ディスティニーブレイカー

製作者:???ネオスさん





はじめに

これは私「???ネオス」が書いた小説です。オリカが多めです。ルールは基本、OCGに準拠しているつもりです。アニメキャラもちょこちょこ顔を出します。世界観としては、遊城十代が活躍していた時代から少し後ということにしてあります。話に出てくる尾瀬呂という地名ですが遊戯王20巻の15ページ、マリクが上陸したのが尾瀬呂港でしたのでいっそ隣町ってことにしてしまいました。まだまだ未熟ですので何か変だなと思ってもあまり気にしないで下さい。



主な登場人物

相馬 十悟

本編主人公。丁寧な言葉使いに糸目で笑顔が似合う好青年。しかしデッキ破壊デッキを使用するため、回りからは密かに恐れられているところもある。

明智 迎人

十悟の親友。デュエルと体育の時以外は寝ている。おおざっぱだが意外といい性格をしている。推理ゲートを使い上級モンスターでガンガン攻めるのが好き。

反町 朝子

十悟の幼馴染で面倒見のいいお姉さんタイプ。パーミッションを使う。意外と鋭くデュエル以外でも彼女のカウンターを恐れる者が多い。

六道 久美

かわいいもの好き。特にピケルが大好き。ピケル中心のキュアバーンを操る。性格はおとなしめだがデュエルの時は結構熱い。

木村 智花

責任感が強く統率力もある典型的な委員長タイプ。今は亡き姉のサイドラデッキを使う。ひょんなことから十悟達と行動を共にすることになる。




第1章:日常

ここは尾瀬呂(オセロ)町、伝説のバトルシティーが行われた童実野町から、電車で1駅である。よって童実野町へ遠征する者も多く、デュエリストのレベルは高い。小高い丘にある尾瀬呂学園の高等部に主人公たちは通っている。ここではデュエルアカデミアに習い、デュエルを学校の科目に取り入れている。高等部、大学部の共同で精霊の研究を行っている。


そんな学園での日常からこの物語は始まる。




「『裁きを下す者ボルテニス』でプレイヤーにダイレクトアタック。」

LP→0

デュエルモンスターズ。
モンスターカード、魔法カード、罠カードを組み合わせて戦うバトルゲーム。
相手のライフ、デッキを0にするか、特殊条件が揃うと勝利となる。


「勝者、反町 朝子」

この学校では審判のやり方も学習する。今まで決められた審判方法はなかったが、バトルシティの磯野氏の方法を基礎とした「磯野方式」が主流となっている。


「クソ。また負けた。」

少年は膝をついた。
デュエルに負ければ悔しい。
誰でもそうだが、これが授業で成績に影響するとなれば皆目の色を変える。

「『光神機−桜花』を生け贄なしで召喚してそのまま墓地へ送るのはもったえない気がするわ。『突然変異』でも入れてみれば?」

「考えとく。」

キーン、コーン、カーン、コーン

授業の終了を告げる音が響きわたる。
デュエル場の中心に教師らしき男がマイクを持って立った。


「皆さん。これで、デュエルの授業は終了です。来週までにレポートをまとめて私、黒須まで提出してください。」

黒須先生は彼らの担任でデュエル担当である。
(注:くろすと読む。決してクロノスではない。)

「十悟、デュエルどうだった?もちろん勝ったんだろう?」

「いや。今日は審判。なかなか相手が見つからなくてね。」

この少年、相馬十悟がこの物語の主人公だ。
ちょっと背が高く、人より少し目が細い、普通の高校生だ。

ただ人と少し違うのはデッキ構築の仕方だろう。
それは彼のデュエルを見ていくうちに分かってくるだろう。



放課後

「ところで今日はどうする?」

「カード屋Dで掘り出し物でも探しながらレポート書こうぜ。久美と朝子もどう?」

「そうね。行きましょ。」

カード屋Dは彼らの行きつけで、店員は学園の卒業生である。卒業生みんなでお金を出し合って作った店で主に学園と取引をしているため、この不況の中でもなんとかやっていっている。

「ちわ。先輩、また机借ります。」

「はいよ。デュエルディスクが一般にも出回るようになって、机でデュエルする人減っちゃったけど役に立ってるようで良かったよ。」

そういって店員はレジに戻っていった。


4人は早速レポートに取りかかった。
レポートでは専用のシートにデュエル経過を記録し、勝負を分けたターニングポイントをまとめ、デッキの改善点等を考察していく。


「だから、それじゃあチェーンの順番が逆じゃないの。最後が『盗賊の七つ道具』。」

彼女は反町朝子。
ブラウンのボブヘアーに、凛とした顔つき。
すらっと伸びた脚が特徴的だ。


「だー。わかったからそんな大きな声出すな。」

彼の名前は明智迎人。
スポーツ刈りで筋肉がすごいわけではないが、いかにもアスリートといった体つきだ。
それなりにデュエルも強いが、勉強のほうはからきしだ。


「十悟君このポテチもらっていいですか?」

彼女が六道久美。
ピンクに髪を染め、左右2つを縛っている。
可愛らしい羊の小物がお気に入りだ。



数時間後

「そろそろ店閉めるよ。」

店員が彼らに話かけてきた。
気づくと何人かいたはずの店内は彼らだけになっていた。

「それじゃあまた明日な。」

こんな日常が毎日続くと思っていた。
しかしこの時、運命の歯車は着実に回り、彼らに過酷な試練を与えようとしていた。




次の日

「こらー。席に着きなさい。数学の授業を始めるぞ。」

デュエルばっかりしているわけではない。きちんとした授業もある。すべての生徒をプロなりデュエル関係の職に就けるのはまだ無理である。そのため最低限の授業はしている。

「ん、このカードは?誰のだ?」

しーん
誰も名乗り出ない。


「黒須先生が置いていったんじゃないでしょうか。」

「そうかそれならとりあえず、委員長の君が預かってなさい。」

クラスを代表してと思ったのかは分からないが、彼女が預かることになった。
彼女が木村智花、クラス委員長を務めている。
キリッとした顔立ちに眼鏡をかけている。
眼鏡を外すと美人になるタイプだ。



数学教師は智花にカードを渡すとすぐに授業が始まった。
十悟にはちらりとそのカードが見えた。

「レベルは10、かなりの上級モンスターか。あんなカード見たことないな。」

十悟はそう呟き教科書を開いた。
頭が痛くなるような方程式が並んでいる。



「ぐーーー。」

迎人はもう寝ているようだ。都合がいいようだが実際クラスに1人か2人はこんな生徒がいるものである。



「智花。ヤット会エタ!!早ク私ノ元ヘ!!」

「え、お姉ちゃん?」

智花は声を上げた。


ピカーーーーー

その瞬間カードが光を放つ!!
光は教室中に広がっていく。

太陽の光を見るような気分。
直視することができず、皆目を閉じた。



次の瞬間、そこは見知らぬ場所だった。
黒板も机もない。
食堂。そいうのが一番近い。




2章:漂流

「いてて。ここどこだ?教室じゃねえな。夢の中か。」

「おーい。寝ボケてる場合か。一応現実みたいだぞ。」

十悟と迎人が漫才?をしているのを遮るように智花が話した。


「と、とりあえず誰がここに来ているのか確かめましょう。出席番号順に呼んでくから返事してください。」


「明智くん」
「ヘイ」

「石井さん」
「はい」

クラス名簿も無いが、智花はすらすらとクラスメイトの名前を呼んで行く。
その度、返事をする姿は学校のようだ。
ただ、その場所は明らかに非現実的な場所だ。

「登校拒否の伊東君を除いて29人全員が来てるみたいですね。1時間目始まる時間ですから。」

「おい。藤沢、どこ行くんだよ。」

迎人が呼びとめると

「うるさい。ちょっと外を見に行ってくるだけだよ。」

その少年はぶっきらぼうにそう言うと部屋のドアを開け外へ出た。
藤沢に続いて2人くらいが部屋から出て行った。

「良かったのかな?行かせても。」

「ほっとけよ。あんな奴。」

十悟と迎人だけでなく、皆不安で一杯だった。
自分の意見や憶測を語る者が多い状況だ。

「とりあえず、状況の把握が最大の課題ですね。数人で探索、他の人は藤沢君たちを待つようにします。」


「さすが、委員長ね。私たちは委員長に従っておいた方が利口だと思うわ。」

「そうだね。何が起こるか分からないし。」

朝子と十悟がそう言うと、皆納得したのか大人しくなった。
事の重大さを徐々に理解してきたようだ。


「では、朝子さん、十悟くん、迎人くん、久美さんで、城の中を見てきて下さい。ただし決して無理しないで下さい。」

「行こう!!」

4人は部屋を出た。
藤沢たちがいる様子はない。

どうやら大きな城の中のようだ。
西洋の甲冑が置いてある廊下が続いている。

「ここは、武器庫って書いてあるけど、開けてみようか?」

重い扉だが鍵は掛っていない。
そこにあったのは剣でも槍でもましてや大砲のような物でもなかった。

「デュエルディスク?」

「何で?」

デュエルディスク。
海馬コーポレーションが開発したバーチャルカードバトルマシンだ。
確かにいつも自分たちが使っているものと同じものだ。

「普通に考えればこれが武器になるってことよね。」

「敵はデュエルモンスター?そんなバカな。」

デュエルディスク=武器
デュエリストにとっては確かにそうかもしれない。
しかしまだ彼らには何かの冗談にしか思えなかった。
ほんの数分後までは・・・。

「こっちは図書室みたいですね。」

「ここから先は客室みたいだよ。ひとりずつ個室に入れそうな数あるな。その先は、階段か。行ってみようか?」十悟が階段を登ろうとしたその時、

いつでーも、そのえーがーお♪
携帯のメロディーが流れた。

「ティアドロップの着うただ。というか携帯つながるのかよ!」

「もしもし。あ、委員長。え!!そんな馬鹿な!!うん。分かったすぐ戻るよ!!」

十悟の顔がみるみる険しくなっていく。

「十悟君何があったの?」

久美が恐るおそる聞いた。

「詳しくは分からないけど、森の中で藤沢が死んだらしい!!」

「ちょっとまってよ!!本当なのか?」

十悟は真顔で頷いた。

4人が食堂へ戻ると、藤沢と出て行った二人が戻っていた。
彼らは青ざめた顔をしている。


「とりあえず、皆さんの話まとめていくとこうですね。」


@藤沢中心に外へでた3人は森に踏み込もうとしたとき、「ヘラクレスビートル」らしき巨大な化け物に襲われ、藤沢は命を落とした。そして2人は命からがら逃げてきた。

A十悟たち4人が発見したのは、まず図書室。次に寝室、一人一部屋はある。最後に武器庫。デュエルディスクが大量にあり。

B食堂に隣接した厨房と地下の倉庫には食料がだいたい1週間分。


「@とAを合わせて考えれば、全員デュエルディスクを付けた方がいいですね。食料はもう少し欲しいですね。森に出れば何かあるでしょうか。」



1人1つディスクを持って個室へ入った。


十悟は部屋で考えてみた。

(ここはどこかの城で、回りはデュエルモンスターが生息している。ここの住人はデュエルモンスターで戦っていた。なぜ?そして自分たちがここにいるのはどうしてか?アニメとかゲームでは対立する国との戦争とか魔王との決戦が待てる?)


そんなことを考えていると、部屋をノックする音が・・・。

「迎人か?」

「私です。」

意外な人物だった。
委員長の木村智花
こうして話をするのも初めてだ。
智花はきちんとドアを閉めて、正座して話始めた。

「単刀直入にお聞きしますが、今の状況をどう考えますか?他の皆さんにもお聞きしたんですが、分からないが大半で中には隣国との戦争だとか、魔王を倒しに行くとかふざけた答えしか返ってこなかったので、成績もよく常識のあるあなたに意見を聞こうと思いまして。」

「いや、僕もみんなと同じようなことしか考え付きませんよ!そもそも常識は通用しませんしね。藤沢の奴はカブトムシに殺されたんですからね。」

少し沈黙が続いた。
友を失った悲しみが少なからずある。
十悟は何か話を変えようと考えを巡らせた。

「ところで授業が始まる前に先生から預かってたあのカードは何だったの?結構興味あったんだけど。」

「あれは・・・え、あれ。ない。」

智花はデッキケースを開けたが自分のデッキしか入っていない事に気づいた。


「確かレベル10で名前は『DESTINY・BREAKER』だったと思ったけど。その他の数値とイラストが無かったんです。」

「直訳で運命を破る者か。今ここにそれが無いってことはそのカードが僕らをここに導いたという事かな。」

十悟は非現実的な事を言ってしまったかな。と思ったがその可能性を必死に模索する智花を見ていた。

「それと、空耳かもしれないですが、姉の声を聞いたんです!!」

「え?でもお姉さんは去年亡くなられたはずでは?」

十悟は言ってから後悔した。
智花の顔は今にも泣きだしそうだ。

「ごめん。つらいこと思い出させてしまって。」

「いえ、いいんです。言い出したのは私の方ですから。ところで・・・・」

そう言いかけた時

ガチャ
ドアが開く音が聞こえた。
同時に3人が部屋に入ってきた。
迎人、朝子、久美の3人だ。

「この状況について話してたんだよ。これからの事とか。」

十悟と智花は今話してた事を簡単に3人に説明した。


「ねえ!!図書室に行ってみない?」

朝子は提案した。
十悟は彼女の言おうとしている事が分かったらしい。

「図書室ならこの世界に関するヒントが隠されているかもしれない!例えば地図とか歴史書なんかがあるかもしれない。そういうことだろう?」

「さすが、十悟!!よく分かってるじゃん。私もそこまでは考えてなかったけど行く価値はありそうじゃない?暇つぶしにもなりそうだし。」

5人は図書室に向かうことにした。
城の中は静かであった。
廊下は暗く、ロウソクの明かりだけが頼りだ。




ひと際重厚な扉がある。
上には確かに「図書室」の文字がある。
その扉をあけるとカードイラストで見たことがある光景が広がっていた。



「ここはまるで、『王立魔導図書館』だね。」

その時、何者かが彼らの後ろに立った。
一緒に来た仲間では無かった。

「ようこそいらっしゃいました。」

そう言って彼は頭を下げた。

「お、おまえは・・・」




3章:魔獣デッキ

「本の精霊ホークビショップ?」

これが噂のデュエルモンスターズの精霊である。
回りには「ブークー」フワフワ浮いている。

「はい。ここに仕え始めて百年になります。私に分かることならば、何でもお話しますよ。どうぞお聞きください。」

本を持った鳥型モンスターが話しかけてきた。
最初は驚いたがようやくこの世界の住人に出会えた。
十悟達は自分の疑問をぶつけていくことにした。

「じゃあ俺から。この世界について教えてくれないか?俺らは学校の教室からこの世界に飛ばされてしまったんだよ。」

迎人は今までの経過を簡単に説明した。

「この世界は、あなた方人間の住む世界とは別次元にある、デュエルモンスター界というのが一番分かりやすいですかね。私のようなモンスターがこうしているのを見るのは初めてでしょう。」

「あ、あのここから元の世界に戻るにはどうしたらいいんでしょうか?」

久美は今後の最大の目的になるであろう事を思い切って聞いてみることにした。

「ここに人間の方が来られたのは初めてでして私には分かりかねます。申し訳ありません。」

ホークビショップは申し訳なさそうに答えた。


「では、この魔導書というのは何ですか?」

十悟は案内図を見ながら質問した。

「おや。十悟さん、あなたはすでにいくつか所持してるではありませんか?その手の機械に付いてるものです。」

ホークビショップは十悟のデュエルディスクを指してそう言った。

「つまりデュエルモンスターズのカードか。なるほどここでデッキが強化できるのか。ありがとうございます。さっそく行ってみます。」

十悟は丁寧にお礼を言って迎人と一緒に走りだした。

「私たちは地図や歴史書を探してみましょ。行くわよ久美。十悟、迎人、いいカードあったら押さえといてよ!!」

「おう!任せとけ!!」

4人はいつも通りに振る舞う事にした。
そうすることで、希望が生まれる気がしたからだ。

「私は、もうしばらくビショップさんからお話を聞いてみますね。」

智花はそう言うと、ホークビショップの正面に座り、話始めた。


十悟と迎人が行ってみると、古い木箱の中にカードが無造作に収められている。
丁度カードショップでノーマルカードが安値で売られているように。

「ブルーポーションにモウヤンのカレー、雑魚カードばっかりだな!こんなカードどんなデッキに使うって言うんだ?なあ十悟。」

「これはデュエルに使うというより、探検というかサバイバルに必要なカードが多いな。」

実体化させれば食べれるのか?「モウヤンのカレー」を。
飲めるのか?「ブルーポーション」を。

彼らの頭の中にはそんな疑問が浮かんでいたに違いない。

「よし戻ろう。」

無料でデッキが強化できるほど異世界はあまくなかった。
その中でも使えそうなカードを数枚ずつ持って戻った。
中央の席に朝子と久美が座っている。

「朝子、そっちはどうだ?」

「もう戻ったの?」

朝子は驚いてそう言った。

「デュエルに使うというより、探検というかサバイバルに必要なカードが多かった。自分のデッキを信じるしかないようだぜ。」

「あんたはどうせ、雑魚カードばっかりで使えねーとか言ってただけでしょ。」

「う、鋭い。」

朝子のカウンターが炸裂した。
迎人の心にグサリと突き刺さった感じだ。

「でもデッキを信じるしかないってのを考えたのは俺だぜ。」

「十悟、地図は見つけたわ!面白いことに、尾瀬呂町の地形にそっくりなの。最初は目を疑ったわよ。」

「無視するなよ。」

確かに机の上にある地図は尾瀬呂町に見える。
尾瀬呂町は東に海が広がっている。
西は住宅街で、さらに先へ行くと童実野町へと続く。



「智花、何か聞けた?」

朝子の声に4人の視線が智花に注がれた。

「ええ、なんでもここから西へ10キロくらい行くと遺跡らしきものがあるらしいの。そこには不思議な部屋がいくつもあるとか。」

「ちょっと待って!!西って言うと現実世界では童実野町の方向よね。」

バトルシティはデュエリストの間では知らぬ者はいないほど有名な大会である。
それ以後も有名な大会はほとんどこの童実野町で行われている。
おそらく影で某大企業社長の力が働いていると思われる。

「確かに何かありそうじゃねえか。」

「その続きは明日、みんながいる時にしよう!!」

十悟がそう提案すると4人は頷いた。



書物を片付け五人が帰ろうとした時、

「少々お待ちを!せっかくデュエリストとこうしてお会いできたのですから、どなたか私とデュエルをしてみませんか?そうですね、情報料ということでいかがです?本当に命(ライフ)を奪ったりいたしませんから。」

「よしおれが。」

「いや僕がいくよ。この世界ではライフが0になったらその者は死ぬ。そういうことですよね?」

迎人を制して十悟が前に出てそう尋ねた。
ホークビショップは黙ってうなずく。


十悟のデッキは「デッキ破壊デッキ」
つまり自分も死なず、なおかつ相手も死なせることなくデュエルを終えられるのは彼だけである。

十悟とホークビショップは向き合ってディスクを構えた。


「デュエル」


相馬十悟:LP8000
ホークビショップ:LP8000


「私からいかせてもらいますよ。ドロー。『ハーピィ・レディ』を攻撃表示で召喚。ターンエンドです。」

スラリと美しい羽の生えた鳥獣が現れる。
そう、元祖ハーピィ・レディである。


ハーピィ・レディ ☆4 風属性 鳥獣族
ATK:1300 DEF:1400


「僕のターン、ドロー。」

「僕はモンスターを1体セット、さらにリバースカードをセット。ターンエンドです。」

十悟の場には伏せられたカードが2枚ある。
相手のハーピィはまるで生きているようにリアルだった。

「私のターン。ドロー。」

「私は、『セイント・バード』と『スカイ・ハンター』を融合して『紅葉鳥』を融合召喚。」



紅葉鳥 ☆6 炎属性 鳥獣族
ATK:2300 DEF:1800
「《セイント・バード》+《スカイ・ハンター》」



「罠カード発動『奈落の落とし穴』、『紅葉鳥』をゲームから除外します。」

十悟はすかさず罠を発動した。
青い亡霊が現れその下には血が溜まった空間ができた。
飛行モンスターである紅葉鳥をその空間が飲み込みやがて消滅した。


奈落の落とし穴  通常罠カード
「相手が、召喚、反転召喚、特殊召喚した攻撃力1500以上のモンスターを破壊しゲームから取り除く。」


「では、ハーピィで守備モンスターを攻撃。『ウィップパニッシュ』」

セットされたカードが表になった。
体にクリスタルのような氷が埋め込まれている、青い鎧のついたモンスターが現れる。
それはハーピィの爪で砕かれた。

「氷結魔獣の効果発動!!タクティクス・フリージング!!相手デッキの上から5枚をゲームから除外します!!」

砕かれた氷は水蒸気となり、フィールドを漂い相手のデッキに向かっていく。
デッキの上から5枚のカードが現れる。
いずれも鳥獣族のモンスターカードだった。
それは氷つき砕け散った。



氷結魔獣ザ・ギーネ ☆2 水属性 悪魔族
ATK:700 DEF:600
「リバース:相手デッキの上から5枚をゲームから除外する。」




「ターンエンドです。」

ホークビショップは少し驚いたようだが、すぐに無表情に戻った。


「僕のターン。ドロー。」

十悟はドローしたカードを確認すると、そのままそれを発動した。

「僕は手札から『封印の黄金櫃』発動。デッキから『邪念魔獣ラム・シューラ』をゲームから除外し効果発動。お互いデッキから5枚ゲームから除外する。」

ウジャトの紋章が刻まれた金の箱が現れる。
そこにモンスターカードが封印されていく。



邪念魔獣ラム・シューラ ☆4 闇属性 悪魔族
ATK:1200 DEF:1800
「このカードがゲームから除外されたときお互いはデッキの上から5枚をゲームから除外する。」




「さらに除外されたカードの中にある2枚目のラム・シューラの効果発動!!デッキからカードを5枚除外する。」

十悟は5枚のカードを確認した。
その中にはもう1枚同名カードがあった。


「そしてもう一枚!!これでデッキからさらに5枚を除外!!」

「ほう。デッキ破壊ですか。珍しい戦術をとりますね。なるほど私を殺さないために、ライフではなくデッキを0にしようと。果たして削りきれますかな?」

ホークビショップは少し笑顔をみせた。
十悟のタクティクスに興味が湧いたのかもしれない。

「(今までデッキから除外されたのが20枚、融合によってカードが墓地に3枚、手札が3枚つまり、デッキはあと14枚程度。いける!!)手札から『異次元からの埋葬』発動。ゲームから除外されている邪念魔獣を3体墓地へ送る。」

十悟は除外されていたカードを墓地へ送った。
ディスクには除外ゾーンはない。
よって制服のポケットが除外ゾーンの代わりだ。

「そして『魂の開放』を発動!!邪念魔獣3体と相手墓地の『セイント・バード』と『スカイ・ハンター』をゲームから除外。これで15枚のカードをお互いに除外。ターンエンドです。」

互いのライフは無傷の8000同士。
だがホークビショップのデッキは0であった。
そしてターンはホークビショップのドローフェイズ。

「相手がドローしなければならない時にドローできない時、勝利は確定する!!」

立派な勝利条件だが本気でこれを目指す者は少ない。

パチパチパチ
ホークビショップは十悟に拍手を送った。

「すばらしい!私の負けですね。よろしければ、手札を見せていただけますか?ほうほう『紅蓮魔獣ダ・イーザ』に『DDダイナマイト』ですか。これはどう転んでも私の負けですね。またよろしければお相手ください。それではおやすみなさい。」


五人は図書室を出た。

「いやー。また恐ろしいデュエルしやがって。」

「今日はたまたま運が良かっただけだって。」

図書室から部屋へと向かう廊下からは月が見える。
ちょうど三日月のようだ。

「じゃあまた明日ね。」

みんな自分の部屋に戻っていった。



十悟はまた考え込んでしまった。

「ホークビショップはなぜあの場面でデュエルなんて申し込んできたのか?もしライフを0にされたら死んでいたはずだ。最初から力試しをするだけで止めるつもりだったのだろうか?まさかあそこで果てるつもりだったのか?役割を果たしたから自分はもう消えるとか考えたりしてたのではないだろうか?」
そんなことを考えながら眠りについた。




4章:サバイバル開始

「おはよう。」

十悟達は食堂に集合していた。


「ホークビショップ?」

十悟たち以外は彼を見るのは初めてだ。
驚くのは無理ない。

「その通りです。それでは皆さん、朝食を配ります。席についてください。それではお願いします。」

智花が紹介するとそこには別のモンスターが立っていた。

「ククク、俺の料理を食う奴がいるとはな。なーに毒なんか入ってないし結構自信あるんだぜ。」

「デ、悪魔の調理人!」


毒は入っていない。
それが分かると1人また1人と食事を始めた。
中々評判いいようだ。
悪魔(デビル)だが調理人(コック)を名乗るだけの事はあった。

「食べながら聞いてください。」
智花は昨日の出来事と、状況の説明をした。

「そこで今日の行動ですが、北の遺跡に12人、城の周りの探索兼食料調達に12人、残りは藤沢くんと渡辺くんの供養をしたいと思います。」

藤沢達の話が出るとみんな少し黙ってしまった。
クラスメイトの死がクラスに影響を与えないはずが無い。

「あ、あの班編成はどうやって決めるんですか?」

「それはまだ決めてません。皆さん何かいいアイデアはありますか?」

「好きな者同士でいいんじゃねえか?」

「確かにその方が喧嘩にならなくていいわ。」

などと言ってるうちにいくつかグループができている。

「あと食料調達組に2人か。俺と、十悟が入るぜ。な?」

「ああ。」

「分かりました。しかし、十悟君は残っていただけませんか?居残り組にも男手は必要です。」

「わかった。じゃあ朝子か久美、代わってくれないか?」

「それでは、朝・・・」

「久美よろしく。」

智花が言う前に朝子が決めてしまった。
久美は黙って頷いた。

「皆さんくれぐれも無理なさらずに。それでは図書館で装備を揃えて出発してください。」


みんなぞろぞろと城を出て行く。
十悟達3人はみんなを送りに城門まで来ていた。
もう1つ藤沢達の遺体を探すために。


「おかしいな。この辺だと聞いたんだけどな。」

「ねえ。これデュエルディスクじゃない?」

確かにそこにはデュエルディスクが無造作に置かれている。
それだけだが彼らの死を物語るには十分だった。

ガサガサ

「誰?」

3人はディスクを構えた。

「失礼。私です。」

ホークビショップだった。

「なんだ、ちょうどいいところに来てくれました。渡辺の使ってたらしいデュエルディスクがあったのですが遺体が見当たりません。なぜだか分かりますか?」

「この世界での死の概念はこの世界からの完全消滅を意味します。その後は輪廻を繰り返すとも、異世界で転生するなど様々な事が言われています。」

「元の世界に戻っている可能性は?」

「分かりかねます。まったく無いとも言い切れませんが。」

十悟達は、城の外に墓を作った。
そこにはデュエルディスクを立てた。

「皆、生きて帰ってくれよ。」

急に他の皆のことが心配になってきた。

3人とホークビショップは城の中に入る事にした。


その途中

「十悟さん、これを受け取って下さい。」

そう言うとホークビショップは2枚のカードを差し出した。
1つ目は「風」の文字が刻まれているカード。
2つ目は魔法カードのようだが何も書かれていない。

「え、何々。何で十悟だけ?」

「昨日のデュエルの賞品と言いますか、この城に伝わる慣わしです。」

「この城の持ち主が残した遺産でこれを受け継ぐ者は強い者でなければなりません。伝説によればこちらを『風の印章』、遺跡の中より持ち出されたカードで何に使うかは分かっておりませんが、遺跡に関係していることは確かです。この城の住人にはさらに『水』『炎』の印章が渡されています。もう1つはあなた自身のデッキに最も必要なカードが浮かび上がるはずです。」

十悟が手にした瞬間、カードは光だしイラストと効果が浮かび上がった。

「『魔獣の宝札』か。いいなこのカード。」

強欲な壺、天使の施しと、ドローカードが次々と禁止カードになっている今、ドロー関係のカードはかなり重宝される。

「私たちもそれ集めようよ。あと、印章もね。」

「そうですね。皆さんも城の外で頑張っているんですものね。」

「皆さん気合が入っているようですね。『水の印章』は中庭の池に住む『トードマスター』が所持しているはずです。」

「それでは私が行きます。」

「じゃあ『水』は智花に任せるね。私は『炎』の方を探してみるね。」

「僕は外との連絡を待つよ。おっと早速、迎人からだ。もしもし。」

十悟は携帯電話に出て報告を受けている。
迎人達は森の中で山菜を集めているようだ。

「ああ。そういうことだから迎人達も『印章』のことを頭に入れといてくれ。もし余裕があったら残りの『印章』を探してくれ。それじゃあまた。」

「よし、あとは遺跡組みの連絡か!」


中庭の花壇には、様々な花が植えられている。
その中央に大きな池があり、何か居る。
もちろん人間には見えない。

「待ってたぜ。あんたが相手か。ホークビショップの奴から久々にデュエルができると聞いて楽しみにしてたんだ。」

「ではデュエルしていただけるのですね?『水の印章』を賭けていただけるとうれしいのですが?」

「その辺もちゃんと聞いてるぜ。」

池の前で2人はデュエルディスクを構えた。

「デュエル」


一方、朝子は

「どこに行けばいいのかな?」

そう言いながら朝子は城の中を歩いている。

「ここはまだ入ってなかったかな。」

他の部屋より少し大きめの扉がある。
扉を開けて中に入ってみる。

「ここは大広間か。あれ?誰かいる、十悟?」

「おや、新しいご主人かい。」

「あんたは『炎の魔神』だね。『炎の印章』持ってるでしょ。それを賭けて私とデュエルしてもらうわよ。」

「このカードのことかい?」

確かにそれは「炎の印章」だった。
鮮やかな赤い炎が描かれている。

「私たちにはそれが必要なのよ。」

「なかなか元気のいいお嬢さんだ。こんなものは私には必要ありませんし丁度退屈していたとこです。いいでしょう。デュエルのお相手をします。」

デュエルディスクを構えて2人は向かい合った。
「デュエル」




5章:精霊の死

城の中庭
智花とトードマスターのデュエル

木村智花:LP8000
トードマスター:LP8000

「俺のターン。ドロー。モンスターをセットしてさらに『おろかな埋葬』を発動。墓地へ送るのは『黄泉ガエル』だ。」


おろかな埋葬 通常魔法
「自分のデッキからモンスター1体を選択して墓地へ送る。その後デッキをシャッフルする。」


黄泉ガエル ☆1 水属性 水族
ATK100 DEF100
「自分のスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在し、自分フィールド上に魔法・罠カードが存在しない場合、このカードを自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。この効果は自分フィールド上に「黄泉ガエル」が表側表示で存在する場合は発動できない。」


「私のターン。ドロー。行きます『未来融合−フューチャー・フュージョン』発動。対象はもちろん『サイバー・エンド』です。」

未来融合、サイバー・エンド、もはや説明不要の強力カードだ。
あの丸藤亮が使っていたことでも有名なカード達である。
もちろん最近では手ごろな価格で手に入るようになっている。

「『サイバー・タートル』を守備表示で特殊召喚。この効果でサイバー・スネークを手札に加える。」


サイバー・タートル  ☆4 水属性 機械族
ATK800 DEF2100
「相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在していない場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。このカードがこの効果で特殊召喚に成功した時、デッキから『サイバー・スネーク』を手札に加える。」


いかにも硬そうな機械の甲羅を持つ亀。
というか機械の亀が現れる。

「モンスターをセットしてターンエンドです。」

「俺のターン。ドロー。黄泉ガエルを特殊召喚。さらに、黄泉ガエルを生け贄に『お家へカエル』を召喚。」

黄泉ガエルが戻ってきた。
この効果は意外と厄介である。


お家へカエル ☆6 水属性 水族
ATK2200 DEF1300
「このカードが『ガエル』と名の付くモンスターを生け贄に召喚した場合、相手フィールド上のモンスター1枚と魔法、罠ゾーンのカード1枚をデッキに戻す。相手はカードを1枚ドローする。」


「モンスター効果発動、未来融合とセットされたモンスターをデッキに戻す。」

智花はデッキにカードを戻し1枚ドローした。

「お家へカエルで、サイバー・タートルを攻撃。」

「サイバー・スネーク、モンスター効果発動。このカードを手札から捨てる。」


サイバー・スネーク ☆2 地属性 機械族
ATK400 DEF300
「このカードを手札から捨てる。このカードは相手モンスターの装備カードとなり、装備モンスターは攻撃できない。自分のスタンバイフェイズに装備を解除して、自分のフィールド上に特殊召喚できる。」


機械の蛇が突如、カエルに巻きついた。
サイバー・ドラゴンより少し小柄だ。

「これで、攻撃はできません。」

「ターンエンドだ。」

黄泉ガエルを復活させるため、リバースカードを出さないらしい。

「私のターン。ドロー。やった『パワー・ボンド』だ。サイバー・スネークの装備を解除、フィールドに戻します。」

機械の蛇が智花のフィールドに戻ってきた。

「手札から、『パワー・ボンド』発動、サイバー・スネークとサイバー・タートルを融合します。」

「『サイバー・ゲンブ』を融合召喚、さらにパワー・ボンドの効果で攻撃力を2倍にする。」


サイバー・ゲンブ ☆7 水属性 機械族
ATK2700 DEF2100
「サイバー・スネーク」+「サイバー・タートル」
「このカードを、『パワー・ボンド』の効果で融合召喚した場合、『パワー・ボンド』によるダメージを受けない。」


ATK2700→5400


「サイバー・ゲンブで、お家へカエルを攻撃。エボリューションアクアウエーブ。」

巨大な波がカエルを襲う。
本来、カエルは水が得意だが、その急激な波に飲み込まれていった。

「ぐは。これは大分ダメージを食らったな。」

木村智花:LP8000
トードマスター:LP4800

「カードを1枚伏せてターンエンドです。サイバー・ゲンブの効果で、私へのダメージはない。」

「俺のターン。ドロー。黄泉ガエル復活。手札から『三つ子の悲劇』発動。セットされた『悪魂邪苦止』を生け贄にする。」


悪魂邪苦止 ☆1 水属性 水族
ATK0 DEF0
「自分フィールド上に存在するこのカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキから「悪魂邪苦止」を手札に加える事ができる。その後デッキをシャッフルする。」


三つ子の悲劇 通常魔法
「フィールド上のモンスターを生け贄にささげる。デッキから同名カードを特殊召喚することができる。」


「デッキからさらに悪魂邪苦止を2体特殊召喚。さらに『悪魂邪苦止』を生け贄に、『デスガエル』を召喚。」


デスガエル ☆5 水属性 水族
ATK1900 DEF0
「このカードの生け贄召喚に成功した時、自分の墓地に存在する『悪魂邪苦止』の枚数分まで、『デスガエル』を手札またはデッキから特殊召喚する事ができる。」


緑のカエルが3体特殊召喚された。
ソリットビジョンだからちょっとかわいい。

「(次に来るのは恐らく『デスコーラス』)罠発動。『威嚇する咆哮』」


威嚇する咆哮 通常罠
「このターン相手は攻撃宣言をする事ができない。」


「いい読みだな。手札から『デスコーラス』を発動。」

3体のデスガエルが歌い始めた。
蛙の歌と言うより騒音に近いようだ。

巨大な亀のような機械は砕け散った。

「ターンエンドだ。」

「私のターン。ドロー。」

「これで終わりだな。あんたもあの男のように消え行く運命。」

急にトードマスターが話を始めた。
何でデュエル中に過去の話を始めるのか?
遊戯王シリーズの謎である。

「あの男?」

「ああ。昨日の夜この近くの森で、ヘラクレスビートルにやられたあいつみたいにな。」

「まさか、藤沢君。どうして助けていただけなかったのですか?」

「奴は、私の仲間である悪魂邪苦止を踏み潰しやがった。だから消えてもらったのさ。」

昨日の行方不明事件の裏に隠された出来事に智花は黙ってしまった。

「彼のした行動には、責任はあります。でも・・・・。」

智花は震えている。

「別にアンタが気にする事はない。それにアンタも消えていくんだからな。」

智花は決意したようにカードを発動した。

「私は消えません。『オーバーロード・フュージョン』発動。墓地から機械族をすべて除外して『キメラテック・オーバー・ドラゴン』を召喚します。」


キメラテック・オーバー・ドラゴン ☆9 闇属性 機械族
ATK? DEF?
「サイバー・ドラゴン」+機械族モンスター1体以上
「このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。このカードの融合召喚に成功した時、このカード以外の自分フィールド上のカードを全て墓地へ送る。このカードの元々の攻撃力と守備力は、融合素材にしたモンスターの数×800ポイントの数値になる。このカードは融合素材にしたモンスターの数だけ相手モンスターを攻撃する事ができる。」


ATK?→4800

「ごめんなさい。でも私は消えるわけにはいきません。攻撃、エヴォリューション・レザルト・バースト5連弾。」

カエルたちは機械龍の口から出される光線で次々と破壊されていく。
それと同時にトードマスターのライフが減っていく。

木村智花:LP8000
トードマスター:LP0

「ギヤーーー。お、俺の負けか。仕方ない『水の印章』受け取れ。あと、こいつもな。」

「本当にごめんなさい。」

智花は心の底から謝った。

「謝るなよ、偽善者。ヒャハハ、ハーハッハハ・・・・。」
トードマスターは笑いながら消えていった。

「これが、死。(私、偽善者なのかなあ。)」

智花はしばらくそこを動けなかった。
自分自身のライフにダメージはない。
ただ、それ以上に精神的ダメージが大きい。
自分は正しかったのか?
彼を救う方法はなかったのか?
そんな事が彼女の頭の中をめぐっている。

「とにかく戻ろう。」
智花はフラフラと城の中に入っていった。




6章:運命の五行詩

城から数十キロ。
不気味な森の奥、暗い洞窟。
中には古代人の残した遺跡がある。

遺跡のある一室

「お呼びですか?智世様。」

彼女は赤い服に青のマントをして、手元には3つの水晶が浮いている。
その女は跪いて言った。

「あなたの予言をもう一度聞かせてくれるかしら。『水晶の占い師』と呼ばれてこの世界最高と言われるその予言を。」

智世と呼ばれるその女性は言った。

「発動、運命の五行詩。」

水晶の占い師がその水晶を放り投げると水晶は高速で回転を始めた。
そこから2枚の紙が飛び出してきた。
そのうち1枚を手にした。

そこにはこう書かれていた。



5つの印章の所持者が変わる。

命を賭けた決闘により、異世界の住人の手に印章が移る。

城の精霊は死に、そこは無人の城となる。

やがて6つの印章は1つに集まる。

結末はこの場所へと導かれる。



「何かおかしなことが?」

「ええ。『城の精霊は死に』てところだけど、ほらこの悪魔の調理師からの報告。風の印章の持ち主は確かに変わった。でもホークビショップは死んでない。」

水晶の占い師は報告書を見て言った。

「何かの間違いでは。もしや病死すると言う可能性も。」

「まあいいわ。そうそう、もうすぐ私の妹の友人がここを訪れるはずです。おもてなしの準備をお願いできるかしら?」

「かしこまりました。」

水晶の占い師はふっと消えた。

「智花、あなたと再会できるのを楽しみにしてるわ。」





「(謝るなよ、偽善者。偽善者、偽善者、偽善者、偽善者、偽善者、偽善者、
偽善者、偽善者、偽善者、偽善者、偽善者、偽善者、偽善者)もうやめて。」


智花はベットから起き上がった。
トードマスターの言葉を思い出していたようだ。

「あ、目が覚めた?」

「十悟君。」

「廊下で倒れていたのを悪魔の調理師が見つけてここまで運んでくれたんだ。」

「夢を見てたの。デュエルしてた時の。」

智花はトードマスターとのやり取りを話した。
十悟はそれを黙って聞いていた。

「大丈夫だよ。智花は悪くない。」

「ホークビショップは死んでない。でもトードマスターは死んだ。」


コンコン

「失礼します。」

ホークビショップだった。

「おや、お目覚めでしたか。十悟さん、頼まれていた書籍の翻訳の件ですがこのようなものでいかがですかな。」

ホークビショップは羊皮紙の束を十悟に手渡した。
確かに現世の、しかも日本語になっていた。

「すごい。しかもこんなに早く異世界の文字を訳してしまうなんて。」

「いかなる言語も法則さえ分かってしまえば造作もありません。それに私は長年生きておりますゆえ、このような作業はいい退屈しのぎになります。それではお大事に。」

そう言うとホークビショップは出て行った。

「これは・・・・。」

本の訳にはこうある。



ある満月の夜、異世界の住人が現れる。

その者、精霊達の信頼を得て、印章を譲り受ける。

その者、6つの印章により異世界への扉が開く。

この時、数百にも及ぶ精霊が異世界へと移り住む。



「やっぱり、印章があれば元の世界に戻れるんだよ。」

「でもこれ以上デュエルは・・・。」

「この訳には『精霊達の信頼を得て』とある。それは必ずしもデュエルである必要はないんだよ。トードマスターを認めさせるのがデュエルでなければならなかっただけなんだ。」

「そうなのかな。」

「そうだよ。どうしてもデュエルしなきゃいけない時は僕がいく。デッキ破壊なら相手は死なない。ホークビショップがそれを教えてくれた。」

「頑張りましょう。元の世界に戻るために。」

僅かばかりの希望があるようだ。

「僕はそろそろ行くよ。朝子のデュエルも心配だし。智花はしばらく休んでいて。」

そう言うと十悟は部屋から出ていった。

「私より朝子さんの方が大事なのかな・・・。いや、私はデュエルで勝った、とにかく命の保障はされている。」

智花はつぶやいた。


部屋の外に、人影が。

悪魔の調理師だ。

これから、遺跡の中の「あのひと」に報告するようだ。
様々な者の思いが交錯しながら運命の歯車は回る。




7章:炎の決闘

城内大広間
朝子と炎の魔神のデュエル。


反町朝子:LP8000
炎の魔神:LP8000

「私から行くわよ。ドロー(うん。出だしにはいいカード)。手札から『豊穣のアルテミス』を攻撃表示で召喚。カードを1枚伏せてターンエンドよ。」


豊穣のアルテミス ☆4 光属性 天使族
ATK1600 DEF1700
「このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、カウンター罠が発動される度に自分のデッキからカードを1枚ドローする。」


青いマントを羽織った変な天使が現れた。
天使かどうかあやしいが。
カウンター罠の発動でドローができるモンスターだ。

「では私のターンだ。ドロー。魔法カード『墓所の火の玉−グレイブ・ファイヤーボール』発動。」


墓所の火の玉−グレイブ・ファイヤーボール  通常魔法
「デッキから炎族、炎属性モンスターを5枚まで墓地へ送る。墓地へ送った数だけ自分のフィールド上に火の玉トークン(☆1、炎族、炎属性、ATK100、DEF100)を特殊召喚できる。このトークンは生け贄にすることはできない。」


「墓地へ送るのは『フレイムキラー』、『ビッグバンドラゴン』、『バーニングソルジャー』、『ミスターボルケーノ』、『炎の剣豪』だ。」

墓地からあの、お墓にでる青い火の玉が現れた。
しかも5つも。

「まだまだ行きますよ。『デスメテオ』と『火炎地獄』を2枚発動。」

太陽のような火の玉が見る見るうちに近づいてくる。
それが朝子を直撃した。

「どうですか『デスメテオ』の味は。可愛い声で鳴いてくださーい。」

「アンタもしかしてバカ?ライフが1000減っただけでしょ。微妙に紳士を気取ってたみたいだけど、もうボロが出たみたいね。」

デュエル中にでもツッコミを入れる。
それが朝子の真骨頂(らしい。)

「ニヒヒ、でもまだ『火炎地獄』が残ってまーす。さあ炎の精霊達よ、相手を焼き尽くしなさーい。」

もう変態キャラでいくらしい。

オレンジ色の肌をした精霊が現れた。
精霊達の羽根が燃え上がりやがてそれは1つになる。
凝縮されていくというのが正しい。
それが一斉に朝子を襲う。

「く、でもまだまだいけるわ。」

「これで反町朝子、16歳のライフは残り5000。」

エロペンギンのような事を言い出した。

「何で私の名前を。言っとくけど私は17よ。」

反町朝子:LP5000
炎の魔神:LP7000

「じゃ、ターンエンド。」


「私のターン。ドロー。(結構熱かったわね。バーンデッキか、厄介ね。しかも何このトークンの数。)召喚『智天使ハーヴェスト』」


智天使ハーヴェスト ☆4 光属性 天使族
ATK1800 DEF1000
「このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地に存在するカウンター罠1枚を手札に加える事ができる。」

「攻撃よ。」

2体の天使が攻撃していく。
2つの火の玉が消滅した。

「全〜然〜効かないよ。」

「(こいつムカつく)ターンエンドよ。」


「私のターン。ドロー。モンスターをセットしてターンエンドだよ。」

手札が少なくなってきた為、する事がないようだ。
メタモルポットで手札補充と行きたいとこだが。


「私のターン。ドロー。攻撃よ。」

アルテミスはトークンを、ハーヴェストはセットされたモンスターを攻撃した。


「リバース効果発動だよ〜。『魔導雑貨商人』モンスター2枚は墓地へ送り、『灼熱の金剛石』を手札に加える。」

「ターンエンドよ。」

「私のターン。ドロー。『灼熱の金剛石』発動。」


灼熱の金剛石  永続魔法
「自分のデッキの一番上のカードを確認する事ができる。それが通常魔法カードだった場合そのカードを墓地へ送り、次の自分のターンのメインフェイズ時にその通常魔法カードの効果を発動する事ができる。通常魔法カード以外の場合にはデッキの一番下に戻す。この効果は1ターンに1度しか使用できない。」


「さっそく効果、発〜動〜。『流転の宝札』これで次のターン効果が使える。さらに『プロミネンス・ドラゴン』召喚。」

「ターンエンドだよ〜。モンスター効果で500ダメージ。これで反町朝子、15歳のライフは4500。」

「15って若くなってるじゃない!」


プロミネンス・ドラゴン ☆4 炎属性 炎族
ATK1500 DEF1000
「自分フィールド上にこのカード以外の炎族モンスターが存在する場合、このカードを攻撃する事はできない。自分ターンのエンドフェイズ時、このカードは相手ライフに500ポイントダメージを与える。」


流転の宝札 通常魔法
「自分のデッキからカードを2枚ドローする。ターン終了時にカードを1枚墓地に送る。送らない場合、3000ポイントのダメージを受ける。」


反町朝子:LP4500
炎の魔神:LP7000


「どうしたのかな?もっと攻めてきたらどうです?反町朝子、14歳。」

「17だって言ってるでしょ!!」


ギー、ガタン。
扉が開く音がした。
「ん〜。誰です?」




8章:勝者の気持ち

「探したよ。こんなところでデュエルしてるなんて。」

「十悟。」

ということで遅すぎる主人公登場である。

「・・・・・・・一言で言うと朝子らしくないな。」

「何よ急に。」

朝子はムスッとした顔になって言った。


「全然、カウンター罠が伏せられてないし。」

「引きが悪かっただけよ。」

「そうか、でもこれが命を賭けた戦いだってことを忘れてるだろ?」

「・・・・・」

図星だった。
少しも間違ってなかった。

「智花は勝ったよ。ちょっと疲れているみたいだからここには来られないけど。」

朝子の心の中で何かがふっ切れたみたいだ。
目が変わった。

「わかったわ十悟!待ってなさい!私は今・・・神を倒す!!」


炎の魔「神」だけどね。


「私のターン。ドロー。『打ち出の小槌』発動。手札をすべて入れ替える。フィールド魔法『断罪の大法廷』発動。」

大広間が一転、大法廷へと姿を変えた。
ちなみに朝子の方が裁判長、炎の魔神の方が被告人席側だ。

「モンスターで攻撃よ。」

「おっと。罠発動『ファイヤー・ウォール』発動。」

「待った!!『ファイヤー・ウォール』にチェーンして『盗賊の七つ道具』発動。」

「バカな。反町朝子、13歳のリバースカードは伏せられたままだ。」

「ふふ。『断罪の大法廷』の効果、プレイヤーは手札からカウンター罠を発動できる。しかもその際コストを支払う必要はない。」

いちいち訂正するのも面倒になったらしい。



断罪の大法廷 フィールド魔法
「お互いのプレイヤーは手札からカウンター罠カードを発動できる。この際コストを支払う必要はない。このカードを生け贄に捧げることで『裁きを下す者−ボルテニス』か『冥王竜ヴァンダルギオン』を手札から特殊召喚できる。」



ファイヤー・ウォールに稲妻が走った。
そのカードは破裂し消滅した。
無効化されたようだ。

「アルテミスの効果で1枚ドロー。バトルを続行、トークン2体を破壊。」

火の玉は消滅した。

「これでターンエンドよ。」

「私のターン。ドロー。流転の宝札の効果でさらに2枚ドロー。手札から『ジャンク・ボム』を発動。墓地からカードを除外して食らえ・・・。」


ジャンク・ボム 通常魔法
「墓地の魔法カードをすべて除外する。除外したカード1枚につき300ポイントのダメージを相手に与える。」


「『マジックジャマー』発動。」

朝子はまた手札からカウンターを発動した。
魔法カードが無効化され破壊された。

「ええい。『火炎木人』召喚。」

「『キック・バック』発動」

またカウンターだ。
こうしている間にもアルテミスの効果でしっかりドローしてます。(一応)

「くそー。何ていやらしい戦術なんだ。」

「ロリコン変態魔神に言われたくないわよ。」

色々な意味で朝子の反撃がはじまった。
彼女は普段の自分に戻り生きいきしてきた。

「カードを1枚伏せてターンエンド。」

「カウンター罠発動。」

「な、何もしてないのに?」

「『プロミネンス・ドラゴン』の効果にチェーンして『天罰』発動したのよ!!さらに『裁きを下す者−ボルテニス』特殊召喚。ロリコン変態魔神のカード2枚を破壊するわ。」



裁きを下す者−ボルテニス ☆8 光属性 天使族
ATK2800 DEF1400
「自分のカウンター罠が発動に成功した場合、自分フィールド上のモンスターを全て生け贄に捧げる事で特殊召喚する事ができる。この方法で特殊召喚に成功した場合、生け贄に捧げた天使族モンスターの数まで相手フィールド上のカードを破壊する事ができる。」



アルテミスとハーヴェストが生け贄になり巨大な天使が降臨した。
これも天使には到底見えない。
この天使が杖を上げると雷鳴が轟き、相手のカードを全滅させた。


「私のターン。ドロー。『断罪の大法廷』を生け贄に『冥王竜ヴァンダルギオン』を手札から特殊召喚。」

暗く厳かな法廷が崩れ出しそこから巨大な竜が現れた。

「まずい。壁となるモンスターがいない。この攻撃を受けたらほとんどライフが残らない。」

「いいえ。このターンで、お・し・ま・い!!墓地の『天罰』を除外して『冥界天使−ゾグラーヴ』を召喚。」

冥界天使−ゾグラーヴ ☆5 闇属性 天使族
ATK? DEF0
「このカードは墓地のカウンター罠を墓地から1枚除外することで生け贄なしで召喚できる。このカードの攻撃力は墓地のカウンター罠の数×1000となる。」

ATK?→3000

「行くわよ。総攻撃!!」

2体の天使が杖を構えた。
さらにドラゴンは口を開き攻撃を始めた。

反町朝子:LP4500
炎の魔神:LP0


「ぐわー。やだ・・やだ・・・死にたくなーーーーーい!!助けて・・・・」

炎の魔神は消えて行き、2枚のカードだけが残された。
炎の印章ともう一枚何も描かれてないカードが。
それを拾い上げるとカードに絵柄が浮かびあがった。

「やった。勝った。見た十悟?」

「いや。強いな朝子は。」

十悟はそう呟いた。

「なーに言ってるのよ。十悟だって、智花だって勝ったでしょ?」

「そうじゃなくて、相手が死んだのに悲しみや苦悩を表に出さないなんてすごいな。と思って。」

「それは・・・・」

このデュエルで朝子にも何か思うところがあったらしい。
しばらく黙って何かを考えているようだった。


「戻ろう。そろそろ迎人達が帰って来る時間だから!」

2人は大広間を出た。
ただ、帰りに一言も話ができなかった。



「ククク。おまえも負けたか。おまえと飲む酒は結構好きだったんだけどな。」

部屋の中に隠れていた悪魔の調理人が現れた。
神出鬼没とはこの事だろう。



「これで3枚か。」

十悟、朝子、智花の3人は集合していた。
それぞれの手には「風」、「水」、「炎」の3つの印章が握られている。

「あと3枚は城の外という事になりますね。」

この3枚以外は何のヒントも無い。
城の外に出て探すしかない。

「おい。帰ったぜ。」

迎人をはじめ、食料調達組が帰ってきた。
山菜、魚、など食料になりそうなものが大量にある。
中にキラートマトが混ざっていたには少し驚いた。

「ありがとうございます。これは私達が運びますので皆さんは部屋で休んで下さい。」

智花がそういうと、皆自分の部屋に戻っていった。
5人で厨房へ持っていき、悪魔の調理人に調理を依頼した。
どうやらキラートマトは食べられないらしい。

いつまで経っても遺跡から仲間が帰ってこない。
何度も森に探しに出ているが帰ってくる気配がない。



その夜

夕食のため食堂に全員集合していた。

誰もしゃべる者はいない。
みんな遺跡で消えた仲間達のことを考えているに違いない。

「これから、どうしましょうか?」

智花が切り出した。

「ここで暮らせばいいじゃないか。」

「そうそう。これ以上仲間がいなくなるのは辛すぎるよ。」

皆口々に言う。

「だけど、それじゃあ一生このままだよ!」

朝子は言った。

そう、何も行動を起こさなければ安全は保障される。
と同時に元の世界に戻る可能性も捨てることになる。
この矛盾は皆気づいているはずである。

「とにかく、今晩ゆっくり考えよう。一人でも友達とでもいい。」

「そうですね。明日、皆さんの答えを聞かせて下さい。」

今日は早めの解散となった。

5人は十悟の部屋に集まっていた。
もちろん今後の事を話し合うために。




9章:拳でデュエル

「私達は、どうしようか?せっかく印章を3つも集めたけど。」

「へへ。これを見な。」

迎人の手には「地」の字が掘り込まれたカードが握られていた。
もちろん「地の印章」である。

「み、見つけたんだ。迎人にしてはやるわね。で、それをどこで?」

「教えてやるぜ。俺の大活躍。」


ということで、ここからは迎人視点で展開



食料調達組みAチーム、そのリーダーがオレだ。
なかなか出番に恵まれないがようやくオレの時代が来た。(と言う事にしておこう。)

「ここで、山菜を中心に食料を集めることにしよう。1時間後にここに集合だ。」

皆森の中に散らばっていった。

とは言ったものの、ちまちま山菜を取るなんざオレの性分じゃない。
そう。オレにはもう1つ重要な任務がある。
地の印章を手に入れて十悟たちをビックリさせてやろうと考えている。


でもなかなか見つからない。
迎人が歩き出そうとした時、

「そこの少年、異世界のデュエリストとお見受けする。」

「何だ?お前は確か『格闘戦士アルティメーター』だったかな。」

「そう我は『地の印章』を守る戦士の一族。」

都合よく印章の方からやってきたわけだ。
白い肌に筋肉隆々。
紫のグラサンが特徴的だ。

「俺らがそれを必要だって知ってるんだな。で、どうしたら譲ってくれるんだ?やっぱデュエルか?」

「そうだ。これを受け取るがいい。」

アルティメーターはデッキを放り投げた。
デッキの一番前には「サイキック・アーマー・ヘッド」というカードがあった。
迎人はデッキのカードの把握のためにそのデッキのカードテキストを読み始めた。

「・・・・・・・」

「・・・・・」

「そろそろ始めても良いか?」

「そうか。思い出したぜ。お前は武器をまったく使わないモンスター。自らの拳しか頼らないってわけか。こういうデュエルは結構好きだぜ。」

迎人はワクワクしながら言った。
勢いよくデッキをカットし始めた。

「そうかデュエルを恐れぬか!そなたの様なデュエリストと戦うために同じデッキを2つ用意したのだ。遠慮は無用だ!!」


アーマーデッキ対決。

客観的にみて、これはただの殴り合いである。
一応デュエルモンスターズのルールには則っているみたいであるが。
壮絶な殴り合いが繰り広げられている。


カードの効果が厄介なので詳しいデュエルは省略しています。

「これでオレの勝ちだ。オレの全てをこの拳に込める。ビッグバン・ブロォオオオオ!!」

迎人の凄まじい攻撃にアルティメーターは吹っ飛んだ。
アルティメーターは木にぶつかった。
その体はゆっくりと地面に落ちた。

「異世界の者よ・・・」

「あ、オレは迎人、明智迎人だ。」

「迎人よ。そなたらが元の世界に戻るにはこれが必要なはずだ。」

アルティメーターは2枚のカードを手渡した。
そのうち1枚はもちろん「地の印章」だ。

「このデッキは?」

「そなたに譲ろう。我はここで消える。しかし、そのデッキを見るたびに我の事を思い出してくれればいい。最後に『闇の印章』を持った者が遺跡に向かったらしいという情報がある。この世界で最も危険な所だ、行くのなら心して行くんだな。」

そう言うとアルティメーターの体が透けはじめ、やがて消滅してしまった。
そう、この世界でデュエルの敗北=この世界からの完全消滅である。

「アルティメーターーーーーーーーーーーーーーーーー」

「何でだよ。何であいつが死ななきゃならないんだ。ホークビショップは生きてたじゃねえか。オレが、オレがあいつのライフを0にしたんだ。こんなカードのために。」

「絶対に元の世界に戻ってやる。あいつはオレ達が元の世界に戻るために自らの命を犠牲にしたんだ。このデッキはオレの宝物にするぜ。」




こうして迎人は「地の印章」を手に入れたらしい。




「じ、実は私も。」


久美の手にも印章が握られていた。
純白に輝く「光の印章」だ。


ここからは久美視点です。


どうも。六道久美です。メインの五人の中では目立たない方です。
ちなみにピケルとか、かわいいモンスターが好きです。

今、食料調達に来てるんだけど、私の目の前にいるモンスター達は可愛さとは無縁のモンスターです。


おジャマ・レッド ☆2 光属性 獣族
ATK0 DEF1000
「あらゆる手段を使ってジャマをすると言われているおジャマシスターズの一員。実はおジャマ・イエローLOVE。」


おジャマ・ブルー ☆2 光属性 獣族
ATK0 DEF1000
「あらゆる手段を使ってジャマをすると言われているおジャマシスターズの一員。実はおジャマ・グリーンLOVE。」


おジャマ・ホワイト ☆2 光属性 獣族
ATK0 DEF1000
「あらゆる手段を使ってジャマをすると言われているおジャマシスターズの一員。実はおジャマ・ブラックLOVE。」



「アハハハ。助けてくれてありがとう。川で洗濯してたらみんなそろって流されちゃったのよ。ところであなたは?」

川で流されてたこの3匹?を助けてあげました。
何かかわいそうだったので。

「私は六道久美。よろしくね。」

「く、久美のアネゴと呼ばせてもらうわ。」

レッドは牛乳瓶の底のような目をして、お下げ髪のような触覚がある。
ブルーはツリ目で結構筋肉質である。
ホワイトはスタイル抜群で、クリクリした目だが所詮おジャマだ。
ちなみにどんな服装かはご想像にお任せしよう。


「ところでアネゴ、デュエルディスクが流されててるけどいいの?」

「あああ。私のピケルがーーーーー。」

皆さん魂のカードを失った気分を味わったことはありますか?
辛いですよ。
しばらく立ち直れないです。
こんな世界ではそうも言ってられないですけどね。

「アネゴ、とりあえずアタイ達の村に来てデッキを作る?」

「え、いいの?」

「おジャマ関係のカードしかないけど。」

ショックでした。
サイドデッキと予備のピケルとクラン。
それが私の今持っているカードの全て。
つまりデッキコンセプトはおジャマデッキに変更しなくてはならない。

「ここよ。ここの奥に確かここにカードが。」

小さなおジャマサイズの倉庫の中にカードが何枚かあった。
デュエルディスクもあった。

「いいの使っちゃって?」

「アタイたちの一族はデュエルディスクはおろか、カードすら持てないのよ。」

モンスターにはデュエルできるのとそうでないのがいるらしい。
体の大きさとか形とか色々な要素で。




10章:結成!ピケクラおジャマ同盟

カンカンカン

「敵襲〜敵襲〜。」

「何?」

「ハーピィの奴らね。アタイ達の美貌を妬んでまたしても。」

ええーーーーーー。
ごめん。おジャマ・レッドそれは絶対ない。


「今日こそアレを渡してもらうわよ。」

ハーピィが数体がやってきて言った。
その中心にはどうやらボスらしく、ハーピィ・クイーンがいる。


「ハーピィ、誰があんた達なんかに渡すもんですか。」

「デュエルもできない低級モンスターが。そんなに消えたければ今すぐ・・。」


モンスター同士の争いだけど、明らかにおジャマたちに不利。

「待ちなさい。」

「異世界の者か。こんな低級モンスターに肩入れするというの?」

「こんなの弱い者イジメじゃない。」

朝子みたいな事言っちゃった。
私のデッキはおジャマカードが大半で結構不利な状況なのに。


「それではアナタが相手をするというのね?」

「分かったわ。」

「久美のアネゴ、アタイ達も戦うわ。」

3匹のおジャマ達は久美のデッキに入っていった。


「デュエル」

六道久美:LP8000
ハーピィ・クイーン:LP8000


「私の先行。ドロー。(とりあえず手札におジャマはないか。まあ丁度いいかな。)私はモンスターをセット、カードを2枚伏せてターンエンド。」

「私のターンね。ドロー。『バード・フェース』を攻撃表示。モンスターを攻撃よ。」

凶暴な鳥獣の前に立ちはだかったのは褐色の女戦士だった。
その腕力のみで鳥獣の攻撃を跳ね返した。

「私の守備モンスターは『サイバー・ジムナティクス』残念だったわね。」


六道久美:LP8000
ハーピィ・クイーン:LP7800


バード・フェース ☆4 風属性 鳥獣族
ATK1600 DEF1600
「このカードが戦闘によって墓地に送られた時、デッキから『ハーピィ・レディ』を1枚手札に加える事ができる。その後デッキをシャッフルする。」


サイバー・ジムナティクス ☆4 地属性 戦士族
ATK800 DEF1800
「手札を1枚捨てる。相手フィールド上に存在する表側攻撃表示モンスター1体を破壊する。この効果は1ターンに1度しか使用できない。」


「カードを1枚伏せてターンエンド。」


「私のターン。ドロー。(『おジャマ・デルタ・サンライズ』か。とりあえず、おジャマが来ないことには。)私はサイバー・ジムナティクスの効果発動。手札から捨てるのは『おジャマジック2』よ。」


おジャマジック2 通常魔法
「このカードが手札またはフィールド上から墓地へ送られた時、自分のデッキから『おジャマ・レッド』『おジャマ・ブルー』『おジャマ・ホワイト』を1体ずつ手札に加える。」


「来なさい、おジャマたち。」

久美は3枚のモンスターカードを手札に加えた。
そう彼女たちである。

「アネゴ、アタイ達の出番ね。」

久美はそれを無視するようにつづけた。

「手札から『融合』発動、融合召喚『おジャマ・クイーン』、さらにそれを『融合解除』、おジャマ3姉妹を特殊召喚。さらにその3体を生け贄にするわよ。」


「ええ。そんな殺生なーー。」

おジャマ達は墓地に吸い込まれて言った。

「さあ、生まれ変わりなさい。『おジャマ・ポーン』を融合デッキから特殊召喚。」


おジャマ・クイーン ☆6
ATK0 DEF3000
「『おジャマ・ブルー』+『おジャマ・レッド』+『おジャマ・ホワイト』
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手の手札上限枚数は4枚となる。」

おジャマポーン ☆2 光属性 獣族
ATK0 DEF1000
「このカードは『おジャマ』と名の付くモンスターを生け贄にした時のみ融合デッキから特殊召喚できる。このカードが墓地に置かれた時、デッキから『おジャマ』と名の付くカード1枚を手札に加えることができる。」


甲冑に身を包んだ女戦士が3体特殊召喚された。
しかし、前にも言ったが所詮おジャマである。

「これでターン終了よ。」


「私のターン。ドロー。手札から『魔法の万華鏡』発動。これにより、手札の風属性モンスター3体を墓地に送り、デッキからハーピィレディ1、2、3の3体召喚。」


魔法の万華鏡 通常魔法
「発動時、任意の枚数風属性モンスターを墓地へ送る。その枚数だけ『ハーピィ』と名の付くモンスターをデッキから特殊召喚できる。」


「さらに、『万華鏡−華麗なる分身−』の効果でデッキから『ハーピィ・レディ三姉妹』を特殊召喚。」

相手フィールドにはハーピィが合計6体いることになる。
対するこちらはおジャマ3体と壁モンスターが1体。

「総攻撃よ。行きなさい。ハーピィ達。」

相手モンスターが攻撃を開始した。
この光景を分かりやすく説明するならば「ハーピィの狩場」である。
久美のフィールドのモンスターは全滅した。

「罠発動『戦いの継承』このカードで今破壊されたカードと同レベルのモンスターをデッキから特殊召喚します。」


戦いの継承 通常罠
「このターン、戦闘によってモンスターが破壊されたバトルフェイズ終了時に発動可能。破壊されたモンスターの数だけデッキからモンスターを特殊召喚できる。ただし同レベルのモンスターに限られる。」


「来なさい『ピケル』『クラン』『ビッグバンガール』守備表示よ。」


ピケル・・・すでに説明不要のモンスターである。白装束に羊の帽子を被り杖を持った魔法少女、彼女に魅入られし者は・・・・・まあいろいろと大変である。

クラン・・・ピケルの対となるモンスターであり、ライバルである。ウサギの帽子を被りその手には鞭が握られている。

ビッグバンガール・・・昔は良く見かけたのに。


「さらに『おジャマポーン』の効果で『おジャマキシマム』『おジャマンダラ2』『おジャマリターン』を手札に加える。」

「ターンエンド。」

「私のターン。ドロー。さあ、ピケルとビッグバンガールのコンボよ。さらにクランの効果でダメージを与えるわ。」


ピケルが杖を振ると久美を光が包み、ライフを回復する。
ビッグバンガールの杖からは火の玉が出てハーピィ・クイーンを襲う。
さらにクランの鞭が追撃を加えた。

六道久美:LP9200
ハーピィ・クイーン:LP6100

「(私の伏せカードはグラビティバインド、このままロックしてもいいけど、ここは攻撃的に行こう。)さらにピケル、クランを生け贄に『守護天使ジャンヌ』召喚。」

「罠発動『奈落の落とし穴』これでそのモンスターを除外する。」

上級モンスターが除外。
本来ならかなりの痛手だが今回はそうではなかった。

「まだよ、まだ彼女達の力が残ってる。手札から『おジャマンダラ2』発動、来ておジャマ達。」


おジャマンダラ2 通常魔法
「ライフを1000払い墓地の『おジャマ・ブルー』『おジャマ・レッド』『おジャマ・ホワイト』をフィールド上に特殊召喚する。」

LP9200→8200

(呼んだ〜?)

ちょっとウザめなこの3姉妹がまたまた登場だ。

「出番よ。魔法カード発動、『おジャマリターン』この効果で相手モンスターを手札に戻す。」


おジャマリターン 通常魔法
「おジャマと名の付くモンスターが3体以上存在する時に発動可能、相手フィールド上のカードを全て手札に戻す。この効果にチェーンすることはできない。」


「わ、私のハーピィ達が・・・・」

「まだまだあ。魔法カード『おジャマ・デルタ・サンライズ』発動。彼女達の底力、見せてあげるわ。行きなさい。」

「はいはーーい。」
「いくわよ、おジャマ・デルタ・サンラーーーイズ。」

おジャマたちがポーズを決めると強大な光がフィールドを包んだ。
それはさながら太陽のような。


おジャマ・デルタ・サンライズ 通常魔法
「自分フィールド上に「おジャマ・ブルー」「おジャマ・レッド」「おジャマ・ホワイト」が表側表示で存在する場合に発動する事ができる。相手の手札を全て捨てさせ、以後相手のターンで数えて3ターン、相手のドローフェイズをスキップする。」


「これが彼女達の必殺技、これであなたのデッキは3ターンの間、完全にロックされた事になる。そして『おジャマキシマム』、これはおジャマ専用の融合魔法。」


おジャマキシマム 通常魔法
「手札またはフィールド上から、融合モンスターカードによって決められたモンスターを墓地へ送り、おジャマと名の付く融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。このモンスターの攻撃力は守備力分アップする。」


「これでおジャマクイーンを召喚。さらにその効果で攻撃力は3000。ビッグバンガールを攻撃表示に変更。」

「プレイヤーにダイレクトアタック。」

おジャマの女王はその巨体で相手に突進していった。
続いて炎の玉がハーピィ・クイーンを襲う。

LP6100→1800

「く、こんな低級モンスター相手に何もできないなんて。」

「ターンエンドよ。もっとも、手札、フィールドに何も無くドローフェイズもスキップされたあなたには何もできないわよ。」

「私のターン。(く、何もできない)ターンエンドよ。」

「ドロー。『早すぎた埋葬』発動、ピケル復活。ビッグバンガールで攻撃。」

六道久美:LP7400
ハーピィ・クイーン:LP500

「とどめよ・・」

その瞬間墓地からおジャマの姉妹が現れた。

「久美のアネゴ、もしかしてピケル姉さんでとどめをさすつもり?ライフ払ってまで蘇生させて。」

「当たり前じゃない。言わせてもらうけどあなたたち、はっきり言ってザコよザコ。私の本当のデッキはピケル中心なの。あなたたちはとりあえずの数合わせ。最後くらいはピケルで決めさせてもらうわよ。引っ込んでて。」

久美に冷たくあしらわれたので、3匹は墓地に引っ込んでいった。


「待たせてごめんなさい。ダイレクトアタックよ。ピケルシャイニング。」

うーん。そろそろ正式な技名が決まって欲しいな。


六道久美:LP7400
ハーピィ・クイーン:LP0

「ま、負けた。私が・・・こんなザコモンスターに。」

「あなたに彼女達をザコなんて言わせない。」

「アネゴーーー。」

「確かに彼女達はザコ。決してかわいいと呼べたもんじゃない。でも彼女達は私に教えてくれた。」

何をーーー。

「力を合わせれば私達でも勝てるんだってことを。」



「下には下がいることを!!!」


「そう、彼女達はザコ、それに負けたあなた達はそれ以下。今ここで彼女達の集落にはもう手出ししないと誓いなさい。」


「そんな事言わなくてもいいわ。私はここで消えるんだから・・・」

ハーピィ・クイーンは消えていった。



それで一族に伝わる秘宝らしいんだけど、命の恩人だから持っていって欲しいって。
そういうわけで私も「光の印章」を手に入れたの。



「ここまで来たら、すべての印章を集めようぜ。明日にでも遺跡へ向かおう!」

「危険は承知と言うわけですね。十悟くんはいかがです?」

「行くよ。僕らは印章に選ばれた。そんな気がするしね。」


5人は遺跡に行くことを決めたようだ。
その後は久美のデッキを皆で調整することになった。
おジャマデッキではちょっと不安があるらしい。

それが終わると皆部屋に戻っていった。
遺跡には何があるのか?
そんな事を皆考えているに違いない。



後編に続く...





あとがき?

「デスティニーブレイカー」もとうとう10章に突入しました。(パチパチ)オイ
そろそろ折り返し地点かなと思います。
いよいよ主人公達は遺跡へ向かう事を決めた。
そこで待つのは死んだはずの智花の姉、智世。
遺跡探索組みを手にかけた水晶の占い師。
城を暗躍する悪魔の調理師。
さてこれからどうなるのやら。(まだ考えてないんです。)
一応、過去の話で遊戯や十代を出す予定があります。(乞うご期待?)

というわけで後編?も頑張ります。





ディスティニーシリーズの紹介動画へ


戻る ホーム 次へ