血の刻印
9話〜

製作者:オウカさん






 ――ネオドミノシティ、ダイモンエリアのビル

 ――9:00

「私だ。 そちらの首尾は順調か?」

 薄暗い室内にいるのは一人の男。

 彼は目の前のモニターを用いて通信を行なっている。

『ああ、当然だ。 今夜のために長年進めてきた計画だ、念には念を入れている』

 モニターに写っているのは、「魔」の文字と黒い龍を象ったマーク。

 おそらく通信先の男を示しているのだろう。

「そうか、お前がそう言うなら安心だ」

『それよりも心配すべきは貴様自身だろう? 計画が最終段階に入る前に貴様が討たれてはこちらが困るのでな』

「私も随分と侮られたものだ、例の一件の時みたいなミスはしないさ。 最も、それ以前に彼らが私の元にたどり着けるかも疑問だがな」

『彼らを侮るべきでは無いだろう。 何せ例の一件ではあの”組織”の思惑を打ち破ったのだからな。 それに、この街に”壊し屋”が入ったという情報もある』

「ほう、”壊し屋”というと……いや、この話は今は必要あるまい。 分かった、警戒を強めておこう」

『日暮れに迎えに行く、準備は済ませておけ』

「ああ、楽しみにしているよ。 神を気取った”組織”を地に堕とし、理想郷アルカディアを創り上げる――私の理想がついに成し遂げられるのだからな」

『フッ、貴様の理想郷アルカディアとやらは俺の知ったことではない。 だが、ついに”組織”への復讐を果たせるというのは実に心が踊る』

 モニター腰にも伝わる、通信相手の邪悪な雰囲気。

『……おっと、夜を前に昂るのは問題だな。 コーヒーでも飲むとしよう、そろそろ通信を切らせてもらおうか』

「ああ、構わん」

 男がそう言うと、モニターの映像が切れる。

「ようやくこの時が来たか……冥界への入り口は魔女の島にある」







 ――ネオドミノシティ、ホテル フィール

 ――12:00

 街の中央部に位置する高層ホテルの最上階の一室。

 そこにいるのは、片方ソファに座っている一人の女性と、向かいのソファに座っている青年と少女のペア。

「なるほど、依頼の内容についてはよくわかりました」

「ククク……俺らに関わる覚悟ができているようで感心したぜ。 後は俺達に任せてくれよ」

 一人は、ポニーテールに束ねた銀髪が特徴的の、青いノースリーブの服を着た高校生くらいの少女。

 一人は、黒いコートを身に纏い足を組んで堂々と座っている、鋭い眼光の二十代の青年。

 二人は、目の前の女性とは実に異質の雰囲気を放っていた。

「この壊し屋に、な」

 二人――ソーガ・ダイモンとセーナ・クロエは、静かな笑みを浮かべた。

「ありがとう、頼りにしているわ」

 そう答えるのは、依頼者の女性――ミスティ・ローラ。

「だけどいいのかしら? 壊し屋の依頼には全財産を依頼金として差し出すって聞いたのだけど」

「ああ、別に俺は金に困っているから法外な料金をたたき出しているわけじゃねえからな。 金なら親父の遺産が腐るほどあるしよ」

 ソーガは足を組み直し、話を続ける。

「俺達壊し屋を利用するにあたって俺が依頼者に求めているのは金でなく、俺のような悪党に関わる覚悟だ。 金さえ積めば汚れ仕事を引き受けてくれるサービス業なんざゴメンでね、悪の片棒を担ぐ覚悟をあるやつだけに俺は力を貸すのさ」

「つまり、法外な料金の話は覚悟のある人とそうでない人をふるい分けるためのデマ、ということね」

「まあ、覚悟の半端な依頼者にはしっかり法外な料金を請求しているからデマってわけでもねえがな。 だがお前みたいに最初から十分な覚悟ができている依頼者はわざわざ覚悟を測る必要もねえ」

「私はそんなに覚悟があるよう見えるのかしら?」

 そう質問するミスティの目を見て、ソーガは邪悪な笑みを浮かべる。

「ああ、見える。 よく見えるぜ。 お前は実に素晴らしい覚悟を持っている」

 ソーガはコートの裏からナイフを取り出し、ナイフシース(鞘)から抜く。

 そして右手だけで器用にナイフを回転させながらそう話す。

「正直、トップモデルからに依頼なんてろくでもねえ物だと思っていたが、お前の目を見たらすぐに分かったぜ」

 回転しているナイフを掴むと、テーブルに勢い良く突き刺した。

「お前はハラワタにドス黒い闇を抱えた、本物の復讐者だ」

 突き立てられたナイフに、ミスティの瞳が映る。

 モデルの名に恥じぬ澄んだ美しさ中に、冷たい闇を抱えた瞳が。

「ええ、私は復讐者よ」

 ミスティは突き立てられたナイフを引き抜くと、右手で握り左手で刀身を軽く撫でる。

「本当なら、私が出向いてあの男の胸を突き刺してやりたいわ」

 手元のナイフを眺めながらそう言うと、ため息をついてナイフをソーガに渡す。

「だけど私じゃあの男には敵わないわ。 あの力を持っていた時ならまだしも、今の私じゃ無力。 だから――」

 差し出されたナイフを、ソーガは手に取る。

「あなたが、代わりにあの男を壊して」

 返されたナイフを再び掴み、ソーガは答える。

「ああ。 その依頼、この壊し屋に任せな」

 返答を聞き、満足気な表情のミスティ。

「ま、あの男は俺個人としても気に食わねえし、こうしてぶっ壊せるのはいい機会だ」

「あら、あなたもあの男と何か因縁があったのかしら?」

「いや。 直接の因縁は無いんだが、俺の忌まわしきクソ親父があの男と仲良く結託していたらしくてな。 親父はもう俺が葬ってやったが、共犯者がいるって言うならぶっ壊すまでだ」

「そう。 私としてはその因縁、好都合ね」

「ククク……したたかな女だな」

「あの、それと……」

 ソーガとミスティの会話に、セーナがそう声をかけ割り込む。

「ん、どうしたセーナ?」

 セーナが取り出したのは、2つの物体。

 片方は、金色の縁があり白く薄い四角形の物体――俗にいう、色紙。

 もう片方は、黒い棒状の物体――俗にいう、ペン。

「よろしかったら、サインください!」

 目の前の女性は、その色紙を受け取る。

「セーナさんへ、と書けばいいかしら」

「あ、名前まで! ありがとうございます、ミスティさん!」

 ミスティは、慣れた手つきでサインを書き上げる。

「はい、そうぞ」

「ありがとうございます! 世界的モデルのミスティさんのサイン色紙をもらえて感激です! 私もミスティさんみたいに美しい女性になりたくて、ミスティさんのインタビューを色々と参考にして……」

「ふふ、ありがとう。 あなたは今のままでも十分よ、若いうちは無理するよりもそのままが一番だと思うわ」

「はい、分かりました!」

 すっかり舞い上がったセーナの様子を見て、ソーガは軽く微笑み声をかける。

「よかったな、セーナ」

 そんなソーガの顔を見て、ミスティはソファから立ち上がる。

「壊し屋さん、少し顔を見せてくれないかしら」

「ん?」

 ソーガの顔を掴み、真剣な表情でじっと見つめるミスティ。

「むぅ……」

 それを見るセーナの表情は、先ほどとは打って変わって不機嫌そうだ。

「あなた――」






第九話「邂逅」



 ――ネオドミノシティ、ダイモンエリア

 ――13:00

 現在、世界の発展の中心とも言える大都市・ネオドミノシティ。

 1年程前までのこの街は、シティとサテライトという階級分けされた地域が存在した。

 しかし治安維持局の前長官であるレクス・ゴドウィンと、サテライト出身である現キング・不動遊星により2つの地域はダイダロス・ブリッジで繋がれ、差別制度も無くなっていった。

 そのためこの街も昔に比べれば平等な社会へと進展したのだが、光あるところに闇はある。

 シティとサテライトが存在していたころから、シティの一角にはマーカーを持つものが集まる地域があった。

 シティには居られない犯罪者、しかしサテライトには行きたくない。

 そんな人々が集まってできた地域、ダイモンエリア。

 シティとサテライトが統一された今も、街はサテライトの再開発に力を入れているためダイモンエリアには手が届かず、これまでと変わらない状態である。

 そんなダイモンエリアの広場に、ソーガとセーナは訪れていた。

「”彼”に関する情報、中々出てきませんね。 今は行なっていた悪事が公表されているのですから、目立たないように活動しているのは納得ではありますけど」

 広場の片隅で、ストリートデュエルを眺めながら会話をするソーガとセーナ。

 まだ昼間だが、この辺りはやや薄暗い。

「困ったもんだぜ。 この街で情報通といえば昔は雑賀ってヤツがいたはずなんだが、今はどこかに行っちまってるみてえだしなあ」

「そう言えばこの街の情報屋といえば、胡桃沢という男の店がありましたね」

「それも悪くはないが……もう少しここでの情報収集を続けるべきだな」

「と、言いますと?」

「どうも妙なんだよなあ……ダイモンエリアと言えど、今日は物騒な連中の気配がやけに多いんだよなあ。 ま、俺はネオドミノシティ在住でもねえし、元からここはそう言う場所なのかもしれねえが」

 この広場で行われているストリートデュエル――

 表舞台で活躍するプロデュエリストには程遠い、裏路地のデュエリスト達の戦いの場だ。

 プロを目指す者もいれば、楽しむためにデュエルをする者、観戦をしにきた者もいる。

 ダイモンエリアのデュエリストたちが集まる、デュエルを楽しむ憩いの場だ。

 しかし、今日は楽しげな雰囲気は見られない。

 どことなく、セーナの目から見たところ殺伐した雰囲気だ。

「確かに、妙な雰囲気がしますね。 ソーガさん、どうします?」

「よし、聞きこみに行ってみるぜ」

 ソーガはデュエルディスクを装着し、広場の中心部へ進む。

 見計らっていたのか丁度デュエルが終わっており、辺りは次のデュエルを楽しみに待ち構えていた。

「ククク……今日は見慣れねえヤツが多いなあ。 せっかくよそ者さんがいらしたんだ、俺とデュエルしてくれよ」

 そう言いながら堂々と割り込むソーガ。

 見慣れないよそ者の乱入に辺りは騒がしくなるが、その様子を見てソーガは指をさす。

「よし、お前! 出てこいよ、俺とデュエルしようぜ」

 指さされたのは、一人の男。

 戸惑いながらも、デュエルを待ち望む周囲の期待から逃げるのは難しいのだろう、デュエルディスクを付けて準備をする。

「ソーガさん、ソーガさん! なんでストリートデュエルに参加しているんですか?」

「ああ、さっき俺が言っただろ、物騒な連中の気配が多いって。 何も無いのに物騒な連中とやらが増えるとは思えねえ、何か理由があるはずだ。 だから、まずはその連中の一人から話を聞いてみようと思ってなあ」

 そう返答するソーガの言葉を受け、セーナは少し考えると納得した様子になる。

「なるほど、先程のデュエルを挑む時の言葉は、標的を炙り出すためだったのですね!」

「分かってんじゃねえか、流石は俺の助手だぜ。 見慣れないよそ者が古株顔であんなセリフを言えば、普段からここに来ているヤツらは不審がる。 逆に言えば、最近ここに来るようになった連中はそう思わねえ。 様子を観察すれば、どいつが新参者かはすぐに分かるぜ」

 対戦相手の準備が終わったのを見ると、セーナは後ろに下がりソーガはデュエルを始める。

「おんどりゃー、デュエルじゃい!」

「おいお前、俺が勝ったら少し質問に答えてもらうぜ」

「質問だあ、構わんわい!」

「ククク……さあ、行くぜ!」

「「デュエル!」」










「ククク……行け、《ヘル・エンプレス・デーモン》! 《迅雷の魔王-スカル・デーモン》! 《暗黒魔族ギルファー・デーモン》!」

 3体の上級悪魔は、目の前の男に一斉に襲い掛かる。

「げぶらぁ!」

男 LP:5730→→2830→330→0

「よーし、じゃあ約束の質問タイムだな。 お前、ここに来る前は何をしていた?」

 吹き飛ばされた男は体勢を立て直すが、ソーガに目線を合わせずにこう答えた。

「んなこと教えんわい」

 ソーガはため息をつくと素早く男に接近する。

 数メートルの距離を一瞬で詰め、右手で男の首元を掴む。

「ああ? 敗者が何ふざけたことぬかしてんだ? デュエルを通した約束すら守れねえのか」

「すまんかったわい、その場のノリで言っちまったが、どうしても話したく……」

「テメエの事情なんて知るか。 俺は半端な気持ちでデュエルする奴が嫌いでなあ、とりあえず四肢の骨をぶっ壊すところから始めてやろうか」

 ソーガは掴んだ男を放り投げる。

「ぐあっ!」

 数メートル程飛ばされて地面に叩きつけられた男に、ソーガは近づく。

「それとも、テメエ見てえなヤツが二度とデュエルできねえように、指を切り落とすってのもありだな」

 ソーガは歩きながらナイフを取り出し、刃を男に向ける。

「わ、分かった! 話すからどうか……」

「本当かよ、適当な嘘をでっち上げる気じゃねえか?」

 ソーガは歩みを止めず、ナイフを構える。

(よし、コイツの頭の横の地面にナイフを付き立てれば完璧だな)

「嘘は絶対に言いま……」

 男がそう言い切る前に、二人の間を何かが横切る。

 それは、一枚のカード――《ジャンク・シンクロン》

「誰だ、俺の邪魔をしたのは?」

 カードが投げられた方向を向くソーガ。

 そこに立っていたのは、一人の青年。

 青い上着を纏い、金のメッシュが入った黒髪の青年。

 彼はデッキを手に持ち、言った。

「おい、デュエルしろよ」

 そう言う青年を前にして、ソーガに笑みが浮かぶ。

「ククク……まさかお前が現れるとは、フォーチュンカップ優勝者にして現ネオドミノシティデュエルキングの不動遊星さんよ」

「お前たちに一体何があったかは知らないが、あれはやり過ぎだ。 デュエルを通した約束を破って生じた問題のようだが、それなら俺が相手をする」

「ほう、この俺とデュエルだと? この”壊し屋”ソーガ・ダイモンと?」

「ああ。 俺が勝ったらあの男は見逃してもらう」

 睨み合うソーガと遊星の様子を見て、ソーガにデュエルで負けた男は立ち上がってその場から逃げようとする。

「逃がしません!」

 刀に手をかけ、男に詰め寄るセーナ。

 男の袖を掴もうとした瞬間、別の腕がセーナの腕を掴んだ。

「貴様らが何者かは知らんが、見過ごすわけにはいかんな」

 セーナの腕を掴んだのは金髪の青年。

「どういう真似も何も、ソーガさんとデュエルを通した約束を破ったのはその男です。 何をされても文句はないはずです」

「セーナ、引け。 不動遊星に続いて元キングのジャック・アトラスまでお出ましとは、予想外の展開だぜ」

「元キングだと!?」

 ソーガの言葉にジャックが怒りを顕にしている隙に、セーナは腕を振りほどいてソーガの近くまで下がる。

「壊し屋……確かパズルシティを中心に活動する、謎の力でD・ホイーラーをクラッシュに追い込む闇のD・ホイーラーだったな」

「ほう、この俺のことを知ってくれていたとは光栄だぜ」

 セーナはソーガの袖を引き、小さめの声でソーガに相談する。

「あの男は逃げてしまいましたね。 ソーガさん、どうします?」

「どうするも何も、あの不動遊星が俺をご指名みたいだからなあ。 受けて立とうじゃねえか」

「ですけどソーガさん、男が逃げてしまった以上このデュエルを受ける必要はあるのでしょうか?」

「ああ、その点はさっき掴みかかった時に発信機を仕込んでおいたから大丈夫だ。 それに……」

 ソーガは遊星に目線を移す。

「フォーチュンカップの時は客席で見ているだけだったが、あの時から不動遊星には面白いものを感じていてな。 折角の機会だ、ご相手願おうじゃねえか」

「分かった。 始めようか」

 デュエルディスクを起動しようとする遊星を、ソーガは呼び止める。

「待てよ、ここはライディングデュエルにしようぜ?」

「わざわざライディングデュエルに変更しただと? 遊星、あの男は何か狙っているかもしれんぞ。 それに、もしかしたらヤツが十六夜を……」

 ソーガの提案に不可解そうな様子のジャック。

「なあに、フォーチュンカップの時の不動遊星はスタンディングよりもライディングが目立っていたからなあ。 ジャック・アトラスとの決着もライディングデュエルで決めていたしな」

「分かった」

「ククク……決まりだな。 じゃ、すぐそこのハイウェイを使おうぜ」








 ――ネオドミノシティ、第二ハイウェイ

 ――13:15

 ハイウェイに並び立つ、二台のD・ホイール。

 不動遊星が乗るのは赤い塗装とシンプルで洗練されたデザインのD・ホイール。

 ソーガ・ダイモンが乗るのは、黒光りするボディに赤い角のようなパーツが目立つD・ホイール。

 その後ろには、セーナの乗る銀色のD・ホイールとジャックの乗る白い一輪型のD・ホイール。

「ソーガと言ったな、俺がこのデュエルに勝ったらあの男のことは見逃してもらうぞ」

「分かってるって。 だが俺が勝ったらお前たちの邪魔が無くなるってだけなのは報酬として少々割に合わねえな……」

「ならどうすればいい?」

「そうだな、俺の仕事に付き合ってもらうとしよう」

「仕事……?」

 ソーガはD・ホイールのデュエルモードを起動する。

「《スピード・ワールド2》、セットオン!」

『デュエルモード、オン。 オートパイロット、スタンバイ』

《スピード・ワールド2》
フィールド魔法 (アニメ5D’sオリジナル)
Sp」スピードスペルと名のついた魔法カード以外の魔法カードをプレイした時、自分は2000ポイントダメージを受ける。
お互いのプレイヤーはお互いのスタンバイフェイズ時に1度、自分用スピードカウンターをこのカードの上に1つ置く。
(お互い各12個まで、1ターン目を除く)
自分用スピードカウンターを取り除く事で、以下の効果を発動する。
●4個:自分の手札の「Sp」と名のついたカードを任意の枚数公開することで、その枚数× 800ポイントダメージを相手ライフに与える。
●7個:自分のデッキからカードを1枚ドローする。
●10個:フィールド上に存在するカードを1枚破壊する。

『レーンセレクション、使用可能な最適レーンをサーチ。 デュエルレーン、セントラルに申請』

 ライディングデュエルに使うハイウェイの申請が自動で行われる。

 この場合の使用可能な最適レーンというのは、丁度彼らのいるハイウェイとなる。

『デュエルが開始されます。 デュエルが開始されます。 ルート上の一般車両は直ちに退避してください』

 ハイウェイが変形し、ライディングデュエル用のコースとなる。

 ライディングデュエルに巻き込まれないように一般車両は退避させられる。

「ソーガさーん、頑張って下さいね!」

「遊星、そんな何処の馬の骨とも分からん男に遅れを取るような真似、このジャック・アトラスが許しはせんぞ」

「馬の骨? ソーガさんを侮辱するのは私が許しませんよ、元キング」

「元キングだと!? 貴様こそこのジャック・アトラスを愚弄するとは、小娘だとうと容赦はせんぞ!」

「おーい遊星、後ろが騒がしいがさっさと始めようぜ」

「ああ、分かった」

 ソーガの前に立体映像のランプが三つ現れる。

 ランプは一つづつ消えていき、最後のランプが消えスタートの合図を知らせる。

「「ライディングデュエル、アクセラレーション!!」」

 二人はアクセルを踏み込み、D・ホイールを加速させる。

 ハイウェイを駆ける二機、徐々に差は広がり黒い機体が先行する。

「なるほどねえ……見たところライディングテクニックはほぼ互角。 だが!」

 不敵な笑みを浮かべたソーガは、車体を傾けつつ操縦しコーナーに切り込む。

 遊星もソーガを追い抜こうとコーナーの内側を狙うものの、ソーガのはD・ホイールを内側に寄せることで遊星の狙いを潰した。

「第一コーナーはもらった、これで俺の先攻だな」

「クッ……」

「どうやら一方でD・ホイールの性能に差があるようだな。 俺とセーナのD・ホイールは多彩なルートを駆使し最上級のパーツを揃えつつ、それらを独自にカスタマイズしている一級品だ。 プログラミングデータもセーナの力があって相当なものが出来上がっている。 お前のD・ホイールの調整は悪くないが、おそらく資金面で問題があるようだな」

 そう語り終えると、ソーガはカードを引く。

「さーて、お喋りはここまでだ。 俺のターン!」

 手札を一通り眺め、戦略を練る。

 そして、すぐさまカードを選び出す。

「《ヘルウェイ・パトロール》を攻撃表示で召喚、カードを2枚セットしターンエンドだ」

 バイクに乗ってソーガと並走するのは、悪魔の警察官。

 悪魔らしい禍々しいデザインのバイクに乗っている。

「俺のターン!」

遊星 LP:4000
手札:5→6枚
モンスター:無し
魔法&罠:無し
スピードカウンター:0→1
ソーガ LP:4000
手札:3枚
モンスター:《ヘルウェイ・パトロール》(攻1600)
魔法&罠:セット2枚
スピードカウンター:0→1

「《スピード・ウォリアー》を攻撃表示で召喚!」

 遊星が呼び出したのはローラーの付いた足で軽快に走る灰色の装甲の戦士。

《スピード・ウォリアー》
効果モンスター
星2/風属性/戦士族/攻 900/守 400
このカードの召喚に成功したターンの
バトルフェイズ時にのみ発動する事ができる。
このカードの元々の攻撃力はバトルフェイズ終了時まで倍になる。

「《スピード・ウォリアー》は召喚したターンのバトルフェイズのみ、攻撃力が倍になる!」

スピード・ウォリアー ATK:900→1800

「行け、《スピード・ウォリアー》! ソニック・エッジ!」

 《スピード・ウォリアー》は加速するとアクロバットな動きで蹴りを放ち、《ヘルウェイ・パトロール》のバイクを粉砕した。

「クク……」

ソーガ LP:4000→3800

「カードを2枚セットし、ターンエンドだ」

 モンスターが破壊され、ダメージを受けたもののソーガは不敵な笑みを浮かべる。

 それもそのはず、ソーガにとって《ヘルウェイ・パトロール》は破壊されたほうが都合が良く、ダメージも微量で済んだのだから彼にとっては理想的な流れなのである。

「俺のターン、ドローだ。 遊星、《ヘルウェイ・パトロール》を破壊してくれてありがとよ。 コイツは墓地で効果が発動するモンスターでなぁ」

 ソーガは墓地から《ヘルウェイ・パトロール》のカードを取り除き、その効果を発動する。

《ヘルウェイ・パトロール》
効果モンスター
星4/闇属性/悪魔族/攻1600/守1200
このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、
破壊したモンスターのレベル×100ポイントダメージを相手ライフに与える。
自分の墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、
手札から攻撃力2000以下の悪魔族モンスター1体を特殊召喚する。

「さあ、血沸き肉踊る虐殺ショーの開幕と行こうぜ! 特殊召喚、《ジェノサイドキングデーモン》!」

 ソーガの元に降り立つは、王の名を冠す悪魔の剣士。

 真紅のマントを背に禍々しい剣を持った姿は、まさしく悪魔。

ジェノサイドキングデーモン ATK:2000
 
「さあ、《ジェノサイドキングデーモン》! 《スピード・ウォリアー》をぶった切ってやれ!」

 《ジェノサイドキングデーモン》は跳びかかり、上空から《スピード・ウォリアー》目掛けて剣を振り下ろす。

 しかし、その剣は《スピード・ウォリアー》に届かず目の前に現れた何かに阻まれ、金属音を響かせる。

「断ち切らせはしない、《くず鉄のかかし》! 相手モンスターの攻撃を無効にする!」

《くず鉄のかかし》
通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。
相手モンスター1体の攻撃を無効にする。
発動後このカードは墓地へ送らず、そのままセットする。

「ほう、コイツの剣を防ごうってのか? だが、《ジェノサイドキングデーモン》の効果発動!」

「何、ここでモンスター効果だと!?」

 《ジェノサイドキングデーモン》は翼で上昇し《くず鉄のかかし》から距離を取る。

 そして、もう一度かかし目掛けて剣を振り下ろす。

「《ジェノサイドキングデーモン》が相手の効果対象になった時、ダイスロールによる成功判定を行う。 俺が2か5の目を出せば、コイツを対象とするカード――つまり、《くず鉄のかかし》は無効となり、破壊される!」

「このモンスターはサイコロの目によって相手の効果を無効にできるのか!」

《ジェノサイドキングデーモン》
効果モンスター
星4/闇属性/悪魔族/攻2000/守1500
自分フィールド上に「デーモン」という名のついた
モンスターカードが存在しなければこのカードは召喚・反転召喚できない。
このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に800ライフポイントを払う。
このカードが相手のコントロールするカードの効果の対象になり、
その処理を行う時にサイコロを1回振る。
2・5が出た場合、その効果を無効にし破壊する。
このカードが戦闘で破壊した効果モンスターの効果は無効化される。

「さあ、運命のダイスロールだ」

 D・ホイールのモニターにサイコロが映し出され、自動的にダイスロールが行われる。

「出た目は……6、か。 残念ながら《くず鉄のかかし》は無効にできず、攻撃は防がれちまったか」

 悪魔の剣による2撃目が振り下ろされたものの、かかしはそれも防ぎきる。

 役目を終えたかかしはカードに戻り、再びセットされる。

「《くず鉄のかかし》は発動後、再びセットされる」

《くず鉄のかかし》
通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。
相手モンスター1体の攻撃を無効にする。
発動後このカードは墓地へ送らず、そのままセットする。

「このターンの攻撃は失敗か……なぁんて甘いことをこの俺がするとでも?」

 ソーガはすぐさま2枚の伏せカードを発動する。

「罠カード《デーモンの宝札》! さらにチェーン発動、永続罠《万魔殿の瘴気》だ!」

「何!?」

 ソーガの周囲に薄く霧のようなものがかかる。

 その後、ソーガの場にいる《ジェノサイドキングデーモン》は苦しみだし、砕け散る。

「これは……」

「《デーモンの宝札》は2枚ドローできるが、その代償として自分のデーモン1体を破壊する」

《デーモンの宝札》
通常罠 (血の刻印オリジナル)
自分フィールド上に存在する「デーモン」と名のついたモンスター1体を選択して発動する。
デッキからカードを2枚ドローし、選択したモンスターを破壊する。

ソーガ 手札:3→5

「それだけじゃねえ、手札から《デスルークデーモン》の効果を発動だ。 コイツを手札から墓地に捨て、破壊された《ジェノサイドキングデーモン》を墓地から特殊召喚するぜ」

 再びフィールドに現れた《ジェノサイドキングデーモン》は、堂々と剣を振りかざす。

《デスルークデーモン》
効果モンスター
星3/光属性/悪魔族/攻1100/守1800
このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に500ライフポイントを払う。
このカードが相手のコントロールするカードの効果の対象になり、
その処理を行う時にサイコロを1回振る。
3が出た場合、その効果を無効にし破壊する。
自分フィールド上の「ジェノサイドキングデーモン」が破壊され墓地に送られた時、
このカードを手札から墓地に送る事で、その「ジェノサイドキングデーモン」1体を特殊召喚する。

「そして、《ジェノサイドキングデーモン》が破壊されたことでさっき発動した《万魔殿の瘴気》を使うぜ。 デッキから2枚目の《デスルークデーモン》を手札に加える」

《万魔殿の瘴気》
永続罠 (血の刻印オリジナル)
このカードがフィールド上に存在する限り、このカードのカード名を「万魔殿−悪魔の巣窟−」として扱う。
戦闘またはカードの効果によって「デーモン」と名のついたモンスターが破壊されて墓地へ送られた時、
以下の効果から一つを選択して発動することができる。
●そのカードのレベル未満の「デーモン」と名のついたモンスターをデッキから1枚選択して手札に加える。
●カードを1枚ドローする。

 遊星とソーガの後に続いてデュエルを観戦していたジャックが口を開く。

「なるほど、《デーモンの宝札》を使うことで手札を補充しつつ《ジェノサイドキングデーモン》を破壊し、一度墓地に送った後で《デスルークデーモン》で復活させることでもう一度攻撃の権利が得られるというわけか。 しかも《万魔殿の瘴気》を併用することで新たな《デスルークデーモン》をサーチをするとは、抜け目の無いやつだ」

「これがソーガさんのデーモンデッキの十八番、その名も犠牲戦術サクリファイス・タクティクスです」

 ジャックの少し後ろを走るセーナはそう語る。

「《くず鉄のかかし》はすでに使用済み、罠カードはセットしたターンに使えないからなぁ!」

 《ジェノサイドキングデーモン》は素早く間合いを詰め、《スピード・ウォリアー》に斬りかかる。

「《スピード・ウォリアー》を葬ってやれ! ジェノサイド・ブレイドォ!」

 鋭利な剣の一撃により《スピード・ウォリアー》はなすすべもなく両断され、その衝撃が遊星を襲う。

「ぐあああああっ!」

遊星 LP:4000→2900

 衝撃を受け揺れる遊星のD・ホイール。

「俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ。 さあ遊星、お前のターンだ」

 遊星の前を走り、ソーガはそう宣言する。

「流石はソーガさん、不動遊星が相手だろうと上手く流れを掴んでいますね」

「フン……遊星を侮るな。 この程度でアイツを追い込めるのなら苦労はせん。 遊星、見せてやるといい、お前の力を!」

 ジャックの言葉を受け、遊星はカードを引く。

「ああ! 俺のターン!」

遊星 LP:2900
手札:3→4枚
モンスター:無し
魔法&罠:セット2枚(1枚は《くず鉄のかかし》)
スピードカウンター:2→3
ソーガ LP:3800
手札:3枚(1枚は《デスルークデーモン》)
モンスター:《ジェノサイドキングデーモン》(攻2000)
魔法&罠:《万魔殿の瘴気》、セット2枚
スピードカウンター:2→3

「チューナーモンスター《ジャンク・シンクロン》を召喚!」

 オレンジ色の装甲の小柄なモンスターが現れる。

「チューナーか。 お得意のシンクロ召喚ということか」

「《ジャンク・シンクロン》の召喚に成功した時、自分の墓地に存在するレベル2以下のモンスター1体と特殊召喚できる。 蘇れ、《スピード・ウォリアー》!」

 《ジャンク・シンクロン》が手をかざすと、そこが光り《スピード・ウォリアー》が現れる。

《ジャンク・シンクロン》
チューナー(効果モンスター)
星3/闇属性/戦士族/攻1300/守 500
このカードが召喚に成功した時、自分の墓地の
レベル2以下のモンスター1体を選択して表側守備表示で特殊召喚できる。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

《スピード・ウォリアー》
効果モンスター
星2/風属性/戦士族/攻 900/守 400
このカードの召喚に成功したターンの
バトルフェイズ時にのみ発動する事ができる。
このカードの元々の攻撃力はバトルフェイズ終了時まで倍になる。

「素材を揃えたか。 だが、そう安々とシンクロさせてやるほど甘くはねえぜ! 罠発動、《激流葬》!」

 突如出現する巨大な津波。

 あらゆるモンスターを飲み込もうと、巨大な水が牙を剥く。

「ククク……フィールドのすべてのモンスターは破壊されるぜ!」

《激流葬》
通常罠
モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時に発動できる。
フィールド上のモンスターを全て破壊する。

「ですけど、ソーガさんの《ジェノサイドキングデーモン》は《デスルークデーモン》で蘇る。 不動遊星のシンクロを止めつつ自分への被害を抑える見事な戦術、流石です」

「そううまく行けばいいがな」

 ジャックの意味深な言葉を他所に迫り来る津波。

 強力な流水は全てを押し流そうと迫るが、その流れは光によって防がれる。

「何!? 《激流葬》をせき止めた?」

「自分フィールド上のカードが2枚以上破壊される効果が発動した場合、このカードは発動できる!」

 光と共に現れるのは、龍の影。

「《スターライト・ロード》! このカードの効果で《激流葬》の効果は無効となる!」

「チッ、そう簡単にシンクロ召喚を止めさせてくれねえか」

「《スターライト・ロード》の効果はそれだけではない。 相手の複数破壊効果を無効にした後、特定のモンスターをエクストラデッキから特殊召喚する!」

 水を弾いた光は消え、中から影を見せていた龍が姿を現す。

「飛翔せよ、《スターダスト・ドラゴン》!」

 翼を広げ、白銀の美しい姿を現す龍。

 煌めく光を従え、星屑の龍――《スターダスト・ドラゴン》が遊星に向かい飛翔する。

《スターライト・ロード》
通常罠
自分フィールド上のカードを
2枚以上破壊する効果が発動した時に発動できる。
その効果を無効にし破壊する。
その後、「スターダスト・ドラゴン」1体を
エクストラデッキから特殊召喚できる。

《スターダスト・ドラゴン》
シンクロ・効果モンスター
星8/風属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
「フィールド上のカードを破壊する効果」を持つ
魔法・罠・効果モンスターの効果が発動した時、
このカードをリリースして発動できる。
その発動を無効にし破壊する。
この効果を適用したターンのエンドフェイズ時、
この効果を発動するためにリリースした
このカードを墓地から特殊召喚できる。

 そして、飛翔する《スターダスト・ドラゴン》は遊星を通り越しソーガの元に留まる。

「ククク……いい子だ」

「何!? スターダストがなぜソーガのフィールドに!?」

「《激流葬》は成功すれば理想的だが、お前相手にうまくいくほうが珍しいだろう。 だからもう一枚シンクロ対策を用意していたのさ。 いきなり《スターダスト・ドラゴン》が現れたのには驚いたが、この《調律師の陰謀》で利用できることを考えればむしろ好都合だぜ」

《調律師の陰謀》
永続罠
相手フィールド上にシンクロモンスターが
特殊召喚された時に発動する事ができる。
そのシンクロモンスター1体のコントロールを得る。
この効果でコントロールを得たモンスターは破壊された場合ゲームから除外される。
そのモンスターがフィールド上に存在しなくなった時、このカードを破壊する。

 まさに陰謀。

 ソーガの巧みな計略によりスターダストは彼の手中に収まった。

「どうだ遊星、自分の切り札が奪われた気分はよぉ!」

「スターダスト!」

 遊星の様子を見て、ジャックが速度を上げ遊星の横に来る。

「遊星、この程度で怖気づいてはこの俺が許さんぞ! かつて俺が従えたレッド・デーモンズと共にスターダストを従えた時も、貴様は策を練りスターダストを取り戻したではないか!」

「ジャック……そうだな。 スターダスト、俺は必ずお前を取り戻して見せる!」

 遊星はフィールドを見つめ、今できる最善の手に繋ぐ。

 その様子を見たジャックは、速度を落としD・ホイールをセーナの位置まで戻す。

(スターダストは奪われてしまったが、《スターライト・ロード》で《激流葬》を防ぐことはできた。 ここは……)

「レベル2《スピード・ウォリアー》にレベル3《ジャンク・シンクロン》をチューニング!」

 《ジャンク・シンクロン》は自身についたリコイルスターターを引き、バックパックのエンジンを駆動させると光の環となって《スピード・ウォリアー》を包み込む。

「集いし星が新たな力を呼び起こす! 光指す道となれ!」

 シンクロした2体は一筋の光を生み、そこから青い装甲と白いマフラーの戦士が姿を現す。

「シンクロ召喚! 切り開け、《ジャンク・ウォリアー》!」

《ジャンク・ウォリアー》
シンクロ・効果モンスター
星5/闇属性/戦士族/攻2300/守1300
「ジャンク・シンクロン」+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードがシンクロ召喚に成功した時、
このカードの攻撃力は自分フィールド上に存在する
レベル2以下のモンスターの攻撃力を合計した数値分アップする。

「だがソイツの攻撃力じゃお前から頂いた《スターダスト・ドラゴン》には届かないぜ」

「《Spスピードスペル -ディメンション・シュート》を発動! このターン、《ジャンク・ウォリアー》が破壊したモンスターは墓地へは送られずゲームから除外される!」

「なるほど、まずは《ジェノサイドキングデーモン》を倒しに来たか」

S pスピードスペル−ディメンション・シュート》
通常魔法 (血の刻印オリジナル)
自分のスピードカウンターが2つ以上あるとき
自分フィールド上に表側表示で存在するシンクロモンスター1体を選択して発動する。
このターン選択したモンスターが戦闘によって破壊したモンスターは
墓地へ送られずゲームから除外される。
この効果でカードがゲームから除外されるたびに、自分はデッキからカードを1枚ドローする。

「行け、《ジャンク・ウォリアー》! 《ジェノサイドキングデーモン》に攻撃だ!」

 背中のブースターの噴出によって加速する《ジャンク・ウォリアー》。

 勢いを生かしつつ拳の一撃を放つが、《ジェノサイドキングデーモン》も負けじと剣で受け止める!

「ディメンション・フィスト!」

 《ジャンク・ウォリアー》は遊星の声と共にブースターの出力を上げ、剣を砕きつつ《ジェノサイドキングデーモン》を貫く。

ソーガ LP:3800→3500

「《Spスピードスペル-ディメンション・シュート》の効果により《ジェノサイドキングデーモン》はゲームから除外され、さらにカードを1枚ドロー!」

「《デスルークデーモン》の効果は破壊された《ジェノサイドキングデーモン》を墓地から復活させる。 除外されちまえば使えねえか」

《デスルークデーモン》
効果モンスター
星3/光属性/悪魔族/攻1100/守1800
このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に500ライフポイントを払う。
このカードが相手のコントロールするカードの効果の対象になり、
その処理を行う時にサイコロを1回振る。
3が出た場合、その効果を無効にし破壊する。
自分フィールド上の「ジェノサイドキングデーモン」が破壊され墓地に送られた時、
このカードを手札から墓地に送る事で、その「ジェノサイドキングデーモン」1体を特殊召喚する。

 遊星は引いたカードを確認すると、すでに手札にあったカードと合わせ伏せる。

「カードを2枚セットし、ターンエンドだ」

「だが遊星、俺の《ジェノサイドキングデーモン》を倒した程度じゃあお前の不利は変わらねえぜ。 俺の場には《スターダスト・ドラゴン》がいるんだからな」

 ソーガの言うとおり、彼の場には白銀に煌めく星屑の龍が堂々と佇む。

(スターダスト……待っていてくれ。 俺は必ずお前を取り戻す!)

「俺のターンだな。 ほう、いいドローだ」

遊星 LP:2900
手札:1枚
モンスター:《ジャンク・ウォリアー》(攻2300)
魔法&罠:セット3枚(1枚は《くず鉄のかかし》)
スピードカウンター:3→4
ソーガ LP:3500
手札:3→4枚(1枚は《デスルークデーモン》)
モンスター:《スターダスト・ドラゴン》(攻2500)
魔法&罠:《万魔殿の瘴気》、《調律師の陰謀》
スピードカウンター:3→4

「コイツはどうかな? 《Spスピードスペル-スピード・フュージョン》を発動!」

「スピード・フュージョン……融合召喚をするつもりか」

S pスピードスペル−スピード・フュージョン》
通常魔法 (アニメ5D'sオリジナル)
自分のスピードカウンターが4つ以上あるとき発動できる。
手札・自分フィールド上から、融合モンスターカードによって
決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、
その融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

「俺は手札の《迅雷の魔王-スカル・デーモン》と《暗黒魔族ギルファー・デーモン》を融合!」

 魔界の雷を操るデーモンと暗黒の炎を纏うデーモン、2体は1つに束ねられる。

《迅雷の魔王-スカル・デーモン》
効果モンスター
星6/闇属性/悪魔族/攻2500/守1200
このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に
500ライフポイントを払う。
このカードが相手のコントロールするカードの効果の対象になり、
その処理を行う時にサイコロを1回振る。
1・3・6が出た場合、その効果を無効にし破壊する

《暗黒魔族ギルファー・デーモン》
効果モンスター
星6/闇属性/悪魔族/攻2200/守2500
このカードが墓地へ送られた時、フィールド上に存在する
モンスター1体を選択して発動する事ができる。
このカードを攻撃力500ポイントダウンの装備カード扱いとして、
選択したモンスターに装備する。

「闇に統べられし雷と炎、冥府より湧き上がる怨念と共に交差せよ! 融合召喚、《雷炎のデーモンズ・リベンジャー》!」

 雷と炎、二つの力を纏う黒い影。

 漆黒の骨格のような肉体に、広げられた一対の翼。

 ソーガに従うように飛行するのは、復讐者の名を持つデーモン。

雷炎のデーモンズ・リベンジャー ATK:2500

「バトルフェイズだ、《雷炎のデーモンズ・リベンジャー》で《ジャンク・ウォリアー》に攻撃!」

 漆黒の悪魔は左手に雷、右手に炎を宿し、それらを束ねて生み出した槍を《ジャンク・ウォリアー》に投げつける。

「罠発動、《くず鉄のかかし》! デーモンズ・リベンジャーの攻撃は無効となる!」

《くず鉄のかかし》
通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。
相手モンスター1体の攻撃を無効にする。
発動後このカードは墓地へ送らず、そのままセットする。

「ククク……甘えよ。 《雷炎のデーモンズ・リベンジャー》の効果発動、魔降雷装!」

 デーモンズ・リベンジャーの体が急に放電し始め、その雷は周囲にも拡散する。

「《雷炎のデーモンズ・リベンジャー》を対象とする相手のカード効果は無効となる。 《ジェノサイドキングデーモン》とは違い成功判定のダイスロールいらず、確定クリティカルの無効化だ」

 雷は《くず鉄のかかし》を貫き、木っ端微塵に破壊する。

「これで邪魔は消えた。 《雷炎のデーモンズ・リベンジャー》の攻撃は続行だ!」

「ならば、罠発動! 《スキル・サクセサー》で《ジャンク・ウォリアー》の攻撃力をアップさせる!」

《スキル・サクセサー》
通常罠
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
このターンのエンドフェイズ時まで、
選択したモンスターの攻撃力は400ポイントアップする。
また、墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体の
攻撃力はこのターンのエンドフェイズ時まで800ポイントアップする。
この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動する事ができず、
自分のターンのみ発動する事ができる

「なるほど、遊星のヤツ考えたな。 《雷炎のデーモンズ・リベンジャー》は自身を対象とするカードの効果に耐性がある。 だが、自分以外のモンスターを対象とする効果なら話は別だ」

「これで《ジャンク・ウォリアー》の攻撃力は400ポイントアップし《雷炎のデーモンズ・リベンジャー》の攻撃力を上回った!」

ジャンク・ウォリアー ATK:2300→2700

「迎撃だ、《ジャンク・ウォリアー》! スクラップ・フィスト!」

 《ジャンク・ウォリアー》の拳は雷と炎の槍を砕き、《雷炎のデーモンズ・リベンジャー》の体を貫く。

「ククク……」

ソーガ LP:3500→3300

「デーモンの復讐者は終わらねえ……コイツは復讐の炎を滾らせる限り、何度でも蘇るんだからなあ!」

 《ジャンク・ウォリアー》の攻撃を受け力尽きたはずの《雷炎のデーモンズ・リベンジャー》の肉体から、炎が燃え上がる。

 その炎は近くにいた《ジャンク・ウォリアー》に襲いかかり、その身を包み込む。

ジャンク・ウォリアー ATK:2700→1700

 そしてその炎は纏まり漆黒の悪魔の姿を創りだす。

「《雷炎のデーモンズ・リベンジャー》のもう一つの効果、暗黒炎生ギルファー・リボーンだ。 墓地へ送られた時、フィールドのモンスターの攻撃力を1000下げることで復活する」

《雷炎のデーモンズ・リベンジャー》
融合・効果モンスター (血の刻印オリジナル)
星6/闇属性/悪魔族/攻2500/守2500
「デーモンの召喚」または「迅雷の魔王-スカル・デーモン」+「暗黒魔族ギルファー・デーモン」
このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に
1000ライフポイントを払う。
このカードを対象にする相手のカードの効果を
無効にし破壊する

このカードが墓地に送られた時、フィールドに表側表示で存在する
モンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターの攻撃力を1000ポイントダウンし、
このカードを墓地から特殊召喚する。

「対象にとる効果を受け付けず、倒してもこちらを弱体化させつつ復活する……なんてモンスターだ」

「ククク……デーモンが破壊されたことで《万魔殿の瘴気》の効果が発動し、1枚カードをドロー」

《万魔殿の瘴気》
永続罠 (血の刻印オリジナル)
このカードがフィールド上に存在する限り、このカードのカード名を「万魔殿−悪魔の巣窟−」として扱う。
戦闘またはカードの効果によって「デーモン」と名のついたモンスターが破壊されて墓地へ送られた時、
以下の効果から一つを選択して発動することができる。
●そのカードのレベル未満の「デーモン」と名のついたモンスターをデッキから1枚選択して手札に加える。
●カードを1枚ドローする。

「さらに《雷炎のデーモンズ・リベンジャー》は一度フィールドを離れてから特殊召喚されたため、再度攻撃ができる。 《ジャンク・ウォリアー》に攻撃だ、雷炎魔槍葬!」

 雷と炎を束ね、再び《ジャンク・ウォリアー》に槍を投げつける。

 《ジャンク・ウォリアー》は槍を避けきれず、その身を貫かれ消滅した。

「ぐああああっ!」

遊星 LP:2900→2100

 ダメージと衝撃を受け、D・ホイールの運転が乱れる遊星は自分が影に包まれていることに気がつく。

 空を見上げると頭上に《スターダスト・ドラゴン》が飛行している。

 スターダストの身体が太陽の光を遮っていたのである。

「スターダスト……!」

「まだコイツの攻撃が残っているぜ。 《スターダスト・ドラゴン》でダイレクトアタック、シューティング・ソニック!」

 《スターダスト・ドラゴン》の放つ音波のブレスは、本来の所持者である遊星を襲う。

 しかし、その攻撃は直前で阻まれる。

「罠発動、《ガード・ブロック》! この戦闘でのダメージを0にし、1枚ドローする」

《ガード・ブロック》
通常罠
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。

「防いだか。 ま、この程度防いでくれねえとつまらねえがな。 俺はこれでターンエンドだ」

 ターン終了を宣言するソーガ。

 そして彼を追従する白銀の龍――《スターダスト・ドラゴン》に、漆黒の悪魔――《雷炎のデーモンズ・リベンジャー》の2体。

 強力な効果を備えた2体を相手にして遊星の場にはモンスターも伏せカードも無し。

 圧倒的な不利にもかかわらず、彼はまだ諦めていない。

 そしてその様子を感じ取ったソーガもまた、遊星がこれで終わると思ってはいなかった。

(さあ、この状況をどうひっくり返すか見せてもらおうか、不動遊星!)

「行くぞ、俺のターン!」

遊星 LP:2100
手札:2→3枚
モンスター:無し
魔法&罠:無し
スピードカウンター:4→5
ソーガ LP:3300
手札:2枚(1枚は《デスルークデーモン》)
モンスター:《スターダスト・ドラゴン》(攻2500)、《雷炎のデーモンズ・リベンジャー》(攻2500)
魔法&罠:《万魔殿の瘴気》、《調律師の陰謀》
スピードカウンター:4→5

 引いたカードを見た遊星の脳裏に、浮かび上がるイメージ。

 繋がっていく数々のカード。

 そして導かれる、逆転への道筋。

「このモンスターは手札のモンスターを捨てることで、手札から特殊召喚できる。 手札の《ソニック・ウォリアー》を捨て、《クイック・シンクロン》を特殊召喚!」

 西部劇に出るようなガンマンをデフォルメしたモンスターが銃を片手に現れる。

《クイック・シンクロン》
チューナー(効果モンスター)
星5/風属性/機械族/攻 700/守1400
このカードは手札のモンスター1体を墓地へ送り、手札から特殊召喚できる。
このカードは「シンクロン」と名のついたチューナーの代わりにシンクロ素材とする事ができる。
このカードをシンクロ素材とする場合、
「シンクロン」と名のついたチューナーをシンクロ素材とする
モンスターのシンクロ召喚にしか使用できない。

「さらに、《チューニング・サポーター》を召喚! このモンスターはレベル1だが、シンクロ素材にする場合レベル2として扱うことができる」

 次に呼んだのはマフラーを巻き鍋を被ったような小さなモンスター。
 
《チューニング・サポーター》
効果モンスター
星1/光属性/機械族/攻 100/守 300
このカードをシンクロ召喚に使用する場合、
このカードはレベル2モンスターとして扱う事ができる。
このカードがシンクロモンスターの
シンクロ召喚に使用され墓地へ送られた場合、
自分はデッキからカードを1枚ドローする

 二体とも外見通り戦闘では役に立たないが、遊星の得意とするシンクロ召喚では話は別。

 小さな力を束ね大きな力へと繋ぐ、シンクロの基本にして遊星の得意戦術である。

「《クイック・シンクロン》はシンクロ素材とする場合、あらゆるシンクロンと名のつくチューナーの代わりとすることができる」

 《クイック・シンクロン》の前に様々なシンクロンのカードが現れ、ルーレットのように回転する。

 そしてその中の1枚――《ジャンク・シンクロン》を銃で撃ち抜いた。

「レベル2として扱う《チューニング・サポーター》にレベル5の《クイック・シンクロン》をチューニング!」

「合計のレベルは7か……」

「集いし叫びが木霊の矢となり空を裂く! 光さす道となれ、シンクロ召喚! いでよ、《ジャンク・アーチャー》!」

 光より現れたのはオレンジ色の装甲の弓兵。

「《チューニング・サポーター》をシンクロ素材にしたことによりカードを1枚ドロー!」

 引いたカードを確認した遊星の口元に小さな笑みが溢れる。

「《ジャンク・アーチャー》の効果発動! 相手モンスター1体をこのターンのエンドフェイズまでゲームから除外する!」 

《ジャンク・アーチャー》
シンクロ・効果モンスター
星7/地属性/戦士族/攻2300/守2000
「ジャンク・シンクロン」+チューナー以外のモンスター1体以上
1ターンに1度、相手フィールド上に存在する
モンスター1体を選択して発動する事ができる。
選択したモンスターをゲームから除外する。
この効果で除外したモンスターは、
このターンのエンドフェイズ時に同じ表示形式で相手フィールド上に戻る。

「俺が選択するのは《スターダスト・ドラゴン》だ!」

「チッ、そう来たか……!」

 弓を引き、《スターダスト・ドラゴン》に狙いを定める《ジャンク・アーチャー》。

「なるほど、ソーガさんの使った《調律師の陰謀》は奪ったシンクロモンスターを対象に取り続けていますが、《ジャンク・アーチャー》で一時的に除外してしまえばその関係は途切れてしまう」

「そうすれば、除外からフィールドに戻ったタイミングでスターダストを取り戻すことができる。 考えたな、遊星」

《調律師の陰謀》
永続罠
相手フィールド上にシンクロモンスターが
特殊召喚された時に発動する事ができる。
そのシンクロモンスター1体のコントロールを得る。
この効果でコントロールを得たモンスターは破壊された場合ゲームから除外される。
そのモンスターがフィールド上に存在しなくなった時、このカードを破壊する。

 《ジャンク・アーチャー》は矢を放つと、直線を描き《スターダスト・ドラゴン》に向かう。

「ディメンジョン・シュート!」

 命中した矢は次元の裂け目を開き、《スターダスト・ドラゴン》を除外する。

「ククク……だが、スターダストを取り戻したところで《雷炎のデーモンズ・リベンジャー》には叶わねえ! 《ジャンク・アーチャー》の攻撃力では《雷炎のデーモンズ・リベンジャー》を倒せねえし、《スキル・サクセサー》を使おうとコイツは不死身なんだからなあ」

「そのモンスターを倒す布石はすでに用意してある。 《Spスピードスペル -シンクロキャンセル》を発動!」

S pスピードスペル−シンクロキャンセル》
通常魔法 (血の刻印オリジナル)
自分のスピードカウンターが2つ以上あるとき発動できる。
フィールド上に表側表示で存在するシンクロモンスター1体を選択してエクストラデッキに戻す。
さらに、エクストラデッキに戻したそのモンスターのシンクロ召喚に使用した
シンクロ素材モンスター一組が自分の墓地に揃っていれば、
その一組を自分フィールド上に特殊召喚できる。

「このカードの効果により俺は《ジャンク・アーチャー》のシンクロを解除し、シンクロ素材とした《クイック・シンクロン》と《チューニング・サポーター》を特殊召喚する!」

 《ジャンク・アーチャー》光となり、そこから素材となった二体が現れる。

「《クイック・シンクロン》はシンクロンと名のつくチューナーの代わりとして扱うことができる」

 今回《クイック・シンクロン》がルーレットで撃ちぬいたのは、《ターボ・シンクロン》。

「そして、レベル1《チューニング・サポーター》にレベル5《クイック・シンクロン》をチューニング!」

「《クイック・シンクロン》の代用効果と《チューニング・サポーター》のレベル変動、さらにドロー効果を生かしたシンクロを使い分ける高等戦術……俺の戦ったデュエリストの中でもこれほどのシンクロ使いは初めてだぜ」

「集いし絆が更なる力を紡ぎだす! 光さす道となれ、シンクロ召喚! 轟け、《ターボ・ウォリアー》!」

 新たにシンクロされたのは、赤のボディが目立つ機械のような姿の戦士。

《ターボ・ウォリアー》
シンクロ・効果モンスター
星6/風属性/戦士族/攻2500/守1500
「ターボ・シンクロン」+チューナー以外のモンスター1体以上
レベル6以上のシンクロモンスターを攻撃対象としたこのカードの攻撃宣言時、
攻撃対象モンスターの攻撃力をダメージステップ終了時まで半分にする。
フィールド上のこのカードはレベル6以下の効果モンスターの効果の対象にならない。

「《ターボ・ウォリアー》で《雷炎のデーモンズ・リベンジャー》に攻撃! アクセル・スラッシュ!」

 《ターボ・ウォリアー》は飛翔し、ブレードを構え漆黒の悪魔へと向かう。

(相打ち狙いか……《雷炎のデーモンズ・リベンジャー》が復活するにはモンスターの攻撃力を下げる必要があるが、場にモンスターがいなければその効果は使えず復活もしない。 遊星のやつ、コイツの弱点を上手く突いてきやがる)

「さらに、墓地の《スキル・サクセサー》の効果発動! このカードをゲームから除外し、《ターボ・ウォリアー》の攻撃力を800ポイントアップする!」

「何!? 《スキル・サクセサー》を発動だと!?」

ターボ・ウォリアー LP:2500→3300
 
《スキル・サクセサー》
通常罠
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
このターンのエンドフェイズ時まで、
選択したモンスターの攻撃力は400ポイントアップする。
また、墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体の
攻撃力はこのターンのエンドフェイズ時まで800ポイントアップする。
この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動する事ができず、
自分のターンのみ発動する事ができる

 ソーガが驚いたのは、《スキル・サクセサー》の墓地から発動する罠カードとしては珍しい効果についてではない。

 そもそも彼は《スキル・サクセサー》のカードを使用しているため、遊星が墓地発動を狙っていることはすでに分かっているのである。

 彼の驚き、それはこのタイミングでの《スキル・サクセサー》の発動が遊星にとって無意味であるどころか自らの首を締めているためだ。

「《雷炎のデーモンズ・リベンジャー》の効果を封じるための相打ち狙いとおもいきや、何を考えてやがる……? 」

 《ターボ・ウォリアー》の一撃が《雷炎のデーモンズ・リベンジャー》の喉を貫き、撃破する。

「ぐあぁぁっ!」

 《雷炎のデーモンズ・リベンジャー》は爆散し、衝撃がソーガを襲った。

ソーガ LP:3300→2500

 衝撃を受けたソーガのD・ホイールは速度が落ち、後を追う遊星のD・ホイールと互角に並んだ。

「ククク……やってくれたなあ、だが! 《雷炎のデーモンズ・リベンジャー》の効果発動! 《ターボ・ウォリアー》の攻撃力を下げ、墓地より蘇れ!」

《雷炎のデーモンズ・リベンジャー》
融合・効果モンスター (血の刻印オリジナル)
星6/闇属性/悪魔族/攻2500/守2500
「デーモンの召喚」または「迅雷の魔王-スカル・デーモン」+「暗黒魔族ギルファー・デーモン」
このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に
1000ライフポイントを払う。
このカードを対象にする相手のカードの効果を
無効にし破壊する

このカードが墓地に送られた時、フィールドに表側表示で存在する
モンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターの攻撃力を1000ポイントダウンし、
このカードを墓地から特殊召喚する。

 しかし先ほどとは違い、フィールドに炎は現れない。

「何……これは……!?」

「《ターボ・ウォリアー》はレベル6以下のモンスターの効果対象にはならない。 弱体化効果を発動させるための対象がいなければ無意味なのはフィールドにモンスターがいない場合と同様だ」

《ターボ・ウォリアー》
シンクロ・効果モンスター
星6/風属性/戦士族/攻2500/守1500
「ターボ・シンクロン」+チューナー以外のモンスター1体以上
レベル6以上のシンクロモンスターを攻撃対象としたこのカードの攻撃宣言時、
攻撃対象モンスターの攻撃力をダメージステップ終了時まで半分にする。
フィールド上のこのカードはレベル6以下の効果モンスターの効果の対象にならない。

「それが狙いだったか。 俺は《万魔殿の瘴気》の効果発動、《雷炎のデーモンズ・リベンジャー》が破壊されたことでカードを1枚ドローだ」

《万魔殿の瘴気》
永続罠 (血の刻印オリジナル)
このカードがフィールド上に存在する限り、このカードのカード名を「万魔殿−悪魔の巣窟−」として扱う。
戦闘またはカードの効果によって「デーモン」と名のついたモンスターが破壊されて墓地へ送られた時、
以下の効果から一つを選択して発動することができる。
●そのカードのレベル未満の「デーモン」と名のついたモンスターをデッキから1枚選択して手札に加える。
●カードを1枚ドローする。

「まだだ、《Spスピードスペル -ソニック・バスター》を発動、俺のモンスターの攻撃力の半分のダメージを与える!」

S pスピードスペル−ソニック・バスター》
通常魔法 (アニメ5D'sオリジナル)
自分のスピードカウンターが4つ以上あるとき発動できる。
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択する。
選択したモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手プレイヤーに与える。

 《ターボ・ウォリアー》はブレードを構え、斬撃を放つ。

「《ターボ・ウォリアー》の攻撃力は3300! よって1650ポイントのダメージだ!」

「チィッ……ぐぉぉぉぉぉ!」

ソーガ LP:2500→850

 斬撃はソーガに命中し、そのライフを大きく削り取る。

「そしてこのエンドフェイズ時、《ジャンク・アーチャー》の効果で除外された《スターダスト・ドラゴン》がフィールドに帰還する」

 ソーガの元に現れるスターダストだが、《調律師の陰謀》の効果から解放されたことで本来の主を思い出し、遊星の元に舞い戻る。

 その咆哮は、どこか嬉しそうだ。

「俺はこれでターンエンドだ!」

 《スターダスト・ドラゴン》と、《ターボ・ウォリアー》――2体の大型モンスターが並び立ち、対するソーガの場にモンスターはいない。

 1ターン前は遊星が同様の状況に追い込まれていたにもかかわらず、1ターンで真逆の状況へと逆転を果たしたのだ

 その不動遊星の逆転劇を体験したソーガは――

「ククク…………、ハハハハハハ!」

 ――笑った。

「面白えじゃねえか! 緻密な戦略を組み上げ、その手で流れを引き寄せ、狡猾に相手の裏をかく! この駆け引きこそがデュエルだ、そしてこんな極上のデュエルを提供してくれたことに礼を言うぜ、不動遊星!」

「ああ、確かに面白いデュエルだ」

 遊星もまた、楽しそうな表情だ。

「さあて、ここからが本番だぜ! 見せてやるよ、この俺の神器龍を……!」

遊星 LP:2100
手札:無し
モンスター:《スターダスト・ドラゴン》(攻2500)、《ターボ・ウォリアー》(攻2500)
魔法&罠:無し
スピードカウンター:5
ソーガ LP:850
手札:3枚(1枚は《デスルークデーモン》)
モンスター:無し
魔法&罠:《万魔殿の瘴気》、《調律師の陰謀》
スピードカウンター:5








第十話「スターダストVSダークネブラ」






 ――ネオドミノシティ郊外付近

 ――13:30

「いやー、この辺りは人も居ないっすね」

 整備こそされてはいるものの、都心ほど人がいない郊外付近。

 ラーメン屋は辺りを眺めながら、紫髪の少女の後を歩く。

「マリスさんの話だとこの辺りっすよね、夜条さん」

「うるさい、黙ってて」

 話しかけるラーメン屋に対しそう冷たく返すのは、夜条。

「あ、すいませんっす」

 夜条は謝るラーメン屋を無視し、建物の影となる裏通りに向かう。

 元から人が少ない地区ではあるが、裏通りとなるとほとんど人がいない。

 昼間にもかかわらず薄暗い道を、二人は進んでいく。

「着いた」

 光が差す開けた場所に出ると、夜条がそう言う。

「おおー、ここが例の工場っすね!」

 ラーメン屋は目の前に立つ建物を観察する。

 やや近代的な白い外壁で、中央部はドーム状になっている。

 周囲を四角い柵で囲っており、前方に入口がある。

「中々でかいっすね、ここがゴドール様の拠点になるんすね……って夜条さん、置いてかないで下さいっす」

 ラーメン屋を放置し、夜条は電子制御盤の設置された入口へ向かう。

 彼女はスカートのポケットからカードのような物を取り出し、制御盤にタッチする。

「待って下さいっす夜条さん、オイラの分のパスは無いんですから一緒に入れて下さいっす」

 ラーメン屋は遅れないように走り、夜条と中に入る。






「良い感じっすね、廃工場なんて言ってもまだ新しいじゃないっすか」

 この工場はこの街でのゴドールの拠点であり、そのために二人が確認に来たのだ。

 ここはかつては治安維持局の管理下にあったのだが最近になって売りに出され、それもバハム率いるゴールデン・ファミリーが購入したものだ。

 ――ちなみにこの工場はイリアステルがライディングロイドの量産に用いた物の一つであり、不動遊星らにその存在の一部が露呈してしまったため残った工場が処分されたのだが、それは彼らの知らないことである。

「ん、あれって何すかね……?」

 工場の内部を確認している二人は、かつて大型の製造機材が置かれていたと思われる広間の二階に出た。

 二階は吹き抜けになっており、一階を見渡せるようになっている。

 そして一階の広間の中央にあった奇妙な物体を見て、ラーメン屋はそう発言した。

「これって……」

 そこにあったのは黄色いボディが目立つ、ロボットのような機械。

「侵入者発見、排除シマス」

 というかロボだ。

「な、何すか、アレ!?」

 目を発光させ、起動するロボット。

「デュエルシステム起動、侵入者ヲ確保シマス」

 二階に立つ夜条は一階にあるロボットを上から観察する。

「多分、この工場で昔使われていた警備用のロボ」

「なるほど、何故かここに置きっぱなしになっていたってことっすか?」

「もしかしたら……バハムかレヴィが工場と一緒に買ったのかも」

「なるほど、あのお二方ならやりそうっすね。 で、夜条さんどうしますっすか?」

 夜条は階段を降り、ロボットのいる一階に出る。

「邪魔、だから消す」







 ――ネオドミノシティ、第二ハイウェイ

 ――13:45


「ククク……俺のターン、ドロー!」

遊星 LP:2100
手札:無し
モンスター:《スターダスト・ドラゴン》(攻2500)、《ターボ・ウォリアー》(攻2500)
魔法&罠:無し
スピードカウンター:5→6
ソーガ LP:850
手札:3→4枚(1枚は《デスルークデーモン》)
モンスター:無し
魔法&罠:《万魔殿の瘴気》、《調律師の陰謀》
スピードカウンター:5→6

「スターダストを取り戻された以上、このカードは不要だな。 《調律師の陰謀》を墓地に送り、《Spスピードスペル -マジック・プランター》を発動、カードを2枚ドローするぜ」

Spスピードスペル−マジック・プランター》
通常魔法 (血の刻印オリジナル)
自分のスピードカウンターが2つ以上存在する場合、
自分フィールド上に表側表示で存在する
永続罠カード1枚を墓地へ送って発動する。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。

「《デスルークデーモン》を攻撃表示で召喚」

 チェスのルークの駒を象った悪魔が現れる。

「《デスルークデーモン》を召喚だと? あの男、どういうつもりだ……?」

 ジャックの疑問はもっともだ。

 《デスルークデーモン》は手札から捨てて《ジェノサイドキングデーモン》を復活させる効果を持つが、フィールドでは少し守備力が高いだけでライフコストを要求される使い勝手の悪いモンスターだ。

 それゆえフィールドに召喚されることはほとんど無い。

《デスルークデーモン》
効果モンスター
星3/光属性/悪魔族/攻1100/守1800
このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に500ライフポイントを払う。
このカードが相手のコントロールするカードの効果の対象になり、
その処理を行う時にサイコロを1回振る。
3が出た場合、その効果を無効にし破壊する。
自分フィールド上の「ジェノサイドキングデーモン」が破壊され墓地に送られた時、
このカードを手札から墓地に送る事で、その「ジェノサイドキングデーモン」1体を特殊召喚する。

「簡単な話だ、コイツは俺の最強カードを呼ぶための素材なんだよ」

「なるほど……シンクロ素材か」

「当たらずしも遠からずってとこか。 俺は墓地の《暗黒魔族ギルファー・デーモン》と《デスルークデーモン》を除外することで、コイツを特殊召喚する!」

 亡霊のような黒い影が現れ、悪魔の姿を作り出す。

「特殊召喚、《D  Tダークチューナー デーモン・ファントム》!」

「何!? ダークチューナーだと!?」

「馬鹿な!? ダークシグナーとの戦いは終わったはず!」

 遊星とジャックの異様な驚き様を見たソーガは――

 なるほど、自分以外にもダークシンクロの使い手がいたのか。

 そのダークシグナーというのはもう居ないらしいから、今ダークシンクロの使い手がいるのは不可解なのだろう。

 ――などと状況を把握した。

「ソーガ、どういうことだ!? なぜお前がダークチューナーを!?」

「落ち着けよ遊星、ジャック。 どうやらお前たちは俺とは違う形でダークチューナーやダークシンクロに触れているらしいが、俺はダークシグナーとかいうヤツじゃねえ」

「ダークシグナーじゃない……! ならそのダークチューナーは一体?」

「俺のルーツ、大門家に伝わる秘宝――大門七神器。 今は多くが行方知らずだが、俺の手元にも残っている奴があってな。 俺の胸につけてある、魔の宝玉から作られたブローチ……これこそが大門七神器の一つ、魔石のブローチだ」

 ソーガは右胸のブローチを指して説明を続ける。

「大門七神器は強力な闇の力を秘めている。 その闇の力の根源は、それぞれの神器に封じられた龍――神器龍の力だ!」

「大門七神器に、神器龍……!」

「見せてやるぜ、遊星! 《DT デーモン・ファントム》の効果発動! 《デスルークデーモン》のレベルを1に変更する!」

D  Tダークチューナー デーモン・ファントム》
ダークチューナー(効果モンスター) (血の刻印オリジナル)
星8/闇属性/悪魔族/攻 0/守 0
このカードは自分の墓地に存在する「デーモン」と名の付いた
カード2枚をゲームから除外し、手札から特殊召喚する事ができる。
1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する
このカード以外の悪魔族モンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターのレベルは1になる。
このカードをシンクロ素材とする場合、
ダークシンクロモンスターのシンクロ召喚にしか使用できない。

デスルークデーモン レベル:3→1

「レベル1となった《デスルークデーモン》にレベル8の《DT デーモン・ファントム》をダークチューニング!」

 デーモン・ファントムの広げる闇に、《デスルークデーモン》は飲まれていく。

「煌めく星の影たる闇夜、今こそ深淵より這い出て光を喰らえ!」

 闇の中、負の世界で悪魔と悪魔は混ざり合い、黒い光を創りだす。

「くっ……これは!」

 突然、遊星の腕が赤く光し出す。

「痣があのモンスターに反応しているのか!?」

 遊星の目の前には、得体のしれない存在が潜む黒い光。

「光なき世界へ! ダークシンクロ!」

 星屑を纏う白銀の龍に対峙して現れたのは、黒に包まれた暗黒星雲の龍。

 頭部に見開かれた一つの目に、背中で蠢く人のものと類似した六本の腕。

 腹部からは鋭利な鉤爪が生え、その奥には口のような捕食器官が見られる。

 まさに、異形――禍々しく醜悪な、黒き龍。

「舞い降りろ、《ダークネブラ・ドラゴン》!」

《ダークネブラ・ドラゴン》
ダークシンクロ・効果モンスター  (血の刻印オリジナル)
星7/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
チューナー以外のモンスター1体−ダークチューナー
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り1度だけ、相手の墓地に存在するモンスターを3体まで選択して発動する。
選択したモンスターを装備カード扱いでこのカードに装備し、そのモンスターの効果を得る。
このカードが破壊される場合、代わりにこのカードの装備カード1枚を破壊することができる。

「これが……神器龍か……! なんて禍々しいモンスターなんだ」

「さあて、ダークネブラの効果発動だ。 お前の墓地のモンスターを3体まで装備し、その効果を得る」

 地上に降りたダークネブラは、背中の腕で地中からモンスターを引きずり出す。

「あれは! 《クイック・シンクロン》に《スピード・ウォリアー》、それに《ジャンク・ウォリアー》!」

 引きずり出された三体は腹部の鉤爪で捕まれ、捕食されていく。

「ま、装備したところで効果が有効に働く奴がいねえのが残念だがな」

 獲物を取り込み、不気味な雄叫びを上げる龍。

「さあて、バトルだ。 《ダークネブラ・ドラゴン》で《ターボ・ウォリアー》に攻撃だ! 轟け、コラプサー・ブラスト!」

(本当ならスターダストを破壊したいところだが、厄介なシンクロ対策効果を持った《ターボ・ウォリアー》を残すわけにはいかねえからなあ。 前のターン、《スキル・サクセサー》を使い相打ちを回避したのは流石だと言うべきだな)

 漆黒の龍は青紫のブレスを放ち、《ターボ・ウォリアー》を飲み込む。

「クッ、迎え撃て! アクセル・スラッシュ!」

 《ターボ・ウォリアー》はその身をブレスに蝕まれながら腕のブレードの一撃を《ダークネブラ・ドラゴン》に命中させる。

「攻撃力は互角、これで相打ちだ!」

「ククク……それはどうかな?」

 残された力を振り絞って一撃を放った《ターボ・ウォリアー》は力尽きたが、対する《ダークネブラ・ドラゴン》は無傷。

 先ほどの《ターボ・ウォリアー》の反撃は、胸元に露出した《ジャンク・ウォリアー》を盾に使い身を守ったのだ。

「《ダークネブラ・ドラゴン》は装備したモンスターを身代わりにし破壊を免れる。 《ジャンク・ウォリアー》を盾にさせてもらったぜ」

《ダークネブラ・ドラゴン》
ダークシンクロ・効果モンスター  (血の刻印オリジナル)
星7/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
チューナー以外のモンスター1体−ダークチューナー
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り1度だけ、相手の墓地に存在するモンスターを3体まで選択して発動する。
選択したモンスターを装備カード扱いでこのカードに装備し、そのモンスターの効果を得る。
このカードが破壊される場合、代わりにこのカードの装備カード1枚を破壊することができる。

「ダークネブラの装備カードは後2枚、つまりコイツを倒すのには後3回の破壊が必要ってわけだ。 俺はカードを1枚セットし、ターン終了だ」

「これが神器龍……! ダークシグナーの使うダークシンクロと互角、もしかしたらそれ以上の力を持っているかもしれん。 どうする、遊星……?」

(神器龍……なんてモンスターだ! だが何だ、この感覚……あのモンスターはシグナーの龍と何か関係があるのか?)

「どうした遊星、お前のターンだぜ?」

 目の前のモンスターについて考える遊星に、ソーガはそう急かす。

(いや、今はこのデュエルに集中するべきだ)

「ああ、分かっている。 俺のターン!」

遊星 LP:2100
手札:0→1枚
モンスター:《スターダスト・ドラゴン》(攻2500)
魔法&罠:無し
スピードカウンター:6→7
ソーガ LP:850
手札:2枚
モンスター:《ダークネブラ・ドラゴン》(攻2500)
魔法&罠:《万魔殿の瘴気》、《スピード・ウォリアー》、《クイック・シンクロン》、セット1枚
スピードカウンター:6→7

「《Spスピードスペル -エンジェル・バトン》を発動! デッキからカードを2枚ドローし、1枚捨てる!」

S pスピードスペル−エンジェル・バトン》
通常魔法 (アニメ5D'sオリジナル)
自分のスピードカウンターが2つ以上あるとき発動できる。
自分のデッキからカードを2枚ドローし、その後手札を1枚墓地へ送る。

「続いて《Spスピードスペル -シンクロ・トレジャー》を発動! フィールドのシンクロモンスター1体につき、1枚ドローする。 フィールドのシンクロモンスターはダークシンクロを含め2体、よって2枚のカードをドロー!」

S pスピードスペル−シンクロ・トレジャー》
通常魔法 (血の刻印オリジナル)
自分のスピードカウンターが4つ以上あるとき発動できる。
フィールド上に表側表示で存在するシンクロモンスター1体につき1枚ドローする。

「ドローカードを連続で使ってきたか、お望みのカードは来たか?」

(よし!)

 遊星はカードを1枚選んで墓地に送ると、次なるカードを発動する。

「《Spスピードスペル -スピード・エナジー》を発動! 《スターダスト・ドラゴン》の攻撃力は、俺のスピードカウンターの数×200ポイントアップする!」

Spスピードスペル−スピード・エナジー》
通常魔法 (アニメ5D'sオリジナル)
自分のスピードカウンターが2つ以上あるとき
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターの攻撃力はエンドフェイズ時まで
自分のスピードカウンターの数×200ポイントアップする。

「俺のスピードカウンターは7個、よってスターダスト攻撃力は1400ポイントアップする!」

スターダスト・ドラゴン ATK:2500→3900

「良いカードを引けたようだな。 ククク……来いよ遊星」

(この攻撃が通ればソーガのライフが0になる。 だが、ヤツの余裕の態度……あの伏せカードに何かある。 だが……)

「行け、《スターダスト・ドラゴン》! 《ダークネブラ・ドラゴン》に攻撃だ! 響け、シューティング・ソニック!」

 スターダストは音波のブレスをダークネブラに向けて放つ。

 しかし、そのブレスを黒い影が遮る。

「そう上手くは行かねえぜ、《敵襲警報-イエローアラート-》を発動だ!」

「何!? イエローアラートだと!?」

「俺の手札のモンスターを特殊召喚し、攻撃はソイツで受けるぜ。 盾としてその身を散らせな、《トランス・デーモン》!」

 黒い影――《トランス・デーモン》はスターダストのブレスをその身で受け、消滅する。

《敵襲警報-イエローアラート-》
通常罠 (遊戯王Rオリジナル)
相手の攻撃宣言時に発動できる。
手札からモンスター1体を特殊召喚する。
その後、相手はこの効果で特殊召喚したモンスターに攻撃しなければならない。
この効果で特殊召喚したモンスターは、バトルフェイズ終了時に手札に戻る。

「これで俺の《ダークネブラ。ドラゴン》は無傷。 さらに、《トランス・デーモン》と《万魔殿の瘴気》の効果が発動するぜ」

《トランス・デーモン》
効果モンスター
星4/闇属性/悪魔族/攻1500/守 500
1ターンに1度、手札から悪魔族モンスター1体を捨て、
このカードの攻撃力をエンドフェイズ時まで500ポイントアップする事ができる。
自分フィールド上のこのカードが破壊され墓地へ送られた時、
ゲームから除外されている自分の闇属性モンスター1体を選択して手札に加える事ができる。

《万魔殿の瘴気》
永続罠 (血の刻印オリジナル)
このカードがフィールド上に存在する限り、このカードのカード名を「万魔殿−悪魔の巣窟−」として扱う。
戦闘またはカードの効果によって「デーモン」と名のついたモンスターが破壊されて墓地へ送られた時、
以下の効果から一つを選択して発動することができる。
●そのカードのレベル未満の「デーモン」と名のついたモンスターをデッキから1枚選択して手札に加える。
●カードを1枚ドローする。

「《トランス・デーモン》の効果で除外された《暗黒魔族ギルファー・デーモン》を手札に。 《万魔殿の瘴気》でカードをドローだ」

「くっ……」

「遊星の攻撃を防ぐどころか、それを起点に手札を補充してくるとは」

「流石はソーガさん、見事なプレイングですね!」

 遊星は残った手札を見ながら数秒考えると、次の行動に移った。

「《スピード・ワールド2》の効果発動、自分のスピードカウンターを7個取り除き、カードを1枚ドロー!」

《スピード・ワールド2》
フィールド魔法 (アニメ5D’sオリジナル)
Sp」スピードスペルと名のついた魔法カード以外の魔法カードをプレイした時、自分は2000ポイントダメージを受ける。
お互いのプレイヤーはお互いのスタンバイフェイズ時に1度、自分用スピードカウンターをこのカードの上に1つ置く。
(お互い各12個まで、1ターン目を除く)
自分用スピードカウンターを取り除く事で、以下の効果を発動する。
●4個:自分の手札の「Sp」と名のついたカードを任意の枚数公開することで、その枚数× 800ポイントダメージを相手ライフに与える。
●7個:自分のデッキからカードを1枚ドローする。
●10個:フィールド上に存在するカードを1枚破壊する。

遊星 スピードカウンター:7→0

(スピードカウンターを全て使ってドローしてきたか……)

「俺は《ミスティック・パイパー》を召喚!」

 横笛を演奏する男が遊星の場に現れる。

「《ミスティック・パイパー》の効果発動! このカードをリリースし、ドロー! そのカードがレベル1のモンスターなら、さらにもう1枚ドローできる!」

《ミスティック・パイパー》
効果モンスター
星1/光属性/魔法使い族/攻   0/守   0
このカードをリリースして発動する。
自分のデッキからカードを1枚ドローする。
この効果でドローしたカードをお互いに確認し、
レベル1モンスターだった場合、自分はカードをもう1枚ドローする。
「ミスティック・パイパー」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

「俺が引いたのはレベル1《エフェクト・ヴェーラー》! よってもう1枚カードをドローする!」

(ほう、《エフェクト・ヴェーラー》か……アイツは厄介だな)

《エフェクト・ヴェーラー》
チューナー(効果モンスター)
星1/光属性/魔法使い族/攻 0/守 0
このカードを手札から墓地へ送り、
相手フィールド上の効果モンスター1体を選択して発動できる。
選択した相手モンスターの効果をエンドフェイズ時まで無効にする。
この効果は相手のメインフェイズ時にのみ発動できる。

「俺はカードを2枚セットし、ターンエンドだ」

スターダスト・ドラゴン ATK:3900→2500

「……ククク、このデュエルも終幕が見えてきたじゃねえか、俺のターン!」

 邪悪な表情と笑い声と共に、ソーガはカードをドローする。

遊星 LP:2100
手札:1枚
モンスター:《スターダスト・ドラゴン》(攻1700)
魔法&罠:セット2枚
スピードカウンター:0→1
ソーガ LP:850
手札:3→4枚(1枚は《暗黒魔族ギルファー・デーモン》)
モンスター:《ダークネブラ・ドラゴン》(攻2500)
魔法&罠:《万魔殿の瘴気》、《スピード・ウォリアー》、《クイック・シンクロン》
スピードカウンター:7→8

「あの男の言うとおり、このデュエルも決着が近いようだな」

「ふふ、このまま畳み掛けてください、ソーガさん!」

「お前と同じカードだな、《Spスピードスペル -エンジェル・バトン》を発動! デッキからカードを2枚ドローし、1枚捨てる!」

S pスピードスペル−エンジェル・バトン》
通常魔法 (アニメ5D'sオリジナル)
自分のスピードカウンターが2つ以上あるとき発動できる。
自分のデッキからカードを2枚ドローし、その後手札を1枚墓地へ送る。

 引いたカードを確認したソーガに、邪悪な笑みが浮かぶ。

「今、手札から捨てた《暗黒魔族ギルファー・デーモン》の効果発動! さあ、スターダストに取り憑くがいい!」

「これは……!」

 《スターダスト・ドラゴン》の背後から悪魔が現れ、掴みかかって羽交い締めにする。

スターダスト・ドラゴン ATK:2500→2000
 
《暗黒魔族ギルファー・デーモン》
効果モンスター
星6/闇属性/悪魔族/攻2200/守2500
このカードが墓地へ送られた時、フィールド上に存在する
モンスター1体を選択して発動する事ができる。
このカードを攻撃力500ポイントダウンの装備カード扱いとして、
選択したモンスターに装備する。

「これでスターダストはパワーダウンだ。 まだまだ行くぜ!」

 ソーガは手札から1枚のカードを選びフィールドに呼び出す。

「ハハハハ、これが闇魔界に君臨せし新たなる高等魔族! 《戦慄の凶皇-ジェネシス・デーモン》をリリース無しで召喚!」

 ソーガの場に現れるは、その名の通り戦慄を醸し出す悪魔。

 黒と紫の色をした髑髏の装甲に、黒と赤の禍々しい大剣。

 ”凶皇”の名に相応しい悪魔がフィールドに降り立った。

「コイツはリリースなしで召喚できるが、その場合攻守は半減する」

戦慄の凶皇-ジェネシス・デーモン ATK:3000→1500

「ククク……だがなあ、弱体化しようがコイツの効果は変わりねえ! 《戦慄の凶皇-ジェネシス・デーモン》の効果発動、墓地の《デーモンの宝札》を除外し、フィールドのカードを1枚破壊させてもらうぜ!」

《戦慄の凶皇-ジェネシス・デーモン》
効果モンスター
星8/闇属性/悪魔族/攻3000/守2000
このカードはリリースなしで召喚できる。
この方法で召喚したこのカードの元々の攻撃力・守備力は半分になり、
エンドフェイズ時に破壊される。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
自分は悪魔族以外のモンスターを特殊召喚できない。
また、1ターンに1度、自分の手札・墓地の
「デーモン」と名のついたカード1枚をゲームから除外して発動できる。
フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。

 ジェネシス・デーモンは剣を掲げると、そこに黒い瘴気が集まっていく。

「消え失せろ、スターダスト!」

(スターダストはその身を犠牲に破壊効果を防ぐことができる……だが、その効果を使えば遊星のフィールドはがら空きになり、ダークネブラの直接攻撃を喰らうことになる。 となれば――)

 しかし、その瘴気は突如消滅する。

「くっ……手札から《エフェクト・ヴェーラー》を捨てることで、相手モンスターの効果を無効にする」

《エフェクト・ヴェーラー》
チューナー(効果モンスター)
星1/光属性/魔法使い族/攻   0/守   0
このカードを手札から墓地へ送り、
相手フィールド上の効果モンスター1体を選択して発動できる。
選択した相手モンスターの効果をエンドフェイズ時まで無効にする。
この効果は相手のメインフェイズ時にのみ発動できる。

「ハハハハハ! そうだよなあ、遊星! スターダストと己の身、その両方を守るには《ミスティック・パイパー》でドローした《エフェクト・ヴェーラー》を使うしかねえよなあ! だが、ジェネシス・デーモンの効果が無効になったことで、リリース無しで召喚したことによる弱体化まで無効になった! よって、攻撃力は元の3000に戻るぜ!」

 ジェネシス・デーモンは本来の力を取り戻し、その姿はみるみる巨大になっていく。

戦慄の凶皇-ジェネシス・デーモン ATK:1500→3000

「このカードでさらに追い込んでやるぜ! 《Spスピードスペル -シンクロ・ブースター》を発動! これで《ダークネブラ・ドラゴン》の攻撃力は1000ポイントアップだ! ハハハハハ!」

 ダークネブラの背中に銀色の塗装がされた機械が装着される。

ダークネブラ・ドラゴン ATK:2500→3500
 
S pスピードスペル−シンクロ・ブースター》
通常魔法 (血の刻印オリジナル)
自分のスピードカウンターが4つ以上あるとき発動できる。
シンクロモンスター1体の攻撃力は1000エンドフェイズまでポイントアップする。
選択したモンスターが戦闘によってモンスターを破壊し墓地に送った時、
自分はカードを1枚ドローする。

「攻撃力3000を超えるモンスターが2体……このターンで削り切るつもりか」

「ソーガさん、一気にやっちゃて下さい!」

 ソーガはアクセルを踏み込み、速度を上昇させる。

「さあ、《戦慄の凶皇-ジェネシス・デーモン》よ! 《スターダスト・ドラゴン》をその剣でぶった斬れ!」

 巨大な剣を振り回し、悪魔の凶皇は星屑の龍を見据える。

「ヘル・ジャッジメント・スラッシュ!」

 ギルファー・デーモンに拘束され動けないスターダストに、圧倒的な力を持ってして振り下ろる大剣。

 その重厚な一撃はスターダストの身を鋭く斬り裂いた。

「ぐあああああああああっ!」

遊星 LP:2100→1100

 ダメージを受け遊星のD・ホイールはバランスを大きく崩す。

 しかし、身を裂かれたスターダストは依然として健在。

「墓地の《シールド・ウォリアー》の効果発動! このカードをゲームから除外することで、スターダストは戦闘破壊を免れる!」

《シールド・ウォリアー》
星3/地属性/戦士族/攻 800/守1600
戦闘ダメージ計算時、自分の墓地に存在するこのカードを
ゲームから除外して発動する事ができる。
自分フィールド上に存在するモンスターはその戦闘では破壊されない。

「ハハハハハ! だからどうした、俺にはまだダークネブラの攻撃が残っている!」

 ダークネブラは羽ばたき、ギルファー・デーモンに羽交い締めにされているスターダストにブレスの標準を定める。

「轟け、コラプサー・ブラストォ!」

 青紫の禍々しいブレスが、スターダストに向けて放たれる。

「ハハハハハ! これで終わりだ、不動遊星ィ!!」

 ダークネブラの放つ、まるで闇のような色合いの青紫の炎――

 そしてその”闇”は、少しずつスターダストを包んでいく――

 ”闇”はただ静かに、死を誘う――

「ハハハハハハ!」

 スターダストは、”闇”へ包まれた――







「それはどうかな?」

 瞬間、”闇”はかき消されていく――

 そこにあったのは、スターダストより放たれる”光”――

「何!?」

 風を纏いて星屑を散らす白き龍――その姿は、まさしく”光”であった。

スターダスト・ドラゴン ATK:2000→3500

「コイツは一体……!?」

「俺はこのカードを発動していたのさ」

 遊星の場に開かれているカード――それは《パワー・フレーム》。

「チッ、厄介なカードを……!」

「《パワー・フレーム》は自分のモンスターが攻撃力を上回るモンスターから攻撃を受けた時発動する。 その攻撃を無効にし、さらに《パワー・フレーム》を装備カードする。 そして、《パワー・フレーム》を装備したことにより、スターダストの攻撃力はダークネブラの攻撃力と同じになる!」

《パワー・フレーム》
通常罠
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターが、
その攻撃力よりも高い攻撃力を持つモンスターの
攻撃対象に選択された時に発動する事ができる。
その攻撃を無効にし、このカードを攻撃対象モンスター1体に装備する。
装備モンスターの攻撃力は、
その時の攻撃モンスターと攻撃対象モンスターの攻撃力の差の数値分アップする。

「なるほど、シンクロ・ブースターの強化はエンドフェイズまでだが、《パワー・フレーム》による強化は永続的。 次のターンの反撃まで計算済みか」

 そう言いながら、ソーガは手札のカードの1枚を見る。

(残念だったなあ、遊星。 お前が次のターン攻撃してこようと、この《邪神の大災害》で《パワー・フレーム》を吹き飛ばしてやる。 同時にギルファー・デーモンも吹き飛ばされるが、コイツは何度でも装備できるからもう一度スターダストを弱体化すればいい。 そうすればお前のスターダストは葬られるって訳だ)

《邪神の大災害》
通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
フィールド上に存在する魔法・罠カードを全て破壊する。

「俺はカードを……」

「待て、ソーガ。 俺はお前のバトルフェイズ終了時にこのカードを発動させてもらう」

 開かれる最後の伏せカード。

「罠発動、《イクイップ・シュート》!」

 その罠カードが開かれると、スターダストは力強く飛翔する。

 ギルファー・デーモンに拘束されているにも関わらず、悠々と天へ向かうスターダスト。

 その勢いを受け、ギルファー・デーモンは振り落とされてしまう。

「このカードは自分の攻撃表示モンスターに装備された装備カード1枚を相手の攻撃表示モンスターに装備し直す! 俺はスターダストに装備されたギルファー・デーモンの装備対象をダークネブラに移す!」

「ギルファー・デーモンを俺のダークネブラに装備するだと!?」

 スターダストは旋回すると振り落とされたギルファー・デーモンを掴む。

 そして自分の下を飛行するダークネブラ目掛け、ギルファー・デーモンを豪快に投げる。

 ダークネブラは頭上から投げられたギルファー・デーモンをよけきれず、命中し高度を落とす。

「ギルファー・デーモンを押し付けられたことで攻撃力が下がっちまったか……」

スターダスト・ドラゴン ATK:3500→4000

ダークネブラ・ドラゴン ATK:3500→3000

「まだだ! 《イクイップ・シュート》の効果により、選択された2体のモンスターでバトルを行う!」

「強制戦闘効果だとお!?」

 ギルファー・デーモンをぶつけられダメージを受けたダークネブラの元に、上空からスターダストが勢い良く降りる。

「響け、シューティング・ソニック!」

 音波のブレスを放ち、体勢を崩したダークネブラを狙う。

(《邪神の大災害》はまだ手札、セットされてねえから使えねえ……打つ手なしか)

 勝負の結末を悟り、ソーガは笑った。

「……ククク、ハハハハハ! さあ来い! 遊星ィ!」

 ダークネブラはスターダストに向け羽ばたき、ブレスで対向する――

 しかし、ダークネブラの力はスターダストに及ばず、次第に”闇”は”光”に押し込めれていく――

 そして”光”は”闇”を包み、戦いに終止符を打った――



ソーガ LP:850→0 





 ライフが0を示したことで、ソーガのD・ホイールは急停止する。

「ソーガさん!」

 セーナは近くにD・ホイールを止め、ソーガの元に駆け寄る。

「ふう……負け、か」

 ヘルメットを外し、そうつ呟くソーガにD・ホイールから降りた遊星が歩いてくる。

「ソーガ、いいデュエルだった。 またやろう」

 そう手を差し出す遊星。

「ああ、楽しいデュエルだったぜ」

 差し出された手を取り、ソーガは満足気な表情でそう答える。

「だが、次は勝たせてもらうぜ」

 ソーガはD・ホイールから降り、差し出された手は握手となっていた。

「あの壊し屋のイメージとは随分違うな。 お前、本当に壊し屋か?」

 ソーガの行動に疑問を持ったのか、質問するジャック。

「まあ、俺も壊し屋である以前にD・ホイーラーだ。 遊星とのデュエルは最高に面白かった、だからそのデュエルに敬意を払っただけだ」

「ソーガさん、ゴドールに負けた時とはだいぶ反応が違いますが……」

「あの時は一応、負けるわけにはいけないデュエルだったからな。 アウロラの介入で助かったが無かったら無事では済まなかったし、そのあたりを反省していたわけだ」

「なるほど」

 ソーガの言葉に納得した様子のセーナ。

 そこに遊星は「ところで」と話を挟む。

「俺達は人探しをしているんだ。 十六夜アキというデュエルアカデミアの学生なんだが」

「十六夜アキか、フォーチュンカップの決勝でお前と戦ってたあの巨乳のサイコデュエリストだろう。 どうしたんだ?」

「巨乳の!?」

 話しの本筋とは関係ないところに反応するセーナを無視し、二人は話を続ける。

「今朝、家を出てからの行方が掴めないんだ。 デュエルアカデミアには来ていないらしく、通信も繋がらない」

「私だって決して小さいわけでは……無いはず、ですよね……」

 少し考えこむソーガ。

「確かに十六夜アキは大きかたですが、私はああいった人と比べるから相対的に小さく見えるわけで……」

「なるほど」

 そう呟くソーガ。

「そうですよね! 比較するから大きく見えないんですよ!」

「ソーガ、何か知っているのか?」

 ソーガはセーナを押しのけ、遊星の問いに返答する。

「その件、俺達が請け負っている仕事と関係があるかもしれねえ」









 ――ネオドミノシティ、旧サテライト、マーサハウス

 ――14:20

「妙なことになっているな」

 旧サテライトの孤児院でそう言うのは、髭を生やした黒髪の男。

「ああ。 アキのヤツ、どこ行っちまったんだか。 アンタなら何か掴んでると思ったんだが――雑賀」

 黒髪の男と会話するのは、顔にたくさんのマーカーを付けたオレンジの髪で小柄の青年。

「力になれなくて済まないな、クロウ、ブルーノ。 俺のところには昔ほど情報が入らなくてな。 そういえば、少し気になる話を聞いたな」

 雑賀は何かをふと思い出したようだ。

「気になる話、ですか?」

 青髪の青年――ブルーノは、そう聞き返す。

「セイリオス・カンパニーって知っているか?」

「セイリオス・カンパニーと言えばあのデュエルグッズの製造や販売を行なっている有名企業だね」

 雑賀の問いにブルーノはそう答える。

「……表の顔は、な」

 そう、クロウが付け加えた。

「やっぱりお前は知っていたか、クロウ」

「まあな」

 雑賀とクロウの会話を聞き、ブルーノは疑問を口にする。

「セイリオス・カンパニーには何かあるということですか?」

「セイリオス・カンパニーの実態は、昔からこのネオドミノシティを根城にするデュエルマフィア組織だ」

「デュエルマフィア!?」

「ああ。 ダイモンエリアに本社があることも要因だろうが、セキュリティに治安維持局と警備が厳しいこの街で長年活動している裏組織なんてのは数少ない。 おそらく権力者への根回しを上手くやってきているんだろう」

 一般に知られている姿とはかけ離れたセイリオス・カンパニーの実態――ブルーノにとっては驚きのものであった。

「で、雑賀。 そのセイリオス・カンパニーがどうしたんだ? 潰れでもしたのか?」

「いや、セイリオス・カンパニー自体は健在だ。 だが、ここ最近セイリオス・カンパニーの若手構成員に上層部への反発が見られるらしい」

「上層部への反発? 給料が少ないとか、クレームをつけているってことか?」

「そんなものじゃない。 この街で活動するためにも、セイリオス・カンパニーは組織の規律を重んじ構成員がそれを破ることは殆ど無い。 だが、最近になって規律を破りあちこちで被害を出している若手が増えている様子だ」

 話を聞き、クロウとブルーノは考えこむ。

「正直、どうしてセイリオス・カンパニーがそんなことになっているかは俺にも分からん。 組織のやり方に何か不満を覚えることがあったのかもしれないな」

 雑賀はそう結論づけるが、クロウはまだ考え込んでいる。

「それだけじゃない気がするけどな……」

「クロウ、今はそれよりもアキさんの行方を調べないと」

「そうだな。 考えていても仕方がねえ」

 ブルーノの発言で我に返ったクロウはD・ホイールに向かう。

「協力ありがとな、雑賀」

「何か情報が手に入ったら、よろしくお願いします」

 ブルーノもスクーター型のD・ホイールに乗り込み、マーサハウスを発とうとする。

「いや、待て。 俺も行こう」

 二人を引き止め、雑賀はそう言う。

「俺の感が告げているんだが……この街で何かが起きる気がする」












 ――ネオドミノシティ郊外付近、工場内部

 ――14:30

「私のターン、ドロー」

夜条 LP:4000
手札:4→5枚
モンスター:《ゾンビ・マスター》(守0)
魔法&罠:セット1枚
ガードロボ LP:4000
手札:1枚
モンスター:《豊穣のアルテミス》(守1700)
魔法&罠:《レベル制限B地区》、セット3枚

「罠発動、《カウンター・フォース》」

 夜条のターン開始と共に開かれるガードロボの伏せカード。

《カウンター・フォース》
永続罠 (アニメ5D'sオリジナル)
自分または相手がカウンター罠が発動する度に、
このカードにチャージカウンターを1つ置く。
自分のスタンバイフェイズ時、チャージカウンターの乗っている
このカードをゲームから除外することで、乗っていた
チャージカウンターの数×1000ポイントダメージを相手に与える。

「あれはまずいッスァァァァァ! B地区とカウンター罠で夜条さんの動きを封じて、《カウンター・フォース》のダメージで勝つつもりッスァァァァァ!!」

 手札のカードを一通り確認すると、夜条は1枚のカードを発動する。

「《大嵐》、発動。 すべての魔法、罠カードを破壊する」

 工場の内部に、巨大な竜巻が発生する。

《大嵐》
通常魔法
フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。

「かうんたー罠発動、《魔宮の賄賂》。 《大嵐》ヲ無効ニシ、相手ハかーどヲ1枚どろーシマス」

《魔宮の賄賂》
カウンター罠
相手の魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。
相手はデッキからカードを1枚ドローする。

「アァァァァァ!! せっかくの《大嵐》が防がれたッスァァァァァァァ!! 《大嵐》が、あの《大嵐》がッスァァァァァァァァァ!!」

 ラーメン屋は頭を抱え、困惑する。

 対照的に夜条はカードを処理を淡々と進め、ドローする。

「《豊穣のアルテミス》ノ効果ニヨリどろー、サラニ《カウンター・フォース》ニかうんたーガ乗リマス」

《豊穣のアルテミス》
効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻1600/守1700
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
カウンター罠が発動される度に自分のデッキからカードを1枚ドローする。

カウンター・フォース チャージカウンター:0→1

(やっぱり防がれた……それなら)

「《ナイトメア・ホース》を召喚」

 フィールドに駆けつけたのは、青い炎に身を包んだ馬のモンスター。

「おお、夜条さんお見事ッスァァァァァァ! 《ナイトメア・ホース》は相手のロックカードをすり抜けられるレベル2、しかも相手の場にモンスターがいようとダイレクトアタックできるッスァァァァァァァァァ!!」

《ナイトメア・ホース》
効果モンスター
星2/闇属性/アンデット族/攻 500/守 400
このカードは相手フィールド上にモンスターが存在しても、
相手プレイヤーに直接攻撃をする事ができる。

「バトル、《ナイトメア・ホース》でダイレクトアタック」

 青い炎を揺らめかせ、《ナイトメア・ホース》はガードロボに突進する。

「入った、入ったッスァァァァァ! 相手の守りを突き破り、夜条さんがダメージを与えたッスァァァァァ! けど、《ナイトメア・ホース》の攻撃じゃ後7回攻撃しないといけないっす、先は長いッスァァァァァァ!!」

「ビビ……損害、小」

ガードロボ LP:4000→3500

「カードを2枚セット、これでターン終了」

「わたしノたーん、どろー」

夜条 LP:4000
手札:2枚
モンスター:《ゾンビ・マスター》(守0)、《ナイトメア・ホース》(攻500)
魔法&罠:セット3枚
ガードロボ LP:3500
手札:2→3枚
モンスター:《豊穣のアルテミス》(守1700)
魔法&罠:《レベル制限B地区》、《カウンター・フォース》(カウンター:1)、セット1枚

「《ボーガニアン》ヲ召喚」

 ガードロボが召喚したのはボーガンと一体化した一つ目の機械。

「しまった、レベル3のモンスターということは《ナイトメア・ホース》を戦闘破壊しに来たッスァァァァァァ! しかも《ボーガニアン》は毎ターンダメージを与えてくる厄介なヤツッスァァァ、まずいッスァァァァァァ!!」

《ボーガニアン》
効果モンスター
星3/闇属性/機械族/攻1300/守1000
自分のスタンバイフェイズ毎に相手ライフに600ポイントダメージを与える。

「ばとる、《ボーガニアン》デ《ナイトメア・ホース》ニ攻撃」

 《ボーガニアン》は《ナイトメア・ホース》に向け矢を放つ。

「夜条さん、《ナイトメア・ホース》を、《ナイトメア・ホース》を守るッスァァァァァァ! ロックデッキを相手にダイレクトアタックができる《ナイトメア・ホース》は貴重な戦力ッスァァァァァァァァ!!」

「……」

 夜条は無言のまま、《ナイトメア・ホース》が矢に貫かれる光景を眺めている。

夜条 LP:4000→3200

「そんな! 《ナイトメア・ホース》が破壊されてしまったッスァァァァァァァァァ!!」

 慌てふためくラーメン屋。

 しかし夜条は落ち着いた様子を崩さない

「かーどヲ2枚せっと、たーんえんどデス」

「ならエンドフェイズにこの伏せカードを使う、《砂塵の大竜巻》で《レベル制限B地区》を破壊」

 前のターンの《大嵐》同様、暴風が巻き起こる。

《砂塵の大竜巻》
通常罠
相手フィールド上の魔法・罠カード1枚を選択して破壊する。
その後、自分の手札から魔法・罠カード1枚をセットできる。

「上手いッスァァァ、まだあのロボットのターンっすからこのターン伏せられた2枚のカードは使えないッスァァァァァァ! これでB地区が! 夜条さんに迫るB地区が! 破壊できるといいッスァァァァァァァ!!」

「かうんたー罠発動、らいふヲ1000払イ《盗賊の七つ道具》デ《砂塵の大竜巻》ヲ無効ニシマス」

《盗賊の七つ道具》
カウンター罠
罠カードが発動した時、1000ライフポイントを払って発動できる。
その罠カードの発動を無効にし破壊する。

ガードロボ LP:3500→2500

「ああ、惜しいッスァァァァァ! あの伏せカードが、まさか《砂塵の大竜巻》を無効にしてくるなんて、惜しいッスァァァァァァ!!」

「《豊穣のアルテミス》ノ効果ニヨリどろー、サラニ《カウンター・フォース》ニかうんたーガ乗リマス」

《豊穣のアルテミス》
効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻1600/守1700
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
カウンター罠が発動される度に自分のデッキからカードを1枚ドローする。

カウンター・フォース チャージカウンター:1→2

 逆転につながる一手を潰された夜条だが、落ち着いた様子は崩さない。

「これでターンが終わりなら、私のターン。 ドロー」

夜条 LP:3200
手札:2→3枚
モンスター:《ゾンビ・マスター》(守0)
魔法&罠:セット2枚
ガードロボ LP:2500
手札:1枚
モンスター:《豊穣のアルテミス》(守1700)、《ボーガニアン》(攻1300)
魔法&罠:《レベル制限B地区》、《カウンター・フォース》(カウンター:2)、セット2枚

 ドローカードを加えた手札を一通り確認すると、夜条は静かに言い放った。

「このターンで、終わらせる。 魔法発動、《おろかな埋葬》……何も発動しないのなら、効果処理」

《おろかな埋葬》
通常魔法
自分のデッキからモンスター1体を選択して墓地へ送る。

「デッキの《ボーンクラッシャー》を墓地に送る」

 デュエルディスクによりデッキから1枚のカードが自動的に抜き出され、夜条はそれを取ると墓地ゾーンへと置く。

「《ゾンビ・マスター》の効果発動……手札のモンスターを捨てることで墓地の下級アンデット族を蘇らせる」

 《ゾンビ・マスター》は手から光の糸のようなものを出すと、それを地中に送る。

《ゾンビ・マスター》
効果モンスター
星4/闇属性/アンデット族/攻1800/守 0
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
手札のモンスター1体を墓地へ送る事で、
自分または相手の墓地のレベル4以下の
アンデット族モンスター1体を選択して特殊召喚する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

「私が復活させるのは、《ボーンクラッシャー》」

「そうか、その手があったッスァァァァ! 《ボーンクラッシャー》を墓地から復活させればその効果でフィールドの魔法か罠を1枚破壊できるッスァァァァァァァ! これでB地区粉砕ッスァァァァァァ!!」

《ボーンクラッシャー》
効果モンスター
星4/地属性/アンデット族/攻1600/守 200
このカードがアンデット族モンスターの効果によって
自分の墓地から特殊召喚に成功した時、
相手フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を破壊する事ができる。
このカードは特殊召喚したターンのエンドフェイズ時に破壊される。

「かうんたー罠《天罰》ヲ発動、手札ヲ1枚捨テルコトデ《ゾンビ・マスター》ノ効果ヲ無効ニシ破壊シマス」

 突如《ゾンビ・マスター》に雷が落ち、その身を霧散消滅させる。

「ああああ、またカウンター罠ッスァァァァァァァァァァ!!!」

《天罰》
カウンター罠
手札を1枚捨てて発動する。
効果モンスターの効果の発動を無効にし破壊する。

「《豊穣のアルテミス》ノ効果ニヨリどろー、サラニ《カウンター・フォース》ニかうんたーガ乗リマス」

《豊穣のアルテミス》
効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻1600/守1700
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
カウンター罠が発動される度に自分のデッキからカードを1枚ドローする。

カウンター・フォース チャージカウンター:2→3

「あ、ヤバイッスァァァァァァ! 次のターン、《ボーガニアン》の効果で600ダメージ、そして《カウンター・フォース》の効果で3000ダメージを受ければ夜条さんのライフ3200は吹き飛んでしまうッスァァァァァァ! どっちか、どっちか破壊しないとまずいッスァァァァァァ!」

 夜条は破壊された《ゾンビ・マスター》を墓地に置くと、次にそこから1枚のカードを選び出す。

「墓地の《馬頭鬼》の効果発動……墓地のこのカードを除外し、墓地のアンデット族を復活させる」

《馬頭鬼》
効果モンスター
星4/地属性/アンデット族/攻1700/守 800
自分のメインフェイズ時、墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、
自分の墓地からアンデット族モンスター1体を選択して特殊召喚する。

「そうか、《ゾンビ・マスター》の効果で《馬頭鬼》を! まさかの隙を生じぬ二段構えッスァァァァァァ!」

「《ボーンクラッシャー》を復活、そして効果で《レベル制限B地区》を破壊」

 死より蘇った骨の怪物は、体中の骨を辺りに撒き散らす。

 その衝撃で、ガードロボの場に出ている《レベル制限B地区》のカードの立体映像が砕け散る。

《ボーンクラッシャー》
効果モンスター
星4/地属性/アンデット族/攻1600/守 200
このカードがアンデット族モンスターの効果によって
自分の墓地から特殊召喚に成功した時、
相手フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を破壊する事ができる。
このカードは特殊召喚したターンのエンドフェイズ時に破壊される。

「よし、これでェェ! ついにィィ! B地区を潰したッスァァァァァァ!」

「さらにチューナーモンスター《ペインペインター》を召喚。 このモンスターは場では《ゾンビキャリア》として扱う」

 召喚されたのは、ペンキを撒き散らすゾンビの絵師。

《ペインペインター》
チューナー(効果モンスター)
星2/闇属性/アンデット族/攻 400/守 200
このカードのカード名は、
フィールド上に表側表示で存在する限り「ゾンビキャリア」として扱う。
また、1ターンに1度、このカード以外の
自分フィールド上のアンデット族モンスターを2体まで選択して発動できる。
選択したモンスターのレベルはエンドフェイズ時まで2になる。
この効果が適用されたモンスターをシンクロ素材とする場合、
アンデット族モンスターのシンクロ召喚にしか使用できない。

「レベル4の《ボーンクラッシャー》に、レベル2の《ペインペインター》をチューニング」

 《ペインペインター》は二つの環となり、《ボーンクラッシャー》を包み込む。

「冥府に沈みし死にゆく骸よ、今こそ業火を纏い不死へと昇華せよ! シンクロ召喚! 蘇れ、《デスカイザー・ドラゴン》!」

 光より現れたのは、業火を従える死霊の龍。

《デスカイザー・ドラゴン》
シンクロ・効果モンスター
星6/炎属性/アンデット族/攻2400/守1500
「ゾンビキャリア」+チューナー以外のアンデット族モンスター1体以上
このカードが特殊召喚に成功した時、
相手の墓地のアンデット族モンスター1体を選択し、
自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚できる。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。

「来た来た、夜条さんのエースシンクロモンスターッスァァァァァァァァ!!」

「驚くのは まだ 早い。 発動せよ、《バスター・モード》……!」

 夜条が伏せカードを発動させると、フィールドにいる《デスカイザー・ドラゴン》が炎に包まれる。

「これは、《バスター・モード》ッスァァァァァァ! 特定のシンクロモンスターを進化させ、デッキから上位種となる”/バスター”を呼び出す必殺カードッスァァァァァァァァァァ!!」

《バスター・モード》
通常罠
自分フィールド上のシンクロモンスター1体をリリースして発動できる。
リリースしたシンクロモンスターのカード名が含まれる「/バスター」と
名のついたモンスター1体をデッキから表側攻撃表示で特殊召喚する。

「煉獄の炎と共に現れよ、《デスカイザー・ドラゴン/バスター》……!」

 《デスカイザー・ドラゴン》を包む炎が渦となって巻き上がると、そこから姿を変えた死の龍が姿を現す。

 腹部にはもうひとつの不気味な顔が浮かび上がり、身にまとう炎もより強くなっている。

「このカードが特殊召喚されたことで、効果発動。 墓地のアンデット族を任意の数だけ復活させる」

《デスカイザー・ドラゴン/バスター》
効果モンスター
星8/炎属性/アンデット族/攻2900/守2000
このカードは通常召喚できない。
「バスター・モード」の効果でのみ特殊召喚できる。
このカードが特殊召喚に成功した時、
自分・相手の墓地からアンデット族モンスターを
任意の数だけ選択して自分フィールド上に特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、
このターンのエンドフェイズ時に破壊される。
また、フィールド上のこのカードが破壊された時、
自分の墓地の「デスカイザー・ドラゴン」1体を選択して特殊召喚できる。

 死の龍の周囲に噴き上がる炎。

 そして炎と共に姿を現すは、死霊の軍勢。

「蘇れ……《ゾンビ・マスター》、《ボーンクラッシャー》、《ペインペインター》、《デスカイザー・ドラゴン》!」

 蘇ったモンスターにより、夜条のフィールドは埋め尽くされる。

「す、凄まじい展開ッスァァァァァァ!! 夜条さんぱねえッスァァァァァァァァ!!」

「この効果で復活したモンスターの効果は無効になる。 だから《ボーンクラッシャー》の効果は使えない……けど、攻撃はできる」

 夜条が手を掲げると、五体のアンデットは動き出す。

「《デスカイザー・ドラゴン/バスター》、《ボーガニアン》に攻撃……!」

 死の龍は頭部と腹部の二つの口から、炎を放つ。

 しかし、その炎は渦に飲まれて消えてしまう。

「……!」

「あ、あれはァァァァ!!」

「かうんたー罠、《攻撃の無力化》」

《攻撃の無力化》
カウンター罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
相手モンスター1体の攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する。

「し、しまったッスァァァァァ! よりにもよってあのカウンター罠が残っていたッスァァァァァァァァ!!」

「《豊穣のアルテミス》ノ効果ニヨリどろー、サラニ《カウンター・フォース》ニかうんたーガ乗リマス」

《豊穣のアルテミス》
効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻1600/守1700
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
カウンター罠が発動される度に自分のデッキからカードを1枚ドローする。

カウンター・フォース チャージカウンター:3→4

「あがががが、もはや夜条さんに打つ手は……」

 ガードロボの一手により、攻撃が無効となった瞬間――

 このデュエルで冷めた表情を崩さなかった夜条に、ようやく変化が訪れた。

「ようやく……伏せカードが無くなった」

 その表情は――静かな笑みであった。

「この伏せカードを発動、《火霊術-「紅」》……!」

 死の龍の身体に炎が纏わりついていき、次第に包み込まれる。

「《デスカイザー・ドラゴン/バスター》をリリースし、その攻撃力をダメージとした与える!」

 死の龍は炎そのものと一体化し、ガードロボ目掛け飛びかかる。

《火霊術-「紅」》
通常罠
自分フィールド上の炎属性モンスター1体をリリースして発動できる。
リリースしたモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

「な、なんてタクティクスッスァァァァァァァァ!! 夜条さんは最初からこのカードを狙っていたッスァァァァァァァァァァァァ!!!」

「爆ぜろ、地獄の業火に包まれて……」

 炎はガードロボを飲み込み、爆発を起こす。

「ピピ……ガガガガ、損傷、大……ガガガガガガ」

ガードロボ LP:2500→0

「や、夜条さん! キメラデュエリストの力を使ったッスカァァァァ!? すげー燃えているッスァァァァァァ!」

「……よし」

「よしじゃ無いッスァァァ! 大惨事ッスァァァァァァァァァ!!」

 自動的にスプリンクラーが作動し、炎を収めていく。

 やがて炎が消えると、そこにあったのは黒く焦げたガードロボの残骸。

「どう見ても壊れてるっすね……これ、大丈夫なんすか? 怒られるんじゃないっすか?」

「襲ってきたロボットを撃退しただけ、悪いことはしていない。 それに……いざって時はお前のせいにすればいい」

「あんまりッスァァァァァァァァァァ!!」












 ――ネオドミノシティ、ダイモンエリア南部

 ――14:50

「アキさん、どこに行ったのかしら?」

 前述の通り治安の悪いダイモンエリアだが、そこに不釣り合いな少女の声が路地に響く。

 声の主は、緑色の髪を束ねた少女。

「大丈夫だって、きっとすぐ見つかるよ」

 不安げな少女に声を掛けたのは、隣にいる瓜二つの少年。

「もう、龍亜ったら緊迫感がなさすぎよ。 アキさんが何かの事件に巻き込まれていたら大変よ」

 呆れた様子で少女は隣の少年――龍亜にそう言った。

 しかし――

「龍可は心配し過ぎなんだよ。 遊星やジャックも、クロウにブルーノも、みんなで手分けして探しているんだからさ」

 少女――龍可の心配を他所に龍亜はこんな調子である。

 そんな会話をしながら、曲がり角を曲がる二人。

「おっと」

「あ、ごめんなさい」

 曲がり角から飛び出した男に少し当たった龍可は振り返りそう謝るが、男は不快そうな表情で龍可に寄る。

「あ〜ん!? ロリガールちゃんよぉ、ぶつかっといてソーリーで済んだら、セキュリティはいらねえんだぜ〜い!」

 筋肉質でピンク髪の男はそう言うと、シャツを破り捨て鍛えられた肉体を顕にする。

「ぶつかってきたのはそっちだろ、龍可から離れろ!」

 龍可と男の間に割って入る龍亜。

「シャァァラップ、ショタボーイ! このレオナルド様に舐めた口聞くとは命アンノウンなやつだぜ〜い!」

 ズボンを破り捨てて下着姿となったレオナルドと名乗る男は、デュエルディスクを装着し跳びかかってくる。

「このレオナルド様は今、不機嫌で暴れたいんだよぉぉぉぉぉぉアタァァァック!」

 デュエルディスクを付けたレオナルドの左腕は高く挙げられ、標準を定めている。

 狭い路地故に、左右へ避けることは不可能!

 地の利を生かしたレオナルドの攻撃に対し、龍亜と龍可は対抗策を持たなかった!

「レォォォォォォォナルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥドッ!」

 奇声と共に振り下ろされる左腕。

 しかし、その一撃が龍亜と龍可に振り下ろされることはなかった。

「私の後輩に何をしているんですかねえ?」

 冷めた声と共に放たれる、突進からの肘の一撃。

 その一撃はレオナルドの腹部を捉えていた。

「がはっ……このレオナルド様の攻撃を勢いを利用したカウンターだとぉぉぉぉう!?」

 龍亜と龍可を守り、レオナルドに一撃を加えたのは、緑髪で眼鏡をかけた高校生くらいの少年。

「少し眠っててもらいましょうか」

 素早くレオナルドの後ろに回りこむと、首筋に手刀でもう一撃加える。

「がぁっ!」

 意識が飛び、崩れ落ちるレオナルド。

 眼鏡の少年は龍亜と龍可に、穏やかな表情で声をかける。

「大丈夫でしたか? 龍亜君に龍可さん」

 颯爽とした彼の早業に驚いた二人は、ワンテンポ遅れてから同時に彼の名前を呼んだ。

「「須藤先輩!」」

「まったく、いけませんよ。 ダイモンエリアは危険地帯ですから無闇に立ち入るのは危険です。 最近はこの辺りで物騒な事件も多いですし」

 眼鏡の男――須藤は、二人にそう諭すように語る。

「ごめんなさい、それと助けてくれてありがとう。 だけど須藤先輩、これには事情があるんだ」

「十六夜先輩のこと、ですね」

 龍亜の語る前にそう推測する須藤。

「知っていますよ、今朝から十六夜先輩の行方が知らないことは」

「じゃあ、須藤先輩もアキねえちゃんを助けに来たんだね」

「ええ。 十六夜先輩にはお世話になっていますし、尊敬する先輩ですから。 では、一緒に十六夜先輩を探しましょう」

 須藤は二人に手を差し出す。

「須藤先輩!」

「いよっしゃー! 須藤先輩がいれば百人力だぜ!」

 龍可と龍亜は差し伸べられた手を取り、重ねる。

「十六夜先輩を助けるために、私も精一杯働かせてもらいますよ。 それと、来て欲しいところがあります」

「来て欲しいところ?」

「はい。 先程通りかかったのですが、もしや十六夜先輩を見つける手がかりになるかもしれません」









「なあ龍可、須藤先輩が来てくれるなんて俺たち超ラッキーだね!」

「そうね。 高等部2年のトップで、アカデミアのネオドミノ校でもアキさんと並ぶ実力者だって言われているぐらいだもん」

「それにスッゲー強いのにさ、威張ったりしないで凄く優しいんだよね! 俺も何回か宿題見てもらったもん」

「もう、龍亜ったら須藤先輩に迷惑かけちゃ駄目よ。 須藤先輩も、ありがとうございました」

 龍可の謝礼を受け、須藤は笑顔で返す。

「ハハ、別にいいですよあれくらい。 それに、人に何かを教えることは自分への勉強にもなりますから」

「ありがとう、須藤先輩! 俺、須藤先輩に負けないデュエリストになるよ!」

「龍亜じゃ須藤先輩に追いつくのに何年かかるのかしら」

「あはは、きついなあ龍可は」

「大丈夫ですよ、龍亜君はきっと立派なデュエリストになります。 龍可さんを助けるために危険を伴わずに動いた君の勇気は、デュエリストにとって大切なモノですから」

 そんな雑談をしている間に、三人は暗い路地へとたどり着いた。

「あそこです、あの路地の奥を見てください」

 須藤が指すのは路地の途中にある曲がり角。

 そう言われた龍亜と龍可はそこを曲がり奥へと進む。

「んー、何だろ?」

「行き止まり?」

 角を曲がった先は薄暗く何もない行き止まり。

 二人は路地を見渡し、アキを探す手がかりになりそうな物を探す。

「こんなところになにがあるの、須藤先ぱ……」

「魔法発動、《マジックブラスト》!」

 カードを掲げる須藤。

 そのカードに描かれた魔導弾が、彼の目の前の空間に出現する。

 放たれたそれは、目の前の少年と少女に襲いかかる。

「うわああああああああああ!!」

「きゃああああああああああ!!」

 立体映像ソリッド・ヴィジョンなどではない、本物の衝撃を受けた二人は吹き飛ばされ、路地の奥の壁面に叩きつけられる。

「随分と簡単に決まりましたねえ。 まったく、子供が余計なことに首を突っ込んで……困ったものです」

 眼鏡を指でクイッと上げ、須藤は笑みを浮かべて横たわる龍亜と龍可を見つめる。

「さて、彼らをどうしましょうか。 そう言えば龍可さんは確か奇妙な力を持っているんでしたねえ、総帥の手土産に持っていけば見返りを要求できるかもしれませんね」

 龍可に近づき、横たわる彼女を確認する須藤。

 しかし、須藤の手を小さな手が掴む。

「龍可に……手を出すな……」

「おや」

 須藤がその手の方向に目線を向けると、横たわった龍亜が須藤の手を掴んでいた。

 その様子を見て、須藤は龍可の腕を放す。

「これは驚きました、私の能力を受けて意識があるとは。 おそらくは龍可さんを意識しすぎて、あなたには《マジックブラスト》が上手く当たってなかったのでしょうねえ」

 私としたことが、などと付け加えるように須藤は両手でリアクションをとる。

 龍亜は立ち上がり、須藤を睨みつける。

「須藤先輩……なんで龍可に、こんな酷いことを……! それに、今の力は……!」

 息を切らしながら質問をする龍亜の様子を見て、須藤は質問に答える。

「一度に複数の質問をするのはよくありませんよ。 まず最初の質問は、さっきも言ったように邪魔なあなたちを排除したかったのですよ」

「でも、あんなに優しかった須藤先輩が、なんで……!?」

「はあ、不愉快ですねえ……優しいだの、エリートだの、どいつもこいつも。 今の私が、素の私なんですよ」

 目つきが鋭くなり、龍亜を睨む須藤。

 しかしすぐに目つきは元に戻り、もう一つの質問に答える。

「で、私の力がもう一つの質問でしたね。 まあ、知っているでしょう? あなたの探している十六夜先輩と同じ力ですよ」

「やっぱり、サイコデュエリスト……!」

「さて、お喋りはこのくらいにしておきましょうか。 もし龍可さんが目覚めてしまったら面倒ですからねえ」

 デュエルディスクを構える須藤。

 対して龍亜も、デュエルディスクを装着する。

「龍可には絶対に手を出させはしない! 須藤先輩……いや、須藤! 俺とデュエルだ!」

「おやおや、この私とデュエル? まあいいでしょう、せっかく組織に入ったのに力を振るう機会が少なくて退屈でしたからねえ」

 須藤は不敵な笑みを浮かべ、龍亜の挑戦を承諾する。

「この須藤洋一、容赦しませんよ」

「龍可は俺が守るんだ……」

「「デュエル!」」

龍亜 LP:4000 須藤 LP:4000




第十一話「サイコデュエリストの急襲」


 ――ネオドミノシティ、ハイウェイ高架下

 ――15:00

「なるほど、そういうことか」

 高架下にいるのは遊星、ジャック、ソーガ、セーナの四人。

「確かにそれは十六夜の失踪と関係がありそうだ」

「ククク……利害は一致しているんだ、ここは共闘と行こうじゃねえか」

「……」

 ジャックはソーガに対する警戒を緩めないでいたが、彼より先に遊星が返答する。

「分かった。 この件、協力して解決しよう」

「おい、遊星!」

「ジャック、今は情報が必要だ。 それに、先ほどのライディングデュエルで分かった。 この男はデュエルに対し真摯な男だ、信頼出来る」

「……フン、お前がそこまで言うのなら認めてやる」

 遊星の決定にジャックが引き下がる。

「よろしく頼むぜ、遊星」

「ああ。 こちらこそ頼む、ソーガ」






 ――ネオドミノシティ、ダイモンエリア南部

 ――15:10

「先攻は俺だ、ドロー! 《D・ステープラン》を攻撃表示で召喚! カードを1枚セットしターンエンドだ」

 龍亜の場にホッチキスが出現し、変形してイラストの形状となった。

 表示形式により効果が変わるディフォーマーシリーズの1体だ。

Dディフォーマー・ステープラン》
効果モンスター
星4/地属性/機械族/攻1400/守1000
このカードはこのカードの表示形式によって以下の効果を得る。
●攻撃表示:このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
相手は他のモンスターを攻撃対象に選択できない。
このカードが戦闘によって破壊された場合、
このカードを破壊したモンスターの攻撃力は300ポイントダウンする。
●守備表示:このカードは戦闘では破壊されない。
このカードが攻撃された場合、そのダメージ計算後に相手フィールド上に
表側攻撃表示で存在するモンスター1体を選択して守備表示にし、
このカードの表示形式を攻撃表示にする。

「《D・ステープラン》を攻撃表示、ですか」

 須藤は龍亜を小馬鹿にしたように笑うと、カードを引きターンを始める。

「私のターン、ドロー。 では、《魔導戦士フォルス》を召喚しましょう」

 場に現れたのは、赤髪の女性魔導士。

「さあ、始めましょう。 魔法発動、《魔導書庫クレッセン》」

 須藤が魔法を発動させると、彼の背後に月を象ったシンボルが中心にある書庫が出現する。

「このカードはデッキから3枚の魔導書を選択し、相手はランダムに1枚を選択。 そのカードを手札に加え、残りをデッキに戻します」

《魔導書庫クレッセン》
通常魔法
自分の墓地に「魔導書」と名のついた魔法カードが存在しない場合に発動できる。
デッキから「魔導書」と名のついた魔法カード3種類を選んで相手に見せ、
相手はその中からランダムに1枚選ぶ。
相手が選んだカード1枚を自分の手札に加え、
残りのカードをデッキに戻す。
「魔導書庫クレッセン」は1ターンに1枚しか発動できず、
このカードを発動するターン、
自分は「魔導書」と名のついたカード以外の魔法カードを発動できない。

「私が選ぶのは《グリモの魔導書》、《ヒュグロの魔導書》、《セフィルの魔導書》の3枚。 さあ、私の手札に加わるのはどれになりますかねえ」

 龍亜の前に、裏側のカードの立体映像が現れる。

「……よし、これだ!」

 龍亜は彼から見て左のカードを選び、タッチする。

 すると須藤の手札にカードが加わり、書庫は消滅する。

「さて、このカードは……おや、一番いいカードが来ましたね。 《グリモの魔導書》を発動、デッキから魔導書を手札に加えます。 私が選ぶのは《セフィルの魔導書》」

 須藤の発動したのは、”魔導書”カードの1枚。

 魔導書とは魔導書庫に蓄積された魔法使い達の英知、それを魔力を媒介として受信し、本という形で顕在化させた物である。

 この《グリモの魔導書》は魔導書の特徴である循環、連鎖において根幹をなす一冊である。

《グリモの魔導書》
通常魔法
デッキから「グリモの魔導書」以外の
「魔導書」と名のついたカード1枚を手札に加える。
「グリモの魔導書」は1ターンに1枚しか発動できない。

「私の場に魔法使い族が存在することで、手札の《トーラの魔導書》を公開し《セフィルの魔導書》を発動、このカードは墓地の通常魔法の魔導書をコピーします」

 次なる魔導書は、禍々しい雰囲気を纏う《セフィルの魔導書》。

 他の魔導書を写しとり、同様の効力を発揮する。

《セフィルの魔導書
通常魔法
自分フィールド上に魔法使い族モンスターが存在する場合、
このカード以外の手札の「魔導書」と名のついたカード1枚を相手に見せ、
「セフェルの魔導書」以外の自分の墓地の
「魔導書」と名のついた通常魔法カード1枚を選択して発動できる。
このカードの効果は、選択した通常魔法カードの効果と同じになる。
「セフェルの魔導書」は1ターンに1枚しか発動できない。

「《グリモの魔導書》をコピーし、《ヒュグロの魔導書》を手札に」

(須藤のヤツ、どうしてこんな回りくどい戦術をしているんだ……? わざわざ墓地のカードをコピーしなくても、最初から欲しいカードを手札に加えればいいのに。 何が狙いなんだ……?)

「手札に加えた《ヒュグロの魔導書》を発動、《魔導戦士フォルス》の攻撃力をアップします」

 《ヒュグロの魔導書》、魔法使いを強化する”力”の魔導書だ。

 魔導書に記された呪文を読み、《魔導戦士フォルス》の魔力は増幅する。

《ヒュグロの魔導書》
通常魔法
自分フィールド上の魔法使い族モンスター1体を選択して発動できる。
このターンのエンドフェイズ時まで、
選択したモンスターの攻撃力は1000ポイントアップし、
戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、
デッキから「魔導書」と名のついた魔法カード1枚を手札に加える事ができる。
「ヒュグロの魔導書」は1ターンに1枚しか発動できない。

魔導戦士フォルス ATK:1500→2500

「攻撃力2500!?」

「それだけではありません、《魔導戦士フォルス》の効果を発動。 墓地の《グリモの魔導書》をデッキに戻し、このカードのレベルと攻撃力をアップします」

《魔導戦士フォルス》
効果モンスター
星4/炎属性/魔法使い族/攻1500/守1400
1ターンに1度、自分の墓地の
「魔導書」と名のついた魔法カード1枚をデッキに戻し、
フィールド上の魔法使い族モンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターのレベルを1つ上げ、
攻撃力を500ポイントアップする。

魔導戦士フォルス ATK:2500→3000 レベル:4→5

「さあ、バトルです」

「待った、バトルフェイズに入った時に永続罠発動!」

 龍亜がそう宣言すると、彼の場に緑色のネットのようなものが現れる。

「《D・バインド》がある限り、相手はDディフォーマー を攻撃できない! いくら攻撃力が高くても、攻撃できないなら大丈夫だ」

Dディフォーマー・バインド》
永続罠
自分フィールド上に「D(ディフォーマー)」と
名のついたモンスターが存在する限り、
相手フィールド上のレベル4以上のモンスターは
攻撃宣言できず、表示形式の変更もできない。

 そう自信満々に語る龍亜を見て、須藤は溜め息を吐きながら1枚のカードをデュエルディスクに置く。

「まったく、その程度の妨害が私に通じると思っているのですか? 《トーラの魔導書》を発動、このターン《魔導戦士フォルス》は罠カードの影響を受けません」

「そんな!」

 新たな魔導書を手に取り、《魔導戦士フォルス》は結界を展開する。

《トーラの魔導書》
速攻魔法
フィールド上の魔法使い族モンスター1体を選択し、
以下の効果から1つを選択して発動できる。
●このターン、選択したモンスターはこのカード以外の魔法カードの効果を受けない。
●このターン、選択したモンスターは罠カードの効果を受けない。

「ではあらためて、《魔導戦士フォルス》で《D・ステープラン》に攻撃!」

 フォルスは掌から魔力で作られた弾を連射し、ステープランを狙い撃つ。

 そして須藤はサイコデュエリスト、その衝撃は実態となって龍亜を襲う。

「うわぁぁぁぁっ!」

龍亜 LP:4000→2400

 衝撃で吹き飛ばされる龍亜。

 須藤はそれを気にも止めず、デュエルを進めようとする。

魔導戦士フォルス ATK:3000→2700

「《D・ステープラン》の効果ですか。 まあ、どうせ効果を使うなら守備表示の効果を狙うべきでしたけどねえ」

Dディフォーマー・ステープラン》
効果モンスター
星4/地属性/機械族/攻1400/守1000
このカードはこのカードの表示形式によって以下の効果を得る。
●攻撃表示:このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
相手は他のモンスターを攻撃対象に選択できない。
このカードが戦闘によって破壊された場合、
このカードを破壊したモンスターの攻撃力は300ポイントダウンする。
●守備表示:このカードは戦闘では破壊されない。
このカードが攻撃された場合、そのダメージ計算後に相手フィールド上に
表側攻撃表示で存在するモンスター1体を選択して守備表示にし、
このカードの表示形式を攻撃表示にする。

「《ヒュグロの魔導書》で強化されたモンスターがバトルで相手を破壊した時、デッキから他の魔導書を手札に加えます。 私は《グリモの魔導書》を選択」

《セフィルの魔導書
通常魔法
自分フィールド上に魔法使い族モンスターが存在する場合、
このカード以外の手札の「魔導書」と名のついたカード1枚を相手に見せ、
「セフェルの魔導書」以外の自分の墓地の
「魔導書」と名のついた通常魔法カード1枚を選択して発動できる。
このカードの効果は、選択した通常魔法カードの効果と同じになる。
「セフェルの魔導書」は1ターンに1枚しか発動できない。

「まだ終わりませんよ、このカードを発動しましょうか。 フィールド魔法、発動」

 フィールドに轟音が鳴り響き、薄暗く狭い路地の風景が一変する。

 そこに佇むは魔法使い達の英知の結晶。

 巨大な銀色の建造物の周囲には、水色の環が複数浮遊しており神秘的な雰囲気を放っている。

「大いなる魔導書達の眠りし地、《魔導書院ラメイソン》」

《魔導書院ラメイソン》
フィールド魔法
自分フィールド上または自分の墓地に魔法使い族モンスターが存在する場合、
1ターンに1度、自分のスタンバイフェイズ時に発動できる。
「魔導書院ラメイソン」以外の自分の墓地の
「魔導書」と名のついた魔法カード1枚をデッキの一番下に戻し、
デッキからカードを1枚ドローする。
また、このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた時、
自分の墓地の「魔導書」と名のついた魔法カードの数以下の
レベルを持つ魔法使い族モンスター1体を手札・デッキから特殊召喚できる。

「カードを2枚伏せ、私のターンは終了です。 さて、どうします? そもそも起き上がれるんですかねえ?」

 先ほどの攻撃で吹き飛ばされた龍亜を見ながらそう言う須藤。

 龍亜は地面に横たわっているが、須藤の言葉が終わると力を振り絞り起き上がる。

「龍可は俺が守るんだ……起き上がれるに決まっているだろ!」

 龍亜は須藤を睨み、デュエルディスクを構える。

魔導戦士フォルス ATK:2700→1700

「俺のターン、ドロー!」

龍亜 LP:2400
手札:4→5枚
モンスター:無し
魔法&罠:《D・バインド》
須藤 LP:4000
手札:1枚(《グリモの魔導書》)
モンスター:《魔導戦士フォルス》(攻2000)
魔法&罠:《魔導書院ラメイソン》、セット2枚

「来た! 俺は手札のモンスターを墓地に送って、《ワン・フォー・ワン》を発動! デッキから《D・モバホン》を攻撃表示で特殊召喚!」

《ワン・フォー・ワン》
通常魔法
手札からモンスター1体を墓地へ送って発動できる。
手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 携帯電話が変形したロボが龍亜の場に現れた。

「《D・モバホン》の効果発動、ダイヤル、オン!」

 《D・モバホン》の胸にある1から6の数字が、ランダムに点灯する。

 そして、6の目が点灯する。

「よし、6だ! デッキの上から6枚確認し、その中からDを1体特殊召喚できる!」

 龍亜はデッキトップ6枚を確認する。

 その6枚は、《D・ライトン》、《ダブルツールD&C》、《ジャンクBOX》、《D・ボードン》、《ガジェット・トレーラー》、《アームズ・ホール》――

 その中から1枚を選び、デュエルディスクに置く。

「来い、《D・ボードン》!」

Dディフォーマー・モバホン》
効果モンスター
星1/地属性/機械族/攻 100/守 100
このカードはこのカードの表示形式によって以下の効果を得る。
●攻撃表示:サイコロを1回振り、
出た目の数だけ自分のデッキの上からカードをめくる。
その中からレベル4以下の「D(ディフォーマー)」と名のついたモンスター1体を選び、
召喚条件を無視して特殊召喚し、
残りのカードはデッキに戻してシャッフルする。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
●守備表示:サイコロを1回振り、
出た目の数だけ自分のデッキの上からカードを
確認して元の順番でデッキの上に戻す。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

Dディフォーマー・ボードン》
効果モンスター
星3/地属性/機械族/攻 500/守1800
このカードはこのカードの表示形式によって以下の効果を得る。
●攻撃表示:このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
自分フィールド上の「D(ディフォーマー)」と名のついたモンスターは
相手プレイヤーに直接攻撃できる。
●守備表示:このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
このカード以外の自分フィールド上の「D(ディフォーマー)」と名のついたモンスターは
戦闘では破壊されない。

「さらに、《D・スコープン》を召喚!」

Dディフォーマー・スコープン》
チューナー(効果モンスター)
星3/光属性/機械族/攻 800/守1400
このカードはこのカードの表示形式によって以下の効果を得る。
●攻撃表示:1ターンに1度、手札から「D(ディフォーマー)」と名のついた
レベル4モンスター1体を特殊召喚できる。
この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。
●守備表示:このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
このカードのレベルは4になる。

 龍亜の場に3体のDディフォーマーが揃い立つ。

「レベル1《D・モバホン》と《D・ボードン》にレベル3《D・スコープン》をチューニング!」

「なるほど、シンクロ召喚ですか」

「世界の平和を守るため、勇気と力をドッキング! シンクロ召喚! 愛と正義の使者、《パワー・ツール・ドラゴン》!」

 呼び出されたのは、黄色の装甲に身を包んだ機械仕掛けの龍。

 赤く目を光らせ、アームに装着された装備を構えている。

「《パワー・ツール・ドラゴン》の効果発動、パワー・サーチ!」

 龍亜はデッキから3枚のカードを選び出す。

 《ダブルツールD&C》、《巨大化》、《魔導師の力》の3枚。

《パワー・ツール・ドラゴン》
シンクロ・効果モンスター
星7/地属性/機械族/攻2300/守2500
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。
デッキから装備魔法カードを3枚選んで相手に見せ、
相手はその中からランダムに1枚選ぶ。
相手が選んだカード1枚を自分の手札に加え、
残りのカードをデッキに戻す。
また、装備魔法カードを装備したこのカードが破壊される場合、
代わりにこのカードに装備された装備魔法カード1枚を墓地へ送る事ができる。

 そしてそれらのカードは裏側で表示され、須藤が選んだ1枚が手札に加わる。

「今手札に加えた《ダブルツールD&C》を発動! これで《パワー・ツール・ドラゴン》の攻撃力は1000ポイントアップだ!」

 《パワー・ツール・ドラゴン》のアームにドリルとカッターが装着される。

《ダブルツールD&D》
装備魔法
自分フィールド上の「パワー・ツール・ドラゴン」または「D(ディフォーマー)」と
名のついたレベル4以上の機械族モンスターにのみ装備可能。
それぞれのターンで以下の効果を適用する。
●自分のターン:装備モンスターの攻撃力は1000ポイントアップする。
また、装備モンスターが攻撃する場合、
バトルフェイズの間だけ攻撃対象モンスターの効果は無効化される。
●相手のターン:相手は装備モンスター以外のモンスターを攻撃対象に選択できない。
また、装備モンスターが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時、
その相手モンスターを破壊する。

パワー・ツール・ドラゴン ATK:2300→3300

「《パワー・ツール・ドラゴン》で《魔導戦士フォルス》に攻撃! クラフティ・ブレイク!」

 ドリルの一撃が《魔導戦士フォルス》を貫き、須藤にダメージを与える。

「《ガード・ブロック》を発動。 私へのダメージは無効となり、カードを1枚ドロー」

 須藤を包むように展開された障壁は、金属音を鳴らし《パワー・ツール・ドラゴン》の攻撃を弾く。

《ガード・ブロック》
通常罠
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。

「よし! ダメージを与えられなかったけど、モンスターは倒せた! 俺はカードを1枚セットして、ターンエンドだ」

「まったく、この程度で喜ぶとは。 私のターン、ドロー」

龍亜 LP:2400
手札:1枚
モンスター:《パワー・ツール・ドラゴン》(攻2300)
魔法&罠:《D・バインド》、《ダブルツールD&C》、セット1枚
須藤 LP:4000
手札:2→3枚(1枚は《グリモの魔導書》)
モンスター:無し
魔法&罠:《魔導書院ラメイソン》、セット1枚

「《魔導書院ラメイソン》の効果発動。 墓地の《ヒュグロの魔導書》をデッキに戻し、カードを1枚ドロー」

《魔導書院ラメイソン》
フィールド魔法
自分フィールド上または自分の墓地に魔法使い族モンスターが存在する場合、
1ターンに1度、自分のスタンバイフェイズ時に発動できる。
「魔導書院ラメイソン」以外の自分の墓地の
「魔導書」と名のついた魔法カード1枚をデッキの一番下に戻し、
デッキからカードを1枚ドローする。
また、このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた時、
自分の墓地の「魔導書」と名のついた魔法カードの数以下の
レベルを持つ魔法使い族モンスター1体を手札・デッキから特殊召喚できる。

「あのフィールド魔法がある限り毎ターン追加でドローしてくるのか……!」

「このカードを特殊召喚しましょう。 《ジェスター・コンフィ》は、手札から攻撃表示で特殊召喚できます」

 場に呼び出されたのは、玉乗りをする丸いピエロ。

《ジェスター・コンフィ
効果モンスター
星1/闇属性/魔法使い族/攻   0/守   0
このカードは手札から表側攻撃表示で特殊召喚できる。
この方法で特殊召喚した場合、次の相手のエンドフェイズ時に
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、
そのモンスターと表側表示のこのカードを持ち主の手札に戻す。
「ジェスター・コンフィ」は自分フィールド上に1体しか表側表示で存在できない。

「攻撃力0のモンスター?」

「さらに装備魔法《ワンダー・ワンド》を《ジェスター・コンフィ》に装備。 攻撃力は500アップします」

ジェスター・コンフィ ATK:0→500

「攻撃力0? そんなモンスターじゃ俺の《パワー・ツール・ドラゴン》には届かない!」

「まったく、勘違いも甚だしいものです。 《ワンダー・ワンド》のもう一つの効果、装備したモンスターを墓地に送り、2枚ドローします」

《ワンダー・ワンド
装備魔法
魔法使い族モンスターにのみ装備可能。
装備モンスターの攻撃力は500ポイントアップする。
また、自分フィールド上のこのカードを装備したモンスターと
このカードを墓地へ送る事で、デッキからカードを2枚ドローする。

「そっか、ドローが狙いだったのか!」

「良いカードが舞い込んできましたねえ。 私は《エフェクト・ヴェーラー》を攻撃表示で召喚」

 須藤が呼び出したのは水色の髪の女性モンスター。

 先ほどの《ジェスター・コンフィ》と同様、戦闘能力は皆無である。

《エフェクト・ヴェーラー
チューナー(効果モンスター)
星1/光属性/魔法使い族/攻   0/守   0
このカードを手札から墓地へ送り、
相手フィールド上の効果モンスター1体を選択して発動できる。
選択した相手モンスターの効果をエンドフェイズ時まで無効にする。
この効果は相手のメインフェイズ時にのみ発動できる。

「また攻撃力0のモンスターか」

「次のカードはこれです、《魔導書廊エトワール》は魔導書が発動される度に魔力カウンターが溜まり、全ての魔法使いは一つにつきその100ポイントの攻撃力を上げるカードです」

《魔導書廊エトワール
永続魔法
このカードがフィールド上に存在する限り、
自分または相手が「魔導書」と名のついた魔法カードを発動する度に、
このカードに魔力カウンターを1つ置く。
自分フィールド上の魔法使い族モンスターの攻撃力は、
このカードに乗っている魔力カウンター数×100ポイントアップする。
また、魔力カウンターが乗っているこのカードが破壊され墓地へ送られた時、
このカードに乗っていた魔力カウンターの数以下のレベルを持つ
魔法使い族モンスター1体をデッキから手札に加える事ができる。

「続いて《グリモの魔導書》を発動、デッキから《ヒュグロの魔導書》を手札に加えます」

《グリモの魔導書》
通常魔法
デッキから「グリモの魔導書」以外の
「魔導書」と名のついたカード1枚を手札に加える。
「グリモの魔導書」は1ターンに1枚しか発動できない。

「魔導書を使用したので《魔導書廊エトワール》に魔力カウンターが溜まります」

魔導書廊エトワール 魔力カウンター:0→1

「先ほど見せた《ネクロの魔導書》を発動。 手札の《ヒュグロの魔導書》を公開、墓地の《ジェスター・コンフィ》をゲームから除外し発動条件をクリア。 墓地の《魔導戦士フォルス》を特殊召喚、除外した《ジェスター・コンフィ》のレベル1を《魔導戦士フォルス》に追加します」

 魔法使いを蘇らせ、そのレベルを上昇させる《ネクロの魔導書》により、《魔導戦士フォルス》は復活を果たす。

《ネクロの魔導書》
装備魔法
自分の墓地の魔法使い族モンスター1体をゲームから除外し、
このカード以外の手札の「魔導書」と名のついた
魔法カード1枚を相手に見せて発動できる。
自分の墓地の魔法使い族モンスター1体を選択して
表側攻撃表示で特殊召喚し、このカードを装備する。
また、装備モンスターのレベルは、
このカードを発動するために除外した
魔法使い族モンスターのレベル分だけ上がる。
「ネクロの魔導書」は1ターンに1枚しか発動できない。

魔導戦士フォルス レベル4→5

魔導書廊エトワール 魔力カウンター:1→2

「さて、これで準備は整いました。 レベル5となった《魔導戦士フォルス》にレベル1の《エフェクト・ヴェーラー》をチューニング!」

「そうか、シンクロ召喚が狙いだったんだ!」

「白き魔導士よ! その手で燃え猛る爆炎を掴み、大いなる魔導の力を示せ! シンクロ召喚!」

 現れるは、白き衣装に身を包んだ上級魔法使い。

「《エクスプローシブ・マジシャン》!」

《エクスプローシブ・マジシャン》
シンクロ・効果モンスター
星6/光属性/魔法使い族/攻2500/守1800
チューナー+チューナー以外の魔法使い族モンスター1体以上
自分フィールド上の魔力カウンターを2つ取り除いて発動できる。
相手フィールド上の魔法・罠カード1枚を選択して破壊する。

「《エクスプローシブ・マジシャン》の効果発動、《魔導書廊エトワール》の魔力カウンターを二つ使い、《パワー・ツール・ドラゴン》に装備された《ダブルツールD&C》を破壊します!」

 《エクスプローシブ・マジシャン》は手を掲げると、エトワールより魔力が流れこむ。

魔導書廊エトワール 魔力カウンター:2→0

「爆ぜろ、魔導爆雷光!」

 魔法使いの掌より放たれる魔導弾は、《ダブルツールD&C》へ向かい、爆発を起こす。

「そんな、《ダブルツールD&C》が!」

「これでその機械竜の持つ破壊耐性は消え失せましたねえ。 よってこのカードも活用できそうです、《ヒュグロの魔導書》を発動」

エクスプローシブ・マジシャン ATK:2500→3500

《ヒュグロの魔導書》
通常魔法
自分フィールド上の魔法使い族モンスター1体を選択して発動できる。
このターンのエンドフェイズ時まで、
選択したモンスターの攻撃力は1000ポイントアップし、
戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、
デッキから「魔導書」と名のついた魔法カード1枚を手札に加える事ができる。
「ヒュグロの魔導書」は1ターンに1枚しか発動できない。

魔導書廊エトワール 魔力カウンター:0→1

「さらにエトワールによる強化です」

エクスプローシブ・マジシャン ATK:3500→3600

《魔導書廊エトワール
永続魔法
このカードがフィールド上に存在する限り、
自分または相手が「魔導書」と名のついた魔法カードを発動する度に、
このカードに魔力カウンターを1つ置く。
自分フィールド上の魔法使い族モンスターの攻撃力は、
このカードに乗っている魔力カウンター数×100ポイントアップする。
また、魔力カウンターが乗っているこのカードが破壊され墓地へ送られた時、
このカードに乗っていた魔力カウンターの数以下のレベルを持つ
魔法使い族モンスター1体をデッキから手札に加える事ができる。

「さあ、《エクスプローシブ・マジシャン》の攻撃と行きましょうか! 穿て、魔導爆閃光!」

 《エクスプローシブ・マジシャン》は右手を《パワー・ツール・ドラゴン》に向けると、そこからレーザーのようなものが放たれる。

 そのレーザーは《パワー・ツール・ドラゴン》の胸部に命中すると、大爆発を引き起こした。

「うわあああああああああっ!!」

龍亜 LP:2400→1100

 爆発とともに、叫び声があがる。

 爆発で巻き上がった煙で様子は見えないが、須藤は龍亜に声をかける。

「さっさとサレンダーしなさい、私と君では根本的に立っている場所が違う、どう足掻いたところで君は私に届かないんですよ。 さあ、さっさと諦めて逃げたら……」

「……だ」

 煙の向こうから聞こえるかすかな声。

「嫌だ! 俺は、サレンダーなんかしない! 龍可を見捨てて逃げるなんてこと、龍可のヒーローがするわけないんだ!」

 龍亜の声と共に、雄叫びを上げる機械竜――《パワー・ツール・ドラゴン》!

「何!? 《パワー・ツール・ドラゴン》が、何故!?」

「へへ、俺は《エクスプローシブ・マジシャン》の攻撃時にこのカードを発動していたのさ」

 龍亜に場には、新たに1枚の罠カードが表になっている。

《ゲットライド!》
通常罠
自分の墓地に存在するユニオンモンスター1体を選択し、
自分フィールド上に表側表示で存在する装備可能なモンスターに装備する。

「このカードで墓地の《オイルメン》を装備し、《パワー・ツール・ドラゴン》の身代わりにしたんだ」

《オイルメン》
ユニオンモンスター
星2/地属性/機械族/攻 400/守 400
1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に装備カード扱いとして
自分フィールド上の機械族モンスターに装備、
または装備を解除して表側攻撃表示で特殊召喚できる。
この効果で装備カード扱いになっている場合のみ、
装備モンスターが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、
デッキからカードを1枚ドローする。(1体のモンスターが装備できるユニオンは1枚まで。
装備モンスターが破壊される場合、代わりにこのカードを破壊する。)

「いつの間にそんなカードを墓地に……そうか! 《ワン・フォー・ワン》のコストで!」

「どうだ! これが俺と《パワー・ツール・ドラゴン》の力だ!」

「下らない悪あがきを……私はこれでターンエンドです」

龍亜 LP:1100
手札:1枚
モンスター:《パワー・ツール・ドラゴン》(攻2300)
魔法&罠:《D・バインド》、《ダブルツールD&C》
須藤 LP:4000
手札:無し
モンスター:《エクスプローシブ・マジシャン》(攻2600)
魔法&罠:《魔導書院ラメイソン》、《魔導書廊エトワール》(魔力カウンター:1)、セット1枚

「よし、俺のターンだ! 《パワー・ツール・ドラゴン》の効果発動! パワー・サーチ!」 

「クッ……《パワー・ツール・ドラゴン》は毎ターン装備カードを補充できるモンスター。 維持させると厄介ですね……」

 このターン選んだのは《パワー・ピカクス》、《巨大化》、《魔導師の力》の3枚。

《パワー・ツール・ドラゴン》
シンクロ・効果モンスター
星7/地属性/機械族/攻2300/守2500
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。
デッキから装備魔法カードを3枚選んで相手に見せ、
相手はその中からランダムに1枚選ぶ。
相手が選んだカード1枚を自分の手札に加え、
残りのカードをデッキに戻す。
また、装備魔法カードを装備したこのカードが破壊される場合、
代わりにこのカードに装備された装備魔法カード1枚を墓地へ送る事ができる。

 その中の1枚が龍亜の手札に加わり、そしてすぐに発動する。

「装備魔法《パワー・ピカクス》を発動!」

 《パワー・ツール・ドラゴン》はアームに装着されたツルハシで地面を叩き、亀裂が生まれる。

「これは私の……!?」

 亀裂より現れたのは《魔導戦士フォルス》。

「お前の墓地の《魔導戦士フォルス》を除外し、《パワー・ツール・ドラゴン》の攻撃力は500ポイントアップだ!」

 《魔導戦士フォルス》は光となって消滅すると、その光は《パワー・ツール・ドラゴン》に吸い込まれる。

《パワー・ピカクス》
装備魔法
1ターンに1度、装備モンスターのレベル以下のレベルを持つ、
相手の墓地に存在するモンスター1体を選択してゲームから除外し、
エンドフェイズ時まで装備モンスターの攻撃力を500ポイントアップする事ができる。

パワー・ツール・ドラゴン ATK:2300→2800

「私の《エクスプローシブ・マジシャン》の攻撃力を越えて来ましたか……!」

「行け、《パワー・ツール・ドラゴン》! 《エクスプローシブ・マジシャン》に攻撃だ、クラフティ・ブレイク!」

 《エクスプローシブ・マジシャン》は両手を前に突き出し、六角形の防壁を展開する。

 《パワー・ツール・ドラゴン》は勢い良く突進し、防壁に《パワー・ピカクス》を叩きつける。

 金属音が鳴り響き、防壁にヒビが入る。

 すかさず《パワー・ピカクス》をもう一度振り下ろす《パワー・ツール・ドラゴン》。

 その一撃は、防壁ごと《エクスプローシブ・マジシャン》を破壊した。

須藤 LP:4000→3800

「この私に……ダメージを……!」

「よし! 俺はカードを1枚セットしてターンエンドだ!」

 ターンを終了した龍亜は、須藤の様子がおかしいことに気がつく。

「まったく……正直言って、龍可さんを総帥の手土産にするとか、冗談半分で言っただけでしてねえ。 どうでもよかったんですよ……」

 そう言い終わって溜め息をつくと、須藤の目付きが鋭くなる。

「ですが! 龍亜君、あなたという存在は正直言って不愉快なんですよ! おとなしく引いていればいいものを私に抗うとは……なら、徹底的に叩き潰してあげるとしましょう」

「……!」

 龍亜はすぐに須藤の纏う雰囲気が先ほどとは違うことに気がつく。

「私のターン、ドロー!」

龍亜 LP:1200
手札:1枚
モンスター:《パワー・ツール・ドラゴン》(攻2300)
魔法&罠:《D・バインド》、《パワー・ピカクス》、セット1枚
須藤 LP:3800
手札:0→1枚
モンスター:無し
魔法&罠:《魔導書院ラメイソン》、《魔導書廊エトワール》(魔力カウンター:1)

「《魔導書院ラメイソン》の効果発動。 墓地の《グリモの魔導書》をデッキに戻し、カードを1枚ドロー」

《魔導書院ラメイソン》
フィールド魔法
自分フィールド上または自分の墓地に魔法使い族モンスターが存在する場合、
1ターンに1度、自分のスタンバイフェイズ時に発動できる。
「魔導書院ラメイソン」以外の自分の墓地の
「魔導書」と名のついた魔法カード1枚をデッキの一番下に戻し、
デッキからカードを1枚ドローする。
また、このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた時、
自分の墓地の「魔導書」と名のついた魔法カードの数以下の
レベルを持つ魔法使い族モンスター1体を手札・デッキから特殊召喚できる。

「罠発動、《ロスト・スター・ディセント》! 墓地のシンクロモンスター《エクスプローシブ・マジシャン》をレベルを下げ特殊召喚!」

 須藤の場に、先ほど破壊された白衣の魔導士が復活する。

《ロスト・スター・ディセント》
通常罠
自分の墓地に存在するシンクロモンスター1体を選択し、
自分フィールド上に表側守備表示で特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、
レベルは1つ下がり守備力は0になる。
また、表示形式を変更する事はできない。

エクスプローシブ・マジシャン DEF:1800→0 レベル:6→5

「《エクスプローシブ・マジシャン》をリリース!」

 白衣の魔導士が消え、フィールドに黒衣の魔導士が現れる。

 鎌を手に持ち、禍々しい黒衣に身を包む姿はまさに死神。

「黒衣纏いし死神、《魔導冥士ラモール》!」

「上級モンスターか……!」

「《魔導冥士ラモール》は召喚時、墓地の魔導書の数に応じた効果を使えます。 私の墓地に魔導書は5枚、よって全ての効果が適用されます」

須藤の墓地の魔導書
《魔導書庫クレッセン》
《セフィルの魔導書》
《トーラの魔導書》
《ネクロの魔導書》
《ヒュグロの魔導書》

《魔導冥士ラモール
効果モンスター
星6/闇属性/魔法使い族/攻2000/守1600
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。
自分の墓地の「魔導書」と名のついた魔法カードの種類によって以下の効果を適用する。
「魔導冥士 ラモール」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
●3種類以上:このカードの攻撃力は600ポイントアップする。
●4種類以上:デッキから「魔導書」と名のついた魔法カード1枚を手札に加える。
●5種類以上:デッキから魔法使い族・闇属性・レベル5以上のモンスター1体を特殊召喚する。

「3種類以上により、自身の攻撃力を600ポイントアップ!」

魔導冥士ラモール ATK:2000→2600

「4種類以上により、デッキから《ゲーテの魔導書》を手札に! そして5種類以上により、デッキから《闇紅の魔導師ダークレッド・エンチャンター》を特殊召喚!」

 《魔導冥士ラモール》の隣にダークレッドの衣装を纏った魔法使いが召喚される。

闇紅の魔導師ダークレッド・エンチャンター
効果モンスター
星6/闇属性/魔法使い族/攻1700/守2200
このカードが召喚に成功した時、
このカードに魔力カウンターを2つ置く。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
自分または相手が魔法カードを発動する度に、
このカードに魔力カウンターを1つ置く。
このカードに乗っている魔力カウンター1つにつき、
このカードの攻撃力は300ポイントアップする。
1ターンに1度、このカードに乗っている魔力カウンターを
2つ取り除く事で、相手の手札をランダムに1枚捨てる。

「上級魔法使いが2体も!?」

「そして、この2体の高レベル魔法使いをリリース!」

 2体の黒き魔導士は渦に包まれ、消滅する。

「来なさい、魔導を統べる漆黒の神官! 《黒の魔法神官》!」

 フィールドに顕現するのは、黒い衣装をその身に纏った魔法使い。

 緑色の杖を手に持ち、魔法使いらしい王道的で洗練された衣装。

 そこから放たれる威圧感は、彼が最上位の魔法使いたることを物語る。

黒の魔法神官マジック・ハイエロファント・オブ・ブラック
効果モンスター
星9/闇属性/魔法使い族/攻3200/守2800
このカードは通常召喚できない。
自分フィールド上のレベル6以上の魔法使い族モンスター2体を
リリースした場合のみ特殊召喚できる。
また、このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
罠カードが発動した時、その罠カードの発動を無効にし破壊できる。

「これが須藤の切り札……!」

 目の前に佇む最上位魔導士の威圧感に、龍亜は息を飲む。

 須藤は不敵に笑い、手札のカードを右手に持つ。

「さあ、終幕と行きましょうか。 私は……」

「龍亜!」

 須藤の言葉を遮るように、男の声が路地に響く。

「大丈夫か龍亜!」

「この男は一体……!」

「まずいな、龍可ちゃんの意識が無いみたいだ」

 現れる三人の青年。

「クロウ、ブルーノ、それに雑賀のおっちゃん!?」

 援軍の登場に驚く龍亜。

「おやおや、面倒なことになって来ましたね」

 そう言う須藤に対し、クロウは怒鳴り声をぶつける。

「龍亜と龍可をこんな目に合わせやがって、なんだお前は!」

「随分と嫌われたものですねえ。 ……さすがにこの人数は相手をしてられませんし、撤退と行きましょうか」

「テメエ……逃がすか!」

 跳びかかるクロウに対し、須藤は手を掲げる。

「さあ、やりなさい」

 すると《黒の魔法神官》が魔導弾を全方位に放ち、辺りを破壊する。

「ぐあっ、何だこりゃ!」

 高威力で実体化した魔導弾。

 その力に吹き飛ばされるクロウ、龍亜と龍可をかばうブルーノと雑賀。

 そしてその衝撃で辺りに煙が立ち込める。

「では、機会があればまた会いましょうか」

 そう言い残し、須藤はその場を立ち去った。

「ゲホッ、アイツはどこ行った」

 煙はすぐに晴れたが、そこに須藤の姿は居ない。

「逃げたみたいだね」

「あの制服はこの街のデュエルアカデミアのものだな」

「それよりも龍亜と龍可を病院に連れてかねえと。 ブルーノ、このことを遊星たちに伝えてくれ!」












 ――ネオドミノシティ、病院

 ――15:35

「龍亜! 龍可!」

 勢い良く扉を開け、病室に入る青年――不動遊星。

 その後ろにはジャック・アトラスも続く。

「遊星、ジャック!」

 遊星はそれぞれベッドで寝ている龍亜と龍可を確認すると、クロウに質問をする。

「クロウ、龍亜と龍可は大丈夫なのか?」

「医者の話だと、命に別条はないが二人とも安静にすべきだと。 龍可の方が重症らしくて、さっきから目覚めねえ」

「そうか……」

 遊星は少し落ち込んだ声でそう答える。

「まあ、命に別条は無いというのが不幸中の幸いだ」

「ジャックの言う通りだ。 先生の話だと龍可ちゃんもすぐ意識を取り戻すだろうし、一週間もすれば退院できるそうだと」

「雑賀、お前も来ていたのか」

「ああ、クロウとブルーノから十六夜アキの行方不明を聞いてな、気になって付いて来たってわけだ」

「それよりもどこのどいつだ、龍亜と龍可をこんな目に合わせたのは!」

 怒りを顕にするジャックに、目を覚ました龍亜が答える。

「須藤洋一……デュエルアカデミア高等部二年生の主席で……、アキ姉ちゃんに並ぶ実力って言われている人だよ」

 所々かすれた声でそう説明する龍亜。

「龍亜、無理をしないほうがいい」

「これくらい、大丈夫……それと、その須藤は……サイコデュエリストだったんだ」

「ククク……やはり繋がったか」

 龍亜がそう言い終わると、病室の扉の向こうから青年の笑い声が響く。

 病室にいるメンバー――遊星、ジャック、クロウ、ブルーノ、雑賀、龍亜は扉の方を向く。

 最も、遊星とジャックに関しては声の主を知っているのだが。

「十六夜アキの行方不明にサイコデュエリストの登場、そしてこの俺に舞い込んだ仕事――なんとまあ綺麗に点と点が繋がっていくじゃねえか」

「ええ、もしかしたら今日中に仕事を終わらせることができるかもしれませんね」

 扉から入ってきたのは黒髪の青年と銀髪の少女の二人組。

「驚いたな……まさかお前たちが現れるとは」

 そう声を上げたのは雑賀だった。

「よう、久しぶりじゃねえか、雑賀。 なんでも旧サテライト地区で孤児院に引越したんだってな、流石は何でも屋ってところか?」

「ま、こっちも色々と思うところがあってな。 俺からすればお前が遊星と一緒にいた事の方が驚きだがな――壊し屋」

 雑賀がそう言うと、初対面のクロウと龍亜は驚愕する。

「ええ!?」

「壊し屋ぁ!? 壊し屋ってあの、パズルシティのか!?」

 仰天するクロウと龍亜の様子を見て、ブルーノが質問する。

「壊し屋? クロウと龍亜は何か知っているの?」

「壊し屋って言えばパズルシティに出没する極悪非道なD・ホイーラーで、金次第で仕事を請け負いD・ホイーラーをクラッシュさせていく血も涙も無え悪魔だって噂だぜ」

 ブルーノの疑問にクロウがそう答えると、ソーガが溜め息をつく。

「ったく、噂ってのは尾ひれだと背びれだのが付きまとうもんだなあ。 金を積まれようと気に喰わねえ仕事は請け負わねえし、悪魔じゃなくて血も涙もある人間だぜ」

「……他の部分は否定しねえのか」

 こんな男を病室に入れて大丈夫なのか心配になってくるクロウ。

「変わった男だが、デュエリストとして信頼出来る。 デュエリストとしては」

「……本当に大丈夫なのか?」

 遊星がそう付け加えたことで、渋々納得するクロウ。

「それでどうして壊し屋が……」

「ソーガ・ダイモンだ、こっちは助手のセーナ・クロエ。 あんまり公共の場で壊し屋とか連呼するな」

「あ、うん。 それでどうして遊星と一緒に?」

「ダイモンエリアで遊星と会ってな、いろいろあって十六夜アキの話を聞いて、こちらの仕事と関連してそうだから協力することになった。 で、お前たちから連絡が来て病院に来たって訳だ」

 ソーガはブルーノの質問にそう答えながら、近くにある椅子に座り足を組む。

「さっきも言っていたけど、その仕事ってなんなんだ」

「そうだな……顧客のプライバシーは厳守するのが基本だが、この依頼は場合によっては依頼者の名を出して事情を話して構わないって話なんだよなあ。 この一件にすでに十六夜アキやその仲間が関わっていたら、自分の名前を出していいから力になってくれってよ」

 クロウの質問に少し考えてから、そう返答する。

「まず今回の依頼だが、依頼者はミスティ・ローラだ。 知っているか?」

 ソーガの出したその名前にすでに話を知っている遊星とジャック、そしてそもそもミスティをよく知らなかったブルーノ以外の全員が反応する。

「ミスティだと!? どうしてミスティがお前に依頼を!?」

「やっぱりほとんどご存知か。 で、その依頼内容なんだが、聞けばお前らは賛同するかはともかく納得はしてくれるってミスティ本人が言ってたぜ」

 ソーガは一呼吸おいて、話を続ける。

「今回の依頼はターゲットを壊すこと。 アルカディア・ムーブメント総帥――ディヴァインを、な」

「ディヴァインだって!?」

 予想もしなかった名前の登場に、驚くクロウ、龍亜、雑賀。

 特に龍亜はディヴァインの名に強く反応した。

「そっか、ミスティの弟はディヴァインに殺されたって言ってたよね。 けど、アイツは《地縛神Ccarayhua》に飲み込まれちゃったはず」

 疑問に思う龍亜とクロウ。

「おそらく、ディヴァインは物理的に捕食されたのではなく魂を吸収されただけだったのだろう」

「そして地縛神を倒したことでヤツは解放され、今まで隠れ潜んでいたんだろう」

「なるほどな……」

 遊星とジャックの推測により、クロウ達は納得する。

「それならサイコデュエリストの須藤は、ディヴァインの手下だってことだね。 総帥って言っていたけど、それはディヴァインのことだったんだ」

「ククク……飲み込みがいいじゃねえか、確か龍可だったかな? フォーチュンカップで見たぜ」

「龍可はこっち、俺は龍可の双子の兄の龍亜だよ」

「双子の兄がいたのか」

 龍亜との話をひとまず置き、ソーガは話を続ける。

「そして十六夜アキの行方不明もおそらく繋がっている。 アイツは元アルカディア・ムーブメントのメンバーだろう。 その繋がりが原因で連れ去られたんだろう」

「なるほど、そういうことか。 これで全部繋がったってことか」

「いや、まだピースは欠けているんだなあ、これが」

 クロウの言葉に対し、残念そうな声でソーガはそう答える。

「なんだよ、欠けているピースって」

「ヤツらがどこにいるか、だよ。 居所が分からなければ殴りこみもできねえ。 ディヴァインがダークシグナーやら地縛神やらの事件の後、どうやって潜伏していたのかも繋がっているはずだ」

 そう言うソーガに対し、クロウ、ブルーノ、雑賀はあることに気づく。

「雑賀、もしかしたら……」

「なるほど、そういうことか……」

「ん? どうしたお前ら……?」

「少し気になる話があってな」

 雑賀は少し前にクロウとブルーノにも伝えた、セイリオス・カンパニーに関する情報を伝えた。

「セイリオス・カンパニーの若手の反発……ソーガさん、これって」

「ああ、間違いねえ。 思い出せば、遊星とあう直前に問い詰めていた不審な男もセイリオス・カンパニーの若手だったのかもな。 全く、どこまでも忌まわしい親父だぜ」

 不愉快そうな表情で溜め息をつくソーガ。

「ソーガ、何か分かったのか?」

「おそらく、ディヴァインはセイリオス・カンパニーに潜んでいる」

「どういうことだ」

「セイリオス・カンパニーとアルカディア・ムーブメント、この二つの組織はある共通の存在と繋がっているのさ」

 そう言うソーガと、側のセーナの表情はどことなく不機嫌だ。

「俺の忌まわしき父親――大門総魔が従える大門コーポレーションと協力関係にあった」

「大門コーポレーション……お前の父親はあの大門コーポレーションのトップだったのか。 だが、その二つの組織と繋がりがあるということは……」

「セイリオス・カンパニー同様、大門コーポレーションも実態は真っ黒だ。 それも、デュエルマフィア程度のセイリオス・カンパニーとは格が違う」

 息を飲む遊星達。

「そうだな、あのクソ親父について分かってもらうには見てもらうのが手っ取り早いか」

 上着を放り投げ、シャツを脱ぐソーガ。

 裸になった上半身に刻まれているのは、無数の傷跡。

 切り傷や縫い傷、痣として残っているものもある。

「なんだこれ……拷問の痕か!?」

「ひでえ……」

 その痛々しい傷跡に言葉を失う周囲。

 セーナも悲しげな表情で傷跡を見る。

「コイツはほとんど俺の小学生時代にクソ親父から刻まれた傷でなあ。 自分の息子をいたぶるのが趣味の変態野郎だ」

「……なるほど、お前の父親のことはよく分かった」

 遊星は静かにそう答える。

「よし、話を戻そう。 セーナ、服取ってくれ」

 セーナから渡されたシャツを着ながら、ソーガは話を続ける。

「大門コーポレーションは昔から続く企業だが、あのクソ親父がトップになってからは大幅に路線を切り替えてな。 非合法な闇市場から裏デュエル大会の運営、果ては人体実験までやりたい放題だ。 ま、表側は健全な企業としてバレずにカモフラージュしてた辺り抜け目がねえがな」

「だが、大門コーポレーションは確か4年前に倒産したはず」

 ネクタイを緩めに締めると、ソーガは話を続ける。

「ああ、4年前に俺があのクソ親父を葬ってやったからなあ。 アイツの手腕と妙なカリスマがあってこそ成り立っていた組織なわけだし、それがいきなり行方不明にでもなってしまえば後は空中分解だ。 裏側の業務を担っていた連中どもは上手いこと親父の使ってた組織を活用していたが、それも俺が地道に潰して行ってるから今ではほとんど残ってねえな」

「そんなことがあったのか……」

「おおっと、俺がクソ親父を葬ったなんてことは証拠も死体も残ってねえ以上は俺の妄言みたいな物だ、深く気にするなよ」

 コートを羽織りながら、ソーガはそう付け加える。

「アルカディア・ムーブメントとセイリオス・カンパニーは共に大門総魔と組んでいた、だからその二つが繋がっている可能性は高い、ということか」

「確定というわけではないが、おそらくそうだろうな。 アルカディア・ムーブメントで行われた人体実験はクソ親父が立案して機材を配備したものが多いらしいし、セイリオス・カンパニーに関してもネオドミノシティ方面に市場を確保するために大門コーポレーションの幹部が立ち上げた子会社みたいなものだ。 どっちもクソ親父との繋がりは強い」

 ソーガはそう言い終わり、服をキッチリ着直し終えた。

「最近になってセイリオス・カンパニーの若手が反発しているのはよくわからない部分だが、もしかしたらディヴァインがセイリオス・カンパニー内である程度の権限を持っているのが気に食わないとかだろ」

「そうと分かればセイリオス・カンパニーの防犯システムにハッキングをしかけ、内部の映像を見てみよう。 もしかしたらアキが見つかもしれない」

「ハッキング用の端末はどうする?」

「俺達のガレージに向かおう、その手のものは一通り揃っている」

 話をまとめると遊星とソーガは立ち上がる。

「遊星、俺も連れてってよ」

 そう遊星に言うのは、龍亜。

「龍亜、アキのことは俺達に任せてくれ。 お前は龍可を守るために戦い、サイコデュエリスト須藤の情報を教えてくれた。 十分やってくれた」

 龍亜の頭を撫でながら、遊星はそう笑いかける。

「遊星……」

「そうだぜ、龍亜! 後は俺達に任せとけって」

「このジャック・アトラスの手にかかればサイコデュエリストなど一捻りだ。 すぐに済む」

 クロウとジャックが龍亜にそう言う中、ソーガとセーナは小声で会話している。

「なあセーナ、こういう時はなんて言うべきだろうな」

「うーん、私たちは特に何も言わなくてもいい気が……」

「だからこそ、何か言ってみたいんだが」

 そんな会話をしているうちに龍亜とのやり取りも終わったようだ。

「……うん、分かったよ。 俺は龍可の側に付いてるよ。 だから、みんなにアキ姉ちゃんのこと、助けてきて」

「あ、完全にタイミング逃しちまった」

 そう小さく呟くソーガ。

「ああ、任せてくれ。 みんな、ガレージに向かおう。」









 ――ネオドミノシティ、ダイモンエリア、セイリオス・カンパニー最上階

 ――15:50

 トントン、と扉をノックする音。

 椅子に座った男は「入れ」と手短に返す。

「只今戻りました、総帥」

「お前か、須藤」

 自動ドアが入り、眼鏡を掛けた緑髪の学生――須藤が入る。

「早速報告したいことが。 十六夜先輩のお仲間と交戦しました」

「何!? 不動遊星か?」

 総帥と呼ばれた男の表情が変わる。

「いえ、龍亜という少年です」

「ああ、あの子か。 お前のことだ、始末はしてきたんだろう」

「残念ながら、途中でクロウ・ホーガンを含む3名の男が乱入してきましてね。 不動遊星やジャック・アトラスはいませんでしたが、あの人数は厄介なので撤退ました」

「なるほど、まあ判断としては悪くない」

「これで私達の存在があちらに露呈したでしょうね」

「構わんさ。 どうせこの場所は見つけられんだろうし、見つけたところでここまで辿り着くことすらできん」

 総帥は静かに笑うと、目線を右手にある壁に向ける。

 そこには手足を鎖で繋がれ磔にされた赤髪の少女の姿。

「さて、そろそろ起こしてあげよう」

 そういうとディヴァインは壁に近づき、アキの顔を掴む。

「さあ、アキ。 起きるんだ」

「んん……」

 アキと呼ばれた少女は見を開き、当たりを確認する。

「……ディヴァイン!? ディヴァインなの!?」

 ディヴァインの姿を確認すると、驚いた様子を見せ彼に向け歩こうとする――が、両手足の鎖がそれを妨害する。

「……? 何、これはどういうことなの? ディヴァイン!?」

「落ち着くんだ、アキ。 すぐに君を開放してあげるから、話を聞くんだ」

 アキをなだめるようにそう語るディヴァイン。

「そうだな……まず、私のことから話すべきか。 私がミスティの地縛神に食べられたことは覚えているかい」

「ええ、覚えているわ」

「私は地縛神に魂を吸収された……だが地縛神が倒されたことで私は解放され、無事に戻ってこれたのだ。 それから一年以上セキュリティから身を隠し、密かにアルカディア・ムーブメントの復活を目指していたんだ」

 アルカディア・ムーブメント、その単語が出てきた瞬間アキの表情が変わる。

「ディヴァイン! まさかまた非道な実験をするつもりなの!?」

「非道な実験か、正直私としても同胞を実験体に使うのは心苦しいのだが、サイコデュエリストの未来の為に……」

「……あんなこと、許されないわ。 ミスティの弟、トビーを死に至らしめるような実験……それだけじゃない、あなたがアルカディア・ムーブメントのサイコデュエリストに行なってきた仕打ちは」

「随分と嫌われたものですねえ、総帥」

 二人の様子を見ていた須藤はそう言いながら会話に割って入る。

「あなたは須藤君……そうだわ、今朝あなたに呼び出されてその後……」

「その後に後部から衝撃を受け気を失い、今に至ると」

「……あなたもサイコデュエリストだったのね。 気が付かなかったわ」

「私はサイコデュエリストとしては例外的な存在らしく、発現時から能力を自在にコントロール出来ましてねえ。 私がサイコデュエリストであるということは最近このアルカディア・ムーブメントに加入するまで誰にも知られていないんですよ」

 須藤はそう語り終わると、背後の椅子に向かう。

「総帥、お話の続きをどうぞ」

「ああ。 といってもすぐに終わるだろう」

 ディヴァインはアキの近くに顔を寄せ、右手をアキの顔の輪郭に沿うように付ける。

「アキ、アルカディア・ムーブメントに戻ってきてくれ。 また私とともにサイコデュエリストの理想郷アルカディアのため、戦おうじゃないか」

 アキは数秒黙りこみ、そして答えを返す。

「ディヴァイン、それはできないわ」

 意思のこもった瞳を向け、アキは強くそう返答する。

「確かにあなたは私に居場所を与えてくれた恩人だわ。 けど、私はあなたの非道なやり方に賛同できない」

 その言葉を聞いたディヴァインは、大きく溜め息をつく。

「残念だよ、アキ」

 そう言うと須藤は椅子から立ち、アキに向かう。

「手足を拘束された状態で察すればいいものを、馬鹿な人です。 しばらく眠ってくださいね、十六夜先輩」

 須藤は素早くアキの腹部に打撃を入れる。

 そして――

「がっ!」

 アキは静かに意識を失った。

「断られてしまいましたね、総帥」

「構わんさ、アキには別の利用価値がある」

「別の利用価値、ですか」

彼ら・・後二時間もしないうちに来る、その時に分かるさ」

「……? 彼らとは?」

「いずれ分かるさ、いずれな……」

















 ――ネオドミノシティ、ポッポタイムのカレージ

 ――16:00

「よし、成功だ」

 手元のノートパソコンを操作している遊星はそう言った。

「これでセイリオス・カンパニーの防犯カメラの映像を確認することができる」

「流石は遊星だな」

「大した腕前だな。 セーナといい勝負かもしれねえな」

 ジャックやソーガの称賛はさておき、遊星はディスプレイに映しだされた映像を確認する。

「多いな……ハッキングできる時間は限られている、ゆっくり見ている余裕は無さそうだ」

 映し出されるカメラの映像――ほとんどは仕事に勤しむ社員が映しだされ、一部は無人の通路などばかりだ。

「アキもディヴァインもいねえ……本当にここであってんのか?」

「これは!」

 クロウがそう疑問をつぶやいたタイミングで、遊星は声を上げる。

「アキ!」

 そこに映しだされているのは壁に磔にされ手足を鎖で拘束された十六夜アキ。

 そして、壁の前にある椅子に腰掛けている一人の男。

「それに……ディヴァイン!」

「遊星、部屋の位置を特定しろ」

「分かった」

 ノートパソコンを操作する遊星。

 しばらくカタカタと操作すると、終わったのか手を止める。

「よし、部屋の位置は特定できた。 各階の見取り図も手に入った」

「ほう、見取り図とは気が利くじゃねえか」

「どうやらアキは最上階にいるらしい。 そしてディヴァインも……」

「最上階、ねえ。 さながらボスに囚われたお姫様ってところか」

 遊星とそう会話したソーガは少し考え、そして立ち上がる。

「よし、セイリオス・カンパニーに殴りこみと行くか」

 さらっとそう言い出すソーガ。

「安心しろ、作戦の立案は俺がやる。 遊星からお前らの腕が確かだってことは聞いている、一時間後には突入できるはずだ」

「おい、壊し屋! なぜ貴様が仕切っているんだ」

 そう突っかかるジャック。

「そうは言っても、俺は仕事で慣れてんだ。 お前らより適任だろ」

「ならクロウはどうだ? セキュリティの保管庫に何度も潜入している経験がある」

「俺に振るなよ……。 WRGPへの出場を決めてからは盗みから足を洗ったんだからな」

 ジャックに指名されつつも、あまり乗り気ではない様子のクロウ。

「クロウ、一つ聞くがその盛りだくさんのマーカーはその時に捕まって刻まれたものか?」

「ああ。 毎回成功しているわけじゃなかったな」

「なら俺に決まりだ。 ブランクあり、敗経験豊富なヤツよりプロに任せたほうが確実だぜ。 ちなみに俺の顔のマーカーはセーナに合う前、つまり壊し屋をする以前に付けられた物だからこれは失敗に入らねえぜ」

 そう言うとソーガは先ほど遊星が使っていたノートパソコンを使い、操作する。

「ククク……情報は十分、そして手札の戦力カードも十分。 今のうちにデッキの調整を済ませておけ、すぐに実行に移すぜ」









 ――ネオドミノシティ、ダイモンエリア、セイリオス・カンパニー近くの廃ビル

 ――16:55

 ダイモンエリアの一角にそびえ立つ、二十階はあるビル――セイリオス・カンパニー本社ビル。

 それを眺めながら待機する4人組。

「こちらソーガ。 ブルーノ、準備はどうだ」

 手元の無線通信機にそう話すソーガ。

『うん、大丈夫。 すぐにセキュリティシステムを乗っ取れるよ』

「そっちは大丈夫そうだな。 雑賀、そちらはどうだ」

『ああ、大丈夫だ。 しかしとんでもないスペックのヘリだな、流石は壊し屋といったところか』

「ククク……D・ホイール二台を収納可能、速度から旋回性能、強固な耐性まで備えた壊し屋専用機だ。 大切に使えよ」

『ああ、撤収の連絡を受付け次第すぐに向かう』

 連絡を終えると通信機をしまう。

「向こうは大丈夫そうだ。 お前らも準備はできているな」

「当然です」

「ああ」

「任せておけ」

 ソーガの言葉に返事をするセーナ、遊星、ジャック。

「そろそろクロウのヤツが仕込みを終えているはずだな」

「ああ、壊し屋特製カード型爆弾だ、威力は保証するぜ」

「まったく、物騒なものをネオドミノシティに持ち込んでくれたものだ」

 呆れた様子のジャックだが、作戦前ゆえに気は抜いていないようだ。

「よし、そろそろ時間だな」

 時計を確認する遊星。

 ――16:59:45

 静かに電子音が時を刻む。

 一刻、一刻を一つずつ、等間隔に刻む。

 ――17:00:00

「罠、発動!」

 瞬間、爆音――!

 セイリオス・カンパニーのビルのあちこちから、火が燃え上がる。

「全員、突入!」

 ソーガ達の目の前の西側面は、爆発による被害が少なく一部分が爆発で剥き出しになっているだけである。

 四人は一斉に廃ビルから、剥き出しの部分を目掛け――跳んだ!

 そして、壁面が崩れ落ちた階段部分に着地。

「ここは5階と6階の中間……14階と半分上がれば目的地ですね」

「ブルーノのハッキングで最上階までは廊下との間にシャッターが降りている。 最上階も他の階からは隔離されているから敵はほとんど居ないはずだ」

「だが、最上階にはディヴァインを始めとする幹部クラスが揃っているはずだ。 油断はできんぞ」

「ククク……さあ、行こうじゃねえか!」

 四人は階段を上へ向けて駆け上がっていった――



第十二話「ディヴァイン復活! 戦慄のタッグデュエル!」







 ――ネオドミノシティ、ダイモンエリア、セイリオス・カンパニー20階、社長室

 ――17:00

 下の階で鳴り響く爆音を聞き、ディヴァインと須藤は驚く。

「!! これは……!!」

「総帥、これはまさか不動遊星が……!」

 扉が開き、男が部屋に入る。

「大変です、総帥! 本ビルで複数の爆発が発生、しかもセキュリティシステムがハッキングされ、各地がシャッターで隔離されています!」

「何!? セキュリティまで奪われるとは……復旧にはどれくらいかかる?」

「多分そのうち出来るでしょう、ですがその他一切のことは分かりません!」

「クッ……須藤、アキを連れて屋上へ向かうぞ」

 不愉快さを表情に現すディヴァイン。

 その時、部屋の扉が開いた。

「お困りのようだな、総帥殿」

「ヘッ、面白えことになってきたじゃねーか」

「……」

 部屋に入ってきた三人組に、ディヴァインは指示を出す。

「お前たちはこの階で侵入者を迎え撃て。 だが、全員の相手をする必要はない。 不動遊星、ヤツは私が葬るとしよう」

「私もいますから、不動遊星の他にもう一人くらいは来ても問題ありませんよ」

 須藤がそう付け加える。

「なるほど。 ならば、この階は我らが請け負うとしよう」

「久々に暴れられるんだ、腕がなるぜ」

「……」






 ――ネオドミノシティ、ダイモンエリア、セイリオス・カンパニー8階、西階段

 ――17:01

「上手く隔離できたようだな、このまま無人の階段を駆け上がれば最上階まで楽に到達できそうだ」

「流石はソーガさんです、場数が違いますからね」

「まあ、そう簡単には行かねえがな」

 階段が10階に差し掛かった時、鈍い音が響く。

「これは……!」

「セイリオス・カンパニーの社員はまだしも、サイコデュエリスト共は一筋縄じゃいかねえってことだな」

 爆音とともに、階段と10階の廊下を仕切るシャッターが破られる。

「いたぞ、侵入者だ!」

「アイツは不動遊星、それにジャック・アトラス!」

「他の二人は正体不明だが、手は抜くな!」

「ヤツらの首を総帥に献上するぞ!」

 シャッターの奥から現れる四人のサイコデュエリスト。

「ジャック、ソーガ、セーナ! 時間が惜しい、速攻でケリを付けるぞ!」

「ふん、当然だ」

「ククク……捻り潰してやるぜ」

「了解です」

 デュエルディスクを構えた遊星の合図に合わせ、他の三人もデュエルディスクを展開する。

「「「「デュエル!」」」」








 ――ネオドミノシティ、ダイモンエリア、あるホテルの屋上

 ――17:05

「ずいぶんとドンパチ賑やかに始めたものだな」

 スコープを片手に、セイリオス・カンパニーを確認している雑賀はそう呟いた。

 側には大型のヘリ。

 ソーガの愛用品を今回の作戦のために貸された物だ。

「ま、俺の出番はまだまだみたいだ。 じっくり見物と行くか」







 ――ネオドミノシティ、ダイモンエリア、セイリオス・カンパニー10階、西階段付近

 ――17:07

「行け、《ニトロ・ウォリアー》! ダイナマイト・ナックル!」

「ぐおぶっ!」

サイコデュエリスト ジョン LP:1000→0

「食らうがいい、《エクスプロード・ウィング・ドラゴン》! キング・ストーム!」

「ゴアアンッ!」

サイコデュエリスト マイク LP:2200→0

「ハハハ、《デーモン・カオス・キング》! ファイア・ソード!」

「ニャァァァァ!!」

サイコデュエリスト ボブ LP:750→0

「これで終わりです、《レッド・ビートル・ボーグ》! レッドアウト・マキシマム・バーニング!」

「あぼぼぼっ!」

サイコデュエリスト 田中 LP:10→0

 倒れる四人のサイコデュエリスト。

 遊星達はすぐに階段を駆け上がる。

「ぶっ壊されたシャッターからサイコデュエリスト、それにセイリオス・カンパニーの構成員共も湧いてくるだろうな。 さっさと上を目指そうぜ」

「ああ。 待っていろ、アキ!」

「おっと待ちな」

 倒れたサイコデュエリストの奥から、聞き覚えのある声が響く。

「クロウ!」

「鉄砲玉のクロウ様の登場だぜ! 爆弾を仕掛け終わったら排気管を通って階段に出る予定だったが、コイツらがシャッターを破ってくれたおかげで近道ができたぜ」

「あまり話している時間はありませんよ、先に進みましょう」

 セーナがそう言い終えるのと同時に、廊下の奥が騒がしくなる。

「雑魚どもが湧いてきやがったか……」

「ここは俺に任せとけ。 お前たちは階段に避難しろ」

 クロウは前に出ると、上着から何かを取り出し放り投げる。

「コイツをくらいな!」

 投げられたそれは煙を吹き出し、廊下を完全に塞ぐ

「ゲホッ……催涙ガスか!」

「目がああああああああ!」

 クロウは先に階段に戻った遊星達と合流する。

「ほう、催涙ガスとは用意周到じゃねえか」

「これでしばらくは足止めできるだろう。 みんな、上に急ごう」









 ――ネオドミノシティ、ポッポタイム、ガレージ

 ――17:10

「遊星達、大丈夫かな」

 ノートパソコンを操作するブルーノは、そう呟く。

 彼の担当は、セキュリティシステムへのハッキングだ。

 そのため、すでに大体の仕事は済んでいる。

「ううん、きっと大丈夫。 遊星達はそう簡単には負けないし、壊し屋って人たちも付いている。 僕は僕のやるべきことを進めなきゃね」







 ――ネオドミノシティ、ダイモンエリア、セイリオス・カンパニー18階、西階段

 ――17:11

「そろそろ最上階だ、おそらく最上階は警備が厳しくなっているはずだ」

「フン、ここからが本番というわけか」

「来るなら来やがれ、全員ぶっ飛ばしてやるぜ!」

「ん? アレは……?」

 19階にたどり着いた遊星達。

 しかし、20階へ向かう階段の前には中央にモニターのある重厚な金属の扉が置いてある。

「なんだこれは!? 見取り図にはこんな物は無かったはず」

「どうやら上に行かせねえためのセキュリティみてえだな。 流石はマフィア共の親玉のいる階だ、簡単には行かせてくれねえか」

 遊星とソーガは扉を確認する。

「どうやら、複雑な電子ロックが施されていてそれを解かなければこの扉は開かないようだ」

「流石は遊星だな、軽く見ただけでそこまで分かるとは」

「感心している場合では無いだろう、このままでは十六夜のいる部屋にたどり着けんぞ。 遊星、解除にはどれくらい時間がかかる?」

 ジャックの質問に対し、遊星は数秒考えた後に返答する。

「正確には分からないが、おそらく10分以上かかるだろう」

「そんなチンタラしてたら追手が来ちまう! 何とかならねえのかよ!?」

 遊星達の様子を受け、ソーガはセーナに目を合わせる。

「狼狽えるんじゃねえ、この程度は想定内だ。 セーナ、許可する」

「了解です」

 ソーガの言葉に答えると、セーナは巻いているマフラーを外す。

 顕になったセーナの首には黒い機械が取り付けられており、セーナはその右側部に手をかける。

「下がって下さい、今からこのセキュリティを解除します」

 セーナは扉の前でしゃがむと首の機械からコードを取り出し、それをモニターの横部分にあるプラグに差し込む。

「セーナ、頼んだぜ」

 セーナは目を閉じ、首の機械に左手を添える。

 そして十秒ほど静かにしていると、突如モニターが切り替わった。

「これは! 扉のロックが解除されたぞ!」

「なんか分からねえが、とにかくすげえぜ!」

「これは一体……?」

 セーナはコードを取り外し、それを収納する。

「セーナ、大丈夫か?」

「はい、思ったほどは難しくないセキュリティだったので」

「よし、先に進むぜ」

 ソーガは扉を開けると、他の四人もそれに続く。

「ソーガ、今のは……」

「セーナが昔受けた人体実験で埋め込まれた機械だ。 忌々しい親父のヤツの計画だぜ」

「大門総魔か……セイリオス・カンパニーやアルカディア・ムーブメントとも関わりが深いという男だな」

「……ですけど、その実験のお陰でソーガさんと会えたわけですし、悪いことばかりでは無いかと思います」

「ま、それもそうかもしれねえな」

 そして五人は階段を上がり、最上階に到達する。

 この階のみシャッターは降りておらず、そのまま廊下へと続いている。

「ククク……さすがに最上階だ、ただでは通れねえか。 隠れてねえで出てこいよ」

 ソーガがそう言うと、陰から謎の三人が姿を現す。

「待っていたぞ」

 目元を隠した金属の仮面を付け、黒いマントと和風の服に身を包んだデュエリスト。

「狩り尽くしてやるぜ、若造ども」

 口元を覆うマスクを付けた、スーツ姿の大柄な中年のデュエリスト。

「……」

 頭部全体を覆い顔を隠す形状の兜を付け、黒い洋風の鎧を身に纏ったデュエリスト。

 立ち塞がる三人のデュエリスト達。

「さっきのサイコデュエリストとは格が違うみたいだな」

「ソーガさんは先に行って下さい!」

「遊星、お前も行け! コイツらは俺達が面倒を見る」

 ジャック、セーナ、クロウはそれぞれデュエルディスクを構え、目の前のデュエリスト達に挑む。

「ジャック、クロウ! ここは任せた!」

「セーナ、無理はするなよ」

 遊星とソーガは前に向かい走る。

 男達は妨害することなく、遊星とソーガを見逃す。

「どうやら素通りさせてくれるようだ。 おそらく俺達を待ち構えているのだろう」

「ククク……上等だ。 叩き潰してやるぜ」

 二人は社長室へと向かう。






「行ったようだな、では始めよう。 アルカディア・ムーブメントの刺客、絶華が相手を務めよう」

「クク、腕がなるぜ。 セイリオス・カンパニー 実行部隊長のザンクだ。 ちなみにコイツはセイリオス・カンパニー社長の懐刀 黒騎士だ、本名は誰も知らねえがな」

「……」

「このジャック・アトラスが本当のデュエルを言うものを教えてやる!」

「壊し屋に仕える助手、このセーナ・クロエが相手をします」

「ヘッ、鉄砲玉のクロウ様はもう弾けてんだよ!」

「「「デュエル!」」」

ジャック LP:4000 絶華 LP:4000

セーナ LP:4000 ザンク LP:4000

クロウ LP:4000 黒騎士 LP:4000






 ――ネオドミノシティ、ダイモンエリア、セイリオス・カンパニー20階、社長室

 ――17:13

 勢い良く扉が開き、遊星とソーガが中に入る。

「誰もいない……!?」

「チッ、逃げたか」

 手に持ったショックガンをしまい、ソーガは当たりを見渡す。

「監視カメラの映像だとこの部屋のはずだが……逃げられたのか?」

「十六夜アキを拘束していた鎖か。 腕輪の部分がまだ暖かいな」

「なら、この部屋を離れて時間は立っていないはず」

「さて、各地を封鎖し隔離されたこの最上階から逃げられる場所といえば……」

「俺たちが通ってきた西階段は最上階まで誰もいなかった」

「そして東階段は封鎖されている……が、それとは別に独立した階段があったな」

 遊星とソーガは見取り図を思い出し、同時に答えを思いつく。

「「屋上だ!」」






 ――ネオドミノシティ、ダイモンエリア、セイリオス・カンパニー屋上

 ――17:15

 夕焼けに染まる空を眺め、二人の男が佇む。

 その背後に駆けつける二人の男。

「見つけたぞ、ディヴァイン!」

「屋上への階段は他とは独立しているからなあ、逃げ場と言ったらここしかねえか」

 遊星とソーガは、背後を向く二人に声をかける。

「久しぶりだな、不動遊星」

 振り返る二人の男――ディヴァインと須藤洋一。

 ソーガは、二人を見て思考を巡らせる。

(ディヴァインと、隣にいるのは須藤とかいうヤツだろうな。 ここまでセイリオス・カンパニーの社長に出会わなかったが、それはつまりディヴァインが本社ビルの裁量を任せられるだけの権限を持っていたってことだろう。 セイリオス・カンパニーも今やディヴァインの傀儡ってことか、親父の事業拡大のために作られた組織だってのに随分と堕ちたもんだぜ)

「まったく、貴様のせいで私がどれほどの苦痛を味わったことか……。 貴様が余計なことを言ったせいで私は地縛神に丸呑みされるはめになったのだからな」

「ふざけるな、アレはお前が行った非道な実験が原因だ! そんなことよりアキをどこにやった!」

「そこにいるだろう」

 ディヴァインと須藤は広がるように移動する。

 すると、彼らの影になっていたアキの姿が顕になる。

 十字架に磔にされ、その十字架か屋上のフェンスに括りつけられている。

「十六夜先輩、お目覚めの時間ですよ」

 須藤は手に持ったスイッチを押す。

 すると、彼女の手足に付けられた鉄輪に電流が流れる。

「ああっ!」

「アキ!」

 遊星の声に反応し、アキが彼の方を向く。

「ゆう……せい……!?」

「アキ、待っていろ! すぐに助けだす!」

「ハハハ! すぐに助けだす、か。 私も随分甘く見られたものだな、不動遊星!」

 笑いながら立ちはだかるディヴァイン。

「ディヴァイン、デュエルだ! アキを返し……」

「待てよ遊星」

 遊星の言葉を遮り、腕を出すソーガ。

「ディヴァインは俺がぶっ壊す、そういう依頼だからなあ」

「何だ貴様は」

「冥土の土産に教えてやるよ、俺は”壊し屋”……ソーガ・ダイモンだ」

 ソーガの名を聞き、ディヴァインは軽く笑う。

「フッ、そうか……総魔の息子か」

「チッ、忌々しい親父の名前を出しやがって、胸糞悪いぜ」

「総魔の大門コーポレーションには様々な協力をしてもらってたが……それとこれとは話が別だ、遠慮なく相手をさせてもらおう」

 デュエルディスクを装着し、構えるディヴァイン。

「相手は二人、なら私も加勢しましょうか」

 須藤もディヴァインの横に構える。

「あの男が龍亜と戦った須藤か」

「遊星、ヤツらが組んで来るんならこっちもそれで対抗だ。 タッグデュエルで決着を付けようぜ」

 共に並び立つ遊星とソーガ。

「ああ! 背中は任せたぞ、ソーガ!」

「ククク……お前とのタッグか、楽しめそうだ」

 デュエルディスクを構え、ディヴァインと須藤を見据える二人。

「ハハハハハ! 不動遊星に総魔の息子か、パワーアップした私の力でまとめて葬ってやろうじゃないか!」

「さあ……私のサイコパワー、味わってもらいましょうか!」

「「「「デュエル!!」」」」

遊星&ソーガ LP:4000 ディヴァイン&須藤 LP:4000

「先攻は俺だ、俺のターン!」

 遊星はカードを確認すると、すぐに発動した。

「手札の《ロードランナー》を捨て、魔法発動、《ワン・フォー・ワン》! 来い、《チューニング・サポーター》!」

 遊星の場に鍋蓋を被った小さなモンスターが現れる。

《ワン・フォー・ワン》
通常魔法
手札からモンスター1体を墓地へ送って発動できる。
手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

《チューニング・サポーター》
効果モンスター
星1/光属性/機械族/攻 100/守 300
このカードをシンクロ召喚に使用する場合、
このカードはレベル2モンスターとして扱う事ができる。
このカードがシンクロモンスターの
シンクロ召喚に使用され墓地へ送られた場合、
自分はデッキからカードを1枚ドローする。

「チューナーモンスター《ジャンク・シンクロン》を召喚! このモンスターの召喚に成功した時、墓地のレベル2以下のモンスターを特殊召喚できる! 蘇れ、《ロードランナー》」

 オレンジ色の小柄な戦士が現れ、ピンクの小鳥をフィールドに呼び戻す。

《ジャンク・シンクロン》
チューナー(効果モンスター)
星3/闇属性/戦士族/攻1300/守 500
このカードが召喚に成功した時、自分の墓地の
レベル2以下のモンスター1体を選択して表側守備表示で特殊召喚できる。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

《ロードランナー》
効果モンスター
星1/地属性/鳥獣族/攻 300/守 300
このカードは攻撃力1900以上のモンスターとの戦闘では破壊されない。

「《チューニング・サポーター》はシンクロ素材となる場合、レベル2として扱うことができる! レベル2の《チューニング・サポーター》にレベル3《ジャンク・シンクロン》をチューニング!」

 《ジャンク・シンクロン》は光の環となり《チューニング・サポーター》を包み込む。

「集いし星が新たな力を呼び起こす! 光指す道となれ! シンクロ召喚!」

 生み出された光は、青い装甲の戦士を創りだす。

「いでよ、《ジャンク・ウォリアー》!」

 遊星のフィールドに降り立つは、腕を突き出し白いマフラーをなびかせる戦士。

「《ジャンク・ウォリアー》はシンクロ召喚に成功した時、自分フィールドのレベル2以下のモンスターの攻撃力をこのカードに加える! パワー・オブ・フェローズ!」

《ジャンク・ウォリアー》
シンクロ・効果モンスター
星5/闇属性/戦士族/攻2300/守1300
「ジャンク・シンクロン」+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードがシンクロ召喚に成功した時、
このカードの攻撃力は自分フィールド上に存在する
レベル2以下のモンスターの攻撃力を合計した数値分アップする。

ジャンク・ウォリアー ATK:2300→2600

「《ロードランナー》の攻撃力を《ジャンク・ウォリアー》に加えてきたか」

「さらに、《チューニング・サポーター》に効果でドロー! カードを1枚セットし、ターンエンドだ」

《チューニング・サポーター》
効果モンスター
星1/光属性/機械族/攻 100/守 300
このカードをシンクロ召喚に使用する場合、
このカードはレベル2モンスターとして扱う事ができる。
このカードがシンクロモンスターの
シンクロ召喚に使用され墓地へ送られた場合、
自分はデッキからカードを1枚ドローする。

「1ターン目からシンクロ召喚ですか。 私のターン、ドロー」

遊星&ソーガ LP:4000
手札:3&5枚
モンスター:《ジャンク・ウォリアー》(攻2600)、《ロードランナー》(守300)
魔法&罠:セット1枚
ディヴァイン&須藤 LP:4000
手札:5&5→6枚
モンスター:無し
魔法&罠:無し

「《久遠の魔術師ミラ》を召喚、その効果によりあなたの伏せカードを見せてもらいましょう」

 白い髪が特徴の女性魔法使いが現れ、遊星のセットカードに杖を向ける。

《久遠の魔術師ミラ》
効果モンスター
星4/光属性/魔法使い族/攻1800/守1000
このカードが召喚に成功した時、
相手フィールド上にセットされたカード1枚を選択して確認する。
この効果の発動に対して、相手は魔法・罠カードを発動する事はできない。

「《ロスト・スター・ディセント》ですか……妨害系の罠ではないみたいですね」

《ロスト・スター・ディセント》
通常罠
自分の墓地に存在するシンクロモンスター1体を選択し、
自分フィールド上に表側守備表示で特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、
レベルは1つ下がり守備力は0になる。
また、表示形式を変更する事はできない。

「ならば、《二重召喚》を発動してもう一度召喚をしましょう。 来なさい、《魔導教士システィ》」

 須藤の場に次に現れたのは、剣と天秤を手に持った魔導モンスター。

二重召喚デュアルサモン
通常魔法
このターン自分は通常召喚を2回まで行う事ができる。

《魔導教士システィ》
効果モンスター
星3/地属性/魔法使い族/攻1600/守 800
自分が「魔導書」と名のついた魔法カードを発動した
自分のターンのエンドフェイズ時、
フィールド上のこのカードをゲームから除外して発動できる。
デッキから光属性または闇属性の魔法使い族・レベル5以上のモンスター1体と、
「魔導書」と名のついた魔法カード1枚を手札に加える。
「魔導教士 システィ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

「だが、攻撃力は《ジャンク・ウォリアー》の方が上だ」

「早とちりしてはいけませんよ。 このデッキの真髄は魔法使いを補助する魔導書の存在――《ヒュグロの魔導書》を発動し、《久遠の魔術師ミラ》を強化しましょう」

 ミラは魔導書を手に取り呪文を読み上げると、その杖に魔力が溢れ出す。

《ヒュグロの魔導書》
通常魔法
自分フィールド上の魔法使い族モンスター1体を選択して発動できる。
このターンのエンドフェイズ時まで、
選択したモンスターの攻撃力は1000ポイントアップし、
戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、
デッキから「魔導書」と名のついた魔法カード1枚を手札に加える事ができる。
「ヒュグロの魔導書」は1ターンに1枚しか発動できない。

久遠の魔術師ミラ ATK:1800→2800

「さあ、バトルです。 《魔導教士システィ》で《ロードランナー》に攻撃」

 システィの持つ魔力を込めた剣は、《ロードランナー》は綺麗に両断した。

「強化を受けた《久遠の魔術師ミラ》よ、《ジャンク・ウォリアー》に攻撃です」

 ミラは魔力の溢れる杖を構えると、赤いブレードを形成する。

 振り下ろされた魔力のブレードは、《ジャンク・ウォリアー》を捉え鋭く切り裂く。

「ぐあああっ!」

 ダメージを受けた遊星は背後に吹き飛ばされる。

遊星&ソーガ LP:4000→3800

「遊星!」

 アキの叫びに対し、ソーガは落ち着いた声で遊星に話す。

「サイコデュエリストとの戦いなんだ、この程度で音を上げるなよ?」

「フッ、この程度なら大丈夫だ。 アキ、心配しないでくれ」

「まあ、200程度のダメージならその程度でしょうねえ。 そしてこの瞬間、《ヒュグロの魔導書》の効果により《グリモの魔導書》を手札に加えましょう」

《ヒュグロの魔導書》
通常魔法
自分フィールド上の魔法使い族モンスター1体を選択して発動できる。
このターンのエンドフェイズ時まで、
選択したモンスターの攻撃力は1000ポイントアップし、
戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、
デッキから「魔導書」と名のついた魔法カード1枚を手札に加える事ができる。
「ヒュグロの魔導書」は1ターンに1枚しか発動できない。

「まだまだ行きますよ、シンクロモンスターを破壊したことで《グリード・グラード》を発動し、2枚ドローです」

《グリード・グラード》
速攻魔法
自分が相手フィールド上に表側表示で存在するシンクロモンスターを
戦闘またはカードの効果によって破壊したターンに発動する事ができる。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。

「カードを2枚セット、そしてエンドフェイズ時に《魔導教士システィ》を除外することで効果発動」

 システィは天秤を上に掲げると、その天秤は光り出しシスティを包み込む。

「魔導書を使ったターンの終了時、《魔導教士システィ》を除外することで魔導書と上級魔導士を手札に加えます。 《神聖魔導王エンディミオン》と《トーラの魔導書》を手札に加えるとしますか」

《魔導教士システィ》
効果モンスター
星3/地属性/魔法使い族/攻1600/守 800
自分が「魔導書」と名のついた魔法カードを発動した
自分のターンのエンドフェイズ時、
フィールド上のこのカードをゲームから除外して発動できる。
デッキから光属性または闇属性の魔法使い族・レベル5以上のモンスター1体と、
「魔導書」と名のついた魔法カード1枚を手札に加える。
「魔導教士 システィ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

「これで私のターンは終了です。 さあ、どうします?」

「決まっているだろ、テメエらをぶっ潰すんだよ。 行くぜ、俺のターン!」

遊星&ソーガ LP:3800
手札:3&5→6枚
モンスター:無し
魔法&罠:セット1枚(ロスト・スター・ディセント)
ディヴァイン&須藤 LP:4000
手札:5&4枚(須藤の手札には《グリモの魔導書》、《トーラの魔導書》、《神聖魔導王エンディミオン》)
モンスター:《久遠の魔術師ミラ》(攻1800)
魔法&罠:セット2枚

「手札のデーモンを捨て、コイツを特殊召喚するぜ。 来い、《アサルト・デーモン》!」

 細身な身体に備わるは、鋭利な爪、牙、そしてシャープなデザインの翼。

 奇襲を得意とするデーモンがソーガの場に召喚された。

《アサルト・デーモン》
効果モンスター (血の刻印オリジナル)
星5/闇属性/悪魔族/攻2200/守0 
このカードは手札から「デーモン」と名の付いたモンスター1体を墓地へ送り、
手札から特殊召喚する事ができる。
このカードが破壊され、墓地に送られた時、自分の墓地に存在する
「アサルト・デーモン」以外の「デーモン」と名の付いたモンスター1体を選択し、特殊召喚する。

「さあ、ここで壊し屋クイズだ。 2200+1800は何だろうなー」

「4000、ですね。 ちょうど初期ライフと同じ数値ですか」

「大正解だぜ! ほら、プレゼントだ! 装備魔法《堕落フォーリン・ダウン》!」

 《アサルト・デーモン》が手を向けると、ミラの肌に黒いシミが生まれ広がっていく。

堕落フォーリン・ダウン
装備魔法
自分フィールド上に「デーモン」という名のついたカードが存在しなければ
このカードを破壊する。
このカードを装備した相手モンスターのコントロールを得る。
相手のスタンバイフェイズ毎に、自分は800ポイントダメージを受ける。

「そうか、《アサルト・デーモン》と《久遠の魔術師ミラ》の攻撃力の合計は4000!」

「私はアカデミアのテストで当たり前のようにトップを取っていましてね、クイズの正解程度でプレゼントなんて結構ですよ。 チェーンして速攻魔法《ディメンション・マジック》を発動です」

 ミラは突如現れた黒い棺のようなものに入り、棺は蓋をされ密閉される。

《ディメンション・マジック》
速攻魔法
自分フィールド上に魔法使い族モンスターが存在する場合、
自分フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。
選択した自分のモンスターをリリースし、
手札から魔法使い族モンスター1体を特殊召喚する。
その後、フィールド上のモンスター1体を選んで破壊できる。

「《久遠の魔術師ミラ》をリリース、そして現れるがいい! 《神聖魔導王エンディミオン》!」

 開かれた棺にいたのは、《久遠の魔術師ミラ》ではない。

 そこにいたのは、魔法使いの街を治める高等魔導士――《神聖魔導王エンディミオン》であった。

《神聖魔導王エンディミオン》
星7/闇属性/魔法使い族/攻2700/守1700
このカードは自分フィールド上に存在する
「魔法都市エンディミオン」に乗っている魔力カウンターを6つ取り除き、
自分の手札または墓地から特殊召喚する事ができる。
この方法で特殊召喚に成功した時、
自分の墓地に存在する魔法カード1枚を手札に加える。
1ターンに1度、手札から魔法カード1枚を捨てる事で、
フィールド上に存在するカード1枚を破壊する。

「さらに、《ディメンション・マジック》の更なる効果! 相手モンスター1体を破壊します。 《アサルト・デーモン》よ、消え失せなさい」

 須藤が手を向けると、《神聖魔導王エンディミオン》は杖から魔力のレーザーを放ち《アサルト・デーモン》を貫く。

「ククク……やってくれたな、だが《アサルト・デーモン》の効果発動! コイツが破壊されようと、墓地のデーモンをフィールドに引きずり出す効果があるんだよ」

《アサルト・デーモン》
効果モンスター (血の刻印オリジナル)
星5/闇属性/悪魔族/攻2200/守0 
このカードは手札から「デーモン」と名の付いたモンスター1体を墓地へ送り、
手札から特殊召喚する事ができる。
このカードが破壊され、墓地に送られた時、自分の墓地に存在する
「アサルト・デーモン」以外の「デーモン」と名の付いたモンスター1体を選択し、特殊召喚する。

「さあ、虐殺ショーと行こうじゃねえか! 冥府の地より蘇れ、《ジェノサイドキングデーモン》!」

 その手に握るは、数多の獲物を斬り伏せてきた魔剣。

 翼を広げ飛翔するは、デーモンの王たる存在。

 そして、壊し屋を象徴する破壊と悪のしもべ――《ジェノサイドキングデーモン》

《ジェノサイドキングデーモン》
効果モンスター
星4/闇属性/悪魔族/攻2000/守1500
自分フィールド上に「デーモン」という名のついた
モンスターカードが存在しなければこのカードは召喚・反転召喚できない。
このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に800ライフポイントを払う。
このカードが相手のコントロールするカードの効果の対象になり、
その処理を行う時にサイコロを1回振る。
2・5が出た場合、その効果を無効にし破壊する。
このカードが戦闘で破壊した効果モンスターの効果は無効化される。

「その程度のモンスター、復活させようと私のエンディミオンには敵いませんよ」

「なら、これでどうだ? 遊星、お前の力を借りるぜ」

「ああ!」

 遊星の返事を貰うと、ソーガは伏せカードを開く。

「罠発動、《ロスト・スター・ディセント》! レベルを1つ下げ、《ジャンク・ウォリアー》を復活させるぜ」

 遊星とソーガの前に、前のターンに破壊された《ジャンク・ウォリアー》が蘇る。

 しかし、装甲が一部砕けたその姿はどこか痛々しい。

《ロスト・スター・ディセント》
通常罠
自分の墓地に存在するシンクロモンスター1体を選択し、
自分フィールド上に表側守備表示で特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、
レベルは1つ下がり守備力は0になる。
また、表示形式を変更する事はできない。

《ジャンク・ウォリアー》
シンクロ・効果モンスター
星5/闇属性/戦士族/攻2300/守1300
「ジャンク・シンクロン」+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードがシンクロ召喚に成功した時、
このカードの攻撃力は自分フィールド上に存在する
レベル2以下のモンスターの攻撃力を合計した数値分アップする。

「ですが、《ロスト・スター・ディセント》で復活させたモンスターは守備力0で表示形式も変えられませんよ。 そんなガラクタに何ができるのやら」

「ガラクタ? それはどうかな」

「ククク……魔法発動、《シンクロ・ギフト》!」

 《ジャンク・ウォリアー》は立ち上がり、《ジェノサイドキングデーモン》をサポートするように構える。

「そのカードは! これなら戦闘に参加できないはずの《ジャンク・ウォリアー》の攻撃力を生かせるということですか!」

「その通りだ。 《ジャンク・ウォリアー》の攻撃力分、《ジェノサイドキングデーモン》の攻撃力をアップするぜ」

《シンクロ・ギフト》
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在するシンクロモンスター1体と
シンクロモンスター以外のモンスター1体を選択して発動する。
このターンのエンドフェイズ時まで、選択したシンクロモンスターの攻撃力を0にし、
その元々の攻撃力分もう1体のモンスターの攻撃力はアップする。

ジェノサイドキングデーモン ATK:2000→4300

「さあ、《神聖魔導王エンディミオン》に攻撃だ!」

 跳びかかる《ジェノサイドキングデーモン》と《ジャンク・ウォリアー》の2体。

「行くぜ遊星!」

「ああ!」

 《ジェノサイドキングデーモン》は剣を構え、翼で生み出した反動でエンディミオンへ突進する。

 エンディミオンは杖から防壁を展開し、《ジェノサイドキングデーモン》の攻撃を防ぐ。

 が、その背後から現れた《ジャンク・ウォリアー》の拳の一撃が防壁を砕く。

 そして、二体はエンディミオンにそれぞれの一撃を放つ。

「「クロス・アクセル!」」

 《ジェノサイドキングデーモン》の剣――

 《ジャンク・ウォリアー》の拳――

 二つが同時にエンディミオンに命中し、突き破る――

「うあぁぁぁぁぁぁぁっ!」

ディヴァイン&須藤 LP:4000→2600

 その衝撃で、数メートル吹き飛ばされる須藤。

「これは……サイコデュエリストの力!? いや、これはそれ以上の……」

「そんな甘え物じゃねえよ。 これこそ大門七神器に秘められし闇の力、相手をいたぶれるのがテメエらだけと思うなよ?」

「なるほど。 これが噂に聞く闇の力ですか……!」

 ソーガは手札のカードを1枚デュエルディスクに伏せる。

「カードを2枚伏せてターン終了だ。 来いよ、総帥さんよ」

 ディヴァインは数歩前に出て、カードを引く。

「いいだろう……私のターン、ドロー!」

遊星&ソーガ LP:3800
手札:3&0枚
モンスター:《ジェノサイドキングデーモン》(攻2000)、《ジャンク・ウォリアー》(守0)
魔法&罠:セット2枚
ディヴァイン&須藤 LP:2600
手札:5→6&3枚(須藤の手札には《グリモの魔導書》、《トーラの魔導書》)
モンスター:無し
魔法&罠:セット1枚

「《闇の誘惑》を発動。 2枚ドローし、手札の闇属性モンスター《サイキック・ゴースト》をゲームから除外する」

《闇の誘惑》
通常魔法
デッキからカードを2枚ドローし、
その後手札の闇属性モンスター1体を選んでゲームから除外する。
手札に闇属性モンスターが無い場合、手札を全て墓地へ送る。

《サイキック・ゴースト》
チューナー(効果モンスター) (血の刻印オリジナル)
星1/闇属性/サイキック族/攻   0/守   0
このカードを手札から捨て、
墓地に存在するサイキック族モンスターを3体まで選択して発動する。
選択したモンスターをゲームから除外する。

「さあ、せいぜい足掻いてくれたまえ、総魔の息子よ!」

「ククク……愉快なジョークだな。 テメエは俺の掌の上で踊り、最後には壊される運命……御託は今のうちに言っておくべきだぜ?」

「まったく、不愉快な男だ。 なら、早速私のサイコパワーを受けてもらおうか。 魔法発動、《デス・メテオ》!」

 ディヴァインの頭上に巨大な火の玉が現れる。

《デス・メテオ》
通常魔法
相手ライフに1000ポイントダメージを与える。
相手ライフが3000ポイント以下の場合このカードは発動できない。

「このカードの火力は前に不動遊星に使った《ファイヤー・ボール》の倍! さあ、業火に包まれ泣き叫ぶがいい!」

 火の玉はソーガに向けて放たれ、その身を炎で包む。

「ぐああああああああっ!」

遊星&ソーガ LP:3800→2800

「大丈夫か、ソーガ!」

 燃える炎は消えると、そこには不敵に笑うソーガの姿。

「……ククク、ハハハハハ! この程度で俺が泣き叫ぶぅ? 良い御託だ、褒めてやるぜ!」

「そうか、この程度では物足りないか。 なら、出し惜しみはないだ! 来い、《クレボンス》!」

 ディヴァインの場に召喚されたのは、人型のサイキッカー。

《クレボンス》
チューナー(効果モンスター)
星2/闇属性/サイキック族/攻1200/守 400
このカードが攻撃対象に選択された時、
800ライフポイントを払って発動できる。
その攻撃を無効にする。

「速攻魔法、《緊急テレポート》を発動! 来い、《調星師ライズベルト》!」

 次に呼び出されたのは、星を操る黒い衣装の青年。

《緊急テレポート》
速攻魔法
自分の手札・デッキからレベル3以下の
サイキック族モンスター1体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは
このターンのエンドフェイズ時にゲームから除外される。

「レベル5のシンクロモンスターか……!」

「そんな甘いては使わんさ。 《調星師ライズベルト》の効果発動! 特殊召喚された時、モンスターのレベルを3まで上げることができる! 私は《クレボンス》レベルを3つ上げ、5とする!」

「ほう、面白えカードだ」

 ライズベルトは《クレボンス》に手をかざし、力を送り込む。

 すると《クレボンス》の周囲に三つの星が纏わり付く。

《調星師ライズベルト》
効果モンスター
星3/風属性/サイキック族/攻 800/守 800
このカードが特殊召喚に成功した時、
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。
エンドフェイズ時まで、選択したモンスターのレベルを3つまで上げる。

クレボンス レベル:2→5

「私はレベル3《調星師ライズベルト》にレベル5となった《クレボンス》をチューニング!」

「合計のレベルは8……! 来るか、龍亜を倒したというディヴァインのシンクロモンスター!」

「逆巻け、我が復讐の黒炎! その身に纏いし憎悪を振りかざし、世界を喰らい尽くすがいい! シンクロ召喚! 来い、《メンタルスフィア・デーモン》!」

 光から現れるは、ディヴァインの従える高レベルサイキッカーの悪魔。

 太いナイフのような爪に、広げられた翼、そして悪魔そのものと言える顔。

 デーモンの名を冠する通り、ソーガの操るデーモンと類似するデザインが見られる。

《メンタルスフィア・デーモン》
シンクロ・効果モンスター
星8/闇属性/サイキック族/攻2700/守2300
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、
破壊したモンスターの元々の攻撃力分だけ自分のライフポイントを回復する。
また、サイキック族モンスター1体を対象にする魔法・罠カードが発動した時、
1000ライフポイントを払って発動できる。その発動を無効にし破壊する。

「気をつけて、その《メンタルスフィア・デーモン》はディヴァインの最強カードよ!」

 かつてディヴァインと行動を共にしたアキは、ディヴァインの戦術を知っている故にそう忠告する。

「最強カードだけあって良いカードだな、俺が勝ったらソイツを頂いていこうか」

「貴様が勝てれば、な。 《メンタルスフィア・デーモン》よ、《ジェノサイドキングデーモン》を葬れ! シャドウ・ブレス!」

 《メンタルスフィア・デーモン》は《ジェノサイドキングデーモン》に向け、黒いブレスを放つ。

「ククク……だったら容赦なく勝たせてもらうぜ! 罠発動、《ヘイト・バスター》」

 《ジェノサイドキングデーモン》は剣を構え、《メンタルスフィア・デーモン》に向けて跳びかかる。

《ヘイト・バスター》
通常罠
自分フィールド上の悪魔族モンスターが攻撃対象に選択された時に発動できる。
相手の攻撃モンスター1体と、攻撃対象となった自分モンスター1体を選択して
破壊し、破壊した相手モンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

「《メンタルスフィア・デーモン》はサイキック族1体を対象とする魔法か罠を無効に出来ますが、これは自分と相手の2体を対象とするカードですか。 上手く総帥のカードを攻略して来ましたね」

「ククク……俺たちの2体のデーモンを道連れにし、さらに《メンタルスフィア・デーモン》の攻撃力がテメエのライフを抉り取るぜ!」

 黒いブレスを剣で切り裂き、《メンタルスフィア・デーモン》の喉を狙い剣で突きを放つ。

「ハハハ! 下らん手だな、手札の《タイム・エスケーパー》を捨て効果発動! 《メンタルスフィア・デーモン》、次元の彼方に消えるがいい!」

 小柄なサイキッカーが現れると、《メンタルスフィア・デーモン》を連れてフィールドから消滅する。

 狙うべき相手が消えたことで、《ジェノサイドキングデーモン》の突きは不発に終わる。

《タイム・エスケーパー》
効果モンスター
星2/地属性/サイキック族/攻 500/守 100
このカードを手札から捨て、
自分フィールド上に表側表示で存在する
サイキック族モンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターを次の自分のスタンバイフェイズ時までゲームから除外する。
この効果は相手ターンでも発動する事ができる。

「この効果で除外された《メンタルスフィア・デーモン》は次の自分のスタンバイフェイズに戻ってくる」

「ほう、そうなると戻ってくるのは須藤のターンになるな。 それまで無防備を晒してくれるとはサービス効いているじゃねえか」

「生憎、私のデッキに死角はない。 魔法発動、《サイコ・フィール・ゾーン》!」

 ディヴァインの前に奇妙な力場が生み出される。

「このカードは除外された2体のサイキック族でシンクロをし、守備表示でサイキック族シンクロモンスターを呼び出すカードだ」

「除外されたモンスターでシンクロ召喚だと!?」

「墓地からシンクロは知っているが、そんなシンクロがあったとは!」

《サイコ・フィール・ゾーン》
通常魔法
ゲームから除外されている自分のサイキック族のチューナー1体と
チューナー以外のサイキック族モンスター1体を墓地に戻し、
そのレベルの合計と同じレベルのサイキック族のシンクロモンスター1体を
エクストラデッキから表側守備表示で特殊召喚する。

「私はレベル8《メンタルスフィア・デーモン》にレベル1《サイキック・ゴースト》をチューニング!」

 生み出された力場から2体のサイキック族が現れ、シンクロする。

「爆ぜ上がれ、我が復讐の黒炎! 憎しみ束ねし魔の者よ、時と次元を従え世界を切り裂くがいい! シンクロ召喚! 来い、《メンタルオーバー・デーモン》!」

 呼び出されたのは、《メンタルスフィア・デーモン》と類似しながらも未来的かつサイバネティックなデザインの悪魔。

《メンタルオーバー・デーモン》
シンクロ・効果モンスター
星9/闇属性/サイキック族/攻3300/守3000
サイキック族チューナー+チューナー以外のサイキック族モンスター2体以上
1ターンに1度、自分の墓地に存在する
サイキック族モンスター1体を選択してゲームから除外する事ができる。
このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、
このカードの効果で除外したモンスターを
可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する。

「何、このモンスター!? 私がアルカディア・ムーブメントにいた頃はこんなモンスター使ってなかったはず」

「私のデッキは進化しているんだよ、アキ。 《メンタルオーバー・デーモン》の効果発動、墓地の《メンタルスフィア・デーモン》を除外する。 カードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

(さて……このプレイングが正解かどうかは分からねえが、使っておくか)

「おっと、エンドフェイズに《デーモンの宝札》だ。 《ジェノサイドキングデーモン》を破壊し、2枚ドローさせてもらうぜ」

《デーモンの宝札》
通常罠 (血の刻印オリジナル)
自分フィールド上に存在する「デーモン」と名のついたモンスター1体を選択して発動する。
デッキからカードを2枚ドローし、選択したモンスターを破壊する。

「ほう、パートナーのターンが来る前にそのモンスターを破壊するのか」

 遊星とソーガの場に残ったモンスターは、《ロスト・スター・ディセント》で蘇生された《ジャンク・ウォリアー》のみ。

「遊星、あのデカブツの処理は任せたぜ」

「分かった、俺のターン!」

遊星&ソーガ LP:2800
手札:3→4&2枚
モンスター:《ジャンク・ウォリアー》(守0)
魔法&罠:無し
ディヴァイン&須藤 LP:2600
手札:0&3枚(須藤の手札には《グリモの魔導書》、《トーラの魔導書》)
モンスター:《メンタルオーバー・デーモン》(守3000)
魔法&罠:セット2枚

「不動遊星、どうするつもりだ? 貴様の場にいるのは力を失ったクズモンスターのみ。 私の新たな力の前に、せいぜい足掻くがいい」

「クズ? ディヴァイン、俺の《ジャンク・ウォリアー》はまだ死んではいない!」

 遊星は手札のカードを掲げる。

「《ジャンク・ウォリアー》よ、再び立ち上がれ! 手札から魔法発動、《精神同調波》!」

 ソーガのターンに復活した《ジャンク・ウォリアー》は飛び上がると、《メンタルオーバー・デーモン》に右手を向ける。

「このカードは俺の場にシンクロモンスターがいる時に発動できる。 その効果は、相手モンスター1体を破壊する!」

「何!? シンクロを条件とした破壊効果だと!?」

《精神同調波》
通常魔法
自分フィールド上にシンクロモンスターが
表側表示で存在する場合のみ発動する事ができる。
相手フィールド上に存在するモンスター1体を破壊する。

「行け、《ジャンク・ウォリアー》! 《精神同調波》!」

 《ジャンク・ウォリアー》は右手を振りかぶると、そこから衝撃波が放たれ《メンタルオーバー・デーモン》の肉体を押し潰していく。

「だが、《メンタルオーバー・デーモン》の効果発動! 来い、《メンタルスフィア・デーモン》!」

 破壊され砕け散っていく《メンタルオーバー・デーモン》は、最後の力を解き放ちフィールドに次元の歪みを作り出す。

 その歪みから這い出てきたのは、《メンタルスフィア・デーモン》。

「《メンタルオーバー・デーモン》はフィールドを離れた時、自身の効果で除外したモンスターをフィールドに特殊召喚する。 残念だったな、不動遊星」

《メンタルオーバー・デーモン》
シンクロ・効果モンスター
星9/闇属性/サイキック族/攻3300/守3000
サイキック族チューナー+チューナー以外のサイキック族モンスター2体以上
1ターンに1度、自分の墓地に存在する
サイキック族モンスター1体を選択してゲームから除外する事ができる。
このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、
このカードの効果で除外したモンスターを
可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する。

《メンタルスフィア・デーモン》
シンクロ・効果モンスター
星8/闇属性/サイキック族/攻2700/守2300
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、
破壊したモンスターの元々の攻撃力分だけ自分のライフポイントを回復する。
また、サイキック族モンスター1体を対象にする魔法・罠カードが発動した時、
1000ライフポイントを払って発動できる。その発動を無効にし破壊する。

「そんな! 倒しても《メンタルスフィア・デーモン》が復活するなんて!」

「ククク……だったら復活した《メンタルスフィア・デーモン》もぶっ潰せばいい話じゃねえか。 なあ遊星」

「ああ! 俺はチューナーモンスター《ブライ・シンクロン》を召喚!」

 遊星が召喚したのは、ロボットのような外見の、黄緑色の装甲のチューナー。

《ブライ・シンクロン》
チューナー(効果モンスター)
星4/地属性/機械族/攻1500/守1100
このカードがシンクロ召喚の素材として墓地へ送られた場合、
このターンのエンドフェイズ時まで、このカードをシンクロ素材とした
シンクロモンスターの攻撃力は600ポイントアップし、効果は無効化される。

「レベル4《ジャンク・ウォリアー》にレベル4《ブライ・シンクロン》をチューニング!」

「《ロスト・スター・ディセント》のレベルダウンを活用して来ましたか」

「集いし願いが新たに輝く星となる! 光指す道となれ! シンクロ召喚!」

 煌めく星屑の元、顕現する白き翼。

 その雄叫びは天に響き、白き龍はフィールドに降り立つ。

「飛翔せよ、《スターダスト・ドラゴン》!」

 星屑の龍、《スターダスト・ドラゴン》が今、遊星の元に現れた――

《スターダスト・ドラゴン》
シンクロ・効果モンスター
星8/風属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
「フィールド上のカードを破壊する効果」を持つ
魔法・罠・効果モンスターの効果が発動した時、
このカードをリリースして発動できる。
その発動を無効にし破壊する。
この効果を適用したターンのエンドフェイズ時、
この効果を発動するためにリリースした
このカードを墓地から特殊召喚できる。

「シンクロ素材とした《ブライ・シンクロン》の効果発動! このターン、スターダストは効果が無効となる代わり攻撃力が600ポイントアップする!」

スターダスト・ドラゴン ATK:2500→3100

「私の《メンタルスフィア・デーモン》を超えただと!?」

「《スターダスト・ドラゴン》で《メンタルスフィア・デーモン》に攻撃! 響け、シューティング・ソニック!」

 《ブライ・シンクロン》の支援を受け強化されたスターダストのブレス。

 それは《メンタルスフィア・デーモン》が超能力で展開した障壁に衝突する。

 ブレスと障壁、それぞれは音を立ててぶつかり合うが、やがてブレスが障壁を突き破り《メンタルスフィア・デーモン》の身体へと命中。

 風穴を開けられた悪魔は全身にヒビが入り、砕け散っていった。

「ちっ、小賢しい真似を」

 粉々になり、煌めく《メンタルスフィア・デーモン》の粉末を前にしてディヴァインは不愉快そうな表情を浮かべる。

ディヴァイン&須藤 LP:2600→2200

「ハハハハ! 流石じゃねえか遊星、コイツは最高のタッグデュエルになりそうだ!」

「フッ、俺も熱くなってきた! ソーガ、俺たちの力で一気に終わらせるぞ! そして、アキを取り戻す!」

 遊星の言葉を聞いたディヴァインは不愉快そうな表情をする。

「まったく……お前のようなヤツはアキの側にいるには相応しくないというのに。 サイコデュエリストでもない只の人間が」

「俺はカードを1枚セット、ターンエンドだ」

「エンドフェイズ、《サイコ・トリガー》を発動だ。 自分のライフが相手を下回っていることで墓地のサイキック族モンスター《メンタルオーバー・デーモン》と《クレボンス》を除外し、2枚ドローする」

《サイコ・トリガー》
通常罠
自分のライフポイントが相手より下の場合に発動する事ができる。
自分の墓地に存在するサイキック族モンスター2体をゲームから除外し、
自分のデッキからカードを2枚ドローする。

 ターンが回ってきた須藤は、背後を向き磔にされたアキを見る。

「いやあ、十六夜先輩も隅に置けませんねえ。 フォーチュンカップのキング殿が必死に助けに来てくれるとは」

「ゆ、遊星とはそう言う……」

「ですが結局サイコデュエリストは異端者なのですよ。 私も苦労しましたよ、学校でも家庭でもこの力を隠し続けるのは」

 自分の手を眺め、須藤はため息をつく。

「ですけど、そんな生活は疲れましてねえ。 あなたが在籍していた時は手を出さなかったアルカディア・ムーブメントですが、今回の復活を期に参加させてもらったのですよ、ありのままの自分自身であるために」

「須藤君、あなた……」

「まあ、ここが私の理想郷となり得るかについては語りませんが……ともかく、サイコデュエリストのあなたが普通の人間に混ざって生活するなどいずれ破綻しますよ?」

「そんなことは無いわ。 確かに昔はこの力で沢山の人を傷つけた……けど、今は違うわ。 今の私には仲間や家族がいるの」

「では聞きますが、かつてあなたを迫害したデュエルアカデミアの皆さんが今はあなたを慕っておるのは何故だと思います?」

 眼鏡をくいっと上げると、須藤は話を続ける。

「それは簡単、あなたがサイコデュエリストの能力を制御できるようになったからです」

「それは……!」

「自分達に危害が及ばなくなったから受け入れ始めた、ただそれだけのことです。 ですが、あなたがもし能力を制御できなくなったら? 社会は、世界は、あなたを受け入れてくれますか?」

 須藤の問いかけが、アキを追い込んでいく。

 そこに響くは、遊星の声。

「たとえどんなことになろうと、アキは俺たちの仲間だ。 何があろうと、何度でも受け止めてやる!」

「遊星……!」

「不動遊星……まったく、普通から外れた人間ですねえ。 ですが、あなたが受け入れようがアカデミアのような社会はアキさんを迫害するでしょう! それがサイコデュエリストの宿命なのですよ!」

 次第に話をする須藤の声が強くなっていく。

「差別されるのも当然です、サイコデュエリストはただの人間から見ればとても恐ろしい力ですからね。 私達サイコデュエリストとそれ以外の人間には抗い難い差というものが存在している……ましてや、サイコデュエリスト同士でさえも差が存在する……」

「須藤君、あなた何が言いたいの?」

「大したことではないですよ。 ただ、あなた達の下らない絆とやらが見るに絶えなくて不愉快なのですよ」

 須藤は一息つくと、デッキからカードを引く。

「さて、お喋りが過ぎましたか。 私のターンです」

遊星&ソーガ LP:2800
手札:1&2枚
モンスター:《スターダスト・ドラゴン》(攻2500)
魔法&罠:セット1枚
ディヴァイン&須藤 LP:2200
手札:2&3→4枚(須藤の手札には《グリモの魔導書》、《トーラの魔導書》)
モンスター:無し
魔法&罠:セット1枚

「手札から《ジェスター・コンフィ》を特殊召喚します」

《ジェスター・コンフィ
効果モンスター
星1/闇属性/魔法使い族/攻 0/守 0
このカードは手札から表側攻撃表示で特殊召喚できる。
この方法で特殊召喚した場合、次の相手のエンドフェイズ時に
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、
そのモンスターと表側表示のこのカードを持ち主の手札に戻す。
「ジェスター・コンフィ」は自分フィールド上に1体しか表側表示で存在できない。

「さらに《ワンダー・ワンド》を装備。 《ワンダー・ワンド》の効果により、装備モンスターを墓地へ送り2枚ドロー」

《ワンダー・ワンド
装備魔法
魔法使い族モンスターにのみ装備可能。
装備モンスターの攻撃力は500ポイントアップする。
また、自分フィールド上のこのカードを装備したモンスターと
このカードを墓地へ送る事で、デッキからカードを2枚ドローする。

「《魔導老士エアミット》を召喚。 このカードは魔導書を使うたびにレベルと攻撃力が上昇します」

 須藤が呼び出したのは、長い髭を蓄えた魔法使いの老人。
 
《魔導老士エアミット》
効果モンスター
星3/地属性/魔法使い族/攻1200/守 700
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
「魔導書」と名のついた魔法カードが発動する度に、
このカードのレベルは2つ上がり、攻撃力は300ポイントアップする。

「さあ、魔導書の真髄をご覧あれ。 まずは《グリモの魔導書》で、デッキの《ネクロの魔導書》を手札に加えましょう」

《グリモの魔導書》
通常魔法
デッキから「グリモの魔導書」以外の
「魔導書」と名のついたカード1枚を手札に加える。
「グリモの魔導書」は1ターンに1枚しか発動できない。

魔導老士エアミット レベル:3→5 ATK:1200→1500

「続いて《ネクロの魔導書》を発動。 手札の《トーラの魔導書》を公開し、墓地の《ジェスター・コンフィ》を除外し発動条件クリア。 蘇れ、《神聖魔導王エンディミオン》!」

 魔法使いの老人の隣に現れたのは、一度は連撃で葬られた高等魔導士――エンディミオン。

「《ネクロの魔導書》の効果により、復活させたモンスターのレベルに除外したモンスターのレベルを加算します」

《ネクロの魔導書》
装備魔法
自分の墓地の魔法使い族モンスター1体をゲームから除外し、
このカード以外の手札の「魔導書」と名のついた
魔法カード1枚を相手に見せて発動できる。
自分の墓地の魔法使い族モンスター1体を選択して
表側攻撃表示で特殊召喚し、このカードを装備する。
また、装備モンスターのレベルは、
このカードを発動するために除外した
魔法使い族モンスターのレベル分だけ上がる。
「ネクロの魔導書」は1ターンに1枚しか発動できない。

魔導老士エアミット レベル:5→7 ATK:1500→1800

《神聖魔導王エンディミオン》
星7/闇属性/魔法使い族/攻2700/守1700
このカードは自分フィールド上に存在する
「魔法都市エンディミオン」に乗っている魔力カウンターを6つ取り除き、
自分の手札または墓地から特殊召喚する事ができる。
この方法で特殊召喚に成功した時、
自分の墓地に存在する魔法カード1枚を手札に加える。
1ターンに1度、手札から魔法カード1枚を捨てる事で、
フィールド上に存在するカード1枚を破壊する。

神聖魔導王エンディミオン レベル:7→8

「《神聖魔導王エンディミオン》の破壊効果は《スターダスト・ドラゴン》の前では無意味ですからね、ここは私の切り札を呼ぶとしましょうか!」

 須藤の場の2体の魔法使いが渦に包まれる。

「高等魔導士《神聖魔導王エンディミオン》に加え、魔導書より力を得た《魔導老士エアミット》も今や高等魔導士! レベル6を超える魔法使い族2体をリリース!」

 二つの渦は一つに混ざると、その中より黒い影が浮かび上がる。

「魔導を統べる漆黒の神官、《黒の魔法神官》の降臨です」

 渦を切り裂き現れたのは、黒の衣装で全身を覆った魔法使い。

 緑の杖を振るい、滾る魔力を従えるその姿はまさに最上級魔導士。

黒の魔法神官マジック・ハイエロファント・オブ・ブラック
効果モンスター
星9/闇属性/魔法使い族/攻3200/守2800
このカードは通常召喚できない。
自分フィールド上のレベル6以上の魔法使い族モンスター2体を
リリースした場合のみ特殊召喚できる。
また、このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
罠カードが発動した時、その罠カードの発動を無効にし破壊できる。

「なんだこのモンスターは!」

「レベル9の魔法使い族モンスターか、面白えじゃねえか」

「さあ、《黒の魔法神官》で《スターダスト・ドラゴン》に攻撃!」

 魔法神官は右手で持った杖をスターダストへと向け、呪文を唱える。

 すると彼の周囲を取り巻くように謎の言語が現れ、魔力を放出する。

「セレスティアル・ブラック・バーニング!」

 杖より放たれる高出力の魔導砲。

「チッ、ここでスターダストが倒されちまったら戦力がキツイぜ」

 そう呟くソーガの声を聞くと、遊星は伏せカードを発動させる。

「速攻魔法発動、《ハーフ・シャット》! モンスター1体の攻撃力は半分になり、このターンバトルでは破壊されない!」

《ハーフ・シャット》
速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターはこのターン戦闘では破壊されず、
攻撃力はこのターンのエンドフェイズ時まで半分になる。

「なるほど、罠を封じる《黒の魔法神官》でも速攻魔法なら通用しますからねえ。 ですが、私の手札にあるカードを忘れましたか?」

 須藤の手札にあるカード――それは前の須藤のターンに《魔導教士システィ》の効果で手札に加えた《トーラの魔導書》だ。

《トーラの魔導書》
速攻魔法
フィールド上の魔法使い族モンスター1体を選択し、
以下の効果から1つを選択して発動できる。
●このターン、選択したモンスターはこのカード以外の魔法カードの効果を受けない。
●このターン、選択したモンスターは罠カードの効果を受けない。

「ああ、分かっている。 俺が選択するモンスターは《スターダスト・ドラゴン》だ」

スターダスト・ドラゴン ATK:2500→1250

「スターダストを守るためにライフを犠牲にしましたか……なら、お望み通りダメージを喰らいなさい!」

 放出された魔導砲はセイリオス・カンパニーの屋上の床をえぐりながら、スターダストを飲み込む。

 スターダストの周囲に展開された結界が破壊を防ぐが、残されたエネルギーは遊星を襲う。

「ぐああああああっ!」

遊星&ソーガ LP:2800→850

 衝撃を受け吹き飛ばされる遊星。

 この場は屋上、吹き飛ばされた先には21階相応の天空だ。

「遊星!」

 遊星は耐性を立て直し、ギリギリで踏みとどまる。

「ふう……よかったわ」

「ったく、危なっかしいヤツだ」

「こんな方法で倒してしまうのは不本意でしたからねえ、私としては喜ばしいですよ。 私はカードを1枚伏せ、ターンを終了です」

 須藤はそう言いターンを終える。

「すまない、ソーガ。 ライフを大きく削られてしまった」

「別に構いやしねえよ、相手を倒しさえすればライフなんて1ポイントでも問題無えしよ。 それにしてもあの須藤とやら、面白えヤツだな、気に入った」

「おやおや、あの壊し屋さんのお気に召されるとは光栄ですねえ。 そこまで言われればあなたを叩き潰すことに尽力せねばなりません」

 右手の指で眼鏡を上げ、須藤はそう答える。

 その様子を見たソーガは、笑い出す。

「ククク……ハハハハハ!」

 ソーガ不敵に笑い、須藤を指差す。

「俺を叩き潰す、か! 世界も、そして己も知らねえ子供の分際でよくもそんなことが言えたもんだなあ」

「……!!」

 ソーガの威圧感に、須藤は一歩後退る。

「見せてやるよ。 己を貫き通し、立ちはだかる壁は壊して突き進む、悪の姿ってヤツをなあ!」

遊星&ソーガ LP:850
手札:1&2→3枚
モンスター:《スターダスト・ドラゴン》(攻2500)
魔法&罠:無し
ディヴァイン&須藤 LP:2200
手札:2&0枚
モンスター:《黒の魔法神官》(攻3200)
魔法&罠:セット2枚(1枚は《トーラの魔導書》)





第十三話「激戦の果て、交差する脅威」




 ――ネオドミノシティ、ダイモンエリア、セイリオス・カンパニー20階、廊下

 ――17:30

「やるな……なら、我の本気を見せてやろう! 墓地に眠る岩石族モンスター《番兵ゴーレム》、《地帝グランマーグ》、《風化戦士》、《ブロック・ゴーレム》、《プリズマン》を除外! 来い、《メガロック・ドラゴン》!」

 仮面のデュエリストが手を掲げると、轟音とともに岩石の巨竜が現れる。

《メガロック・ドラゴン》
効果モンスター
星7/地属性/岩石族/攻   ?/守   ?
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地に存在する岩石族モンスターを除外する事でのみ特殊召喚できる。
このカードの元々の攻撃力と守備力は、特殊召喚時に除外した
岩石族モンスターの数×700ポイントの数値になる。

メガロック・ドラゴン ATK:3500

「消え去るがいい! 《メガロック・ドラゴン》で《エクスプロード・ウィング・ドラゴン》に攻撃!」

 《メガロック・ドラゴン》は目の前の龍を押しつぶそうと突進する。

「ならば、罠発動! 《チェンジ・デステニー》は相手の攻撃モンスターを守備表示にし、さらに二つの効果を相手が選択し適用する!」

 謎の力に阻まれ、《メガロック・ドラゴン》の動きが停止する。

《チェンジ・デステニー》
通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
相手モンスター1体の攻撃を無効にし、
そのモンスターを守備表示にする。
そのモンスターはフィールド上に表側表示で存在する限り、
表示形式を変更する事ができなくなる。
その後、相手は以下の効果から1つを選択して適用する。
●このカードの効果で攻撃を無効にされたモンスターの
攻撃力の半分だけ自分のライフポイントを回復する。
●このカードの効果で攻撃を無効にされたモンスターの
攻撃力の半分のダメージを相手ライフに与える。

「何……ならば、我はライフを回復する!」

絶華 LP:1250→3000

 目の前の相手がそう宣言すると、対峙する男は鼻で笑う。

「フッ……ライフ回復、か。 この状況で怖気付いたか?」

「我はかつてこの地で王の名を得た貴様という相手を警戒し、慎重にデュエルを進めているのみ! そんな侮辱を受ける筋合いなど無い! ターンエンドだ!」

「それが怖気ついたと言っているのだ! ならばこのジャック・アトラスが見せてやろう、本物のデュエルを! 俺のターン!」

ジャック LP:2000
手札:3→4枚
モンスター:《エクスプロード・ウィング・ドラゴン》(攻2950)
魔法&罠:セット1枚
絶華 LP:3000
手札:1枚
モンスター:《メガロック・ドラゴン》(守3500)
魔法&罠:無し

「魔法発動、《トラスト・マインド》! 《エクスプロード・ウィング・ドラゴン》をリリースし、そのレベルの半分以下のレベルを持つチューナーを墓地より手札に加える! 戻れ、《ダーク・リゾネーター》!」

「強力なシンクロモンスターを、チューナー1枚のために犠牲とするだと!?」

《トラスト・マインド》
通常魔法
自分フィールド上に存在するレベル2以上の
モンスター1体をリリースして発動する。
自分の墓地から、リリースしたモンスターの
半分以下のレベルを持つチューナー1体を手札に加える。

「《ダーク・リゾネーター》を召喚!」

 音叉を手に持った小型の悪魔が現れる。

《ダーク・リゾネーター》
チューナー(効果モンスター)
星3/闇属性/悪魔族/攻1300/守 300
このカードは1ターンに1度だけ、戦闘では破壊されない。

「さらに魔法発動、《紅蓮魔竜の鼓動》! 自分フィールドにリゾネーターと名の付いたモンスターが存在することで、デッキから《バイス・ドラゴン》を特殊召喚する!」

 《ダーク・リゾネーター》が鳴らした音叉に共鳴するように、禍々しい外見の紫色の龍が姿を現す。

《紅蓮魔竜の鼓動》
通常魔法 (血の刻印オリジナル)
このカードを発動する場合、このターン自分はドラゴン族・闇属性以外のレベル5以上のモンスターを特殊召喚できない。
自分フィールド上に以下のモンスターが表側表示で存在する場合、1つを選択して発動する。
●「リゾネーター」と名の付いたモンスター:
自分の手札・デッキ・墓地からレベル5・ドラゴン族・闇属性モンスター1体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力・守備力は半分になり、効果は無効となる。
●レベル5・ドラゴン族・闇属性モンスター:
自分の手札・デッキ・墓地から「リゾネーター」と名の付いたモンスター1体を手札に加える。
●レベル8・ドラゴン族・闇属性シンクロモンスター:
自分の手札・デッキ・墓地から「リゾネーター」と名の付いたモンスター2体を特殊召喚する。

《バイス・ドラゴン》
効果モンスター
星5/闇属性/ドラゴン族/攻2000/守2400
相手フィールド上にモンスターが存在し、
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、
このカードは手札から特殊召喚できる。
この効果で特殊召喚したこのカードの元々の攻撃力・守備力は半分になる。

「レベル5《バイス・ドラゴン》にレベル3《ダーク・リゾネーター》をチューニング!」

「これは……!」

「王者の鼓動、今ここに列をなす! 天地鳴動の力を見るがいい! シンクロ召喚! 我が魂、《レッド・デーモンズ・ドラゴン》!」

 燃え盛る業火と共に君臨する、赤黒い悪魔龍。

 地獄の炎を従えるその姿は、禍々しさと同時に圧倒的な孤高の存在を印象づける。

《レッド・デーモンズ・ドラゴン》
シンクロ・効果モンスター
星8/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2000
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードが相手フィールド上に守備表示で存在するモンスターを攻撃した場合、
そのダメージ計算後に相手フィールド上に守備表示で存在するモンスターを全て破壊する。
自分のエンドフェイズ時にこのカードがフィールド上に表側表示で存在する場合、
このカード以外のこのターン攻撃宣言をしていない自分フィールド上のモンスターを全て破壊する。

「《レッド・デーモンズ・ドラゴン》よ、《メガロック・ドラゴン》に攻撃だ! アブソリュート・パワーフォース!」

 《レッド・デーモンズ・ドラゴン》は右腕に炎を纏わせ、力強い打撃を放つ。

「何!? 守備力は我が《メガロック・ドラゴン》の方が上だ!」

 《メガロック・ドラゴン》は《レッド・デーモンズ・ドラゴン》に対し同じく打撃で応戦する。

 結果《レッド・デーモンズ・ドラゴン》は押し負け、弾き飛ばされる。

「ぐあああっ!」

 サイコデュエリストの力によって実体化したダメージを受け、ジャックは大きく弾き飛ばされる。

ジャック LP:2000→1500

「だが! 《レッド・デーモンズ・ドラゴン》が守備表示モンスターとバトルした場合、相手の守備表示モンスターを全て破壊する!」

「これは! そのために敵わない戦闘を行ったのか……!」

「喰らえ、デモン・メテオ!」

 《レッド・デーモンズ・ドラゴン》の雄叫びに呼応し業火の隕石が降り注ぎ、《メガロック・ドラゴン》を焼き払っていく。

「我が切り札、《メガロック・ドラゴン》が……!」

「それだけではない、《破壊神の系譜》を発動! 相手の守備モンスターを破壊したターン、レベル8モンスターに2回攻撃を付与する!」

 猛々しい咆哮とともに、再び攻撃態勢に入る《レッド・デーモンズ・ドラゴン》。

《破壊神の系譜》
通常罠
相手フィールド上に守備表示で存在するモンスターを破壊したターン、
自分フィールド上に表側表示で存在するレベル8のモンスター1体を選択して発動する。
このターン、選択したモンスターは一度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。

「なんという猛攻……フッ、どうやら本当に我は怖気づいていたようだな」

「喰らうがいい! アブソリュート・パワーフォース!」

 再度放たれる魔竜の鉄槌を、絶華はその身で受ける。

「フッ……」

絶華 LP:3000→0










「フィールド魔法発動だ、《アドバンス・コロッセオ》! コイツがあればすでに召喚したターンでもアドバンス召喚が可能になる!」

《アドバンス・コロッセオ》
フィールド魔法 (血の刻印オリジナル)
このカードがフィールド上に存在する限り、
お互いのプレイヤーはそれぞれのメインフェイズ時に1度だけ、
通常召喚に加えてアドバンス召喚できる。

 男はカードを掲げ、デュエルディスクに叩きつける。

 すると、樹海に包まれたフィールドの中に古代のコロッセオを模したフィールドが出現する。

「小娘が、力の差を教えてやるぜ! 召喚したばっかの《暴鬼》をリリースし、《インフェルノ・ハンマー》をアドバンス召喚!」

 ザンクと名乗る男の場に、巨大なハンマーを持った悪魔が現れる。

《インフェルノ・ハンマー》
効果モンスター
星6/闇属性/悪魔族/攻2400/守   0
このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、
裏側守備表示にする事ができる。

「ですが、その程度の攻撃力では私の《レッド・ビートル・ボーグ》には通じませんよ」

《レッド・ビートル・ボーグ》
シンクロ・効果モンスター (血の刻印オリジナル)
星7/炎属性/昆虫族/攻2700/守2400
昆虫族チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードが表側表示で存在する限り、自分フィールド上に表側表示で存在する昆虫族モンスターは相手の罠の効果を受けない。
1ターンに1度、このカードの攻撃によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、
破壊したそのモンスターを相手フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚することができる。
この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力は1000ポイントダウンする。
さらに、このバトルフェイズ中、このカードはもう1度だけ攻撃できる。

「へっ、ならコイツでどうだ? 《破天荒な風》でパワーアップだ!」

 悪魔の手にあるハンマーは風を帯び、その破壊力は強化される。

《破天荒な風》
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターの攻撃力・守備力は、
次の自分のスタンバイフェイズ時まで1000ポイントアップする。

インフェルノ・ハンマー ATK:2400→3400

「ぶっ潰してやれ!」

 《インフェルノ・ハンマー》はハンマーを振り下ろし、《レッド・ビートル・ボーグ》を粉々に砕く。

「っ……!」

セーナ LP:2000→1300

「ですが《大樹海》の効果発動です。 破壊された《レッド・ビートル・ボーグ》はレベル7、よって同レベルの《ポセイドン・オオカブト》をデッキから手札に加えます」

《大樹海》
永続魔法
フィールド上に表側表示で存在する昆虫族モンスターが
戦闘またはカードの効果によって破壊され墓地へ送られた時、
そのモンスターのコントローラーは破壊されたモンスターと
同じレベルの昆虫族モンスター1体をデッキから手札に加える事ができる。

「くだらねえ小細工しやがる、これで俺様はターンエンドだ」

 セーナは手札のカードを眺めつつ、カードを引く。

「私のターンですね」

セーナ LP:1300
手札:4→5枚(1枚は《ポセイドン・オオカブト》)
モンスター:無し
魔法&罠:セット1枚、《大樹海》
ザンク LP:2000
手札:無し
モンスター:《インフェルノ・ハンマー》(攻3400)
魔法&罠:《アドバンス・コロッセオ》

「さて、ソーガさんの後を追いたいですし、終わらせるとしましょうか」

「何い!?」

「私は《カブトロン》を召喚」

 セーナの場に呼び出されたのはカブトムシのモンスター。

「なんだそのモンスターは」

「このモンスターは自分の場に表側表示で存在する魔法か罠を墓地に送ることで、墓地の下級昆虫族を復活させます。 《大樹海》を墓地に送り、《共鳴虫》を特殊召喚します」

《カブトロン》
効果モンスター
星4/闇属性/昆虫族/攻1600/守 900
自分フィールド上に表側表示で存在する
魔法・罠カード1枚を墓地へ送って発動できる。
自分の墓地のレベル4以下の昆虫族モンスター1体を選択して
表側守備表示で特殊召喚する。
「カブトロン」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

「あなたの《アドバンス・コロッセオ》の効果、使わせてもらいます。 2体の昆虫族をリリースし、アドバンス召喚! 《ポセイドン・オオカブト》!」

 セーナの場にトライデントを手にした、昆虫らしからぬ外見の戦士が召喚される。

ポセイドン・オオカブト ATK:2500

「ハッ、だが《破天荒な風》でパワーアップした俺様の《インフェルノ・ハンマー》には敵わねえ!」

「それはどうでしょう。 速攻魔法《ハーフ・シャット》により《インフェルノ・ハンマー》の攻撃力を半減します」

「なっ……!」

インフェルノ・ハンマー ATK:3400→1700

《ハーフ・シャット》
速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターはこのターン戦闘では破壊されず、
攻撃力はこのターンのエンドフェイズ時まで半分になる。

「バトル、《ポセイドン・オオカブト》で《インフェルノ・ハンマー》に攻撃。 トライデント・スパイラル!」

 《ポセイドン・オオカブト》は手にした槍で勢い良く《インフェルノ・ハンマー》の腹部を貫く。

「ぐあああっ!」

ザンク LP:2000→1200

「ん、これは……」

「《ハーフ・シャット》の効果を受けたモンスターは戦闘では破壊されません」

「ワハハハハハハ、何やってんだお前! たった800のダメージを食らわすのがお前の狙いか、やっぱ所詮は小娘……」

「《ポセイドン・オオカブト》のモンスター効果」

 セーナがそう宣言すると、《ポセイドン・オオカブト》は再び槍を構える。

「このモンスターがバトルした相手を破壊できなかった場合、追加で攻撃ができます」

《ポセイドン・オオカブト》
効果モンスター
星7/地属性/昆虫族/攻2500/守2300
このカードが相手フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスターを攻撃し、
そのモンスターが戦闘によって破壊されなかった場合、
同じモンスターに続けて攻撃する事ができる。
この効果は1ターンに2度まで使用できる。

「まさか、《ハーフ・シャット》はこれが狙い……」

「トライデント・スパイラル、第二打!」

「がはあああっ!」

ザンク LP:1200→400

 ダメージをよろめくザンク。

 そんな彼を見ながら、セーナはさらに攻撃を続ける。

「《ポセイドン・オオカブト》のこの効果は2回まで使用出来ます」

「な……!」

「トライデント・スパイラル、第三打!」

 三度目の攻撃が《インフェルノ・ハンマー》を貫き、その衝撃がザンクを襲った。

「ごへりゅああああああっ!」

ザンク LP:400→0







「《ブラックフェザー・ドラゴン》、効果発動だ! ブラック・バースト!」

《ブラックフェザー・ドラゴン》
シンクロ・効果モンスター
星8/闇属性/ドラゴン族/攻2800/守1600
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
自分がカードの効果によってダメージを受ける場合、
代わりにこのカードに黒羽カウンターを1つ置く。
このカードの攻撃力は、このカードに乗っている黒羽カウンターの数×700ポイントダウンする。
また、1ターンに1度、このカードに乗っている黒羽カウンターを全て取り除く事で、
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、
その攻撃力を取り除いた黒羽カウンターの数×700ポイントダウンし、
ダウンした数値分のダメージを相手ライフに与える。

 黒羽の龍の巻き起こす突風を受け、《ダークストーム・ドラゴン》は力を削がれる。

 そして、突風はその背後のプレイヤーをも襲う。

「……」

ダークストーム・ドラゴン ATK:2700→2000

黒騎士 LP:4000→3300

「こうも何も喋んねえと気味が悪いぜ……だが、容赦はしないぜ! 行くぜ、《ブラックフェザー・ドラゴン》、《ダークストーム・ドラゴン》に攻撃だ! ノーブル・ストリーム!」

 黒羽の龍の放つブレスは、弱体化した《ダークストーム・ドラゴン》を貫く。

「……」

黒騎士 LP:3300→2500

「さらに、《BF-黒槍のブラスト》でダイレクトアタック! デス・スパイラル!」

 槍を構えた黒羽の戦士は、回転しながら黒騎士に突進する。

黒騎士 LP:2500→800

「俺はこれでターンエンドだ。 さあ、お前のターンだぜ」

 黒騎士と呼ばれた男は、沈黙したままカードを引きターンを進める。

クロウ LP:2000
手札:1枚
モンスター:《ブラックフェザー・ドラゴン》(攻2800)、《BF-黒槍のブラスト》(攻1700)
魔法&罠:セット2枚
黒騎士 LP:800
手札:2→3枚
モンスター:無し
魔法&罠:セット1枚

「……」

 黒騎士が掲げたのは、《竜の霊廟》のカード。

《竜の霊廟》
通常魔法
デッキからドラゴン族モンスター1体を墓地へ送る。
墓地へ送ったモンスターがドラゴン族の通常モンスターだった場合、
さらにデッキからドラゴン族モンスター1体を墓地へ送る事ができる。
「竜の霊廟」は1ターンに1枚しか発動できない。

 黒騎士は《ダークストーム・ドラゴン》をデッキから取り出し、墓地に送る。

「ソイツは確か、デュアルモンスター……墓地では通常モンスターとして扱うんだったな」

《ダークストーム・ドラゴン》
デュアルモンスター
星8/闇属性/ドラゴン族/攻2700/守2500
このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、
通常モンスターとして扱う。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、
このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する
魔法・罠カード1枚を墓地へ送って発動できる。
フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。

 黒騎士は頷くと、《竜の霊廟》の追加効果により更なる《ダークストーム・ドラゴン》を墓地に送る。

「……!」

 続いて発動したのは、《銀龍の轟砲》のカード。

 黒騎士の場に嵐を統べる黒き翼竜――《ダークストーム・ドラゴン》が復活した。

「またコイツか……!」

《銀龍の轟砲》
速攻魔法
自分の墓地のドラゴン族の通常モンスター1体を選択して特殊召喚する。
「銀龍の轟咆」は1ターンに1枚しか発動できない。

「……」

 フィールドに突如、ファンタジー風の城が現れる。

 永続罠、《竜魂の城》。墓地のドラゴン族を除外しモンスターを強化するカード。

 黒騎士は墓地の《ダークストーム・ドラゴン》を1枚除外し、フィールドの《ダークストーム・ドラゴン》を強化した。

《竜魂の城》
永続罠
1ターンに1度、自分の墓地のドラゴン族モンスター1体をゲームから除外し、
自分フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターの攻撃力はエンドフェイズ時まで700ポイントアップする。
また、フィールド上に表側表示で存在するこのカードが墓地へ送られた時、
ゲームから除外されている自分のドラゴン族モンスター1体を選択して特殊召喚できる。
「竜魂の城」は自分フィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。

ダークストーム・ドラゴン ATK:2700→3400

「俺の《ブラックフェザー・ドラゴン》の攻撃力を上回りやがった!」

「……!」

 黒騎士の発動した手札の最後のカード――《スーペルヴィス》。

「そのカードは、デュアルモンスターの力を開放するカード!」

 その効果により、《ダークストーム・ドラゴン》は効果モンスターとなる。

《スーペルヴィス》
装備魔法
デュアルモンスターにのみ装備可能。
装備モンスターは再度召喚した状態になる。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードが墓地へ送られた時、
自分の墓地に存在する通常モンスター1体を選択して特殊召喚する。

「…………!」

 黒騎士は《スーペルヴィス》を墓地に送り、右腕を掲げる。

 すると、《ダークストーム・ドラゴン》の周囲に嵐が巻き起こる。

《ダークストーム・ドラゴン》
デュアルモンスター
星8/闇属性/ドラゴン族/攻2700/守2500
このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、
通常モンスターとして扱う。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、
このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する
魔法・罠カード1枚を墓地へ送って発動できる。
フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。

 巻き起こされた嵐は全てを飲み込み、城は崩れ落ちていく。

「コイツは……俺の伏せカードが吹き飛ばされちまった!」

「……!」

 クロウの場の2枚の伏せカードと、黒騎士の場の《竜魂の城》が破壊される。

 しかし、黒騎士は墓地から2枚のカード――《スーペルヴィス》と《竜魂の城》を取り出す。

「確か、あの2枚は墓地で効果を発動するんだったな。 《スーペルヴィス》は通常モンスターを墓地から復活させる、そして《竜魂の城》は除外されたドラゴン族を特殊召喚する……なんてこった、アイツの墓地と除外には《ダークストーム・ドラゴン》が1体ずつ、つまりフィールドに3体の《ダークストーム・ドラゴン》が揃っちまうってわけか!」

「……!」

 黒騎士の足元に円状の光の門が表れ、崩れ落ちた城は光を放つ。

「なーんてな」

 クロウがそう言うと同時に、黒騎士の足元で爆発が起きる。

「……!?」

黒騎士 LP:800→0

 何が起きたのかもわからないまま爆風で吹き飛ばされる黒騎士。

 クロウは墓地から1枚のカードを取り出す。

「お前が破壊したのは《BF-マイン》! お前がコイツを破壊したことで、1000ポイントのダメージがお前を襲ったのさ!」

《BF-マイン》
通常罠
セットされたこのカードが相手のカードの効果によって破壊された時、
自分フィールド上に「BF」と名のついたモンスターが表側表示で存在する場合、
相手ライフに1000ポイントダメージを与え、
自分はデッキからカードを1枚ドローする。

「……!」

「ヘッ、残念だったな騎士ヤロー! このクロウ様に挑もうなんて百年早えぜ!」

 デュエルを終えたクロウに歩み寄るジャックとセーナ。

「そちらも終わったようですね」

「おう、そっちも無事みてえだな」

「当然だ、あの程度の相手に敗れるこのジャック・アトラスではない」

 セーナは先ほど通った階段を見つつ、疑問を口にする。

「それにしても、どうして他のサイコデュエリストやセイリオス・カンパニーのデュエルマフィアが来ないのでしょうか」

「そう言えば妙だな、10階あたりのシャッターはサイコデュエリストに破れれたはずだ。 そこから追手が山ほど来てもおかしくねえんだがな」

「フン、敵が来た時に相手をしてやればいい話だ。 そんなことより屋上に向かうぞ」

 そう言うとジャックは奥へ続く通路に向かう。

 クロウも後に続こうとするが、セーナが立ち止まっていることに気づく。

「……」

 セーナは静かに、倒れている黒い甲冑の男を見つめている。

(何だろう、この人……どこかで……)

「どうした、セーナ? 早く行こうぜ」

「あ、はい」

 セーナはクロウの方を振り向き、黒騎士を後にして先に向かった。








 ――ネオドミノシティ、ダイモンエリア、セイリオス・カンパニー屋上

 ――17:40

「ククク……ハハハハハ! コイツはいいドローだ!」

 ソーガは引いたカードをすぐさま召喚する。

「《トランス・デーモン》を召喚し、効果を発動だ。 手札の悪魔族モンスター《トリック・デーモン》を捨てることで攻撃力を500アップするぜ!」

 場に現れた青紫の悪魔は、降り注いだ魔力を受け力を増幅させた。

《トランス・デーモン》
効果モンスター
星4/闇属性/悪魔族/攻1500/守 500
1ターンに1度、手札から悪魔族モンスター1体を捨て、
このカードの攻撃力をエンドフェイズ時まで500ポイントアップする事ができる。
自分フィールド上のこのカードが破壊され墓地へ送られた時、
ゲームから除外されている自分の闇属性モンスター1体を選択して手札に加える事ができる。

トランス・デーモン LP:1500→2000

「たった今墓地へと送られた《トリック・デーモン》の効果発動! デッキのデーモンを手札に加えるぜ! 俺が加えるのは《D  Tダークチューナー  デーモン・ファントム》!」

《トリック・デーモン》
効果モンスター
星3/闇属性/悪魔族/攻1000/守 0
このカードがカードの効果によって墓地へ送られた場合、
または戦闘によって破壊され墓地へ送られた場合、
デッキから「トリック・デーモン」以外の
「デーモン」と名のついたカード1枚を手札に加える事ができる。
「トリック・デーモン」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

「さらに墓地の《トリック・デーモン》と《アサルト・デーモン》をゲームから除外し、コイツを特殊召喚だ! 来い、《D  Tダークチューナー  デーモン・ファントム》!」

 ソーガに纏わり付くように出現したのは亡霊のような姿の悪魔。

「ダーク……チューナー……!? そのカードは一体……!?」

「クク……《DT デーモン・ファントム》の効果により《トランス・デーモン》のレベルを1にするぜ!」

D  Tダークチューナー デーモン・ファントム》
ダークチューナー(効果モンスター) (血の刻印オリジナル)
星8/闇属性/悪魔族/攻 0/守 0
このカードは自分の墓地に存在する「デーモン」と名の付いた
カード2枚をゲームから除外し、手札から特殊召喚する事ができる。
1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する
このカード以外の悪魔族モンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターのレベルは1になる。
このカードをシンクロ素材とする場合、
ダークシンクロモンスターのシンクロ召喚にしか使用できない。

「レベル1となった《トランス・デーモン》にレベル8の《DT デーモン・ファントム》をダークチューニング!」

 デーモン・ファントムの身体から闇が広がり、《トランス・デーモン》を包んでいく。

 そして、ソーガの周囲にもまた闇が纏わり付く。

「煌めく星の影たる闇夜、今こそ深淵より這い出て光を喰らえ!」

 ソーガがカードを空に掲げると、周囲の闇がそこに集まってゆく。

「光なき世界へ! ダークシンクロ!」

 闇の中より這い出るは、奇怪なデザインの漆黒の龍。

 背中より生えた何本もの腕、額に一つだけ見開かれた瞳、脈動する胴体に、捕食器官を備えた腹部。

 白銀に輝く星屑の龍の隣に、漆黒に染まりし暗黒の龍が降臨する。

「舞い降りろ、《ダークネブラ・ドラゴン》!」

《ダークネブラ・ドラゴン》
ダークシンクロ・効果モンスター  (血の刻印オリジナル)
星7/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
チューナー以外のモンスター1体−ダークチューナー
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り1度だけ、相手の墓地に存在するモンスターを3体まで選択して発動する。
選択したモンスターを装備カード扱いでこのカードに装備し、そのモンスターの効果を得る。
このカードが破壊される場合、代わりにこのカードの装備カード1枚を破壊することができる。

「ダークチューナーから呼び出されるダークシンクロ……何ですか、そのカードは! この私が見たことも聞いたこともないようなカードがあるなんて……」

「ククク……サイコデュエリストだかアカデミアのトップだか知らねえが、世界にはまだまだ上があるってことだ。 覚えておきな」

「偉そうなことを……その程度で私に勝った気にならないでくださいよ! 私の《黒の魔法神官》の攻撃力は3200! スターダストだろうとダークネブラだろうと敵じゃないんですよ!」

 須藤の言うとおり、《ダークネブラ・ドラゴン》を呼ぼうと《黒の魔法神官》を突破する力は無い――現段階、では。

「なら見せてやるぜ、《ダークネブラ・ドラゴン》の効果をよ! さあ、死者共を引きずり出し、その身で喰らい尽くせ!」

 ダークネブラは大地に降りると、背中から何本も生えている腕を地面に突き刺しモンスターを引きずり出す。

「さあ、本日のディナーは《メンタルスフィア・デーモン》に《久遠の魔術師ミラ》、それに《神聖魔導王エンディミオン》だ」

 引きずり出されたのはソーガに名指しされた三体のモンスター。

 それらはダークネブラの腹部の鉤爪に捉えられ、腹部にある口から飲み込まれていく。

「なんて光景ですか……」

「そう暗い顔をするなよ、素敵なお知らせがあるんだからなあ。 コイツはこの効果で取り込んだモンスターの効果を吸収できるんだぜ」

《ダークネブラ・ドラゴン》
ダークシンクロ・効果モンスター  (血の刻印オリジナル)
星7/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
チューナー以外のモンスター1体−ダークチューナー
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り1度だけ、相手の墓地に存在するモンスターを3体まで選択して発動する。
選択したモンスターを装備カード扱いでこのカードに装備し、そのモンスターの効果を得る。
このカードが破壊される場合、代わりにこのカードの装備カード1枚を破壊することができる。

「……! 《神聖魔導王エンディミオン》の持つ破壊効果が狙いですか!」

「ご名答!」

《神聖魔導王エンディミオン》
効果モンスター
星7/闇属性/魔法使い族/攻2700/守1700
このカードは自分フィールド上に存在する
「魔法都市エンディミオン」に乗っている魔力カウンターを6つ取り除き、
自分の手札または墓地から特殊召喚する事ができる。
この方法で特殊召喚に成功した時、
自分の墓地に存在する魔法カード1枚を手札に加える。
1ターンに1度、手札から魔法カード1枚を捨てる事で、
フィールド上に存在するカード1枚を破壊する。

「その前に《貪欲な壺》を発動し、墓地の《ジャンク・シンクロン》、《ロード・ランナー》、《ジャンク・ウォリアー》、《トランス・デーモン》、《ジェノサイドキングデーモン》をデッキに戻す。 そして2枚ドローだ」

《貪欲な壺》
通常魔法
自分の墓地のモンスター5体を選択して発動できる。
選択したモンスター5体をデッキに加えてシャッフルする。
その後、デッキからカードを2枚ドローする。

「さあ、ありがたく頂戴したカードを使わせてもらうぜ! 吸収した《神聖魔導王エンディミオン》の効果発動! 手札の魔法カード《万魔殿-悪魔の巣窟》を捨て、《黒の魔法神官》をぶっ壊す!」

 ダークネブラの体から《神聖魔導王エンディミオン》が姿を表し、杖を掲げ呪文を唱える。

 そして放たれた魔法は《黒の魔法神官》の身体を貫き、光に包んで消滅させる。

「私の《黒の魔法神官》が……!」

「さあて、戦闘と行こうか。 まずは《スターダスト・ドラゴン》だ! 響け、シューティング・ソニックゥ!」

 スターダストは須藤に標準を合わせ、強烈なブレスを放つ。

「……罠発動です、《体力増強剤スーパーZ》でライフを4000回復します」

《体力増強剤スーパーZ》
通常罠
このターンのダメージステップ時に相手から
2000ポイント以上の戦闘ダメージを受ける場合、
その戦闘ダメージがライフポイントから引かれる前に、
一度だけ4000ライフポイント回復する。

ディヴァイン&須藤 LP:2200→6200

「ほう、序盤から伏せたままのそのカードはライフ回復カードだったか。 だが攻撃は続くぜ!」

 須藤に襲いかかるスターダストのブレス。

「ぐああああああああっ!」

ディヴァイン&須藤 LP:6200→3700

 ソーガの魔石の力でダメージは実体化し、須藤は大きく吹き飛ばされる。

「クソ……この私が!」

 吹き飛ばされた衝撃で、須藤のシャツの胸元からペンダントが姿を見せる。

 水色の結晶を組み合わせたような形のそれは、どうやら普段はシャツの内側に下げていたようである。
 
 須藤はペンダントを握ると、よろめきつつ立ち上がる。

「元気そうだな、だが《ダークネブラ・ドラゴン》の攻撃も残っているぜ! 轟け、コラプサー・ブラストォ!」

 スターダストに続いて放たれるダークネブラのブレス。

 須藤は再びダメージを受け、吹き飛ばされる。

「がああああああっ!!」

ディヴァイン&須藤 LP:3700→1200

 手で覆っていたためペンダントには傷が付いていないようであったが、須藤自身の髪は乱れ、制服は汚れている。

(何なんですか、この男は……!)

 須藤はソーガを見つつゆっくり立ち上がる。

(壊し屋……噂には聞いていましたが、何なんですか! サイコデュエリストである私ですら及ばない程、普通から外れている人間だ! ……なのに、何故)

『見せてやるよ。 己を貫き通し、立ちはだかる壁は壊して突き進む、悪の姿ってヤツをなあ!』

(何故、どうして……自分を……!?)

 須藤は、ぶら下がったペンダントを手に取る。

 そのペンダントは夕日を結晶が反射し、光り輝いた。

『その力は、優しい力。 だって……私を助けてくれた』

 彼の脳裏にペンダントと共に浮かび上がる、少女の言葉。

(何故、あの男はそれができる……! 私が、ずっと出来なかったことを……!)

 須藤は、ソーガを睨む。

「ククク……どうしたどうした? もう日も暮れるし、ガキは帰るか?」

「……調子に乗らないでくださいよ。 こうなったら……そもそも、十六夜先輩がこちらの手中にいることを忘れたのですか?」

 須藤は十字架に拘束されたアキを指す。

「須藤君、そんなことをしても本当にデュエルに勝ったことにはならないわ」

「十六夜先輩は黙ってくださいよ! どうせあなたと私は違うんですからねえ!」

 須藤はアキを睨みながらそう返す。

「くっ……ここでアキを使ってくるか! 卑怯な!」

「まあ遊星、そう言うな。 自分を信じることが出来ねえガキなんぞ、先は見えてるぜ」

 須藤を見て小馬鹿にした笑みを浮かべながらソーガはそう言う。

「自分を……信じていない? ……黙れ、黙れぇ! 何も分からないヤツが口出しするな! お前だって化け物で、外れていて、クズに過ぎないというのにィ!」

「クク、それがどうした? テメエが、誰が、俺をなんと思おうと! 俺とその助手は確証を持って言える!」

 ソーガは両手を広げ、高らかに宣言する。

「この俺が、禍々しくも気高き悪――壊し屋”ソーガ・ダイモン”だということをな! 負け犬共がいくら吠えようと知ったことか、俺はただ、俺が進むべき道を歩むだけだ!」

「……!」

(どうして……どうして……!)

「黙れ! こうなったらぁ、十六夜先輩がどうなっても……」

 ポケットからカッターナイフを取り出す須藤、しかしその手に投げられる1枚のカード。

「ぐあっ!」

 そのカード――《ダーク・リゾネーター》は須藤の手に命中しカッターナイフは滑り落ちる。

「ふん、そんな手段に頼るとは……デュエルアカデミアのエリートが聞いて呆れる」

「ジャック!」

 屋上の入り口にはカードを投げた男――ジャック・アトラスの姿。

 そして、入り口から素早く動く一つの影。

「私は……私はぁ……!」

 完全に冷静さを失った表情でアキの方を向く須藤。

 そして、須藤の頭上を飛び越える影。

「動かないで下さい」

 瞬間、夕日を弾く刀身から生まれる数度の斬撃。

 アキの拘束を全て断ち、かつアキ自身には一切の傷を残さない鮮やかな手際によりアキは解放される。

「きゃっ!」

 拘束が外れたことでアキの身体は落下する。

 が、刀の所持者はそれを抱きかかえる。

「ソーガさん、人質の救出は完了しました」

「ご苦労だったな、セーナ。 だがお姫様抱っことは、妙な路線に走ったか?」

「どんな路線ですか」

 アキを抱きかかえたまま、ソーガの元に素早く戻るセーナ。

「ちえ、クロウ様の出番は無しか」

 そして遅れて屋上に現れるクロウ。

「クロウ! みんな無事だったか!」

「ククク……全員集合ってか?」

 セーナはアキを下ろすと、ソーガの隣に移動する。

「噂の壊し屋の助手ですか……十六夜先輩を奪え返してくるとは!」

「須藤」

 冷めた声で彼の名を呼んだのは、ディヴァイン。

 彼は冷酷な眼差しを須藤に送っていた。

「まったく、期待はずれだよ。 ここまで使えないヤツだとは……」

 ディヴァインは須藤に十分聞こえる声で、冷酷にそう呟く。

「使えない……総帥ぃ、それは私のことを言っているのですか!?」

 問い詰める須藤を、無言で睨むディヴァイン。

「ふざけるな……これほど協力しているのに、この私が使えないヤツ!?」

 ディヴァインの服を掴み、怒鳴る須藤。

「調子に乗らないでくださいよ、何がサイコデュエリストの理想郷アルカディアだ! 私の居場所になり得ないこんな……」

 ディヴァインの蹴りが須藤の腹部に命中し、追加の蹴りで吹き飛ばされる。

「ぐあっ!」

「黙れ、貴様ごときが私の計画の邪魔をするな」

 ディヴァインは倒れた須藤にもう一度蹴りを入れる。

「やめろディヴァイン!」

「ほう、向こうは面白くなってきてるな。 カードを1枚セットし、ターンを終了するぜ」

 ソーガがターンを終え、ディヴァインにターンが移る。

「須藤が予想以上に使えんと分かったことだ、私自身が貴様らに引導を渡すとしよう」

 ディヴァインは不敵に笑いつつ、カードを引く。

「私のターン」

遊星&ソーガ LP:850
手札:1&0枚
モンスター:《スターダスト・ドラゴン》(攻2500)、《ダークネブラ・ドラゴン》(攻2500)
魔法&罠:《神聖魔導王エンディミオン》、《メンタルスフィア・デーモン》、《久遠の魔術師ミラ》、セット1枚
ディヴァイン&須藤 LP:1200
手札:2→3&0枚
モンスター:無し
魔法&罠:セット1枚(《トーラの魔導書》)

「手札の《マスター・ジーク》を捨て、《トレード・イン》を発動。 カードを2枚ドローする」

《トレード・イン》
通常魔法
手札からレベル8のモンスターカードを1枚捨てる。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。

《マスター・ジーク》
効果モンスター
星8/地属性/サイキック族/攻2600/守1400
1000ライフポイントを払って発動する。
自分フィールド上に表側表示で存在する
サイキック族モンスターの数だけ、
相手フィールド上に存在するモンスターを破壊する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

「さらに《貪欲な壺》を発動。 墓地の《タイム・エスケーパー》、《サイキック・ゴースト》、《マスター・ジーク》、《黒の魔法神官》、《魔導老士エアミット》をデッキに戻し、カードを2枚ドロー」

《貪欲な壺》
通常魔法
自分の墓地のモンスター5体を選択して発動できる。
選択したモンスター5体をデッキに加えてシャッフルする。
その後、デッキからカードを2枚ドローする。

(魔法カードによるドローで手札を整えてきたか……どう来る?)

「速攻魔法《サイクロン》を発動。 私の《メンタルスフィア・デーモン》を返してもらおうか」

「チッ、せっかく装備したってのに」

 《ダークネブラ・ドラゴン》を中心に竜巻が巻き起こり、吸収された《メンタルスフィア・デーモン》を引き剥がした。

《サイクロン》
速攻魔法
フィールド上の魔法・罠カード1枚を選択して破壊する。

「これで準備は整った……さあ、私の新たなる最強カードを見せてやろう! 魔法発動、《ミラクルシンクロフュージョン》!」

 ディヴァインがカードを掲げると、地面が光りビルが揺れる。

「このカードは私のフィールドまたは墓地からシンクロモンスターを含むモンスターを融合させるカード。 私は墓地の《メンタルスフィア・デーモン》と《調星師ライズベルト》を融合!」

「何!? シンクロモンスターを素材とした融合だと!?」

「俺も融合召喚は使うが、こんな融合は初めて見るな」

《ミラクルシンクロフュージョン》
通常魔法
自分のフィールド上・墓地から、
融合モンスターカードによって決められた
融合素材モンスターをゲームから除外し、
シンクロモンスターを融合素材とするその融合モンスター1体を
融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。
また、セットされたこのカードが
相手のカードの効果によって破壊され墓地へ送られた時、
自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 地面の光から《メンタルスフィア・デーモン》と《調星師ライズベルト》が現れ、渦に巻き込まれていく。

 渦は地面の光をも吸い取り、巨大な光の球体となる。

「復讐の黒炎は幾度でも燃え盛る! 忌まわしき世界を蹂躙すべく、穢れし大地に降り立ち殲滅を振り撒け!」

 球体の表面は少しずつ崩れ落ちていき、中より悪魔が姿を現す。

 《メンタルスフィア・デーモン》を基盤としたデザインであるが、下半身は龍のように長く角や爪もより鋭利で殺傷力の高い物へと成長している。

「融合召喚、《アルティメットサイキッカー》!」

《アルティメットサイキッカー》
融合・効果モンスター
星10/光属性/サイキック族/攻2900/守1700
サイキック族シンクロモンスター+サイキック族モンスター
このカードは融合召喚でのみエクストラデッキから特殊召喚する事ができる。
このカードはカードの効果では破壊されない。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
また、このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、
破壊したモンスターの攻撃力分だけ自分のライフポイントを回復する。

「《アルティメットサイキッカー》……これが今のディヴァインの最強カード!」

「さらに、《サイコ・ウォールド》を守備表示で召喚。 そして800ライフを支払い効果を発動! このターン《アルティメットサイキッカー》は二度の攻撃ができる!」

 ディヴァインが呼び出したカタツムリのようなモンスターは《アルティメットサイキッカー》にエネルギーを送り込んだ。

《サイコ・ウォールド》
効果モンスター
星4/地属性/サイキック族/攻1900/守1200
800ライフポイントを払って発動する。
自分フィールド上に表側表示で存在するサイキック族モンスター1体は、
1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。
この効果を発動するターンこのカードは攻撃する事ができない。

ディヴァイン&須藤 LP:1200→400

「そう来たか。 来いよ、ディヴァイン」

「言われなくとも葬ってやろう。 《アルティメットサイキッカー》、《スターダスト・ドラゴン》を粉砕せよ! ダークフレイム・パイロキネシス!」

 大きく息を吸い、放たれる漆黒のブレス。

 その狙いは、遊星のスターダスト。

「来いって言っただろう、テメエの相手はこっちだよ。 《立ちはだかる強敵》を発動!」

 スターダストとブレスの間に現れる黒い影――ダークネブラ。

「このカードの効果により、このターンテメエはダークネブラしか攻撃できねえ」

「何!? ソーガ、お前……!」

「ハハハハハ! 強敵か、面白い冗談じゃないか! 今の私の力の前では、壊し屋である貴様も敵では無いのだからな!」

《立ちはだかる強敵》
通常罠
相手の攻撃宣言時に発動する事ができる。
自分フィールド上の表側表示モンスター1体を選択する。
発動ターン相手は選択したモンスターしか攻撃対象にできず、
全ての表側攻撃表示モンスターで選択したモンスターを攻撃しなければならない。

 《アルティメットサイキッカー》のブレスはダークネブラに命中した。

 しかし、ダークネブラはフィールドに健在。

 ダークネブラの身体が脈動し、腹部にある捕食器官から体液にまみれた《久遠の魔術師ミラ》が吐出される。

 呪縛から放たれ自由を得たミラの表情は明るくなるが、すぐにダークネブラの腕が彼女を掴む。

 そして掴まれたミラは目の前の漆黒のブレスに向けられる。

 攻撃を防ぐための盾として使用されている状況を理解したのか、ミラの顔に再び恐怖の表情が戻る。

 ダークネブラはミラをブレスに押し付け、その威力を完全に削ぐことで自らは無傷であった。

 ――そして、盾に使われた魔法使いの末路は言うまでもない。

「ククク……ダークネブラは装備カードを身代わりに破壊されねえ」

「だがダメージは受けてもらう」

 ソーガは衝撃を受け、数歩分後方に押される。

「っ……!」

遊星&ソーガ LP:850→450

「まだだ、《サイコ・ウォールド》の効果による二度目の攻撃を喰らうがいい!」

 再度ブレスを受けたダークネブラは、先ほどと同じように《神聖魔導王エンディミオン》を放出し盾とする。

「ぐあっ……!」

遊星&ソーガ LP:450→50

「ハハハハ、これで貴様らのライフは風前の灯火! 私はカードを1枚セットしターンエンドだ」

 ソーガは息を整えると、振り向き遊星に語る。

「大丈夫か、ソーガ!」

「ククク……この壊し屋が特別サービスでお膳立てを済ませてやったんだ、仕留めてこいよ?」

 ソーガは不敵に笑いながら遊星にそう告げる。

 その言葉に遊星は頷き、答える。

「ああ、任せてくれ!」

 遊星はディヴァインを見据え、デュエルディスクを構え直す。

(ククク……不思議なもんだな、俺と遊星は今日出会ったばかりだ。 にも関わらず、こうやって背中を預けて戦っている。 悪の道を貫くこの壊し屋が、だぜ?)

(最初に会った時、ソーガは恐ろしい男だと思っていた。 だが、アイツとのライディングデュエルを通じて、ソーガのデュエルへの熱い魂が俺に伝わっていった……)

(たった一度だが、己を全てをぶつけ合ったライディングデュエル。 あの時理解したぜ、遊星はこの俺のデュエルロードに不可欠なライバルだと)

(全力で戦ったライバルだからこそ、ソーガとの即興タッグもこうも上手くいった。 あのデュエルで紡がれた絆が、俺達の勝利を導いてくれる!)

「ヤツをぶっ潰してこい、遊星!」

「行くぞ、俺のターン!」

遊星&ソーガ LP:50
手札:1→2&0枚
モンスター:《スターダスト・ドラゴン》(攻2500)、《ダークネブラ・ドラゴン》(攻2500)
魔法&罠:無し
ディヴァイン&須藤 LP:400
手札:0&0枚
モンスター:《アルティメットサイキッカー》(攻2900)
魔法&罠:セット2枚(1枚は《トーラの魔導書》)

「ソーガ! お前の力、使わせてもらう!」

 遊星はドローしたカードを掲げる。

「闇より這い出し暗き星雲よ、光纏いし煌めく星屑の元に昇華せよ! 魔法発動、《受け継がれる力》!」

 スターダストとダークネブラは天空に飛翔する。

 ダークネブラは雄叫びを上げると、その体は黒い霧へと変化する。

「これは……!」

「《受け継がれる力》は自分のモンスターを1体墓地に送ることで、その攻撃力を他のモンスター1体に加算する!」

「さあ、《ダークネブラ・ドラゴン》! 俺らの勝利のために、華々しく散るがいい!」

《受け継がれる力》
通常魔法
自分フィールド上のモンスター1体を墓地に送る。
自分フィールド上のモンスター1体を選択する。
選択したモンスター1体の攻撃力は、
発動ターンのエンドフェイズまで墓地に送った
モンスターカードの攻撃力分アップする。

 黒い霧となったダークネブラはスターダストに纏わりついていく。

 次第にそれは鋭利なブレード状の鎧へと変化し、スターダストに装備される。

「その身に集いし絆の闇で、光とともに全てを貫け! 《スターダスト・ドラゴン》――コズミック・クロス!」

スターダスト・ドラゴン ATK:2500→5000

「馬鹿な……攻撃力5000だと……!?」

 白銀と漆黒の翼を広げ、高らかに咆哮するスターダスト――

「遊星、チェックメイトと行こうじゃねえか!」

「スターダスト・ドラゴン・コズミック。クロス! 《アルティメットサイキッカー》に攻撃だ!」

 装着した鎧から力を得たスターダストの身体から、白と黒の二色のオーラが溢れ出す――

「「貫け、シューティング・コラプサー・ソニ――」」

 瞬間――轟く爆音!

 同時に――激震する地面!

 瞬間的に現れた衝撃――この場にいる誰もが姿勢を崩した!

「なんだ!?」

「地震か!?」

「ようやくヤツらが来たか」

 驚く周囲とは対照的に、ディヴァインだけが冷静でいた。

 何度も下から鳴り響く爆音。

 三度目の爆音の直後、屋上の中央にヒビが入る。

「ソーガ、下がれ!」

「コイツはまずそうだな」

 遊星とソーガは後ろに跳ぶ。

 その直後に起こった四度目の爆音とともに、屋上の中央部が崩壊する。

 そして、そこから燃え広がる火柱。

 夕日よりも赤く輝くその炎は、天に立ち昇ると消えていった。

「この炎は一体……」

「遊星、まずいぞ! 下の階が燃えてやがる!」

 驚いたクロウの声を受け、彼の近くにいたジャック、アキ、セーナはフェンス越しに下の階を確認する。

「だいぶ燃え広がっていますね。 雑賀さんに連絡してヘリで脱出しましょう」

「くっ、誰だこんなことをしたのは!」

「私」

 ジャックの声に答える、少女の声。

 崩れ大きな穴が開いた屋上の中心から、円盤のようなものが浮上する。

 円盤に乗っているのは、五人――青年三人、老人一人、少女一人。

「あなたは……夜条!」

 ジャックに答えた少女の姿を確認し、その名を呼ぶセーナ。

「久しぶり……セーナ・クロエ」

 フード付きのローブを纏い、紫の髪で右目を隠した少女――夜条。

 彼女の周囲には先程この屋上を貫いたような炎が纏っている。

「前に私とデュエルをした後、あなたが退散する時に炎に包まれて消えていましたね。 やはり、あなたが炎のキメラデュエリストですか」

「その通り。 ……私は他のキメラデュエリストとは違うけど」

 夜条は赤い玉の付いたネックレスを取り出して見せる。

 キメラデュエリストの使う属性のオーブだ。

「夜条だけじゃねえな。 バハム、レヴィ、マリス、ついでにラーメン屋……ゴドール本人こそ居ねえがヤツの一味が勢揃いじゃねえか」

「ソーガ、アイツらを知っているのか?」

「ああ、厄介なヤツらだ。 お前たちも気をつけろ!」

「厄介なヤツら、か。 まあ、その通りではあるがな」

 ディヴァインがそう言う横で、地面に倒れている須藤はゴドールの一味達を見ていた。

(彼女らは一体……!?)

 円盤は屋上の穴から1メートル程上で停止し、乗っていたマリスを除く四人は屋上へ跳び移る。

「……」

「キーッヒッヒッヒッヒ! 壊し屋にジャック・アトラスまで! オイラの獲物が盛り沢山ッスァァァァァ!」

「よーし、賑やかになってるじゃねえか! 俺たちも混ぜてくれよ!」

「ふむふむ。 まあこのビルも長くは持たないでしょうが」

 屋上に降り立つ四属性のキメラデュエリスト。

 彼らはそれぞれ狙いを定め、跳びかかる。

「セーナ・クロエ……お前みたいなヤツが一番ムカつく」

「今ここで、ジャック・アトラスにリベンジしてやるッスァァァァァ!」

「おい、そこの箒頭! この俺と遊んでくれよ!」

「ケヒケヒケヒ! 助手の小娘さんは取られましたがぁぁ、豊満なバストゥの小娘さぁぁぁんがいるじゃないですかぁぁぁ!」

 夜条はセーナ。

 ラーメン屋はジャック。

 バハムはクロウ。

 レヴィはアキ。

 それぞれの相手を見つけ、前に立ちはだかる。






「ヒヒヒ、若いみなさんはフットワークが軽いですなあ。 本番は今夜になってからだというのに」

 一人浮遊する円盤の上に残ったマリスは、不気味に笑う。

「疑問に思っている人のためにお答えしますが、この円盤はなんと魔法の力で動いているのです。 ヒヒヒ、にわかに信じがたいでしょうが、魔法というものは実在して……」

「マリス、撤退ということだな。 しかし随分と派手にやらかしてくれるじゃないか」

「ご安心を、人員は退避させておきましたので。 まあ逃げ遅れた連中もいるでしょうが、些細なことです」

 マリスの言葉を遮り、ディヴァインが彼に話しかける。

「遊星! まずはこのデュエルを終わらせるぞ!」

「分かった! 攻撃を再開だ、スターダスト!」

 下の階で不定期に爆音が響く中、スターダストは白と黒の混ざったブレスを放つ。

「出来ればこの手は使いたくなかったが、仕方あるまい」

 ディヴァインと手を掲げ、伏せてあるカードをオープンする。

「罠発動、《破壊指輪》! 《サイコ・ウォールド》を破壊し互いに1000のダメージを与える!」

破壊指輪はかいリング
通常罠
自分フィールド上の表側表示モンスター1体を破壊し、
お互いに1000ポイントダメージを受ける。

「引き分け狙いか!」

 《サイコ・ウォールド》に爆弾の付いた指輪が装着される。

「この決着はいずれ付けるとしよう」

 その指輪のサイズにも関わらず大爆発が起き、フィールドに爆風が吹き荒れる。

「ぐああっ!」

「ぐおっ!」

遊星&ソーガ LP:50→0

「ふん……」

ディヴァイン&須藤 LP:400→0

 互いのライフが0を示し、デュエルは引き分けとなったことをデュエルディスクが表示する。

「ぐっ……はぁっ……!」

 地面に横たわっていた須藤が、呼吸を整えゆっくりと立ち上がる。

「総帥ぃ……いや、ディヴァイン! これは何のつもりですかぁ!」

 起き上がり、ディヴァインを睨む。

「あの謎の集団があなたの協力者なら、アルカディア・ムーブメントの本拠地であるこのビルを燃やしたことはどう説明……」

 須藤が言葉を言い終える前に、背後から放たれたレーザーが彼の腹部を貫く。

「がっ……これ、は……!」

「ヒヒヒ、コレは廃棄してもよろしいですかな?」

 レーザーが放たれたのは、マリスの持つ杖。

「それくらい、私自身がやるさ」

「があぁっ!」

 ディヴァインはレーザーに貫かれ倒れる須藤に蹴りを入れ、飛ばされた彼は屋上に開けられた穴へと落ちていく。

「まだ私に……は……」

 そして須藤は穴の闇へと消えていった――








 夜条を除く三人の肉体は変化し、異形の存在へと変貌する。

「オイラはパワーアップしたッスァァァァァ! キメラデュエリスト・モードマンティコア!」

「驚くんじゃねえぞ! キメラデュエリスト・モードベヒーモス!」

「こぉぉぉの姿であなたを追い詰めてあげましょうぅぅ! キメラデュエリスト・モードリヴァイアサン!」

 マンティコア、ベヒーモス、リヴァイアサン。

 幻獣と人を混ぜあわせた姿に変化する三人。

「まるで意味が分からんぞ!?」

「そんなインチキありかよ!」

「何なのこの人……!?」

 キメラデュエリストを見たことのない遊星の仲間の三人は驚愕する。

「気をつけて下さい! 彼らは変身することでパワーアップしますが、その姿に気圧されてはどうしようもありませんよ」

 セーナは三人に忠告する。

「ですがあなたはそのままの姿なのですね、夜条」

「私はこれで構わない……」

 他の三人とは違い、元の姿のままの夜条。

「だからといって、手加減はしませんよ」

 セーナは刀をデュエルディスクに変形させ、構える。

「前に戦った時は手を抜いていたようですが、私の方もあの時とは違います。 ソーガさんのために手に入れたこの力で、あなたを倒します!」

 千刃の龍のカードを手に、強い覚悟が宿った瞳でそう宣言するセーナ。

 それが、よほど不快だったのだろう。

「そういうのがさあ……うざいんだよ、目障りなんだよ!」

 その瞬間、辺りの炎が勢いを増した。

「なんだ……!?」

「揺れが大きくなったぞ!」

「夜条さん、炎が強くなっているッスァァァァァ!?」

 夜条の周囲の炎が渦巻くと同時に、下の階層の炎も勢いを増しビルの倒壊が早まっていく。

「この炎で焼き尽くす……下らない絆も、何もかも」

 その時、崩れていくビルに向かう一台のヘリ。

「早く乗れ!」

 声の主は雑賀。

 ヘリからハシゴを下ろし、屋上付近でホバリングする。

「みんな! ヘリで脱出するぞ!」

「分かったぜ」

 遊星の指示で、ヘリに向かうジャック達。

「このビルも長く持たないから仕方ないっすね、勝負は預けるッスァァァァァ!」

「ああ、小娘ちゃんの豊満な肉体がぁぁぁぁ……」

「レヴィ、熱くなり過ぎだぜ。 とはいえ、俺もお預けってのはつまらねえがな。 じゃあな、クロウ! また会ったらやろうぜ!」

 キメラデュエリスト達も危機を察し退散していく―― 一人を除いて。

「夜条、デュエルは預けます」

 セーナはヘリへ向かおうとするが、撤退経路を炎が塞ぐ。

「これは……!」

「は? 預ける? 逃がさない……今ここで、憎悪の炎で焼き尽くしてあげる」

「くっ……こんな事をしては、あなたもただではすみませんよ」

(夜条の私に対するこの執着は一体……?)

 クロウ、アキはすでにハシゴに捕まって避難し終え、ジャックがそれに続いている。

 ソーガはセーナの危機に気が付き、彼女の元に駆けつける。

「おいおい、俺の助手に付きまとうのはやめてもらえねえか」

 炎を飛び越え、セーナの前に着地する。

「ソーガさん!」

「セーナ、さっさとずらかるぜ」

「はい!」

「だから、逃さないって言ってるの……!」

 夜条は右手を掲げると、炎がソーガとセーナ目掛け襲いかかる。

 地面を流れる波のように襲いかかる炎。

「変幻自在かよ……他の三人のキメラデュエリストはこんなこと出来ねえと思うが、この夜条ってヤツは何か違うのか?」

 二人は右側に大きく迂回しつつヘリを目指す。

「セーナ・クロエ……! お前だって、化け物のくせに……!」

 炎の波は渦になってまとまり、柱状に変形する。

「跳ぶぜ!」

「了解です!」

 大きく跳躍し、夜条の操る炎を回避する。

「ヒヒヒ」

 二人の着地を狙い、放たれたのはマリスの魔導弾。

 セーナの足元で爆発が起き、彼女は中央の方向に吹き飛ばされる。

「セーナ!」

 吹き飛ばされたセーナは中央の穴に落ちそうになる。

 が、ギリギリで縁を右手で掴む。

「ふう、危ないところでした」

「セーナ、手を貸すぜ」

 ソーガが駆け寄ろうとした瞬間、上方に輝く物体に気が付く。

「《サイコ・ソード》」

 超能力の剣を手にするディヴァインは、宙からその剣をセーナ目掛けて投げつける。

「しまった!」

 もう少しで崖から這い上がれたセーナ目掛け、一直線に飛ぶ《サイコ・ソード》!

 今のセーナの体勢では、この速度の剣を避けることは不可能だろう。

「あれは……セーナ!」

 ヘリに撤退する途中で気がついた遊星が駆けつけようとするが、間に合う距離ではない。

 ――それは、一瞬であった。

 結論から言えば、セーナは助かった。

 では、どのように助かったのか。

 距離的に間に合わない遊星や、すでにヘリに乗っているメンバーは助けるのは不可能。

 セーナが自力で避けるのも無理がある。

 そう――ソーガがセーナを助けたのだ。

「ソーガ、さん……!?」

 しかし、上方から投げつけられた剣から崖に捕まるセーナを守るためにソーガがとった手段――

 それは、穴に飛び込み剣とセーナの間に入ることで自らを盾とすることであった。

「ソーガ!」

 駆けつけた遊星の叫び――

 屋上に大きく開けられた穴に飛び込んだソーガだったが、運良く下の二十階に着地したようだ。

「遊星か……頼みがある」

「ソーガさん!」

「ソーガ!」

 胸に《サイコ・ソード》を突き刺されたソーガは、声を振り絞る。

 安堵するセーナと遊星。

 同時に、ディヴァインは新たなカードを取り出す。

「セーナを……任せる」

「消えろ、《デス・メテオ》」

 ソーガ目掛け落下する、巨大な炎の隕石。

「ソーガさん!」

「待て!」

 穴に飛び込もうとするセーナを遊星は押さえる。

 それと同時に、隕石は穴に落ち爆発する――

「ハハハハ! さらばだ、総魔の息子!」

 ディヴァインは笑いながらマリス達の乗る円盤へ向かう。

 いつの間にか、夜条も円盤に退避していたようだ。

「ソーガさん!」

 《デス・メテオ》が落ちた部分を確認する二人。

 しかし、先ほどソーガがいた二十階の部分は完全に崩れ、ソーガの姿はどこにも見当たらない。

「ソーガさんを探さないと……!」

「待て、この炎の中、探すのは危険だ!」

「黙って下さい、あなたに何が分かるんです! 私はこの命に代えようとソーガさんを……」

 遊星は、ソーガが最後に残した言葉を思い出す。

『セーナを……任せる』

 セーナの腹部に、一発のボディブローが入る。

「がっ……!」

 遊星の放った一撃で、セーナは意識を失いぐったりと倒れる。

 その直後、下層でこれまで以上の爆音が響く。

「何だ!?」

 大きく揺れるビル。

 そして屋上が大きく傾く。

「くっ……もう持たないか!」

「遊星! 早く戻れ!」

 ヘリから叫ぶジャック。

 遊星はその声の方に向かい、セーナを抱えながら斜めの屋上を駆ける。

 炎が燃え広がり、傾きもどんどん大きくなっていく。

 再び大きな爆発と揺れが発生し、傾斜はさらに大きくなる。

 雑賀はヘリを動かし、傾斜の下の方へと移動する。

「うおおおおおおお!」

 傾斜を利用し、遊星は助走を付ける。

 そして、屋上の縁からヘリ目掛け、ジャンプする。

 跳躍はギリギリ届き、右手でハシゴを掴む。

 同時に、三度目の大きな爆発が起こりビルは崩れ落ちていく。






「ヒヒヒ、危ないところでしたなあ。 夜条さん、炎は程々にして欲しいところです」

「……」

 マリスの言葉に無言で返す夜条。

「なあ、マリスさん。 この円盤ってよ、あのヘリ追いかけられねえの?」

「ヒヒヒ、さすがに移動速度はそれほどありませぬ」

「そんなことよりも、ソーガ・ダイモンは死んだのかッスァァァァァ!? これってゴドール様に怒られるんじゃないかッスァァァァァ!?」

「ふむふむ。 あの男との再戦を望んでいたゴドール様です、今回の件はただではすまないでしょうねえ、ディヴァインさん」

 レヴィにそう言われたディヴァインは、崩れ落ちるセイリオス・カンパニーのビルを見ながら答える。

「ふん、私の知ったことではない」

 その言葉を聞いたラーメン屋はディヴァインの腕を掴む。

「……そんな言葉で済むと思っているんすか? 壊し屋に、ソーガ・ダイモンに勝つことが今のオイラの目的っす、だからアイツの死って決着は絶対に許せないんすよ」

「離せ、貴様ごときが私に触るな」

「断るっすよ。 サイコデュエリストだがなんだか知らないっすけど、今ここで叩き落としてやってもいいんすよ?」

「ストップです、お二人とも〜!」

 間に入り、仲裁したのはマリス。

「仲間同士で喧嘩なんて良くないことですぞ。 今回のことはまずゴドール様に報告しましょう」

「……分かったっす」

 ラーメン屋はディヴァインの腕を離し、円盤の反対側に座る。









「遊星、やはりあの男は……」

 ヘリの座席にセーナを寝かせた遊星に、ジャックはそう質問する。

 遊星は、無言で首を横にふる。

「くっ……壊し屋ソーガ・ダイモン、ほんの数時間前に出会ったばかりだが、こんなことになるとは……」

 そう言うと、ヘリの壁を殴るジャック。

「ソーガ……アイツがこんな事になるなんてな」

 操縦席の雑賀も、どこか悲しそうな声だ。

 遊星は、窓から先ほどソーガと共に戦ったビルを見る。

 いつの間にかすっかり日は沈み、闇夜を燃えるビルの炎が照らしていた。

 遊星は、今日ソーガと出会ったばかりだ。

 しかし、一度はぶつかり合うことで互いを理解し合った。

 そして共にアルカディア・ムーブメントと戦った。

 遊星の胸には、すでにソーガのことが深く刻まれてあった。

『ほう、この俺とデュエルだと? この”壊し屋”ソーガ・ダイモンと?』

『面白えじゃねえか! 緻密な戦略を組み上げ、その手で流れを引き寄せ、狡猾に相手の裏をかく! この駆け引きこそがデュエルだ、そしてこんな極上のデュエルを提供してくれたことに礼を言うぜ、不動遊星!』

『ああ、楽しいデュエルだったぜ』

『ククク……お前とのタッグか、楽しめそうだ』

『遊星、チェックメイトと行こうじゃねえか!』

 遊星の脳裏に浮かぶ、ソーガの言葉の数々。

 赤く染まる闇夜に、思い浮かぶソーガの姿。

「くっ……ソーガ!」

 遊星はただ、叫んだ――












続く...




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