3章・ジェットコースター・シューティング
(本田ヒロト 視点)
忘れたくても忘れられない、「あの時」の海馬ランド。
あそこで海馬のヤツはアトラクションだとかぬかして、オレ達に命がけのゲームを強要してきた。
死のテーマパーク――DEATH−T。
そこでオレ達は、何度もピンチになりながらも何とかゲームクリアしたのだった。
――DEATH−Tのアトラクションは5つあった。
そして、あの時一番最初のアトラクションは――シューティングゲーム。
今、オレの左側のウィンドウには――
「アトラクション1 『ジェットコースター・シューティング』 ただ今5分待ちです」
と書かれている。
列に並んでから5分間、オレは顔を引きつらせていた。
城之内もあまり顔色は良くないが、カードの事が先立っているので、引き返そうとは言い出さない。
遊戯と杏子は、最初はちょっと嫌そうな顔をしたものの、今はもう平気そうだ。
まあ、アイツが今さら「人殺しテーマパーク」なんてやらねぇよな…。
――オレもそう割り切ることにした。
「この宇宙ステーションはエネミー襲来により、破壊状態にあります! ここを救えるのはあなた達しかいません! ――さあ! サイバーレンズを装着して レーザー銃で敵を倒してください!」
ジェットコースター乗り場の脇にあるウィンドウに、アトラクションのシナリオのようなものが書かれている。
どこかで聞いたような気もしたが、気のせいだと割り切って、サイバーレンズとレーザー銃を係員から受け取る。
レンズを装着すると視界の右隅に「SCORE 000000」の文字が浮かぶ。
どうやら、スコア表示らしい。
さらにその上に「HIGH SCORE 025800」の文字。ハイスコアのようだ。
ハイスコア……。
オレの中で熱く燃えるものが生まれてくる。
小さい時からこういったガン系統は得意だった。ガキの頃、窓の外を飛んでいるスズメに弾を当てたこともある。
ならば、このアトラクションで狙うはハイスコア!
絶対ハイスコアを塗り替えてやる――と、一人決意するのであった。
「それでは、コースターに乗ったらベルトを装着してください。よろしいですね?」
係員の声に従いオレはコースターに乗り込む。
もはや遊戯達の声は聞こえない。
集中あるのみ。
間もなくコースターが動き出した。
コースターはゆっくりと坂道を登っていく。
その間にも周りには何体ものモンスターが現れる。
オレは現れたモンスターのうち、骸骨型のモンスターに素早く照準を合わせ引き金を引く。
ボォォンと音を立てモンスターは消滅し、それと同時にスコアに300点が入る。
間髪いれず、周りのモンスターにも攻撃を仕掛けていく。
モンスターによっては2、3発攻撃を当てないといけないが、大抵は1発で仕留めることができた。
そうして、コースターは頂上までやってきた。現在スコア3800点。ハイスコアにはまだまだ届かない。
コースターが下に傾く。それと同時に周りにモンスターが突如何体も現れる。
M&Wで見知ったモンスターが多い。
オレはその中のミノタウルスに向けて銃を向ける。
引き金を1回引くが1発では倒れない。
再び引き金を引く。
それと同時に視界が傾き、風の抵抗を感じる。
コースターが加速し始めたのだ。
急な加速で2発目の攻撃は外れてしまった。
だが、取り乱さずにオレはミノタウルスを何度も攻撃する。
――6発当てたところで、ミノタウルスは倒れた。
スコアは3800点から5500点になった。
そこでオレはふと気づいた。
このゲームは、M&Wのカードデータを利用している…。
カードでのモンスターのレベルが、耐久力――つまりHPになっている!
そして、カードでのモンスターの攻撃力の数値が、そのまま獲得スコアになっているんだ!
――ならば、低レベルで攻撃力の高いモンスターを狙っていけば…!
オレは周りに5、6体存在するモンスターのうち、女邪神ヌヴィアに銃口を向けていた。
――コースターは中間地点を通り過ぎる。
現在10500点。
ハイスコアは25800点なので、このままでは届かない。
だが、前半で要領は掴んだので、後半はまだまだ挽回できるチャンスはある。
オレは次のモンスターに銃口を向けた。
サファイアドラゴン、ヘルポエマー、ドラゴン・ゾンビ―――低レベルで攻撃力の高いモンスターだけを狙っていく。
16000点。
デスグレムリン、ジャイアント・オーク、X−ヘッド・キャノン―――次々とモンスターを撃墜していく。
21600点。
ここでコースターが減速し始めた。
ゲーム終了まで、あと10秒といったところか?
オレは、右手奥で回っているニュートを撃ち落とす。
これで23500点。
あと2200点…!
右手にモンスターが現れる。
そこに現れたのはフィッシャービースト。確かコイツはレベル6で攻撃力2400!
時間はわずかしかない。
オレは迷わずフィッシャービーストに銃口を向ける。
そして引き金を引く。何度も引く!
あと1発! ――間に合うか!
最後の1発を放った!
ビームがフィッシャービーストを捕らえ………
「え?」
今、別の方向からビームが飛んで来なかったか?
フィッシャービーストはドォォォンと音を立てて消滅した。
だが、いい予感はしない。
恐る恐るスコアを見る。
――スコアは23500点のままだった。
「城之内! あんたねぇ〜!」
コースターから降りるなり、杏子と御伽は城之内に詰め寄っていく。
「へへへ…みんなありがとな!」
城之内がニヤニヤしながら言う。そして、
「正々堂々何でもアリなのよ〜!」
と付け加えた。
………。
3人のやり取りを見ているうちに、ようやくオレは気付いた。
トドメの一発時に、どこからともなく飛んできたレーザー…。
増えないスコア…。
そして責められる城之内…。
間違いない。
城之内のヤツ、オレ達が攻撃したモンスターに、トドメだけ刺していきやがった!
そうして人の獲物を横取りして、自分だけ高得点をたたき出す…。
く…… や、やられた!!
サイバーレンズの右上隅には、
「HIGH SCORE 027400」
の文字が浮かびあがっていた。
ジェットコースター・シューティングの出口から、次のアトラクションに向かう。
次のアトラクションはもう決めてある。
城之内の「大好き」なホラーハウスだ。
「ホ、ホ、ホラーだけは勘弁してくれ〜」
城之内が訴えてくるが、もちろん無視して進んでいく。
「いい気味ね!」
「ああ。」
「でも、ちょっと可哀想かも…」
「いいんだよ! 元はアイツが悪いんだからな!」
オレ達5人はホラーハウスへ直行する。
「オ、オレは行かないからな!」
と、城之内は放棄しようとするが、オレはすかさず――
「残念だな、城之内。カードはいらないらしい。」
と言ってやる。
「うっ…」
渋々城之内は着いてくる。
フン、ざまあみやがれってんだ!
■微妙な後書き■
本田が最初に撃ち落した骸骨型のモンスターはおそらくワイト。
…でも、原作だとレベルは…確か2だよなぁ……と、一人で突っ込んでみる。
ジェットコースター・シューティングって、現実的やるには無理があるような…。撃ってる余裕ないって! …少なくとも私は。