遊戯王オリジナルストーリー The Stardust Memories

製作者:八汰烏のムクロさん






Memories 001 The Stardust Dreamers 〜夢追う流星〜

土草事務所屋上 2036年8月7日 AM10:23


「うっわー!すごーい!」

雲一つない澄み切った空。
たくさんのハイブリッドカーが下を走る様子の見えるガラス越しの床に立ち、両手を伸ばして天を仰ぎながら
10代半ばくらいの少女が高いはしゃぎ声を上げる。
彼女の立つ床はエレベーター。
そして、少女のすぐ隣には黒っぽい制服を来た黒髪の少し年老いた男の人が立っている。
男は少女に優しく声をかけた。

「どうですか?ここがアルアシティ最上部、俗に"最上階"とも呼ばれています。」

「へぇ〜!」

興味津々な眼をして、好奇の声を上げる少女。
男にはそれに何かを感じたらしくそっと微笑んだ。

「イリアさん、ありがと!
 私、沖縄から出たことなかったし、飛行機乗ったのも初めてだったから!
 アルアシティって広いんだね!」

少女のテンションはやけに高かった。
それもそうだろう。彼女は今まで出身地の沖縄から一歩も外に出たことがない。
しかしまぁ、このテンションの上がり様はまるで小学生男児のようである・・・。
そして、イリアと呼ばれた男は、少女、愛華に対してこんな言葉を放った。

「いえいえ、愛華ちゃんみたいな子を他のスカウターより先にスカウトできるなんて、
 私のほうが感謝したいくらいですよ。」

「私みたいな、子?」

質問に走っても愛華の好奇の眼差しは変わらない。
イリアはゆっくりと説明した後、少ししわがれた顔にやさしい笑みを浮かべて見せた。

「あなたの持っているそのデッキ、そのデッキからあなたに対する感謝と友情を大きく感じたんです。
 カードを大事にする人は、カードに大事にされる。
 カードに大事にされる人は、さまざまな困難を乗り越えて行く事ができます。
 人は、一人では生きてゆけない。
 しかし愛華ちゃん、あなたは既にたくさんの仲間がいます。」

イリアが遠くのものを見るような目で説明する。
しかし、愛華は数個の?マークを特殊召喚していた。

「その顔は全く分からない、といった顔ですね。
 まぁ、あなたならいずれ分かるでしょう。
 さて、そろそろ屋上ですよ。」

依然として浮かない顔である愛華であったが、ナレーター音と同時に2人を乗せたエレベーターは停止、
2人の後ろの金属製のドアーが自動で開いた。

「うわー!きれー!」

扉が開くと同時に、愛華は眼を輝かせながらそんな言葉を発してはしゃぎ回る。
確かに、屋上から眺める大都市の光景は田舎育ちの愛華にとって素晴らしい事この上なかった。
その後ろでイリアは、我が子を見るような眼差しで愛華を見つめていた。
そして、ふと気付いたようにイリアが手を叩く。

「愛華ちゃん、これから社長が来るまで暇でしょう。
 まだ約束の時間までは時間がありますので、一つお願いを聞いてもらっていいですか?」

「え?なぁに?」

首を傾げて聞く愛華の前に、イリアはデュエルディスクを腕にはめて構える体勢となった。

「私とデュエルしましょう。
 あなたの実力をこの眼で確かめたくなりました。」

その視線は優しいままではあるが本気の眼である。
愛華はそこにデュエリストとしての闘志を感じ、逃げてはいけない気になった。

「いいよ!イリアさん優しいけど、手加減しないんだからね!」

「手加減なんてしてもらったら、私の方が困りますよ。」

苦笑を浮かべるイリア。
そして、歯車は動き出した。

「「デュエル!」」 愛華8000vs8000イリア


「先攻をどうぞ。」

そう言ったのはイリア。礼を言った後思い切ってカードを引く愛華。
そして、彼女の仲間は彼女とともに戦うことを始めた。

「スターナイツ・ソルジャー セリアを召喚!」

そう言って飛び出したのは、背中に大剣を背負った誇り高き騎士。

スターナイツ・ソルジャー セリア
効果モンスター
星4/風属性/戦士族/攻1900/守1400
1ターンに1度、手札からモンスターカード1枚を捨てて発動する。
エンドフェイズまでこのカードの攻撃力は
捨てたモンスターのレベル×100ポイントアップし、
捨てたモンスターのレベルと同じレベルになる。

「カードを1枚伏せて、ターン終了だよ!」

「(まずは様子見、といったところですか。)
 私のターンです、ドロー。」

ターン終了の宣言とともに、ターンはイリアに移る。
イリアも負けじとモンスターを召喚したようだが・・・。

「エボルギオン・ラーバを召喚します。」

エボルギオン・ラーバ
効果モンスター
星2/地属性/昆虫族/攻 700/守 800
自分フィールド上にこのカード以外の
「エボルギオン」と名のついたモンスターが存在する場合、
相手はこのカードを攻撃対象にする事ができない。

フィールドに、アメコミ風の可愛らしい容貌をした幼虫が現れる。
すると、不意に愛華が叫びだした。

「うっわー!かわいー!」

「それはそれは、まぁ、お褒めの言葉と受け取っておきましょう。」

イリアが苦笑しながら言う。

「で、でもそんな低攻撃力モンスターで何するの?」

イリアは小さく微笑した。

「あなたもこれからプロデュエリストとしてやっていく身です。
 モンスターは攻撃力だけではありませんよ。
 手札よりエヴォリュートモンスター、エボルギオン・バタフライの効果を発動します。
 エボルギオン・ラーバは、手札に眠るエボルギオン・バタフライへと進化を遂げます!」

刹那、その可愛らしい容貌をした幼虫の背中が光を放ちながら裂け、
フィールドに鮮やかな模様をした巨大な蝶が出現した。
しかしこれまた、アメコミ風の風貌である。

エボルギオン・バタフライ
効果モンスター・エヴォリュート
星5/風属性/昆虫族/攻2100/守1600
相手フィールド上にモンスターが2体以上存在し、
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、
このカードは手札から特殊召喚する事ができる。
自分フィールド上に存在する「エボルギオン・ラーバ」1体をリリースする事で
このカードを手札または墓地から特殊召喚する。
このカードのエヴォリュート召喚に成功した場合、以下の効果を得る。
●このカードはバトルフェイズ中にはカードの効果によってフィールドから離れない。

「うわー!きれー!」

その大げさな反応を見て、イリアは少し苦笑して言った。

「愛華ちゃんは一回の反応が大げさで、素直ですね。
 少し心配な面もありますが。」

少し間をおいて、バタフライは攻撃を仕掛けた。

「エボルギオン・バタフライで、スターナイツ・ソルジャー セリアを攻撃します。
 エヴォリューション・ゲイル!」

「罠カード、発動だよ!
 スターナイツ・バリア!」

「やはり、ただでは行きませんか。」

スターナイツ・バリア
永続罠
相手モンスターの攻撃宣言時に手札から「スターナイツ」
と名のついたモンスター1体を捨てる事で、
その攻撃を無効にし攻撃モンスターを破壊する。

「この効果で、手札からスターナイツ1体を捨ててバタフライの攻撃を無効にし破壊するよ!」

豪快な爆音とともに、蝶はフィールドから消え去った・・・?

「・・・!!」

「驚きました?
 エヴォリュート召喚したエボルギオン・バタフライは、
 バトルフェイズ中にはカード効果でフィールドから離れないんです。
 流石に、攻撃は無効化されますけどね。」

そこには依然としてバタフライの姿があった。
愛華は少し焦ったような顔をしたが、その刹那何かが動き出した。

「手札から捨てたスターナイツ・ファルコン ユラヌスを特殊召喚するよ!」

スターナイツ・ファルコン ユラヌス
効果モンスター
星4/風属性/鳥獣族/攻2100/守 800
このカードは通常召喚できない。
このカードが手札から捨てられた時、
このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。

フィールドに大きな翼と身体を持ったファルコンが現れる。

「手札コストとして捨てられることで能力を発揮するモンスター、ですか。
 バタフライと攻撃力が並んだ、流石に一筋縄ではいきませんね。」

「イリアさんだって凄いよ!
 バタフライ、そう簡単に倒せないなぁ〜。」

「ふふ、それじゃ、楽しいひと時にしましょう。」

互いに褒めの言葉を掛け合う2人。
しかし2人は既に、互いの実力が確かであることを身を持って感じ取っていた。




Memories 002 Promis of Stardust 〜流星の約束〜

土草事務所屋上 2036年8月7日 AM10:39


愛華 LP8000
「スターナイツ・ソルジャー セリア」(ATK1900)
「スターナイツ・ファルコン ユラヌス」(ATK2100)
「スターナイツ・バリア」

イリア LP8000
「エボルギオン・バタフライ」(ATK2100)

スターナイツ・ソルジャー セリア
効果モンスター
星4/風属性/戦士族/攻1900/守1400
1ターンに1度、手札からモンスターカード1枚を捨てて発動する。
エンドフェイズまでこのカードの攻撃力は
捨てたモンスターのレベル×100ポイントアップし、
捨てたモンスターのレベルと同じレベルになる。

スターナイツ・ファルコン ユラヌス
効果モンスター
星4/風属性/鳥獣族/攻2100/守 800
このカードは通常召喚できない。
このカードが手札から捨てられた時、
このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。

スターナイツ・バリア
永続罠
相手モンスターの攻撃宣言時に手札から「スターナイツ」
と名のついたモンスター1体を捨てる事で、
その攻撃を無効にし攻撃モンスターを破壊する。

エボルギオン・バタフライ
効果モンスター・エヴォリュート
星5/風属性/昆虫族/攻2100/守1600
相手フィールド上にモンスターが2体以上存在し、
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、
このカードは手札から特殊召喚する事ができる。
自分フィールド上に存在する「エボルギオン・ラーバ」1体をリリースする事で
このカードを手札または墓地から特殊召喚する。
このカードのエヴォリュート召喚に成功した場合、以下の効果を得る。
●このカードはバトルフェイズ中にはカードの効果によってフィールドから離れない。


「私はカードを1枚伏せて、ターン終了です。」

二人の友好を深めるという理由で始まった親善試合。
―――まぁ、どちらかというと、イリアが愛華の実力を確かめたかっただけなのだが・・・―――
後攻1ターン目にしてイリアはエヴォリュート召喚という珍しい戦法を披露するが、
愛華も辛うじてスターナイツ・バリアで攻撃を防ぎ、ユラヌスを墓地から特殊召喚した。
しかし、まだ後攻1ターン目。
今後の展開が楽しみである。

「私のターン、ドロー!」

先攻2ターン目、愛華の渾身のドローから始まった。
その表情は少しばかり歪み、どこか嬉しそうに見える。

「スターナイツ・コミュナー ダートを召喚!」

スターナイツ・コミュナー ダート
チューナー(効果モンスター)
星3/風属性/魔法使い族/攻1200/守1700
1ターンに1度、手札からモンスターカード1枚を捨てて発動する。
捨てたモンスターのレベル3つにつき1枚、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。

フィールドに、魔力の込められた杖を持つ女魔術師が現れた。
そして、魔術師は杖に力を溜めだす。

「ダートの効果発動っ!
 手札からモンスターカード1枚を捨てることで、
 捨てたモンスターのレベル3つにつき1枚、カードをドローするよ!」

「ドロー補強カードですか。
 特に手札消費の激しいあなたのデッキにはぴったりのカードかもしれませんね。」

「うんっ!
 手札のレベル6、スターナイツ・ソーサラー サターニアを墓地に捨てて、
 カードを2枚ドロー!」

愛華は満面の笑みを浮かべて首を縦に振る。
その自身がどこから来るのかはよく分からないが・・・。

スターナイツ・ソーサラー サターニア
効果モンスター
星6/風属性/魔法使い族/攻2400/守1600
自分の手札からこのカード以外の「スターナイツ」と名のついた
モンスター1体を墓地に捨てることで、
手札または墓地からこのカードを特殊召喚する事ができる。

「そして、墓地のサターニアの効果を発動っ!
 手札からモンスター1体を墓地に捨てて、
 サターニアを特殊召喚するよっ!」

「凄いコンボですね・・・。」

「お願いっ、サターニア!」

フィールドに、不思議な形をした聖なる杖を持った男魔術師が現れた。

「攻撃力2400・・・バタフライを超えましたね。」

「それだけじゃないんだよぉ〜!
 なんと今なら、チューナーモンスター、コミュナー ダートをおつけしてぇ〜!」

どっかのテレビショッピングの宣伝かなんかのような口調で話し出す愛華。
少し呆れ気味になりながらも、イリアは愛華の才能の高さに驚きを隠せなかった。

「レベル3、ダートに、レベル4のセリアをチューニング!
 貫かれし正義が、今ここに力の源となる。
 光差す道となれ!
 シンクロ召喚!お願いっ、スターナイツ・ロード ネイラー!」

輝く7つの星は力の源となる。
そしてフィールドに、光り輝く大きな剣を持った聖戦士が現れた。

スターナイツ・ロード ネイラー
シンクロ・効果モンスター
星7/風属性/戦士族/攻2400/守1700
チューナー+チューナー以外の「スターナイツ」と名のついたモンスター1体以上
1ターンに1度、相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターのレベル×300ポイントのダメージを与える。
この効果を発動したターン、このカードは攻撃できない。

「・・・来ますか。」

「サターニアで、バタフライを攻撃!
 シューティング・ブラスト!」

サターニアは所持した杖で大量の星屑の幻影を発生させ、バタフライに浴びせた。

「・・・。」 イリアLP8000→7700

「ユラヌスで直接攻撃!
 スターソニック・フライ!」

「・・・・・。」 イリアLP7700→5600

「ネイラーで直接攻撃!
 デブリ・クラッシュ・ソード!」 イリアLP5600→3200

「なかなか、ですね。」

3回の攻撃を受けきった後に、イリアはよろけながらも褒め言葉を発した。
しかし、眼はどうやら本気のようである。

「イリアさんも、そんなものじゃないでしょ!
 ターン終了だよ!」

「(そんなものじゃないでしょ、ですか・・・。)
 私のターンです、ドロー。」

小さなため息をつきながらカードを引くイリア。
彼の反撃がここから始まった。

「罠カード、リミット・リバースを発動します。
 この効果で、攻撃力1000以下のエボルギオン・ラーバを特殊召喚します。」

リミット・リバース
永続罠
自分の墓地から攻撃力1000以下のモンスター1体を選択し、
攻撃表示で特殊召喚する。
そのモンスターが守備表示になった時、そのモンスターとこのカードを破壊する。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。

エボルギオン・ラーバ
効果モンスター
星2/地属性/昆虫族/攻 700/守 800
自分フィールド上にこのカード以外の
「エボルギオン」と名のついたモンスターが存在する場合、
相手はこのカードを攻撃対象にする事ができない。

フィールドに、アメコミ風の幼虫が再び舞い戻る。

「さらに、もう1体のエボルギオン・ラーバを召喚します。」

2体目の幼虫が現れた時、愛華の顔は何故と問いたげに歪んだ。

「ふふ、好奇心旺盛なのはいいことです。
 エボルギオン・ラーバの効果、それは、
 自分の場に自身以外のエボルギオンモンスターが存在する場合攻撃されなくなる事。
 攻撃されないモンスターが2体、ということは?」

「あ!私攻撃できないじゃん!」

はっとしたような面でイリアを見つめる愛華。
カードを握ったその手は力なく下に垂れ下がった。
しかし、それもつかの間。

「ターン終了です。」

先攻3ターン目。

「私のターン、ドロー!
 攻撃ができないなら、効果ダメージで攻めるよ!
 ネイラーの効果発動!
 1ターンに1度、相手モンスター1体のレベル×300ダメージを与えるよ!
 ダスト・クラッシュ!」

振り翳された剣から、無数の星がイリアに墜落する。

「うっ、やりますね・・・。」 イリアLP3200→2600

左手を顔の前に持っていき、衝撃を抑えるイリア。
対する愛華には余裕の表情が見られる。

「ターン終了だよっ!」

「私のターンです。」

後攻3ターン目。
カードを引いたイリアは、思わずしたり顔をする。
キーカードを引き当てたのだろうか、それとも・・・。

「エボルギオン・ラーバをリリースし、
 エボルギオン・チャーマーを召喚します。」

ラーバは光の粒子として消え去り、変わりに可愛らしい格好と容姿をした小さな魔術師が現れる。
上級モンスターなのに・・・(ぇ

エボルギオン・チャーマー
効果モンスター
星5/光属性/魔法使い族/攻1000/守 700
1ターンに1度、手札から魔法カード1枚を捨てる事で
相手フィールド上に存在するモンスター1体のコントロールを得る。
このカードがフィールドに存在しなくなった時そのモンスターのコントロールを元に戻す。
1ターンに1度、ライフを1000ポイント払い、
この効果でコントロールを得たモンスターをリリースする事で、
自分のデッキからエヴォリュートモンスター1体を手札に加える。

「うっわー!かわいー!
 私もそのモンスターほしー!」

愛華の過剰な反応にも流石に飽きたのか、イリアの反応は段々疎かになってきた。
ははは、と苦笑してから手札からカードを捨てて宣言した。

「エボルギオン・チャーマーの効果を発動します。
 手札の魔法カード1枚を捨てる事で、相手モンスターのコントロールを得ます。
 その厄介なネイラーをコントロール奪取しましょうかね。
 マインド・チェック!」

「うわぁ・・・。」

チャーマーは先端にハートマークのついた杖をネイラーに振り翳し、その身体を洗脳した。
その愛華の反応は残念そうなものである。

「ネイラーの効果を発動しますよ。
 サターニアを選択し、1800ポイントのダメージです。」

「うぅ・・・。」 愛華LP8000→6200

「そして、チャーマーの2つ目の効果を発動します。
 ライフを1000ポイント払い、この効果でコントロールを得たモンスターをリリースする事で、
 デッキからエヴォリュートモンスター1体を手札に加えます。
 アリュール・リーディング!」 イリアLP2600→1600

魔術師の放つ白き光とともに、ネイラーの姿は消える。
そして間もなく、小さく可愛らしかった魔術師は大人の姿へと成長した。

「チャーマーをリリースし、エヴォリュート召喚!
 エボルギオン・スピリチュアリズマー!」

エボルギオン・スピリチュアリズマー
効果モンスター・エヴォリュート
星8/光属性/魔法使い族/攻3000/守1400
自分フィールド上に存在する「エボルギオン・チャーマー」1体をリリースする事で
このカードを手札または墓地から特殊召喚する。
このカードのエヴォリュート召喚に成功した場合、以下の効果を得る。
●このカードを含む自分フィールド上に存在するモンスター2体をリリースする事で、
自分のエクストラデッキからシンクロモンスター1体を特殊召喚する。
(この特殊召喚はシンクロ召喚扱いとする。)
この効果で特殊召喚されたモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。

「こ、攻撃力3000・・・。」

そう、フィールドには攻撃力3000の大型モンスターが立ちはだかる。
しかし、忘れてはならないのが愛華の永続罠カード、スターナイツ・バリア。
愛華の手札は4枚あるため、スピリチュアリズマーに特殊な効果が備わっていない限り、
攻撃を防ぎ、破壊することが可能だが・・・。

「スピリチュアリズマーに備わった効果、
 破壊を防ぐ効果は備わっていないので、スターナイツ・バリアを防ぐことはできませんが・・・。」

小さく右手でガッツポーズをする愛華。
それが見えたのかイリアはフフ、と小さく微笑した。

「スピリチュアリズマーの効果を発動します。
 自身を含む2体のモンスターをリリースし、
 エクストラデッキからシンクロモンスター1体をシンクロ召喚します!
 私が呼び出すのは、あなたもご存知でしょう・・・。」

「!!」

驚きの表情の隠せない愛華。
普段はメインデッキに入らず、チューナーモンスターとチューニングを行うことで姿を現すシンクロモンスター。
当然、シンクロモンスターに使用する素材には予め決められているため、
状況に応じてどんなモンスターでも呼び出せるというわけではない。
しかし、スピリチュアリズマーの効果は別だ。
墓地に送る2体のモンスターはシンクロ素材ではない、
スピリチュアリズマーは、エクストラデッキに眠る全てのシンクロモンスターを呼び出すことができる、
大きな可能性を秘めた強力なモンスター・・・。

「スピリチュアリズマー、ラーバをリリースし、
 アリュール・スピリチュアリズム!
 シンクロ召喚、スターダスト・ドラゴン!」

高らかな声とともに召喚された風属性の龍、その名はスターダスト・ドラゴン。
その姿は雄雄しく、白く輝く翼から巻き起こる風は注意しないと吹き飛ばされてしまいそうなくらいだった。

スターダスト・ドラゴン
シンクロ・効果モンスター
星8/風属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
「フィールド上のカードを破壊する効果」を持つ
魔法・罠・効果モンスターの効果が発動した時、
このカードをリリースする事でその発動を無効にし破壊する。
この効果を適用したターンのエンドフェイズ時、
この効果を発動するためにリリースされ墓地に存在するこのカードを、
自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。

「ス、スターダスト・・・ドラゴン・・・。」

愛華の表情とテンションが一気に変わる。
まるで、懐かしいものを見つめるような目で、愛華は上空に高らかに飛ぶスターダストを見つめた。
それが何故だか、本人以外は知る由もないのだが・・・。

「どうか、しましたか?」

「う、ううん!?何でもない!
 凄いなぁ、と思って・・・。」

声のトーンを落として質問するイリアに、大きく首を振って答える愛華。
少し疑問に思いながらも、スターダストは攻撃を開始する。

「スターダスト・ドラゴンで、ユラヌスを攻撃します。
 シューティング・ソニック!」

スターダストは口に衝撃波を溜め、それを放出した。

「スターナイツ・バリアの効果発動!
 手札のスターナイツと名のついたモンスターを墓地に捨て、攻撃を無効にし破壊する!」

「スターダスト・ドラゴンの効果、ご存知ですか?」

「知ってるよ!」

半ばやけくそになっているのだろうか。
愛華の返答は少々切れ気味だった。

「スターダストの効果を発動します。
 このカードをリリースする事でフィールド上のカードを破壊する効果を無効にし、
 そのカードを破壊します。」

刹那、スターダストの周りに白く輝く聖域が出現し、
愛華を守っていたシールドは砕け散った。

「そして、スターダストはエンドフェイズ時に帰還します。
 ターン終了・・・。」

白き竜がフィールドから離れていたのもつかの間。
シールドを破壊したと思ったら一瞬にして場に戻ってきた。

「私のターン、ドロー!」

先攻4ターン目、段々愛華の表情が引きつってきた。
目の前に存在するのは攻撃力2500の破壊効果に耐性を持つ大型ドラゴン。
戦闘による破壊のほか、バウンスや除外でもフィールドから除去することはできる。
しかし、彼女の手の内に今そのようなカードはないようだ・・・。

「スターナイツ・エクスタシーを発動!」

スターナイツ・エクスタシー
通常魔法
ライフを500ポイント払い、
手札から「スターナイツ」と名のついたモンスター1体を墓地に捨てる。
デッキからカードを2枚ドローする。

愛華が発動したのは手札補強カード。
スターダストを除去するための賭けに出た。

「ライフを500ポイント払い、手札からスターナイツと名のついたモンスターを墓地に捨てる事で、
 デッキからカードを2枚ドローするよっ!」 愛華LP6200→5700

刹那、彼女の表情が歪んだ。

「スターナイツ・フェアリー エイリを召喚!」

スターナイツ・フェアリー エイリ
チューナー(効果モンスター)
星2/風属性/天使族/攻 400/守1000
1ターンに1度、手札からモンスターカード1枚を捨てて発動する。
自分の墓地から、捨てたモンスターと同じレベルの
「スターナイツ」と名のついたモンスター1体を選択して
自分フィールド上に特殊召喚する。

フィールドに、背中に白い翼を生やした小天使が現れる。

「レベル2のチューナーモンスター、エイリに、
 レベル6のサターニアをチューニングっ!」

「シンクロ召喚、ですか・・・。」

そう、シンクロ召喚ならスターダスト・ドラゴンの攻撃力2500を上回ることも容易。

「運命の歯車が、今ここに音を立てて動き出す。
 光差す道となれ!」

その叫び声と同時に現れた竜。
背中には8枚の白い翼が生えており、空中を雄雄しく飛行している。
現れたのは、彼女のデッキのエースシンクロモンスター。

「シンクロ召喚!お願いっ、スターナイツ・ドラゴン メルキュール!」

スターナイツ・ドラゴン メルキュール
シンクロ・効果モンスター
星8/風属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
チューナー+チューナー以外の「スターナイツ」と名のついたモンスター1体以上
自分フィールド上に存在するモンスターがフィールドから離れる場合、
代わりにフィールドから離れるモンスターと同じ枚数の手札を捨てる事ができる。
このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、
与えたダメージ500ポイントにつき1枚+1枚
デッキからカードをドローする。

「スターダストと攻撃力が並びましたか・・・。」

ほっとため息をついてそういうイリアだが、決して安堵のため息ではない。
対する愛華は勝ち誇った表情だ。
それもそのはず、2体のモンスターの相殺を狙えば・・・。

「メルキュールで、スターダスト・ドラゴンを攻撃!
 セイント・ギャラクシー!」

「・・・。」

フィールドの2体の竜は相殺する。
しかし、メルキュールは輝きを残すかのごとく場に居座っていた。

「・・・何故、メルキュールを場に残したのでしょう?
 効果を発動しなくても、あなたは勝っているはずですよ。」

メルキュールの効果を知っているのか、イリアは疑問を含んだ表現で愛華に尋ねた。

「嫌なんだ、そういうの。」

「・・・?」

しんみりとした声色で、愛華が淡々と話し出した。

「メルキュールは私の友達だから、簡単に見捨てるようなこと、したくない。」

「・・・そうですか。」

イリアはそこに、何か温かいものを感じた。
昔見た何かと同じものを・・・。

「ユラヌスで直接攻撃!」

「私の完敗です。
 強いですね、愛華ちゃんは。」 イリアLP1600→0

「えへへ、それほどでも〜。」

頭をぽりぽり書きながら照れる愛華。
2つの流星の約束が交わされるのは暫く後のこととなる・・・。




Memories 003 The Lightning Knights 〜閃光の騎士団〜

土草事務所屋上 2036年8月7日 AM10:51


先ほど行われた愛華vsイリア。
イリアはスターダスト・ドラゴンのシンクロ召喚で愛華を追い込むも、
愛華も負けじと切り札であるスターナイツ・ドラゴン メルキュールを召喚し、見事勝利をおさめる。
しかし、約束の時刻まではまだ間に合うそうで二人は少々退屈していた。

「そういえば、先ほどのデュエルについてなんですが・・・。」

話題を切り出したのはイリア。
ベンチに二人で座りながら時間まで雑談するということになっているようで、
さっきまでは本当の「雑談」だったのだが、今回のイリアは少し深刻そうな口調で話しかけた。

「なぁに?イリアさん。」

暢気な様子で愛華が尋ね返す。
どうやら深刻な雰囲気をのみこめていないようだが・・・。

「私がスターダスト・ドラゴンを召喚した時、
 あなたはどこか悲しそうでしたよね?
 何か過去に障る事でもあったのかと思いまして・・・。」

「あぁ、スターダストの事ね・・・。」

一気に愛華の声のトーンが落ち、まるで物思いにふけるかのような細い目になる。
対するイリアは、これ以上触れてはいけないと察したのか話題を逸らした。

「悪いことを聞いてしまったみたいですね。
 無理に話さなくてもいいですよ。」

「あ、うぅん・・・。」

「おっと、そろそろお時間のようですね。
 それにしても所長遅いですね・・・。」

イリアが独り言のような小さな声でぼそっと呟くと、イリアの先のエレベーターから一つの人影が現れる。
言葉はその人影にも届いていたらしく、不満そうにこんな言葉が発せられた。

「遅くて悪かったな。」

「おっと所長、失言を申し訳ございません。」

慌ててお辞儀をするイリア。
それに連られて愛華も軽く会釈をした。
二人の先に立っているのは、紺の紳士服を着たイリアと同年代に見える少し痩せた男性。

「話は聞いているよ、明星愛華。
 何でも、世界大会優勝者の娘さんだとか。
 わしはここの事務所の所長をやっている土草武彦と言う者だ。よろしく。」

「よ、よろしくお願いします。」

少しおどけた様子で再びお辞儀をする愛華。
対する土草は、1枚の厚い辞書のような本を愛華に手渡してこう言った。

「明日の朝までに、これを読んでおいてくれ。
 可能ならば、内容も把握しておくこと。
 そして、今から君の部屋まで案内するから、ついてきてくれ。」

渡されたその本の厚さは、軽く5cmはある。
ただでさえ活字を読むのが苦手な愛華にとって、それは地獄だった。
しかし、そんなことも深く考える暇もなく、土草はエレベーターに向かって歩き出した。

「イリア、後で話がある。
 ちょっとそこに残っていてくれ。」

「分かりました、所長。」

イリアは軽く会釈をした後、視線を愛華に向ける。
何か言おうとするも、その言葉をすぐに飲み込んだ。

「(彼女には、まだ早すぎますか・・・。)」

2人を乗せたエレベーターは、次第に彼のいる回から遠ざかっていった。


土草事務所7F709号室 2036年8月7日 PM03:01


「えっと・・・事務所内のデュエリスト間のトラブルは当所では一切責任を取りません・・・。
 うー・・・長すぎる・・・。」

先ほど土草所長から貰った一冊の本。
それは、土草事務所に所属する際のマニュアルのようなものであった。
しかし、ただのマニュアルごときが何故これほど厚くなければならないのか・・・。
それは神のみぞ知ることだった。
とにかく、その分厚い本を愛華は4時間前からベッドで寝転がりながら休み休みで熟読していた。
分厚いとはいえ、一応箇条書きで書かれているのでそこまで時間はかからないはずなのだが・・・。
読み手は活字を読むのが苦手な愛華である。
正直言って、無理もないだろう。
と、ドアをノックする音が愛華の耳に入った。
ハーイ、と返事をして本を置き、ドアを開ける愛華。
目の前に立っていたのは、金髪の西洋系男性だった。

「ハロー、君が今日ここに来た新人さんかな?」

愛想のいい笑顔で愛華の視線に眼を合わせてくる青年。
愛華との身長差は、30cm定規一本分を軽く超えるほどもある。
愛華は相手の顔を見上げて少しおどけた様子で尋ねた。

「えと、どちら様で?」

「俺は、この部屋の隣のザーグ・フィアレッジさ。
 気軽に、ザーグと呼んでくれ。」

前髪を軽く払いのけながらザーグは軽く自己紹介をした。

「えっと、愛華、明星愛華です!」

愛華がそういう刹那、ザーグは愛華の肩を抱えるようにしてこういった。

「愛華ちゃん、今からちょっと付き合ってくれないかい?」

「ふぇ!?」

顔を紅潮させながら身を引く愛華。
それを拒むかのように、ザーグは左手で愛華の肩をドアの反対側へ押す。
そして、709号室のドアを閉めたあと愛華の抵抗も許さずにその手をとって歩き出した。

「ちょ、どこ行くんですかぁ!?」

必死で質問する愛華に、ザーグは鋭い視線を向ける。
一瞬怖気づいた愛華は、そのままザーグの引っ張られるままに歩いていった。


土草事務所前 2036年8月7日 PM03:08


「(うっわー・・・どーしよぉ・・・。)」

土草事務所前・・・というより、そこは事務所の裏だった。
人通りも少なく、人目につきにくいその場所で、
ザーグに連れてこられた愛華は、人相の悪そうな男のデュエリスト集団に囲まれていた。

「さて、どんなカード持ってんのかなぁ〜。」

そこにいた一人の男が愛華の腕のデュエルディスクに手を伸ばす。
とっさに愛華はディスクをはめた左手から手を払いのける。

「や、やめてよっ!」

「ぁんだとぉ!?
 俺らに逆らうつもりかぁ!?」

「なめてもらっちゃ困るんだよぉ!」

一瞬の出来事だった。
愛華の右頬に強烈な拳が飛んでくる。
愛華は思わず両目を閉じて嬌声を上げる。

「きゃっ!?」

渾身の拳を食らった愛華は地面にたたずみ、攻撃を受けた左頬を押さえる。
そして、頬を押さえたまま拳の主をじっと睨み付けた。

「やっちまおうぜぇ!」

「だな!じゃないと俺たちの怖さが分からないみたいだぜ?」

言うと同時か直後に、複数の足が愛華の座り込んだ身体に飛んでくる。
思わず愛華は両腕で頭を抱え、目を瞑った。
その時だった。

「そこから立ち退きなさい!アンタ達!」

まるで、戦隊ものだかなんだかの登場シーンのような女声が当たりに響く。
愛華の周りを囲んでいる男達の行動は止まり、
攻撃の刃は声の主に向けられた。

「あぁん!?何だよ!?
 俺達に文句つける気か!?」

愛華は呆然とした眼で目の前の少女を見つめる。
少女は、キレイに首から下に垂れた金髪で、金色の眼をしていた。
その眼は愛華の周りを囲む男達に鋭い視線を向けている。

「アンタ達、デュエリストよねぇ。」

少女の口元が妙に歪む。
男達は少女の挑発的な態度に今にもはちきれそうだ。
それを察したのか、同じ金髪をしたザーグが少女の前に立つ。

「手出しは無用だ、お前ら。
 いいだろう。デュエルを受けてやる。
 俺が負けたら、俺らは引いてやる・・・。」

その言葉の後に少し間を空ける。
そして、愛華の短い茶髪を掴んでこう言い放った。

「ただし、俺が勝ったらこいつもお前もまとめて痛い目に遭わせてやるぜ!」

男達の間から歓声が上がる。
ザーグの口元も少し歪んで見えた。
対する少女は、強張った表情をそのままに、ザーグを睨み付けながら言い放った。

「その手を離しなさい。
 いいわよ、条件は呑んだ。
 ただし、恨みっこなしね・・・。」

左手にはめられたディスクを展開しながらザーグを睨み付ける。
ザーグは、少女を嘲笑した後、同じようにディスクを展開した。

「後で泣きついても知らねぇぜ。
 行くぜ、デュエルだ!」

「「デュエル!」」 ザーグ8000vs8000少女

「俺の先攻で行くぜ、ドロー!」

先攻を取ったのはザーグ。
得意げな表情で1体のモンスターを召喚する。

「火炎放射戦闘機 Starfighter(スターファイター)を召喚!」

火炎放射戦闘機 Starfighter
効果モンスター
星4/炎属性/炎族/攻1600/守 0
手札を1枚捨てる事で、
相手ライフに600ポイントのダメージを与える。
この効果は1ターンに3度までしか使用できない。

フィールドに、火炎放射器を備えた戦闘機が出現する。
ただの戦闘機ではなく、目がついていることから、生物であるようにも取れる。

「スターファイターの効果を発動。
 1ターンに3度まで手札を1枚捨てる事で、
 相手ライフに600ポイントのダメージを与える。
 行くぜ!シューティング・バーン!」

ザーグは、自らの手札3枚を墓地に捨て、その効果の発動を宣言する。
その刹那、ソリッドヴィジョンに映し出された火炎放射器から、大量の炎が放出された。

「いやぁぁっ!」 少女LP8000→6200

少女が叫び声を上げると同時に、周りから完成が起こる。
少女は、舌打ちをして態勢を立て直すと、ザーグは勝ち誇った顔で少女を睨み付けた。

「へっ、どうだ!シューティング・バーンの威力は!
 俺はこれで、ターン終了!」

よろめきながらも体勢を立て直す少女。
確かに、攻撃不可能な先攻1ターン目に1000を超えるダメージを受けてしまったのは痛手だろう。
しかし少女は、ザーグの挑発を無視してゲームを進める。

「私のターン、ドロー!
 ライトロード・パラディン ジェインを召喚!」

フィールドに閃光の誇り高き騎士が現れる。

ライトロード・パラディン ジェイン
効果モンスター
星4/光属性/戦士族/攻1800/守1200
このカードは相手モンスターに攻撃する場合、
ダメージステップの間攻撃力が300ポイントアップする。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
自分のエンドフェイズ毎に、自分のデッキの上からカードを2枚墓地に送る。

「ジェインでスターファイターを攻撃よ!
 ホワイト・ロード!」

「ライトロード・パラディン ジェイン」(ATK1800→2100)

白き閃光は、スターファイターこと火炎放射戦闘機を照らし出し、抹殺した。

「ぐわぁっ!」 ザーグLP7500

「カードを1枚伏せ、ターン終了。
 そしてこの瞬間、光の騎士団達の効果が発動する・・・。」

少女のデッキは光に照らされる。
そして、2枚のカードがソリッドヴィジョンに映し出された。

「ジャスティス・ワールド」→墓地
「ライトロード・エンジェル ケルビム」→墓地

ジャスティス・ワールド
フィールド魔法
自分のデッキからカードが墓地に送られる度に、
このカードにシャインカウンターを1つ置く。
シャインカウンター1つにつき、フィールド上の「ライトロード」
と名の付いたモンスターの攻撃力は100ポイントアップする。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードが他のカードの効果によって破壊される場合、
代わりにシャインカウンターを2つ取り除く。

ライトロード・エンジェル ケルビム
効果モンスター
星5/光属性/天使族/攻2300/守 200
このカードが「ライトロード」と名のついたモンスターを
リリースしてアドバンス召喚に成功した時、
デッキの上からカードを4枚墓地に送る事で
相手フィールド上のカードを2枚まで破壊する。

「な、何だ!?」

ザーグが始めて慌てた表情を見せる。
その後ろの愛華も、少し戸惑った様子だ。

「ライトロード・パラディン ジェインの効果。
 自分のエンドフェイズ時に、デッキの上からカードを2枚墓地に送るわ。
 さぁ、あなたのターンよ。」

少女は2枚のカードを墓地に送った後、ザーグにターンを促す。
納得行かない表情のまま、ザーグはデッキに手を伸ばした。

「俺のターン、ドロー!
 俺は、スペイアーを発動!」

スペイアー
通常魔法
自分の墓地に存在する「戦闘機」と名のついたモンスター2体を手札に加える。
自分は手札に加えたモンスターのレベルの合計×100ポイントのダメージを受ける。

「この効果で、墓地の戦闘機モンスター2体を手札に加え、
 そのレベルの合計×100ポイントのダメージを受ける。
 墓地の急降下爆撃戦闘機 Spearfish(スピアーフィッシュ)と、
 制空戦闘機 Eagle(イーグル)を手札に加え、800ポイントのダメージを受けるぜ・・・。」 ザーグLP7500→6700

急降下爆撃戦闘機 Spearfish
効果モンスター
星4/水属性/魚族/攻1900/守1100
相手の手札が4枚以上のときに発動できる。
手札を1枚捨てる事で、
相手の手札1枚をランダムに破壊する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

制空戦闘機 Eagle
効果モンスター
星4/風属性/鳥獣族/攻1800/守 700
手札を1枚捨てる事で、
相手フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を破壊する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

「ダメージを受けてまで回収したいカードなのかしらねぇ。」

今度は少女が挑発に回る。
ザーグは軽く舌打ちをして、戦闘機モンスターを呼び出した。

「来い、イーグル!」

フィールドに、鋭いくちばしを持った戦闘機が現れる。
戦闘機がくちばしなんておかしな話かもしれないが、もちろん眼も存在するので、
強いて言えば、戦闘機を擬人(鳥?)化したようなものだろう。

「イーグルの効果発動。
 手札1枚を捨て、お前の場の魔法・罠カードを破壊する!
 対象はもちろん、伏せられた1枚のリバースカード!
 行け!プレッシャー・サイクロン!」

戦闘機から2本のミサイルが発射され、少女の場の伏せカードを狙撃した。

「ちっ・・・。」

「ライトロード・バリア」→墓地

ライトロード・バリア
永続罠
自分フィールド上に表側表示で存在する「ライトロード」
と名のついたモンスターが攻撃対象になった時、
自分のデッキの上からカードを2枚墓地へ送る事で
相手モンスター1体の攻撃を無効にする。

「カードを1枚伏せ、ターンエンドだ。」

さっきまで互いを罵り合っていた2人も、今ではすっかり落ち着いてプレイに集中している。
その後ろで黙って見物をする愛華。
しかしまぁ、自分の安否がかかっているのだからこのデュエルから眼を反らすわけにも行かないのだろうが・・・。




Memories 004 Light of Destraction 〜破滅の光〜

土草事務所前 2036年8月7日 PM03:17


ザーグ LP6700
「制空戦闘機 Eagle」(ATK1800)
伏せカード1枚

少女 LP6400
「ライトロード・パラディン ジェイン」(ATK1800)

制空戦闘機 Eagle
効果モンスター
星4/風属性/鳥獣族/攻1800/守 700
手札を1枚捨てる事で、
相手フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を破壊する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

ライトロード・パラディン ジェイン
効果モンスター
星4/光属性/戦士族/攻1800/守1200
このカードは相手モンスターに攻撃する場合、
ダメージステップの間攻撃力が300ポイントアップする。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
自分のエンドフェイズ毎に、自分のデッキの上からカードを2枚墓地に送る。


後攻2ターン目。

「私のターン、ドロー!
 私はまず、ソーラー・エクスチェンジを発動!」

ソーラー・エクスチェンジ
通常魔法
手札から「ライトロード」と名のついたモンスターカード1枚を捨てて発動する。
自分のデッキからカードを2枚ドローし、その後デッキの上からカードを2枚墓地に送る。

「この効果で、手札のライトロード・ビースト ウォルフを墓地に捨て、2枚ドロー。
 更に、デッキの上から2枚を墓地へ送るわ。」

「ちっ・・・手札補強カードか・・・。」

ザーグが舌打ちする。
少女の周りには聖なる白き結界が現れ、またも2枚のカードが照らされる。

「ライトロード・ビースト ウォルフ」→墓地
「ライトロード・ウォリアー ガロス」→墓地
「死者転生」→墓地

ライトロード・ビースト ウォルフ
効果モンスター
星4/光属性/獣戦士族/攻2100/守 300
このカードは通常召喚できない。
このカードがデッキから墓地に送られた時、このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。

ライトロード・ウォリアー ガロス
効果モンスター
星4/光属性/戦士族/攻1850/守1300
自分フィールド上に表側表示で存在する「ライトロード・ウォリアー ガロス」以外の
「ライトロード」と名のついたモンスターの効果によって
自分のデッキからカードが墓地に送られる度に、
自分のデッキの上からカードを2枚墓地に送る。
このカードの効果で墓地に送られた「ライトロード」と名のついたモンスター1体につき、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。

死者転生
通常魔法
手札を1枚捨てて発動する。
自分の墓地に存在するモンスター1体を手札に加える。

ここで一つ念を押しておくが、
ウォルフはデッキからではなく手札から墓地へ送られているため、特殊召喚されません。
勘違いしなくもなさそうなので念のため。
何はともあれ、少女は口元を緩ませながらカードを2枚引き、その下の2枚のカードを墓地に送る。

「ライトロード・マジシャン ライラを召喚!」

ライトロード・マジシャン ライラ
効果モンスター
星4/光属性/魔法使い族/攻1700/守 200
自分フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードを表側守備表示に変更し、
相手フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する。
この効果を発動した場合、次の自分のターン終了時まで
このカードは表示形式を変更できない。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
自分のエンドフェイズ毎に、自分のデッキの上からカードを3枚墓地に送る。

フィールドに、聖なる魔法使いが出現し、魔法の呪文を唱えた。

「ライラの効果発動。
 自身を守備表示にすることで相手の場の魔法・罠カード1枚を破壊する。
 闇を掻き消せ!闇を照らす閃光(シャインド・レイ)!」

「ライトロード・マジシャン ライラ」(DEF200)

すかさず、伏せられたカードが始動した。

「させるかぁ!速攻魔法、デストロイ・レーザー!」

デストロイ・レーザー
速攻魔法
自分フィールド上に存在する「戦闘機」と名のついた全てのモンスターは、
エンドフェイズまで攻撃力が1500ポイントアップする。
エンドフェイズ時に、この効果を受けたモンスターを全て破壊する。

「戦闘攻撃機 Eagle」(ATK1800→3300)

鳥の形をした戦闘機に、破壊型レーザーが取り付けられる。
その強烈なエナジーはイーグルの攻撃力を爆発的に上昇させた。

「なるほど、攻撃力を上げれば倒されないとでも思ったのでしょうね。
 でも、閃光の使徒はそう甘くないですよ。」

「な、何!?」

攻撃力3000越えのモンスターを目の前にして、冷静な口調で淡々と話す少女。
(まぁ、エンドフェイズ時には自壊するのだが。)
しかしその目は、自壊を待つ眼ではなく、
確実に破壊しようとする挑戦的な目だった。

「パラディン ジェイン、イーグルを粉砕せよ!
 ホワイト・ロード!」

「なっ、狂ったか!?」

イーグルの装着したレーザーからジェインに向けて強力なレーザーが発射される・・・その時だった。
誇り高き騎士の周りを、眩い閃光が包んだのは。

「ライトロード・パラディン ジェイン」(ATK2100→5400)

「!!」

同時に、愛華も驚きを隠せなかった。
カードの伏せられていない少女に許されたこのダメージステップというタイミングで発動できるのは、必然的に速攻魔法。
それがなんだ。
目の前の騎士の攻撃力は、軽く神のカードのそれを上回っている。

「光は必ず闇を打ち破る。
 どんなことがあっても、ね・・・。」

1枚のカードを提示しながら少女は静かに呟いた。
そして、戦闘機は次第に光に掻き消され、消滅してゆく。

「ぐわぁぁぁっ!」 ザーグLP6700→4600

ダメージを食らった張本人、ザーグはもちろんのこと、
傍観している愛華や、それを取り囲む男達も、こればかりは驚嘆を露にする。
依然として、少女の手には1枚のカードが握られている。

「オネストの効果発動。
 ダメージステップ時、自分の場の光属性モンスターの攻撃力を、
 戦闘を行う相手モンスターの攻撃力の数値分アップする・・・。」

オネスト
効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻1100/守1900
自分のメインフェイズ時に、フィールド上に表側表示で存在する
このカードを手札に戻す事ができる。
また、自分フィールド上に表側表示で存在する光属性モンスターが
戦闘を行うダメージステップ時にこのカードを手札から墓地へ送る事で、
エンドフェイズ時までそのモンスターの攻撃力は、
戦闘を行う相手モンスターの攻撃力の数値分アップする。

「そんな、カードがあったなんて・・・。」

声の主は愛華。
眼は大きく見開かれ、放心状態に近い状態だ。
この世界ではオネストは珍しいカードだったようである。

「私は、カードを1枚伏せ、ターン終了。
 この瞬間、2体のライトロードの効果を発動!
 私のデッキの上から、カードを5枚墓地に送るわ。」

「創世の預言者」→墓地
「ライトロード・プリースト ジェニス」→墓地
「ライトロード・バリア」→墓地
「ライトロード・ドラゴン グラゴニス」→墓地
「裁きの龍」→墓地

創世の預言者
効果モンスター
星4/光属性/魔法使い族/攻1800/守 600
手札を1枚捨てる。
自分の墓地に存在するレベル7以上のモンスター1体を手札に加える。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

ライトロード・プリースト ジェニス
効果モンスター
星4/光属性/魔法使い族/攻 300/守2100
「ライトロード」と名のついたカードの効果によって
自分のデッキからカードが墓地へ送られたターンのエンドフェイズ時、
相手ライフに500ポイントダメージを与え、自分は500ライフポイント回復する。

ライトロード・バリア
永続罠
自分フィールド上に表側表示で存在する「ライトロード」
と名のついたモンスターが攻撃対象になった時、
自分のデッキの上からカードを2枚墓地へ送る事で
相手モンスター1体の攻撃を無効にする。

ライトロード・ドラゴン グラゴニス
効果モンスター
星6/光属性/ドラゴン族/攻2000/守1600
このカードの攻撃力と守備力は、自分の墓地に存在する「ライトロード」
と名のついたモンスターカードの種類×300ポイントアップする。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する場合、
自分のエンドフェイズ毎に、デッキの上からカードを3枚墓地に送る。

裁きの龍
効果モンスター
星8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2600
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地に「ライトロード」と名のついた
モンスターカードが4種類以上存在する場合のみ特殊召喚する事ができる。
1000ライフポイントを払う事で、
このカードを除くフィールド上のカードを全て破壊する。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する場合、
自分のエンドフェイズ毎に、デッキの上からカードを4枚墓地に送る。


「さぁ、アンタのターンよ!」

ザーグにターンを促す少女。
依然としてうろたえを残しているザーグだった。
先攻3ターン目。

「お、俺のターン、ドロー!
 護衛戦闘機 Goblin(ゴブリン)を召喚!」

護衛戦闘機 Goblin
効果モンスター
星4/地属性/悪魔族/攻 200/守1900
手札を1枚捨てる事で、
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を破壊する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

フィールドに、悪魔の顔立ちをした丸型の戦闘機が出現する。
そして、2本のミサイルを少女の場のモンスターに向けて発射した。

「ゴブリンの効果発動だぜ!
 手札1枚を捨て、相手の場の表側表示モンスター1体を破壊!
 デビル・ブラストをお見舞いしろ!」

そのミサイルは、ジェインの肢体を貫通し、抹殺した。

「くっ・・・。」

眉をひそめる少女。
ザーグの表情はどこか得意げである。
それもそのはず・・・。

「この瞬間、墓地のマルチロール機 Lightning(ライトニング)の効果を発動!
 自分の場に戦闘機が存在する場合、墓地から特殊召喚できる!
 来い!ライトニング!」

マルチロール機 Lightning
チューナー(効果モンスター)
星3/光属性/機械族/攻 500/守1400
自分フィールド上に「戦闘機」と名のついたモンスターが存在する場合、
墓地に存在するこのカードを表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
「マルチロール機 Lightning」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
この効果によって特殊召喚に成功した時、
相手はデッキからカードを2枚ドローする。

「この瞬間、お前はカードを2枚ドローするぜ。」

「分かったわ・・・。」

小さく呟くと、カードを2枚引く少女。
ライトロードが長期決戦に弱いことを見抜かれてしまったのであろうか・・・。
しかし、その瞬間に少女の口元が歪むのを見たのは、傍観していた愛華のみであった。

「レベル3のチューナー、ライトニングに、レベル4のゴブリンをチューニング!
 現れよ、ダーク・ダイブ・ボンバー!」

ダーク・ダイブ・ボンバー
シンクロ・効果モンスター
星7/闇属性/機械族/攻2600/守1800
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
自分フィールド上に存在するモンスター1体をリリースして発動する。
リリースしたモンスターのレベル×200ポイントダメージを相手ライフに与える。

フィールドに、巨大な急降下爆撃機が出現する。
って今は亡き某ダークシグナーが使ったカードそんな安易に使っていいのだろうか。
しかもこれ、大会クラスではよほど嫌われてるカードだべ?
アニメでは大した活躍もせずガラクタウォリアーに爆殺されちゃったけど。

「ダーク・ダイブ・ボンバーで、ライラを攻撃だ!
 ダーク・ブラスト・カノン!」

魔法使いは、爆撃機の放つ無数の爆薬によって焼き殺されてしまった。
少女は小さく舌打ちをする。

「ターン終了だぜ!」

「私のターン、ドロー!」

後攻3ターン目。
再び口元を緩ませる少女の、勝利へのカウントダウンが始まった。

「伏せカード、オープン!光の召集!」

光の召集
通常罠
自分の手札を全て墓地に捨て、その枚数だけ自分の墓地から
光属性モンスターを選択して手札に加える。

「手札の6枚のカードを墓地に捨て、
 私の墓地に眠る6枚の光属性モンスターを手札に加えるわ!」

宣言と同時に、少女は6枚の手札を墓地に捨てる。
そして、数秒後に、6枚のカードがソリッドヴィジョンに映し出された。


「裁きの龍」→手札
「オネスト」→手札
「オネスト」→手札
「オネスト」→手札
「ライトロード・ハンター ライコウ」→手札
「ライトロード・ウォリアー ガロス」→手札

ライトロード・ハンター ライコウ
効果モンスター
星2/光属性/獣族/攻 200/守 100
リバース:フィールド上のカードを1枚破壊する事ができる。
自分のデッキの上からカードを3枚墓地に送る。

ライトロード・ウォリアー ガロス
効果モンスター
星4/光属性/戦士族/攻1850/守1300
自分フィールド上に表側表示で存在する「ライトロード・ウォリアー ガロス」以外の
「ライトロード」と名のついたモンスターの効果によって
自分のデッキからカードが墓地に送られる度に、
自分のデッキの上からカードを2枚墓地に送る。
このカードの効果で墓地に送られた「ライトロード」と名のついたモンスター1体につき、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。

「そして墓地に4種類以上のライトロードが眠ることにより、
 手札の伝説の龍の召喚条件が満たされる!」

「伝説の龍・・・だと!?」

「聖天より裁きを下したまえ・・・。
 我が僕、裁きの龍(ジャッジメント・ドラグーン)を召喚!」

フィールドに、白い身体を持つ巨大な西洋風の龍が現れる。
その瞳は、全てを焼き尽くさんとばかりに怪しげに揺らめいていた。

裁きの龍
効果モンスター
星8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2600
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地に「ライトロード」と名のついた
モンスターカードが4種類以上存在する場合のみ特殊召喚する事ができる。
1000ライフポイントを払う事で、
このカードを除くフィールド上のカードを全て破壊する。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する場合、
自分のエンドフェイズ毎に、デッキの上からカードを4枚墓地に送る。

「さぁ、裁きの龍、閃光の裁きによって、闇を薙ぎ払いなさい!
 裁きの龍で、ダーク・ダイブ・ボンバーを攻撃!
 ジャッジ・オブ・ホーリー!」

白き龍は、巨大な翼を広げ、雄雄しく飛翔する。
甲高い咆哮が木霊したかと思うと、既にフィールドは白一色に染まっていた。

「裁きの龍」(ATK3000→5600→8200→10600)

「こ、攻撃力・・・10600・・・!?」

唖然として声の出ないザーグ。
まるで宇宙船か何かを見るような目で、ザーグは膝を追って地面に座り込んだ。

「う、嘘・・・だろ・・・。」 ザーグLP4600→0

「(す・・・凄い・・・。)」

対戦相手であるザーグはもちろんのこと、周りにいた愛華や男達も、暫くは声を出せないでいた。
そして、自らのおかれた立場を漸く自覚したのか、
ザーグとその取り巻き立ちは蜘蛛の子を散らしたように一目散で逃げていった。
(つーかオーバーキル自重←)

「大丈夫、ですか?」

デュエルを終えたその少女は、さっきまでとは打って変わって、意外に優しい口調で愛華に声をかける。
少し戸惑いながらも、うん、と首を縦に振って立ち上がる愛華。
立ち上がるや否や、愛華は大きくお辞儀してこういった。

「あの、ありがとうございます!」

「いえ、当然のことです。」

相手の金髪の少女は、優しく微笑んで見せる。
少女の顔色から何かを察したのか、あ、と呟いてこう言った。

「私ですか?
 私、ミラ・リハインです。」

「ミラ・・・さん?」

「あの、気軽に呼んでもらって結構ですよ。」

背は愛華より高いものの、まだ幼さを残した表情。
思わずそれに見惚れてしまう愛華だったが、すぐに平静を取り戻して元気よくこう自己紹介した。

「あの、私明星愛華です!
 デュエル強いですね!」

「いえ、私はそれほどでも。」

頭をぽりぽりかきながら照れた口調でそういうミラ。
しかし、すぐに表情を強張らせてこう言った。

「土草事務所の新人さんですよね。
 この事務所は、初めて上京した新人さんに対する恐喝や暴行が流行っていて、
 それが元でたった一週間近くでこの所を退所した人も数知れません。
 気をつけてくださいね。」

「う、うん!分かった!
 後、ミラさん・・・。」

「呼び捨てでかまいませんよ。
 愛華さん。」

次の瞬間、愛華はぷっと吹き出して微笑しながら言った。

「って、そっちこそ人のこと言えないじゃ〜ん!」

「あ・・・。」

顔を紅潮させてフリーズするミラ。
慌てた様子で愛華の笑い声を遮る。

「ま、愛華?
 何ですか?」

「えっと、敬語を止めて欲しいのと、
 私とデュエルしてくれない!?」
愛華は元気に明るく、しかしどこか挑戦的な視線でミラの金色の眼を見つめた。




Memories 005 Road across the Light and Wind 〜光と風の通り道〜

土草事務所前 2036年8月7日 PM03:29


「そうですね・・・。」

そこは、土草事務所前の人通りの少ない空き地。
事務所で流行っている「新人虐め」の被害者となった愛華を助けるべく
ザーグにデュエルを挑んだ金髪の少女、ミラは見事勝利を収め、彼女を解放する。
愛華はミラの実力に疼きを感じ、挑戦を挑む・・・。
ミラは少し考え込んだ後、こちらも挑戦的な笑みを浮かべてこう返信した。

「敬語は無理です。
 一種の癖なんで。」

ミラは頭をかきながら苦笑する。
そして、その手をすぐに下に下ろしてこう言った。

「そして、デュエルですよね・・・。
 喜んでお受けしますよ。」

不意に、愛華の顔に安心の笑みが生まれる。
しかし、その笑みも一瞬にして消え、左手を構えて距離をとるべく背中を返す。

「手加減はなしで、お願いね!」

愛華の緊張と興奮間の混ざった言葉。
ミラは少し苦笑しながらこう言った。

「こう見えても私、負けず嫌いなんですよ!」

対する愛華も少し苦笑する。
そして2人は無言でディスクを構え、息の合ったゲーム開始宣言の言葉を放った。

「「デュエル!」」 愛華8000vs8000ミラ


「先攻いただきっ!ドロー!」

先手を切ったのは愛華。
先攻1ターン目、愛華は慎重に手を考え、1体のモンスターを召喚した。
というかこの小説ではやはり、先攻は早い者勝ちだろう。
多分原作やアニメでもそうである。
じゃなきゃどこで誰が決めてるんだか・・・。

「スターナイツ・エンチャントレス ティアナを攻撃表示で召喚っ!」

スターナイツ・エンチャントレス ティアナ
効果モンスター
星4/風属性/魔法使い族/攻1800/守1000
1ターンに1度、手札からモンスターカード1枚を捨てて発動する。
自分のデッキから、捨てたモンスターより低いレベルを持つ
「スターナイツ」と名のついたモンスター1体を選択して手札に加える。

フィールドに結晶の力のこめられた杖を持つ女魔術師が現れる。

「更に、ティアナの効果を発動!
 手札からモンスターカード1枚を捨てる事で、
 デッキからそのモンスター未満のレベルを持つスターナイツモンスター1体を手札に加えるよっ!」

手札1枚を提示して愛華がモンスター効果の発動を宣言した。

「サーチ効果モンスターですか。
 序盤から墓地も肥えて、デッキ圧縮も可能・・・。
 なかなかのモンスターですね。」

ミラの考察に愛華の本心でこんな言葉が木霊した。
「そ、そんなことまで考えたことないよっ!」

「レベル3のスターナイツ・コミュナー ダートを墓地に捨て、
 デッキからレベル2のスターナイツ・フェアリー エイリを手札に!」

スターナイツ・コミュナー ダート
チューナー(効果モンスター)
星3/風属性/魔法使い族/攻1200/守1700
1ターンに1度、手札からモンスターカード1枚を捨てて発動する。
捨てたモンスターのレベル3つにつき1枚、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。

スターナイツ・フェアリー エイリ
チューナー(効果モンスター)
星2/風属性/天使族/攻 400/守1000
1ターンに1度、手札からモンスターカード1枚を捨てて発動する。
自分の墓地から、捨てたモンスターと同じレベルの
「スターナイツ」と名のついたモンスター1体を選択して
自分フィールド上に特殊召喚する。

すると、フィールドに光が照らされ、ソリッドヴィジョンに1枚の妖精のカードが提示される。
手札に加わったのは、「スターナイツ・フェアリー エイリ」のカード・・・。

「私はこれで、ターン終了!」

「私のターン、ドロー!」

後攻1ターン目、ミラのターンだ。
こちらもよく手札を見て熟考している。

「私は、ライトロード・ウォリアー ガロスを召喚します。」

ライトロード・ウォリアー ガロス
効果モンスター
星4/光属性/戦士族/攻1850/守1300
自分フィールド上に表側表示で存在する「ライトロード・ウォリアー ガロス」以外の
「ライトロード」と名のついたモンスターの効果によって
自分のデッキからカードが墓地に送られる度に、
自分のデッキの上からカードを2枚墓地に送る。
このカードの効果で墓地に送られた「ライトロード」と名のついたモンスター1体につき、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。

フィールドに、聖なる剣を持った聖戦士が現れる。

「攻撃力50の差は大きいですよ!
 ガロスで、ティアナを攻撃します!
 アーリー・ブレード!」

ミラが冗談っぽく笑うと、剣を持った光の戦士は女魔術師に斬りかかる。
成す術もなくティアナは斬殺された。
愛華が攻撃力50の差に泣いた初めての瞬間だった。

「うわっ!」 愛華LP8000→7950

「カードを1枚伏せ、ターン終了です。」

「私のターン、ドロー!」

先攻2ターン目。
先のターンに加えたエイリがいる。
愛華には、少しながら自身があった。

「スターナイツ・フェアリー エイリを召喚っ!」

フィールドに、薄い4枚の羽が生えた小さな妖精の少女が現れる。
そして、その隣には眩しい光が差した。

「エイリの効果を発動するよっ!
 手札からモンスターカード1枚を捨てる事で、
 そのモンスターと同じレベルのモンスター1体を墓地から特殊召喚する!
 レベル4のスターナイツ・ファルコン ユラヌスを墓地に捨て、
 ティアナを墓地より特殊召喚!」

晴れた眩しい光の光源には、先ほど破壊されたはずのティアナが蘇っている。
そして、六芒星の空間に再び光が差し、フィールドに星を司る鳥獣が召喚された。

スターナイツ・ファルコン ユラヌス
効果モンスター
星4/風属性/鳥獣族/攻2100/守 800
このカードは通常召喚できない。
このカードが手札から捨てられた時、
このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。

「!!」

驚いた表情を見せるミラ。
愛華は得意げな顔でそれを説明して見せる。

「ユラヌスは、手札から捨てられた時、
 墓地から特殊召喚されるんだ!
 行くよ!ティアナの効果発動!
 手札のスターナイツ・ソーサラー サターニアを墓地に捨て、
 デッキから2体目のファルコン ユラヌスを手札に加えるっ!」

スターナイツ・ソーサラー サターニア
効果モンスター
星6/風属性/魔法使い族/攻2400/守1600
自分の手札からこのカード以外の「スターナイツ」と名のついた
モンスター1体を墓地に捨てることで、
手札または墓地からこのカードを特殊召喚する事ができる。

不思議な星の光に導かれ、鋭いくちばしを持った鳥獣が愛華の手札に舞い込む。

「それにしても凄いですね、この展開力・・・。」

今更、というような気もするが、やはり愛華の展開力は関心に値するものだった。
チューナーモンスターも存在し、既にミラの場のモンスターの攻撃力を上回るものも存在する。
しかし、まだまだこれからと言わんばかりに、愛華は行動を続けている。

「手札のファルコン ユラヌスを墓地に捨て、
 サターニアの効果を発動!
 墓地から自身を特殊召喚するよっ!
 おいで、サターニア!」

稲光る魔法陣の元に現れたのは、強力な上級魔法使い。
そして、2体目の鳥獣が愛華の場に特殊召喚される。
目まぐるしい特殊召喚の連続に、読者の皆さんはついていけているだろうかっ!(は?


愛華 LP7950
「スターナイツ・フェアリー エイリ」(ATK400)
「スターナイツ・エンチャントレス ティアナ」(ATK1800)
「スターナイツ・ファルコン ユラヌス」(ATK2100)
「スターナイツ・ファルコン ユラヌス」(ATK2100)
「スターナイツ・ソーサラー サターニア」(ATK2400)

ミラ LP8000
「ライトロード・ウォリアー ガロス」(ATK1850)
伏せカード1枚


「見事・・・ですね。」

ミラはそう呟いてほっとため息をつく。
しかし、直後に挑戦的な目つきで愛華を見つめる。

「しかし、さっきのデュエル、あなたも見てましたよね?
 私の使うライトロード達は、そう簡単にはやられませんよ。」

察しの通り、と言わんばかりに、愛華はミラの挑発を軽く受け流す。
そう、この大量展開は、彼女の戦術の布石に過ぎなかった。


「行くよ!
 レベル2のチューナーモンスター、エイリに、レベル4のティアナをチューニング!
 輝きし新星が、明るい未来への道を照らし出す。
 光差す道となれ!シンクロ召喚!」

妖精の少女の身体の2つの星が、女魔術師の4つの星と共鳴する。
6つの星が行き交い、交じり合う時、白く透き通った肌を持つ神聖なる一角獣が降臨した。

「お願いっ、スターナイツ・ユニコーン クレセリア!」

スターナイツ・ユニコーン クレセリア
シンクロ・効果モンスター
星6/風属性/獣族/攻2200/守1900
チューナー+チューナー以外の「スターナイツ」と名のついたモンスター1体以上
1ターンに1度、自分フィールド上に存在するモンスター1体をリリースする事で、
そのモンスターのレベルによって以下の効果を得る。
●1〜4:デッキからカードを1枚ドローする。
●5、6:相手フィールド上に存在するカードを2枚まで破壊する。
●7以上:相手ライフに2000ポイントのダメージを与える。

フィールドに現れた幻獣は、青白い髪を棚引かせ、地面を一蹴りした。
その鋭い一角は、見るものを魅了する。

「そして、クレセリアの効果を発動!
 アリューリー・ノヴァ!」

突然、6つの白い星と同時に、男性魔術師が消滅する。
6つの星の波動は、ミラの場の2枚のカードを攻撃した。

「なっ!」

衝撃を左手で受け流しながらミラが顔を歪める。
そして、得意げに説明する愛華の顔を見て成す術もなく小さく舌打ちをする。

「クレセリアは、自分の場のモンスター1体をリリースする事で、
 そのモンスターのレベルに応じて効果を発動するんだ!
 リリースしたモンスターはレベル6のサターニア!
 レベル5または6のモンスターをリリースした場合、
 相手の場のカードを2枚まで破壊できる!
 モンスターが居なければ、オネストも使えないから怖いものなしだよっ!」

そう、彼女の切り札の1枚であるオネストは、モンスター同士の戦闘では絶対的な力を誇る。
しかし、それも彼女の場に光属性モンスターが居ての話である。
モンスターを除去してしまえばなんて事はない。

オネスト
効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻1100/守1900
自分のメインフェイズ時に、フィールド上に表側表示で存在する
このカードを手札に戻す事ができる。
また、自分フィールド上に表側表示で存在する光属性モンスターが
戦闘を行うダメージステップ時にこのカードを手札から墓地へ送る事で、
エンドフェイズ時までそのモンスターの攻撃力は、
戦闘を行う相手モンスターの攻撃力の数値分アップする。

「覚悟はいい!?ミラ!
 2体のファルコン、そして、クレセリアで直接攻撃!
 ツイン・スターソニック・フライ!
 シューティング・アーク・ダイブ!」

3体のモンスターの乱舞がフィールドに舞う。
ソリッドヴィジョンの3体のモンスターは、ミラに向かって容赦ない攻撃を浴びせる。
ミラは思わず悲鳴を上げて後ろへ倒れる。

「きゃあぁぁぁ!?」 ミラLP8000→5900→3800→1600

「えへへ!ターン終了だよ!」

得意げに笑って見せる愛華。
ミラは、倒れて打撃を受けたお知りをさすりながらゆっくりと立ち上がり、苦笑して見せた。
これから逆転せんとばかりに、少し悔しげな、しかし尊敬の目で愛華を見つめた。

「やりますね、愛華・・・。
 でも、私も負けるわけには行きませんから!」

「いいよ!全力でかかってきて!」

2人の目は、もう勝敗の事よりもデュエルを楽しむ事の方に興味が行っているようだ。
ミラは、思いっきりカードをデッキから引き抜いた。




Memories 006 Crimson Bright 〜紅蓮の輝き〜

土草事務所前 2036年8月7日 PM03:37


愛華 LP7950
「スターナイツ・ユニコーン クレセリア」(ATK2200)
「スターナイツ・ファルコン ユラヌス」(ATK2100)
「スターナイツ・ファルコン ユラヌス」(ATK2100)

ミラ LP1600

スターナイツ・ユニコーン クレセリア
シンクロ・効果モンスター
星6/風属性/獣族/攻2200/守1900
チューナー+チューナー以外の「スターナイツ」と名のついたモンスター1体以上
1ターンに1度、自分フィールド上に存在するモンスター1体をリリースする事で、
そのモンスターのレベルによって以下の効果を得る。
●1〜4:デッキからカードを1枚ドローする。
●5、6:相手フィールド上に存在するカードを2枚まで破壊する。
●7以上:相手ライフに2000ポイントのダメージを与える。

スターナイツ・ファルコン ユラヌス
効果モンスター
星4/風属性/鳥獣族/攻2100/守 800
このカードは通常召喚できない。
このカードが手札から捨てられた時、
このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。


「ドロー!」

後攻2ターン目。
まだ序盤だと言うのに攻撃力2000を越えるモンスターを何体も並べたという愛華の行動に戸惑いを覚えるミラ。
しかし、負けていられないとばかりに引いたカードを手札に加え、じっくりと戦術を練る。

「私は、フィールド魔法ジャスティス・ワールドを発動します!」

「!?」

ジャスティス・ワールド
フィールド魔法
自分のデッキからカードが墓地に送られる度に、
このカードにシャインカウンターを1つ置く。
シャインカウンター1つにつき、フィールド上の「ライトロード」
と名の付いたモンスターの攻撃力は100ポイントアップする。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードが他のカードの効果によって破壊される場合、
代わりにシャインカウンターを2つ取り除く。

一風代わりのなかったデュエルフィールドが、中世ヨーロッパ風の王国の景色に移り変わる。
その城壁は、愛華を拒むかのように威風堂々とそびえたっている。

「更に、手札のライトロード・ハンター ライコウを墓地に送り、
 ソーラー・エクスチェンジを発動!」

ソーラー・エクスチェンジ
通常魔法
手札から「ライトロード」と名のついたモンスターカード1枚を捨てて発動する。
自分のデッキからカードを2枚ドローし、その後デッキの上からカードを2枚墓地に送る。

ライトロード・ハンター ライコウ
効果モンスター
星2/光属性/獣族/攻 200/守 100
リバース:フィールド上のカードを1枚破壊する事ができる。
自分のデッキの上からカードを3枚墓地に送る。

ミラの発動したのは手札交換カード。
彼女が1枚のモンスターカードを捨て2枚のカードをドローすると、
彼女の場のソリッドヴィジョンの2枚のカードが映し出される。

「ライトロード・ビースト ウォルフ」→墓地
「ライトロード・ナイト ノーム」→墓地

ライトロード・ビースト ウォルフ
効果モンスター
星4/光属性/獣戦士族/攻2100/守 300
このカードは通常召喚できない。
このカードがデッキから墓地に送られた時、このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。

ライトロード・ナイト ノーム
チューナー(効果モンスター)
星3/光属性/戦士族/攻 900/守 100
自分の墓地に「ライトロード」と名のつくモンスターが4種類以上存在し、
相手フィールド上にモンスターが存在する場合、
このカードを墓地から攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
この効果で特殊召喚されたこのカードは、
フィールドから離れた場合ゲームから除外される。

「そして、墓地に送られたウォルフの効果を発動!
 デッキから墓地に送られた時、フィールド上に特殊召喚されます!」

フィールドに、狼の頭を持つ巨大な獣人が姿を現す。

「更に、ライトロード・サモナー ルミナスをコストとし、
 もう1枚のソーラー・エクスチェンジを発動!」

ライトロード・サモナー ルミナス
効果モンスター
星3/光属性/魔法使い族/攻1000/守1000
1ターンに1度、手札を1枚捨てる事で自分の墓地に存在するレベル4以下の
「ライトロード」と名のついたモンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する場合、
自分のエンドフェイズ毎に、自分のデッキの上からカードを3枚墓地に送る。

また・・・、と心中で小さく呟く愛華。
しかし、これが危ない行動である事を、愛華はよく熟知しているようだった。
って読者の皆さん、変な意味でとらえちゃ(ry
それはともかく、再びフィールドに2枚のカードが映し出される。
映し出されたカードはすかさず墓地へ送られる。

「裁きの龍」→墓地
「ライトロード・プリースト ジェニス」→墓地

裁きの龍
効果モンスター
星8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2600
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地に「ライトロード」と名のついた
モンスターカードが4種類以上存在する場合のみ特殊召喚する事ができる。
1000ライフポイントを払う事で、
このカードを除くフィールド上のカードを全て破壊する。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する場合、
自分のエンドフェイズ毎に、デッキの上からカードを4枚墓地に送る。

ライトロード・プリースト ジェニス
効果モンスター
星4/光属性/魔法使い族/攻 300/守2100
「ライトロード」と名のついたカードの効果によって
自分のデッキからカードが墓地へ送られたターンのエンドフェイズ時、
相手ライフに500ポイントダメージを与え、自分は500ライフポイント回復する。

「そして、ウォルフをリリースし、
 ライトロード・エンジェル ケルビムをアドバンス召喚します!」

ライトロード・エンジェル ケルビム
効果モンスター
星5/光属性/天使族/攻2300/守 200
このカードが「ライトロード」と名のついたモンスターを
リリースしてアドバンス召喚に成功した時、
デッキの上からカードを4枚墓地に送る事で
相手フィールド上のカードを2枚まで破壊する。

獣人は、光の粒子としてリリースされ、フィールドに白い羽の生えた天使が降臨する。
その羽からは白く眩い光が発せられ、愛華の場のカードを掻き乱した。

「うわっ!?」

「ケルビムの効果、デッキの上から4枚を墓地に送る事で、
 相手フィールド上のカードを2枚まで破壊します!
 正義の閃光(シャイン・オブ・ザ・ジャスティス)!」

光が晴れると、そこに今まで存在したクレセリアとユラヌスの1体が消え去っていた。

「スターナイツ・ユニコーン クレセリア」→墓地
「スターナイツ・ファルコン ユラヌス」→墓地
「閃光のイリュージョン」→墓地
「ライトロード・パラディン ジェイン」→墓地
「オネスト」→墓地
「オネスト」→墓地

閃光のイリュージョン
永続罠
自分の墓地から「ライトロード」と名のついたモンスター1体を選択し、
攻撃表示で特殊召喚する。
自分のエンドフェイズ毎に、デッキの上からカードを2枚墓地に送る。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターがフィールド上から離れた時このカードを破壊する。

ライトロード・パラディン ジェイン
効果モンスター
星4/光属性/戦士族/攻1800/守1200
このカードは相手モンスターに攻撃する場合、
ダメージステップの間攻撃力が300ポイントアップする。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
自分のエンドフェイズ毎に、自分のデッキの上からカードを2枚墓地に送る。

オネスト
効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻1100/守1900
自分のメインフェイズ時に、フィールド上に表側表示で存在する
このカードを手札に戻す事ができる。
また、自分フィールド上に表側表示で存在する光属性モンスターが
戦闘を行うダメージステップ時にこのカードを手札から墓地へ送る事で、
エンドフェイズ時までそのモンスターの攻撃力は、
戦闘を行う相手モンスターの攻撃力の数値分アップする。

「くっ・・・。」

「まだですよっ!
 墓地のライトロード・ナイト ノームの効果を発動します!
 自分の墓地にライトロードモンスターが4種類以上の場合、
 墓地から攻撃表示で特殊召喚されます!」

宣言と同時に、フィールドに小さな剣を持った小さな少年騎士が現れる。
そして、騎士は天に小さな剣を振り翳した。

「レベル3のチューナーモンスター、ライトロード・ナイト ノームに、
 レベル5のライトロード・エンジェル ケルビムをチューニング!」

「ライトロード・ナイト ノーム」→除外
「ライトロード・エンジェル ケルビム」→墓地

「し、シンクロ召喚!?」

間の抜けた声で愛華が叫ぶ。
さっき自分がした仕打ちを直後に受けることになるとは、彼女の想像の値を超越していたのだろう。
フィールドに8つの白い星が行き交う。

「眩き光が交わりし時、閃光の使徒が天より舞い降りる。
 正しき道へ導きたまえ!
 シンクロ召喚!我が僕、ライトエンド・アーク ガスト!」

フィールドに、太くて強靭な4つの手足を持ち、長い胴体を持つ白い伝説の龍が降臨する。
龍は、フィールドに舞い降りると同時か否か、全ての者を怯えさせるような咆哮をあげる。

ライトロード・アーク ガスト
シンクロ・効果モンスター
星8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2000
チューナー+チューナー以外の光属性モンスター1体以上
魔法・罠・モンスター効果が発動した時、
自分のデッキの上からカードを5枚墓地に送る事でその効果を無効にし破壊する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する場合、
自分のエンドフェイズ毎に、デッキの上からカードを4枚墓地に送る。

「す、凄い・・・。」

流石の愛華もこればかりには驚いてしまったのだろうか。
異星人を見るような目で目の前の巨大な龍を見上げる。
その大きさは、アニメGXにおけるサイバー・エンド・ドラゴン等を想像してもらうと分かりやすいだろう。
さすがに地縛神ほどの大きさがあったらそれはそれで困るが。

「・・・そういえば、お気づきですか?
 私の場のモンスターの攻撃力・・・。」

「・・・へ?」

「ジャスティス・ワールド」 シャインカウンター×3
「ライトロード・アーク ガスト」(ATK3000→3300)

フィールドに堂々たる姿で居座る龍は、僅かながら王宮の力でパワーアップしていた。
頭上に?マークを浮かべながら説明を待つ愛華に、ため息交じりのミラの言葉が入る。

「ジャスティス・ワールドは、自分のデッキからカードが墓地に送られるたびに、
 シャインカウンターを1つ乗せる能力があります。
 そして、そのシャインカウンターは、私の場のライトロードの攻撃力を
 100ポイントアップさせる能力を持っています。
 それが、さっきまでで3つ溜まった。
 つまり、私の場のライトロードは攻撃力を300ポイントアップしているのです。」

「うっ・・・。」

攻撃力3000のモンスターに300のパワーアップなど、大したものではない。
しかし、ライトロード特有の墓地肥やし能力により、少しずつ攻撃力を上げていくその様は、
愛華にとってまさに脅威そのものだろう。

「行きますよっ・・・!!
 ライトロード・アーク ガストで、スターナイツ・ファルコン ユラヌスを攻撃!
 ジ・エンド・オブ・ノヴァ!」

龍は、その巨体を宙に浮かせる。
その刹那、龍の放った光線によりその貧弱な肉体を持つ鳥獣は一瞬にして消されてしまった。
無論、その衝撃はプレイヤーである愛華にも直撃し、愛華はしりもちをついて後ろに倒れてしまった。

「うわぁぁ!?」 愛華LP7950→6750

「カードを2枚セットして・・・、
 エンドフェイズ時に、ガストの効果!
 デッキの上から4枚を墓地に送り、
 ジャスティス・ワールドにシャインカウンターを1つ乗せます!」

「オネスト」→墓地
「裁きの龍」→墓地
「死者転生」→墓地
「ライトロード・ドラゴン グラゴニス」→墓地

死者転生
通常魔法
手札を1枚捨てて発動する。
自分の墓地に存在するモンスター1体を手札に加える。

ライトロード・ドラゴン グラゴニス
効果モンスター
星6/光属性/ドラゴン族/攻2000/守1600
このカードの攻撃力と守備力は、自分の墓地に存在する「ライトロード」
と名のついたモンスターカードの種類×300ポイントアップする。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する場合、
自分のエンドフェイズ毎に、デッキの上からカードを3枚墓地に送る。

「ジャスティス・ワールド」 シャインカウンター×3→4
「ライトロード・アーク ガスト」(ATK3300→3400)


ターンの終了を宣言するミラ。
おしりをさすりながら立ち上がる愛華。
ミラの少し勝ち誇った様子を見た愛華は、心の中でこう呟いた。
「絶対負けられない!」
そして、先攻3ターン目。

「私のターン、ドロー!
 私はまず、バック・スターを発動!」

バック・スター
通常魔法
自分の墓地から「スターナイツ」と名のついたモンスター2体を手札に加える。

「墓地からスターナイツ2体を手札にっ!
 私は、ユラヌス2体を選択するよっ!」

愛華のディスクが星に照らされる。
それと同時に、2体の鳥獣が愛華の手札に舞い戻った。

「そして、ユラヌスと500のライフをコストに、
 スターナイツ・エクスタシーを発動っ!」 愛華LP6750→6250

スターナイツ・エクスタシー
通常魔法
ライフを500ポイント払い、
手札から「スターナイツ」と名のつくモンスター1体を墓地に捨てる。
デッキからカードを2枚ドローする。

ミラの表情は相変わらず真剣な感じだった。
ユラヌスをコストにしたことで、それはフィールドに生還する・・・。
なんて凄いんだろう、彼女には、愛華に対する小さな嫉妬心すらも芽生えていた。

「ユラヌスを手札コストとしたことにより、
 墓地より特殊召喚っ!」

フィールドに再び鳥獣の姿が現れる。

「手札の2体目のユラヌスを墓地に捨て、
 墓地から再びスターナイツ・ソーサラー サターニアを特殊召喚するよっ!」

スターナイツ・ソーサラー サターニア
効果モンスター
星6/風属性/魔法使い族/攻2400/守1600
自分の手札からこのカード以外の「スターナイツ」と名のついた
モンスター1体を墓地に捨てることで、
手札または墓地からこのカードを特殊召喚する事ができる。

フィールドに再び、男魔術師の姿が生還する。
無論の如く、墓地に捨てられたユラヌスも生還した。

「そして、2枚目のバック・スターを発動!
 墓地からフェアリー エイリと、ユニコーン クレセリアを手札に!」

スターナイツ・フェアリー エイリ
チューナー(効果モンスター)
星2/風属性/天使族/攻 400/守1000
1ターンに1度、手札からモンスターカード1枚を捨てて発動する。
自分の墓地から、捨てたモンスターと同じレベルの
「スターナイツ」と名のついたモンスター1体を選択して
自分フィールド上に特殊召喚する。

墓地からチューナーモンスターとシンクロモンスターを手札に・・・、
正確にはシンクロモンスターはエクストラデッキへ行くのだが・・・。
ミラは再び襲い来る嫌な予感を否定できなかった。

「そして、フェアリー エイリを召喚!」

フィールドに再び、薄い4枚の羽の生えた小さな妖精が現れる。
当たり前と言わんばかりに、隣にもう1体のモンスターが展開され、
愛華のフィールドは再び5体のモンスターが並び立った。
新たに召喚されたのは・・・。

「手札から2枚目のエイリを墓地に捨て・・・、
 捨てたエイリを再び場に特殊召喚っ!」

「2体のチューナーモンスター・・・!?
 (もしかして、2体のシンクロモンスターを・・・。)」

「レベル2、エイリに、レベル4のユラヌスをチューニング!
 召喚輝きし新星が、明るい未来への道を照らし出す。
 光差す道となれ!
 シンクロ召喚!お願いっ、スターナイツ・ユニコーン クレセリア!」

交わりし白い6つの星は、フィールドに再び清風のユニコーンを繰り出す。
白馬は、その青白いキレイな鬣をなびかせ、地面を一蹴りした。

「そして、2体目のエイリに、レベル6のサターニアをチューニング!
 運命の歯車が、今ここに音を立てて動き出す。
 光差す道となれ!」

「レベル8の・・・シンクロモンスター・・・!?」

ミラが唖然としたように呟く。
額につうっ、と一筋の汗が垂れる。

「シンクロ召喚!お願いっ、スターナイツ・ドラゴン メルキュール!」

愛華が叫ぶと同時か否か、そこには8枚の翼と神秘的な白い巨体を持つ龍が召喚されていた。
龍は、空中を飛翔しながら自分よりも一回り大きい目の前の龍を睨み付けながら雄雄しく咆哮する。
その時だった。2人のデュエルを中断して、「何か」が輝きだしたのは・・・。


愛華 LP6250
「スターナイツ・ドラゴン メルキュール」(ATK2500)
「スターナイツ・ユニコーン クレセリア」(ATK2200)
「スターナイツ・ファルコン ユラヌス」(ATK2100)

ミラ LP1600
「ライトロード・アーク ガスト」(ATK3400)
「ジャスティス・ワールド」(シャインカウンター×4)
伏せカード2枚




Memories 007 The Dragon of Legend 〜伝説の竜〜

土草事務所前 2036年8月7日 PM03:45


愛華 LP6250
「スターナイツ・ドラゴン メルキュール」(ATK2500)
「スターナイツ・ユニコーン クレセリア」(ATK2200)
「スターナイツ・ファルコン ユラヌス」(ATK2100)

ミラ LP1600
「ライトロード・アーク ガスト」(ATK3400)
「ジャスティス・ワールド」(シャインカウンター×4)
伏せカード2枚

スターナイツ・ドラゴン メルキュール
シンクロ・効果モンスター
星8/風属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
チューナー+チューナー以外の「スターナイツ」と名のついたモンスター1体以上
自分フィールド上に存在するモンスターがフィールドから離れる場合、
代わりにフィールドから離れるモンスターと同じ枚数の手札を捨てる事ができる。
このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、
与えたダメージ500ポイントにつき1枚+1枚
デッキからカードをドローする。

スターナイツ・ユニコーン クレセリア
シンクロ・効果モンスター
星6/風属性/獣族/攻2200/守1900
チューナー+チューナー以外の「スターナイツ」と名のついたモンスター1体以上
1ターンに1度、自分フィールド上に存在するモンスター1体をリリースする事で、
そのモンスターのレベルによって以下の効果を得る。
●1〜4:デッキからカードを1枚ドローする。
●5、6:相手フィールド上に存在するカードを2枚まで破壊する。
●7以上:相手ライフに2000ポイントのダメージを与える。

スターナイツ・ファルコン ユラヌス
効果モンスター
星4/風属性/鳥獣族/攻2100/守 800
このカードは通常召喚できない。
このカードが手札から捨てられた時、
このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。

ライトロード・アーク ガスト
シンクロ・効果モンスター
星8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2000
チューナー+チューナー以外の光属性モンスター1体以上
魔法・罠・モンスター効果が発動した時、
自分のデッキの上からカードを5枚墓地に送る事でその効果を無効にし破壊する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する場合、
自分のエンドフェイズ毎に、デッキの上からカードを4枚墓地に送る。

ジャスティス・ワールド
フィールド魔法
自分のデッキからカードが墓地に送られる度に、
このカードにシャインカウンターを1つ置く。
シャインカウンター1つにつき、フィールド上の「ライトロード」
と名の付いたモンスターの攻撃力は100ポイントアップする。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードが他のカードの効果によって破壊される場合、
代わりにシャインカウンターを2つ取り除く。


愛華の場に現れたのは、1体の巨大な龍。
大きさは目の前のミラの操る龍には劣るものの、それでも十分の迫力と威圧感を放っていた。
そしてその龍が現れる刹那か、フィールドが禍々しい紅蓮の色に染まる。

「「!?」」

目を見張る2人。
互いに、2人の顔を確認しあうことができなくなるほど眩い紅色の光。
その光は、デュエルフィールド全体を埋め尽くし、ソリッドヴィジョンを超えて物理的破壊を行った。
次第に光の埋め尽くす範囲は拡大され、近くに止めてあった車などは無事では済まなかった。
地面にも大きな亀裂が入る。
しかし、事務所は不可視のバリアが張ってあるためかほとんど無傷だった。

「な、なにこれっ!?
 ミ、ミラぁぁ〜〜〜!!」

恐怖と困惑のあまり叫びだす愛華。
冷静さを保とうとするミラも、さすがに混乱してしまうようだった。
姿の見えない愛華が居るであろう方向に向かって走り出そうとする。
しかし、その願いも叶わず足元の亀裂によって後ろに倒れてしまう。

「ま、愛華!?
 キ、キャぁ!?」

人通りが少ないのがせめてもの救いだろうか。
光はどんどん膨張し、周囲のものを破壊しつくす。
しかし、なぜか2人は無傷だった。
その時だった。甲高い紅い龍の姿を2人の視覚がとらえたのは・・・。



数分後のことだった。
光は次第に収縮し、1分足らずで周囲は破壊しつくされた残骸の残る事務所前の空き地に戻った。
愛華は、場の状態を確認する。
デュエルディスクにはしっかりとカードがセットされているのだが、ソリッドヴィジョンにモンスターは存在しない。
さっき召喚した龍も、ミラの場に存在した巨大な龍も・・・。
沈黙の続いたその空き地に、先に口を開いたのは愛華。

「な、なんだったんだろうね・・・。」

「さぁ・・・。」

腰を折って座り込んでしまっているミラは、首を横に振って答えた。
そして、服についた汚れを払いながら深刻そうな表情でこう言う。

「超常現象対策局に届け出て見ましょう。
 何か分かるかもしれません。」

「ちょうじょうげんしょう・・・たいさくきょく?」

すかさず愛華が切れの悪い語調で首を傾けて尋ねる。

「一般に起こる全ての超常現象に対する管理や研究を行っている機関です。
 もちろん、一般人からの質問や相談も受け付けているので、
 やはり、この事件は対策局に相談するのが無難でしょう。
 ソリッドヴィジョンも消えてしまってますし・・・、
 このデュエルはお預けにしましょう。」

最後の1文を聞いて、愛華は少しがっかりする。
無理もないだろう、勝ったと確信したのだったから・・・。

「ただ、動画などの証拠がないのが残念ですね。
 まぁ、デュエル中にそう動画なんて撮ってるわけでもないですが。」

辺りに広がる無残な光景を見つめながら、ミラが苦笑する。
対する愛華は、もどかしくなったのかミラを急かすような口調で言った。

「ねぇ、あの、早く行こうよ!
 その、えっと・・・ちょう、じょう・・・。」

「超常現象対策局ですね。
 こっちです。」

ミラの案内で、2人はゆっくりと歩き出した。



超常現象対策局アルアシティ西部地区支部受付 2036年8月7日 PM4:22


歩くことおよそ30分。
2人は対策局受付にキレイに並べられたベンチに浅く腰掛けている。
その表情はあまり浮いた感じでもなく、かといって悲しい感じでもない。
寧ろ、これから何か起こるのではないか・・・そういった探究心の類によるものだった。

ベンチに座ってから数分が経った。
2人の前に黒い紳士服姿の青年が現れる。
見たところ30歳前後のその青年は、咳払いを1つして2人の前に立ち、こう尋ねた。

「あなた達が、依頼番号36080703の依頼人ですね?」

透き通っていて優しい声色に思わず聞き惚れてしまいそうになる愛華。
隣に座っているミラは、愛華のそんな様子などお構いなしに、真剣な表情ではい、と首を縦に振る。

「それでは、こちらへどうぞ。」

右手を彼女らの行く先に指し示すと、ミラはゆっくりと立ち上がる。
つられるように愛華が立ち上がると、青年とミラの後を追いかけた。



そこに並べられた3つのイス。
青年に促されるままに愛華とミラはイスに腰を下ろす。
青年が余ったイスに座ると、書類らしきものを片手に口を開く。

「では、そのときの状況を詳しくお願いします。」

口を開いたのはミラ。

「私と彼女でデュエルをしているときでした。
 私の場にライトロード・アーク ガストが存在する状態で、
 彼女の場にスターナイツ・ドラゴン メルキュールが召喚された・・・。」

頷きながら書類に筆を運ばせる青年。
その瞳は、どこか確信めいたものがあった・・・。

「その時でした。
 デュエルフィールドから紅い光が発せられ、フィールドを覆い囲んだんです。
 その光は次第に膨張していき、物理的破壊を行ったんです・・・。」

「あなた達は、無事だったんですか?」

すかさず青年が質問する。
首を縦に振って淡々と話を続けるミラ。

「はい、なぜか私たちや私たちの装飾しているものへの被害は皆無でした。
 もちろん、そばにあった土草事務所は、独自のガードによって無傷でしたが・・・。」

「光は、淡い紅色だったんですよね・・・?」

「はい・・・。」

ミラの隣に座っているはずの愛華は、最早話についていけず空気化してしまっている。
青年の口から意外な言葉が漏れた。

「同じような事件が、およそ20年ほど前に起こっています。」

「20年前・・・ですか?」

質問したのはミラ。
青年は、真剣な口調で話し始めた。

「その時は、エンシェント・フェアリー・ドラゴンとスターダスト・ドラゴンのパターンでしたが・・・。
 後から召喚されたスターダスト・ドラゴンの召喚直後、突然紅い光が発生し、
 物理的破壊を行い、デュエルを中断しました。」

今まで口を閉じていた愛華が漸くのことで口を開く。

「そういえば、私たちの時もデュエル中断しました!」

「となると、またあの戦いがやってきますか・・・。」

ふぅ、と溜め息をつきながら青年はまた話し始める。

「あなた達の使うそのドラゴン族のシンクロモンスター、
 即ち、ライトロード・アーク ガストと、スターナイツ・ドラゴン メルキュールは、
 恐らく5体の伝説の龍の生まれ変わりです。
 光、風・・・と来たら闇、炎、地も存在する筈ですが・・・。
 まだ確認されていない現状では発見を待つしかないですね・・・。」

腕を組みながら2人に目配せをする青年。
小さく手を上げて質問しようとするミラの口から漏れたのはこんな言葉。

「あの・・・どうしても発見しなくちゃいけないんですか?
 発見しなくちゃいけない理由とかは・・・。」

「それは・・・。」

一瞬躊躇ってから、思い切ったように言葉を放った。

「いずれ時が来てから、再びあなた達を呼び出します。
 それに備えて、あなた達は心の準備を。
 これにて、面会を終了してもよろしいでしょうか?」

「は、はい・・・。」

ここからは禁断領域・・・そう悟ったミラは、小さな声で返事をした。
軽く伸びをして立ち上がる2人は、青年によって出口へ案内される。




「いいのかな、これで?」

局を出た2人。
先に言葉を放ったのは愛華。

「大丈夫よ、それより・・・。」

ミラは愛華に向き直って手を差し伸べる。

「また今度、デュエルしましょう!
 そこで、決着をつけましょう!」

差し伸べた手を握り、愛華は満面の笑みで返事をした。

「うん!
 絶対負けないからね!」

ミラは再び微笑んでから、西に輝く夕日の下に別れと再開の約束を果たした・・・。




アルアシティ関門西口 2036年8月7日 PM07:18


「へぇ〜、ここがアルアシティの関門ねぇ〜・・・。」
1人の少年が、月をバックに塔の上でこう呟いた・・・。




Memories 008 Dragon Warriors 〜竜の戦士団〜

アルアシティ関門西口 2036年8月7日 PM07:18


「へぇ〜、ここがアルアシティの関門ねぇ〜・・・。」

呟いたのは、紅いツンツンヘアーをした少年。
その下では、サイレンやらマイクの音が鳴り響いている。

「おい!そこの者!今すぐ降りて来い!」

「頼まれなくても、降りてきてやるぜ・・・。」

少年は小声でそう呟くと、月をバックにした4階建ての建物の屋上から・・・飛び降りた!?

「「「!?」」」

そこにいたのはアルアシティセキュリティ隊員。
いくらセキュリティとは言えども、突然の出来事に慌てふためく。
しかし、心配後無用と言わんばかりに、少年はセキュリティの白バイやらの取り囲む中心に、無事・・・着地した!

「あん?驚いた?
 俺にとっちゃこんなん普通だから、気にすんな。」

気にすんなといわれて気にしないほうが無理である。
しかし、起こったことは現実。
隊員はすぐに平静を取り戻して少年に尋問を開始する。

「パスポートを見せろ。
 さもないと不法侵入罪で逮捕する。」

「ぱすぽーとぉ?
 んなもんあるわけないだろ。」

警察手帳を見せながらお決まりのセリフを発する隊員。
あまりにも舐めてかかった少年の態度に苛立ちを覚えるも、やはり冷静に対処した。

「それでは、逮捕しますよ。
 署へ同行願います。」

「なぁ、それよりさぁ・・・。」

少年は、自身の腕を掴もうとする隊員の腕を振り払いこう言った。

「俺とデュエルしね?
 俺が勝ったらこのこと、見逃してくれよ。
 逮捕なんてそんなこと、俺は知ったこっちゃねぇし、
 別に目的があってここに来たわけじゃねぇんだしさ。」

口利きの悪い態度で接してくる少年に募る苛立ちを憶える隊員。
しかし、確かに目的もなくここへやってきて逮捕されるというのも少しかわいそうだ。

「分かった、ただし、君が負けたらちゃんと所へ同行するんだ。
 私の弁護で、少しは罪を軽くしてやるから。」

流石に相手は子どもである。
それに、目的もなく、しかもアルアのルールを知らずにやってきた者に対していきなり逮捕と言うのも人道に反するだろう・・・。
それに、自分はセキュリティ隊員である。
こんな1人の子どもにデュエルで負けるなど想像もしなかった。
そう考えたセキュリティ隊員の言った言葉に、少年はあからさまにガッツポーズをとってこう言った。

「よっしゃぁ!
 じゃ、とっとと始めるぜ!」

ディスクを構えて子どもっぽい笑みを浮かべる少年。
仕方ない、といった感じで隊員は白いデュエルディスクを構えた。


「「デュエル!」」 少年8000vs8000隊員

「じゃ、俺の先攻で行くぜ!ドロー!」

先攻1ターン目。
先攻をとったのは赤髪の少年。
やっぱじゃんけんなしか・・・ハァ・・・。

「俺は、DW(ドラゴンウォリアーズ)−赤橙のサブマリンを召喚!」

DW−赤橙のサブマリン
効果モンスター・ドラゴンリンク
星4/地属性/ドラゴン族/攻 100/守2100
自分フィールド上に「DW−赤橙のサブマリン」以外の
「DW」と名のついたモンスターが存在する場合、
ライフを500ポイント払う事でこのカードを手札から通常召喚する事ができる。
(ドラゴンリンクは1ターンに1度しか使用できない。)
このカードの召喚に成功した時、このカードは表側守備表示になる。
このカードは魔法カードの効果によっては破壊されない。

フィールドに、岩のような硬い身体を持った竜が現れる。
竜は、攻撃表示で現れた刹那、その身体を守備体制にした。

「DW−赤橙のサブマリン」(DEF2100)

「守備力は2100!そう簡単には倒されないぜ!
 しかも、サブマリンは魔法の効果で破壊されない!」

なるほど、守備を固めて様子見できたか・・・と隊員は考察する。
しかし、少年はそんなこと微塵も考えてなかった。


「・・・と、言いたいところだが、
 サブマリンには早々に退場してもらう!」

「な、何!?」

驚きの表情を隠せない隊員。
少年は悪戯っぽい笑みを浮かべて1枚のカードに指をかける。

「DW−蒼藍のマリンを召喚!」 少年LP8000→7500

「な、ライフ500を引き換えにモンスターを特殊召喚!?」

DW−蒼藍のマリン
チューナー(効果モンスター・ドラゴンリンク)
星3/水属性/ドラゴン族/攻1400/守1100
自分フィールド上に「DW−蒼藍のマリン」以外の
「DW」と名のついたモンスターが存在する場合、
ライフを500ポイント払う事でこのカードを手札から通常召喚する事ができる。
(ドラゴンリンクは1ターンに1度しか使用できない。)
このカードの召喚に成功した時、フィールド上に存在するモンスター1体の攻撃力を
1000ポイントダウンする事ができる。

フィールドに現れたのは、水のような透き通った身体を持つ竜。

「特殊召喚じゃない。
 DWは、自分の場に他のDWがいる場合、
 ドラゴンリンクによってライフ500と引き換えに自身を通常召喚させる!
 そして、蒼藍のマリンはレベル3のチューナーモンスター!」

フィールドにチューナー1体を含む2体以上のモンスター・・・即ちそれは・・・。

「蒼藍のマリンに、赤橙のサブマリンをチューニング!
 巻き起こる旋風に、眩い黄金が共鳴する。
 悪を打ち破れ!
 シンクロ召喚!来い、DW−黄金のプラチナ!」

7つの星は、眩い光とともに共鳴する。
そしてフィールドに現れたのは、全身から金の光を放つ竜・・・。

DW−黄金のプラチナ
シンクロ・効果モンスター
星7/炎属性/ドラゴン族/攻2400/守1600
「DW」と名のついたチューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このモンスターがカードの効果によって破壊された場合、
次の自分のスタンバイフェイズ時にこのカードを特殊召喚する。
この方法で特殊召喚に成功した場合、フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。

「1ターンでシンクロ召喚か・・・思ったよりやるな・・・。」

「へっ、舐めてもらっちゃ困るぜ!
 俺はターン終了!」

フッ、と鼻で小さく笑う隊員。
まるで、それはこっちのセリフだとでも言いたげだ。

「私のターンだ、ドロー!
 私はまず、増援を発動!」

増援
通常魔法
デッキからレベル4以下の戦士族モンスター1体を手札に加え、
デッキをシャッフルする。

「私が呼び出すのは、リアクト・ガンマン!
 そして召喚する!」

リアクト・ガンマン
効果モンスター
星4/地属性/戦士族/攻1600/守 800
このカードが相手モンスターの攻撃対象となった時、
このカードの攻撃力は600ポイントアップする。

フィールドに小さな拳銃を持った1体の西部ドラマ風のガンマンが現れる。

「そして、カードを1枚伏せ、ターン終了だ。」

「俺のターン、ドロー!」

後攻2ターン目。
カードを引いた瞬間、少年は楽しそうな、しかしどこかつまらなそうな笑みを浮かべる。

「俺はまず、DW−真紅のクリムゾンを召喚!」

フィールドに、全身を炎で纏う竜が現れる。
現れると同時か否か、隊員の場に異変が起こる。

DW−真紅のクリムゾン
効果モンスター・ドラゴンリンク
星4/炎属性/ドラゴン族/攻1600/守 700
自分フィールド上に「DW−真紅のクリムゾン」以外の
「DW」と名のついたモンスターが存在する場合、
ライフを500ポイント払う事でこのカードを手札から通常召喚する事ができる。
(ドラゴンリンクは1ターンに1度しか使用できない。)
このカードの召喚に成功した時、自分フィールド上に存在する
このカード以外の「DW」と名のついたモンスターの数だけ
相手フィールド上にセットされた魔法・罠カードを破壊する事ができる。

「クリムゾンの召喚成功時、
 自分の場のDWの数だけ相手フィールド上にセットされた魔法・罠を破壊する!
 フレイム・スピア!」

炎を纏った竜から放たれた火の礫は、隊員の場に伏せられた1枚のカードを貫通した。

「くっ!
 (グレイ・ガンが・・・。)」

グレイ・ガン
通常罠
自分フィールド上に存在する「ガンマン」と名のついた
全てのモンスターの攻撃力は、
エンドフェイズまで800ポイントアップする。

「へぇ〜、そのカードで返り討ちを狙ってたわけか。
 だが、俺にそんな小細工は通用しないぜ。」

明らかに甘く見た目で隊員を小ばかにする。
隊員は流石にカチンと来たのか、顔をしかめて舌打ちをした。

「更に、ドラゴンリンクを発動!
 ライフを500払い、DW−青緑のシアンを召喚!」 少年LP7500→7000

DW−青緑のシアン
チューナー(効果モンスター・ドラゴンリンク)
星2/風属性/ドラゴン族/攻1100/守 200
自分フィールド上に「DW−青緑のシアン」以外の
「DW」と名のついたモンスターが存在する場合、
ライフを500ポイント払う事でこのカードを手札から通常召喚する事ができる。
(ドラゴンリンクは1ターンに1度しか使用できない。)
このカードの召喚に成功した時、自分の墓地から「DW」と名のついた
レベル4以下のモンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する事ができる。

フィールドに現れたのは、身体を葉っぱなどの緑で構成する竜。
あまり強くはなさそうだが・・・。

「シアンの効果を発動!
 召喚に成功した時、墓地からDW1体を守備表示で特殊召喚する!
 来い、赤橙のサブマリン!」

自然の力によって呼び出されたのは、先ほどシンクロ素材となったサブマリン。
そして・・・。

「ま、まさか・・・シンクロ召喚!?」

「ご名答だ・・・。
 レベル2のチューナー、シアンに、サブマリンをチューニング!
 吹き荒れる風が、大樹をもなぎ倒す。
 悪を吹き飛ばせ!
 シンクロ召喚!来い、DW−翡翠のエメラルド!」

6つの星が共鳴する。
フィールドに現れたのは、8枚の細い翼を持った巨大な竜。

DW−翡翠のエメラルド
シンクロ・効果モンスター
星5/風属性/ドラゴン族/攻2400/守1700
「DW」と名のついたチューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
手札のモンスターカード1枚を墓地に送る事で、
そのモンスターの攻撃力以下の相手フィールド上の表側表示モンスター1体を破壊する。

唖然とする隊員。
そして、漸く後悔する。

「まだだぜ・・・。」

少年から発せられる一言。
隊員の顔から血の気が引いてくる・・・。

「バック・ドラゴンを発動!
 墓地から赤橙のサブマリンと、真紅のクリムゾンを手札に!
 更に、加えたモンスターのレベルの合計×300ダメージを受ける・・・。」 少年LP7000→5600

バック・ドラゴン
速攻魔法
自分の墓地から「DW」と名のついたモンスター2体を手札に加える。
その後、加えたモンスターのレベルの合計×300ポイントのダメージを受ける。

襲い来る小さなダメージを受け流した後、少年は悪戯な笑みを浮かべて3体のカードを手札から墓地に送った。

「手札の、DW−虹色のアルカンシェルに、
 DW−純白のライトラル、DW−赤橙のサブマリンをチューニング!」

「な、手札の・・・シンクロ!?」

「そう、虹色のアルカンシェルは、手札でのシンクロ召喚を可能とする!」

更に驚嘆の表情を浮かべる隊員の前に、虹色の小さな身体をした竜のソリッドヴィジョンが現れる。

DW−虹色のアルカンシェル
チューナー(効果モンスター・ドラゴンリンク)
星1/光属性/ドラゴン族/攻 100/守 200
自分フィールド上に「DW−虹色のアルカンシェル」以外の
「DW」と名のついたモンスターが存在する場合、
ライフを500ポイント払う事でこのカードを手札から通常召喚する事ができる。
(ドラゴンリンクは1ターンに1度しか使用できない。)
このカードがフィールド上に存在する限り、
このカードをシンクロ素材とすることはできない。
このカードの召喚に成功した時、自分フィールド上に
存在するモンスターを全て手札に戻す事ができる。
このカードが手札に存在する場合、このカードと手札に存在するチューナー以外の
「DW」と名のついたモンスター1体以上を墓地に送り、
そのレベルの合計と同じレベルの「DW」と名のついた
シンクロモンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚する事ができる。

DW−純白のライトラル
効果モンスター・ドラゴンリンク
星3/光属性/ドラゴン族/攻1000/守1000
自分フィールド上に「DW−純白のライトラル」以外の
「DW」と名のついたモンスターが存在する場合、
ライフを500ポイント払う事でこのカードを手札から通常召喚する事ができる。
(ドラゴンリンクは1ターンに1度しか使用できない。)
自分のスタンバイフェイズ時、フィールド上に表側表示で存在する
このカードを持ち主の手札に戻す。
自分フィールド上に存在する「DW」と名のついたモンスターが攻撃対象になった時、
このカードを手札から捨てる事で、攻撃対象になったモンスターの攻撃力は、
エンドフェイズまで攻撃モンスターの攻撃力分アップする。

「レベルの合計は8!
 俺はエクストラデッキから、DW−混沌のカラレスを特殊召喚!
 来い、カラレス!」

8つの虹色に輝く星は、次第に光と闇を司るおぞましい姿をした竜を形作っていった・・・。

DW−混沌のカラレス
シンクロ・効果モンスター
星8/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2500
「DW」と名のついたチューナー+チューナー以外のモンスター2体以上
ライフを3000ポイント払う事で、
お互いの手札とフィールド上に存在する全てのカードを墓地に送る。
この効果で墓地に送ったカード1枚につき相手ライフに300ポイントダメージを与える。

「これで終わりだ・・・。
 まず、エメラルドの効果!
 手札のクリムゾンを捨て、クリムゾンの攻撃力以下、即ち貴様の場の1体のモンスターを破壊する!
 ブライト・ハリケーン!」

「くっ・・・!!」

巻き起こる旋風は、隊員の場を乱し、もぬけの殻にする。
そして、3体の竜は始動した・・・。

「エメラルドで攻撃!
 ツイスト・ハンマー!」

「ぐわぁっ!」 隊員LP8000→5600

「プラチナで攻撃!
 ティンクル・スターライド!」

「うわぁぁっ!!」 隊員LP5600→3200

「カラレスで攻撃!
 カオスナイト・エクスタシー!」

「うわぁぁぁぁぁっ!!!」 隊員LP3200→200

3体の竜の強烈なブレスは、隊員の身体を数メートル後方へ吹き飛ばす。
しかし、僅かながらライフは残った。
僅かに残る希望の光を胸に、少年のターン終了宣言を待つ隊員だったが・・・。

「これで終わりだといったはずだぜ?
 カラレスの効果発動!
 ライフ3000を代償に、フィールド・手札のカード全てを墓地に送り、
 その枚数×300ダメージを相手プレイヤーに与える。
 散れ、ナイトメア・クライシス!」

「な・・・何だって!?
 というかお前、強すぎる・・・何者だ!?名を名乗れ!!」

慌てた隊員の必死の叫び声。
最早それは、セキュリティ隊員としての威厳を失った姿だった。

「俺か?冥土の土産にでも教えてやるかっ・・・って、死ぬわけじゃないんだっけな。
 俺の名は・・・。」

口を運ばせる少年の後ろに飛翔するのは、禍々しい姿をした黒い竜。
竜は、少年が言うと同時か否か、黒い光を放ちだした。

「俺の名は、秋里煌也だ!」 少年LP5600→2600

「ぐわぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」 隊員LP200→0


ソリッドヴィジョンの消えた同場所。
1ターンにして8000ポイント以上のダメージを受け、気絶する隊員の元に近寄り、
そのディスクを拾い上げる少年、煌也。
こんなものか、と呟きながら1体のシンクロモンスターを拾い上げ、ゲートをくぐって行った・・・。


カノンショット・ガンマン
シンクロ・効果モンスター
星5/地属性/戦士族/攻2300/守 600
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードが戦闘を行う場合、
このカードの攻撃力は相手フィールド上に存在する
モンスター1体につき200ポイントアップする。




Memories 009 Kaiba World Classic 〜KWC〜

土草事務所7F709号室 2036年8月8日 AM08:00


そこは、事務所内の愛華の部屋。
朝8時の時報がなった。
叩き起こされるのが嫌だとばかりに布団に潜り込む愛華。

「う〜ん・・・もう8時かぁ・・・。」

およそ数分後に漸くベッドから這い上がる愛華。
鏡に映った混沌――カオス――な自分の髪型を見て思わず顔を赤らめ洗面所へと走る。
愛華の、事務所での初めての一夜が明けた。

こんこん、愛華が髪型を治している途中で、ドアのノック音が聞こえる。
仕方なく、直し途中の髪のままドアを開けると、そこにはイリアの姿が。

「うゎ、イリアさん・・・。」

「おや、取り込み中でしたか、これは失礼しました。」

苦笑しながら軽く頭を下げるイリア。
そして、用件を伝える。

「もう1度、8時30の時報がなりましたら朝食を届けに参ります。
 また、そのときにプロ活動について打ち合わせを行いますので、よろしくお願いします。」

「えっと、イリアさんは私のまねーじゃー?」

至る所が跳ねた髪形のまま、寝ぼけ眼で尋ねる愛華。
イリアは、苦笑しながらこう答えた。

「まぁ、確かにそんなところでしょうかね。
 スカウトしたのは私ですので、私が責任を持って。
 この事務所は、基本的にプロ転向後間もないデュエリストの保護機関ですので。」

へぇ〜、首を軽く振りながら相槌を打つ愛華。
イリアが身体を起こしてこう言った。

「それでは、30分後にもう1度参ります。
 それまでには髪、直しておいてくださいね。」

悪戯っぽい笑みを浮かべてイリアが言うと、愛華は頬を膨らまして赤面し、こう言い返した。

「わ、分かってるよぉ〜!」

「はは、それでは。」

もう1度、軽くお辞儀をしてドアを閉めるイリア。
イリアさんのいぢわる、そう呟いて愛華は洗面所に戻った。



アルアパーク 2036年8月8日 AM08:17


「ふぁぁ〜おはよ、って誰もいねぇ。」

寝ぼけ眼でベンチの上から起き上がったのは、例の少年、秋里煌也。
・・・って、君、ベンチで寝てたの!?
完全にホームレスじゃん!

「ホームレス?別に家持ってるからホームレスじゃないし。
 それに、来たばっかで寝るとこねぇし〜。」

寝るとこないって、そりゃ不法侵入だからね・・・。
後、地の分との会話はNGね。
まぁ、余計な突っ込みいれた自分(地の文)も悪いんですがorz

閑話休題、煌也がそれまで寝ていたのは、アルアパーク。
アルアシティでも髄いつの入場率と人気を誇る遊園地なのだが・・・、
煌也が何故そこに無料では入れたのかは謎である(一般入場料300円)。
しかも夜に。

「さて、と。
 KWCまでは時間あるし、それまで何してよっかな〜。」

・・・犯罪犯してるっていうのに気楽なヤツである。
それより、KWCって何だ?>後述します。



土草事務所7F709号室 2036年8月8日 AM08:30


8時30の時報が鳴った。
愛華の髪型はもうバッチリである。
天使が舞い降りたくらいキレイな髪形だ(本人談)。
まぁ、愛華は肩まで届くか届かないかくらい短い髪なので、寝癖が直りさえすればバッチリなのだが。

「み、短くて悪かったね!」

こらこら、地の文との会話NG。
閑話休題(本日2回目)、予告通りすぐにイリアが入ってきた。
さっきと違うところは、片手にサンドイッチを3つ持ってるところだろう。

「(って、朝食それだけっ!?)」

口に出したら流石に失礼なのであえて心の中で叫ぶ愛華。
確かに、朝食としては物足りないかもしれない。
因みに、作者の朝食はいつもパン1枚なので、サンドイッチ3つは寧ろ豪華。
(それ以前に多すぎて口に入らないのは内緒。)

「すみません、朝食としては物足りないですよね。」

イリアの口からこんな言葉が漏れる。
うんうんと、大きく首を縦に振る愛華は礼儀知らずの代名詞。

「それでは、朝食を食べながら話を聞いてください。」

イリアは近くにおいてあった小さなイスに腰掛ける。
そして、1枚の書類を愛華に手渡した。

対する愛華はサンドイッチを左手に、書類を右手に持ちながらベッドにドスンと腰掛ける。
そういえば、私服にも着替えている。

「第19回・・・KWC?」

ベッドに仰向けになりながら書類に書かれた内容をリピートする。
イリアは、食事を食べながらの行儀の悪い愛華の行動をスルーして、説明を始めた。
読者の皆さん、こう言うのを反面教師って言うんですよ(ヒソヒソ)。

「はい、海馬ワールドクラシック、略してKWC。
 19年前から海馬コーポレーションが毎年行っている、
 過去のバトルシティ大会の形式を受け継いだ大会の1つです。
 バトルシティ大会は知ってますよね?」

「うん!
 凄いよねぇ!神のカードっ!」

ベッドに寝転がった身体を急に起き上がらせると、愛華は目を輝かせてイリアの方を向く。
イリアはお決まりの如く、苦笑しながら説明を続ける。

「バトルシティ大会と同じように、
 予選は各々に配布された"星"を奪い合う戦いとなります。
 各々に配布された星の初期値は1。
 勝つごとに、1つ増えていき、負けるごとに1つ減っていきます。
 そして、星が0になった者は予選敗退、
 7つになった人の中で上位8名が決勝に出場することができます。」

へぇ〜、とかうんうん、とかいろいろな相槌を打ちながらイリアの話に聞き入る愛華。

「決勝はトーナメント形式で、アルア東部デュエルリングで行われます。
 そして、成績優秀者には賞金が入る、というわけです。」

「いいなぁ〜、おかね・・・。」

頬を赤らめながらまるで一目惚れの恋に落ちたかのような声で呟く愛華。
しかしながら、イリアは突っ込み役ではない。
愛華がボケても、誰も突っ込んではくれないというわけである。
強いて言うなら、地の文が突っ込みだろう。

閑話休題(本日3回目)、それでも鈍感な愛華に、イリアが誘惑的な視線でこんなことを言った。

「あなたも、KWCに出てみませんか?」

「私が?」

一瞬愛華の思考回路が静止する。
その目は、躊躇いや拒否のそれもなく、ただ何も考えていないという目だ。
鈍感とはまさにこのことだろう。

「う、うん!出る!」

聞きたかった返事が漸く聞けて、イリアは思わず微笑する。

「KWCの予選は明後日、8月10日の午前10時から開催されます。
 会場はこのアルアシティ内全体。
 シティ内であれば有料でなければ入れない場所も無料で自由に行き来できますが、
 シティ外へは参加資格を破棄する以外出ることはできませんのでご注意を。」

ただでさえ頭の中での整理の遅い愛華である。
イリアは速度を落としながら、それでも確実に書類の内容を次々と述べる。

「終了は午後6時。
 それまでに8人の予選通過者が出た時点で予選は終了します。
 また、決勝はその次の日の11日。
 詳細はあなたが予選通過したら話しますので、ご了承を。」

話が終わった、とばかりに愛華は立ち上がってイリアの瞳を見つめる。
そして小さな部屋の中なのに声を振り絞ってこう叫んだ。

「大丈夫!私絶対予選通過するから!
 頑張るぞー!」

テンションの高さに、憧れすら憶えるイリア。
時の流れは残酷である(イリア談)。



桜並木街道H地区 2036年8月8日 AM10:24


時間は2時間ほど後。
アングルは煌也である。
その彼はというものの、さっきのアルアパークを無事抜け出して、
今は人通りのまあまあある桜並木街道に来ている。
HというのはAから数えてH、ただそれだけのこと。
決してハレンチとかそういう意味では(ry

「さっきから何ハレンチなこと話してるんだ?地の文は。」

なっ、き、聞こえていたのかっ!?

閑話休題(本日4回目)、煌也はこれから何をするのだろうか。

「お前らストーカーかよ!?
 あっち行け!しっし!」

しっしって・・・まるでゴキブリを追い払う女の子みたいだな。

「閑話休題(本日5回目)、この回終わりが見えなくなってきてね?」

確かに・・・。

「デュエルもしてないしさ・・・、予選まで後2日あるんだろ?
 そのさ、地の文パワーでタイムスリップとかできないの?」

無理ですよ、作者の意向です。

「はぁ〜、ザコ敵Aとか現れないかなぁ〜・・・。」

哀れザコ敵A。
閑話休題(本日6回目)、終わりが見えなくなってきているのは事実である。
このまま終わらせてしまうか、それとも無理やりタイムワープさせてしまうか・・・。

「やっぱできんじゃんかよ!
 早くしてくれ!」

ちっ、聞こえてやがったか・・・。
閑話休題(本日7回目)、この中途半端な文字数でタイムワープというのもあれである・・・。
それ以前に煌也君、地の文との会話NG。




アルア東部デュエルリング広場 2036年8月10日 AM09:54


そこは、人々のざわめきの止まらない大きなドームの前。
アングルは一応煌也視点。
正直愛華のところへ行きたかったが、煌也に捕まった。
こんちきしょう。

閑話休題(本日8回目)、ホントにタイムワープしちゃったっぽいです・・・。

「なっ!?言っただろ!?
 この世に不可能はない!」

そんなこと言ってましたっけ?

閑話休題(本日9回目)、彼の目の前に見える高台に、
黒い紳士服を着て黒いサングラスをかけた40代前半の男がゆっくりと上ってきた。
漸く開会宣言が始まるのか・・・、煌也は息をのんでそれを凝視する。

「えぇー、これより、第19回KWCを開催いたします!
 まず始めに、KWC予選の簡単なルール説明から始めたいと思います! 
 (中略)
 それでは皆様、解散!
 皆様の健闘を祈ります!」

「中略ぅ!?
 おい作者!めんどくさいからってそれはないだろ!?」

あのぉ・・・もう始まってるんですけど、予選・・・。

「知るかよ!俺は納得行かない!
 作者出せ作者!」

ここでキレる理由がよく分かりませんなぁ(汗)。

閑話休題(本日10回目達成!!)、かくして予選は始まった。
次回からは愛華視点で行きますよ。
流石に煌也視点疲れますたわ。

「混沌のカラレス!地の分と作者を焼き尽くせ!
 ナイトメア・クライシス!」

ちょ、それってカラレスの効果名・・・。
らめぇ、こないでぇ!!


※18歳未満閲覧禁止

ズガッ!! バキッ!! ボコッ!!




Memories 010 The Primary 〜予選〜

アルア東部デュエルリング広場 2036年8月10日 AM10:10


愛華視点。
言いましたよね?煌也視点はもう疲れたと←

あ、どうやら説明は終わったようです。


「よーしよせんがんばるぞー」

よく聞いたら棒読み。
あれ?愛華だよね?
君そんなキャラだっけ!?

「よーし!予選頑張るぞー!」

・・・さっきのは一体・・・。

それはともかく、予選を始めることにしよう。
早速愛華の前にザコ敵Aが現れた!(ぉぃ

「だ、誰がザコ敵Aだ!」

「あ、あのねキミ!?
 地の文との会話はNGなんだよ!?」

愛華えらい。

そんな彼女の前に立っているのは、彼女の背丈を数十センチほど下回るであろう少年。
少年はすかさず仁王立ちで叫びだした。

「女ごときが子の俺様に命令するとはいい度胸だ!
 聞いて驚くなよ!
 俺様の名前は中村響!
 世界最強のデュエリストだ!!」

「えっ!?ホントに!?」

ここで真に受けるのが愛華らしいといえばそうである。
この反応が少年、響の機嫌をとるためにやっているのなら、愛華にも相当の下心があるというのか、
それとも、こんな愚かな少年を哀れんでやっているのか・・・。
しかし、対象は愛華である。
間に受けてとっている可能性もなくはない。

「じゃ、やろうよデュエル!」

左手を構えて純粋な笑みを浮かべながら響を見下ろして言う愛華。
絶対真に受けてるな・・・。

「ハッハッハ!
 初戦から俺様を相手に選んだのを後で後悔することになるぜ!?
 行くぜ!
 俺様の"はにわデッキ"の脅威を思い知らせてやる!」

仁王立ちの姿勢を崩さずに図に乗って叫ぶ響。
流石の愛華も、このセリフには閉口してしまった。
「は、はにわ・・・?」
言葉にならないような声を発しながら顔をしかめる愛華。

それはともかく、申し込んでしまったデュエルは便宜上止められない。
ザコはザコらしくおとなしく主人公の前に屈していればよいのである。
2人の1つしかない星を賭けたデュエルが始まった。


「「デュエル!」」 響8000vs8000愛華

「俺様の先攻、ドロー!」

先攻1ターン目。
やはりじゃんけんはなし。

「俺様はモンスターを1枚伏せてターンエンドだ!」

「私のターン、ドロー!」

後攻1ターン目。
響のした行動そのものは、巷のデュエルではよく見かけるありがちな光景だった。

「私は、スターナイツ・ソルジャー セリアを召喚っ!
 そして、守備モンスターを攻撃っ!」

スターナイツ・ソルジャー セリア
効果モンスター
星4/風属性/戦士族/攻1900/守1400
1ターンに1度、手札からモンスターカード1枚を捨てて発動する。
エンドフェイズまでこのカードの攻撃力は
捨てたモンスターのレベル×100ポイントアップし、
捨てたモンスターのレベルと同じレベルになる。

フィールドに背中に大剣を背負った誇り高き騎士が現れる。
すかさず愛華は攻撃宣言。
普通、相手のデッキ内容が不明瞭な1ターン目の時点での不用意な攻撃はあまり好ましいものではない。
しかし、それを気にしたりしないのが愛華という少女であった。
振り下ろされた剣は、守備モンスターを貫通する。

「はにわ」→墓地

はにわ
通常モンスター
星2/地属性/岩石族/攻 500/守 500
古代王の墓の中にある宝物を守る土人形。

「は・・・はにわ?」

行った通りだ。やはり彼のデッキははにわデッキ。
当然切り札もはにわだろう。
そんな切り札が、いとも簡単に愛華の切り込み体調的な役割を担う下級モンスターに倒された。

「あ〜、俺様のはにわが〜。」

というか本当に切り札なのだろうか。
そんな疑問をよそに、少年の目には一粒の涙が浮かんでいる。
男のくせに情けない。

「・・・、カードを1枚伏せて、ターン終了。」

ここまでは愛華の優勢(?)。
先攻2ターン目、響はどんなことをしでかしてくれるのだろうか。

「チキショウ!
 俺様のターン、ドロー!」

はにわの敵を討たんとばかりに、大げさなジェスチャーでカードを引き抜く響。
引いたカードを見て響きはにやりと口元を緩ませた。

「俺様は、モンスターを1枚セット!
 更に、カードを2枚伏せてターン終了だ!
 さぁどうだ!?さっきみたいに攻撃して来いよ!」

大げさな挑発をする響。
この少年は礼儀というものを知らないのだろうか。

「私のターン、ドロー!
 まず、セリアの効果を発動!
 手札のソーサラー サターニアを墓地に捨て、
 攻撃力を600ポイントアップし、レベルをサターニアと同じ6に上昇する!」

「スターナイツ・ソルジャー セリア」(LV4→6,ATK1900→2500)

スターナイツ・ソーサラー サターニア
効果モンスター
星6/風属性/魔法使い族/攻2400/守1600
自分の手札からこのカード以外の「スターナイツ」と名のついた
モンスター1体を墓地に捨てることで、
手札または墓地からこのカードを特殊召喚する事ができる。

サターニアが墓地に行った。
それは、愛華の手札が尽きぬ限り何度でも復活が可能となるモンスター。
考えてみれば壊れ気味かもしれない。
当然この後の彼女の行動は・・・。

「手札から、スターナイツ・コミュナー ダートを墓地に捨て、
 サターニアを墓地から特殊召喚!」

フィールドに怪しげな魔法の杖を持った男性魔術師が出現する。
思わず後ずさりしてしまうザコ敵Aこと少年、響。

スターナイツ・コミュナー ダート
チューナー(効果モンスター)
星3/風属性/魔法使い族/攻1200/守1700
1ターンに1度、手札からモンスターカード1枚を捨てて発動する。
捨てたモンスターのレベル3つにつき1枚、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。

「さらに、スターナイツ・フェアリー エイリを通常召喚!」

スターナイツ・フェアリー エイリ
チューナー(効果モンスター)
星2/風属性/天使族/攻 400/守1000
1ターンに1度、手札からモンスターカード1枚を捨てて発動する。
自分の墓地から、捨てたモンスターと同じレベルの
「スターナイツ」と名のついたモンスター1体を選択して
自分フィールド上に特殊召喚する。

フィールドに、4枚の薄い羽の生えた妖精が出現する。
その刹那か、妖精は自らの身体から2つの星を放出した。

「レベル2、エイリに、レベル6のサターニアをチューニング!」

レベルの合計は8。
とすると来るのはもちろん、あのモンスター・・・。

「運命の歯車が、今ここに音を立てて動き出す。
 光差す道となれ!
 シンクロ召喚!お願いっ、スターナイツ・ドラゴン メルキュール!」

8つの光放つ星が交差する。
その光が眩い星のヴィジョンに照らされると同時に、
お決まりのセリフとともに8枚の翼が生えた巨大な龍が出現した。
その咆哮に、龍の目の前に立つザコ敵Aは怖気づく。

スターナイツ・ドラゴン メルキュール
シンクロ・効果モンスター
星8/風属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
チューナー+チューナー以外の「スターナイツ」と名のついたモンスター1体以上
自分フィールド上に存在するモンスターがフィールドから離れる場合、
代わりにフィールドから離れるモンスターと同じ枚数の手札を捨てる事ができる。
このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、
与えたダメージ500ポイントにつき1枚+1枚
デッキからカードをドローする。

「シ、シンクロ召喚だと!?」

この程度で驚いているようでは、世界一どころか町内一も務まらない。

「セリアで、守備モンスターを攻撃!
 デブリ・セイバー!」

再び、誇り高き騎士は道のモンスターに向かって巨大な剣を振り下ろした。
またしても伏せられたモンスターは粉砕される。

「岩盾の巨人」→墓地

岩盾(がんたて)の巨人
通常モンスター
星2/地属性/岩石族/攻 100/守1600
岩の盾を持つ巨人。
それなりの攻撃なら簡単に防ぐことができる。

「(チッ!頼もしき守護者を使っても守備力は上回らない・・・!)」

頼もしき守護者
速攻魔法
表側表示モンスター1体の守備力を、
ターン終了時まで700ポイントアップする。

つ収縮

「更に、メルキュールで直接攻撃っ!
 セイント・ギャラクシー!」

その巨大な龍は、口に波動を溜め始める。
溜めているだけで、周囲は空気抵抗と威圧感に押され、思わず立ち去りたくなってしまうほどだった。
愛華の行け、の一言で、波動が発射される。

「ぐわぁぁぁっ!!」 響LP8000→5500

思わず右手でガッツポーズを取る愛華。
対する響のジェスチャーはまたしても大げさなものだった。

「へっ、女ごときがこの俺様にダメージを与えられるとは、驚いたものだな!
 だが、次のお前のターンで、お前は地獄を見る!
 俺様のターンだ!」

女ならば弱いと思っているのだろうか、響はいつまでも大口を叩く。
その減らず口から出たのは、まさかの勝利宣言だろうか。
というか愛華のターンが勝手に終了されている。
審判〜!

「ドロー!
 まず、伏せられた罠カード、岩投げアタックを発動!
 デッキからはにわを墓地に送り、貴様に500ダメージを与える!」

「うっ・・・。」 愛華LP8000→7500

響のデッキから飛び出したはにわのソリッドヴィジョンが、愛華の肢体に直撃する。
愛華は思わずよろけた。

岩投げアタック
通常罠
自分のデッキから岩石族モンスター1体を選択して墓地へ送る。
相手ライフに500ポイントダメージを与える。
その後デッキをシャッフルする。

「さぁこれで条件は整ったぜ!
 魔法カード、古の祭壇を発動!」

古の祭壇
通常魔法
自分の墓地にレベル2以下の岩石族・通常モンスターが
3体以上存在する場合発動できる。
自分のデッキから岩石族モンスター4体を墓地に送る。

フィールドに、怪しげな祭壇が現れる。
その祭壇に灯された4つの小さな炎が、次第に岩の魂へと変化する。

「はにわ」→墓地
「円筒はにわ」→墓地
「円筒はにわ」→墓地
「円筒はにわ」→墓地

円筒はにわ
通常モンスター
星1/地属性/岩石族/攻 100/守1000
古代王の墓の中にある円筒をかたどったはにわ。

「古の祭壇は、墓地にレベル2以下の岩石族通常モンスターが3体いるときに発動!
 デッキから岩石モンスター4体を墓地に送るぜ!」

はにわが4体埋葬される。
この行為に疑問を隠せない愛華。
しかし、OCGにおいてデッキからカードを墓地に送ることがどれだけ危険な行為であるかは、皆様も御存知の通り・・・。

「そして俺様は今、切り札を呼び寄せる!」

1枚のカードに指をかけこう宣言する響。

「魔法カード!古きに眠りし陵墓を発動!
 デッキから、大和巫女を降臨させる!
 出でよ、大和巫女!」

古きに眠りし陵墓
通常魔法
自分の墓地にレベル2以下の岩石族・通常モンスターが
5体以上存在する場合発動できる。
自分のデッキ・手札・墓地から「大和巫女」1体を特殊召喚する。

大和巫女(ヤマトノミコ)
効果モンスター
星10/地属性/天使族/攻 0/守 0
このカードは通常召喚できない。
「古きに眠りし陵墓」の効果でのみ特殊召喚できる。
このカードの攻撃力は、自分の墓地に存在するレベル2以下の
岩石族・通常モンスター1体につき500ポイントアップする。
このカードがカードの効果によって破壊される場合、
自分の墓地からレベル2以下の岩石族・通常モンスター1体を除外する事で、
その効果を無効にし破壊する。

フィールドに、白い着物をはおい同の鏡で顔を隠した女性と思わしきモンスターが降臨する。
そのモンスターは身体全体から淡い光を放っている。
あ、メガロック・ドラゴン想像したヤツ負けね。

「大和巫女」(ATK0→3500)

「こ、攻撃力3500!?」

「そう!大和巫女は、墓地のレベル2以下の岩石族通常モンスター1体につき500ポイントの攻撃力を得る!
 俺様の墓地のモンスターは7体、よって攻撃力は3500だ!」

愛華の純粋な驚嘆の表情。
まぁ、攻撃力3000越えのモンスターを目の前に驚くのも無理はないが。

「へっ、行くぜ!大和巫女で、メルキュールを攻撃!
 終末の祭壇!」

巫女は、その身体から強烈な淡い光を発する。
光は龍を多い尽くした・・・。

「そうはさせないよっ!
 メルキュールの効果発動!
 手札1枚を捨てる事で、自分フィールド上のモンスターに対する身代わりとする!
 輝きよ、永遠に!ブライト・アット・フォーエバー!」

周囲は言葉では言い表せないほどの光に包まれる。
ギャラリーも目を見張るほどの先攻に、堂々と流星の龍は居座っていた。

「だが、ダメージは受けてもらう!」

「うぅっ・・・。」 愛華LP7500→6500

切り札モンスターを守りきったとはいえ、相手の場には攻撃力3000を超える協力モンスターが依然として存在する。
このまま何も対策を打たなければ、手札とライフを失い、最後には切り札も失うだけである・・・。

「ターン終了だぜ!」

勝った気でいる響。
だが、愛華の眼にも闘志は消えてはいなかった。

「私のターン、ドロー!」

微塵の迷いもなく引いたカードを確認する愛華。
その表情のまま、口元をかすかに緩めた。

「永続魔法、ビヨンド・スターダストを発動!」

ビヨンド・スターダスト
永続魔法
自分の手札が2枚以下の場合発動できる。
相手フィールド上に存在するモンスターは、
自分フィールド上に存在する「スターナイツ」と名のついたモンスターの攻撃対象になった場合、
ダメージステップの間攻撃力が0になる。
自分の手札が3枚以上ある場合、フィールド上のこのカードを破壊し、
自分の手札を全て墓地に捨てる。

フィールドに、星屑の聖域が現れる。

「ビヨンド・スターダストは、自分の手札が2枚以下の場合発動できる永続魔法!
 その効果で、スターナイツと戦闘を行う相手モンスターの攻撃力を0にする!」

「な、何!?」

巫女の攻撃力は3500、それが一瞬にして無に帰すのである。
メルキュールでなくとも、1900の攻撃力を持つセリアで簡単に倒すことができるようになる。

「更に永続罠、スターナイツ・リバースを発動っ!
 手札1枚をコストに、スターナイツ・ソーサラー サターニアを特殊召喚するよっ!」

スターナイツ・リバース
永続罠
手札からモンスターカード1枚を捨てて発動する。
自分の墓地から「スターナイツ」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。
このカードが破壊された時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターがフィールドから離れた時、このカードを破壊する。

サターニアは通常、手札からスターナイツモンスターを捨てなければ蘇生できないモンスター。
愛華の手札に残っているのは1枚の魔法カードのみだったが・・・。
この蘇生カードを使うことによって蘇生できない状態を回避した。
そして、5500しか残らない響のライフは・・・。

「セリアで大和巫女を攻撃!
 デブリ・セイバー!」

「大和巫女」(ATK3500→0)

3度目のセリアの攻撃。
そういえばこのモンスター、後攻1ターン目に召喚されて1度も倒されてなかったりする。
ともかく、その県は巫女の身体を貫き、響に僅かながらダメージを与えた。

「ぐわぁぁっ!」 響LP5500→3600

そして・・・。

「サターニア、メルキュール、直接攻撃!
 シューティング・ブラストぉ!」

魔術師の容赦ない一撃が下る。
メルキュールは再び口にブレスを溜め始め・・・躊躇いもせず発射した。

「セイント・ギャラクシー!」

「うわぁぁぁぁっ!!」 響LP3600→1200→0

響のライフカウンターが0を表示する。
その瞬間、愛華の勝利が確定した。

「やったぁ!世界一に勝ったぁ!」

どうやらやはり真に受けていたようである・・・。
まぁ、ひとまずこれで愛華は決勝への階段を1歩進んだと言えよう。
響は、泣く泣く愛華に"星"を渡した。


〜今回の戦績〜

明星愛華 星1→2 1勝0敗 1連勝中!
中村響 星1→0 0勝1敗 予選敗退!




Memories 011 Against Fighter 〜再出撃〜

アルア東部デュエルリング広場 2036年8月10日 AM10:29


今回も同じく愛華視点。
彼女の目の前には、先ほど負かした自称世界一の少年、響が力なく地面に跪いていた。

「あぁ〜・・・もうおしまいだぁ〜・・・。」

なんてことを呟きながら。
愛華は、流石に放って置けなくなったのか、響に近づき、肩を叩きながら言った。

「男の子でしょ?
 人生の終わりじゃないんだから!
 それより、デュエル楽しかったよ!またデュエルしようね!」

それはまるで子をあやす母のように・・・そして、1人の認め合った決闘者として・・・。

「う、うるさいっ!
 お、俺様はぁ、つ、強いんだぁ!
 今日はたまたま運が悪かっただけだ!
 つ、次は覚えてろよ!
 その高い鼻へし折ってやる!」

早口にこんなことを言いながら愛華の右手を払いのけそそくさと立ち去っていった。
強がる響きのその目から一粒の涙が零れ落ちていたのは言うまでもない。

「は、はぁ・・・。」

しばらくの間愛華は何が起きたのかよく分からなかった。
何しろ響は聞き取るのが困難なほど早口でしゃべっていたのである。
決まり悪そうに、響から受け取った小さな"星"をポケットにしまう。
―――これで彼女の"星"は2つになった。


アルアパーク 2036年8月10日 AM11:08


11時を回った。
喉の乾いた愛華は、近くにあったアルアパーク(9話参照)に寄って、
ドリンクを買ってベンチに座って飲んでいる。
そう、予選中はこういったスポットは無料で入退場可能なのだ。
流石にドリンクの料金150円は払ったが。

「とはいっても、早く相手見つけて星集めないとなぁ〜。」

ストローを咥えながら不意に呟く愛華。
確かに、こんな調子では星が7つになる前に予選通過者が8人出て本線出場も叶わぬ夢となってしまうだろう。

「さて、と。」

飲み終わったドリンクをゴミ箱に無作為に放り投げ、はずしていたデュエルディスクを左手にはめて立ち上がる。
そして大きく伸びをして歩き出そうとするその時だった。
ガシッ、
―――二の腕を誰かに掴まれた!?

「うわっ!?」

突然の出来事に間中の頭の中はパニック状態に陥る。
掴まれた左手の方向を反射的に見ると、そこには見覚えのある顔が・・・。

「てめぇ・・・今度こそズタズタにしてやる・・・。」

「ざ・・・ザーグ・フィアレッジ!?」

愛華の口から恐る恐る発せられる1つの人名。
その名の主はまさに、今彼女に対する怒りを露にする金髪の青年だった。

「あの時・・・組んでたんだろ!?ヤツと!」

声を荒げて言うザーグ。
こめかみには深く激怒の表情が刻まれている。

「く、組んでた!?
 そ、そんなことないよっ!?
 だってミラとはあの時初対面だもん!」

慌てた口調で言う愛華。
彼女の二の腕をがっしりと掴んだ手は、そのまま離れようとはしない。

「ほう・・・ミラって言うのか、あいつ・・・。」

ザーグはあの時を回想していた。
そう、いきなり現れた金髪の少女に分けも分からぬまま敗北を喫し、屈辱を味合わされたあの少女・・・。
ザーグは愛華の二の腕を掴んだその手を離し、その憤怒の表情を崩さないままこう言い放った。

「俺とデュエルしろ。
 言っておくが、俺もKWCの参加者だ。
 戦う正規の理由はできている!」

そういいながら3つの星を見せ付けるザーグ。
どうだ!かっこいいだろ!

「へぇ〜、大会参加者かぁ・・・。」

体勢を立て直すと同時に、愛華も2つの星を見せつけながら言った。

「たとえアナタが大会参加者じゃなくても、挑まれたデュエルは受ける!
 絶対負けないからねっ!」

ザーグがにやりとほくそ笑む。
そして左手のデュエルディスクを起動させる。

「さぁ、始めようか。
 貴様への復讐―――リベンジを果たす!」

別にザーグは愛華とデュエルしたわけでもないが、ザーグの愛華への勝利はどうやら復讐とイコールで結ばれるようだ。
それに突っ込む気もないのか、無言でディスクを構える愛華。
愛華の予選2回戦目が始動した。


「「デュエル!」」 ザーグ8000vs8000愛華


「先攻は貰うぜ、ドロー!
 俺はまず、急降下爆撃戦闘機 Spearfishを攻撃表示で召喚する!」

急降下爆撃戦闘機 Spearfish
効果モンスター
星4/水属性/魚族/攻1900/守1100
相手の手札が4枚以上のときに発動できる。
手札を1枚捨てる事で、
相手の手札1枚をランダムに破壊する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

フィールドに魚面の戦闘機方モンスターが出現する。
刹那、その口から怪しげなミサイルが発射された。

「スピアフィッシュの効果!
 手札1枚をコストに、相手の手札1枚をランダムに破壊する!
 フライト・ダイビング!」

ミサイルは愛華の右手の先へ直撃する。
呻き声を上げる愛華の持つ手札は、5枚から4枚に減った。

「ハッハッハ!どうだ!?
 1ターン目から手札―――可能性を削り取られる感覚はぁ!?」

高笑いをしながら叫ぶザーグ。
対する愛華は勝ち誇ったような微笑を浮かべ、口元を緩ませた。

「あながち、そうでもないみたいだよっ!」

「スターナイツ・ソーサラー サターニア」→墓地

スターナイツ・ソーサラー サターニア
効果モンスター
星6/風属性/魔法使い族/攻2400/守1600
自分の手札からこのカード以外の「スターナイツ」と名のついた
モンスター1体を墓地に捨てることで、
手札または墓地からこのカードを特殊召喚する事ができる。

「なっ・・・そのモンスターは・・・!?」

カード効果を知っているのか否か、ザーグは露骨に驚きの表情を浮かべる。

「この時点では、破壊されたサターニアの効果は発動されない。
 でも、サターニアは手札からスターナイツ1体を墓地に送る事で特殊召喚される!
 墓地に行っても、特殊召喚するに越したことはないから・・・寧ろ逆効果だねっ!」

悔しげに舌打ちしながらザーグはもう1枚のカードに手をかける。
自らの手札コストを考えると、確かにザーグが損しているといえよう。

「カードを1枚伏せ、ターン終了だ!」

「私のターン、ドロー!」

後攻1ターン目。
愛華は誰もが予想可能な行動に出る。

「手札からスターナイツ・アーチャー レクトを墓地に捨て、サターニアの効果発動!
 墓地より特殊召喚される!」

フィールドに、緑色の魔法陣が現れる。
魔法陣から呼び出されたのは、怪しげな魔法の杖を持つ男性魔術師。

「チッ・・・。」

再び聞こえるザーグの舌打ち。
1枚の伏せカードがあるにもかかわらず、上級モンスターを前に相当焦っているようだ。

「さらに、スターナイツ・エンチャントレス ティアナを召喚!」

続いてフィールドに呼び出されたのは、深々と尖った帽子を被った魔法使いの少女。
隣の男性魔術師と比べるとまだまだ幼くて未熟な印象を受けるが、
それでも1800という高い攻撃力は魅力だった。

スターナイツ・エンチャントレス ティアナ
効果モンスター
星4/風属性/魔法使い族/攻1800/守1000
1ターンに1度、手札からモンスターカード1枚を捨てて発動する。
自分のデッキから、捨てたモンスターより低いレベルを持つ
「スターナイツ」と名のついたモンスター1体を選択して手札に加える。

「更に速攻魔法、スペースダスト・サイクロンを発動っ!」

スペースダスト・サイクロン
速攻魔法
自分フィールド上に「スターナイツ」と名のついた
モンスターが存在する場合発動できる。
相手フィールド上にセットされた魔法・罠カード1枚を破壊する。

突如、フィールドに星屑を散りばめた突風が発生する。
突風はザーグの場に伏せられた1枚のカードを吹き飛ばした。

「なっ!?」

「スペースダスト・サイクロンは、自分の場にスターナイツが存在する場合発動可能。
 相手の場にセットされた魔法・罠カード1枚を破壊するよっ!」

相変わらず余裕の表情を垣間見ることのできる愛華の口から発せられた言葉に青ざめるザーグ。
これで、彼を守る頼みの綱は消え失せた。

「炸裂装甲」→墓地

炸裂装甲
通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
その攻撃モンスター1体を破壊する。

「行くよ!
 サターニアでスピアフィッシュを攻撃!
 シューティング・ブラストっ!」

男性魔術師の持つ杖から放たれた波動は、混沌のエネルギーを散りばめながら魚面戦闘機の目の前で破裂する。

「チッ・・・!!」 ザーグLP8000→7400

「ティアナで直接攻撃!
 ホーリー・ナイト・マジック!」

最後、ザーグに向かって女性魔術師の持つ杖から流星の如くエネルギーが飛び散った。

「ぐわぁぁっ!!」 ザーグLP7400→5600

「カードを1枚伏せ、ターン終了だよっ!」

「俺のターン、ドロー!」

先攻2ターン目。
よろめきながらもカードを引き抜くザーグには、もう落ち着きの様子は見られなかった。

「俺は、マルチロール機 Lightningを攻撃表示で召喚!」

マルチロール機 Lightning
チューナー(効果モンスター)
星3/光属性/機械族/攻 500/守1400
自分フィールド上に「戦闘機」と名のついたモンスターが存在する場合、
墓地に存在するこのカードを表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
「マルチロール機 Lightning」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
この効果によって特殊召喚に成功した時、
相手はデッキからカードを2枚ドローする。

フィールド上に、丸型の小さな戦闘機らしき機体が現れる。
機体からはところどころ稲妻がバチバチと飛び散っているが。

「更に、ライトニングに対し、機械複製術を発動!」

機械複製術
通常魔法
自分フィールド上に存在する攻撃力500以下の機械族モンスター1体を選択して発動する。
デッキから同名カードを2枚まで特殊召喚する事ができる。

「・・・!!」

丸型の小さな戦闘機は、火花を立てながら共鳴する。
その刹那、同じ姿かたちをした2体の戦闘機が召喚された。


愛華 LP8000
「スターナイツ・ソーサラー サターニア」(ATK2400)
「スターナイツ・エンチャントレス ティアナ」(ATK1800)
伏せカード1枚

ザーグ LP5600
「マルチロール機 Lightning」(ATK500)
「マルチロール機 Lightning」(ATK500)
「マルチロール機 Lightning」(ATK500)


「俺はレベル3チューナー、ライトニング3体をチューニングする!」

「シ、シンクロ!?」

驚きの表情を浮かべる愛華。
ただ単にシンクロ召喚に驚いているのではない。
それは、チューナー3体によるシンクロ召喚・・・。

「通常、シンクロ召喚にチューナーは1体しか使えない。
 だがなぁ、いるんだよ!
 チューナー2体以上を用いたシンクロ召喚が可能なモンスターがよぉ!
 出でよ、デス・ブラスト・ボンバー!!」

火花を撒き散らしながら9つの星が共鳴する。
一筋の星から呼び出されたのは、身体の至る箇所にミサイルを装着した巨大な戦闘機モンスター。

デス・ブラスト・ボンバー
シンクロ・効果モンスター
星9/炎属性/機械族/攻3100/守2300
機械族チューナー+機械族モンスター2体以上
1ターンに1度、このカードの攻撃力を100ポイント単位でダウンすることで、
相手ライフにダウンした数値分のダメージを与える。(最大1000まで。)
自分のターンのスタンバイフェイズ時にこのカードの攻撃力を500ポイントアップする。
また、手札を1枚捨てる事で、フィールド上に存在するカード1枚を破壊し、
このカードの攻撃力を300ポイントアップする。

「こ、攻撃力3100・・・。」

一瞬にしてフィールドを制圧した巨大な戦闘機モンスター。
シンクロ召喚、恐るべし。
その高い攻撃力に、果たして愛華はついていけるだろうか・・・。




Memories 012 The Legend Illusion 〜伝説の精霊龍〜

アルアパーク 2036年8月10日 AM11:20


愛華 LP8000
「スターナイツ・ソーサラー サターニア」(ATK2400)
「スターナイツ・エンチャントレス ティアナ」(ATK1800)
伏せカード1枚

ザーグ LP5600
「デス・ブラスト・ボンバー」(ATK3100)

スターナイツ・ソーサラー サターニア
効果モンスター
星6/風属性/魔法使い族/攻2400/守1600
自分の手札からこのカード以外の「スターナイツ」と名のついた
モンスター1体を墓地に捨てることで、
手札または墓地からこのカードを特殊召喚する事ができる。

スターナイツ・エンチャントレス ティアナ
効果モンスター
星4/風属性/魔法使い族/攻1800/守1000
1ターンに1度、手札からモンスターカード1枚を捨てて発動する。
自分のデッキから、捨てたモンスターより低いレベルを持つ
「スターナイツ」と名のついたモンスター1体を選択して手札に加える。

デス・ブラスト・ボンバー
シンクロ・効果モンスター
星9/炎属性/機械族/攻3100/守2300
機械族チューナー+機械族モンスター2体以上
1ターンに1度、このカードの攻撃力を100ポイント単位でダウンすることで、
相手ライフにダウンした数値分のダメージを与える。(最大1000まで。)
自分のターンのスタンバイフェイズ時にこのカードの攻撃力を500ポイントアップする。
また、手札を1枚捨てる事で、フィールド上に存在するカード1枚を破壊し、
このカードの攻撃力を300ポイントアップする。


フィールド上に現れたのは超巨大急降下爆撃機。
攻撃力は某社長令嬢の3000ポイントのそれを僅かに上回っており、
戦闘で倒すのは困難であるかのように堂々とフィールドに居座っている。
かといって、愛華にはそれの持つ特殊効果もまだ未知の領域・・・。

「ハハハッ!負ける気がしねぇ!
 デス・ブラスト・ボンバーの効果発動!」

「ほぇ!?」

ザーグの高笑いと同時か否か、爆撃機は空高く飛び上がってミサイルを発射した・・・。

「デス・ブラスト・ボンバーは手札1枚を捨てる事で、
 相手モンスター1体を破壊し、攻撃力を300ポイントアップする!
 バーニング・ミサイル!」

そしてそのミサイルは、激しく燃えながら伏せカードに一直線に突っ込んで行った・・・。

「デス・ブラスト・ボンバー」(ATK3100→3400)
「スペースダスト・サイクロン」→墓地

スペースダスト・サイクロン
速攻魔法
自分フィールド上に「スターナイツ」と名のついた
モンスターが存在する場合発動できる。
相手フィールド上にセットされた魔法・罠カード1枚を破壊する。

「更に手札を1枚捨て・・・。」

最後の手札1枚に指をかけ、ほくそ笑みながらザーグが高らかに宣言する。
どうやらターン中の発動制限はないようだ。

「男の方を焼き尽くせ!
 バーニング・ミサイル!」

再び爆撃機からミサイルが発射される。
燃焼しながら男魔術師に突っ込み、その身体を燃やす様は、愛華に強烈な不快感と恐怖を与えた。

「デス・ブラスト・ボンバー」(ATK3400→3700)
「スターナイツ・ソーサラー サターニア」→墓地

「さぁ、行くぜ!」

刹那、爆撃機は3度目の飛翔を始める。
覚悟したように左手を反射的に構える愛華。
そして、3度目の砲撃が始まった・・・。

「デス・ブラスト・ボンバーで、残った女の魔術師を攻撃する!
 フィナーレ・ブラスト・キャノン!」

大量に発射される黒く巨大な砲弾の威力に耐え切れず、
悲鳴を上げながらその身を焼かれ消滅するティアナ。
その炎は、プレイヤーである愛華の方にも飛び火し、侮ることのできない数値のダメージを与えた。

「うわぁぁぁっ!!」 愛華LP8000→6100

炎の攻撃を受けきり、苦しそうな表情でほっとため息をつく愛華。
しかし、ザーグは再び高らかに叫んだ。
ターン終了の宣言とはまた違った、徹底的な戦術の証を・・・。

「デス・ブラスト・ボンバーの、第二の効果を発動!」

「第二の・・・効果!?」

よろめきながら、聞きたくなかったその言葉を思わず反芻してしまう愛華。
そのターン中最後となるであろう飛翔を開始する急降下爆撃機、デス・ブラスト・ボンバー・・・。

「デス・ブラスト・ボンバー自身の攻撃力を1000ポイントダウンすることにより、
 貴様に同等の効果ダメージを与える!
 奴の身を焼き尽くせ、デス・ブラスト・ボンバー!」

先は丸くなっているが、中に大量の爆薬がこめられているであろう巨大な砲弾が2つ、愛華に向けて発射される・・・。

「バーニング・ボム!」

「やぁぁぁぁっ・・・!!」 愛華LP6100→5100

とても1000ポイントのそれとは思えないような、炎の衝撃が愛華の全身に走る。
デス・ブラスト・ボンバーは、自身の攻撃力をそのままダメージ源に換算して、
確かに愛華に苦痛なる衝撃を与えていた。

「デス・ブラスト・ボンバー」(ATK3700→2700)

「しかもなぁ愛華ちゃんよぉ!?
 デス・ブラスト・ボンバーには隠されたもう1つの能力がある!」

「もう一つの・・・能力・・・?」

何とか衝撃を持ちこたえながら、片目を瞑って聞き返す。
対するザーグの瞳は、勝ちを確信したそれそのものだ。

「あぁ、スタンバイフェイズに、自身の攻撃力を500ポイントアップさせる能力!
 それを使えば、次の俺のターンには・・・。」

「攻撃力は・・・3200!?」

3200ポイント、それは、召喚直後の攻撃力を僅かだが上回っている数値。
このまま場を荒らしつくされ、ライフポイントも削られてしまうのでは愛華自身にとっては身が持たない。
そんな彼女の手札は現在、たったの1枚である。

「ターン終了!
 貴様のそのたった1枚の手札で何が起こせるか、試してみろよ!
 まぁ、できたらの話だがな!」

行った直後、ザーグは狂ったように笑い出す。
流石の愛華も、この直面に諦めかけたのか、落胆の表情で手札に視線を落とす。

バック・スター
通常魔法
自分の墓地から「スターナイツ」と名のついたモンスター2体を手札に加える。

「(残りの手札は、バック・スター、
  ティアナあたりを手札に戻して壁にすることもできるけど・・・。)」

再び場の状況を見回して悟ったように目を瞑る。

「(やっぱこの状況・・・もう無理かも・・・。)」


―――諦めちゃだめだよ!


「!?」

突然の出来事にきょとんと目を大きく見開く愛華。
デッキを見つめる。
ディスクにセットされた、「可能性」を示唆するカードの束、彼女自身の「仲間」を・・・。


   感じる・・・、何か不思議なパワーを・・・。


目を瞑って、ゆっくりと、デッキに眠る「可能性」を1枚、ドローした。


スターナイツ・フェアリー エイリ
チューナー(効果モンスター)
星2/風属性/天使族/攻 400/守1000
1ターンに1度、手札からモンスターカード1枚を捨てて発動する。
自分の墓地から、捨てたモンスターと同じレベルの
「スターナイツ」と名のついたモンスター1体を選択して
自分フィールド上に特殊召喚する。


引いたカードを見て再び目を大きく見開く愛華。
そのカードは、元から彼女自身のデッキに投入されていたものであり、
別段驚くようなことでもないはずだが・・・。

しかし、何かが違った。

彼女だけにしか分からない、まさに、「不思議なパワー」の存在。
それを感じ取ることができるのは、「愛華」ただ一人・・・。


「スターナイツ・フェアリー エイリを召喚!」

フィールドに現れたのは、小さな身体と4枚の薄い羽を持った幼い妖精。

「バック・スターを発動!
 墓地から、サターニアとティアナを手札に加えるよっ!」

愛華の墓地に光が照らされる。
星に導かれ、2体のソリッドヴィジョンが愛華の手札に舞い戻った。

「更に、エイリの効果発動!
 手札からスターナイツ・エンチャントレス ティアナを墓地に捨て・・・、
 そのままティアナを特殊召喚!」

再びフィールドに魔法使いの少女が現れる。
高攻撃力モンスターを前に無防備の攻撃表示の状態・・・。

「雑魚モンスター2体を並べて・・・、
 まさかっ!?」

「レベル2、スターナイツ・フェアリー エイリに、
 レベル4のスターナイツ・エンチャントレス ティアナをチューニングっ!」

2、そして4・・・。
合計6つの白く輝く星が木霊しあう。
そして、フィールドに召喚されたのは、彼女のデッキに本当に入っているのかどうか疑わしい、
不思議なパワーを持った精霊だった・・・。

「冷たき氷の世界に、神の化身が龍の姿を借りてここに降臨する。
 永遠に木霊せよ!
 シンクロ召喚!猛れ、氷結界の龍 ブリューナク!」

「なッ・・・そのモンスターはっ!?」

氷結界の龍 ブリューナク
シンクロ・効果モンスター
星6/水属性/海竜族/攻2300/守1400
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
自分の手札を任意の枚数墓地に捨てて発動する。
その後、フィールド上に存在するカードを、
墓地に送った枚数分だけ持ち主の手札に戻す。

フィールドに降臨したのは、白い身体を持った龍。
その龍から放たれる禍々しいオーラは、全てを凍りつかせるほどに痛々しい・・・。

「ブリューナクの効果発動!
 手札からサターニアを墓地に捨て、
 デス・ブラスト・ボンバーを手札に戻すよっ!
 クローズド・フィールド!」

フィールドにありえないほどの寒さの吹雪が起こる。
堂々と場に居座っていた急降下爆撃機は一瞬にして消滅し、
ザーグも暫くの間寒さに震え上がっていた。
対する愛華の表情は凛としていて、寒さなど物ともしない様子・・・。

「ブリューナクの直接攻撃!
 ブリザード・スピア!」

「ぐわぁぁぁっ!」 ザーグLP5600→3300

龍の口から強烈な氷のブレスが放たれる。
「スピア」の名の通り、放たれた氷の矢はザーグに甚大なダメージを与えた・・・。

「ターン終・・・」


言うと同時に愛華の身体がふらつく。
声のトーンも段々落ち、その目は心なしに閉じられる。


―――体が・・・動かない・・・?

   意識が、遠くなってゆく・・・?




ここで、愛華の記憶に残る出来事は一旦途切れることとなった・・・。



アルアパーク 2036年8月10日 PM00:05


「・・・ここは?」

そこは何の変わりもない公園のベンチ。
さっき愛華が見たときよりも人が多い。
・・・昼時だから・・・?
ここまで連想して慌てて時計を見る愛華。

「わっ!もう12時だっ!
 ・・・て・・・。」

再び辺りをキョロキョロ見回す。
そして、手に握られた1枚の紙切れに気付いた。


――― To Miss Manaka

   俺の完敗だ。 受け取れ。

               From Zarg Fiarege ―――

紙切れの近くをよく確認してみると、彼女の左手に、確かに1つの星が握られていた。


〜今回の戦績〜

明星愛華 星2→3 2勝0敗 2連勝中!

ザーグ・フィアレッジ 星3→2 2勝1敗



というかあの時、ブリューナクじゃなくて4話で出てきたアレを出しててもよかったんだけどね。
ま、アレ出してもジリ貧だから結果としていいんだけど。
最初はブリューナク出す予定なかったんです実は←←←

以上、作者のちっぽけなぼやきでした。
次回へ続く↓




Memories 013 The Request From Icedust 〜氷結界からの依頼〜

アルアパーク 2036年8月10日 PM00:09


氷結界の龍 ブリューナク
シンクロ・効果モンスター
星6/水属性/海竜族/攻2300/守1400
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
自分の手札を任意の枚数墓地に捨てて発動する。
その後、フィールド上に存在するカードを、
墓地に送った枚数分だけ持ち主の手札に戻す。


1枚のカードを見つめて依然とベンチに座っている愛華。
枠を白色で囲まれ、イラストは妙に赤黒く光っている。
イラストに描かれた龍は、氷でできた感じで、どこか凍りついた印象を受ける。

イラストの下の枠には「DT01-JP031」と記されている。
勿論デュエルターミナルのパラレル仕様。
ゴールドシリーズなど邪道である(爆☆)

話が逸れたが、彼女の手に握られているのは紛れもなく「氷結界の龍 ブリューナク」のカード。
今まで彼女のデッキには投入されていなかったカードである。

「もしかして、デュエル中感じたあの不思議な感覚・・・。」

先ほどのデュエル。
そう、ザーグ・フィアレッジとのデュエルで感じた、あの不思議な感覚。
理由は分からない―――でも確かに感じたあの不思議な感覚。
あの感覚の直後に、愛華はこのカードの存在を最初から知っていたかのようにそれをシンクロ召喚した。
理屈ではない。確かにそのとき、愛華の本能に"何か"が訴えかけていた。
―――「我ヲ喚ベ」、と・・・。

「まぁいいや・・・。」

ブリューナクのカードをデッキケースにしまって立ち上がる。
前まで彼女のデッキに存在しなかったカードでも、今は確かに彼女の手に握られている。
不可解な現象ではあるが、現在のブリューナクの持ち主は他の誰でもない、愛華なのである。


―――それじゃあ、あの時聞こえた少女の声は一体?


そうだ。
あの時、不思議な感覚を感じる直前。
愛華は確かに少女の声と思わしき声を聞いた。
それとブリューナクと、何か関係があるのだろうか。

「あぁ〜、もう分けわかんない!」

伸びをしながら無作為にこんな言葉を発する。
そして、40枚のカードの束を無造作にデッキケースにしまいこむ。
確かに、自分一人でそんなに考え込んでも、今すぐに名答が舞い込んでくるわけでもない。
既に大会が始まって2時間が過ぎた―――そう、今はKWCの予選中なのである。

何となくポケットに手を突っ込み、掌の半分の大きさはある3つの星を見つめる。
そして、思い直したように足を進めようとした・・・その時だった。


―――聞こえるか、風を受け継ぐ少女よ・・・。


「(・・・!?)」

愛華の神経に訴えかけてくる低い男声。
一瞬、思考の止まる愛華。
どうしたらいいのかも分からず、とりあえず首を縦に振った。


―――我は、氷を修めし神の化身。
   人は我をこう名づけた・・・"氷結界の龍 ブリューナク"―――


不意に愛華の手が止まる。
そして、デッキケースから1枚のカードを取り出した。
「氷結界の龍 ブリューナク」のカード・・・。


「ひ・・・光ってる!?」

切なくも淡く赤黒い光を発する1枚のカード。
そこから訴えかけられる低い声に、愛華は再び耳を傾けた。


―――今、世界は異変の時を迎えている。
   それを伝えるために我は風を受け継ぎし少女・・・即ち汝の元へ舞い込んだ・・・―――


「風を受け継ぎし・・・少女?」

何の事だかさっぱり分からない。
きょとんとした顔で、誰に話しかけるわけでもなくぼそりと呟いた。


―――汝が思い立ったとき、何時でも我を喚べ。
   きっと力になる・・・―――


「は、はぁ・・・。」

喚べ、と言うことはデュエル中でシンクロ召喚しろと言うことだろうか。

持ってるカードなんだから言われなくてもやってやるぜ。
ブリュは伊達に制限カードやってませんよw(((

またまた話が逸れたが、再びカードから聞こえる声に耳を傾ける愛華。
カードは依然として赤黒い光を放ち続けている。


―――それではさらば、またいつか―――我を喚び出したときに会おう。
   風を受け継ぎし、我が君主よ・・・―――


そういってから少し間をおいて、カードから発せられる赤黒い光は消えた。
ブリューナクのカードは、元の白色の枠をしたシンクロモンスターカードに戻っていた。


「風を受け継ぎし、少女・・・かぁ・・・。」

その小さな手に握られたカードを見つめながら愛華は、
ブリューナクの言葉であろう文を反芻する。



沖縄県粟国村 とある地 2036年8月10日 PM00:37


「そう、愛華が・・・。」

そこは、部屋全体をキレイな白で塗られた居間。
居間には大きな机と、それを囲むように4つのイスが置いてある。


―――心配なさるな深冬殿。
   伊達に汝の娘ではないだろう・・・―――


机を囲む1つのイスに腰掛けながらエプロン姿をした30代くらいの女性が呟く。
その女性にだけ聞こえる精霊の声。
声の主は、純白で周りを象られ、赤黒い光を発しているカードの中に在った。


氷結界の龍グングニール
シンクロ・効果モンスター
星7/水属性/ドラゴン族/攻2500/守1700
チューナー+チューナー以外の水属性モンスター1体以上
手札を2枚まで墓地へ捨て、捨てた数だけ相手フィールド上に存在する
カードを選択して発動する。選択したカードを破壊する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。


「でもあの子ったら、誰に似たのかすぐに熱くなって周りが見えなくなるから・・・。
 ちょっと心配なのよねぇ〜・・・。」

頬杖をつき、目を静かに瞑りながら誰に話しかけるのでもなく女性は呟く。
その顔立ちは、30代にしては少し若々しく見えた。


―――・・・恒星殿のことか?―――


カードから依然として聞こえてくる低い男声。
それを聞いているのか聞いていないのか、
カードを机の上に置いたまま大きく伸びをして女性は立ち上がる。

「さ〜て!そろそろ流良も帰ってくるころだし、
 おやつでも支度しとくかぁ〜!」

明星流良(ながら)・・・自らの息子を思いながら母、深冬(みふゆ)は台所へ向かう。
今、愛華は高校1年生・・・、しかしこんなことを考えていても、
愛華は―――娘はやはり、遠くでまた別の道を歩んでいた。

「恒星さん、愛華もやはり・・・あなたと同じ道を歩むみたいです・・・。」

深冬は目を瞑ってそっと呟いた。



アルアシティのどこかの裏路地 2036年8月10日 PM14:47


「氷結界のカードを・・・渡してもらう・・・。」

最早場所を考えるのがめんどくさくなったのが見え見えの午後3時前。
再び視点は愛華に戻る・・・。

「氷結界の・・・カード・・・。」

反射的に腰につけたデッキケースを握り締め、腰を屈める体制になってしまう愛華。
彼女の目に映る声の主は、黒い仮面をかぶって顔を隠した・・・明らかに周囲から見れば変な人。
そんな男がいきなり氷結界のカード―――おそらくブリューナクを渡せと言ってきたのである。
警戒しないほうがおかしいというものだろう。

「あのカードに未知なる力が宿っているのは存知の通りだろう。
 私は今・・・そのカードの力が欠かせない・・・。」

「な、何言ってるんですか・・・。
 理由は知らないけど、自分のカードを易々人に渡せるほど裕福な家庭じゃないですから・・・。」

口から出任せに適当な言い訳を作って口に出す愛華。
仮面に隠れた口が僅かに緩んだ。

「貴様、大会参加者だろう?
 星はいくつ集まったんだ?」

徐々に愛華との距離を縮めていく男性。
そのペースには僅かに及ばないが、愛華も少しずつ後ずさりしているのが本人でも自覚できる。

「えっと、6つ・・・。」

そう、あの後愛華は、残り3つの星をゲットしてきた。
後1つで本戦出場が決定するのだが・・・。

「私は5つなんだけどね・・・。
 この際本戦はどうでもいい。
 おとなしく氷結界のカードを渡しなさい。
 その方が、身のためですよ・・・。」

声のトーンを落としながら、確実に声を発する仮面の男。
愛華に近寄る速度は少しずつ速くなっており、それにつられて立ち退く愛華の足も速まっていく。

「い、嫌だって言ってるでしょ!」

本人が考えるよりも先に、本人が思うよりも大きな声で言葉を発してしまう・・・。
短所が裏目に出てしまった、というところか。

「そうか、ならば・・・。」

不意に男の足音が消える。
仮面の下に不気味な微笑を浮かべた男は、左手に装着したデュエルディスクを構え、叫んだ。

「力づくで渡してもらう!」

反射的に左手を構える愛華。
デュエリストたるもの、もめ事は全てデュエルで・・・といったところだろうか。
愛華は、冷や汗を垂らしたまま言葉が出てこない。

「「デュエル!」」 仮面の男8000vs8000愛華


「先攻はいただく。私のターンだ!」

先攻1ターン目。
男は以外にも刹那な動きでデッキからカードを引き抜いた。

「ドロー!
 シャドウナイトデーモンを召喚!」

シャドウナイトデーモン
効果モンスター
星4/風属性/悪魔族/攻2000/守1600
このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に
900ライフポイントを払う。
このカードが相手のコントロールするカードの効果の対象になり、
その処理を行う時にサイコロを1回振る。
3が出た場合、その効果を無効にし破壊する。
このカードが相手プレイヤーに与えるダメージは半分になる。

フィールドに、「ナイト」の称号を持つデーモンの騎士が現れる。

「カードを1枚伏せ、ターン終了だ。」

攻撃力2000・・・並の下級モンスターではない攻撃力を持っている。
相手の出方を警戒しつつ、愛華はカードを引き抜いた。

「私のターン、ドロー!
 私は、スターナイツ・ソルジャー セリアを召喚!」

スターナイツ・ソルジャー セリア
効果モンスター
星4/風属性/戦士族/攻1900/守1400
1ターンに1度、手札からモンスターカード1枚を捨てて発動する。
エンドフェイズまでこのカードの攻撃力は
捨てたモンスターのレベル×100ポイントアップし、
捨てたモンスターのレベルと同じレベルになる。

フィールドに、スターナイツの切り込み隊長とでも言えるべく頼もしき騎士が現れる。
目の前のデーモンの騎士とは違い、正義感漂う構えを見せる。

「だが、攻撃力は僅かにシャドウナイトデーモンのほうが上だ・・・。」

薄ら笑いを浮かべながら男は言う。
勝てると思っているのだろうか。

「セリアの効果発動!
 手札からスターナイツ・エンチャントレス ティアナを墓地に捨て、
 攻撃力を400ポイントアップする!」

「スターナイツ・ソルジャー セリア」(ATK1900→2300)

スターナイツ・エンチャントレス ティアナ
効果モンスター
星4/風属性/魔法使い族/攻1800/守1000
1ターンに1度、手札からモンスターカード1枚を捨てて発動する。
自分のデッキから、捨てたモンスターより低いレベルを持つ
「スターナイツ」と名のついたモンスター1体を選択して手札に加える。

「シャドウナイトデーモンの攻撃力を上回っただと!?」

何このアニメ展開。

「行け!セリアでシャドウナイトデーモンを攻撃!
 デブリ・セイバー!」

「ぐわぁぁっ!」 仮面の男LP8000→7700

騎士は騎士に斬りかかった(紛らわしいわっ)。
攻撃力が低いほうが斬られて死んだ。
ざまぁみろ。

「くくく、だがこの瞬間、貴様を地獄に陥れる罠が発動する!
 来い、罠カード発動!」

「と、トラップ!?」

めっちゃアニメ展開な台詞を発しながら、仮面の男が1枚の罠に手を翳した。

「デーモンの断末魔!」

男が叫ぶと同時に、奈落から悲痛な叫びが木霊し、愛華の耳を劈く。
反射的に、愛華は耳を押さえる。

「いやぁ!?」

デーモンの断末魔
永続罠
自分フィールド上に存在する「デーモン」と名のついた
モンスターが戦闘によって破壊されたとき発動できる。
このカードがフィールド上に存在する限り、
相手は自分のスタンバイフェイズにコントロールしているモンスター1体につき
1000ポイントライフを払わなければならない。

「デーモンの断末魔が発動されている場合、
 貴様は私のスタンバイフェイズ時にコントロールするモンスター1体につき
 1000のライフを冥府に支払わなければならない。
 貴様はモンスターをフィールドに残している限り、
 命を冥府に払い続けなければいけないんだよ!」

仮面の男が冷たく言い放つと愛華は顔をしかめる。
それもそのはず、このターン対抗策の存在しない愛華には、ターンを終了することしかできない・・・。

「カードを1枚伏せ、ターン終了・・・。」

「私のターン・・・。
 さぁ、冥府に貴様の命を払ってもらおうか!」

仮面の男が叫ぶと同時に、地面から巨大な青白い手が現れる。
手はそのまま愛華の身体を握りつぶした。

「きゃぁぁぁ!?」 愛華LP8000→7000

「そして我は、手札のジェネラル・デーモンの効果を発動する。
 デッキから万魔殿−悪魔の巣窟−を手札に。」

ジェネラルデーモン
効果モンスター
星4/闇属性/悪魔族/攻2100/守 800
このカードを手札から墓地に捨てる。
デッキから「万魔殿−悪魔の巣窟−」1枚を手札に加える。
フィールド上に「万魔殿−悪魔の巣窟−」が存在しない場合、
フィールド上のこのカードを破壊する。

万魔殿−悪魔の巣窟−
フィールド魔法
「デーモン」と名のついたモンスターはスタンバイフェイズにライフを払わなくてよい。
戦闘以外で「デーモン」と名のついたモンスターカードが破壊され墓地に送られた時、
そのカードのレベル未満の「デーモン」と名のついたモンスターカードを
デッキから1枚選択して手札に加える事ができる。

「そして、手札に加えたパンディモニウムをそのまま発動する!」

刹那、フィールドは不気味な悪魔の巣窟へと姿を変える。
そのおぞましい光景に、怯えた顔を露わにする愛華。
それを見て未だ薄ら笑いを浮かべる仮面の男もいる・・・。

「そして、ジェノサイドキングデーモンを召喚!」

ジェノサイドキングデーモン
効果モンスター
星4/闇属性/悪魔族/攻2000/守1500
自分フィールド上に「デーモン」という名のついた
モンスターカードが存在しなければこのカードは召喚・反転召喚できない。
このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に800ライフポイントを払う。
このカードが相手のコントロールするカードの効果の対象になり、
その処理を行う時にサイコロを1回振る。
2・5が出た場合、その効果を無効にし破壊する。
このカードが戦闘で破壊した効果モンスターの効果は無効化される。

フィールドに、これまたおぞましい姿をした悪魔が現れる。

「そのモンスターの攻撃力上昇はエンドフェイズまで・・・。
 今ならジェノサイドキングデーモンの餌食だ!
 行け、ジェノサイドキングデーモン!
 ジェノサイド・ナイトメア!」

炸裂・五臓六腑ではありません。
何はともあれ、愛華のフィールドに命を削りながらも居座っていた騎士が闇の波動によって消滅した。

「うわぁっ!?」 愛華LP7000→6900

「ターン終了だ。
 さぁもっと見せてくれ、悪魔に怯え、苦しむその哀れな姿を!」

言って男は不気味に高笑いをしだす。
普段なら負けじとばかりに反論する愛華だったが、
この薄暗く不気味なフィールドとおぞましい悪魔モンスターを目の前に、
ただ女の子らしく怯えながらいやいやゲームを続けることしかできなくなっていた・・・。

「(で、でも、このデュエル勝たなくちゃ・・・。
  ブリューナクが・・・盗られちゃう・・・。)」

不意にデッキケースに眼をやる愛華。
あのときの不思議な反応は返ってこない。

やはり、喚び出そう・・・彼を。
愛華には、そう思えてならなかった・・・。




Memories 014 The End of the Primary

アルアシティのどこかの裏路地 2036年8月10日 PM14:56


愛華 LP6900
伏せカード1枚

仮面の男 LP7700
「ジェノサイドキングデーモン」(ATK2000)
「万魔殿−悪魔の巣窟−」
「デーモンの断末魔」

ジェノサイドキングデーモン
効果モンスター
星4/闇属性/悪魔族/攻2000/守1500
自分フィールド上に「デーモン」という名のついた
モンスターカードが存在しなければこのカードは召喚・反転召喚できない。
このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に800ライフポイントを払う。
このカードが相手のコントロールするカードの効果の対象になり、
その処理を行う時にサイコロを1回振る。
2・5が出た場合、その効果を無効にし破壊する。
このカードが戦闘で破壊した効果モンスターの効果は無効化される。

万魔殿−悪魔の巣窟−
フィールド魔法
「デーモン」と名のついたモンスターはスタンバイフェイズにライフを払わなくてよい。
戦闘以外で「デーモン」と名のついたモンスターカードが破壊され墓地に送られた時、
そのカードのレベル未満の「デーモン」と名のついたモンスターカードを
デッキから1枚選択して手札に加える事ができる。

デーモンの断末魔
永続罠
自分フィールド上に存在する「デーモン」と名のついた
モンスターが戦闘によって破壊されたとき発動できる。
このカードがフィールド上に存在する限り、
相手は自分のスタンバイフェイズにコントロールしているモンスター1体につき
1000ポイントライフを払わなければならない。


 舞台は最早場所の裏設定を考えるのが面倒になった作者の気持ちを垣間見ることができる裏路地。
 そこで、謎の仮面の男に半ば強制的にデュエルを挑まれる愛華だったが、
 その奇々怪々且つ恐怖感のあるデュエルで開始早々圧倒される……。

「私のターン、ドロー!」

 負けてられない、とばかりに強引にカードを引く愛華。
 後攻2ターン目。

「スターナイツ・シールド タイタニアを召喚するよっ!」

スターナイツ・シールド タイタニア
効果モンスター
星4/風属性/戦士族/攻1000/守1000
このカードは1ターンに1度戦闘によっては破壊されない。
1ターンに1度、手札からモンスターカード1枚を捨てて発動する。
自分のデッキから捨てたモンスターより低いレベルを持つ
「スターナイツ」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。

 フィールドに、巨大な盾を持ち守備体制を整える戦士が現れる。
 とはいっても、OCGのルール上攻撃表示なのだが。

「更にフィールド魔法、星屑の聖域を発動っ!
 パンディモニウムは、上書きによって破壊されるよ!」

「……小癪なマネをっ!!」

 奇妙だった悪魔の巣窟は次第に消滅し、透き通った夜空の広がる古代都市へと姿を変えた。

星族の聖域
フィールド魔法
自分の手札からカードが墓地に送られるたびに、
このカードにスターカウンターを1つ置く。
このカードに乗っているスターカウンターを2つ取り除くことで、
デッキからカードを1枚ドローする。
このカードが破壊される場合、
代わりにこのカードに乗っているスターカウンターを1つ取り除くことができる。

「そして、手札を一枚捨て、タイタニアの効果を発動っ!
 捨てたモンスターより低いレベルを持つモンスター一体を、デッキから特殊召喚する!
 私が特殊召喚するのは……」

「スターナイツ・ファルコン ユラヌス」→墓地
「星屑の聖域」(スターカウンター×0→1)

スターナイツ・ファルコン ユラヌス
効果モンスター
星4/風属性/鳥獣族/攻2100/守 800
このカードは通常召喚できない。
このカードが手札から捨てられた時、
このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。

 手札を捨てた後、愛華はデッキからカードを一枚選び出してフィールドに表側表示でセットする。

「お願いっ、スターナイツ・フェアリー エイリっ!」

 盾を構えた戦士は、腕を高々と空に掲げる。
 すると、フィールドに四枚羽根の小さな妖精がひらりと舞い降りた。

スターナイツ・フェアリー エイリ
チューナー(効果モンスター)
星2/風属性/天使族/攻 400/守1000
1ターンに1度、手札からモンスターカード1枚を捨てて発動する。
自分の墓地から、捨てたモンスターと同じレベルの
「スターナイツ」と名のついたモンスター1体を選択して
自分フィールド上に特殊召喚する。

「更に、手札から捨てたユラヌスの効果を発動!
 このカードは、手札から墓地に捨てられた時、墓地から特殊召喚されるっ!
 頼むよっ、ユラヌス!」

 その刹那、フィールドに眩い輝きを放ちながら鋭いくちばしを持った中級の鳥獣が現れた。

「小賢しいマネを……っ!」

 これで愛華のフィールドに並ぶのは三体。
 そのうちの一体は仮面の男の場のモンスターの攻撃力を僅かながら超えている。
 フィールドに出されたカードに手をかけながら、確信めいた目ですかさず愛華が叫ぶ。

「レベル2のエイリに、レベル4のタイタニアをチューニング!
 冷たき氷の世界に、神の化身が龍の姿を借りてここに降臨する。
 永遠に木霊せよ!」

 六つの星が共鳴し、夜空の下に楕円形の輪を描き出す。
 刹那、六つの星が氷を司る龍の零体を"召喚"した……。

「シンクロ召喚っ! 猛れ、氷結界の龍 ブリューナク!」

氷結界の龍 ブリューナク
シンクロ・効果モンスター
星6/水属性/海竜族/攻2300/守1400
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
自分の手札を任意の枚数墓地に捨てて発動する。
その後、フィールド上に存在するカードを、
墓地に送った枚数分だけ持ち主の手札に戻す。

 フィールドに、身体を氷で模す鋭い姿をした龍が召喚された。
 余談だが、このカードのお陰で某ユニコーンは出番が激減したことだろう。

「来たか……忌々しき氷結界の神よ……」

 フィールドに龍が召喚されるのを見て、男はデュエル中で始めて苦虫を噛み潰したような憤怒の表情を浮かべる。
 しかし、依然として愛華は警戒を崩さない。

「ブリューナクの効果!
 手札一枚を捨てる事で、フィールド上のカード一枚を手札に戻す。
 対象はその、デーモンの断末魔!」

「……なるほど、少しは考えたようだな」

 男のフィールドに発動された忌々しき永続罠、デーモンの断末魔を指差して高らかに宣言する愛華。
 対する男の表情はあまり浮いたそれではない。

「永続罠を手札に戻す事で、その発動を遅らせ、ダメージを軽減するという手か……。
 だが少し甘いな、私がこのカードを再びセットした上体で貴様が私のデーモンを破壊した瞬間、
 再び悪夢が発動するのだからな」

 以外にも浮かない表情は続かなかった。
 男は愛華に継続した挑発を続けたまま止めない。

「構わないっ!
 頼んだよ、ブリューナク!」


 ――了解した……っ!!


「クローズド・フィールドっ!」


「デーモンの断末魔」→手札
「スターナイツ・ソルジャー セリア」→墓地
「星屑の聖域」(スターカウンター×1→2)

スターナイツ・ソルジャー セリア
効果モンスター
星4/風属性/戦士族/攻1900/守1400
1ターンに1度、手札からモンスターカード1枚を捨てて発動する。
エンドフェイズまでこのカードの攻撃力は
捨てたモンスターのレベル×100ポイントアップし、
捨てたモンスターのレベルと同じレベルになる。

 ここはアニメではない小説だ。
 だから主人公だって同名カードを複数積む。

 それはさておき、強がっていた仮面の男も少しばかり悔しそうな表情で永続罠を手札に戻した。

「そして、星屑の聖域の効果を発動する……」

「このフィールド魔法の……か?」

 静かに愛華が呟く。
 鬼が出るか蛇が出るか、男は微動だにせず成り行きをただ見守る。

「星屑の聖域は、自分が手札を捨てるたびにスターカウンターを一つ乗せる。
 そして今、スターカウンターは二つ!」

「その二つで、何かを起こそうというのだな」

 静かに呟く仮面の男。
 さっきまでの取り乱した様子は微塵も感じられない。

「そう、スターカウンター二つを取り除くことで、デッキからカードを一枚ドローするよ!」

 言うと同時に、デッキからカードを一枚引き抜く愛華。
 引いたカードを確認するか否か、強張った表情をそのままに、ついに彼女の僕たちが動き出す。

「バトルフェイズ!
 ユラヌスでジェノサイドキングデーモンを攻撃っ!
 スターソニック・フライ!」

 ユラヌスの身体は次第に光を帯び、そのまま悪魔の身体に突っ込む。
 僅かながら上回ったエネルギーは、男にも微量のダメージを与える。

「くっ……」 仮面の男LP7700→7600

「ブリューナクで直接攻撃っ!」


 ――ブリザード・スピア……っ!!


「くわぁぁぁっ……!!」 仮面の男LP7700→5400

 叫び声をあげて必死に龍の攻撃を受け止める男。
 しかし、2000を超えるダメージは半端なものではなかった。

「ターン、終了」

 自らの優勢を気にせず平静を装う愛華。
 すっかり集中しきっている。

「ククク、私のターンだな」

 薄気味悪い笑みを浮かべながら静かにカードを引く男。
 その表情を崩さずに、一枚のカードを場に出す。

「デーモン・チューナーを召喚!」

 フィールドに、小柄で杖のようなものを持った悪魔が現れる。
 それにしても単純な名称、作者のオリカ作成センスが疑われる。

デーモン・チューナー
チューナー(効果モンスター)
星4/闇属性/悪魔族/攻1000/守 700
このカードをシンクロ素材とする場合、「デーモン」と名のついた
モンスターのシンクロ召喚にしか使用できない。
このカードの召喚に成功した時、手札を1枚捨てる事で
自分の墓地からレベル4以下の「デーモン」と名のついた
モンスター1体を特殊召喚する事ができる。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、
エンドフェイズ時に破壊される。

「そして、デーモン・チューナーの効果を発動する!」

 悪魔はフィールドに現れるや否や、持っている杖をぶんぶんと乱暴に振り回し始める。
 するとフィールドに、さっき倒されたはずの悪魔が跪いたまま生還した……!?

「ジェノサイドキングデーモン」→特殊召喚

「!!」

 驚きの表情を隠せない愛華。
 似たような効果を持つモンスターはチューナーではたくさんいるが、
 このモンスターはどれだけ対象が広いのだろうか。

「デーモン・チューナーは、手札一枚を捨てる事で、
 自分の墓地からレベル4以下のデーモンを復活させる。
 効果は無効化され、エンドフェイズに自壊はするがな……」

「でもそのモンスター……」

 恐る恐る口を開く愛華。
 その通りと言わんばかりに男は目を大きく見開き叫びだした。

「その通り! レベル4のチューナー、デーモン・チューナーに、
 レベル4のジェノサイドキングデーモンをチューニングっ!」

 せっかくブリューナクを出したのに・・・レベル8のシンクロモンスターでは簡単に倒されてしまう。
 余談だが、レベル8のシンクロモンスターの最低攻撃力は2400である。
 遊戯王wikiで調べた(何

「フハハハハ、出でよ我が悪なる使い魔よ!
 シンクロ召喚! カオスナイト・デーモン!」

 静寂な星空を打ち破って、光と闇の力を持つ巨大な高等悪魔が出現した。

カオスナイト・デーモン
シンクロ・効果モンスター
星8/光属性/悪魔族/攻3000/守2000
チューナー+チューナー以外の「デーモン」と名のついたモンスター1体以上
このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に
1000ライフポイントを払う。
このカードは相手のコントロールするカードの効果を受けない。
1ターンに1度、ライフを800ポイント払う事で、
このカードが戦闘によって破壊したモンスター1体を
自分フィールド上に攻撃表示で特殊召喚する。
この効果で特殊召喚されたモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。

「こ、攻撃力3000……」

 レベル8のシンクロモンスターなら無理もない。
 攻撃力3000というのは、某社長令嬢と同等のそれである。

「クハハハハ!! さぁ行けカオスナイト・デーモン!
 氷結界の神を抹殺しろ!
 エクスタシー・カオス!!」

 明らかに壊れきった鋭い目つき特徴で、ブリューナクへの攻撃を宣言する仮面マン(遂に略された
 怯えきった愛華には、最早成す術もなくその攻撃を受けることしかできなくなっていた。

「んあああぁぁぁ……っ!!」 愛華LP6900→6200

「クハハハハハハハハッ! いい鳴き声だ氷結界に選ばれし少女よ!
 もっと聞かせてくれよ、その悲痛な叫びを!」

 ただのヘンタイだ。

「メインフェイズ2に移行だ!
 カオスナイト・デーモンの効果発動!
 このカードが戦闘で破壊した相手モンスター一体を、
 ライフ800と引き換えに自らのコントロールで復活させる!
 我が下へ来たれ! 氷結界の神よ!」 仮面の男LP5400→4600

 叫ぶと同時に、豪快な音を立てて地が割ける。
 すると、全身ボロボロになったブリューナクが男のフィールドに痛々しそうな姿で現れた。

「ぶ、ブリューナクっ!?
 そんなにボロボロになって……」

「ああ、かわいそうか!? 氷結界の神が!
 こいつもお前も、私とこのカオスナイト・デーモンが存分に甚振ってやるよ!」

 やっぱりただのヘンタイだ。

「ブリューナクの効果発動!
 手札1枚を捨て、貴様のその小賢しい鳥獣を手札へと戻す!
 クローズド・フィールド!」

「うっ……!?」

 今まで自分の僕として戦ってきたモンスターに裏切られる恐怖感と絶望感。
 今それを、愛華はリアルタイムに肌で感じ取っている……。

「そのモンスターは通常召喚が不可能だからな。
 退場してもらわねば困る。
 私は、ターン終了だ。
 まぁ、この瞬間神は再び墓場へ戻るがな……。
 個々まで来て戦う気にはなれるか!? 氷結界に選ばれし少女よ!」

 ブリューナクは悲痛な叫びを上げて墓場へ舞い戻っていった。
 それをただ、目に一粒の涙を浮かべながら見守る愛華。


 ――済まぬ主よ……――


   ぶ、ブリューナク!?


 ――だが、我は再び主の墓場へと舞い戻った
   奴のいうことなど気にするな……
   存分に…………――


   ・・・タタカエ・・・


「!!」

 はっとした表情でデッキの一番上を見つめる愛華。
 何が起きたわけでもない、ただ……。

「そう、ただ……」

「!?」

 叫んだ後浮かない表情の男。
 何が気に食わないのか……、それは……。

「ただ、先がどうであれ私は戦う! 私のターン!」

 デッキに手をかけ、カードを……ドロー!!

「ドローっ!」




 その次の瞬間だった。




 ピンポンパンポン

 市営のチャイムが当たりに鳴り響く。
 こんな裏路地でも普通に聞こえる大音量のチャイムだ。
 チャイムの女性の音声は、ゆっくりとした口調でこんなことを告げた。

「第十九回KWC参加者にご連絡します。
 ただいまを以て、予選通過者八名が確認されたので、
 現在デュエルを行っている参加者は、直ちにデュエルを中断し、東部デュエルリング場へお戻りください。
 繰り返します…………」


「……………………」

「……仕方ない、デュエルはお預けだな。」

 男が悔しげな表情で言うと、フィールドに置かれたカードをゆっくりとデッキケースへとしまう。

「………………へ?」

「聞いていなかったのか?
 予選は終わった、参加者は直ちに中止してデュエルリング状へ戻るのが義務だ。
 さもなくば……」

「……………………はい?」

「さもなくば、永久にKWC参加権を失う」

「……………………えぇぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜っっっ!!!?」

 以外にも落ち着いた口調で仮面の男は説明する。
 既にソリッドヴィジョンは消えているが、未だに愛華はディスクからカードを外せないでいた。
 そんな愛華の落胆の叫びが辺りに木霊する。

「そんなぁ〜っ……。」

 バタッ、と地面に座り込む愛華。
 最早この男が誰だったかすら忘れてしまいそうなくらいに落ち込んでいる。

「氷結界のカードは預ける。
 次は必ず、この私が……」

 男は握り拳を固めて冷たく言い放った。

「この私が、貴様の持つ氷結界のカードをいただく。
 さらばだ…………」

「ほぇ…………」

 未だに地面に座り込む愛華。
 男の後姿が見えなくなって数秒後、はっと我に返る。

「は、早く戻らなくちゃぁぁ〜!」

 ディスクにセットされたカードを拾い上げ、デッキケースにしまう。
 そして、一目散に、デュエルリング場へと駆け出して行った……。
 既に落ち着きを取り戻した愛華は、予選敗退の悔しさよりも
 ブリューナクを守らねばならないというどこから来るのかも分からない使命感に押し潰されそうになっていた……。




Memories 015 

土草事務所7F709号室 2036年8月10日 PM09:37


「ハァ〜、惜しかったなぁ〜……」

 場所は事務所の愛華の自室。
 第十九回KWCの予選……愛華は、惜しくも予選敗退と言う形で終わってしまったのだ。
 イリアに慰められながらも自室に戻り、
 今はただ小言を呟きながら本戦の予定の書かれた紙に目を通すことくらいしかできなかった。


 ――第十九回KWC本戦 トーナメント表

 Trmar Profarl  ―
          |―
 Canon Tialuq  ―  |
            |―
 Mira Rihine   ―  | |
          |―  |
 Zarg Fiarege  ―    |
              |―The Champion
 Eito Miyahara  ―    |
          |―  |
 Riu Li     ―  | |
            |―
 Makoto Takasaka ―  |
          |―
 Koya Akizato  ―

 ――



「……って、ミラ出てるじゃん」

 トーナメント表の上から三番目。
 "Mira Rihine"と書かれた文字を見つけて思わず呟く愛華。
 スペリングは知らなかったが、「ミラ」というローマ字そのままの綴りと、
 愛華の能と眼で「リハイン」と読めなくもない綴りを目にして彼女の思考回路はそちらの方向へと作用する。
 確かに間違いなく、この綴りはミラのそれそのものだった。

「いいなぁ〜、私も出たかったなぁ〜……」

 ミラの出場を知って尚更だろう。
 再戦の約束を果たしたものの、連絡手段は全くないのだから。

「……あれ? これってざーぐって読むんだよね?
 何で私に負けたのに出てんの?」

 要は星七つ集めればいいんですよ。
 何度負けたって七つ集まってれば。


 コンコン


 ――丁寧なノック音が聞こえる。
 ゆっくり且つ丁寧なドアの叩き方からして、おそらくイリアのそれだろうと愛華は推測。
 ハーイ、と何気ない声をかけながらドアを開けると、案の定イリアがそこに立っていた……、

「夜分失礼します、愛華ちゃん」

「って……何それ?」

 微笑しながら出迎えを受けるイリアの持っている愛華の視線に入ったそれ……間違いなく受話器そのものだった。

「何それって……見れば分かるでしょう、受話器ですよ」

 首を傾げながらイリアは苦笑する。
 そっちじゃなくて……まぁ、誰もが思うことだろう。

「そうじゃなくて……もしかして電話?」

「はい、KWC主催委員会会長からあなたへ、直々の電話ですよ」

「KWC主催委員会……会長?」

 歯切れの悪い口調でイリアの言ったそれを反復する愛華。
 察しが悪いとはまさにこのこと。
 とりあえず、愛華は受話器を耳に当て、もしもしと電話から流れてくるであろう音声に耳を傾ける。

「夜分失礼します、明星愛華様、ですよね」

 似たようなセリフを十九秒前に聞いた。
 しかし突っ込みは地の分だけで十分だ。
 愛華ははい、と聞こえるように呟く。

「実は、予選通過者の一人、"トルマー=プロファール"様の遺体が発見されたとの報告がつい数分前に入りまして……、
 星を六つ所持していたことが確認される3人の方から抽選しましたところ、
 明星様、あなたが本戦参加者の一人に選ばれました」

「………………は?」

 いきなり人が死んで抽選やって……なんてこれ見よがしに言われても、愛華には何のことだか理解できなかった。
 自室に入ってトーナメント表をもう一度見てみる。


 ――第十九回KWC本戦 トーナメント表

 Trmar Profarl  ―
          |―
 Canon Tialuq  ―  |
            |―
 Mira Rihine   ―  | |
          |―  |
 Zarg Fiarege  ―    |
              |―The Champion
 Eito Miyahara  ―    |
          |―  |
 Riu Li     ―  | |
            |―
 Makoto Takasaka ―  |
          |―
 Koya Akizato  ―

 ――



「そのトルマーさんって人、トーナメント表の一番上の……?」

「はい……つい数分前……死亡報告が入ったんです……」

 あまり浮かない声が受話器から漏れこんでくる。
 愛華は漸く状況を理解できてきたようだ。

「それで、抽選やって……私が本戦出場?」

「はい……中止にするわけにもいかないので……。
 一応、委員会の満場一致での決定ですので、参加をご希望ならご遠慮なくその旨を「やりますっ!」

 電話口から聞こえてくる声を思いっきり遮って、キラキラと輝いた目で愛華が叫ぶ。
 もう寝ている人もいるのに、はた迷惑な話。

「はい、それでしたら朝十時までに簡単な手続きを済ませておかなければなりませんので……」

 うんうんと、頷きながら浮かれ口調の愛華。
 張り切りすぎて空回りしなければいいが。
 そういえば、本戦は予選の次の日にすぐ開催される。
 詳細は九話参照。

「それでは明日、九時半までにアルア東部デュエルリングまでお越し下さい」

「了解っ!」

 誰に聞く口だか。
 目の前のイリアは少し呆れながら苦笑していた。

「では、これにて失礼いたします……」

 その言葉を最後にツーツー、と受話器の切れる電波音が流れる。

「それよりもイリアさん……」

 神妙な表情になってイリアから少し視線を下にして尋ねる愛華。
 何ですか、と首を傾げて尋ねるイリア。

「何でその人――死んじゃったんだろうね?」

 多少の沈黙が走る。
 その、トルマーという人を愛華は知っているわけではないが……、
 大会前日の理由なしの死亡報告(厳密には愛華が聞かなかっただけだが)、
 そもそも理由がなかったとしても、何か訳があるのかもしれない……。

「さぁ……まぁ、これも何かの縁ですよ。
 あなたは、明日の本戦に向けしっかりと睡眠をとってくださいね」

 無理に笑顔を作って見せるイリア。
 人の死を喜ぶ――と言ったら物騒な話ではあるが、確かにここでどうこう言っても何か起こるわけでもない。
 愛華は素直にイリアの言葉を受け止め、うんと一声かけてイリアに別れを告げた。


アルア東部デュエルリング場 2036年8月11日 AM09:55


 炎天下の太陽の元、これでもかというくらいに人のたくさん集まったドームの中。
 残り5分という少ないながらも待ちきれない微妙な時間に耐えかねて、会場はがやがやとやかましい音を立てている。

「うわ〜、人多いなぁ〜……」

 控え室のモニターで会場の様子を見て、何気なく呟いた愛華。
 控え室は本戦出場者8人それぞれに振り分けられる個室。
 全ての部屋は白いタイルで囲まれており、鏡や洗面具など意外に設備はばっちりだ。
 不意に、ドアをノックする音が聞こえる。

「はーい」

 イスに軽く腰掛けていた愛華はワクワクの止まらないといった、浮いた気分を垣間見ることのできる明るい口調でドアへ歩き出す。

「開始5分前です。
 出場者は直ちに会場裏までおいでください」

 紳士服を着た若い男性が静かな声で言うと、深くお辞儀をする。
 はい、と返事をしてから素早い動作で机に置いてあるデュエルディスクを左手にはめる愛華。
 そして、腰につけたデッキケースから40枚ほどのカードの束を取り出し、パラパラと何気なく展開する。

「(ブリューナク……君のことはまだよく分かんないけど、私のデッキの一員だから、今回はがんばってもらうね!)」

 愛華は心の中で微笑を浮かべながら呟く。
 今にもカードから赤黒い光が発生して声をかけてくれる気がしたが、カードからは何の変化もなかった。
 愛華は内心少しがっかりしたが、早足で控え室の外へ足を踏み出した。


 ――Readies and Gentleman
 高らかな司会の男性の声が会場に響き渡ると、賑やかだった会場は一気に静まり返る。
 八月十一日、午前十時ジャスト。
 今から、その歴史に残る第十九回のKWC――海馬ワールドクラシックの本戦が開催されるのだ。

「今年もまたやってまいりました、KWC!
 十九回目となる今回も、総勢八名の曲者強者を迎えております!
 司会はワタクシ、タカハシ! 解説は今年もお馴染みのマスダでお送りします!」

 司会のテンションの高さに隠れてか、隣に立っている白髪の中年の男性の影が薄れていたようだ。
 しかし、会場にきている大勢の観客や、はたまた本人までもそれを気にする様子はない。

「それでは早速行ってまいりましょう!」

 高々とこぶしを上げて宣言する司会。
 会場は蜂の巣をつついたように騒然とする。

「まず一人目! 今年も予選通過第一位という快挙を成し遂げたアルアシティ期待の星!
 去年の当大会にて解説マスダに"暴走する機械獣"の異名を送られた、マコト・タカサカ!」

 司会がその左手を会場裏に続く通路へ差し向けると、そこから茶髪でメガネをかけた青年――マコト・タカサカがゆっくりと歩いて会場の真ん中に静かに静止した。

「そして二人目! 去年一回戦敗退の無念を晴らすことができるのかっ!?
 "叛乱の闘士"、エイト・ミヤハラ!」

 再びその左手は会場裏へ続く通路に向けられる。
 そこから出てきたのは金髪をした日本人青年。
 どうでもいいかもしれないが、人が一人二人……と出てくるにつれて会場のざわめきはヒートアップするように大きくなっている。

「三人目! 大会初出場にて予選通過第三位という新記録をたたき出した天才ルーキー!
 その光は全てを裁く、ミラ・リハイン!」

 さっきから司会の口走る肩書きが無駄にかっこよすぎる。
 通路から落ち着いた足取りで出てきたのは先の二人よりも子どもじみた、それでも十分に大人っぽい雰囲気を受ける金髪の少女、ミラ。

「続いて四人目! その怒りは全てを粉砕する、"狂ったゼロ戦"、ザーグ・フィアレッジ!」

 ザーグって金髪だっけ? そうだよね、確か。

「まだまだ行ってみましょう、五人目!
 ロシアチャンピオンシップで何度も好成績を残す実力は伊達ではない!?
 "戦慄のハーモニー"、カノン・ティアルーク!」

 出てきたのは銀色の長髪をして、蒼い目をした少女。
 司会の紹介からして、ロシア人だろうか?
 少しあどけない足取りで会場の真ん中へと姿を現す。背ぇ高ぇ。

「次、六人目!
 コリアからの電撃出世で本戦に出場だぁ!
 "白銀の焔"、イ・リウ!」

 姿を現したのは愛華以上に背の低いアジア系黄色人種というべき肌を持った黒髪の少女。
 緊張しているのか、その足取りはどこかぎこちない。
 というかなんで朝鮮人や中国人は「姓・名前」なのに日本人は「名前・姓」なんでしょうね。

「まだまだ行きますよ、七人目!
 その所在や出身は不明で、いつの間にかアルアシティにいたという謎の新人!
 "暴れる竜戦士"、コウヤ・アキザト!」

 >その所在や出身は不明で、いつの間にかアルアシティにいたという謎の新人!
 犯罪ですよ犯罪。彼は犯罪者です。

「最後となりました、八人目!
 新人としてはKWC本戦出場過去最多の五人目となる、期待の星!
 "煌く超新星"、マナカ・ミョウジョウ!」

 これで漸く出場者八人が揃った。
 通路から茶色をした短髪を持つ少女、愛華が辺りを見回しながら出てくる。

「(うっわー、緊張するぅ……)」

 愛華の心の叫び。
 顔には出さないでいるものの、精神的な緊張は相当のものだった。

「それでは早速トーナメント表の組み合わせ発表です!
 モニターをご覧くださいっ!」

 司会、高橋が高らかに叫びながら会場北側にある巨大なモニターを指差す。
 モニターには電子的なアルファベットで出場者八人の名前がランダムに書かれていた。


 ――第十九回KWC本戦 トーナメント表

 Manaka Myojho  ―
          |―
 Canon Tialuq  ―  |
            |―
 Mira Rihine   ―  | |
          |―  |
 Zarg Fiarege  ―    |
              |―The Champion
 Eito Miyahara  ―    |
          |―  |
 Riu Li     ―  | |
            |―
 Makoto Takasaka ―  |
          |―
 Koya Akizato  ―

 ――



「って、うわっ!? 一回戦目!?」

 思わず愛華が叫びだしていた。
 内心、相当緊張していたのだから無理もないだろう。
 しかし、考えてみれば当然の結果である。
 例の死亡者――トルマー・プロファールの代わりとして出ているのだから。

「あの……明星愛華さんですよね?」

 丁寧だが少し歯切れの悪い日本語で蒼い目をした銀髪の少女が愛華に話しかけてくる。
 出場者が会場の真ん中で動いてもいいのだろうか。
 ……司会から許可が下りた。

「えっと、確か……」

「私、カノン・ティアルークです。
 不束者ですが、どうぞよろしくお願いします」

 初戦の相手ということで挨拶に来たのだろう。
 深く頭を下げて高いソプラノの声で目の前の自分より背の低い少女、愛華にお辞儀をする。

「あ、えっと、こちらこそ!」




「それでは早速第一回戦目に参りたいと思います!
 Aサイド、明星愛華と、Bサイド、カノン・ティアルーク!
 勝利の女神が微笑むのは一体どちらか、それでは、デュエルスタート!」

 およそ十分が経った。
 一回戦出場者の愛華とカノン以外の選手は舞台裏のロビーに引っ込まされ、会場に残るのは愛華とカノンのみとなる。
 互いにデュエルディスクを構える二人に、決戦の火蓋が切って下ろされた。

「「デュエル!」」 愛華8000vs8000カノン




Memories 016 Calm Harmony 〜静寂のハーモニー〜

「「デュエル!」」 愛華8000vs8000カノン

「私の先攻、ドロー!」

 高らかに宣言しカードをドローする愛華。
 二人にはそれぞれ手を使わなくてもいい首にかける式のマイクが配られているため、そこまで大きな声で宣言する必要はない。
 というかあれなんていうんでしたっけ、わかんねー。
 後、先攻はAサイドの人って決まってるんです。
 決して早い者勝ちでは(ry

「まず、スターナイツ・エクスタシーを発動!
 ライフ500ポイントを払い、手札からスターナイツ一体を墓地に捨てる事で、カードを二枚ドローするよっ!」 愛華LP8000→7500

 スターナイツ・エクスタシー
 通常魔法
 ライフを500ポイント払い、
 手札から「スターナイツ」と名のつくモンスター1体を墓地に捨てる。
 デッキからカードを2枚ドローする。

 とまぁ、無駄に長い説明である。
 でも使用されたのはドロー増強カード。
 カノンにとっては危険極まりない。

「そして、手札から捨てられたファルコン ユラヌスを特殊召喚する!」

 スターナイツ・ファルコン ユラヌス
 効果モンスター
 星4/風属性/鳥獣族/攻2100/守 800
 このカードは通常召喚できない。
 このカードが手札から捨てられた時、
 このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。

 フィールドに鋭いくちばしを持つファルコンが現れる。

「なんという猛攻!
 愛華選手、先攻1ターン目にして攻撃力2000を超える大型モンスターを展開しました!」

「いやぁ〜、展開力(てんかいりょく)は天下一品(てんかいっぴん)ですね」

 司会のハイテンションな実況に解説者の一言解説。
 それにしても、駄洒落なんていってる場合じゃない。

「更に、カードを二枚伏せて、ターン終了だよ!」

「私のターンです、ドロー」

 手札をよく確認してから愛華のフィールドをよく観察するカノン。

「(ドロー補強後に伏せられたカードが二枚……慎重に行きましょうか)
 私はまず、永続魔法恋の戦慄を発動します」

 恋の旋律
 永続魔法
 自分フィールド上に「ハモニシック」と名のついたモンスターが
 召喚・反転召喚・特殊召喚されるたびに、
 このカードにハーモニーカウンターを1つおく。
 このカードのハーモニーカウンターを3つ取り除くことで、
 自分の墓地に存在する「ハモニシック」と名のついたカード1枚をデッキに戻し、
 自分のデッキから「ハモニシック」と名のついた
 戻したモンスター以外のモンスター1体を手札に加える。

「恋の……戦慄?」

 フィールドに甘いメロディーが響き渡る。
 少しざわめいていた会場も一瞬で静まり返る。

「ここでカノン選手、永続魔法恋の戦慄を発動したぁ!
 このカードは確か……」

「恋の戦慄が発動している場合、ハモニシックモンスターが召喚されるたびにハーモニーカウンターを一つおきます。
 更にそのハーモニーカウンターを三つ取り除く事で、墓地のハモニシックモンスター一体をデッキに戻し、デッキからハモニシックモンスターを手札に加えるんですが……」

 深呼吸した後、カノンは手札の一枚のカードに手をかけた。

「私は更に、ハモニシック・トロンバを召喚します!」

 ハモニシック・トロンバ
 効果モンスター
 星3/光属性/魚族/攻1400/守 400
 このカードの召喚に成功した時、
 自分の手札から「ハモニシック」と名のついた
 モンスター1体を特殊召喚する事ができる。

 フィールドに現れたのは、巨大な口をあんぐりあけたいたって普通の魚類……。

「……魚?」

 愛華の間の抜けた疑問文。
 "まなか"から"ま"を取って"なか"、だろうか。

「確かに、トロンバは魚です……ね……」

 少し残念そうな微笑を浮かべてカノンが呟く。

「と、トロンバの効果を発動します!
 このカードの召喚に成功した時、手札からハモニシックモンスター一体を特殊召喚します!
 出てきてください、ハモニシック・ブロッサム!」

 ハモニシック・ブロッサム
 効果モンスター
 星2/光属性/植物族/攻 800/守 600
 このカードが「ハモニシック」と名のついた
 カードの効果によって特殊召喚に成功した時、
 自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 トロンバは、その巨大な口から音を発した。
 どこかで聞いたような音……?

「トロンボーンの音だぁ!!」

 不意に愛華が叫びだす。
 どうやら効果の方には興味はないらしい。

「あ、分かるんですか!?」

「うん! 中学時代吹奏楽部だったもん!」

 どうでもいい方向に話がヒートアップする。
 対して、司会や解説、観客は一部を除いてあまり楽しそうではなかった。
 というか本当に使い道のない裏設定だ。

「えっと、気を取り直して、ブロッサムを特殊召喚し、その効果を発動します!
 デッキからカードを一枚ドロー……」

 フィールドに至って普通の赤いバラの姿をしたモンスターが出現する。
 カノンはゆっくりとカードをドローする。
 今度はどんな楽器のモンスターだろうか。

「ここに来てカノン選手、手札を補充しましたぁ!
 しかも、恋の戦慄のハーモニーカウンターは二つ!」

「しかし、カノン選手のフィールドのモンスターはいずれも愛華選手のユラヌスの攻撃力には及びませんね。
 このままでは防戦一方です」

 今度は意外にも真面目な司会と解説の一言。
 確かに、このままではカノンの防戦一方かもしれない。

「カードを一枚伏せて、ターン終了です」

「私のターン、ドロー!」

 先攻2ターン目。
 テンションの上がってきた愛華は高らかに声を張り上げ、思い切ってカードを引き抜く。

「そっちが来ないならこっちから行くよ!
 まず、スターナイツ・フェアリー エイリを召喚!」

 スターナイツ・フェアリー エイリ
 チューナー(効果モンスター)
 星2/風属性/天使族/攻 400/守1000
 1ターンに1度、手札からモンスターカード1枚を捨てて発動する。
 自分の墓地から、捨てたモンスターと同じレベルの
 「スターナイツ」と名のついたモンスター1体を選択して
 自分フィールド上に特殊召喚する。

 フィールドに薄い四枚の羽を供えた小さな妖精が出現する。

「そして、レベル2のエイリにレベル4のユラヌスをチューニング!」

 右手を高く上げ、声を張り上げて叫ぶ愛華。
 会場は次第に騒がしくなってくる。
 それもそのはず、先攻2ターン目にしていきなりシンクロ召喚しようというのだから。

「輝きし新星が、明るい未来への道を照らし出す。
 光差す道となれ!
 シンクロ召喚! お願いっ、スターナイツ・ユニコーン クレセリア!」

 六つの光り輝く小さな星が交わりあう。
 その星の紡ぎだす光はやがて、白く光るキレイな鬣を棚引かせ、まっすぐ伸びた一角を突き出したユニコーンを具現化させた。
 ユニコーンは地面を一蹴りすると、雄々しい雄叫びを上げる。

 スターナイツ・ユニコーン クレセリア
 シンクロ・効果モンスター
 星6/風属性/獣族/攻2200/守1900
 チューナー+チューナー以外の「スターナイツ」と名のついたモンスター1体以上
 1ターンに1度、自分フィールド上に存在するモンスター1体をリリースする事で、
 そのモンスターのレベルによって以下の効果を得る。
 ●1〜4:デッキからカードを1枚ドローする。
 ●5、6:相手フィールド上に存在するカードを2枚まで破壊する。
 ●7以上:相手ライフに2000ポイントのダメージを与える。

「ここに来て愛華選手、早速レベル6のシンクロモンスターをシンクロ召喚したぁ!」

 司会の騒々しい実況は相変わらず、愛華はそれを気に留めることもなくさっさと次の行動へ移る。

「クレセリアの効果を発動! 自分フィールド上のモンスター一体をリリースする事で、そのモンスターのレベルに応じた効果を得る!
 リリースするモンスターはクレセリア自身! その効果で、カノンの場のカードを二枚まで破壊する!」

「なっ!?」

 カノンに降りかかる疑問と驚愕。
 一つは愛華とのボードアドバンテージ差が開いてしまうことに対する嫌悪感、もう一つは何故ここまでして召喚したモンスターを簡単に犠牲にしてまでボードアドバンテージ差をつけたいのかという疑問。

「クレセリア! その身を糧に、トロンバと伏せカードを破壊して!
 アリューリー・ノヴァ!」

 クレセリアは、再び雄々しい雄叫びを上げながら祖のみに眩い光を纏う。
 光が破裂したかと思うと、そこから飛び出した無数の星の塵に、カノンの場に存在した二枚のカードが粉砕された。

「………………」

「ハモニシック・トロンバ」→墓地
「ハモニシック・フィナーレ」→墓地

 ハモニシック・フィナーレ
 通常罠
 自分フィールド上に「ハモニシック」と名のついたモンスターが存在する場合、
 相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。
 相手フィールド上に存在するモンスターを全て破壊する。

「おっとぉ!? 破壊されたのはハモニシック専用"ミラーフォース"とでも言えるべきカード、ハモニシック・フィナーレだぁ!
 ここでとった愛華選手の打開策は正解だったのかぁ!?」

「一概にそうは言い切れないとは思いますけどねぇ……。
 愛華選手の場は優勢ながらがら空きですからね……」

 駄洒落なんていってる場合じゃない。
 洒落がかかる部分を無駄に強く発音しているところから、この解説者のだめっぷりがよく分かる。

「それにしても驚きました。
 せっかく召喚した攻撃力2000越えのモンスターをそう簡単に犠牲にするとは……。
 いえ、攻撃力どうこうの問題ではありません。
 私はあまりそういうの好かないので……」

 相変わらず少しなまりのかかった日本語で悲しそうな表情で呟くカノン。
 その目はどこか愛華を軽蔑しているかのようにも見える。

「……私だって、そういうの嫌いだよ?」

「……じゃあ、勝利のためなら何でもするとでも……?」

 カノンのその目はどこか真剣で、それでいて愛華を問い詰める感じだった。

「あなたの気持ちよく分かる……。
 そして私だって……」

 愛華は、目を瞑って深呼吸しながら一枚の伏せカードに手をかけた。

「罠カード発動! スターナイツ・リバース!」

 スターナイツ・リバース
 永続罠
 手札からモンスターカード1枚を捨てて発動する。
 自分の墓地から「スターナイツ」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。
 このカードが破壊された時、そのモンスターを破壊する。
 そのモンスターがフィールドから離れた時、このカードを破壊する。

 不意に、愛華の装着されたデュエルディスク――詳しく言うと、ディスクの墓地スペース部分が白い光で輝き始める。
 手札一枚を墓地に送って、愛華は高らかに宣言する。

「あなたのその言葉、私を惑わせるための戦略じゃなければいいけどねっ!
 スターナイツ・リバースは、手札一枚をコストに、墓地からスターナイツ一体を特殊召喚するよっ!
 私が蘇らせるのはもちろん、スターナイツ・ユニコーン クレセリア!」

 フィールドに再び、ユニコーンの甲高い雄叫びが木霊した……。

「……!!」

「さぁ、行くよっ!」

 拳を目の前に突き出して、声のトーンをそのままに宣言する愛華。
 ユニコーンは、地面を一蹴りすると、そのまま花の形をした生物に突っ込んでいった。

「今ならブロッサムは攻撃表示だから、カノンには大ダメージを受けてもらうよっ!
 クレセリアの攻撃! シューティング・アーク・ダイブっ!」

 そう、先のターンでカノンは、伏せカードに過信してか攻撃力の低い両モンスターを攻撃表示で場に出していた。

「うあぁぁっ!?」 カノンLP8000→6600

「よしっ! ターン終了だよっ!」

 突き出した拳を胸の前で握り締め、自身ありげにガッツポーズをとる愛華。
 まだ少し衝撃の走る身体を立て直し、カノンは愛華に対して視線を合わせながらこう言った。

「さっきはすみませんでした。
 やっぱり、デュエルは楽しまなくちゃ……」

「じゃあ、カノンも全力でかかってきてね!
 私はこれで、ターン終了!」

 負けられない、とばかりにデッキに手をかけるカノン。
 既に会場は、二人のデュエルの虜になっていた。
 騒がしいながらも緊張感漂う雰囲気のなか、カノンの後攻2ターン目が――反撃が始まる。




続く...



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