ディスティニークリエイター

製作者:???ネオスさん






はじめに
この小説は「ディスティニーブレイカー」の続編です。前作を読んでないと良く分からないと思います。よろしければ前作にも目を通していただけるとうれしいです。今回もオリカが多くなると思われますのでその点はご了承下さい。
カード窃盗集団「神狩の使徒」が運命の名を持つ神を狙いだした。新たな仲間を加えて十悟達の運命が再び動き出す。



今作からの登場人物

森崎 いつき
この名前と見た目により小さい頃から女の子に間違われていた美少年。孤児であった過去から人を信じず植物の方が好きであった。しかしデュエルモンスターズとの出会いから少しずつ心を開くようになってきた。ある人からの指令で尾瀬呂学園に転校してくるが、デュエルを通じて友達ができればいいと考えている。戦場花シリーズで構成された植物族デッキを操る。

宝生 澪
平安の時代に京都で災いをなす魔物を封印・退治してきた、宝生家の一人娘。性格はおっとりしていて、少し天然ボケなところがある。伝説のデュエリスト、ヨハン・アンデルセンとはまったく違う宝玉獣を操る。父親から「究極宝玉神―レインボー・フェニックス」を託され、尾瀬呂学園に転校してくる。デュエルをする中で精霊の力に目覚める。

伊東 淳也
高校入学直後、イジメにより不登校となる。そのために異世界へは飛ばされず、ディスティニーブレイカーについても知らない。「悪魔の調理師」のカードを手にして以来、その精霊の力に操られるように、自分をバカにしてきた者たちへの復讐を企てる。





1章:運命の再始動

今は12月。
そろそろ雪が降ってもおかしくないような気候だ。
十悟達が異世界から帰還して、4ヶ月が経っていた。
あの一件について最終的に学園側は、B組全体での夏季合宿と言うことを発表した。
もちろん実際は壮絶なデュエルが繰り広げられており精霊にも犠牲がでた。クラスメイトに犠牲が出なかったのは不幸中の幸いであろう。
その真相は、黒須から一部のデュエル関係者にのみに伝えられた。






ここは尾瀬呂学園高等部、
2年B組の教室。
今は古典の授業だ。

「あと5分!」

楽しい時間はあっという間に過ぎる。
しかし、苦痛な時間程長く感じられるのはなぜだろう?
と作者も常日頃考えている。


「(10、9、8・・・3、2、1、0、よっしゃ!!デュエルの時間だ!!!」


この時間を心待ちにしていたのは彼だけでは無いはずである。


「落ち着け、迎人。今日は実技じゃない。とりあえず教室で待機だそうだ。睡眠学習の最中に連絡があったよ。」

「う、うそだろ・・・。それだけが楽しみだったのに。」

迎人は物凄い勢いで崩れ落ちた。

彼は僕の親友で名前は明智迎人。学校の授業は寝てばっかりだけどデュエルの腕前は学園でもトップクラスだ。ちなみにデッキは推理ゲートを扱う。



「おい。授業を始めるぞ。」

この人は黒須先生。僕達のクラスの担任でデュエルの授業を受け持つ教師だ。
過去にプロとして活躍したこともあったが、その詳細は語られた事はない。


「あ、あなたは。」

黒須と共に入ってきた人物を見て思わず十悟達は思わず声をあげた。
それは、テレビや雑誌でしか見た事がない男だったのだ。

「ハロー。始めましてデース。」

ペガサス・J・クロフォード。デュエルモンスターズの生みの親であるこの男の他に2人の男が教室へと入ってきた。

「私の事は、皆さんご存知みたいデースから、彼らの紹介をさせて頂きマショウ。右がMrフランツ、左は前田隼人。2人とも我が社でカードデザイナーをしてもらってマース。」

前田隼人、父は薩摩次元流の使い手で伝説のデュエリスト。
また、アカデミア在学中1年だけだがあの遊城十代のルームメイトだった事がある。
現在は絵の才能を生かし、インダスト・リアル・イリュージョン本社のデザイナーとして忙しい日々を送っている。

※Mrフランツについては、遊戯王GX85話を参照。


2人はそれぞれ軽く会釈をした。

「会長、私から一言よろしいですか?あの、皆さん『ディスティニーブレイカー』の事件では大変ご迷惑をおかけしました。」

彼は深々と頭を下げた。

「あのカードを製作したのは私なのです。あの時、私はおかしかったのです。カード作りに行き詰まり、とにかく強いカードを生み出す事だけに固執してしまった結果がこれです。」

フランツは本当に申し訳なさそうにその詳細を語った。
話が一段落すると今度は、ペガサスの方が口を開いた。

「私たちが、ここに来たのには理由がありマース。神、幻魔、邪神、これらのカードは3枚あるというのはご存知デースね。実は、ディスティニーブレイカーにもこれに匹敵する、運命の神があと2枚存在するのデース。これらのカードは互いに引かれ合い、やがて1人の所持者を求めマース。」


クラス中にざわめきが起きた。
十悟達にもその衝撃は大きかった。

でも、それと同時に考えてしまう。
どんなカードなのか?
どんな効果なのか?
今は誰が所持しているのか?



「デュエリストにデュエルをするな!とは私には言えマセーン。ですが、十分注意してくだサーイ。」

「そんな、大げさな。」

迎人は言った。

「でもそうとも言ってられないんだな!!実はこれらのカードを狙っている組織が存在するんだな。」

「隼人ボーイ、その話はMr黒須のみに話せばいいのではないのデースカ。」

「俺には分かるんだな。彼らは知っていなければならないんだな!十代だってあの歳で三幻魔との戦いから逃げなかったんだな。それに見れば分かるんだな。彼らからは強い意志を感じる。はっきり言うんだな。君達がディスティニーブレイカーを守るんだな!」



十悟たちは、自分達とそう歳の変わらない者の言葉に聞き入っていた。
それと同時に彼らの中で、何かが動き始めた。
「運命」そういうのが最も適当であろう。







放課後

「運命の神か。ちょっと気になるな。」

十悟はつぶやいた。
彼は異世界でディスティニーブレイカーと戦った事がある。

「おーい。十悟、待ってくれよ。」

迎人、朝子、久美、智花がそこには立っていた。
異世界で戦った五人がそろったことになる。

「ねえねえ、私さっき黒須先生とペガサス会長が話してるのを聞いちゃったんだけど、運命の神の1つは京都にあるらしいんだ。なんとかっていう古いお屋敷の奥深くに封印してあるらしいわよ。でも問題は、運命の神を狙う組織の方なんだって。その名称は『神狩の使徒』日本を中心にレアカードの強奪と偽造を行っているって話だよ。」

彼女は反町朝子。一応、幼馴染ってことになっている。
デッキはパーミッションだ。


「昔のグールズって組織みたいですね。首領のマリク・イシュタールの敗北で実質壊滅したって、何かの本で読みました。」

彼女は木村智花。責任感がありクラス委員長を務めている。異世界の一件以来、僕達とよく行動を共にする。デッキはサイドラビートダウンだ。


そしてもう一人。
最後になったのに特に理由は無い。
ただ、語るべき事が多そうだから後にしたのだ。

六道久美。彼女にはデュエルモンスターズの精霊が見える。
ちなみに僕には「トゲクリボー」以外は微かにしか見えない。
彼女のデッキはピケル中心のキュアバーン。
だから精霊はピケル!
なんて世の中上手く行くはずは無い。

彼女の肩の辺りに赤い塊が見える事がある。
どうやらそれが彼女の精霊「おジャマ・レッド」らしい。



おジャマ・レッド ☆2 光属性 獣族
ATK0 DEF1000
「あらゆる手段を使ってジャマをすると言われているおジャマシスターズの一員。実はおジャマ・イエローLOVE。」



久美が異世界から連れてきた精霊だ。
はっきり言って弱い。
おジャマをメインでデッキに入れている者は、有名なところでは伝説のデュエリスト万丈目準くらいだろう。

久美が彼女達から聞いた話では、昔おジャマの村から別の次元に旅立った恋人を探しているらしいのだ。




「神狩の使徒か。最終的には、武藤遊戯の持つ神まで奪おうって事か。大した自信だね。」

それを聞いた迎人が、真剣な顔で言った。

「俺たちでそいつらを倒さないか?そうすりゃ、俺らも伝説のデュエリストの仲間入りできるかもしれないぜ!!」

突然の迎人の提案に皆、驚いた。

「確かにそんな組織は絶対に許せないけど、奴らの狙うようなカードを僕らは持ってない。それにディスティニーブレイカーの存在自体ごく一部の人しか知らない事だから僕らと接触する事はないはずだよ。」


「そうそう。大体、相手がどんな連中なのかとか、どこに潜んでるとか詳しい事が分からないのよ!」

と、いうことで「神狩の使徒」殲滅計画は却下となった。

しかしこの時はまだ気づかなかった。
新たな運命は僕達のもうすぐそこまで来ていたのだ。



2章:2人の転校生

薄暗い部屋に一人の男がいる。

「ボス、2枚のカードの所在が判明しました。ディスティニーブレイカーは尾瀬呂学園の教師が研究用に所持している模様です。その学園の生徒が覚醒させたらしく、精霊としての反応もあります。」

社長が座るような肘掛椅子が振り返った。
ボスと呼ばれるその男は中肉中背で、顔にもこれといった特徴はない。
歳は20代後半といったところだろうか。

「それでもうひとつは?」

報告者はメモを開きそれを見ながら話を続けた。

「ディスティニークリエイターの方が、少し厄介でして。京都のとある屋敷の中に封印されており、その封印を解くにはあるカードが必要だという事が分かりました。そのカードはその屋敷のどこにも無く、同時にその屋敷の娘の姿が無くなっていることから、彼女にそのカードを託しどこかへ逃がしたと思われます。いかがなされましょう?」


「分かった。尾瀬呂は後回しだ。あそこは海馬瀬人のいる童実野に近い。やつがいるそばで事を起こすと厄介だ。あの武藤遊戯とも独自のコネクションがあり、警戒されては困るからな。奴をスパイとして使い、いつでも行動を起こせるようにしておけ!それ以外の者は娘の行方をつかむ事に全力を尽くせ!!以上だ。」

男は何のためらいも無く指令を言い渡した。
そして肘掛け椅子をクルリと回し逆の方向を向いた。

それを確認すると報告者は、部屋を出て行った。

「究極宝玉神か。いい響きだ。宝玉獣と共に手に入れる日も近い。ふふふ。」











次の日

「ええ・・・無事、彼女と同じく2年B組に編入することができました。・・・・はい、分かっています。まずはデュエルですね。・・・はい、では今夜また連絡いたします。それでは。」

その少年は携帯電話をしまい、2年B組を探し始めた。
それはすぐに分かった。
廊下にたたずむ少女が一人いるからだ。
もう、HRが始まってもおかしくないのに教室に入らないのは自分と同じ転校生である何よりの証拠であろう。

「二人とも揃ったね。教室で私が合図したら入ってきなさい。自己紹介をしてもらうから、ちょっと考えておいてくれよ!」

そういうと黒須は教室に入っていった。




「ええ、突然だがこのクラスに転校生が来る事になった。さあ二人とも入りなさい!」

黒須が廊下まで聞こえる大きな声で言うとドアが開いた。
教室じゅうにざわめきが起きた。
それもそのはず、誰もが期待するような、美少女と美少年が入ってきたのだ。

「静かに!!これから自己紹介をしてもらいます。じゃあ君から。」

黒須の言葉で、クラス中の視線が二人に注がれた。
少年は一歩前に出てさほど緊張することもなく話し出した。

「始めまして、森崎いつきです。両親の急な転勤で今日からこの学園でお世話になります。趣味は、花の栽培とデュエルモンスターズです。この学園ではデュエルの授業もあるというので大変楽しみにしています。皆さん!!これからよろしくお願いします!!!」

彼はいわゆる美少年だった。
一見すると、女の子にも見える。
髪は薄い茶髪である。
身長は少し低めでとなりに立つ女の子とほぼ同じだ。


今度は女の子の方が前に出た。

「うちの名前は宝生澪ですー。京都からきましたー。うちもデュエルモンスターズが大好きですー。でもカードで戦うのは初めてなので授業をしっかり聞いてようと思いますー。皆さんよろしゅうに。」

彼女は生粋の京女といった感じだ。
髪は美しい長い黒髪で瞳はサファイアのような青だ。


「これから2人にはデュエルをしてもらおう。授業は変更してある。これからデュエル場へ移動だ。」

「(ふふ。これは願ってもない。)」

いつきは微笑を浮かべた。


自己紹介も終わり皆デュエル場に移動していく。

「まず、森崎君の相手を・・・・六道久美!相手をしてあげるんだ。」

久美は少し緊張しながら前へでた。
彼女に対して特に女子の視線が突き刺さっている。

「君が相手か。見せてあげるよ!僕の美しき花々を!!!」


2人が向かい合い臨戦態勢に入った。


「デュエル!!!」


六道久美:LP8000
森崎いつき:LP8000


「私の先行。(お、おジャマが3枚も・・・ピケルは無しかぁ。)ドロー。」

彼女の横におジャマレッドが浮いている。
久美はそれを気にせず、カードをドローした。
真っ青だった久美の顔が元に戻っていった。

精霊の力だろうか?
必要なカードが来たらしい。

結構興味深いデュエルかもしれない。
転校生のデッキも気になるけど、久美がいかにして精霊を使いこなすのか?



次回予告

久美は序盤、おジャマカードを中心に展開する。対するいつきは戦場花シリーズを駆使して久美を追い詰めていく。久美はピケルを召喚し勝負にでる。

あ、僕の出番はまだ先ですか。
とりあえず次回予告は頑張ります。



次回

3章:戦場の美しき花
4章:ピケル- Die Schone Frau



3章:戦場の美しき花

「私は手札から『融合』を発動。手札のおジャマ三姉妹を融合して『おジャマ・クイーン』を召喚よ。」


おジャマ・クイーン ☆6 光属性 獣族
ATK0 DEF3000
「『おジャマ・ブルー』+『おジャマ・レッド』+『おジャマ・ホワイト』
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手の手札上限枚数は4枚となる。」


純白のドレスを着ているが所詮おジャマである。
一応、おジャマキングと同じ王冠をつけている。


「何だ?この醜いモンスターは?(いやそれでも守備力3000の強力な壁モンスター。油断はできない。)」

いつきの口からは、つい本音が出てしまった。

「これでターン終了よ。」

六道久美:LP8000  手札:2
森崎いつき:LP8000  手札:5


「僕のターン。ドロー。まず、手札を1枚捨てて永続魔法『魔法の植木鉢』発動。」


いつきのフィールドに不思議な鉢が現れた。
確かに植物を育てるための鉢である事は見てわかる。

「さらに、『戦場花−バラ』を召喚。そして『魔法の植木鉢』の効果で再度召喚するよ。」


真紅のバラを模した美しいモンスターが現れた。
おジャマと比べると雲泥の差であろう。


戦場花−バラ ☆4 地属性 植物族
ATK1400 DEF1200
「このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、通常モンスターとして扱う。フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。●このターン、攻撃しない代わりに相手ライフに800ポイントのダメージを与える。」


魔法の植木鉢 永続魔法
「手札を1枚捨てて発動。1ターンに1度、植物族デュアルモンスター1体を再度召喚した状態にすることができる。このカードが破壊された時、この効果を受けたモンスターすべてを破壊する。」


「十悟、あのモンスターって?」

「デュアルモンスターか。フィールド、墓地では通常モンスターとして扱われるけど、フィールドで再度召喚することにより効果を発揮するモンスター達だ。しかも『魔法の植木鉢』の効果で即座に効果を使ってくるわけか。」




「壁モンスターを出してもこのモンスターの前には意味がない。『戦場花−バラ』のモンスター効果、ローズキャノン!!」

バラ型のモンスターから無数のトゲが久美に向かって飛んでいった。

「く、でも大丈夫。ピケルさえ来ればこのくらいのライフすぐ取り戻せる。」

「カードを1枚伏せてターンエンドだよ。」

六道久美:LP7200  手札:2
森崎いつき:LP8000  手札:2


「私のターン。ドロー。(ヒステリック天使か。よしこれで!)手札から『ヒステリック天使』を召喚。戦場花−バラを攻撃よ。ヒステリーキック!!」


強烈な蹴りが炸裂した。
薔薇には棘があるが、ブーツを履いていたので平気のようだ。


ヒステリック天使 ☆4 光属性 天使族
ATK1800 DEF500
「自分のフィールド上モンスター2体を生け贄に捧げる事で、1000ライフポイント回復する。」


見た目はあまり良くないが、アタッカーとしては十分だろう。
何気に回復効果のおまけもある。


六道久美:LP7200  手札:2
森崎いつき:LP7600  手札:2


「罠発動『正当なる血統』、この効果で墓地の『ギガ・プラント』を特殊召喚する。」


ギガ・プラント ☆6 地属性 植物族
ATK2400 DEF1200
「このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、通常モンスターとして扱う。フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。●自分の手札または墓地に存在する昆虫族または植物族モンスター1体を特殊召喚する。この効果は1ターンに1度しか使用できない。」


正統なる血統 永続罠
「自分の墓地から通常モンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。そのモンスターがフィールド上に存在しなくなった時、このカードを破壊する。」


先ほどのバラとはうって変わり醜悪な魔物が現れた。

「う、美しくないですね。」

「うるさい!!このモンスターが僕のデッキに合ってると思ったから入っているんだ。それにおジャマをデッキに入れている君には言われたくない!!」

「そう言われればそうかも。ターンエンドよ。」

久美は、少し笑いながら言った。


「僕のターン。ドロー。『戦場花−トリカブト』召喚。さらに永続魔法効果で再度召喚だ。このモンスターの効果は相手モンスター1体を破壊できる。もちろん破壊するのは『おジャマ・クイーン』だ。」


戦場花−トリカブト ☆4 地属性 植物族
ATK1300 DEF800
「このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、通常モンスターとして扱う。フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。●このターン、攻撃しない代わりに相手モンスター1体を破壊することができる。」


怪しい紫色の体をしているモンスターだ。
とてもこの花から猛毒が取れるとは思えない。

しかしトリカブトによる毒は確実におジャマ・クイーンの体を蝕んでいき、ついには消滅してしまった。

「トリカブトはミステリー小説等に出てくる猛毒。その美しくも強力な効果を僕は気に入っている。そうそう、まだ攻撃が終わってなかったね。ギガ・プラントでヒステリック天使を攻撃。」


怪しい触手がヒステリック天使を巻き取り、グングン締め付けていった。
やがてヒステリック天使は消滅してしまった。


「これでターン終了だ。」

六道久美:LP6600  手札:2
森崎いつき:LP7600  手札:2


「私のターン。ドロー。手札から『召喚陣・光』発動。その効果で『守護天使ジャンヌ』を攻撃表示で特殊召喚よ。」


守護天使ジャンヌ ☆7 光属性 天使族
ATK2800 DEF2000
「このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、自分は破壊したモンスターの元々の攻撃力分のライフポイントを回復する。」


召喚陣・光 通常魔法
「自分は手札をすべて公開する。その中の光属性モンスター1体を相手がランダムに指定する。そのモンスターを特殊召喚することができる。ただしその効果は無効となる。」


白き光の魔方陣から純白の衣を身にまとった天使が現れる。

「バトル。ギガ・プラントを攻撃!エンジェリック・ノヴァ!!さらに速攻魔法『光の追撃』を発動。攻撃力を半分にしてもう一度攻撃が可能になる。トリカブトに攻撃!エンジェリック・ノヴァ!!」


光の追撃 速攻魔法
「自分フィールド上の光属性モンスターは攻撃力を半分にしてもう一度攻撃ができる。」


「ぐ、僕のモンスターが全滅か。(相手は手札を使い切った。守護天使を破壊できればまだチャンスがある。)」



「僕のターン。ドロー。モンスターをセット。さらにカードを1枚伏せてターンエンド。(壁モンスターを出すだけで精一杯か。)」


六道久美:LP6600  手札:0
森崎いつき:LP7100  手札:1


「私のターン。ドロー。魔法カード『シールドクラッシュ』この効果で守備モンスターを破壊。そして、プレイヤーにダイレクトアタック!!」


守備モンスターである「デス・デンドル」は音を立てて砕け散った。


「罠発動『百花繚乱』、この効果はデッキから植物族を墓地に送ることで相手の攻撃を1度だけ無効にできる。よってジャンヌの攻撃は無効!!」


百花繚乱 カウンター罠
「相手モンスターの攻撃時に発動。そのモンスターの攻撃を無効にして、そのモンスターのレベル分だけデッキから植物族モンスターを墓地に送る。」


「この効果により、戦場花の「アサガオ」「ウメ」「ガーベラ」「コスモス」「サクラ」「ツバキ」「モモ」を墓地に送る。」


色鮮やかな花々がいつきを攻撃から守った。
このソリットビジョンの美しさは、海馬コーポレーションの技術力の高さを物語っている。


「ターン終了よ。」


「僕のターン。ドロー。よし!!(僕の誇る最強のモンスターだ)手札から『精霊樹−レジェンド・ツリー・ドラゴン』を特殊召喚。このモンスターの攻撃力、守備力は墓地から除外した植物族モンスター×700。僕はすべてのモンスターを除外する。」


精霊樹−レジェンド・ツリー・ドラゴン ☆7 地属性 植物族
ATK?   DEF?
「このカードは通常召喚できない。自分の墓地に存在する植物族モンスターを除外する事でのみ特殊召喚できる。このカードの元々の攻撃力と守備力は、特殊召喚時に除外した植物族モンスターの数ラ700ポイントの数値になる。」


墓地の植物達が互いに絡み合い、やがて巨大なドラゴンへと姿を変えた。
その巨大さは他を圧倒している。

ATK?→7000


「ジャンヌを攻撃だ。リーフ・オブ・ツイスター!!!」


そのドラゴンが巻き起こす強風がジャンヌと久美を直撃した。

「うわああああああ!!!!」

六道久美:LP2200  手札:0
森崎いつき:LP7100  手札:1


「これでターンターン終了だ。勝負あったみたいだね。君の手札は0、そしてフィールドにも何もない。たとえモンスターを引いたとしても僕がモンスターを出せれば同じこと。」



「(負ける・・・・。いいか。テストとか別に正式なデュエルじゃないし。彼が強かったんだよね。精霊に選ばれたデュエリストがみんな強いわけじゃないよ。私の精霊おジャマだもの。」

(アネゴ・・・)

声がする。
それは墓地から聞こえてくる。
そう。おジャマレッドだ。

(アネゴ!久美のアネゴ!!まだピケル姉さんを出してないじゃないですか?)

「ピケル?いいよ。ピケルの傷つく姿なんて見たくないよ。(きっと読者も)」

(違うわよ。ピケル姉さんで逆転を狙う。いつものアネゴなら、そうしていたじゃないの。)


そうよ。
十悟君には魔獣たちが、朝子にはボルテニスがいるように、私のデッキにはまだピケルが残っている。
次のドローで決まる。



4章:ピケル- Die Schone Frau

「私のターン。ドロー。『貪欲な壺』発動。墓地のおジャマ3姉妹、ヒステリック天使、ジャンヌをデッキに戻しシャッフル。そして2枚ドロー。」

貪欲な壺。
強欲な壺の後釜とも言えるカードだ。
デッキを問わず投入しているプレイヤーも多いはずだ。

ドローカード:白魔導士ピケル
       白き魔法少女の決意


「私はピケルを攻撃表示で召喚。カードを1枚伏せてターンエンド。」

ピケル・・・そのカードはその愛らしいイラストと、その効果で多くのデュエリストを癒してきたカードである。噂では家一軒売ってすべてをピケルに換えた者がいるほどの人気カードだ。(一応、話の中の設定です)


「僕のターン。ドロー。(モンスター自体大した脅威ではないが、問題は伏せカードだ。モンスター破壊カードならば手札の『我が身を盾に』で防ぐことができる・・・。)この一撃で終わらせる!!レジェンド・ツリー・ドラゴン、ピケルを攻撃だ!!!!」


確かにモンスターは砕け散った。

六道久美:LP2200  手札:0
森崎いつき:LP7100  手札:2


「ライフが0になっていない。」


「罠カード『白き魔法少女の決意』を発動したの。」


白き魔法少女の決意 通常罠
「白魔導士ピケルが戦闘で破壊されるとき、その戦闘ダメージを0にする。デッキ、手札、墓地から『ピケル- Die Schone Frau』を特殊召喚する。」


久美のフィールドには1人の魔女が立っていた。
ピケルの面影を残しつつも凛々しく成長した女性だ。
ピンクの髪は変わらないが、羊の帽子は無い。
格好はモンスターワールドの白魔導士に似ている。


ピケル- Die Schone Frau ☆8 光属性 魔法使い族
ATK1200 DEF0
「このカードは戦闘では破壊されない。このカードが戦闘する時、相手モンスターの攻撃力分のライフを回復する。このカードが戦闘することによって発生するダメージは0となる。」


そう。これが私のデッキのエース。
王女という身分を捨て、偉大なる魔法使いの元で修行した究極の魔女の姿。
圧倒的なライフ回復効果を持つ。


「ターンエンドだ。でもそれだけでは僕を倒すことはできないはずだ。」



「私のターン。ピケルの攻撃よ!!アルティミー・ヒーリング!!!」

迎撃するドラゴンのエネルギーをピケルがライフに変換していくように見える。
久美のライフは一気に回復して、いつきのそれを上回った。


六道久美:LP9200  手札:1
森崎いつき:LP7100  手札:2


「カードを1枚伏せてターンエンドよ。」


「僕のターン。ドロー。(こちらから攻撃してもライフを回復させてしまうのか。何より戦闘で破壊できないのが厄介だな。)モンスターをセットしてターン終了だ。」

いつきにはモンスターをセットするだけで精一杯のようだ。


「私のターン。ドロー。バトルよ!!ピケルでレジェンド・ツリーを攻撃。さらにピケルの効果でライフを7000回復。手札から速攻魔法『インスタント・ビックバン』発動。」


インスタント・ビックバン  速攻魔法
「自分がライフを回復した時発動可能。回復したのと同じだけ相手にダメージを与える。デッキからビックバンガールを手札に加える事ができる。」


「よって7000ダメージを与えて、ビッグバンガールを手札に加える。」

巨大な爆発がいつきに襲いかかった。
その爆風が治まるまでしばらくかかった。


六道久美:LP9200  手札:1
森崎いつき:LP100  手札:2


「これでターン終了よ。」


「僕のターン。ドロー。(ダメか。次の相手のターン。ビックバンガールが召喚されれば、ピケルとのコンボで500ダメージ。ライフ100ではどうしようもない。最強のレジェンド・ツリーがいて、手札も3枚もあるのに何もできないのか?考えろ。考えるんだ。)」









10数秒経っただろうか。
いつきはデッキに手を置きサレンダーした。


「やった!!私の勝ちですね!!」

「最後に教えてくれ!!なぜデッキにおジャマなど入れている?そんなもの無ければもっと強いはずだ!!」

「それは・・・・・・・・・・・・ひ、秘密です。」

おジャマの精霊が見えるから・・・なんて言えないもん。
他にも理由が無いことも無いけど。



「二人とも!いいデュエルだったよ。」

黒須も賞賛の言葉を述べた。

「さあ。次のデュエルだ。澪くんの相手は・・・・」

「俺が行くぜ!先生。2人のデュエル見てたらいい感じに燃えてきたぜ!!」

迎人が真っ先に立候補した。
結局、勢いのまま彼がデュエルすることになった。


迎人と澪はデッキをカットし始めた。

「あ、やべ。」

迎人の手からカードが1枚落ちた。
「モンスターゲート」彼のデッキのキーカードの1枚だ。

「はは。見えちまったか。俺のデッキは推理ゲートさ。まあそれが分かったところでどうなるもんでもないけどな。」

「うち、初心者やからそう言われてもよう分らんのや。自分の宝玉獣たちの効果覚えるのに精一杯やのに相手の事なんか考えてられへんよ。」


「ほ、宝玉獣だって!!!!!」

クラス中に衝撃が走った。
宝玉獣と言えば、伝説のデュエリスト、ヨハン・アンデルセンしか持たない伝説のカードのはずだが・・・・・。



次回予告

澪の使う宝玉獣はヨハンのものとは全く別の宝玉獣だった。その独特の効果と初心者である澪に調子を狂わされっぱなしの迎人。そんなデュエルを見つめる者の中に不登校であったはずの伊東の姿が・・・。




次回

5章:2人目の宝玉獣デッキ使い
6章:バルバロスVSレインボーフェニックス



5章:2人目の宝玉獣デッキ使い

「宝玉獣って言えば、ローマ帝国繁栄の証で、かのユリウス・カエサルが世界中から集めた宝石の成分を元にあのペガサス会長が作った世界でただ1人、ヨハン・アンデルセンだけのカードのはず。」

そう、それが世間一般で言われている歴史である。


「だが、実は宝玉獣は他にも存在する。これは一部のデュエル研究者だけの秘密だから、みんなは他言しないでほしい。」

黒須は語り始めた。



かつて伝説のデュエリスト、ヨハン・アンデルセンは親友でもある遊城十代が自らここまでの高みに上ってこられたのも同じHERO使いであるエド・フェニックスとD−HEROがいたからだと聞かされた。
それを聞いた彼は自らを更なる高みを目指すため、自らの強力なライバルとなりえる宝玉獣を作ってくれるようペガサス会長に頼みに行ったそうだ。
彼の熱心な態度に心を打たれた会長は、自らそのカードのデザインを考え始めた。

そんな矢先、ペガサスは日本の京都に残るある伝説を耳にした。



かつて京の都に大飢饉が起こる。
同時に人々の心が荒み始め、各地で犯罪が横行し始めた。
それは、闇より生まれた鬼の仕業であるとされていた。
その鬼は、魑魅魍魎(ちみもうりょう)を人々に取り付かせ、悪事を行わせていた。

そんな最中、首から異国の「玉」を提げた少女が、7体の獣を操り人々を救っていった。
彼女は京の都を回り、とうとう親玉である鬼を見つけた。

その戦いは想像を絶するものであったらしい。
しかし、最後は彼女自身が「大きな虹色の不死鳥」となりその鬼を滅した。
そしてその場所には、7つの玉だけが残されていた。
人々はそこに神社を建て、彼女を「玉使いの巫女」と呼びその玉と共に彼女を奉った。


「で、その神社を代々守ってきたのが彼女の一族というわけだ。」


ペガサスはその玉の成分を譲り受け7枚の宝玉獣をつくりあげた。
そしてヨハン・アンデルセンの「レインボー・ドラゴン」と双璧をなす「レインボー・フェニックス」まで完成した。

でもここで大きな問題があった。
もちろんこのカードを誰が所有するかである。
宝玉獣の使い手になれるのならば、万でも億でも金を積むという者も現れたが、当然そのような者に与えるわけにはいかない。



そんなある日、ペガサスは別荘で久々の休暇を楽しんでいた。
この日はいい風が吹き、彼はすぐに眠りについたという。
おそらく、夢の中であろう。

ここは、日本の京都であることは見てわかる。
彼の目の前に虹色の鳥が現れる。
彼は、それを追いかけていた。
もちろんそれが、自分のデザインした「レインボー・フェニックス」だったからだ。

虹色の鳥は、ある神社に止まり羽を休めた。
そこでその鳥と会話をしている女の子がいた。
サファイアのような青く透き通った目が印象的だった。
彼女はペガサスが想像していた「玉使いの巫女」そのものであったからだ。


ペガサス会長は次の日すぐに日本へ渡り、その神社を見つけそこの一人娘である彼女に宝玉獣を託した。
そのときカードは主を見つけた喜びを示すがごとく輝き出した。



「じゃあまさか彼女は、玉使いの巫女の生まれ変わりという事なのですか先生。」

「そう考えるとロマンがあるよな。」

突拍子もないと言えばそうだが、十悟達はいろいろと体験してきている。




「話が長げーよ!!俺のデュエルの時間がどんどん減っていくじゃねえか!!もういい、俺のターンからドロー。」


明智迎人:LP8000
宝生澪:LP8000


「俺は『黄泉ガエル』を召喚、さらにこいつを生け贄に『モンスターゲート』発動。出でよ『青氷の白夜龍』


青氷の白夜龍 ☆8 水属性 ドラゴン族
ATK3000 DEF2500
「このカードを対象にする魔法または罠カードの発動を無効にし、それを破壊する。自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターが攻撃対象に選択された時、自分フィールド上の魔法または罠カード1枚を墓地に送る事で、このカードに攻撃対象を変更する事ができる。」


「これでターン終了だ。さあ、来い!宝玉獣!!」


「ウチのターンやね。ドロー。うーん、相手攻撃力は3000か〜。よし、それなら『究極宝玉神レインボーフェニックス』を攻撃表示。」


「なに?」

迎人の驚きも無理はない。
推理ゲートで攻撃力3000のモンスターがでた次のターンからそれを上回る上級モンスターを出されるのは初めてだ。

「え、まさかこのタイミングで出せるの?十悟、知ってた?」

「いや、そもそも初めて見るカードだし。」

ギャラリーも動揺を隠せないでいるようだ。











「・・・・・・・・」

「・・・・」

「・・」







「いややわ〜。ボケってやつや。そんな簡単に出せるわけないやん。誰かツッコミいれてや。ウチは『宝玉獣ペリドット・スワロー』を攻撃表示で召喚。カードをセット?で良かったん?これでターン終了や。」


澪のフィールドが黄緑色に輝き出した。
そこに嘴が宝玉でできた1羽のツバメが現れる。


(あらあら。ようやく召喚してくれたのね。うふふ。強力なモンスターが相手みたいだけど大丈夫?まあその方が私の効果はいいんだけどね。)


「あの?ウチに言ってるの?」


(ええそうよ。まあ詳しい事は後で話すわ。アナタ初心者みたいだから、私たちが手助けしてあげる。)


ペリドット・スワローが澪に話しかけているようだ。
もっともこの会話が聞こえるのはこの中で、澪を含めても3人だけだ。



「えっと、俺のターンでいいか?」

「は、はい。」

「それじゃドロー。(サイクロンか)まず、『黄泉ガエル』復活だ。相手は攻撃力500を攻撃表示、罠としか思えねーな。だったら、『サイクロン』発動。セットされたカードを破壊。さらに『聖鳥クレイン』を召喚、まず、青氷で攻撃!バースト・ブリザード!!」


聖鳥クレイン ☆4 光属性 鳥獣族
ATK1600 DEF400
「このカードが特殊召喚した時、このカードのコントローラーはカードを1枚ドローする。」


青氷の攻撃はその小さなツバメに向かって放たれた。
しかしそれは、宝玉である嘴から吸収されていった。
やがてそのツバメは迎人にぶつかり力尽きた。


明智迎人:LP5500
宝生澪:LP8000

「何で俺のライフが?」

「ペリドット・スワローの効果、戦闘によって発生するダメージを相手が受けるんよ。そして、破壊されても宝玉として、魔法、罠ゾーンに残る。」


宝玉獣ペリドット・スワロー ☆2 風属性 鳥獣族
ATK500 DEF300
「このカードが戦闘を行う事によって受けるコントローラーの戦闘ダメージは相手が受ける。このカードがモンスターカードゾーン上で破壊された場合、墓地へ送らずに永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。」


「へー。これが宝玉獣の力なんだ。」

「綺麗だな。さすが海馬コーポレーション。」


澪のフィールドには、黄緑色に輝く宝玉が1つ残された形となった。


「(こんな事なら、先にクレインで攻撃しとけば良かったぜ。)『聖鳥クレイン』でダイレクトタック!!」

明智迎人:LP5500
宝生澪:LP6400


「これでターンエンドだ。」


「ウチのターンやね。ドロー。」


(フォフォ、ここはワシの出番かのぉ。)



6章:バルバロスVSレインボー・フェニックス

観客席の1番上、誰もが宝玉獣を間近で見ようと前の席に陣取っているのにもかかわらず、彼は誰にも気づかれぬよう、それでいて誰よりもこのデュエルに見入っていた。

「あの方の言うようにやはり来たか。ここでの出来事を報告すれば、このデッキはオレのもの。オレをイジメてきた奴らへの復讐がかなう。そのためなら悪魔に魂を売っても構わない。」

黒縁の眼鏡のその少年はつぶやいた。


(オイオイ、確かに俺は悪魔だけどお前から魂を奪おうなんて考えちゃいない。ただ少し協力してほしいだけさ。俺たち精霊はこの世界ではいろいろと力に制約がある。それにおれの教える料理は結構うまいだろ?)

「料理はおいしいよ。それに俺にもおまえの力が必要だ『悪魔の調理師』!!」



デュエル場


「ウチはモンスターをセットして、ターンエンド。」

澪は彼らの助言の通りにそのモンスターを出した。


「よしチャンスだ。俺のターン。ドロー。まず、黄泉ガエル復活!さらに手札から『名推理』発動!!さあレベルを宣言してくれ!!」

「そ〜やな〜。じゃ、ラッキーセブンの7」

「☆3の『ディープ・ダイバー』だ。」


ディープ・ダイバー ☆3 水属性 水族
ATK1000 DEF1100
「このカードが戦闘によって破壊され墓地に送られた場合、バトルフェイズ終了時にデッキからモンスターカードを1枚選択し、デッキの一番上に置く。」


「バトルだ!青氷で、セットされたカードを攻撃!!」

セットされていたカードが表になりモンスターが現れた。
それは澪の身長をはるかに超えた大きな鯨であった。

「『ガーネット・ホエール』の効果、フィールドのモンスターすべてを持ち主の手札に戻すえ!」


宝玉獣 ガーネット・ホエール ☆4 水属性 水族
ATK1800 DEF1600
「このカードが魔法、罠ゾーンに置かれた時フィールド上のモンスターすべてを持ち主の手札に戻す。このカードがモンスターカードゾーン上で破壊された場合、墓地へ送らずに永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。」


モンスターは破壊されルビーにも似た真紅の宝玉が残った。
するとその宝玉は宙に浮きやがてどこからともなく巨大な津波が押し寄せてきた。
その津波にモンスターがすべて飲み込まれていった。
フィールドには赤と緑、2つの宝玉が残された。


「だったらメインフェイズ2で『聖鳥クレイン』を召喚して、ターンエンド。」

白き鶴が再び召喚された。


「ウチのターンやね。ドロー。今度はこれやね『宝玉獣 ダイヤモンド・ライオン』召喚。』

(ワハハハ、やはり俺様が出なくてはな。宝玉獣最強たるこの俺様が!!)

牙がダイヤモンドでできている、いかにも強力そうなライオンが現れる。


宝玉獣 ダイヤモンド・ライオン ☆4 光属性 獣族
ATK1600 DEF1100
「自分の魔法、罠ゾーンの宝玉獣1体につき攻撃力が400ポイントアップする。このカードがモンスターカードゾーン上で破壊された場合、墓地へ送らずに永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。」


ATK1600→2400


「なるほど、硬度がずば抜けて高いダイヤモンドと百獣の王ライオンの組み合わせか。こいつは強敵そうだな。大丈夫か迎人!!」



「では、その鳥を攻撃します!!」

(任せろや!!ダイヤモンド・ファング!!!)


ライオンはその鶴に噛み付いた。

「く、クレインが・・。」


明智迎人:LP4700
宝生澪:LP6400


「ターンエンドや。」

「俺のターン。ドロー。まだまだ終わらないぜ!!手札から『トレード・イン』発動。手札の青氷を墓地へ送り2枚ドロー。」


トレード・イン 通常魔法
「手札からレベル8のモンスターカードを1枚捨てる。自分のデッキからカードを2枚ドローする。」


「さらに『早すぎた埋葬』で青氷を復活。そして『ディープ・ダイバー』を召喚。」


早すぎた埋葬 装備魔法
「800ライフポイントを払う。自分の墓地からモンスターカードを1体選んで攻撃表示でフィールド上に出し、このカードを装備する。このカードが破壊された時、装備モンスターを破壊する。」


明智迎人:LP3900
宝生澪:LP6400


「バトル!!ダイヤモンド・ライオンを攻撃だ青氷!!さらにディープ・ダイバーでダイレクトアタック!!」


明智迎人:LP3900
宝生澪:LP4800


ライオンは砕け散りそれが無色透明に輝く宝玉となりフィールドに残った。

「あちゃ。(宝玉獣最強って言ってたのに。ウチの使い方が悪かったんかなぁ?)」


(大丈夫!彼の魂は宝玉の中でまだ残ってるよ!!今度は僕を呼んで!きっと逆転に繋げるから!)


「ウチのターン。ドロー。(そんな事言っても手札に君は・・・)そうか、手札から『宝玉の導き』発動。来て『宝玉獣 ジェード・ラビット』そのモンスター効果で『宝玉の導き』を手札に加える。」


宝玉獣 ジェード・ラビット ☆2 地属性 獣族
ATK1000 DEF600
「このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから『宝玉の』と名のつくカード1枚を手札に加える。このカードがモンスターカードゾーン上で破壊された場合、墓地へ送らずに永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。」


「ウチはさらに『宝玉の解放』を装備。ディープ・ダイバーを攻撃します。」


宝玉の解放 装備魔法
「「宝玉獣」と名のついたモンスターのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力は800ポイントアップする。このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、デッキから「宝玉獣」と名のついたモンスター1体を永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。」


強化されたウサギはダイバースーツの人間に体当たりした。
そのウサギの尻尾には黄緑色に輝く宝玉がある。


明智迎人:LP3100
宝生澪:LP4800


「ディープ・ダイバーの効果『神獣王バルバロス』をデッキの1番上に置く!」

「メインフェイズ2?でさらに『宝玉の導き』発動、デッキから『宝玉獣 パール・イエティ』を特殊召喚。青氷を破壊します!!」


宝玉獣 パール・イエティ ☆4 地属性 獣戦士族
ATK1700 DEF1500
「このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、相手フィールド上のモンスター1体を相手が指定して破壊する。このカードがモンスターカードゾーン上で破壊された場合、墓地へ送らずに永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。」


「い・え・て・ぃ・って何だ十悟?」

「まあ雪男ってやつだよ。」

「なるほどな。」

「大丈夫なのか?青氷、破壊されたみたいだけど。」

「大丈夫だって。何てったって俺はお前に初黒星をつける(予定)男だからな。」

「まあ、楽しみにしてるよ。」



「ウチはこれでターンエンドや。」

「俺のターン。ドロー。来たぜ!マイフェイバリットモンスター。『神獣王バルバロス』を生け贄無しで召喚。この場合ATKは1900になっちゃうけどな。」


神獣王バルバロス ☆8 地属性 獣戦士族
ATK3000 DEF1200
「このカードは生け贄なしで通常召喚する事ができる。その場合、このカードの元々の攻撃力は1900になる。3体の生け贄を捧げてこのカードを生け贄召喚した場合、相手フィールド上のカードを全て破壊する。」


「ジェード・ラビットに攻撃!!トルネード・シェイパー!!」

巨大なランスが可愛らしいウサギへと向けられた。

「ウチはジェード・ラビットを場に残さず墓地へ。そして『宝玉の解放』の効果で『宝玉獣 トルマリン・ドッグ』を魔法、罠ゾーンに置く。」

黄色の宝玉が新たにフィールドに置かれた。
これでフィールドには4つの宝玉が置かれた。


明智迎人:LP3100
宝生澪:LP4700


「カードを1枚伏せてターンエンドだ。」


「ウチのターン。手札から『M・フォース』発動。パール・イエティのATKを500ポイントアップ!バルバロスを攻撃や!!」


M・フォース 速攻魔法
「『宝玉獣』と名の付くモンスター1体はこのターン、攻撃力を500ポイントアップする。この効果の対象となったモンスターが守備モンスターを攻撃したとき、その攻撃力が守備モンスターの守備力を超えていれば、その数値だけ相手に戦闘ダメージを与える。」


雪男の巨大な拳がバルバロスを直撃した。

「カードを1枚伏せてターンエンドや!」


「俺のターン。ドロー。(宝玉4つにリバースカード、多分罠。おそらく俺の攻撃宣言で発動する罠、最悪の場合『聖なるバリアミラーフォース』)手札から『名推理』発動。さあ、クイズだぜ。レベルを宣言してくれ!」

「今度こそレベル7!」

「選ばれたのは・・・レベル8『創世神』だ。(よし、ついてるぜ。)」


創世神 ☆8 光属性 雷族
ATK2300 DEF3000
「自分の墓地からモンスターを1体選択する。手札を1枚墓地に送り、選択したモンスター1体を特殊召喚する。この効果は1ターンに1度しか使用できない。このカードは墓地からの特殊召喚はできない。」


「さらにリバースカードオープン『リビングデッドの呼び声』墓地から『青氷の白夜龍』、創世神の効果、手札を1枚捨てて『聖鳥クレイン』復活、その効果で1枚ドロー。(来たぜ!待ち望んでいたカードが!手札から『死者転生』を発動、手札の『黄泉ガエル』を墓地へ送り、墓地から『神獣王バルバロス』を手札に加える。」


リビングデッドの呼び声 永続罠
「自分の墓地からモンスターカード1体を選び、攻撃表示で特殊召喚する。このカードがフィールド上に存在しなくなったら、そのモンスターを破壊する。そのモンスターが破壊された時、このカードを破壊する。」


死者転生 通常罠
「手札を1枚捨てる。自分の墓地に存在するモンスターカード1枚を手札に加える。」



「す、すごい。(ラスト・リゾートを発動してレインボールインを発動させれば、まだ持ちこたえられる。)」


「俺はフィールドの3体を生け贄に『神獣王バルバロス』を召喚。モンスター効果発動、フィールドを一掃するぜ!!」


澪のフィールドから宝玉が一掃された。
最後に純白の真珠が1つ残された。

「ダイレクトアタック!!トルネードシェイパー!!」


明智迎人:LP3100
宝生澪:LP1700


「あちゃ。計算通りにいかないものやなぁ。」

「これでターンエンドだぜ。」


「ウチのターン、ドロー。『宝玉獣 オブシディアン・フォックス』ATK1500か。これを守備表示で出すと・・・次のターン、相手のモンスター次第ではウチのライフが0になってまう。」

(おいおいマスターさんよ。オレを召喚すれば、場と墓地に宝玉獣が7体揃う。これがどういう意味か分かるだろう?)


「そっか!!手札から『宝玉獣 オブシディアン・フォックス』を召喚。これで7体揃った。」


「揃った?まさか?最初に出そうとしたあのカードか。」

「ウチの最強モンスター、待たせたなぁ。いよいよやわぁ。」


キーンコーンカーンコーン。

何の変哲もない無機質な機械音だが、それが彼らのデュエルの時間の終了を告げた。
デュエル場の電源が自動的に落とされた。
節電のためだろうが、クラス中からのブーイングはものすごいものだった。


「残念やねぁ。またデュエルしてや。」

澪は笑顔で言った。

「おう。いつでもデュエルしてやるぜ。それにいつきとも早くデュエルしてえしな。」


2人の転校生はうまくクラスに馴染めたようだ。



「さて俺は行くとしようか。神狩の使徒がオレを待っている。ふはっははっはは。」

彼の手には退学届けが握られている。
退学届けを持って高笑いというのもいかがなものだろうか?



次回予告

伊東は神狩の使徒へと情報を流した。そして宝玉獣を持つ澪は有名人となる。尾瀬呂町を中心に神狩の使徒の被害が出始める。それをいち早く察知したいつきは、自らの過去と自分の任務について語り始める。


次回

7章:守護する者
8章:第一の刺客



7章:守護する者

放課後の教室

「まったく、どうして俺達が居残りなんだよ!!」

「確かに、智花さんや十悟くんまで居残りなんて!」


その日の放課後、十悟達5人は、放課後の教室に残っていた。


ガラガラ
扉が開き黒須が入ってきた。

「みんないるか?」

「何なんですか先生?もしかして重要な話ですか?」

「話があるのは彼だよ!」

黒須の後からいつきが入ってきた。
彼は言葉を選びつつ言った。

「僕がこの学園に転校してきたのは、本当は家庭の事情なんかじゃない。僕の両親はすでにこの世にはいない。あれは、僕がまだ10歳の時だ。」

いつきは自分の過去を少しずつ語り始めた。



十数年前


「皆さん、今日からみんなとこの施設で暮らすことになった、森崎いつき君です!皆さん仲良くしてあげて下さいね!」

「・・・・・」

いつきの最も古い記憶は施設へやってきた時の事であった。
ただ、何も喋らず、黙っている少年だった。
明るい日でも滅多に部屋から出てこなかった。

そんな時、学園長が彼に声をかけた。
園長は60代のお婆さんだ。

「ちょっと、外へ出てみない!」

「いいえ。外に出たくありません。」

「そんな事言わずに、先生を助けると思って来てくれないかしら?」

園長は笑顔で言った。

「・・・」

いつきは黙って園長についていくことにした。
その施設の裏、森を抜けた。

「わあーー。」

いつきは大きな声をあげた。
そこには薔薇、チューリップをはじめとする色とりどりの花が咲き乱れていた。

「ここはね、私が母と一緒に育てた花達よ。お花はね、愛情を込めた分だけ美しく花を咲かせるの。でもね、来年はもうこの花は見られないの。」

「どうしてですか?」

「私はね、実は腰を悪くしてしまってね。もうお世話に来られないのよ。だから、あなたに一度でいいから見て欲しかったのよ。」

彼には園長先生の言いたいことがようやくわかった。
いつきは黙っていたが、重い口を開いた。

「僕が、僕がお世話します。そして、園長先生に綺麗なお花をいっぱい届けます!!」

その日からいつきは変わった。
友達とも積極的に話すようになった。
そして施設の仲間と一緒に花の世話に励んだ。



そんなある日

「あの施設か!」

「へい。間違いありやせん。ここを買収すればいいんす。」

「じゃあ、行くか!ボスから抵抗するようなら、少々手荒なまねをしてでも目的を果たせと言われている。」

チンピラ風の男が2人施設に向かっていた。
その頃、いつきは友人と花壇にいた。

「いつき君、雑草の除去終わったよ。」

「ありがとう。そろそろ帰ろうか?」

「わーあ、綺麗な『鈴蘭』だね。」

いつきの手には白くて可愛らしい花が握られている。

「あれ?あれ施設の方じゃない?」

いつき達の住む施設の方から煙が上がっている。
走れば走るほど煙の出る場所が自分たちの住む場所であるという現実が彼らに突きつけられてくる。
着く頃には施設が真赤に燃えている。

「先生!」

「いつきくん、良かった。中にはいなかったのね。」

「はい。裏庭にこの子と行ってたんです。」

「学園長先生は一緒じゃないの?」

先生は驚いていった。

「ま、まさか。」

と言うのが早いか、いつきは飛び出していた。
彼は水を被り施設の中に飛び込んだ。
彼は真っ先に学園長の部屋に向かった。

扉の近くに園長先生が倒れている。
彼は急いで彼女をおんぶをして歩きだした。

「しっかりして下さい!もうすぐ外に出ますからね。」

彼は一生懸命声をかけた。
しかし子供である彼には限界があった。

彼は薄れゆく意識の中で園長先生の言葉を聞いた。

「あら手に持っているのは鈴蘭ね。の花言葉は『純粋』『幸福の再来』等の意味があるの。あなたは両親がいないけど真っ直ぐ純粋に育ってくれました。これから先、あなたにはきっと幸福が訪れると思うわ。それから・・・・・・」





いつきは病院で目を覚ました。
あの日から3日が過ぎていた。

「園長先生は?」

「・・・・・」

施設の関係者は黙って首を振った。
彼のベッドの横には鈴蘭の花があった。
そして見覚えのある花瓶があった。
園長先生の部屋にあったものだ。
少し焦げ目のついている、水色の花瓶だ。



いつきは退院すると、違う施設に移る事となる。
そこはインダスト・リアル・イリュージョン社の寄付によって建てられたものだった。
そこで彼は運命的な出会いをする。
戦場花シリーズだ。

「ペガサス会長は、新作カードができるとカードデザイナーのテストプレーの後、試作のカードをこうした施設の子供に与えることにしていた。そのようにしてデュエリストとして大成した子供達が何人もいる。その時に僕が譲り受けたのが『戦場花シリーズ』もちろん一般に発売されているものと同じだ。ただ、僕はそんな名誉よりもペガサス会長に恩返しがしたかった。」


いつきはさらに続けた。


「本題に入ることにしよう。僕はCS(カード・スイーパーズ)という組織に所属している。この組織は、海馬コーポレーションとインダスト・リアル・イリュージョン社が共同で設立したもので、デュエルモンスターズを利用して犯罪を組織的に行う者たちに対抗するための組織だ。そこから今回、僕に与えられた任務は『宝生澪及び宝玉獣を守ること。』だ。」


「でも、何で僕たちにそんなことを?そういう組織というのは秘密裏に動くのではないのかな?」

「確かにその通り。だが君たちにはこの話を聞いてもらいたかった。それは君たちにこの任務を手伝ってほしいからだ。」

「つまり、神狩の使徒から澪さんと宝玉獣をデュエルで守れ!と言うことか。みんなどう思う?」


十悟はみんなの顔を見た。

「私はいいと思う。ペガサス会長たちも手を焼いてるみたいだしそのくらいは。」

「宝玉獣をそんな悪い人たちに渡すわけにはいきませんしね。」

朝子と智花は賛成した。

「久美に負けるような護衛だけじゃ心配だしな。」

「迎人くん、そんなこと言っちゃ悪いですよ!」

「そういうことだから、協力させてもらうよ!」


十悟はニッコリ笑って手を出した。
いつきはそれに応え、しっかりと握手した。
それに重ねるように全員が手を出した。

「よっしゃ。打倒!!神狩の使徒ぉ!!」
「おーーーー。」



8章:第一の刺客

校舎内デュエル場

デュエル場は放課後、生徒に開放されている。
きちんと申し込めば、そこでデュエルができる。
この日もデュエルが行われている。

「藤沢くん、伊東くん、第2デュエル場へどうぞ」

そうアナウンスが流れた。
二人がデュエル場で向かい合った。


「やあ!伊東君、またアンティでいいんだね?去年散々奪ってやったのにまだ懲りないらしいな。」


藤沢(覚えている人いるのか?)は軽く挑発した。

「御託はいい。アンティは『森の番人グリーン・バブーン』だ。」


「デュエル!」










数ターン後

「終わりだ!くたばれぇ藤沢ぁ!」

藤沢LP 0



「勝った!なかなかいいカード持ってるみたいだな。貰っていくよ。あとは、渡辺と須藤か。」

(復讐か。まあそれもいいが神狩の使徒からの任務も忘れるなよ。)

彼の後ろから声が聞こえる。
普通の人間には見えない、醜悪な料理人のものだ。

「分かったよ。」


デュエル場に横たわる藤沢を見下しながら、彼は学校を出た。





学校の帰り道


「強い!俺がこんなに強い!神狩の使徒の力は偉大だ!」

伊東は2人の生徒を見下ろしながら笑った。
倒れた2人は魂を抜かれたようになっている。
顔は蒼白になり、目は虚ろだ。


「レアカードは貰っておこう。」



ピピピピ

無機質な電子音が流れる。
伊東はメールを開いた。

「何々、俺が宝玉獣を狩っていいのか!立ちふさがる者はすべて潰し、レアカードを奪え!か、よしやってやるぜ。今なら誰にも負ける気がしない!」



一方、十悟たち


「いざ守ると言ってもなぁ。すれ違う人みんな怪しいと言えば怪しいし、怪しくないと言えば怪しくない気がする。」

「まったく、全員が黒のフード被っている。とか変な仮面付けている。とかそういう分かり易ければいいのにな。」

「そんな特徴あったら、いつきくんの組織がとっくに捕まえてるって。」

澪のまわりを久美達がさりげなく囲み、十悟と迎人が前を歩き、後ろからいつきがついていく形だ。
傍から見れば普通の下校風景だ。



「待て!!」

十悟達の目の前に男が一人立ちはだかる。
彼は十悟達と同じ制服を着ている。

「悪いが、宝玉獣のカードを置いていってもらうぜ!」

「お、おまえは・・・・」

「フフフフ。」

「誰だ?」

迎人はお決まりのセリフを言ってしまった。

「うちの制服着てるから、宝玉獣の噂を聞きつけたんでしょ。構うだけ無駄よ。」

「いえ、彼は確か伊東君です。しかもうちのクラスの。不登校だったと聞いてますけど。」

智花が説明をいれた。


「ああ。俺の名前は伊東淳也、学校は今日辞めてきた。今は『神狩の使徒』の一人だ。それともうひとり紹介しよう。と言っても見えないやつには見えないけどな。」

(ククク。久し振りだな、相馬十悟。今はこいつが俺のマスターだ。もちろん神狩の使徒の話も本当だ。こいつのデュエルディスクを見てみな!複製したカードも使用可能にする特別製だ!)


よく見ると普通のディスクとは違うパーツがいくつかついている。

「何でうちの宝玉獣を狙うん?」

「それが命令だからだ!さー俺とデュエルしてもらおう!」

淳也はデュエルディスクを展開した。

「仕方ない、ここは・・・」

そう、いつきが言いかけた時、

「僕に行かせてくれないかな。彼と、というか彼のモンスターにちょっと因縁があるんだ。僕たち5人はね。」

「あ、ああ。でも負けは許されないよ。」

いつきはちょっと腑に落ちない感じだが、了承した。


「お前が相馬十悟、『悪魔の調理師』から話は聞いてる。貴様には『魔獣』のカードを賭けてもらうぜ。それが交代の条件だ。どうだ?」

「分かった。」

十悟もデュエルディスクを出した。
それを素早く腕につけてデッキをセットした。



「デュエル!!」



相馬十悟LP:8000
伊東淳也LP:8000


「俺のターン。ドロー。まず、『悪魔の調理師』を召喚。カードを2枚伏せてターンエンド。」



悪魔の調理師 ☆4 闇属性 悪魔族
ATK1800 DEF1000
「このカードが直接相手に戦闘ダメージを与えた時、相手はデッキからカードを2枚ドローする。」


相手デッキ:34枚



「僕のターン。ドロー。カードを2枚伏せる、『烈風魔獣バ・ムーナ』を召喚。」



烈風魔獣バ・ムーナ ☆3 風属性 悪魔族
ATK:1400 DEF:600
「このカードを召喚した時、お互いのプレイヤーは手札を全て除外し、除外した数だけカードをドローする。」



「そちらは3枚、僕は4枚ドローだ。」


相手デッキ:31


「罠発動、グリード。」

「そうか!確かにそれなら『悪魔の調理師』の効果を生かせる。それに烈風魔獣の効果を逆手にとられてしまったな。」



グリード 永続罠
「カードの効果でドローを行ったプレイヤーは、そのターンのエンドフェイズ終了時にカードの効果でドローしたカードの枚数×500ポイントダメージを受ける。」



「リバースカードオープン。装備魔法『異世界の力』を烈風魔獣に装備。」



異世界の力 装備魔法
「装備モンスターの攻撃力を500ポイントアップする。装備モンスターがフィールドを離れた時、デッキからレベル4以下の『魔獣』と名のつくモンスターを手札に加える。」



「バトル!烈風魔獣で悪魔の調理師を攻撃だ!!」

深緑の装甲をつけた悪魔の爪が悪魔の調理師を襲う!


「罠発動『攻撃の無力化』これでバトルフェイズ終了だ。」

魔獣は攻撃を止めた。
そして十悟のフィールドへ戻っていった。


「これでターン終了です。」

「この瞬間、『グリード』の効果発動。」


相馬十悟LP:8000→6000  手札:2
伊東淳也LP:8000→6500  手札:3



「俺のターン。ドロー。俺は『大盤振舞侍』を攻撃表示で召喚。さらに『財宝への隠し通路』発動。これで大盤振舞侍は直接攻撃ができる。」



大盤振舞侍 ☆3 光属性 戦士族
ATK1000 DEF1000
「このカードが相手プレイヤーに戦闘ダメージを与えた時、相手プレイヤーは手札が7枚になるようにカードをドローする。」



財宝への隠し通路 通常魔法
「表側表示で自分フィールド上に存在する攻撃力1000以下のモンスター1体を選択する。このターン、選択したモンスターは相手プレイヤーを直接攻撃する事ができる。」



小さな侍の前に重厚な石の扉が現れる。
その侍は素早くその扉の奥に進んだ。

その先は十悟の真後ろにつながっていた。
その侍の一太刀目が十悟を切り裂いた。
さらにその勢いのまま十悟のデッキに刀を突き刺した。


相馬十悟LP:6000→5000 手札:2
伊東淳也LP:6500 手札:2



「さー、7枚になるようにドローしてもらおうか!」

十悟はデッキから5枚のカードをドローした。
これで元の手札と合わせて7枚となった。


「これでターンエンドだ。さてお待ちかねの『グリード』の効果だ。」


「ぐわぁああ」


相馬十悟LP:5000→2500 手札:7
伊東淳也LP:6500 手札:2


「だ、大丈夫か相馬?今からでも僕と代われ!」

「心配ないよ!いつき君。手札も補充させてもらった、そろそろ反撃させてもらうよ!!」


いつきはまだ心配そうな顔をしている。


「うちにだって十悟君が押されてるんは見てわかるよ。でも皆はそう考えてないん?」

澪がそう言おうとして顔を向けると智花と目が合った。


「大丈夫ですよ。私も彼のデュエルを初めてみたときびっくりしましたから。私たちから一言、言うとすればライフを削るだけがデュエルじゃない!ということですかね。」


智花はにっこり笑ってそう言った。



次回予告

手札が満たされた十悟が鮮やかな反撃を見せる。しかしこのデュエルの裏で重大な事件が起こっていた。



9章:悪魔の調理師の目的
10章:進級試験デュエル



9章:炸裂!デッキ破壊コンボ!

「僕のターンだ。ドロー。僕は烈風魔獣の効果で除外した『紅蓮魔獣』と『岩窟魔獣』をデッキの1番下へ戻す。それにより『魔獣僧侶ナイム・アーチュス』を特殊召喚。」



魔獣僧侶ナイム・アーチュス ☆5 闇属性 天使族
ATK2100 DEF1600
「『魔獣』と名のつくモンスター×2
ゲームから除外されている上記のモンスターをデッキの1番下に戻した場合のみ融合デッキから特殊召喚することができる。ゲームから除外されているモンスターカード以外のカードをデッキの1番下に戻すことでライフを1000ポイント回復する。この効果は1ターンに1度しか使うことができない。このカードを特殊召喚する場合、このターンに他のカードを特殊召喚することはできない。」


神父のような服装のモンスターが現れる。
白い髭が特徴的だ。
手には聖書のようなものを持っている。


「烈風魔獣の効果で除外した『煉獄焚書』をデッキの1番下に戻す。」


相馬十悟LP:2500→3500 手札:8
伊東淳也LP:6500 手札:2


「これによりライフを1000回復します。(よし、準備はできた。)」

「モンスターを召喚してライフを1000回復したくらいで・・・。」

「これで終わりなわけないよ。君からこれでもかと言うくらい施しを受けたからね。永続魔法『魂吸収』を発動。それじゃあお礼をしよう。」



魂吸収 永続魔法
「このカードのコントローラーはカードがゲームから除外される度に、1枚につき500ライフポイント回復する。」


十悟はカードを手裏剣のように投げた。
それを淳也が受け取った。

「と、『トーチ・ゴーレム』だと!!」

「もちろん攻撃表示でね。」

淳也は受け取ったカードをディスクに攻撃表示で置いた。
カードから巨大なゴーレムが現れる。
それは鋼鉄のボディでゆっくりと動き出した。
その瞬間に十悟のフィールド上にトークンが2体現れる。



トーチ・ゴーレム ☆8 闇属性 悪魔族
ATK3000 DEF300
「このカードは通常召喚できない。このカードを手札から出す場合、自分フィールド上に『トーチトークン』(悪魔族・闇・星1・攻/守0)を2体攻撃表示で特殊召喚し、相手フィールド上にこのカードを特殊召喚しなければならない。このカードを特殊召喚する場合、このターン通常召喚はできない。」



「バトル、魔獣僧侶で大盤振舞侍を攻撃!!魔の祈り!!!」

僧侶は不気味な呪文を唱え始めると、小さな侍は急に苦しみだす。
その祈りが最高潮に達すると侍が砕け散った。


相馬十悟LP:3500 手札:6
伊東淳也LP:6500→5400 手札:2


「バトル続行!トーチトークンでトーチ・ゴーレムを攻撃!!」


小さなトークンは巨大なゴーレムに果敢にも挑んでいく。
しかしあっさりと潰されてしまった。


相馬十悟LP:3500→500 手札:6
伊東淳也LP:5400 手札:2


「あかん。ライフがあと500しかないやん。」

「まさか相馬の狙いは・・・」

いつきには十悟のやろうとしていることが分かったらしい。


「この瞬間リバースカードオープン『ヘル・テンペスト』。デッキと墓地のモンスターをすべて除外だ!!」



ヘル・テンペスト 速攻魔法
「3000ポイント以上の戦闘ダメージを受けた時に発動する事ができる。 お互いのデッキと墓地のモンスターを全てゲームから除外する。」



天空に巨大な炎が現れる。
それはさながら、太陽のようだ。
その炎が見る見るうちに近づいてくる。
炎がフィールドを包み、それが地面へと抜けて行った。


「な、なんだと!!!」

十悟はそんな言葉を気にも止めてない。
デッキからモンスターを取り出していった。
モンスターすべてをケースへとしまった。
デュエルディスクには除外ゾーンというものが存在しないからだ。


「除外したカードは何枚ですか?」

「じゅ、15枚だ。」

淳也も遅れながらカードを除外した。
予期していなかったコンボに少し焦っているようだ。


相手デッキ:14枚

「なるほど、それじゃ僕のカードと含めて合計16500回復させてもらうよ。これで『グリード』の効果をチャラにしてもおつりがくる。さらに除外された『邪念魔獣ラム・シューラ』の効果でお互いに5枚のカードを除外だ。よって『魂吸収』の効果でライフ回復。」



邪念魔獣ラム・シューラ ☆4 闇属性 悪魔族
ATK1200 DEF1800
「このカードがゲームから除外されたときお互いはデッキの上から5枚をゲームから除外する。」



相馬十悟LP:500→17000→22000 手札:6
伊東淳也LP:5400 手札:2


相手デッキ:9枚


「これで勝ったと思うなよ!!まだお前からもらった『トーチ・ゴーレム』だってある。決して削り切れないライフじゃない!!」

「魔法カード『カオス・エンド』を発動!!」



カオス・エンド 通常魔法
「自分のカードが7枚以上ゲームから除外されている場合に発動する事ができる。フィールド上に存在する全てのモンスターカードを破壊する。」



突如、上空に巨大な穴ができる。
そこからは不気味な白い光が漏れている。
逆にフィールドのモンスターは生気を失い、その穴に吸い込まれていく。
すべてを吸い込むと空はまた元の姿に戻った。

「このターン、もう通常召喚も特殊召喚もできない。カードを2枚伏せてターンエンド。」


「俺のターン。ドロー。(デッキはあと8枚か。フィールドにはモンスターはいないから手札のモンスターと残った魔法、罠だけでの勝負。いや奴は融合デッキからも出してくる。)ええい『電動刀虫』を召喚。攻撃だ!!」


電動刀虫 ☆4 地属性 昆虫族
ATK2400 DEF0
「このカードが戦闘を行った場合、ダメージステップ終了時に相手プレイヤーはカードを1枚ドローする。」


巨大なチェーンソーが動き出した。
そのクワガタはその角をまっすぐ十悟向けて突進してくる。

「罠発動『次元幽閉』これで、電動刀虫を除外するよ。」


不気味な異次元へとつながる穴が開く。
巨大なクワガタはそれに飲み込まれていった。

「『魂吸収』で500ポイント回復させてもらったよ。」

「カードを2枚伏せてターンエンド。(くそ!何でだ。途中まで完全に押してたはず。なのにデッキは8枚、ライフは5400あるが、フィールドはガラ空きだ。)」


「僕のターン。ドロー。ゲームから除外されている『岩窟魔獣』、『邪念魔獣』、『氷結魔獣』をデッキに戻すことで『魔獣導士ワーズ・ナロウム』を特殊召喚。」



魔獣導士ワーズ・ナロウム ☆6 闇属性 魔法使い族
ATK2400 DEF2000
「『魔獣』と名のつくモンスター×3
ゲームから除外されている上記のモンスターをデッキの1番下に戻した場合のみ融合デッキから特殊召喚することができる。ゲームから除外されている、モンスターカード1枚をデッキの1番下に戻す事で、このターン2回攻撃することができる。この効果は1ターンに1度しか使うことができない。このカードを特殊召喚する場合、このターンに他のカードを特殊召喚することはできない。」



「ゲームから除外している『異次元の女戦士』をデッキの1番下へ戻します。」

その、山高帽を被ったそのモンスターはその剣とも杖ともつかない武器を振り上げた。

「ダイレクトアタック!魔・導・炸・裂・弾!!」

その武器からは魔力のつまった漆黒の玉が現れる。
それがみるみるうちに大きくなっていく。


「速攻魔法『収縮』だ。」

モンスターの体は急激に縮みだし、それに合わせて攻撃も弱まった。


ATK2400→1200

「さらに、追加攻撃!魔・導・炸・裂・弾!!」


相馬十悟LP:22500 手札:6
伊東淳也LP:5400→4200→3000 手札:0

小さくなってはいるものの、そのモンスターは確実にダメージを与えた。



10章:黒と白・光と闇

「ターンエンドの前に教えて欲しい。どうして君が神狩の使徒なんかに入ったのかを。そして悪魔の調理師の事も。」

「ああ、教えてやるよ。俺に精霊がいつから見えたかなんて覚えてない。ただこの『悪魔の調理師』は、俺の親父のようなものだ。俺の親父は、国内でも有数の料理人だ。料理以外に興味が無く、家に帰る事も滅多にない。そんな親父からたまに買ってきてくれたのがデュエルモンスターズだ。その数あるカードの中で俺が気に入ったのが、『悪魔の調理師』だ。普通相手にドローさせるのはデメリットだが、相手が喜ぶのは間違いない。人々においしい料理を食べさせてあげる反面、家庭をかえりみないような男でも俺にとっては大事な家族だ。俺やこのカードをクズ呼ばわりする奴もいた。でも、誰がなんて言おうと俺はこいつとともに戦い続ける!!」


「そ、そんな事が。」

「つまらない話をしたな。神狩りの使徒については俺に勝てたら教えてやるよ!」


「いくぜ!ドロー。(あいつのデッキは俺のデッキと似ている。もし退学する前に、神狩りの使徒に入る前に、こんなデュエルができていたら・・・)」


相手デッキ:7枚


淳也の周りに黒いオーラのようなものが漂い始める。

「(く、そうか!もう戻れないのか。この道を行くしかない!)手札から『魂狩りの代償』発動!これは、神狩りの使徒だけが使える専用魔法だ!!」



魂狩りの代償 通常魔法
「デッキからカードを2枚選択して手札に加える。次の自分のターンのドローフェイズの前に自分は敗北する。」


「俺が手札に加えるのは『三ツ星の称号』と『デビル・ドーピング・スープ』だ!」


相手デッキ:5枚


(ククク。やはりお前は最高のマスターだ。)

悪魔の調理師は不敵な笑みを浮かべる。

「手札から『三ツ星の称号』を発動。墓地の『悪魔の調理師』を特殊召喚しこのカードを装備。さらにこれが俺の切り札『デビル・ドーピング・スープ』だぁ!」



三ツ星の称号 装備魔法
「デッキまたは墓地の『調理師』と名のつくモンスターを1体特殊召喚しこのカードを装備する。装備モンスターはレベルを3つ上げ、攻撃力を1200ポイントアップする。」


☆4→7
ATK1800→3000



デビル・ドーピング・スープ 通常魔法
「自分のフィールド上に『悪魔の調理師』がいる時のみ発動可能。相手プレイヤーはデッキから『悪魔の調理師』のレベルの数だけドローする。その後『悪魔の調理師』1体はこの効果でドローした枚数×1000ポイント攻撃力を上げる。」



悪魔の調理師は不気味なスープを取り出した。
色は紫色に近い。
とても人が飲めるものとは思えない。
だがそれを一気に飲み干した。


「お前が引くのは7枚、そして『悪魔の調理師』の攻撃力は10000だ!!行くぞ!ワーズ・ナロウムを攻撃!!血ぬられ大包丁!!!」


悪魔の調理師の姿がみるみるうちに変わっていく。
筋肉は隆々で、顔色は今まで以上に悪い。
そして悪魔の調理師は、巨大で禍々しく強化された包丁を振り上げた。
次の瞬間、邪悪な魔法使いを切り裂いた。


相馬十悟LP:22500→14900 手札:6
伊東淳也LP:3000 手札:0


「ぐわぁ。き、きいた!!(魂吸収を発動してなかったら瞬殺だった。)まだ『グリード』の効果がある。」

「お前はさらに2枚ドローだ。ターンエンド、『グリード』の効果を受けな!!」

グリードのカードから強烈な光を放つ。
それが十悟の体を貫いた。

「く、ダメージが大きい。これは、ソリットビジョンだけじゃない!!」

十悟はなんとかふんばった。


相馬十悟LP:14900→10400 手札:6
伊東淳也LP:3000 手札:0


「ライフは残った。でも危なかった。」

「先に言っておくがサレンダーはしない!!遠慮は無用だ!攻撃してこい!!」

淳也の目には覚悟を決め、炎が宿っているようにも見える。



「僕のターン。ドロー。」


クリクリ〜

十悟はカードを確認した。
見るまでもなく、あの人から貰ったカードであった。


「ゲームから除外している魔獣3枚をデッキの1番下へ戻す。『魔獣騎士 ラジル・キュームス』を融合デッキから特殊召喚!」



魔獣騎士 ラジル・キュームス ☆7 闇属性 戦士族
ATK2800 DEF2300
「『魔獣』と名のつくモンスター×3
ゲームから除外されている上記のモンスターをデッキの1番下に戻した場合のみ融合デッキから特殊召喚することができる。ゲームから除外されている、モンスターカード1枚をデッキの1番下に戻す事で、このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。このカードを特殊召喚する場合、このターンに他のカードを特殊召喚することはできない。」



「手札から『トゲ・クリボー』を召喚!こいつの攻撃力は300!バトルだ!!プレイヤーにダイレクトアタック!!」


その騎士は漆黒のランスを構えた。
そしてトゲの生えたクリボーは小さな体で、精一杯突進していった。


伊東淳也LP:3000→0 手札:0


「お、俺の負けだ。『魂狩りの代償』の効果はテキストに書かれているだけではない。敗者の魂はき・・え・・・る・・・。」

淳也は突如その場に倒れた。
まるで魂が抜けたように。
そしてその体は消えてしまった。



「まさか、彼が負けるとは!我が組織のホープとして活躍して頂こうと考えていましたのに!まあ仕方ありません。」


黒のスーツをビシっと着こなすその男は残念そうに言った。
そして『魂狩りの代償』のカードだけを抜き出すと、十悟たちをゆっくりと見回した。
その目は今まで見たことものだった。
すべてを見透かすようで、それでいて悪意を秘めている。



「お前!!」

迎人が怒鳴った。

「おやおや。もうこんな時間、申し訳ありませんゆっくり話している余裕はありませんね。私の名前は『白峰』そう言えば君たちの先生には分かります。いずれは、魔獣も宝玉獣もいただきますよ!!それではごきげんよう!!」


そう言うと、その男は姿を消した。
十悟はデュエルディスクを外すことにした。
やりきれない気持ちが誰の心にも広がっていくのが分かる。



「みんな。学校へ戻ろう!!先生にこの事を報告しないと!!」

全員そろって、学校への道を走った。
また友を失った。
今度は異世界でもなく、現実だ。






尾瀬呂学園職員室


「やっぱりラーメンは『しょうゆ味』に限るなー。」

黒須は職員室のポットでカップラーメンにお湯を注いでいた。

「先生!!!」

十悟たちはドカドカと職員室に流れこんだ。


「何だ?下校時間はとっくに過ぎているぞ!!」


黒須はびっくりして、あやうくカップラーメンをひっくりかえすところだった。

「それが、『神狩りの使徒』に遭遇したんです。」

「な、なんだって?で、被害が出たのか?」

カップラーメンを食べながらしゃべっている。

「そ、それが・・・・」

十悟達は今までの話をはじめた。
黒須は相変わらず、ラーメンを食べながら聞いていたが『白峰』の名前を聞いた時の表情はとても険しかった。

「伊東の退学は、本当に突然だったからな。私も聞いたのは今日の夕方になってからだ。まさか『神狩りの使徒』の一員になっていたとは。」

ラーメンはほとんど無くなり、スープを少し残すだけとなった。
箸を置き、黒須はさらにつづけた。

「『白峰』は・・・、彼は私の大学時代の友人だ。そして今は『神狩りの使徒』の総帥。だから私は止めなくてはいけない!!友として、好敵手として!!!」

黒須はすぐに、ペガサス会長に連絡をとると約束してくれた。
ただ、それ以上の事は何も語られなかった。




その夜

十悟はパソコンに向かっていた。
黒須が尾瀬呂大学出身なのは聞いていたので白峰のことを調べてみようと思ったからだ。




白峰神斗

大学卒業後、プロリーグへ。
スポンサー:童実野食品株式会社



黒須芽出一

大学卒業後、アマチュアリーグに出場しながら教育者に。
現在:尾瀬呂学園高等部教師




結局それ以外出てこなかった。


「黒と白、名前までライバル関係だったのか。かたや、プロにはなれなかった(ならなかった?)が家族もいて若いデュエリストの育成に力を注ぐ教諭。かたや元プロでありながら、今はカード犯罪に手を染める男。彼らの過去にいったい何が?」

十悟はパソコンを閉じた。
何かが起こっている。
このままでは終わらない。
そんな気がしてならない。


「僕のデッキ!信じてるよ。次も勝とう!!」

デッキにそう語りかけた。
十悟は再びデッキをケースに戻し、眠ることにした。



11章:魔法少女の館

6時間目

こんな時間に数学や古典をやらされたらたまったものではない。
この学園では特別な場合を除きこの時間にのみデュエルの講義が行われる。

「で、あるからして今月より『スーパーエキスパートルール』から『マスタールール』に変更になるわけだが、今回の変更の特徴を・・・・明智!!」

黒須は珍しく起きている迎人に当てた。


「生贄召喚がアドバンス召喚になって生贄がリリースになるんっすよね。」

「まあいいか。他には・・・木村!」

「はい。さらに融合デッキはエクストラデッキになります。ここには融合モンスターカードの他にシンクロモンスターが入ります。しかも枚数は15枚までに限定されます。私のようなサイドラ使いやE・HEROを使う者はデッキを見直す必要があると考えます。さらには・・・・」

「あ、そのへんでいいぞ。(時間ないから)」

黒須は机の上にどっさりとレポート用紙を重ねた。
それは紙でありながら、バベルの塔のごとくそびえ立っている。

「新ルールに関するレポートを、エクストラデッキにちなんで15枚提出するように!!期限は来週のこの時間だ。それじゃ、解散」

十悟達はレポート用紙を15枚ずつとり帰ることにした。



放課後


「なあ、十悟!今日もみんなでレポートやらないか?」

「ごめん。今日は委員会があるから。確か朝子と智花もそうだと思ったけど。」

「ま、マジか。じゃあ終わったら例のところでな。」

「わ、分かったけど気に入ったんだね。久美のバイト先。」

十悟は委員会の準備をはじめた。
いつものメンバーがなぜか集まってきている。

「ウチも行っていいかな?レポートごっつ不安なんよ。」

「だったら僕も。」

澪といつきがやってきた。

「いいぜ。みんなでやればすぐ終わる。」

4人は歩きだした。
学園は丘の上にあり、坂道を下って帰ることになる。
坂を降り切るとすぐが尾瀬呂駅だ。

尾瀬呂駅から電車で1駅。
かつて伝説のバトルシティーが行われた童実野町につく。
ここはデュエルの聖地とも言われ、5分も歩いていれば誰かがデュエルしている光景に出くわす。
特に今日は金曜日なので普段より多いのだろう。


「ここ、ここ。」

久美たちは裏路地にある小さなビルに入って行った。
この辺りには昔「ジャンキースコーピオン」なる店が入っていたらしい。
それらしい落書きがいくつか残っている。



十悟は

「ふう。以外に早く終わったな。あ、おーい智花!」

「あ、十悟くん。今終わったところ?」

「うん。今から久美のバイト先でレポートやるんだけど、一緒にどう?」

「いいですね。ところで久美さんのバイト先ってどこなんですか?」

「童実野町の魔法少女喫茶!!」

「え?あ、あの何度かニュースで見たことはありますけど。」

智花はちょっとびっくりして言った。


魔法少女喫茶
メイド喫茶などの派生として考えてもいいだろう。
ウエイトレスはデュエルモンスターズの中でも人気の高い「ピケル」「クラン」「アウス」「エリア」「ヒータ」「ウィン」のコスプレをして接客いる。
今後「カードエクスクルーダー」の採用予定もあるらしい。
オプションとして彼女達とデュエルすることができ、勝つと特製「魔法少女トークン」が貰えるのである。
もちろん喫茶店としてのメニューも充実している。


「で、久美は水曜と土曜にピケルをやってるんだ。」

「十悟くんもよく行かれるのですか?」

「最初は久美達の誘いで行ってみただけなのだけど、この特製トークンを集めたくってさ。デュエルディスクにも対応しているらしいよ。」

十悟は6枚のトークンのカードを見せた。
しかもすべてパラレル仕様だった。

「ぜ、全勝したのですね。デッキ破壊で?」

「あ、うん。こういうのかかってると負けられないんだよね。久美は知ってたけど、エリア役の子とウィン役の子なんか途中で泣き出しちゃった。あとクラン役の子とヒータ役の子には逆ギレされてさ。」

十悟は笑いながら言った。

「アウスの子は?」

「しばらく沈黙したあと、しつこくデッキレシピ聞かれたよ。教えなかったけど。」

「面白そう。私も行ってみようかな。」



十悟たちは迎人達から遅れること1時間、童実野駅に到着した。
相変わらず場所を選ばずデュエルが行われている。
この時間になると、学生や会社帰りのサラリーマンなども見物している。



最強の〜♪ カードで♪ 掴み〜とれ♪

突如、十悟の携帯が鳴った。
着うたは今、人気bP歌手「きただにひろし」の「EndlesDream」だ。

「ごめん、先に入っていて。この中、電波悪いからさ。」

そう言うと十悟は建物のない方へ歩いていった。
一人残された智花は、少し躊躇している。
一応、そこは「魔法少女の館」という看板が出ている。
ただ、どうしてもそこに自分の仲間がいるようには思えないのだ。
彼女は勇気を振り絞り、ドアを開けた。


「おかえり!おねえちゃん!私とデュエルしよ!」


智花は一瞬固まった。
中は洋風の家具で統一されている。
彼女の目の前に黄緑色の髪を後ろで束ね、ベージュのローブを着た女の子が杖を持って立っていた。
もちろん、デュエリストならば、それが「風霊使いウィン」の姿だとわかる。
杖やローブの精巧さには目を見張るものがある。


「おーい。こっちこっち。」

迎人の声が聞こえた。
振り向くとそこには見たことのある顔が揃っていたので一安心だった。




一方の十悟は

「もしもし!ああ、先生ですか!・・・え?京都にですか?え、はい。・・・今は童実野町に来ているんですが・・・・・はい、分かりました。」



十悟は電話を切ると、急いで店に向かった。
十悟が入ると今度はオレンジ色の髪の女の子が出てきた。

「ああ、あんたか。デュエルするの?今日は絶対負けないわよ!!」

先ほどのウィンの子とはうって代わって、強気な女の子だ。
「火霊使いヒータ」であることは言うまでもない。


「また今度にしとくよ。」

十悟は迎人たちを見つけた。
普段なら人のデュエルを少し見ながら行くのもいいのだが、そこへまっすぐと歩いていく事にした。


「みんな、ちょっといいかな?」

「なんだよ急に。」

迎人は特製パフェを食べながら言った。

「さっき、黒須先生から連絡があった。『カード・スイーパーズ』の幹部とあの『クロノス・デ・メディチ』や先生を始めとするデュエル関係者で作られた特別部隊が『神狩りの使徒』の殲滅作戦を行うらしい。敵の本部は京都。今、先生はあちらへ向かってる。恐らく激しい戦いになるだろうと思う。そして、いつき君の上司から僕たちにも指令があるはずだって言っていた。」

十悟は先ほどの電話の内容を手短に話した。


「ああ、来たみたいだ。」

いつきは皆に携帯のメールを見せた。




指令

学園内研究室に保存されている「ディスティニーブレイカー」及び「宝玉獣」を死守せよ。




メールにはそう書かれていた。



12章:任務開始

「つまり、このまま学園に戻れと言うことか。」

「よし、行こう!!!」


十悟達は、店を出た。
もちろん、お勘定はしている。




学園研究室前


「あんたらね!神狩りの使徒は!ここは絶対に通さないわよ!!」

朝子はディスクを構えた。
彼女の前にはチンピラ風のデュエリストが4人いる。


「ふん。小娘が!ならばデュエルをしてやろう。ただしこちらは4人だ。恨むのならこんな事をさせた奴らを恨むのだな。」


敵A:LP8000
敵B:LP8000
敵C:LP8000
敵D:LP8000
朝子:LP8000


「オレのターン。行くぞ!『切り込み隊長』召喚!この効果で『切り込み隊長』を召喚!さらに永続魔法『連合軍』を使ってターンエンド。」


「俺のターン。ドロー。『切り込み隊長』召喚!この効果で『切り込み隊長』を召喚!永続魔法『ツーマンセルバトル』発動。この効果で『戦士ダイ・グレファー』を召喚。ターンエンド。」


「アタイのターンよ!ドロー。『切り込み隊長』召喚!この効果で『コマンド・ナイト』を召喚。カードを1枚伏せてターンエンド。」


「我がターン。ドロー。『切り込み隊長』召喚!この効果で『一刀両断侍』を召喚!さらに『強制転移』発動。俺は相手にAを選ぶ。渡すのは『一刀両断侍』だ。これで効果モンスターをセットしようとも無駄!!これでターンエンド。」


「さらにいい事教えてあげるわ。アタイの伏せたカードは『王宮のお触れ』、発動しておくわ!!」



切り込み隊長 ☆3 地属性 戦士族
ATK1200 DEF400
「相手はこのカードを破壊しない限り、他の戦士族モンスターを攻撃できない。このカードが召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスターを1体特殊召喚する事ができる。」



コマンド・ナイト ☆4 炎属性 戦士族
ATK1200 DEF1900
「自分のフィールド上に他のモンスターが存在する限り、相手はこのカードを攻撃対象に選択できない。また、このカードがフィールド上に存在する限り、自分の戦士族モンスターの攻撃力は400ポイントアップする。」



一刀両断侍 ☆2 風属性 戦士族
ATK500 DEF800
「裏側守備表示のモンスターを攻撃した場合、ダメージ計算を行わず裏側守備表示のままそのモンスターを破壊する。」



連合軍 永続魔法
「自分のフィールド上戦士族・魔法使い族モンスター1体につき、自分の全ての戦士族モンスターの攻撃力は200ポイントアップする。」



強制転移 通常魔法
「お互いが自分フィールド上モンスターを1体ずつ選択し、そのモンスターのコントロールを入れ替える。選択されたモンスターは、このターン表示形式の変更はできない。」



王宮のお触れ 永続罠
「このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、このカード以外の罠カードの効果を無効にする。」



戦士ダイ・グレファー ☆4 地属性 戦士族
ATK1700 DEF1600
「ドラゴン族を操る才能を秘めた戦士。過去は謎に包まれている。」

      


切り込み隊長:ATK3400
コマンド・ナイト:ATK3400
一刀両断侍:ATK2700
戦士ダイ・グレファー:ATK3900


9体の戦士がフィールドに並んでいるその光景は壮観だ。
なかでもグレファーの攻撃力には目を見張るものがある。


「(ちょっと!何なのよあの攻撃力。まさか最初からこのつもりでデッキを!それに王宮のお触れの効果は私のデッキとの相性最悪!どうしたら?)」



「彼らのデュエルにまともに付き合っていては意味がないよ!!」

声のする方を向くと十悟達が立っていた。

「相馬の言うとおり!このデュエル、僕たちも参加させてもらう!!僕は『戦場花−ツバキ』を召喚。速攻魔法『フォース・リリース』この効果で再度召喚の状態にして効果発動!」



戦場花−ツバキ ☆4 地属性 植物族
ATK800 DEF200
「このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、通常モンスターとして扱う。フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。●このカードと戦闘したモンスターはダメージ計算を行わず破壊される。この効果で破壊されたモンスターと同じ種族のモンスターはすべて破壊される。」



フォース・リリース 速攻魔法
「このカードの発動時に自分フィールド上に表側表示で存在する全てのデュアルモンスターは再度召喚した状態になる。この効果を適用したモンスターはエンドフェイズ時に裏側守備表示になる。」



「ではこちらもいい事を教えましょう。椿の花は花びらが別々に散るわけではない。愕(がく)ごとすべてが散ってしまう。つまりアンタらの戦士族も丸ごと破壊される。」

「馬鹿め!切り込み隊長ロックを忘れたか!貴様らに攻撃は許されていない。」

「忘れてなどいない。魔法発動『エフェクト・サイレンス』この効果で『切り込み隊長』の効果を無効化!!」



エフェクト・サイレンス 通常魔法
「ライフポイントを1000払い、モンスター名1つを宣言する。そのモンスターの効果はこのデュエル中すべて無効となる。」


いつき:LP7000


「バトル!!妖魔の花弁!!!」

突如フィールドを桃色の花弁が包んだ。
それらは敵モンスターを包み全滅させた。


「ターンエンド。『戦場花−ツバキ』を裏守備表示にする!!おっと任務で我を忘れてしまっていたよ。朝子さん、君のターンだったね。それとも『王宮のお触れ』まで破壊しないとダメだったかな?」

いつきは笑顔で言った。

「うるさいわね。でもありがとう。もう大丈夫!私のターン。ドロー。魔法カード『トリプル・カウンター』発動!」



トリプル・カウンター 通常魔法
「デッキからカウンター罠を3枚までセットすることができる。セットされたカードを墓地に送ることで、次のターンのスタンバイフェイズに送った枚数分ドローすることができる。」



「私は3枚とも墓地に送る。さらに手札のカウンター罠1枚を墓地に送り『カウンター・ドラゴン』を特殊召喚。」



カウンター・ドラゴン ☆5 光属性 ドラゴン族
ATK2000 DEF100
「手札からカウンター罠1枚を墓地に送ることで、このカードは特殊召喚できる。自分のターンのエンドフェイズに墓地のカウンター罠1枚をセットすることができる。」


全身が棘で覆われた白いドラゴンが現れる。


「墓地の罠は4枚、そのうち1枚を除外して『冥界天使−ゾグラーヴ』を特殊召喚!」



冥界天使−ゾグラーヴ ☆5 闇属性 天使族
ATK? DEF0
「このカードは墓地のカウンター罠を墓地から1枚除外することで生け贄なしで召喚できる。このカードの攻撃力は墓地のカウンター罠の数×1000となる。」


ATK→3000


「『智天使ハーヴェスト』を通常召喚!」

2体の天使とドラゴンがフィールドに揃った。


「バトル!!カウンターブレス!!さらに暗黒冥光弾!!!そして、ハーヴェストシャイン!!!!」


敵A:LP1200


「これでターンエンドよ!『カウンター・ドラゴン』の効果でカードを1枚伏せるわ。」



「私が行かせてもらいます。ドロー。カード効果を使います。」

智花は朝子の方をみて言った。
朝子は軽くうなずいた。

「私は『トリプル・カウンター』の効果で3枚ドロー。手札から『パワー・ボンド』発動!手札の『サイバー・ドラゴン』2体を融合します。」



サイバー・ツイン・ドラゴン ☆8 光属性 機械族
ATK2800 DEF2100
「「サイバー・ドラゴン」+「サイバー・ドラゴン」
このモンスターの融合召喚は、上記のカードでしか行えない。このカードは一度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。」



2俣に分かれた機械龍だ。
かつて、丸藤亮も愛用した強力カードだ。



「さらに速攻魔法『リミッター解除』を発動します。」



リミッター解除 速攻魔法
「このカード発動時に自分フィールド上に存在する全ての表側表示機械族モンスターの攻撃力を倍にする。エンドフェイズ時この効果を受けたモンスターカードを破壊する。」


ATK→5600→11200


「プレイヤーにダイレクトアタック!!エボリューション・ツイン・バースト!!」


敵B:LP0
敵C:LP0


「ターンエンドです。元々の攻撃力分ダメージを受け、サイバー・ツイン・ドラゴンは破壊されます。」


智花:LP5200


「僕のターン。ドロー。」


「も、もう勘弁して下さい!!今すぐここから出て行きますから。」

4人はそう言って逃げて行った。


「ごめん、朝子。遅くなっちゃって!!」

「まあ、いいじゃねえか。間に合ったんだし。」

「迎人、アンタが言わないの!!」

「アハハハハ!!」

7人の間に笑いが起こった。



パチパチパチ

「ワンダフォー。やはり結束の生み出すデュエルは最高デース。」

「ペ、ペガサス会長!!」

「ミスター黒須に頼まれて様子を見に来たのですが、問題ないようデースネ。」


突如現れたこの外国人のに一同は驚かされた。

「あの、会長さんは京都には行かれなかったのですか?」

「イエース。私は随分前にデュエルは引退していマース!現在はカードデザインにのみ専念しているのデース。」

「そ、そうなんですか。」

「あとは、『カード・スイーパーズ』の方々に任せマショウ。」

そう言うとペガサスは皆と一緒に研究室に入っていった。
そこで、コーヒーを飲みながらデュエルの話をすることにした。
ペガサスはデュエリストキングダムの裏話などを一通り語り終えてから言った。

「いつの時代もデュエリストにはこうした試練が降りかかって来マース。伝説のデュエリストといわれる者たちもこういった試練を乗り越えてきました。あなた達にもその試練が訪れているのデース。」


そう言いかけた時、携帯が鳴った。
おそらく、ペガサスのものだろう。

「私デース。どうしマシタ?まさか、ミスター黒須が単独で彼と決着をつけにデスカ。仕方ありマセーン。友情とはそういうものデース。」


ピッ

「聞いての通りデース。私は今すぐ京都に向かいマース。あとはあなた達にお任せしマース!」

そう言ってペガサスは学園を飛び出した。
十悟達はカードの護衛を続けることにした。
ただ、先生が心配な事は皆同じであった。



13章:再会

京都某所の建物の中

「皆さーん!ワタクシが今回の作戦の指揮をとる『クロノス・デ・メディチ』よろしくお願いシマスーノ。」

クロノス・デ・メディチ、かつて遊城十代をはじめとする伝説のデュエリスト達を学生時代指導した有名教師。教え子である天上院明日香に「デュエル担当最高責任者」の地位を譲ってからは「カード・スイーパーズ」にも所属し、新人の育成に力を注いでいる。


「指令書は貰っている。それ以上は必要ない!!!」

「最もな意見だな。」

カード・スイーパーズの面々は口々にそう言った。
ある者はその部屋から出て行ってしまった。

「マンマミーヤ。」

「お久しぶりです。クロノス先輩!!」

「おおシニョール黒須!あなたも選ばれたのデスネ。デュエルの腕前だけはプロ並みだったから、当たり前と言えば当たり前なノーネ。」

2人は久々の再会を喜んだ。

「思い出すノーネ、数年前は教師としての才能なんてこれっぽちも無かったあなたを、名前の発音が似ているという理由だけーで指導していたあの頃ーガ。」

「惜しかったな!!あと1年早く来てれば、十代君達に会えたのに!!」

「彼は、デュエルこそピカイチデスーガ、勉強はダメダメのドロップアウトボーイなノーネ!!毎回補習に付き合わされる方の身にもなってほしいノーネ。受け持たなくて正解でしたーヨ!!」

黒須はアカデミアに勤めた事があった。
ちょうど、遊城十代達が卒業した後にやってきた。
定年退職された樺山教諭の代わりにラーイエローを任されたりもした。
ティラノ剣山のような優秀な生徒にも出会った。
考えると、忙しかったが充実していた時期だろう。
今、充実してないわけではないが。

クロノスにあいさつをすませると、黒須は携帯を出した。
彼らへの連絡を忘れていたのだ。



「ああ、もしもし私、黒須だ。今京都なんだが・・・・・・・というわけで指令が行くはずだから。自信を持て!!お前たちは私が受け持った誰よりも強い!!なんてな、じゃあ私も仕事があるから。仲間と協力して頑張れよ!!」

ピィ



「仲間か・・・・・・白峰・・・。」

黒須はしばらく考え込むようにソファーに座った。
何分経っただろう?

クロノスは自分の仕事に戻っていた。
指揮をとると言っても作戦が開始してしまえば、後は戦う場所こそ決められているが、個人の裁量で動ける事になっている。
そのため、開始までにトラブルが起きないように注意するのが仕事だ。



10、9、8、7・・・・・・

運命のカウントダウンが始まった。
刻一刻とその時は迫っている。


「皆さーん!準備はよろしいデスーカ?」


クロノス達にも緊張が走る。




3、2、1、ゼロ!


作・戦・開・始!!!











黒須は走り出していた。
作戦の事は多分、頭にあっただろう。
ただ、それを強引に頭の隅に追いやった。


「シニョール黒須!待つノーネ。そっちじゃナイーノ!!!行っちゃだめなノーネ。」

「すいません!!!行かせてください!!!!」


クロノスの制止を振り切り走り続けた。
その足は徐々に早くなっていく。

「私達の戦いはまだあの時から止まっている。あの時から封印し続けてきたデッキ。できるのならもう一度!!」







十年前の尾瀬呂大学



その日、デュエル場には多くの観客が集まっていた。
フィールドには2人のデュエリスト、2体のモンスターが向かい合っている。

白峰神斗
雄々しく光る「裁きの龍」を従えている。

黒須芽出一
暗黒の闇から力を受けた「ダーク・アームド・ドラゴン」を操っている。


「黒須!!ここまでは互角。と言う事にしておこうか!!」

「ああ。さてこれからどうでる?」

2人の実力はほぼ互角。
このデュエルに勝った者が「童実野食品」と正式にプロ契約を交わす。
そんな大切なデュエルだった。



「はあ、はあ、神人兄ちゃん!!!お母さんが!!お母さんが!!!!」

女の子が息を切らしながらやってきた。
彼女は今にも泣きそうな顔をしている。

「お母さんが事故に!!だから、すぐ病院にいこう!!」

「しかし・・・・」

白峰は童実野食品のオーナーの顔を見た。
恰幅(かっぷく)の良いオヤジで、敏腕経営者と言った感じだ。
白のスーツを着ているがあまり似合っていない。

「デュエルを放棄するかね?プロの世界は甘くない。親の死に目に会えない事も少なくないのだよ!さあ、決断したまえ!!今は君のターン『裁きの龍』の効果を使えば圧倒的に有利な状況になると思うがね。」


白峰はしばらく沈黙した。

何が正しいか?
デュエルを放棄することが人として正しい?
そんな事が彼の頭を巡っていたに違いない。













現在

「(あの時、私は敗北する道を選んだ。私は友の為にデュエリストとしてのプライドを捨てた。そう言えば聞こえはいいだろう。だが、結果としてあいつはプロリーグで『お情けでデビューしたデュエリスト』というレッテルを貼ら続けた。その苦悩は想像を絶するものだったろう。)」

黒須はそんな事を考えながら、走っている。
彼の前に建物が見えてきた。
京都だが、普通の事務所のような場所だ。


「ここを攻めるのは最後なノーネ!」

「私はあいつと決着をつけなくてはいけないんです。昔、話しましたよね?彼との因縁は。」

「分かったノーネ!ただし、この事はシニョール・ペガサスに報告するノーネ。」

「分かりました。しかるべき処分は受けます。」

「そしてもう一つ。ワタクシも一緒に行くノーネ。それでよろしいデスーネ?」

黒須は黙ってうなずく。
デュエルディスクを装着して準備を整えた。
窓にはブラインドが下ろされ中を伺い知ることはできない。

2人はそっと扉を開けて中に入った。
中は何かのオフィスのようになっている。
デュエル関連の雑誌や、デュエルディスクの空き箱が積んであるところもある。

「ここが最後の部屋なノーネ」

黒須は思い切り扉を開けた!!!
部屋には男が1人いるだけだった。

「よく来たな!黒須!!と、かの有名なクロノス教諭ですか。」

「白峰!あの時の決着をつけにきた!!」

黒須は大声で叫んだ。
白峰は不敵な笑みを浮かべながら黒須を見据えた。



14章:『闇の指名者』と『エクスチェンジ』

「ちょっと待つノーネ!!!なぜあなたしかいないーのデスカ?ワタクシ達の予想では数十人規模で対抗してくるようシミュレーションしたノーネ!」

「ははは。カード・スイーパーズともあろう方々が情報操作にまんまと引っ掛かってしまったようですね。かつてマリク・イシュタールは『グールズ』を組織しましたね。それと同様に考えておられるようですが、違いますよ!」

「何?」

黒須も驚いていた。
確かにここに来るまでトントン拍子だった。
今考えれば妨害が何もなかったのはおかしい話だ。

「伊東淳也、君の元教え子だ。彼のように何らかの理由で才能を持ちながら強くなれないデュエリストに、いわゆる派遣社員やパート労働者のような形で協力してもらう。そうやって仲間がいるように見せかけていたのですよ。実際は私を含めて3人しか本当の目的を知らない。」

「目的って何なノーネ?」

「そうですねえ、一言でいえば『この世界を捨てる』ということです。」

「す、捨てる?」

「最近の研究でこの世界以外の次元の存在が指摘されるようになった。ツバインシュタイン博士の弟子の論文には次のような記述がある。」




次元大統一理論の可能性とその考察

仮に我々の世界を第1次元と考えるならば、さらに違う世界が11個存在する可能性が高い。12の次元が環状に連なると考えるのが最も自然である。もし数千億ジュールという巨大なエネルギーを自由にコントロールできるなら、人間や動物、人工的に作られたものであっても次元の間を移動させることができる。もし実用化できれば今起こっているあらゆる問題を解決に向かわせる事ができると考えられる。



「すばらしいじゃないか!今の人口増加や環境問題!もうこの世界は長くない。いずれ、この日本でも一握りの人間の生活の為に他者が犠牲を強いられる時代がやってくる。そんな世界からは早く抜け出すに限る。私は何もこの世界をどうこうしようと考えているわけではない!ここに残りたい者に無理強いはしない。」


「そのために『運命の神』の力が必要だという事か?」

「その通り、三幻神は武藤遊戯が管理している。これを奪うのは至難の業だ。なんせ歴代最強のデュエルキングだからね。アカデミアの三幻魔の警備も以前より格段に厳しくなった。アカデミアに入島する労力も考えるとこちらもスマートじゃない。だったら『運命の神』を使えばいい。世間にその存在を知る者も少ないカード達を。」




運命の神
かつて、インダストリアルイリュージョン社のMrフランツが、三幻神を超えるカードを作ろうと密かに制作させていたもの。ペガサスによって厳しい召喚条件が付けられたため闇に葬られるカードのはずだった。


「先ほど、私の仲間が2人いるといいましたね。ここにいないということはどこにいるんですかね?ククク。」

「まさか?尾瀬呂に!」

「その通り!はっきり言いましょう!彼らはゲスですよ。おおよそデュエリストとは呼べない。カードというおもちゃを持った子供!いや悪魔とでもいいましょうか。今回のような場合には、金さえ払えばそれなりに使えるんですがね。」


白峰は相変わらず不敵な笑みを浮かべている。









同時刻
尾瀬呂学園



「我々が『神狩りの使徒』最後の刺客!上城兄弟!!我らの狙いは3つ!『ディスティニー・ブレイカー』『レインボー・フェニックス』『魔獣王』だ。相馬十悟、宝生澪!デュエルしてもらおうか!タッグでも別々でもいい早くしろ!」

角狩りとスキンヘッドの男がそう怒鳴った!


「分かった。僕は相手をしよう!でも・・・」

「ウチも受ける!!いつまでも守られてるだけじゃない!!別々にデュエルや!」


2人はディスクを構えた。


上城(弟)LP:8000
宝生澪LP:8000


「俺の先行。ドロー。ヒャハハハハハハハハ。魔法カード『魂狩りの代償』これで任務は完了する。手札に加えるのは『闇の指名者』と『エクスチェンジ』だ!魔法発動『闇の指名者』対象は『究極宝玉神レインボー・フェニックス』だ。そして『エクスチェンジ』発動ォ!」


闇の指名者 通常魔法
「モンスター名を1つ宣言する。宣言したカードが相手デッキにある場合、そのカード1枚を相手手札に加える。」


エクスチェンジ 通常魔法
「お互いに手札を公開し、それぞれ相手のカード1枚を選択する。選択したカードを自分の手札に加え、そのデュエル中使用することができる(墓地へ送られる場合は元々の持ち主の墓地へ送られる)」


男は澪のデッキから強引にカードを奪い取った。
次の瞬間、男は教室を飛び出した。


「ま、待って!!う、ウチのカードが!」

「て、てめえら!最初っからそのつもりで!」


迎人は大声をあげて兄の方を見た。

「あいつのしたことは知らねえよ!俺は強いから単純にアンティで奪えるからな!!さあお前のターンからだぜ!」


「みんな!あいつを追いかけて!!彼は僕が倒す!!」

「分かった!!十悟絶対負けるなよ!!お前を倒すのは俺とバルバロスだからな!」

迎人はそう言って飛び出した。
久美や朝子もそれに続いた。
部屋は男と十悟だけとなった。







「見つけたぜ!!!」


男はデュエル場にいた。
パソコンに複雑な機械をつないでいる。


「あー貴様らか!!このカードがそんなに大事かぁ。もう用は済んだ。レインボー・フェニックスの画像データとそこから放たれるエネルギーをトレースしたところさ。これで『ディスティニー・クリエイター』の封印が解かれるのも時間の問題だ!!」


カードを投げて返した。
澪はそれを受け止めた。

「(ごめん。ウチのせいで!!)」

澪の涙がこぼれ落ちた瞬間、カードは微かに鳴動した。
それには皆も気づいていない。

「今頃は兄貴が『ディスティニー・ブレイカー』を・・・」

男は後ろにいる人物の存在に気づき振り返った。

「彼はもう立てません!!『魂狩りの代償』そのツケがありますから。」

十悟は男を引きずってきた。
男を壁に立てかけながらそう言った。

「バカな!兄貴のデッキは元プロランク5位のデッキ!そうやすやすと倒されるハズは・・・・・。」

「彼のこの姿が何よりの証拠です。カードを使わなければこんな事にはならなかった!」

『魂狩りの代償』のカードが男の手には握られている。
握ったまま魂を抜かれた状態になっているようだ。

目が虚ろになった兄を見つめながら弟はうつむいていた。
顔を起こしながら笑いだした。

「ひゃはははっははははははは。てめえら全員このカードの餌食にしてやる!!魔獣も宝玉獣もレアカードも全部奪ってやるぜ!!」

男は兄のカードをデッキに加えた。
十悟は男を憐れみの目で見つめながら、サイドデッキからカードを数枚交換し、デッキをカットし始めた。
それをディスクに戻しながら手札を5枚引いた。


「僕の先行。カードドロー。伏せカード2枚を出して、『トーチ・ゴーレム』を相手の場に特殊召喚。トーチトークンを場に出してターンエンド。」


「へ!最初から手札事故か?わざわざ俺にモンスターを渡すとはな。俺のターン。ドロー。(チ、エクスチェンジも闇の指名者も無しか。相手の場に『魔法の筒』か何かが伏せられていたとしてもまだデュエルは始まったばかり。致命傷にはならないはず。)ここは・・・トーチ・ゴーレムでトーチトークンを攻撃だ!!」

巨大な機械が動き出し、小さなトークンに攻撃を仕掛ける!!
トークン1体が倒された次の瞬間、勝敗は決した。


伏せカードの1枚が『ヘル・テンペスト』なのは仲間も皆分かっていた。
ただ、もう1枚のカード。それは十悟がサイドデッキに封印しつづけてきたカードだった。



15章:完全デッキ破壊と力の代償

相馬十悟LP:8000→5000


「この瞬間あなたの敗北は決定しました。速攻魔法『ヘル・テンペスト』さらにこのカードにチェーンして『ヘブンズ・テンペスト』を発動します!!」

どんなに怒りを感じようと、十悟は常に敬語で話す。
逆に男はそれに恐怖していたに違いない。



ヘブンズ・テンペスト 通常罠
「このカードは自分の発動した『ヘル・テンペスト』にチェーンすることによってのみ発動できる。相手のデッキと墓地の魔法、罠カードをすべてゲームから除外する。発動後、お互いのプレイヤーは自分のターンの初めに手札を1枚捨てることで自分のドローフェイズをスキップすることができる。」




そこには異様な光景が広がっている。
二人の頭上には赤と青の2つの炎の塊がある。
それらは混ざりあい2人を貫いた。

2人のデッキがディスクから外れた。
1枚や2枚ではないすべてのカードだ。
十悟はそれを上手にキャッチし、デッキケースにしまった。



「完全デッキ破壊コンボ!とでも呼べばいいのか?僕はカード・スイーパーズで様々なデュエリストを見てきたが、相馬は異質!!彼のデュエルを見ていると自分のタクティクスなど無意味に思えてくる。これが敵だったらと考えると恐ろしい。」

いつきはつぶやいた。
仲間もいつきと同じことを思ったのかもしれない。


「考えたくもないですね。十悟君が敵だったらなんて。ゲームから除外されているカードをデッキに戻すことで召喚できる魔獣がいたはず。いずれ、相手の手札も尽きます。彼の勝ちは揺るぎません。」

智花は冷静に分析したつもりだが、声が震えているのが分かった。


「十悟は言ってたわ。もし自分がこのカードを使うようなことがあったら、もう普通のデュエリストとしてはやっていけないだろうと。詳しくは教えてくれなかったけど。」

朝子はただ自分の知ってることだけを話した。




「デッキ破壊だと?こんなの反則じゃねぇのか!!」

男はそう吐き捨てた。

「あなたの『闇の指名者』『エクスチェンジ』と同じ立派な戦術ですよ。」

十悟は言った。
男は言い返せなかった。



「僕のターン。カード効果で手札を1枚捨ててドローフェイズをスキップ!(パワーで押し切る。たまにはそんな戦術もいいのかな。)手札を1枚捨てて『D・D・R』発動!!装備するのは『紅蓮魔獣ダ・イーザ』です。このカードの攻撃力及び守備力はゲームから除外しているカードの数×400。」



紅蓮魔獣ダ・イーザ ☆3 炎属性 悪魔族
ATK? DEF?
「このカードの攻撃力と守備力は、ゲームから除外されている自分のカードの数×400ポイントになる。」



D・D・R 装備魔法
「手札を1枚捨てる。ゲームから除外されている自分のモンスター1体を選択して攻撃表示で特殊召喚し、このカードを装備する。このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。」



ATK?→13200


深紅の装甲!
紫の羽!
その悪魔は除外されたカードから力を受けながら大きくなっていく。


「これが本当のパワーです!!トーチ・ゴーレムとの差10200ポイントがあなたのライフから引かれることになる。」

十悟と紅蓮魔獣が男を見下ろすように言った。


「ちきしょう、ちきしょう、ちきしょう。俺たちは異世界へ行くんだ!!ボスは腐りきったこの世界の救世主!ボスについていけば俺たちは幸せになれるんだぁぁ!!」

男は膝をつき叫んだ!!

「なぜそうまでして異世界に?そこまでいい世界ではないですよ。」

十悟は異世界での戦いを思い出しながら言った。

「うるせえ!この世界じゃなければどこでもいい。俺達の人生はゴミ同然だった。」






男は語りだした。


物心ついた時、2人には家も親もなかった。
繁華街のゴミを漁ることで食いつなぐ生活を送っていた。

そんな生活が長く続くわけもなく、間もなく2人は施設に預けられる。
2人は名前を与えられた。
「上城」ただ施設が城跡の上に立っているという安易な理由だ。
下の名前は特に決まっていなかった。
兄弟以外とは口も利かなかったし、兄弟顔を合わせれば喧嘩ばかりしていた。
言葉も「おい」や「おまえ」で片づけていた。

16歳の時、彼らはそろって施設を出た。
危険な仕事を請け負いながら生計を立てた。
それ相応のリスクがあったが、儲かった。
刑務所に入ったこともあった。




「分からねえよな!お前らみたいに家族や仲間もいて幸せに暮らしている奴らには!!敗北した俺たち兄弟は地獄のような生活に逆戻り!!いやあの苦痛を繰り返すくらいなら、力づくでカードを奪ってやる!!!」

男がそう言いかけた時、男には自分を威圧している存在に気づいた。


「は?この殺気は?」


そのプレッシャーが十悟の後ろから伝わってくるのが分かる。


(そこまで望むならば我が彼らを導こう。十悟よ!お前の力を借り受ける。)

突如、低い声で十悟に語りかける者がいた。
十悟には聞き覚えがあった。
異世界で手にした力。
ただ、それを使おうとは思わなかった。


「あ、アルド・ヴァーム!」

魔獣王アルド・ヴァーム。
十悟のエースカードだ。

その精霊が十悟に向かって移動していくのが分かる。
その瞬間、彼の目が大きく見開かれ赤く光出す。
ちょうどアルド・ヴァームと同じ輝きを放っている。
十悟は相手をまっすぐと見据えた。

「ダ・イーザで攻撃!!」

攻撃宣言をすると男たち2人を巨大な光が包みだした。
それは確かに十悟から生み出されている。
荒々しさと優しさの入り混ざった奇妙な感覚。
迎人達はかつて体験したことがあるものだった。


「兄貴!!次に会う時には・・・うまい酒でも・・飲み・ながら・・・デュエルの話を・・しよう・・」

兄を抱えた弟の目から涙がこぼれたのが分かった。
その時、2人は微かに笑っているようにも見えた。
光と一緒に2人の姿が消えた。


それと同時に十悟は力が抜けたようにその場に倒れ込んだ。
まるで糸が切れた操り人形のように。


「十悟!!しっかりしろ!!おい!」

迎人たちは必死に叫んでいる。
十悟は薄れゆく意識の中その声を聞いていた。



16章:動き出す運命の神

京都

「なるほど。デュエルは十悟君の勝ち。魔獣王の力で彼らを異世界へ導くとは、予想とは少し違いますがまあいいでしょう。」

白峰は小型の機械を見ながら言った。


「私の生徒を甘く見ていたようだな。」

「ただ、神は私の味方をしているようですね。十悟君ですが、力を使いすぎたようですね。倒れられたみたいですよ。信じがたいでしょうが、彼が倒れたことで次元のバランスが崩れている!宝生家の施した結界は異世界の精霊の力を応用したもの。弱まりつつあるようですね。」

「どういうことだ?」

「言った通りの意味です。上城兄弟との通信から得た事実!!!」

白峰はそう言いながら金庫の近くへ歩み寄った。
暗証番号をゆっくりと押していく。
1枚の白いカードを取り出した。

「何だか分かりますか?『DESTINY・CREATOR‐運命の創造者』のカードですよ。ほら、徐々にイラストが浮かび上がってきました。復活も時間の問題です。」

そのカードには白銀の鎧をつけ、それでいて禍々しい悪魔のカードが完成しようとしている。

(グフフフフ、ヨウヤク目覚メル事ガデキタワ。ワタシノ力は未ダ覚醒シテイナイ。私ハ欲シテイル。デュエリストヲ。マズハコノ男ヲ使ッテ。)


「さあ!私を異世界へを導いて下さい!!」

(シバラクハ大人シクシテイヨウカ。『ディスティニー・ブレイカー』ハアセッテ失敗シタ。)

ディスティニー・クリエイターは白峰の体に吸い込まれるように姿を消した。
黒須にもクロノスにも、もちろん白峰にも精霊は見えていない。

「うーん。おかしいですね。カードは復活したはずですが・・・・」

「ま、マサーカ、シニョール十悟の魔獣と戦わないと真に力が覚醒しないのではナイーノ?」

「クロノス先輩!!!」

「言ってしまったノーネ!!!」

クロノスは青ざめてしまった。
対称的に白峰は笑いがこみ上げてきた。
それは彼の中のディスティニー・クリエイターも同じだ。

「なるほど、納得がいきました。『運命の神』の覚醒には『魔獣』が必要。なぜなら異世界を自在に行き来できるほどの力を超えなければ神とは呼べない。」

「相馬に手出しはさせない!!」

「別に私は彼とデュエルがしたいだけですよ。彼の回復に必要ならば力を貸しましょう!」

(ソウダ。私ノ復活ノ為、利用デキルモノハ全テ利用スルノヨ。)

白峰は黒須に敵意がないことを説明し始めた。
背後からはディスティニー・クリエイターの声が聞こえてくる。
白峰にはそれに操られるように話を続けた。

「仕方ないですね・・・・・こうなれば・・・・。」


白峰は「ディスティニー・クリエイター」のカードをかざした。
一瞬の間その部屋は光にが満ちた。
白く染まったというのが正しいのかもしれない。
部屋は白峰一人が残った。

(最初カラ邪魔ナ者ハ消セバ良カッタノヨ。サア魔獣ヲ従エシ者ノ所ヘ!!)

白峰は部屋を出た。

「尾瀬呂町へ向かうとしましょうか。」

(ウフフフフフフフ。コノ者ノデッキハ少シ変更シテオコウカシラ。)

白峰の持つデッキケースのカードが数枚のイラストが変わっていく。
それは「ディスティニー・クリエイター」しか知らない事実だ。





















童実野総合病院
童実野病院が尾瀬呂病院が合併した巨大病院だ。
573号室。
十悟は個室で眠り続けている。


「あの!そろそろ面会時間は終了です。」

看護師はベットのそばに集まっている迎人たちに声をかけた。

「あら?このカードはあなた達のものかしら?」

看護師は3枚のカード拾い上げて迎人に手渡した。
「トーチ・ゴーレム」「ヘル・テンペスト」「ヘブンズ・テンペスト」の3枚だった。
この事態の引き金となったカード達だ。

「何で?こんなカード3枚で!」

「十悟はこうやって大変なこと全部自分で引き受けて、いつも心配させるんだから!!」

朝子の目から涙が流れた。



迎人は十悟のディスクにカードを戻した。
6人は病院を出た。
十悟の病室にはまだ電気がついている。












「ん?ここは・・・?」

十悟が目覚めるとそこは何もない真白な世界だ。
ただ、赤いフードを被った5人に囲まれていた。



「ふふふふ。デュエルだぁ!!!『神獣王バルバロス』召喚!!」

神獣王バルバロス、ATK→3000

「リリース無しで召喚したにも関わらず攻撃力3000なんて!」

男は無視して攻撃を続けた。

「攻撃!!」

「ぐ、ぐわぁあああ」

十悟を神獣の槍が貫いた。



「『裁きを下す者ボルテニス』召喚!!さらに『ダグラの剣』を装備!!攻撃!!」

白銀の雷が十悟を貫いた。

「ぐ、ぐわぁあああああああ」

「おジャマ専用融合魔法『おジャマキシム』発動!『おジャマ・クイーン』を融合召喚!攻撃!!」

おジャマキシマム 通常魔法
「手札またはフィールド上から、融合モンスターカードによって決められたモンスターを墓地へ送り、おジャマと名の付く融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。そのモンスターの攻撃力は守備力分アップする。」


おジャマ・クイーン、ATK→3000


おジャマの女王はその巨体で十悟を押しつぶした。

「・・・・(く、体が痛い・・・もうだめなのかな)」



「『融合』発動『サイバー・エンド・ドラゴン』を融合召喚!!攻撃!!!エターナルエヴォリューションバースト!!」


サイバーエンドの攻撃がさらに十悟に追い打ちをかける。
強烈な光線が十悟を直撃した。


十悟は心も体もボロボロだった。


「こんなことって。確かにこれは皆のカード。」


(ふふ、そうだよ。これが彼らの本性!!こうやってルールを破らなきゃ君にダメージを与えることはできないからね。でも安心して君のライフは決して尽きないよ。さあカードを引いて!君のデッキならこの状況を切りぬけられる。)


誰かの声が聞こえる。
この頼れるものもない世界で。


「『精霊樹レジェンドツリードラゴン』を召喚!!攻撃!!」


(早く!!これ以上この苦痛を受け続けたいの?)


攻撃を受けた瞬間十悟はカードを発動させた。


「速攻魔法『ヘル・テンペスト』さらに『ヘブンズ・テンペスト』発動!!」



相手のデッキが飛び散った。
ソリットビジョンだと思っていた2枚のカードから放たれた炎がカードを燃やしていく。
対象は1人のはずだと思ったが5人全員のデッキを破壊した。
5つのデッキに火が付き次々と燃え上っていく。

爆風が起こりフードが吹き飛んだ。
迎人、朝子、久美、智花、いつきの5人が姿を現した。
彼らが倒れその場所から消滅していく。

「分からないのか?・・・・大切なデッキを壊される気持が・・・」

そう言い残して消えてしまった。



「う、うわああ。どうして?いや、薄々感じていた。あれが彼らのカードだということも分かっていた。このデュエルのダメージがただの痛みではないことも。それを分かった上で彼らを・・・」



十悟は目をつぶりその場に倒れこんだ。


(アノシャベリ方ハドウモ慣レナイワネ。アト数時間クライデソチラニ着クカナ。楽シミニシテルワネ十悟クン)


そう言って「ディスティニー・クリエイター」は白峰のデッキに戻っていった。



「もう・・・消えてしまいたい・・・・この世界から・・・」

十悟は最後にそう呟いた。



17章:届かない心

次の日
十悟の病室には「面会謝絶」の札が掛けられていた。
家族だけしか会う事ができないと看護師から話があった。


「あら!朝子ちゃんじゃない。皆さんも!ごめんなさいね。十悟は今、誰とも会いたくないみたいなの。」

「今まで、仕事で全然構ってやれなかったからな。こんな時くらい、あいつの自由にさせてやろうと思ってるんだが・・・」

十悟の両親は売店の方へ歩いていった。
その背中は悲しさが滲みでていた。


「十悟のお父さんの『相馬一輝』さん、童実野裁判所の裁判官。お母さんの『相馬百恵』さん、弁護士をしてるわ。」


朝子は説明した。


「だから、十悟君は丁寧な言葉使いで成績もいいんですね。」

久美たちは何となく納得した。

「そうそう。あとお姉さんが2人。クリボーマニアの次女『相馬万桜』さん、特に『ハネクリボー』に目がない。長女の『相馬千春』さん、遊城十代のファンクラブ会員ナンバー2のつわものよ!・・・うーん、半分ストーカーね。ちなみに好きなカードは『ユベル』だったはずよ。」


売店で両親と合流した2人の女性指差しながら説明した。


「楽しそうな家族やなぁ。うち一人っ子やからうらやましいなぁ。」


一人暮らしをしている澪は家族のことを思い出しながら言った。


朝子たちは学校へ向う事にした。
その道では誰も口を開かなかった。
十悟の事を心配しているからだ。






学校の教室
午後から十悟は登校してきた。


「ごめん!午前中は検査がいろいろあったんだ。せっかく来てくれたのに!」

「いいってことよ!!よっしゃ。久々にデュエルしようぜ!!」

「それはできない!!!い、いや。デッキを置いてきちゃったんだ。病院から直接来たから。」

みんなが笑ったその中で朝子だけが、十悟の微妙な変化に気づいていた。
しかしそこでは何も言わなかった。
結局デュエルの授業中、十悟は審判だけをして過ごした。





放課後
体育館裏、ここに呼び出してすることは・・・・告白かリンチ(タイマンも?)くらいだろう。
朝子は十悟を呼び出していた。
上2つのどちらでもない用件で。


「どうしたの朝子?」

十悟は口を開いた。

「デッキ持ってるでしょ?知ってるわよ!制服の内ポケットにいつも入れてるでしょ!!」

十悟は黙った。
それなりに上手く嘘をついたつもりだった。
しかし朝子にはわかっていたのだ。


朝子は無理やり十悟のポケットからデッキを取り出した。

「E・HERO?何で?魔獣はどうしたの?」

確かにそれは「フェザーマン」や「バーストレディ」など通常モンスターが集められたデッキがあった。


「姉さんのデッキと間違えたかな。」

「嘘でしょ!!私の目を見ながら話しなよ!十悟らしくない!!」


朝子はつい大きな声を出してしまった。
しばらく沈黙が続いた。
内心、十悟は早くこの状態から抜け出したかった。




「あ、あの!十悟君、もしよかったら、これら童実野町へ遊びに行きませんか?」




後ろから声が聞こえたので2人はそちらを向いた。
智花は精一杯の勇気を出して声をかけた!!
傍から見れば空気読まない誘い方なのだろうが。


「行く!!今すぐ行こう!!」

十悟はチャンスと思い、智花の腕を引っ張って走り出した。
朝子のことを振り返らずまっすぐ学校を出た。


「バカ!!」

朝子はそうつぶやいた。
十悟のことを分かっているから、分かってしまうから。
だから辛かったに違いない。







数分後


十悟たちは電車に乗っていた。
数分もかからずに童実野町に着く。


「たまには違うデッキ使うのもいいですよね。サイバードラゴンが準制限になったじゃないですか。最近出たばかりのシンクロモンスターを使おうと思うんです。」

「そう言えば、童実野町のカード屋で『チューナー・キャンペーン』をやってるんだっけ?」

「当たりです!!レベル3以下の通常モンスターをチューナーにしてくれるんです!シンクロモンスターの普及と、昔の通常モンスターを再利用が目的らしいです。」

「そうか!『テンダネス』を!!」



テンダネス ☆3 光属性 天使族
ATK700 DEF1400
「恋人たちの永遠を祝福する、かわいらしい天使。」



姉が智花のために残したカードだ!
十悟には智花の目的が分かった。
もっとも智花は十悟を少しでも励まそうと誘い出したのだが。

「はい!!受付番号56289番です。ただいまの待ち時間は30分となっています。店内を見るなどしてお待ちください」

カード屋でしばらく時間をつぶすことにした。
キャンペーンのためか、通常モンスターの特設コーナーが設けられていた。

「し、知らなかった。こんなにカードの種類があったなんて。絶版になったカードもありますね。」

智花は無邪気にカードを見ている。
「音速ダック」、「岩石の巨兵」あたりが人気らしい。
ただ、十悟はそんなことにはあまり興味が沸かなかった。
デュエルが嫌いになったわけでもなく、できなくなったわけでもない。

十悟は店のベンチに座った。
時間はまだまだある。
キャンペーン会場は相変わらず混雑している。

「みんな自分のデッキを持ってるんだ。もし魔獣とデュエルしたら・・・・」


行きかう人々のデッキが破壊される姿が浮かんでくる。
ある者は泣き出し、ある者は苦悶の表情を浮かべ、ある者はデュエルに絶望する


(分からないのか?・・・・大切なデッキを壊される気持が・・・)


「E・HEROデッキ。十代さんに憧れて作ったデッキ!!このデッキを使えば誰も傷付かない!!」

誰も傷つかない・誰も傷つけない、僕が魔獣を使わなければ。
十悟はそう何度も心の中でつぶやいた。



18章:女の戦い!智花VS朝子

「むむむ。十悟君やっぱり元気ないですね。」

「それにしてもよく十悟達の場所が分かったな!!」

(アネゴ!!アタイらの実力分かった?ねえ褒めて!褒めて!)

久美にはモンスターの精霊が見える。
アカ、アオ、シロの不気味な3匹
おジャマの3姉妹だ。



「はいはい。ありがとね!!」

「????」

迎人は精霊が見えない。
だからこのやりとりについても分かっていない。


「で、どうする?僕らの活動に相馬と魔獣の力は必要不可欠!!」

いつき達もついてきたのだ。
朝子もいる。


「もう!我慢できない!!!十悟デュエルよ!!だいたいエクストラデッキに制限がついたE・HEROデッキなんかで勝てるわけないでしょ!!」


朝子は飛び出した。
十悟は朝子の方を向いた。
しかしそれに答えようとはしなかった。



「あ、朝子さん!!待って下さい!!誰だってデュエルしたくない日だってあります。どうしてもと言うなら私が相手をします!!私が勝ったら十悟君をそっとしておいてあげて下さい!!」

智花が一歩前に出た。
2人はしばらくその場でにらみ合った。



「私が勝ったら十悟!!アンタは誰が何と言おうと魔獣で戦うのよ!!黒須先生を助け出さなきゃいけないんだから!!」



店のそとで2人はデュエルディスクを構えた。

「デュエル!!!」


反町朝子LP:8000
木村智花LP:8000




「私のターン。手札のカウンター罠『盗賊の七つ道具』を墓地に捨てて『カウンター・ドラゴン』を攻撃表示で召喚!!カードを2枚伏せてターンエンド!!エンドフェイズ墓地の『盗賊の七つ道具』をセット!!ターンエンド!!」





カウンター・ドラゴン ☆5 光属性 ドラゴン族
ATK2000 DEF100
「手札からカウンター罠1枚を墓地に送ることで、このカードは特殊召喚できる。自分のターンのエンドフェイズに墓地のカウンター罠1枚をセットすることができる。」



盗賊の七つ道具 カウンター罠
「1000ライフポイントを失う。罠カードの発動を無効にし、それを破壊する。発動後、このカードを破壊する。」



白銀に光り棘の生えた竜。
リバースカードが3枚伏せられた鉄壁の布陣と言ったところだろうか。



「何でこんな事になってんだかな。」

「女の戦いってやつか!カード・スイーパーではこんなデュエルは見たことないな。」

いつきはやれやれと言った気持ちと、このデュエルの決着にワクワクする不思議な気分なだった。


「一見の価値ありですね。賭かってるものが大きいですから。」

「ああ。ウチにもなんとなく分かったわ。ズバリ!!勝った方が十悟君を貰うということなんやろ!!ねえ久美ちゃん!!」

「あったり!!」

久美と澪は顔を見合せて笑った。





















京都、カード・スイーパーズ本部


「ア、 アンビリーバボー。2人が消えた。ディスクに付けた反応は?」

「ERRORになってます。ディスク自体がこの世界に存在してない事に・・・・」

京都に到着したペガサスを待っていたのはクロノスと黒須が消えたという報告だった。
メンバーからの報告では神狩りの使徒のアジトへ入るまでは確かに反応はあったという。


「彼らを呼ぶことにシマショウ。先生を助けるためには協力してくれるデショウ。」

「分かりました。すぐに手配を!!」


ペガサスの側近は部屋を飛び出した。


「事態は良くない方向へ向かいつつありマース。やはり早急に完成させる必要があるようデース。・・・・新たな魔獣カードを・・・問題は十悟ボーイにそれを操る力があるかどうか・・・。」


ペガサスはデザイン用の機械を取り出した。
すでに着色の段階まで来ているようだ。
確かに画面には見た事もないモンスターが映っていた。



19章:カウンターデッキの脅威

「私のターンですね。ドロー(1枚は罠を無効化する罠。罠はセットしたターンに発動できないから、気にすべきは残りの2枚ですね。)『サイバー・タートル』を守備表示で特殊召喚!!さらに効果発動!その効果で『サイバー・スネーク』を手札に加えます。」



サイバー・タートル  ☆4 水属性 機械族
ATK800 DEF2100
「相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在していない場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。このカードがこの効果で特殊召喚に成功した時、デッキから『サイバー・スネーク』を手札に加える。」



智花は次の戦略について考えを巡らせていた。
壁モンスターにカウンターを使うはずは無いとふんでいたからだ。


「次は『パワーボンド』だったかしら?」

朝子は軽く智花を挑発しながら言った。
智花はそれを気にせずこう言った。

「今までの私のデッキでしたらね。行きます!手札から『地砕き』発動!」

「手札を1枚捨てて、カウンター罠『マジック・ジャマ−』発動!『地砕き』は無効よ!先に別の魔法を発動させるべきだったんじゃない?」



地砕き 通常魔法
「相手フィールド上の守備力が一番高い表側表示モンスター1体を破壊する。」



マジック・ジャマー カウンター罠
「手札を1枚捨てる。魔法カードの発動を無効にし、それを破壊する。発動後、このカードを破壊する。」



智花は笑った。

「ふふ。多分そう来ると思ってました!『ヴァンダルギオン』は手札にないんですね。さらに『サイバネティック・シンクロ・サポート』をライフ2000を支払って発動!!」


反町朝子LP:8000
木村智花LP:8000→6000



サイバネティック・シンクロ・サポート 通常魔法
「フィールド上に『サイバネテック・チューナー・トークン』(光、機械、攻/守0、チューナー)を特殊召喚する。このトークンのレベルは1から7までとすることができる。特殊召喚時決定したレベル×1000ポイントライフを支払う」


円柱の形をした小型マシーンが智花のフィールドに現れる。
そのボディーには星が7つ描かれていて、そのうち2つが点灯した。


「4つ星『サイバー・タートル』にこのトークンをチューニングします!!6つ星『氷結界の龍 ブリューナク』をシンクロ召喚!!!」


機械同士のシンクロ召喚!
合体といった方が正しい。

機械のボディーが冷気で凍り始める。
やがてそれは水のように透き通る海竜へと姿を変えた。



氷結界の龍 ブリューナク ☆6 水属性 海竜族
ATK2300 DEF1400
「チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
自分の手札を任意の枚数墓地に捨てて発動する。その後、フィールド上に存在するカードを、墓地に送った枚数分だけ持ち主の手札に戻す。」



「この時を待ってたわ!罠発動『昇天の黒角笛』これでシンクロ召喚も無効!」

朝子は待ってたとばかりにカードを発動した。
黒き笛から発せられる音波で、海竜が砕け散った。



昇天の黒角笛 カウンター罠
「相手モンスター1体の特殊召喚を無効にし、それを破壊する。」



「まだです!!『サイバー・ドラゴン』を特殊召喚!!バトル!エボリューションバースト!!!」

機械龍の口から強力な光線が放たれる!!
朝子は罠を発動させる様子はない!!
白銀の龍は砕け散った。

反町朝子LP:8000→7900
木村智花LP:6000


「す、すげー!朝子のカウンターをすべてかわしきった。」

「でも朝子のカウンターデッキはこんなもんじゃない!」

久美はつぶやいた。
十悟はデュエルを見ているようだが、まだ何か思いつめた顔をしている。

「カードを1枚伏せてターンエンドです。」


「私のターン。ドロー。魔法カード『反逆者の宝札』このカードはセットされた罠カードを墓地に送ることでカードを2枚ドローできる。」



反逆者の宝札 通常魔法
「自分のフィールドにセットされているカウンター罠を墓地に送る。デッキからカードを2枚ドローできる。」



朝子は勢いよくカードを2枚ドローした。
それを確認するとそのうち1枚を発動させた。

「『トリプル・カウンター』発動!!カウンター罠を3枚セットよ!!さらに『智天使ハーヴェスト』召喚!!ターンエンド!」



智天使ハーヴェスト ☆4 光属性 天使族
ATK1800 DEF1000
「このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地に存在するカウンター罠1枚を手札に加える事ができる。」



トリプル・カウンター 通常魔法
「デッキからカウンター罠を3枚までセットすることができる。セットされたカードを墓地に送ることで、次のターンのスタンバイフェイズに送った枚数分ドローすることができる。」



「私のターンですね。ドロー。(く、またカウンター罠!どこまで私の邪魔をするっていうの?でも絶対に負けない!)魔法カード『くず鉄の押し売り』サイドラのコントロールを相手に移します。そして移したモンスターの攻撃力1000ポイントにつき1枚ドローです。」


朝子はカウンター罠の発動タイミングを計っているようだ。
ここでは発動しないらしい。



くず鉄の押し売り 通常魔法
「機械族モンスター1体のコントロールを相手に移す。移したモンスターの攻撃力1000ポイントにつき1枚ドローする。」


朝子のフィールドに機械龍が移って、智花の方を向いた。
智花はカードを2枚ドローする。


「『サイバー・スネーク』を攻撃表示で召喚!」



「さらに『サイクロン』を発動!破壊するのは真ん中のカードです!」


破壊されたのは『攻撃の無力化』だった。
朝子はそれを墓地に置いた。


「さらに『ファイヤー・ブレイズ』発動!左のカードを破壊です!」


ファイヤー・ブレイズ 速攻魔法
「魔法または罠1枚を破壊する。1000ポイントライフを失う。」



反町朝子LP:7700
木村智花LP:6000→5000


今度は『神の宣告』だ。
カードが破壊され墓地に送られた。


「行きます!『DNA改造手術』発動!」

「(そうか!キメラティック・フォートレスね。)させない!『魔宮の賄賂』発動!」



魔宮の賄賂 カウンター罠
「相手の魔法・罠カードの発動と効果を無効にし、そのカードを破壊する。相手はデッキからカードを1枚ドローする。」



朝子はハーヴェストまで機械にされて召喚されては困ると考えたのだ。
無効化された代わりに智花はカードを1枚ドローした。



「『キメラテック・フォートレス・ドラゴン』を特殊召喚します!バトル!!エヴォリューション・リザルト・アーチャリー!!」

サイバー・ドラゴンとサイバー・スネークが分解して再構築されて、キメラテック・フォートレス・ドラゴンになった。
蛇のようなその機械龍の口から破壊光線が天使を破壊した。



キメラテック・フォートレス・ドラゴン ☆8 闇属性 機械族
ATK0 DEF0
「サイバー・ドラゴン」+機械族モンスター1体以上
このカードは融合素材モンスターとして使用する事はできない。フィールド上に存在する上記カードを墓地に送った場合のみ、融合デッキから特殊召喚が可能(「融合」魔法カードは必要としない)。このカードの元々の攻撃力は、融合素材にしたモンスターの数×1000ポイントの数値になる。


ATK→2000



反町朝子LP:7900→7700
木村智花LP:6000

「ターンエンドです!」


「私のターン。ドロー。『冥界天使−ゾグラーヴ』を墓地の『神の宣告』を除外して特殊召喚!!」



冥界天使−ゾグラーヴ ☆5 闇属性 天使族
ATK? DEF0
「このカードは墓地のカウンター罠を墓地から1枚除外することで生け贄なしで召喚できる。このカードの攻撃力は墓地のカウンター罠の数×1000となる。」



ATK?→4000


「ゾグラーヴでフォートレスを攻撃!暗黒冥光弾!!!」


巨大な漆黒の光弾が機械龍を押しつぶした。
その衝撃が智花にも及んだ。
智花は膝をついた。


反町朝子LP:7700
木村智花LP:6000→4000


「いい!!私は十悟に勝つ方法を長年考えてきた。そしてたどり着いたのがこのデッキよ!もしアンタが魔獣を使って間違った道に進むなら、私はそれを止める!!そのために作ったデッキ!だから、自分の思った通りにデッキ破壊で戦えばいい!!」

朝子は十悟を指さして言った。

「・・・・」
「まだ何か悩んでるの?まったく!カードを1枚伏せてターンエンドよ!!」



20章:奇跡を呼ぶチューナー『テンダネス』

朝子と漆黒の天使が智花をみおろしている。





「まだデュエルは終わってませんよ!!十悟君の気持ちも考えないで勝手なことを言わないで下さい!ドロー。」

(智花!あなたに託した力、ここで引き当てるなんてさすが私の妹!頑張って。)

かすかにそう聞こえた。
智花が振り返ると姉の姿が見える。
それがスッと姿を消した。
カードを確認する。



テンダネス ☆3 光属性 天使族 チューナー
ATK700 DEF1400
「恋人たちの永遠を祝福する、かわいらしい天使。」


※デスティニークリエイター特別仕様です。実際は存在しないので悪しからず



丸くてピンクの体
水色の羽根にエメラルドグリーンに光る瞳
テキスト通りのかわいらしい天使だ。



「(大丈夫!お姉ちゃんがついていてくれる!)私は負けを恐れたりしない!『精神操作』発動!!」



精神操作 通常魔法
「エンドフェイズ時まで相手フィールド上モンスター1体のコントロールを得る。このモンスターは攻撃宣言する事ができず、生け贄にする事もできない。」



「『魔宮の賄賂』発動!それは無効よ!!」

「それなら、その効果でドロー。よし、『貪欲な壺』発動!『サイバー・タートル』『サイバー・スネーク』『サイバー・ドラゴン』『氷結界の龍 ブリューナク』『キメラテック・フォートレス・ドラゴン』を選択!カード2枚をドローです!!」



3枚をデッキに!
2枚をエクストラデッキに戻した。

「(テンダネスを活かせるカード!来て!!!)やった!『サイバー・ドラゴン』を特殊召喚!!そして『テンダネス』召喚!!受け継ぎしカードが今、奇跡を起こす!!『サイバー・ドラゴン』に『テンダネス』をチューニング!!召喚するのは・・・・」


(智花、あなたには力が必要!彼のためにも!そして、世界のためにも!戦いが終わるまで・・・あなたに預けるわ。伝説の龍たちを!)


智花には姉の声が聞こえた!!
エクストラデッキをもう一度確認する。

「(え?こ、これは・・・)行きます!!召喚するのは『スターダスト・ドラゴン』です!!」



スターダスト・ドラゴン ☆8 風属性 ドラゴン族
ATK2500 DEF2000
「チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
『フィールド上のカードを破壊する効果』を持つ魔法・罠・効果モンスターの効果が発動した時、このカードをリリースする事でその発動を無効にし破壊する。この効果を適用したターンのエンドフェイズ時、この効果を発動するためにリリースされ墓地に存在するこのカードを、自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。」



大いなる風に導かれしそのモンスターは翼を広げ飛び立った。
輝く龍。その光は星!
永劫輝き続ける星屑の龍が智花のフィールドにで漆黒の天使と向かい合う。


「綺麗な龍やなぁ。智花さんあんなカードも持ってたん?」

「あれは確か相当なレアカードのはず!カードスイーパーズでもあんなカードは見たことない。なぜ彼女が?」


みんな驚きを隠せない。
確かに彼女のデッキは変わった。
それが何を意味するのか?
何のためにそうなったのかまだ智花ですら分からない状況だ。


「でもまだゾグラーヴの方が攻撃力が高い!!」

「魔法カード『エクストラ・フォース』発動!!エクストラデッキからランダムにカードを墓地に送り、その攻撃力の分モンスターがパワーアップします。」



エクストラ・フォース 通常魔法
「フィールドのモンスター1体を選択して発動する。エクストラデッキからランダムにカードを墓地に送る。そのカードの種類(融合・シンクロ)が選択したモンスターと同じ場合、このターンのみ墓地に送ったモンスターの攻撃力分、選択したモンスターの攻撃力を上げる。」



「選択したのは・・・攻撃力3000の『レッド・デーモンズ・ドラゴン』闇の炎が輝く風に合わさる時、その攻撃力は5500!!バトルです!!シューティング・ソニック!!」


光り輝くブレスが放たれる。
漆黒の天使を消し去った!!


反町朝子LP:7700→6200
木村智花LP:4000


「これで逆転ですね!!私はターンエンドです。」



今度は一転、朝子が追い込まれた。

「私にターン。ドロー。(『キックバック』かダメだ)カードを1枚伏せてターンエンドよ!!」

「私のターンですね。ドロー。モンスターが召喚できてしまえば怖くないです。装備魔法『早すぎた埋葬』を発動、舞い戻って『サイバー・ドラゴン』」



早すぎた埋葬 装備魔法
「800ライフポイントを払う。自分の墓地からモンスターカードを1体選んで攻撃表示でフィールド上に出し、このカードを装備する。このカードが破壊された時、装備モンスターを破壊する。」



反町朝子LP:6200
木村智花LP:4000→3200


機械龍が智花のフィールドに現れる。
2体のモンスターが朝子を威圧し続ける。


「バトル!!シューティング・ソニック!!!エボリューション・バースト!!!」

2体のモンスターの攻撃が朝子を吹き飛ばした。

反町朝子LP:6200→1600
木村智花LP:3200


「(負ける!負ける!負ける!負ける!負ける!負ける!どうして?彼女が強かった。ううん、それもあるけど何か違う。多分敗因はそれだ!それは分からない。)私のターン。ドロー。(裁きを下す者―ボルテニス、出せない。)ターンエンドよ。」


(先に言っておくがサレンダーはしない!!遠慮は無用だ!攻撃してこい!!)

朝子は伊東淳也の言葉を思い出していた。
大切なものをかけた最終局面!
今、彼がいたら、答えを教えてくれる。
そんな気がしていた。


「私のターンです。ドロー。私の勝ちですね。バトル!!シューティング・ソニック!!」

白銀のブレスが朝子を貫く
攻撃の跡が星屑のようにキラキラと光った。
朝子は膝をついた。


反町朝子LP:1600→0


「朝子さん、ありがとう!『デュエルをすれば相手の考えてることが分かる』とは上手いこと言った人もいたものですね。あなたが十悟君を大切に思っていることは分かりました。私たちの利害は相反するようで実は同じ。十悟君に元気になってもらうことです。」

智花が手を出す。
それに朝子が応える。

「確かにそうだったわね。何を熱くなってたのかな。でも次は負けないわよ。デュエルも恋もね!!」


朝子はニッコリ笑った。

その瞬間、店内に大きな拍手が起きた。
忘れていたかもしれないが、カード屋の中でデュエルしていたのだ。



7人はそろって店をでた。
童実野公園までやってきた。

「ねえみんな!!僕はこれからも魔獣で戦ってもいいのかな?正直に言って欲しい。大切なカードを破壊し続ける戦術を憎んではいない?」

今までずっと黙っていた十悟が切り出した。

「いいに決まってるだろ!!だいたい、十悟がデッキ破壊を使ってなきゃ今頃俺達は異世界でどうなってたか分からねえ。」

「そうですよ!それに十悟君のデッキ破壊は、相手のカードを踏みにじるようなデッキ破壊とは違う。相手をリスペクトしたデッキ破壊?矛盾してるようだけど、そんな感じです。」

迎人と久美はそう答えた。



「アンタが間違った道に進もうとした時は、私と智花で全力で連れ戻すから安心しなよ!!」

朝子もそう言った。


「みんな!!ありがとう!僕はいい仲間を持った気がするよ!!」

十悟にも笑顔が戻った。

(ツマラナイ。セッカク、面白イ事ニナルト思ッタノニ。)


その瞬間、上空に大きな音が聞こえた。
ヘリからペガサスが降り立つ。

「オー、探しマシタヨ。今すぐ京都に向かいマショウ。」

十悟たちを乗せてすぐにヘリは飛び立った。



「十悟ボーイ、このカードを!!」

ペガサスは5枚のカードを差し出した。
十悟はそれを受け取った。

「これは?新たな魔獣モンスター!」

「プレゼントデース。」

ペガサスは笑顔で言った。
その後、真面目な顔をしてこう言った。

「私にできるのはここまでなのデス。2人を取り戻してくだサーイ!!」



21章:決戦の地へ

「ペガサス会長!!白峰神斗というデュエリストを倒せば先生たちは帰ってくるのですね?」

十悟は思い切って聞いてみた。
みんなの視線がペガサスに集まる。

「イエース。正確には彼の持つ『ディスティニー・クリエイター』のカードなのデスガ。」

ペガサスはすかさずそう答えた。

「ペガサス会長!!こちらをご覧下さい!!」

黒服の男は言った。
ペガサスはパソコンの画面に目をやる。
どうやらメールのようだ。





彼とのデュエルを要求する!!
二人の命と引き換えに!!
「命運寺」の葬祭殿で今夜12時に待つ!





それは確かに白峰からのものだった。
そこから居場所を探ろうと思ったがダメだったらしい。


「と、ところで私たち今夜どこに泊まればいいのでしょう?」

「あああ!!」


智花が大変なことを思い出した。

「ノープロブレム!!彼女の家に連絡をしてありマース」

そいってペガサスは澪を指さした。
澪は一瞬、ポカーンとしていたが、周りの景色を見渡していった。

「あ、ここは裏山やったんやね。」

やがてヘリは森の中に着陸した。


「みんな!ちょっと歩くけどついてきてや!」

澪が先頭に立って歩き出した。
ペガサス達はヘリで別の宿に向かった。
あとで合流すると約束して。

十悟たち7人は山道をひたすら下っていく。
結構歩いただろうか?
そこには荘厳な木造建築が昔のまま残されている。



「ここや、ここ!!」

澪の指すさきには確かに「命運寺」とある。


「え、命運寺って澪さんの実家なのですか?」


智花だけでは無く皆驚いている。
決戦の地が澪の実家だとは誰も考えていなかった。


「お父様!お母様!ただいま!!」

澪は元気に叫んだ。

「・・・・」

「どうしたんやろ?誰もいないなぁ。」

澪は襖を1つずつ開けていった。
人がいる気配はない。

「あとはウチの部屋やけど・・・・」

澪は自分の部屋へ真先に入った。
変わった様子や、置き手紙でも無いかと探し始めた。
澪を見ていれば何もないことが十悟たちも伝わってくる。


「ねえ!僕は葬祭殿に行ってみてはどうかと思うんだ!これはあくまで僕の推測だけど、これはすべて罠!!すでにこの寺は彼の手に落ちていると考えてはどうかな?」


(アネゴ!!久美のアネゴ!!十悟のダンナが言ってるのは間違いじゃないのよぅ。嫌な気配がするの。)

久美のデッキから赤いモンスターが現れている。

「(で、行っても大丈夫なの?)」

久美は小さな声で聞いた。

(それは分からないわ。アタイ達ノーマルモンスターだから!そういうサーチ効果とかレイダー効果とか持ってないのよぉ。)



「とにかく、行ってみればいいじゃねえか!絶対何かあるって。十悟のそういうカン外れたことないし!!」

迎人がそういうと、みんなそろって澪の部屋を出た。

「確か別館にあるんよ!!」


渡り廊下を進むと豪華絢爛な飾りが並んでいる。
仁王像やら、地蔵やらが整然と並べられている。
十悟と迎人が大きな引き戸を開けた。


中は真っ暗だ!!
その瞬間!
入口のほうからロウソクに火が灯り、それが奥の方へと広がっていく。


「ようこそ決戦の地へ!」


白峰神斗がそこには立っていた。
後ろに不気味なオーラを漂わせながら!



「さて、少々早くおいで願ったのは十悟君の魔獣以外にも不確定要素がいくつかあることが分かりましてね!澪さんの宝玉獣と智花さんのドラゴン!それを圧倒的な力で抑え込まないといけないのですよ!召喚!『右仁坊・ダン』『左義坊・ジン』!!」

白峰はカードを2枚取り出した。
次の瞬間、和服を身にまとった男が2人現れた。
顔は人間のように整っている。
ただ、それは人間では無く精霊であると分かる。
右の男は赤い帯、左は青の帯だ。


「さて!デュエルしていただきましょうか?ただとは言いません!勝ったら2人を解放しますよ。ふふふ。」


「それに嘘は無いと誓えますか?」

智花はそう問いただした。
白峰は黙って頷いた。

「分かった!ウチも戦う!(頼むでみんなで今度こそ勝つでぇ!!)」

澪の周りに宝玉獣が集まっている。


「クク。素晴らしい!魔獣さえあれば私の目的は達せますが・・・」



宝生澪LP:8000
右仁坊・ダンLP:8000


「デュエル!!!」

「ウチからいくでぇ!!ドロー。『宝玉獣 ジェード・ラビット』を召喚!デッキから『宝玉の解放』を手札に加える。ジェード・ラビットに装備や!」


(ありがとう澪!力がみなぎってくるよ!)

そのウサギは、澪にお礼を言って敵を睨みつけた!!



宝玉獣 ジェード・ラビット ☆2 地属性 獣族
ATK1000 DEF600
「このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから『宝玉の』と名のつくカード1枚を手札に加える。このカードがモンスターカードゾーン上で破壊された場合、墓地へ送らずに永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。」



宝玉の解放 装備魔法
「「宝玉獣」と名のついたモンスターのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力は800ポイントアップする。このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、デッキから「宝玉獣」と名のついたモンスター1体を永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。」


ATK1000→1800


「カードを1枚セットしてターンエンドや!」



「我がターン。ドロー。手札からフィールド魔法『歯車街』発動!この効果で『古代の機械獣』をリリース無しで召喚!」


男は無機質な物の言い方でカードを発動した。
和風の建物から一転、そこはすべてが機械が支配した町へと変わった。
そこに巨大な機械の獣が現れた。


古代の機械獣 ☆6 地属性 機械族
ATK2000 DEF2000
「このカードは特殊召喚できない。このカードが戦闘によって破壊した相手効果モンスターの効果は無効化される。このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。」



歯車街 フィールド魔法
「『アンティーク・ギア』と名のついたモンスターを召喚する場合に必要なリリースを1体分少なくする事ができる。このカードが破壊され墓地に送られた時、自分の手札・デッキ・墓地から『アンティーク・ギア』と名のついたモンスター1体を特殊召喚する事ができる。」



「バトル!!プレシャス・ファング!!」

機械の獣は本能のまま噛みついた。



宝生澪LP:8000→7800
右仁坊・ダンLP:8000


「宝玉獣の効果は無効!フィールドには残らない!」

「宝玉の解放で『宝玉獣 トルマリン・ドッグ』を魔法・罠ゾーンへ!」

黄色に輝く宝玉が澪のフィールドに置かれた。
その美しさに誰もが心を奪われる!



「カードを1枚伏せてターンエンド!」

「待った!『宝玉の祈り』発動や!!破壊するのは『古代の機械獣』、ウチだってやればできるんや!!」



宝玉の祈り 通常罠
「分の魔法&罠カードゾーンに存在する「宝玉獣」と名のついたカード1枚を墓地へ送る事で発動する事ができる。相手フィールド上のカード1枚を破壊する。」



黄色い宝玉が力を解放し、機械の獣を粉砕した。
澪はニッコリ笑って仲間の方を見た。



22章:古代の機械(アンティークギア)フルスロットル!

「ウチのターン。ドロー。手札から『宝玉獣 ダイヤモンド・ライオン』召喚!任せたでぇ!!」

(ワハハッハハハ!やはり俺様が出なくてはな!宝玉獣最強たるこの俺が!!)



宝玉獣 ダイヤモンド・ライオン ☆4 光属性 獣族
ATK1600 DEF1100
「自分の魔法、罠ゾーンの宝玉獣1体につき攻撃力が400ポイントアップする。このカードがモンスターカードゾーン上で破壊された場合、墓地へ送らずに永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。」



「まだや!『宝玉の恵み』対象は墓地のトルマリン・ドッグとジェード・ラビット!!彼らの魂はダイヤモンド・ライオンに力を与える!!」


ATK1600→2400


「バトルや!!いっけぇ!ダイヤモンドファング!!!」


その純白のライオンは相手に牙を立てた。
ダイヤモンドでできた強靭で噛みついた。

宝生澪LP:7800
右仁坊・ダンLP:8000→5600


「手札を1枚捨てて罠発動『ダメージ・コンデンサー』特殊召喚するのは『古代の機械騎士』だ。」



古代の機械騎士 ☆4 地属性 機械族
ATK1800 DEF500
「このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、通常モンスターとして扱う。フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。●このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。」



ダメージ・コンデンサー 通常罠
「自分が戦闘ダメージを受けた時、手札を1枚捨てて発動する事ができる。その時に受けたダメージの数値以下の攻撃力を持つモンスター1体をデッキから攻撃表示で特殊召喚する。」



ランスを構えた機械が動き出した。
そのボディからは想像できない俊敏な動きをする。



「あれは僕の戦場花と同じデュアルモンスター!古代の機械シリーズは、その強力な効果ゆえ特殊召喚できないデメリットがある。だがあの能力ならアタッカーとして十分!さすが伝説のデュエリストたちの教師のデッキといったところか!」

いつきはそう呟いた。
十悟たちもそう思ったに違いない。


「ターンエンド。(攻撃力は十分なはず!)」


「我がターン。ドロー。『古代の機械騎士』をリリースし『古代の機械巨人』をアドバンス召喚だ!!」

歯車と歯車が噛み合い巨大な機械が動き出す。
その機械はゆっくりと白きライオンの方を向いた。


「ありゃマズイぜ!十悟!」

「『古代の機械巨人』、確かクロノス・デ・メディチの持つレアカード!恐らく1枚じゃない!」



古代の機械巨人 ☆8 地属性 機械族
ATK3000 DEF3000
「このカードは特殊召喚できない。このカードが守備表示のモンスターを攻撃した時、このカードの攻撃力が守備表示モンスターの守備力を越えていれば、その数値分だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。」



「その通り!ではバトル!アルティメット・パウンド!!!」

機械で出来た巨人は腰を回転させた。
その力をそのまま拳に乗せたパンチを白きライオンにぶつけた!


(く、宝玉獣最強たるこの俺が・・・・)


フィールドに無色透明の宝玉が残される。
宝玉はこれで3つになった。


「ターンエンド!」



「う、ウチのターン。ドロー。(マズイなぁ。)『宝玉獣ペリドット・スワロー』を場に出してターンエンドや!」


澪のフィールドには燕が1羽と宝玉が3つあるだけだ。


「我がターン。ドロー。手札から『古代の廃棄物』発動!墓地の『古代の機械』と名のつくカードを3枚までフィールドに召喚条件を無視して特殊召喚!対象は『古代の機械獣』、『古代の機械騎士』、コストとして墓地に送った『古代の歯車』だ!攻撃力は0になる!だがこれで『魔法の歯車』の発動条件が揃った!!今ここに3体の『古代の機械巨人』を召喚する!!」


古代の廃棄物 通常魔法
「墓地の『古代の機械』と名のつくカードを3枚までフィールドに召喚条件を無視して特殊召喚することができる。攻撃力、守備力は0となる。」



魔法の歯車 通常魔法
「自分フィールド上に表側表示で存在する「アンティーク・ギア」と名のついたカード3枚を墓地へ送って発動する。自分の手札及びデッキからそれぞれ「古代の機械巨人」1体を召喚条件を無視して特殊召喚する事ができる。その後、自分フィールド上に存在する「古代の機械巨人」以外のモンスターを全て破壊する。発動後、自分のターンで数えて2ターンの間、自分は通常召喚できない。」



その重厚なボディに圧倒的威圧感!
伝説のレアカードと呼ぶにふさわしい。
それぞれが澪の方に向かってゆっくりと動き出している。


「総攻撃だ!!アルティメット・パウンド!三連撃!!」


巨人のパンチが3つ同時に澪を襲う!!

(澪!!絶対に諦めないのよ!!)


燕はそう言って機械の巨人に向かっていく。
そのスピードをだんだんと増していった。

「跳ね返して!ペリドットカウンター!!!」


爆発とともにフィールドを粉塵が包んだ!!


「澪!!!」

みんなが同時に叫んだ!!
それと同時に粉塵がはれていく。


宝生澪LP:7800→1800
右仁坊・ダンLP:5600→3100


和服に身を包んだそのモンスターは膝をついた。
澪は倒れてその場を動かない・・・。


「さすがは世界で1枚の宝玉獣!こんな効果を持っていたとは・・・。油断したな。瞬殺は免れたようだが、もう立てないだろう。我の勝ちだ!!」








真っ暗な中に澪はいる。
周りには何も見えない。
「ウチ、まだまだ弱いなぁ!あと少し力があったら・・・」



23章:虹纏う不死鳥!

(あなたに力は備わっている!!それではあなたに問いましょう!なぜ力を欲するのか?)

優しい女性の声が聞こえてくる。
目をあけるとそこには澪そっくりな女性が立っている。
少し大人びた雰囲気だ。

「あなた・・・ウチに似ている。力は備わっているっていったい?」

(いいから答えるのです。選択次第で、あなたと仲間たちの運命が変わります)


澪には何を言っているのか分からなかったが考えを巡らせた。
結論は来る前から出ていた。


「ウチにデュエルを教えてくれた黒須先生を助けたいんや!他にいくつも理由はある!でも今はそれができない自分が情けなくて仕方無い・・・。」

(悪くない答えです!ある方からの預かりものです。さあ、準備は整いました。あとはあなた次第ですよ。)


澪は静かに立ち上がった。


「まだ立ち上がるか!いいでしょう。そのライフが尽きるまで!」

男は言った。
宝玉獣使いがこんなことで負けるとは思わなかったのだろうか。


「ウチのターン。ドロー。(これが預かりもの・・・みんなの友達?)ウチに力を貸して!!『宝玉獣 サファイア・ペガサス』モンスター効果発動!『宝玉獣 コバルト・イーグル』を魔法・罠ゾーンに置く。」



宝玉獣 サファイア・ペガサス ☆4 風属性 獣族
ATK1800 DEF1200
「このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、自分の手札・デッキ・墓地から『宝玉獣』と名のついたモンスター1体を永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。このカードがモンスターカードゾーン上で破壊された場合、墓地へ送らずに永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。」



宝玉獣 コバルト・イーグル ☆4 風属性 鳥獣族
ATK1400 DEF800
「自分フィールド上に表側表示で存在する『宝玉獣』と名のついたカード1枚をデッキの一番上に戻す事ができる。この効果は1ターンに1度しか使用できない。このカードがモンスターカードゾーン上で破壊された場合、墓地へ送らずに永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。」



これで宝玉は5つ!
サファイア・ペガサスの後ろには宝玉が輝いている。
客観的にみると、魔法・罠ゾーンが埋まってしまった状況だ。


(私が皆を代表してあいさつをしよう。次元の混乱を招く『運命の神』復活阻止のために力を貸す。それが我々の役目だ。)

白き天馬は澪に丁寧な言葉で話した。


「ありがとうな!ウチ絶対勝つわ!今こそ手札からフィールド魔法『虹架かる古都―ジョウト』発動!」


機械で出来た街が崩れ始めた。
周りには五重の塔や日本らしい神社が現れる。




虹架かる古都―ジョウト フィールド魔法
「このカードはルール上『虹の古代都市−レインボー・ルイン』として扱う。●1ターンに1度、フィールド上にある『宝玉獣』と名のつくカード1枚をリリースすることで墓地から『宝玉の』と名のつくカードを手札に加える。●1ターンに1度、手札の『宝玉の』と名のつくカードを墓地に送ることでデッキから『宝玉獣』と名のつくカードを特殊召喚することができる。●魔法・罠ゾーンに『宝玉獣』と名のつくカードが5枚ある時、『究極宝玉神』と名のつくカードをデッキから手札に加えることができる。●『究極宝玉神』と名のつくカードを手札から墓地に送ることでデッキから『宝玉獣』と名のつくカードを5枚まで墓地に送ることができる。」



「歯車街の効果発動!デッキから『古代の機械巨竜』を特殊召喚する。ふふ、さらに敗北へと近づいたようだな。」



崩れたパーツが自動的に組み上がっていく。
徐々に機械の龍が姿を現してその羽を羽ばたかせた。
場には巨人3体。
空には機械の龍が澪を狙っている。



古代の機械巨竜 ☆8 地属性 機械族
ATK3000 DEF2000
「このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。以下のモンスターを生け贄にして生け贄召喚した場合、このカードはそれぞれの効果を得る。●グリーン・ガジェット:このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。●レッド・ガジェット:相手プレイヤーに戦闘ダメージを与えた時、相手ライフに400ポイントダメージを与える。●イエロー・ガジェット:戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、相手ライフに600ポイントダメージを与える。」



「フィールド魔法、第3の効果発動や!!デッキから『究極宝玉神 レインボー・ドラゴン』と『究極宝玉神 レインボー・フェニックス』を手札に加える。」


「そ、そのために魔法、罠ゾーンをすべて封鎖するリスクを負ってまで・・・むむむ、さすがは宝玉獣使いというわけか。」


「まだまだよ!フィールド魔法、第4の効果手札の『究極宝玉神 レインボー・ドラゴン』を墓地に送ることでデッキから『宝玉獣 アメジスト・キャット』『宝玉獣 エメラルド・タートル』『宝玉獣 トパーズ・タイガー』『宝玉獣 アンバー・マンモス』『宝玉獣 パール・イエティ』を墓地に送る。」


澪はデッキからモンスターを墓地に送った。
彼女はあのカードに手を掛けた。

その時は来た。
この状況、覆すならこのカードしかない。

「フィールド及び墓地の宝玉獣は11体。出でよ『究極宝玉神 レインボー・フェニックス』その効果は次のターンからでなければ使えない!!それでも攻撃はできるんよ!!フレイミング・ザ・レインボー!!!」


翼に宝玉を埋め込んだ美しき不死鳥。
かつて武藤遊戯の所有している「ラーの翼神竜」を彷彿とさせる威圧感がある。
嘴はダイヤモンドでできている。

その体を光り輝く炎が包み込む。
光り輝く不死鳥は飛翔し、機械の巨龍を粉砕した。


宝生澪LP:1800
右仁坊・ダンLP:3100→2100



究極宝玉神 レインボー・フェニックス ☆10 光属性 鳥獣族
ATK4000 DEF0
「このカードは通常召喚できない。自分フィールド上及び墓地に「宝玉獣」と名のついたカードが合計7種類以上存在する場合のみ特殊召喚する事ができる。このカードが特殊召喚されたターンには以下の効果を発動できない。 ???」



「まだや!フィールド魔法、第1の効果、サファイア・ペガサスをリリースして墓地の『宝玉の解放』を手札に加える。さらに第2の効果、今手札に加えた『宝玉の解放』を再び墓地へ!デッキから『宝玉獣 オブシディアン・フォックス』を特殊召喚!」


(待ちわびたぜ!マスターさんよぉ)


「ごめんなぁ!でも頼りにしてるんよ!!」

澪はモンスターに呼び掛けた。



宝玉獣 オブシディアン・フォックス ☆4 闇属性 獣族
ATK1300 DEF1500
「相手バトルフェイズ時に表側攻撃表示のこのカードをゲームから除外することで相手バトルフェイズを終了する。自分のメインフェイズ時に除外されたこのカードを魔法・罠ゾーンに置くことができる。このカードがモンスターカードゾーン上で破壊された場合、墓地へ送らずに永続魔法カード扱いとして自分の魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。」



「ターンエンドや!」


「我がターンドロー。これで勝ったと思ったら大間違いだぞ。手札から『セイム・フュージョン』を発動!フィールドのモンスター3体を融合して『古代の機械究極巨人』を特殊召喚!!」



セイム・フュージョン 通常魔法
「融合モンスターカードによって決められたモンスターを墓地に送り融合モンスターを特殊召喚する。融合素材1体を指定して、そのカードと同じ名称のカードを融合素材に使っている場合その枚数分カードをドローする。」



古代の機械究極巨人 ☆10 地属性 機械族
ATK4400 DEF3400
「「古代の機械巨人」+「アンティーク・ギア」と名のついたモンスター×2
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。このカードが破壊された場合、自分の墓地から『古代の機械巨人』1体を召喚条件を無視して特殊召喚する事ができる。」



「攻撃力は4400!!さらに我はカードを2枚ドローだ!!バトル!!」

強化された巨人は黒き狐に向かってまっすぐ攻撃した。


「『オブシディアン・フォックス』の効果!!オブシディアン・ミスト!!!このモンスターを除外してバトルフェイズは終了や!」

漆黒の狐は、自らを黒き霧へと姿を変えて敵の攻撃を受け流す。
霧は再び狐の姿へと戻った。
次の瞬間モンスターは違う次元へと姿を消した。



「カードを2枚伏せて、ターンエンド。」


「ウチのターンやね。ドロー。」

「この瞬間、我がモンスターはさらに強化される罠発動『古代の機械超強化』墓地のモンスターを除外することでその攻撃力を得る。対象はもちろん『古代の機械巨竜』」



古代の機械超強化 通常罠
「発動後このカードを『古代の機械』と名のつくモンスターに装備する。墓地の『古代の機械』と名のつくカードを除外することで装備モンスターにその攻撃力を加える。」



ATK4400→7400


究極巨人にさらに機械のパーツが装備され攻撃力を上げた。
その重厚なボディと強力な武器が不死鳥を狙っている。



24章:覚醒!!玉使いの巫女

「まだ負けてない!!『レインボー・フェニックス』効果発動!!魔法・罠ゾーンのカードをすべて墓地へ送る。そして手札をすべてデッキに戻して、墓地に送ったのと同じ枚数ドローできる。」



究極宝玉神 レインボー・フェニックス ☆10 光属性 鳥獣族
ATK4000 DEF0
「このカードは通常召喚できない。自分フィールド上及び墓地に「宝玉獣」と名のついたカードが合計7種類以上存在する場合のみ特殊召喚する事ができる。このカードが特殊召喚されたターンには以下の効果を発動できない。●魔法・罠ゾーンのカードをすべて墓地へ送る。手札をすべてデッキに戻して、墓地に送ったのと同じ枚数ドローできる。●デュエル中1度だけ、手札の魔法、罠を任意の枚枚墓地に送ることでこのカードの攻撃力を1枚につき1000ポイントアップさせる。相手のターンでも発動できる。」



宝玉が姿を消し、澪はデッキからカードをドローした。



「さらにもう1つの効果!!手札の『レア・ヴァリュー』『宝玉の契約』『カウンター・ジェム』『宝玉の双璧』を墓地に送って攻撃力を上げる!!」



ATK4000→8000


魔法・罠カードの力が不死鳥へと吸収されていく。
その体の宝玉はさらに輝きを増す。


「バトル!!フレイミング・ザ・レインボー!!」


光が再び不死鳥を包む。
機械の巨人に向かって一直線に向かう。


「甘い!!『リミッター解除』発動!!」

その機械巨人が高熱を発しフルパワーで活動し始めた。
機械が壊れんばかりの高出力を見せる。


ATK7400→14800


「マズイ!!澪のレインボー・フェニックスが!!」

「澪!!!」

十悟たちが叫ぶ
澪は振り向いてわずかに笑顔を見せた。


「ウチは負けられないんや!!手札から『玉使いの巫女』の効果発動!!」



玉使いの巫女 ☆4 光属性 魔法使い族
ATK1400 DEF1200
「自分フィールド上に表側表示で存在する『宝玉獣』または『究極宝玉神』が戦闘を行うダメージステップ時にこのカードを手札から墓地へ送る事で、エンドフェイズ時までそのモンスターの攻撃力は、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力分アップする。」



(さすがは、我が力を受け継ぐ者!あなたの勝ちです)

黒髪の女性がつぶやく。
不死鳥と機械巨人の間にその女性が立つ。
ソリットビジョンには見えないほどリアルな姿だ。
顔が澪にそっくりなのは言うまでもない。
彼女は自らを光に変えた。
その光の空間を輝く不死鳥が通る。



ATK8000→22800


輝く不死鳥の放つ炎が機械巨人を包み込む。
次の瞬間、フィールドを強大な光が包んだ。

皆が顔を上げると空を舞う美しい不死鳥が澪の前に舞い降りるところだった。
フィールドには綺麗な虹がかかった。
その場にいたすべての者の心を奪うような美しさだ。



宝生澪LP:1800
右仁坊・ダンLP:2100→0



「やった!!!初勝利や!!!」


澪は飛び上がって喜んだ。
迎人とのデュエルは不完全な形で終わってしまったのがよほど心残りだったのだろう。

相手を見ると右仁坊・ダンがその場に倒れる。
彼の姿が徐々に変わっていく。
髪は金色でカリスマ美容師にカットされた特製のオカッパ頭が現れる。


「こ、ここはどこなノーネ?お寺ぁ?おお、シニョールたちは!どうやら助けていただいたようデスーネ。そうだシニョール白峰は?」

「私はここですよ。あなたの古代の機械デッキは彼女の宝玉獣に敗れました。まあそのおかげであなたはここにいるのですが。」

白峰は少し不機嫌そうに言った。


「さて、次はあなたの番です。左義坊・ジン」

「分かりました。」

着物をまとったその男は静かに言った。
今度は智花が前に出る。

「智花・・・」

「十悟君!言いたいことは分かっています。『右仁坊・ダン』がクロノス・デ・メディチのデッキだったということは、『左義坊・ジン』のデッキは黒須先生のデッキとみるのが妥当。大丈夫です!私には姉がついていますから。」

智花はそう言ってディスクを構えた。
相手も同様にディスクを展開した。



「デュエル!!」

木村智花LP:8000
右義坊・ジンLP:8000



「ねえ十悟!黒須先生のデッキってどんなデッキだか知ってる?」

朝子が聞いた。

「白峰って人と先生の関係が気になって調べたことがあるんだけど、ダークモンスター中心らしいんだ。」


十悟が説明する間もなく男はデュエルを進めた。


「我のターン。ドロー。『手札団殺』発動!!お互い手札を2枚墓地へ!そして2枚ドローだ!」



手札団殺 速攻魔法
「お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする。」



二人は自分の手札からカードを捨てた。
そしてデッキからカードを引く。

「さらに『終末の騎士』召喚!!デッキから『ダーク・ヴァルキリア』を墓地へ送る。この瞬間、邪悪なる闇の龍は召喚可能になった。出でよ!『ダーク・アームド・ドラゴン』」



終末の騎士 ☆4 闇属性 戦士族
ATK1400 DEF1200
「このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、自分のデッキから闇属性モンスター1体を選択して墓地に送る事ができる。」



ダーク・ヴァルキリア ☆4 闇属性 天使族
ATK1800 DEF1050
「このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、通常モンスターとして扱う。フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。●このカードが表側表示で存在する限り1度だけ、このカードに魔力カウンターを1個乗せる事ができる。このカードに乗っている魔力カウンター1個につき、このカードの攻撃力は300ポイントアップする。その魔力カウンターを1個取り除く事で、フィールド上のモンスター1体を破壊する。」



ダーク・アームド・ドラゴン ☆7 闇属性 ドラゴン族
ATK2800 DEF1000
「このカードは通常召喚できない。自分の墓地に存在する闇属性モンスターが3体の場合のみ、このカードを特殊召喚する事ができる。自分の墓地に存在する闇属性モンスター1体をゲームから除外する事で、フィールド上のカード1枚を破壊する事ができる。」



甲冑の騎士がフィールドの中心を開ける。
そこに巨大で醜悪そうなドラゴンが現れる。


「カードを1枚伏せてターンエンドだ。」


破壊に餓えているその龍は智花が早くモンスターを召喚しないか。
そんな目で見つめている。

「聞いたことがあります。プロデュエリストも愛用する強力カード!でも、私も負けるわけにはいきません!!」


(智花、頑張るのよ!私がいつもついてるから。)

かすかに聞こえる姉の声。
そして見守る仲間を胸に彼女は戦う。

「私のターンですね。ドロー。」



25章:力と犠牲

智花はドローカードを確認する。

ドロー:サイバー・ドラゴン


「(手札には『テンダネス』がある。これでレベル8のシンクロモンスターを)・・・え!!お姉ちゃん!!何で?」


突如として、智花の目の前の光景が変わる。
暗闇の中に姉の姿が見える。

両腕を鎖で繋がれ、体中におびただしい数の痣が浮き上がっている。
赤く無気味に光るその体は目を覆いたくなる姿だ。

姉の目が開き智花に語りかける。

(智花!そんな悲しい顔をしないで!私の体はあの時無くなっている。これは偽りの身、あなた達のために精霊の力で作られたもの。それが私の使命。そしてあの時の償いでもある。さあ!龍を呼ぶのよ!)


智花の目の前に相手と邪悪な龍の姿が移る。


「(とにかく今は勝つことが先決)手札の『サイバー・ドラゴン』を特殊召喚します!!さらに『テンダネス』を召喚してサイバー・ドラゴンにチューニング!!出でよ『レッド・デーモンズ・ドラゴン』」



サイバー・ドラゴン ☆5 光属性 機械族
ATK2100 DEF1600
「相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在していない場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。」



テンダネス ☆3 光属性 天使族 チューナー
ATK700 DEF1400
「恋人たちの永遠を祝福する、かわいらしい天使。」


(デスクリ特別仕様です。)



レッド・デーモンズ・ドラゴン ☆8 闇属性 ドラゴン族
ATK3000 DEF2000
「チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードが相手フィールド上に存在する守備表示モンスターを攻撃した場合、ダメージ計算後相手フィールド上に存在する守備表示モンスターを全て破壊する。このカードが自分のエンドフェイズ時に表側表示で存在する場合、このターン攻撃宣言していない自分フィールド上のこのカード以外のモンスターを全て破壊する。」



(く!!きつい!この不完全な体では・・・)

智世の体の痣がわずかに赤く光る。



「バトル!!灼熱のクリムゾン・ヘルフレア!!」

悪魔龍から強力なブレスが放たれる!!
すべてを燃やしつくす圧倒的な炎に包まれる。


「罠発動『ガード・オブ・ダーク』これで攻撃対象を別のモンスターに変更する。この時、フィールド上のダークモンスターで最もレベルの高いモンスターのレベルに応じて違う効果を得る。」



ガード・オブ・ダーク 通常罠
「相手の攻撃をダークと名のつかないモンスターに変更する。フィールド上の「ダーク」と名のつく最もレベルの高いモンスターのレベルによって以下の効果を得る。
レベル4以下:相手と戦闘する時に発生するダメージを500ポイント減らす。
レベル5・6:相手と戦闘する時に発生するダメージは半分になる。
レベル7以上:相手と戦闘する時に発生するダメージは0となる。」



「よって『終末の騎士』が破壊されることで発生するダメージは0となる。」


炎の中から醜悪なドラゴンが姿を現した。
無傷のままで!



「まずい!次の相手のターンで『ダーク・アームド・ドラゴン』の効果でせっかく出したモンスターが破壊されてしまう。」

十悟が叫んだ。


「智花ならなんとかする!私が認めたライバルなんだから!!」


朝子は戦ったからこそ彼女を信じているようだ。


「カードを1枚伏せてターンエンドです。」

智花はゆっくりとカードを伏せる。
そしてゆっくり相手を見据える。



「我がターン。ドロー。モンスター効果発動だ。墓地の『ダーク・ヴァルキリア』を除外して『レッド・デーモンズ・ドラゴン』を破壊する。切り裂け!!ジェノサイド・ダーク・カッター!!!」


漆黒の真空刃が悪魔龍を襲う。
そのすべての攻撃を受け砕け散った。


「さらにそのカードも破壊しようか。墓地の闇属性モンスターを除外して伏せカードを破壊だ!ジェノサイド・ダーク・カッター!!続けてダイレクトアタック!!ダーク・アームド・パニッシャー!!」

伏せられたカードは発動せずに墓地へと送られた。
そして醜悪なその龍は鋭く尖った龍の爪で智花を切り裂いた。


「く!!(負けない!このくらいお姉ちゃんの苦しみに比べれば!)」


木村智花LP:8000→5200
右義坊・ジンLP:8000



「永続魔法『漆黒のトバリ』発動!!ターンエンド!!」



漆黒のトバリ 永続魔法
「自分のドローフェイズにドローしたカードが闇属性モンスターだった場合、そのカードを相手に見せる事で、そのカードを墓地へ送る。その後、自分のデッキからカードを1枚ドローする事ができる。」



男はモンスターを出さずにターンを終えた。


「私のターンですね。ドロー。特殊召喚『サイバー・タートル』モンスター効果で『サイバー・スネーク』を手札に加えます。さらにカードを1枚伏せてターンエンド。」



サイバー・タートル  ☆4 水属性 機械族
ATK800 DEF2100
「相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在していない場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。このカードがこの効果で特殊召喚に成功した時、デッキから『サイバー・スネーク』を手札に加える。」



サイバー・スネーク ☆2 地属性 機械族
ATK400 DEF300
「このカードを手札から捨てる。このカードは相手モンスターの装備カードとなり、装備モンスターは攻撃できない。自分のスタンバイフェイズに装備を解除して、自分のフィールド上に特殊召喚できる。」



「我がターン。ドロー。『漆黒のトバリ』効果発動!今ドローした『異次元の偵察機』を墓地へ送り、カードをドロー。ふふふ、2枚目の『ダーク・アームド・ドラゴン』だ!!特殊召喚!!」


異次元の偵察機 ☆2 闇属性 機械族
ATK800 DEF1200
「このカードがゲームから除外された場合、そのターンのエンドフェイズ時にこのカードを自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。」



醜悪なドラゴン2体が並ぶ。
両方ともすぐにでも機械の亀を倒そうと狙っている。


「モンスター効果発動!!カードを破壊する。まずは『サイバー・タートル』だ。最初のターン『手札団殺』で墓地へ送った闇属性のうち1体を除外する。行け!!ジェノサイド・ダーク・カッター!!」


男はカードを除外して叫んだ。
漆黒の刃は次々と放たれ、機械の亀を粉砕した。


「さらにその伏せカードも破壊だ。『終末の騎士』を除外して、ジェノサイド・ダーク・カッター!!第二刃!!」


「速効魔法発動です。『スケープ・ゴート』、羊トークンを4体出現!!」


青、黄、オレンジ、赤の羊が智花の場に現れた。


「バトルだ!!羊トークンを攻撃!ダーク・アームド・パニッシャー!」


「『サイバー・スネーク』のモンスターを効果発動です!このカードを手札から捨てることで相手モンスターに装備。相手モンスターは攻撃できません!!」

機械で出来た長い蛇が醜悪な龍へと巻きつく。
徐々に締め上げていくと龍の攻撃が止まった。


「ならばもう1体で羊トークンを攻撃!!ダーク・アームド・パニッシャー!」

鋭く尖った爪が羊トークンを粉砕する。


「まだだ!墓地の『異次元の偵察機』を除外して『サイバー・スネーク』を破壊だ!!ジェノサイド・ダーク・カッター!!」


1体の龍がもう1体の龍に巻きつく蛇に黒き刃を放つ。
機械の蛇は粉砕されたがその装甲のような龍の体には傷一つついていない。


「ターンエンド。『異次元の偵察機』はフィールドに舞い戻る!!」


次元が歪み、目玉のようなその機械はフィールドに現れた。
智花のフィールドには羊トークンが3体残っているだけだ。
対して相手のフィールド上には凶悪モンスター2体が破壊に餓えた表情で智花を見つめる。



26章:使命と宿命

「(強い!さすが黒須先生のデッキ。このドローで逆転できなければ負ける!)わ、私のターンですね。」

何かが智花の心の中で脈を打つ。
敗北への恐怖感がこみ上げてくるような感覚。


「どうした?ドローしないのか?」

男は智花に語りかける。




(智花!智花!!しっかりして!!)

「お姉ちゃん?」


(智花!負けを恐れないで!負けた先に得ることだってある。あなたには私がついている、彼らもみんな智花を信じているのよ。そのドローが逆転を導く!!)



「(勝とう!!勝って黒須先生を救おう)ドロー。うん!!手札から『貪欲な壺』発動!!『レッド・デーモンズ・ドラゴン』以外のモンスターカード5枚をデッキに戻し、2枚ドロー。」



仲間は息をのみ、智花の次の一手を見守った。



「何だ?何を引いたというのだ。」



「手札から『仮想同調』発動!!ライフを1000払います。エクストラデッキから『ブラック・ローズ・ドラゴン』を特殊召喚です!!」


木村智花LP:5200→4200
右義坊・ジンLP:8000


仮想同調 通常魔法
「1000ライフポイントを払う。エクストラデッキからシンクロモンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したシンクロモンスターは攻撃する事ができず、エンドフェイズ時に破壊される。「仮想同調」は1ターンにつき1枚しか発動できない。(この特殊召喚はシンクロ召喚扱いとする)」



ブラック・ローズ・ドラゴン ☆7 炎属性 ドラゴン族
ATK2400 DEF1800
「チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードがシンクロ召喚に成功した時、フィールド上に存在するカードを全て破壊する事ができる。1ターンに1度、自分の墓地に存在する植物族モンスター1体をゲームから除外する事で、相手フィールド上に存在する守備表示モンスター1体を攻撃表示にし、このターンのエンドフェイズ時までその攻撃力を0にする。」



黒の花弁を身に纏ったドラゴンが咆哮する。
男は思わず、1歩後ろに下がった。



(そうよ、智花!それでいいの。それがあなたの使命!!例えこの私を犠牲にしてでも・・・果たさなければ・・ならない宿命!!)



「何だ!このドラゴンは?」

「お姉ちゃんが私に託した希望!!行きます!モンスター効果発動、ブラック・ローズ・ガイル!!!この効果がすべてを飲み込みます。この龍自身も!」


竜巻が起こり、花びらフィールドを包んだ。
深紅、むしろ黒に近いが。
その竜巻にフィールドのモンスターが巻き込まれていく。




「全滅効果かよ。智花もやるじゃねえか。なあ十悟!!」

「ああ。しかも智花はまだ通常召喚をしていない。これで逆転だね。」


十悟たちの顔にも笑顔が戻ってきた。


「一気に行きますよ!手札から永続魔法『ハデスの共同墓地』を発動します。このカードは相手の墓地を自分の墓地として扱い、相手も自分の墓地を相手の墓地として扱う。そして『ウィクトーリア』を攻撃表示で召喚!!」



ハデスの共同墓地 永続魔法
「このカードがフィールドに存在する限り、お互いに相手の墓地を自分の墓地として扱い、自分の墓地を相手の墓地として扱うことができる。」



ウィクトーリア ☆4 光属性 天使族
ATK1800 DEF1500
「1ターンに1度、相手の墓地に存在するドラゴン族モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手は表側表示で存在する他の天使族モンスターを攻撃対象に選択する事はできない。」



「モンスター効果発動!!私の墓地を相手墓地として扱い、墓地の『レッド・デーモンズ・ドラゴン』を特殊召喚!」


悪魔龍が翼を広げて飛翔する。

「ダイレクトアタックです!!灼熱のクリムゾン・ヘルフレア!!」


灼熱の炎がプレイヤーを直撃する。


「ぐは!!こんなタクティクスがあったとは!」

「ウィクトーリアがまだ残っています。攻撃!」



木村智花LP:4200
右義坊・ジンLP:8000→3200


「やった!智花の逆転ね。」


「カードを1枚伏せて、ターンエンドです。」



「我がターン。ドロー。来た!!いくぞ『ダーク・スフィア・ボム』を召喚!手札の闇属性モンスターを墓地に送り効果発動だ!フィールドすべてのカードを破壊し、お互いは自分のコントロールするモンスターの攻撃力分のダメージを受ける。」



ダーク・スフィア・ボム ☆4 闇属性 機械族
ATK1400 DEF1400
「手札の闇属性モンスターを任意の枚数墓地へ送ることができる。自分のフィールドにこのカードしか存在しないとき、このカードをリリースすることでお互いにフィールドのモンスターをすべて破壊し、その攻撃力分のダメージを受ける。」



「(あのカードは確か・・・)通常召喚にチェーンして速効魔法発動!!」



「無駄だ!!手札を1枚捨てて効果発動!すべてを消し去れ!!ダークネス・エクスプロージョン!!!」






静寂がフィールドを包む。
フィールドには何かが光り輝くものが見える。



「なぜ?」


「速効魔法『シンクロン・シフトチェンジ』を発動しました。『レッド・デーモンズ・ドラゴン』を墓地に送ることで『スターダスト・ドラゴン』を特殊召喚しました。その効果で破壊効果は無効化されました。」



スターダスト・ドラゴン ☆8 風属性 ドラゴン族
ATK2500 DEF2000
「チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
「フィールド上のカードを破壊する効果」を持つ魔法・罠・効果モンスターの効果が発動した時、このカードをリリースする事でその発動を無効にし破壊する。この効果を適用したターンのエンドフェイズ時、この効果を発動するためにリリースされ墓地に存在するこのカードを、自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。」



シンクロン・シフトチェンジ 速攻魔法
「フィールド上のシンクロモンスターを墓地に送り同レベルのシンクロモンスターをエクストラデッキから特殊召喚する。」



星屑となって光り輝いていたのだ。


「手札もフィールドにもカードはないターンエンドだ。」

男は悔しそうに膝をついた。



星屑の中から龍が飛び出した。
光を纏ったその龍は智花の前で止まった。



「私のターン。ドロー。サレンダーしてはいただけないのですね?」


男は黙ったままだ。
その場にたったままだ。


「せめて全力で行きます。手札から『死者蘇生』発動!墓地の『ブラック・ローズ・ドラゴン』を蘇生!!さらに『ウィクトーリア』の効果で『レッド・デーモンズ・ドラゴン』を特殊召喚!!」


上空には3体の龍!!

光を纏う風の龍
灼熱を今すぐにでも吐き出したい悪魔龍
深紅の薔薇が体を包む龍。
その威圧感はあの『ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン』3体に匹敵しているだろう。

そして、それらに守られるように金色の衣に身を包む天使がフィールドに存在する。


「バトル!!」



爆音とともに強大な力がフィールドを包む。
そこにいるすべての者が目をつぶった。
強大なエネルギーがそこに滞留している。
わずかに龍の咆哮が聞こえた。



(ごめんね。智花・・・。私の最後のわがままに付き合って)

「お姉ちゃん・・・・」



27章:思い出

智花はゆっくりと目を開けた。


「ここは・・・昔、私たちが住んでいた家!」

回りを新緑の森に囲まれた一件の家。
庭にはブランコが二つ。
二人の女の子が遊んでいる。
子ども時代の知世と智花だ。


(そうよ。私の願い、それはただ、智花との思い出の時間・場所を見て回りたかった。それが終われば・・・)


目の前の光景が刻々と変わっていく。

「覚えている。お姉ちゃんと旅行に行ったこと。お姉ちゃんとデュエルしたこと。忘れかけていた思い出がいくつも、いくつも。」

智花の目に涙があふれてくる。
小さな涙が止めどなく流れる。


(あの時はずっとこんな時間が続くと思ってた。智花も私もね。)



智花が高校生になる光景が映ると、智花の胸が急に苦しくなってきた。
それは智世も同じだ。


「あの日が近づいている。」


智花には分かった。
何度も泣いた。
それまでの楽しい日々がガラス細工のように崩れたあの日のことが。


(でも・・・この世界に、あの瞬間は訪れないの。私の記憶を元に作った世界だから)


今、この瞬間も変わらない日常が続いている。
二人は学校へ行き、勉強して、クラブ活動、友達とデュエルをする。


「あの日の朝、お姉ちゃんは事故にあったはず。」

(そんなことはもう忘れていいのよ。事故のことも私のことも。私が消えれば、龍が使用者に及ぼす弊害はすべて私が引き受けることになる)

「そんなのダメだよ!!」

(もう時間ね。今度こそ、サ・ヨ・ナ・ラ!)


そう言うと智世の体が消えて行く。
それと同時に5体の龍が智花の元に舞い降りる。
5体は光となって智花のディスクに吸い込まれた。


「待って!消えないで・・・」

智花の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。
ダイヤモンド!
澪の宝玉のように透き通るような輝きがある。




木村智世
尾瀬呂学園高等部生徒会長にして最強のデュエリスト。
幼少のころからサイバー流道場に通う。
道場の紅一点。丸藤亮が帝王(カイザー)ならば彼女は女帝と呼ばれてもおかしくない実力。
高校時代は無敗の成績を誇った天才!
突如の事故で命を失う(享年18歳)
異世界で十悟に敗北してからは、精霊の力を借り智花に龍の力を授けようと研究を進めていた。






智花の目の前の光景が元に戻る。


「今のは・・・・。なぜ?何か・・・何か大切なものを失った気がする。・・・何?何なのこの気持ち。思い出せないよーーー。」


その声は屋敷の中にこだまする。
智花は頭を抱えてその場に座り込む。



「大丈夫!!すぐに思い出す。今は少しデュエルで疲れているんだよ。」


十悟は智花に手を差し出した。
智花は手を借りてゆっくりと立ち上がった。

相手を見ると、攻撃を受けた左義坊・ジンの姿が黒須へと変わっていく。
黒須はゆっくり目を開けた。


「先生!!!」


みんな大声で叫んだ。
全員が黒須を囲むように集まった。


「クフフフフ。まるで学園ドラマのような光景ですね。」

白峰は小さく拍手しながら言った。
体は今にも怒り出しそうに震えている。


「白峰、もう止めてくれ!この戦いは無意味だ。」

「もう遅いよ黒須!!力が湧いてくるんだ。あのカードが私に語りかけてくる。彼を倒せ、そうすれば私の願いがかなうってね。こんなワクワクはプロリーグでも味わえないよ。」


白峰は怒りと喜びが混じり合うような精神状態に置かれているようだ。
そして一歩一歩前に出る。


「さあ、相馬十悟君!デュエルをしてもらいましょうか。」


「相馬!!私にこんなことを頼む資格など無いのは分かっているが、あいつを、白峰を救ってやって欲しい!『運命の神』の呪縛から解き放ってやってくれ!!」


黒須は十悟に頭を下げた。
先生と生徒とか、そんな事を気にせずいたに違いない。



「はい!!(まずはこの人に全力でぶつかっていこう!)」

十悟は叫んでディスクを構えた。
白峰と十悟が向かい合う。




「デュエル!!!」


ただならぬ空気が漂っている。
闇のゲーム。
実際にはそうではないが、それが最も近い表現なのだろう。



相馬十悟LP:8000
白峰神斗LP:8000



「私の先行。ドロー。『ライトロード・パラディン ジェイン』を召喚!カードを1枚伏せてターンエンド。デッキからカード2枚を墓地へ。さあ、見せてもらいましょうか魔獣の力を!!」



ライトロード・パラディン ジェイン ☆4 光属性 戦士族
ATK1800 DEF1200
「このカードは相手モンスターに攻撃する場合、ダメージステップの間攻撃力が300ポイントアップする。このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、自分のエンドフェイズ毎に、自分のデッキの上からカードを2枚墓地に送る。」



白銀の髪、同じ色の甲冑に身を包んだ戦士が召喚される。
剣をまっすぐ十悟の方へ向けた。
白峰は素早くカードを墓地に送った。



相手デッキ:32



「僕のターン。ドロー。」


十悟はドローカードを確認する。
そして手札を確認して戦術を組み立てる。



「ライトロードか。確かに強力なデッキだが、エンドフェイズにデッキからカードを墓地に置くリスクがある。相馬のデッキとは相性が悪い!!」


「カード・スイーパーズの森崎君ですね。悪くない読みですが、これを見てもそう思いますか?永続罠『王宮の鉄壁』これで除外を封じますよ。ふふふ。」



王宮の鉄壁 永続罠
「このカードがフィールド上に存在する限り、カードをゲームから除外する事はできない。」



「マズイノーネ。シニョール十悟のデッキはカードを除外するコトーデ効果を発揮するモンスターだったノーネ。」

クロノスが声を上げる。
クロノスとは対照的に迎人たちはそうは思っていなかった。
除外を封じたくらいでは彼には勝てないことを知っていたからだ。



28章:『裁きの龍』召喚!ライトロードデッキの恐怖

「なるほど流石は元プロといったところですね。ですが、僕のデッキは除外だけではないですよ。魔法カード『手札抹殺』発動。カードを5枚捨てて、5枚をドローする。」

十悟はすべてのカードを墓地に送りカードをドローする。
白峰も同様にドローした。


「行きますよ!手札から永続魔法『戦場の惨劇』を発動します。モンスターをセットしてターンエンド。」



手札抹殺 通常魔法
「お互いの手札を全て捨て、それぞれ自分のデッキから捨てた枚数分のカードをドローする。」



戦場の惨劇 永続魔法
「戦闘を行ったプレイヤーはバトルステップ終了時にデッキから5枚のカードを墓地へ置く。」



相手デッキ:28


「私のターン。ドロー。『ライトロード・ウォーリアーガロス』召喚。」



ライトロード・ウォーリアーガロス ☆4 光属性 戦士族
ATK1850 DEF1300
「自分フィールド上に表側表示で存在する「ライトロード・ウォリアー ガロス」以外の「ライトロード」と名のついたモンスターの効果によって自分のデッキからカードが墓地に送られる度に、自分のデッキの上からカードを2枚墓地に送る。このカードの効果で墓地に送られた「ライトロード」と名のついたモンスター1体につき、自分のデッキからカードを1枚ドローする。」



「ジェインで裏守備表示モンスターを攻撃!!聖・輝・斬!!」



裏側表示のカードが表になり、モンスターが現れる。
紫の衣を纏った骸骨の鎌が剣を受け止めた。


「『魂を削る死霊』は戦闘では破壊されない。バトルステップ終了時、『戦場の惨劇』の効果でカード5枚を墓地に送ってもらいます。」



魂を削る死霊 ☆3 闇属性 アンデット族
ATK300 DEF200
「このカードは戦闘によっては破壊されない。魔法・罠・効果モンスターの効果の対象になった時、このカードを破壊する。このカードが相手プレイヤーへの直接攻撃に成功した場合、相手はランダムに手札を1枚捨てる。」



「ターンエンドにしましょうか。ジェインの効果で2枚を墓地へ。そしてガロスの効果でさらに2枚墓地へ。ルミナスとグラゴニスです!!さらに2枚ドロー(ふふふ、来ましたね『裁きの龍』が)さあ君のターンですよ。」


白峰は、手札にドローした2枚を加えた。



相手デッキ:16



「僕のターン。ドロー。(確実にデッキは減っている。でもあの人はまだ余裕だ)それなら僕は『戦場の惨劇』を墓地へ送り、『魂を削る死霊』をリリース。『破壊獣ゾミューア』をアドバンス召喚。」



破壊獣ゾミューア ☆8 闇属性 獣族
ATK2800 DEF2100
「このカードはフィールドから墓地に送った永続魔法の数だけ召喚に必要なリリースを減らすことができる。戦闘で相手モンスターを破壊した時、そのモンスターのレベル分だけ相手デッキからカードを墓地に送る。」



漆黒の猟犬!!
大きさは2メートルを超す大型だ。
獰猛ですぐにでも相手に飛びかかろうという姿勢だ。



「ほう。この劣勢から上級モンスターを召喚してきますか。」


白峰は素直に感心した。
『裁きの龍』で逆転できるために未だに不敵な笑みを浮かべている。


「バトル!!僕はジェインに攻撃します!ジェノサイド・ファング!!」


猟犬は大きな雄叫びを上げて突進していく。
鋭い牙に噛みつかれ光の剣士は砕け散った。


「モンスター効果発動!!デストロイ・ハウンド!!」


猟犬の鳴き声で白峰のデッキからカードが4枚フィールドに現れる。
鳴き声に共鳴してカードが1枚ずつ砕けていく。



相馬十悟LP:8000
白峰神斗LP:8000→7000


相手デッキ:12


「カードを1枚伏せてターンエンドです。」



「私のターン。ドロー。では『死者転生』を発動!手札を1枚墓地に送り、墓地の『裁きの龍』を手札に加える。『裁きの龍』を特殊召喚!!そして、モンスター効果発動。ライフ1000を支払いこのカード以外のカードすべてを破壊する。シャイニング・ストーム!!」



雄々しく輝く龍が現れる。
龍が翼を羽ばたかせると、光る暴風がすべてのカードを包み込んでいく。


「く、全滅か!!」


「さらに2枚目の『裁きの龍』を特殊召喚。バトル!プレイヤーにダイレクトアタック!!ジャッジメント・ブレス、二連撃!!」


二体の龍は同時に口を開き、ブレスを放つ。
巨大な爆風が十悟を包む。



相馬十悟LP:8000→2000
白峰神斗LP:7000→6000



「メインフェイズ2で『ライトロード・ガードナー ダニエル』を召喚。このカードをリリースすることで、デッキからカードを墓地に送るリスクを無効化!!ターンエンドですよ。」



ライトロード・ガードナー ダニエル ☆4 光属性 戦士族
ATK0 DEF1600
「このカードをリリースすることで、このターンに自分フィールド上のカードの『デッキの上からカードを墓地に送る』効果を発動しなくても良い。」



相手デッキ:11



「強い。相手フィール上には上級モンスターが2体。僕のフィールドにカードは無い。ここから逆転できるのか?」


相変わらず白峰は不敵な笑みを浮かべている。
フィールドからは2体の龍のプレッシャーが容赦なく十悟を襲う。


「僕のターン。ドロー。(『王宮の鉄壁』が無くなって除外が可能になっている。まだチャンスはある)」


十悟はドローしたカードをそのままディスクに持って行った。


「僕は『幻光魔獣アル・ミューレ』を攻撃表示で召喚!モンスター効果発動!!墓地の『魔獣王アルド・ヴァーム』を除外することで同レベルの『裁きの龍』1体を破壊します!!行け!妖かしの魔光!!!」


白銀の装甲をつけている悪魔だ。
一見すると天使族にも見えるが、鎌のような腕を持っており凶悪そうな顔をしている。
幻光魔獣はその鋭い鎌で時空を切り裂く。
そこには次元の裂け目ができ、光り輝く龍がそこに吸い込まれていく。



幻光魔獣アル・ミューレ ☆4 光属性 悪魔族
ATK1600 DEF700
「自分の墓地のモンスター1体と相手フィールド上のモンスター1体を対象とする。それらが同レベルならばゲームから除外する。」



魔獣王アルド・ヴァーム ☆8 闇属性 悪魔族
ATK3500 DEF2450
「フィールドまたは墓地からそれぞれ違う属性の6種類の『魔獣』と名の付くモンスターを除外した時のみ特殊召喚可能。このカードが特殊召喚に成功した時、相手デッキを半分(切り上げ)にする。自分のエンドフェイズ時にゲームから除外している『魔獣』と名の付くモンスターを1枚、セットまたは特殊召喚できる。」



(ウフフ。サア、マダ『裁きの龍』ガ1体残ッテル。ドウスルノカシラ?)



「カードを1枚伏せてターンエンド。」

十悟はまっすぐ白峰を見据えた。


「『裁きの龍』に破壊されると分かってカードを?それとも破壊されることで発動する罠でしょうかね。私のターン。ドロー。速攻魔法『サイクロン』リバースカードを破壊です。」

突風が巻き起こり十悟のカードを破壊する。
効果が発動する気配はない。

「そのモンスターにも退場願いましょうか。ライフを1000払い『幻光魔獣アル・ミューレ』を破壊!!」


相馬十悟LP:2000
白峰神斗LP:6000→5000



「よく頑張りましたが、ここまでです。バトル!!ジャッジメント・ブレス!!」


光り輝くブレスが十悟目がけて飛んで行く。
その強大なエネルギーが十悟を襲う。



誰もがそう思った。
だが、その攻撃は徐々に弱まっていった。



「手札の『次元守護師』の効果を発動しました。墓地の『破壊獣ゾミューア』を除外することでその攻撃力2800分だけ『裁きの龍』の攻撃力を下げました。」



次元守護師 ☆2 光属性 戦士族
ATK200 DEF1000
「相手の攻撃宣言時、このカードを手札から墓地に捨てて発動する。墓地に存在するこのカード以外のモンスター1体を除外することで、このターンのエンドフェイズまで、そのカードの攻撃力分相手のモンスターの攻撃力を下げる。この効果を使用したターンのエンドフェイズに除外したモンスターを手札に加える。」



「く、やりますね。では追撃の速攻魔法『ライトロード・コーリング』、手札の『ライトロード・マジシャン ライラ』を特殊召喚して攻撃だ!!」



ライトロード・マジシャン ライラ ☆4 光属性 魔法使い族
ATK1700 DEF200
「自分フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードを表側守備表示に変更し、相手フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する。この効果を発動した場合、次の自分のターン終了時までこのカードは表示形式を変更できない。このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、自分のエンドフェイズ毎に、自分のデッキの上からカードを3枚墓地に送る。」



杖を構えた魔女の魔法攻撃が十悟を襲う!!


「く、まさかここで攻撃が来るとは。」

「こちらも驚きですよ。あそこでデュエルが終わらなかったとは。ターンエンドですよ。カードを7枚墓地に置きましょうか。」

「僕は除外した『破壊獣ゾミーア』を手札に加える。(僕の場は0、手札はこのままでは召喚できない上級モンスターが1枚。次のターンのドローにすべてがかかってる。)」


相馬十悟LP:100
白峰神斗LP:5000


相手デッキ:3


十悟のライフはあと100。
白峰のデッキはあと3枚。
緊迫した状況が続く。



29章:決着!?真の敵!

「(ここから先・・・少しでも気を抜いたら負けだ・・・。)僕のターン。ドロー!よし!!まだチャンスはある。手札から『魔獣の宝札』発動!!カードを5枚確認する。そして『氷結魔獣ザ・ギーネ』をゲームから除外。残りをすべてデッキに戻し、シャッフル!そして2枚をドロー。」


十悟は迷わず除外して、カードをドローした。
そしてカードを確認する。



魔獣の宝札 通常魔法
「デッキの上から5枚を確認する。その中に『魔獣』と名の付くカードがある場合はそのカードを除外して残りをデッキに戻しシャッフル。ない場合は5枚全てをゲームから除外する。デッキからカードを2枚ドローする。」



「手札から『岩窟魔獣ガ・ラード』を召喚!!バトル!ライラに攻撃だ!!」



ローリング・ガ・ラード!!



岩窟魔獣ガ・ラード ☆4 地属性 悪魔族
ATK:2400 DEF:300
「自分のスタンバイフェイズにゲームから除外されている自分のカードを墓地へ送る。送れなければこのカードを破壊する。」



巨大な岩石がボーリングの玉のように相手に向かって転がっていく!
魔女を踏みつぶし、方向を変えると十悟のフィールドに戻ってきた。


相馬十悟LP:100
白峰神斗LP:5000→4300


「カードを1枚伏せてターンエンド。」


十悟はドローしたカードを伏せた。
もう一枚は「ゾミューア」だと白峰も知っている。


「私のターン。ドロー。このターンで終わりです。」



相手デッキ:3→2


「アカン『裁きの龍』の効果を使われたら!!」

「ううん!!まだ十悟は諦めてない!!まだ希望は残ってる。」

朝子も希望を捨てていない。
一番長い付き合い。
彼のデュエルをずっと見てきたから。


「ではその希望!消して差し上げましょう。モンスター効果発動!!」


シャイニング・ストーム!!


龍が翼を羽ばたかせる。
白銀の暴風が巻き起こった。



相馬十悟LP:100
白峰神斗LP:4300→3300


「フィールドの『ガ・ラード』をゲームから除外して、カウンター罠『魔獣王の宣告』発動!モンスター効果を無効にして、相手バトルフェイズをスキップさせます。」



魔獣王の宣告 カウンター罠
「フィールド上に表側表示で存在する『魔獣』と名のつくモンスターをゲームから除外して発動する。魔法、罠、モンスター効果のどれか一つを無効にして相手バトルフェイズをスキップすることができる。」



ガ・ラードの体が粉々になり、『裁きの龍』を襲う。
龍は一瞬たじろいだ。


「しかし君のフィールドは、また0となった。私は魔法カード『小さな閃光』発動!墓地から攻撃力1000以下のライトロードを特殊召喚します。対象はもちろん『ライトロード・ガードナー ダニエル』。そしてモンスター効果発動!!『裁きの龍』のリスクは無効!!ターンエンドです。くふふふ、はーははははは。」


白峰は勝利を確信したように笑いだした。



小さな閃光 通常魔法
「墓地に存在する攻撃力1000以下の『ライトロード』と名のつくカード1体をフィールド上に特殊召喚できる。そのモンスターはこのターン攻撃できない。」



「僕のターンですね。ドロー!!」

「なぜ諦めないのです?」

「それは、あなたもデュエリストなら分かるはずですよ。勝つ可能性が残されているから!」

十悟は微笑みながら言った。


「バカな!!この状況を逆転する方法が?そんなカードが!」

白峰は十悟とは対称的に怒りながら言った。


「いいえ!ドローカードに関係なく既にあなたのターン、逆転への布石は完成していました。ゲームから除外されている『氷結魔獣』と『岩窟魔獣』をデッキの一番下に戻します。これにより、エクストラデッキから『魔獣牛鬼 グレク・オーギュス』を特殊召喚!!」



魔獣牛鬼 グレク・オーギュス ☆4 闇属性 獣戦士族
ATK1800 DEF200
「『魔獣』と名のつくモンスター×2
ゲームから除外されている上記のモンスターをデッキの1番下に戻した場合のみ融合デッキから特殊召喚することができる。ゲームから除外されているモンスターカード1枚をデッキの1番下に戻す事で、そのカードの攻撃力以下の相手モンスター1体をゲームから除外する。この効果は1ターンに1度しか使えず、このターンにそのモンスターは攻撃できない。このカードを特殊召喚する場合、このターンに『魔獣』と名のつく他のカードを特殊召喚することはできない。」



巨大な斧を手にした牛の頭を持つ魔獣が十悟のフィールドに現れる。
茶色い肌に筋肉隆々。
鉄の鎧をつけている。


「僕はゲームから除外されている『魔獣王アルド・ヴァーム』をデッキの1番下に戻して効果発動!!魔獣王の攻撃力以下のモンスター1体をゲームから除外します!!」


インフィニティー・アックス!!



巨大な斧が振り下ろされ、龍を切り裂いた。
大きな雄たけびを上げた龍は異次元へと消えた。


「バカな!私の『裁きの龍』が全滅!!」

「現在のデュエルモンスターズで『裁きの龍』は準制限のモンスター。つまり、あなたのデッキの要『裁きの龍』はすべて除外しました。ターンエンドです。」

巨龍が消える姿は、見る者を圧倒した。
フィールドとこのデュエルを支配していたはずの龍が消えたのだ。
当然と言えば当然かもしれない。


「私のターン。ドロー。(く、『魂狩りの代償』か)」


カードからは不気味なオーラが漂っている。



魂狩りの代償 通常魔法
「デッキからカードを2枚選択して手札に加える。次の自分のターンのドローフェイズの前に自分は敗北する。」



相馬十悟LP:100
白峰神斗LP:3300



相手デッキ:2→1



「それは『魂狩りの代償』、しかしあなたのデッキは1枚。つまり発動はできない!!」

「く、その通りです。」


(フン!!コノ男モ使エナイワネ。ワタシニ最モ相応シイノハ強イデュエリスト!!ソウ、ワタシヲ倒セルクライノネ。アナタハモウ用済ミヨ。)

ディスティニー・クリエイターは白峰の中で小さく呟いた。
そして白峰の体からゆっくりと離れる。


「待て!私の願いが・・・。」

(敗者ノ戯言ナンテ私ノ心ニハ届カナイ!モウイイワ消エナサイ!!)

白峰の体が石のような色に変化していく。


「わ、私の体が・・・」

(フフ、敗者ノ末路ハコンナモノヨ!!)


「白峰!!!」

「黒須!やはりそうだ。おまえの選択はいつも正しかった。ただ、ライバルの意見を受け入れるのが嫌だった。私は愚かな人間だ!そんな私をまだ友と呼んでくれてあ・り・が・と・・・・」

そう言い終わる前に砂になって消えた。
十悟の前にはデュエルディスクと「ライトロード」デッキが残されている。


「くそ!!」

黒須は床に拳を叩きつけた。
みんな、白峰のいた一点を見つめている。
最大の敵が突如として消えた。
その状況が掴めずにいる。

十悟は顔をゆっくりと上げた。
そしてその精霊を見据えて言った。

「姿を現したらどうです?僕らの真の敵!!ディスティニー・クリエイター!!」



30章:運命デッキ再び!

運命の神「ディスティニー・クリエイター」は徐々に姿を現す。
大きさは5メートルほど!
悪魔のように白く不気味な体!

(ハジメマシテ皆サン!私ノ復活ニ立チ会エタナンテ、アナタ達は運ガイイワ!!)


「も、モンスターが喋った!!そんなことがあるのか。」

モンスターの精霊を見たことがないいつきは、驚きを隠せずにいる。
そんな中、黒須が一歩前に出て言った。

「白峰をどうした?伊東だってそうだ!!!」


(フフフ、知リタイ?知リタイヨネ?ソウネ、教エテアゲル!!説明スルノモ面倒ダカラ皆ニ見セテアゲルワ。彼ラガドウナッタカ)






急に周りが暗くなると、光がその場を包む。
全員がゆっくり目を開けるとそこには一人の少年が立っている。

伊東淳也!
彼の手には「悪魔の調理師」のカードが握られている。

「俺は何をしている?ここはどこだ?なぜここにいる?」


そんな疑問ばかりを口にしている。

周りは砂漠。
砂、砂、砂ばかり。
所々もり上がった場所もあるが、砂以外のものが何もない世界。


「ここにはデュエリストもいない。何も無い!」

そう言って淳也はゆっくりと目を閉じた。
そしてその場に倒れ込んだ。
「悪魔の調理師」のカードだけがしっかりと彼の手には握られている。


(コレガ彼ノ心ニ最モ近イ世界よ!今、アナタ達ガイル世界ハ『第1次元』ト呼バレテイルノ!)

ディスティニー・クリエイターは説明を始めた。



私たちの住む世界は第1次元。
宇宙は球形をしている(そんなバカなとか言わないで!!)
それが時計回り第2次元、第3次元と数珠のように12個繋がっている。

隣り合う次元にはごくまれに人が迷い込むことがある。
それが「神隠し」などと言われる現象。
これらの世界には少なからずデュエルモンスターの力が関係している。
ゆえに強い意志と鍵となるカードがあれば、違う次元へと進むことができる。
その場合に確率的として最も高いのは丁度反対側の次元。
第1ならば第7といった感じだ。

ただし、元の世界に戻るためにはさらなる強い意志と運が必要になる。
強い意志は次元を渡るための原動力!
1度違う次元に来てしまうと、次に行く次元はランダム!
もといた世界をピンポイントで狙うのは難しい。

普通の人間ならば、その次元で一生を終えることになるだろう。
淳也の置かれている状態はまさにそんなところだ。



「ちょっと待て!俺達全員無事別の次元から帰還したんだぜ!」

迎人が口にする。

(アナタノヨウナ低レベルデュエリストにソンナ力ハ無イ!)

「な!なんだと!」


(マア、ソンナ話を続ケテイテモ面白ク無イ。ソロソロデュエルヲ始メマショウカ!!十悟君!!)

ディスティニー・クリエイターは不気味に微笑みながら言った。


「待って!十悟は白峰とのデュエルで疲れている。ここは私が!!」

朝子が立候補する。


「いえ!十悟君のためにも私が行きます!!」

智花も負けじと名乗りを上げる。


(木村智花!龍ニ選バレシ、デュエリスト!!十悟君ヲ私ダケノモノニシタラ、可愛ガッテアゲテモイイワ!!)


「ちょっと!!十悟をあんただけのものってどういうことよ?」

(ウルサイワネ!邪魔ナ者ハ消シテシマイマショウカ)


ディスティニー・クリエイターがその指をまっすぐ朝子に向ける。
次の瞬間、朝子の体は氷漬けとなった。
怒りの表情のまま!!



「あ、朝子!!」

みんなが同時に叫ぶ!



(フフフフ!消エナサイ!!)

剛腕を振り上げ氷を砕いた。
そこには何も残っていない。


(邪魔者ハ消エタ!サアデュエルニシマショウ!)

そう言うとディスティニー・クリエイターの腕からデュエルディスクが生えてくる。
十悟も素早くデッキをカットし始めた。


「(あいつを倒す。絶対に!朝子や伊東君のためにも負けられない)」

仲間を奪われた悲しみ、怒り!
普段はあまり感情を表に出さない十悟もこの時ばかりは違った。


「デュエル!!」


相馬十悟LP:8000
運命の創造者LP:8000



相手デッキ:35


「僕の先行!カードドロー。」


クリクリ!!
トゲクリボーは針を逆立たせた。



「(そうか!おまえも怒りを感じているんだね!!)僕は『異次元の女戦士』を攻撃表示!!カードを1枚伏せてターンエンド!!」



異次元の女戦士 ☆4 光属性 戦士族
ATK1500 DEF1600
「このカードが相手モンスターと戦闘を行った時、相手モンスターとこのカードをゲームから除外する事ができる。」



「私ノターン。ドロー。サテ、メインフェイズニ入リマショウカ。」


「今だ!!罠発動『攪乱作戦』あなたは手札をすべてデッキに戻しシャッフル!同じ枚数ドローしてもらいます!!」


十悟はここぞとばかりに罠を発動させる。
運命の創造者は言われた通りドローする。


「この瞬間、手札から『トゲクリボー』の効果発動!!手札をすべて墓地に送ってもらいます!!」



攪乱作戦 通常罠
「相手は手札をデッキに加えてシャッフルした後、元の手札の数だけデッキからカードをドローする。」



トゲクリボー ☆1 地属性 獣族
ATK300 DEF200
「相手がドローフェイズ以外にカードを3枚以上ドローした時、このカードを手札から除外することで、相手の手札が0になるように墓地へ送る。」



「よっしゃ!いきなり手札全捨てだぜ!!これで十悟が圧倒的有利!!」

迎人はガッツポーズして喜んだ!!
他の皆も笑顔を浮かべた!

だが十悟はまっすぐ相手を見据えたままだ。
こんなものでは終わらない。
それが分かっていたのかもしれない。

「墓地ニ送ラレタ『運命決定』ノ効果発動!!デッキカラ『運命』ト名ノツクカードヲデッキノ一番上ニ置クワ。対象ハモチロンコノカードヨ!!」



運命決定 通常魔法
「このカードが、フィールドまたは手札から墓地に置かれた時、デッキの運命と名のつくカードをデッキの1番上に置く。」



レベル10
運命の神だった。
目の前のモンスターと同じ絵柄が記されている。



DESTINY・CREATER‐運命の創造者 ☆10 神 幻神獣族
ATK X000 DEF X000
「このカードはフィールドと手札にこのカードしかない場合のみ特殊召喚できる。このカードを対象とする魔法、罠、効果モンスターの効果は無効となる。このカードを特殊召喚したプレイヤーはドローフェイズの前にフェイズを1つ宣言する。以後そのフェイズをすべてスキップする。 ???」


運命デッキの恐怖はまだ始まったばかりなのかもしれない。



31章:闇に落ちる友

「こ、ここはどこ?私は今まで十悟のデュエルを見ていて・・・」

朝子はすべてを思い出して黙り込んだ。
伊東淳也と同じ、異世界に迷い込んだと直観した。

だが、彼女が立っているのは森の中。
不気味というよりは、童話に出てくるようなメルヘンな感じだ。



「いっけなーい。早くしないと遅れちゃう!!」

朝子の後ろを一人の女性が通りかかる。
振り返ると見覚えがあるピンクの髪!羊の飾りを離さず持っている。


「く、久美?」

久美に似ているが20代位と少し大人びている。
その女性は朝子の言葉が聞こえないのかそのまま通り過ぎようとする。

「待って!久美!!」

久美を追って走り出すと、彼女の向う先はすぐに分かった。
森の中にひっそりと建つ教会!!
白を基調にしたその建物から大きな鐘の音が鳴り響く。



久美は人がいる方へと走って行く。

「いたいた、迎人君!澪さん!いつき君!」

3人が振り向く。
みんなどことなく大人びた雰囲気だ。


「遅いよぉ。久美ちゃん!始まってまうところやったよ!結婚式!」

澪が笑顔で久美に話しかける。
その言葉を聞いて朝子は一瞬ドキッとした。
女の子なら誰でもそうだろけれど・・・。

その瞬間、教会の扉が開く。
そこから現れる2人を見て朝子は愕然とする。
その場に膝をついた彼女の目からは大粒の涙が次々とこぼれ落ちる。


「十悟と智花・・・・」

一瞬時が止まったような感覚。
次の瞬間、朝子は教会に背を向けて走り出した。
目の前のものすべてを否定したくて。

森をひたすら走った。
もう何キロ走ったか分からないと思い、目をそっと開けるとそこには同じ教会がある。

相変わらず2人を祝福し続けるその空間に彼女は嫌気がさしてきた。
心の奥底から醜い感情が湧いてくるのが分かった。


「憎い!智花が!!ううん、二人を祝福する迎人もいつきも澪も、久美も!!」

(ダッタラ十悟君ヲ私達ダケノモノにシチャエバイイ)

どこからともなく声が聞こえる。
甘美で魅力的な声と言葉!


「私達だけのもの!!そうよ、智花に奪われるくらいならいっそ!!」

朝子の体が徐々にモンスターへと姿を変える。
黒衣に身を包み、不気味な杖を持っている。
朝子はゆっくり目を閉じた。


(フフフ、成功!!)









現実の世界


「次ノターン、貴方ハ絶望ヲ味ワウ事ニナル。ターンエンドヨ。」

運命の神は不気味に笑いながら言った。



「僕のターン。ドロー。(このターンに相手デッキから直接カードを墓地に送れるカードは僕の手札にはない。運命の神を召喚される!!)」

十悟にも緊張がはしる。
手札のカードを確認しながら次の一手を考える。


「僕はモンスターをセット、『異次元の女戦士』を守備表示に変更。さらにカードを2枚伏せてターンエンド。」

金髪の女戦士は剣を構えて守りの体制をとった。




心の奥底にある太鼓が徐々に大きく叩かれるような感覚。
恐怖と好奇心が混ざりあいせめぎ合う、そんな感情が十悟を襲っている。



「私ノターン。ドロー。イヨイヨネ!!私ノ力、見セテアゲルワ!!!」



相手デッキ:33




「『DESTINY・CREATER‐運命の創造者』を特殊召喚!!モンスター効果発動!!クリエイト・オブ・ライブラリー!!!コノカードノ攻撃力ハ自分ノメインフェイズ1ニ墓地カラデッキニ戻シタカード×1000ポイントトナル。ソシテデッキマタハ墓地カラデッキニ戻シタノト同ジレベルヲ持ツ『運命』ト名ノツクモンスターヲ特殊召喚デキル!!出デヨ!『運命の皇女』!!」



DESTINY・CREATER‐運命の創造者 ☆10 神 幻神獣族
ATK X000 DEF X000
「このカードはフィールドと手札にこのカードしかない場合のみ特殊召喚できる。このカードを対象とする魔法、罠、効果モンスターの効果は無効となる。このカードを特殊召喚したプレイヤーはドローフェイズの前にフェイズを1つ宣言する。以後そのフェイズをすべてスキップする。このカードの攻撃力は自分のメインフェイズ1に任意の枚数墓地からデッキに戻したカードの数×1000ポイントとなる。この効果は次の自分のターンのドローフェイズまで続く。この効果でデッキに戻したカードの枚数と同じレベルの『運命』と名のつくモンスターをデッキまたは墓地から特殊召喚できる。この効果で特殊召喚したモンスターはフィールドに1体しか存在できない。」



ATK X000→6000



運命の皇女 ☆6 闇属性 魔法使い族
ATK2400 DEF1200
「1ターンに1度デッキからカードを10枚墓地に送り、相手のライフに2000ポイントのダメージを与える。」



モンスターはゆっくりと目を開ける。
その顔を見て一同が騒然となる。


「あ、朝子!?何で?」

十悟たちの目の前に現れたモンスターは先ほど消えたばかりの仲間の顔をしている。


「ふふふ。戻ってきたわよ!!十悟、あんたを私達のものにするために!!」

「そんな本当に朝子さん?」

智花が驚いて声を上げる。


「ディスティニークリエイターの幻覚かもしれない!!朝子があんなことを言ったことはない。姿形は真似できても、僕たちを騙すことはできないよ!!」

「クフフフ、ソウ思イタケレバソウ思ッテレバイイワ。」

運命の神は不気味に笑った。

「モンスター効果発動ヨ。デッキ10枚ヲ墓地ヘ!!相手ライフニ2000ポイントノダメージヨ!!」


モンスターは杖をまっすぐ十悟に向けた。
次瞬間、強力な衝撃波が十悟を襲う。
あまりの衝撃に十悟は吹き飛び倒れ込んだ。


相馬十悟LP:8000→6000
運命の創造者LP:8000



32章:運命デッキの脅威

「十悟ぉ!そんなんじゃ倒れないってことぐらい知ってるんだからねぇ」

「バトルフェイズヨ!!私自身デ『異次元の女戦士』を攻撃!!ディスティニー・バースト!!フフフ、女戦士ノ効果ハ無効ヨ!!」

地中から巨大な爆発が起こり、女戦士を一瞬で葬った。
あまりの爆風に皆目を閉じる!


「追撃!!サア朝子サン、彼ノモンスターを攻撃ヨ!!」

「その呼び方はやめろ!!」

十悟は思わず叫んだ。
普段あまり大きな声を上げない彼だがこの時は違った。


「行くよぉ、十悟ぉ!!ディスティニー・マジック!!!」

杖の反対側が剣のように鋭い刃に代わり、伏せられたモンスターを両断した。
クリスタルのように氷を纏った魔獣が砕け散った。


「『氷結魔獣ザ・ギーネ』、モンスター効果発動!!相手デッキ5枚をゲームから除外する。タクティクス・フリージング!!」

デッキ5枚がフィールドに現れ、次々と凍結していく。
次の瞬間、音を立てて砕けた。


「さらにザ・ギーネが破壊されたことで、速攻魔法『魔獣の報復』発動!!消えされ!朝子の幻影よ!特殊召喚『邪念魔獣ラム・シューラ』、守備表示だ。」

暗闇から邪悪な魔獣が魔法使いの体を貫いた!!
仲間の報復のための容赦ない攻撃だ!



「い、痛いよ十悟!!でも、こんなんじゃ諦めないわよ。アハハハハ!!」

深手を負いながら不気味笑う。
その姿に皆恐怖を覚え初めている。
そう言いながらモンスターは消えていった。



氷結魔獣ザ・ギーネ ☆2 水属性 悪魔族
ATK:700 DEF:600
「リバース:相手デッキの上から5枚をゲームから除外する。」



邪念魔獣ラム・シューラ ☆4 闇属性 悪魔族
ATK:1200 DEF:1800
「このカードがゲームから除外されたときお互いはデッキの上から5枚をゲームから除外する。」



魔獣の報復 速攻魔法
「このターン『魔獣』と名の付くモンスターが破壊されている場合、破壊されたモンスターとは違う属性の魔獣モンスターをデッキから特殊召喚し、相手モンスター1体を破壊する。」



「コンナ非情ナ事モデキルノネ。以外ダワ!」

「あなたの言葉に惑わされるつもりはない!!」

十悟は語気を強めて言った。
怒りが徐々に込み上げてくる。


「手札も無いのですることはないですね?僕のターン。ドロー。モンスターをセット、カードを1枚伏せてターンエンド!!」


お互い手札を使い切った。


「私ノターン。私自身ノ効果デ、エンドフェイズヲスキップスル。ドローフェイズニカードヲドロー。メインフェイズ1に墓地のカード6枚をデッキに戻し、墓地の『運命の皇女』を再びフィールドに戻す。これで再び攻撃力は6000、そして彼女が甦る。」



相手デッキ:28


「『運命の皇女』効果発動!!デッキ10枚を墓地に送り、相手ライフニ2000ポイントノダメージヨ!!」

「フィールド上の魔獣を除外してカウンター罠発動『魔獣王の宣告』!!モンスター効果を無効にして、バトルフェイズをスキップだ!!さらに『邪念魔獣ラム・シューラ』の効果発動!!お互いにデッキからカードを5枚除外する!!(モンスター効果でデッキにカードが戻せなければ攻撃力は上がらない。ならば除外していくのみ!!)」

「メインフェイズ2デ永続魔法カード『運命の刻印』発動!コノカードハフィールド上ノ『運命』ト名ノツクモンスターノ数ダケデッキノカードヲドロースル事ガデキル。コレデターンエンドヨ!!」



運命の刻印 永続魔法
「自分のターンにこのカードをリリースすることで自分フィールド上の『運命』と名のつくモンスターの数だけデッキからカードをドローできる。」




「僕のターン。ドロー。」

「十悟ぉ、私を墓地に送るなんてひどいなぁ。暗くてジメジメした場所で寂しかったよ。だから決めたの。友達を呼ぼうって!!」

「どういうことだ?」

十悟や他のメンバーも注目する。


「ソウネ、十悟君ノライフガ1000ポイント減ルタビニ皆サンヲ朝子サンと同ジ世界ニ招待シマショウ。正確ニハ同ジデハナイケレド。」

運命の神が代わって説明した。


「(手札は今ドローした『幻光魔獣アル・ミューレ』のみ。ダメか!!)モンスターを守備表示にしてターンエンド!!」

十悟の心にわずかずつだが恐怖心が芽生えはじめる。
その恐怖体が震えてくる。



「私ノターン。ドロー。モンスター効果デ、スタンバイフェイズヲスキップスル。手札カラ『運命の囚人』ヲ召喚!!」



運命の囚人 ☆4 闇属性 戦士族
ATK2200 DEF600
「このカードは攻撃できない。自分のスタンバイフェイズにこのカードの元々の攻撃力の半分のダメージを相手に与える事ができる。この効果で相手にダメージを与えた場合このカードを破壊する。」



「そ、相馬か。ふふ、不様な姿だろ!!笑いたければ笑え!!」

傷だらけの囚人は口を開き十悟に語りかける!!
顔を見れば分かる。
あの時、消えたはずの伊東淳也の姿だ!


相手デッキ:12



(た、頼む・・・、あいつを・・・)


「え!!この声は!!」


(相馬十悟!あいつを、淳也のやつを助けてやってくれ!!)


「デ、悪魔の調理師!!」


(あいつの心は、『運命の囚人』の中にある。もちろん反町朝子の心も『運命の皇女』中!!これは事実だ。)


「嘘だ!!今度は何を企んでいる!?」

十悟は周りの事など構わず叫んだ。
異世界での裏切りを忘れてはいない。


(俺はお前に忠告しに来た!!このままでは大切なものを失う。そして世界は・・・いや、すべての次元は地獄と化す!!お前はデュエルに勝て!!そしてできることなら淳也を救ってやってくれ!)


悪魔の調理師の声はそれ以降聞こえてこなかった。


十悟は話の内容を整理する。
これは事実か否か!
事実ならどうすればいい。

デュエルに勝つ!
それしかない・・・・・。



33章:消えゆく友

「行クワヨ!墓地ヲ全テデッキニ戻ス、見セテアゲルワ圧倒的ナ攻撃力差!!!ディスティニー・ライブラリー!!!」


ATK X000→14000


相手デッキ:27



「サア朝子サン!仲間ヲコチラノ世界ヘ!!」

「行くよぉ十悟!!」


デッキが10枚墓地へと置かれる。
漆黒の衝撃波が十悟を襲う。



「ぐわぁあ」


相馬十悟LP:6000→4000
運命の創造者LP:8000



「久美、迎人こっちに来なよ!!」

朝子がそう言って手まねきする。
すると二人の体が足元から徐々に凍っていく。



(久美のアネゴ!!)

3匹のおジャマが一斉に集まってくる。
久美の周りを行ったり来たりしてあたふたしている。


「か、体が!!ごめん、おジャマたち!!恋人に会わせてあげられなく・・・て」


(アネゴーーー!!)

おジャマたちが現れて久美の周りで泣いている。
悲しそうにシクシクと。



「十悟!!最後に勝てばいいんだぜ!!信じてるから・・・な!!」


迎人が笑顔で言ったが、彼の体も凍っていく。
二つの氷の像が出来上がる。


「消エナサイ!!!」

運命の神は朝子と同じように、二つを粉々に砕いた。


「迎人!!久美!!!」

十悟は声が枯れるくらい叫んだ。
その声が屋敷の中にこだまする。


「何で?何でデュエルで友達が消えてかないけないん?」

「こんな簡単に消えるのか?僕たちも?」

澪といつきも不安がいっぱいになってつぶやく。
体が震えているのが分かる。


「フフフ、貴方達モスグ二人ト同ジ運命ヲタドル!!」

「久美、迎人、朝子・・・・どうすればいいんだ?」

十悟はディスクを見つめながら考える。
デッキを破壊してもすぐ再生。
フィールドからは運命の神や仲間から容赦ない攻撃が来る!



「バトル!!私自身ノ攻撃!ディスティニー・バースト!!」


運命の神の攻撃が起こす爆風でフィールドのモンスターが葬られる。
白銀の鎧をつけた魔獣が吹き飛ぶ。


「く、幻光魔獣が・・・。」

息つく間もなかった。
モンスターは杖を構える。


「私の攻撃ね!行くよぉ十悟ぉ、ディスティニー・マジック!!」



相馬十悟LP:4000
運命の創造者LP:8000→7600



「え?倒せない!」

「セットしていたのは『紅蓮魔獣ダ・イーザ』だ。僕の除外カードは7枚だから。」



紅蓮魔獣ダ・イーザ ☆3 炎属性 悪魔族
ATK? DEF?
「このカードの攻撃力と守備力は、ゲームから除外されている自分のカードの数×400ポイントになる。」



DEF?→2800



「フフフ、デモ私ノ効果ノ前デハ無力!!」

運命の神はまた不気味に笑いだす。
運命の皇女とのコンボでほぼ毎ターン、1万近い攻撃力を叩き出している。
確かにその通りだ。



「・・・」

十悟は何もしゃべらない。
仲間をまた失った悲しみに彼の心も打ちのめされていた。


「デハ、メインフェイズ2ニ『運命の刻印』ノ効果!!デッキからカードを3枚ドローシテターンエンド。」













沈黙が続く・・・
そんな中、智花がそっと口を開く。






「私は・・・私は十悟君が勝つと信じています。異世界で戦ったとき、運命は変えられるって証明してくれましたよね。だったら今度取り戻しましょうよ!私たちの運命!楽しかった学園生活を!!」


「それは無理よ!!智花!あなたに十悟を渡さない!十悟のライフは残り4000!それが0になったらあと4人こちらの世界に招待できる。十悟を入れると5人だけどね。十悟以外にいつき、澪、黒須先生、クロノス先生!!」


運命の皇女は指を1本ずつ折りながら数える。
智花が入っていない。


「あはははは。あなたは・・・この次元とともに消える。消えて無くなっちゃえばいいんだ。あはははははは・・・。」

笑い声が響く。
それに皆が恐怖し黙り込む。


「(フフフ朝子サン、アナタハ本当ニイケナイ子ネ。マア私ハソノ方ガ面白イケドネ)」

運命の神は心でそう思っていた。
人間の心が作る負の感情。
そこから生まれる闇が魔物にはたまらなく心地よいらしい。





「朝子・・・・僕にはデュエルを続けることしかできない。そうだ!!このデュエルの結末がどうなろうと、後悔だけはしないデュエルにするんだ!そして勝つ!僕は僕のやり方で!!」


十悟は運命の神をまっすぐ見据え、はっきりと言った。


「十悟君!ウチも信じとる!勝ってや!!」

「相馬!君は僕たちの希望だ!!」

「十悟君!頑張って下さい!!」

澪、いつき、智花が叫ぶ!
十悟はそれに応えるとデッキの1番上のカードをゆっくりと引きぬく。

「僕のターン。ドロー。」



34章:新たな魔獣

「僕は・・・カードを1枚伏せて、ターンエンド。」

十悟はドローしたカードをそのままセットした。



「モウ、オシマイノヨウネ。私ノターン。モンスター効果デメインフェイズ2ヲスキップ!!!ソシテカードヲドロー。彼ラモ紹介シマショウ!魔法カード『召喚陣・闇』ノ効果ヲ発動!!選択デキルカードハ『運命の大戦士』、『運命の聖母』ノ2枚!!ソシテ最後ノカードハ2枚目ノ『召喚陣・闇』、迎人君ト久美サンガ召喚サレマス!!モットモ効果ハ無効化サレルケドネ。」



運命の大戦士 ☆8 闇属性 戦士族
ATK3000 DEF2500
「自分のフィールド上にこのカード以外の『運命』と名のつくモンスターが存在する場合、このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。」



運命の聖母 ☆5 闇属性 天使族
ATK2100 DEF1700
「自分スタンバイフェイズ時、自分フィールド上に存在する『運命』と名のつくモンスターの数×800ライフポイント回復する。」



召喚陣・闇 通常魔法
「自分は手札をすべて公開する。その中の闇属性モンスター1体を相手がランダムに指定する。そのモンスターを特殊召喚することができる。ただしその効果は無効となる。」



黄金の甲冑に身を包み迎人の顔をした戦士と久美の顔をした聖母?が現れフィールドに現れる。



「サラニ私自身ノ効果デ、墓地13枚ヲデッキニ戻ス。朝子サン、仲間ヲ招待シテ差シ上ゲマショウ。」



ATK X000→13000



デッキが10枚墓地へと置かれる。
そして黒い衝撃波が十悟を襲う。


「ごめん!みんな!!」

「うふふふ、十悟は私のもの!あと少し、あと少しで・・・あははははは!!」


相馬十悟LP:4000→2000
運命の創造者LP:7600



「今度は黒須先生とクロノス教諭よ!!」


二人の体が次々と凍っていく。



「十悟、お前にはもっと教えてやりたいことがあったんだけどな・・・」

「シニョール十悟・・・あなたは強い、そして優秀なノーネ。どうかこの次元を救ってほしいノーネ!!」


二人の言葉もそこまでだった。



「(この罠を発動させればこのターンはしのげる。でも・・・)」

十悟はセットしたカードを確認しながら考える。



「相馬、迷うな!!勝つためなら僕たちのことは考えなくていい。」

「ウチも同じ気持ちよ!!」


残った仲間も必至に語りかける。
十悟を信じて応援する。



「コノターンデ皆オシマイヨ!!バトル!」

運命の神が語りかける。
そして、攻撃を宣言した。



「ライフを1000支払い、『魔獣の防御壁』を発動だ。これによりあらたなる魔獣を召喚する。(ペガサスさん、今こそ使わせてもらいます)相手モンスターの『運命の大戦士』を対象としてそのレベル合計と同じになるようにデッキから『魔獣』と名のつくモンスターを特殊召喚!!出でよ『魅惑魔獣』『可憐魔獣』『妖艶魔獣』『恍惚魔獣』、守備表示だ。」



「じゃあ今度はいつきの番!!」


朝子が叫ぶ!
いつきが抵抗しようとしても体は容赦なく凍っていく。



「ごめん、いつき君!!」



魔獣の防御壁 通常罠
「ライフ1000ポイント支払って相手モンスター1体を指定して発動する。そのモンスターとレベル合計が同じになるようにデッキから『魔獣』と名のつくモンスターを特殊召喚する」



魅惑魔獣イクス・ジェーン ☆2 炎属性 悪魔族
ATK600 DEF200
「このカードが通常召喚に成功した時、デッキから『魔獣』と名のつくモンスター1枚をデッキから墓地へ送る。このカードが墓地に存在する時、自分のスタンバイフェイズにカードを1枚ドローすることができる。相手は自分のメインフェイズにデッキから2枚カードを除外することで、墓地のこのカードを除外できる。」



炎を纏うその魔獣は深紅のシャドウと口紅をつけた悪魔だ。
燃え上がる剣を手にしている。
それをまっすぐ構えて防御の体制をとる。



可憐魔獣エレン・ファルク ☆2 風属性 悪魔族
ATK900 DEF300
「このカードが通常召喚に成功した時、デッキから『魔獣』と名のつくモンスター1枚をデッキから墓地へ送る。このカードが墓地に存在する時、相手スタンバイフェイズに1000ポイントのダメージを与える。相手は自分のメインフェイズにデッキから2枚カードを除外することで、墓地のこのカードを除外できる。」



エメラルドグリーンの髪をなびかせる悪魔だ。
深緑の2本の短剣を構えた。



妖艶魔獣アルン・クォームル ☆2 地属性 悪魔族
ATK800 DEF500
「このカードが通常召喚に成功した時、デッキから『魔獣』と名のつくモンスター1枚をデッキから墓地へ送る。このカードが墓地に存在する時、自分のスタンバイフェイズにゲームから除外されている自分のカード1枚を手札に加えることができる。相手は自分のメインフェイズにデッキから2枚カードを除外することで、墓地のこのカードを除外できる。」



露出の多い服を着た悪魔だ。
土色をした斧を相手に向けて防御体制をとる。



恍惚魔獣ウラル・ザミヌ ☆2 水属性 悪魔族
ATK700 DEF400
「このカードが通常召喚に成功した時、デッキから『魔獣』と名のつくモンスター1枚をデッキから墓地へ送る。このカードが墓地に存在する時、相手スタンバイフェイズに相手の手札1枚をゲームから除外する。相手は自分のメインフェイズにデッキから2枚カードを除外することで、墓地のこのカードを除外できる。」



青く透き通る眼を持つ悪魔だ。
海の色に似た鮮やかな長槍を構えた。




「ソンナ低級モンスター、何体出シテモ同ジヨ!一斉攻撃!!!」


今召喚されたばかりのモンスターが次々と破壊されていく。


「く、だけど『運命の囚人』は攻撃できない!まだモンスターが・・・」

「甘イ、早速彼ノ効果ヲ使ウワ!!墓地に存在する『運命の吟遊詩人』、この効果でフィールド上のモンスター1体はもう一度攻撃できる。」



運命の吟遊詩人 ☆4 闇属性 戦士族
ATK1900 DEF1000
「墓地に存在するこのカードを除外することで、フィールドの『運命』と名のつくモンスター1体はこのターン2回できる。」



いつきの顔をしている。
神父の切るような漆黒の服に身を包んでいる。
そのモンスターが消えると、運命の大戦士が再び剣を振り上げた。


「ダ・イーザ粉砕!!!アナタヲ見守ル仲間モアト2人!!」


運命の神が十悟を見下ろすように言う。


「十悟ぉ、もう諦めちゃいなよぉ。デッキの上に手を置けばいいんだって。澪と一緒にこっちに来なよ!!そうすれば十悟も私も幸せになれるの。分かる?分かるよねぇ。分かったらさっさとサレンダーしなさいよ!!!!」

朝子は大声でサレンダーを要求する。
モンスターとなった彼女の言葉に智花や澪も恐怖している。



「ワタシハターンエンドヨ!!」


運命の神が言葉をはさむ。

十悟はモンスターとなった仲間を見つめる。
ふと、不思議なことに気づく。


「朝子以外・・泣いてる・・・・。」

(気づいたか十悟!!彼らは闘っているのだ。自らの心と。その抵抗の証があの涙だ!!さあ次のターン、私を呼ぶのだ!!)

厳かでありながら優しい声
異世界で聞いたあの声と一緒だ。



「僕のターン。ドロー。僕は墓地の魅惑魔獣と妖艶魔獣の効果発動!!ゲームから除外されている邪念魔獣を手札に加え、カードを1枚ドロー。行くよ!手札の邪念魔獣を通常召喚だ!!」

十悟は不気味な闇の魔獣をフィールドに出す。


「この瞬間、フィールドと墓地に6属性の魔獣がすべて揃った。これらを除外することで、手札から『魔獣王アルド・ヴァーム』を特殊召喚!!!モンスター効果発動!!相手デッキを半分にする。そしてそのカードはゲームから除外だ!!ハーフ・オブ・ライブラリー!!」



魔獣王アルド・ヴァーム ☆8 闇属性 悪魔族
ATK3500 DEF2450
「フィールドまたは墓地からそれぞれ違う属性の6種類の『魔獣』と名の付くモンスターを除外した時のみ特殊召喚可能。このカードが特殊召喚に成功した時、相手デッキを半分(切り上げ)にする。自分のエンドフェイズ時にゲームから除外している『魔獣』と名の付くモンスターを1枚、セットまたは特殊召喚できる。




「特殊召喚のために除外された邪念魔獣の効果発動!!お互いにデッキからカードを5枚除外する!!」



相手デッキ:3枚



「ク、何処ニコンナ力ガ眠ッテイタトイウノ?」

運命の神が驚きの声を上げる。
朝子も目を丸くする。



「まだだ!魔法カード『グレイブ・デリーター』発動!!お互いの墓地のカードをすべてゲームから除外する。」


地中に轟音が聞こえる。
墓地のモンスターの魂が次々と解放されていく。



グレイブ・デリーター 通常魔法
「お互いのデッキのカードをすべて除外し、発動後このカードを除外する。」



「運命の神によってデッキに戻すカードは無い。そして『運命の皇女』で墓地に送るにはデッキが10枚必要!!しかしあなたのデッキは残り3枚!」


十悟は相手を指さして叫ぶ!


智花たちも勝負の行方を見守る。
この先にどんな結末が待っているのか。
そして十悟のフィールドには序盤から伏せられたままのカードが1枚残っていた・・・。



35章:最後の伏せカード!負けた勝者!?

「(迎人たちが自分の心と戦っているんだ。攻撃はできない!)僕はこれでターンエンドだ!!」

十悟が宣言すると運命の神がわずかに微笑む。


「ヤハリ、アナタハ甘イ!私ノターン。モンスター効果、メインフェイズ1ヲスキップ!!カードドロー。フフフ、アハハハハハ!!速攻魔法『絶対運命召喚』発動!!コノカードハ運命ノ神ヲ召喚条件ヲ無視シテデッキカラ特殊召喚デキル!モンスター3体ヲリリースシテ、出デヨ!!『DESTINY・BREAKER‐運命の破壊者』!!」



「ば、バカな!そのカードは黒須先生が管理していたはず・・・は!まさか、あの時・・・。」


「ソウヨ。最初ニ彼ノ魂ヲ奪ッタ時!!コンナ簡単ニ手ニ入ルトハ思ワナカッタケド!!」



DESTINY・BREAKER‐運命の破壊者 ☆10 神 幻神獣族
ATK4000 DEF4000
「このカードはフィールドと手札にこのカードしかない場合のみ特殊召喚できる。このカードを対象とする魔法、罠、効果モンスターの効果は無効となる。このカードを特殊召喚したプレイヤーはドローフェイズの前にフェイズを1つ宣言する。以後そのフェイズをすべてスキップする。このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時相手はカードの種類(魔法、罠、モンスター)を1つ宣言する。デッキのその種類のカードをすべて墓地へ送る。」



絶対運命召喚 速攻魔法
「フィールド上の『運命』と名のつくモンスター3体をリリースして発動する。レベル10の『運命』と名のつくモンスターの召喚条件を無視してデッキから特殊召喚する。」



迎人、久美、淳也の顔をしたモンスターが消滅していく。
禍々しく歪む闇から騎士とも悪魔ともつかない鎧の魔物が現れる。
すべてを威圧する凶悪な殺意、プレッシャー。



「ディスティニーブレイカー、攻撃力4000!!」


十悟の心にあの時の恐怖が再び蘇る!
魔獣王の攻撃力は3500。
攻撃を受ければデッキを破壊され、フィールドにモンスターはいなくなる。



「ソウ、『ディスティニーブレイカー』デ魔獣王ヲ破壊!アナタハ彼女ノ手ニヨッテ敗北スル!!」

「負け・・・。この勝負は僕の負けか・・・。相手のデッキを削りきれなかった。」

十悟は悔しそうにうつむく。
そしてゆっくり目を閉じる。


「いいじゃん、十悟!!十悟もこっちにきなよ!!!大丈夫、敗北の傷は私が癒してあげるから!!」


モンスターとなった朝子が語りかけてくる。
さっきとは打って変わり優しい声で話す!



「朝子サン、今マデ本当ニ御苦労様!彼ハアナタニアゲルワ。ソノ前ニ邪魔ナモンスターヲ消シ去リマショウ!!バトル!『ディスティニーブレイカー』で魔獣王を攻撃!!ディスティニーオーバードライヴ!!!」


剛腕が魔獣王を襲う。
魔獣王も楯で防ごうとするもその攻撃で砕け散った。



「くっ!!」


相馬十悟LP:1000→500
運命の創造者LP:7600




「モンスター効果発動ヨ!!サア、モンスター、魔法、罠。好キナカードヲ墓地ニ送ッテモラウワ!!!」

「罠カードだ・・・」

うつむいたまま宣言した。
十悟はわずかに残ったデッキから罠カードを墓地に送る。



「モンスターも手札も無い!!この勝負・・・僕の負けだ・・・・・・・・・・最後に頼みがある。朝子の手で僕のライフを0にしてほしい。」


十悟が小さな声でつぶやく。
運命の神はやれやれと言った表情で後を朝子に任せた。





「ありがとう!!十悟!やっと分かってくれたんだね。少し痛くするけど我慢してね!!」


朝子は笑顔で杖の先、尖った部分を十悟に向けた。
ゆっくり、ゆっくりと十悟に近づいていく。


あと3メートル!!!




あと2メートル!!




あと1メートル!




「十悟くーーーん!!!!」


智花が叫ぶ!!
張り裂けそうな気持が、その声からは伝わる。






勝利を確信しきった運命の神がわずかに目をそらす。
その瞬間を十悟は見逃さなかった。

朝子と十悟の間にリバースカードが現れる。
罠カード!!



その瞬間!
相手フィールド上に爆炎が起こる。


朝子が驚いて後を振り向く!
運命の神2体が炎に包まれている光景だ。



「一体何ガ・・・?」


爆炎の中運命の神が声を上げる。
その狂暴な眼差しを十悟のフィールドに向ける。


「罠カード『D.D. ダイナマイト』を発動した。除外されているカードは32枚、よってダメージは9600!!」

十悟の目から涙がこぼれる。
信念を曲げた。
相手の命(ライフ)を奪わないという信念を。



D.D. ダイナマイト 通常罠
「相手が除外しているカードの数×300ポイントダメージを相手ライフに与える。」



相馬十悟LP:500
運命の創造者LP:7600→0



「ヨ、ヨクモ騙シタワネ!!」


業火の中から運命の神が叫ぶ!!


「いいや!!相手のデッキを0にできなかった時点でこの勝負は僕の負け!!それは変わらない事実!!僕はまだまだ弱い。自分の信念を曲げなければ勝利できなかった。」


「まさか?私に攻撃させたのは、あの爆発から私を守るため・・・?」


十悟は笑顔でうなずいた。
朝子は杖を落とす。
杖と黒き衣装が消え、制服姿の朝子に戻った。


「ごめんなさい!!本当にごめんなさい!!みんなを、みんなを巻き込んだ私なんかを・・・きゃ!!」


そう言いかけた時、朝子が後へと引っ張られる。
仲間とやっと触れ合えそうだった時間が無残にも無くなった。

十悟の目の前には鬼の形相の神が立っている。
業火に焼かれ、傷を負いながらも。


「許サナイ!!許サナイ!!許サナイ!!私ヲ、イイエ神ヲ冒涜シタ罪ハ彼女ノ体ト魂デ償ッテモラウワ!!!」


運命の神は朝子を掴んだまま一歩ずつ下がっていく。


「待て!!朝子を!!迎人やみんなを返すんだ!!」

十悟は必死に叫ぶ。
デュエルから来る疲労感からか、ふらつきながら。




最終章:勝利の後も

「行かせない!!!ウチの仲間をこれ以上、奪わせない!!」


澪が運命の神の前に立ちはだかる。
まっすぐ敵を見据えデュエルディスクを構えた。


「邪魔ヨ、消エナサイ!!!」

運命の神がその剛腕を振り上げる。
それが澪に当たる瞬間!

(澪!あなたの勇気見せてもらいました)


玉使いの巫女!!
彼女の声が聞こえる。
フィールドには虹を纏った不死鳥が舞降りる!
その攻撃を翼でいなして臨戦態勢をとる。


運命の神は別の方向に向き直るとそこには智花が立っている。
彼女もディスクを構え、モンスターを召喚する。


「スターダスト・ドラゴン!レッド・デーモンズ・ドラゴン!!ブラックローズ・ドラゴン!!!あなたに逃げ道などありません!!」


3体の龍が運命の神を威圧する。


前は虹纏う不死鳥が行く手を阻み!!
後は3体のドラゴンが威圧する!!


「ココマデトイウコトネ。デモコレデ終ワリジャ無イノヨ。知ッテルワヨネ、『運命の神』ハ3体存在スルコトヲ。私タチトハランクノ違ウ『最凶最悪の運命の神』ガ、イズレアナタ達ヲ絶望トイウ運命ニ導ク!!」


運命の神は真剣な顔で話す。
その話し方から嘘を言っているようには見えない。


「十悟君なら絶対負けません!!いえ、私だって!!」

「ウチだって!!もっともっと強うなって、そんな運命変えてみせる!!」


智花と澪が叫ぶ。
十悟もふらふらと立ち上がってやってくる。


運命の神は観念したらしく、ゆっくりとした口調で話し始める。


「彼ラヲ返シマショウ。タダ、覚エテオキナサイ!運命ハ常二残酷ヨ。常ニ不条理ナ選択ヲ迫ルモノ。例エソレガイカニ平和ナ世界デモネ。」

「そんな運命でも僕らは乗り越えていくよ。自分たちの運命は自分たちで作る。だから、仲間たちを返してほしい!!!」


運命の神はわずかに微笑んだ。
そう言うと運命の神の姿が消え始める。


「言イ忘レタケド、アノ時ノ朝子サンハ私ニ操ラレテナドイナイ!!アレガ彼女ノ本心。十悟君、アナタノ選択次第デハ・・・。アハハハハ!!!」


その声は不気味にこだまする。
すべてが消えると、消えていた迎人たちが現れる。
久美もいつきも!!
黒須やクロノス、淳也と白峰もいる。
もちろん朝子も!!


「僕の選択・・・。う、うわあ」

「十悟!!このこの。やっぱ勝っちまいやがったな。いやいいのか。何と言っても十悟に初黒星を付けるのはこの俺だからな。」


迎人が十悟に飛びついてくる。
そして変わらぬ笑顔で場を和ませる。






「オー。もう決着がついているようデースね。この様子を見る限り、何も心配いりマセーンね。」


突如現れたその外国人は不慣れな日本語を話す。


「ペガサス会長!!」

皆が同時に叫ぶ!!
十悟の近くまで行くとペガサスは腰が90度になるまで頭を下げる。
そしてゆっくり顔を上げる。


「これが日本のしきたりデシタネ。十悟ボーイ、ユーには大変感謝していマース。本来我々がしなければならない仕事を・・・」



その声を遮るように声を発する者がいる。

「ペガサス会長!!元は私が持ち場を放棄したのが原因!!処罰は受ける所存です。」

「いや!神狩りの使徒を作り『運命の神』を利用しようとした私に責任があります!!」

黒須と白峰が前へ出て頭を下げた。
クロノスも慌てて頭を下げる。
ペガサスは3人をゆっくりと眺める。
そして何かを考え、口を開く。


「いいデショウ。処分は追って知らせマース!!」


ペガサスの言葉でその場は収拾がついた。
十悟たちには黒須の処分が気になっていた。













その夜



澪の実家に泊まることになった仲間たち。
十悟たち男子3人で1部屋、澪たち女子4人が1部屋で一緒に寝ることになった。












女子の部屋



久美と澪が向かい合っている。



「いくでぇ。ウチはこの1枚に賭ける!!!」




澪はカードを確認する。
そして手元にあるカードを確認する。
それはモンスターでも魔法でも罠でも無い。


「ジョーカーや。さあ久美ちゃん、残るカードは2枚!!ウチらの一騎打ちや!!」


そう、彼女たちは「ババ抜き」をしていたのだ。
智花と朝子は先に上がっている。
二人が盛り上がっているのを見ながら、朝子はそっと部屋を抜け出す。
廊下には静寂な空気が流れている。



「朝子さん!!」

「智花!?」

智花が朝子を呼び止める。
しばらく二人が向かい合ったまま沈黙が続く。


「朝子さん、聞かせてくれませんか?ディスティニークリエイターが言っていたこと・・・。あれが朝子さんの本当の気持ちなのですか?」

「そ、それは・・・」


朝子は口ごもる。
うつむきながら、ゆっくりと首を縦に振る。


次の瞬間、智花の平手が朝子の頬に当たる。
モンスターのダイレクトアタックよりも、魔法・罠によって受けるダメージよりも、彼女の感情を揺さぶった。
朝子はゆっくりと智花の方を見る。



「私は・・・あなたをライバルだと思っていました。もちろん誰にだって負けたくない気持ちはあります。でも、あんなやり方は卑怯です!!!見損ないました。朝子さん!!あなたは最低です!!!」


涙ながらに語った智花は走ってその場を離れる。
洗面所に駆けていった。





朝子は部屋に戻って布団にもぐり込む。
その中でも智花の言葉がグルグル頭の中を回っている。


「(最低・・・そうね。私の心には醜いモンスターがいるの。うんうん。私がそのモンスターなのかも。本当はみんな私のこと恨んでいるんだ!私があんなことしなければって思っているんだ。絶対そうだ!)」

朝子はフラフラと歩き出す。
部屋を抜け出し誰もいない庭に出る。



「ハ、アハハハハハ!!私の心には醜いモンスターがいる!?だから何?それが私なのよ。智花になんか遠慮しない!!どんな手を使ったっていい。フフフ、アーハッハハハッハアハッハハ!!!」

月明かりに移る彼女の眼が怪しく光る。
何かに取り憑かれている?
そんな不気味な雰囲気が漂っている。
彼女の姿は誰にも見られていない。
見られていたら別の意味で大変だが・・・。








男子の部屋



十悟は目を覚ます。
何か嫌な予感がした。

「ん?うーん!!何だろう?運命の神は倒したはず!それとは違う。」

しばらく考え込んだ。
でも迎人といつきを見て自分も寝ようと決めた。
そんな十悟を襖と襖の間から見つめる瞳が!!


「ふふふふふ」


小さく微笑んでその場を離れた。
音も立てずにそっと!!











次の日



「さあ!みんな帰るぜ!!!」

迎人が元気いっぱいに叫んだ。
メンバーは屋敷からぞろぞろと出てくる。
裏山にはペガサスが呼んでくれたヘリが待っていた。
次々とヘリに乗り込んでいく。




「十悟ボーイ!!あなたには言っておかなければならないことがありマース!!」

ペガサスはヘリの入口で十悟を引きとめた。
十悟はペガサスの言葉に耳を傾けた。


「・・・・・・」


仲間たちにはプロペラ音で何も聞こえていない。
話しが終わるのを待っている形だ。
言い終わるとペガサスはヘリを降りて彼らを見送った。




「十悟?」



ペガサス会長は今なんて言った?

最後の運命の神の在り処!

それが僕の中?何の冗談だ。

僕自身が最後の・・・『最強最悪の運命の神』?



「(信じ無い!そんなこと信じるものか!!信じない・・・信じない・・・・)」


十悟は心の中でそう何度もつぶやいた。
ヘリに乗っている間も、家についてからも・・・・。


「嘘だ・・・・嘘だーーーー。」


運命は時に残酷だ。
たとえそれが平和な世界でも・・・。



彼らの運命は・・・・。











完結編『ジ・アブソリュート・ディスティニー』へ









あとがき

プロたん様を始め皆さんのおかげでディスティニーシリーズも2作目が完結となりました。
気づけば1年以上の長期連載。付き合って下さった方、本当にありがとうございました。
お気づきの方もいると思いますが、伏線がまだ残っています。
ゆえに完結編を計画中です。
読んでいただけるとうれしいです。
ささやかながらオマケも用意しました。よろしければ見てやって下さい。

→オマケを見てみる







ディスティニーシリーズの紹介動画へ


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