遊闘12 準決勝開始!


風が強い。

校庭の片隅で生まれた小さな風の渦巻は、いっそう強さを増して来た。

ビュオオオ…と大きな音をあげている。

その音は、校庭にいる者達を警告するには十分大きな音のはずだった。

しかし、校庭ではそんな風よりも大きい闘いが繰り広げられていた。

誰も渦巻に気付かない。

その渦巻がここ数分で小さな竜巻と呼べるほど、大きくなっていることに気付かない。

そして、その竜巻が、校庭の片隅から、動き始めていることに、誰も、気付かない。

ビュオオオ…と轟音を上げながら、竜巻は校庭の中央に移動を開始している。

移動する速度はゆっくりではあるが、確実に校庭の中央へ向かっている。

その間にも、竜巻は砂を巻き上げ、新緑の葉、その木の枝までも巻き上げている。

この竜巻の中は台風の中のように、風が荒れ狂っている。

人が巻き込まれたら危険だ。

だが、誰も気付かない。

竜巻の轟音も、朝から風が強かったこともあって、誰も気に止めない。

校庭の中央の闘いは、佳境を迎えていた。

竜巻は校庭の中央に集まる者達の15メートル後ろまで迫っていた。

「ブラック・マジシャンは遊戯くんの大切なカード!
お前なんかには従わないのです!」

あと10メートル。

「花咲! ゾンバイア! 蛭谷を倒せぇぇ!」

あと7メートル。

まだ誰も気付かない。

「ゾンバイア、悪を倒して遊戯くんを救い出すのです!」

あと5メートル。

「ゆ、遊戯! 後ろを見て!」

「え?」

「なんだぁぁ! この竜巻みてぇなのは!」

応援していた遊戯達は、竜巻のコースからそれるように走り出す。

何とか竜巻を回避できた遊戯達。

だが、まだ気付かない者もいる。

「行けぇぇ、ゾンバイア!!」

「そ、そんなフザけたことが許されて…!」

大剣を持ち、仮面をかぶった戦士が、小さな怪物に斬りかかる。

それと同時に竜巻も襲い掛かる。

「花咲ぃぃ、逃げろぉ!!」

誰かが叫んだ。

花咲はようやく竜巻に気付く。

しかし、遅すぎた。

竜巻から逃げる時間はない。

竜巻は、この試合の対戦者2名の間を通り過ぎていこうとしている。

だが、花咲も、蛭谷も、竜巻の射程圏内だ。

逃げる時間はない。

竜巻は2人を襲う。

「うわぁぁぁぁ」

「ギャアアアア」

竜巻は、その2人を吹き飛ばすほどではなかったが、2人は立っている事はできない。

竜巻の中は風が荒れ狂い、息苦しさを感じるほどだ。

ビュオオオオオ、と轟音を立てて校庭の中央を通り過ぎる。

「はぁはぁ…」

「く、くそっ。」

竜巻は通り過ぎた。

幸い、花咲、蛭谷ともに外傷もなく済んだようだ。

「よ、良かった…」

竜巻から逃げた遊戯の仲間たちの一人が、言葉を漏らした。

だが、そんな言葉とは裏腹に、竜巻に吹き飛ばされた者もいた。

今、デュエルフィールドには、丸い怪物だけが残っている。

「あれ、ボクのゾンバイアは…!?」

花咲のデュエルディスクには「破邪の大剣−バオウ」のカードが残っているのみ。

風は無常にも、花咲の切り札を吹き飛ばしていたのだ。





「第2回戦、第4試合――勝者・蛭谷!」





蛭谷 「 へ…驚かせやがって!」

花咲 「 ま、負けた…!」



遊戯 「 花咲くん!」

花咲 「 遊戯くん、ゴメン。ボク…負けてしまいました。」

遊戯 「 …こんなの、負けたうちには入らないよ!」

本田 「 ああ。結果では負けちまったが、勝負では勝ってたぜ!」

城之内 「 花咲! 後は、オレ達に任せろ!
蛭谷のヤツはオレ達が必ずブッ倒す。」

花咲 「 …はい!
――それじゃあ、ボクは風に飛ばされたゾンバイアのカードを探しに行くよ。
城之内くん、次の試合も頑張ってください!」

城之内 「 ああ! せっかくお前が大事にしてたカードを探してやれなくて悪ぃな!」

花咲 「 ううん。気にしないでください。」



審判 「 それでは準決勝第1試合を開始する!
対戦者の城之内克也、獏良了はデュエルフィールドへ集まるように!」



城之内 「 よっしゃああ、やってやるぜ!」

遊戯 「 でも、今の獏良くんは、千年リングを身に着けた闇の人格。
バトル・シティで、もう一人のボクが闘った時も苦戦した相手だ…。
気をつけて、城之内くん!」

城之内 「 ああ、バクラのあの強力な戦術は分かってるぜ。
だがオレは、この試合も絶対勝つぜ!」

本田 「 おう! その意気だぜ、城之内!」



審判 「 準決勝第1試合――
城之内克也vs獏良了!」

バクラ 「 ククク。まさか、てめえと闘うことになるとはな!」

城之内 「 バクラ…!
何でまた千年リングを…!」

バクラ 「 それはオレ様じゃなく、宿主サマに直接聞きな!
まぁどうやら、宿主サマは千年リングが、相当お気に入りのようだけどなぁ!」

城之内 「 ……」

バクラ 「 まあ無駄話はこれくらいにして、さっさとかかってきな、城之内!
強い奴が蛭谷と闘う――
パズルを確実に取り戻すには、これが当然だろぉぉ!?」

城之内 「 あ……お、おう!
こんなところで、躊躇してられねぇぜ!
行くぜ!」



城之内&バクラ 「 デュエル!」



バクラ 「 オレ様の先攻ドロー!」

ドローカード:ダーク・ネクロフィア

バクラ ( ククク…いきなり切り札を引き当てたぜ!
――まずは下準備!)

バクラ 「 オレ様は首なし騎士を攻撃表示で召喚!
ターンエンドだ!」



城之内 「 オレのターン、ドロー!」

城之内 「 オレはワイバーンの戦士を召喚!
ワイバーンの戦士! 首なし騎士に攻撃だ!」

城之内のワイバーンの戦士(攻1500)が、バクラの首なし騎士(攻1450)に攻撃!

ズバァァ

城之内 「 首なし騎士を撃破だぜ!」

バクラ ライフポイント 4000 → 3950

バクラ 「 ……」

城之内 「 ターンエンドだ!」



バクラ 「 オレ様のターン、ドロー!」

バクラ 「 オレ様は絵画に潜む者を攻撃表示で召喚!
リバースカードを1枚セットし、ターンエンドだ…」



城之内 「 オレのターンだな!」

城之内 ( バクラの「絵画に潜む者」の攻撃力は1200。
しかし、絵画に潜む者の守備力は1500のはず。
コイツをわざわざ攻撃表示にしたのには、あのカードを召喚するために違いねぇ!)

バクラ ( 攻撃して来い、城之内!
オカルトデッキの恐怖を教えてやるよ…!)

城之内 ( バクラのダーク・ネクロフィアは厄介だ!
攻撃できるチャンスをみすみす逃すのももったいねぇが、ここはガマンだぜ!)

城之内 「 ……オレはこのままターンを終了するぜ!」

バクラ ( チッ、読まれてやがる!
ならば…!)

バクラ 「 ――その前にこのカードを発動!
『死なばもろとも』!」

城之内 「 死なばもろとも!」

バクラ 「 そう…お互いの手札を全て捨て、デッキから5枚ドローする罠カード!」

「死なばもろとも」の効果により バクラ ライフポイント 3950 → 3550

バクラ ( ダーク・ネクロフィアはとりあえず墓場で眠ってもらうぜ!
カードを5枚ドロー!)

ドローカード2枚目:死霊操りしパペットマスター

ドローカード5枚目:ウィジャ盤

バクラ ( ククク。ダーク・ネクロフィアの恐怖を教えてやるぜ!)



バクラ 「 オレ様のターンだ…!」

城之内 ( バクラのヤツ、死なばもろとものカードで、一体何を狙ってやがるんだ?
嫌な予感がするぜ…!)

バクラ 「 場に1枚カードを伏せ、
さらにモンスターを1体生け贄にし――
死霊操りしパペットマスターを召喚!」

城之内 「 パペットマスター!?
攻撃力・守備力が0のモンスターだとぉ!」



遊戯 ( パペットマスターには特殊能力が隠されている!
気をつけて、城之内くん!)



バクラ 「 ククク…城之内、オレ様のオカルトデッキの本領はこれから発揮される!」

バクラ 「 パペットマスターには、ライフを1000払うことで、
墓場から3体の死霊モンスターを特殊召喚出来る能力を持っている…!」

城之内 「 …て、いうことは!」

バクラ
LP 2550
死霊操りしパペットマスター
守備表示
攻0
守0
ダーク・ネクロフィア
攻撃表示
攻2200
守2800
首なし騎士
攻撃表示
攻1450
守1700
死霊伯爵
攻撃表示
攻2000
守700
伏せカード
『ウィジャ盤』


ワイバーンの戦士
攻撃表示
攻1500
守1200
城之内
LP 4000

城之内 「 一瞬にして、バクラの場にモンスターが4体に!」

バクラ 「 ヒャハハハハハァ!!
ダーク・ネクロフィア速攻召喚に成功したぜ!」

バクラ 「 まあ、パペットマスターで特殊召喚されたモンスターは、このターンには攻撃できないがな。
だが、この状況なら、貴様のライフはすぐ0になるぜ!
ヒャハハーーー!!」

城之内 「 く! オレのターン!」



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