ジ・アブソリュート・ディスティニー

製作者:???ネオスさん








序章:予定運命

「ここは・・・・」



目覚めた僕を待っていたのは地獄だった。
『地獄』・・・それは人それぞれ違うものを思い浮かべるのだと思う。
少なくとも僕にとって今、この状況は地獄以外の何物でもない。
僕たちが住む世界の廃工場によく似た場所!
彼女の声だけがこだまする。



「うふふふふ、あははははははは!!!!みんな、みんな壊れちゃえ!!デュエルディスクも、カードも!!うんうん、迎人も久美も、いつきも澪も、私の邪魔するものは全部壊す!!あははははははは! 」


周囲にはカードがいたるところに散らかっている。
神獣王バルバロス!白魔導師ピケル!!
大切なカードを残して無惨に地面に横たわる仲間たち。

そして、僕の後で瀕死の状態にある友!
僕の目の前で狂気の沙汰にある仲間!

どこで間違えた?
いや、正しい選択肢などあったのか?
分からない・・・。



「この女だけ、あとは智花さえいなくなれば・・・私と十悟の邪魔をする人間はいなくなる。」


彼女は血に染まった鉄パイプでまっすぐ僕の後を指す。
その目は冷たい氷のようで見る者を恐怖させる。
何があったか分からない。
どうすればこんな世界が訪れてしまうのか?



「もう止めてくれ!!智花に罪はない!!」


彼女は少し笑って話し出す。
顔についた血をなめて口を開く。


「罪?あるよ、この十二次元世界の神、『ディスティニー・ブレイカー』『ディスティニー・クリエイター』そして最後の『・・・・・・・・・・・』すべてを打ち破った十悟を惑わせた。それがこの女の罪!!!今が断罪のときよ。だからそこをどいて!!!」


「何を言っているのか分からない!!もうこれ以上、罪を重ねるな!!!」


僕は必死に叫ぶ!
彼女は少し考えてから、その冷たい瞳を僕に向ける。


「どうして?どうして智花なの?どうして私じゃないの?私たちはずっと一緒だったじゃない。両親も仲良しで幼稚園も小学校も、中学校だって一緒!!尾瀬呂校にだって一緒に勉強して合格したよね・・・。これは運命なのよ!!」


彼女は涙ながらに話す。
それでも僕は何も話せず黙り込む。


「(僕は無力だ・・・。デッキがあったって無くたって!!親友も救えない。目の前の彼女だって・・・)」



「そっか!!十悟は私より智花の方がいいんだ!!私もバカだなぁ。そんなこと薄々分かっていたのに。あははははははは、だったら智花がいなくなればいいんだ!!どんな手を使ったっていい。欲しいものは全部手に入れるわ。私はそういう人間なんだもの!!」


彼女は素早く駆け寄り鉄パイプを大きく振り上げる。
智花まであと1メートル・・・・50センチ・・・・40センチ・・・・・・30センチ・・・・・・20センチ・・・・・・。


「消えなよ智花!!!消えて!消えて!私たちの前からいなくなって!!!」


何度も何度も聞こえる鈍い音!
欲望から生まれる殺意!憎悪!
それらがこの地獄を作っている。
分かっても今の僕には何もできない・・・。


「じ、十悟君・・・に、逃げてください。私のことはもう・・・。」


智花はわずかの気力を振り絞って話す。
僕の手が智花の血で染まる。
服も徐々に染み始めている。


「こ、この女!!私の十悟を汚らわしい血で汚して!!許さない!許さない!!絶対に許さない!!大人しくくたばれば、楽に死なせてあげようと思ったのに!」


「朝子・・・・。いや、おまえはもう朝子なんかじゃない!!悪魔だ!!」


僕は叫んでいた。
本当にそう思った。
もう失うものなんて何もない・・・はずだった。


「悪魔?この私が!何で?ずっと十悟のために頑張ってきたのに。」

「僕のため?僕は仲間を失ってもヘラヘラしていられるような悪魔じゃない!!絶対に許さない、デュエルだ!!」


次の瞬間、僕の胸の辺りに激痛が走る。
どこに隠していたのか彼女の手には血まみれのナイフが握られている。


「もういいや!!私の事を分かってくれない十悟なんていらない!!カードも!この世界も!あははははははは!!あははははははは!!!」


薄れゆく意識の中で思った。
どうしてこんな事になったのだろう?

もし次の世界というものがあるなら・・・。
少しでも彼女のことを理解できるようにしたい・・・そう思った。




「我ガ名ハ『絶対運命神』!!コノ世界ヲ・・・スル者!!」


僕の中からモンスターが現れる。
何で?

小金色に輝く醜悪な姿。
すべてを絶望させる威圧感。
不気味で拷問器具のような鎧を身に付けている。


「あはははは!もう化け物だろうが、死神だろうが怖くない!!っていうか私がどうなっても気にしないわ。さあ!私を地獄に落としなさい!あの世界を破壊し、仲間も愛する人もこの手で葬ったこの私を!!」


「・・・・」


「早く殺してよ!!私だけが生き残るなんておかしいじゃない。私が悪いのに!!何で私だけ?」


朝子はもう自分が何を言っているのか分からなくなってきた。
手には相変わらずナイフが握られている。


「もう、疲れちゃった!!十悟、今会いに行くね!」

















「うあああああああああああああああああああああ!?」

「は?ゆ、夢か・・・・・」


僕は目覚めた。
夢だった。
本当に嫌な夢を見た。

こんな未来しか待っていないとしたら?
それでも未来を信じて進めるだろうか?
運命の時は刻一刻と迫っていた。




1章:トライアングル・デュエル・カーニバル

4月、僕らは3年生になった。
神狩りの使徒との戦いからもう随分経った。
運命の神が僕の中にいると聞いてから不安な夜も続いた。
でも、今まで通りの日常が戻りつつある。
完全ではないが。

「ディスティニー・クリエイター」の一件で白峰神斗は、罰として童実野高校のデュエル教師として赴任することになったらしい。
海馬コーポレーションの監視下にあるということだ。

彼について行くと伊東淳也は、童実野高校に編入したという。
2人が一緒にあいさつに来たときはびっくりした。
もちろん悪魔の調理師も。
あの精霊が何を考えているのか誰にも分からない。
ただ伊東淳也とその精霊は互いに信頼し合っている。
恐らくもう心配はいらない。


「(悪魔の調理師が言っていたすべての次元が地獄になる・・・まさか?)」


そんなことを考えながら学校に行く支度を始める。
勉強道具とデュエルディスク、デッキケースを鞄に詰めると家を飛び出した。

朝食を抜いたのはまずかったけど、どうしても確認したいことがあった。
無論、反町朝子のことだ。
夢1つでどうこうってわけではないが気になった。
家はすぐ近く!1分もかからない。




だが


「来ない。もう先に学校に行ったのかな?」


彼女の家の前で待ってみたものの一向に現れる様子がない。
諦めて学校へ向かおうとする。



「ちょっと、そこのあなた!!」

「え?僕?」

「そうですわよ。まったく最近の愚民ときたら・・・。まあいいですわ!童実野町へはどうやっていくの?」


その女の子は高圧的なもの言いで一方的に質問してくる。
黒髪の美人であることは否定しようがない。


僕は駅までの道を説明した。
駅で隣町まで行けばすぐだと教えると、まっすぐその方向へ向かっていく。


「ん?デュエルアカデミアの制服?でもあそこは小さな島の全寮制の学校だったような・・・・。」


深く考えても仕方なかった。
とにかく今は学校に行く事にしよう。


「ああ!!もう遅刻だぁ。」


時計を見るとすでに始業時間を過ぎている。
ガッカリとして歩き出した。
学園への山道を登る。



「あれ?」


黒板には「1時限目は全校集会!!体育館へ!!」


黒須先生の字だ。
当たり前か、うちの担任だし。
指示通り体育館に向かう。



「で、あるからして、今回の大会に参加できるのも、黒須先生の教育と皆さんの努力の賜物です。校長としてうれしく思います。えー私も少しデュエルをするようになりましてね。ある生徒が私にカードをくれました。『戦士ダイ・グレファー』です。熱き男のカードだなぁとうれしくなりましたよ。早速、家で娘とデュエルしたんですが、どうにもこのカードだけは嫌いなようでしてー。それから・・・・。」


相変わらず校長の話は長い。
皆は携帯でメールをしたり、友達と話をしている。


「おう!十悟、遅かったじゃねえか。」


彼は明智迎人、僕の親友でライバル(迎人談)だ。


「うん。ちょっとね。で、さっき大会がどうのって言ってたけど・・・。」

「それを聞くために全員が待ってるんだけどな。」


迎人は少し呆れたように話す。
久美と澪は二人でおしゃべりをしている。
いつき君はメールでも打っているのかな。


「そういえば朝子は来てる?」

「いや!見てねぇな。一緒じゃなかったのか?」

僕は黙って首を横に振った。
相変わらず校長の話が続いている。

迎人が制限改定で「推理ゲート」が使えなくなって困っていることや、昨日のテレビ番組の話など、他愛もない話をしていると、校長先生がステージを降りるのが分かった。




「では皆、待たせたな!!デュエル大会の話だ!!!」

黒須がマイクを持って話し出すと全校が彼に注目する。
彼は大きく息を吸ってしゃべりだした。


「大会名はトライアングル・デュエル・カーニバルだ!!!」


体育館が一気に盛り上がる。


「大会は学校対抗。デュエルアカデミア、童実野高校、そして我々尾瀬呂学園高等部の三校が優勝を目指して戦う。選手はタッグ2チーム4人、シングル3人!3校がそれぞれ総当たりで争う大会だ!!恐らく高校レベルでは最高峰の大会と言っていい!!」


黒須の説明が続く。


「我が校のチーム監督はこの黒須が務めさせてもらう。メンバーは決めてあるんだ。相馬十悟、明智迎人、反町朝子、六道久美、木村智花、森崎いつき、宝生澪。7人で行こうと思う。みんな応援してほしい。」


いきなり言われて僕たちは意表をつかれた。
そして他人の視線が集まってくる。



「納得できねぇぞ!!何でだよ。」

「そうだ。そうだ。自分のクラスの生徒だからって!!」


下級生を中心にすごいブーイングだ。
何を考えているんだろか黒須先生は?


「納得できませんね。どうして彼らで決まりなのですか?」


少年が一人前に出る。
はっきりとした口調でしゃべりだす。
彼の周りの六人もまっすぐ黒須先生を見つめる。


「七星帝君だね。1年生ホープで帝デッキ使い。最近はチーム『七帝王』を結成して頑張っているそうじゃないか。」

「ええ。だから僕らが出てあげますよ!!」


彼は本気で言っている。
その目には炎が宿っているようだ。


「ははははは!!面白いな。いいだろう。ただし、あそこにいる相馬十悟に勝てたらの話だ。彼は強いぞ、私でも勝てるかどうか。ははは!!」


なぜかデュエルをすることになってしまった。
彼は、まっすぐ僕の方を睨みつける。

「先輩に恨みはないが、地べたに這いつくばらせてあげますよ!!!」




2章:倒せ!帝デッキ

「デュエル!!」



相馬十悟LP:8000
七星帝LP:8000




「俺の先行で行きますよ、先輩!!ドロー。『デビルズ・サンクチュアリ』発動。メタルデビル・トークンをリリースして『炎帝テスタロス』をアドバンス召喚!!一番右のカードを捨ててください!!」



相手デッキ:34



デビルズ・サンクチュアリ 通常魔法
「『メタルデビル・トークン』(悪魔族・闇・星1・攻/守0)を自分のフィールド上に1体特殊召喚する。このトークンは攻撃をする事ができない。『メタルデビル・トークン』の戦闘によるコントローラーへの超過ダメージは、かわりに相手プレイヤーが受ける。自分のスタンバイフェイズ毎に1000ライフポイントを払う。払わなければ、『メタルデビル・トークン』を破壊する。」



炎帝テスタロス ☆6 炎属性 炎族
ATK2400 DEF1000
「このカードの生け贄召喚に成功した時、相手の手札をランダムに1枚墓地に捨てる。捨てたカードがモンスターカードだった場合、相手ライフにそのモンスターのレベル×100ポイントダメージを与える。」



相馬十悟LP:8000→7200




「ははは。ついてないですね。レベル8だったんですか?これでターン終了ですよ。」


僕をあざ笑うかのような瞳。
ここで負けるわけにはいかない。


「僕のターン。ドロー。僕は『手札抹殺』を発動!!4枚を捨てて、4枚ドローだ。行くよ!『邪念魔獣ラム・シューラ』を攻撃表示で召喚!」


黒きオーラに覆われた魔獣が現れる。
鋭い剣を構える。


「さらにこのモンスターに『冥界流傀儡術』を発動!!墓地の『岩窟魔獣ガ・ラード』を特殊召喚!!そしてゲームから除外したラム・シューラの効果発動!!お互いにデッキを5枚除外する。」



邪念魔獣ラム・シューラ ☆4 闇属性 悪魔族
ATK:1200 DEF:1800
「このカードがゲームから除外されたときお互いはデッキの上から5枚をゲームから除外する。」



岩窟魔獣ガ・ラード ☆4 地属性 悪魔族
ATK:2400 DEF:300
「自分のスタンバイフェイズにゲームから除外されている自分のカードを墓地へ送る。送れなければこのカードを破壊する。」



手札抹殺 通常魔法
「お互いの手札を全て捨て、それぞれ自分のデッキから捨てた枚数分のカードをドローする。」



冥界流傀儡術 通常魔法
「自分の墓地の悪魔族モンスター1体を選択する。合計レベルがそのモンスターのレベルと同じになるように、自分フィールド上のモンスターをゲームから除外する。その後、選択したモンスターを特殊召喚する。」




相手デッキ34→30→25



「まさか、デッキ破壊?」


「さらにガ・ラードに装備魔法『異世界の力』を装備、攻撃力を500ポイントアップだ。バトル!!炎帝を破壊だ!!ローリング・ガ・ラード!!!」



異世界の力 装備魔法
「装備モンスターの攻撃力を500ポイントアップする。装備モンスターがフィールドを離れた時、デッキからレベル4以下の『魔獣』と名のつくモンスターを手札に加える。」



七星帝LP:8000→7500



巨大な岩石の化け物は炎を纏ったモンスターに体当たりをする。
高速で回転するその攻撃に耐えきれず、炎の帝は砕け散った。


「ターンエンド。」


「そんなものですか。俺のターン。ドロー。(今ドローしたのは『雷帝ザボルグ』、そして手札には2枚目の『デビルズ・サンクチュアリ』、攻撃力2900でも関係ない!!)」


「君のスタンバイフェイズ、墓地に存在する『可憐魔獣エレン・ファルク』と『恍惚魔獣ウラル・ザミヌ』の効果発動!!相手に1000ポイントのダメージを与え、手札を1枚墓地に捨てさせる。一番左のカードをね!ちなみにこの2枚はメインフェイズにデッキからカードを2枚除外することで排除できるよ。」



可憐魔獣エレン・ファルク ☆2 風属性 悪魔族
ATK900 DEF300
「このカードが通常召喚に成功した時、デッキから『魔獣』と名のつくモンスター1枚をデッキから墓地へ送る。このカードが墓地に存在する時、相手スタンバイフェイズに1000ポイントのダメージを与える。相手は自分のメインフェイズにデッキから2枚カードを除外することで、墓地のこのカードを除外できる。」



恍惚魔獣ウラル・ザミヌ ☆2 水属性 悪魔族
ATK700 DEF400
「このカードが通常召喚に成功した時、デッキから『魔獣』と名のつくモンスター1枚をデッキから墓地へ送る。このカードが墓地に存在する時、相手スタンバイフェイズに相手の手札1枚を墓地へ送る。相手は自分のメインフェイズにデッキから2枚カードを除外することで、墓地のこのカードを除外できる。」



「ち!『手札抹殺』でそんなカードを捨てていたのか。くそ!ザボルグが墓地行きか。厄介なモンスターは除外だ。」



七星帝LP:7500→6500
相手デッキ:25→24→20



「なめるなよ!!手札から『ならず者傭兵部隊』を召喚!!効果発動!!岩窟魔獣を破壊だ!!」

「この瞬間『異世界の力』の効果発動!デッキから『紅蓮魔獣ダ・イーザ』を手札に加える。」

「だったら『死者蘇生』発動!!甦れ『雷帝ザボルグ』、攻撃だ!」



雷帝ザボルグ ☆5 光属性 雷族
ATK2400 DEF1000
「このカードの生け贄召喚に成功した時、フィールド上のモンスター1体を破壊する。」



ならず者傭兵部隊 ☆4 地属性 戦士族
ATK1000 DEF1000
「このカードをリリースして発動する。フィールド上に存在するモンスター1体を破壊する。」



死者蘇生 通常魔法
「自分または相手の墓地に存在するモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。」



「くぅ!!帝モンスターのダイレクトアタックはさすがに効いたなぁ!!」



雷の帝の攻撃が僕に直撃する。
ソリットビジョンと分かっていてもやっぱり痛い。



相馬十悟LP:7200→4800



「どうだ!!ターン終了!!」



「でも負けない!!僕のターン。ドロー。スタンバイフェイズに墓地の『魅惑魔獣イクス・ジェーン』の効果発動!!さらにもう1枚ドロー。僕の新しいデッキ破壊コンボを見せてあげるよ!!墓地のカードをすべて除外して『魔獣女帝パドグ・リリクス』を特殊召喚!!さらに『紅蓮魔獣ダ・イーザ』を通常召喚!!」



魔獣女帝パドグ・リリクス ☆8 光属性 悪魔族
ATK3000 DEF2150
「このカードは自分の墓地のカードが5枚以上存在する時、自分の墓地のカードをすべて除外することで特殊召喚することができる。このカードがゲームから除外されたとき、お互いにデッキからカードを10枚除外する。」



紅蓮魔獣ダ・イーザ ☆3 炎属性 悪魔族
ATK? DEF?
「このカードの攻撃力と守備力は、ゲームから除外されている自分のカードの数×400ポイントになる。」



ダ・イーザ、ATK?→5600


「ふ、ふざけるなATK5600と3000だと!!」

「さらに永続魔法カード『デッキ・ブレイク』発動!!相手に与えるダメージ1000ポイントにつき1枚、相手デッキからカードを除外することができる。バトル!!紅蓮魔獣でザボルグを攻撃!!」


赤き爪がザボルグを襲う!!
モンスターが砕け散り発生するはずのダメージを帝のデッキが守った。
正確には十悟の魔法効果で削られた。というのが正しい。



デッキ・ブレイク 永続魔法
「相手に与えるダメージ1000ポイントにつき1枚、相手デッキからカードを除外することができる。」



「さらに魔獣女帝でダイレクトアタック!!このダメージもデッキ破壊効果に変換!!」



七星帝LP:6500→6300
相手デッキ:20→17→14



「カードを1枚伏せてターンエンド!!」



「圧倒的な攻撃力がありながらそれをデッキ破壊効果に変えるだと!!ふざけてるんですか!!絶対後悔させてやりますよ!!俺のターン。ドロー。来た!!『洗脳−ブレインコントロール』を発動、相手のダ・イーザのコントロー・・」


「カウンター罠『魔獣王の宣告』発動!!魔獣女帝を除外することで、その効果を無効にする。そしてその効果でお互いにデッキからカードを10枚除外する。」



洗脳−ブレインコントロール 通常魔法
「800ライフポイントを払う。相手フィールド上の表側表示モンスター1体を選択する。発動ターンのエンドフェイズまで、選択したカードのコントロールを得る。」



魔獣王の宣告 カウンター罠
「フィールド上に表側表示で存在する『魔獣』と名のつくモンスターをゲームから除外して発動する。魔法、罠、モンスター効果のどれか一つを無効にして相手バトルフェイズをスキップすることができる。」



七星帝LP:6300→5500
相手デッキ:14→13→3



「カードをセットしてターンエンド!!(セットしたのはマシュマロン!破壊はされない)」



マシュマロン ☆3 光属性 天使族
ATK300 DEF500
「フィールド上に裏側表示で存在するこのカードを攻撃したモンスターのコントローラーは、ダメージ計算後に1000ポイントダメージを受ける。このカードは戦闘では破壊されない。」



「僕のターン。ドロー。僕はゲームから除外している『魔獣』と名のつくモンスター3体をデッキに戻すことでエクストラデッキから『魔獣騎士ラジル・キュームス』を特殊召喚だ!!そして除外しているモンスターカードをデッキに戻し、効果発動!!」



魔獣騎士ラジル・キュームス ☆7 闇属性 戦士族
ATK2800 DEF2300
「『魔獣』と名のつくモンスター×3
ゲームから除外されている上記のモンスターをデッキの1番下に戻した場合のみ融合デッキから特殊召喚することができる。ゲームから除外されている、モンスターカード1枚をデッキの1番下に戻す事で、このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。このカードを特殊召喚する場合、このターンに『魔獣』と名のつく他のカードを特殊召喚することはできない。」



漆黒の鎧に身を包む魔獣に力がみなぎり始める。


「バトル!!魔獣騎士でセットしたモンスターに攻撃!!」

「マシュマロンの効果発動!!相手に1000ポイントのダメージを与える。そして戦闘では破壊されない!!」

「魔獣騎士は今、貫通効果を持っている。よって『デッキ・ブレイク』の効果で戦闘ダメージをデッキ破壊効果に変換!!」

「な、何ぃ!!」


相馬十悟LP:4800→3800
七星帝LP:5500→5200

相手デッキ:2→1




「これでターン終了だ!!(相手のデッキは1枚だけど油断はできない)」


僕はまっすぐ彼を見つめる。
彼の闘志はまだ消えてない。


「俺のターン。ドロー。カードを1枚伏せてターンエンド。」

彼はまだ諦めていない。
何か狙っている?


相手デッキ:1→0



「僕のターン。ドロー。(転生の預言者でも伏せていれば・・・。)ターン終了だ。」


僕の宣言と同時にディスクに「YOU WIN」の文字が浮かび上がる。
勝った・・・。
何となくほっとした。



「文句はいいません。先輩、頑張ってくださいよ。行くぞみんな!!」


帝は仲間を連れて体育館を出て行ってしまった。
でも、またデュエルしたいと思う相手だった。




3章:明智迎人の苦悩!

「今日もなんとか授業が終わったな。」


帰り道をそう呟きながら歩いていた。
黒須先生から大会の発表があった日、朝子は学校に来なかった。
少し心配になったのだと思う。
足早に帰宅した。


「十悟!!」

「朝子!どうして?」

「大会の話、聞いたよね?実はデュエルアカデミアに行ってたんだ・・・。黒須先生に頼まれて!!」

僕の家の前で待っていた朝子が笑顔で話す。
いつもの彼女だ。
心配する必要もなかったらしい。

「こんな所で立ち話もなんだから上がりなよ!!」

「うん」

朝子と二人で僕の部屋に行くことにした。


「結構きれいにしてるじゃん。以外だよ。」

「そんなこと言いに来たんじゃないだろ?」


朝子は鞄を開けてレポート用紙を数枚取り出す。
それを僕に手渡して話し始める。


「アカデミアの頂点に立つのはこの子!!アカデミアの女王、天王寺つかさ!デッキは『終焉のカウントダウン』らしいわ。次は・・・・」


デュエリストの写真とデッキの特徴がまとめられている。
この子どこかで見たような・・・。
そんなことを思ったがあえて口に出さなかった。


「よくこんなに詳しく調べられたね」

「ふふふ。じゃーん!!アカデミアの制服!!似合うでしょ!!」


朝子は制服を自慢しながらくるくる回って見せた。
潜入してたのか・・・。
あれ、誰が用意したんだろう?
黒須先生じゃないだろうな?
まあいいか。


「で、こっちが童実野高校!!童実野の頂点に立つのは、阿紋鏡介!前に一度戦ったことあるよね?交流試合のときに。あらゆる手段を使ってエクゾディアを揃えるらしいわ・・・・・。」

「す、すごい流石朝子だね。で、どうして僕に?」

「え?何でって・・・・・十悟が尾瀬呂で一番強いし、リーダーで決まりでしょ。」

朝子は少し困ったような顔をして言った。
頬を赤くして少し視線をそらす。

「でさ、うちのメンバーはどうする?やっぱり十悟が大将だよね」

「いやー、皆の意見も聞かないと。タッグ組むメンバーだっているし」

僕らは大会のことで盛り上がった。
大会では、デュエル以外にもデュエルモンスターズ関係のイベントが用意されているらしい。
結局、朝子はうちで夕飯を食べていった。
昔はよくこんなことがあったと思う。
いつからだろう?変わってしまったのは?


「明日は学校ちゃんといくからね!!」


朝子は笑顔で手を振った。
僕の家の玄関を出ると走って帰っていった。
















同時刻、尾瀬呂学園



「ぐわー。終わらねえ!!こんな量できるわけねぇ。こんな日に限って頼みの十悟は帰っちまうし、智花もいつの間にか・・・。朝子に至っては登校すらしてねぇ」


迎人は教室で頭を抱えている。
古典、数学・・・教科書やノートが山積みになっている。


「終わったか?」


黒須が教室の扉を開けながら声を掛ける。
迎人は首を振ってうなだれている。


「気分転換にデュエルでもするか!!」

「ま、マジっすか。やりますやります!!」

「ただし、私が勝ったら1つだけ言う事を聞いてもらうがいいか?」

「何ですか?」

「負けた時のお楽しみだ。まあ罰ゲームのようなものだよ!!」



そう言うと2人はデュエルディスクを用意する。
そして教室の真ん中で向かい合う。







「デュエル!!」




明智迎人:LP8000
黒須芽出一:LP8000



「俺の先行。カードドロー。『神獣王バルバロス』をリリースなしで召喚!!カードを2枚伏せてターンエンド。」



神獣王バルバロス ☆8 地属性 獣戦士族
ATK3000 DEF1200
「このカードは生け贄なしで通常召喚する事ができる。その場合、このカードの元々の攻撃力は1900になる。3体の生け贄を捧げてこのカードを生け贄召喚した場合、相手フィールド上のカードを全て破壊する。」



「私のターン。ドロー。(これも運命か・・・宿命なのか)私は手札から『未来融合−フューチャー・フュージョン』を発動!!デッキから『ダーク・ホルス・ドラゴン』3枚と『レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン』2枚を墓地に送り、指定するのは『F・G・D』だ!!」



ダーク・ホルス・ドラゴン 闇属性 ドラゴン族
ATK3000 DEF1800
「このカードがフィールド上に存在する限り、相手のメインフェイズ時に魔法カードが発動された場合、自分の墓地からレベル4の闇属性モンスター1体を特殊召喚する事ができる。この効果は1ターンに1度しか使用できない。」



レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン ☆10 闇属性 ドラゴン族
ATK2800 DEF2400
「このカードは自分フィールド上に存在するドラゴン族モンスター1体をゲームから除外する事で特殊召喚する事ができる。1ターンに1度だけ、自分のメインフェイズ時に手札または自分の墓地から『レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン』以外のドラゴン族モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。」



F・G・D 闇属性 ドラゴン族
ATK5000 DF5000
「このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。ドラゴン族モンスター5体を融合素材として融合召喚する。このカードは地・水・炎・風・闇属性モンスターとの戦闘によっては破壊されない。(ダメージ計算は適用する)」



未来融合−フューチャー・フュージョン 通常魔法
「自分のデッキから融合モンスターカードによって決められたモンスターを墓地へ送り、融合デッキから融合モンスター1体を選択する。発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時に選択した融合モンスターを自分フィールド上に特殊召喚する(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)。このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する」



「させないぜ!速攻魔法『サイクロン』でそのカードを破壊する。」



サイクロン 速攻魔法
「フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する。」



黒須のカードは消えてしまう。
それでも、黒須は続けた。

「それでも支障はない!!それではこちらも『サイクロン』発動だ!!」

「くそ!『炸裂装甲』が!!」

迎人は悔しがった。
しかしまっすぐ黒須の方を見つめる。
まさかこのターンで決着がつくとは思いもしなかっただろう。


「私は手札から『ダーク・クリエイター』を特殊召喚!!墓地の『レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン』を除外してもう1体の『レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン』を呼び出す!!そして『D・D・R』発動!対象は『レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン』、そしてそれぞれの効果で『ダーク・ホルス・ドラゴン』を召喚だ!!」



ダーク・クリエイター ☆8 闇属性 雷族
ATK2300 DEF3000
「このカードは通常召喚できない。自分の墓地に闇属性モンスターが5体以上存在し、自分フィールド上にモンスターが存在していない場合に特殊召喚する事ができる。自分の墓地の闇属性モンスター1体をゲームから除外する事で、自分の墓地の闇属性モンスター1体を特殊召喚する。この効果は1ターンに1度しか使用できない。」



D・D・R 装備魔法
「手札を1枚捨てる。ゲームから除外されている自分のモンスター1体を選択して攻撃表示でフィールド上に特殊召喚し、このカードを装備する。このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。



フィールドには5体のモンスターが揃う。
鋼の体に深紅の眼の竜が2体!
漆黒の体を持つ闇の竜が2体!
そして黒いボディーの巨人!



「う、うそだろ!!」

「攻撃!!」

黒須が攻撃宣言すると4体の龍がブレスを放つ!!
槍を構えた獣戦士を一瞬で粉砕すると第二、第三の攻撃が続く。
それがすべて迎人に直撃した。
その勢いで迎人は教室の後まで吹き飛ぶ!



「ぐわぁあ」



明智迎人:LP8000→0
黒須芽出一:LP8000



黒須は迎人に手を差し出して助け起こした。
悔しそうに立ち上がる。



「それじゃあ、罰ゲームだ。私の言う事を聞いてもらう。」

「な、何ですか?レポート増やすとか・・・?」


迎人は冗談で言ったつもりだったが黒須は真顔だ。
それを感じて彼の顔がこわばる!


「迎人!『名推理』と『モンスターゲート』が制限になったんだ(随分前からですが)。別のデッキコンセプトに変えるんだ!!今のままでは大会では勝てない!これが聞けないと言うのなら、お前の代わりに七星帝をメンバーする!いいな?」

「そ、そんな。」


黒須はデュエルディスクを片付け、教室を出た。
迎人は床に膝をつく。
そして涙が一つまた一つとこぼれ落ちる。


「このデッキを使うなってことか。どんなデッキ使えっていうんだよ!誰か教えてくれよ!俺はどうすればいいんだよーーーーーー。」


教室に彼の声が響く。
放課後の教室は静かだ。
答えは無かった。


「許せ迎人!!これもお前のためだ。『推理ゲート』にこだわらなければ、まだまだ強くなれるんだ」


黒須はそう呟きながら、廊下を歩いていく。
彼も辛い選択だったようだ。

帰り道、迎人は考えていた。
どんなデッキにすればいいのか?


「十悟は、相手の命(ライフ)を奪わないことを信念にデッキ破壊を使っている。智花は姉の残したカードを自分自身のデッキに昇華させて使っている。朝子や久美、いつき、澪だって。だったら俺は・・・。」


結局、家に帰って勉強するわけでもなく、そうかと言って必死にデッキコンセプトを考える気にもなれない。


「明日、十悟に相談してみるか・・・。」


そう呟きながらベットにもぐり込む。
もう何も考える気もなかった。




次の日


「って言う訳なんだ。なあ十悟!俺はどんなデッキを使ったらいい?」

「昨日、そんなことがあったのか。それは迎人自身が決めるべきだと思うな。黒須先生もそれを期待しているはずだ・・・・」

迎人はがっかりして椅子に腰掛ける。
何か言ってあげた方がいいと思って考えをめぐらす。
彼のデッキの良さ・・・。

「迎人は上級モンスターが好きだよね!それを生かすデッキ!」


僕は思ったことを言ったつもりだった。
失言だったかと思い、迎人の顔を見る。


「そうか!あのカードか。だがそうすると・・・。悪ぃ、黒須先生のところ行ってくる!!」

何かに気づき迎人は走り出す。
職員室に黒須がいないことを確かめると黒須の研究室に向かう。
研究室の前に立つと彼は大きく深呼吸をする。



「黒須先生!!俺のつくるべきデッキが見つかりました。放課後、アドバイスをお願いします。」


迎人はそう叫ぶと研究室には入らず走り出した。
それを聞くと黒須の頬がゆるむ。
彼は紙を取り出し、メンバーを書き始める。




S(シングル):明智迎人
T(タッグ):反町朝子、六道久美
S(シングル):宝生澪
T(タッグ):木村智花、森崎いつき
S(シングル):相馬十悟

補欠:七星帝


「基本はこれで行こう。さあ、白峰お前はどう出るかな。(教え子同士の大会ではあるもののこれもまた私とお前の戦い!!楽しみだ。)」




4章:前夜祭!集結するライバルたち!

大会前日の海馬ランドホテル
ここはトライアングル・デュエル・カーニバルの前夜祭が行われる場所だ。
豪華な衣装を身にまとったお金持ちがたくさん集まっている。
僕らがこんなところにいるなんて場違いな気がしてならない。


「うめぇ。この料理、すごくうまいぞ。なあ十悟も食おうぜ!!」

迎人は並べられた料理を皿いっぱいに盛り付けていく。
そして片っ端から口に運ぶ。


「そんなに急いで食べなくても・・・」

「いいんじゃない。迎人はこういうやつだし」

朝子は笑っている。
あれはやっぱりただの夢?
そうに違いない!


「まあまあ、はしたない。これだから愚民は・・・」


アカデミアの制服を着た少女が声を上げる。
そこにはアカデミア生が集まっている。


「冴えないデュエリストばかりですね。お嬢様!!」

「まったくだ!所詮、尾瀬呂は敵じゃない!」


取り巻きたちも好き勝手にしゃべる。
僕たちなど瞬殺できると言わんばかりに。


「なんだとぉ!!」


迎人が叫ぶ。
そこに割り込むように二人の少年が入って来る。


「なんだよ!先客がいたのか。まあいい!俺が用のあるのはただ一人!相馬十悟、貴様だ!!」


突然言われて僕は意表を突かれた。
彼はさらに続ける。


「昨年開かれた交流試合の敗北以来、俺は貴様に勝つために強くなった。そして今、童実野高校の頂点にいる!!そして貴様は尾瀬呂のトップ!俺達の戦いは必然だ!」


茶髪にピアス!
不良というわけではないが、柄の悪い感じの少年だ。


「鏡介!誰がいつ戦うかは監督が決めることだ。それが俺でも文句をいうことはできない。」


かつてのクラスメイト!
そして生死を賭けて戦ったデュエリスト。
伊東淳也だった。
紺の学ランに身を包んだ姿が今でもなんだか不思議な感じだ。


「伊東君!!久しぶり!大会に出るって聞いて楽しみしていたよ!」

「俺もだ!今、童実野のナンバー2まで上り詰めた!大会で戦えなくてもまたデュエルしてくれるか?」

「もちろん!」

久々の再会を喜んだ僕たち。
やがて童実野のメンバーが集まってきた。
前夜祭には出場選手すべてが参加していた。
どうやら、この場で選手紹介をするらしい。


僕たちはそろってステージに進んだ。
学校ごとに並びスタンバイする。




「皆さんお待ちかねの選手紹介だ!!!!」


司会の男がマイクに向かって大声で叫ぶ。
それを聞き、会場は一気に盛り上がる。
デュエルファンのお金持ちが集まっているらしい。

テレビカメラや新聞記者が一斉に注目する。
そして紹介が始まる。


「まずは、初代デュエルキング武藤遊戯を輩出したデュエルの古豪!!童実野高校!!!デュエリストを紹介しよう!!」


次々と名前を呼ばれ、その度にスポットライトが当てられていく。
そして彼の番を迎えた。


「続いては、他人にドローと言う名の苦痛を与える『グリードバーン』使い!!伊東淳也――!!」

「そしてラストは、貪欲に召喚神(エクゾディア)の完成を狙う童実野のエース!!阿紋鏡介―――!!」





「さーここからが大本命!!数多のプロデュエリストを生み出すまさにデュエリストの登竜門!あの遊城十代も通った超名門!デュエルアカデミア―――!!選手の紹介だ!」


その名に恥じないデュエリストの風格!
タクティクスが紹介されていく。
そして最後に彼女が残った。


「そして、その頂点に君臨するのは、終焉を導く無敗の女王、天王寺つかさ―――――!」


今まで以上にカメラのフラッシュがたかれ、テレビカメラが集まってくる。
まるでアイドルでもいるかのように。
しばらく、そんな状態が続いた。
そんな中、彼女は笑顔を絶やさずに微笑み続けている。






「さあ!最後のチームだ!新進気鋭でありながら、その強さは他の二校に勝るとも劣らない!!尾瀬呂学園高等部――――!!」


何か自分の学校が紹介されるのが少し恥ずかしかった。
誰が先に呼ばれるんだろうと皆ドキドキしている。



「まずは、パワーこそすべて!!上級モンスターを使わせたら右に出る者無し!!Mrパワーデュエリスト、明智迎人――――!!」

「可愛いものが正義!!ピケルへの情熱はそんじょそこらのピケルオタクには負けません!!キュアバーン使い!六道久美――――!!」

「彼女の前ではコンボは成立しない!!スペルスピードの速さが強さ!!パーミッション使い!!反町朝子――――!!」


仲間たちも次々に呼ばれていく。
久美はちょっと恥ずかしそうにうつむいた。
迎人と朝子は堂々と前に出た。


「カード犯罪は絶対に許さない!デュエリストのために働くカードスイーパーズが自信を持って送り出す美少年デュエリスト、森崎いつき――――!!」

「新戦術のシンクロ召喚を使い、呼び出すは最強のドラゴンたち!!天才デュエリストと血を分けた奇跡を呼ぶ少女、木村智花――――!!」

「デュエルの創造主に選ばれたラッキーガール!手にするのは伝説の宝玉獣!!彼女のデュエルを見なければこの大会は語れない!?宝生澪――――!!」


皆の名前が呼ばれた。
と思った瞬間、僕が最後だということに気づく。
心臓が高鳴る。
なんて呼ばれるんだろ?


「彼が操るのは破壊の力!敗北の運命を打ち破り、勝利の運命を作りだす!!彼の運命はどこへと導かれるのか!?相馬十悟――――――――!!」


司会の声が今でも心に響いている。
そんな気がする。
選ばれしデュエリストが21人揃う壮観な風景だ。



「大会には賞品がつきものだ!!優勝したチームには―――――世界中に散らばる、遊城十代を始めとした伝説のデュエリスト達に挑戦する権利が与えられるぞぉ!さらに超強力なレアカードも賞品として用意されているぞ!!それは明日、ペガサス氏から直々に発表される予定だ!!明日は絶対会場に足を運んでくれよな!!」


伝説のデュエリストへの挑戦権!
超強力レアカード!
デュエリストを本気にさせるには十分な賞品だ。


「(遊城十代への挑戦権か!)」

「十悟!今、遊城十代とデュエルする自分を想像してたんじゃない?」


朝子が笑顔で話しかけてくる。


「あの時から僕の目標だからね。それは朝子も同じだろ!?」

「うん!こればっかりは譲れないよ!!」


幼少時代に出会った伝説のデュエリスト!
彼らは今、遥かな高みで僕らを待っている。
もし挑戦できるなら、そのデュエルの先に何が待っているのだろう?




「さあ皆!!夕食を済ませたら、8時に10階のミーティングルームに集合だ!大会に臨む前に話がある。」


黒須先生が僕らを集めてそう言った。
はっきりとした口調!真剣な顔!
先生も本気だ。
それを言い終わると先生は会場を後にした。


僕らは夕食を取ることにした。
パーティ料理はたくさん用意されていたし、おいしかった。
そんな当たり前なことは今の僕らにはどうでも良かった。


童実野校もアカデミアのメンバーも作戦会議のために監督と出て行ってしまった。
この大会では誰がいつ誰と戦うかが重要なのはもちろん、2つあるタッグデュエルの勝敗を左右する。そのためタッグを組む者同士が綿密にデッキを調整する必要がある。


「僕らも行こう!!」


揃って前夜祭の会場を出た。
10階は僕らの部屋がある。
もちろん皆個室だ。




「みんな!よく来た!まずこれを見てほしい」


黒須は部屋に置かれたホワイトボードをひっくり返す。
そこには戦う順番。つまりオーダーが書かれていた。



S(シングル):明智迎人
T(タッグ):反町朝子、六道久美
S(シングル):宝生澪
T(タッグ):木村智花、森崎いつき
S(シングル):相馬十悟



「シングルの最初は迎人だ。切り込み隊長と言っていい。まずは1勝を勝ち取ってもらいたい!!!」

「オッス!!」


迎人は大きな声で返事する。
黒須の期待が身にしみているのだろう。


「タッグの最初は朝子と久美!!2人は親友同士で、お互いのデッキを知った仲だ。基本戦術は久美のロックバーンを朝子が守ってやればいい!!もちろん隙あらば真っ向勝負で行くのもいい!!」


「はい!!」


朝子と久美は顔を見合わせ同時に返事した。
それだけ信頼し合っているのだ。


「次のシングルは澪!!宝玉獣の特性上、仕方ないというのも理由の1つだ。だが、宝玉獣は強い!!何よりこのカードたちを使いこなせるのは澪だけだ!!」


「うち!!頑張る!!」



「次のタッグは智花といつき!!特殊召喚が容易な植物族デッキと組み合わせることでシンクロ召喚がしやすくなると思ってのタッグだ!!」


「分かりました」

「了解です!!」

智花といつきが言う。
新たな可能性を見出した。
そんな感じだ。


「最後は十悟!!お前が絶対勝つと信じている!それだけだ!!」


全員に一言ずつアドバイスしてくれた。
いよいよ大会が始まる。
皆の目がキラキラと光っているのが分かった。

「みんな!!明日は絶対勝とう!!」




5章:童実野のエース!逆襲のエクゾディア使い!

「ふざけるな!!何で俺が真っ先に戦わなければいけないんだ!!相馬十悟と決着つけるためにはこんなところでデュエルはできない!!十中八九、アイツは大将!!アカデミアのザコとやるのも俺のプライドが許さない!!」


阿紋鏡介は大声を上げて机を叩く!!
そんな彼をまっすぐ見つめる瞳。
白峰は鏡介とチーム全員を見渡すようにしてしゃべる。


「これはお前のためでもあり、チームのためでもある!!」

「わかんねえよ!!何でだよ?」


納得いかずに白峰に詰め寄る。
それを淳也が止めようと手で制す。
白峰は少し考えて口を開く。


「ふう!仕方無い!本当のことを言いましょう。私は君がいずれプロの世界で活躍するデュエリストになると信じている。これは秘密の話だが、プロのスカウトも何人か見に来ている。これはチャンスだ!高卒でプロになれるデュエリストは数少ないということを分かってほしい!!」


白峰は一気に話を進める。
それをメンバーは息を呑んで見守る。


「く!!わかりましたよ!!相馬十悟との決着は別の機会で、プロの世界でやれってことか。話はこれで終わりですね?俺は部屋に戻ります!!」


鏡介はミーティングルームを飛び出した。
部屋のドアを勢いよく閉めてベットに横になる。


「くそ!何のための大会だよ!!」


童実野高校のメンバーも解散し、部屋に戻っていく。
白峰はヤレヤレといった表情で資料をしまう。


「白峰さん!!俺は相馬十悟とクラスメイトだったこともあるし、本気のデュエルでぶつかり合った。だから分かるんだが、あいつはおそらくプロの世界には来ない!!」


淳也ははっきりと白峰に意見する。
白峰は淳也を見つめて言葉を返す。


「プロの世界でやるっていうのは彼が言いだしたこと。『デッキを持ったデュエリストが集まればそこでデュエルができる!!』私と黒須にデュエルを教えてくれた人の言葉だ。お前なら二人を繋ぐことができる!!!」

「ようするに、俺が別の機会に二人がデュエルできるときを作ってやれと!!了解しましたよー。」


白峰に上手く乗せられたようで淳也も少し不機嫌だ。


「行くぞ!悪魔の調理師!!」

(まったく、くえない教師だな!!でもお前がついていくと決めた男だ!俺は信じている、童実野の勝利を!!)

彼の精霊、それが悪魔の調理師だ。
精霊の目的を淳也は知らないが、互いに信頼し合っている。
だからこそ童実野のbQまで登り詰めることができたのだろう。

「フン!心にも無いことを!!」

悪魔の調理師は淳也のデッキに戻っていった。
淳也はデッキをもう一度確認するために部屋に戻った。
デッキを広げて最終調整に入った。





「ククク、あれが童実野で唯一の精霊を使うデュエリスト!!だが精霊がアレでは・・・。僕らの敵では無いということか!問題なし。優勝はアカデミアで決まりだな!!」


廊下でつぶやく少年が一人!
彼はゆらゆらと暗闇に向かって歩いていく。
淳也はそれに気づいていない。


「デュエルアカデミア、オベリスクブルー3年の影沼孝太。別の意味で要注意人物ですね。大会は万全を期しているはずですが・・・。」


白峰は一言そう呟いた。
そして彼も自分の部屋へと戻っていった。
















十悟の部屋


「うーん、このカードはやっぱり入れるべきかな。」


デッキ調整をしっかりしておくのはデュエリストの常識・・・。
と黒須先生は言っていた。
多分みんなも自分の部屋でカードを広げているころだろう。


ドックン!!


「うっ・・・。うわあああああ」


突如、僕の体を激痛が襲う。
そして心の底からおぞまし声が聞こえる。


(出セ、ココカラ出セ・・・)


「この声?」


(ソウ、貴殿ニ言ッテイルノダ。我ハ欲シテイル!心ノ闇ヲ!)


「その前にどうしてあなたはそこにいるのですか?僕はそんなこと許可した覚えはありませんよ。」


(忘レタカ?異世界カラコノ世界ニ戻ルトキ、『本の精霊ホークビショップ』ガ貴殿ニ施シタ術式!我ガ魂ヲ封印スルコトデ次元ヲ渡ッタ)


「そうか!知らなかった・・・。でも運命の神が解放されたら災いが訪れることを僕は知っている。残念だけど出すわけにはいかないよ」


それ以後、声は聞こえてこなかった。
大丈夫!僕がしっかりしていれば・・・。

気分も悪かったしすぐにベッドに入った。
明日は大会!



「勝ちたいな・・・」













次の日


大会の開会式が行われている。
ペガサスがステージに上る。

「本来ならここで海馬ボーイ・・・失礼、ミスター海馬より激励をいただくところデースが所用で来られないと聞いてマース!私から賞品の発表シマース!最初に優勝した学校にはこのカードが贈られマース!」


ペガサスが発表すると同時にスクリーンに3枚のカードが映される。
それは醜悪そうな姿が映しだされいる。


「運命の神!?」


僕は思わず声を上げる。
一瞬、周囲の注目を浴びてしまい、まずいことを言ったと思った。
ディスティニーブレイカー、ディスティニークリエイター、そしてその2枚以上に凶悪そうな風貌をもつモンスターだ。

ペガサスは僕を見てわずかに微笑む。
そして軽く咳ばらいをする。


「そう、言うならば運命の神!!武藤遊戯の持つ神、アカデミアの幻魔にも匹敵するでしょう!!」


ペガサスはさらに続ける。


「そして、最優秀デュエリストにはこのカードを・・・」

再びカードがスクリーンに映される。
今度は6枚ある。
地、水、炎、風、光、闇の文字が刻まれたカードだ。


「十悟君、あれはもしかして?」


智花が声を上げる。
言われなくても分かった。


「印章のカード!」


僕よりも早く朝子が言う。
そしてさらに続ける。


「会長さんは何を考えているのよ!!あんな危ないカードを賞品にしたり・・・。」

「多分、ここで優勝する人たちにカードを管理してほしいってことじゃないかな。印章のカードは効果こそわからないから・・・くぅ・・・」


またあの時と同じ激痛!
しかも強まっている?
カードが近くにあるからか。


「どうした十悟?」


迎人たちが心配そうに僕を見る。
これからデュエルなんだ。
余計な心配はさせない。


「大丈夫!!なんでもないよ!!」


本当は立っているのも嫌だった。
でも相談しても・・・。






「それでは対戦カードの発表だ!スクリーンに注目してくれ!!」

実況が声を上げる。
そして組み合わせが発表された。





1回戦、尾瀬呂学園高等部VS童実野高校
2回戦、童実野高校VSデュエルアカデミア
3回戦、デュエルアカデミアVS尾瀬呂学園高等部




「初戦は伊東君のいる童実野か・・・。」


激痛で声が裏返っていたかもしれない。
気分は・・・良くない。




6章:迎人出陣!召喚神の恐怖!

メンバー表を提出している黒須先生を待った。
そして僕たちは先生の元に集まっていた。


「順番に変更はない!!最後にリーダーから一言頼む!!」


黒須が言うとみんな僕の方を見る。
そんな柄じゃないんだけどな・・・。


「今ここで、このメンバーで戦えることを誇りに思う!!みんな、絶対に勝とう!!」


ゆっくりと皆の顔をみる。
みんな闘志に満ちあふれた顔だ。
その表情に少し元気をもらった気がする。
少し気分が楽だ。


「よっしゃ、行ってくるぜ!!」

迎人がディスクを装着する。
そして走ってステージに上る。
ステージ上では対戦相手が待っていた。


「やはり貴様か・・・」

「何だよ!?」



わずかに交わされた会話はこの2人しか聞こえていなかった。



「それでは、尾瀬呂学園高等部『明智迎人』VS童実野高校『阿紋鏡介』のデュエルを開始します!両者はデッキをカット!!」


審判に促され、デッキをカットする。
いつも以上の緊張感を迎人は感じていた。



「デュエル!!」



明智迎人:LP8000
阿紋鏡介:LP8000



「俺の先行カードドロー。くそ!手札が悪い!手札から『神獣王バルバロス』をリリース無しで召喚!!さらに『おろかな埋葬』発動!!墓地に送るのは『黄泉ガエル』だ!!これでターンエンド!!」



神獣王バルバロス ☆8 地属性 獣戦士族
ATK3000 DEF1200
「このカードは生け贄なしで通常召喚する事ができる。その場合、このカードの元々の攻撃力は1900になる。3体の生け贄を捧げてこのカードを生け贄召喚した場合、相手フィールド上のカードを全て破壊する。」



黄泉ガエル ☆1 水属性 水族
ATK100 DEF100
「自分のスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在し、自分フィールド上に魔法・罠カードが存在しない場合、このカードを自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。この効果は自分フィールド上に「黄泉ガエル」が表側表示で存在する場合は発動できない。」



おろかな埋葬 通常魔法
「自分のデッキからモンスター1体を選択して墓地へ送る。その後デッキをシャッフルする。」




「上級モンスターを妥協召喚か!!つまらない戦術をとったな!!俺のターン。ドロー。俺は手札からフィールド魔法『封印解放フィールド』を発動!!さらに『封印されし者の右腕』を攻撃表示だ!!」

「な?そんな雑魚モンスターを攻撃表示?」

「ふん!!どっちが雑魚か教えてやるよ!!」


鏡介は驚く迎人をよそにデュエルを進める。


「いくぜ、『封印解放フィールド』はフィールド上の『封印されし』と名のついた
モンスターの攻撃力を2000ポイントアップさせるのさ!!そしてフィールド、墓地、除外ゾーンからの封印パーツ回収能力がある!」


鏡介がカードの説明を続ける。



封印されし者の右腕 ☆1 闇属性 魔法使い族
ATK200 DEF300
「封印された右腕。封印を解くと、無限の力を得られる。」



封印解放フィールド フィールド魔法
「フィールド上の『封印されし』と名のつくモンスターの攻撃力は2000ポイントアップする。次の効果は1ターンにそれぞれ1回ずつ使える。●フィールド上の『封印されし』と名のつくモンスターを手札に加える。●手札を1枚捨てることで墓地の『封印されし』と名のつくモンスターを手札に加える。●ライフを2000支払うことでゲームから除外されている『封印されし』と名のつくカードを手札に加える。」



「まだだ!!『闇の誘惑』発動!!手札を2枚ドローし、『封印されしエクゾディア』を除外!!さらに『ワン・フォー・ワン』発動!『マッド・リローダー』を墓地に送り、デッキから『封印されし者の左腕』を特殊召喚!!バトル!右腕でバルバロスを攻撃!エクゾードパンチ!!」



明智迎人:LP8000→7700
阿紋鏡介:LP8000



封印されしエクゾディア ☆3 闇属性 魔法使い族
ATK1000 DEF1000
「このカードに加え、「封印されし者の左足・右足・左腕・右腕」が手札に全て揃った時、勝利が決定する。」



封印されし者の左腕 ☆1 闇属性 魔法使い族
ATK200 DEF300
「封印された左腕。封印を解くと、無限の力を得られる。」



マッド・リローダー ☆1 闇属性 悪魔族
ATK0 DEF0
「このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分の手札からカードを2枚墓地へ送り、自分のデッキからカードを2枚ドローする。」



闇の誘惑 通常魔法
「自分のデッキからカードを2枚ドローし、その後手札の闇属性モンスターカード1枚をゲームから除外する。手札に闇属性モンスターカードがない場合、手札を全て墓地へ送る。」



ワン・フォー・ワン 通常魔法
「手札からモンスター1体を墓地へ送って発動する。手札またはデッキからレベル1モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。」



「左腕で追撃だ!!エクゾードチョップ!!」

「くそ!!こんな雑魚モンスターに!!」


明智迎人:LP7700→5500
阿紋鏡介:LP8000



「ターンエンドだ!!」




「俺のターン。ドロー。(フィールド魔法を破壊すれば、あいつの戦術は崩壊する。だが、今それを破壊するカードは無い!さてどうする?)まず、『黄泉ガエル』を復活させる!それならこいつを発動させるぜ!『モンスターゲート』、『黄泉ガエル』をリリースしてモンスターを召喚する!!来い『青氷の白夜龍』!!」



青氷の白夜龍 ☆8 水属性 ドラゴン族
ATK3000 DEF2500
「このカードを対象にする魔法または罠カードの発動を無効にし、それを破壊する。自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターが攻撃対象に選択された時、自分フィールド上の魔法または罠カード1枚を墓地に送る事で、このカードに攻撃対象を変更する事ができる。」



「バトル!!右腕を粉砕しろ!ブリザード・バースト!!」



明智迎人:LP5500
阿紋鏡介:LP8000→7200



「ターンエンド!!」




「俺のターン。ドロー。ふふ、おあつらえ向きのカードが来たな!俺は手札から『欲望の追求者』を攻撃表示で召喚!!バトル!青氷に攻撃しろ!!」

「何?攻撃力0で攻撃だと?」



欲望の探究者 ☆4 闇属性 魔法使い族
ATK0 DEF0
「このカードが自分のターンのバトルフェイズ、1番最初に戦闘で破壊され墓地に送られたとき手札をすべて捨てて発動する。このカードを破壊したモンスターのレベル分だけカードをドローする。自分がこの戦闘でダメージを受けなかった場合、この効果は無効となる。」



明智迎人:LP5500
阿紋鏡介:LP7200→4200



「こいつには効果があるのさ!!俺は手札をすべて捨てて、8枚ドローだ。そして俺のメインフェイズ2!ふふふ。ははははは!!ショータイムだ!!」





「行くぜ『成金ゴブリン』発動で1枚ドロー。『手札団殺』で2枚捨てて2枚ドロー。『カップ・オブ・エース』でコイントス!表!2枚ドロー。2枚目の『闇の誘惑』発動!2枚ドローして『冥界の使者』を除外!!さらに『魔法石の採掘』、手札を2枚捨てて『闇の誘惑』を手札に加えて発動!!カードを2枚ドローして、1枚除外だ!!」



成り金ゴブリン 通常魔法
「デッキからカードを1枚ドローする。相手は1000ライフポイント回復する。」



手札団殺 速攻魔法
「お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする。」



カップ・オブ・エース 通常魔法
「コイントスを1回行い、表が出た場合は自分のデッキからカードを2枚ドローし、裏が出た場合は相手はデッキからカードを2枚ドローする。」



魔法石の採掘 通常魔法
「手札を2枚捨てて発動する。自分の墓地に存在する魔法カード1枚を手札に加える。」






「く、やりたい放題しやがって!!」


「勝負はついたな」




『封印解放フィールド』の効果発動!!まず、フィールド上の『封印されし者の右腕』を手札に加える。そして手札の『キラートマト』を墓地に送り『封印されし者の左腕』を手札に加える。最後にライフを2000支払いゲームから除外している『封印されしエクゾディア』を手札に加える!!」


鏡介は手札を5枚見せる。
それをディスクに認証させる。
次の瞬間、無敵のモンスターが姿を現す。


「雑魚は消えな!怒りの業火エクゾードフレイム!!!」


圧倒的な力でフィールドのドラゴンを粉砕していく。
その攻撃はモンスターだけでなく迎人に直撃する。
衝撃で迎人は倒れ込む。


「はーははっはは!エクゾディアよ!すべて燃やしつくせ!燃やせー!燃やせー!!」


鏡介は高笑いを続ける。
それが会場に響いている。


「しょ、勝者『阿紋鏡介』!!まずは童実野高校が1勝だ。さすがは童実野のエース、素晴らしいデュエルでした!!ではインタビューを・・・」


鏡介はマイクをもぎ取る。


「いいか!!最強はこの俺だ!この先も勝ち続けていずれデュエルキングになってやる!!もう一度言うぜ!!最強はこの俺『阿紋鏡介』だ!!」


会場が一気に盛り上がる。
こうしたカリスマ性のあるデュエリストも人気があるらしい。
海馬瀬人しかり、万丈目準しかり。


「くそ!!」


迎人は地面をたたく。
そんな彼に近づく影があった。


「迎人、やっぱりそのデッキに未練があったんだな。」


黒須はゆっくりと迎人の元に近よる。
迎人は顔を上げる。


「すいません。どうしてもこいつらを大会の舞台に立たせてやりたくて!!」

「迎人、お前のしたことは間違っている!!この試合では1つ1つのデュエルの勝利が最終的なチームの勝利になる・・・・・・。でもデュエリストとして譲れないこともある。それは私もデュエリストだから分かる。次は勝て!!」


黒須はそう言って自分の席に戻った。
僕らはそれを見ているだけ。


「何て声を掛けてあげればいいんだろう?」


朝子と久美が席を立った。


「迎人君・・・」

久美が小さな声でいう。
それを遮るように朝子が続ける。

「本当にバカなことしてくれたわね!!これはチーム戦なのよ!!」

「返す言葉もねえ。」

迎人はしゅんとして言った。
まだマイナスオーラを纏っている。


「久美、勝つわよ!!」

「う、うん!!」



二人はステージに上がる。
会場は見渡す限り人だった。







「遅いわよ久美!!」


その女の子は久美に向かって呼び掛ける。
黒髪に凛とした顔つき。


「ミヤちゃん!?ミヤちゃんが相手?」

「久美、知ってるの?」


朝子が驚いて尋ねる。


「五階堂ミヤちゃん!バイト仲間だよ!!魔法少女喫茶で黒魔導師クランのコスプレしている。」




魔法少女喫茶!
メイド喫茶の霊使いバージョンだ。
ここからはそれができるまでの物語。
興味がない人は飛ばしてください。








男は魔法少女に魅せられた44歳!
週3くらいで秋○原に通う無職。NEETと言っていい。
そんな男が店を持つようになったのはある事件がきっかけだ。
彼の兄貴はジャンキースコーピオンというショップを経営していたのだが、数年ほど前にサソリの毒で入院して以来、この店を任せると言われたのだ。
元々シューズには興味無かった。
そこで思い切って改装する決意をしたのだ。

ヲタクの友人それを打ち明けたのは丁度メイド喫茶だった。
ただのメイド・・・と言っては語弊があるかもしれないが、最近は数多くのメディアでも取り上げられ珍しいものではなくなっていた。
これではいずれ商売は行き詰る!男はそう直感したのだ。友人も大方同じ意見だった。

そんな彼が肌身離さず持ち歩くカードがあった。
地麗使いアウス、水霊使いエリア、火霊使いヒータ、風霊使いウィン、黒魔導師クラン、白魔導士ピケル!!


彼はふと思った。


彼女たちが喫茶店で出迎えてくれたら?
一緒に楽しくデュエルできたら?




店の改装工事が始まったのはその1週間後だそうだ。
完成にはあまり時間が掛からなかった。
むしろ家具や衣装を作るのに時間が掛かったくらいだ。





完成後、男は童実野駅に立った。

駅からは約5分!立地条件としては悪くない。
建物は童実野町の路地裏を少し入ったところにある。
外観は黒を基調にした洋風の建物だ。
シルクのカーテンが掛かっていて外から中をうかがい知ることはできない。
扉を開けるとそこにはアンティーク(ギアではない)の家具が並べられている。
そこでは魔法少女が迎えてくれる。
今のところバイトは6人!

山地一美:地麗使いアウス
水野双葉:水霊使いエリア
火比野三奈代:火霊使いヒータ
四条風子:風霊使いウィン
五階堂ミヤ:黒魔導師クラン
六道久美:白魔導士ピケル



メニューもいろいろ工夫した。


ホットケーキには好きな魔法少女の焦げ跡が付くように工夫し、それと同じ格好をしたウエイトレスがお客様の元まで届ける。

特性パフェはアウスの子が運ぶ時に「バナナ味」、エリアの子なら「ブルーベリー味」、ヒータの子なら「ストロベリー味」、ウィンの子なら「メロン味」、クランの子なら「チョコレート味」、ピケルの子なら「ヨーグルト味」と楽しめるようになっている。


食事の後は彼女たちとデュエルができる。
勝つと特製のプロモカードがもらえるということもあり、とある人種・・・じゃなくても大人気だ!
時には30分以上待つこともある。
その度に飲み物を注文して待つ人もいるそうだ。


さあ!君も魔法少女喫茶へ!!
彼女たちは君が来るのを待ってるぞ!!!







今回は終わりですよ・・・。




7章:朝子が仕掛ける真の罠

「ミヤちゃん、そろそろ・・・。」

「悪かったわね。紹介が遅れちゃったわ。私のタッグパートナーで彼氏の王崇陳(ワン・スーチェン)よ!中国からの留学生よ!」


ミヤは彼を自慢して満足そうに笑う。
アジア系の顔なので一見すると日本人と変わらない。
誠実そうな顔をした少年だ。


「ミヤちゃん!魔法少女は恋愛禁止だよ!みんなの物なんだから!」

「久美、今の問題はそこじゃない・・・」

朝子は普通にツッコミを入れるが久美は聞いてない。
二人はさらに話を続ける。

「恋愛は個人の自由よ!!それに久美、愛を知らない者に真のサービスはできないわよ!!!」


「がーん!!」


久美は一気に崩れ落ちる。
自分だって恋したくないわけじゃないのに・・・。


「いいからデュエル始めるわよ!!」


朝子は久美を助け起こしながら言う。


「あなたも恋人いないでしょう?見るからに一生仲のいい女友達で終わりそうな顔しているもの!」

「な、ななな何言ってるのよ!!」


明らかに動揺する朝子にミヤはさらに追い打ちを掛ける。


「さっきから仲間の方を見てるけど好きな人がいるのね!!ふんふん」


ミヤは尾瀬呂の3人を見渡す。
そして一呼吸置いて口を開く。


「まず、茶髪の美少年君じゃないわね。ていうか私が認めない!!」


いつきを指さしてさらりと言う。
そして少し笑いながら続ける。


「あと背が高いけど圧倒的に地味な彼でもないわ!」


彼女の指は間違いなく僕を刺している。
地味かな?
迎人や淳也が笑いを堪えているのが分かる。


「と、いうことは・・・鏡介に負けたちょっとバカっぽいあいつね!!確か店でも仲良さそうだったし。でも彼の気持ちはどう・・・」

「はいはい!勝手にそう思っているといいわ」

「そ、そろそろデュエルにしましょう」


久美が気を利かせて言った。
これ以上怒らせてしまうと大変だと思ったのだろう。



3人は久美の言葉に促されてデッキを相手に渡してカットを始める。





「デュエル!!」



朝子&久美:LP8000
ミヤ&王:LP8000


ターン交代:朝子→ミヤ→久美→王



「私のターン。ドロー。リバースカードを5枚伏せてターンエンド。」

朝子のフィールドに5枚のカードが並ぶ。
だがその中にモンスターカードは1枚も無い。

「あらあら!手札事故かしら?でも私は容赦しないわよ。」

ミヤが笑っている。
童実野高校のメンバーも心の中で笑っているに違いない。


「朝子は罠を張っている!」


その時僕はあることを思い出した。
大会が決まったあの日、僕の家を訪れたときに見せてくれたあのカードなら!


「そりゃ、あれだけ伏せカードがあれば・・・」

「バカね!私はあの店であなたたちとデュエルしてるのよ。当然、その戦術に対する対抗策も用意している。私のターン。ドロー。」


迎人の言葉を遮るようにミヤがターンを進める。


「うふふふ、私は手札から『黒魔導師クラン』を召喚!そして『黒魔導術−破魔』を発動!!相手の魔法・罠カードを破壊する!!そしてこの効果にチェーンすることはできない!すべてを消してあげるわ!!」



黒魔導師クラン ☆2 闇属性 魔法使い族
ATK1200 DEF0
「自分のスタンバイフェイズ時、相手フィールド上に存在するモンスターの数×300ポイントダメージを相手ライフに与える。」



黒魔導術−破魔 通常魔法
「自分のフィールド上に『黒魔導師クラン』がいる時のみ発動できる。相手の魔法・罠ゾーンのカードをすべて破壊する。このカードにチェーンすることはできない。」



黒のドレスを着た魔法少女が呪文を唱え始める。
次の瞬間、黒き魔法の塊がフィールドを包み込む。
その塊はカードを1枚ずつ破壊していく。


「魔導術は自分のカードも相手のカードもチェーンできない。ゆえにあなたのカウンター罠は無意味!」

「ふふ。あははははは!!カウンター罠が無意味?いいえ!私はこの時を待ってたのよ!!手札にあるこのカードを特殊召喚する!!来て『龍神天帝−ドグルニス』!!」


白き羽衣に包まれた天使が現れる。
その天使には龍の鱗を持つ龍と天使の混血モンスターだ。
龍頭を持つ杖を構えて攻撃態勢を取る。


「な、何このモンスター?」

「このモンスターは相手のカード効果でカウンター罠が破壊されたとき特殊召喚することができる!!」



龍神天帝−ドグルニス ☆9 光属性 天使族
ATK3000 DEF2700
「自分のフィールド上にセットされたカウンター罠カードが相手のコントロールする1枚のカードによって3枚以上破壊された場合、このカードを特殊召喚できる。この効果で特殊召喚されたこのカードをコントロールするプレイヤーは自分のメインフェイズに墓地のカウンター罠カードを5枚まで手札に加えることができる。」



「ふふふ、無意味じゃないのよ!カウンター罠はね!!」


朝子は笑いながら言う!



「カードを2枚伏せてターンエンドよ。(伏せカードの1枚は『炸裂装甲』。罠カードは伏せたターンに発動できない。あの子が攻撃してくれれば!)」



「わ、私のターン。ドロー。メインフェイズ1までいきます。カウンター罠を全部手札に加えます。も、持つのが大変ね。リバースカードを4枚伏せます。そして私は『シャイン・エンジェル』を攻撃表示で召喚!!バトル!シャイン・エンジェルでクランに攻撃!!」


「来た!!罠発動『邪神の大災害』、このカードで再びカウンター罠は墓地行きよ!!罠カードは伏せたターンに発動できない!!基本中の基本よ!久美!!」


セットされたカードが次々と破壊されていく。
久美のフィールドにはモンスターだけが残った。



シャイン・エンジェル ☆4 光属性 天使族
ATK1400 DEF800
「このカードが戦闘によって墓地へ送られた時、デッキから攻撃力1500以下の光属性モンスター1体を自分のフィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。その後デッキをシャッフルする。」



邪神の大災害 通常罠
「相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。フィールド上に存在する魔法・罠カードを全て破壊する。」



「残念だったわね。でもこれが現実よ!!」

ミヤが笑いながら言う。
久美は破壊されたカードを墓地に送る。
そしてまっすぐ相手を見据える。


「ミヤちゃん!これなーんだぁ?」


久美が笑顔で1枚のカードを見せる!


「『マジカル・プライマリー』なの?か、回収したカウンター罠じゃない!!」

「そ、私たちだって簡単には負けないよ!『マジカル・プライマリー』の効果はこのカードがフィールドまたは手札から墓地に置かれたとき、攻撃力1200の魔法使い族モンスターを2体まで呼び出せる!!」



マジカル・プライマリー 通常魔法
「このカードが手札またはフィールド上から墓地へ送られた時、自分のデッキから攻撃力1200の魔法使い族モンスターを2体まで特殊召喚することができる。」



久美のフィールド上に魔法の館が現れる!!
そこには2人の少女の影がある。


「Die Schone Frau!!王女と言う身分を捨てて偉大なる魔法使いの元で修行した魔法少女にのみ与えられる最強の称号!出でよ『ピケル- Die Schone Frau』『クラン- Die Schone Frau』!」


ピンクの髪に優しそうな顔!
魔法石がついた長い杖を持った少女!

そして自分の身長以上はある鞭!
キリっとした顔つきの少女!

2人が久美のフィールド上に現れる!!



ピケル- Die Schone Frau ☆8 光属性 魔法使い族
ATK1200 DEF0
「このカードは戦闘では破壊されない。このカードが戦闘する時、相手モンスターの攻撃力分のライフを回復する。このカードが戦闘することによって発生するダメージは0となる。」



クラン- Die Schone Frau ☆8 闇属性 魔法使い族
ATK1200 DEF0
「このカードは戦闘では破壊されない。このカードが戦闘する時、相手モンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。このカードが戦闘することによって発生するダメージは0となる。」



「私のクランで、ミヤちゃんのクランに攻撃!アルティミー・ロング・ウィップ!!」


成長したクランは自分の過去を消し去るかのように鞭で少女を巻き取る!
呪文を唱えた次の瞬間、鞭に巻かれていたモンスターが消える!


「モンスター効果!!相手に1200ポイントのダメージ!!そして私のクランは破壊されない!!さあピケル!追撃よ!!アルティミー・クラッシュ!!」


ピケルの杖から次々と魔法弾が放たれていく!
それがミヤに直撃する!


「シャイン・エンジェルでダイレクトアタック!!」


ミヤ&王:LP8000→6800→5600→4200


「最後にドグルニスで攻撃!!ドラゴニア・ダスティ!!」

「させない!!『炸裂装甲』発動よ!!そのモンスターを破壊!!」


何かがミヤを守る!
その装甲に触れると龍の鱗を持つ天使が砕け散った。


「詰めが甘いわね!!」




「ご、ごめん朝子・・・。」

「ドンマイ、ドンマイ!!久美のエースを召喚したんだから落ち込まないの!」


朝子が優しく励ます!!
その一方でちょっと困った顔をする・・・。


「カードを2枚伏せてターンエンド!!」


久美は深く深呼吸してターンを終えた。
そしてまっすぐ相手を見る。




8章:愛の力?

「僕のターン。ドロー。ミヤちゃん、僕に任せて!!手札から『ブレイズ・キャノン』発動!」

「久美!!」

「うん!セットした『魔宮の賄賂』発動!!その効果を無効化します!!」



魔宮の賄賂 カウンター罠
「相手の魔法・罠カードの発動と効果を無効にし、そのカードを破壊する。相手はデッキからカードを1枚ドローする。」




「だったら僕はその効果で1枚ドロー。よし2枚目の『ブレイズ・キャノン』だ!発動!!そして『ヴォルカニック・ロケット』召喚!効果発動、『ブレイズ・キャノン−トライデント』を手札に加えて発動!!さらに、手札の『ブレイズ・キャノン−アルテマ』を発動する!」



ブレイズ・キャノン 永続魔法
「手札から攻撃力500ポイント以下の炎族モンスター1体を墓地へ送る事で、相手フィールド上に存在するモンスター1体を破壊する。この効果を使用したターン、自分のモンスターは攻撃する事ができない。」



ブレイズ・キャノン−トライデント 永続魔法
「自分フィールド上に表側表示で存在する『ブレイズ・キャノン』1枚を墓地へ送って発動する。手札から炎族モンスター1体を墓地へ送る事で、相手フィールド上に存在するモンスター1体を破壊し相手ライフに500ポイントダメージを与える。この効果を使用したターン、自分のモンスターは攻撃する事ができない。」



ブレイズ・キャノン−アルテマ 永続魔法
「自分フィールド上に表側表示で存在する『ブレイズ・キャノン−トライデント』1枚を墓地へ送って発動する。手札から炎族モンスター1体を墓地へ送る事で、相手フィールド上に存在するモンスター1体を破壊し相手ライフに500ポイントダメージを与える。この効果を使用したターン、自分のモンスターは攻撃する事ができない。1ターンに1度『ヴォルカニック』と名の付くモンスター1体をリリースすることでその攻撃力分のダメージを相手に与える。」



「『ヴォルカニック・バックショット』を捨てて効果発動!!さらに2枚の『ヴォルカニック・バックショット』を墓地送り、相手モンスターをすべて破壊だ!!ファイヤー!!」


鈍く光る銃口が久美のモンスターに向けられる。
散弾となったモンスターで久美のフィールドが爆炎に包まれる。
モンスターたちが次々と破壊されていく。


「(ごめん!モンスターたち)でも、ここは堪えないと!!」


「そして、アルテマとなったブレイズ・キャノンにはもう一つ効果がある。自分フィールド上の『ヴォルカニック』と名のついたモンスターをリリースしてその攻撃力分のダメージを相手に与える!!アルテマ・キャノン!!」


さらに強力な攻撃が久美を襲う!
それになんとか堪えて立ち上がる。



朝子&久美:LP8000→7000→5100



「カードを1枚伏せてターンエンドだ。」

「さっすが王!大好きよ!!」

「ミヤちゃんのためならたとえ火の中、水の中だよ!!」


二人は見つめ合う。
久美も朝子も観客もお構いなし。
完全に二人の世界に入っている。


「これが愛の力よ!愛を知らないあなたたちでは私達に勝てない!!ほら、好きな人の前で無様に負けたくなかったらさっさとサレンダーしなさい!」


「うるさい!うるさい!!うるさーい!!もう怒った!!絶対に勝ってやる!私のターン。ドロー。久美!ありがとね!あなたの選択、正しかった!!私はフィールドにセットされているカウンター罠を墓地に送って魔法カード『反逆者の宝札』を発動!!カードを2枚ドロー。」


「い、いまさら何ができるっていうのよ!!」


ミヤは少し動揺する。
朝子は手札を確認して考えを巡らす。


「(伏せカードは恐らく攻撃を無効にする『ファイヤー・ウォール』、罠を無効化にするカードは墓地にしかない!だったら攻める!!)魔法カード『トリプル・カウンター』発動!デッキからカウンター罠『昇天の黒角笛』『マジック・ドレイン』『天罰』をフィールドにセット!そして魔法効果で墓地へ!」



トリプル・カウンター 通常魔法
「デッキからカウンター罠を3枚までセットすることができる。セットされたカードを墓地に送ることで、次のターンのスタンバイフェイズに送った枚数分ドローすることができる。」



「次のターン。つまり、久美が3枚ドローするカードね。」

「私は墓地から『天罰』を除外して『冥界天使−ゾグラーヴ』を特殊召喚!!このモンスターの攻撃力は7000よ!!バトル!暗黒冥光弾!!!」



冥界天使−ゾグラーヴ ☆5 闇属性 天使族
ATK? DEF0
「このカードは墓地のカウンター罠を墓地から1枚除外することで生け贄なしで召喚できる。このカードの攻撃力は墓地のカウンター罠の数×1000となる。」



「罠発動・・・・・『魔法の筒』!!」


その罠は無情にも発動した。
赤い筒が現れ、天使の攻撃を吸収していく!

モンスターの攻撃が方向を変える。
次の瞬間、巨大な魔法攻撃は朝子を直撃した。



朝子&久美:LP5100→0



「あ、朝子・・・。」

「ま、負けた!悔しいー。熱くなりすぎてたの?しかもこれで尾瀬呂が2敗!もう後がない!!」 

朝子が崩れ落ちる。
ソリットビジョンの天使が徐々に姿を消していく。




「き、決まったー!!童実野高校の勝利だ!これですでに2勝!!チーム勝利に早くも大手だ!さっそく、勝利した2人にインタビューしてみましょう。ずばり、今回の勝因は?」



「もちろん、2人の愛でーす!!」


声をそろえた!!
幸せそうに帰って行く二人を眺めていることしかできない!
朝子たちの辛さが伝わってくる。






スタジアム女子トイレ


「次はウチの番だ・・・。どうしよう?ウチが負けたら尾瀬呂の負け。ウチが負けたら尾瀬呂の負け・・・ウチが負けたら尾瀬呂の負け・・・・。」


澪は洗面台の前で呪文のようにつぶやく。
いつもはのほほんとしている彼女も緊張している。
大舞台は初めて。しかもチームの敗北がかかった重要な一戦だ。


(とにかく会場に行かなきゃいけない。不戦敗だけは避けないと!!)


デッキから声が聞こえる。
宝玉獣が話しかけてくる。


澪は会場へと急ぐ。


「待ちな!!」

「だ、誰?」

「俺はカードプロフェッサーのマルク・ヒルド!!悪いがアンタを会場に行かせるわけにはいかないぜ!!なぜならこの試合、大会結果はもちろん一試合ごとに金が掛かっている。もちろん裏社会でのやり取りだから何千万というお金が動く。雇い主からアンタを試合終了まで会場に入れるなとの命令だ。」


澪は一歩ずつ後ろに下がる。
対して男はジリジリと澪に近づく。


「どこにでもいるな。デュエルを悪用する者は!!」

「澪?大丈夫?」


十悟といつきが二人の間に割って入る。
そしてデュエルディスクを構える。


「お前らも尾瀬呂の選手!!ここでデュエルしようってのか!!」

「彼女は試合で忙しい!!ここは僕が相手をする!!相馬、澪を連れて急げ!!」


澪はなずいて会場へと向かう。
曲がり角で振り向くといつき君がデュエルを始めたところだ。

階段を駆け上がり、ドームの中心の会場に急ぐ。
会場まであと一歩のところにもう一人男が立っている。


「待つのだ!!ここを通りたければ私にデュエルで勝つことだ・・・」

「ここは僕が!!」


デュエルディスクを展開する。
そして素早くデッキをセットする。


「デュエル!!」


相馬十悟:LP8000
男:LP8000


相手デッキ:35



「私のターン。カードドロー。私は『暗黒の狂犬』を攻撃表示で召喚!!カードを1枚伏せてターンエンド。(くくく、これは『炸裂装甲』。これでたとえ攻撃力が高いモンスターを出しても破壊できる)」



暗黒の狂犬 ☆4 闇属性 獣族
ATK1900 DEF1400
「かつては公園で遊ぶ普通の犬だったが、暗黒の力により凶暴化してしまった。」



「僕のターン。カードドロー。僕は魔法カード『トーチ・テンペスト』を発動!デッキから相手フィールドに『トーチ・ゴーレム』を特殊召喚して自分のフィールドにトーチトークン2体特殊召喚する。」

「トーチトークンで攻撃だ!!」

「ま、まさか?トーチ・テンペスト!ち、『炸裂装甲』発動!」

「もう一体トークンがいる!行け!!」


ひ弱なトークンが巨大なゴーレムに突進していく。
見たとおり自殺行為だが、これこそ十悟の必殺コンボ!



トーチ・ゴーレム ☆8 闇属性 悪魔族
ATK3000 DEF300
「このカードは通常召喚できない。このカードを手札から出す場合、自分フィールド上に『トーチトークン』(悪魔族・闇・星1・攻/守0)を2体攻撃表示で特殊召喚し、相手フィールド上にこのカードを特殊召喚しなければならない。このカードを特殊召喚する場合、このターン通常召喚はできない。」



トーチ・テンペスト 通常魔法
「自分のデッキから『トーチ・ゴーレム』1体を相手フィールド上に特殊召喚し、自分フィールド上に『トーチトークン』(悪魔族・闇・星1・攻/守0)を2体攻撃表示で特殊召喚する。発動ターンのみ手札の『テンペスト』と名の付くカードを発動することができる」



相馬十悟:LP8000→5000


「速効魔法『ヘル・テンペスト』発動!!そしてこの瞬間手札の『ヘブンズ・テンペスト』を発動する!!」

「て、手札から罠カードだと?」

「『トーチ・テンペスト』のもう一つの効果!発動ターンのみ、手札から『テンペスト』と名の付くカードを発動することができる。よって、『ヘル・テンペスト』にチェーンして『ヘブンズ・テンペスト』を発動!」



ヘル・テンペスト 速攻魔法
「3000ポイント以上の戦闘ダメージを受けた時に発動する事ができる。 お互いのデッキと墓地のモンスターを全てゲームから除外する。」



ヘブンズ・テンペスト 通常罠
「このカードは自分の発動した『ヘル・テンペスト』にチェーンすることによってのみ発動できる。お互いはデッキと墓地の魔法、罠カードをすべてゲームから除外する。発動後、お互いのプレイヤーは自分のターンの初めに手札を1枚捨てることで自分のドローフェイズをスキップすることができる。」


男はデッキを除外する。
召喚するはずだったカードが一度に除外されたショックは大きいようだ。


相手デッキ34→0


十悟は気にせずターンを進める。
そして迷わず次の一手を打つ。


「メインフェイズ2に移ります!!僕はゲームから除外している『烈風魔獣』『紅蓮魔獣』『幻光魔獣』をデッキに戻し、エクストラデッキから『魔獣騎士ラジル・キュームス』を特殊召喚!!」



魔獣騎士ラジル・キュームス ☆7 闇属性 戦士族
ATK2800 DEF2300
「『魔獣』と名のつくモンスター×3
ゲームから除外されている上記のモンスターをデッキの1番下に戻した場合のみ融合デッキから特殊召喚することができる。ゲームから除外されている、モンスターカード1枚をデッキの1番下に戻す事で、このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。このカードを特殊召喚する場合、このターンに『魔獣』と名のつく他のカードを特殊召喚することはできない。」



「だ、だが!まだトーチ・ゴーレムの方が攻撃力は上!」

「魔法カード『手札抹殺』発動!お互いは手札をすべて捨てて同じ枚数ドローする。ドローするカードがないあなたの負けです!!」


相手手札:0
相手デッキ:0



「ふふふ。悪には冷徹なまでのタクティクス!!うちの大将はすごいでしょう?リッツさん!」


振り向くといつき君がいる。
カードスイーパーの仲間らしき人と一緒に。


「初めまして!相馬十悟君だね。私はリッツ・ドートン!カードスイーパーズのリーダーをさせてもらっている。いつきの連絡で駆け付けた。どうやら、金持ちたちの道楽にハイエナたちがたかっているようだ!!あとは私たちに任せて試合を頑張ってほしい!!」


僕は黙って頷いた。
いつき君と一緒に歩きだしたそのとき。


「相馬君!君は、カードスイーパーズに入る気はないかな?」

「リッツさん!!」

「おっと失礼!今すぐでなくてもいい。考えておいてくれたまえ!!」


突然で驚いた。
自分の進路か・・・。
今はまだ分からないというのが正直なところだ。


「気にするな相馬!今は澪の応援に専念しよう!!」


気にしない・・・わけにはいかないと思う。




9章:激突!宝玉獣VSスピリット

澪はなんとか試合会場にたどり着いた。
相手は笑顔の似合う少年だった。
二人はデッキを交換しカットし始める。


「俺は神城大和!よろしく!!君が宝生澪さんだね。宝玉獣使いに選ばれたラッキーガールと聞いているよ。その相手に選ばれるなんて光栄だなぁ。ははは!!」


少年は爽やかに語る。
そしてカットしたデッキを澪に返す。
澪は黙ってデッキを受け取る。


「(ウチが負けた尾瀬呂はおしまい・・・尾瀬呂の負け・・・・尾瀬呂の負け・・・・。)」



宝生澪:LP8000
神城大和:LP8000



「デュエル!!」


二人が向かい合ってデュエルが開始される。


「ウチのターン。カードドロー。ウチはモンスターを裏守備表示でセットしてターンエンド。」


澪はどこか虚空を見ながらターンを終える。
その様子を仲間たちが心配そうに見つめる。


「俺のターンだね。ドロー。手札から『死皇帝の陵墓』発動!ライフを2000支払い、最上級モンスターを呼び出す!!出でよ『八俣大蛇』!!さらに装備魔法を3枚発動する。『草薙剣』『八尺勾玉』『八汰鏡』。俺は最初から全開だぜ!!」



神城大和:LP8000→6000



死皇帝の陵墓 フィールド魔法
「お互いのプレイヤーは、生け贄召喚に必要なモンスターの数×1000ポイントのライフを払う事で、生け贄モンスター無しでそのモンスターを通常召喚する事ができる。」



八俣大蛇 ☆7 炎属性 ドラゴン族
ATK2600 DEF3100
「このカードは特殊召喚できない。召喚・リバースしたターンのエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。このカードが相手プレイヤーに戦闘ダメージを与えた時、手札が5枚になるまでデッキからカードをドローする。」



草薙剣 装備魔法
「スピリットモンスターにのみ装備可能。装備モンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。装備モンスターが自分フィールド上から手札に戻る事によってこのカードが墓地へ送られた時、このカードを手札に戻す。」



八尺勾玉 装備魔法
「スピリットモンスターにのみ装備可能。装備モンスターが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの元々の攻撃力分だけ自分のライフポイントを回復する。装備モンスターが自分フィールド上から手札に戻る事によってこのカードが墓地へ送られた時、このカードを手札に戻す。」



八汰鏡 装備魔法
「スピリットモンスターにのみ装備可能。装備モンスターはエンドフェイズ時に手札に戻る効果を発動しなくてもよい。装備モンスターが戦闘によって破壊される場合、代わりにこのカードを破壊する。」



「これにより、俺のモンスターは貫通効果、破壊したモンスターの攻撃力分のライフ回復、そしてスピリット特有の手札に戻る効果を発動しなくてもよい!!バトルだ!屍山血河!!」



宝生澪:LP8000→7400



「ウチのモンスターは『宝玉獣 エメラルド・タートル』、このモンスターが破壊されると魔法・罠ゾーンに永続魔法扱いで置かれる!!」





宝玉獣 エメラルド・タートル ☆4 水属性 水族
ATK600 DEF2000
「このターン中に攻撃を行った自分フィールド上に存在するモンスター1体を守備表示にする事ができる。この効果は1ターンに1度しか使用できない。このカードがモンスターカードゾーン上で破壊された場合、墓地へ送らずに永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。」



「な、確かそのモンスターは伝説のデュエリスト、ヨハン・アンデルセンしか持っていないカードのはず・・・。何で?」

「・・・」


澪は何も答えずにいる。
ただ沈黙が続く。
大和は澪を見つめる。


「あの?」

「あ、ごめん。ターン進めてや!!」

「え、ああ分かった。相手に貫通ダメージを与えたので俺はカードをドロー。4枚だな。宝玉として場に残ったためライフは回復できずか。ターンエンドだ。」


大和はターンを終えた。
澪はまだ何かつぶやいている。


「ウチのターン。ドロー。ウチは『宝玉獣 オブシディアン・フォックス』を攻撃表示で召喚!!ターンエンドや。」



宝玉獣 オブシディアン・フォックス ☆4 闇属性 獣族
ATK1300 DEF1500
「相手バトルフェイズ時に表側攻撃表示のこのカードをゲームから除外することで相手バトルフェイズを終了する。自分のメインフェイズ時に除外されたこのカードを魔法・罠ゾーンに置くことができる。このカードがモンスターカードゾーン上で破壊された場合、墓地へ送らずに永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。」



「俺のターン。ドロー。手札から『地砕き』を発動!!そのモンスターを破壊する!!さらにライフを2000支払い『火之迦具土』を通常召喚!!」



火之迦具土 ☆8 炎属性 炎族
ATK2800 DEF2900
「のカードは特殊召喚できない。召喚・リバースしたターンのエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。このカードが相手プレイヤーに戦闘ダメージを与えた場合、次のターンのドローフェイズ時、相手はドロー前に手札を全て捨てる。」



地砕き 通常魔法
「相手フィールド上の守備力が一番高い表側表示モンスター1体を破壊する。」



神城大和:LP6000→4000


「火之迦具土のダイレクトアタック!!紅蓮滅殺拳!!」


大男の拳に炎が宿る。
その拳は徐々に勢いを増す。


「さらに八俣大蛇、屍山血河!!」


八又の竜の口からブレスが放たれる。
血のように黒みがかった炎だ。

2つの攻撃が澪に直撃する。



「くぅ・・・・」



宝生澪:LP7400→2200



「澪!!」


仲間たちが必死に叫ぶ。


「俺は手札が5枚になるようにドロー。火之迦具土を手札に戻してターンエンド!」


大和はまっすぐ澪を見る!


「ウチ・・・弱いな!」


(澪!みんなどこかに心の弱さを持っているのよ!)

小さな燕の精霊が話し掛ける。
母のような優しい言葉で!


(みんなに見せてやろうぜ!俺達の力を!)

白きライオンも彼女を勇気づける。
その言葉には父のような力強さがある。


「で、でもウチが負けたら尾瀬呂は・・・・」





「澪!!!」


「じゅ、十悟君!?」


「何か全然澪らしくないデュエルだよ!!大丈夫。勝っても負けても今日は最高の日になるよ!!僕は今ここで、このメンバーで戦えることを誇りに思う。澪は僕たちの仲間だから。そう最高の仲間だから!!」



澪の心に衝撃が走る。
ただ彼女には彼の言葉で恋心が・・・とか考えるタイプではない。
純粋に強さが湧いてくるのが分かる。
他のメンバーも澪を励ます。




「十悟君、みんな!!そうやね!ウチはもう迷わない!!」


澪は目を閉じて深呼吸する。
そして、しなやかな指をそっとデッキに当てる。
彼女のデッキがわずかに光り、鼓動するのを会場にいる何人が気づいただろう?





「ウチのターンやね!」

「君は『火之迦具土』の効果で手札を捨てなければならない!!」

「ええ!?そんなぁ!でもドローはできる。カード!ドロー。」


澪はカードを確認する。
しばらくカードを見つめながら戦略を練る。


「ウチは『宝玉獣 ジェード・ラビット』を攻撃表示で召喚!モンスター効果でデッキから手札に『宝玉の導き』を加える。そして魔法発動!『宝玉獣 パール・イエティ』を特殊召喚!このカードは相手モンスター1体を破壊できる!パール・インパクト!!」


巨大な地響きとともに八俣大蛇を地面が呑み込んでいく。
その地震を雪男が引き起こしたのは言うまでもない。



宝玉獣 ジェード・ラビット ☆2 地属性 獣族
ATK1000 DEF600
「このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから『宝玉の』と名のつくカード1枚を手札に加える。このカードがモンスターカードゾーン上で破壊された場合、墓地へ送らずに永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。」



宝玉獣 パール・イエティ ☆4 地属性 獣戦士族
ATK1700 DEF1500
「このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、相手フィールド上のモンスター1体を相手が指定して破壊する。このカードがモンスターカードゾーン上で破壊された場合、墓地へ送らずに永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。」




「プレイヤーにダイレクトアタック!!」


2体のモンスターが大和に攻撃を加える!
彼はそれに堪え、澪の方を見据えた。

神城大和:LP4000→1300



「(これで陵墓の効果で最上級モンスターを出されることはない!!)ウチはこれでターンエンド!」



「俺のターン。ドロー。(手札に『砂塵の悪霊』があれば俺の勝ちだったんだが・・・さてどうするか?)俺は墓地の『八俣大蛇』を除外して『大和神』を特殊召喚!さらに手札の『火之迦具土』を除外して『伊弉凪』を特殊召喚するぜ!」



大和神 ☆6 闇属性 戦士族
ATK2200 DEF1200
「このカードは通常召喚する事ができない。自分の墓地に存在するスピリットモンスター1体をゲームから除外した場合のみ特殊召喚する事ができる。特殊召喚したターンのエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、相手フィールド上に存在する魔法または罠カード1枚を破壊する事ができる。」



伊弉凪 ☆6 風属性 天使族
ATK2200 DEF1000
「このカードは手札のスピリットモンスター1体をゲームから除外し、手札から特殊召喚する事ができる。このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上に存在するスピリットモンスターはエンドフェイズ時に手札に戻る効果を発動しなくてもよい。」



「まっずいなぁ。『砂塵の悪霊』が来んで助かったけど・・・」


「バトル!!大和神でジェード・ラビットを攻撃!!さらにモンスターを破壊したのでフィールド上に存在する黒曜石の宝玉を破壊する!!そして伊弉凪で追撃だ!!」


2体の屈強な神が小さなウサギと雪男が力尽きて倒れる。
そして純白と緑の宝玉となって場に残る。



宝生澪:LP2200→1000→500



「どうだターンエンド!!大和神は伊弉凪の効果で手札には戻らない!!」




10章:逆転!トルマリン・プリズン!!

「(本当は怖い!次のカードを引くのが。ウチのドロー次第で尾瀬呂は・・・)それでもウチは諦めない!まだ可能性は残されている。カード。ドロー。」


澪は迷わずカードを発動させる。


「手札から『レア・ヴァリュー』を発動!宝玉を1つ墓地に送って2枚ドロー。」


澪はしばらくカードを見つめる。
何かを考えている。
そして少し笑顔を見せて微笑む。


「ウチは魔法カード『宝玉の選択』を発動!!フィールドに存在する宝玉の数だけデッキから宝玉獣のカードを選択して公開する。そして相手が選んだ1枚を魔法・罠ゾーンに置く!!ウチが選択するのは『宝玉獣 ガーネット・ホエール』と『宝玉獣 トルマリン・ドッグ』、さあ選んでや!!」



宝玉獣 ガーネット・ホエール ☆4 水属性 水族
ATK1800 DEF1600
「このカードが魔法、罠ゾーンに置かれた時フィールド上のモンスターすべてを持ち主の手札に戻す。このカードがモンスターカードゾーン上で破壊された場合、墓地へ送らずに永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。」



宝玉の選択 通常魔法
「自分の魔法・罠ゾーンにある『宝玉獣』と名の付くカードの数までデッキから宝玉獣のカードを選択して公開する。相手が選択した1枚を魔法・罠ゾーンに置き、残りのカードをデッキに加えてシャッフルする。」



大和はカードテキストを確認する。


「ガーネット・ホエールを選べばモンスターはすべて手札に戻ってしまう。だったら、トルマリン・ドッグを選ぶ!!さあ!正真正銘最後のカードだね!!」


勝利は目前!
大和はそう考えていた。

澪のフィールドには黄色く透き通った宝玉が置かれる。
客観的に見ても彼女の不利は分かる。
だが彼女は笑顔を絶やさない。

なぜなら、デュエルは彼女の思い通りに進んでいた。
澪は一呼吸置いて最後のカードに手を掛ける。


「ウチが希望を託すモンスター、それは・・・『宝玉獣 コバルト・イーグル』!!その効果で魔法・罠ゾーンに存在するトルマリン・ドッグをデッキの1番上に戻す。」


コバルト・イーグルから青い光が放たれトルマリンの宝玉に当たる。
その光は宝玉の中で乱反射して力を増幅させる。


「この瞬間、トルマリン・ドッグの効果が発動するんよ!!このカードが魔法・罠ゾーンからデッキに戻るとき相手フィールドのモンスターを任意の枚数、相手の魔法・罠ゾーンに封印する。いっけー。トルマリン・プリズン!!」



宝玉獣 コバルト・イーグル ☆3 風属性 鳥獣族
ATK1400 DEF800
「自分フィールド上に表側表示で存在する「宝玉獣」と名のついたカード1枚をデッキの一番上に戻す事ができる。この効果は1ターンに1度しか使用できない。このカードがモンスターカードゾーン上で破壊された場合、墓地へ送らずに永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。」



宝玉獣 トルマリン・ドッグ ☆3 地属性 獣族
ATK1200 DEF1100
「魔法・罠ゾーンに置かれたこのカードがデッキに戻った時、相手フィールド上の表側表示モンスターを任意の枚数相手の魔法・罠ゾーンに置くことができる。このカードがモンスターカードゾーン上で破壊された場合、墓地へ送らずに永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。」



澪がモンスターをデッキに戻すとフィールドが黄色い光に包まれる。
激しくもあり、そして優しい光でもある。

誰もが目を瞑り、光が治まるのを待つ。
次の瞬間、大和神と伊弉凪が黄色い宝玉に幽閉されている。


「こ、これが宝玉獣の実力・・・。」


「ウチのバトルフェイズ!!モンスターでダイレクトアタックや!!コバルト・ウイング!!」


青い宝玉を秘めた鷹は徐々にスピードを増し、大和に攻撃する。
その嘴がぶつかり、彼はその攻撃で膝を着く。


神城大和:LP1300→0



「き、決まったーー。勝者は尾瀬呂学園、宝生澪!!」


実況が高らかに叫ぶ。
その声で一気に会場が盛り上がる。



「大和!!このスピリット馬鹿!!結局、減ったライフのほとんどは陵墓で払ったライフじゃねぇか!!だから常々ライフ回復手段をもっと用意しとけって言ってただろうが!!」


鏡介が怒鳴り声を上げる。
会場の盛り上がりでかき消されているが大和に文句を言っている。
勝てた?試合を落としたようで彼は不機嫌だった。




「いややわ!!なんか照れてまうなぁ。」


「そうだー!まず誰もが聞きたいことをあえて私が聞かせて頂こう!!どうしてあなたが宝玉獣を持っているのか?」


「え?そらーペガサス会長から貰ったからやけど・・・。詳しい話は秘密や!!」


澪は無邪気に笑いながら帰ってくる!!


「みんな!!勝ったよ!!ウチも強うなったでしょ!!」

「ああ。よくやってくれたよ。ねえみんな?」


全員が揃ってうなずく。
そしてみんなが温かい言葉で迎える。


「十悟君、ウチもっともっと強うなりたい!!いつか君の隣に見合うような女性デュエリストになるために!!」

「え、えええええ!!」

「なーーんちゃって!!冗談や冗談!ちょっとドキっとした?デュエル中の励ましの言葉!!ウチもちょっとドキっとしたからこれで『おあいこ』や!!それに十悟君は競争率激しいからなぁ・・・。誰を選んでもいいけど、女の子は大切にしてあげなきゃあかんよ!!」


澪は微笑みながら自分の席に戻っていく。
勝利と抱えていた不安がなくなったので、どこか落ち着いた様子!
いつもの澪に戻ったみたいだ。


智花は不安そうに澪と十悟を見る。
自分はこのままでいいのか?
そう思いながら。

一方の朝子は少し不機嫌そうに澪を見つめる。
気持ちを押し殺し、耐えている感じだ。
それを久美が不安そうに見守っている。







「以前として尾瀬呂のピンチは変わらない!!何としても僕たちが勝って君につなげるよ。相馬、僕たちは最高のチームだよな?」

「もちろん!!」


いつきが十悟に尋ねる。
それに答えると彼は立ちあがる。


「私も行きますね!十悟君、成長しているのは澪さんだけじゃありませんから!!」


智花は勢いよく立ちあがりデュエルフィールドに向かう!
その姿は少し頼もしく見えた。


フィールドにはもう対戦相手が立っている。
小柄な少女が智花の前に立つ。


「あなたが木村智花?」

「そ、そうですけどあなたは?」


(ついに来た。代わってくれる?このデュエルが終わったら私はあなたの中からいなくなる。だから・・・お願い!!)


彼女たちにしか分からない人格交代を果たす。


「初めまして。私は香取奈緒!いいえ、この体は妹の奈菜のもの。私がこの世界にとどまっているのはあなたへの復讐が目的。」

「な、何を言って・・・」


突如として放たれる言葉に智花は戸惑う。
奈菜は智花に歩み寄り彼女の眼鏡を無理やり外す。


「か、返してください」

「いやよ!!そう、この顔だった。木村智世、あなたが私の大切な彼を死に追いやった!!そして私も命を失うことになる。私は絶対に許さない!!」






数年前


童実野高校と尾瀬呂学園高等部の交流試合!!







「サイバー・エンド・ドラゴン!!エターナル・エボリューション・バースト!!」


彼女の声がデュエル場に響きわたる。
三つ首の機械龍から破壊光線が放たれモンスターが消滅する。
彼女は軽くガッツポーズを取る。


「ま、負けた・・・この俺が・・・」

「信護!!大丈夫!!」


少年の元に小柄でショートヘアーの少女が近づく。
彼は自力で立ち上がる。
そして対戦相手の元に歩み寄る。


「あんた名前は?」

「木村智世!!」

「そうか。智世、あんたは俺のライバルにふさわしい!!次は俺が勝つからな!!」


智世は微笑んでデュエル場を後にする。
信護にとって初めての敗北だった。
それが彼の心に火をつけた。
ライバルの存在、勝ちたいと思う相手がいること。
それがデュエリストをさらなる高みへと進める。


「すげー。うちの学校の成績上位生徒相手に10連勝かよ。」

「しかも最後は最強と言われていた信護さん相手にノーダメージ!彼女は本物のデュエリストだよ」

「うるさい!!彼女に瞬殺された雑魚は黙って!!」


奈緒は一喝する。
それを聞いて少年AとBは黙ってしまう。
一応、童実野高校でトップ10には入っているのだが・・・。

信護と奈緒は二人揃ってデュエル場を出た。
学校の帰りにカード屋に寄ったり。
簡単に言えばデートだ。
二人はそういう間柄ということになる。











数日後


彼(信護)と彼女(奈緒)の運命が変わってしまった。
ある出来事によって。

その日の新聞はほぼ全社同じような見出しが躍った。
それはショッキングな話題だった。


「プロデュエリストが飲酒運転!女子高生1人をひき逃げ!!」


智世が交通事故に遭ったのだ。
病院に運ばれたがその日のうちに息をひきとった。



「死んだ?嘘だろ・・・今度は俺が勝つって言ったじゃねえか!!そんなのあるかよ!!」

「信護!!信護には私がいるじゃん」

「うるさい!!お前は俺に勝てるほど強かったのかよ!!俺を満足させるデュエルができるのかよ・・・いいからほっといてくれ!!!!」


大きな声で叫んだ。
そのときから信護はデュエルをする気力を失った。
それだけではなく生きていく気力も。

酒やタバコにも手を出した。
違法な地下デュエルをして地獄のような世界を体験したこともあった。




そんなある日


「奈緒、俺は行きたい場所があるんだ!!一緒に行くか?」

「え?信護が行きたいなら・・・。」


次の瞬間、奈緒の意識が遠くなる。
信護がハンカチを彼女にあてたのだ。
そして彼女が眠るのを確認して自分と奈緒の腕に注射器を刺す。


「何やっているんだろ?俺は?」


信護はそう呟いて目を閉じた。
目からはわずかに涙がこぼれた。
そして二度と目覚めることはなかった。








「私は妹の中で生かされている。あの女を・・・あの女の妹であるあなたを葬ったときこそ、私は本当に彼と幸せになれる。だから、消えてもらうわ。木村智花!!」


奈菜(奈緒)はディスクを展開する。


「待て!それは逆恨みじゃないか!!あんたも何か言ってやってくれよ!!パートナーだろ?」


いつきがパートナーの少年に話し掛ける。
その男は身長が180にもなり、ガッチリとした体系だ。
スクリーンには岩熊隆男の名前が出ている。


「オイは個人のことには干渉しない。タッグデュエルを制するために彼女と組むがそれ以上の詮索はしない!!」


彼もデュエルディスクを展開しいつきを見つめる。


「いつき君、デュエルで勝ちましょう!勝てばいいんです!!」


智花は覚悟を決めてデュエルディスクを構えた。
黙っていつきもディスクを構える。




11章:縛られた心

「ふふふ。・・・始めるわよ・・・闇のゲームを!!」


「闇のゲーム?」


智花が驚いて聞き返すと、明らかに周囲の様子がおかしい。
フィールドを次第に黒い霧が包み、重苦しい空気が2人を包む。
2人・・・。そこには智花と奈菜(奈緒)しかいない。
観客も仲間たちの姿もどこにもないのだ。


「これは・・・それにいつき君たちは?」


「私の復讐に余計な人間は必要ないのよ!!でも安心しなさい。外にいる人間には、私たちが普通にタッグデュエルをしているように見えるようにしてある。そして私たちの勝敗が外に反映されるようになっているわ。見かけ上はね。」


「しかし、言い伝えでは闇のゲームはそんな生易しいものではないはず。」


「その通り!!あなたには最も大切な人間の魂の半分を賭けてもらうわ。もちろん私も賭ける、妹の魂を・・・。この指輪がね、教えてくれるのよ。私たちが幸せになる方法を・・・。」


奈菜(奈緒)は舐めまわすように指輪を眺める。
そして願いを込めるように力を注ぐ。
指輪は光り出して場を包んだ。


「あなたにも味わってもらうわ。大切な人を失い、自分をも失う体験を・・・・・ふーん。そうか、あの大将くんかぁ。あなたの大切な人は!!」


「ま、待って!!」


「もう遅い!!私の力で彼の心の中に入る!!」














邪悪な光から奈菜(奈緒)が目をあける。
黒色で重厚感のある城のような場所だ。



(誰ダ?ココヲ訪レル人間ガイルトハ、褒メテツカワソウ。)



圧倒的で高圧的な物言い!
すべてを自分の思い通りにできると言わんばかり。
それだけ大きなプレッシャーが彼女を襲う。


「私はこの体の持ち主の魂の片割れが・・・欲しいのよ・・。」


奈菜(奈緒)は言葉を詰まらせながら目的を話す。
そんな事を言って自分は殺される?
ただでは戻れないはずだと息をのむ。


(好キニスルト良イ。片割レト言ワズ魂全テ奪ッテモカマワンゾ!!クククククク)


予想とは反する答え。
何か釈然としない・・・。


「は、はははは・・・。あなたは彼の心の守護者ではないの?」


聞かなくてもいいことだったと思った。
ただ、この状況を少しでも知りたいという心が勝った。


(違ウ。ムシロ逆ダ。コノ男ノ魂ニ封印サレテイル。欲シイ物ハコレダロウ?)


悪魔のような不気味な腕から光る半球体が差し出される。
指輪がその光を少しずつ吸収していく。


「あなたが何者であろうと私には関係ないわ。私の目的は復讐だけだから。でも、なぜかな?あなたに逆らうことはできない気がする。だから、お互いの目的が叶うことを祈ってるわ。」


暗い影に潜むその者は、不気味に微笑んだ。
奈菜(奈緒)はその視線を感じながらその空間を後にした。





「待たせたわね。デュエル、スタートよ!!」



木村智花:LP8000
香取奈菜:LP8000



「デュエル!!」



「私の大切なものを奪った代償は高くつくわよ!木村智世!!例え地獄の底まで追いかけてでもあなたに絶望を味わわせてあげる。私のターン。ドロー。」



彼女はその言葉に憎悪を込めるようにして言い放つ。
そして勢いよくカードを引き抜く。



「私は『幻銃士』を攻撃表示で召喚!!その効果で『銃士トークン』を1体特殊召喚!!そして魔法カード『ナチュラル・チューン』発動!対象は『銃士トークン』!!よってこのトークンはチューナーモンスターとして扱われる!!」



青い翼と白の体を持ち、背中には2つの銃口を備えたモンスターが現れる。
銃声と共に、フィールドにトークンが現れる。
ちょうどそのモンスターと似ているが、少し小さめの悪魔のようだ。



幻銃士 ☆4 闇属性 悪魔族
ATK1100 DEF800
「このカードの召喚・反転召喚に成功した時、自分フィールド上に存在するモンスターの数まで『銃士トークン』(悪魔族・闇・星4・攻/守500)を特殊召喚する事ができる。自分のスタンバイフェイズ毎に自分フィールド上に表側表示で存在する『銃士』と名のついたモンスター1体につき300ポイントダメージを相手ライフに与える事ができる。この効果を発動する場合、このターン自分フィールド上に存在する『銃士』と名のついたモンスターは攻撃する事ができない。」



ナチュラル・チューン 通常魔法
「自分フィールド上に表側表示で存在するレベル4以下の通常モンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターはフィールド上に表側表示で存在する限りチューナーとして扱う。」










「冥府の瞳に魅入られし魔物!我が怨念を纏い混沌としたこの世界へと降臨せよ!!ダーク・シンクロ!!現れよ!『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』!!」



黒いボディーにくすんだマゼンタの翼!
体中には無数の眼が蠢いている。
人を最も不快にさせる「物」と「色」の組み合わせと言っても過言ではない。



ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン ☆8 闇属性 ドラゴン族
ATK3000 DEF2500
「闇属性チューナー+チューナー以外の悪魔族モンスター1体以上
1ターンに1度、自分の墓地に存在するレベル6以下の闇属性の効果モンスター1体をゲームから除外して発動する事ができる。このカードはこのターンのエンドフェイズ時まで、
この効果を発動するためにゲームから除外した効果モンスターと同名カードとして扱い、同じ効果を得る。また、このカードが破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキから『地縛神』と名のついたモンスター1体を手札に加える。」



「さらに『手札団殺』を発動するわ。さあ、木村智世!手札を捨てるのよ!!」

「だから私は姉では・・・」


智花は一生懸命に否定している。


「そんな事はどうでもいいの!!私の気が満たされないから。まだ私のターンは終わってないのよ。墓地の『強欲雑貨商人』をゲームから除外して『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』の効果発動!!サイコロを1個振り、その目によって効果が決定する。」


智花の言葉を遮るように言い捨てる。
そしてそのままデュエルを進めていく。



強欲雑貨商人 ☆5 闇属性 獣戦士族
ATK1700 DEF1700
「このカードは特殊召喚できない。このカードをアドバンス召喚する場合、リリースはレベル7以上の闇属性モンスターでなければならない。1ターンに1度自分のメインフェイズにサイコロを1つ振る。1、2が出た場合自分のデッキからカードを1枚ドローする。3、4が出た場合自分のデッキからカードを2枚ドローする。5、6が出た場合、相手は出た目の数だけデッキからカードをドローすることができる。」



手札団殺 速攻魔法
「お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする。」




「いくわよ!運命のダイス・ロール!!!」



賽は投げられた!
フィールドを何の変哲もない白いサイコロの映像が映し出されている。
ゆっくり、ゆっくりと転がり続けている。
そして・・・動きが止まる・・・。



「ふふふ。ダイスの目は4!!よって私はデッキから2枚ドロー。カードを2枚伏せてターン終了よ!!」


フィールドには邪眼を持つ龍。
そして2枚のカードが並んだ。



「ダーク・シンクロ、公式的な用語ではないけれど闇属性チューナーと特定のモンスターでシンクロする戦術。確認されたカードは世界でもまだ数枚程度しかないというレアカードですか。」


「そう。でもあなたも持っているでしょ!?シンクロモンスターを・・・。本来ならあるはずのないカード!!教えてあげようか。このモンスターたちは未来のカードなのよ。つまり私たちよりもずっと後の人間たちが使うカードなのよ。」


奈緒の言葉に驚きを隠せない智花。
一般人なら冗談だと笑い飛ばしたかもしれない。
しかし、智花にとってこのカードたちは特別なものであることは言うまでもない。


「冥界はね。過去も未来も超越した世界なのよ!!先人たちのデュエルタクティクスを学び、未来のカードでデッキを組むこともできる!!!例えばこんなカードだって手に入るのよ!!」



青眼の白龍 ☆8 光属性 ドラゴン族
ATK3000 DEF2500
「高い攻撃力を誇る伝説のドラゴン。どんな相手でも粉砕する、その破壊力は計り知れない。」



「ブルーアイズ?」


「そう、これはかつて存在していた4枚目のカード!!残念だけど、これは特別な力が宿っているらしくてね。残る3枚を手に入れることはできないの。この1枚は、さしずめ観賞用といったところかしら!」


むしろ知らぬ者などいないレアカード。
伝説のデュエリスト「海馬瀬人」のモンスターであるが、4枚目が存在していた事実を知る者は、今ではほとんどいないと言っていい。
それが誰によって処分されたかも・・・。



伝説のレアカードに驚いた智花だったが、気持ちを入れなおして真っすぐ相手を見る。
奈菜(奈緒)が「そのカード」をカードケースにしまうのを確認すると、再びディスクを構える。



「それでも、私は勝ちます。お姉ちゃんは無実ですから!!私のターン。ドロー。私は手札から『バイス・ドラゴン』を特殊召喚します!!」



紫の鱗に緑の翼。
不気味で毒々しいさでは先ほどの龍に負けていない。



バイス・ドラゴン ☆5 闇属性 ドラゴン族
ATK2000 DEF2400
「相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。この方法で特殊召喚したこのカードの元々の攻撃力・守備力は半分になる。」






「ふふ。あなたのデッキは特殊召喚モンスターが多いことは分かっていたわ。だからこのカードが使える。速攻魔法『終焉の地』!!このカードでデッキのフィールド魔法、『ナーズカの大地』発動!まさにここがあなたの人生の『終焉の地』となるのよ。」



フィールドは薄暗い場所から一転、荒野のような場所に変わる。
見渡す限りの黄白色の土砂がある無機質な場所となった。



終焉の地 速攻魔法
「相手がモンスターの特殊召喚に成功した時に発動する事ができる。自分のデッキからフィールド魔法カード1枚を選択して発動する。」



ナーズカの大地 フィールド魔法
「このカードは墓地の魔法カード1枚を除外することで破壊されない。このカードをデッキ、手札に戻すことはできない。」



「(破壊されにくいだけのフィールド魔法?いったい何が?)私はこのタイミングで速攻魔法『サイクロン』!!セットされたカードを破壊します!!」



サイクロン 速攻魔法
「フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する。」





「く、私の『次元幽閉』が!!」



「さらに『デブリ・ドラゴン』を召喚!!そしてデブリ・ドラゴンの効果で、私の墓地に存在する『リトル・ドラゴ』を特殊召喚!!まだです!魔法カード『おろかな埋葬』でデッキの『ダンディ・ライオン』を墓地に送り、綿毛トークンを2体特殊召喚します!!」



デブリ・ドラゴン ☆4 風属性 ドラゴン族 チューナー
ATK1000 DEF2000
「このカードが召喚に成功した時、自分の墓地に存在する攻撃力500以下のモンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する事ができる。この効果で特殊召喚した効果モンスターの効果は無効化される。このカードをシンクロ素材とする場合、ドラゴン族モンスターのシンクロ召喚にしか使用できない。また、他のシンクロ素材モンスターはレベル4以外のモンスターでなければならない。」



リトル・ドラゴ ☆1 闇属性 ドラゴン族
ATK100 DEF200
「このカードをドラゴン族のシンクロモンスターのシンクロ素材とした場合、特殊召喚したシンクロモンスターの攻撃力を500ポイントアップする。自分フィールド上の『ドラゴン』と名のつくモンスターがいる場合、墓地に存在するこのカードを特殊召喚することができる。この効果で特殊召喚したこのカードがフィールドを離れるときこのカードをゲームから除外する。」



ダンディ・ライオン ☆3 地属性 植物族
ATK300 DEF300
「このカードが墓地へ送られた時、自分フィールド上に「綿毛トークン」(植物族・風・星1・攻/守0)2体を守備表示で特殊召喚する。このトークンは特殊召喚されたターン、アドバンス召喚のためにはリリースできない。」



おろかな埋葬 通常魔法
「自分のデッキからモンスター1体を選択して墓地へ送る。その後デッキをシャッフルする。」





「一気にモンスターが5体!!?」




「私はレベル5『バイス・ドラゴン」とレベル1『リトル・ドラゴ』にレベル4の『デブリ・ドラゴン』をチューニングします!!』




「正義を貫く三又矛よ!!偉大なる龍の姿となりて邪悪なる敵を貫け!!シンクロ召喚!『トライデント・ドラギオン』!!」



炎に似た深紅の龍。
それも屈強な鱗に巨大な翼を持ったモンスターが現れる。
あの青眼の究極龍を彷彿とさせる三ツ首、その六つの瞳は破壊を望むような力強い光が宿っている。



トライデント・ドラギオン ☆10 炎属性 ドラゴン族
ATK3000 DEF2800
「ドラゴン族チューナー+チューナー以外のドラゴン族モンスター1体以上
このカードはシンクロ召喚でしか特殊召喚できない。このカードがシンクロ召喚に成功した時、自分フィールド上に存在するカードを2枚まで破壊する事ができる。このターンこのカードは通常の攻撃に加えて、このカードの効果で破壊した数だけ、1度のバトルフェイズ中に攻撃する事ができる。」




「さらにリトル・ドラゴの効果で攻撃力が500ポイントアップします。」



ATK3000→3500




「綿毛トークンを糧として『トライデント・ドラギオン』の効果発動!!このモンスターは自身の効果で破壊した自分のカードの数だけ攻撃回数を増やすことができる。」



その龍は大きく口を開き、二体の綿毛トークンを食らう。
「まだ足りぬ」と言わんばかりに三ツ首の龍が口を大きく開く。



「1回目の攻撃!!対象は『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』です!!燃やしつくせイ!!ブレイズ・オブ・ドラギオン!!!」


その刹那、フィールドは炎に包まれる。
不気味な眼の龍は苦しみながら消滅する。


「私は『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』が破壊されたことにより、デッキから『地縛神 Ccapac Apu』を手札に加える。」


「無駄です!!第2、第3の攻撃はプレイヤーへのダイレクトアタック!!ブレイズ・オブ・ドラギオン!!」


ドラゴンの放つ炎は次の瞬間には奈菜(奈緒)の周りを囲む。
第一波では全身に焼けるような痛みが走りライフを奪う。
第二波で内臓まで到達するような激痛でライフが削られる。




木村智花:LP8000
香取奈緒:LP8000→7500→4000→500









「ぐ、こんなことって・・・。」


智花は思わず顔を覆う。
確かに相手にダメージは与えた。
それ以上の衝撃が彼女を襲った。


「くぅ!!・・・やってくれたわね!!説明するのが遅くなってしまったけど、このデュエルではモンスターの攻撃が現実の痛みとなるのよ。ただし、それを受けるのは私たちだけじゃなく、妹と彼もなのよ!!」


奈菜(奈緒)が自分と智花のフィールドに交互に目をやると二人の人間が現れる。
智花の場には奈緒によく似た女の子が現れる。
奈緒がポニーテイルなのに対して彼女は後ろの髪を二つに縛っている。
そして相手のフィールドには・・・。


「あなたには見えているはず。あなたが召喚した『トライデント・ドラギオン』によって焼けただれた彼の姿が!!」



奈緒は十悟の姿に見向きもせずに話を進める。



「信じない!!私は絶対信じません!あれが十悟君な訳がない!!カードを1枚伏せてターンエンド。」


「じゃあ殺せばいいわ!大切な人を!!あなたの代わりに攻撃を受けるのが、妹だからって手を抜くと思ったら大間違いよ!!あなたを地獄に落として私は妹とともに生きていく。それが許されるのよ!闇のゲームの勝者にはね!!」




12章:姉と妹

「私のターン。ドロー。手札から『ナーズカの民』を特殊召喚!このカードは自分フィールド上に『ナーズカの地』しかカードが存在しないとき、手札から特殊召喚できる。そして『地縛神』と名のつくモンスターをアドバンス召喚するとき1体で2体分として扱うことができる。」


「地縛神!?」


「そう我が怨念を纏いしモンスター!現れよ『地縛神 Ccapac Apu』!!」



召喚されたばかりの黒いフードの人間の魂が上空へと飛んでいく。
そして今まで無機質な砂漠が突如として光を放つ。
フィールドの中心から放射状に光が広がる。
そこに何かを描くように。
やがてそれが天空に映し出される。


「これはナスカの地上絵をモチーフに作られたモンスター。そう今、描かれたのは巨人の地上絵なのよ!!そして召喚したモンスターは・・・・。」


奈緒はニヤリと笑って後ろを振り向く。
天を突くような巨人が立っている。
それは高層ビルを軽く超える大きさ。
この世にある「不浄」を全てかき集めたような漆黒の体。
不気味でおぞましい鳴き声を上げている。



ナーズカの民 ☆1 地属性 悪魔族
ATK100 DEF0
「自分フィールド上に『ナーズカの大地』しかカードが存在しないとき、手札から特殊召喚することができる。このカードは『地縛神』と名のつくモンスターをアドバンス召喚するとき、1体で2体分として扱うことができる。」



地縛神 Ccapac Apu ☆10 闇属性 悪魔族
ATK3000 DEF2500
「『地縛神』と名のついたモンスターはフィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。フィールド上に表側表示でフィールド魔法カードが存在しない場合このカードを破壊する。相手はこのカードを攻撃対象に選択する事はできない。このカードは相手プレイヤーに直接攻撃をする事ができる。このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。」



「行くわよ。地縛神 Ccapac Apuの攻撃は相手プレイヤーへの直接攻撃!あの女を捻り潰しなさい!!」


巨人が大きく腕を振り上げる。
そしてゆっくりでも確実にその掌が迫ってくる。
『今、逃げだせば・・・』などという期待すら持てぬ状況に追い込まれた智花。


「逃げることはできない・・・。」


爆音とともに智花の体が宙を舞う。
それが地縛神の攻撃の凄まじさを物語っている。
数メートルの高さまで吹き飛ばされ、強く地面にたたきつけられる。



木村智花:LP8000→5000



「まだまだ!!こんなんじゃ終わらない!!魔法カード『縛られし神々の宴』を発動!!このカードは地縛神の写し身たちを作り上げる!!」



縛られし神々の宴 通常魔法
「自分のフィールド上に『地縛神』と名のついたモンスターがいるときのみ発動できる。ライフを半分支払ってデッキから任意の枚数『地縛神』と名のついたモンスターをゲームから除外する。そのモンスターと同じ攻撃力、守備力を持つ『縛られし神トークン』(闇属性・悪魔族)を特殊召喚する。相手はこのトークンを攻撃対象に選択する事はできない。このトークンは直接攻撃できず、戦闘ダメージを与えることもできない。」



香取奈緒:LP500→250


奈緒がデッキから勢いよくカードを選び、ゲームから除外する。



「あはははっはっはは。私の命(ライフ)などあってないような物!!来なさい!アスラピスク!コカライア!!チャクチャルア!!ウル!!」


周囲を巨大なモンスターが取り囲む。
長い嘴を持ったハチドリ、ギョロっとした目のトカゲ、不気味なヒレを持つシャチ、八ツ足の蜘蛛。
気がつくとそれらのモンスターが二人を囲んでいる。



「カードを1枚伏せてターンエンド。『地縛神』はあなたのモンスターの攻撃は受け付けない崇高なる神なのよ!!さあ足掻いてみせてよ!!それともサレンダーして自らその命を絶つかしら?あははっはははは!!」




「私のターン。ドロー。(どうせ直接攻撃を受けるなら・・・)手札から『アドバンスドロー』を発動!『トライデント・ドラギオン』をリリースしてカードを2枚ドロー。(このドローでテンダネスが来た。でも・・・。)」



アドバンスドロー 通常魔法
「自分フィールド上に表側表示で存在するレベル8以上のモンスター1体をリリースして発動する。自分のデッキからカードを2枚ドローする。」



「さあ?どうするつもり?」


「私は・・・カードを1枚伏せてターンエンドです。」



智花は悔しそうにカードを伏せる。
強力なドラゴンをコストにしたにも関わらずドローしたカードが優れなかったからだ。



「あはっははっは!そう・・・所詮あなたのデュエルなんてこの程度!私と信護を邪魔しようとするなんて身の程知らずもいいとこだわ。私のターン。ドロー。ふふふ!すべてを吹き飛ばせ!!『地縛旋風』発動ぉ!!」



巨人がその剛腕を振るうとフィールドに突風が吹き荒れる。
それが智花のフィールドの伏せカードを狙う。
智花は迷わずカードを発動させる。



「(私に・・・力を貸して・・・)リバースカードオープン『スターライト・ロード』!!荒々しき暴風を超え、輝ける天空へ飛翔して『スターダスト・ドラゴン』!!」


さながら流星のような一筋の光跡がフィールドに現れる。
その中心を輝く龍が威風堂々羽ばたく。
その龍は智花のフィールドで防御の態勢をとる。



スターダスト・ドラゴン ☆8 風属性 ドラゴン族
ATK2500 DEF2000
「チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
『フィールド上のカードを破壊する効果』を持つ魔法・罠・効果モンスターの効果が発動した時、このカードをリリースする事でその発動を無効にし破壊する。この効果を適用したターンのエンドフェイズ時、この効果を発動するためにリリースされ墓地に存在するこのカードを、自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。」



スターライト・ロード 通常罠
「自分フィールド上に存在するカードを2枚以上破壊する効果が発動した時に発動する事ができる。その効果を無効にし破壊する。その後、『スターダスト・ドラゴン』1体をエクストラデッキから特殊召喚する事ができる。」



「モンスター1体出すだけで精いっぱいなようね。私は『縛られし神トークン』(アスラピスク)で『スターダスト・ドラゴン』に攻撃!」


巨大なハチドリ嘴が智花に向けて近づいてくる。
輝く龍はモンスターとの間に入って智花を守る。
ダメージは無かったが巨大な衝撃が智花を襲う。



「さらに『地縛神 Ccapac Apu』でダイレクトアタック!!」


奈緒は容赦なく『地縛神』に攻撃命令を与える。
それこそ、殺しても殺しても足りないと言わんばかりに。

巨人に自分の意思など無く無防備な智花へ容赦なく攻撃を加える。
それこそすべての力を込めるように。




木村智花:LP5000→2000




「これでターン終了よ。さあ!最後のターンよ・・・くふふふっふ。」


智花はふらふらと立ち上がる。
もう、いつ倒れてもおかしくない状態だ。


「(わ、私の負けか。闇のゲームに負けたら・・・死ぬんだっけ?死んだら・・・お姉ちゃんに文句言わなきゃ。何であんな人に勝ったの・・・って。何でお姉ちゃんの代わりに私が恨まれなきゃいけないの?私が何したっていうの?私が・・・私が・・・・。全部、全部お姉ちゃんがいけないんだ!!!!)」



智花の瞳からは涙がこぼれ落ちる。
一粒ずつ。
それこそ涙で水たまりができるほどに。



(人のせいにするんだ。姉の代わりに恨まれたから姉のせい・・・。だったら十悟の代わりに恨まれたら十悟のせいにするのね。)


突如として声が聞こえる。
誰の声かは分からない。


「そ、そんなことは・・・・。」


智花はその言葉を否定する。
しかし、あまりにも自分の事を理解しているようで口ごもってしまう。


(そんな人間が愛する人として十悟の命を賭けてデュエル!?笑わせるわね。)


「私はこんなデュエル、望んでなんか・・。」


(私が好きな十悟はね、誰のせいとかそんな事を天秤にかける人間じゃない。あなたにそんな十悟を愛する資格なんてあるのかしら?)



そこで声は途絶えた。
闇のゲームに第三者が干渉することは無いと聞いたことがあった。
だったら・・・?



「あ、朝子さん・・・。違う!私の心が・・・彼女の言葉を借りて出てきたんだ!!」


智花にはそう思えた。
実際、朝子であってもその言葉は核心に迫っていると思えた。



「絶望しておかしくなったみたいね。どうでもいいことだけど。」



「私は・・・お姉ちゃんのデッキを・・・デュエルを継ぐって決めたんだ。こんな時、十悟君なら・・・いいえ、デュエリストならどうする?」


智花は小さな声でつぶやく。
弱気になった自分に問いかけるように。


「勝利できるあらゆる可能性を探る・・・そして、自分のデッキを、カード達を信じる!!」



智花は目を瞑り集中力を高める。
自分のデッキのカード、エクストラデッキのカードを一つ一つ繋ぎ合せていく。



「(何をしても無駄。あなたが行きつく先はチューナーを召喚してシンクロを狙うのみ。でも私の最後の伏せカードは・・・ふふふ。」



智花がゆっくりと目を開く。
血液が沸騰するように熱い。
デュエルの高揚感なのか?
今までの自分とは違うようだ。



「私のターンですね。ラスト・・・・ドロー!!!」


カードからも脈動が伝わるような気持ち。
待ち望んだカードだ。
かつて姉もこのカードを待ち望み、このカードで逆転していたのを知っていた。



「私が引いたカードは『サイバー・ドラゴン』です。このカードは相手モンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在していない場合、手札から特殊召喚する事ができます。」



サイバー・ドラゴン ☆5 光属性 機械族
ATK2100 DEF
「相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在していない場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。」




「続いて墓地の『リトル・ドラゴ』の効果、自分フィールド上が『ドラゴン』と名のつくモンスターがいるとき墓地から特殊召喚できます。そして手札から『テンダネス』を通常召喚!!!」



テンダネス ☆3 光属性 天使族 チューナー
ATK700 DEF1400
「恋人たちの永遠を祝福する、かわいらしい天使。」



本作特別仕様です。
実際は普通の通常モンスターですよ。




「それがあなたの最も信頼するチューナー『テンダネス』!!おそらくそのリバースカードはレベル1『救世竜 セイヴァー・ドラゴン』を呼びこむカード。そしてレベル8の『レッド・デーモンズ・ドラゴン』をシンクロ召喚。『リトル・ドラゴ』と共にさらにシンクロして『セイヴァー・デモン・ドラゴン』を召喚!!地縛神の効果を無効にして、その攻撃力を自身の攻撃力に加えて攻撃する・・・。」



「さあ?どうでしょうか?」



「でもね!無駄なのよ。永続罠『不協和音』発動!!これであなたのシンクロ召喚は封じられた。残念だったわね。」



不協和音 永続罠
「お互いのプレイヤーはシンクロ召喚する事ができない。発動後3回目の自分のスタンバイフェイズ時にこのカードを墓地へ送る。」



「『救世竜 セイヴァー・ドラゴン』、『セイヴァー・デモン・ドラゴン』・・・まだ、このデッキを強くすることは可能なのですね!!しかし私のデッキにそのようなカードはありません!」


「じゃあ結局あなたの負けじゃない!!」


「いいえ!!私は負けません!このデッキは確かにシンクロ召喚を中心に組み立てたデッキ。でも、このデッキにはお姉ちゃんが残したカードとタクティクスが組み込まれている!!罠発動『DNA改造手術』!!宣言する種族は・・・『機械族』、フィールドのモンスターは機械族となります!!」


「ま、まさか!!?」


「私はすべての機械族を『サイバー・ドラゴン』に融合させます!!」




フィールドが歪み、全てのモンスターが重なり合っていく。
巨大なモンスターがフィールドの中心に向かって吸い込まれる。
そして智花のフィールドの『サイバー・ドラゴン』が姿を変える。



「融合召喚『キメラテック・フォートレス・ドラゴン』!!」



ATK0→8000



キメラテック・フォートレス・ドラゴン ☆8 闇属性 機械族
ATK0 DEF0
「「サイバー・ドラゴン」+機械族モンスター1体以上
このカードは融合素材モンスターとして使用する事はできない。フィールド上に存在する上記カードを墓地に送った場合のみ、融合デッキから特殊召喚が可能(「融合」魔法カードは必要としない)。このカードの元々の攻撃力は、融合素材にしたモンスターの数×1000ポイントの数値になる。」



DNA改造手術 永続罠
「発動時に1種類の種族を宣言する。このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上の全ての表側表示モンスターは自分が宣言した種族になる。」



「こ、攻撃力8000!しかも、私の地縛神まで融合素材に・・・。対抗手段は・・・ない・・・。」


「あなたの復讐の象徴『地縛神』は消え去りました!!闇のゲームはこれで終わりです!」


智花ははっきりとした口調で語り掛ける。
表情を和らげさらに続ける。


「私もあなたも大切な人のために戦った。そしてこの最後の攻撃!!これは彼の嫌いな命を奪うということ。でも分かってくれますよね?真実は彼女を彼の元に送り届けるということになる!!」


「私が・・・信護の元へ!?」



智花はゆっくりとうなずいた。
それを見て奈菜(奈緒)は少し笑顔を見せる。



「行きます!!『キメラテック・フォートレス・ドラゴン』の攻撃!エヴォリューション・レザルト・アーティラリー!!!」



その攻撃は彼女を貫いた。
攻撃力8000という1ターン・キル級の攻撃を受けた。
それにも関わらず彼女は倒れなかった。


「奈菜!?」


彼女を支えたのは妹だった。
今まで彼女の心の影にいた彼女が・・・その体の主が現れたのだ。



「こうして・・・一緒に支え合ってデュエルすれば良かったんだね。2人で1つの体を共有するようになってから、私は『お姉ちゃんにデュエルしてほしい』って思っていたし、お姉ちゃんは私に遠慮していた・・・。ライフはもうゼロ・・・2人だったら逆転できたかな?」


奈菜の目からは大粒の涙がこぼれる。
それでいて彼女は笑顔を浮かべる。
その涙を奈緒がそっと手で拭う。


「木村智世・・・。いいえ!智花さん!!私は消えてしまう・・・。私のことを知っていて、奈菜と同じ境遇にあるあなたに・・・お願いがあります!!」



フィールドを包んでいた黒い霧が消えていく。
それと同時に定着していたはずの奈緒の魂が消え始めるのが分かった。



「奈菜と友達になってあげて!!」


声を振り絞って一生懸命に呼び掛ける。
智花は笑ってそれに答える。


「もちろん!!もし私の姉に会うことがあるなら、友達になってあげて下さい!姉はああ見えて結構さみしがり屋ですから!!」


奈緒はもう一度笑った。
しかし次の瞬間、彼女は消えていた。






香取奈菜:LP250→0





この瞬間・・・彼女のライフカウンターはゼロをさした。
そして・・・霧は消えた・・・。











気づくとスタジアムは歓声に包まれていた。
隣りにはいつき!
ベンチからは応援してくれる仲間たち。
もちろん十悟の姿も。

相手チームのライフはゼロになっていた。
2勝2敗で五分になったと実況が叫んでいるのが聞こえる。



「そうか・・・大会の途中でした・・・」




13章:大将戦?

「ちっくしょう!!ここから出しやがれ!!」


スタジアムの機材倉庫に伊東淳也はいた。
大きな声で叫ぶが、外にはほとんど声が届かない。


(フン!完全に閉じ込められたようだな。このままじゃあ相馬十悟とのデュエルにも間に合わない・・・。)


彼の精霊「悪魔の調理師」も一緒だ。
倉庫には無論、窓などなく照明機材などが置かれているだけだ。
鍵は外から掛けられており、彼が何度体当たりをしてもびくともしない。


「この俺に不意打ち食らわすとは・・・。確かあの制服はデュエルアカデミアのオベリスクブルー!こんな事をしていったい何を考えてやがる!?あああくそ!!ここから出せーーーーーーー!!」



倉庫のドアを何度も叩き、蹴っているが一向に開く気配がない。
重要な機材を守るため、そう簡単に壊されないように・・・という配慮なのだろうが、今はそれが淳也を苦しめている。




ドアの外にはオベリスクブルーの制服を着た少年が座っている。
大きく欠伸しながら携帯ゲーム機でデュエルのゲームをしている。


「(ふぁああ。うるせえな!!ま、これも女王の為だしな・・・。まあ俺みたいな選手にもなれない人間にはこんな仕事しかないんだよな・・・)」


見張りをしているようだ。
やっているのはゲームなのだが・・・。
















会場では









「ブラック・ローズ・ドラゴンにレッドデーモンズ・ドラゴン!!やっぱり、智花のシンクロドラゴンは最強だぜ!なあ十悟?」


「うん!さすがだったよ。でもそのシンクロ召喚の下地を作っていたのは、いつき君の戦場花たちだ。それに、相手の岩熊君の岩石族たちも・・・。」


「うっし!!十悟!あとは任せたぜ!!これで俺たちの1勝だ!!」


迎人はまだ興奮冷めやらぬといった感じだ。
闇のゲームはもちろん、体験した人間にしか分からない。
その外側では確かにタッグデュエルが繰り広げられていたらしい。

智花はデュエル場ゆっくりと降りる。
途中、もう一度デッキとデュエル場を見る。



「闇のデュエル・・・不思議な体験でした・・・。」



智花は誰も気づかないようにつぶやく。
闇のゲームの疲労は相当なものだったらしい。


「あの?」

「はい!!」


突然の声に智花が振り向く。
対戦相手の奈菜が心配そうに声をかける。


「いい、デュエルでしたね?」

「ええ!みんなには・・・分かりませんけどね。」


奈菜の言葉に智花は優しく語り話し返す。
今まで死闘を繰り広げていた人間(の妹)とは思えぬほどに。
その後に二人で一言、二言語り合う。
まるで昔からの親友のように。



「次でいよいよ、決着ね。」

「十悟君は負けませんよ!!」



2人はそれぞれの仲間の元に戻る。
それを皆が優しく迎え入れる。







「それでは、本日最後の1戦。両校の選手はデュエルフィールドにどうぞ!!」


司会者は会場中に響く大きな声で叫ぶ。
そう叫んだのはいいが、気づくとそこには1人しかいない。
十悟だけだ。


「大将は伊東君ではないのですか?」


十悟は童実野高校の方を見ながら白峰に尋ねる。
尾瀬呂、童実野高校全員の視線が監督である白峰に注がれる。


「何をしているんでしょうかね?君とのデュエルを誰よりも楽しみにしていたというのに・・・。」



白峰は首を傾げる。
そして審判と十悟を交互に見て、申し訳なさそうに尋ねる。



「あとどのくらいなら待っていただけますか?」

「僕は彼が来るまで待っていてもいいですが・・・。」



十悟は審判の方を見る。
彼の指示を仰ぐことにしたのだ。


「かつて、デュエリストキングダムの準決勝ではデュエリストに5分の猶予を与えた例がありますからね・・・。控え選手の準備など、諸々合わせて15分でいいでしょう。」


「ありがとうございます。」


白峰は審判に頭を下げる。
そしてチーム全員に視線をやる。
最後にリーダーである鏡介を見る。


「俺たちで探してくるぜ!!大和、岩熊、手伝え!!」


鏡介は大柄な少年とスマートな好青年を連れて出て行った。
白峰はそれを満足そうに見送る。
そんな彼の前に1人の少年が立つ。


「よお!先生!!あいつが来なけりゃオレがデュエルをするってことでいいんだよなぁ?ここで不戦敗なんて事はさけないといけないよな?」


学ランをラフに着て、両腕にはシルバーを巻いている。
お世辞にも礼儀正しいとは言えない・・・。
ワイシャツのボタンも3つ外している。


「淳也がどうしても間に合わないときだけだ!!大会の選手選抜にあたって開いた校内予選、上位3人は必ずベンチには入れる・・・それ以外は私が選ぶと私は言った。確かにお前は3位に入った。だが・・・私が何も知らないと思ったら大間違いだ!!それだけは覚えておけ!!」


白峰は珍しく感情を剥き出しにしているのが分かった。


「へーい!了解しやした!!」


少年は軽く返事しながらデッキを確認している。
そしてデュエルディスクの入ったケースをニヤニヤしながら眺めていた。


「(へへへ。あいつは今頃、くらーい闇の中・・・ここで勝てばオレの注目度も上昇。そのまま一気にプロデュエリストだぜ!!)」


少年は誰にも聞こえないように呟いたつもりだった。
しかし、少年の口の動きがなぜか十悟には分かった。
ただ、それだけでは確証がない。


「僕も、探しに行ってくる!!」

「な、お前はこれからデュエルするんだろ?俺らで探してくるぜ。」


迎人は驚いて答える。
いっそ、このまま不戦勝の方が良かったと思っていただけに。


「いつき、手伝ってくれるだろう?」


黙って彼は頷く。
十悟は確証も無かったが、少年の言葉を迎人に伝える。


「なるほどな・・・そいつはかなーり怪しいぜ!!よし、この迎人様の『名推理』で見事、居場所を突き止めてやるぜ!!あ、今は推理ゲートを使っちゃいねえけど・・・ま、いっか!!」


迎人は勢いよく会場を出て行った。
推理と言ったものの、学園一の俊足を誇る彼は足で稼ぐ様子だ。


売店、トイレ、休憩室
淳也が行きそうな場所を片っ端から探していく。
途中、童実野高校の3人にも出くわしたが一向に見当たらない。




「あと5分です!!そろそろ、デュエルの準備を!!」


審判に促され、十悟はデュエル場に向かう。
デュエルディスクを付けてゆっくりと深呼吸をする。
彼のことが心配でもう一度、会場の入り口を見る。


「まだ、来ないのか・・・。」


小さくつぶやく。
そうしている間にも時間は経過していく。


「あと1分です!!」


審判が告げる。
白峰はイライラしながら少年の方を見る。


「んじゃ、行ってきますよ先生!!」


少年は立ち上がって十悟の前に立つ。
そして自分の背負っているカバンからデュエルディスクを取り出す。
そのディスクは全体を赤に塗ったディスクで観客たちの目を引いている。


「いいだろ?このディスク。オレのお気に入りなんだぜ!!」

「赤いディスクか・・・珍しいね。」


十悟は珍しそうにディスクを見ながら相手のデッキをカットする。
デッキを返して自分のデッキを受け取るとそれをディスクにセットする。




マイクが入り、審判が再びアナウンスをかける。



「それでは、本日最後の1戦。尾瀬呂学園、相馬十悟選手VS童実野高校、アウトロー金子選手のデュエルを始めます!!」



「あ、アウトロー?」


十悟は思わず声に出してしまった。
別に吹き出しそうになったわけではない。


「昔いただろ『インセクターなんとか』って奴とか『ダイナソーなんちゃら』って奴ら!!そんな感じだ!」

「そっか!!うん!気にしないでおくよ!!」


本名じゃないデュエリストって結構いるなぁと思いつつデュエルの準備をする。
2人はデッキからカードを5枚引き、手札とする。



「デュエル!!」



相馬十悟:LP8000
アウトロー金子:LP8000





「僕の先行!!カードドロー。僕は・・・」




14章:堕天使は舞い降りた

十数分前の迎人


「なんだてめぇは?尾瀬呂校の奴だったか?」


少年が迎人に気づく。
その間にもドアを殴る蹴るの必殺コンボ?でわずかに音が聞こえる。


「俺のカンはやっぱりすげー!・・・・じゃねえ!!お前!伊東淳也を監禁しているな!!そこをどきやがれ!!」


迎人が大声で叫ぶ。
その言葉に淳也が気づく。
そして外の会話に耳を傾ける。


「ふん!うるせえ野郎だ!!まあ見ての通りだ。俺はここでゲームをしている。ヒマだからな!!」


少年は悪びれることもなく話す。
迎人は間髪入れずに叫ぶ。


「暇なら俺がデュエルで遊んでやるよ!!俺が勝ったらそこをどけ!そして、伊東淳也を開放し、その後・・・童実野の奴らにボコられろ!!」

「何ぃ?」

「その制服、デュエルアカデミアだよな?しかもブルー、挑戦を受けないなんてことはないよな?」

「面白れぇ!やってやる!!」



挑発に乗り少年はデュエルディスクを構える。
迎人もディスクを構えてデッキをセットする。



「デュエル!!」



明智迎人:LP8000
ブルーの少年:LP8000



「先行は譲ってやるぜ!オベリスクブルーのエリートさんよ!!」


「ふん!俺のターン。ドロー。俺は『小牛鬼』を攻撃表示で召喚、こいつをリリースすることで『牛鬼』を特殊召喚!!」



ゴブリンにも似た小さなモンスターが小金色の壺に吸い込まれていく。
壺に魔力が集中して何度も乱回転する。
次の瞬間、質量保存の法則などまるで無視して壺の中から茶色の体、青の体毛のモンスターが飛び出す。
筋肉隆々でいかにも強そうな魔物だ。



小牛鬼 ☆3 闇属性 悪魔族
ATK150 DEF350
「このカードをリリースすることで手札から『牛鬼』を特殊召喚することができる。」



牛鬼 ☆6 闇属性 獣族
ATK2150 DEF1950
「黒魔術で蘇ったウシの悪魔。壺の中から現れる。」



「さらに魔法カード『牛鬼の憤怒』発動!このカードは牛鬼専用の魔法カード。相手に『牛鬼』の元々の攻撃力分のダメージを与えることができる!!」



牛鬼の憤怒 通常魔法
「自分フィールド上に表側表示で存在する『牛鬼』と名のついたモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。このカードを発動するターンに「牛鬼」は攻撃する事ができない。」



巨大な牛の魔物は怒り狂い暴れ出す。
体を赤くして両手にエネルギーが集まっていく。


「食らいやがれ!!牛鬼爆砲!!」


その球体をした攻撃が放たれる。
迎人は驚きながらも攻撃に堪える。


「へ!まだまだ効かねぇな!!」



明智迎人:LP8000→5850
ブルーの少年:LP8000



「俺はさらに牛鬼をリリースして『大牛鬼』を特殊召喚!!



大牛鬼 ☆8 闇属性 悪魔族
ATK2600 DEF2100
「このカードは自分フィールド上に存在する『牛鬼』をリリースして手札から特殊召喚することができる。このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、もう一度だけ続けて攻撃することができる」



先ほどの魔物よりさらに大きく不気味な化け物が現れる。
顔は牛で体は土蜘蛛、人に化け、騙し操り、人を襲う!
それがこの魔物だ。



「これでターン終了だぜ!!」



オベリスクブルーの少年は手札を確認してターンを終える。
決して手札事故ではないようだが、セットする魔法・罠カードは無かったようだ。



「俺のターン。ドロー。」



迎人は勢いよくデッキからカードを引く。
それを素早く手札に加え、6枚のカードに目を通す。



「へへ、悪くねえ!!行くぜ!手札から『トレード・イン』を発動!手札の『堕天使スペルビア』を墓地に捨てて、カードを2枚ドロー。さらに『ヘカテリス』を墓地に送り『神の居城―ヴァルハラ』を手札に加える!!」



ヘカテリス ☆4 光属性 天使族
ATK1500 DEF1100
「このカードを手札から墓地に捨てる。デッキから「神の居城−ヴァルハラ」1枚を手札に加える。」



トレード・イン 通常魔法
「手札からレベル8のモンスターカードを1枚捨てる。自分のデッキからカードを2枚ドローする。」



「天使族デッキだと?男なのに!!」


オベリスクブルーの少年は驚いたように迎人を見る。
誰が作った法則かは分からないが天使族と言えば女性デュエリストを思い浮かべる。
可愛らしいモンスターや高貴で美しいモンスターが多いからだろうか?


「はははは!俺の天使はそんじょそこらの天使じゃねえ。闇と光の最上級天使だ!!まあ、じっくり味あわせてやるよ!俺のニューデッキの威力を!!」


迎人は不敵に笑い次のカードに手をかける。
勢い良くディスクに差しこむ。


「いくぜ『神の居城―ヴァルハラ』を発動し『アテナ』を特殊召喚!」


迎人がカードを発動するとフィールドには巨大な神殿が現れる。
高貴な神殿の赤きカーテンが開き、純白の衣を身に纏った天使が姿を現す。
プラチナの髪をなびかせ、パールの盾と矛を構えて攻撃態勢をとる。



「さらに速攻魔法『光神化』発動!!7つの大罪、その1つ強欲の天使『堕天使マモン』を特殊召喚!!」


黒き羽を持った天使!
キツネのように目が細くズル賢そうな顔をしている。


「アテナの効果発動!!お前に600ポイントのダメージだ。そしてマモンの効果が発動!!手札の『堕天使ベルゼブブ』を墓地に送り、カードを2枚ドロー。」


アテナはその矛を構え魔力を集中させる。
白き光弾が放たれ相手にダメージを与える。

その一方で堕天使は迎人のカードを奪い取り自分のものにしようとする。
そして代わりにデッキからカードを抜き取り迎人に手渡す。
まるでアテナに気づかれないように。



明智迎人:LP5850
ブルーの少年:LP8000→7400




アテナ ☆7 光属性 天使族
ATK2600 DEF800
「自分フィールド上に存在する『アテナ』以外の天使族モンスター1体を墓地に送る事で、自分の墓地に存在する『アテナ』以外の天使族モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。この効果は1ターンに1度しか使用できない。フィールド上に天使族モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚される度に、相手ライフに600ポイントダメージを与える。」



堕天使マモン ☆8 闇属性 天使族
ATK2300 DEF3000
「このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、手札の闇属性・天使族モンスターを墓地に送ることでデッキからカードを2枚ドローすることができる。」



神の居城―ヴァルハラ 永続魔法
「自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、手札から天使族モンスター1体を特殊召喚できる。この効果は1ターンに1度しか使用できない。」



光神化 速攻魔法
「手札の天使族モンスター1体を特殊召喚する。このカードで特殊召喚されたモンスターは攻撃力が半分になり、エンドフェイズ時に破壊される。」





「アテナの効果で『堕天使マモン』を墓地に送り、墓地の『堕天使スペルビア』を特殊召喚だ!そしてスペルビアの効果で『堕天使ベルゼブブ』を特殊召喚!!」


「一気に上級天使が3体だとぉ?」


「アテナの効果ダメージ1200を忘れてもらっちゃ困るぜ!!さらに通常召喚『堕天使レヴィアタン』!こいつは自分より攻撃力が高いモンスターがいればいるほど強力になるんだぜ!!そして『アテナ』効果で600ダメージ!!」


明智迎人:LP5850
ブルーの少年:LP7400→6200→5600



堕天使レヴィアタン ☆8 闇属性 天使族
ATK2500 DEF2300
「このカードより攻撃力が高いモンスターが相手フィールド上にいるとき、このカードはリリースなしで召喚することができる。このカードが召喚に成功したとき、自分フィールド上に存在するこのカードより攻撃力が高いモンスター1体につき、このカードの攻撃力を500ポイントアップする。」



堕天使ベルゼブブ ☆8 闇属性 天使族
ATK2700 DEF2200
「このカードが相手プレイヤーにダメージを与えた場合、そのポイントだけ自分のライフポイントが回復する。このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの攻撃力分だけ自分のライフポイントを回復する。」



アテナ    ATK2600
スペルビア  ATK2900
ベルゼブブ  ATK2700
レヴィアタン ATK2500→4000



「く!どれも世界に十数枚しかないレアカードが何で?」


「おお!!よくぞ聞いてくれた!!そりゃー苦労したぜ。」





















数週間前
ちなみにこの小説では3章の辺り。








「迎人先輩!頼まれていたカード『神の居城―ヴァルハラ』と『ヘカテリス』を3枚ずつっすよ。ネットオークションで落としときました。」

「おう!!悪いな!」


迎人は後輩からカードを受け取る。
いわゆる「ほぼ美品」というやつだ。
カードを確認して6枚をケースにしまう。


「それで・・・例の物を・・・」


「おお!忘れるとこだったぜ!!ほら、幻の『ボ○キン○ラダ○ス―完全版DVD BOX』だ!ちなみに1巻を『ブラックマジシャンガールと賢者の宝石』、2巻を『ブラックマジシャンガールと秘密の衣裳部屋』、3巻を『ブラックマジシャンガールと時計塔の囚人』のケースに・・・みたいな感じでカムフラージュしてある!!」


「流石っす先輩!!完全版は全国で限定生産50個のはずなのによく・・・尊敬しちゃいます!」


注:良い子は尊敬してはいけません。


「いいてことよ!個人的には・・・2巻の子がおすすめだ。あのマジシャンズヴァルキリア役の小日向なんとかって女優のそっくりさん!!複製させる約束だからな。それじゃあまたな!!」


後輩に軽く手を振って走り出す。
欲しいカードは手に入った。
これも一種のトレードってやつだ・・・と思う。

そしてその足で黒須の研究室を訪ねる。
デュエル場でデュエルをしている人を横目で見ながらその場を通り過ぎる。
研究室をノックするのを忘れたので勢いよく扉を開けて中に入る。


「ういーす!」

「おおお!来たな!待っていたぞ迎人!まあ座れ」


黒須はコーヒーを2人分入れて1つを迎人に差し出す。
迎人はそれを一気に飲み干しカップを置く。


「(その顔・・・キーカードは手に入ったようだな)迎人、お前は『7つの大罪』を知っているか?いや、多分知らないな・・・。」

「え、知らねえけど大体想像がつく。大罪になぞらえた7枚のカードがあるってことっすよね?で、どうしたら手に入るんですか?」

「尾瀬呂学園に散らばる7人の教諭に託してある。彼らの信頼を勝ち得ることができればいいんだ。頑張れよ!!」


そう言って黒須は1枚のメモを取り出す。
迎人はそれを受け取って部屋を飛び出す。
メモには7人の教員の名前と7枚のカードが記されている。






それから迎人は

金の亡者として名高い数学教師から金に対する講釈を聞かされ「堕天使マモン」を獲得!
男子生徒を誘惑しまくる保健医に生け贄を捧げ「堕天使アスモディウス」を入手!
若い女教師を妬む三十路の国語教師の愚痴を聞き「堕天使レヴィアタン」をゲット!
1日5食で間食2回の肥満教頭とは菓子パン5つと「堕天使ベルゼブブ」を交換!
怠け者社会科教師の荷物運びを手伝い「堕天使ベルフェゴール」を受領!
機嫌の悪い生徒指導教諭のスキを見て「堕天使サタン」を回収!
偉そうな学園長とのデュエルに上手く負けることで「堕天使ルシファー」を貰う頃には日はどっぷりと暮れていた・・・。


















現在


「なんか学園に保管してあるレアカードらしいんだわ。黒須先生の遊びに付き合わされただけのような気がするけどな!!」


「・・・」


「以上、説明終了!!大牛鬼とあいつに攻撃!!」


4体の天使が攻撃態勢を取る。
暴食の天使が一瞬で相手モンスターを食らう。
他の天使たちはプレイヤーに一斉に攻撃を加える。





ブルーの少年:LP5600→0





ブルーの少年は衝撃で尻もちをつく。
迎人は彼のポケットから倉庫の鍵らしきものを拾い上げる。
そして少年をまっすぐ見る。


「俺の勝ちだ!!選手の奴らにも伝えとけよ!優勝は尾瀬呂学園だってな!」



この時すでに15分経過。
十悟のデュエルが始まっていたのは言うまでもない。




15章:禁じられたタクティクス

「僕の先行。カードドロー。僕は・・・モンスターをセット。カードを2枚伏せてターンエンド。」


モンスターを守備表示にリバースカードが2枚。
何の変哲もない一手。
誰の目にもそう映る。
少なくともこのターンだけは・・・。



「オレのターン。ドロー。」


少年は赤くカラーリングされたディスクから勢いよくカードを引く。


「へへ、手札から『天使の施し』発動!!デッキからカードを3枚ドローして2枚を捨てる!!」



天使の施し 通常魔法
「デッキからカードを3枚ドローし、その後手札からカードを2枚捨てる。」




ドロー、墓地肥し、デッキ圧縮を1枚で行う万能カードなのは言うまでもない。
このカードを初手から使うのがダサいのか?ダサくないのか?
個人的には別にどっちでもいい。
皆、このカードの特性を分かった上で言っていることですから・・・。




「え?い、いきなり手札入れ替えカード?そ、それよりそれは禁止カードじゃ・・・。」


「確かに・・・。君!!それは禁止カードであり即刻・・・」


審判は禁止リストを確認しながら少年に近付いていく。
それを見た少年の目つきが突然変わる。


「あん!?てめえ、ブチ殺されてのか?オレは童実野暗黒獄連会の次期組長なんだよ!貴様の家族皆殺しにしたっていいんぜ!!それとも今死にてぇか!?あん?」


少年はドスのような刃物を取り出してそれを審判に向ける。
それが合図だったのか身長が180以上、筋肉隆々の大男が飛び込んでくる!!
モンスターに例えるならD−HEOドレッドガイのような感じだ。
男は置かれているパイプイスを何度も地面に叩きつけて周囲を威嚇する!
観客席からは幾度となく悲鳴が聞こえる。


「坊ちゃん!!呼びましたかい?」

「ありがとう。そこで少しでもおかしな事をした奴を懲らしめてくれるかな?」


男は黙って頷いた。
童実野暗黒獄連会は、童実野町と尾瀬呂町を中心に関東全域に勢力をのばす暴力団組織で百人以上の武闘派構成員を誇る。
関東で起こる凶悪事件の影にはこの組織の暗躍があると言われているくらいだ。
十悟は両親の仕事柄こうしたニュースは割と頭に入ってくる。


「(困りマシタ。さて十悟ボーイ、どう出マスカ?インダスト・リアル・イリュージョン社の黒服達を使えば訳ありマセンガ・・・。)」


ペガサスは招待者席を動かない。
黒須も白峰もデュエル大会の経験はあるが、こうした事態は初めてだ。



「誰も動くんじゃねぇぞ!!」



観客やベンチ、全ての人間を大声で威嚇する。
脅す事がもう慣れてしまっているのか。
その貫禄は暴力団のそれと同じだ。



「おっと。デュエルの途中だったな!そうそう、このデュエルディスクは通称『リミテッド・レッド』、カードデザイナーやカード裁定、禁止カード決めている奴らが調整で使うディスクなのさ。つまり、どんなカードでも使いたい放題ってわけだ!」



少年は深紅のディスクを示しながらニヤリと笑う。
どのようにして手に入れたかは言っていないが、自分は選ばれた人間だと言わんばかりの態度だ。



「僕がこのままデュエルを続ければ他人には危害を加えない・・・って事でいいのかな?」

「ははは!お前がどれだけ強いか知らねえが、このデュエルはオレが禁止カードでテメーを処刑するってシナリオなのよ!!まあそう言う事にしてやってもいいけど!」


少年は負けるなんて事は考えていない。
それは許されざるカードを使えるという優越感。
暴力によって相手を完全に抑え込んでいるのだという満足感からだろう。


「デュエル続行だぁ!オレはさらに『天使の施し』を発動!カードを3枚ドローして2枚捨てる。手札事故だったなんて思ってないよな?オレはキーカードを待っていただけさ。そしてカードは揃った!!」



少年はニヤニヤ笑いながらデュエルを進める。



「オレは手札から『ブラック・ボンバー』を攻撃表示で召喚!!カード効果で墓地の『魔装機関車デコイチ』を特殊召喚だぁ!!」


「この流れはまさか・・・噂に聞く超強力シンクロモンスター?」


「そうよ!!禁止カード『ダーク・ダイブ・ボンバー』をシンクロ召喚!!」



ブラック・ボンバー ☆3 闇属性 機械族
ATK100 DEF1100
「このカードが召喚に成功した時、自分の墓地に存在する機械族・闇属性のレベル4モンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する事ができる。この効果で特殊召喚した効果モンスターの効果は無効化される。」



魔装機関車 デコイチ ☆4 闇属性 機械族
ATK1400 DEF1000
「リバース:カードを1枚ドローする。自分フィールド上に「魔貨物車両 ボコイチ」が表側表示で存在する場合、さらにその枚数分カードをドローする。」



ダーク・ダイブ・ボンバー ☆7 闇属性 機械族
ATK2600 DEF1800
「チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
自分フィールド上に存在するモンスター1体をリリースして発動する。リリースしたモンスターのレベル×200ポイントダメージを相手ライフに与える。」




「まだまだぁ。手札から『ワン・フォー・ワン』を使って禁止カード『魔導サイエンティスト』を特殊召喚!!」



魔導サイエンティスト ☆1 闇属性 魔法使い族
ATK300 DEF300
「1000ライフポイントを払う事で、融合デッキからレベル6以下の融合モンスター1体を特殊召喚する。この融合モンスターは相手プレイヤーに直接攻撃する事はできず、ターン終了時に融合デッキに戻る。」



ワン・フォー・ワン 通常魔法
「手札からモンスター1体を墓地へ送って発動する。手札またはデッキからレベル1モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。」



巨大な機械と怪しげな化学者がフィールドに揃う。
ジェット機が変形したような巨大ロボット。
体中のいたるところにミサイルを装填している。





「オレは『魔導サイエンティスト』の効果発動!!ライフを1000支払い、デッキから闇属性レベル6『バラに棲む悪霊』を特殊召喚だ!」



化学者が怪しいスイッチを押す。
次元空間は湾曲し、そこから大きな薔薇と花に寄生した邪霊が現れる。
そして邪霊の魂が巨大な機械へと吸い込まれていく。



「コイツは味方モンスターを次々とダメージに変える事ができるのさ!!ま、使えねえ奴は次々と切り捨てていく、オレがこれから身を置く世界と一緒なわけさ。いけ射出!!相手プレイヤーに1200ポイントのダメージを与える!!」


十悟は迷わずカードを使う。


「僕は永続罠『ディフェンド・ライブラリー』を発動!!これは相手のカード効果によるダメージが発生した時、デッキの1番上をめくり、そのカードがモンスターカードならば攻撃力分ダメージを軽減する!!」



ディフェンド・ライブラリー 永続罠
「相手のカード効果によるダメージが発生した時に発動する。自分のデッキの1番上のカードを墓地に送る。そのカードがモンスターカードの場合、その攻撃力分だけ自分の受けるダメージを軽減することができる」



「構うか!!殺れ!!ダーク・ダイブ・ボンバー!!」


「僕のカードは・・・魔法カードか・・・。く!!」


凶悪なその機械は全身のミサイルを放つ。
カードの形をした盾を攻撃が貫通する。
そして全弾が十悟に命中する。



相馬十悟:LP8000→6800
アウトロー金子:LP8000→7000


「へへ!!1KILLできるかどうかのギャンブルってわけか!!いいぜ!モンスター効果、融合モンスター『おジャマ・キング』を特殊召喚!!殺れ!!ダーク・ダイブ・ボンバー!!」


「罠効果、僕が墓地に送るのは・・・罠カード・・・。」


相馬十悟:LP6800→5600
アウトロー金子:LP7000→6000



「次ぃ!!オレは『金色の魔象』を特殊召喚!殺れ!!ダーク・ダイブ・ボンバー!!」



「僕は罠効果発動!モンスターカード『紅蓮魔獣ダ・イーザ』か・・・。」


『モンスター』という言葉に一瞬、表情を変えたが、すぐ不敵な笑みへと変わる。
そのモンスターの攻撃力には?と書かれているからだ。


「そいつの元々の攻撃力はゼロ。もちろん軽減もゼロだな?」



相馬十悟:LP5600→4400
アウトロー金子:LP6000→5000



「ははは。運がねぇ野郎だな!!サイエンティストの効果『キング・もけもけ』を特殊召喚!!さあ行け!ダーク・ダイブ・ボンバー!!」



少年は無邪気に。
それでいて残忍に次々とモンスターを犠牲にしていく。



「罠効果発動だ!デッキの一番上は・・・く、魔法カードか。」

「残念だったなぁ!!」


相馬十悟:LP4400→3200
アウトロー金子:LP5000→4000


「ククク、こいつは1KILL行くな!サイエンティストの効果、次は『クリッチー』だ!ぶっ潰せ!ダーク・ダイブ・ボンバー!!」


「罠効果発動!次のカードは・・・『トゲクリボー』だ!!ダメージを300軽減する!!」


「へ!気休めだなぁ」



相馬十悟:LP3200→2300
アウトロー金子:LP4000→3000



「オレは魔導サイエンティストの効果発動!!『おジャマ・キング』を特殊召喚!!そしてリリース!行け!ダーク・ダイブ・ボンバー!」


「罠効果発動だ!デッキの一番上は・・・く、魔法カードか。」


徐々に十悟のライフが削られていく。
伊東淳也への対策として効果ダメージ無効化の罠を積んでいて助かった。
もし、このカードが無かったらと思うと背筋が寒くなってきそうだ。



相馬十悟:LP2300→1100
アウトロー金子:LP3000→2000


「さあ行くぜ!モンスター効果、『キング・もけもけ』を特殊召喚!!殺れ!!ダーク・ダイブ・ボンバー!!」


「罠効果発動!カードは攻撃力3000の『トーチ・ゴーレム』よってダメージは0だ!ここで君と僕のライフポイントは逆転した!」



ダメージはゼロ。
カードの盾は十悟を守った。
ライフ1100VSライフ1000
モンスター召喚のコストとして相手もライフを払っている事を忘れてはいない。



相馬十悟:LP1100
アウトロー金子:LP2000→1000


「バカが!!オレにはまだ2体モンスターが残っているんだぜ!魔導サイエンティストをリリース!200ポイントのダメージ!」


「罠効果、デッキの1番上のカードは・・・『異次元の女戦士』!!」


十悟は自身のカードを確認しながら、それを墓地に送る。
相手の攻撃は再びカードの盾で守られた。
少年はそれが気に入らないのか、あと一歩で勝てるという焦りなのかまだ効果の使用を続ける。


「まだだぁ!!ダーク・ダイブ・ボンバーをリリース!!1400ポイントのダメージを受けて死ねぇ!!」


「罠効果!!僕のカードは攻撃力2400の『岩窟魔獣ガ・ラード』、よってダメージはゼロだ!!」



岩窟魔獣ガ・ラード ☆4 地属性 悪魔族
ATK:2400 DEF:300
「自分のスタンバイフェイズにゲームから除外されている自分のカードを墓地へ送る。送れなければこのカードを破壊する。」



十悟は力いっぱいカードを引き、そのカードを見せる。
カードの盾は三度、彼を守った。


「調子に乗るんじぇねえ!!手札から『死者蘇生』発動!対象はもちろん『ダーク・ダイブ・ボンバー』!!今度こそ1400ポイントのダメージを受けて死にな!!」



死者蘇生 通常魔法
「自分または相手の墓地に存在するモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。」




「く!!罠効果発動!このカードに賭ける・・・モンスターカード『幻光魔獣アル・ミューレ』、その攻撃力は1600だ!!」



幻光魔獣アル・ミューレ ☆4 光属性 悪魔族
ATK1600 DEF700
「自分の墓地のモンスター1体と相手フィールド上のモンスター1体を対象とする。それらが同レベルならばゲームから除外する。」



十悟はほっとした様子でゆっくりカードを墓地に送る。
後攻2ターン目でギリギリの綱渡りを演じたのは恐らく初めてだっただろう。



「しぶとい奴め!オレは魔法カード『ハデスの徳政令』を発動!このターン、カード効果で支払ったライフポイント分自分のライフを回復することができる!よってオレのライフは無傷の8000に戻る!!はははははっはは!せっかく持ちこたえたのに残念だったなぁ。ターンエンドだ!」



ハデスの徳政令 通常魔法
「このターンに自分が自身のカード効果で支払ったライフポイント分、ライフを回復する。このカードを発動する場合、バトルフェイズを行う事が出来ず、発動後エンドフェイズになる」



相馬十悟:LP1100
アウトロー金子:LP8000






「ふう。君は新聞を読むかな?」

「な、何だよ急に。」

「インターネットも悪くないけど事件、事故、テクノロジー、政治、経済。」

「ピンチになっておかしくなったか?」




童実野暗黒獄連会、強制捜査。

組員100名以上が逮捕!

覚せい剤所持、銃刀法違反などの疑い続々。




「記事によると、残るは逃走中のあの人だけ!!」


十悟は男を指差す。
次の瞬間、男の巨体が前方に倒れる。
十悟はびっくりして男を凝視する。

結果と過程を結び付けるのは簡単だった。
男に素早く正確に手刀が当たったのだ。
少し遅れてどこに居たか分からないが、黒服の男たちが次々と男に飛び掛かる。
周囲の行動に安心して少年は立ち上がる。
十悟と同じ制服。


「迎人!!」

「待たせたな!!救出ミッション完了だぜ!」


一見、無鉄砲だがまっすぐ正しい行動!
それこそ十悟が迎人を尊敬し、2人が親友たりうる理由なのかもしれない。


迎人に遅れて数十秒、伊東淳也が会場に入ってくる。
酸欠状態なのか、少しフラフラと足元がおぼつかない感じだ。


「相馬十悟!!決着はいずれ着ける!!俺の『悪魔の調理師』も待っているからな!!」


伊東淳也は大声で叫ぶ。
本来、そこで闘っているのは自分だった。
大会決勝で遊戯と闘うはずだった海馬が都合で戦えないような・・・。



「オッケイ!やれるとこまでやってみるよ!!」



男が連行されていく姿を横目で確認しながら十悟は話す。
迎人、淳也は自分達のベンチに戻ってデュエルを見守る。




16章:禁止デッキを破壊せよ!

「僕のターン。ドロー!!!」



十悟は勢いよくカードをドローする。
カードを素早く確認して戦術を立てる。
圧倒的不利な状況ではある。
だがそれがデュエリストの闘志に火をつける!



「(今、最も脅威となりえるのは・・・『混沌帝龍 −終焉の使者−』!!全体破壊効果を使われたらそこで終わりだ。)」



混沌帝龍 −終焉の使者− ☆8 闇属性 ドラゴン族
ATK3000 DEF2500
「このカードは通常召喚できない。自分の墓地の光属性と闇属性モンスターを1体ずつゲームから除外して特殊召喚する。1000ライフポイントを払う事で、お互いの手札とフィールド上に存在する全てのカードを墓地に送る。この効果で墓地に送ったカード1枚につき相手ライフに300ポイントダメージを与える」。



裁きの龍(現環境トップメタのエースカード)はライフ1000と引き換えに、フィールドを一掃する。
加えてこのカードは手札もすべて墓地に送り、1枚につき300ポイントのダメージを相手だけに与える。
その強さこそが禁止カードたる所以だろう。



「だったら僕は魔法カード『鉄鎖の指名者』発動!!このカードは僕がレベルと属性を宣言し、それに当てはまるモンスターをデッキ、手札、墓地から除外することで相手デッキから同レベル、同属性のモンスターをすべてゲームから除外する!!」



鉄鎖の指名者 通常魔法
「レベルと属性を1つ宣言し、それに当てはまるモンスターをデッキ、手札、墓地から1枚ずつ除外する。相手はデッキに宣言されたレベルと属性が同じモンスターがいる場合、そのカードをすべて除外しなければならない。」



「僕が宣言するのは闇属性、レベル8!!」




十悟は3枚のカードを選ぶ。
手札からは『破壊獣ゾミューア』
デッキからは『魔獣王アルド・ヴァーム』
墓地からは『トーチ・ゴーレム』



「く、オレはデッキから『混沌帝龍 −終焉の使者−』2枚と『混沌の黒魔術師』1枚をゲームから除外する。」



3枚のかカードがフィールドに現れる。
カード状態の3枚に次々と鎖が突き刺さり、砕けていく。



「僕はカードを1枚伏せてターン終了だ!」


「ピンポイントで破壊か!!オレのターン。ドロー。」


強力カードの除外に少し残念そうにつぶやく。
しかし、ドローカードを見てわずかに微笑む。
それは誰もが望むカード。


「オレは手札から『強欲な壺』を発動!デッキからカードを2枚ドロー。ドローカードにはもう1枚『強欲な壺』がある!!もちろん発動!!カードをさらに2枚ドローする!」



強欲な壺 通常魔法
「自分のデッキからカードを2枚ドローする。」




「行くぜ!!手札の『サイバー・ドラゴン』を特殊召喚!!さらに墓地の光属性と闇属性モンスターを除外して『カオス・ソルジャー −開闢の使者』を特殊召喚!さらに2枚を除外して、もう一枚の『カオス・ソルジャー −開闢の使者』を特殊召喚だぁ!!」



カオス・ソルジャー −開闢の使者 ☆8 光属性 戦士族
ATK3000 DEF2500
「このカードは通常召喚できない。自分の墓地の光属性と闇属性モンスターを1体ずつゲームから除外して特殊召喚する。自分のターンに1度だけ、次の効果から1つを選択して発動する事ができる。●フィールド上に存在するモンスター1体をゲームから除外する。この効果を発動する場合、このターンこのカードは攻撃する事ができない。●このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、もう1度だけ続けて攻撃を行う事ができる。」



サイバー・ドラゴン ☆5 光属性 機械族
ATK2100 DEF1600
「相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在していない場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。」



「今度こそぶっ倒す!!『カオス・ソルジャー −開闢の使者』の攻撃!開闢双破斬!!」



光と闇の魂が生け贄となり、伝説の剣士2体が剣を構える。
デュエルキングも愛用したレアカードで、超絶な威圧感がある。
剣士が剣をまっすぐ上に掲げると、その力が切っ先へと伝わる。
そして次の瞬間、強烈な斬撃が十悟のフィールドを直撃する!



「くぅ!!これが伝説の最強剣士の力!!」

「まだまだぁ!モンスター効果でもう一回攻撃!時空突刃・開闢双破斬!!」



最強剣士はその剣を再び構える。
さらなる標的、十悟をまっすぐに見据える。
それを直感した十悟は迷わず行動に出る。



「罠発動!!『魔獣の防御壁』!!僕はライフを1000支払い、カオス・ソルジャーとレベル合計が同じになるようにデッキから『魔獣』と名のついたモンスターを特殊召喚するよ!!」



魔獣の防御壁 通常罠
「ライフ1000ポイント支払って相手モンスター1体を指定して発動する。そのモンスターとレベル合計が同じになるようにデッキから『魔獣』と名のつくモンスターを特殊召喚する」



相馬十悟:LP1100→100
アウトロー金子:LP8000




十悟は素早くカードを探し召喚する。
残るカオス・ソルジャーとサイバー・ドラゴンからの直接攻撃の回避。
自分のデッキから特殊召喚可能なモンスターのレベル合計。
そして次のターンへの布石。

全てを満たす一手が導き出された。
今、デュエルが傾く瞬間がここに訪れた。
数多くのデュエルを見てきたペガサスにはそれが分かった。
その偶然とも必然とも取れる瞬間に彼はまた喜びをおぼえる。



「来た!!十悟の魔獣カード!!十悟!ここから反撃だぜ!!」


迎人が軽く拳を振り上げる。
十悟は頷いて相手を見据える。


「レベル2の『魅惑魔獣』『可憐魔獣』『妖艶魔獣』『恍惚魔獣』をそれぞれ守備表示で特殊召喚だ!!」


魅惑魔獣イクス・ジェーン ☆2 炎属性 悪魔族
ATK600 DEF200
「このカードが通常召喚に成功した時、デッキから『魔獣』と名のつくモンスター1枚をデッキから墓地へ送る。このカードが墓地に存在する時、自分のスタンバイフェイズにカードを1枚ドローすることができる。相手は自分のメインフェイズにデッキから2枚カードを除外することで、墓地のこのカードを除外できる。」



可憐魔獣エレン・ファルク ☆2 風属性 悪魔族
ATK900 DEF300
「このカードが通常召喚に成功した時、デッキから『魔獣』と名のつくモンスター1枚をデッキから墓地へ送る。このカードが墓地に存在する時、相手スタンバイフェイズに1000ポイントのダメージを与える。相手は自分のメインフェイズにデッキから2枚カードを除外することで、墓地のこのカードを除外できる。」



妖艶魔獣アルン・クォームル ☆2 地属性 悪魔族
ATK800 DEF500
「このカードが通常召喚に成功した時、デッキから『魔獣』と名のつくモンスター1枚をデッキから墓地へ送る。このカードが墓地に存在する時、自分のスタンバイフェイズにゲームから除外されている自分のカード1枚を手札に加えることができる。相手は自分のメインフェイズにデッキから2枚カードを除外することで、墓地のこのカードを除外できる。」



恍惚魔獣ウラル・ザミヌ ☆2 水属性 悪魔族
ATK700 DEF400
「このカードが通常召喚に成功した時、デッキから『魔獣』と名のつくモンスター1枚をデッキから墓地へ送る。このカードが墓地に存在する時、相手スタンバイフェイズに相手の手札1枚をゲームから除外する。相手は自分のメインフェイズにデッキから2枚カードを除外することで、墓地のこのカードを除外できる。」



燃え立つような炎の剣
研ぎ澄まされた緑の短剣
大地にも似た重厚な斧
透き通る海のような長槍
それぞれの武器を携えたモンスターが4体並ぶ!!


「ザコモンスターを並べても無駄だ!開闢の使者の攻撃!開闢双破斬!!」


「く!!」


「続いて2回目の攻撃!時空突刃・開闢双破斬!!」



伝説の剣士の攻撃は次々とフィールド上のモンスターを蹴散らしていく。
十悟を守るモンスターは1体また1体と倒されていく。



「サイバー・ドラゴン、最後のモンスターも蹴散らせ!!エボリューション!!バースト!!」



機械龍の攻撃で再び十悟のフィールドにモンスターはいなくなった。
それでも彼の闘志は消えていない。
それどころか逆に燃え盛っているといって良い。



「この4体は墓地で効果を発揮するモンスターだ!!ドロー強化、除外カードの回収、バーンダメージ、ハンデス!!君はデッキから2枚のカードを除外することでモンスターを除外することができる。」



十悟はカードを4枚見せながらそれぞれの効果を説明する。
先程よりもじょう舌、それでいて冷静さは失っていない。

少し考えながら金子は決断を下す。
相手に流れを持っていってはいけない。
そう直感したのだ。



「オレはデッキから8枚を除外して、その4体をすべて除外する。ターン終了だ!!」

「エンドフェイズに速攻魔法『異次元からの埋葬』を発動!!除外されている『魅惑魔獣イクス・ジェーン』と『妖艶魔獣アルン・クォームル』、『恍惚魔獣ウラル・ザミヌ』の3枚を墓地へと送る!!」



異次元からの埋葬 速攻魔法
「ゲームから除外されているモンスターカードを3枚まで選択し、そのカードを墓地に戻す。」



十悟は少し笑ってカードを墓地に送る。
そして一呼吸おき、そっとカードに手をかける。



「僕のターン。ドロー。魅惑魔獣の効果発動!さらにもう一枚ドロー。妖艶魔獣の効果で除外されている『魔獣王アルド・ヴァーム』を手札に加える!!」






「僕は『魔獣執事ヴェラド・ローザン』を召喚する!!彼は魔獣王に仕える有能なる執事だ!召喚時、相手フィールド上のモンスターのレベル合計と同じ枚数分まで相手の墓地のカードをデッキに戻すことができる。レベル合計は21、君の墓地は18枚のはず・・・すべてをデッキに戻してもらうよ!!」



魔獣執事ヴェラド・ローザン ☆1 闇属性 悪魔族
ATK200 DEF1000
「このカードが召喚に成功した時、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターのレベル合計分まで相手墓地のカードをデッキに戻す。???」



自身を主張しない黒の執事服を纏った悪魔が現れる。
召喚されてすぐ十悟に軽くお辞儀をし、相手の方に向き直る。



「な、何を考えてやがる!!」


金子は一歩下がりながらも叫ぶ。
精一杯の威嚇だったのかもしれない。



相手デッキ:25



「この瞬間、魔獣王召喚の準備が整った!!僕に力を!!」



紅蓮魔獣ダ・イーザの力を受け、煉獄なる炎を纏い

岩窟魔獣ガ・ラードの力を受け、屈強なる地の盾を持ち

恍惚魔獣ウラル・ザミヌの力を受け、清廉なる水の理を知り

可憐魔獣エレン・ファルクの力を受け、大いなる風を味方に

幻光魔獣アル・ミューレの力を受け、偽りなき正義の光に導かれ

魔獣執事ヴェラド・ローザンの力を受け、何物にも染まらぬ黒き力を覚醒させよ!!






十悟はカードを高らかに掲げる。
その後、勢いよくカードをディスクに置く。



「僕のエースモンスター!!来い!『魔獣王アルド・ヴァーム』!!」



魔獣王アルド・ヴァーム ☆8 闇属性 悪魔族
ATK3500 DEF2450
「フィールドまたは墓地からそれぞれ違う属性の6種類の『魔獣』と名の付くモンスターを除外した時のみ特殊召喚可能。このカードが特殊召喚に成功した時、相手デッキを半分(切り上げ)にする。自分のエンドフェイズ時にゲームから除外している『魔獣』と名の付くモンスターを1枚、セットまたは特殊召喚できる。」




あらゆる属性の魔獣を司る王
その絶対的強さを体現したそのプレッシャー。
悪魔でありながら、正義を知る騎士のような姿。
伝説の剣士の正面へと進み攻撃態勢を取る。




「僕は『魔獣王』のモンスター効果発動!!君のデッキの半分、12枚のカードをゲームから除外だ!!」


「な、除外だと!!」








相手デッキ:13




「僕はさらに魔法カード『破滅の競売‐デッドリー・オークション』を発動する!!」



破滅の競売‐デッドリー・オークション 通常魔法
「相手フィールド上の表側表示モンスターを任意の枚数対象にして発動する。対象モンスターのレベルの半分(切り捨て)のカード相手に公開することで、そのモンスターのコントロールを得る。この時、相手は対象モンスターのレベル分のカードをデッキから公開してコントロールを戻すことができる。エンドフェイズ時にお互いに公開したカードをゲームから除外する。」



「こ、今度は何だっていうんだ」


「これはモンスターの所有権を取引するオークションさ。支払いは自分のデッキのカードを使う!!実際にやってみるよ。僕はデッキ4枚を公開することで『カオス・ソルジャー −開闢の使者』のコントロールを得るよ!!」



公開カード(十悟)

氷結魔獣ザ・ギーネ
邪念魔獣ラム・シューラ
魔獣の宝札
奈落の落とし穴



カオス・ソルジャー1体が十悟のフィールドへと移る。
そして金子の方を向いて攻撃態勢を取る。
十悟はそれを見ながらさらに続ける。



「君はこれを取り返すのには倍の支払いが必要になる!」

「渡さねぇ!!デッキから8枚を公開!!カオス・ソルジャーの効果は使わせねえよ!」



金子は迷わずデッキのカードを手に取る。
一応、全てのカードに目を通す。
カオス・ソルジャー1体は再び金子のフィールドに戻る。
それを金子は嬉しそうに見る。




公開カード(アウトロー金子)

デビル・フランケン
苦渋の選択
同族感染ウィルス
サンダー・ボルト
ハーピィの羽根帚
キラー・スネーク
破壊輪
八汰烏




「残念だったな。除外8枚ごときで諦めると思ったか!?」


「いいや!僕の思惑通りだよ!!オークションの効果で君は8枚のカードの除外を宣言している。そして僕が除外する邪念魔獣は『ネクロ・フェイス』と同じ、デッキを5枚除外する効果を持っている。」



邪念魔獣ラム・シューラ ☆4 闇属性 悪魔族
ATK:1200 DEF:1800
「このカードがゲームから除外されたときお互いはデッキの上から5枚をゲームから除外する。」



「と、いうことは・・・」


「僕のエンド宣言と共に君のデッキは合計13枚除外される!!そして僕の記憶に間違いがなければ君のデッキも13枚!!」


「ば、バカな!!オレの手札は『遺言状』・・・どうしようもねぇ。」


金子は手札を見つめる。
自分で声に出した通り、何度見ても手札は変わらない。




「ターン終了!!このデュエル、僕の勝ちです!!」

「ぐわぁあああああああ。デッキ切れだとぉ。」



相手デッキ:13→5→0



金子は髪をクシャクシャにしながら叫ぶ。
そして十悟の方を睨みつける。



「オレは禁止カードを使うことを絶対に辞めない!!オレ達、法の外で生きる人間のデュエルは勝利こそすべて!勝ち負けで金、権力、女、それらを手にする事が組織の繁栄につながる!!オレは親父からその為のカードを貰った。」


「僕が父から教わった事は違う。法は僕らの大切なものを守るのに必要な決まりだ!!法の外で生きる人同士でどんなデュエルをしようと構わない!!でも、それを僕たちの世界に持ち込もうとしたなら、僕は君を許さない!!」


「ふん!!オレとは真逆の人間ってわけか!!これ以上喋っていても話が合うとは思えない!敗者は黙って去ってやるよ!!じゃあな!正義のヒーローさんよ!!」



金子は荷物を軽く肩にかけて十悟に背中を向ける。
そして童実野高校のメンバーにも何も言わずに会場を去っていく。
観客からの罵声などまるで聞こえないかのように。
十悟はしばらくそれを見ていた。





「デッキ破壊は正義と言うには冷たすぎる!そして魔獣たちをヒーローと呼べるのか!?」


十悟は目をつぶり考える!
朝子と見に行ったあのデュエルを忘れた事はない!!

やっぱり直接戦ってみたい。
僕があの時から目指す、最高のデュエリスト!
ヒーローデッキ使い!
遊城十代!!




17話以降へ続く



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