13章 心に射した光
滅びるのは一瞬だった。
神の脅威は幻となり、なだれ込むのは反乱軍。
想像もできぬほど昔から支配してきた神も一瞬で終わった。
神も所詮、人の子なのだろうか。
「私の…ターン…」
力なくスエズがカードを引く。
目がうつろだ。
うつろな目で、ただ自分の手札を見ていた。
「……」
何も考えていないのか。
「……」
それとも、戦術を練っているのか。
「……」
彼自身さえも分かっていなかった。
ただただ時間だけが流れていく。
スエズは苦しめられていた。
彼の頭の中に映像が浮かぶ。
それは、思い出したくない映像。
しかし、いくら消そうとしても消えない。
…隠すしかなかった。
だから、自分を偽り、それが最初からなかったように振る舞った。
そのおかげで、前に進めた。
しかし今、海馬によってその偽りは消されてしまった。
一つの小さな裂け目が、ひとりでに伸びていき、そして、押し寄せてくる罪過の映像。
(私は…私は…!)
押し寄せてきた映像の中に別のものが混じった。
「ねえ、スエズ…。あたしね、あなたの夢を追いかける姿が――」
映像と共に声が聞こえる女性の声。
一面に広がっていた罪の映像は、わずかに残った闇に押し込まれていく。
(私は、ここで負けるわけにはいかないんだ!)
1ターンの思考猶予時間の3分が経過する前に、手が動いた。
「デッキリーダーをブルーアイズから退避。ニュートとシェイプ・スナッチを進撃させ、ターンを終える!」
スエズの瞳には闘志が宿っていた。
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【スエズ】 LP 700 |
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青眼白龍 攻撃表示 ATK 3000 DEF 2500 |
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【海馬】 LP 1000 |
ニュート 攻撃表示 ATK 1900 DEF 400 |
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スナッチ 攻撃表示 ATK 1700 DEF 1600 |
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「オレのターン…!」
「オレはガジェット・ソルジャーを召喚し、シェイプ・スナッチに攻撃!」
――ズガガガガァ!
「撃破!」
スエズ LP 700 → 600
「く…! だが、ウイルスに感染することを忘れるな!」
「当然、承知の上だ!」
――シュウウゥ…
戦闘で敗れたシェイプ・スナッチとともに、ガジェット・ソルジャーも消滅していく。
「オレは、デッキリーダーをニュートから遠ざけ、ターン終了だ!」
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【スエズ】 LP 600 |
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青眼白龍 攻撃表示 ATK 3000 DEF 2500 |
壁
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壁
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壁
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ニュート 攻撃表示 ATK 1900 DEF 400 |
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【海馬】 LP 1000 |
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「私のターン!」
(まだ私には…やらねばならないことがある!)
「NULL(ヌル)を召喚し、NULLとニュートを進撃!」
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【スエズ】 LP 600 |
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壁
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青眼白龍 攻撃表示 ATK 3000 DEF 2500 |
壁
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壁
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壁
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ニュート 攻撃表示 ATK 2400 DEF 900 |
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NULL 攻撃表示 ATK 3100 DEF 3600 |
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【海馬】 LP 1000 |
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スエズのモンスターが攻め寄る。
この進撃により、海馬のデッキリーダーは、ニュートとNULL、いずれのモンスターからも攻撃射程圏内にある。
「これで、お前の逃げ道は完全に絶たれた! 次のターン、オレは勝つ!」
「フ…オレのターン!」
退路を完全に失われたにもかかわらず、海馬は焦燥する気配さえ見せない。
「オレはこの伏せカードを場に出し、ターンエンドだ…」
カードを1枚場に出しただけでターンを終える。
「私のターン!」
「私は死者蘇生でシェイプ・スナッチを蘇生――そして、NULLでデッキリーダーに直接攻撃!」
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【スエズ】 LP 600 |
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壁
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スナッチ 攻撃表示 ATK 2200 DEF 2100 |
青眼白龍 攻撃表示 ATK 3000 DEF 2500 |
壁
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壁
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壁
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ニュート 攻撃表示 ATK 2400 DEF 900 |
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NULL 攻撃表示 ATK 3100 DEF 3600 |
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【海馬】 LP 1000 |
???? 攻撃表示 |
「トラップカード発動!」
NULLが攻撃を仕掛ける前に海馬は伏せカードをオープンにしようとする。
「やはりトラップか…!」
スエズには海馬がトラップを仕掛けることは予想範疇だった。
しかし――
「フ、トラップと言えども…この1枚だけで貴様は終わる!」
「…何!」
「神――旧神族は完全に滅びる。この1枚でな…」
裏向きのカードはゆっくりと回転し、その姿を現していく。
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壁
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【スエズ】 LP 600 |
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壁
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スナッチ 攻撃表示 ATK 2200 DEF 2100 |
青眼白龍 攻撃表示 ATK 3000 DEF 2500 |
壁
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壁
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壁
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ニュート 攻撃表示 ATK 2400 DEF 900 |
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NULL 攻撃表示 ATK 3100 DEF 3600 |
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【海馬】 LP 1000 |
DNA 改造手術 |
「DNA改造手術…!」
「DNA改造手術は、全モンスターの種族を変更することのできる永続罠…」
「まさか…」
「そう…。これで、旧神族は終わる。神の時代は終わるのだ! 全ての種族をドラゴン族に変更!」
滅ぶのは一瞬。
DNA配列を変えられドラゴン族になったスエズのしもべ達は、もはや神ではない。
神ではなくなった彼らの視界は、紫色で染まっていた。
「ウイルス…」
スエズが呟いた。
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壁
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【スエズ】 LP 600 |
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壁
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スナッチ 消滅! |
青眼白龍 攻撃表示 ATK 3000 DEF 2500 |
壁
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壁
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壁
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ニュート 消滅! |
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NULL 消滅! |
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【海馬】 LP 1000 |
DNA 改造手術 |
神――かつて神だったモンスターは、消えていく。
自分自身の撒いたウイルスによって、苦しみ、消えていく。
それはあたかも――
「私自身のようだ…」
スエズはうなだれて膝をついた。
戦意は完全に喪失していた。
「もはや、貴様に勝ち目はない!」
海馬がスエズを見下ろしたまま言う。
「……」
「このまま貴様のライフを0にすることは簡単だが、モクバを元に戻し、このふざけた闇のゲームとやらを解くなら、退いてやる。」
「……」
「さあどうする!? 今、オレの手札には、フィールドカード『ドラゴンの聖域』がある…。これを使えば、貴様のライフを一瞬で0にすることもできる! このままくたばるか、助かるか、選ぶがいい!」
「私は…」
闇に隠していたはずの、あの映像が再び蘇る。
もはや、闇に隠すことはできない。
隠すべき闇は光に照らされ、なくなった。
(もう…、耐えられない…)
「ごめんなさい…」
ポツリと呟く声。
そして、こぼれ落ちる涙。
「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!」
何度も頭を地面に打ちつけ、大声で叫ぶ。
「……」
あまりに突然の行動に、海馬も唖然としてしまう。
「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!」
止まらないスエズの謝罪。
デュエル場に響き渡る悲痛に満ちた声。
「……くっ。」
彼の謝罪はどこまで届いたのであろうか…。
――午後11時57分
ルーレットレストラン3階・仮眠室。
「う、うーん…」
「あ! モクバくん!」
「あれ? オレは…?」
「良かった…」
「ええ…」
安堵のため息をつく杏子と舞。
闇のゲームは終わったのだ。
海馬瀬人 vs スエズ・プロメス
勝者・海馬瀬人
■補足■
ドラゴンの聖域は、周囲2マスをドラゴン族が得意とするフィールドに変えるフィールドカードです。
デッキリーダーが1マス左に移動した後、その左上のマスで発動させれば、ウイルス地形のいくつかは消えて、青眼の白龍は2マス移動してデッキリーダーに攻撃できます。
また、これもオマケみたいなものですが、シェイプ・スナッチは攻撃表示の間、相手のデッキリーダーと同じパラメータになる特殊能力を持っています。海馬のデッキリーダーであるカイザー・シーホースは、攻1700・守1600ですので、その数値が適用されています。