやで!」
 エイジは、少し動揺しながらカードをドローした。


「カードを2枚場に伏せ……エンドフェイズ時に、私の場の2体の上級ドラゴン達は、最上級ドラゴンへと進化するための条件が整いました。」
「な、何やて!……確か、『バンジョウメ』とか言うプロデュエリストも、『アームド・ドラゴン LV5』の進化型を使っとったなあ、エイジ。」
「そうやな、ミカ。確か……『ホルスの黒炎竜 LV6』も、もう1段階進化するらしいしな。」
 エイジとミカは、顔を見合わせながら、少しでも不安を紛らわせようとしていた……。

「行きますよ……。これが、『アームド・ドラゴン LV5』と『ホルスの黒炎竜 LV6』の完全体……『アームド・ドラゴン LV7』!『ホルスの黒炎竜 LV8』!」
 そう言うと、龍也の場の2体のドラゴンが(ほうこう)を上げ……『アームド・ドラゴン LV5』は、元の2倍近くの体格を持つ、鋼の鎧を身に付けた赤い皮膚のドラゴンへと姿を変え……『ホルスの黒炎竜 LV6』は、さらに巨大な鋼の翼を持った、堂々とした体格のドラゴンへと姿を変えた!


アームド・ドラゴン LV7
風 レベル7
【ドラゴン族・効果】
このカードは通常召喚できない。
「アームド・ドラゴン LV5」の効果でのみ特殊召喚できる。
手札のモンスターカード1枚を墓地に送る事で、
そのモンスターの攻撃力以下の相手フィールド上表側表示モンスターを全て破壊する。
攻撃力2800 守備力1000

ホルスの黒炎竜 LV8
炎 レベル8
【ドラゴン族・効果】
このカードは通常召喚できない。
「ホルスの黒炎竜 LV6」の効果でのみ特殊召喚できる。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
魔法の発動と効果を無効にし破壊する事ができる。
攻撃力3000 守備力1800


「これで私はターンを終了します。さて、どうしますか?」
「うっ……うちのターン、ドロー!」
 ミカは、龍也の場の2体の巨大ドラゴンの迫力に、少し気押されていた……。

「(これで龍也先生の手札はたったの1枚になったで……なんとかなるやろ……。)うちは……『憑依装着−エリア』を攻撃表示で召喚するわ!」
 ミカの場に、青色の髪をした、おとなしそうな少女が現れた。

「攻撃力1850のモンスターを攻撃表示……?何を狙っているのですか?」
「そんな事……教えるわけ無いやろ。カードを2枚場に伏せて、ターンエンド!」
 ミカは、龍也の一言をスルーしながら、ターンを終えた。


「わいのターンや!ドロー!」
 ドローしたカードを確認しながら、エイジは場の状況を確認した……。

「(場のモンスターは……炎属性の『ホルスの黒炎竜 LV8』……風属性の『アームド・ドラゴン LV7』……。んで、水属性の『憑依装着−エリア』……か。……読めたで!ミカが伏せたカードが!)」
 エイジは、軽く微笑み……

「行くで……。『エーリアン・ソルジャー』を攻撃表示で召喚や!」
 緑色の皮膚をした、エーリアンの剣士が、エイジの場に現れた!

「『エーリアン・ソルジャー』……攻撃力1900ですか。いったい何を……まさか!」
「ああ……。わいも、場のモンスターの『属性』をよう見たら、読み取れたで!……ミカ!」
 ハッとする龍也を見て、エイジはミカの方を見た。

「いっくでー!これが、逆転への切り札……『風林火山』や!」
 エイジの目を見たミカが1枚の伏せカードを表にすると……『ホルスの黒炎竜 LV8』から赤色のオーラが、『アームド・ドラゴン LV7』から緑色のオーラが、『憑依装着−エリア』から青色のオーラが、『エーリアン・ソルジャー』から黒色のオーラが発生した!


「『風林火山』……発動条件となるモンスターは、自分の場だけでは無く、相手の場もカウントするんですよね。」
「ああ!そうや!『風林火山』で、相手のモンスターを全滅させる効果を選ぶで!『侵略すること、火のごとし』!!」
 ミカがそう言うと、龍也の場の『ホルスの黒炎竜 LV8』から発生した赤色のオーラが、燃え盛る炎に姿を変え……龍也の場の2体のドラゴンを焼き尽くした!


風林火山
通常罠
風・水・炎・地属性モンスターが全てフィールド上に
表側表示で存在する時に発動する事ができる。
次の効果から1つを選択して適用する。
●相手フィールド上モンスターを全て破壊する。
●相手フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。
●相手の手札を2枚ランダムに捨てる。
●カードを2枚ドローする。


「これでがら空きや!『エーリアン・ソルジャー』で、龍也先生にダイレクトアタック!」
 エイジの言葉に反応して、『エーリアン・ソルジャー』は剣を振るい、龍也に切り掛かった!

「ぐっ……中々やりますね。」(龍也LP 6100→4200)

「どうや!これがわいらの力や!カードを3枚場に伏せ、ターンエンド!」


現在の状況
龍也 LP…4200
   手札…1枚
   場…伏せカード2枚

ミカ LP…3100
   手札…0枚
   場…憑依装着−エリア(攻撃力1850・攻撃表示)
     伏せカード1枚
エイジ LP…4000
    手札…0枚
    場…エーリアン・ソルジャー(攻撃力1900・攻撃表示)
      伏せカード3枚


「……私のターン、ドロー。……エイジ君、ミカさん。先程の攻防は見事でした。しかし……このターンで終わりです。」
 龍也は、不敵に微笑んだ。

「え?」
「何やて!」
 ミカとエイジは、龍也の突然の一言に驚いていた……。
この状況で、どのように勝利するのか……

「手札から、魔法カード……『龍の鏡(ドラゴンズ・ミラー)』を発動します。」
 龍也の場に、突然金色の枠に、ドラゴンの羽と足の形のフレームが付いた不思議な鏡が現れた!


「『龍の鏡』……あんま見いへんカードやなあ、エイジ。」
「そうやな、ミカ。」
 ミカとエイジは、龍也の発動したカードの効果が分からず、お互いに顔を見合っていた……。

「このカードの効果は、場または墓地から、素材となるモンスターを除外し、融合モンスターを融合召喚する魔法カードです。」
「なるほどな!簡単に言えば、『ミラクル・フュージョン』みたいな感じやな!」
 エイジは、龍也の説明に感心していた。


龍の鏡
通常魔法
自分のフィールド上または墓地から、
融合モンスターカードによって決められたモンスターをゲームから除外し、
ドラゴン族の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。
(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)


「このカードの効果で、墓地から5体のドラゴン族……『ホルスの黒炎竜 LV8』、『ホルスの黒炎竜 LV6』、『ホルスの黒炎竜 LV4』、『アームド・ドラゴン LV5』、『アームド・ドラゴン LV3』をゲームから除外し……」
 龍也の墓地に眠る、5体のドラゴンが鏡に吸収され……

「究極のドラゴン……『F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)』を融合召喚!」
鏡が粉々に砕け散ると……その中から、5本の首を持った、巨大なドラゴンが姿を現した!

「な、何や!?その変なドラゴンは!」
 ミカは、5本も首を持っているドラゴンの見た目に、驚いていた……。

「確かに、見た目は悪いかもしれませんが……『F・G・D』の攻撃力は、とんでもなく高いですよ。その攻撃力は5000……それに対し、『憑依装着−エリア』の攻撃力は1850……。攻撃が通れば、ミカさんのライフを一瞬で削り取れますよ。」
 龍也は、軽く話した。


F・G・D
闇 レベル12
【ドラゴン族・融合・効果】
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。
ドラゴン族モンスター5体を融合素材として融合召喚する。
このカードは地・水・炎・風・闇属性のモンスターとの戦闘によっては破壊されない。
(ダメージ計算は適用する)
攻撃力5000 守備力5000


「さらに……ライフを半分払い、伏せ罠カード『異次元からの帰還』!出でよ!『ホルスの黒炎竜 LV6』!『ホルスの黒炎竜 LV4』!『アームド・ドラゴン LV5』!『アームド・ドラゴン LV3』!」
 龍也の頭上に、異次元と場を繋ぐ巨大な穴が現れ……その穴から、先程鏡に吸い込まれたはずのドラゴンが4体、大きな地響きを立てながら、龍也の場に集結した!


異次元からの帰還
通常罠
ライフポイントを半分払う。
ゲームから除外されている自分のモンスターを
可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する。
エンドフェイズ時、この効果によって特殊召喚されたモンスターを
全てゲームから除外する。


龍也LP 4200→2100

「なっ……ドラゴン族が、場に5体!?」
「しかし、いくら強力なドラゴンと言えども、戦場に立つ指揮者がいなければ、確実に攻撃を通すことはできません。『ホルスの黒炎竜 LV6』をリリースし……魔法カード『突然変異(メタモルフォーゼ)』を発動。出でよ!レベル6の融合モンスター……『ドラゴン・ウォリアー』!」
 龍也の場の、鳥の様な鋼のドラゴンが姿を消すと……青いドラゴンの仮面を被り、筋骨粒々の肉体を持った戦士が代わりに現れた!


突然変異
通常魔法
自分フィールド上モンスター1体を生け贄に捧げる。
生け贄に捧げたモンスターのレベルと同じレベルの
融合モンスターを融合デッキから特殊召喚する。


「バトルフェイズに入……」
「待った!このタイミングを待っとったんや!速攻魔法『「A」細胞散布爆弾』を発動!わいの場の『エーリアン・ソルジャー』を破壊し、龍也先生の場の4体のドラゴンにAカウンターを1個づつ乗せるで!」
 エイジがそう言うと、『エーリアン・ソルジャー』の体から4個の不気味な細胞が発生し……その細胞が、龍也の場の4体のドラゴン……『F・G・D』、『ホルスの黒炎竜 LV4』、『アームド・ドラゴン LV5』、『アームド・ドラゴン LV3』に付着した!


「A」細胞散布爆弾
速攻魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する
「エーリアン」と名のついたモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターを破壊し、そのモンスターのレベルの数だけAカウンターを
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターに置く。


「このタイミングで、『「A」細胞散布爆弾』を発動させるとは……何か考えがあるのでしょうね。行きますよ。『F・G・D』で、ミカさんの『憑依装着−エリア』に攻撃します。」
 『F・G・D』は、5本の首からそれぞれ違った色のブレスを放ち……それらを収束させ、『憑依装着−エリア』を粉砕しようとした!

「今や!伏せ罠カード……『細胞爆破ウイルス』を発動や!」
 『F・G・D』の体に付着した不気味な細胞が突然蠢き……激しく輝きだした!

「『細胞爆破ウイルス』は、Aカウンターが乗ったモンスターの攻撃宣言時に発動可能な罠カードや!この効果で……龍也先生の場のモンスターを全滅させるで!」
 エイジの言葉に反応して、不気味な細胞が今にも爆発しそうになるが……

「無駄です。」
 突然、『ドラゴン・ウォリアー』の額の宝石からレーザーが放たれ……エイジの場の『細胞爆破ウイルス』を貫いた!
それによって、不気味な細胞の暴走が治まり、『F・G・D』は攻撃を再開した……。

「な、何で『細胞爆破ウイルス』が無効化されたんや!?」
「これが、『ドラゴン・ウォリアー』の効果です。私のライフを1000ポイント払い、通常罠の効果を無効にする事ができる効果ですよ。」
 龍也は、またしても軽く話した……。


細胞爆破ウイルス
通常罠
Aカウンターが乗った相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
相手フィールド上に存在する攻撃表示モンスターを全て破壊する。

ドラゴン・ウォリアー
地 レベル6
【戦士族・融合・効果】
「戦士ダイ・グレファー」+「スピリット・ドラゴン」
このモンスターの融合召喚は、上記のカードでしか行えない。
このカードがフィールド上に存在する限り、
1000ライフを払う事で通常罠の効果を無効化する。
また、このカードを対象にする魔法カードの効果を無効にし破壊する。
攻撃力2000 守備力1200


龍也LP 2100→1100

「(うっ……このままじゃあ、うち、負けてまうわあ……。でも、できる限りのことはやっとかんと……。)……伏せ罠カード『迎撃準備』を発動するわ!『憑依装着−エリア』を裏側守備表示に……」
「『ドラゴン・ウォリアー』の効果発動。『迎撃準備』の効果を無効にします。」(龍也LP 1100→100)
 『ドラゴン・ウォリアー』は、再度額の宝石からレーザーを放ち……ミカの抵抗とも言える罠の効果を無効にしてしまった!
そして、『F・G・D』の攻撃が、とうとう『憑依装着−エリア』に炸裂し……ミカのライフが、一瞬で消し飛んだ!

「ま、負けてまった……。」(ミカLP 3100→0)



「ふふふ、エイジ君の場に唯一残っていたモンスター……『エーリアン・ソルジャー』は、『「A」細胞散布爆弾』の効果で破壊されていますね。これでエイジ君の場には、1枚の伏せカードしか存在しません。」
 龍也は、がら空きのエイジの場を見て微笑み……

「行きます。『アームド・ドラゴン LV5』で、エイジ君にダイレクトアタック。アームド・バスター。」
 『アームド・ドラゴン LV5』は、腕をぶんぶん振り回し、エイジを全力で殴り付けた!

「ぐわわっ!」(エイジLP 4000→1600)



「これで終わりです。『ホルスの黒炎竜 LV4』で、ダイレクトアタック!」
「……攻撃宣言したな?龍也先生。」
 トドメをさそうと攻撃宣言をした龍也先生に対し、エイジは不敵に微笑んだ。


「2回目のダイレクトアタック宣言時……この最後の伏せ罠カードが発動できるで!伏せ罠カード……『コンフュージョン・チャフ』を発動や!」
 すると、龍也の場の『ホルスの黒炎竜 LV4』が、エイジに攻撃するどころか、味方の『アームド・ドラゴン LV5』に突撃を始めていた!



「こ、これは……」
「『コンフュージョン・チャフ』は、1度のバトルフェイズ中に2回目のダイレクトアタックの宣言をされた時に発動可能な罠カードや!その攻撃モンスターは、1回目にダイレクトアタックをしたモンスターと、強制的にバトルさせられるんや!」
 エイジは、自信満々に答えた!


コンフュージョン・チャフ
通常罠
1度のバトルフェイズ中に2回目の直接攻撃が宣言された時に発動する事ができる。
その相手モンスターは、直接攻撃した1体目の相手モンスターと戦闘しダメージ計算を行う。


「龍也先生のライフは100……『ドラゴン・ウォリアー』の効果は使えへん!これで終わりや!」
「くっ……ならば!『コンフュージョン・チャフ』にチェーンし、伏せ罠カード……『亜空間物質転送装置』を発動!『ホルスの黒炎竜 LV4』を一時的にゲームから除外します!」
 龍也が、最後の伏せ罠カードを表にすると……『ホルスの黒炎竜 LV4』が、突然場から消え去った!


「な……何をしたんや?」
「これが……『亜空間物質転送装置』の効果です。このカードの効果によって、『ホルスの黒炎竜 LV4』は、このターンのエンドフェイズまで、ゲームから除外されます……。」
 龍也は、少々焦りながら答えた……。


亜空間物質転送装置
通常罠
自分フィールド上の表側表示モンスター1体を選択し、
発動ターンのエンドフェイズまでゲームから除外する。


「ぐっ……最後の一手も、防がれてまったか……。」
 エイジは、残念そうに話した。

「……『ドラゴン・ウォリアー』で、エイジ君にダイレクトアタック!」
 『ドラゴン・ウォリアー』は、持っている剣を振るい、エイジにトドメをさした!

「ぐっ……わいらの負けか……。」(エイジLP 1600→0)











「……負けてまったなあ、エイジ……。」
「……そうやな、ミカ。龍也先生は、やっぱ強かったな。」



「いえ、エイジ君、ミカさん。貴方達も強かったですよ。特に終盤は、私の心が騒ぎました。」
 龍也は、2人をなぐさめようと、優しく話し掛けた。









「……貴方達、私の部屋に来てくれませんか?」
「え?」
 龍也の突然の問い掛けに、エイジとミカは当惑していた……。
「いえ……『カードの精霊』が見える貴方達なら、私の話が通じると思いましてね……。」



第二十六話 精霊研究サークル

 エイジとミカは、デュエルが終わった後、龍也の部屋に誘われていた……。



「さあ、エイジ君、ミカさん。お茶をどうぞ。」
 龍也は、2杯の紅茶を、エイジとミカの座っているテーブルに置き、テーブルの上をスライドさせながら差し出した。


「……で、話って何なん?」
 ミカは、紅茶のカップを右手で持ちながら話した。

「ミカさん。再度確認しますが……貴方は、『カードの精霊』が見えるんですよね?」
「そ……そうやよ。」
 龍也の言葉に対してミカは、当然と言わんばかりの表情で返答した。



「分かりました。……実は私は、このデュエルアカデミア星海校に在学中、『カードの精霊』についての研究を行うサークル活動を行っていました。」
 龍也は、テーブルの上で手を合わせながら話した。

「精霊研究……か。そんなサークルがあったんやな、ミカ。」
「全然知らんかったなあ、エイジ。」
 エイジとミカは、顔を見合わせながら話した。

「……実は、そのサークルは3年前に、事実上の解散を行ったのですがね。」
「え!?」
「何やて!?」
 エイジとミカは、龍也の言葉に驚いた。



「た、龍也先生って、20そこらの年齢やったんやなあ……。うち、てっきり20台後半やと思っとったわあ……。」
「……そっちに驚いていたのですか……。」
 龍也は、ミカの素っ頓狂な一言に、呆れた表情をしてしまった……。



「でも、3年前に何があったんや?」
 今度は、エイジが尋ねた。

「……精霊研究サークルには、私も含めて、たったの3人しか参加していませんでした。……その内の1人との仲違いが、原因ですよ……。」
 龍也は、少し淋しそうな表情で話した。

「そ、そうなんや……。嫌な事思い出させてまったな……。」
 エイジは、少し申し訳なさそうに話した……。



「……なあ、エイジ。3年前……って、何かあった?」
「さあ……。何も思いつかんな。」
 ミカとエイジは、腕を組みながら必死に考えていた……。

「……『三幻魔事件』の事を、ご存じありませんか?」
「『三幻魔事件』?……知らんな。ミカ。」
 エイジは、不思議そうな表情でミカに話し掛けた。

「……そうでしたか。」
 龍也は、少しだけ残念そうに話した。



「……龍也先生。……『三幻魔事件』って、何なん?」
 ミカは、龍也先生の顔を覗き込みながら言った。


「『三幻魔事件』――いえ、正式な名称は無いため、私はそう読んでるだけですが……デュエルアカデミア本校には、『三幻魔』と呼ばれる、カードの精霊にとって凶悪な影響力を持つ3枚のカードが封印されています。」
「三……幻魔?」
 ミカは、龍也の言葉にキョトンとしていた。

「で、その三幻魔が、何をしたんや?」
「……何者かが、その三幻魔の力で、世界中のカードの精霊の力を奪い……永遠の命と若さを手に入れようとしたのですよ。」
「なっ……そんな恐ろしいことが可能なんか……?」
 龍也は、「ええ。」と一言いい、仰天するエイジを見ていた。

「なら……もしその事件が解決されんかったら、カードの精霊は……みんな死んでまっとったんか?」
「ええ……。恐ろしい事です……。」
 龍也は、低い声で答えた。



「……と、今の話では、実際に起きた『三幻魔事件』を例に挙げたのですが……平たく言えば、精霊の力を一ヶ所に集中・凝縮すれば、人間を若返らせる様な事も行える訳です。」
「つまり……喧嘩して抜け出した奴も、永遠の命を手に入れようとしたんか?」
 エイジは、龍也に尋ねた。

「……詳しくは語れませんが、その目的ではありません。」
 しかし龍也は、少し口籠もりながら返答した……。


すると、ミカは……



「えぇ〜、何でなん〜〜?なぁ〜あぁ〜〜、龍也先生ぇ〜〜。ちょっとぐらい教えてくれたってええやろぉ〜〜。」
 突然、龍也の眼前に顔を寄せ……猫なで声を出し、両手を合わせながら龍也に話し掛けた。


「ダメなんかぁ〜〜?先生ぇ〜〜。」
「ふふふ、ミカさん。わざわざ自分の羞恥心を無理矢理抑えつけ、上辺だけ可愛こぶっても、すぐに見抜かれてしまいますよ。……それどころか、自らの羞恥心を揺さぶり、冷静な判断を行えなくなりますよ。」
「そ……そんな事……ないで。うち、いっつもこんな感じやよ。」
 ミカは、少し頬を赤らめ、手のひらを龍也に向けながら話した。



「……まあいいでしょう。ヒントを少しだけあげます。……カードの精霊の力を吸収した人物は、老化した肉体を若返らせました。それと似た事を行おうとしています。」
 龍也は、腕を組みながら話した。

「……?」
「全然分からへん……。」
 ミカとエイジは、龍也の言葉の意味がまったく分からなかった……。



「……そ、そうや。カードの精霊の研究って……いったい何やっとったんや?」
 重苦しい空気を和らげようと、エイジが口を開いた。

「ええ。……私達は、『精霊の実体化』についての研究を行っていました。」
「じ……実体化?」
 エイジは、龍也の言葉にまた驚いていた……。

「なあなあ、実際に、その『実体化』っての、見せてくれへん?」
「ええ、いいですよ。」
 龍也は、ミカの要求に軽く微笑みながら答えた。

「では、少し待っていて下さい。準備に時間が掛かるので。」
 龍也は椅子から立ち上がり、部屋の奥へと歩いていった……。











「いやぁ〜、楽しみやなぁ〜〜。どんな風に精霊を実体化させるんかなぁ〜〜。」
 ミカは、頬杖をつき、ウキウキしながら準備完了を待っていた。

「ミカ。そう言えば、この部屋に置かれてる写真……何か気にならへんか?」
「ああ。気になっとったよ。」
 エイジとミカは、棚の上に置かれていた写真立ての中に入った写真の近くに近付いた。
その写真には、金髪の青年と黒髪の青年、そして青髪の青年が、仲良さそうにお互いに肩を組んだ状態で写っていた……。


「この黒髪の人は……龍也先生か?」
「多分そうやな。目付きがおんなじや。」
「で……喧嘩した奴は……この青髪かなあ、エイジ。」
「多分な。見た目的に、そんなに仲良さそうに無いし。」
 ミカとエイジは、写真の真ん中に写っている黒髪の青年と、写真の右側に写っている青髪の青年を指差しながら、楽しそうに話していた。











「お待たせしました。これが、精霊を実体化させるためのディスクです。」
 龍也は、部屋の奥から、直径50センチぐらいの、巨大な円盤状の装置を、重そうに持ってきて、それをテーブルの上にドスンと乗せた。

「うわ、でっかあ〜〜。」
「でっかいな。」
「でっかいなあ〜。」
 ミカとエイジは、テーブルの半分近くを占める程の巨大な円盤状の装置に、目を丸くしていた。


「まあ、これでも大きさは相当抑えたのですがね。それと……」
 龍也は、電源をコードで繋ぎ、スイッチをオンにした。

「で、電源コードもいったんかあ……。ほとんど家電製品やなあ……。」
「仕方がありませんよ。実体化には、大きなエネルギーが必要ですからね。」
 そう言いながら、龍也はデッキから1枚のカードを取り出した。


「これが、今回実体化させるカードの精霊……『プチリュウ』です。」
『ピキー!』
 龍也が、『プチリュウ』のカードをエイジとミカに見せると、全身黄色で、大きな瞳と小さな耳、そして少し大きめの羽を持った小さなドラゴンが、半透明状態で浮かび上がった!

「わっ!可愛いなあ。龍也先生、こんな可愛らしい精霊を持っとったんやなあ。」
 ミカは、思わず可愛らしい『プチリュウ』に触れようと手を差し出したが、まったく抵抗を及ぼさずに、『プチリュウ』の体を擦り抜けてしまった……。

「あれっ?」
「ふふふ、ミカさん。実体化してない精霊に触れる事はできませんよ。」
 龍也は、キョトンとするミカの様子を、軽く微笑みながら見ていた。


「そ、そらそうやなあ……。……でも、龍也先生、カードの精霊を持っとったんやなあ。」
「そうやな。わいもデュエル中は、全然気付かんかったな。」
「まあ私は、あまり精霊をひけらかさないようにしていますから。」
 龍也は、ミカとエイジに対して軽く話し……



「……では、行きますよ。」
『プチリュウ』のカードを、テーブルの上の円盤状の装置にセットした……。











ブゥゥンンン――











「ピキーーー!」
 鳴き声を上げながら、半透明だった『プチリュウ』の体が実体化し、エイジとミカの下によっていった!


「ほ、本当に実体化してまった!」
「可愛いなあ。まるでぬいぐるみみたいや!」
 エイジが驚きながらプチリュウの羽や頭を触った後……ミカが、突然プチリュウの体を、まるでぬいぐるみを抱くかのように腕に抱き締めた!

「可愛いなあ。可愛いなあ。」
 ミカは、微笑みながら、抱き締めているプチリュウに頬摺りをした!
プチリュウは、強く抱き締められて苦しいのか、「キュゥゥ……」と弱々しく鳴いていた……。


「ふふふ、ミカさん。あまりプチリュウをいじらないで下さいよ。カードの精霊も、ちゃんと意志を持った一つの命なんですから。」
「そ、そうやったなあ……。ゴメンなあ……。きつく抱き締めてまって。」
 龍也に注意されたミカは、腕を緩め、プチリュウの頭を優しく撫でた。
すると、プチリュウは、嬉しそうに「ピー」と軽く鳴いた。



「……でも、すごいなあ。精霊に触れるなんて、まるで夢みたいや!」
「そうやな、ミカ!龍也先生の誘いに乗って正解やったな!」
 ミカとエイジは、実体化したプチリュウに触りながら、楽しそうに会話をしていた。

「ふふふ、光栄ですよ。喜んでもらえて。」
 龍也は、嬉しそうな表情のミカとエイジを見て、微笑を浮かべていた……。











「……おっと、もうこんな時間でしたか。そろそろ自分の部屋に戻ったほうがいいのでは?」
 龍也は、外の夕焼けを見て、ミカとエイジに話し掛けた。


「も、もう夕方になってまったんか……。」
「残念やなあ……。……なあなあ、龍也先生。このプチリュウの精霊、もらってっちゃあかん?」
 外を見て、残念そうな声を上げる2人だったが、ミカは、プチリュウをぬいぐるみのように抱き、龍也にお願いをした。

「……駄目に決まっているでしょう。」
 龍也は、そう言いながら、精霊を実体化させる装置の電源を切った。
すると、プチリュウの体が半透明状態になり……「ピー」と鳴きながら、ミカの腕を擦り抜け、龍也の下に戻ってしまった……。

「あっ……。強引やなあ、龍也先生。」
「当然ですよ。普通、他の人に易々精霊を渡すわけ無いでしょう。」
 龍也は、装置に置かれた『プチリュウ』のカードを、自分のデッキに戻した。


「そらそうや、ミカ。諦めなあかんって。」
「そうやなあ……。また今度遊びに来させてえな、龍也先生。」
「いいですよ。時間があれば、いつでも歓迎しますよ。」
 立ち上がったエイジとミカに対して、龍也は軽く微笑みながら話した。



「じゃあ、おおきに。」
「またプチリュウを触らせてなあ、龍也先生。」
 エイジとミカは、出口を背に龍也にお辞儀をし、部屋から出ていった……。





















「……あいつの事を思い出すのは、いったい何ヵ月ぶりだろうな……。」
 龍也は、棚の上に置かれていた写真を手に取り、軽くため息をついた……。


「(お前の気持ちは否定できない……。……だが……『三幻魔事件』と同じ方法でお前の思いを果たすためには、カードの精霊達の多大な犠牲がともなう……。)」
 龍也は、自分の傍らで円らな瞳を開いている『プチリュウ』を軽く見ながら話した……。



「(……お前が別れの際に私に告げた方法は、表面上は平和的に見える……。だが、それは本当に平和的なのか……?……誰でもいい……。教えてくれ……。)」
 心の中で、龍也は孤空――この場に存在し得ない、答えを知る者――に話し掛け……写真に写る青髪の青年を、ぼんやりと見つめていた……。




第二十七話 炎の翼

午後9時頃……デュエルアカデミア星海校・屋外通路にて……


「おっ、やっとスターチップを持ってそうな参加者が見つかったッスね。」
 カムイは、参加者を探すために、日の落ちた夜道を歩き回っていた……。

「おーい、オレとデュエルしてくれないッスか?」
「い…いや……。おれ、もう失格になっちまったんだ……。」
 カムイは、歩いている参加者に話し掛けたが、その参加者は、スターチップが1個もはまっていない右手の をカムイに見せ、立ち去った……。



「……ふう。また失格になった参加者に話し掛けちまったッスね……。これで5回目ッスよ?」
 カムイは、落胆しながら木の根元に座り込んだ……。

「……誰かいるのかい?」
「ん?誰ッスか?」
 声のした方を見ると、1人の背の低い少年……ナオが立っていた。


「あっ、ナオもデュエリストを探してるんスか?」
「違うよ。……探し終わって、帰ろうとしてるだけだよ。」
 カムイの問いに、ナオは軽く答えた。

「……で、何個スターチップを集めたんスか?」
「8個だよ。つまり、あと1回デュエルすれば、対抗戦に出られるって事。」



「……悪いけど、カムイ。ボクと一緒に、『悪魔部』の前まで来てくれる?」
「ん?」
ナオの唐突な一言を、カムイは疑問に思った。

「だって、こんな夜中に1人で外を歩き回るなんて……危険すぎるからね。」
「なるほど……。そうッスよね。」
 ナオの一言を聞いて、カムイはある事を理解した。
――ナオは、誰かに妬まれているのではないか――と。



「(……ナオは、体格だけ見れば、小学生ともとれるくらいの身長しか無いんスよね……。それに、年は中学2年生相当にもかかわらず、デュエルの腕はかなり高い……。年下の相手に負けた上にナマイキな事を言われたら、恨み・妬み・疎みを持つ生徒がいても、不自然じゃないッスね……。)」
 カムイは、色々と考えて、少し黙り込んでしまった……。

「ん?何してるんだい?」
「いや、何でもないッスよ。」
 考えるカムイにナオが不意に話し掛けたが、カムイは軽く答えた。

「……仕方ないッスね。一緒に行ってあげるッスよ。」
「助かるよ、カムイ。」
 カムイの返答に、ナオは軽く笑みを浮かべた。











「……カムイ。そう言えば君は、スターチップを持ってそうなデュエリストを探してたんだよね。」
「ああ、そうッスよ。」
 『悪魔部』へと一緒に歩いていく間に、カムイとナオは会話をしていた。

「何時間も探してたんスが……全然スターチップを持ったデュエリストに合えなかったんスよね……。」
「でも……おかしいと思わないかい?」
「ん?」
 ナオの一言に、カムイは少し驚いた。

「だって……ここまで参加者が減ってるなら、もうスターチップを10個集めた奴がいても、おかしくないよね。」
「ああ、なるほど……。言われてみたら、そうッスよね。」
 カムイは、ナオの言葉で妙な点に気が付いた。

「……つまり、正規の参加者じゃない『デュエリスト狩り』が紛れ込んでるって事ッスか?」
「そうだね……。参加者がルール違反したら、即失格になるだろうけど、侵入者には、ボク達に適用されるルールは適用されないだろうから……。」
 ナオは、腕を組みながら答えた。

「……で、ナオは、もしその『デュエリスト狩り』に出会ったら、どうする気なんスか?」
「そんなの……。……デュエルで打ち負かす。それだけだよ。」
 カムイの問い掛けを聞いたナオは、少しだけうつむいたが、デュエルディスクを付けた細い左腕を少し上げ、左手に握りこぶしを作った。



「……そもそも『デュエリスト狩り』って、言っちゃえば、実力はともかくスターチップを大量に持っているだけなんだよね。」
「なるほど……。つまりナオは、『デュエリスト狩り』の事を、ただのスターチップ稼ぎ要員としてしか見てないんスか?」
「そう言う事。」
 ナオは、小悪魔のような笑みを浮かべながら言った。



「……おっ、やっと『悪魔部』の前に着いた見たいッスね。」
「そうみたいだね。助かったよ、カムイ。」
 ナオは、カムイに軽く話し掛け、自分の部屋がある『悪魔部』の中へと帰っていった……。











「……『デュエリスト狩り』……いったいどんな奴なんスかね……。」
 カムイは、腕を組みながら、ナオと別れた『悪魔部』を後にした……。
すると……



「よう。……お前、スターチップを持っているか?」
「ん?誰ッスか?」
 声がした方に振り向くと、カムイの目に、大柄の1人の青年が映った。
その青年は、短い金髪で全身がっちりとした体格で、両腕を肩まで出している黒色のジャケットみたいな者を着ていた。
身長は、カムイより明らかに高く、軽く1メーター80は越えているだろうか。

「(この男……オレ達の使っているデュエルディスクと違う形状のを使ってるんスね……。それに、スターチップをはめ込むグローブも着けていない……。まさか、この男が、『デュエリスト狩り』なんスかね……。)」
 カムイは、男の左腕に装着された、黒色の基盤を金色で縁取った盾のような形状のデッキをセットする部分に、これまた金色で縁取られた、刄の様な形をした銀色のカードを置くスペースが5個付いている形状のデュエルディスクを、不思議そうに見ていた……。



「なるほど……。『デュエリスト狩り』の登場って訳ッスね。」
「ほう、お前等の間では、俺の事はそう呼ばれてたって訳か。」
「いや、ただオレがそう呼んでるだけなんスけど。」
 男の言葉に対し、カムイは軽く返答した。


「まあ……ここは、スターチップを2個賭けてデュエルすることでいいッスか?」
「ああ、構わねえぜ。」
 男は、腕を組みながら答えた。

「(やっぱり……この男は、ルールを理解していない部外者みたいッスね……。本来、賭けるスターチップの数は、デュエルを申し込んだ側が決めるんスけど……。)」
 カムイは口を結び、アトロポスの動向を正確に分析していた……。


「デュエルの前に、名前を教えてもらうッスよ。」
「俺か?……俺はアトロポスだ。」
「アトロポス……。デュエルを始めるッスよ!」
 男の名前を確認したカムイは、デュエルディスクを構え……





「「デュエル!」」
……そのまま、デュエルを開始した。











「先攻はもらうッスよ!ドロー!手札から、『カードブロッカー』を召喚!」
 カムイの場に、紫色の鎧を着けた小さな戦士が現れた。

「『カードブロッカー』は、召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、守備表示になるんスよ!カードを3枚場に伏せ、ターンエンド!」


「1ターン目は無理に攻めを行わねえ……って訳か。俺のターン!ドロー!手札から、速攻魔法『手札断殺』を発動!この効果で俺は2枚の手札を墓地に送り、カードを2枚ドローするぜ!」
「だが……オレにも手札交換のチャンスを与えちまうんスよね。手札を2枚墓地に送り、カードを2枚ドローするッスよ!」
 アトロポスとカムイは、自分の手札のカードを2枚墓地に送って、カードを2枚ドローした。


手札断殺
速攻魔法
お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする。


「これで手札は整ったぜ!手札から、『E−HERO(イービルヒーロー) ヘル・ブラット』を特殊召喚!」
 アトロポスの場に、黒い体で頭に角を生やした、小型の悪魔が現れた。

「『E−HERO(イービルヒーロー)』?初めて見るカードッスね……。どんな効果を持ってるんスか?」
「『ヘル・ブラット』は、俺の場にモンスターが存在しない場合、手札から特殊召喚可能なモンスターだ!さらに『ヘル・ブラット』をリリースし……『E−HERO(イービルヒーロー) マリシャス・エッジ』をアドバンス召喚!」
 小型の悪魔がアトロポスの場から消え去ると……両手に鋭く長い針を持ち、仮面を身につけ、背中に刄のような翼を持った細身のヒーローが現れた!

「ん?……見た感じ『マリシャス・エッジ』のレベルは7ッスよね……。何で1体のリリースでアドバンス召喚ができるんスか?」
「教えてやるぜ!『マリシャス・エッジ』は、相手の場にモンスターが存在する場合、1体のリリースでアドバンス召喚可能なモンスターだぜ!バトルだ!『マリシャス・エッジ』で、『カードブロッカー』に攻撃!ニードル・バースト!」
 『マリシャス・エッジ』は、両手に持った針を、弾丸の様な速さで『カードブロッカー』に向けて放ったが……

「『カードブロッカー』の効果発動ッス!デッキの上からカードを3枚墓地に送り、守備力を1500ポイントアップさせるッスよ!」
 カムイがデッキの上から3枚のカード……『ゴブリンのやりくり上手』、『E・HERO フェザーマン』、『E・HERO バーストレディ』を墓地に送ると、『カードブロッカー』の持っている盾が全身を覆い隠すほど大きくなり……『マリシャス・エッジ』の攻撃に備えた!


カードブロッカー
地 レベル3
【戦士族・効果】
このカードは召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、守備表示になる。
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターが攻撃対象に選択された時、
このカードに攻撃対象を変更することができる。
このカードが攻撃対象になった時、自分のデッキのカードを上から3枚まで
墓地へ送る事ができる。
墓地へ送ったカード1枚につき、このカードの守備力はエンドフェイズ時まで
500ポイントアップする。
攻撃力400 守備力400


カードブロッカー 守備力400→1900

「(よっしゃー!『ゴブリンのやりくり上手』が、いい具合に墓地に落ちてくれたッスね!)」
 カムイは、墓地に送られたカードの良さに、少々喜んでいた。
……と思っている間に、『マリシャス・エッジ』の放った針が『カードブロッカー』を貫き、貫通した針がカムイに直撃しそうになった!

「(ま、まさか……貫通効果を持ってるんスか?)……伏せ罠カード『ガード・ブロック』を発動ッス!この効果で、オレが受ける戦闘ダメージを0にして、カードを1枚ドローするッスよ!」
 『マリシャス・エッジ』の放った針がカムイに今まさに直撃しそうになったが……その寸前に発動させた『ガード・ブロック』の効果によって、その針はカムイに当たる事は無かった。


ガード・ブロック
通常罠
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。


「(ふう……。相変わらず『ガード・ブロック』の発動タイミングには、ヒヤヒヤするッスね……。何せ、攻撃をギリギリまで引き寄せないと使えないんスからね……。)」
 カムイは、『ガード・ブロック』の発動にうまくいったからか、ホッと胸を撫で下ろした。

「『マリシャス・エッジ』による貫通ダメージを防ぐとは……中々やるじゃねえか。……俺はこいつで、今日41人のデュエリストを倒してきたぜ。」
 アトロポスは、軽く笑いながら話した。


E−HERO マリシャス・エッジ
地 レベル7
【悪魔族・効果】
相手フィールド上にモンスターが存在する場合、
このカードは生け贄1体で召喚する事ができる。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が越えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
攻撃力2600 守備力1800


「カードを2枚場に伏せ……エンドフェイズ時に、『E−HERO マリシャス・エッジ』をアドバンス召喚するためのリリース要員となった『ヘル・ブラット』の効果発動!カードを1枚ドローするぜ!」
 アトロポスは、デッキの上からカードを1枚勢い良くドローした。


E−HERO ヘル・ブラット
闇 レベル2
【悪魔族・効果】
自分フィールド上にモンスターが存在していない場合、
このカードは手札から表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
このカードを生け贄にして「HERO」と名のついたカードを生け贄召喚した場合、
そのターンのエンドフェイズ時に自分のデッキからカードを1枚ドローする。
攻撃力300 守備力600


「ぐっ……実質、カード消費無しで攻撃力2600の貫通持ちを呼べたことになるんスね……。」
「その通りだ。俺はこれでターンを終了するぜ。」
 アトロポスは、ドローしたカードを手札に加え、ターンを終えた。


現在の状況
カムイ LP…4000
    手札…3枚
    場…伏せカード2枚

アトロポス LP…4000
      手札…1枚
      場…E−HERO マリシャス・エッジ(攻撃力2600・攻撃表示)
        伏せカード3枚


「オレのターン、ドロー!」
 ドローしたカードを確認したカムイは……

「……アトロポス!これでオレの墓地に、モンスターが5体集まったッスよ!」
「何……!俺の『手札断殺』を利用しやがったとはな!」
 カムイの一言に、アトロポスは憤慨した。

「……何を発動させる気だ?『貪欲な壺』か?」
「……いや、違うッスよ。オレが発動させるカードは……厳しい発動条件を満たせば、1枚のカードを3枚の手札に変換できるカードッスよ!」
 そう言いながらカムイは、1枚目の伏せカードに手を掛けた。

「伏せ罠カード……『補充要員』を発動ッス!このカードの効果で、墓地から効果を持たない攻撃力1500以下のモンスターを3体……『フェザーマン』、『バーストレディ』、『クレイマン』を手札に戻すッスよ!」
 カムイは、先程『カードブロッカー』によって墓地に送られた『フェザーマン』と『バーストレディ』、『手札断殺』によって墓地に送られた『クレイマン』を手慣れた手つきで取り出し、手札に加えた。


補充要員
通常罠
自分の墓地にモンスターが5体以上存在する場合に発動する事ができる。
自分の墓地に存在する効果モンスター以外の攻撃力1500以下の
モンスターを3体まで手札に加える。


「くっ、4枚だった手札を、一気に7枚に増やしやがったか!」
「ああ!さらにオレは、伏せ罠カード『ゴブリンのやりくり上手』を発動するッス!墓地の『ゴブリンのやりくり上手』の枚数……1枚+1枚カードをドローし、手札を1枚デッキの1番下に戻すッスよ!」
 カムイは、さらにもう1枚の伏せカードを表にし、手札交換を行った。


ゴブリンのやりくり上手
通常罠
自分の墓地に存在する「ゴブリンのやりくり上手」の枚数+1枚を
自分のデッキからドローし、自分の手札を1枚選択してデッキの一番下に戻す。


「(これでオレの手札は8枚……。うまく行けばこのターンで決められるッスね……。)……手札から、魔法カード『融合』を発動ッス!手札の『フェザーマン』と『バーストレディ』を融合し……『E・HERO フレイム・ウイングマン』を融合召喚!」
 カムイの手札の翼を持つヒーローと、炎を操るヒーローが融合し……翼と鷹の頭を腕に付けたヒーローが現われた!

「さらにオレは手札から、フィールド魔法『摩天楼−スカイスクレイパー−』を発動するッスよ!」
 カムイが『摩天楼−スカイスクレイパー−』のカードを、デュエルディスクのフィールド魔法カードを置くスペースに勢い良く置くと……カムイとアトロポスを覆い隠すかの様な巨大なビル街が現れ……一番高いビルの頂上に『フレイム・ウイングマン』が飛び乗った!

「『摩天楼−スカイスクレイパー−』が発動している時に、『E・HERO』と名のつくモンスターが自分より攻撃力の高い相手に攻撃するとき、攻撃力が1000ポイントアップするんスよ!オレの『フレイム・ウイングマン』の攻撃力は2100……『マリシャス・エッジ』に攻撃する時に効果が適用されるッスよ!」
 カムイは、自信満々に話した。


摩天楼−スカイスクレイパー−
フィールド魔法
「E・HERO」と名のつくモンスターが攻撃する時、
攻撃モンスターの攻撃力が攻撃対象モンスターの攻撃力よりも低い場合、
攻撃モンスターの攻撃力はダメージ計算時のみ1000ポイントアップする。


「行くッスよー!『フレイム・ウイングマン』で、『マリシャス・エッジ』に攻撃!スカイスクレイパー・シュート!」
 『フレイム・ウイングマン』は、ビルから飛び降り『マリシャス・エッジ』に向かって突撃するが……

「……なるほどな。お前も融合主体のデッキ……って訳か。だが、それは俺も同じだ!速攻魔法『融合解除』を発動!『フレイム・ウイングマン』には退場してもらうぜ!」
 アトロポスが、伏せておいたカードを表にすると……突然『フレイム・ウイングマン』の周りに、不思議な渦みたいな空間の歪みが発生し……その体が真っ二つに引きちぎられそうになった!

「ゆ、『融合解除』!?アトロポスも仕掛けてたんスか!?」
「も……だと!?」
 カムイの思わぬ一言に、アトロポスは眉をひそめた。

「ああ……オレも手札に持ってたんスよね……。『融合解除』を!」
 そう言いながらカムイは、手札のカードを1枚デュエルディスクに差し込んだ!
すると、異質な渦に巻き込まれ、体が真っ二つにちぎれてしまいそうな『フレイム・ウイングマン』の周りに、その渦を打ち消す別の渦が発生し……『フレイム・ウイングマン』の体が、融合素材である『フェザーマン』と『バーストレディ』の2体に分離した!

「……『融合解除』は、相手の融合モンスターに対して発動しても、相手の場に融合素材を出すことは無いから、実質ノーコストの除去になってしまうんスよね……。」
「その通りだ。……『解除』のニュアンスとしては、明らかにおかしいがな。」
 カムイとアトロポスは、『融合解除』の効果について語り合っていた。


融合解除
速攻魔法
フィールド上の融合モンスター1体を融合デッキに戻す。
さらに、融合デッキに戻したこのモンスターの融合召喚に使用した
融合素材モンスター一組が自分の墓地に揃っていれば、
この一組を自分のフィールド上に特殊召喚する事ができる。


「……だが、これでお前の場には、攻撃力1000の『フェザーマン』と、攻撃力1200の『バーストレディ』のみ……。たとえ『摩天楼−スカイスクレイパー−』の効果を受けたとしても、俺の『マリシャス・エッジ』の攻撃力を上回る事はできねえぜ!」
「確かに……攻撃力では上回れないッスね……。……だが、守備力ならどうッスかね!」
 カムイは、手札に持っていた1枚のカードを、勢い良くデュエルディスクに差し込んだ!
すると、カムイの前に巨大なコントローラーが現れ……コントローラーの端子部が、『マリシャス・エッジ』の腹部に突き刺さった!

「速攻魔法……『エネミーコントローラー』!このカードの効果で、『マリシャス・エッジ』を守備表示に変更させるッスよ!」
「ちっ!……そのカードを手札に持ってやがったか!」
 カムイの発動したカードによって『マリシャス・エッジ』が守備表示にされて、アトロポスは舌打ちをした。


エネミーコントローラー
速攻魔法
次の効果から1つを選択して発動する。
●相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体の表示形式を変更する。
●自分フィールド上に存在するモンスター1体を生け贄に捧げて発動する。
このターンのエンドフェイズ時まで、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体のコントロールを得る。


「『マリシャス・エッジ』の守備力は1800……当然、守備表示のモンスターとバトルする時も、『摩天楼−スカイスクレイパー−』の効果が適用されるッスよ!『フェザーマン』で、『マリシャス・エッジ』に攻撃!フェザー・ブレイク!」
 『フェザーマン』がビルの高さを利用し、翼を広げて『マリシャス・エッジ』に突撃すると……『マリシャス・エッジ』はその衝撃に耐え切れず、破壊された!

「まだ終わりじゃ無いッスよ!『バーストレディ』で、アトロポスにダイレクトアタック!バースト・ファイヤー!」
 『バーストレディ』は、両手で作った火の玉を頭上にかかげ……アトロポスに向かって一気に放出した!

「うぉぉっ!」(アトロポスLP 4000→2800)
 『バーストレディ』の攻撃によって、アトロポスは少し仰け反ったが……

「……かかったな。俺が1200ポイントの戦闘ダメージを受けたことで……手札を1枚捨て、伏せ罠カード『ダメージ・コンデンサー』を発動!」
 そう言うと、アトロポスの場に巨大なガラス瓶みたいなものが現われ……その中に受けたダメージが、電気のエネルギーとなって蓄まっていった!

「このカードの効果で、俺はデッキから……攻撃力1200の『憑依するブラッド・ソウル』を特殊召喚!」
 アトロポスの場に出現した電気を蓄めるビンが砕け散ると……そのビンの中から、全身赤色の悪霊みたいなモンスターが現れた!


ダメージ・コンデンサー
通常罠
自分が戦闘ダメージを受けた時、手札を1枚捨てて発動する事ができる。
その時に受けたダメージの数値以下の攻撃力を持つモンスター1体を
デッキから攻撃表示で特殊召喚する。


「『憑依するブラッド・ソウル』……確か、自身をリリースする事で、オレの場のレベル3以下の表側表示モンスターをすべて奪い取るんスよね……。メインフェイズ2に、モンスターと伏せカードを1体セットして、ターンを終了するッス。」
 カムイは、アトロポスの場の『憑依するブラッド・ソウル』の効果で『フェザーマン』と『バーストレディ』を奪われる事を危惧し、手札に残されていたカードをすべてセットし、ターンを終えた。

「俺のターン!ドロー!『憑依するブラッド・ソウル』の効果発動!お前の場のレベル3モンスター……『フェザーマン』と『バーストレディ』を奪い取らせてもらうぜ!」
 『憑依するブラッド・ソウル』は、その身を犠牲にして赤色の帯みたいな物を『フェザーマン』と『バーストレディ』に投げ付けると……その2体の目が突然真っ赤になり……アトロポスの場へと跳んでいった!


憑依するブラッド・ソウル
闇 レベル3
【悪魔族・効果】
このカードを生け贄に捧げる。
相手フィールド上でレベル3以下の表側表示モンスター全てのコントロールを得る。
攻撃力1200 守備力800


「さらに伏せ罠カード『ゴブリンのやりくり上手』を発動!俺の墓地の『ゴブリンのやりくり上手』……『手札断殺』によって墓地に送った1枚+『ダメージ・コンデンサー』のコストで墓地に送った1枚+1枚のカードをドローし、手札を1枚デッキの1番下に戻す!」
「何!アトロポスも『ゴブリンのやりくり上手』を伏せていたんスか!?これでアトロポスの手札は3枚……。」
 カムイは、アトロポスが『ゴブリンのやりくり上手』を発動したことにはもちろん、いつのまにか墓地に2枚の『ゴブリンのやりくり上手』を送っていた事に驚いた……。



「……おい。『フレイム・ウイングマン』の効果は、ライフを一撃で半分近く削る強力な効果と言えるな。」
「ああ、確かにそうッスよね。……前のターンで妨害が無かったら、一瞬で勝負がついてたんスからね。」
 カムイは、アトロポスの突然の言葉に、少しだけ当惑していた……。

「……だが、今から俺が呼ぶモンスターは、その『フレイム・ウイングマン』の効果を遥かに凌駕しているんだよ!手札から、魔法カード――」
 アトロポスは、手札のカードを1枚カムイに見せ付け、声を低くして話した。











「――『ダーク・フュージョン』――発動!!」

――と。



「ダ……『ダーク・フュージョン』?」
 聞いた事の無いカードに、カムイは驚いていた……。

「『ダーク・フュージョン』は、悪魔族専用の融合魔法……。このカードを使用しなければ、『E−HERO(イービルヒーロー)』の融合体は呼べねえんだぜ!『フェザーマン』と『バーストレディ』をダークフュージョン!現れろ!『E−HERO インフェルノ・ウイング』!!」
 アトロポスがそう言うと、場の『フェザーマン』と『バーストレディ』が、どす黒い渦に巻き込まれて交ざり合い……その渦が消えた後には、黒色のプレートみたいな物で目を隠し、真っ黒な翼と真っ赤な布みたいな物を身に付け、両手が獣の様な形の悪魔が出現していた!

「な……『フェザーマン』と『バーストレディ』の融合で出せる融合体は、『フレイム・ウイングマン』と『フェニックスガイ』だけじゃ無かったんスか!?」
「……『E・HERO(エレメンタルヒーロー)』ならな。だが『ダーク・フュージョン』は、原型となった『E・HERO』の融合体の能力を凌駕した『E−HERO(イービルヒーロー)』の融合体を呼び出せるんだぜ!」
 アトロポスは、軽く笑いながら答えた。


ダーク・フュージョン
通常魔法
手札またはフィールド上から、融合モンスターカードによって決められた
モンスターを墓地へ送り、悪魔族の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは、このターン相手の魔法・罠・効果モンスターの
効果の対象にならない。(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)


「さらに俺は、『E−HERO ヘル・ゲイナー』を召喚!」
 アトロポスの場に、むき出しとなっている筋繊維を黒色の外骨格で覆ったような姿の、不気味なモンスターが姿を現し……

「『ヘル・ゲイナー』の効果発動!このカードをゲームから除外し、『インフェルノ・ウイング』は1回のバトルフェイズ中に、2回攻撃が可能になるぜ!」
……即、フィールド上から姿を消した!


E−HERO ヘル・ゲイナー
地 レベル4
【悪魔族・効果】
自分のターンのメインフェイズ1にこのカードをゲームから除外する事で、
自分フィールド上に表側表示で存在する悪魔族モンスター1体は1度の
バトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。
この効果を使用した場合、このカードは2回目の自分のスタンバイフェイズ時に
表側攻撃表示で自分フィールド上に特殊召喚される。
攻撃力1600 守備力0


「バトルだ!『インフェルノ・ウイング』!裏守備モンスターを焼き尽くせ!インフェルノ・ブラスト!!」
 『インフェルノ・ウイング』は右手から、激しく燃え盛る淡い青色の火球を発生させ……カムイの場の裏守備モンスター……『カードガンナー』を一瞬で蒸発させ、その攻撃の余波が、カムイに直撃した!

「ぐっ!……『インフェルノ・ウイング』も貫通能力を!?」(カムイLP 4000→2300)
 カムイは、貫通能力を持った『インフェルノ・ウイング』の攻撃に驚いていたが、これだけでダメージが終わるとは思っていなかった……。

「『インフェルノ・ウイング』の効果発動!このモンスターがモンスターを戦闘破壊した場合、そのモンスターの攻撃力か守備力か、高い方分のダメージを与える!ヘル・バックファイア!!」
「だが、オレの『カードガンナー』の効果も発動させてもらうッスよ!このモンスターが破壊された時、カードを1枚ドローできるんスよ!」
 カムイがデッキからカードを1枚ドローしている間にも、『インフェルノ・ウイング』は容赦無く青白い火炎を発生させ、ライフを軽く削り取った!

「くっ、400ポイントくらいならまだいいんスが……。」(カムイLP 2300→1900)
 カムイは、減ったライフを確認しながら、『インフェルノ・ウイング』の次の攻撃に備えていた……。


E−HERO インフェルノ・ウイング
炎 レベル6
【悪魔族・効果】
「E・HERO フェザーマン」+「E・HERO バーストレディ」
このモンスターは「ダーク・フュージョン」による融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が越えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、
破壊したモンスターの攻撃力か守備力の高い方の数値分のダメージを相手ライフに与える。
攻撃力2100 守備力1200

カードガンナー
地 レベル3
【機械族・効果】
自分のデッキのカードを上から3枚まで墓地へ送る事ができる。
墓地へ送ったカード1枚につき、このカードの攻撃力は
エンドフェイズ時まで500ポイントアップする。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
自分フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。
攻撃力400 守備力400


「まだだ!『ヘル・ゲイナー』の効果で、『インフェルノ・ウイング』はもう1度攻撃が可能だ!トドメをさせ!インフェルノ・ブラスト!!」
 アトロポスの言葉に反応し、『インフェルノ・ウイング』は左手から、淡い青色の火球をカムイに向けて放った!

「くっ……墓地の『ネクロ・ガードナー』の効果発動ッス!墓地のこのカードをゲームから除外して、『インフェルノ・ウイング』の攻撃を無効にするッスよ!」
「何だと!」
 『インフェルノ・ウイング』とカムイの間に突然『ネクロ・ガードナー』のソリッドビジョンが現れ……カムイを攻撃から守った!


ネクロ・ガードナー
闇 レベル3
【戦士族・効果】
自分の墓地に存在するこのカードをゲームから除外して発動する。
相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする。
攻撃力600 守備力1300


「くっ……俺の『手札断殺』の効果で『ネクロ・ガードナー』を墓地に送ってやがったか!カードを1枚場に伏せ、ターンエンド!」


現在の状況
カムイ LP…1900
    手札…1枚
    場…−スカイスクレイパー−(表側表示)
      伏せカード1枚

アトロポス LP…2800
      手札…0枚
      場…E−HERO インフェルノ・ウイング(攻撃力2100・攻撃表示)
        伏せカード1枚


「オレのターン、ドロー!」
 ドローしたカードを確認したカムイは……

「(アトロポスの『E−HERO』を主体とした、超速攻デッキ……。少しでも隙を見せたら瞬殺されるッスね……。)」
そう思いながら、手札のカードを1枚右手に持ちかえた……。

「……手札から、魔法カード『ミラクル・フュージョン』を発動ッス!墓地の『フェザーマン』と『バーストレディ』を除外し……」
「その2体を素材だと……。ここで呼ぶとしたら、あいつしかいねえな。」
「ああ!……現れろ!『E・HERO フェニックスガイ』!!」
 カムイがそう言うと、墓地の2体のヒーローが融合し……『フェザーマン』と同じような翼を背中に持ち、赤色と黒色で構成された体に、右手に大きな爪を持ったヒーローが現れた!

「行くッスよ!『フェニックスガイ』で、『インフェルノ・ウイング』に攻撃!フェニックス・シュート!」
 『フェニックスガイ』は右手を引き、『インフェルノ・ウイング』に向かって突撃した!
『インフェルノ・ウイング』はそれを迎撃しようと淡い青色の火球を『フェニックスガイ』に向けて放ったが……『フェニックスガイ』はその攻撃を颯爽とかわし、鋭い爪で『インフェルノ・ウイング』を引き裂いた!

「『フェニックスガイ』は戦闘破壊されねえ……って訳か。」
「ああ……。場をがら空きにするのは危険すぎるッスからね……。オレはカードを1枚場に伏せて、ターンを終了するッス。」
 カムイは、アトロポスの次の攻めを予感し、ターンを終えた。


E・HERO フェニックスガイ
炎 レベル6
【戦士族・融合・効果】
「E・HERO フェザーマン」+「E・HERO バーストレディ」
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードは戦闘によっては破壊されない。
攻撃力2100 守備力1200


「俺のターン!ドロー!……手札から、魔法カード『ダーク・コーリング』を発動!」
「『ダーク・コーリング』!?……『ダーク・フュージョン』と似た名前のカードッスね……。」
 アトロポスが発動したカードに、カムイは少し驚いた……。

「このカードは、手札または墓地から素材となるモンスターを除外し、『ダーク・フュージョン』でのみ融合召喚可能なモンスターを融合召喚するカードだぜ!この効果で……『インフェルノ・ウイング』と『マリシャス・エッジ』をダークフュージョン!」
 そう言うと、墓地の2体の『E−HERO』が、黒色の渦に吸い込まれていき……











「現れろ!これが、今の俺ができる最高の一手……『E−HERO(イービルヒーロー) マリシャス・デビル』!!」
 アトロポスの場に、全身に黒色のプレートみたいな物を身に着け……巨大な刃の様な翼を持ち、両手の甲に長いかぎ爪を着けたヒーローが姿を現した!


ダーク・コーリング
通常魔法
自分の手札または墓地から、融合モンスターカードによって決められた
モンスターを1体ずつゲームから除外し、「ダーク・フュージョン」の効果によってのみ
特殊召喚できる融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。
(この特殊召喚は「ダーク・フュージョン」による融合召喚扱いとする)

E−HERO マリシャス・デビル
炎 レベル8
【悪魔族・融合・効果】
「E−HERO マリシャス・エッジ」+レベル6以上の悪魔族モンスター
このモンスターは「ダーク・フュージョン」による融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手ターンのバトルフェイズ中に
相手フィールド上に存在するモンスターは全て表側攻撃表示になり、
相手プレイヤーは全てのモンスターでこのカードを攻撃しなければならない。
攻撃力3500 守備力2100


「攻撃力3500が1枚のカードで……。中々やるッスね。」
「さらに……ライフを半分支払い、伏せ罠カード『異次元からの帰還』を発動!場に舞い戻れ!『ヘル・ゲイナー』!『マリシャス・エッジ』!」
 アトロポスの頭上に、先程『マリシャス・デビル』を呼び出す際に発生した渦とは逆巻きの渦が発生し……その渦の中から、『ヘル・ゲイナー』と『マリシャス・エッジ』が飛び出してきた!


異次元からの帰還
通常罠
ライフポイントを半分払う。
ゲームから除外されている自分のモンスターを
可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する。
エンドフェイズ時、この効果によって特殊召喚されたモンスターを
全てゲームから除外する。


アトロポスLP 2800→1400

「このタイミングで『異次元からの帰還』……。『インフェルノ・ウイング』は戻ってこれないんスね……。」
「さらに俺は、『ヘル・ゲイナー』をもう1度し……『マリシャス・デビル』に2回攻撃能力を持たせるぜ!」
 『ヘル・ゲイナー』の体が光の粒子となって場から消え去ると……『マリシャス・デビル』の両手の爪が長さと鋭さを増した!

「バトルだ!『マリシャス・デビル』で、『フェニックスガイ』に攻撃!マリシャス・ネイル・スラッシャー!!」
 『マリシャス・デビル』は、右手の鋭いかぎ爪で『フェニックスガイ』に1度目の引き裂きを行い……その攻撃の余波で、カムイのライフを削った!

「ぐっ……『フェニックスガイ』が破壊されなくても、ダメージは通るッスね……。」(カムイLP 1900→500)
「これで終わらせてやるよ!『マリシャス・デビル』で、『フェニックスガイ』に追加攻撃!ダブル・マリシャス・ネイル・スラッシャー!!」
 『マリシャス・デビル』は、今度は左手のかぎ爪で『フェニックスガイ』を引き裂こうとした!

「くっ……伏せ罠カード『ゴブリンのやりくり上手』を発動ッス!さらにそれにチェーンし……『ゴブリンのやりくり上手』と『摩天楼−スカイスクレイパー−』を墓地に送り、速攻魔法『非常食』を発動するッスよ!」
「何!『非常食』だと!?」
 アトロポスは、この攻撃に耐えきる事が可能な事に驚いていた……。

「オレは……『非常食』の効果でライフを2000回復し……『ゴブリンのやりくり上手』の効果で、デッキからカードを4枚ドローし、手札を1枚デッキの1番下に戻すッスよー!」
「なるほどな。お前の墓地には、『ゴブリンのやりくり上手』が前からあった2枚に加え、『非常食』のコストで墓地に送った1枚が加わった……って訳か。」
 カムイの説明を聞いたアトロポスは、腕を組みながら話した。


非常食
速攻魔法
このカードを除く自分フィールド上の魔法または罠カードを墓地へ送る。
墓地へ送ったカード1枚につき、自分は1000ライフポイント回復する。


カムイLP 500→2500

「……だが、『マリシャス・デビル』の攻撃が止まった訳じゃねえぜ。ダメージを受けな!」
「ぐっ!」(カムイLP 2500→1100)
 アトロポスの言葉通り、『マリシャス・デビル』の攻撃の余波が再びカムイに直撃し……ライフを大きく削った!

「まだ『マリシャス・エッジ』の攻撃が残ってるぜ!『フェニックスガイ』を攻撃しろ!ニードル・バースト!」
「だが……まだオレのライフは0にならないッスよ!」(カムイLP 1100→600)
 『フェニックスガイ』は、このターンだけで3回もの攻撃を受け止め、カムイのライフを守りぬいた!

「……これで俺は、ターンエンドだ。『マリシャス・エッジ』は、再び異次元に戻るぜ……。」
 アトロポスは、一言そうつぶやいた。



「……オレのターン、ドロー!手札から、速攻魔法『異次元からの埋葬』を発動ッス!除外されている『フェザーマン』、『バーストレディ』、『ネクロ・ガードナー』をオレの墓地に戻すッスよ!」
 カムイは、そう言いながら除外されたカードを3枚墓地の上に戻した。


異次元からの埋葬
速攻魔法
ゲームから除外されているモンスターカードを3枚まで選択し、
そのカードを墓地に戻す。


「さらにオレは……魔法カード『融合』を発動ッス!場の『フェニックスガイ』と手札の『スパークマン』を融合し……」











「……『E・HERO(エレメンタルヒーロー) シャイニング・フェニックスガイ』……融合召喚!」
 カムイの場の『フェニックスガイ』に、閃光を操るヒーローが融合し……鋼のような翼を背負い、肩、腕、足にに鋼のプレートを身に付けたヒーローが現れた!

「『シャイニング・フェニックスガイ』の元々の攻撃力は2500なんスが……オレの墓地の『E・HERO』1体につき、攻撃力が300ポイントアップするんスよ!」
「なるほどな。お前の墓地には『フェザーマン』、『バーストレディ』、『フェニックスガイ』、『スパークマン』が存在するな……。」
「ああ……。つまり、『シャイニング・フェニックスガイ』の攻撃力は1200アップして3700……。『マリシャス・デビル』の攻撃力3500を上回ったッスよ!」
 『シャイニング・フェニックスガイ』は、墓地の仲間から力を得て……鋼のプレートを激しく光り輝かせた!


E・HERO シャイニング・フェニックスガイ
 レベル8
【戦士族・融合・効果】
「E・HERO フェニックスガイ」+「E・HERO スパークマン」
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードの攻撃力は、自分の墓地の「E・HERO」と名のついた
カード1枚につき300ポイントアップする。
このカードは戦闘によっては破壊されない。
攻撃力2500 守備力2100


E・HERO シャイニング・フェニックスガイ 攻撃力2500→3700

「攻撃力3700……。『マリシャス・デビル』を上回っただと!?」
「ああ!……このターンで終わらせるッスよ!手札から、装備魔法『ジャンク・アタック』を『シャイニング・フェニックスガイ』に装備させるッス!」
 そう言うと、『シャイニング・フェニックスガイ』の両手が……まるで大気圏に突入する流星のように、赤く発熱し始めた!
 

ジャンク・アタック
装備魔法
装備モンスターが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、
破壊したモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手ライフに与える。


「バトルフェイズに入るッスよ!『シャイニング・フェニックスガイ』で、『マリシャス・デビル』に攻撃!シャイニング・フィニッシュ!!」
 『シャイニング・フェニックスガイ』は、右手から流星のような小型隕石を何百発も放ち……『マリシャス・デビル』を一瞬で粉砕した!

「ぐあっ!!……これぐらいのダメージならまだ負けちゃいねえぜ!」(アトロポスLP 1400→1200)
「いや……これで終わりッスよ。……『ジャンク・アタック』の効果発動!このカードを装備したモンスターがモンスターを戦闘破壊した場合、そのモンスターの攻撃力の半分……つまり、1750ポイントのダメージを相手に与えるッス!」
「何だと!?」
 『シャイニング・フェニックスガイ』は、さらに左手からも流星群を発生させ……アトロポスに直撃させた!

「ぐあぁぁぁっ!!」(アトロポスLP 1200→0)





















「さあ、アトロポス。スターチップを2個渡してもらうッスよ。」
「しゃあねえな。……ほらよ。」
 アトロポスは、ベルトに着けたケースに手を突っ込み、その中から2個のスターチップを取り出してカムイに渡した。

カムイ スターチップ5個→7個

「……で、何で部外者がこのデュエルアカデミア星海校に忍び込んでるんスか?」
 カムイは、腕を組みながらアトロポスに質問をした。

「部外者……?……何故俺の事を部外者だと言える?」
「いや……オレ達と違う所を探せば、すぐ気付くと思うんスけどね。」
 アトロポスの言葉に対し、カムイは頭を掻きながら答えた。

「……で、どうする?俺の事を部外者通告するのか?」
「いや……その必要は無いッスね。」
「ほう、何故だ?」
 カムイの一言を、アトロポスは疑問に思った。

「……アトロポスは、実力でデュエルに勝利して、大量にスターチップを獲得したんスよね。」
「それがどうした?」
「なら、別に部外者が勝手にデュエルを行っても問題ないと思うんスよね。『スターチップ稼ぎに使える』……って考えるデュエリストもいるくらいなんスからね。」
「……おもしれえ考えの奴がいるじゃねえか。」
 アトロポスは、軽く苦笑いを浮かべながら話した。



「……1つ聞かせてもらおうか。……お前は、『天魔神』のカードを知っているか?」
「ん?……『天魔神』?」
 アトロポスの予想外の言葉に、カムイは少し驚いた。

「……ああ、知ってるッスよ。」
「何!誰が持ってんだ!?」
 カムイの返答に対し、アトロポスはさらに質問を重ねた。

「……名前は知らないんスが……背の低い女の子が使ってたッスね……。」
「なるほどな。情報ありがとよ!」
 一言そう言ったアトロポスは、カムイに背をむけ、走り去っていった……。











「……アトロポスは、オレの言う事を信用したんスかね……。」
 アトロポスの姿が見えなくなった後に、カムイはそうつぶやいた。

「(……アトロポスは、オレに自分の事が部外者だと疑われているから、オレが本当の事を言うはず無いと考えながら、あの質問をしたと思うんスけどね……。だからオレは、わざと知っていると言いながら、誰なのかはぼかして答えたんスが……。……ナオが持っている『天魔神』のカード……。何であいつがねらうんスか……?)」
 カムイは、腕を組みながら色々と心の中で考え、自分の部屋に帰っていった……。


スーパージェネックス……1日目 終了





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