車と公共交通機関を乗り継いで、翌日、遺跡に到着した。

 遺跡は、町からはそれほど離れてはいないが、遺跡の周囲は小高い丘に囲まれており外からは目立たない。
 丘の上にいた私は、緩やかな斜面をゆっくりと下っていき、遺跡の入り口へと辿り着いた。その入り口は、洞窟のようにぽっかりと穴が開いていた。

「イ……イシズ様……」

 突如、遺跡の穴の中から声が聞こえた。
 墓泥棒かと思って私は一瞬身構えたが、その声の主は自分のよく知っている人だった。

「リシド……?」
 遺跡から出てきた姿は、リシドだったのだ。彼はよろよろと歩いていて、ひどく衰弱した様子だった。

「イシズ様、すみません……。私の力ではマリク様を助けられませんでした……」
 肩で息をしながら、リシドは言う。

「一体何があったのです?」
「私の元に『手紙』が来たのです。墓泥棒を名乗る者から……」
 リシドは言った。リシドも私と同じく、墓泥棒の手によってこの遺跡に呼ばれたのだ。

「それで、遺跡の中であなたは何を……?」
 私は先を促した。

「墓泥棒の指示通り、私はカードを集めていました。しかし、この遺跡は危険です! 情けない話ですが、私は、命からがら遺跡から逃げ出してきたのです……」
 リシドはそう言って、ひざを着いた。

 遺跡には危険がある……だから、あの墓泥棒は私達にカード集めをさせているのだ。
 私達は、いわば身代わり、そう表現しても過言ではないだろう。

 でも、危険と分かっていても、退くわけにはいかない。

「リシドはここで待っていなさい。私が行ってきます……」
 私は言った。
「しかし、イシズ様……」
「マリクの命がかかっているのですよ?」

「……分かりました。それでは、遺跡に入る前にこれをお持ちください……」
 リシドは、1枚のカードを私に手渡した。

「これは……?」
 カードには首飾りの絵が書かれていた。
 だが、その首飾りはただの首飾りではなかった。

 その首飾りは、千年タウクだったからだ。

 もちろん、これはカード。千年タウクが描かれているただのカードに過ぎない。
 だが、私はこのカードに秘められた『力』を感じずにはいられなかった。

「そのカードは、私が遺跡の中で発見した唯一のカード。この遺跡に眠る7枚のカードのうちの1枚です」
 リシドは言った。

 このカードこそ、墓荒らしの求めているカードの1枚。
 これを7枚集めれば、遺跡に眠る『あるもの』が手に入ると言う。

「そして、これもお持ちください」
 リシドはカードの束を私に渡した。
 これらは、M&Wのカード。デュエリスト達が決闘を行う時のデッキだった。

「遺跡の中では、戦いは避けられません……」
 リシドはそう付け加えた。

 人質、千年アイテム、戦い……。

 これから遺跡の中で何が起こるのだろうか?
 無事に帰還することができるのだろうか?
 マリクを救出することができるのだろうか?

 私は、戦慄した。

「十分にお気をつけください……」
 私が遺跡に足を踏み入れた時、リシドはそう言った。



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