GX plus!
11話〜

製作者:カオスマンSPさん






新キャラ紹介

 早乙女 ナオ
『悪魔部』に所属するナマイキな奴。年は低いがデュエルの腕は高い。



第十一話 ナマイキ天魔

 カムイ達は、先週エイジから情報をもらった『スーパージェネックス』で特別販売されるパックの整理券をもらいに、購買部に向かっていった。

「ふう、何とか手に入ったッスね。」
 カムイは、もらった整理券を右手に握りながら、センリとリナに話し掛けた。
「そうだな、カムイ。この券があれば、大会の一週間前に特別パックと効果をしてもらえるんだよな。」
「う〜、楽しみだな〜。どんなカードが入ってるんだろ〜。」
 カムイ達は、特別パックについて、いろいろと想像していた。
「やあ、君達。特別パックの事、教えてほしいかい?」

「ん?誰ッスか?」

 声がした方を見ると、一人の背の低い生徒がいた。その生徒は半ズボンを履いていて、ネコ耳のついた帽子をかぶっていた。髪は微妙に青味かかった黒髪で、身長は1メーター40程度だろうか。

「ボクの名前は『早乙女ナオ』。この学校では結構有名なデュエリストなんだよ。」
「『早乙女ナオ』……、聞いたこと無いッスね。」
「……ああ、君達、一年生だったんだね。それじゃあボクのこと知らなくてもおかしくないね。」
「え!?じゃあ、そっちは何年生何スか!?」
 カムイは、自分よりかなり背が低いナオが、先輩だとは思っていなかった。

「ボクかい?ボクは二年生……君達より一年上だよ。」
「え〜!?うっそ〜!あたしよりちっちゃいのに、先輩なの?」
リナは、ナオのネコ耳のついた帽子を撫でながら言った。

「って、何頭撫でてるんだよ!そりゃあ、ボクは小卒でここに入ったから君達より背が低いのは当たり前だけどね……そっちだって十分小さいじゃないか!」
「な……失礼ね!あたしはそんなにちっちゃくないよ!」
「それはどうかな?ボクの妹の小学校卒業時の身長は、大体君と同じなんだよ!」
「……何かそれって、自分の背が低い事を強調してるように見えるんスけど……」
「いいんだよ!こっちは年相応なんだから!」
「う〜、ナマイキな奴〜!」
 リナは、年下のナオに甘く見られたことが悔しいのか、思い切りナオを睨み付けていた。


「……と、無駄話はこれくらいにして……特別パックの情報だったよね。教えてあげてもいいけど、条件があるんだ。ボクとデュエルして、勝てたら教えてあげるよ。」
と、ナオは少々上目遣いで言った。

「……やっぱり、そんな簡単に教えてもらえるとは、思ってなかったぜ。じゃあ、ここは……」
と、カムイとセンリとリナは、お互いに顔を見合わせて……


「「「最初はグー!じゃんけんぽん!」」」


「え、ええっ!」
 ナオは、カムイ達がいきなりじゃんけんを始めたことに、少々当惑していた。

「よし!俺の勝ちだな!」
「リナー、じゃんけんでグーしか出してなかったみたい何スが……カリカリしてるんスか?」
「そりゃそうでしょ。あいつ、自分のことを棚に上げてあたしの事をちっちゃいって言うんだもん。」
「んー、確かに。あれはひどいッスねー。」


「……で、誰がやるのか決まったのかい?」
 ナオは、腕を組んで、苛立ちの感情を顕にしていた。

「ああ。俺がやるって事でな。」
と、センリは軽く答えた。

「やっと決まったみたいだね。……あっ、そうだ。君達の名前を聞いてなかったね。何て言うんだい?」
「ああ、俺は『黄泉センリ』だ。」
「オレは『光カムイ』ッス!」
「…………」
 リナは、膨れっ面でいて自己紹介をしなかった。

「おーい、そっちのちびっ子は自己紹介しないのかい?」
「び〜〜っだ!誰があんたみたいなナマイキな奴に自己紹介すると思ってんの!」


「……まあいいや。君達の会話で、名前は分かったから。じゃあ、始めるよ。」
「よし、いくぜ!」

『デュエル!』


先行は、ナオだった。

「ボクのターン、ドロー。モンスターを一体裏側守備表示で場に出し、伏せカードを一枚セットして、ターンエンド。」
 ナオは、まるでパターン化されているように淡々とカードをデュエルディスクに置いていき、ターンを終了した。

「俺のターン、ドロー!手札から、『ピラミッド・タートル』を召喚!」
 センリの場に、ピラミッドを背負った亀が現れた。


ピラミッド・タートル
地 レベル4
【アンデット族・効果】
このカードが戦闘によって墓地に送られた時、デッキから守備力2000以下のアンデット族モンスター1体をフィールド上に特殊召喚する事ができる。その後デッキをシャッフルする。
攻撃力1200 守備力1400


「バトルだ!『ピラミッド・タートル』で、裏側守備モンスターに攻撃!」
 『ピラミッド・タートル』の体当たりによって、裏側守備モンスター……『ジャイアントウィルス』は一発で破壊された。

「礼を言わせてもらうよ。『ジャイアントウィルス』を破壊してくれて。」
 ナオは、まるで子悪魔の様に微笑みながら言った。
「何!」
「『ジャイアントウィルス』の効果発動……このカードが戦闘で破壊され墓地に送られた時、君に500ポイントのダメージを与え、ボクのデッキから好きなだけ『ジャイアントウィルス』を攻撃表示で特殊召喚できる……ボクのデッキにはあと二枚の『ジャイアントウィルス』が入っているから、二体とも特殊召喚するよ。」
 弾けとんだ『ジャイアントウィルス』から黒いガスがあふれ出て、センリに500ポイントのダメージを与え、二体の新たな『ジャイアントウィルス』を呼び寄せた。

「ぐっ!」(センリLP 4000→3500)


ジャイアントウィルス
闇 レベル2
【悪魔族・効果】
このカードが戦闘によって墓地へ送られた時、相手に500ポイントのダメージを与える。さらにデッキから同名カードをフィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。その後デッキをシャッフルする。
攻撃力1000 守備力100


「攻撃したのが裏目に出ちゃったね。センリ君。」
「くっ……、カードを一枚場に伏せ、ターンエンドだ……。」


「キィ〜〜!何なの!あの人を小馬鹿にしたような態度は!!」
 リナは、ナオの言動に怒りの感情を顕にしていた。
「(……もしリナがデュエルしてたら、間違いなくリアルデュエルに突入してたッスね……)」
 カムイは、ナオのデュエル相手がリナじゃなくてよかったと、心から思っていた。


現在の状況
ナオ LP…4000
  手札…四枚
   場…ジャイアントウィルス×2(攻撃表示)
     伏せカード一枚
センリ LP…3500
   手札…四枚
    場…ピラミッド・タートル(攻撃表示)
      伏せカード一枚


「(『ジャイアントウィルス』を二体並べられたのは痛いが……俺の『ピラミッド・タートル』もデッキからモンスターを特殊召喚する効果を持っている……ナオが上級モンスターを出してきても、何とかなる!)」
「ボクのターン、ドロー。手札から、『強欲な壺』を発動して、カードを二枚ドローする。」


強欲な壺
通常魔法
自分のデッキからカードを2枚ドローする。


「さらに、手札から、『暗黒のミミック LV3』を召喚するよ。」
 ナオの場に、大きな口を持つ宝箱が現れた。

「上級モンスターじゃ……無いだと!?」
「そして、手札を一枚捨て、『暗黒のミミック LV3』に『破邪の大剣−バオウ』を装備させる。」
 宝箱が、大きな剣を持って、攻撃力をアップさせた。
 ……どうやって持ったかは、考えないように。

「今の『暗黒のミミック LV3』の攻撃力は1500……『ピラミッド・タートル』より上だね。『暗黒のミミック LV3』で、『ピラミッド・タートル』に攻撃だ。ミミック・バイト!」
『暗黒のミミック LV3』大きな口による噛み付きで、『ピラミッド・タートル』は破壊された。
「ちっ!」(センリLP 3500→3200)

「だが、『ピラミッド・タートル』の効果発……」
「無駄だよ。『破邪の大剣−バオウ』の効果……このカードを装備したモンスターが戦闘で破壊したモンスターの効果は無効化されるんだよ。」
「な、何だと!」


破邪の大剣−バオウ
装備魔法
手札のカード1枚を墓地に送って装備する。装備モンスターの攻撃力は500ポイントアップする。このカードを装備したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した場合、そのモンスターの効果は無効化される。

暗黒のミミック LV3
闇 レベル3
【悪魔族・効果】
このカードが戦闘によって墓地に送られた場合、このカードのコントローラーはデッキからカードを1枚ドローする。このカードが「暗黒のミミック LV1」の効果によって特殊召喚されている場合はカードを2枚ドローする。
攻撃力1000 守備力1000


「まだ『ジャイアントウィルス』二体の攻撃が残っているよ。センリにダイレクトアタックだ!」
「くっ、伏せ罠カード、『リビングデッドの呼び声』を発動!墓地から、『ピラミッド・タートル』を……」
「手札から、速攻魔法、『ツイスター』を発動するよ。500ライフを払って、君の『リビングデッドの呼び声』を破壊するね。」(ナオLP 4000→3500)
「な……」


ツイスター
速攻魔法
500ライフポイントを払う。フィールド上に存在する表側表示の魔法または罠カード1枚を破壊する。


 永続罠である『リビングデッドの呼び声』は、破壊されると効果は適用できなくなる……『ピラミッド・タートル』の蘇生を無効にされたセンリは、『ジャイアントウィルス』二体の攻撃を受け入れるしかなかった……
「ぐっ、ぐあぁぁぁ!」(センリLP 3200→2200→1200)

「どうしたんだい?君の実力はそんなものなのかい?カードを一枚場に伏せ、ターンエンド。」


「ちょっと!センリ!何であんなナマイキな奴に押されてんのよ!」
「な、ナマイキとか言う以前に、あいつ結構強いんだよ!だが……、まだ勝負は終わってないぜ!俺のターン、ドロー!」
 センリは、ドローしたカードを確認すると、表情が和らいだ。

「手札から、魔法カード、『強欲な壺』を発動!デッキから、カードを二枚ドローするぜ!」
「なるほど。ここで『強欲な壺』か。なかなかいい引きをしてるじゃないか。」
 センリは、ナオの言葉を気にせず、デッキからカードを二枚ドローした。

「俺は……手札から、『ゾンビ・マスター』を召喚する!『ゾンビ・マスター』の効果発動!手札の『ピラミッド・タートル』を墓地に送り、墓地から『ピラミッド・タートル』を守備表示で特殊召喚!」
 『ゾンビ・マスター』が自分の右手を持ち上げると、墓地から『ピラミッド・タートル』が糸に引っ張られるように場に蘇った。


ゾンビ・マスター
闇 レベル4
【アンデット族・効果】
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、手札のモンスターカード1枚を墓地に送る事によって、墓地に存在するレベル4以下のアンデット族モンスター1体を特殊召喚する。この効果は1ターンに1度しか使用できない。
攻撃力1800 守備力0


「なるほど。自らを守るための壁を作ったってわけか。……で、『ゾンビ・マスター』で攻撃するのかい?」
「……カードを二枚場に伏せ、ターンエンドだ。」
「……攻撃しないのかい?」
「ああ……。」
「ふうん。なかなか慎重だね。(まあ、攻撃してきたら『ヘイト・バスター』で返り打ちにするんだけどね……。)」


現在の状況
ナオ LP…3500
  手札…一枚
   場…ジャイアントウィルス×2(攻撃表示)
     暗黒のミミック LV3(攻撃力1500・攻撃表示)
     破邪の大剣−バオウ(暗黒のミミック LV3に装備)
     伏せカード二枚
センリ LP…1200
手札…二枚
場…ゾンビ・マスター(攻撃表示)
ピラミッド・タートル(守備表示)
      伏せカード二枚


「ボクのターン、ドロー。」
「速攻魔法、『手札断殺』を発動!お互いは手札を二枚墓地に送り、デッキからカードを二枚ドローする!」
 センリは手札から『龍骨鬼』と『ゴブリンゾンビ』を、ナオは手札から『智天使ハーヴェスト』二体を墓地に送り、二人はデッキからカードを二枚ドローした。


手札断殺
速攻魔法
お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする。

龍骨鬼
闇 レベル6
【アンデット族・効果】
このカードと戦闘を行ったモンスターが戦士族・魔法使い族の場合、ダメージステップ終了時にそのモンスターを破壊する。
攻撃力2400 守備力2000

智天使ハーヴェスト
光 レベル4
【天使族・効果】
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた場合、自分の墓地に存在するカウンター罠1枚を手札に加えることができる。
攻撃力1800 守備力1000


「このタイミングで手札交換かい?まあいいや。ボクは、手札から、永続魔法『天魔神の門』を発動するよ。」
 ナオの場に、白と黒が混同した不思議な門が出現した。

「『天魔神の門』……だと!何だ!?そのカードは?」
 センリは、始めて見るカードに対し、疑問を持っていた。

「『天魔神の門』の効果発動。ボクの墓地から、光属性の天使族と、闇属性の悪魔族をゲームから除外することで、デッキから『天魔神』と名のつくカードを一枚手札に加える……ボクは、『ジャイアントウィルス』と『智天使ハーヴェスト』をゲームから除外し……『天魔神 インヴィシル』を手札に加える!異界の魔物よ!ボクの声に答えよ!」
 ナオがそう言うと、『天魔神の門』から、真っ白な顔に真っ黒な体を持つ異形の天使が現れた!


天魔神の門
永続魔法
自分の墓地の光属性・天使族モンスターと闇属性・悪魔族モンスターを一枚ずつゲームから除外することで、デッキから『天魔神』と名のつくカードを一枚手札に加えることができる。この効果は1ターンに1度しか使用できない。


「『ジャイアントウィルス』を生け贄に捧げ……『天魔神 インヴィシル』を召喚!」
「『天魔神 インヴィシル』だと!一体どんな効果を持っているんだ!」

「『インヴィシル』は光天使と闇悪魔のいずれかを生け贄に捧げて召喚したとき、真の力を発揮する!光天使の場合魔法を、闇悪魔の場合罠を無効にする効果を発揮する!くらえ!ダークネス・アトモス!」
 ナオがそう言うと、『天魔神 インヴィシル』の体から黒い空気があふれ出てきた!


天魔神 インヴィシル
地 レベル6
【天使族・効果】
このカードは特殊召喚できない。生け贄召喚時の生け贄によって以下の効果を得る。
●光属性・天使族:このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、魔法カードの効果を無効にする。
●闇属性・悪魔族:このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、罠カードの効果を無効にする。
攻撃力2200 守備力


「くっ……、罠を封じる効果を持った上級モンスターか……。(だが、今の俺の状況なら、まだ耐えられる!)」
「バトルだ!『インヴィシル』で、『ゾンビ・マスター』に攻撃!ダークネス・ネイル!」
『インヴィシル』が、合わせていた両手をクロスさせ、『ゾンビ・マスター』に向かって突撃してきた!

「くっ、速攻魔法、『月の書』を発動!『インヴィシル』の表示形式を裏側守備表示に変更する!」
 『月の書』が呼んだ闇が『インヴィシル』を包み込み、攻撃を封じ込めた!


月の書
速攻魔法
表側表示でフィールド上に存在するモンスター1体を裏側守備表示にする。


「……仕方が無いね。『暗黒のミミック LV3』で、『ピラミッド・タートル』に攻撃!ミミック・バイト!」
 『ピラミッド・タートル』は、前のターンを再現するかのように、あっさりと破壊された。

「くっ……、『ピラミッド・タートル』の効果は、使えないんだったな……」
 このセンリの言動に対し、ナオは胡散臭さを覚えていた。

「……メインフェイズ2に入るよ。カードを一枚場に伏せ、ターンエン……」
「待った!このタイミングで、俺は伏せ罠カード、『ネクロ・フュージョン』を発動!墓地に送られた三体のアンデット族の魂を融合し、『屍魔獣 ネクロ・キメラ』を特殊召喚!」
「な、何だって!」
 センリの墓地に三体のアンデット族が送られた事をトリガーにし、『龍骨鬼』、『ピラミッド・タートル』、『ゴブリンゾンビ』を混ぜ合わせたかのような魔獣が降臨した。その姿は、『龍骨鬼』の全身を『ゴブリンゾンビ』の骨格と『ピラミッド・タートル』のコウラで守っているような感じだ。


屍魔獣 ネクロ・キメラ
闇 レベル10
【アンデット族・融合・効果】
アンデット族モンスター×3
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。このモンスターの特殊召喚に成功したとき、このターン内に墓地に送られたアンデット族モンスターをすべてこのカードに装備する。このモンスターの攻撃力は、装備されたモンスターの攻撃力の合計分アップする。このカードが破壊される時、代わりに装備したモンスターを破壊する。
攻撃力0 守備力0


「『龍骨鬼』、『ピラミッド・タートル』、『ゴブリンゾンビ』の攻撃力の合計は4700だ!よって、『ネクロ・キメラ』の攻撃力は4700にまで上がったぜ!」
「なるほど……。『手札断殺』をボクのターンで使ったのは、これをやるためだったのか!」
「ああ!俺のターン、ドロー!手札から、装備魔法、『ネクロボーン・ジャベリン』を発動!『ゾンビ・マスター』を素材にして、『ネクロ・キメラ』に強力な槍を作ってやるぜ!」
と言うと、『ゾンビ・マスター』の体がバラバラになり、その骨が一ヶ所に集まっていって、白い一本の槍に姿を変えた!


ネクロボーン・ジャベリン
装備魔法
自分フィールド上のアンデット族モンスターにのみ装備可能。自分フィールド上のアンデット族モンスター一体を生け贄に捧げる。このカードを装備したモンスターの攻撃力は、生け贄に捧げたモンスターの元々の攻撃力分アップし、守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手プレイヤーに戦闘ダメージを与える。装備モンスターが破壊されるとき、代わりにこのカードを破壊してよい。


「攻撃力4700の『ネクロ・キメラ』に、さらに『ゾンビ・マスター』の力が加わったことで、攻撃力が6500にまで跳ね上がって、貫通効果、四回の破壊耐性まで持っている、超強力なモンスターが完成したぜ!」
「おお!凄いッスね!今回のセンリの切り札は!」
「そうだろそうだろ!いくぜ!『ネクロ・キメラ』で、裏側守備モンスターに攻撃!ヘルボーン・ピラミッド・スラッシュ・シェイパー!」
「って、本当に技名長いッスね。」

「くっ、伏せ罠カード、『カオス・バースト』を発動!ボクの場の裏側守備モンスター……『天魔神 インヴィシル』を生け贄に捧げて、『ネクロ・キメラ』を破壊する!」
『天魔神 インヴィシル』の犠牲によって発生した大爆発は『ネクロ・キメラ』を直撃したが、外骨格の様に身に付けられた『ゴブリンゾンビ』に守られ、破壊されなかった。

「『カオス・バースト』の第二効果発動だ!センリに1000ポイントのダメージを与えるよ!」
「ぐっ、あぶねえ!もう少しでライフが0になっちまう所だった!」(センリLP 1200→200)
 予想外の大ダメージに、思わずセンリはのけぞった。


カオス・バースト
通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる事で、その攻撃モンスター1体を破壊する。その後、相手ライフに1000ポイントダメージを与える。


「ボクの場の『天魔神 インヴィシル』が場から離れたから、攻撃の巻き戻しが発生する!」
「そうだったな。だが、『ゴブリンゾンビ』の効果で、デッキから『ゾンビ・マスター』を手札に加えるぜ!」


ゴブリンゾンビ
闇 レベル4
【アンデット族・効果】
このカードが相手プレイヤーに戦闘ダメージを与えた時、相手はデッキの一番上のカードを墓地へ送る。このカードがフィールド上から墓地に送られた時、自分のデッキから守備力1200以下のアンデット族モンスター1体を選択し、お互いに確認して手札に加える。その後デッキをシャッフルする。
攻撃力1100 守備力1050


「まだ『ネクロ・キメラ』の攻撃力は5400もあるんだぜ!『ネクロ・キメラ』で『ジャイアントウィルス』に攻撃!ヘルボーン・ピラミッド・シェイパー!」
「無駄だ!伏せ罠カード、『ヘイト・バスター』を発動だ!攻撃される『ジャイアントウィルス』と、攻撃してくる『ネクロ・キメラ』を破壊する!」
「だが、『ネクロ・キメラ』には破壊耐性があるぜ!『ネクロ・キメラ』の代わりに、装備された『ピラミッド・タートル』を破壊するぜ!」
 『ジャイアントウィルス』が自分の体を爆発させることによって起こった爆風も、『ネクロ・キメラ』の体をおおっていたピラミッド型のコウラによって防がれた。


ヘイト・バスター
通常罠
自分フィールド上に表側表示で存在する悪魔族モンスターが攻撃対象に選択された時に発動する事ができる。相手の攻撃モンスター1体と、攻撃対象となった自分モンスター1体を破壊し、破壊した相手モンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。


「それぐらい分かってるさ!だけど、『ネクロ・キメラ』のパーツはだいぶ無くなったから、攻撃力は大幅にダウンしてるよ!今なら何とか耐えられる!」
「くっ……、今の『ネクロ・キメラ』の攻撃力は4200か……これではトドメをさせないな……だが、致命傷ぐらいは与えられるぜ!行け!『ネクロ・キメラ』!『暗黒のミミック LV3』に攻撃!ヘルボーン・シェイパー!」
「って、技名どんどん短くなってないッスか!?」
 『ネクロ・キメラ』の突き出した槍により、『暗黒のミミック LV3』は串刺しになり、その攻撃の余波に耐え切れず、ナオは大きく吹っ飛ばされた!

「ぐあぁぁぁ!な、なんて……威力なんだ……」(ナオLP 3500→800)


「やった〜!見たでしょ!カムイ〜!『ネクロ・キメラ』に吹っ飛ばされたナオのあの格好!もう最高!気分爽快だね!」
 リナは、ナオが大ダメージを受けたことにはしゃいでいた。さながら、闇マリクがオベリスクの攻撃を受けたときの城之内のように。

「…………」
「ん?どうしたの?カムイ?」
「いや、なーんかこのターンで決められなかったのは、不安なんスよねー。次のターンで、逆転されそうで。」
「ふ〜ん。そっかな〜。それってちょっと心配しすぎだと思うんだけど。」


「くっ、だけど、このタイミングで、『暗黒のミミック LV3』の効果発動!カードを一枚ドローする!」
「……ターンエンドだ。」


現在の状況
ナオ LP…800
手札…一枚
場…天魔神の門(表側表示)
センリ LP…200
手札…三枚
    場…屍魔獣 ネクロ・キメラ(攻撃力4200・攻撃表示)
龍骨鬼(ネクロ・キメラに装備)
ネクロボーン・ジャベリン(ネクロ・キメラに装備)


「……ボクのターン、ドロー。手札から、魔法カード、『天使の施し』を発動。カードを三枚引き、……手札から『ヒステリック天使』と『デーモン・ソルジャー』を捨てる。」


天使の施し
通常魔法
デッキからカードを3枚ドローし、その後手札からカードを2枚捨てる。

ヒステリック天使
光 レベル4
【天使族・効果】
自分のフィールド上モンスター2体を生け贄に捧げる度に、自分は1000ライフポイント回復する。
攻撃力1800 守備力500

デーモン・ソルジャー
闇 レベル4
【悪魔族】
攻撃力1900 守備力1500


「……さらに、手札から、速攻魔法、『非常食』を発動する。ボクの場の『天魔神の門』を墓地に送り、ライフポイントを1000回復させる。」(ナオLP 800→1800)


非常食
速攻魔法
このカードを除く自分フィールド上の魔法または罠カードを墓地へ送る。墓地へ送ったカード1枚につき、自分は1000ライフポイント回復する。


「(!?ナオの奴、いきなり静かになったな……何を引いたんだ?)」
 センリは、『天使の施し』を使った後のナオの言動の変化に戸惑いを覚えていた。

「……センリ。君は知っているかい?デュエルモンスターズの世界には、あまりにも強力すぎて禁止カードに指定されたカードがあることを……。」
 不意にナオが尋ねた。

「ああ……。開闢・終焉の使者がその最たる例だな……。」
「……そうだね。だけど、使者達の力は、新しい世代へと受け継がれているんだ!見せてあげるよ!終焉の使者の破壊の力を受け継いだ、ボクの切り札を!」
「な、何だと!」
センリは、これから現れる恐怖に対して、歯を食い縛っていた。

「墓地から『智天使ハーヴェスト』、『ジャイアントウィルス』二体、『暗黒のミミック LV3』をゲームから除外し……いでよ!破滅の神、『天魔神 ノーレラス』!」
ナオの場に現れた巨大な黒の世界から、一体の悪魔が這い出てきた。黒い体に白骨でできた鬼の仮面、骨のような手、巨大な漆黒の翼を持ち、全身の至る所から血のように赤い刺が生えていた。
その姿は、『悪魔』という一言で片付けられるものではなかった。

「な……何だ?こいつは!」
 センリは、現れた悪魔の威圧感にたじろいでいた。

「『ノーレラス』の効果発動!1000ライフポイントを払い、お互いの場と手札のカードを全て墓地に送る!破滅の力の暴走だ!みーんな消えちゃえー!!」(ナオLP 1800→800)
『天魔神 ノーレラス』は、自らの体を崩壊させ、巨大なブラックホールみたいな物を創り出した!……そして、そのブラックホールに、場、手札の全てを飲み込んでいった!


「な……『ネクロ・キメラ』の破壊耐性が、効かないだと!?」
「それはそうだよ。これは『破壊』なんて小さなレベルの出来事じゃない……『崩壊』なんだからね……。」
と言ってる間にも、『ネクロ・キメラ』の全身は崩壊していき、無へと還っていった……

「な、何だ!?俺の左手が……闇へ引き寄せられていく!?」
場のカードを全て飲み込んだ闇は、その勢力をとめどなく増大させていき、貪欲にも双方の手札をも引き寄せ、飲み込んでいった……


天魔神 ノーレラス
闇 レベル8
【悪魔族・効果】
このカードは通常召喚できない。自分の墓地の光属性・天使族モンスター1体と闇属性・悪魔族モンスター3体をゲームから除外した場合のみ特殊召喚する事ができる。1000ライフポイントを払う事で、お互いの手札とフィールド上のカードを全て墓地へ送り、自分のデッキからカードを1枚ドローする。
攻撃力2400 守備力1500


「終わりだ!崩壊の円陣!(エクスティンクション・サークル!)」
 ナオがそう言うと、暴走していた闇が一点に収束していった……



「い……一体、何が起こったんだ……」
「ば……場も手札も、完全に消滅してしまったッス……」
「す……凄い……」
 カムイ達は、『天魔神 ノーレラス』の破壊力に、ただただ唖然とするばかりだった。


 場・手札……全てが消えた跡に残っていたのは、光り輝く一枚のカードだけだった……

「『ノーレラス』の崩壊の力は、新たな可能性を生み出す……無人の野に残ったこのたった一枚のカードが、その可能性だ!ボクは、今引いた魔法カード、『天魔神の再臨』を発動する!墓地から『ヒステリック天使』と『デーモン・ソルジャー』をゲームから除外し、『ノーレラス』を場に復活させる!」
「な、何いぃぃぃ!」

先程全てを滅ぼした『ノーレラス』が、場に戻ってきた!これは、もはや悪夢再びとしか言いようが無かった。


天魔神の再臨
通常魔法
自分の墓地の光属性・天使族モンスターと闇属性・悪魔族モンスターを一枚ずつゲームから除外する。墓地から『天魔神』と名のつくモンスターを一体召喚条件を無視して特殊召喚する。


「ぐっ……俺の身を守るカードは何も無い……俺の負けか……」
 『ノーレラス』の白骨の鬼面は、センリを静かに睨み付けていた。

「トドメだ!『ノーレラス』で、センリにダイレクトアタック!ディメンジョン・カタストロフ!」
「ぐあっ……ま、負けたぜ……」(センリLP 200→0)


「なかなか面白いデュエルだったよ、センリ!」
「強いな。ナオ。さすが先輩って言った所かな。」
「いや、そっちも強かったよ。ボクの同級生にも、これだけの実力を持ったデュエリストはそうそう居ないからね。ただ……」

「ん!?何だ?」
「いやさ、君達って、いつもそんな複数で行動してるのかい?」
「ま、まあな……」
「……そうか。でもね、複数行動してると、一人辺りのデュエル時間が減っちゃうんじゃない?それに……あんまり大人数でいると、一人になったときの衝撃が強くなっちゃうし……(今のボクの妹の様に……)」

「ん?どうしたんスか?いきなり静かになって。」
 物思いにふけっているナオに、カムイは尋ねた。

「いや、べつに何でもないよ。じゃあ、大会を楽しみにしてるよ。」
と言い、ナオは走り去っていった。


「……なるほど。単独でいろんな相手とデュエルすれば、もっと強くなれるみたいッスね。……で、その方法、やってみるッスか?」
「いいんじゃないのか?大会前夜の日まで、誰が一番多く勝てるか、競い合ってみようぜ!」
「む〜っ、あいつの意見を取り入れるのは嫌なんだけど……カムイ達が賛成するなら、やってもいいかな。」
 カムイ達は、ナオの提案した修業方を採用することにした。

「よっしゃー!大会まで、デュエルしまくるッスよー!」



 午後十時ごろ、ナオの部屋にて……

ナオは、携帯電話を使って電話をかけていた……

ピピピ……ピピピ……

「……やあ、やっと出たか、レイ。」

『……お兄ちゃん、こんな時間に、一体何の様?』
「いやさ、最近、そっちの様子はどうかなって思ってね。」
『うん……一つ、気になることがあるんだ。』
「ん?何だ?」

『……あのね、ボク、十代が卒業するときに、ボクの部屋の住所と電話番号を教えたのに……』

「……音沙汰が無いってことかい?」

『……そうなの。ボク、振られちゃったのかな……』

「……レイ。お前とと十代は、たったの1年程度しか関わってないんだよ。それに、色々と事件が起こって、あまり一緒にいる機会も無かったんじゃないかな?……それじゃあ、付き合うところまでは行ってなかったと思うんだけど。」

『……でも……ボク、十代のことが忘れられないよ……』
「あのねえ、お前が本校に入学したとき、十代はもう3年生だったんだろ?……1年で別れがくることぐらい、容易に想像できるじゃないか。だらしが無いぞ、そんな弱音ばっか吐いて。」
『…………』


「……そうだ。何か他に変わったことは無いかい?」

『……去年、本校を退職したナポレオン教頭の代わりに、新しい先生として、フェイト教諭が入ってきたんだけど……』

「……そのフェイト教諭が、どうかしたのかい?」

『……その人、ボクを見るとき、食い入るように見てくるのよ……ちょっと、恐い……』

「……怪しい奴だね。関わらないほうがいいよ。……大会の代表に選ばれるように、頑張れよ。……期待、してるからさ……」
『うん……お兄ちゃんも、頑張ってね……』

ピッ。


「……フェイト教諭……か。一体、何者なんだろうな……レイの身に、何も起こらなければいいんだけど……」
 ナオは、フェイトと言う奴によって、何かが起こる……そんな予感をしていた……
「何があっても、ボクがレイを守らないと……」

大会まで……あと39日



新キャラ紹介

 国枝 耕司(コウジ)
『昆虫部』に所属する、情報集めが好きな青年。昔からの知り合いであるジャーナリスト・国崎康介を『アニキ』と呼び慕っている。



第十二話 不死虫団集結!

 二週間前にナオの提案した修業方を行っているカムイは、学校内をデュエルしながら回っていた……

「これで終わりッスね!『ワイルドジャギーマン』で全体攻撃!」
「キ…キ…キィィィィィィィ オ…オレの『海皇の長槍兵』三体がぁぁぁぁぁ…… ぜ……ぜん…め…めつめつめつ…」(海瀬LP 3600→2400→1200→0)

カムイは、軽く海瀬と言うデュエリストを倒した。『海皇の長槍兵』を使っていた所から、どうやら『海竜部』の生徒みたいだ。

「よっしゃー!これで10連勝ッスね!さーて、次の相手を探すッスか。」
 そう言いながら、カムイはまた歩き回り始めた。

「……そう言えば、あの『早乙女ナオ』先輩って、本当にデュエルアカデミア本校の『早乙女レイ』って生徒の兄なんスかね……」
 カムイは、2週間前にセンリがナオとデュエルした後で話したことを思い出していた……



「なあ、カムイ。ちょっと気になったことがあるんだが、聞いてくれないか?」
「ああ、いいッスけど……一体何のことッスか?」
「さっき、俺『早乙女ナオ』って奴とデュエルしたよな?」
「そうだったッスね。あのデュエルは、結構白熱したッスよ。……で、それがどうかしたんスか?」
「いや、デュエルより、あのナオって奴について疑問があるんだよ。」
「え?何がッスか?」
「まあ、まずはこれを見てくれよ。」
と言いながら、センリはレイが写っている写真をカムイに見せた。

「……その写真、何週間か前にも見たッスよ……まだ持ち歩いてたんスか?」
「ま、まあ、その辺りは気にすんなよ。可愛いんだから。」
「……そのセリフも前に聞いたことあるッスね……で、これがどうかしたんスか?」
「まあ、写真のなかのレイの目の色を見てみろよ。」
「目ぇ?」
 カムイは、センリに言われるままに写真に写っているレイの目の色を確認した。
……写真とはいえ、女の子の顔をまじまじと見るのは少々照れ臭そうだったが……

「……まあ、普通に茶色っぽいッスよね。」
「だろ?……でも、ナオの目の色は、エメラルドのように澄んだ緑色だったんだぜ!?血の繋がっている兄妹として、これはおかしいだろ!?」
「……ああ!確かに!言われてみれば、そうッスよね!」
「だろ?やっぱり、ナオとレイは、本当の兄妹じゃないってことだよ!」



「……ってセンリは言ってたんスけど……ナオの妹についての発言には、レイとの共通点があまりにも多すぎるんスよね……。小卒で高校に入ったとか、年の割に背が高いとか……それに、同じ名字も持っているし……一体、どういうことッスか?」
 カムイは、レイとナオの関係は一体何なのか、妙に真剣になって考えていた……

「おっ、カムイ!何一人でぶつぶつ言っとるんや?」
「ん?この声は……」

 聞き覚えのある声だと思って声のした方を見てみると、一組の男女……エイジとミカがいた。

「何や、カムイ。今日は一人なんやな。あかんなあ、リナちゃんを一人にしたら。」
「だから、別にそういう関係じゃ無いッスよ!」
「ははっ、照れんでいいんやで!」
 ミカは、カムイを少しからかうように話した。

「おいおい、ミカ。あんまりカムイをからかったらあかんで。おお、そうや、カムイ。特別パックについて分かったことがあるんや。教えたろか?」
「え?どんなことッスか?」
「なんかな、色々なデュエリストが使っとったカードが入っとるみたいや。例えば、こういうのとかな。」
と言いながらエイジは、カムイに『アナザー・フュージョン』の効果が書かれた紙を渡した。


アナザー・フュージョン
通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動可能。
フィールド上から、融合モンスターカードによって決められたモンスターを墓地へ送り、「E・HERO」と名のついた融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。
相手の攻撃モンスターは、このカードの効果によって特殊召喚されたモンスターに攻撃しなければならない。
この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターンのエンドフェイズ時に破壊される。
(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)


「へー、なかなか面白いカードッスねー。」
「やろ?まあ、わいのエーリアンセンスなら、楽に分かったんやけどな。」
「へえ、なかなか面白そうなこと話してるじゃないか。僕も話に入れてくれよ。」

 カムイ達が声のした方を見ると、一人の青年がいた。カッターシャツに黒色のベストを着ていて、スーツのような黒ズボンをはいていた。ベストの首の辺りには、ボールペンや小型マイク等が付いていて、手にはメモ帳みたいなものが握られていた。

「僕の名前は『国枝コウジ』。よろしく頼むよ。」
「ああ!……それより、コウジ。身につけてるそのボールペンとか小型マイクとか、一体何のために使うんスか?」
「ああ、これか?実はさ、僕のアニキがジャーナリストだから、それに憧れてるって言うのかな。……アニキって言っても、兄弟ってわけじゃ無いんだけどね。」
コウジは、照れ臭そうに頭を掻きながら答えた。

「ああ、それより、『光カムイ』……だったよね。どうだい?僕とデュエルしてみないかい?」
「あれ?何でオレの名前を知ってるんスか?」
「いやさ、最近そっちのことも少し有名になってきたからね。『戦士部』の黒部先生と互角に渡り合ったそうだってね。」
「……それって、1ケ月以上前のことッスよ。」
「ま、まあ、いいじゃないか。じゃあ、始めようか。」

『デュエル!』

 先攻は、コウジだった。
……なぜかカムイは、今だに先攻を取ったことが無いのだか……

「僕のターン!ドロー!手札から、『Gemini Summoner(デュアル・サモナー)』を召喚する!」
 コウジの場に、表地が黒、裏地が緑のローブを着た、細身の召喚師が現れた。

「な、何なんスか!?そのカードは!?」
 カムイは、始めて見る英語版カードに驚いていた。

「なあ、エイジ。うち、あんなカード、始めて見たわ……。」
「わいもや……ミカ。見た感じ、英語版のカードみたいやな……。」
 エイジとミカも、始めて見るカードに戸惑いを覚えていた。

「みんな、このカードが珍しいかい?……実はさ、このカード、アニキがアメリカに仕事に行ったときのお土産なんだよ。アメリカで先に登場するカードも最近増えてきたからね。」
 コウジは、自分が召喚した『デュアル・サモナー』を手に入れた経緯を話していた。

「カードを1枚場に伏せて、ターンエンドだ!」

「オレのターン、ドロー!手札から、魔法カード、『融合』を発動ッス!手札の『フェザーマン』と『ワイルドマン』を融合し、『E・HERO ワイルド・ウィングマン』を融合召喚するッス!」
 カムイの場に、巨大な翼を持ったヒーローが現れた。

「『ワイルド・ウィングマン』の効果発動ッス!手札を1枚捨て、コウジの伏せカードを破壊するッスよ!」
「くっ!しまった!」
 コウジの場に伏せられていた『正統なる血統』は、『ワイルド・ウィングマン』の起こした突風により破壊された。


E・HERO ワイルド・ウィングマン
地 レベル8
【戦士族・融合・効果】
「E・HERO ワイルドマン」+「E・HERO フェザーマン」
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。
手札を1枚捨てる事で、フィールド上の魔法・罠カード1枚を破壊する。
攻撃力1900 守備力2300


正統なる血統
永続罠
自分の墓地から通常モンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターがフィールド上に存在しなくなった時、このカードを破壊する。


「(……あの『Gemini Summoner(デュアル・サモナー)』とか言うモンスターの攻撃力は1500みたいッスね……。)」
 カムイは、始めて見る『デュアル・サモナー』の能力を慎重に確かめていた。

「……『ワイルド・ウィングマン』で、『Gemini Summoner(デュアル・サモナー)』に攻撃ッス!」
「『Gemini Summoner(デュアル・サモナー)』の効果発動だ!1ターンに1度だけ、戦闘破壊を無効にする!」
「何!そんな効果があったんスか!?全然分からなかったッス!」

 『ワイルド・ウィングマン』の放った竜巻は確かに『デュアル・サモナー』を捕らえたが、『デュアル・サモナー』はその竜巻を全身から魔力を放って受け流した。

「……だが、ダメージは普通に通るみたいッスね!」
「くっ……まあ、仕方ないか。」(コウジLP 4000→3600)

「……カードを1枚場に伏せて、ターンエン……」
「ここで、『Gemini Summoner(デュアル・サモナー)』の第2効果発動だ!ライフを500払い、手札か場のデュアルモンスター1体を通常召喚する!」
「な……まだ効果を隠し持っていたんスか!?」
 『デュアル・サモナー』の効果を知らなかったカムイは、さらに驚いた。


Gemini Summoner(デュアル・サモナー)
水 レベル4
【魔法使い族・効果】
500ライフポイントを払う事で、手札または自分フィールド上に表側表示で存在するデュアルモンスター1体を通常召喚する。
この効果は1ターンに1度だけ、相手ターンのエンドフェイズ時に発動する事ができる。
このカードは1ターンに1度だけ、戦闘によっては破壊されない。(ダメージ計算は適用する)
攻撃力1500 守備力0


「僕は、手札から、『Blazewing Butterfly(炎妖蝶ウィルプス)』を召喚する!」(コウジLP 3600→3100)
 『デュアル・サモナー』が呪文を唱えながら右手を振りかざすと、炎の翼を持った大きな蝶が出現した。
「『Blazewing Butterfly(炎妖蝶ウィルプス)』?それも始めて見るカードッスね……。」
 カムイはまたしても、見たことが無い英語版カードに驚いていた。


現在の状況
カムイ LP…4000
   手札…1枚
    場…E・HERO ワイルド・ウィングマン(攻撃表示)
      伏せカード1枚

コウジ LP…3100
   手札…3枚
    場…デュアル・サモナー(攻撃表示)
      炎妖蝶ウィルプス(攻撃表示)


 妙に手札使いが荒いカムイだが、それにはある理由があった。

「僕のターン、ドロー!手札から、魔法カード、『融合』を発動!手札の『ヴァリュアブル・アーマー』と『ギガプラント』を融合し、『超合魔獣ラプテノス』を融合召喚する!」
 コウジの場に、無茶苦茶に生物のパーツを縫い合わせた怪物が現れた。頭の形から、どうやらドラゴンをモチーフにしているみたいだ。

「さらに手札から、『生還の宝札』を発動だ!」
「『生還の宝札』ッスか!何かそのカード、よく見かけるッスね。……エイジもミカも使ってたッスよね。」
「ま、まあ、うちのデッキには、蘇生カードが大量に入っとるからな。」
「そ、それにあの1枚で大量にドローできる可能性が秘められとるからな。」
 エイジとミカは、少々照れ臭そうに答えた。

「なるほど。色んな人が『生還の宝札』を使っているのか。……教えてあげるよ!僕のデッキテーマは『不死』!」
「何!」
「……実はさ、このセリフって、バトルシティのDVDで聞いたセリフをちょっと変えただけなんだけどね。」
 コウジは、頭を掻きながら言った。

「……見せてあげるよ!不死虫団の復活祭を!まずは『超合魔獣ラプテノス』の効果だ!こいつが場に存在するとき、僕の場のデュアルモンスターは再度召喚された状態になる!燃え上がれ!『Blazewing Butterfly(炎妖蝶ウィルプス)』!」
 コウジがそう言うと、『炎妖蝶ウィルプス』の炎の翼が巨大化していった!


超合魔獣ラプテノス
光 レベル8
【ドラゴン族・融合・効果】
デュアルモンスター×2
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、フィールド上に表側表示で存在する通常モンスター扱いのデュアルモンスターは再度召喚された状態になる。
攻撃力2200 守備力2200


「さらに、『Blazewing Butterfly(炎妖蝶ウィルプス)』の効果発動!再度召喚されたこのカードを生け贄に捧げることで、墓地から同名カード以外のデュアルモンスターを1体再度召喚された状態で復活させる!蘇れ!『ギガプラント』!攻撃表示だ!」
 『炎妖蝶ウィルプス』の放った命の炎によって、『ギガプラント』は真の力を解き放った状態で復活した!


Blazewing Butterfly(炎妖蝶ウィルプス)
炎 レベル4
【昆虫族・デュアル・効果】
このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、通常モンスターとして扱う。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●このカードを生け贄に捧げることで、自分の墓地に存在する「炎妖蝶ウィルプス」以外のデュアルモンスターを1体特殊召喚する。
この効果で特殊召喚されたデュアルモンスターは再度召喚された状態になる。
攻撃力1500 守備力1500


「墓地から『ギガプラント』が復活したから、『生還の宝札』でカードを1枚ドローする!まだ終わりじゃないぞ!再度召喚された『ギガプラント』の効果発動だ!1ターンに1度、手札か墓地から植物族か昆虫族を1体特殊召喚できる!蘇れ!『Blazewing Butterfly(炎妖蝶ウィルプス)』!」

 『ギガプラント』は、墓地に向けて触手を伸ばし、まるで一本釣りのように『炎妖蝶ウィルプス』を場に引っ張りこんだ!


ギガプラント
地 レベル6
【植物族・デュアル・効果】
このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、通常モンスターとして扱う。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●自分の手札または墓地に存在する昆虫族または植物族モンスター1体を特殊召喚する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
攻撃力2400 守備力1200


「『生還の宝札』の効果で、カードを1枚ドローする!まだまだ続くよ!」
「な……まだ続くんスか!?」

 カムイは、コウジがとめどなく攻撃力2000超えのモンスターを特殊召喚することに驚いた。
「『超合魔獣ラプテノス』の効果で再度召喚された状態になった『Blazewing Butterfly(炎妖蝶ウィルプス)』の効果発動!このカードを生け贄に捧げ、墓地から『ヴァリアブル・アーマー』を攻撃表示で復活させる!」
 『炎妖蝶ウィルプス』は、『ギガプラント』を蘇生させた時と同じように、『ヴァリュアブル・アーマー』を蘇生させた!


ヴァリュアブル・アーマー
地 レベル5
【昆虫族・デュアル・効果】
このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、通常モンスターとして扱う。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●このカードは相手フィールド上の全てのモンスターを1度ずつ攻撃をする事ができる。
攻撃力2350 守備力1000


「『生還の宝札』の効果で、1ドローだ!」
「な……1ターンで『生還の宝札』の効果を3回も使ったんスか!?」
 カムイは、『生還の宝札』の強力さに感心していた。

「……さて、僕の場の『ギガプラント』は植物族、『ヴァリュアブル・アーマー』は昆虫族……この2つの種族をつなぐ掛け橋となるフィールド魔法が、僕の手札にある!見せてあげるよ!フィールド魔法、『森』を発動!パワーアップだ!『ギガプラント』!『ヴァリアブル・アーマー』!」
 コウジが『森』を勢い良くフィールド魔法ゾーンに置くと、場に密林が現れ、デュアルモンスターがパワーアップした!



フィールド魔法
全ての昆虫・植物・獣・獣戦士族モンスターの攻撃力と守備力は、200ポイントアップする。


「バトルだ!『ヴァリュアブル・アーマー』!『ワイルド・ウィングマン』を切り刻め!グラス・チョッパー!」
 『超合魔獣ラプテノス』と『森』のサポートによって早さと力を高めた刄によって、『ワイルド・ウィングマン』はあっという間に切り刻まれた。

「ぐあっ!」(カムイLP 4000→3350)

「……かかったッスね!『ワイルド・ウィングマン』が破壊されることは、始めから想定してたんスよ!」
「な、何だって!?」
 カムイのこの発言に、コウジは驚いた。

「伏せ罠カード、『ヒーロー逆襲』を発動ッス!さあ、コウジ!オレの手札からカードを1枚ランダムに選んでもらうッスよ!」
「……って、カムイの手札は1枚しかないから、ランダムも何も無いじゃないか……」
「……まあ、そうッスよね。オレの残しておいた1枚の手札は……『E・HERO バブルマン』ッス!」
 コウジは、『ヒーロー逆襲』が発動された時点でカムイが残していた手札は『E・HERO』だということは予想していたが、それが『バブルマン』だと知ったとき、衝撃を覚えた。

「……まさか!『バブルマン』の効果を発動させるために手札を大量に消費していたのか!?」
「やっと気付いたみたいッスね!まずは『ヒーロー逆襲』の効果が成功したから、『超合魔獣ラプテノス』を破壊するッス!」
 『超合魔獣ラプテノス』は、『ワイルド・ウィングマン』が破壊されたことによってまき散らされた羽によって、全身を縫い合わせていた糸を切られ、バラバラに崩れ落ちてしまった。


ヒーロー逆襲
通常罠
自分フィールド上に存在する「E・HERO」と名のついたモンスターが戦闘によって破壊された時に発動する事ができる。
自分の手札から相手はカード1枚をランダムに選択する。
それが「E・HERO」と名のついたモンスターカードだった場合、相手フィールド上のモンスター1体を破壊し、選択したカードを自分フィールド上に特殊召喚する。


「そして……『ヒーロー逆襲』の第2効果で、手札から『バブルマン』を守備表示で特殊召喚するッスよ!『バブルマン』の効果発動ッス!このカードが場に出たとき、オレの手札、場に他のカードが無いとき、カードを2枚ドローできるッスよー!」
 カムイは、得意気にデッキからカードを2枚ドローした。


E・HERO バブルマン
水 レベル4
【戦士族・効果】
手札がこのカード1枚だけの場合、このカードを手札から特殊召喚する事ができる。
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に自分のフィールド上と手札に他のカードが無い場合、デッキからカードを2枚ドローする事ができる。
攻撃力800 守備力1200


「くっ……『超合魔獣ラプテノス』が破壊されてしまったせいで、僕の場のデュアルモンスター達は効果を失ってしまったか……。これでは、『ヴァリュアブル・アーマー』での追撃ができない……。」
「おっ、凄いやないか!カムイ!」
「いやあ、うちじゃああんな戦法は思い付かんかったわ。」
 エイジとミカは、カムイの戦法を称賛していた。

「……だが、まだ『Gemini Summoner(デュアル・サモナー)』と『ギガプラント』の攻撃が残っている!『Gemini Summoner(デュアル・サモナー)』で『バブルマン』に攻撃だ!ジェミニ・マジック!」
 『デュアル・サモナー』の放った2つの光球が『バブルマン』に直撃し、一瞬で破壊された。

「よし!これでカムイの場は空になった!『ギガプラント』で、カムイにダイレクトアタック!」
「『ネクロ・ガードナー』の効果発動ッス!墓地に存在する『ネクロ・ガードナー』をゲームから除外し、『ギガプラント』の攻撃を無効にするッスよ!」
 墓地から現れた『ネクロ・ガードナー』の魂が『ギガプラント』の攻撃を受けとめ、カムイを守った。


ネクロ・ガードナー
闇 レベル3
【戦士族・効果】
自分の墓地に存在するこのカードをゲームから除外して発動する。
相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする。
攻撃力600 守備力1300


「何!いつのまに『ネクロ・ガードナー』が墓地に?……そうか!『ワイルド・ウィングマン』の効果コストでか!」
「ああ!その通りッス!」
「くっ……凄いじゃないか!ターンエンドだ!」
 コウジは、カムイの計算された戦法に舌をまいていた。

「オレのターン、ドロー!手札から、魔法カード、『融合回収』を発動ッス!オレの墓地から『融合』と『ワイルドマン』を手札に戻すッスよ!そして……魔法カード、『E―エマージェンシーコール』を発動し、デッキから『E・HERO エッジマン』を手札に加えるッス!」
「くっ!まさか、『ワイルドジャギーマン』を呼ぶ気か!?」
「おっ、よく分かったッスね。」
「おいおい、カムイ。そんなカード名言いながら手札を集めとったら、誰でも分かるやろ。」
 エイジは、冷静にツッコミを入れた。

「じゃ、じゃあ、もう分かってると思うんスけど……魔法カード、『融合』を発動ッス!手札の『ワイルドマン』と『エッジマン』を融合し、『E・HERO ワイルドジャギーマン』を融合召喚するッスよ!」
 カムイの場に、巨大な刀を持つヒーローが現れた。


E・HERO ワイルドジャギーマン
地 レベル8
【戦士族・融合・効果】
「E・HERO ワイルドマン」+「E・HERO エッジマン」
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。
相手フィールド上の全てのモンスターに1回ずつ攻撃をする事ができる。
攻撃力2600 守備力2300


「くっ、全体攻撃能力を持ったヒーローか……。だけど、『ワイルドジャギーマン』の攻撃力は、僕の『森』の力を得た『ギガプラント』と同じ2600だ!相討ちになるけど、それでもいいのかい!?」
「……ああ!」
「!?」
 コウジは、カムイの覚悟に少し驚いた。

「(確かに……このターンで『ギガプラント』を破壊しなければ、カムイの負けになったな……。『妥協』で勝利を逃さないヒーロー使い……か。アニキの話で聞いただけの人だけど、カムイの実力は、期待の新人プロデュエリストの『彼』に匹敵するかもしれない!)」
 コウジは、カムイの実力がどれほどの物なのか、推測していた。

「……『ワイルドジャギーマン』で、まずは『Gemini Summoner(デュアル・サモナー)』に攻撃ッス!」
「『Gemini Summoner(デュアル・サモナー)』の効果発動だ!1ターンに1度、戦闘破壊を無効にする!」
 『デュアル・サモナー』の魔力によって、『ワイルドジャギーマン』の剣の一撃が受け流された。
「くっ、だけど、ダメージは普通に通る……」(コウジLP 3100→2000)

「よっしゃー!次は『ヴァリュアブル・アーマー』に攻撃ッス!」
『ワイルドジャギーマン』の斬り掛かりには、強化された『ヴァリュアブル・アーマー』の刄も耐えきれず、真っ二つにされた。
「50ダメージを受けてしまったか……このダメージが今後に響かなければいいんだが……」(コウジLP 2000→1950)

「最後は『ギガプラント』に攻撃ッス!」
「だが、攻撃力は互角だ!迎撃しろ!『ギガプラント』!」
 『ワイルドジャギーマン』の剣が『ギガプラント』をとらえたが、強化された『ギガプラント』の触手も『ワイルドジャギーマン』の体を貫いていた!攻撃力2600を誇るその両雄の戦いは、壮絶な相討ちで終わった……

「なかなか激しい攻撃だったな……僕のデュアルモンスター達が全滅してしまったか……だけど、カムイ!最初に言ったよね!僕のデッキテーマは『不死』!いくら破壊しても、場に舞い戻ってくる!」
「確かに、やっかいなデッキッスよね。……だが、それを打ち破れるカードが、オレのデッキに眠ってるんスよ!メインフェイズ2に入るッス!手札から、魔法カード、『ホープ・オブ・フィフス』を発動ッス!墓地の『ワイルド・ウィングマン』、『ワイルドジャギーマン』、『バブルマン』、『フェザーマン』、『ワイルドマン』をデッキに戻し……場に他のカードが無いから、カードを3枚ドローするッスよー!」
「何!そのために『ワイルドジャギーマン』で相討ち覚悟の攻撃を!?」
 コウジは、このタイミングでの『ホープ・オブ・フィフス』の発動は想定していなかった。


ホープ・オブ・フィフス
通常魔法
自分の墓地に存在する「E・HERO」と名のついたカードを5枚選択し、デッキに加えてシャッフルする。
その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。
このカードの発動時に自分フィールド上及び手札に他のカードが存在しない場合はカードを3枚ドローする。


「デッキから、カードを3枚ドロー!……来たッスよ!コウジのデッキテーマの『不死』を破るキーカードが!」
「な、何を引いたんだ!?」
「今見せてやるッスよ!手札から……『カードエクスクルーダー』を召喚ッス!」

 カムイの場に、魔法使い……と言うより、色は違うが、『ブラック・マジシャン』と似た形状の服を着た幼女が現れた。

「おっ、カムイ。以外やなあ。そんな可愛らしいカードをデッキに入れとるなんて。」
 ミカは、カムイをからかうように言った。

「いや、そこまでおかしなことじゃないよ。あの新人プロデュエリストの遊城十代って人も、エクルンをデッキに入れてるんだからね。」
「エ、エクルン?一体何のことッスか!?」
「ああ、『カードエクスクルーダー』の『エク』と『クル』を合わせた呼び方だよ。……実はさ、最近プロリーグで『カードエクスクルーダー』が召喚された時に、観客がそう呼んだことが始まりなんだけどね。」
コウジは、エクルンの起源について話した。

「……ついでに、エクルンにはこんな逸話があるんだけど……聞いていくかい?」
 コウジは、エクルンがプロリーグで召喚された時のことを語りはじめた……



「オレは、手札から、『カードエクスクルーダー』を召喚!効果で、お前の墓地の『Il Blud(地獄の番人 イル・ブラッド)』をゲームから除外するぜ!」
「Nooooo!お、俺の『Il Blud(地獄の番人 イル・ブラッド)』があaaaa!」

……おお!すげえ!
……最高だぁぁぁ!エクルゥゥン!

エクルンが召喚された瞬間、多くの観客が狂乱したかのように歓喜した……

「チックッショォー!俺のターン、ドロー!手札から、『Dark Grepher』を召喚!『カードエクスクルーダー』を破壊da!」
『Dark Grepher』の一撃で、『カードエクスクルーダー』は一瞬で破壊された。

「くっ、だが、伏せ罠カー……」

……ふ……ふ……ふざけんなぁ!テメエ!よくも私たちのエクルンをぉぉぉ!
……返せぇ!俺達のエクルンを返せぇぇぇ!

 激昂した観客がフーリガンと化し、観客席を乗り越えて、デュエルリングに襲い掛かってきた!

「ヒィィィィィィィィ〜! ヒ…助けて…来る来る来る助けて…来るああああ! 来る…来る……来る…来る…フーリガンが……」
 命の危機を感じたのか、レアハンターの物真似をするプロデュエリスト……早く逃げろよ……



「……こうして、その試合は無効試合になってしまいました……とさ。」
 コウジは、エクルンについての逸話を話し終えた……

「な、なんて壮絶なストーリーなんスか!?」
カムイは、エクルンに関する逸話を聞いて、驚愕していた……

「……と、とにかく、『カードエクスクルーダー』の効果発動ッス!コウジの墓地の『Blazewing Butterfly(炎妖蝶ウィルプス)』をゲームから除外するッスよ!ソウル・エクスクルード!」
 エクルンが持っている杖を振るうと、『炎妖蝶ウィルプス』の魂は墓地から解放され、消え去っていった……


カードエクスクルーダー
地 レベル3
【魔法使い族・効果】
相手の墓地に存在するカード1枚を選択しゲームから除外する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
攻撃力400 守備力400


「くっ……、『Blazewing Butterfly(炎妖蝶ウィルプス)』が……少々まずいかな……」
「カードを2枚場に伏せ、ターンを終了するッス!」


現在の状況
カムイ LP…3350
   手札…0枚
    場…カードエクスクルーダー(攻撃表示)
      伏せカード2枚

コウジ LP…1950
   手札…2枚
    場…デュアル・サモナー(攻撃表示)
      生還の宝札
      森


 お互いに激しいバトルが行われた第2順だったが、デュエルの流れはカムイに傾いていた……

「僕のターン、ドロー!手札から、魔法カード、『黙する死者』を発動!墓地の『ギガプラント』を……」
「この瞬間、カウンター罠、『ヒーローズルール2』を発動ッス!墓地のカードを対象にする『黙する死者』の効果を無効にし、破壊するッスよー!」
「な……墓地対策のカードは、エクルンだけじゃなかったのか!?」


ヒーローズルール2
カウンター罠
墓地のカードを対象とする効果モンスターの効果・魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。

黙する死者
通常魔法
自分の墓地から通常モンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する。
そのモンスターはフィールド上に存在する限り攻撃をする事ができない。


「くっ、仕方がない!『Gemini Summoner(デュアル・サモナー)』でエクルンに攻撃だ!ジェミニ・マジック!」
「残念だったッスね!伏せ罠カード、『ドレインシールド』を発動ッス!『Gemini Summoner(デュアル・サモナー)』の攻撃を無効にし、その攻撃力分のライフを回復するッスよ!」(カムイLP 3350→4850)
 『デュアル・サモナー』の放った光球は、エクルンの前に現れたエネルギーの盾によって吸収されてしまった。


ドレインシールド
通常罠
相手モンスター1体の攻撃を無効にし、そのモンスターの攻撃力分の数値だけ自分のライフポイントを回復する。


「くっ、ターンエンドだ……。」
「オレのターン、ドロー!……『カードエクスクルーダー』を守備表示に変更し、効果発動ッス!コウジの墓地の『ギガプラント』をゲームから除外するッスよー!ソウル・エクスクルード!」
 『ギガプラント』は、『炎妖蝶ウィルプス』の後を追うように墓地から解放されていった。

「カードを1枚場に伏せ、ターンエンド!」


現在の状況
カムイ LP…4850
   手札…0枚
    場…カードエクスクルーダー(守備表示)
      伏せカード1枚

コウジ LP…1950
   手札…2枚
    場…デュアル・サモナー(攻撃表示)
      生還の宝札
      森


……前のターンと比較すると、明らかに静かにターンが進んでいった……

「僕のターン、ドロー!まずは手札から、魔法カード、『おろかな埋葬』を発動し、デッキから『ヘルカイザー・ドラゴン』を墓地に送る!さらに手札から、魔法カード、『思い出のブランコ』を発動!墓地から、『ヘルカイザー・ドラゴン』を攻撃表示で復活させる!」
 コウジの墓地から『ヘルカイザー・ドラゴン』が、思い出の力で蘇った。
……とは言っても、このデュエル内では、『ヘルカイザー・ドラゴン』に対してほとんど思い出が無いのだが……


思い出のブランコ
通常魔法
自分の墓地に存在する通常モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。
この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターンのエンドフェイズ時に破壊される。


「『生還の宝札』の効果で、カードを1枚ドロー!……バトルだ!『ヘルカイザー・ドラゴン』で、エクルンに攻撃だ!ヘルカイザー・ブレイズ!」
「くっ、伏せ罠カード、『ヒーローシャッフル』を発動ッス!『カードエクスクルーダー』をオレのデッキに戻すッスよ!」

 『ヘルカイザー・ドラゴン』の放った火球がエクルンを襲うが、カムイが発動した伏せカードによって、破壊から逃がすことに成功した。
……何!エクルンを守るためだけにオリカを作るなって!?

「……分かってたよ。カムイなら、エクルンを守るってね。」
「……って言うか、あんな話を聞かされたら、破壊するのは少しまずいと思うんスけど……と、とにかく、『ヒーローシャッフル』の効果で、デッキから『E・HERO バブルマン』を守備表示で特殊召喚するッス!場、手札に他のカードが無いから、カードを2枚ドローするッスよー!」
 カムイは、もっともな事を言って、『バブルマン』を場に出し、カードを2枚ドローした。


ヒーローシャッフル
通常罠
自分フィールド上のモンスター1体をデッキに戻す。
自分のデッキから、レベル4以下の「HERO」と名のついたモンスター1体を選択して、自分フィールド上に特殊召喚する。


「くっ、『ヘルカイザー・ドラゴン』!『バブルマン』を破壊しろ!ヘルカイザー・ブレイズ!……第二打ァ!」
 『ヘルカイザー・ドラゴン』の放った火球によって、『バブルマン』は焼き尽くされた。

「まだ『Gemini Summoner(デュアル・サモナー)』の攻撃が残っている!『Gemini Summoner(デュアル・サモナー)』で、カムイにダイレクトアタック!ジェミニ・マジック!」
 『デュアル・サモナー』の放った光球がカムイを直撃し、1500ポイントのダメージを受けた。
「ぐっ!」(カムイLP 4850→3350)

「まだだ!手札から、速攻魔法、『フォース・リリース』を発動し、『ヘルカイザー・ドラゴン』を再度召喚された状態にする!」
「何!」
 『ヘルカイザー・ドラゴン』は咆哮をあげてカムイを威圧しはじめた!


フォース・リリース
速攻魔法
このカードの発動時に自分フィールド上に表側表示で存在する全てのデュアルモンスターは再度召喚した状態になる。
この効果を適用したモンスターはエンドフェイズ時に裏側守備表示になる。

ヘルカイザー・ドラゴン
炎 レベル6
【ドラゴン族・デュアル・効果】
このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、通常モンスターとして扱う。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。
攻撃力2400 守備力1500


「いくぞ!『ヘルカイザー・ドラゴン』で、カムイにダイレクトアタック!ヘルカイザー・ブレイズ!……第三打ァ!」
 『ヘルカイザー・ドラゴン』の放った火球がカムイにぶつかって炸裂し、カムイは大ダメージを受けた。

「ぐあぁぁぁ!」(カムイLP 3350→950)

「どうだ!カムイ!強力な一撃だろ?まあ、『フォース・リリース』の効果を受けた『ヘルカイザー・ドラゴン』はエンドフェイズに疲れ切って裏側守備表示になってしまうけど……『思い出のブランコ』の、復活させたモンスターをエンドフェイズ時に破壊するデメリットを無視できるんだ!すごいだろ?」
「確かに……本来デメリットである効果をメリットに変えるとは……なかなかやるッスね。……オレのターン、ドロー!手札から、『スパークマン』を召喚するッス!」
 カムイの場に、閃光を操るヒーローが現れた。

「『スパークマン』の攻撃力は1600……『ヘルカイザー・ドラゴン』より上ッスよ!『スパークマン』で、裏側守備の『ヘルカイザー・ドラゴン』に攻撃ッス!スパークフラッシュ!」
 『スパークマン』が手から放った閃光は『ヘルカイザー・ドラゴン』をとらえ、一発で破壊した。

「よっしゃー!カードを1枚場に伏せ、ターンエンド!」


現在の状況
カムイ LP…950
   手札…1枚
    場…E・HERO スパークマン(攻撃表示)
      伏せカード1枚

コウジ LP…1950
   手札…1枚
    場…デュアル・サモナー(攻撃表示)
      生還の宝札
      森


 お互いにライフも手札も尽きてきたので、そろそろ決着か……と考えていた。

「僕のターン、ドロー!手札から、魔法カード、『天使の施し』を発動!カードを3枚引き、手札を2枚捨てる!さらに手札から、『再融合』を発動だ!800ライフを払い、墓地から『超合魔獣ラプテノス』を復活させる!」(コウジLP 1950→1150)
 少し前にバラバラにされた、墓地の『超合魔獣ラプテノス』のパーツが瞬く間に縫い合わせられ、元のドラゴンの姿へと戻っていき、場に舞い戻ってきた!


再融合
装備魔法
800ライフポイントを払う。
自分の墓地から融合モンスター1体を選択して自分フィールド上に特殊召喚し、このカードを装備する。
このカードが破壊された時、装備モンスターをゲームから除外する。


「『生還の宝札』の効果で、カードを1枚ドローだ!」
 コウジは、ドローしたカードを確認すると、微笑を浮かべた。

「ぐっ……また『超合魔獣ラプテノス』が現れてしまったッスね……。またモンスターを並べまくる気ッスか!?」
「ああ!手札から、魔法カード、『黙する死者』を発動し、墓地から『Blazewing Butterfly(炎妖蝶ウィルプス)』を守備表示で復活させる!『生還の宝札』の効果で、1ドローだ!」
 コウジの墓地から、炎の翼をもつ蝶が蘇った。静かに守備体勢をとっているが、『超合魔獣ラプテノス』の魔力によって、その翼は大きく燃え上がっていた。

「さらに『Blazewing Butterfly(炎妖蝶ウィルプス)』の効果発動だ!墓地から『ギガプラント』を復活させる!……『生還の宝札』で、1ドローだ!」
 『ギガプラント』は、『Blazewing Butterfly(炎妖蝶ウィルプス)』の命の炎によって蘇った。

「さらに『ギガプラント』の効果で、墓地から『Blazewing Butterfly(炎妖蝶ウィルプス)』を復活!『生還の宝札』で1ドロー!『超合魔獣ラプテノス』の効果で再度召喚された状態になった『Blazewing Butterfly(炎妖蝶ウィルプス)』の効果で、墓地から『ヘルカイザー・ドラゴン』を復活!『生還の宝札』の効果で1ドロー!」
 コウジは、見ているほうもうんざりするほど蘇生・ドローを繰り返した。

「って、まだ並べる気ッスか!?」
「あ、ああ……(言ってるこっちも疲れてくるんだが……)」
 コウジも、いちいち蘇生・ドローを言って口が疲れてきているようだ。

「……さらに手札から、『黙する死者』を発動し、墓地から『Blazewing Butterfly(炎妖蝶ウィルプス)』を復活!『生還の宝札』で1ドロー!……『Blazewing Butterfly(炎妖蝶ウィルプス)』の効果で、墓地から『ヴァリュアブル・アーマー』を復活!『生還の宝札』で1ドロー!」
 コウジの場に、攻撃力2000強のデュアルモンスター達が一気にそろった!……しかも、これだけモンスターを並べたのに、手札は減るどころか増えているのである…… ……1歩間違えれば、『ずっと俺のターン!』状態である……

「はぁ……はぁ……や……やっと終わったか……」
「って、一体どうしたんスか!?そんな息切らして!?」
「い……いや……大丈夫だ……」

 コウジは、あまりにしゃべりすぎたのか、息を切らしていた。

「と、とにかく、これで僕の場は埋まったから……行け!不死虫団!」
 『デュアル・サモナー』が手に魔力を溜め、『ヴァリュアブル・アーマー』が自分の刄を、『ギガプラント』が触手を振るい、『超合魔獣ラプテノス』と『ヘルカイザー・ドラゴン』は口にエネルギーを溜めはじめ、コウジの攻撃命令を今か今かと待ち構えていた。

「モンスターで攻……!?」
 攻撃宣言を行おうとしたとき、コウジの声が止まった……カムイが、この状況で微笑を浮かべてていたからだ。

「(何なんだ……カムイのあの余裕は?……まさか、『聖なるバリア―ミラーフォース―』か!?だが、今の僕の手札なら、破壊されてもすぐ復活させらせる!)」
 コウジは、カムイの伏せカードに警戒したが、意を決して……

「……『ヘルカイザー・ドラゴン』で、『スパークマン』に攻撃だ!ヘルカイザー・ブレイズ!」
「伏せ罠カード、『攻撃の無力化』を発動ッス!『ヘルカイザー・ドラゴン』の攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させるッスよー!」
「な……」

 『ヘルカイザー・ドラゴン』の口から放たれた火球が『スパークマン』を襲うが、カムイが発動した『攻撃の無力化』によって発生した時空の渦によって、『スパークマン』に攻撃が当たることは無かった。


攻撃の無力化
カウンター罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
相手モンスター1体の攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する。


「(『攻撃の無力化』だったか……これじゃあ、僕の手札にたまっている蘇生カードが使えないか……)……カードを2枚場に伏せ、ターンエンドだ。」

「オレのターン、ドロー!……コウジ!見せてやるッスよ!オレのデッキの切り札を!」
「き、切り札!?一体何が来るんだ!?」

「まずは、手札から『キャプテン・ゴールド』を捨て、デッキから『摩天楼―スカイスクレイパー』を手札に加えるッスよ!さらに、手札から、魔法カード、『ミラクル・フュージョン』を発動ッス!」
「!?『ミラクル・フュージョン』!?」

 コウジは、カムイの墓地に存在するヒーローの種類を思い出していた。

「(……カムイの墓地に存在するヒーローは、『エッジマン』、『バブルマン』、『スパークマン』、『キャプテン・ゴールド』……一体何を呼ぶんだ?)」
「行くッスよー!墓地から『エッジマン』、『バブルマン』、『スパークマン』、『キャプテン・ゴールド』を除外して……オレのデッキ最強のヒーロー……『E・HERO キャプテン・シュピーゲル』を融合召喚ッス!」

 カムイの場に、巨大な二振りの刀を持つヒーローが現れた。その刀は、すべての光を反射するかのような鏡状になっていたが、刀を持つヒーローは、逆にすべての光を吸収するかのような黒色のアーマーを身につけていた。

「こ、これがカムイの切り札……『キャプテン・シュピーゲル』か!」
 コウジは、カムイの場に現れた切り札……『キャプテン・シュピーゲル』の姿に驚愕していた。

「『キャプテン・シュピーゲル』の効果発動ッス!コウジの場の『ヴァリュアブル・アーマー』の効果を使わせてもらうッスよ!ミラーウォール・ブレード!」
 『キャプテン・シュピーゲル』は、自分の持っている鏡の刄で『ヴァリュアブル・アーマー』を映し出し、それによってできた鏡の中の像を、吸収していった!


E・HERO キャプテン・シュピーゲル
闇 レベル10
【戦士族・融合・効果】
『E・HERO エッジマン』+『E・HERO バブルマン』+『E・HERO スパークマン』+『E・HERO キャプテン・ゴールド』
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。以下の効果を1つ選んで発動することができる。
●:手札から、効果モンスターカードを一枚捨てる。このターンのエンドフェイズ時まで、この効果によって捨てられたモンスターの効果を得る。この効果は、1ターンに1度しか使用できない。この効果は、相手ターン内でも使用することができる。
●:相手フィールド上のモンスターを1体選択する。このターンのエンドフェイズ時まで、選択したモンスターの効果を得る。この効果は、1ターンに1度しか使用できない。
●:このモンスターが破壊されるとき、代わりに自分フィールド上のカードを破壊することができる。
攻撃力3200 守備力2500


「『ヴァリュアブル・アーマー』の効果を得た『キャプテン・シュピーゲル』を再度召喚し、全体攻撃能力を手に入れるッスよー!」
「な、何!僕のモンスターはすべて攻撃表示……あの攻撃力で全体攻撃されたらひとたまりもない……僕の負けか……」
 『キャプテン・シュピーゲル』は、鋭い眼光でコウジの場のモンスターすべてを標的にとらえていた……

「よっしゃー!『キャプテン・シュピーゲル』で、コウジのモンスターに全体攻撃ッス!インフィニティ・ミラージュ!」
 『キャプテン・シュピーゲル』は、まるで合わせ鏡に映ったように幻影を作り出し、コウジの場のモンスターすべてを、一斉に切り裂いた!

「ぐあぁぁぁぁぁ!くっ……負けてしまったか……」(コウジLP 1150→0)


「オレの勝ちッスね!コウジ!」
「すごいな、カムイ!あの『キャプテン・シュピーゲル』!」
「いやー、そっちの蘇生戦法もすごいと思うッスよ!」
 カムイとコウジは、先程のデュエルについて語り合っていた。

「実はさ、僕のアニキも『E・HERO』デッキを使ってるんだけど……カムイは、アニキと違うタイプのヒーローを使ってたから、新鮮なデュエルができたよ!」
「そうッスか?そっちがアニキって呼んでる人は、一体どんなE・HEROを使うんスかねー。」

「……あっ、そうだ。僕とデュエリスト登録しないか?カムイ達と登録しておけば、新しい情報が手に入りやすいかもしれないからさ!」
「ああ!もちろんいいッスよ!……そう言えば、オレ、まだエイジやミカとデュエリスト登録してなかったッスね。エイジ達も登録しておくッスか?」
「ああ、いいで!わいがキャッチした情報、バンバン教えたるでな!」
「うちも、カムイにリナちゃんの近況について、教えたらなあかんしな!……カムイも、心配やろ?」
「だーかーら!そんな心配するようなこと無いッスから!」
「ははっ、ムキにならんでも、分かっとるんやで。」
ミカは、笑いながら言った。

「(まっ、センリもリナも、一人でもたぶん大丈夫ッスよね……。)」
 カムイは、センリとリナのことについて、少し気掛かりに思っていた……

大会まで……あと25日



新キャラ紹介

ルーク&ケーン
カードキャラへのコスプレが好きなコンビ。魔法使い族主体のデッキを操る。



第十三話 雷人オブ……

 大会に向けてデュエリストを捜し回っているカムイに、DCT(デュエリストコミュニケーションツール)から電話がかかってきた……



ピピピ……ピピピ……



カチャッ。


「はい、もしもし……何だ、ミカじゃないッスか。」
「『何だ』って何や!せっかくカムイにリナちゃんの近況を教えたろうと思っとったのに!」
「って、何でそのことで、毎日電話かけてくるんスか?」
「別にいいやろ?減るもんやないんやからさ。」
「……」
 カムイは、毎日電話をかけてくるミカに少々うんざりしていた。


「……で、どんな状態なんスか?」
「ああ、それか?……何かな、最近元気無いみたいやで。……やっぱ、カムイと一緒におらへんからやろうか……」
「……そうなんスか……」


「……」
「……」
 カムイがリナのことを心配そうに思う返事をした後、少しお互いに沈黙した……



「……って、他に何か言うことあらへんのか?」
「え!?何を言えばいいんスか!?」
「あのなあ、ここは普通、『今からリナに合いに行く』……とか言うもんやろ!」
「え!?そう言うものなんスか!?……でも、やっぱり一人でいる機会が無いと、強いデュエリストになれないと思うんスよね……」
「そんなこと言っとる場合や無いやろ!ほら!さっさと行ってき!」



ピッ。



「……何かああ言う言い方されると、断りにくいんスよね……まっ、合いに言ってみるッスか。」
 カムイは、ミカに言われるままに、リナに合いに行った……





















その頃、リナは、ハンバーガーショップの中にいた……


「ご注文は、お決まりでしょうか?」
「ハンバーガー10個下さい。」
「え……10個……ですか?」
「うん。」
 店員は、少年的に痩せているリナがハンバーガーを10個も頼んだことに、驚いていた。


「あの……お持ち帰りでしょうか」
「いえ、ここで食べます。」
 リナは、店員の言葉をさえぎるように言った。


「……分かりました……しばらくお待ちください。」











数分後……


「……お待たせいたしました。ハンバーガー10個です。」
 プラスチックのプレートに所狭しと置かれたハンバーガー10個……見てるだけで気が滅入りそうだ……

「ありがと。」
 リナは、そっけないお礼を言って、店内のテーブルに向かって歩いていった……











「あ〜あ、退屈だなあ……」
 リナは、先程買ったハンバーガーにかぶりつきながら、ため息をついていた……

「何でだろう……昔は、あたし一人でいても、何とも思わなかったのに……」











 リナのそんな様子を、遠距離から見かけたナオは、少し立ち止まって……
「……思ってる人が近くにいなくなった女の子って、こんなに脆いものなのかな……」
 ナオは、リナのことを心のなかでは少々気の毒に思っていたが……

「まっ、あんなちびっ子のことなんて、ボクには関係ないんだけどね……」
 そのような素振りは見せず、歩き去っていった……











「はぁ……カムイ達、一体今何してんだろ……」
 と、リナが6個目のハンバーガーを手に取ろうとしたとき……
「よう、リナちゃん。」
「え……」


 リナが声のした方を見ると、背の高い青年……雷人がいた。

「……な〜んだ、雷人じゃん。何か用?」
「はっはー!リナちゃんが元気無さそうだから、声をかけただけだぜ!」
「……別にそんな、元気無いってわけじゃ無いんだけどね。」
 リナは、雷人の言葉を軽く受け流そうとしていた……

「……おいおいリナちゃん。一体何個ハンバーガー食ってるんだよ!大丈夫か?」
 雷人は、テーブルの上に散らばった5つのハンバーガーの包み紙を見て、びっくりしていた。

「別にいいじゃん。雷人には関係ないんだし。」
「か、関係ないってよ……普通心配するだろ!そんな大量に食ってたら!」
「……そうかな。じゃあ……」
 リナは、ハンバーガーを手に取り……



ムギュッ。


「ぐ……いきなり何すんだよ、リナちゃん……」
 リナは、雷人の開いた口に、ハンバーガーを無理矢理押し込んでいた!

「あ、雷人。このハンバーガー、全部食べていいよ。じゃあね。」
 リナは、残りのハンバーガーすべてを雷人に押しつけ、走り去っていった……

「って、おい、この処分方はおかしいだろ!リナちゃん!ちょ、ちょっと待てよ!」










十分後……

「うっ……さすがに同じハンバーガー5個を食うのは、さすがにきつかったか……」
 リナから押しつけられたハンバーガー5個を食べおわった雷人は、少し苦しそうに歩いていた……
 ……当のリナは、5個食べても、別に何とも無かったみたいだが……


「ん?あそこにいるのは……リナちゃんと……誰だ?」
 雷人が見た方には、リナと、二人の男がいた。
 一方は、白い神官のような服を着、長い杖みたいなものを持っていた。
 もう一方は、黒い魔術師のような服を着、こちらも長い杖みたいなものを持っていた。
 ……簡単に言えば、『熟練の白魔導師』と、『熟練の黒魔術師』の格好をしていると言ったところだ。

「だから、何であたしがガキ呼ばわりされなきゃなんないのよ!」
「はっ!ガキをガキって呼んで、何が悪いってんだ!」
「おいおいケーン。そいつの相手もその辺にしとけよ。キリねえって。」
「おぉい、ルーク。そうカリカリすんなよ。また頭が薄くなるぞ。どっかの、誰かさんみたいによ。」
「うるせえ!大きなお世話だ!あそこまではいかねえって!」





















「ヘックシ!」
「どうしたノーネ!鮫島校長ー!」
「いや……誰かが私の噂を……」
「マンマミーア!前年度・前々年度・前々々年度に起こった、度重なる事件のせイーデ、このデュエルアカデミアに、良からぬ噂が流れているのかも知れないノーネ!」
 クロノスは、世間の噂に頭を抱えていた……


「確かに……その可能性は、否定できませんね、クロノス教頭。……しかし、もう少しで、デュエルアカデミア星海校との交流試合があるのですから、それで悪い空気を変えられれば……」
「そんな事言っテーモ、今のデュエルアカデミアニーハ、遊城十代を始めとする黄金世代ーハ、卒業してしまったノーネ!今、星海校に対抗できるデュエリストーハ、エド・フェニックスぐらいしかいないノーネ!」
「ふうむ……しかし、エド君も、プロで忙しい身……ちゃんと試合に参加してくれるかどうか……」
 鮫島校長も、クロノスも、今年度の生徒の人員不足に、悩んでいた……



「ふっ……何を言ってるのですか……鮫島校長、クロノス先輩。このデュエルアカデミアにも、強力な生徒がいると言うのに……。」
「ん?あなたは……」
「フェ、フェイト教諭!」
 鮫島校長も、クロノスも、いきなり現れたフェイト教諭に、驚いていた。


「……では、聞きましょう。あなたの言う、その強力な生徒とは……」
「……『早乙女レイ』ですよ。」
「え!?」
「何でスート!?」
 二人は、意外な名前が挙がったことに、驚きを隠しきれなかった……


「……しかし……彼女には、過去のジェネックスで準優勝したことくらいしか実績が無い……それに、本来生徒でもプロでもなかった彼女が、どうやってジェネックスに参加したのか……また、彼女と万丈目君の優勝決定戦以外のデュエルを行っていたのかも怪しい……」
「なるほど……確かに、そう言う意見もありますね。……では、こうしましょう。このデュエルアカデミアの生徒でトーナメント大会を開き、その中の上位2名を本命参加者とし……まあ、ありえないと思いますが、もしレイが途中で敗退した場合は、補欠として参加させるということで良いでしょうか。そして、もし本命参加者が参加できなくなった場合、レイを本命参加者とする……それでどうでしょうか。」
 フェイトは、長々と語った。

「ふむ……まあ、いいでしょう……絶対本命のエド君をあわせて、3人をそれで決定することにしましょう。」
「私の進言を受け入れてくださって、感謝いたします……なお、私がレイを推挙したことは、くれぐれも御内密に……」
 フェイトは、そう言い残し、去っていった……











「どうするノーネ、鮫島校長ー!あの新入りの意見を、採用するのデスーカ!?」
「ふうむ……しかし、彼は、教員採用試験でトップを取り、実習生として入った後、たった1日で生徒達とのデュエル100連勝を達成してしまうほどの実力者ですから、何故か彼の進言を否定できない……」
「さ、鮫島校長ー!」



 ……噂によるクシャミから、何故かハードな話に移ってしまいました……





















その頃、リナ達は……

「あんたねえ……何度も何度もあたしのことガキって……あたしのどこがガキなの!」
「どこがって、そりゃあ……全部に決まってんだろ!」
「ぜ、全部って……」
 リナは、ケーンの顔面を思い切り殴ってやろうと握りこぶしを作っていた……
 それを見たルークは……


「(おぉい、ケーン。もうそろそろ止めとけって。……ぶん殴られるぞ。)」
 ルークは、ケーンに小声でそう言った。

「(わぁったよ。しゃぁねえな……)」
 ケーンも、小声でそう答えた。

 ここではっきりとさせておきますが、『熟練の白魔導師』がルーク、『熟練の黒魔術師』がケーンです……。



「おぉい、俺にガキって言われたくなかったら、俺にデュエルで勝ってみな!……まさか、デュエル出来ねえってこたぁねえよな!?」
「望むところよ!ケチョンケチョンにしてやるんだから!」
 リナは、自分の左手に装着しているデュエルディスクを、ケーンの方に向けた。



「デュエ……」
 と、デュエルを始めようとした時……



「おいおいリナちゃん。何やってんだ?ケンカか?」
「別に。大したことじゃないって。それより、雷人。ハンバーガー食べるのに一体何分かけてんの?」
「って、ハンバーガー5個とか、そんな早く食えるものじゃないだろ!」



「(ちっ、雷人の奴……邪魔しやがって……)」
「(何言ってんだ、ケーン。これは俺達にとってチャンスだぜ。)」
「(ああ、そうだなぁ、ルーク。ここは『あれ』だな。)」
「(そうだ。『あれ』だ。)」
 ケーンとルークは、お互いに顔を見合わせて、笑っていた……

「何やってんのさ。早く始めよっ。」
 リナは、ケーンとルークに話し掛けた。すると……



「おぉい、二人揃ったみたいだな!ルーク!」
「そうだなぁ、ケーン!……お前ら、役者も揃ったことだし、タッグデュエルでも始めようぜ!」
「え……タッグデュエルって……」

 リナは自分の周りを見渡してみたが、周りには、雷人、ケーン、ルークの三人しかいなかった。


「ま、まさか……」
 リナは、自分の置かれている状況に気付いて……



「ちょっと待ってよ!何であたしが雷人と組まなきゃなんないのよ!」
「別にいいじゃないか、リナちゃん。俺達のデュエルの腕前を、あいつらに見せてやろうぜ!」
「そ、そんないきなりタッグデュエルなんて、できるわけないでしょ!大体、あたし、タッグデュエルのルールなんて知らないし……」
「そうか。……まあ、下に書いてあることを読めば、すぐわかるさ。」



自分&相方vs相手A&相手Bの例で考える。
こちらのチームが先攻の場合、ターンは「自分→相手A→相方→相手B→自分→…」の順に行う。
厳密には、「自分vs相手B→自分vs相手A→相方vs相手A→相方vs相手B→自分vs相手B→…」といった風に回していく。
自分のターンが終了した後も、相方のターンが来るまで場に立ったまま残るのである。

攻撃できないのは1ターン目のみ。上記の例でいえば、相手Aのターン以降はバトルフェイズを行うことができる。
手札、デッキ、融合デッキは別々に扱う。
フィールド、墓地、除外ゾーン、ライフポイントは相方と共有する。
デッキサーチや手札コストは、自分の所しか使えない。

フィールドからの生け贄及び墓地からの蘇生は、共有なので相方のカードを使ってもよい。



「……うう〜、ちょっとややこしそう〜。」
「まあ、そりゃあ…なあ……」
「でも……基本的なルールは、変わんないんだね。まあ……あたしも、あいつらのデュエルの申し込みを受けたんだから……じゃ、雷人。始めよっ。」
「よし、じゃあいくぜ!」


「(へっ、あいつら、やっぱりタッグデュエルの初心者みてえだなぁ、ルーク。)」
「(そうだなあ。もう楽勝だな。)」
 ケーンとルークは、デュエルが始まる前から、リナと雷人をなめてかかっていた。


「「「「デュエル!」」」」

 ターンの順番は、雷人、ルーク、リナ、ケーンの順に進んでいくようだ。


「俺のターン、ドロー!……モンスターを裏側守備表示で召喚!カードを1枚場に伏せ、ターンエンドだ!」

「おれのターン、ドロー!……いきなり来たぜ!俺達のデッキを強力にサポートするキーカードがな!手札から、『召喚僧サモンプリースト』を召喚だ!自身の効果で守備表示に!」
 ルーク達の場に、黒いローブをまとった老魔術師が現れた。

「『召喚僧サモンプリースト』の効果発動だ!手札から『マジックブラスト』を捨て、デッキから『熟練の白魔導師』を守備表示で特殊召喚するぜ!サモンプリースト!召喚呪文を詠唱しろ!」
 ルークがそう言うと、サモンプリーストが呪文を唱えはじめ、デッキから白い法衣をまとった魔導師が現れた。


召喚僧サモンプリースト
闇 レベル4
【魔法使い族・効果】
このカードは生け贄に捧げる事ができない。
このカードは召喚・反転召喚が成功した場合守備表示になる。
自分の手札から魔法カード1枚を捨てる事で、
デッキからレベル4モンスター1体を特殊召喚する。
この効果によって特殊召喚されたモンスターは、そのターン攻撃する事ができない。
この効果は1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに発動する事ができる。
攻撃力800 守備力1600

熟練の白魔導師
光 レベル4
【魔法使い族・効果】
自分または相手が魔法を発動する度に、
このカードに魔力カウンターを1個乗せる(最大3個まで)。
魔力カウンターが3個乗っている状態のこのカードを生け贄に捧げる事で、
自分の手札・デッキ・墓地から「バスター・ブレイダー」を1体特殊召喚する。
攻撃力1700 守備力1900


「サモンプリーストの効果で特殊召喚されたモンスターは、このターン攻撃できねえぜ!カードを1枚場に伏せ、ターンエンド!」

「あたしのターン、ドロー!」
 そう言ってリナは、雷人が場に伏せたカードが何なのか確認した。

「(あ……ちょっと、かわいいかも……)」
 そう思いながら、リナは雷人が伏せたモンスター……『電池メン−ボタン型』を見ていた。

「(で……伏せカードが『地獄の暴走召喚』かあ……あたしのデッキには『電池メン』1枚も入ってないのに……)」

 もしこのデュエルがタッグデュエルでなければ、雷人のターンで『電池メン−ボタン型』のリバース効果で、デッキから『電池メン−単三型』を特殊召喚し、『地獄の暴走召喚』で一気に3体並べることができ、速攻勝利できた……
 自分にうまく機能するサポートカードが、パートナーにとっては意味が無いことがある……それがタッグデュエルの恐ろしい所だ……

「(……とりあえず、『電池メン−ボタン型』を狙われないようにしないとね……。)あたしは、手札から『ミラクル・フリッパー』を召喚するね。」
 リナの場に、魔法使い……と言うより、『ブラック・マジシャン』と似た服を着た少年が現れた。

「カードを1枚場に伏せて、ターンエンドね。」

「けっ!そんなガキんちょに何ができるってんだ!俺のターンだ!ドロー……の代わりに、墓地から『マジックブラスト』を手札に戻すぜ!」
 ケーンは、ルークの墓地に置かれていた『マジックブラスト』を、自分の手札に加えた。


マジックブラスト
通常魔法
自分フィールド上に魔法使い族モンスターが存在する時に発動する事ができる。
自分フィールド上の魔法使い族モンスター×200ポイントダメージを相手ライフに与える。
このカードが墓地に存在する場合、自分のドローフェイズに
通常のドローを行う代わりに、このカードを手札に加える事ができる。


「いくぜ!サモンプリーストの効果発動!手札から『マジックブラスト』を捨て、デッキから『王立魔法図書館』を守備表示で特殊召喚するぜ!」
 サモンプリーストが呪文を唱えると、デッキから巨大な図書館が現れた。

「さらに、手札から『熟練の黒魔術師』を召喚するぜ!」
 ケーンの場に、黒い法衣をまとった魔術師が現れた。


熟練の黒魔術師
闇 レベル4
【魔法使い族・効果】
自分または相手が魔法を発動する度に、
このカードに魔力カウンターを1個乗せる(最大3個まで)。
魔力カウンターが3個乗っている状態のこのカードを生け贄に捧げる事で、
自分の手札・デッキ・墓地から「ブラック・マジシャン」を1体特殊召喚する。
攻撃力1900 守備力1700


「そして、手札から、『精神統一』を発動し、デッキから『精神統一』を手札に加えるぜ!」
 『熟練の白魔導師』と『熟練の黒魔術師』は、静かに瞑想を始めた……


精神統一
通常魔法
この魔法は1ターンに1度しか発動できない。
自分のデッキから「精神統一」を1枚選択し手札に加える。


「さらに手札から、『トゥーンのもくじ』を発動し、デッキから『トゥーンのもくじ』を手札に加えるぜ!さらにもう1回もくじを発動し、デッキからもくじを手札に加えるぜ!」
 ケーンが魔法を発動させるたびに、『熟練の黒魔術師』と『熟練の白魔導師』と『王立魔法図書館』の周りに、魔力がたまってきた!


トゥーンのもくじ
通常魔法
「トゥーン」という名のついたカードをデッキから1枚手札に加える。


「さらに伏せカード、『漆黒のパワーストーン』を発動!魔力カウンターを3つ発生させるぜ!」
 ケーンの場に現れた黒い水晶玉の周りに、3つの魔力がこもった球体が現れた。


漆黒のパワーストーン
永続罠
発動後、このカードに魔力カウンターを3個乗せる。
自分のターンにつき1個だけ、このカードの魔力カウンターを
他の「魔力カウンターを乗せる事ができるカード」に移す事ができる。
このカードの魔力カウンターが無くなった時、このカードを破壊する。


「はーっはっはっは!……これで準備が整ったぜ!俺の手札に眠る、大量破壊兵器の発動条件がなあ!」
「ええっ!?な、何をする気なの!?」
「見せてやるぜ!『熟練の白魔導師』から3つ、『熟練の黒魔術師』から3つ、『王立魔法図書館』から3つ、『漆黒のパワーストーン』から1つの魔力カウンターを取りのぞき……『メガトン魔導キャノン』を発動だぁぁぁ!」
 ケーンがそう言うと、場のモンスター達の周りを回っていた魔力カウンターが、次々と『メガトン魔導キャノン』に充填されていった!



「な、何かその『メガトン魔導キャノン』……今にも爆発しそうなすごい音たててんだけど……」
 リナはそう言いながら、ケーンの場に現れた『メガトン魔導キャノン』を恐る恐る指差していた……
 ……魔力カウンター10個は、明らかにため込みすぎなのだろうか……発射する前に、大暴発しそうである……


「くらえぇぇ!メガトン・マジック・バースト・ストリーム!」
 ケーンがそう叫ぶと、『メガトン魔導キャノン』の発射口から極太なレーザーが発射され、リナの場の『電池メン−ボタン型』、『攻撃の無力化』、『地獄の暴走召喚』をなぎはらっていった!


メガトン魔導キャノン
通常魔法
自分の魔力カウンターを10個取り除く。
相手フィールド上のカードを全て破壊する。


「はーっはっはっは!見たかぁぁ!俺の『メガトン魔導キャノン』の威力をよぉぉぉ!」
 ケーンは、自分の発動させた『メガトン魔導キャノン』の威力に、理性を失ったかのように大爆笑していた……



「はっはっ……は……」
 場を確認したケーンは、いきなり笑いが止まった……リナの場の『ミラクル・フリッパー』が、持っていた杖で『メガトン魔導キャノン』から発生した破壊光線を、必死に押さえ込んでいたからである!



「ば……ば……馬鹿なあぁぁぁぁぁ!あんなガキんちょが、『メガトン魔導キャノン』を押さえ込んだだとぉぉぉぉぉ!」
「す……すごい……」
 リナと雷人は、『ミラクル・フリッパー』の必死に頑張る姿を見て……

「……が、頑張れ!フリッパー!」
「そうよ!負けちゃダメ!ガキんちょってバカにしたあいつらに、本当の力を見せてあげて!」

 『ミラクル・フリッパー』は、リナと雷人の励ましに答えようとしたのか、自らに秘められた魔力を解放し、破壊光線を跳ね返し、『熟練の黒魔術師』に向かわせた!

「な、何ぃぃぃぃぃ!あ、有り得ねえぇぇぇ!あんなガキがぁぁぁぁ!」
 『熟練の黒魔術師』も、自分の魔力で対抗しようとするが、すでに『メガトン魔導キャノン』発射のために魔力を使いきってしまったため、まったく抵抗できずに破壊された……

「す、すげえぞ!フリッパー!」
「かっこよかったよ!フリッパーく…ん……」
 リナと雷人がほめたたえている間に、『ミラクル・フリッパー』はすべての魔力を使い尽くしたのか、人形のように崩れ落ちていった……



「フ……フリッパーく〜〜ん!」
 リナは、『ミラクル・フリッパー』の最後の雄姿に、思わず叫んでしまった……


ミラクル・フリッパー
光 レベル2
【魔法使い族・効果】
「ミラクル・フリッパー」が自分フィールド上に表側表示で存在する場合、
このカードは召喚・反転召喚・特殊召喚できない。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
相手は他の表側表示のモンスターを攻撃対象に選択できない。
このカードが戦闘で破壊された場合、このカードを相手フィールド上に特殊召喚する。
このカードが魔法・罠の効果で破壊された場合、
相手フィールド上のモンスター1体を破壊する。
攻撃力300 守備力500


 一応、まだ一巡目だが、まるでクライマックスのようなノリになっていた……

「あ……あんなガキんちょに、俺の『メガトン魔導キャノン』が封じられただと……ちっくしょぉぉ!『熟練の白魔導師』あのガキにダイレクトアタックだ!白の魔導!」
 『熟練の白魔導師』の放った魔法がリナに直撃し、ライフが削られた。

「きゃっ!」(リナ&雷人LP 4000→2300)

「カードを2枚場に伏せ、ターンエンドだ!」

「うう〜……。あ、あいつ〜よくもフリッパーくんを〜!」
 リナは、『ミラクル・フリッパー』を効果によって破壊したケーンを、獲物を狙うネコのようににらみつけ……

「……雷人!あんな奴ら、もうケッチョンケチョンにやったげて!」
「あ、ああ……」
 リナがいきなり大声をあげたので、雷人は少しびっくりしていた……



「……全然おれ、話に割り込めなかったな……」
 ルークは、全然話に参加できなくて、少々さみしそうだった。


現在の状況
雷人&リナ LP…2300
     手札…4枚・4枚
      場…無し

ルーク&ケーン LP…4000
       手札…3枚・1枚
        場…熟練の白魔導師(魔力カウンター1個・攻撃表示)
          召喚僧サモンプリースト(守備表示)
          王立魔法図書館(魔力カウンター1個・守備表示)
          漆黒のパワーストーン(魔力カウンター2個)


一巡目にしては、妙に白熱した展開になっていた……

「俺のターン、ドロー!手札から、魔法カード、『浅すぎた墓穴』を発動!墓地から『電池メン−ボタン型』を裏側守備表示で復活させる!」
「なら俺は、『熟練の黒魔術師』を裏側守備表示で復活させるぜ!」


浅すぎた墓穴
通常魔法
自分と相手はそれぞれの墓地からモンスターを1体選択し、
守備表示でフィールド上にセットする。


「さらに……手札から、『太陽の書』を発動!『電池メン−ボタン型』をリバースするぜ!」
 雷人の場に、円盤状の丸い体をした、小さな電池メンが現れた。

「『電池メン−ボタン型』のリバース効果発動だ!デッキから『電池メン−単三型』を特殊召喚するぜ!」 『電池メン―ボタン型』が作った電界によって、デッキの『電池メン―単三型』が引き寄せられていった!


電池メン−ボタン型
光 レベル1
【雷族・効果】
リバース:自分のデッキから「電池メン−ボタン型」以外のレベル4以下の
「電池メン」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。
また、リバースしたこのカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。
攻撃力100 守備力100


「『電池メン−単三型』が特殊召喚されたことにより……『地獄の暴走召喚』を発動するぜ!集結しろ!『電池メン−単三型』!」
 雷人がそう言うと、場に首からマフラーのような形状に放電している電池メンが3体出現した!


地獄の暴走召喚
速攻魔法
相手フィールド上に表側表示モンスターが存在し、自分フィールド上に
攻撃力1500以下のモンスター1体の特殊召喚に成功した時に発動する事ができる。
その特殊召喚したモンスターと同名カードを自分の手札・デッキ・墓地から
全て攻撃表示で特殊召喚する。
相手は相手フィールド上のモンスター1体を選択し、そのモンスターと
同名カードを相手自身の手札・デッキ・墓地から全て特殊召喚する。


「(ちっ……俺のデッキには、場にいるモンスターと同名モンスターが1枚も入ってねえ……。)俺は、『熟練の白魔導師』を指定する……が、俺のデッキには、『熟練の白魔導師』は1体もいないぜ!」
 ケーンは、一方的にモンスターを並べられたことで、いらだっていた……。


「お前ら!『電池メン−単三型』の効果を、教えてやるよ!場の同名の味方がすべて同じ表示形式だった場合、1体につき、攻撃表示なら攻撃力が……守備表示なら守備力が1000ポイントアップするんだぜ!俺の場の『電池メン−単三型』はすべて攻撃表示……よって、攻撃力は3000になったぜ!」
 『電池メン−単三型』は、自分の首に巻かれているマフラーのようなものを繋ぎあわせ、電力を高めあっていった!


電池メン−単三型
光 レベル3
【雷族・効果】
自分フィールド上の「電池メン−単三型」が全て攻撃表示だった場合、
「電池メン−単三型」1体につきこのカードの攻撃力は1000ポイントアップする。
自分フィールド上の「電池メン−単三型」が全て守備表示だった場合、
「電池メン−単三型」1体につきこのカードの守備力は1000ポイントアップする。
攻撃力0 守備力0


「な……攻撃力3000が、場に3体だとぉぉぉ!……某社長が聞いたら憤慨するぜ、絶対。」
「何言ってんのさ。前のデュエルの雷人なんて、攻撃力4500を4体も並べてたんだから。」
 リナは、前の実体験をもとに、サラリとすごいことを言った。

「な……攻撃力4500が4体!?絶対泣いちまうって、某社長。」
 今度はルークが驚いていた……

「おぉい、相棒!某社長に気の毒だよ!」
「いいじゃねえか、本当の事なんだしよぉ!」
 ケーンとルークは、リナと雷人を無視して、勝手に漫才行為を始めた。



「……で、攻撃していいのか?」
 雷人は、少しいらつきながら言った。

「ああ、いいぜぇ!まだ負けが決まったわけじゃあねえからなぁ!」

「いくぜ!この一撃に、フリッパーの魂をこめるぜ!『電池メン―単三型』3体で、『熟練の白魔導師』、『召喚僧サモンプリースト』、『王立魔法図書館』に攻撃!単三バッテリーアタック4.5V!」
 『電池メン―単三型』の放った強烈な電撃により、『熟練の白魔導師』、『召喚僧サモンプリースト』、『王立魔法図書館』は一瞬で破壊された。『熟練の白魔導師』は攻撃表示だったため、ケーンは1300ポイントのダメージを受けた。

「ぐぅあぁぁぁぁ!!」(ケーン&ルークLP 4000→2700)

「見たか!これが俺達の力だ!カードを1枚場に伏せ、ターンエンド!」
 雷人は、守りのためのカードを1枚場に伏せ、ターンを終えた。

「おれのターン、ドロー!『熟練の黒魔術師』を反転召喚し、手札から『熟練の白魔導師』を召喚!」
 ルーク達の場に、また白い魔導師と黒い魔術師が現れた。

「さらに手札から、魔法カード『早すぎた埋葬』を発動!ライフを800払い、墓地から『王立魔法図書館』を復活させるぜ!」
 ケーンの墓地に置かれていた『王立魔法図書館』が、ルークの場に蘇った。しかし、無理に攻撃しようとしているからか、今にも倒壊してしまいそうなほどバランスが崩れている……


早すぎた埋葬
装備魔法



ルーク&ケーンLP 2700→1900

「魔法が発動したことで、『熟練の白魔導師』と『熟練の黒魔術師』に、魔力カウンターが1個のるぜ!」
と言いながら、ルークは、ケーンが前のターンに伏せておいたカードを確認した。

「……ありがとよ!ケーン!いいカードを伏せておいてくれてよぉ!伏せ魔法カード、『トゥーンのもくじ』を発動し、デッキから『トゥーンのもくじ』を手札に加えるぜ!さらにもう1回もくじを発動し、デッキからもくじを手札に加える!」
 ルークが魔法を発動させるたびに、『熟練の黒魔術師』、『熟練の白魔導師』、『王立魔法図書館』に魔力がたまってきた!



「……準備は整ったぜ!もう1回見せてやる!大量破壊兵器の威力をよ!『熟練の黒魔術師』から3つ、『熟練の白魔導師』から3つ、『王立魔法図書館』から2つ、『漆黒のパワーストーン』から2つの魔力カウンターを取りのぞき……『メガトン魔導キャノン』を発動ぉぉぉ!」
 ルークがそう言うと、場の魔力カウンターすべてが、『メガトン魔導キャノン』に吸収されていった!それによって魔力カウンターを失った『漆黒のパワーストーン』は、役目を終えたからか、静かに消滅していった……



「に、2発目!?」
「バ、バカな!早すぎる!」
 リナと雷人は、あまりに早い魔力カウンターのチャージに、驚いていた。
 普通のデュエルならば、1度『メガトン魔導キャノン』を撃った後は、ほとんど手札を残すことができないので、2発目を撃つのは、至難の技だ……
 しかし、ケーンとルークは、タッグデュエルの特性を活かし、パートナーに『トゥーンのもくじ』を渡すことで、速攻で第二打を放つのに成功した!



「くらえぇぃ!メガトン・バースト・ストリーム!……第二打ァ!」
「くっ!伏せ罠カード、『進入禁止!NoEntry!!』を発動!場のモンスターすべてを守備表示に変更するぜ!」
「な、何だとぉぉ!」
 雷人が発動した『進入禁止!No Entry!!』から、警備員軍団が現れ、『メガトン魔導キャノン』から発射された破壊光線をかいくぐり、ルークの場のモンスターすべてを無理矢理守備表示に変更した!
 ……雷人の場のモンスターを守備表示にした警備員達は、破壊光線に巻き込まれてしまったが……


進入禁止!No Entry!!
通常罠
フィールド上に存在する攻撃表示モンスターを全て守備表示にする。


「くっ……、『熟練の黒魔術師』は、もうこのターン、表示形式を変更しちまった……『熟練の白魔導師』は、ついさっき召喚したばかりだ……2体とも、このターン内の表示形式変更のチャンスは失われてやがる……これじゃあ、追撃できねえじゃねえか……」
 ルークは、攻撃のチャンスを失ったことに、落胆していた……

「……カードを1枚場に伏せ、ターンエンドだ……」

「あたしのターン、ドロー!手札から、『白魔導士ピケル』を召喚して……魔法カード、『ゼロリーブ』を発動するね!来て!『ものマネ幻想師』!」
 ピケルが杖を振りながら呪文を唱えると、リナのデッキから、顔を手鏡で隠し、奇抜な衣裳に身を包んだひ弱そうな幻術使いが現れた。


ゼロリーブ
通常魔法
自分フィールド上に存在する「ピケル」と名のつくモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターのレベル以下の魔法使い族モンスター1体を、自分のデッキから特殊召喚する。
「ゼロリーブ」は、1ターンに1度しか発動できない。
選択したモンスターは、このターン、攻撃宣言と表示形式の変更ができない。


「『ものマネ幻想師』の効果発動!『熟練の黒魔術師』の攻撃力と守備力をコピーするね!」
 『ものマネ幻想師』は、持っていた手鏡で『熟練の黒魔術師』を映し出すと、ひょろひょろだった体が力を持ち始め、鏡に映った黒魔術師と同等のパワーになった!

ものマネ幻想師 攻撃力0→1900 守備力0→1700


「『ものマネ幻想師』か。なかなか面白いカードを入れてるじゃないか、リナちゃん。」
「だから、何でいちいちちゃん付けで呼ぶのよ!子供扱いしないでよ!」
「べ、別にそういうわけじゃないんだがな……」
 雷人は、リナの反応に少々戸惑っていた。



「と、とにかく……『ものマネ幻想師』で、『熟練の黒魔術師』に攻撃!イリュージョン・マジック!」
 『ものマネ幻想師』と『熟練の黒魔術師』の能力は互角だったが、『熟練の黒魔術師』は守備表示だったため、『ものマネ幻想師』の攻撃に反撃を行えず、一方的に破壊された。

「で、メインフェイズ2に、手札から、魔法カード、『キュアドロップ』を発動するね。」
「な、何だぁ?その魔法カードは?」
 ルークとケーンは、始めて見る魔法カードに注目していた。

「このカードは、あたしの場にピケルちゃんがいるときに発動できる魔法よ。あたしの場のピケルちゃんの仲間達の攻撃力の合計分、あたしのライフを回復することができるんだ。」
と言うと、聖なる雫がリナの頭の上に降ってきて、ライフが大幅に回復した。

リナ&雷人LP 2300→4200


キュアドロップ
通常魔法
自分フィールド上に存在する「ピケル」と名のつくモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスター以外の、自分フィールド上に存在する魔法使い族モンスターの攻撃力の合計分、自分のライフポイントが回復する。
「キュアドロップ」は、1ターンに1度しか発動できない。
選択したモンスターは、このターン、攻撃宣言と表示形式の変更ができない。



「な……たった1枚のカードで、ライフが1900も回復しただとぉぉぉ!卑怯だ!卑怯すぎるぜ!」
 あまりの大幅ライフ回復に、ケーンは憤慨した。

「何言ってんのさ。発動条件あるんだからさ、これくらい回復しないと意味無いじゃん。」
 リナは、自分が発動したカードの効果を正当化した。

「だが……お前の度重なる魔法の発動で、おれの場の『熟練の白魔導師』と『王立魔法図書館』には、魔力カウンターが2個のったぜ!」
 と、ルークが言った。
「あっ、そうだったっけ。まっ、いっか。カードを1枚場に伏せて、ターンエンドね。」

「くっ、なめやがって……このガキが……俺のターンだ!ドロー!!」
 ケーンは、怒りにまかせてカードをドローした。


「伏せ魔法カード、『トゥーンのもくじ』を発動!デッキから『トゥーン・アリゲーター』を手札に加えるぜ!これで『王立魔法図書館』に魔力カウンターが3個のったぜ!効果発動だ!『王立魔法図書館』にのっている魔力カウンターを3個取りのぞき、カードを1枚ドローするぜ!」
 『王立魔法図書館』にためられていた魔力が、手札という形になって、ケーンの手にわたった。

「さらに手札から、『精神統一』を発動し、デッキから『精神統一』を手札に加え……魔法カード、『天使の施し』を発動だぁ!カードを3枚ドローし、手札を2枚捨てるぜ!」
 ドローしたカードを確認すると、ケーンは……



「はーっはっはっは!来たぜ!俺のデッキに眠っていた超強力なカードがな!儀式魔法、『エェンド・オォブ・ザ・ワァーーールド(エンド・オブ・ザ・ワールド)』を発動だぁぁぁぁぁぁ!!手札の『熟練の黒魔術師』と、場の『熟練の白魔導師』を生け贄に捧げ……来い!『終焉の王 ディマァイス(デミス)』!!!」
 ケーンがそう叫ぶと、場に、鋼色の巨大な斧を持ち、淡青色の炎のようなマントを身につけた、巨大な悪魔が現れた。


終焉の王デミス
闇 レベル8
【悪魔族・効果】
「エンド・オブ・ザ・ワールド」により降臨。
フィールドか手札から、レベルの合計が8になるよう
カードを生け贄に捧げなければならない。
2000ライフポイントを払う事で、
このカードを除くフィールド上のカードを全て破壊する。
攻撃力2400 守備力2000


「魔力カウンターが3個のった『王立魔法図書館』の効果で、カードを1枚ドローだ!見せてやるぜ!『終焉の王 ディマァイス(デミス)』の究極最終必殺奥義をよぉぉぉ!ライフポイントを2000払……」
 自分達のライフポイントを確認した瞬間、ケーンの口が止まった……

ケーン&ルークLP 1900

「な……な……ぬぅあにぃぃぃぃぃ!ライフポイント……1900どぅあとぉぉぉぉぉ!」
 ライフポイントの想像以上の減少具合に、ケーンは絶叫した。



「ちっきっしょぉぉぉぉ!『終焉の王 ディマァイス(デミス)』あのガキをぶっ飛ばせ!」
 デミスは、素手でピケルの首根っ子をつかみ、そのまま力任せに、リナに向けて投げ付けた!

「きゃっ!……な、何て乱暴な攻撃方法なの!」(リナ&雷人LP 4200→3000)
 デミスの意外な攻撃方法に、リナは思わずのけぞった。

「けっ!あんなガキを相手にするのに、斧を使う価値すらねえぜ!カードを1枚場に伏せ、ターンエンドだ!」
 ケーンは、ワイトを倒したミノタウロスのような問題発言をし、ターンを終えた。


現在の状況
雷人&リナ LP…3000
     手札…1枚・2枚
      場…ものマネ幻想師(攻撃力1900・攻撃表示)
        伏せカード1枚

ルーク&ケーン LP…1900
       手札…1枚・0枚
        場…終焉の王デミス(攻撃表示)
          王立魔法図書館(守備表示)
          伏せカード1枚


リナと雷人は、ライフポイントではわずかに勝っているが、ケーンとルークの場には、『終焉の王デミス』が存在している……まだどちらに転ぶか分からなかった……


「俺のターン、ドロー!」
 前のターンにリナが伏せたカードを確認すると、雷人は……

「(おいおい……『マジシャンズ・サークル』かよ……俺のデッキには、魔法使い族入ってないのによ……)」
 自分が使えないカードを見た雷人は、少々表情が引きつったが……

「(まあ、俺も1ターン目にリナちゃんが使えない『電池メン−ボタン型』を場に出したから、お互い様か……)」
 自分も同じようなことをしていたことに気付き、気を取り直して……

「……いくぜ!『ものマネ幻想師』を生け贄に捧げ、『充電池メン』を召喚する!」
 雷人の場に、腹部に他の電池をはめ込むスペースを持った電池メンが現れた。

「『充電池メン』の効果発動だ!デッキから、電池メンと名のつくモンスター1体を特殊召喚できるんだぜ!俺は、『電池メン−単一型』を守備表示で特殊召喚するぜ!」
 『充電池メン』の腹部に『電池メン−単一型』がはめ込まれ、充電されていった!充電された『電池メン−単一型』は、場の『充電池メン』を守るかのように、電場を作っていった!


充電池メン
光 レベル5
【雷族・効果】
このカードの召喚に成功した時、自分の手札またはデッキから
「充電池メン」以外の「電池メン」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する事ができる。
このカードの攻撃力・守備力は、自分フィールド上に表側表示で存在する
雷族モンスターの数×300ポイントアップする。
攻撃力1800 守備力1200

電池メン−単一型
光 レベル1
【雷族・効果】
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
相手は自分フィールド上に存在する「電池メン−単一型」以外の
雷族モンスターを攻撃対象に選択できない。
攻撃力0 守備力1900


「『充電池メン』の攻撃力・守備力は、場の雷族1体につき300ポイントアップするんだぜ!よって、『充電池メン』の攻撃力は2400……『終焉の王デミス』の守備力を上回ったぜ!」
「はぁっ!何言ってやがんだ!俺の場の『終焉の王ディマァイス(デミス)』は攻撃表示……守備力なんざ関係ねえぜ!」
「それはどうかな!?さらに手札から、魔法カード、『魔霧雨』を発動!お前の場の、『充電池メン』の攻撃力以下の守備力を持つモンスターを、すべて破壊するぜ!」
「な、何だとぉぉぉぉぉ!」
 雷人が発動した『魔霧雨』から発生した霧雨によって、『終焉の王デミス』と『王立魔法図書館』の体が濡れ、『充電池メン』の放った電撃をまともに食らってしまった!


魔霧雨
通常魔法
自分のフィールド上「デーモンの召喚」か雷族モンスター1体を指定する。
指定モンスターの攻撃力以下の守備力を持つ相手表側表示のモンスターを全て破壊する。
このカードを発動する場合、このターンのバトルフェイズを行う事はできない。


「お、俺の『終焉の王ディマァイス(デミス)』がぁぁぁぁ!」
 ケーンは、デミスをあっさりと破壊されたことに絶叫した。

「どうだ!ターンエン……」
「あっまぁぁぁーい!伏せ罠カード、『リビングデッドの呼び声』を発動ぉぉぉ!蘇れぇぇ!『終焉の王ディマァイス(デミス)』!!」
 ケーンの墓地から、デミスがはい上がるように蘇った。先程『充電地メン』の攻撃によって受けた傷は、完全に消え去っていた。

「くっ、蘇生カードを伏せていたとはな……」
 雷人は、デミスを完全に破壊することができなくて、残念そうだった。

「おれのターン、ドロー!『終焉の王デミス』で、『電池メン−単一型』に攻撃!アース・ブレイカーー!」
 デミスが巨大な斧を振り下ろすと、『電池メン−単一型』は、まるで薪が割れるように真っ二つにされてしまった……

「これで『充電池メン』の攻撃力は2100……デミスの攻撃力を下回ったなぁ!カードを1枚場に伏せ、ターンエンド!」


「あたしのターン、ドロー!」
 ドローしたカードを確認すると、リナは……

「(……『天使の施し』かあ……これで、やっとタッグだったから使えなかったあたしのサポートカードを入れ替えれるなあ……)」
 リナは、いいカードを引いた喜びと、自分の戦術のキーカードを使えない悲しみで、複雑な気持ちだった……

「……手札から、魔法カード、『天使の施し』を発動して、カードを3枚ドローして、手札を2枚捨てるね。で、手札から『ピクシーナイト』を召喚するね。」
 リナの場に、背中に蝶々のような薄い羽根を持った、赤髪の小さな妖精が現れた。
 一応、レベル2以下の魔法使い族では、最高の攻撃力を持っていたりする……


ピクシーナイト
光 レベル2
【魔法使い族・効果】
このカードが戦闘によって墓地に送られた時、
自分の墓地の魔法カード1枚を相手が選択し、
そのカードを自分のデッキの一番上に置く。
攻撃力1300 守備力


「じゃ、『ピクシーナイト』で、『終焉の王デミス』に攻撃ね。」
「何!攻撃力1300で、デミスに攻撃だと!ありえねえ!何考えてんだ!?」
 リナのあまりにおかしな行動に、ルークは驚いた。

「まっ、見ててよね。『ピクシーナイト』の攻撃宣言時に……伏せ罠カード、『マジシャンズ・サークル』を発動するね!この効果で、あたしは、デッキから……『見習い魔術師』を特殊召喚するね!」
 リナのデッキから、黒い衣裳を身につけた、金髪の若い魔法使いが現れた。


マジシャンズ・サークル
通常罠
魔法使い族モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
お互いに自分のデッキから攻撃力2000以下の魔法使い族モンスター1体を選択し、
それぞれ自分のフィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。


「!?ちょっと待てよ……『マジシャンズ・サークル』による特殊召喚は、お互いに強制攻撃表示だったよな!」
「そっ。だから早くそっちも魔法使いを出してよね。」
 リナのこの行動のねらいを、雷人は気付いた。

「……なるほどな。相手の場にモンスターを無理矢理特殊召喚させて、『ピクシーナイト』の攻撃を取り消しながら、デッキから魔法使いをサーチしたってわけか。それに、『マジシャンズ・サークル』で特殊召喚できるモンスターの攻撃力は、2000以下……『充電池メン』で楽に破壊できる……考えたな!リナちゃん!」
「だから、ちゃん付けは止めてって言ってんでしょ!」

「(ちっ……へたなモンスターを出したら、ライフが大幅に削られちまうか……)ならおれは、『熟練の白魔導師』を特殊召喚するぜ……」
「じゃ、『ピクシーナイト』の攻撃をキャンセルして、『充電池メン』で『熟練の白魔導師』に攻撃するね。」
 『充電池メン』の放つ強力な電撃により、『熟練の白魔導師』は一瞬で破壊された。

「ぐっ!」(ルーク&ケーンLP 1900→1500)

「で……カードを1枚場に伏せて、ターンエンドね。」

「ちっ……俺のターンだ!ドロー!行け!ディマァイス(デミス)!『見習い魔術師』を叩き切れ!アース・ブレイクゥァーーー!」
 デミスが巨大な斧を振り回すと、『見習い魔術師』は紙切れのように真っ二つにされた。

「きゃあ!ひ、ひどいなあ……」(リナ&雷人LP 3000→1000)

「……でも、これで『見習い魔術師』の効果が発動するかんね!あたしは、デッキから……」
「(けっ……『執念深き老魔術師』か?まあ、そんな奴が来るなら、ルークが伏せた『デストラクション・ジャマー』の出番だけどよ……)」
 ケーンは、リナが単純に『執念深き老魔術師』を裏側守備表示で出すとたかを括っていた……
 しかし……



「あたしは……『黒魔導師クラン』を裏側守備表示で出すかんね!」
「な、何だとぉぉぉぉぉ!」
 意外なモンスターの特殊召喚に、ケーンは絶叫した。

「あ……ありえねえぜ!このガキがぁぁぁ!そんなガキを呼んで、一体何になるってんだ!」
「ガ、ガキってねえ……見てなさいよ!次のターン、あたしのクランちゃんが、デミスを倒すんだから!」
「けっ!やれるもんなら、やってみな!ターンエンドだ!」


現在の状況
雷人&リナ LP…1000
     手札…0枚・1枚
      場…充電池メン(攻撃表示)
        ピクシーナイト(攻撃表示)
        黒魔導師クラン(裏側守備表示)
        伏せカード1枚

ルーク&ケーン LP…1500
       手札…1枚・1枚
        場…終焉の王デミス(攻撃表示)

          伏せカード1枚


「俺のターン、ドロー!」
 前のターンにリナが場に伏せたカードを確認すると、雷人は……
「なるほど……このカードを使えば、デミスを倒せるな。」



 そのカードは、タッグデュエルの本質である、『力を合わせる』……と言う意味が込められているみたいだった……



「見せてやるぜ……力を合わせれば、小さき者達でも、魔王を越えられることをな!」
「おもしれえ……やってみろってんだ!」
「ああ!いくぜ!『黒魔導師クラン』を反転召喚し……魔法カード、『マジシャンズ・クロス』を発動だ!」
 雷人がそう言うと、ピクシーナイトが魔法を唱え始めた!
 すると、クランの持っていたムチが、10メートルを越えるほどとてつもなく長い物になった!

「な……何じゃそりゃぁぁぁ!そんなバカみたいに長いムチ、ガキ一人に扱えるか!」
「確かに……一人では無理があるな……。だが、今のクランには、『仲間』がいるぜ!ピクシーナイト!クランに協力しろ!」
 ピクシーナイトは、クランと共に、長いムチを手に取った!

「ちょっと待て!二人がかりで攻撃かよ!卑怯じゃねえのか!?」
「いや、違うぜ。これが、リナちゃんが伏せておいてくれた魔法カード、『マジシャンズ・クロス』の効果だ!俺の場に2体以上の魔法使い族モンスターが存在するとき、その内の指定した1体以外の攻撃権を放棄することで、指定した1体の攻撃力が3000ポイントにアップするんだぜ!俺は、ピクシーナイトの攻撃権を放棄して、クランの攻撃をサポートさせる……よって、クランの攻撃力は、3000にアップしたぜ!」
 雷人は、長々と『マジシャンズ・クロス』の効果について説明した。

黒魔導師クラン 攻撃力1200→3000

「な……あんなガキが……攻撃力3000だとぉぉぉぉ!」
 デミスの攻撃力を上回られたことに、ケーンは憤慨した。


「これでクランの攻撃力は、デミスの攻撃力2400を上回ったぜ!いくぜ!クランとピクシーナイトの、連係攻……そう言えば、リナちゃん。技名何ていえばいいんだ?」
 雷人は、照れ臭そうに尋ねた。



「い、いいよ……別に何でも……」
「そ、そうか……ならいくぜ!クランとピクシーナイトの連係攻撃!ビッグウィップ・パニッシャー!」
 クランとピクシーナイトが協力して振り回したムチは、まるで意志を持っているかのようにデミスをぐるぐる巻きにした!



「な……ディマァイス(デミス)!そんな物引きちぎっちまえ!」
「無理だぜ!このムチには、クランとピクシーナイトのすべての力が込められているんだ!そのまま引き倒せ!」
 クランとピクシーナイトが、お互いに協力してムチを綱引きのように引くと、なんとぐるぐる巻きになったムチを引き抜かれたデミスは、まるでコマのように激しく回転しはじめた!
 さらに、持っていた斧が、まるでプロペラのようになり、そのまま孤空に消えてしまった……











「………」
「………」
「………」
 ケーン、ルークはもちろん、攻撃宣言を行った雷人も、この意外な光景に唖然としていた……











「な……なあ……リナちゃん……あんな情けない終わり方で、良かったのか……」
「うん。だってさ、クランちゃんが敵をくびり殺したり、細切れにする光景なんて、見たくないじゃん。」
「ま、まあ、そりゃあ……なあ……」
 雷人は、リナの言葉に納得しながらも、デミスの情けない最後を少々哀れんでいた……



「お、俺のディマァイス(デミス)がぁぁぁぁぁぁ!!あんなガキ共にぃぃぃぃ!!!」(ケーン&ルークLP 1500→900)
 デミスを倒されたショックからか、ケーンは頭を抱えて絶叫していた……

「な、何言ってやがる!リナちゃんのことをガキだガキだとバカにしたお前の負けだ!ケーン!と、とにかく……『充電池メン』でとどめだ!バッテリークラッシュ!!」
 『充電池メン』のクロスした腕から放たれた雷が、ケーンとルークの残りライフを削り落とした!

「ぐぅあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」(ケーン&ルークLP 900→0)











「どう?あたし達の勝ちだかんね!もうあたしのこと、ガキって呼ばないでよね。」
「おぉい!ちょっと待てよ!テメェ、今のデュエルで、あんまり活躍してねえじゃねえか!雷人がしゃりしゃり出てこなかったら、俺はテメェなんかに負けなかったんだよ!」
 ケーンは、デュエルの結果に納得できず、いちゃもんを付けた。


「テメェなんざしょせん、仲間がいなけりゃあ、何も出来ねえ……」
「いや、それは違うぜ。」
 ケーンの言葉に対し、雷人が反論した。



「な、何だとぉぉ……そんな証拠がどこに……」
「……見せてやれよ、リナちゃん。『天使の施し』で墓地に送った、2枚のカードを。」
「……そんなこと、言われなくてもやってたって。」
 リナは、自分の墓地に置かれた、『魔導学園(マジカル・アカデミー)』と、『魔導集会(マジカル・チャット)』をケーンとルークに見せ付けた。


魔導集会(マジカル・チャット)
永続魔法
自分フィールド上にモンスターが存在しないとき、手札から、レベル2以下の
魔法使い族モンスター1体を特殊召喚できる。
自分がレベル2以下の魔法使い族モンスターの召喚に成功したとき、
デッキから、レベル2の魔法使い族モンスター1枚を手札に加えることができる。
(召喚したモンスターと同名カードは除く。)
自分フィールド・墓地にレベル2以下の魔法使い族以外のモンスター存在するとき、
このカードを破壊する。

魔導学園(マジカル・アカデミー)
フィールド魔法
レベル2以下の魔法使い族モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚に成功したとき、
このカードにマジカルカウンターを1つ乗せる。
自分フィールド上のレベル2以下の魔法使い族モンスターの攻撃力は、
このカードに乗っているマジカルカウンターの数×100ポイントアップする。
このカードのコントローラーは、「フィールド上のカードを破壊する効果」を持つ
魔法・罠・効果モンスターの効果が発動した時、
このカードに乗っているマジカルカウンターを2つ取り除くことででその発動を無効にし破壊する。
自分フィールド・墓地にレベル2以下の魔法使い族以外のモンスターが存在するとき、
このカードを破壊する。


「な……何だぁ?このカードは?」
「なんて贅沢なフィールド魔法なんだ……」
 ケーンとルークは、リナが見せた『魔導集会(マジカル・チャット)』と『魔導学園(マジカル・アカデミー)』の効果の長さと強力さに、舌を巻いていた。

「そっ。確かに、あたしの使う魔法使い達は、一人じゃ大したこと無いって言われるんだけどね……みんなで力を合わせれば、どんな困難にも打ち勝っていけるんだから。」
 リナは、ケーンとルークに、自分のデッキコンセプトを説明した。



「なるほどな……協力しあう力ってやつか……それを念頭に置いていたから、雷人との即決タッグでも、戦えていけたんだな。」
「普通、即決タッグなんざ、お互いに遠慮しちまって、全力なんて出せるわけねえぜ……次やる時は、絶対テメェらなんざぶっ倒してやるぜ!」
「そうだなあ。もっと俺達のタッグデュエルの腕も、研かねえとな。……じゃあな!」
 ルークとケーンは、そう言うと、歩き去っていった……











「……それにしても、リナちゃん。今回のデュエルでは、ピケルやクランを強化していく『魔導法具(マジカルキット)』を使ってなかったよな。何でだ?」
「え……べ、別に、雷人には関係ないでしょ!……まあ、一つ言えるのは……仲間の大切さに、気付いたから……かな。」
 リナは、口ごもりながら話した。まるで、何かを隠しているみたいに。


「ん?何だって?」
「ほ、本当に大したことじゃないから〜!そ、それより、雷人、タッグ組んでくれてありがとね!」
 リナは、雷人の両肩を軽くたたいて、雷人がひるんだうちに走り去っていった……










「……一体どうしたんだろうな……リナちゃん……」
 雷人は、走り去ってしまったリナのことを、茫然と考えていた……

「おーい、リナー。一体どこにいるんスかー。……おっ、雷人。この辺でリナ見なかったッスか?」
 考え込んでいる雷人に、リナを探しているカムイが話し掛けた。

「ん?カムイか。一体何の用だ?」
「いや、この辺りで、リナを見かけなかったッスか?何か、最近元気が無い見たいッスから……」
「……いや、見てないな。」
 雷人は、少し黙ってから、わざとそう答えた……

「……それより、カムイ。あと少しで、スーパージェネックスの開催だな。そこで俺とお前、どちらが強いか、はっきりさせようぜ!」
「ああ!楽しみにしてるッスよ!……おっと。それより、早くリナを探して、元気付けてやらないと……(ミカに『何でリナちゃんを元気づけたらんのや!』とか言われそうッスからね……)」
 そう思いながら、カムイは歩き去っていった……











「(カムイ……リナちゃんを元気づけようとするとは……やっぱりあいつ自身も、リナちゃんのことが好きなんだな……だが……見てな、カムイ。リナちゃんを、絶対俺に振り向かせてやるぜ……)」
 雷人は、カムイに勝とうという気持ちを、より一層強くしていた……
大会まで……あと11日



第十四話 決戦前夜だよ!全員集合!!(前編)

――大会を前日に控えたカムイは、自分の部屋で、ジュンとDCT(デュエリストコミュニケーションツール)で色々話し合っていた――


「いやー、大会限定パックには、色々と面白そうなカードが入っていたッスねー。ジュンは何かいいカード手に入ったッスか?」
『ああ……。いいと思った札は、『六武衆の師範』だな。しかし……何故かそれが三枚も入っていたんだが……普通は無いだろ?そのようなことは。』
「んー、確かに……そうッスよね。オレも、入っていたカードは、ほとんど融合サポートだったッスからね。……大会前に、これでデッキを強化しろってことなんスかね?」
『そうだな……。狙いすぎな感じがするからな。』

コンコン。

「あっ、誰か来たみたいッスね。いったん切るッスよ。」
『わかった。じゃあ、またな。』
ピッ。

 誰かがドアをノックしたので、カムイはジュンとの会話を止め、部屋のドアを開けた。

カチャッ。


 ドアを開けると、そこには、カッターシャツを着た青年……コウジがいた。

「おっ、コウジ。一体どうしたんスか?」
「実はさ、ちょっとカムイに報告しておきたいことがあってね。」
「ん?どんなことッスか?」
「前に、僕のアニキは、ジャーナリストだってこと話したよな。……で、本校との交流試合の日に、アニキに、ここに来てもらうように頼んだんだよ!」
「え?確か、その人って、オレと同じE・HERO使いって言ってたッスよね!その人とデュエルできるんスか!?」
 コウジの言葉に、カムイは目を輝かせているみたいだ。

「んー、どうだろうな……。その交流試合が、いい記事になりそうだから呼んでみたんだけど……まあ、一応言っとくよ。たぶん、アニキにはカムイと、3年前にあったあるヒーロー使いがダブって見えるかもしれないからね。」
「……誰なんスか?そのヒーロー使いって……」
「……遊城十代だよ。」
「え!?あ、あの!?」
 カムイは、自分の憧れである遊城十代と自分がダブって見えると言われたことに、驚きながらも光栄に感じていた。

「さ、3年前って、確か遊城十代さんが1年生の時だったんスよね!」
「ああ、そうだよ。……実はさ、その時のデュエルアカデミア本校は、特待生が行方不明になっていたって影の噂があってね。で、アニキは、そのことを調査するために、本校に潜り込んだ……って言ってたんだよ。」
 コウジは、照れ臭そうに頭を掻きながら答えた。

「え!?そんな噂があったんスか!?……何か、本校との交流試合、不安に思ってきたッスね……。」
 カムイの表情が、少し引きつった。

「ま、まあ、そんな心配することないよ。……多分。」
 コウジは、カムイの心配を和らげようと軽く声をかけたが、コウジ自身も、少し不安に思っていた……



――そのころ、デュエルアカデミア本校・校長室では――


「ほう……これが決勝トーナメントに参加する16人ですか。鮫島校長、クロノス先輩。」
と言いながらフェイトは、鮫島校長が持っていた参加者の名簿を取り上げた。

「フェ、フェイト教諭!」
「い、いつのまに入ってきたノーネ!?」
 突然すぎるこの行為に、鮫島校長もクロノスも、腰を抜かしていた。

「ふっ……あなた方が名簿にあまりに夢中になっていたからですよ。」
 フェイトは、2人を見下すように言った。

「しかし……一つ、言えることがあります。現在のこの学校の大部分の生徒達は、デュエルの腕が下落している……。実技最高責任者としての意見はありますか?クロノス先輩。」
「そ、そんなこと無いノーネ!この学校にも、恐竜族使いのシニョール剣山ーや、ホルスの黒炎龍使いのシニョール空野らーを始めとした、強力なデュエリストーガいるノーネ!」
 クロノスは、フェイトの手痛い指摘に対して、強がってみせたが……

「ふっ……何を強がっておられるのですか、クロノス先輩。彼らには、勝負に対する熱意が全く感じられない。そんな彼らを、強いと言ってしまわれるとは……」
 フェイトは、クロノスの言葉に呆れたようだった。

「ななっ!そ、そんなこと言ったら、シニョーラ早乙女だって……ヒャァッ!!」
 フェイトは、そう言ったクロノスの肩を静かにつかみ……冷淡な眼差しで睨み付けた……
すると、クロノスはとんでもない悪寒を感じたのか、ガクガクと小刻みに震え始めた……

「……ほう、あなたは、レイを愚弄すると……」
「ヒ……ヒ……」
 フェイトに肩をつかまれ、睨まれたクロノスは、あまりの恐怖で全身の血の気が引いたような感覚に襲われ、崩れ落ちるようにへたれ込んでしまった……

「ク、クロノス教頭!大丈夫ですか!?」
 へたれ込んだクロノスに鮫島校長が駆け寄り、立たせようと体を支えた……

「あ、あいつ……ちょ、超コワイノーネ……」
「クロノス教頭!気を確かに!す、すぐ保健室に連れていきますからね!」
 震えが止まらず、顔が汗びっしょりになっているクロノスを落ち着かせようと、鮫島校長は、クロノスに肩を貸し、一緒に保健室へと歩いていった……


「……下種が……しょせんその程度か……」
 フェイトは、へたれこんだクロノスを見下すような発言をした……

「さて……我が先日星海校に送り出した奴らは、そろそろ着いた頃か……」
 誰もいなくなった校長室で、フェイトはほくそ笑んでいた……



――そのころ、デュエルアカデミア星海校周辺の海域に、3人が乗った一つの小さなイカダが浮かんでいた――


「おーい、クロートー。まだ星海校に着かねえのか?」
 画体のいい金髪の青年が、イカダを漕ぎながら、細身で青髪の、眼鏡をかけた青年に話し掛けた。

「まっ、もうすぐ着くでしょう、アトロポス。フェイト様も、今日までには星海校に行けると言っていたのですから。」
 クロートーと呼ばれた青年は、眼鏡を上げながら言った。
言葉使いは、少々女性拠りだったが……

「しっかしなあ。イカダで星海校に忍び込めなんて、フェイト様も無茶な指令出……」
「黙れ、アトロポス。」
 アトロポスが無駄口をたたいているのを、一人の少女が注意した。その少女は、赤髪で、黒色のドレスとブーツを身につけていた。
しかし、少女の髪は、右側の一部が、不自然に黒くなっていた……。

「……おい、ラケシス。会話止まっちまったじゃないか。」
「関係ない。口より手を動かせ。」
 ラケシスは、ほとんど声のトーンを変えずに話した。


「……ラケシス。そろそろ私とイカダを漕ぐのを交替してもらいたいのですが……」
 少し続いた沈黙を、クロートーが破ったが……
「なぜ妾がそんなことする必要がある。」
……即、沈黙に戻った。


「(なあ……クロートー。ラケシスの奴、いつからあんな冷たくなっちまったんだ?)」
「(さあ……いつからでしょうね……)」
 アトロポスとクロートーは、ラケシスに気付かれないように小さな声で会話していたが……

「何をこそこそ話している。妾が無感情とでも言いたいのか。」
「べ、別にそんなこと話してねえよ!」
「……」

 ラケシスは、アトロポスの反応に少々うんざりしたのか、
「……勝手にしろ。」
 この一言だけを言い放った。



――そのころ、星海校にて、リナは、ミカと一緒に自分の部屋で特別パックの中身について話していた――


「ふ〜ん、これがミカが言ってたおもしろい装備魔法、『ハッピー・マリッジ』か〜。」
「どうや?このカードの効果、うちの霊使い達と相性抜群やろ?」
 リナとミカは、低いテーブルに向かい合いながら、ミカの『ハッピー・マリッジ』を見ていた。


ハッピー・マリッジ
装備魔法
相手のモンスターが自分フィールド上に表側表示で存在する場合に発動する事ができる。装備モンスターの攻撃力は、そのモンスターの攻撃力分アップする。


「……でな、お嬢ちゃん。このカードには、特別な演出があるんや。見てみるか?」
「うん!見せて見せて〜!」
 ミカの言葉に、リナははしゃぎだした。

「ほらほら、そんな急かさんでも、すぐ見せたるって。(えーと、この娘でいいかな……)」
 ミカは、デュエルディスクのスイッチをオンにしてから、自分のデッキから『地霊使いアウス』を取り出して、デュエルディスクに置き、アウスのソリッドビジョンを展開した。

「……で、『ハッピー・マリッジ』を、『地霊使いアウス』に装備させるわ。」
 そう言いながら、ミカは、テーブルの上に置いてあった『ハッピー・マリッジ』を、デュエルディスクに差し込んだ。
……すると、アウスの服装が、シルクのヴェールをかぶり、ウエディングドレスを着、ブーケを持っているという、まるで結婚式に出るかのような衣裳に姿を変えた!


「うわ〜、すっごいなあ〜!あたしも欲しかったな、そのカード。」
 リナは、きれいな衣裳に姿を変えたアウスをうらやましそうに見ていた。

「そっか。……じゃあ、1枚あげたろっか?」
「え?本当にいいの!?」
 ミカのこの言葉に、リナは目を輝かせた。

「ああ、ええで!……って言うか、なぜかうちのパック、5枚全部が『ハッピー・マリッジ』やったんやけどな。」
 ミカは、デュエルディスクのスイッチをオフにし、セットされていた『地霊使いアウス』と『ハッピー・マリッジ』をデッキに戻した。

「ふ〜ん、そんなこともあるんだね。」
「で、うちが3枚、リナちゃんが1枚、んで……あと1枚は、エイジにあげようと思っとるんや。」
「へ〜、エイジにあげるんだ。……あ。そういえば、エイジって、エーリアン使いだったっけ……」
「そうや。エイジのデッキも、『ハッピー・マリッジ』との相性抜群やろ?」
「そ、そりゃそうだけどね……エーリアンがウエディングドレスを着る姿なんて、想像したくないよ〜!!」
 リナは、少し気分が悪くなったのか、テーブルにひじを付き、頭を抱えていた。

「ま、まあ、大丈夫やろ。あの演出があるのは、たぶん、女の子カードだけやからさ。うちも、『炎を操る者』に装備させたんやけど、何にも見た目の変化は起きんかったで。」
「そうなんだ。じゃ、安心だね。」
 ミカの言葉によって、リナに笑顔が戻った。

「……あっ、そういえば、リナちゃんはどんなカードが当たったんや?」
「へへっ、内緒だよ〜。」
 リナは、悪戯っぽく舌を出しながら言った。

「……へー。お嬢ちゃん。『ハッピー・マリッジ』、いらへんのやな。」
「うっ……」
 痛いところを突かれたのか、リナは言葉がつまった。

「まっ、いいんやで。別に話さんでも。『ハッピー・マリッジ』、もともと2枚エイジにあげようと思っとったし。」
 ミカは、『ハッピー・マリッジ』のカードを、人差し指と中指で挟みながら言った。

「うう〜、な、何か……弱み握られちゃったみたいだね……。わかったよ〜。ちゃんと話すから〜!」
「ははっ、うちの勝ちやな、お嬢ちゃん。」
 ミカは、リナの肩を軽く叩きながら言った。


――日が沈んだころ、カムイとセンリは、カムイの部屋で一緒にデッキ構築をしていた――


「いやー、センリ。特別パックには、『アナザー・フュージョン』や『スピリット・フュージョン』と言った、おもしろい融合サポートがあったから、デッキ作りがおもしろくなるッスねー!」
「そうだな!まあ、俺は『馬頭鬼』とか『酒呑童子』って言った、日本風のアンデット族が入ってたぜ。……ジュンはこう言うの好きそうだよな。」
「俺を呼んだか?」
「ん……何だ、ジュンか。」
 センリは、始めはジュンがいたことに何の違和感も感じなかったが……
「……って、ちょっと待て、ジュン!いったいどこから入ってきたんだ!?」
 この部屋にはカムイと自分しかいなかったと言うことを思い出して、センリは驚いた。

「はっはっは!言った通りやろ?ここから入れば、絶対あいつら驚くってな!」
「エ、エイジも!どうやってここに!?」
「はっはっは!聞いて驚くな!わいらは……この部屋のベランダから入ってきたんや!」
「ベ、ベランダから!?」
 カムイは、自分の部屋のベランダをあわてて見に行った。
そこには、ジュンの草履とエイジのスニーカーが、丁寧に並べられていた。

「た、確かに、窓は開けっ放しだったから、ベランダに上がりさえすれば簡単に入れるんスが……ここ3階ッスよ!いったいどうやってベランダに上がってきたんスか!?」
「何言っとんのや!ベランダのすぐ近くにでかい木があるやろ?それをよじ登っていったんや!」
 エイジは、笑いながら言った。

「ま、まあ、いいやろ。ちょっとした遊び心や。それに、無人の部屋に忍び込んだわけやないんやし。」
「確かに……こんな方法で無人の部屋に忍び込んだら、大問題ッスね……。もしバレたら、ひどい目に合うッスよね。」
「まあ俺だったら、純粋な可愛い娘なら、許しちまうかもしれねえけどな。」
「おいおい、センリ……」


『くしゅん!』
「どうしたんだい、レイ。風邪かい?」
『う、うん……。そうかもね。』

――所変わって、ここは、ネコ耳帽子をかぶった少年・ナオの部屋……
ナオは、ベッドに寝転がりながら、レイと携帯で話していた……

「大丈夫かい?暑くても、寝冷えするかもしれないから、ちゃんと布団に入って寝なきゃダメだよ。」
『だ、大丈夫よ、お兄ちゃん。自分の体調管理くらい、自分でできるから。』
 レイは、少し焦ったような口調で言った。

「そうか。……で、話を戻すけど……レイ。何でボクに『恋する乙女』デッキの改造法を聞くんだい?」
『え?ま、まあ……お兄ちゃんにボクのデッキに対する意見を言ってほしいから……かな。』
 ナオは、ベッドにうつぶせになり、足をパタパタさせながら、レイのデッキのカードの効果を確認していた……


恋する乙女
光 レベル2
【魔法使い族・効果】
このカードはフィールド上に表側攻撃表示で存在する限り、戦闘によっては破壊されない。このカードを攻撃したモンスターに乙女カウンターを1個乗せる。
攻撃力400 守備力300

キューピット・キス
装備魔法
乙女カウンターが乗っているモンスターを装備モンスターが攻撃し、装備モンスターのコントローラーが戦闘ダメージを受けた場合、ダメージステップ終了時に戦闘ダメージを与えたモンスターのコントロールを得る。


「……なるほどね。『恋する乙女』で相手モンスターを洗脳するには、まず攻撃されることで相手に『乙女カウンター』を一つ乗せて……その後、『キューピット・キス』を装備させてその相手に攻撃し、自分がダメージを負う必要があるのか。……ずいぶん手間が掛かるね。」
『……当たり前よ。恋ってのは、時間をかけて進展させていくものなんだから。』
「まっ、そうだよね。(……じゃあ、『スピリットバリア』は使えないな……)……『和睦の使者』のように、『戦闘を行うけど、ダメージは無効にする。』系統のカードをもっと増やしたほうがいいんじゃないかな?他に、『キューピット・キス』をサーチするための『アームズ・ホール』とか……」
『ちょ、ちょっと待って。言いにくいんだけど……』
「何だい?」
『……『アームズ・ホール』って……何?』
「……」
 レイのこの言葉に、ナオは少々呆れてしまった……

「……まあ、持ってないなら無理に入れなくていいよ。『アームズ・ホール』は、とんでもなく高価なカードだからね。」
『……そうなんだ。』
「……そうだ。『恋する乙女』を使った強力な戦法があるんだけど、聞くかい?」
『え!?ど、どんな戦法なの!?』
 ナオの考えた戦法を聞き出そうと、レイは必死だった。

「……わかった。言うよ。まず『強制転移』で相手の場に『恋する乙女』を攻撃表示で送り込む。そして、送り付けた『恋する乙女』を、攻撃しまくるんだ。『マシュマロン』とかと違って、守備表示になったら普通に戦闘破壊できるからね。」
『ちょ、ちょっと!お兄ちゃん!それ、本気で言ってるの!?』
 ナオが言った戦法に、レイは面食らったような表情をした。

『そ…そんな……自分のモンスターを何度も何度も攻撃するなんて……ひどすぎるよ……』
 レイは、声を震わせ、ベッドに顔をうずめてしまった……


「……やっぱりね。そう言うと思ったよ……」
『え……』
 ナオのその言葉に、レイは呆気にとられたみたいだった……

「さっきの言葉は、レイの気持ちを確かめるためのテストだよ。自分のデッキのモンスターをどれだけ大切に思っているのか……ね。」
『テ、テスト?全然分からなかった……』
「だから泣くなよ。レイ。自分のカードを大切にする思い……それさえあれば、デッキはきっと答えてくれるんだからさ。」
『う…うん……。ありがとう、お兄ちゃん。』
 レイは、目からあふれそうな涙を拭い、ナオにお礼を言った……




――午後10時過ぎ、カムイの部屋では、センリ、ジュン、エイジが帰り支度をしていた――

「さて……俺の六武衆の山札は、なかなか強力に仕上げることができたな。センリ。お前の妖怪系の札も、少し期待しているからな。」
「ああ、わいのエーリアンデッキも、だいぶいい感じになったで!それに、カムイのデッキもなかなか強力になったみたいやしな!じゃ、明日の大会、お互いがんばろうな!」
と言いながら、ジュンとエイジは、玄関に歩いていった……

「あっ、そういえば、ジュン、エイジ。靴、ベランダに置きっぱなしじゃ……」
「そ、そうだったな……」
「すっかり忘れとったわ。ありがとな、カムイ。」
 ジュンとエイジは、ベランダの靴を玄関に持っていき……

「……じゃあ、今度こそ、じゃあな。」
「また明日合おうな。」
手を振って、さよならの挨拶をした。


「……本当あいつら、窓から入ってくるとは、予想外だったな。じゃあ、俺もそろそろ帰るか。」
「ああ、明日の大会、勝ち上がれるといいッスね!」
「そうだな!じゃあ、またな!」
と言いながら、センリはカムイの部屋から出ていった……

と、次の瞬間!

「お、おい、カムイ!ポストの中に、何か入ってるぞ!」
「え!?いったい、何なんスか!?」
 カムイは、急いで部屋を出て、ポストの中に入っていた手紙を確認した……

「えーと……『話したいことがあります。デュエルディスクを持って、地図に印された場所に来て下さい。』……って書いてあるッスね。差出人は……不明ッスが……」
「へえ。面白そうじゃねえか。行ってみようぜ!」
「あ、ああ……わかったッス。」


いったい、この手紙の差出人は、誰なのか!?
大会まで……あと1日



第十五話 決戦前夜だよ!全員集合!(後編)

カムイとセンリは、カムイの部屋のポストに入っていた手紙に書かれていた場所に行った……

「えーと、確かここで良かったッスよね。」
「ああ、そうみたいだな。」

地図に印された場所に着いたカムイは、あたりを見渡したが……

「誰もいないみたいッスね……」
「そうか?ちゃんといるじゃねえか。」
「え!?どこにいるんスか!?」
 カムイは、再度周りを見渡したが誰も見つけることができなかった……


「……いったい誰なんスかね……この手紙を書いたのは……」
「……俺だよ。」
「ええっ!?」

ガサッ……

ある一つの茂みから、何か妙な音がした……

「な、何だ?今の音は!?」
「さあ……分からないッスね。……でも何でわざわざここに呼んだんスか?」
 カムイは、不思議そうに尋ねた。

「おいおい、覚えてねえのか?ここは、俺とお前が初めてデュエルした所じゃねえか。」
「……ああ!言われてみれば、そうだったッスよね!」
 カムイの表情は、疑問を持っている感じから、なるほどと言った感じに変わった。

「いやー、あの時は、このデュエルアカデミア星海校に入りたてだったッスよねー!」
「そうだったよな!そんな時、お前が俺をここに呼んで、デュエルしたんだよな!」
 カムイとセンリは、お互いに出会った時の思い出を語り合っていた……











――その時、茂みの中で――
「うう〜、二人とも、あんなに楽しそうに話してるよ〜!」
「ははっ、ええやないか、リナちゃん。別にカムイは、女の子に呼ばれた訳やないんやし。」
 リナとミカは、カムイ達にばれないように小声で話していた……

「しっかしなあ、お嬢ちゃん。もしカムイが女の子と話しとったら、こんなんでどついとったんか?」
と言いながらミカは、リナが持っていたはりせんを取り上げた。

「そうだよ。……だって、何か悔しいじゃん。あたしより先に、カムイと合おうとした奴がいるなんてさ。」
 リナは、カムイの部屋のポストに入っていた手紙を見たときのことを話し始めた……











「ん〜と、カムイの部屋って、いったいどこなんだろ。この手紙、早く送りたいのにな〜。」
 リナは、手紙を大切そうに持ちながら、部屋の近くに付いているポストに書かれた名前を一つ一つ確認しながら、カムイの部屋を探していた……

「……あっ!カムイの部屋、見〜つけた!これでやっと、カムイを呼び出すメッセージを送れるね!」
 リナは、自分の持っていた手紙を、カムイの部屋のポストに入れようとしたが……

「ん……何だろ、これ……」
 既に手紙が一枚入っていることに気付き、それを手に取った瞬間、リナの顔が強ばった。

「な……こ、これって…まさか……ラ、ラブレター!?」
 手紙を持っていたリナの手がわなわなと震え、今にもその手紙を八つ裂きにしそうだったが……

「……こんな手紙、いったい誰がカムイに送ったの……先回りして、ケチョンケチョンにしてやるんだから!」
 リナは、その手紙を乱暴にポストに戻し、その手紙に印された場所に走っていった……











「……なるほどな。でもな、リナちゃん。いくら悔しくても、暴力なんかしちゃあかんで。」
「うん……そうだよね……。」
 リナの表情が、少し暗くなった……普段のリナからは、考えられないほどに。

「……おっ。リナちゃん。カムイとセンリ、デュエルディスクを構えたで。」
「……え?」
 リナは、ミカの言葉に興味津々と言った様子の表情に変わった。











「センリ……そういえば、真剣勝負をするのは、あの時以来だったッスよね!」
「そうだな!明日の大会では、生き残りをかけた勝負が行われる……それまでに、お前と本気のデュエルがしたかったんだぜ!カムイ!」
「ああ!俺も、センリとの本気のデュエル、楽しみにしてたんスよ!」
 カムイとセンリは、お互いに相手のデッキを念入りにシャッフルし、今から始めるデュエルに備えていた……


「よし……いくぜ!カムイ!」
「おお!センリ!」
 2人は、デッキを相手に返し、デュエルディスクのデッキゾーンにセットした!








「「デュエル!」」


先攻は、センリだった。

「俺のターン、ドロー!」
自分の手札を確認したセンリは……

「一気に行くぜ!手札から、魔法カード、『融合』を発動!『龍骨鬼』、『ゾンビ・マスター』、『馬頭鬼』を融合し……『屍魔獣 ネクロ・キメラ』を融合召喚だ!」
 センリのフィールド上に、虹色の煙が渦巻く、不思議な空間が現われ……渦の中心に、1つの黒い不気味な球体が現われた!

「素材となったアンデット達を吸収しろ!『ネクロ・キメラ』!」
 センリがそう言うと、墓地から3体のアンデットの体が、まるで渦潮に飲み込まれるように、黒い球体――コアに収束していった!
すると、渦の中心でアンデット達の体が交じり合い……一体の巨大な魔物へと姿を変えた!
その容姿は、『馬頭鬼』の体に、『龍骨鬼』の体の骸骨で精製された鎧と、『ゾンビ・マスター』が身につけていた白面とボロボロなマントを装着されたと言った感じだった……。


屍魔獣 ネクロ・キメラ
闇 レベル10
【アンデット族・融合・効果】
アンデット族モンスター×3
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このモンスターの特殊召喚に成功したとき、
このターン内に墓地に送られたアンデット族モンスターをすべてこのカードに装備する。
このモンスターの攻撃力は、装備されたモンスターの攻撃力の合計分アップする。
このカードが破壊される時、代わりに装備したモンスターを破壊する。
攻撃力0 守備力0


「いきなり来たッスね……。センリの切り札『ネクロ・キメラ』が!」
 カムイは、『ネクロ・キメラ』から発せられる威圧感に少したじろいていた……

「『龍骨鬼』、『馬頭鬼』、『ゾンビ・マスター』の攻撃力の合計は、2400+1700+1800で、5900だ!よって、『ネクロ・キメラ』の攻撃力は、5900になったぜ!」
 『ネクロ・キメラ』は、元は『馬頭鬼』が持っていた巨大な斧を軽がると振り回し、雄猛びをあげた。まるで、自らの強さを誇示するかのように。

屍魔獣 ネクロ・キメラ 攻撃力 0→5900

「い、1ターン目から攻撃力5900……なかなかやるッスね!」
「どうだ!ターンエンドだ!」
「くっ、オレのターン、ドロー!」
 カムイは、自分の手札を確認すると、笑みがこぼれた。

「センリがオレに初めて見せてくれた融合モンスターで来るなら……オレも初めて見せた融合モンスターで対抗する必要があるッスね!」
 そう言いながらカムイは、自分の手札から3枚のカードを選び、その3枚を右手に移し変えた!

「ん!?……まさか、入学試験の時に出した、あのヒーローか!?」
 センリは、カムイの出すカードに、見当がついていた……
圧倒的な攻撃力を持つ『ネクロ・キメラ』……それを打ち破るのは、あのカードならば可能だ……と思っていたからだ。

「いくッスよー!手札から、魔法カード、『融合』を発動ッス!手札の『バーストレディ』と『ワイルドマン』を融合し……」
 カムイは、右手に移しておいた内の1枚――『融合』をデュエルディスクの魔法・罠ゾーンに差し込み、残った2枚――『バーストレディ』と『ワイルドマン』を、墓地に置いた!
すると、炎を操るヒーローと野性の力を持ったヒーローが、虹色の煙の渦巻きのような空間で交じり合い……1人の新たなヒーローへと姿を変えた!


「いくッスよー!オレの呼ぶヒーローの名前は――」









「「――『E・HERO ファイヤー・ダンサー』!!」」
 カムイとセンリは、同時に1人のヒーローの名前を口に出した……
 そのヒーローは、火の点いたたいまつを両手に持ち、南国風の衣裳を身につけた、ダンサー……と言った感じだ。

「……やっぱり覚えていたんスね!センリ!オレが呼ぼうとしていたヒーロー……『ファイヤー・ダンサー』の名前を!」
「ああ!当然だぜ!」
 カムイは、センリが自分のヒーローの名前を覚えていてくれたことを、うれしく思っていた……。

「……さらに手札から、魔法カード、『R―ライトジャスティス』を発動するッス!オレの場の『E・HERO』は『ファイヤー・ダンサー』1体だから、『ネクロ・キメラ』に装備された『龍骨鬼』を破壊するッスよ!」
 『ファイヤー・ダンサー』は、自分の首に掛けられていた、両端に2つの油が入ったひょうたんが付いたロープを右手で持ち、ひょうたんに、持っていたたいまつで火を点けた!
 そして、そのひょうたんが両端についたロープを勢い良く振り回し……

「食らえ!バーニング・スマッシャー!」
 カムイの言葉に反応し、『ファイヤー・ダンサー』は、そのロープを、遠心力を活かしながら全力で『ネクロ・キメラ』の骸骨の鎧に投げ付けた!
 すると、火の点いたひょうたんが『ネクロ・キメラ』の骸骨の鎧にぶつかって弾け飛び……その鎧を、一瞬で炎に包みこんだ!
 その炎が消えたときには、『ネクロ・キメラ』の骸骨の鎧は、すっかり燃え尽きてしまった……。

「くっ、『ネクロ・キメラ』の鎧が焼き尽くされちまって、攻撃力が3500にまで下がっちまったか!なかなかすごいパフォーマンスだったな、カムイ!」
「ああ!これが『ファイヤー・ダンサー』流の、ライトジャスティスなんスよ!さらにオレは、『フレンドッグ』を攻撃表示で召喚するッス!」
 カムイの場に、機械でできた犬が現われた。

「よっしゃー!まずは『ファイヤー・ダンサー』で、『ネクロ・キメラ』に攻撃するッス!ヒート・オブ・ダンス!」
 『ファイヤー・ダンサー』は、持っていたたいまつを振り回しながら、『ネクロ・キメラ』に突撃した!











「え〜〜、攻撃力2000で攻撃力3500に攻撃しちゃうの〜?あれじゃあ勝負になんないよ〜〜。」
「いや、それは違うよ。『ファイヤー・ダンサー』には、特殊能力があるんだ。」
「え……」
 リナが、声のした方を見ると、コウジがDCT(デュエリストコミュニケーションツール)を触りながら立っていた。

「おっ、コウジやんか。いったいどうしたんや?」
 ミカは、突然現われたコウジに、少し驚いていた。

「実はさ、カムイ達が何かおもしろそうなことをやってるのを見かけたからね。……興味本意でここに来たんだよ。」
「ふ〜ん、そうなんだ。……で、コウジ……だったっけ。今カムイの場にいるヒーローには、どんな効果があるの?」
「ああ、『ファイヤ・ーダンサー』の効果かい?あのカードが攻撃するとき、攻撃対象となるモンスターの表示形式を変更させることができるんだよ。」


E・HERO ファイヤー・ダンサー
炎 レベル8
【戦士属・融合・効果】
「E・HERO バーストレディ」+「E・HERO ワイルドマン」
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードの攻撃宣言時、攻撃対象となるモンスターの表示形式を変更する事ができる。
攻撃力2000 守備力2200


「ふ〜ん、つまり、『ネクロ・キメラ』の守備力は0だから、簡単に破壊できるってわけ?」
「そう言うことだね。……まあ、『ネクロ・キメラ』にもやっかいな特殊能力があるから、まだ完全には破壊できないけどね。」
 コウジは、リナに、カムイとセンリの場にいるモンスターの効果について教えていた。











「……センリ!『ファイヤー・ダンサー』の効果、分かってるッスよね!」
「ああ!バトルを行う相手の表示形式を変更するんだろ?」
「分かってるなら、話は早いッスね!行け!『ファイヤー・ダンサー』!『ネクロ・キメラ』のパーツを破壊するッス!」
 カムイがそう言うと、『ファイヤー・ダンサー』は、素早い足払いを放ち、『ネクロ・キメラ』をすっ転ばした!
その一瞬の隙を突き、『ファイヤー・ダンサー』は、持っていたたいまつで『ネクロ・キメラ』を殴り付け、炎で包み込んだ!

「くっ、『ネクロ・キメラ』の効果発動!このカードが破壊されるとき、装備されたアンデット族を代わりに破壊する!この効果で、『馬頭鬼』を代わりに破壊するぜ!」
 『ネクロ・キメラ』の体を覆っていた『馬頭鬼』の体が燃え上がったことにより、『ネクロ・キメラ』のコアは、『ゾンビ・マスター』の肉体を新たなパーツとし、『馬頭鬼』の皮をはぎ取って這い出てきた!











「な…何か今、すっごく不気味な光景を見ちゃったような気が……。」
 リナは、『ネクロ・キメラ』が、破壊を免れるために自分の皮をはぎ取った光景を見たことにより、少し青ざめていた……

「なるほど。今回の『ネクロ・キメラ』の体は、まず『ゾンビ・マスター』の体に取り付き、その上から『馬頭鬼』の皮を着て、さらにその上から、『龍骨鬼』の体でできた鎧を身につけていたのか。なかなか面白いな。」
コウジは、『ネクロ・キメラ』の構造に興味があるのか、分析していた。











「よっしゃー!『ネクロ・キメラ』の守備力は0!『フレンドッグ』で最後のパーツを破壊するッスよー!フレンドリー・バイト!」
 『フレンドッグ』は、今だに態勢を建て直せない『ネクロ・キメラ』の体に噛み付き、吸収していた『ゾンビ・マスター』の体はボロボロと剥がれ落ちてしまった!

「くっ……これで『ネクロ・キメラ』の攻撃力はたったの0になっちまったか……」
 センリは、全てのパーツを失い、コアがむき出しになっている『ネクロ・キメラ』を残念そうに見ていた。

「……だが、カムイ!このターンだけで手札を5枚も使っちまったな!これでデュエルの主導権は、俺に移るぜ!」
「ああ……確かに、今の手札はたったの1枚なんスが……この1枚で、手札不足は解決するんスよ!手札から永続魔法、『悪夢の蜃気楼』を発動ッス!」
「!!そのカードか!」
 カムイの周りに、不思議な霧が発生し始めた!


悪夢の蜃気楼
永続魔法
相手のスタンバイフェイズ時に、
自分の手札が4枚になるようにカードをドローする。
自分のスタンバイフェイズ時に、
その効果でドローした枚数分だけカードを手札からランダムに捨てる


「なるほど……手札を0枚にすれば、俺のスタンバイフェイズ時に、『悪夢の蜃気楼』の効果で、手札を4枚もドローできるな。だが、それによって発生する手札は、何も対策を施さなければ、ただの幻だ!幻の手札を現実にするためのキーカード……ドローできるのか!?」
「いや……ドローできるかどうかなんて、そんなことは分からないッス!」
「!?」
 カムイの言葉に、センリは少し驚いたが……

「でも……分からないからこそ、デュエルは面白いんスよ!」
 カムイは、自分の前方で右手を大きく左から右へ振りかざしながら、自分の心の内を語った。

すると、センリは……
「……そうだよな、カムイ。」
 なるほどと言った感じに、笑みを浮かべながら言った。


「(カムイ…やっぱりお前は、デュエルを本気で楽しんでいるんだな……。次にドローできるカードは、相手はともかく、自分も知ることができない……。そんな『未来』の見えない戦い……だからデュエルは面白いんだよな!カムイ!!)」
 センリは、カムイとのデュエルの楽しさを噛み締めていた。

「……俺はこのデュエル、楽しいぜ!カムイ!」
「オレもッスよ!センリ!ターンエンド!」
 カムイは、自分の残り手札を全て使いきり、ターンを終了した。


現在の状況
センリ LP…4000
   手札…2枚
    場…屍魔獣 ネクロ・キメラ(攻撃力0・守備表示)

カムイ LP…4000
   手札…0枚
    場…E・HERO ファイヤー・ダンサー(攻撃表示)
      フレンドッグ(攻撃表示)
      悪夢の蜃気楼(表側表示)











「すごいなあ、カムイもセンリも。まだ1ターン目なのに、一気に勝負が動いたように見えちゃったよ。」
「そうやなあ、リナちゃん。でもな、このデュエル、まだまだ動きそうやで。」
 リナとミカは、カムイとセンリのデュエルを、ただ茫然と見ていた。

「……でも、2人とも。こんな熱いデュエル、僕達だけで見るのは、もったいないだろ?……ジュン、エイジ。遅かったじゃないか。」
「え!?」
「何やて!?」
 リナとミカは、コウジが突然言った予想外の言葉に、驚いていた。


「なるほど。コウジの言った通りだな。カムイとセンリが、熱い決闘を繰り広げているとな。」
「あいつら、なかなかやるやないか。カムイの手札は0枚……やけど、場に『悪夢の蜃気楼』があるんやな。」
「それに、戦闘破壊されたら、墓地のE・HEROと『融合』を回収できる『フレンドッグ』がいるみたいだね。次のターン、センリはどう動くか……」
 コウジは、自分が呼んだジュンとエイジがやっと来たことに安心して、楽しそうに会話を始めた。

「あっ、ジュン、エイジ。2人ともコウジと楽しそうに話してるじゃん。あたしも混ぜてよ〜。」
 リナは、いきなり大きな声で話し掛けたが……

「おい、リナ。あまり大きな声で話すな。」
 リナは、大声を出したことをジュンに注意された。

「……何でさ。」
 リナは、不満そうな表情をジュンに向けた。

「見てみろ、リナ。今、カムイとセンリは、お互いの実力を試す、男と男の勝負を行っている。……横槍を入れることは禁物だ。」
「ふ〜ん……そうなんだ。」
 ジュンの言葉に、リナは納得したかのような表情を浮かべた。











「……俺のターン、ドロー!」
 センリがカードをドローすると、カムイの周りに4つのカードの幻が浮かび上がった!

 その間に、自分のドローしたカードを確認したセンリは……
「……俺は、墓地に存在する『馬頭鬼』の効果を発動するぜ!墓地の『馬頭鬼』を除外し、墓地の『龍骨鬼』を復活させるぜ!」
 センリがそう言うと、『馬頭鬼』が墓地から這い出てきて……自分の体に火を点けた!

「な……自分の体を燃やした!?いったい何をする気なんスか!?」
「教えてやるぜ!これが『馬頭鬼』の効果……自分の肉体を犠牲にすることで、墓地のアンデット族を復活させることができるんだぜ!」
 そう言ってる間に、『馬頭鬼』の体は灰になり……その灰を浴びた『龍骨鬼』の死骸は、まるで生気を帯びたように動き始めた!


馬頭鬼
地 レベル4
【アンデット族・効果】
墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、
自分の墓地からアンデット族モンスター1体を特殊召喚する。
攻撃力1700 守備力600

龍骨鬼
闇 レベル6
【アンデット族・効果】
このカードと戦闘を行ったモンスターが戦士族・魔法使い族の場合、
ダメージステップ終了時にそのモンスターを破壊する。
攻撃力2400 守備力2000


「な……墓地から除外するだけで、モンスターを蘇生させる効果を持ってるんスか!?強力なモンスターを手に入れたッスね!」
「どうだ!すごいだろ!さらに俺は、手札から、『ゴブリンゾンビ』を召喚するぜ!」
 センリの場に、黄土色の外骨格を持つゾンビが現われた。

「いくぜ!『龍骨鬼』で、『ファイヤー・ダンサー』に攻撃だ!ヘルボーン・スラッシュ!」
 『龍骨鬼』の巨大な爪によって『ファイヤー・ダンサー』は弾き飛ばされ、消滅した……

「くっ……なかなか強力な一撃ッスね……」(カムイHP 4000→3600)

「まだだ!『ゴブリンゾンビ』で、『フレンドッグ』に攻撃!ゴブリン・スラッシュ!」
 『ゴブリンゾンビ』は、自分が持っていた剣を振るい、『フレンドッグ』を真っ二つにした!

「ぐっ!」(カムイHP 3600→3300)

「『ゴブリンゾンビ』の効果発動だ!カムイのデッキの1番上のカードを墓地に送るぜ!……実際、ほとんど意味無い効果なんだけどな。」
「まあ……そうッスよね。」
 カムイは、デッキの1番上に置かれていた『フェザーマン』を墓地に送った。

「……だが、これで『フレンドッグ』の効果が発動するッスよ!オレの墓地から、『融合』と、『E・HERO フェザーマン』を手札に戻すッスよー!」


フレンドッグ
地 レベル4
【機械族・効果】
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分の墓地から「E・HERO」と名のついたカード1枚と
「融合」魔法カード1枚を手札に加える。
攻撃力800 守備力1200


「何!いつのまに『フェザーマン』が墓地へ!?……そうか!『ゴブリンゾンビ』の効果でか!……やっぱり意味無いよな。デッキのカードをたった1枚墓地に送っても。」
「いや……意味無いどころか、墓地に送られたカード次第では、相手の利益になるッスね……」
「まあ、『ゴブリンゾンビ』は、もう1つの効果が優秀だから使ってるんだかな。」
 カムイとセンリは、『ゴブリンゾンビ』の効果について、話し合っていた。

「……さて、メインフェイズ2に入るぜ!カードを1枚場に伏せ……魔法カード、『悪夢の蜃気楼』を発動するぜ!」
「!!『悪夢の蜃気楼』!?センリも引いてたんスか!?」
 センリの周りにも、カムイと同じように、不思議な霧が発生しはじめた!

「これで俺の手札は0枚……カムイのスタンバイフェイズで、俺はカードを4枚引けるぜ!ターンエンド!」

「オレのターン、ドロー!ドローフェイズ時に、手札から、速攻魔法、『サイクロン』を発動して、『悪夢の蜃気楼』を破壊するッス!」
「何!どっちの『悪夢の蜃気楼』を破壊するんだ!?」
「え……そりゃあ、オレの『悪夢の蜃気楼』を破壊するッスよ。」
 カムイは、センリの反応に少し驚きながら言った。











「ねえねえ、ミカ。なんでカムイは、自分の『悪夢の蜃気楼』を破壊しちゃったの?」
 リナは、ミカの背中をぺしぺし叩きながら言った。
「ああ、あれか?『悪夢の蜃気楼』は、相手のスタンバイフェイズ時に手札が4枚になるまでカードをドローできるんやけど、自分のスタンバイフェイズ時に、その効果で引いた枚数分手札を捨てなあかんのや。」
「え〜、せっかく引いたのに、自分のターンになったら捨てなきゃダメなの〜?相手のターンで手札を増やしても、自分のターンで使えなかったら、意味無いじゃん。」
「ははっ、そう思うやろ?」
 残念そうな表情をしているリナに、ミカは軽く声をかけた。

「……でもな、リナちゃん。永続魔法の性質、知っとるやろ?」
「うん。フィールド上に表側表示で残ってないと、効果が使えないんだよね。……あっ!」
「分かったみたいやな!手札を捨てる効果が発動してまう前に、『悪夢の蜃気楼』を破壊してまえば、手札を捨てんでもいいんやで!」
「へ〜!おいしいとこ取りだね!」
 リナは、『悪夢の蜃気楼』と『サイクロン』のコンボの強力さに感心していた。

「だが……そのコンボを崩すのも、『サイクロン』なんだよ。」
 不意にコウジが話した。

「……どう言うこと?」
 コウジの言葉に、リナは不思議そうな表情を浮かべた。

「……確かに、『サイクロン』で『悪夢の蜃気楼』のデメリットを封じられるけど、それと同じ方法で、メリットを封じることができるんだよ。相手がドローする前に、相手の『悪夢の蜃気楼』を破壊してしまえば、1枚もドローできずに終わるからね……」


――そう……『悪夢の蜃気楼』によって現われたカードの幻を実体化させるのも、幻を出現させないのも、『サイクロン』によって可能な芸当なのだ……
『悪夢の蜃気楼』と『サイクロン』の関係は、敵であり……味方でもあると言う、妙な関係だ――











「……と、言うわけで……これで『悪夢の蜃気楼』のデメリットは解消できたッスよー!」
 カムイの周りに発生していた霧は『サイクロン』によって完全に消え去り、後に残っていたのは、『幻』から、『現実』になった、4枚のカードだった……

「だが、俺の場にも、『悪夢の蜃気楼』があるぜ!俺の手札は0枚……よって、4つのカードの幻が出現するぜ!」
 センリがそう言うと、センリの周りに、カードの幻が浮かび上がった!

「センリがカードをドローするなら……オレもさらにドローするッスよ!手札から、魔法カード、『天使の施し』を発動ッス!カードを3枚ドローし……手札を2枚捨てるッス!さらにオレは、魔法カード、『融合回収』を発動し、墓地から『融合』と『バーストレディ』を手札に戻すッスよー!」
 カムイは、墓地の一番下に置かれていた『バーストレディ』と、墓地の上部に置かれていた『融合』を取り出し、センリに見せてから手札に加えた。

「……なるほど。『天使の施し』で捨てたカードの中に、『融合』を含めていたんだな。『天使の施し』で手札を充実させつつ、『融合回収』の発動条件を満たす……か。やるな!カムイ!」
「ああ!さらにオレは、魔法カード、『強欲な壺』を発動し、カードを2枚ドローするッス!これで準備は整ったッスよ!手札から、魔法カード、『融合』を発動ッス!手札の『フェザーマン』と『バーストレディ』を融合し……」
 そう言うと、フィールド上に再び、虹色の煙が渦巻く、不思議な空間が現われ……翼を持つヒーローと、炎を操るヒーローが、一つに交じり合っていった!




「来い……『E・HERO フレイム・ウィングマン』!」

 虹色の煙が消え去った後に立っていたのは、左手に大きな翼を持ち、右手には赤い鷹の頭のような形になっている、1人のヒーローだった!

「『フレイム・ウィングマン』……攻撃力2100か!だが、そのヒーローでは、俺の『龍骨鬼』の攻撃力2400には及ばないぜ!」
「ああ……それぐらい、分かってるッスよ!だが、このカードがあれば、『龍骨鬼』を破壊できるんスよ!手札から、『キャプテン・ゴールド』を捨て……デッキの『摩天楼 −スカイスクレイパー−』を手札に加え、すぐに発動させるッスよー!!」
 カムイは、墓地に勢い良く『キャプテン・ゴールド』を送り、デッキから『摩天楼 −スカイスクレイパー−』を探しだし、即、フィールド魔法ゾーンに置いた!
 すると……カムイとセンリの周りに、巨大なビル街が現れた!


E・HERO キャプテン・ゴールド
光 レベル4
【戦士族・効果】
このカードを手札から墓地に捨てる。
デッキから「摩天楼 −スカイスクレイパー−」1枚を手札に加える。
フィールド上に「摩天楼 −スカイスクレイパー−」が存在しない場合、
フィールド上のこのカードを破壊する。
攻撃力2100 守備力800

摩天楼 −スカイスクレイパー−
フィールド魔法
「E・HERO」と名のつくモンスターが攻撃する時、
攻撃モンスターの攻撃力が攻撃対象モンスターの攻撃力よりも低い場合、
攻撃モンスターの攻撃力はダメージ計算時のみ1000ポイントアップする。


「『摩天楼 −スカイスクレイパー−』……か。そう言えば、俺が見ていたカムイのデュエルでは、ほとんど使っていたよな。」
「ああ……そう言えば、そうだったッスね。確か、リナと、エイジとのデュエルで使ったッスよね。」











「ん?どうしたんや?リナちゃん。」
 ミカは、急に静かになったリナに話し掛けた。

「いやさ、カムイって、あたしとの初めてのデュエルのこと、覚えててくれたんだ……って思ってね。」
 リナは、カムイとのデュエルのことを思い出して、少し感傷に浸っていた……

「(あのころのあたしは、ほんの少しの仲間しか使ってなかったんだよなあ……でも……)」











「さらにオレは、『スパークマン』を召喚するッス!」
 カムイの場に、新たに閃光を操るヒーローが召喚された。

「『摩天楼 −スカイスクレイパー−』がフィールド上にある状態で、E・HEROが自分より攻撃力が高い相手に攻撃する時、攻撃力が1000ポイントアップするんスよ!『スパークマン』の攻撃力は1600……『龍骨鬼』の攻撃力は、2400!よって、『スパークマン』の攻撃力は、2600になるッス!『スパークマン』で、『龍骨鬼』に攻撃ッス!スパークフラッシュ!」
 『スパークマン』は、『龍骨鬼』に向かって、電撃を放つが……

「甘いぜ!カムイ!伏せ罠カード、『邪神の大災害』を発動だ!」
「な……」
 カムイの場の『スパークマン』の放った『闘争心』に呼応し……黒い竜巻が、辺りに渦巻いた!

「い……いったい、何が起こってるんスか!?」
「これが『邪神の大災害』の効果だ!相手の攻撃宣言時に発動し……場の魔法・罠カードをすべて破壊するんだぜ!」
 そう言うと、カムイとセンリの周りにそびえ立っていたビル街が、ガレキの山と化して、消滅した!
その光景は、まさしく『大災害』にふさわしかった……


邪神の大災害
通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
フィールド上に存在する魔法・罠カードを全て破壊する。


「『摩天楼―スカイスクレイパー』が破壊されたことにより、『スパークマン』の攻撃力は、1600にダウンしたぜ!『龍骨鬼』!『スパークマン』を迎撃しろ!」
 『龍骨鬼』は、『スパークマン』が放った電撃を受けとめ……そのまま跳ね返した!『スパークマン』は、跳ね返された電撃の直撃を受け、破壊された……

「くっ…なるほど……。『邪神の大災害』ッスか……。」(カムイLP 3300→2500)
カムイは、『スパークマン』が返り打ちにあったことと、密かにセンリの周りに漂っていた霧が、消え去っていたことに驚いていた……

「どうだ!俺の場には、もう『悪夢の蜃気楼』は存在しないぜ!これで、手札を捨てるデメリットは解消されたぜ!」
「くっ!なら、『フレイム・ウィングマン』で、『ゴブリンゾンビ』を攻撃ッス!フレイム・シュート!」
 『フレイム・ウィングマン』は、右手についた赤い鷹の口から火炎放射を放ち、『ゴブリンゾンビ』を一瞬で焼き尽くした!

「ぐあっ!」(センリLP 4000→3000)

「さらに『フレイム・ウィングマン』の効果発動ッス!このカードが戦闘で破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを、相手プレイヤーに与えるッス!」
「だが、『ゴブリンゾンビ』にも特殊能力があるぜ!このカードがフィールド上から墓地に送られた時、デッキから守備力1200以下のアンデット族を手札に加えるぜ!加えるカードは……守備力0の、『ゾンビ・マスター』だ!」
 センリは、『フレイム・ウィングマン』の効果によるダメージを受けながらも、デッキから『ゾンビ・マスター』を捜し出して手札に加えた。


E・HERO フレイム・ウィングマン
風 レベル6
【戦士族・効果】
「E・HERO フェザーマン」+「E・HERO バーストレディ」
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、
破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。
攻撃力2100 守備力1200

ゴブリンゾンビ
闇 レベル4
【アンデット族・効果】
このカードが相手プレイヤーに戦闘ダメージを与えた時、
相手はデッキの一番上のカードを墓地へ送る。
このカードがフィールド上から墓地に送られた時、
自分のデッキから守備力1200以下のアンデット族モンスター1体を選択し、
お互いに確認して手札に加える。その後デッキをシャッフルする。
攻撃力1100 守備力1050


「だが……たった1回の攻撃で、ライフが半分近く減っちまったな……」(センリLP 3000→1900)
 センリは、自分のライフポイントを確認し、少し残念に思った。

「メインフェイズ2に入るッスよ!手札から、魔法カード、『O−オーバーソウル』を発動するッス!オレの墓地から、効果を持たないヒーロー……『スパークマン』を守備表示で特殊召喚するッスよ!」
 カムイの場に、光のリングが現われ、墓地の『スパークマン』を蘇らせた!


O−オーバーソウル
通常魔法
自分の墓地から「E・HERO」と名のついた通常モンスター1体を選択し、
自分フィールド上に特殊召喚する。


「カードを1枚場に伏せて、ターンを終了するッス。」


現在の状況
センリ LP…1900
   手札…5枚
    場…屍魔獣 ネクロ・キメラ(攻撃力0・守備表示)
      龍骨鬼(攻撃表示)

カムイ LP…2500
   手札…1枚
    場…E・HERO フレイム・ウィングマン(攻撃表示)
      E・HERO スパークマン(守備表示)
      伏せカード1枚

 このターンには全くバトルに干渉しなかった『ネクロ・キメラ』だが……その真っ黒なコアは、不気味に胎動していた……


「俺のターン、ドロー!いくぜ!俺は手札から、『ゾンビ・マスター』を召喚するぜ!」
 センリの場に、白面でぼろぼろなマントをまとったモンスターが現われた。

「(くっ……今の俺の手札には、モンスターがいないか……。これでは、『ゾンビ・マスター』の効果は使えないな……)」
 センリは、少々手札が悪いことを悩んでいた……


ゾンビ・マスター
闇 レベル4
【アンデット族・効果】
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
手札のモンスターカード1枚を墓地に送る事によって、
墓地に存在するレベル4以下のアンデット族モンスター1体を特殊召喚する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
攻撃力1800 守備力0


「……俺は手札から、魔法カード、『死魔合成』を 発動するぜ!」
 センリがそう言うと、場の『龍骨鬼』と『ゾンビ・マスター』が、突然バラバラに砕け散った!

「な……なんで『龍骨鬼』と『ゾンビ・マスター』がいきなり砕け散ったんスか!?」
「教えてやるぜ!これが『死魔合成』の効果だ!俺の場のアンデット族すべてを、『ネクロ・キメラ』に吸収させるぜ!覚醒しろ!『ネクロ・キメラ』!」
 『ネクロ・キメラ』は、アンデット達の破片を取り込み……巨大化していった!
その容姿は、『龍骨鬼』の肉体を、『ゾンビ・マスター』のマントで守っている感じだ……


死魔合成
通常魔法
自分の場の『屍魔獣 ネクロ・キメラ』1体を選択して発動する。
選択したモンスター以外の自分の場のモンスターすべてを、選択したモンスターに装備する。
選択したモンスターの攻撃力は、このカードの効果によって
装備されたモンスターの攻撃力の合計分アップする。
選択したモンスターが破壊される時、代わりにこのカードの効果によって
装備されたモンスターを破壊する。


「『ネクロ・キメラ』の攻撃力は、『龍骨鬼』と『ゾンビ・マスター』の攻撃力の合計……2400+1800=4200だぜ!バトルだ!『ネクロ・キメラ』で、『フレイム・ウィングマン』に攻撃!ヘルボーン・スラッシュ・シュート!!」
 『ネクロ・キメラ』は、アンデットを吸収したことにより強化された体で、『フレイム・ウィングマン』に突撃した!

「……かかったッスね!」
「何!」
 カムイが伏せカードに手をかけたのを見て、センリの表情が変わった……。

「伏せ罠カード、『アナザー・フュージョン』を発動ッス!場の『フレイム・ウィングマン』と『スパークマン』を融合し……」
 カムイの場に、突然現われた虹色の空間……
その空間で、炎と風の力を持つヒーローに、光の力が加わり……









「来い!太陽のごとき輝きを放つヒーロー……『E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン』!」
 光輝く翼を持ち、純白の軽装鎧で身を包んだヒーローが現われた!
そのヒーローが放つ光は、まるで太陽みたいに、周りの闇夜を照らし出した!

「『シャイニング・フレア・ウィングマン』の元々の攻撃力は2500なんスが……オレの墓地のE・HEROの数×300ポイントアップするんスよ!オレの墓地のは合計7枚!よって、攻撃力は4600にアップ!」
 『シャイニング・フレア・ウィングマン』は、墓地に眠るヒーロー達の魂を受け継ぎ……さらに全身の輝きを増していった!


E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン
光 レベル8
【戦士族・効果】
「E・HERO フレイム・ウィングマン」+「E・HERO スパークマン」
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードの攻撃力は、自分の墓地の「E・HERO」という名のついた
カード1枚につき300ポイントアップする。
このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、
破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。
攻撃力2500 守備力2100



「ちょっと待て!今カムイの墓地のヒーローは、『ワイルドマン』、『ファイヤー・ダンサー』、『フェザーマン』、『バーストレディ』、『フレイム・ウィングマン』、『スパークマン』の6枚のはずだ!いつのまに墓地にもう1枚ヒーローを送ったんだ!?」
 センリは、密かにカムイの墓地に送られたカードを数えていたようだ。
墓地利用を行うデッキを使っているからこそ、ついつい相手の墓地が気になってしまうようだ……

「さっき『天使の施し』を発動したッスよね!その時、『融合』と一緒に、『E・HERO エッジマン』も墓地に送っていたんスよ!」
「なるほど……あの時の『天使の施し』は、『エッジマン』を墓地に送る目的もあったのか!」
 センリは、カムイのデュエルの繋げ方に感心していた……。

「だが、カムイの場のモンスターの数が変わったことにより、戦闘の巻き戻しが……」
「いや……『アナザー・フュージョン』の効果で、バトルは続けなければならないッスよ!」
「な……何だと!」


アナザー・フュージョン
通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動可能。
フィールド上から、融合モンスターカードによって決められたモンスターを墓地へ送り、
「E・HERO」と名のついた融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。
相手の攻撃モンスターは、このカードの効果によって
特殊召喚されたモンスターに攻撃しなければならない。
この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターンのエンドフェイズ時に破壊される。
(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)


『ネクロ・キメラ』は、強化された体で、果敢にも攻撃を続行したが、『シャイニング・フレア・ウィングマン』の圧倒的な攻撃力にはかなわず……









「――シャイニング・シュート!」



 『シャイニング・フレア・ウィングマン』は、光の早さに匹敵するかのような突撃を放ち……『ネクロ・キメラ』を迎撃した!

「ぐあぁぁぁ!」(センリLP 1900→1700)


「……だが、『ネクロ・キメラ』の効果発動!このモンスターの代わりに、装備された『ゾンビ・マスター』を破壊するぜ!」
 そう言うと、『ネクロ・キメラ』が身につけていた『ゾンビ・マスター』のマントが、まるで紙切れのように散っていった!

「……だが、『ネクロ・キメラ』を戦闘破壊できなかったから、『シャイニング・フレア・ウィングマン』の効果は発動しないッスね……。それに、『アナザー・フュージョン』によって特殊召喚されたモンスターは、たったの1ターンしかフィールド上に存在できないッスから……」
 カムイは、少し残念そうに言った。

「そうだな。……危なかったぜ。もし『龍骨鬼』のまま攻撃してたら、俺のライフが0になっていたな……。カードを2枚場に伏せて、ターンエンドだ。」
「このタイミングで、『アナザー・フュージョン』のデメリットで、『シャイニング・フレア・ウィングマン』が破壊されるッス……。」
 『シャイニング・フレア・ウィングマン』は、相手を迎撃するために瞬間的に融合したことにはやはり無理があったのか……その代償として、大地に膝から崩れ落ち、消滅した……











「あぁ〜、カムイの場のモンスターが、1体もいなくなっちやったよ〜。」
「『ネクロ・キメラ』……破壊されようとも、吸収したモンスターを身代わりに生き残る、厄介なモンスターやな、リナちゃん。うちもあのモンスターの圧倒的攻撃力に負けてまったでな……。」
「おいおい、ミカ。まだ勝負はついとらんのに、そんな気ぃ落とすな。……それより、『シャイニング・フレア・ウィングマン』の命懸けの迎撃……ジュンはどう思ったんや?」
「まあ……西洋の英雄にしては、よくやった方だな。」
「ジュン……素直じゃないな。でも、手札もモンスターも尽きかけなカムイは、いったいどう出るんだろうな……。」
「何言ってんのさ、コウジ。カムイなら、あたしたちをあっ……て言わせる戦術を見せてくれるって。」
 リナ、ミカ、エイジ、ジュン、コウジは、次の展開が読めないカムイとセンリのデュエルを、わくわくしながら見ていた……。











「……だが、『シャイニング・フレア・ウィングマン』の犠牲は、無駄にしないッスよ!オレのターン、ドロー!手札から、魔法カード、『ヒーローズスター』を発動ッス!オレの墓地の『シャイニング・フレア・ウィングマン』をゲームから除外し……除外したモンスターのレベルと合計値が同じになるように、デッキから『E・HERO』を手札に加えるッスよ!『シャイニング・フレア・ウィングマン』のレベルは8……よって、レベル4の『E・HERO バブルマン』と、レベル4の『E・HERO クレイマン』を手札に加えるッス!」


ヒーローズスター
通常魔法
自分の墓地の「E・HERO」と名のつくモンスター1体をゲームから除外して発動する。そのカードとレベルの合計が同じになるように自分のデッキから「E・HERO」と名のつくモンスターを選択して手札に加える。


「さらにオレは、魔法カード、『ヒーローの法則』を発動ッス!手札の『E・HERO クレイマン』を捨て……次の自分のターンのスタンバイフェイズに、カードを2枚ドローするッスよー!」
「何!遅行制のドローカードか!」


ヒーローの法則
通常魔法
手札の『E・HERO』と名のつくモンスター1枚を捨てて発動する。次の自分のスタンバイフェイズ時に、デッキからカードを2枚ドローする。


「……なるほど。一時的に手札を減らしておけば、『バブルマン』の効果を使えるようになるな!」
「よく分かったッスね!今のオレの手札は『バブルマン』1枚……よって、効果発動の権利を得たッスよ!手札から、『バブルマン』を守備表示で特殊召喚するッス!場、手札に他のカードが無いから、カードを2枚ドローするッスよー!」
 カムイは、得意気にカードを2枚ドローした。


E・HERO バブルマン
水 レベル4
【戦士族・効果】
(効果)
攻撃力800 守備力1200


 ドローしたカードを確認すると、カムイは……

「(よっしゃー!このカードなら!)カードを2枚場に伏せ、ターンエンド!」

現在の状況
センリ LP…1700
   手札…2枚
    場…屍魔獣 ネクロ・キメラ(攻撃力2400・攻撃表示)
      龍骨鬼(ネクロ・キメラに装備)
      伏せカード2枚

カムイ LP…2500
   手札…0枚
    場…E・HERO バブルマン(守備表示)
      伏せカード2枚


「俺のターン、ドロー!まずは魔法カード、『強欲な壺』を発動し、カードを2枚ドローするぜ!さらに手札から、魔法カード、『悪夢再び』を発動だ!墓地から、守備力0の『ゾンビ・マスター』2体を手札に戻すぜ!」
 センリは、自分の墓地から『ゾンビ・マスター』を捜し出し、手札に加えた。


悪夢再び
通常魔法
自分の墓地に存在する守備力0の闇属性モンスター2体を選択し手札に加える。


「くっ、3枚だった手札を、一気に5枚に増やしてきたッスね……。」
 カムイは、増えた手札を慎重に見定めているセンリを見て、次は何をしてくるのかと身構えていた。

「(今、俺の手札にはモンスターカードがある……『ゾンビ・マスター』の効果で大量展開する手もあるが、別の目的のために取っておくか……。)俺は、『ゾンビ・マスター』を召喚するぜ!」
 センリの場に、再び白面でぼろぼろなマントをまとったモンスターが現われた。

「バトルだ!『ゾンビ・マスター』で、『バブルマン』に攻撃だ!ネクロマンス・ゾンビ・シュート!」
 『ゾンビ・マスター』は、地面に埋まったゾンビを呼び覚まし、『バブルマン』を捕らえさせた!
そして、『ゾンビ・マスター』が指を鳴らすと、ゾンビは、『バブルマン』を地面に引きずり込んでいった……

「よし!これでカムイの場にモンスターはいなくなったぜ!『龍骨鬼』で、ダイレクトアタック!ヘルボーン・スラッシュ!」
「甘いッスよ!センリ!オレは伏せ罠カード、『スピリット・フュージョン』を発動するッス!」
「何!そのカードは……特別パックに入っていたカードか!?」
 センリは、カムイが発動したカードに心当たりがあった……。

「確かそれは……『ミラクル・フュージョン』と似た効果だったよな!」
「ああ!……まあ、墓地のカードしか素材にできないし、ライフを1000も払う必要があるんスけどね。」(カムイLP 2500→1500)
 カムイは、頭を掻きながら言った。


スピリット・フュージョン
通常罠
1000ライフポイントを払って発動する。
自分の墓地から、融合モンスターカードによって決められたモンスターを
ゲームから除外し、「E・HERO」という名のついた
融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。
(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)


「オレは……墓地の『E・HERO エッジマン』、『E・HERO バブルマン』、『E・HERO スパークマン』、『E・HERO キャプテン・ゴールド』をゲームから除外し……」
「何!4体融合か!いったい何を出すんだ!?」
 センリは、カムイがどんなヒーローを出すか、楽しみにしていた。









「『E・HERO キャプテン・シュピーゲル』……魂の召喚!!」
 そう言うと、カムイの場に、1人の二刀流の騎士が現われた!
その容姿は、『エッジマン』と同系の鎧を身につけているが、色はすべての光を吸収するかのような漆黒で、手の甲や背中に刄が無いタイプだ。
さらに、持っている大剣は、まるですべての光を跳ね返すかのような鏡のようになっていた。


「すごいな……『キャプテン・シュピーゲル』か!4体融合だけあって、かなりの威圧感だな!」
 センリは、『キャプテン・シュピーゲル』に秘められた戦闘能力を、体で感じ取っていた!

「ああ!『キャプテン・シュピーゲル』の攻撃力は3200……『ネクロ・キメラ』の攻撃力2400を上回ったッスよ!」
「そうだな……。だが、俺の『ネクロ・キメラ』も負けちゃいないぜ!手札から、魔法カード『死魔合成』を発動だ!『ゾンビ・マスター』の力を、『ネクロ・キメラ』に与えるぜ!」
 そう言うと、『ゾンビ・マスター』の体がバラバラになり、その破片が……『ネクロ・キメラ』へと付着していった!
 

「これで『ネクロ・キメラ』の攻撃力は4200……『キャプテン・シュピーゲル』の3200を上回ったぜ!カードを1枚場に伏せ、ターンエンドだ!」

「オレのターン、ドロー!スタンバイフェイズに、前のターンに発動した『ヒーローの法則』の効果で、デッキからカードを2枚ドローするッスよー!」
 カムイがドローしたカードを確認した瞬間、センリは、2ターン前から伏せてあったカードに手を掛けた……

「よし!これでカムイの手札は2枚以上になったぜ!速攻魔法、『手札断殺』を発動だ!お互いは、手札を2枚墓地に送り、カードを2枚ドローするぜ!」
 そう言ったセンリは、手札2枚を墓地に送り、カードを2枚ドローした!

「何!このタイミングで!?」
 カムイは、このタイミングでの『手札断殺』に、何の意味があるのか考えていた……。

「(おかしいッスね……。前のオレのターンでも、『手札断殺』を発動させるタイミングはあったはずッスよね……。何で今になって……!!そ、そう言えば……この戦法、見たことあるッス!)」
 カムイの記憶の中に、センリが相手ターン中に『手札断殺』を使ったデュエルのことが、鮮明に蘇ってきた……


手札断殺
速攻魔法
お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする。


「(まさか…今、センリが伏せているカードは……『ネクロ・フュージョン』ッスか!?)」
 カムイは、センリの伏せカードが何なのかと、推測していた。

「(だが……ここで攻撃を躊躇すると、『ネクロ・キメラ』に一方的に倒されちまうッスね……)」
 『手札断殺』によって入れ替えた手札を確認したカムイは、何度も左手で持っている手札のカードを、右手でつかんでは放し、つかんでは放し……を繰り返していた……











「ねえねえ、ミカ〜。何でカムイは、あんなに悩んでるのかな?」
「……もしかして、センリの『ネクロ・フュージョン』を警戒しとるんやないかな?あのカードを出されると、カムイも危なくなるしな。」
 

「でも……このターン、何もしなかったら、『キャプテン・シュピーゲル』は、『ネクロ・キメラ』に破壊されてしまうからね……」
 コウジは、このターンのカムイの出方で、勝負が大きく動くと思っていた……

「まったく……迷いを持っていては、剣さばきが鈍るんだかな……」
 ジュンは、出方を迷っているカムイを、少し情けないと思っている発言をした……。











 30秒ぐらい悩んだカムイは……ついに意を決して……

「…オレは……『キャプテン・シュピーゲル』の効果を発動するッス!手札から、『カードガンナー』を捨て、捨てたモンスターの効果を得るッスよ!」
 カムイが『カードガンナー』のカードを『キャプテン・シュピーゲル』にかざすと……持っていた鏡の剣に、『カードガンナー』の像が映し出された!


E・HERO キャプテン・シュピーゲル
闇 レベル10
【戦士族・融合・効果】
『E・HERO エッジマン』+『E・HERO バブルマン』+『E・HERO スパークマン』+『E・HERO キャプテン・ゴールド』
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。以下の効果を1つ選んで発動することができる。
●:手札から、効果モンスターカードを一枚捨てる。このターンのエンドフェイズ時まで、この効果によって捨てられたモンスターの効果を得る。この効果は、1ターンに1度しか使用できない。この効果は、相手ターン内でも使用することができる。
●:相手フィールド上のモンスターを1体選択する。このターンのエンドフェイズ時まで、選択したモンスターの効果を得る。この効果は、1ターンに1度しか使用できない。
●:このモンスターが破壊されるとき、代わりに自分フィールド上のカードを破壊することができる。
攻撃力3200 守備力2500


「そして……『カードガンナー』の効果を得た、『キャプテン・シュピーゲル』の効果発動ッス!デッキの上からカードを3枚墓地に送り……攻撃力を1500ポイントアップさせるッスよ!」
 墓地にカードが送られたことにより、『キャプテン・シュピーゲル』の持っている剣は、さらに鋭さを増していった!


カードガンナー
地 レベル3
【機械族・効果】
自分のデッキのカードを上から3枚まで墓地へ送る事ができる。
墓地へ送ったカード1枚につき、このカードの攻撃力は
エンドフェイズ時まで500ポイントアップする。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
自分フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。
攻撃力400 守備力400


E・HERO キャプテン・シュピーゲル 攻撃力3200→4700

「攻撃力4700……『ネクロ・キメラ』を、さらに上回ったか!」
「ああ!いくッスよ!センリ!『キャプテン・シュピーゲル』で、『ネクロ・キメラ』に攻撃ッス!」
 『キャプテン・シュピーゲル』の剣は、まるでレーザーのように長く伸び……









「インフィニティ・レーザー・ブレード!」
 『ネクロ・キメラ』を真っ二つにしようとした!









「速攻魔法、発動!」

 グサッ!!



「な……『キャプテン・シュピーゲル』の攻撃が、止まった……?」
 カムイは、『ネクロ・キメラ』を目の前にしてピタリと止まった『キャプテン・シュピーゲル』を目の当たりにして、驚いていた……

「カムイの攻撃宣言時に……俺は、速攻魔法『エネミーコントローラー』を発動していたんだぜ!」
「何!」
 センリの場に、巨大なコントローラーが現われ……カムイの側からはよく見えないみたいだが、コントローラーの端子部は、『キャプテン・シュピーゲル』の腹部に突き刺さっていた!

「コマンド入力だ!『ネクロ・キメラ』を生け贄にし、←・→・A・Bを入力することで……『キャプテン・シュピーゲル』のコントロールを、このターンの間だけ得るぜ!」
 そう言うと、『ネクロ・キメラ』の体内から、真っ黒な煙が沸き上がった!
その煙を吸ったことにより、一時的に意識を失った『キャプテン・シュピーゲル』は……突然カムイと向かい合わせになった!
その脇で、『ネクロ・キメラ』は、まるで魂が抜け落ちたかのように、バラバラになっていった……


エネミーコントローラー
速攻魔法
次の効果から1つを選択して発動する。
●相手フィールド上の表側表示モンスター1体の表示形式を変更する。
●自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる。
相手フィールド上の表側表示モンスター1体を選択する。
発動ターンのエンドフェイズまで、選択したカードのコントロールを得る。


「……だが、『エネミーコントローラー』による洗脳は、1ターンでとけるみたいッスね!カードを1枚場に伏せ、ターンエン……」
「待て!このタイミングで、俺は……」
「……!!やっぱり……」
 カムイは、このタイミングでのセンリの伏せカードの発動は、想定していたが……

「俺は……手札を1枚捨て、速攻魔法、『トラップ・ブースター』を発動するぜ!」
「な……!」
 センリが予想外のカードを発動したことに対し、カムイは驚いた……

「『トラップ・ブースター』の効果で、俺はこのターン、罠カードを1枚発動できるんだぜ!俺は当然……」









「『ネクロ・フュージョン』……発動!!」


 センリの墓地に送られた6体のアンデット族が、まるで正六角形のようなシルエットを浮かび上がらせ……
 6体のアンデット族が、一点に収束し……



「来い!『屍魔獣 ネクロ・キメラ』!!」
 そう言うと……センリの場に、新たな1体のモンスターが現われた!
頭部には、三方向に『ゾンビ・マスター』の顔が……
腹部には、『龍骨鬼』の頭部が……
背中には、『ドラゴン・ゾンビ』の腐食した羽が……
腕、足は、『龍骨鬼』を思わせる頭蓋骨で形成されていて、『ゾンビ・マスター』が着ていたような服で覆われていた……
そして……左手、両足の爪は、『ドラゴン・ゾンビ』状の、毒々しい色に変わっていた……
さらに…右手には……『ドラゴン・ゾンビ』の頭が埋め込まれていた!


トラップ・ブースター
速攻魔法
手札を1枚捨てて発動する。
このターン、自分は手札から罠カード1枚を発動する事ができる。

ネクロ・フュージョン
通常罠
自分の墓地に3体以上アンデット族モンスターが
送られたターンのエンドフェイズに発動可能。
自分の融合デッキから『屍魔獣 ネクロ・キメラ』を特殊召喚する。
(この特殊召喚は、融合召喚扱いとする。)


「『ネクロ・キメラ』の攻撃力は……吸収されたアンデット族の攻撃力の合計になるぜ!」
「な……い、今『ネクロ・キメラ』に吸収されているモンスターは……『ゾンビ・マスター』3体、『龍骨鬼』、『ドラゴン・ゾンビ』の5体ッスよね!」
 カムイは、『ネクロ・キメラ』に吸収されたアンデット族の攻撃力の合計を計算し始めた……

「…1800……3600………5400…………7800……………」
 攻撃力を足していくカムイの表情が、だんだん強ばってきた……

「こ…攻撃力……9400!!?」
 カムイは、破滅的に攻撃力を高めた『ネクロ・キメラ』の姿に、驚愕していた……
その間に、『エネミーコントローラー』による洗脳がとけた『キャプテン・シュピーゲル』がカムイの場に舞い戻ってきたが……倍以上の攻撃力を持つ『ネクロ・キメラ』を前にしては、小さく見えてしまった……




「俺のターン、ドロー!これで終わりだ!!『ネクロ・キメラ』で、『キャプテン・シュピーゲル』に攻撃だ!!」
 『ネクロ・キメラ』の右手に取り付けられた、ドラゴンのような口に、膨大なエネルギーが収束し……









――ネクロマンス・ゾンビ・デッドリー・スラッシュ・ブレス・シュート!!



 そのエネルギーが、巨大な火球と化し、『キャプテン・シュピーゲル』に向けて放たれた!!

「くっ、相変わらず技名長いッスね……伏せ罠カード、『迎撃準備』を発動ッス!」
 『キャプテン・シュピーゲル』は、腰を低くし、左膝を地面につき、持っている2本の鏡の剣をクロスさせ……『ネクロ・キメラ』の破滅的な攻撃力からカムイを守ろうとした!
だが、巨大な火球に対する必死の抵抗も虚しく……焼き尽くされてしまった!!!











「ああ〜!カムイのモンスターが、センリの不気味なモンスターにやられちゃったよ〜〜!」
「カムイ……圧倒的な攻撃力の『ネクロ・キメラ』を見て、冷や汗かいとるんやないか?」
 

「おいおい、ミカ。何言っとるんや。……カムイの目を見てみろや。」
「まだ敗北の色には染まっていない……と言う事だな。」

「そうだな、ジュン。エイジ。……次のドローで、勝負が決する……見逃せないな。」
 コウジは、カムイとセンリのデュエルを、余すところ無く見ていた……











「俺はこれでターンエンドだ。さあ、カムイ!俺の『ネクロ・キメラ』を倒せるか!?」
「…………」
 カムイは、残り1枚の手札を見ながら、1つのことを考えていた……

「(……このカードを使えば、『ネクロ・キメラ』の攻撃力を越えられるんスが……たったの1ターンだけじゃあ、返しのターンで返り打ちに合うだけッスね……。このドローで、あのカードを引けば……)」

「……オレの……ターン!!ドロー!!!」
 カムイは、目を瞑りながら、勢い良くカードをドローした……。
そして、少しづつ目を開け、恐る恐る引いたカードを確認すると……


「……勝った!」
「な、何!」
 

「オレは……魔法カード……『平行世界融合(パラレル・ワールド・フュージョン)』を発動するッス!」
そう言うと、カムイの目の前の空間が裂け……2本の不思議な空間の帯が現われた!!

「こ…これは……いったい!?」
「『平行世界融合(パラレル・ワールド・フュージョン)』は……除外されたヒーローを融合素材として、新たなヒーローを融合召喚する魔法カードなんスよ!オレは……『シャイニング・フレア・ウィングマン』と、『キャプテン・ゴールド』を融合し……」
 『シャイニング・フレア・ウィングマン』と『キャプテン・ゴールド』は、それぞれ別の帯の中を進んでいき……ある1点で衝突し、交じり合っていった!!

「来い……『E・HERO キャプテン・コロナ』!!!」
 カムイの場には……太陽の周りを覆うような、激しい輝きを放つオーラをまとったヒーローが出現していた!!
両腕には、『シャイニング・フレア・ウィングマン』の翼のような小手が付いていて、白銀の鎧を全身にまとっていた……
そのあまりの明るさは、まるで夜が朝になったかのような錯覚を起こさせた……。


平行世界融合(パラレル・ワールド・フュージョン)
通常魔法
自分の除外ゾーンから、融合モンスターカードによって
決められたモンスターをデッキに戻し、「E・HERO」という
名のついた融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。
(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)


「な……なんて輝きだ……!まるで太陽が地上に降りてきたみたいじゃねえか!」
 センリは、『キャプテン・コロナ』の放つ強烈な光を直視できないらしく、左腕のデュエルディスクをサンバイザーのようにしていた!!

「『キャプテン・コロナ』の元々の攻撃力は3000ッスが……墓地、除外ゾーンのE・HERO1種類につき、攻撃力が400ポイントアップするんスよ!オレの墓地、除外ゾーンにあるE・HEROは10種類!よって……『キャプテン・コロナ』の攻撃力は……7000にアップしたッスよ!」
 『キャプテン・コロナ』は、墓地、除外ゾーンのヒーローの魂に呼応し……さらにまとっているオーラを強くし始めた!

キャプテン・コロナ 攻撃力3000→7000


「攻撃力……7000か!だが、それでも『ネクロ・キメラ』の攻撃力9400には及ばないぜ!」
「いや……『キャプテン・コロナ』のもう1つの効果を発動するッス!1ターンに1度、墓地、除外ゾーンの『キャプテン・ゴールド』または『キャプテン・ゴールド』を融合素材とするモンスター1体をデッキに戻し……戻したモンスターの攻撃力を、このターンの間のみ追加するッスよ!」
 そう言うと……空から2本の剣が振ってきて、『キャプテン・コロナ』の目の前の地面に突き刺さった!
その剣は、『キャプテン・シュピーゲル』が所持していた、鏡の剣と、ほぼ同じ形をしていた……

「『キャプテン・シュピーゲル』の力を受け継いだ『キャプテン・コロナ』の攻撃力は……3200アップして、10200になるッスよ!……まあ、墓地のヒーローが1種類減っちまったことで、『キャプテン・コロナ』の攻撃力は400ポイントダウンするから、実際の攻撃力は9800なんスけどね。」
 『キャプテン・コロナ』は、振ってきた2本の鏡の剣を両手に持ち……身を包むオーラを、さらに激しく放出し始めた!


E・HERO キャプテン・コロナ
光 レベル10
【戦士族・融合・効果】
『E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン』+『E・HERO キャプテン・ゴールド』
このモンスターの融合召喚は、上記のカードでしか行えず、融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードの攻撃力は、自分の墓地・除外ゾーンの『E・HERO』という名のついたカード1種類につき400ポイントアップする。
1ターン1度、自分の墓地・除外ゾーンに存在する『E・HERO キャプテン・ゴールド』及び『E・HERO キャプテン・ゴールド』を融合素材とする融合モンスター1体をデッキに戻すことで、エンドフェイズ時まで、このカードの攻撃力はこの効果によってデッキに戻したモンスターの攻撃力分だけアップする。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
攻撃力3000 守備力2500


「『ネクロ・キメラ』の攻撃力を……上回っただと!?」
 センリは、次から次へと自分のモンスターの攻撃力を上回るモンスターを繰り出してくるカムイの戦術に感心していた……

「(カムイ…さすがだな……。俺が強いモンスターを出せば、さらに強いモンスターを出してくる……。)」
「さらに…オレは……『キャプテン・コロナ』に、『アサルト・アーマー』を装備させるッスよ!」
 『キャプテン・コロナ』の全身を包んでいるオーラから、深紅色の炎状の閃光――
――プロミネンスが、吹き出してきた!!


「『アサルト・アーマー』の効果発動ッス!装備されているこのカードをカードを墓地に送ることにより……このターン、『キャプテン・コロナ』は、2回攻撃が可能になるッスよ!」
 放出したプロミネンスが、鏡の剣に集まっていき……鏡の剣が、炎の剣へと化した!


アサルト・アーマ
装備魔法
自分のモンスターカードゾーンに戦士族モンスター1体のみが
存在する場合に、そのモンスターに装備する事ができる。
装備モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。
装備されているこのカードを墓地に送る事で、このターン装備モンスターは
1度のバトルフェイズ中に2回攻撃をする事ができる。


「これで終わりッスね!『キャプテン・コロナ』で、『ネクロ・キメラ』に2回攻撃――」
「……俺の……負けか……」









「――コロナティック……ノヴァ!」



『キャプテン・コロナ』は、左手による1撃目で、『ネクロ・キメラ』の右腕に吸収された『ドラゴン・ゾンビ』を、腕ごと切り落とし……2撃目は、右手の剣で、頭部に吸収された『ゾンビ・マスター』の顔の1つを、貫通するかのような勢いで突き刺した!


「ぐあぁぁぁぁ!!!」(センリLP 1500→1100→0)









「や…やった……オレの勝ちッスね……」
 そう言いながら、カムイはセンリに駆け寄っていった。

「くっ……また……負けちまったな……」
 センリは、カムイの手をつかんで、ゆっくりと立ち上がった。

「……結局、あの勝負……カムイの勝ちだったな……。」
「え?『あの勝負』って……」
 カムイは、センリの言う『あの勝負』のことを、理解できずにいた……

「おいおい、覚えてないのかよ。……明日の大会に向けて、今日まで1人でデュエルの修業をやってただろ?」
「ああ、そう言えば……一ヵ月くらい前にデュエルの勝ち数を競い合う約束してたッスよね!(第十一話参照)……で、オレが50勝、センリが50勝だったッスよね!!」
「そうだぜ。……で、このデュエルでカムイが勝ったから、俺の負けってわけだ。」
「なるほど……。その決着をつけるために、ここに呼び出したんスね!」
「そう言うことだぜ!カムイ!」
 カムイとセンリは、お互いに笑いながら握手して、互いの強さを認めあっていた……

「……で、リナ。もうそろそろ出てきたらどうッスか?」


「……え。」
 カムイの言葉に驚いたリナは、弾かれるように出てきた……。


「あっちゃぁ……何でばれちゃったかな〜。」
リナは、髪の毛を掻きながら茂みの中から出てきた。

「まあ、そりゃあ……皆の声、普通に丸聞こえだったッスよね、センリ。」
「そうだよな。リナ以外にも、あと4人ぐらいの声がしてたよな。」

「いやー、いい勝負、見せてもらったよ。」
「コ、コウジ!」

「男と男の、熱い戦いだったな、カムイ、センリ。」
「ジュン!」

「いやあ、うちらもあれくらいのデュエルができたらいいな、エイジ。」
「そうやな、ミカ。」
「ミカ!エイジ!」
 次々と茂みの中からカムイがデュエリスト登録したデュエリストが出てきた。


「ずるいよなあ、カムイもセンリも。あたしを誘ってくれないなんてさ。」
 リナは、いきなりカムイの右腕をつかんで言った。

「ははっ、カムイ。相変わらずリナちゃんに好かれとるなあ。」
 そう言いながらミカは、カムイの左肩を叩いていた。

「……ってわけだよ。皆、カムイ達とデュエルしたがっているんだよ。……僕も含めてね。」
 コウジは、密かにデュエルディスクを構えて、デュエルしたいという気持ちを表していた……

「そうだな。次は俺と決闘してくれ。」
「何勘違いしとんのや!次はわいやで!」




「……なるほど。やっぱり皆、デュエルがやりたいんスね!」
「そうみたいだな!カムイ!今日は大切な決戦前夜だからな!」
「よぉっしゃーー!!大会まで、夜通しデュエルしまくるッスよー!!!」
 カムイの周りにいた全員は、デュエルディスクを付けている左手を高々とあげた!!!











その頃、デュエルアカデミア星海校の浜辺では……



「や…やっと着いたぜ……デュエルアカデミア星海校にな……」
「け……結局……ラケシスは交代してくれませんでしたね……」
 浜辺に、疲れて地面に座り込んでいる2人の青年と、そんな2人を立ちながら黙って見ている1人の少女がいた……

「さ……てと。大会開催まで、しばらく休むとする……か、クロートー。」
「そうですね、アトロポス。……ラケシスは、どうしますか?」
「いや、妾はいい。お前達、先に寝ていろ。」
 ラケシスは、クロートーとアトロポスを上から見下ろしながら言った。

「……そうですか。では、お休みなさい。」
「大会開始が近くなったら、起こしてくれよ。」
 そう言いながら、クロートーとアトロポスは、静かに目を瞑った……。



「……デュエル……か。」
 ラケシスは、自分の左腕に付いているデュエルディスク……のような物に、チラリと目をやり……
「一体、どのようなデュエルが……。」
 空に浮かぶ月を、自分の赤い目で見つめながら、ボソッと呟いた……。









第一部……完





 16話以降はこちらから





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