「小さな魔法使いと黒い王様」についてのレポート
製作者:ラギさん
※この記事は筆者の完全な創作です。あしからず。
※「解放されし記憶」最終章に関係あるかもしれません。
※文章、イラストに関しては、どうか寛大な心で受け止めてください。
「ワンハンドレッド−エイト」19××年10月号より
あるところ に
ちいさな まほうつかい の おとこのこ と
ちいさな まほうつかい の おんなのこ が いました
ふたり は とても なかよし
いっしょに あそんだり まほう の れんしゅう を します
しあわせ を よぶ ふえふき の ふえのね に あわせて おどったり
ひ を あやつる せいれい と いたずら したり
でも あるとき
こわい こわい かいぶつたち が やってきた
ここではない どこかから
ここではない どこかから
ふえふき も せいれい も いなくなりました
いちばん なかのよかった おんなのこ も いなくなりました
こわい こわい かいぶつたち
それを すべるのは くろい おうさま
そして おとこのこ は くろい おうさま に
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以上が「小さな魔法使いと黒い王様」の内容である。
皆さまは、これを見てどう思うだろうか?
筆者の考えを記すなら、尻切れトンボもいいところな、中途半端な部分で終わっているストーリー。
加えて、絵も平凡以下、大したことのない駄作で片付けられそうな代物、だと思う。
だが、そうはならなかった。
極めて局地的ではあるものの、この絵本がインターネットなどを通じて、有名になった。
一種の都市伝説の様な扱いを受けたのだ。
その主な理由は2つある。
1つは、絵を見てもらえば、わかる人にはわかるであろう。(※1)
主人公であろう魔法使いの男の子、見覚えがないだろうか?
そう、世界的にブームを巻き起こしつつあるTGC(注:トレーディング・カードゲーム)、
デュエルモンスターズの有名なカードの1枚。
デュエリストキングダムで優勝した武藤遊戯が扱っていたことで有名になった
《ブラック・マジシャン》に告示しているのである。
また、「ほのお を あやつる せいれい」の絵も、
デュエルモンスターズのカード、《逆巻く炎の精霊》に見える、と言われることもある。
無論、これは少々こじつけ感があるのが否めない。
デュエルモンスターズにもオカルト的な噂があるので、
この絵本の作者の逸話と合わせて、
オカルト的な見解の好きな人の歪曲が入っていることは否めない。
さて、先の行で少し書いたが、都市伝説的な扱いを受けたもう一つの理由。
それは、この作品の作者とされるのが、トーラ・ギルトであること、である。
トーラ・ギルトの名前自体は、オカルトに興味のない方でも、聞いた事があるかもしれない。
今から1年前の「ガシャンナ教事件」の報道にて、名前が出てきた事があるからだ。
簡単に纏めると今から1年ほど前、新興宗教団体「ガシャンナ教」のコミュニティにて
非人道的な行いが罷り通っている、との情報から警察が強制捜査を敢行。
あれよあれよと言う間に銃撃戦にまで発展し、警察官、教団員、両者に重傷者を数名だしながら、
傷害罪、死体遺棄損壊、などの罪で教団代表レムリア・シャーマン氏ほか幹部8名、構成員23名の
逮捕にて幕を閉じた、凄惨な事件である。
ただ、この教団に良からぬ噂があったのは前々からだったのだが、特に注目されているわけではなかった。
だというのに、1年前にて、警察は突如として捜査敢行に踏み切った。
加えて、この強制捜査の敢行に至る決め手になった“証拠”は、公表されていない。
どうにも不透明、不審な部分が多い事件なのだ。
そして、報道にて、一人の人物の名前が挙がった。
それが、トーラ・ギルトである。
その報道の内容としては、トーラ・ギルトは「ガシャンナ教」の有力な支援者であるが、その行方が知れない、というものだった。
それなら逮捕のために、もっと情報を開示しそうなものだが、まったくもってトーラ・ギルトの情報は公表されない。
公表された数少ない情報はというと、“金持ちの老人”“絵本を書いて自費出版していた”くらいのものであった。
そんな何もかもが不可解な事件と人物の中、突如、トーラ・ギルトについての情報がネットに奔り出す。
その例を書き出してみよう。
●冷戦時代、核開発に関わった研究者の一人(確かに、当時の資料の中に、トーラ・ギルトの名前がある)
●第2次世界大戦の際、ドイツに渡りナチスに協力した(こちらも、当時の資料にそう読める名前があるのは事実)
●切り裂きジャックの協力者
●ビーンズ一族の生き残り(※2)
なんというか、こちらこそこじつけとしか思えない話ばかりである。
上二つの項目について言うなら、確かに当時の資料にその名前は確認できる。
だが、名前が同じ、と言うだけの話だ。同一人物である証拠は何もない。
第一、「ガシャンナ教」の事件に関わったトーラ・ギルトは、それが本名かどうかさえ分からないのだ。
(絵本作家としての、ペンネームの可能性が高い)
下二つは完全に、他の都市伝説、言い伝えへの悪ノリと言っても過言ではないだろう。
だが、これだけしか情報がないというのに、トーラ・ギルトの話は一時的に燃え上がった。
言い方を変えるなら、さほど「悪ノリするための材料がそろっているとは思えない」のに、
それにしては広がりすぎた、と思えるのだ。
トーラ・ギルトに対してのイメージの独り歩きだけにはとどまらない、
何か得体の知れない魅力が、ここにはあるのかもしれない。
では次回は、トーラ・ギルトに付いて、さらに踏み込んだ取材、および考察を進めて行こう。
※1:次ページに、件の絵本のイラストを引用させてもらっている。
※2:スコットランドにいたとされる殺人集団の一族。真実である可能性は薄い。
【文責:ネオン・マテリア】
◆ゴシップ雑誌「ワンハンドレッド−エイト」(現在は出版社の倒産により、廃刊)より。
この雑誌の記者であり、変死を遂げたネオン・マテリアが最後に書いた記事の引用。
下のリンク(↓)より、記事に引用されていた「小さな魔法使いと黒い王様」のイラストを閲覧可能。