遊闘6 白昼の襲撃者!


やっとメシにありつけたぜ…」

午前11時半。

校舎の屋上で城之内が弁当を広げている。

1時間前に早弁すると言って、会場を抜け出してきた城之内であったが、実際に昼食を取るのはそれより1時間遅くなってしまっていた。

理由は単純。弁当を家に忘れてきたからである。

学校へ来る時には、勉強用具一式は忘れてもカードと弁当は忘れないぜ、というのが城之内の密かなポリシーであったが、それは今日破れてしまったようだ。

あ、でも、休みの日は学校に来たことにはならねぇよな。」

と、一人で弁解する。

ちょっと虚しさが込み上げてくる。

チッ、さっさと遊戯と合流するか…」

城之内は誰に向かってでもなくつぶやくと、弁当を片付け、校庭へ向かっていった。



階段を降りている途中で、見慣れた人影を発見する。遊戯だ。

あ、あれ? 遊戯?
何で校舎内に…?」

じょ、城之内くん…」

よろめきながら遊戯が答える。

遊戯の側頭部は腫れ上がっていた。どうやら、殴られたようだ。

ど、どうした遊戯!?
いったいこれは…!」

トイレに寄った帰りに…誰かに…襲われた…みたいなんだ。」

誰かって、誰だか分からねぇのか?」

遊戯は力なくうなずく。

遊戯は相当落ち込んでいた。

それは、単に襲われたショックから来るものではなかった。

ゆ、遊戯! 腕につけてたハズのデュエルディスク…どうしたんだ?
まさか…」

多分、奪われた…と思う。」

デュエルディスクが奪われたっつうことは、デッキも…」

遊戯はうなずく。

遊戯は自分の左腕を見る。

左腕に装着されていたデュエルディスクは、引きちぎられるように奪われ、遊戯の左腕に その破片が残っていた。

そして、城之内は最も大事なことに気付く。

遊戯にとってはカードよりも大切なもの。

あの時からずっと身につけていたはずの、千年パズルまでもが奪い取られていたのだった。



ゴメン、城之内くん。
決勝で闘うことはできなくなりそうだよ。」

バ、バカヤロー! そんなこと言ってる場合かよ!
今すぐ犯人捕まえて、取り返してやるぜ! ホラ、遊戯! 犯人をとっつかまえに行くぜ!
いつまでも落ち込んでないで立てよ!
ここで落ち込んでいたらもう一人の遊戯に、永久に会えなくなっちまうぜ!」

……うん! ありがとう城之内くん。」

よっしゃあ! 行くぜ!」

城之内くん、ちょっと待ってよ!
行くって…どこに行くの?
誰に襲われたのか全然分からないのに…」

うっ、いつものノリで…!
チッ、手がかりになるモンとかねぇからな…。
犯人が自分から名乗り出てくれりゃ、楽なんだけどな。」

そう言って、城之内は窓の外に目を向ける。

どうやら、遊戯は不戦敗ということで、1回戦最後の試合が始まっているようだ。



審判 「 1回戦第8試合、孤蔵乃vs本田!」

本田 「 遊戯はハラ壊して、トイレにこもりっきりで失格とは…。
今回はツイてねぇな、アイツ。
まぁその分オレが、勝ち進んでやるぜ!」



本田&孤蔵乃 「 デュエル!」



孤蔵乃 「 オレの先攻…。
オレはモンスターを守備表示で召喚し、ターンエンドだ…」

本田 「 よし、オレのターンだぜ!
オレは戦士 ダイ・グレファー召喚!
ターン終了だ。」

孤蔵乃 「 オレは…この魔法カードを使う。
『ソウルテイカー』発動!」

本田 「 !!
オレのモンスターが生け贄にされちまった…!」

孤蔵乃 「 ククク。残念だったな、本田!
オレの場のモンスターと、お前のモンスターを生け贄に、こいつを召喚するぜぇ…。
『ブラック・マジシャン』召喚!」

本田 「 ブ、ブラック・マジシャンだと…!」

孤蔵乃 「 ブラック・マジシャン、本田に直接攻撃だ!」



城之内 「 ゆ、遊戯! 外見てみろよ!
孤蔵乃、遊戯の持ってるカードばかり使ってるぜ…!!」

遊戯 「 も、もしかして、孤蔵乃くんが…!?」

城之内 「 とにかく行ってみるしかねぇだろ!
急げ、遊戯!」



審判 「 第1回戦第8試合、勝者・孤蔵乃!!」

本田 「 ま、負けた…」

城之内 「 孤蔵乃〜〜! てめぇ…!!」

孤蔵乃 「 どうしたぁ、城之内ぃぃ?」

城之内 「 そ、その声は…!
お前、孤蔵乃じゃあ…ないな!」

孤蔵乃 「 ククク。さすがオレの『親友』!
覚えていてくれてうれしいぜぇ!!」

バサッ

城之内 「 やっぱりフードの下は…蛭谷、お前か!」

蛭谷 「 フフフ……」

遊戯 「 蛭谷って、あの隣玉高の…」

城之内 「 蛭谷、遊戯のデッキとパズルを返しな!
今すぐ返さねぇと、血を見ることになるぜ!!」

蛭谷 「 ああん? パズル?
知らねぇなぁ、そんなモン…!」

城之内 「 なんだと!!」

蛭谷 「 ああ。そういえば、あの時計塔のところにぶら下がってるのは…何だぁ?」

遊戯 「 あ、あれは…千年パズル!!」

城之内 「 チッ、ナメやがって…!」

蛭谷 「 おっと待て城之内。
言っておくがあのパズルには、火薬が仕込んである。
オレの機嫌を損ねると、オレの手下がパズルを爆破させるぜぇ。」

遊戯 「 そ、そんな!」

城之内 「 フザけやがって!」

蛭谷 「 そうだなぁぁ。
お前がオレのチームに戻ると誓ったら、返してやってもいいぜ。
ただし誓いの証明として、お前の仲間とやらをオレの前で半殺しにしてもらうがな!」

城之内 「 な、仲間を傷つけろ…だと…!?」

蛭谷 「 仲間のパズルをとるか、仲間の命をとるか…!
苦渋の選択ってやつか! ハハハ!」

蛭谷 「 ――だが、『親友』として、チャンスを与えてやるよ…!
オレがこの大会で負ければ、パズルは返してやるぜぇ。
ただし、オレが優勝した時には…お前とその仲間は――処刑だがな!」

城之内 ( く…、どちらにしろ仲間が巻き込まれちまう!
オレはどうすれば…!!)

遊戯 「 城之内くん…、闘るしかないよ!」

本田 「 そうだぜ城之内! ここで逃げたら、真のデュエリストへの道も閉ざされちまうぜ!」

城之内 「 だが、オレが負けたらお前達も…!」

遊戯 「 城之内くんは勝つ! 絶対に勝つよ!!」

本田 「 バトル・シティ、ベスト4だろ、城之内!
世界の4本指に入るお前が、ここで負けっワケねぇぜ!」

城之内 「 だけどよ、奴のデッキは――遊戯、お前のデッキなんだぜ。
本田もあっさり負けちまったし、どうすりゃあ……」

遊戯 「 もう一人のボクも言ってたけど、盗んだデッキじゃあ、魂なんかこもらない!
――でも、城之内くんのデッキには魂がこもっている!
絶対勝てるよ、城之内くん!」

城之内 「 ……そうだよな――ああ、そうだぜ!
――サンキューな! 遊戯!
うーっし! オレはやるぜ!!」

蛭谷 「 ハハハ…! 城之内思いの仲間じゃねぇか!
せいぜい処刑されねぇようにあがくんだな!
せめて、決勝までは勝ち上がって来いよ!
てめえがオレ以外の奴に負けても、つまんねぇからなぁぁ!」

城之内 「 フッ、てめぇこそ、決勝まで負けねぇように祈ってな、ボスザル!!」



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