プロジェクトWD

製作者:あっぷるぱいさん




注:「プロジェクトVD」、「プロジェクトGL」が未読の方は、まずそちらからお読みください。なお、かなり勝手に設定した部分があります。二次創作として割り切ってください。



 さてさて皆さん、僕を覚えていますか?
 「プロジェクトVD」とか「プロジェクトGL」を読んだ人なら当然分かるでしょう。全国の女性の皆さん(ついでに男性も)こんにちは。僕の名は……公式的には無い。チキショオ!!

 まあ、挨拶はこれくらいにしておいて、本編に入ろう。
 あれから僕は、無事に牢獄から解放され、いつもの生活に戻れた。ただ心残りなのは、「プロジェクトGL」と「ゴキブリ・ロック」の件だ。結局、それらについては何のことなのか、最後まで分からなかった。
 「囚人番号99番」は、毎日のようにその話をしてくれたが、いかんせん長すぎた。「……ちょっと話が長くなるが……いいか?」なんて言ってたけど、ちょっとどころではない。毎日毎日話してるのに、全然話が終わらないのだ。
 はっきり言って、最初の方の話はもう忘れた。だから最後の方は、何を話しているんだか、さっぱり分からなかった。何か、相対性理論とか、松尾芭蕉とか、ピケル萌えとか言ってたような気がするが……。
 まあ、この謎については、いずれ明らかにしてやろうと思う。



前編  3月14日って何の日? ホワイトデー? チョコを貰わなかった俺には関係ねえ話だな!!

 3月13日。
 今、僕は学校にいる。昼休みも終わり、5時間目の授業が始まったところだ。5時間目の授業は数学か。うん、寝よう。

睡眠学習
(罠カード)
授業はちゃんと受けましょう。

 この時間を睡眠時間にしようと決定した時、隣にいた友人の顔が目に入った。う〜ん、顔を見たところ……何か悩んでるな。

 彼は、皆からは「パロ」と呼ばれている。何故かは知らないけどね。そして、僕の無二の親友でもある。
 パロは分かりやすく言えば、ドラ○もんに出てくる「の○太君」みたいな男だ。勉強もスポーツもできないし、気も弱い。そんでもって、極めてお人好しだ。無論、女にはもてない。
 で、パロという男は、考えていることが大抵表情に出る。今は悩んでいる時の表情だ。分かりやすい奴だな。ユ〜の考えていることなどお見通しデ〜ス。パロボ〜イ。
 とりあえず、あとで悩みを聞いてあげよう。親友としてね。




 授業が終わり、休み時間に入った。僕は、パロに問いかけた。
「パロ、何か悩んでるだろ?」
 すると、パロは驚いたような表情をした。
「え? いや、そんなこと無いよ……」
 嘘ついたって無駄だよ。顔に出てるんだから。こいつは絶対、隠し事とかできないタイプだな。
「おいおい、水臭いな。僕たち親友だろ? 悩みがあるなら話してみなよ」
「……う〜ん」
 フフ……。悩むことはない。君の悩みは僕が受け止める。いつもそうしてきたじゃないか。まあ、あとでいつも通り、報酬としてカードをおごってもらうけどね。
「じゃあ……話すよ」
 フッ、いいカモ……じゃなくて、話す気になったか。うん。話してごらん。僕がすぐに解決してあげよう!
「うん。どうしたんだよ?」
「実は……バレンタインデーにチョコ貰っちゃってさ……」

 …………。

知らぬが仏
(罠カード)
世の中、知らない方が幸せなこともある。

 ……聞くんじゃなかった。
 ていうか、バレンタインデーにチョコ貰っただと!? ふざけんなよ! 何で1年間“プロジェクトVD”を進めていた僕が1個もチョコ貰えないのに、こんなクラス一のダメ人間がチョコ貰ってんだよ!! ありえないだろ普通!!
 あ〜、こいつ殴りてぇ……。……だが、そんなことすれば「妬んでる」と思われるのが関の山だ。それは僕のプライドが許さない。ここは甘んじて、こいつの悩みを聞いてやるしかない……。くそぉ〜、覚えとけパロ。この報酬はたんまり頂くからな!!
「へぇ〜、チョコ貰ったのか! やるなお前も。……で、誰から貰ったの?」
 あくまで冷静な風を装い、渡し主を聞いてみる。まあ、どうせ親から貰ったとかそんなんだろう。
「えーと……鷹野さんから

 …………。

知らぬが仏
(罠カード)
世の中、知らない方が幸せなこともある。

 ……あぁ〜面白くねぇ〜。
 何か僕、こいつのことが嫌いになってきた。ていうか、鷹野さんは、僕が唯一仲良くなれなかった女子だぞ……。腹立つわ……。要するにアレか? お前は僕を見下しているんだな? 大人しそうな振りをして、内心、僕のことを見下してるんだろう!? チキショオ!!
 しかし、何故だ? 何故あの鷹野さんが、こんなダメ人間にチョコを? どう考えたって、不釣合いだろうが。だってさ、クラスのマドンナとクラスのダメ男、だぜ?

 いや、待てよ……? ……そういうことか。謎は解けたぜ!

 パロ。お前は鷹野さんの本当の顔を知らない。お前みたいなお人好しは、あいつに利用されて捨てられるのがオチだ。
 多分お前は、鷹野さんにチョコを貰って浮かれているだろう。ひょっとしたら、「鷹野さんって僕のこと好きなんじゃ?」とか勘違いしてるかも知れない。しかし、それは鷹野さんの狙い。チョコは、お前を下僕にして利用するためのエサってワケだ!

「スゲーじゃん! 鷹野さんからチョコ貰うなんてさ」
 表面上では褒めておく。パロよ、可哀想に。遊ばれているとも知らずに……。だが、安心してくれ。もし君が危険な目に遭いそうになった時は警告するから。
「でもさ……何を悩んでるんだよ?」
 まあ、悩みは聞いておこう。親友として。
「え〜と……明日はホワイトデーでしょ?」
 ……あぁ、そう言えばそうだっけ。ということは……こいつの悩みは十中八九……アレだ。
「あ、分かったぞ。ホワイトデーに何返せばいいか、分からないんだろ?」
「……うん」
 やっぱりな。こいつ女子にプレゼントとかしたこと無いだろうし……。まあ、こいつの悩みといったらそんなとこだろう。
「やっぱりさ、ホワイトデーと言ったらクッキーだろ?」
「クッキーか。……でも、どういうのを買ったらいいのか……」
 どういうクッキー……ねえ。鷹野さんとだけは仲良くなれなかったからなぁ。あの人のことだけはよく分からないんだよね。
「じゃあさ、学校が終わったら、買いに行こうぜ。僕もついてくからさ」
「え? 本当かい! ありがとう! ……パラコンボーイ君」
 …………。
 「パラコンボーイ」? どういう意味? それってあだ名? 意味が分からんよ意味が。本名で呼べ。


●     ●     ●     ●     ●     ●     ●


 放課後。
 僕とパロは、デパートにいた。もちろん、クッキーを購入するため(僕はカードをおごってもらうため)だ。さっさと目ぼしい物を買って、カードをおごってもらえば、僕の目的は達成だ。
 ……と思ってたんだが。
「どれがいいだろう?」
 悩んでるパロ。もう30分近くこの状態だ。僕が何言っても悩み続けるしさぁ〜! ダメだ〜〜! 埒が明かない! どれだっていいだろが!! 気持ちがこもってりゃ何だっていいんだよ!!
「これとこれ、どっちにするか……」
 どうやら、2つにまで絞ったらしい。あ〜もう、どっちでもよくね?
「パラコンボーイ君はどっちがいいと思う?」
 パラコンボーイって呼ぶなこの糞野郎が!!
「う〜ん、右がいいと思うよ」
「そうか、……じゃあ、こっちにしよう!」
 やっと決めたか、このウスノロめ。この借りはキッチリ返してもらうぜ。

 会計を済ませ、ようやくクッキー購入は終了した。何か疲れたよ……。
「ありがとう、パラコンボーイ君。助かったよ」
「いや、いいんだよ。……でさ、お礼と言ってはなんだけど……」
 そう、この時を待っていたんだぜ! カードをたんまりおごってもらうからな! 言っておくが、「今日はもうお金無いから……」とか言って、回避できると思ったら大間違いだ! どれだけ時が経とうと、最低でも10パックおごるまでは追い続けるからな!!
「お礼? うん、僕にできることなら」
「じゃあ、カードおごって」
 さあ、どう来る? たとえ嫌そうな顔したって逃がさないぞ。
「カードかぁ。今300円しかないから、2パックしか買えないけど、それでいい?」
 300円? ショボイ奴だ! だが、僕は逃がさないぞ!!
「……できれば10パック」
「?」
「10パックおごって。あと8パックはまた次でいいから」
「う……うん」
 よし。10パックは確定した。パロよ、お互いにいい親友を持てて幸せだな。
 やっぱり、いいことした後は気持ちがいい。


●     ●     ●     ●     ●     ●     ●


 3月14日。
 世間はホワイトデーとか言ってるが、僕にはあまり関係が無い。むしろ、関係があるのはパロの方だろう。
 とりあえず、クッキーは買ったわけだが……ちゃんと渡せるのかな、あいつ。緊張しまくった挙句、結局渡せずに終わりそうな感じもするんだよな……。

 でも気になるのは、鷹野さんがどうして、パロなんかにチョコをあげたか、だよなぁ。どう考えたって、普通はありえないはずだし……。直接聞いてみるって言うのもアリかな。……いや、絶対にあいつは喋らないだろうな。

 だったら、別の人から聞きだすのが手っ取り早い!




 教室に入ると、僕は近くにいた「真田杏奈」に声をかけた。
「真田さん、ちょっと聞きたいんだけど……」
「ん? 何?」
 ひょっとしたら、パロは案外女子に人気なのではないか、と考えた僕は、こんな質問をしてみた。
「『パロ』っているじゃん。どう思う?」
「……別に」
 うわぁ……冷めた反応だ……。こりゃ、相当人気無いな。じゃあ、次の質問。
「パロと鷹野さんって、仲良かったりする?」
「パロと鷹野さん?? ありえないよ〜! 代々木君と鷹野さんなら分かるけど」
 あ〜、やっぱりそうだよなぁ……。現実はそんなもの……。けど、それじゃあ、鷹野さんがパロにチョコをあげた理由って何?
 と、僕がそこまで思った時、真田さんが何かを思い出したように言った。
「あ、でも……ひょっとしたらあの話が関係してるかも……」
 ? あの話? 何の話だよ。何かあるの??
「え? 何の話? 何か仲良くなるきっかけとかあるの?」
「うん。ちょっと長くなるんだけどね……ここだけの話だよ」
「う……うん……!」
 ぱ……パロと鷹野さんの間に一体何が……!?
「まだM&Wができたばかりの頃、ペガサス・J・クロフォードが極秘裏に進めたプロジェクトがあるの……。その名も『プロジェクトGS』!!」
「…………」

〜5分後〜

「――で、相対性理論を知った山中さんが、松尾芭蕉の生きるスタンスを基に秘宝を生み出したのよ。そして、それを見た鈴木さんがこう叫んだの。『ピケル萌え』って……」
 そこまで話してもらったところで、僕は口を挟んだ。
「あのさ、その話、あとどれくらい続く?」
「え? ……う〜ん。文庫本800ページ相当?」
 そんなにあるの!? 「やさしい死神」より長いじゃねえか!!!
「ゴメン。続きはまた今度……」
「えぇ〜! まだ始まったばっかりなのに〜。『レプリカの悪夢』で例えると、『JavaScriptがONになっているか確かめ終わった』くらいにしか相当してないよ」
 どんだけ始まったばっかなんだよ!! て言うか、始まってすらいねえよ!!! もうダメだ。他を当たろう。
「ありがとう。真田さん」
「あ、待って! 新しいカード手に入れた?」
「手に入れてない!!」




 時間を無駄にしてしまったな。……今度は「川原静江」に聞いてみよう。
「川原さん、ちょっといい……」
「うん。何?」
 真田さんにした質問と同じ質問をしてみよう。
「『パロ』っているじゃん。どう思う?」
「……別に」
 ……また冷めた反応だ……。パロよ、君はぶっちぎりで人気無いね。じゃあ、次の質問。
「パロと鷹野さんって、仲良かったりする?」
「パロと鷹野さん……? 天地がひっくり返っても、それは無いと思う……。 代々木君と鷹野さんなら分かるけど」
 やっぱ、そうだよなぁ……。現実はそんなもの……。喩えが分かりやすくて助かる。けどさあ、それだと、鷹野さんがパロにチョコをあげた理由って何なのさ?
 と、僕がそこまで思った時、川原さんが何かを思い出したように言った。
「あ、でも……もしかしたら……あの話が……?」
 ? あの話? 何の話だよ。何かあるの??
「え? 何の話? 何か仲良くなるきっかけとかあるの?」
「うん。ちょっと長くなるけど……ここだけの話ね」
「う……うん……!」
 ぱ……パロと鷹野さんの間に一体何が……!?
「まだM&Wができたばかりの頃にね、ペガサス・J・クロフォードがある巨大プロジェクトを立ち上げたの……。その名も『プロジェクトWS』!!」
「…………」

〜5分後〜

「――で、田中さんが相対性理論を深く理解しようとした矢先、松尾芭蕉の亡霊が彼に憑依したの。そして、それを見た鈴木さんが『ピケル萌え』って叫んだと伝えられ……」
 そこまで話してもらったところで、僕は口を挟んだ。
「あのさ、その話、あとどれくらい続く?」
「え? ……う〜ん。ホームページ2週間相当?」
 そんなにあるの!? 「本田ヒロトのM&Wページ」より長いじゃねえか!!!
「ゴメン。続きはまた今度……」
「え!? まだ始まったばっかりなんだけど……。『レプリカの悪夢』で例えると、『JavaScriptがONになっているか確かめ終わった』くらいにしか相当してないよ」
 だからそれ、始まってないっての!!! もうダメだ。他を当たろう。
「ありがとう。川原さん」
「あ、待って! 今日は引き出しに手を挟まないの?」
「挟まない!!」

使い回し
(魔法カード)
世の中リサイクルだぜ!

 その後、色んな女子から話を聞いたが、最終的に誰もが「相対性理論と松尾芭蕉とピケル萌え」が出てくる話に収束した。流行ってんの!? その話!?
 もうダメだ。こうなれば、本人から直接聞くのが一番早いだろうな。……しかし、あいつが喋るとも思えないし……。
 ならば……方法は1つ!

ゲームをしようぜ!
(魔法カード)
あらゆるトラブルを、ゲーム1つで片付ける。

●     ●     ●     ●     ●     ●     ●


 放課後。
 僕は鷹野さんに声をかけた。全ての謎を解くためだ。
「鷹野さん、ちょっといい?」
「……何?」
 鷹野さんはもう帰ろうとしてたらしい。……パロからはクッキーを受け取ったのかな? それともまだ?
「突然悪いけど……決闘をしてもらうよ」
「決闘? ……別にかまわないけど」
 物分りが良くて助かるよ、鷹野さん。おかげでストーリーが円滑に進む。

ご都合主義
(魔法カード)
都合のいい展開でストーリーを進行させる。

 皆が教室から出て行き、教室には僕と鷹野さんの2人だけになった。
 机の上にデッキを置き、互いに向かい合うように座る。
 そして、上の2文は“プロジェクトVD”からコピー&ペーストしたものである。

コピー&ペースト
(魔法カード)
パソコンで文章を打ち込む上での手間省き技の1つ。

「思い出すね。1ヶ月前の決闘を……」
 あの時の決闘を思い出し、僕は何となく口にした。思えば、あの時から僕は鷹野さんをライバル視してきたんだ。こうやって決闘するのはもう3度目だ。
「1ヶ月前? ……決闘なんてした?」
 ……こいつ忘れたのか。お前、僕の顔に消火器ぶっかけてきただろが。
「1ヶ月前……バレンタインデーの時だよ。鷹野さん、僕に『ゴキボール』のカードをくれたよね?」
「……???」

意味不明のワード!
(罠カード)
何言ってるんだ……こいつ……?

 このクソ女……本気で忘れてるよ。あぁ〜そうですよね! どうせあんたにとっちゃ、僕なんて、取るに足らない男ですよ〜だ!!
 さて、そんなことはもうどうだっていい。ここからが本題だ。
「鷹野さん。決闘の前に1つ、僕から提案があるんだ。この決闘に負けた者には、罰ゲームが与えられる……ということにしない?」
「罰ゲーム……ってどんな?」
 よし。食いついてきたな。多分、鷹野さんは絶対に自分が勝つと思ってるだろうから、確実にOKを出すはずだ。
「うん、そうだね。……まあシンプルに、負けた人は勝った人の言うことを1つだけ聞く……ってのはどう?」
「なるほどね。いいわよ」
 即答だな。よっぽど、僕に勝つ自身があるんだろう。
 僕が鷹野さんに与える罰ゲームは……罰ゲームってほどでもないが、「何故、パロにチョコをあげたか」という質問に何が何でも答えてもらう。これで、僕の疑問を全て解決してやる!
「じゃあ、はじめようか」
「えぇ」
 決闘スタート!


僕  LP:4000
鷹野さん  LP:4000




中編  かの有名なデュエリスト、海馬瀬人の言葉に「俺は未来などに導かれはしない! 俺の踏み印したロード! それが未来となるのだ!!」というものがある。え? 何で今こんなこと書くかって? それはだね……

 指相撲の結果、僕が先攻を取ることになった。
「僕のターン、ドロー!」
 さて、彼女の使うフィールド魔法『うずまき』には注意をしなければ。『うずまき』を使われれば、決闘のルールは、原作ルールからOCGルールに強制変更されてしまう。
 だが、僕だって、何の対策も無く、鷹野さんに挑んでるわけじゃない。
「僕はカードを1枚伏せ、『速攻の吸血蛆』を召喚! プレイヤーに攻撃!」
「!!?」
 フフ……。『速攻の吸血蛆』は、攻撃力は500ポイントと低いが、先攻1ターン目に攻撃することが可能なのだ! そして、攻撃したターンに手札を1枚墓地に捨てれば、ターン終了時に守備表示に変更できる。攻撃と守備の両方を兼ね備えた、万能モンスターだ!

速攻の吸血蛆  攻撃力500
鷹野さん  LP:4000→3500

「僕は手札を1枚捨てて、『吸血蛆』を守備表示に変更。ターンエンドだよ」
 さて、鷹野さんは『うずまき』を使ってくるだろうか。まあ、使ってきたとしても問題は無いけどね。
「私のターン……魔法カード『うずまき』発動!」
 いきなり来たか。だが、お見通しだ!!
「なら、伏せカード発動! 『死者蘇生』!!」
「!」
 フッ! 『うずまき』の効果が適用される前に、『死者蘇生』を使わせてもらった! 今はまだ原作ルール。原作ルールでは、伏せてある魔法カードはいつでも発動できる!
 皆さんもご存知の通り、『死者蘇生』は、墓地に眠るモンスターを復活させるカードだ!
「蘇らせるモンスターは……『人造人間−サイコ・ショッカー』!!」
「! ……『サイコ・ショッカー』……」
 フン! 驚くのも無理は無いよなぁ。お前が『うずまき』を使ったということは、十中八九、罠カードをぶっ放してくるってことだ。だから僕は、『吸血蛆』の効果で『サイコ・ショッカー』を捨てておいたんだ。
 OCGルールになったことで、2人のライフは増大した。

僕  LP:4000→8000
鷹野さん  LP:3500→7500

「……私は『天使の施し』を発動。デッキから3枚引き、2枚を捨てる……」
 『天使の施し』ねぇ……。捨てたカードは、魔法カード『融合』と永続罠カード『血の代償』か……。
「モンスターを裏側守備表示で出し、カードを4枚セット。ターンを終えるわ」
 く……! 裏側守備表示だと! モンスターの正体が分からない……。これがOCGルールの恐ろしさ……。つーか、伏せカード4枚とかって、ありえなくね?



LP:8000
モンスター:人造人間−サイコ・ショッカー  速攻の吸血蛆
魔法・罠:なし
手札:3枚

鷹野さん
LP:7500
モンスター:裏守備モンスター
魔法・罠:うずまき  伏せカード4枚
手札:0枚


「僕のターン、ドロー!」
 さて、鷹野さんの場の伏せモンスター……攻撃するか否か。伏せモンスターを除去できるカードは、手札に無いんだよなあ……。
 まあ、ここで攻撃を躊躇するのもアレだしな。どうせ罠は封じているわけだし、攻撃してみるか。
「『サイコ・ショッカー』で伏せモンスターに攻撃!」
 さあ、正体を現せ! 雑魚モンスター!!
魔法カード発動! 『コマンド・サイレンサー』!!」
 …………は? 魔法カード?
 おいおい、鷹野さん。『うずまき』を発動したのはあんたでしょ? OCGルールでは、魔法カードは相手ターンに使えないよ。何やってんの? 自棄になってるとか?
 まあ、きっと焦ってるんだろう。僕が優しく指摘してあげよう。
「鷹野さん、今はOCGルールでしょ? 魔法カードは自分のターンにしか使えないのでは?」
「? ……これ、速攻魔法なんだけど。相手ターンにも使えるわよ」
 …………は? 速攻魔法? 何それ? そんなの聞いたこともないぞ? いわゆるアレか? OCGルールにおける、相手ターンに使える魔法カードってことか?
「『コマンド・サイレンサー』の効果によって、バトルフェイズは強制終了する。そして、私はその後、カードを1枚ドロー!」
 くそ……! まあいい。これくらいのハンデが無ければ面白くないしな。
「カードを2枚伏せ、ターンエンド!」
 伏せたカードのうち1枚は『闇の護風壁』。1ターンのみ、直接攻撃によるダメージを無効にする魔法カードだ。
 もう1枚は、『エネミーコントローラー』。コマンド入力することで、相手の表側表示モンスター1体を操作(「表示形式を変更する」または「自分のモンスター1体を生け贄にして、1ターンのみコントロールを得る」のどちらか)できる魔法カードだ。



LP:8000
モンスター:人造人間−サイコ・ショッカー  速攻の吸血蛆
魔法・罠:伏せカード2枚
手札:3枚

鷹野さん
LP:7500
モンスター:裏守備モンスター
魔法・罠:うずまき  伏せカード3枚
手札:1枚


「私のターン、ドロー! ……魔法カード『強欲な壺』を発動!」
 何!! 『強欲な壺』だと! く……何のコストもなくカードを2枚引けるという、自分で使う分にはいいが、相手に使われると吐き気がしてくる忌々しい魔法カード! その強さゆえに、自分のデッキには3枚入れておきたいが、相手には1枚たりとも使わせたくないカードなのだ! おのれ! おのれぇぇぇ!!
「その効果により、さらに2枚ドロー!」
 ぬぬぬぬぬぅ! この屈辱は忘れんぞ!!

かくかくしかじか
(魔法カード)
話を短縮し、ストーリーを高速回転させる。

 かくかくしかじかで、鷹野さんのバトルフェイズは終了した。
「ターン終了よ」



LP:7000
モンスター:なし
魔法・罠:なし
手札:5枚

鷹野さん
LP:7500
モンスター:神炎皇ウリア  降雷皇ハモン  幻魔皇ラビエル
魔法・罠:うずまき
手札:0枚


 えぇえぇえぇえぇええええええええええええええええええええ!!???????
 何でだよ!! 何でこうなんの???!! 三幻魔とかってアリなの!? ちょっと待ってよ!! どうすればこうなるんだよ!!?? 描写を省略するな!!
 くそ〜!! ご都合主義にも限度ってもんがあるだろうが!

カオス・ソーサラーの法則
(魔法カード)
三幻魔が出現したのは、決してイカサマではありません。
鷹野さんは、正規の方法で三幻魔を勢揃いさせました。
しかし、無駄に長くなりそうなので書きません。
気が向いた人は(向かない人も)、考えてみましょう!

●     ●     ●     ●     ●     ●     ●


 三幻魔について知らない人のために、効果を説明しておこう!

 『神炎皇ウリア』は、自分の場から表側表示の罠カード3枚を墓地に送らなければ、場に出せないモンスターだ。攻撃力は自分の墓地の永続罠カードの枚数×1000アップする。現在の攻撃力は4000だ。
 また、1ターンに一度だけ、相手の場にセットされた魔法・罠カードを1枚破壊できる。この効果に対し、魔法・罠カードの発動はできない。

 『降雷皇ハモン』は、自分の場から表側表示の永続魔法カード3枚を墓地に送らなければ、場に出せないモンスターだ。攻撃力は4000。戦闘で相手モンスターを破壊して墓地に送れば、相手に1000ダメージを与える能力を持つ。
 また、このカードが場にいる限り、相手はこのカード以外のモンスターを攻撃対象に選べない。

 『幻魔皇ラビエル』は、自分の場から悪魔族モンスター3体を生け贄に捧げなければ、場に出せないモンスターだ。攻撃力は『降雷皇ハモン』と同等の4000。相手がモンスターを召喚する度に、攻・守ともに1000の『幻魔トークン』(攻撃は不可)を出現させる能力を持つ。
 また、1ターンに一度だけ、自分の場のモンスター1体を生け贄に捧げることで、そのモンスターの元々の攻撃力を、エンドフェイズまでこのカードの攻撃力に加えることができる。


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 ヤバイよ。三幻魔相手にどう立ち向かえと? 僕はまた敗北するのか……?
 いや、待て。大抵、こんな風に追い詰められた主人公というのは、何かしらの方法で逆転するのだ。そうでなければ面白みが無い。敵の最強の布陣を倒してこそ、主人公の強さが引き立つのだ! 要するに、三幻魔の出現は、僕の逆転勝利への伏線ってワケだ。

逆・転・劇
(罠カード)
敵が反則レベルに強くて、主人公が追い詰められた時に発動!
主人公は意外な方法で逆転する。

 恐れることは無い! 手札を見てみようじゃないか。僕の手札は……何故か知らないが、増えているな。ラッキー! で、どんなカードがあるかと言うとだ……。


〜僕の手札〜
ゴキボール  ゴキボール  ゴキボール  闇からの奇襲  闇からの奇襲


 ……完璧だ。完璧すぎる!
 だって見てみろよ。『ゴキボール』が3枚揃ってるんだぜ? この意味が分かるよね? フフ……その通り! ズバリ! 狙うは『ゴキボール』3体融合!! 強靭! 無敵! 最強! の『マスター・オブ・ゴキボール』が降臨するのだ!!

マスター・オブ・ゴキボール
★12/地属性/昆虫族
攻5000  守5000
「ゴキボール」+「ゴキボール」+「ゴキボール」
このモンスターの融合召喚は上記のカードでしか行えない。
また、このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードが破壊された時、空いている自分のモンスターゾーン全てに
「ゴキボールトークン」(昆虫族・地・星4・攻1200・守1400)を特殊召喚する。
「ゴキボールトークン」はルール上、カード名を「ゴキボール」として扱う。

 OCGルールでは確か、手札融合が可能だったはずだからね。『融合』カードを引き当てれば、即座に融合が可能だ! 便利だぜ! OCGルール!
 しかも、手札には『闇からの奇襲』の魔法カードが2枚! バトルフェイズ終了後にこの魔法カードを使うと、もう一度バトルフェイズを行えるのだ! すなわち、僕は次のターン、バトルフェイズを3回行える!
 『融合』だ。『融合』の魔法カードを引き当てれば、僕の勝ちだ!!
「僕の……ターン!!」
 運命のドローフェイズ! 目に見えるデッキから見えないカードを引くことの勇気!! だが……その見えないカードを信じる力が決闘者の強さ!!
 僕は自分のデッキを信じる! 僕のデッキよ!! 勝利を導けぇぇぇえええ!!!
「――――ドロー!!」
























ドローカード:サンダー・ボルト






 …………。






「魔法カード『サンダー・ボルト』発動! 相手モンスターを全て破壊する!!
「!」
 やっぱり、『サンダー・ボルト』は決闘者の必需品だよね。だってノーコストで相手モンスター全滅だぜ? デッキに入れないなんてありえないぜ! ハハハハハ!! 見ろ! 敵モンスターがゴミのようだ!

空気読まない
(KY罠カード)
場の雰囲気を全て破壊する。

「ちっ……下衆の考えそうなことだ……」
 鷹野さんが何やら負け惜しみを言っているが、やめた方がいいんじゃない? 惨めなだけだよ。
 いいかい? OCGというのはね、原作以上にモンスターが除去されやすいんだよ。OCGの厳しさを舐めていた鷹野さんが悪いね。自滅だよ、自滅。
「フン! だが、まだ私のライフは残っているわ!」
 ライフねえ。確かに、モンスターを除去したからと言って、すぐに勝利というわけではない。まあ、とりあえず、場の状況を確認してみよう。



LP:7000
モンスター:なし
魔法・罠:なし
手札:5枚

鷹野さん
LP:7500
モンスター:なし
魔法・罠:うずまき
手札:0枚


 鷹野さんの場にモンスターはいない! 攻撃のチャンスだ!!
「僕は『ゴキボール』を召喚! プレイヤーに直接攻撃!」
「く……っ!」
 ははは! これは君から受け取った『ゴキボール』だよ。まさか、こうして仕返しすることになろうとはね!! 1200ダメージを食らうがいい!!

ゴキボール  攻撃力1200
鷹野さん  LP:7500→6300

 さて、ここで『闇からの奇襲』を使うべきか? いや、とどめをさせないこの状況で使ってしまうのは……。けど、大ダメージを与えられるチャンスだしなぁ……。2枚とも使えば、あと2400ダメージを与えられるし……。
 ……いや、でもやっぱり温存しておいた方が……? じゃあ、間を取って、1枚だけ使って1枚は温存しておくか? でもそれじゃあ、中途半端な気が……?
 ……やっぱ、攻撃できる時に攻撃しておいた方が……。どうせ、相手は手札が無いわけだし、次のターンであっさり逆転されることなんて無いだろう……。けどなあ……?



俺の未来は俺が決める!
(社長カード)
未来を切り開け!!

















さあ! 君ならどうする!?

2枚とも使用する
1枚は使用して1枚は温存する
2枚とも温存する











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