ディスティニーブレイカー
後編

製作者:???ネオスさん




後編の前にこの世界の復習

1、カードはデュエルディスクにセットすることで実体化する。

2、この世界のデュエルによりライフが0になった者は死ぬ。

3、モンスターは2種類に分けられる。ホークビショップや悪魔の調理師のように自らデュエルができるタイプとおジャマやワイトのようにデュエルできないタイプ。

4、城の図書館にはモウヤンのカレーのようなデュエルには使わない、サバイバル用のカードが収められている。

5、この世界に存在する6つの印章。底知れぬ力が込められているらしい。



11章:真夜中の回想

眠れない。
遠足の前日の子供のような気分だ。
明日はただの遠足では済まないだろうが。

十悟は部屋を出た。
個室の先の階段を登るとそこは塔の頂上に繋がっている。
昼間に城を探索した者しか多分知らないだろう。


「十悟も来たんだ。」

「朝子か。」

「いいよね。ここ。」

確かに真っ暗で特に何があるわけでもない。
ただ空には満天の星空が広がっている。

「ねえ、デュエルを始めた頃のこと覚えている?」

「確か伝説のデュエリスト、遊城十代がデュエルキングになったその日だったよね。」



数年前

遊城十代達はアカデミア卒業後、プロリーグに入った。
彼らの快進撃は続き、プロのトップはほとんど彼らが占めている状態だ。

武藤遊戯は突如旅に出ると宣言して以来デュエルの大会には顔を出していない。
海馬瀬人も会社経営が忙しく、自らデュエルすることは無くなった。
かといって、城之内克也の天下と言うわけでもない。

こうなった今、次のデュエルキングは誰かと言うことに世間は注目している。


「ねえ、十悟きいた?こんど海馬コーポレーションが新しいデュエルキングを決める大会をひらくんだって。それでね、パパがその決勝戦のチケットくれたの。おともだちと行きなさいって。ねえ、いっしょにいこうよ。」

「いく。海馬ドームだよね。ぜったい行くよ。じゃあ朝子の家にむかえにいくね。」



数日後の童実野町

「ついた。でもどうしてこんなに早く行こうなんて言ったの?」

「ぼくもデュエルモンスターズ始めようと思うんだ。それで行く前にカードを買おうと思ってるんだ。」

「え、じゃあ私も買おうかな。パパが多めにおこづかいをくれたし。」


2人の目の前には「亀のゲーム屋」の看板がある。

「ここか。」

カランカラン

「いらっしゃい。」

そこには仙人が・・・






じゃなかった、一人の老人がいる。
その歳には似合わない、オーバーオールを着ている。

「あの、デュエルモンスターズのカードはありますか?」

「こっちじゃよ。」

老人についていくと別コーナーが設けられていた。
沢山のカードがガラスケースに並べられている。

「ストラクチャーデッキは・・・ここか。」

十悟たちが選んでいるその後ろを一人の男が通りかかった。
身長は低め、髪は前髪が金、赤いところがあるが根元と大部分は黒である。

「じいちゃん。ただいま。」

ここまで言えば誰だか大体分かるはずである。

「よし決めた。」

「私も。」

「ほほ、それじゃ、レジの方まで行こうかの。」

その老人は体を動かすのが辛そうである。
もう歳なのかなぁ。

「いいよ僕が行くから。」

その特徴的な髪形の男が代わりにレジを打ちだした。


「すまんのぉ。」

老人は椅子に腰掛けてカードの整理を始めた。
その扱い方からカードを心底大切にしていることが分かった。


「よし!行こうか?」

「うん!!」

朝子は笑顔で頷いた。
二人揃って店をでた。








元デュエルキング、初代主人公を完全スルー。
子供は時に残酷である。

「海馬ドームはどうやって行けばいいのかな?」


今度から先に調べておこうね。
※ここでアドバイス、ブルーアイズの頭を探すといいよ。

「あの人に聞いてみようよ。」

「あのすみません。海馬ドームへはどう行ったらいいのでしょうか?」

「あら、あなたたちも行くの?」

その金髪の女性は、凛として隙の無い顔をしている。

「あ、あなたは天上院明日香さんじゃないですか?」

朝子は興奮しながら言った。

「ええ。そうよ。」

「わあ。昨日のデュエル見ました。私、あなたに憧れてデュエルを始めようと思ったんです。今日、カードを買ってきました。」

朝子と明日香がしばらく話しこんでしまったので十悟はしばらく近くのベンチに座って待つことにした。
買ってきたカードについていたルール解説書を読みはじめた。

「相手のライフかデッキを0にしたら勝ちか。ライフって確か命だよな。お父さんが人の命を奪う事は許されない!って言ってたけどなぁ」

解説書を1度読み終わってしまった。
長い・・・そう思っていたに違いない。
ようやく終わったらしい。朝子がやってきた。

「みてみて十悟、明日香さんからカードもらっちゃった。」

朝子の手には「神の宣告」が握られている。
このカードがあったから朝子のデッキはパーミッションデッキになったのかもしれない。

「そろそろ行きましょ。」

3人は歩き出した。
ドームに近づくにつれ人が増えてきた。
明日香は帽子とサングラスをかけた。
アイドルではないが、そのくらいの有名人なのかもしれない。

「そうだ。開演まで少し時間があるわね。ちょっといいところに連れていってあげるわ。」

そこは「関係者以外立ち入り禁止」とあり、黒服の男が2人立っている。
明日香がサングラスをはずすとそれに気づいたらしく道をあけてくれた。


コンコン

「あいてるぜ。」

部屋に入るとそこにはデッキを調整している青年がいた。
茶髪に茶色の瞳、伝説のデュエリストといわれている「遊城十代」その人だった。

「明日香、こいつらは?」

「来る途中に会ったの。これからデュエルを始めるそうよ。いろいろとアドバイスしてあげてよね。」

十悟たちは色々な話をきいた。
かつてカイザーと呼ばれた先輩の話、三幻魔というカードの話、光の結社の話、異世界へ飛ばされた時の話。

「失礼します。十代さん、そろそろ時間です。」

「おう。わかった。」


十悟はデュエルディスクを装着した十代に言った。

「今日はぜったい勝ってくださいね。」

「任せときな。」

十悟たちはデュエルを見にいくことにした。
席が見つかるまで明日香がついてきてくれた。

デュエルは「遊城十代VS万丈目準」らしい。

万丈目はアームドドラゴン中心のパワーデッキ。
対する十代はネオスデッキ。

「行くぜ、ネオス、エアハミングバード、アクアドルフィン、コンタクト融合『ストームネオス』召喚。ダイレクトアタックだ。」

万丈目LP→0

「この瞬間、新たなデュエルキングは『遊城十代』に決定しました。」

会場はものすごい声援に包まれた。
十代はガッチャのポーズをとっている。
それを囲むようにして報道陣が集まりだした。

この時、十悟は思った。いつか遊城十代と戦ってみたいと。



十悟は感動のあまり、しばらくそこから動けなかった。

「そろそろ帰ろうよ。」

「うん。」

満員のドームだったが2人の帰る頃にはもう人はまばらだった。
2人が公園を通りかかった時、

「ちょっと待った。」

振り向くとそこには十代と明日香の2人が立っていた。
十代は十悟の前まできた。

「ラッキーカードってやつだ。持ってけよ。」


クリクリ〜。

「トゲクリボー」確かにそのカードにはそう書かれている。
十悟には微かに聞こえたが、姿は完全に見えていないらしい。


「それとこれ。」

十代はデュエルディスクを差し出した。

「いいんですか?」

「ああ。プロになるとスポンサーから最新のやつがでるたびに支給されるんだ。一世代前のやつだけど見た目は変わんねえから。」

「あなたにもね。」

明日香は朝子にもデュエルディスクを渡した。

「本当にありがとうございました。」

2人は揃ってお礼を言った。
そして駅に向かって歩き出した。

「あいつら、きっと強くなるな。」

「何でわかるのよ?」

「目をみりゃ分かるよ。な、相棒。」

十代はハネクリボーに話しかけた。
まだ見えるらしい。

「早くデュエルできるといいわね。」

明日香は冗談半分で言ったようだが、十代は真剣な顔をしていた。
十代もその少年とのデュエルを楽しみにしているに違いない。




12章:放たれたワイトとキケンな飲み物

現在(異世界)


相変わらずの静寂、夜空には満天の星空だ。

「あの、いいムードのとこ悪いんだけど、城の中が大変なことになってるのよー。」

赤いその生き物は十悟達に話かけてきた。
2人は最初少し戸惑ったが

「久美のおジャマレッド?」

「正解よ。じゃなくて、とにかく久美のアネゴの所へ応援にいってあげてよ。」

2人は塔の階段を駆け下り、個室の廊下へ急いだ。

「みんな。大丈夫か?」

迎人、久美を含め、城に残っている内半分くらいが集まっているようだ。
そこには驚愕の光景が広がっている。


「ワイトだ。」



紫色の衣を纏った骸骨。
廊下を埋め尽くさんばかりのワイトが蠢いている。


※どこにでも出てくるガイコツのおばけ
「(出てきてたまるか。少なくとも安全だと思われていた城の中には。)」

※攻撃は弱いが集まると大変
「(本当に大変だよ。この数。)」


「なあ十悟、どうしたらいいと思う?」

「モンスターで倒せないのか?デュエルディスクつけてないから召喚されたやつだろ。」

「それが、そう思って攻撃し続けたらこの数になっちまった。」

迎人は「神獣王バルバロス」を召喚している。

十悟はデッキではなく、サイドデッキらしい束の中からカードを取り出した。

「あとは、魔法か。いくよ。『マクロ・コスモス』、さらに『グランド・クロス』発動。」

十悟が発動したあたりに巨大な宇宙空間が現れた。
太陽を中心に惑星が回転を始めた。
やがて地球を中心として十字が作られた瞬間、場のワイトが次々とその重力波で粉々になっていった。

「クク、これが次元を繋ぐ力か。ホークビショップも一目置いているだけはあるな。」

どこからとも無く悪魔の調理師が現れた。
あの巨大な包丁をその手に抱えながら。

「悪魔の調理師、さっきのワイトはいったい?」

「俺が放ったのさ。お前らの力を図るためにな。時は満ちた、ここを無人の城にするためのな。もちろん放ったのはワイトだけじゃない。じゃあ俺はそろそろ遺跡に戻るとしよう。そうそう、お前らの仲間の智花だが、もうこの城にはいない。一足早く遺跡へ向かったよ。」


悪魔の調理師はそう言うと、姿を消した。


「十悟、お前らは智花を追ってくれ。ここは俺たちに任せな。」

クラスメイトAはフィッシャービースト召喚しながら言った。
気が向いたら再登場、命名もあるかも。

「ごめん。頼んだ。迎人、朝子、久美、印章はあるよね?」

「大丈夫だぜ。すぐに出発だ。」

4人は城の外へ出た。


同時刻の森の中

「サイバー・エンド・ドラゴン、エターナル・エボリューション・バースト!!」

サイバー・エンドの光線は次々と敵を蹴散らしていく。
行く先を邪魔していたモンスターがいなくなると再び智花は走り出した。

「待ってて、お姉ちゃん。すぐに行くから。」



十悟達は・・・

「智花、待って。」

十悟たちはようやく追いついたようだ。
森のモンスターとのデュエルでその差が縮まったらしい。

「十悟くん、皆さんどうして?」

「まあいろいろあってね。」

十悟は城の中での出来事を話した。
ワイト大量発生のこと。
今は仲間が頑張っていること。
悪魔の調理師の裏切り。

「智花は何でこんなことを?」

「遺跡にお姉ちゃんがいるの。」

悪魔の調理師の話によると、遺跡を実質的に支配しているのが智花の姉だという。
彼女の手に「闇の印章」があり、智花に会いたいという。

「本物のお姉さんなのですか?確かお姉さんは亡くなられたと聞きましたが。」

「分からない。でも・・・」

智花自身にしか分からない事があるらしい。

「ここで、悩んでいても仕方ねえよ。」

迎人はウズウズしているらしい。

「智花、僕らも一緒に行くよ。」

「最初からそのつもりだったじゃん。」

朝子もやる気満々だ。

五人はまた歩き出すことにした。
遺跡へ行く途中はモンスターも襲ってこない。
まるで嵐の前の静けさといった感じだ。




やがて行く先に大きな山が見える。
その岩肌に不気味な洞窟がある。
恐らく遺跡の入り口なのだろう。

「よっしゃ、遺跡突入前に食事タイムだ。」

「急いで来たから『非常食』しかないけどね。」

「飲み物は?」

パサパサの乾パンに牛肉と魚の缶詰
そりゃ飲みものが欲しくなるだろう。

「それ聞くの?『ブルーポーション』と『レッドポーション』だけど。」

「どっちがマシなんだ?」

ブルー?レッド?
回復量だけならレッドか。
イエローがあればもっと他の色が・・・。

「いっそ混ぜちゃおうか。」

混ぜるなキケン!


ちなみに真のデュエリストは何も食べない。・・・・・らしいよ。



「ふふふ。智花、来たわね。そして印章を持つデュエリストが。」

「智世様、『DESTINY・BREAKER』の封印を解放する準備が整いました。あとは『6つの印章』と『生け贄』を捧げるのみです。」

水晶の占い師、智世の側近である。

「ご苦労様。それじゃあ最後の仕事をお願いするわ。妹たちの為にとっておきの『試練』の用意を。」

水晶の占い師はその部屋を出た。
入れ替わりに悪魔の調理師が入ってきた。

「ただ今戻りました。」

「それで、生け贄はどこ?」

智世はウズウズしながら聞いた。

「妹君とこちらに向かっております。」

悪魔の調理師は膝をつき、頭を下げながらそう言った。
彼は生贄を探していた。


「それで、生け贄の名は?」

智世はすかさず聞いた。
それに対し悪魔の調理師はゆっくりと顔を上げて答えた。
「相馬十悟です。」




13章:奪われた印章

ブルーポーションによる被害者は幸いでなかった。


5人は遺跡に突入した。
明かりをつけると、いかにもTVゲームにありそうな洞窟だ。
いつの間にか人工的にならされた壁になっている。

「とりあえず、進もう。」

「デュエルディスクは展開した方がいいわね。」

30分程歩いただろうか。
広い部屋に出た。

「よく来たな。」

血の染み込んだ調理服、
巨大な殺人包丁、
不気味な紫の肌、
悪魔の調理師だ。

「おい!おまえよくも裏切りやがったな。」

迎人は半ギレ状態だ。

「勘違いするな。元々あの城にいたのは、あの城にある印章を手に入れるチャンスをうかがっていただけだ。我らの目的は6つの印章を集め、『DESTINY・BREAKER』を復活させること。それでだ、単刀直入に言おう。印章を渡せ。」

「誰が渡すか!それよりそこどけ。俺らは智花の姉さんに用があるんだ。」

「こいつらの命と引き換えでどうだ。」

そう言うと部屋に人が入ってくる。
何かに操られた人形のように無言のまま歩いてくる。

「藤沢に渡辺、それに皆も。どうして?」

「本当は誰も死んではいない。この俺が死んだように見せかけていただけだ。城に残った奴らも俺の配下の者が倒してここに連れてきた。お前達5人以外、大したやつはいないと言うことが分かっていたからな。」

24人、城に残った者もいる。
皆、魂を抜かれたかのように動かない。

「まさか本物?」

偽者の可能性もある。
ただ、悪魔の調理師の言動をみる限り彼らは本物のように思える。

「お前達が印章を渡さなければ、ここにいる者を順に殺していく。今度は本当にこの世界からいなくなる。跡形も無くな。」

どうする?
印章がなければ元の世界に戻れない。
かといってクラスメイトを見殺しにはできない。

「わかった。印章を渡す。」

5枚の印章を悪魔の調理師に渡すと、クラスメイトが全員戻ってきた。
悪魔の調理師は素早く部屋を出て言った。

「安心するのはまだ早い。」

その瞬間部屋が完全に閉ざされた。
それと引き換えに大きな扉ができた。
そこにはカードが1つ納まるようなくぼみがある。

「そこから抜けるにはそこにカードを1つ収めればいい。ただしカードは1枚しか収められない。間違えばそこでアウト。全員そろってここで息絶えるしかない。まあヒントがその部屋にはある。せいぜい頑張るんだな。ヒヒヒ、ヒャーハハハハ。」


皆、まだ気絶してるみたいだ。
部屋の中を探してみると無数のカードと1枚の紙がでてきた。

「HEROしかないな。ネオスやD‐HEROまである。」

「この紙には『D―1010001』と書かれているな。」

5人は考え始めた。
さー皆で考えよーーーーー。

















「ディーの百一万一?最初のDはD‐HEROだとして、あとの数字は何だろう?」

原作を読んだあなたならもうお分かりですね。

「そうか分かった。」

十悟にも分かったらしい。
十悟はカードを探しはじめた。
目的と違うカードを次々と迎人に渡していく。

フェザーマン、バーストレディ、デビルガイ、ダイ・グレファー、ダイハードガイ、バブルマン、スパークマン、ドグマガイ、ドレッドガイ・・・・・・。


え?HEROじゃないのが混ざってるって。
気のせいじゃない?
あ、HでEROも混ざってるかもね。
















ごめんなさい。本題に戻ります。


答え

D―1010001→D‐HERO blood→『D‐HERO Bloo-D』


「あった。伝説のデュエリスト『エド・フェニックス』のモンスターにして究極のD‐HERO。これが答えだ。」

十悟がそれを扉にはめると、扉は大きな音をたてて開いた。元来た道も同時に開いた。
真っ暗だがまだ先に続いているようだ。

「どうする?進みたいけど、皆をここに放置するのはマズイよね。」

確かにこんな所に放置されても困りますよね。

「心配要りません。彼らの事は私にお任せ下さい。」

振り返ると本の精霊ホークビショップがいる。
彼はデュエルディスクをつけている。
デュエルをしてきたのだろう。

「智花、行こう。お姉さんに会いに。」

「はい。」

5人は再び進むこととなった。
ただ智世に会うために。
彼女が何を考えているのか、それだけでも知ろうとしているのだ。

道は一本で敵が出てくるわけでもない。
今度はいかにも遺跡の中といった感じの空間だ。
見た事のない石造や石柱がある。
古代エジプトと言うより古代ギリシャの建造物に酷似している。




「よく来た、我らが生け贄よ。」

今度は水晶の占い師だ。
デュエルディスクをつけている。

「今度は何ですか?」

「簡単よ、十悟くんあなたがデュエルすればいいだけ。」

そう言うと問答無用でデュエルが開始した。
その顔の布によりその表情で何を考えているか読み取ることはできない。




14章:十悟VS水晶の占い師

相馬十悟:LP8000
水晶の占い師:LP8000

「私のターン。ドロー。モンスターをセット。さらにリバースカードを2枚伏せてターンエンド。」

伏せられたカードが不気味に並んでいる。

「僕のターン。ドロー。」

「罠発動『ダーク・キュア』さらに『シャモッチによる副作用』」


ダーク・キュア 永続罠
「相手がモンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、そのモンスターの攻撃力の半分の数値だけ相手のライフポイントを回復する」


シモッチによる副作用 永続罠
「相手のライフポイントを回復する効果は、ライフポイントにダメージを与える効果になる。」


「(恐らく、相手のデッキはシャモッチによる副作用や堕天使ナースで回復効果をダメージに変えることでライフを削るデッキ。)それなら、『サイクロン』発動。『シモッチによる副作用』を破壊。」


竜巻が起こり、カードを1枚吸い込んでいった。

「カードを2枚伏せる。そして『烈風魔獣バ・ムーナ』召喚。この効果でお互い手札を除外して同じ枚数ドロー。さらに『ダーク・キュア』の効果でライフを回復してもらいます。」



烈風魔獣バ・ムーナ ☆3 風属性 悪魔族
ATK:1400 DEF:600
「このカードを召喚した時、お互いのプレイヤーは手札を全て除外し、除外した数だけカードをドローする。」



その悪魔は緑の翼を纏っており一見鳥獣族にも見える。
鍵爪には緑色の毒が仕込まれている。



相馬十悟:LP8700
水晶の占い師:LP8000


「ターンエンドです。」

「私のターン。ドロー。カードを2枚伏せてターンエンド。」

何もしない。
これはこれでまた不気味である。

「僕のターン。ドロー。」

「罠発動『真実の眼』これで手札を公開しなければならない。」

十悟は全ての手札を公開した。
ドローしたカードが丁度魔法カードだ。

「手札から『岩窟魔獣ガ・ラード』召喚。ダーク・キュアの効果でライフを回復。」


岩窟魔獣ガ・ラード ☆4 地属性 悪魔族
ATK:2400 DEF:300
「自分のスタンバイフェイズにゲームから除外されている自分のカードを墓地へ送る。送れなければこのカードを破壊する。」


岩でできたその悪魔は恐ろしい形相をしている。
最もこれは岩の模様なのだが。
ゴーレムと違うのはこのモンスターには足が無いことである。



相馬十悟:LP9900
水晶の占い師:LP8000


「ガ・ラードでセットされたモンスターを攻撃、ローリング・ガ・ラード!!」

その巨大な岩はものすごい勢いで突進していく。

「リバース効果発動。このカードが表になった時、相手モンスター1体を指定し、そのモンスターの攻撃力分相手ライフを回復。対象は岩窟魔獣。」


マッド・ヒーラー ☆2 闇属性 魔法使い族
ATK:200 DEF:300
「リバース:このカードが表になった時、相手モンスター1体を指定し、そのモンスターの攻撃力分相手ライフを回復。」


相馬十悟:LP12300
水晶の占い師:LP8000


「(ダイレクトアタックしてもいいけどライフを0にしたら相手は死ぬことになる。止めておこうか。)ターンエンド。」

「私のターン。ドロー。『成金ゴブリン』を発動。デッキからカードを1枚ドローする。カードを1枚伏せてターンエンド。」

さらに十悟のライフが回復していく。


相馬十悟:LP13300
水晶の占い師:LP8000


「不気味すぎねえか。」

「そうですね。『シモッチ』や『堕天使ナース』が来てないからでしょうか?」

「明らかにデッキが機能してない感じよね。」

迎人達にもこの不可解な戦術を疑問に思っているようだ。

「僕のターン。ドロー。(モンスターも出さないのか。)」

「真実の眼の効果でさらにライフを回復してもらうわ。さらに罠『ギフト・カード』発動。」



ギフト・カード 通常罠
「相手は3000ライフポイント回復する」



ハネクリボーの描かれた赤いリボンのカードがヒラヒラと飛んできた。


相馬十悟:LP17300
水晶の占い師:LP8000


「ここで私の使命は終わりね。」

水晶の占い師は小さな声でつぶやいた。

「え、まだデュエルは終わってないはず。」

十悟は思わず声を出して言った。

確かにどちらのライフも0になっていない。
もちろんデッキだって0じゃない。
特殊な勝利条件が整ったとも思えない。



「いえここで終わりです。罠発動『自爆スイッチ』」


自爆スイッチ 通常罠
「自分のライフポイントが相手より7000以上少ない時に発動する事ができる。お互いのライフポイントは0になる。」


恐ろしく巨大な爆発音が遺跡じゅうに響き渡った。
2人のライフは急激に減り始め、同時に0となった。


相馬十悟:LP0
水晶の占い師:LP0


「最後に教えてあげるわ。十悟くん、君は『DESTINY・BREAKER』復活の生け贄。そしてこの部屋こそ復活の儀式の場でもある。そして私は智世様の永遠のしもべとなる。それでは智花さんお姉さんによろしく。」


そう言うと水晶の占い師は消えていった。

十悟は何も言わずにその場に倒れ込んだ。
体は残っているが何の反応も示さない。


引き分け。
だがそれは痛すぎる引き分けだった。

「おい。冗談だろ・・・・ふざけるなよ!俺はまだ十悟にデュエルで勝ってないんだよ。勝手に殺すんじゃねえぇぇぇ!!」

「十悟、遊城十代とデュエルするんでしょ!!こんなところで寝てたら一生できないよ。起きてよ・・・。お願いだから。」

突如、遺跡の中に大きな地響きがおこる。
それが2、3度ゆれ、最後に立てない程の大きなゆれが起こる。

「まさか?『DESTINY・BREAKER』が復活したのか?」

「十悟は大丈夫なの?」

「彼はもう起きないわ。」

そこには智世がいた。
彼女は智花たちと同じ尾瀬呂学園の制服を着ている。

「お姉ちゃん。何でこんな事を。」

「ここで、新しい世界を創ること。そう私たちの世界を。」

新世界の創造。
6つの印章と『DESTINY・BREAKER』があればそれが可能になるらしい。


「智花、一緒に創ろうよ。新しい世界を。」

智世は自分の夢を話すような無邪気な顔をしている。
新たな世界の為なら十悟の犠牲は仕方ないと言わんばかりだ。



「・・ぇして・・・かえして、私たちに十悟君を返して!!新世界なんて作らなくたっていい。元の世界に戻れなくたっていい。だ、だから私の、私たちの十悟君を返してよ!!!」

智花はそう言って崩れ落ちた。
頬からは大粒の涙が絶え間なくあふれ出てくる。


でもその時はまだ誰も気づいていない。
十悟のデッキの中のカード1枚が微かに光を放っていることに。
紛れも無い、十代から貰ったあのカードだ。




15章:魔獣王とトゲクリボー

クリクリ〜。

「い、痛い。」

十悟に何か接触したみたいだ。
その痛みに十悟は目を覚ました。
回りは霧に覆われている。

クリクリ〜。クリ・・・クリリ。

「と、トゲクリボー?」


トゲクリボーがはっきりと見える。
全身はハリネズミのようだが、クリボーならではの瞳が特徴的なモンスターだ。

クリリリ、クリクリ。

「?????」

クリ・・・クリ。

「???」

クリ。

「まあ、天国で仲良くやろう。僕ら死んだんだ。僕は悪いことした覚えはないし、天国か地獄かなら多分天国だと思う。」

クリボー言語?はよく分からないが、とりあえず十悟は話をしてみた。
通じているのかはよくわからない。

クリリクリ。


「人間・・人間ダ。オイ、人間ガイルゾ。食ッテシマエ。」

モンスターではなく、悪霊のようなものが十悟の後ろに迫りつつあった。


「行け。マハード、魔連弾。」

その男は精霊を召喚した。
黒(紫)の衣に包まれた、魔術師だ。
その魔術師の杖から出された攻撃が次々と悪霊を消滅させた。

「君、大丈夫か。」

男は黒いマントに金でできた飾りをいくつか身につけている。
しかし一番特徴的なのはやはりその髪であろう。(色とか形とか。)

「はい。ありがとうございます。僕、ここへ来たばかりで何も分からないんですけど。」

十悟にとってはようやく今の状況を聞くことができる者にめぐり会えた。
多少安心したようで、話を聞くことにした。

「まず、君は死んでいない。いや死んでもらっては困るんだ。ここは、いわゆるこの世とあの世の狭間と言っていい場所だ。そもそもこの世界は12の次元に分かれておりそこで、人や精霊が生活している。そこで死んだ者達がここを通り、あの世へと行くことになる。それはどこの次元で死んでも同じだ。ここまではいいか?」

「はい。」

微妙に宗教じみていると十悟は思ったが口には出さなかった。

「決闘者は、数あるカードの中から、己の信じたカードを選び、デッキを構築する。だが、カードもまた決闘者を見極める。君の持つ魔獣モンスターは、数ある精霊の中でも『次元を繋ぐ力』を持っている。君が魔獣を選び、魔獣もまた君を選んだ。その力は12ある次元のバランスを保つ為に必要不可欠なものだ。」

その男はさらにつづけた。

「君には、すぐに第7次元に戻ってもらう。ああ、第7次元っていうのは、君が水晶の占い師とデュエルした次元だ。そこを支配する神が復活した。それを破るには君の力が必要なんだ。」

「神?オベリスクとかオシリスですか?」

「そうか、君は第1次元から来たのか。詳しい力は分からない。でもそのくらいの敵であると覚悟していたほうがいい。」

その男は少し緊迫した表情で言った。

「で、どうしたら皆のいる第7次元に戻れるのですか?」

十悟は本題を聞くことにした。
男は少し言葉を選びながらこう言った。

「魔獣王を復活させる。君の持つ6つの魔獣の力を合わせればそれが可能だ。」

十悟は言われた通り、6枚のカードを取り出した。

幻光魔獣アル・ミューレ(未登場)
邪念魔獣ラム・シューラ
紅蓮魔獣ダ・イーザ
氷結魔獣ザ・ギーネ
岩窟魔獣ガ・ラード
烈風魔獣バ・ムーナ

十悟のデッキの中でも核となるモンスターたちだ。

突如そのカードが光だした。
その六色の光はやがて1つになりその光は1枚のカードになった。

「十悟、我が主よ。共に闘おう。」

カードから声が聞こえた。それは厳かだがそれでいて優しさも秘めている。
さらに十悟の目の前に巨大な光の扉が現れた。

「ありがとうございます。え、えっと。」

「アテム。それが俺の名前だ。」

「ありがとう。アテムさん。それでは失礼します。」

十悟はトゲクリボーをカードへ戻した。
その後デッキに加えると、その光の扉へと歩きだした。

「皆、今戻るよ。」

それを見送りながらアテムは思った。

「(はあ。彼は俺の事を知らなかったな。俺たちの時代はもう終わったのか?なあ相棒。)」


ごめんなさい。
何か遊戯ファンに申し訳ない気がしますんで。














第1次元(元いた世界)

尾瀬呂学園高等部2年B組
十悟達の消えた教室に一人の男が佇んでいる。
黒須芽出一(くろすめでいち)、十悟達の担任でデュエルを担当する教師である。

「(大丈夫だ、もうすぐペガサス会長とツバインシュタイン博士が来て下さる。)」

コンコン

「ハロー。ミスター黒須、お久ぶりデース。」

ペガサス・J・クロフォード、デュエルモンスターズの生みの親である。今はその売り上げや関連商品等で築き上げた財産で気ままな隠居生活をしている。

「また、デュエルモンスターズに係わる失踪事件が発生したと聞いたんじゃが。」

ツバインシュタイン博士、相対性理論を完成させた天才博士である。精霊研究の第一人者と言われている。

「博士、間違いありません。昨日の朝、発生した特異点の場所はこの教室のようです。」

黒須は驚いた。
助手らしき男がいたのだ。
確かに2人しかいないと思っていたからだ。

「それで博士、原因は何なのデースカ?」

「恐らく、これではないかと。」

黒須は1枚のカードを取り出した。
それは真っ白になっていた。

「元はいったい?」

「『DESTINY・BREAKER』です。」

「オーノー。こんなところに。『DESTINY・BREAKER』は、私の部下が作ったカードなのデース。彼は力に溺れてイタ。カードは強くなければ意味がないと。それは神を超えるものが理想であると言っていマシタ。そんな彼が作ったカードが『DESTINY・BREAKER』。私は彼に無断でその召喚条件を改変しマシタ。直感したのデース。そのカードは危険であると。彼はそれに激怒しそのカードを捨ててしまいマシタ。そのカードは神を超えるはずだったカード。その名の通り神を超える運命を持ちながらそれを打ち破られたカードなのデース。その後、彼は神のカードを操るカードを作りだしマシタ。それ程のデザイナーの作り出したカードに精霊が宿った。それが今回の事件の引き金なのデスネ。」


「そんな。私の生徒達は大丈夫なのでしょうか?」

「最善は尽くすつもりじゃが・・・。」

それを遮るように助手がしゃべった。

「博士、我々の次元から数えて7番目の次元に特異点発生の前兆があります。」

この時は、丁度十悟が異世界へ戻った時である。

「それで、戻ってくる確立は?」

「俺の計算で0、01%以下、次元の入り口はこの世界に繋がっていない可能性が高いようです。やはり『レインボー・ドラゴン』のようなカードがなければダメなのか。」

その助手は黒板に向かって何やら計算式を書いている。
その最後には確かに0、01という数字がある。

「博士の言われた通り通信機を繋いだのデースガ、何の応答もありまセーン。」

「絶望的な状況じゃ。」

黒須はその状況で何もできない自分がとても情けないと思っているらしい。
「せめて俺が一緒にいてやれれば・・・・。」




16章:真理の福音DB

突然ですが、というか作者の都合でこんな中途半端な時期にキャラクター紹介をしようと思います。
最初の奴だけじゃあちょっと物足りないので。





相馬 十悟(そうま じゅうご) ♂
誕生日:9月23日
身長:179センチ
体重:64キロ
血液型:O型
2年B組出席番号6番

使用デッキ:デッキ破壊デッキ
主力:紅蓮魔獣、氷結魔獣etc
精霊としてトゲクリボーを所有。
獲得した印章「風」

「作者が小説を書くなら、主人公のデッキはデッキ破壊+除外にしようと考えていまして、まさにそれを実現したのが彼である。デッキ破壊と聞くと性格が悪そうなデュエリストを連想してしまうが、それは避けたいと思いました。その結果少し寡黙でおとなしめな主人公になってしまった。『そう まじゅう ご』ということで名前に魔獣が含まれていたりする。」




明智 迎人(あけち げいと) ♂
誕生日:2月11日
身長:174センチ
体重:60キロ
血液型:B型
2年B組出席番号1番

使用デッキ:推理ゲート
主力:神獣王バルバロスetc
アルティメーターから「アーマーデッキ」を譲り受ける。
獲得した印章「地」

「主人公の親友というポジションである。最初のデュエルを除けば、まだ自分のデッキでデュエルしていない。彼のモデルは作者の友人で昔のジュニアルール(レベル5以上も生け贄なしで出せる)の方がいいと考えている人がいます。これは使えると思いました。上級がたくさんつかえる推理ゲートを使わせることで小説に登場させました。一応、ボケ担当。名前も不自然にゲート。」




反町 朝子(そりまち あさこ) ♀
誕生日5月3日
身長:165センチ
体重:48キロ
血液型:A型
2年B組出席番号7番

使用デッキ:パーミッション
主力:ヴァンダルギオン、ボルテニス
獲得した印章「炎」

「当初ヒロインの予定だったが、すっかり智花にその座を奪われています。パーミッションデッキを使うのは単にこれを書き始める当初趣味で作ってみて面白かったから。という理由です。主人公の幼馴染キャラでちょっとおせっかいかもしれない。一応、ツッコミ担当ってことになる。」





六道 久美(ろくどう くみ) ♀
誕生日12月23日
身長:162センチ
体重:46キロ
血液型:AB型
2年B組出席番号29番

使用デッキ:キュアバーン
主力:ピケル、ビッグバンガール、おジャマ3姉妹etc
精霊としておジャマ3姉妹を所有。
獲得した印章「光」

「朝子の友人として、レギュラーに入れたつもりだったが、なかなか上手くキャラ付けできなくて薄れていたキャラ。このままではGXの三○君の二の舞になってしまうと思い、精霊の所持者にしてみました。おジャマとのやり取りが今後の課題かな。彼女のおかげでこの小説でもピケルの活躍が期待できる。」




木村 智花(きむら ちか) ♀
誕生日3月21日
身長:164センチ
体重:47キロ
血液型:A型
2年B組出席番号6番

使用デッキ:ビートダウン
主力:サイバードラゴン、サイバータートルetc
獲得した印章「水」

「この物語のヒロインのポジション。B組の委員長として登場。サイバー関係のオリカは是非作りたかったのでデッキは、普通にサイドラのビートダウンにしてみました。姉から引き継いだデッキということになっているけど、バリバリ使いこなしてますね。真面目な性格でちょっと落ち込みやすい?」









「これで、行方不明者リストは全部デースカ?なかなか面白い生徒たちデースね。」

「彼らは私が特に注目している生徒たちです。クラス内での勝率も抜きん出ています。」

黒須は生徒のリストをペガサスに見せながら言った。
個人情報?そんなもんもありますね。まあ緊急事態ですから。

「とにかく待つしかないようじゃの。」
「私が作ったゲームですが、本当に不思議なものデース。」




17章:VS運命デッキ

十悟が倒れてからそれ程時間が経ってはいないらしい。
遺跡の中にはまだ智花の泣き声が響いている。


「おい!!俺とデュエルしろ!『DESTINY・BREAKER』とやらの力で俺があいつを蘇らせてやる!!」


迎人は叫んだ。
その声は遺跡の中にこだまし、響き渡る。


「いいえ。ここは私が行く。」

「何でだよ。朝子、邪魔すんなよ。」

「あんた、私との戦績忘れたわけじゃないでしょ。」

「うるせぇ!!俺がいくって決めたんだ。」


口喧嘩が始まってしまった。
智世もやれやれといった感じで見ている。


「まあまあ、二人とも落ち着いて。」

喧嘩を仲裁する常套句が聞こえてきた。

「久美は黙ってて。」

朝子はそちらを見ずに言った。

「わ、私は何も言ってないよ。」

久美はびっくりしてそう言った。

「じゃあ智花?」

「いいえ。」

智花も否定した。
朝子と迎人、そして全員が声のする方へ目を向けた。
そこには倒れたはずの十悟が立っていた。

「みんな。ただいま!」

十悟は仲間の元へ歩み寄った。
しっかりとした足つきでとても今まで倒れていた者とは思えない程だ。

「ところでこのデュエル僕に譲ってくれないかな?詳しいことは後で話すから。」

そう言うと十悟は智世の前に立った。
驚いているが、迎人達もそれを見守ることにしたようだ。

(奴ヲ殺セ。ソウスレバ、オ前ノ望ム運命ガ約束サレル。)

智世の後ろに禍々しい黒い闇から声が聞こえる。
それに操られるかのように智世はディスクを構える。

「いいわ。私達の世界の為に。」



「デュエル。」

相馬十悟:LP8000
木村智世:LP8000

「私から行くわよ。ドロー。アハハ、アーハッハハハ!!!やはり、私が勝つ!それが運命なのよ。魔法カード『封印の黄金櫃』発動。もちろん、中に入れるのは『DESTINY・BREAKER』」

黄金の柩が現れそれにカードが封印されていく。
それは邪悪なオーラを帯びている。


「黄金櫃は十悟くんの専売特許じゃなかったんですね。」

「そんなこと言ってる場合じゃないよ、久美。」

「2ターン後には手札に『DESTINY・BREAKER』が入るって事だろ。」

確かに決していい状況とは言えない。
2ターン後にはこの世界の神と呼ばれるモンスターが相手の手札に加わるのだ。
(モンスターじゃない、神か。)

「さらに『運命の囚人』を攻撃表示で召喚。そしてカードを2枚伏せてターンエンド。さあ、君のターンよ。」


運命の囚人 ☆4 闇属性 戦士族
ATK2200 DEF600
「このカードは攻撃できない。自分のスタンバイフェイズにこのカードの元々の攻撃力の半分のダメージを相手に与える事ができる。この効果で相手にダメージを与えた場合このカードを破壊する。」


手錠で繋がれた長髪で筋肉隆々の大男が現れた。
傷のないドレッドガイと言ったところだろうか。

「僕のターンですね。ドロー。」

「罠発動『サモン・ディスティニー』この効果でデッキから『運命の看守』を守備表示で特殊召喚します。」


サモン・ディスティニー 通常罠
「デッキから『運命』と名の付いたレベル4以下のモンスターを特殊召喚する。」


運命の看守 ☆3 闇属性 戦士族
ATK1000 DEF1900
「このカードがフィールド上に存在する時、『運命の囚人』は戦闘及び自身の効果では破壊されない。(効果は使用可能)」


Dと書かれた魔方陣が現れ、
今度は黒い鞭を持った怪しい看守が現れた。


デッキはそれを作った本人を象徴すると言う。
死と言う冷たい牢獄に閉ざされ、必死にもがいている。
そんな智世、いや柩に眠るあのカードを象徴しているデッキだ。


「僕はカードを2枚伏せて、『手札抹殺』を発動。僕の手札は3枚、よって3枚ドローです。そして、時空を切り裂く白き魔獣『幻光魔獣アル・ミューレ』召喚。」


手札抹殺 通常魔法
「お互いの手札を全て捨て、それぞれ自分のデッキから捨てた枚数分のカードをドローする。」


幻光魔獣アル・ミューレ ☆4 光属性 悪魔族
ATK1600 DEF700
「自分の墓地のモンスター1体と相手フィールド上のモンスター1体を対象とする。それらが同レベルならばゲームから除外する。」


白銀の装甲をつけている悪魔だ。
一見すると天使族にも見えるが、鎌のような腕を持っており凶悪そうな顔をしている。

「アル・ミューレ、モンスター効果発動。対象は墓地の『邪念魔獣ラム・シューラ』と『運命の囚人』だ。行け!!妖かしの魔光!!!」

幻光魔獣はその鋭い鎌で時空を切り裂く。
そこには次元の裂け目ができ、運命の囚人がそこに吸い込まれていく。

「更に邪念魔獣の効果発動。この効果でお互いデッキからカードを5枚除外します。」


邪念魔獣ラム・シューラ ☆4 闇属性 悪魔族
ATK:1200 DEF:1800
「このカードがゲームから除外されたときお互いはデッキの上から5枚をゲームから除外する。」


「これで僕のターンは終了です。」

「次よ!次のターンに私は『DESTINY・BREAKER』を手にする。それまでせいぜい足掻くのね。私のターン。ドロー。『運命の騎士』召喚。さらに『運命の看守』を攻撃表示に変更。」


運命の騎士 ☆4 闇属性 戦士族
ATK1700 DEF900
「このカードが表側攻撃表示で存在する限り、このカード以外の『運命』と名の付くモンスターに攻撃できない。」


漆黒の騎士が現れた。
その手には大槍が握られている。
鎧は傷だらけでそれだけ多くの攻撃を受けてきたことを窺わせる。

「それじゃあ『運命の騎士』で『幻光魔獣』を攻撃よ、ディスティニー・スパイラル!!」

その槍は幻光魔獣を貫いた。

相馬十悟:LP7900
木村智世:LP8000


「速攻魔法発動『魔獣の報復』この効果で『運命の騎士』を破壊し、屈強なる地の魔獣『岩窟魔獣』を特殊召喚。」


魔獣の報復 速攻魔法
「このターン魔獣と名の付くモンスターが破壊されている場合、破壊されたモンスターとは違う属性の魔獣モンスターをデッキから特殊召喚し、相手モンスター1体を破壊する。」


岩窟魔獣ガ・ラード ☆4 地属性 悪魔族
ATK:2400 DEF:300
「自分のスタンバイフェイズにゲームから除外されている自分のカードを墓地へ送る。送れなければこのカードを破壊する。」


仲間を倒された報復として現れたその岩の魔獣はその巨体で運命の騎士へと突進していった。

「ふーん。攻撃力2400のモンスターねぇ。まあいいわ、これでターン終了よ。」

「僕のターン。ドロー。」

クリクリー。

「(あれ、この声は・・・トゲクリボーか。)ごめんな。まだお前をドローできないみたいだ。(こんな時、遊城十代ならばハネクリボーをドローしていただろうか。)」

励ましの言葉なのか。
自分は自分のデュエルを貫け。そう言ってるように聞こえた。

「僕は岩窟魔獣の維持コストとしてゲームから除外している『惨劇の傍観者』を墓地へ送ります。そして永続魔法『戦場の惨劇』を発動します。」


惨劇の傍観者 ☆2 闇属性 戦士族
ATK200 DEF700
「このカードが墓地に存在する時、このカードの持ち主は『戦場の惨劇』の効果を受けない。」


戦場の惨劇 永続魔法
「戦闘を行ったプレイヤーはバトルフェイズ終了時にデッキから5枚のカードを墓地へ置く。」


「バトルだ。岩窟魔獣で攻撃、ローリング・ガ・ラード!!!」

3メートルはゆうに越す大きな岩が怪しい看守を踏み潰した。

「墓地の『惨劇の傍観者』の効果で僕はカードを墓地へ送る必要はありません。」

相馬十悟:LP7900
木村智世:LP6600

「ターンエンドです。」

大丈夫だ。次のターンに相手の手札に『DESTINY・BREAKER』が入るのだとしてもそのターンに召喚できるとは限らない。たとえ召喚したとしてもデッキからカードを墓地へ送るリスクがある。
でもなぜだろう?『DESTINY・BREAKER』の力が見てみたい。そんな感情が湧いてくる。デュエリストの本能というものだろうか。




18章:DESTINY・BREAKER降臨

「ついに来たわねこの時が。私のターン。ドロー。さらに黄金櫃に封印されていたこのカードを手札に加える。」


黄金の櫃が空き中のカードが出てきた。
邪悪なオーラをより一層深めているみたいだ。


(早ク、早ク我ヲ呼ベ。待チワビタゾコノ時ヲ。)

「さーあ。『DESTINY・BREAKER』を見せてあげるわ。手札から『フューチャー・グリード』を発動。手札とフィールドから『DESTINY・BREAKER』以外の全てのカードを墓地へ送る。」


フューチャー・グリード 通常魔法
「手札とフィールドから任意の枚数墓地へ送る。2ターン後のスタンバイフェイズに墓地へ送ったのと同じ枚数ドローする。」


「私は手札2枚とセットされたカード1枚を墓地へ送る。」

「バカな。神、邪神、幻魔、名だたる凶悪モンスターたちはフィールド上の何らかのカードを生け贄に召喚されるはず。それを自らのカードをすべて失わせるカードに何の意味が?」

「でもそれが『DESTINY・BREAKER』の召喚条件。このカードの真の生け贄は未来の運命そのもの。見せてあげるわ!この世界の神『DESTINY・BREAKER』召喚!!!!!」

一瞬、時空が激しく歪んだかと思うと怪しげな声が響き渡る。

(ガハハハハハハハハハハハハ、ツイニヤッタゾ。ツイニコノ体ヲ取リ戻ス時ガ来タ。)

その瞬間、智世の顔からみるみるうちに血の気が失せていった。
それとは逆に智世の背後の闇が濃く深くなっていくのが分かる。
智世はその場に倒れた。

禍々しく歪む闇から騎士とも悪魔ともつかない鎧の魔物が現れる。
大きさは5メートル程で、神や幻魔ほど大きくはない。
しかし、それに勝るとも劣らない凶悪な殺意、プレッシャーがある。

その魔物はディスクから『DESTINY・BREAKER』のカードを奪った。

「お姉ちゃん!!!」

智花が姉の元に駆け寄った。

「小娘、貴様ノ姉ハモウ用済ミダ。返シテ欲シケレバ返シテヤル。タダシ、元々肉体ノ無イ魂ヲ練成シタダケダ、『DESTINY・BREAKER』ガ完全ニ覚醒スレバ消エ行クダロウ。」

「どうしてお姉ちゃんにこんなことを?」

「簡単ナ話ダ。コノ女ガデュエリストトシテ類稀ナル才能ヲ持チ合ワセテイタ事、ソシテソノ魂ガ肉体カラ遊離シタソノ瞬間ニ居合ワセル事ガデキタカラダ。実際ヨク働イテクレタヨ、コノ世界ノ統一マデアト一歩ダ。アトハ次元間ノ完全封鎖ダケ。ソレガデキレバ如何ナル次元カラノ干渉モ受ケナイ。ソノ為ニハ貴様ガ邪魔ダ、相馬十悟!!!」


「ふざけた事を言ってるんじゃないわよ!!!智花のお姉さんを騙して精霊達に争いをけしかけて争わせて、私たちの仲間を捕らえ卑怯な手段で印章を奪っておいて何が新世界よ!!何が世界の統一よ!!」

「そうだ。てめぇの復活の為にどれだけの犠牲がでたか分かってるのか!!おまけに十悟が邪魔だから消すだとぉ!」


「朝子、迎人もういい。僕があいつを倒してすべてを終わらせる。」

「でも・・・。」

「大丈夫。それにあんなにすごそうなモンスター、一度でいいから戦ってみたかったんだ。武藤遊戯は神のカードを、遊城十代は幻魔のカードを倒したんだ。だったら僕はあいつを倒す!!僕は僕のやり方でね。」

「面白イ。ヤッテミロ。バトルダ。『DESTINY・BREAKER』デ『岩窟魔獣』ヲ攻撃!!ディスティニー・オーバー・ドライヴ!!!!」


「罠発動『次元幽閉』(さあどうなる?)」


次元幽閉 通常罠
「相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。その攻撃モンスター1体をゲームから除外する。」


「無駄、無駄、無駄ナノダヨ。マサカソノ程度デ我ヲ排除スルツモリダッタノカ?」

「まさか。ちょっと試しただけだよ。除外できるなら儲けものだしね。」

ドォーン

岩の魔獣は大きな音をたてて粉々になった。

相馬十悟:LP6300
運命の破壊者:LP6600

「コノ瞬間モンスター効果発動ダ」


DESTINY・BREAKER‐運命の破壊者 ☆10 神 幻神獣族
ATK4000 DEF4000
「このカードはフィールドと手札にこのカードしかない場合のみ特殊召喚できる。このカードを対象とする魔法、罠、効果モンスターの効果は無効となる。このカードを特殊召喚したプレイヤーはドローフェイズの前にフェイズを1つ宣言する。以後そのフェイズをすべてスキップする。このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時相手はカードの種類(魔法、罠、モンスター)を1つ宣言する。デッキのその種類のカードをすべて墓地へ送る。」


「なんて恐ろしい効果なの〜ん。これじゃあ十悟の旦那のモンスターじゃあとても太刀打ちできないわ〜ん。」

赤いモンスターが久美のとなりでしゃべった。

「おジャマレッド!!あんたは黙って見てて!!」

久美がそういうとおジャマは引っ込んでいった。


「(トゲクリボーの為にもモンスターは選べない。逆転にはあの魔法も必要だ。)だったら僕は罠カードを選択します。」

罠カードは発動までにタイムラグがある。
また普通のデッキならばそこに占める割合は少ない。
罠を選択しておくのが定石なはずだ。
十悟はデッキから全て罠を墓地へ送った。

「『戦場の惨劇』の効果で今度はあなたがカードを墓地へ送る番です。」

「マアイイ、デッキ5枚ヲ墓地ヘ置コウ、マアコンナ事シテモ無駄ダガナ。我ニスルコトハ無イ、ターンエンド。」


「僕のターンドロー。モンスターをセットしてターンエンドです。」

ダメか。
まだキーカードが来ない。
次にモンスターが来たら正直ちょっとヤバイかな。

「我ノターン、我ハ自身ヲ維持スル為ニ『エンドフェイズ』ヲスキップスル。マアコノ『フェイズ』ハ無クテモ困ラヌ。メインフェイズ2ノ後スグ相手ノターンニ移ルダケダ。更ニ速攻魔法『サイクロン』発動。『戦場の惨劇』ヲ破壊ダ。」

十悟のフィールドには守備モンスターだけになってしまった。

「バトルダ。裏守備モンスターヲ攻撃!!ディスティニー・オーバー・ドライヴ!!!!」

く、烈風魔獣が・・・。
でもこれで、戦闘で破壊された幻光魔獣、岩窟魔獣、そして手札抹殺で墓地にある紅蓮魔獣と氷結魔獣、そして除外ゾーンには邪念魔獣。あと少しだ。


「ターンエンドダ。」


「僕のターン。ドロー。これに賭ける!『魔獣の宝札』発動。」


魔獣の宝札 通常魔法
「デッキの上から5枚を確認する。その中に『魔獣』と名の付くカードがある場合はそのカードを除外して残りをデッキに戻しシャッフル、ない場合は5枚全てをゲームから除外する。デッキからカードを2枚ドローする。」


「魔獣はない。すべてをゲームから除外して2枚ドロー。」


クリクリクリー。

来た。
そしてもう一枚は「次元超融合」。
これで準備は整った。

「ハハ。」

「ソノ笑イ、ツイニ絶望シタカ。オ前ノ敗北ハ運命ダ。イイ加減ソレヲ認メルノダ。」
「敗北の運命か。今気づいたけどそれは明らかに矛盾している。あなたの名前・・・『運命の破壊者』、運命を打ち破る。それは可能だということを示しているじゃないか。それを今から証明してみせますよ!」




19章:変わる運命

「運命が変わる。そんな気がする。」

仲間達には分かっている。
自分達の運命を、そしてこの世界の運命を変えられるのは彼だけであると。


「何ヲ引イタカ知ラヌガ、我ノ勝チハ確定シテイル。」

「まあ見てれば分かりますよ。」

十悟は場を冷静に分析してみる。
相手の除外カードは6枚。
墓地は9枚。
フィールドは1枚だから、残りのデッキは24枚のはず。
そのうちフューチャー・グリードの効果で3枚のドローは確定している。


「僕のメインフェイズ、手札から『次元超融合』発動。このカードは除外されたモンスター1体特殊召喚し、除外された魔法カードを4枚が発動可能になる。」


「でも、そんなすごいカード、リスクもあるんじゃあないかな。」

「確かに久美の言う通りだ。でもアイツならなんとかしてくれる。」


「このカードの発動時、相手は手札が7枚になるようにドローする。」


次元超融合 通常魔法
「相手は手札が7枚になるようにドローする。自分はゲームから除外しているモンスター1体を特殊召喚し、除外している魔法カードを4枚まで発動することができる。このターン戦闘を行うことはできない。」


「ナルホドナ。相手ニ1枚デモ多クカードヲ引カセル分ケカ。デハ、7枚ドロー。」


相手デッキ24枚→17枚


「この瞬間『トゲクリボー』のモンスター効果を手札から発動。」


トゲクリボー ☆1 地属性 獣族
ATK300 DEF200
「相手がドローフェイズ以外にカードを3枚以上ドローした時、このカードを手札から除外することで、相手の手札を0になるように墓地へ送る。」


ハリネズミのようなクリボーが場に現れた。
クリボーのトゲが相手の手札に突き刺さった。
今、補充されたはずのディスティニー・ブレイカーの手札が見る見るうちに消えていく。

「まだ、次元超融合の効果は終わってませんよ。僕は除外ゾーンから『邪念魔獣ラム・シューラ』を特殊召喚。そして発動させる魔法はこの4枚です。」

十悟はカードを4枚見せた。

「1枚目、永続魔法『魂吸収』発動。以後、除外されるカード1枚につき500ライフを回復できる。」

「2枚目、通常魔法『煉獄焚書』発動。ライフを1000支払い、相手のデッキの上からカード5枚を墓地へ。」


相手デッキ17枚→12枚

相馬十悟:LP5300
運命の破壊者:LP6600

「3枚目、装備魔法『魔獣王への忠誠』を邪念魔獣に装備。」

「4枚目、『封印の黄金櫃』を発動。対象は2枚目の『紅蓮魔獣ダ・イーザ』です。」

相馬十悟:LP5800
運命の破壊者:LP6600


魂吸収 永続魔法
「このカードのコントローラーはカードがゲームから除外される度に、1枚につき500ライフポイント回復する。」


煉獄焚書 通常魔法
「ライフを1000支払うことで、相手デッキを5枚墓地へ送る。」


魔獣王への忠誠 装備魔法
「『魔獣』と名の付くモンスターの攻撃力を400ポイントアップ。装備モンスターが除外された時、お互いにデッキからカードを2枚ドローする。」


「すごい。『次元超融合』のリスクを『トゲクリボー』で回避すると同時に相手のデッキを削ったわけですね。サイドラビートダウンしか使った事のない私にはとても思いつかない戦略です。」

「まだまだ。十悟の凄さはこれからよ。」

朝子にはわかる。
誰よりも十悟とデュエルをしてきたのは彼女であり、その強さを最も知っているのも彼女である。

「さすがは、俺のライバルだぜ!見たかデッキ破壊コンボ!!」



「小癪ナ。コンナ事シテ何ニナル。我ヲ消シ去ル事ナド不可能ダ。」

ディスティニー・ブレイカーは自分のデッキを見ながら言った。

「消し去るつもりなんてない!ただこのデュエルに勝つ。それだけです。」

未だ緊迫した状態が続いている。

「さらにフィールドの『邪念魔獣』、墓地の『紅蓮魔獣』『氷結魔獣』『烈風魔獣』『岩窟魔獣』『幻光魔獣』の6枚をゲームから除外する事で、僕のデッキのエース『魔獣王アルド・ヴァーム』を守備表示で特殊召喚!!」


魔獣王アルド・ヴァーム ☆8 闇属性 悪魔族
ATK3500 DEF2450
「フィールドまたは墓地からそれぞれ違う属性の6種類の『魔獣』と名の付くモンスターを除外した時のみ特殊召喚可能。このカードが特殊召喚に成功した時、相手デッキを半分(切り上げ)にする。自分のエンドフェイズ時にゲームから除外している『魔獣』と名の付くモンスターを1枚、セットまたは特殊召喚できる。」


氷結魔獣の体に、烈風魔獣の爪、それにどことなく、紅蓮魔獣、幻光魔獣、邪念魔獣が混ざっているような感じだ。
6体の魔獣が見事に合体?したその姿はある意味「合成魔獣」である。
そのモンスターが防御の姿勢をとり、岩窟魔獣をそのまま持っているような盾を構えた。


「邪念魔獣の効果でお互いデッキからカードを5枚除外。さらに『魔獣王への忠誠』の効果でお互いに2枚ドロー。そして『魔獣王』の効果で相手デッキを半分に。」


相手デッキ12枚→7枚→5枚→3枚。


魔獣6枚除外×500で3000
邪念魔獣の効果で10枚除外×500で5000

「『魂吸収』の効果でライフを8000回復。」


相馬十悟:LP13800
運命の破壊者:LP6600


「バカナ。ライフガ13800ダト。」

「更に今ドローした『手札断殺』発動。お互い2枚カードを墓地へ送り、デッキから2枚ドローします。」


手札断殺 速攻魔法
「お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする。」

相手デッキ3枚→1枚


怒涛のデッキ破壊戦術。
ライフを削るような派手さはないが、その戦術は確実に相手を追い込んでいく。

「我ガターン。」



「マダダ。我自身ノ効果デ、ドローフェイズヲスキップダ。コレデ我ノデッキハモウ減ラナイ。貴様ノデッキ破壊モココマデダ。」

「果たしてそうでしょうか?僕の記憶に間違いが無ければこのターン、2ターン前に発動した『フューチャー・グリード』の効果が発動するはず。そしてあなたのデッキは・・・」

ディスティニー・ブレイカーは自らのデッキを確認した。

「ハ!」

何度確認してもデッキは1枚しかない。
それに対して引かなければならないカードの枚数は3枚。
まさかディスティニー・ブレイカーの召喚条件を満たすために発動したカードがデュエルの勝敗を決するカードになると、誰が予想できただろうか。


「では、ドローフェイズをスキップしてスタンバイフェイズに移ってもらいましょうか。」


ディスティニー・ブレイカーはデッキから最後のカードを抜き取った。
あと2枚デッキがあったら負けなかっただろうか?
そんな事を考えても後の祭りというものだ。



相手がドローしなければいけない時に、ドローできない場合。
デュエルモンスターズにおける2つ目の勝利条件だ。



「この時点であなたのデッキは0、僕の勝ちだ!!」

「バカナ!バカナ!バァカナ!アリエナイ。封印サレル前、コノ世界デ様々ナデュエリストト戦ッテ来タ。シカシコンナ事ハ初メテダ。コンナ戦術モ、敗北モ・・・。」

「ディスティニー・ブレイカー、私たちの負けみたいですね。」

智世が起き上がり言った。

「貴様、何故マダ生キテイル?」

「印章の力・・・ですかね。これから私はあなたを封印する。それが私の最後の役目。」

「待って!!お姉ちゃん!!あと少しだけ!」

「ごめんね。今度こそ本当お別れよ。少しの間だけど、一緒にいられてうれしかったわ。それじゃあ、さようなら。」

智世の手には6枚の印章が握られている。
智世は1歩1歩ディスティニー・ブレイカーに近づいていく。
そして、智世たち2つの体が触れた時、遺跡中が巨大なエネルギーに満ち溢れた。

激しいく輝く光。
優しく包み込む闇。
全てを支える地。
透き通るような水。
消える事なき炎。
強く吹き荒ぶ風。

それらが全て交じり合った巨大なエネルギーによって、遺跡の上空に大きな空間ができた。
そこに体が吸い込まれていく。
ただ、そのスピードはゆっくりと歩くようである。


「なんだろう?この気分?」

この世界へ来た時もこんな感じだったろうか?
一昨日の事なのに、えらく昔の事に感じられるのは色々あったからだろうか。
何も見えない。目の前が真っ白だ。













キーン、コーン、カーン、コーン。

学園に始業のベルが響き渡る。
この時間はHRだから。教室には担任が来るはずである。

2年B組の教室の前、一人の男が立っている。
黒須というこの教師は十悟達の担任だ。
HRだから仕方なくこの教室に来た。(誰もいるはずのない教室に。)

ガラガラ

扉を開けた。

「え?」

そこには驚くべき光景が広がっていた。
皆、気を失っているものの自分の席についているのだ。

「1、2、3・・・・・・・・・・・・28」

ただ一人、相馬十悟を除いて・・・。




20章(最終章):次元を超えて

運命って何でしょう?
私たちの意志に関係なく訪れるそれに、私たちは常に縛られている。

私はあの時、願った。
大好きだった姉に会いたい。
ただそれだけだった。

確かに姉には会えた。話もできた。
その代わりに大切な人を失った。

「私のせいだ・・・・・・・・・。」

そんな言葉を何度繰り返しただろうか?

運命は変えられる。

よく聞く言葉だ。
でも、変えない方がいい運命もあった。
もし私が姉に会おうと思わなければ、彼の運命を変える事も無かった。

「私のせい・・・だよなぁ。」

智花はそんな事をつぶやきながら学校への坂道を登っていく。


ピピ、ピピピ。

突然、無機質な機械音が響きわたる。
携帯が鳴ったのだ。
メールが届いている。(届くはずのない彼から)
智花は急いでメールを見た。




Title:智花へ

本文:とりあえずこのメールは迎人、朝子、久美、智花の4人にしか送ってない。他の人に送っても多分良く分からないだろうから。
智花のお姉さんとディスティニー・ブレイカーが接触した瞬間に光に包まれたあたりまでは、みんな分かると思う。本当は僕もそれで帰れるはずだったんだけど、思わぬ邪魔が入ったんだ。「悪魔の調理師」がその次元間の移動に介入してきたんだ。つまりそっちの次元の誰かが持つ「悪魔の調理師」にあの精霊が宿っている事になる。
僕がそちらの次元へ帰る手段はまだ残っている。「ホークビショップ」の協力で、もうすぐ帰れそうなんだ。時間軸の調整がどうとかで、帰るのは次の満月の夜になるらしい。その時、教室で待っていてくれたらうれしい。










PS,お姉さんは、智花が幸せになるように祈っているって言ってたよ。良かったね。それとハートのマークのついたオルゴールを智花にもらって欲しいそうだよ。カードが入っているみたいだから。帰ったら何のカードか教えてほしいな。それじゃあ。また会うときまで。



「おはよう。智花。ねえねえ、十悟からのメールが来たんだよ。智花の所にも来たでしょ。私、物理とか地学とか苦手なんだけど、次の満月っていつ?」

「・・・」

「え、何で泣いてるのよ。帰ってくるんだよ。」

「いいえ。皆さんにも教えてあげましょう。」



その話は2年B組の間にすぐに知れわたった。
ただ、あの時の事を全部夢だったと思っている者も多いらしい。






「ああ。皆、相馬の事だが・・・・・・・・学園長はとりあえず、デュエルで外国へ留学と言う事にするらしい。」

担任の黒須が、HRの最初にそう切り出した。


「・・・・」

ああ、管理職って大変だな。
アカデミアの校長もそりゃー逃げたくもなるよ。


「え?あの、留学で済ませようとしてるんだよ!!」

黒須もやるせない気持ちと、無力な自分への怒りで怒鳴ってしまった。

「先生、私たちの話を聞いて頂けますか?私たちが消えていた時の本当の話を。」

智花はすべてを話すことにしたらしい。
誰も信じないであろうと、みんなが黙っていた真実を。

智花、迎人、朝子、久美を中心に話を進めることにした。
もちろんメールの事も。

黒須は黙ってそれを聞いていた。
ただ、バカにする様子も無く、話を真剣に聞いているようである。

「・・・と、言うのが私たちの知るすべてです。それでも私たちには分かるんです。十悟君は帰ってきます。だから留学でもいいんです。」

智花の言葉にみんなうなずいている。
それを見ていた黒須は重い口を開いた。

「みんな。本当にすまない。私が『ディスティニー・ブレイカー』をしっかりと管理していなかったばっかりに。本当にすまない。」

黒須は頭を下げた。
その態度から心から謝罪している事が分かった。

「それは、十悟が帰ってきたらあいつに言ってあげてくれよ。『ディスティニー・ブレイカー』を倒したのもあいつだしさ。」

「そうだな。ああ、そうだ忘れる所だった。みんな知っていると思うが来週の日曜日、童実野高校との交流試合がある。デッキの調整は怠らないようにな。」

そう言うと黒須は教室から出て行った。

良かった。
全員とまではいかなかったが生徒が戻ってきた。

「来週の試合が楽しみになってきた。相馬、ちゃんと戻ってこいよ!」

黒須はそうつぶやいた。














土曜日の夜。
その日は昼から雲ひとつ無い空が広がっていた。
夜になると見事なまでの月が見える。
黒須先生の計らいで、クラスのほとんどが教室に集まっていた。

「遅い!まだかよ。明日は童実野高との試合だっていうのに。」

「まあ、そう焦らない。まだ8時よ。」


9時、10時、11時、刻々と時間は過ぎていくが一向に十悟が戻ってくる気配はない。

黒須が教室に入ってきた。

「みんな。明日の事も考えてそろそろ帰らないか。相馬だって分かってくれるさ。」

「俺は、2時でも3時でも待ってるぜ!」

「分かった。どうせ止めても聞かないだろ。先生も付き合う。」

朝子達も残ると主張したが結局、迎人と黒須だけになってしまった。
月もすっかり西に傾き、東からは太陽がのぼり始めた。
それから何時間経っただろうか。
教室の中に差し込む太陽の光で迎人は目を覚ました。

「そうか。学校に泊まったんだっけな。」

迎人はまだ眠そうに目をこすった。

「あ、起きたか。」

「十悟!!!」

夢ではない。
親友であり、異世界で共に戦った仲間の姿がそこにはあった。

「ありがとな。待っていてくれて。」

「いいって事よ。」

感動のあまり抱きつきたい気分でもあるが、そこはなんとか抑えることにした。
「じゃあ。帰ろうか?」

十悟が言いかけた時、黒須が大声を上げた。

「しまった!!!試合の時間だ!!明智、相馬、デッキはあるな。ディスクは童実野高で貸してもらえ!とにかく車に乗るんだ!」

3人は急いで校舎から出て黒須の車に乗り込んだ。
車の中でようやく十悟は今日の試合の事を知った。

「先生、もう少し安全運転でお願いしますよ。」

「うるさい。このスピードならギリギリ間に合う。」

と言うことで、「頭○字D」並みの運転で童実野高校を目指す事になった。
くれぐれも車の運転には気をつけましょう。

















彼らが車でこちらに向かっている頃

「はっはははは。弱い。弱すぎる。尾瀬呂の実力なんてこんなもんか。俺の相手をする奴はもう少し手ごたえのあるやつなんだろうな。」

童実野高の生徒だろうか、デュエル場全体に聞こえるような大声で笑っている。
それに便乗するかのように数人の童実野高の生徒が笑っている。

「まったく好き放題言ってくれるわね。」

「でも仕方ありません。まだ尾瀬呂で勝ったのは朝子さんと私だけですから。」

智花も悔しそうに言った。

「あれ?久美は?」

「私、手札事故っちゃって。」

「バカーーー。」

そんな会話をしているうちにデュエルはどんどん進んでいく。
相変わらず尾瀬呂に勝ち星は2つしかない。

「んん?尾瀬呂はもう全員デュエルしたんじゃないのか?俺達の対戦相手はどこだよ。」

「さあ、逃げたんじゃねぇの。」

ダダダダダ

会場内を物凄い勢いで走る音が聞こえた。

「ギッリギリ、セーフ。だよな?あ、よかった。テメーらの相手は俺達だーーーー!」

「早すぎだよ。迎人、デュエリストじゃなくて陸上選手でもいいんじゃないのか。ってもうデュエルしてる。」

遅れて、十悟と黒須が入ってきた。

「あいつはあいつなりに気を使ったのよ。やっぱりラストは十悟がキメないとね。」

「お、おかえりなさい。おジャマ達も随分心配してたんですよ。」

順々にクラスの皆から歓迎を受けて最後に智花が残った。
いや、残していたのかもしれない。


「あのさ、智花・・・・・・・・」


「よっしゃーーーーー。俺の勝ちだーーーーーーーー。」

その言葉を遮るように迎人の勝利の雄叫びが響きわたった。

「もう僕の番か。迎人も随分早く決着つけたみたいだな。智花、行ってくるよ。あ、あのさ、もし僕がデュエルで勝ったら、その・・・・・・・・・お姉さんが残したあのカード見せて欲しいな。」


「ええ。もちろんです。」

十悟はデュエル場の上に立ちデュエルが始まった。




















その日の夜

お姉ちゃん、元気ですか?死んだ人に元気ですかなんて変だね。
あのね。今日、十悟君が帰ってきたんだよ。
今日は童実野高校でデュエルしたんだけどその最後のデュエルが笑っちゃうんだ。
十悟君の相手はエクゾディア使いで、最初のターンにエクゾディアパーツが4枚と「クリッター」が手札にあったのに、十悟君の「手札抹殺」で墓地へ直行。数ターン後には除外されて打つ手なし。
散々、尾瀬呂の事を馬鹿にしてたから気分爽快よ。
でも結局うちが4勝、童実野が25勝でボロ負け。ちょっと情けないです。
だけど私、頑張るね。お姉ちゃんの分まで。

智花はオルゴールの中から1枚のカードを取り出した。
傷1つない。きれいなカードだった。

「お姉ちゃんの残してくれたこのカード、大切にするね。」


テンダネス  光属性 天使族
ATK700 DEF1400
「恋人たちの永遠を祝福する、かわいらしい天使。」


能力も低く効果も無いカード。
しかしテキストを見れば姉の言いたいことは何となく分かる。

智花はそのカードを眺めながら眠りについた。
そう、姉の温もりが残るそのカードを見ながら。













その時まだ僕達は知らなかった。
デュエルモンスターズに「運命」の名前を持つ神がまだ存在していた事を。

新たな運命はもう始まっている。
もしまた運命に導かれる事があるのならば、僕達はまた旅立つだろう。
次元を超えて。











あとがき
まず、自分なんかの作品を掲載して下さったプロたん様どうもありがとうございます。
そして掲示板に感想をいただいた方、そして最後まで読んでいただいた方、本当にありがとうございました。
ラストに思いっきり続編のフラグを立ててしまいました。まだ構想もほとんど決まってませんが、もし次回作が登場するようならばまた「相馬十悟」をよろしくお願いします。





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