GX plus!
42話〜

製作者:カオスマンSPさん






第四十二話 フェイトの策略!砕け散るネオス!!

 本選出場者決定から1日後……アメリカのある町にて……

「精霊と人間の関係……オレ1人でどうにかなる問題なのか……?難しいな……。」
 遊城十代は、公園のベンチにて、少し黄昏てみていた……。



「よう、十代。」
 十代の後ろから、突然、黒色のジャケットを着、少しひげを生やしている誰かが話し掛けた。

「ん?あんたは……国崎さんか!」
 懐かしい顔を見た十代は、驚きを交えた声を出した。

「どうしたんだ?こんな所で。」
「なあに、ただ懐かしい顔を見かけたから、声をかけただけだ。」
 十代の問い掛けに対し、国崎は軽く答えた。



「それより十代。あと1週間かそこらで、お前の母校・デュエルアカデミア本校と、星海校の対抗試合が行われるんだが……知ってたか?」
「……いや、知らなかったな。」
 初めて知った事に、十代は少し驚いていた。

「……見に行ってみるか?」
「いや。……卒業したのにそんなあっさり戻ってきちゃ……『でもどり』呼ばわりされちまうんじゃないか?」
 軽く話す国崎に対し、十代は、軽く笑みを浮かべながら話した。

「オレ自身に、けじめが付くまでな。」
「……言うねぇ。」
 国崎は、十代にそう軽く言い放った。



「……一応、俺は見学させてもらおうと考えてるぜ。星海校側の代表者の1人が、お前と同じ『E・HERO』使いらしいからな。」
「そうなのか?」
 十代は、国崎の言葉に少し心が動いたかの様な表情をした。

「まあいいぜ。行く行かないはお前の勝手だ。……じゃあな。」
「ああ。」
 国崎は、軽く挨拶を交わして歩き去っていった……。





















 一方その頃、プロリーグを見学に来ていたフェイトと空野は……

「さて……スケジュールを確認するに、これでしばらくは本校卒業者の試合を見る事は不可能になった……訳か。」
 フェイトは、新聞を手に取りながら、空野に向かってそう言った。

「……つまり、君はもうこの国に滞在する必要が無くなったわけだ。それに、そろそろ帰還しなければ、本戦に間に合わなくなる。」
「しかし……どうやって帰るんですか?」
 空野は、フェイトにそう質問した。

「チケットは手配してある。このチケットで、デュエルアカデミアへと帰還してくれ。」
 フェイトはそう言いながら、空野にチケット入りの封筒を渡した。

「先生は帰らないんですか?」
「いや……私には、まだ様があってな。」
「……そうですか。」
 空野は、フェイトの言動を疑問に思いながらも、帰還様のチケットを受け取り、フェイトの下を立ち去っていった……。











「……これで不安は取り除かれた。後は……」
 フェイトは、軽く笑みを浮かべながら、歩き去っていった……。




















 ――その頃、十代は……

「デュエルアカデミア……か。卒業してから、アカデミアの事はあんまり考えなかったな……。」
 十代は、デュエルアカデミアの事を懐かしむかの様に、空を仰ぎながらそう言った。











「……探したぞ、遊城十代。」
 フェイトは、音も無く十代の目の前に移動し、小さな声でそう言った。

「誰だ!お前は!」
 その声を聞いた十代は、素早く一歩引き下がり、デュエルディスクを構えた。

「失礼。……私は、デュエルアカデミア本校の、フェイト教諭だ。」
 フェイトは、不敵な笑みを浮かべながら答えた。

「フェイト教諭?オレの在学中には、あんたを一度も見た事が無いんだけどな……。」
「当然だ。私は、君が卒業した後に教諭となったからな。」
 フェイトはまた軽く答えた。

「あんた……いったい何が目的なんだ?」
「……単刀直入に言えば、君の精霊・ユベルの再生に少しだが興味があってね。」
「『な、何だと!?」』
 フェイトの思わぬ一言に、十代とユベルは思わず驚いた。

「ユベル……。お前は、デュエルエナジーをデュエルアカデミアの生徒から掻き集めさせ、自らの肉体を再生させた……。違うか?」
『な、何故それを……?』
「デュエルアカデミア本校の過去のデータに残されていた……それだけだ。」
 驚くユベルに対して、フェイトは軽く話した。

「……!あんた……『カードの精霊』を見る事ができるのか?」
「その通りだ……遊城十代。」
 驚く十代に対して、フェイトは軽く笑みを浮かべながら答えた。

「……ついてこい。デュエル場はこっちだ。」
 フェイトは、十代に背中を向け、ビルの入り口に向かって歩いていった……。





















 ――ヘリポートが存在する、あるビルの屋上にて……

「(ヘリポート……出入り口は1つ……。奴はすぐに逃げる準備を整えてる訳か……?)」
 十代は、屋上の様子を軽く確認していた……。

「さて……始めよう。究極のデュエルを……。」
 フェイトと十代は、少し距離を置きデュエルディスクを構え……











「「デュエル!」」
 先攻は、フェイトだった。

「私のターン、ドロー。モンスター1体とカード2枚をセットし、ターンエンドだ。」
 フェイトは、複数枚のカードを伏せ軽くターンを終えた。

「オレのターン、ドロー!手札から、魔法カード『コンバート・コンタクト』を発動!手札から『N・ブラック・パンサー』を、デッキから『N・フレア・スカラベ』を墓地に送り、カードを2枚ドロー!」
 十代は、デッキと手札から2枚のカードを墓地へと送り、2枚のカードをドローした。


コンバート・コンタクト
通常魔法
このカードは自分フィールド上にモンスターが存在しない場合のみ発動する事ができる。
自分の手札及びデッキから1枚ずつ「N(ネオスペーシアン)」と名のついた
カードを墓地に送り、デッキをシャッフルする。
その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。


「さらにオレは、手札の『ネオスペース・コンダクター』を捨て、効果発動!デッキから『ネオスペース』を手札に加える!」
 そう言いながら、デッキから『ネオスペース』のカードを探し出し、手札に加えた。


ネオスペース・コンダクター
光 レベル4
【戦士族・効果】
このカードを手札から墓地に捨てる。
自分のデッキまたは墓地に存在する「ネオスペース」1枚を手札に加える。
攻撃力1800 守備力800


「手札から、永続魔法『未来融合−フューチャー・フュージョン』を発動!オレが指定する融合モンスターは……『E・HERO ゴッド・ネオス』!デッキから『E・HERO ネクロダークマン』、『E・HERO アナザー・ネオス』、『N・エア・ハミングバード』、『N・グロー・モス』、『N・グラン・モール』を墓地に送るぜ!」
 十代は、『ゴッド・ネオス』の素材となる『HERO』、『ネオス』、『N(ネオスペーシアン)』の名を持つカードを合わせて5枚、デッキから墓地に送った。


未来融合−フューチャー・フュージョン
永続魔法
自分のデッキから融合モンスターカードによって決められたモンスターを
墓地へ送り、融合デッキから融合モンスター1体を選択する。
発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時に選択した融合モンスターを
自分フィールド上に特殊召喚する(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。


「さらに手札から、魔法カード『コクーン・パーティ』を発動!オレの墓地のネオスペーシアンは5種類……現れろ!『C・チッキー』!『C・パンテール』!『C・ラーバ』!『C・ピニー』!『C・モーグ』!!」
 十代の言葉に反応して、場に赤い小鳥、黒い子猫、肌色の芋虫、光る幽霊、茶色のモグラが姿を現した!


コクーン・パーティ
通常魔法
自分の墓地に存在する「N(ネオスペーシアン)」と名のついたモンスター1種類につき、
「C(コクーン)」と名のついたモンスター1体を自分のデッキから特殊召喚する。


「なるほど……。1枚のカードで、5体のモンスターを並べるとはな……。」
「まだだ!オレはさらに、2枚の永続魔法『コクーン・リボーン』と『生還の宝札』を発動!」
 十代は、続けざまに2枚の永続魔法を発動させた。

「ほう……。『コクーン・リボーン』によって、墓地のネオスペーシアンを1体ずつ蘇生させ、『生還の宝札』で大幅に手札を増強する訳か。」
「ああ!まずは『C・チッキー』を『N・エア・ハミングバード』に進化させるぜ!」
 十代がそう言うと、十代の場の小さな赤い小鳥がハチドリ人間型のモンスターへと進化した!


コクーン・リボーン
永続魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する
「C(コクーン)」と名のついたモンスター1体を生け贄に捧げる事で、
そのカードに記されている「N(ネオスペーシアン)」と
名のついたモンスター1体を墓地から特殊召喚する。


「『生還の宝札』によって、カードを1枚ドローし……『エア・ハミングバード』の効果発動!ハニー・サック!」
 十代がカードを1枚ドローした後、『エア・ハミングバード』は、フェイトの3枚の手札から3輪の花を出現させ、その花から、ハチドリの様に蜜を吸い取り、十代のライフを回復させた!


生還の宝札
永続魔法
自分の墓地に存在するモンスターが特殊召喚に成功した時、
自分のデッキからカードを1枚ドローする事ができる。

N・エア・ハミングバード
風 レベル3
【鳥獣族・効果】
相手の手札1枚につき、自分は500ライフポイント回復する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
攻撃力800 守備力600


十代LP 4000→5500

 しかし……

『くっ……!』
「どうした!?『エア・ハミングバード』!」
『いや……奴の手札から現れた花の1つからエネルギーを吸おうとしたが……逆にエネルギーを奪われた様な感覚に襲われた……!』


「(さすが『精霊持ち』と言った所か……。我の手札に加わった何かを感じ取ったか……。)」
 フェイトは、心の中で軽くそう思っていた……。

「(何だ……?いったい何を隠し持っている……?)」
 十代は、フェイトの手札から発せられる何かに感付きながらもその正体がつかめず、少しばかり慎重になっていた……。

「……次は、『C・パンテール』を、『N・ブラック・パンサー』に進化だ!」
 次に十代は、自分の場の小さな黒猫を、立派な黒豹へと進化させた。

「『生還の宝札』で、カードを1枚ドロー!次は『C・ピニー』だ!現れろ!『N・グロー・モス』!」
 十代はカードを1枚ドローした後、光る幽霊を発光する人間体に変化させた!

「『生還の宝札』でカードを1枚ドロー!次は『C・ラーバ』だ!蘇れ!『N・フレア・スカラベ』!」
 十代の場の、芋虫型のモンスターが進化し……人とカブト虫が合体したかの様なモンスターが姿を現した!

「『生還の宝札』によって、カードを1枚ドロー!最後は『C・モーグ』だ!蘇れ!『N・グラン・モール』!」
 さらに、小さなモグラの様なモンスターが進化し……両肩にドリルの様な物を装着し、一回り大きくなったモグラが現れた!

「『生還の宝札』によって、カードを1枚ドロー!手札から、魔法カード『スペーシア・ギフト』を発動!」
 さらにカードを1枚ドローした十代は、追撃の魔法カードを発動させ、カードを5枚もドローした。


スペーシア・ギフト
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する「N(ネオスペーシアン)」と名のついた
モンスター1種類につき、自分のデッキからカードを1枚ドローする。


「ライフ・アドバンテージ……ハンド・アドバンテージ……ボード・アドバンテージ……。すべてにおいて、私より優位に立ったか……。1枚のカードで5枚ドローし、現在の手札は11枚……。……儲かり過ぎるのも考え物だな。」
「くっ……!」
 十代は、フェイトの「そんな戦術は当然だ。」と言わんばかりの表情に、少し不愉快そうな表情をしていた……。

「手札から、魔法カード『打ち出の小槌』を発動!手札を2枚デッキに戻し、カードを2枚ドロー!」
「そこまでドローし、手札交換……か。デッキに残したいカードまでつかんでしまうとは……。強欲者の末路……と言った所か。」
 またしてもフェイトは、軽い皮肉を述べた。

「……手札から、魔法カード『ヒーロー・マスク』を発動!デッキから『E・HERO ネオス』を墓地に送り……『エア・ハミングバード』を『ネオス』へと改名させる!」
 十代がそう言うと、『エア・ハミングバード』がデッキの『ネオス』から発せられたオーラに包まれ……自らの名前を『ネオス』に変化させた!


ヒーロー・マスク
通常魔法
自分のデッキから「E・HERO」と名のついたモンスター1体を墓地へ送る。
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、
このターンのエンドフェイズ時までその効果で墓地へ送った
モンスターと同名カードとして扱う。

現在の状況
十代 LP…5500
   手札…9枚(内1枚ネオスペース)
   場…E・HERO ネオス(N・エア・ハミングバード、攻撃力800・攻撃表示)
     N・ブラック・パンサー(攻撃力1000・攻撃表示)
     N・グロー・モス(攻撃力300・攻撃表示)
     N・フレア・スカラベ(攻撃力1100・攻撃表示)
     N・グラン・モール(攻撃力900・攻撃表示)
     未来融合−フューチャー・フュージョン(0ターン経過)
     コクーン・リボーン(表側表示)
     生還の宝札(表側表示)


「……トリプルコンタクト融合……か。」
「ああ……。オレの場の『ネオス(エア・ハミングバード)』、『ブラック・パンサー』、『グロー・モス』をデッキに戻し、新たなモンスターを降臨させるぜ!……現れろ!『E・HERO カオス・ネオス』!」
 そう言うと、十代の場の3体のネオスペーシアンが飛翔し……夜空に浮かぶ満月から、混沌の力を操る新たな『ネオス』が出現した!

「『カオス・ネオス』の効果発動!ルーラー・オブ・シグナル!!」
 十代の言葉に呼応し『カオス・ネオス』は赤色、黄色、青色の球体状のシグナルを発生させ、すべてを点滅させた!

「『カオス・ネオス』は、1ターンに1度シグナルをランダムに操作し……点灯したシグナルの数に応じて、発動する効果を変化させる!」
「なるほど……。運任せの戦法と言う訳か。」
 十代の言葉に対し、フェイトは軽く反応した。


E・HERO カオス・ネオス
闇 レベル9
【戦士族・融合・効果】
「E・HERO ネオス」+「N・ブラック・パンサー」+「N・グロー・モス」
自分フィールド上に存在する上記のカードをデッキに戻した場合のみ、
エクストラデッキから特殊召喚できる。
エンドフェイズ時にこのカードをエクストラデッキに戻し、
フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て守備表示でセットする。
また、自分のメインフェイズ1に一度、コイントスを3回行う事ができる。
表の回数によって以下の効果を適用する。
●3回:相手フィールド上のモンスターを全て破壊する。
●2回:このターンのエンドフェイズ時まで
相手フィールド上の表側表示モンスターの効果は無効化される。
●1回:自分フィールドのモンスターを全て持ち主の手札に戻す。
攻撃力3000 守備力2500


 そうしている間に……シグナルの点滅が、すべて点灯した状態で終わった!

「……3個のシグナルが点灯!相手モンスターをすべて破壊する!」
 『カオス・ネオス』は、すべての点灯したシグナルを自らに吸収させ……両腕から発せられる衝撃波により、フェイトの場の裏守備モンスター……『クリッター』を一撃で粉砕した!

「破壊されたモンスターは……『クリッター』だ。このカードが場から墓地に送られた事により、デッキから攻撃力1500以下のモンスター……『マンジュ・ゴッド』を手札に加える。」
 しかしフェイトは、軽くそう言いながら、デッキから『マンジュ・ゴッド』のカードを探し出し、手札に加えた。


クリッター
闇 レベル3
【悪魔族・効果】
このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、
自分のデッキから攻撃力1500以下のモンスター1体を手札に加える。
攻撃力1000 守備力600


「さらに、魔法カード『O−オーバーソウル』を発動!オレの墓地から、E・HEROの通常モンスター……『アナザー・ネオス』を特殊召喚!『生還の宝札』で1枚ドロー!」
 十代の墓地から、『ネオス』のコスプレをした小型のモンスターが現れ……十代は、カードを1枚ドローした!


O−オーバーソウル
通常魔法
自分の墓地から「E・HERO」と名のついた通常モンスター1体を選択し、
自分フィールド上に特殊召喚する。


「まだだ!手札から、装備魔法『スーペルヴィス』を『アナザー・ネオス』に装備!この効果により、『アナザー・ネオス』は『ネオス』へと進化する!!」
 『スーペルヴィス』を装備した『アナザー・ネオス』は、全身から激しいオーラを発生させ……自らの名前を『ネオス』へと変化させた!


E・HERO アナザー・ネオス
光 戦士族
【戦士族・デュアル・効果】
このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、
通常モンスターとして扱う。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、
このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●このカードはフィールド上に表側表示で存在する限り、
カード名を「E・HERO ネオス」として扱う
攻撃力1900 守備力1300

スーペルヴィス
装備魔法
デュアルモンスターにのみ装備可能。
装備モンスターは再度召喚した状態になる。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードが墓地へ送られた時、
自分の墓地に存在する通常モンスター1体を選択して特殊召喚する。


現在の状況
十代 LP…5500
   手札…8枚(内1枚ネオスペース)
   場…E・HERO カオス・ネオス(攻撃力3000・攻撃表示)
     E・HERO ネオス(E・HERO アナザー・ネオス、攻撃力1900・攻撃表示)
     N・フレア・スカラベ(攻撃力1100・攻撃表示)
     N・グラン・モール(攻撃力900・攻撃表示)
     未来融合−フューチャー・フュージョン(0ターン経過)
     コクーン・リボーン(表側表示)
     生還の宝札(表側表示)
     スーペルヴィズ(元アナザー・ネオスに装備)


「『ネオス(アナザー・ネオス)』と『フレア・スカラベ』と『グラン・モール』をトリプルコンタクト融合!現れろ!『マグマ・ネオス』!!」
 十代の場の3体のモンスターがまた飛翔し……次は、獣の様な腕と巨大なドリルを両立させた、2体目のトリプルコンタクト融合体を呼び出した!

「場から墓地に送られた『スーペルヴィス』の効果発動!墓地から、通常モンスター1体を特殊召喚する!蘇れ!『ネオス』!『生還の宝札』の効果でカードを1枚ドロー!」
 トリプルコンタクト融合後に残された『スーペルヴィス』は、墓地の『ネオス』に力を与え、場に蘇らせた!

「それほどの超展開をしながら、まだ手札を9枚も残している……か。当然、3体目も出すのだろう?」
 フェイトは、十代の場に現れた『マグマ・ネオス』と『ネオス』の姿を見ながら、軽くそう言った。

「(あいつの言いなりになってるみたいだが……今のオレの手札なら、『ストーム・ネオス』をコンタクト融合するしかない!)」
 そう思いながら十代は、手札のカード1枚に手を掛けた。

「手札から『E・HERO プリズマー』を召喚し……効果発動!オレのデッキから……『ストーム・ネオス』の融合素材となる『N・アクア・ドルフィン』を墓地に送り、名前を変化させる!リフレクト・チェンジ!」
 十代の場に、プリズムの体をしたヒーローが現れ……その体に、『アクア・ドルフィン』の姿を映し出すと、『プリズマー』の姿が『アクア・ドルフィン』へと変化した!


E・HERO プリズマー
光 レベル4
【戦士族・効果】
自分のエクストラデッキに存在する融合モンスター1体を相手に見せ、
そのモンスターにカード名が記されている融合素材モンスター1体を
自分のデッキから墓地へ送って発動する。
このカードはエンドフェイズ時まで墓地へ送ったモンスターと同名カードとして扱う。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
攻撃力1700 守備力1100


「まだだ!手札から、魔法カード『二重召喚』を発動し……それにチェーンし、速攻魔法『非常食』を発動!オレの場の『生還の宝札』、『二重召喚』、『未来融合 フューチャー・フュージョン』、『コクーン・リボーン』を墓地へと送り、オレのライフを4000ポイント回復する!」
 十代が続けざまに2枚のカードを発動させると、十代のライフが大幅に回復した!

十代LP 5500→9500


「2度目の通常召喚だ!来い!『エア・ハミングバード』!」
 十代の場に、再び『エア・ハミングバード』が召喚された。

「『エア・ハミングバード』の効果発動!……行けるか?」
『ああ……。』
 『エア・ハミングバード』の安否を確認した十代は、再び効果発動を宣言し、ライフを回復させた。
 しかし、エネルギーを吸い終わった『エア・ハミングバード』は、また少し表情を歪ませていた……。

十代LP 9500→11500


現在の状況
十代 LP…11500
   手札…5枚(内1枚ネオスペース)
   場…E・HERO カオス・ネオス(攻撃力3000・攻撃表示)
     E・HERO マグマ・ネオス(攻撃力6200・攻撃表示)
     E・HERO ネオス(攻撃力2500・攻撃表示)
     N・エア・ハミングバード(攻撃力800・攻撃表示)
     N・アクア・ドルフィン(E・HERO プリズマー、攻撃力1700・攻撃表示)



「『ネオス』と『アクア・ドルフィン(プリズマー)』と『エア・ハミングバード』をトリプルコンタクト融合!現れろ!『ストーム・ネオス』!!」
 さらにもう1度、十代の場の3体のモンスターが飛翔し……次は、背中に巨大な翼を持ち、水の様に青い胴体を持つトリプルコンタクト融合体を呼び出した!

「『ストーム・ネオス』の効果発動!場の魔法・罠カードをすべて破壊する!アルティメット・タイフーン!!」
 『ストーム・ネオス』は、背中の翼から激しい暴風雨を発生させ、フェイトの場の2枚の伏せカードを吹き飛ばそうとしたが……

「それにチェーンし、速攻魔法『終焉の焔』を発動する。私の場に『黒焔トークン』を2体守備表示で特殊召喚。」
 フェイトが伏せられていたカードを表にすると、『ストーム・ネオス』によって吹き飛ばされる前に、フェイトの場に、黒色の炎の様な小型モンスターを出現させた。
 しかし、もう1枚の伏せカード『ヘイト・バスター』は、何の抵抗も及ぼさずに破壊された。


E・HERO ストーム・ネオス
風 レベル9
【戦士族・融合・効果】
「E・HERO ネオス」+「N・エア・ハミングバード」+「N・アクア・ドルフィン」
自分フィールド上に存在する上記のカードをデッキに戻した場合のみ、
融合デッキから特殊召喚が可能(「融合」魔法カードは必要としない)。
1ターンに1度だけ自分のメインフェイズ時にフィールド上の魔法・罠カードを
全て破壊する事ができる。
エンドフェイズ時にこのカードは融合デッキに戻る。
この効果によって融合デッキに戻った時、
フィールド上に存在する全てのカードをデッキに戻しシャッフルする。
攻撃力3000 守備力2500


「……だが、これでお前の場には『黒焔トークン』2体だけだ!手札から、フィールド魔法『ネオスペース』を発動!『ネオスペース』の力を受け、ネオスを融合素材とするモンスターの攻撃力は、500ポイントアップする!」
 そう言うと、十代とフェイトの場が不思議な虹色の空間に包まれ……『マグマ・ネオス』、『カオス・ネオス』、『ストーム・ネオス』に力を与えた!


ネオスペース
フィールド魔法
「E・HERO ネオス」及び「E・HERO ネオス」を融合素材とする
融合モンスターの攻撃力を500ポイントアップする。
「E・HERO ネオス」を融合素材とする融合モンスターは、
エンドフェイズ時にデッキに戻る効果を発動しなくてもよい。


マグマ・ネオス 攻撃力5400→5900
カオス・ネオス 攻撃力3000→3500
ストーム・ネオス 攻撃力3000→3500

「行くぜ!『カオス・ネオス』で『黒焔トークン』に攻撃!ライト・アンド・ダーク・スパイラル!!」
 『カオス・ネオス』は、右手にエネルギーを集約させ、『黒焔トークン』を紙切れの様に粉砕した!

「さらに……『ストーム・ネオス』で『黒焔トークン』に攻撃!マッハ・トルネイド!!」
 『ストーム・ネオス』は、翼から激しい暴風雨を発生させ、『黒焔トークン』を一瞬で蹴散らした!

「これで終わりだ!『マグマ・ネオス』で、ダイレクトアタック!スーパー・ヒート・メテオ!!」
 『マグマ・ネオス』は、空に掲げた手のひらから巨大な火球を発生させ、フェイトに向かって解き放ったが……

「……手札から『クリボー』を捨て、効果を発動する。その攻撃によって私が受けるダメージは0となる。」
 フェイトの前に、黒いもふもふの小さな悪魔が立ちはだかり、『マグマ・ネオス』の放った火球をかき消した!


クリボー
闇 レベル1
【悪魔族・効果】
相手ターンの戦闘ダメージ計算時、このカードを手札から捨てて発動する。
その戦闘によって発生するコントローラーへの戦闘ダメージは0になる。
攻撃力300 守備力200


「『クリボー』を握っていたか……。オレの場のコンタクト融合体は、エンドフェイズ時にエクストラデッキに戻るデメリットが存在するが……『ネオスペース』が発動している間は、その効果を発動する必要が無くなるぜ!オレはこれで、ターンエンド!」


現在の状況
フェイト LP…4000
     手札…3枚
     場…無し

十代 LP…11500
   手札…4枚
   場…E・HERO カオス・ネオス(攻撃力3500・攻撃表示)
     E・HERO マグマ・ネオス(攻撃力5100・攻撃表示)
     E・HERO ストーム・ネオス(攻撃力3500・攻撃表示)
     ネオスペース(表側表示)


「……私のターン、ドロー。手札から『マンジュ・ゴッド』を召喚する。」
 フェイトは、十代の場に3体の最上級融合モンスターがいる事、手札枚数でも圧倒的に負けている事にもまったく動じずに1枚のカードをドローし、手札から、大量の腕を持つ像を召喚した。

「『マンジュ・ゴッド』の効果発動。デッキから……儀式魔法『高等儀式術』を手札に加える。」
 『マンジュ・ゴッド』は、自身の大量の腕でフェイトのデッキのカードを探り出し、フェイトに『高等儀式術』のカードを与えた。


マンジュ・ゴッド
光 レベル4
【天使族・効果】
このカードが召喚・反転召喚された時、自分のデッキから
儀式モンスターカードまたは儀式魔法カード1枚を選択して手札に加える事ができる。
攻撃力1400 守備力1000


「さらに手札から、魔法カード『闇の誘惑』を発動。この効果で、デッキからカードを2枚ドローし、手札の闇属性モンスター……『ダーク・リゾネーター』を除外する。」
 フェイトは、1枚の魔法カードを発動させる事により、手札交換を行った。


闇の誘惑
通常魔法
自分のデッキからカードを2枚ドローし、
その後手札の闇属性モンスター1体をゲームから除外する。
手札に闇属性モンスターがない場合、手札を全て墓地へ送る。


「手札から、儀式魔法『高等儀式術』を発動。……私が儀式召喚するモンスターは、『サイバー・エンジェル−韋駄天−』だ。デッキから、合計レベルが6となる様に通常モンスターを墓地に送り……『サイバー・エンジェル−韋駄天−』を儀式召喚。」
 そう言いながらフェイトは、デッキからレベル6の通常モンスター……『デーモンの召喚』を墓地に送り、女性型の機械天使を降臨させた!


高等儀式術
儀式魔法
手札の儀式モンスター1体を選択し、そのカードとレベルの合計が
同じになるように自分のデッキから通常モンスターを選択して墓地に送る。
選択した儀式モンスター1体を特殊召喚する。


「『韋駄天』の効果を発動する。特殊召喚に成功した時、墓地の魔法カードを手札に加える事ができる。この効果により、墓地の『闇の誘惑』を手札に加える。」
 そう言いながらフェイトは、墓地から『闇の誘惑』のカードを見せ付け、手札に戻した。


サイバー・エンジェル−韋駄天−
光 レベル6
【天使族・儀式・効果】
「機械天使の儀式」により降臨。
このカードが特殊召喚に成功した時、
自分の墓地から魔法カード1枚を手札に加える。
攻撃力1600 守備力2000


「今の私の手札は3枚……。さらに手札から、魔法カード『儀式の準備』を発動。この効果で、デッキから『韋駄天』サーチし、墓地の『高等儀式術』を手札に加える。」
 フェイトはそう言いながら、手札に『韋駄天』と『高等儀式術』を揃えた。


儀式の準備
通常魔法
自分のデッキからレベル7以下の儀式モンスター1体を手札に加える。
その後、自分の墓地から儀式魔法カード1枚を手札に加える事ができる。


「(特殊召喚時に魔法カードを回収する『韋駄天』に、デッキの儀式モンスターをサーチし墓地の儀式魔法を手札に加える『儀式の準備』……!)」
 十代は、フェイトが使用した2枚のカードの効果を考え……











「まさか……『韋駄天』と『儀式の準備』のループで、デッキに眠る『韋駄天』をすべて儀式召喚する気か?」
「その通りだ。手札から、儀式魔法『高等儀式術』を発動。デッキから、合計レベルが6となる様に通常モンスター……レベル4の『ハープの精』、レベル2の『命の砂時計』を墓地に送り『韋駄天』を儀式召喚。特殊召喚された『韋駄天』の効果で、墓地の『儀式の準備』を手札に加える。」
 驚く十代を軽く見たフェイトは、手札から2体目の『韋駄天』を儀式召喚した上、墓地から『儀式の準備』を手札に戻した。

「くっ……また『韋駄天』か……。」
 十代は、まったく手札を消費せずに2体目の『韋駄天』を儀式召喚された事に、少し危機感を抱いていた……。

「『サイバー・エンジェル』の効果は、儀式召喚以外の特殊召喚でも発動する……。その強力さが、遊城十代……お前に分かるか?」
「いや……実際にオレ、『サイバー・エンジェル』デッキと戦った事ねえから、その強さはあまり知らねえんだよな……。まあ、『契約の履行』で蘇生させて『強欲な壺』を回収・即発動の流れは、プロでもあっさりねじ伏せちまうほど強力なコンボって事ぐらいは分かるんだけどな。」
 十代は、フェイトの問い掛けに対して軽く答えた。



「……その通りだ。」
「…………?」
 十代は、フェイトの一言に少し疑問符を抱いていた……。



「……回収した『儀式の準備』をもう1度発動させてもらおう。デッキから『韋駄天』を手札に加え、墓地から『高等儀式術』を手札に加える。」
 フェイトは、そう言いながら先程の行動を再現するかの様に、手札に『韋駄天』と『高等儀式術』を揃えた。

「さらに……手札から、魔法カード『闇の誘惑』を発動する。カードを2枚ドローし、手札の闇属性モンスター……『デーモン・ソルジャー』をゲームから除外する。」
 フェイトは、1体目の『韋駄天』によって回収した『闇の誘惑』を発動させ、手札交換をした。


現在の状況
フェイト LP…4000
     手札…4枚(内3枚???、韋駄天、高等儀式術)
     場…マンジュ・ゴッド(攻撃力1400・攻撃表示)
       サイバー・エンジェル−韋駄天−(守備力2000・守備表示)×2


「手札から、魔法カード『貪欲な壺』を発動。墓地の『クリッター』、『クリボー』、『デーモンの召喚』、『ハープの精』、『命の砂時計』をデッキに戻し、カードを2枚ドロー。」
 さらにフェイトは、『闇の誘惑』でドローしたカードを追撃の様に発動させ、カードを2枚ドローした。


貪欲な壺
通常魔法
自分の墓地に存在するモンスター5体を選択し、
デッキに加えてシャッフルする。
その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。


「……手札から、儀式魔法『高等儀式術』を発動。デッキから、合計レベルが6となる様に通常モンスター……レベル2の『怨念集合体』と、レベル2の『命の砂時計』2体を墓地に送り『サイバーエンジェル 韋駄天』を儀式召喚。特殊召喚された『韋駄天』の効果で、墓地の『貪欲な壺』を手札に加える。」
 フェイトは、つい先程発動させた『貪欲な壺』を墓地から取り出し、手札に加えた。

「くっ……3回も儀式召喚した後なのに、まだ手札を4枚も残してるのかよ……。」
 十代は、手札を大きく消費する儀式召喚の常識を軽く覆しているかの様なフェイトの戦法に、ただただ驚くしかなかった……。

「……謙遜するな、遊城十代。お前のトリプルコンタクト融合体を3体並べる戦法の方が、明らかに常識を軽く覆しているだろう。」
 しかしフェイトは、十代の行動に対しても皮肉を交えた様な口調でそう言った。

「……手札から、魔法カード『デビルズ・サンクチュアリ』を発動。この効果により、私の場に『メタルデビル・トークン』が特殊召喚される。」
 フェイトの場に、金属状の人形の様な、小さな悪魔が現れた。

「さらに……手札から、魔法カード『二重魔法』を発動。このターン、もう1度通常召喚が可能となった。」
 フェイトは、自分の手札を見ながら、軽くそう言った……。


現在の状況
フェイト LP…4000
     手札…2枚(???、貪欲な壺)
     場…マンジュ・ゴッド(攻撃力1400・攻撃表示)
       サイバーエンジェル 韋駄天(守備力2000・守備表示)×3
       メタルデビル・トークン(攻撃力0・攻撃表示)


「さて……2度目の通常召喚をさせてもらおう。光天使2体……『サイバーエンジェル 韋駄天』2体と、闇悪魔1体……『メタルデビル・トークン』をリリースし……」
「何!3体だと!?」
 十代は、3体のモンスターをリリースする宣言に、少し驚いていた……。

『十代!』
「ああ、分かってる!奴の手札から放たれる妙な威圧感……今奴が右手に持ってるカードからだ!」
 ユベルと十代は、これからフェイトが召喚するモンスターに対して身構えていた。











「……出でよ!『天魔神 ノートゥング』!!」
 フェイトの場に、ブルーメタルで精製されたブレストプレートと白銀の軽装鎧、羽飾りの付いた髪留めに、絹の様な素材でできたスカートの様な物を身につけ、右手に光輝く剣を持った、戦乙女の様な1体のモンスターが、空の上から姿を現した!!



「『天魔神 ノートゥング』……攻撃力3700!?」
 十代は、『ノートゥング』の美しくもどこか虚無的な姿と、それに似つかない攻撃力に目が行き……

「(いや……指定された種族・属性のモンスターを揃える必要のあるモンスターだ……!何か、強力な効果があるに決まってる……!)」
 ……その後、どんな効果を持っているのかと警戒していた……。

「『ノートゥング』の召喚は無効化されず、その召喚に対しても魔法・罠・モンスター効果を発動させる事はできない。」
「……カウンターできない……?」
 フェイトの言葉を聞いた瞬間、十代の脳裏にある言葉が過った……。











 ――『超融合』をカウンターする事はできない。











「……オレは認めない!そんな一方的な、相手からの抵抗を許さない力は!」
「…………?何故そこでむきになる?お前の場には、伏せカードは1枚も無い。カウンター手段が手札にあったとでも言うのか?」
 十代が突然大きな声を出した事を、フェイトは少し疑問視していた……。



「……回収した『貪欲な壺』をもう1度発動させてもらおう。墓地から『韋駄天』2体、『怨念集合体』、『命の砂時計』2体をデッキに戻し、カードを2枚ドロー。」
 フェイトは、墓地の5体のモンスターをデッキに戻し、カードを2枚ドローした。

「さらに手札から、魔法カード『儀式の準備』を発動。デッキから『韋駄天』を手札に加え、墓地の『高等儀式術』を手札に戻す。」
 フェイトは、2枚目の『儀式の準備』を発動させ、手札に『韋駄天』と『高等儀式術』を揃えた。

「くっ……!……また『韋駄天』か……!」
「手札から、儀式魔法『高等儀式術』を発動。デッキから、合計レベルが6となる様に通常モンスター……レベル2の『怨念集合体』、『命の砂時計』2体を墓地に送り『韋駄天』を儀式召喚。特殊召喚された『韋駄天』の効果で、墓地の『儀式の準備』を手札に加える。」
 顔を強張らせている十代を見ながら、フェイトは2体目の『韋駄天』を儀式召喚し、墓地の『儀式の準備』を手札に戻した。

「回収した『儀式の準備』をもう1度発動させてもらおう。デッキから『韋駄天』を手札に加え、墓地の『高等儀式術』を手札に戻す。」
 そしてまた、3体目の『韋駄天』を儀式召喚する準備を整えた……。

「手札から、儀式魔法『高等儀式術』を発動。デッキから、合計レベルが6となる様に通常モンスター……レベル2の『怨念集合体』2体、『命の砂時計』を墓地に送り『韋駄天』を儀式召喚。特殊召喚された『韋駄天』の効果で、墓地の『貪欲な壺』を手札に加える。」
 さらにフェイトは、3体目の『韋駄天』を追加で儀式召喚した。

「……回収した『貪欲な壺』を発動させてもらおう。墓地から『怨念集合体』2体、『命の砂時計』3体をデッキに戻し、カードを2枚ドロー。」
 フェイトは、もう1度墓地の5体のモンスターをデッキに戻し、カードを2枚ドローした。


現在の状況
フェイト LP…4000
     手札…3枚
     場…天魔神 ノートゥング(攻撃力3700・攻撃表示)
       サイバーエンジェル 韋駄天(守備力2000・守備表示)×3
       マンジュ・ゴッド(攻撃力140・攻撃表示)


「バトルフェイズに入る。『天魔神 ノートゥング』で『カオス・ネオス』に攻撃!」
 『ノートゥング』は、フェイトの命を聞き付けた瞬間に、剣を構えて『カオス・ネオス』に向かって突撃し……高速で振るう剣により、『カオス・ネオス』の体を一瞬で真っ二つにした!

「ぐっ……あぁっ!」(十代LP 11500→11300)
 そして、超過ダメージを受けた十代は、思わず声を上げた……。



「(なっ……何だ……?この感覚……!オレの体から、力が抜け落ちていく様な……!)」
 十代は、自分のライフが削られた際に、どっと疲れがたまった様な感覚に襲われ、自分の胸元を押さえ付けていた……。

「……まだだ。『ノートゥング』の攻撃終了後、相手の場にモンスターが残っている場合、もう1度攻撃する事ができる。……次は『ストーム・ネオス』に攻撃!」
「がっ……あぁっ!」(十代LP 11300→11100)
 『カオス・ネオス』に次ぎ『ストーム・ネオス』も真っ二つに引き裂かれ……十代は、『ノートゥング』の2度目の攻撃によって、少し目眩を起こした様によろめいてしまった……。


天魔神 ノートゥング
光 レベル10
【天使族・効果】
このカードはフィールド上から墓地に送られた場合にのみ特殊召喚する事が可能になる。
自分フィールド上に存在する光属性・天使族モンスター2体と
闇属性・悪魔族モンスター1体をリリースした場合のみ通常召喚することができる。
このカードは魔法・罠・効果モンスターの効果の対象にできない。
自分のターンに1度だけ、次の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚をゲームから除外する。
この効果を発動する場合、このターンこのカードは攻撃する事ができない。
●相手フィールドにモンスターが存在する場合のみ、
バトルフェイズ中にもう一度だけ攻撃する事ができる。
攻撃力3700 守備力2800


「(ま……まただ……!これは……気のせいじゃ無い!)」
 十代は、『ノートゥング』の攻撃によって自らに何らかの影響が起こっている事を感じていた……。

「カードを2枚場に伏せ、ターンエン……」
「この瞬間……『マグマ・ネオス』の効果発動!このカードがエクストラデッキに戻り、それにより……場のカードをすべて手札に戻す!ネビュラズ・ノヴァ!!」
 十代がそう言うと、『マグマ・ネオス』は場から去る前に腕から燃え盛る火の玉を足元にぶつけ……ぶつけた部分からブラックホールの様に黒い空間が発生し、十代とフェイトの場のモンスターと魔法・罠カードをすべて吹き飛ばした!

「なるほど……。その効果を我のターンのエンドフェイズに発動させる事で、確実なダイレクトアタックをねらうか……。……だが、相手のモンスターを消したいのは、我も同じだ。手札から、速攻魔法『リロード』を発動する。我の7枚の手札をすべてデッキに戻し、戻した枚数分カードをドローする。」
 フェイトは、総入れ替え後の自分の手札を確認し……

「ターンエンドだ。」
 ……余裕そうな表情でターンを終えた。
 手札7枚でターンを終えていたため、フェイトは手札から『ハープの精』を墓地に送った。


リロード
速攻魔法
自分の手札を全てデッキに加えてシャッフルする。
その後、デッキに加えた枚数分のカードをドローする。


現在の状況
フェイト LP…4000
     手札…6枚
     場…無し

十代 LP…11100
   手札…5枚(内1枚ネオスペース)
   場…無し


「オレのターン、ドロー!」
 十代は、カードを1枚ドローして、次の戦法を考えた……。

「手札から、魔法カード『召喚師のスキル』を発動!この効果で、デッキからレベル5以上の通常モンスター……『E・HERO ネオス』を手札に加える!」
 十代は、トリプルコンタクト融合のためにデッキに戻した『ネオス』を探し出し、手札に加えた。


召喚師のスキル
通常魔法
自分のデッキからレベル5以上の通常モンスターカード1枚を選択して手札に加える。


「さらに手札から、魔法カード『古のルール』を発動!手札のレベル5以上の通常モンスター……『ネオス』を特殊召喚!」
 そう言いながら十代は、サーチした『ネオス』をすぐさま特殊召喚した!


古のルール
通常魔法
自分の手札からレベル5以上の通常モンスター1体を特殊召喚する。


 しかし、『ネオス』は片膝を付き、どこか疲れている様な表情をしていた……。

「……『ネオス』!お前も……」
『ああ……。奴の『ノートゥング』に私のコンタクト融合体が切られた瞬間……エネルギーを大幅に奪われる様な感覚に襲われた……。』
 『ネオス』は、肩で息をしながら十代の問い掛けに答えた……。

『だが……この程度なら、まだ大丈夫だ……。私で奴を攻撃するんだ、十代!』
「ああ……分かった!」
 十代は、『ネオス』の安全を確認し……

「……墓地の『ネクロダークマン』の効果発動!この効果で、手札の『E・HERO』をノーコストで召喚できる様になる!来い!『E・HERO エッジマン』!」
 十代は、墓地の『ネクロダークマン』の効果を使用し、手札の『エッジマン』をリリース無しで召喚した!


「……行くぜ!『ネオス』で、ダイレクトアタック!ラス・オブ・ネオス!!」
 『ネオス』は、フェイトに対して渾身の力でチョップを放ち、フェイトのライフを大きく削った。

「…………。」(フェイトLP 4000→1500)
 フェイトは、涼しげな表情でそれを受け流していた……。

「……手札から『冥府の使者ゴーズ』の効果を発動する。我の場にカードが存在しない時にダメージを受けた場合、手札から特殊召喚する。」
 フェイトがダメージを受けた事に呼応し、手札から、目を隠す仮面を被り、両手の甲に刃物を装備した悪魔族の男が現れた!

「さらに『ゴーズ』は、受けたダメージの種類によって発動する効果が変化する。戦闘ダメージの場合、そのダメージと同等の攻撃力・守備力を持つ『冥府の使者カイエントークン』が特殊召喚される。」
 さらにもう1体、『ゴーズ』と似たデザインの仮面を被り、手に剣を持った天使族の女が現れた!


冥府の使者ゴーズ
闇 レベル7
【悪魔族・効果】
自分フィールド上にカードが存在しない場合、
相手がコントロールするカードによってダメージを受けた時、
このカードを手札から特殊召喚する事ができる。
この方法で特殊召喚に成功した時、受けたダメージの種類により以下の効果を発動する。
●戦闘ダメージの場合、自分フィールド上に「冥府の使者カイエントークン」
(天使族・光・星7・攻/守?)を1体特殊召喚する。
このトークンの攻撃力・守備力は、この時受けた戦闘ダメージと同じ数値になる。
●カードの効果によるダメージの場合、
受けたダメージと同じダメージを相手ライフに与える。
攻撃力2700 守備力2500


冥府の使者カイエントークン 守備力2500

「くっ……『ゴーズ』が手札にいたか……。6枚も手札交換したら、さすがに来るよな……。だが、『エッジマン』で『冥府の使者カイエントークン』に攻撃!パワーエッジ・アタック!」
 『エッジマン』は、手の甲の刀で『冥府の使者カイエントークン』を切り裂き、フェイトに軽く貫通ダメージを与えた。

「…………。」(フェイトLP 1500→1400)
 フェイトはそれを、軽く眼を瞑って受け止めていた……。

「メインフェイズ2に、フィールド魔法『ネオスペース』を発動!これにより、『ネオス』の攻撃力を500ポイントアップさせる!」
 『ゴーズ』の登場を警戒していた十代は、メインフェイズ2に『ネオスペース』を発動させ、『ネオス』の攻撃力を高めた。

E・HERO ネオス 攻撃力2500→3000

「(……奴のデッキには、1ターンの間にモンスター2体に攻撃可能な『天魔神 ノートゥング』が眠っている……。無駄にモンスターを召喚するのは危険だ……!)」
 十代は、フェイトの『ノートゥング』召喚を危惧し……

「カードを1枚場に伏せ、ターンエンド!」


現在の状況
フェイト LP…1400
     手札…6枚
     場…冥府の使者ゴーズ(攻撃力2700・攻撃表示)

十代 LP…11100
   手札…1枚
   場…E・HERO ネオス(攻撃力3000・攻撃表示)
     E・HERO エッジマン(攻撃力2600・攻撃表示)
     ネオスペース(表側表示)
     伏せカード1枚


「我のターン、ドロー。手札から、魔法カード『儀式の準備』を発動。デッキから『韋駄天』を手札に加え、墓地の『高等儀式術』を手札に戻す。」
 フェイトは、3枚目の『儀式の準備』を発動させ、飽きる程に『韋駄天』を儀式召喚する準備を整えた。

「手札から、儀式魔法『高等儀式術』を発動。デッキから、合計レベルが6となる様に通常モンスター……レベル4の『暗黒界の番兵 レンジ』、レベル2の『命の砂時計』を墓地に送り『韋駄天』を儀式召喚。特殊召喚された『韋駄天』の効果で、墓地の『儀式の準備』を……」
 そう言いながらフェイトは、墓地の『儀式の準備』を取り出し、手札に加えようとしたが……

「待て!カウンター罠『ヒーローズルール2』を発動!この効果により、墓地のカードを対象に取る効果……つまり、『韋駄天』の効果を無効にし、破壊する!」
 十代の言葉通り、フェイトの墓地にバリアの様な物が突然現れ……『韋駄天』の魔法回収を封じた!


ヒーローズルール2
カウンター罠
墓地のカードを対象とする効果モンスターの効果・魔法・罠カードの
発動を無効にし破壊する。


「……まあいい。手札から、魔法カード『黙する死者』を2枚発動する。この効果により、墓地の通常モンスター……『暗黒界の番兵 レンジ』、『ハープの精』を特殊召喚。」
 フェイトがそう言うと、丈夫な体をした悪魔と、ハープを持った女性型の天使が蘇った。


黙する死者
通常魔法
自分の墓地に存在する通常モンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターを表側守備表示で特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは
フィールド上に表側表示で存在する限り攻撃する事ができない。


 ……その瞬間、フェイトの場にいた『ゴーズ』は、何か迫り来る驚異を感じているかの様に、表情を強ばらせた……。

「(……怯えている?いったい何にだ……?)」
 十代は、フェイトの場のモンスター達が怯えている様子に、少し戸惑っていた……。

「さらに……『冥府の使者ゴーズ』、『デュナミス・ヴァルキリア』、『デーモンの召喚』をリリースし……」
 フェイトがそう言うと……『ゴーズ』は、突然背中から何者かに剣で刺された……。
 そして……その剣を引き抜くと、そのまま地面に倒れこみ、消滅した……。
 当然『暗黒界の番兵 レンジ』、『ハープの精』も例外では無く……

「何だ……?何が来るんだ!?」
 フェイトのモンスターを串刺しにして現れるモンスターはいったい何なのか、十代はまったく理解できなかった……。











「出でよ……『天魔神 ティルヴィング』!」
 フェイトの場の3体のモンスターが消滅した後に現れたのは、漆黒の軽装鎧と、黒色の絹でできた半ズボンみたいな物、コウモリの羽の様な飾りが付いた黄金の髪飾りを身に着け……右手に、血の様な真紅色に染まった魔剣を持った戦士の姿をした小さな子供の様なモンスターが姿を現した!



「(子供……?いや、幼児か……?いや……)」
 十代は、フェイトの場に現れた、一見すると無垢な子供の様な姿をしたモンスターが、自分のモンスターを串刺しにしたと言う事実に、少し戸惑っていた……。

「『ティルヴィング』が召喚に成功した時、自身以外の場のカードをすべて墓地へと葬る……。」
 そうフェイトが言っている間に、『ティルヴィング』は持っている赤色の剣を振るい、場を包み込んでいた『ネオスペース』を、まるでガラスか何かの様に叩き割った……。
 そして……次は『エッジマン』に飛び掛かり、金色の鎧や、それに装着されている羽や刀を、持っている剣でスパスパ削ぎ落として行った!
 ……その後、『ネオス』の背中に負ぶさる様に飛び掛かり……無垢な表情をまったく変化させずに、『ネオス』の背中に剣を突き刺し、まるでピンで止めるかの様に地面に突き刺した……。
 さらに、腰に付けたナイフを手に取り、『ネオス』の手の指を一本一本、無慈悲に切り落としていった……。



『っっ……ぐっっ……』
「『ネオス』!!」
 十代は、足の指……手首足首……と、順番に削ぎ落とされ、苦痛に悶え苦しむ『ネオス』を見て、思わず声を上げた。

「(『ティルヴィング』……!あいつは……幼児の皮を被った悪魔だ……!)」
 一思いにトドメを刺せばいいのに、痛め付ける様に『ネオス』の四肢の傷口をナイフでえぐり、スライスし、またえぐる……と言う行動をしていく『ティルヴィング』の様子を見た十代は、心の中でそう呟いた……。



『…………。』
 四肢を削ぎ落とされ、傷口をえぐられる行為を繰り返され「鳴かなくなった」『ネオス』の様子を見た『ティルヴィング』は、残念そうな表情をし……ピン止めに使っていた剣を手に取り、その剣を『ネオス』の頭部に向けてスライドさせていき……











「――っっ!!」
 十代は『ティルヴィング』の、そんな冷徹に『ネオス』をまるで玩具か何かのように壊す光景を、直視する事ができなかった……。
 当然、もう1体の『エッジマン』も、『ティルヴィング』の手に掛かり……

「……『ティルヴィング』は、自身の効果によって墓地に送ったカード1枚につき、相手に400ポイントのダメージを与える。」
「何!」
 玩具が何も無くなって残念そうにしている様な表情をしていた『ティルヴィング』は、十代を見て目を少し爛々と輝かせ……剣を軽く舐める仕草をし、十代に向かって持っている赤色の長剣を投げ付けた!

「『ぐあぁっ!!」』(十代LP 11100→9900)
 十代には、ソリッドビジョンの『ティルヴィング』の投げ付けた剣が突き刺さった訳ではないが、剣がぶつかった時に発せられる衝撃によってライフを削られ、軽く浮き上がるほど後ろに強く弾き飛ばされてしまった……。
 さらに、その衝撃は十代と融合していたユベルにまで及び……精霊のユベルは、『ティルヴィング』の放った衝撃を直に受ける形となり、衝撃のギャップがありすぎて、十代とユベルは強引に引き剥がされてしまった!



「ユ……ユベル!」
 十代は、自分の3メートル近く後ろで突っ伏しているユベルに向かって、背中を打ち付けた痛みを押さえながら呼び掛けた……。


天魔神 ティルヴィング
闇 レベル10
【悪魔族・効果】
このカードはフィールド上から墓地に送られた場合にのみ特殊召喚する事が可能になる。
自分フィールド上に存在する光属性・天使族モンスター1体と
闇属性・悪魔族モンスター2体をリリースした場合のみ通常召喚することができる。
このカードは魔法・罠・効果モンスターの効果の対象にできない。
このカードが召喚に成功した時、このカード以外のフィールド上に存在する全てのカードを墓地に送り、
この効果で墓地に送ったカード1枚につき相手ライフに400ポイントダメージを与える事ができる。
この効果を発動する場合、このターンこのモンスターは攻撃宣言する事ができない。
攻撃力3700 守備力2800


「この効果を発動した『ティルヴィング』は、このターン攻撃することはできない。」
「そ……そんな事はどうだっていい!……今の冷徹な光景は、いったい……」
 衝撃によって背中を打ち付けた十代はよろりと起き上がり、フェイトの言葉を遮るかの様に、すでに消滅した『ネオス』だった物が合った場所を見ながらそう言った。

「冷徹……?何を綺麗事を。デュエルにおいて、モンスターを破壊する事は常識だろう?」
 フェイトは、十代の言葉に対して軽くそう答えた。

「だが……あんな惨たらしい破壊の仕方を、何とも思わないのか!?」
 あまりに淡々と答えるフェイトに対し、十代は声を張り上げてそう言った。

「…………。」
 フェイトは、ほんの一瞬口を瞑り……



「目的を果たすため、力が力をねじ伏せる……。そんな事は常識だろう。デュエルでも……もちろん、生きる者通しの闘争でもな。」
 ……声を低くし、十代に向かって軽くそう言った。

「力こそが絶対……だと?」
 十代は、小さくそう呟き……











 ――力こそすべてだ。











 ――勝ち残るものが正義だ。











「ふざけるな!そんな事が罷り通ったら、この世の終わりだ!」
 ……フェイトに向かって吠える様に怒鳴り付けた。











「(遊城十代……奴のデータは、何故か1年前の数か月分だけすっぽり抜け落ちていたが……その空白の間に、今の一言の様に、情緒不安定の原因となる要因があったのか……?)」
 フェイトは、十代の過去について、少し疑問を抱いていた……。

「……まあいい。カードを3枚場に伏せ、ターンエンドだ。」

現在の状況
フェイト LP…1500
     手札…0枚
     場…天魔神 ティルヴィング(攻撃力3700・攻撃表示)
       伏せカード3枚

十代 LP…9900
   手札…1枚
   場…無し


「オレの……ターン、ドロー!」
 十代は、疲労しきった指で、1枚のカードをドローした。

「……このカードで……『ティルヴィング』を倒す!手札から……魔法カード『ミラクル・フュージョン』を発動!オレの墓地から『ネオスペース・コンダクター』、『N・アクア・ドルフィン』、『E・HERO カオス・ネオス』、『E・HERO プリズマー』、『E・HERO ネクロダークマン』を除外し……」
 十代がそう言うと、墓地の5体のモンスターが、不思議な虹色の渦に巻き込まれて融合し……











「『E・HERO ゴッド・ネオス』……融合召喚!」
 その渦の中から、神々しい黄金色に輝く『ネオス』の最終形態……『ゴッド・ネオス』が姿を現した!
 ……しかし、『ティルヴィング』の目には、新しい玩具を見つけた程度の認識にしか映っていなかった……。

「『ゴッド・ネオス』の効果発動!墓地から『E・HERO ストーム・ネオス』を除外し……効果をその身にコピーし、攻撃力を500ポイントアップさせる!」
 『ゴッド・ネオス』は、『ストーム・ネオス』の効果を自らに吸収し、攻撃力を高めようとしたが……

「それにチェーンし、速攻魔法『禁じられた聖杯』を発動する。この効果により、攻撃力を400ポイント高める代わりに効果が1ターンの間無効になる。……つまり、『ストーム・ネオス』の効果を得る事はできない。」
 『ゴッド・ネオス』は、『禁じられた聖杯』からあふれ出る呪われた聖水を浴び、効果を封殺されてしまった……。


E・HERO ゴッド・ネオス
光 レベル12
【戦士族・融合・効果】
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
「ネオス」・「N(ネオスペーシアン)」・「HERO」と名のついたモンスターを
それぞれ1体以上、合計5体のモンスターを融合素材として融合召喚する。
1ターンに1度、自分の墓地に存在する
「ネオス」・「N(ネオスペーシアン)」・「HERO」と名のついたモンスター1体を
ゲームから除外する事で、このカードの攻撃力は500ポイントアップする。
さらに、エンドフェイズ時までそのモンスターと同じ効果を得る。
攻撃力2500 守備力2500


禁じられた聖杯
速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
エンドフェイズ時まで、選択したモンスターの攻撃力は
400ポイントアップし、効果は無効化される。


E・HERO ゴッド・ネオス 攻撃力2500→2900

「『ストーム・ネオス』にも、『マグマ・ネオス』の様なエンドフェイズ時の効果が備わっているのだろう?その効果を利用し、『ティルヴィング』を排除しようとした訳か。」
「違う!……オレのデッキの精霊達を、平気な表情で……残忍な手段で痛め付けた『ティルヴィング』……!お前だけは……」
 十代は、少しうつむき、声を震わせながらそう言い……











「――生かしておくかぁ!!!!
 両目を金色に変化させ、『ティルヴィング』を刺す様な眼差しで睨み付けていた……。











『ダメだ……十代!怒りに我を忘れて戦っては……!』
 『ティルヴィング』の投げ付けた剣をまともに食らって、立ち上がる事ができないユベルは、十代を必死で説得しようとしていたが……











「オレの目的は……お前の場の伏せカードを破壊し、『ティルヴィング』を戦闘破壊する事だけだ!!」
 十代は、ユベルの言葉など聞こえないかの様に、声を低くしてそう言った……。

「……行け!『ゴッド・ネオス』!『ティルヴィング』を破壊しろ!レジェンダリー・ストライク!!」
 十代は、攻撃力が800ポイント下回っているにも関わらず、『ゴッド・ネオス』で『ティルヴィング』に向かって攻撃宣言を行った……。

「……速攻魔法の発動か。」
 フェイトは、十代の意志を読み取り、軽くそう呟いた。

「……ダメージ計算時に、速攻魔法『決闘融合−バトル・フュージョン』を発動!この効果により……戦闘を行う相手の攻撃力分『ゴッド・ネオス』の攻撃力がアップする!」
 十代は、手札の速攻魔法をデュエルディスクに差し込むと、突然『ゴッド・ネオス』の体が激しく光り輝き始めたが……


決闘融合−バトル・フュージョン
速攻魔法
自分フィールド上に存在する融合モンスターが戦闘を行う場合、
そのダメージステップ時に発動することができる。
その自分のモンスターの攻撃力は、ダメージステップ終了時まで
戦闘を行う相手モンスターの攻撃力の数値分アップする。











「遊城十代。勝利への焦りから、不安定な攻撃力に頼ってまで『ティルヴィング』を破壊しようとするか……。」
 フェイトは、十代の行動に少し哀れみを覚えたかの様な表情をし、伏せておいたカードを表にした……。



「カウンター罠『魔宮の賄賂』を発動し、発動された魔法カードの効果を無効にし、破壊する。」
「…………!!」
 十代が驚いている間に、『ティルヴィング』は突撃してくる『ゴッド・ネオス』を胴体輪切りにして、一瞬で消滅させてしまった……。

「ぐっっ……。」(十代LP 9900→9100)
 『ティルヴィング』の攻撃によってダメージを負った十代は、少し表情を強張らせた……。
 しかし……『ゴッド・ネオス』をゆっくりと壊して遊ぼうとしていたらしい『ティルヴィング』は、残念そうに両手を頭の後ろで組み、ナイフの背を軽くくわえていた……。

「……残念だったな、遊城十代。これでお前の場は空になった。」
「黙れ!」
 軽く語るフェイトに向かって十代は、虚勢を張るかの様に話した。

「メインフェイズ2に、お前の『魔宮の賄賂』によってドローしたカードを使わせてもらう!来い!『E・HERO バブルマン』!!」
 十代は、手札が『バブルマン』のみである事により、手札から『バブルマン』を守備表示で特殊召喚した。

「『バブルマン』は手札がこのカードのみの場合、手札から特殊召喚が可能だ!さらに……『バブルマン』の効果発動!手札・場がこのカードのみの場合、デッキからカードを2枚ドローする!」
 そう言いながら十代は、カードを2枚ドローした。


E・HERO バブルマン
水 レベル4
【戦士族・効果】
手札がこのカード1枚だけの場合、
このカードを手札から特殊召喚する事ができる。
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に
自分のフィールド上と手札に他のカードが無い場合、
デッキからカードを2枚ドローする事ができる。
攻撃力800 守備力1200


「このタイミングで『バブルマン』……。積み込みの巧さは一級品だな。」
 フェイトは、十代の悪あがきクラスの引きに対して、皮肉の念を込めながら話した。

「……カードを1枚場に伏せ、ターンエンド!」

現在の状況
フェイト LP…1500
     手札…0枚
     場…天魔神 ティルヴィング(攻撃力3700・攻撃表示)
       伏せカード1枚

十代 LP…9100
   手札…1枚
   場…E・HERO バブルマン(守備力1200・守備表示)
     伏せカード1枚


「我のターン、ドロー。伏せ罠カード『補充要員』を発動する。この効果により、墓地の攻撃力1500以下かつ効果を持たないモンスター3体……『命の砂時計』、『暗黒界の番兵 レンジ』、『ハープの精』を手札に戻す。」
 フェイトは、墓地から3枚のモンスターを探し出し、手札に加えた。


補充要員
通常罠
自分の墓地にモンスターが5体以上存在する場合に発動する事ができる。
自分の墓地に存在する効果モンスター以外の攻撃力1500以下の
モンスターを3体まで手札に加える。


「さらに手札から、魔法カード『手札抹殺』を発動。お互いは手札をすべて捨て、捨てた枚数分カードをドローする。」
 そう言いながらフェイトは3枚、十代は1枚の手札を捨て、フェイトは3枚、十代は1枚ドローした。


手札抹殺
通常魔法
お互いの手札を全て捨て、それぞれ自分のデッキから
捨てた枚数分のカードをドローする。


 そして、ドローしたカードを確認したフェイトは、軽く笑みを浮かべた……。

「……ライフを800払い、装備魔法『契約の履行』を発動。墓地から『サイバー・エンジェル−韋駄天−』を特殊召喚。効果により、墓地の『儀式の準備』を手札に戻す。」


契約の履行
装備魔法
800ライフポイントを払う。
自分の墓地から儀式モンスター1体を選択して
自分フィールド上に特殊召喚し、このカードを装備する。
このカードが破壊された時、装備モンスターをゲームから除外する。


フェイトLP 1500→700

「回収した魔法カード『儀式の準備』を発動。デッキから『韋駄天』を手札に加え、墓地の『高等儀式術』を手札に戻す。」
 フェイトは、本気で飽きる程に『韋駄天』を儀式召喚する準備を整えた。

「手札から、儀式魔法『高等儀式術』を発動。デッキから、合計レベルが6となる様に通常モンスターを墓地に送り『韋駄天』を儀式召喚。特殊召喚された『韋駄天』の効果で、墓地の『デビルズ・サンクチュアリ』を手札に加える。」
 そう言いながらフェイトは、墓地の『デビルズ・サンクチュアリ』を取り出し、手札に加えた。

「回収した『デビルズ・サンクチュアリ』を発動し、『メタルデビル・トークン』を特殊召喚。さらに……『韋駄天』2体、『メタルデビル・トークン』をリリースし……」
「…………!」
 十代は、フェイトが呼ぼうとしているモンスターを、すぐに察知した……。











「出でよ……!『天魔神 ノートゥング』!!」
 フェイトの場に、再び1人の戦乙女……『ノートゥング』が召喚された!

「まさか……2体が揃い立つだと!?」
「『ノートゥング』の効果を発動する。1ターンに1度、相手の場の表側表示カードを1枚ゲームから除外する。」
 『ノートゥング』は、持っている剣をすぐさま振るい、十代の場の『バブルマン』を一瞬で消し去った!



『…………。』
 『ティルヴィング』は、「何なんだよ〜『ノートゥング』〜。あいつ何でボクに残しといてくれなかったんだよ〜。」……と言った感じの表情をしていた。

『…………。』
 その表情を見た『ノートゥング』は、「命令だからだ。戯れたいならば、私を刺すがいい。」……と言った感じの表情で返した。

『…………。』
 それに対して『ティルヴィング』は、「え〜、何でお前なんか〜。大体お前刺されたって何にも言わないじゃないか〜。」……と言った感じの表情をした。



「バトルフェイズに入る。『ティルヴィング』で、十代にダイレクトアタック。」
 『ティルヴィング』は、「つまんないな〜。あんな奴刺したって、な〜んにも面白くないのに。」……と言った感じの表情をしながら、十代に向かって切り掛かった!

「があっっ……!」(十代LP 9100→5400)
 十代は、『ティルヴィング』の攻撃によって発生した衝撃によって、倒れそうになったが、足を踏ん張らせて何とか堪えた……。

「ターンエンドだ。」
「オレの……ターン……ドロー!」
 十代は、息も絶え絶えな状態でカードを1枚ドローした……。

「手札から……魔法カード……『闇の量産工場』を発動!墓地の通常モンスター……『ネオス』と『アナザー・ネオス』を手札に戻す!」
「なるほど……。我の『手札抹殺』を利用し、墓地に『アナザー・ネオス』を送り込んでいたか。」
 フェイトは、『闇の量産工場』の発動条件を満たしたタイミングを、軽く推測していた。


闇の量産工場
通常魔法
自分の墓地に存在する通常モンスター2体を選択して発動する。
選択したモンスターを自分の手札に加える。


「伏せ罠カード……『凡人の施し』を発動!カードを2枚ドローし、手札の通常モンスター……『ネオス』を除外する!」
 さらに十代は、『闇の量産工場』によって回収した『ネオス』を利用し、手札を交換した。


凡人の施し
通常罠
デッキからカードを2枚ドローし、
その後手札から通常モンスターカード1枚をゲームから除外する。
手札に通常モンスターカードがない場合、手札を全て墓地へ送る。


「……カードを2枚場に伏せ、ターンエンド!」

「その2枚にすべてを賭ける……か。我のターン、ドロー!」
 フェイトは、ドローしたカードを軽く確認し……

「バトルフェイズに入る。『ノートゥング』、『ティルヴィング』で、十代にダイレクトアタック!」
『…………。』
『…………。』
 『ノートゥング』は、「分かりました、フェイト様。」……と言った感じの表情をしていた。
 『ティルヴィング』は、「はぁ〜あ、終わった。これでまたつまらなくなっちゃうな〜。」と言った感じの表情をしていた。



「……これで終わりだ!速攻魔法発動!『クリボーを呼ぶ笛』!この効果により……デッキから『ハネクリボー』を特殊召喚!」
 十代がそう言うと、デッキから白い羽を生やした茶色っぽいもふもふのモンスターが現れた!

「……『ハネクリボー』を盾にし、このターンを生き延びる気か?」
「違う!……こいつらは倒す!絶対に倒す!」
 そう言いながら十代は、最後の伏せカードを表にした……。

「さらに……手札2枚と『ハネクリボー』をコストに……速攻魔法『進化する翼』を発動!これにより……『ハネクリボー』は『ハネクリボー LV10』へと進化する!!」
 十代がそう言うと、『ハネクリボー』の背中に生えている翼が一気に巨大化し……10メートル近くの大きさの翼へと姿を変えた!


進化する翼
速攻魔法
自分フィールド上に存在する「ハネクリボー」1体と手札2枚を墓地に送る。
「ハネクリボー LV10」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。

ハネクリボー LV10
光 レベル10
【天使族・効果】
このカードは通常召喚できない。
このカードは「進化する翼」の効果でのみ特殊召喚する事ができる。
自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードを生け贄に捧げる事で、
相手フィールド上の攻撃表示モンスターを全て破壊し、
破壊したモンスターの元々の攻撃力の合計分のダメージを相手ライフに与える。
この効果は相手バトルフェイズ中のみ発動する事ができる。
攻撃力300 守備力200


「『ハネクリボー LV10』の効果発動!相手の攻撃表示モンスターをすべて破壊し、破壊したモンスターの攻撃力の合計分のダメージを与える!……食らえ!OFF波動!!」
 『ハネクリボー LV10』は、縮めていた背中の翼を大きく広げ……その際に発生した光の衝撃波によって、フェイトの場の『ノートゥング』と『ティルヴィング』を消し去ろうとしたが……











 ――バリン!



       ――バリン!



「……何!」
 その波動が発生する直前に『ハネクリボー LV10』の翼は、フェイトの手札からエックスの軌道を描きながら飛び出した2体の球体型のモンスターに、まるでガラスの様に打ち砕かれ、波動を発生させる事ができなくなった……。

「……手札から『紫光の宣告者』と『朱光の宣告者』を捨て、『朱光の宣告者』の効果を発動した。この効果は、発動された効果モンスターの効果を無効にし、破壊する……。」
「…………!!」
 『ハネクリボー LV10』の効果を無効にされ、逆転の手段を失った十代は、『ノートゥング』の振るう剣と『ティルヴィング』の突き刺す剣をまともに食らい……



「ぐあぁぁっ!」(十代LP 5400→1700→0)
 ……そのまま、ライフをすべて削り取られてしまった……。


朱光の宣告者
光 レベル2
【天使族・チューナー・効果】
このカードと天使族モンスター1体を手札から墓地へ送って発動する。
相手の効果モンスターの効果の発動を無効にし破壊する。
この効果は相手ターンでも発動する事ができる。
攻撃力300 守備力500





















「……私の勝ちだな、遊城十代。」
 フェイトは、そう小さく呟いた。

「…………ぐっ……!何……なんだ……?あの……カードは……!?」
 十代は疲労し切って、地面に仰向けになっている状態でそう言った……。

「遊城十代。お前の力をここで捨てるのは、あまりに惜しい……。私に協力してもらえないか?」
 フェイトは自分のデッキをしまい、十代に右手を差し出した。

「…………。」
 十代は、息を切らしながらも、フェイトの言葉に対して沈黙を守り続けていた……。











「……答える気は無いか。」
 そう言いながらフェイトは、十代の近くで腰を低くし……

「それならば……こうしよう。」
 ……十代のデュエルディスクに手をやり……十代のデッキのカードをすべて手に取った!



「なっ……貴……様!」
「……お前のデッキ……いや、お前の所有する精霊をすべて人質に取る……と言ったらどうだ?」
 フェイトは、左手で疲労し切った十代を押さえ付け、右手で十代のデッキを鷲掴みにしながらそう言った。

「我は精霊を殺す様な真似はしたくない……。だが……目的のためならば、止むを得ない事もある……。」
 フェイトは、自分の腰に付けているデッキケースを左手に取った……。



「例えば……この精霊を隔離するデッキケースに、お前のデッキと『ティルヴィング』を収納してみよう……。……さて、どうなる?」
 そう言いながらフェイトは、十代のデッキを左手に取ったデッキケースの中に収納した……。
 フェイトの言葉を聞いた『ティルヴィング』は、「やった〜、おもちゃだおもちゃだ〜。」と言った感じの表情をし、目を爛々と輝かせながらデッキケースを見つめていた……。



「…………!」
 十代は、ある事を悟り目を見開いた……。

「(『ティルヴィング』……あいつは……デュエル中ですら、『ネオス』を惨殺同然まで痛め付けた……!デュエルの枠を外れた状態だと……オレのデッキの精霊達は……絶対……皆殺しだ……!)」
 十代は、表情を強ばらせながらそう考え……











「オレは……何をすればいい?」
 ……十代は、そう小さく呟いた……。



「……賢明な返事だ。」



次回予告

アトロポス「フェイト様は、遊城十代を捕獲しに行った訳だな。」
ラケシス「だが、その意図はいったい何なんだ?」
クロートー「しかし……我々は、フェイト様の意向に従うのみ。」
ラケシス「……分からない……。フェイトの意図が分からない……。」

次回、『GX plus!』第四十三話!



『無限連獄!インフェルニティ!!』

クロートー「手札0枚の綱渡り戦法……中々難しい物ですね。」




第四十三話 無限連獄!インフェルニティ!!

 本戦出場者決定から3日後……デュエルアカデミア星海校・カムイの部屋にて……

「おっ、コウジ。こんな朝からどうしたんスか?」
「いや、今日は『スーパージェネックス』の上位入賞者が、19時くらいからの本校の本戦出場者との顔合わせとして、食事会に招待されたみたいだね。」
「ああ。それでリナは、かなりはしゃいでたんスよね。」
 カムイとコウジは、部屋で今日の夜の事について会話していた。

「……そうだ、カムイ。そうなると、本戦前に本校の出場者とデュエルする機会があるかもしれないだろ?」
「なるほど……。オレは1種類のデッキしか持ってなかったんスよね……。そうなると、デッキの内容がバレて不利になっちまうんスね……。」
 カムイは、そう言えばそうなる事を感じ、少し困った表情をした。

「……サブデッキとして、僕のデッキを貸してあげるよ。」
「ん?いいんスか?」
「ああ。自由に改造してもいいけど、本戦直前には返してもらうよ。」
 そう言いながらコウジは、デッキレシピが書かれた紙とデッキを手渡した。

「なるほど……。面白そうなデッキなんスね……。それより食事会の事を知ってるって事は……コウジもその食事会に招待されたんスか?」
「いや、そうじゃないな……。」
「…………?」
 カムイは、コウジの反応に少し疑問を持っていた……。




















 18時30分ごろ……会場入口にて……
 カムイ、センリ、リナは食事会場に入ろうとしていた……。


「バイキングか〜。……よ〜し!お腹いっぱいになるまで食べるぞ〜!」
「食いしん坊だな……。」
 はりきるリナに向かってセンリは、小さく呟いたが……

「何?……『太るぞ』って言いたいの?」
「いや……別に……。」
 センリは、小さく呟いた。

「……じゃあ、そろそろ入るッスよ。」
 カムイは、軽くそう言いながら会場への扉を開いた。



「やった〜、色々あるじゃ〜ん。」
 多くの皿に盛られた料理を見たリナは、嬉しそうに小皿を手に取り

「え〜っと、これとこれとこれとこれとこれとこれとこれとこれとこれとこれとこれとこれとこれとこれとこれとこれとこれとこれとこれとこれと……」
 そのまま、料理を1つずつ皿いっぱいに盛っていった。



「……あれ?ナオって肉食べないんだ。」
 1人で野菜サラダを食べているナオに対して、リナは軽く話し掛けた。

「別にいいよ。肉はあんまり好きじゃないし。」
 そう言いながらナオは、手に持ったフォークで皿の中のキャベツを取り、口へと運んだ。

「何言ってんのさ。好き嫌いばっかしてたら、大きくなんないよ。」
 肉を食べようとしないナオに対してリナは、軽く話したが……。

「へえ……。君は、好き嫌いばっかしてたんだね。」
 ナオは、リナに向かって小悪魔の様な笑みを浮かべながら話した。
 そんな様子を見たリナは、ムッとした表情になり、右手に持っていたフォークで、ハンバーグの1切れを取り……











「……食べろ!」
 左手で無理矢理ナオの口を開けさせ、ハンバーグを無理矢理押し込んだ!

「嫌だ〜〜!食べたくない〜〜〜〜!」
「うるさい!いっつもいっつもあたしの事バカにして!」
 足をばたつかせて泣き喚く様にしているナオに対して、リナは無理矢理ハンバーグを口に含ませようとしていた。



「まったく……相変わらずだな、あの2人は。」
「そうッスね、センリ。」
 センリとカムイは、2人の様子を遠くから眺めていた。



「ったく……ガキ共がわぁわぁじゃれあいやがって……。」
 カムイの背後から、呆れた様な発言が飛び出した。

「ん?誰ッスか?」
「ほぅ、この俺様『青森 孝太郎』の名前を知らないとはなぁ……。」
 カムイの言葉に対して青森は、腕を組みながら話した。

「青森……。リナから話は聞いたッスよ。リナと本戦出場枠を賭けて激戦したんスよね。」
「ああ。……だがあのガキは、大した自覚が無ぇ様な振る舞いをしてやがる……。」
 青森は、ナオとじゃれあっているリナを、忌々しそうに見ていた。











「さて……これより、本校からの本戦出場者が入場する!……では鮫島校長。彼等への入場指示を。」
「分かりました、黒部校長。では……本戦出場者、ティラノ剣山君、早乙女 レイ君、入場!」
 鮫島校長がそうアナウンスすると……パーティ会場の扉の1つが開かれ……剣山とレイが、1人の女性に誘導されながら入場した!










「……みなさん、お待たせいたしました!この2人が……もう1人は、少し事情で今日は来れないみたいですが!……デュエルアカデミア本校からはるばるやって来た、本戦出場者の2名です!」
 上半身に紺色のスーツみたいな物を着て、赤色の短パンを履き、マイクを握った女性は、剣山とレイの方に手をやりながら高らかとアナウンスをした。

「……さて!実は私も、この2人のフルネームはまだ聞かされておりません!では、まずは男子生徒に質問してみましょう!……お名前は何ですか?」
 女性は、持っているマイクを剣山の口元に近付けた。

「『ティラノ剣山』だドン。」
「ティラノ剣山君……分かりました!では次は女子生徒に質問してみましょう!……お名前は何ですか?」
 剣山のフルネームを確認した女性は、次はレイにも問い掛けた。

「『早乙女 レイ』です。」
 レイは、小さく会釈しながらそう言った。

「早乙女 レイちゃん……なるほど!分かりました!」
 女性は、そう大きな声で言った。











「『早乙女 レイ』……?あのお節介野郎か。あいつ、本校に入学してやがったとはな。」
 青森は、予想外の再開に小さくそう呟いた。



「……センリ。テンションが高いアナウンサーッスね。」
「そうだな。」
 カムイとセンリは、女性アナウンサーのうるさいほどのアナウンスについて語り合っていた。

「そう言えば……このパーティには、エドは来ないみたいだな。」
 何かを思い出したかの様に、センリはそう言った。

「そうッスね……。あの時、オレとのデュエルを楽しみにしている……って言ってたんスけど……そこまですぐには来れないんスね……。」
「……そうだよな。あの時……な。」
 センリは、そう言いながらナオの方を軽く見た。(「plus α ―貪欲な魔物―」参照)



「(何か背中から嫌な視線を受けてる気がするけど……無視無視。)」
 ナオは頬杖をつきながら、心の中でそう呟いていた。










「(……久しぶりに会えたね……お兄ちゃん……。)」
 レイは椅子に座っているナオを見かけ、心の中でそう言っていた……。

「(レイ……。本戦に出場できなかったボクには、頑張れの一言しか言う資格は無いけど……)」
 ナオも、心の中で小さくそう呟いていた……。



「(……あっ……。)」
 ……そしてレイは、ナオの後ろの方でセンリと話しているカムイの姿を見て、少しハッとした表情になった……。











「おっ。あの娘、カムイの事見てるんじゃないのか?」
「そうみたいッスね。……オレ、誰かに似てるんスかね?」
 センリにそう言われたカムイは、レイから自然に目をそらしながらそう言った。











「(ちょっと……似てるかな……?あの……頭にバンダナを巻いた人……。)」
 レイは、カムイに向かって無心になりながら目をやっていたが……











「……何ボーっとしてんの?」
 ……ナオからすでに離れていたリナは、背伸びしながらレイの目線に立ちはだかった。

「し、してないよ……。」
「……ふ〜ん。」
 ごまかす様に話すレイに対してリナは軽く後ろを振り向き、小さくそう呟いた。

「おおっと!ここで、星海校からの本戦出場者……『光 カムイ』君か『黄泉 センリ』君を虎視眈々とねらうレイちゃんに対しての、『転羽 リナ』ちゃんからのライバル宣言でしょうか!?……星海校側の順番に紹介していこうかと思いましたが、面白そうな展開なのでそのまま続けてもらいましょう!」
 アナウンサーの女性は、リナの乱入を逆に面白そうな展開ととらえ、黙認する事にしていた。

「それにしてもあんた……あんなナマイキな弟いて、よく平気だね。」
 リナは背伸びをやめ、レイを見上げながらそう言った

「ええっ?弟……?」
 レイは、少し表情をキョトンとさせ……











「……弟なんていないんだけど……。」
「……え……ええぇ〜〜〜〜っっ!!!?」
 レイの予想外の一言に、リナは目を丸くして驚いていた……。

「嘘だ!あそこにいるナオって奴、あんたの弟じゃ無いの?」
 リナは、レイより頭一つ分近く背が低い少年……ナオを指差しながら質問した。

「あっ、お兄ちゃんの事?」
 レイは、軽くそう言った。

「え……ナオが兄であんたが妹で……姉で弟で兄で妹で姉で弟で兄で妹で姉で弟で…………」
 信じられない意外な真実を知った後、リナはレイとナオの2人の容姿を見て……


「……何か……頭ぐるぐるしてきた……。」
 まったくその現実を信じられず、頭を抱えて悩んでいた……。



「……あっ、そうだ。あんた何歳?」
「じゅ、14歳……」
「14歳……?嘘だ!あんたが14歳なわけ無いよ!絶対年誤魔化してるでしょ!」
 リナは、レイの両肩をつかみながらそう言った。

「14歳!……これは(わたくし)も想定外です!……正直私、レイちゃんの年は順当に16くらいだと思っておりました!」
 アナウンサーを含め、リナの言葉を聞いた会場の過半数の人は、その事実を知って少しざわざわとしていた……。











「ちっ……あいつ、あのガキと兄妹……しかも妹たぁな……。」
 青森は、自分の予想が間違っていた事に対して、吐き捨てる様にそう呟いた。

「(レイが14歳な事は……そんなに有名じゃ無かったんスね……。センリは知ってたみたいなんスけどね。)」
 カムイは、過去の事を少し思い出していた。

「初めて知ったな……。リナちゃんと話してるあの娘、14歳だったのか。」
 雷人は、小さくそう呟いた。

「おっ、雷人も来てたんスね。」
 雷人の姿を見たカムイは、軽く挨拶した。











「じゃあ……何歳くらいに見えるの?」
「ん〜……、あたしの同級生より少し背が高いか同じくらいだから……だいたい16か17くらいかな。」
 質問するレイに対してリナは手を離し、自分の頬に手を当て、少し考えてそう言った。










「さて……今ここに、5人の本戦出場者が出揃った!……本校からは1人都合により、この場には来られないみたいだがな。」
 黒部校長は、放送室のマイクからそうアナウンスをした。

「ではこれより、本戦前のエキシビションマッチを行おうと思う!星海校の光 カムイ君、本校の早乙女 レイ君、中央のデュエル場へ!」
 さらに、エキシビションマッチをいきなり宣言し、カムイとレイは唐突に指名された……。











「いきなりッスね……。予備デッキをコウジに貸してもらったのは正解だったッスね……。」
 カムイは、そう言いながらデッキを手にして立ち上がった。

「まあ、あまり本気になってやるなよ、カムイ。」
 センリは、カムイに軽くそう呼び掛けた。

「本校の実力……見極めさせてもらうぜ。」
 青森は、腕を組みながらそう呟いた。











「エキシビションマッチ……勝てるかな……?」
 レイは、不安そうにデュエル場に向かっていったが……

「レイ……本戦前に、自分のメインデッキを使う訳にはいかないだろ?ここはボクのデッキを使いなよ。」
 ナオは、舞台に上がろうとしているレイを呼び止め、自分のデッキを手渡した。

「カムイはE・HERO使い……だけど、メインデッキを使う訳無いから、何か別のデッキを使うはずだよ。
「え……?そうなんだ……。」
 軽く伝えるナオに対し、レイはハッとした表情で反応した。

「……頑張れよ、レイ。」
「……うん。」
 ナオとレイはそう会話し、レイはデュエル場へと歩いて行った……。









「……さて、面白いデュエルを期待してるッスよ。」
 カムイは、軽く笑みを浮かべながらそう言った。

「……あっ!よ、よろしくおねがいします!カムイ先輩!」
 レイはハッとした表情をし、一礼をしながらそう言った。

「先輩……?オレ、1年生なんスけど……。」
「あっ、そ、そうだった……。ゴメンね、カムイ君……。」
 カムイに突っ込まれたレイは、照れくさそうに髪を掻きながらそう言った。

「いや……別に君付けしなくてもいいッスよ。オレは先輩でも、普通に呼び捨てしてるんスけどね。」
 カムイは、そう軽く答えた。











「……俺の事だな。」
 自然にリナの近くに来ていた雷人は、小さくそう呟いた。

「あっ、雷人じゃん。来てたんだ。」
 その声を耳に捕えたリナは、むしゃむしゃ食べながら雷人に話し掛けた。

「おいおい、いったいどれだけ料理を皿に盛ってんだよ。」
「別にいいじゃん。美味しいんだし。」

「あんまり食べると、太る」
「うるさい!」
 リナは、雷人に向かって全力で肘打ちを放った!

「ぐはっ……っつっ……」
 肘打ちを食らった雷人は苦痛に顔を歪ませ、よろめきながらリナの元を離れて行った……。


「大丈夫ザウルス?」
 ちょうど雷人の近くにいた剣山は、雷人を心配するかの様にそう呼び掛けた。

「まあ……何とか……。」
 雷人は、剣山にそう軽く答えた。

「あんたは……ティラノ剣山か。俺は『疾風 雷人』だ。本戦出場者じゃ無いが、よろしくな。」
「ああ、よろしく頼むドン、雷人。」



「……で、レイちゃんとデュエルするカムイって1年生は、どんなデュエルをするザウルス?」
「おっ、剣山はあの娘が好きなのか?」
 雷人は、剣山の問いからわざと的を外すかの様にそう質問した。

「いや、ただ後輩だからそう呼んでるだけだドン。」
「何だよ、紛らわしいな。」
 軽く否定する剣山に対して、雷人は軽くそう呟いた。

「カムイは強いぜ。とりあえず……自分のデッキの力を最大限に引き出すデュエルをする感じだな。まあ、カムイと互角にデュエルできるのは俺ぐらいだな。……多分。」
 雷人は、自分の強さをついでに自慢するかの様に、カムイの強さを端的に説明した。

「つまり、お前も強いザウルス?」
「当然だぜ。……このパーティが終わったら、俺の部屋に遊びに来ないか?歓迎するぜ。」
 雷人は、剣山との会話をもう少し楽しみたいのか、一言そう言った。



『この雷人って人……お調子者かと思ったけど、意外と芯はしっかりしてるみたいね。』
 デッキケースの1枚のカードに隠れているアリスは、雷人の事を剣山との会話からそう認識していた。











「さあさあさあ!本校と星海校のエキシビションマッチが始まろうとしています!実況は、この私『国枝(くにえだ) 千里(ちさと)』がお送り致します!」
 千里と名乗った、今までアナウンサーをしていた女性は、マイクを握りながら高らかに宣言した。

「さあて!今回のデュエル、本校からの挑戦者は……ロングヘアーや大人びた容姿と、あどけなさが残る顔つきが目を引く、可愛らしい14歳の少女……と言うか私もついさっき彼女の年齢を知ったんですけど!……早乙女 レイちゃんです!!」
 千里は、マイクを握ったまま左手をレイの方に向けながらそう言った。

「(……あの娘も言ってたけど……そんなにかな……?)」
 レイは、少し心の中でそう思っていた……。

「それを迎え撃つのは!星海校の新入生……深緑色のジャケットとバンダナを身に着けた少年……その柄は、どこかで見た感じなのですが、少々思い出せません!デッキ・手札・場・墓地……すべてを支配するデュエリスト……光 カムイ君です!」
 すかさず千里は、カムイについてもアナウンスした。

「(支配って……どこの皇帝ッスか?)」
 カムイは、始めにそう心の中で言い……

「(とりあえず……アナウンスを聞く限り千里は、本校生徒の事はほとんど知らない見たいッスね……。まあ、オレもなんスけど。)」
 千里の自分に対するアナウンス(戦術面)とレイに対するアナウンス(容姿面)の差異を、軽く考えていた……。



「では……お互いのデッキを、カット&シャッフル!!」
 千里の一言と共に、カムイとレイは向かい合い、まずは自分の手にしているデッキをシャッフルした。
 そして、シャッフルした後お互いにデッキを手渡した。

「(全部支配する力……どんなデュエルをするのかな……?)」
 レイは、カムイのデュエルがどの様な物なのか、期待と不安を入り乱した表情で考えていた……。

「(……このデッキは、ナオからの借り物なんスよね……。そうなると当然、あのカードも入ってるはずッスね……。)」
 カムイは、そう考えながらレイから手渡しされたデッキを軽く1回シャッフルした。











 そして、お互いにデッキを返し合い……

「……では……デュエル・スタート!!!!」
 千里の一声により、デュエルがスタートした!



「オレのターン、ドロー!モンスターを1体セットし、カードを1枚場に伏せ、ターンエンド!」
 カムイは、手札のカードを2枚デュエルディスクにセットし、ターンを終えた。

「(セットしたカードは『フェデライザー』と『正統なる血統』……まずはこれで様子見ッスね。)」
 カムイは、『フェデライザー』を戦闘破壊させ、その効果で墓地に送ったモンスターを『正統なる血統』で蘇生させる事をねらっていた……。



「先攻1ターン目の重要な局面……カムイ君は牽制球を投げる様にターンを終えたぁ!そんなカムイ君に対して、レイちゃんはどの様に対抗するのでしょうか!!」
 

現在の状況
カムイ LP…4000
    手札…4枚
    場…裏守備モンスター1体
      伏せカード1枚

レイ LP…4000
   手札…5枚
   場…無し


「ボクのターン、ドロー!」
 レイは、ドローしたカードを軽く確認し……

「……モンスターを1体セットして……カードを5枚場に伏せるよ!ターンエンド!」
 ……自分の手札をすべてデュエルディスクにセットし、ターンを終えた。


現在の状況
レイ LP…4000
   手札…0枚
   場…裏守備モンスター1体
     伏せカード5枚

カムイ LP…4000
    手札…4枚
    場…裏守備モンスター1体
      伏せカード1枚



「ふ〜ん。5枚も伏せちゃうんだ〜。『大嵐』でも食らったら一発なのに。カムイ〜、あんな奴やっちゃえ〜!」
 リナは、フォークを右手に持ちながらカムイを応援した。











「(5枚の伏せカード……『メタモルポット』でも出したんスかね……。)」
 カムイは、レイの場のモンスターを軽く推測し……

「……手札から、魔法カード『大嵐』を発動するッスよ!」
 手札の1枚のカードをデュエルディスクに差し込むと、突然激しい嵐が場に発生し始めた!



「おぉーっと!!ここでリミテッドカード『大嵐』が発動しました!!これを通した場合、レイちゃんは3枚のディスアドバンテージを負ってしまう!さあ、何か防ぐ手はあるのでしょうか!?」
 千里は、マイクを強く握りしめ、マイクが壊れるほどに激しい声でアナウンスをしていた。



「じゃあ……カウンター罠『魔宮の賄賂』を発動!この効果で、『大嵐』の効果は無効だよ!」
 レイがそう言うと、発生していた激しい嵐が、まるで何事も無かったかの様に消え去った!

「……やっぱり、通る訳無いッスよね。だがオレは、『魔宮の賄賂』の効果でカードを1枚ドローできるんスよ!」
 そう言いながらカムイは1枚ドローし、5枚の手札を軽く確認した……。

「オレは……カードを3枚場に伏せ、手札から『エヴォルテクター シュバリエ』を攻撃表示で召喚するッスよ!」
 カムイは、誰から見ても『メタモルポット』を警戒している様にカードを多く伏せ、手札から騎士の様なモンスターを召喚した。

「さらにオレは、『フェデライザー』を反転召喚!」
 さらに、場に伏せていたモンスター……『フェデライザー』を反転召喚させた。

「行くッスよ!『フェデライザー』で、裏守備モンスターに攻撃!」
「ええっ?……攻撃力700で、どうして……?」
 レイは、攻撃力700のモンスターで攻撃すると言うカムイの意図が読み取れず、少し戸惑っていた……。











「(……カムイは、レイの裏守備モンスターを『メタモルポット』と思ってるみたいだね……。でも、それは違うよ。何たって、ボクのデッキは……)」
 それに対してナオは、カムイの行動の意図をはっきりと読み取っていた。











「で、でも……攻撃されたモンスターは守備力2000の『サイバーデーモン』だから、反射ダメージが入るよ!」
 『サイバーデーモン』は、腕を組んで雷のバリアを発生させ、『フェデライザー』の風の魔法を軽く跳ね返し、カムイのライフを削った!

「ぐっ!」(カムイLP 4000→2700)
 大きな反射ダメージを受けたカムイは、思わず声を上げた。

「読みを間違えちまったッスね……。これでオレは、ターンエンド!」
 カムイは、メインフェイズ1にカードを伏せていたため、メインフェイズ2では何もせずにターンを終えた。

「ボクのターン、ターン開始時に手札が0枚だったから、『サイバーデーモン』の効果が発動するよ!ドローフェイズに、追加で1枚ドローできるよ!」
 レイは、そう言いながら2枚のカードをドローした。


サイバーデーモン
闇 レベル4
【悪魔族・効果】
自分のドローフェイズ開始時に手札が0枚だった場合、
通常のドローに加えてもう1枚ドローする。
自分のエンドフェイズ時に手札が1枚以上存在していた場合、
このカードを破壊する。
攻撃力1000 守備力2000


「手札0枚の時に効果が発動するモンスターなんスか?手札が無い……つまり、ハンドレスデッキって事なんスかね……。」
 カムイは、レイの使用するデッキの内容を考えていた……。

「カードを1枚伏せて……『インフェルニティ・ガーディアン』を召喚するよ!」
 レイの場に、盾の様な形をしたモンスターが召喚された。

「……バトルフェイズに入るよ!『インフェルニティ・ガーディアン』で、『フェデライザー』に攻撃!」
 『インフェルニティ・ガーディアン』は、盾状の体を激しく縦回転させて『フェデライザー』を引き裂き、そのままカムイに向かって突撃したが……

「ダメージ計算時に、伏せ罠カード『ガード・ブロック』を発動するッスよ!この効果で、オレがこの戦闘で受けるダメージを0にし、カードを1枚ドロー!
 その突撃は、カムイの目の前まで『インフェルニティ・ガーディアン』が向かった時に発生したバリアに防がれた!


ガード・ブロック
通常罠
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。


「さらに、戦闘破壊された『フェデライザー』の効果発動ッス!デッキからデュアルモンスター1体を墓地に送り、カードを1枚ドローできるんスよ!」
 カムイは、デッキから『ヘルカイザー・ドラゴン』のカードを墓地へと送り、さらにカードを1枚ドローした。

「デッキから好きなカードを墓地に送った上に、手札が1枚増えるんだ……ちょっとマズいかな……。……でもこれ以上何もできないから、ターンエンド!」
 レイは、少し不安そうな表情でターンを終えた。


現在の状況
レイ LP…4000
   手札…0枚
   場…サイバーデーモン(守備力2000・守備表示)
     インフェルニティ・ガーディアン(攻撃力1200・攻撃表示)
     伏せカード4枚

カムイ LP…2700
    手札…3枚
    場…エヴォルテクター シュバリエ(攻撃力1900・攻撃表示)
      伏せカード3枚


「オレのターン、ドロー!」
 ドローしたカードを確認したカムイは、軽く笑みを浮かべた。

「……このタイミングで……まさかの神を引いちまったッスね……。」
「え……?」
 カムイの言葉に対し、レイは少しキョトンとしていた……。

「手札から……永続魔法『生還の宝札』を発動するッスよ!」



「(『生還の宝札』?確かに神だね……。レイは対抗手段を持ち合わせているのか……?)」
 ナオは、これから始まる恐ろしい光景を軽く推測し、レイがどうやって『生還の宝札』を処理するか少し期待していたが……



「『生還の宝札』……?どの辺が神なの……?」
 ……レイは、カムイの発動させたカードに対して、キョトンとしていた。



「(って、何で分かんないんだよ!)」
 ナオは、レイのそんな表情に驚きを隠せないでいた。



「『生還の宝札』が来たか……。残念だが、これはカムイの勝ちだな。」
「残念?別にいいじゃん。あいつをケチョンケチョンにできるんだし。」
 センリとリナは、『生還の宝札』によって発生する光景を、少しだけ予想していた……。



「すぐに分かるッスよ!まずは伏せておいた『スーペルヴィス』を『エヴォルテクター シュバリエ』に装備させるッスよ!この効果で、『エヴォルテクター シュバリエ』は再度召喚された状態になるんスよ!」
 そう言うと、『エヴォルテクター シュバリエ』は自らの体に不思議なオーラを纏わせた。


スーペルヴィス
装備魔法
デュアルモンスターにのみ装備可能。
装備モンスターは再度召喚した状態になる。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードが墓地へ送られた時、
自分の墓地に存在する通常モンスター1体を選択して特殊召喚する。


「再度召喚された『エヴォルテクター シュバリエ』の効果を発動するッスよ!オレの場の装備魔法……『スーペルヴィズ』を墓地に送り、『サイバーデーモン』を破壊!」
 『エヴォルテクター シュバリエ』は、自らに纏わせているオーラを持っている剣へと集約させ……そのオーラを発射する事で、『サイバーデーモン』の体を撃ち抜いて破壊した!


エヴォルテクター シュバリエ
炎 レベル4
【戦士族・効果】
このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、
通常モンスターとして扱う。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、
このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●自分フィールド上に表側表示で存在する装備カード1枚を墓地へ送る事で、
相手フィールド上に存在するカード1枚を破壊する。
攻撃力1900 守備力900


「装備状態から墓地に送られた『スーペルヴィス』の効果が発動するッスよ!オレの墓地から通常モンスター……『ヘルカイザー・ドラゴン』を特殊召喚!『生還の宝札』でカードを1枚ドロー!」
 そう言うと、残された不思議なオーラがカムイの墓地から『フェデライザー』の効果で墓地に送った『ヘルカイザー・ドラゴン』を蘇生させ、カードを1枚ドローした。


生還の宝札
永続魔法
自分の墓地に存在するモンスターが特殊召喚に成功した時、
自分のデッキからカードを1枚ドローする事ができる。


「さらにオレは、『ヘルカイザー・ドラゴン』を再度召喚!再度召喚された『ヘルカイザー・ドラゴン』は、1ターンの間に2回攻撃が可能になるんスよ!」
 再度召喚された『ヘルカイザー・ドラゴン』は咆哮を揚げ、レイの場の『インフェルニティ・ガーディアン』を威嚇した!


ヘルカイザー・ドラゴン
炎 レベル6
【ドラゴン族・デュアル・効果】
このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、
通常モンスターとして扱う。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、
このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。
攻撃力2400 守備力1500


「おおっと!攻撃力2400での2回攻撃!これをまともに食らっては、ライフが無傷な状態でも耐えられません!さあ、レイちゃんはこの攻撃にどう対抗するのでしょうか!」
 千里は、レイが敗北の危機に晒されている事を、端的に熱く語っていた。



「行くッスよ!『エヴォルテクター シュバリエ』で、『インフェルニティ・ガーディアン』に攻撃!」
 『エヴォルテクター シュバリエ』は、『インフェルニティ・ガーディアン』を叩き割ろうと剣を叩きつけたが……



 ――カンッ!



 ……金属と金属がぶつかり合う様な澄んだ音を発てただけで、『インフェルニティ・ガーディアン』が破壊される事は無かった……。

「破壊できない……?何か効果が発動していたんスか?」
「うん……。『インフェルニティ・ガーディアン』は、ボクの手札が0枚の間は破壊されないよ!」(レイLP 4000→3300)
 驚いているカムイに対して、レイは『インフェルニティ・ガーディアン』の効果を説明した。


インフェルニティ・ガーディアン
闇 レベル4
【悪魔族・効果】
自分の手札が0枚の場合、フィールド上に表側表示で存在する
このカードは戦闘及びカードの効果では破壊されない。
攻撃力1200 守備力1700


「だが……当然超過ダメージは通るッスよ!さらに『ヘルカイザー・ドラゴン』で、『インフェルニティ・ガーディアン』に攻撃!ヘルカイザー・ブレイズ!!」
「うっ……。」(レイLP 3300→2100)
 ライフを削られたレイは、思わず声を上げた。

「『ヘルカイザー・ドラゴン』で、2回目の攻撃ッス!ヘルカイザー・ブレイズ!!」
 『ヘルカイザー・ドラゴン』は、『インフェルニティ・ガーディアン』に対して2度目の攻撃を行い、レイに超過ダメージを与えようとしたが……その熱波は、レイの目の前で弾けてかき消された!

「ダメージ計算時に……伏せ罠カード『ガード・ブロック』を発動したよ!この効果で、ボクが受ける戦闘ダメージを0にして、カードを1枚ドロー!」
 レイはそう言いながら、カードを1枚ドローした。

「なるほど……。『インフェルニティ・ガーディアン』の破壊耐性を残すために、このタイミングで『ガード・ブロック』を発動させたんスね。……だが、このカードで終わらせるッスよ!」
 そう言いながらカムイが伏せておいたカードを表にすると……突然『ヘルカイザー・ドラゴン』の体が燃え上がり、炎のドラゴンへと姿を変えた!

「『ヘルカイザー・ドラゴン』をリリースし……伏せ罠カード『火霊術−「紅」』を発動!リリースした炎属性モンスターの攻撃力分のダメージを与えるッス!」
 『ヘルカイザー・ドラゴン』は、大きく弧を描き、レイの場の『インフェルニティ・ガーディアン』をかわし、レイのライフを削り取ろうとした!


火霊術−「紅」
通常罠
自分フィールド上に存在する炎属性モンスター1体を生け贄に捧げる。
生け贄に捧げたモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。



「おおぉーっと!これは!!このタイミングでの『火霊術−「紅」』は、レイちゃんに引導を渡すのでしょうか!!?」
 千里は、大きな声でそう叫んだ。




「て……手札の『ハネワタ』を捨てて、効果を発動するね!この効果で、このターンボクは効果ダメージを受けなくなるよ!」
 しかし、レイの前に小さな白い羽を生やしたオレンジ色っぽいもふもふのモンスターが『ォワタ〜』と言いながら現れ、『火霊術−「紅」』のダメージを防いだ!


ハネワタ
光 レベル1
【天使族・チューナー・効果】
このカードを手札から捨てて発動する。
このターン自分が受ける効果ダメージを0にする。
この効果は相手ターンでも発動する事ができる。
攻撃力200 守備力300


「ぐっ……2回目の攻撃前に『火霊術−「紅」』を発動しておけば良かったんスかね……。だが、まだ手は残ってるんスよ!永続罠『正統なる血統』を発動し、墓地の『ヘルカイザー・ドラゴン』を特殊召喚!『生還の宝札』で1枚ドロー!」
 そう言うと、カムイの墓地から『ヘルカイザー・ドラゴン』が、咆哮を上げながら蘇った!
 さらにカムイは、『生還の宝札』でカードを1枚ドローした。


正統なる血統
永続罠
自分の墓地に存在する通常モンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターがフィールド上に存在しなくなった時、このカードを破壊する。


「『ヘルカイザー・ドラゴン』で『インフェルニティ・ガーディアン』に攻撃するッスよ!ヘルカイザー・ブレイズ!!」
「きゃっ!」(レイLP 2100→900)
 『ヘルカイザー・ドラゴン』は、さらに『インフェルニティ・ガーディアン』に向かって炎のブレスを浴びせ、レイのライフを削り取った。

「さらに速攻魔法……『フォース・リリース』を発動するッス!この効果で、オレの場のデュアルモンスターはすべて、再度召喚された状態になるんスよ!」
 カムイがそう言うと、『ヘルカイザー・ドラゴン』はもう1度咆哮を上げ、レイを威嚇した!


フォース・リリース
速攻魔法
このカードの発動時に自分フィールド上に表側表示で存在する
全てのデュアルモンスターは再度召喚した状態になる。
この効果を適用したモンスターはエンドフェイズ時に裏側守備表示になる。



「な、なんとなんと!『ヘルカイザー・ドラゴン』の攻撃はグォルエェンダァ!!!!も続くのでしょうか!!!!?」
 千里は、テーブルが目の前に会ったらバンバン叩いているかの様な動きをし、攻めの激しさを表現した。



「これで終わりッスね!『ヘルカイザー・ドラゴン』で、『インフェルニティ・ガーディアン』に攻撃!ヘルカイザー・ブレイズ!!」
 カムイは、まさしくヘルカイザーの如く『インフェルニティ・ガーディアン』に向かって攻撃宣言を行った!

「じゃ、じゃあ……『インフェルニティ・ガーディアン』をリリースして、速攻魔法『神秘の中華なべ』を発動!この効果で、『インフェルニティ・ガーディアン』の守備力分……1700ポイントライフを回復するよ!」
 レイがそう言うと、『インフェルニティ・ガーディアン』が光の粒子となって場から消え去り……『ヘルカイザー・ドラゴン』によって削られるライフを補充し、ギリギリで踏み止まった……。


神秘の中華なべ
速攻魔法
自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる。
生け贄に捧げたモンスターの攻撃力か守備力を選択し、
その数値だけ自分のライフポイントを回復する。


「た……助かった……のかな……?」(レイLP 900→2600→200)
 レイは、圧倒的な猛攻を耐えしのいだ事を、自分でも信じる事ができなかった……。



「と……とりあえず攻撃が一段落付いたところで、今の合計火力をおさらいしてみましょう!このターン、レイちゃんがすべての攻撃をまともに受けた場合に受けるダメージは……1900+2400×5=13900ダメージ!驚異的です!例えるならこれは、『青眼の究極竜』と『融合解除』のコンボを決めた場合の火力である4500+3000×3=13500をさらに上回ってしまっています!」
 千里は、興奮覚め止まぬ自分の気持ちを抑えながら、今の状況を観客に語っていた。



「けっ!エキシビションマッチ何ざ名ばかり……。あの女の公開処刑が主目的じゃぁ無ぇのか?」
 青森は、あまりに一方的な展開を、そう暗諭していた……。



「……このターンで決着は付かなかったッスね……。カードを1枚場に伏せ、ターンエンド!エンドフェイズ時に、『フォース・リリース』の効果でオレの場のデュアルモンスターはすべて裏守備表示になるッスね……。」
 『エヴォルテクター シュバリエ』と『ヘルカイザー・ドラゴン』が闇に包まれた様子を見たカムイは、少し残念そうにターンを終えた。


現在の状況
カムイ LP…1100
    手札…3枚
    場…裏守備モンスター(エヴォルテクター シュバリエ・守備力800)
      裏守備モンスター(ヘルカイザー・ドラゴン・守備力1500)
      伏せカード1枚
      生還の宝札(表側表示)
      正統なる血統(表側表示)

レイ LP…200
   手札…0枚
   場…伏せカード2枚


「ボクのターン……ドロー!」
 カムイの猛攻を防ぐために大量のカードを消費したレイは、少し不安そうにカードを1枚ドローしたが、そのカードを確認した瞬間に安堵の表情をした……。

「ドローしたカードは……『インフェルニティ・デーモン』だよ!このカードは手札が0枚の時にドローしたら、手札から特殊召喚できるよ!」
 レイの場に、山羊の頭をし多くの目を持った悪魔が現れた。



「おおっと!手札0枚でドローした時に効果を発揮するカードを、レイちゃんはここでドローしました!まさにこれはディスティニードローです!!」
 千里は、レイの引きの良さをそう表現した。



「それから……『インフェルニティ・デーモン』が特殊召喚された時にボクの手札が0枚だったら……デッキから『インフェルニティ』って名前に入ってるカードを1枚手札に加える事ができるよ!」
 そう言いながらレイは、まずはデッキを手に取った。

「(……『インフェルニティ・デーモン』はドローじゃ無いから効果が使えなくて……『インフェルニティ・フォース』は攻撃される前に破壊されちゃうかもしれないし……上級モンスターの『インフェルニティ・デストロイヤー』はちょっともったいないかな……?)」
 そして、ナオから借りたデッキに入っているカードの効果をしっかりと確認した後……



「……デッキから、『インフェルニティ・ネクロマンサー』を手札に加えるよ!」
 ……デッキから『インフェルニティ・ネクロマンサー』のカードを探し出し、手札に加えた。


インフェルニティ・デーモン
闇 レベル4
【悪魔族・効果】
自分の手札が0枚の場合にこのカードをドローした時、
このカードを相手に見せる事で自分フィールド上に特殊召喚する。
また、このカードが特殊召喚に成功した時、自分の手札が0枚の場合、
自分のデッキから「インフェルニティ」と名のついたカード1枚を手札に加える事ができる。
攻撃力1800 守備力1200


「(それから……『インフェルニティ・デーモン』は他のカードの効果で特殊召喚されてもサーチ効果を使えるんだよね……。)」
 そう考えながらレイは、自分の伏せカードに手を掛けた。

「……『インフェルニティ・デーモン』をリリースして、伏せ罠カード『闇霊術−「欲」』を発動するよ!」
 さらにレイは『インフェルニティ・デーモン』をリリースしドローをしようとしたが……

「だが……そのカードは、オレが手札から魔法カードを見せれば効果が無効になるんスよね。」
 そう言いながらカムイは、自分の3枚の手札に目をやり、その内の1枚に右手を掛けた……。

「(あっ……どうしよう……。無効にされちゃうのかな……。)」
 レイは、カムイに魔法カードを見せられて効果が無効にされるのではとないかと、不安そうな表情をしていた……。



「……いや、ここは見せない方がいいッスね。」
 しかしカムイは軽くそう言いながら掛けている手を離し、『闇霊術−「欲」』の効果を許した。

「え……?」
 レイは、驚きながらもデッキからカードを2枚ドローし、手札を3枚に増やした。


闇霊術−「欲」
通常罠
自分フィールド上に存在する闇属性モンスター1体を生け贄に捧げて発動する。
相手は手札から魔法カード1枚を見せる事でこの効果を無効にする事ができる。
見せなかった場合、自分はデッキからカードを2枚ドローする。


「ねえねえ、何でカムイは手札の魔法カードを見せなかったのかな?……もしかして!あいつに気に入られようとしてるんじゃ……」
「そんな訳無いだろ……。……俺じゃあるまいし。」
 リナの質問に、センリは軽く答えた……が、リナはムッとしてセンリの頬を抓った。



「(……あれは……レイを不安がらせるための、ただのハッタリかな?それとも……)」
 そしてナオは、カムイの行動がただのハッタリだと考えていた……。











「手札から……魔法カード『おろかな埋葬』を発動するよ!この効果で……デッキから……」
 そう言いながらレイは、デッキのカードを確認した……。

「(とりあえず……『インフェルニティ・ネクロマンサー』で蘇生できて一番攻撃力の高い『インフェルニティ・デストロイヤー』でいいかな……?)」
 そして、何を墓地に送ろうか考えていた……。

「デッキから……『インフェルニティ・デストロイヤー』を墓地に送るよ!」
 ……少し考えた末、レイは『インフェルニティ・デストロイヤー』を墓地に置く事を選択した。


おろかな埋葬
通常魔法
自分のデッキからモンスター1体を選択して墓地へ送る。
その後デッキをシャッフルする。


「それから……手札から『インフェルニティ・ネクロマンサー』を召喚して……効果で守備表示になるよ!」
 レイの場に、悪魔の姿をした死霊使いが召喚された。

「カードを1枚場に伏せてから……『インフェルニティ・ネクロマンサー』の効果発動!ボクの手札が0枚の時、1ターンに1度墓地から『インフェルニティ』モンスター1体を特殊召喚できるよ!来て!『インフェルニティ・デストロイヤー』!」
 レイの手札が0枚になった事を確認した『インフェルニティ・ネクロマンサー』は、目を閉じながら念じると……墓地に置かれた、両手の甲に剣をつけた悪魔族の男が蘇った!


インフェルニティ・ネクロマンサー
闇 レベル3
【悪魔族・効果】
このカードは召喚に成功した時、守備表示になる。
自分の手札が0枚の場合、以下の効果を得る。
1ターンに1度、自分の墓地から「インフェルニティ・ネクロマンサー」以外の
「インフェルニティ」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する事ができる。
攻撃力0 守備力2000


「……バトルフェイズに入るよ!『インフェルニティ・デストロイヤー』で、『ヘルカイザー・ドラゴン』に攻撃!」
 『インフェルニティ・デストロイヤー』は、手の甲についた剣で『ヘルカイザー・ドラゴン』を串刺しにした!

「手札が0枚の時に『インフェルニティ・デストロイヤー』が相手のモンスターを戦闘破壊したから……1600ポイントのダメージを与えるよ!」
 さらに『インフェルニティ・デストロイヤー』は、両腕から紫色の火球を発生させ、カムイのライフを大きく削ろうとしたが……

「ならオレは……カウンター罠『フュージョン・ガード』を発動!オレのエクストラデッキから融合モンスターがランダムに1体墓地に送られ……オレが受けるダメージ効果を無効にするッスよ!」
 カムイの言葉に合わせて、エクストラデッキの『超合魔獣ラプテノス』が炎のドラゴンとなってカムイの前に現れ……『インフェルニティ・デストロイヤー』の放った紫色の火球をかき消した!


インフェルニティ・デストロイヤー
闇 レベル6
【悪魔族・効果】
自分の手札が0枚の場合、
このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、
相手ライフに1600ポイントダメージを与える。
攻撃力2300 守備力1000

フュージョン・ガード
カウンター罠
ダメージを与える効果が発動した時に発動する事ができる。
その発動と効果を無効にし、自分の融合デッキからランダムに
融合モンスター1体を墓地へ送る


「……これで……ターンエンド!」
 何とか状況を持ち直したレイは、気持ちを落ち着かせながらターンを終えた。


現在の状況
レイ LP…200
   手札…0枚
   場…インフェルニティ・デストロイヤー(攻撃力2300・攻撃表示)
     インフェルニティ・ネクロマンサー(守備力2000・守備表示)
     伏せカード2枚

カムイ LP…2700
    手札…3枚
    場…裏守備モンスター1体(エヴォルテクター シュバリエ・守備力800・守備表示)
      生還の宝札(表側表示)
      正統なる血統(表側表示)


「オレのターン、ドロー!」
 軽くカードをドローし、自分の4枚の手札を確認したカムイは、軽く笑みを浮かべ……

「……そろそろ、すごい事をさせてもらうッスよ!」
 ……レイの目を見ながらそう言った。

「手札から……魔法カード『融合』を発動ッス!この効果で、オレの手札のデュアルモンスター2体……『ギガプラント』と『ヴァリュアブル・アーマー』を融合し……『超合魔獣ラプテノス』を融合召喚!」
 カムイの場に、多くのパーツを縫い合わせ、ドラゴンを形取ったモンスターが、守備体勢を取りながら現れた。

「オレは……さらに『炎妖蝶ウィルプス』を召喚!」
 さらにカムイは、羽が炎でできた蝶々型のモンスターを召喚した。これで一旦、カムイの手札は0枚になったが……

「『超合魔獣ラプテノス』によって再度召喚された状態の『炎妖蝶ウィルプス』の効果発動ッス!自身をリリースすることで、墓地のデュアルモンスター……『ギガプラント』を特殊召喚!『生還の宝札』の効果でカードを1枚ドロー!」
 墓地から、『超合魔獣ラプテノス』の素材となった巨大な植物の体をしたモンスターを蘇らせ、カードを1枚ドローした。


炎妖蝶ウィルプス
炎 レベル4
【昆虫族・効果】
このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、
通常モンスターとして扱う。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、
このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●このカードをリリースする事で、自分の墓地に存在する「炎妖蝶ウィルプス」以外の
デュアルモンスター1体を特殊召喚する。
この効果によって特殊召喚されたデュアルモンスターは再度召喚された状態になる。
攻撃力1500 守備力1500

超合魔獣ラプテノス
闇 レベル8
【ドラゴン族・効果】
デュアルモンスター×2
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
フィールド上に表側表示で存在する通常モンスター扱いの
デュアルモンスターは再度召喚された状態になる。
攻撃力2200 守備力2200


「……蘇生した『ギガプラント』の効果を発動するッスよ!この効果で、墓地の昆虫族モンスター……『炎妖蝶ウィルプス』を特殊召喚!『生還の宝札』でカードを1枚ドロー!」
 蘇生させた『ギガプラント』は、墓地にツタを伸ばし、墓地から『炎妖蝶ウィルプス』を引っ張り上げた!


ギガプラント
地 レベル6
【植物族・効果】
このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、
通常モンスターとして扱う。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、
このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●自分の手札または墓地に存在する昆虫族または植物族モンスター1体を特殊召喚する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
攻撃力2400 守備力1200


「……まだ終わりじゃないみたいッスね。ドローした『融合』をもう1度発動するッスよ!今度は、手札の『E・HERO バブルマン』と、場の地属性の『ギガプラント』を融合し……」
 さらにカムイは2枚の手札を確認し……手札の『バブルマン』と、場の巨大植物型のモンスター『ギガプラント』を融合させ……











「……『E・HERO ガイア』……融合召喚!」
 全身が鉄に覆われた、がっしりとしたヒーローへと姿を変えた!

「『ガイア』の効果……融合召喚時に、相手の場のモンスター1体の攻撃力を半分にし、その攻撃力を吸収させるッスよ!『インフェルニティ・デストロイヤー』の攻撃力の半分を『ガイア』に!」
 『ガイア』は、両腕から発生させた衝撃波によって『インフェルニティ・デストロイヤー』の足元を破壊し……攻撃力の半分を、自らに加算した!


E・HERO ガイア
地 レベル6
【戦士族・融合・効果】
「E・HERO」と名のついたモンスター+地属性モンスター
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードが融合召喚に成功した時、
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
このターンのエンドフェイズ時まで、選択したモンスター1体の攻撃力を半分にし、
このカードの攻撃力はその数値分アップする。
攻撃力2200 守備力2600


E・HERO ガイア 攻撃力2200→3350
インフェルニティ・デストロイヤー 攻撃力2300→1150

「……ちょっと待って!もしかして……また『ギガプラント』が墓地に落ちちゃったから……」
 ようやく『生還の宝札』の脅威に気付いたレイは、表情を強ばらせた……。

「ああ……。オレの場の『炎妖蝶ウィルプス』の効果を発動するッスよ!『炎妖蝶ウィルプス』をリリースし、墓地のデュアルモンスター……『ギガプラント』を特殊召喚するッスよ!『生還の宝札』で1枚ドロー!」
 『炎妖蝶ウィルプス』は、再び翼の炎を大きくし……墓地の『ギガプラント』を蘇らせ、カードを1枚ドローした!

「『ギガプラント』の効果を発動し……墓地の『炎妖蝶ウィルプス』を特殊召喚するッスよ!『生還の宝札』で1枚ドロー!」
 さらにカムイは、墓地の『炎妖蝶ウィルプス』を蘇生させ、カードを1枚ドローした。

「さらに……『炎妖蝶ウィルプス』をリリースし、墓地から『ヘルカイザー・ドラゴン』を特殊召喚!『生還の宝札』で1枚ドローさせてもらうッスよ!」
 蘇った『炎妖蝶ウィルプス』は、三度翼の炎を激しく燃え盛らせ……墓地から、レイのライフを大幅に削り取った暴君・『ヘルカイザー・ドラゴン』を蘇らせた!



「おおぉーっと!!まだ特殊召喚しますか!!手札を3枚残している上に、これでカムイ君の場には、5体のモンスターが集結したあ!!……いえ、デュエルのすべてを支配するカムイ君にとっては、この程度の事はむしろ普通なのでしょう!!」
 千里は、カムイを大きく持ち上げるかの様にアナウンスした。



「(……って、表現が無駄に大きすぎやしないッスか……?)」
 カムイは、千里の誇大表現に少し驚いていた……。

「(たくさんのカードが、手札も場も墓地もデッキも縦横無尽に移動するなんて……。すべてを支配する……そう言う事なのかな?)」
 レイは、不安そうに両腕を縮こませていた……。


「(……ボクも……支配されちゃうのかな……?)」


カムイ LP…2700
    手札…3枚
    場…E・HERO ガイア(攻撃力3350・攻撃表示)
      超合魔獣ラプテノス(守備力2200・守備表示)
      ギガプラント(攻撃力2400・攻撃表示)
      ヘルカイザー・ドラゴン(攻撃力2400・攻撃表示)
      エヴォルテクター シュバリエ(攻撃力1900・攻撃表示)
      生還の宝札(表側表示)
      正統なる血統(表側表示)



「さて……そろそろ行くッスよ!『エヴォルテクター シュバリエ』で『インフェルニティ・デストロイヤー』に攻撃!」
 『エヴォルテクター シュバリエ』は持っている剣で、弱体化した『インフェルニティ・デストロイヤー』への攻撃で、レイのライフを0にしようとしたが……

「……ちょっと待って!『インフェルニティ・デストロイヤー』が攻撃対象に選択されたから……伏せ罠カード『インフェルニティ・フォース』を発動するよ!攻撃してきた『エヴォルテクター シュバリエ』を破壊して……墓地から『インフェルニティ・デーモン』を特殊召喚するよ!」
 レイの言葉通り、『エヴォルテクター シュバリエ』は『インフェルニティ・デストロイヤー』の手の剣を突き出すカウンターによって串刺しにされ……『インフェルニティ・デストロイヤー』は、『エヴォルテクター シュバリエ』から奪い取った命を利用し、墓地の『インフェルニティ・デーモン』を蘇らせた!


インフェルニティ・フォース
通常罠
自分の手札が0枚の場合、
「インフェルニティ」と名のついたモンスターが
攻撃対象に選択された時に発動する事ができる。
攻撃モンスター1体を破壊し、
自分の墓地に存在する「インフェルニティ」と
名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚する。


「ボクの手札が0枚の時に『インフェルニティ・デーモン』が特殊召喚されたから……デッキから『インフェルニティ・ガーディアン』を手札に加えるよ!」
 そう言いながらレイは、デッキから『インフェルニティ・ガーディアン』を探し出し、手札に加えた。

「だが……次の一撃が通れば終わりッスよ!『ヘルカイザー・ドラゴン』で『インフェルニティ・デストロイヤー』に攻撃!ヘルカイザー・ブレイズ!!」
 『ヘルカイザー・ドラゴン』は、引導を渡そうと灼熱の炎を放ったが……

「……じゃあ、手札から『インフェルニティ・ガーディアン』を捨てて……伏せ罠カード『レインボー・ライフ』を発動するよ!この効果で……このターンボクが受けるダメージは回復に変換されるよ!」
 突然レイの周りに虹色のオーラが発生し……そのオーラが、『ヘルカイザー・ドラゴン』の破壊の力を癒しの力に変換した!


レインボー・ライフ
通常罠
手札を1枚捨てる。
このターンのエンドフェイズ時まで、自分が受けるダメージは無効になり、
その数値分ライフポイントを回復する。


レイLP 200→1450

「だが……モンスター1体を破壊できるなら、600ポイントのライフを与えるくらい軽い物ッスよ!『ヘルカイザー・ドラゴン』で『インフェルニティ・デーモン』に2回目の攻撃!ヘルカイザー・ブレイズ!!」
「でも……『レインボー・ライフ』の効果で、ライフが600回復するよ!」(レイLP 1450→2050)
 レイはそう言いながらも、自分の場のカードがどんどん失われていく事実に、心の中で焦らざるを得なかった……。

「さらに……『ガイア』で『インフェルニティ・ネクロマンサー』に攻撃!コンティネンタル・ハンマー!!」
 『ガイア』は、両腕を地面に付ける事によって発生させた衝撃波によって『インフェルニティ・ネクロマンサー』を一瞬で破壊した!

「メインフェイズ2に入るッスね。手札から、魔法カード『思い出のブランコ』を発動するッスよ!墓地から、通常モンスター……『炎妖蝶ウィルプス』を特殊召喚!『生還の宝札』で1枚ドロー!」
 これ以上の攻撃が必要無くなったカムイは、メインフェイズ2に再び『炎妖蝶ウィルプス』を蘇生させ、カードを1枚ドローした。

「『超合魔獣ラプテノス』の効果で再度召喚された状態の『炎妖蝶ウィルプス』の効果を発動するッスよ!『炎妖蝶ウィルプス』をリリースし……墓地から『エヴォルテクター シュバリエ』を特殊召喚!『生還の宝札』でカードを1枚ドロー!」
 ドローしたカードを確認したカムイは、さらに墓地の『エヴォルテクター シュバリエ』を蘇生させ、カードを1枚ドローした。

「カードを1枚場に伏せ、ターンエンド!」
 場のモンスターを埋め尽くしたカムイは、軽くターンを終えた。

「(レイの手札は0枚で場にカードも無い……。次のターンに出されたカードを今伏せたカードで対処すれば……多分、オレの勝ちッスね。)」
 カムイは、勝利を確信したかの様な思いを持っていた……。


現在の状況
カムイ LP…2700
    手札…3枚
    場…E・HERO ガイア(攻撃力3350・攻撃表示)
      超合魔獣ラプテノス(守備力2200・守備表示)
      ギガプラント(攻撃力2400・攻撃表示)
      ヘルカイザー・ドラゴン(攻撃力2400・攻撃表示)
      エヴォルテクター シュバリエ(攻撃力1900・攻撃表示)
      伏せカード1枚
      生還の宝札(表側表示)
      正統なる血統(表側表示)

レイ LP…2050
   手札…0枚
   場…無し











「やっぱりすごいよね〜、カムイって。もう楽勝じゃん。」
「……どうだろうな。ナオのデッキなら、まだ逆転手段は残されているだろうからな。」
 リナとセンリは、今の状況への感想を軽く述べ合っていた……。











「あっ……っっ……。」
 場も手札も存在しない、圧倒的に不利な状況まで押し込まれたレイは、自分のターンが始まったにも関わらず、目に涙を浮かべてうつむいていた……。

「(どうしよう……。もう……無理だよ……。それに……全然……自分の力でライフを削れなかった……。)」
 あまりに惨めすぎる自分の様子に、レイは目を瞑りながら悔しそうな表情をしていた……。











「……レイ。まだ……逆転の手は残されているだろ?」
 そんな様子を見ていられなかったナオは、レイに声を掛けた。

「お兄ちゃん……。でも……こんな状況で、逆転なんて……」
 レイは目を潤ませながら、小さな声でそう言った……。

「……レイにはまだ、デッキの1番上のカードが残ってるじゃないか。……そんな表情をするかしないかは、それを見てから決めないと。」
 ナオは、レイの目を見ながらそう一言言った。

「……それとも、ボクのデッキが信じられなかったなら……。……ゴメン……もっと強いデッキを貸してやれなくて……」
「そ……そんな事……」
 ナオが逆にうつむいた事に、レイは少し動揺してしまったが……



「…………!」
 ……突然、頭の中にある1つの事が過ぎった……。



「(そうだ……!あのカードを引けば、まだ……!)」
 レイは、デッキを確認した時に目を付けた1枚のカードを思い出し、そのカードなら逆転できると確信し……

「……ボクのターン……ドロー!」
 レイは、少し手を震わせながらカードをドローし……ドローしたカードを確認した……。
 そのカードは目的の物では無かったが、まだ次に繋げられるカードだったため、レイはホッとした表情をした……。

「……手札から、魔法カード『死者蘇生』を発動するよ!この効果で……カムイ君の墓地から『バブルマン』を特殊召喚!」
 レイがそう言うと、カムイの墓地から『バブルマン』が蘇った!

「なっ……このタイミングで『死者蘇生』を引いたんスか!?」
 今までこのデュエルのを完全に支配していたカムイだったが、レイが最高のタイミングで『死者蘇生』をドローした事に、少し驚いていた……。


死者蘇生
通常魔法
自分または相手の墓地からモンスターを1体選択して発動する。
選択したモンスターを自分のフィールド上に特殊召喚する。


「『バブルマン』が手札が0枚の時に特殊召喚されたから……カードを2枚ドロー!」
 そう言いながらレイは、2枚のカードをドローした。


E・HERO バブルマン
水 レベル4
【戦士族・効果】
手札がこのカード1枚だけの場合、
このカードを手札から特殊召喚する事ができる。
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に
自分のフィールド上と手札に他のカードが無い場合、
デッキからカードを2枚ドローする事ができる。
攻撃力800 守備力1200



「おぉぉぉーっと!!ここでレイちゃんは、起死回生の『死者蘇生』をドローしました!前のターンにも言った様な気がしますが、まさしくこれはディスティニードローです!!『バブルマン』の2枚ドローで、カムイ君のモンスター達にどう対抗するのでしょうか!?」
 千里は、マイクが壊れるほどの大声で今の神引き状況を説明した。



「手札から……速攻魔法『魔導書整理』を発動するよ!デッキの上から3枚のカードを見て、その順番を好きな順番に入れ替えるよ!」
 ドローしたカードを確認したレイは、まずはデッキのカードの順番を少し入れ替えた……。


魔導書整理
速攻魔法
自分のデッキの上から3枚カードをめくり好きな順番でデッキの上に戻す。
相手はそのカードを確認できない。


「それから……墓地の闇悪魔3体……『インフェルニティ・ガーディアン』、『インフェルニティ・デストロイヤー』、『サイバーデーモン』と、光天使1体……『ハネワタ』を除外して……」
「…………!まさか……あのモンスターが来るんスか!?」
 カムイは、これからレイが特殊召喚するモンスターに、少し表情を歪ませた……。











「……来て!『天魔神 ノーレラス』!」
 レイがそう言うと、レイの目の前の空間の一部が突然無と化し……その無の中から、











「無から出現したモンスター……『ノーレラス』か……!」
 その効果を直に体験した事のあるセンリは、小さくそう呟いた……。











「……『天魔神 ノーレラス』の効果発動!ライフを1000ポイント払って、場と手札のカードを全部墓地に送るよ!」(レイLP 2050→1050)
 レイがそう言うと、『ノーレラス』の肉体が無へと回帰していき……それによって、何者も存在しない無の力が解放された……。
 そして……その無は、全く音を立てずに浸食していき……カムイの場の『ガイア』、『超合魔獣ラプテノス』、『ヘルカイザー・ドラゴン』、『ギガプラント』、『エヴォルテクター シュバリエ』……レイの場の『バブルマン』を、それらが発する咆哮や声等のすべての音を消しながら、包み込み始めた……。





「ならオレは……伏せ罠カードを発動させてもらうッスよ!」
 カムイがそう言うと、レイの場を激しい烈風が発生した……。
 しかし……その風から発生する風音もほとんど消滅し、正体をほとんど確認できないまま、すべては無へと飲みこまれ……後には、すべてが始めから「存在しなかった」と錯覚させるかの如く、モンスター・魔法・罠の欠片も残っていなかった……。



「『ノーレラス』の効果で手札と場のカードが全部墓地に送られた後……デッキからカードを1枚ドローするよ!」
「そのドロー……大体何が来るかは想像できるんスけどね……。」
 カムイは、レイが『魔導書整理』によってデッキの順番を入れ替えていた事から、すべてを消滅させた後にたった1つだけ残された、光輝く1枚のカードが逆転の一手である事を確信していた……。


天魔神 ノーレラス
闇 レベル8
【悪魔族・効果】
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の光属性・天使族モンスター1体と闇属性・悪魔族モンスター3体を
ゲームから除外した場合のみ特殊召喚する事ができる。
1000ライフポイントを払う事で、お互いの手札とフィールド上のカードを
全て墓地へ送り、自分のデッキからカードを1枚ドローする。
攻撃力2400 守備力1500


「ドローしたカードは『インフェルニティ・デーモン』……手札が0枚の時にドローしたから、特殊召喚されるよ!手札が0枚の時に『インフェルニティ・デーモン』が特殊召喚されたから……デッキから『インフェルニティ・ネクロマンサー』を手札に加えるよ!」
 レイがそう言うと、『天魔神 ノーレラス』の効果でドローした『インフェルニティ・デーモン』を特殊召喚し、デッキから『インフェルニティ・ネクロマンサー』を手札に加えた。

「それから……手札に加えた『インフェルニティ・ネクロマンサー』を召喚!自身の効果で守備表示に!」
 さらにレイは、手札に加えた『インフェルニティ・ネクロマンサー』をすぐさま召喚した。

「ボクの手札が0枚だから……『インフェルニティ・ネクロマンサー』の効果を発動するよ!墓地から『インフェルニティ』モンスター……『インフェルニティ・デーモン』を特殊召喚!その効果で……デッキから『インフェルニティ・フォース』を手札に加えるよ!」
 そして『インフェルニティ・ネクロマンサー』の効果を利用し、場に『インフェルニティ・デーモン』を、手札に『インフェルニティ・フォース』のカードを加えた。
 ……つまり、1枚のカードが4枚に大増量した……と言う訳だ。



「な、なーんとなんとなんとなんと!!レイちゃんは、あの手札・場が空の状況から、一気に巻き返しました!!何というシーソーゲーム!これだからデュエルは最後まで気が抜けません!!」
 千里は、完全にデュエルの流れが変わった事に、動揺をまったく隠せていなかった。



「たった1枚の『天魔神 ノーレラス』から連鎖して、オレの場を全滅させた上に4枚のカードを補充した……。一瞬の大番狂わせ……恐ろしい効果なんスね……。」
 カムイは、『天魔神 ノーレラス』とインフェルニティの効果が連鎖して、自分の場を空にされただけでは無く、レイの場に多数のカードをもたらした事に、ただただ感心するしかなかった……。

「バトルフェイズに入るよ!『インフェルニティ・デーモン』で、ダイレクトアタック!ヘル・プレッシャー!」
 『インフェルニティ・デーモン』は、魔法陣の中から巨大な手を発生させ、その手によってカムイに殴り掛かった!

「ぐっ!」(カムイLP 2700→900)
 致命的にライフを削られたカムイは、思わず声を上げた……。

「勝てる……勝てるよ!2体目の『インフェルニティ・デーモン』のダイレクトアタックが通れば!」
 レイがそう言うと、『インフェルニティ・デーモン』はレイに勝利を与えるために、カムイのライフをすべて削り取ろうと、2つ目の魔法陣を発生させた……。が……











「……墓地の『ネクロ・ガードナー』の効果を発動ッス!このカードを墓地から除外し……『インフェルニティ・デーモン』の攻撃を無効にするッスよ!」
 カムイの墓地から、突然『ネクロ・ガードナー』の幻影が現れ……その幻影が、カムイのライフを守り抜いた!


ネクロ・ガードナー
闇 レベル3
【戦士族・効果】
自分の墓地に存在するこのカードをゲームから除外して発動する。
相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする。
攻撃力600 守備力1300


「ええっ……!?いつ『ネクロ・ガードナー』が墓地に送られたの……?」
「『ノーレラス』の効果で墓地に送られたカードの内の1枚が『ネクロ・ガードナー』だったんスよ。」
 カムイのその一言に、レイは残念そうにしていた……。

「じゃあ……カードを1枚場に伏せて、ターンエンドね。」


現在の状況
レイ LP…1050
   手札…0枚
   場…インフェルニティ・デーモン×2(攻撃力1800・攻撃表示)
     インフェルニティ・ネクロマンサー(守備力2000・守備表示)
     伏せカード1枚(インフェルニティ・フォース)

カムイ LP…900
    手札…0枚
    場…無し


「(場には、『インフェルニティ・ネクロマンサー』に『インフェルニティ・デーモン』2体、それに『インフェルニティ・フォース』があるから……大丈夫……勝てるよね……。)」
 レイは、何とか自分に自信を付けようと、心の中で自分を勇気付けようとしていた……。

「確かに……1枚のカードで逆転したのは予想できなかったッスね……。だが、オレのドローするカードも、逆転のキーカードになるんスよ!」
「え……?」
 レイは、カムイがなぜそこまで自信満々なのか、理解できずにいた……。











「(レイ……まさか、気付いてないのか……?カムイのデッキの1番上には……)」
 カムイの発動させたカードを確認していたナオは、カムイのデッキの1番上のカードの正体を確信していた……。











「……オレのターン、ドロー!」
 カムイは、ドローしたカードを確認せずに、そのまま守備表示で特殊召喚した。

「オレがドローしたカードは……『E・HERO バブルマン』!オレの手札がこのカードだけの時、手札から特殊召喚し……オレの場と手札にカードが存在しない事により、デッキからカードを2枚ドローするッスよ!」
 その宣言の通り、カムイは手札の『バブルマン』を特殊召喚し、カードを2枚ドローした。



「おおーっと!このタイミングで、カムイ君は『バブルマン』をドローしました!!!!……しかしこれは、偶然が生み出したディスティニードローではありません!定められた必然だったのです!」
 千里は、カムイが『バブルマン』をドローする事が当たり前の事だったかの様にアナウンスした。




「ええっ?何で……『バブルマン』をドローするって分かってたの……?」
「……レイ。オレは前のターンに、『ノーレラス』の効果にチェーンして『鳳翼の爆風』を『バブルマン』に対して発動してたんスよ。」
 カムイは、驚いているレイに対し、墓地の『鳳翼の爆風』を見せながら軽く答えた。


鳳翼の爆風
通常罠
手札を1枚捨てる。
相手フィールド上のカード1枚を持ち主のデッキの一番上に戻す。


「元々の持ち主がオレの『バブルマン』は、その効果でオレのデッキの1番上に行く……当然の事ッスよ。」
 さらにカムイは、レイを軽く諭す様に話した。

「この2枚の手札……オレの勝ちみたいッスね。」
 ドローした2枚のカードを確認したカムイは、軽くそう言った。

「手札から……魔法カード『融合回収』を発動するッスよ!この効果で、墓地の『融合』と『ヴァリュアブル・アーマー』を手札に戻し……回収した『融合』を即発動させるッスよ!『バブルマン』と、地属性の『ヴァリュアブル・アーマー』を融合し……『E・HERO ガイア』を融合召喚!」
 カムイがそう言うと、墓地から2枚のカードがカムイの手札に加わり……その2枚と場の『バブルマン』を利用し、2体目の『ガイア』を融合召喚した!


融合回収
通常魔法
自分の墓地に存在する「融合」魔法カード1枚と、
融合に使用した融合素材モンスター1体を手札に加える。


「『ガイア』が融合召喚に成功した時の効果で……『インフェルニティ・デーモン』の攻撃力の半分を吸収!!」
 『ガイア』は、両手をハンマーの様にして大地を震わせ……『インフェルニティ・デーモン』の攻撃力を半減させた!

E・HERO ガイア 攻撃力2200→3100
インフェルニティ・デーモン 攻撃力1800→900


「さらに……手札から、魔法カード『龍の鏡(ドラゴンズ・ミラー)』を発動するッスよ!墓地からデュアルモンスター2体……『ヘルカイザー・ドラゴン』と『ヴァリュアブル・アーマー』を融合し……『超合魔獣ラプテノス』を融合召喚!」
 さらにカムイは、墓地の2体のデュアルモンスターを素材とし、2体目の『超合魔獣ラプテノス』を融合召喚した!


龍の鏡
通常魔法
自分のフィールド上または墓地から、
融合モンスターカードによって決められたモンスターをゲームから除外し、
ドラゴン族の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。
(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)


「あの状況から……攻撃力2200のモンスターと、攻撃力3100のモンスターが……一瞬で……?」
「ああ……。2体のモンスターを並べれば、『インフェルニティ・フォース』で1体破壊されてももう1体でライフを削りきれるんスよ!」
 そう言いながらカムイは、バトルフェイズに入り……



「……『ガイア』で『インフェルニティ・デーモン』に攻撃!コンティネンタル・ハンマー!!」
「…………。」(レイLP 1050→0)
 『ガイア』が、『インフェルニティ・デーモン』の足元を炸裂させ……そのまま、レイのライフをすべて削り落とした……。











「き、決まりました!!このエキシビションマッチ……勝者は、光 カムイ君です!!!!」
 千里は、勝敗の決定を高らかに宣言した。




「……凄いんだね……カムイ君って……。ボクなんかじゃ、全然歯が立たなかったよ……。」
 レイは、地べたに座り、カムイを尊敬するかの様な眼差しで見つめていた。

「いや……レイの戦法も、中々凄かったッスよ。」
 そう言いながらカムイは、レイに右手を差し出そうとしたが、背中からの刺すような視線を感じ取り……

「それだけ凄いデュエリストなら……自分の力で立ち上がれるッスよね?」
 レイに一言そう言い、手を差し出す事はしなかった……。

「だ……大丈夫……。」
 カムイにそう言われたレイは、床に手をつけて起き上った……。


「さて!!……これでエキシビションマッチは終了ですが……本校からの参戦者も、素晴らしい実力でした!……これから1週間、本戦まで時間があります!……本校の生徒たちも、この星海校での生徒達との触れ合い……施設見学等、存分にお楽しみ下さい!!!!」
 千里は、そうやってエキシビションマッチの終幕を宣言した。











「……よし、剣山!この食事会が終わったら、俺の部屋に案内するぜ!ついて来てくれよな!」
「ああ!分かったドン!」
 デュエルを観戦していた雷人と剣山は、そうやって会話を弾ませていた。





















「中々やりますな、鮫島校長。……さすが、本校の数百人から選出されたデュエリスト……と言った所ですかな?」
「ええ。……本戦が楽しみですな、黒部校長。」
 黒部校長と鮫島校長は、放送室の中で本戦と、自らの校の勝利を心待ちにしていた……。


次回予告

カムイ「レイには勝ったんスけど……剣山の実力はまだ分かって無いんスよね……。」
センリ「そうだな。……実際にデュエルしてみるのか?」
カムイ「いや……。本戦前に相手のメインデッキの情報を手に入れるのは、さすがに気が引けるッスね……。」
センリ「……で、その代わり自分のメインデッキ情報も流さない……訳か。」

次回、『GX plus!』第四十四話!



『太古の力vs閃光の力!』

カムイ「面白そうなデュエル……なんスけど、オレがそのデュエルを見る訳にはいかないのが残念ッスね……。」




第四十四話 

――食事会が終わった後……雷人は、剣山を自分の部屋に連れて行っていた……。

「ここが俺の部屋だぜ、剣山。」
 雷人は、自分が住むカラオケボックス大の大きさの部屋を指差しながら言った。

「カラオケボックス……1人1部屋になってるザウルス?」
「ああ。所属人数の少なめな俺の『雷部』はな。」
 質問する剣山に、雷人は軽く語った。

「生徒数の多い『戦士部』や『魔法使い部』なら、アパートみたいな部屋が使えるんだがな。……まあ、入れば静かで快適だぜ。」
 そう言いながら雷人はドアを開け、剣山を手招きした。

「じゃあ……お邪魔させてもらうドン。」
 剣山は、挨拶をしながら雷人の部屋へと入っていった。











「これが俺の部屋だぜ。意外と広いだろ?」
 雷人は、剣山にそう言いながら、座布団を薦めた。

「すまないザウルス。……今日のパーティーのデュエル前に、レイちゃんにデッキを手渡ししていた男の子は誰だドン?」
 座布団に座った剣山は、軽く雷人に質問した。

「ああ、ナオの事か?……よく男って分かったな。」
 雷人は、少しだけ驚きながらそう言った。

「いや……リナって女の子との会話で、はっきり兄って言ってたザウルス。」
「そうだったな。……俺は初めて知った時、かなり驚いたぜ。女の娘っぽい名前で、頭にあんな耳着けてる位だからな。」
 雷人は、両手の親指と人差し指を頭に持って行き、頭に三角形を作りながらそう言った。

「そう言えば、『レイ』って名前も男が女か微妙な線はあると思うぜ。……まあ意外と可愛い娘だったから良かったがな。」
 雷人は、軽くそう言い……

「それより剣山。誰か好きな娘はいるのか?」
 さらにその調子で質問を投げ掛けた。











「……いや、いないドン。」
 ……剣山は、少し口ごもりながらそう答えた。

「好きじゃなくて、気になる程度でいいんだぜ。……あのレイって娘、気になってんじゃないか?」
 雷人は、剣山をからかう様にそう言った。

「べ、別にそんな事無いザウルス!」
「照れなくていいんだぜ、冗談だ冗談。単なる先輩後輩の友人関係って事ぐらい分かってるからよ。」
 雷人は笑い声で、剣山の肩を叩きながらそう言った。


「まあ、俺にはいるっちゃいるな。だがそいつは他の奴にぞっこん……って言えばいいのかもな。」
 雷人は、少しだけ残念そうにそう言った。











『ゴメンね……剣山君……。ワタシが人間だったら、はっきりいるって言えたのに……。』
 アリスは、申し訳無さそうな気持ちと口惜しい気持ちが入り混じった表情でそう呟いた……。











「一応、ナオはかなり強いぜ。二年生の中では……俺より少し強いくらいだろうな。レイって娘も強いんだろ?」
 そして、腕を組みながら軽く質問し返した。

「ああ。……そう言う雷人は強いザウルス?」
「当然だぜ。」
 剣山の質問に対し、雷人は自信満々に答えた。

「だが、ナマイキな奴だとか言われる話をよく聞くがな。……レイって娘には『年不相応だ』とか、そう言う噂は流れてないか?」
「いや、流れてないドン。」
 剣山は、そう軽く答えた。











「よし、俺とデュエルしようぜ。……本当に俺が強いのか疑問なんだろ?」
「まあ……それは一応あるザウルス。」
「そうか……なら、今ここで証明してやるぜ!」
 そう言いながら、雷人と剣山はデュエルディスクを装着し……











「「デュエル!!」」
 お互いにそう言い、デュエルの開始を宣言した。

「俺のターン、ドロー!手札手札の『キラーザウルス』を捨て、効果発ドン!デッキから『ジュラシックワールド』を手札に加えるザウルス!」
 そう言いながら剣山は、デッキから『ジュラシックワールド』のカードを探し出し、手札に加えた。


キラーザウルス
地 レベル4
【恐竜族・効果】
このカードを手札から墓地に捨てる。
デッキから「ジュラシックワールド」1枚を手札に加える。
攻撃力1800 守備力1100


「さらに俺は『暗黒プテラ』を攻撃表示で召喚するドン!」
 剣山の場に、黒色の翼竜が召喚された。

「まだザウルス!手札から、永続魔法『一族の結束』を発ドン!俺の墓地のモンスターが全部恐竜族モンスターである事により……俺の場の恐竜さんは攻撃力を800ポイントアップするザウルス!」
 剣山がそう言うと、『暗黒プテラ』の頭上に金色の星が点り……『暗黒プテラ』の攻撃力を大幅に高めた!


一族の結束
永続魔法
自分の墓地に存在するモンスターの元々の種族が
1種類のみの場合、自分フィールド上に表側表示で存在する
その種族のモンスターの攻撃力は800ポイントアップする。


暗黒プテラ 攻撃力1000→1800

「手札から、フィールド魔法『ジュラシックワールド』を発ドン!この効果によって、俺の場の恐竜さんの攻撃力は300ポイントアップするザウルス!これでターンエンドン!」
 剣山がそう言うと、場が突然ジャングルの様になり……『暗黒プテラ』の攻撃力をさらに高めた!


ジュラシックワールド
フィールド魔法
フィールド上に表側表示で存在する恐竜族モンスターは
攻撃力と守備力が300ポイントアップする。


暗黒プテラ 攻撃力1800→2100

「1ターン目から攻撃力1100のパワーアップか……。本戦出場者の名はだてじゃないな!!」
 雷人は、剣山の1ターン目の行動を、少し感心しながら見ていた。



「俺のターン、ドロー!さて……ここはひとまず、この魔法カードを発動させてもらうぜ!」
 ドローしたカードを確認した雷人は、手始めにデッキの上からカードを3枚墓地に送った!

「魔法カード……『光の援軍』を発動するぜ!デッキから、『ライトロード』と名のついたモンスター1体……『ライトロード・ハンター ライコウ』を手札に加えるぜ!」
 デッキの上から3枚のカード……『充電器』、『電池メン−業務用』、『地獄の暴走召喚』を墓地に送った雷人は、デッキから『ライトロード・ハンター ライコウ』のカードを探し出し、手札に加えた。


光の援軍
通常魔法
自分のデッキの上からカードを3枚墓地へ送って発動する。
自分のデッキからレベル4以下の「ライトロード」と
名のついたモンスター1体を手札に加える。


「さらに……モンスター1体とカードを1枚場に伏せ、ターンを終了するぜ!」
 その後雷人は手札を軽くシャッフルし、2枚のカードをデュエルディスクにセットしてターンを終えた。


現在の状況
雷人 LP…4000
   手札…4枚
   場…裏守備モンスター1体
     伏せカード1枚

剣山 LP…4000
   手札…2枚
   場…暗黒プテラ(攻撃力2100・攻撃表示)
     一族の結束(表側表示)
     ジュラシックワールド(表側攻撃)
     伏せカード1枚


「(『光の援軍』によって墓地に送られたカードに、魔法カードが2枚……調子が悪いか……?)」
 雷人は、『光の援軍』によって有用なカードが墓地に送られた事を、残念に思っていた。

「(雷人がセットしたモンスターは……今サーチしたモンスターの『ライトロード・ハンター ライコウ』ザウルス?)」
 それに対して剣山は、雷人が伏せたカードを軽く推測していた……。

「……俺のターン、ドロー!」
 剣山は、ドローして3枚になった手札を軽く確認し……

「『暗黒プテラ』をリリースし……出るドン!『超古代恐獣(エンシェント・ダイノ』!!」
 剣山の場に、
 さらに、リリースされた『暗黒プテラ』は、自身の効果によって手札に戻っていった。


暗黒プテラ
風 レベル3
【恐竜族・効果】
このカードが戦闘によって破壊される以外の方法で
フィールド上から墓地に送られた時、このカードは持ち主の手札に戻る。
攻撃力1000 守備力500


「レベル8のモンスターを1体のリリースで召喚?……リリース軽減効果か!」
「ああ!『超古代恐獣』はその身に秘めた古代の力により、恐竜族モンスター1体のみで召喚できるザウルス!」
「……理屈は分からないが、とにかく攻撃力3800のモンスターを一瞬で召喚された事実に変わりは無いな……。」
 雷人がそう呟くと、『超古代恐獣』は自らの力を誇示するかの様にを上げ、雷人を威嚇した!


超古代恐獣(エンシェント・ダイノ
地 レベル8
【恐竜族・効果】
このカードは恐竜族モンスター1体をリリースして
表側攻撃表示でアドバンス召喚する事ができる。
自分の墓地に存在する恐竜族モンスターが特殊召喚に成功した時、
自分のデッキからカードを1枚ドローする事ができる。
攻撃力2700 守備力1400


超古代恐獣 攻撃力2700→3500→3800


「だが……『超古代恐獣』の真の効果はここからだドン!『超古代恐獣』が俺の場に存在する時に墓地の恐竜さんが蘇生した場合……俺はカードを1枚ドローできるザウルス!」
「つまり……『生還の宝札』に近い効果を持ったモンスターって訳か!」
 『生還の宝札』の強力さを知っている雷人は、『超古代恐獣』の効果に警戒していた。

「ああ!まずは手札から、魔法カード『手札断殺』を発ドン!この効果により、お互いは手札を2枚墓地に送り、カードを2枚ドロー!」
 剣山がそう言うと、剣山は2枚の手札すべて……雷人は4枚の内から2枚の手札を墓地に送り、カードを2枚ドローした。


手札断殺
速攻魔法
お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする。



「これで蘇生対象は墓地に送られたザウルス!永続罠『リミット・リバース』を発ドン!この効果により、俺の墓地から攻撃力1000以下のモンスター……『ベビケラサウルス』を特殊召喚!『超古代恐獣』でカードを1枚ドロー!」
 剣山は、先程『手札断殺』の効果で墓地に送った小さな恐竜の子供をすぐさま蘇らせた上に、カードを1枚ドローした。

「さらに……『リミット・リバース』をコストに、魔法カード『マジック・プランター』を発動するザウルス!この効果で、俺はデッキからカードを2枚ドローすらドン!」
 剣山の言葉に合わせ、場の『リミット・リバース』が消え去り、カードを2枚ドローして手札を4枚に増やした。
 ……しかし、『リミット・リバース』によって蘇っていた『ベビケラサウルス』は、『リミット・リバース』を失った事であっさりと破壊された。


マジック・プランター
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する
永続罠カード1枚を墓地へ送って発動する。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。


「破壊される事を知りながら『ベビケラサウルス』を蘇生させた!?……破壊された時に効果が発動する訳か!」
「ああ……。『ベビケラサウルス』が効果によって破壊された事で、俺のデッキからレベル4以下の恐竜さんを1体特殊召喚するザウルス!現れろ!『セイバーザウルス』!」
 剣山の場に、角が刃の様になった恐竜が現れた。


ベビケラサウルス
地 レベル2
【恐竜族・効果】
このカードが効果によって破壊され墓地へ送られた時、
デッキからレベル4以下の恐竜族モンスター1体を選択して
自分フィールド上に特殊召喚する。
攻撃力500 守備力500


セイバーザウルス 攻撃力1900→2700→3000

「自壊する事を前提に『マジック・プランター』を発動させるか……。犠牲を前提とした戦法……強力なコンボだな!」
 雷人は、「カムイも俺とのデュエルでやってたが」の一言はあえて伏せながらそう言った。

「ああ!……この戦法は、本校の仲間達と考えた戦法だドン!」
 剣山は、自信満々に答えた。





















――2日前……デュエルアカデミア本校・剣山の部屋にて……

「……で、俺様達を呼び出した訳は、デッキの調整を協力しろ……と言いたいからかよ。」
「そうみたいだな、外道。……まあ僕としても、本校代表として勝ってもらいたい気持ちはあるけどな。」
 外道と五階堂は、剣山の部屋のテーブルの周りの椅子に座りながらそう言った。

「ああ……。実は、昨日手に入れたカードをどうしても活かしてやりたかったんだドン……。だが……俺1人の力では、あまりいい案を捻り出すことができなかったザウルス……。」
 剣山は、小さくそう呟いた。

「活かすカードは……この『超古代恐獣』か。」
 剣山のテーブルの上に置かれていたデッキの一番上のカードを見た外道は、軽くそう尋ねた。

「あ、ああ……そうだドン。」
 剣山は、「そう言う事にしておこう」……と言った感じの表情で返答した。


超古代恐獣
地 レベル8
【恐竜族・効果】
このカードは恐竜族モンスター1体をリリースして
表側攻撃表示でアドバンス召喚する事ができる。
自分の墓地に存在する恐竜族モンスターが特殊召喚に成功した時、
自分のデッキからカードを1枚ドローする事ができる。
攻撃力2700 守備力1400


「『超古代恐獣』の効果を活かすにはなぁ……まずは『化石発掘』、『リミット・リバース』の増量だ。後は、テメエが昨日レイ(あの女とのデュエルで使った『弱肉強食』は残しときな。」
 外道は、腕を組みながらそう言った。


化石発掘
手札を1枚捨てる。
自分の墓地に存在する恐竜族モンスター1体を選択して特殊召喚する。
この方法で特殊召喚されたモンスターのモンスター効果は無効化される。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。

弱肉強食
永続魔法
1ターンに1度、自分の自分フィールド上の恐竜族モンスター1体をリリースする事で、
自分の墓地に存在する、リリースしたモンスター以上のレベルを持つ
恐竜族モンスター1体を選択して特殊召喚する。
この効果によって特殊召喚されたモンスターは、そのターン攻撃する事ができない。
この効果で特殊召喚したモンスターがフィールド上から離れた時、
このカードを破壊する。


「で……そうなると、何を蘇生させるかが重要になるドン。」
「蘇生対象としては……『暗黒プテラ』か『ベビケラサウルス』なんて良いんじゃないか?」
 外道に続き、五階堂も複数枚のカードを提案した。

「……五階堂。テメエ、中々なモンスターを挙げるじゃねぇか。」
 外道は、五階堂の選別に軽く賛同していた。

「まあ……『暗黒プテラ』も『ベビケラサウルス』も、破壊される事で効果が発動するからな。」
「『化石発掘』にも『リミット・リバース』にも、自壊するデメリットがある……。つまり……『デメリットから逃げんじゃねぇ!正面から逆用しやがれ!』……と言う訳だ。」
 五階堂の言葉に続け、外道はそう言った。

「そうなると……蘇生させた『ベビケラサウルス』を効率良く道連れ破壊するために、『マジック・プランター』や『非常食』の投入が必要だな。」
「モンスターの犠牲を前提とした戦法……残酷じゃ無いザウルス?」
 五階堂の提案に対して、剣山は少し戸惑った表情をした……。

「何言ってやがる剣山!……デッキに投入したカードの効果を活かさねぇ事の方が残酷だろうが!」
 少し戸惑う剣山に、外道は喝を入れる様に話した。

「そうだ!どんなカードでも、活かさなければ入れる意味は無い!……だからあいつは強いんだ!」
 五階堂は、言葉をそのまま続けようとしたが……

「……万丈目先輩の事ザウルス?」
「ま、まあ……な。」
 ……剣山に先手を取られた五階堂は、決まりが悪そうにそう呟いた。





















「行くドン!『超古代恐獣』で裏守備モンスターに攻撃!」
 『セイバーザウルス』は角を突き出しながら突撃し、雷人の場の裏守備モンスター……『RAI−MEI』を一撃で粉砕した!

「何!……『ライコウ』をセットしたんじゃ無いザウルス!?」
「……ああ!戦闘破壊されたモンスターは『RAI−MEI』だ!この効果でデッキから、レベル2以下の光属性モンスター……『電池メン−ボタン型』を手札に加えるぜ!」
 剣山が意外なモンスターの登場に驚いている間にも、『RAI−MEI』は雷人のデッキに電撃を浴びせ、その電気に誘われた『電池メン−ボタン型』を雷人の手札に与えた!


RAI−MEI
光 レベル3
【雷族・効果】
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキからレベル2以下の
光属性モンスター1体を手札に加える事ができる。
攻撃力1400 守備力1200


「だが……まだ『セイバーザウルス』の攻撃が残ってるドン!『セイバーザウルス』で、ダイレクトアタック!」
「ぐあっ!」(雷人LP 4000→1000)
 雷人は、無抵抗のまま『セイバーザウルス』の攻撃を受けたが、その後軽く笑みを浮かべ……

「……俺がダイレクトアタックを受けた事により……伏せ罠カード『無抵抗の真相』を発動するぜ!手札のレベル1モンスター……『電池メン−ボタン型』を見せ、手札・デッキから『電池メン−ボタン型』を1体ずつ特殊召喚!」
 雷人がそう言うと、場に円盤状の体をした小さな電池メンが2体現れた!


無抵抗の真相
通常罠
相手モンスターの直接攻撃によって自分が戦闘ダメージを受けた時、
手札のレベル1モンスター1体を相手に見せて発動する。
相手に見せたモンスター1体と、自分のデッキに存在する同名モンスター1体を
自分フィールド上に特殊召喚する。


「何!……『無抵抗の真相』の発動条件を満たすために、わざと『RAI−MEI』をセットしたザウルス!?」
「ああ、当然だぜ。……まさかここまで綺麗に決まるとは思わなかったがな。」
 雷人は、軽くそう言った。




現在の状況
剣山 LP…4000
   手札…2枚
   場…超古代恐獣(攻撃力3800・攻撃表示)
     セイバーザウルス(攻撃力3000・攻撃表示)
     一族の結束(表側表示)
     ジュラシックワールド(表側攻撃)
     伏せカード2枚

雷人 LP…1000
   手札…4枚
   場…電池メン−ボタン型(守備力100・守備表示)×2


「伏せカード2枚か……。警戒したい所だが、『無抵抗の真相』の発動条件を満たしてくれた礼に見せてやるぜ……!俺の電池メンの展開力を!」
 雷人はそう言いながら、デッキの上に手をやった……。

「俺のターン、ドロー!手札から、速攻魔法『皆既日蝕の書』を発動!この効果により……俺とお前の場のモンスターはすべて裏守備表示に変更されるぜ!」
 雷人がそう言うと、突然場を闇が包み込み……剣山の場の『超古代恐獣』、『セイバーザウルス』、雷人の場の『電池メン−ボタン型』2体を裏守備表示に変更させた!


皆既日蝕の書
速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て裏側守備表示にする。
このターンのエンドフェイズ時に相手フィールド上に
裏側守備表示で存在するモンスターを全て表側守備表示にし、
その枚数分だけ相手はデッキからカードをドローする。


「これで『電池メン−ボタン型』のリバース効果を使えるぜ!『電池メン−ボタン型』を反転召喚し、効果発動!デッキから、レベル4以下の電池メン……『電池メン−単三型』を特殊召喚!」
 反転召喚された『電池メン−ボタン型』は、雷人のデッキに軽い電気を走らせ……『電池メン−単三型』を呼び寄せた!


電池メン−ボタン型
光 レベル1
【雷族・効果】
リバース:自分のデッキから「電池メン−ボタン型」以外のレベル4以下の
「電池メン」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。
また、リバースしたこのカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。
攻撃力100 守備力100


「2体目の『電池メン−ボタン型』を反転召喚し、リバース効果を発動するぜ!デッキから、レベル4以下の電池メン……2体目の『電池メン−単三型』を特殊召喚!」
 さらに雷人は2体目の『電池メン−ボタン型』を反転召喚し、2体目の『電池メン−単三型』を特殊召喚した。

「さらに……手札から、魔法カード『強制転移』を発動!この効果で、お互いは自分のモンスターを1体ずつ相手と交換するぜ!俺が渡すのは『電池メン−ボタン型』だ!」
「なら俺は……『セイバーザウルス』を渡すドン!」
 雷人と剣山は、互いに自分のモンスターを相手に渡しあった!


強制転移
通常魔法
お互いに自分フィールド上に存在するモンスター1体を選択し、
そのモンスターのコントロールを入れ替える。
そのモンスターはこのターン表示形式を変更する事はできない。



「まだだぜ……!『セイバーザウルス』をリリースし……『充電池メン』をアドバンス召喚!その効果で……デッキから3体目の『電池メン−単三型』を特殊召喚!」
 『充電池メン』が、雷人のデッキに電気を与えると……雷人の場に、3体目の『電池メン−単三型』を呼び出した!


充電池メン
光 レベル5
【雷族・効果】
このカードの召喚に成功した時、自分の手札またはデッキから
「充電池メン」以外の「電池メン」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する事ができる。
このカードの攻撃力・守備力は、自分フィールド上に表側表示で存在する
雷族モンスターの数×300ポイントアップする。
攻撃力1800 守備力1200


「これで俺の場には……攻撃表示の『電池メン−単三型』が3体だぜ!よって……『電池メン−単三型』の攻撃力は、3000だ!」
 『電池メン−単三型』は、首から発生させているマフラーの様な電流をつなぎ合わせ……


電池メン−単三型
光 レベル3
【雷族・効果】
自分フィールド上の「電池メン−単三型」が全て攻撃表示だった場合、
「電池メン−単三型」1体につきこのカードの攻撃力は1000ポイントアップする。
自分フィールド上の「電池メン−単三型」が全て守備表示だった場合、
「電池メン−単三型」1体につきこのカードの守備力は1000ポイントアップする。
攻撃力0 守備力0


雷人 LP…1000
   手札…2枚
   場…充電池メン(攻撃力3300・攻撃表示)
     電池メン−単三型(攻撃力3000・攻撃表示)×3
     電池メン−ボタン型(攻撃力100・攻撃表示)


「集結したぜ……電池メン軍団が!」
 自分の場に集まった電池メン達を前にした雷人は、軽くそう言った。

「行くぜ!バトルフェイズに入……」
「待つザウルス!バトルフェイズに入った瞬間に……伏せ罠カード『威圧する咆哮』を発ドン!この効果で、このターン雷人のモンスターは攻撃宣言できなくなるザウルス!」


威圧する咆哮
通常罠
このターン相手は攻撃宣言をする事ができない。


「くっ……『威圧する咆哮』か……!『電池メン−ボタン型』を攻撃表示のままにするのは危険すぎるな……!カードを2枚場に伏せ、ターンエン……」
 雷人は、守りを固めるために手札をすべてセットし、エンドフェイズを迎えたが……

「このタイミングで、『皆既日蝕の書』のデメリットが発動するザウルス!俺の場の『超古代恐獣』が表になり、カードを1枚ドロー!」
 そう言うと、剣山の場の『超古代恐獣』が闇の中から姿を現し、剣山はカードを1枚ドローした。

「永続罠『リミット・リバース』を発動するザウルス!この効果で……蘇れ!『暗黒プテラ』!『超古代恐獣』の効果で1枚ドロー!」
 剣山がそう言うと、再び小さな黒い翼竜が蘇った!


現在の状況
雷人 LP…1000
   手札…0枚
   場…充電池メン(攻撃力3300・攻撃表示)
     電池メン−単三型(攻撃力3000・攻撃表示)×3
     電池メン−ボタン型(攻撃力100・攻撃表示)
     伏せカード2枚

剣山 LP…4000
   手札…4枚
   場…超古代恐獣(守備力1700・守備表示)
     電池メン−ボタン型(攻撃力100・攻撃表示)
     暗黒プテラ(攻撃力1000・攻撃表示)
     一族の結束(表側表示)
     ジュラシックワールド(表側攻撃)
     リミット・リバース(暗黒プテラ対象)
     伏せカード1枚


「……俺のターン、ドロー!」
 剣山は、カードを1枚ドローし……

「『暗黒プテラ』をリリースし、魔法カード『大進化薬』を発ドン!戦闘以外で墓地に送られた『暗黒プテラ』は俺の手札に戻り……『大進化薬』が俺の場に存在する限り、恐竜族モンスターをリリース無しで召喚可能になるザウルス!」
 そう言うと、剣山の場に存在した『暗黒プテラ』の翼を調合素材として、カプセル状の薬を作り出した!
 しかし当の『暗黒プテラ』は、調合素材として提供した翼を一瞬で再生させ、剣山の手札へと帰って行った。


大進化薬
通常魔法
自分フィールド上に存在する恐竜族モンスター1体をリリースして発動する。
このカードは発動後、相手のターンで数えて
3ターンの間フィールド上に残り続ける。
このカードがフィールド上に存在する限り、
レベル5以上の恐竜族モンスターをリリースなしで召喚する事ができる。


「さらに……手札から、魔法カード『手札抹殺』を発ドン!この効果で、俺は4枚の手札をすべて捨て……カードを4枚ドロー!」
 剣山は、手札から『暗黒プテラ』、『フロストザウルス』、『究極恐獣』、『暗黒ドリケラトプス』捨てカードを4枚ドローし……

「(アリスちゃん……。今こそ……このカードを使わせてもらうドン!)」
 ……その後、ドローしたカードを軽く確認した……。

「さらに……俺の場の『超古代恐獣』を選択し……魔法カード『Tears Of Alice(ティアーズ オブ アリス』を発ドン!」
「何!……そのカードが手札に加わっていたのか!?」
 雷人は、剣山が口にしたカード名に、驚きの色を隠せないでいた……。

「何!……雷人もこのカードの存在を知ってたドン!?」
「ああ……噂程度の認識でだがな!」





















――再び2日前……デュエルアカデミア本校・剣山の部屋にて……

「……何だ?見慣れないカードだな。」
 五階堂は、剣山のデッキのカード群にはあまり似付かわしくない、人形の様な女の子が両手を合わせながら涙を流しているカードに、少し目がいった。

「ああ、そのカードは……」
「……珍しいカードだな。俺様も実物を見たのは初めてだぜ。」
 剣山が話そうとした時、外道はそう軽く語った。

「外道。このカードを知ってるザウルス?」
「あぁ。……データ上だけだがな。」
 外道は、腕を組みながらそう言った。

「そのカードの製作には、ある逸話があるらしいぜ。……教えてやろうか?」
「ああ。」
「……教えてやる。……ある所に、1人の妹と病弱の兄がいた。」
 剣山の返答を聞き、外道は話を始めた。

「兄がか?普通こう言うのは妹が病弱だろ?」
「黙ってろ!男だろうが女だろうが、病気になる可能性はあるだろ!」
 外道は、五階堂の言葉を遮る様にそう言った。

「兄が生死の狭間をさまよっている間に、その女は涙を流しながら祈っていた。女が涙を流したことによって……その兄の様態は見る見る回復したらしいぜ。その魔法の様な出来事をペガサスは1枚のカードとし、その女の名前からカード名をこう命名したらしい。……『Tears Of Alice(ティアーズ オブ アリス』とな。」
 外道は、腕を組みながらそう言った。

「本当なのか?外道。」
「んな事知るわけ無ぇだろ、迷信だ迷信。」
 質問する五階堂に対して外道は、足を組みながらそう呟いた。

「大体……そんな物は奇跡じゃ無ぇ。兄が自らの意思で女の思いに答えた……それだけだ。」
 さらに外道は、そう一言言い放ち

「奇跡は起きる物じゃ無ぇ。起こす物なんだよ。」
 ……そして、一言そう付け加えた。
























「この効果により……墓地からレベル8・地属性・恐竜族モンスター……『究極恐獣』を特殊召喚!『超古代恐獣』の効果で1枚ドロー!」
 剣山がそう言うと、『超古代恐獣』の傍らに黒色のドレスの様な服を着た少女の幻影が現れ……その少女の目から、真珠の様にきらめく涙が零れ落ち……墓地の『究極恐獣』が生を受け、剣山の場に現れた!

「最上級モンスターが、1枚のカードの力で蘇生した……!?それがそのカードの効果だな!」
「ああ!『Tears Of Alice』の効果は……俺の場から選択したモンスターと同じレベル・属性・種族のモンスターを1体、俺の墓地から特殊召喚できるザウルス!」
 剣山は、自信満々にそう答えた。

「(だが……普通究極進化した生物の前で、純粋な少女が宝石の様な涙を流すと、その進化の呪いは解けるんじゃないか……?)」
 雷人は、か弱い少女の涙によって蘇るには不釣合いな、怪物の様な形相の『究極恐獣』を見てそう考えていた……。


Tears Of Alice(ティアーズ オブ アリス
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターと同じレベル・属性・種族のモンスター1体を
自分の墓地から攻撃表示で特殊召喚する。
自分のメインフェイズ時、手札2体を墓地に送る事で、
このカードを自分の墓地から手札に加える。
「Tears Of Alice」はは1ターンに1枚しか発動できない。


究極恐獣 攻撃力3000→3800→4100

「『究極恐獣』……攻撃力4100か!!」
 『オベリスクの巨神兵』以上の攻撃力を得た『究極恐獣』を見た雷人は、思わずそう呟いた。

「俺はまだ手札を4枚残しているザウルス!『大進化薬』の効果により……出るドン!『超伝導恐獣』!」
 さらに剣山が手札から恐竜を召喚すると……その恐竜は、剣山の場に散らばっている薬を貪り……全身の金属部分から火花を発しながら現れた!

超伝導恐獣 攻撃力3300→4100→4400

「『超伝導恐獣』の効果を発動するザウルス!『電池メン−ボタン型』をリリースし……雷人に1000ポイントのダメージを与えるドン!」
 『超伝導恐獣』は、『電池メン−ボタン型』を片手で無機質な鈍い音を立てながら握り潰し……吸収した電気エネルギーを抵抗無く雷人に向かって射出したが……

「くっ……カウンター罠『ダメージ・ポラリライザー』を発動!『超伝導恐獣』のダメージ効果を無効に、お互いはカードを1枚ドローするぜ!」
 雷人の目の前に、突然不思議な偏光プリズムが発生する事でそのエネルギー波が掻き消え……雷人と剣山に1枚の手札を与えた!


超伝導恐獣
光 レベル8
【恐竜族・効果】
自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる事で
相手ライフに1000ポイントダメージを与える。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
また、この効果を発動したターンこのモンスターは
攻撃宣言をする事ができない。
攻撃力3300 守備力1400

ダメージ・ポラリライザー
カウンター罠
ダメージを与える効果が発動した時に発動する事ができる。
その発動と効果を無効にし、お互いのプレイヤーはカードを1枚ドローする。


「ぐっ……トドメを指せなかったザウルス……。だが、俺も『ダメージ・ポラリライザー』の効果でいいカードを引かせてもらったドン!手札から、魔法カード『二重召喚』を発動するザウルス!この効果によって、俺はこのターンもう1度通常召喚が可能になったドン!」
 剣山は、自信満々にそう言った。


二重召喚
通常魔法
このターン自分は通常召喚を2回まで行う事ができる。


現在の状況
剣山 LP…4000
   手札…3枚
   場…究極恐獣(攻撃力4100・攻撃表示)
     超古代恐獣(攻撃力3800・攻撃表示)
     超伝導恐獣(攻撃力4400・攻撃表示)
     一族の結束(永続魔法)
     ジュラシックワールド(フィールド魔法)
     リミット・リバース(表側表示)


「恐竜さんの軍団……集合だドン!」
 剣山は、先程の雷人の言葉を再現するかの様に、軽くそう言った。

「これで終わりザウルス!『究極恐獣』で、『電池メン−単三型』に攻撃!アブソリュート・バイト!!」
 『究極恐獣』は、剣山の攻撃宣言を聞いたか聞かないかのタイミングで巨大な顎を開き、激しい地響きを起こしながら『電池メン−単三型』に向かって突撃しに行ったが……

「まだだ!伏せ罠カード『和睦の使者』を発動!……この効果により、このターンの戦闘によって発生するダメージはすべて0になるぜ!」
 雷人の言葉と同時に、雷人の場のモンスターは不思議なバリアに守られ……『究極恐獣』の侵攻を防いだ!


和睦の使者
通常罠
このカードを発動したターン、相手モンスターから受ける
全ての戦闘ダメージは0になる。
このターン自分モンスターは戦闘では破壊されない。


「『和睦の使者』……さすがにこの攻撃は防がれたザウルス……。」
「あ、当たり前だぜ!……その攻撃を通したら、何万のダメージが入ると思ってるんだ!」
 『究極恐獣』の攻撃を防いだ雷人は、思わずそう剣山に言い放った。
 しかし『究極恐獣』は、究極に進化した全身から溢れ出る闘争本能をまったく抑えられないのか、『和睦』の意味を理解できないのか、『和睦の使者』のバリアによって守られている雷人の場のモンスターを、耳を突くような激しい咆哮を上げながら1回ずつ殴っていった……。
 その様子は、まるで破壊――すべての生命体を根絶やしにする――以外の概念が存在しない『怪物』と呼ぶに相応しい物だった……。


究極恐獣
地 レベル8
【恐竜族・効果】
自分のバトルフェイズ開始時にこのカードが
フィールド上に表側表示で存在する場合、このカードから攻撃を行い、
相手フィールド上に存在する全てのモンスターに1回ずつ
続けて攻撃しなければならない。
攻撃力3000 守備力2200


「なら俺は……メインフェイズ2に入るドン!手札から、『ダークティラノ』を召喚!」
 剣山は、『二重召喚』によって得た2度目の召喚権によって、王道型の恐竜と言える姿の『ダークティラノ』を、『大進化薬』の効果でリリース無しで召喚した!

ダークティラノ 攻撃力2600→3400→3700

「……カードを2枚場に伏せ、ターンエンドン!」
 


現在の状況
剣山 LP…4000
   手札…0枚
   場…究極恐獣(攻撃力4100・攻撃表示)
     超古代恐獣(攻撃力3800・攻撃表示)
     超伝導恐獣(攻撃力4400・攻撃表示)
     ダークティラノ(攻撃力3700・攻撃表示)
     一族の結束(永続魔法)
     ジュラシックワールド(フィールド魔法)
     リミット・リバース(表側表示)
     伏せカード2枚

雷人 LP…1000
   手札…1枚
   場…充電池メン(攻撃力3300・攻撃表示)
     電池メン−単三型(攻撃力3000・攻撃表示)×3
     電池メン−ボタン型(攻撃力100・攻撃表示)


「攻撃力4000前後のモンスターが4体か……!永続カードに頼ってるとはいえ、異常事態過ぎるだろ……。」
 雷人は、剣山の場に現れた恐竜軍を見て、思わずそう呟いた……。

「だが……まだ俺にもチャンスはあるぜ!俺のターン、ドロー!」
 そう言いながら雷人は、カードを1枚ドローした……。

「……『電池メン−ボタン型』をリリースし、速攻魔法『エネミーコントローラー』を発動!この効果によって、『究極恐獣』のコントロールをこのターンの間だけ得るぜ!!」
 雷人がそう言うと、剣山の場の『究極恐獣』の体にコントローラーの端子部が突き刺さり……コントローラーを手にした『電池メン−ボタン型』が『←→AB』のコマンドを入力すると……『究極恐獣』が洗脳され、雷人の場に移った!


エネミーコントローラー
速攻魔法
次の効果から1つを選択して発動する。
●相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体の表示形式を変更する。
●自分フィールド上に存在するモンスター1体をリリースして発動する。
このターンのエンドフェイズ時まで、相手フィールド上に表側表示で存在する
モンスター1体のコントロールを得る。


超伝導恐獣 攻撃力4100→3300

「だが……俺の場を離れた『究極恐獣』は『一族の結束』の効果を受けられなくなる事で、攻撃力は大幅に下がるザウルス!」
「そうだな……。だが……これで条件は揃った!見せてやるぜ……剣山!俺のデッキの、もう1枚の切り札をな!」
 雷人は、自信満々にそう言った……。

「何!手札0枚で……いったい何を呼ぶ気だドン!?」
 剣山は、これから雷人が何をするのか、まったく予想できなかった……。

「……『充電池メン』と『究極恐獣』を墓地に送るぜ!究極の電気の力を得……太古の力と閃光の力よ、融合せよ!」
 雷人がそう言うと、『充電池メン』と『究極恐獣』が光の粒子となって消え去り……その粒子は、不思議な虹色の渦の中で交じり合い始めた!










「現れろ……!『超伝導合体(スーパーコンダクターユニオン ボルテック・レックス』!!」
 その渦の中から雷人の場に現れたのは……『究極恐獣』に似た体格だが、全身が帯電した銀色の装甲で覆われ、脚部にはタイヤの様な物が装着され、背中には『充電池メン』を模した様なバッテリーを背負い、そのバッテリーから電流を自らの糧とするモンスター……つまり、『充電池メン』と『究極恐獣』が合体したかの様なモンスターが、咆哮を上げながら雷人の場に現れた!

「『ボルテック・レックス』の攻撃力は、素材としたモンスターの元々の攻撃力の合計となる……。つまり……元々の攻撃力は、4800だぜ!」
 雷人がそう言うと、『ボルテック・レックス』は全身から激しい電撃を発生させ、剣山の場の『超古代恐獣』と『超伝導恐獣』、『ダークティラノ』を威嚇した!


超伝導合体(スーパーコンダクターユニオン ボルテック・レックス
光 レベル8
【恐竜族・融合・効果】
恐竜族モンスター+雷族モンスター
自分フィールド上に存在する上記のカードを墓地へ送った場合のみ、エクストラデッキから特殊召喚できる。
このカードの元々の攻撃力は、融合素材に使用したモンスターの攻撃力の合計の数値となる。
このカードは、融合素材に使用したモンスターの内元々の攻撃力が最も高いモンスターと同じ効果を得る。
攻撃力? 守備力0


超伝導合体 ボルテック・レックス 攻撃力?→4800→5100

「さらに……装備魔法『団結の力』を『ボルテック・レックス』に装備!俺の場のモンスターは4体……つまり、攻撃力が3200ポイントアップするぜ!」
 『ボルテック・レックス』は、周りの『電池メン−単三型』から電気のエネルギーを受け取り……攻撃力を大幅に高めた!


団結の力
装備魔法
自分フィールド上に存在する表側表示モンスター1体につき、
装備モンスターの攻撃力・守備力を800ポイントアップする。

超伝導合体 ボルテック・レックス 攻撃力5100→8300

「攻撃力……8300!?」
「ああ!……これで引導を渡してやるぜ!『ボルテック・レックス』で『ダークティラノ』に攻撃!スーパーアブソリュート・ボルテックス!!」
 『ボルテック・レックス』は、全身から激しい電光を発生させ、『ダークティラノ』を粉砕しようとしたが……

「いや……まだザウルス!伏せ罠カード『生存本能』を発ドン!『キラーザウルス』、『セイバーザウルス』、『ベビケラサウルス』をゲームから除外し、俺のライフを1200ポイント回復させるザウルス!」
 剣山がそう言いながら3枚のカードを除外すると……剣山は、自分のライフを1200ポイント回復させた!


生存本能
通常罠
自分の墓地に存在する恐竜族モンスターを任意の枚数選択しゲームから除外する。
除外した恐竜族モンスター1枚につき、自分は400ライフポイント回復する。


剣山LP 4000→5200

「ぐああっ!!」(剣山LP 5200→600)
 『ボルテック・レックス』の攻撃を封じられた訳では無く、致命的な大ダメージを受けることとなった……。

「まだだぜ……!『ボルテック・レックス』は、素材としたモンスターの内、攻撃力が高い方の素材の効果を得る……!つまり、『ボルテック・レックス』は『究極恐獣』の効果を得、追加攻撃が可能となるぜ!」
 『ボルテック・レックス』は、雷人の言葉を聞くや否や、今度は『超古代恐獣』に向かって噛み付こうとしたが……











「ぐっ……伏せ罠カード……発ドン!!」
 そう言いながら剣山が1枚の伏せカードを表にすると……突然、雷人と剣山がデュエルしている場に流星群が場に降り注いだ!



「何……!何を発動させた!?」
 何の前触れも無く発生した流星群が、轟音を発しながら場のモンスターを殲滅していく様子を見た雷人は、思わずこう質問した。

「俺が発動させた最後のカードは……『ジュラシック・インパクト』!この効果により……お互いの場のモンスターはすべて破壊され、破壊されたモンスターの数×300ポイントのダメージを受けるザウルス……!」
「まさか……そのカードの発動条件を満たすために、『生存本能』でライフを調整していたのか!?」
 剣山がそう言い、雷人が驚くと……モンスターを全滅させた時に発生した火の粉が雷人と剣山に降りかかり……そのダメージによって、ライフをすべて削り取られてしまった……。


ジュラシック・インパクト
通常罠
自分のライフポイントが相手より少ない場合のみ発動可能。
フィールド上のモンスターを全て破壊する。
この効果で破壊されたモンスター1体につき、
そのモンスターのコントローラーは300ポイントのダメージを受ける。
次の自分のターン終了時までお互いのプレイヤーはモンスターを召喚・特殊召喚できない。

剣山LP 600→0
雷人LP 1000→0












「引き分けか……やるじゃないか、剣山!」
「ああ……だが、雷人も本当に強かったザウルス!」
 雷人と剣山は、全力を出し切った後お互いに歩み寄り、軽く握手した……。

「……よし!とりあえずここは、今のデュエルで戦略を変えていれば勝てていたのか検証しようぜ!」
 雷人は、大きな紙をテーブルの上に広げながらそう言った。

「まずは……剣山の墓地には、恐竜族モンスターが何体いたんだ?」
「ああ。『キラーザウルス』、『セイバーザウルス』、『ベビケラサウルス』、『暗黒プテラ』、『フロストザウルス』、『究極恐獣』、『暗黒ドリケラトプス』の7体だドン。」
 剣山がそう軽く答えると、雷人は紙にモンスターの数を書き並べていった。

「例えば……『究極恐獣』をそのまま使うってのはどうだ?」
 雷人は、そう言いながら3300と4000と4400の数字を書き連ねた。

「つまり……攻撃力4400の『超伝導恐獣』を殴った場合、剣山に2900ポイントのダメージを与える事になって『ジュラシック・インパクト』の発動条件を満たさずにすんだんじゃないか!?」
 そして、電卓を叩いて出てきた数字をメモしたが……











「……無理だ。」
「……何でザウルス?」
 残念そうにする雷人に、剣山は軽く質問した。

「俺が攻撃力7300の『究極恐獣』の2回目の攻撃を、攻撃力3700の『ダークティラノ』に放ったとするだろ?そうなると剣山は、『生存本能』を発動させて墓地の恐竜族を8体中7体除外する……1体残しておくのは、『一族の結束』の都合上な。」
「そうなると……俺のライフは1100+2800=3900になり、『究極恐獣』の攻撃を残り300で耐え切る……『ジュラシック・インパクト』で引き分けになる事実に変わりは無いドン……。」
 剣山は、雷人が紙にメモしていく事実にただただ納得するしかなかった……。

「当然、『究極恐獣』で『超伝導恐獣』以外を殴った場合、剣山のライフが1000未満になり、『ジュラシック・インパクト』→『生存本能』で俺の負けだな……。」
 さらに雷人は、3700、3600、300、3800、3500、500、1200……と、暗号にしか見えない数字を書き殴っていった……。

「……と、見れば見るほど逆転の要素が無くなっていくな……。さすが本戦出場者だな、剣山!」
「いや、俺もギリギリだったザウルス!……本戦でも、勝ってみせるドン!」
「いや……星海校をなめてもらっちゃ困るぜ。……本戦の開催が、楽しみだな!」











 ……と、雷人と剣山の話し合いは、夜明けまで続けられるのであった……。


次回予告

リナ「今日のパーティーで実況してた千里って奴から聞いたんだけど、『明日、レイとカムイに一緒にインタビューする』……だってさ。……嫌んなっちゃう。」
センリ「ハイテンションな上に、挑発的な女だな……。完全にリナを誘い出そうとしてるだろ……それ。」
リナ「……よし!明日、そのインタビューに殴りこんでやろっかな!」
センリ「……やめとけ。あんまり妙な行動すると、千里って女に『本校vs星海校に大スキャンダル発覚!1人の生徒をめぐる争い!』とか何とかネタにされるぞ。……既にネタにされてそうだがな。」

次回、『GX plus!』第四十五話!



『千里さん出撃!黒薔薇の園!』

センリ「黒薔薇の花言葉は『恨み』、『憎しみ』、『私はあなたのもの』……みたいだな。2人をつなぐのは嫉妬か……綺麗な考えな気はしないな。」




第四十五話 千里さん出撃!黒薔薇の園!

 パーティーの夜……カムイの部屋にて……

ピピピ……ピピピ……


『よっ、カムイ。』
「どうしたんスか?センリ。」
 カムイは、軽く電話をかけたセンリに対して軽くそう言った。

『なあ、カムイ。……明日、レイって娘と一緒に千里って奴からインタビューを受ける様に言われたんだろ?』
「ああ。……って、何で知ってるんスか?」
 カムイは、センリの予想外の一言に、少し驚いていた……。

『いや、リナがそのインタビュアーから聞いたらしいぜ。』
「……?インタビュアーは、『他の人には言わないで下さいね!』……って言ってたんスけど……何でリナに教えたんスかね……?」
 カムイは、千里の行動を少し疑問に思っていた……。

「……そうなると……リナを誘い込むのが目的なんスかね。」
『そうか……。乱入させて、無理矢理修羅場に発展させようと言う感じか?』
 センリは、軽くそう言った。

『愛は罪深い物だな、カムイ。』
「確かに……それを利用する奴はそれ以上に罪深いんスけどね。」
 カムイは、声を低くしてそう言った。



『なら……俺が明日、リナが妙な行動をしない様に見張っといてやろうか?』
「ん?いいんスか?」
『ああ、当然だぜ。』
 センリは、電話の向こうから軽くそう言った。

『だが……うまくいかないかもな。リナの奴かなり暴力的だからな。』
「……リナが聞いたら、絶対殴られるッスよ。」
 カムイは、センリの一言に対してそう呟いた。

「……頼むッスよ、センリ。」
『ああ、努力するぜ。』

ピッ。



「……とりあえず……あの千里って奴について誰か知ってないんスかね……。」
 カムイは、千里について何か知っていないかと、PDAを操作して、電話帳のハ行を開き……



ピピピ……ピピピ……

「……………………。」
 カムイはしばらく待っていたが、雷人(フルネームが『疾風(はやて 雷人』)が電話に出る事は無かった……。

ピッ。

「……………………つながらないッスね……。」
 カムイは、残念そうにそう呟いた。

「ナオの携帯番号は知らないから……質問する事はできないんスよね……。」
 カムイは、電話帳のサ行を見てナオ(フルネームが『早乙女(さおとめ ナオ』)と連絡が取れない事を感じながら、また残念そうにそう言った。

「上級生に聞けないとなると……次は……」
 そう言いながらカムイは、電話帳のカ行を開き……



ピピピ……ピピピ……

『何だい?カムイ。』
「コウジ、聞きたい事があるんスけど……。」
 カムイは、コウジ(フルネームが『国枝(くにえだ 浩司』)に対して軽くそう言った。

「今日のデュエルでアナウンサーをしてた千里って奴についた、何か知ってるッスか?」
『……ああ。』
 コウジは、声を低くしながらそう言った。

「千里って奴が、明日オレとレイにインタビューする事をリナにわざわざ言ったんスよね……。何か目的があるんスかね?」
 カムイが、軽くそう言うと……



『何だって!……あのバカ姉貴!何考えてんだ!』
 電話の向こうから、突然怒号が飛んだ。

「姉貴……?千里って、コウジの姉だったんスか!?」
『ああ……。今はOBとしてこの星海校で働いてるんだが……あいつ考えがバカすぎるんだよ!情報収集にも、勝手に個人的な悪趣味を挟むぐらいだからな!』
 コウジは、感情を顕にした口調でそう言った。

「調べる?……何を調べるんスか?」
『多分……レイって娘に自分のデッキでデュエルさせ、そのデッキを調べるのが目的だと思うな……。』


「……デッキを調べる!?それって、オレ達を有利にするためなんスか?」
『……バカ姉貴は、僕達星海校の勝利を望んでいる……。恋愛感情をくすぐってデュエルに誘導させるのは、バカ姉貴の変な趣味だと思うけどね……。』
 コウジは、千里の考え方に半分呆れながらそう言った……。

「……明らかにフェアじゃ無いッスね……。……コウジも、リナの乱入を防ぐために協力してくれないッスか?」
『言われなくったってそうするな……。バカ姉貴のいい様にさせないためにね……。』

ピッ。

 コウジは、そう言いながら通話を切った。



「……千里って奴は……何を仕掛けてくるんスかね……。」
 カムイは、小さくそう呟いた……。





















――翌日……ある喫茶店にて……


「……来て下さいましたね!」
 インタビュー場所で待っていた千里は、ほぼ同じタイミングで来たカムイとレイに対してそう言った。

「さあさあ、こちらへどうぞ!」
 そう言いながら千里は、カムイとレイを喫茶店の中に誘導し、同じテーブルに隣同士で座らせた。





















「あっ、入ってっちゃった!もうちょっと近付かないと……」
 千里に集合場所を聞かされていたため、レイの様子を待ち伏せして見ていたリナは、喫茶店に近付いて行ったが……

「おい、リナ。」
 リナを見張りにやってきたセンリとコウジに、小さな声で呼び止められた。

「あっ、センリとコウジじゃん。何しに来たの?」
「まあ……千里って奴のインタビューに不安があって……って所だね。」
 リナの質問に対して、コウジは軽く答えた。

「とりあえず、ここは危険だな。……うまく死角に隠れるぞ。」
 センリ達3人は、喫茶店の中の様子を確認できながら、中のカムイ達には見えない好都合な死角を見つけ、そこに身を隠す事にした。





















「(確かに……コウジの言う通り、リナにレイを嫉妬させる事が目的に思えるッスね……。)」
 カムイは、コウジの一言を意識してそう考えていた。

「……では、カムイ君とレイちゃんには、お互いに1つずつ、何か質問しあってもらいましょう!」
 そう言いながら千里は、座っているカムイとレイの間にマイクを近付けていった。

「……カムイ君に、好きな娘っているの?」
 レイは、少し恥ずかしそうにそう言った。

「好きな娘?……まあ、いない事は無いッスね。」
 カムイは、レイに心の中を感じ取らせない様に軽く語った。

「……そうなんだ……。」
 レイは、少し残念そうにそう呟いた。

「…………。」
 カムイは、腕を組みながらレイの目を見て……

「なら逆に……オレからも質問させてもらうッスよ。」
 ……そして、さらにそう続けた。



「……レイは、好きな人と別れた事があるんじゃないんスか?」
 …………と。

「な…何で……」
「……レイは、オレの事を何か別の奴と掛け合わせて見てる様に思えるんスよね。」
 レイの質問に対して、カムイは思っていた事を軽くそう言った。



「……うん……。」
 レイは、うつむきながら小さくそう答えた……。

「でも……でも……!もう一度でもいいから、会いたいよ……十代様に……。」
 そして、だだをこねるようにそう言ったが……

「だが……オレは代替品にはならないんスよ。」
 ……カムイは、レイを諭すようにそう言った。

「……ゴメン……1人のワガママで迷惑かけちゃって……。」
 レイは申し訳無さそうに、カムイに向かってうつむきながらそう呟いた……。

「なら……こう言うのはどうッスか?」
 落ち込むレイに対して、カムイはこう言った。



「オレが遊城十代を、レイの前に連れて行く。」
 …………と。

「どうして……?気を使ってくれなくても……」
「気を使ってる訳じゃ無いッスよ。オレは遊城十代と戦いたい……レイは遊城十代に会いたい……。利害は一致すると思うんスけどね。」
 当惑するレイに向かって、カムイはそう諭した。

「……ありがとう……。」
 レイは、目を少し潤ませ、両手でカムイの右手を握り締めながらそう言った。
 すると……



 ガタッ……バタバタバタバタ……



 喫茶店の外から、何かが床にぶつかる音と何かを床に叩き付ける音が突然鳴り始めた……。

「(おっ……来ましたね……。)」
 千里は、外から鳴った音を聞き、チラッと出入り口の方を見た……。





















「おい……落ち着け……リナ。」
 喫茶店の死角でリナを見張っていたセンリは、飛び出そうとしたリナを床に押し付けながらそう言った……。
 センリとコウジはリナが飛び出さない様に、センリはリナの右肩と口を、コウジはリナの左肩を押さえていた(足はジタバタさせているので、危なくて押さえられなかった)……。

「ひははほ〜、いはへへはないほ、はいつにとられはうよ〜。(嫌だよ〜、今出てかないと、あいつに取られちゃうよ〜。)」
 リナは、口を押さえ付けられてもごもごしながらそう言った。

「大丈夫だろ。……そうなったら、いつもの様に暴れまわってボコボコにすればいいだろ。」
「……ほほふほ。(……怒るよ。)」
 リナは、センリを睨みながらそう言った。



















「(……中々来ませんね……。)」
 千里は、中々来ないリナに対して、少しそわそわし始めた……。



「……誰を待ってるんスか?」
 そわそわしている千里を見たカムイは、声を低くしてそう質問した。

「べ……別に何でもありませんよ……」
「なら……何でリナにだけわざわざオレ達の場所を教えたんスか?」
 図星を突かれて当惑する千里を追い詰める様に、カムイは質問を重ねた。

「な、何で知ってるんですか!?……あの娘にちゃんと『言わないで下さいね!』……って言ったはずなのに、裏切りましたね!」
「……リナは千里の仲間じゃないんスよ。初めから仲間じゃないから、裏切りにはならないと思うんスけど……。」
 カムイは、まだ当惑している千里に、声を低くして話した……。



「何……それ……。」
 千里の、相手を傷付ける事を厭わない、あまりに自分勝手な行動を知ったレイは、みるみる怒りがこみ上げてきて……


「そもそも……普通その程度で嫉妬する訳無いですよね?……いいじゃないですか、ちょっとぐらい嫉妬された方が、面白くなり……」
「……ふざけないで!!」
 ……レイは、千里の態度に対しての怒りの感情を抑えきれなくなり、千里に対してそう怒鳴りつけた!

「ど、どうしたんですか……?レイちゃん……。」
 突然のレイの一言に、千里は少し当惑していた……。

「あなた、それでも女なの!?乙女心を何だと思ってるの!」
 当惑する千里に対して、レイはさらに言葉を続けた。



「(これは……ちょっと乙女心をくすぐれば、簡単にデュエルに持って行けそうですね……!)」
 千里は、レイの行動を軽く推測し、次に言うべき言葉を考えた……。

「だって……面白そうですからね!2人の女の子が、1人をめぐって争う様子を見るのは!」
「……何て人……!」
 千里の無頓着な一言(演技だが)に、さらにレイは怒りの感情を顕わにした。

「許さない……!乙女の一途な思いを踏みにじるなんて……!思い知らせてあげる!」
 レイはそう言いながらデッキケースに手をやり……両手とデッキをテーブルの上に置き、椅子を後ろに倒してしまいそうな勢いで立ち上がった。
 千里は、心の中で「うまくいった!」……と笑みを浮かべていた……。

「デュエルですか?……別にやってもいいですけど、私が勝ったら、レイちゃんの有る事無い事ペラペラ喋っちまいましょうかねー。」
 千里は、口の辺りに手を添えながらそう言った。

「あなた……何を知っているの!?」
「例えば……レイちゃんの身長とか体重とか……スリーサイズも言っちゃいましょうかね。」
 千里がレイに耳打ちをすると……レイは一瞬で顔を赤くして……











「ほ……本気でそんな事話す気なの!?……最低!あんた以上にあくどい人なんて見た事無いよ!」
 千里に対して、込み上げる怒りをすべてぶつけるかの様にそう言い放った。

「あなただけは……許さない!」
 そう言いながらレイは、テーブルの上に置いたデッキをデュエルディスクにセットし、デュエルディスクを構えた。



「(ふふふ……レイちゃんは直情的……悪く言えば単純な娘ですね。完全に私の思った通りに動いちゃって……可愛いんだから。)」
 レイの様子を見た千里は、心の中でそうほくそ笑んでいた……。

「(……後は、のんびりデュエルして、レイちゃんのデッキの真の姿を解き放たせるだけですね。)」
 そして、千里は自分のデュエルディスクを構えた……。





















「…………。」
 レイの様子を見たリナは、ジタバタするのを止め、少し落ち着いていた……。

「どうした?リナ。」
 急に暴れなくなったリナの様子を不思議がったセンリは、軽くそう尋ねた。

「いやさ……あいつ、あたしのためにあんなに怒ってくれてるのかな……って思ってさ。」
 リナは、小さくそう呟いた。

「そうだね、絶対に。」
「ああ。だから突撃なんて止めろよな。突撃したら、余計にカムイに嫌われちまうぜ。」
 コウジとセンリは、リナを諭すようにそう言った。

「……分かったよ。あたしだって、レイって奴にあの千里って奴を倒してほしいかんね。」
 リナは、不本意ながらも仕方なくそう口にした。

「……よし。ここは気分転換に、3人で何か食べにいくか?」
「うん、行く行く。」
 センリにそう言われたリナは、嬉しそうにそう言ったが……

「……あたしの事、何か食べさせれば落ち着くと思ってんの?」
「いや、別に……。」
 リナにそう言われたセンリは、小さくそう呟いた……。



「(バカ姉貴は……これ以上おかしな事はしないか……?)」
 コウジは、不安そうに千里の方を少し見てそう考えた……。





















「「デュエル!!」」
 レイvs千里のデュエル――先攻は、千里だった。

「私のターン、ドロー!」
 千里は、軽くカードを1枚ドローして……

「手札から、魔法カード『手札抹殺』を発動しますよ!さあ、手札を捨ててください!」
 千里がそう言うと、千里とレイは手札をすべて捨て、新たにカードを5枚ドローした。


手札抹殺
通常魔法
お互いの手札を全て捨て、それぞれ自分のデッキから
捨てた枚数分のカードをドローする。


「(捨てたカードは『ワン・フォー・ワン』、『ミスティック・エッグ』、『ロックメイス』、『エンジェル・リフト』、『シャインエンジェル』……。とりあえず、低レベルモンスターのサポートが多いですね……。)」
 そして、レイが捨てたカードを確認し、デッキの方向性を推測していた……。

「(後は、悪魔族の『ロックメイス』……何の目的ですかね……。)」
 しかし、『ロックメイス』の意味を理解できず、少し悩んでいた……。



「それから……手札から、フィールド魔法『ブラック・ガーデン』を発動しますよ!」
 千里が、1枚のフィールド魔法をデュエルディスクに置くと……突然、レイと千里の周りに、モンスターを虎視眈々とねらう不気味な黒薔薇が大量に発生し……1つの花畑へと姿を変えた!

「な……何……?この不気味な庭は……。」
「『ブラック・ガーデン』は、モンスターの命を養分として薔薇を咲かせる庭ですよ!」
 千里は、『ブラック・ガーデン』の主な効果を軽く語った。

「ちょっと……ちゃんと教えてよ!」
「ダ〜メ!教えてあげな〜い!自分の無知と無力を呪うんですね!」
 千里は、レイをからかう様に舌を出しながらそう言った。



「……主な効果は、モンスターが召喚・特殊召喚される度に、そのモンスターの攻撃力を半分にして、相手に『ローズ・トークン』を与えるんスよ、レイ。」
 カムイは、腕を組みながらそう呟いた。

「なっ……ちょっと、カムイ君!教えないでくださいよ!」
 千里は、カムイの方を向いて思わずそう言った。


ブラック・ガーデン
フィールド魔法
「ブラック・ガーデン」の効果以外の方法で
モンスターが召喚・特殊召喚に成功した時、そのモンスターの攻撃力を半分にし、
そのモンスターのコントローラーから見て相手のフィールド上に「ローズ・トークン」
(植物族・闇・星2・攻/守800)1体を攻撃表示で特殊召喚する。
自分はこのカードとフィールド上に表側表示で存在する
全ての植物族モンスターを破壊し、破壊したモンスターの攻撃力の
合計と同じ攻撃力のモンスター1体を自分の墓地から選択して特殊召喚する事ができる。


「……まあいいですよ!モンスターを1体セットして、カードを1枚場に伏せてターンエンド!」
 千里は、少し残念そうにターンを終えた。

「……ボクのターン、ドロー!」
 レイは、カードをドローして作戦を考えた……。

「(……『ブラック・ガーデン』の効果で、召喚したら攻撃力が半分になっちゃうから……攻撃できないかな……。)」
 レイは、乙女心を傷つけた千里を何とか打ちのめしたいと考えていたため、『ブラック・ガーデン』の効果にイラつきを感じていた……。

「……モンスターをセットして、カードを2枚場に伏せて、ターンを終了するよ!」
 レイは、仕方無く消極的にターンを終えた。



「(モンスターをセットするだけですか……。攻撃力の高いモンスターはあまり入ってないみたいですね。……『魔のデッキ破壊ウイルス』を使ったら、泣きべそかいちゃいそうですねぇ。)」
 千里は、勝手にそう推測していた……。


現在の状況
レイ LP…4000
   手札…3枚
   場…裏守備モンスター1体
     伏せカード2枚

千里 LP…4000
   手札…2枚
   場…裏守備モンスター1体
     ブラック・ガーデン(表側表示)
     伏せカード1枚


「私のターン、ドロー!」
 ドローしたカードを確認した千里は、軽く笑みを浮かべた……。

「手札から、永続魔法『種子弾丸』を発動しますよ!」
 千里の場に、巨大な大砲の様な形をした花……花大砲が出現した!

「セットしていた『アイヴィ・ウォール』を反転召喚しますよ!それにより、『種子弾丸』にプラントカウンターが1つ乗ります!」
 千里の場に、茨の壁みたいなモンスターが姿を現すと……花大砲の中に、1つの種子が装填された!


種子弾丸
永続魔法
植物族モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚される度に、
このカードにプラントカウンターを1つ置く(最大5つまで)。
フィールド上に存在するこのカードを墓地に送る事で、
このカードに乗っているプラントカウンターの数
×500ポイントダメージを相手ライフに与える。


種子弾丸に乗ったプラントカウンター 0個→1個

「……『アイヴィ・ウォール』のリバース効果が発動しますよ!レイちゃんの場に、『アイヴィトークン』を守備表示で特殊召喚!『種子弾丸』にプラントカウンターがもう1つ乗りますよ!」
 『アイヴィ・ウォール』は、体の一部をレイの場に添え木すると……レイの場に、小さな茨のモンスターが現れた。
 そして、『アイヴィ・ウォール』から放たれる胞子を利用し、花大砲は2つ目の種子を装填した。


アイヴィ・ウォール
地 レベル2
【植物族・効果】
リバース:相手フィールド上に「アイヴィトークン」
(植物族・地・星1・攻/守0)1体を守備表示で特殊召喚する。
「アイヴィトークン」が破壊された時、
このトークンのコントローラーは300ポイントダメージを受ける。
攻撃力300 守備力1200


種子弾丸に乗ったプラントカウンター 1個→2個

「そして……『ブラック・ガーデン』の効果が発動しますよ!『アイヴィトークン』の攻撃力を半分にして、私の場に『ローズ・トークン』を攻撃表示で特殊召喚!……当然、プラントカウンターも忘れてはいけませんよ。」
 小さな『アイヴィトークン』は、『ブラック・ガーデン』から発生した茨に巻き付かれて、有りもしないはずの攻撃力を奪われ……千里の場に小さな黒薔薇を咲かせた!
 さらに『ローズ・トークン』からの受粉によって、花大砲に3つ目の種子が装填された。

アイヴィトークン 攻撃力0→0
種子弾丸に乗ったプラントカウンター 2個→3個

「さて……私にはまだ通常召喚が残されていますね!『アイヴィ・ウォール』をリリースして、『ローズ・テンタクルス』をアドバンス召喚!」
 千里がそう言うと、場に蔦を足に見立て、頭部が薔薇の花となっている、イカを模したかの様なモンスターが現れ……その足の様な蔦で、『アイヴィ・ウォール』をまるでうどんの様につまんでむしゃむしゃと食べてしまった……。

種子弾丸に乗ったプラントカウンター 3個→4個

「……当然、『ブラック・ガーデン』の効果で攻撃力は半減しますがね!」
 モンスターの召喚に反応した『ブラック・ガーデン』は、蔦を伸ばして『ローズ・テンタクルス』の養分を奪い取り……レイの場に一輪の薔薇を咲かせた!
 それに加え、花大砲にもう1つ種子が装填され……限界値まで補充を完了させた。

ローズ・テンタクルス 攻撃力2200→1100
種子弾丸に乗ったプラントカウンター 4個→5個


現在の状況
千里 LP…4000
   手札…1枚
   場…ローズ・テンタクルス(攻撃力800・攻撃表示)
     ローズ・トークン(攻撃力800・攻撃表示)
     ブラック・ガーデン(表側表示)
     種子弾丸(プラントカウンター×5・表側表示)
     伏せカード1枚

レイ LP…4000
   手札…3枚
   場…ローズ・トークン(攻撃力800・攻撃表示)
     アイヴィトークン(守備力0・守備表示)
     裏守備モンスター1体
     伏せカード2枚


「……残念ですが、『種子弾丸』に関係無くこのターンで終わるかもしれませんね!」
「ええっ!?」
 レイは、千里の一言に、少し驚いていた……。



「手札から、装備魔法『憎悪の棘』を『ローズ・テンタクルス』に装備させますよ!」
 千里がそう言うと……『ローズ・テンタクルス』の足の様な蔦に、巨大な茨が寄生させられ……その茨に蔦が見る見るうちに、悲鳴と共に浸食されていった!
 そして、寄生された蔦が、まるで茨の鞭みたいに変化し……触れば手がズタズタになってしまいかねない、自分で自分の体を傷つけてしまいそうな形相へと姿を変化させた!

ローズ・テンタクルス 攻撃力1100→1700

「行きますよ……!『ローズ・テンタクルス』で、『ローズ・トークン』に攻撃!」
 『ローズ・テンタクルス』は、茨と化した蔦で『ローズ・トークン』を打ち払い……その勢いのまま、レイの右手を鞭打ちした!

「っっうっ……」(レイLP 4000→3100)
 レイは、当然ソリッドビジョンの『ローズ・テンタクルス』の攻撃で怪我をした訳ではないが、右腕を茨の蔦に巻き付かれ、棘が当たっているのに痛くないと言う矛盾と不快感を感じていた……。

「まだですよ……!『ローズ・テンタクルス』は、通常の攻撃に加えて、相手の場の植物族モンスターの数だけ追加攻撃ができます!」
 千里がそう言うと、『ローズ・テンタクルス』はレイの場のモンスターを再び痛めつけようとしているかの様に、足の茨を構えた……。


ローズ・テンタクルス
地 レベル6
【植物族・効果】
このカードは特殊召喚できない。
自分のバトルフェイズ開始時に相手フィールド上に
表側表示で植物族モンスターが存在する場合、
このターンこのカードは通常の攻撃に加えて、
その植物族モンスターの数だけ攻撃する事ができる。
このカードが戦闘によって植物族モンスターを破壊した場合、
相手ライフに300ポイントダメージを与える。
攻撃力2200 守備力1200


「『ローズ・テンタクルス』て『ローズ・トークン』に攻撃!ソーン・ウィップ・2!」
「ええっ!?……何で戦闘破壊されてないの……?」
 レイが驚きながら場を確認すると……『ローズ・トークン』は、『ローズ・テンタクルス』の茨に締め上げられ、ほとんど生殺しの状態になっていた……。


憎悪の棘
装備魔法
「ブラック・ローズ・ドラゴン」または植物族モンスターにのみ装備可能。
装備モンスターの攻撃力は600ポイントアップする。
装備モンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
装備モンスターがモンスターを攻撃した場合、
ダメージ計算後に攻撃対象モンスターの攻撃力・守備力は600ポイントダウンする。
装備モンスターと戦闘を行った相手モンスターは、その戦闘では破壊されない。


ローズ・トークン 攻撃力800→200
         守備力800→200

 つまり、何の問題もなく『ローズ・トークン』は『ローズ・テンタクルス』からの追加攻撃をまともに受けてしまった……。

「きゃっ!」(レイLP 3100→1600)
 『ローズ・テンタクルス』は、容赦無く『ローズ・トークン』を茨の蔦でもう1度締め上げ……その勢いのまま、今度はレイの左足首に茨の蔦を巻き付かせた!
 もし『ローズ・テンタクルス』の攻撃が本物だったら、レイの右手首と左足首の皮膚が切れ、血をにじませてしまった所だろう……。

ローズ・トークン 攻撃力200→0
         守備力200→0

「さて……これで終わりですよ!『ローズ・テンタクルス』で、『ローズ・トークン』に攻撃!ラスト・ソーン・ウィップ!」
 千里がそう言うと、『ローズ・テンタクルス』は、自らの養分で生み出されたはずの『ローズ・トークン』を、まったく容赦せずに茨の蔦で縛り上げて持ち上げ……落下の勢いを付けて蔦を伸ばし、同じく茨の蔦で右手首と左足首を縛っているレイを打ち払い、トドメを刺そうとしたが……

「……ふ、伏せ罠カード『ガード・ブロック』を発動するよ!この効果で、その戦闘ダメージを0にして、カードを1枚ドロー!」
 レイがそう言うと、レイの周りに不思議なバリアが発生し……『ローズ・テンタクルス』の鞭打ちを、激しくガラスを引っ掻いた時に発せられるキイィ……と言う感じの音と共に防いだ!


ガード・ブロック
通常罠
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。


「ひっ!」
 ガラスを引っ掻く嫌な音を目の前で聞いたレイは、耳をふさいで思わず鳥肌を立たせてしまった……。

「さ……さすがの私も、ガラスの引っ掻き音がするとは思いませんでしたよ……。」
 少し遠くから聞いていた千里も、小さくそう呟いた……。

「ですが……まだ『ローズ・トークン』の攻撃が残っていますよ!『ローズ・トークン』で、レイちゃんの『ローズ・トークン』に攻撃!ローゼス・ビット!」
「うっ……。」(レイLP 1600→800)
 千里の場の『ローズ・トークン』は、花の中からビームを発射し、レイの場の『ローズ・トークン』を躊躇無く焼き切った!











「(薔薇の中からレーザー……ロボットの武器じゃ無いんスから……。)」
 カムイは、『ローズ・トークン』の攻撃方法に、少し驚いていた……。











「……何とか堪えきった様ですが、『種子弾丸』の存在を忘れてませんよね?」
 千里は、自分の場に存在する大砲の様な花を指差しながらそう言った。

「……メインフェイズ2に入りますよ!『種子弾丸』を墓地に送り、レイちゃんに2500ダメージを与えます!」
 千里がそう言うと、種子をため込んでいた花が勢い良く弾け飛んで……そのから放たれた5個の種子がレイに向かって飛んでいったが……



「て、手札から『ハネワタ』を捨てて、効果発動!この効果で、このターボクがン効果で受けるダメージは0になるよ!」
 レイの目の前に、背中に小さな羽を付けた、オレンジ色したもふもふの天使が現れ……レイのライフを守り抜いた!


ハネワタ
光 レベル1
【天使族・チューナー・効果】
このカードを手札から捨てて発動する。
このターン自分が受ける効果ダメージを0にする。
この効果は相手ターンでも発動する事ができる。
攻撃力200 守備力300


「『ハネワタ』……兄妹揃って好きですねえ。まあいいでしょう!ターンエンド!」
 千里は、軽く皮肉を込めた様な口調でそう言い、ターンを終えた。


現在の状況
千里 LP…4000
   手札…0枚
   場…ローズ・テンタクルス(攻撃力1700・攻撃表示)
     ローズ・トークン(攻撃力800・攻撃表示)
     ブラック・ガーデン(表側表示)
     憎悪の棘(ローズ・テンタクルスに装備)
     伏せカード1枚

レイ LP…800
   手札…3枚
   場…アイヴィトークン(守備力0・守備表示)
     裏守備モンスター1体
     伏せカード1枚


「(……強い……この人……!落ち着いて考えないと……負けちゃうよ……。)」
 レイは、何とか心を落ち着かせようとしていたが……

「(でも……負けるのは絶対に嫌……!あいつに人の秘密をペラペラ喋られるのは……!)」
 千里に負けたくない気持ちが中途半端に混じり合い、心を落ち着かせる事ができなかった……。



「(ふふふ……悩んじゃって、相変わらず可愛いですねえ。……ただのハッタリに心をくすぐられちゃって。)」
 千里は、心の中でそう呟いていた……。











「…………レイ。」
 黙り込んでいるレイに対して、カムイは軽く呼びかけた。

「そもそも……千里がレイの何を知ってるんスか?」
 カムイは、千里の発言の中から疑問に思っている事を口にした。

「ええっ!?それって……」
「普通、レイの身長や体重を調べる方法なんて無いはずッスよね。」
 驚くレイに対して、カムイはそう説明した。



「な……盗み聞きするなんて、卑怯だと思わないんですか!?」
「……この距離なら、普通に聞こえたんスけど……。」
 カムイは、千里の反論に少しだけ呆れた様な口調で話した。

「千里は……レイの身長を1センチ単位で言えるんスか?」
「うっ……っっ!!」
 千里は、カムイの一言に口ごもり……

「な……何なんですか!?カムイ君!私は……別にレイちゃんを辱めたい訳では無いんですよ!私に何か恨みでもあるんですか?」
 千里は、思わずそう言った。

「千里は仲間を傷付けた……それだけじゃ理由として足りないんスか?」
 カムイは、声を低くしてそう答えた。

「仲間……?ボクの事……?」
「ああ。……それだけじゃ無いんスけどね。」
 カムイがそう言うと、レイは少しだけ頬を赤らめた……。











「(……カムイ君の一言には驚いたんですけど……何となくカムイ君とレイちゃん、いい雰囲気になってますね。まあ……2人の関係を深めるために、ここは私は敵役に徹していますか。)」
 千里は、予想外の事態ながら、心の中では軽くにやついていた……。



「……そもそも、レイちゃんが勝てば私は何も言い触らさないんですから……とにかく何にも気にしないで、全力でかかってきて下さいよ!」
 しかし外には、あくまでレイの秘密を知っているかの様にそう言った。

「うん……絶対、勝ってみせるよ!」
 レイは、カムイにカッコ悪い様子は見せたくないと意識を強く持ち、千里の方を見た……。

「……ボクのターン、ドロー!」
 自分のターンを始めたレイは、まず自分の手札を確認した。

「……墓地から光天使3体……『ミスティック・エッグ』、『シャインエンジェル』、『ハネワタ』と、闇悪魔1体……『ロックメイス』を除外して……」
 レイがそう言うと、墓地から3体の光天使、1体の闇悪魔が墓地から飛び出し、場にて混じり合っていった……。

「…………!?……この召喚条件は……ナオ君の持っているカードと同じ……」
 レイの発言に、千里は少し驚いていた……。











「来て……!浄化の神……『天魔神 エンライズ』!!」
 4つの魂が混じり合った元には、白色の天使の羽根を持ち、腕と下半身に黒色のハンドを巻き、腹に異界へと通じる様に見える穴(ホール)を持った、白と黒のコントラストが目立つ1体の天使が現れた!

「しかし……『ブラック・ガーデン』の効果で、『エンライズ』の攻撃力は半減しますよ!」
 『エンライズ』は、『ブラック・ガーデン』から伸びる茨に巻き付かれ……その茨に力を奪われ、『エンライズ』は苦痛に表情を歪めながら攻撃力を大きく落とした!

天魔神 エンライズ 攻撃力2400→1200

「でも……守備力は変わらないから、簡単には戦闘破壊されないよ!『エンライズ』の効果で……『ローズ・テンタクルス』をゲームから除外!」
 『エンライズ』が、守備表示のまま腹のホールを全開にすると……そのホールから不思議な黒い霧が発生し、その霧に巻き込まれた『ローズ・テンタクルス』は、砂の様な物体へと姿を変え……そのまま『エンライズ』の腹のホールへと吸い込まれ、完全に消滅させられた!


天魔神 エンライズ
光 レベル8
【天使族・効果】
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の光属性・天使族モンスター3体と闇属性・悪魔族モンスター1体を
ゲームから除外した場合のみ特殊召喚する事ができる。
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体をゲームから除外する事ができる。
この効果を発動する場合、このターンこのカードは攻撃する事ができない。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
攻撃力2400 守備力1500


「『ローズ・テンタクルス』が一瞬で……!中々やりますね!」
 千里は、『エンライズ』の効果に単純に感嘆していた。

「それから……『シャインエンジェル』を反転召喚!」
 レイの場に、光り輝く1人の天使が現れた。

「バトルフェイズに入るよ!『シャインエンジェル』で、『ローズ・トークン』に攻撃!」
 『シャインエンジェル』は光を放ち、『ローズ・トークン』を一瞬で消滅させたが……

「それなら私も、伏せ罠カード『ガード・ブロック』を発動させてもらいますよ!私への戦闘ダメージは0になり、カードを1枚ドロー!」
 そう言うと、千里の前にもレイの前に現れた様なバリアが発生し……『シャインエンジェル』の攻撃の光を吸収し、千里に1枚の手札を与えた!

「でも、これでボクが有利になったよ!モンスター1体をセットして、ターンエンド!」
 大きくアドバンテージで差を付けたレイは、そう言いながらターンを終えた。


現在の状況
レイ LP…800
   手札…2枚
   場…天魔神 エンライズ(守備力1500・守備表示)
     シャインエンジェル(攻撃力1400・攻撃表示)
     アイヴィトークン(守備力0・守備表示)
     裏守備モンスター1体
     伏せカード1枚

千里 LP…4000
   手札…1枚
   場…ローズ・トークン(攻撃力800・攻撃表示)
     ブラック・ガーデン(表側表示)


「私のターン、ドロー!」
 千里は、カードの枚数では大きく押し込まれているにも関わらず、余裕そうにターンを始めた。

「手札から……永続魔法『世界樹』を発動しますよ!」
 千里の場に、天まで伸び、すべての生命の輪廻を司っているかの様な威圧感を感じさせる、巨大な1本の木が現れた!

「『世界樹』……?何?その大きな木は……。」
「『世界樹』は、植物の散らせた命を自らに蓄えて花を咲かせ……数々の奇跡を起こす樹木なんですよ!」
 千里は、レイに効果を教えない様に、わざとぼかした表現で話した。

「(つまり……植物族が破壊される度に花が咲いて、その花を使って効果を発動する……って事かな……?)」
 レイは、『世界樹』の効果を推測していた……。

「……増えすぎた薔薇は、少し間引きしなければなりませんね!手札から、魔法カード『フレグランス・ストーム』を発動します!この効果で……私の場の『ローズ・トークン』を破壊して、カードを1枚ドロー!」
 千里がそう言うと、千里の場の『ローズ・トークン』が、血赤色の花びらを撒き散らしながら美しく散り……千里に1枚の手札をもたらした!
 さらに、『世界樹』は散り行く『ローズ・トークン』から養分を奪い取り……自らに血赤色の花を1つ咲かせた!


フレグランス・ストーム
通常魔法
フィールド上に表側表示で存在する植物族モンスター1体を破壊し、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。
さらに、この効果でドローしたカードが植物族モンスターだった場合、
そのカードをお互いに確認し自分はカードをもう1枚ドローする事ができる。

世界樹
永続魔法
フィールド上に存在する植物族モンスターが破壊される度に、
このカードにフラワーカウンターを1つ置く。
このカードに乗っているフラワーカウンターを任意の個数取り除く事で、
以下の効果を適用する。
●1つ:このターンのエンドフェイズ時まで、フィールド上に表側表示で存在する
植物族モンスター1体の攻撃力・守備力は400ポイントアップする。
●2つ:フィールド上のカード1枚を破壊する。
●3つ:自分の墓地に存在する植物族モンスター1体を選択し特殊召喚する。


世界樹に乗ったフラワーカウンター 0個→1個

「……おっと!『フレグランス・ストーム』でドローしたカードは、植物族の『シード・オブ・フレイム』でした!よって私は、もう1枚だけカードをドローできますよ!」
 千里は、少し嬉しそうにそう言いながら、カードを1枚ドローした。

「え……?ボクの場にも『アイヴィトークン』がいたのに、何で自分のモンスターを破壊したの……?」
「……言いましたよね?……これは間引きだって。」
 千里は、疑問を抱いている表情のレイに軽くそう言い……











「……『ブラック・ガーデン』……解除!」
 ……手札と場の状況を確認した千里が指を鳴らしながらそう言うと……レイの場にいた『アイヴィトークン』は、みるみる内に枯れていき……『ブラック・ガーデン』は轟音と共に自らの薔薇を枯らせていき、大地へと還っていこうとしていた……。

「何……?何が起こってるの……?」
「これが……『ブラック・ガーデン』の最終効果……。場の植物族すべてを自らと共に大地に還す事で、その攻撃力の合計と同じ攻撃力を持つモンスターを1体、私の墓地から特殊召喚できるんですよ……!」
 そう言っている間に、『ブラック・ガーデン』は『ローズ・トークン』と共に枯れていき、大地に崩れ落ちていった……。
 『世界樹』は、枯れ行く『ローズ・トークン』からも養分を余さず吸い取り、自らに2つ目の血赤色の花を咲かせた……。

世界樹に乗ったフラワーカウンター 1個→2個











「(『世界樹』の花が2つ……。1000年に1度の奇跡の大安売りッスね……。)」
 2つの『世界樹』の花を見たカムイは、心の中でそう呟いた……。











「植物の恵みを糧に……墓地から『スプリット・D・ローズ』が特殊召喚されます!」
 千里の言葉と共に、墓地から、『ローズ・トークン』より一回りも二回りも大きく、頭部と両腕に1つずつ真紅色の薔薇を持つ『スプリット・D・ローズ』が蘇った!

「……もしかして……攻撃力を合わせるために、自分の『ローズ・トークン』を破壊したの……?」
「その通りですよ!……ついでに『アイヴィトークン』が破壊されたので、レイちゃんに300ポイントのダメージを与えますよ!」
 千里は、自信満々にそう言うと、『アイヴィトークン』は破壊された時に棘を飛び散らせ、レイのライフを削った。

レイLP 800→500

「さらに……手札から、『シード・オブ・フレイム』を召喚しますよ!」
 千里の場に、体が人型の根っこの様な姿で、頭に炎の花を咲かせたモンスターが現れた。

「『世界樹』の効果を発動しますよ!フラワーカウンターを2つ取り除き……場のカード1枚……『シード・オブ・フレイム』を破壊!」
 千里がそう言うと……『世界樹』の花2つが飛び、その花に切り裂かれ『シード・オブ・フレイム』が、派手火の粉を撒き散らしながら散っていった!
 『世界樹』は、自分で散らせた『シード・オブ・フレイム』からも養分を吸収し……オレンジ色の花を新たに咲かせた。

世界樹に乗ったフラワーカウンター 2個→0個→1個

「『シード・オブ・フレイム』がカードの効果で破壊された事によって、効果が発動しますよ!私の墓地から、レベル4以下の植物族……『ボタニティ・ガール』を攻撃表示で特殊召喚し、レイちゃんに『シードトークン』を1体あげますよ!」
 千里がそう言うと、墓地から牡丹の花を擬人化した様なモンスター……『ボタニティ・ガール』が蘇り、レイの場に、小さな種型のトークンが現れた。


シード・オブ・フレイム
炎 レベル4
【植物族・効果】
自分フィールド上に存在するこのカードがカードの効果により
破壊され墓地へ送られた時に発動する事ができる。
自分の墓地に存在する「シード・オブ・フレイム」以外のレベル4以下の
植物族モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚し、
相手フィールド上に「シードトークン(植物族・地・星1・攻/守0)」
1体を守備表示で特殊召喚する。
このトークンはアドバンス召喚のためにはリリースできない。
攻撃力1600 守備力1200


シードトークン 攻撃力0
        守備力0

「行きますよ!『スプリット・D・ローズ』で、『シャインエンジェル』に攻撃!」
「ええっ!?……攻撃力0なのに……」
 千里の言葉にレイが驚いている間に、『スプリット・D・ローズ』は果敢に『シャインエンジェル』に向かって突撃したが……攻撃力が0であるため、普通に返り討ちに合い頭部の薔薇を大地に散らした……。

「……やはり花と言うのは、散り際も美しい物ですね!」(千里LP 4000→2600)
 千里は、『スプリット・D・ローズ』が破壊される様子を、美しい物を見るかの様にそう表現した。
 『世界樹』は、当然の様に散った薔薇から養分を吸収し……真紅色の花を咲かせた。

世界樹に乗ったフラワーカウンター 1個→2個

「もしかして……『世界樹』にカウンターを載せるためだけに『スプリット・D・ローズ』に攻撃させたの……?」
「半分、正解ですね。戦闘破壊された『スプリット・D・ローズ』の効果を発動しますよ!私の場に、『D・ローズトークン』を2体特殊召喚!」
 レイの質問に対して千里がそう返答すると……『スプリット・D・ローズ』の頭部の花が散った事によって両腕の薔薇が解放され、独立した二輪の薔薇へと変化した!


スプリット・D・ローズ
闇 レベル7
【植物族・効果】
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分フィールド上に「D・ローズトークン」
(植物族・闇・星3・攻/守1200)を2体特殊召喚する事ができる。
攻撃力0 守備力1500


D・ローズトークン 攻撃力1200
          守備力1200

「さらに……『ボタニティ・ガール』で『シャインエンジェル』に攻撃!」
「ま……また?」
 『ボタニティ・ガール』は、果敢に『シャインエンジェル』に向かって突撃したが……攻撃力が足りないため当たり前の様に返り討ちに合い、大地に自らを散らした……。
 『世界樹』は、『ボタニティ・ガール』からも養分を吸収し、今度はピンク色の花を咲かせた。


千里LP 2600→2500
世界樹に乗ったフラワーカウンター 2個→3個

「『ボタニティ・ガール』が墓地に送られた時……デッキから守備力1000以下の植物族モンスターを1体手札に加える事ができるのですよ!私が加えるカードは……『ダンディライオン』!」
「え……?」
 レイは、『ダンディライオン』のカード名を耳にした瞬間、過去の事が頭を過ぎって少しハッとした表情になった。


ボタニティ・ガール
水 レベル3
このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、
自分のデッキから守備力1000以下の植物族モンスター1体を
手札に加える事ができる。
攻撃力1300 守備力1100


「……レイ。『ダンディライオン』は別に遊城十代だけの特権じゃ無いんスよ。……オレもデッキに入れてるんスからね。」
 カムイは、レイにそう呼びかけた。

「さらに……『D・ローズトークン』で『シードトークン』に攻撃!」
 右の『D・ローズトークン』は、殴る様に『シードトークン』を攻撃し……一撃で打ち砕いた!

世界樹に乗ったフラワーカウンター 2個→3個

「まだですよ!『D・ローズトークン』で、『シャインエンジェル』に攻撃!」
 さらに千里が攻撃宣言すると、『スプリット・D・ローズ』の左手だった『D・ローズトークン』が果敢に『シャインエンジェル』に向かって突撃し……そのまま返り討ちに合い大地にその身を散らせた……。
 当然『世界樹』は、『D・ローズトークン』の養分を余さず吸収し、真紅色の花を1つ咲かせた。

千里LP 2500→2300

世界樹に乗ったフラワーカウンター 3個→4個

「自分からモンスターに突撃させてまでカウンターを貯めるなんて……ライフが減るのが怖くないの……?」
「レイちゃん……貴女、ライフが減るのが怖いんですか?」

「さて……メインフェイズ2に入りますよ!フラワーカウンターを2つ取り除き、『世界樹』の効果発動!」
 千里が『天魔神 エンライズ』を指差しながらそう言うと、『世界樹』に咲いた真紅色の花が2つ散り……



「……のばらと共に散りなさい!『天魔神 エンライズ』!!」
 ……『世界樹』から白色の球体――ホワイトホールが発生し……それに巻き込まれた『天魔神 エンライズ』は、石化し粉々に砕け散った!

世界樹に乗ったフラワーカウンター 4個→2個

「まだですよ……!『世界樹』からフラワーカウンターを2つ取り除き……次は『シャインエンジェル』を破壊!」
 『世界樹』は、今度はオレンジ色の花とピンク色の花を散らせると……再びホワイトホールを発生させ、レイの場の『シャインエンジェル』を石化消滅させた!

世界樹に乗ったフラワーカウンター 2個→0個

「カードを1枚場に伏せ、ターンエン……」
「待って!このタイミングで、永続罠『奇跡の光臨』を発動するよ!この効果で……現れて!『ミスティック・エッグ』!」
 レイがそう言うと、除外していたレイのデッキのキーカード……『ミスティック・エッグ』が、満を持して現れた!

「『奇跡の光臨』……そのカードは!1ターン目から伏せていたカード……私の『ブラック・ガーデン』が消えるまで、温存していたのですか!?」
「いえ……いい発動タイミングがここしか無かったんですけど……。」
 単純に考えていたレイは、千里の頭でっかちな発言に、少し戸惑っていた……。


奇跡の光臨
永続罠
除外されている自分の天使族モンスター1体を選択し特殊召喚する。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。


「それから……相手のエンドフェイズに、『ミスティック・エッグ』の効果が発動するよ!『ミスティック・エッグ』から、新しいベビーが生まれるよ!」
 レイはそう言いながら、デッキの上のカードをめくった……。

「出てくるモンスターは……この子だよ!『ミスティック・ベビー・ドラゴン』!!」
 レイがそう言うと、『ミスティック・エッグ』が光を放ちながら孵化し……緑色の赤ちゃん竜……『ミスティック・ベビー・ドラゴン』が現れた!


ミスティック・エッグ
光 レベル1
【天使族・効果】
このカードはリリースできない。
このカードが戦闘によって破壊され、墓地に送られた場合、
バトルフェイズ終了時に、墓地に存在するこのカードを守備表示で特殊召喚する。
相手ターンのエンドフェイズ時に、このカードを墓地に送り、
「ミスティック・ベビー」と名のつくモンスターが出るまで自分のデッキをめくり、
そのモンスターを特殊召喚する。
他のめくったカードはデッキに戻してシャッフルする。
攻撃力0 守備力0


「(1番上に『ミスティック・ベビー・ドラゴン』がありましたか……。デッキの中身を見れるチャンスだと思ったんですが、残念ですね……。)」
 レイのデッキを見れなかった千里は、残念そうにしていた……。


現在の状況
千里 LP…2300
   手札…1枚(ダンディライオン)
   場…D・ローズトークン(攻撃力1200・攻撃表示)
     世界樹(フラワーカウンター×0・表側表示)
     伏せカード1枚

レイ LP…1600
   手札…2枚
   場…ミスティック・ベビー・ドラゴン(攻撃力1200・攻撃表示)
     裏守備モンスター1体
     奇跡の光臨(表側表示)


「ボクのターン、ドロー!スタンバイフェイズに、『ミスティック・ベビー・ドラゴン』の効果が発動するよ!」
 『ミスティック・ベビー・ドラゴン』は、レイのスタンバイフェイズを迎えた事によって、小さかった体を成長させ……攻撃力を大きく高めた!


ミスティック・ベビー・ドラゴン
光 レベル4
【ドラゴン族・効果】
相手ターンのエンドフェイズ毎に、このカードにミスティックカウンターを1つ乗せる。
このカードに乗ったミスティックカウンターの個数によって、以下の効果を得る。
(特殊召喚されたターンには、この効果を発動できない。)
1個:このカードの元々の攻撃力は倍になる。
2個:このカードをリリースすることで、自分の手札・デッキから
「ミスティック・ドラゴン」1体を特殊召喚する。
攻撃力1200 守備力


ミスティック・ベビー・ドラゴン 攻撃力1200→2400

「それから……『次元合成師』を反転召喚するよ!」
 さらにレイの場に、仮面を身に付けた魔法使いみたいなモンスターが姿を現した。

「(『ミスティック・ベビー・ドラゴン』の攻撃力は2400で、『次元合成師』の攻撃力は1300……。『D・ローズトークン』の攻撃力は1200だから……通れば勝てるよね……。)」
 自分の場の状況を確認したレイは、心の中でそう呟き……

「……行くよ!『ミスティック・ベビー・ドラゴン』で、『D・ローズトークン』に攻撃!」
 成長した『ミスティック・ベビー・ドラゴン』は、自らの力をレイに見せつけるかの様に、果敢に『D・ローズトークン』に突撃し、炎のブレスをぶつけようとしたが……千里は、少し残念そうな表情をした……。



「残念ですが……植物族モンスターが攻撃対象になった事により、伏せ罠カード『棘の壁』を発動させてもらいますよ!」
 千里がそう言うと……『D・ローズトークン』の前に天井まで届くほどに巨大な棘の壁が発生した!
 その壁に『ミスティック・ベビー・ドラゴン』がブレスをぶつけると……棘の足元が焦げ、レイの場のモンスターは、崩れていく棘に押しつぶされて全滅させてしまった……。


棘の壁
通常罠
自分フィールド上に表側表示で存在する植物族モンスターが
攻撃対象に選択された時に発動する事ができる。
相手フィールド上に存在する攻撃表示モンスターを全て破壊する。


「でも……破壊された『次元合成師』の効果発動!除外された『ハネワタ』を手札に戻すよ!」
 『次元合成師』は、自らの犠牲と引き換えに、異次元から『ハネワタ』のカードを取り出し、レイに与えた!


次元合成師
光 レベル4
【天使族・効果】
1ターンに1度だけ、自分のデッキの一番上のカードをゲームから除外し、
さらにこのカードの攻撃力をエンドフェイズ時まで500ポイントアップする事ができる。
自分フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、
ゲームから除外されている自分のモンスターカード1枚を選択し、
手札に加える事ができる。
攻撃力1300 守備力200


「メインフェイズ2に入るよ!モンスターをセットして……ターンエンド!」
 レイは、がら空きの場を埋めるために、手札のカードを1枚セットしてターンを終えた。
 しかし、レイは手札のシャッフルを忘れていたため、『ハネワタ』を手札に温存している事はすでにバレバレだった……。

「私のターン、ドロー!『D・ローズトークン』で、裏守備モンスターに攻撃しますよ!」
 手札の少ない千里は、さすがにする事が無いのか、単純に攻撃宣言を行い……『D・ローズトークン』は、伝説の右で、レイの場の裏守備モンスター……『クリッター』を破壊した!

「でも……破壊された『クリッター』の効果が発動するよ!デッキから、攻撃力1500以下のモンスター1体……『コーリング・ノヴァ』をデッキから手札に加えるよ!」
 『クリッター』は、死に際にレイのデッキに手をやり……デッキから『コーリング・ノヴァ』を探し出し、手札に加えた。


クリッター
闇 レベル3
【悪魔族・効果】
このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、
自分のデッキから攻撃力1500以下のモンスター1体を手札に加える。
攻撃力1000 守備力600


「メインフェイズ2に入りますよ!モンスターをセットし、カードを1枚場に伏せ、ターンエンド!」
 そして千里はすべての手札をセットし、ターンを終えた。


現在の状況
千里 LP…2300
   手札…0枚
   場…D・ローズトークン(攻撃力1200・攻撃表示)
     裏守備モンスター(ダンディライオン)
     世界樹(フラワーカウンター×0・表側表示)
     伏せカード1枚

レイ LP…500
   手札…4枚(内2枚コーリング・ノヴァ、ハネワタ)
   場…奇跡の光臨(表側表示)


「ボクのターン、ドロー!」
 レイは、ドローしたカードを確認し……

「(セットしたモンスターは、絶対に『ダンディライオン』……。『ダンディライオン』を破壊したら、また『世界樹』にカウンターが余計に乗っちゃうから……)」
 次に何をすべきかを、慎重に考えていた……。

「手札から、『コーリング・ノヴァ』を召喚するよ!」
 レイの場に、オレンジ色の輪っかの様な形をした天使族が現れた。

「バトルフェイズに入るよ!『コーリング・ノヴァ』で、『D・ローズトークン』に攻撃!」
「くうっ!」(千里LP 2300→2100)
 『コーリング・ノヴァ』は、円盤の様に回転しながら『D・ローズトークン』に攻撃すると……頭の薔薇が切られて地面に落ちた!
 『世界樹』は、落とした薔薇からも養分を吸い取り、赤色の花を咲かせた。

世界樹に乗ったフラワーカウンター 0個→1個

「『世界樹』にカウンターが乗っちゃったのは残念だけど……カードを1枚場に伏せて、ターンエンド!」
 レイは、守りを固めるためにカードを1枚場に伏せ、ターンを終えた。


現在の状況
レイ LP…500
   手札…3枚(内1枚ハネワタ)
   場…コーリング・ノヴァ(攻撃力1400・攻撃表示)
     伏せカード1枚
     奇跡の光臨(表側表示)

千里 LP…2100
   手札…0枚
   場…裏守備モンスター(ダンディライオン)
     世界樹(フラワーカウンター×1・表側表示)
     伏せカード1枚


「私のターン、ドロー!」
 ドローしたカードを確認した千里は、軽く笑みを浮かべた……。

「『ダンディライオン』を反転召喚し……手札から、魔法カード『フレグランス・ストーム』を発動しますよ!『ダンディライオン』を破壊して、カードを1枚ドロー!」
 千里は、当たり前の様にタンポポ型のモンスター……『ダンディライオン』を破壊し、カードを1枚ドローした……。
 『世界樹』は、芳香の嵐に巻き込まれて花びらを散らせて行く『ダンディライオン』からも当然養分を吸い取り……黄色の小さな花を咲かせた。

世界樹に乗ったフラワーカウンター 1個→2個

「ふふふ、私も運がいいですね!私がドローしたカードは、植物族の『フェニキシアン・クラスター・アマリリス』ですよ!カードをもう1枚ドローします!」
 千里は、軽く笑みを浮かべながらさらに1枚カードをドローした。

「破壊された『ダンディライオン』の効果が発動しますよ!私の場に、『綿毛トークン』が2体特殊召喚されます!」
 千里の場に、白い綿の様なふわふわな頭をした、綿毛型のトークンが2体現れた!


ダンディライオン
地 レベル3
【植物族・効果】
このカードが墓地へ送られた時、自分フィールド上に「綿毛トークン」
(植物族・風・星1・攻/守0)を2体守備表示で特殊召喚する。
このトークンは特殊召喚されたターン、アドバンス召喚のためにはリリースできない。
攻撃力300 守備力300


綿毛トークン 攻撃力0

「おっと!まだ『ダンディライオン』を休ませませんよ!永続罠『リミット・リバース』を発動し、墓地の『ダンディライオン』を特殊召喚しますよ!」
 千里は、そう言いながら墓地の『ダンディライオン』が花びらをすべて再生させた状態で蘇った!


リミット・リバース
永続罠
自分の墓地から攻撃力1000以下のモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。
そのモンスターが守備表示になった時、そのモンスターとこのカードを破壊する。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。


「さらに……『リミット・リバース』をコストに、魔法カード『マジック・プランター』を発動しますよ!デッキから、カードを2枚ドロー!」
 千里がそう言うと、『ダンディライオン』は再び花びらを散らせて大地に還り、千里は2枚のカードをドローした。
 『世界樹』は、大地に還る『ダンディライオン』から、再び養分を吸い取り綺麗な黄色の花を咲かせた。


マジック・プランター
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する
永続罠カード1枚を墓地へ送って発動する。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。


世界樹に乗ったフラワーカウンター 2個→3個

「当然、2体の『綿毛トークン』が特殊召喚されますよ!」
 千里がそう言うと、白い綿の様なふわふわな頭をした、綿毛型のトークンが再び現れた!

「(でも……特殊召喚されたのは『綿毛トークン』だから、このターンに『フェニキシアン・クラスター・アマリリス』は召喚されないよね……。)」
 レイは、最上級モンスターだと言う事を確認した『フェニキシアン・クラスター・アマリリス』は、『綿毛トークン』の制約によってこのターン召喚されないと思っていた……。

「そして……『世界樹』の効果を発動しますよ!フラワーカウンターを3つ取り除き……私の墓地から、植物族モンスターが1体特殊召喚します!『フェニキシアン・シード』を特殊召喚!」
 千里がそう言うと、3つの『世界樹』の花が墓地に供えられると……天から安らかな光が放たれ、1ターン目に『手札抹殺』によって墓地に捨てた『フェニキシアン・シード』が、千里の場に蘇った!

世界樹に乗ったフラワーカウンター 3個→0個

「『フェニキシアン・シード』……?フェニキシアン……もしかして……」
「その通りですよ!『フェニキシアン・シード』を墓地に送り、効果を発動します!手札から……『フェニキシアン・クラスター・アマリリス』を特殊召喚!」
 レイが何かに気付いた表情をすると、『フェニキシアン・シード』が地面に埋まり……一瞬で成長し、巨大な彼岸花――『フェニキシアン・クラスター・アマリリス』へと姿を変えた!


フェニキシアン・シード
炎 レベル2
【植物族・効果】
自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードを墓地へ送って発動する。
自分の手札から「フェニキシアン・クラスター・アマリリス」1体を特殊召喚する。
攻撃力800 守備力0


「行きますよ……!『フェニキシアン・クラスター・アマリリス』で、『コーリング・ノヴァ』に攻撃!」
 『フェニキシアン・クラスター・アマリリス』は、果敢に『コーリング・ノヴァ』に向かって突撃したが……

「伏せ罠カード『和睦の使者』を発動!この効果で……このターンの戦闘ダメージは0になるよ!」
 レイは、攻撃によるダメージを防ぐために、伏せておいた『和睦の使者』を表にした……。


和睦の使者
通常罠
このカードを発動したターン、相手モンスターから受ける
全ての戦闘ダメージは0になる。
このターン自分モンスターは戦闘では破壊されない。



「(勝ちましたね……!)」
 『和睦の使者』を発動させた事以外、何のアクションも起こさないレイの様子を見た千里は、勝利を確信していた……。











「レイ!『ハネワタ』!!」
「え!?あ、はい!」
 レイが、カムイの突然の一言に焦りながら『ハネワタ』のカードを捨てると……レイの前に再びもふもふのモンスターが現れた!
 しかし、当然『ハネワタ』には攻撃を封じる力は無かったが、攻撃してきた『フェニキシアン・クラスター・アマリリス』は、勝っていたのに破壊された……。

「え……?何で『フェニキシアン・クラスター・アマリリス』が破壊されたの……?」
 レイは、戦闘に勝ったはずの『フェニキシアン・クラスター・アマリリス』が破壊された事に驚いていた……。
 すると、『フェニキシアン・クラスター・アマリリス』は、弾け飛んだ事によって発生した彼岸花特有の毒を、レイに向かってぶつけようとした!
 しかし、その毒はレイの前にいた『ハネワタ』によって防がれ、レイに届く事は無かった……。


フェニキシアン・クラスター・アマリリス
炎 レベル8
【植物族・効果】
このカードは「フェニキシアン・シード」または
このカードの効果でしか特殊召喚できない。
このカードは攻撃した場合、ダメージ計算後に破壊される。
自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードが破壊され
墓地へ送られた時、800ポイントダメージを相手ライフに与える。
自分のエンドフェイズ時にこのカードが墓地に存在する場合、
自分の墓地に存在する植物族モンスター1体をゲームから除外する事で、
このカードを墓地から守備表示で特殊召喚する事ができる。
攻撃力2200 守備力0


世界樹に乗ったフラワーカウンター 0個→1個

「『フェニキシアン・クラスター・アマリリス』は、攻撃すると破壊され、破壊されると相手に800ポイントのダメージを与えます……。ダメージステップ中に『ハネワタ』の効果は発動できませんから……カムイ君の助言が無ければ、レイちゃんはここで負けていたのですよ!」
 千里は、レイに攻撃を耐えられた事に対して、皮肉の念を込めながらそう言った。

「そ、そうだったんだ……。ありがとう……」
「礼を言われる程の事じゃ無いッスよ。……レイが勝てば、すべては丸く収まるんスからね。」
 カムイは、レイの礼に対して軽くそう答えた。

「仕方ありませんね!手札から、魔法カード『トークン収穫祭』を発動しますよ!『綿毛トークン』をすべて破壊し、破壊したトークンの数×800ポイント私のライフを回復します!」
 千里は、自分の場に無駄に現れた『綿毛トークン』をすべて破壊し、ライフを大幅に回復した!
 当然『世界樹』は、『綿毛トークン』からも養分を吸い取り、真っ白な花を咲かせた。


トークン収穫祭
通常魔法
フィールド上のトークンを全て破壊する。
破壊したトークンの数×800ライフポイントを回復する。


千里LP 2100→5300

世界樹に乗ったフラワーカウンター 1個→2個











「(このデュエルで使われたトークンは『アイヴィトークン』、『ローズ・トークン』、『シードトークン』、『D・ローズトークン』、『綿毛トークン』……。まさに『トークン収穫祭』って感じなんスね……。)」
 カムイは、心の中でそう呟いた。











「『世界樹』のカウンターを2つ取り除いて、効果を発動しますよ!『コーリング・ノヴァ』を破壊!」
 千里は、レイの場の『コーリング・ノヴァ』を、『世界樹』から発生したホワイトホールによって破壊した!

世界樹に乗ったフラワーカウンター 2個→0個

「カードを1枚場に伏せて……エンドフェイズに、墓地の『フェニキシアン・クラスター・アマリリス』の効果が発動しますよ!墓地の植物族1体……『フェニキシアン・シード』を除外して、墓地から特殊召喚!」
 千里がそう言うと、墓地の『フェニキシアン・クラスター・アマリリス』が墓地の『フェニキシアン・シード』から養分を奪い取り……守備表示で、再び花を咲かせた!

「これで『フェニキシアン・クラスター・アマリリス』を破壊したら、レイちゃんのライフは0になりますよ!これでターンエンド!」
 そして、余裕そうな表情でターンを終えた。


現在の状況
千里 LP…5300
   手札…0枚
   場…フェニキシアン・クラスター・アマリリス(守備力0・守備表示)
     世界樹(フラワーカウンター×0・表側表示)
     伏せカード1枚

レイ LP…500
   手札…2枚
   場…奇跡の光臨(表側表示)


「(『フェニキシアン・クラスター・アマリリス』を破壊したら負けちゃうから……何とか除外するか手札に戻すかして、破壊以外でどうにかしないと……。そうなると……墓地の……!)」
 レイは、心の中でそう呟き……

「……ボクのターン、ドロー!」
 そして、デッキからカードを1枚ドローした……。

「……『奇跡の光臨』を墓地に送って、魔法カード『マジック・プランター』を発動するよ!デッキからカードを2枚ドロー!」
「な、何ですって!?」
 千里が、あまりに意外なカード名の登場に驚いている間に、レイはカードを2枚ドローした。

「(行ける……!この4枚なら!)」
 そして、ドローしたカードを確認したレイはそう自信をつけ……

「手札から……『創世の預言者』を召喚するよ!」
 ……手札から白いローブをまとった女性の預言者を召喚した。

「手札を1枚捨てて……『創世の預言者』の効果を発動するよ!墓地のレベル7以上のモンスター1体……『天魔神 エンライズ』を手札に戻すよ!」
 『創世の預言者』が、持っていた杖を構えて呪文を唱えると……墓地の『天魔神 エンライズ』が光を放ち、再びレイの手札に加わった!


創世の預言者
光 レベル4
【魔法使い族・効果】
手札を1枚捨てる。
自分の墓地に存在するレベル7以上のモンスター1体を手札に加える。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
攻撃力1800 守備力600


「墓地から『コーリング・ノヴァ』、『次元合成師』、『ハネワタ』、『クリッター』を除外して……もう一度来て!『天魔神 エンライズ』!!」
 そして、墓地から再び光天使3体、闇悪魔1体を除外し……再び『天魔神 エンライズ』を特殊召喚した!

「『エンライズ』の効果を発動するよ!『フェニキシアン・クラスター・アマリリス』をゲームから除外!」
 『エンライズ』が、再び腹のホールを全開にすると……『フェニキシアン・クラスター・アマリリス』が砂の様な物質と化し……『エンライズ』のホールに吸い込まれていった!

「(また『エンライズ』ですか……。しかし、私が伏せているカードは『異次元からの埋葬』ですよ。このターンで決着を付けなければ……)」
 千里は、軽く笑みを浮かべながらそう考えていたが……

「それから……手札から、装備魔法『巨大化』を『創世の預言者』に装備させるよ!」
 レイがそう言うと、『創世の預言者』の体が巨大化し……攻撃力が一気に倍になった!


巨大化
装備魔法
自分のライフポイントが相手より下の場合、
装備モンスターの攻撃力は元々の攻撃力を倍にした数値になる。
自分のライフポイントが相手より上の場合、
装備モンスターの攻撃力は元々の攻撃力を半分にした数値になる。


創世の預言者 攻撃力1800→3600

「それから……このカードで終わりだよ!『エンライズ』を墓地に送って、魔法カード『受け継がれる力』を発動!この効果で……『創世の預言者』の攻撃力を2400ポイントアップさせるよ!」
 さらに、レイが『エンライズ』を墓地へと送ると……『創世の預言者』の背中に『エンライズ』の灰色の翼が生え、攻撃力をさらに大きく高めた!


受け継がれる力
通常魔法
自分フィールド上のモンスター1体を墓地に送る。
自分フィールド上のモンスター1体を選択する。
選択したモンスター1体の攻撃力は、
発動ターンのエンドフェイズまで墓地に送った
モンスターカードの攻撃力分アップする。


創世の預言者 攻撃力3600→6000

「攻撃力……6000ですか!?」
 千里は、自分のライフを上回る攻撃力のモンスターをいきなり出された事に、驚きを隠せないでいた……。

「……行くよ!『創世の預言者』で、ダイレクトアタック!サンシャイン・クリエイト!」
 『創世の預言者』は、背中に生えた翼で飛び上がり……持っていた杖から激しい光を放ちながら突撃すると、千里のライフを一瞬で削り落とした!

「くうっ……負けてしまいましたか……。」(千里LP 5300→0)





















「私の負けですね……。約束通り、レイちゃんの秘密は言いふらしませんよ……。」
 千里は、残念そうな表情をしながらそう呟いた……。

「ですが……レイちゃんの本気デッキも中々やりますね!……これは本戦も期待できそうですね!」
「あっ……!」
 千里にそう言われたレイは、ハッとした表情をした……。



「(どうしよう……。お兄ちゃんからデッキを借りてたのに、普段使ってるデッキを使っちゃった……。デッキ内容がバレちゃったかな……?)」
 レイは、感情に任せて自分のデッキを使ってしまった失敗を、思わず悔やんでしまった……。

「……レイ。オレにデッキがバレて、後悔してるんスか?」
 カムイは、レイに対して軽くそう言い……

「なら……オレの普段のデッキを使う様子を見せてもいいッスよ。」
 そして、そう付け加えた。

「えっ……?いいの?」
「ああ。……そもそも、このままじゃオレ達が明らかに有利になるだけッスからね。」
 驚くレイに対して、カムイはそう答えた。

「……ありがとう。」



「(ふふふ……2人とも、いい感じですね。)」
 千里は、カムイとレイの様子を見て、心の中でそう微笑んでいた……。





















――その頃、センリ達は……

「むっ……。」
 丼屋で丼を食べていたリナは、突然表情を変えた……。

「どうした?食べ過ぎて苦しくなったか?」
 センリは、テーブルに4〜5杯くらい丼を重ねているリナに対してそう言った。

「全然。待ち伏せのために朝食べてなかったから、まだ2、3杯くらいは食べれるよ。」
「……朝を食べてない?カムイ達が来るまで、ずっと待ってたって事か?」
 センリは、リナの食欲についてはあまり触れずにそう尋ねた。

「そうだよ。……だって、不安だったもん。あいつ、カムイの事気にしてるみたいだったしさ。」
 リナは、うつむきながらそう呟いた……。

「まあ……大丈夫だったから、良かったじゃないか。」
「でもさ……まだ安心できないんだよね〜……。」
 コウジの一言に対して、リナは不安そうにそう言った。



「(さすがのバカ姉貴も……明日には妙な行動はホイホイできなくなりそうだから……大丈夫か……?)」
 コウジは、自分の携帯に入っているメールを確認し、心の中でそう呟いた……。


次回予告

雷人「明日学校に来た男……あいつは誰だ?」
剣山「いや、分からないドン。……本校の先生じゃ無い事は確かザウルス……。」
雷人「この星海校にわざわざ来たのは……対校戦を見るためか?」
剣山「それか……誰かに会うため……とも考えられるドン。」



次回、『GX plus!』第四十六話!



『E・HEROvsE・HERO!摩天楼に君臨する者!!』

雷人「E・HERO対決……あの男は、E・HERO使いなのか?」






千里「さて……前日、レイちゃんは何とかこの私、国枝 千里にデュエルで勝利しました。……しかしレイちゃんは、自らのデッキを使ってしまった事に、後悔の念を顕わにしてしまいました。そこでカムイ君は、そのお返しにと言う感じで、自らのデュエルを何度かレイちゃんに見せてあげました。……その翌日、ある男がこの星海高にやって参りました。その男は、何とカムイ君と同じく『E・HERO』使い!……カムイ君は、その男に果たして勝てるのでしょうか!?」
 千里は暗い部屋で椅子に座りながら、物語を話すかの様に語った……。



千里「それでは!デュエルファイト!……ReadyーーGo!!」
 そして、部屋に明かりが灯ると椅子から立ち上がり、マイクを握りながらそう言った……。











コウジ「って、何やってんだよバカ姉貴!」
千里「いいじゃないですか!こんな演出も面白そうだったんですし!」



第四六話 E・HEROvsE・HERO!摩天楼に君臨する者!!

「…………。」
 カムイの右側にいるリナは、カムイの左側にいるレイの方を睨む様に見ていた……。

「ど……どうしたの?リナちゃん……」
「何さ。自分の背の方が高いからって、あたしの事子供扱いして。」
 そう質問するレイに対して、リナは声を低くしてそう言った。


「まったく……憎しみにとらわれるなよ、リナ。」
 センリは両腕を組み、壁に背を付けながらそうリナに呼びかけた。

「別に。そんなんじゃ無いもん。」
 リナは、小さくそう言った。





















 一方その頃……

「……で、今日この星海校に、『国崎 康介』って男がやってきたんだぜ、龍也。」
「そうですか。……で、その彼とどの様な話を?」
 星海校の同期の先生……剣一と龍也は、廊下を歩きながら雑談をしていた……。

「とりあえず、本戦出場者が誰なのかを話したな。……で、カムイ君の事を話したら、ご機嫌で去っていったぜ。」
「カムイ君……剣一が優秀な生徒と称していた1年生ですね。そうなると……国崎と言う男は、カムイ君に会いに来たと言う事ですかね?」
「そう言う事だろうな。」
 剣一がそう答えたが、龍也は前を歩いている男の側に、何かある物が存在する事を確認していた……。



「……どうした?龍也。」
「いえ……彼の側に……見えませんか?」
「ああ、見えるな。……女の子の精霊がな。」
 剣一と龍也は、前を歩いていた男――剣山の側にいる精霊――アリスの方を指差しながらそう言った。

「少し……話しかけてみましょうか。」
「そうか、頑張れよ、龍也。」
 剣一にそう言われた龍也は、剣山(の側にいるアリス)の方に歩いて行った。











『初めまして、お嬢さん。』
『…………!』
 龍也の『精霊の声色』を聞いたアリスは、思わずビクッとした。

『誰……?』
 アリスは、恐る恐る龍也の方を見た……。

「ん……?」
 足音が聞こえた剣山は、後ろにいる龍也をチラッと見た……。

『私は龍也と言います。この星海校の先生です。貴女は?』
『……アリスです。』
 龍也の言葉に対して、アリスは小さくそう言った。

『アリスさん……ですね、貴女は……本校から剣山君に付(憑)いてきた精霊ですね?』
 龍也の問いかけに対して、アリスは小さくうなずいた……。

「(こいつ……フェイト教諭と似た事をやってるドン……。)」
 精霊の声色が聞こえない剣山だが、その様子から龍也がフェイトと同じ事をやっている様に、直感的に感じ取っていた……。

『何か……貴女のいた本校で起こっている事について、話して頂けませんか?』
『…………。』
 ……しかしアリスは、フェイトと同じ技法ができる龍也を明らかに警戒し、口を開こうとしなかった……。



「……さっきから一体何やってるザウルス?」
 口パクを続けている(様に見える)龍也に対して、剣山はそう呼びかけた。

「失礼。……しかし、貴方はこの手法をどこかで見た……その様な反応ですね。」
「いや……今年から本校に来た本校のフェイト教諭も、俺の前で同じ事をやってたドン……。」
 龍也の問いかけに対して剣山は、軽くそう答えた。

「……フェイト教諭……?」
 龍也は、小さくそう呟き……

「(……あいつか……?いや……まさか……。)」
 そして、頭の中をある男の名前が過った……。

「で……そのフェイト教諭は、貴方達と一緒に星海高へ?」
「いや……行方不明になって、ついて来て無いザウルス……。」
 剣山は、残念そうに龍也の質問に答えた……。

「そうでしたか……。ありがとうございます。」
 そう言いながら龍也は、剣山の元を離れていった……。











「龍也。彼の持っていた精霊は……」
「アリスと言う名前だそうです。」
 剣一の質問に、龍也はそう答えたが……

「それより……興味深い噂を耳にしました。……本校に、フェイト教諭と言う者がいるそうです。」
「フェイト教諭?」
 剣一は、不思議そうにそう尋ねた。

「もしや……あの男の事かもしれません……。」
「あの男……?定眼(さだめ)の事か!?」


「だが……『精霊の声色』は精霊と意志疎通ができる奴なら誰でも身に付けられる……。さすがに考えすぎじゃないか?」
「ええ……そうだといいのですが……。」
 剣一にそう言われても、龍也はまだ心に色々と引っかかっていた……。











 その頃……カムイ達は……

「も〜我慢できない!さっさとカムイのそばから離れてよ!」
 リナは、カムイとレイの間に割り込もうとしながらそう言った。

「おいおい……いつ我慢したんだ?」
 センリは、リナに対して軽くそう言った。











「(リナちゃんとレイちゃん……カムイ君をめぐって、面白そうな展開になってきましたね……。)」
 カムイ達の様子を遠くから眺めていた千里は、笑みを浮かべながらそう言った。

「よう、千里。」
 そんな千里の後ろから、ある男が話しかけてきた……。

「く、国崎先輩!?」
 後ろから話しかけられた千里は、驚きながら後ろを見た。

「何だ?また生徒同士の惚れたはれたの話に興味津々ってか?」
「そ、そんなんじゃありませんよ!本戦出場者の調査ですよ調査!」
 千里は、顔を赤くしながらそう言った。

「本戦出場者……か。」
 国崎は、そう言いながらカムイ達の方を見た……。



「何か、騒がしいッスね……。」
 カムイは、国崎と千里のいる辺りに耳を傾けていた……。

「よし、行ってみようぜ。」
 センリの一言で、4人は国崎達の方へ向かっていった……。



「……あっ!この人、また!」
 レイは、千里を指差しながらそう言った。

「何、道端で千里に合ったから、話しかけただけだ。」
「そ、そうですよそうですよ!別に後をつけてた訳じゃ無いですから!」
 千里は、自らの身の潔白を証明するかの如く両手をひらひらさせながら大きな声で言った。

「…………。」
 リナとレイは、呆れて物も言えなかった……。



「……なるほど。……あんた達が本戦出場者って訳ねえ。」
 国崎は話題を変えるために、カムイ、センリ、リナ、レイの4人を見ながらそう言った。

「で、カムイってのは誰だ?」
「オレッスよ。……もしかして、コウジが言ってた国崎さんなんスか?」
 国崎に呼ばれたカムイは、一歩前に出ながらそう言った。

「ああ。お前とデュエルしてみた方がいい……と聞いてな。」
「……そう言えば、オレがそう頼んでもらう様にコウジに頼んだんスよね……。」
 カムイは、頭を掻きながらそう言った……。

「だが……さすがに廊下でデュエルする訳にはいかないだろ?」
「そう言えばそうッスね。デュエル場……今使えるんスかね……。」
 国崎に言われたカムイは、何かいい案が無いかと考えていたが……

「あっ、それなら大丈夫ですよ。今は予定は埋まってませんからね。」
 カムイの一言に対して、千里は軽くそう言った。

「何であんたがそんな事知ってんのさ。」
「だって、私がこの星海校のデュエル上の管理を任されている立場ですからね。」
 リナの問いかけに対して、千里はそう答えた。





















 ――デュエル場・大ホールにて

「カムイ……コウジからの噂で聞いたぜ。相当な実力者だってな。……いいデュエルを期待してるぜ。」
「ああ……オレも全力で行くッスよ、国崎さん!」
 ただっぴろいデュエル場に立ったカムイと国崎は、お互いにデッキを交換し、何度かシャッフルしていた……。











「で、千里って奴はどこに行ったんだ?」
「あっ、あんな所に。」
 センリの質問に対して、リナはデュエル場の真上の籠を指差しながらそう言った。











「さあさあさあ!これより、星海校の1年生でありながらデュエルの支配者……『光 カムイ』君と、星海校への来訪者……『国崎 康介』さんとのデュエルが始まります!!」
 籠の中の千里は、マイクを握り締めながらそうアナウンスした。











「支配者……そんなに凄いんだ……。」
「まああくまで例えだろ、レイ。」
 不安そうにするレイに対して、センリは軽くそう言った。
 センリの横にいたリナは、軽くセンリの左足の上に自分の右足を置いた……。

「でもあいつって、司会の時は真面目なんだね。」
「……それだけだと思うがな。」
 リナとセンリは、軽くそう話した。











「それでは……デュエル開始!!」
 千里は、右手を上げながらそう言った。











「俺のターン、ドロー!」
 先攻を取った国崎は、軽くターンを開始した。

「手札から……『E・HERO エアーマン』を召喚するぜ!」
 国崎がそう言うと、扇風機みたいな羽が埋め込まれた金属のプレートを背負った様なヒーローが、国崎の場に現れた!

「『エアーマン』の効果発動!デッキから、『HERO』と名の付くモンスター1体を手札に加えるぜ!俺が加えるモンスターは……『E・HERO ザ・ヒート』!」
 『エアーマン』は、国崎のデッキから『ザ・ヒート』のカードを探し出し、手札に加えた。


E・HERO エアーマン
風 レベル4
【戦士族・効果】
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、
次の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●自分フィールド上に存在するこのカード以外の
「HERO」と名のついたモンスターの数まで、
フィールド上に存在する魔法または罠カードを破壊する事ができる。
●自分のデッキから「HERO」と名のついた
モンスター1体を手札に加える。
攻撃力1800 守備力300


「召喚するだけで手札を1枚増やせる……強力なヒーローッスね……。」
 カムイは、『エアーマン』の強力な効果に感心していた……。

「カードを2枚場に伏せ、ターンエンドだ。」


「オレのターン、ドロー!手札から、魔法カード『融合』を発動するッスよ!手札の『フェザーマン』と『バーストレディ』を融合し……『E・HERO フレイム・ウィングマン』を融合召喚!」


「行くッスよ!『フレイム・ウィングマン』で『エアーマン』に攻撃!フレイム・シュート!」
 『フレイム・ウィングマン』は、腕と一体化した鳥の口から炎を放ち……『エアーマン』を一瞬で焼き尽くした!

「『フレイム・ウィングマン』がモンスターを戦闘破壊した事により、その攻撃力分のダメージを与えるッスよ!」
「だが、『エアーマン』が戦闘破壊された事により、伏せ罠カード『ヒーロー・シグナル』を発動させてもらうぜ!デッキから、レベル4以下の『E・HERO』……『フォレストマン』を特殊召喚!」
 『フレイム・ウィングマン』は、手の口から炎を発して国崎のライフを削ろうとしたが……国崎の場に、木の幹の様な身体をした1体のヒーローが現れた!


E・HERO フレイム・ウィングマン
風 レベル6
【戦士族・融合・効果】
「E・HERO フェザーマン」+「E・HERO バーストレディ」
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、
破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。
攻撃力2100 守備力1200

ヒーロー・シグナル
通常罠
自分フィールド上のモンスターが戦闘によって破壊され
墓地へ送られた時に発動する事ができる。
自分の手札またはデッキから「E・HERO」という名のついた
レベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。


国崎LP 4000→1900

「『フォレストマン』……守備力2000の効果モンスターッスね。」
 カムイは、国崎の場に現れたモンスターを軽く確認していた……。

「メインフェイズ2に入るッスよ!モンスターを1体セットし、カードを2枚場に伏せ、ターンエン……」
「おっと!エンドフェイズに、伏せ罠カード『奇跡の残照』を発動させてもらうぜ!墓地から『エアーマン』を特殊召喚!」


奇跡の残照
通常罠
このターン戦闘によって破壊され自分の墓地へ送られた
モンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターを墓地から特殊召喚する。


「『エアーマン』の第1効果を発動させてもらうぜ!俺の場の『エアーマン』以外の『E・HERO』の数まで、相手の場の魔法・罠カードを破壊!」
「なっ……そうくるッスか……。」
 カムイがそう言っている間に、『エアーマン』はカムイの場に伏せられた『融合解除』のカードを破壊した。











「おおっと!国崎さんは、『奇跡の残照』をエンドフェイズに発動させる事で、カムイ君の伏せカードを発動させずに破壊した!これはまさしくエンドエアーマンです!!」
 千里は、声を大にしてそうアナウンスした……。











「『融合解除』か……。俺が伏せカードを出していなければ、『フレイム・ウィングマン』の攻撃からの『融合解除』で瞬殺をねらっていた訳か。……若いのは勢いがあるねえ。」
「なるほど……。2枚も戦闘破壊前提のカードをセットしたのは、オレが『エアーマン』を戦闘破壊する事を読んでいた……って事なんスね。」
 カムイは、軽くそう言った……。











「何さ、あの国崎って奴。あんなの『エアーマン』が強いだけじゃん。」
 リナは、小さくそう呟いた。

「でも、それと相性のいいカードを探し出すのも実力……だよ。」
 リナの後ろで、誰かがそう話した。

「あっ……来たんだ、お兄ちゃん。」
 レイは、リナの後ろに来たネコ耳帽子を被った少年……ナオの方を見てそう言った。

「なるほどな。特殊召喚する『ヒーロー・シグナル』や『奇跡の残照』を投入していた訳だな、ナオ。」
 センリは、後ろを向き軽くそう言った。

「そうだよ。」
 ナオは、端的にそう言った。











現在の状況
カムイ LP…4000
    手札…0枚
    場…E・HERO フレイム・ウィングマン(攻撃力2100・攻撃表示)
      裏守備モンスター1体
      伏せカード1枚

国崎 LP…1900
   手札…4枚
   場…E・HERO エアーマン(攻撃力1800・攻撃表示)
     E・HERO フォレストマン(守備力2000・守備表示)


「俺のターン、ドロー!スタンバイフェイズに『フォレストマン』の効果を使わせてもらうぜ!デッキから『融合』を手札に!」
 そう言いながら国崎は、デッキから『融合』のカードを探し出し、手札に加えた。


E・HERO フォレストマン
地 レベル4
【戦士族・効果】
1ターンに1度だけ自分のスタンバイフェイズ時に発動する事ができる。
自分のデッキまたは墓地に存在する「融合」魔法カード1枚を手札に加える。
攻撃力1000 守備力2000


「1ターンに1枚手札を増やす効果……残しておくと、危険な事になりそうッスね……。」
 カムイは、『フォレストマン』のサーチ効果を危険視していた。











「(カムイの場の裏守備モンスター……『メタモルポット』の可能性は否定できねえな……。)」
 国崎は、カムイの場の裏守備モンスターを軽く推測し……











「……手札から、魔法カード『融合』を発動!手札の『ザ・ヒート』と『レディ・オブ・ファイア』を融合し……『E・HERO フレイム・ブラスト』を融合召喚!」
 国崎の場に、地割れを起こした大地の様にひび割れた皮膚を持つヒーローが現れた!

「さらにカードを2枚場に伏せ、モンスターを1体セットするぜ!」
 さらに国崎は、自分の手札をすべてデュエルディスクにセットした。

「(手札を全部伏せるんスか……?『メタモルポット』でもセットしたんスかね……。)」
 カムイは、軽くそう推測した。

「行くぜ!『フレイム・ブラスト』で、『フレイム・ウィングマン』に攻撃!」
「ぐっ!」(カムイLP 4000→3800)
 『フレイム・ブラスト』は腹から火炎放射を放ち、『フレイム・ウイングマン』を一瞬で焼き尽くした!

「さらに……『エアーマン』で、裏守備モンスターに攻撃!」
 『エアーマン』は、翼の扇風機から竜巻を発生させ、カムイの場の裏守備モンスター……『フレンドッグ』を吹き飛ばした!

「戦闘破壊されたモンスターは『フレンドッグ』なんスけど……ここは効果を発動しない事を選択するッスよ!」
「何!……まさか、俺が発動させたカードと同じ罠カードを使うのか!?」
 国崎は、カムイの使うカードを一瞬で推測した……。

「ああ……!伏せ罠カード『ヒーロー・シグナル』を発動するッスよ!デッキから特殊召喚するモンスターは……『E・HERO バブルマン』!」
 カムイがそう言うと、空に発生した光のシグナルに呼ばれて、青色の小柄なヒーロー……『バブルマン』が現れた!

「オレの場・手札に他のカードが存在しない事により、『バブルマン』の効果が発動するッスよ!カードを2枚ドロー!」
 カムイは、そう言いながらカードを2枚ドローした。


E・HERO バブルマン
水 レベル4
【戦士族・効果】
手札がこのカード1枚だけの場合、
このカードを手札から特殊召喚する事ができる。
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に
自分のフィールド上と手札に他のカードが無い場合、
デッキからカードを2枚ドローする事ができる。
攻撃力800 守備力1200


「(このタイミングで『バブルマン』か……。『エアーマン』は『フレンドッグ』の効果が挟まりタイミングを逃しちまうが……『フォレストマン』を持っていないのは幸いと言った所か……。)」
 国崎は、カムイの次の手を想像していた……。

「……これで俺は、ターンエンドだ。」


現在の状況
国崎 LP…1900
   手札…0枚
   場…E・HERO フレイム・ブラスト(攻撃力2300・攻撃表示)
     E・HERO エアーマン(攻撃力1800・攻撃表示)
     E・HERO フォレストマン(守備力2000・守備表示)
     裏守備モンスター1体
     伏せカード2枚

カムイ LP…3800
    手札…2枚
    場…E・HERO バブルマン(守備力1200・守備表示)











「『バブルマン』の効果をうまく発動したカムイ君!さあ、その2枚でどう出るのでしょうか!?」
 千里は、相変わらずのテンションでそう言った。











「……オレのターン、ドロー!」
 カムイは、ドローしたカードを軽く確認した。

「(国崎さんの裏守備モンスター……『メタモルポット』の可能性はあるんスけど、今のオレの手札で確認するのはリスクが大きすぎるッスね……。)」
 カムイは、国崎の場の裏守備モンスターの正体を推測していたが、それを確認できない事を残念に思っていた……。

「(ならここは……通るとは思えないんスけど、勝負を賭けてみるのがいいッスね……。)」
 そう考え、カムイは1枚の手札に手をかけた……。

「手札から……魔法カード『融合』を発動ッス!手札の『クレイマン』と場の『バブルマン』を融合し……『E・HERO ガイア』を融合召喚!」
 カムイがそう言うと、『バブルマン』と『クレイマン』が虹色の渦の中で融合し……分厚い黒鉄の装甲を持った1体のヒーローが現れた!

「融合召喚された『ガイア』の効果が発動するッスよ!『フレイム・ブラスト』の攻撃力の半分を『ガイア』に吸収!」
 『ガイア』は、『フレイム・ブラスト』の足元の地面を砕き、その攻撃力の半分を自身に吸収した!


E・HERO ガイア
地 レベル6
【戦士族・融合・効果】
「E・HERO」と名のついたモンスター+地属性モンスター
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードが融合召喚に成功した時、
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
このターンのエンドフェイズ時まで、選択したモンスター1体の攻撃力を半分にし、
このカードの攻撃力はその数値分アップする。
攻撃力2200 守備力2600


E・HERO ガイア 攻撃力2200→3350
E・HERO フレイム・ブラスト 攻撃力2300→1150

「この攻撃が通れば終わりッスよ!『ガイア』で『フレイム・ブラスト』に攻撃!コンティネンタル・ハンマー!!」
 『ガイア』は、両腕を頭上に構え、そのまま勢いを付けて振り下ろそうとしたが……











「伏せ罠カード『異次元トンネル−ミラーゲート−』を発動!この効果で、『ガイア』と『フレイム・ブラスト』のコントロールを入れ替えるぜ!」
 国崎がそう言うと、突然カムイの場の『ガイア』と、国崎の場の『フレイム・ブラスト』の位置関係が突然入れ替わった!
 ……当然、『ガイア』のアームハンマーの衝撃はカムイに直撃する形となり、ライフを大きく削られてしまった……。

「ぐっ……当たり前の様に迎撃されちまったッスね……。」(カムイLP 3800→1600)
 カムイはそう言いながらも、内心は甘いカードの発動に少し安心していた……。


異次元トンネル−ミラーゲート−
通常罠
自分フィールド上に表側表示で存在する「E・HERO」と名のついたモンスターを
攻撃対象にした相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
相手の攻撃モンスターと攻撃対象となった自分モンスターのコントロールを入れ替えて
ダメージ計算を行う。このターンのエンドフェイズ時までコントロールを入れ替えた
モンスターのコントロールを得る。


「いきなりの強襲……これで手が尽きたって事は無いよな?」
「ああ……オレの手札には、まだ手は残されてるんスよ!メインフェイズ2に入るッスよ!手札から、魔法カード『ホープ・オブ・フィフス』を発動!」
 カムイは、国崎の言葉に答えるかの様に、最後の手札をデュエルディスクに差し込んだ!

「オレの墓地の『E・HERO』5体……『フェザーマン』、『バーストレディ』、『フレイム・ウィングマン』、『バブルマン』、『クレイマン』をデッキに戻し……オレの場と手札に他のカードが存在しない事で、カードを3枚ドロー!」
 そう言いながらカムイは、デッキからカードを3枚ドローした。


ホープ・オブ・フィフス
通常魔法
自分の墓地に存在する「E・HERO」と名のついたカードを5枚選択し、
デッキに加えてシャッフルする。
その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。
このカードの発動時に自分フィールド上及び手札に他のカードが存在しない場合は
カードを3枚ドローする。


「『ガイア』の攻撃が通れば万々歳、除去されたとしても次の手を残す……か。乱暴に見えるが理にかなった戦法……俺は嫌いじゃないぜ、そう言う戦法はよ。」
 国崎は、カムイの行動をそう分析した。

「オレは……手札から、『カードブロッカー』を召喚するッスよ!自身の効果で守備表示に!」
 カムイの場に、紫色の鎧を着た小さな戦士が現れ……攻めを考えずに、カムイを守るかの様に守備体勢を取った!

「カードを2枚場に伏せ、ターンエンド!この瞬間、『ガイア』のコントロールは元に戻るッスよ!」
 カムイがそう言うと、位置関係の入れ替わっていた『ガイア』が、音を立てずにカムイの場に戻って来た。

E・HERO ガイア 攻撃力3300→2200


現在の状況
カムイ LP…1600
    手札…0枚
    場…E・HERO ガイア(攻撃力2200・攻撃表示)
      カードブロッカー(守備力400・守備表示)
      伏せカード2枚

国崎 LP…1900
   手札…0枚
   場…E・HERO エアーマン(攻撃力1800・攻撃表示)
     E・HERO フォレストマン(守備力2000・守備表示)
     裏守備モンスター1体
     伏せカード1枚


「俺のターン、ドロー!スタンバイフェイズ時に『フォレストマン』の効果が発動するぜ!デッキから『融合』を手札に!」
 国崎は、またしてもデッキから『融合』のカードを探し出し、手札に加えた。

「カードを2枚場に伏せ……『メタモルポット』を反転召喚し、リバース効果を発動させてもらうぜ!」
「『メタモルポット』……やっぱりそれだったんスね……。」
 カムイが小さくそう呟いた後、国崎とカムイはカードを5枚ドローした。


メタモルポット
地 レベル2
【岩石族・効果】
リバース:自分と相手の手札を全て捨てる。
その後、お互いはそれぞれ自分のデッキからカードを5枚ドローする。
攻撃力700 守備力600


現在の状況
カムイ LP…1600
    手札…5枚
    場…E・HERO ガイア(攻撃力2200・攻撃表示)
      カードブロッカー(守備力400・守備表示)
      伏せカード2枚

国崎 LP…1900
   手札…5枚
   場…E・HERO エアーマン(攻撃力1800・攻撃表示)
     E・HERO フォレストマン(守備力2000・守備表示)
     メタモルポット(攻撃力700・攻撃表示)
     伏せカード3枚(内1枚融合)


「これで手札の補充ができたぜ……!魔法カード『融合』を発動!俺の場の『エアーマン』と『メタモルポット』を融合し……『E・HERO ガイア』を融合召喚!」
 国崎がそう言うと……国崎の場にも重厚な『ガイア』が融合召喚された!

「『ガイア』の効果発動!お前の場の『ガイア』の攻撃力の半分を、俺の場の『ガイア』に吸収させるぜ!」
 国崎の場の『ガイア』は、カムイの場の『ガイア』の足元の地面を崩し、その攻撃力を奪った!

国崎の場のE・HERO ガイア 攻撃力2200→3300
カムイの場のE・HERO ガイア 攻撃力2200→1100

「まだだ!手札から、魔法カード『融合』を発動!手札の『オーシャン』と、場の『フォレストマン』を融合し……」
 国崎がそう言うと、『フォレストマン』の体に『オーシャン』の水のエレメントが吸収されていき……











「『E・HERO アブソルートZero』……融合召喚!!」
 ……その2つが結合した結果発生した熱エネルギーを捨て去り……後に残ったのは、すべてを凍てつかせるかの様な波動を放つヒーローだった!

「まだだ!手札から『E・HERO キャプテン・ゴールド』を捨て、効果発動!デッキから……『摩天楼 −スカイスクレイパー−』をサーチするぜ!」


現在の状況
国崎 LP…1900
   手札…3枚(内1枚摩天楼 −スカイスクレイパー−)
   場…E・HERO ガイア(攻撃力3300・攻撃表示)
     E・HERO アブソルートZero(攻撃力2500・攻撃表示)
     伏せカード2枚


「さて……そろそろ、俺のデッキのエースモンスターを出させてもらうぜ!」
「……!!何を出すんスか!?」
 国崎の一言に、カムイは少し驚いていた……。



「手札から……魔法カード『ミラクル・フュージョン』を発動!墓地から『キャプテン・ゴールド』、『ザ・ヒート』、『レディ・オブ・ファイア』を除外し……」
 国崎が、墓地から3体のモンスターを除外すると……『キャプテン・ゴールド』の体に燃え上がる赤色のエレメントが2つ吸収され……











「来い!『E・HERO キャプテン・マックス』!!」
 国崎の場に現れたのは、燃え上がる様に赤いボクサーグローブを身に付けた、ボクサーの姿を模した様な1体のヒーローが現れた!











「おおっと!!ここで来ました!国崎さんのエースモンスター『キャプテン・マックス』!さあ、カムイ君は『キャプテン・マックス』の熱い拳をどう受けきるのでしょうか!?」
 千里は、国崎のエースが出現した事に驚きながらそう言った。











「『キャプテン・マックス』……初めて見るヒーローッスね!」
「ああ……『キャプテン・マックス』の拳には、2つの選択肢がある!1つは、自らの守りをすべて力に変えた捨て身の拳……もう1つは、威力の代わりに速さを重視した拳だ!」
 国崎がそう言うと……『キャプテン・マックス』は重心を低くし、自らの全体重を乗せたパンチを放つ体勢をとった!


E・HERO キャプテン・マックス
炎 レベル10
【戦士族・融合・効果】
「E・HERO キャプテン・ゴールド」+「E・HERO」と名のついた炎属性モンスター2体
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードが破壊された時、相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択して破壊する。
1ターンに1度、次の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●:このカードの元々の攻撃力を倍にする。
この効果を発動したターン、このカードが相手プレイヤーに与える戦闘ダメージは半分になる。
●:このカードの元々の攻撃力を半分にする。
この効果を発動したターン、このカードは2回攻撃する事ができる。
攻撃力2800 守備力2200


E・HERO キャプテン・マックス 攻撃力2800→5600

「行くぜ!『キャプテン・マックス』で『ガイア』に攻撃!豪熱・バーニング・ナックル!」
 『キャプテン・マックス』が、自らの闘志を拳に送り込むと……その拳は、激しい豪熱を放ちながら燃え盛り始めた!
 そしてそのまま、カムイの場の『ガイア』に、豪熱の拳をぶつけようとしたが……

「オレは……『カードブロッカー』の効果を発動するッスよ!『キャプテン・マックス』の攻撃対象を『カードブロッカー』に変更!」
 ……カムイがそう言うと、『カードブロッカー』は突然『ガイア』の前に立ちはだかり、『キャプテン・マックス』の攻撃を肩代わりしようとした!


カードブロッカー
地 レベル3
【戦士族・効果】
このカードは召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、守備表示になる。
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターが攻撃対象に選択された時、
このカードに攻撃対象を変更することができる。
このカードが攻撃対象になった時、自分のデッキのカードを上から3枚まで
墓地へ送る事ができる。
墓地へ送ったカード1枚につき、このカードの守備力はエンドフェイズ時まで
500ポイントアップする。
攻撃力400 守備力400


「さらに『カードブロッカー』の効果は続くんスよ!デッキの上からカードを3枚墓地に送り……」
 カムイがそう言うと、デッキの上から『和睦の使者』、『カードガンナー』、『エッジマン』が墓地に送られた……。
 そして、その送られたカードを確認したカムイは……

「『カードブロッカー』の効果にチェーンし、永続罠『リミット・リバース』を発動するッスよ!墓地から……『カードガンナー』を特殊召喚!逆順処理で、『カードブロッカー』の守備力が1500アップするッスよ!!」
 そう言いながらカムイが『リミット・リバース』を表にすると、墓地からキャタピラを付けた玩具の様なモンスター……『カードガンナー』が蘇った!
 その後、『カードブロッカー』の持っている盾が、全身を覆うくらいに大きくなった!


リミット・リバース
永続罠
自分の墓地から攻撃力1000以下のモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。
そのモンスターが守備表示になった時、そのモンスターとこのカードを破壊する。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。


カードブロッカー 守備力400→1900

「オレの場に『カードガンナー』が特殊召喚された事で、バトルステップの巻き戻しが発生するッスよ!」
「だが、まだ『キャプテン・マックス』の攻撃力には及ばないぜ!『キャプテン・マックス』で『ガイア』に攻撃!」
 『キャプテン・マックス』は、構わず『ガイア』に攻撃しようとしたが……

「『カードブロッカー』の効果で、攻撃対象を移し替え……デッキの上からカードを3枚墓地に送り、守備力を1500ポイントアップさせるッスよ!」
 『カードブロッカー』は、再び『ガイア』の前に立ちはだかり、カムイはデッキの上から『バブルマン』、『ジャンク・コレクター』、『神剣−フェニックスブレード』を墓地に送ると……『カードブロッカー』は、モンスターの増減に当惑している『キャプテン・マックス』の一瞬の隙を突き、自らの持っている盾を直径2メーター近くの大きさに巨大化させた!

カードブロッカー 守備力1900→3400

「……そして……『リミット・リバース』をコストに、速攻魔法『非常食』を発動するッスよ!この効果で、オレのライフを1000ポイント回復!」
 カムイがそう言うと、カムイの場の『リミット・リバース』が光の粒子となって消え去り……カムイのライフへと変換された!
 当然『リミット・リバース』によって命を繋ぎ止めていた『カードガンナー』は、そのまま破壊され、墓地へと送られた……。


非常食
速攻魔法
このカード以外の自分フィールド上に存在する
魔法・罠カードを任意の枚数墓地へ送って発動する。
墓地へ送ったカード1枚につき、自分は1000ライフポイント回復する。


カムイLP 1600→2600

「『カードガンナー』が破壊された事でオレはカードを1枚ドローし……もう1度、バトルステップの巻き戻しが発生するッスよ!」
 カムイは、そう言いながらカードを1枚ドローした。


カードガンナー
地 レベル3
【機械族・効果】
1ターンに1度、自分のデッキの上からカードを3枚まで墓地へ送って発動する。
このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで、
墓地へ送ったカードの枚数×500ポイントアップする。
また、自分フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。
攻撃力400 守備力400


「モンスターの蘇生、破壊……巻き戻しコンボか!!」
 国崎は、あまりに当たり前の如く行われる『カードブロッカー』強化コンボに、純粋に驚いていた……。

「『カードブロッカー』の効果を発動するッスよ!デッキの上からカードを3枚墓地に送り、守備力を1500ポイントアップ!」
 カムイのデッキの上から『鳳翼の爆風』、『クレイマン』、『ネクロ・ガードナー』が墓地に送られると……『カードブロッカー』の盾が、まるで障壁か何かと見間違えるかの様な大きさにまで巨大化させた!

カードブロッカー 守備力3400→4900

「守備力……4900だと!?だが、『キャプテン・マックス』の攻撃力5600には及ばないぜ!」
 国崎の言葉通り、『キャプテン・マックス』は『カードブロッカー』の巨大な盾にも怯まずに拳を叩き付け……超巨大化した『カードブロッカー』の紫色の盾をまるで紙切れの様にぶち抜き、そのままの勢いで『カードブロッカー』をノックアウトした!

「(『ダンディライオン』さえ墓地に送られれば、もう1回巻き戻しを発生させて『キャプテン・マックス』の攻撃を防ぎ切れたんスけど……それは仕方無いッスね。)」
 カムイは、少し残念そうに心の中でそう呟いた。

「バトルステップの巻き戻しを利用して、『カードブロッカー』の守備力を4900にまで引き上げるか……!さすがに驚いたぜ!」
 国崎は、何度も繰り返された巻き戻しからの強化に、純粋に驚いていた……。











「…………。」
 カムイの戦法を見ていたレイは、その様子を茫然と見ていた……。

「どしたの、レイ。」
 少しゾクッとしているレイに対して、リナは軽く話しかけた。

「何か……凄すぎるかな……。怖いほどに……」
「何さ。今まで散々カムイといたのに、そんな言い方無いじゃん。」
 レイの一言に対して、リナは不愉快そうにそう言った。

「そうじゃ無くって……本戦でカムイ君と戦ったら、全然手も足も出せずに負けちゃうんじゃ無いと思ったら……」
「そんなの、カムイがあんたと当たるとは限らないじゃん。……まっ、あたしもセンリも、結構強いんだけどね。」
 リナは、自信満々にそう言った。

「そう言えば、あと1人……本校からの出場者は、いつ来るんだ?」
 センリは、レイにそう尋ねた。

「え?……誰なのかな……?」
「知らないのかよ!……エド・フェニックスじゃ無いのか?」
「エド先輩……あの人、全然学校に来ないから、あんまり話した事無いんだけど……」
 センリの言葉に、レイは少し申し訳なさそうに答えた。

「なるほどな……俺はカムイとエドの会話を見てたよな、ナオ。」
「……同意を求めないでほしいんだけどね、センリ。」
 ナオは、少し恥ずかしそうにそう言った。















「だが、まだ俺の攻撃は残ってるぜ!『ガイア』で『ガイア』に攻撃!コンティネンタル・ハンマー!」
 国崎の『ガイア』は、両手を頭上で構え、そのままカムイの場の『ガイア』にアームハンマーを叩きつけようとしたが……

「墓地から『ネクロ・ガードナー』を除外して、効果発動ッス!『ガイア』の攻撃を無効にするッスよ!」
 墓地から『ネクロ・ガードナー』の幻影が出現して、『ガイア』の攻撃を封じ込めた!


ネクロ・ガードナー
闇 レベル3
【戦士族・効果】
自分の墓地に存在するこのカードをゲームから除外して発動する。
相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする。
攻撃力600 守備力1300


「くっ……『カードブロッカー』の効果で、『ネクロ・ガードナー』が墓地に送られていたか……。『アブソルートZero』で『ガイア』に攻撃!Freezing at moment(フリージングアットモーメント)!!」
 『アブソルートZero』は、両手から冷気を放ちながら『ガイア』に向かっていき……手の甲の刃で『ガイア』を切り裂くと、一瞬で氷の塊となり砕け散った!

「ぐっ!」(カムイLP 2600→1200)
 カムイは、軽くそう言った……。

「俺はこれで、ターンエンドだ。」


E・HERO キャプテン・マックス 攻撃力5600→2800
E・HERO ガイア 攻撃力3300→2200


現在の状況
国崎 LP…1900
   手札…2枚(内1枚摩天楼 −スカイスクレイパー−)
   場…E・HERO キャプテン・マックス(攻撃力2800・攻撃表示)
     E・HERO ガイア(攻撃力2200・攻撃表示)
     E・HERO アブソルートZero(攻撃力2500・攻撃表示)
     伏せカード2枚

カムイ LP…1200
    手札…6枚
    場…無し


「オレのターン、ドロー!」
 カムイは、7枚になった手札を軽く確認し……

「手札から……フィールド魔法『摩天楼 −スカイスクレイパー−』を発動するッスよ!」
 そう言いながら1枚のフィールド魔法を表にすると……突然戦場がビル街へと変化した!

「摩天楼……か。ヒーローが戦うにはうってつけの演出だぜ……!」
 国崎は、摩天楼に立つ自分の場のヒーローを見て、何かを懐かしむかの様にそう呟いた……。

「オレは……手札から『E・HERO プリズマー』を召喚!」
 カムイの場に、プリズム状に輝く体を持つヒーローが現れた!

「エクストラデッキから『サンダージャイアント』を見せ……その融合素材のデッキから『スパークマン』を墓地に送り、効果を発動するッスよ!『プリズマー』の名前を、『スパークマン』に変更!」
 『プリズマー』は、デッキから出現した『スパークマン』の姿を自らに写し取り……自らの名称を『スパークマン』へと変化させた!


E・HERO プリズマー
光 レベル4
【戦士族・効果】
自分のエクストラデッキに存在する融合モンスター1体を相手に見せ、
そのモンスターにカード名が記されている融合素材モンスター1体を
自分のデッキから墓地へ送って発動する。
このカードはエンドフェイズ時まで墓地へ送ったモンスターと同名カードとして扱う。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
攻撃力1700 守備力


「『プリズマー』の効果……名前変更が主目的じゃねえな。」
「ああ……!手札から、魔法カード『闇の量産工場』を発動!この効果で、オレの墓地から『スパークマン』と『クレイマン』を手札に加えるッスよ!」
 そう言いながらカムイは、慣れた手付きで『プリズマー』によって墓地に送られた『スパークマン』と、『カードブロッカー』によって墓地に送られた『クレイマン』を手札に戻した。


闇の量産工場
通常魔法
自分の墓地に存在する通常モンスター2体を選択して発動する。
選択したモンスターを自分の手札に加える。


「さらに……手札から、魔法カード『融合』を発動ッス!手札の『スパークマン』と『クレイマン』を融合し……『E・HERO サンダー・ジャイアント』を融合召喚!」
 カムイが手札の2体のヒーローを融合すると……カムイの場に、電撃を放つ黄色い大柄なヒーローが現れた!

「(つまり……『ガイア』は2枚以上入れてねえ……って訳か。)」
 国崎は、カムイが『ガイア』を融合召喚しなかった理由を、軽く推測していた……。

「墓地の『神剣−フェニックスブレード』の効果を発動するッスよ!墓地から『スパークマン』と『エッジマン』を除外し、墓地の『神剣−フェニックスブレード』を手札に加えるッス!」
 カムイがそう言うと、『カードブロッカー』によって墓地に送られていた『神剣−フェニックスブレード』を墓地から取り出し、手札に戻した。


神剣−フェニックスブレード
装備魔法
戦士族モンスターにのみ装備可能。
装備モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。
自分のメインフェイズ時、自分の墓地に存在する
戦士族モンスター2体をゲームから除外する事で、
このカードを自分の墓地から手札に加える。


「さらに……手札の『神剣−フェニックスブレード』を捨て、『サンダー・ジャイアント』の効果を発動するッスよ!『サンダー・ジャイアント』より攻撃力の低いモンスター……『ガイア』を破壊!ヴェイパー・スパーク!」
 そして、回収した『神剣−フェニックスブレード』をコストにし、国崎の場の『ガイア』を電撃で撃ち砕いた!


E・HERO サンダー・ジャイアント
光 レベル6
【戦士族・融合・効果】
「E・HERO スパークマン」+「E・HERO クレイマン」
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
自分の手札を1枚捨てる事で、フィールド上に表側表示で存在する
元々の攻撃力がこのカードの攻撃力よりも低いモンスター1体を選択して破壊する。
この効果は1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに使用する事ができる。
攻撃力2400 守備力1500


「(墓地利用、コスト抽出、強化……!ほとんど無駄がねえ……完璧だ!)」
 国崎は、カムイのデュエルの流れに単純に感心していた……。

「行くッスよ!『サンダー・ジャイアント』で『キャプテン・マックス』に攻撃!『摩天楼 −スカイスクレイパー−』の効果で、攻撃力が1000ポイントアップするッスよ!ボルティック・サンダー!」
 『サンダー・ジャイアント』は、摩天楼の月夜をバックにしながら両手から雷を放ち、『キャプテン・マックス』を撃ち抜いた!


摩天楼 −スカイスクレイパー−
フィールド魔法
「E・HERO」と名のつくモンスターが攻撃する時、
攻撃モンスターの攻撃力が攻撃対象モンスターの攻撃力よりも低い場合、
攻撃モンスターの攻撃力はダメージ計算時のみ1000ポイントアップする。


E・HERO サンダー・ジャイアント 攻撃力2400→3400
E・HERO キャプテン・マックス 攻撃力2800

「くっ!」(国崎LP 1900→1300)
 国崎は、小さくそう言ったが……

「破壊された『キャプテン・マックス』の効果が発動するぜ!相手の場のモンスター1体……『プリズマー』を破壊!」
 『キャプテン・マックス』は、『サンダー・ジャイアント』の攻撃を食らいながらも『プリズマー』に向かって突撃し……最後の力を振り絞って、『プリズマー』をノックアウトした!

「……仕方ないッスね。メインフェイズ2に入るッスよ!墓地の『バブルマン』と『プリズマー』を除外し、『神剣−フェニックスブレード』の効果発動!墓地から『神剣−フェニックスブレード』を手札に戻し……そのまま『サンダー・ジャイアント』に装備!」
 『サンダー・ジャイアント』が小さな剣を持つと、攻撃力が少しアップした。

E・HERO サンダー・ジャイアント 攻撃力2400→2700

「(『摩天楼 −スカイスクレイパー−』が存在する状態で、『サンダー・ジャイアント』の攻撃力を上げるだと?……あからさまに罠だな。)」
 国崎は、心の中でそう推測した……。

「……カードを3枚場に伏せ、ターンエンド!」
 そしてカムイは、自分の手札をすべて伏せ、ターンを終えた。


現在の状況
カムイ LP…1200
    手札…0枚
    場…E・HERO サンダー・ジャイアント(攻撃力2700・攻撃表示)
      摩天楼 −スカイスクレイパー−(表側表示)
      神剣−フェニックスブレード(サンダー・ジャイアントに装備)
      伏せカード3枚

国崎 LP…1300
   手札…2枚(内1枚摩天楼 −スカイスクレイパー−)
   場…E・HERO アブソルートZero(攻撃力2500・攻撃表示)
     伏せカード2枚


「俺のターン……ドロー!」
 国崎は、ドローしたカードを確認した瞬間、そのカードをすぐさまデュエルディスクに差し込んだ……。











「――エターナルフォースブリザード!!」
 国崎がそう言うと、カムイの場が突然冷たい冷気に包み込まれた!

「…………!何が起こってるんスか!?」
「速攻魔法……『融合解除』によって、俺の場の『アブソルートZero』の融合を解除したぜ!『アブソルートZero』が場を離れた時、相手の場のモンスターをすべて破壊する……!」
 強力に融合素材を結合し、安定したエネルギー状態となっている『アブソルートZero』は、融合素材である『オーシャン』と『フォレストマン』へと分離するために必要な熱エネルギーを、カムイの場から吸収していった!
 その結果『アブソルートZero』は分離に成功したが、カムイの場は大幅に熱エネルギーを奪われた事で気温が一気に下がり、その結果『サンダー・ジャイアント』は完全に凍り付き、そのまま砕け散ってしまった……。


E・HERO アブソルートZero
水 レベル8
【戦士族・融合・効果】
「HERO」と名のついたモンスター+水属性モンスター
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードの攻撃力は、フィールド上に表側表示で存在する
「E・HERO アブソルートZero」以外の
水属性モンスターの数×500ポイントアップする。
このカードがフィールド上から離れた時、
相手フィールド上に存在するモンスターを全て破壊する。
攻撃力2500 守備力2000

融合解除
速攻魔法
フィールド上の融合モンスター1体を融合デッキに戻す。
さらに、融合デッキに戻したこのモンスターの融合召喚に使用した
融合素材モンスター一組が自分の墓地に揃っていれば、
この一組を自分のフィールド上に特殊召喚する事ができる。


「スタンバイフェイズに、『フォレストマン』の効果が発動するぜ!墓地から『融合』を手札に!」
 国崎は、墓地から『融合』を回収し……

「ここで、伏せておいた速攻魔法『リロード』を発動させてもらうぜ!3枚の手札をデッキに戻し、カードを3枚ドロー!」
 その回収した『融合』をすぐさまデッキに戻し、手札交換の糧とした。


リロード
速攻魔法
自分の手札を全てデッキに加えてシャッフルする。
その後、デッキに加えた枚数分のカードをドローする。


「回収したカードを利用しての手札交換……まさに定石戦法ッスね……。」
 カムイは、小さくそう言った。

「さらに『オーシャン』の効果で、墓地から『エアーマン』を手札に加えるぜ!」
 さらに国崎は、墓地の『エアーマン』を自分の手札に加えた。


E・HERO オーシャン
水 レベル4
【戦士族・効果】
1ターンに1度だけ自分のスタンバイフェイズ時に発動する事ができる。
自分のフィールド上または墓地から「HERO」と
名のついたモンスター1体を持ち主の手札に戻す。
攻撃力1500 守備力1200


現在の状況
国崎 LP…1300
   手札…4枚(内1枚E・HERO エアーマン)
   場…E・HERO オーシャン(守備力1200・守備表示)
     E・HERO フォレストマン(守備力2000・守備表示)
     伏せカード1枚

カムイ LP…1200
    手札…0枚
    場…摩天楼 −スカイスクレイパー−(表側表示)
      伏せカード3枚


「メインフェイズに入るぜ……!手札から、魔法カード『HERO’s ボンド』を発動!俺の手札からレベル4以下の『E・HERO』2体……『エアーマン』と『レディ・オブ・ファイア』を特殊召喚!」
 国崎がそう言うと、場の2体のヒーロー……『オーシャン』と『フォレストマン』が右手を甲を上にしながら差し出し……手札から2体のヒーロー……『エアーマン』と『レディ・オブ・ファイア』が現れ、場に集結した4体のヒーローが、差し出した右手を合わせて輪を作った!


HERO’S ボンド
通常魔法
フィールド上に「HERO」と名のついたモンスターが存在している時に発動する事ができる。
手札からレベル4以下の「E・HERO」と名のついたモンスター2体を特殊召喚する。


「『エアーマン』の効果を発動するぜ!俺の場の『エアーマン』以外の『E・HERO』1体につき、相手の場の魔法・罠カードを1枚破壊するぜ!エアー・シューター!!」
 そして『エアーマン』は、背中の扇風機から竜巻を3個発生させようとしたが……

「その効果にチェーンして、永続罠『デモンズ・チェーン』を発動!この効果で……『エアーマン』の攻撃と効果を無効にするッスよ!」
 『エアーマン』は、カムイの場で表となった罠カードから発生した鎖に拘束され……竜巻を発生させる事ができなくなった!


デモンズ・チェーン
永続罠
フィールド上に表側表示で存在する
効果モンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターは攻撃する事ができず、効果は無効化される。
選択したモンスターが破壊された時、このカードを破壊する。


「くっ……攻撃と効果を同時に封じる、強力な永続罠か……。だが、これで終わりだ!手札から、『キャプテン・ゴールド』を召喚!」
 そう言うと、国崎の手札から金色の1体のヒーローが現れ……カムイの背後にそびえ立つビルの頂上に、国崎の『キャプテン・ゴールド』が飛び乗った!

「オレの後ろに!?……『摩天楼 −スカイスクレイパー−』を発動させたのはオレなんスから、位置関係的にそうなるッスよね……。」
 カムイは、後ろを見ながらそう言った。

「摩天楼での決着は、摩天楼に住まうヒーローで付けるのが相応しい……!『キャプテン・ゴールド』で、カムイにダイレクトアタック!スカイスクレイパー・キャプテン・キック!!」
 国崎が攻撃を指示すると、『キャプテン・ゴールド』はビルから飛び降り、落下の勢いを利用した蹴りをカムイに食らわせようとしたが……

「いや……まだ手は残されてるんスよ!永続罠『リミット・リバース』を発動!墓地から、攻撃力1000以下のモンスター……『ジャンク・コレクター』を特殊召喚!」
「『ジャンク・コレクター』だと!?」
 国崎は、思いがけないカード名に、少し驚いていた……。

「オレの場の『ジャンク・コレクター』と、墓地の『和睦の使者』を除外し……その効果を発動ッス!このターン、相手モンスターから受ける戦闘ダメージは0になるんスよ!」
 カムイがそう言うと、『ジャンク・コレクター』の姿がフードを被った使者へと変化し……『キャプテン・ゴールド』の蹴りを防いだ!


ジャンク・コレクター
光 レベル5
【戦士族・効果】
フィールド上に表側表示で存在するこのカードと
自分の墓地に存在する通常罠カード1枚をゲームから除外して発動する。
このカードの効果は、この効果を発動するために
ゲームから除外した通常罠カードの効果と同じになる。
この効果は相手ターンでも発動する事ができる。
攻撃力1000 守備力2200

和睦の使者
通常罠
このカードを発動したターン、相手モンスターから受ける
全ての戦闘ダメージは0になる。
このターン自分モンスターは戦闘では破壊されない。


「攻撃を封じられたか……だが!エンドフェイズ時に、俺の場の『レディ・オブ・ファイア』の効果が発動するぜ!俺の場の『E・HERO』1体につき、相手に200ポイントのダメージを与える!」
「ぐっ!」(カムイLP 1200→200)
 『レディ・オブ・ファイア』両手から放たれた炎によって残り少ないライフをさらに削られ、カムイは思わずそう言った。


E・HERO レディ・オブ・ファイア
炎 レベル4
【炎族・効果】
自分のターンのエンドフェイズ時、自分フィールド上に
表側表示で存在する「E・HERO」と名のついた
モンスターの数×200ポイントダメージを相手ライフに与える。
攻撃力1300 守備力1000


「これで俺は、ターンエンドだ。」


現在の状況
カムイ LP…200
    手札…0枚
    場…摩天楼 −スカイスクレイパー−(表側表示)
      デモンズ・チェーン(E・HERO エアーマン対象・表側表示)
      リミット・リバース(表側表示)
      伏せカード1枚

国崎 LP…1300
   手札…0枚
   場…E・HERO キャプテン・ゴールド(攻撃力2100・攻撃表示)
     E・HERO エアーマン(守備力300・守備表示)
     E・HERO オーシャン(守備力1200・守備表示)
     E・HERO フォレストマン(守備力2000・守備表示)
     E・HERO レディ・オブ・ファイア(守備力1000・守備表示)
     伏せカード1枚


「その目は……まだ諦めちゃいねえな。」
「ああ……。まだオレには、逆転の手段がいくらでもあるんスよ!」
 カムイは、自分の場を国崎に示しながらそう言った。











「(この言葉……虚勢じゃねえ!……あいつは本気で……この状況を打破する気だ……!)」
 国崎は、何かが起こりそうな気配を感じていた……。

「……オレのターン……ドロー!」
 ドローしたカードを確認したカムイは、軽く笑みを浮かべた……。

「……オレの勝ちみたいッスね。」
 そして、小さくそう言った……。



「手札から……魔法カード『フュージョン・ゲート』を発動するッスよ!」
「『フュージョン・ゲート』だと!?」
 国崎は驚いたが、同時にある事に気付いた。


「だが……お前の場に残されたカードはその伏せカード1枚……。それで何をする気だ?」
 融合素材がまったく存在しない状況での『フュージョン・ゲート』……『摩天楼 −スカイスクレイパー−』を失った事で『キャプテン・ゴールド』が破壊されるとは言え、それ以外に意味の無い事に一見思えるのだが……

「いや……この1枚の伏せカードが、逆転へのキーカード……としたらどうッスかね?」
 カムイは、軽くそう言いながら、その伏せカードを開いた……。



「ライフを半分払い……伏せ罠カード『異次元からの帰還』を発動!除外ゾーンから……『エッジマン』、『スパークマン』、『バブルマン』、『プリズマー』、『ジャンク・コレクター』を特殊召喚!!」
 カムイがそう言うと、『神剣−フェニックスブレード』の回収コストとなった4体のヒーローと、


異次元からの帰還
通常罠
ライフポイントを半分払って発動する。
ゲームから除外されている自分のモンスターを
可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する。
エンドフェイズ時、この効果によって特殊召喚されたモンスターを
全てゲームから除外する。


「『プリズマー』の効果発動!デッキから『キャプテン・ゴールド』を墓地に送り……カード名を『キャプテン・ゴールド』に変更するッスよ!」
 『プリズマー』は、『キャプテン・ゴールド』の姿を自らに映し出すと……自らの名称を『キャプテン・ゴールド』に変化させた!

「『フュージョン・ゲート』の効果で……『エッジマン』、『スパークマン』、『バブルマン』、『キャプテン・ゴールド(プリズマー)』を除外融合し……」
 そして、カムイの場にいた4体のヒーローが、辺りを包む不思議な空間に巻き込まれ……











「……融合召喚!『E・HERO キャプテン・シュピーゲル』!!」
 ……その空間を通過した末に出てきたのは、全身をすべての光を吸収する漆黒の軽装鎧で覆い、両手にすべての光を跳ね返す鏡の剣を持った、1体の巨大なヒーローだった!

「いや……まだ終わりじゃ無いッスよ!『ジャンク・コレクター』の効果発動!このカードと墓地の『異次元からの帰還』を除外し……」
「何……だと……!?」
 国崎が驚くと……『ジャンク・コレクター』は高く跳び上がり、閉じかけていた異次元の門を両手で再びこじ開け……











「除外ゾーンから……『エッジマン』、『プリズマー』、『スパークマン』、『ジャンク・コレクター』を特殊召喚!!」
 ……融合素材となった3体と、異次元の門をこじ開けた『ジャンク・コレクター』が再びカムイの場に集った!

「馬鹿な……!そんな事が……!」
 国崎は、ほとんどコストを支払わずにモンスターを大量展開した事に、驚きを隠せないでいた……。
 さらに、『ジャンク・コレクター』の効果が再び発動する事に対して、危機感を抱いていた……。

「もう1度……『ジャンク・コレクター』の効果を発動させてもらうッスよ!墓地の『鳳翼の爆風』をゲームから除外し……国崎さんの場の伏せカードをデッキの1番上に戻すッスよ!」
 『ジャンク・コレクター』は『風帝ライザー』の物真似をして、国崎の場の伏せカードを吹き飛ばそうとしたが……

「くっ……伏せ罠カード『エレメンタル・チャージ』を発動するぜ!この効果で、俺のライフを4000ポイント回復!」
 国崎はライフを大幅に回復したが……これでは耐えられない事に気付いていた……。


鳳翼の爆風
通常罠
手札を1枚捨てる。
相手フィールド上のカード1枚を持ち主のデッキの一番上に戻す。

エレメンタル・チャージ
通常罠
自分フィールド上に表側表示で存在する
「E・HERO」と名のついたモンスター1体につき、
自分は1000ライフポイント回復する。


国崎LP 1300→5300

「さらにもう1度……『プリズマー』の効果発動!デッキから『ワイルドマン』を墓地に送り……カード名を『ワイルドマン』に変更するッスよ!」
 『プリズマー』は、『ワイルドマン』の姿を自らに映し出すと……自らの名称を『ワイルドマン』に変化させた!

「『フュージョン・ゲート』の効果で……『エッジマン』と『ワイルドマン(プリズマー)』を除外融合!『E・HERO ワイルドジャギーマン』を融合召喚!」
 さらにカムイは、自分の場の『エッジマン』と『ワイルドマン(プリズマー)』を除外すると……場に、巨大な刀を持った1体のヒーローが現れた!

「そして……『キャプテン・シュピーゲル』の効果で、国崎さんの場の『レディ・オブ・ファイア』の効果を吸収させてもらうッスよ!」
 『キャプテン・シュピーゲル』は、鏡の剣に『レディ・オブ・ファイア』の姿を映し出し……その虚像を、自らに吸収した!


E・HERO キャプテン・シュピーゲル
闇 レベル10
【戦士族・融合・効果】
「E・HERO エッジマン」+「E・HERO バブルマン」+
「E・HERO スパークマン」+「E・HERO キャプテン・ゴールド」
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードが破壊されるとき、代わりに自分フィールド上のカードを破壊することができる。
1ターンに1度、次の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●:手札から、効果モンスターカードを一枚捨てて発動する。
このターンのエンドフェイズ時まで、この効果によって捨てられたモンスターの効果を得る。
この効果は、相手ターン中でも使用することができる。
●:相手フィールド上の効果モンスターを1体選択して発動する。
このターンのエンドフェイズ時まで、選択したモンスターの効果を得る。
攻撃力3200 守備力2500


「さあ、バトルフェイズに入るッスよ!まずは『ワイルドジャギーマン』で、国崎さんの場のモンスターすべてに攻撃ッス!インフィニティ・エッジ・スライサー!!」
 『ワイルドジャギーマン』は、持っていた刀を4度振るい、国崎の場のヒーローを全滅させた!

「さらに……『スパークマン』と『キャプテン・シュピーゲル』で、ダイレクトアタック!スパークフラッシュ!ミラージュ・フレア・スラッシュ!」
 カムイがそう言うと、『スパークマン』は右手から電撃を放ち、『キャプテン・シュピーゲル』は鏡の剣に高熱を与え……同時に国崎にダイレクトアタックした!

「くっ!」(国崎LP 5300→3700→500)
 国崎は、軽くそう言ったが、確実にこのターンで負ける事を悟っていた……。

「エンドフェイズに……吸収した『レディ・オブ・ファイア』の効果で、国崎さんに600ポイントのダメージを与えるッスよ!」
 『キャプテン・シュピーゲル』は、『レディ・オブ・ファイア』と同じ様に両手から炎を放ち……国崎の残り少ないライフを、一気に削り落とした!

「ぐああぁっ!」(国崎LP 500→0)











「き、決まりました!勝者は、『光 カムイ』君です!!」
 千里は、勝者のカムイの名前を高らかに宣言した。











「今のカムイのコンボ……中々凄かったね。……レイは勝てるかな?」
「そんなの……分からないよ、お兄ちゃん……。」
 ナオの言葉に、レイは少し縮こまりながらそう言った。

「でも、今の戦法、凄かったよね〜。多分ナオも今のカムイに勝てないんじゃ無いかな〜。」
「そうだな。学園最強も入れ替わったかもな。」
 リナとセンリは、ナオをからかう様にそう言った。

「どうかな。……確かに一方的に勝てないとは思うけど、絶対勝てないなんて事は無いと思うよ。」
 ナオは、腕を組みながらそう言った。











「……カムイ。俺のデッキの『E・HERO』……使ってみる気はねえか?」
「ん?どう言う事ッスか?」
 カムイは、国崎の唐突な一言に、少し目を丸くしていた……。

「お前なら、俺のヒーローをうまく使えそうだからな。……返すのは、本戦が終わってからでいいぜ。」
「だが……いいんスか?オレが使っても……」
 国崎の言葉に対して、カムイはそう尋ねたが……

「何、俺は星海校に勝ってほしいとか、そう言う考えじゃねえ。ただ……俺のデッキのヒーロー達には、もっと色々な強い相手と闘ってもらいてえ……それだけだ。」
 ……国崎は、呟く様にそう言った……。
 それに対して、カムイは……

「ああ……。絶対、使いこなしてみるッスよ!」
 ……そう言いながら、国崎から何十枚かのカードを受け取った……。











「(本戦も……負ける訳にはいかなくなったッスね……!)」
 受け取ったカードを見ながらカムイは、心の中でそう呟いていた……。


次回予告

龍也「フェイト教諭……ですか。どうしても気になりますね……。」
剣一「そうだな……。一体、何者なんだ……?」
龍也「しかし……この対校戦に姿を見せる事は、十分に考えられます……。」
剣一「そうなると……その時に、色々質問するのが一番だな。」



次回、『GX plus!』第四十七話!



『揺ぎ無い過去!!』

龍也「定眼……あいつは、今どこに……。」






――3年前……星海校のとある教室にて――

「精霊研究サークル?」
 椅子に座り、帰り支度をしていた細身で背が高い男――定眼は、とう問いかけた。

「ええ。」
「どうだ?定眼も参加してみるか?」
 黒髪で物静かな青年……龍也と、金髪で明るめな青年……剣一は、そう言葉を重ねた。

「……そうだな。剣一、龍也。」
 定眼は軽く笑みを浮かべ、椅子から立ち上がった……。


第四十七話 揺ぎ無い過去!!

「さて……ここを私達の部室としましょう。」
「龍也の部屋か……。ここなら、無駄に厄介な部登録も人数不足も関係無いな。」
 龍也の考えを理解し、剣一は納得した表情でそう言った。



「さて……何か話題を作りましょう。」
 龍也が椅子に腰をかけた瞬間……

「……精霊の完全実体化は可能か?」
 定眼は、待っていたかの様にそう言った。

「実体化ですか……。デュエルディスクのソリッドビジョンを何重にも重ね合わせれば、ソリッドビジョンに触れる事も可能となるはずですから、擬似的に可能だと思いますが……とんでもない大掛かりな装置になってしまいそうですね。」
「例えば……初期のコンピューターの様に、部屋1個分くらいの大きさか?」
 龍也と剣一は、顔を合わせて自らの考えを言い合った。

「龍也達も、実体化を考えていたのか?」
「ええ。あくまで仮説ですが。」
 定眼の問いかけに、龍也は軽くそう答えた。

「だが……海馬コーポレーションの技術革新は、恐ろしいと言わざるを得ないな……。」
「ええ……一昔前は、正方形型のボックスや大型のテーブルを使わなければ、ソリッドビジョンシステムを実現できなかった……。それが……」
 龍也がそう言っている間に、剣一は床に置いてあったデュエルディスクを手に取り……

「今や、この程度の大きさのデュエルディスクで再現可能か……。」
 感心するかの様に、そう言葉を続けた。

「しかし、その技術はもう何年も使い古され、さらなるステージには移行していない……。海馬コーポレーションに、イノベーションが起こっていない証拠だ。」
 定眼は、海馬コーポレーションを皮肉るかの様にそう言った。

「余りにも少なすぎるエネルギー消費……完璧すぎて進化しないシステム……。……そこで、ある仮説が思いつきました。」
「何だ?龍也。」
 考え込む龍也に対して、剣一はそう質問した。

「カードそのものが実体化能力を持っていて、デュエルディスクはそれを映し出すきっかけに過ぎない……と考えるのはどうでしょう。」
「まさか。そうなると、すべてのカードに精霊が宿る事になるじゃないか。」
 龍也の一言を剣一がそう反論し……

「そもそも、カードのソリッドビジョン化の特許を取ったのは、あの超現実主義者時代の海馬瀬人だぞ。カードの精霊の存在を意識してシステムを創るわけ無いだろ?」
 そして剣一は、話をそう続けた。

「……そうですね。」
 剣一の論理を聞いた龍也は、小さくそう呟いた……。





















――数週間後――

「……一応、システムの外枠はできたのですが……」
「何か問題があったのか?」
 残念そうにそう呟く龍也に対して、剣一はそう軽く尋ねた。

「口で言うより、実際に見てみた方が早いでしょう。」
 龍也は、テーブルの半分近くを占めるほど巨大な円盤状の機械をテーブルの上に置き、電源コードをつなぎながらそう言った。

「おっ、これが実体化装置か。……しかし、でかいな。」
 剣一は、巨大な円盤に感心しながらそう言った。

「そして……実体化させるのはこの『プチリュウ』です。」
『ピキー!』
 龍也が、自分のデッキケースから『プチリュウ』のカードを取り出して2人に見せると……その中から、半透明の小さな黄色のドラゴンが出現した。

「精霊の宿るカードか……本当に持っていたのか。」
 定眼は、龍也の物持ちの良さに感心していた。

「では……実体化を開始するので、『プチリュウ』に手を近付けるのをやめて下さい。」
 そして、円盤状の機械に『プチリュウ』のカードをセットし、電源スイッチをオンにすると……











ブーン……











「ピキー!」
 実体化した『プチリュウ』は、精霊の声では無い普通の声でそう鳴いた。

「おっ、はっきり見えるようになったじゃないか。」
「剣一。危ないですから手を触れては」
 龍也の忠告を聞く前に、剣一は実体化した『プチリュウ』に右手で触れようとしたが……



ビジジッ!!

「っっ!!!!」
 爪に電流が走った剣一は、反射的に手を引っ込めた……。

「これは……漏電しているのか?」
 定眼は、『プチリュウ』の周りに静電気みたいな物が走っている事に気付いてそう言った。

「ええ……、触れる事は可能なのですが、その実体化した者の周りに電流が走り、まともに触れる事ができないのですよ。」
「ソリッドビジョンを何重にも重ね合わせた事の弊害……かっっ。」
 龍也がそう呟いたのを受けて、剣一は右手をかばう様にそう言った。

「ピイィ……。」
 『プチリュウ』は、剣一を申し訳なさそうに見ていた……。

「電流か……。」
 定眼は腕を組みながら考えを巡らせ……

「なら……こう言うのはどうだ?ソリッドビジョンをテクスチャーの様に薄いものにすれば、電力消費は抑えられるはずだ。」
 ……そして、1つの案を提示した。

「なるほど……確かに、海馬コーポレーションのソリッドビジョンシステムは、中までぎっしりとソリッドビジョンが詰まっています。……外枠さえ明確に作ってしまえば、中身はすかすかでも問題ありませんね。」





















――さらに数週間後――

「……と、言う訳でテスクチャーのみで実体化システムを作ってみたのですが……」
「何か問題があったのか?」
 残念そうにそう呟く龍也に対して、剣一はまったく同じ言葉でそう軽く尋ねた。

「中身がすかすかで、少し力を加えると簡単にテスクチャーが潰れてしまうのですよ。」
龍也は、両手を合わせながらそう言った。

「なら……そのテクスチャーの中に綿でも詰め込むのはどうだ?」
「ぬいぐるみじゃないですか。……まあ、それなら精霊の有無に関係無く完全実体化は可能そうですね。」
 剣一の提案に対し、龍也は軽くそう言った。

「精霊の有無?どう言う事だ?龍也。」
 剣一は龍也に対して、さらにそう尋ねた。

「精霊の宿るカードは……宿っていないカードよりも実体化しやすかったのですよ。」
「そうなのか。」
 龍也の理論に、定眼はそう反応した。

「そうだな……、そう言えば定眼が提示したのは『ソリッドビジョンの実体化』じゃ無くて、『カードの精霊の実体化』だったよな。」











――さらにさらに数週間後――

「とりあえず……スキャナーで精霊の姿をトレースしたソリッドビジョンを作り出すのは、本当に難しいぞ……。」
「確かに……精霊の姿をスキャナーでは感知できませんからね……。ソリッドビジョンの内部データを流用するにも……パターンが少なすぎます……。」
 剣一と龍也は、お互いに悩みながらそう話していた……。

「……剣一、龍也。一応、人型の精霊用の汎用データは作ってきたが……。」
 その空気を打破しようと定眼は、剣一と龍也に軽くそう言った。

「人型?……なるほど。人型なら自分自身を参考にすれば、自然な動きの骨組みを作れるな。」
 剣一は、ポンと手を合わせながらそう言った。

「しかし、背丈が違うと完全な流用はできない……。と言う事は……定眼は、自分と同等の体格で、人型の精霊を持っているんですか?」
 龍也は、定眼にそう尋ねた。

「……いや、持っていない……。」
 定眼は、そう答えた。

























剣一「……と、色々あったけど、初めの1年間はうまくいってたよな……。」
龍也「ええ……。そう思いたいですね……。――しかし……ある物との出会いから、私達の運命の歯車が少し狂い始めました……。」
剣一「だが……それは彼等のせいじゃ無い……。いや、僕達に落ち度があった……かもな。」

























――現在の2年前……部室(龍也の部屋)にて……――

「問題無く作動しているな。精霊の実体化は、ひとまず成功……と言った所か。」
 定眼は、精霊実体化の円盤装置の作動を確認しながらそう言った。

「いえ、これも定眼の尽力の賜物ですよ。」
「ピキー。」
 龍也に頭をなでられた『プチリュウ』は、うれしそうにそう言った。

「だが、剣一と龍也の思いついた『精霊の声色』は便利な物だな。」
「ありがとうございます。精霊の声を聞けない人には聞き取れない言葉なので、私たちだけの暗号としても流用できますしね。」
「ピィ。」
 定眼と龍也は、お互いに顔を合わせてそう言った。



コンコン。

「2人を連れてきたんですね、剣一。」
 外からのノック音を聞いた龍也は、軽く笑みを浮かべながらそう言った。



コンコン。

「……ひとまず実体化装置の電源を切っておきましょう。見られると何かと説明が大変ですしね。」
 龍也が装置の電源を切ると、実体化していた『プチリュウ』の体が一瞬で透明化した。



コンコン。

「2人……?誰の事だ?」
 定眼は、龍也にそう質問した。



コンコン。

「ええ。私と定眼が実家に帰省中に、そちらで出会った2人の子達ですよ。」
 龍也は、嬉しそうにそう言った。



コンコン。

「とりあえず、その来客に『プチリュウ』を仕向けてみるか。精霊を認知できるのかを試すのを兼ねてな。」
『ピッ。』
 定眼にそう言われた『プチリュウ』は、小さくそう言った。



カチャッ。

「おいおい、いったい何回ノックさせれば気がすむんだよ。」
 中々開かない入口に痺れを切らした剣一は、自分で扉を開いた。

「誰だ?この子供達は。」
 定眼は、剣一の近くにいた青色っぽいロングヘアーの背が高い方の女の子と、青色っぽいショートヘアーでネコ耳がついた帽子を被った背が低い方の男の子の方を見ながらそう言った。

「ああ、この子達は、地元のデュエル大会で知り合った小学生……『早乙女 ナオ』君と『早乙女 レイ』ちゃんです。」
 定眼の問いに対して、龍也は背の低い方のナオと背が高い方のレイを軽く紹介した。

「こんにちはー。」
「お邪魔します。」
 レイに対し、ナオは棒読み気味にそう挨拶した。



『……とりあえず、2人に突撃してみろ。』
『ピィ。』
 『精霊の声色』で定眼にそう言われた『プチリュウ』は入口にいるナオとレイに向かって体当たりを放った……。
 ……が、当然実態の無い『プチリュウ』の体はナオとレイに何の抵抗も及ぼさずにすり抜けていった……。

『おいおい……何変な指示出してるんだよ、定眼。』
 剣一は、『精霊の声色』で定眼を注意し……

「2人とも、その大会で中々優秀な成績を納めていたよな。」
 ナオとレイには何か妙な事をしていると悟られないように、すかさず本筋の話を始めた。

「そうでしたね。ナオ君は優勝、レイちゃんは……ナオ君と当たらなければもっといい線行けていましたね。」
 龍也は、自然にそう話を続け……

『すいません……剣一。』
 そして、『精霊の声色』で軽くそう詫びた。

「そうだよ。……正直、あれはどっちが勝ってもおかしくなかったけどね。……いつからそんなに強くなったんだい?レイ。」
「だって……もう、黙ってたら亮様に会えなくなっちゃうと思ったら、もういてもたってもいられなくって……」
 ナオとレイは、顔を軽く見合わせながらそう言った。



『とりあえず……精霊は戻した方がいいぞ。』
『そうですね。変に悟られても嫌ですし……。』
『ピィ、ピィ。』
 剣一と龍也は、『精霊の声色』で秘密の会話をしながら、『プチリュウ』をカードの中に戻した。

「何故そうなる?」
 剣一と龍也から注意をそらす様に、定眼はレイに対してそう質問した。

「だって……亮様は今年で、デュエルアカデミアを卒業しちゃうんだよ……。そうなっちゃったら、もう……ずっと会えなくなっちゃうかも……。」
 レイは、表情を少し曇らせながらそう答えた。

「亮……丸藤亮の事ですか?」
「……うん。」
 龍也の問いに対して、レイは小さく頷いた。

「丸藤亮……デュエルアカデミアのカイザーを名乗り、天才ともてはやされている男か。」
 定眼は、丸藤亮を皮肉るかの様にそう言った。

「天才ですか……。そんな物、」
「大昔の負け犬が作った言葉……有名な言葉だな、龍也。」
 龍也の言葉に対して、剣一は自然に言葉をつなげた。

「ええ。……丸藤亮が私達とデュエルして、本当に勝てるのかどうかも疑問ですしね。」
「そうだな。相対的に最強なだけな可能性もあるしな。」
 そして、丸藤亮の事を過小評価する様に話し合った。

「……亮様の事、あんまり悪く言わないでよ。」
「失礼。」
「ちょっと調子に乗ったみたいだな。」
 レイにそう言われた龍也と剣一は、軽くそう言った。

「でもそれは、間違ってないと思うよ。……レイが望むなら、すぐにでも丸藤亮を倒してきてやってもいいんだけどね。」
「無理だよ。……いくらお兄ちゃんでも、亮様に勝つなんて……」
 自信満々にそう言うナオを、レイはいさめる様にそう言った。

「無謀と勇敢は違うんだから。」
「慎重な事と臆病な事もまた違うよ。」
 ナオとレイは、以心伝心しているようにそう言葉をつなげた。

「ボクが丸藤亮に挑む事とレイが丸藤亮に思いを伝える事……何が違うんだい?」
 そしてナオは、さらに言葉を続けた。

「どっちも無謀……そう言う事だな。」
「無謀だなんて言わないでよ。」
 剣一の一言に対して、レイは少しムッとした表情でそう言った。

「その通り。貴方達の行動は、どちらも結果の分からない行為です。……レイちゃん。貴女はナオ君の勝利を信じていないと?」
「そ、そうじゃないけど……やっぱり、亮様には負けてほしくないから……」
 龍也の論理に、レイは口ごもりながらそう反論した。

「つまり貴女は、丸藤亮の実力がそこら辺に転がってる凡骨デュエリストと同じだったら、歯牙にもかけなかったと?」
 レイの言葉に反応して龍也は、すかさずそう反論した。

「力こそ正義か……愚かだな。」
「…………。」
 反論できなかったレイは、しゅんとした表情でうつむいていた……。

「……何だよ。じゃあ君達は、ボク達が弱かったら歯牙にもかけなかったのかい?」
 ナオは、レイを攻める定眼達に対し、声を低くしながらそう言った。

「なるほど。これは一本取られましたね。」
「僕達は力だけで君達兄妹に惹かれた訳じゃ無い……。……そうなると、レイちゃんを攻めるのはお門違いだよな。」
 龍也と剣一は、ナオの言葉の真意を理解した上でそう言った。

「まあデュエルの勝敗と恋愛に何か関係があるか?……って言われたらな。」
「無いでしょうね。」
「丸藤亮が勝利に飢える輩ならば話は別だがな。」
 剣一、龍也、定眼はそう言葉を続けていった。

「何で?……勝利だけを求めるなんて、デュエリストとして普通じゃ無いの?」
 ナオは、3人に向かってさも当たり前の様にそう言った。

「まあそうですが……多分、勝利より大切な事もあるでしょう。」
 龍也は、虚空を仰ぐ様にそう言った。

「そんな事言ったって……勝たなきゃ実力を認めてもらえないじゃないか。」
 ナオは、小さくそう呟いた。

「しかしナオ君、貴方は負けたレイちゃんを認めているじゃないですか。」
 龍也は、ナオに対して軽くそう言った。

「レイちゃんは、勝たなくても認められている……ナオ君にも、そして僕達にもな。」
 続けて剣一は、ナオの頭を上から押さえつける様に手をやりながらそう言った。

「……それとこれとは話は別だよ。でも一応、ボクは君達に勝てると思うよ?」
 ナオは、剣一達に対して自信満々にそう言った。

「こらこら。年上に向かって『君達』は無いだろ?」
「い……痛い……。」
 剣一にほっぺたをつかまれたナオは、少し声を震わせながらそう言った。

「なるほど……ならお前の強さ、私が確かめてやろうか?」
 定眼は、ナオに対して軽くそう言った。

「いいよ。……でも、今は自分のデッキを持ってないから、ちょっと無理だけどね。」
「そうか。それは仕方がないな。」 
 定眼は、疑いの眼でそう言った。











――数時間後……

「……もうこんな時間か。ナオ君、レイちゃん。そろそろ帰った方がいいんじゃないか?」
 剣一は、部屋にかかった時計を見ながらそう言った。

「じゃあ、明日デッキを持ってまた来るからね。」
「おやすみなさーい。」
 ナオとレイは、3人に軽く挨拶して部屋を後にした……。





















「…………。」
 定眼は、少し黙り込み……

「あのナオとか言う恐れを知らない子供は、少々度が過ぎている……。……なぜお前達はナオやレイと馬を合わせられる?」
 定眼は、剣一と龍也にそう質問した。

「「可愛いから。」」
 それに対して剣一と龍也は、声を揃えてそう言った。

「なるほど。……私達は、似た者同士かもな。」










――翌日……

「……逃げずに来た様だな。」
 定眼は、デッキを持ってきたナオに対して軽くそう言った。

「ふーん……大口を叩くのはいいんだけど、本当にボクに勝てるのかな?」
 それに対してナオは、定眼を見下すように見ながらそう言った。

「大口か……。それはこちらのセリフだな。」
 定眼は、声を低くしてそう言った。

「……まあいいや。すぐにでもボクに挑んだ事を後悔させてあげるよ。」
 ナオは、剣一から借りたデュエルディスクを右腕に着けながら、軽くそう言った。











「定眼とナオ君のデュエルですか……中々面白い物になりそうですね。」
 龍也は、小さくそう呟いた。

「そうだな、龍也。……レイちゃんは、どっちが勝つと思う?」
「え……?そんなの、分かんないよ……。定眼って人がどんなデッキを使うのかも知らないし……。」
 レイは、剣一の言葉に小さくそう答えた。

「……でもやっぱり、お兄ちゃんには勝ってほしいかな……。」











「「デュエル!!」」
 先攻は、ナオが自然に取った。

「ボクのターン、ドロー。モンスターを1体セットして、カードを1枚場に伏せるよ。ターンエンド。」
 ナオは、まるでパターン化されている様な動きでターンを終了した。

「私のターン、ドロー。……手札から『センジュ・ゴッド』を召喚する。その効果により、デッキから『終焉の王デミス』を手札に加える。」
 定眼はそう言いながら1体の千手観音を召喚し……その腕は、定眼のデッキから『終焉の王デミス』のカードを探し出し、定めに与えた!


センジュ・ゴッド
光 レベル4
【天使族・効果】
このカードが召喚・反転召喚された時、
デッキから儀式モンスターカード1枚を選択して手札に加える事ができる。
攻撃力1400 守備力1000


「『センジュ・ゴッド』で、裏守備モンスターに攻撃!」
 定眼がそう指示すると、千手観音はナオの場に走って行き……ナオの場にいた1体の天使を殴り倒した!

「戦闘破壊されたモンスターは『シャインエンジェル』だよ。効果で、デッキから2体目の『シャインエンジェル』を特殊召喚する。」
 ナオがそう言うと、デッキから戦闘破壊された天使とまったく同じ姿のモンスターが特殊召喚された!


シャインエンジェル
光 レベル4
【天使族・効果】
このカードが戦闘によって墓地へ送られた時、デッキから攻撃力1500以下の
光属性モンスター1体を自分のフィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
その後デッキをシャッフルする。
攻撃力1400 守備力800


「カードを1枚場に伏せ、ターンエンドだ。」


現在の状況
定眼 LP…4000
   手札…5枚
   場…センジュ・ゴッド(攻撃力1400・攻撃表示)
     伏せカード1枚

ナオ LP…4000
   手札…4枚
   場…シャインエンジェル(攻撃力1400・攻撃表示)
     伏せカード1枚


「ボクのターン、ドロー。」
 ナオは、軽くカードを1枚ドローし……

「バトルフェイズに入るよ。『シャインエンジェル』で『センジュ・ゴッド』に攻撃。」
 そのまま、『シャインエンジェル』と『センジュ・ゴッド』を相打ちさせ、定眼の場を空にしようとしたが……

「伏せ罠カード『和睦の使者』を発動!この効果により、『センジュ・ゴッド』の戦闘破壊を無効にする!」
 定眼が伏せカードを表にすると、『センジュ・ゴッド』は不思議なオーラに守られ、ナオの『シャインエンジェル』を一方的に破壊した!


和睦の使者
通常罠
このカードを発動したターン、相手モンスターから受ける
全ての戦闘ダメージは0になる。
このターン自分モンスターは戦闘では破壊されない。


「『和睦の使者』?まあいいや。戦闘破壊された『シャインエンジェル』の効果で、デッキから『シャインエンジェル』を特殊召喚。」
 ナオは、構わず3体目の『シャインエンジェル』を特殊召喚し……

「まだだよ。『シャインエンジェル』で『センジュ・ゴッド』に攻撃。」
 そのまま、自爆特攻を指示した!

「なるほど……墓地にカードが欲しいか……。」
 定眼は、ナオの戦法を読み取っていた……。











「自爆特攻を繰り返して墓地にモンスターを送り込む……常套手段だな、龍也。」
「ええ。……有名な言葉があります。『デッキを最後まで使い切らないデッキならばどの道使わずに終わってしまう無駄デッキが発生するので、いくらかデッキが削れたってまったく問題は無い。墓地に送られたカードは、デッキの奥底に眠っていて、どうせ引けなかったカードと考えれば良い』……とね。」
 ……当然、剣一と龍也も例外ではなく。











「『シャインエンジェル』の効果で、デッキから『コーリング・ノヴァ』を特殊召喚。『コーリング・ノヴァ』で『センジュ・ゴッド』に攻撃。」
 さらにナオは、容赦無く『コーリング・ノヴァ』にも自爆特攻を指示し、普通に戦闘破壊させた。

「戦闘破壊された『コーリング・ノヴァ』の効果で、デッキから攻撃力1500以下の光天使……『コーリング・ノヴァ』を守備表示で特殊召喚。」
 『コーリング・ノヴァ』も、『シャインエンジェル』と同様にデッキから自身と同じ姿のモンスターを呼び出した。


コーリング・ノヴァ
光 レベル4
【天使族・効果】
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
デッキから攻撃力1500以下で光属性の天使族モンスター1体を
自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。
また、フィールド上に「天空の聖域」が存在する場合、
代わりに「天空騎士パーシアス」1体を特殊召喚する事ができる。
攻撃力1400 守備力800


 そして、墓地に置かれたカードを軽く確認し……

「……メインフェイズ2に入るよ。ボクの墓地に天使族モンスターが4体ちょうどいるから、手札から『大天使クリスティア』を特殊召喚するよ。」
 ナオがそう言うと、墓地の『シャインエンジェル』3体と『コーリング・ノヴァ』1体の魂の鼓動を受け取り……白銀色の体と羽根をした、1体の天使が現れた!

「『大天使クリスティア』の効果が発動するよ。墓地から天使族モンスター……『コーリング・ノヴァ』を手札に加える。」
 ナオはそう言いながら墓地の『コーリング・ノヴァ』を取り出し、手札に戻した。


大天使クリスティア
光 レベル8
【天使族・効果】
自分の墓地に存在する天使族モンスターが4体のみの場合、
このカードは手札から特殊召喚する事ができる。
この効果で特殊召喚に成功した時、
自分の墓地に存在する天使族モンスター1体を手札に加える。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
お互いにモンスターを特殊召喚する事はできない。
このカードがフィールド上から墓地へ送られる場合、
墓地へ行かず持ち主のデッキの一番上に戻る。
攻撃力2800 守備力2300


「それと『大天使クリスティア』がいる限り、特殊召喚はできなくなるんだよ。モンスターを1体セットして、カードを1枚場に伏せてターンエンド。」


現在の状況
ナオ LP…4000
   手札…3枚(内1枚コーリング・ノヴァ)
   場…大天使クリスティア(攻撃力2800・攻撃表示)
     コーリング・ノヴァ(守備力800・守備表示)
     裏守備モンスター1体
     伏せカード2枚

定眼 LP…4000
   手札…5枚
   場…センジュ・ゴッド(攻撃力1400・攻撃表示)


「……私のターン、ドロー。」
 『クリスティア』を前にしながらも、定眼は落ち着いた様子でターンを開始した。

「……手札から『マンジュ・ゴッド』を召喚する。その効果で、デッキから儀式魔法……『高等儀式術』を手札に加える。」
 定眼は、デッキから『高等儀式術』のカードを探し出し、手札に加えた。


マンジュ・ゴッド
光 レベル4
【天使族・効果】
このカードが召喚・反転召喚された時、自分のデッキから
儀式モンスターカードまたは儀式魔法カード1枚を選択して手札に加える事ができる。
攻撃力1400 守備力1000


「『高等儀式術』ね。……『大天使クリスティア』の効果で特殊召喚できないんだけど……何か手はあるのかい?」
「その通りだ……。手札から、速攻魔法『禁じられた聖杯』を発動する!『大天使クリスティア』の効果を無効にする!」
 ナオの言葉に対して定眼がそう言うと、場に現れた大きな聖杯の中に入った水が『大天使クリスティア』にぶっかかり……その聖水の呪いによって、効果を無効にされた!


禁じられた聖杯
速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
エンドフェイズ時まで、選択したモンスターの攻撃力は
400ポイントアップし、効果は無効化される。


大天使クリスティア 攻撃力2800→3200

「……『禁じられた聖杯』……これで『クリスティア』の効果は封じられちゃったね。」
「これで特殊召喚が可能になった……。手札から……魔法カード『高等儀式術』を発動する!」
 そして、サーチしたカードをすぐに発動させたが……











「じゃあ……それにチェーンして、伏せ罠カードを発動させてもらうよ。」
 ナオは、小悪魔の様な笑みを浮かべながらそう言うと……ナオの場の『クリッター』が弾け飛び、その欠片が毒々しい色のウイルスへと姿を変えた!

「そのカードは……発動した瞬間に相手を絶望の闇へと叩き込む、凶悪な罠カードか!!」
 定眼は、ナオが発動させたカードの正体を、一瞬で認識した……。

「そうだよ。ボクが発動させたカードは『死のデッキ破壊ウイルス』だよ。……さあ、手札を見せてよ。」
 定眼は舌打ちしながら4枚の手札を見せ、その中の攻撃力1500以上のモンスター……『終焉の王デミス』を墓地に送った。
 特殊召喚対象を失った『高等儀式術』は不発となり、何も及ぼさずに墓地へと送られた……。


死のデッキ破壊ウイルス
通常罠
自分フィールド上に存在する攻撃力1000以下の
闇属性モンスター1体をリリースして発動する。
相手のフィールド上に存在するモンスター、相手の手札、
相手のターンで数えて3ターンの間に相手がドローしたカードを全て確認し、
攻撃力1500以上のモンスターを破壊する。


定眼の手札……『儀式の準備』、『天罰』、『非常食』

「『クリッター』がボクの場から墓地に送られたから、デッキから攻撃力1500以下のモンスター……『バトルフェーダー』を手札に加えるよ。」
「……高いのは気位だけではない様だな。」
 定眼は、ナオを皮肉るかの様にそう言った。


クリッター
闇 レベル3
【悪魔族・効果】
このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、
自分のデッキから攻撃力1500以下のモンスター1体を手札に加える。
攻撃力1000 守備力600











「なるほど……儀式魔法にチェーンして無駄打ちさせましたか。」
 龍也は、小さくそう言った。

「でも……ちょっと怖いかな……。何でも見透かされてるみたいで……。」
 レイは、少しうつむいてそう言った。

「いや、あれくらい普通だろ、レイちゃん。」
 剣一は、レイに対して軽くそう言った。











「『死のデッキ破壊ウイルス』を発動させたお前は……次に私が何を発動させるか分かっているだろう?」
「……『儀式の準備』かな?」
「……ご明答。」
 そう言いながら定眼は、手札から『儀式の準備』を発動し、デッキから『破滅の魔王ガーランドルフ』を、墓地から『高等儀式術』を手札に加えた。


儀式の準備
通常魔法
自分のデッキからレベル7以下の儀式モンスター1体を手札に加える。
その後、自分の墓地から儀式魔法カード1枚を手札に加える事ができる。


「さらに、儀式魔法『高等儀式術』を発動する!デッキから合計レベルが7となる様に通常モンスターを墓地に送り、『破滅の魔王ガーランドルフ』を儀式召喚!」
 定眼が、デッキからレベル4の『デーモン・ソルジャー』とレベル3の『ハウンド・ドラゴン』を墓地に送ると、


高等儀式術
儀式魔法
手札の儀式モンスター1体を選択し、そのカードとレベルの合計が
同じになるように自分のデッキから通常モンスターを選択して墓地に送る。
選択した儀式モンスター1体を特殊召喚する。


「へえ……。」
「儀式召喚された『ガーランドルフ』の効果を発動する!『ガーランドルフ』より守備力の低いモンスターをすべて破壊!」
 『ガーランドルフ』が、両手についた真紅の爪を一気に伸ばすと……その爪で、場にいる『センジュ・ゴッド』、『マンジュ・ゴッド』、『大天使クリスティア』、『コーリング・ノヴァ』を、敵味方関係無く手当たり次第に八つ裂きにした!
 そして、それらのモンスターから飛び散り自らの爪に付着した血をなめ、自らの攻撃力を高めた……。


破滅の魔王ガーランドルフ
闇 レベル7
【悪魔族・儀式・効果】
「破滅の儀式」により降臨。
このカードが儀式召喚に成功した時、
このカードの攻撃力以下の守備力を持つ、
このカード以外のフィールド上に表側表示で存在する
モンスターを全て破壊し、破壊したモンスター1体につき
このカードの攻撃力は100ポイントアップする。
攻撃力2500 守備力1400


破滅の魔王ガーランドルフ 攻撃力2500→2900

「効果を無効にされた『クリスティア』はデッキに戻らない……まあボクとしても、次のドローが固定されないから楽なんだけどね。」
 ナオは、少し残念そうな表情でそう言った。

「バトルフェイズに入る!『ガーランドルフ』でダイレクトアタック!」
 『ガーランドルフ』は、真紅に染まった爪でナオに直接攻撃を食らわせようとしたが……

「……手札から、『バトルフェーダー』の効果を発動するよ。このカードを手札から特殊召喚して、バトルフェイズを終了させる。」
 ナオの目の前に、小さな振り子時計みたいな形のモンスターが突然手札から飛び出し……ぶら下げられていたベルが音を鳴らすと、『ガーランドルフ』の攻撃が無効にされた!

バトルフェーダー
闇 レベル1
【悪魔族・効果】
相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動する事ができる。
このカードを手札から特殊召喚し、バトルフェイズを終了する。
この効果で特殊召喚したこのカードは、
フィールド上から離れた場合ゲームから除外される。
攻撃力0 守備力0


「なるほど……。カードを1枚場に伏せ、ターンを終了する。」


現在の状況
定眼 LP…4000
   手札…1枚
   場…破滅の魔王ガーランドルフ(攻撃力2900・攻撃表示)
     伏せカード1枚

ナオ LP…4000
   手札…3枚(内1枚コーリング・ノヴァ)
   場…バトルフェーダー(守備力0・守備表示)
   伏せカード1枚


「ボクのターン、ドロー。」
 ナオは、ドローしたカードを軽く確認し……

「……そろそろ、ボクのデッキの切り札を出させてもらうよ。」
 ……そして、小悪魔の様な笑みを浮かべながらそう言った。

「墓地の光天使3体……『シャインエンジェル』3体と、闇悪魔1体……『クリッター』を除外して……来い!『天魔神 エンライズ』!!」
 ナオの墓地から3個の光天使のエレメントと1個の闇悪魔のエレメントが混じり合い……その中から、白と灰色が混じり合った天使の翼を持ち、下半身と腕を黒いバンドの様な布で覆い、腹に異次元へとつながるホールを持った1体の天使……『天魔神 エンライズ』が現れた!

「『エンライズ』の効果発動……」
 ナオは、小さくそう言おうとしたが……

「……すると思ったかい?しないね、ここはしない。……したら『天罰』を使われちゃうからね。」
「なるほど……『死のデッキ破壊ウイルス』で、私の手札を完全に把握していたか……。」
 定眼は、ナオを皮肉るかの様にそう言った。

「そうだよ。永続罠『闇次元の解放』を発動するよ。除外された『クリッター』を特殊召喚。」
 ナオがそう答えながら伏せカードを表にすると……ナオの場に異次元へとつながる穴が空き……その中から、『クリッター』が戻ってきた!


闇次元の解放
永続罠
ゲームから除外されている自分の闇属性モンスター1体を選択し、
自分フィールド上に特殊召喚する。
このカードがフィールド上から離れた時、
そのモンスターを破壊してゲームから除外する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。


「『クリッター』を生け贄にして、手札から『天魔神 インヴィシル』を召喚!」


「墓地に送られた『クリッター』の効果を発動するよ。デッキから攻撃力攻撃力1500以下のモンスター……『ハネワタ』を手札に加える。」
 墓地に『クリッター』が送られた事を確認したナオは、デッキから『ハネワタ』のカードを探し出し、手札に加えた。











「手札から効果を発動するカードか……。相手の抵抗をことごとく無効にしていく戦法だな。」
「そうですね。……手札からの効果は読みにくく奇襲性の高い効果です。それは、時に相手の戦意をも拘束する……。」
 剣一と龍也は、ナオの戦法を軽く考察していた。

「……そんな凄い戦法だったんだ……。でも、確かに1回やられるとちょっと攻撃しにくいかな……。」
 レイは、声を小さくしてそう呟いた。

「だが、相手も手札を消費する事実は変わらないだろ?それをどうにかするか……まあ、それが難しい所だな。」
 剣一は、レイに軽くそう言った。











「それから……『エンライズ』の効果発動!相手の場の表側表示モンスター……『ガーランドルフ』を除外!」
 ナオの言葉に反応し、『エンライズ』は腹に開いたホールを全開にした……!

「カウンター罠……!」
 定眼がそう言おうとした瞬間、定眼は『インヴィシル』の目から放たれる眼差しに自分の罠が縛り付けられている事に気付いた……。

「……!罠カードの無効化か!」
「そうだよ。闇悪魔を生け贄に召喚された『インヴィシル』が場にいる限り、罠カードの効果は無効になるんだ。」
 その言葉に続いて、『エンライズ』の腹のホールから発生した霧の様な物に包まれた『ガーランドルフ』は砂の様な状態となり、そのまま消滅した……。


天魔神 インヴィシル
地 レベル6
【天使族・効果】
このカードは特殊召喚できない。
生け贄召喚時の生け贄によって以下の効果を得る。
●光属性・天使族:このカードがフィールド上に
表側表示で存在する限り、魔法カードの効果を無効にする。
●闇属性・悪魔族:このカードがフィールド上に
表側表示で存在する限り、罠カードの効果を無効にする。
攻撃力2200 守備力1600

天魔神 エンライズ
光 レベル8
【天使族・効果】
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の光属性・天使族モンスター3体と闇属性・悪魔族モンスター1体を
ゲームから除外した場合のみ特殊召喚する事ができる。
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体をゲームから除外する事ができる。
この効果を発動する場合、このターンこのカードは攻撃する事ができない。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
攻撃力2400 守備力1500


「バトルフェイズに入るよ。『インヴィシル』でダイレクトアタック!」
「ぐっ!」(定眼LP 4000→1800)








 


「(……この感覚は……)」
 『インヴィシル』のダイレクトアタックを受けた定眼は、額にほんの少しの汗を滲ませた……。

「(ほんの少しだが……体力を奪われたのか……?)」
 ……そして、今までのダイレクトアタックによって受けた感覚とのほんの少しの違いに、少し戸惑いを感じていた……。











「メインフェイズ2に入るよ。手札から、魔法カード『打ち出の小槌』を発動。手札を2枚デッキに戻してカードを2枚ドロー。」
 メインフェイズ2に入ったナオは、不要な手札をデッキに戻してカードを2枚ドローした。


打ち出の小槌
通常魔法
自分の手札を任意の枚数デッキに加えてシャッフルする。
その後、デッキに加えた枚数分のカードをドローする。











「『打ち出の小槌』……確かに『ハネワタ』はデッキに戻ったんですが、」
「デッキへの存在と言う事実が見えないプレッシャーとして残る……そう言う事だな、龍也。」
 龍也と剣一は、そう言葉を続けた。











「カードを2枚場に伏せて、ターンエンド。」


現在の状況
ナオ LP…4000
   手札…0枚
   場…天魔神 エンライズ(攻撃力2400・攻撃表示)
     天魔神 インヴィシル(攻撃力2200・攻撃表示)
     バトルフェーダー(守備力0・守備表示)
     闇次元の解放(表側表示)
     伏せカード2枚

定眼 LP…1800
   手札…1枚
   場…伏せカード1枚


「……私のターン、ドロー!」
「はい、『死のデッキ破壊ウイルス』の効果があるから、ドローしたカードを見せてよ。」
 定眼は仕方がないと言わんばかりの表情で、ドローしたカードを見せた。

ドローしたカード…儀式の準備

「手札から……魔法カード『儀式の準備』を発動する!デッキから儀式モンスター……『救世の美神ノースウェムコ』を手札に加え、墓地から『高等儀式術』を手札に戻す!」
 定眼は、ドローしたカードをすぐさま発動させ、手札を増やした。

「『救世の美神ノースウェムコ』……また『ガーランドルフ』を使えば、ボクの場を全滅させられたのに。」
「あいにく……私のデッキに『ガーランドルフ』は1枚しか入っていなくてな。」
 定眼は、言い訳がましく軽くそう言った。

「手札から、儀式魔法『高等儀式術』を発動!デッキからレベル7の『翼を織り成す者』を墓地に送り、『救世の美神ノースウェムコ』を儀式召喚!」
 定眼が『高等儀式術』を発動すると……場に、光り輝く女性型の儀式モンスターが降臨した!

「『ノースウェムコ』の効果発動!儀式召喚に使用したモンスターの数まで場のカードを選択し、そのカードが残っている限り効果による破壊を無効にする!」
 『ノースウェムコ』は、ナオの場の『闇次元の解放』に魔力を送り、自らの命を長引かせようとした……。


救世の美神ノースウェムコ
光 レベル7
【魔法使い族・儀式・効果】
「救世の儀式」により降臨。
このカードが儀式召喚に成功した時、
このカードの儀式召喚に使用したモンスターの数まで、
このカード以外のフィールド上に表側表示で存在するカードを選択して発動する。
選択したカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
このカードはカードの効果では破壊されない。
攻撃力2700 守備力1200


「ひゃあ……厄介な効果だね。」
 ナオは、わざとらしくそう言い……











「……なんて、嘘だよ。」
 ……小さく舌を出しながら、伏せカードを1枚表にすると……『ノースウェムコ』の姿を、突然闇が包み込んだ!。

「何!……『月の書』か!」
「そうだよ。この効果で『ノースウェムコ』を裏守備状態にしたんだ。つ・ま・り、『ガーランドルフ』を出しても効果は不発になったんだよ。」
 ナオは、相手の精神を逆撫でするかの様な口調でそう言った。


月の書
速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、裏側守備表示にする。


「くっ……カードを1枚場に伏せ、ターンエンドだ……。」


「(確かあのカードは『非常食』だったから、何とかこのターンで決着をつける方法は……)」


「伏せ罠カード『針虫の巣窟』を発動するよ。デッキの上からカードを5枚墓地に送る。」
 ナオは、躊躇無くデッキの上からカードを5枚墓地に送った。


墓地に送られたカード……『貪欲な壺』、『ジャイアントウイルス』、『異次元からの埋葬』、『バトルフェーダー』、『奇跡の光臨』

「……ボクの勝ちだよ。」
 墓地に送られたカードを確認したナオは、軽くそう言った……。

「墓地の光天使1体……『コーリング・ノヴァ』と、闇悪魔3体……『クリッター』、『クリボー』、『バトルフェーダー』を除外して……来い!『天魔神 ノーレラス』!!」
 ナオの墓地から4体のモンスターが除外されると……ナオの場に、どす黒い不気味な渦が発生し……その中から、骨の面を被り、全身黒色で真紅の爪を持った、1体の悪魔が現れた!

「これで君に打つ手は無い……サレンダーするなら今の内だよ。」
 ナオは、小悪魔の様な笑みを浮かべながらそう言った。

「仕方が無いな……。ここは……サレンダーだ。」
 打つ手が無くなった定眼は、不本意ながらもサレンダーを宣言し、デュエルを終了させた……。

定眼LP 1800→0











「ボクの勝ちだね。」
 ナオは、定眼の前に歩いて行き、定めの顔を見上げながらそう言った。

「しかし……凄いですね、ナオ君。」
「そうだな。……特に『天魔神』がな。」


「へへん、いいでしょ。大会で優勝した時の賞品としてもらえたんだ。」
 ナオは、自慢する様にそう言った。

「でも、3種類を同じデッキに居合わせるのは無理があるかもね……。レイにも使わせてあげようかな?」
「え?……でも、ボクに使いこなせるかな……?」
 ナオの言葉に、レイはキョトンとした表情で返答したが……

「大丈夫さ。レイなら絶対うまく使いこなせるよ。」
 ナオは、レイを励ます様にそう返した。











「(『天魔神』……いったいどんな性質を持つカードなんだ……?)」
 4人が楽しそうに話している中定眼は、『天魔神』に対しての興味が収まらず、ナオに対してこう言った……。











「その3枚の『天魔神』のカード……私に貸してくれないか?」
 ……と。


次回予告

龍也「……思い出したくありません……あの日の事は……。」



次回、『GX plus!』第四十八話!



『離反するもの! 天魔の息吹!!』

剣一「……僕が居合わせていれば、この結果は避けられたのか……?」
龍也「いえ……剣一のせいではありません……。」




第四十八話 離反するもの! 天魔の息吹!!

――2年前の星海校……龍也の部屋にて……――

「で……ちょっと前に貸した『天魔神』のカード、まだ返してくれないの?」
 龍也の部屋にやってきたナオは、頭のネコ耳を苛立ちからピクピク動かしながら、剣一と龍也に詰め寄った……。

「それがですね……中々定眼に会う機会が無くてですね……」
 龍也は、体が悪そうにそう言った。

「何だよ!早く返してよ!」
「…………。」
 ナオは、龍也の服の裾をつかみながらそう言った。

「だからあんな奴に貸したくなかったんだ!」
 そして、容赦無くそう言葉をぶつけた……。

「……あんな奴ですか。」
 それを聞いた龍也は声を低くし、ナオの頭についている左側のネコ耳を右手でつまみながらそう言った。

「分かった。すぐに何とか取り返すから、少し待っていてくれないか?」
 剣一は、ナオの頭についた右側のネコ耳を左手でつまみながらそう言った。

「……絶対だよ。」
 龍也と剣一にそう言われたナオはムッとした表情になりながら爪を立て……右手で剣一の左手に、左手で龍也の右手に、自分の親指と人差し指の爪を後が付くくらいに押し付けながらそう言った。











――龍也の部屋の前にて……――

「……とは言った物の、どうしましょうか……。」
 ナオに部屋から追い出された龍也は、右手に左手を被せながらそう呟いた。

「とりあえず、定眼の部屋に行ってみようぜ。」
 龍也と共に追い出された剣一は、左手に右手を被せながらそう言った。

「ええ……。定眼が『天魔神』を借りてから、私達にまったく姿を見ていない……少し心配ですからね。」











――定眼の部屋の前にて……――

 ピンポーン……ピンポーン……。

「定眼、いるか?」
 剣一は、チャイムを鳴らしながら扉越しにそう言った。

『……剣一か。』
 部屋の中にいた定眼は、部屋から出ずにインターホンを通じてそう言った。

「定眼。そろそろナオ君から借りた『天魔神』のカードを返してもらいたいのですが……」
 龍也は、単刀直入に要件を述べた。

『……ああ、分かった。』
 定眼は、声を低くしてそう言い……

 ……ガチャッ。

「……これだな。」
 ドアを少し開けて顔と手を出し、龍也に3枚のカード……『天魔神 インヴィシル』、『天魔神 エンライズ』、『天魔神 ノーレラス』を手渡した。

「大丈夫か?定眼。」
 剣一は、定眼に対して一言そう言った。

「大丈夫だ。」
 定眼はそう言い、バタンとドアを閉めた……。



「……エネルギーが……失われている?」
 『天魔神』のカードを手にし、定眼の部屋の前から離れた龍也は、小さくそう呟いた……。

「エネルギー?……確かに、ナオ君が使っていた数週間前より明らかに弱くなっている……。」
 剣一も『天魔神』のカードに手を触れ、小さくそう言った……。











――再び龍也の部屋にて……――

「ほら、返してもらったぞ。」
「ご苦労様。」
 ナオは2人に軽くそう言い、剣一の手から3枚のカードを受け取った。

「……何か……このカードに不自然な点はありませんか?」
 龍也は、ナオにそう尋ねた。

「何だい?これは偽物だって言いたいの?」
 ナオはそう言いながら、受け取ったカードを確認し……

「複製品でもコピーされてても何でもいいよ。このカードが『使える』ならね。」
 ……そして、さらにそう続けた。

「……もちろん本物ですから、使えるはずです。ですが1つ、確認したい事があります。」
「何?」
 龍也の言葉に対して、ナオはそう端的に問いかけた。

「ナオ君は、このカードを使って何か疲労感とかを感じた事は無いかい?」
「全然。」
 ナオは、また端的に言葉を口にした。



『……つまり……エネルギーは、ナオ君から無理矢理奪っている訳では無く、本当に微弱な量のみを少しずつ蓄えているみたいですね。』
『……他には、対戦相手から……もだろうな。』
 龍也と剣一は、ナオにバレない様に『精霊の声色』を使い、秘密の会話をした……。

「……で、ボクはもう帰るよ。もらう物ももらったし。」
 ナオは腕を組みながら、苛立っている様子でそう言った。

「……失礼。」
「気を付けてな、ナオ君。」
 龍也と剣一は、そう言いながらナオを見送った。











「……もしや定眼は、その性質に引かれて『天魔神』のカードを借りたのでしょうか……。あっさり返したのも、その性質をすでに複製していたからと考えれば……」
 ナオの姿が見えなくなった事を確認した龍也は、話を元に戻した。

「だが……そのエネルギーの使い方を僕達は知らないだろ?……実際に定眼に会って、上手い事聞き出してみるか?」
「そうですね。……使い方が、危険な事でなければいいのですが……。」
 2人はそう言いながら、また部屋を後にした……。











――再び、定眼の部屋の前にて……――

 ピンポーン……ピンポーン……。

「定眼、いるか?」
 剣一は、チャイムを鳴らしながら扉越しにそう言った。

「……また来たと思われてるのか?」
 ほとんど時間を空けずに来た事を思い出した剣一は頭を掻きながらそう呟いた。

「剣一。……書置きみたいなメモが見つかりました。」
 ドアに挟まれていた紙を手に取った龍也は、剣一にそう言った

「『しばらく部屋を空ける。心配しないでくれ。』……定眼からか。」
 剣一は、メモを手に取ってそう呟いた。

「心配しないでくれって……普通心配しますよ……。」
 さらに龍也も、そう呟いた……。

























龍也「思えば……その時、なぜ定眼の事をもっと深く心配しなかったのでしょう……。」
剣一「そして……あの日につながった……か。」
























――それから、数ヵ月後、龍也の部屋にて……――

「まだですかね……。」
 活動を早く始めたいと思っている龍也は、剣一の登場を心待ちにしていた……。

 カチャッ。

「剣一ですか?」
 龍也がドアの方に眼をやると……そこには、剣一では無く細身の男……定眼が立っていた。



「久しぶりだな、龍也。」
 定眼は、軽くそう言った。

「定眼……今までどこに行っていたんですか?心配しましたよ。」
 龍也は、定眼の近くに歩み寄りながらそう言った。

「……重要な話がある。聞いてくれ。」
「……何ですか?」
 龍也は、定眼の言葉に耳を傾けた。

「1つ……自分の事に集中するために、ここでけじめをつけたいと思う……。」
 定眼は、声を低くしてそう言い……



「……私は……この『精霊研究サークル』をやめるつもりだ。」
 ……そして定眼は、しれっとそう言った。

「……何故ですか?」
 あまりに唐突な一言に、龍也は目を丸くした……。

「私は、デュエルアカデミア本校で潜入捜査を行い……ある1つの仮説が正しいと証明された。」
 定眼は、そう言葉を続けた。

「……何がですか?」
「……精霊のエネルギーについてだ。精霊に込められたエネルギー……それを利用すれば、生命の復活も可能だとね。」
 定眼は、自信満々にそう話した。

「馬鹿な……!そんな事、できるはずが……」
「いや、実例はある。……間接的だがな。」
 龍也の一言に対し、定眼はそう反論した。

「間接的……?」
 意図が読み取れない龍也は、小さくそう尋ねた。

「ああ……。最近、デュエルアカデミア本校で起こった事件を知っているか?」
「いえ……。揉み消しやら何やらで、伝わっていませんね……。」
 龍也は、残念そうにそう言った。

「……『三幻魔事件』……本校の理事長が、不老長寿を得るために起こした事件だ。」
 定眼は、一言そう言った。

「(『三幻魔』……本校の地下に封印されていると噂される、謎のカードでしたね……。)」
 龍也は、自分の情報の引き出しから『三幻魔』についての情報を取り出し、考察していた。

「三幻魔は、広範囲のカードの精霊のエネルギーを貪り食う力を秘めている……。その力によって、デュエルアカデミア本校がある島中のカードすべてがエネルギーを巻き上げられ、多くの住人に混乱を巻き起こした……。」
 定眼は、そう言いながら表情を緩ませ……

「……愚かな行為だと思わないか?密度の低いカードの精霊のエネルギーだけを貪欲に吸い取り、供給源すべてを死滅させかねない計画など……。」
 ……そして、皮肉めいた口調でそう呟いた。

「……話が見えてきません。不老長寿と死者蘇生……どの様な関係があるのですか?」
 龍也は、定眼の話の真意が見えてこなかった……。

「……老いとは、どの様な要因で起こる?」
 定眼は、龍也に対して1つのクイズを与えた。

「細胞の死、損傷が要因の1つと言われています…………まさか!」
 何かに気付いた龍也は、思わずそう言った。

「そうだ。若返った理由……それは、新たな細胞が生み出されたと見るのが妥当だろう?」
 その表情を見た定眼は、笑みを浮かべながらそう言った。

「……ホムンクルスでも作って、永遠の命でも得ようとしているのですか?」
 龍也は、そう問いかけたが……

「いや。……私は自らの命など惜しくもない。目的を満たすためならば……私の命など、惜しみなく捧げる!」
 定眼は、自らの意思を誇示するかの様に、声を張り上げてそう言い放った。

「しかし……いずれにしよそれは、精霊のエネルギーを奪い取る事に他なりません!……精霊に与える影響を考えているのですか!?」
 龍也は、定眼の目を見、肩をつかみながらながらそう言った。

「…………。」
 定眼は、龍也の目線を避ける様に斜め下に目をやり……

「……目的を果たすためたらば……多少のリスクは認めなければならない……。」
 そして、小さくそう呟いた……。

「なら……こうしましょう。命を投げ捨てる行為……命を刈り取る行為……それらすべては、私が許さない……と言ったら?」
 そう言いながら龍也は肩から手を離し、速攻でデュエルディスクを装着した……。

「……龍也……お前を制し、自らの意思を貫くまでだ!」
 定眼もそう言いながら、デュエルディスクを構えた……。
 そして……










「「デュエル!!」」
 先攻は、龍也だった。

「私のターン、ドロー!手札から『ホルスの黒炎竜 LV4』を攻撃表示で召喚します!」
 鳥の形をした金属のドラゴンが現れた。

「さらに『ホルスの黒炎竜 LV4』を墓地に送り……魔法カード『レベルアップ!』を発動!『LV4』は『LV6』へと進化する!」
 


レベルアップ!
通常魔法
フィールド上に表側表示で存在する「LV」を持つ
モンスター1体を墓地へ送り発動する。
そのカードに記されているモンスターを、
召喚条件を無視して手札またはデッキから特殊召喚する。


「1ターン目から『ホルスの黒炎竜 LV6』か……。」
「カードを2枚場に伏せ、ターンエンド!」
 さらに龍也は、次への布石を打ちながらターンを終えた。

「私のターン、ドロー。……手札から、『マンジュ・ゴッド』を召喚する。」
 定眼の場に、大量の手を持つ観音像が現れ……

「『マンジュ・ゴッド』の効果を発動する。デッキから、儀式モンスターまたは儀式魔法を1枚……『高等儀式術』を手札に加える。」
 ……その観音像は、定眼のデッキから1枚のカードを取り出し、定眼に与えた。


マンジュ・ゴッド
光 レベル4
【天使族・効果】
このカードが召喚・反転召喚された時、自分のデッキから
儀式モンスターカードまたは儀式魔法カード1枚を選択して手札に加える事ができる。
攻撃力1400 守備力1000


「手札から、儀式魔法『高等儀式術』を発動する。デッキから、レベル7の通常モンスター……『翼を織りなす者』を墓地に送り、『破滅の魔王ガーランドルフ』を儀式召喚!」
 定眼がそう言うと、デッキからレベル7分の通常モンスターが墓地へと送られ……蒼色の体をし、真紅の爪を持ったモンスターが儀式召喚された!


高等儀式術
儀式魔法
手札の儀式モンスター1体を選択し、そのカードとレベルの合計が
同じになるように自分のデッキから通常モンスターを選択して墓地に送る。
選択した儀式モンスター1体を特殊召喚する。


「『ガーランドルフ』の効果を発動する。『ガーランドルフ』の攻撃力より低い守備力を持つモンスターをすべて破壊する!」
 『ガーランドルフ』は、自らの真紅の爪で手始めに定眼の場の『マンジュ・ゴッド』を八つ裂きにし、さらに龍也の場の『ホルスの黒炎竜 LV6』を引き裂こうと突進したが……

「速攻魔法『収縮』を発動!この効果で、『ガーランドルフ』の攻撃力を半減させる!」
 龍也の場に現れたレンズによって照らされた『ガーランドルフ』は、その体が見る見る収縮していき……『ホルスの黒炎竜 LV6』の装甲を引き裂く事はできなかった……。


破滅の魔王ガーランドルフ
闇 レベル7
【悪魔族・儀式・効果】
「破滅の儀式」により降臨。
このカードが儀式召喚に成功した時、
このカードの攻撃力以下の守備力を持つ、
このカード以外のフィールド上に表側表示で存在する
モンスターを全て破壊し、破壊したモンスター1体につき
このカードの攻撃力は100ポイントアップする。
攻撃力2500 守備力1400

収縮
速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択する。
そのモンスターの元々の攻撃力はエンドフェイズ時まで半分になる。


破滅の魔王ガーランドルフ 攻撃力2500→1250

「『ホルスの黒炎竜 LV6』の守備力は1600……半減した『ガーランドルフ』の攻撃力は1250……よって、破壊はできません!」
 龍也は、無傷の『ホルスの黒炎竜 LV6』を見ながらそう言った。


ホルスの黒炎竜 LV6
炎 レベル6
【ドラゴン族・効果】
このカードは自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
魔法の効果を受けない。
このカードがモンスターを戦闘によって破壊したターンのエンドフェイズ時、
このカードを墓地に送る事で「ホルスの黒炎竜 LV8」1体を
手札またはデッキから特殊召喚する。
攻撃力2300 守備力1600


「『収縮』……やはりか。相変わらずだ、龍也。」
「……そうですか。」
 定眼の一言に対して、龍也はそう答えた。

「これで私は、ターンを終了する。」
 定眼のターンエンド宣言時、『収縮』によって縮んでいた『ガーランドルフ』の姿は元に戻った。

破滅の魔王ガーランドルフ 攻撃力1250→2600


現在の状況
定眼 LP…4000
   手札…4枚
   場…破滅の魔王ガーランドルフ(攻撃力2600・攻撃表示)

龍也 LP…4000
   手札…2枚
   場…ホルスの黒炎竜 LV6(攻撃力2300・攻撃表示)
     伏せカード1枚


「私のターン……ドロー!」
 龍也は、3枚の手札を軽く確認した。

「『ホルスの黒炎竜 LV6』を生け贄に捧げ……『アームド・ドラゴン LV5』を召喚!」
 龍也の場に、新たに黒鉄の鎧を身に付けたドラゴンが現れた。

「上級モンスターを生け贄に上級モンスター……戦闘を補助するカードは無かったと言う訳か。」
「ええ……。手札から『アームド・ドラゴン LV7』を墓地に送り、『アームド・ドラゴン LV5』の効果発動!コストとなったモンスター以下の攻撃力を持つモンスター……『ガーランドルフ』を破壊!デストロイド・パイル!」



アームド・ドラゴン LV5
風 レベル5
【ドラゴン族・効果】
手札のモンスターカード1枚を墓地に送る事で、
そのモンスターの攻撃力以下の相手フィールド上表側表示モンスター1体を破壊する。
このカードがモンスターを戦闘によって破壊したターンのエンドフェイズ時、
このカードを墓地に送る事で「アームド・ドラゴン LV7」1体を
手札またはデッキから特殊召喚する。
攻撃力2400 守備力1700


「バトルフェイズに入ります!『アームド・ドラゴン LV5』で、ダイレクトアタック!アームド・バスター!」
「…………。」(定眼LP 4000→1600)
 定眼は、『アームド・ドラゴン LV5』のダイレクトアタックを黙って受け入れたが……

「手札から、『冥府の使者ゴーズ』の効果を発動する。私の場に他のカードが存在しない時にダメージを受けた事により、手札から特殊召喚する。」
「……!やはり……」
 龍也が驚いている間に、定眼の場に仮面をつけた赤髪の悪魔族の男が現れた!

「さらに『冥府の使者ゴーズ』が戦闘ダメージによって特殊召喚に成功した時、受けたダメージと同じ攻撃力・守備力を持つ『冥府の使者カイエントークン』を特殊召喚!」
 そして『ゴーズ』の登場に合わせ、刀を持った1体の天使族の女が現れた!


冥府の使者ゴーズ
闇 レベル7
【悪魔族・効果】
自分フィールド上にカードが存在しない場合、
相手がコントロールするカードによってダメージを受けた時、
このカードを手札から特殊召喚する事ができる。
この方法で特殊召喚に成功した時、受けたダメージの種類により以下の効果を発動する。
●戦闘ダメージの場合、自分フィールド上に「冥府の使者カイエントークン」
(天使族・光・星7・攻/守?)を1体特殊召喚する。
このトークンの攻撃力・守備力は、この時受けた戦闘ダメージと同じ数値になる。
●カードの効果によるダメージの場合、
受けたダメージと同じダメージを相手ライフに与える。
攻撃力2700 守備力2500


冥府の使者カイエントークン 攻撃力2400
              守備力2400

「ですが……まだ私の攻撃は終わってませんよ!『アームド・ドラゴン LV5』を生け贄に捧げ、伏せ罠カード『レベル・ソウル』を発動!この効果により、墓地の『ホルスの黒炎竜 LV6』をゲームから除外し、デッキから『ホルスの黒炎竜 LV8』を召喚条件を無視して特殊召喚!」
 龍也の伏せ罠カード発動に合わせて、場の鎧竜が光の粒子となって場から消え去ると……龍也のデッキから、巨大な鋼のドラゴンが翼を大きく広げながら現れた!


レベル・ソウル
通常罠
自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げて発動する。
自分の墓地に存在する「LV」と名のつくモンスター1体をゲームから除外し、
そのカードに記されているモンスターを、召喚条件を無視して手札またはデッキから特殊召喚する。

ホルスの黒炎竜 LV8
炎 レベル8
【ドラゴン族・効果】
このカードは通常召喚できない。
「ホルスの黒炎竜 LV6」の効果でのみ特殊召喚できる。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
魔法の発動と効果を無効にし破壊する事ができる。
攻撃力3000 守備力1800


「『レベル・ソウル』……か。私の手札に『ゴーズ』がいなければ勝負はついていた訳か。」
 定眼は、そう小さく呟いた。

「『ホルスの黒炎竜 LV8』で、『冥府の使者ゴーズ』に攻撃!ブラック・メガフレイム!!」
 『ホルスの黒炎竜 LV8』は口から灼熱の黒炎を放ち……定眼の場の『冥府の使者ゴーズ』を一瞬で焼き尽くした!

「だが……これで龍也の手札は1枚……これでどうする気だ?」
「いえ……損失分は、取り返させてもらいますよ!エンドフェイズに、速攻魔法『超再生能力』を発動!このターン生け贄となったドラゴン族モンスター1枚につき、カードを1枚ドロー!」
 エンドフェイズを迎えた龍也はそう言いながら、カードを2枚ドローした。


超再生能力
速攻魔法
エンドフェイズ時、自分がこのターン中に
手札から捨てた、または生け贄に捧げた
ドラゴン族モンスター1体につき、デッキからカードを1枚ドローする。


「なるほど……『超再生能力』か。『アームド・ドラゴン LV5』のコストが『捨てる』で無いのは残念だったな。」
「ええ……。」


現在の状況
定眼 LP…4000
   手札…2枚
   場…ホルスの黒炎竜 LV8(攻撃力3000・攻撃表示)

定眼 LP…1600
   手札…2枚
   場…冥府の使者カイエントークン(守備力2400・守備表示)


「私のターン、ドロー……」
 ドローしたカードを確認した定眼は、少し眉を動かし……

「……モンスターをセットし、カードを1枚場に伏せ、ターンエンド。」
 ……そして、そのドローしたカードを手札に加えた後手札を軽くシャッフルし、2枚のカードをデュエルディスクにセットしてターンを終えた。


現在の状況
定眼 LP…1600
   手札…2枚
   場…冥府の使者カイエントークン(守備力2400・守備表示)
     裏守備モンスター1体
     伏せカード1枚

龍也 LP…4000
   手札…2枚
   場…ホルスの黒炎竜 LV8(攻撃力3000・攻撃表示)


「私のターン、ドロー!手札から、魔法カード『スタンピング・クラッシュ』を発動します!」
 伏せカードを確認した龍也はターンを開始するや否や、手札から1枚の魔法カードを発動させた。

「伏せカードを見るや否やすかさず『スタンピング・クラッシュ』……か。」
 定眼は、小さくそう呟き……

「だが……そのテンプレート通りの戦法は、時に大きな隙となる……。」
「…………!」
 軽く笑みを浮かべた定眼に対して、龍也は眉を潜ませた……。

「『スタンピング・クラッシュ』にチェーンし、対象となった伏せ罠カード……『ダメージ・トランスレーション』を発動する。この効果により、このターン私が受ける効果ダメージは半分になる。」
 定眼がそう言うと、定眼の周りに不思議なオーラが発生した!
 しかし当然、墓地に送られた訳では無い『ダメージ・トランスレーション』は、『スタンピング・クラッシュ』の効果で破壊され、その余波は定眼に飛んでいくが……定眼の周りに現れたオーラによってそのダメージは軽減された!


スタンピング・クラッシュ
通常魔法
自分フィールド上に表側表示のドラゴン族モンスターが
存在する時のみ発動する事ができる。
フィールド上の魔法・罠カード1枚を破壊し、
そのコントローラーに500ポイントダメージを与える。

ダメージ・トランスレーション
通常罠
このターン自分が受ける効果ダメージは半分になる。
このターンのエンドフェイズ時、受けた効果ダメージの回数と
同じ数だけ自分フィールド上に「ゴースト・トークン」
(悪魔族・闇・星1・攻/守0)を守備表示で特殊召喚する。


定眼LP 1600→1350

「(効果ダメージを封じるだけなら他に良いカードが有るはず……他の効果が有るはずですね……。)」
 龍也は、『ダメージ・トランスレーション』のもう1つの効果を警戒し……

「手札から、『仮面竜』を召喚!」
 ……手札から、仮面を着けた赤色のドラゴンを召喚した。

「『ホルスの黒炎竜 LV8』で『冥府の使者カイエントークン』に攻撃!ブラック・メガフレイム!」
 龍也の攻撃宣言を聞いた『ホルスの黒炎竜 LV8』は口から炎を吐き、『冥府の使者カイエントークン』を破壊した!

「さらに『仮面竜』で、裏守備モンスターに攻撃!」
 『仮面竜』は、口から小さな炎を吐き出し、定眼の場の裏守備モンスターに攻撃したが……その攻撃は、表側表示となった2体で1体のモンスターに軽くかわされた……。

「『ジェルエンデュオ』……このモンスターは、戦闘では破壊されない。」
 定眼は、小さくそう呟いた。


ジェルエンデュオ
光 レベル4
【天使族・効果】
このカードは戦闘によっては破壊されない。
このカードのコントローラーがダメージを受けた時、
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを破壊する。
光属性・天使族モンスターを生け贄召喚する場合、
このモンスター1体で2体分の生け贄とする事ができる。
攻撃力1700 守備力0

「『ジェルエンデュオ』ですか……。カードを1枚場に伏せ、ターンを終了し……」
「エンドフェイズ時、『ダメージ・トランスレーション』のもう1つの効果が発動する。このターン受けた効果ダメージの回数と同じ数だけ、私の場に『ゴースト・トークン』を特殊召喚する。」
 龍也のターンエンドを宣言した瞬間、定眼の場に小型の黒い幽霊みたいなモンスターが現れた。


現在の状況
龍也 LP…4000
   手札…1枚
   場…ホルスの黒炎竜 LV8(攻撃力3000・攻撃表示)
     仮面竜(攻撃力1400・攻撃表示)
     伏せカード1枚

定眼 LP…1350
   手札…2枚
   場…ジェルエンデュオ(守備力0・守備表示)
     ゴースト・トークン(守備力0・守備表示)


「龍也……。」
 自分の場の状況を見た定眼は、小さくそう呟き……

「今こそ……お前に見せよう。私のデッキの切り札を!」
 ……そう言いながらカードを1枚ドローし、手札のカード1枚に手をかけた……。

「光属性・天使族モンスターを生け贄召喚する時、『ジェルエンデュオ』は2体分の生け贄として扱うことができる!光天使の『ジェルエンデュオ』と、闇悪魔の『ゴースト・トークン』を生け贄に捧げ……」
 定眼がそう言うと、『ジェルエンデュオ』と『ゴースト・トークン』が光の粒子となって場から消え去り……











「……出でよ!『天魔神 ノートゥング』!!」
 ……定眼の場に、ブルーメタルで精製されたブレストプレートと白銀の軽装鎧、羽飾りの付いた髪留めに、絹の様な素材でできたスカートの様な物を身につけ、右手に光輝く剣を持った、戦乙女の様な1体のモンスターが姿を現した!

「『天魔神 ノートゥング』……初めて見ますね、そのカード……。」
 龍也は、『ノートゥング』の美しくもどこか虚無的な雰囲気に、少し当惑していた……。

「『ノートゥング』で『ホルスの黒炎竜 LV8』に攻撃!」
 定眼がそう指示すると、『ノートゥング』は長いスカートをはいているとは思えぬ速さで『ホルスの黒炎竜 LV8』の懐に潜り込んだ……。

「速攻魔法……!」
 龍也は、伏せておいた速攻魔法……『収縮』を発動させ、『ノートゥング』を返り討ちにしようとしたが……

「……『ノートゥング』は、相手の魔法・罠・モンスター効果の対象にならない……。」
「…………!!」
 自らの効果で龍也の妨害を封じた『ノートゥング』は、持っていた剣で『ホルスの黒炎竜 LV8』の胴体を真っ二つに切り裂いた!
 すると、『ホルスの黒炎竜 LV8』の傷口から、蛇口から溢れ出る水の様に血しぶきが飛び……その血しぶきが、『ノートゥング』の顔の一部と髪飾り、鎧と純白のスカートに真紅の染みを残した……。

「ぐっ……ぁっ……!!」(龍也LP 4000→3300)
 『ノートゥング』の攻撃の余波を受けた龍也は、胸を押さえて表情を歪ませた……。

「(こ……この感覚は……いったい……!?)」
 龍也は、デュエルで今まで感じた事の無い疲労感に襲われ、思わずよろめいてしまった……。

「……『ノートゥング』は戦闘後、相手の場にモンスターが残っている場合、もう1度攻撃が可能だ!」
「何……ですって……!?」
 疲労によって定眼の言葉を聞き取れなかったのか、龍也はそう質問した……。


天魔神 ノートゥング
光 レベル10
【天使族・効果】
このカードはフィールド上から墓地に送られた場合にのみ特殊召喚する事が可能になる。
自分フィールド上に存在する天使族・光属性モンスター2体と悪魔族・闇属性モンスター1体をリリースした場合のみ通常召喚することができる。
このカードの召喚・反転召喚は無効化されない。
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、相手は魔法・罠・効果モンスターの効果を発動できない。
このカードは魔法・罠・効果モンスターの効果の対象にできない。
自分のターンに1度だけ、次の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●:相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚をゲームから除外する。
この効果を発動する場合、このターンこのカードは攻撃する事ができない。
●:相手フィールドにモンスターが存在する場合のみ、
バトルフェイズ中にもう一度だけ攻撃する事ができる。
攻撃力3700 守備力2800


「『ノートゥング』で『仮面竜』に攻撃!」
 定眼の命を受けた『ノートゥング』は、頬についた返り血をまったく気にする素振りも見せずに剣を構え……足下からすくい上げる様に剣を振るい、『仮面竜』の首をはねた!

「……っっ……!!」(龍也LP 3300→1000)
 その衝撃をまともに受けた龍也は、額に汗を滲ませながら表情を歪ませた……。

「せ……戦闘破壊された『仮面竜』の効果……デッキから、攻撃力1500以下のドラゴン族モンスター『ボマー・ドラゴン』を特殊召喚!」
 龍也は、肩で息をしながら自分のデッキを確認し……その中から、爆弾を抱えた黒色の小型ドラゴンを特殊召喚した!

「『ボマー・ドラゴン』か……。カードを2枚場に伏せ、ターンを終了する。」
 定眼は、『ボマー・ドラゴン』対策のカードを伏せるかのごとくターンを終えた。

現在の状況
龍也 LP…1000
   手札…1枚
   場…ボマー・ドラゴン(攻撃力1000・攻撃表示)
     伏せカード1枚

定眼 LP…1350
   手札…0枚
   場…天魔神 ノートゥング(攻撃力3700・攻撃表示)
     伏せカード2枚


「私の……ターン、ドロー!『ボマー・ドラゴン』で、『ノートゥング』に攻撃!」
 『ボマー・ドラゴン』は、自らを犠牲にして『ノートゥング』を爆殺しようとしたが……

「永続罠……『デモンズ・チェーン』を発動する。この効果により、『ボマー・ドラゴン』の攻撃と効果を無効にする。」

 鎖に縛られ、『ノートゥング』の冷たく虚ろな目によって見られた『ボマー・ドラゴン』は、小さな鳴き声を上げながら縮こまっていた……。

「くっ……カードを1枚場に伏せ、ターンエン……」
「エンドフェイズに、速攻魔法『終焉の焔』を発動する。この効果によって、私の場に『黒焔トークン』を特殊召喚。」
 龍也のターンエンド宣言を聞いた定眼が、伏せカードを発動させると……定眼の場に、一つ目の黒い2体のモンスターが現れた!


終焉の焔
速攻魔法
このカードを発動する場合、
自分は発動ターン内に召喚・反転召喚・特殊召喚できない。
自分のフィールド上に「黒焔トークン」
(悪魔族・闇・星1・攻/守0)を2体守備表示で特殊召喚する。
(このトークンは闇属性モンスター以外の生け贄召喚のための生け贄にはできない)

「……『終焉の焔』……?まさか……」
 『終焉の焔』龍也は、心の中である警戒をしていた……。

「(定眼のデッキには……闇属性の『天魔神』が……!?)」



「私のターン、ドロー。」
 定眼はドローしたカードを軽く確認し……

「残念だが……龍也。このターンで、このデュエルは終わる……。」
「…………!」
 それを聞いた龍也は、思わずそう驚いた……。

「光天使1体……『ノートゥング』と、闇悪魔2体……『黒焔トークン』2体を生け贄に捧げ……」











「……出でよ……『天魔神 ティルヴィング』!」
 定眼の場に、漆黒の軽装鎧と、黒色の絹でできた半ズボンみたいな物、コウモリの羽の様な飾りが付いた黄金の髪飾りを身に着け……右手に、血の様な真紅色に染まった魔剣を持った戦士の姿をした小さな子供の様なモンスターが現れ……いきなり『ノートゥング』を背中から刺した!
 ……しかし背後から刺された『ノートゥング』は、表情1つ変えずに後ろを軽く見て、墓地に自ら進んで移動した……。

「味方を……刺した……?」
 龍也は、血の様な物が飛び散った場に立つ、1体の子供の姿をしたモンスター……『ティルヴィング』の姿を見て、思わず呟いた……。
 『ティルヴィング』は、つまらなそうな表情で剣から手を離し……身に付けていたナイフを手に取り、2体の『黒焔トークン』に付いていた1つの目をナイフでえぐり……そのままボールの様に蹴り飛ばした……。
 『ノートゥング』は、背中に刺さった剣を抜いて『ティルヴィング』に渡し、自ら墓地に向かっていった……。

「『ティルヴィング』の効果を発動する。場の自身以外のカードをすべて墓地へと送る……!」
 その言葉とともに、『ティルヴィング』は持っている血塗られた剣をペロッとなめる仕草をし、龍也の場に目をやった……。


「カウンター罠……!」
 龍也は『ティルヴィング』の効果を無効にしようと、伏せておいたカウンター罠……『天罰』を発動させようとしたが……

「なぜ……発動できない……!?」
 龍也は、発動タイミングとしての指示を受け付けない自分の伏せカードに、当惑していた……。

「……『ティルヴィング』の召喚は無効にされず、召喚成功時相手は魔法・罠・モンスター効果を使用できない……。」
「……!!まさか……」
 龍也は、定眼の次の一言を想像し、顔を強ばらせた……。











「……つまり……この効果は、止める事ができない……。」
 定眼が小さくそう呟くと……『ティルヴィング』が剣を引きずりながら、目にも止まらぬ速さで龍也の場に走っていき……持っていた剣で、龍也の場の伏せカード1枚……『天罰』を引き裂いた!
 さらに『ティルヴィング』が剣を突き出すと……『収縮』のレンズが粉々に砕け散った!
 そして『ティルヴィング』は、『ボマー・ドラゴン』を拘束している『デモンズ・チェーン』の一部をつかみ、軽くクイクイッと引っ張り……











 ……そのまま、一気に引き抜いた!
 すると、『ボマー・ドラゴン』の体に巻き付いていた『デモンズ・チェーン』の圧力が一瞬で高まり、その結果『ボマー・ドラゴン』の体が激しい血しぶきと肉塊を撒き散らしながら弾け飛んだ……。

「……この効果によって墓地に送られたカード1枚につき、相手に400ポイントのダメージを与える……。」
 すべてを壊してしまい、何も無くなった場に突っ立ている『ティルヴィング』は、次の獲物として龍也に眼をやり……持っていた剣を龍也に投げつけた!

「ぐあぁ……ぁっ……!」(龍也LP 1000→0)
 龍也は、その剣(ソリッドビジョンだが)によって発生した衝撃を受け、そのまま崩れる様に床に倒れてしまった……。











「(……調整を見誤ったか……?これでは、あまりに危険すぎる……。)」
 龍也の苦しそうな表情を見た定眼は、心の中でそう思っていた……。

「……すまない……龍也……。私には、成すべき事がある……。」
 そして、小さくそう呟き……龍也から離れていった……。



「駄目だ……定眼……」
 龍也は、絶え絶えな息で、必死にそう口にしていた……

「…………。」
 定眼は、黙って黒色のマントを羽織い、龍也の下から歩き去っていった……。










「……行くなぁぁぁぁっ!!」











 数分後……

「龍也!どうした!?」
 倒れている龍也の姿を見た剣一は、そう言いながら龍也の元に歩み寄った……。

「……わ……私の事は結…構です……。それよ…り、定眼を……」
 龍也は、剣一の服をつかみながら、苦しそうにそう言った……。

「定眼!?あいつがやったのか!?」
 剣一は、質問を重ねたが……

「早く!!!!」
 龍也は剣一の両肩をつかみながら、残りの力を振り絞ったかの様な大きな声でそう言い放ち、そのまま崩れる様に意識を失った……。

「……分かった……。」
 剣一はそう言い、龍也の部屋から走り去った……。
























「――三年前……結局定眼は見つからず、アカデミアからも既に退学していた……訳でしたね……。」
「ああ……。完全にもぬけの空になっていた定眼の部屋を見た時は……唖然としたな……。」
 剣一(19歳)と龍也(20歳)は、部屋の中で過去の事を思い返していた……。

「……そして、校長に聞いた時は、また耳を疑ったな……。」
「……『定眼は過去に両親と兄弟を失っている』……ですね。」
 そして、さらにそう会話をつなげた……。











 ……大切な者を無くした人は、どうすればいい?

「大切な者を無くした痛み……それが、定眼を突き動かした……。」
「僕達が定眼の心中を理解せずに、一方的に止めようとしたのは、お門違いだったのか……?」
 龍也と剣一は、今更ながら後悔の念を顕にした……。

「そうかもしれません……。」
 龍也は、小さくそう呟き……

「それだとしても……自らの命を投げ捨てる様な行為は……。……自らの死を悲しむ人が誰もいない様な考え方です……。」
 ……さらに、そう続けた……。

「……だが、今の僕達にできる事は……定眼の無事を願う事だけだ……。」
「……そうですね。」
 龍也は、小さくそう呟いた……。





















 ――その頃、星海校へと向かう、船の中にて……

「今一度聞こう……。お前は……何だ。」
 船の暗い一室の中で、ローブを羽織った男……フェイトは、黒い甲冑に身を包んだ男にそう言った……。











「……我が名は……覇王。」


次回予告

リナ「本戦まであと1日……何でカムイは今になってあんな奴とデュエルするんだろ。」
センリ「さあな。単純に、実力調べじゃ無いか?」
リナ「でもさ。あいつレイと裏でつながってるから、デッキ内容を教えるかもしれないじゃん。」
センリ「……裏も何も、表でつながってるだろ。」



次回、『GX plus!』第四十九話!



『カムイvsナオ!開放される無限煉獄!!』

リナ「無限煉獄って……どこまで無限なんだろね。」




第四十九話 カムイvsナオ!開放される無限煉獄!!

――デュエルアカデミア星海校……森の中のテントにて……

「離せ!クロートー!アトロポス!探しに行かせてくれ!!」
 一部分が不自然に黒色になっている赤色の髪で、黒の下地に所々に赤い染みみたいなものが付着しているドレスを着た、赤い眼をした少女……ラケシスは、テントの中で暴れながらそう言っていた……。

「フェイト様が来るまで持ち場を離れるなと言われているはずです。……それからでも遅くないのでは?」
「嫌!」
 青髪で眼鏡をかけた男……クロートーの言葉を、ラケシスは全否定した。

「諦めろ、ラケシス。この手錠がある限り、勝手な行動は許され無ぇぜ。」
 短い金髪で全身がっちりとした体格で、両腕を肩まで出している黒色のジャケットみたいな者を着ている男……アトロポスは、自分の右手とラケシスの右手を繋いだ手錠を見せ付けながらそう言った。

「――っっ!!」
 ラケシスは、二の腕の革の鞘に刺していたナイフを口でくわえて取り出し……そのまま、自分の手首に刃の部分に突き刺そうとした!



「ざけんじゃねえ!今何しようとしやがった!」
 その様子を見たアトロポスは、物凄い見幕でラケシスを睨み付け、そのまま地面に張り倒した!

「大人しくして下さい、ラケシス。貴女が傷付くと、私達まで悲しくなります。」
 そう言いながらクロートーは、楔と鎖を用意し……

カン!カン!カン!カン!……

「何をする!外せ!外せ!!」
 鎖付き楔で地面に縛り付けられたラケシスは、体を動かそうともがいていたが、完全に拘束され四肢を動かす事ができなくなっていた……。

「容赦無ぇな、クロートー。」
「仕方ありませんよ。これもラケシスのためです。」 
 アトロポスに対して、クロートーは至って冷静にそう答えた。

「確かに……ラケシスの体の一部分を拘束するだけじゃぁ、その部分を削ぎ落としてでも脱出しようとするぜ。」
「そうですね。……今の私達にできる事は、ラケシスを安静にさせておく事のみ。」
 アトロポスとクロートーが、互いにそう会話している間に……











サッ……

「……久しぶりだな、クロートー、ラケシス、アトロポス。」
 1人のローブを着た男が、3人の名前を呼びながらテントの入り口を開いた。

「フェイト様。お久しぶりです。」
 クロートーは、フェイトに対して丁寧に挨拶した……

「フェイト!?」
 ラケシスは、ハッとした表情でそう言い……

「フェイト!!……妾の『真紅眼の血塊竜(レッドアイズ・ブラッディドラゴン』が……」
 手足を必死に動かそうともがきながら、大きな声でそう言ったが……

「落ち着け、ラケシス。」
 テントの中に入ったフェイトが、ラケシスの首元をスッ……と触ると、ラケシスは今までの様子が嘘の様に、まるで事切れた人形の様にくったりとなった……。

「さすがですね、フェイト様。」
「俺達で抑え切れなかったラケシスを、あっさりと止めてしまうとは……」
 クロートーとアトロポスは、フェイトの技能に良く分からないながらも感心していた……。

「クロートー、アトロポス。沖に船を付けてある。そこを私達の本拠地とするぞ。……ついて来い。」
「分かりました。」
「了解。」
 クロートーとアトロポスは、ラケシスを抱きかかえているフェイトの言葉に従い、テントから船へと歩いて行った……。





















――一方その頃、カムイ、センリ、リナの3人は……

「ふ〜ん……。あの国崎って人からもらったカードと自分のデッキのカードとの調整、中々うまくいってないんだ。」
 リナは、カムイの顔を見上げながら軽くそう言った。

「ああ……。色々と試してみたんスけど、中々納得がいかないんスよね……。」
 カムイは、デッキケースに手をやりながらそう呟いた。

「おいおい、本戦は明日だろ?大丈夫なのか?」
 センリは、軽くそう言った。

「ああ……そろそろ強い相手とデュエルして調整を終わらせないとまずいんスよね……。」
 カムイは、小さくそう呟いた。

「強い相手か。それなら、いい相手がいるんじゃ無いか?」
「ん?誰なんスか?」
 センリの一言に対して、カムイはそう返した。

「『早乙女 ナオ』だよ。あいつとデュエルすればいいんじゃ無いか?」
「あいつと?別にあんな奴使わなくったっていいじゃん。」
 センリの言葉に対してリナは、嫌そうにそう言った。

「……そもそも、どこにいるか分からないと、申し込む事もできないんスよね……。」
 カムイは、ジャケットのポケットに手を突っ込みながら、軽くそう言い……

「……あ。ロッカーに財布を忘れたみたいッスね……。少し待っててもらっていいッスか?」
 忘れ物の存在を確認したかの様な様子でそう言い、そのまま2人の元から走り去った……。

「あっ、ちょっと待ってよ。」
 リナがそう呼び止めようとしたが、カムイは聞こえていないのかそのまま走り去って行った……。











――センリとリナの元から離れたカムイは……

「とりあえず……ナオにデュエルを申し込むためには……」
 カムイはそう言いながら携帯電話を操作し……

ピピピ……ピピピ……

『どうしたの?カムイ君。』
 カムイの電話の向こうから、1人の女の子の声がした。

「レイ。1つ、聞きたい事があるんスけど……。」
『何?』
 小声で話すカムイに対して、女の子――レイはそう尋ねた。

「……ナオが今、どこにいるか分かるッスか?」
『場所?……ちょっと分からないかな……。今一緒にいないから……』
 カムイの質問に対してレイは、申し訳無さそうにそう言った。

「なら……とりあえず、ナオのいる場所を確認してもらってもいいッスか?」
『え?いいけど……何で?』
 レイは、電話の向こうからカムイの要求に対して疑問に思っている口調で話した。

「いや……オレ、1回ナオとデュエルしてみたかったんスよね。で、連絡先を知っているレイに聞いてみた訳なんスよ。」
 カムイは、左手で頭をかきながらそう言った。

『……そう言う事ね。今からお兄ちゃんに電話してみるから、また後から連絡するね。』
「すまないッスね、レイ。」
 カムイは、レイに感謝の言葉を述べ……

ピッ。

 ……そのまま、通話を切った。



「……リナの前でレイに電話すると、またうるさい事になりそうッスからね……。」
 カムイは、小さくそう呟いた。











――その頃、カムイから連絡を受け取ったレイは……

『なるほど……。カムイがボクとね……。』
 ナオは、電話の向こうで軽くそう言った。

「……で、デュエルするの?」
『……そうだね。今のカムイなら、いい勝負になりそうだからね。』
 レイの言葉に対して、ナオは少し興味がありそうな様子でそう呟いた。

『じゃあ……デュエル場で待ってるって伝えておいてよ。』
「うん、今からカムイ君を呼ぶから、ちょっと待っててね。」
 レイは、ナオに対して一言そう言い……

ピッ。

 ……そのまま、通話を切った。

「……何か、ボクの事伝言板みたいに扱われてる様な気が……。」
 そう思いながらもレイは、携帯電話を操作した……。



















――数分後、カムイは……

「(何々……『お兄ちゃん、デュエル場で待ってるって。』……ッスか。)」
 カムイは、レイから送信されたメールを確認しながらセンリとリナの元に帰っていた。

「……おっ、来たな、カムイ。」
 帰ってきたカムイに対して、センリはそう呼び掛けた。

「ああ。……待たせちまったッスね。」
「そうだよ。……別にお金くらい、あたしが貸したげたのに。」
 リナは、ふくれっ面でカムイを見上げながらそう言った。

「いや……色々と必要な物も入ってたんスよね……。」
 カムイはそう言いながら、何食わぬ顔でデュエル場に向かって歩いて行った……。



「あれ?カムイ、デュエル場に何か用でもあんの?」
 カムイについてきているリナは、カムイにそう尋ねた。

「ああ。誰か調整相手がいるかもしれないッスからね。」
 カムイは、軽くそう答えた。





















――デュエル場にて……

「……あまり人がいないな。明日の準備で忙しいんじゃないか?」
 辺りを見渡したセンリは、そう自分の考えを述べた。

「……一応、1人だけいたッスね。あれは……」
 カムイは、デュエルリングの真ん中で立っている子供の元に歩み寄った。

「げっ……あいつだ。」
 その姿を見たリナは、嫌そうな表情をした。



「やあ、カムイ。」
 半ズボンをはき、頭にネコ耳を生やした子供……ナオは、カムイに対して軽くそう言った。

「偶然ッスね、ナオ。」
 カムイは、呼んでもらった事を隠しながらそう言った。

「そうだね。……強者ってのは、お互いに惹かれあう性質があるのかもね。」
 ナオは、呼ばれて来た事を隠しながらそう言った。

「なるほど……。オレとデュエルしてみるッスか?」
 カムイは、ナオに対してそう質問した。

「……いいよ。そろそろ、カムイとはデュエルする時だと思ってたんだ。」
 ナオは、カムイに対して軽くそう答えた。

「カムイとのデュエルなら、ボクの実力を見せてあげれるかもしれないからね。」
 そう言いながら、ナオは自分の左腕に大きめ(に見える)なデュエルディスクを装着した……。

「……だが、オレも負けないッスよ!」
 カムイも、自分の左腕にデュエルディスクを装着し……











「「デュエル!」」
 ……お互いに、デュエル開始の宣言をした!











「ナオとカムイのデュエルか……。面白い物になりそうだな。」
「そうだね。カムイがあいつをケチョンケチョンに叩きのめす様子が見れるかもしれないしさ。」
 センリとリナは、少し離れて2人のデュエルを観戦する事にした。











「ボクのターン、ドロー。手札から、魔法カード『闇の誘惑』を発動するよ。カードを2枚ドローして、手札の闇属性モンスター……『インフェルニティ・デーモン』を除外。」
 先攻だったナオは、『闇の誘惑』の効果でデッキからカードを2枚ドローし、7枚の手札の中から『インフェルニティ・デーモン』のカードをカムイに見せつけ、自分の半ズボンのポケットの中に放り込んだ。


闇の誘惑
通常魔法
自分のデッキからカードを2枚ドローし、
その後手札の闇属性モンスター1体をゲームから除外する。
手札に闇属性モンスターがない場合、手札を全て墓地へ送る。


「それから、『インフェルニティ・ネクロマンサー』を召喚するよ。自身の効果で守備表示に。」


「カードを3枚場に伏せてから……永続魔法『マジック・クロニクル』を発動するよ。」
 ナオがそう言いながら、手札の魔法カードを発動させると……ナオの場に、赤色と黒色に分かれたプレートみたいな物が出現した!

「『マジック・クロニクル』……手札すべてをコストに発動するカードッスね。」
「そうだよ。これは、ボクとカムイのデュエルの結果を示す書物……とでも言っておこうかな。まずはデッキから魔法・罠カードを5枚ゲームから除外する。」
 ナオは、デッキから5枚のカード……『D・D・R』、『ワン・フォー・ワン』、『闇の誘惑』、『非常食』、『マジック・プランター』を取り出し、自分のポケットに放り込んだ。


マジック・クロニクル
永続魔法
手札を全て墓地に送って発動する。
デッキから魔法または罠カードを5枚選択し、ゲームから除外する。
相手が魔法カードを発動する度に、
このカードにクロニクルカウンターを1つ置く。
このカードのクロニクルカウンターを2つ取り除く事で、
このカードの効果でゲームから除外したカードの中から1枚を相手が選択し、
自分の手札に加える。
このカードがフィールド上から離れた時、
このカードの効果でゲームから除外されているカード1枚につき、
自分は500ポイントダメージを受ける。


「カムイが魔法カードを発動させる度にこのカードにクロニクルカウンターが乗って、それを2個取り除く度にこの効果で除外したカードを手札に加える事ができるんだよ。」
「さらに手札が0枚……1ターン目からハンドレスコンボの炸裂ッスね。」
 カムイは、『マジック・クロニクル』の効果そのものよりも、手札が0枚になった事で使用可能になる『インフェルニティ』の効果を警戒していた……。

「そうだよ。『インフェルニティ・ネクロマンサー』の効果発動。墓地から『インフェルニティ』と名の付いたモンスター1体……『インフェルニティ・リローダー』を守備表示で特殊召喚する。」
 『インフェルニティ・ネクロマンサー』がナオの墓地に対して呪文を唱えると……『インフェルニティ・リローダー』の魂が、肉体を取り戻した状態で蘇った!


インフェルニティ・ネクロマンサー
闇 レベル3
【悪魔族・効果】
このカードは召喚に成功した時、守備表示になる。
自分の手札が0枚の場合、以下の効果を得る。
1ターンに1度、自分の墓地から「インフェルニティ・ネクロマンサー」以外の
「インフェルニティ」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する事ができる。
攻撃力0 守備力2000



「『インフェルニティ・リローダー』の効果発動。カードを1枚ドローして、その種類によってボクかカムイがダメージを受けるよ。」
 ナオがそう言うと、『インフェルニティ・リローダー』の銃口がカムイとナオに向けられ、それを見たナオはカードを1枚ドローし……

「ドローしたカードは、魔法カードの『神秘の中華なべ』……モンスター以外のカードだったから、ボクが500ポイントのダメージを受けるよ。」
 ……ドローしたカードをカムイに見せると、『インフェルニティ・リローダー』の銃口が火を噴き……その弾丸によって、ナオは少しのダメージを受けた。


インフェルニティ・リローダー
闇 レベル1
【戦士族・効果】
自分の手札が0枚の場合、
1ターンに1度、自分のデッキからカードを1枚ドローする事ができる。
この効果でドローしたカードをお互いに確認し、
モンスターカードだった場合、
そのモンスターのレベル×200ポイントダメージを相手ライフに与える。
魔法・罠カードの場合、自分は500ポイントダメージを受ける。
攻撃力900 守備力0


ナオLP 4000→3500

「カードを1枚場に伏せて、ターンエンド。」
 ナオは、『インフェルニティ・リローダー』の放った弾丸(ソリッドビジョンだが)が当たった所に手を添えながら、ターンを終えた。


現在の状況
ナオ LP…3500
   手札…0枚
   場…インフェルニティ・ネクロマンサー(守備力2000・守備表示)
     インフェルニティ・リローダー(守備力0・守備表示)
     マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×0)
     伏せカード4枚(内1枚神秘の中華なべ)

「オレのターン、ドロー!手札から、速攻魔法『サイクロン』を発動するッスよ!この効果で……『マジック・クロニクル』を破壊!」
 カムイは、ドローしたカードを見渡した後、手札から1枚のカードをデュエルディスクに差し込んだ。
 すると、ナオの場に激しい竜巻が発生して、赤と黒のプレートを吹き飛ばそうとしたが……

「カウンター罠……『魔宮の賄賂』を発動するよ。この効果で『サイクロン』を無効にする。」
 その竜巻は、ナオの発動させたカウンター罠によってあっさりと鎮圧された……。


サイクロン
速攻魔法
フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する。

魔宮の賄賂
カウンター罠
相手の魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。
相手はデッキからカードを1枚ドローする。


「魔法カードの発動が無効になったから、『マジック・クロニクル』にカウンターは乗らないんスね……。『魔宮の賄賂』の効果で、カードを1枚ドロー!」
 カムイは、ドローしたカードを軽く確認し……

「オレは……『カードガンナー』を攻撃表示で召喚するッスよ!」
 ……手札から、キャタピラとレーザー砲が付いたおもちゃの様なモンスターを召喚した。

「さらにオレは……カードを3枚場に伏せ、永続魔法『マジック・クロニクル』を発動ッス!」
 カムイは、手札のカード1枚……『神剣−フェニックスブレード』を墓地に送り、ナオが発動させたカードと同じカードを発動させた。

「『マジック・クロニクル』?……まさかカムイも使うなんてね。でもカムイが魔法カードを発動させたから、ボクの場の『マジック・クロニクル』にクロニクルカウンターが1個乗るよ。」
「だが、効果は処理されるッスよ!オレが除外するカードは……『ミラクル・フュージョン』、『手札抹殺』、『R−ライトジャスティス』、『E−エマージェンシーコール』、『神剣−フェニックスブレード』の5枚ッス!」
 カムイがそう言いながらデッキから5枚のカードを黒色のジャケットのポケットにしまっている間に、

ナオのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 0個→1個

「『カードガンナー』の効果発動ッス!デッキの上からカードを3枚墓地に送り、攻撃力を1500ポイントアップさせるッスよ!」
 カムイがそう言うと、デッキの上から3枚のカード……『スパークマン』、『ゴブリンのやりくり上手』、『エッジマン』が墓地に送られ、『カードガンナー』は自らの攻撃力を高めた。


カードガンナー
地 レベル3
【機械族・効果】
1ターンに1度、自分のデッキの上からカードを3枚まで墓地へ送って発動する。
このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで、
墓地へ送ったカードの枚数×500ポイントアップする。
また、自分フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。
攻撃力400 守備力400


カードガンナー 攻撃力400→1900

「墓地に送られた『神剣−フェニックスブレード』の効果を発動するッスよ!墓地から戦士族モンスター2体……『スパークマン』と『エッジマン』を除外し、このカードを手札に!」
 そして、『マジック・クロニクル』のコストとして墓地に送った『神剣−フェニックスブレード』を、『カードガンナー』のコストとして墓地に送ったカードを除外して手札に戻した。


神剣−フェニックスブレード
装備魔法
戦士族モンスターにのみ装備可能。
装備モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。
自分のメインフェイズ時、自分の墓地に存在する
戦士族モンスター2体をゲームから除外する事で、
このカードを自分の墓地から手札に加える。


「なるほどね。まず『マジック・クロニクル』でデッキの魔法カードを除外して、『カードガンナー』で戦士族を墓地に送られやすくした訳だ。……常識的行動だけどね。」
 ナオは、カムイの戦法に対して軽くそう言った。

「これで除外ゾーンに2体のモンスターが揃ったッスね……。伏せておいた魔法カード『平行世界融合』を発動ッス!」
 カムイがそう言うと、場の上空の空間の一部が、突然ガラスの様に砕けた!



「『平行世界融合』?……『マジック・クロニクル』にクロニクルカウンターが乗るから、どうでもいいんだけどね。」
「この効果で、除外された『スパークマン』と『エッジマン』をデッキに戻し……」
 カムイは、融合召喚されるモンスターの内容にまったく興味が無いと言わんばかりのナオの言葉を気にせずに2枚の除外カードをジャケットのポケットからデッキに戻し……

ナオのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 1個→2個

「……融合召喚!『E・HERO プラズマヴァイスマン』!!」


平行世界融合
通常魔法
ゲームから除外されている、融合モンスターカードによって決められた
自分の融合素材モンスターをデッキに戻し、「E・HERO」と名のついた
融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。
このカードを発動するターン、自分はモンスターを特殊召喚する事はできない。










「『神剣−フェニックスブレード』の効果で手札を増やしながら除外されたカードを増やし、『平行世界融合』に繋げるか……。やるな、カムイ!」
 センリは、アドバンテージをほとんど失わないカムイの戦法を評価していた。

「え〜っと……あれは、カムイが1枚も手札を減らさずに融合モンスターを特殊召喚した……って事だよね?」
「まあ、そう言う事だな。」
 少し当惑しているリナに対して、センリは軽くそう言った。

「……って事は、普通に『ミラクル・フュージョン』で融合召喚すると手札が1枚減るけど、『平行世界融合』と『神剣−フェニックスブレード』を組み合わせたから、1枚手札消費が減ったって事か〜。や〜るじゃ〜ん、カムイ〜!」
 カムイの戦法を理解したリナは、嬉しそうにカムイを称賛した。











「行くッスよ!『カードガンナー』で、『インフェルニティ・リローダー』に攻撃!」
 『カードガンナー』は、両腕のレーザー砲からレーザーを放ち、『インフェルニティ・リローダー』を焼き切った!

「さらに『プラズマヴァイスマン』で、『インフェルニティ・ネクロマンサー』に攻撃!」
 『プラズマヴァイスマン』は、両腕のナックルから電流を発し、『インフェルニティ・ネクロマンサー』を押しつぶそうとしたが……

「……その攻撃宣言時に、伏せ罠カード『ヘイト・バスター』を発動するよ。」
「なっ……!そのカードを伏せてたんスか!?」
 意外なカードの発動に、カムイは思わず驚いた。

「そうだよ。この効果で『プラズマヴァイスマン』と『インフェルニティ・ネクロマンサー』を破壊して、カムイに『プラズマヴァイスマン』の攻撃力分のダメージを与える。」
 『インフェルニティ・ネクロマンサー』は、殴りかかってくる『プラズマヴァイスマン』に向けて両手で爆弾を構え……その爆弾を『プラズマヴァイスマン』のナックルに接触させ、そのまま自らの命と引き換えに『プラズマヴァイスマン』を爆殺した!


ヘイト・バスター
通常罠
自分フィールド上に表側表示で存在する悪魔族モンスターが
攻撃対象に選択された時に発動する事ができる。
相手の攻撃モンスター1体と、攻撃対象となった自分モンスター1体を破壊し、
破壊した相手モンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。


「『ヘイト・バスター』……ここでそのカードは、正直予想外だったッスね……。」
 カムイは、1ターン目から致命的なダメージを受けた事に、少し危機感を抱いていた……。

「オレはこれで、ターンエン……」
「エンドフェイズに、永続罠『闇次元の解放』を発動。除外された闇属性モンスター……『インフェルニティ・デーモン』を特殊召喚する。」
 そう言いながらナオは、自分の服のポケットから『インフェルニティ・デーモン』を取り出し、デュエルディスクに置いた。


闇次元の解放
永続罠
ゲームから除外されている自分の闇属性モンスター1体を選択し、
自分フィールド上に特殊召喚する。
このカードがフィールド上から離れた時、
そのモンスターを破壊してゲームから除外する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。


「ボクの手札が0枚の時に特殊召喚された『インフェルニティ・デーモン』の効果が発動するよ。デッキから『インフェルニティ』と名の付いたカード……『インフェルニティガン』を手札に加える。」
 デッキから1枚の永続魔法を取り出したナオは、端的にそう言った。


インフェルニティ・デーモン
闇 レベル4
【悪魔族・効果】
自分の手札が0枚の場合にこのカードをドローした時、
このカードを相手に見せる事で自分フィールド上に特殊召喚する。
また、このカードが特殊召喚に成功した時、自分の手札が0枚の場合、
自分のデッキから「インフェルニティ」と名のついたカード1枚を手札に加える事ができる。
攻撃力1800 守備力1200


「『闇次元の解放』……『闇の誘惑』からの組み立ては、とりあえず完璧だったみたいッスね。ターンエンド!」
 


現在の状況
カムイ LP…1400
    手札…1枚(神剣−フェニックスブレード)
    場…カードガンナー(攻撃力400・攻撃表示)
      マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×0)
      伏せカード2枚

ナオ LP…3500
   手札…1枚(インフェルニティガン)
   場…インフェルニティ・デーモン(攻撃力1800・攻撃表示)
     マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×2)
     闇次元の解放(インフェルニティ・デーモン対象)
     伏せカード1枚(神秘の中華なべ)


「ボクのターン、ドロー。メインフェイズに、『マジック・クロニクル』に乗ったクロニクルカウンターを2つ取り除いて、効果を発動するよ。……何をボクの手札に加えさせる?」
 ナオはそう言いながら、ポケットの中から5枚のカードを取り出し、カムイに見せた。

ナオがマジック・クロニクルで除外したカード……D・D・R、ワン・フォー・ワン、闇の誘惑、非常食、マジック・プランター

「ならオレは……『ワン・フォー・ワン』を手札に加えさせるッスね。」
「『ワン・フォー・ワン』……本当にそれでよかったのかな?」
 カムイの言葉を聞きつけたナオは、そう言いながら『ワン・フォー・ワン』を手札に加え、残りのカードは再びポケットの中にしまった。



「……さて、どうしようかなっと。」
 ナオは、頬に人差し指を当て、自分の3枚の手札を見ながら次の手を考えていた。

「カードを1枚場に伏せて、魔法カード『ワン・フォー・ワン』を発動するよ。手札の『インフェルニティ・デーモン』を捨てて、デッキから『インフェルニティ・ミラージュ』を特殊召喚。」
 ……そして、すぐに思いついた手を実行し、デッキから仮面をつけた赤髪のモンスター……『インフェルニティ・ミラージュ』を特殊召喚した。


ワン・フォー・ワン
通常魔法
手札からモンスター1体を墓地へ送って発動する。
手札またはデッキからレベル1モンスター1体を
自分フィールド上に特殊召喚する


カムイのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 0個→1個

「これでボクの手札が0枚になったから、『インフェルニティ・ミラージュ』の効果を発動するよ。自身をリリースして、墓地から『インフェルニティ』と名の付いたモンスター2体……『インフェルニティ・デーモン』と『インフェルニティ・ネクロマンサー』を特殊召喚する。」
 『インフェルニティ・ミラージュ』は、墓地に眠る『インフェルニティ・デーモン』と『インフェルニティ・ネクロマンサー』の魂を投影し……自らの命と引き換えに、その2体に肉体を与えて蘇らせた!


インフェルニティ・ミラージュ
闇 レベル1
【悪魔族・効果】
このカードは墓地からの特殊召喚はできない。
自分の手札が0枚の場合、このカードをリリースし、
自分の墓地に存在する「インフェルニティ」と名のついた
モンスター2体を選択して発動する事ができる。
選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。
攻撃力0 守備力0


「なっ……1枚のカードで2体のモンスターを特殊召喚したんスか!?」
「そうだよ。手札が0枚の時に特殊召喚された『インフェルニティ・デーモン』の効果発動。デッキから『インフェルニティ・デストロイヤー』を手札に加える。」
 ナオは、当たり前の様にデッキからカードを探し出し、手札に加えた。

「……これで終わりかな。『インフェルニティ・デーモン』で『カードガンナー』に攻撃。ヘル・プレッシャー!」
 『インフェルニティ・デーモン』は、魔法陣から巨大な悪魔の手を召喚し、『カードガンナー』を握りつぶさせようとしたが……

「……手札から『神剣−フェニックスブレード』を捨て、伏せ罠カード『レインボー・ライフ』を発動ッス!この効果で、オレがこのターン受けるダメージはすべて回復に変換されるんスよ!」
 ……その攻撃が届く前に、カムイの前に虹色の不思議なオーラが発生した!
 そのオーラによって、『インフェルニティ・デーモン』の戦闘によって発生した衝撃波が癒しの力へと変換され、カムイのライフを回復した!


レインボー・ライフ
通常罠
手札を1枚捨てる。
このターンのエンドフェイズ時まで、自分が受けるダメージは無効になり、
その数値分ライフポイントを回復する。


カムイLP 1400→2800

「『カードガンナー』が破壊された事で、オレはデッキからカードを1枚ドローするッスよ!」
 カムイは、そう言いながらカードをドローした。

「……まあ、決まる訳無いとは思ってたけどね。メインフェイズ2に入るよ。伏せておいた永続魔法『インフェルニティガン』を発動。」
 ナオは、手札を減らすために伏せておいたカードを発動させた。

カムイのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 1個→2個

「『闇次元の解放』で帰還した『インフェルニティ・デーモン』をリリースして、『インフェルニティ・デストロイヤー』をアドバンス召喚する。」
 ナオの場に、両腕に刃を持った黒色をした破壊者――『インフェルニティ・デストロイヤー』が召喚された。

「これでボクの手札が0枚になったから、『インフェルニティガン』の第2効果を発動するよ。このカードを墓地に送って、墓地から『インフェルニティ・デーモン』と『インフェルニティ・リローダー』を特殊召喚。」
 ナオがそう言うと、『インフェルニティガン』の弾丸装填部に『インフェルニティ・デーモン』と『インフェルニティ・リローダー』の魂が詰め込まれ……砲身から『インフェルニティ・デーモン』と『インフェルニティ・リローダー』が肉体を取り戻した状態で射出された!


インフェルニティガン
永続魔法
1ターンに1度、手札から「インフェルニティ」と名のついた
モンスター1体を墓地へ送る事ができる。
また、自分の手札が0枚の場合、
フィールド上に存在するこのカードを墓地へ送る事で、
自分の墓地に存在する「インフェルニティ」と名のついた
モンスターを2体まで選択して自分フィールド上に特殊召喚する。


「ボクの手札が0枚の時に特殊召喚された『インフェルニティ・デーモン』の効果が発動するよ。デッキから『インフェルニティ・フォース』を手札に加える。」
 『インフェルニティガン』の力によって蘇った『インフェルニティ・デーモン』は、デッキから『インフェルニティ・フォース』のカードを探し出し、ナオに与えた。

「まだだよ。『インフェルニティ・デーモン』をリリースして、伏せておいた速攻魔法『神秘の中華なべ』を発動する。この効果で、リリースしたモンスターの攻撃力分……1800ポイントのライフを回復するよ。」
 そしてナオは、蘇った『インフェルニティ・デーモン』を再び墓地に送り、自らのライフに変換した。


神秘の中華なべ
速攻魔法
自分フィールド上のモンスター1体をリリースして発動する。
リリースしたモンスターの攻撃力か守備力を選択し、
その数値だけ自分のライフポイントを回復する。


ナオLP 3500→5300

カムイのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 2個→3個

「『インフェルニティ・デーモン』が墓地に……『インフェルニティ・ネクロマンサー』の効果で蘇生させ、また効果を発動する気なんスかね……。」
「そうだよ。カードを1枚場に伏せて、『インフェルニティ・ネクロマンサー』の効果発動。墓地から『インフェルニティ・デーモン』を守備表示で特殊召喚。」
 墓地に送られた『インフェルニティ・デーモン』は、『インフェルニティ・ネクロマンサー』の呪文によって再び蘇った。

「『インフェルニティ・デーモン』の効果を発動するよ。デッキから『インフェルニティガン』を手札に加える。」
 『インフェルニティ・ネクロマンサー』の効果によって蘇った『インフェルニティ・デーモン』は、デッキから2枚目の『インフェルニティガン』のカードを探し出し、ナオに与えた。

「カードを1枚場に伏せてから、そろそろ『インフェルニティ・リローダー』の効果を発動するよ。カードを1枚ドローする。」
 そう言いながらナオは、『インフェルニティ・リローダー』に銃口を突き付けられた後にカードを1枚ドローし……

「ドローしたカードは『マジック・プランター』……魔法カードを引いたから、ボクは500ポイントのダメージを受けるよ。」
 ……『インフェルニティ・リローダー』の放った弾丸を受けながらも、軽くそう言った。

ナオLP 5300→4800

「ドローした『マジック・プランター』を使わせてもらうよ。無駄に残った『闇次元の解放』を墓地に送ってカードを2枚ドロー。」
 ナオは、『インフェルニティ・リローダー』によって撃たれた胸元を軽く押さえながら、カードを2枚ドローした。


マジック・プランター
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する
永続罠カード1枚を墓地へ送って発動する。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。


カムイのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 3個→4個

「カードを2枚場に伏せて、ターンを終了するよ。」


現在の状況
ナオ LP…4800
   手札…0枚
   場…インフェルニティ・デストロイヤー(攻撃力2300・攻撃表示)
     インフェルニティ・ネクロマンサー(守備力2000・守備表示)
     インフェルニティ・デーモン(守備力1200・守備表示)×2
     インフェルニティ・リローダー(守備力0・守備表示)
     マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×0)
     伏せカード4枚(内2枚インフェルニティ・フォース、インフェルニティガン)

カムイ LP…2800
    手札…1枚
    場…マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×4)
      伏せカード1枚











「『インフェルニティ』……凶悪な展開力だな……。」
 センリは、ナオの場が埋まった事に普通に感心していた……。

「でもカムイなら絶対大丈夫だって。あんな奴に負ける訳無いじゃん。」
 それに対してリナは、自信満々にそう言った。

「……その根拠の無い自信はいったいどこから来るんだよ。」
「べっつに〜。どっからでもいいじゃん。」
 センリの言葉に、リナは軽くそう答えた。











「……オレのターン、ドロー!まずは……『マジック・クロニクル』のクロニクルカウンターを2個取り除き、効果を発動するッスよ!」
 カムイは、ジャケットのポケットから5枚のカードを取り出し、ナオに見せた。

カムイがマジック・クロニクルで除外したカード……ミラクル・フュージョン、手札抹殺、R−ライトジャスティス、E−エマージェンシーコール、神剣−フェニックスブレード

「それなら……『神剣−フェニックスブレード』かな。」
「『神剣−フェニックスブレード』……確かにこれくらいしか無いッスね。」
 そう言いながらカムイは、『神剣−フェニックスブレード』を手札に加え……

カムイのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 4個→2個

「さらにもう1度『マジック・クロニクル』の効果を発動するッスよ!」
 残った4枚のカードを、再びナオに見せ付けた。

カムイがマジック・クロニクルで除外したカード……ミラクル・フュージョン、手札抹殺、R−ライトジャスティス、E−エマージェンシーコール

「じゃあ……『手札抹殺』にしようかな。」
「『手札抹殺』ッスね。」
 カムイは『手札抹殺』を手札に加え、残りの3枚は自分のジャケットのポケットに入れた。

カムイのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 2個→0個

「(ナオの『マジック・クロニクル』にカウンターを乗せる事になるんスけど……ここは仕方無いッスね……。)」
 カムイは、今の4枚の手札でできる作戦を、軽く考えていた。

「手札から、永続魔法『未来融合−フューチャー・フュージョン』を発動ッス!この効果で融合召喚するモンスターは……『E・HERO エリクシーラー』!デッキから、その融合素材の4体……『フェザーマン』、『バーストレディ』、『クレイマン』、『バブルマン』を墓地に送るッスよ!」
 ……そして、手を思いついたカムイは、そう言いながらデッキから4枚のカードを探し出し、墓地に送った。


未来融合−フューチャー・フュージョン
永続魔法
自分のデッキから融合モンスターカードによって決められたモンスターを
墓地へ送り、融合デッキから融合モンスター1体を選択する。
発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時に選択した融合モンスターを
自分フィールド上に特殊召喚する(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。


ナオのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 0個→1個

「さらに手札から、魔法カード『闇の量産工場』を発動ッス!墓地から通常モンスター2体……『フェザーマン』と『バーストレディ』を手札に!」
 カムイは、慣れた手付きで墓地のモンスター2体を取り出し、手札に加えた。


闇の量産工場
通常魔法
自分の墓地に存在する通常モンスター2体を選択して発動する。
選択したモンスターを自分の手札に加える。


ナオのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 1個→2個

「墓地の『神剣−フェニックスブレード』の効果を発動するッスよ!墓地から『クレイマン』と『プラズマヴァイスマン』を除外し、手札に回収!」
 カムイは、さらに『神剣−フェニックスブレード』の効果を利用し、手札の水増しをした。

「これでオレの手札は5枚……手札から、魔法カード『手札抹殺』を発動するッスよ!4枚の手札を捨て、カードを4枚ドロー!」
 カムイは、増やした自分の手札をすべて捨て、新たな手札へと変換した。


手札抹殺
通常魔法
お互いの手札を全て捨て、それぞれ自分のデッキから
捨てた枚数分のカードをドローする。


ナオのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 2個→3個


現在の状況
カムイ LP…2800
    手札…4枚
    場…未来融合−フューチャー・フュージョン(0ターン経過・表側表示)
      マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×4)
      伏せカード1枚

ナオ LP…4800
   手札…0枚
   場…インフェルニティ・デストロイヤー(攻撃力2300・攻撃表示)
     インフェルニティ・ネクロマンサー(守備力2000・守備表示)
     インフェルニティ・デーモン(守備力1200・守備表示)×2
     インフェルニティ・リローダー(守備力0・守備表示)
     マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×3)
     伏せカード4枚(内2枚インフェルニティ・フォース、インフェルニティガン)


「これで手札交換はできたッスよ!手札から、『E・HERO エアーマン』を召喚!」
 カムイの場に、ゴーグルを付けて背中に扇風機みたいな物が埋め込まれたプレートを背負ったヒーローが現れた!

「『エアーマン』が召喚・特殊召喚に成功した時、2つの効果の中から1つを選択して発動する事ができるんスよ!オレは第2効果で、デッキから『HERO』と名の付いたモンスター……『E・HERO スパークマン』を手札に!」
 カムイは、デッキから『スパークマン』のカードを探し出し、手札に加えた。


E・HERO エアーマン
風 レベル4
【戦士族・効果】
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、
次の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●自分フィールド上に存在するこのカード以外の
「HERO」と名のついたモンスターの数まで、
フィールド上に存在する魔法または罠カードを破壊する事ができる。
●自分のデッキから「HERO」と名のついた
モンスター1体を手札に加える。
攻撃力1800 守備力300


「手札から、魔法カード『融合』を発動するッスよ!オレの場の『E・HERO』……『エアーマン』と、手札の光属性……『スパークマン』を融合し……」











「……来い!『E・HERO The シャイニング』!!」
 カムイの場に、背中に光輪を背負った全身白色のヒーローが現れた!

「『The シャイニング』……か。でも魔法カードが発動された事で、『マジック・クロニクル』にクロニクルカウンターが乗ったよ。」
 ナオの言葉通り、『マジック・クロニクル』の黒い板が淡く光り、魔法力が蓄えられた事を示していた……。

ナオのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 3個→4個

「だが、『The シャイニング』の攻撃力は、オレの除外された『E・HERO』の数×300ポイントアップするんスよ!オレの除外された『E・HERO』は『クレイマン』、『プラズマヴァイスマン』の2体……よって、攻撃力は600ポイントアップ!」
 『The シャイニング』は、カムイのジャケットのポケットの中のヒーローから力を受け取り……自らの力を高めた!


E・HERO The シャイニング
光 レベル8
【戦士族・融合・効果】
「E・HERO」と名のついたモンスター+光属性モンスター
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードの攻撃力は、ゲームから除外されている
自分の「E・HERO」と名のついたモンスターの数×300ポイントアップする。
このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、
ゲームから除外されている自分の「E・HERO」と名のついた
モンスターを2体まで選択し、手札に加える事ができる。
攻撃力2600 守備力2100


E・HERO The シャイニング 攻撃力2600→3200

「さらにオレは、永続罠『リビングデッドの呼び声』を発動するッスよ!オレの墓地から、『エアーマン』を特殊召喚!」
 カムイの場に、再び『エアーマン』が現れた。


リビングデッドの呼び声
永続罠
自分の墓地からモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。


「『リビングデッドの呼び声』……『エアーマン』の効果を再利用だね。」
「ああ……。『エアーマン』の第1効果……魔法・罠破壊効果を発動するッスよ!この効果で……」
 『エアーマン』は、背中のプレートの扇風機を回し、

「永続罠……『デモンズ・チェーン』を発動する。この効果で、『エアーマン』の攻撃と効果を封じるよ。」
 ナオの言葉通り、『エアーマン』はナオの場のカードから発生した鎖によって拘束され、竜巻を発生させる事ができなくなった……。


デモンズ・チェーン
永続罠
フィールド上に表側表示で存在する
効果モンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターは攻撃する事ができず、効果は無効化される。
選択したモンスターが破壊された時、このカードを破壊する


「『デモンズ・チェーン』……破壊効果は当たり前の様に警戒されてたんスね……。」
 カムイは、残念そうにそう呟いた……。

「……手札から、魔法カード『ミラクル・フュージョン』を発動ッス!オレの場の『HERO』……『エアーマン』と、墓地の水属性……『バブルマン』を除外し……」
 そう言いながらカムイは、2枚のカードを自分のジャケットのポケットにしまい……











「『E・HERO アブソルートZero』……融合召喚!!」
 カムイの場に、氷結の力を操るクリスタル状の体をしたヒーローが現れた!


ミラクル・フュージョン
通常魔法
自分のフィールド上または墓地から、融合モンスターカードによって
決められたモンスターをゲームから除外し、「E・HERO」という
名のついた融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。
(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)


E・HERO The シャイニング 攻撃力3200→3800

ナオのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 4個→5個

「(……『アブソルートZero』……。とりあえず、『インフェルニティ・フォース』の破壊効果を警戒してかな。)」
 ナオは、カムイの手札と、自分の3枚の伏せカードに軽く目をやりながらそう言った。

「『エアーマン』が破壊以外の方法で場から離れた事で、『リビングデッドの呼び声』はオレの場に残るんスよ!その『リビングデッドの呼び声』をコストに、魔法カード『マジック・プランター』を発売ッス!カードを2枚ドロー!」
 そう言いながらカムイは、カードを2枚ドローした。

ナオのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 5個→6個

「(『ミラクル・フュージョン』を発動させて『エアーマン』を場から離してから、残った『リビングデッドの呼び声』をコストに『マジック・プランター』を発動……か。『リビングデッドの呼び声』さえ破壊されなければ、どうでもよかった……って事だね。)」
 ナオは、軽くそう分析した。

「墓地の『神剣−フェニックスブレード』の効果を発動ッス!墓地から『フェザーマン』と『バーストレディ』を除外する事で手札に戻すッスよ!」
 カムイは、墓地から3枚のカードを取り出し、2枚のカードをジャケットのポケットに、『神剣−フェニックスブレード』を手札に加えた。
 『The シャイニング』は、除外された『E・HERO』が増えた事で、さらに自らの輝きを増した!

E・HERO The シャイニング 攻撃力3800→4400

「(……ナオの『マジック・クロニクル』の存在を考えると、『神剣−フェニックスブレード』をわざわざ装備させる必要は無いッスね……。)」


現在の状況
カムイ LP…2800
    手札…3枚(内1枚神剣−フェニックスブレード)
    場…E・HERO The シャイニング(攻撃力4400・攻撃表示)
      E・HERO アブソルートZero(攻撃力2500・攻撃表示)
      マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×0)

ナオ LP…4800
   手札…0枚
   場…インフェルニティ・デストロイヤー(攻撃力2300・攻撃表示)
     インフェルニティ・ネクロマンサー(守備力2000・守備表示)
     インフェルニティ・デーモン(守備力1200・守備表示)×2
     インフェルニティ・リローダー(守備力0・守備表示)
     マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×6)
     デモンズ・チェーン(表側表示)
     伏せカード3枚(内2枚インフェルニティ・フォース、インフェルニティガン)



「行くッスよ!『The シャイニング』で、『インフェルニティ・デストロイヤー』に攻撃!オプティカル・ストーム!」
 『The シャイニング』は全身から光を放ち、『インフェルニティ・デストロイヤー』の体を焼き尽くした!

「…………。」(ナオLP 4800→2700)
 ナオは、その衝撃を黙って受け入れた。

「『アブソルートZero』で『インフェルニティ・ネクロマンサー』に攻撃!Freezing at moment(フリージングアットモーメント)!!」
 『アブソルートZero』は、両腕の甲に付いた氷の刃で『インフェルニティ・ネクロマンサー』を打ち砕こうとしたが……

「墓地の『インフェルニティ・デストロイヤー』を対象に、伏せ罠カード『インフェルニティ・フォース』を発動するよ。この効果で、攻撃モンスター……『アブソルートZero』を破壊する。」
 ナオがそう言うと、『アブソルートZero』の足元の地面から突然刃が出現した……!

「どうする?何かチェーンはあるかい?」
 ナオは、カムイに対して小悪魔の様な笑みを浮かべながらそう言った。

「(あの目は……!モンスターを守る気なんてさらさら無い目なんスか……!)」
「どうしたの?何かチェーンは?」
「いや……無いッスね。」
 カムイは、ナオのくりくりした目の中に潜む小悪魔の気配を感じ取り、小さくそう言った。

「『インフェルニティ・フォース』の処理だよ。攻撃してきた『アブソルートZero』を破壊して、墓地から『インフェルニティ・デストロイヤー』を特殊召喚。」
 『アブソルートZero』は、地面の中から不意打ちまがいに出現した『インフェルニティ・デストロイヤー』に腹を貫かれた事で、ガラスが割れる様な音を立ててそのまま砕け散ってしまった……。


インフェルニティ・フォース
通常罠
自分の手札が0枚の場合、
「インフェルニティ」と名のついたモンスターが
攻撃対象に選択された時に発動する事ができる。
攻撃モンスター1体を破壊し、
自分の墓地に存在する「インフェルニティ」と
名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚する。


「だが……場から離れた『アブソルートZero』の効果が発動するッスよ!ナオの場のモンスターをすべて破壊!」
 カムイがそう言うと、粉々になった『アブソルートZero』の存在した部分から激しい凍てつく吹雪が放出された!
 その吹雪に巻き込まれたナオの場の5体のモンスターは完全に凍り付き、そのまま粉雪の様に砕け散った……。


E・HERO アブソルートZero
水 レベル8
【戦士族・融合・効果】
「HERO」と名のついたモンスター+水属性モンスター
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードの攻撃力は、フィールド上に表側表示で存在する
「E・HERO アブソルートZero」以外の
水属性モンスターの数×500ポイントアップする。
このカードがフィールド上から離れた時、
相手フィールド上に存在するモンスターを全て破壊する。
攻撃力2500 守備力2000


 ……しかし、ナオは……

「……礼を言わせてもらうよ。ボクの場のモンスターを墓地に送ってくれて。」
 ……小悪魔の様な笑みを浮かべながら、カムイにそう言った。











「何さあいつ。まるで自分のモンスターを破壊してほしかったみたいじゃん。」
 ナオのナマイキな言動を聞いたリナは、不機嫌そうにそう呟いた。

「一掃されてもすぐに復帰できる事からの自信だな。……まあ、確かにもったいないよな。」
「そうだよ。別に破壊されて嬉しいモンスターじゃ無かったしさ。」
 センリも、リナと同じくナオの行動をあまり良い目で見ていなかった。











「(……すっかり忘れてたッスね……。自分のモンスターをさっさと墓地に送ってほしいと思っているナオにとって、『アブソルートZero』の存在は眼中にも無い事を……。)」
 カムイは、『インフェルニティ・フォース』を警戒しての『アブソルートZero』があまり良い手では無かったと感じ取っていた……。

「……メインフェイズ2に入るッスよ!墓地から『スパークマン』と『アブソルートZero』を除外し、墓地の『神剣−フェニックスブレード』を手札に!」
 カムイは、また墓地の2枚のカードを自分のジャケットのポケットにしまい、墓地から『神剣−フェニックスブレード』を手札に戻した。

E・HERO The シャイニング 攻撃力4400→5000

「カードを2枚場に伏せ、ターンエンド!」


現在の状況
カムイ LP…2800
    手札…1枚
    場…E・HERO The シャイニング(攻撃力5000・攻撃表示)
      マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×0)
      未来融合−フューチャー・フュージョン(0ターン経過、表側表示)
      伏せカード2枚

ナオ LP…2700
   手札…0枚
   場…マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×6)
     デモンズ・チェーン(表側表示)
     伏せカード2枚(内1枚インフェルニティガン)


「(オレの場には、攻撃力5000の『The シャイニング』……だが、次のドローと『マジック・クロニクル』で手札に加わるカードで圧倒的な展開をされる可能性がある分、オレの方が圧倒的に不利ッスね……。)」
 カムイは、ナオが次にドローするカードを警戒していた……。

「ボクのターン、ドロー。……手札から『ファントム・オブ・カオス』を召喚して、優先権で効果を発動するよ。墓地から『インフェルニティ・ミラージュ』を除外して、同じ効果と名前を得る。」
 ドローしたカードを目にしたナオは、何の躊躇いもなくそのカードを召喚し、すぐさま効果を発動させた。
 すると、『ファントム・オブ・カオス』の姿が見る見る溶けていき……自らの姿を、真っ黒な『インフェルニティ・ミラージュ』へと変化させた!


ファントム・オブ・カオス
闇 レベル4
【悪魔族・効果】
自分の墓地に存在する効果モンスター1体を選択し、ゲームから除外する事ができる。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
このカードはエンドフェイズ時まで選択したモンスターと同名カードとして扱い、
選択したモンスターと同じ攻撃力とモンスター効果を得る。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
このモンスターの戦闘によって発生する相手プレイヤーへの戦闘ダメージは0になる。
攻撃力0 守備力0


「『インフェルニティ・ミラージュ(ファントム・オブ・カオス)』の効果を発動するよ。自身をリリースして、墓地から『インフェルニティ・デーモン』と『インフェルニティ・ネクロマンサー』を特殊召喚。」
 『インフェルニティ・ミラージュ(ファントム・オブ・カオス)』は、自らを鏡として墓地の2体のモンスターを投影し……その中から、投影した2体のモンスターを蘇らせた!

「手札が0枚の時に特殊召喚された『インフェルニティ・デーモン』の効果発動。サーチするカードは……『インフェルニティ・ネクロマンサー』だよ。」
 そう言いながらナオは、『インフェルニティ・ネクロマンサー』を手札に加えた。

「(2体とも攻撃表示……あらかさまに罠ッスね。)」
 カムイは、『The シャイニング』より攻撃力が劣るモンスターが2体も攻撃表示になっている事を、軽く警戒していた……。

「伏せておいた永続魔法『インフェルニティガン』を発動……何かチェーンは?」
「いや……無いッスね……。一応『マジック・クロニクル』にクロニクルカウンターは乗るんスけどね。」
 ナオは、カムイに確認を取りながら、あらかじめ伏せておいたカードを発動させた。

カムイのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 0個→1個

「『インフェルニティガン』の第1効果を発動するよ。手札の『インフェルニティ・ネクロマンサー』を墓地に送る。」
 ナオは、『インフェルニティガン』の弾丸として墓地に『インフェルニティ・ネクロマンサー』を装填し……

「『インフェルニティガン』の第2効果を発動するよ。ボクの墓地から、『インフェルニティ・ネクロマンサー』と『インフェルニティ・リローダー』を特殊召喚。」
 ……さらに墓地の『インフェルニティ・リローダー』の魂を追加装填し、

「ボクの手札が0枚になったから、『インフェルニティ・リローダー』の効果を発動するよ。カードを1枚ドローする。」
 ナオは、『インフェルニティ・リローダー』に銃口を突き付けられながらカードを1枚ドローした。

「ドローしたカードは『隠された魔導書』……罠カードを引いたから、ボクは500ポイントのダメージを受けるよ。」
 罠カードをドローしたナオは、火を噴いた『インフェルニティ・リローダー』の弾丸を気にせずに、そのカードを手札に加えた。

ナオLP 2700→2200

「カードを1枚場に伏せて、『インフェルニティ・ネクロマンサー』の効果を発動するよ。墓地から『インフェルニティ・デーモン』を特殊召喚。」
 さらにナオは今ドローしたカードを伏せて、墓地から『インフェルニティ・デーモン』を蘇らせた。

「手札が0枚の時に特殊召喚された『インフェルニティ・デーモン』の効果発動。サーチするカードは……『インフェルニティ・リベンジャー』だよ。」
 そう言いながらナオは、『インフェルニティ・リベンジャー』を手札に加えた。











 ――小悪魔の様な笑みを浮かべながら。


現在の状況
ナオ LP…2200
   手札…1枚(インフェルニティ・リベンジャー)
   場…インフェルニティ・デーモン(攻撃力1800・攻撃表示)×2
     インフェルニティ・ネクロマンサー(攻撃力0・攻撃表示)×2
     インフェルニティ・リベンジャー(攻撃力900・攻撃表示)
     マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×6)
     デモンズ・チェーン(表側表示)
     伏せカード2枚(内1枚隠された魔導書)


「じゃあ、これで終わらせようかな。」
 ナオは、自分の伏せカードに手をやりながらそう言った。

「手札から『インフェルニティ・リベンジャー』を捨てて……伏せ罠カード『レインボー・ライフ』を発動。」
 そう言うと、伏せカードを表にしたナオの周りに、不思議な虹色のオーラが発生した……!

「……!!……これは……まさか……!」
「そうだよ。……気が付いたみたいだね。」
 驚くカムイに対して、ナオは小悪魔の様な笑みを浮かべながらそう言った。

「ライフを少し回復するくらいなら、『レインボー・ライフ』を使う必要は無いよ。『レインボー・ライフ』の神髄は、もっと攻撃的な使い方にあるんだ。」


「バトルフェイズに入るよ。『インフェルニティ・ネクロマンサー』で、『The シャイニング』に攻撃。」
 ナオの指示を聞いた『インフェルニティ・ネクロマンサー』は、まったく無い攻撃力で『The シャイニング』に突撃し……そのまま当たり前の様に破壊された……。
 当然その時に発生した衝撃はナオに向かって飛んで来たが……その衝撃は、虹色のオーラによって癒しの力に変換された……。

ナオLP 2200→7200

「ボクの手札が0枚の時にモンスターが戦闘破壊されたから、墓地から『インフェルニティ・リベンジャー』を特殊召喚するよ。」
 ナオがそう言うと、戦闘によって破壊された『インフェルニティ・ネクロマンサー』の脇から、墓地から小型のガンマンの人形の様なモンスターが現れた!


インフェルニティ・リベンジャー
闇 レベル1
【悪魔族・チューナー・効果】
このカードが墓地に存在し、自分の手札が0枚の場合
「インフェルニティ・リベンジャー」以外の自分フィールド上に存在する
モンスターが相手モンスターとの戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
このカードを墓地から特殊召喚する事ができる。
この効果で特殊召喚したこのカードのレベルは、
相手モンスターに破壊された自分のモンスターと同じレベルになる。
攻撃力0 守備力0


「『インフェルニティ・リベンジャー』で、『The シャイニング』に攻撃。」
 『インフェルニティ・リベンジャー』は、勝手に突撃して勝手に破壊された『インフェルニティ・ネクロマンサー』の敵(?)を討つべく『The シャイニング』に向かって突撃した……。
 しかし、攻撃力0では復讐などできるはずも無く、一方的に返り討ちにあった……。
 当然、その際の衝撃はナオの周りの虹色のオーラが余さず吸収した……。

ナオLP 7200→12200

「『インフェルニティ・リローダー』で、『The シャイニング』に攻撃。」
 ナオは、次の弾として『インフェルニティ・リローダー』に攻撃させ……その返り討ちに会う様子を黙って見ていた……。
 当然その時に発生した衝撃は、虹色のオーラで回復に変換された……。

ナオLP 12200→16300

「『インフェルニティ・リローダー』が戦闘破壊されたから、『インフェルニティ・リベンジャー』が自己再生するよ。」
 ナオの言葉に合わせ、再び『インフェルニティ・リベンジャー』が蘇り……

「『インフェルニティ・リベンジャー』で、『The シャイニング』に攻撃。」
 そのまま、『インフェルニティ・リローダー』の後を追う様に特攻して『The シャイニング』に返り討ちに会った……。

ナオLP 16300→21300

「『インフェルニティ・デーモン』で、『The シャイニング』に攻撃。」
 『インフェルニティ・デーモン』は、魔法陣から悪魔の腕を召喚せずに自ら突撃し……そのまま当たり前の様に返り討ちに会った……。

ナオLP 21300→24500

「『インフェルニティ・デーモン』が戦闘破壊されたから、『インフェルニティ・リベンジャー』が自己再生するよ。『インフェルニティ・リベンジャー』で、『The シャイニング』に攻撃。」
 『インフェルニティ・リベンジャー』は、三度無謀な特攻を行い、ナオのライフを回復させる事に徹した。

ナオLP 24500→29500

「『インフェルニティ・デーモン』で、『The シャイニング』に攻撃。」
 『インフェルニティ・デーモン』は、先程の再現VTRを流しているかの様に自爆特攻し、ナオのライフを回復させた。

ナオLP 29500→32700

「『インフェルニティ・デーモン』が戦闘破壊されたから、『インフェルニティ・リベンジャー』が自己再生するよ。『インフェルニティ・リベンジャー』で、『The シャイニング』に攻撃。」
 『インフェルニティ・リベンジャー』は、四度無謀な特攻を行い、ナオのライフを回復させる事に徹した。

ナオLP 32700→37700

「『インフェルニティ・ネクロマンサー』で、『The シャイニング』に攻撃。」
 ナオは、自分の場の最後のモンスター……『インフェルニティ・ネクロマンサー』にも特攻命令を出し、その戦闘で発生した衝撃を自らのライフに変換した。

ナオLP 37700→42700

「『インフェルニティ・ネクロマンサー』が戦闘破壊されたから、『インフェルニティ・リベンジャー』が自己再生するよ。」
 ナオがそう言うと、うんざりとするほど神風特攻するナオの場のモンスター達の脇で、『インフェルニティ・リベンジャー』が蘇った。

「これで最後だよ。『インフェルニティ・リベンジャー』で、『The シャイニング』に攻撃。」
 そしてその特攻の最後を飾ろうと、『インフェルニティ・リベンジャー』は『The シャイニング』に向かって5度目の突撃を行った……。
 当然『インフェルニティ・リベンジャー』に勝ち目など無く、『The シャイニング』の放つ光の衝撃によって華々しく散って行った……。

ナオLP 42700→47700


ナオ LP…47700
   手札…0枚
   場…マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×6)
     デモンズ・チェーン(表側表示)
     伏せカード1枚(隠された魔導書)


 ナオは、無限ループにも何も手を染めていない……。
 それにもかかわらず生み出された、目を背けたくなるほどの異常なライフ差……それが今、カムイの前に立ちはだかっている。
 周りから見れば、いったい何を相手にしているのか理解できない様な状況だろう……。











「よ、47700って……ちょっとおかしくない!?」
 リナは、ナオのライフポイントの異常な数値に、思わず当惑していた……。

「そうだな……。だが、何とかなるだろ。カムイのデッキならな。」
 センリは、カムイのデッキ内容的に、この状況でも切り返せると信じていた。











「…………。」
「どうだい?……諦める?」
 ナオは、カムイに対して軽くそう言った。

「……いや。まだオレは勝機が無い訳じゃ無いんスけどね。」
 カムイは、ナオに対してそう言った。

「……例えば、ナオがオレの場の『The シャイニング』を突破できなければ、ナオはデッキ切れで負ける事になるんスからね。」
「……そうだね。何ターンかかければ47700くらいのライフ、どうにかして削り落とせるかもしれないからね。」
 カムイの言葉に対して、ナオは軽くそう述べた。

「メインフェイズ2に入って、『マジック・クロニクル』の効果を発動するよ。クロニクルカウンターを2個取り除いて……何を手札に加えさせる?」
「……そう言えば、まだその効果が残っていたんスね。」
 カムイがそう言っている間に、ナオはポケットの中から4枚のカードを取り出した。

ナオがマジック・クロニクルで除外したカード……D・D・R、闇の誘惑、非常食、マジック・プランター

「オレが選ぶカードは……『非常食』ッスね。」
「『非常食』だね。」
 手札に加わったカードが気に食わなかったのか、ナオは端的にそう答え……

「もう1度『マジック・クロニクル』の効果を発動するよ。クロニクルカウンターを2個取り除いて……次は何?」
 そう言いながら、カムイに対して3枚のカードを見せた。

ナオがマジック・クロニクルで除外したカード……D・D・R、闇の誘惑、マジック・プランター

「ここは……『闇の誘惑』ッスね。」
「『闇の誘惑』だね。」
 ナオは、軽くそう言い……

「あと1回『マジック・クロニクル』の効果を発動するよ。クロニクルカウンターを2個取り除いて……次は?」
 ……そして、そのまま2枚のカードをカムイに見せた。

ナオがマジック・クロニクルで除外したカード……D・D・R、マジック・プランター

「ここは……『D・D・R』ッスね。」
「……それで良かったのかな?」
 ナオは軽くそう言いながら、残った1枚……『マジック・プランター』を自分のポケットの中に放り込んだ。

ナオのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 6個→4個→2個→0個

「手札から『非常食』を捨てて、装備魔法『D・D・R』を発動。除外した『インフェルニティ・ミラージュ』を特殊召喚するよ。」
 ナオが今必要無いカードを捨てると、ナオの場に異次元へと繋がる穴が空き……その中から、『ファントム・オブ・カオス』によって除外された『インフェルニティ・ミラージュ』が帰還した!


D・D・R
装備魔法
手札を1枚捨てる。ゲームから除外されている自分のモンスター1体を選択して
攻撃表示でフィールド上に特殊召喚し、このカードを装備する。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。


カムイのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 1個→2個

「カードを1枚場に伏せて、『インフェルニティ・ミラージュ』の効果を発動するよ。自身をリリースして、墓地から『インフェルニティ・デーモン』と『インフェルニティ・ネクロマンサー』を特殊召喚。」
 ナオの場に現れた『インフェルニティ・ミラージュ』は、ナオの墓地から2体のモンスターを蘇らせた!

「手札が0枚の時に特殊召喚された『インフェルニティ・デーモン』の効果発動。デッキから『インフェルニティガン』を手札に加える。」
 さらにナオは、当たり前の様にデッキから3枚目の『インフェルニティガン』を手札に加えた。


現在の状況
ナオ LP…47700
   手札…1枚(インフェルニティガン)
   場…インフェルニティ・デーモン(守備力1200・守備表示)
     インフェルニティ・ネクロマンサー(守備力2000・守備表示)
     マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×0)
     デモンズ・チェーン(表側表示)
     伏せカード2枚(隠された魔導書・闇の誘惑)


「手札から『インフェルニティガン』を発動させてから、効果を発動するよ。『インフェルニティガン』を墓地に送って、墓地から、『インフェルニティ・デーモン』と『インフェルニティ・ネクロマンサー』を特殊召喚。」
 ナオが手札から『インフェルニティガン』を発動させると、『インフェルニティガン』の砲身に『インフェルニティ・デーモン』と『インフェルニティ・ネクロマンサー』の魂が装填され……砲身から、その2体のモンスターが肉体を取り戻した状態で射出された!

カムイのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 2個→3個

「手札が0枚の時に特殊召喚された『インフェルニティ・デーモン』の効果発動。デッキから『インフェルニティ・フォース』を手札に加える。」
 ナオは、また当たり前の様にデッキから1枚のカードをサーチした。

「(これでナオは、3枚の『インフェルニティガン』を消費したんスね……。とは言え、『隠された魔導書』でまたデッキに戻されると厳しいッスね……。)」
 カムイは、ナオの場の『隠された魔導書』の存在を警戒していた……。

「カードを1枚場に伏せて、『インフェルニティ・ネクロマンサー』の効果を発動するよ。墓地から『インフェルニティ・リローダー』を特殊召喚。」


「伏せておいた魔法カード『闇の誘惑』を発動するよ。カードを2枚ドローして……手札から『インフェルニティ・ガーディアン』を除外するよ。」
 ナオは、そう言いながらカードを2枚ドローし……小悪魔の様な笑みを浮かべながら手札の『インフェルニティ・ガーディアン』を自分のポケットに放り込んだ。

カムイのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 3個→4個


「……まだ終わりじゃ無いみたいだね。手札から、魔法カード『無欲な壺』を発動するよ。ボクの墓地から『インフェルニティガン』2枚をデッキに戻す。」
 そう言いながらナオは、墓地に送った『インフェルニティガン』2枚をデッキに戻し、次のターンへの布石を打った。


無欲な壺
通常魔法
自分または相手の墓地に存在する
カードを合計2枚選択し、持ち主のデッキに戻す。
このカードは発動後、墓地へ送らずにゲームから除外する。
「無欲な壺」は1ターンに1枚しか発動できない。


カムイのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 4個→5個

「『インフェルニティ・リローダー』の効果を発動するよ。カードを1枚ドローする。」
 ナオは、『インフェルニティ・リローダー』に銃口を突き付けられながらも余裕そうにカードをドローした。

「ドローしたカードは『転生の予言』。罠カードを引いた……けど、『レインボー・ライフ』の効果で、500ダメージを回復に変換するよ。」

ナオLP 47700→48200


「カードを1枚場に伏せて、ターンエン……」
「そのエンドフェイズに、永続罠『リミット・リバース』を発動するッスよ!この効果で……墓地から『カードガンナー』を特殊召喚!」
 カムイがそう言うと、墓地から『カードガンナー』が攻撃表示で蘇った!


リミット・リバース
永続罠
自分の墓地から攻撃力1000以下のモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。
そのモンスターが守備表示になった時、そのモンスターとこのカードを破壊する。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。



現在の状況
ナオ LP…48200
   手札…0枚
   場…インフェルニティ・デーモン(守備力1200・守備表示)×2
     インフェルニティ・ネクロマンサー(守備力2000・守備表示)×2
     インフェルニティ・リローダー(守備力0・守備表示)
     マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×0)
     デモンズ・チェーン(表側表示)
     伏せカード3枚(隠された魔導書、インフェルニティ・フォース、転生の予言)
マジック・クロニクルで除外しているカード……マジック・プランター

カムイ LP…2800
    手札…2枚
    場…E・HERO The シャイニング(攻撃力5000・攻撃表示)
      カードガンナー(攻撃力400・攻撃表示)
      マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×5)
      未来融合−フューチャー・フュージョン(0ターン経過、表側表示)
      リミット・リバース(カードガンナー対象・表側表示)
      伏せカード1枚
マジック・クロニクル……ミラクル・フュージョン、R−ライトジャスティス、E−エマージェンシーコール


「『リミット・リバース』で次のターンへの繋ぎだね。……さて、どうなるのかな?これでターンエンド。」
 ナオは、次のターンのカムイの行動に、興味津々な様子だった……。

「……オレの……ターン!」



次回予告

センリ「『インフェルニティ』の展開力……恐ろしいな。」
リナ「何言ってんのさ。センリのアンデット族デッキも似た様な物じゃん。」
センリ「……そこまで凄いか?ナオは伏せカードまで稼いでいるんだぜ。」
リナ「そう言う事って、使ってる人には分かんない物なんじゃないの?」



次回、『GX plus!』第五十話!



『カムイvsナオ!無限煉獄の果てに……!!』

センリ「あのカードは来るか?いや……来ないか?」




第五十話 カムイvsナオ!無限煉獄の果てに……!!

――デュエルアカデミアの浜辺につけた、フェイトの船の中にて……

「ここが私達の部屋だ、クロートー、アトロポス。」
 ラケシスを担いでいるフェイトは、扉の鍵を開けながらそう言った。

「なるほど……。資料室みたいな感じですね。」
 クロートーは、部屋の様子を軽く確認し……

「フェイト様。この黒い甲冑は?」
 ……見せしめの様に椅子に置かれていた黒鋼の鎧に気付き、それを指差しながらそう尋ねた。

「……遊城十代……いや、覇王十代の鎧だ。」
 フェイトは、軽くそう言った。

「これが……フェイト様が捕獲してきたと言うあの……」
「その通りだ、アトロポス。……雰囲気作りのための用意は必要だからな。」
 驚くアトロポスに対して、フェイトは軽くそう答えた。

「さて……私はラケシスを別室で寝かしてくる。ここで待機していてくれ。」
「了解。」
「分かりました、フェイト様。」
 フェイトの言葉に対して、アトロポスとクロートーはそう答えた。





















――一方、カムイ達は……


現在の状況
ナオ LP…48200
   手札…0枚
   場…インフェルニティ・デーモン(守備力1200・守備表示)×2
     インフェルニティ・ネクロマンサー(守備力2000・守備表示)×2
     インフェルニティ・リローダー(守備力0・守備表示)
     マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×0)
     デモンズ・チェーン(表側表示)
     伏せカード3枚(隠された魔導書、インフェルニティ・フォース、転生の予言)

カムイ LP…2800
    手札…2枚
    場…E・HERO The シャイニング(攻撃力5000・攻撃表示)
      カードガンナー(攻撃力400・攻撃表示)
      マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×5)
      未来融合−フューチャー・フュージョン(E・HERO エリクシーラー指定・0ターン経過・表側表示)
      リミット・リバース(カードガンナー対象・表側表示)
      伏せカード1枚




「……オレのターン、ドロー!」
 ナオの場にズラリと並んだモンスターを前にしながら、カムイはカードをドローした。

「『カードガンナー』の効果を発動するッスよ!デッキの上からカードを3枚墓地に送り、攻撃力を1500ポイントアップ!」
 カムイは、『ダンディライオン』、『ワイルドマン』、『ネクロ・ガードナー』を墓地に送り、『カードガンナー』の攻撃力をアップさせた。


カードガンナー
地 レベル3
【機械族・効果】
1ターンに1度、自分のデッキの上からカードを3枚まで墓地へ送って発動する。
このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで、
墓地へ送ったカードの枚数×500ポイントアップする。
また、自分フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。
攻撃力400 守備力400


カードガンナー 攻撃力400→1900

「墓地に送られた『ダンディライオン』の効果が発動するッスよ!オレの場に『綿毛トークン』を2体特殊召喚!」
 そう言うと、カムイの場にふわふわの綿毛みたいなモンスターが2体特殊召喚された!


ダンディライオン
地 レベル3
【植物族・効果】
このカードが墓地へ送られた時、自分フィールド上に「綿毛トークン」
(植物族・風・星1・攻/守0)2体を守備表示で特殊召喚する。
このトークンは特殊召喚されたターン、アドバンス召喚のためにはリリースできない。
攻撃力300 守備力300


「『リミット・リバース』をコストに、魔法カード『マジック・プランター』を発動ッス!カードを2枚ドロー!」
 カムイは、そう言いながらカードを2枚ドローし……

「『リミット・リバース』を失った『カードガンナー』は、そのまま破壊されるんスよ!破壊された『カードガンナー』の効果で、さらにもう1枚ドロー!」
 さらに『カードガンナー』の効果を合わせ、手札を5枚に増やした。
 ドローしたカードを確認したカムイは、軽く笑みを浮かべた……。


マジック・プランター
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する
永続罠カード1枚を墓地へ送って発動する。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。


ナオのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 0個→1個

「さらにオレは……『The シャイニング』に、装備魔法『神剣−フェニックスブレード』を装備させるッスよ!」
 『The シャイニング』は、右手に不死鳥の小刀を持ち、攻撃力を少しだけ高めた。


神剣−フェニックスブレード
装備魔法
戦士族モンスターにのみ装備可能。
装備モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。
自分のメインフェイズ時、自分の墓地に存在する
戦士族モンスター2体をゲームから除外する事で、
このカードを自分の墓地から手札に加える。


E・HERO The シャイニング 攻撃力5000→5300
ナオのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 1個→2個

「『神剣−フェニックスブレード』……ボクの『マジック・クロニクル』にクロニクルカウンターを乗せたかった訳じゃ無いよね?」
「ああ……!『神剣−フェニックスブレード』を対象に……魔法カード『拘束解放波』を発動ッス!この効果で……ナオの場に伏せられた魔法・罠カードをすべて破壊するッスよ!」
 カムイがそう言うと、『The シャイニング』は持っていた短剣をナオに向けて突き付けた……。

「……それならボクは、それにチェーンして伏せ罠カード『転生の予言』を発動するよ。」
 『拘束解放波』の発動を見たナオは、伏せておいたカードを表にした。

「ならオレは……伏せ罠カード『ゴブリンのやりくり上手』を発動し、さらにそれにチェーンして『非常食』を発動するッスよ!」
 ナオの『転生の予言』の発動を見たカムイは、伏せておいたカードと手札の速攻魔法を、続けざまに発動させた。

「『非常食』の発動コストとして、『拘束解放波』と『ゴブリンのやりくり上手』を墓地に送り……逆順処理で、まずはオレのライフを2000ポイント回復!」
 カムイがそう言うと、場の2枚のカードが光の粒子となって消え去り……カムイのライフへと変換された!


非常食
速攻魔法
このカード以外の自分フィールド上に存在する
魔法・罠カードを任意の枚数墓地へ送って発動する。
墓地へ送ったカード1枚につき、自分は1000ライフポイント回復する。


カムイLP 2800→4800
ナオのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 2個→3個


「次は『ゴブリンのやりくり上手』の効果解決ッスね……!デッキから、オレの墓地の『ゴブリンのやりくり上手』の枚数+1枚……つまり、3枚のカードをドローし、手札のカード1枚をデッキの一番下に戻すッスよ!」
 そしてカムイはカードを2枚ドローし、デッキの下に『神剣−フェニックスブレード』を戻した。


ゴブリンのやりくり上手
通常罠
自分の墓地に存在する「ゴブリンのやりくり上手」の枚数+1枚を
自分のデッキからドローし、自分の手札を1枚選択してデッキの一番下に戻す。


「次は『転生の予言』の効果解決だよ。ボクの墓地から『インフェルニティガン』と『インフェルニティ・フォース』をデッキに戻す。」
 ナオは、墓地から2枚のカードを取り出し、自分のデッキに戻した。


転生の予言
墓地に存在するカードを2枚選択し、
持ち主のデッキに加えてシャッフルする。


「最後は『拘束解放波』の効果で、ナオの場に伏せられた魔法・罠カードをすべて破壊!」
 カムイがそう言うと、『The シャイニング』持っている短剣から激しい光が放たれ……その光によって『神剣−フェニックスブレード』が砕け散り、ナオの場の伏せカードを吹き飛ばした!


拘束解放波
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する装備魔法カード1枚を選択して発動する。
選択した装備魔法カードと相手フィールド上にセットされた魔法・罠カードを全て破壊する。


ナオのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 3個→4個

 そしてカムイは、『ゴブリンのやりくり上手』の効果で4枚になった手札を確認し……

「クロニクルカウンターを2個取り除き、『マジック・クロニクル』の効果を発動するッスよ!何を手札に加えさせるんスか?」
 そう言いながらカムイは、ジャケットのポケットから取り出したカードをカムイに見せ付けた。

カムイがマジック・クロニクルの効果で除外したカード……ミラクル・フュージョン、R−ライトジャスティス、E−エマージェンシーコール

「じゃあ……『E−エマージェンシーコール』かな。」
「……それでいいんスかね?」
 カムイは、ナオから少し前に言われた言葉を再現するかの様にそう言った。


マジック・クロニクル
永続魔法
手札を全て墓地に送って発動する。
デッキから魔法または罠カードを5枚選択し、ゲームから除外する。
相手が魔法カードを発動する度に、
このカードにクロニクルカウンターを1つ置く。
このカードのクロニクルカウンターを2つ取り除く事で、
このカードの効果でゲームから除外したカードの中から1枚を相手が選択し、
自分の手札に加える。
このカードがフィールド上から離れた時、
このカードの効果でゲームから除外されているカード1枚につき、
自分は500ポイントダメージを受ける。


「手札から、魔法カード『E−エマージェンシーコール』を発動するッスよ!デッキから、『E・HERO』と名の付いたモンスター1体……『エッジマン』を手札に!」
 そう言いながらカムイは、残り少ないデッキの中から『エッジマン』のカードを探し出し、手札に加えた。


E−エマージェンシーコール
通常魔法
自分のデッキから「E・HERO」と名のついたモンスター1体を手札に加える。


ナオのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 4個→5個

「さらに手札から、魔法カード『戦士の生還』を発動ッス!この効果で、墓地の戦士族モンスター……『ワイルドマン』を手札に!」


戦士の生還
通常魔法
自分の墓地に存在する戦士族モンスター1体を選択して手札に加える。


ナオのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 5個→6個

「さらに魔法カード『融合』を発動ッス!手札の『ワイルドマン』と『エッジマン』を融合し……」
 カムイが1枚の魔法カードを発動させると、場に不思議な虹色の渦が現れ……その中に『ワイルドマン』と『エッジマン』が巻き込まれ……











「……『E・HERO ワイルドジャギーマン』……融合召喚!」
 ……その中から、巨大な刀を持った1体のヒーローが現れた!

「『ワイルドジャギーマン』……全体攻撃能力を持つモンスターだね。でもそれだけじゃ、ボクのライフはあまり削れないよ。」
 ナオは、軽くそう言った。


E・HERO ワイルドジャギーマン
地 レベル8
【戦士族・融合・効果】
「E・HERO ワイルドマン」+「E・HERO エッジマン」
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードは相手フィールド上に存在する全てのモンスターに
1回ずつ攻撃をする事ができる。
攻撃力2600 守備力2300


「ああ……!ここはサポートカードを使わせてもらうッスよ!手札から、『ドリル・シンクロン』を召喚!」
 カムイの場に、丸い体をして3本のドリルを装備している1体のモンスターが現れた!

「『ドリル・シンクロン』がオレの場に存在する限り、オレの場の戦士族モンスターは貫通能力を得、1ターンに1度カードをドローできるんスよ!さらに……『ワイルドジャギーマン』に、装備魔法『団結の力』を装備!」
「!!……『団結の力』?」
 ナオは、このデュエルで初めて、驚きの感情を顕わにした。


ドリル・シンクロン
地 レベル3
【機械族・チューナー・効果】
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
自分フィールド上に存在する戦士族モンスターが
守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
この効果が適用されたことによって相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、
1ターンに1度だけ自分のデッキからカードを1枚ドローする事ができる。
攻撃力800 守備力300

団結の力
装備魔法
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体につき、
装備モンスターの攻撃力・守備力は800ポイントアップする。


ナオのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 6個→7個
E・HERO ワイルドジャギーマン 攻撃力2600→6600


現在の状況
カムイ LP…4800
    手札…0枚
    場…E・HERO ワイルドジャギーマン(攻撃力6600・攻撃表示)
      E・HERO The シャイニング(攻撃力5000・攻撃表示)
      ドリル・シンクロン(攻撃力800・攻撃表示)
      綿毛トークン(守備力0・守備表示)×2
      マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×3)
      未来融合−フューチャー・フュージョン(1ターン経過、表側表示)
      団結の力(ワイルドジャギーマンに装備)


「これでナオの場には、攻撃を妨げるカードは無くなったッスよ……!『ワイルドジャギーマン』で、ナオの場のモンスターすべてに攻撃!真・インフィニティ・エッジ・スライサー!!」
 『ワイルドジャギーマン』は、持っていた剣に『ドリル・シンクロン』のドリルを合体させ……そのドリルで、ナオの場のモンスターすべてを突き刺し切り裂いた!

「わわっっ!」(ナオLP 48200→41600→36200→30800→26200→21600)
 あまりに強力な衝撃によって、ナオは思わず張り倒され、背中を床に打ち付けた格好になってしまった……。

「痛たたた……」
 ナオは、べそをかきながら背中をさすって起き上がった……。

「『ドリル・シンクロン』の効果でカードを1枚だけドローし……『ドリル・シンクロン』と『The シャイニング』で、ダイレクトアタック!オプティカル・ストーム!」
 カムイは、さらに容赦無く攻撃を加え、ナオのライフを大きく削った!

「っっ!」(ナオLP 21600→20800→15800)
 ライフをさらに大きく削られたナオは、左腕のデュエルディスクを盾にしている様な格好を取った。











「やった〜!決まった決まった!もう最高だよね!あの格好!」
 ナオが張り倒された様子を見たリナは、嬉しそうにはしゃいでいた。

「まあ、ありっちゃありなんじゃ無いか?」
 センリは、腕を組みながら軽くそう答えた。











「たった1ターンで、ライフが一気に30000以上も……とんでもない一撃だね。」
 ナオは、カムイの切り返しに対して賞賛の念を述べていた。

「ああ……!メインフェイズ2に入り、クロニクルカウンターを2個取り除き、『マジック・クロニクル』の効果を発動するッスよ!何を手札に加えさせるんスか?」
 カムイは、ジャケットから2枚のカードを取り出し、ナオに見せ付けた。

カムイがマジック・クロニクルの効果で除外したカード……ミラクル・フュージョン、R−ライトジャスティス

「じゃあ……『ミラクル・フュージョン』かな。」
「『ミラクル・フュージョン』……ッスね。」
 そう言いながらカムイは、除外された『ミラクル・フュージョン』を手札に加え、残りの『R−ライトジャスティス』をジャケットのポケットに戻した。

「カードを1枚場に伏せ、ターンエンド!」
 カムイは、軽く手札をシャッフルした後手札を1枚伏せ、ターンを終えた。


現在の状況
カムイ LP…4800
    手札…1枚
    場…E・HERO ワイルドジャギーマン(攻撃力6600・攻撃表示)
      E・HERO The シャイニング(攻撃力5000・攻撃表示)
      ドリル・シンクロン(攻撃力800・攻撃表示)
      綿毛トークン(守備力0・守備表示)×2
      マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×1)
      未来融合−フューチャー・フュージョン(1ターン経過、表側表示)
      団結の力(ワイルドジャギーマンに装備)
      伏せカード1枚

ナオ LP…15800
   手札…0枚
   場…マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×7)
     デモンズ・チェーン(表側表示)


「ボクのターン、ドロー。……手札から、『インフェルニティ・ミラージュ』を召喚するよ。」
 ナオは、ドローしたカードをすぐに召喚し……

「『インフェルニティ・ミラージュ』の効果発動。墓地から『インフェルニティ・ネクロマンサー』2体を特殊召喚。」
 ……再び、お馴染みの2体を蘇らせた。


インフェルニティ・ミラージュ
闇 レベル1
【悪魔族・効果】
このカードは墓地からの特殊召喚はできない。
自分の手札が0枚の場合、このカードをリリースし、
自分の墓地に存在する「インフェルニティ」と名のついた
モンスター2体を選択して発動する事ができる。
選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。
攻撃力0 守備力0


「『インフェルニティ・ネクロマンサー』の効果発動。墓地から『インフェルニティ・デーモン』を特殊召喚。『インフェルニティ・デーモン』の効果発動。デッキから『インフェルニティガン』を手札に加える。」
 ナオは、蘇生・サーチを当たり前の様に行った。


インフェルニティ・ネクロマンサー
闇 レベル3
【悪魔族・効果】
このカードは召喚に成功した時、守備表示になる。
自分の手札が0枚の場合、以下の効果を得る。
1ターンに1度、自分の墓地から「インフェルニティ・ネクロマンサー」以外の
「インフェルニティ」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する事ができる。
攻撃力0 守備力2000

インフェルニティ・デーモン
闇 レベル4
【悪魔族・効果】
自分の手札が0枚の場合にこのカードをドローした時、
このカードを相手に見せる事で自分フィールド上に特殊召喚する。
また、このカードが特殊召喚に成功した時、自分の手札が0枚の場合、
自分のデッキから「インフェルニティ」と名のついたカード1枚を
手札に加える事ができる。
攻撃力1800 守備力1200


「手札から『インフェルニティガン』を発動して、2体目の『インフェルニティ・ネクロマンサー』の効果発動。墓地から『インフェルニティ・デーモン』を特殊召喚。『インフェルニティ・デーモン』の効果で、デッキから『インフェルニティガン』を手札に加える。」
 さらにナオは、もう1度同じ行為を行った。

「手札を増やしつつ、一瞬でモンスターが4体に……『ワイルドジャギーマン』がオレの場にいるとは言え、場を固められると中々攻められないッスね……。」
 カムイは、ナオの場にズラッと並んだモンスターに感心し……

「(だが攻撃力は、『ワイルドジャギーマン』にも『The シャイニング』にも全然足りていない……ナオは自分の場のモンスターを邪魔に思ってると思うんスよね……。)」
 ……その無垢な顔の中に潜む黒い本心を、軽く推測していた……。



「ここで『マジック・クロニクル』の効果を発動するよ。クロニクルカウンターを2個取り除いて……除外した『マジック・プランター』を手札に加えるよ。」
 ナオは、除外した最後のカード……『マジック・プランター』を自分のポケットから取り出し、カムイに見せながら手札に加えた。

ナオのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 7個→5個

「手札から、魔法カード『マジック・プランター』を発動。『デモンズ・チェーン』コストにして、カードを2枚ドローするよ。」
 ドローした2枚を確認したナオは……

「……このデュエル……ボクの勝ちかもね。」
 ……小悪魔の様な笑みを浮かべながら、1枚の魔法カードを発動した……。

「手札から……永続魔法『マスドライバー』を発動するよ。」
「なっ……そこで『マスドライバー』ッスか!?」
 カムイは、ナオのねらいを読み取って、表情を強ばらせた……。
 邪魔なモンスターを墓地送りにしつつ相手にダメージを与える……今のナオにとって、最高の1枚と言えるだろう……。

カムイのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 2個→3個→4個


「そう。今のカムイのライフは4800……12体モンスターを射出すればボクの勝ちだよ。」
 ナオは、自分の右手で場を仰ぎながらそう言った。

「12体……そんなに射出できるんスか?」
「できるよ。……むしろ今の手札でできない方がおかしくない?」
 ナオは、軽くそう言った。


現在の状況
ナオ LP…15800
   手札…2枚(内1枚インフェルニティガン)
   場…インフェルニティ・デーモン(攻撃力1800・攻撃表示)×2
     インフェルニティ・ネクロマンサー(守備力2000・守備表示)×2
     マスドライバー(表側表示)
     マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×5)
     インフェルニティガン(表側表示)


マスドライバー
永続魔法
自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる度に、
相手ライフに400ポイントダメージを与える。











「何さあいつ。キッパリできるなんて言っちゃって。ちょっと焦って失敗しちゃえばいいのに。」
 リナは、ナオの態度に対して不満を述べていた。

「だが、『インフェルニティガン』1枚につき4体の弾丸が揃うからな。それが残り3枚……このままでは危険だな。」
 それに対してセンリは、ナオの状況を冷静に判断していた。











「『マスドライバー』の効果発動。まずは『インフェルニティ・デーモン』を射出してカムイに400ポイントのダメージを与える。」
 ナオがそう言うと、『インフェルニティ・デーモン』がリリースされ、それにより『マスドライバー』にエネルギーが充填され……その銃口からエネルギー弾射出され、カムイの腕にぶつかった!

「ぐっ!」(カムイLP 4800→4400)
 カムイは、左手のデュエルディスクを盾の様に構えた。

「次は2体目の『インフェルニティ・デーモン』を射出するよ。」

カムイLP 4400→4000

「次は『インフェルニティ・ネクロマンサー』を射出。」

カムイLP 4000→3600

「次は2体目の『インフェルニティ・ネクロマンサー』を射出。」
 ナオは、容赦無く『インフェルニティ・ネクロマンサー』を射出した。

「ぐっ……とりあえず第一段階終了ッスね……。」(カムイLP 3600→3200)
 ナオの場のモンスターが全滅した事を確認したカムイは、軽くそう言ったが……

「カードを1枚場に伏せて……手札から、永続魔法『インフェルニティガン』を発動するよ。」
 ナオは、そう言いながら『インフェルニティ・デーモン』でサーチしたカードを発動させた。

カムイのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 4個→5個

「ボクの手札が0枚だから、『インフェルニティガン』の効果を発動するよ。墓地から『インフェルニティ・ネクロマンサー』2体を特殊召喚。」
 ナオがそう言うと、墓地から2体のモンスターの魂が『インフェルニティガン』に装填され、肉体を取り戻した状態で射出させた……。



インフェルニティガン
永続魔法
1ターンに1度、手札から「インフェルニティ」と名のついた
モンスター1体を墓地へ送る事ができる。
また、自分の手札が0枚の場合、
フィールド上に存在するこのカードを墓地へ送る事で、
自分の墓地に存在する「インフェルニティ」と名のついた
モンスターを2体まで選択して自分フィールド上に特殊召喚する。


「『インフェルニティ・ネクロマンサー』の効果発動。墓地から『インフェルニティ・デーモン』を特殊召喚。効果でデッキから『インフェルニティガン』を手札に加える。」
 ナオは、また墓地から『インフェルニティ・デーモン』を特殊召喚し、3枚目の『インフェルニティガン』を手札に加えた。

「手札から、永続魔法『インフェルニティガン』を発動してから、『マスドライバー』の効果発動。『インフェルニティ・デーモン』を射出するよ。」
「くっ……第二楽章の始まりッスね……。」(カムイLP 3200→2800)
 カムイは、軽くそう言った。


現在の状況
ナオ LP…15800
   手札…0枚
   場…インフェルニティ・デーモン(攻撃力1800・攻撃表示)
     インフェルニティ・ネクロマンサー(守備力2000・守備表示)×2
     マスドライバー(表側表示)
     マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×5)
     インフェルニティガン(表側表示)×2
     伏せカード1枚


カムイのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 5個→6個

「2体目の『インフェルニティ・ネクロマンサー』の効果発動。墓地から『インフェルニティ・デーモン』を特殊召喚。効果でデッキから『インフェルニティ・ビートル』を手札に加えて……」
 そう言いながら、デッキから1枚のカードを探し出し……

「邪魔。」
 ……そのまま『インフェルニティガン』の第1効果を利用し、サーチした『インフェルニティ・ビートル』を何のためらいも無く捨てた……。

「(確かに……今のナオの場の魔法・罠ゾーンには空きが無い……邪魔に思っていても無理無いッスね……。)」
 カムイは、ナオの言動の意図を読み取っていた。

「『インフェルニティ・ネクロマンサー』2体も、一旦お休みだよ。」
「これで第二楽章の終わり……まだ二幕残ってるんスよね……。」(カムイLP 2400→2000→1600)
 カムイは、ライフを大きく失った事に危機感を抱いていた……。

「『インフェルニティガン』の効果発動。『インフェルニティガン』をコストに、墓地から『インフェルニティ・ネクロマンサー』2体を特殊召喚するよ。」
 さらにナオは、クライマックスを始めるために墓地から2体の『インフェルニティ・ネクロマンサー』を蘇らせ……

「『インフェルニティ・ネクロマンサー』の効果を発動するよ。墓地から『インフェルニティ・デーモン』を特殊召喚。その効果で『インフェルニティ・ブレイク』を手札に加える。」
 ……パターン化されている様な行動で、デッキから必要なカードをサーチした。

「『マスドライバー』の効果発動。『インフェルニティ・デーモン』を射出するよ。」
「……クライマックス……ッスね。」(カムイLP 1600→1200)
 カムイは、射出を開始したナオに対してそう呟いた。

「カードを1枚場に伏せて、『インフェルニティ・ネクロマンサー』の効果を発動するよ。墓地から『インフェルニティ・ビートル』を特殊召喚。」
 ナオの墓地から、『インフェルニティガン』で捨てられた黒色のカブトムシが蘇った。

「『インフェルニティ・ビートル』の効果発動。自信をリリースして、デッキから同名カードを2枚特殊召喚するよ。」
 ナオは、デッキから2枚の『インフェルニティ・ビートル』を取り出し、デュエルディスクに置いた。


インフェルニティ・ビートル
闇 レベル2
【昆虫族・チューナー・効果】
自分の手札が0枚の場合、
このカードをリリースする事で自分のデッキから
「インフェルニティ・ビートル」を2体まで特殊召喚する。
攻撃力1200 守備力0


「『マスドライバー』の効果発動。『インフェルニティ・ビートル』を射出するよ。」
「なるほど……。ただ弾丸を増やしただけなんスね……。」(カムイLP 1200→800)
 カムイは、小さくそう呟いた。

「もう1体の『インフェルニティ・ビートル』も射出するよ。」
「ぐっ……!」(カムイLP 800→400)
 ライフポイントに危険信号がともったカムイは、思わずそう言った。











「……どう思う?この戦法。……残酷だと思うかい?」
 カムイを追い詰めたナオは、軽くそう言った。

「いや、思わないッスね。モンスターを一旦墓地に送ってまた再利用する戦法は、モンスターの力を最大限に引き出す1つの方法なんスからね。」
 それに対してカムイは、ナオに対して自分の意見を述べた。

「……安心したよ。カムイは、綺麗事を言わないデュエリストだって事が分かって。」
 ナオは、小さくそう呟き……

「これで終」
「いや……オレが『マスドライバー』でダメージを受けたタイミングで、オレに優先権が残されてるんスよ!『The シャイニング』を対象に……伏せ罠カード『デストラクト・ポーション』を発動ッス!この効果で『The シャイニング』を破壊し、その攻撃力分……5000ポイントのライフを回復するッスよ!」
 カムイがナオの言葉を遮りながらそう言うと、『The シャイニング』の体が粉々に砕け散り、その破片がカムイのライフへと変換された!


デストラクト・ポーション
通常罠
自分フィールド上に存在するモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターを破壊し、破壊したモンスターの
攻撃力分だけ自分のライフポイントを回復する。


カムイLP 400→5400

「『デストラクト・ポーション』……破壊と回復は同時だから、破壊された時の任意効果もタイミングを逃さずに使えるんだね。」
「ああ……。墓地に送られた『The シャイニング』の効果発動ッス!除外された『E・HERO』2体……『エアーマン』と『スパークマン』を手札に戻すッスよ!」
 さらにカムイは、ジャケットの中から2枚のカードを取り出し、手札に加えた。


E・HERO The シャイニング
光 レベル8
【戦士族・融合・効果】
「E・HERO」と名のついたモンスター+光属性モンスター
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードの攻撃力は、ゲームから除外されている
自分の「E・HERO」と名のついたモンスターの数×300ポイントアップする。
このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、
ゲームから除外されている自分の「E・HERO」と名のついた
モンスターを2体まで選択し、手札に加える事ができる。
攻撃力2600 守備力2100


「でも、『マスドライバー』の効果で2体の『インフェルニティ・ネクロマンサー』を射出する事は止めないよ。」
「とりあえず……第三楽章も耐えきったッスね……。」(カムイLP 5400→5000→4600)
 カムイは、ホッとした表情でそう言った。











「あ……危なかったね、センリ。」
 リナは、カムイがピンチだった様子からそう言った。

「そうだな……。だがカムイは、当たり前の様に対処法を用意していたか……。」
 センリは、軽くそう言った。











「……その程度のライフ、ちょっと頑張ればすぐに消え去るよ。『インフェルニティガン』の効果発動。墓地から『インフェルニティ・ネクロマンサー』2体を特殊召喚する。」
 ナオは、少し不満足そうな口調でそう言いながら、墓地の2体のモンスターを特殊召喚した。

「『インフェルニティ・ネクロマンサー』の効果発動。墓地から……『インフェルニティ・デストロイヤー』を特殊召喚。」
 ナオは、デッキに『インフェルニティガン』が残って無い事を意識し、蘇生対象を切り替えた。

「2体目の『インフェルニティ・ネクロマンサー』の効果発動。墓地から……『インフェルニティ・リローダー』を特殊召喚。」
 さらにナオは、今度は墓地から『インフェルニティ・リローダー』を特殊召喚した。
 ……そしてナオは、残念そうな表情をし……

「バトルフェイズに入るよ。『インフェルニティ・デストロイヤー』で、『ドリル・シンクロン』に攻撃。」
 『インフェルニティ・デストロイヤー』は、腕の刃で『ドリル・シンクロン』を貫こうと突撃した……。



「(……『ネクロ・ガードナー』を使う?……使わなかったら負けるよ?)」
 ナオは、『カードガンナー』の効果でカムイの墓地に落ちた『ネクロ・ガードナー』の存在を知っており、使うか使わないか少しドキドキしていた……。

「……『ネクロ・ガードナー』の効果を発動するッスよ!その効果で、『インフェルニティ・デストロイヤー』の効果を無効にするッスよ!」
「(……やっぱり。)」
 カムイがそう言うと、『ドリル・シンクロン』の前に『ネクロ・ガードナー』の幻影が現れ……『インフェルニティ・デストロイヤー』の攻撃を封じた!
 ナオは、その様子を心の中で当然の行為だと見ていた。

「まだだよ。『インフェルニティ・リローダー』で『ドリル・シンクロン』に攻撃。」
「ぐっ!」(カムイLP 4600→4500)
 『インフェルニティ・リローダー』に撃たれた『ドリル・シンクロン』は、一瞬で破壊された……。

「メインフェイズ2に入るよ。『インフェルニティ・リローダー』の効果を発動する。カードを1枚ドローして……」
 『インフェルニティ・リローダー』に銃口を突き付けられたナオは、カードを1枚ドローし……

「ドローしたカードは『無欲な壺』……まさかここでこのカードを引くとはね。」
 ナオは、『インフェルニティ・リローダー』に撃たれながらドローした『無欲な壺』を、恨めしそうに見ていた。


インフェルニティ・リローダー
闇 レベル1
【戦士族・効果】
自分の手札が0枚の場合、
1ターンに1度、自分のデッキからカードを1枚ドローする事ができる。
この効果でドローしたカードをお互いに確認し、
モンスターカードだった場合、
そのモンスターのレベル×200ポイントダメージを相手ライフに与える。
魔法・罠カードの場合、自分は500ポイントダメージを受ける。
攻撃力900 守備力0


ナオLP 15800→15300

「『マスドライバー』の効果で、『インフェルニティ・リローダー』、『インフェルニティ・ネクロマンサー』2体を射出するよ。この効果で、カムイに1200ポイントのダメージを与える。」
 ナオは、八つ当たりに近い形で3体のモンスターを射出し、カムイにダメージを与えた……。

「ぐっ!」(カムイLP 4500→4100→3600→3200)

「手札から、魔法カード『無欲な壺』を発動する。墓地から『インフェルニティガン』2枚をデッキに戻す。」
 ナオは、墓地から2枚のカードをデッキに戻した。


無欲な壺
通常魔法
自分または相手の墓地に存在する
カードを合計2枚選択し、持ち主のデッキに戻す。
このカードは発動後、墓地へ送らずにゲームから除外する。
「無欲な壺」は1ターンに1枚しか発動できない。


カムイのマジック・クロニクルに乗ったクロニクルカウンター 5個→6個

「……これでターンエンド。」
 そしてナオは、残念そうにターンを終えた。


現在の状況
ナオ LP…15300
   手札…0枚
   場…インフェルニティ・デストロイヤー(攻撃力2300・攻撃表示)
     マスドライバー(表側表示)
     マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×5)
     伏せカード2枚(内1枚インフェルニティ・ブレイク)

カムイ LP…3200
    手札…3枚(ミラクル・フュージョン、エアーマン、スパークマン)
    場…E・HERO ワイルドジャギーマン(攻撃力5000・攻撃表示)
      綿毛トークン(守備力0・守備表示)×2
      マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×6)
      未来融合−フューチャー・フュージョン(1ターン経過、表側表示)
      団結の力(ワイルドジャギーマンに装備)


「オレのターン……ドロー!スタンバイフェイズに、『未来融合−フューチャー・フュージョン』の効果が発動するッスよ!」
「そうだったね……すっかり忘れてたよ。」
 ナオが皮肉を込めながらそう言うと……カムイの場に虹色の渦が発生し……











「……現れろ!『E・HERO エリクシーラー』!!」
 ……その中から、黄金に光輝く1体の巨大なヒーローが出現した!

「『エリクシーラー』が融合召喚に成功した事で……除外されたカードがすべてデッキに戻るッスよ!」
「デッキか。……『R−ライトジャスティス』を加えられなくて残念だったね。」
 カムイとナオがそう言いあうと、カムイは黒色のジャケットのから『プラズマヴァイスマン』、『クレイマン』、『フェザーマン』、『バーストレディ』、『アブソルートZero』、『スパークマン』、『ネクロ・ガードナー』、『R−ライトジャスティス』を、ナオは……

「『エリクシーラー』の効果にチェーンして、速攻魔法『異次元からの埋葬』を発動するよ。除外された『インフェルニティ・ガーディアン』を墓地に戻す。」
 ……伏せておいた速攻魔法を発動する事で、『インフェルニティ・ガーディアン』を自分の半ズボンのポケットの中から取り出し、墓地に戻した。


E・HERO エリクシーラー
光 レベル10
【戦士族・融合・効果】
「E・HERO フェザーマン」+「E・HERO バーストレディ」
+「E・HERO クレイマン」+「E・HERO バブルマン」
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードの属性は「風」「水」「炎」「地」としても扱う。
このカードが融合召喚に成功した時、ゲームから除外された全てのカードを
持ち主のデッキに戻し、デッキをシャッフルする。
相手フィールド上に存在するこのカードと同じ属性のモンスター1体につき、
このカードの攻撃力は300ポイントアップする。
攻撃力2900 守備力2600

異次元からの埋葬
速攻魔法
ゲームから除外されているモンスターカードを3枚まで選択し、
そのカードを墓地に戻す。


「メインフェイズに入るッスよ!手札から、『E・HERO エアーマン』を攻撃表示で召喚!」
 カムイの場に、三度扇風機のついたプレートを背負ったヒーローが現れた。

「『エアーマン』の……魔法・罠破壊効果を発動するッスよ!オレの場の『HERO』は2体……つまり、2枚の魔法・罠カードを破壊!」
 カムイがそう言うと、『エアーマン』は背中の羽の扇風機を回転させ、ナオの場の伏せカードを吹き飛ばそうとしたが……

「……それにチェーンして、伏せ罠カード『インフェルニティ・ブレイク』を発動。墓地から『インフェルニティ・ネクロマンサー』を除外し……『ワイルドジャギーマン』を破壊する。」
 それにチェーンしてナオが発動させた罠カードから突然衝撃波が発生し……カムイの場の『ワイルドジャギーマン』を打ち砕いた!


インフェルニティ・ブレイク
通常罠
自分の手札が0枚の場合に発動する事ができる。
自分の墓地に存在する「インフェルニティ」と名のついたカード1枚を選択してゲームから除外し、
相手フィールド上に存在するカード1枚を選択して破壊する。


「『エアーマン』の効果解決だね。……何を破壊する?」
「仕方無いッスね……。ここは……『マスドライバー』を破壊!」
 『エアーマン』は、背中の羽から竜巻を発生させ……ナオの場の『マスドライバー』を吹き飛ばした!


E・HERO エアーマン
風 レベル4
【戦士族・効果】
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、
次の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●自分フィールド上に存在するこのカード以外の
「HERO」と名のついたモンスターの数まで、
フィールド上に存在する魔法または罠カードを破壊する事ができる。
●自分のデッキから「HERO」と名のついた
モンスター1体を手札に加える。
攻撃力1800 守備力300



「だが……これでナオの場に伏せカードは無くなったッスよ……!手札から、魔法カード『貪欲な壺』を発動ッス!オレの墓地から、『The シャイニング』、『ワイルドジャギーマン』、『ドリル・シンクロン』、『カードガンナー』、『ダンディライオン』をデッキに戻し、カードを2枚ドロー!」
 カムイは、慣れた手付きで墓地から5枚のカードを取り出し、デッキに戻してシャッフルした後、カードを2枚ドローした。


貪欲な壺
通常魔法
自分の墓地に存在するモンスター5体を選択し、
デッキに加えてシャッフルする。
その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。


「行くッスよ……!手札から、魔法カード『フュージョン・ゲート』を発動ッス!」
 ドローした2枚のカードを確認したカムイが1枚のカードを発動させると……場を突然、不思議な黒い渦が包み込んだ!

「『フュージョン・ゲート』……手札か場の融合素材を除外して融合召喚をする事ができるカードだね。融合素材が網目の様に繋がってるカムイのデッキにとっては有益なカード……って訳か。」
「ああ……!『フュージョン・ゲート』の効果で、オレの手札の『E・HERO』……『スパークマン』と、風属性モンスター……『綿毛トークン』を融合し……」
 カムイがそう言うと、『エアーマン』と『綿毛トークン』が黒色の渦の中に吸い込まれていき……











「……融合召喚!『E・HERO Great TORNADO』!!」
 ……その渦の中から、マントを羽織った西部劇に出てくる様な容姿をしたヒーローが現れた!


フュージョン・ゲート
フィールド魔法
このカードがフィールド上に存在する限り、
「融合」魔法カードを使用せずに融合召喚をする事ができる。
この際の融合素材モンスターは墓地へは行かず、
ゲームから除外される。


「融合召喚に成功した『Great TORNADO』の効果が発動するッスよ!タウン・バースト!」
 『Great TORNADO』が全身から突風を発生させると、その風が真空波となり、『インフェルニティ・デストロイヤー』を弱らせた!


E・HERO Great TORNADO
風 レベル8
【戦士族・融合・効果】
「E・HERO」と名のついたモンスター+風属性モンスター
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードが融合召喚に成功した時、相手フィールド上に表側表示で存在する
全てのモンスターの攻撃力・守備力を半分にする。
攻撃力2800 守備力2200


インフェルニティ・デストロイヤー 攻撃力2300→1150
                 守備力1000→500

「さらに手札から、魔法カード『ミラクル・フュージョン』を発動ッス!オレの墓地から『ワイルドマン』と『エッジマン』を融合し……」
 さらにカムイは、墓地の2枚のカードを場の黒い渦へと送り込み……











「……融合召喚!『E・HERO ワイルドジャギーマン』!!」
 ……その渦の中から、破壊されたはずの『ワイルドジャギーマン』が再び現れた!


現在の状況
カムイ LP…3200
    手札…1枚
    場…E・HERO Great TORNADO(攻撃力2800・攻撃表示)
      E・HERO エリクシーラー(攻撃力2900・攻撃表示)
      E・HERO ワイルドジャギーマン(攻撃力2600・攻撃表示)
      E・HERO エアーマン(攻撃力1800・攻撃表示)
      綿毛トークン(守備力0・守備表示)
      マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×6)
      未来融合−フューチャー・フュージョン(エリクシーラー・表側表示)

ナオ LP…15300
   手札…0枚
   場…インフェルニティ・デストロイヤー(攻撃力1150・攻撃表示)
     マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×7)


「行くッスよ……!『ワイルドジャギーマン』で、『インフェルニティ・デストロイヤー』に攻撃!インフィニティ・エッジ・スライサー!!」
 『ワイルドジャギーマン』は、持っていた刀で『インフェルニティ・デストロイヤー』の体を縦に切り裂いた!

「わっ!」(ナオLP 15300→13850)
 ナオは、思わずそう言い……

「『Great TORNADO』と『エリクシーラー』、『エアーマン』で、ナオにダイレクトアタック!スーパーセル!フュージョニスト・マジスタリー!エアー・シューター!」
「っっ!……まさかね……。」(ナオLP 13850→11050→8150→6350)
 さらに3体のヒーローによる追い打ちで大きくライフを削られた!











「これで大体射程圏内だな。」
 センリは、リナに対して軽くそう言った。

「そだね。だってあいつのデッキ、全然突破力無いもん。」
 リナは、ナオを少し見下すかの様にそう言った。

「……おいおい、人の事言えるのか?」
 リナを戒めるかの様に、センリは一言そう言った。











「メインフェイズ2に入り……もう1度『フュージョン・ゲート』の効果を発動するッスよ!オレの場の『E・HERO』……『エアーマン』と、光属性モンスター……『エリクシーラー』を融合し……」
 カムイがそう言うと、今度は『エリクシーラー』と『エアーマン』が、黒い渦に吸い込まれていき……











「……融合召喚!『E・HERO The シャイニング』!!」
 その渦の中から、金属のリングを背負った全身白色のヒーローが現れた!

「融合モンスターを素材に融合召喚?……そこまでして『The シャイニング』を出したかったのかな?」
「まあ……そう言う事になるッスね。」
 カムイは、ナオの問いに対して軽くそう答えた。

「これでオレは……ターンエンド!」


現在の状況
カムイ LP…3200
    手札…1枚
    場…E・HERO Great TORNADO(攻撃力2800・攻撃表示)
      E・HERO The シャイニング(攻撃力4100・攻撃表示)
      E・HERO ワイルドジャギーマン(攻撃力2600・攻撃表示)
      綿毛トークン(守備力0・守備表示)
      マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×6)

ナオ LP…6350
   手札…0枚
   場…インフェルニティ・デストロイヤー(攻撃力1150・攻撃表示)
     マジック・クロニクル(クロニクルカウンター×7)


「ボクの……ターン、ドロー。」
 いよいよ追い詰められたナオは、少し不安そうにカードを1枚ドローした……。

「(このカードは……今使えるかな……?ボクの墓地に置かれたカードは……)」
 そしてナオは、ドローしたカードを見た瞬間、墓地の確認を始めた……。



闇の誘惑(通常魔法)
魔宮の賄賂(カウンター罠)
ヘイト・バスター(通常罠)
ワン・フォー・ワン(通常魔法)
インフェルニティガン(永続魔法)
神秘の中華なべ(速攻魔法)
闇次元の解放(永続罠)
マジック・プランター(通常魔法)
ファントム・オブ・カオス(闇属性・悪魔族)
レインボー・ライフ(通常罠)
非常食(速攻魔法)
D・D・R(装備魔法)
インフェルニティ・ミラージュ(闇属性・悪魔族)
闇の誘惑(通常魔法)
隠された魔導書(通常罠)
インフェルニティ・フォース(通常罠)
転生の予言(通常罠)
インフェルニティ・ミラージュ(闇属性・悪魔族)
デモンズ・チェーン(永続罠)
マジック・プランター(通常魔法)
インフェルニティ・デーモン(闇属性・悪魔族)
インフェルニティ・デーモン(闇属性・悪魔族)
インフェルニティ・ビートル(闇属性・昆虫族)
インフェルニティ・ビートル(闇属性・昆虫族)
インフェルニティ・ビートル(闇属性・昆虫族)
インフェルニティガン(永続魔法)
インフェルニティ・ネクロマンサー(闇属性・悪魔族)
インフェルニティ・リローダー(闇属性・戦士族)
インフェルニティ・リベンジャー(闇属性・悪魔族)
インフェルニティ・ガーディアン(闇属性・悪魔族)
異次元からの埋葬(速攻魔法)
インフェルニティ・ブレイク(通常罠)
インフェルニティ・デストロイヤー(闇属性・悪魔族)


「(……今見直すと、デッキ消費がとんでもないね……。まだ往復5ターンの始まりなのに、墓地にカードが33枚なんて……。)」
 ナオは、自分のデッキの突破力の無さに、少し憤りを感じていた……。

「(墓地確認……ここで『あのカード』を引いたんスか?)」
 カムイは、ナオの行動を見てある事を推測したが……

「(だが……『あのカード』なら、まだ使えないはずなんスよね……。)」
 墓地の状況を軽く思い出し、『あのカード』なら安心だと確信していた……。 

「……手札から、魔法カード『貪欲な壺』を発動するよ。墓地から『インフェルニティ・ミラージュ』2体と『インフェルニティ・ビートル』3体をデッキに戻して、カードを2枚ドロー。」
「なるほど……そのカードを引いたんスね。」
 カムイが納得しながらそう言っている間に、ナオは墓地から5枚のモンスターをデッキに戻し、カードを2枚ドローした。

「…………。」
 ナオは、くりくりした目で自分の2枚の手札を見つめていた……。

「(……ドローしたこのカード……使うしか、無いかな……?)」
 そしてナオは、手札のカード1枚に手をかけた……。

「手札から『ハネワタ』を捨てて、効果を発動するよ。このターンボクは効果によるダメージを受けない。」
「……!来るんスか!?あのカードが……」
 あるカードの登場を予想したカムイは、思わずそう言った……。


ハネワタ
光 レベル1
【天使族・チューナー・効果】
このカードを手札から捨てて発動する。
このターン自分が受ける効果ダメージを0にする。
この効果は相手ターンでも発動する事ができる。
攻撃力200 守備力300


「それから……墓地の光天使1体……『ハネワタ』と、闇悪魔3体……『インフェルニティ・ガーディアン』、『ファントム・オブ・カオス』、『インフェルニティ・デーモン』を除外して……」
 ナオは、そう言いながら墓地の4枚のカードを自分の半ズボンのポケットの中に放り込むと……











「……『天魔神 ノーレラス』……特殊召喚!」
 ……突然、ナオの場にどす黒い水たまりみたいな物が発生し……その中から、血の様に赤い爪と、鬼の様な骨の面を持った1体の悪魔が、這い出るように現れた……!

「『ノーレラス』の効果発動……ライフを1000払い、場と手札のカードをすべて墓地に送る!デストラクト・サークル!!」
 ナオがそう言うと……『ノーレラス』の体が突然黒水の様に変質し……場のすべてを、どす黒い闇が包み込んだ……!
 その闇は、カムイの場の『The シャイニング』、『Great TORNADO』、『ワイルドジャギーマン』を音も無く包み込み、すべてを無へと変質させた……。
 さらにその闇は魔法・罠カードや手札までも貪欲に貪り尽くし……すべての存在を、まるで『夢』であったかの様な状態へと帰結させた……!


天魔神 ノーレラス
闇 レベル8
【悪魔族・効果】
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の光属性・天使族モンスター1体と闇属性・悪魔族モンスター3体を
ゲームから除外した場合のみ特殊召喚する事ができる。
1000ライフポイントを払う事で、お互いの手札とフィールド上のカードを
全て墓地へ送り、自分のデッキからカードを1枚ドローする。
攻撃力2400 守備力1500


「そして……すべてを無に帰した『ノーレラス』の最後の希望……ボクはカードを1枚ドローするよ。」
 ナオはそう言いながら、カードを1枚ドローした。

「だが……手札から墓地に送られた『ダンディライオン』の強制効果……オレの場に、綿毛トークンを2体特殊召喚!」
「『ダンディライオン』?……もし『インフェルニティ・デーモン』をドローしても、その処理が挟まって『インフェルニティ・デーモン』のサーチ効果が使えなくなるんだよね……。」
 ドローしたカードを確認したナオは、不愉快そうにそう呟いた……。

「さらに……『ノーレラス』の墓地送り効果とドロー効果は同時なんスよね……。それによって、『The シャイニング』の効果が発動するんスよ!……除外された『エアーマン』と『バブルマン』を手札に!」
 さらにカムイは自分の黒ジャケットのポケットの中から2枚のカードを取り出し、手札に加えた。


現在の状況
ナオ LP…5350
   手札…1枚
   場…無し

カムイ LP…3200
    手札…2枚(エアーマン、バブルマン)
    場…綿毛トークン(守備力0・守備表示)×2


「ボクがドローしたカードは『インフェルニティ・ネクロマンサー』……そのまま召喚するよ。自身の効果で守備表示に。」
 ナオは、ドローした死霊使いをそのまま召喚した。

「『インフェルニティ・ネクロマンサー』の効果発動。墓地から『インフェルニティ・デーモン』を特殊召喚。効果で『インフェルニティガン』をサーチするよ。」
 ナオは、当たり前の様にまた『インフェルニティガン』をサーチした。

「手札から、永続魔法『インフェルニティガン』を発動して、効果を発動するよ。墓地から『インフェルニティ・デストロイヤー』と『インフェルニティ・リローダー』を特殊召喚。」
 ナオがサーチしたカードを発動させると、人型の破壊者と銃型の小型モンスターの2体が蘇った!

「なるほど……。墓地に『インフェルニティ・デーモン』を残しておけば、このターンで確実にトドメを差せたんスね……。」
 ナオの表情の意味を読み取ったカムイは、軽くそう言った。



「さてと……ここで上手くいけば、デュエルを終わらせられるかもね。」
 ナオは、自分の場に置かれたモンスターを指差しながらそう言った……。

「『インフェルニティ・リローダー』の効果発動。デッキからカードを1枚ドローするよ。」
 『インフェルニティ・リローダー』が銃口をカムイと自分に突き付けられた事を確認したナオは、カードを1枚ドローした……。

「ドローしたカードは『インフェルニティ・デーモン』……レベル4のモンスターを引いたから、カムイに800ポイントのダメージを与えるよ。」
「ぐっ!だが……このダメージ効果で救われたのは皮肉な話ッスね……。」(カムイLP 3200→2400)
 『インフェルニティ・リローダー』の放った銃弾(ソリッドビジョンだが)を受けたカムイは、思わずそう言った。


インフェルニティ・リローダー
闇 レベル1
【戦士族・効果】
自分の手札が0枚の場合、
1ターンに1度、自分のデッキからカードを1枚ドローする事ができる。
この効果でドローしたカードをお互いに確認し、
モンスターカードだった場合、
そのモンスターのレベル×200ポイントダメージを相手ライフに与える。
魔法・罠カードの場合、自分は500ポイントダメージを受ける。
攻撃力900 守備力0


「そうだよ……。『インフェルニティ・リローダー』でドローされた『インフェルニティ・デーモン』は、ダメージ効果のせいでタイミングを逃しちゃうからね……。」
 ナオは、残念そうにそう呟いた……。

「バトルフェイズに入るよ。『インフェルニティ・リローダー』と『インフェルニティ・デーモン』で、『綿毛トークン』2体に攻撃。」
 ナオの場の2体のモンスターは、カムイの場に現れた邪魔な『綿毛トークン』を、まるで綿の様に捻り潰した。

「『インフェルニティ・デストロイヤー』で、カムイにダイレクトアタック!」
「ぐあっ!」(カムイLP 2400→100)



「……これでボクは、ターンエンド。」
 このターンで決着を付けられなかったナオは、少し残念そうにターンを終えた。


現在の状況
ナオ LP…5850
   手札…1枚(インフェルニティ・デーモン)
   場…インフェルニティ・デーモン(攻撃力1800・攻撃表示)
     インフェルニティ・デストロイヤー(攻撃力2300・攻撃表示)
     インフェルニティ・リローダー(攻撃力900・攻撃表示)
     インフェルニティ・ネクロマンサー(守備力2000・守備表示)

カムイ LP…100
    手札…2枚(エアーマン、バブルマン)
    場…無し


「……オレのターン……ドロー!」
 カムイは、デッキからカードを1枚ドローし……

「……いいカードが来たッスね……。」
 ……そのカードを確認したカムイは、ナオに対してそう一言言った。

「手札から……『エアーマン』を召喚!」
 カムイの場に、四度『エアーマン』が現れた。

「『エアーマン』のデッキサーチ効果を発動するッスよ!デッキから……『E・HERO キャプテン・ゴールド』を手札に!」
 カムイは、デッキから1枚のカードを手札に加え……

「手札から『キャプテン・ゴールド』を捨て……効果発動ッス!デッキから『摩天楼 −スカイスクレイパー−』を手札に!」
 そのカードをすぐさま墓地に送り、新たなカードを手札に加えた。


E・HERO キャプテン・ゴールド
光 レベル4
【戦士族・効果】
このカードを手札から墓地に捨てる。
デッキから「摩天楼 −スカイスクレイパー−」1枚を手札に加える。
フィールド上に「摩天楼 −スカイスクレイパー−」が存在しない場合、
フィールド上のこのカードを破壊する。
攻撃力2100 守備力800


「さらに墓地から『神剣−フェニックスブレード』の効果発動ッス!墓地から『エリクシーラー』と『キャプテン・ゴールド』を除外し、手札に戻すッスよ!」
 またカムイは、墓地から『神剣−フェニックスブレード』を手札に加えた。


神剣−フェニックスブレード
装備魔法
戦士族モンスターにのみ装備可能。
装備モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。
自分のメインフェイズ時、自分の墓地に存在する
戦士族モンスター2体をゲームから除外する事で、
このカードを自分の墓地から手札に加える。


「手札の『バブルマン』と『神剣−フェニックスブレード』を捨て……魔法カード『魔法石の採掘』を発動ッス!」
「『魔法石の採掘』……?まさか、ここであのカードに帰結する……!?」
 ナオは、カムイが発動させたカードから、回収するカードをすぐさま読み取った……!

「ああ……!始まりと終わり――その2つの平行世界は、このカードによって交わり会うんスよ……!オレがこの効果で墓地から手札に加える魔法カードは……『平行世界融合』!」
 そう言いながらカムイは、自分の墓地の奥底に眠っていた『平行世界融合』のカードを取り出し、ナオに見せ付けながら手札に戻した。


魔法石の採掘
通常魔法
手札を2枚捨てて発動する。
自分の墓地に存在する魔法カードを1枚手札に加える。


「さらに墓地から『バブルマン』と『ワイルドジャギーマン』を除外し、墓地の『神剣−フェニックスブレード』を手札に戻すッスよ!」
 再びカムイは、除外されたカードを増やすために『神剣−フェニックスブレード』の効果を利用した。

「これで素材は揃ったッスよ……!手札から……魔法カード――」











「――『平行世界融合』……発動!!」
 カムイはそう言いながら、1枚の魔法カードをデュエルディスクへと差し込んだ……!

「この効果で、除外された『エッジマン』、『バブルマン』、『スパークマン』、『キャプテン・ゴールド』を融合し……」
 カムイがそう言うと……突然、カムイの頭上の空間に突然ひびが入り始めた……。
 そしてそのまま、空間の一部ガラスの様に砕け……場・デッキ・異次元――交わる事の無い3つの世界が繋がり合った……!
 そしてその中で、4体のヒーローが渦に巻き込まれ……その4体はデッキへと再び輪廻の輪を繋げるかの様に帰還し……











「――『E・HERO キャプテン・シュピーゲル』……融合召喚!!」
 ……そしてその4体の心は、すべての光を吸収するかの様な漆黒の重装鎧を身にまとい、両手にすべての光を跳ね返すかの様な鏡の剣を持った1体のヒーローとして、カムイの場に帰結した……!


平行世界融合
通常魔法
ゲームから除外されている、融合モンスターカードによって決められた
自分の融合素材モンスターをデッキに戻し、「E・HERO」と名のついた
融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。
このカードを発動するターン、自分はモンスターを特殊召喚する事はできない。


「カードを1枚場に伏せ……『キャプテン・シュピーゲル』の効果を発動するッスよ!ナオの場の……『インフェルニティ・デストロイヤー』の効果を吸収!」
 『キャプテン・シュピーゲル』は、持っていた2本の鏡の剣に『インフェルニティ・デストロイヤー』の姿を吸収し……その虚像を、自らの漆黒の鎧へと重ね合わせた!


E・HERO キャプテン・シュピーゲル
闇 レベル10
【戦士族・融合・効果】
「E・HERO エッジマン」+「E・HERO バブルマン」+
「E・HERO スパークマン」+「E・HERO キャプテン・ゴールド」
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードが破壊されるとき、代わりに自分フィールド上のカードを破壊することができる。
1ターンに1度、次の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●:手札から、効果モンスターカードを1枚捨てて発動する。
このターンのエンドフェイズ時まで、この効果によって捨てられたモンスターの効果を得る。
この効果は、相手ターン中でも使用することができる。
●:相手フィールド上の効果モンスターを1体選択して発動する。
このターンのエンドフェイズ時まで、選択したモンスターの効果を得る。
攻撃力3200 守備力2500


「『神剣−フェニックスブレード』を『キャプテン・シュピーゲル』に装備させ、攻撃力を300ポイントアップ!」
 さらに『キャプテン・シュピーゲル』は、不死鳥の剣を右手で逆手に持ち、攻撃力を高めた。

E・HERO キャプテン・シュピーゲル 攻撃力3200→3500

「これでオレの手札は0枚……ハンドレスコンボの発動条件を満たしたッスよ!」
 手札が0枚になったカムイは、ナオに対して軽くそう言った。


現在の状況
カムイ LP…100
    手札…0枚
    場…E・HERO キャプテン・シュピーゲル(攻撃力3500・攻撃表示)
      E・HERO エアーマン(攻撃力1800・攻撃表示)
      神剣−フェニックスブレード(キャプテン・シュピーゲルに装備)
      伏せカード1枚(摩天楼 −スカイスクレイパー−)



「行くッスよ!『エアーマン』で『インフェルニティ・デーモン』に攻撃!エアー・シューター!」
「迎撃は……してほしくないんだけどね……。」
 ナオのため息も虚しく、『エアーマン』と『インフェルニティ・デーモン』はお互いの力をすべて出し合い、相打ちした……。

「さらに……『キャプテン・シュピーゲル』で『インフェルニティ・リローダー』に攻撃!デストロイド・ミラージュ!!」
 『キャプテン・シュピーゲル』は、持っていた2本の鏡の剣を振り下ろし……そのまま『インフェルニティ・リローダー』を、紙の様に切り裂いた!

「2600ポイントの戦闘ダメージに加え……『インフェルニティ・デストロイヤー』の効果を吸収した『キャプテン・シュピーゲル』の効果……手札0枚の時に相手モンスターを戦闘破壊した事によって、ナオに1600ポイントのダメージを与えるッスよ!」
「いたっ……!」(ナオLP 5350→2750→1150)
 『キャプテン・シュピーゲル』は、鏡の剣から紫色の光線を発生させ……ナオのライフを大きく削った!


インフェルニティ・デストロイヤー
闇 レベル6
【悪魔族・効果】
自分の手札が0枚の場合、
このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、
相手ライフに1600ポイントダメージを与える。
攻撃力2300 守備力1000


「これが、今のオレにできる最高の一手……これでオレは、ターンエンド!」
 カムイはそう言い、自分のターンを終えた。


現在の状況
カムイ LP…100
    手札…0枚
    場…E・HERO キャプテン・シュピーゲル(攻撃力3500・攻撃表示)
      神剣−フェニックスブレード(キャプテン・シュピーゲルに装備)
      伏せカード1枚(摩天楼 −スカイスクレイパー−)

ナオ LP…1150
   手札…1枚(インフェルニティ・デーモン)
   場…インフェルニティ・デストロイヤー(攻撃力2300・攻撃表示)
     インフェルニティ・ネクロマンサー(守備力2000・守備表示)


「…………。」
 ナオは、口を結んで少しうつむいていた……。

「(……カムイの場の『キャプテン・シュピーゲル』は破壊耐性持ち……『インフェルニティ・フォース』や『インフェルニティ・ブレイク』は通用しない……。かと言って……『インフェルニティ・デストロイヤー』を排除しようとしても、自爆特攻させるにはライフが足りない……!)」
 そしてナオは、心の中で何とかする方法を必死に考え……

「(つまりここで……モンスターカードを引いたら負ける……負ける……!?)」
 ……あらゆる事を考えていたナオの脳裏に突然『敗北』の2文字が浮かび上がった……。

「(負け……る……?)」











「……嫌だ……!」
「……?」
 ナオの、今まで見せた事の無い口調に、カムイは思わず驚いた……。

「……ボクの……ターン……ドロー!」
 ナオは、今までで1番大きな声でカードをドローし……

「……カードを1枚場に伏せて、モンスターを1体セットするよ。」
 ……そのカードを確認したナオは緊張の糸を少し解し、自分の手札をすべてデュエルディスクにセットした……。

「ボクの手札が0枚だから『インフェルニティ・ネクロマンサー』の効果発動……墓地から『インフェルニティ・リローダー』を特殊召喚する!」
 そして『インフェルニティ・ネクロマンサー』の効果を発動させ、墓地から『インフェルニティ・リローダー』を蘇らせた……。

「『インフェルニティ・リローダー』の効果発動……カードを1枚ドロー!」
「!!?……このタイミングで賭けに出るんスか!?」
 今まで理詰めでデュエルを行っていたナオからは考えられない行動に、カムイは少し驚いたが……

「いや……これは!明らかにオレに部が悪い賭けッスね……!」
 ……それも理詰めからの行動だと言う事を読み取り、カムイは表情を引きつらせた……。
 ナオは前のターンに『インフェルニティ・デーモン』の効果によってデッキを確認した上、最低でも『貪欲な壺』によって戻した5体のモンスターがデッキに残されているからだ……。

「……『インフェルニティ・リローダー』の効果で……ドローした……カードは……」
 ナオは『インフェルニティ・リローダー』の効果でカードを1枚ドローし……ドローしたカードを確認せずにカムイに見せ付けた……。











「……『インフェルニティ・ミラージュ』……ッスね……。」
 そのカードを確認したカムイは、ナオの緊張の糸を解くかの様に、小さくそう呟いた……。
 そして『インフェルニティ・リローダー』の銃口が火を吹き、その弾丸がカムイに直撃した……。

カムイLP 100→0





















「負けちゃっ……た。」
 リナは、残念そうにそう呟いた。

「だが、あれはどっちが勝ってもおかしくなかっただろ?落ち込む必要は無いだろ。」
「うん……そうだね。」
 センリの一言を聞いたリナはそう言い、2人はカムイの下へと歩み寄った……。

「さすがッスね、ナオ。」
 カムイは、ナオの下に歩み寄りながらそう言った。

「…………。」
 ナオは、口を結んだままうつむき……

「こんなの……勝った内に入らないよ。」
 ……そして一言、不満足そうにそう呟いた。



「…………。」
 カムイは、少し困った表情で言葉を考え……

「それなら……また今度、オレとデュエルすればいいんじゃ無いんスか?」
 ……そして、ナオを励ます様に軽くそう言った。

「少なくとも……オレ達は、ナオが負けたからって見下す事は無いッスよ。……そうッスよね、センリ、リナ。」
 さらにカムイは、そう言いながらセンリとリナにそう尋ねた。

「当然だろ?な?」
「う……うん。」
 センリは、左手でリナの頭を下げさせながらそう言った。

「…………。」
 ナオは、少し黙ってまたうつむき……

「……ゴメン。少し1人で考えさせて。」
 ……そして、一言そう言ってカムイ達の下から立ち去ろうとした。

「どうした?こう言う時の表情に困ってるのか?」
 センリは、ナオに対して軽くそう言った。

「別に。作り笑い浮かべたって、何も生まれないよ。」
 ナオは、センリの言葉に対してそう返した。











「(本戦は明日……ナオの勝利を正当化するために、何としても勝つ必要があるッスね……。ギリギリのデュエルになったのは、ナオが弱かったんじゃ無くてオレが強かった事にするために……。)」
 ナオの後姿を見ながらカムイは、心の中でそう呟いた……。



次回予告

雷人「次回はついに本戦開始か……いいデュエルになりそうだな、カムイ。」
カムイ「そうッスね、雷人。で、最初の対戦カードは……」
雷人「やっぱり俺達星海校の代表に勝ってもらいたいよな。」
カムイ「そうッスね。で、本校からの代表は……」



次回、『GX plus!』第五十一話!




『本戦開始!』

カムイ「あの相手の実力……雷人なら知ってるはずッスよね。」

第五十話 完






「いよいよ始まるか……。」
 赤い軍服の様な物を着た、星海校の校長……黒部校長は、椅子から立ち上がり……

「本校の者共に、我が星海校の実力を見せつける時が……。」
 ……そして、暗い校長室の中で小さくそう呟いた……。











第五十一話 本戦開始!











 ――本校からの出場者である剣山の滞在用の部屋にて……

「いよいよ本戦だな……頑張れよ、剣山。」
 雷人は、剣山の肩を叩きながらそう言った。

「だが……相手の代表を応援していいザウルス?……内通しているみたいだドン……。」
 剣山は、小さくそう呟いたが……

「内通?関係ないだろ。」
 雷人は、軽くそう言い……

「まあ俺としては、大会が面白くなればそれでいいけどな。」
 そして、そう言葉をつなげた。











 ――一方、レイの滞在用に用意された部屋にて……

「……いよいよ本戦だね。」
 ナオはレイを鏡の前に座らせ、くしでレイの髪の毛をときながらそう言った。

「でも……勝てるかな……?」
 レイは、不安そうにそう尋ねた。

「勝てるよ、きっとね。」
 ナオは、レイの頭の上に左手を添えながらそう言った。

「……っと。次は……」
 右手に握っていたくしを手放したナオは、右手も使ってレイの髪の毛の根元の辺りをつかみ……

「……え?な、何してるの?」
 レイは、髪の毛を引っ張られる感覚を感じ取って後ろに手を出したが……

「……だって、まとめておかないと、鬱陶しいだろ?」
 ナオは、レイの長い髪の毛を三つ編みにしながらそう言った。

「ま、まあ……ね。でも……似合うかな?三つ編みなんてやった事無いから……。」
 レイは、少し不安そうにそう呟いたが……

「似合うよ。……絶対にね。」
 ナオは、確信した様な口調でそう言った。











 ――それから少し後、デュエル場に向かう廊下にて、カムイ、センリ、リナの3人は……

「……で、昨日の間にデッキは完成させたんだよな?」
「ああ。……ナオとのデュエルで、色々変更点を思いついたんスよね。」
 センリの言葉に対して、カムイはそう反応した。

「ふ〜ん……あんな奴とのデュエルで何か参考になったんだ。」
 リナは、頭の後ろに手をやりながらそう言った。

「まあ……誰とのデュエルでも参考になる事は確かなんスけどね。」
 カムイは、頭を掻きながら軽くそう言った。

「よう、カムイ。」
 3人の後ろから、1人の男の声が聞こえた。

「ん?……国崎さんッスね。」
 カムイは、後ろを振り向きながらそう言った。

「どうだ?俺が貸したヒーロー、使いこなせてるか?」
「ああ。……まあ、昨日に負けちまったんスけどね。」
 国崎の質問に対して、カムイはそう答えた。

「へぇ、お前ほどの実力の奴を倒すとはな……。で、誰だ?その相手ってのは。」
 国崎は、カムイに対して軽くそう言った。

「……『早乙女 ナオ』ッスね。」
「……あいつか。なるほどな。」
 カムイの言葉を聞いた国崎は、何かを思い出した様にそう言った。

「知ってるんスか?」
「ああ……そいつの事は、千里に耳にタコができるほど聞かされたぜ……。写真見せながら『ナオくん可愛いでしょ?でしょ?』とかよ……あいつはショタコンかっつうの。」
 国崎は、吐き捨てる様にそう言った。

「……なるほどな。」
 センリは、小さくそう言った。

「……と、デュエル場に着いたみたいッスね。」
「そうだな。もう本校からの参加者は2人来ているか。……俺達が1番遅かったんじゃ無いか?」
 カムイとセンリは、軽くそう言った。

「じゃあ俺は、観客席で見学させてもらうぜ。」
 国崎は、軽くそう言いながらデュエル場に向かうカムイ達の下を後にした。











『……参加者は集まった様だな。本校からの第3の参加者は、少々遅れるみたいだが……。』
 5人がデュエル場に集まった事を確認した黒部校長は、放送室のマイクからその様にアナウンスし……

『ではこれより……スーパージェネックス・本戦を開幕する!』
 そうアナウンスを続けると、会場の観客達から歓声が沸き起こった……。



「……まだエドは来てないんスね……。」
 その歓声の中でカムイは、不安そうにそう呟いた……。





















 放送室内にて……

「さて……初陣は誰に切らせますかな?鮫島校長。」
 放送室の中で黒部校長は、鮫島校長に対して軽くそう言った。

「ええ、決まっていますよ。……黒部校長はどうですかな?」
「無論だ。」
 2人の校長は、そう応答した……。





















 そして、デュエル場にて……

「さてさて!ついに始まりましたスーパージェネックス・本戦です!実況はこの私、『国崎 千里』がお送りいたします!」
 デュエル場の上の籠の中で千里はそう言い、右手のマイクを使って観客達に聞こえる様にそうテンションを上げてアナウンスした。

「第1回戦の対戦カードは……あちらのモニターに表示されます!誰が来るのかは……私もまだ分かっておりません!」
 そして左手にマイクを持ち変え、右手でモニターを示しながらそう言った……。











「(当たれ!レイと当たれ!そしたら容赦無く勝ってやる!)」
 と、リナ。

「(誰と当たるのかな……?カムイ君と当たったらいいんだけど、負け点取っちゃうし……。)」
 と、レイ。

「(剣山と当たるかレイと当たるか……レイと当たれば面白そうだな。)」
 と、センリ。

「(雷人が評価したカムイの実力……できれば俺自ら試してみたいザウルス……!)」
 と、剣山。

「(誰と当たるんスかね……。誰と当たっても、オレは全力を尽くすだけなんスけど。)」
 と、カムイ。

 それぞれが、自らの理想を心の中で描き……。





















 ピーン!

「出ました出ました!本校からの挑戦者は……太古の陸上の支配者――恐竜の力を現世に蘇らせる、パワフルデッキの使い手……『ティラノ剣山』君です!!」
 千里は、初めに表示された名前を高らかに宣言した。

「おっ!いきなり俺ザウルス!」
 剣山は、拳を上げながらそう言った。

「それを迎え撃つは……魔法使い達の絆を活かすデッキを使う、星海校きってのロリっ娘……『転羽 リナ』ちゃんです!」
 そして、2番目に表示された名前も高らかに宣言した。

「(あいつ……言いたい放題言って……。)」
 リナは、千里の発言に心の中でイラついていた……。



「リナちゃん!いいデュエルになるといいザウルス!」
 剣山は、リナに激励する様にそう言ったが……

「……なに?」
 リナは、思わずそう呟いた……。

「……じゃあオレ達は、観客席で見学してるッスね。」
「頑張れよな、リナ。」
「う、うん……分かった。」
 カムイとセンリにそう言われたリナは、心を落ち着かせながらそう言った。
 カムイの隣にいたレイに対しては、ナチュラルに視線を背けていたが。











「さて!……デッキのシャッフルが済んだ所で……始まりますよ!」
 リナと剣山がお互いのデッキをシャッフルした事を確認した千里は、一呼吸起き……





















「デュエル……スタート!!!!」
 マイクを握り締めながら大きな声を出し、デュエル開始の宣言をした!











「俺のターン、ドロー!」
 剣山は、ドローしたカードを軽く確認し……

「モンスターを1体セットし、カードを2枚場に伏せるザウルス!ターンエンド!」
 そして、1ターン目は慎重にターンを終えた……。

「あたしのターン、ドロー!」
 リナは、デッキからカードを1枚ドローし、手札を軽く確認した……。

「まずは……手札から、魔法カード『闇の誘惑』を発動するかんね!デッキからカードを2枚ドローして……手札から『見習い魔術師』を除外するよ!」
 そして、手始めに手札交換を行った。

闇の誘惑
通常魔法
自分のデッキからカードを2枚ドローし、
その後手札の闇属性モンスター1体をゲームから除外する。
手札に闇属性モンスターがない場合、手札を全て墓地へ送る。


「手札から、永続魔法『魔法族の結界』を発動してから……来て!『時の魔術師』!」
 そしてリナが2枚のカードをデュエルディスクに置くと……リナの周りに不思議な魔法陣が発生し、時計みたいな形をした魔法使いが現れた!

「『時の魔術師』の効果を発動するかんね!タイム・ルーレット!」
 リナがそう言うと、『時の魔術師』は杖についた『当』マークと『ドクロ』マークがついたルーレットの針をくるくると回し始めた!











「来ました!『時の魔術師』!そのタイム・マジックは、モンスターの身を一瞬で滅ぼします!……と言うか、時の流れとは恐ろしい物です!私も、彼氏いない歴をドンドン更新してしまっていますから!」
 千里は、『時の魔術師』の効果をその様に解説した。











 そして、その針は少しずつ回転を弱めていき……









 ――ピコーン。

 針は……当たり前の様にドクロのマークで止まってしまった……。
 その結果、リナの場に暴走した時空の渦が発生し……その渦に、『時の魔術師』が吸い込まれた……。

「あぁ〜……やっぱり……。」(リナLP 4000→3750)
 リナは、時空の渦に吸い込まれていく『時の魔術師』を見て、残念そうにそう呟いた。
 しかし『魔法族の結界』の周りには、1枚のカードの幻影が出現した……。

「じゃあ……カードを3枚場に伏せて、ターンエンドね。」


現在の状況
リナ LP…3750
   手札…1枚
   場…魔法族の結界(魔力カウンター×1・表側表示)
     伏せカード3枚

剣山 LP…4000
   手札…3枚
   場…裏守備モンスター1体
     伏せカード2枚











「『時の魔術師』の効果失敗……よくある事だな。」
「そうッスね、センリ。『魔法族の結界』でそのデメリットを上手く軽減できもしているんスけどね。」
 観客席に移動したセンリとカムイは、観客席で前のターンの攻防を話し合っていた……。

「やるねぇ……さすが本戦参加者と言った所だな。」
 そしてそのすぐ近くにいた国崎は、小さくそう呟いた。

「リナちゃんと剣山のデュエルか……いいデュエルになりそうだな。」
 会話している3人の後ろから、誰かがそう言った。

「おっ、雷人もここで観戦するんスか?」
「ああ、探したぜ。」
 カムイの問いかけに、雷人はそう答えた。

「そう言えば……雷人は剣山を部屋に誘ってたよな。実力は測ったのか?」
 センリは、雷人にそう質問を重ねた。

「剣山か?あいつは中々強いぜ。その後も色々と話していたんだがな……」
 雷人は、軽くそう言い……

「……少し、失敗したか。」
 ……後悔の念を込めながらそう続けた。











「俺のターン、ドロー!」
 剣山は、デッキからカードを1枚ドローし……

「見せてやるドン……俺の恐竜さんの展開力を!」
 ……リナに対して、一言軽くそう言った……。

「まずは手札から、魔法カード『化石調査』を発動するザウルス!この効果で、デッキからレベル6以下の恐竜族モンスター……『俊足のギラザウルス』を手札に加えるドン!」
 剣山は、デッキからカードを1枚探し出し、手札に加えた。


化石調査
通常魔法
自分のデッキからレベル6以下の恐竜族モンスター1体を手札に加える。


「今サーチした『俊足のギラザウルス』を、攻撃表示で特殊召喚するザウルス!」
 剣山の場に、小型の恐竜が1体駆けつけた。











「おぉっと!剣山君は、サーチしたカードをすぐさま特殊召喚しました!……しかし、無条件で特殊召喚などと言う虫のいい話などあるはずがありません!そのデメリット効果が今、発動されます!」
 千里は、『俊足のギラザウルス』の効果をそう熱く語った。











「『俊足のギラザウルス』が自身の効果で特殊召喚に成功した時……リナちゃんは、自分の墓地から1体特殊召喚できるザウルス!」
「えっ?いいの?じゃあ……『時の魔術師』を守備表示で特殊召喚するね。」
 剣山の言葉を聞いたリナは、墓地から『時の魔術師』のカードを取り出し、自分の場に特殊召喚した。


俊足のギラザウルス
地 レベル3
【恐竜族・効果】
このモンスターの召喚を特殊召喚扱いにする事ができる。
特殊召喚扱いにした場合、相手の墓地から相手は
モンスター1体を特殊召喚する事ができる。
攻撃力1400 守備力


「さらに俺は……『奇跡のジュラシック・エッグ』を反転召喚!」
 剣山がそう言うと、化石化した白い骨の卵が姿を現した。

「『俊足のギラザウルス』をリリースし……出るドン!『超古代恐獣(エンシェント・ダイノ』!!」
 剣山の場の『俊足のギラザウルス』が場から消え去ると……代わりに、全身灰色の1体の巨大な恐竜が出現した!
 『奇跡のジュラシック・エッグ』は、墓地に送られた『俊足のギラザウルス』の命の欠片を吸収し、自らに蓄えた……。

奇跡のジュラシック・エッグに乗ったカウンター 4個→2個

「ふ〜ん……。最上級モンスターなのに、1体のリリースで召喚できるんだ。」
「ああ……!『超古代恐獣』は、その身に秘めた古代の力によって1体のリリースで召喚可能ザウルス!」
 剣山は、自信満々にそう言った。


超古代恐獣
地 レベル8
【恐竜族・効果】
このカードは恐竜族モンスター1体をリリースして
表側攻撃表示でアドバンス召喚する事ができる。
自分の墓地に存在する恐竜族モンスターが特殊召喚に成功した時、
自分のデッキからカードを1枚ドローする事ができる。
攻撃力2700 守備力1400


「さらに手札から『ベビケラサウルス』を捨て、永続罠『化石採掘』を発動するザウルス!この効果で、墓地から恐竜族モンスター……『ベビケラサウルス』を特殊召喚!『超古代恐獣』の効果で1枚ドロー!」
 剣山は捨てたカードをすぐさま蘇生させ、さらにカードを1枚ドローした。


化石採掘
永続罠
手札を1枚捨てる。
自分の墓地に存在する恐竜族モンスター1体を選択して特殊召喚する。
この方法で特殊召喚されたモンスターのモンスター効果は無効化される。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。


奇跡のジュラシック・エッグに乗ったカウンター 2個→4個

「さらに……永続罠『化石採掘』をコストに、魔法カード『マジック・プランター』を発ドン!デッキからカードを2枚ドローするザウルス!」
 さらに剣山は、表にした永続罠をコストにカードを2枚ドローした。
 『化石採掘』によって命をつなぎ止めていた『ベビケラサウルス』は、『化石採掘』を失った事であっさりと破壊された……。


マジック・プランター
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する
永続罠カード1枚を墓地へ送って発動する。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。


奇跡のジュラシック・エッグに乗ったカウンター 4個→6個

「破壊された『ベビケラサウルス』の効果発ドン!俺のデッキから、レベル4以下の恐竜族モンスターを1体特殊召喚するザウルス!……出るドン!『暗黒プテラ』!」
 『ベビケラサウルス』は、剣山のデッキの中の黒い翼竜に力を託し、場に特殊召喚させた……。


ベビケラサウルス
地 レベル2
【恐竜族・効果】
このカードが効果によって破壊され墓地へ送られた時、
デッキからレベル4以下の恐竜族モンスター1体を選択して
自分フィールド上に特殊召喚する。
攻撃力500 守備力500


「……リナちゃんの場に表側表示モンスターが存在する時に、俺の場に攻撃力1500以下のモンスターが1体特殊召喚された事により……このカードの発動条件を満たしたザウルス!速攻魔法『地獄の暴走召喚』を発ドン!」
 『暗黒プテラ』が特殊召喚された事を確認した剣山はそう言いながら、1枚の速攻魔法を発動させた。

「ふ〜ん。『俊足のギラザウルス』を特殊召喚したのって、ただリリース要員が欲しかったからじゃ無いんだ。」
 リナは、剣山が『俊足のギラザウルス』のデメリットを『地獄の暴走召喚』の発動条件を満たすために使用した事に、少し感心していたが……

「でも……あたしが暴走召喚させるカードは、『時の魔術師』じゃ無いかんね!永続罠『闇次元の解放』を発動して、除外された『見習い魔術師』を守備表示で特殊召喚するよ!」
 ……そう言いながらリナが伏せておいたカードを表にすると、『闇の誘惑』で除外したカードをスカートのポケットの中から取り出し、場に特殊召喚した!


闇次元の解放
永続罠
ゲームから除外されている自分の闇属性モンスター1体を選択し、
自分フィールド上に特殊召喚する。
このカードがフィールド上から離れた時、
そのモンスターを破壊してゲームから除外する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。


「『地獄の暴走召喚』で特殊召喚するモンスターは、効果が解決される時に選ぶから……『見習い魔術師』を特殊召喚できるんだよ!」
 その言葉通りリナは、デッキから2体の『見習い魔術師』を取り出し、守備表示で特殊召喚した。


地獄の暴走召喚
速攻魔法
相手フィールド上に表側表示でモンスターが存在し、自分フィールド上に
攻撃力1500以下のモンスター1体が特殊召喚に成功した時に発動する事ができる。
その特殊召喚したモンスターと同名モンスターを自分の手札・デッキ・墓地から
全て攻撃表示で特殊召喚する。
相手は相手自身のフィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、
そのモンスターと同名モンスターを相手自身の手札・デッキ・墓地から全て特殊召喚する。


「チェーン処理が終わったから……特殊召喚された『見習い魔術師』3体の効果で、『魔法族の結界』に魔力カウンターを3個乗せるかんね!」
 リナの場に集結した『見習い魔術師』3兄弟は、持っていた杖から魔法力を解き放ち……リナの周りにカードの幻影を3枚発生させた!


見習い魔術師
闇 レベル2
【魔法使い族・効果】
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、
フィールド上に表側表示で存在する魔力カウンターを
置く事ができるカード1枚に魔力カウンターを1つ置く。
このカードが戦闘によって破壊された場合、
自分のデッキからレベル2以下の魔法使い族モンスター1体を
自分フィールド上にセットする事ができる。
攻撃力400 守備力800


魔法族の結界に乗った魔力カウンター 1個→4個


現在の状況
剣山 LP…4000
   手札…2枚
   場…超古代恐獣(攻撃力2700・攻撃表示)
     暗黒プテラ×3
     奇跡のジュラシック・エッグ(カウンター×6)
     伏せカード1枚

リナ LP…3750
   手札…1枚
   場…時の魔術師(守備力400・守備表示)
     見習い魔術師(守備力800・守備表示)×3
     魔法族の結界(魔力カウンター×4・表側表示)
     闇次元の解放(見習い魔術師1体対象・表側表示)
     伏せカード2枚











「『地獄の暴走召喚』……手軽な大量展開を可能にするカードッスね。」
 カムイは、剣山の戦法をそう分析した。

「2枚のカードで3体のモンスターを並べる……1+1を3にも4にもするのがデュエリストのタクティクスって訳だな。」
 国崎も、その様に評価した。

「デュエルは、単純な足し算じゃあ無い……」
「そう言う事ッスね、国崎さん。」
 センリとカムイは、国崎の言葉をそう読み取った。











「でも『地獄の暴走召喚』使っちゃえば、小粒なモンスターを並べる事なんて誰だってできるじゃん。まさかそんなんで展開力とか言ってんなら……怒るよ。」
 リナは、少し小さくそう呟いた……。

「いや……まだ終わりじゃ無いドン!手札から、永続罠『血の代償』を発動するザウルス!500ポイントライフを払い、もう1度通常魔法を行うザウルス!」
 さらに剣山は追撃の伏せ罠カードを発動させ、新たな通常召喚の権利を得た。


血の代償
永続罠
500ライフポイントを払う事で、モンスター1体を通常召喚する。
この効果は自分のメインフェイズ時及び
相手のバトルフェイズ時にのみ発動する事ができる。


剣山LP 4000→3500

「これで俺の場に、モンスターが出揃ったザウルス!『暗黒プテラ』2体をリリースし……」
 剣山はそう言いながら、残り2枚の内1枚の手札に手をかけ……











「『創世神(ザ・クリエイター』――召喚!」
 ……全身朱色に輝く、巨大な体格のモンスターが稲妻と共に出現した!

「戦闘破壊以外の方法で場から墓地に送られた2体の『暗黒プテラ』は、俺の手札に戻ってくるドン!」
 『暗黒プテラ』は、自ら墓地から剣山の手札に舞い戻った!
 さらに恐竜族が墓地に送られた事により、『奇跡のジュラシック・エッグ』にその命の欠片の一部が吸収された……。


暗黒プテラ
風 レベル3
【恐竜族・効果】
このカードが戦闘によって破壊される以外の方法で
フィールド上から墓地に送られた時、このカードは持ち主の手札に戻る。
攻撃力1000 守備力500


奇跡のジュラシック・エッグに乗ったカウンター 6個→8個

「カウンターが8個乗った『奇跡のジュラシック・エッグ』をリリースし、効果を発ドン!『奇跡のジュラシック・エッグ』は、恐竜さん達の死を乗り越え……今ここで、奇跡の孵化を遂げるザウルス!……出るドン!『究極恐獣』!!」
 剣山がそう言うと、『奇跡のジュラシック・エッグ』の体が、内部からの呻き声と共にひび割れ、弾け飛ぶ様に粉々に砕け散った!
 ……その中から、マグマの様にドロドロに溶けた赤い液体が溢れ出し……その液体と共に、全身を鋼の様な皮膚で覆い、巨大な肉体へと進化を遂げた1体のモンスター……『究極恐獣』が姿を現した!


奇跡のジュラシック・エッグ
地 レベル3
【恐竜族・効果】
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
このカードをゲームから除外する事はできない。
また、恐竜族モンスターが自分の墓地に送られる度に、
このカードの上にカウンターを2つ置く。
このカードを生け贄に捧げる事で、
この時このカードに乗っていたカウンターの数以下のレベルの
恐竜族モンスター1体をデッキから選択して特殊召喚する。
攻撃力0 守備力2000


「レベル8のモンスターが、たった1枚の消費で出て来たんだ……。……まるで怪物みたいじゃん。」
 鋭い眼光でリナの場のモンスターをまるで獲物を見つけた野獣の睨み付ける『究極恐獣』の姿を見たリナは、小さくそう呟いた。

「『創世神』の効果を発動するザウルス!手札を1枚墓地に送り、俺の墓地のモンスターを特殊召喚するドン!俺が蘇生予告するモンスターは……『奇跡のジュラシック・エッグ』!」
「『奇跡のジュラシック・エッグ』……か。でもあたし、今の手札じゃ何にもできないしな〜。」
 『創世神』は、両手から魔力を放出し、その魔力によって『奇跡のジュラシック・エッグ』を蘇らせた!


創世神
光 レベル8
【雷族・効果】
自分の墓地からモンスターを1体選択する。
手札を1枚墓地に送り、選択したモンスター1体を特殊召喚する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
このカードは墓地からの特殊召喚はできない。
攻撃力2300 守備力3000


「『超古代恐獣』の効果で、カードを1枚ドロー!さらに『創世神』と『暗黒プテラ』を墓地に送り……」
「え?な、何が出てくんの!?」
 リナがそう言っている間に、剣山の場の2体のモンスターが光の渦の中で混じり合い……











「――現れろ!『超伝導合体(スーパーコンダクターユニオン ボルテック・レックス』!!」
 その渦の中から、『創世神』の様な朱色の巨大な体に、『暗黒プテラ』の黒い翼を持った、1体のモンスターが出現した!

奇跡のジュラシック・エッグに乗ったカウンター 0個→2個

「『ボルテック・レックス』は、俺の場の恐竜族モンスターと雷族モンスターを墓地に送った場合にエクストラデッキから特殊召喚可能なモンスターだドン!その攻撃力・守備力の数値は素材となったモンスターの攻撃力・守備力を合計した数値となり……攻撃力が高い方の素材の効果を得るザウルス!『創世神』の効果を吸収し……墓地に送られた『暗黒プテラ』は俺の手札に戻るドン!」
 剣山がそう言うと、『ボルテック・レックス』は背中の翼から電撃を発生させ、リナの場のモンスターを威嚇した!


超伝導合体(スーパーコンダクターユニオン ボルテック・レックス
光 レベル8
【恐竜族・融合・効果】
恐竜族モンスター+雷族モンスター
自分フィールド上に存在する上記のカードを墓地へ送った場合のみ、エクストラデッキから特殊召喚できる。
このカードの元々の攻撃力は、融合素材に使用したモンスターの攻撃力の合計の数値となる。
このカードは、融合素材に使用したモンスターの内元々の攻撃力が最も高いモンスターと同じ効果を得る。
攻撃力? 守備力0


超電導合体 ボルテック・レックス 攻撃力?→3300











「まさか……雷人は、剣山にあのカードを貸したのか?」
「ああ……だから失敗なんだよ。リナちゃんを負かす事になっちまいそうだからな……。」
 センリの言葉を聞いた雷人は、残念そうにそう呟いた。











「『創世神』の効果を吸収した『ボルテック・レックス』の効果を発動するザウルス!手札から『暗黒プテラ』を墓地に送り、墓地から『暗黒プテラ』を特殊召喚するドン!『超古代恐獣』の効果でカードを1枚ドロー!」
 『ボルテック・レックス』は、墓地の『暗黒プテラ』に対して魔力を与え……その身を蘇らせた!
 手札から恐竜族モンスターが墓地に送られた事で、当然『奇跡のジュラシック・エッグ』はその力を吸収した。

奇跡のジュラシック・エッグに乗ったカウンター 2個→4個






現在の状況
剣山 LP…3500
   手札…4枚(内1枚暗黒プテラ)
   場…超伝導合体 ボルテック・レックス(攻撃力3300・攻撃表示)
     超古代恐獣(攻撃力2700・攻撃表示)
     究極恐獣(攻撃力3000・攻撃表示)
     暗黒プテラ(守備力500・守備表示)
     奇跡のジュラシック・エッグ(カウンター×4・守備力2000・守備表示)
     血の代償(表側表示)










「おぉっと!!剣山君の場に、5体の恐竜族モンスターが集結しました!しかもそれによる手札消費はなんと実質1枚!さて、このモンスターでどの様にリナちゃんの場のモンスターの壁を乗り越えるのでしょうか!!?」
 千里は、剣山の場の様子を熱く語った。











「『究極恐獣』は、相手モンスターすべてに1回ずつ攻撃する効果を持っているザウルス!『究極恐獣』で『時の魔術師』に攻撃!アブソリュート・バイト!!」
 溢れる破壊衝動を抑えきれない『究極恐獣』は、剣山が攻撃指令を発している途中にもかかわらず、地響きを起こしながらリナの場に進撃し……そのまま『時の魔術師』を鋭い牙で噛み砕こうとしたが……



「伏せ罠カード……『和睦の使者』を発動するかんね!この効果で、このターン相手モンスターから与えられる戦闘ダメージは0になるよ!」
 リナの場のモンスターを不思議なバリアが包み込み、その攻撃を完全に遮断した!
 だが『究極恐獣』は、自らの破壊衝動を発散するかのごとくリナの場のモンスターに攻撃を繰り出し……すべてに1度殴った事でようやく気が治まったのか、剣山の下へと戻って行った……。


究極恐獣
地 レベル8
【恐竜族・効果】
自分のバトルフェイズ開始時にこのカードが
フィールド上に表側表示で存在する場合、このカードから攻撃を行い、
相手フィールド上に存在する全てのモンスターに1回ずつ
続けて攻撃しなければならない。
攻撃力3000 守備力2200

和睦の使者
通常罠
このカードを発動したターン、相手モンスターから受ける
全ての戦闘ダメージは0になる。
このターン自分のモンスターは戦闘では破壊されない。


「カードを3枚場に伏せ、ターンエン……」
「待った!エンドフェイズに、あたしはこの伏せ罠カードを発動するかんね!『闇次元の解放』で帰還した『見習い魔術師』をリリースして、伏せ罠カード……『闇霊術−「欲」』を発動するよ!」
 剣山の手札が少なくなるタイミングを見計らっていたリナは、伏せておいた1枚のカードを発動させた!

「この効果は剣山が魔法カードを見せれば無効にされるけど……無理だよね。手札はさっき手札に戻した『暗黒プテラ』しか無いんだから。」
 リナはそう言いながら、カードを2枚ドローした。


闇霊術−「欲」
通常罠
自分フィールド上に存在する闇属性モンスター1体を生け贄に捧げて発動する。
相手は手札から魔法カード1枚を見せる事でこの効果を無効にする事ができる。
見せなかった場合、自分はデッキからカードを2枚ドローする。


現在の状況
剣山 LP…4000
   手札…1枚(暗黒プテラ)
   場…超伝導合体 ボルテック・レックス(攻撃力3300・攻撃表示)
     超古代恐獣(攻撃力2700・攻撃表示)
     究極恐獣(攻撃力3000・攻撃表示)
     暗黒プテラ(守備力500・守備表示)
     奇跡のジュラシック・エッグ(カウンター×4・守備力2000・守備表示)
     血の代償(表側表示)
     伏せカード3枚

リナ LP…3750
   手札…3枚
   場…時の魔術師(守備力400・守備表示)
     見習い魔術師(守備力800・守備表示)×2
     魔法族の結界(魔力カウンター×4・表側表示)
     闇次元の解放(表側表示)


「あたしのターン、ドロー!」
 リナは、ドローしたカードを軽く確認し……

「『魔法族の結界』の効果を発動するよ!魔力カウンターが4個乗ったこのカードと、あたしの場の魔法使い族……『闇次元の解放』で帰還した『見習い魔術師』を墓地に送って、カードを4枚ドロー!」
 リナの周りのカードの幻影を実体化させ、手札を8枚に増やした。


魔法族の結界
永続魔法
フィールド上に存在する魔法使い族モンスターが破壊される度に、
このカードに魔力カウンターを1つ置く(最大4つまで)。
自分フィールド上に表側表示で存在する魔法使い族モンスター1体と
このカードを墓地へ送る事で、このカードに乗っている
魔力カウンターの数だけ自分のデッキからカードをドローする。


「『魔法族の結界』……たった数ターンで4枚ドローされるとは思わなかったドン!」
「へへ〜ん、すごいでしょ。」
 リナは、軽くそう言った。

「手札を2枚捨てて、魔法カード『魔法石の採掘』を発動するかんね〜。この効果で、墓地から『魔法族の結界』を手札に戻すよ〜。」
 リナは、手札から『ものマネ幻想師』と『高等儀式術』を捨て、墓地に置かれた『魔法族の結界』を手札に戻した。


魔法石の採掘
通常魔法
手札を2枚捨てて発動する。
自分の墓地に存在する魔法カードを1枚手札に加える。


「で……『魔法族の結界』を発動させてっと。『時の魔術師』の効果を発動するかんね!タイム・ルーレット!」
 リナの効果発動宣言を聞きつけた『時の魔術師』は、杖に付いているルーレットをくるくると回し始めたが……

 









 ――ピコーン。

 針は……先程の再現VTRを見ているかの様にドクロのマークで止まってしまった……。
 その結果、リナの場にまた暴走した時空の渦が発生し……その渦に、『時の魔術師』と『見習い魔術師』が吸い込まれた……。


リナLP 3750→3300
魔法族の結界に乗った魔力カウンター 0個→1個

「(まっ、いっか。別にそこまで損した訳じゃ無いんだし。)」
 リナはそう割り切り、手札の魔法カード1枚に手をかけた……。

「手札から、魔法カード『儀式の準備』を発動するかんね!この効果で、デッキからレベル7以下の儀式モンスター……『サクリファイス』を手札に加えて、墓地から『高等儀式術』を手札に戻すよ!」
 リナは、デッキと手札からカードを1枚ずつ探しだし、手札に加えた。


儀式の準備
通常魔法
自分のデッキからレベル7以下の儀式モンスター1体を手札に加える。
その後、自分の墓地から儀式魔法カード1枚を手札に加える事ができる。


「『高等儀式術』……『魔法石の採掘』のコストで捨てていたザウルス!?」
「そっ。……だって捨てっぱなしだと、手札すぐに無くなっちゃうじゃん。」
 リナは、軽くそう言った。

「手札から、儀式魔法『高等儀式術』を発動するかんね!デッキから、レベル1の通常モンスター1体……『千眼の邪教神』を墓地に送って、『サクリファイス』を儀式召喚するよ!」
 そう言うと、リナのデッキから目を大量にもったモンスターが贄となり……ウィジャト眼を持ち、腹に顔の様な物を浮かび上がらせた、妙な姿をしたモンスターが現れた!


高等儀式術
儀式魔法
手札の儀式モンスター1体を選択し、そのカードとレベルの合計が
同じになるように自分のデッキから通常モンスターを選択して墓地に送る。
選択した儀式モンスター1体を特殊召喚する。


「『サクリファイス』の効果を発動するよ!『究極恐獣』を食べちゃえ〜!」
 リナがそう言うと、『サクリファイス』は飢えた目で『究極恐獣』を見た後自分の口を大きく開き……『究極恐獣』の頭に食らいついた!
 じたばたして抵抗している『究極恐獣』を、『サクリファイス』は両手を使ってどんどん口の中に無理矢理押し込んでいき、そのまま一口で丸呑みにしてしまった……。


サクリファイス
闇 レベル1
【魔法使い族・儀式・効果】
相手モンスター1体を指定してこのカードに装備する。
(この効果は1ターンに1度しか使用できず、
同時に装備できるモンスターは1体のみ)
このカードの攻撃力・守備力は装備したモンスターの数値になる。
戦闘によってこのカードが破壊される場合、
かわりに装備したモンスターが破壊され、
超過した戦闘ダメージは相手プレイヤーも受ける。
攻撃力0 守備力0


サクリファイス 攻撃力0→3000
        守備力0→2200


「ぐっ……これじゃあ弱肉強食じゃ無くて強肉弱食ザウルス……。」
 剣山は、あっさりと『究極恐獣』を捕食した『サクリファイス』の姿を見て、小さくそう呟いた……。

「いっくよ〜!『サクリファイス』で、『超古代恐獣』に攻撃!」
 『サクリファイス』は、頭のウィジャト眼から光線を放ち、『超古代恐獣』を破壊しようとしたが……

「なら俺は……伏せ罠カード『無力の証明』を発ドン!この効果で、リナちゃんの場のレベル5以下のモンスターをすべて破壊するザウルス!」
 剣山がそう言うと、『超古代恐獣』が突然大きな口を開けて『サクリファイス』と『見習い魔術師』を威嚇した!
 そしてその2体を地響きを起こしながら追いかけ回し、そのまま虫けらか何かの様に踏み潰してしまった……。


無力の証明
通常罠
自分フィールド上にレベル7以上のモンスターが
表側表示で存在する場合のみ発動する事ができる。
相手フィールド上に表側表示で存在する
レベル5以下のモンスターを全て破壊する。
このカードを発動するターン、
自分フィールド上に存在するモンスターは攻撃する事ができない。


魔法族の結界に乗った魔力カウンター 1個→2個

「げっ……一瞬で全滅させられちゃったよ……。」
 『超古代恐獣』に全滅させられた自分の場を目の当たりにしたリナは、小さくそう呟き……。

「でも……負けないかんね!メインフェイズ2に入って……手札から、魔法カード『貪欲な壺』を発動するよ!墓地から『見習い魔術師』2体、『時の魔術師』、『千眼の邪教神』、『サクリファイス』をデッキに戻してからカードを2枚ドロー!」
 リナはそう言いながら墓地の5体のモンスターをデッキに戻し、カードを2枚ドローした。


貪欲な壺
通常魔法
自分の墓地に存在するモンスター5体を選択し、
デッキに加えてシャッフルする。
その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。


「へへ〜ん、いいカード引いちゃった。」
 そしてドローしたカードを含め、5枚となった手札を確認したリナは、イタズラっぽく舌を出しながらそう言った。

「手札から、魔法カード『ダーク・バースト』を発動するかんね〜。墓地から、攻撃力1500以下の闇属性モンスター……『見習い魔術師』を手札に戻すよ〜。」
 そう言いながらリナは、墓地に残しておいた『見習い魔術師』のカードを取り出し、手札に加えた。


ダーク・バースト
通常魔法
自分の墓地に存在する攻撃力1500以下の闇属性モンスター1体を手札に加える。


「今手札に戻した『見習い魔術師』を召喚して、効果発動だよ。『魔法族の結界』に、魔力カウンターを1個乗せちゃおっと。」
 『見習い魔術師』は持っていた杖を振るい、リナの周りにカードの幻影を1つ発生させた。

魔法族の結界に乗った魔力カウンター 2個→3個

「魔力カウンターが3個……これで3枚ドローする気ザウルス?」
「違うよ。たったそんだけで喜ぶはず無いじゃん。」
 リナはそう答えながら、手札のカード1枚に手をかけた……。

「手札から、速攻魔法『ディメンジョン・マジック』を発動するよ。あたしの場の『見習い魔術師』をリリースして、手札の『見習い魔術師』を特殊召喚だよ〜。」
 『見習い魔術師』が、リナの場に現れた箱の中に入ると……その中から、再び『見習い魔術師』が光の中から出現した!

「特殊召喚した後に『ディメンジョン・マジック』のもう1つの効果が発動するかんね。場のモンスター1体……『ボルテック・レックス』を破壊するよ!」
 リナの場に現れた2体目の『見習い魔術師』は、持っている杖で『ボルテック・レックス』に殴りかかった!
 すると、その杖から激しい光が放たれ、その光に巻き込まれた『ボルテック・レックス』は一瞬で消滅した……。


ディメンジョン・マジック
速攻魔法
自分フィールド上に魔法使い族モンスターが
表側表示で存在する場合に発動する事ができる。
自分フィールド上に存在するモンスター1体をリリースし、
手札から魔法使い族モンスター1体を特殊召喚する。
その後、フィールド上に存在するモンスター1体を破壊する事ができる。


奇跡のジュラシック・エッグに乗ったカウンター 6個→8個

「ぐっ……!『ボルテック・レックス』を一瞬で破壊されちまったザウルス……!」
 剣山は、『ボルテック・レックス』自分の場から消え去った事で、残念そうにそう言った……。

「それから、『見習い魔術師』の強制効果が発動するよ。『魔法族の結界』に魔力カウンターが1個乗るかんね〜。」
 『ボルテック・レックス』を破壊した『見習い魔術師』は、もう1度杖を振るいリナの周りに4枚目のカードの幻影を出現させた。

魔法族の結界に乗った魔力カウンター 3個→4個

「……で、やっとお待ちかねの『魔法族の結界』の効果が発動するよ〜。魔力カウンターが4個乗ったこのカードと、あたしの場の魔法使い族……『見習い魔術師』を墓地に送って、カードを4枚ドローするかんね〜。」
 そう言いながらリナは、2枚のカードを墓地に送り手札を6枚に増やした。











「おぉっと!リナちゃんはまた手札を大幅に増強しました!これが絆の力なのでしょうか!?」
 千里は、声を張り上げてそう言った。












「それから……手札から、永続魔法『魔法族の結界』を発動するかんね〜。」
 リナが6枚の手札の中から1枚に手をかけると、リナの周りにまた不思議な魔法陣が現れた。

「何!3枚目の『魔法族の結界』ザウルス!?」
「違うよ。墓地から1枚は手札に加えたから、これで2枚目じゃん。」
 剣山の言葉に対して、リナは軽くそう答えた。

「まだだよ。『闇次元の解放』をコストに、魔法カード『マジック・プランター』を発動するかんね〜。カードを2枚ドロー!」
 そしてリナは、邪魔になった『闇次元の解放』をコストにカードを2枚ドローし、また手札を6枚に戻した。

「カードを4枚場に伏せて、ターンエン……」
「このタイミングで、永続罠『リミット・リバース』を発動するザウルス!俺の墓地から『ベビケラサウルス』を特殊召喚!『超古代恐獣』の効果でカードを1枚ドロー!」
 リナのターンエンド宣言を聞いた剣山は伏せておいたカードを発動させ、墓地から『ベビケラサウルス』を蘇らせた!
 さらに剣山は、『超古代恐獣』の効果でカードを1枚ドローした。


リミット・リバース
永続罠
自分の墓地から攻撃力1000以下のモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。
そのモンスターが守備表示になった時、そのモンスターとこのカードを破壊する。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。


現在の状況
リナ LP…3300
   手札…2枚
   場…魔法族の結界(魔力カウンター×0・表側表示)
     伏せカード4枚

剣山 LP…3500
   手札…2枚(内1枚暗黒プテラ)
   場…超古代恐獣(攻撃力2700・攻撃表示)
     暗黒プテラ(攻撃力1000・攻撃表示)
     奇跡のジュラシック・エッグ(カウンター×8・守備力2000・守備表示)
     ベビケラサウルス(攻撃力500・攻撃表示)
     リミット・リバース(ベビケラサウルス対象・表側表示)
     血の代償(表側表示)
     伏せカード1枚











「『魔法族の結界』で4枚ドロー連発か……さすがリナちゃんだな。」
 雷人は、カムイに対して軽くそう言った。

「ああ……リナのデッキのモンスターは攻撃力自体は低いんスけど……ドロー効果を活かした物量作戦で攻めていくんスよね。」
 カムイは、雷人の言葉に対してそう答えた。











「俺のターン、ドロー!」
 剣山は、そう言いながらカードを1枚ドローし……

「俺は……『ベビケラサウルス』を守備表示に変更するザウルス!」
「え?守備表示にするくらいそんなに珍しいことじゃ無いのに。……何かあるんでしょ。」
 剣山の妙にはっきりした話し方に、リナは少し疑問を抱いていた。

「ああ……『リミット・リバース』の効果で蘇生されたモンスターは、守備表示となった時に破壊されるザウルス!だが、カードの効果で破壊された『ベビケラサウルス』の効果で、デッキから『奇跡のジュラシック・エッグ』を特殊召喚!」
 『リミット・リバース』によって蘇った『ベビケラサウルス』は、守る事を許されぬ掟を破った罰として、そのまま破壊された……。
 しかしその心は、デッキから現れた『奇跡のジュラシック・エッグ』へと引き継がれた!

奇跡のジュラシック・エッグに乗ったカウンター 8個→10個

「……カウンターが10個乗った『奇跡のジュラシック・エッグ』の効果発ドン!自身をリリースし……デッキから、レベル10以下の恐竜さんを特殊召喚するザウルス!……出るドン!『超伝導恐獣』!!」
 剣山がそう言うと、『奇跡のジュラシック・エッグ』の中から雷鳴が轟き……溢れ出るマグマとスパークと共に、金属の鎧をまとった1体のモンスターが出現した!
 そしてその生命力は、2体目の『奇跡のジュラシック・エッグ』へと引き継がれていった……。

奇跡のジュラシック・エッグに乗ったカウンター 0個→2個

「うっ……またレベル8のモンスターが来ちゃったよ……。」
 リナは、マグマの中から次々現れる巨大恐竜達の姿に、少し縮こまっていた……。

「『超伝導恐獣』の効果を発動するザウルス!『暗黒プテラ』を射出し、リナちゃんに1000ポイントのダメージを与えるドン!」
 『超伝導恐獣』は、牙で『暗黒プテラ』に噛み付いて生命エネルギーを吸いつくし、それを電撃と言う形にしてリナにぶつけた!
 当然『暗黒プテラ』は、自身の効果によって剣山の手札に舞い戻り、『奇跡のジュラシック・エッグ』った。


超伝導恐獣
光 レベル8
【恐竜族・効果】
自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる事で
相手ライフに1000ポイントダメージを与える。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
また、この効果を発動したターンこのモンスターは
攻撃宣言をする事ができない。
攻撃力3300 守備力1400


奇跡のジュラシック・エッグに乗ったカウンター 2個→4個

「きゃっ!」(リナLP 3300→2300)
 不意のダメージに対してリナは、思わずそう言った。

「でも……せっかく特殊召喚したのに、自分の効果で攻撃できなくなるんだよね。それでどうすんのさ。」
「いや……これも作戦の1つザウルス!『超伝導恐獣』をコストに、魔法カード『アドバンスドロー』を発ドン!デッキからカードを2枚ドロー!」
 剣山は特殊召喚した『超伝導恐獣』をリリースし、カードを2枚ドローした。


アドバンスドロー
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する
レベル8以上のモンスター1体をリリースして発動する。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。


奇跡のジュラシック・エッグに乗ったカウンター 4個→6個

「さらに……伏せ罠カード『ギブ&テイク』を発動するザウルス!この効果によって、俺の墓地から『超伝導恐獣』を……リナちゃんの場に守備表示で特殊召喚し、『超古代恐獣』のレベルを8上げるドン!」
 そして墓地に送られた『超伝導恐獣』は、今度はリナの場へと特殊召喚された!


ギブ&テイク
通常罠
自分の墓地に存在するモンスター1体を
相手フィールド上に守備表示で特殊召喚し、
そのレベルの数だけ自分フィールド上に表側表示で存在する
モンスター1体のレベルをエンドフェイズ時まで上げる。


超古代恐獣 レベル8→16

「え!?何であたしの場に特殊召喚させたの!?」
「それはすぐに分かるザウルス!俺の墓地から恐竜さんが特殊召喚された事により、『超古代恐獣』の効果でカードを1枚ドロー!」
 リナの驚く声を聞いた剣山は、そう言いながらカードを1枚ドローし、手札を6枚に増やした。


現在の状況
剣山 LP…3500
   手札…6枚(内2枚暗黒プテラ)
   場…超古代恐獣(攻撃力2700・攻撃表示)
     奇跡のジュラシック・エッグ(カウンター×6・守備力2000・守備表示)
     血の代償(表側表示)

リナ LP…2300
   手札…2枚
   場…超伝導恐獣(守備力1400・守備表示)
     魔法族の結界(魔力カウンター×0・表側表示)
     伏せカード4枚


「カウンターが6個乗った『奇跡のジュラシック・エッグ』を墓地に送り……デッキから、3体目の『奇跡のジュラシック・エッグ』を特殊召喚!」
 剣山の場の『奇跡のジュラシック・エッグ』にひびが入り……その中から、まったく同じ姿型の『奇跡のジュラシック・エッグ』が現れた!

「二重卵?……そんなお菓子あるよね。でも何の意味があんの?」
「いや……まだ意味があるザウルス!リナちゃんの場にモンスターが存在し、俺の場に攻撃力1500以下のモンスターが特殊召喚された事で……手札の速攻魔法『地獄の暴走召喚』を発ドン!」
 リナの一言に対して剣山は1枚のカードを発動させた……。

「ふ〜ん……だからわざわざ『超伝導恐獣』を渡したんだ。でも……あたしもモンスターを特殊召喚したいから、永続罠『エンジェル・リフト』を発動するかんね!墓地から、『ものマネ幻想師』を攻撃表示で特殊召喚!」
 リナが伏せカードを発動させると、墓地から手鏡を持ったひょろひょろの幻想師が蘇った!


エンジェル・リフト
永続罠
自分の墓地に存在するレベル2以下のモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターがフィールド上から離れた時このカードを破壊する。


「だが、『地獄の暴走召喚』の効果は止まらないザウルス!俺は墓地から、2体の『奇跡のジュラシック・エッグ』を攻撃表示で特殊召喚!」
「あたしだって、デッキから2体の『ものマネ幻想師』を特殊召喚するよ!」
 剣山とリナがそう言うと、場に合計4体のモンスターが追加で特殊召喚された!

「墓地から『奇跡のジュラシック・エッグ』が特殊召喚された事で、『超古代恐獣』の効果でカードを1枚ドロー!」
「でも……特殊召喚された3体の『ものマネ幻想師』の効果が発動するかんね!この効果で、『超古代恐獣』の攻撃力と守備力をコピーするよ!」
 3体のひょろひょろな『ものマネ幻想師』は、持っている手鏡に『超伝導恐獣』の姿を映し出し……その姿を、自らにトレースした!


ものマネ幻想師
光 レベル1
【魔法使い族・効果】
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、
このカードの攻撃力・守備力は、相手フィールド上に表側表示で存在する
モンスター1体の元々の攻撃力・守備力になる。
攻撃力0 守備力0


ものマネ幻想師×3 攻撃力0→2700
          守備力0→1400


現在の状況
剣山 LP…3500
   手札…6枚(内2枚暗黒プテラ)
   場…超古代恐獣(攻撃力2700・攻撃表示)
     奇跡のジュラシック・エッグ(カウンター×0・守備力2000・守備表示)×3
     血の代償(表側表示)

リナ LP…2300
   手札…2枚
   場…超伝導恐獣(守備力1400・守備表示)
     ものマネ幻想師(攻撃力2700・攻撃表示)
     ものマネ幻想師(守備力1400・守備表示)×2
     エンジェル・リフト(攻撃表示のものマネ幻想師を対象・表側表示)
     魔法族の結界(魔力カウンター×0・表側表示)
     伏せカード3枚


「(……また『究極恐獣』を出されたらやだし、守備表示にしとこっかな。)」
 リナは、『地獄の暴走召喚』で特殊召喚された『ものマネ幻想師』を一応守備表示にしておいた。

「手札から『暗黒プテラ』2枚を捨て、魔法カード『魔法石の採掘』を発ドン!この効果で、墓地から『地獄の暴走召喚』を手札に戻すザウルス!」
 剣山は、自らの大量展開を助けた『地獄の暴走召喚』を墓地から取り出し、手札に戻した。
 さらに『奇跡のジュラシック・エッグ』は墓地に送られた『暗黒プテラ』の命の欠片を自らに蓄えた……。

奇跡のジュラシック・エッグ×3に乗ったカウンター 0個→2個

「カウンターが2個乗った『奇跡のジュラシック・エッグ』を墓地に送り……出るドン!『トモザウルス』!」
 そして再び『奇跡のジュラシック・エッグ』がひび割れ……その中から、小さな肉食恐竜型のモンスターが出現した!
 残り2体の『奇跡のジュラシック・エッグ』は、その卵の殻を自らに吸収し、孵化のためのエネルギーを蓄えた……。


トモザウルス
地 レベル2
【恐竜族】
攻撃力500 守備力400


奇跡のジュラシック・エッグ×2に乗ったカウンター 2個→4個

「『トモザウルス』……攻撃力500の通常モンスターだっけ。」
「ああ……!『トモザウルス』を墓地に送り、装備魔法『戦線復活の代償』を発ドン!この効果により……出るドン!『究極恐獣』!!」
 剣山がそう言うと、墓地の『究極恐獣』が眼を血の様に赤くして蘇り……そのまま怒りに任せ、『トモザウルス』の首元に食らいついた!
 そして『トモザウルス』は、肉が潰れる音と骨が砕ける音と共に倒れ、『究極恐獣』の餌となった……。
 『奇跡のジュラシック・エッグ』は、その飛び散った血肉を貪欲に蓄えていった……。


戦線復活の代償
装備魔法
自分フィールド上の通常モンスター1体を墓地へ送って発動する。
自分または相手の墓地に存在するモンスター1体を選択して自分フィールド上に
特殊召喚し、このカードを装備する。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、装備モンスターを破壊する。


奇跡のジュラシック・エッグ×2に乗ったカウンター 4個→6個

「げっ……また来た……。」
 場を血で染めながら剣山の場に現れた『究極恐獣』の姿を見たリナは、思わずそう言ってしまった……。

「『究極恐獣』が蘇生した事によって、『超古代恐獣』の効果でカードを1枚ドロー!」
 剣山は、そう言いながらカードを1枚ドローした。

「カウンターが6個乗った『奇跡のジュラシック・エッグ』を墓地に送り……出るドン!『暗黒ドリケラトプス』!!」
 そして再び『奇跡のジュラシック・エッグ』がひび割れ……その中から、鳥と恐竜が混じり合ったかのようなモンスターが出現した!
 そしてその殻は、残された最後の『奇跡のジュラシック・エッグ』へと吸収された……。

奇跡のジュラシック・エッグに乗ったカウンター 6個→8個

「カウンターが8個乗った『奇跡のジュラシック・エッグ』を墓地に送り……出るドン!『ダークティラノ』!!」
 剣山がそう言うと、最後の『奇跡のジュラシック・エッグ』がひび割れ……その中から、オートゾックスな肉食恐竜の姿をしたなモンスターが出現した!

「さらに……俺は、この戦術の帰結点となる魔法カードを発動させるザウルス!」
「え!?な、何が来んの!?」
 リナは、剣山の一言に驚いていた……。

「手札から……魔法カード……!」











「『シャイニング・アブソーブ』……発ドン!」
 剣山がそう言うと……突然リナの場の『超伝導恐獣』の全身に、激しい電流が走り始めた……!

「え!?な、何が起こってんの!?」
 リナは、剣山の発動させた魔法カードの効果が分からず、驚きを隠せなかった……。

「これは、相手の場の光属性モンスター1体を選択して発動する魔法カードだドン!この効果により、俺の場の攻撃表示のモンスターの攻撃力は……リナちゃんの場に送り付けた光属性モンスターの、『超伝導恐獣』の攻撃力の数値分アップするザウルス!」
 剣山が、声を大にしてそう説明すると……リナの場に移っていた『超伝導恐獣』の体を覆っていたスパークが、剣山の場のモンスターすべてへと伝染していった!
 そのスパークによって全身の筋肉と脳を刺激された『超古代恐獣』、『究極恐獣』、『暗黒ドリケラトプス』、『ダークティラノ』は、まるで催眠術にかかったの様に咆哮を上げながら凶暴化し、攻撃力を大幅に高めた……!


シャイニング・アブソーブ
通常魔法
相手フィールド上に表側表示で存在する
光属性モンスター1体を選択して発動する。
自分フィールド上に表側攻撃表示で存在する
全てのモンスターの攻撃力はエンドフェイズ時まで、
選択したモンスターの攻撃力分アップする。


超古代恐獣 攻撃力2700→6000
暗黒ドリケラトプス 攻撃力2400→5700
究極恐獣 攻撃力3000→6300
ダークティラノ 攻撃力2600→5900


現在の状況
剣山 LP…4000
   手札…3枚(内1枚地獄の暴走召喚)
   場…超古代恐獣(攻撃力6000・攻撃表示)
     究極恐獣(攻撃力6300・攻撃表示)
     暗黒ドリケラトプス(攻撃力5700・攻撃表示)
     ダークティラノ(攻撃力5900・攻撃表示)
     戦線復活の代償(究極恐獣に装備・表側表示)

リナ LP…2300
   手札…2枚
   場…超伝導恐獣(守備力1400・守備表示)
     ものマネ幻想師(攻撃力2700・攻撃表示)
     ものマネ幻想師(守備力1400・守備表示)×2
     エンジェル・リフト(攻撃表示のものマネ幻想師を対象・表側表示)
     魔法族の結界(魔力カウンター×0・表側表示)
     伏せカード3枚











「おぉーっと!『シャイニング・アブソーブ』の効果によって、剣山君の場のモンスターの合計攻撃力は23900!これはもう無茶苦茶です!色々な意味で終わっています!」
 千里は、剣山の異常な場の様子に、声を張り上げながらそう実況した!











「凄い……剣山先輩……。」
 剣山の場の様子を見たレイは、思わずそう呟いた。

「合計攻撃力23900か。……これはあのちびっ子も終わったかな。」
 レイのすぐそばにいたナオは、しれっとそう言い放った。

「……あんまりそう言う言い方って、良くないんじゃない?」
 ナオの言葉使いに対して、レイはそう言ったが……

「別に。……あのちびっ子は、レイに対して否定的な態度を取ってるんだよ。それぐらい言われても文句は言えないよ。」
 ナオは、リナがレイを敵対視している事に対して不満そうにそう呟いた。











「げっ……6000前後ばっかりって……ちょっと、上がりすぎじゃない……?」
 リナは、異常なまでに攻撃力を高めた剣山の場のモンスターに、思わずそう呟いた……。

「バトルフェイズに入るザウルス!『究極恐獣』で、『ものマネ幻想師』に攻撃!アブソリュート・バイト!」
 『究極恐獣』は、自らの破滅的力を誇示するかの様に『ものマネ幻想師』に向かって突撃したが……

「伏せ罠カード……『反転世界』を発動するかんね!この効果で、攻守は逆転するよ!」
 リナがそう言うと、リナと剣山の間の空間が突然破れ……その中からゆがんだ時空が噴出し、その破れた世界に取り込まれた8体のモンスターは、攻撃力・守備力が入れ替わってしまった!


反転世界
通常罠
フィールド上に表側表示で存在する全ての効果モンスターの攻撃力・守備力を入れ替える。


ものマネ幻想師 攻撃力2700→1400
        守備力1400→2700
超伝導恐獣 攻撃力3300→1400
      守備力1400→3300
超古代恐獣 攻撃力6000→1400
      守備力1400→6000
究極恐獣 攻撃力6300→2200
     守備力2200→6300
暗黒ドリケラトプス 攻撃力5700→1400
          守備力1400→5700
ダークティラノ 攻撃力5900→1800
        守備力1800→5900

「何!『究極恐獣』の攻撃力が……!」
 剣山がそう驚いている間に、『究極恐獣』の攻撃力が大きく下がったが……同じく攻撃力の下がった攻撃表示の『ものマネ幻想師』を、何のためらいも無く食い千切った……。

「きゃっ!」(リナLP 2300→1500)
 ダメージを受けたリナは、小さくそう言ったが……

「でも……あたしが戦闘ダメージを受けたから、伏せ罠カード『ダメージ・ゲート』を発動するかんね!この効果で、墓地から攻撃力800以下のモンスター……『見習い魔術師』を特殊召喚するよ!」
 ……リナが伏せカードを表にすると、リナが受けたダメージが墓地へと集約されていき……その衝撃が、『見習い魔術師』を蘇生させるエネルギーへと変換された!
 そして『ものマネ幻想師』が破壊された事で、リナの周りにカードの幻影が1枚出現した……。


ダメージ・ゲート
通常罠
自分が戦闘ダメージを受けた時に発動する事ができる。
その時に受けたダメージの数値以下の攻撃力を持つ
モンスター1体を自分の墓地からフィールド上に特殊召喚する。


魔法族の結界に乗った魔力カウンター 0個→1個

「特殊召喚された『見習い魔術師』の効果で、『魔法族の結界』に魔力カウンターを1個乗せるよ!」
 さらに『見習い魔術師』が杖を振るうと、もう1枚カードの幻影が1枚出現した。

魔法族の結界に乗った魔力カウンター 1個→2個

「だが、『究極恐獣』は相手の場のモンスターすべてに1回ずつ攻撃するザウルス!『究極恐獣』で『見習い魔術師』に攻撃!アブソリュート・バイト!!」
 『究極恐獣』は、蘇生した『見習い魔術師』の体を、軽く食い千切った……。

魔法族の結界に乗った魔力カウンター 2個→3個

「……戦闘破壊された『見習い魔術師』の効果を発動するよ!デッキから、レベル2以下の魔法使い族……『ピクシーナイト』を裏守備表示で特殊召喚するかんね!」
 リナは、そう言いながらデッキから蝶の様な羽の生えた妖精を特殊召喚した。
 しかし『究極恐獣』は、特殊召喚された『ピクシーナイト』を容赦無く踏み潰してしまった……。

「戦闘破壊された『ピクシーナイト』の効果を発動するよ!墓地から……何をあたしのデッキの1番上に戻す?」
 リナはそう言いながら、墓地の魔法カード……『闇の誘惑』、『魔法族の結界』、『魔法石の採掘』、『儀式の準備』、『高等儀式術』、『貪欲な壺』、『ダーク・バースト』、『ディメンジョン・マジック』、『マジック・プランター』を取り出し、剣山に見せた。

「それなら俺は、『魔法石の採掘』をデッキに戻すドン!」
「『魔法石の採掘』だね。」
 リナはそう言いながら、墓地の『魔法石の採掘』を取り出し、デッキの1番上に置いた。
 ついでに『ピクシーナイト』が破壊された事で、リナの周りに4枚目のカードの幻影が出現した……。


ピクシーナイト
光 レベル2
【魔法使い族・効果】
このカードが戦闘によって墓地に送られた時、
自分の墓地の魔法カード1枚を相手が選択し、
そのカードを自分のデッキの一番上に置く。
攻撃力1300 守備力200


魔法族の結界に乗った魔力カウンター 3個→4個

「『究極恐獣』の攻撃は強制……自分より強い相手にも攻撃しなければならないザウルス……。」
 剣山の残念そうな一言を知ってか知らずか、『究極恐獣』は闘争本能をむき出しにしてリナの場の残りのモンスターに突撃したが……守備力を大きく高めた守備表示の『ものマネ幻想師』と『超伝導恐獣』を突破できず、その攻撃で発生した衝撃を剣山に与える形となってしまった……。

「ぐぁっ!」(剣山LP 4000→3500→3000→1900)
 剣山は、『究極恐獣』が本能のまま暴れまわった事で大きくライフを削られた……。

「……だがこれで、『ダークティラノ』の効果の発動条件を満たしたザウルス!相手の場のモンスターがすべて守備表示だった場合、相手モンスターを無視してダイレクトアタックを行えるようになるドン!」
 剣山がそう言うと、『ダークティラノ』はリナにトドメを刺そうと、場のモンスターをジャンプで飛び越えたが……











「伏せ罠カード……『マジックアーム・シールド』を発動するかんね!この効果で『究極恐獣』のコントロールを得て、『ダークティラノ』の攻撃を受けさせるよ!」
 リナがそう言うと、リナの目の前に分厚い盾が出現し……その中から巨大なマジックアームが出現し、『究極恐獣』を捕縛した!
 捕縛されてリナの前に立つ形となった『究極恐獣』は、突撃してくる『ダークティラノ』を本能のまま迎撃し、そのまま息の根を止めた……。


ダークティラノ
地 レベル7
【恐竜族・効果】
相手のモンスターカードゾーンに守備表示モンスターしか存在しない場合、
このカードは相手プレイヤーに直接攻撃できる。
攻撃力2600 守備力1800

マジックアーム・シールド
通常罠
自分フィールド上にモンスターが存在する場合、
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
相手フィールド上に表側表示で存在する攻撃モンスター以外の
モンスター1体のコントロールをバトルフェイズ終了時まで得て、
そのモンスターに攻撃を受けさせる。


「ぐっ!」(LP 1900→1500)
 『究極恐獣』の迎撃によってライフを削られた剣山は、思わずそう言った。

「でも、バトルフェイズが終わったら『マジックアーム・シールド』の効果が無くなっちゃうのは残念なんだけどね。」
 リナがそう呟くと、『究極恐獣』の暴走によって発生する衝撃にマジックアームが耐えきれなくなり、粉々に砕け散ってしまった……。
 『究極恐獣』は、捕縛された恨みから真後ろのリナに対して牙を向け、そのまま食らいつこうとしたが……バトルフェイズが終わってしまった事で、不本意ながらも剣山の場へと戻って行った……。

「……メインフェイズ2に入るザウルス!手札から、魔法カード『テールスイング』を発ドン!この効果で『超古代恐獣』を指定し……相手の場の、レベル16未満のモンスターを2体まで手札に戻すザウルス!」
 剣山がそう言うと、『ギブ&テイク』でレベルを高めていた『超古代恐獣』は空気を切り裂くかの様なスピードで尾を振るい、リナの場の『超伝導恐獣』と『ものマネ幻想師』を手札に戻した!


テールスイング
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する
レベル5以上の恐竜族モンスター1体を選択して発動する。
相手フィールド上に存在する裏側表示モンスター
または選択した恐竜族モンスターのレベル未満のモンスターを
合計2体まで選択し、持ち主の手札に戻す。











「蘇生・送り付け・レベル上昇……すべてを内包した戦術を立てられるとはな……。」
 国崎は、剣山の戦術を評価するかの様にそう言った。

「だがリナちゃんも、それを防いだのはさすがだったな。」
 それに対して雷人は、リナの戦術も評価していた。

「……リナの事、あまりそうやって呼ばない方がいいッスよ。」
 カムイは、雷人にそう忠告した。











「カードを1枚場に伏せ、ターンエンドン!」
 剣山がエンド宣言をすると、暴走状態に陥っていた『究極恐獣』、『超古代恐獣』、『暗黒ドリケラトプス』は電気催眠から解け、落ち着きを取り戻した……。


現在の状況
剣山 LP…1500
   手札…2枚(内1枚超伝導恐獣)
   場…超古代恐獣(攻撃力1400・攻撃表示)
     究極恐獣(攻撃力2200・攻撃表示)
     暗黒ドリケラトプス(攻撃力1500・攻撃表示)
     血の代償(表側表示)
     伏せカード1枚

リナ LP…1500
   手札…3枚(内1枚ものマネ幻想師)
   場…ものマネ幻想師(守備力2700・守備表示)
     魔法族の結界(魔力カウンター×4・表側表示)


「『反転世界』の効果で、攻撃力と守備力はその数値で固定されるんだよね……。守備力がとんでもない事になっちゃったけど、何とか助かったかな?」
 リナは、真っ平らな胸をなで下ろしながらそう言い……。

「でも……負けないかんね!あたしのターン、ドロー!」
 ……そして、そう言いながら自分のターンを開始した……。



次回予告

カムイ「伏せカードをすべて使っての攻防……凄まじい物だったッスね……。」
センリ「そうだな、カムイ……。これが雷人の戦術を取り入れた剣山の実力か……。」
カムイ「……だが……まだリナにも、十分逆転のチャンスはあるッスね。」
センリ「ああ、『魔法族の結界』の4枚ドローも残されているしな。」



次回、『GX plus!』第五十二話!



『血肉を食らう者!血塊竜の咆哮!!』

カムイ「あのモンスターは……!どこで手に入れたんスか!?」




第五十二話 血肉を食らう者!血塊竜の咆哮!!

「……中々面白い事になってきたな。」
 観客席の出入り口辺りで、黒いローブをまとった男……フェイトは、小さくそう呟いた。

「だが……何故本戦の見学をするんだ?」
 同じくローブをまとった男……は、フェイトに対してそう尋ねた。

「……ある目的のため……とだけ言っておこうか。」
 フェイトは、そうとだけ答えた。

「ですが……ラケシスを部屋に置いたままで大丈夫だったのでしょうか?」
 さらに同じく黒いローブをまとったクロートーは、そう質問を重ねた。

「心配無い。……『真紅眼の血塊竜』のカードは、必ず取り戻すと伝えておいた。」
 フェイトは、そう小さく言い……

「……あまり長引かせるのも、危険だがな。」
 さらにそう言葉を繋げた。








 ――デュエル場にて……

「さあさあ!剣山君の『シャイニング・アブソーブ』で上昇した攻撃力は、リナちゃんの発動した『反転世界』の効果で守備力へと変換されました!ここから、どの様にデュエルが動くのでしょうか!?」
 千里は、マイクを握り締めながら大きな声でそう言った。


現在の状況
剣山 LP…1500
   手札…2枚(内1枚超伝導恐獣)
   場…超古代恐獣(攻撃力1400・攻撃表示)
     究極恐獣(攻撃力2200・攻撃表示)
     暗黒ドリケラトプス(攻撃力1500・攻撃表示)
     血の代償(表側表示)
     伏せカード1枚

リナ LP…1500
   手札…3枚(内1枚ものマネ幻想師)
   場…ものマネ幻想師(守備力2700・守備表示)
     魔法族の結界(魔力カウンター×4・表側表示)


「あたしのターン、ドロー!」
 リナは、そう言いながらカードを1枚ドローし……

「まずは……魔力カウンターが4個乗った『魔法族の結界』の効果を発動するよ!このカードと、魔法使い族の『ものマネ幻想師』を墓地に送って、カードを4枚ドロー!」
 新たに4枚のカードをドローし、手札を8枚に増やした……。


魔法族の結界
永続魔法
フィールド上に存在する魔法使い族モンスターが破壊される度に、
このカードに魔力カウンターを1つ置く(最大4つまで)。
自分フィールド上に表側表示で存在する魔法使い族モンスター1体と
このカードを墓地へ送る事で、このカードに乗っている
魔力カウンターの数だけ自分のデッキからカードをドローする。


「それから……手札から、魔法カード『魔法石の採掘』を発動するかんね!手札を2枚捨てて、墓地から『魔法族の結界』を手札に戻すよ!」
 そして手札の『サターナ』と『ものマネ幻想師』をコストに、先程墓地に送られた『魔法族の結界』を取り出し、手札に戻した。


魔法石の採掘
通常魔法
手札を2枚捨てて発動する。
自分の墓地に存在する魔法カードを1枚手札に加える。











「『魔法石の採掘』……前のターンに『ピクシーナイト』の効果でデッキに戻されたカードだな。」
 センリは、軽くそう言った。

「そうッスね、センリ。……手札を失う事になるのは変わりないんスけど、必要なカードを回収できるのは重要ッスからね。」
 カムイは、センリの問いに軽くそう答えた。











「手札に戻した『魔法族の結界』を発動してから……手札から、『見習い魔術師』を攻撃表示で召喚するよ!」
 リナがそう言うと、周りにまた不思議な魔法陣が発生し、その外に金髪の小柄な魔術師の男が現れた。

「召喚された『見習い魔術師』の効果で……『魔法族の結界』に魔力カウンターを1個乗せるよ!」
 リナがそう言うと、『見習い魔術師』は持っていた杖を振るい……リナの周りに、カードの幻影を1枚出現させた!


見習い魔術師
闇 レベル2
【魔法使い族・効果】
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、
フィールド上に表側表示で存在する魔力カウンターを
置く事ができるカード1枚に魔力カウンターを1つ置く。
このカードが戦闘によって破壊された場合、
自分のデッキからレベル2以下の魔法使い族モンスター1体を
自分フィールド上にセットする事ができる。
攻撃力400 守備力800


「いっくよ〜!『見習い魔術師』で、『暗黒ドリケラトプス』に攻撃!」
「こ、攻撃するザウルス!?」
 剣山は、攻撃力で劣る『見習い魔術師』に攻撃させた事に、驚きを隠せないでいた……。

「手札から、速攻魔法『死角からの一撃』を発動するかんね!この効果で……『見習い魔術師』の攻撃力を、『究極恐獣』の守備力分アップさせるよ!」
 リナがそう言うと、『見習い魔術師』は杖の先で『究極恐獣』のこめかみ――死角から突き刺した!
 そして、突き刺した部分からエネルギーを吸収し……自らの攻撃力を大幅に高めた!


死角からの一撃
速攻魔法
相手フィールド上に表側守備表示で存在するモンスター1体と、
自分フィールド上に表側攻撃表示で存在する
モンスター1体を選択して発動する。
選択した自分のモンスターの攻撃力はエンドフェイズ時まで、
選択した相手モンスターの守備力の数値分アップする。


究極恐獣 守備力6300
見習い魔術師 攻撃力400→6700

「ぐっ……『反転世界』で上がった守備力を利用されたドン……!」
「そっ。……これが通ったら、あたしの勝ちだよ!」
 『見習い魔術師』は、杖の中に集約させた力をそのまま『暗黒ドリケラトプス』に向かって解き放とうとしたが……











「……だが俺も、対抗手段を用意しているザウルス!伏せ罠カード『反転世界』を発ドン!この効果で……場のモンスターすべての攻撃力と守備力を入れ替えるザウルス!」
 剣山が伏せていたカードを発動させると……再び剣山とリナの間に裂け目が現れ……その中から湧き出した不思議な空間によって、歪んだ時空が元に戻った!


反転世界
通常罠
フィールド上に表側表示で存在する全ての効果モンスターの攻撃力・守備力を入れ替える。


究極恐獣 攻撃力2200→6300
     守備力6300→2200
超古代恐獣 攻撃力1400→6000
      守備力6000→1400
暗黒ドリケラトプス 攻撃力1500→5700
          守備力5700→1500
見習い魔術師 攻撃力6700→800
       守備力800→6700











「こ、これは!何かが……歪んでいます!デュエル場の……何かが!」
 解説者の千里は、攻撃力と守備力の関係が逆転した場の状況に当惑した様に声色を変えながらそうアナウンスした。











「げっ……。せっかく下げた攻撃力を、すぐに戻されちゃったよ……。」
 リナは、圧倒的攻撃力を取り戻した剣山の場に、思わず気圧されそうになったが……

「でも……まだ終わんないよ!手札から、速攻魔法『収縮』を発動するかんね!この効果で……『暗黒ドリケラトプス』の攻撃力を、元々の攻撃力の半分の数値にするよ!」
 ……負けずに1枚の速攻魔法を発動させ、『暗黒ドリケラトプス』の攻撃力を大幅に落とした……。
 しかし攻撃力の関係を逆転させるには至らず、『見習い魔術師』は一方的に『暗黒ドリケラトプス』に踏み潰された……。


収縮
速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターの元々の攻撃力はエンドフェイズ時まで半分になる。


暗黒ドリケラトプス 攻撃力5700→1200

「きゃっ!」(リナLP 1500→1100)
 『見習い魔術師』を戦闘破壊されたリナは、思わずそう言ったが……

「でも……戦闘破壊された『見習い魔術師』の効果が発動するかんね!デッキから……『水晶の占い師』を、裏守備表示で特殊召喚!」
 リナはそう言いながら、デッキから1枚のカードを取り出し、自分の場に特殊召喚した。
 そして魔法使い族が破壊された事で、リナの周りの結界に1枚のカードの幻影が出現した……。


魔法族の結界に乗った魔力カウンター 1個→2個

「メインフェイズ2に入るね。カードを2枚場に伏せて、ターンエンド!」
 リナはそう言いながら、自分の手札をすべてセットしてターンを終えた。
 そして『収縮』によって縮んでいた『暗黒ドリケラトプス』の体は元に戻り、本来の力を取り戻した……。


暗黒ドリケラトプス 攻撃力1200→2400


現在の状況
リナ LP…1100
   手札…0枚
   場…裏守備モンスター1体(水晶の占い師)
     魔法族の結界(魔力カウンター×2・表側表示)
     伏せカード2枚

剣山 LP…1500
   手札…2枚(超伝導恐獣、地獄の暴走召喚)
   場…究極恐獣(攻撃力6300・攻撃表示)
     超古代恐獣(攻撃力6000・攻撃表示)
     暗黒ドリケラトプス(攻撃力2400・攻撃表示)
     血の代償(表側表示)


「俺のターン、ドロー!」
 剣山は、3枚の手札を軽く確認し……

「まずは……レベル8の『究極恐獣』をコストに、魔法カード『アドバンスドロー』を発ドン!デッキからカードを2枚ドロー!」
 剣山がそう言うと、暴虐の限りを尽くしていた『究極恐獣』が剣山の場から消え去り、2枚の手札へと変換された。


アドバンスドロー
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する
レベル8以上のモンスター1体をリリースして発動する。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。


「『アドバンスドロー』……『究極恐獣』はもういらないって事なんだね。」
「ああ……!『暗黒ドリケラトプス』の貫通効果で『水晶の占い師』に攻撃すれば、リナちゃんのライフは0になるドン!」
「そっか。……一言余計だけどね。」
 剣山の言葉に対して、リナはムッとした表情でそう答えた。

「『暗黒ドリケラトプス』で、裏守備モンスターに攻撃!!」
 『暗黒ドリケラトプス』は、リナの場で隠れていた小柄なモンスター……『水晶の占い師』を踏み潰した!
 そして、その攻撃によって発生した衝撃波が『水晶の占い師』を貫通し、リナに向かって飛んでいったが……

「伏せ罠カード……『ガード・ブロック』を発動するかんね!この効果で……その戦闘ダメージを0にして、カードを1枚ドローするよ!」
 ……その衝撃は、リナの目の前に発生した不思議なバリアによって防がれ、リナに1枚の手札を与えた!
 そして『水晶の占い師』が破壊された事で、リナの周りにカードの幻影がもう1枚出現した。


ガード・ブロック
通常罠
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。


魔法族の結界に乗った魔力カウンター 2個→3個

「攻撃された『水晶の占い師』のリバース効果が発動するかんね!デッキの上からカードを2枚見せて、その中から1枚を手札に加えるよ!」
 リナは、デッキの上からカードを2枚めくり……その中から、『魔力掌握』を手札に加えた。


水晶の占い師
水 レベル1
【魔法使い族・効果】
リバース:自分のデッキの上から2枚をめくり、
その内の1枚を選択して手札に加える。
残りはデッキの一番下に戻す。
攻撃力100 守備力100


「だが、『超古代恐獣』の攻撃が通れば終わりザウルス!『超古代恐獣』で、リナちゃんにダイレクトアタック!!」
 『超古代恐獣』は、圧倒的な攻撃力で口から火炎放射をリナに浴びせようとしたが……

「伏せ罠カード……『ドレインシールド』を発動するかんね!この効果で、『超古代恐獣』の攻撃力分のライフ……6000ポイントを回復するよ!」
 その攻撃は、リナの正面に発生したバリアによって防がれ、リナのライフへと変換された……。


ドレインシールド
通常罠
相手モンスター1体の攻撃を無効にし、
そのモンスターの攻撃力分の数値だけ自分のライフポイントを回復する


リナLP 1100→7100

「ぐっ……!『究極恐獣』を『アドバンスドロー』のコストにしなくても、結局俺の勝ちにはならなかったザウルス……!?」
「うん。……だって、『暗黒ドリケラトプス』よりも先に『究極恐獣』が『水晶の占い師』に攻撃しちゃうから、貫通ダメージは与えられないもんね〜。」
 残念そうにそう言う剣山に対してリナは、少し舌を出しながら軽くそう言った。

「カードを2枚場に伏せ……ターンエンドン!」
 剣山は、次のターンに備えて2枚のカードを伏せ、ターンを終えた。


現在の状況
剣山 LP…1500
   手札…2枚(内1枚超伝導恐獣)
   場…超古代恐獣(攻撃力6000・攻撃表示)
     暗黒ドリケラトプス(攻撃力2400・攻撃表示)
     血の代償(表側表示)
     伏せカード2枚

リナ LP…7100
   手札…2枚(内1枚魔力掌握)
   場…魔法族の結界(魔力カウンター×3・表側表示)


「……あたしのターン……ドロー!」
 ドローしたカードを確認したリナは、表情を軽く緩ませた……。

「手札から、魔法カード『魔力掌握』を発動するかんね!『魔法族の結界』に魔力カウンターを1個乗せて、デッキから『魔力掌握』を手札に加えるよ!」
 リナは、魔法カードの効果によって4枚目のカードの幻影を出現させ、デッキから2枚目の『魔力掌握』を手札に加えた。


魔力掌握
通常魔法
フィールド上に表側表示で存在する魔力カウンターを
置く事ができるカード1枚に魔力カウンターを1つ置く。
その後、自分のデッキから「魔力掌握」1枚を手札に加える事ができる。
「魔力掌握」は1ターンに1枚しか発動できない。


魔法族の結界に乗った魔力カウンター 3個→4個

「次は手札から、魔法カード『貪欲な壺』を発動するよ!この効果で、墓地から『ものマネ幻想師』3体、『サターナ』、『水晶の占い師』をデッキに戻して、カードを2枚ドローするかんね!」
 リナは、墓地から5体のモンスターをデッキへと戻し、カードを2枚ドロー戻した。


貪欲な壺
通常魔法
自分の墓地に存在するモンスター5体を選択し、
デッキに加えてシャッフルする。
その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。


「それから……手札から、魔法カード『デスペラード・マネージャー』を発動するかんね!カードを2枚ドローしてから、手札を3枚あたしのデッキの上に好きな順番で置くよ!」
 リナはそう言いながらカードを2枚ドローし、5枚の手札の内3枚のカードをデッキの上に戻した。


デスペラード・マネージャー
通常魔法
自分の手札が2枚以上の場合に発動する事ができる。
自分のデッキからカードを2枚ドローし、
自分の手札を3枚選択して好きな順番でデッキの上に戻す。


「『デスペラード・マネージャー』……手札を2枚失って、何をする気だドン!?」
 単純に考えると、明らかに損失となるリナの行動に、剣山は疑問を感じていたが……

「すぐ分かるよ。ライフを800ポイント払って……魔法カード『魔の試着部屋』を発動するかんね!デッキの上からカードを4枚めくって……その中から、レベル3以下の通常モンスターを全部特殊召喚するよ!」
 リナはさらに、手札に握っていた1枚の魔法カードを発動させた!

リナLP 7100→6300

「何……!それがねらいザウルス!?」
「そっ。まず1枚目!……レベル2の通常モンスター『サターナ』だから、特殊召喚!」
 リナがそう言いながらデッキの1番上のカードをめくると……場に、水色のフードを被った小さな魔法使いが現れた。

「2枚目!……レベル2の通常モンスター『ブークー』だよ!」
 さらにリナの場に、本の様な形のモンスターが現れた。

「3枚目!……レベル1の通常モンスター『千眼の邪教神』を特殊召喚!」
 さらにさらにリナの場に、大量の目を持った全身緑色のモンスターが現れた。

「だがここまでは、リナちゃん自身が『デスペラード・マネージャー』で作り出した展開ザウルス!次のカードが特殊召喚可能とは限らないドン!」
「そうだね。……でも、3体もモンスターが特殊召喚されたから、別に4枚目が外れたっていいもん。」
 リナは、軽くそう言い……

「……4枚目!……あっ、ラッキー。レベル2の通常モンスター『魅惑の怪盗』が来ちゃった。そのまま特殊召喚するよ。」
 ……デッキの一番上のカードを確認したリナは、嬉しそうにそれを特殊召喚した。


魔の試着部屋
通常魔法
800ライフポイントを払う。自分のデッキの上からカードを4枚めくり、
その中のレベル3以下の通常モンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。
それ以外のカードはデッキに戻してシャッフルする。











「おぉっとこのコンボは!デッキトップに好きなカードを送り特殊召喚する戦法!これは非常に効果的な戦法です!!」
 千里はマイクを強く握りしめ、自分が入っている籠を揺らしながら大きくそう言った。











「で、『魔法族の結界』の効果を発動するかんね〜。『千眼の邪教神』とこのカードを墓地に送って、カードを4枚ドローするよ〜。」
 リナは、気を良くしながらそう言い、カードを4枚ドローした。











 ……そしてその表情は、ドローしたカードを確認した瞬間に大きく変化した……。

「(……あっ……!このカード……)」
 予想外のカードをドローしたリナは、ハッとした表情になった。

「(このカードって……確か予選中にあの子が使ってたカードだったっけ……。その子って確か、このカードを使ってスターチップを色んな人から取ってたみたいなんだよね……。)」
 そして、ドローしたカードの使い手の事を考えて、少し口を結んだ……。

「(どうしよっかな……?使ったら、みんな驚いちゃうかも……。でも……)」
 リナは、ドローしたカードを使おうか使うまいか迷っていたが……

「(でも……使わないと、本当に負けちゃうよ……。)」
 自分の場の状況を考え、出さざるを得ない状況に陥っていると言う感覚に襲われた……。











「それから……『サターナ』と『ブークー』をリリースして……」
 リナがそう小さく呟くと……リナの足下に不気味な真紅の血溜まりが発生して、それがリナの場を染め上げ……



「……『真紅眼の血塊竜』……召喚!!」
 ……その中から、血が固まった様な色の胴体を持ち、渇きでボロボロになった真紅の翼を背中から生やし、両手両足を真紅色の液体で染め上げた爪を持つ1体のドラゴンが出現した……!
 そしてそのドラゴンは、血に飢えた真紅色の眼でリナの場の『サターナ』と『ホーリー・パワー』を睨み付け……そのまま両手でバキバキと骨が砕ける音を立てながら握り潰した!









 

「な、何ですか!?あの不気味なモンスターは!!今までのリナちゃんのデッキからは考えられない怪物……あれがリナちゃんのデッキの切り札でしょうか!!??」
 千里は、声が涸れるぐらいの大声でそう叫んだ。











 ――観客席にて……

「た、龍也!あのカードは……!」
「ええ……。何か不気味な『カードの精霊』の気を感じます……!」
 ざわつく観客席でデュエルを見ていた剣一と龍也は、リナが召喚したモンスターに驚き……

「しかし……何でしょうか?あのモンスターは……」
「何か……苦しんでいるみたいだな……。」
 ……そして、そのモンスターの様子の奇妙さを感じ取っていた……。











「まさか……あいつが『真紅眼の血塊竜』を盗んでいたのか!?」
 『真紅眼の血塊竜』の姿を見たアトロポスは、思わずそう言った。

「しかしラケシスは……盗まれた事に気が付かなかったのですか……。」
 クロートーは、小さくそう呟いた……。

「『真紅眼の血塊竜』……あの苦しみの咆哮は……」
 フェイトは、リナの場に現れた『真紅眼の血塊竜』の姿に眉を顰め……











「(……ラケシスが、この状況を感付かなければいいが……。)」
 ……そして、心の中でそう呟いた。











 ――デュエル場にて……

「な……何だドン!?その不気味なモンスターは……!」
 デュエル場で『真紅眼の血塊竜』と対峙していた剣山は、『サターナ』と『ブークー』を噛み砕きながら現れたその姿に、表情を引きつらせていた……。

「ううっ……相変わらず不気味なモンスターだよね……。」
 召喚したリナ本人も、小さくそう呟いていたが……

「(でも……このモンスターって、こんなにボロボロの羽してたっけ……。確かラケシスが持ってた時は、もっと羽も綺麗な真っ赤っかだったし、もっと元気そうだった様な気が……。)」
 リナは、前に見た『真紅眼の血塊竜』の姿と少し違っている事に、違和感を感じていた……。

「……バトルフェイズに入るよ!『真紅眼の血塊竜』のレベル×100ポイントのライフを払って……『真紅眼の血塊竜』で、『暗黒ドリケラトプス』に攻撃!ブラッディ・ファング!!」
 リナが右手で『暗黒ドリケラトプス』を指差しながら攻撃宣言を行うと……ソリッドビジョンの『真紅眼の血塊竜』は何かを求める様にリナの足下に近付いていき……リナの右手首に突然噛みついた!

「げっ……やっぱり……。」(リナLP 6300→5600)
 ソリッドビジョンの『真紅眼の血塊竜』に噛み付かれたリナは、実際に怪我をした訳では無いがやはりいい気分では無かった……。

「だが……攻撃力は互角ザウルス!迎撃するドン!『暗黒ドリケラトプス』!!」
 剣山の言葉に反応した『暗黒ドリケラトプス』は、『真紅眼の血塊竜』に噛み付かれながらも太い前足を振り下ろし……そのまま右腕を踏み潰した!
 その踏み付けによって『真紅眼の血塊竜』は右腕を砕け散らせたが……『真紅眼の血塊竜』の牙は『暗黒ドリケラトプス』の首元をとらえ、そのまま息の根を止めた……。

「なっ……何で破壊されないザウルス!?」
 剣山は、腕を砕け散らせても破壊状態にならない『真紅眼の血塊竜』の姿に、驚きを隠せなかった……。

「『真紅眼の血塊竜』には、自身のレベル分のライフを払わせて破壊を無効にする効果がある……んだったっけ。」
 『暗黒ドリケラトプス』との相討ちで右腕を失った『真紅眼の血塊竜』は、苦しそうにリナの左足首に噛み付いた……!
 しかし当然、ソリッドビジョンの体ではリナの足首に傷を付ける事はできず、求めていた血を得る事はできなかった……。
 ……が、自らの効果によって定められたルールにより墓地に逝く事ができず、そのまま無様にも地面に突っ伏してしまった……。


真紅眼の血塊竜(レッドアイズ・ブラッディドラゴン
闇 レベル7
【ドラゴン族・効果】
このカードは、このカードのレベル×100ポイントのライフを払わなければ攻撃できない。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、このカードが戦闘によって
破壊したモンスターのレベル・攻撃力・守備力分だけ、
このカードのレベル・攻撃力・守備力がアップする。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードが破壊される時、
このカードのレベル×100のライフポイントを支払い、破壊を無効にする。
攻撃力2400 守備力2000


リナLP 5600→4900

「それから……『真紅眼の血塊竜』は、戦闘破壊した相手のレベルと攻撃力と守備力を吸収する効果を持ってるんだよ!」
 リナに噛み付くのを止めた『真紅眼の血塊竜』は、はう様にして噛み砕かれ地面に突っ伏した『暗黒ドリケラトプス』に近付き……貪る様にその血をすすり、肉を喰らった……。
 ……『暗黒ドリケラトプス』を骨の髄まで貪り尽くした『真紅眼の血塊竜』は、その血肉で自らの体力を無理矢理回復させ、砕かれた右手を再生させた!


真紅眼の血塊竜 レベル7→13
        攻撃力2400→4800
        守備力2000→3500


「攻撃力……4800……!」
 自分の場のモンスターを食らい、攻撃力を大幅に高めた『真紅眼の血塊竜』の姿を目の当たりにし、思わずそう呟いた……。

「とりあえず……カードを2枚場に伏せて、ターンエンド!」
 何とか戦況を立て直したリナは、安心した表情でそう言いながらターンを終えた。


現在の状況
リナ LP…4900
   手札…2枚(内1枚魔力掌握)
   場…真紅眼の血塊竜(攻撃力4800・攻撃表示)
     魅惑の怪盗(守備力700・守備表示)
     伏せカード2枚

剣山 LP…1500
   手札…2枚(内1枚超伝導恐獣)
   場…超古代恐獣(攻撃力6000・攻撃表示)
     伏せカード2枚
     血の代償(表側表示)


「……俺のターン、ドロー!」
 剣山は、リナの場の『真紅眼の血塊竜』の姿に気圧されながらもカードを1枚ドローした……。

「手札から……魔法カード『貪欲な壺』を発ドン!俺の墓地から『暗黒プテラ』2体、『奇跡のジュラシック・エッグ』2体……さらに『超伝導合体 ボルテック・レックス』をデッキに戻し、カードを2枚ドロー!」
 剣山は、墓地で眠っていた5体の恐竜族をデッキに戻し、新たにカードを2枚ドローした。

「『ボルテック・レックス』……もう1回特殊召喚するんだね。」
「いや……だが、できる可能性は残しておきたいザウルス!まずは永続罠『リミット・リバース』を発ドン!俺の墓地から、攻撃力1000以下のモンスター……『奇跡のジュラシック・エッグ』を特殊召喚!」
 リナの言葉に反応した剣山は、まずは伏せておいた罠カードを発動させ、墓地から恐竜の卵の化石を蘇らせた。


リミット・リバース
永続罠
自分の墓地から攻撃力1000以下のモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。
そのモンスターが守備表示になった時、そのモンスターとこのカードを破壊する。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。


「墓地から恐竜さんが蘇った事で『超古代恐獣』の効果が発動し……それにチェーンし、速攻魔法『地獄の暴走召喚』を発動させるザウルス!」
 剣山が、前の前のターンに『魔法石の採掘』の効果で手札に戻していた『地獄の暴走召喚』を、ここぞと言わんばかりのタイミングで発動させた!

「『地獄の暴走召喚』……か。でもあたしのデッキには、暴走召喚できるモンスターなんて残って無いしな〜……。」
 自分の場のモンスターと同名のモンスターが自分のデッキに残っていない事を知っているリナは、残念そうにそう呟いた……。
 その間に剣山は、デッキから2体の『奇跡のジュラシック・エッグ』を攻撃表示で特殊召喚し、『超古代恐獣』の効果でカードを1枚ドローした。


地獄の暴走召喚
速攻魔法
相手フィールド上に表側表示でモンスターが存在し、自分フィールド上に
攻撃力1500以下のモンスター1体が特殊召喚に成功した時に発動する事ができる。
その特殊召喚したモンスターと同名モンスターを自分の手札・デッキ・墓地から
全て攻撃表示で特殊召喚する。
相手は相手自身のフィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、
そのモンスターと同名モンスターを相手自身の手札・デッキ・墓地から全て特殊召喚する。

超古代恐獣
地 レベル8
【恐竜族・効果】
このカードは恐竜族モンスター1体をリリースして
表側攻撃表示でアドバンス召喚する事ができる。
自分の墓地に存在する恐竜族モンスターが特殊召喚に成功した時、
自分のデッキからカードを1枚ドローする事ができる。
攻撃力2700 守備力1400


現在の状況
剣山 LP…1500
   手札…4枚(内1枚超伝導恐獣)
   場…超古代恐獣(攻撃力6000・攻撃表示)
     奇跡のジュラシック・エッグ(攻撃力0・攻撃表示)×3
     リミット・リバース(奇跡のジュラシック・エッグ1体対象・表側表示)
     血の代償(表側表示)
     伏せカード1枚

リナ LP…5100
   手札…1枚
   場…真紅眼の血塊竜(攻撃力4800・攻撃表示)
     魅惑の怪盗(守備力700・守備表示)
     伏せカード2枚


「さらに……手札の『キラーザウルス』を捨て、効果発ドン!デッキから『ジュラシックワールド』を手札に加えるザウルス!」
 剣山が手札から1枚のカードを墓地に送ると、デッキから1枚のカードを探し出し手札に加えた。
 さらに3体の『奇跡のジュラシック・エッグ』は、墓地に送られた『キラーザウルス』から命の欠片を受け取り、力を蓄えた……。


キラーザウルス
地 レベル4
【恐竜族・効果】
このカードを手札から墓地に捨てる。
デッキから「ジュラシックワールド」1枚を手札に加える。
攻撃力1800 守備力1100

奇跡のジュラシック・エッグ
地 レベル4
【恐竜族・効果】
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
このカードをゲームから除外する事はできない。
また、恐竜族モンスターが自分の墓地に送られる度に、
このカードの上にカウンターを2つ置く。
このカードを生け贄に捧げる事で、
この時このカードに乗っていたカウンターの数以下のレベルの
恐竜族モンスター1体をデッキから選択して特殊召喚する。
攻撃力0 守備力2000


奇跡のジュラシック・エッグ×3に乗ったカウンター 0個→2個











「『キラーザウルス』……。あれはサーチが目的じゃ無いはずッスね……。」
 カムイは、腕を組みながら剣山の戦術を分析した。

「そうだな。能動的に墓地に退場可能な『キラーザウルス』を墓地に送り込む事で、『奇跡のジュラシック・エッグ』にカウンターを乗せる……。その後の展開は、御察しの通りだ。」
 国崎は、カムイに対して軽くそう答えた。











「『奇跡のジュラシック・エッグ』の効果発ドン!デッキから、レベル2以下の恐竜さんを特殊召喚するザウルス!俺が選ぶモンスターは……『ベヒケラサウルス』だドン!」
 剣山がそう言うと、化石化した卵がひび割れ……その中から、小さな小型の恐竜が姿を現した!


奇跡のジュラシック・エッグ×2に乗ったカウンター 2個→4個

「さらに……2体目の『奇跡のジュラシック・エッグ』の効果発ドン!デッキからレベル4以下の恐竜さんを特殊召喚するザウルス!……出るドン!『セイバーザウルス』!!」
 そして2個目の化石化した卵がひび割れ……その中から、全身朱色の1体の恐竜が姿を現した!

奇跡のジュラシック・エッグに乗ったカウンター 4個→6個

「3体目の『奇跡のジュラシック・エッグ』を孵化させるザウルス!俺が特殊召喚する恐竜さんは……レベル6の『フロストザウルス』だドン!!」
 さらに剣山の場の最後の化石化した卵が孵化し……その中から、全身が凍りついた巨大な体格を持つ恐竜が出現した!


現在の状況
剣山 LP…1500
   手札…4枚(内2枚超伝導恐獣、ジュラシックワールド)
   場…超古代恐獣(攻撃力6000・攻撃表示)
     フロストザウルス(攻撃力2600・攻撃表示)
     セイバーザウルス(攻撃力1900・攻撃表示)
     ベビケラサウルス(攻撃力500・攻撃表示)
     リミット・リバース(表側表示)
     血の代償(表側表示)

リナ LP…5100
   手札…1枚
   場…真紅眼の血塊竜(攻撃力4800・攻撃表示)
     魅惑の怪盗(守備力700・守備表示)
     伏せカード2枚


「これでデッキ圧縮ができたドン!……ここで俺は、もう1枚の切り札を使わせてもらうザウルス!」
「え!?な、何が来んの!?」
 剣山の突然の一言に、リナは驚きを隠せないでいた……。

「『超古代恐獣』を選択し……魔法カード『Tears Of Alice(ティアーズ オブ アリス』を発ドン!!」
 剣山がそう言いながら1枚のカードを発動させると……『超古代恐獣』の前に、黒いドレスを来た小さな少女の幻影が出現した!











「剣一。あの姿は……」
「ああ……。剣山君の傍らにいた『カードの精霊』……アリスちゃんの姿と同じだな。」
 龍也と剣一は、剣山が使ったカードをそう分析し……

「……つまりアリスさんは、あの『Tears Of Alice』と言うカードに宿り、剣山君を見守っている……と言う事ですね。」
「そうだな、龍也。……だが剣山君は、『カードの精霊』の存在に気付いてないのが悲しい所だな……。」
 ……そして、ため息をつきながらそう続けた……。











「『Tears Of Alice』……何それ。」
「このカードは……場のモンスター1体を選択し、そのモンスターと同じレベル・属性・種族のモンスターを墓地から蘇らせるカードだドン!」
 リナの問い掛けに対し、剣山はそう答えた。

「この効果によって……蘇れ!『究極恐獣』!!」
 剣山がそう言うと、精霊のアリスの目から真珠の様な涙が零れ落ち……その涙を受けた『究極恐獣』は、耳を突く様な激しい咆哮を挙げながら剣山の場へと蘇った!
 そして『究極恐獣』は、自らが墓地にいる間に出現した、リナの場のもう1体の怪物……『真紅眼の血塊竜』を、うめき声を挙げながら睨み付けた!


Tears Of Alice(ティアーズ オブ アリス
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターと同じレベル・属性・種族のモンスター1体を
自分の墓地から攻撃表示で特殊召喚する。
自分のメインフェイズ時、手札2体を墓地に送る事で、
このカードを自分の墓地から手札に加える。
「Tears Of Alice」はは1ターンに1枚しか発動できない。


「げっ……また来た……。女の子の涙でそんな怪物みたいなモンスターが蘇るなんて、全然似合わないよ……。」
 リナは、剣山の場に再び現れた『究極恐獣』に対して、小さくそう呟いた……。











「そうだよな。リナちゃんも俺と同じ意見か。」
 観客席で立ち見していた雷人は、腕を組みながらそう呟いた。

「なるほど……雷人もそう思ってたんスね。」
 カムイは、雷人にそう呟き返した。

「で、カムイはどう思うんだ?」
 センリは、カムイに対してそう問い掛けた。

「いや……似合う似合わない関係無しに、主人を勝利に導くために蘇るならむしろ大歓迎ッスね……。」
 カムイは、自分の下唇に右手を添えながら一言そう言った。









「でも……『究極恐獣』は攻撃表示で特殊召喚されるんだね。それじゃ『真紅眼の血塊竜』にされちゃうよ。」
 リナは、剣山に軽くそう言った。

「いや……まだ対抗策はあるザウルス!手札を1枚捨て、伏せ罠カード『レインボー・ライフ』を発ドン!これで俺はこのターン、受けるダメージは回復に変換されるザウルス!」
「でもそれじゃ、『究極恐獣』の戦闘破壊はどうしようも無いじゃん。」
 リナは、さらにそう言ったが……

「手札から……フィールド魔法『ジュラシックワールド』を発ドン!この効果で……恐竜さんの攻撃力と守備力は300ポイントアップするザウルス!」
 剣山が1枚のフィールド魔法を発動させると……場が突然古代の密林へと姿を変え、剣山の場の恐竜族は自らの攻撃力を高めた!


ジュラシックワールド
フィールド魔法
フィールド上に表側表示で存在する恐竜族モンスターは
攻撃力と守備力が300ポイントアップする。


超古代恐獣 攻撃力6000→6300
      守備力1400→1700
究極恐獣 攻撃力3000→3300
     守備力2200→2500
フロストザウルス 攻撃力2600→2900
         守備力1700→2000
セイバーザウルス 攻撃力1900→2200
         守備力500→800
ベビケラサウルス 攻撃力500→800
         守備力500→800

「まだだドン!俺は……手札から装備魔法『ヴィシャス・クロー』を『究極恐獣』に装備させるザウルス!」
 剣山がそう言いながら1枚のカードを『究極恐獣』に装備させると……『究極恐獣』の右手の上に、突然コードが剥き出しの鉄甲が装着された!
 そして、その鉄甲から漆黒のオーラを放ち、『究極恐獣』以外のすべてのモンスターを威嚇した!

究極恐獣 攻撃力3300→3600


現在の状況
剣山 LP…1500
   手札…2枚(内1枚超古代恐獣)
   場…超古代恐獣(攻撃力6300・攻撃表示)
     究極恐獣(攻撃力3600・攻撃表示)
     フロストザウルス(攻撃力2900・攻撃表示)
     セイバーザウルス(攻撃力2200・攻撃表示)
     ベビケラサウルス(攻撃力800・攻撃表示)
     ジュラシックワールド(表側表示)
     ヴィシャス・クロー(究極恐獣に装備・表側表示)
     リミット・リバース(表側表示)
     血の代償(表側表示)

リナ LP…5100
   手札…1枚
   場…真紅眼の血塊竜(攻撃力4800・攻撃表示)
     魅惑の怪盗(守備力700・守備表示)
     伏せカード2枚


「バトルフェイズに……」
「ちょ、ちょっと待って!!バトルフェイズに入る前に……手札の『エフェクト・ヴェーラー』を捨てて、効果を発動するかんね!この効果で……『究極恐獣』の効果を封印するよ!」
 剣山がバトルフェイズに入る前にリナが手札のカードを捨てると……突然『究極恐獣』の背後に『エフェクト・ヴェーラー』が憑依し、闘争本能を押さえ付けた!


エフェクト・ヴェーラー
光 レベル1
【魔法使い族・チューナー・効果】
このカードを手札から墓地へ送り、
相手フィールド上に表側表示で存在する
効果モンスター1体を選択して発動する。
選択した相手モンスターの効果をエンドフェイズ時まで無効にする。
この効果は相手のメインフェイズ時のみ発動する事ができる。
攻撃力0 守備力0


「(『超古代恐獣』に使った方が良かったかも知んないんだけど……破壊耐性もあるし、これでどうにかなるかな?とりあえず『魅惑の怪盗』に攻撃させれば……)」
 リナは、心の中で小さくそう呟いた……。

「だが俺は、このままバトルフェイズに入るザウルス!『究極恐獣』で、『真紅眼の血塊竜』に攻撃!ヴィシャス・アブソリュート・バイト!!」
「え!?な、何で!?」
 悪魔のかぎ爪を装備した『究極恐獣』、攻撃力で劣るにもかかわらず激しい地響きを起こしながら『真紅眼の血塊竜』に向かって突撃した……。
 剣山の、この無謀とも思える行動に、リナは目を丸くしていた……。

「でも……攻撃力はこっちが上だよ!『真紅眼の血塊竜』で迎撃するかんね!」
 リナの言葉通り、『真紅眼の血塊竜』は自分の牙で『究極恐獣』の右腕を噛み砕いた!
 しかしその衝撃は剣山のライフを逆に回復させるだけの結果となり……しかも、『究極恐獣』は壊れた鉄甲を引きずりながらも場に留まっていた!


レインボー・ライフ
通常罠
手札を1枚捨てる。
このターンのエンドフェイズ時まで、自分が受けるダメージは無効になり、
その数値分ライフポイントを回復する。


剣山LP 1500→2700

「な、何で破壊されないの!?」
 リナは、確かに負けたはずの『究極恐獣』が破壊されない事に、驚きを隠せないでいた……。

「『ヴィシャス・クロー』を装備したモンスターが戦闘破壊される場合、装備された『ヴィシャス・クロー』を手札に戻す事で、戦闘を行ったモンスター以外のモンスターを代わりに破壊する効果を持っているザウルス!俺が破壊するモンスターは……『ベビケラサウルス』だドン!」
「え゛……?」
 リナがそう目を丸くして驚いている間に、『ヴィシャス・クロー』に宿った悪魔は『究極恐獣』の受けた苦痛をはじき出し……その苦痛を剣山の場の『ベビケラサウルス』へと移し換えた!
 当然巨大な『究極恐獣』が破壊されるほどの苦痛に小さな『ベビケラサウルス』が耐えられるはずも無く、その全身は小さな鳴き声と共に跡形も無く崩壊してしまった……。

「そして……リナちゃんに600ポイントのダメージを与え、リナちゃんの場に『イービル・トークン』が特殊召喚されるザウルス!」
 そして『ヴィシャス・クロー』から飛び出した悪魔は、リナにダメージを与えつつ黒いモンスターの形となって、リナの場に特殊召喚された!


ヴィシャス・クロー
装備魔法
装備モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。
装備モンスターが戦闘によって破壊される場合は、
代わりにこのカードを手札に戻す。
さらに戦闘を行った相手モンスター以外のモンスター1体を破壊し、
相手ライフに600ポイントダメージを与える。
その後、相手フィールド上に「イービル・トークン」
(悪魔族・闇・星7・攻/守2500)を1体特殊召喚する。
このカードが手札に戻ったターンは「ヴィシャス・クロー」を手札から使用できない。


イービル・トークン 攻撃力2500
          守備力2500
究極恐獣 攻撃力3600→3300

リナLP 5100→4500

「げっ……また変なのが来た……。」
 リナは、自分の場に現れた『イービル・トークン』を見て、思わずそう呟いた。

「カードの効果で破壊された『ベヒケラサウルス』の効果発ドン!デッキから、レベル4以下の恐竜さんを特殊召喚するザウルス!……出るドン!『ハイパーハンマーヘッド』!!」
 『ヴィシャス・クロー』の効果で破壊された『ベビケラサウルス』の代わりに、剣山の場に頭がハンマーの形になった恐竜が出現した!


ベビケラサウルス
地 レベル2
【恐竜族・効果】
このカードが効果によって破壊され墓地へ送られた時、
デッキからレベル4以下の恐竜族モンスター1体を選択して
自分フィールド上に特殊召喚する。
攻撃力500 守備力500


ハイパーハンマーヘッド 攻撃力1500→1800
            守備力1200→1500











「おぉっと!!自分のモンスターを破壊しての効果発動です!この行為が、果たして吉と出るか凶と出るか!?」
 千里は、大きな声でそう言った。











「特殊召喚された『ハイパーハンマーヘッド』で、『真紅眼の血塊竜』に攻撃!」
「ま、また自爆特攻!?」
 リナが驚いている間にも、剣山の場に現れた『ハイパーハンマーヘッド』は、『真紅眼の血塊竜』に向かって果敢に突撃した!
 当然『ハイパーハンマーヘッド』は『真紅眼の血塊竜』に胴体を噛み付かれ、そのまま破壊されたが……

「『ハイパーハンマーヘッド』の効果発ドン!戦闘を行った相手モンスターを手札に戻すザウルス!」
 『ハイパーハンマーヘッド』は、死に際に頭のハンマーを『真紅眼の血塊竜』に対して叩き付け……その衝撃で、無理矢理リナの手札へと弾き飛ばした!
 当然その戦闘によって発生した衝撃波は、剣山のライフへと変換された……。


ハイパーハンマーヘッド
地 レベル4
【恐竜族・効果】
このモンスターとの戦闘で破壊されなかった相手モンスターは、
ダメージステップ終了時に持ち主の手札に戻る。
攻撃力1500 守備力1200


剣山LP 2700→5700

「次は『超古代恐獣』で、『イービル・トークン』に攻撃!」
 『超古代恐獣』は、口から火炎放射を発射し、リナの場に現れた『イービル・トークン』に向けて放ったが……

「伏せ罠カード……『ジャスティブレイク』を発動するかんね!この効果で、攻撃表示の通常モンスター以外を全部……」
 それに対してリナがそう言うと、空から激しい稲妻が『イービル・トークン』の掲げた手の上に降り注ぎ……場のすべてのモンスターを薙ぎ払おうとしたが……

「ライフを1500ポイント払い……速攻魔法『我が身を盾に』を発ドン!この効果で、『ジャスティブレイク』の効果を無効にし、破壊するザウルス!」
 剣山がそう言うと、剣山の体から朱色のオーラが出現し、『ジャスティブレイク』の稲妻を完全に消滅させた!


我が身を盾に
速攻魔法
相手が「フィールド上のモンスターを破壊する効果」を持つカードを発動した時、
1500ライフポイントを払う事でその発動を無効にし破壊する。


剣山LP 5700→4200

「げっ……。」
 リナがそう言った瞬間、『イービル・トークン』は『超古代恐獣』の火炎放射を食らいそうになったが……

「まだだよ!伏せ罠カード『デストラクト・ポーション』を発動するかんね!この効果で『イービル・トークン』を破壊して、その攻撃力分ライフを回復するよ!」
 リナが最後の伏せカードを発動させると……『イービル・トークン』の体が粉々に砕け散り、リナのライフへと変換された!


デストラクト・ポーション
通常罠
自分フィールド上に存在するモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターを破壊し、破壊したモンスターの
攻撃力分だけ自分のライフポイントを回復する。


リナLP 4500→7000

「だが攻撃は中断しないドン!『超古代恐獣』で『魅惑の怪盗』に攻撃!」
 ……そしてその間に、リナの場の『魅惑の怪盗』もついでに破壊されてしまった……。

「これでリナちゃんの場は空になったザウルス!『セイバーザウルス』と『フロストザウルス』でダイレクトアタック!」
「痛っ!!」(リナLP 7000→4800→1900)
 場が完全に空の状態でライフを大きく削られたリナは、デュエルディスクを盾の様にしながらそう言った。


現在の状況
剣山 LP…4200
   手札…2枚(超伝導恐獣、ヴィシャス・クロー)
   場…超古代恐獣(攻撃力6300・攻撃表示)
     究極恐獣(攻撃力3300・攻撃表示)
     フロストザウルス(攻撃力2900・攻撃表示)
     セイバーザウルス(攻撃力2200・攻撃表示)
     ジュラシックワールド(表側表示)
     リミット・リバース(表側表示)
     血の代償(表側表示)

リナ LP…1900
   手札…2枚(魔力掌握、真紅眼の血塊竜)
   場…無し


「メインフェイズ2に入るザウルス!『セイバーザウルス』と『フロストザウルス』をリリースし……出るドン!『超伝導恐獣』!!」
 剣山がそう言うと、的になり得る2体のモンスターが場から消え去り……場に、激しいスパークを放つ金属の鎧を身につけた巨大な恐竜が、バチバチと何かが弾ける様な音を立てながら姿を現した!

「『超伝導恐獣』の効果発ドン!『究極恐獣』を射出し、リナちゃんに1000ポイントのダメージを与えるザウルス!」
 『超伝導恐獣』は、『究極恐獣』のエネルギーを自らに蓄え……それを電撃と言う形でリナにぶつけた!

「きゃっ!」(リナLP 1900→900)
 ライフをさらに削られたリナは、思わずそう言った。

「これで俺は、ターンエンドン!」
 そして剣山は、自分のターンを終えた。










 ――観客席にて……

「『狡兎(こうと死して走狗(そうく煮らる』……か。良く言った物だね。」
 ナオは、小さくそう呟いた。

「こうとし……?何それ。」
「ウサギ狩りに使われた犬も獲物がいなくなったら煮られる……必要な時は利用するだけ利用されて、必要無くなったら捨てられるって意味だよ。」
 キョトンとした目で尋ねるレイに対して、ナオはそう答えた。

「でも……それって可哀想じゃ無い……?」
 レイは、ナオに対してそう言ったが……

「しょうがないよ。……人は、自分より強い相手が怖いんだからね。」
 それに対してナオは、声を低くしてそう言った。











現在の状況
剣山 LP…4200
   手札…2枚(超伝導恐獣、ヴィシャス・クロー)
   場…超古代恐獣(攻撃力6300・攻撃表示)
     超伝導恐獣(攻撃力3600・攻撃表示)
     ジュラシックワールド(表側表示)
     リミット・リバース(表側表示)
     血の代償(表側表示)

リナ LP…900
   手札…2枚(魔力掌握、真紅眼の血塊竜)
   場…無し



「あたしの……ターン……」
 リナは、さらに声を小さくしてターンを開始した……。

「(あたしの手札は、今使えない『魔力掌握』と『真紅眼の血塊竜』だけ……ライフも1900対4200……どうにかして『超伝導恐獣』を除去しないと負けちゃうよ……。)」
 そして、心の中でそう呟き……











「……ドロー!」
 そして、祈る様にカードをドローした。

「ドローしたカードは……魔法カード『終わりの始まり』だよ!あたしの墓地の闇属性モンスターは『見習い魔術師』3体、『魅惑の怪盗』、『サターナ』、『ブークー』、『千眼の邪教神』の7体がいるから、発動条件は満たしてるよ!」
 リナはドローしたカードと、墓地に存在するちょうど7体の闇属性モンスターを剣山に見せ付けながらそう言った。

「墓地から『見習い魔術師』、『魅惑の怪盗』、『サターナ』、『ブークー』、『千眼の邪教神』を除外して……カードを3枚ドロー!」
 そして、7枚の内5枚のカードを自分のポケットにしまい、カードを3枚ドローした……。


終わりの始まり
通常魔法
自分の墓地に闇属性モンスターが7体以上存在する場合に発動する事ができる。
自分の墓地に存在する闇属性モンスター5体をゲームから除外する事で、
自分のデッキからカードを3枚ドローする。


「手札から……魔法カード『魔法族の結界』を発動するかんね!」
 リナがそう言うと、またリナの周りに不思議な結界が発生した!

「『魔法族の結界』……いまさら何をする気ザウルス?」
「すぐに分かるよ……。手札から『真紅眼の血塊竜』を捨てて、装備魔法『D・D・R』を発動するかんね!この効果で……除外された『見習い魔術師』を特殊召喚!」
 リナがそう言うと、ポケットの中から『見習い魔術師』のカードを取り出し、自分の場に特殊召喚した!


D・D・R
装備魔法
手札を1枚捨てる。ゲームから除外されている自分のモンスター1体を選択して
攻撃表示でフィールド上に特殊召喚し、このカードを装備する。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。


「特殊召喚された『見習い魔術師』の効果が発動して……それにチェーンして速攻魔法『地獄の暴走召喚』を発動するよ!墓地から……2体の『見習い魔術師』を特殊召喚!」
 リナがそう言いながら、剣山が今まで散々発動させたカードを発動させると……リナの場に、再び『見習い魔術師』3兄弟が集結した!
 そして『D・D・R』の効果で特殊召喚された『見習い魔術師』は杖を振るい、リナの周りに1枚のカードの幻影を発生させた!

魔法族の結界に乗った魔力カウンター 0個→1個

「『地獄の暴走召喚』で特殊召喚された『見習い魔術師』効果が発動するよ!『魔法族の結界』に魔力カウンターが2個乗るかんね!」
 リナの場に現れた2体の『見習い魔術師』は、リナの周りにさらに2枚のカードの幻影を発生させた!

魔法族の結界に乗った魔力カウンター 1個→3個

「それから……手札から魔法カード『魔力掌握』を発動するよ!『魔法族の結界』に魔力カウンターを1個乗せて、デッキから『魔力掌握』を手札に!」
 リナはさらに周りに4枚目のカードの幻影を発生させ、デッキから最後の『魔力掌握』を手札に加えた!

「『魔法族の結界』の効果を発動するよ!このカードと『見習い魔術師』を墓地に送って、カードを4枚ドロー!」
 そしてリナは、新たにカードを4枚ドローした。

「(あれ?この手札……)」
 ドローしたカードを確認したリナは、頭の中で戦法をシミュレートし……

「……勝った……かな。」
 ……そして、小さくそう言った。

「手札から……『黒魔導師クラン』を攻撃表示で召喚するよ!」
 リナがそう言うと、場に黒い子供服を着、黒兎の帽子をかぶり、ピンク色のムチを持った魔法使いの少女が現れた!

「カードを1枚場に伏せて……魔法カード『エクスチェンジ』を発動するよ!……『ヴィシャス・クロー』を渡してよ。」
 リナはそう言いながら剣山の元に歩み寄り、剣山の手札に残されていた『ヴィシャス・クロー』を自分の手札に加えた。
 対する剣山は、リナの手札から『貪欲な壺』をリナの手札から選び、自分の手札に加えた。


エクスチェンジ
通常魔法
お互いに手札を公開し、それぞれ相手のカードを1枚選択する。
選択したカードを自分の手札に加え、そのデュエル中使用する事ができる。
(墓地へ送られる場合は元々の持ち主の墓地へ送られる)


「それから……手札から『ヴィシャス・クロー』を『超伝導恐獣』に装備させるよ!」
 リナがそう言うと、剣山の場の『超伝導恐獣』の右腕に鉄甲が無理矢理装着され……その爪から、黒いオーラがあふれ始めた!
 しかし今回は、リナの場のモンスター達は特に恐怖を抱いている訳でも無かった……。

超伝導恐獣 攻撃力3600→3900

「……これが最後の魔法カードだよ!手札の『魔力掌握』を捨てて、伏せておいた魔法カード『二重魔法』を発動するよ!この効果で……剣山の墓地から、魔法カードを1枚発動させるよ!」
 リナはそう言いながら、『エクスチェンジ』で取られないために伏せておいた1枚のカードを発動させた!

「な……に!まさか……」
「そうだよ……!あたしが発動させるカードは――」
 苦虫を噛みしめたかの様な表情を浮かべる剣山に対して、リナは剣山を指差しながらこう宣告した……。





















「――『シャイニング・アブソーブ』!!」
 ……と。

「『シャイニング・アブソーブ』の効果で……『超伝導恐獣』の攻撃力分、あたしの場のモンスターの攻撃力がアップするよ!」
 リナがそう言うと……『超伝導恐獣』の体から光のエネルギーが放出し、そのエネルギーを受けたリナの場のモンスターは、攻撃力を大幅に高めた!


二重魔法
通常魔法
手札の魔法カードを1枚捨てる。
相手の墓地から魔法カードを1枚選択し、
自分のカードとして使用する。

シャイニング・アブソーブ
通常魔法
相手フィールド上に表側表示で存在する
光属性モンスター1体を選択して発動する。
自分フィールド上に表側攻撃表示で存在する
全てのモンスターの攻撃力はエンドフェイズ時まで、
選択したモンスターの攻撃力分アップする。


黒魔導師クラン 攻撃力1200→5100
見習い魔術師 攻撃力400→4300

「行くよ……!『見習い魔術師』で、『超伝導恐獣』に攻撃!」
 リナがそう言うと、『見習い魔術師』は杖から雷の魔法を放ち、『超伝導恐獣』の右腕に装備された『ヴィシャス・クロー』を打ち砕いた!

「ぐあっ!」(剣山LP 4200→3800)
 剣山はそう言ったが、『超伝導恐獣』は『ヴィシャス・クロー』によって命を繋ぎとめていた……。

「『ヴィシャス・クロー』を装備したモンスターは、他のモンスターを犠牲にして生き長らえないといけないんだよね……。『ヴィシャス・クロー』を剣山の手札に戻して、『超古代恐獣』を破壊するよ!」
 リナの言葉に合わせて、『ヴィシャス・クロー』に宿った悪魔はその呪いによって、『超伝導恐獣』を場に留まらせる代償として『超古代恐獣』を破壊した!

「それから……剣山に600ポイントのダメージを与えて、『イービル・トークン』を剣山の場に特殊召喚するよ!」
 呪いによって『超古代恐獣』を破壊した『ヴィシャス・クロー』に宿った悪魔は剣山にダメージを与えつつ、場に実体化した!


イービル・トークン 攻撃力2500
          守備力2500
超伝導恐獣 攻撃力3900→3600

剣山LP 3800→3200

「『見習い魔術師』で、『イービル・トークン』に攻撃!」
 そしてその悪魔は、現れた瞬間に『見習い魔術師』の雷の魔法に破壊された。

「ぐっ!」(剣山LP 3200→1400)
 剣山は、思わずそう言い……

「これで終わりだよ!クランちゃんで、『超伝導恐獣』に攻撃!サンダー・ウィップ!!」
 リナが最後の攻撃宣言をすると、『黒魔導師クラン』のムチが『超伝導恐獣』の首元を捉え、そのまま電撃と共に締め上げた!
 電気の衝撃と首元の拘束を受けた『超伝導恐獣』は、呻き声と共に砂煙を上げながら崩れ落ち、剣山のライフを削り落した……。

「ぐあぁぁっ!」(剣山LP 1400→0)











「き、決まりました!本戦第1試合……勝者は、星海校代表・『転羽 リナ』ちゃんです!!」
 リナの勝利を確認した千里は声を一層張り上げて勝利者宣言をした。











「ぐっ……さすが本戦参加者ザウルス!すごい逆転劇だったドン!」
 剣山は、リナに対して一言そう言った。

「へへ〜ん、凄いでしょ。」
 それに対してリナは、自信満々にそう言ったが……

「でも……ちょっと危なかったかな。」
 さらにリナは、そう言葉を続けた。




 ――観客席にて……

「さすがッスね……リナ。」
 カムイは、小さくそう呟いた。

「ああ。……これは俺も負けられないな。」
 センリも、リナのデュエルに感嘆していた。

「当たり前だろ、カムイ、センリ。リナちゃんが負けるかよ。」
 雷人は、2人に対してそう言った。

「相手の力をかわし、利用しての勝利か……これがデュエルだ。来たかいがあったぜ。」
 国崎は、そう言葉を漏らした。











「飼い犬に手を噛まれるは、まさにこの事だよ。完全に再起不能に持ち込まない限り、反撃の可能性は存在するんだからね。」
 ナオは、軽くそう呟き……

「……レイは次の試合になると思うけど……絶対、勝ってよ。」
 ……そして、レイに対して小さくそう呟いた。

「うん……分かった。」
 レイは、小さくそううなずいた。











――一方、その頃……

「さて……と。次はあいつの負ける姿でも観客席でゆっくり見てよっと。」
 リナは、そう言いながら前を見ながら歩いていると……

 ドン……。

 前にいた者に気が付かず、正面からぶつかり合ってしまった……。

「ご、ゴメ……」
 リナが謝ろうとした時、その相手の姿に言葉を失ってしまった……。

「あっ……ラケシス……。」
 黒色のドレスの様な服を着て、赤色と黒色が混じった髪の少女――ラケシスの姿を見たリナは、思わずそう言いながら口をポカンと開けてしまった。

「…………。」
 ラケシスは、口を結んだまま腰の革製の鞘につけた包丁を手に持ち……その刃を、リナに見せつけた!

「ちょ、ちょっとラケシス!そ、そんな物騒な物出さないでよ!」
 包丁を突き付けられたリナは、焦りながらそう言った。

「そ、それ、おもちゃだよね?おもちゃだよね!?」
 リナの慌てふためくその一言を聞いたラケシスは、自分の左手を開いてその手の平に右手の包丁を持って行き……











 ブスッ……

「…………。」
 そのまま、その刃を自らの手の平に軽く突き刺した……。
 するとラケシスの手の平に穴が空き、そこから赤い何かがダラダラと流れ出た……。

「…………!!??」
 ラケシスの手の平から流れ出る赤い何かを見たリナは、顔面蒼白になり……

「ちょ、ちょ、ちょっと冗談止めてよ!痛いから痛いからそれ痛いから!!」
 命の危機を感じ取ったリナは、あたふたと慌てながらそう叫んだ。

「…………。」
 ラケシスは、表情1つ変えずにリナの元に歩み寄って行った……。

「だ、だ、だからそれを離してよ!1回刺されたくらいじゃ多分あたし気絶しないよ!だから刺したら絶対返さないよ!借りてたカード破
っちゃうよ!だから……」
 リナは、そう言いながらラケシスの右手腕をつかみ、無理矢理ひねったが……

「……返せ。」
 ……ラケシスは、赤い何かが滴り落ちる自分の左手を、無理矢理リナの顔面に押し付けた……。


「ひっ……!!?」
 左手を顔に押し付けられたリナは、視界が赤く染まる感覚に襲われ……そのまま、気を失ってしまった……。

「……『真紅眼の血塊竜』を……。」
 ラケシスは、赤い何かで染まった左手でリナのデッキケースを開き、その中から右手で『真紅眼の血塊竜』のカードを取り出した。
 すると……











 ブシュッ……

 肉が潰れる様な音とともに、ラケシスの右手首に穴が空き、そこから赤い何かがダラダラと溢れ出した……。

「…………。」
 両手に傷を負い、空虚な眼で自分の右手首の傷口を見たラケシスは、何も言わずにリナの下から歩き去っていった……。





















「……どうしたんスか!?リナ!」
 リナが気絶した何分か後、カムイがリナを起こしながらそう言った。

「え……?」
 リナは、潤んだ眼を開き……

「ひ〜ん、怖かったよ〜!血まみれになっちゃったよ〜!」
 そして、泣きじゃくりながら両手で顔を拭っていた……。

「…………。」
 リナのそんな様子を見たカムイは……











「……血なんて、付いてないんスけど……。」
 ……涙だけで濡れているリナの顔を見ながら、一言そう呟いた……。


「…………へ?」



次回予告

リナ「……で、次はレイのデュエルだね。あと1人が来てないんだから、しょうがないよね。」
カムイ「そうなんスよね、リナ。次は……いや、次もオレ達星海校の代表が勝つと思うッスね。」
リナ「あっ、カムイもそう思う?あいつの負ける姿、ゆっくりと見てようよ。」
カムイ「……。」



次回、『GX plus!』第五十三話!



『2回戦開始!仕組まれたカード!!』

リナ「何だろ、あのカード。……しっとりしてるって言うか、ちょっと虚無的すぎる様な……」




第五十三話 2回戦開始!仕組まれたカード!!

「つまり……廊下でその女に合って、傷口を突き付けられ……それで気絶したって事なんスね。」
 デュエル場に向かう廊下で、カムイはリナに対してそう尋ねた。

「うん……。あいつ包丁持ってたから、絶対刺されると思ったもん……。って思ってたら自分を刺して血ぃダラダラ流してたし……もう意味分かんないよ……。」
 リナは、しゅんとした表情で小さくそう言った……。

「なるほどな……。」
 センリは、軽くそう反応し……



「……そもそも……そこんとこは、本当の話なのか?」
「うにゅ?」
 センリの一言に対してリナは、目を丸くしてそう言った。

「その自分の手の平にナイフを突き刺した奴の血は、どこにも残ってなかったんだろ?催眠術か何かで騙されたんじゃ無いのか?」
 センリは、リナを諭すようにそう話しかけたが……

「だ、だって本当だもん!それにあいつに、『真紅眼の血塊竜』のカードを取り返されたし……」
 リナは、自分が正しい事を証明するために、手をあたふたさせながらそう言った。

「取り返された?どう言う事ッスか?」
 あるワードを聞きつけたカムイは、そこについて詳しく追求しようとそう言った。

「……いやさ。あいつがデュエル中に『真紅眼の血塊竜』を使ったら、急に腕から血を流したんだ。だからちょっと不安になって、あいつの手元から遠ざけただけだよ。」
 リナは、『真紅眼の血塊竜』を手に入れた経緯について、そう作り話をした。

「デュエル中に流血する……か。噂で聞いただけだが、あのカードがそうだったとはな……。」
 センリは一言そう言い……

「だが……リナは怪我しなかったんだよな。その理由が分からないぜ……。」
 ……そして、そう言葉を続けた……。

「とりあえず……1つ言える事はあるッスね。」
 それを聞いたカムイは、まずはそう言葉を発し……

「このデュエルアカデミアでは、常識に囚われてはいけないって事なんスね。」
 さらにカムイは、そう言葉を続けた……。



「……リナさんですね?」
「ん?誰?」
 後ろから名前を呼ばれたリナは、声がした方に目をやった……。

「私は龍也と言います。1つ尋ねたい事があるのですが……」
 龍也先生は、軽く挨拶をし……

「『真紅眼の血塊竜』を手に入れた経緯について……我々に詳しく語っていただけませんか?」
 ……そして即効で本題に入った。

「いいけど……あれの事、何か知ってんの?」
「いえ……詳しくは分かりませんが、少々特殊な空雰囲気を感じましてね……。」
 リナの問いに対して、龍也はそう返答した。

「ん〜……別にいいけど。あたしもちょっと変な感じはしたし。」
 リナは、小さくそう呟き……

「……じゃっ、ちょっと試合見れなくなるのは残念だけど……話でもしとこっかな。」
 そしてそう言葉を続け、龍也の元へと歩み寄った……。

「大丈夫だぜ。俺達が負けると思うか?」
 センリはリナに対して一言そう言い……

「思わないよ。2人があんな奴に負ける訳無いじゃん。」
 リナは、そう返した。











 ――デュエル場にて……

「ラケシス……何処に行っていたのですか?」
「…………。」
 デュエル場の最後尾に近い所でローブをまとって見学している4人……の内2人のクロートーとラケシスは小声でそう話していた……。

「まあ、『真紅眼の血塊竜』のカードが目と鼻の先にありゃあいても立ってもいられねえだろうがな。デュエル中に乱入しなかったのが不思議なぐらいだぜ。」
「…………。」
 もう1人の男……アトロポスの言葉に対してもラケシスは沈黙を守り続けた……。

「過ぎた話だ。それより、次のデュエルの見学を楽しもうではないか。」
 フェイトは、クロートーとアトロポスをなだめる様に一言そう言い……

「次の本校からの参加者は……『天魔神』のカードの所有者だからな。」
 そして一言、そう言葉を続けた……。











「さあさあさあ!本戦はまだまだ続きますよ!実況は引き続きこの私、清く正しい国枝 千里がお送りいたします!」
 デュエル場の上部に吊るされた籠に入った千里は、右手にマイクを握り締め声を張り上げてそうアナウンスした。











「(清く正しい……どこがなんスかね……。)」
 ちょうど観客席に入り込んだカムイは、腕を組みながら心の中で小さくそう呟いた。











「さて!次の対戦者は、いったい誰でしょうか!?……あちらのモニターをご覧下さい!」
 千里はそう言いながら、左手でデュエル場上部のモニターを指し示した……。











 ピピピピピピピピピピ……

「(次の本校からの参戦者は……順当に行けばレイだな。)」
「(次の星海校からの参戦者はオレかセンリか……誰になるんスかね……。)」
 センリとカムイは、モニターを見ながら心の中でそう考えていた……。

「次のデュエル……どっちがレイに負けるのかな。」
 考える2人に対して後ろから一人の少年が近付いてきて、一言そう言った。

「ん?どうしたんスか?ナオ。」
 カムイは、後ろにいた緑色の帽子を被った少年……ナオに対して軽くそう言った。

「別に。ただどっちがレイとデュエルするのか気になっただけだよ。」
 ナオは、軽くそう言った。

「なるほどな。……で、肝心のレイは一緒じゃ無いのか?」
「そうだよ。……何でも、1枚のカードを入れるかどうか悩んでるみたいだからね。」
 センリの問いに対して、ナオはそう答えた。

「1枚のカード……何なんスか?」
「……今日の朝に部屋のポストに入ってた封筒の中に入ってたカードみたいだよ。」
 さらに投げかけられるカムイの問いに対して、ナオはそうとだけ答えた。

「封筒……誰からかは分からないんスね。」
「そうだね。……まあ、効果だけ読めばボクの考えでは入れたほうがいいと思ったけど……まっ、最終的な決定はレイに委ねたよ。」
 カムイとナオは、軽くそう言った。

「(……何かアドバイスしたなら、最終判断もそれに左右される可能性もあるんスけどね……。)」
 ナオの言葉を聴いたカムイは、心の中でそう呟いた……。 











「さて!……まことに申し訳ありませんが、本校からの最後の参加者はまだこの星海校に到着しておりません!……つまり本校からの2番手は、早乙女 レイちゃんに決定いたしました!そして……」
 千里は、モニターに対戦カードが表示される頃合を見計らってそうアナウンスし……











 ――ピコーン。

「……それを迎え撃つのは、星海校に現れた、百万鬼夜行の使い手……黄泉 センリ君です!」
 そしてモニターに表示された名前を確認した千里は、モニターを指差しながら大声でそう言った。











「(百万……多すぎだろ。)」
 千里のアナウンスを聞いたセンリは、心の中でそう考えていた……。

「……っと!よし、行くか!」



「いいデュエルにしようぜ、レイ。」
 センリは、軽くそう言った。

「う、うん……。」
 






「さて!お互いのデッキシャッフルも済んだ所で……始まりますよ!」
 千里は左手にマイクを持ち替え、右手をグーにして頭上に掲げ……

「第2回戦……デュエル、スタート!!」
 そして親指と人差し指を開きながら右手を前に振り下ろし、デュエル開始を宣言した。











「俺のターン……」
 センリは、手札を見ながら軽くそう言い……

「(何だ?この手札は……。)」
 センリは、自分の手札に違和感を持っていた……。


センリの手札…ゴブリンゾンビ、D・D・R、おろかな埋葬、トレード・イン、マスドライバー

「……ドロー!」

ドローしたカード…ネクロ・ガードナー

「(おいおいこれじゃあ……俺の勝ちじゃないか。)」
 そして、心の中でそう続けた……。



「(センリの今の手札は……まさか!)」
 ナオは、センリの作戦を瞬時に読みとり、カムイ達の近くから走り去ろうとしたが……

「どこに行くんスか?ナオ。」
 カムイは、ナオの細い左手首を右手でつかみながらそう言った……。

「…………っ!」
 左腕をつかまれたナオは、少しビクッとし……

「……ちょっと、場所を変えるだけだよ!」
 ……そして、右手の爪を立て……カムイの右手を爪で引っ掻いた!

「っっ!」
 ナオに引っ掻かれたカムイは思わず右手を離し、その隙にナオは走り去って行った……。











「……仕方ないッスね……。」
 カムイは、引っ掻かれた事でできた切り傷から出てきた細く短い血糸を、左手で軽く拭いながらそう呟いた……。











「手札から……『ゴブリンゾンビ』を召喚!」
 センリの場に、茶色の外骨格で身を包んだゾンビが現れた。

「さらに手札から……永続魔法『マスドライバー』を発動するぜ!」
 さらにセンリの場に、大砲の様な形をした機械が出現した!











「おぉっと!ここで『マスドライバー』の発動です!!モンスターを失いますが1ターンに何度でもダメージを与える事が可能なカード……センリ君はここで1ターンキルでもねらう気でしょうか!!?」
 千里は、センリが発動したカードから次の展開を軽く推測しながらそうアナウンスした。











「『マスドライバー』の効果発動!『ゴブリンゾンビ』を射出し、レイに400ポイントのダメージを与える!」
 センリがそう言うと、『ゴブリンゾンビ』の生命エネルギーが『マスドライバー』に吸収され……

「きゃっ!」(レイLP 4000→3600)
 『マスドライバー』からの砲撃を受けたレイは、思わずそう言った。

「墓地に送られた『ゴブリンゾンビ』の効果発動!デッキから『バーニング・スカルヘッド』を手札に加える!」
 センリは、デッキから1枚のカードを探し出し、レイに見せながら手札に加えた。


マスドライバー
永続魔法
自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる度に、
相手ライフに400ポイントダメージを与える。

ゴブリンゾンビ
闇 レベル4
【アンデット族・効果】
このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、
相手はデッキの上からカードを1枚墓地へ送る。
このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、
自分のデッキから守備力1200以下の
アンデット族モンスター1体を手札に加える。
攻撃力1100 守備力1050


「手札から、魔法カード『おろかな埋葬』を発動!デッキから、『馬頭鬼』を墓地に送るぜ!」
 センリは、自分のデッキの中から『馬頭鬼』を探し出し、墓地に送った。


おろかな埋葬
通常魔法
自分のデッキからモンスター1体を選択して墓地へ送る。


「墓地の『馬頭鬼』を除外し、効果発動!墓地のアンデット族モンスター……『ゴブリンゾンビ』を特殊召喚!」
 センリがそう言うと、墓地の『馬頭鬼』の魂が『ゴブリンゾンビ』の骸に憑依し……そのまま、センリの場に舞い戻らせた!


馬頭鬼
地 レベル4
【アンデット族・効果】
墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、
自分の墓地からアンデット族モンスター1体を特殊召喚する。
攻撃力1700 守備力800


「『マスドライバー』の効果発動!『ゴブリンゾンビ』を射出するぜ!」
 さらにセンリがそう言うと、『ゴブリンゾンビ』が再び射出されレイのライフを軽く削った。

レイLP 3600→3200

「墓地に送られた『ゴブリンゾンビ』の効果がもう1度発動するぜ!デッキから、2枚目の『バーニング・スカルヘッド』を手札に!」
 さらにセンリは、もう1度『バーニング・スカルヘッド』をデッキから手札に加えた。

「手札を1枚捨て……装備魔法『D・D・R』を発動!除外された『馬頭鬼』を、俺の場に特殊召喚するぜ!」


「『馬頭鬼』を射出し、『マスドライバー』の効果発動!レイに400ポイントのダメージを与えるぜ!」
「ま、また?」(レイLP 3200→2800)
 躊躇無く射出を繰り返すセンリに、レイは少し驚いていた……。


「墓地の『馬頭鬼』を除外し、効果発動!墓地から『ゴブリンゾンビ』を特殊召喚!」
 センリの場に、三度『ゴブリンゾンビ』が現れ……

「『マスドライバー』の効果を発動するぜ!『ゴブリンゾンビ』を射出!」

「……もう1度、『ゴブリンゾンビ』の効果発動!デッキから、守備力0の『スカル・コンダクター』を手札に!」
 さらにセンリは、デッキから『スカル・コンダクター』のカードを探し出し、手札に加えた。

「手札から『スカル・コンダクター』を捨て、効果発動!手札のアンデット族モンスターを、合計攻撃力が2000になる様に特殊召喚するぜ!……来い!2体の『バーニング・スカルヘッド』!!」
 センリが手札のカードを墓地に送ると、場に水色の軍服を着た幽霊が出現し……センリの手札から、攻撃力1000の『バーニング・スカルヘッド』を2体場に呼び出した!


スカル・コンダクター
闇 レベル4
【アンデット族・効果】
このカードがフィールド上に表側表示で存在する場合、
バトルフェイズ終了時にこのカードを破壊する。
また、手札からこのカードを墓地へ送る事で、
攻撃力の合計が2000になるように
手札からアンデット族モンスターを2体まで特殊召喚する。
攻撃力2000 守備力0


「手札から特殊召喚された2体の『バーニング・スカルヘッド』の効果が発動するぜ!レイに合計2000ポイントのダメージを与える!ヘル・バーニング!!」
 そして『スカル・コンダクター』の幻影は、両手に持った『バーニング・スカルヘッド』をレイに向かって勢いよく投げつけたが……

「ちょっと待って!手札から『ハネワタ』を捨てて、効果を発動するよ!この効果で、このターンボクが受ける効果ダメージは0になるよ!」
 突然レイの前に、オレンジ色のもふもふのモンスターが出現し、『バーニング・スカルヘッド』の直撃からレイを守った!


バーニング・スカルヘッド
炎 レベル3
【アンデット族・効果】
このカードが手札から特殊召喚に成功した時、
相手ライフに1000ポイントダメージを与える。
また、自分フィールド上に表側表示で存在する
このカードをゲームから除外する事で、
ゲームから除外されている「スカル・フレイム」1体を墓地に戻す。
攻撃力1000 守備力

ハネワタ
光 レベル1
【天使族・チューナー・効果】
このカードを手札から捨てて発動する。
このターン自分が受ける効果ダメージを0にする。
この効果は相手ターンでも発動する事ができる。
攻撃力200 守備力300


「なるほどな……。俺の手札を浪費させるために、このタイミングまで『ハネワタ』を取っておいたんだな。」
「まあ……ね。」
 センリの言葉に対して、レイはそう呟いた。

「俺はこれで、ターンエンドだ。」



現在の状況
センリ LP…4000
    手札…1枚
    場…バーニング・スカルヘッド(守備力800・守備表示)×2
      マスドライバー(表側表示)

レイ LP…2400
   手札…4枚
   場…無し











「(た……助かった……。)」
 レイの後ろ側に席を移したナオは、心の中でそうため息をついた……。











「ボクのターン……ドロー!」
 何とか1ターンキルを防いだレイは、5枚の手札を確認しながら次の戦略を立てた……。

「手札から……『コーリング・ノヴァ』を攻撃表示で召喚するよ!」
 レイの場に、オレンジ色の輪の形をしたモンスターが現れた。

「『コーリング・ノヴァ』で、『バーニング・スカルヘッド』に攻撃!」
 『コーリング・ノヴァ』は、体の輪の中からレーザーを放ち、守備力の低い『バーニング・スカルヘッド』を一瞬で破壊した!

「カードを2枚場に伏せて、ターンエンド!」
 そしてそのまま、大きな動きを見せずにターンを終えた。


現在の状況
レイ LP…2400
   手札…2枚
   場…コーリング・ノヴァ(攻撃力1400・攻撃表示)
     伏せカード2枚

センリ LP…4000
    手札…1枚
    場…バーニング・スカルヘッド(守備力800・守備表示)
      マスドライバー(表側表示)


「俺のターン、ドロー!」
 センリは、軽くカードを1枚ドローし……

「手札の『スカル・フレイム』を捨て、魔法カード『トレード・イン』を発動!デッキからカードを2枚ドロー!」
 手札の魔法カードを発動させ、手札を交換した。


トレード・イン
通常魔法
手札からレベル8のモンスターカードを1枚捨てる。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。


「行くぜ!手札から……『酒呑童子』を召喚!」
 センリの場に、酒が入った瓢箪を持った鬼の姿のモンスターが現れ……

「『酒呑童子』の効果発動!除外されたアンデット族1体……『馬頭鬼』を、俺のデッキの1番上に戻す!」
 ……『酒呑童子』は持っている瓢箪の中から『馬頭鬼』の魂を取り出し、センリのデッキの1番上に戻した。


酒呑童子
地 レベル4
【アンデット族・効果】
1ターンに1度、次の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●自分の墓地に存在するアンデット族モンスター2体を
ゲームから除外する事で、自分のデッキからカードを1枚ドローする。
●ゲームから除外されている
自分のアンデット族モンスター1体をデッキの一番上に戻す。
攻撃力1500 守備力800


「さらに手札から、永続魔法『デーモンの宣告』を発動するぜ!」
 センリはそう言いながら、2枚目の永続魔法を発動させた。

「『デーモンの宣告』は、1ターンに1度ライフポイントを500払う事でカード名を1つ宣言し……俺のデッキの1番上のカードがそのカードだった場合、俺の手札に加わるカードだぜ!」
「じゃあつまり……『馬頭鬼』が手札に加わっちゃうって事?」

「ライフを500払い、『デーモンの宣告』の効果を発動するぜ!俺のデッキの1番上のカードは……『オベリスクの巨神兵』だ!」
「え……!?」
 レイは、センリの意外な宣言カードに驚いていた……。


デーモンの宣告
永続魔法
1ターンに1度だけ、500ライフポイントを払い
カード名を宣言する事ができる。
その場合、自分のデッキの一番上のカードをめくり、
宣言したカードだった場合手札に加える。
違った場合はめくったカードを墓地へ送る。


センリLP 4000→3500

「……意味無く外した訳無いだろ。俺のねらいは、他にあるからな。」
 センリは、デッキの1番上のカードを墓地に送りながらそう言い……

「墓地の『馬頭鬼』を除外し、効果発動!墓地からアンデット族1体……『ゴブリンゾンビ』を攻撃表示で特殊召喚するぜ!」
 墓地に送られたカードをすぐさま除外し、墓地の『ゴブリンゾンビ』を再び蘇らせた!

「じゃあ……『酒呑童子』か『デーモンの宣告』をどうにかしないと、ターンが回ってくる度にアンデット族モンスターが墓地から蘇るって事……?」
「そう言う事だ。」
 センリは、軽くそう答えた。

「行くぜ!『酒呑童子』で、『コーリング・ノヴァ』に攻撃!」
「痛っ!」(レイLP 2800→2700)
 『酒呑童子』は、口から炎を吹き出し『コーリング・ノヴァ』を焼き尽くしたが……

「……でも……戦闘破壊破壊された『コーリング・ノヴァ』の効果発動!この効果で、デッキから攻撃力1500以下の天使族・光属性モンスター1体を特殊召喚するよ!……来て!『ミスティック・ベビー・エンジェル』!」
 ……レイがそう言うと、『コーリング・ノヴァ』はデッキに信号を送り、レイのデッキから小さな球体に短い手足と小さな天使の羽根が生えている様なモンスターを出現させた!


コーリング・ノヴァ
光 レベル4
【天使族・効果】
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
デッキから攻撃力1500以下で光属性の天使族モンスター1体を
自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。
また、フィールド上に「天空の聖域」が存在する場合、
代わりに「天空騎士パーシアス」1体を特殊召喚する事ができる。
攻撃力1400 守備力800


「守備力900のモンスターか……。これで俺は、ターンエンドだ。」


現在の状況
センリ LP…3500
    手札…0枚
    場…バーニング・スカルヘッド(守備力800・守備表示)
      酒呑童子(攻撃力1500・攻撃表示)
      マスドライバー(表側表示)
      デーモンの宣告(表側表示)

レイ LP…2300
   手札…2枚
   場…ミスティック・ベビー・エンジェル(守備力900・守備表示)
     伏せカード2枚


「ボクのターン、ドロー!」
 レイは、デッキからカードを1枚ドローし……

「『ミスティック・ベビー・エンジェル』は、『恵み』の力で成長のための力を蓄えるんだよ!」
 レイがカードをドローした事に呼応し、『ミスティック・ベビー・エンジェル』が優しいオーラに包まれた!


ミスティック・ベビー・エンジェル
光 レベル3
【天使族・効果】
自分がカードをドローする度に、このカードにミスティックカウンターを1つ乗せる。
このカードに乗ったミスティックカウンターの個数によって、以下の効果を得る。
(召喚・反転召喚・特殊召喚されたターンには、この効果を発動できない。)
1個:このカードの元々の攻撃力は倍になる。
2個:このカードをリリースすることで、自分の手札・デッキから
「ミスティック・エンジェル」1体を特殊召喚する。
攻撃力600 守備力900


「伏せ罠カード……『ゴブリンのやりくり上手』を発動するよ!」


「なるほどな。さらにドローして進化条件を整えるか。」
「うん……。でも、それだけじゃ無いよ!それにチェーンして、速攻魔法『ダブル・サイクロン』を発動!この効果で……センリ君の場の
『デーモンの宣告』と、ボクの場の『ゴブリンのやりくり上手』を破壊するよ!」
 レイがさらに伏せておいた速攻魔法を発動させると……突然2本のサイクロンが発生し、2枚のカードを吹き飛ばした!


ダブル・サイクロン
速攻魔法
自分フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚と、
相手フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を選択して発動する。
選択したカードを破壊する。

「それから……『ゴブリンのやりくり上手』の効果解決だね。墓地の『ゴブリンのやりくり上手』の枚数+1枚……2枚のカードをドローして、手札を1枚デッキの1番下に戻すよ!」
 さらにレイは、『ダブル・サイクロン』によって破壊され墓地に送られた『ゴブリンのやりくり上手』を利用し、ドロー枚数を増やしつつ手札を1枚デッキの1番下に戻した。


ゴブリンのやりくり上手
通常罠
自分の墓地に存在する「ゴブリンのやりくり上手」の枚数+1枚を
自分のデッキからドローし、自分の手札を1枚選択してデッキの一番下に戻す。


「『ダブル・サイクロン』の効果を利用して『ゴブリンのやりくり上手』の効果を高めつつ、俺の場の『デーモンの宣告』を破壊する……か。さらに『ミスティック・ベビー・エンジェル』の進化条件を満たす……この状況を作り出すために、俺の『デーモンの宣告』の効果をあえて見逃したんだな。」
 センリは、レイの戦略に対して一言そう呟いた。

「ミスティックカウンターが2個乗った『ミスティック・ベビー・エンジェル』をリリースして……来て!『ミスティック・エンジェル』!!」
 レイがそう言いながらデッキの1番下から『ミスティック・エンジェル』のカードを取り出しデュエルディスクに置くと……

「攻撃力2750のモンスターか……。」
「それだけじゃ無いよ。……『ミスティック・エンジェル』の効果発動!手札を1枚捨てて、カードを1枚ドロー!」
 レイは、今必要無いカードを捨ててカードを1枚ドローした。


ミスティック・エンジェル
光 レベル8
【天使族・効果】
このカードは、「ミスティック・ベビー・エンジェル」または
「ミスティック・レボリューション」の効果でのみ特殊召喚できる。
手札を1体を捨てて発動する。
自分のデッキからカードを1枚ドローする。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
攻撃力2750 守備力2400


「『ミスティック・エンジェル』で、『酒呑童子』に攻撃!ヴァルキュルス・アロー!」
 『ミスティック・エンジェル』は、左手に持った光の弓にセットした光の矢を右手で引き絞り、『酒呑童子』に向かって解き放ったが……

「墓地の『ネクロ・ガードナー』を除外し、効果発動!この効果で、『ミスティック・エンジェル』の攻撃を無効にするぜ!」
 その攻撃は、墓地から出現した『ネクロ・ガードナー』の幻影に阻まれかき消された……。


ネクロ・ガードナー
闇 レベル3
【戦士族・効果】
自分の墓地に存在するこのカードをゲームから除外して発動する。
相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする。
攻撃力600 守備力1300


「じゃあ……モンスターを1体セットして、カードを1枚場に伏せて、ターンエンド!」
 レイは、2枚のカードをデュエルディスクにセットしてターンを終えた。


レイ LP…2300
   手札…2枚
   場…ミスティック・エンジェル(攻撃力2750・攻撃表示)
     裏守備モンスター1体
     伏せカード1枚

センリ LP…3500
    手札…0枚
    場…酒呑童子(攻撃力1500・攻撃表示)
      ゴブリンゾンビ(守備力1050・守備表示)
      バーニング・スカルヘッド(守備力800・守備表示)
      マスドライバー(表側表示)


「俺のターン、ドロー!」
 センリは、軽くカードを1枚ドローし……

「『マスドライバー』の効果発動!『ゴブリンゾンビ』を射出し、レイに400ポイントのダメージを与えるぜ!」
「きゃっ!」(レイLP 2300→1900)
 ……すぐさま『ゴブリンゾンビ』を射出し、レイに軽くダメージを与えた。

「『ゴブリンゾンビ』の効果発動!デッキから、3枚目の『バーニング・スカルヘッド』を手札に加える!」
 さらにセンリは、デッキからカードを1枚手札に加えた。

「『酒呑童子』の効果を発動するぜ!墓地のアンデット族2体……『スカル・コンダクター』と『ゴブリンゾンビ』を除外し、カードを1枚ドロー!」
 『酒呑童子』は墓地の2体のアンデット族の魂を瓢箪にしまい、センリに1枚の手札を与えた。



「……このカードをここで引くとはな。」
 ……そしてドローしたカードを確認したセンリは、小さくそう呟いた……。

「墓地の『スカル・フレイム』を除外し……来い!『スピード・キング☆スカル・フレイム』!!」
 センリが墓地の『スカル・フレイム』を除外すると、突然場に一陣の風が吹き荒れ……その風を切り裂きながら、半人半馬のアンデット族最速のモンスターが出現した!

「攻撃力2600……?でも『ミスティック・エンジェル』の攻撃力は2750だから、攻撃できないよ!」
「ああ……だが、『ミスティック・エンジェル』を破壊できなくても、レイ自身は……どうだ?」
 センリは、レイに対して軽くそう言った。

「え……?」
 レイは、その言葉に少しゾクッとしていた……。

「手札から、魔法カード『奇跡の発掘』を発動!除外されたモンスター3体……『馬頭鬼』、『ネクロ・ガードナー』、『スカル・フレイム』を墓地に戻すぜ!」
 


奇跡の発掘
通常魔法
自分のモンスターが5体以上ゲームから除外されている場合、
その内の3体を墓地に戻す。


「墓地から『馬頭鬼』を除外し、効果発動!墓地のアンデット族……『スカル・フレイム』を守備表示で特殊召喚!」
 センリがそう言うと、墓地からマントを身にまとい、全身から炎を発する骸骨が現れた!

「『スカル・フレイム』の効果発動!バトルフェイズを放棄する事で、手札から『バーニング・スカルヘッド』を1体特殊召喚するぜ!」
 センリがそう言うと、『スカル・フレイム』は開けた右手の上に炎をまとった頭蓋骨を出現させ……

「手札から特殊召喚された『バーニング・スカルヘッド』の効果発動!レイに1000ポイントのダメージを与えるぜ!」
 ……その頭蓋骨をレイに向かって投げつけ、ライフを大きく削った!


スカル・フレイム
炎 レベル8
【アンデット族・効果】
1ターンに1度、手札から「バーニング・スカルヘッド」1体を特殊召喚する事ができる。
この効果を発動するターン、自分はバトルフェイズを行う事ができない。
また、自分のドローフェイズ時に通常のドローを行う代わりに、
自分の墓地に存在する「バーニング・スカルヘッド」1体を手札に加える事ができる。
攻撃力2600 守備力2000


レイLP 1900→900

「(こ……このままじゃ……)」
 ライフを大きく削られたレイは、少し不安そうに心の中でそう呟いた……。

「『マスドライバー』の効果発動!『バーニング・スカルヘッド』を射出だ!」
「うっ……!」(レイLP 900→500)
 さらにライフを致命的な値にまで削られたレイは、思わずそう言った……。

「さらにもう1度『マスドライバー』の効果発動!『バーニング・スカルヘッド』を射出だ!」
「(まだ……まだ、何とか……!)」(レイLP 500→100)
 自分の伏せカードを確認したレイは、何とか心を落ち着かせようとしていた……。

「これで終わりだ!『スピード・キング☆スカル・フレイム』の効果発動!墓地の『バーニング・スカルヘッド』の枚数×400ポイントのダメージを与えるぜ!」
 センリがそう言うと、『スピード・キング☆スカル・フレイム』の周りに3体の『バーニング・スカルヘッド』の幻影が出現し、レイに向かって飛んでいった……。











「おぉっと!!この効果が通れば、1200ポイントのダメージを与えてセンリ君の勝ちです!レイちゃんは、この効果を封じる術を持ち合わせているのでしょうか!!?」
 千里は、声を張り上げてそう実況した。











「(いや……ここで終わる訳無いよ。)」
 それに対し、レイのデュエルの一挙手一投足を逃さず確認していたナオは、心の中でそう呟いた……。











「……墓地の『ダメージ・イーター』を除外して、効果を発動するよ!この効果で『スピード・キング☆スカル・フレイム』の効果で受けるダメージを回復に変換するよ!」
 ……レイがそう言うと、突然レイの墓地から黄色のウナギの様な形のモンスターが出現し……『スピード・キング☆スカル・フレイム』の放った炎に喰らい付き、レイのライフへと変換した!


スピード・キング☆スカル・フレイム
風 レベル10
【アンデット族・効果】
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地に存在する「スカル・フレイム」1体を
ゲームから除外した場合に特殊召喚する事ができる。
1ターンに1度、自分の墓地に存在する「バーニング・スカルヘッド」の数
×400ポイントダメージを相手ライフに与える事ができる。
また、このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、
自分の墓地に存在する「スカル・フレイム」1体を特殊召喚する事ができる。
攻撃力2600 守備力2000

ダメージ・イーター
闇 レベル2
【悪魔族・効果】
相手がダメージを与える魔法・罠・効果モンスターの効果を発動した時、
墓地に存在するこのカードをゲームから除外して発動する事ができる。
その効果は、ライフポイントを回復する効果になる。
この効果は相手ターンにのみ発動する事ができる。
攻撃力100 守備力800


レイLP 100→1300

「なるほどな。『ミスティック・エンジェル』の効果で『ダメージ・イーター』をコストにしていたか……。」
 センリは、残念そうにそう呟いた。

「『スカル・フレイム』の効果でこのターンバトルフェイズは行えないか……。『酒呑童子』を守備表示に変更するぜ!ターンエンド!」
 これ以上ライフを削る事に意味が無いと悟ったセンリは、そう言いながらターンを終えた。


現在の状況
センリ LP…3500
    手札…0枚
    場…スピード・キング☆スカル・フレイム(守備力2000・守備表示)
      スカル・フレイム(守備力2000・守備表示)
      酒呑童子(守備力800・守備表示)
      マスドライバー(表側表示)

レイ LP…1300
   手札…2枚
   場…ミスティック・エンジェル(攻撃力2750・攻撃表示)
     裏守備モンスター1体
     伏せカード1枚


「ボクのターン……ドロー!」
 レイは、少し不安そうにカードをドローした……。

「……『スカル・フレイム』は、ドローフェイズに通常のドローをする代わりに、墓地の『バーニング・スカルヘッド』を手札に加える効果を持っている……。このカードを除去しない限り、俺の勝利は揺るぎないぜ。」
 そんなレイに対して、センリは軽くそう言った。

「(それに……センリ君の墓地には『ネクロ・ガードナー』もいるし……対処するカードが、多すぎるよ……。)」
 そしてレイは、センリの墓地に置かれたカードにさらなる畏怖を感じていた……。











「(とりあえず……効果ダメージを何とかしないとレイの勝ちは無いね……。その方法はあるけど……レイなら気付くはずだよ。)」
 レイの後ろでデュエルを見学しているナオは、このターンレイが助かる方法を軽く考察していた……。











「手札から……『次元合成師』を攻撃表示で召喚するよ!」
 レイの場に、白い仮面を付けたモンスターが現れた。

「それから……『クリッター』を反転召喚!」
 さらにレイの場に、茶色の体をした三つ目のモンスターが姿を現した。

「(3体のモンスターが攻撃表示か……。『酒呑童子』は破壊されたな……。)」
 センリは、心の中で残念そうにそう呟いた。

「『ミスティック・エンジェル』で、『スピード・キング☆スカル・フレイム』に攻撃!」
 『ミスティック・エンジェル』は、『スピード・キング☆スカル・フレイム』の胴体部に光の矢を解き放ったが……

「墓地の『ネクロ・ガードナー』を除外し、効果発動!『ミスティック・エンジェル』の攻撃を無効にするぜ!」
 その攻撃は、墓地から現れた『ネクロ・ガードナー』の幻影に再びかき消された……。

「『次元合成師』で、『酒呑童子』に攻撃!」
 『次元合成師』の手から放たれた魔力は、『酒呑童子』に対して何の抵抗も及ぼさずに直撃し、そのまま破壊された……。

「メインフェイズ2に入るよ!『次元合成師』の効果発動!デッキの1番上のカードを除外して、攻撃力を500ポイントアップさせるよ!」
 レイがそう言いながらデッキの1番上のカードを自分のポケットにしまうと、『次元合成師』の攻撃力は少しだけ高まった。

次元合成師 攻撃力1300→1800

「それから……『次元合成師』を対象にして、伏せ罠カード『デストラクト・ポーション』を発動!この効果で『次元合成師』を破壊して
、ライフを1800ポイント回復するよ!」


デストラクト・ポーション
通常罠
自分フィールド上に存在するモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターを破壊し、破壊したモンスターの
攻撃力分だけ自分のライフポイントを回復する。


レイLP 1300→3100

「破壊された『次元合成師』の効果を発動するよ!除外された『ダメージ・イーター』を手札に!」
 『次元合成師』は破壊される間際に、異次元の藻屑となった『ダメージ・イーター』の魂を再生成し、レイの手札へと与えた。


次元合成師
光 レベル4
【天使族・効果】
1ターンに1度だけ、自分のデッキの一番上のカードをゲームから除外し、
さらにこのカードの攻撃力をエンドフェイズ時まで500ポイントアップする事ができる。
自分フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、
ゲームから除外されている自分のモンスターカード1枚を選択し、
手札に加える事ができる。
攻撃力1300 守備力200


「『ミスティック・エンジェル』の効果を発動するよ!手札の『ダメージ・イーター』を捨てて、カードを1枚ドロー!」
 そして回収したカードをすぐさま墓地へと送り、カードを1枚ドローした。

「カードを2枚場に伏せて、ターンエンド!」


現在の状況
レイ LP…3100
   手札…1枚
   場…ミスティック・エンジェル(攻撃力2750・攻撃表示)
     クリッター(攻撃力1000・攻撃表示)
     伏せカード2枚

センリ LP…3500
    手札…0枚
    場…スカル・フレイム(攻撃力2600・攻撃表示)
      マスドライバー(表側表示)











「(『デストラクト・ポーション』の破壊と回復は同時発動で、回復力は場での攻撃力に依存される……。『次元合成師』の様なカードとの相性は抜群ッスね……。)」
 カムイは、腕を組みながらレイの戦略を軽く考察していた……。











「俺のターン、ドロー!」
 センリは、軽くカードを1枚ドローし……

「手札から……魔法カード『強欲で謙虚な壺』を発動!デッキの上からカードを3枚めくり……その中から1枚を手札に加えるぜ!俺が手札に加えるカードは……『アトバンスドロー』だ!」
 ……デッキからカードを3枚めくり、今必要なカードを手札に加えた。


強欲で謙虚な壺
通常魔法
自分のデッキの上からカードを3枚めくり、
その中から1枚を選択して手札に加え、
残りのカードをデッキに戻す。
「強欲で謙虚な壺」は1ターンに1枚しか発動できず、
このカードを発動するターン自分は特殊召喚する事ができない。


「『スカル・フレイム』をコストに、魔法カード『アトバンスドロー』を発動!デッキからカードを2枚ドロー!」
 さらにセンリは、手札に加わったカードを使用し、手札を補充した。


アトバンスドロー
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する
レベル8以上のモンスター1体をリリースして発動する。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。


「『スピード・キング☆スカル・フレイム』を攻撃表示に変更し……行くぜ!『スピード・キング☆スカル・フレイム』で、『クリッター』に攻撃!」
 センリの攻撃宣言によって、『スピード・キング☆スカル・フレイム』は『クリッター』を突撃で粉砕し、そのままの勢いでレイに対して突撃したが……

「ダメージ計算時に……伏せ罠カード『ガード・ブロック』を発動するよ!戦闘ダメージを無効にして、デッキからカードを1枚ドロー!」
 ……その突撃の衝撃は、レイの目の前ではじけて消え、レイに1枚の手札を与えた。


ガード・ブロック
通常罠
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。


「墓地に送られた『クリッター』の効果を発動するよ!デッキから、攻撃力1500以下のモンスター……『バトルフェーダー』を手札に!」
 さらにレイは、デッキから1枚のカードを探し出し、自分の手札に加えた。


クリッター
闇 レベル3
【悪魔族・効果】
このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、
自分のデッキから攻撃力1500以下のモンスター1体を手札に加える。
攻撃力1000 守備力600


「『バトルフェーダー』か……。モンスターをセットし、カードを1枚場に伏せ、ターンエンド!」
 センリは手札をすべてセットし、自分のターンを終えた。


現在の状況
センリ LP…3500
    手札…0枚
    場…スピード・キング☆スカル・フレイム(攻撃力2600・攻撃表示)
      裏守備モンスター1体
      マスドライバー(表側表示)
      伏せカード1枚

レイ LP…3100
   手札…3枚(内1枚バトルフェーダー)
   場…ミスティック・エンジェル(攻撃力2750・攻撃表示)
     伏せカード1枚


「ボクのターン……ドロー!」
 レイは、デッキからカードを1枚ドローし……

「手札を1枚捨てて、『ミスティック・エンジェル』の効果を発動するよ!デッキからカードを1枚ドロー!」
 そして手札を1枚捨て、新たにカードを1枚ドローした。

「手札から……『ミスティック・ベビー・ドラゴン』を召喚するよ!」
 レイの場に、卵の殻をかぶった緑色のドラゴンが出現し……

「それから……手札から、魔法カード『ミスティック・レボリューション』を発動!この効果で、『ミスティック・ベビー・ドラゴン』を一人前のドラゴンに成長させるよ!」
 レイがそう言うと、『ミスティック・ベビー・ドラゴン』の体が優しい光に包まれ……











「来て!『ミスティック・ドラゴン』!」
 ……巨大な体をした緑色のドラゴンとなってレイの場に出現した!


ミスティック・ベビー・ドラゴン
光 レベル4
【ドラゴン族・効果】
相手ターンのエンドフェイズ毎に、このカードにミスティックカウンターを1つ乗せる。
このカードに乗ったミスティックカウンターの個数によって、以下の効果を得る。
(特殊召喚されたターンには、この効果を発動できない。)
1個:このカードの元々の攻撃力は倍になる。
2個:このカードをリリースすることで、自分の手札・デッキから
「ミスティック・ドラゴン」1体を特殊召喚する。
攻撃力1200 守備力700

ミスティック・レボリューション
通常魔法
自分フィールド上の「ミスティック・ベビー」と名のついたモンスター
1体を選択し、発動することができる。
選択したモンスターをリリースし、そのモンスターに記させたモンスター
1体を特殊召喚することができる。

「『ミスティック・ドラゴン』……攻撃力3600のモンスターか!」

「行くよ……!『ミスティック・ドラゴン』で、『スピード・キング☆スカル・フレイム』に攻撃!ミスティア・フレア!!」
 『ミスティック・ドラゴン』は、口から激しい炎を吹き出して『スピード・キング☆スカル・フレイム』を一瞬で焼き尽くし、その余波がセンリに直撃しそうになったが……



「……伏せ罠カード『ガード・ブロック』だ。この効果で戦闘ダメージを0にし、カードを1枚ドローさせてもらうぜ。」
 その炎はセンリの目の前で掻き消え、センリに1枚の手札を与えた。

「さらに……破壊された『スピード・キング☆スカル・フレイム』の効果発動!墓地から『スカル・フレイム』を特殊召喚!」
 センリがそう言うと、『スピード・キング☆スカル・フレイム』の胴体部分が馬から分離し、『スカル・フレイム』となって再びセンリの場へと舞い戻った!

「でも……守備力2000なら『ミスティック・エンジェル』で戦闘破壊できるよ!『ミスティック・エンジェル』で、『スカル・フレイム』に攻撃!」
 蘇った『スカル・フレイム』は、『ミスティック・エンジェル』の放つ矢を受けて一瞬で破壊された……。

「これで……ターンエンド!」


現在の状況
レイ LP…3100
   手札…2枚
   場…ミスティック・エンジェル(攻撃力2750・攻撃表示)
     ミスティック・ドラゴン(攻撃力3600・攻撃表示)
     伏せカード1枚

センリ LP…3500
    手札…1枚
    場…裏守備モンスター1体
      マスドライバー(表側表示)


「俺のターン、ドロー!」
 センリは、軽くカードを1枚ドローし……

「『マスドライバー』の効果発動!セットされた『ゴブリンゾンビ』を射出し、レイに400ポイントのダメージを与えるぜ!」
 そして『マスドライバー』の効果発動を宣言し、『マスドライバー』の砲身にエネルギーを充填させた!

「(戦闘ダメージは受けないから、墓地の『ダメージ・イーター』の効果は使わなくていいかな……?)」
 レイは、心の中で少し考え、『マスドライバー』のダメージを受け入れることにした……。

レイLP 3100→2700

「……仕方ないな。墓地に送られた『ゴブリンゾンビ』の効果発動!デッキから『ゾンビ・マスター』を手札に加える!」
 センリはそう言いながらデッキから『ゾンビ・マスター』のカードを探し出し、手札に加えた。

「さらに……手札から、魔法カード『生者の書−禁断の呪術−』を発動するぜ!俺の墓地のアンデット族1体……『ゴブリンゾンビ』を特殊召喚し、レイの墓地から『クリッター』を除外!」
 センリがそう言いながら1枚のカードを発動させると……レイの墓地の『クリッター』の魂が消滅し、それと引き換えにセンリの墓地から『ゴブリンゾンビ』が蘇った!


生者の書−禁断の呪術−
通常魔法
自分の墓地に存在するアンデット族モンスター1体を特殊召喚し、
相手の墓地に存在するモンスター1体をゲームから除外する。


「さらに『マスドライバー』の効果発動!『ゴブリンゾンビ』を射出だ!」
「きゃっ!」(レイLP 2700→2300)
 『マスドライバー』からの砲撃を受けたレイは、思わずそう言った。

「もう1度、墓地に送られた『ゴブリンゾンビ』の効果発動!デッキから加えるカードは……守備力1000の『火車』だ!」
 さらにセンリは、何度目になるのか分からないデッキサーチを行った。

「行くぜ!手札から……『ゾンビ・マスター』を召喚!」
 センリが『ゴブリンゾンビ』の効果で手札に加えたカードを召喚すると、場に灰色のマントを身に付けた死霊使いが現れた。

「手札の『ピラミッド・タートル』を墓地に送り、『ゾンビ・マスター』の効果発動!墓地から『酒呑童子』を特殊召喚!」
 『ゾンビ・マスター』は、両手の指から糸状のエネルギーをセンリの墓地に向かって伸ばすと……墓地の『酒呑童子』の四肢と頭にその糸が取り付けられ、人形の様に蘇った!


ゾンビ・マスター
闇 レベル4
【アンデット族・効果】
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
手札のモンスターカード1枚を墓地に送る事で、
自分または相手の墓地に存在するレベル4以下のアンデット族モンスター1体を特殊召喚する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
攻撃力1800 守備力0


「『酒呑童子』の効果発動!墓地から『バーニング・スカルヘッド』2体を除外し、カードを1枚ドロー!」
 『酒呑童子』は、瓢箪の中に『バーニング・スカルヘッド』2体の魂を封入し、センリに1枚の手札を与えた。

「さて……俺の場にアンデット族が2体存在する事で、新たなモンスターを特殊召喚させてもらうぜ!」
 センリがそう言いながら1枚のカードをデュエルディスクに置くと、突然『にゃーん』と効果音が鳴り……











「手札から……『火車』を特殊召喚!」
 ……センリの場に、鉄製の一輪車を引く化け猫の様な姿をしたモンスターが特殊召喚された!

「特殊召喚された『火車』の効果が発動するぜ!場のモンスターすべてをデッキに戻す!冥界入口!!」
 センリがそう言うと、『火車』は鉄製の一輪車を引き、走り回りながら場の『ミスティック・エンジェル』、『ミスティック・ドラゴン』、『ゾンビ・マスター』、『酒呑童子』をかき集めた!
 そしてそのまま一輪車に持ち去られた魂は、墓地でも異次元でも無く成仏できないデッキへと強制送還された……。


火車
地 レベル8
【アンデット族・効果】
このカードは通常召喚できない。
自分フィールド上にアンデット族モンスターが
表側表示で2体以上存在する場合のみ特殊召喚する事ができる。
このカードが特殊召喚に成功した時、
フィールド上に存在するこのカード以外のモンスターを全てデッキに戻す。
このカードの攻撃力は、この効果でデッキに戻した
アンデット族モンスターの数×1000ポイントになる。
攻撃力? 守備力1000


「(……『火車』からの『八汰烏』に繋げられれば、ネタ的にも完璧だったんだがな……。)」
 センリは、心の中で小さくそう呟いた……。

「バトルフェイズに入るぜ!『火車』でダイレクトアタック!火炎車!」
 センリがそう言うと、『火車』の引く一輪車の車輪が燃え上がり、激しく赤色と青色の火の粉を撒き散らしながらレイに向かって飛んでいったが……


「……手札から、『バトルフェーダー』の効果発動!手札からこのモンスターを特殊召喚して、バトルフェイズを終了させるよ!」
 突然レイの場に振り子型のモンスターが出現し、バトルフェイズを強制終了させた!


バトルフェーダー
闇 レベル1
相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動する事ができる。
このカードを手札から特殊召喚し、バトルフェイズを終了する。
この効果で特殊召喚したこのカードは、
フィールド上から離れた場合ゲームから除外される。
攻撃力0 守備力0


「『バトルフェーダー』か……当然分かってたぜ!カードを1枚場に伏せ、ターンエン……」
「エンドフェイズに……伏せ罠カード『闇霊術−「欲」』を発動するよ!『バトルフェーダー』をリリースして、カードを2枚ドロー!」
 センリの手札が0枚になった事を確認したレイが、伏せておいた罠カードを表にすると、『バトルフェーダー』が消え去りレイに2枚の手札を与えた。


闇霊術−「欲」
通常罠
自分フィールド上に存在する闇属性モンスター1体を生け贄に捧げて発動する。
相手は手札から魔法カード1枚を見せる事でこの効果を無効にする事ができる。
見せなかった場合、自分はデッキからカードを2枚ドローする。


現在の状況
センリ LP…3500
    手札…0枚
    場…火車(攻撃力2000・攻撃表示)
      マスドライバー(表側表示)
      伏せカード1枚

レイ LP…2300
   手札…3枚
   場…伏せカード1枚


「ボクのターン……ドロー!」
 レイは、自分の手札を確認しながらカードを1枚ドローした……。

「(……今の手札じゃ『火車』の攻撃は防げないけど……この伏せカードを使えば……何とかなるかな?)」
 そして4枚の手札を確認し、伏せカードに手をかけた……。

「伏せ罠カード……『ゴブリンのやりくり上手』を発動するよ!」
 手始めにレイは、伏せカードを1枚表にし……

「それにチェーンして、手札から……速攻魔法『ダブル・サイクロン』を発動!この効果で、『ゴブリンのやりくり上手』と『マスドライバー』するよ!」
 さらに手札の速攻魔法を発動すると、『ゴブリンのやりくり上手』と『マスドライバー』は激しい旋風によって吹き飛ばされた!

「それから……『ゴブリンのやりくり上手』の効果発動!デッキからカードを3枚ドローして、手札を1枚デッキの1番下に送るよ!」
 手札交換をしたレイは、5枚の手札を軽く確認し……

「……墓地から天使族・光属性モンスター3体……『コーリング・ノヴァ』、『ハネワタ』、『ミスティック・ベビー・エンジェル』と、悪魔族・闇属性モンスター1体……『ダメージ・イーター』を除外して……」
「何!4体のモンスターだと!?」
 センリがそう驚いている間に、レイの墓地から4体のモンスターが除外され……











「……来て!『天魔神 エンライズ』!!」
 そしてその4体の魂が混沌の渦に巻き込まれ……その中から、灰色の翼を持ち、目元を鉄の様な輪で隠し、全身から威光を放つ1体のモンスターが姿を現した!











「(『エンライズ』か……。3年前と変わらない……いや、内部的観点で見れば、明らかに変わっている……か。)」
 フェイトは、『エンライズ』の姿を懐かしむ様に心の中でそう呟き……

「(……3年の月日は、待つには長く、何かを成すには短すぎると言う事か……。)」
 ……そして心の中で、自らを皮肉る様にそう言葉を続けた……。











「『エンライズ』の効果を発動するよ!この効果で……『火車』をゲームから除外!」
 レイがそう言うと、『エンライズ』の腹に開いた異次元へと繋がる穴が開き、『火車』を場から消滅させようとしたが……

「伏せ罠カード『地霊術−「鉄」』を発動!地属性の『火車』をコストに、墓地からレベル4以下の地属性モンスターを特殊召喚するぜ!」
 『火車』は、消滅させられる前に墓地へと逃げ込み、『エンライズ』の攻撃が届かない位置に『ピラミッド・タートル』を蘇らせた!


天魔神 エンライズ
光 レベル8
【天使族・効果】
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の光属性・天使族モンスター3体と闇属性・悪魔族モンスター1体を
ゲームから除外した場合のみ特殊召喚する事ができる。
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体をゲームから除外する事ができる。
この効果を発動する場合、このターンこのカードは攻撃する事ができない。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
攻撃力2400 守備力1500

地霊術−「鉄」
通常罠
自分フィールド上に存在する地属性モンスター1体を生け贄に捧げる。
自分の墓地から、生け贄に捧げたモンスター以外で
レベル4以下の地属性モンスター1体を特殊召喚する。


「じゃあ……カードを3枚場に伏せて、ターンエンド!」
 『ピラミッド・タートル』の効果を警戒したレイは、手札をほぼすべてセットしてターンを終えた。


現在の状況
レイ LP…2300
   手札…1枚
   場…天魔神 エンライズ(攻撃力2400・攻撃表示)
     伏せカード3枚

センリ LP…3500
    手札…0枚
    場…ピラミッド・タートル(攻撃力1200・攻撃表示)


「俺のターン、ドロー!」
 センリは、デッキからカードを1枚ドローし……

「手札から、魔法カード『貪欲な壺』を発動!墓地の『バーニング・スカルヘッド』、『スカル・フレイム』、『ゴブリンゾンビ』、『火車』、『スピード・キング☆スカル・フレイム』をデッキに戻し、カードを2枚ドロー!」
 そしてドローしたカードをすぐさま発動させ、新たに2枚のカードをドローした。


貪欲な壺
通常魔法
自分の墓地に存在するモンスター5体を選択し、
デッキに加えてシャッフルする。
その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。


「さらに……手札から2体目の『ピラミッド・タートル』を召喚!」
 ドローしたカードを確認したセンリは、場にいたモンスターと同じ姿形をしたモンスターを攻撃表示で召喚した。

「行くぜ!『ピラミッド・タートル』で『エンライズ』に……」
「待って!伏せ罠カード……『デストラクト・ポーション』を発動するよ!『エンライズ』を破壊して、ライフを2400ポイント回復するよ!」
 センリの攻撃宣言を聞きつけたレイは、その攻撃を取り止めさせるために伏せておいたカードを発動させた!
 伏せ罠カードが表になったことを確認した『エンライズ』はチラッとレイの方を見、破壊される事を承諾した表情をして自ら進んで墓地へと行った……。

レイLP 2300→4700

「モンスターが破壊されたから……ライフを1000払って、伏せ罠カード『魂の綱』を発動!この効果で……来て!『ジェルエンデュオ』!!」
 そしてレイが2枚目の伏せ罠カードを発動させると、『エンライズ』はレイのデッキへと綱を伸ばし、デッキから後続のモンスターを呼び出した!


魂の綱
通常罠
自分フィールド上のモンスターが破壊され墓地へ送られた時に発動する事ができる。
1000ライフポイントを払う事で、自分のデッキからレベル4モンスター1体を
特殊召喚する事ができる。

ジェルエンデュオ
光 レベル4
【天使族・効果】
このカードは戦闘では破壊されない。
このカードのコントローラーがダメージを受けた時、
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを破壊する。
天使族・光属性モンスターをアドバンス召喚する場合、
このカードは2体分のリリースとする事ができる。
攻撃力1700 守備力0


レイLP 4700→3700











「おぉっとこれは!破壊と回復が同じタイミングで発生する事を利用した、『魂の綱』のコストと発動条件を同時に満たす有力なコンボです!そして『ジェルエンデュオ』が守備表示である事によって、センリ君は自爆特攻を行う事ができません!」
 千里は、面白い攻撃回避方に声を張り上げていた。











「『ジェルエンデュオ』……戦闘で破壊されないモンスターか!カードを1枚場に伏せ、ターンエンド!」
 自爆特攻させる事ができなくなったセンリは、不本意ながらも自らのターンを終えた。


現在の状況
センリ LP…3500
    手札…0枚
    場…ピラミッド・タートル(攻撃力1200・攻撃表示)×2
      伏せカード1枚

レイ LP…2300
   手札…1枚
   場…ジェルエンデュオ(守備力0・守備表示)
     伏せカード1枚


「ボクのターン……ドロー!」
 2体の『ピラミッド・タートル』を前にし、レイは不安そうにカードを1枚ドローした……。
 そして、そのドローしたカードを確認した瞬間……

「(き……来た!)」
 ……ハッとした表情になり、心の中でそう呟いた……。











「(あのカードは……!出すのか……。)」
 レイがドローしたカードを確認したナオは、心の中でそう呟いた……。











「永続罠……『闇次元の解放』を発動!この効果で……『クリッター』を特殊召喚するよ!」
 レイが最後の伏せカードを表にすると、突然レイの場に異次元への隙間が開き、その中から三つ目のモンスターが出現した!


闇次元の解放
永続罠
ゲームから除外されている自分の闇属性モンスター1体を選択し、
自分フィールド上に特殊召喚する。
このカードがフィールド上から離れた時、
そのモンスターを破壊してゲームから除外する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。


「『ジェルエンデュオ』は、天使族の光属性モンスターをアドバンス召喚する時2体分のリリースとして扱えるんだよ!『ジェルエンデュオ』と『クリッター』をリリースして――」
「何!!……3体だと!?」
 センリが驚いている間に、レイの場の2体ののモンスターが光の粒子となって場から消え去り……





















「――来て!『天魔神 ノートゥング』!!」
 ……粒子となった光が再び収束し、その中からブルーメタルで精製されたブレストプレートと白銀の軽装鎧、羽飾りの付いた髪留めに、絹の様な素材でできたスカートの様な物を身につけ、右手に光輝く剣を持った、戦乙女の様な1体のモンスターが姿を現した!!
 が……











 ドサッ……











 『天魔神 ノートゥング』が召喚された瞬間、突然レイが事切れたかの様に倒れ込んでしまった……。

「な……何が起こったんだ!?」
 ざわつく観客の中でセンリは、レイが突然崩れる様に倒れた事に、驚きの色を隠せずにいた……。











「(倒れた……だと?調整を誤ったか……?)」
 予想外の事態が起こってしまった事に対して、フェイトは自分のミスを悔やんでいた……。











「レイ……どうしたんだよ……。」
 ナオは、レイが倒れた事に驚き観客席から身を乗り出していた……。











「(デュエルで人が倒れる……?どう言う事ッスか……?)」
 カムイは、少し表情を強張らせて心の中でそう呟いた……。











「な……何と言う事でしょう!?モンスターが召喚された瞬間、突然レイちゃんが倒れてしまいました!」
 千里は、驚きをまったく包み隠さずにそうアナウンスし……

「……しかしこれではデュエル続行は不可能です!!あと5分して立ち上がらなければ……試合放棄とみなし、センリ君の勝利となります!!」
 ……そして解説としての役割を果たすべく、マイクを片手にこうも言い放った……。











「センリの勝ち……?レイの……負け……?」
 千里の一言を聞いたナオは、微かな声でそう呟き……

「(嫌だ……!あんな……意味の分からないカードでレイが負けるなんて……嫌だ……、負けさせ……たくない……!)」
 そして、心の中でそう自問自答していた……。











「あと1分!」
「(負けさせたく……無い……!)」
 千里のカウントダウンを耳にしたナオは、何かに弾き飛ばされる様に立ち上がり……





















「――待て!!」
 2メートル近く高さのギャップがある観客席からデュエル場へと飛び降り、レイの元へと走っていった……。











「ナオ……。」
 ナオの向かい側にいたカムイは、小さく一言そう言った……。











「おぉっ!レイちゃんの身を心配してナオくんの乱入ですか!!これは熱い展開ですね!!」
 ナオがレイの元に走って行く様子を見た千里は、高揚する気持ちを撒き散らす様にマイクでその声をデュエル場中に広げた。

「……このデュエル……ボクが引き継ぐ!!」
 レイの隣に立ったナオは、千里を見て大きな声でそう言った。



次回予告

リナ「引継ぎデュエルって……判定負けにさせちゃえばややこしい事になんないのに。」
カムイ「まあ……あの状況で負けると、何が起こるか分からないッスからね……。異常な状態を心配して駆け寄るのは、当然の行為だと思うッスよ。」
リナ「だよね〜。あの状態になってデュエル場に乱入する事に罰則与えようとしちゃう人がいたら、それこそ鬼だよ。」
カムイ「……それは、海馬コーポレーションの社風批判ッスかね?」



次回、『GX plus!』第五十四話!



『unknown』

カムイ「気絶したレイは……いったい何を見るんスか?」




第五十四話 unknown

「……どこ……ここ……」

 力が入らない……
 まるで……自分の体じゃ無いみたいに……


「おまたせ。」
「え?待ってないけど……って、誰?」
 目をやった先には、赤いリボンで締められたら白いドアノブカバーの様な帽子をかぶり、白い半袖の服の上に真紅色のボレロを着、首下の白色の襟の下に黄色のリボンを巻き、腰の辺りには白色の太い布を背中でリボン結びし、腰から下は真紅色のスカートみたいな物を履いた子供が突っ立っていた……。

「ボク?ティルヴィングってよばれてるかな。そうよばれてるからそうなんだろうね。」
 自らをティルヴィングと名乗った子供は、レイの目の前に座りながらそう言った。






「こわすのさ。」
「え……?」
「そうだよ、こわすのさ。モンスターもせいれいもなにもかも!ぜんぶぜ〜んぶぶっこわしちゃおうよ〜!」

「嫌……そんなの嫌だよ……!」


「なんでなのさ。おもしろいよ?こわすのって。ほら、そうぞうしてみてよ。もってるけんをブスッてしたら、そのブスッてしたとこから……」
 ティルヴィングは、レイに対して嬉しそうにそう言い……

「そうそう、こんなかんじのいろのがドバ〜ッてでてきて、こわれたののまわりがベチャベチャになるんだよ。」
 ……自分の着ている真紅色のボレロを指差し、そして両手を大きく広げながらそう言った。

「それからまわりをチョキチョキして、でてきたのをペロペロしたり、なかの……こんなかんじのいろのをポキッてしたり、やらかいのをきゅっとしてクチャってしたりさ。ねっ、おもしろくなってきたよね。」
 ティルヴィングは、自分の右手の指先をペロペロなめたり肩の辺りの服の白色を指で示したり、右手を握りしめてパッと開いたりしながらそう言った。

「うっ……!」
 レイは、ティルヴィングが楽しそうに言った事のおぞましさに、吐き気を起こしていた……。





「ねえ……1つ聞いていい?」
「なに?」
 レイにそう言われたティルヴィングは、くりくりした目をレイに向けながらそう言った。

「ここって……君以外に誰もいないの?」
 レイは、自分とティルヴィングしか無い空間の中で不安そうにそう尋ねた。

「いたよ。」
 ティルヴィングは、端的にそう答えた。

「でもみんな、ボクとあそんだらどこかにいなくなっちゃったのさ。」
 そして、表情一つ変えずにそう続け……

「もどってこれないドコカにね。」
 ……最後に、そう付け加えた。

「おねえちゃんはボクのあたらしいトモダチ。いなくなったりしないよね。」
 ティルヴィングは、ニパッとしながらそう言った。

「(どう言う事……?『誰もいなくなった』って、まさか……)」
 ティルヴィングの言葉を聞いたレイは、頭の中に嫌な予感を過ぎらせた……。




「ねえおねえちゃん。ボクとあそぼうよ。」
 ティルヴィングは、両膝と両手を床に付けて四つん這いになりながら真横のレイの顔を覗き込み、ニパッとしながらそう言った。

「遊……ぶ?」
「うん。でもみんな、ボクとちょっとあそんだだけでかんたんにこわれちゃうのさ。」
 ティルヴィングは、端的にそう言葉を続け……











「おネエちゃんも、すぐコワれちゃう?」
 ……そして一言、自分の目を爛々とさせ、食い入る様にレイの目を見ながらそう言葉を続けた。

「……ぃ……」
 ティルヴィングのそんな様子を見たレイは、腰を抜かして経たれ込んでしまい……

「……ぃ……嫌……!」
 ……そしてそのまま、震える足を引きずりながらティルヴィングから必死で離れようとした……。

「あっ、おにごっこ?じゃあまずはボクのおにか。」
 逃げようとしているレイを見たティルヴィングは、軽くそう言い……












 背中から抱き付く様に飛びかかった!

「ひっ!」
「つ〜かま〜えたっと。」
 事切れたかの様に驚くレイに対して、ティルヴィングは一言そう言った。

「……っっ……!!」
 両腕を押さえつけられながら背中からのしかかられたレイは、ティルヴィングを必死に振り解こうとしたが……小さな見た目からは想像できないほどの強い力で押さえつけられたためまったく身動きがとれず……

「……ぁっ……っ……!!」
 そしてそのとんでもない圧力によって、全身の骨が悲鳴を上げている感覚に襲われた……。

「(……殺され……る……!)」
 レイの頭の中に、このまま全身の骨を粉々に砕かれて自分が原型を留めないほどに『こわされる』光景が頭を過ぎり、思わず顔をうずめ目を瞑った……。











 しかし……

「じゃあつぎは、おねえちゃんがおにだね。じゅうかぞえてから、つかまえにきてよ。」
 ……ティルヴィングは軽くそう言いながら拘束を緩め、レイの下から走り去っていった……。



「…………?」
 あまりに唐突な発言を耳にしたレイは、ティルヴィングの走り去る姿を呆然と見て……

「に……逃げないと……。」
 ……少しして我に返ったレイは、とにかくティルヴィングから逃げたいと言う思いに駆られ、痛む全身を引きずりながらティルヴィングの向かった方の反対方向に去っていった……。





















 ――その頃、デュエル場では……

「しかし……ナオくんが引き継ぎですか。私はそれでもよろしいのですが、校長の方はよろしいのでしょうか!?」
 千里は、そう言いながら黒部校長に通信で尋ねた。

『構わぬよ。状況は完全に本校側の不利だ。たとえ誰であろうとも、逆転の可能性に縋るしかあるまい。』
 黒部校長は放送によって小さくそう呟き……

『……まあ、不慮の事故で勝ったとは思わせたくないのだがな。』
 そして、皮肉めいた口調でそう言った。

「……と言う事で、ナオくんがレイちゃんのデュエルを引き継ぐ事に決定いたしました!」
 黒部校長の言葉を聞いた千里は、マイクを握り締めて大声でそうアナウンスした……。











 ――龍也の部屋周辺にて……

「……つまり、あの『真紅眼の血塊龍』のカードには、不思議な力が働いていたのですよ。」
 龍也は、両手の指を噛み合わせながらそう言った。

「そうなんだ。……まっ、あのカードって何か変な感じがしたんだけどね。」
 リナは、軽くそう言った。











「(リナと剣山……さっきデュエルした奴等を引き連れて何を話すかと思えば……ややこしい話になってきやがった……。)」
 国崎は、龍也の会話に色々と興味を示していた

「(カードの精霊……?眉唾な存在だと思ってたが、あの龍也って奴は知ってんのか?)」


「どうしたんだい?国崎さん。」
 剣一は、盗聴している国崎に対して軽く話しかけた。

「ああいや……、通りかかった時に、ちと興味深い話が聞こえてきたんでな……。」
 国崎は、軽くそう言った。

「それなら、中でゆっくり話を聞いた方がいいんじゃ無いか?この情報は共有した方が都合がいいからね。」
 剣一はそう言いながら、国崎を部屋の中に誘い込もうとした。

「そ、そうか?……それなら、お邪魔させてもらうぜ。」
 国崎はその誘いに乗り、部屋に入って行った……。





















 ――その頃、謎の空間にて……

「お……追いかけてこない……?助かった……。」
 レイは、後ろを振り向いてティルヴィングの存在を確認し……

「……もしかして、あれが出口かな……。」
 そして自分の正面に存在する、光の射す空間に飛び込んで行った……。











 ――そして、デュエル場にて……

現在の状況
レイ LP…2300
   手札…1枚
   場…天魔神 ノートゥング(攻撃力3700・攻撃表示)
     闇次元の解放(表側表示)


センリ LP…3500
    手札…0枚
    場…ピラミッド・タートル(攻撃力1200・攻撃表示)
      伏せカード1枚


「『天魔神 ノートゥング』……攻撃力3700のモンスターか!」
 センリは、レイが召喚したモンスターの姿に、少し戸惑っていた……。

「(『ノートゥング』……?……そう言えば……『ノートゥング』を召喚したら、突然意識が飛んじゃって……)」
 センリの言葉を聞いたレイは、気を失う直前の事を思い出し……

「(でも……何で……?何で体が動かないの……?声が出ないの……?)」
 ……そして、まったく動かない自分の体に、違和感を感じていた……。

「『クリッター』の効果を発動するよ。デッキから『バトルフェーダー』を手札に加える。」
 ナオは、レイが身に付けたデュエルディスクに装着されたデッキの中から『バトルフェーダー』のカードを探し出し、手札に加えた。


クリッター
闇 レベル3
【悪魔族・効果】
このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、
自分のデッキから攻撃力1500以下のモンスター1体を手札に加える。
攻撃力1000 守備力600


「行くよ……!『ノートゥング』で、『ピラミッド・タートル』に攻撃!」
 ナオがそう言うと、『ノートゥング』は持っている剣を構え

「(え!?か、体が……勝手に……!)」
 そして、『ノートゥング』は持っていた剣を構え……そのまま『ピラミッド・タートル』を紙切れの様に引き裂いた!



「伏せ罠カード……『ガード・ブロック』を発動!『ノートゥング』の戦闘によって受ける俺へのダメージを0にし、カードを1枚ドローするぜ!」
 センリがそう言うと、センリの前に不思議なバリアが現れ……

「(……え……?)」
 ……そしてレイは、センリの前に発生した不思議なバリアとそれに阻まれる剣の姿を目の前で拝む感覚に襲われた……。


ガード・ブロック
通常罠
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。


「(嘘……もしかして……)」
 「見る」・「聞く」・「考える」意外の行為を行えず、自らの意思で体を動かせないレイの頭の中に、不吉な考えが浮かんだ……。

「(……なっちゃったの……?『ノートゥング』に……。)」











「戦闘破壊された『ピラミッド・タートル』の効果発動!デッキから守備力2000以下のアンデット族モンスター……『デス・ラクーダ』を守備表示で特殊召喚!」
 センリがそう言うと、『ピラミッド・タートル』の三角錐型の甲羅の中から場にミイラ化したラクダが現れた!


ピラミッド・タートル
地 レベル4
【アンデット族・効果】
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキから守備力2000以下のアンデット族モンスター1体を
自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。
攻撃力1200 守備力1400


「『ノートゥング』は、攻撃後に相手の場にモンスターが存在する時、もう一度攻撃できるよ……。2体目の『ピラミッド・タートル』に攻撃!」
 ナオがそう言うと、『ノートゥング』は2体目の『ピラミッド・タートル』の体も真っ二つに叩き割り……











 ――ズバッ!

 ……そのままセンリの胴を切り裂いた!

「……ぐっ……はっ……!?」(センリLP 3500→1000)
 『ノートゥング』の剣の攻撃を受けたセンリは、その部分から赤い鮮血を撒き散らせた……!
 そしてその鮮血の一部は、『ノートゥング』の頬と目に少しかかった……。


天魔神 ノートゥング
光 レベル10
【天使族・効果】
このカードはフィールド上から墓地に送られた場合にのみ特殊召喚する事が可能になる。
自分フィールド上に存在する光属性・天使族モンスター2体と
闇属性・悪魔族モンスター1体をリリースした場合のみ通常召喚することができる。
このカードは魔法・罠・効果モンスターの効果の対象にできない。
自分のターンに1度だけ、次の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚をゲームから除外する。
この効果を発動する場合、このターンこのカードは攻撃する事ができない。
●相手フィールドにモンスターが存在する場合のみ、
バトルフェイズ中にもう一度だけ攻撃する事ができる。
攻撃力3700 守備力2800











「な、何と言う事でしょうか!?センリ君の体が、『ノートゥング』によって引き裂かれたぁ!!?鮮血で染まるデュエルフィールドは、どちらの勝利で幕を引くのでしょうか!?」
 攻撃の光景を見た千里は、赤く染まったセンリの足元を見て思わずそう叫んだ……。
 そしてその光景を見た会場も、不安とどよめきが伝染し始めた……。










「(な……何で……!?)」
 レイは、視界の半分が突然紅く染まった事に驚き、右目の辺りに手をやろうとしたが……

「(……やっぱり……手も……全然動かせない……。)」
 ……やはり手はまったく反応せず、センリを目の前で見る事になった……。











「(何だ……!?この激痛は……っ!『ノートゥング』の攻撃は、ソリッドビジョンのはずだ……!?)」
 『ノートゥング』の攻撃を受けたセンリは、いきなり自分の上半身の一部が裂けた事に、戸惑いを抱いていたが……

「(だが……倒れる訳にいくか……!レイやナオが見ている目の前で……っ!!)」
 そして、気合いだけで歯を食いしばり……





















「……今のは、聞いたぜ……。」
 センリは口を右手親指でなぞり、目を見開きながらナオの方を見た……。

「……大丈夫……かい?」
 ナオは、傷口から血を流すセンリに対して小さくそう呟いたが……

「おいおい……ソリッドビジョンだぜ?本気で俺が、怪我したと思ってるのか?」
 センリは、そう言いながら、切られた所を軽く叩いて見せた……。











 ――観客席にて……

「……センリ……。あれは……」
 カムイは、小さくそう呟いた……。











「……痛くないのか?あの男は……。」
 ラケシスは、フェイトのローブの裾をつかみながらそう尋ねたが……

「……確実な答えを出す事は無理だな。」
 フェイトは、ラケシスに対して小さくそう言った。











「(ヤバいな……。これは、肋骨ごと切断されてやがる……。心臓まで届かなかったのが奇跡なくらいだ……。)」
 センリは、自分の傷口を叩いた事で肋骨が少しずれ、激しい痛みを感じ取っていた……。

「(……このデュエルが終わるまで、何とか耐えられるか……?)」
 そして口元から湧き出してきた血糸を親指で軽く拭い……

「『ピラミッド・タートル』の……効果、発動!デッキから……『酒呑童子』を、守備表示で特殊召喚!」
 デッキから『酒呑童子』を探し出し、デュエルディスクにセットした。

「……カードを1枚場に伏せて、ターンエンド。」
 ナオは、少し心配そうにカードを1枚セットし、ターンを終えた。


現在の状況
センリ LP…1000
    手札…1枚
    場…酒呑童子(守備力800・守備表示)
      デス・ラクーダ(守備力600・守備表示)

レイ LP…2300
   手札…1枚(バトルフェーダー)
   場…天魔神 ノートゥング(攻撃力3700・攻撃表示)
     闇次元の解放(表側表示)
     伏せカード1枚


「俺の、ターン……ドロー!」
 センリは、歯を食いしばりながらカードを1枚ドローした……。

「(『ノートゥング』を破壊する方法か……何とか、ナオのライフを0にする方法が必要だが……ダイレクトアタックは『バトルフェーダー』で封じられたか……。)」
 センリは、手札と場の状況を確認し……

「(今度こそ……『ノートゥング』の攻撃を食らうわけには行かないな……。状況次第では……サレンダーも、ありか……?)」
 そして、『ノートゥング』の攻撃を確実に食らわない方法を考え、手札に手をかけた……。

「メインフェイズに、入るぜ……。『酒呑童子』の効果、発動!除外された『火車』を、デッキの1番上に戻す!」
 センリがそう言うと、『酒呑童子』は除外された『火車』の魂を瓢箪から取り出し、


酒呑童子
地 レベル4
【アンデット族・効果】
1ターンに1度、次の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●自分の墓地に存在するアンデット族モンスター2体を
ゲームから除外する事で、自分のデッキからカードを1枚ドローする。
●ゲームから除外されている
自分のアンデット族モンスター1体をデッキの一番上に戻す。
攻撃力1500 守備力800


「さらに……『デス・ラクーダ』の効果、発動……っ!『デス・ラクーダ』を裏側守備表示に変更、するぜ……!」
 さらにセンリは、震える右手で『デス・ラクーダ』をセット状態にし……

「そして……『デス・ラクーダ』を反転召喚し、効果発動!カードを、1枚ドロー!」
 そして元に戻し、カードを1枚ドローした。


デス・ラクーダ
地 レベル3
【アンデット族・効果】
このカードは1ターンに1度だけ裏側守備表示にする事ができる。
このカードが反転召喚に成功した時、自分のデッキからカードを1枚ドローする。
攻撃力500 守備力600


「さら……に!手札から、『火車』を攻撃表示で、特殊召喚!」
 センリがそう言うと、『にゃーん』と死体をもらいにやってきた者の鳴き声が響き渡り……再びセンリの場に、猫型のモンスターが特殊召喚された!

「『火車』の、効果発動!場の、モンスターすべてを、デッキに戻す!」
 センリの言葉に従って、『火車』は手始めに自分の場の『酒呑童子』と『デス・ラクーダ』を一輪車の中に押し込み、そして『ノートゥング』も回収しようとしたが……











「伏せ罠カード……『亜空間物質転送装置』を発動するよ。この効果で、『ノートゥング』をゲームから除外する。」
 その車にさらわれる前に不思議な異次元への隙間が出現し、『ノートゥング』その隙間へと吸い込まれて場から消え去った……。


火車
地 レベル8
【アンデット族・効果】
このカードは通常召喚できない。
自分フィールド上にアンデット族モンスターが
表側表示で2体以上存在する場合のみ特殊召喚する事ができる。
このカードが特殊召喚に成功した時、
フィールド上に存在するこのカード以外のモンスターを全てデッキに戻す。
このカードの攻撃力は、この効果でデッキに戻した
アンデット族モンスターの数×1000ポイントになる。
攻撃力? 守備力1000

亜空間物質転送装置
通常罠
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、
発動ターンのエンドフェイズ時までゲームから除外する。



「バト……ル、フェイズだ!『火車』で、ダイレクトアタック!」
 センリは、痛みをこらえながら『火車』の攻撃宣言を行ったが……

「……手札から『バトルフェーダー』の効果を発動するよ。手札から特殊召喚して、バトルフェイズを終了させる。」
 ナオは反射的に手札の『バトルフェーダー』を特殊召喚し、『火車』の攻撃を防いだ。


バトルフェーダー
闇 レベル1
【悪魔族・効果】
相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動する事ができる。
このカードを手札から特殊召喚し、バトルフェイズを終了する。
この効果で特殊召喚したこのカードは、
フィールド上から離れた場合ゲームから除外される。
攻撃力0 守備力0


「カードを、2枚……場に伏せ……ターン、エンドだ……。」
 センリは、歯を食いしばりながら自分のターンを終えた……。

「……ボクのターン、ドロー。」
 ナオは、少し不安そうにカードをドローした。

「手札から、魔法カード『強欲で謙虚な壺』を発動するよ。デッキの上から3枚のカードをめくって、その中から、『大嵐』をボクの手札に加える。」


強欲で謙虚な壺
通常魔法
自分のデッキの上からカードを3枚めくり、
その中から1枚を選択して手札に加え、
残りのカードをデッキに戻す。
「強欲で謙虚な壺」は1ターンに1枚しか発動できず、
このカードを発動するターン自分は特殊召喚する事ができない。


「手札から……魔法カード『大嵐』を発動。センリの場の伏せカードを全部破壊する。」
 そして発動させた魔法カードの効果によって、センリの場の攻撃を防ぐ手段を破壊した……。


大嵐
通常魔法
フィールド上に存在する魔法・罠カードを全て破壊する。


「これで……終わりだよ。早くサレンダーしてよ。」
 センリの場の防衛手段をすべて奪ったナオは、そう言いながらセンリに降参を迫ったが……

「どうした……?攻撃すればいいだろ?これでナオの勝ちだ。」
 センリは、小さくそう呟いた……。

「な……何考えてるんだよ!そんな事……できるわけ、無いだろ……。攻撃なんて……」
 ナオがそう言っている間に、『攻撃』のワードを聞き付けた『ノートゥング』は愚直なほど冷徹に反応し、剣を構えて走って行った……。











「……已むを得まい。」
 フェイトは一言そう呟き、デュエル場の中へと自然に進んでいった……。

「……さすがにフェイト様も止めに行きましたか。」
「だがあの程度の怪我ならラケシスも普段から負っている。死ぬこたぁねぇだろ。」
 クロートーとアトロポスは、小さくそう話した。

「…………。」
 ラケシスは、黙りながらチラッとクロートーとアトロポスの方を見た……。











「や、止め……!」
 『ノートゥング』は、ナオの制止をまったく受け入れずに攻撃行動を行った……。
 センリの命の危機を感じた『火車』は、攻撃対象になったと言うルール上『ノートゥング』とセンリの間に立ちはだかったが……

『……邪魔だ。』
 『ノートゥング』はその一言と共にセンリの前にいた『火車』を真っ二つにし、そのままセンリの息の根を止めようとした……。

「(2度目……か……。これは避ければ……っ!?)」
 センリは『ノートゥング』の切りかかりをかわそうとしたが、体が付いていかず……

「(……無理……か……!?)」
 ……回避行動を行えないほどの怪我に、諦めを感じていた……。











 だが……











 スッ……

『……ノートゥングを壊せ、ティルヴィング。』
 『ノートゥング』とセンリの間に割り込んだフェイトが一言『精霊の声色』でそう言いながら『天魔神 ティルヴィング』のカードを客席から『ノートゥング』に向けてかざすと、そのカードの中からティルヴィングの精霊が出現し……











『……みぃつけたっ。』
 ……『ティルヴィング』はニパッと笑みを浮かべながら『ノートゥング』の右手首が右腕から切断され、その切断された切り口から紅色の液体みたいな物が溢れ出した!
 右手首を切り落とされた事で『ノートゥング』は持っていた剣を落とし、ただ腕を振り下ろしただけに終わった……。

「(きゃっ!)」
 レイは、自分の手首に『ティルヴィング』の剣が直撃した事で思わずそう言おうとしたが……

「(……あれ?痛く……ない?)」
 確かに右腕を切り落とされたはずなのに何の痛みも感じなかった事に、違和感を感じていた……。

『…………。』
 『ノートゥング』は、切り落とされた右手を気にせず左手で剣を拾おうとしたが……

『じゃあつぎは、あしにしよっかな。』
 ……今度は左足の下半分を切断され、バランスを崩して床に右膝をつけた……。

『…………。』
 相変わらず『ノートゥング』は黙り込み、左足の膝と右足で体を支えながら、センリに向かって剣を投げつけたが……

『みてみて。パシッてつかんだけんをキュッてしたら……』
 しかしその剣は『ティルヴィング』に左手で軽くつままれ、センリに直撃する前に空中でピタッと止まった……。
 そして『ティルヴィング』が、その剣をキュッと握りしめると……











 ――パリーン……。

『ほらほら。もとのかたち、わからなくなっちゃった。』
 剣が粉々の金属片となって床にパラパラと落下し、『ティルヴィング』は左手の切り傷から紅い何かをダラダラと垂らしながら愉快そうにそう言い放った……。

『ねえおねえちゃん、つぎはどうするの?』
 『ティルヴィング』は、右手と左足と武器を失った『ノートゥング』を見ながら軽くそう言った。

『すぐこわれちゃつまんないよ。ねえ、なんかしてよ。』
 無反応な『ノートゥング』に対して、『ティルヴィング』は不満そうにそう言い……

『……甘んじて受けよう。それがフェイト様の命令ならば。』
 『ノートゥング』は、『ティルヴィング』の目を見ながら一言そう答えた。

『……なにもしないの?なにもしないと……』
 それを聞いた『ティルヴィング』は、持っている剣を振り上げ……











『……コワしちゃうよ。』
 ……持っている剣を振り下ろし、『ノートゥング』の頭の左側の一部を削ぎ落とした……。

「(ひっ……!?)」
 レイは、『ティルヴィング』の剣が左目を通り過ぎた様子を見た事によって、左側の視界が紅く染まり半分近く狭くなった事に、ただただ戸惑うしかなかった……。

『アハ、アハハ、アハハハ八八ノヽノヽ/ヽ/ヽノ \ノ \/ \/ \……』
 『ティルヴィング』は、目を見開き笑い声を上げながら『ノートゥング』の左腕、右足をねじ切り、剣で皮膚を引き裂いていった……。

「(い……嫌……やめて……!)」
 レイは、『ティルヴィング』が『ノートゥング』の体を壊していく様子に目を背ける事もできず、狂気に満ち溢れた『ティルヴィング』と目線を合わせていた……。











『……終わりだ。ティルヴィング。』
 フェイトはそう言いながら『ノートゥング』のカードをデュエルディスクから取り外すと、『ノートゥング』のソリッドビジョンが消滅
して観客の目に映らなくなった……。

『あれ?ノートゥング、きえちゃった……。』
 『ノートゥング』の姿を確認できなくなった『ティルヴィング』は、紅く染まった手の平を広げて一言そう呟いた……。

「……これで、終わりだ。」
 そしてフェイトは『ティルヴィング』をカードに戻し、歩き去っていった……。





















「……な、何が起こったのかは分かりませんが……ルール上『ノートゥング』の直接攻撃は成功した物とします!」
 千里はそう言いながらマイクを握り締め……

「よってこのデュエル……早乙女 レイちゃんの勝利で決定いたしました!」
 そして、勝利者の名を高らかに宣言した。











「…………?」
 横たわっていたレイは、重い瞳を開いて両手で自分の左足や左目辺りに手をやり……

「……助かった……の……?」
 そして、自らの存在を確認するかの様に小さくそう呟いた……。

「レイ!大丈夫!?」
 意識を取り戻したレイに対して、ナオは真っ先にそう呼び掛けたが……

「大丈夫……だけど……」
 レイはそう言い、目を背けセンリの方を指差しながら不安そうにそう続けた……。

「…………。」
 ナオは、センリの様子に対してかける言葉を探し……

「……大丈夫……かい?」
 ……そして、センリに対して一言そう言ったが……

「ああ……大丈夫だ。」
 センリは一言そう答え、ナオの頭を左手で軽く撫でて歩き去っていった……。





















 廊下にて……

「ぐっ……っっ……」
 センリは、傷口に右手を添え、左手で壁にもたれかかり、よろめきながら歩いていた……。

「(駄目か……意識が……っ……)」
 傷口からの血の噴出が収まらないセンリは、崩れ落ちる様に倒れ込みそうになったが……



 ドサッ……

「…………カムイ……か……。」
 センリは、そう反応した……。

「やっぱり……ただの維持だったんスね……。」
 カムイは、瀕死状態のセンリを右肩で抱えながらそう問いかけた……。

「まあ……な……。」
 センリは、息を切らしながら弱々しくそう答えた……。

「だが……ナオや…レイが見てる前で…倒れるのは、避けて、みせたぜ……。俺の、意思を……汲んで、止めに、入らな……かった、のもな……。」
「……あまり喋らない方がいいッスよ……。」
 センリの言葉に対して、カムイは小さくそう言った……。











「…………。」
 遠目でセンリの様子を見ていたラケシスは、口を結び……

「……やはり……。」
 ……そして一言そう呟き、歩き去って行った……。





















 その頃、龍也の部屋にて……

「……で、つまりですね……。」
 龍也は、リナ、剣山、国崎に3人に対して『カードの精霊』について語っていた……。



 ♪蒼き闇越えて〜空〜高〜く〜翔け〜れば〜〜Ah〜深〜く溶け〜て〜〜い〜〜ま〜感じてる〜〜

「ん?電話ですか?国崎さん。」
「ああ……。この着うたは……千里からだな。」
 国崎は、剣一の問い掛けに対して軽くそう答え……

 ♪輝く奇跡煌〜めく未来〜へと〜〜記〜憶の果てへ〜〜

 ピッ。

 席から立ち上がり、携帯電話の通話ボタンを押した。











「……何!マジか!?」
 電話の向こうからの発言に、国崎は耳を疑っていた……。

「どうしたんですか?国崎さん。」
 龍也は、国崎に対してそう尋ねた。

「……大会中に、怪我人が出たってよ。」
「け、怪我?デュエル中に!?……何が原因ザウルス!?」
 声を小さくしてそう言う国崎に剣山は驚き、立ち上がって国崎にそう尋ねた……。

「何でも……『天魔神 ノートゥング』とか言うカードが実体化して、センリを攻撃したらしいぜ。」


「じ、実体化って……『カードの精霊』は物体に触れないって話だったじゃん!」
 リナは、信じられない様子で声を張り上げながらそう言った。

「ノ、『ノートゥング』だって!?まさか……」
「ええ……信じたくありませんが……」
 それに対して剣一と龍也は、聞き覚えのある名前に動揺していた……。

「(まさか……定眼はすでにこの校内のどこかに……?)」
 そして龍也は、1つの考えを頭に浮かべた……。



「……ねえ、答えてよ。」
 ……その動揺は、リナの質問も妨げるほどに。



次回予告

剣一「おかしい……静かすぎると思わないか?」
龍也「ええ……。ここまで進んでいながら、まったく妨害が無いとは……。」
剣一「この扉が一番奥か……。」
龍也「迷っていても仕方ありません。……行きましょう。」



次回、『GX plus!』第五十五話!



『悲劇の再会!違い会う意思!!』

龍也「……?何ですか?この部屋は……。」




 続く...





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