GX plus!
28話〜

製作者:カオスマンSPさん






第二十八話 2日目開幕!

午前7時……『魔法使い部』のある一室にて……。



ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ……


「ん〜、何なのさ〜〜。疲れてんだからもう少し寝かせ……」

――ドサッ。

 茶色っぽい髪の色をして、背の低い女の子……リナは、水色のパジャマ姿でベッドから転げ落ち、その衝撃で起床した。



ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ……

「ふぁ〜ぁ……。……もう7時か。眠たいな〜……。」
 リナは、パジャマ姿で目をショボショボさせながら起き上がった。



ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ……

「……うるさい!」

ピピピピピガシャッ。



 リナは、目覚まし時計のアラームがうるさかったのか、スイッチを上から乱暴に叩いて止めた。
 そして、冷蔵庫の中から食パンを5布とパンにぬるジャムを複数、そして牛乳パックを取り出し、それらをテーブルの上に置いた。
 その後、リナは袋の中からパンを1布ずつ取り出し、イチゴジャムをパンに塗り、そのまま噛り付いた。





「もぐもぐ……昨日は……朝何にも……食べて……なかったから……お昼に……お腹が……ペコペコに……なっちゃっ……たんだよね……。」
 リナは、まったく口を休めずに食パンを1布ずつ食べ続け……5分程度で5布のパンをペロリと平らげた。
 その後、手と顔を洗い、髪の毛を寝癖が直る程度に軽くくしでとき、歯ブラシに歯磨き粉をつけ、口に歯ブラシをふくんだ。





「ははし、すはーひっふほひの〜のはひはによんほしははふめはへなはっはんはよなあ〜……。(あたし、スターチップを昨日の間に4個しか集められなかったんだよなあ〜……。)」
 口に歯ブラシをくわえながらリナは、自分の昨日に集めたスターチップの個数を考えていた……。

「もっほはやふはふめないほ、ほんへんにしゅふじょ〜へひないよ〜〜。(もっと早く集めないと、本戦に出場できないよ〜〜。)」
 ……口に歯ブラシをふくんでいるため、ふにゃふにゃな話し方だったが……。



 そして、歯磨きを終えた後パジャマを適当に脱ぎ捨て、黒色のタイツをはいた後、ハンガーに引っ掛けておいた普段どおりの黄色いチェック柄の上着を着、青色のデニムのスカートをはいた。

「(……あたしって、いっつもおんなじ様な服ばっか着てるんだよな〜……。この服結構気に入ってるからなんだけどね。)」
 リナは、毎日毎日同じような服ばかり着ている事に気がついたが、あまり気にする素振りを見せずに1分程度で着替えを終えた。
 その後、部屋に置いておいたデュエルディスクを左手にはめ、4個のスターチップがはまったデュエルグローブを右手にはめ……



「よっし、準備完了〜。今日も頑張るぞ〜〜!」
 部屋の出口に向かい、オレンジ色のブーツをはき、部屋を後にした……。





















7時30分……森の中を通る道にて……

「さ〜て、どこにいるのかな〜。スターチップを持ってる参加者は。」
 リナは、すたすた歩きながら、デュエリストをきょろきょろ探していた。











ピピ……ピピ……



「おい……あいつ、スターチップを幾つ持っている?」
「まてよ……。……あいつ、腕を大きく振りながら歩いてるから、よく分かんねえぞ……。」
 2人の男が茂みの中から、双眼鏡を使ってリナの右手にはめられたデュエルグローブを見て、幾つスターチップを所持しているか確認していた……。

「ちっ……役にたたねえ奴らだ。……貸しな!」
「あっ……青森先輩。」
 青森と呼ばれた、赤いシャツと黒いチョッキを着、白色のズボンをはいた男は、双眼鏡を取り上げてリナの右手を確認した。

「1、2、3……4個か。さすがに2日目となると、大量にスターチップを所持した奴がいるってもんだ。」
 青森は、軽く笑いながら話していたが……











「(待っていな……。外道流派(サイバー流の腰巾着共……。テメエ等の実力なんざあ、大したことねえって事を思い知らせてやらあ……。)」
 口の中では歯を食い縛り、忌々しい感情を押し殺していた……。











「……出臼!テメエはスターチップを4個持っていたよな!」
「ああ!」
「よし!あのガキとデュエルするのはテメエだ!もう1人はここで待ってな!」
 青森は、出臼と呼ばれた、白いシャツを着、黒いズボンをはいた青年を指差しながら話した。

「分かったぜ、青森先輩!おれの戦闘機デッキで瞬殺してやるぜ!」
 出臼は、左手のデュエルディスクを構えながら答えた。

「決まりだな。……あのガキを誘い込むぜ!」
 青森は、一言そう言い、リナが通るルートのすぐそばの茂みに入り込み、その茂みの中から人差し指をチョイチョイっと動かし、リナを手招きした。











「ん?……誰かな〜?そこにいるのは。」
 リナは、いきなり現れた手招きに少し驚きながらも、やっとデュエリストを見付けた事に喜び、手招きされた方に歩いていった……。











「よう、お前、まだ失格になってねえよな?」
「え?……そうだよ。」
 出臼に突然話し掛けられ、リナは驚いた。

「おれの名は出臼だ!お前にデュエルを申し込むぜ!」
「べ、別にいいんだけど……何でわざわざ道から離れた所でデュエルするわけ?」
 リナは、出臼の行動に当惑していたが……

「俺様から説明してやる。」
 当惑するリナに対して、青森が腕を組みながら話した。



「テメエ……『デュエリスト狩り』を知ってるか?」
「『デュエリスト狩り』……?」
 聞き覚えの無い単語に、リナはキョトンとしていたが……

「……ちょっと待ってね。」
 そう青森に言ってリナは背を向け、ポケットから取り出したDCT(デュエリストコミュニケーションツール)のボタンをピッと押した。











ピピピ……ピピピ……


「あっ、カムイ?」
『……リナ。何か用ッスか?』
「いやさ、ちょっと聞きたい事があってね。……『デュエリスト狩り』って、知ってる?」
 リナは、軽く頭を掻きながらカムイに質問した。

『ああ、知ってるッスよ。……昨日、アトロポスって名前の、EHERO(イービルヒーロー)使いの部外者とデュエルしたんスよね……。』
「ええっ!で、勝ったの!?」
 リナは、驚きながらカムイに質問を続けた。

『ああ、勝ったッスよ。それで今、スターチップは7個持ってるんスよね。』
「うわ〜〜。スゴいじゃん、カムイ!あたしなんて、まだ4個しか集めてないのに!」
 カムイの言葉を聞いたリナは、はしゃいだ様な声で話した。

『いや……オレよりも多くスターチップを持ってるデュエリストはいるッスよ。……ナオは、昨日の段階で8個スターチップを持ってたんスよね……。』
「え゛……あいつもうそんなに持ってんだ。」
 リナは、何か嫌そうな表情をした。

『……リナ。相変わらずナオの事を毛嫌いしてるんスね……。』
「だってあいつ、あたしの事ちびっ子ちびっ子って言うんだもん。……あいつの方がちっちゃいのに。」
 リナは、少しうつむきながら話した。



「……あっ、情報教えてくれて、ありがとね。カムイ。」
『ああ。……じゃあ、切るッスよ。』


ピッ。











「……『デュエリスト狩り』?……うん、知ってるよ。」
 リナは、回れ右して青森に話し掛けた。

「テメエ……今、他の奴に聞いてただろ。」
 青森は、リナの行動に呆れてしまっていた……。

「つまり……だ。俺様達は、他の奴にばれねえように遠距離から参加者とデュエリスト狩りを見極め、参加者のみをねらう……って訳だ。」
「ふ〜ん。」
 青森の言葉を、リナは少しだけ納得した様な様子で聞いていた。

「……まっ、いっか。で、スターチップは何個賭けるの?」
「4個賭けてもらうぜ!」
「うん。いいよ。」
 出臼の返答に、リナはコクンと頷いた。











「「デュエル!」」



先攻は、リナだった。

「あたしのターン、ドロー!……まずは手札から、永続魔法『魔法族の結界』を発動するね。」
 リナが手札のカードを1枚デュエルディスクに差し込むと、リナの周りに不思議な文字が書かれた魔法陣みたいなものが現れた。

「それから、『見習い魔術師』を攻撃表示で召喚するね。『見習い魔術師』が召喚された時の効果で、『魔法族の結界』に魔力カウンターを1個乗せるね。」
 リナの場に現れた金髪の魔術師が杖を振るうと……魔法陣に1枚のカードの幻影が発生した!

「カードを1枚場に伏せて、ターンエンドね。」
「『見習い魔術師』……攻撃力400のモンスターを攻撃表示かよ!……よくそれで今まで勝ち上がれたな。」
「別にいいじゃん。『見習い魔術師』は、すっごく強い効果を持ってんだからさ。」
 リナは、出臼の言葉に反論するように話した。

「まあいい。おれのターン、ドロー!手札から、『ジェイドナイト』を召喚!」
 出臼の場に、スペースシャトルの様な形をした戦闘機が現れた。

「『ジェイドナイト』の攻撃力は1000だが、『見習い魔術師』を戦闘破壊するには十分だぜ!『ジェイドナイト』で、『見習い魔術師』に攻撃!」
 『ジェイドナイト』が機体の先端からレーザーを放つと、『見習い魔術師』はあっさりと破壊された……。

「あいたっ。……まっ、600ダメージくらいなら大丈夫だよね。」(リナLP 4000→3400)
 リナは、少し仰け反った。

「……でもこれで、『見習い魔術師』の効果が発動するかんね!デッキから、レベル2以下の魔法使い族……『時の魔術師』を裏側守備表示で特殊召喚!」
 そう言いながらリナは、デッキの中から『時の魔術師』を探し出し、デュエルディスクに裏向きで置いた。


見習い魔術師
闇 レベル2
【魔法使い族・効果】
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、
フィールド上で表側表示の魔力カウンターを乗せる事ができるカード1枚に
魔力カウンターを1個乗せる。
このカードが戦闘で破壊された場合、デッキからレベル2以下の
魔法使い族モンスター1体を選択して自分フィールド上にセットする事ができる。
攻撃力400 守備力800


「それから……魔法使い族が破壊された時に、『魔法族の結界』に魔力カウンターが1個乗ったよ!」
 リナの周りの魔法陣に、2枚目のカードの幻影が発生した。

「『時の魔術師』だと?……『執念深き老魔術師』じゃねえってのか?」
「うん。……だって、執念深いって、何かカッコ悪いじゃん。」
 リナは、軽く答えた。



「……なめるなよ……ガキが。そんな甘ったれた感情で、デュエルに勝てると思わねえこったな。」
 デュエルを見ていた青森は、リナの無頓着な言葉を忌々しく思ったのか、腕を組みながら吐き捨てる様に話した。

「なっ……失礼ね!あたしはガキじゃないよ!」
 ガキと言われた事に腹を立てたのか、リナは声を張り上げて話した。

「う……うるさいガキだ……。カードを1枚場に伏せ、ターンエンド!」
 出臼も、思わずリナの事をガキと言ってしまいつつも、ターンを終えた。


現在の状況
リナ LP…3400
   手札…3枚
   場…裏守備モンスター(時の魔術師)
     魔法族の結界(魔力カウンター×2・表側表示)
     伏せカード1枚

出臼 LP…4000
   手札…4枚
   場…ジェイドナイト(攻撃力1000・攻撃表示)
     伏せカード1枚


「なっ……何でいちいちガキ呼ばわりされなきゃなんないのよ……。あたしのターン!ドロー!」
 リナは、腹を立てながらターンを開始し、カードをドローした。

「……あたしは、『時の魔術師』を反転召喚してから、効果を発動するかんね!タイム・ルーレット!」
 リナの場の丸時計みたいな形の体をした魔術師が現れ、持っている杖に付いた、『当』マークと『ドクロ』マークが書かれたルーレットを回転させた!

「『時の魔術師』の効果は、ルーレットを回転させて、針が『当』に止まったら相手の場のモンスターが……『ドクロ』に止まったら、あたしの場のモンスターが全滅するんだよ!」
「ギャンブルカードか……。この序盤での発動は、別に大勝負って訳じゃねえな……。」
 出臼がそう言っている間に、くるくる回っていたルーレットの針が速度を落としていき……











――ピコーン。











 ルーレットの針は、見事に止まった……。……ドクロマークの所で。



「ありゃ?」
 リナは、『時の魔術師』がルーレットを外したことに目を丸くしていた。
 その間にも『時の魔術師』は時空の渦を間違えてリナの場に発生させてしまい……その渦に、『時の魔術師』が吸い込まれてしまった……。
 『時の魔術師』が破壊されたことで、リナの周りの『魔法族の結界』に、密かに3つ目のカードの幻影が発生したが……。


「うっ……。『時の魔術師』が効果発動に失敗したら、あたしの場のモンスターが全部破壊されちゃって、破壊されちゃったモンスターの攻撃力の合計の半分のダメージを受けるんだ……。」(リナLP 3400→3150)
 リナは、残念そうに呟いた。


時の魔術師
光 レベル2
【魔法使い族・効果】
コイントスで裏表を当てる。当たりは相手フィールド上モンスターを全て破壊する。
ハズレは自分フィールド上のモンスターを全て破壊する。
さらにこの効果によって破壊された自分のモンスター全ての攻撃力を合計し、
その半分のダメージを受ける。
この効果は1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに使用する事ができる。
攻撃力500 守備力400


「はーっはっはっは!だらしねえ!このガキ自滅しやがったぜ!」
 デュエルを見ていた青森は、失敗したリナの事を嘲笑していた。


「う〜〜〜〜っ。も、もう1回!伏せ罠カード『エンジェル・リフト』を発動して『時の魔術師』を墓地から特殊召喚するかんね!」
 リナが自分の伏せカードを表にすると、2体の小天使が降りてきて、墓地から『時の魔術師』を引っ張り上げた!


エンジェル・リフト
永続罠
自分の墓地に存在するレベル2以下のモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターがフィールド上から離れた時このカードを破壊する。


「それから……『時の魔術師』の効果を発動するかんね!タイム・ルーレット!」
 『時の魔術師』は、再び持っている杖に付いたルーレットをくるくる回転させた!



「……今度こそお願い!成功して!」
 リナは、『時の魔術師』に祈るように両手を合わせていた。そして……











――ピコーン。











ルーレットの針は……まるで先程のシーンの再現VTRを見ているかのように、ドクロマークに止まってしまった……。



「あ〜う〜〜……。全然当たんないよ〜〜……。」(リナLP 3150→2900)
 リナは口元に手をやり、『時の魔術師』の効果を2連続で外してしまったことを残念に感じていた……。
 その間にも、リナの周りの魔法陣にカードの幻影が発生し、これでリナの四方にカードの幻影が現れたことになった……。

「うぅ〜〜っ、どうしよっかな〜〜……。『ジェイドナイト』は、確か戦闘破壊されたら、デッキからレベル4の光属性の機械族を手札に持ってくる効果を持ってんだよなぁ〜……。」
 リナは、手札のモンスターを召喚しようかしないか少しの間悩んでから……



「……手札から、『ピクシーナイト』を攻撃表示で召喚するね!」
 リナの場に、蝶の様な羽を持った、妖精みたいな魔法使いが現れた。

「『ピクシーナイト』の攻撃力は1300……『ジェイドナイト』より上だよ!『ピクシーナイト』で、『ジェイドナイト』に攻撃するね!」
 『ピクシーナイト』は、手の平から魔力を放つと、『ジェイドナイト』の翼が折れ、地面に墜落した!

「ぐっ!」(出臼LP 4000→3700)


「残念だったな!『ジェイドナイト』の効果を発動させてもらうぜ!デッキから、レベル4・光属性・機械族のモンスター……『ブルーサンダーT45』を手札に加えさせてもらうぜ!」
 出臼がそう言うと、墜落した『ジェイドナイト』が突然信号をデッキに発信し、デッキの中から『ブルーサンダーT45』が飛び出し、出臼の手札に入った!


ジェイドナイト
光 レベル4
【機械族・効果】
このカードが自分フィールド上に表側攻撃表示で存在する限り、
自分フィールド上に表側表示で存在する攻撃力1200以下の
機械族モンスターは罠カードの効果では破壊されない。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードが戦闘によって
破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキから
光属性・機械族のレベル4モンスター1体を手札に加える事ができる。
攻撃力1000 守備力1800


「うっ……。何かモンスターを残しとくとまずい気がするんだよな〜……。」
 リナは、一呼吸置いた後……

「……メインフェイズ2に、『魔法族の結界』の効果を発動するね。このカードと、あたしの場の魔法使い族モンスター……『ピクシーナイト』を墓地に送って、『魔法族の結界』に乗ってた魔力カウンターの数だけカードをドローするね。」
 そう言うと、リナの周りのカードの幻影が実体化し……手札という形になってリナの手元に送られた!


魔法族の結界
永続魔法
フィールド上に存在する魔法使い族モンスターが破壊される度に、
このカードに魔力カウンターを1つ置く(最大4つまで)。
自分フィールド上に表側表示で存在する魔法使い族モンスター1体と
このカードを墓地へ送る事で、このカードに乗っている
魔力カウンターの数だけ自分のデッキからカードをドローする。


「……なるほどな。場の魔法使い族を『殺して』魔力カウンターを貯め、ドローに変換する……って訳か。……ガキのくせに、中々冷徹な真似するじゃねえか。」
「そ、そんなんじゃないよ!……死なせたんじゃなくて、破壊されちゃっただけだよ……。」
「けっ!……自分の行動を正当化するために難癖付けやがって……。(……外道流派(サイバー流共も似たような物だがな……。)」
 青森は、吐き捨てる様に話した。



「……あたしは……カードを2枚場に伏せて、ターンエンドね。」
 リナは、手札から2枚のカードをデュエルディスクに差し込み、ターンを終えた。


「おれのターン、ドロー!手札から、『ビクトリーバイパーXX03』を召喚!」
 出臼の場に、1体の小型戦闘機が召喚された。

「あれ?……『ブルーサンダーT45』じゃ無いんだ。」
「見てな……。『ビクトリーバイパーXX03』は、相手モンスターを戦闘破壊した場合に効果を発動可能だが……その効果を、すぐ使わせてもらうぜ!手札から、魔法カード『パワーカプセル』を発動!さらにそれにチェーンし、伏せ罠カード『マジック・キャプチャー』を発動するぜ!」
 出臼がそう言うと、『パワーカプセル』の周りに、不思議な緑色のオーラが発生した!

「さらに『パワーカプセル』の効果解決!第2の効果で、伏せカードを破壊させてもらうぜ!」
 そう言うと、『ビクトリーバイパーXX03』の先端からレーザーが発射され、リナの場の伏せカード……『ドレインシールド』を撃ち抜いた!


パワーカプセル
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する「ビクトリー・バイパー XX03」1体を
選択して発動する。「ビクトリー・バイパー XX03」の効果から1つを選択し、
このカードの効果として適用する。

ビクトリーバイパーXX03
光 レベル4
【機械族・効果】
このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した時、
次の効果から1つを選択して発動する。
●このカードの攻撃力は400ポイントアップする。
●フィールド上に表側表示で存在する魔法または罠カード1枚を破壊する。
●自分フィールド上に常にこのカードと同じ種族・属性・
レベル・攻撃力・守備力の「オプショントークン」を1体特殊召喚する。
攻撃力1200 守備力


「あっちゃ〜〜……。攻撃封じの伏せカードが1枚破壊されちゃったよ〜。……って、あれっ?」
 リナは、自分の伏せカードが破壊された後に、目を見開いた……。
 チェーンが解決したことで墓地に送られるはずの『パワーカプセル』が、出臼の手札に戻ってきたからだ……。

「な、何で?何で『パワーカプセル』が手札に戻ってんの?」
 リナは、思いがけない光景に思わず慌てふためいていたが……



「ガキが……。『マジック・キャプチャー』の効果を知らねえのか?魔法カードの発動にチェーン発動する事で、チェーンされた魔法カードが墓地に送られた時にそのカードが手札に戻るようになるんだよ。」
「びぃ〜〜っだ!ど〜せあたしはバカですよ〜〜っだ!」
 青森の言葉に対してリナは、半ばやけっぱちになった様に舌を出しながら話した。


マジック・キャプチャー
通常罠
自分が魔法カードを発動した時、手札を1枚捨ててチェーン発動する。
チェーン発動した魔法カードが墓地へ送られた時、そのカードを手札に戻す。



「手札に戻した『パワーカプセル』をもう1度発動させてもらうぜ!第2効果で、もう1枚の伏せカードを破壊だ!」
 再び『ビクトリーバイパーXX03』はレーザーを発射し、リナの場の伏せカード……『攻撃の無力化』を撃ち抜いてしまった!

「げ……。ちょっとマズイかな……。」
 リナは、自分の場ががら空きになってしまった事を、少し不安に思っていた……。

「まだ終わりじゃねえぜ!手札から、2枚目の『パワーカプセル』を発動!現れろ!『オプショントークン』!」
 出臼の場に現れたがパカッと割れると……その中から正八面体みたいな機械が出てきた!

「バトルだ!『ビクトリーバイパーXX03』、『オプショントークン』!ダイレクトアタックだ!」
 『ビクトリーバイパーXX03』と『オプショントークン』は、同時にリナに向かってレーザーを放ち、リナのライフを大きく削った!

「きゃっ!……ひ、ひどいな〜。」(リナLP 2900→1700→500)
 残りライフが少なくなってしまった事で、リナは思わず声を上げた。

「どうだ!これでお前のライフは残り500……もう後が無いな!ターンエンド!」


現在の状況
リナ LP…500
   手札…5枚
   場…無し

出臼 LP…3700
   手札…2枚
   場…ビクトリーバイパーXX03(攻撃力1200・攻撃表示)
     オプショントークン(攻撃力1200・攻撃表示)


「だ、大丈夫だもん。まだ後ならいくらでもあるんだかんね〜。」
 リナは強がってみせたが、内心では手札の悪さを残念に感じていた……。

「(……どうしよっかな……。今の手札じゃ、次のターンまで耐えらんないよ……。)……あたしのターン、ドロー!」
 リナは、ドローしたカードを恐る恐る確認したが……そのカードが何なのか分かった瞬間に、表情が和らいだ……。

「……あたしは……手札から、魔法カード『打ち出の小槌』を発動するね!手札を4枚デッキに戻して、カードを4枚ドローするかんね!」
 リナは、手札の5枚のカードの内4枚をデッキに戻してシャッフルし、カードを4枚ドローした。


打ち出の小槌
通常魔法
自分の手札を任意の枚数デッキに加えてシャッフルする。
その後、デッキに加えた枚数分のカードをドローする。



「このタイミングで『打ち出の小槌』とはな……。『魔法族の結界』の様な単体で動かねえコンボパーツの投入は、手札事故を引き起こす……って訳か。」
「べ、別にいいじゃん……。単体で動けるカードばっか入れてたら、みんなおんなじデッキになっちゃうよ……。」
「……だろうな。」
 腕を組みながら話す青森は、リナの言葉に少しだけ感心したかの様に呟いた。



「……いっくよ〜!これがあたしのデッキのキーカード……永続魔法『魔導集会(マジカル・チャット)』と、フィールド魔法『魔導学園(マジカル・アカデミー)』だよ!」
 そう言いながらリナは、1枚のカードをデュエルディスクの魔法・罠ゾーンに差し込み、もう1枚のカードをフィールド魔法ゾーンに置いた!
 すると、辺りが突然薄暗くなって……リナと出臼の周りが、洋風なレンガ造りの建物で囲まれた、中央に澄んだ水をたたえる噴水があり、多くの薄明かりを浮かべる街灯と、緑色の葉をした木が植えられた公園みたいな空間に変化し……リナの目の前には、木でできた小さな円卓が現れた!



「な、何だ!?その2枚の魔法カードは!?」
「この2枚のカードは……あたしのデッキに入ってる魔法使い達をサポートするカードだよ!まずは、『魔導集会(マジカル・チャット)』の効果を発動するね!手札から、『白魔導士ピケル』を攻撃表示で特殊召喚するね!」
 リナがそう言うと、円卓のわきに、白色の羊の帽子をかぶり、白い袋のような服を着た魔法使いの少女が現れた。

「何!特殊召喚だと!?」
「うん。そうだよ。『魔導集会(マジカル・チャット)』が場にあってあたしの場にモンスターがいなかったら、手札からレベル2以下の魔法使い族を特殊召喚できるんだ。それから、あたしがレベル2以下の魔法使い族を召喚したら、デッキからレベル2の魔法使い族を持ってこれるんだ〜。」
 リナは、自信満々に話した。


魔導集会(マジカル・チャット)
永続魔法
自分フィールド上にモンスターが存在しないとき、手札から、レベル2以下の
魔法使い族モンスター1体を特殊召喚できる。
自分がレベル2以下の魔法使い族モンスターの召喚に成功したとき、
デッキから、レベル2の魔法使い族モンスター1枚を手札に加えることができる。
(召喚したモンスターと同名カードは除く。)
自分フィールド・墓地にレベル2以下の魔法使い族以外のモンスター存在するとき、
このカードを破壊する。



「それから、あたしの場にピケルちゃんが特殊召喚されたから、『魔導学園(マジカル・アカデミー)』にマジカルカウンターが1個乗ったよ。『魔導学園(マジカル・アカデミー)』に乗ってるマジカルカウンター1個につき、あたしの場のレベル2以下の魔法使い族は攻撃力が100ポイント上がるんだ〜。」
 リナの言葉に合わせて街灯の1つが淡く光り輝き……その光が、リナの場の『白魔導士ピケル』に力を与えた!


魔導学園(マジカル・アカデミー)
フィールド魔法
レベル2以下の魔法使い族モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚に成功したとき、
このカードにマジカルカウンターを1つ乗せる。
自分フィールド上のレベル2以下の魔法使い族モンスターの攻撃力は、
このカードに乗っているマジカルカウンターの数×100ポイントアップする。
このカードのコントローラーは、「フィールド上のカードを破壊する効果」を持つ
魔法・罠・効果モンスターの効果が発動した時、
このカードに乗っているマジカルカウンターを2つ取り除くことででその発動を無効にし破壊する。
自分フィールド・墓地にレベル2以下の魔法使い族以外のモンスターが存在するとき、
このカードを破壊する。


白魔導士ピケル 攻撃力1200→1300



「……なるほどな。テメエのデッキコンセプトは、その2枚の魔法カードを維持し、物量作戦で攻める戦法か。……雑魚も徒党を組むと、とたんに態度がでかくなるって訳かよ。」
 青森は、腕を組みながらリナの使用したカードを考察した。

「ち、違うよ!何なんだよ!いちいちあたしのやることにケチばっか付けて!あたしになんか恨みでもあんの!?」
 リナは、自分のデッキを馬鹿にされたことが悔しいのか、青森に向かってカリカリしながら大声を上げた。

「恨み……?笑わせんな!テメエみたいなガキに恨みなんざねえよ!」
「ま……また……ガキって……ねえ……」
 リナは、青森の顔面を思いっきりぶん殴ってやろうかと、うつむきながら右手に握りこぶしを作っていた……。



「(ちっ……。このガキ、歯止めも聞かねえのか……。)……テメエのターンだぜ。さっさと続けな。」
 リナの様子を確認した青森は、軽く話した。



「言われなくったって分かってるよ!それからあたしは『黒魔導師クラン』を攻撃表示で召喚するかんね!」
 リナの場に新たに、黒いウサギの帽子をかぶり、黒い服を着た魔法使いの少女が現れた。

「あたしの場にクランちゃんが召喚されたから、『魔導学園(マジカル・アカデミー)』にマジカルカウンターがもう1個乗ったよ!それから、『魔導集会(マジカル・チャット)』の効果で、デッキからレベル2の魔法使い族……『ハリケル』を手札に加えるかんね!」
 そう言うと、リナがデッキから1枚のカードを探し出した後に、薄明かりを浮かべる街灯がもう1つ点灯した!

白魔導士ピケル 攻撃力1300→1400
黒魔導師クラン 攻撃力1200→1400

「行くよ!ピケルちゃんで、『ビクトリーバイパー XX03』に攻撃!」
 『白魔導士ピケル』が持っている杖で『ビクトリーバイパー XX03』を軽く叩くと、『ビクトリーバイパー XX03』の翼が折れ、あっけなく墜落した!
 本体が消えたことで、オプショントークンは場に存在できなくなり、勝手に自爆してしまった……。

「ぐあっ!(や、やっとおれの出番か……。)」(出臼LP 3700→3500)
デュエルしているのにまったく話に参加できなかった出臼は、少々戸惑っていた……。


「まだだよ!クランちゃんで、出臼にダイレクトアタック!」
 リナの言葉を聞いた『黒魔導師クラン』は、八つ当りのように出臼をムチでめったうちにした!

「ぐっ!」(出臼LP 3500→2300)


「あたしはカードを1枚場に伏せて、ターンエンドだよ!」

「ぐっ……おれのターン、ドロー!手札から、『ブルーサンダーT45』を召喚!」
 出臼の場に、名前通り青色の機体をした戦闘機が召喚された。

「『ブルーサンダーT45』の攻撃力は1700!『白魔導士ピケル』の1400を上回ってるぜ!バトルだ!『白魔導士ピケル』を焼き払え!サンダー・キャノン!」
 『ブルーサンダーT45』は、自らに搭載されたレーザー咆から稲妻状のレーザーを、『白魔導士ピケル』に向かって発射した!

「きゃっ!」(リナLP 500→200)
 一度にライフを半分近く削られて、リナは思わずのけぞった。

「まだ終わりじゃ無いぜ!『ブルーサンダーT45』の効果発動!このモンスターがモンスターを戦闘破壊した時、攻撃力1500の『サンダーオプショントークン』を特殊召喚するぜ!」
「え゛……。」
 出臼の場に、青色の八面体みたいな機械が現れたことに、リナは目を丸くした。


ブルーサンダーT45
光 レベル4
【機械族・効果】
このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、
自分フィールド上に「サンダーオプショントークン」
(機械族・光・星4・攻/守1500)を1体特殊召喚する。
このトークンは生け贄召喚のための生け贄にはできない。
攻撃力1700 守備力1000


「行け!『サンダーオプショントークン』!『黒魔導師クラン』を焼き払え!サンダーオプション・キャノン!」
 『サンダーオプショントークン』は、『ブルーサンダーT45』の発射したレーザーと同質のレーザーを発射し……『黒魔導師クラン』に直撃させた!

「ううっ……。ホントひどいなあ〜〜……。」(リナLP 200→100)

「おれはこれでターンエンドだ。」


現在の状況
リナ LP…500
   手札…1枚(ハリケル)
   場…魔導集会(表側表示)
     魔導学園(マジカルカウンター×2・表側表示)
     伏せカード1枚

出臼 LP…2300
   手札…2枚
   場…ブルーサンダーT45(攻撃力1700・攻撃表示)
     サンダーオプショントークン(攻撃力1500・攻撃表示)


「あたしのターン、ドロー!……伏せ罠カード『凡人の施し』を発動するね〜。カードを2枚ドローしてから、手札の通常モンスター……『ハリケル』を除外するね。」
 リナは、落ち着きを取り戻したのか、若干穏やかな口調で話した。


凡人の施し
通常罠
デッキからカードを2枚ドローし、その後手札から通常モンスターカード1枚を
ゲームから除外する。手札に通常モンスターカードがない場合、手札を全て墓地へ送る。

ハリケル
風 レベル2
【魔法使い族】
攻撃力900 守備力200


「それから、手札から『ものマネ幻想師』を召喚するかんね〜。」
 リナの場に、鏡で顔を隠したひょろひょろな幻想師が現れた。

「『ものマネ幻想師』が場に出た時、相手のモンスター1体の攻撃力と守備力をコピーできるんだ〜。この効果で、『ブルーサンダーT45』の能力をコピーするかんね〜。」
 『ものマネ幻想師』は、持っている鏡で『ブルーサンダーT45』の姿を映し出し……その力を、自らの肉体に吸収した!


ものマネ幻想師
光 レベル1
【魔法使い族・効果】
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、
このカードの攻撃力・守備力は、相手フィールド上に表側表示で存在する
モンスター1体の元々の攻撃力・守備力になる。
攻撃力0 守備力0


ものマネ幻想師 攻撃力0→1700
        守備力0→1000

「それから〜、『魔導集会(マジカル・チャット)』の効果でデッキから『マジカルフィシアリスト』を手札に加えて、『魔導学園(マジカル・アカデミー)』に乗ってるマジカルカウンターが3個になったから、『ものマネ幻想師』の攻撃力が300アップするかんね〜。」
 リナがそう言っている間に街灯の1つが明るく灯り……『ものマネ幻想師』に力を与えた!

ものマネ幻想師 攻撃力1700→2000

「いっくよ〜!『ものマネ幻想師』で、『サンダーオプショントークン』に攻撃するかんね〜。」
 『ものマネ幻想師』は、鏡から『ブルーサンダーT45』の発射したレーザーと同質のレーザーを発射し……『サンダーオプショントークン』を破壊した!

「ぐわっ!」(出臼LP 2300→1800)
「あたしは、カードを2枚場に伏せて、ターンエンドね〜。」
 リナは、軽くターンを終えた。

「ぐっ……おれのターン、ドロー!『ブルーサンダーT45』をリリースし……『巨大戦艦 ビッグ・コア』をアドバンス召喚するぜ!」
 出臼がそう言うと、青色の戦闘機が場から消え去り……名前どおり巨大で、中央にコアを持つ戦艦が現れた!

「『ビッグ・コア』は、召喚時にシールドが3つ追加される……。このシールドがある限り、おれの『ビッグ・コア』は戦闘を行って墓地に送られることは無いんだよ!」
 『ビッグ・コア』は、むき出しのコアを守るように3枚のシールドを張り、戦闘態勢に入った!


巨大戦艦 ビッグ・コア
闇 レベル6
【機械族・効果】
このカードの召喚時にカウンターを3つ置く。
このカードは戦闘によっては破壊されない。
戦闘を行った場合、ダメージステップ終了時に
このカードのカウンターを1つ取り除く。
カウンターのない状態で戦闘を行った場合、
ダメージステップ終了時にこのカードを破壊する。
攻撃力2300 守備力1100


「これで終わりだ!『ビッグ・コア』で、『ものマネ幻想師』に攻撃!ビッグコア・ファイナルキャノン!!」
 『ビッグ・コア』は、自分のシールド1枚を犠牲にし、『ものマネ幻想師』に向かって極太のレーザー咆を放った!

「ま、待って!ダメージを受ける前に、伏せ罠カード『ガード・ブロック』を発動するかんね!」
 リナが伏せておいたカードを表にすると……『ものマネ幻想師』はレーザーをまともに食らって破壊されてしまったが……その攻撃の余波は、リナに届くことはなかった!


ガード・ブロック
通常罠
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。


「な、何だとぉぉぉ!おれの『ビッグ・コア』の攻撃を堪えやがっただと!!」
「うん。だってこれが、『ガード・ブロック』の効果だもん。このカードは、相手のモンスターの攻撃で受けるあたしのダメージを0にして、カードを1枚ドローするカードなんだ。」
 リナは、『ガード・ブロック』の効果を語って、カードを1枚ドローした。


「(ぐっ……だが、次のターンまで耐えれば、『ボスラッシュ』を発動可能だ……。)おれはこれで、ターンエン……」
「じゃあこのタイミングであたしは、『エンジェル・リフト』を発動するね〜。この効果で、墓地の『黒魔導師クラン』を蘇生させるかんね〜。」
 リナの墓地に、2体の天使が来て……墓地から、小さな可愛らしい魔法使いの少女……『黒魔導師クラン』を引っ張り上げてきた!

「これで、『魔導学園(マジカル・アカデミー)』にもう1個マジカルカウンターが乗ったよ〜。」
「ちっ……ここは『ものマネ幻想師』じゃ無いのか!?ターンエンド!」
 出臼は、なぜここで『黒魔導師クラン』を蘇生させるのかさっぱり分からないまま、ターンを終えた。



「あたしのターン、ドロー!スタンバイフェイズに、クランちゃんの効果で、出臼の場のモンスターの数×300ポイントのダメージを与えるね〜。」
「ちっ……たった300じゃねえか!」
 『黒魔導師クラン』の振るうムチで少しだけライフを削られた出臼は、それがどうしたと言わんばかりの表情で話した。


黒魔導師クラン
闇 レベル2
【魔法使い族・効果】
自分のスタンバイフェイズ時、相手フィールド上に存在する
モンスターの数×300ポイントダメージを相手ライフに与える。
攻撃力1200 守備力0


出臼LP 1800→1500

「……たった?何言ってんのさ。その300ダメージのせいで、負けちゃうのに。」
 リナは、自信満々に話した。

「な、何だと!」
「今から分からせてあげるかんね。手札から、『マジカルフィシアリスト』を攻撃表示で召喚するね。」
 リナの場に、腕が機械ででき、変な服を着た魔法使いが現れた。

「『マジカルフィシアリスト』が召喚されたから、自身に魔力カウンターを1個乗せるよ。それから、『魔導学園(マジカル・アカデミー)』にマジカルカウンターが1個乗って、合計5個になったよ。これで、あたしの場のクランちゃんの攻撃力は500ポイントアップするよ。」
 『黒魔導師クラン』は、5本の街灯からのやさしい光を一身に受け……自らの魔力を高めた!

黒魔導師クラン 攻撃力1200→1700

「それから、『マジカルフィシアリスト』の効果を発動するね。このカードに乗ってる魔力カウンターを1個取りのぞいて、クランちゃんの攻撃力を500ポイントアップさせるね。」
 『マジカルフィシアリスト』は機械の手をかざし……自らの魔力を惜し気もなく『黒魔導師クラン』に分け与えた!


マジカルフィシアリスト
光 レベル2
【魔法使い族・チューナー】
このカードが召喚に成功した時、
このカードに魔力カウンターを1つ置く(最大1つまで)。
このカードに乗っている魔力カウンターを1つ取り除く事で、
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体の攻撃力を、
エンドフェイズ時まで500ポイントアップする。
攻撃力800 守備力400


黒魔導師クラン 攻撃力1700→2200

「それから……これがあたしのデッキのポリシーを表すカードだよ!装備魔法『団結の力』を、クランちゃんに装備させるかんね!」
 『黒魔導師クラン』は、仲間の『マジカルフィシアリスト』と、主人のリナの希望を一身に受け……攻撃力を圧倒的な数値に変化させた!


団結の力
装備魔法
自分のコントロールする表側表示モンスター1体につき、
装備モンスターの攻撃力と守備力を800ポイントアップする。


黒魔導師クラン 攻撃力2200→3800



「こ……攻撃力……3800!?おれの『ビッグ・コア』の攻撃力2300を軽く上回っただと!?」
 出臼は、想像以上に攻撃力の高いモンスターの登場に、驚きの色を隠せなかった。

「これで終わりだかんね!クランちゃんで、『ビッグ・コア』に攻撃!!」
 『黒魔導師クラン』は、ムチを見えないくらいの速度で振るい、『ビッグ・コア』のコアを1秒に10発近くの速さで打ち払った!
 『ビッグ・コア』のコアは、シールドに守られ破壊されなかったが……その攻撃の余波は、すべて出臼に直撃し、出臼の残りライフをぴったり削り取った!

「ぐああああっ!!」(出臼LP 1500→0)











「……ふう、よかった。やっと勝てて。」
 リナは、胸を撫で下ろし、勝利の余韻に浸っていた。

「ちっ……なんて強さだ。ほら、スターチップを渡すぜ。」
 出臼は、リナの手のひらの上に、自分のスターチップをすべて置いた。


リナ スターチップ4個→8個
出臼       4個→0個(失格)


「よ〜し、あと1回で10個貯まりそうだから、がんばるぞ〜!」
 スターチップを受け取ったリナは、意気揚々と走りだし、出臼の元を離れた……。











「あ……青森先輩……。負けちまったぜ。」
「ちっ、だらしねえ。俺様がお前等にスターチップを掻き集めるテクニックを教えてやったのによ……。……俺様はこれから勝手にやらせてもらうぜ。じゃあな。」
「ま……待ってくれ!青森先輩!」
 青森はそうはき捨てる様に言い放ち、出臼から離れていった……。











「あっ、青森先輩。出臼は勝ちましたか?」
「……負けやがったぜ。つまり、俺様とお前等3人で本線に出場することは出来なくなっちまったんだよ。……つまり……」
 青森は、突然デュエルディスクを構え……



「テメエと組む価値は無くなったって訳だ。俺様とデュエルしてもらうぜ!」
「なっ……」
 目の前の、今まで組んでいた男に、突然デュエルを申し込んだ!











「魔法カード『オーバーロード・フュージョン』を発動!!俺様はぁぁ!墓地から『融合呪印生物闇』、『ツインバレル・ドラゴン』、『ブローバック・ドラゴン』、『リボルバー・ドラゴン』、『ガトリング・ドラゴン』を除外!!現れろ!!『キメラテック・オーバー・ドラゴン』!!!」
 青森がそう叫ぶと……墓地の5体のモンスターが融合し、5本の首を持つ黒金のドラゴンへと姿を変えた!


「き……来やがった!これが青森先輩の切り札……『キメラテック・オーバー・ドラゴン』!」
 男は、突然現れた、攻撃力4000のモンスターに呆然としていた……。



「食らいな!!!『キメラテック・オーバー・ドラゴン』の攻撃!!エヴォリューション・レザルト・バァーーーーストォ!!!!グォルェンダァ!!!!」
 『キメラテック・オーバー・ドラゴン』は、5本の首から、1本だけで相手に止めを刺せる程の極太レーザーを5本も相手の場のモンスターに射出し……相手のライフを一瞬で削り取った!











「……雑魚が!テメエなんざが、外道流派(サイバー流の腰巾着共に太刀打ちできるかよ!」
 青森は、負けた男に対して、はき捨てる様に言い放ち、スターチップを奪い取った。


青森 スターチップ3個→6個



「……見てな……。外道流派(サイバー流の腰巾着共……。外道流派の実力は、凶悪なカードによるものだって事を、俺様が直々に教えてやらあ……。」
 青森は、力強く握りこぶしを作り、ボソッとつぶやいた……。










「この……外道融合体……『キメラテック・オーバー・ドラゴン』でよ……。」




第二十九話 強力ライバルの協力デュエル!?(前編) 魔導王の強襲!

「さて……オレのスターチップは7枚だから、賭ける個数次第では後1回で本戦に出場できるッスね……。」
 カムイは、右手にはめたグローブに付けたスターチップを眺めながら歩いていた……。

「そう来ると……最後のデュエルは……雷人とやった方がいいんスかね……。」
 カムイは、昨日の話について、よくよく考えていた……。




















「オレの勝ちッスね!佐寺!」
「ちっ……やるじゃねえかぁ!雷人がライバル視するだけのことはあるなぁ!!」
「え!?雷人って、オレのことをライバル視してるんスか!?」

(第十七話より)





















「……カムイ!おれが負けたからって、調子に乗るなよ!雷人は、おれよりかなり強いからな!」
「……確かに、2ヵ月近く前に、雷人のデュエルを1回見たことがあるんスけど、かなり強かったんスよね……。」

……………

「なあ、カムイ。……雷人って、誰だ?」
「あれ、センリは知らなかったんスか?……『スーパージェネックス』の開催予告をされた日に、見たと思うんスけど。」
「もしかして……あの時、リナに蹴られてうずくまってた男の事か?」
「そうッスよ。」

……………

「なるほど……。そんな事があったのか。……リナには、そんな事をする印象は無かったんだけどね……。」
「まあ……誰だってピンチになれば、それ位すると思うッスよ。」

……………

「……覚えとけ!カムイ!おれは失格になったが……いずれ雷人が、お前の前に強敵として立ちはだかるぜ!その時までせいぜい勝ち残るんだな!じゃあな!!」

(第二十四話より)





















「佐寺も石谷も、雷人をオレとデュエルさせるために、雷人に協力しているような発言をしてたんスよね……。……なら、オレから雷人にデュエルを申し込むのも有りッスね……。」
 カムイは、腕を組みながら小さな声で話していた。


「誰を捜しているんだ?」
 一人の、男が、腕を組みながら歩いているカムイの肩をつかんだ。

「ん?……雷人。何か様ッスか?」
 カムイは、今まで考えていた事を悟られない様に、雷人に対してごく自然に話し掛けた。

「ああ。……俺もお前を捜していたんだぜ。……デュエルを申し込むためにな。」
 雷人は、左手のデュエルディスクを構えながら話した。


「……で、スターチップは何個持ってるんスか?」
「6個だぜ。お前もそれぐらい持ってるよな?」
「ああ。そうッスよ。」
 雷人の返答に対し、カムイも軽く返答した。











「……やっと見つけたぜぇぇぇぇ!雷人!!」
 向かい合っているカムイと雷人に対して、黒い魔術師のような服を着、長い杖みたいなものを持った男が話し掛けてきた。

「おぉ、やっと見つけたか、ケーン!」
 カムイと雷人に話し掛けた男――ケーンに対し、白い神官のような服を着、長い杖みたいなものを持った男が話し掛けた。


「ケーン、ルーク……。いったい何の様だ?」
 雷人は、『熟練の黒魔術師』の格好をしたケーンと、『熟練の白魔導師』の格好をしたルークに、少し動揺しながら話し掛けた。


「俺はなあ……お前に復讐するために、この大会の間お前を捜し回ってたんだよ!俺とデュエルしな!」
 ケーンは、左手のデュエルディスクを、雷人に向かって構えた。

「まあ待て、ケーン。おれも雷人に復讐する機会をうかがっていたから、おれにもやらせてもらうぜ。」
 そう言いながらルークも、左手のデュエルディスクを構えた。


「おいおい……ケーン、ルーク……。お前等は、タッグデュエルを申し込んでいるのか?」
 雷人は、何かを悟ったかの様な表示で質問した。

「タッグデュエル?……雷人は、ケーンとルークと、タッグデュエルをやった事があるんスか?」
 カムイは、デュエルの邪魔をした2人の事を雷人が知っていると言う事実に、少し驚いていた……。

「そうだぜ!12日前に、俺とリナちゃんの最強タッグでな!羨ましいだろ!カムイ!」
 雷人は、その時の事を思い出しながら、楽しそうに話した。



「……やっぱり、12日前にリナを見かけてないって言った事は、嘘だったんスね。」
「ま……まあな。(……覚えてたのか……。カムイの奴……。)」
 雷人は、その時ついた嘘がばれてしまった事に、少し戸惑いを覚えていた。



「まあ……オレは別に雷人とタッグを組んでもいいんスけど……雷人は大丈夫ッスか?」
「大丈夫だぜ。俺は意外とタッグデュエルが得意だからな。」
 雷人は、軽く答えた。

「で、スターチップは何個賭けるんスか?」
「おれは2個、ケーンは3個の全賭けだ!お前等はどうする!?」
 カムイの問い掛けに答えたルークは、質問を返した。



「(オレは7個、雷人は6個……。普通なら、オレが3個賭けて本戦出場をねらうのが正しいんスけどね……。)」
 カムイは、腕を組みながら少し考え……


「……オレが2個、雷人が3個賭ける事でいいッスか?」
「いいぜ!俺達の力、思い知らせてやろうぜ!」
 雷人は、自信満々に答えた。

「決まりだな!さあ、始めるぜ!!」











「「「「デュエル!!」」」」

ターンの流れは、ルーク、雷人、ケーン、カムイの順番で行われるみたいだ。

「おれのターン、ドロー!見せてやるぜ!これがおれ達のデッキを支えるフィールド魔法……『魔法都市エンディミオン』だ!」
 ルークがそう言いながら、手札の1枚のカードをフィールド魔法カードゾーンに置くと……中央の巨大な塔を中心に中世風の町が広がっていき……巨大な塔を中心に、不思議な魔導文字がリングの様に浮かび上がった!

「『魔法都市エンディミオン』は、魔法カードが発動するたびに魔力カウンターが1個乗り、1ターンに1度だけ、他のカードの魔力カウンターのコストを肩代わりさせる事ができるぜ!さらに、このカードが効果で破壊される場合に、乗っている魔力カウンターが代わりに取りのぞかれるんだぜ!」
 ルークは、『魔法都市エンディミオン』の効果を長々と語った。


魔法都市エンディミオン
フィールド魔法
自分または相手が魔法カードを発動する度に、
このカードに魔力カウンターを1つ置く。
魔力カウンターが乗っているカードが破壊された場合、
破壊されたカードに乗っていた魔力カウンターと
同じ数の魔力カウンターをこのカードに置く。
1ターンに1度、自分フィールド上に存在する魔力カウンターを
取り除いて自分のカードの効果を発動する場合、
代わりにこのカードに乗っている魔力カウンターを取り除く事ができる。
このカードが破壊される場合、代わりに
このカードに乗っている魔力カウンターを1つ取り除く事ができる。


「さらにおれは、魔法カード『魔力掌握』を発動するぜ!『魔法都市エンディミオン』に魔力カウンターを1個乗せ、デッキから『魔力掌握』を手札に加えるぜ!さらに、自身の効果でもう1個魔力カウンターを乗せるぜ!」
 ルークが自分のデッキの中から『魔力掌握』を探している間に、巨大な塔の周りに、逆三角形のマークが付いた、黒色の球体――魔力カウンターが2個周回し始めた!


魔力掌握
通常魔法
フィールド上に表側表示で存在する魔力カウンターを
乗せる事ができるカード1枚に魔力カウンターを1つ置く。
その後、自分のデッキから「魔力掌握」1枚を手札に加える事ができる。
「魔力掌握」は1ターンに1枚しか発動できない。


魔法都市エンディミオンに乗った魔力カウンター 0個→2個

「おれは……『見習い魔術師』を攻撃表示で召喚!効果で『魔法都市エンディミオン』に魔力カウンターを1個乗せるぜ!」
 ルークの場に、金髪の小柄な魔術師が現れ、その魔術師が杖を振るうと、『魔法都市エンディミオン』の塔にさらにもう1個の黒色の球体が発生した!


見習い魔術師
闇 レベル2
【魔法使い族・効果】
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、
フィールド上に表側表示で存在する魔力カウンターを
置く事ができるカード1枚に魔力カウンターを1つ置く。
このカードが戦闘によって破壊された場合、
自分のデッキからレベル2以下の魔法使い族モンスター1体を
自分フィールド上にセットする事ができる。
攻撃力400 守備力800


魔法都市エンディミオンに乗った魔力カウンター 2個→3個

「カードを3枚場に伏せ、ターンエンド!」



「攻撃力400をさらけ出してまで魔力カウンターを補充するか……。何をねらってるんだ?……俺のターン、ドロー!手札から、『カードガンナー』を攻撃表示で召喚するぜ!」
 雷人の場に、手がレーザー砲みたいな形をした、小さな機械が現れた。

「『カードガンナー』の効果を発動するぜ!デッキの上からカードを3枚墓地に送り、攻撃力を1500ポイントアップさせる!」
 雷人が、デッキの上から『充電器』、『電池メン−単三型』、『電池メン−ボタン型』を墓地に送ると……『カードガンナー』は、自らの攻撃力を大幅にアップさせた!


カードガンナー
地 レベル3
【機械族・効果】
1ターンに1度、自分のデッキの上からカードを3枚まで墓地へ送って発動する。
このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで、
墓地へ送ったカードの枚数×500ポイントアップする。
また、自分フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。
攻撃力400 守備力400


カードガンナー 攻撃力400→1900

「バトルだ!『カードガンナー』で、『見習い魔術師』に攻撃!」
 『カードガンナー』は、両腕のレーザー砲から、攻撃表示の『見習い魔術師』に向かってレーザーを放つが……

「甘いぜ!雷人!速攻魔法『月の書』を発動するぜ!このカードの効果で、『見習い魔術師』を裏側守備表示に変更だ!魔法カードが発動したことで、『魔法都市エンディミオン』に魔力カウンターが1個乗るぜ!」
 そう言うと、ルークの場の『見習い魔術師』が真っ暗な闇に包み込まれ……塔の周りに4個目の魔力カウンターが発生した!


月の書
速攻魔法
表側表示でフィールド上に存在するモンスター1体を裏側守備表示にする。


魔法都市エンディミオンに乗った魔力カウンター 3個→4個

「だが、『見習い魔術師』の守備力じゃあ、『カードガンナー』の攻撃は耐えられないぜ!」
 雷人の言葉通り、『カードガンナー』の放ったレーザーが、『見習い魔術師』を軽く貫いた!

「『見習い魔術師』が戦闘破壊された事で、デッキからレベル2以下の魔法使い族を1体裏側守備表示で特殊召喚できるぜ!さらに、守備表示の『見習い魔術師』が戦闘破壊された事で……伏せ罠カード『ブロークン・ブロッカー』を発動ぉぉぉ!!」
 ルークがそう言うと、場にいた『見習い魔術師』と同じ姿のモンスターが2体も現れた!

「何!ここで『ブロークン・ブロッカー』か!」
 雷人は、ルークが発動させたカードに驚いていた……。

「そうだぜ!『ブロークン・ブロッカー』の効果でデッキから『見習い魔術師』を表側守備表示で2体……『見習い魔術師』の効果で、デッキから『執念深き老魔術師』を裏側守備表示で特殊召喚したぜ!」
 ルークは、自分の場に並んだ3体のモンスターの内容を、自信満々に語った。


ブロークン・ブロッカー
通常罠
自分フィールド上に存在する攻撃力より守備力の高い守備表示モンスターが、
戦闘によって破壊された場合に発動する事ができる。
そのモンスターと同名モンスターを2体まで
自分のデッキから表側守備表示で特殊召喚する。


「2体の『見習い魔術師』の効果発動だ!『魔法都市エンディミオン』に、魔力カウンターを2個乗せるぜ!」
 2体の『見習い魔術師』が杖を振るうと、『魔法都市エンディミオン』の塔に2個の魔力カウンターが発生し、『魔法都市エンディミオン』に乗っている魔力カウンターの合計が6個になった!

魔法都市エンディミオンに乗った魔力カウンター 4個→6個

「魔力カウンター6個か……。あれを打たれるとまずいな……。カードを2枚場に伏せ、ターンエンド!」
 雷人は、慎重にターンを終えた。


現在の状況
ルーク&ケーン LP…4000
        手札…1枚・5枚
        場…見習い魔術師×2(守備力800・守備表示)
          裏守備モンスター(執念深き老魔術師)
          魔法都市エンディミオン(魔力カウンター×6)
          伏せカード1枚

雷人&カムイ LP…4000
       手札…3枚・5枚
       場…カードガンナー(攻撃力400・攻撃表示)
         伏せカード2枚


「俺のターンだ!ドロー!手始めに、『執念深き老魔術師』を反転召喚するぜ!リバース効果で、『カードガンナー』を破壊してやるぜ!」
 ケーンの場の、赤い服を着た老婆が杖から魔力を放つと、『カードガンナー』が粉々に砕け散った!

「『カードガンナー』が破壊された事で、効果が発動するぜ!カードを1枚ドロー!」
 雷人は、『カードガンナー』が破壊された様子を見てから、カードを1枚ドローした。

「……雷人!まだ俺達のデッキの切り札が、『メガトン魔導キャノン』だと思ってねえか!?」
「何!違うのか!?」
 ケーンの突然の一言に、雷人は驚いた。

「……見せてやるぜ!俺達のデッキの切り札をなあ!魔法カード『おろかな埋葬』を発動だぁぁぁぁ!!デッキから、『神聖魔導王 エェンディィミオォン(エンディミオン)』を墓地に送るぜ!『魔法都市エンディミオン』にさらに1個魔力カウンターが乗ったぜ!」
 ケーンは、デッキから1枚のカードを探し出し、墓地に送った。


おろかな埋葬
通常魔法
自分のデッキからモンスター1体を選択して墓地へ送る。
その後デッキをシャッフルする。


魔法都市エンディミオンに乗った魔力カウンター 6個→7個

「行くぜぇぇぇぇ!『魔法都市エンディミオン』に乗った魔力カウンターを6個取り除き……」
 ケーンの言葉に反応し、塔の周りを回っていた7個の魔力カウンターの内、6個が一点に収束して激しい光を放ち……











「蘇れぇぇぇぇ!!『神聖魔導王 エェンディィミオォン(エンディミオン)』!!!!」
 その光の中から、目の部分を隠した黒い仮面を身に付け、背中に白銀のリングを背負い、黒い魔術師のローブを着、右手に杖を持った、魔術師の王が姿を現した!



「何!……魔力カウンターを糧に特殊召喚される最上級モンスターだと!?」
「『神聖魔導王 エンディミオン』……。名前からして、『魔法都市エンディミオン』を治める王みたいな感じなんスかね……。」
 雷人とカムイは、ケーンの場に現れた『神聖魔導王 エンディミオン』の姿に驚いていた……。


「それだけじゃあねえぜ!『神聖魔導王 エェンディィミオォン(エンディミオン)』が自身の効果で特殊召喚された場合、墓地から魔法カードを1枚手札に加えられるんだぜえ!この効果で、『月の書』を手札に戻すぜえ!……相棒!『月の書』をいったん貸してもらうぜ!」
「いいぜ!ケーン!受け取れ!」
 ケーンは、ルークが墓地から取り出した『月の書』を受け取り、手札に加えた。


神聖魔導王 エンディミオン
闇 レベル7
【魔法使い族・効果】
このカードは自分フィールド上に存在する
「魔法都市エンディミオン」に乗っている魔力カウンターを6つ取り除き、
自分の手札または墓地から特殊召喚する事ができる。
この方法で特殊召喚に成功した時、
自分の墓地に存在する魔法カード1枚を手札に加える。
1ターンに1度、手札から魔法カード1枚を捨てる事で、
フィールド上に存在するカード1枚を破壊する。
攻撃力2700 守備力1700


「さらに、ルークが伏せた魔法カード……『魔力掌握』を発動するぜえ!『魔法都市エンディミオン』に魔力カウンターを1個乗せ、デッキから『魔力掌握』を手札に加えるぜ!さらに、魔法カードが発動した事で、『魔法都市エンディミオン』に魔力カウンターが1個乗ったぜ!」
 ケーンは、3個の魔力カウンターが周回する事になった塔を見ながら話した。

魔法都市エンディミオンに乗った魔力カウンター 1個→3個

「行くぜぇぇぇぇ!『神聖魔導王 エェンディィミオォン(エンディミオン)』で、ダイレクトアタック!魔・導・爆・裂・波!!」
 『神聖魔導王 エンディミオン』は、右手に持った杖から魔力を放ち、雷人の足元の大地を炸裂させようとしたが……


「待て!攻撃宣言時に、伏せ罠カード……『進入禁止!No Entry!!』を発動するぜ!このカードの効果で、『神聖魔導王 エンディミオン』と『執念深き老魔術師』を守備表示に変更する!」
 そう言うと、『進入禁止!No Entry!!』の中から警備員軍団が現れ……『神聖魔導王 エンディミオン』と『執念深き老魔術師』に、無理矢理守備態勢を取らせた!


進入禁止!No Entry!!
通常罠
フィールド上に攻撃表示で存在するモンスターを全て守備表示にする。


「何だと!そのカードかよ!仕方ねえ!カードを3枚場に伏せ、ターンエンド!」
 ケーンは、残念そうにターンを終えた。



「やっとオレのターンッスね!ドロー!手札から、魔法カード『融合』を発動ッス!手札の『スパークマン』と『ネクロダークマン』を融合し……『E・HERO ダーク・ブライトマン』を融合召喚!」
 カムイの手札の、稲妻を操るヒーローと、かぎ爪を持ったヒーローが融合し……闇の雷を操るヒーローが姿を現した!

魔法都市エンディミオンに乗った魔力カウンター 3個→4個

「だかな!魔法カードが発動された事で、『魔法都市エンディミオン』に魔力カウンターが1個乗ったぜ!」
「それぐらい分かってるッスよ!さらに、墓地の『ネクロダークマン』の効果を発動するッスよ!手札から、『E・HERO』と名のつくモンスター……『E・HERO エッジマン』をリリース無しで召喚するッスよ!」
 カムイがさらにもう1枚のカードをデュエルディスクに置くと……全身金色で、両腕に長い刄を持ったヒーローが現れた!


E・HERO ネクロダークマン
闇 レベル5
【戦士族・効果】
このカードが墓地に存在する限り、自分は「E・HERO」と
名のついたモンスター1体を生け贄なしで召喚する事ができる。
この効果はこのカードが墓地に存在する限り1度しか使用できない。
攻撃力1600 守備力1800


「行くッスよ!『ダーク・ブライトマン』で、『神聖魔導王 エンディミオン』に攻撃ッス!ダークフラッシュ!」
 『ダーク・ブライトマン』は、右手から黒色の雷を放ち、『神聖魔導王 エンディミオン』の体を貫いた!


「ぐあっ!……貫通効果を持ってやがったか!」(ケーン&ルークLP 4000→3700)
 少しだけダメージを受けた事で、ケーンは驚いた。

「攻撃し終わった『ダーク・ブライトマン』は、守備表示になるんスけど……まだ『エッジマン』の攻撃が残ってるッスよ!『エッジマン』で、『執念深き老魔術師』に攻撃ッス!パワーエッジ・アタック!」
 『エッジマン』は、右手の刄を振りかざし、『執念深き老魔術師』に向かって突撃するが……


「待ちな!速攻魔法『月の書』を発動するぜ!『エッジマン』を裏側守備表示に変更してやるぜ!」
 そう言うと、カムイの場の『エッジマン』が闇に包み込まれ、守備態勢を取らざるを得なくなった!

魔法都市エンディミオンに乗った魔力カウンター 4個→5個

「『月の書』が発動された事で、『魔法都市エンディミオン』に魔力カウンターが1個乗ったぜ!」
「ぐっ……まあ、強力な速攻魔法の『月の書』を浪費させれたからいいんスけどね……。カードを2枚場に伏せ、ターンエン……」
 カムイがターンを終えようとした瞬間に、ケーンは……


「エンドフェイズに、伏せ罠カード『砂塵の大竜巻』を発動するぜ!お前が伏せた……一番左のカードを破壊させてもらうぜ!」
「なっ……エンド砂塵を使われちまったッスね……。」
 カムイは、自分が伏せた『ゴブリンのやりくり上手』が、発動する機会すら与えられずに破壊されてしまった事を、残念に感じていた……。

「『砂塵の大竜巻』の第2効果だ!俺の手札の魔法・罠カードを1枚伏せさせてもらうぜ!」
「自分の手札を伏せるんスか?自分のターンで伏せる方法もあったと思うんスけど……」
 カムイは、ケーンが『砂塵の大竜巻』の第2効果を使う意図が一瞬読み取れなかったが……











「……!!まさか!」
 ある事に気付いたカムイは、突然大声をあげた。

「そう言う事か……。俺も読めたぜ!カムイ!」
 雷人も、カムイの言葉である事に気付いた……。


現在の状況
ケーン&ルーク LP…3700
        手札…3枚・1枚
        場…見習い魔術師×2(守備力800・守備表示)
          執念深き老魔術師(守備力600・守備表示)
          魔法都市エンディミオン(魔力カウンター×5)
          伏せカード2枚

カムイ&雷人 LP…4000
       手札…0枚・4枚
       場…E・HERO エッジマン(守備力1800・守備表示)
         E・HERO ダーク・ブライトマン(守備力1000・守備表示)
         伏せカード2枚


「おれのターン、ドロー!」
 カードをドローし、伏せカードを確認したルークは……

「……なるほどな。」
 軽く笑みを浮かべながら、ケーンに話し掛けた。


「伏せ魔法カード『魔力掌握』を発動だ!『魔法都市エンディミオン』に魔力カウンターを1個乗せ、自身の効果でもう1個魔力カウンターを乗せるぜ!さらにデッキから、『魔力掌握』を手札に加えるぜ!」
 ルークは、ケーンのターンに伏せられたカードを表にし、デッキから最後の『魔力掌握』を探し出した。

魔法都市エンディミオンに乗った魔力カウンター 5個→7個

「魔力カウンターが7個……まさか、また『神聖魔導王 エンディミオン』を蘇生させるんスか?」
「ああ!『魔法都市エンディミオン』に乗った魔力カウンターを6個取り除き……蘇れ!『神聖魔導王 エンディミオン』!!」
 ルークの場の塔を中心に周回している7個の魔力カウンターの内、6個が収束し……墓地より『神聖魔導王 エンディミオン』が蘇った!

「『神聖魔導王 エンディミオン』の効果で、墓地から『月の書』を手札に加えるぜ!」
「『月の書』だな!受け取れ!相棒!」
 ケーンは、ルークから借りた『月の書』を返す形で、ルークに手渡した。

「さらに……伏せ魔法カード……」
 そう言いながらルークは、ケーンが『砂塵の大竜巻』の効果で伏せたカードに手をかけた……。











「1000ライフを払い……『拡散する波動』……発動ぉぉぉ!!」
 ルークの言葉に反応し、『神聖魔導王 エンディミオン』は、右手に持った杖に、膨大な魔力を収束し始めた!



「!!……やっぱり……その系統のカードを伏せたんスね!」
「そうか……!そのカードは、使うタイミングが限定されるからな……。」
 カムイと雷人は、伏せカードの系統が想像通りだった事に、驚いていた……。


 本来、タッグデュエルの場合、相手のターンが終わった場合パートナーのターンに移ってしまう……。
 そのため、自分の手札に残した、使いたい魔法カードを返しのターンですぐに使う事は不可能だ……。

 しかし、パートナーに使わせたいカードを、『砂塵の大竜巻』でエンドフェイズに伏せる……。
 こうすれば、タッグデュエルでは不可能な手札の共有を、疑似的に可能になるのだ……。











「食らえ!『神聖魔導王 エンディミオン』で、カムイの場のモンスターを全滅させるぜ!超・魔・導・破・砕・弾!!!!」
 ルークの命令を聞き付け、『神聖魔導王 エンディミオン』は、杖に収束させた魔力を一気に弾丸という形で解放し……カムイの場の『ダーク・ブライトマン』と『エッジマン』を一瞬で粉砕した!


拡散する波動
通常魔法
1000ライフポイントを払う。
自分フィールド上のレベル7以上の魔法使い族モンスター1体を選択する。
このターン、選択したモンスターのみが攻撃可能になり、
相手モンスター全てに1回ずつ攻撃する。
この攻撃で破壊された効果モンスターの効果は発動しない。


魔法都市エンディミオンに乗った魔力カウンター 1個→2個

「ぐっ……。『拡散する波動』の効果で、『ダーク・ブライトマン』の効果は発動しないんスね……。」
 カムイは、残念そうに話した……。


E・HERO ダーク・ブライトマン
闇 レベル6
【戦士族・融合・効果】
「E・HERO スパークマン」+「E・HERO ネクロダークマン」
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
このカードの攻撃力が守備表示モンスターの守備力を超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
このカードは攻撃した場合、ダメージステップ終了時に守備表示になる。
このカードが破壊された時、相手フィールド上のモンスター1体を破壊する。
攻撃力2000 守備力1000


「どうだ!これでお前等のモンスターは全滅したぜ!ターンエン……」
「ならこのタイミングで、永続罠カード……『携帯型バッテリー』を発動するッスよ!この効果で、墓地の『電池メン−ボタン型』と『電池メン−単三型』を攻撃表示で特殊召喚!」
 カムイは、雷人が伏せたカードを表にすると、雷人の墓地から、丸い体の小さな電池メンと、体に『3』の文字が刻まれた、円柱型の電池メンが、バッテリーから電力を供給され、場に復活した!


携帯型バッテリー
永続罠
自分の墓地から「電池メン」と名のついたモンスター2体を選択し、
攻撃表示で特殊召喚する。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを全て破壊する。
そのモンスターが全てフィールド上から離れた時このカードを破壊する。


現在の状況
ルーク&ケーン LP…3700
        手札…2枚・3枚
        場…神聖魔導王 エンディミオン(攻撃力2700・攻撃表示)
          見習い魔術師×2(守備力800・守備表示)
          執念深き老魔術師(守備力600・守備表示)
          魔法都市エンディミオン(魔力カウンター×5)
          伏せカード2枚

カムイ&雷人 LP…4000
       手札…0枚・4枚
       場…電池メン−ボタン型(攻撃力100・攻撃表示)
         電池メン−単三型(攻撃力1000・守備表示)
         携帯型バッテリー(電池メン−ボタン型と電池メン−単三型を対象)
         伏せカード1枚


「(いいタイミングだぜ……。カムイ……。)」
 場の状況では、カムイと雷人が明らかに不利だが……雷人は、軽く笑みを浮かべていた……。


「――俺のターン!」




第三十話 強力ライバルの協力デュエル!?(後編) 裁きの雷!

「――ドロー!」
 雷人は、ドローしたカードと手札を確認し、軽く笑みを浮かべた……。

「……行くぜ!『電池メン−ボタン型』をリリースし、『充電池メン』をアドバンス召喚!」
 雷人がそう言うと、丸い体の小さな電池メンが場から消え去り……

「『充電池メン』の効果を発動するぜ!デッキから、レベル4以下の電池メン……『電池メン−単三型』を特殊召喚!」
 『充電池メン』が、自らの電力を『電池メン−単三型』に注ぎ込むと……『電池メン−単三型』の首の辺りからマフラーの様な電気が発生し、活動を始めた!


充電池メン
光 レベル5
【雷族・効果】
このカードの召喚に成功した時、自分の手札またはデッキから
「充電池メン」以外の「電池メン」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する事ができる。
このカードの攻撃力・守備力は、自分フィールド上に表側表示で存在する
雷族モンスターの数×300ポイントアップする。
攻撃力1800 守備力1200


「『電池メン−単三型』は、場の攻撃表示の同名モンスター1体につき、攻撃力が1000ポイントアップするぜ!俺の場の『電池メン−単三型』は2体攻撃表示だ!よって、『電池メン−単三型』の攻撃力は2000だぜ!」
 『電池メン−単三型』は、お互いのマフラー状の電気を繋げ合い……攻撃力を高め合った!


電池メン−単三型
光 レベル3
【雷族・効果】
自分フィールド上の「電池メン−単三型」が全て攻撃表示だった場合、
「電池メン−単三型」1体につきこのカードの攻撃力は1000ポイントアップする。
自分フィールド上の「電池メン−単三型」が全て守備表示だった場合、
「電池メン−単三型」1体につきこのカードの守備力は1000ポイントアップする。
攻撃力0 守備力0


「待ちな!『電池メン−単三型』が特殊召喚に成功した時に……速攻魔法『月の書』を発動!『充電池メン』には裏側守備表示になってもらうぜ!ついでに、『魔法都市エンディミオン』に魔力カウンターが1個乗るぜ!」
 ルークが伏せカードを表にすると、『充電池メン』が闇に包み込まれ……裏側守備態勢を取らざるを得なくなった!


月の書
速攻魔法
表側表示でフィールド上に存在するモンスター1体を裏側守備表示にする。

魔法都市エンディミオン
フィールド魔法
自分または相手が魔法カードを発動する度に、
このカードに魔力カウンターを1つ置く。
魔力カウンターが乗っているカードが破壊された場合、
破壊されたカードに乗っていた魔力カウンターと
同じ数の魔力カウンターをこのカードに置く。
1ターンに1度、自分フィールド上に存在する魔力カウンターを
取り除いて自分のカードの効果を発動する場合、
代わりにこのカードに乗っている魔力カウンターを取り除く事ができる。
このカードが破壊される場合、代わりに
このカードに乗っている魔力カウンターを1つ取り除く事ができる。


魔法都市エンディミオンに乗った魔力カウンター 2個→3個

「雷人!!お前がこのタイミングで3体の電池メンを並べた訳は……『漏電』の発動をねらっての事だろ!『漏電』によっておれ達の場を全滅させれば、一瞬で勝負を終わらせられるからな!」
「……そうだな。」
 雷人は、自分の手札に眠る『漏電』のカードを眺めながら、軽く答えた。

「……だが!俺の手札には、まだ全滅魔法が眠っているんだぜ!手札から、魔法カード『魔霧雨』を発動だ!俺の場の雷族モンスター……『電池メン−単三型』の攻撃力2000以下の守備力の相手モンスターをすべて破壊させてもらうぜ!」
 雷人がそう言うと、ルークの場の『神聖魔導王 エンディミオン』、『執念深き老魔術師』、2体の『見習い魔術師』を霧雨が覆い……『電池メン−単三型』がマフラーの様な電気をスパークさせると、ルークの場のモンスターすべてが、感電して破壊された!


魔霧雨
通常魔法
自分のフィールド上「デーモンの召喚」か雷族モンスター1体を指定する。
指定モンスターの攻撃力以下の守備力を持つ相手表側表示のモンスターを全て破壊する。
このカードを発動する場合、このターンのバトルフェイズを行う事はできない。


魔法都市エンディミオンに乗った魔力カウンター 3個→4個

「何!……おれの場のモンスターが、全滅だと!?」
 ルークは、空になった自分の場を見て、驚いていた……。

「どうだ!『魔霧雨』を発動したターンは攻撃ができないが……カードを2枚場に伏せ、ターンを終了するぜ!」

「ちっ……。俺のターン!ドロー!伏せ魔法カード『魔力掌握』を発動するぜ!自身の効果を含め、『魔法都市エンディミオン』に魔力カウンターを2個乗せ……デッキから『魔力掌握』を1枚手札に加えるぜ!」
 ケーンは、デッキから2枚目となる『魔力掌握』を探し出し、手札に加えた。


魔力掌握
通常魔法
フィールド上に表側表示で存在する魔力カウンターを
乗せる事ができるカード1枚に魔力カウンターを1つ置く。
その後、自分のデッキから「魔力掌握」1枚を手札に加える事ができる。
「魔力掌握」は1ターンに1枚しか発動できない。


魔法都市エンディミオンに乗った魔力カウンター 4個→6個


「まだまだ魔力カウンターを貯めさせてもらうぜ!!手札から、魔法カード『精神統一』を発動だぁ!!デッキから、『精神統一』を手札に加えるぜ!!」
 ケーンがさらに魔法カードを発動させた事によって、『魔法都市エンディミオン』に、もう1個の魔力カウンターが発生した!


精神統一
通常魔法
この魔法は1ターンに1度しか発動できない。
自分のデッキから「精神統一」を1枚選択し手札に加える。


魔法都市エンディミオンに乗った魔力カウンター 6個→7個

「『魔法都市エンディミオン』に乗った魔力カウンターを6個取り除き……蘇れぇぇぇぇ!!『神聖魔導王 エェンディィミオォン(エンディミオン)』!!!!」
 『魔法都市エンディミオン』に集結した7個の魔力カウンターの内、6個が収束し……再び、目の部分を隠した黒い仮面を身に付け、背中に白銀のリングを背負い、黒い魔術師のローブを着、右手に杖を持った、魔術師の王が蘇った!

魔法都市エンディミオンに乗った魔力カウンター 7個→1個

「はーっはっはっは!!エンディミオンは滅びん!何度でも蘇るさ!」
 ケーンは、笑いながらカムイと雷人に話し掛けた。

「『神聖魔導王 エェンディィミオォン(エンディミオン)』の効果を発動するぜぇぇぇぇ!!墓地から、『月の書』を手札に加えるぜ!!」
「分かったぜ!受け取れ!ケーン!」
 ルークは、墓地から『月の書』のカードを探し、ケーンに手渡した。


神聖魔導王 エンディミオン
闇 レベル7
【魔法使い族・効果】
このカードは自分フィールド上に存在する
「魔法都市エンディミオン」に乗っている魔力カウンターを6つ取り除き、
自分の手札または墓地から特殊召喚する事ができる。
この方法で特殊召喚に成功した時、
自分の墓地に存在する魔法カード1枚を手札に加える。
1ターンに1度、手札から魔法カード1枚を捨てる事で、
フィールド上に存在するカード1枚を破壊する。
攻撃力2700 守備力1700


「手札から『魔法都市エンディミオン』を捨て、『神聖魔導王 エェンディィミオォン(エンディミオン)』の効果発動するぜぇぇぇぇ!!『電池メン−単三型』を粉砕しろ!」
 『神聖魔導王 エンディミオン』の持っている杖に、周りの細かい魔力が収束していき……その魔力を解き放つ事で、『電池メン−単三型』を1体粉砕した!

電池メン−単三型 攻撃力2000→1000

「何!……そんな効果まであるのか!?」
 雷人は、『電池メン−単三型』が残り1体になってしまった事で、攻撃力が大幅に下がった『電池メン−単三型』を残念そうに見ていた。

「食らえぇぇぇぇ!!『神聖魔導王 エェンディィミオォン(エンディミオン)』で、『電池メン−単三型』に攻撃!!魔・導・爆・裂・波!!!!」
 『神聖魔導王 エンディミオン』は、杖から光の玉を放ち、『電池メン−単三型』を破壊しようとするが……

「待て!伏せ罠カード発動!『くず鉄のかかし』!!この効果で、『神聖魔導王 エンディミオン』の攻撃を無効にするぜ!」
 雷人は、カムイが伏せたカードを表にすると、『電池メン−単三型』の目の前に、突然廃材でできたかかしが地面から生えてきて……『神聖魔導王 エンディミオン』の攻撃を代わりに受け止めた!

「発動した『くず鉄のかかし』は、墓地に送られずに再びセットされるぜ!……罠カードはセットされたターンには発動できないから、実質1ターンに1度しか使えない事になるがな。」
 『くず鉄のかかし』は、地面の中に帰っていき、次の攻撃に備えた。


くず鉄のかかし
通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
相手モンスター1体の攻撃を無効にする。
発動後このカードは墓地に送らず、そのままセットする。


「ちっ……めんどくせえカードを使いやがって!だが、『くず鉄のかかし』の場所は分かったぜ!次のターンですぐ破壊してやるよ!カードを3枚場に伏せ、ターンエンド!」


現在の状況
雷人&カムイ LP…4000
       手札…1枚・0枚
       場…充電池メン(守備力1200・裏側守備表示)
         電池メン−単三型(攻撃力1000・攻撃表示)
         伏せカード3枚(内1枚くず鉄のかかし)

ケーン&ルーク LP…2700
        手札…2枚・2枚
        場…神聖魔導王 エンディミオン(攻撃力2700・攻撃表示)
          魔法都市エンディミオン(魔力カウンター×2)
          伏せカード3枚


「オレのターン、ドロー!」
 カムイは、雷人が伏せたカードを軽く確認した。

「……雷人!この伏せカード、使わせてもらうッスよ!伏せ罠カード『ゴブリンのやりくり上手』を発動ッス!それにチェーンして、速攻魔法『非常食』を発動するッスよ!まずは『非常食』のコストで『ゴブリンのやりくり上手』を墓地に送って、ライフを1000回復し……『ゴブリンのやりくり上手』の効果で、デッキから、墓地の『ゴブリンのやりくり上手』の枚数……2枚+1枚カードをドローし、手札を1枚デッキの1番下に戻すッスよ!」
 カムイは、雷人が伏せた2枚のカードを使い、手札とライフを補充した。


ゴブリンのやりくり上手
通常罠
自分の墓地に存在する「ゴブリンのやりくり上手」の枚数+1枚を
自分のデッキからドローし、自分の手札を1枚選択してデッキの一番下に戻す。

非常食
速攻魔法
このカードを除く自分フィールド上の魔法または罠カードを墓地へ送る。
墓地へ送ったカード1枚につき、自分は1000ライフポイント回復する。


カムイ&雷人 LP4000→5000

魔法都市エンディミオンに乗った魔力カウンター 1個→2個

「さらにオレは……『カードガンナー』を攻撃表示で召喚するッスよ!」
 カムイの場に、手がレーザー砲みたいな形をした、小さな機械が現れた。

「何ぃぃぃぃ!!このタイミングで、攻撃力400のモンスターを攻撃表示だとぉぉぉぉ!!何のつもりだ!?」
「ああ……。ここは『カードガンナー』の効果を使っておきたかったんスよね。デッキの上からカードを3枚墓地に送って、攻撃力を1500ポイントアップさせるッスよ!」
 カムイは、デッキの上から『E・HERO フェザーマン』、『融合回収』、『カードエクスクルーダー』を墓地に送った。


カードガンナー
地 レベル3
【機械族・効果】
1ターンに1度、自分のデッキの上からカードを3枚まで墓地へ送って発動する。
このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで、
墓地へ送ったカードの枚数×500ポイントアップする。
また、自分フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。
攻撃力400 守備力400


カードガンナー 攻撃力400→1900

「オレは……『電池メン−単三型』を守備表示に変更し、カードを2枚場に伏せ、ターンを終了させるッスね。」
 カムイは、自分の手札をすべて伏せ、ターンを終えた。

カードガンナー 攻撃力1900→400

「おれのターン、ドロー!伏せ魔法カード『精神統一』を発動だ!デッキから『精神統一』を手札に加え、『魔法都市エンディミオン』に魔力カウンターが1個乗るぜ!」
 ルークは、ケーンが伏せた『精神統一』を発動し、自分の手札に新たな『精神統一』を手札に加えた。

魔法都市エンディミオンに乗った魔力カウンター 2個→3個

「なるほど……。これでルークの手札は4枚になったッスね……。」
「さらに伏せ魔法カード『魔力掌握』を発動するぜ!自身の効果を含め『魔法都市エンディミオン』に魔力カウンターを2個乗せるぜ!……おれのデッキに『魔力掌握』は残ってねえから、サーチ効果は使えねえがな。」
 ルークは、残念そうに一言そう言った。

魔法都市エンディミオンに乗った魔力カウンター 3個→5個

「そして……『精神統一』を捨て、『神聖魔導王 エンディミオン』の効果を発動だ!エンディミオン!『くず鉄のかかし』を破壊しろ!!」
 『神聖魔導王 エンディミオン』は、目を瞑って精神を統一すると……『くず鉄のかかし』を、まるで霧の様にあっさりと消し去ってしまった!

「……カムイ!おれはこのターン、お前にダイレクトアタックを食らわすぜ!」
「何!……いったいどうやってオレの場のモンスターを全滅させるんスか!?」
 カムイは、ルークの一言に少し驚いていた……。

「見せてやるぜ……。手札を1枚捨て、速攻魔法発動!『トラップ・ブースター』!!」
 ケーンが伏せた最後のカードを表にしながら、ルークはそう大声で話した。

「『トラップ・ブースター』……。確か、手札コストと引き換えに、手札の罠カードをすぐに使える様になるカードなんスよね……。」
「ああ!この効果で発動させる罠カードは……攻撃力2000以上の闇属性モンスター……『神聖魔導王 エンディミオン』をリリースして発動する強力な罠カードだぜ!!」
 ルークがそう言うと、『神聖魔導王 エンディミオン』の体が消え去っていき……消え去った元から、不気味な紫色のウイルスが発生し、カムイの場の『カードガンナー』と『電池メン−単三型』に感染を始めた!


トラップ・ブースター
速攻魔法
手札を1枚捨てて発動する。
このターン、自分は手札から罠カード1枚を発動する事ができる。


魔法都市エンディミオンに乗った魔力カウンター 5個→6個

「なっ……オレの場の2体のモンスターが!……まさか、あのカードを!?」
「そうだぜ!おれが発動させたカードは……『魔のデッキ破壊ウイルス』だ!!お前の手札と場の攻撃力1500以下のモンスターは、ウイルスに感染して死滅するぜ!!!!」
 その言葉通り、『カードガンナー』と『電池メン−単三型』は、ウイルスに全身を支配され……そのまま何の抵抗もできずに破壊されてしまった!


魔のデッキ破壊ウイルス
通常罠
自分フィールド上の攻撃力2000以上の闇属性モンスター1体を生け贄に捧げる。
相手のフィールド上モンスターと手札、発動後(相手ターンで数えて)3ターンの間に
相手がドローしたカードを全て確認し、攻撃力1500以下のモンスターを破壊する。


「……だが、『カードガンナー』が破壊された事で、オレはカードを1枚ドローできるッスよ!」
「それはいいが、『魔のデッキ破壊ウイルス』にはまだ効果が残されているぜ!相手がドローしたカードをすべて確認し、攻撃力1500以下のモンスターをドローした場合、問答無用で破壊するんだぜ!さあ、見せな!」
 カムイは、ドローしたカードをしぶしぶルークに見せた。

ドローしたカード:ホープ・オブ・フィフス(通常魔法)

「ちっ。魔法カードか。『魔のデッキ破壊ウイルス』じゃあ破壊できねえな……。」
「ん……?『魔法都市エンディミオン』には、もう魔力カウンターが6個乗ってるんスよね……。……まさか!」
「分かっていたか!『魔法都市エンディミオン』の魔力カウンターを6個取り除き……ウイルスをまき散らした焦土に舞い戻れ!!『神聖魔導王 エンディミオン』!!」
 その身を犠牲にウイルスをまき散らし、カムイの場のモンスターを複数破壊した『神聖魔導王 エンディミオン』が……何事も無かったかのようにルークの場に蘇り、カムイを仮面越しに睨みつけた!

魔法都市エンディミオンに乗った魔力カウンター 6個→0個

「『神聖魔導王 エンディミオン』の効果で、墓地の『精神統一』を回収するが……すぐコストとして使わせてもらうぜ!エンディミオン!!次のターゲットは、裏守備表示の『充電池メン』だ!!」
 ルークの指令を聞きつけた『神聖魔導王 エンディミオン』は、再び瞑想を始め……『充電池メン』を音も無く消滅させた!

「くっ……。『神聖魔導王 エンディミオン』を一時的に場から離して、1ターンに1度しか使えない効果を2回も使用可能にしたんスね……。これでオレの場のモンスターは全滅してしまったッスね……。」
 カムイは、1ターンで全滅させられた場を見て、残念に感じていた……。

「どうだ!!『神聖魔導王 エンディミオン』で、カムイにダイレクトアタック!!魔・導・爆・裂・波!!」
「ぐっ!」(雷人&カムイLP 5000→2300)
 『神聖魔導王 エンディミオン』は、カムイの足もとの大地を炸裂させ……半分以上のライフを一撃で削り落とした!

「これでライフは逆転したな!カードを1枚場に伏せ、ターンエンドだ!」


現在の状況
カムイ&雷人 LP…2300
       手札…1枚・1枚
       場…伏せカード2枚

ルーク&ケーン LP…2700
        手札…0枚・2枚
        場…神聖魔導王 エンディミオン(攻撃力2700・攻撃表示)
          魔法都市エンディミオン(魔力カウンター×0)
          伏せカード1枚


「俺のターン、ドロー!」
「『魔のデッキ破壊ウイルス』の効果だ!さあ、ドローしたカードを見せな!」
「……いいのか?後悔するぜ?」
 雷人は、ルークに対し軽く笑みを浮かべながら話した。



ドローしたカード:電池メン−業務用(攻撃力2600)

「なっ……このタイミングで、最強の電池メンを引きやがったのか!?」
「行くぜ……。墓地の『電池メン−単三型』を2体除外し……来い!最強の電池メン……『電池メン−業務用』!!」
 雷人が、ドローしたカードをそのままデュエルディスクに叩きつけると、雷人の場に、1メートル近くの大きさで、全身からあふれる電気で火花を散らした、巨大な電池メンが姿を現した!

「業務用だと!?今までの電池メンとはスケールが違うな!」
「ああ!『電池メン−業務用』の効果を発動するぜ!墓地の『電池メン−ボタン型』を除外し、『神聖魔導王 エンディミオン』と『魔法都市エンディミオン』を破壊するぜ!!食らえ!!100Vボルテックス!!」
 『電池メン−業務用』は、火花を放っているプラス極とマイナス極の電極を地面に差し込むと……耳を塞ぎたくなる様な巨大な雷鳴が轟いた!
 すると、『神聖魔導王 エンディミオン』は、背中に背負った白銀のリングに電撃が走った事によって一瞬で消し炭となり、『魔法都市エンディミオン』によって発生した中世風の街並みと巨大な塔が、音をたてて崩壊した!!
 その光景はまるで、天空の神が裁きの雷を落としたかの様な、一種の『黙示録』と言える物だった……。


電池メン−業務用
光 レベル8
【雷族・効果】
このカードは通常召喚できない。
このカードは自分の墓地に存在する「電池メン」と名のついたモンスター2体を
ゲームから除外した場合のみ特殊召喚する事ができる。
自分の墓地に存在する雷族モンスター1体をゲームから除外する事で、
フィールド上に存在するモンスター1体と魔法または罠カード1枚を破壊する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
攻撃力2600 守備力0


「な……何ておぞましい電撃だ!もう電池なんてレベルじゃねえぞ!!」
 ルークは、『電池メン−業務用』の放った激しい電撃によって焦土と化した自分の場に、ただただ目を丸くするしか無かった……。

「だが……『神聖魔導王 エンディミオン』はまだ墓地にいるな……。ここは、二度と蘇らない様にしてやるぜ!伏せ罠カード『リミット・リバース』を発動だ!」
 そう言いながら雷人は、カムイが前のターンに伏せたカードを表にした。











「……蘇れ!!『カードエクスクルーダー』!!」
 雷人がそう言うと、カムイの墓地から、魔法使い……と言うより、『ブラック・マジシャン』と似た形状で、ピンク色の魔法使いの服を着た幼女が現れた。


「何ぃぃぃぃ!そんなガキんちょをこのタイミングで呼ぶだとぉぉぉぉ!!!!ありえねぇ!俺をなめてやがんのか!?」
 ケーンは、このタイミングで現れた、明らかに戦場に不釣り合いな幼女――『カードエクスクルーダー』の姿に憤慨していた。

「何を言ってる、ケーン!前のタッグデュエルで、お前は別のガキんちょに勝利を封じられた事を忘れたのか!?」
 雷人は、ケーンを指差しながら話した。

「とにかく、『カードエクスクルーダー』の効果を発動させてもらうぜ!墓地から消え去れ!『神聖魔導王 エンディミオン』!!ソウル・エクスクルード!!」
 『カードエクスクルーダー』が持っている杖を振るうと、『神聖魔導王 エンディミオン』の魂は墓地から解放され、消え去っていった……。


カードエクスクルーダー
地 レベル3
【魔法使い族・効果】
相手の墓地に存在するカード1枚を選択しゲームから除外する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
攻撃力400 守備力400


「な、何ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!俺達の『神聖魔導王 エェンディィミオォン!!(エンディミオン)』がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
「まあ落ちつけよ、ケーン。まだ勝負が決まった訳じゃ無いんだからよ。」
 絶叫するケーンに対し、ルークが軽く声を掛けた。

「バトルフェイズに入るぜ!『電池メン−業務用』で、ダイレクトアタック!業務用バッテリーアタック100V!!」
「ぐあっ!」(ルーク&ケーンLP 2700→100)
 『電池メン−業務用』は、先程放った電撃よりは威力を落とした電撃を放ち、ルークのライフをギリギリの値にまで減らした!

「トドメだ!『カードエクスクルーダー』で、ダイレクトアタック!エジェクト・マジック!」
 『カードエクスクルーダー』は、持っている杖でルークを精一杯に攻撃しようとしたが……











「それを待っていたぜ!魔法使い族の攻撃宣言時に、伏せ罠カード『マジシャンズ・サークル』を発動ぉぉぉぉ!!!!この効果で、おれはデッキから『熟練の白魔導師』を攻撃表示で特殊召喚するぜ!!」
 『カードエクスクルーダー』の目の前に、六芒星の魔法陣が発生し……その魔法陣から、白色の法衣を着て、杖を持った魔導師が現れた!


マジシャンズ・サークル
通常罠
魔法使い族モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
お互いのプレイヤーは、それぞれ自分のデッキから
攻撃力2000以下の魔法使い族モンスター1体を表側攻撃表示で特殊召喚する。


「くっ……。俺のデッキには魔法使い族はいないぜ……。『カードエクスクルーダー』の攻撃を中断し、ターンエンドだ……。」
 雷人は、このターンで勝利できなかった事を、少々後悔していた……。
 『カードエクスクルーダー』では無く、普通に自分の『電池メン−単三型』や、『カードガンナー』を出せば勝利していたからだ……。

「俺のターン!ドロー!」
 ドローしたカードを見て、ケーンは軽く笑みを浮かべた。

「見てな……雷人……。テメエの軽率な行為で、敗北を喫するんだからよ……。」
「何!」
「行くぜ!最近手に入れた魔法使い族……『魔導騎士 ディフェンダー』を召喚するぜ!」
 ケーンの場に、ナイフの様な短剣と巨大な盾を持ち、青色の鎧で全身を覆った騎士が姿を現した!

「『魔導騎士 ディフェンダー』の召喚に成功した時、自身に魔力カウンターが1個乗るぜ!バトルだ!『熟練の白魔導師』!あのガキんちょに攻撃しろ!白の魔導!!」
 『熟練の白魔導師』は、杖から白色の光の玉を放ち、『カードエクスクルーダー』を弾き飛ばした!
 弾き飛ばされた『カードエクスクルーダー』を見た『魔導騎士 ディフェンダー』は、醜悪な笑みを密かに浮かべていた……。

「ぐっ……。」(雷人&カムイLP 2300→1000)

「おぉっと!!ガキんちょは、まだ墓地には行かせねえぜ!!『魔導騎士 ディフェンダー』の効果を発動するぜ!自身の魔力カウンターを1個取り除き、ガキんちょの破壊を1度だけ無効にするぜぇぇぇぇ!!!!」
 ケーンの言葉に反応したのか自分の意志なのかは不明だが、『魔導騎士 ディフェンダー』は笑みを浮かべながら、自分の盾を『カードエクスクルーダー』の落下点に投げつけ、地面に突き刺した!
 『熟練の白魔導師』の放った魔力によって弾き飛ばされた『カードエクスクルーダー』は、『魔導騎士 ディフェンダー』が投げつけた盾の持ち手の部分に、体が足からすっぽり入ってしまい、貼り付け状態みたいになり、身動きが取れなくなってしまった!


魔導騎士 ディフェンダー
光 レベル4
【魔法使い族・効果】
このカードが召喚に成功した時、
このカードに魔力カウンターを1つ置く(最大1つまで)。
フィールド上に表側表示で存在する魔法使い族モンスターが破壊される場合、
代わりに自分フィールド上に存在する魔力カウンターを、
破壊される魔法使い族モンスター1体につき1つ取り除く事ができる。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
攻撃力1600 守備力2000












「『魔導騎士 ディフェンダー』!あのガキんちょに追加攻撃しろ!!」
 ケーンの言葉を聞き付けた『魔導騎士 ディフェンダー』は、まるで獲物を捕らえたかのような醜悪な笑みを浮かべながら……持っていたナイフを、『カードエクスクルーダー』の右ひざと左ひざの間に向かって投げ付けた!
 『カードエクスクルーダー』は、足を開いて何とかそのナイフが足に当たるのを避けたが、ナイフがスカートに刺さり、盾に画鋲で止められたみたいになってしまった!

 その様子を見た『魔導騎士 ディフェンダー』は、もう1本のナイフを取り出して軽くペロリとなめ……今度は『カードエクスクルーダー』の右わきの辺りに向かってナイフを投げ付けた!
 そのナイフは、『カードエクスクルーダー』の体にほんの数ミリの差で当たらなかったが……あまりにギリギリすぎる事への恐怖からか、『カードエクスクルーダー』の水色の大きな瞳に涙が浮かび上がった……。

 しかし『魔導騎士 ディフェンダー』は、小さな女の子である『カードエクスクルーダー』のそんな様子を見る事に快楽すら覚えているのか、さらにもう1本ナイフを取り出し、『カードエクスクルーダー』の左目辺りに投げ付けた!
 『カードエクスクルーダー』は、必死に首を右に傾けてそれをかわしたが、表情は完全に血の気が引き、ただただいつ破壊されるのかを怯えている様子だった……。





















「……っつっ……」
 雷人は、『魔導騎士 ディフェンダー』の冷徹な行動に奥歯を噛みしめていたが、ついに我慢できずに……











「……おい!!ケーン!!これじゃあ『カードエクスクルーダー』が可哀想じゃないか!!早く止めろ!!」
 そう大声で、ケーンに対して叫んだ……。

「そうッスよ!いくらモンスターだからって、これはちょっと酷いんじゃないんスか!?」
 カムイも、自分のカードがなぶり殺しにあっている姿に、声を張り上げた……。



「し、知らねえよ!俺だって『魔導騎士 ディフェンダー』を使うのは初めてなんだからよ!!」
「そうだぜ!もう破壊は確定してるんだ!見たくないなら早く墓地に送れよ!……おれ達も、こんな光景なんざ見たく無いんだからよ!」
 ケーンとルークは、自分のモンスターでありながら、あまりにサディスティックな『魔導騎士 ディフェンダー』の攻撃法に当惑していた……。













 デュエルを行っている4人を後目に、『魔導騎士 ディフェンダー』は、健気にナイフをかわし続ける『カードエクスクルーダー』を見て、快楽の絶頂に到っている様に表情を緩め……最後にナイフを、左胸の心臓辺りに投げ付けた!



「……くっ!!」
 雷人は、目を瞑りながら、『カードエクスクルーダー』のカードをデュエルディスクから外して、墓地に送り込んだ。
 すると、貼り付け状態だった『カードエクスクルーダー』のソリッドビジョンが消え去り、貼り付け板として使用されていた『魔導騎士 ディフェンダー』の盾がバタンと倒れた!

 そうなると、対象を失った『魔導騎士 ディフェンダー』のナイフは、まっすぐ雷人めがけて飛んで行った!



「だが、ダメージ計算は普通に行われるぜぇぇぇぇ!!『魔導騎士 ディフェンダー』の攻撃力は1600……『カードエクスクルーダー』の攻撃力は400……。この攻撃で終わりだぜぇぇぇぇ!!!!」
「……それは違うぜ。」
 雷人が、カムイの伏せたカードを表にすると……『魔導騎士 ディフェンダー』の投げたナイフが、突然雷人の目の前で不思議なバリアみたいな物に阻まれた!











「何ぃぃぃぃ!いったい何を発動しやがった!!?」
「俺が発動させたカードは……『ガード・ブロック』だぜ!このカードの効果で、この戦闘で受ける俺へのダメージを0にし、カードを1枚ドローするぜ!」
 雷人は得意気に語りながら、カードを1枚ドローした。


ガード・ブロック
通常罠
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。


「……だが!『魔のデッキ破壊ウイルス』の効果が発動するぜ!」
「俺のドローしたカードは……攻撃力0の『電池メン−単一型』だ。破壊され、墓地に送られるぜ。」
 雷人は、ドローしたカードをそのまま墓地に送った。

「カードを2枚場に伏せ、ターンエンドだ……。」
 ケーンは、残念そうにターンを終了した。


現在の状況
雷人&カムイ LP…1000
       手札…1枚・1枚
       場…電池メン−業務用(攻撃力2600・攻撃表示)

ケーン&ルーク LP…100
        手札…0枚・0枚
        場…熟練の白魔導師(攻撃力1700・攻撃表示)
          魔導騎士 ディフェンダー(攻撃力1600・攻撃表示)
          伏せカード2枚


「オレのターン、ドロー!」
 カムイは、『魔のデッキ破壊ウイルス』が発動中のため、ドローしたカードをケーンに見せながら手札に加えた。

ドローしたカード:次元誘爆

「手始めに、『電池メン−業務用』の効果を発動するッスよ!墓地の『充電池メン』を除外して、『魔導騎士 ディフェンダー』と1枚の伏せカードを破壊するッス!250Vボルテックス!!」
 『電池メン−業務用』は、先程の『魔導騎士 ディフェンダー』の冷徹な行動に天罰を下すかのように、今一番の強烈な電撃を放った!

「……残念だったな!対象に取られた伏せカード……『神秘の中華なべ』を発動するぜ!対象に取られた『魔導騎士 ディフェンダー』をリリースし、その守備力分……つまり、2000ポイント俺達のライフを回復させてもらうぜ!」
 ケーンがそう言うと、『魔導騎士 ディフェンダー』の体が光の粒子となって消え去り……無くなりかけのケーンのライフを大幅に回復させた! 


神秘の中華なべ
速攻魔法
自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる。
生け贄に捧げたモンスターの攻撃力か守備力を選択し、
その数値だけ自分のライフポイントを回復する。


ケーン&ルークLP 100→2100

「だが……まだオレには手が残されているッスよ!手札から、魔法カード『ホープ・オブ・フィフス』を発動ッス!墓地の『E・HERO』と名のつくモンスター5体……『スパークマン』、『ネクロダークマン』、『エッジマン』、『ダーク・ブライトマン』、『フェザーマン』をデッキに戻し、カードを2枚ドローするッスよ!」
 そう言いながらカムイは、墓地からすべての『E・HERO』を取り出し、デッキに戻した後新たにカードを2枚ドローした。


ホープ・オブ・フィフス
通常魔法
自分の墓地に存在する「E・HERO」と名のついたカードを5枚選択し、
デッキに加えてシャッフルする。
その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。
このカードの発動時に自分フィールド上及び手札に他のカードが存在しない場合は
カードを3枚ドローする。


ドローしたカード:E・HERO キャプテン・ゴールド、ミラクル・フュージョン

「ドローした『キャプテン・ゴールド』の効果を発動するッスよ!このカードを手札から墓地に捨て、デッキから『摩天楼−スカイスクレイパー−』を手札に加えて、即、発動させるッスよ!」
 カムイがそう言うと、場が突然近代的なビル街に姿を変え……そのビル街を通る道路を隔て、カムイの場の『電池メン−業務用』と、ケーンの場の『熟練の白魔導師』が向かい合った!



E・HERO キャプテン・ゴールド
光 レベル4
【戦士族・効果】
このカードを手札から墓地に捨てる。
デッキから「摩天楼 −スカイスクレイパー−」1枚を手札に加える。
フィールド上に「摩天楼 −スカイスクレイパー−」が存在しない場合、
フィールド上のこのカードを破壊する。
攻撃力2100 守備力800


「さらに……手札から、魔法カード『ミラクル・フュージョン』を発動するッスよ!!」
「何!テメエの墓地には、『キャプテン・ゴールド』以外のヒーローは存在しないはずだぜ!いったい何を呼びやがんだ!?」
「確かに……オレの墓地には、『E・HERO』は1体しかいないッスね……。」
 カムイは、軽くそう呟き……



「……だが、『地属性』ならいくらでもいるッスよ!『E・HERO』の『キャプテン・ゴールド』と、『地属性』の『カードエクスクルーダー』を融合し……」
 そう言うと、『キャプテン・ゴールド』の体に、『カードエクスクルーダー』の体から出現した、黒色の『地』のエレメントが融合し……











「来い!轟く大地のヒーロー……『E・HERO ガイア』!!」
 ……大地の中から、重厚な暗い色の鎧を全身に身につけ、大地を砕く力を秘めた空気砲を両腕につけたヒーローが姿を現した!!


ミラクル・フュージョン
通常魔法
自分のフィールド上または墓地から、融合モンスターカードによって
決められたモンスターをゲームから除外し、「E・HERO」という
名のついた融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。
(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)


「『ガイア』の効果発動ッス!相手の場のモンスター……『熟練の白魔導師』の攻撃力を半分にし、半分にした分の攻撃力を『ガイア』が吸収するんスよ!」
 『ガイア』は、両腕の空気砲で『熟練の白魔導師』の足元の大地を砕き……自らの力に吸収した!


E・HERO ガイア
地 レベル6
【戦士族・融合・効果】
「E・HERO」と名のついたモンスター+地属性モンスター
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードが融合召喚に成功した時、
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
このターンのエンドフェイズ時まで、選択したモンスター1体の攻撃力を半分にし、
このカードの攻撃力はその数値分アップする。
攻撃力2200 守備力2600


熟練の白魔導師 攻撃力1700→850
E・HERO ガイア 攻撃力2200→3050


「行くッスよ!『電池メン−業務用』で、『熟練の白魔導師』に攻撃!業務用バッテリーアタック100V!!」
 『電池メン−業務用』は、両側の電極から激しい電撃を放ち……『熟練の白魔導師』を一撃で破壊した!

「ぐあぁっ!!」(ケーン&ルークLP 2100→350)

「これが通ればオレの勝ちッスよ!『ガイア』で、ケーンにダイレクトアタック!コンティネンタルハンマー!!」
 『ガイア』は、両手を合わせて高く掲げ……ケーンに向かって殴りかかろうとした!



「カムイ!このカードを忘れちゃいねえか!?速攻魔法『月の書』を発動だぁぁぁぁ!!『ガイア』には守備表示になってもらうぜ!」
 ケーンがそう言いながら最後の伏せカードを表にすると、カムイの場の『ガイア』の周りに闇が発生したが……

「……分かってるッスよ……。『月の書』にチェーンし、手札から、速攻魔法『次元誘爆』を発動ッス!」
 カムイの言葉と同時に、『ガイア』が突然場から消え去った!



「『次元誘爆』の効果で、オレの場の融合モンスター1体をエクストラデッキに戻し……お互いに、除外されたモンスターを2体まで特殊召喚できるッスよ!この効果で、オレは『キャプテン・ゴールド』と『カードエクスクルーダー』を攻撃表示で特殊召喚するッス!」
「何!?『摩天楼−スカイスクレイパー−』の効果で『キャプテン・ゴールド』の攻撃力が上がっちまうから、『神聖魔導王 エェンディィミオォン(エンディミオン)』を戻しても、勝ち目がねえじゃねえか!……仕方がねえ!守備表示で戻って来い!!『神聖魔導王 エェンディィミオォン!!(エンディミオン)』!!」
 『ガイア』が消え去った後に出現した、異次元と場を結ぶ不思議な裂け目から、カムイの場に『キャプテン・ゴールド』と『カードエクスクルーダー』、ケーンの場に『神聖魔導王 エンディミオン』……と、合計3体のモンスターが場に帰還した!


次元誘爆
速攻魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する融合モンスター1体を
融合デッキに戻す事で発動する事ができる。
お互いにゲームから除外されているモンスターを2体まで選択し、
それぞれのフィールド上に特殊召喚する。


「これでケーンの場に伏せカードは無くなったッスね!『キャプテン・ゴールド』で、『神聖魔導王 エンディミオン』に攻撃!スカイスクレイパー・キャプテン・キック!!」
 『キャプテン・ゴールド』は、ビルの屋上から飛び降りながら強烈な蹴りを放ち……『神聖魔導王 エンディミオン』を打ち倒した!

「さらに……『カードエクスクルーダー』で、ケーンにダイレクトアタック!!エジェクト・マジック!!」
 『カードエクスクルーダー』は、ケーンの目の前に行き、杖から光を放ち……ケーンのライフを削り取った!

「ぐぅぅあぁぁぁぁ!!!!」(ケーン&ルークLP 350→0)





















「オレ達の勝ちッスね。さあ、スターチップを渡してもらうッスよ。」
「ちっ……。何て強さだ……。雷人のミスがなかったら、もっとあっさりと負けちまってたじゃねえか……。」
「そうだなあ、ケーン。……おれ達も、もっとタッグデュエルの腕を磨かなきゃ駄目だな。」
 ケーンとルークは、顔を見合せながら話し、カムイと雷人にスターチップを渡した。


カムイ スターチップ7個→9個
雷人 スターチップ6個→9個
ケーン スターチップ3個→0個(失格)
ルーク スターチップ2個→0個(失格)


「おいおいカムイ……。お前、スターチップを7個も持ってたのか?」
「ああ、そうッスよ。」
 驚く雷人に対して、カムイは軽く答えた。

「今のデュエル……お前が3個スターチップを賭ければ、本戦に出場できたじゃないか!何でわざわざ少ない方を……」
「……実を言うと、ここは雷人とデュエルして、本戦に出場した方がいいと思ったんスよね……。雷人をオレとデュエルさせようと必死に努力している参加者もいるくらいなんスから、ここはその願望に応えておかないと……」
「カムイ……。」
 雷人は、カムイの一言に、何か込み上げる物を感じていた……。











「(おおい、相棒……。俺達、明らかに場違いだよなぁ……。)」
「(そうみたいだなあ、ケーン……。ここは退散するか……。)」
 ケーンとルークは、小声で話し合い……

「「……雷人!カムイ!失格になった俺(おれ)達はここで退場させてもらうぜ!!じゃあな!!」」
 2人同時にカムイと雷人に声をかけ、そのまま走り去って行った……。





















「……さて、オレ達がデュエルするまでに、後1時間の待機時間があるんスよね……。」
「……そ、そうだな。」
 雷人は、カムイの一言に少し驚きながら反応した。

ルール2・デュエル終了後1時間は、チャージタイムとなり、デュエルを行うことができない。











「(……なるほどな。リナちゃんがカムイを好く事が、少し分かった気がするぜ……。だが、俺もまだ諦めないぜ……。)」
「ん?どうしたんスか?雷人。」
「……いや、何でもないぜ。」
 雷人は、密かにだが、カムイの何気ない優しさを感じ取って、少し呆然としていたみたいだ・・・・・・。


 そして、カムイと雷人はしばらく、決戦前の気軽な雑談をしていることにした……。




第三十一話 通らぬ決闘(デュエル)!

「……俺の出番か……。」
 和服に草履と言った、昔ながらの衣服を身に付けた青年……ジュンは、腕を組みながらボソッと呟いた。

「俺の所持している星の欠片(スターチップ)は4個……。次の決闘次第では、本戦出場に大きく近づけるな……。」











「なるほど……。あなたは4個のスターチップを持っているのですか……。」
「!!……誰だ!」
 いきなり背後から話し掛けられたジュンは驚きながら、話し掛けた男と距離をとり、左腰の辺りに握りこぶしを持っていくと言う、刀を抜くかの様な姿勢をとった。

「私(わたくし)はクロートーと申します。あなたにデュエルを申し込みたいのですが……。」
 クロートーと名乗った、青髪で、眼鏡をかけた男は、自分の右目辺りに手のひらを添え、軽く眼鏡をクイッと動かしながら話した。



「(この男……気配を感じさせずに、真後ろに歩み寄った……?いったい何者だ……?)」
 そう思いながらジュンは、クロートーの身に付けている、純白の、天使の羽の様な形のカード置場を持ったデュエルディスクを見ていた……。



「……いいぜ。お前の挑戦、受けてやる!」
「では……スターチップは4個賭けでお願いしますよ。」
 ジュンの言葉を聞いたクロートーは、軽く一礼をし……











「「デュエル!!」」



 先攻は、クロートーだった。

「私のターン、ドロー!」
 クロートーは、ドローしたカードに軽く目をやり……

「手始めに……魔法カード『名推理』を発動しましょう。さあ、好きなレベルを宣言しなさい!」
 クロートーは、ジュンに右手を差し出す様に話した。

「(『名推理』……。俺が宣言した星の数と、奴が上から山札をめくり、一番始めに出た、通常召喚可能なしもべの星の数が一致していない場合、そのしもべが奴の場に特殊召喚する魔法か……。)ならば……『4』を宣言する!」
「ふむ……『4』ですか。では、私のデッキをめくっていきますよ。」
 クロートーは、デッキの1番上のカードを確認し、ジュンに見せ付けた。


1枚目……デス・ラクーダ(レベル3)


「残念でしたね……。あなたの推理は外れてしまいました。よって、私の場に『デス・ラクーダ』が特殊召喚されますよ。」
 クロートーがそう呟くと、場に、ミイラの様にひからびたラクダが姿を現した。


名推理
通常魔法
相手プレイヤーはモンスターのレベルを宣言する。
通常召喚が可能なモンスターが出るまで自分のデッキからカードをめくる。
出たモンスターが宣言されたレベルと同じ場合、めくったカードを全て墓地に送る。
違う場合、出たモンスターを特殊召喚し、残りのカードを墓地へ送る。


「そして……『デス・ラクーダ』の効果を発動しますよ。裏側守備表示になりなさい!」
 クロートーの指示を聞き付けた『デス・ラクーダ』は、地面の中にいったん隠れ、ジュンの攻めに備えていた……。


デス・ラクーダ
闇 レベル3
【アンデット族・効果】
このカードは1ターンに1度だけ裏側守備表示にする事ができる。
このカードが反転召喚に成功した時、自分のデッキからカードを1枚ドローする。
攻撃力500 守備力600


「そして……カードを4枚場に伏せ、ターンエンド。」
「!!……4枚だと!?」
 ジュンは、自分の手札をほとんど伏せてしまったクロートーの行動に、思わず驚いてしまった……。

「……俺の番だな。札を1枚引く!」
「ならば……永続罠『人造天使』を発動しますよ!」
 

「ん……?何だ!?その機械は?」
「『人造天使』は、カウンター罠が発動されるたびに、私の場に『人造天使トークン』が特殊召喚される様になるカードですよ。」
 クロートーは、軽く語った。


「(なるほど……。自らの戦法を、隠すまでも無いと言う訳か!)」
 ジュンは、少しそう考えた後……

「……手札から、『六武衆−火門(カモン)』を召喚する!」
 ジュンの場に、キセルをくわえ、手に火薬を持った武士が現れた。

「さらに……俺の場に『六武衆』が存在する事によって……手札から『六武衆の師範』を特殊召喚する!」
 そう言うと、ジュンの場に、髭を蓄え片目を隠した老武士が姿を現した!


六武衆の師範
地 レベル5
【戦士族・効果】
自分フィールド上に「六武衆」と名のついたモンスターが
表側表示で存在する場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。
このカードが相手のカードの効果によって破壊された時、
自分の墓地に存在する「六武衆」と名のついたモンスター1体を手札に加える。
「六武衆の師範」は自分フィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。
攻撃力2100 守備力800


「『六武衆−火門(カモン)』の効果を発動する!攻撃をする代わりに、相手の場に表側表示で存在する、魔法・罠を1枚破壊できる!」
 『六武衆−カモン』は、クロートーの場の『人造天使』に向かって爆弾を投げ付けたが……


「……無駄ですよ。手札の『闇の仮面』を捨て、伏せ罠カード『天罰』を発動!『六武衆−カモン』の効果を無効にし、破壊しますよ!」
 突然、空の上から2本の雷が落ちてきて……1本は『六武衆 カモン』の投げた爆弾を不発にし、もう1本は『六武衆−カモン』自身に、大きな雷鳴をたてながら直撃した!


六武衆−カモン
炎 レベル3
【戦士族・効果】
自分フィールド上に「六武衆−カモン」以外の
「六武衆」と名のついたモンスターが存在する限り、
1ターンに1度だけ表側表示で存在する魔法または罠カード1枚を破壊する事ができる。
この効果を使用したターンこのモンスターは攻撃宣言をする事ができない。
このカードが破壊される場合、代わりにこのカード以外の
「六武衆」と名のついたモンスターを破壊する事ができる。
攻撃力1500 守備力1000

天罰
カウンター罠
手札を1枚捨てて発動する。
効果モンスターの効果の発動を無効にし破壊する。


「さらに、『人造天使』の効果が発動しますよ!おいでなさい!『人造天使トークン』!!」
 クロートーの言葉に反応し、『人造天使』の中から、小さな球体の天使が、攻撃表示で飛び出してきた!


人造天使
永続罠
カウンター罠が発動される度に、
「人造天使トークン」(天使族・光・星1・攻/守300)を1体特殊召喚する。


人造天使トークン 攻撃力300

「攻撃力300を攻撃表示……?囮のつもりなのか?」
「さあ?どうでしょう。……攻撃する、しないは、あなたの自由ですよ。」
 ジュンの問い掛けに対し、クロートーは右手の甲を口元にやり、不敵な笑みを浮かべていた……。

「ならば……『六武衆の師範』で、裏側守備表示の相手に攻撃をする!」
 『六武衆の師範』は、手に持った刀を振りかざし、裏守備表示の『デス・ラクーダ』を一刀両斬しようとしたが……『デス・ラクーダ』の前に突然時空の渦が現れた!

「くっ……また罠か!」
「ええ……。カウンター罠『攻撃の無力化』です。この効果で、『六武衆の師範』の攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させましたよ!カウンター罠が発動した事により……『人造天使トークン』が特殊召喚されます!!」
 そう言いながらクロートーが手をジュンの方に開くと、2体目の『人造天使トークン』が、小さな音をたてながら出現した。


攻撃の無力化
カウンター罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
相手モンスター1体の攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する。


「くっ……『攻撃の無力化』か……。だが、罠を浪費させた事実に代わりはないな……。(もし俺が、『人造天使』から現れた敵に攻撃した場合には、多分『攻撃の無力化』を発動させなかっただろうからな……。)」
 ジュンは、クロートーの戦法を、少し警戒していた……。

「……札を1枚伏せ、俺の番は終わりだ。」


現在の状況
クロートー LP…4000
      手札…0枚
      場…デス・ラクーダ(守備力600・裏側守備表示)
        人造天使トークン(攻撃力300・攻撃表示)
        人造天使トークン(守備力300・守備表示)
        人造天使(表側表示)
        伏せカード1枚

ジュン LP…4000
    手札…3枚
    場…六武衆の師範(攻撃力2100・攻撃表示)
      伏せカード1枚


「私のターン、ドロー!メインフェイズに、『デス・ラクーダ』を反転召喚します!『デス・ラクーダ』の反転召喚に成功した事によって、カードを1枚引かせてもらいますよ!」
 1ターン目に、土の中に潜った『デス・ラクーダ』が、突然姿を現し……クロートーの手に1枚の手札を与えた!
 ドローしたカードを確認したクロートーは、軽く笑みを浮かべ……

「行きますよ……!私の場の2体の『人造天使トークン』をリリースし……『天空勇士ネオパーシアス』をアドバンス召喚します!」
 そう言うと、小さな天使2体がクロートーの場から消え去り……両刃の剣を握った、体が金属の様な物質でできた天使が現れた!

「バトルフェイズに入ります!『天空勇士ネオパーシアス』!『六武衆の師範』に攻撃しなさい!!」
 『天空勇士ネオパーシアス』は、手に持った両刃の剣を振るい、『六武衆の師範』の体を切り裂いた!

「ぐっ!!」(ジュンLP 4000→3800)
 『天空勇士 ネオパーシアス』の攻撃によって発生した余波に、ジュンは思わず仰け反った。

「『天空勇士ネオパーシアス』があなたにダメージを与えた事によって、効果が発動しますよ!デッキから、カードを1枚ドローします!」
「なるほど……。『天罰』や『攻撃の無力化』によって消費した手札を、他の効果で取り戻すと言う訳か!」
 ジュンは、クロートーの手札枚数が、自分を逆転した事に少々危機感を抱いていた……。


天空勇士ネオパーシアス
光 レベル7
【天使族・効果】
このカードは自分フィールド上の「天空騎士パーシアス」1体を
生け贄に捧げる事で特殊召喚する事ができる。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
このカードの攻撃力が守備表示モンスターの守備力を超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
また、このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。
フィールド上に「天空の聖域」が存在し、
自分のライフポイントが相手のライフポイントを超えている場合、
その数値だけこのカードの攻撃力・守備力がアップする。
攻撃力2300 守備力


「メインフェイズ2に入りますよ。カードを2枚場に伏せ……さあ、あなたのターンです!」
 クロートーは、右手をジュンの方に向けながら、自分のターンを終えた。


「また罠か……。厄介だな……。俺の番だな。札を1枚引く!」
 ジュンは、ドローしたカードを確認し、次に行うべき行動を考えていた……。



「(今俺は『増援』を引いた……。この効果で山札から『六武衆−矢一(ヤイチ)』を手札に呼び込み、召喚……。その後、伏せておいた罠札『六武衆推参!』を発動し、墓地の『火門(カモン)』を蘇らせ、2体の効果で相手の『人造天使』と伏せ札を破壊する……。最後には、俺の手札に眠る切り札……『大将軍 紫炎』を特殊召喚し、『天空勇士』を討ち取る……。)」
 ジュンは、自分の今できる最善の――クロートーに妨害されなかった場合の――一手を考えていた……。



「(相手の手札は0……『天罰』は無い!)手札から『増援』を発動する!この効果で……」
「お待ちなさい!魔法カード『増援』にチェーンし、カウンター罠『マジック・ドレイン』を発動します!」
 クロートーが、伏せておいたカード――『マジック・ドレイン』を表にすると……『増援』から放たれた魔力が、『マジック・ドレイン』に吸い取られ始めた!

「な、何だ?その罠は!?」
「『マジック・ドレイン』は、魔法の発動に対して発動可能なカウンター罠ですよ。このカードの発動に成功した場合、あなたが手札から別の魔力を捨てないと、あなたの『増援』は打ち消されてしまいますよ!」
 クロートーがそう言っている間にも、『増援』のソリッドビジョンの絵柄が、みるみる『マジック・ドレイン』に吸い取られていき……今にも消滅しそうになった!


マジック・ドレイン
カウンター罠
相手が魔法カードを発動した時に発動可能。
相手は手札から魔法カードを1枚捨ててこのカードの効果を無効化する事ができる。
捨てなかった場合、相手の魔法カードの発動を無効化し破壊する。


「(くっ……『増援』を無効にされるのは危険だ!)……お前の言う通り、魔法を捨てさせてもらうぞ!手札から、装備魔法『漆黒の名馬』を捨て、お前の罠の効果を無効にする!」
 ジュンが、手札のカードを1枚墓地に送ると……『マジック・ドレイン』と『増援』の間に『漆黒の名馬』のソリッドビジョンが現れ……『マジック・ドレイン』と『漆黒の名馬』がお互いに消滅した!

「なるほど……。手札から魔法カードを捨てましたか。しかし、カウンター罠が発動した事実に代わりはありませんから、『人造天使』の効果で『人造天使トークン』を攻撃表示で特殊召喚しますよ。その後に、『増援』の処理が正常に行われますね。さあ!レベル4以下の戦士族モンスターをデッキから手札に加えなさい!」
「(また攻撃表示か……。体力を犠牲にしてでも、手札補充要員をねらわせないつもりか……?)……『増援』の逆順処理だ!山札より、『六武衆−矢一(ヤイチ)』を手札に加える!」
 ジュンは、クロートーの場に出現した『人造天使トークン』をいぶかしそうに見ながら、デッキ内の『六武衆 ヤイチ』を探し出し、手札に加えた。

「『六武衆−ヤイチ』ですか……。中々厄介なモンスターですね……。しかし、手札には加えさせませんよ!カウンター罠『強烈なはたき落とし』を発動します!!」
 そう言うと、クロートーの目の前に現れた時空の渦から、突然何者かの右腕が出現し……ジュンが手札に加えた『六武衆−ヤイチ』のカードを、強烈にはたき落とした!


強烈なはたき落とし
カウンター罠
相手がデッキからカードを手札に加えた時に発動する事ができる。
相手は手札に加えたカード1枚をそのまま墓地に捨てる。


「何!……山札から切り札を手札に呼び込む事も封じられただと……!」
「その様ですね……。カウンター罠の発動によって、もう1体の『人造天使トークン』が特殊召喚されますよ!」
 クロートーの場の『人造天使』の中から、2体目の球体の小天使が出現した。

「これで俺の手札は2枚か……。ならば、手札から『紫炎の足軽』を召喚する!」
 ジュンの場に、槍を持った、猿顔の小柄な兵士が召喚された。


「戦闘だ!『紫炎の足軽』で、土の中に隠れる敵を攻撃する!」
 『紫炎の足軽』は、『デス・ラクーダ』が潜った地点を槍で突き刺し……『デス・ラクーダ』の体を引きずりだして討ち取った!


「『デス・ラクーダ』の守備力は600……。『紫炎の足軽』の攻撃力700の攻撃には対抗できませんでしたね……。」
 クロートーは、残念そうに呟いた。

「……俺の番は終わりだ。」


現在の状況
クロートー LP…4000
      手札…0枚
      場…天空勇士ネオパーシアス(攻撃力2300・攻撃表示)
        人造天使トークン×2(攻撃力300・攻撃表示)
        人造天使(表側表示)
        伏せカード1枚

ジュン LP…3800
    手札…1枚
    場…紫炎の足軽(攻撃力700・攻撃表示)
      伏せカード1枚


「私のターン、ドロー!……『天空勇士ネオパーシアス』で、『紫炎の足軽』に攻撃!」
 『天空勇士ネオパーシアス』は、光の速さで両刃の剣を振るい、『紫炎の足軽』をまるで紙の様に切り裂いた!

「ぐあっ!……この傷は、覚悟していた事だがな……。」(ジュンLP 3800→2200)
 ジュンは、軽くそう呟き……

「『天空勇士ネオパーシアス』の効果が発動します!デッキから、カードを1枚ドローしますよ!」
「だが、『紫炎の足軽』の効果を発動させてもらう!『紫炎の足軽』が戦闘破壊された場合、山札から、星三以下の『六武衆』……『槍左(ヤリザ)』を特殊召喚する!」
 クロートーがデッキからカードを1枚ドローした後、ジュンの場に、槍を持った日本風の武士が姿を現した。


紫炎の足軽
地 レベル2
【戦士族・効果】
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
デッキから「六武衆」と名のついたレベル3以下のモンスター1体を
自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。
攻撃力700 守備力300


「新たな『六武衆』が特殊召喚されましたか……。『人造天使トークン』でダイレクトアタックを行えれば儲け物だったのですがね……。メインフェイズ2に、カードを2枚場に伏せ、『人造天使トークン』2体を守備表示に変更し、ターンエンド!」


「くっ……俺の番だ!札を1枚引く!」
 ドローしたカードを確認したジュンは……


「……行くぞ!伏せ罠『六武衆推参!』を発動する!蘇れ!『六武衆−矢一(ヤイチ)』!!」
 そう言うと、先程『強烈なはたき落とし』によってはたき落とされた『六武衆−ヤイチ』が、場に蘇った!

「『矢一(ヤイチ)』の効果を発動する!攻撃を行う代わりに、お前の……初めの番から全く手を付けていない伏せ札を破壊させてもらう!破魔の鏑矢!!」
 『ヤイチ』は、1本の矢を音を鳴らしながら放つと……クロートーのカウンター罠『神の宣告』を、見事に打ち抜いた!


六武衆−ヤイチ
水 レベル3
【戦士族・効果】
自分フィールド上に「六武衆−ヤイチ」以外の
「六武衆」と名のついたモンスターが存在する限り、
1ターンに1度だけセットされた魔法または罠カード1枚を破壊する事ができる。
この効果を使用したターンこのモンスターは攻撃宣言をする事ができない。
このカードが破壊される場合、代わりにこのカード以外の
「六武衆」という名のついたモンスターを破壊する事ができる。
攻撃力1300 守備力800


「何ですと……!私の『神の宣告』を破壊されるとは……。」
「よし!これで俺の手札に眠る切り札を妨害する罠を1枚封じ込めた!……俺の場に『六武衆』が2体存在する事により……現れろ!『大将軍 紫炎』!!」
 ジュンの場に、真紅の鎧を身につけ右手に刀を持ち、相手を威圧するオーラを放つ大将軍が現れた!










 ――かに、思えた……。

「何!『大将軍 紫炎』が、現れもせずに墓地に送られた……!?まさか!!」
「その通り……。カウンター罠『昇天の黒角笛』を発動しました!この効果で、『大将軍 紫炎』の特殊召喚を無効にし、破壊させてもらいましたよ!さらに、『人造天使』の効果で、『人造天使トークン』が特殊召喚されます!」
 クロートーは、軽く微笑みながら、発動したカードをジュンに見せた。


昇天の黒角笛
カウンター罠
相手モンスター1体の特殊召喚を無効にし破壊する。


「さあ、どうしますか?これであなたの切り札は消滅しましたよ!……まだあなたは通常召喚を行っていないのですが、どうしますか?」
「……いや……俺はこの番では、通常召喚を行わない!」
 ジュンは、そう一言いい……

「戦闘だ!『槍左(ヤリザ)』で、『人造天使トークン』に攻撃!」
 『ヤリザ』は、まるで野球ボール並みの大きさの『人造天使トークン』を正確に突き刺し、一撃で打ち取った!

「さらに……俺の場の2体の『六武衆』の犠牲の元に……手札から、速攻魔法『六武ノ書』を発動する!!」
「!!……そのカードですか!」
 クロートーは、ジュンの場の2体の『六武衆』がリリースされた事に、少しだけ驚いていた……。

「この速攻魔法の効果で……山札より、今度こそ現れろ!『大将軍 紫炎』!!」
 そう言うと、ジュンの場に、真紅の鎧を身につけ右手に刀を持ち、相手を威圧するオーラを放っている……と、先程現れたかに見えた大将軍と瓜二つの大将軍が、デッキから姿を現した!


六武ノ書
速攻魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する
「六武衆」と名のついたモンスター2体をリリースして発動する。
自分のデッキから「大将軍 紫炎」1体を自分フィールド上に特殊召喚する。


大将軍 紫炎 攻撃力2500

「攻撃力2500……。『天空勇士ネオパーシアス』の攻撃力を上回りましたか!」
「ああ!『大将軍 紫炎』!『天空勇士』を討ち取れ!覇道の斬撃!!」
 『大将軍 紫炎』は、持っている刀に自らのオーラをまとわせ……『天空勇士ネオパーシアス』を一刀の元に切り捨てた!

「くっ……やりますね……。」(クロートーLP 4000→3800)

「どうだ!これで俺の番は終わりだ!」

現在の状況
クロートー LP…3800
      手札…0枚
      場…人造天使トークン×2(守備力300・守備表示)
        人造天使(表側表示)
        伏せカード1枚

ジュン LP…3800
    手札…1枚
    場…大将軍 紫炎(攻撃力2500・攻撃表示)
      伏せカード1枚


「私のターン、ドロー!」
 ドローしたカードを確認したクロートーは、軽く笑みを浮かべた。

「あなたが切り札を見せて下さったので、私も切り札を見せる必要がありそうですね……。2体の『人造天使トークン』をリリースし……」
 そう言うと、2体の『人造天使トークン』が光の粒子となって場から消え去り……











「現れよ!『裁きを下す者−ボルテニス』!!」
 クロートーの場に、紫色の服みたいな物を身につけ、巨大な杖を持った、法を司る天使が姿を現れた!











 ――かに、思えた……。

「何……!!『裁きを下す者』が、消えた……!?なぜだ!!」
「ええ……。『裁きを下す者−ボルテニス』の召喚を、私は『キックバック』を発動したのですよ!この効果で、『ボルテニス』は手札に戻り、カウンター罠の発動によって、『人造天使』の効果で『人造天使トークン』が特殊召喚されます!!」
 クロートーは、淡々と語った。


キックバック
カウンター罠
モンスターの召喚・反転召喚を無効にし、
そのモンスターを持ち主の手札に戻す。


「そして……これからが、真の裁きの時間ですよ!」
 クロートーの言葉に反応する様に、場の『人造天使トークン』が場から消え去り……ジュンとクロートーの頭上に、突然雷雲が発生した!
 そして、その雷雲からはおぞましい雷鳴が発生し、2人の耳を貫いていた……。

「な……何が起こっている……!?」
 ジュンは、今起こっている事を、まったく理解できないでいた……。

「教えてあげますよ……。私がカウンター罠を発動させた事によって、手札の『ボルテニス』の効果が発動しました……。私の場のモンスターすべてをリリースし……」











「裁きの雷を巻き起こしながら、降臨しなさい!!『裁きを下す者−ボルテニス』!!」
 そう言うと、激しい雷鳴と稲妻と共に、紫色の服みたいな物を身につけ、巨大な杖を持った、法を司る天使が、真の姿を解放した状態で姿を現れた!


裁きを下す者−ボルテニス
光 レベル8
【天使族・効果】
自分のカウンター罠が発動に成功した場合、
自分フィールド上のモンスターを全て生け贄に捧げる事で特殊召喚する事ができる。
この方法で特殊召喚に成功した場合、生け贄に捧げた天使族モンスターの数まで
相手フィールド上のカードを破壊する事ができる。
攻撃力2800 守備力1400


「『ボルテニス』が自身の効果で特殊召喚された場合、その際にリリースした天使族モンスターの数まで、相手の場のカードを破壊できます!リリースした天使族は、『人造天使トークン』の1体……。よって、『大将軍 紫炎』は、裁きの雷によって破壊されます!!」
 『ボルテニス』が、自身の持っている杖を振るうと、天空から激しい雷が降ってきて……『大将軍 紫炎』の全身を、跡形もなく焼き尽くしてしまった!!

「何……。『大将軍 紫炎』が……一瞬で……!」
 驚くジュンに対し、クロートーは……

「トドメをさしなさい!『ボルテニス』!!ジャッジメント・ボルテックス!!」
「ぐあぁぁっ!!俺の負けか……。」(ジュンLP 2200→0)





















「私の勝ちみたいですね。約束通り、スターチップはもらいますよ。」
 クロートーは、ジュンからすべてのスターチップを受け取り、自分の小物入れの中に放り込んだ。

ジュン スターチップ4個→0個(失格)











「一つ……聞かせてもらいたい事がある。」
「……何をですか?」
 ジュンの真剣な表情からの質問を、クロートーは疑問に思っていた……。



「お前は……何だ?」
「…………!」
 ジュンの言葉に、クロートーは驚いたのか、気付かれない程度に眉を動かした……。



「お前は……この学校の生徒とは、明らかにまとう空気が違った……。……いや、今まで会った者の誰とも似ていない……。」
「…………。」
 クロートーは、少し黙りこみ……











「答える必要はありませんね……。」
 そう一言言い、立ち去って行った……。











「あの男……。いったい何者だ……?」
 ジュンは、負けた事よりも、クロートーの正体への疑問で頭の中が一杯になり、しばらく呆然と立ち尽くすしかなかった……。











【次回予告】

次回予告ですか……懐かしいものですね……。
……っと、失礼。私(わたくし)はクロートーと申します。

さて……次回は、フェイト様が教諭として活動を行っておられるデュエルアカデミア本校のお話ですね。
本校では、代表者を知ったフェイト様が、ある手に打って出る……?



次回、『GX plus!』第三十二話!


『黒炎の消滅?忍び寄る天魔の力!』
知りませんでした……。フェイト様が、あれほどのカードを所有していようとは……。




第三十二話 黒炎の消滅?忍び寄る天魔の力!

 デュエルアカデミア本校――デュエル場近くの廊下にて……


カッ……
    カッ……
        カッ……

「(どこだ……?どこにいる……!?剣山……空野……!!)」
 デュエルアカデミアの教諭……フェイトは、大きな足音を立てながら廊下を歩いていた……。



「(鮫島校長……!あの様な見え見えの嘘で、我を騙せると思っていたのか……!!)」
 フェイトは、少し前の鮫島校長との会話を、忌々しそうに思い出していた……。





















 数分前――校長室にて……

「……なるほど。レイの本戦出場は、確定したと言う事ですね。」
 フェイトは、右手で鮫島校長の左肩をつかみ、鮫島校長と目を合わせながら話していた……。

「え、ええ。……もちろんですよ。」
 鮫島校長は、フェイトの冷たい目線を避けようと、軽く目をそらしながら答えた……。

「……それを聞いて安心しましたよ、鮫島校長。では、本戦が楽しみですね。」
「そ、そうですね。」
 鮫島校長は、フェイトの笑みを見た時、心臓を鷲掴みされた様な感覚が襲い掛かってきた事に少し冷や汗をかいたが、その様な素振りを隠しながら返答した……。

「では……これで。」
 フェイトは、鮫島校長に軽く一礼をし、校長室から歩き去っていった……。





















「(あの反応……明らかに偽りを話している反応だ……。本戦出場を決めた生徒を探し出し、欠場にさせなければ……。)」
 フェイトは、腕を組みながら考え事をし、前を見ずに廊下を歩いていると……



「うわっ!……ど、どこ見て歩いてるんですか?先生!」
 青色の制服を着て、下まつ毛が目立つ男子生徒……五階堂に、後ろからぶつかってしまった……。

「ああ……。すまない。少々考え事をしていてね……。」
 フェイトは、鮫島校長ら先生達と話す時とは違った口調で、五階堂に軽く詫びた。

「……五階堂君。1つ、聞きたいことがあるんだが……本戦への出場が決まった生徒の名前を、教えてくれないか?」
「え?知らないんですか!?……まあ、教えてあげますけど……ティラノ剣山と、空野大悟ですよ。」
 五階堂は、少々戸惑いながら答えた。

「……そうか……。レイは、本戦出場できなかったのか……。」
「ま、まあ……。正直、僕は残念に思ってるんですけどね……。」
 残念そうにしているフェイトに、五階堂は頭を掻きながら話すと……

「……私も……残念だ。」
 フェイトは、そう呟き、歩き去っていった……。





















「……どうしたんだ?あの先生……。何でそこまでレイの肩を持つんだ……?」
 五階堂は、歩き去るフェイトの姿を、茫然と眺めていたら……


「どうしたの?五階堂先輩。」
「うわっ!……な、何だ、レイか……。」
 猫目石(キャッツアイ)のイヤリングを付けた少女……レイに突然話し掛けられた五階堂は、少し驚いた。

「いや……少し、気になる事があってな。」
「……ねえ、何の事?」
 ボソッと呟いた五階堂に対し、レイは質問を続けた。

「……今、フェイト教諭と話をしてたんだが……レイが本戦出場できなかったことを聞いた瞬間に、様子がおかしくなったんだ。」
「え?……あの先生が?」
 

「でも……あの先生、ボクの事を嫌な目で見てきたんだけど……。」
「なっ……そうだったのか!?」
 レイの口から語られた意外な一言に、五階堂は仰天した。

「なら……しばらくの間部屋に戻った方がいいんじゃないか!?今のフェイト教諭の様子なら、何しでかすか分からないからな!」
「う、うん……。そうだね。ありがとう、五階堂先輩。」
 レイは、五階堂に向かって軽く微笑んでから、廊下を走り去っていった……。











「ど……どういたしまして……。」
 五階堂は、少し頬を赤らめ、レイが歩き去っていった方をボーッと眺めていた……。





















「ん?あいつは……」
 ある男子生徒の後ろ姿を見たフェイトは、軽く笑みを浮かべ……

「(見つけたぞ……!ティラノ剣山!!)」
 心の中で高ぶる気持ちを、外に溢れださない様に押さえ込んでいた……。



「……やあ、剣山君。」
「ん?どうしたザウルス?フェイト先生。」
 フェイトに話し掛けられた剣山は、お決まりの返答をした。

「本戦出場おめでとう、剣山君。しかし……」
「……何だドン?」
 フェイトの残念そうな呟きを、剣山は疑問に思っていた。

「デュエルアカデミア星海校の生徒は、正直言って相当強い。今の君の実力では、不様な敗北をするだけだろう。」
「よ、余計なお世話ザウルス!」
フェイトの失礼な一言に、剣山は思わず大声で反論した。



「……よって、私が今から君の実力を見極めよう。もし君の実力が、私の目に止まらぬ様なら……」
 そう言いながらフェイトは、剣山の左手に触れようとしたが……

『……待って!』
 突然、剣山のデッキケースの中から、黒色のロングヘアーで、2つの紫のリボンを着け、すその辺りが白いフリルになっている黒いドレスを着、首、腿の辺りに、フリルの付いたゴムバンドを着け、手首に黒い布を巻いている少女の精霊……アリスが姿を現し、フェイトの前に立ちはだかった!

「!!(この男……精霊持ちなのか!?)」
 フェイトは、剣山の前に『カードの精霊』が現れたことに、思わず目を丸くした……。

『あなた……剣山君に何する気なの?』
 アリスは、フェイトの前に、腕を大きく広げながら、剣山を守ろうと振る舞っていた……。

「ふっ……。」
 フェイトは、アリスのそんな様子を軽く鼻で笑い……











『……虚勢を張るな。普通の精霊が物理的干渉を及ぼせない事は、お前がよく知っているはずだ。』
『!?』
 アリスは、フェイトの声色が突然変わった事に、目を丸くしていた……。

『剣山君……?あいつの声が、聞こえてないの?』
『無駄だ。……我は今、精霊と同質の声で話をしている……。精霊の声が聞こえない者に、今の我の声は聞こえない……。……お前の声の様にな。』
 

『だが……それをお前はいつまで続ける気だ?』
『え?……それって、どう言う……』
 アリスは、フェイトの突然の問いかけの意味が読み取れなかった……。

『お前の存在は、剣山に認知される事は無いだろう。それに加え、精霊体であるお前では、精々精霊からしか剣山を守る事ができない……。その事に対し、お前は口惜しさを感じないのか?』
 フェイトは、アリスに小さな声で話し掛けたが……

『……それでもいいわ。』
『??』
 アリスの一言に対し、フェイトは少し驚いていた……。

『だって……アタシは……剣山君を見守っていられれば、それでいいから……。』
『……健気だな。』
 フェイトは、アリスの一言に対し、思わず笑みを浮かべた。



「(フェイト先生……いったいどうしたんだドン……?いきなり口パクになったと思ったら、笑みを浮かべたザウルス……。)」
 『カードの精霊』の声が聞こえない剣山には、精霊と同質の声で話しているフェイトが口パクをしている様にしか見えず、当惑するしか無かった……。

「……っと、失礼。」
 剣山の表情の変化を見たフェイトは、すぐさま声を人間の物に戻し、剣山に軽く詫びた。

「……すまなかった。では、本戦も頑張ってくれ。」
 そう言い残し、剣山の近くから歩き去っていった……。


「(精霊持ちを相手にして、無駄なリスクを負う必要はないな……。)」





















「(確かに……剣山君は、アタシの存在に一生気付かないかもしれない……。でも……)」
 アリスは、そう小さく呟き、剣山のデッキケースの中のカードに戻って行った……。





















数分後……

「……空野君。探したよ。」
「ん?何ですか?フェイト先生。」
 フェイトは、ようやく見つけた空野に挨拶をすると、空野からお決まりの答えが返ってきた。

「本戦出場おめでとう、空野君。しかし……」
「……?」
 フェイトの残念そうな呟きを、空野は疑問に思っていた。

「デュエルアカデミア星海校の生徒は、正直言って相当強い。今の君の実力では、不様な敗北をするだけだろう。」
「よ、余計なお世話だ!」
 フェイトは、先程の剣山との会話の再現VTRに近い空野との会話を、涼しい顔で聞いていた……。



「よって……今から君は、私とデュエルを行ってもらおう。君が私の目に止まらぬほどのレベルならば、本戦出場を諦めてもらうぞ。」
「(な……何なんだ?この、妙な圧迫感は……)」
 空野は、フェイト教諭から放たれる、邪悪な威圧感に押し負けまいと歯を食いしばり……



「……いいですよ。始めますよ!」
 その気持ちから逃れようと、勢いでその誘いに乗ってしまった……。

「……いい判断だ。」
 フェイトは、笑みを浮かべながらデュエルディスクを構えた……。











「「デュエル!!」」
 先攻は、空野だった。

「僕のターン、ドロー!モンスターをセットし、ターンエンド!」
 空野は、1ターン目はシンプルにターンを終えた。

「私のターン、ドロー。……手札から、『キラー・トマト』を攻撃表示で召喚しよう。」
 フェイトの場に、ハロウィンの時に使われるカボチャの様なくり抜きがされたトマトが現れた。

「『キラー・トマト』で、裏守備モンスターに攻撃。」
 『キラー・トマト』は、全身を使った体当たりで、空野の場の裏守備モンスター……『スクリーチ』を戦闘破壊した!

「戦闘破壊された『スクリーチ』の効果を発動だ!デッキから、2体の水属性モンスター……『黄泉ガエル』と『氷帝メビウス』を墓地に送る!」
 『スクリーチ』は、空野のデッキに口の様なパイプを近付け………デッキの2枚のカードを道連れに墓地に行った!


スクリーチ
水 レベル4
【爬虫類族・効果】
このカードが戦闘によって破壊された場合、
自分のデッキから水属性モンスター2体を選択して墓地へ送る。
攻撃力1500 守備力400


「なるほど……。墓地にキーカードを落とし、さらなる一手につなげるわけだな。……カードを1枚場に伏せ、ターンエンド。」


現在の状況
空野 LP…4000
   手札…5枚
   場…無し

フェイト LP…4000
     手札…4枚
     場…キラー・トマト(攻撃力1400・攻撃表示)
       伏せカード1枚


「僕のターン、ドロー!スタンバイフェイズに、墓地から『黄泉ガエル』を守備表示で特殊召喚する!」
 空野の墓地から、黄色っぽい色をし、小さな羽を持ったカエルが蘇った!


黄泉ガエル
水 レベル1
【水族・効果】
自分のスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在し、
自分フィールド上に魔法・罠カードが存在しない場合、
このカードを自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。
この効果は自分フィールド上に「黄泉ガエル」が
表側表示で存在する場合は発動できない。
攻撃力100 守備力100


「メインフェイズ1に入る!『黄泉ガエル』をリリースし……来い!『ホルスの黒炎竜 LV6』!!」
 黄色っぽいカエルが空野の場から消え去ると……新たに、片翼で体長と同じぐらいの長さの翼を持った、鋼の様なドラゴンが姿を現した!

「バトルだ!『ホルスの黒炎竜 LV6』で、『キラー・トマト』に攻撃!ブラック・フレイム!」
 『ホルスの黒炎竜 LV6』は、口から黒色の炎を発射して……『キラー・トマト』を一瞬で焼き尽くした!

「…………。」(フェイトLP 4000→3100)
 フェイトは、攻撃の衝撃を涼しい顔で受けていた……。

「……戦闘破壊された『キラー・トマト』の効果を発動する。デッキから、攻撃力1500以下の闇属性モンスター……『ダーク・リゾネーター』を攻撃表示で特殊召喚する。」
 フェイトの場に、音叉を持った小柄な悪魔が姿を現した。


キラー・トマト
闇 レベル4
【植物族・効果】
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキから攻撃力1500以下の闇属性モンスター1体を
自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
攻撃力1400 守備力1100


「『ダーク・リゾネーター』……。1回だけ戦闘破壊を免れるやっかいなモンスターだな……。だが、これで『ホルスの黒炎竜 LV6』の進化条件を満たしたぜ!エンドフェイズ時に、進化しろ!『ホルスの黒炎竜 LV6』!!」
 『ホルスの黒炎竜 LV6』は、自身の鋼の翼をさらに大きく広げ……『ホルスの黒炎竜 LV8』へと進化した!


ホルスの黒炎竜 LV6
炎 レベル6
【ドラゴン族・効果】
このカードは自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
魔法の効果を受けない。
このカードがモンスターを戦闘によって破壊したターンのエンドフェイズ時、
このカードを墓地に送る事で「ホルスの黒炎竜 LV8」1体を
手札またはデッキから特殊召喚する。
攻撃力2300 守備力1600


「『ホルスの黒炎竜 LV8』……ここでも、私の前に障壁として立ちはだかるのか……。」
 フェイトは、空野に聞こえない程度の小さな声でボソッと呟いた。

「……私のターン、ドロー。……モンスターをセットし、『ダーク・リゾネーター』を守備表示に変更する。ターンエンドだ。」
 フェイトは、強力な効果を持つ『ホルスの黒炎竜 LV8』を目の当たりにし、守りを固めている様子を見せながら、静かにターンを終えた。


現在の状況
空野 LP…4000
   手札…5枚
   場…ホルスの黒炎竜 LV8(攻撃力3000・攻撃表示)

フェイト LP…3100
     手札…4枚
     場…ダーク・リゾネーター(守備力300・守備表示)
       裏守備モンスター1体
       伏せカード1枚


「僕のターン、ドロー!スタンバイフェイズに、墓地から『黄泉ガエル』を守備表示で特殊召喚する!」
 ドローしたカードを確認した空野は……

「フェイト先生!このターンで、デュエルを終わらせる!」
「いいだろう。……では、その戦法を見せてもらおう。」


「行くぞ!墓地から、水属性モンスター2体……『スクリーチ』と『氷帝メビウス』、炎属性モンスター1体……『ホルスの黒炎竜 LV6』を除外し、現れろ!『氷炎の双竜(フロストアンドフレイム・ツインドラゴン)』!!」
 空野の墓地から現れた、1個の赤色のエレメントが、2個の青色のエレメントに包み込まれ……炎竜の首と、氷竜の首を持ったドラゴンが姿を現した!

「『氷炎の双竜』の効果発動だ!手札を1枚捨て、『ダーク・リゾネーター』を破壊する!」
 『氷炎の双竜』は、炎竜の首から火炎を、氷竜の首から吹雪を吐き出し、『ダーク・リゾネーター』にぶつけようとしたが……

「無駄だ。罠カード『亜空間物質転送装置』を発動しよう。この効果で、『ダーク・リゾネーター』はエンドフェイズ時までゲームから除外し、破壊を回避させる。」
 突然、『ダーク・リゾネーター』が場からいなくなり、『氷炎の双竜』の放ったブレスは虚しく空を切った……。


氷炎の双竜
水 レベル6
【ドラゴン族・効果】
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の水属性モンスター2体と炎属性モンスター1体を
ゲームから除外する事でのみ特殊召喚する事ができる。
手札を1枚捨てる事でフィールド上のモンスター1体を破壊する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
攻撃力2300 守備力2000

亜空間物質転送装置
通常罠
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、
発動ターンのエンドフェイズ時までゲームから除外する。


「だが、これで『ダーク・リゾネーター』は場から消え去った!手札を1枚捨て、装備魔法『D・D・R』を発動する!異次元から舞い戻れ!『ホルスの黒炎竜 LV6』!!」
 


D・D・R
装備魔法
手札を1枚捨てる。ゲームから除外されている自分のモンスター1体を選択して
攻撃表示でフィールド上に特殊召喚し、このカードを装備する。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。


「まだ終わりじゃ無い!手札から、魔法カード『ハリケーン』を発動し、『ホルスの黒炎竜 LV6』に装備された『D・D・R』を手札に戻す!本来、『D・D・R』が場から離れた場合、帰還させたモンスターは破壊されてしまうが……『ホルスの黒炎竜 LV6』は魔法の効果を受けないから、場に生き残るんだ!」
 空野は、自信満々に語った。


ハリケーン
通常魔法
フィールド上に存在する魔法・罠カードを全て持ち主の手札に戻す。


「手札に戻した『D・D・R』をもう1回発動だ!手札を1枚捨て、次はこのモンスターを!『氷帝メビウス』!!」
 空野の場に、もう1度次元の穴が現れ……その中から、氷の力を操る皇帝が出現した!

「なるほど。場にモンスターが5体……。お前の言葉は本当だったみたいだな。」
 フェイトは、空野の場に集結した4体の上級モンスター(+『黄泉ガエル』)を見て、軽く笑みを浮かべた。

「行け!『ホルスの黒炎竜 LV6』で、裏守備モンスターに攻撃!ブラック・フレイム!!」
 『ホルスの黒炎竜 LV6』は、口から黒色の火球を放ったが……その攻撃は、対象のモンスターが二手に別れてしまった事で、見事にかわされてしまった……。

「『ジェルエンデュオ』……このモンスターは、戦闘では破壊されない。」
 フェイトは、静かに語った。


ジェルエンデュオ
光 レベル4
【天使族・効果】
このカードは戦闘によっては破壊されない。
このカードのコントローラーがダメージを受けた時、
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを破壊する。
光属性・天使族モンスターを生け贄召喚する場合、
このモンスター1体で2体分の生け贄とする事ができる。
攻撃力1700 守備力0


「くっ……。『ダーク・リゾネーター』より、裏守備の『ジェルエンデュオ』を優先して破壊していれば、勝っていたのか……。」
「……残念だったな。」
 フェイトは、残念そうにしている空野を、手札に持っている『冥府の使者ゴーズ』を確認してから見ていた……。

「僕の手札は0枚……。これでターンエンドだ……。」
「このタイミングで、『ダーク・リゾネーター』が場に戻ってくる。私のターン、ドロー。」
 ドローしたカードを確認したフェイトは、表情を緩ませ……

「……光栄に思うんだな、空野。」
「な……何をだ?」
 フェイトの突然の一言に、空野は当惑していた……。

「お前は……我が初めて召喚するモンスターによって破れ去る、初の人物だからな!」
 

「『ジェルエンデュオ』は……光属性・天使族モンスターのアドバンス召喚の際、2体分のリリースとする事ができる!光属性・天使族の『ジェルエンデュオ』と、闇属性・悪魔族の『ダーク・リゾネーター』をリリースし……現れよ!!」











「――『天魔神 ノートゥング』!!」
 フェイトの場に、ブルーメタルで精製されたブレストプレートと白銀の軽装鎧、羽飾りの付いた髪留めに、絹の様な素材でできたスカートの様な物を身につけ、右手に光輝く剣を持った、戦乙女の様な形の青色のオーラが、空の上から姿を現した!!

「な……何なんだ?そのモンスターは……。」
 空野は、フェイトの場に出現した『天魔神 ノートゥング』の姿に、思わず見入ってしまった……。

「『天魔神 ノートゥング』は、戦場にて美しく舞う死神……。攻撃力3700を誇り、相手の場にモンスターが存在する場合、1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事が可能となる!」
「な、何!」
 空野は、3700もの攻撃力で2回攻撃が可能な『天魔神 ノートゥング』の効果を耳にし、思わず絶句した……。


天魔神 ノートゥング
光 レベル10
【天使族・効果】
このカードはフィールド上から墓地に送られた場合にのみ特殊召喚する事が可能になる。
自分フィールド上に存在する光属性・天使族モンスター2体と
闇属性・悪魔族モンスター1体をリリースした場合のみ通常召喚することができる。
このカードは魔法・罠・効果モンスターの効果の対象にできない。
自分のターンに1度だけ、次の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚をゲームから除外する。
この効果を発動する場合、このターンこのカードは攻撃する事ができない。
●相手フィールドにモンスターが存在する場合のみ、
バトルフェイズ中にもう一度だけ攻撃する事ができる。
攻撃力3700 守備力2800


「バトルフェイズに入る……。『天魔神 ノートゥング』よ!『ホルスの黒炎竜 LV8』を亡き者にしろ!」
 『天魔神 ノートゥング』は、目にも止まらぬ速さで剣を振るい……『ホルスの黒炎竜 LV8』の首と左翼を、無残にも一瞬で削ぎ落としてしまった!

「ぐっ……『ホルスの黒炎竜 LV8』が、一瞬で……。」(空野LP 4000→3300)
 

「まだ終わりでは無い……。次は……『氷炎の双竜』だ。」
 フェイトの言葉を聞き付けた『天魔神 ノートゥング』は、『氷炎の双竜』の近くに一瞬で近付き……2本の首の間に剣を振り下ろし、胴体を真っ二つに引き裂いた!
 真っ二つにされた『氷炎の双竜』は、熱エネルギーのバランスを完全に保てなくなり、水蒸気と化して消え去ってしまった……。

「な……なんて威力だ!1ターンで、軽く逆転するなんて……!」(空野LP 3300→1900)
「……これで我は、ターンを終了する。」
 


現在の状況
空野 LP…1900
   手札…0枚
   場…ホルスの黒炎竜 LV6(攻撃力2300・攻撃表示)
     氷帝メビウス(攻撃力2400・攻撃表示)
     (守備力100・守備表示)

フェイト LP…3100
     手札…4枚
     場…天魔神 ノートゥング(攻撃力3700・攻撃表示)


「くっ……僕のターン、ドロー!」
 空野は、デッキの1番上のカードを、手に無駄な力が入った状態でドローした……。

「(『聖なるバリア−ミラーフォース−』……か。このカードが発動さえできれば、何とか……。)」
 そう思いながら、空野は……

「『ホルスの黒炎竜 LV6』と『氷帝メビウス』を守備表示にし、カードをセット……。ターンエンドだ……。」
 明らかに逃げに回った一手で、自分のターンを終えた。

「それだけか。……やはりお前の実力は、その程度か。」
 フェイトは、小さな声でそう呟き……

「……我のターン、ドロー。メインフェイズ1に、『天魔神 ノートゥング』の効果を発動する!浄化されろ!『黄泉ガエル』!!」
 『天魔神 ノートゥング』が、持っていた剣を『黄泉ガエル』に向かって投げつけると……激しい光が発生して、『黄泉ガエル』が粒子となって消え去ってしまった!!

「手札から、『幻銃士』を召喚し、効果を発動する。場のモンスターの数まで、闇属性・悪魔族の『銃士トークン』を2体特殊召喚する!」
 場に、背中に銃の様なパイプが付いた小さな悪魔が現れ……そのその悪魔と形が同じで一回り小さい悪魔が2体現れた!


幻銃士
闇 レベル4
【悪魔族・効果】
このカードが召喚・反転召喚に成功した時、
自分フィールド上に存在するモンスターの数まで
「銃士トークン」(悪魔族・闇・星4・攻/守500)を特殊召喚する事ができる。
自分のスタンバイフェイズ毎に自分フィールド上に表側表示で存在する
「銃士」と名のついたモンスター1体につき300ポイントダメージを
相手ライフに与える事ができる。
この効果を発動する場合、このターン自分フィールド上に存在する
「銃士」と名のついたモンスターは攻撃宣言する事ができない。
攻撃力1100 守備力800


「さらに……魔法カード『二重召喚』を発動する!この効果で、2回目の通常召喚が可能となる!光属性・天使族の『天魔神 ノートゥング』1体と、闇属性・悪魔族の『銃士トークン』2体をリリースし……現れよ!!破壊の魔戦士!!」











「――『天魔神 ティルヴィング』!!」
 フェイトの場に、漆黒の軽装鎧と、黒色の絹でできた半ズボンみたいな物、コウモリの羽の様な飾りが付いた黄金の髪飾りを身に着け……右手に、血の様な真紅色に染まった魔剣を持った戦士の姿を形をした赤色のオーラが姿を現した!
 その大きさは、『天魔神 ノートゥング』と比べれば、一回りも二回りも小さい物だが……その威圧感は、それを上回るほどの物だった……。

「『天魔神 ティルヴィング』の召喚に成功した時、効果が発動する!『天魔神 ティルヴィング』の攻撃宣言を封印する代わりに、このモンスター以外の場のカードを、すべて墓地に送る事ができる!」
「何……だって……!」
 空野が驚いている間にも、『天魔神 ティルヴィング』は負のオーラを剣から発生させながら突きを放ち……空野の場の『聖なるバリア−ミラーフォース−』は、まるでガラスの様に粉々に砕け散らせてしまった!
 さらに『天魔神 ティルヴィング』は、その剣を『氷帝メビウス』に向かって振るい……その四肢を1つ1つ、無残にも切り落としてしまった!
 それだけでは飽き足らず……『天魔神 ティルヴィング』は『ホルスの黒炎竜 LV6』の背中にまたがり……その翼を、1本ずつ削ぎ落としていった……。

 翼を削ぎ落とされ、地に墜ちた『ホルスの黒炎竜 LV6』は、弱々しく鳴き声を上げたが『天魔神 ティルヴィング』は全く容赦せずに、その首を冷徹に切り落とした……。
 ……当然、味方のはずの『幻銃士』も例外では無く……


天魔神 ティルヴィング
闇 レベル10
【悪魔族・効果】
このカードはフィールド上から墓地に送られた場合にのみ特殊召喚する事が可能になる。
自分フィールド上に存在する光属性・天使族モンスター1体と
闇属性・悪魔族モンスター2体をリリースした場合のみ通常召喚することができる。
このカードは魔法・罠・効果モンスターの効果の対象にできない。
このカードが召喚に成功した時、このカード以外のフィールド上に存在する全てのカードを墓地に送り、
この効果で墓地に送ったカード1枚につき相手ライフに400ポイントダメージを与える事ができる。
この効果を発動する場合、このターンこのモンスターは攻撃宣言する事ができない。
攻撃力3700 守備力2800


「そ……そんな……。何て冷徹な攻撃なんだ……。」
 空野は、場を骸が転がる地獄絵図へと変化させた『天魔神 ティルヴィング』を、ただただ唖然と見ていた……。

「『天魔神 ティルヴィング』には、もう1つ効果が存在する……。自身の効果で墓地に送ったカードの数1枚につき、400ポイントのダメージを与える!」
「何……!全滅効果に加えて、ダメージ効果まで!?」
 空野が驚いている間に、『天魔神 ティルヴィング』は血塗られた剣を空野に向けて振るい……ライフポイントを、致命的な値にまで減らしてしまった!

「ぐわあぁっ!!」(空野LP 1900→300)
 空野は、『天魔神 ティルヴィング』から受けた効果ダメージを前に、思わず床に膝をついてしまった……。

「これで終わりだ!魔法カード『死者蘇生』を発動!……復活せよ!『天魔神 ノートゥング』!!」
 フェイトの場に、先程空野の切り札級モンスター2体を破壊した、美しき死神『天魔神 ノートゥング』が舞い戻ってきた!


死者蘇生
通常魔法
自分または相手の墓地からモンスターを1体選択して発動する。
選択したモンスターを自分のフィールド上に特殊召喚する。


「う……つ……強い……!」
 空野は、フェイトの場の2体の『天魔神』の威圧感に押されて額から汗がにじみ出、立ち上がる事がやっとだった……。

「終わりだ!『天魔神 ノートゥング』で、空野にダイレクトアタック!」
「ぐわああああぁぁぁぁ!!」(空野LP 1900→0)





















「ま……負けた……。完全にだ……。」
 空野は、完敗を喫してしまい、残念そうに肩を落とした……。


「そうだな……。つまり、お前は……」
 フェイトは、そう言いながら空野の近くに近付き……











ボカッ!!


「が……はっ……。」
 フェイトに思いっきり腹を殴られたフェイトは、デュエルで受けた精神的疲労も合わさって、思わず気絶してしまった……。



「本戦が終わるまで、しばらくおとなしくしてもらおうか……。」
 フェイトは、気絶した空野を抱え、自分の部屋に戻って行った……。











【次回予告】

剣山「おーい、空野ー。いったいどこ行ったんだドン?」
外道「ったく……。予告の仕事をすっぽかすたぁ、情けねえ奴だ!」
剣山「ま、まあ……。外道が代理で来てくれて助かったザウルス……。……と、次回は……」
外道「五階堂の奴……何ボーッとしてんだ!?」



次回、『GX plus!』第三十二話!


『五階堂の憂鬱?気持ちは伝わる!?』

剣山「憂鬱?いったい何があったんだドン?外道。」
外道「俺様が知るわけねえだろ!……まぁ、類推までは可能だがなぁ!!」




第三十三話 五階堂の憂鬱?気持ちは伝わる!?

デュエルアカデミカア……森の中にて……

「空野ーー!いったいどこにいったんだドーーン!」
 剣山は、空野を捜そうと森の中を歩き回っていた……。











――ガササッ……

「ん?誰ザウルス!?」
 茂みの中から音がしたため、剣山は音がした方に目をやると……青色の制服を着、鋭い目付きの男子生徒……外道(そとみち)が姿を現した。

「剣山じゃねえか!空野は見つかったのかぁ!?」
 外道は、剣山の近くに歩み寄りながら話した。

「いや……見つかってないドン。」
「俺様もだ。ったく……あの野郎、どこに行きやがったんだぁ!?」
 外道は、腕を組みながら話した。

「……にしてもよぉ……!俺様達もとことんお人好しだよなぁ!フェイト教諭に、空野捜しのやっかいな仕事を協力させられたんだからよぉ!!」
 外道は、舌打ちをしながら、つい先程の事を思い出していた……。





















「……剣山君、外道(そとみち)君。君達に頼みがあるんだが……空野君の捜索を手伝ってくれないか?」
「ん?いったい何があったんだドン?フェイト先生。」
 剣山は、フェイトの突然の頼み事に、少し驚いていた……。

「いや……空野君のPDA(ポータブル・デュエルアカデミカア)に連絡をしてみたのだが……なぜだか連絡が取れなかったんだ。本戦出場者は、あと1〜2時間以内に校長室に集合しなければ、参加取り消しになってしまう……。」
「なっ……それは大変ザウルス!」
「ああ!それで星海校との本戦を欠場しちまったら……本校の恥曝しじゃねえかよ!!」
 剣山と外道は、フェイトから聞かされた話から事の重大さを理解した……。



「……分かったドン!俺達も、空野捜しに協力するザウルス!!」
「ちっ!本校の恥曝しは御免だぜ!!……俺様も協力するぜ!!」
 剣山と外道は、フェイトに協力をする事にした……。


「ありがとう。……君達は森の方を捜索してくれ。私は港の辺りを捜索する……。」
 そう言っている間にフェイトは、剣山の脇に立っているカードの精霊……アリスから刺すような視線を感じ取っていた……。



『剣山君に手を出したら……絶対許さないわよ!』
 剣山の隣にいた精霊アリスは、フェイトを睨み付けていた……。



『……そんないかがわしい目で、我を見ないでくれないか?』
 フェイトは、アリスに向かって、またしても精霊と同質の声で話し掛けた……。





















「人が突然消える……。まるで、あの事件みたいだドン……。」
「あの事件!?……俺様達の弱さのせいで、全校生徒が全滅に追い込まれたあの事件の事か!!」
 外道(そとみち)は、握りこぶしを作り、忌々しそうに話した……。

「だがなぁ……その事件と今回の事件は、まったく関係ねえと思うぜ!」
「ああ!……俺達は、空野の事を忘れていないザウルス!!」
 外道と剣山は、自信満々に答えた。



「……っと、次は俺様は、オベリスクブルー寮の辺りを捜索するぜ!」
「なら俺は、ラーイエロー寮の辺りを捜索するドン!」
 剣山と外道は、お互いにそう言い残し、別れていった……。





















一方その頃、太平洋上空にて……

バララララララララララララ……



「……う……ん……?」
 プロペラが回るような妙な音によって、空野は目を覚ました。

「……目を覚ましたようだな。」
 空野の隣には、フェイト教諭が腕を組みながら座っていた……。

「フェイト先生……。これはいったい何の真似ですか?」
 空野は、フェイトを横目で見ながら、なぜ自分がヘリコプターに乗せられているのか質問した……。

「強引な手を使って悪かったが……こうでもしないと決断がつかないと思ってね。」
「……何がですか?」
 フェイトの言葉の意味を、空野は全く理解できなかった……。



「君は……プロデュエリストを知っているかい?」
「プロデュエリスト?……ああ、デュエルアカデミカアからも、丸藤先輩や万丈目先輩がプロとして活躍を始めたんですよね。」
「その通りだ。……そして、期待の新人……遊城十代もだな。」
 フェイトは、軽く笑みを浮かべながら話した。

「つまり……君には特別に、プロデュエリストのデュエルを、生で見せてあげようと思ってね。」
「え!?プロのデュエルを!?」
 フェイトの思いがけない一言に、空野は驚いてしまった……。

「でも……星海校との対校試合は大丈夫なんですか?」
「その点は心配ない。鮫島校長に話を付け、対校戦直前に戻ればいい事になっている。」
 フェイトは、そう空野に言い……



「よって……気にする必要はない。」
「…………。」
 その様な会話をしている間にも、2人を乗せたヘリコプターは、アメリカへと全速前進していた……。











一方その頃、デュエルアカデミカア本校・オベリスクブルー寮の辺りにて……


「さあて……ここは、五階堂とレイ(にも、空野捜しの協力を手伝わせるか……。」
 外道(そとみち)は、そう考えて腕を組みながら、オベリスクブルー寮の辺りを捜索していた。

「ん?あいつ……。」
 外道は、芝生に座っている生徒に、思わず目をやった……。











「……好き……嫌い……好……ダメだ!これもハズレだ!」
 青色の制服を着た男子生徒……五階堂は、花びらが偶数枚残った花を投げ捨て、思わずそう言った……。

「何してんだ!?五階堂!!」
「うわっ!……外道じゃないか……。」
 後ろから話し掛けられた五階堂は、少し驚いていた。

「何本も何本も花を抜いて、花びらちぎりやがって……何がしてぇんだよ!」
 外道は、五階堂の周りに散らばった花を見ながら、そう質問した。

「いや……ちょっと可愛いと思った女の子とうまく行くのか……と思ってな。」
 五階堂は、あさっての方向を見ながら答えた。



「……そうだ。外道は、異性に興味があるのか?」
「興味ねぇよんな物!俺様が欲しいのは(ちからだ力!このデュエルアカデミカアの女なんざ、うるせぇし弱ぇし興味ねえ!」
「あっ……そう…………。」
 五階堂は、外道からの想像以上の返答に、少し呆れてしまった……。

「……なら、強い女は好きなのか?」
「はあ!?それがどうした!」


「例えば……なあ……。万丈目サンダーの友人の、天上院明日香ってデュエリストはかなり有名だったと思うが……そいつはどう思う?」
「あいつか?……確かに卒業生の中ではトップクラスのデュエリストだったみたいだがなあ……やっぱ興味ねえな!ああ言う女には!」
「まあ……僕もそうだな。」
 五階堂は、軽くそう呟いた。



「……で、テメエの好きな女ってのは、どんな奴なんだ!?」
「そうだな……。髪の毛が長くて、優しそうで、目がパッチリしてて、笑顔が可愛らしくて、ちょっとデュエルが強くて……」
「……肯定表現ばっかじゃねえかよ。悪い所が見えてねえんじゃねえのか?」
 五階堂の話が長引きそうだったので、外道は言葉をさえぎった。



「……で、誰なんだよ!その女は!」
「誰って……早乙女レイだよ!昨日、僕とデュエルした!」
「なるほどなぁ……。あの女か!」
 外道は、軽くそう言った。

「外道は、レイの事をどう評価するんだ?」
「あの女か?……あの女は、何か精神的な脆さを必死に隠している様にも思えるな。」
 外道は、一言そう呟いた。

「……よし、決めた!玉砕してもかまわない!僕はレイに、この気持ちを伝えてやる!」
「……玉砕どころか、粉砕させられなきゃいいがな。」
 外道は、腕を組みながら呟いた。

「……で、外道。お前、レイと連絡取れるか?」
「取れるわけねえだろ!……しゃあねえ……。」
 外道はそう言いながら、PDA(ポータブル・デュエルアカデミカア)を操作し始めた……。











一方その頃、デュエルアカデミカア本校・ラーイエロー寮の辺りにて……

「ふう……。ここにもいなかったザウルス……。いったい空野はどこにいったんだドン?」
 剣山は肩を落とし、寮の周りの階段に座っていた……。


ピピピ……ピピピ……


「ん?誰ザウルス?」
 剣山は、そう言いながらPDA(ポータブル・デュエルアカデミカア)を手に取り……

ピッ。

『よぉ、剣山!』
「おっ、外道(そとみち)。どうしたんだドン?」
 

『いや、俺様の用事じゃねえんだがよぉ……いったん五階堂に替わるぜぇ!!』











『おい!五階堂!早く受け取れ!』
『い、いいじゃないか!それぐらい外道が言ってくれたって……』
『甘ったれんじゃねぇ!テメエ、さっき玉砕する覚悟だって言ったじゃねえかよ!それぐらい自分で言えなくて、あの女に気持ちを伝えられるか!!』
 外道と五階堂は、剣山に筒抜けになるかならないか程度の声で、言い争いを始めていた……。











「(2人とも……いったい何やってるザウルス……。)」
 中々次の話が出てこない事に、剣山は少し呆れてしまった……。

『……なあ、剣山。』
「ん?どうしたんだドン?五階堂。」


『いや……お前、レイと連絡取れるか?』
「レイちゃんと?……まあ……取れるザウルス。」
 剣山は、軽くそう答えた。

『じゃ、じゃあ……レイを、オベリスクブルー男子寮の近くの林に呼んでくれないか?一応……僕からの頼みだって事は、隠しておいてくれ……。』
「あ、ああ……。分かったドン。」
『……すまない。』


ピッ。



「五階堂……いったいレイちゃんに、何の様があるザウルス?」
 そう思いながら、剣山は再びPDA(ポータブル・デュエルアカデミカア)を操作し始めた……。











その頃、デュエルアカデミカア本校・オベリスクブルー女子寮のある一室にて……

「(……フェイト先生……。いったい何なのかな……?)」
 少し前に、五階堂の助言を受けたレイは、フェイトの目を避けるかの様に、自分の部屋のベッドに寝転びながら待機していた……。


ピピピ……ピピピ……

「……あれ?誰からかな?」
 そう言いながらレイは、枕元に置いておいたPDA(ポータブル・デュエルアカデミカア)を手に取り……


ピッ。

「あっ、剣山先輩。どうしたの?」
『ああ、レイちゃん。ちょっと渡したい物があるから、オベリスクブルー男子寮の近くの林に来てほしいドン。』
 剣山は、軽くそう頼んだ。

「オベリスクブルー男子寮の近くの林……ね。うん、いいよ。」
『もう俺はそこにいるから、なるべく早く来てほしいザウルス。』
「分かった。すぐ行くから、待っててね。」

ピッ。



「ええ……と。フェイト先生に見つからないためには……これぐらいでいいかな。」
 レイは、自分の長い髪の毛を束ねてヘアピンで止め、緑色の帽子を手に取り、自分の髪の毛を無理矢理帽子の中に収めながら深くかぶった。

「(3年ぐらい前より、ちょっと髪の毛伸ばしてたから、これじゃ不自然になっちゃうかな……?)」
 レイは鏡を通して、納まりきらない髪の毛を見ながら、過去の事を思い出していた……。
 そして、少しの間帽子のかぶり方を整えてから、部屋を後にした。











デュエルアカデミカア本校・オベリスクブルー男子寮の近くの林にて……

「……確か……剣山先輩が言ってたのは、この辺りだったよね。」
 レイは、辺りをキョロキョロしながら、誰かいないか確認していた。

「(誰もいないなら……今の内に、髪の毛元に戻しておこうかな……。)」
 そう思いながらレイは、かぶっていた緑色の帽子を取って、ヘアピンを外して髪の毛を開放し、手で髪の毛を軽くといた後に、再び帽子をかぶり直した。



「やあ……レイ。」
 髪の毛を元に戻したレイに、五階堂は軽く話し掛けた。

「あっ、五階堂先輩。剣山先輩見なかった?」
「いや……実は……さ。」
 五階堂は、小さな声でそう呟き……



「……実は……剣山がお前をここに呼んだのは……僕が頼んだからなんだ……。……話があるから……な。」
「……何の話?」
 五階堂の途切れ途切れな話し方を、レイは不思議そうに見ていた……。

「レ……レイ……。ぼ……僕は…………――」











「――……お前が……好きなんだ!」


「え……ええええぇぇぇぇっっ!!」
 レイは、五階堂からの思いがけない一言を耳にした瞬間、顔の辺りが一瞬で火照った様な感覚に襲われ……

「ちょちょちょちょちょっと待って!いいいいきなりそんな事言われてもワワワワタシどんな反応すればいいのか」
 両手を体の前ではためかせながら、顔を真っ赤にして慌てふためいていた……。











「……もしかしたら……間違ってたのかな……?」
 レイは、しゅんとした表情でそう呟いた……。

「な……何がだ?」
 いきなり静まり返ったレイを、五階堂は心配そうに見ていた……。

「……恋愛って……自分の気持ちを伝えるだけじゃなくって、相手に気持ちを受け止めてもらう事も大切なんだよね……。ワタシなんて……誰か好きになったら、もう周りなんて見えなくなっちゃって、ただ自分の気持ちを伝えるのに精一杯で、受け止める側の気持ちまで、考えた事無かった……。」
 レイは、過去の事を思い出しながら話していた……。



「五階堂先輩……。3年ぐらい前に、ワタシ、このデュエルアカデミカアに来た事があるんだ……。」
「何だって!?何しに来たんだ!?」
 五階堂は、レイの言葉に驚いていた……。

「それはね……。亮様……丸藤亮様にワタシの気持ちを伝えるためだったんだ……。」
「丸藤亮?……ああ。あのカイザーと呼ばれていた、デュエルアカデミア最強クラスのデュエリストか。……って、それほどの男に告白しに行ったのか!?凄いじゃないか!!」
 五階堂は、レイの行動力と度胸……その両方に、ただただ驚いて賞賛していた……。

「うん……。でも、振られちゃったんだけど……当たり前だよね……。ワタシにとっての亮様は、大好きな人だったけど、亮様にとってのワタシは、どこにでもいるただの熱烈なファンの1人だったのかも……。」
 レイは、小さな声で、うつむきながら話し……

「……バカだよね……ワタシって……。……そんな一方通行な恋なんて、うまく行くはず無かったのに……」
 ……潤んでいる右目の辺りを、右手の人差し指で軽く撫で、自嘲している様な話し方をした……。
 レイのそんな様子を見た五階堂は、右手を握り締めながら歯を食い縛り……











「――そんな事無い!」
 耳鳴りがするほどの大きな声で、五階堂は言い放った……。


「いくら押し付けがましくても……飾りっ気の無い、純粋な自分の気持ちを伝えられるなんて……立派な事じゃないか!」
「でも……でも……。それで何度も何度も失敗しちゃったんだよ……。そんなワタシって、ミジメだよね……。」
 レイは、相変わらずうつむき、小さな声でそう言った……。



「ミジメ……?それが何だ!いくら失敗したって……地獄に墜ちたって……そこからはい上がればいいじゃないか!それができたから、あいつは強くなったんだ!」
 五階堂は、そう言いながら、右手でレイの左手首をつかみながら言った。

「強くなった……?……まさか!」
 レイは、その人物に心当たりがあるのか、思わずハッとした。

「やっと分かったろ!そいつの名前は、万じょ」
「十代様?」

ズテッ!


 レイの予想外の一言に、五階堂は思わずズッコケてしまった……。

「ちっがーーう!!!分からなければ、もう一度言って聞かせてやる!!一で始まり、万で終わる雷を!」
「え?まさか……」
「そうだ!!」

「一!」

「十!」

「百!」

「千!」


「万丈目サンダー!!」
 五階堂は、右手を、人差し指を立てながら高く掲げ、万丈目サンダーの名前を高らかに宣言した。



「ええっ!?万丈目先輩が、『地獄から舞い戻ってきた』……って、どう言うこと?」
「ああ……、万丈目サンダーは、入学後に負けがかさみ、退学を賭けたデュエルにも負け、デュエルアカデミカアを退学処分になったらしい。」
「あっ……。だから見かけなかったんだ、あの人。」
 レイは、初めてデュエルアカデミカア本校に来た時に万丈目を見なかった理由に、納得した様な表情をした。

「だがその後!万丈目サンダーは、ノース校で最強の座を勝ち取り、不死鳥の様に、本校に帰還したんだ!その後は……まあ、残念な事も多かったけど、最終的には最優秀生徒になっただろ。」
「そうだったんだ……。万丈目先輩って、見た目以上に波瀾万丈な学生生活を送ってたんだね。」
「見た目以上……?見た目通りじゃ無いのか?」
 五階堂は、軽くそう話した。



「ありがとう……。五階堂先輩。ボクの事を、慰めてくれて……。」
「当たり前だろ……。純粋な事は、立派だからな!」
 レイの感謝の言葉を聞いた五階堂は、レイに背中を向け、歩き去っていった……。











「やっぱり無理だった……か。他に好きな人がいたんじゃあ、しょうがないよな……。」
 五階堂はそう呟き、残念そうに歩いていた……。

「体よく断られた……様にも見えるが、これで満足したのかぁ!?五階堂!」
「そ、外道(そとみち)!見てたのか!?」
 

「ああ……。僕はそこまでしつこくないからな。……まあ、どうせ無理だと思ってたからな。」
 五階堂は、外道の問い掛けに軽く答え、オベリスクブルー男子寮の方に向かって歩き去っていった……。











「……さっぱり分からねえな……。男女(おとこおんなの、惚れた晴れたの話なんざ……。」
 外道は、腕を組みながら五階堂の後ろ姿を見て、そう呟いた……。











【次回予告】


剣山「なるほど……。五階堂は、レイちゃんに告白するために、回りくどい方法を取ったザウルス?」
五階堂「まあ……な。もう終わった話だから、関係ないじゃないか……。」
剣山「……分かったドン。さて……次の対戦カードは……!」
五階堂「なっ……次はあの人がデュエルするのか!?」



次回、『GX plus!』第三十二話!


『君の力を確かめさせてもらう……。サイバー流の力を見よ!』

五階堂「これがサイバー流か……。なんて破壊力だ!」
剣山「ああ……。俺もサイバー流を生で見るのは、久しぶりだドン!」




第三十四話 君の力を確かめさせてもらう……。サイバー流の力を見よ!

「そろそろ時間か……。しかし、空野君がまだ見つからず、フェイト教諭からの連絡も途切れてしまうとは……。」
 鮫島校長は、腕を組み、パソコンの画面を凝視しながら、デュエルアカデミアから神隠しに遭ってしまった2人の事を、心配していた……。

「フェイト教諭は、早乙女レイ君を補欠としてでも参加させる様に進めていた……。しかし、彼女の実力には、少々不安が残る……。」
 鮫島校長は、キーボードを高速で叩き……

「……仕方が無い。あの方法しか無いだろう。」
 そう一言呟き、エンターキーをカタッと音を立てながら押した。











一方その頃、オベリスクブルー女子寮、レイの部屋にて……

「はあ……残念だったなあ……本戦に出場できたら、お兄ちゃんに久しぶりに会えると思ったのに……。」
 レイは、ベッドに寝転がって頬杖をつきながら、残念そうに溜息を吐いていた……。

♪〜さ〜よな〜ら〜大好きな〜人〜〜さ〜よな〜ら〜大好きな〜人〜〜

「あっ……電話だ。」
 レイは、手元にあった携帯電話を手に取り、誰からの電話なのかを確認した……。

♪〜た〜だ、大好きな〜人〜〜

「……お兄ちゃんから?……でも……本戦に出場できなかった事なんて言ったら、絶対残念がっちゃうよ……。」
 そう呟きながら、鳴っている携帯電話を布団の中に押し込み、聞こえないふりをしていた……。

♪〜く〜やしいよ〜と〜ても〜〜か〜なしいよ〜と〜ても〜〜

ピピピ……ピピピ……

「あれ?……次は、PDA(ポータブルデュエルアカデミア)から連絡が……。」
 レイは、PDAを手に取り、受信されていたメールを確認した……。

♪〜もうか〜え〜ってこ〜ない〜〜それでもわた〜しの、大好きな〜人〜〜

「『本戦の件で話したい事があるので、デッキを持ち込み、今すぐ校長室に来てもらいたい。……鮫島校長』……?本戦って……代表に選ばれなかったボクが、何で呼ばれるんだろう……?」
 レイは、鮫島校長からのメールに、疑問を抱いていた……。

♪〜な〜にも〜かも忘れられない〜〜な〜にも〜かも捨てきれない〜〜

「でも……もしかしたら、特別に本戦に出場させてもらえるのかな……。……まさかね……。」
 レイは、自分のデュエルディスクを手に取り、校長室へと向かって歩いて行った……

♪〜そんな自分〜が、ミ〜ジ〜メで、よ〜わ〜くて、可哀そ〜う〜で〜大嫌〜〜い〜〜



















デュエルアカデミア本校……校長室にて……

「ティラノ剣山君……。本戦出場おめでとう。……だが、もう1人の出場者である、空野大悟君とは今だに連絡が取れない……。」
「ああ……。俺も必死に捜したけど、まったく見つからなかったザウルス……。」
 鮫島校長と剣山は、残念そうに呟いていた……。

「それで……ボクを呼んだ理由は何ですか?」
 剣山の隣にいたレイは、鮫島校長に質問した。

「うむ……。空野君が制限時間内に集合しなかったのは仕方がないこととして……早乙女レイ君。君に本戦出場の資格を与えたいと思う。」
「ええっ!?」
 鮫島校長の思いがけない一言に、レイは目を丸くした……。

「で……でも……。他の人達にも参加資格があるはずなのに……どうしてボクが……?」
「うむ……。単刀直入に言えば、君のデュエルの腕は素晴らしい物だったのだが……」
 鮫島校長は、声を低くしながら話し……

「……私が指定した者とデュエルをしてもらい、君の実力を確かめさせてもらおう。……いいかね?」
 机の上で手を合わせ、レイの目を見ながらそう答えた。
 それを聞いたレイは、これはチャンスだと思っていた……。

「(ここで本戦に出場できれば……久しぶりに、お兄ちゃんに会えるかも……。)」
 そう少しだけ考えたレイは……

「……分かりました。受けます。」
 鮫島校長に面と向かって、そう答えた。

「うむ。……では、今すぐデュエル場に向かってくれ。対戦者も、直に現れるだろう。」











「なるほどなぁ……。あの女が、本戦に出場するって訳かよ!」
「そ……そうみたいだな……。外道(そとみち)……。」
 校長室の近くを通りかかった外道と五階堂は、鮫島校長の話を密かに盗み聞きしていた……。

「だがなぁ……。鮫島校長は、何故あの女を選んだんだ?」
「もしかすると……フェイト教諭から、何か圧力を受けているのかもしれないな……。フェイト教諭は、妙にレイの肩を持ちたがっている様に見えたからな……。」
「ったく……。鮫島校長は、外部の奴から何度も事件を起こされたのに、まだ懲りちゃぁいねぇのか……?」
 五階堂の仮説を聞いた外道は、鮫島校長に少々呆れてしまっていた……。





















デュエルアカデミア本校……デュエル上にて……

「さあて……いったい誰があの女の対戦相手になるんだ……?」
 外道(そとみち)は、腕を組みながら話した……。

「さあ……。クロノス先生だと思うドン……。」
「クロノス先生か……。そうかも知れないな。……おっ、出てくるみたいだぞ。」
 剣山と五階堂は軽く返答をし、スポットライトが当てられた入口の方に目をやった……。











「では……登場してもらおう!出でよ!秘密兵器!!」
 鮫島校長の言葉と共に、デュエルリングに、赤茶色で、左右に4個づつ緑色のボタンを付けた武闘着の様な物を着、足には布を巻き、紐草履を履いた男が上がってきた!











「……って、あの人じゃないか!」
「さ……さすがにこの展開は予想できなかったぜ……。」
「ああ……。俺はてっきり、クロノス教頭が来る物だと思ってたザウルス……。」
 観客席で見ていた剣山、五階堂、外道(そとみち)の3人は、まさかの登場人物に、思わず声が出てしまった……。











「さ……鮫島校長が相手なんですか……?」
 レイも、予想外な対戦相手に、目を丸くするしかなかった……。

「少々違うな……。今の私は、鮫島校長では無い!私は、鮫島師範……いや、マスター鮫島として、デュエルを行う!」
 そう言いながら、鮫島校長……いや、マスター鮫島は、デュエルディスクを構えた。

「……分かりました。でも、校長先生が相手でも、全力で行きますよ!」
「うむ……。私としても、手を抜かれては困るからな。では、行くぞ!」











「「デュエル!!」」
 先攻は、レイだった。

「ボクのターン、ドロー!」
 レイは、ドローしたカードを、軽く確認した……。

「(まずは……墓地のカードを増やさないと……。)手札から『ライトロード・エンジェル ケルビム』を捨てて、魔法カード『ソーラー・エクスチェンジ』を発動!カードを2枚ドローして、デッキの上からカードを2枚墓地に送ります!」
 レイは、デッキの上に手をやって、2枚のカードを手札に加え、2枚のカード……『キーメイス』と『成長の揺りかご』を墓地に送った。


ソーラー・エクスチェンジ
通常魔法
手札から「ライトロード」と名のついたモンスターカード1枚を捨てて発動する。
自分のデッキからカードを2枚ドローし、その後デッキの上からカードを2枚墓地に送る。


「それから……手札から、魔法カード『泉の精霊』を発動!この効果で……墓地から、装備魔法『成長の揺りかご』を手札に戻しますよ!」
 さらにレイは、先程墓地に送られたカードを墓地から取り出し、自らの手札に加えた。


泉の精霊
通常魔法
自分の墓地から装備魔法カード1枚を手札に加える。
その装備魔法カードはこのターン発動できない。


「手札から『ロックメイス』を捨てて……魔法カード『ワン・フォー・ワン』を発動!この効果で……来て!『ミスティック・エッグ』!」
 レイの言葉と共に、場に1つの不思議な卵が現れた。











「『ワン・フォー・ワン』……。レベル1モンスターを手軽に特殊召喚可能なカードか!あの女、中々いいカードを使うじゃねえか!」
「そうだな。レベル1のモンスターを鍵にしたデッキなら、相当な強さを発揮するよな。」
 外道(そとみち)と五階堂は、レイの使用した魔法カードを分析していた……。


ワン・フォー・ワン
通常魔法
手札からモンスター1体を墓地へ送って発動する。
手札またはデッキからレベル1モンスター1体を
自分フィールド上に特殊召喚する。











「それから……モンスターをセットして、カードを1枚場に伏せて……ターンを終了します!」

「私のターン、ドロー!」
 マスター鮫島は、ドローしたカードを軽く確認し……

「手札から、魔法カード『闇の誘惑』を発動する!カードを2枚ドローし、手札の闇属性モンスター……『サイバー・ウロボロス』をゲームから除外する!」
 


闇の誘惑
通常魔法
自分のデッキからカードを2枚ドローし、
その後手札から闇属性モンスター1体をゲームから除外する。
手札に闇属性モンスターがない場合、手札を全て墓地へ送る。


「『サイバー・ウロボロス』がゲームから除外された場合、手札を1枚墓地に送り、カードを1枚ドローできる!」
 マスター鮫島は、手札の現在不要なカードを墓地に送り、さらに1枚のカードをドローした。


サイバー・ウロボロス
闇 レベル2
【機械族・効果】
このカードがゲームから除外された時、手札のカード1枚を墓地に送る事で、
デッキからカードを1枚ドローする。
攻撃力100 守備力600



「手札交換コンボ……まるで『天使の施し』みたいだドン!」
「そうだな……。『サイバー・ウロボロス』の任意効果のせいで、『オーバーロード・フュージョン』の様なコストで除外された場合には効果を発動できねえが……『闇の誘惑』は効果での除外を行うから、問題なく効果を使える……って訳だな!」
 剣山と外道(そとみち)は、鮫島校長の戦法に感心していた……。


「……では、このカードで君の力を確かめさせてもらおう……。サイバー流の力を見よ!『サイバー・ドラゴン』!!」
 ドローしたカードをすぐさまデュエルディスクに置くと……マスター鮫島の場に、全身が白銀色のメタルで形成され、ドラゴンの様な頭部を持ったモンスターが現れた!



「『サイバー・ドラゴン』の効果は今更語る必要もないだろうが……このカードは、相手の場にモンスターが存在し、自分の場にモンスターが存在しない場合、手札から特殊召喚する事ができる!」
 マスター鮫島の言葉に反応して、『サイバー・ドラゴン』は金属質な咆哮を揚げた!


サイバー・ドラゴン
光 レベル5
【機械族・効果】
相手フィールド上にモンスターが存在し、
自分フィールド上にモンスターが存在していない場合、
このカードは手札から特殊召喚する事ができる。
攻撃力2100 守備力1600


「さらに……このモンスターの力によって、『サイバー・ドラゴン』は、双頭の機械龍へと姿を変える!『融合呪印生物−光』を召喚する!」
 マスター鮫島の場に、黄金色の岩石みたいな殻に被われた、不思議な生物が現れた。


「『融合呪印生物−光』の効果により、『サイバー・ドラゴン』に『融合呪印生物−光』を融合する!」
 そう言うと、『融合呪印生物−光』の体がまるでスライムの様に溶け出し……『サイバー・ドラゴン』を吸収するかの様に包み込んだ!











「……光の呪印が、新たな首を紡ぎだす……!交差する閃光を見るがいい!特殊召喚!出でよ!『サイバー・ツイン・ドラゴン』!!」
 そう言うと、『サイバー・ドラゴン』の首が新たに1本出現して……2本の首を持つ、鋼の双頭龍へと進化した!


融合呪印生物−光
光 レベル3
【岩石族・効果】
このカードを融合素材モンスター1体の代わりにする事ができる。
その際、他の融合素材モンスターは正規のものでなければならない。
フィールド上のこのカードを含む融合素材モンスターを生け贄に捧げる事で、
光属性の融合モンスター1体を特殊召喚する。
攻撃力1000 守備力1600


「バトルだ!行け!『サイバー・ツイン・ドラゴン』!裏守備モンスターに攻撃!エヴォリューション・ツイン・バースト!!」
 『サイバー・ツイン・ドラゴン』は、2つの頭から激しい光線を発射させ、レイの場の裏守備モンスター……『シャインエンジェル』を、一瞬で焼き尽くした!

「『シャインエンジェル』が戦闘破壊されたから、効果が発動しますよ!この効果で、『異次元の女戦士』を特殊召喚!」
 『シャインエンジェル』の体から、光が放たれると……レイの場に、黒い光沢を放つスーツみたいな物を身にまとった、金髪の女戦士が姿を現した。


シャインエンジェル
光 レベル4
【天使族・効果】
このカードが戦闘によって墓地へ送られた時、デッキから攻撃力1500以下の
光属性モンスター1体を自分のフィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
その後デッキをシャッフルする。
攻撃力1400 守備力800


「『異次元の女戦士』……。戦闘を行った相手を除外可能な、やっかいなモンスターだな……。……だが!恐れる必要は無い!『サイバー・ツイン・ドラゴン』は、1度のバトルフェイズ中に、2回の攻撃が可能だ!『異次元の女戦士』に攻撃!エヴォリューション・ツイン・バースト!!」
 『サイバー・ツイン・ドラゴン』は、2本の首から再度光線を発射させ……1本の光線で『異次元の女戦士』を打ち抜き、もう1本の光線がレイに直撃した!

「きゃっ!」(レイLP 4000→2700)

「で、でも……これで『異次元の女戦士』の効果が発動しますよ!『異次元の女戦士』と戦闘した『サイバー・ツイン・ドラゴン』をゲームから除外!」
 『異次元の女戦士』は、『サイバー・ツイン・ドラゴン』の放つ光線を受けながらも、持っていた剣を振るって次元を引き裂き……『サイバー・ツイン・ドラゴン』を自らもろとも異次元へと引きずり込んだ!


異次元の女戦士
光 レベル4
【戦士族・効果】
このカードが相手モンスターと戦闘を行った時、
相手モンスターとこのカードをゲームから除外する事ができる。
攻撃力1500 守備力1600


「メインフェイズ2に入ろう。私の場にモンスターが存在せず、君の場にモンスターが存在する事によって……出でよ!『サイバー・ドラゴン』!!」
 マスター鮫島の場に、先程まで存在した双頭の機械龍の首が1本になった様な機械龍が、再び出現した!











「2枚目の『サイバー・ドラゴン』……。これがあったから、相討ち覚悟の突撃ができたザウルス?」
「そう言う事になるな……。『サイバー・ドラゴン』の真の驚異は、攻撃力じゃあねぇ……。その特殊召喚効果にあるんだよ。」
 剣山と外道(そとみち)は、2体目の『サイバー・ドラゴン』特殊召喚の様子に、少し驚いていた……。

「確かに……攻める時には、メインフェイズ1にその特殊召喚効果で、1ターンの間に大量のモンスターを展開すれば、簡単に場を制圧できるドン……。」
「それに、たとえ相討ち・返り打ちになったとしても、メインフェイズ2での特殊召喚効果と攻撃力で、攻撃を防ぐ壁になる……。そう言う事だな、外道。」
 剣山と五階堂は、外道に次々と話し掛けた。

「そうだぜ……。『サイバー・ドラゴン』は、究極の『剣』でありながら、時として究極の『盾』にもなる!……まあこの表現は、俺様の考えた言葉じゃねぇ……。ある文献からの引用だがな……。」
 外道は、そうボソッと呟いた。











「さらに手札から、永続魔法『未来融合−フューチャー・フュージョン』を発動!」
 マスター鮫島は、手札のカードを1枚、表向きでデュエルディスクに差し込んだ。

「このカードの効果で、デッキより素材となるモンスターを墓地に送り、私のターンで数えて2ターン後のスタンバイフェイズに、融合モンスターを特殊召喚可能なカードだ。私が融合召喚するモンスターは……『サイバー・オーガ・2』!」
 マスター鮫島は、デッキから『サイバー・オーガ・2』の融合素材となる2枚の『サイバー・オーガ』を墓地に送った。


未来融合−フューチャー・フュージョン
永続魔法
自分のデッキから融合モンスターカードによって決められたモンスターを
墓地へ送り、融合デッキから融合モンスター1体を選択する。
発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時に選択した融合モンスターを
自分フィールド上に特殊召喚する(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。


「さらに……『未来融合−フューチャー・フュージョン』によって墓地に送られたカードは、融合に使用した融合素材モンスターとして扱われる!手札から、魔法カード『融合回収』を発動!墓地に存在する『融合』と『サイバー・オーガ』を手札に戻す!」
 マスター鮫島は、墓地から2枚のカードを取り出し、自分の手札に加えた。

「ええっ!?……い、いつ『融合』を墓地に送ったんですか……?」
「ターンの始めに『サイバー・ウロボロス』の効果で手札交換を行った事で、『融合』を墓地に送っていたのだよ。」
 驚くレイに対し、マスター鮫島は落ち着き払った話し方で答えた。


融合回収
通常魔法
自分の墓地に存在する「融合」魔法カード1枚と、
融合に使用した融合素材モンスター1体を手札に加える。











「あの女……下らねぇ質問してやがるぜ……。あのタイミング以外に、墓地に送るタイミングはねぇだろうが!」
「べ、別にいいだろ!あれはただの確認だ!」
 試合を見ていた外道(そとみち)と五階堂は、レイの先程の発言について、自分の意見を述べていた……。











「カードを1枚場に伏せ、ターンエン……」
「このタイミングで、『ミスティック・エッグ』の効果発動!卵が孵化して……新たなベビーが生まれるよ!」
 レイはそう言いながら、デッキの上からカードをめくっていき……

「今回、『ミスティック・エッグ』から生まれたのは……この子ですよ!『ミスティック・ベビー・エンジェル』!」
 卵の中から、背中に白い羽根を生やし、白色の布みたいな服をまとった、小さな丸っこい天使が出現した!


ミスティック・エッグ
光 レベル1
【天使族・効果】
このカードはリリースできない。
このカードが戦闘によって破壊され、墓地に送られた場合、
バトルフェイズ終了時に、墓地に存在するこのカードを守備表示で特殊召喚する。
相手ターンのエンドフェイズ時に、このカードを墓地に送り、
「ミスティック・ベビー」と名のつくモンスターが出るまで自分のデッキをめくり、
そのモンスターを特殊召喚する。
他のめくったカードはデッキに戻してシャッフルする。
攻撃力0 守備力0

ミスティック・ベビー・エンジェル
光 レベル3
【天使族・効果】
自分がカードをドローする度に、このカードにミスティックカウンターを1つ乗せる。
このカードに乗ったミスティックカウンターの個数によって、以下の効果を得る。
(召喚・反転召喚・特殊召喚されたターンには、この効果を発動できない。)
1個:このカードの元々の攻撃力は倍になる。
2個:このカードをリリースすることで、自分の手札・デッキから
「ミスティック・エンジェル」1体を特殊召喚する。
攻撃力600 守備力900


「なるほど……。このタイミングでの特殊召喚か……。これで私は、ターンを終了する。」



現在の状況
レイ LP…2700
   手札…2枚
   場…ミスティック・ベビー・エンジェル(攻撃力600・攻撃表示)
     伏せカード1枚

マスター鮫島 LP…4000
       手札…2枚
       場…サイバー・ドラゴン(攻撃力2100・攻撃表示)
         未来融合−フューチャー・フュージョン(0ターン経過)
         伏せカード1枚


「ボクのターン、ドロー!」
 長かったマスター鮫島のターンを終えて、ようやくレイはカードをドローした。

「カードをドローしたから、『ミスティック・ベビー・エンジェル』にミスティックカウンターが1個乗りますよ!これで、ベビーの攻撃力は、1200ポイントにアップします!」
 『ミスティック・ベビー・エンジェル』は、レイがカードをドローした事に反応し……背中の羽根を少し大きくした!

ミスティック・ベビー・エンジェル 攻撃力600→1200

「それから……手札から、装備魔法『成長の揺りかご』を『ミスティック・ベビー・エンジェル』に装備させます!」
 レイがそう言うと、『ミスティック・ベビー・エンジェル』が、白い羽衣に包み込まれ……小さな寝息をたてながら、眠ってしまった……。

「なるほど……。そのカードは、君のモンスターの成長を促す装備魔法だな。」
「そうですよ!『成長の揺りかご』の効果で、『ミスティック・ベビー・エンジェル』にミスティックカウンターが1個乗って……一人前の天使に成長する条件は満たしましたよ!」
 レイがそう言っている間に、『ミスティック・ベビー・エンジェル』の体の中心に、見る見る光が集まっていった!


成長の揺りかご
装備魔法
「ミスティック・ベビー」と名のついたモンスターにのみ装備可能。
このカードを装備している限り、装備モンスターは戦闘によっては破壊されない(ダメージ計算は適用する)。
1ターンに1度、このカードを装備したモンスターにミスティックカウンターを1個乗せることができる。
この効果を発動するターン、装備モンスターは攻撃する事ができない。
装備モンスターがリリースされる事によってこのカードが墓地に送られた場合、このカードを手札に戻す。


「そして……これが『ミスティック・ベビー・エンジェル』の立派に成長した姿!現れて!『ミスティック・エンジェル』!!」
 『ミスティック・ベビー・エンジェル』が、体の中から光を放つと……白衣を着て、背中に白い羽根を4本生やし、頭上と両腕に光のリングを着け、左手に青色の弓を持った、女性の天使へと姿を変えた!

ミスティック・エンジェル 攻撃力2750

「攻撃力2750……。『サイバー・ドラゴン』を上回ったか!」
 マスター鮫島は、レイが通常召喚の権利を失わずに『サイバー・ドラゴン』を超える攻撃力のモンスターを出現させた事に、少しだけ驚いた。

「さらに、役目を終えた『成長の揺りかご』は、新たなベビーを育むために、ボクの手札に戻るんですよ!」
 そう言いながら、レイは自分のデュエルディスクにセットされた『成長の揺りかご』を、自分の手札に加えた。

「それから……『ミスティック・ベビー・デビル』を攻撃表示で召喚して、装備魔法『成長の揺りかご』を装備させますよ!」
 レイの場に、コウモリのような羽を背中に付け、見るからに悪戯好きそうな顔した茶色な子悪魔が現われた。


「それから……手札から、魔法カード『ハリケーン』を発動!この効果で、場の魔法・罠カードをすべて手札に戻しますよ!」











「『ハリケーン』!?なるほど!そうすれば、1ターンの間にミスティックカウンターを2個乗せて、すぐに進化させられるザウルス!」
「いいや……それは無理みてぇだな。」
 剣山の感嘆の言葉に対し、外道(そとみち)は腕を組みながら答えた。

「どう言う事だ?外道?」
「あの女のミスティック・ベビーは、召喚・反転召喚・特殊召喚されたターンには、進化できねぇみてえだからな……。」
 五階堂の問い掛けに対し、外道は的確に分析したかの様な解説をした。

「外道……どこでレイちゃんが今使っているカードの効果を調べたんだドン?」
 剣山は、外道に質問を続けた。

「んな物市販されているカードの効果ぐらい、分かって当然だろ!出回っているカードの効果を知らずに負けるなんざぁ、情けなくってしょうがねぇよ!」
 外道は、次は足を組みながら答えた。











「『ハリケーン』……か。ならば、永続罠『闇次元の解放』を発動!異次元から舞い戻れ!『サイバー・ウロボロス』!!」
 マスター鮫島がそう言うと、突然マスター鮫島の場に異次元と場をつなぐ穴が現れ……その穴の中から、

「ええっ!?そう言うカードって、場を離れたら特殊召喚したモンスターも一緒に場から消えちゃうはずなのに、何で発動させたんですか?」
「いや……。『闇次元の解放』が場を離れた場合、特殊召喚したモンスターは除外される!……この意味が分かるか?」
 マスター鮫島は、そうレイに問い掛けた。

「??……すいません……分かりません……。」
 レイは、マスター鮫島の言葉を、キョトンとしながら聞いていた……。











「分からねぇだと……?有り得ねぇだろ!あの女、『サイバー・ウロボロス』の効果を知らねぇのか!?」
 外道(そとみち)は、レイの一言を、忌々しそうに聞いていた……。

「ま、まあ……。あれは、『クリッター』の墓地に送られた時に発動する効果と同じ様に考えれば簡単だよな。」
「その通りだぜ……五階堂。『闇次元の解放』によって帰還した『サイバー・ウロボロス』は、『闇次元の解放』が場を離れた事で再び除外される……。つまり、除外された時に発動する『サイバー・ウロボロス』の効果を、手軽に使える……って訳だ。」
 五階堂の言葉に対し、外道は腕を組みながら答えた。











「『闇次元の解放』が場を離れた事によって、『サイバー・ウロボロス』は再び除外されるが……それによって、効果が発動する!手札を1枚墓地に送る事で、カードを1枚ドロー!」
 マスター鮫島は、『未来融合−フューチャー・フュージョン』と『闇次元の解放』を手札に戻した後、手札のカードを1枚墓地に送り、カードを1枚ドローした。


闇次元の解放
永続罠
ゲームから除外されている自分の闇属性モンスター1体を選択し、
自分フィールド上に特殊召喚する。
このカードがフィールド上から離れた時、
そのモンスターを破壊してゲームから除外する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。


「で、でも……これで鮫島校長の伏せカードは無くなったから……バトルフェイズに入りますよ!『ミスティック・エンジェル』で、『サイバー・ドラゴン』に攻撃!ヴァルキュルス・アロー!!」
 『ミスティック・エンジェル』は、右手で弓を引いて矢を放ち、『サイバー・ドラゴン』を貫いた!

「ぐっ!」(マスター鮫島LP 4000→3350)


「まだですよ!『ミスティック・ベビー・デビル』で、鮫島校長にダイレクトアタック!」
 『ミスティック・ベビー・デビル』は、眠そうな目をこすりながらも、指先から小さな火花を散らし、マスター鮫島のライフを軽く削った。

「むっ……。」(マスター鮫島LP 3350→2850)


「メインフェイズ2に入りますよ!手札を1枚捨てて、『ミスティック・エンジェル』の効果を発動しますよ!カードを1枚ドロー!」
 レイは、自分の手札から『キーメイス』を墓地へと捨て、新たなカードをドローした。


ミスティック・エンジェル
光 レベル8
【天使族・効果】
このカードは、「ミスティック・ベビー・エンジェル」または
「ミスティック・レボリューション」の効果でのみ特殊召喚できる。
手札を1体を捨てて発動する。
自分のデッキからカードを1枚ドローする。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
攻撃力2750 守備力2400


「それから……『ミスティック・ベビー・デビル』に『成長の揺りかご』を装備させて……カードを1枚場に伏せて、ターンエンド!このターンが終わったら、やっと『ミスティック・ベビー・デビル』が少し成長しますよ!」
 その言葉通り、『ミスティック・ベビー・デビル』の体は、先程の睡眠の効果がようやく発揮されたのか、少しだけ大きくなった!


ミスティック・ベビー・デビル
闇 レベル2
【悪魔族・効果】
自分の墓地にモンスターカードが送られる度に、このカードにミスティックカウンターを1つ乗せる。
このカードに乗ったミスティックカウンターの個数によって、以下の効果を得る。
(召喚・反転召喚・特殊召喚されたターンには、この効果を発動できない。)
1個:このカードの元々の攻撃力は倍になる。
2個:このカードをリリースすることで、自分の手札・デッキから
「ミスティック・デビル」1体を特殊召喚する。
攻撃力500 守備力700


「私のターン、ドロー!手札から、魔法カード『融合回収』を発動!墓地の『融合』と『サイバー・オーガ』を手札に戻す!」
 マスター鮫島は、前のターンの行動を再現するかの様な手つきで、墓地の2枚のカードを手札に加えた。

「君は『ハリケーン』を使用した事によって、『サイバー・オーガ・2』の登場を止めた……と勘違いしているか?」
「え……?違うんですか……?」
 レイは、キョトンとしながらマスター鮫島に質問した。

「……手札から、魔法カード『融合』を発動!手札の『サイバー・オーガ』2体を融合し……現れよ!『サイバー・オーガ・2』!!」
 マスター鮫島の手札から、(くろがねの鬼が2体融合し……さらに巨体となった、灰色の機械じかけの鬼が、場に姿を現した!

「これで私の墓地のモンスターは5枚になった……。手札から、魔法カード『貪欲な壺』を発動する!墓地の『サイバー・ドラゴン』2体、『融合呪印生物−光』、『サイバー・オーガ』2体をデッキに戻し、カードを2枚ドロー!」
 マスター鮫島は、墓地から5枚のモンスターカードをデッキに戻した後、新たにカードを2枚ドローした。


貪欲な壺
通常魔法
自分の墓地に存在するモンスター5体を選択し、
デッキに加えてシャッフルする。
その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。


「『サイバー・オーガ・2』の攻撃力は2600だが……戦闘を行う相手の攻撃力の半分の値分、自らの攻撃力を高める効果を持つ!行け!『サイバー・オーガ・2』!『ミスティック・エンジェル』に攻撃!!」
 『サイバー・オーガ・2』は、自らの巨体で『ミスティック・エンジェル』に向かって突撃したが……

「伏せ罠カード『和睦の使者』を発動!これで、このターン『サイバー・オーガ・2』の攻撃によって発生する戦闘ダメージを0にしますよ!」


サイバー・オーガ・2
地 レベル7
【機械族・融合・効果】
「サイバー・オーガ」+「サイバー・オーガ」
このカードの融合召喚は、上記のカードでしか行えない。
このカードが攻撃を行う時、攻撃対象モンスターの
攻撃力の半分の数値だけこのカードの攻撃力をアップする。
攻撃力2600 守備力1900

和睦の使者
通常罠
このカードを発動したターン、相手モンスターから受ける
全ての戦闘ダメージは0になる。
このターン自分モンスターは戦闘によっては破壊されない。


「なるほど……。『和睦の使者』をセットしていたか……。メインフェイズ2に入る!手札から、永続魔法『未来融合−フューチャー・フュージョン』を発動!」
 そう言いながらマスター鮫島は、デッキから3枚のカードをレイに見せつけた。

「ま、まさか……」
「そうだ!私が融合召喚するモンスターは――」











――『サイバー・エンド・ドラゴン』!!
 マスター鮫島が、3体の『サイバー・ドラゴン』を墓地に送った瞬間、マスター鮫島の背後に、3本の首を持ち、巨大な翼を持った影のドラゴンが現れたかの様に見えた!

「カードを2枚場に伏せ、ターンエンドだ。」


現在の状況
レイ LP…2700
   手札…0枚
   場…ミスティック・エンジェル(攻撃力2750・攻撃表示)
     ミスティック・ベビー・デビル(攻撃力1000・攻撃表示)
     成長の揺りかご(ミスティック・ベビー・デビルに装備)

マスター鮫島 LP…3350
       手札…1枚
       場…サイバー・オーガ・2(攻撃力2600・攻撃表示)
         未来融合−フューチャー・フュージョン(0ターン経過)
         伏せカード2枚


 マスター鮫島の場に現れた『未来融合−フューチャー・フュージョン』……。
 それは、レイの敗北を告げる時限爆弾の様に、その時を静かに刻んでいた……。











【次回予告】


剣山「さ、さすがサイバー流のデュエルだドン……。一撃一撃に、とんでもない重みを感じるザウルス……。」
五階堂「そうだな……。実際に見ると、迫力が違うよな……。」
剣山「次のターン以降……レイちゃんはどうやって『サイバー・エンド・ドラゴン』に対抗するんだドン……?」



次回、『GX plus!』第三十五話!

『究極の機械龍降臨!サイバー・エンド・ドラゴン!!』
五階堂「『サイバー・エンド・ドラゴン』……あのカードは相当強力なカードだな!」




第三十五話 究極の機械龍降臨!サイバー・エンド・ドラゴン!!

「『サイバー・エンド・ドラゴン』……。攻撃力4000を誇り、さらに貫通能力を持つ、大型モンスターって訳だな。」
 外道(そとみち)は、腕を組みながら呟いた。

「『サイバー・エンド・ドラゴン』か……。確か、この学校出身の有名なデュエリスト・丸藤亮の切り札モンスターだったよな。」
「そうみてえだな……。3年前の模範デュエルでは、『サイバー・エンド・ドラゴン』が何度も何度も融合召喚されたみてぇだからな。」
 五階堂と外道は、自分の知っている『サイバー・エンド・ドラゴン』の情報について語り合った……。











「(どうしよう……。手札0枚じゃ、2ターン後の『サイバー・エンド・ドラゴン』の融合召喚に対抗できないよ……。)」
 レイは、自分の口の前に右手を添え、不安そうな表情をしていた……。

「……ボクのターン、ドロー!……メインフェイズに、『成長の揺りかご』の効果発動!『ミスティック・ベビー・デビル』に、ミスティックカウンターを1個乗せますよ!」
 そう言うと、『ミスティック・ベビー・デビル』がすやすやと静かに眠り始め……さらに体が一回り大きくなった!


ミスティック・ベビー・デビル
闇 レベル2
【悪魔族・効果】
自分の墓地にモンスターカードが送られる度に、このカードにミスティックカウンターを1つ乗せる。
このカードに乗ったミスティックカウンターの個数によって、以下の効果を得る。
(召喚・反転召喚・特殊召喚されたターンには、この効果を発動できない。)
1個:このカードの元々の攻撃力は倍になる。
2個:このカードをリリースすることで、自分の手札・デッキから
「ミスティック・デビル」1体を特殊召喚する。
攻撃力500 守備力700

成長の揺りかご
装備魔法
「ミスティック・ベビー」と名のついたモンスターにのみ装備可能。
このカードを装備している限り、装備モンスターは戦闘によっては破壊されない(ダメージ計算は適用する)。
1ターンに1度、このカードを装備したモンスターにミスティックカウンターを1個乗せることができる。
この効果を発動するターン、装備モンスターは攻撃する事ができない。
装備モンスターがリリースされる事によってこのカードが墓地に送られた場合、このカードを手札に戻す。


「それから……『ミスティック・ベビー・デビル』の効果を発動します……。来て!『ミスティック・デビル』!」
 


「ベビーを成長させる役目を終えた『成長の揺りかご』は、ボクの手札に戻って……『ミスティック・エンジェル』の効果を発動しますよ!手札から『成長の揺りかご』を捨てて、カードをドローします!」
 レイは、手札に戻したカードをすぐに墓地に送り、カードを1枚ドローした。


ミスティック・エンジェル
光 レベル8
【天使族・効果】
このカードは、「ミスティック・ベビー・エンジェル」または
「ミスティック・レボリューション」の効果でのみ特殊召喚できる。
手札を1体を捨てて発動する。
自分のデッキからカードを1枚ドローする。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
攻撃力2750 守備力


「バトルフェイズに……」
「入る前に、永続罠『サイバー・シャドー・ガードナー』を発動する!出でよ!『サイバー・シャドー・ガードナー』!」
 マスター鮫島がそう言うと、場に(くろがね色の機械が姿を現した!


サイバー・シャドー・ガードナー
永続罠
このカードは相手ターンのメインフェイズにしか発動できない。
このカードは発動後モンスターカード(機械族・地・星4・攻/守?)となり、
自分のモンスターカードゾーンに特殊召喚する。
このカードが攻撃宣言を受けた時、
このカードの攻撃力・守備力は相手攻撃モンスターと同じ数値になる。
このカードは相手ターンのエンドフェイズ時に魔法&罠カードゾーンにセットされる。
(このカードは罠カードとしても扱う)


「『サイバー・シャドー・ガードナー』は、戦闘を行う相手の姿を模倣し、同等の攻撃力・守備力を得る!」
「で、でも……『サイバー・シャドー・ガードナー』に攻撃しなければ大丈夫なんですよね……。『ミスティック・エンジェル』で、『サイバー・オーガ・2』に攻撃!ヴァルキュルス・アロー!!」
 『ミスティック・エンジェル』は、右手で弓を引き……放たれた矢によって、『サイバー・オーガ・2』の首元を貫いた!

「くっ!」(マスター鮫島LP 3350→3200)


「じゃあ……これでターンを終了します……。」
「このタイミングで、『サイバー・シャドー・ガードナー』は再びセットされる!」
 レイのエンド宣言時に、『サイバー・シャドー・ガードナー』は次の発動タイミングに備えていた……。

「私のターン、ドロー!」
 マスター鮫島は、ドローしたカードを軽く確認し……

「手札から、『サイバー・ヴァリー』を召喚する!」
 手札から、銀色の装甲を持った小型のドラゴンみたいなモンスターが現れた。

「さらに、永続罠『闇次元の解放』を発動!再び帰還せよ!『サイバー・ウロボロス』!!」
 

闇次元の解放
永続罠
ゲームから除外されている自分の闇属性モンスター1体を選択し、
自分フィールド上に特殊召喚する。
このカードがフィールド上から離れた時、
そのモンスターを破壊してゲームから除外する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。


「『サイバー・ヴァリー』の効果には、3つの選択肢がある……。私は、第2の効果を発動!『サイバー・ヴァリー』と『サイバー・ウロボロス』を除外し、カードを2枚ドロー!」
 マスター鮫島は、場の2体のモンスターを除外し、新たにカードを2枚ドローした。


サイバー・ヴァリー
光 レベル1
【機械族・効果】
次の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●このカードが相手モンスターの攻撃対象になった時、
このカードをゲームから除外する事で自分はデッキからカードを1枚ドローし、
そのバトルフェイズを終了する。
●このカードと自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を
選択しゲームから除外する。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。
●このカードと自分の手札1枚を選択してゲームから除外する。
自分の墓地のカード1枚をデッキの一番上に置く。
攻撃力0 守備力0


「……あれ?『サイバー・ウロボロス』の効果は、発動しないんですか……?」
「うむ……。『サイバー・ウロボロス』の手札交換効果は、任意効果だ。『サイバー・ヴァリー』の効果で除外した場合、除外の直後にドローの処理が入る事によって、タイミングを逃してしまう……。」
 マスター鮫島は、残念そうに話した。


サイバー・ウロボロス
闇 レベル2
【機械族・効果】
このカードがゲームから除外された時、手札のカード1枚を墓地に送る事で、
デッキからカードを1枚ドローする。
攻撃力100 守備力600


「『闇次元の解放』は、対象が破壊以外の方法で場を離れた場合、場に残り続けるが……それもまた、私の手札を補充する糧となる!『闇次元の解放』をコストに、魔法カード『マジック・プランター』を発動!カードを2枚ドローする!」
 マスター鮫島は、場に無意味に残った『闇次元の解放』を利用し、さらに手札を補充した。


マジック・プランター
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する
永続罠カード1枚を墓地へ送って発動する。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。











「手札補充コンボか……!1ターンキルばかりをねらっている様に見えるが、意外と粘り強いのがサイバー流って奴なのか!」
 外道(そとみち)は、腕を組みながら話した。

「外道……お前、サイバー流のデュエルを見た事があるのか?」
「実際には無えがな……。資料室で3年前の卒業模範デュエルのVTRを見て研究しただけだ。」
 五階堂の問いかけに対し、外道は軽く答えた。











「カードを2枚場に伏せ、ターンエンドだ。」
 マスター鮫島は、守りのためのカードを場に伏せ、ターンを終えた。


現在の状況
レイ LP…2700
   手札…2枚
   場…ミスティック・エンジェル(攻撃力2750)
     ミスティック・デビル(攻撃力2500)

マスター鮫島 LP…3200
       手札…2枚
       場…未来融合−フューチャー・フュージョン(1ターン経過)
         伏せカード3枚(内1枚サイバー・シャドー・ガードナー)


「……」


「(どうしよう……。マズイよ……マズイよ……。このターンで何とかしないと、『サイバー・エンド・ドラゴン』を融合召喚されちゃうよ……。)」
 レイは、うつむきながら両手を合わせたり、右手で猫目石(キャッツアイ)のイヤリングを触ったりと、何とか不安を取り除こうとしていた。

「(……『サイバー・シャドー・ガードナー』は、攻撃されたモンスターと同じ攻撃力と守備力になるから、ボク場のモンスターを1体失う事になっちゃうよ……。それに、破壊しようとしても、メインフェイズ1の終わりに発動されちゃうから、通常魔法とかモンスター効果を当てる事ができないよ……。)」
 そして、手札のカードを確認しながら、何をするべきなのか考えていた……。

「(……このターンで勝負を決めるためには……とりあえず……今は『ユニオン・アタック』は必要ないかな……。)……手札から『ユニオン・アタック』を捨てて、『ミスティック・エンジェル』の効果を発動します。……カードを1枚ドロー!」
 レイは、手札のカードを1枚捨て、新たにカードを1枚ドローした。

「(……そう言えば……前にもこんな事を教えてもらった様な気が……!)」





















「いいかい?レイ。メインフェイズ終了前に、相手が何か効果を発動したなら、まだメインフェイズを続ける事ができるんだよ。」
「……?どう言う事?お兄ちゃん。」
 ナオの言葉に対し、レイは目を丸くしていた……。

「……例えば、自分がメインフェイズ1を終わってバトルフェイズに入りたい時に、相手が『アポビスの化身』を発動したとするよ。そうされたら、まだメインフェイズ1が終わった事にならないから、通常召喚や魔法の発動、セットを行えるんだよ。」
「え……?そうだったんだ。……結構重要そうな事なのに、それを知らずにデュエルアカデミアに行って、大丈夫かな……。」
 レイは、不安そうな表情をしたが……

「……まあ、そんな状況はほとんど無いかもしれないけどね。知らなくてもデュエルアカデミアで困る事は無いと思うよ。……それ以前に、多分デュエルアカデミアの生徒のほとんどはこの事を知らないと思うけどね。」
 心配そうな表情をするレイに、ナオは軽く話し掛けた。





















「……そうだ……!」
 レイは、何かを思い出したように声を揚げ……

「……バトルフェイズに……」
「入る前に、永続罠『サイバー・シャドー・ガードナー』を発動!」
 マスター鮫島がそう言うと、場に再び(くろがね色の機械が姿を現した!

「じゃあ……このタイミングで、墓地から光天使3体……『ライトロード・エンジェル ケルビム』、『キーメイス』、『ミスティック・エッグ』と、闇悪魔1体……『ロックメイス』をゲームから除外して……来て!『天魔神 エンライズ』!!」
 レイがそう言うと、場に不思議な光が降り注ぎ……その光と共に、外側が白色だが内側が黒色の天使の翼、腰まで伸びた長い白髪、腹に開いた(ホール、黒い布で目を隠したモンスターが姿を現した!

「何……!このタイミングでの特殊召喚だと!?」
「『天魔神 エンライズ』の効果発動!この効果で、場の表側表示モンスター1体……『サイバー・シャドー・ガードナー』をゲームから除外します!」
 『天魔神 エンライズ』は、腹に開いた異次元への(ホールを全開にすると……『サイバー・シャドー・ガードナー』の体が、まるで砂鉄の様に変化し……その砂鉄が『天魔神 エンライズ』の腹の穴に吸い込まれ、跡形も無く消え去った!


天魔神 エンライズ
光 レベル8
【天使族・効果】
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の光属性・天使族モンスター3体と闇属性・悪魔族モンスター1体を
ゲームから除外した場合のみ特殊召喚する事ができる。
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体をゲームから除外する事ができる。
この効果を発動する場合、このターンこのカードは攻撃する事ができない。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
攻撃力2400 守備力1500











「メインフェイズ1を終わろうとしたのに、新たにモンスターを特殊召喚した……?どう言う事ザウルス?外道(そとみち)。」
 

「当然だろ。あの女はメインフェイズ1を終わろうとしたが、それを校長に拒否された……それだけだ。」

「なるほど……。確かメインフェイズを終えるためには、お互いに何もせずに優先権を放棄する必要があるんだよな。」
「そうだぜ、五階堂。『メインフェイズを終わりたい』発言は、優先権を放棄する意思の表れだ。だが、その発言に対し相手が何かを発動させた場合、メインフェイズの終了を望む流れは崩れる……。つまり、まだメインフェイズが終わらねぇって訳だ。」
 五階堂の問い掛けに対し、外道は当然だと言わんばかりの表情で答えた。

「は、初めて知ったドン……。」
「……だが、基本的にこれは気にする機会が無ぇ事だぜ。メインフェイズ以外に発動不可能なカード自体少ねぇからな。」
 剣山に対して外道は、腕を組みながら話した。











「じゃあ……改めてバトルフェイズに入りますよ!これが通れば……ボクの勝ちですよ!『ミスティック・デビル』で、鮫島校長にダイレクトアタック!ミスティア・ライトニング!!」
 レイは、勝利を確信しながら『ミスティック・デビル』による攻撃宣言を行ったが……突然、マスター鮫島の目の前に2体の小さな機械族モンスターが、守備態勢を取りながら姿を現した!

「伏せ罠カード……『異次元からの帰還』!ライフを半分支払い、除外されている『サイバー・ウロボロス』と『サイバー・ヴァリー』が、エンドフェイズ時まで場に帰還する!」
 マスター鮫島は、軽く笑みを浮かべながら話した。


異次元からの帰還
通常罠
ライフポイントを半分払う。
ゲームから除外されている自分のモンスターを
可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する。
エンドフェイズ時、この効果によって特殊召喚されたモンスターを
全てゲームから除外する。


マスター鮫島LP 3200→1600

「あれ……?1ターン目に『異次元の女戦士』で除外された『サイバー・ツイン・ドラゴン』は、戻ってこないんですか……?」
「うむ……。『融合呪印生物−光』によって特殊召喚された『サイバー・ツイン・ドラゴン』は、召喚制限がかかってしまう……。」
 マスター鮫島は、少し残念そうに話した。

「じゃ、じゃあ……もう手札交換効果を発動させたくないから……『ミスティック・デビル』で、『サイバー・ウロボロス』に攻撃!ミスティア・ライトニング!!」
 『ミスティック・デビル』は、激しい稲妻を発生させ……『サイバー・ウロボロス』を、一瞬で感電させた!

「じゃあ……カードを1枚場に伏せて、ターンを終了します……。」

「……私のターン、ドロー!!……遂に訪れた……この時が!」
 マスター鮫島は、小さな声でそう呟いた。

「3体の『サイバー・ドラゴン』は……時を越え、融合する!出でよ!究極の融合モンスター――」











『サイバー・エンド・ドラゴン』!!!
 マスター鮫島の言葉と共にに、虹色の霧で覆われた不思議な空間が現れ……その中から、大きな翼を持ち、白銀色の金属で形成された3つ首の機械龍が姿を現した!


未来融合−フューチャー・フュージョン
永続魔法
自分のデッキから融合モンスターカードによって決められたモンスターを
墓地へ送り、融合デッキから融合モンスター1体を選択する。
発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時に選択した融合モンスターを
自分フィールド上に特殊召喚する(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。

サイバー・エンド・ドラゴン
光 レベル10
【機械族・融合・効果】
「サイバー・ドラゴン」+「サイバー・ドラゴン」+「サイバー・ドラゴン」
このカードの融合召喚は上記のカードでしか行えない。
守備表示モンスターを攻撃した時、
このカードの攻撃力がそのモンスターの守備力を越えていれば、
その数値だけ相手に、戦闘ダメージを与える。
攻撃力4000 守備力2800


「さらに……装備魔法『巨大化』を、『サイバー・エンド・ドラゴン』に装備!この効果によって、『サイバー・エンド・ドラゴン』の攻撃力は倍となる!」
 そう言うと、『サイバー・エンド・ドラゴン』の体が2倍程度に大きくなり……激しい咆哮を上げ、レイの場のモンスター達を威嚇した!


巨大化
装備魔法
自分のライフポイントが相手より少ない場合、
装備モンスター1体の元々の攻撃力を倍にする。
自分のライフポイントが相手より多い場合、
装備モンスター1体の元々の攻撃力を半分にする。


サイバー・エンド・ドラゴン 攻撃力4000→8000

「こ…攻撃力……8000!?」
 レイは、登場するモンスターの攻撃力は4000だと高をくくっていたりもしたが、いきなり攻撃力8000になった『サイバー・エンド・ドラゴン』を見て、思わず目を丸くした……。

「バトルだ!『サイバー・エンド・ドラゴン』で、『天魔神 エンライズ』に攻撃!エターナル・エヴォリューション・バースト!!」
 『サイバー・エンド・ドラゴン』は、3つの頭から激しい光線を、『天魔神 エンライズ』に向かって発射させたが……その攻撃は、突然発生した稲妻のカーテンに阻まれた!

「むっ……。モンスター効果が発動したのか?」
「はい!『ミスティック・デビル』の効果が発動したんですよ!相手の攻撃時にデッキの1番上のカードを墓地に送って、そのカードがモンスターだった場合、その攻撃は無効になるんですよ!墓地に送られたカードは、モンスターカードの『ミスティック・ドラゴン』だから、攻撃は無効ですよ!」
 レイは、虚勢を張るように答えた。


ミスティック・デビル
闇 レベル8
【悪魔族・効果】
このカードは、「ミスティック・ベビー・デビル」または
「ミスティック・レボリューション」の効果でのみ特殊召喚できる。
相手モンスターの攻撃宣言時、自分のデッキの1番上のカードを墓地に送って発動する。
墓地に送られたカードがモンスターカードだった場合、
相手モンスター1体の攻撃を無効にする。
攻撃力2500 守備力1200


「なるほど……。では私は、これでターンを終了する。」


現在の状況
レイ LP…2700
   手札…2枚
   場…天魔神 エンライズ(攻撃力2400・攻撃表示)
     ミスティック・エンジェル(攻撃力2750・攻撃表示)
     ミスティック・デビル(攻撃力2500・攻撃表示)

マスター鮫島 LP…1600
       手札…2枚
       場…サイバー・エンド・ドラゴン(攻撃力8000・攻撃表示)
         未来融合−フューチャー・フュージョン(サイバー・エンド・ドラゴン対象)
         伏せカード1枚


「な……何とか、助かったかな……。ボクのターンで、『天魔神 エンライズ』の効果を発動させれば……!」
 レイは、目の前の『サイバー・エンド・ドラゴン』に対抗する方法を考える事で、心を落ち着かせ……

「……ボクのターン、ドロー!メインフェイスに、『天魔神 エンライズ』の効果を発動します!この効果で、『サイバー・エンド・ドラゴン』を除外!」
 『天魔神 エンライズ』は、再び腹に開いた異次元への(ホールを開こうとしたが……

「ならば、速攻魔法『禁じられた聖杯』を『天魔神 エンライズ』に対し発動!この効果で、このターン中攻撃力を400上げる代わりに、効果を無効にする!」
 聖杯からこぼれ落ちた聖水が『天魔神 エンライズ』の体に取り付き……(ホールを開く事ができなくなった……。


禁じられた聖杯
速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
エンドフェイズ時まで、選択したモンスターの攻撃力は
400ポイントアップし、効果は無効化される。


天魔神 エンライズ 攻撃力2400→2800











「……鮫島校長……手を抜いてんのか?」
 外道(そとみち)は、マスター鮫島の行動に、疑問を抱いていた……。

「前のターン、『禁じられた聖杯』を『ミスティック・デビル』に向かって発動すりゃあ、攻撃無効化効果を封印して勝利していたはずだぜ。」











「(どうしよう……。本当に『サイバー・エンド・ドラゴン』をどうにかしないと、負けちゃうよ……。)」
 レイは何か手は無いかと、手札、墓地のカードを1枚1枚確認し始めた……。

「(手札には、墓地の魔法カードを回収できる『魔法石の採掘』……墓地には『ユニオン・アタック』があるけど……みんなの力を合わせて、『サイバー・エンド・ドラゴン』の攻撃力に対抗できるのかな……?)」
 レイは、何とかならないかと頭の中で計算を始めた……。

「(『ミスティック・エンジェル』の攻撃力は2750……『ミスティック・デビル』の攻撃力は2500……『禁じられた聖杯』の効果を受けた『天魔神 エンライズ』の攻撃力は2800……。2750+2500+2800は……!)」
 答えが出たのか、レイは手札のカードを1枚デュエルディスクに差し込んだ。

「……手札を2枚捨てて……魔法カード『魔法石の採掘』を発動!この効果で、墓地の魔法カード……『ユニオン・アタック』を手札に戻します!」
 レイは、墓地から1枚のカードを探し出し……

「お願い……みんな……力を貸して……!手札から、魔法カード『ユニオン・アタック』を、『ミスティック・エンジェル』に対して発動させますよ!!」
 そう言うと、『ミスティック・エンジェル』の右肩に『天魔神 エンライズ』が、左肩に『ミスティック・デビル』が手をやり……すべての攻撃力を、『ミスティック・エンジェル』に集約した!


ユニオン・アタック
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
このターンのバトルフェイズ中、選択したモンスターの攻撃力は、
自分フィールド上に表側攻撃表示で存在する他のモンスターの攻撃力の合計分アップする。
このモンスターは相手プレイヤーに戦闘ダメージを与える事はできない。
また、他の表側攻撃表示モンスターはこのターン攻撃をする事ができない。


ミスティック・エンジェル 攻撃力2750→8050

「攻撃力8050……!!『巨大化』した『サイバー・エンド・ドラゴン』の攻撃力を50の差で上回っただと!?」
 マスター鮫島は、偶然としか思えないほどの僅差で『サイバー・エンド・ドラゴン』の攻撃力を上回られてしまった事に、思わず絶句してしまった。

「ま、まさか8000をギリギリ超えちゃうなんて、何度計算しなおしてもおかしいと思ったんですけど……これが正しいなら、『サイバー・エンド・ドラゴン』を倒せますよ!『ミスティック・エンジェル』で、『サイバー・エンド・ドラゴン』に攻撃!ライトニング・ディメンジョン・アロー!」
 『ミスティック・エンジェル』は、雷に匹敵するくらいの矢を『サイバー・エンド・ドラゴン』の胴体に向かって解き放った!
 すると、その当たった矢から次元の渦が発生し、『サイバー・エンド・ドラゴン』の体がまるで錆の様な砂へと姿を変えていき、そのまま崩れ落ちていった……。

「ぐっ……まさか『サイバー・エンド・ドラゴン』が、こうもあっさりと……!」
「こ、これで何とか、首の皮一枚つながったかな……。……これでターンを終了します!」
 『サイバー・エンド・ドラゴン』が場から消えた事を確認したレイは、ホッと胸をなで下ろし、自分のターンを終えた。

「……私のターン、ドロー!」
 マスター鮫島は、デッキからカードを1枚ドローし……

「……手札から、速攻魔法『皆既日蝕の書』を発動!この効果によって、君の場のモンスターをすべて裏側守備表示に変更する……!」
 突然、場が陰に包み込まれ……レイの場の『天魔神 エンライズ』、『ミスティック・エンジェル』、『ミスティック・デビル』が陰に同化してしまった!


皆既日蝕の書
速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て裏側守備表示にする。
このターンのエンドフェイズ時に相手フィールド上に
裏側守備表示で存在するモンスターを全て表側守備表示にし、
その枚数分だけ相手はデッキからカードをドローする。


「宣言しよう……。私は……このターン、『サイバー・エンド・ドラゴン』を融合召喚する!」
「ええっ!?て……手札2枚で、どうやって『サイバー・エンド・ドラゴン』を融合召喚するんですか……?」
 レイは、マスター鮫島の突然の一言に、目を丸くしていたが……

「あるのだよ……。サイバー流には、その方法が!」
 マスター鮫島の自信満々の様子が、変わる事は無かった……。











「ど……どう言う事ザウルス!?」
「いくら何でも……そんな方法が……!」
 剣山と五階堂も、マスター鮫島の一言に、驚くしかなかったが……

「……いや!あるぜ!サイバー流には、この状況で『サイバー・エンド・ドラゴン』を呼び出す方法が!」
 外道(そとみち)だけは、何かを思い出した様な表情で話していた。

「そ……それは、どんなカードなんだドン!?」
「ああ……。そのカードは、3年前の模範デュエルで、ラストを飾った融合補助カードだ……!」
 剣山の問い掛けに対し、外道は腕を組みながら答えた。

「これが、サイバー流の恐ろしい所なんだよ。」
「……お前、サイバー流の何知ってんだよ……。」
 外道の、全てを知っている様な話し方に、五階堂は思わず突っ込んでしまった。











「ライフを半分払い……速攻魔法『サイバネティック・フュージョン・サポート』を発動!」
 マスター鮫島が1枚のカードを発動すると……突然、マスター鮫島の墓地から激しい光が放たれた!

マスター鮫島LP 1600→800

「『サイバネティック・フュージョン・サポート』を発動したターンに機械族モンスターの融合召喚を行う場合……1度だけ、墓地のカードをも素材とした融合召喚を行う事が可能となる!」
「ええっ!?じゃ、じゃあ……」
 レイは、これから目の当たりにする光景をすぐに理解し、脇をしめ、少し縮こまってしまった……。


サイバネティック・フュージョン・サポート
速攻魔法
ライフポイントを半分払って発動する。
このカードの発動ターンに機械族モンスターの融合召喚を行う場合、
1度だけ融合モンスターカードによって決められたモンスターを
自分の手札・フィールド・墓地から選択してゲームから除外し、
これらを融合素材とする事ができる。


「そして……魔法カード『融合』を発動!『サイバネティック・フュージョン・サポート』の効果により、墓地の3体の『サイバー・エンド・ドラゴン』を除外し、融合素材とする!……現れよ!」
 マスター鮫島の言葉に反応し、墓地から3体の『サイバー・ドラゴン』が1つに融合し……











『サイバー・エンド・ドラゴン』!!!
 


「そ…そんな……!本当に、1ターンで出てきちゃった……。」
 レイは、自分の敗北を確信したのか、マスター鮫島の場に登場した『サイバー・エンド・ドラゴン』の姿に唖然とするしかなかった……。

「行くぞ……!『サイバー・エンド・ドラゴン』で、裏側守備表示の『ミスティック・デビル』に攻撃!エターナル・エヴォリューション・バースト!」
 『サイバー・エンド・ドラゴン』は、3本の首から発射される光線を集約させ……裏側守備表示のため、効果による抵抗のできない『ミスティック・デビル』の体を紙の様に貫き、その光線をレイに直撃させた!

「きゃあぁぁ!」(レイLP 2700→0)











「あぁ……負けちゃった……。」
 デュエルが終わった直後にレイは、肩を落として残念そうにうつむいていた……。

「早乙女レイ君……。」
 マスター鮫島は、自分の顔をデュエリストの表情から校長先生の表情に変化させ、レイの元に歩み寄り……

「……この試合では勝利を飾る事はできなかったが……君の実力ならば、十分本戦出場の権利を手にする資格があるだろう……。」
「え……本当ですか……。」
 鮫島校長の言葉を、レイは目を丸くしながら聞いていた……。














「剣山、五階堂。……今の鮫島校長のセリフ……テメエらはどう分析する!?」
 外道(そとみち)は、鮫島校長のセリフを耳にした瞬間、剣山と五階堂に向かって問いかけを行った。

「ああ……。俺の考えでは、鮫島校長はただレイちゃんの実力を測りたかっただけだと思うザウルス……。」
「そうだな……。やっぱり、始めからレイを本戦に出場させる気だったんじゃないのか?」
 剣山と五階堂は、外道に言われるがまま自らの意見を述べた。

「……テメエらもそう思うか。」






「……では!これにて、本戦出場者の2名が決まった!本戦は10日後、星海校にて行われる!出場者の2名は、2日後デュエルアカデミアから船で発つので、準備を済ませておく様に!」
 鮫島校長は、右手にマイクを持ち、観客が少ないデュエル場に対して高らかに宣言した。











「星海校へ船で行くのにかかる時間は1日程度……1週間程度の余裕を持たせたって訳だな。」
 外道は、腕を組みながら剣山とレイの今後の予定を推測した。

「外道。お前、星海校について何か知ってるのか?」
「ああ……。一応、向こうの友人から色々とな。」
 不意に五階堂に尋ねられた外道は、軽く答えた。

「だが……1週間の間は、何に使うザウルス?」
「さすがに船旅を終え、すぐさまアウェーゲームは厳しい物があるだろ。しばらく星海校の生徒と交流を深め、万全の態勢で挑む必要があるに決まってんだろ。」
「た、確かにそうだドン……。」
 剣山は、外道の言葉に納得していた。











「では、これにて解散!」
 鮫島校長の締めくくりの言葉で、鮫島校長のテストは、終わりを告げたが……。











「(……フェイト教諭が早乙女レイ君を推薦した事は、間違ってはいなかったようだ……。しかし……フェイト教諭は今どこに……。)」
 心の中では、今だ姿を見せぬフェイト教諭の事を、不思議に感じていた……。





















数十分後……

「よかった……。これで本戦に出場できる……。」
 レイは、安堵のため息をつきながら、ベッドに仰向けに寝転がった……。

♪〜さ〜よな〜ら〜大好きな〜人〜〜

「あっ、電話だ。」
 レイは、鳴っている電話を手に取り、誰からなのかを確認した……。

♪〜さ〜よな〜ら〜大好きな〜人〜〜

「お兄ちゃんから?……さっき電話を無視してた事、バレちゃってるかな……。」
 少しだけ不安がりながら、携帯電話を手に取り……

♪〜ずっと〜大好きな人〜〜ず〜っとずっと〜

ピッ。

「もしもし?」
『レイ。何でさっき電話したのに、出てくれなかったんだい?ボクの事無視されてるんじゃ無いかと思ったじゃないか。』
「そ、そんな事無いって。ただ気が付かなかっただけだから。」
 レイは、ナオに図星を突かれたからか、少々焦りながら話していた。

『……まあいいや。それより、レイは本戦に出場できるのかい?』
 

「……うん。できたよ。」
『へえ……。凄いじゃないか!レイ!』
 電話の向こうから、レイの言葉を聞き付けたナオが、嬉しそうな声で話していた。

「……ねえ、お兄ちゃんの方はどうなの?もう本戦に出場できたんでしょ?」
『ボクかい?……実はさ……最後の相手がどうしても見つからなくってさ。』
「え?……どう言う事?」
 

『何でも、参加者の中に、侵入者が紛れ込んでるらしくてね……。それで、参加者がだいぶ減らされてるみたいなんだよ。』
「そ、そうだったんだ……。」


『……ゴメンゴメン。本戦参加ができてないからって、言い訳がましくなっちゃったね。』
「……大丈夫だよ。お兄ちゃんなら、きっと出場できるから。」
 

『そうだ。本戦は本校か星海校か、どっちでやるか聞かされてないかい?』
「えーと……。鮫島校長の話だと、星海校でやるって言ってたよ。」
『なるほどね。……じゃあ、ボクが出場するにせよ出場しないにせよ、どっちにしたってレイはボクに合える事になるじゃないか。』
「で、でも……やっぱりお兄ちゃんには、本戦に出場してもらいたいよ……。お兄ちゃんは、本当に強いんだから……。」
 レイは、ナオに対し、お願いする様な口調で話していた……。

『……分かった。何とか、レイの期待に答えてみせるよ。』
「うん。……頑張ってね、お兄ちゃん。」


ピッ。



「本戦は星海校で……ね……。」
 レイは、そう小さな声で呟き……

「でも……ボクが、星海校の生徒に勝てるのかな……。」
 成り行きで代表に選ばれた自分に対し、少し不安を抱いていた……。




次回予告

外道「なるほどなぁ……。次回は星海校の、本戦出場者が分かるって訳か。」
五階堂「外道。誰か候補でも知っているのか?」
外道「俺様が聞きつけた情報は1年程度前の情報だけだ。今の状況は分からねぇな。」
五階堂「そ、そうか……。」



次回、『GX plus!』第三十六話!

『E・HEROvs電池メン!閃光のデュエル!!』

外道「E・HERO……模範デュエルで『サイバー・エンド・ドラゴン』と互角に渡り合ったデッキタイプだな。」




第三十六話 E・HEROvs電池メン!閃光のデュエル!!

デュエルアカデミア本校……デュエルドーム入り口前にて……

「おっ、早かったな、コウジ。ジュン。」
 ミカとデュエル観戦をしていたエイジは、ちょうど今来たジュンとコウジに話しかけた。

「なるほどね……。今やっているデュエルが、センリの本戦出場を賭けたデュエルって訳か……。」
 コウジは、腕を組みながら話した。



「それにしても……何故ここまで観戦者がいるんだ?エイジ。」
「ああ、ここで見てる人んたはな……多分全員、失格になってまっとるみたいやな……。」
 ジュンの問い掛けに対し、エイジは少し声を小さくして話した。

「なるほど……。だが、少し多すぎないか?」
 辺りを見渡しながらジュンがそう言うと、ジュンの視界の中には、100人〜200人もの観客が出場者の決定を心待ちにしていた……。

「そうやろ……ジュン。うちもちょっと変やと思っとったんや……。」
 ミカは、少し不安そうに話した。

「で……今センリとデュエルしているのは……」
「ああ、あいつの名前は、『松本 健次』って言うらしいで。何でも、天使族デッキを操る、派手好きの3年生見たいやな……。」
「なるほど……。だから、こんなに観客を呼んでいるのか……。」
 コウジは、エイジの言葉に納得していた。

「で……今の状況は……」


現在の状況
センリ LP…400
    手札…4枚
    場…無し

松本 LP…4000
   手札…0枚
   場…アテナ(攻撃力2600・攻撃表示)
     光神テテュス(攻撃力2400・攻撃表示)
     堕天使スペルピア(攻撃力2900・攻撃表示)
     アスモトークン(攻撃力1800・攻撃表示)
     ディウストークン(攻撃力1200・攻撃表示)
     神の居城−ヴァルハラ(表側表示)
     DNA改造手術(天使族指定・表側表示)


「さぁぁて……これからお前に、5分の時間をくれてやろう……!この状況をどの様に覆すのか……無理だな。おれには、女神『アテナ』様がついているんだからよぉ!」
 松本は、センリに対して挑発する様に話した。











「この布陣……。センリにとって、かなり厳しいな、エイジ。」
「そうやな……コウジ。『DNA改造手術』の効果で天使族を指定されてまっとるで、センリがモンスターを表側表示で場に出した瞬間に、『アテナ』の効果が発動して、センリのライフが0になってまうな……。」
「……かと言ってもなあ……。『アテナ』の効果は、自分で天使族モンスターを特殊召喚しても相手にダメージを与えられるんやろ?なら……相手にターンを回したらそれで終わりやん……。」
「そうだね、ミカ……。でも……センリはまだ、あのカードを出していない……。あれさえ使えば……!」
 エイジ、ミカ、コウジは、今の状況を的確に分析していた……。



「……ん?どうしたん?ジュン。天使族モンスターに、何か嫌な思いででもあるんか〜?」
 ミカは、一歩後ろでデュエルを観戦しているジュンの首に、後ろから左腕をやり、右手の人差し指でジュンの頬を軽く撫でた。

「まあ……な。天使族使いのクロートーと言う男に、失格に追い込まれたからな……。」
「クロートー?初めて聞く名前だな……。外部の男かもしれんな。」
 ジュンの言葉に対し、エイジは自分の仮説を述べた。

「外部から来た男……クロートー……か。そいつは、僕がデュエルした血まみれの女の子と、何か関係があるのか……?」
「血まみれの女?……『戦場の死装束』みたいな奴か?コウジ。」
 エイジに仮説を述べられたジュンは、次はコウジに自らの意見を述べた。

「いや……簡単に表現すれば、ゴスロリ風の服を着ている女の子だね。」
「『ごすろり』……?誰だ?それは。」
 ジュンは、コウジの言葉の意味を、まったく理解できていなかった……。

「コウジ〜。そんなんジュンに分かるわけ無いやろ。」
「そ……そうだったね……。」
 ミカの軽い話し方に対し、コウジは少し焦りながら答えた。

「『ゴスロリ』ってのはな、だいたい黒色っぽい洋服や靴を身につけとったり、人形みたいな化粧をしとる女の子の事を指す表現やよ。」
「なるほど……。血は固まると、黒色に近くなる……。血まみれと言うのは、そう言う事だな。」
 ジュンは、小さな声で軽く答えた……。

「ジュン……。あんま恐い事言わんといて……。」
 ミカは、ジュンの言葉に対して少し恐れを抱いていた……。

「……おっ!センリがやっと手を動かしたで!」
 エイジは、3人に対し、デュエルに注目する様に呼びかけた。











「俺のターン、ドロー!手札から、フィールド魔法『アンデットワールド』を発動!」
 センリが1枚のカードをフィールドカードゾーンに置くと……突然、場が紫色の霧に覆われ……その霧を浴びた『アテナ』達は、不死者……アンデットと化した!
 『アテナ』は、身に着けていた槍と髪飾りが、骨の槍と髑髏の髪飾りに変化し……『光神テテュス』の羽は、コウモリみたいな形の黒い羽に変化し……『堕天使スペルピア』、『アスモトークン』、『ディウストークン』の服装は、まるで『ヴァンパイア・ロード』の様なタキシード姿に変貌した!

「何ぃぃぃぃ!おれの『アテナ』様軍団が、すべてアンデットと化しただと!……風景ほど不気味な姿にならねえのは、幸いと言った所か……。」
 松本は、自分の場のモンスター達の容姿がほとんど変化しない事に、少しだけ安心していた……。

「これで場のモンスターはすべてアンデット族だ!『アテナ』のダメージ効果は発動しないぜ!手札から、『ゾンビ・マスター』を召喚!」
 モンスターの召喚が可能になったセンリは、悠々と手札のモンスターを召喚した。

「『ゾンビ・マスター』の効果発動だ!手札から『馬頭鬼』を捨て、墓地から『酒呑童子』を特殊召喚!」
 『ゾンビ・マスター』は、墓地の『酒呑童子』に魔力を与え、蘇らせた!


ゾンビ・マスター
闇 レベル4
【アンデット族・効果】
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
手札のモンスターカード1枚を墓地に送る事で、
自分または相手の墓地に存在するレベル4以下のアンデット族モンスター1体を特殊召喚する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
攻撃力1800 守備力0


「さらに……『酒呑童子』の効果を発動するぜ!墓地の『闇竜の黒騎士』と『ゴブリンゾンビ』を除外し、カードを1枚ドロー!」
 『酒呑童子』は、持っている酒壺に死者の魂を詰め込むと……その魂が、手札という形に変換され、センリの手札に加わった!


酒呑童子
地 レベル4
【アンデット族・効果】
1ターンに1度、次の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●自分の墓地に存在するアンデット族モンスター2体を
ゲームから除外する事で、自分のデッキからカードを1枚ドローする。
●ゲームから除外されている
自分のアンデット族モンスター1体をデッキの一番上に戻す。
攻撃力1500 守備力800


「まだだ!手札から『ピラミッド・タートル』を捨て……装備魔法『D・D・R』を発動!帰還しろ!『ゴブリンゾンビ』!さらに墓地の『馬頭鬼』をゲームから除外し、墓地の『ピラミッド・タートル』を特殊召喚!」
 そして、先ほど酒壺に入った『ゴブリンゾンビ』の魂が溢れ出し……肉体を取り戻して場に帰還した!
 さらに、『馬頭鬼』の魂が『ピラミッド・タートル』の肉体に憑依し、墓地から蘇った!


馬頭鬼
地 レベル4
【アンデット族・効果】
墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、
自分の墓地からアンデット族モンスター1体を特殊召喚する。
攻撃力1700 守備力800


「何ぃぃぃぃ!1ターンで場にモンスターが4体だと!?」
 松本は、あまりに早すぎるアンデット族の展開力に、思わず驚いていた……。

「これで……俺の場に4体のアンデット族が揃ったぜ!最後の手札から……このモンスターを特殊召喚するぜ!」
 センリは、最後の手札に手をかけながら、こう言った……。










「……『火車』……特殊召喚!!」
 ……と。

「『火車』が特殊召喚に成功した時、場のモンスターをすべてデッキに戻すぜ!」
「……しまった!おれのアテナ様軍団も、まさか……!!」
 松本は、表情を歪ませた……。

「そうだ!すべてデッキに帰れ!効果発動!冥界入口!!」
 センリの言葉に反応したかの様に、『火車』の木造車体に場のすべてのモンスターが吸い込まれていった!


火車
地 レベル8
【アンデット族・効果】
このカードは通常召喚できない。
自分フィールド上にアンデット族モンスターが
表側表示で2体以上存在する場合のみ特殊召喚する事ができる。
このカードが特殊召喚に成功した時、
フィールド上に存在するこのカード以外のモンスターを全てデッキに戻す。
このカードの攻撃力は、この効果でデッキに戻した
アンデット族モンスターの数×1000ポイントになる。
攻撃力? 守備力1000


「『火車』の攻撃力は、この効果でデッキに戻した、元々の種族がアンデット族モンスターの数×1000ポイントになるぜ!つまり……攻撃力は、4000だ!」
「よ……4000……だと……!?」
 松本は、ここまであっさりと逆転されてしまった事に、驚いていた……。

「これで終わりだ!『火車』でダイレクトアタック!火炎車!!」
 『火車』は、2つの燃え上がる車輪を松本にぶつけ……松本のライフを一瞬で削り落とした!

「ぐああああっ!」(松本LP 4000→0)











「くっ……一年坊の割に、なかなかやるじゃねえか!」
「ああ……!松本先輩の負けが無駄にならないように、本戦も勝たせてもらうぜ!」
 センリと松本は握手を交わし、スターチップの受け渡しを行った。

センリ スターチップ9個→18個(本戦出場)
松本  スターチップ9個→0個(失格)


「やるな、センリ。」
「凄かったで、今のデュエル!」
「そうやなあ、エイジ。」
「あの戦法は……思いつかなかったな。」
 ジュン、ミカ、エイジ、コウジは、口々にそう言いながら、センリの近くに歩いていった……。

「よし!俺が本戦1番乗りって訳だな!」
 センリは、ジュン達とハイタッチをしながら、デュエルドームに向かって歩いていった。

「さて……俺がスターチップを10個集めたって事は……カムイもそろそろ集め終わる頃か……?」
 センリは腕を組みながら、カムイがいつ来るのかを密かに楽しみにしていた……。





















「……そろそろ時間だな……。」
 雷人はデュエルディスクを確認し、チャージタイムが終わっている事を確認した……。

「よし、カムイ!そろそろデュエルを始めようぜ!」
「ああ!いいッスよ!」
 カムイと雷人は、お互いにデュエルディスクを構え……











「……っと、まずはスターチップの賭け数を決める必要があるんスよね。」
「そうだな……。ここは潔く、お互いに9個全賭けで行こうぜ!」
「ああ!望むところッスよ!!」
 カムイと雷人は、改めてお互いにデュエルディスクを構え……











「「デュエル!」」
 雷人の先攻で、待ちに待ったデュエルの火蓋は切って落とされた……。

「俺のターン、ドロー!モンスターを1体セットし、カードを1枚セットするぜ!ターンエンド!」
 雷人は、1ターン目は慎重にターンを終えた。

「オレのターン、ドロー!手札から、永続魔法『未来融合−フューチャー・フュージョン』を発動ッス!この効果で……オレが融合召喚するモンスターは、『E・HERO ガイア』!よって、その素材となる『E・HERO』と『地属性モンスター』を1体ずつ……『E・HERO ネクロダークマン』と『ダンディライオン』を墓地に送るッスよ!」
 カムイは、デッキから2枚のカードを選び出し、それらを雷人に見せながら墓地に送った。


未来融合−フューチャー・フュージョン
永続魔法
自分のデッキから融合モンスターカードによって決められたモンスターを
墓地へ送り、融合デッキから融合モンスター1体を選択する。
発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時に選択した融合モンスターを
自分フィールド上に特殊召喚する(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。


「『ダンディライオン』は、墓地に送られた時に『綿毛トークン』を2体特殊召喚する効果を持ってるんスよ!」
 そう言うと、カムイの場に怒り顔の綿毛と笑顔の綿毛が現れた。


ダンディライオン
地 レベル3
【植物族・効果】
このカードが墓地へ送られた時、自分フィールド上に「綿毛トークン」
(植物族・風・星1・攻/守0)を2体守備表示で特殊召喚する。
このトークンは特殊召喚されたターン、アドバンス召喚のためにはリリースできない。
攻撃力300 守備力300


「さらに、『ネクロダークマン』が墓地に存在する事によって……手札から、『E・HERO エッジマン』をリリース無しで召喚するッスよ!」
 カムイがさらにもう1枚のカードをデュエルディスクに置くと……全身金色で、両腕に長い刄を持ったヒーローが現れた!


E・HERO ネクロダークマン
闇 レベル5
【戦士族・効果】
このカードが墓地に存在する限り、自分は「E・HERO」と
名のついたモンスター1体を生け贄なしで召喚する事ができる。
この効果はこのカードが墓地に存在する限り1度しか使用できない。
攻撃力1600 守備力1800


「『未来融合−フューチャー・フュージョン』で墓地に送った2体のモンスターの効果を有効に使うか……。やるな、カムイ!」
「ああ!『未来融合−フューチャー・フュージョン』の強い点は、少ない手札消費で融合召喚する効果に加え、エクストラデッキに入った融合モンスター次第で、デッキのモンスターを手軽に墓地に送れる事なんスよね。」
 カムイは、軽く答えた。

「まだ終わりじゃ無いッスよ!手札から、装備魔法『団結の力』を『エッジマン』に装備!この効果で『エッジマン』の攻撃力を、オレの場の表側表示モンスター1体につき800ポイント……つまり、2400ポイントアップするんスよ!」
 『エッジマン』は、自分の両サイドにいる『綿毛トークン』から力を受け取り……手の甲に付けた刄の鋭さを、大幅に高めた!


団結の力
装備魔法
自分のコントロールする表側表示モンスター1体につき、
装備モンスターの攻撃力と守備力を800ポイントアップする。


「バトルフェイズに入るッスよ!『エッジマン』で、裏守備モンスターに攻撃ッス!パワーエッジ・アタック!」
 『エッジマン』は、強烈な力で裏守備モンスターに向かって突撃するが……

「このタイミングで、伏せ罠カード『進入禁止!No Entry!!』を発動するぜ!この効果で、『エッジマン』を守備表示に変更し、攻撃は無効だ!」
 その攻撃を止めるために、突然警備員軍団が立ちはだかり、『エッジマン』を無理矢理守備表示に変更した!


進入禁止!No Entry!!
通常罠
フィールド上に攻撃表示で存在するモンスターを全て守備表示にする。


「さすがッスね、雷人。……オレもさすがに、これで決まるとは思ってなかったんスけどね。」
「そうか……。俺もこんなに早く負ける訳には行かないからな!」
 雷人は、自信満々に答えた。

「メインフェイズ2に、カードを1枚場に伏せ、ターンエンド!」


現在の状況
雷人 LP…4000
   手札…4枚
   場…裏守備モンスター1体

カムイ LP…4000
    手札…2枚
    場…E・HERO エッジマン(守備力4200・守備表示)
      綿毛トークン×2(守備力0・守備表示)
      未来融合−フューチャー・フュージョン(0ターン経過)
      団結の力(エッジマンに装備)
      伏せカード1枚


「俺のターン、ドロー!メインフェイズ時に、『電池メン−ボタン型』を反転召喚するぜ!」
 雷人の場に、円盤みたいな体の小さな電池メンが姿を表した。

「『電池メン−ボタン型』のリバース効果発動だ!デッキから、『電池メン−単二型』を特殊召喚!」
 


電池メン ボタン型
光 レベル1
【雷族・効果】
リバース:自分のデッキから「電池メン−ボタン型」以外のレベル4以下の
「電池メン」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。
また、リバースしたこのカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。
攻撃力100 守備力100


「このタイミングで、電池メン強化にはほとんど関わらない『電池メン−単二型』をあえて特殊召喚する訳は……リリース確保のためなんスかね……。」
「その通りだぜ、カムイ!『電池メン−単二型』をリリースし……起動しろ!『超電磁稼働ボルテック・ドラゴン』!!」
 

「『ボルテック・ドラゴン』は、アドバンス召喚の際にリリースした電池メンによって、得る効果が変化するんだぜ!『電池メン−単二型』をリリースした場合には……貫通能力を得るぜ!」
 そう言うと、『ボルテック・ドラゴン』の爪に電気が溜まっていき……まるで槍みたいな形を作り出した!


超電磁稼働ボルテック・ドラゴン
光 レベル5
【雷族・効果】
以下のモンスターを生け贄にして生け贄召喚した場合、
このカードはそれぞれの効果を得る。
●電池メン−単一型:このカード1枚を対象にする魔法・罠カードの効果を無効にする。
●電池メン−単二型:このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
●電池メン−単三型:このカードの攻撃力は1000ポイントアップする。
攻撃力2400 守備力1000


「さらに……装備魔法『団結の力』を『ボルテック・ドラゴン』に装備させるぜ!」
「なっ……雷人も持ってたんスか!?」
 雷人の使用したカードに、カムイは少し驚いた。

「これで『ボルテック・ドラゴン』の攻撃力は4000……守備力0の『綿毛トークン』に攻撃すれば、貫通ダメージで俺の勝ちだぜ!バトルだ!『超電磁稼働 ボルテック・ドラゴン』で、『綿毛トークン』に攻撃!ボルテック・クラッシュ!!」
 『ボルテック・ドラゴン』は、全身に電気をまとわせ、怒り顔の『綿毛トークン』に攻撃するが……

「なら、ここは……伏せ罠カード『力の集約』を発動するッスよ!」
 カムイが伏せておいたカードを表にすると……『綿毛トークン』の体に光が集まっていき、『ボルテック・ドラゴン』の攻撃を受け止めた!

「何!『綿毛トークン』が『ボルテック・ドラゴン』の攻撃を耐え切っただと!?」
「ああ!オレが発動させた罠カードは『力の集約』!この効果で、『綿毛トークン』にすべての装備魔法を集約させて、守備力を大幅に高めたんスよ!」
 カムイは、自信満々に答えた。


力の集約
通常罠
フィールド上の表側表示モンスター1体を選択する。
フィールド上に存在する全ての装備カードを選択したモンスターに装備させる。
対象が正しくない場合は、その装備カードを破壊する。


エッジマン 攻撃力5000→2600
超電磁稼働ボルテック・ドラゴン 攻撃力4000→2400
綿毛トークン 守備力0→4000


雷人LP 4000→2400

「だが、まだ『電池メン−ボタン型』の攻撃が残ってるぜ!守備力0の『綿毛トークン』に攻撃!」
 『電池メン−ボタン型』は、その小さな体から火花を散らせて……守備力0の『綿毛トークン』を軽く破壊した!


綿毛トークン 守備力4000→3200


「『電池メン−ボタン型』の攻撃力は100……『エッジマン』の攻撃を通す訳には行かないな……。カードを3枚場に伏せ、ターンエンド!」
 雷人は、残った自分の手札をすべてセットし、ターンを終えた。

「オレのターン、ドロー!メインフェイズに、攻撃力3200の『綿毛トークン』を攻撃表示に変更するッスよ!」
 怒り顔の『綿毛トークン』は、顔の下に垂らした1本の細い足(みたいな物)を使って地面にしっかりと立ち上がった!

「この攻撃が通れば、オレの勝ちッスよ!『綿毛トークン』で、『電池メン−ボタン型』に攻撃!」
 『綿毛トークン』ふわふわな頭で『電池メン−ボタン型』に突撃を行ったが……


「甘いぜ!伏せ罠カード『ゴブリンのやりくり上手』を発動!」
 雷人は、自信満々に1枚目の伏せカードを表にした……。

「なるほど……。このタイミングで『ゴブリンのやりくり上手』を発動させたって事は、次はあのカードを使うんスね……。」
「その通りだぜ、カムイ!『ゴブリンのやりくり上手』にチェーンし、速攻魔法『非常食』を発動!俺の場に存在する『ゴブリンのやりくり上手』と『団結の力』をコストとして墓地に送り、ライフを2000回復するぜ!」
 雷人がもう1枚のカードを表にした瞬間に、雷人の場に存在した『ゴブリンのやりくり上手』と『団結の力』が光の粒子となって消え去り……雷人のライフへと変換された!
 一方、カムイの場の『綿毛トークン』は、2枚の『団結の力』の内1枚を失い、大幅に攻撃力を落としてしまった……。


非常食
速攻魔法
このカード以外の自分フィールド上に存在する
魔法・罠カードを任意の枚数墓地へ送って発動する。
墓地へ送ったカード1枚につき、自分は1000ライフポイント回復する。


雷人LP 2400→4400
綿毛トークン 攻撃力3200→1600

「次は『ゴブリンのやりくり上手』の効果だ!墓地の『ゴブリンのやりくり上手』の枚数+1枚……つまり、2枚のカードをドローし、手札を1枚デッキの1番下に送るぜ!」
 雷人はデッキの上から2枚のカードをドローし、必要でない1枚をデッキの下に戻した。


ゴブリンのやりくり上手
通常罠
自分の墓地に存在する「ゴブリンのやりくり上手」の枚数+1枚を
自分のデッキからドローし、自分の手札を1枚選択してデッキの一番下に戻す。


「だが……それでも『綿毛トークン』の攻撃力は、『電池メン−ボタン型』を上回っているッスよ!」
 カムイの言葉通り、『綿毛トークン』のふわふわな頭による体当たりによって、『電池メン−ボタン型』は大きく跳ねとばされた!

「くっ!」(雷人LP 4400→2900)

「戦闘破壊された『電池メン−ボタン型』の効果で、カードを1枚ドローするぜ!」
「まだ『エッジマン』の攻撃が残ってるッスよ!『エッジマン』で『ボルテック・ドラゴン』に攻撃!パワーエッジ・アタック!」
 『エッジマン』は、右手の甲の刄で、『ボルテック・ドラゴン』の首を刈り取った!

「くっ……これで俺の場のモンスターは全滅か……。」(雷人LP 2900→2700)

「メインフェイズ2に入るッスよ!手札から、『カードブロッカー』を召喚ッス!」
 カムイの場に、紫色の鎧を身に着けた、小さな戦士が現れた。

「『カードブロッカー』は、召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、守備表示になるんスよ!カードを1枚場に伏せ、ターンエン……」
「エンドフェイズ時に、俺はこの永続罠……『携帯型バッテリー』を発動させてもらうぜ!!蘇れ!『電池メン−ボタン型』!『電池メン−単二型』!」
 そう言うと、雷人の場に巨大な充電器が現れ……その充電器から電力を受け取り、2体の電池メンが蘇った!


携帯型バッテリー
永続罠
自分の墓地から「電池メン」と名のついたモンスター2体を選択し、
攻撃表示で特殊召喚する。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを全て破壊する。
そのモンスターが全てフィールド上から離れた時このカードを破壊する。


「なるほど……。蘇生させたモンスターを自分のターンで守備表示に変更するために、このタイミングで発動させたんスね……。エンドフェイズでは対処の仕様が無いから、これでターンを終えるッスね。」


現在の状況
雷人 LP…2700
   手札…2枚
   場…電池メン−ボタン型(攻撃力100・攻撃表示)
     電池メン−単二型(攻撃力0・攻撃表示)
     携帯型バッテリー(電池メン−ボタン型、電池メン−単二型を対象)

カムイ LP…4000
    手札…1枚
    場…E・HERO エッジマン(攻撃力2600・攻撃表示)
      綿毛トークン(攻撃力2400・攻撃表示)
      カードブロッカー(守備力400・守備表示)
      未来融合−フューチャー・フュージョン(1ターン経過)
      団結の力(綿毛トークンに装備)
      伏せカード1枚


「俺のターン、ドロー!『電池メン−単二型』をリリースし……次はこいつだ!『充電池メン』!!」
 雷人の場に、激しく電気を散らす電池メンが現れた。

「『充電池メン』は召喚に成功した時、デッキから『充電池メン』以外の電池メンを特殊召喚できるんだぜ!俺が特殊召喚するモンスターは……『電池メン−単一型』だ!」
 『充電池メン』は、『電池メン−単一型』の体をつかむと……エネルギーが充填され、『電池メン−単一型』が活動を開始した!

「『充電池メン』の元々の攻撃力は1800だが……場の雷族モンスター1体につき、攻撃力が300ポイントアップする効果を持っているんだぜ!俺の場の雷族モンスターは全部で3体……。よって、『充電池メン』の攻撃力は、2700だ!」
 『充電池メン』は、両脇の電池メンから電力を受け取り、自らの攻撃力を高めた!


充電池メン
光 レベル5
【雷族・効果】
このカードの召喚に成功した時、自分の手札またはデッキから
「充電池メン」以外の「電池メン」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する事ができる。
このカードの攻撃力・守備力は、自分フィールド上に表側表示で存在する
雷族モンスターの数×300ポイントアップする。
攻撃力1800 守備力1200


「行くぜ!『充電池メン』で、『エッジマン』に攻撃!充電バッテリーアタック!」
 『充電池メン』は、強烈な電撃を『エッジマン』に向かって放ったが……その攻撃に対し、カムイの場の『カードブロッカー』が立ちはだかった!

「『カードブロッカー』の効果発動ッス!相手のモンスターの攻撃は、『カードブロッカー』が代わりに受け止める事ができるんスよ!さらに……デッキの上から3枚カードを墓地に送り、攻撃された『カードブロッカー』の守備力を1500ポイントアップさせる効果も持ってるんスよ!」
 カムイは、デッキの上から『融合』、『カードガンナー』、『E・HERO ワイルドマン』を墓地に送ると……『カードブロッカー』の持った盾が、突然大きくなった!


カードブロッカー
地 レベル3
【戦士族・効果】
このカードは召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、守備表示になる。
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターが攻撃対象に選択された時、
このカードに攻撃対象を変更することができる。
このカードが攻撃対象になった時、自分のデッキのカードを上から3枚まで
墓地へ送る事ができる。
墓地へ送ったカード1枚につき、このカードの守備力はエンドフェイズ時まで
500ポイントアップする。
攻撃力400 守備力400


「(……『融合』と『ワイルドマン』が送られたのはいいんスが……『カードガンナー』が墓地に送られたのは厳しいッスね……。)」
 墓地に送られたカードの内容を確認したカムイは、少し残念に思っていた……。

「メインフェイズ2に入るぜ!カードを1枚場に伏せ、『電池メン?ボタン型』を守備表示に変更するぜ!ターンエンド!」

「オレのターン、ドロー!……これで『未来融合?フューチャー・フュージョン』による融合召喚の時は来たッスよ!『E・HERO ガイア』を融合召喚!」
 カムイの言葉に反応するかの様に、場に不思議な渦が発生し……その中から、重厚な鎧みたいな物を身につけたヒーローが姿を現した!

「『E・HERO ガイア』の効果発動ッス!『充電池メン』の攻撃力を半分にし、その数値を『E・HERO ガイア』に吸収させるッスよ!」
 『E・HERO ガイア』が両手を接地させると……『充電池メン』の足元の大地が砕け、バランスを大きく崩した!


E・HERO ガイア
地 レベル6
【戦士族・融合・効果】
「E・HERO」と名のついたモンスター+地属性モンスター
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードが融合召喚に成功した時、
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
このターンのエンドフェイズ時まで、選択したモンスター1体の攻撃力を半分にし、
このカードの攻撃力はその数値分アップする。
攻撃力2200 守備力2600

E・HERO ガイア 攻撃力2200→3550
充電池メン 攻撃力2700→1350

「メインフェイズに、手札から魔法カード『融合回収』を発動するッスよ!この効果で、融合素材となったモンスター……『ダンディライオン』と、『融合』を手札に戻すッスよ!」
 カムイは、慣れた手つきで墓地のカードを2枚探し出し、手札に加えた。


融合回収
通常魔法
自分の墓地に存在する「融合」魔法カード1枚と、
融合に使用した融合素材モンスター1体を手札に加える。


「そして……手札から、魔法カード『戦士の生還』を発動し、墓地から戦士族の『ワイルドマン』を手札に戻すッスよ!」
 カムイは、さらに1枚のカードを墓地から探し出し、手札に加えた。

「これで融合素材は揃ったッスよ!手札から、魔法カード『融合』を発動ッス!場の『エッジマン』と、手札の『ワイルドマン』を融合し……『E・HERO ワイルドジャギーマン』を融合召喚!」
 カムイの場に、再び不思議な渦が発生し……その中から、巨大な刀を持ったヒーローが現れた!

「行くッスよー!『ワイルドジャギーマン』で、『電池メン−単一型』に攻撃!インフィニティ・エッジ・スライサー!」
 『ワイルドジャギーマン』は、持っていた刀で雷人の場のモンスターを切り裂こうとしたが……突然、場が闇に包み込まれた!

「速攻魔法……『皆既日蝕の書』を発動させてもらったぜ!この効果で、場のモンスターはすべて裏側守備表示になるぜ!」
「まあ……トークンは裏側守備表示にならないから、表側守備表示になるだけなんスけどね……。」
 カムイは、軽くそう言い……

「オレは、これでターンエン……」
「このタイミングで、『皆既日蝕の書』のもう1つの効果が発動するぜ!姿を現せ!『ガイア』!『ワイルドジャギーマン』!」
 カムイのターンエンド宣言と同時に、場を包み込んでいた陰りが消え……カムイの場の『ガイア』と『ワイルドジャギーマン』が姿を現した!

「だが……この強力な効果には、大きなリスクがともなう……。この効果で表になったモンスター1体につき、相手はカードを1枚ドローするんだぜ!」
「なるほど……。つまりオレは、カードを2枚ドローする事になるんスね。」
 カムイはそう言いながらカードを2枚ドローし、手札を3枚に増やした。


皆既日蝕の書
速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て裏側守備表示にする。
このターンのエンドフェイズ時に相手フィールド上に
裏側守備表示で存在するモンスターを全て表側守備表示にし、
その枚数分だけ相手はデッキからカードをドローする。


「(相手にドローさせるカードを使用してまで攻撃を防いだのに、妙に余裕そうなんスよね……。何かいいカードが手札にあるんスか?)」
 カムイは、雷人の手札に残った手札が何なのか、密かに警戒していた……。

「俺のターン、ドロー!」
「雷人の手札が2枚になった瞬間に、伏せておいた速攻魔法『手札断殺』を発動するッスよ!手札を2枚墓地に送り、カードを2枚ドローするッスよ!」
「それは俺も同じだぜ!手札を2枚墓地に送り、カードを2枚ドロー!」
 カムイと雷人は、自分の手札を2枚墓地に送り、カードを2枚ドローした。

「オレが墓地に送ったカードの1枚は『ダンディライオン』!よって、2体の『綿毛トークン』を特殊召喚するッスよ!」
 カムイの場に、新たに2体の綿毛が現れた。これで、カムイの場のモンスターゾーンはすべて埋め尽くされたが……

「……カムイ!俺のこのターンの攻撃を止めるためには、いくらモンスターを並べても無駄だぜ!」
「何!ここで何かいいカードを引いたんスか!?」
 カムイは、雷人の言葉に少し驚いていた……。

「まずは、『電池メン−ボタン型』を反転召喚し、リバース効果を発動するぜ!デッキから『電池メン−単三型』を攻撃表示で特殊召喚!」

「これで……俺の場に電池メンが3体揃ったぜ!これが、俺のデッキの究極の除去魔法カード……『漏電』だぜ!」
「なっ……このタイミングで、そのカードを!?」
 カムイが驚いている間に、雷人の場の3体の電池メンから激しい電流が溢れだし……カムイの場を、爆音とともに、直視できないほどの激しい稲光で包み込んだ!
 その電撃によって、『ガイア』、『ワイルドジャギーマン』、『綿毛トークン』3体、『未来融合』、『団結の力』は一瞬で焼き尽くされ……爆雷が発生した後のカムイの場には、モンスターの欠片の1つも残っていなかった……。


漏電
通常魔法
自分フィールド上に「電池メン」と名のついたモンスターが3体以上
表側表示で存在する場合に発動する事ができる。
相手フィールド上に存在するカードを全て破壊する。


「ぐっ……オレの場の5体のモンスターが、一瞬で……!」
 焦土と化した自分の場を見たカムイは、残念そうに呟いた……。

「さらに……『電池メン?単一型』を反転召喚するぜ!これで俺の場の雷族モンスターは4体……。よって、『充電池メン』の攻撃力は、3000だぜ!」


「『電池メン−単三型』の攻撃力は1000……このターンの攻撃が通れば、俺の勝ちだぜ!『電池メン−単三型』で、カムイにダイレクトアタック!単三バッテリーアタック!」
 『電池メン−単三型』は、カムイに電撃を浴びせ、ライフの4分の1を削った!

「ぐっ!」(カムイLP 4000→3000)

「これで引導を渡してやるぜ!『充電池メン』で、カムイにダイレクトアタック!充電バッテリーアタック!!」
 『充電池メン』は、止めをさそうとカムイに向かって雷を放ったが……その攻撃に、モンスターの幻影みたいな物が立ちはだかり、攻撃を防いだ!

「『ネクロ・ガードナー』……。このカードを墓地から除外する事で、『充電池メン』の攻撃を封じさせてもらったんスよ……。」
「なるほどな……。『手札断殺』の効果で、『ネクロ・ガードナー』まで墓地に送っていたか……。」
 雷人は、決着を付けるのに失敗し、攻撃力の低いモンスターを攻撃表示にすると言う大きなリスクを負ってしまった事を、残念に思っていた……。


ネクロ・ガードナー
闇 レベル3
【戦士族・効果】
自分の墓地に存在するこのカードをゲームから除外して発動する。
相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする。
攻撃力600 守備力1300


「……一応、『電池メン−ボタン型』でもダイレクトアタックをしておくぜ!」
 『電池メン−ボタン型』は、小さい火花でカムイのライフを軽く削った。

カムイLP 3000→2900

「……カードを1枚場に伏せ、ターンエンドだ。」


現在の状況
雷人 LP…2700
   手札…0枚
   場…充電池メン(攻撃力3000・攻撃表示)
     電池メン−ボタン型(攻撃力100・攻撃表示)
     電池メン−単一型(攻撃力0・攻撃表示)
     電池メン−単三型(攻撃力1000・攻撃表示)
     携帯型バッテリー(対象無し)
     伏せカード1枚

カムイ LP…2900
    手札…3枚
    場…無し


「……雷人!今の『漏電』には驚いたんスが……オレはまだあきらめちゃいないッスよ!」
 カムイは、そう言いながらデッキの1番上に手をやり……


「――オレのターン!」




第三十七話 閃光の果てに!E・HEROvs電池メン!!

「激しい音がしたから来てみたんだけど……ただのデュエル中だったみたいだね。」
 雷人の発動した『漏電』によって発生した爆音を聞き付けた、ネコ耳帽子を被った少年……ナオは、その爆音の発生地点に目をやっていた……。

「今デュエルしてるのは……カムイと雷人だね。ボクと同学年の中ではかなり実力が高い雷人と、新入生の中ではかなり実力が高いカムイのデュエルか……。ボクも対戦相手を探さなきゃマズいんだけど、少し見てこうかな。」
 ナオは、カムイと雷人の近くに生えていた木の影から、デュエルを観戦する事にした……。

「今の戦況は……カムイの場に何にもカードが無いって事は、『漏電』でも打たれたのかな?雷人の場のモンスターを見れば、もう勝負は決まっちゃった様にも見えるけど……多分カムイは、『ネクロ・ガードナー』か何かで攻撃を凌いだんだろうね。」
 場の状況、誰のターンなのか……等を確認し、ナオは前のターンに行われた攻防の様子を推測していた……。

「カムイの手札は3枚……これからどう展開していくのかな……?」











「オレのターン、ドロー!」
 カムイは、自分の場が空になっている状態を目の当たりにしながらも、まったく気にしていないかの様な様子でカードをドローした。

「(……カムイは、この状況でも余裕を感じているのか……?さすがだぜ……。)」


「手札から、『フレンドッグ』を攻撃表示で召喚するッスよ!」
 カムイの場に、機械でできた小型犬が現れた。

「『フレンドッグ』で、『電池メン−単一型』に攻撃ッス!フレンドリー・バイト!」
 カムイの言葉を聞きつけた『フレンドッグ』は、場のモンスターを守っている『電池メン−単一型』に向かって果敢に突撃し……そのまま噛み付こうとした!



「(『フレンドッグ』の攻撃力は800……この伏せカードを発動させる必要は無いな……。)」
 雷人は、自分の伏せカードに手を掛けずに、そのまま『フレンドッグ』の攻撃を通した。

「くっ!」(雷人LP 2700→1900)



「(とりあえず『電池メン−単一型』を倒した事で、『充電池メン』の攻撃力は300ポイントダウンしたんスが……まだ安心できないッスね……。)カードを2枚場に伏せ、ターンエンド!」
 

「俺のターン、ドロー!」
 雷人は、ドローしたカードを軽く確認した。

「(……『フレンドッグ』は、戦闘破壊された時に、墓地の『E・HERO』と『融合』を手札に戻す厄介な効果を持っているな……。だが……攻撃力1000の『電池メン−単三型』と、攻撃力2700の『充電池メン』の攻撃が通れば、俺の勝ちだ……!)」
 雷人は、場のモンスターの攻撃力とカムイのライフを計算し……

「バトルだ!行け!『充電池メン』!『フレンドッグ』に攻撃!充電バッテリーアタック!!」
 『充電池メン』は、2700の攻撃力を誇る激しい電撃を『フレンドッグ』に浴びせ……跡形も無く砕け散らせた!

「ぐあっ!」(カムイLP 2900→1000)
 カムイは、『充電池メン』から発生した大きなダメージに、少し驚いていたが……

「……だが!これで『フレンドッグ』の効果が発動するッスよ!この効果で、墓地から『融合』と『E・HERO ネクロダークマン』を手札に加えるッス!」
 カムイは、なれた手つきで墓地のカードを取り出し、2枚のカードを手札に加えた。


フレンドッグ
地 レベル3
【機械族・効果】
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分の墓地から「E・HERO」と名のついたカード1枚と
「融合」魔法カード1枚を手札に加える。
攻撃力800 守備力1200


「これで引導を渡してやるぜ!『電池メン−単三型』で、カムイにダイレクトアタック!」
 『電池メン−単三型』は、腕から電撃を発射したが……その攻撃は、地面から生えてきたかかしに防がれ、カムイに届く事は無かった!

「何!……まさか、あのカードか!」
「その、まさかッスよ!伏せカード発動!『くず鉄のかかし』!!」
 カムイは、自信満々に話した。


くず鉄のかかし
通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
相手モンスター1体の攻撃を無効にする。
発動後このカードは墓地に送らず、そのままセットする。


「そして……『くず鉄のかかし』は、オレの場に再びセットされるッスよ!」
 『くず鉄のかかし』は地面に戻っていき、次の攻撃を待ち構えていた。

「……カムイ。何故『充電池メン』の攻撃に対して『くず鉄のかかし』を発動させなかったんだ?発動させれば、ライフはそこまで削られなかったはずだぜ……。」
 雷人は、カムイの『くず鉄のかかし』の発動タイミングに、少しだけ疑問を抱いていたが……

「……いや……。『充電池メン』の攻撃に対して『くず鉄のかかし』を発動させたら、多分『電池メン−単三型』の攻撃は無かったと思うんスよね……。『フレンドッグ』は、戦闘破壊されても手札を増強できる強力なモンスターだから、あまり戦闘破壊したく無かったんじゃ無いッスか?」
「まあ……確かにな。」
 カムイの一言に、軽く賛同する事になった。

「だが……さすがッスね、雷人。攻撃の順番を考えて、オレに与えるダメージを大幅に増やしたんスからね。」
「そうだな……。この場面では、1回の強力な攻撃より、2回に分散した攻撃の方が、ダメージが通りやすいと思ったからな……。」
 











「確かに……墓地さえ揃っていれば、『フレンドッグ』は戦闘破壊されても得するモンスターだから、好きで破壊したく無いよね……。」
 物陰から見ていたナオは、カムイの今の行動について考えていた……。

「それを読んで高攻撃力モンスターで先に攻撃した雷人と、その攻撃を素通ししたカムイのデュエル……。面白くなりそうだね。」
 ナオは、時間が無い事も忘れて、2人のデュエルに見入っていた……。 











「俺は……カードを1枚場に伏せ、ターンエン……」
「このタイミングで、永続罠『リミット・リバース』を発動させてもらうッスよ!この効果で、『カードガンナー』を攻撃表示で特殊召喚!」
 カムイが1枚の伏せカードを表にすると……墓地から、キャタピラ付きの小さな機械が蘇った!


リミット・リバース
永続罠
自分の墓地から攻撃力1000以下のモンスター1体を選択し、
攻撃表示で特殊召喚する。
そのモンスターが守備表示になった時、そのモンスターとこのカードを破壊する。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。


「この状況で『リミット・リバース』か……。いざとなったら、『カードガンナー』を守備表示にして、『リミット・リバース』のデメリットで自壊させ、カードをドローする訳だな。ターンエンド!」


現在の状況
カムイ LP…1000
    手札…3枚(内2枚はネクロダークマン、融合)
    場…カードガンナー(攻撃力400・攻撃表示)
      リミット・リバース(カードガンナーを対象)
      伏せカード1枚(くず鉄のかかし)

雷人 LP…1900
   手札…0枚
   場…充電池メン(攻撃力2700・攻撃表示)
     電池メン−単三型(攻撃力1000・攻撃表示)
     電池メン−ボタン型(リバース済み・守備力100・攻撃表示)
     伏せカード2枚


「オレのターン、ドロー!まずは、『カードガンナー』の効果を発動させてもらうッスよ!デッキの上からカードを3枚墓地に送り、攻撃力を1500アップさせるッスよ!」
 カムイは、デッキの上から『ゴブリンのやりくり上手』、『E・HERO バーストレディ』、『神剣−フェニックスブレード』を墓地に送り、攻撃力を高めた!


カードガンナー
地 レベル3
【機械族・効果】
1ターンに1度、自分のデッキの上からカードを3枚まで墓地へ送って発動する。
このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで、
墓地へ送ったカードの枚数×500ポイントアップする。
また、自分フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。
攻撃力400 守備力400


「手札から、魔法カード『融合』を発動ッス!手札の『スパークマン』と『エッジマン』を融合し……『E・HERO プラズマヴァイスマン』を融合召喚!」
 カムイの場に、霧の様な不思議な渦が現れ……その中で、稲妻を操るヒーローと、刃を持ったヒーローが融合し……両腕に巨大なナックルを身につけたヒーローが姿を現した!

「『プラズマヴァイスマン』……。貫通効果と除去効果を持ったヒーローか!」
「ああ!まずは、除去効果を使わせてもらうッスよ!墓地の戦士族モンスター2体……『カードブロッカー』と『ガイア』を除外し、墓地の『神剣−フェニックスブレード』を手札に戻すッスよ!」
 カムイは、先程墓地に送られた『神剣−フェニックスブレード』を取り出し、自分の手札に加えた。


神剣−フェニックスブレード
装備魔法
戦士族のみ装備可能。
装備モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。
このカードが自分のメインフェイズ時に自分の墓地に存在する時、
自分の墓地の戦士族モンスター2体をゲームから除外する事でこのカードを手札に加える。


「そして……『プラズマヴァイスマン』の効果発動ッス!今戻した『神剣−フェニックスブレード』を墓地に捨て、攻撃表示モンスター……『充電池メン』を破壊するッスよ!」
 『プラズマヴァイスマン』は、両腕に電気をまとわせ……その腕で、『充電池メン』を地面に叩き伏せた!


E・HERO プラズマヴァイスマン
地 レベル8
【戦士族・融合・効果】
「E・HERO スパークマン」+「E・HERO エッジマン」
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が越えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
手札を1枚捨てる事で相手フィールド上の攻撃表示モンスター1体を破壊する。
攻撃力2600 守備力2300


「この攻撃が通れば、オレの勝ちッスよ!『プラズマヴァイスマン』で、『電池メン−ボタン型』に攻撃!」
 『プラズマヴァイスマン』の拳は、確かに『電池メン−ボタン型』の体を貫通し、雷人にそのまま殴りかかろうとしたが……その拳は、雷人に直撃するスレスレで止まった!

「ダメージ計算のタイミングで、伏せ罠カード『ガード・ブロック』を発動させてもらったぜ!この効果で、俺への戦闘ダメージは0になり、カードを1枚ドローするぜ!さらに、リバースした『電池メン−ボタン型』が戦闘破壊された事によって、カードを1枚ドローだ!」
 そう言いながら雷人は、デッキから2枚のカードをドローした。


ガード・ブロック
通常罠
通常罠
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。

電池メン−ボタン型
光 レベル1
【雷族・効果】
リバース:自分のデッキから「電池メン−ボタン型」以外のレベル4以下の
「電池メン」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。
また、リバースしたこのカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。
攻撃力100 守備力100



「だが……まだ『カードガンナー』の攻撃が残ってるッスよ!『カードガンナー』で『電池メン−単三型』に攻撃ッス!」
 『カードガンナー』は、腕のレーザー砲で、『電池メン−単三型』の体を打ち抜いた!

「くっ……この一撃で、ライフが並んだか……!」(雷人LP 1900→1000)

「メインフェイズ2に入るんスが……『カードガンナー』を残しておくのは、少々危ないッスね……。オレの場の『リミット・リバース』をコストに、魔法カード『マジック・プランター』を発動するッスよ!カードを2枚ドローし……『リミット・リバース』が場から離れた事によって破壊された、『カードガンナー』の効果が発動するッスよ!さらにカードを1枚ドロー!」
 カムイは、2枚のカードの効果を利用し、手札を3枚にまで増やした!


マジック・プランター
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する
永続罠カード1枚を墓地へ送って発動する。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。


「2枚のカードを使って3枚のカードをドローするか……。やるな!」
「まだ終わりじゃ無いッスよ!手札から、魔法カード『貪欲な壺』を発動ッス!墓地の『ワイルドジャギーマン』、『フレンドッグ』、『カードガンナー』、『ネクロダークマン』、『スパークマン』をデッキに戻し……カードを2枚ドロー!」
 カムイは、墓地から5枚のカードを取り出し、雷人に見せてからデッキに戻し、カードを2枚ドローした。

「さらに、墓地の『ワイルドマン』と『エッジマン』を除外し、『神剣−フェニックスブレード』を手札に戻すッスよ!モンスターを1体セットし、カードを3枚場に伏せ、ターンエンド!」




「俺のターン、ドロー!」
「ドローフェイズに、オレはこのカードを発動させるッスよ!永続罠『リミット・リバース』!この効果で、オレの墓地から『ダンディライオン』を特殊召喚するッスよー!」
 

「何!このタイミングでの『リミット・リバース』だと!?」
 雷人は、タイミングの意図が読めない『リミット・リバース』に、少し当惑していた……。











「このタイミングでわざわざ『リミット・リバース』を発動した訳は……もしかしたら、カムイの場のあと2枚の伏せカードに隠されてるのかな……。」
 ナオは、カムイのこの行動の意味を分析しようとしていた……。

「例えば……『非常食』の様な、自分の魔法・罠カードをコストにするカードを伏せているのかもね。『リミット・リバース』は、効果解決時まで場に残っていないと、蘇生効果が不発になっちゃうから……不意に『大嵐』を打たれた時に、『非常食』の回復量が2000になっちゃうからね……。」


「でも……あらかじめ発動しておけば、不意に『大嵐』を打たれても、カムイは、全部のカードを墓地に送って3000回復……さらに『リミット・リバース』が場から離れた事で『ダンディライオン』が破壊されて、『綿毛トークン』を呼び出す効果も使える……って訳か。」
 











「だが……この2枚のカードで俺は、手札を整えさせてもらうぜ!伏せ罠カード『ゴブリンのやりくり上手』を発動するぜ!さらに、『ゴブリンのやりくり上手』にチェーンし、手札の速攻魔法『非常食』を発動だ!『ゴブリンのやりくり上手』を墓地に送る事でライフを1000回復し……カードを、墓地の『ゴブリンのやりくり上手』の数……2+1枚ドローし、手札を1枚デッキの下に戻すぜ!」
 雷人は、自分のライフを回復しつつ手札の補充を行った。


ゴブリンのやりくり上手
通常罠
自分の墓地に存在する「ゴブリンのやりくり上手」の枚数+1枚を
自分のデッキからドローし、自分の手札を1枚選択してデッキの一番下に戻す。

非常食
速攻魔法
このカード以外の自分フィールド上に存在する
魔法・罠カードを任意の枚数墓地へ送って発動する。
墓地へ送ったカード1枚につき、自分は1000ライフポイント回復する。


雷人LP 1000→2000

「これで準備は整ったぜ……!ライフを500払い……手札から、魔法カード『充電器』を発動するぜ!蘇れ!『電池メン−単三型』!」
 雷人は、先程得たライフをコストに、墓地の『電池メン−単三型』に力を与え、蘇らせた!

雷人LP 2000→1500

「攻撃力1000の『電池メン−単三型』が特殊召喚された事により……手札から、速攻魔法発動!『地獄の暴走召喚』!!」
「なっ……そこでそのカードを使うんスか!?」
 カムイは、このタイミングでの『地獄の暴走召喚』に、少し驚いていた……。


「『地獄の暴走召喚』は、俺の場に攻撃力1500以下のモンスターが特殊召喚された時に発動可能なカードだぜ!この効果で、俺は『電池メン−単三型』をデッキ・手札・墓地から可能な限り特殊召喚するが……カムイも自分の場に存在するモンスター1体と同名カードを、可能な限り特殊召喚できるぜ!」
「いや……オレの場の『プラズマヴァイスマン』も『ダンディライオン』も、暴走召喚できないんスよね……。つまり、一方的にモンスターを並べられるって事なんスね……。」
 カムイは、残念そうに呟いた。


地獄の暴走召喚
速攻魔法
相手フィールド上に表側表示モンスターが存在し、自分フィールド上に
攻撃力1500以下のモンスター1体の特殊召喚に成功した時に発動する事ができる。
その特殊召喚したモンスターと同名カードを自分の手札・デッキ・墓地から
全て攻撃表示で特殊召喚する。
相手は相手フィールド上のモンスター1体を選択し、そのモンスターと
同名カードを相手自身の手札・デッキ・墓地から全て特殊召喚する。


「『電池メン−単三型』は、同名カードがすべて攻撃表示だった場合、その枚数×1000ポイント攻撃力がアップするんだぜ!『電池メン−単三型』は場に3体……よって、『電池メン−単三型』の攻撃力は3000だぜ!」
 『電池メン−単三型』は、首に巻いている電気のマフラーをつなげ合わせ……攻撃力を大幅に高めあった!


電池メン−単三型
光 レベル3
【雷族・効果】
自分フィールド上の「電池メン−単三型」が全て攻撃表示だった場合、
「電池メン−単三型」1体につきこのカードの攻撃力は1000ポイントアップする。
自分フィールド上の「電池メン−単三型」が全て守備表示だった場合、
「電池メン−単三型」1体につきこのカードの守備力は1000ポイントアップする。
攻撃力0 守備力0


電池メン−単三型 攻撃力1000→3000

「さらに……墓地から『電池メン−単二型』、『電池メン−単一型』を除外し……これで引導を渡してやるぜ!『電池メン−業務用』を特殊召喚!!」
 雷人が、墓地から2体の『電池メン』を除外すると……1メートル近くの大きさで、全身からあふれる電気で火花を散らした、巨大な電池メンが姿を現した!

「『電池メン−業務用』の効果を発動するぜ!墓地の『ボルテックドラゴン』を除外し、カムイの場の裏守備モンスターと『くず鉄のかかし』を破壊するぜ!食らえ!100Vボルテックス!!」
 『電池メン−業務用』が、地面に2つの電極を差し込むと……その電気がショートし、耳を塞ぎたくなる様な激しい雷鳴が場を包み込んだ!

「……だが、ただでは破壊させないッスよ!伏せ罠カード『ゴブリンのやりくり上手』を発動し……オレの場の『くず鉄のかかし』、『リミット・リバース』、『ゴブリンのやりくり上手』を墓地に送り、速攻魔法『非常食』を発動するッス!」
 カムイは、先程雷人が発動させたカードとまったく同じカードを発動させてみせた!

「『非常食』の効果で、ライフを3000回復するッスよ!さらに、『ゴブリンのやりくり上手』の効果で、墓地の『ゴブリンのやりくり上手』の数+1枚……つまり、3枚のカードをドローし、手札を1枚デッキの下に戻すッスよ!」
 カムイは、自分のライフを大幅に回復すると共に、手札を大幅に補強した!
 さらに、『リミット・リバース』が場を離れた事により、蘇生されていた『ダンディライオン』も、道連れに墓地へと消えていった。

カムイLP 1000→4000

「だが、裏守備モンスターは電撃を避けられないぜ!砕け散れ!裏守備モンスター!!」
 雷人の言葉通り、カムイの場の裏守備モンスター……『クレイマン』は、轟音と共に砕け散り、場から消え去ってしまった……。











「……ううっっ……。本当に……何て音の大きさなんだよ……。頭にまで響いたみたいじゃないか……。」
 『電池メン−業務用』の放った爆音を聞いてしまったナオは、自分のネコ耳の部分を押さえながら、半ズボンによって顕にしている膝を地面につき、うずくまってしまった。

「でも……やっぱりカムイは、『非常食』を伏せていたんだね。そうなると……雷人はこのターンでは勝てないって事になるね。」











「『リミット・リバース』墓地に送られた『ダンディライオン』の効果が発動するッスよ!『綿毛トークン』を2体特殊召喚!」
 カムイの場に、守備力0の綿毛が2体現れ、雷人の場のモンスターの前に立ちはだかった!


ダンディライオン
地 レベル3
【植物族・効果】
このカードが墓地へ送られた時、自分フィールド上に「綿毛トークン」
(植物族・風・星1・攻/守0)を2体守備表示で特殊召喚する。
このトークンは特殊召喚されたターン、アドバンス召喚のためにはリリースできない。
攻撃力300 守備力300


「これで俺の攻撃を妨害するカードは消え去ったぜ!行け!『電池メン−単三型』!『プラズマヴァイスマン』に攻撃!単三バッテリーアタック4.5V!」
 『電池メン−単三型』は、腕から強烈な電撃を放ち、『プラズマヴァイスマン』を軽く粉砕した!

「ぐっ!」(カムイLP 4000→3600)

「次は『綿毛トークン』を破壊するぜ!『電池メン−業務用』と、2体目の『電池メン−単三型』で攻撃!」
 2体の電池メンによる激しい攻撃は、『綿毛トークン』をまるで紙の様に焼ききってしまった……。

「まだ終わりじゃないぜ!3体目の『電池メン−単三型』で、カムイにダイレクトアタック!単三バッテリーアタック4.5V!!」



「これで俺は、ターンエンドだ。」


現在の状況
カムイ LP…600
    手札…3枚
    場…無し

雷人 LP…1900
   手札…0枚
   場…電池メン−業務用(攻撃力2600・攻撃表示)
     電池メン−単三型×3(攻撃力3000・攻撃表示)



「……オレのターン、ドロー!まずは、『バブルマン』を攻撃表示で召喚するッスよ!」
 カムイの場に、泡を操るヒーローが召喚された。

「ここで『バブルマン』を召喚だと!?……だが、手札は残っているから、ドロー効果は使えないぜ!」
「それぐらい分かってるッスよ!……と言うより、手札が残っている状態でドロー効果が使えたら、明らかに強すぎると思うんスけどね。」
「そうだな……。そんな強力な効果だったら、俺でも『バブルマン』をデッキに入れるぜ。」
 カムイと雷人は、軽く語り合った。

「『バブルマン』を召喚した訳は……まさか、『バブル・シャッフル』を発動させるつもりか!?」
 雷人は、『バブルマン』から想像できる1枚のカードが、カムイの手札に存在するのか不安に思っていた……。
 『電池メン−単三型』は、同名カードがすべて同じ表示形式でなければ、電力のバランスが崩れ、力が発揮できなくなる……。『バブル・シャッフル』の効果で1体でも守備表示にされたなら、すべての『電池メン−単三型』の攻守が0にまで激減してしまうからだ……。

「いや……。オレが『バブルマン』を召喚した訳は……この速攻魔法を使うためなんスよ!速攻魔法『バブルイリュージョン』を発動ッス!」
 カムイがそう言うと、『バブルマン』が突然マジシャンの衣裳を身に付け……手にしたステッキから、いくつかの泡を発生させた!


バブルイリュージョン
速攻魔法
「E・HERO バブルマン」が自分フィールド上に
表側表示で存在する時のみ発動する事ができる。
このターン、自分は手札から罠カード1枚を発動する事ができる。


「『バブルイリュージョン』の効果で、このターン、オレは手札から罠カードを1枚だけ発動できるんスよ!オレが発動させるカードは……『ゴブリンのやりくり上手』!」
「何!?3枚目の『ゴブリンのやりくり上手』だと!?」
 雷人は、意外なカードの発動に、驚きを隠せないでいた……。

「『ゴブリンのやりくり上手』の効果で、オレは3枚カードをドローし、手札を1枚デッキの下に戻すッスよ!」
 ドローしたカードを軽く確認したカムイは……



「雷人……。このデュエル、オレの勝ちみたいッスね!魔法カード『闇の量産工場』を発動するッスよ!墓地から、通常モンスター2体……『バーストレディ』と『クレイマン』を手札に加えるッス!」
 カムイは、またしてもなれた手つきで墓地のカードを2枚取り出し、自分の手札に加えた。


闇の量産工場
通常魔法
自分の墓地から通常モンスター2体を選択し手札に加える。


「そして……魔法カード『融合』を発動するッス!オレの手札と場の、4体の『E・HERO』……『フェザーマン』、『バーストレディ』、『クレイマン』、『バブルマン』を融合し……」
 そう言うと、カムイの場に、緑色、赤色、黒色、青色のエレメントが1つに交じり合い……











「……現れろ!『E・HERO エリクシーラー』!!」
 カムイの場に現れたのは、全身が金色に光り輝き、緑、赤、黒、青のオーラを背負ったヒーローだった!

「『エリクシーラー』の融合召喚に成功した時、お互いの除外されているカードはすべてデッキに戻るんスよ!……まあ、この効果は今は必要無いんスけどね。」
 カムイは、1つの効果を軽く流しながら、除外された『ネクロ・ガードナー』を、雷人は『電池メン−単一型』、『電池メン−単二型』、『ボルテックドラゴン』をデッキに戻した。


E・HERO エリクシーラー
光 レベル10
【戦士族・融合・効果】
「E・HERO フェザーマン」+「E・HERO バーストレディ」
+「E・HERO クレイマン」+「E・HERO バブルマン」
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードの属性は「風」「水」「炎」「地」としても扱う。
このカードを融合召喚した時、ゲームから除外された全てのカードを
持ち主のデッキに戻しデッキをシャッフルする。
相手フィールド上に存在するこのカードと同じ属性のモンスター1体につき、
このカードの攻撃力は300ポイントアップする。
攻撃力2900 守備力2600


「オレが今求めているのは……残りの効果なんスよ!『エリクシーラー』は光属性に加え、融合素材とした4体の『E・HERO』の属性……つまり、風、炎、地、水属性を併せ持ってるんスよ!さらに、自信と同じ属性を持つ相手モンスター1体につき、攻撃力が300ポイントアップするんスよ!」
 『エリクシーラー』は、雷人の場にいる4体のモンスターから力を受け取り……攻撃力を大幅に高めた!

E・HERO エリクシーラー 攻撃力2900→4100

「攻撃力……4100だと!?」
「これで終わりッスね!『エリクシーラー』で、『電池メン−業務用』に攻撃ッス!フュージョニスト・マジスタリー!!」
 『エリクシーラー』は、両の手のひらを近づけ、波動拳を放つかの様な体制を取り……手のひらの間に、光のエネルギーを収束させ、球体の様にした!
 そして……そのエネルギーを『電池メン−業務用』に向かって放つと……その光の球体が炸裂し、『電池メン−業務用』を一瞬で光の粒子とし、場から完全に消し去った!

「くっ……俺の負けか……。」(雷人LP 1500→0)











「オレの勝ちッスね!雷人!」
「そうだな……。想像以上にいいデュエルだったぜ!カムイ!」
 雷人は、ためらう様子も無く、自分の持っているスターチップをすべてカムイに渡した。

カムイ スターチップ9個→18個(本戦出場)
雷人  スターチップ9個→0個(失格)

「……ん?デュエル中に、センリからメールが来てたみたいッスね。」
 カムイは、自分の服のポケットに入れていたDCT(デュエリストコミュニケーションツール)を取り出し、メールの内容を確認した。

「なるほど……。センリも、本戦出場できたんスね!」
 センリの成果を確認したカムイは、嬉しそうに話した。



「……カムイ。なら、今リナちゃんはどれだけスターチップを集めてるんだろうな。」
「リナの事ッスか?……朝の段階では4個って言ってたんスから……今はもっと増えてると思うッスよ。」
 カムイは、軽く話した。

「おい、連絡手段がありながら、そんな古い情報しか入ってないのかよ!俺が聞いてやるから、リナちゃんの連絡先教えろよ!」
「なっ……いったい何考えてるんスか!?他人の個人情報を教えるなんて、普通そんな事できる訳無いじゃないッスか!」
 カムイは、雷人に対して驚きながら話した。

「……仕方無いッスね。とりあえず、リナにメールして……返事くらいは教えてもいいと思うんスよね。」
「そうか!じゃあ、今すぐ送ろうぜ!」
「あ、ああ……。とりあえず、『今何個スターチップを持ってるんスか?オレは今やっと10個集めた所なんスよ。』……で、送信……と。」











「やっぱり……実力がある者同士のデュエルは違うね。見てるだけで凄さが伝わってくるよ。」
 2人のデュエルを途中から最後まで見ていたナオは、満足したかの様な表情をしていたが……

「……って、見入ってる場合じゃなかったよね。カムイ達の話では、もう2人埋まっちゃってるみたいだから、早く相手を見つけないと……!」
 ナオは、そう思いながら、そそくさと木の影を後にした……。




次回予告

カムイ「雷人。この大会に潜伏しているって噂の、『デュエリスト狩り』の噂って、聞いたこと無いッスか?」
雷人「いや……無いな。俺が聞いたのは、『血まみれの女』を見たって話を聞いただけだぜ。」
カムイ「『血まみれの女』……。侵入者なら、『デュエリスト狩り』と何か関係がありそうッスね……。」
雷人「……『デュエリスト狩り』は、いったい何が目的なんだ?」



次回、『GX plus!』第三十八話!

『気遣い?お節介?血塊竜の行方!』

カムイ「『真紅眼の血塊竜』……。名前からして不気味なんスけど……。」
雷人「だが、使用者は何となく可愛らしいよな。」
カムイ「……可哀らしい……じゃ無ければ幸いなんスけどね……。」




第三十八話 気遣い?お節介?血塊竜の行方!

「え〜と。今あたしが持ってるスターチップの数は9個だから……あと1回勝てば本戦に出場できるって訳だね。」
 リナは、自分の右手に付けたグローブにはめ込んだスターチップを見て、そう呟いた。

「……とは言ったものの、さっきデュエルしたばっかだから、1時間の待機時間があるんだよね。……どうしよっかな〜。」
 ルールによる不自由さを残念に思いながらも、リナは適当に歩き回る事にした……。


ルール2・デュエル終了後1時間は、チャージタイムとなり、デュエルを行うことができない。



ピピピ……ピピピ……



「あっ、メールだ。」
 着信音を聞いたリナは、ポケットからDCT(デュエリストコミュニケーションツール)を取り出し、メールの内容を確認した。

「……ふ〜ん。カムイもセンリも、予選を通過できたんだね!すごいな〜。」
 リナは、2人の戦果を聞き、思わず嬉しくなってしまった。

「え〜っと……。『わ〜。すごいじゃ〜ん、カムイ〜(o^▽^o)。メールあんがとね〜(^-^)/。あたしも、あと1個で出場できるんだけど……間に合うかな……(;^_^A。』……で、送信……っと。」
 メールの返事を打ったリナは、送信ボタンをピッと押した。











「……おい。」
「ん?誰?」
 リナは、後ろから話し掛けられ、思わずそちらを見た。
 見た方には、一部分が不自然に黒色になっている赤色の髪で、黒色のブーツをはき、黒の下地に所々に赤い染みみたいなものが付着しているドレスを着た、赤い眼をした少女が立っていた……。

「……天魔神について、何か知っているか?」
「ちょっと……いきなり何?あたしの方が先に質問したんだから、まずはあたしの質問に答えてよ。」
 少女の問い掛けに対し、リナは戸惑いながら話し掛けた。

「……何を質問した?」
「『誰?』って質問したじゃん。」
「…………。」
 リナの一言に対し、少女は少し返答できなかった……。

「……ラケシスだ。」
「ラケシス……ね。あたしはリナって言うんだ。」
 リナは、軽く話した。

「……天魔神について、何か知っているか?」
「天魔神?」
 リナは、『天魔神』の使用者を思い出したが……

「……知らないよ。使ってる奴なんて。」
 使っていた人に嫌な事を言われた事も思い出し、わざとそう言った。

「……知っている様だな。」
 ラケシスは、そう言いながら左手に付けたデュエルディスクを構え……

「……妾とデュエルしろ。」
「デュエル?……あっちゃあ……今さっきデュエルしちゃったから、しばらくデュエルできないんだ……。ゴメンね。」
 ラケシスの挑戦に対し、リナは残念そうに頭を掻きながら断った。

「ね。だから、あたしじゃなくて他の人を……」
 そう言いながらリナは、ラケシスの右手首をつかむと……何かグチュッ……とした、調理前の唐揚げ用の肉をつかんだかの様な、何か嫌な感覚が手のひらに伝わってきた……。



「ちょっ………どどどどうしたの!?その腕!」
 ラケシスの右手首の状態を見たリナは、思わず叫んでしまった……。

「関係ない。」
「無くないよ!何でこんなになっちゃったの!?」
 ラケシスは、つかまれている右手を振りほどこうとしたが……リナは、ラケシスが右手を動かせない様につかみ続けた……。

「……な……何を……」
「何をって……傷がひどくなんない様にするだけだよ。砂とか入ったら、きれいに治んなくなっちゃうかんね……。」
 リナは、ラケシスの右の二の腕を、血が止まるほど思い切りつかんで、その状態を保つように、ハンカチできつく縛った。
 その後、傷口にハンカチをあて、軽く結び付けた……。

「それと……左足も何か同じ様になってるよね……。こっちにも巻いとくね。」
 リナは、ラケシスのスカートの中に両手を入れ……左足の腿を強く握りしめ、ハンカチできつく縛った……。
 さらに、4枚目のハンカチを手に持ち、ラケシスの左足首にあて……こちらも軽く結び付けた。

「これでよし……っと。でも、あんまり動かしちゃダメだよ。」
「…………。」
 リナは、ラケシスにそう軽く忠告し、歩き去って行った……。





















「はぁ……べったべただよ〜……。」
 リナは、ラケシスの手足にハンカチを巻いた時に付いた、赤色の『何か』を洗い流すために、水道で手を洗っていた……。

「……そう言えば、ハンカチ全部あの娘にあげちゃったっけ……。……誰も見てないから、服で手を拭いちゃってもいいよね……?」
 そう言いながらリナは、洗い終わった手に付いた水滴を軽く掃い、はいていたデニムのスカートで手を拭った……。

「……でも……あの娘、ちゃんとあたしの言う事聞いてくれたかな……?ちょっと不安だから、もうちょっと一緒にいようかな……。」
 リナは、あまりにも無抵抗すぎたラケシスの様子を思い出し……少し不安になったのか、ラケシスを捜しに行く事にした……。





















「え〜と……確か、こっちの方に歩いてったよね……。」
 リナは、ラケシスが歩いて行った方に向かって歩いて行くと……

「……あっ、ラケシス。何してんの?」
 男と向かい合っているラケシスの姿を見つけて、軽く声をかけた。

「……デュエルを申し込んだだけだ。」
「え……ほ、本当なの!?」
 リナは、ラケシスのあまりに淡々とした一言に、思わず目を丸くしてしまった……。

「だ、ダメだよ!怪我してるのに腕なんか動かしたら……もっとひどくなっちゃうよ!」
 リナは、腕を広げながらラケシスの前に立ちはだかったが……ラケシスは、リナの制止を無視してデュエルを行おうとしていた……。

「あ〜〜もう〜〜!……ゴメンね、ラケシス!」
 そう言いながらリナは、ラケシスの肩を持ち……

「…………!」
 ……そのまま近くに立っている木に、背中から押しつけた!
 そして、ロープを使って、腰の辺りと膝の辺りで木に括り付けた!

「後は……頭をぶつけない様に……頭もしっかりと括り付けておけば大丈夫かな。」
 リナは、ラケシスの頭と木の間にロープを通しながら、頭からもロープで固定した。



「ラケシス。ちょっと手荒な真似しちゃってゴメンね……。このデュエル、あたしが代わりにカードを出したりするから、色々と指示出してくれない?」
「……ああ。」
 ラケシスは、リナの奇行とも取れる行動を、表情一つ変えずに受け入れた。

「おい……お前、無茶苦茶なガキだな……。」
「ガキじゃ無い!あたしにはねえ……リナって言う立派な名前があるんだかんね!」
 リナは、ラケシスとデュエルしようとしていた男に対し、怒りながら話した。

「で……あんたの名前は何なの!?」
「おれか?おれの名前は『節分(ふしぶ 渋士(しぶし』だ!」
節分(ふしぶ?……節分(せつぶんじゃ無いんだね。」
 節分の名前を聞いたリナは、軽く話した。

「じゃっ、行っくよ〜!」
 リナは、ラケシスの左手から外した、黒い色をした鳥の翼の骨のような形をしたフレームに、赤色をしたカードを置くプレート部分が張られているような形のデュエルディスクを自分の左手に付け……











「「デュエル!」」
 先行は、リナだった。

「あたしのターン!」
「妾のターンだ。」
「べ……別にどっちでもいいじゃん……。形式上言ってるだけなんだしさ。」
 リナは、ラケシスの忠告に少し戸惑っていた……。

「……で、どうすればいいの?」
「左から2番目のカードを発動させた後、1番右のカードを発動しろ。」
「はいはい。……手札から、永続魔法『魂吸収』を発動するかんね!」


魂吸収
永続魔法
このカードのコントローラーはカードがゲームから除外される度に、
1枚につき500ライフを回復する。


「それから……魔法カード『封印の黄金櫃』を発動!……で……何を除外すんの?」
「右から14番目のカードだ。」
「じゅ、14番目って……ど〜せ相手に見せんだから、ここは名前で言ってもいいじゃん。」
「……『ネクロフェイス』だ。」
「『ネクロフェイス』?……うっ。」
 マネキンの頭が割れ、その割れ目から不気味な肉と触手がむき出しになっている『ネクロフェイス』のイラストを見たリナは、昼に食べたおにぎり10個が逆流する様な感覚に一瞬襲われた……。



「ね、ねえ……ラケシス……。本当にこのカードでいいの?」
「ああ。」
「ううっ……。絶対開けたくないな……この黄金櫃……。」
 リナは、嫌々『ネクロフェイス』のカードを、『封印の黄金櫃』の中に投げ込んだ……。


封印の黄金櫃
通常魔法
自分のデッキからカードを1枚選択し、ゲームから除外する。
発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時にそのカードを手札に加える。


リナのデッキ枚数 34枚→33枚

「え〜と、それから……」
 リナがそう言おうとしている間に、突然黄金櫃のふたがガタガタ揺れ始めた!

「ええっ!?まだ入れたばっかなのに、何で出てきそうになってんの!?」
 リナが驚いている間に……黄金櫃の中から『ネクロフェイス』の触手があふれ出て……リナと節分のデッキに絡み付いた!

「え!?な、何なの!?これ!」
「『ネクロフェイス』は、除外された時に、お互いのデッキの上から5枚を道連れに除外される……。」
 ラケシスが、表情一つ変えずに呟いた時には、リナと節分のデッキの上から5枚のカードが……『ネクロフェイス』と共に除外されてしまった……。


ネクロフェイス
闇 レベル4
【アンデット族・効果】
このカードが召喚に成功した時、
ゲームから除外されているカード全てをデッキに戻してシャッフルする。
このカードの攻撃力はこの効果でデッキに戻したカードの枚数×100ポイントアップする。
このカードがゲームから除外された時、
お互いはデッキの上からカードを5枚ゲームから除外する。
攻撃力1200 守備力1800


リナのデッキ枚数 33枚→28枚
節分のデッキ枚数 35枚→30枚

「ううっ……何か気分悪くなってきた……。」
 リナは、口の辺りに手を当て、苦しそうにしていたが……『魂吸収』の効果で、ライフだけは回復していた……。

リナLP 4000→4500→9500

「で……次は?」
「左から2番目のモンスターを召喚しろ。」
「左から2番目?……『酒呑童子』ね。」
 リナの場に、ひょうたん型の酒樽を持った小型の鬼が現れた。

「『酒呑童子』の効果で、除外された『ネクロフェイス』をデッキの1番上に置き、1番右のカードを発動しろ。」
「え゛……。またあの不気味なモンスター出さなきゃダメなの?」
「……。」
 ラケシスは、赤色の瞳でリナをじっと見つめていた。

「ううっ……分かったよ〜。やればいいんでしょ……。」
 リナは、ラケシスに言われるがままに、黄金櫃に封印されていた『ネクロフェイス』を取り出し、デッキの1番上に置いた。


酒呑童子
地 レベル4
【アンデット族・効果】
1ターンに1度、次の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●自分の墓地に存在するアンデット族モンスター2体を
ゲームから除外する事で、自分のデッキからカードを1枚ドローする。
●ゲームから除外されている
自分のアンデット族モンスター1体をデッキの一番上に戻す。
攻撃力1500 守備力800


リナのデッキ枚数 28枚→29枚

「次は、1番右のカードだ。」
「『闇の誘惑』だね。……もしかして、また『ネクロフェイス』を除外しなきゃなんないの?」
「……。」
 ラケシスは、黙ってうなずいた。

「……ラケシスは、デッキ破壊で勝ちたいのかな……。でも、除外されたカードは、ほとんどアンデット族ばっかだったし……。」
 リナは、ラケシスのデッキコンセプトが、いまいち理解できなかった……。

「……手札から、魔法カード『闇の誘惑』を発動するかんね!この効果で、カードを2枚ドローして……手札の『ネクロフェイス』を除外するね……。」
 リナが、嫌々『ネクロフェイス』を除外すると……再び、『ネクロフェイス』の触手が、リナと節分のデッキに絡み付いた……。


闇の誘惑
通常魔法
自分のデッキからカードを2枚ドローし、
その後手札から闇属性モンスター1体をゲームから除外する。
手札に闇属性モンスターがない場合、手札を全て墓地へ送る。


リナのデッキ枚数 29枚→27枚

「ううっ……本当に気分悪くなってきた……。デュエルが終わるまで、耐えられるかな……。」
 リナが小さくそう言っている間に、絡み付いた触手が異次元へと戻っていき……その際に、上から5枚のカードを奪い取っていった……。

リナのデッキ枚数 27枚→22枚
節分のデッキ枚数 30枚→25枚

リナLP 9500→10000→15000

「だがなぁ……おれのデッキには、無限の兵力が存在するんだよ!無限の兵力を使えば、15000のライフを削り取るなんざ雑作じゃねぇ……!」
 節分は、余裕そうな表情で話した。


「1番右のカードを伏せターンエンドだ。」
「これだね。カードを1枚場に伏せて、ターンエンド!」
 リナは、ラケシスの言葉通りにターンを終えた。

「おれのターン、ドロー!ドローフェイズに、速攻魔法『異次元からの埋葬』を発動してやるぜぇ!この効果で……除外された『不死武士』、『ネクロ・ガードナー』、『終末の騎士』を墓地に戻すぜぇ!」
 

異次元からの埋葬
速攻魔法
ゲームから除外されているモンスターカードを3枚まで選択し、
そのカードを墓地に戻す。


「スタンバイフェイズに、『不死武士』の効果が発動するぜぇ!蘇れぇ!『不死武士』!」
 節分の場に、全身に傷を負い、怪しい妖気を漂わせている武士が現れた!


不死武士
闇 レベル3
【戦士族・効果】
このカードは戦士族モンスターの生け贄召喚以外の生け贄にはできない。
自分のスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在し、
自分フィールド上にモンスターカードが存在しない場合、
このカードを自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。
この効果は自分の墓地に戦士族以外のモンスターが存在する場合には発動できない。
攻撃力1200 守備力400


「うっ……また何か不気味なモンスターが出てきちゃったよ……。でも、攻撃力1200じゃ、『酒呑童子』は倒せないよね……。」
「甘いぜぇ!手札から、装備魔法『融合武器ムラサメブレード』を『不死武士』に装備だぁ!」
 節分が、1枚のカードをデュエルディスクに差し込むと……『不死武士』の右腕と、不気味な妖気を放つ刀が同化してしまった!


融合武器ムラサメブレード
装備魔法
戦士族のみ装備可能。攻撃力が800ポイントアップする。
このカードは魔法カードを破壊する効果では破壊されない。


不死武士 攻撃力1200→2000

「『ムラサメブレード』は、装備者が死ぬか、戦士である事をやめるまで、腕に融合する妖刀なんだぜぇ!バトルだぁ!『不死武士』で、『酒呑童子』に攻撃!」
 『不死武士』は、妖刀……では無く右手で『酒呑童子』の胴を切り裂いた!

「きゃっ!」(リナLP 15000→14500)


「おれはカードを1枚場に伏せ、ターンエンドだ!」


現在の状況
リナ LP…14500
   手札…2枚
   場…魂吸収(表側表示)
     伏せカード1枚

節分 LP…4000
   手札…3枚
   場…不死武士(攻撃力2000・攻撃表示)
     融合武器ムラサメブレード(不死武士に装備)
     伏せカード1枚


「じゃっ、次はラケシスのターンだね。ドロー!」
 リナは、ドローしたカードを軽く確認した。

「伏せカードを発動しろ。」
「伏せカードね。永続罠『闇次元の解放』を発動するかんね!……で、何を帰還させんの?」
「……『ダブルコストン』だ。」
「『ダブルコストン』だね。……アンデット族としては、結構可愛いカードだね。」
 リナは、『ダブルコストン』の見た目に、少し安心していた……。

「そして……『ダブルコストン』をリリースし、1番左のカードを召喚しろ。」
「1番左?……レベル7だけど、闇属性だから『ダブルコストン』1体で大丈夫だね。……よ〜し!」
 リナは、初めのドローから手札に加わっていたカードに手を掛け……。

「行っくよ〜!『ダブルコストン』をリリースして……このモンスターを召喚するよ!『真紅眼の血塊竜(レッドアイズ・ブラッディドラゴン』!」
 そう言うと、リナの足元に不気味な血溜りが現れ、その血の中から、全身血赤色に染まったドラゴンが姿を現した……。
 そして、そのドラゴンは……『ダブルコストン』を、肉を潰す様な気持ち悪い音を立てながら食らい尽くした!

「うげっ……。食べた……可愛いの食べちゃったよ……。しかも、丸呑みにしないで、ぐっちゃぐっちゃ味わいながら食べちゃってるよ……。」
 リナは、『真紅眼の血塊竜』の召喚描写だけで、身の毛がよだつ様な感覚に襲われた……。



「っっ……」
 節分は、『真紅眼の血塊竜』の姿を見て、歯を食いしばり……

「後ろのお前だったのか!『血まみれの女』ってのは!」
 ……ラケシスに対していきり立つように話した。

「『血まみれの女』?何それ。」
「お前……知らなかったのか!?結構有名だぜ!この『スーパージェネックス』に、スターチップを大量に奪い取っている奴らが紛れ込んでるって噂がな!」
「紛れ込んでる?……どっかで聞いた事がある様な無い様な無い様なある様な……」
 リナは、自分の記憶の中をひっくり返し、何かを思い出そうとしていた……。





















「つまり……だ。俺様達は、他の奴にばれねえように遠距離から参加者とデュエリスト狩りを見極め、参加者のみをねらう……って訳だ。」

(第二十八話より)





















「……そう言えば、青森って奴がそんな事言ってた様な……。」
 リナは、思い出した事を小さな声で話した。

「何……お前、青森とデュエルしたのか!?」
「ううん。してないよ。部下っぽい奴とデュエルしただけだよ。……青森って、そんな有名な奴だったの?」
 驚く節分に対し、リナは軽く質問した。

「ああ……。おれ達3年生世代の中では、相当な実力を持つ男なんだよ!……1年前辺りから、少々不調になっているみたいだがな……。」
「ふ〜ん……。1年前に、青森に何があったのかな……。」
 リナは、頭の上に疑問符が浮かんでいるかの様な表情で話した。

「お前……何年生だよ。」
「1年生だよ。」
「って、先輩を呼び捨てにしてるのかよ!……タメ口とはな……やっぱりガ」
「ガキで悪かったわね!」
 節分の言葉の続きを読み取ったリナは、怒りながら話した。

「……話を戻すぜ。おれはな……この大会を荒らすデュエリスト狩りをしょっ引いてやろうと思ってんだよ。」
 節分は、まるで正義を盾にしている様な態度で話した。

「ふ〜ん……。大会の乱入者がスターチップを奪ってるから、捕まえる……。……でもそれって、理由になんないんじゃない?」
 そんな節分に対し、リナはきょとんとした表情で話した。

「……どう言う事だ?」
「……だってさ、デュエリスト狩りったって、ちゃんとデュエルに勝ってスターチップを稼いでる訳だよね。失格になっちゃうのは、実力不足だっただけなんだし。」
 リナは、もっともな事を節分に指摘した。

「おい……デュエリスト狩りとまともにデュエルして、勝てると思ってんのか!?」
「うん。……だって、ちゃんとデュエリスト狩りに勝って、スターチップを手に入れた人を知ってんだもん。」
 リナは、まるで自分の事の様に自信満々に答えた。

「……なるほどな。もっともな意見じゃねえか。おれもこのデュエルに勝てば代表入りが決定するから、その後の事はどうでもいい……って訳か。ガキにしては、邪気まみれの考え方だな!」
「だから、ガキじゃないって!」
 リナは、ガキと言う言葉に再び怒りの感情を顕わにした……。











「それより……嫌だなあ……。攻撃したら、絶対にまた気持ち悪い事になっちゃうよ……。」
 『真紅眼の血塊竜』で攻撃する事を、リナはためらっていたが……

「……バトルフェイズだ。『真紅眼の血塊竜』で『不死武士』に攻撃しろ。」
「や……やっぱ攻撃しなきゃダメ?」
「……。」
「……分かったよ……。『真紅眼の血塊竜』で『不死武士』に攻撃!」
 リナが、『不死武士』を人差し指で指さしながら、『真紅眼の血塊竜』に向かって攻撃命令を行うと……

「え!?な、何!?」
 突然『真紅眼の血塊竜』が、リナの伸ばした右手に噛み付いてきた!

「ちょ、ちょっと!何であたしの腕に噛み付いて来んのよ!相手が間違ってんでしょ!」
 リナは、『真紅眼の血塊竜』を振りほどこうと、左手で『真紅眼の血塊竜』を叩き付けようとしたが……実体が無いソリッドビジョンの『真紅眼の血塊竜』に触れられるはずも無く、左手は虚しく空を掻く事となった……。

「……『真紅眼の血塊竜』は、攻撃時に主人(あるじの血を食らう必要がある……。」
「血?……あんまり恐い事言わないでよ……。ライフポイントの事でしょ……。」
 リナは、ラケシスの言葉に対し、身震いしながら話し掛けた。

リナLP 14500→13800

 『真紅眼の血塊竜』は、『不死武士』の体を鋭い牙で噛み砕き……原型が残らないほどにしてしまった……!

「ぐあっ!」(節分LP 4000→3600)

「ううっ……。あんな状態になっちゃったら、もう絶対に生き返んないよ……。」
 リナは、『不死武士』の無残な骸を、直視する事ができなかった……。

「そして……戦闘によって破壊したモンスターのレベル、攻撃力、守備力を、自らの能力に加える……。」
「げっ……そうなの?」
 リナは、不気味にうごめく『真紅眼の血塊竜』の背中も、直視できなかった……。

真紅眼の血塊竜 攻撃力2400→3600
        守備力2000→2400
        レベル7→10

「これで、ターンエンドだ。」
「ラケシス……あんな気持ち悪い光景を見て、何とも思わないの……?」
 リナは、ラケシスのあまりに淡々とした話し方に、身震いしていた……。

「ターンエン……」
「エンドフェイズに、永続罠『底なし流砂』を発動するぜぇ!」
 リナのターンエンドを宣言した時に、場に巨大なアリ地獄みたいな物が発生した!

「え!?何が起こってんの!?」
「『底なし流砂』の効果が発動するぜぇ!砕け散れ!『真紅眼の血塊竜』!」
 リナが驚いている間に、『真紅眼の血塊竜』は、流砂に巻き込まれる事で肉体が砕け……流砂に、濁った血をぶちまけた!


底なし流砂
永続罠
相手ターン終了時、全フィールド上で一番攻撃力が高い表側表示モンスターを破壊する。
自分のスタンバイフェイズ時、自分の手札が4枚以下だった場合、
このカードは破壊される。


「ううっ……ヤバいなあ……。今日は夜ご飯食べらんないかも……。」
 リナは、あまりに気持ち悪い光景に、少し青ざめてしまった……。
 ……その間に、『真紅眼の血塊竜』は、砕けた体でリナの左足首の辺りに這いずってきて……リナの足首に噛み付いた!

「ひっ!……な……何でまた?」
 『真紅眼の血塊竜』(ソリッドビジョンだが)に噛み付かれたリナは、思わず声を上げてしまった。

「……『真紅眼の血塊竜』は破壊される時、主人の血を食らい、破壊を無効にする……。」
「強制的に?」
「……。」
 リナの問い掛けに対し、ラケシスは黙ってうなずいた。


真紅眼の血塊竜(レッドアイズ・ブラッディドラゴン
闇 レベル7
【ドラゴン族・効果】
このカードは、このカードのレベル×100ポイントのライフを払わなければ攻撃できない。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、このカードが戦闘によって
破壊したモンスターのレベル・攻撃力・守備力分だけ、
このカードのレベル・攻撃力・守備力がアップする。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードが破壊される時、
このカードのレベル×100のライフポイントを支払い、破壊を無効にする。
攻撃力2400 守備力2000


リナLP 13800→12800

「破壊耐性だとぉ!だがなぁ……『底なし流砂』は永続罠だぜぇ!お前のライフが尽きるまで、何度でも『真紅眼の血塊竜』を破壊し続けるぜぇ!おれのターン、ドロー!スタンバイフェイズに、『不死武士』が蘇るぜぇ!」
 破壊されたはずの『不死武士』は、再び立ち上がり、守備体勢を取り始めた!

「うげっ……あんな状態で、蘇っちゃったよ……。」
 リナは、『不死武士』の復活描写に、気分を悪くしていた……。

「これでおれは、ターンエンドだぁ!」
「あれっ?……それだけなの?」
「あぁ……。『底なし流砂』は、おれのスタンバイフェイズ時に手札が4枚以上ねえと、維持できねぇからな……。」
「ふ〜ん。……やっぱ、コスト無しでモンスターを破壊するんだから、何かリスクが無いとおかしいよね。」
 リナは、軽く話した。


現在の状況
リナ LP…12800
   手札…2枚
   場…真紅眼の血塊竜(レベル10・攻撃力3600・攻撃表示)
     魂吸収(表側表示)
     闇次元の解放(表側表示)

節分 LP…3600
   手札…4枚
   場…不死武士(守備力400・守備表示)
     底なし流砂(表側表示)


「あたし……じゃなくて、ラケシスのターンだね。ドロー!」
 リナは、ドローしたカードを軽く確認した。

「(……通常召喚できるモンスターが無いなあ……。どうすればいいんだろ……。)」
 リナは、指示を求めるかの様にラケシスの方を見た。

「……今ドローしたカードを伏せ、ターンエンドだ。」
「このカードだね。カードを1枚場に伏せ、ターンエン……」
「このタイミングで、『底なし流砂』の効果が発動するぜぇ!砕けろぉ!『真紅眼の血塊竜』!」
 『真紅眼の血塊竜』は、流砂に巻き込まれて、左足が引き千切れてしまったが……リナの足首に噛み付いてライフを奪い取り、千切れた左足を再生させた!

「うげっ……足が千切れちゃってるなんて、気持ち悪すぎるよ……。」
 リナは、『真紅眼の血塊竜』がさらにボロボロになってしまった事を、不気味がっていた……。

リナLP 12800→11800

「おれのターン、ドロー!……魔法カード『フォース』を発動するぜぇ!『真紅眼の血塊竜』の攻撃力の半分を、『不死武士』に吸収させるぜぇ!」
 『不死武士』は、持っていた刀を掲げ……『真紅眼の血塊竜』の力を自らの刀にまとわせた!


フォース
通常魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスター2体を選択して発動する。
エンドフェイズ時まで、選択したモンスター1体の攻撃力を半分にし、
その数値分もう1体のモンスターの攻撃力をアップする。


不死武士 攻撃力1200→3000
真紅眼の血塊竜 攻撃力3600→1800

「攻撃だぁ!『不死武士』!『真紅眼の血塊竜』の背中に刀をぶっ刺せ!」
 『不死武士』は、『真紅眼の血塊竜』の背中に向かって刀で切り掛かると……右の翼が削ぎ落とされ、右翼があった部分から、噴水の様に、濁った血が吹き出した!

「ひっ!!」(リナLP 11800→10600)
 リナは、必死なサイドステップで、『真紅眼の血塊竜』から噴出した血(ソリッドビジョンだが)を浴びない様にしていた。
 しかし、『真紅眼の血塊竜』は、リナが着地した瞬間に足首に噛み付き……自らの右翼を再生させた!

リナLP 10600→9600

「ううっ……本当にリアルすぎるよ……。本物だったら、絶対全身血まみれになっちゃうよ……。」
 そう言いながらリナは、『真紅眼の血塊竜』の口元をチラッと見て……

「……それだけじゃ、すまないかも……。」
 ……一言、そう呟いた。

「これでおれは、ターンエンドだぁ!」


現在の状況
リナ LP…9600
   手札…2枚
   場…真紅眼の血塊竜(レベル10・攻撃力3600・攻撃表示)
     魂吸収(表側表示)
     闇次元の解放(表側表示)
     伏せカード1枚

節分 LP…3600
   手札…4枚
   場…不死武士(攻撃力1200・攻撃表示)
     底なし流砂(表側表示)


「じゃっ……次はラケシスのターンだね……。ドロー!」
 リナは、手札を軽く確認したが、通常召喚可能なモンスターが存在しない事を残念に思っていた……。

「(嫌だなあ……。攻撃したら、また『不死武士』がぐっちゃぐっちゃになっちゃうよ……。)」
 『真紅眼の血塊竜』の攻撃描写を見たくないリナは、バトルフェイズに入る事をためらっていたが……

「……バトルフェイズだ。『真紅眼の血塊竜』で『不死武士』に攻撃しろ。」
「ううっ……。人の気も知らないで……。」
 リナは、ラケシスの方を見ながら(=『真紅眼の血塊竜』から目を逸らしながら)、嫌々攻撃宣言をした……。
 当然、攻撃宣言を受けた『真紅眼の血塊竜』は(ソリッドビジョンだが)リナの右腕に噛み付き……その後の戦闘によって、肉が潰れる様な気持ち悪い音は止め様が無かったため、リナは自然に耳をふさいでいた……。

リナLP 9600→8600

「ぐあっ!」(節分LP 3600→1200)

真紅眼の血塊竜 攻撃力3600→4800
        守備力2400→2800
        レベル10→13

「これで、ターンエン……」
「エンドフェイズに、『底なし流砂』の効果が発動するぜぇ!砕け散れ!『真紅眼の血塊竜』!」
 『真紅眼の血塊竜』は、流砂に巻き込まれて右足を引き千切られ……再び、(ソリッドビジョンだが)リナの足首に噛み付いた!

「ううっ……この復活描写は、何度見ても慣れないよ……。」
 リナは、小さくそう呟いた。

リナLP 8600→7300

「おれのターン、ドロー!スタンバイフェイズに、『不死武士』が蘇るぜぇ!」
 先程の『真紅眼の血塊竜』の攻撃によって、潰れた肉塊と化したはずの『不死武士』が……まるでゾンビの様に蘇った!

「ううっ……何であんな状態で生き返んの……?本当に『不死武士』って、こんな状態になってまで戦いたいのかな……?」
 リナは、戦場に縛られる『不死武士』の様子を、気持ち悪がりながらも可哀想に思っていた……。

「メインフェイズに入るぜぇ!手札から、速攻魔法『魔法効果の矢』を発動だぁ!『魂吸収』を破壊し、500ポイントのダメージを与えるぜぇ!」
「きゃっ!」(リナLP 7300→6800)
 節分の発動したカードによって発射された矢によって、リナの場の『魂吸収』がパリンと割れ、その破片によってリナのライフが削られた!


魔法効果の矢 
速攻魔法
相手フィールド上に表側表示で存在する魔法カードを全て破壊する。
破壊した魔法カード1枚につき、相手ライフに500ポイントダメージを与える。


「あ〜あ……。これじゃあ、ライフを回復できないよ……。」
 リナは、残念そうに呟いた。 

「これで、ターンエンドだぁ!」


リナ LP…6800
   手札…3枚
   場…真紅眼の血塊竜(レベル13・攻撃力4800・攻撃表示)
     闇次元の解放(表側表示)
     伏せカード1枚

節分 LP…1200
   手札…4枚
   場…不死武士(守備力400・守備表示)
     底なし流砂(表側表示)


「次はラケシスのターンだね。ドロー!」
 ドローしたカードを確認したリナは、少し表情を和らげた……。

「(『ゴブリンゾンビ』……か。このカードを召喚すれば、デュエルを終わらせる事ができるよね……。)……『ゴブリンゾンビ』を、攻撃表示で召喚するかんね!」
 リナは、早くデュエルを終わらせたい一心で、ラケシスの助言を聞かずに召喚を行った。

「……あっ……ラケシス。これで良かった?」
「……。」
 リナの問い掛けに対し、ラケシスは黙ってうなずいた。

「じゃあ……バトルフェイズに入るかんね!『ゴブリンゾンビ』で、『不死武士』に攻撃!」
 『ゴブリンゾンビ』は、持っていた剣で、守備表示の『不死武士』の体を真っ二つに切り裂いた!

「これであたしの勝ちだよ!『真紅眼の血塊竜』で、節分にダイレクトアタック!」
 『真紅眼の血塊竜』は、(ソリッドビジョンだが)リナの右手首に噛み付き……節分に向かって突撃したが……

リナLP 6800→5500

「『ネクロ・ガードナー』の存在を忘れちゃいけねぁなあ!『ネクロ・ガードナー』を墓地から除外し、攻撃は無効だ!」
 ……墓地から、『ネクロ・ガードナー』のシルエットが立ちはだかり、『真紅眼の血塊竜』の侵攻を防いだ!


ネクロ・ガードナー
闇 レベル3
【戦士族・効果】
自分の墓地に存在するこのカードをゲームから除外して発動する。
相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする。
攻撃力600 守備力1300


「ううっ……忘れてたよ……。でも、次のターンになれば、何とかなりそうだよね……。ターンエンド!」
 そう言った瞬間に、流砂に巻き込まれて『真紅眼の血塊竜』の左翼が千切れ……その足を再生させるために、(ソリッドビジョンだが)リナの左足首に噛み付いた!

リナLP 5500→4200

「……ええっ!?15000くらいライフがあったはずなのに……もうほとんど無くなっちゃったよ……。」
 リナは、ライフが想像以上に無くなっている事に、思わず目を丸くしてしまった……。

「……『真紅眼の血塊竜』って、燃費悪いね。ラケシス。」
「……相手が悪かっただけだ。普通は、ここまで何度も『真紅眼の血塊竜』が傷つくことは無い。」
「……そうかな?……『底なし流砂』の効果って、意外と凄かったんだね。」
 リナは、『底なし流砂』の効果が意外と強い事に、目を丸くしていた……。

「おれのターン、ドロー!スタンバイフェイズに、『不死武士』が守備表示で蘇るぜぇ!」
 『ゴブリンゾンビ』に胴体輪切りにされた『不死武士』は、手で上半身と下半身を合体させ……再び立ち上がった!

「うげっ……『不死武士』って、本当に不死身なの……?」
 リナは、胴体輪切りになっても蘇った『不死武士』を、完全に気持ち悪がっていた……。

「メインフェイズに、永続魔法『暗黒の扉』を発動するぜぇ!この効果で、お互いは1ターンに1体のモンスターでしか攻撃できねぇぜ!」
「つまり……何度でも復活する『不死武士』を何とかしないと、攻撃が通せないんだね……。でも、これで『不死武士』がこれ以上気持ち悪い事にならないから、良かったのかも……。」
 リナは、『不死武士』を攻撃しなくていい理由ができた事に、少し安心していた……。


暗黒の扉
永続魔法
お互いのプレイヤーはバトルフェイズにモンスター1体でしか攻撃する事ができない。


「これでおれは、ターンエンドだぁ!」


リナ LP…4200
   手札…3枚
   場…真紅眼の血塊竜(レベル13・攻撃力4800・攻撃表示)
     ゴブリンゾンビ(攻撃力1100・攻撃表示)
     闇次元の解放(表側表示)
     伏せカード1枚

節分 LP…1200
   手札…4枚
   場…不死武士(守備力400・守備表示)
     暗黒の扉(表側表示)
     底なし流砂(表側表示)


「あた……しじゃなくて、ラケシスのターンだね。ドロー!」
 リナが、ドローしたカードを確認した瞬間に、ラケシスは……

「……今引いたカードを伏せ、『ゴブリンゾンビ』を守備表示に変更し、ターンエンドだ。」
「あっ……ラケシス。さっきの事、やっぱ怒ってる?」
「……いや。」
 ラケシスは、小さくそう言った。

「……カードを1枚場に伏せて、『ゴブリンゾンビ』を守備表示に変更するね。ターンエン……」
「エンドフェイズ時に『底なし流砂』の効果が発動するぜぇ!」
 次は、『真紅眼の血塊竜』の頭部の左側が砕け散り……再び、リナの足首に噛み付いた!

「うげっ……もう『真紅眼の血塊竜』の体に砕ける場所なんて残ってないよ……。」
 さらにボロボロになった『真紅眼の血塊竜』の様子を見て、リナは少し青ざめてしまっていた……。

リナLP 4200→2900

「おれのターン、ドロー!『不死武士』を攻撃表示に変更するぜぇ!」
 『真紅眼の血塊竜』に匹敵する程にボロボロになってしまった『不死武士』は、ゾンビの様によろめきながら立ち上がった……。

「え!?……そんな事したら、次のあたしのターンで、あたしが勝っちゃうよ?」
「……攻撃だ!『不死武士』で、『ゴブリンゾンビ』に攻撃!」
 『不死武士』は、持っていた刀を闇雲に振り回し……『ゴブリンゾンビ』の体を切り裂いた!

「『ゴブリンゾンビ』の効果が発動するかんね!デッキから、守備力1200以下のアンデット族……何を加えればいいの?ラケシス。」
「……『酒呑童子』だ。」
「『酒呑童子』だね。」
 リナは、ラケシスに言われたカードを探し出し、ついでに残ったデッキの内容を確認していた……。

「……何してんだ?もう手札に加えるカードは分かってんだろ!?」
「ちょっと待ってよ!今ラケシスのデッキに何が残ってんのか見てんだから!」
 デッキ確認を邪魔されたリナは、少し怒っていた……。

「(……ヤバいなあ……。『サイクロン』も『大嵐』も残ってないよ……。これじゃあ、『底なし流砂』を破壊できないじゃん……。)」
 リナは、この残りデッキで勝てるのか、今更ながら不安に感じていた……。

「カードを1枚場に伏せ、ターンエンドだぁ!」


リナ LP…2900
   手札…4枚
   場…真紅眼の血塊竜(レベル13・攻撃力4800・攻撃表示)
     闇次元の解放(表側表示)
     伏せカード2枚

節分 LP…1200
   手札…4枚
   場…不死武士(守備力400・守備表示)
     暗黒の扉(表側表示)
     底なし流砂(表側表示)
     伏せカード1枚


「次はラケシスのターンだね。ドロー!」
 リナは、デッキからカードを1枚ドローし……

「この攻撃が通ればあたしの勝ちだよ!『真紅眼の血塊竜』で、『不死武士』に攻撃!」
 攻撃宣言を受けた『真紅眼の血塊竜』は、リナの右手首に噛み付いた後、『不死武士』の体を、気持ち悪い音を立てながらボロボロに砕け散らせてしまった……。
 リナは、目も耳も防いでいたため、その無残な光景を見ずにすんだ……。

リナLP 2900→1600

「はあ〜……やっと終わったか……な……?」
 リナが恐る恐る目を開くと……信じられない光景が映っていた……。

節分LP 1200

「え!?な、何でライフが減ってないの!?」
「ダメージ計算時に、伏せ罠カード……『スピリット・フォース』を発動したんだぜぇ!この効果で、おれがその戦闘によって受けるダメージは、0になったぜぇ!」
 驚くリナに対し、節分は自信満々に話した。


スピリット・フォース
通常罠
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる。
その後、自分の墓地に存在する守備力1500以下の
戦士族チューナー1体を手札に加える事ができる。


真紅眼の血塊竜 攻撃力4800→6000
        守備力2800→3200
        レベル13→16

「『真紅眼の血塊竜』のレベルは16……エンドフェイズに、お前は『底なし流砂』の効果で『真紅眼の血塊竜』を破壊され、その破壊を免れるために、ライフを強制的に1600ポイント払うんだろ!おれの勝ちだ!!」
「え……あんたの勝ち……?って事は……」
 リナは、今更ながら危機感に襲われた……。
 ――このデュエルに負けてしまっては、本戦出場の最後の一枠を奪われてしまう事に気付いたからだ……。

「(ヤバい……。ここで何が何でも勝たないと……あいつに最後の一枠を取られて、あたしが本戦に参加できなくなっちゃう……!)」
 リナは、デュエルを代わりに引き受けた時は、ラケシスの代わりにカードを動かしてあげれれば、勝敗は関係無いと思っていた……。
 しかし、勝敗が自分の本戦出場にかかっていると知った時には、もはや自分の事で頭が一杯になり、ラケシスの意見を尊重するより、何としても勝利を得たいと言う考えが頭の中を支配した……。











「……ターンエン……」
「あ〜も〜……ちょっと黙っててよ!ラケシス!今どうやったら勝てんのか考えてんだから!」
 ラケシスの、勝負を諦めたかの様な発言に対し……リナは思わず大声を上げてしまった……。

「メインフェイズ2に入るかんね!伏せておいた速攻魔法『異次元からの埋葬』を発動!この効果で、除外された『ネクロフェイス』、『馬頭鬼』、『ゴブリンゾンビ』を墓地に戻すよ!」
 リナは、『ネクロフェイス』のイラストを見ない様に気を付けながら、墓地に3枚のカードを戻した。

「それから……手札から『酒呑童子』を召喚して、効果を発動するよ!墓地のアンデット族モンスター2体……『ネクロフェイス』と『ダブルコストン』を除外して、カードを1枚ドロー!」
 場に現れた『酒呑童子』は、持っていたひょうたんに『ネクロフェイス』と『ダブルコストン』の魂を封入し……リナに1枚の手札を与えた!
 すると、当然『ネクロフェイス』から発生した触手がリナと節分のデッキに絡み付いたが……リナは、目を瞑ってその光景を見ない様にしていた……。

リナのデッキ枚数 15枚→14枚→9枚
節分のデッキ枚数 19枚→14枚

「まだだよ!墓地の『馬頭鬼』を除外して……初めのターンで破壊された、墓地の『酒呑童子』を特殊召喚するかんね!」
 『馬頭鬼』は、墓場の中にいた『酒呑童子』の体に憑依し……地面の中から、2体目の『酒呑童子』が蘇った!
 今までの無残な蘇生を行っていた『不死武士』や『真紅眼の血塊竜』とは違い、生前の状態を保った様子で完全に蘇っていた……。


馬頭鬼
地 レベル4
【アンデット族・効果】
墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、
自分の墓地からアンデット族モンスター1体を特殊召喚する。
攻撃力1700 守備力800


「はあ〜、よかった……。『酒呑童子』までボロボロになっちゃってたら、きっと耐えられなかったよ……。」
 完全な姿で蘇った『酒呑童子』の様子を見たリナは、思わず安堵のため息をはいていた……。

「……っと、2体目の『酒呑童子』の効果を発動するかんね!除外されたアンデット族……『ネクロフェイス』を、デッキの上に戻すよ!」
 リナは、『ネクロフェイス』のイラストを見ない様に、デッキの上に『ネクロフェイス』のカードを戻した。

リナのデッキ枚数 9枚→10枚

「それから……魔法カード『闇の誘惑』を発動するかんね!…………2枚ドローして『ネクロフェイス』を除外!」
 リナは、少し黙った後……勢いよくカードを2枚ドローした直後に、『ネクロフェイス』を見ない様に右から2番目のカードを除外したが……

リナのデッキ枚数 10枚→8枚→3枚
節分のデッキ枚数 14枚→9枚

「……ひっ!な、何で手札に『ネクロフェイス』が残ってんの!?」
 『ネクロフェイス』を除外したはずなのに、手札の1番右に、二度と見たくない『ネクロフェイス』のカードが存在した事を、思わず口走ってしまった……。



「……うるせいよ!ガキみてぇに手札に来たカードでいちいちわぁわぁ言いやがって!……単に『ネクロフェイス』を2枚引いただけだろうが!」
「あ、そっか……。……一言余計だけどね。」
 節分に諭されたリナは、落ち着きを取り戻しだが……NGワードとも言える余計な一言は、しっかりと耳が捕らえていた……。

「(予定とは違ったけど……あたしの手札は6枚……。何とかなるよね……。)手札の『ネクロフェイス』を捨てて、装備魔法『D・D・R』を発動するかんね!この効果で、除外された『酒呑童子』を帰還させるよ!」
 リナが、見たくない『ネクロフェイス』を捨てて、別の『ネクロフェイス』の触手によって異次元へと消えた、3体目の『酒呑童子』が場へと舞い戻った!


D・D・R
装備魔法
手札を1枚捨てる。ゲームから除外されている自分のモンスター1体を選択して
攻撃表示でフィールド上に特殊召喚し、このカードを装備する。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。


「それから……あたしは、もう1枚の『異次元からの埋葬』を伏せといたんだよ!この効果で、除外された『ネクロフェイス』、『馬頭鬼』、『ダブルコストン』を墓地に戻すかんね!」
 リナは、2枚目の『異次元からの埋葬』を発動させ……除外された3枚のカードを墓地に戻した。

「3体目の『酒呑童子』の効果発動!墓地の2体の『ネクロフェイス』を除外して、カードを1枚ドローするよ!それから……2体の『ネクロフェイス』の効果で、デッキのカードが10枚除外されるね……。」
 リナがドローした瞬間に、リナと節分のデッキに、今までの触手の量の2倍近くの触手が絡み付き……2人の残りデッキをすべて異次元へと引きずり込んでしまった!

リナのデッキ枚数 3枚→2枚→0枚
節分のデッキ枚数 9枚→4枚→0枚

「何!お前……いったい何回同じ『ネクロフェイス』を除外してんだよ!……だが、『底なし流砂』の破壊効果は、おれがドローできずに敗北する前に発生するぜ!このままならおれの勝ちなんだよ!」
「げっ……。そ……そうだったっけ……。」
 節分の指摘に対し、リナは小さな声で答えた……。

「でも、ど〜せ負けるなら、今ドローしたこのカードを使って、『不死武士』の体を治してあげた方がいいかな……?……ライフポイントを1500払って……手札から、装備魔法『自律行動ユニット』を発動!」
 リナがそう言うと……突然、節分の場の『不死武士』の骸に不思議な機械が付着して……その骸が、激しく輝きだした!

「この効果で……あんたの墓地の『不死武士』を、あたしの場に蘇らせるかんね!」
「何ぃぃぃぃ!『不死武士』……だとぉぉぉぉ!!」
 リナの思わぬ一言に、節分は思わず驚いた……。
 その間に、『不死武士』の骸に付いた傷がみるみる消え去っていき……生気を取り戻した体で、リナの場に立ち上がった!


自律行動ユニット
装備魔法
1500ライフポイントを払う。
相手の墓地からモンスターを1体選択して攻撃表示で自分フィールド上に
特殊召喚し、このカードを装備する。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、装備モンスターを破壊する。


リナLP 1600→100

「よかった……。自分の効果で蘇った訳じゃないから、ちゃんとボロボロじゃ無い見た目で蘇ったね……。」
 リナは、今まで不気味な姿で場に蹂躙していた『不死武士』の体についていた全身の傷が消えている事に、少し安心していた

「だが……これでお前のライフは100だぜ!エンドフェイズに、『真紅眼の血塊竜』によってライフを強制的に支払い、おれが勝つ事実は変わらな……」
「違う……。破壊される際に、主人(あるじの血を食らい破壊を無効にする『真紅眼の血塊竜』は、血を捧げる事ができない程に主人が血を失っている場合は、破壊される……。」
 節分の言葉に対し、ラケシスはほとんど声のトーンを変えずに話した……。

「あっ……そうだったんだ。」
「だが……。残された血と支払うべき血が同じ場合は、すべての血を捧げ、敗北する事になる……。」
 あまりに偶然勝利が転がってきた事を知ったリナは、思わずキョトンとしていたが……ラケシスは、破壊されてしまう『真紅眼の血塊竜』の姿を、その赤い瞳でいとおしそうにに見ていた……。

「これであたしはターンエンド……。ライフポイントが払えないから……『真紅眼の血塊竜』は、もう蘇らないんだよ……。」
 リナの言葉と共に、地を這う『真紅眼の血塊竜』は、少しづつ……静かに流砂に飲み込まれていった……。
 しかし……流砂に飲まれていく『真紅眼の血塊竜』は、墓地に行く際に、何故か満足げな表情をしていた……。


「くっ……おれのターンだが、ドローできねぇ……。おれの負けか……。」
 節分は、1枚も残っていないデッキを見て、そう残念そうに呟いた……。











「さっ、約束だよ。スターチップをちゃんとラケシスに渡してよね。」
「ちっ……おれの実力不足は否定できねえ……。」
 節分は、残念そうにスターチップをリナの手元に渡した。

節分 スターチップ5個→0個(失格)

「はっきり言うぜ……!おれは『血まみれの女』に負けたんじゃねえ!お前に負けたんだ!」
「そっかな……。あたしが強かったんじゃないよ。ラケシスがデッキを使ったら、もっとすごくなったと思うよ。」
「……ガキのくせに、おれを過小評価してんのか?」
「だから、ガキじゃない!」
 リナは、走り去る節分を追いかけようとしたが、ラケシスを解放する事を思い出し、追いかけるのを止めた……。



「……ゴメンね……ラケシス……。最後の方なんか、ラケシスの事完全に無視しちゃってたよ……。」
 リナは、デュエルの終わりにラケシスの意向を無視してしまった事を、今更ながら後悔していた……。

「…………。」
 ラケシスは、リナの様子を、赤色の瞳でじっと見つめていた……。

「それと……スターチップを10個集めたからって、ドームに帰っちゃダメだよ。……あたし達だったから見逃したんだけど、ドームに帰ったら本当に捕まっちゃうよ……。」
「……すでに捕まっている様に見えるが……」
「大丈夫だよ。すぐ解放してあげるかんね……」
 そう言いながら、ラケシスを縛っていたロープを解こうとしたが……

「…………!」
 ラケシスの傷の位置を見直したリナの頭の中に、、『真紅眼の血塊竜』の効果発動描写がかすめていった……。

「(……もしかして……この娘……『レッドアイズ』のせいで、怪我してるのかな……?)」
 リナは、あまりにリアルすぎる『真紅眼の血塊竜』の効果発動描写によって、頭の中にある仮説が浮かんだ……。

「(……ソリッドビジョンで傷つくなんて、普通はありえないんだけど……何かに噛み付かれた様な傷なんて……『レッドアイズ』に噛み付かれてついた傷としか思えないよ……。それに……『レッドアイズ』で払うライフポイントを『血』って表現するなんて……。)」
 『真紅眼の血塊竜』と、ラケシスの傷の関係についての想像が、リナの頭の中に染み付いて離れなくなってしまった……。



「…………。」
 リナは、ラケシスにバレない様に、黙ってラケシスのデッキから『真紅眼の血塊竜』のカードを抜き取り……

「……はい。怪我が治るまで、デュエルしちゃダメだよ。」
 ラケシスを拘束していたロープを解き、デッキとデュエルディスクとスターチップをラケシスに返した。


「…………。」
 ラケシスは、『真紅眼の血塊竜』を取られた事に気付いていないのか、何も言わずにデッキとデュエルディスクとスターチップを受け取り、歩き去って行った……。





















「……大丈夫かな……。『レッドアイズ』無くなってる事がバレちゃったら、絶対真っ先に怪しまれちゃうよ……。」
 リナは、ラケシスが後ろを向いた後、逃げる様に走り去って行った……。




次回予告

カムイ「リナ……。いくらなんでも、カードを盗むのはマズいんじゃ無いんスか?」
センリ「そうだな……カムイ。……だが、そのカードを使っていた娘について、お前はどう思うんだ?」
カムイ「どう……って、何か可哀らしい印象があるんスよね……。それより、話で出てきた『青森』って3年生は、いったい何者なんスかね……。」
センリ「さあなあ……。実力者な事ぐらいしか情報がないからな……。」



次回、『GX plus!』第三十九話!

『鋼鉄の襲撃者!本戦出場者は俺様よぉぉぉぉ!!』
カムイ「鋼鉄……。機械族使いは、あまりこの星海校で見かけなかったッスね……。」




第三十九話 鋼鉄の襲撃者!本戦出場者は俺様よぉぉぉぉ!!

「3……2……1…………0!やったね!これでやっとデュエルできるね!」
 リナは、ルールの拘束から解放された喜びから、思わず飛び上がってしまった……。

「でも……節部は、あの娘(ラケシス)以外にもデュエリスト狩りがいる……って言ってたんだよな〜。……って事は、まだ残ってるデュエリストは、本当に強いんだろ〜な〜。」
 そう軽く話しながら、まだ残っているデュエリストを探す事にした……。











「……よぅ、また会ったな。」
 リナの後ろから、人を見下した様な(リナの背はかなり低いため、物理的にも見下ろしているのだが)声が聞こえてきた……。

「あっ。青森じゃん。まだスターチップ持ってんの?」
 リナは、赤いシャツと黒いチョッキを着、白色のズボンをはいた背の高い男……青森に話し掛けた。

「ほう……。テメエもスターチップを持ってやがんだな。……ガキにしては、よく生き残った物だぜ。」
「ガキって……余計なお世話だよ!」
 リナは、青森の一言に腹を立てながら答えた。

「まあいい……。おい、俺様とデュエルしな!」
 青森は、リナを指差しながらそう言い……



「俺様には……絶対に負けられねぇ理由があるんだよ!」
 ……さらに、その一言も追加した。

「そんな事言って……あたしに手加減してもらいたいの!?そんな事できる訳無いじゃん!」
「当然だ!俺様は、手を抜く奴なんざ、デュエリストと認めねぇ!……全力で来な!テメエの全力をねじ伏せ、俺様はさらなる高みをねらってやる!」
 青森は、そう言いながらデュエルディスクを構えた……。

「……ふ〜ん……。あんたって、意外とストイックだね。」
 リナは、小さくそう呟き……

「いいよ。あたしだって、あと1回勝てば本戦に出場できるんだし。」
「……言うじゃねぇか。だが、俺様に易々と勝てると思うな!」
 リナと青森は、お互いにデュエルディスクを構えた……!











「「デュエル!」」
 先行は、青森だった。

「俺様のターン、ドロー!」
 青森は、軽くカードをドローした。

「まずはこいつで遊んでやる!『ダーク・グレファー』!」
 青森の場に、全身がどす黒い、筋骨隆々な戦士が現れた。

「『ダーク・グレファー』のモンスター効果を使わせてもらうぜ!手札から、闇属性の『ダークシー・レスキュー』を捨て……デッキから、闇属性の『リボルバー・ドラゴン』を墓地に送ってやる!」
 『ダーク・グレファー』は、デッキと手札から発生した2枚のカードのソリッドビジョンを、持っていた剣で貫き……2枚のカードを墓地へと送った!


ダーク・グレファー
闇 レベル4
【戦士族・効果】
このカードは手札からレベル5以上の闇属性モンスター1体を捨てて、
手札から特殊召喚する事ができる。
1ターンに1度、手札から闇属性モンスター1体を捨てる事で
自分のデッキから闇属性モンスター1体を選択して墓地へ送る。
攻撃力1700 守備力1600


「カードを4枚場に伏せ……テメエの番だぜ。」
「え!?全部伏せちゃうんだ……。あたしのターン、ドロー!」
 リナがドローした瞬間に、青森は……

「さぁて……このタイミングで、ちょっとしたギャンブルを楽しませてもらうぜ!伏せ罠カード『ギャンブル』を発動!」
 青森は、余裕な表情で伏せたカードを軽く発動させた。

「『ギャンブル』は、俺様の手札が2枚以下、テメエの手札が6枚以上の時に発動可能なカードだぜ!俺様がコイントスを当てた場合、手札が5枚になる様にカードをドローし……外した場合は、次の俺様のターンをスキップするんだぜ!」
「ふ〜ん……。危険すぎるギャンブルなのは分かんだけど、何でそんなに発動条件が厳しいんだろうね。相手の手札が6枚なんて……本当にこの瞬間くらいでしか使えないじゃん。」
 リナは、ありえない程に厳しい『ギャンブル』の発動条件に、目を丸くしていた……。


ギャンブル
通常罠
相手の手札が6枚以上、自分の手札が2枚以下の時に発動可能。
コイントスで裏表を当てる。当たりは自分の手札が5枚になるようにドローする。
ハズレは次の自分のターンをスキップする。


「俺様は……『裏』を選択するぜ。」
 青森がそう言うと、場にコインのソリッドビジョンが現れ……そのコインが、コイ〜〜ンと高くトスされた!











 そして……そのコインは、表を向いて地面に転がっていた……。

「やったね!これでもう1度あたしのターンが来るんだね!」
「ああ……。だが、ここはもう1枚の伏せカードを発動させてもらうぜ!伏せ罠カード『ギャンブル』を発動だ!」
「え!?2枚目?」
 リナは、青森の追加の『ギャンブル』に対し、目を丸くしていた……。

「俺様は『裏』を選択するぜ。」
「裏?……外せ!外せ〜!」
 リナは、コイ〜〜〜ンと弾かれたコインのソリッドビジョンに向かって、外してくれる様に祈った。











 しかし……そのコインは、裏を向けて地面に転がり落ちていった……。

「当たったぜ!俺様の手札が5枚になる様にドローさせてもらうぜ!」
「ううっ……5枚も引かれちゃったよ……。あいつの使えるカードは……6、7、8枚かあ……。」
 リナは、青森の得たアドバンテージの量を、羨ましそうに見ていた……。

「でも……あたしも1ターンもらえたんだから、何とかなるかな……?」
 そう言いながらリナは、自分を自身つけ……

「……手札から、魔法カード『闇の誘惑』を発動するかんね!カードを2枚ドローして……手札の『見習い魔術師』をゲームから除外するよ!」
 リナは、カードを2枚ドローして、手札の闇属性モンスター……『見習い魔術師』をゲームから除外した。


闇の誘惑
通常魔法
自分のデッキからカードを2枚ドローし、
その後手札から闇属性モンスター1体をゲームから除外する。
手札に闇属性モンスターがない場合、手札を全て墓地へ送る。


「それから……手札から『ピクシーナイト』を召喚するよ!」
 リナの場に、小さな妖精みたいな魔女が現れた。

「カードを2枚場に伏せて、ターンエンド!」


現在の状況
青森 LP…4000
   手札…5枚
   場…ダーク・グレファー(攻撃力1700・攻撃表示)
     伏せカード2枚

リナ LP…4000
   手札…3枚
   場…ピクシーナイト(攻撃力1300・攻撃表示)
     伏せカード2枚


「…………。」
「…………。」
 リナのターンエンド宣言後、リナと青森の間に妙な静寂が流れた……。

「どうした?テメエのターンだぜ!」
「あっ……そうだっけ。あたしのターン、ドロー!」
 リナは、『ギャンブル』のデメリットを少し失念していたのか、ハッとしながらカードをドローした。

「……手札から、永続魔法『魔法族の結界』を発動するよ!」
 そう言うと、リナの周りに、不思議な魔導文字が刻まれたリングが発生した。

「『魔法族の結界』……。魔法使いを殺して手札を補充するカードって訳かよ。……犠牲によって成り立つ勝利を、俺様は否定はしねえがな。」
「ちょっと!殺すとか犠牲とか……もっと他の言い方があるじゃん!」
「ほう、どんな言い方があるってんだ?」
「げっ……。ちょっと、そこまでは考えてなかったかな……。」
 リナは、青森の思わぬ一言に、口籠もってしまった……。

「と……とりあえず……永続罠『闇次元の解放』を発動するかんね!戻ってきて!『見習い魔術師』!」
 そう言うと、リナの場に、異次元へと繋がる不思議な穴が現れ……その穴の中から、金髪の小柄な魔術師が出現した!


闇次元の解放
永続罠
ゲームから除外されている自分の闇属性モンスター1体を選択し、
自分フィールド上に特殊召喚する。
このカードがフィールド上から離れた時、
そのモンスターを破壊してゲームから除外する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。


「『見習い魔術師』が特殊召喚されたから、効果が発動するかんね!魔力カウンターを1個、『魔法族の結界』に乗せるよ!」
 『見習い魔術師』は、杖を1回振るい、リナの周りに1枚のカードの幻影を発生させた!


見習い魔術師
闇 レベル2
【魔法使い族・効果】
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、
フィールド上に表側表示で存在する魔力カウンターを
置く事ができるカード1枚に魔力カウンターを1つ置く。
このカードが戦闘によって破壊された場合、
自分のデッキからレベル2以下の魔法使い族モンスター1体を
自分フィールド上にセットする事ができる。
攻撃力400 守備力800

魔法族の結界
通常魔法
フィールド上に存在する魔法使い族モンスターが破壊される度に、
このカードに魔力カウンターを1つ置く(最大4つまで)。
自分フィールド上に表側表示で存在する魔法使い族モンスター1体と
このカードを墓地へ送る事で、このカードに乗っている
魔力カウンターの数だけ自分のデッキからカードをドローする。


「それから……やっとこの娘を召喚するタイミングが来たね。……手札から『黒魔導師クラン』を攻撃表示で召喚するかんね〜。」
 自分のデッキの中の、好きなカードを使えるタイミングが来たとたんにリナは、話し方が一気に幼児化した。

「バトルフェイズに入るよ〜。『ピクシーナイト』で、『ダーク・グレファー』に攻げ〜き!」
 『ピクシーナイト』は、『ダーク・グレファー』に向かって果敢に攻撃を加えようとした!

「攻撃力の勝る『ダーク・グレファー』に攻撃だと?……自滅させてまで手札が欲しいって訳かよ。」
「違うよ。伏せ罠カード『スキル・サクセサー』を発動するかんね〜。この効果で、あたしの『ピクシーナイト』の攻撃力を400ポイント上がるんだ〜。」
 リナが軽く語ると……『ピクシーナイト』の周りに、一重の赤いオーラが発生し……『ダーク・グレファー』の心臓部に魔力をぶつけた!
 それに対し、『ダーク・グレファー』は、持っていた剣で、『ピクシーナイト』をまるで飛んでいる虫を斬るかの様に攻撃し、2体のモンスターは共に相打ちした……。


スキル・サクセサー
通常罠
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
このターンのエンドフェイズ時まで、
選択したモンスターの攻撃力は400ポイントアップする。
また、墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体の
攻撃力はこのターンのエンドフェイズ時まで800ポイントアップする。
この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動する事ができず、
自分のターンのみ発動する事ができる。


「『ピクシーナイト』が破壊されちゃったんだけど……これで、『魔法族の結界』に魔力カウンターが1個乗るよ。それから、『ピクシーナイト』の効果で、墓地の魔法カードを1枚相手に選ばせて、選んだカードがあたしのデッキの1番上に戻るんだよ。」
「なるほどな。……テメエの墓地には、『闇の誘惑』以外の魔法カードはねぇんだろ。さっさと戻しな。」
 青森は、忌々しそうに話した。


ピクシーナイト
光 レベル2
【魔法使い族・効果】
このカードが戦闘によって墓地に送られた時、
自分の墓地の魔法カード1枚を相手が選択し、
そのカードを自分のデッキの一番上に置く。
攻撃力1300 守備力200


「……でも、これで青森の場にモンスターはいなくなったから……クランちゃんで、青森にダイレクトアタ〜ック!」
 『黒魔導師クラン』は、持っているピンク色のムチを振るい、青森に攻撃を加えようとしたが……

「ちょっと待ちな!永続罠『メタル・リフレクト・スライム』を発動してやるぜ!」
 青森の場に、銀色の巨大なスライムが現れ、リナのモンスターの前に立ちはだかった!

「『メタル・リフレクト・スライム』?守備力は…………さ、3000?ちょっと高くない!?」
 リナは、『メタル・リフレクト・スライム』の守備力の高さに、思わず目を丸くしてしまった……。


メタル・リフレクト・スライム
永続罠
このカードは発動後モンスターカード(水族・水・星10・攻0/守3000)となり、
自分のモンスターカードゾーンに守備表示で特殊召喚する。
このカードは攻撃する事ができない。(このカードは罠カードとしても扱う)


「安心しな。『メタル・リフレクト・スライム』は、モンスターであり、永続罠でもある。つまり、破壊方法は幾らでもあんだよ。……言っちまえば、見かけ倒しの脆い壁って訳なんだよ。」
「ふ〜ん。……でも、今のあたしの手札じゃ、そんな脆い壁にも対抗できないよ……。」
 リナは、残念そうに呟いた。

「……メインフェイズ2に入るかんね!あたしの場の『闇次元の解放』を墓地に送って……魔法カード『マジック・プランター』を発動するよ!『闇次元の解放』が場から離れちゃったから、『見習い魔術師』は破壊されて除外されちゃうんだけど……これで『魔法族の結界』に、魔力カウンターがもう1個乗るんだ。」
 『見習い魔術師』は、異次元に帰る前に、再び杖を振るい……リナの周りに、3枚目のカードの幻影を発生させた!

「『魔法族の結界』に魔力カウンターを乗せてから、『マジック・プランター』の効果が解決するよ。カードを2枚ドローするかんね〜。」
 リナは、軽くカードを2枚ドローした。


マジック・プランター
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する
永続罠カード1枚を墓地へ送って発動する。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。


「『マジック・プランター』……。このカードの発動コストで『闇次元の解放』を墓地に送り、『見習い魔術師』をわざと殺した……って訳かよ。」
「殺したんじゃ無いよ!ただ、場から別の場所に行っただけだよ!」
「けっ!破壊しておいて、何抜かしてやがる!……どうせ手札補充の為に、テメエの前にいるガキも犠牲にするんだろ。」
「うるさい!あんただって、自分のモンスターを好き放題墓地に送ってるくせに!」
 リナは、自分の事を棚に上げた様な青森の発言に対し、怒りの感情を顕にしていた……。

「でも……あたしのデッキのモンスター達は、どこからでもあたしの場に来てくれるんだよ!ちょっとの間、クランちゃんを墓地に送って……『魔法族の結界』の効果を発動するかんね!デッキから、カードを3枚ドロー!」
 リナは、自分の場の『黒魔導師クラン』を墓地に送って、カードを3枚ドローした。

「それから……カードを2枚場に伏せて、ターンエンドね。」


現在の状況
青森 LP…4000
   手札…5枚
   場…メタル・リフレクト・スライム(守備力3000・守備表示)
     伏せカード1枚

リナ LP…4000
   手札…5枚
   場…伏せカード2枚


「俺様のターン、ドロー!『メタル・リフレクト・スライム』をリリースし、こいつを呼ばせてもらうぜ!『ブローバック・ドラゴン』!」
 青森の場に現れた巨大なスライムが姿を消し……新たに、頭部が拳銃の様になった機械竜が出現した!

「『ブローバック・ドラゴン』のモンスター効果だ!テメエの場の、右側の伏せカードに対し、破壊か破壊じゃねえかのギャンブルを楽しませてもらうぜ!」
 青森がそう言うと、リナの場に存在する1枚の伏せカードが、レーザーポインターによって狙われた!

「え……?何にもリスクが無いんだ……。そんなの、ギャンブルじゃ無いじゃん……。」
 リナは、『ブローバック・ドラゴン』の、ギャンブルと言う名のローリスクハイリターンな効果に、目をぱちくりするしかなかった……。


ブローバック・ドラゴン
闇 レベル6
【機械族・効果】
コイントスを3回行う。その内2回以上が表だった場合、
相手フィールド上に存在するカード1枚を選択して破壊する。
この効果は1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに使用する事ができる。
攻撃力2300 守備力1200


「……もしかしたら破壊されちゃうかもしれないから……伏せ罠カード『和睦の使者』を発動するかんね!」
 リナが、狙われたカードを表にすると……リナの周りに、不思議なオーラが現れた!


和睦の使者
通常罠
このカードを発動したターン、相手モンスターから受ける
全ての戦闘ダメージは0になる。
このターン自分モンスターは戦闘によっては破壊されない。


「ちっ……チェーンされちまったか。……形式上、コイントスをさせてもらうぜ。」
 青森がそう言いながら、3枚のコインをトスすると……











コイントスの結果……裏・裏・表

「外れたが、関係ねぇな。」
 『ブローバック・ドラゴン』は、銃口から半透明の赤いBB弾みたいな弾丸を3発発射し……その内の1発だけが、『和睦の使者』のカードに直撃した。



「……イクラかな?」
 リナの目には、『ブローバック・ドラゴン』の放った弾丸の色や形がイクラみたいに見えてしまっていた……。

「……イクラなんざ発射するわけねぇだろ。」
 リナのあまりに素っ頓狂な一言に、青森は呆れて物も言えなかった……。



「『和睦の使者』の効果で、攻撃する意味すらねぇ……。ターンエンドだ!」

「あたしのターン、ドロー!」
 ドローしたカードを確認したリナは、軽く笑みを浮かべた……。

「……やっとこのカードを引いたから、今すぐに使わせてもらうよ。これがあたしのデッキの力を引き出すフィールド魔法……『魔導学園(マジカル・アカデミー』だよ!」
 自分のデッキのキーカードを引いたリナは、嬉しそうにすぐ発動させた。
 すると、辺りが突然薄暗くなって……リナと青森の周りが、洋風なレンガ造りの建物で囲まれた、中央に澄んだ水をたたえる噴水があり、多くの薄明かりを浮かべる街灯と、緑色の葉をした木が植えられた公園みたいな空間に変化した!

「あたしの場にレベル2以下の魔法使い族が召喚・反転召喚・特殊召喚されたら、『魔導学園(マジカル・アカデミー』にマジカルカウンターが1個乗るんだよ。それから〜、そのマジカルカウンター1個につき、場のレベル2以下の魔法使い族は、攻撃力を100ポイントアップするんだよ。」
 リナは、自分の発動させた『魔導学園(マジカル・アカデミー』の効果を軽く語った。

「永続罠『エンジェル・リフト』を発動するかんね〜。この効果で、クランちゃんを特殊召喚するよ〜。」
 リナがそう言うと、リナの墓地に2体の天使が下りてきて……『黒魔導師クラン』の体を優しく持ち上げ、場に送った!


エンジェル・リフト
永続罠
自分の墓地に存在するレベル2以下のモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターがフィールド上から離れた時このカードを破壊する。


「あたしの場にクランちゃんが召喚されたから、『魔導学園(マジカル・アカデミー』にマジカルカウンターが1個乗ったよ〜。これで、クランちゃんの攻撃力が、100ポイントアップするんだ〜。」
 リナの言葉に合わせて街灯の1つが淡く光り輝き……その光が、リナの場の『黒魔導師クラン』に力を与えた!


魔導学園(マジカル・アカデミー
フィールド魔法
レベル2以下の魔法使い族モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、
このカードにマジカルカウンターを1つ乗せる。
自分フィールド上のレベル2以下の魔法使い族モンスターの攻撃力は、
このカードに乗っているマジカルカウンターの数×100ポイントアップする。
このカードのコントローラーは、「フィールド上のカードを破壊する効果」を持つ
魔法・罠・効果モンスターの効果が発動した時、
このカードに乗っているマジカルカウンターを2つ取り除く事でその発動を無効にし破壊する。
自分フィールド・墓地にレベル2以下の魔法使い族以外のモンスターが存在するとき、
このカードを破壊する。


魔導学園(マジカル・アカデミーに乗ったマジカルカウンター 0個→1個
黒魔導師クラン 攻撃力1200→1300

「それから〜、『マジカルフィシアリスト』を攻撃表示で召喚するかんね〜。召喚に成功した『マジカルフィシアリスト』には、魔力カウンターが1個乗って〜、『魔導学園(マジカル・アカデミー)』には、マジカルカウンターが1個乗るんだよ〜。これで、クランちゃんと『マジカルフィシアリスト』の攻撃力は、200ポイントアップするんだ〜。」
 すると、2つ目の街灯が淡く点灯して……2体のモンスターにさらなる力を与えた!

魔導学園(マジカル・アカデミーに乗ったマジカルカウンター 1個→2個
黒魔導師クラン 攻撃力1300→1400
マジカルフィシアリスト 攻撃力800→1000

「その2体は……出臼に止めを刺したモンスターだな。」
 青森は、朝に観戦したデュエルの事を思い出し、軽く呟いた。

「それから〜、カードを3枚場に伏せて……このカードを発動するね。永続魔法『弱者の意地』!」
 リナは、手札を0枚にしつつ、1枚の永続魔法を発動させた。

「『弱者の意地』だと?……テメエのモンスターはほぼレベル2以下だから、手軽に効果を使えるって訳かよ。」
「そうだよ。羨ましいでしょ。」
 リナは、軽く話した。

「だが……『ブローバック・ドラゴン』の攻撃力を越えなければ、その効果も宝の持ち腐れだ!越えれる物なら越えてみな!」
「大丈夫だよ。すぐに越えてみせるかんね〜。まずは、『マジカルフィシアリスト』の効果で、クランちゃんの攻撃力を500ポイントアップさせるよ〜。」
 『マジカルフィシアリスト』は、機械仕掛けの両手から魔力を発生させ……『黒魔導師クラン』の攻撃力をさらに高めた!


マジカルフィシアリスト
光 レベル2
【魔法使い族・チューナー】
このカードが召喚に成功した時、
このカードに魔力カウンターを1つ置く(最大1つまで)。
このカードに乗っている魔力カウンターを1つ取り除く事で、
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体の攻撃力を、
エンドフェイズ時まで500ポイントアップする。
攻撃力800 守備力400


黒魔導師クラン 攻撃力1400→1900

「それから〜……前のターンに墓地に送られた『スキル・サクセサー』を除外して、効果を発動するかんね〜。この効果で、クランちゃんの攻撃力を800ポイントアップさせるよ〜。」
 リナがそう言うと、『黒魔導師クラン』の周りに不思議な二重のオーラが発生し……さらに攻撃力を高めた!

黒魔導師クラン 攻撃力1900→2700

「攻撃力2700だと?」
「いっくよ〜!クランちゃんで、『ブローバック・ドラゴン』に攻げ〜き!」
 『黒魔導師クラン』は、持っていたピンク色のムチを激しく振るい、青森の場の『ブローバック・ドラゴン』を打ち倒した!

「ちっ……まさか破壊しやがるとはな……。」(青森LP 4000→3600)
 青森は、小さく呟いた。

「レベル2のクランちゃんが『ブローバック・ドラゴン』を戦闘破壊したから〜、『弱者の意地』の効果が発動するかんね〜。カードを2枚ドローするよ〜。」
 リナは、嬉しそうにカードを2枚ドローした。


弱者の意地
永続魔法
自分の手札が0枚の場合、自分フィールド上に存在する
レベル2以下のモンスターが戦闘によって
相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、
自分のデッキからカードを2枚ドローする。


「ちっ……。俺様のモンスターを破壊した上に、カードを2枚ドローだと……?ガキのくせに、小賢しい真似をしやがって……。」
 青森は、忌々しそうに、リナと『黒魔導師クラン』の姿を見ていた。

「それから〜、『マジカルフィシアリスト』で、青森にダイレクトアタ〜ック!」
 『マジカルフィシアリスト』は、攻撃力1000となった機械仕掛けの両手から魔力を放ち……青森のライフを軽く削った。

「ちっ……。」(青森LP 3000→2000)

「これであたしのターンは終了ね〜。」


現在の状況
青森 LP…2000
   手札…5枚
   場…伏せカード1枚

リナ LP…4000
   手札…2枚
   場…黒魔導師クラン(攻撃力1400・攻撃表示)
     マジカルフィシアリスト(攻撃力1000・攻撃表示)
     弱者の意地(表側表示)
     エンジェル・リフト(黒魔導師クランを対象)
     魔導学園(マジカル・アカデミー(マジカルカウンター×2・表側表示)
     伏せカード3枚


「俺様のターン、ドロー!手札から、『ダーク・グレファー』を召喚するぜ!」
 青森の場に、再び筋骨隆々な戦士が現れた。

「『ダーク・グレファー』のモンスター効果だ!手札の『ダークシー・レスキュー』を墓地に送り、デッキから『融合呪印生物−闇』を墓地に送らせてもらうぜ!」
 『ダーク・グレファー』は、再び剣を振るい、青森のデッキのカードを墓地へと送り込んだ!

「またモンスターを墓地に送っちゃうの?そんな事したら、手札の方が先に無くなっちゃうのに。」
「安心しな……!手札は、このカードで取り返すぜ!手札から、魔法カード『悪夢再び』を発動!この効果で、墓地に存在する守備力0のモンスター2体……『ダークシー・レスキュー』を手札に戻すぜ!」
 青森は、そう言いながら、墓地から2枚のカードを取り出し、自分の手札に加えた。


悪夢再び
通常魔法
自分の墓地に存在する守備力0の闇属性モンスター2体を選択し手札に加える。


「ふ〜ん。なるほどね。……あたしも、クランちゃんを回収するために、『悪夢再び』を入れてみよっかな……?」
 リナは、左手で右腕の肘を持ち、自分の口元に右手の人差し指を当てた。

「……でも、『悪夢再び』でクランちゃんを回収するのって、何となくイメージが湧かないんだよな〜……。『悪夢再び』を使われたのって、センリが『ゾンビ・マスター』を回収する時くらいだけだったし……。」
 そして、『悪夢再び』の採用を考えてみたが、名前からのイメージで、どうしようかと悩んでいた……。

「見せてやるぜ……!究極の融合魔法をよぉ!手札から……魔法カード『オーバーロード・フュージョン』を発動だ!!」
 青森が、そう言いながら『オーバーロード・フュージョン』のカードをデュエルディスクに差し込むと……突然、青森の墓地から激しい光が放たれた!

「墓地の『リボルバー・ドラゴン』と『ブローバック・ドラゴン』を融合し――」
 青森の場に、虹色の不思議な霧の様な渦が現れ……その渦の中で、拳銃の頭部をした機械龍と、リボルバーの頭部と腕を持った機械龍が融合し……











「――覚悟しな!このモンスターで、テメエのモンスターを全滅させてやるぜぇ!『ガトリング・ドラゴン』!!」
 その渦の中から、頭部と腕がガトリング砲になった機械龍が、爆音を立てながら姿を現した!


オーバーロード・フュージョン
通常魔法
自分フィールド上または墓地から、
融合モンスターカードによって決められたモンスターをゲームから除外し、
闇属性・機械族の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。
(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)


「げっ……、また何か変な形のドラゴンが出てきちゃったよ……。」
「さぁて……ここは、『ガトリング・ドラゴン』のちょっとしたギャンブルを楽しませてもらうぜ!ロシアン・ルーレット!」
 『ガトリング・ドラゴン』は、両腕と頭部のガトリング砲を、金属が擦れ合う様な嫌な音を立てながら回し始めた!

「じゃ、じゃあ……『魔導学園(マジカル・アカデミー』の効果を発動するよ!このカードに乗ってるマジカルカウンターを2個取り除いて、『ガトリング・ドラゴン』の破壊効果を無効にするかんね!」
 リナは、『ガトリング・ドラゴン』の破壊効果を無効にしようと、効果の発動を宣言したが……その効果を、無効にする事はできなかった……。

「え!?な、何で発動できないの!?」
「……ガキが。『ガトリング・ドラゴン』の破壊効果は、確実じゃねぇ。テメエの使うその系統の効果は、確実に破壊を行う効果にしか使えねぇんだよ。」
「そ……そうだったんだ……。……一言余計だけどね。」
 リナは、青森の言葉に対し、細い腕を組みながら答えた。
 その間に、ガトリング砲の回転は、ガチャンと言う鈍い音を立てながら止まった……。











「3つのガトリング砲が的中!これにより、3つのガトリング砲が火を吹くぜ!消えな!ガトリング・キャノン・ショット!!」
 青森がそう言うと……『ガトリング・ドラゴン』の頭部と腕のガトリングが火を吹き……赤色の弾丸が、冷徹に『黒魔導師クラン』、『マジカルフィシアリスト』、『ダーク・グレファー』の命を奪い去っていった!


ガトリング・ドラゴン
闇 レベル8
【機械族・融合・効果】
コイントスを3回行う。表が出た数だけ、フィールド上のモンスターを破壊する。
この効果は1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに使用する事ができる。
攻撃力2600 守備力1200











「げっ……。自分のモンスターまで巻き込んじゃってるよ……。何か可哀想に思えてきちゃった……。」
 リナは、焦土となった場を見て、残念そうに呟いた……。



「さらに……初めのターンに伏せた魔法カード……『鳳凰神の羽根』を発動させてもらうぜ!手札を1枚捨て、墓地の『オーバーロード・フュージョン』を……」
 青森が、墓地のカードに手を掛けようとした瞬間に、リナは……

「ちょ、ちょっと待って!……あたしも、伏せ罠カード『墓荒らし』を発動するかんね!この効果で、あんたの墓地から『オーバーロード・フュージョン』をちょっとの間もらうよ!」
 そう言った瞬間に、墓を荒らす小さな悪魔が、青森の墓地に手を伸ばし……『オーバーロード・フュージョン』のカードを奪い取り、リナに渡した!


墓荒らし
通常罠
相手の墓地にある魔法カード1枚を選択し、
ターン終了時まで自分の手札として使用する事ができる。
その魔法カードを使用した場合、2000ポイントのダメージを受ける。


「ちっ……手癖の悪いガキだ!カードを2枚伏せ……返してもらうぜ!手札から、魔法カード『エクスチェンジ』を発動!」
「え゛……そこで『エクスチェンジ』が来ちゃうの……?」
 リナは、青森が発動させたカードに、少し戸惑っていた……。

「俺様の手札は1枚だが……テメエの手札は3枚だったな。『オーバーロード・フュージョン』以外に用はねぇが……さぁ、手札を見せな!」
「ううっ……何か手札を見られるのって、いい気分はしないなあ〜……。」
 リナは、嫌々自分の手札を青森に見せた。

「…………『オーバーロード・フュージョン』を渡しな!!」
 青森は、リナの手札を確認し、『オーバーロード・フュージョン』のカードを取り返した。

「でも……あたしも、あんたの手札から1枚カードをもらえるんだよ!」
「そうだな……。渡してやるぜ!」
 青森は、残っていた1枚の手札を、リナに押しつける様に渡した。


エクスチェンジ
通常魔法
お互いに手札を公開し、それぞれ相手のカードを1枚選択する。
選択したカードを自分の手札に加え、そのデュエル中使用する事ができる。
(墓地へ送られる場合は元々の持ち主の墓地へ送られる)


「そう言えば……あんたが『墓荒らし』で取り返したカードを使ったら、あたしが2000ダメージを受けちゃうから……青森が『オーバーロード・フュージョン』を使ったら、あたしが2000ダメージを受けちゃう……って事?」
「違うな……。『墓荒らし』の効果で奪った魔法カードが、持ち主の手札に戻った場合、誓約は消え去るんだよ。……ダメージを受けてぇなら勝手に受けてな。」
 青森は、腕を組みながら、『墓荒らし』と『エクスチェンジ』の関係について語った。











「(……何に使うのかな……?このカード……。)」
 リナは、青森に押しつけられたカード……『ダークシー・レスキュー』の使い道がさっぱり分からなかった……。


ダークシー・レスキュー
闇 レベル1
【機械族・効果】
このカードがシンクロモンスターの
シンクロ召喚に使用され墓地へ送られた場合、
自分はデッキからカードを1枚ドローする。
攻撃力0 守備力0


「テメエのデッキには、『死のデッキ破壊ウイルス』が効きそうに無ぇからなぁ……。……馬鹿は風邪をひかねぇって訳だな。」
「びぃ〜〜っだ!ど〜せあたしはバカですよ〜〜っだ!」
 青森の言葉に対してリナは、半ばやけっぱちになった様に舌を出しながら話した。

「……その言葉、朝にも聞いたぜ。語彙の足らねぇガキだ。」
「ガキじゃない!……大体、そんな事覚えてんのは、あんたぐらいだよ!」
 リナは、再び青森の言葉に怒りの感情を顕にしていた……。

「けっ!どうだかねぇ……。テメエの周りにも、十数日近く前の会話を覚えてやがる奴がいるんじゃねぇのか?」
「え?……そんなの……あたしが知ってるわけ無いじゃん……。」
 青森の思わぬ一言に、リナは目を丸くしてしまった……。

「……デュエルに戻るぜ。俺様の手札に『オーバーロード・フュージョン』が加わったが……ここは温存させてもらうぜ。バトルだ!『ガトリング・ドラゴン』!あのガキを蜂の巣にしろ!ガトリング・キャノン!!」
 『ガトリング・ドラゴン』の頭や腕と同化したガトリング砲が火を吹き……無数の赤い弾丸が、リナに向かって飛んでいったが……

「伏せ罠カード……『ドレインシールド』を発動するかんね!この効果で、『ガトリング・ドラゴン』の攻撃を無効にして、その攻撃力分のライフを回復するよ!」
 リナの前に、円弧型の不思議なバリアが現れ……そのバリアが、放たれた弾丸を受け止め、リナのライフへと変換した!


ドレインシールド
通常罠
相手モンスター1体の攻撃を無効にし、
そのモンスターの攻撃力分の数値だけ自分のライフポイントを回復する。


リナLP 4000→6600

「……ちっちゃいイクラだな〜。何個撃ってんだろ。」
「……イクラじゃねぇよ。」
 リナの素っ頓狂な一言に対し、青森は冷静に反応した。

「『ドレインシールド』……このターンじゃあ、ケリは付けられなかった訳かよ。」
 青森は、腕を組みながら話した。

「……テメエのターンだぜ!」
「分かった。あたしのターン、ドロー!」
 リナは、軽く1枚のカードをドローした。

「(あのガキは、『弱者の意地』の効果を発動させるために、『ピクシーナイト』によってデッキに戻った『闇の誘惑』を伏せていやがる……。さらに、あのガキの手札には、あのカードがあったな……。『ガトリング・ドラゴン』の排除を行うために、使ってくるだろうぜ……。)」
 青森は、先程の『エクスチェンジ』によってリナの手札を確認した際に、このターンの戦法を予想していた。

「伏せといた魔法カード『闇の誘惑』を発動するかんね!この効果で、カードを2枚ドローして……手札の『ダークシー・レスキュー』を除外するよ!」
 リナは、カードを2枚ドローした後、青森から押しつけられた不要なカードを除外した。

「あんたがイクラでギャンブルすんなら……あたしもギャンブルで行くかんね!手札から、『時の魔術師』を召喚するよ!」
 リナがそう言うと……時計みたいな体をした、小さな魔術師が現れた。

「『魔導学園(マジカル・アカデミー』に、マジカルカウンターが1個乗ってから……『時の魔術師』の効果を発動するよ!タイム・ルーレット!」
 『時の魔術師』は、杖に付いたルーレットをくるくると回し始めた!

「『時の魔術師』の効果は、ルーレットを回転させて、針が『当』に止まったら相手の場のモンスターが……『ドクロ』に止まったら、あたしの場のモンスターが全滅するんだよ!」
 リナががそう言っている間に、くるくる回っていたルーレットの針が速度を落としていき……











ピコーン!

 ルーレットの針は、見事に止まった……ドクロの所で。

「ありゃ?」
 『時の魔術師』の効果が失敗した事を目の当たりにしたリナは、思わず目を丸くしてしまった……。

「あ〜〜う〜〜〜……全然当たんないよ〜……。」
 リナは、時空の渦に飲まれていく『時の魔術師』を、恨めしそうに見ていた……。


時の魔術師
光 レベル2
【魔法使い族・効果】
1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動する事ができる。
コイントスを1回行い、裏表を当てる。
当たった場合、相手フィールド上に存在するモンスターを全て破壊する。
ハズレの場合、自分フィールド上に存在するモンスターを全て破壊し、
自分は破壊したモンスターの攻撃力を合計した数値の半分のダメージを受ける。
攻撃力500 守備力400


リナLP 6600→6350

「(だが……あのガキは、手札に『ワン・フォー・ワン』を握ってやがる……。『ものマネ幻想師』を特殊召喚すれば、『ガトリング・ドラゴン』の戦闘破壊をねらえるな……。)」
 青森は、『エクスチェンジ』によって確認したリナの手札を覚えていて、次の展開を予想していた……。

「……な〜んてね。手札から『ハリケル』を捨てて、魔法カード『ワン・フォー・ワン』を発動するかんね〜。デッキから、『ものマネ幻想師』を攻撃表示で特殊召喚するよ〜。」
 リナは、裏をかいたつもりで、悪戯っぽく舌を出しながら話したが、青森の想像通りの行動をしている事に全く気付いていなかった……。


ワン・フォー・ワン
通常魔法
手札からモンスター1体を墓地へ送って発動する。
手札またはデッキからレベル1モンスター1体を
自分フィールド上に特殊召喚する。


「(このガキ……。そのカードの存在は俺様に知られている事を忘れてやがんのか……?)」
 青森は、リナの行動についてを考えていた……。



「『ものマネ幻想師』が特殊召喚されたから、『魔導学園(マジカル・アカデミー』にマジカルカウンターが1個乗ったよ〜。それから〜、『ものマネ幻想師』の効果で、『ガトリング・ドラゴン』の攻撃力、守備力をコピーするかんね〜。」
 『ものマネ幻想師』は、持っていた手鏡で『ガトリング・ドラゴン』を映し出し……その能力を自らと同化させた!


ものマネ幻想師
光 レベル1
【魔法使い族・効果】
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、
このカードの攻撃力・守備力は、相手フィールド上に表側表示で存在する
モンスター1体の元々の攻撃力・守備力になる。
攻撃力0 守備力0


ものマネ幻想師 攻撃力0→2600
        守備力0→1200

「それから〜、『魔導学園(マジカル・アカデミー』にマジカルカウンターが4個乗ってるから〜、『ものマネ幻想師』の攻撃力が400ポイントアップするよ〜。」
 

魔導学園(マジカル・アカデミーに乗ったマジカルカウンター 3個→4個
ものマネ幻想師 攻撃力2600→3000

「カードを1枚場に伏せて〜、バトルフェイズに入るよ〜。『ものマネ幻想師』で、『ガトリング・ドラゴン』に攻げ〜き!」
 『ものマネ幻想師』は、左手から、半透明の赤い弾丸を無数に放ち……『ガトリング・ドラゴン』を一方的に破壊した!

「……まあいい。」(青森LP 2000→1600)

「今のあたしの手札は0枚だから〜、『弱者の意地』の効果で、カードを2枚ドローするかんね〜。」
 リナは、また嬉しそうにカードを2枚ドローした。

「これであたしは、ターンエンドね〜。」


現在の状況
青森 LP…1600
   手札…1枚(オーバーロード・フュージョン)
   場…伏せカード2枚

リナ LP…6350
   手札…2枚
   場…ものマネ幻想師(攻撃力3000・攻撃表示)
     弱者の意地(表側表示)
     魔導学園(マジカル・アカデミー(マジカルカウンター×4・表側表示)
     伏せカード2枚


「俺様のターン、ドロー!」
 青森は、ドローしたカードを確認し……

「前のターンに伏せた速攻魔法『異次元からの埋葬』を発動させてもらうぜ!除外ゾーンの『ブローバック・ドラゴン』、『リボルバー・ドラゴン』、『ダークシー・レスキュー』を墓地に戻すぜ……!」
 除外された3枚のカードを探し出し、墓地へと戻した。


異次元からの埋葬
速攻魔法
ゲームから除外されているモンスターカードを3枚まで選択し、
そのカードを墓地に戻す。


「え゛……もしかして、またあの変なドラゴンを出しちゃうの……?」
「さぁて……そろそろ反撃させてもらうぜ!手札から、魔法カード『オーバーロード・フュージョン』を発動だ!!」
 青森は、前のターンにリナから取り返したカードを、静かに発動させた……。

「さらに……『オーバーロード・フュージョン』にチェーンし、手札から『リボルバー・ドラゴン』捨て……伏せ罠カード『マジック・キャプチャー』を発動!!」
 青森がそう言うと、『オーバーロード・フュージョン』の周りに激しい緑色の光が発生した……。

「『マジック・キャプチャー』?どっかで見た事がある様な無い様な無い様なある様な……。」
 リナは、頭の上に『?』マークが浮かんでいるかの様な表情で、青森の発動させたカードの効果を思い出そうとしていた……。



「……物覚えの悪いガキだ。朝に、出臼が発動させた事を忘れてやがんのか?」
「ちょ、ちょっと待ってよ!あと少しで思い出せそうだったのに!」
 青森に指摘されたリナは、焦りながら反応した……。

「『マジック・キャプチャー』は……そのカードでチェーンした魔法カードが墓地に送られた時、そのカードを手札に戻すんだよね。」
「そうだぜ……。つまり、俺様の手札には、再び『オーバーロード・フュージョン』が来るって訳なんだよ。」
 青森は、腕を組みながら答えた。


マジック・キャプチャー
通常罠
自分が魔法カードを発動した時、手札を1枚捨ててチェーン発動する。
チェーン発動した魔法カードが墓地へ送られた時、そのカードを手札に戻す。


「『オーバーロード・フュージョン』の効果処理だ!墓地の『ブローバック・ドラゴン』と『リボルバー・ドラゴン』を融合し……来やがれ!『ガトリング・ドラゴン』!!」
 青森の場に、再びガトリング砲と体が同化した機械龍が現れた!

「『マジック・キャプチャー』の効果で、『オーバーロード・フュージョン』は手札に戻り……『ガトリング・ドラゴン』の効果を発動させるぜ!ロシアン・ルーレット!!」
 『ガトリング・ドラゴン』は、金属音を鳴らしながらガトリング砲を回し始め……











ガチャン、ガチャン、ガチャン。

 ガトリング砲の回転は、3回鈍い音を立てながら止まった……。

「……2つのガトリングが火を噴くぜ!『ガトリング・ドラゴン』と共に地獄に落ちな!『ものマネ幻想師』!!」
 青森がそう言うと、『ガトリング・ドラゴン』の頭部のガトリング砲が、爆音を立て弾け飛び……『ものマネ幻想師』と共に、拡散する赤い弾丸によって破壊された!



「げっ……『ガトリング・ドラゴン』って、自分で自分を破壊しちゃう効果を持ってんだ……。ギャンブルに失敗したからって、ちょっと残酷かも……。」
 リナは、頭部が弾け飛んで崩れ落ちる『ガトリング・ドラゴン』を、可哀想に思いながら見ていた……。

「……これで……テメエの場は空になったな……!」
 青森は、不気味な笑みを浮かべながら話した……。

「な……何か、嫌な予感が……。」
 リナは、青森の全身から発せられる不気味な気迫を感じ取り……思わず身構えた……。

「手札から……魔法カード『オーバーロード・フュージョン』を発動するぜ……!!」
 青森は、声色を低くし……憎しみを込めながら1枚のカードを発動させた……。

「俺様はぁぁぁぁ!この6体を融合素材とする!!」
 そう言うと、青森の墓地が激しく輝きだし……墓地から、5体の機械族モンスター……『ダークシー・レスキュー』2体、『リボルバー・ドラゴン』、『ガトリング・ドラゴン』2体が飛び出し……そのモンスター達が、『融合呪印生物−闇』を中心として、1つに交じり合っていった……。

「現れろ!究極の機械族モンスター――」











「――『キメラテック・オーバー・ドラゴン』!!!!」
 6体のモンスターが交じり合った後には……6本の首を持つ、不可思議な姿をした巨大な機械龍が降臨した!

「『キメラテック・オーバー・ドラゴン』は、素材としたモンスターの数×800ポイントの攻撃力になる!よって……『キメラテック・オーバー・ドラゴン』の攻撃力は、4800だ!」
「え゛……攻撃力……4800!?」
 リナは、突然現れた攻撃力4800の『キメラテック・オーバー・ドラゴン』に、目を丸くするしかなかった……。


キメラテック・オーバー・ドラゴン
闇 レベル9
【機械族・融合・効果】
「サイバー・ドラゴン」+機械族モンスター1体以上
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードの融合召喚に成功した時、
このカード以外の自分フィールド上のカードを全て墓地へ送る。
このカードの元々の攻撃力と守備力は、
融合素材にしたモンスターの数×800ポイントの数値になる。
このカードは融合素材にしたモンスターの数だけ
相手モンスターを攻撃する事ができる。
攻撃力? 守備力?


「食らいな!エヴォリューション・レザルト・バァーーーースト!!!!ルゥォクルゥエンダァ!!!」
 『キメラテック・オーバー・ドラゴン』は、6本の首から発射した光線を収束させ……その光線を、リナに向けて一気に放った!

「きゃあぁっ!!」(リナLP 6350→1550)
 リナは、その光線に(ソリッドビジョンだが)弾き飛ばされ、思わず背中を地面に叩きつけてしまった……。



「いっ……た〜〜……。」
 背中を強く打ち付けたリナは、痛そうに表情を歪め、両手を使って起き上がろうとしていた……。



「これが……外道融合体『キメラテック・オーバー・ドラゴン』だぜ……。テメエの実力じゃあ……外道流派(サイバー流の腰巾着共には勝てねぇよ……。」
 青森は、リナに対して、溢れる怒りをぶつけるかの様な話し方をしていた……。

「外道……流派……?何に対してそんな事言ってんの……?」
 リナは、青森の言葉の意味を、理解できなかった……。











「……本校だ。奴らは、俺様達の絆を踏み躙った……!」




次回予告

カムイ「本校……。今は、絆を踏み躙る様な真似はしないと思うんスが……過去に何があったんスかね……。」
雷人「どうなんだろうな……?……だが、デュエルアカデミアの過去の状況なら、少し聞いた事があるぜ。」
カムイ「どんな状況なんスか?」
雷人「聞いた話では……ランク至上主義で、数年前に革命……と言うか改革のために、エリート教育を進めようとした事があるらしいぜ。」



次回、『GX plus!』第四十話!

『憎しみのキメラテック』
カムイ「エリート教育……。その事と絆の崩壊に、何か関係があるんスかね……?」




第四十話 憎しみのキメラテック

「これは……3年前の話だ……。」
 青森は、自らの過去の話について話し始めた……。





















3年前……とある中学校にて……

「外道(そとみち)!やるじゃねぇか!あの狭き門と言われた、デュエルアカデミアに合格できたんだろ!」
 俺様は、同級生の友人……外道の肩をつかみながら話した。

「そうだな!……だが、青森。テメエが歓迎するとは、意外だったな。」
「何がだ?」
 外道の予想外の言葉に、俺様は少し驚いた……。

「俺様達の中学は、エレベーター式に高等学校に進学する事が可能な学校だ。って事は、俺様達のデュエル部も引き継ぎになるだろうぜ。……裏切りになる……と言えねぇか!?」
「何言ってんだ!テメエは、実力でアカデミアに入ったんだろ!?その努力を批判するなんざぁ、あり得ねぇよ!」
 俺様は、外道を激励する様に話し……

「……頑張りやがれ!外道!」
 お互いに握手をした……。





















 だが……数日後……

「でアールから、そこを何とか頼んでるのでアール!」
 ナポレオンとか言う、デュエルアカデミアの教頭らしいチビブタ野郎が、俺様の家に来やがった……!勧誘のつもりか……?

「ムッシュ青森の実力は、デュエルアカデミアでこそ発揮されるのでアール。ここで首を縦に振れば、一番待遇のいいオベリスクブルーへの推薦入学を許可するのでアール。」
 見込んでいた……だぁ?嘯きやがって!今まで俺様達の中学を鼻にも掛けなかったくせによ!外道がデュエルアカデミアに合格した事で、やっと目を付けただけだろ!
 本当に見込んでいたなら、こんな時期に来るはずが無ぇ……!



「……うるせぃよ!このブタ野郎!!自分のプライドを捨ててまで、デュエルアカデミアに入ろう何ざ思わねぇよ!!」
 俺様は、ブタ野郎を威嚇する様に話した。

「それによぉ!入口から入った外道の事を考えると、俺様が裏口から入ろうと何ざ思えねぇよ!……外道の努力を馬鹿にすんじゃねぇ!」
 さらに俺様は、テーブルに置かれた契約書を、ブタ野郎が見ている前でびりびりに引き裂いてみせた。

「ぐぬぬぅーーっ!生意気な奴でアール!我輩が下手に出ている事をいい事に!……いつか後悔させてやるのでアール!!」
 そう言いながらブタ野郎は、資料を片付けて捨て台詞を吐きながら部屋を出て行きやがった……。





















 それから数日後……俺様達のデュエル部に、悲劇が起こった……!

「よぉ。……何だ?誰もいねぇのか?」
 部室に入ると……普段5人以上いる部員が、1人もいねぇ……!いるのは、顧問だけだ……!
 おかしい……。今日は活動日だったはずだ……!

「……どうしたんだ?」
 俺様は、何か紙を見て落胆する顧問に向かって、軽く話し掛けた……。

「……実は……我がデュエル部の3年生達の大部分が、デュエルアカデミアに引き抜かれてしまった……。」
「何……だと……!まさか……!」
 俺様は、数日前に面会したブタ野郎の事を思い出した……。

「まさか……?何か知っているのか?青森君……。」
「ああ……!俺様の所にも来やがったぜ!引き抜きのブタ野郎がよ!んな下らねぇ話し何ざ蹴ってやったがよ!」
 俺様は、顧問の肩をつかみながら話した……。

「我がデュエル部の生徒を引き抜いたデュエルアカデミアに復讐がしたいが……今の戦力では、デュエルアカデミアには対抗できないだろう……。」
「そうだな……。忌々しいぜ……!下位高校は上位高校の愚行に抗議もできねぇってのはよ……!」
 俺様と顧問は、泣き寝入りしかねない程に両腕を握り締めながら話していた……。

「だが……1つだけ方法がある。……校長室に来てくれないか?」
「……ああ。」
 顧問に言われた俺様は、声を低くして答えた。











「青森君……。何人もの部員がデュエルアカデミア本校の引き抜きを受けた中、残ってくれた事を誇りに思う……。」
 校長は、残念そうに話した……。

「だが……今の我々の戦力では、本校への復讐は不可能だろう……。そこでだ。復讐方法を考えてきた……。」
 そう言いながら校長は、パソコンの画面を俺様の方に向けた……。

「これは……」
「デュエルアカデミア星海校……。デュエルアカデミアの名を持つが、海馬瀬人の管轄下に置かれていない、言わばダークホースと言える高校だ……。」
 校長は、静かに話した……。
 アカデミアにあってアカデミアにあらず……そんな高校がある何ざ、知らなかったぜ……!

「私は、その高校の校長……黒部与一とコネを結んでいる……。推薦入学も、十分に可能だろう……。……どうする?」
 なるほど……俺様に、復讐してほしいって訳か……!面白ぇ! 

「……入学するぜ……その、星海校って奴によ!そして、本校に一泡吹かせてやる!」
 俺様は、校長の誘いに乗り、大きな声で話した……。

「そうか。……では、入学資金は、我が中学から支給しよう。……頼むぞ、青森君。」
 










 その後……俺様は、外道に会った……。

「なるほどなぁ……。デュエルアカデミアへの復讐のために、星海校への編入を決意したって訳だな。」
「ああ……。テメエの努力を踏み躙る行為をした本校への……な。」
 外道(そとみち)と青森は、腕を組みながら会話していた……。

「……外道!テメエはどうする!?」
「……何がだ?」
 外道は、俺様の言葉に対して眉を潜めながら話した……。

「何が……って、俺様と一緒に星海校に入学し、本校の奴等に一泡吹かせてやらねぇか!?」
 俺様は、外道を星海校に誘ったが……。

「……待ちな、青森!……今のテメエの口にした事は……本校の上の奴等と同じ事になるぜ……!」
「そうか……!奴等と同じじゃぁ、どうにもならねぇ……。」
 その直後の外道の言葉を聞き、ハッとした様な表情になった……。

「……外道!テメエは、本校の奴等の悪意に流されんなよ!」
「……当然だ。俺様は、情けねぇ行動何ざ取り入れねぇ!己の道を貫き、本校最強の生徒になってやる!」









 俺様は……デュエルアカデミア星海校に入学した後、寮の自分の部屋でテレビを点けると……

「えー、ではこれより、プロリーグ速報をお送りいたします!」
 プロリーグ速報か……。何の情報がある……?

「ではまず、デュエルアカデミアより現れた、破竹の10連勝を成し遂げた期待の新星……カイザーこと、丸藤亮について特集したいと思います!」
「アカデミア……本校……だと?」
 俺様は、忌々しいワードを耳にし、思わず眉をしかめた。

「カイザー亮の見事な勝利、そのダイジェストをどうぞ!」



「手札から、魔法カード『パワー・ボンド』を発動!『サイバー・ドラゴン』3体を融合し、『サイバー・エンド・ドラゴン』を融合召喚!」



「あり得ねぇ……!初手から同名カードを3枚使用した融合だと!?こいつ、イカサマしてんじゃねぇのか!それか、デッキが10枚程度しかねえのか!!?」
 俺様は、テレビの両端をつかみ、怒りに任せてガタガタ揺らし始めた……。



「除外された『異次元からの宝札』の効果発動!このカードを手札に戻し、お互いはカードを2枚ドローする!」



「どんな辻褄合わせだこのインチキ野郎!そもそも除外利用のデッキじゃねぇのにんなカードを入れてる時点で、完全なご都合主義じゃねぇか!!」
 さらに俺様は、怒りに任せて激しくテレビをガタガタ揺らした……。



「装備魔法『未来融合 フューチャー・フュージョン』を発動!デッキから、3体の『サイバー・ドラゴン』を墓地に送り、『サイバー・エンド・ドラゴン』を融合召喚!」



「たった1枚のカードで、デッキ圧縮に加え、速攻で融合体を特殊召喚だぁ……?ざけんじゃねぇ!んな反則カード、さっさと制限か禁止にしやがれ!それが無理なら、せめて2ターン後に融合召喚する様にエラッタしろ!」
 青森は、テレビの両端をつかみ、テレビに向かって、額に後ができるくらいに連続で頭突きをした……。
 ……さすがにこれには、大幅なエラッタが加えられたがな。



「ライフを半分払い、手札から、魔法カード『サイバネティック・フュージョン・サポート』を発動!この効果によって、このターン、1度だけ墓地のモンスターを除外する事で、機械族融合モンスターの融合素材に利用できる!」



「何もかもムカつくんだよテメエェェェェ!!!!」
 あまりの怒りから、まともな思考も働かなくなっちまった……。



「カイザー亮、今日の試合は、見事な勝利でしたね!」
「ええ。……しかし、今回の相手はいいデュエリストでした。また手合せしたい所です。」
 丸藤亮の奴……!インチキカードを大量に使いやがって……!!ざけんなよ……!!



「こ……こんな反則男を育てた高校に、俺様達の絆を踏み躙られた…だ……と……!!」
 俺様は、あまりの落胆と悔しさに、声を震わせて、生まれて初めて涙を流しちまった……!!



「…………」
 そして、涙を拭き、少し黙り……











「ざっっけんなぁぁぁぁあぁぁぁ!!!!!!!!死ね!!!!!!!!」
 俺様は、発狂した様な声を上げて、テレビに向かって殴りかかった……。
 すると、画面に少しひびが入り、テレビの画面が乱れた……。



「ばっっきゃろぉぉぉぉおぉぉぉぉ!!!!!!!!」

バコッ!パリィィィィン!……ボンッ!ジジジジジジジジ……


 怒りに身を任せテレビに映る丸藤亮に蹴をたたき込むと……大きな音を立ててテレビの画面が砕け、粉々になった基盤から電気が溢れだしちまった……。



ジジジジジジジジ……

「ぐっ……!」
 漏電した部分を踏み付けると、感電によるショックで、我に返った……。

「……丸藤亮……。あんな他者を無視した1ターンキルの使い手がカイザーを名乗っているデュエルアカデミアが、健全な高校のはずかねぇ……!」
 俺様は、ほとんど理性を失ったかの様な様子で話した……。
 その時の表情を、割れたテレビ画面で確認すると……その表情は、何かに取りつかれた様な感じだったな……。

「見てな……本校の生徒共……!ぬるま湯に浸かって本校に入学した奴等の実力何ざ、取るに足らねぇって事を、俺様が直々に証明してやる……。」





















 それから何カ月かたった後……外道から、本校にて開催されているイベント……『ジェネックス』の情報を聞きつけた……。
 その大会には、あの丸藤亮も出場しているらしいな……。
 俺様は、物資調達の船に忍び込んで、『ジェネックス』に乱入してやる事にしたぜ……。



「衝撃増幅装置……?丸藤亮は、そんな物を使ったのか?」
『ああ……。まさしく阿鼻叫喚……この世の物とは思えねぇデュエルだったぜ……。』
 電話の向こうで外道は、声を低くして話した……。

「……外道。約束通り、俺様がアカデミアについた際には、メダルを1個くれるんだろうな……。」
『ああ……。約束だからな。じゃあ切るぞ。』

 ピッ。

 あと1時間程度でアカデミアか……。甲板で休んでいるか……。
 ……ん……?

「……おい、そこのバンダナ。」
 俺様は、オレンジ色のバンダナを巻いた女に話し掛けた。
 見る限り、中二か中三程度か。俺様とほとんど変わらねぇな。


「……お前だお前!」
「ボ、ボク!?」
 女は、俺様の言葉にビクッてしやがった。

「性別偽ってるつもりか?……バレバレなんだよ。」
「そ、そんなんじゃ無い!」
 女は、少々頬を赤らめやがった……。……可愛子ぶってるつもりか……?

「お前……何しにアカデミアに行くんだ?」
「……夢のため……。」
 女は、一言そう呟いた……。

「アカデミアに置き忘れた夢……だぁ?」
「うん……。」


「……奇遇だな。俺様も、ある出場者に様があってな。」
 俺様は、女に向かって軽く笑みを浮かべ……

「俺様はなぁ……ぶちのめしてぇ相手がいるんだよ!ジェネックスに、そいつが出場していると言う情報を聞き付けたんでなぁ!」
 女を威嚇するかの様に拳と手の平をぶつけて音を立てた。

「誰なの?その相手って……。」
「お前には関係ねぇ事だ、お節介野郎が……。」
 俺様は、女に向かって腕を組みながら話した……。

「最後に……名前だけは聞いておくぜ。名前は何だ?」
「……『早乙女 レイ』。」
「俺様は『青森 孝太郎』だ。あばよ、早乙女。」











「(早乙女……?あのナマイキな奴と同じ名字だ……。中二か中三って事は……あいつの姉かな?)」
 リナは、ナオの事を思い出し、勝手な推測を立てた。





















 俺様は、本校に到着した直後に外道と会い、参加メダルを1個だけ借り……ジェネックスで、丸藤亮を捜し回った……。
 そして……

「……見つけたぜ!丸藤亮!」
 丸藤亮を目にした俺様は、大声で呼びつけた……。

「ここで会ったが百年目!俺様とデュエルしな!」
「……命は無いぞ。」
「関係ねぇ!命が惜しくてテメエに挑めるか!」
 表情をあまり変えずに話す丸藤亮に対して、俺様は挑発する様に話した。

「フッ……面白い!俺に真っ向から挑むデュエリストは、数える程しかいなかったからな……。」
 丸藤亮は、不敵な笑みを浮かべやがった……。凶悪カードを持ってやがる事からの余裕か……!?

「ただのデュエルじゃぁ気が済まねぇ……。……衝撃増幅装置をよこしな!」
「…………?」
 丸藤亮は、俺様を厳めしそうに見やがった……。

「お前……正気か?」
「ああ……。当然、テメエにも付けてもらうがな。」
 俺様は、丸藤亮を指差しながら話した……。だが……



「……フフ…………フフフフ……」
 丸藤亮の奴……笑ってやがる……!

「何がおかしい!」
「おかしいのでは無い。このデュエルアカデミアの生徒には、少々退屈していた所だ……。だが、この大会にここまで血気盛んなデュエリストが残っていたとはな……。面白い!血のたぎりを感じるぞ!」
 丸藤亮は、そう言いながら何かを取りに行きやがった。……こんな事言うのも何だが、シュールな光景だぜ……。











10分後……

「……待たせたな。立ちはだかるデュエリストを始末するのに、少々手間取ってな……。」
 丸藤亮は、右手に何かケースを持って、俺様の下に戻ってきやがった……。
 それより、この野郎……俺様を待たせてデュエルしてやがったのか……。なめ腐りやがって……!

「御託はいい!さっさとよこせ!衝撃増幅装置をよぉ!」
「いいだろう……。受け取れ!」
 丸藤亮は、ケースの中から1つの大きなリングと2つの小さなリングを取り出し、俺様に渡しやがった……!











「「デュエル!!」」
 先攻は丸藤亮か……!さぁ……どんなインチキカードを使う……?

「俺のターン、ドロー!手札から、永続魔法『未来融合 フューチャー・フュージョン』を発動!」
 丸藤亮は、機械的に1枚のカードを発動させやがった……!少々前に、大幅なエラッタが出されたカードか……!


未来融合 フューチャー・フュージョン
永続魔法
自分のデッキから融合モンスターカードによって決められたモンスターを
墓地へ送り、融合デッキから融合モンスター1体を選択する。
発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時に選択した融合モンスターを
自分フィールド上に特殊召喚する(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。


「このカードは、発動時に融合デッキから融合モンスターを1体選択し、効果解決時に素材となるモンスターを墓地に送り……2ターン後の俺のスタンバイフェイズに、選択した融合モンスターを融合召喚する!俺が選択するモンスターは……」
 そう言いながら丸藤亮は、デッキからモンスターを1、2、3……4……5…………6……?
 この野郎……何体抜き出してやがるんだ!?

「――『キメラテック・オーバー・ドラゴン』!!」
 丸藤亮は、デッキから13枚のカードを抜き出し……その13枚を、この世の者とは思えないほど満足気な表情でばら撒きやがった!!

「さらに俺は、モンスターをセットし、ターンエンド!」
 丸藤亮は、平凡にターンを終えやがった……。裏守備モンスターを破壊してほしいのか……?

「俺様のターン、ドロー!手札から『キラー・トマト』を攻撃表示で召喚!」
 俺様の場に、ハロウィンで使うカボチャの様なくりぬきがされたトマトが現れた。

「バトルだ!行け!『キラー・トマト』!裏守備モンスターに攻撃!」
 『キラー・トマト』の体当たりは、確かに丸藤亮のモンスターに直撃したが……その攻撃は、裏守備モンスター……『融合呪印生物−光』によって弾かれちまった……!

「反射ダメージか……!」
「そうだ……!『融合呪印生物−光』の守備力は1600……。200ポイント分の衝撃を受けてもらおう!」
「くっ…………ぐ……っっ!!」(青森LP 4000→3800)
 ライフポイントの表示が200マイナスされた瞬間に、首と二の腕に付けられた衝撃増幅装置から、電撃が発生しやがった……!参ったぜ……これは想像以上だ……!

「ちっ……カードを1枚場に伏せ、ターンエンド!」
 俺様は、今は使えないカードを伏せ、ターンを終えた。

「俺のターン、ドロー!手札から『プロト・サイバー・ドラゴン』を召喚!」
 丸藤亮の場に、安物の鉄で作られた機械龍が現れやがった……。

「『プロト・サイバー・ドラゴン』は、場に存在する間『サイバー・ドラゴン』として扱われる……。……『融合呪印生物−光』の効果により、『プロト・サイバー・ドラゴン』に『融合呪印生物−光』を融合!」
 丸藤亮がそう言うと……突然『融合呪印生物−光』の外殻が割れ、その中からあふれ出たスライム上の物体が、『プロト・サイバー・ドラゴン』を取り込みやがった……!











「……光の呪印が、新たな首を紡ぎだす……!交差する閃光を見るがいい!特殊召喚!出でよ!『サイバー・ツイン・ドラゴン』!!」
 丸藤亮の言葉に合わせながら、『プロト・サイバー・ドラゴン』の安物の鉄の様な体が、まるで『サイバー・ドラゴン』の様な白銀色に姿を変え……白銀の双頭龍へと飛躍的な進化をとげやがった……!


融合呪印生物−光
光 レベル3
【岩石族・効果】
このカードを融合素材モンスター1体の代わりにする事ができる。
その際、他の融合素材モンスターは正規のものでなければならない。
フィールド上のこのカードを含む融合素材モンスターを生け贄に捧げる事で、
光属性の融合モンスター1体を特殊召喚する。
攻撃力1000 守備力1600


「バトル!『サイバー・ツイン・ドラゴン』で、『キラー・トマト』に攻撃!エヴォリューション・ツイン・バースト!!」
 『サイバー・ツイン・ドラゴン』は、2本の破壊光線を、俺様の場に攻撃表示で横たわる『キラー・トマト』に向かって放射しやがった……!!
 つまり……

「ぐっ……!がっ……っっ……ぐぁぁぁぁ………っっ…」(青森LP 3800→2400)
 何て衝撃だ……!全身の骨、筋肉……すべてが悲鳴を上げてやがる……!
 やべぇ……!……あまりに歯ぁ食い縛ってたら……口の中に血の味が染み渡ってきやがった……!

「だ……だが、『キラー・トマト』に゛は、効果がある……!デッキがら、2体目の『キラー・トマト』を、特殊召喚……!」
 ぐっ……衝撃増幅装置の電撃で、喉に傷が逝っちまったみてぇだ……!
 だが……『サイバー・ツイン・ドラゴン』の攻撃はまだ……!

「……『サイバー・ツイン・ドラゴン』は、1ターンの間に2回攻撃が可能だ!エヴォリューション・ツイン・バースト!!」
「がっ………は………っっ……!」(青森LP 2400→1000)
 電撃が発生した瞬間に、口の中から紅色の唾が出てきやがった……!


サイバー・ツイン・ドラゴン
光 レベル8
【機械族・融合・効果】
「サイバー・ドラゴン」+「サイバー・ドラゴン」
このモンスターの融合召喚は上記のカードでしか行えない。
このカードは一度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。
攻撃力2800 守備力2100


「……が……はっ………ごほっ…ごほっっ……」
 気管の方に、少し血が流れてきやがって、むせちまった……。それに、丸藤亮の目の前で、肋骨を押さえながら、立て膝をついちまった……。不様すぎるぜ……。











「……もう止めろ。お前が俺に何の恨みがあるのかは知らん。だが……これ以上続けても、お前の肉体が傷付くだけだ。」
 丸藤亮の奴……俺様を見下した様な発言をしやがった……!なめ腐りやがって……!

「ま゛……まだだ!俺様は、まだテメエに一泡も吹かせてねぇ!」
 俺様は、なめ腐りやがる丸藤亮に向かって、威嚇する様に話した……。

「『キラー・トマト』のモ゛ンスター効果だ……!デッキから『クリッター』を特殊召喚……!」
 俺様の場に、三つ目の小型モンスターが現れた。

「『クリッター』……。中々強力なカードを呼び出したな。カードを1枚伏せ、ターンエンド!」
 ……テメエが言うな。

「…………!」
 手が……震えてやがる……電撃を二の腕に受け、腕の筋肉が麻痺してやがんのか……?

「……俺様は……待ってたんだよぉ!テメエの場に『サイバー・ツイン・ドラゴン』が現れるのをなぁ!」
 丸藤亮のターンを終えた後、俺様は吐き捨てる様に話した。

「俺様のターン、ドロー!!『クリッター』を生け贄に捧げ……速攻魔法『エネミーコントローラー』を発動!テメエの『サイバー・ツイン・ドラゴン』を奪い取ってやる!さらに……『クリッター』の効果だ!デッキから、攻撃力1500以下のモンスター……『終末の騎士』を手札に加えてやる!」
 俺様が1枚のカードを発動させると、『サイバー・ツイン・ドラゴン』が俺様の場にきやがった……!こいつで、丸藤亮を……!!


エネミーコントローラー
速攻魔法
次の効果から1つを選択して発動する。
●相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体の表示形式を変更する。
●自分フィールド上に存在するモンスター1体をリリースして発動する。
このターンのエンドフェイズ時まで、相手フィールド上に表側表示で存在する
モンスター1体のコントロールを得る。

クリッター
闇 レベル3
【悪魔族・効果】
このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、
自分のデッキから攻撃力1500以下のモンスター1体を手札に加える。
攻撃力1000 守備力600

「消えろ丸藤亮ぉぉぉぉ!!!!『サイバー・ツイン・ドラゴン』で、ダイレクトアタック!!エヴォリューション・ツイン・バァーーーースト!!!!」
 『サイバー・ツイン・ドラゴン』の口から放たれた2本の光線は、確かに丸藤亮に向かって伸びていったが……突然丸藤亮の伏せカードが開き、『サイバー・ツイン・ドラゴン』が場から消えやがった!

「速攻魔法……『融合解除』を発動。このカードによって、『サイバー・ツイン・ドラゴン』を排除する……!」
 丸藤亮は、自分のモンスターを惜しげもなく排除しやがった……!
 融合召喚されていない『サイバー・ツイン・ドラゴン』の融合を解除した所で、素材を呼ばれない事は幸いだな……。


融合解除
速攻魔法
フィールド上の融合モンスター1体を融合デッキに戻す。
さらに、融合デッキに戻したこのモンスターの融合召喚に使用した
融合素材モンスター一組が自分の墓地に揃っていれば、
この一組を自分のフィールド上に特殊召喚する事ができる。


「ぐっ……!メインフェイズ2に、『終末の騎士』を召喚するぜ!」
 俺様の場に、サングラスをかけた全身黒ずくめの騎士が現れた。

「『終末の騎士』の効果だ!デッキから『融合呪印生物−闇』を墓地に送るぜ!」
 『終末の騎士』は、剣で1枚のカードを突き刺し、墓地へと送った……。

「カードを2枚場に伏せ、ターンエンド……!」


「俺のターン、ドロー!……スタンバイフェイズに、『未来融合 フューチャー・フュージョン』の効果が発動する!来い!『キメラテック・オーバー・ドラゴン』!!」
 丸藤亮の場に、圧倒的な攻撃力の『キメラテック・オーバー・ドラゴン』現れやがった……!
 だが……

「『キメラテック・オーバー・ドラゴン』は、特殊召喚時に自身以外の場のカードをすべて墓地へと送る……。『未来融合−フューチャー・フュージョン』が場から離れた事によって、『キメラテック・オーバー・ドラゴン』も破壊されるがな……。」
 一瞬で煙の様に消え去りやがった……。


キメラテック・オーバー・ドラゴン
闇 レベル9
【機械族・融合・効果】
「サイバー・ドラゴン」+機械族モンスター1体以上
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードの融合召喚に成功した時、
このカード以外の自分フィールド上のカードを全て墓地へ送る。
このカードの元々の攻撃力と守備力は、
融合素材にしたモンスターの数×800ポイントの数値になる。
このカードは融合素材にしたモンスターの数だけ
相手モンスターを攻撃する事ができる。
攻撃力? 守備力?


「だが……まだ俺のターンは終わっていない!……手札から、魔法カード『手札抹殺』を発動!お互いは手札をすべて捨て、捨てた枚数分カードをドローする!」
 俺様は2枚……丸藤亮は3枚の手札を捨て、カードをドローした。
 その時……丸藤亮は、少し躊躇っている様に見えた……!何かいいカードを捨てたのか……?

「俺は……ライフを半分支払い、速攻魔法『サイバネティック・フュージョン・サポート』を発動する!この効果によって、このターン、1度だけ墓地のモンスターを除外する事で、機械族融合モンスターの融合素材に利用できる……!」
 丸藤亮は、衝撃増幅装置から発生した電撃を受けながら、カードの効果を説明した……。


サイバネティック・フュージョン・サポート
速攻魔法
ライフポイントを半分払って発動する。
このカードの発動ターンに機械族モンスターの融合召喚を行う場合、
1度だけ融合モンスターカードによって決められたモンスターを
自分の手札・フィールド・墓地から選択してゲームから除外し、
これらを融合素材とする事ができる。

丸藤亮LP 4000→2000

「さらに……魔法カード『融合』を発動!『サイバネティック・フュージョン・サポート』の効果により、墓地の『サイバー・ドラゴン』3体を融合し……来い!!『サイバー・エンド・ドラゴン』!!」
 丸藤亮の場に、たった2枚のカード消費で攻撃力4000の三つ首機械龍が現れやがった……!

「バトルだ!『サイバー・エンド・ドラゴン』で、『終末の騎士』に攻撃!エターナル・エヴォリューション・バースト!!」
 『サイバー・エンド・ドラゴン』は、3つの頭から強烈な破壊光線を放ってきたが……

「ふ、伏せ罠カード『ドレインシールド』を発動だ!『サイバー・エンド・ドラゴン』の攻撃を無効にし、俺様のライフを4000ポイント回復!」
 『サイバー・エンド・ドラゴン』の放った攻撃は、俺様の前に出現したバリアによって、ライフポイントに変換された……。
 ――だがそれは、苦痛を負う時間が増える事だ――。


ドレインシールド
通常罠
相手モンスター1体の攻撃を無効にし、
そのモンスターの攻撃力分の数値だけ自分のライフポイントを回復する。

青森LP 1000→5000


「カードを1枚伏せ、ターンエンド!」
「手札を0枚にしやがったか……!ここでやっと、このカードが使えるぜぇ!『終末の騎士』を生け贄にし……伏せ罠カード『闇霊術−「欲」』を発動だぁ!」
 俺様がそう言うと、足元に魔方陣と『欲』の文字が現れた……!

「このカードの効果は……テメエが手札の魔法カードを見せなかった場合、俺様は2枚のカードをドローできるんだよ!テメエの手札は無ぇ……。よって、2枚ドロー!」
 俺様は、自信満々にカードを2枚ドローした。


闇霊術−「欲」
通常罠
自分フィールド上に存在する闇属性モンスター1体を生け贄に捧げて発動する。
相手は手札から魔法カード1枚を見せる事でこの効果を無効にする事ができる。
見せなかった場合、自分はデッキからカードを2枚ドローする。


「俺様のターン、ドロー!」
 ドローしたカードを確認した俺様は、軽く笑みを浮かべた……。この5枚で、丸藤亮をぶちのめせる……!

「手始めに……永続魔法『魔力倹約術』を発動だぁ!このカードにより、魔法カードのライフコストは必要なくなるぜぇ!」
 俺様は、軽くそう言い……

「テメエがあれほど見たがっていた『キメラテック・オーバー・ドラゴン』……とくと拝ませてやるぜぇ……!」
 手札から、1枚のカードを発動させた……!

「手札の『闇の誘惑』を捨て……魔法カード『二重魔法』を発動だぁ!これでテメエの墓地の『サイバネティック・フュージョン・サポート』を発動させてもらうぜぇ……!当然『魔力倹約術』によって、ライフコストは必要無くなるぜぇ!」
 俺様は、丸藤亮の墓地を確認し、一番有用なカードを発動させた……。


二重魔法
通常魔法
手札の魔法カードを1枚捨てる。
相手の墓地から魔法カードを1枚選択し、
自分のカードとして使用する。


「さらに……永続罠……『輪廻独断』を発動だぁ!!これによって……墓地のモンスターの種族は、すべて機械族になる……!」


輪廻独断
永続罠
発動時に1種類の種族を選ぶ。
このカードがフィールド上に存在する限り、
お互いの墓地に存在するモンスターを選択した種族として扱う。


「俺様の手札には、2枚目の『二重魔法』……。俺様の墓地には『融合呪印生物−闇』に加え、機械族は5体……!その意味が分かるかぁ……?」
「まさか……やめろ!お前には危険だ!」
 丸藤亮がほざいてやがる……!だが……俺様には、テメエの言葉を聞く義務は無ぇ……!











「手札の『魔力倹約術』を捨て……『二重魔法』を発動だぁ!この効果で……テメエの墓地の『パワー・ボンド』……発動ぉぉぉぉ!!!!」
 俺様は、墓地のモンスターをすべて除外し……あのモンスターの名を呼んだ……!











「――『キメラテック・オーバー・ドラゴン』!!」
 そう言うと……俺様の場に、6本の首をもった禍々しき機械龍が現れた!


「『パワー・ボンド』によって融合召喚したモンスターは、攻撃力が倍となる……!よって、攻撃力は800×6×2=9600だぁ!!!!」


パワー・ボンド
通常魔法
手札またはフィールド上から、
融合モンスターカードによって決められたモンスターを墓地へ送り、
機械族の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。
このカードによって特殊召喚したモンスターは、
元々の攻撃力分だけ攻撃力がアップする。
発動ターンのエンドフェイズ時、このカードを発動したプレイヤーは
特殊召喚したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを受ける。
(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)

キメラテック・オーバー・ドラゴン 攻撃力4800→9600

「……死に……さらせぇぇぇぇ!!!!丸藤亮ぉぉぉぉ!!!!エヴォリューション・レザルト・バーーーースト!!!!ルォクルゥェンダァァァァ!!!!!!!!」
 『キメラテック・オーバー・ドラゴン』は、6本の首から破壊光線を放射し、『サイバー・エンド・ドラゴン』を砕け散らせようとしたが……











「な……に……?」
 突然『サイバー・エンド・ドラゴン』の体が爆発し、その爆風が『キメラテック・オーバー・ドラゴン』の肉体を砕いた……!

「永続罠……『サイバネティック・ヒドゥン・テクノロジー』……。このカードにより、『サイバー・エンド・ドラゴン』を墓地へと送り、『キメラテック・オーバー・ドラゴン』を破壊する……!」


サイバネティック・ヒドゥン・テクノロジー
永続罠
相手モンスターの攻撃宣言時に、自分フィールド上に表側表示で存在する
「サイバー・ドラゴン」及び「サイバー・ドラゴン」を融合素材とする
融合モンスター1体を墓地に送る事で、相手の攻撃モンスター1体を破壊する。


「何だ……と……!?」
 俺様は、目の前で崩れ去る『キメラテック・オーバー・ドラゴン』と『サイバー・エンド・ドラゴン』を見て、当惑する事しかできなかった……。

「力あるカードにはリスクが伴う……。『パワー・ボンド』を発動したプレイヤーは、融合召喚したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを受ける……。」
 丸藤亮は、静かに語りやがった……。
 と言う事は、俺様は4800ポイントのダメージを……











「ぐっ……がぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!!!!!」(青森LP 5000→200)
 こ……これが、4800ポイント分の衝撃……!あり得ねぇ……!!
 全身の血管が千切れ……皮膚が……焼き切れちまう……!!

「ぁぁぁ…………あ゛ぁぁぁ!!!!!!!!ごんな゛所で……ぶっ倒れ゛で堪るがぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!!!!!」
 俺様は叫んだ……喉が潰れるくらいに……意識を少しでも保つために……
 ……こうでもしなけりゃあ、一瞬で気絶しちまう……!!



 電撃が納まった瞬間……目の前が暗くなり……俺様の体は前へ…………





















「――森!……青森!!目ぇ覚ませ!!」
 

「……外……道……。」
 そう言いながら俺様は、首と二の腕に付いた物を見た……。
 ……包帯だ。衝撃増幅装置じゃ無ぇ……。

「ここは……どこだ?」
「俺様の部屋だ。変な派閥が寮の色を白色に染めてやがるがな。」


「だが……俺様に非がある事には違いねぇ……。テメエに、衝撃増幅装置の事何ざを話しちまったんだからよぉ……。」
「いいや……違うぜ、外道……。俺様が、丸藤亮をねじ伏せる程の実力を持ってりゃあ、んな不様な事には無らなかったんだからなぁ……。」
 俺様は、軽くそう呟き……

「……俺様は……!奴のライフを、1ポイントも削る事ができなかった……!こんな屈辱的な完敗……我慢できっかよ……!!」
 そのまま、怒りに任せてベッドを殴った……。
 そして……ボロボロの体を引きずり、荷物をまとめ始めた……。

「青森……」
「外道……俺様は帰るぜ……!さらに力を研き……本校の生徒共をぶちのめしてやる……!……絶対に……絶対にだ!!」
 俺様は、よろめきながらデュエルアカデミア本校を後にした……。





















「それから3年が経った今では……ブタ野郎は退職し、丸藤亮は介護老人状態になってやがる……。つまり、今の俺様には、やり場のねぇ怒りだけが残った……って訳だ。」
青森は腕を組みながら過去話を終えた……。

「…………!」
 リナは、あまりに壮絶な話に、目をパチクリさせるしか無かった……。

「仲間を奪われた事には、どんな言葉をかけたらいいかなんて分かんないよ……。」
 リナは、重い口を開き……

「でも……何で危険な事に手を出さなきゃなんないのさ!そんな事やってたら、本当に死んじゃうよ……。」
 青森の事を心配する様に話した……。

「うるせぃよ!テメエなんざに言われる筋合いはねぇ!……さぁ!デュエルの続きだ!」
 青森は、目を見開き声を低くし、リナを威嚇するかの様に話した……。




【次回予告】

カムイ「青森の過去……。」
センリ「おぞましいぜ……。」
カムイ「……って、今のオレ達には、これぐらいの感想しか言えないッスね……。」
センリ「そうだな……。これって、次回予告か?」


次回、『GX plus!』第四十一話!

『光り輝く単頭龍!キメラテック・オーバー・ドラゴン!!』
カムイ「1本首……。『キメラテック・オーバー・ドラゴン』のそんな姿は、想像できないッスよね……。」




第四十一話 光り輝く単頭龍!キメラテック・オーバー・ドラゴン!!

現在の状況
リナ LP…1550
   手札…2枚
   場…弱者の意地(表側表示)
     魔導学園(マジカル・アカデミー(マジカルカウンター×4・表側表示)
     伏せカード2枚

青森 LP…1600
   手札…0枚
   場…キメラテック・オーバー・ドラゴン(攻撃力4800・攻撃表示)


魔導学園(マジカル・アカデミー
フィールド魔法
レベル2以下の魔法使い族モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、
このカードにマジカルカウンターを1つ乗せる。
自分フィールド上のレベル2以下の魔法使い族モンスターの攻撃力は、
このカードに乗っているマジカルカウンターの数×100ポイントアップする。
このカードのコントローラーは、「フィールド上のカードを破壊する効果」を持つ
魔法・罠・効果モンスターの効果が発動した時、
このカードに乗っているマジカルカウンターを2つ取り除く事でその発動を無効にし破壊する。
自分フィールド・墓地にレベル2以下の魔法使い族以外のモンスターが存在するとき、
このカードを破壊する。


「(……どうしよっかな……。)」
 リナは、青森の場に存在する『キメラテック・オーバー・ドラゴン』を眺めながら、そう考えていた……。

「……あたしのターン、ドロー!」
 しかし、1歩を踏み出すために、リナは1枚のカードを ドローした。

「さぁて……テメエのデッキで、俺様の『キメラテック・オーバー・ドラゴン』を倒せるか!?」
「大丈夫だよ。……今すぐには無理だけどね。」
 リナは、軽くそう言い……

「……モンスターを1体セットして、カードを1枚場に伏せるよ!ターンエンド!」
 2枚のカードをデュエルディスクにセットし、ターンを終えた。

「俺様のターン!ドロー!バトルだ!『キメラテック・オーバー・ドラゴン』で、裏守備モンスターに攻撃!!エヴォリューション・レザルト・バーーーースト!!」
 『キメラテック・オーバー・ドラゴン』の放った破壊光線は、リナの場に裏守備表示でいた、水晶玉を持った占い師の体を貫いた!

「……『水晶の占い師』か!」
「そうだよ。『水晶の占い師』のリバース効果が発動するかんね!デッキの上からカードを2枚めくって、その内の1枚を手札に加えるよ!」
 リナは、デッキの上からカードを2枚めくり、青森に見せた。

1枚目……貪欲な壺
2枚目……マジック・プランター

「あたしは……『貪欲な壺』を手札に加えるかんね!」
「……妥当だな。」
 青森は、リナの選択を軽く聞き流していた。


水晶の占い師
水 レベル1
【魔法使い族・効果】
リバース:自分のデッキの上から2枚をめくり、
その内の1枚を選択して手札に加える。
残りはデッキの一番下に戻す。
攻撃力100 守備力100


「1枚カードを場に伏せ、ターンエンドだ!」


現在の状況
リナ LP…1550
   手札…2枚(内1枚貪欲な壺)
   場…弱者の意地(表側表示)
     魔導学園(マジカル・アカデミー(マジカルカウンター×4・表側表示)
     伏せカード3枚

青森 LP…1600
   手札…0枚
   場…キメラテック・オーバー・ドラゴン
     伏せカード1枚


「あたしのターン、ドロー!手札から、魔法カード『貪欲な壺』を発動するよ!あたしの墓地のクランちゃんと、『ものマネ幻想師』、『ピクシーナイト』、『マジカルフィシアリスト』、『時の魔術師』をデッキに戻して、カードを2枚ドロー!」
 リナは、墓地のモンスター達をデッキに戻し、新たにカードを2枚ドローした。


貪欲な壺
通常魔法
自分の墓地に存在するモンスター5体を選択し、
デッキに加えてシャッフルする。
その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。


「これであたしの手札は4枚……伏せといたこのカードを発動させるかんね!魔法カード『カップ・オブ・エース』だよ!」
 リナがそう言うと、リナの前に大きなコインが現れた!

「このカードは、コインが表だったらあたしがカードを2枚ドローして、裏だったらあんたがカードを2枚ドローするんだよ!」
「ギャンブルカードか……。『弱者の意地』での大量ドローからの余裕か?」
 青森は、腕を組みながら忌々しそうに話した。
 そして、リナの前に現れたコインのソリッドビジョンが、コイ〜〜〜ンと澄んだ音を立てながら弾かれた……。











コイントスの結果……裏


「ありゃ……?」
 裏を向いて横たわるコインを目にし、リナは思わずそう言ってしまった。

「裏か……!カードを2枚ドローさせてもらうぜ!」
 裏になったコインを見て、青森は軽くカードをドローした。


カップ・オブ・エース
通常魔法
コイントスを1回行い、表が出た場合は自分のデッキからカードを2枚ドローし、
裏が出た場合は相手はデッキからカードを2枚ドローする。


「あ〜う〜〜……、……やっぱこんなのに頼ったって、強くなんかなれないよ〜……。」
 リナは、裏を向いて横たわるコインを、恨めしそうに見ていた……。

「でも……『キメラテック・オーバー・ドラゴン』を止める準備は、もう整ってたんだよ!伏せといた永続魔法『魔導集会(マジカル・チャット』を発動するかんね!」
 リナは、デュエルディスクに置いておいた1枚のカードに手を掛けた……。
 すると、リナの目の前に、集会で使うような木製の小さな円卓が現れた!

「『魔導集会(マジカル・チャット』の効果は、あたしの場にモンスターがいなかったら、手札のレベル2以下の魔法使い族を特殊召喚できるんだよ!この効果で、手札から『サターナ』を特殊召喚するかんね!」
 リナの場にあった円卓の近くに、全身を隠すローブを身につけた小さな魔法使いが現れた。


魔導集会(マジカル・チャット
永続魔法
自分フィールド上にモンスターが存在しないとき、手札から、レベル2以下の
魔法使い族モンスター1体を特殊召喚できる。
自分がレベル2以下の魔法使い族モンスターの召喚に成功したとき、
デッキから、レベル2の魔法使い族モンスター1枚を手札に加えることができる。
(召喚したモンスターと同名カードは除く。)
自分フィールド・墓地にレベル2以下の魔法使い族以外のモンスター存在するとき、
このカードを破壊する。


「『魔導学園(マジカル・アカデミー』にマジカルカウンターが1個乗ってから……『サターナ』をリリースして、伏せ罠カード『大番狂わせ』を発動するかんね!この効果で、特殊召喚されたレベル7以上のモンスターを全部手札に戻すよ!」
 リナがそう言うと、『サターナ』の周りに赤いオーラが発生し……『キメラテック・オーバー・ドラゴン』に向かって突撃したが……

「待ちな!伏せ罠カード……『王宮のお触れ』を発動するぜぇ!この効果で、罠カードの効果はすべて無効になるんだよ!」
 青森がそう言った瞬間に、『王宮のお触れ』から電光が発生して……その電光が、リナの『大番狂わせ』を貫いた!


大番狂わせ
通常罠
自分フィールド上に表側攻撃表示で存在する
レベル2以下のモンスター1体をリリースして発動する。
フィールド上に表側表示で存在するレベル7以上の
特殊召喚したモンスターを全て持ち主の手札に戻す。

王宮のお触れ
永続罠
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
このカード以外のフィールド上の罠カードの効果を無効にする。

魔導学園(マジカル・アカデミーに乗ったマジカルカウンター 4個→5個

「テメエ……そんな下らねぇ真似で、俺様の『キメラテック・オーバー・ドラゴン』を消せると思ってやがるのか?」
「ち、違うよ!……あたしには、まだ手が残ってんだもん……。」
 リナは、残り3枚の手札に目をやり、声を小さくして話した。

「『魔導集会(マジカル・チャット』の効果で……手札のピケルちゃんを攻撃表示で特殊召喚するかんね!」
 リナの場の円卓の近くに、白い袋の様な服を着、白い羊の帽子を被った魔法使いの幼女が現れ……

「ピケルちゃんが特殊召喚されたから、『魔導学園(マジカル・アカデミー』にマジカルカウンターが1個乗るよ!まだ通常召喚はしてないから……『マジカルフィシアリスト』を召喚するよ!」
 さらに、機械仕掛けの両手をした魔法使いが現れた。

「『マジカルフィシアリスト』が召喚されたから『魔導学園(マジカル・アカデミー』にマジカルカウンターが1個乗って……『魔導集会(マジカル・チャット』の効果で、デッキからレベル2の魔法使い族モンスター……『ブークー』を手札に加えて……魔法カード『闇の誘惑』を発動するかんね!カードを2枚ドローして、手札の『ブークー』をゲームから除外するよ!」
 リナは、デッキから1枚のカードを手札に加え、すぐさま除外した。


闇の誘惑
通常魔法
自分のデッキからカードを2枚ドローし、
その後手札の闇属性モンスター1体をゲームから除外する。
手札に闇属性モンスターがない場合、手札を全て墓地へ送る。

ブークー
闇 レベル2
【魔法使い族】
攻撃力650 守備力500


魔導学園(マジカル・アカデミーに乗ったマジカルカウンター 5個→7個

「(あたしの場のモンスターの攻撃力の合計は……ピケルちゃんが1200で、『マジカルフィシアリスト』が800で、効果で500ポイントアップできて、どっちも700ポイント攻撃力がアップしてるんだよね……。……500で700で1200で800で〜〜…………)」
 リナは、頭の中で足し算を必死に行っていたが……

「…………」
 だんだん表情に陰りが出始め、頭を抱え……











「…………あ〜〜も〜〜〜、頭ん中こんがらがっちゃって、何が何だか分かんなくなっちゃったよ〜〜!」
 自分の茶色っぽい髪の毛をワシャワシャとし、思わずそう言ってしまった……。

「(あのガキ……2桁の計算もできねぇのか?今の合計攻撃力は3400……どうにもならねぇな……。)」
 青森は、リナのそんな様子を見下す様に見ていた……。

「(……うう〜〜っ……何か、頭がクラクラするよ〜……。でも……このままじゃ負けちゃうから、これを出してから考えよっかな……?)」
 リナは、攻撃力の足し算をしやすくするために、残り2枚の手札の中の、モンスターを1体特殊召喚する事にした……。

「あたしは……手札の『ジェスター・コンフィ』を攻撃表示で特殊召喚するかんね!レベル2以下の魔法使い族が特殊召喚されたから、『魔導学園(マジカル・アカデミー』にマジカルカウンターが1個乗るよ!」
 リナの場に、道化師みたいな恰好をした不思議な魔法使いが現れた。


ジェスター・コンフィ
闇 レベル1
【魔法使い族・効果】
このカードは手札から表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
この方法で特殊召喚した場合、次の相手のエンドフェイズ時にこのカードと
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を手札に戻す。
「ジェスター・コンフィ」は自分フィールド上に1体しか表側表示で存在できない。
攻撃力0 守備力0


魔導学園(マジカル・アカデミーに乗ったマジカルカウンター 7個→8個
白魔導士ピケル 攻撃力1200→2000
マジカルフィシアリスト 攻撃力800→1600
ジェスター・コンフィ 攻撃力0→800

「え〜と……『魔導学園(マジカル・アカデミー』に乗ってるカウンターの数は8個だから、あたしの場のモンスターの攻撃力は800ポイントアップするんだよね。ピケルちゃんの攻撃力は2000、『マジカルフィシアリスト』の攻撃力は1600、『ジェスター・コンフィ』の攻撃力は800だから……」
 リナは、両手を使って攻撃力の合計を指折り計算していた……。

「新たなモンスターだと?……」
 そう言いながら青森は、リナの場のモンスターを確認していた……。

「……『ユニオン・アタック』か。」
「え?……何で分かっちゃったの?」
 リナは、青森の一言に、目をキョトンとさせていた……。

「テメエの場のモンスターの攻撃力の合計は、4400……いや、『マジカルフィシアリスト』の効果を併用すれば、4900か……。俺様の『キメラテック・オーバー・ドラゴン』の攻撃力を100の差で上回るとはな……。」
 青森は、腕を組みながらリナの場を確認し、軽くそう呟いた。

「ちょっと!何であたしより先に言っちゃうのよ!あたしの事バカみたいに思われちゃうじゃん!」
「違うってのか?」
「違うよ!」
 リナは、青森の発言に対してカリカリしながら話した……。


「とにかく……みんなの力を、ピケルちゃんに集約させるかんね!手札から、魔法カード『ユニオン・アタック』を発動するよ!」
 リナが、1枚の魔法カードをデュエルディスクに差し込むと……『マジカルフィシアリスト』と『ジェスター・コンフィ』の魔力が、『白魔導士ピケル』へと収束していった!


ユニオン・アタック
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
このターンのバトルフェイズ中、選択したモンスターの攻撃力は、
自分フィールド上に表側攻撃表示で存在する他のモンスターの攻撃力の合計分アップする。
このモンスターは相手プレイヤーに戦闘ダメージを与える事はできない。
また、他の表側攻撃表示モンスターはこのターン攻撃をする事ができない。


「これで、ピケルちゃんの攻撃力は4400ポイントになったよ!……言っとくけど、ちゃんと自分で計算したんだかんね。」
 リナは、自信満々ながらも、少し不機嫌そうに話した。

白魔導士ピケル 攻撃力2000→4400

「それから、『マジカルフィシアリスト』の効果を発動するかんね!魔力カウンターを取り除いて、ピケルちゃんの攻撃力を500ポイントアップさせるよ!」
 『マジカルフィシアリスト』は、機械仕掛けの両手から魔力を発生させ……その魔力によって、『白魔導士ピケル』の攻撃力をさらに高めた!


マジカルフィシアリスト
光 レベル2
【魔法使い族・チューナー】
このカードが召喚に成功した時、
このカードに魔力カウンターを1つ置く(最大1つまで)。
このカードに乗っている魔力カウンターを1つ取り除く事で、
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体の攻撃力を、
エンドフェイズ時まで500ポイントアップする。
攻撃力800 守備力400


白魔導士ピケル 攻撃力4400→4900

「いっくよ〜!ピケルちゃんで、『キメラテック・オーバー・ドラゴン』に攻撃!」
 『白魔導士ピケル』は、持っていた杖から激しい光を放ち……その魔力は、『キメラテック・オーバー・ドラゴン』の首のつなぎ目から砕け散らせた!

「ちっ……。『ユニオン・アタック』の効果で、俺様へのダメージは無えがな……。」
 青森は、腕を組みながら話した。

「あたしの手札が無い状態で、レベル2のピケルちゃんが相手モンスターを戦闘破壊したから、『弱者の意地』の効果が発動するよ!カードを2枚ドロー!」
 リナは、嬉しそうにカードを2枚ドローした。


弱者の意地
永続魔法
自分の手札が0枚の場合、自分フィールド上に存在する
レベル2以下のモンスターが戦闘によって
相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、
自分のデッキからカードを2枚ドローする。


「2枚カードを伏せて、ターンエンド!」
「俺様のターン、ドロー!……『王宮のお触れ』を墓地に送り、魔法カード『マジック・プランター』を発動してやる!デッキから、2枚のカードをドロー!」
 青森は、用済みの『王宮のお触れ』を墓地へと送り、2枚のカードをドローした。


マジック・プランター
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する
永続罠カード1枚を墓地へ送って発動する。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。


「(やったね!これで罠が使える!)」
 リナは、『王宮のお触れ』が消え去った事を、少し嬉しそうに思っていた。
 一方、ドローしたカードを確認した瞬間に、青森は……

「(……俺様を嘲笑ってやがるのか?……それとも、あのモンスターの呪いから解放されてねぇってのか……?)」
 ドローしたカードを、自嘲気味に確認していた……。

「行くぜ……!これが、俺様の最後の一手だ……!手札を1枚捨て、速攻魔法『トラップ・ブースター』を発動!この効果で、手札の罠カードを1枚発動可能になるぜ……!」
 青森は、静かに1枚の魔法カードを発動した後、1枚の罠カードに手を掛けた……。


トラップ・ブースター
速攻魔法
手札を1枚捨てて発動する。
このターン、自分は手札から罠カード1枚を発動する事ができる。


「ライフを半分払い、罠カード……『異次元からの帰還』を発動!!帰還しろ!2体の『ガトリング・ドラゴン』!2体の『ブローバック・ドラゴン』!『融合呪印生物−闇』!!」
 青森の場に、不思議な時空の渦が現れ……その中から、ガトリング咆の頭を持った機械龍が2体……ピストルの頭を持った機械龍が2体……黒色の不気味な鋼核で覆われた生物が1体出現した!

「げっ……『融合呪印生物−闇』って、そんな気持ち悪いモンスターだったんだ……。」
 リナは、『融合呪印生物−闇』の不気味な姿に、少し引いてしまった……。


異次元からの帰還
通常罠
ライフポイントを半分払って発動する。
ゲームから除外されている自分のモンスターを
可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する。
エンドフェイズ時、この効果によって特殊召喚されたモンスターを
全てゲームから除外する。


青森 LP1600→800

「『ブローバック・ドラゴン』の効果を発動してやる!伏せカードを撃ち抜け!!」
 『ブローバック・ドラゴン』は、リナの場の伏せカード1枚にレーザーポインターを合わせ、弾丸を放とうとしたが……

「その効果に、ねらわれたカードをチェーンするよ!速攻魔法『皆既日蝕の書』を発動して……それにチェーンして、永続罠『エンジェル・リフト』を発動するかんね!」
 そう言いながらリナは、自分の場に伏せられた2枚のカードを表にした!

「『エンジェル・リフト』……『水晶の占い師』か!?」
「だ〜か〜ら!何で先に言っちゃうの!?……そりゃ、それしか無いんだけどさ……。」
 リナがそう呟くと、水晶を持った占い師が場に蘇り……場を包み込む光が消えていき、9体のモンスターが裏側守備表示へとなった!


エンジェル・リフト
永続罠
自分の墓地に存在するレベル2以下のモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターがフィールド上から離れた時このカードを破壊する。

皆既日蝕の書
速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て裏側守備表示にする。
このターンのエンドフェイズ時に相手フィールド上に
裏側守備表示で存在するモンスターを全て表側守備表示にし、
その枚数分だけ相手はデッキからカードをドローする。


「ねらわれたのは『皆既日蝕の書』だから、コイントスの結果は関係無いよ!それから『エンジェル・リフト』は、『水晶の占い師』が裏側守備表示になったから場に残って……『水晶の占い師』が特殊召喚されたから、『魔導学園(マジカル・アカデミー』にマジカルカウンターが1個乗るんだよ!」
 リナは、自分の場の状況を長々と語った。


現在の状況
リナ LP…1550
   手札…0枚
   場…白魔導士ピケル(守備力0・裏側守備表示)
     マジカルフィシアリスト(守備力400・裏側守備表示)
     ジェスター・コンフィ(守備力0・裏側守備表示)
     水晶の占い師(守備力100・裏側守備表示)
     弱者の意地(表側表示)
     魔導集会(マジカル・チャット
     魔導学園(マジカル・アカデミー(マジカルカウンター×9・表側表示)
     エンジェル・リフト(蘇生対象が裏守備表示になったため残る)

青森 LP…800
   手札…1枚
   場…ガトリング・ドラゴン(守備力1200・裏側守備表示)×2
     ブローバック・ドラゴン(守備力1200・裏側守備表示)×2
     融合呪印生物−闇(守備力1600・裏側守備表示)


「(どうする……?)」
 青森は、自分の場を分析し始めた……。

「(裏側表示では、俺様の場のモンスターは効果を発動できねぇ……。このままターンを流せば、『皆既日蝕の書』のデメリットでカードを5枚ドロー可能だ……。だが、あのガキのモンスターを生かしておけば、俺様の場のモンスターを全滅させられちまう……!)」
 青森は、次のターンで起こり得る最悪の状況を想定し……

「(ならば……あのガキのモンスターを、先に殺すしかねぇ……!皆殺しだ……!!)」
 そう思いながら青森は、最後の1枚の手札に手を掛けた……!











「手札から……魔法カード発動!『融合』!!」
 青森は、何かに取り憑かれたかの様に、1枚の魔法カードを発動させた……!

「こ、ここで『融合』を発動させんの?……まさか……また……」
「そうだ!俺様はぁぁぁぁ!!『融合呪印生物−闇』に、4体の機械族を融合する!!!!」
 そう言いながら青森は、デュエルディスクに置かれた5枚のカードを、右手で掻き取り……そのままの勢いで墓地へと送り込んだ!
 すると……『融合呪印生物−闇』を覆っていた殻が弾け飛び……その中からあふれ出た毛の様な物体が、青森の場の『ガトリング・ドラゴン』2体と『ブローバック・ドラゴン』2体の装甲に絡み付いた!
 その物体は、金属の装甲を締め上げ、バキバキと何かが砕ける様な音を立て続けていた……。

「ひっ……可哀そすぎて見てらんないよ〜……。」
 リナは、青森の場のそんな様子を、直視できずにいた……。



「現れろぉぉぉぉ!!!!『キメラテック・オーバー・ドラゴン』!!!!」
 そう言うと、物体に絡み付かれていた4体の装甲が砕け散り……その破片が1点に収束し、その中から5本の首を持つ巨大な機械龍が姿を現した!

「『キメラテック・オーバー・ドラゴン』の攻撃力は、素材となったモンスターの数×800ポイントになり、素材にしたモンスターの数だけ、相手モンスターを葬る!!!!」
 青森は、そう叫びながらリナの場を指差した……。











 圧倒的な力の証――『キメラテック・オーバー・ドラゴン』……。
 暴走した力は、狂気をはらむ……。



「消えろ雑魚がぁぁぁぁ!!!!『キメラテック・オーバー・ドラゴン』で、連続攻撃!エヴォリューション・レザルト・バーーースト!!!!ユォンルゥエンダァ!!!!」
 青森がそう叫ぶと、『キメラテック・オーバー・ドラゴン』の5つの頭の内4つの頭から強烈な破壊光線が放射され……リナの場のモンスターを、一瞬で全滅させた!

「げっ……耐えられると思ったのに、一瞬で全滅させられちゃったよ……。」
 リナは、残念そうに呟き……

「でも……『水晶の占い師』のリバース効果が発動するよ!デッキの上から2枚めくって、その中から1枚をあたしの手札に加えるかんね!」
 リナは、2枚のカードを確認し、その中から『マジック・プランター』を手札に加えた。

「これで……俺様のターンは終了だ。」


現在の状況
リナ LP…1550
   手札…1枚(マジック・プランター)
   場…弱者の意地(表側表示)
     魔導集会(マジカル・チャット
     魔導学園(マジカル・アカデミー(マジカルカウンター×9・表側表示)
     エンジェル・リフト(蘇生対象が裏守備表示になったため残る)

青森 LP…1600
   手札…0枚
   場…キメラテック・オーバー・ドラゴン(攻撃力4000・攻撃表示)


「(ううっ……ここで、攻撃力4000の『キメラテック・オーバー・ドラゴン』か〜……。でも、あたしの手札には『マジック・プランター』が加わってるから、何とかなるかな……?)」
 そう思いながらリナは、前のターンに『水晶の占い師』によって手札に加わったカードを発動させる事にした。

「……あたしのターン、ドロー!あたしの場の『エンジェル・リフト』を墓地に送って、魔法カード『マジック・プランター』を発動するかんね!この効果で、カードを2枚ドローするよ!」
 リナは、デッキの上から2枚のカード……『マジシャンズ・クロス』と『貪欲な壺』をドローした。

「(『マジシャンズ・クロス』……。魔法使い族さえ引ければ、何とか『キメラテック・オーバー・ドラゴン』を倒せるんだけど……どっちにしたって、『貪欲な壺』は使わなきゃど〜にもなんないよね。)」
 リナは、さらに1枚の手札補充カードを発動させる事にした。

「手札から、魔法カード『貪欲な壺』を発動するかんね!あたしの墓地のピケルちゃんと、『マジカルフィシアリスト』、『水晶の占い師』、『ジェスター・コンフィ』、『サターナ』をデッキに戻して、カードを2枚ドローするよ!」
 そう言いながらリナは、デッキを念入りにシャッフルした後、2枚のカードをドローした。
 そして、ドローしたカードを確認したリナは……

「……手札から……永続魔法『好敵手(ともの名前』を発動するかんね!」
「『好敵手(ともの名前』……だと?」
 青森は、リナの発動させたカードに対し、少し驚いていた……。

「『好敵手(ともの名前』は、発動時に相手の墓地のモンスター1体を選択して……そのモンスターと名前だけ同じモンスターになって、あたしの場に特殊召喚されるんだよ!あたしが選ぶモンスターは……『キメラテック・オーバー・ドラゴン』!」
 リナが、墓地の『キメラテック・オーバー・ドラゴン』を右手の人差し指で差すと……『好敵手(ともの名前』の姿が、1本の首を持った白銀色の『キメラテック・オーバー・ドラゴン』へと変化していった!

「でも……『好敵手(ともの名前』でコピーできるのは、名前だけなんだよ。効果は持ってなくて、レベルは1で攻撃力と守備力は0で、光属性の魔法使い族として特殊召喚されるんだ。」
「レベル1の魔法使い族……『魔導学園(マジカル・アカデミー』は自壊しねぇか。」
 青森は、リナの場に現れた白銀色の輝きを放つ『キメラテック・オーバー・ドラゴン』を、腕を組みながら見ていた。


好敵手(ともの名前
永続魔法
相手の墓地に存在するモンスター1体を選択して発動する。
このカードは発動後モンスターカード(魔法使い族・光・星1・攻/守0)となり、
自分のモンスターカードゾーンに特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したこのカードは選択したモンスターと同名カードとして扱い、魔法カードとしても扱う。


「あたしの場に魔法使い族モンスターが特殊召喚されたから、『魔導学園(マジカル・アカデミー』にマジカルカウンターが1個乗るよ!それから、手札のピケルちゃんを攻撃表示で召喚して、もう1個マジカルカウンターを乗せるよ!」
 そう言うと、11個の街灯が淡く光輝き……その光が、リナの場の2体のモンスター達に力を与えた!

魔導学園(マジカル・アカデミーに乗ったマジカルカウンター 9個→11個
キメラテック・オーバー・ドラゴン(好敵手(ともの名前) 攻撃力0→1100
白魔導士ピケル 攻撃力1200→2300

「それから……このカードで、『キメラテック・オーバー・ドラゴン』を破壊してみせるよ!手札から、魔法カード『マジシャンズ・クロス』を発動するかんね!この効果で……『キメラテック・オーバー・ドラゴン(好敵手(ともの名前)』の攻撃力が3000ポイントにアップするよ!」
 『白魔導士ピケル』は、自らの杖から自分の魔力を『キメラテック・オーバー・ドラゴン(好敵手(ともの名前)』とクロスさせ……攻撃力を爆発的に高めた!


マジシャンズ・クロス
通常魔法
自分フィールド上に表側攻撃表示の魔法使い族モンスターが
2体以上存在する場合、その内1体を選択して発動する。
選択した魔法使い族モンスターの攻撃力はエンドフェイズ時まで3000になる。
このターン、選択したモンスター以外の
魔法使い族モンスターは攻撃する事ができない。


キメラテック・オーバー・ドラゴン(好敵手(ともの名前) 攻撃力0→3000→4100

「……攻撃力4100……。『キメラテック・オーバー・ドラゴン』の攻撃力を、あっさりと上回っただと!?」
 青森は、少しだけ驚きながら話した。

「まだだよ!ピケルちゃんを墓地に送って、魔法カード『受け継がれる力』を発動するかんね!この効果で、『キメラテック・オーバー・ドラゴン(好敵手(ともの名前)』の攻撃力を、1200ポイントアップさせるよ!」
 さらに『白魔導士ピケル』は、自らの生命力をも『キメラテック・オーバー・ドラゴン(好敵手(ともの名前)』に与え……攻撃力を完全に1点へと集中させた!


受け継がれる力
通常魔法
自分フィールド上のモンスター1体を墓地に送る。
自分フィールド上のモンスター1体を選択する。
選択したモンスター1体の攻撃力は、
発動ターンのエンドフェイズまで墓地に送った
モンスターカードの攻撃力分アップする。


「これであたしの勝ちだよ!『キメラテック・オーバー・ドラゴン(好敵手(ともの名前)』で、『キメラテック・オーバー・ドラゴン』に攻撃!エヴォリューション・レザルト・バースト!1連打!」
「迎撃しろ!『キメラテック・オーバー・ドラゴン』!エヴォリューション・レザルト・バーーーースト!!!!グォルエェンダァ!!!!」
 リナと青森の一言によって、リナの場の『キメラテック・オーバー・ドラゴン』は、白銀の輝きをした1本の光線を放ち……青森の『キメラテック・オーバー・ドラゴン』は、青白い光をした5本の光線を放ち……その光線が、2体の『キメラテック・オーバー・ドラゴン』の間でぶつかり合った!!











「あたしの『キメラテック・オーバー・ドラゴン(好敵手(ともの名前)』の攻撃力は、3000+1100+1200で、5300だよ!この攻撃が決まれば……あたしの勝ちだかんね!」
「……んな事は言われなくても分かってんだよ。」
 青森は、小さくそう呟いた。

「じゃあ……何で反撃を命令したの?」
「……単に……やり場の無ぇ怒りを、こんな形で発散させているだけかもな……。『キメラテック・オーバー・ドラゴン』を通じてよ……。」
 そう言っている間にも、青森の『キメラテック・オーバー・ドラゴン』は、白銀の光線に打ち負け、全身にその光線をまともに受ける形になっていた……。

「テメエは言ったな……。危険な事に手を出す何ざぁ、馬鹿らしいってな……。」
「え……?まあ、言ったっけ……。」
「だが……俺様の、本校を見返してやろうと言う野望は辞める気は無ぇよ……危険な事には手は伸ばさ無ぇがな。」
 青森がそう言うと、白銀の光線が青森を直撃し、ライフポイントを削り落した……。

青森LP 800→0











「テメエ……中々やるじゃ無ぇか。……だが!」
「何?」
 青森の言葉に対し、リナはキョトンとした表情で質問した。

「俺様に勝ったからには……絶対本校の生徒に勝ちやがれ!そして、俺様達星海校の実力を証明しろ!負けやがったら……容赦しねぇ!!」
「うん……分かった!絶対勝つよ!」
 青森とリナは向かい合い、スターチップの手渡しを行った……。


リナ スターチップ9個→18個
青森       9個→0個


「……おい。デュエルディスクを付けたままじゃぁ、走りにくいだろ!ディスクぐらいは預かっといてやるぜ!」
「え?……何で?」
「……出場枠はあと1つだ。急がねぇと、奪われちまうだろ!俺様を負かした奴が本戦に出場できないなんざぁ、納得行かねぇんだよ!それだけだ!」
 青森は、腕を組みながら怒鳴った。

「安心しな。明日までには返してやるからよ!」
「そっか。……じゃっ、すぐに返してね。」
 リナは、そう言いながらデュエルディスクを外し、デッキごと青森に持たせた。
 そして、すごい勢いでゴール地点――デュエルドーム入り口前に向かって一直線に走りだした……。











「……あのガキ……デッキをセットされた状態のデュエルディスクを預からせやがったか……。」
 青森は、リナの走り去る様子を見てから、自分も歩き出した……。





















「林道か〜……。でも、これくらいなら……」
 リナは、林道を通ってのショートカットを行い、ゴールに向かっていったが…… 

「え……あわわっ!」
 ズテッ!

 木の根に足を引っ掛け、顔と手から地面に激突してしまった……。



「……いっ……た〜〜……。」
 リナは、苦痛に顔を歪めながら、自分の手の平を見ると……

「げっ……手のひら擦り剥いちゃったよ〜〜……。」
 手の平を怪我してしまった事を知り、手の甲で顔を軽くなで、付着した土埃を拭った……。

「……おっかし〜な〜……。何年か前なら、こんな道ちょちょいって進めたのに……ちょっと体鈍ってんのかな〜……。」
 リナは、小さくそう呟いた後……むくっと起き上がり、再び走り始めた……。





















一方その頃、デュエルアカデミア本校……デュエルドーム入り口前――ゴール地点にて……

「本戦出場の最後の一枠……いったい誰が入るんスかね。」
 カムイは、多くの生徒と共に、最後の出場者の登場を心待ちにしていた……。

「カムイ。あと1人は、誰が出場するんだろうな。」
「誰なんスかね……センリ。2人くらいは候補が上がってるんスけどね。」
 センリの問い掛けに対し、カムイは腕を組みながら答えた。

「2人……リナかナオか……って感じか?」
「そんな感じッスね。……と言うよりその2人くらいしか、ここにいなくて強いデュエリストが思いつかなかったんスけどね。」
「なるほど……。そう言えばそうだな。」
 頭を掻きながら答えるカムイに対し、センリは軽く返した。


ガサッ……

「ん?何の音ッスか?」
 カムイは、音がした茂みの方を見ると……そこから、リナが息を切らしながら出てきた……。

「って、何でそんな所から出てきたんスか?リナ。」
「な……何でも……無いよ……。ちょっと……近道しただけだから……。」
 リナは、よろよろしながら受付へと歩いていき……

「スターチップ10個……集めました〜〜……。」
 リナは、倒れこむ様に、受付に飛び込んでいった……。

「リナ……何があったんスか?」
 カムイは、リナの顔に少し砂が付いていたのを見たので、それを軽く拭きながら話した。

「何でもないよ。……ちょっと転んじゃっただけだかんね。」
 それに対してリナは、心配そうに話し掛けるカムイに対し、少し舌を出して笑みを浮かべながら話した。

「転んだ……?」
「うん……手のひらをこ〜んな感じで。」
 そう言いながらリナは、擦り剥いた両手をカムイに見せた。

「……痛くないんスか?」
「痛いよ。……でも、そんな事言ってらんないよ。あたしが本戦に出場できなかったら、あたしに負けた人達に申し訳無いもん……。」
 リナは、青森の言葉を親身に受け止めている様な話し方で、そう言った……。



「……でもあんがとね、カムイ。あたしの事、待っててくれたんでしょ?」
「ん?まあ……そう言う事になるッスね。……オレ以外にも、大会が終わった参加者はほとんどここにいるんスけどね。」
 カムイは、軽くそう答えた。










その頃、校長室にて……

「……校長。本選出場者は全員1年……面白い結果になりましたね。」
 金髪の黒部先生は、校長先生に向かって、軽く話し掛けた。

「うむ……。1年の3人が本戦出場か……。後釜少なき本校との差が大きく開いた瞬間だな……。」
 校長室で待機していた、赤色の軍服を着た黒部校長は、そう考えながら放送用マイクを手に取り……





















「おめでとう!これにて、本戦出場者の3名が決定した!」


 校長は、あまりにも大きすぎるアナウンスと共に、実質的な大会終了宣言を行った……。











「ひっ!……な、何でこんな大きい音でアナウンスが流れんの……?」
 リナは、あまりに大きな音に驚き、手の甲で耳を押さえながら話した……。

「リナ……昨日の朝にも同じ様なアナウンスがあった事、覚えてないんスか……?」
「何の事?」
「…………。」
 キョトンとしているリナを、カムイはやれやれと言わんばかりの表情で見ていた。




一方、カムイ達から100メートル程度離れた地点にて……

「……間に合わなかったんだ……。あと1分でゴールにたどりつけた……って事は、本当にタッチの差だったね……。」
 終了宣言を聞きつけた、ネコ耳帽子を被った少年……ナオは、残念そうに呟いた……。



「おっ、あの耳は……」
 ナオの姿を耳で判断したセンリは、軽くそう言った。

「ナオじゃん。あいつ、あんなとこで何やってんだろ。」
 リナは軽くそう呟き、ナオの方へと走って行った……。

「カムイ……。リナの奴、ナオに向かって何か無茶苦茶言いそうだよな……。」
「そうッスね……。ここは、ついて行った方がいいッスよね……。」
 カムイとセンリは、リナの行動を警戒し、リナについて行く事にした……。











「ねえねえ、ナ〜オ〜、どうしたの〜?」
 リナは、残念そうな表情をしているナオに対し、笑みを浮かべながら話した。

「リナ……。それは無頓着すぎるんじゃ無いんスか?」
 カムイは、リナの一言に少し驚いていた……。

「……何だい?ボクの事を侮辱しに来たのかい?」
 ナオは、リナの一言に対し、腕を組みながら話した。



「ふ〜ん、10個スターチップを集めたのに、あと1歩で本戦出場できなかったんだ〜。残念だね〜。まっ、あたしは出場できたんだけどね〜〜。」
 リナは、今までナオにちびっ子呼ばわりされた事へのうっぷんを晴らすかの様に、ナオの頭を手の甲でなでなでしながら話した……。

「いや〜、可哀想だね〜。でも、泣いちゃダメ……むぐっ。」
 リナの言葉が終わらない内に、カムイがリナの口にあんパンを押しつけ、無理矢理口を止めさせた……。

「なっ……言いすぎッスよ……リナ……!」
「ああ……。ナオの奴、本当に泣きそうだぞ……。」
 カムイとセンリはそう言いながらリナを止め、ナオを慰めようとしたが……

「いいんだよ……。どうせ君達も、そのちびっ子が言ってる様な事を思ってるんだろ!?」
 ナオは、少し声を震わせながらカムイとセンリに向かってそう叫んだ。

「ま……まはひびっほって……!(ま……またちびっ子って……!)」
 リナは、ちびっ子と言われた事に腹を立てたのか、もごもご言いながら話していた……。

「そ……そんな事無いッスよ……。」
 カムイは、ナオの言葉に軽く反論したが……

「そんなの……偽善者だよ!」
 ナオは、カムイの言葉に耳を貸さず、そう吐き捨てる様に言い立ち去って行った……。











「…………。」
 カムイは、ナオの一言に、少し呆然としていた……。

「……カムイ……あんな事気にする必要無いよ!そりゃ、あたしは言いすぎたけどさ……あんなのただの八つ当たりだよ!」
 あんパンを食べ終えたリナは、カムイの体を肘で小突きながらそう言った。

「まあ……そうなんスけどね……。」
 カムイは、腕を組みながら軽く呟いた……。











「(……ナオは、何か心に弱さを持ってるんスかね……。あそこまで真剣に怒る様子は今まで見た事無かったッスから……。)」
 カムイは、ナオの様子に少し違和感を感じていたが……

「(今まで……とは言っても、まだ知り合って1年も経ってないんスけどね。)」




次回予告

クロートー「なるほど……。次は、フェイト様のデュエルですか。」
アトロポス「そうだな。そして、その相手は……あの男か。」
ラケシス「だが……何が目的でその男とデュエルをする?」
クロートー「さあ……。しかし、何か大きな目的があるのでしょう……。」



次回、『GX plus!』第四十二話!

『フェイトの策略!砕け散るネオス!!』

アトロポス「ネオス……『E・HERO』か。どれほどの抵抗を見せるか、楽しみだな。」
ラケシス「それはお前だけだ。」
クロートー「そうでしょうかね……?まあ、いいでしょう。」



第二部…完





 42話以降はこちらから





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