怪奇!謎のイルカ男

製作者:ヘルグレファー9骨さん






第一話 ちくしょー某絵師め俺がやろうとしていたネタ先にやりやがって…これじゃ俺が二番煎じみたいじゃねーか!

ヒノラーシ魔法学校。
400年の歴史を持つ女子校であり、世界最大の魔法学校。
今日は中等部の入学式…水色の髪の女の子、エリアも今日からここの生徒になりました。

さて、退屈な式もさっさと終わり、エリアはこれから自分が住むことになる寮にやってきました。
寮で同じ部屋になるのは、同じ一年生のアウス、ヒータ、ウィンでした。
四人は初対面でしたが、すぐに仲良くなりました。

その日の夜、ふとアウスがこんなことを言いました。

「みんな、この噂知ってる?
あたし、ここの先輩に知り合いがいるんだけど、その人から聞いた話。
学校の庭にあるあの大きな湖、あそこ、出るらしいよ…。」

「で、出るって…何が!?」

真っ先に聞き返したのは、エリアでした。

「ふっふっふ、それはだね…あの湖には、怪物が住んでいるのだよ。
その怪物というのは、体は人間のような形で二足で歩き、皮膚は青白くぬめっとしていて、顔はまるでイルカのようで、クケケケケケと奇妙な鳴き声を発する…その名も『謎のイルカ男』!
どう?おもしろいでしょ!」

「い…イルカ男…。」

エリアは一人ビビってましたが、その後ろでヒータが、

「よっしゃ!じゃあ今日の十二時にそいつを捕まえにいこーぜ!」

そしてアウスも、

「んー、それいいねー。」

それに続けてウィンまでもが、

「あっ…私も…。」

ルームメイト三人が行くことになり、断るわけにもいかないので、結局エリアも行くことになりました。


そんなわけで、夜中の十二時。
入学早々こっそり寮を抜け出して、庭の大きな湖に来てしまった四人。
遠足気分のアウス達に対して、エリアは一人だけびくびく。
湖にはお皿のような満月が映るのみで、今のところ「イルカ男」が現れる気配はなさそうです。

「ねえ、やっぱ帰ろうよ…どうせイルカ男なんて単なる噂だって!本当にいるわけないじゃん!」

「えー?まだ来たばっかだよ。これから出てくるかもしれないしさぁー。」

オバケや何やらの類がものすごく苦手なエリアは、早く寮に帰りたいと思っていました。
でも、アウス達は「イルカ男」を本当に捕まえる気でした。
そろそろ本気で怖くなってきたエリアは、自分だけ帰ろうかと思いました。

「やっぱ、わたし帰…」

と、その瞬間でした。
エリアは足元の濡れた石で足を滑らせて思いっきりひっくり返り、湖にドボーンと…。
湖は思っていた以上に深く、エリアは足が届きませんでした。
しかも、エリアは水属性なのに実は泳げないのでした。
必死でもがくものの、エリアの体はどんどん深く沈んでいきます。
アウス達が手を差し伸べようにも、既に届かないくらいにまで…。

エリアは死を覚悟しました。
せっかくあこがれだった魔法学校に入学できたのに、たった一日で死んでしまうなんて…。
自分はなんて不幸な少女だったのだろうと、頭の中でそんな思いが駆け巡りました。

しかし、その時奇跡が起こりました。
突然、湖底からすのすごい速度で現れた謎の黒い影がエリアを抱えて、水面を飛び出したのです。
謎の黒い影はアウス達がいるのとは反対の岸に立ち、そこでエリアを下ろしました。

「あなた…は…だれ…?」

エリアは、自分を助けてくれた人の顔を一目見ようと、虚ろな目をがんばって開けました。
そしてその目に飛び込んできたのは……イルカ頭でした。

「うんっぎょべゃぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあああ!!!!!!」

この世のものとは思えない叫び声を上げて、エリアは飛び起きました。

「やあ、僕はネオスペースからやってきたドルフィーナ星人。
ところでキミ、かわいいね。僕と魂の共有−コモンソウルしないかい?
別に痛くないさ。きもちいいよ。」

突然出てきたこの「イルカ男」は、まさにアウスの話どおりの、人間のような体つきに、イルカの頭、そしてぬめっとした肌…。
しかもいきなりこんなナンパ(?)じみた発言をしてくる…。
エリアはあまりの出来事に頭が混乱していたが、少しして落ち着いて、ぼそっと一言。

「キモっ…。」

イルカ男は、そんなことを言われても全く動じず、爽やかに笑っていました。

「おーいエリアー、大丈夫ー?」

一方で、向こう側からアウス、ヒータ、ウィン達がこちらに走ってきました。
…すると、イルカ男は一瞬にして湖の中に飛び込み、姿を消してしまいました。
エリアはほとんど放心状態。

「エリアどうしたの?すごい叫び声だったけど…。」

エリアの顔は青ざめ、体は死体のようにぐったりしていました。
それも、溺れたことが原因ではなく、イルカ男を見たせいで…。

「ところでエリア、誰に助けてもらったの?」

「えっ!?だ、誰って……キモイルカ。」
これが――エリアとキモイルカの出会いでした。



第二話 消創のラスボスとして用意していた「ゾーク・ホルアクティ」はいつ表さんに先を越されるか心配だった。今後の作品でそれっぽいものが出てくるね、絶対。消創とは比べ物にならないくらいの燃える演出に期待!

今日は理科の授業。担当はホーリー・エルフ先生です。

「えー、それではみなさん、今日はこのブルー・ポーションを…。」

ホーリー・エルフ先生が何やら青い液体を試験管に注ごうとした瞬間、突然理科室の窓ガラスが砕け散りました。

「また出たわねキモイルカ!いい加減しつこいっ!」

窓ガラスを割ったのは、エリアでした。
窓には何時ぞやの変態イルカ男がぬめっとした体でべったりと貼り付き、よだれを垂らしながらエリアを見ていたのです。

「エリアさん、授業中は静かにね。」

笑いながら注意するホーリー・エルフ先生ですが、エリアは聞く気配がありません。

「キモいししつこいし…本当につきまとうのやめてよ!」

エリアは試験管をブン回し、一生懸命キモイルカを追い払いました。
しかし、キモイルカは機敏な動きでそれをかわします。

「エリアちゃん…ボクの愛を受け止めて…そして魂の共有をしよう…。」

「お前なんぞ宇宙に飛ばされてしまえー!」

「エリアさん、授業中は静かに…。」

先生の話なんか耳に届かず、エリアは理科室にあるものを片っ端から投げまくりキモイルカ撃退のために大暴走。
キモイルカの方はキモい動きでそれを悠々と避けながらキモい台詞を吐きまくり。
生徒の皆さんは呆れてものも言えず、先生は穏やかな笑顔でエリアを注意していました。
しかし――

「キモイルカさん、不法侵入ですよ?」

先生はどこから持ってきたのかバスターランチャーを取り出し、キモイルカに向けてぶっ放ちました。
キモイルカは奇声を上げて吹っ飛び、空の彼方に消えてしまいました。

「エリアさんも、授業中には騒がないようにしてくださいね。」

先生は今度は砲身をエリアに向けました。

「は、はいっ!」


授業も終わり、エリア達は寮に戻る廊下を歩いていました。

「もう最悪…あの日からずっと付き纏われてるし…。
しかもあいつのせいで先生にも怒られるし…。」

エリアは相当ゲンナリしていました。
キモイルカは入学式以来毎日のようにストーキングしてくるので、一時たりとも気が抜けないのでした。
そして現に今も、後ろから妙な視線を感じているのでした…。

「エリアちゃんはぁはぁ…かわいいよエリアちゃん…。」

キモい声が聞こえたので、エリアは思い切って振り返ると、キモイルカは物陰に隠れました。

「……。」

エリアはブチ切れそうになりましたが、アウス達になだめられてなんとか正気を取り戻しました。

「まあ、あんな奴ほっとけばいいよ。そのうち飽きるでしょ。」

「うん…そうだといいけど。」

そう言ってエリアが歩き出すと、キモイルカは物陰から姿を現し、床に這いつくばりゴキブリのようにカサカサと動きながらエリアの後をつけていきました。
エリアが振り返ると、これまたゴキブリのような動きで物陰に隠れました。

「誰かトゲトゲ神の殺虫剤を…むしろ殺キモイルカ剤をッ!!!!!」

「落ち着けエリア!そのうち先生が連れ出してくれるから!」

ヒータに言われ、エリアは元の人格に戻る。

「…ごめん。」

そしてまた歩き出すと、キモイルカは今度は壁や天井を這ってエリアを追う。

「うぜぇーんだよこのクズカスがぁー!」

エリアは床に置いてあった消火器を掴んで天井めがけて投げつけました。
消火器はキモイルカの顔面にブチ当たり、天井を突き抜けました。

「エ…エリア落ち着いて!そのうち警察が捕まえてくれるから!」

アウスがエリアの腕を掴んで引っ張ると、エリアは闇人格から開放されました。

「キモい……。」

そんなわけでエリアの災難は続くながらも、四人は寮の自室に戻ってきました。
すると…。

「エリアちゃんのぱんつ…はぁはぁ…。」

キモイルカがタンスを漁っていました。

「うっぎぃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

バーサーカーソウル発動!
暴走したエリアはもう誰にも止められない!
処刑者の如く杖をブン回し、キモイルカに突撃!
しかしキモイルカはパンツを頭にかぶって窓から脱出!

「死ねキモイルカァァァァァァァ!!!!!!」

「もうやめてエリアぁぁぁぁ!!」

ウィンが後ろから羽交い絞めにし、狂ったように暴れまわるエリアを止める。

「そのうち天罰喰らって死ぬから!あのキモイルカぜったいナイスボートされて死ぬから!安心して!」

しかしエリアは止まらず、ウィンを振りほどいて窓から飛び出し、キモイルカの湖に猪突猛進。

「エリアちゃん!やっとボクのもとに来てくれたんだね!さあ、魂の共有−コモン・ソウルを…。」

湖の中から出現し、エリアに飛びつこうとするキモイルカ。
エリアは右手に握った杖でキモイルカの股間を一気に弩突く!
声にならない叫びが学園中に木霊し、キモイルカは空中でひっくり返って真っ逆さまで湖に落ちる。
エリアはその隙に頭に被ったパンツをもぎ取る。
そしてがっくりと全身の力が抜け、地面にぺたりと座り込んでしまった。

「もう、ホント最悪…。」

一方キモイルカは。

「痛いよ…エリアちゃん…これがキミの愛なんだね…。」
そんなことを言いながら沈んでいきましたとさ。



第三話 消創制作秘話。なぜ光のデッキが「使えないカードデッキ」だったのか。それは、絵空のデッキが強力なカードばかりを集めたいわゆる「スタンダード」「グッドスタッフ」というヤツだったからである。そんなわけで、「やさしい死神」と並ぶ名作にしよう!と考えた自分は、絵空と真逆のデッキを絵空のモロパクリキャラに持たせてしまうという表さん及び表さんファンに破邪の大剣でぶった切られそうなことをやってしまったのである。今となってはいい思い出だ。

「やあアクア・ドルフィン、久しぶりじゃないか。」

キモイルカは、今日は久しぶりにネオスペーシアン達の秘密基地に帰ってきました。
そこにいたのは、かつてネオスペースで同僚だったエア・ハミングバードとグラン・モールでした。

「我らネオスペーシアンによる…チューチュー、地球侵略計画は…チューチュー、どうだい?進んでいるかな?チューチュー。」

エア・ハミングバードは手に持っている花の蜜をチューチューしながら言いました。

「ふうぅ…癒される…。」

どうやら、彼は花の蜜を吸って癒されることが大好きなようです。

「まあ、それなりにはね。」

キモイルカは作り笑いで答えました。

「聞いた話によれば…チューチュー、地球人の女に惚れて…チューチュー、その女を追い掛け回してばかりだとか…チューチュー、はぁ…癒される…。」

「そ、そんなことないさ!ボクが地球人に惚れるなんて!」

「それならいいんだけどね…はふぅぅん…素晴らしい…癒しとはなんと素晴らしいんだろう…嗚呼、チューチュー…。
まあ、この癒し系ネオスペーシアンである私が来たからには安心したまえ、チューチューチューチューチューチュー…あ、蜜切れた。
モール、次の花持ってきてよ。」

「やだよ、自分で持ってきやがれ。」

「何だと!自分で持ってくるのは癒されない!他人に持ってこさせてこそ真の癒しだ!」

「それはただめんどくさいだけだろうが!」

一人何やら写真を整理しているグラン・モールは、それを邪魔されて気が立っているようでした。

「モールは何してるの?」

キモイルカがモールの持っていた写真を覗こうとすると、モールは素早く写真を隠しました。

「地球偵察のために写真を撮ってるんだ。
俺の次元トンネルを使えばどこにでも行けるからな。」

「ふーん…で、何で見せてくれないの?」

「別に見せなくたっていいだろ。」

「せっかく撮っても仲間に見せなきゃ意味ないじゃん。」

「うるせーな。」

何度も見せてくれるように頼んでみましたが、モールは一向に見せてくれませんでした。

「ところでアクア・ドルフィンよ、君と一緒にここに来たフレア・スカラベの姿が見当たらないのだが…彼はどこに行った?」

チューチューする花が無くなって言動がまともになったエア・ハミングバードが聞きました。

「あの蟲野郎は…しばらく前に行方不明になってそれっきりだよ。連絡もつかないんだ。」

「そうか…惜しい奴を亡くしたな。」

キモバードの目から、一粒の涙がほろり。
一方グラン・モールは、カメラを首にぶら下げてどこかへ出かける準備。

「あれ、モールどこいくの?」

「ちょっと偵察にね…。」

モールはそう言うと、次元トンネルを掘ってどこかに行ってしまいました。

「…ボクも、エリアちゃんのとこ行くかな。」

一人勝手に悲しみに暮れるキモバードを他所に、キモイルカもこそこそと去っていきました。

一方その頃、エリア達は。

「えー、私が、体育担当のギルティアです。
好きなものはスク水とブルマ!彼女はまだいません!募集中です!」

今日は体育の授業…ヒノラーシ魔法学校の体操着がブルマなのは、多分この先生の趣味でしょう。

「あのー、先生、質問があるんですけど…。」

「何だねエリア君。」

「魔法学校なのに何で体育の授業があるんですか?」

「それはもちろん私がブルマを見たいから…ではなくッ!
強い魔法使いになるには、魔力だけでなく体力も必要だからだッ!
そこでこの授業では、君たちに基礎体力をつけてもらおう!
まずは全員!ランニング十週!」

「ええぇぇ〜!?」

理不尽な理由で走らされるエリア達。
そしてそれを覗く謎の影。

「エリアちゃんのブルマ姿…かわいいよぉ…はぁはぁ…。」

木陰に隠れ、キモい声を漏らすキモイルカ。
突然、エリアの脳内に閃光が走りました。

「先生!その木陰に不審者が!」

エリアは大声でそう叫びました。
しかしギルティア先生は

「嘘つけ!そんなこと言って、俺の見ていないうちに歩く気だろ!」

と、嫌味な体育教師にありがちな台詞を吐き捨てやがりました。

エリアは仕方が無いので、キモイルカのキモい視線に耐えながら走りました。
こころなしか、キモイルカだけでなくギルティア先生からもキモい視線が送られているような気がしました。

しかし、ふと耳を澄ますと、遠くから何か妙な音が聞こえてきました。
それは何度か聞き覚えのある音で、そしてその音はだんだんと大きくなっていきました。
それは、パトロイドのサイレン音でした。
校門から四台のパトロイドが一斉に飛び出し、キモイルカに銃を向けました。

「動くな不審者!お前は完全に包囲されている!」

突然の状況に、エリアもびっくり。
後ろを振り向くと、アウスが右手に携帯電話を持ってウインクしていました。

一方、パトロイドに囲まれたキモイルカは余裕の表情で鼻をほじっていました。

「えー、何?警察?ボクを捕まえるつもり?
言っとくけどボクは何も悪いことなんてしてないよ。
ボクはただ愛する人を見守っていただけさ。」

「それをストーカーと言うんだ。
これ以上抵抗するならば容赦はしないぞ!」

可愛い外見に似合わず、パトロイド達はけっこう過激な性格でした。
四本の銃口が一斉にキモイルカの頭に押し付けられました。

「酷いなぁ…それじゃやっちゃってよ、プロト・サイバー・ドラゴン君。」

キモイルカがそう言うと、突然地面から一匹の機械の竜が飛び出してきました。

「必殺!蝶☆融☆合!」

プロト・サイバー・ドラゴンはパトロイド達を一気に飲み込み、巨大な機械竜へと姿を変えました。

「これがッ!キメラテック・フォートレス・ドラゴンだッ!」

キメラテック・フォートレス・ドラゴン 攻撃力5000

校庭に突如出現した怪物に、生徒達は大パニック。
悲鳴を上げる者、腰を抜かす者、ひたすらに逃げ回る者…キモイルカはフォートレス・ドラゴンの頭の上に立ち、うろたえる少女達の姿を笑いながら眺めていました。

「アハハハハハ!さあエリアちゃん、ボクと魂の共有−コモンソウルしよう!」

なんとも偉そうにキモいことを言うキモイルカ。
と、その顔面に火の粉がブチ当たりました。
突然の200ダメージに、さっきまで気分がよかったキモイルカも豹変します。

「だっ!だだだ誰だッ!ボクの顔に火の粉を当てた奴は!」

「キモイルカ…てめーはあたしが倒すぜっ!」

ヒータは杖を構え、更なる魔法を繰り出そうとしました。

「そうはいかないよ!エヴォリューション・リザルト・アーティレリー!ダイイチダァ!」

キメラテック・フォートレス・ドラゴンの攻撃を受け、ヒータは吹っ飛ばされました。

「ダイニダァ!」

ヒータを援護しようとしていたアウスも、吹っ飛ばされてしまいました。

「ダイサンダァ!」

たまたま近くに居たウィンも、ついでに吹っ飛ばされました。

「ギルティア先生!なんとかしてください!」

エリアは強靭な体育教師に呼びかけますが、当のギルティア先生は腰を抜かして震えていました。

「お、俺は機械族が苦手なんだ!
む…昔戦った時、必殺の魔法を跳ね返された上大量のミサイルを撃たれてな…それ以来トラウマなんだよ!」

「ダイヨンダァ!」

そんなことを言っているうちに、ギルティア先生もやられてしまいました。

「さーあエリアちゃん!ボクの愛を受け止めてぇー!エヴォリューション・リザルト・アーティレリー!ダイゴダァ!!!」

キモイルカはなんと、自らキメラテック・フォートレス・ドラゴンの車輪に入り、自身を打ち出しました。

「クケケケケケケケー!!!!!」

キモイルカは両手両足を大の字に広げ、ヨダレを撒き散らしながらキモい声を出してエリアに迫ります。

「いやぁぁぁぁぁぁ!!!」

エリアの叫びが、キモい声を掻き消すかのように校庭に響き渡ります。

「やめろ!」

と、その瞬間。
一人の少年がエリアとキモイルカの間に現れ、その拳でキモイルカを殴り飛ばしました。
殴られたキモイルカはキメラテック・フォートレス・ドラゴンに突き刺さり、その衝撃でキメ(ryは大爆発。
空の彼方へと消えていきました。

エリアを助けたのは、歳はエリアと同じくらいの、背が高い黒髪の美少年。
彼は何事も無かったかのように、一言も言わずその場を去っていきました。
エリアは一人、ただ立ち尽くすのみ。

「あの人…だれ?」

こうして、体育の授業中のキモイルカ襲撃は幕を下ろしたのでした。
あ、殉職された四人のパトロイドのご冥福を祈ります。



第四話 そろそろ遊戯王サイト作ろうかなーとか思ってます。遊戯王と関係無いジャンルのサイトは持ってるけど。小説とかデッキレシピとかカード考察とか載せたり…。

校舎裏の物陰。
黒髪の少年は、しきりに目を動かし辺りの様子を伺っていました。

「(ここなら…誰も見ていないか。)」

少年はほっとため息をつきました。
そして再度誰もいないことを確認すると、少年の体はどろどろに溶けて、別の姿を形作りました。
少年は、真っ黒な豹へと変貌したのです。

「やあ、ブラック・パンサーじゃないか!」

突然、上空から聞こえた声に、先程まで少年の姿をしていた黒豹は驚いて全身の毛が逆立ちました。
上を見上げると、キモいとしか言いようのない変な鳥がこちらに下りてきました。

「何だエア・ハミングバード先輩っスか。で、何か用っスか?」

「ああ、それがだね、チューチューする花が切れてね…禁断症状が出ているんだよ…。
それで今から買いにいこうと思っていたんだが、丁度よかった。
代わりにそこの花屋で買ってきてくれないか?」

「え、パシリ!?」

「何か文句はあるかい?今の私は全く癒されていないんだ。
怒らせたら何が起こるかわからないよ…。」

「わ…わかりましたよ。」

ブラック・パンサーはしぶしぶ金を受け取ると、再び人間の少年に変身し、花屋の方へ歩いていきました。

「私は秘密基地に戻ってるからね。あと、おつりは返すように。それでは!」

キモバードはそう言って羽を広げ、飛び去っていきました。
一方ブラック・パンサーは、花屋に向かう途中でふとあることを思い出しました。

「(女の子が襲われてたから勢いあまって助けちゃったけど…あれ襲ってたのアクア・ドルフィン先輩だったような…。気のせいか?)」

とりあえず気のせいということにして、花屋に急ぎました。


その頃、エリア達は。

「ふーっ、汗かいたーっ。」

体育の授業を終えて、寮の部屋に戻ってきました。
エリアは即刻ベッドにばたんきゅ〜。
キモイルカの襲撃もあって相当疲れているようです。

「次の授業までにお風呂で汗流そっかなー…。」

エリアはそう言って立ち上がました。

「あっ、お風呂ならさっきウィンが…。」

アウスの言うことに聞き耳も持たず、エリアは脱衣所へ。
ぽいぽいっと服を脱ぎ捨て、浴室の扉を開けます。

「あ、エリアちゃん!」

風呂に入っていたウィンが、急にびくりとなりました。

「ウィン、入ってたんだ。」

「あ、うん…。」

ウィンは、なんだか妙にもじもじしていました。
エリアは、ふとウィンの胸に目がいきました。
見事なまでのぺったんこ。

…しかし、エリアはあることに気がついてしまったのです。
少なくとも自分が今まで見た限りでは、サイズの順番は
アウス>ウィン>ヒータ>エリアでした。
しかし、今こうして裸で見ると、ウィンの方が自分よりはるかに小さいのです。

エリアはまさかと思い、脱衣所に戻ってウィンの脱いだ服を確認しました。
…予想通り、かなり大きめのパッドがありました。
隣でキモイルカがエリアの服を漁っていましたが…思いっきりぶん殴りました。
自分がキモイルカと同レベルのことをしていたのには腹が立ちましたが、少なくとも自分がウィンに勝っていたことがわかり、エリアはご満悦でした。

「ねーウィン、これなーんだ…。」

エリアは、ちょっといじわるするつもりでパッドを取り出し、ウィンに見せました。

「あっ!エリアちゃんそれ!」

ウィンは驚いて立ち上がりました。
その瞬間、エリアの手からパッドがこぼれ落ちました。
そしてエリアは腰を抜かしてしまいました。

「ウィ…ウィン…それ…。」

ウィンには、ついていました。ガーネシア・エレファンティスが。

「げっ、やべっ!バレちまった!」

ウィンは急いで水につかりました。

「あーあ、エリアにもバレちゃったの。」

エリアの後ろで、アウスとヒータが笑っていました。

「まあ、見ての通りこいつは男なわけよ。
なんでも、ちょっとしたワケありで女装してこの学校に通ってるんだとさ。」

アウスは親指でウィンを指差しながら言いました。

「そーいうこと。鳥獣族の村じゃガキ大将やってた、暴風小僧のウィンとは俺様のことよ!」

暴風小僧のウィンは、正体バラされてこれ以上女の子の振りをする必要がないためが、下品に大口を開けて笑っていました。

「ついでに、大人しい子の振りしてたのはその方が男だとバレなさそうだかららしいよ。」

ヒータが呆れ顔で言いました。

「まっ、そういうことで、これからは男としてよ・ろ・し・く・な☆」

ウィンがそう言った途端…さっきキモイルカがやられたように顔面を思いっきり殴られました。

そんな中、どさくさに紛れて浴室の隅から覗く影。
それも、キモイルカではありませんでした。

「ふっふっふ、オイラの次元トンネルを掘る能力があれば、風呂場にトイレに更衣室、果てはラブホテルまであらゆる場所を盗撮可能!
やっぱオイラは天才だぜぇ〜!」

カメラを構え、盗撮に励むグラン・モールでした。
シャッター音に気が付き、ヒータが杖で殴ろうとすると、グラン・モールはトンネルに逃げ込みそれをかわしました。
女装癖の変態と盗撮魔の変態の登場で、エリアの学園生活は更に悲惨なものとなりました…。



第五話 色んな意味でKunaiさんと表さんごめんなさい。二人とも大好きです。キミワラ&BC3応援してます。

「おーいアウスー、来たよー。」

ある日のことでした。
エリア達の部屋に、訪問者がやってきました。

「みんなー久しぶりー。」

やってきたのはアウスの知り合いのようで、女性2人と男性3人でした。

「ねーアウス、今年の夏はなにやんの?」

一人の女の子が、入ってきて早々言いました。

「ああ、今年は藤×野でいくつもり。」

「藤×野って…そこは野×藤だろ、常識的に考えて…。」

「いやいや、普段ヘタレのふじふじがこういう時だけのぐっさんをリードするのがよいのではないか。」

エリア、ヒータ、ウィンにはアウス達の会話が理解できませんでした。
まるでこの部屋だけ別次元に飛ばされたかのような感覚でした。

「なあ…この人達は…一体…。」

ヒータは恐る恐るアウスに聞いてみました。

「あぁ、こいつらはあたしが主催の同人サークル『覚悟しろよこの蟲野郎』のメンバーだよ。」

「どう…じん…?」

「うん。ほれ、これあたしが描いたヤツ。」

アウスは、メンバーの一人が持ってきた本をヒータに差し出しました。
タイトルは『やらしい死神』。
ヒータは、何の疑いもなしに本を開きました。
……開いた瞬間、ヒータは思わず本を落としてしまいました。

「アウス…おまえ中学生だよな?
そっそっ…それがこんな漫画描いていいのかっ!?」

ヒータは顔を真っ赤にして、震えながら言いました。
でも、少なくとも視線は下に落とした本を向いていました。
あまりにも衝撃的な内容に驚いてはいるようですが、とりあえずまんざらでもなかったようです。

「えー、なになにー?俺にも見せてよー。」

ウィンが床に落ちた本を拾おうとしました。
すると、アウスは素早くそれを取り上げました。

「はいはいー、これはお子様が読むもんじゃないよー。」

「なんだよケチー!」

「んー、新刊のモデルやってくれるんなら見せてあげてもいいけど?」

アウスは不敵な笑みを浮かべてウィンを見つめました。
その瞬間ウィンは本能で危険を察知したのか、素早くカーテンの裏に隠れました。
こちらからでもわかるくらい、ウィンはガタガタ震えていました。

「…で、アウス、やっぱり新刊は藤×野よりも野×藤だって!」

最初にアウスに話しかけた少女は、まだ言っていました。

「どうせならボクはユキちゃんのを描いて欲しいんだよなぁ…。」

それに続けて一人の男性も言いました。

「あー、男性向けも何か描くつもり。
でも何にするかはまだ未定ー。」

「そっかぁー、どうせ描くなら『(性的な意味で)逆襲の城之内』クラスの名作を頼むよ!」

「オッケーオッケー。」

本人達だけで勝手に盛り上がっているようですが、相変わらずエリアは話についていけません。
ウィンは震えて動けないし、ヒータは同人誌に興味を持ったようでこっそり隠れて読んでるし。
とりあえずエリアが気になることは…あるサークルメンバーの姿でした。
同人サークル『覚悟しろよこの蟲野郎』の男性メンバーは三人。
そのうち一人は(一応、他と比べれば)顔や服装がまともなのに対し、他の二人は人間とは思えないような姿でした。
それぞれが違った意味で。
二人のうち片方は、単なるブサイクな人間。
小太り体型に、アニメキャラが描かれたピチピチのTシャツ、背中にはリュックサックを背負い、顔は脂ぎってグルグル眼鏡をかけた、まさに「萌え〜」というセリフがこの世の誰よりも似合いそうな、オタクのテンプレートとも言えるような男です。

しかし問題はもう一人。
さっきの人の「人間とは思えない」というのは言うなれば彼のブサイクさを表す比喩表現ですが、こちらは直接的な意味で「人間とは思えない」のです。
頭の天辺に大きな一本の角が生え、肌の色は黒く、まるで甲羅のような硬質感があります。更に背中には昆虫のような羽まで生えています。
その姿はまるで、二足歩行するカブトムシ…。

「あの、この人(?)は一体…。」

エリアは、勇気を出してアウスにこのカブトムシのことを聞いてみました。

「ああ、彼はフレア・スカラベ。
ネオスペースからやってきた宇宙人で、うちのサークルメンバーだよ。」

「ども、宇宙人です。」

アウスはとんでもないことをさらっと言いました。

「いや〜、ワタクシも地球に来て一年になりますが、すっかり地球の文化に染まってしまいましたよ。
萌えとは地球で最も素晴らしい文化ですね。
アウス殿やサークルメンバーの皆様方もとてもよい方ばかりで…。
いずれは同人誌やアニメDVDを私の故郷であるネオスペースにも持って帰り、布教したいと思ってるんですよ。」

この宇宙人もう駄目だ…とエリアは思いました。

「あっそうそう、そういえばワタクシ重大発表があるのですよ。」

「えっ、なになにー?」

さっきまでそれぞれが勝手に話していたサークルメンバー全員が振り返りました。

「なんと…なんとなんと…当たったのですよ。アレが!」

「アレって…まさか!?」

「ななななんと!週刊少年プロたんの懸賞で、1/8絵空フィギュアが当たったのですぞ!」

「なっ、なんだってー!?」

全員同時に叫び声を上げました。
他の部屋に迷惑なので止めてくださいとエリアは言いますが、全く聞く気配がありません。

「あっ、あのたった10名にしか当たらない超レア物の!?」

「表先生完全監修で、スカートの中まで完璧に作ってあるというあの!?」

「絵空ファンなら喉から手が出るほど…いや、所有者を破産に追い込んだ上自殺させてまで手に入れたいあのフィギュアが!?」

「「「「「当たっただとぉー!!!!」」」」」

嫌にテンションが高くなるオタクの皆さん。
エリアは少し頭が痛くなってきました。

「羨ましいぞこの蟲野郎ー!俺によこせ!」

「嫌だッ!!死んでも渡さん!!」

「じゃあせめて一目でいいから見せてくれ!」

「うーん、それなら考えてやらないこともない…。」

人の部屋で勝手に盛り上がるオタク達。
エリアはとうとう耐え切れなくなり、保健室へと駆け出しました。

一方、いつものように窓から覗くキモイルカは。

「まさかフレア・スカラベがこんなところにいたとは…。
とりあえず基地に連れ戻さねば…。
っと、だが今はそんなことをしている場合ではない!
保健室に先回りしてベッドの中にスタンバイだッ!」

その後の惨状については言うまでもない。



第六話 龍亜と龍可の苗字が発表されてないのは無印・GXキャラの血縁者だから…と予想してみる

ブラック・パンサー達と一緒に地球にやってきたグロー・モスは、途中で彼らとはぐれてしまいました。
ネオスペーシアンのアジトの場所もわからず、一人トボトボと町を彷徨っていました。
そういえば、今日は朝から何も食べていません。
グロー・モスは足がふらつき、道端で倒れてしまいました。

しばらくして目が覚めると…そこはベッドの上でした。

「あっ、気がついたんだ。」

グロー・モスに話しかけたのは、ウサギの形をした頭巾を被った小さな女の子でした。

「あたしはクラン。あなたのお名前は?」

「え?ボクはグロー・モス…。」

グロー・モスは何が起こったのかわからず、首を左右に動かして辺りを見渡してみました。
壁には金銀の装飾が施され、天井には大きなシャンデリア。
それはまるでお城のよう。
こんな大豪邸、グロー・モスは見たことがありませんでした。

「君が…助けてくれたの?」

グロー・モスは、クランに聞いてみました。

「ええ、そうよ。
ところであなた、どうしてあんなところで倒れてたの?」

「えっと、それは…。」

グロー・モスは今までのことを話しました。

「それは大変だったわね。
でも、ここであたしが拾ってあげたんだから、あなたは今日からあたしのペットよ。いいわね!」

「えっ?ペット?」

「グロー・モス、お手!」

「お手!?」

グロー・モスがどうすればいいのかわからずもたもたしていると、クランは突然ムチを取り出してグロー・モスの頭をそれで叩きました。

「痛っ!」

でも、グロー・モスはなんとなくそれが気持ちいいと感じました。

「お手っていうのはね、こうやるの!」

クランはグロー・モスの右手首を掴んで、その手を自分の右手のひらの上に乗せました。

「う、うん…わかったよ…。」

グロー・モスは、こんなことしてないで早く仲間を探さないと…と思いました。

「はい、じゃあお手!」

グロー・モスは急いでこの場から立ち去るため、今度はちゃんとお手をしました。

「よし、いい子いい子。」

クランはグロー・モスの頭を撫でてあげました。
グロー・モスは、どうせなら撫でてもらうよりムチで叩いてほしかった…と思いました。

「じゃあ、次はお座りね。」

そんなこんなで、クランの調教は続くのでした。
しかし、しばらくして…。

「クランちゃーん、あーそーぼー。」

窓の外から、女の子の声が聞こえてきました。

「誰?」

グロー・モスはバイサー・デスを装着してヘブン状態になりながら聞きました。

「ピケルだよ。」

クランは、キリキリ快感を味わっているグロー・モスを放置して玄関に走っていきました。

「こんにちはクランちゃん、お屋敷抜け出して遊びにきたよー。」

ピケルは、にこにこ笑っていいました。

「うん、じゃあ上がって。」

クランがそう言ってピケルを家に上げようとしたその時…。

「ピケルお嬢様ー!」

突然、上空からレーザーが飛んできました。
二人が上を見上げると、眼鏡をキラリと光らせながらヒステリック天使が降り立ちました。

「お嬢様、これからお勉強の時間です。
お屋敷にお戻りください。
あなたにはお母様みたいな立派な治療の神になってもらわねばならないのです。
こんな低俗なものとお遊びになってはなりません。」

ヒステリック天使はピケルの腕を掴んで無理矢理連れて帰ろうとしました。

「ごめんねクランちゃん…家庭教師のヒステリック天使先生、こういうのすっごく厳しいから…。」

ピケルは、少し涙目で言いました。

「ねえクランちゃん!一体何があったの!?」

そんな中、空気の読めないグロー・モスが頭にバイサー・デスを付けたまま走ってきました。
それを見た瞬間…ヒステリック天使の顔が真っ青に染まりました。

「まっ…な…ななな何て下品なの!!!
そこの貴方、そのペットをお嬢様の視界から遠ざけなさい!!!
あんな下品かつ低俗、汚らわしいその生き物をっ!!!
お嬢様ッ、あんなものを見てはなりません!!!
さあ、帰りますよ!!!!」

ヒステリック天使は強引にピケルを抱え、羽を広げて飛び立っていきました。
ピケルは「クランちゃ〜ん…」と叫んで、そのまま連れ去られてしまいました。
一方グロー・モスは…あれだけ思いっきり罵倒されて悦に浸っていました。

「………戻るわよ、馬鹿犬。」

クランに引き連れられて、グロー・モスはクランの部屋に戻ってきました。

「ところでクランちゃん、あのピケルちゃんって娘…。」

「友達だよ、たった一人の…。
あたし、人付き合い苦手で、なかなか友達ができなくってね、でもピケルだけは普通に接してくれて。
うちはパパもママも仕事で忙しくってなかなか家に戻ってきてくれないの。
だからピケルは時々遊びに来てくれるんだ…お屋敷を抜け出して。
あたしのパパとピケルのパパはライバル同士で仲が悪いの。
それで、ピケルの家庭教師はピケルがあたしの家に来るのを嫌ってて…。」

クランは、なんだかしょんぼりしていました。

「クランちゃん…じゃあ、ボクも君の友達になってあげるよ!」

「友達じゃなくてあなたはペット。あたしの犬!」

「わ…わん…。」

グロー・モスは思わずお座りしてしまいました。

「今日もあんたが出てこなかったらもう少し長くピケルといられたんだからね!
おしおきにバイサーショックを装着してやる!」

「くぅーん…。」

グロー・モスは、しばらく仲間を探すのは中止してこの家にいることにしました。
形はどうであれ、自分が彼女の心のより所になれるからと思って…。



第七話 おスの天空竜!オベリスクの巨チン兵!きんのたま

「エリアちゃんはぁはぁ…今日もかわいいよ…。
先生の話がよくわかんなくって眠くなっちゃうエリアちゃん…ああっ!その寝顔をペロペロしたいッ!!」

綺麗に晴れた朝。
今日もキモイルカは、いつものように授業中のエリアをストーキングしていました。
しかし、今日はその様子を空から眺める男が一人。

「全くアクア・ドルフィンめ。
地球人の女にうつつを抜かすとは、なんと情けない。
実に癒されないぞチューチュー。」

キモバードは以前からキモイルカの言動を怪しんでいました。
そして調べてみれば案の定。

「我々の使命を忘れこんなことをしているとは…帰ったらおしおきが必要だな。
嗚呼、全く癒されない!こんな時は美しき花をチューチューして癒されるのが一番だ。
チューチューチューチューチューチュー…。」

キモバードはそう言って飛び去ろうとしました。
しかし、ふと窓の向こうにいる一人の少女が目に留まりました。
その瞬間、キモバードはかつて経験したことのない妙な感覚に襲われたのでした。

「馬鹿な…癒し系ネオスペーシアンであるこの私が…癒されている!?」

さっきまでチューチューしていた花は、滑り落ちるように手から離れました。
キモバードはその妙な感覚が頭から離れず、花をチューチューするのも忘れて少女に魅入っていました。
やがてキモイルカはエリアに杖を投げつけられて叩き落されましたが、そんなこと気にも留めませんでした。

少女が立ち去って、ようやくキモバードは正気を取り戻しました。

「この私が地球人の小娘ごときに癒されるなんて…まさかこれって…恋!?」

キモバードはその身に背負った二枚の翼を大きく広げて、急いで秘密基地まで飛び立ちました。
基地に着いたキモバードは、自分の倉庫から一番美しい花を取り出すと、一回だけチュッと蜜を吸い、再び飛び立ちました。


一方その頃エリア達は、授業を終えていつもの四人でおしゃべりしていました。

「もう最悪…キモイルカ本当しつこい…。」

朝っぱらからキモイルカにストーキングされて、エリアはとっても不機嫌でした。

「まあまあ元気出しなよ。
そのうちあいつも飽きるって!」

ヒータがなんとかフォローします。
しかし、エリアは無言でした。

「どしたの?エリア。」

ヒータが顔を覗き込みました。
エリアの眉が、ピクリと動きました。

「…来る!」

この世のものとは思えぬキモさを本能で感じ取ったエリアは、杖を構えました。
しかし、そのキモさは普段のそれとは全くの別物でした。

「キモイルカじゃない…!じゃあ、一体!?」

ガシャーン!!と耳が裂けるような音と共に、教室の窓を粉砕☆玉砕☆大喝采してそれは現れました。

「ウィンさん!私とチューチューしていただけませんか!?」

教室に飛び込んできたキモバードは空中で一回転し、一輪の花(チューチュー済)をウィンに手渡しました。
……教室全体が、時が止まったかのように固まりました。

「ちょっとお前、こっち来い。」

ウィンはキモバードのくちばしを思いっきり握って、教室の外まで引きずっていきました。
そして人気のない場所まで来ると、キモバードを離しました。

「ウィンさん…こんな所に連れてきたということは…今からここで…。」

キモバードはキラキラした目つきでウィンを見つめました。

「ンなワケあるか!だいたいオレは男だ!」

「え…。」

キモバードの表情が固まりました。

「お、男!?証拠を見せてみろ!」

「おうよ!上等だ!」

ウィンはスカートを捲り上げ、パンツをずり下ろしました。
それは素晴らしいガーネシア・エレファンティスでした。

「う…ううう嘘だッ!!!」

キモバードは真っ青になって倒れました。

「よし、これでもう変なことはしないだろ。」

ウィンは腕を組んで誇らしげに言いました。

「嘘だ…男…ウィンさんが…男…。」

キモバードは白目を向いて口から泡を吐き、体は小刻みに震え、呪文のようにそんなことを呟いていました。

「男…男…男の子…そうだ、男の子なんだ。
男の子でもいいや、むしろ男の子だからいいんだ。
こんなかわいい子が女の子なはずがない!」

キモバードは不死鳥の如く立ち上がりました。
さっきまで倒れていた彼はどこにやら、今にも神風特攻ゴッドバードアタックを放ちそうな程元気です。

「ウィンきゅん!改めて言おう!男の君が好きなんや!
私にチューチューさせてくれ!」

さっきまで強気だったウィンの顔から、だんだん血の気が引いてきました。

「く…来るなぁぁぁぁぁ!!!!!」
こうして、キモバードは変な趣味に目覚め、ウィンにもストーカーができたのでした。



第八話 今読み返してみるとビギナーズ・カップは酷すぎる。作者からの紹介文にはルールの間違いや文章力について書いたが、実はそれ以上に酷いものがあった。それは「他人のネタをパクリすぎ」ということ。海馬と乾の声優ネタなんて「海馬ランドへ行こう」で使われたばかりのものを即パクリ。たまたまネタが被ったんじゃなく、意識してパクったのを覚えている。以前「HURRY GO ROUND」を(軽い冗談とはいえ)消創のパクリだと言ったことがあるが、他人にそんなことを言えるような立場ではない。パクリ元の作者の皆さん、本当に申し訳ありませんでした。

「皆さんこんにちはー☆
今日からこの学校に教育実習生としてやってきた、ブラック・マジシャン・ガールでぇす(はぁと
ヨロピクねっ♪」

教育実習の季節。
ヒノラーシ魔法学校にも、ちょっとアレな教育実習生のお姉さんがやってきました。
でも実はこのお姉さん、ちょっとアレなだけじゃなく、ものすごくキケンな方だったのでした。

「(ククク…忌々しい霊使いどもめ…貴様らのお陰でワシの人気は下降中…。
OCGのアイドルの座は渡さん!何としても貴様らを痛い目に合わせてくれる!
武羅真剣組(ブラマジぐみ)組長の娘の恐ろしさ…とくと見せてやるぜよ!!)」

そんなワケで、笑顔の裏では恐ろしいことを考えているブラマジガール先生の嫌がらせが始まるのでした。

一日目から早速ブブラマジガール先生の授業が始まりましたが、エリアはその授業で居眠りをしていました。
ブラマジガール先生はそれに気がつき、心の中で悪魔のような笑みを浮かべました。

「(クク、まずはエリア、貴様からだ!)」

ブラマジガール先生は黒板に呪文を書くのを一旦止め、杖を持ってエリアのところに歩いていきました。

「エリアさーん、授業中に居眠りしちゃ、ダメだぞー☆」

そして杖を高く振り上げ、思いっきり振り下ろそうとしましたが、その瞬間…

「エリアちゃん、あぶなーーーーーい!!!」

教室の窓を突き破り飛び込んでくるキモイルカ。
その流線型のボディでブラマジガール先生に強烈なタックルを浴びせました。
ブラマジガール先生は吹っ飛ばされ、後ろの壁に叩きつけられてしまいました。

「大丈夫だったかいエリアちゃん。ボクがいる限り君には傷一つ付けさせはしないからね。」

親指を立て、カッコよくポーズを決めるキモイルカ。
しかし、今ちょうど目を覚ましたエリアには何のことだかさっぱり分からず。

「キ…キモッ!!!!」

助けてもらったことなど知るはずもなく、近くに落ちていた殴られたら痛そうなブラマジガール先生の杖をとっさに掴み、キモイルカの顔を思いっきりぶっ叩きました。
キモイルカは哀れ、空の彼方にホームラン。
そしてエリアは後ろで伸びているブラマジガール先生に気がつき、駆け寄りました。

「先生大丈夫ですか!?あいつにやられたんですか!?」

しかしブラマジガール先生は目を回して完全に気を失っており、エリアの声は聞こえませんでした。
そしてしばらくして…。

「ん…どこじゃここは…。」

ブラマジガール先生が目を覚ますと、そこはベッドの上でした。

「あ、気がついたんだ。」

保険委員のアウスが、近くに座っていました。

「それじゃあ私、先生が目覚めたって他の先生に連絡してきます。」

アウスはそう言って走っていきました。
しかし、ベッドの隣にある机の上に一冊のノートとペンが…。
ブラマジガール先生は、きっとアウスのものだと思って覗いてみることにしました。
するとどうやらそれは、アウスが描いた漫画のようです。

「(クク…中坊の時に描いた漫画なぞ将来思い出して恥ずかしくなるためにあるようなもの…。
今ここで奴の恥を拝んでやる!)」

ブラマジガール先生はそう思ってページをめくって行きますが…

「(なっ!プロ並に上手いッ!
しかもこれは豪×仁志だと!?
こいつ…なかなかわかっている!)」

読みふけっているうちに、アウスが戻ってきました。
ブラマジガール先生は急いでノートを戻しました。

「他の先生には連絡しておいたから。
もうしばらく休んでたら?」

「あ、もう大丈夫。ぜんぜん立てるから。」

ブラマジガール先生はそう言って起き上がり、保健室を出て行きました。

「(ああ、続きが気になる…でも見せてほしいなんて言い出せない…)」

そんなことを思いながら、ブラマジガール先生は裏庭に歩いていきました。
すると、そこで立ちションをしているウィンの姿が。

「(お、男だ!こいつ男だ!こいつはいい弱みを握ったッ!)」

勝利を確信し、小さくガッツポーズ。
一方のウィンもついにバレてしまい、ものすごく慌てていました。

「あ、あの、先生これは…。」

「(やった!勝った!仕留めたッ!!これでワシの勝利じゃーーーい!!!)」

喜びがつい言動に出てしまいそうになりますが、必死でこらえます。
しかしその後ウィンがとった行動は、彼女にとって予想外のものでした。

「ボ…ボク、どうしてもこの学校にいなきゃいけない理由があるんです。
だから、どうかお願いします…。」

腰を落とし、上目遣いで、目をうるうるさせて必死に頼む姿に、極道の心もついときめいてしまいます。

「し、仕方が無いから特別に黙っといてあげるわ。
先生はやさしいからね☆」

先生はそう言って立ち去っていきました。
その後で、ウィンが物凄くあくどい笑顔でニヤリ。

「(故郷の村じゃハーピィのお姉さま方に可愛がられてたんでね…年上の扱いには慣れてんだよ)」

そして職員室に戻ったブラマジガール先生は、自分の席に着いてぼそっと一言。
「やっぱ、あいつらとは仲良くしといた方がよさそうかな…。」



第九話 グラン・モールの一人称がいつの間にか俺からオイラに変わってた。まあ、GXでも途中で性格も声優も変わったし、別にいっか。

今日は理科の授業。
理科室の窓にへばりつき、今日もキモイルカはエリアの様子を観察していました。

「はぁはぁ…愛してるよエリアちゃん…えっ、どのくらい愛してるかって?
そうだな、それはまさにボクがふじふじでキミがユキちゃんというくらいにゅべらっ!」

そして案の定杖をぶつけられて吹っ飛ばされました。
もはやいつもの光景なので、他の生徒達も全く気にしなくなりました。

「エリアも毎日毎日、ホント大変だねー。」

息を荒げ、ニトロ・ウォリアーのような形相で杖を握るエリアに対して、ヒータがぽんと肩を叩きました。

「あれ、ヒーちゃんいたんだ。」

エリアはころっと表情が変わりました。

「いたんだって…確かに前回存在を忘れられたけど…確かに個性が出せず作者も扱いに困ってるみたいだけど…
いくらなんでもいきなり空気扱いは酷くない!?」

「でも、個性が出せず扱いに困ったキャラは『影が薄い』キャラになることで出番が増えるってさんさわくんが言ってたよ。」

「…誰だよさんさわくんって。」

そんな話をしているうちに、授業開始の鐘が鳴り、ホーリー・エルフ先生が教室に入ってきました。

「はーい皆さーん、席についてくださいねー。」

にこやかに笑いながらバスターランチャーを構える姿に恐れをなして、生徒達は一斉に席につきました。

「うふふ、今日は私が作った新しいメカをみんなに見せてあげまーす。
これから地下にある私の研究室に行きましょう。」

ホーリー・エルフ先生はそう言って、小さなリモコンを取り出してスイッチを入れました。
すると、後ろの壁にガシャンと穴が開き、地下への階段が現れました。

「えええええ!?ちょっ、何これ!何で学校に地下室が!?」

「うふふ、研究室が欲しかったから作っちゃいました。
ちなみに学校には無断です☆」

「ええっ!?いいの?生徒にバラしちゃって!」

「校長先生は多分知ってますから…なんだかんだで学校の役にも立ってますしね。」

「……。」

そうして、エリア達は地下室へと移動することにしました。
薄暗い階段を下りると、そこは黒と銀の金属光沢がきらめくサイバネティック空間。
何やら奇妙な機械がそこら中に置かれ、奥の窓の向こうには延々と広がる工場が。
ホーリー・エルフ先生は理科教師であると共に、天才科学者兼発明家だったのでした。魔法学校の先生なのに。

「私の新しいメカは工場の方にあるから、そっちに行きましょう。」

更に階段を下りて、エリア達は工場にやってきました。
まさか学校の地下に敷地全てを利用した巨大な機械工場があるだなんて、エリア達は驚きを隠せませんでした。
主に、魔法学校なのに、という点で。

ホーリー・エルフ先生の案内で工場を見学していると、エリアはふとあることに気がつきました。
ここにあるメカは、どれも物騒な兵器を積んだ戦闘ロボットばかり。
何で魔法学校の地下にこんなものがあるのか、エリアは疑問に思いました。

「あの、先生、このメカは…。」

「ああ、そのミサイルは私の趣味よ。カッコいいでしょ。」

エリアは呆れてしまいました。
しかし、エリアの横でこんな声が…。

「おう!カッコいいぜ!あたしはこういうの大好きだ!」

声を上げたのはヒータでした。
ヒータは様々な戦闘ロボットに目を輝かせていました。

「ふふ、ありがと。
あっ、これが新しいメカよ。」

ホーリー・エルフはあるメカの前で立ち止まりました。
そこに並べられていたのは四台の乗り物型メカ。
しかし今までのと比べると可愛い目がついていたりして、どこかファンシーです。

「この子達の名前は、ステルスロイド、ドリルロイド、エクスプレスロイド、トラックロイド。
合体して巨大ロボットになる新兵器よ。」

「うおーっ、すげぇ!」

ヒータは大興奮でした。

「そうだヒータちゃん、なんなら乗ってみる?」

「え?乗っていいのか!?」

「ええ、まだ実験段階だけど、特別に乗せてあげるわ。
…そうね、ヒータちゃんに合いそうなのは、このステルスロイドかしら。」

「…ステルスってところが気になるけれど、まあいいや。」

そうしてヒータはステルスロイドに乗り込み、操縦席に座りました。
席の横には、ホッチキスで束ねられた操縦のマニュアルが置いてありました。

「まあ、こんなもの読まなくても適当に感覚で動かせば十分だろ。」

ヒータはそんなことよりも、ロボットアニメの主人公になったような気分に浸っていました。

「よーし、それじゃあ早速、はっしーん!」

「待てやゴルァ!!」

ヒータが中央のレバーを入れようとした途端、操縦席に設置された画面に凶暴な顔が映り、怒鳴り声が飛び込んできました。

「ブ…ブラマジガール先生!どうしてここに!?」

「実を言うとなぁ…ワシはこのトラックロイドのパイロットなんじゃーい!」

「ええええええ!?」

ヒータはもちろんのこと、ホーリー・エルフ先生の持つ無線機を通じて外で話を聞いていたエリア達もびっくりしました。
よく見るとトラックロイドのコンテナには「武羅真剣組」の文字が大きく書かれて、まるで…というか完全にヤクザトラック。

「武羅真剣組って確か、政界・財界・カード界を牛耳る世界最大の極道組織だったような…何で先生が!?」

ブラマジガール先生がパイロットであることよりも、ヤクザの関係者であることに驚いていました。

一方その頃、この工場に現れたキモスペーシアンが二人。
グラン・モールとフレア・スカラベです。

「適当に次元トンネルを掘ってたらこんなところに出てしまった…。」

「ほほう、巨大な兵器工場とはなんともヲタ心をくすぐるものですな。」

二人はなんとなくこの工場を見学することにしました。

「あーっ、キモスペーシアン!」

そして案の定エリアに見つかる二人。

「フレア・スカラベ、こんなところで何やってんの?」

アウスが言いました。

「いや、モール殿とアキバで買い物をしていたのでありますが、モール殿が帰りは次元トンネルでいろんな場所を見て回ろうと言い出しまして…。」

「それで適当に掘ってたらここに着いたと。」

「そういうこと。」

結局、キモスペーシアンの二人も一緒に工場を見学することになりました。
エリアとウィンは、キモイルカとキモバードでなくてよかったと思いました。

「キモスペーシアンさん達も、もしよかったら乗っていかない?
これで丁度四人になるから合体もできるわよ。」

「うおおおお!是非やらせてください!」

ホーリー・エルフ先生の誘いに、二人は同時でガッツポーズを決めました。
やっぱりこういう人種にとってロボットは憧れなのでしょう。

「じゃあオイラはこのドリルにするぜ!」

「それではワタクシはこの新幹線ということで。」

キモスペーシアンの二人も乗り込み、いよいよ合体の準備が整いました。
ヒータは合体して巨大ロボットになることにワクワクが止まりませんでした。
しかしそんな中、都合よくか都合悪くか、更なる二人のキモスペーシアンが現れました。

「エリアちゃーん!」

「ウィンきゅーん!」

『愛してるよーーー!!!!』

エリアとウィンのいる場所ならどこにでも現れるキモい奴ら。
やはり現れたキモイルカ&キモバードです。

「丁度いいわ。あのキモい二人をやっつけるのよ。
合体の掛け声は『究極合体・ステルスユニオン!』よ。」

「了解だッ!!行くぜみんな!!」

「おう!!」

遂に解き放たれたかの如く、ヒータが気合を入れる。
そして四人全員が、一気に叫ぶ。

『究極合体・ステルスユニオン!!!!』

四つのメカは変形・合体し、一つの巨大ロボットへと姿を変えました。
それはどこかのロボットアニメで見たことあるような、本当にどこかのロボットアニメで見たことあるような姿をしたスーパーロボット。

「影が薄いがなんなんだ!背景無くては世界は生まれぬ!空気が無くては生きられぬ!
あたしの名はヒータ!炎の美少女、ヒータ様だ!!」

ヒータの名乗り口上と共に、ステルスユニオンの拳に炎が宿ります。

「喰らいやがれ!スーパーヒータメテオ!!」

拳から灼熱の炎が打ち出されました。
炎はキモイルカとキモバードを直撃し、大爆発が起こります。
二人は天井を突き破り、空の彼方へと消えていきました。

「正義は勝つ!!」

そして最後に決めポーズ。
エリア達からは拍手喝采が巻き起こる。
しかし、それを見てため息をつく一人の男が。

「あのさあ…工場破壊しといて正義はないだろーが。直すの俺なんだよ…。」

そう言ったのは、ギルティア先生でした。

「ギルティア先生何でここにいるの?」

しかしギルティア先生は答えようとしませんでした。
そこで、ホーリー・エルフ先生がニコッとダークな笑みを見せた後、代わりに話してくれました。

「彼はこの前、あなた達の体操着の臭いを嗅いでいたことがバレて、今はここで罰を受けてるのよ。
ただでさえ重労働なのに、機械が嫌いな彼にとっては拷問ね。ウフフ……。」

ホーリー・エルフ先生は、バブル・クラッシュした成金ゴブリンを見るような目でギルティア先生をチラッと見ました。
ギルティア先生はただでさえキツいのに、生徒に全部バラされたことで余計にへこんでしまいました。

「最近見ないと思ってたら、そういうことだったんだ…。」

その上、その場にいた生徒全員からも軽蔑の目で見られてしまいました。
そしてとどめに、ステルスユニオン搭乗中のヒータを怒らせてしまいました。

「最低の野郎だな。あたしが懲らしめてやる!」

再びステルスユニオンの拳に炎が宿りました。

「イヤアアアアアァァァァアァァ!!!」

ギルティア先生の悲痛の叫びが、工場全体に木霊します。

「スーパーヒータメテオ!!」

炎の拳から放たれた爆炎は、ギルティア先生を直撃。
しかし、ギルティア先生は無傷でした。

「…あれ?」

「ん?」

誰もが首をかしげました。
そしてギルティア先生は…。

「そうか!これは俺がトラウマを乗り越えるための試練なんだ!
これで俺の機械恐怖症は直るんだ!
喰らえ!ソウル・スピア!」

どこからともなく取り出した槍から、一筋の光が放たれました。
光に貫かれたステルスユニオンは、ゴミの山のようにガラガラと崩れ落ちて行きました。

「やった!勝ったぞ!俺は勝ったんだー!」

一人で大喜びしているギルティア先生を、エリア達はぽかんと口を開けて見ていました。
ヒータと他三名は、必死で瓦礫の下から這い出してきました。

「先生…これは一体…。」

ホーリー・エルフ先生は、ふと何かを思い出したかのように、ポケットの中から小さなものを取り出しました。

「あらあら、どうやらネジが一本抜けてたみたい。
これじゃ本来の半分の力も出せなくて、ギルティア先生にすら負けちゃうわね。」
自分のミスだというのにこの人は全く気にしないが如く、ニコニコと笑っていました。



第十話 近いうちに新作読切を二つほど発表します。あまり期待はしないでください。

最近、毎度毎度迷惑をかけるキモイルカのお陰で(主に学校に対する賠償金で)ネオスペーシアン地球侵攻部隊の軍資金が底を尽きかけていました。
そこである日、グラン・モールは幼女が一人で住む屋敷の話を聞き、そこに盗撮に行くことになりました。
実を言うとネオスペーシアン地球侵攻部隊にはろくに働いている人がいないので、彼の撮った写真の売り上げが実質的な軍資金なのでした。
幼女モノは一部マニアには非常に高く売れるため、このチャンスは逃すわけにはいかないのでした。

グラン・モールはアキバで購入した新品のカメラを装備し、次元トンネルで華麗なる潜入工作員のごとく屋敷に忍び込みました。
彼は自分の盗撮技術に絶対的な自信がありました。
どんな場所にでも自在に移動できる次元トンネル、天才的なカメラ使い。
それこそ制限カードになるのも当然なほどのスーパーカメラマン。

彼はお目当ての幼女を見つけると、早速後ろに回り込み、カメラのシャッターを切ろうとしました。
しかしその瞬間、突然の衝撃によりカメラがバラバラに砕け散りました。

「どちら様かしら…私に何か用?」

幼女は一瞬でグラン・モールの気配に感づき、鞭の一振りでカメラを破壊したのでした。
新品のカメラは哀れ、粉々のジャンクに。

「えっ…いや、その…。」

絶対気付かれないと思っていたグラン・モールは、あまりの衝撃で挙動不審に。
急いで次元トンネルを作り逃げ出そうとしますが、あっさりと鞭で捕らえられてしまいました。

「(ヤベェ…このままじゃオイラはゴヨウなガーディアンさんに逮捕されて全世界に実名報道だ…。
ネオスペースの実家にこのことを知られたら…しかも幼女だぞ!幼女!
俺は別に幼女には興味は無いが一部マニアには高く売れるから撮ってるだけなのに、このままじゃペド扱いだ!
釈放されても社会復帰はまず不可能…あのイルカや鳥からも変態扱いされるのは最悪だ!どうする、どうする俺…。)」

そんなことを考えているうちに、グラン・モールはとある部屋に連れてこられました。
そこは様々な拷問器具が並べられた、まさに悪夢の拷問部屋。
拷問器具の中でも一際目を引くのは、現在進行形で誰かを拷問している巨大な車輪。
見るからに痛そうで、とても見ていられません。

「さーて、あなたへのおしおきはどれにしようかしら…。」

幼女は楽しそうに拷問器具を物色しています。
グラン・モールは顔が引きつり、恐怖で全身の毛が抜け落ちそうでした。
しかし、突然として部屋内に響いた聞き覚えのある声で正気に返りました。

「グラン・モール君!」

声を出したのは、拷問車輪にかけられていた人でした。

「その声、グロー・モスか!?しばらく姿を見ないと思ってたら、こんな所にいたのか!」

「うん、実はボク、クランちゃんのペットになったんだ。
ここにいれば毎日クランちゃんにおしおきしてもらえるし、ものすごくハッピーさ。
君も一緒にペットにならないかい?」

「…いや、オイラは遠慮しとく。」

死んだと思われた同胞との意外な再会。
盗撮した写真の話や、フレア・スカラベとの再会の話、地球人にゾッコンなイルカと鳥の話…グラン・モールはこれから自分がおしおきされるということも忘れて、グロー・モスとの会話を楽しんでいました。
もちろん、グロー・モスは回りながら。

「なあ、グロー・モス、ペット生活もいいけど、いい加減戻ってこいよ。
こうしてせっかく再会できたんだからさ。
他の連中もお前が帰ってくるのを待ってるぜ。」

「え…でも…。」

楽しそうだったグロー・モスの表情が、暗いものに変わりました。

「クランちゃんには、ボクがついてないと駄目だから…。」

その言葉は、先程まで拷問車輪で悦んでいた者が言ったとは思えないほど決意に満ちていました。

「…そうか、そんじゃ仕方ねえ。
お前のことは仲間には黙っといてやるぜ。
そんじゃオイラはこれで退散するとしますか。」

グラン・モールはそう言って次元トンネルを掘ろうとしました。

「待ちなさい!」

クランの鞭が、鼻面を掠めました。

「まだおしおきが終わってないわよ。
あなた、おしおきは初めてみたいだし…軽くバイサー・デスくらいで済ませてあげるわ。」

グラン・モールは全身から血の気が引いていきました。

「ついでにグロー・モス、わたしを差し置いてこんな奴と話をしていた罰よ。回転速度三倍ね。」

拷問車輪に付けられたレバーを倒すと、車輪は目にも留まらぬ速さで回転を始めました。

「ああああああああっ!クランちゃんっ!きもちいい!きもちいいよおおおおおお!!!!!」

グロー・モスの恍惚の叫びが、部屋中に木霊しました。
グラン・モールは既に放心状態でした。
そしてバイサー・デスを装着され…二つの叫びが、見事なハーモニーを奏でたのでした。



続く...



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