ぷろじぇくとSV(SAVE)(裏)

製作者:あっぷるぱいさん




これは、「ぷろじぇくとSV」の後編を、牛尾さんの視点で書いたお話です。



後編(裏)  光差す道となれ!

 俺の名は牛尾。『遊戯王』において、武藤遊戯の最初の敵を務めた男だ。
 そんな俺は今、ゲームに敗北したことによってあら〜〜!! 金だ!! カネカネ!! 金だらけだ〜〜!! うれしぃ〜〜楽しぃ〜〜!!
 この金は俺のモノダ誰ニモ渡サナイギャハハハハハハハハ!!!!
「おい君! 大丈夫か!?」
 ヒョハハハハ〜〜カネカネ〜〜!! コノ金ハ正真正銘ボクのモノサ! タマタマ偶然知人カラ譲リ受ケタ物デネェ!!!
「しっかりしろ!!」

 ――ベチィンッッ!!

 うぁ!!? 誰かが俺の頬にビンタを喰らわせてきた! はっ!? 俺は今まで一体何を??!
「お……俺は……」
「! 正気を取り戻したか!」
 ん? なんか俺の前に若い男がいるな。こいつか? 俺にビンタを喰らわせてきたのは。
「お前は……誰だ?」
「ただの通りすがりさ。それより……君、大丈夫なのか? さっきから幻影を見ているようだったが……」
 ……うーむ。どうやら、俺はゲームに負けたことで錯乱状態に陥っていたようだ。くそっ! 武藤遊戯にゲームで負けて以来、ずっとこんな調子なんだよな!
 あぁ思い出した。俺は紳士とのゲームで負けたんだ。せっかく登場できたのにゲームで負けちまうとは……。つーかあれで俺の出番終わりかよ!? ふざけんな!!
 よし、こうなったら誰でも構わねぇ! M&Wで潰してやる! そして名誉挽回と行こうじゃないか!
「大丈夫なら、もう僕は行くけど……」
 さっきの若い男がそう言って、その場を立ち去ろうとした。あれ? そう言えばこの男……どっかで見たことあるな。誰だっけ……。
 !! 思い出した! ようし、決めたぜ! 俺の相手は……アンタだ! ここで会ったのも何かの縁!
「ちょっと待ってくれ! あんた『マリク・イシュタール』だろ? バトル・シティ大会第2位の」
「! ……あぁそうだよ。いかにも僕は『マリク・イシュタール』だ!」
 マリク……。この男はバトル・シティ決勝戦で武藤遊戯と戦った男だ。それなら、M&Wは相当強いはず! 面白いゲームが期待できそうだ!
「いきなりで悪いが……あんたにデュエルを申し込むぜ!」
「デュエル? あぁいいだろう! 僕はいつ誰の挑戦でも受ける!」
 マリクはノリノリで俺の挑戦を受け入れた。デュエリストってのは、物分りのいい奴が多いと俺は思った。
「ただし、僕は急ぎの用事で今すぐ“牛丼野郎”という店に行かなければならない! そのため、バイクに乗りながらデュエルをすることになるが……いいな!?」
 …………。
 俺は原作の内容をよく思い出してみた。そうだ。コミックス20巻でマリクは、バイクに乗りながら武藤遊戯とデュエルをしていた(しかもヘルメットなし)。
 おそらく、バイクに乗りながらデュエルするというのは、彼の中で1つの戦闘形体なのだろう。俺には全く理解ができんがな。だってどう考えたって危険だろ!!
 しかし、ここで拒否すると挑戦を断られそうだ。俺も原作キャラ。そのくらいは許容しよう。
「あぁ、構わないぜ! だが……どうやってバイクに乗りながらデュエルを?」
 そう。俺が一番気になっているのはそこだ。バイクに乗ってデュエルする方法が分からん。原作のように、誰かを洗脳することなんてできないし。
「簡単なことさ。バイクにデュエルディスクをくっつけて、そこにカードを置いて戦えばいい」
 なるほど、基本はデュエルディスクを使ったデュエルってことか。確かに簡単だな。だが生憎、俺はデュエルディスクを持っていない。バイクなら持ってるんだがな(そもそもこの場所へはバイクに乗って来た)。
 俺が頭を悩ませた時だった。突然、背後に人の気配を感じた! だ……誰だ!?
 振り向くと、そこには黒いコートを身に纏い、顔に変な刻印を入れたスキンヘッドの男がいた。な……なんだコイツ!? いつの間に俺の背後にいた!? 俺に気付かれずに……背後を取ったというのか!?
 コイツ……ただものじゃない!! 俺の本能がそう告げていた。
「このデュエルディスクをお使い下さい……」
 刻印の男はそう言うと、俺にデュエルディスクを渡してきた。え? 貸してくれんの?
「ありがとう、リシド。さあ、これで足りない物は無いはずだ!」
 刻印の男はマリクの仲間で、リシドという名らしい。何だよ……仲間だったのか。よくよく思い出してみれば、この男もバトル・シティ大会に出てた男だな。
「さあ、そのディスクをバイクに装着するんだ!」
 よし、じゃあそうさせてもらうぜ! ……と行きたいところだが、そもそもデュエルディスクは腕に装着する物であって、バイクに装着する物ではない。だから、バイクに装着できるようには設計されていない。どうやってデュエルディスクをバイクに装着しろと?
「ん? バイクに装着できないのか……。よし、リシド。頼むよ」
「お安い御用です、マリク様。失礼、デュエルディスクを借ります」
 リシドは俺からデュエルディスクを受け取ると、どこからともなく重そうな道具箱を持ち出してきた。そしてコートを脱ぎ捨て、腕をまくり、頭にハチマキをつけると、道具箱から釘を何本か取り出して口にくわえ、金槌を右手に持った。
「てやんでぇ!!」
 リシドはいきなりそう叫ぶと、俺のバイクにデュエルディスクを取り付け始める。どうやって取り付けるのか、気になって見てみると、粘着テープで固定していた。
 ……どうやら、金槌と釘は使わないようだ。


 1分位で作業は終了し、俺のバイクにデュエルディスクが装着された。
「これで完了です。大丈夫だとは思いますが、あまり乱暴に扱うとディスクが外れてしまう可能性があるので注意してください。万が一外れてしまった場合は、お近くのホームセンターで粘着テープを購入してください」
 道具箱に金槌と釘をしまいながら、リシドは俺に言った。なるほど、粘着テープも万能ではないということか。
「これで準備は整ったな! 僕にはもう時間が無い! 一気に行かせてもらうぞ!」
 既にマリクはヘルメットをかぶり、バイクに跨っていた。今回はヘルメットをかぶってデュエルするようだ。
 俺もバイクに跨り、ヘルメットをかぶると、懐からデッキを取り出した。今回は時間が無いようだから、すぐに勝負をつけるために『ゴキブリ・ロック』は使わないことにする。あれは勝つまで時間がかかるからな。
 代わりに俺は、攻撃重視の『権力デッキ』をデュエルディスクにセットした。フフ……マリク! テメーはもう終わりだぜ!
「そうだ……。まだ君の名を聞いてなかったな! 名は何だ?」
 マリクが尋ねてくる。そう言えば、まだコイツには名を名乗ってなかったな。よし、名乗ってやるか!
「フ……! 俺の名は牛尾だ! よ〜く覚えときな!」
「牛尾か! いいデュエルをしよう!」
 お互いにエンジンを吹かし、いつでも走り出せる状態になった。バイクに乗ってデュエルか……。何だか変な気持ちだぜ……。
「行くぞ! 牛尾!!」
「行くぜ! マリク!!」

「「デュエル!!」」

俺 LP:4000
マリク LP:4000

 俺たちは同時に叫び、そして走り出す――! 見てろよ……俺は必ず勝つぜ!!
 走り出した俺たちは、左手でハンドルを操作しながら、右手でデッキからカードを5枚引いた。よし……なかなかいいカードが揃ってるな! これなら敵を瞬殺できるぜ!
「僕の先攻だ! ドロー! 『リバイバルスライム』を守備表示で召喚! さらにカード1枚伏せ、ターンエンドだ!」
 マリクが勝手に先攻を取った! くそっ! ……まあいい。
 マリクの横に、スライムのモンスターが現れた。『リバイバルスライム』は攻撃力1500、守備力500の雑魚モンスターだが、敵に倒されても復活する能力を持っている。
 だが俺の手札にある魔法カードで、『リバイバルスライム』は攻略できるぜ! 見てなマリク! 俺のターン―――
 と、その瞬間、俺に悲劇が襲い掛かった!

 ――ヒュゥゥゥゥゥ

「!!?」
 ぬぁぁぁああ!!?? なんてこった!! 風で手札が全部飛ばされちまった!! くそっ! なんてやり辛いデュエルだ!!
「自ら手札を除外するとは……愚かな!」
 マリクが馬鹿にしてきた。何言ってんだよお前!! 今のは風で飛ばされたんだよ!!
「ま……マリク! 手札を拾いに行きたいんだが……」
「それは駄目だ! 一度捨てた手札を回収することはできないぞ!」
 早くカードを拾いに行きたいのに、マリクはそれを許さなかった。いいじゃねぇかよ拾いに行ったって! 無くしたらどうすんだよ!!
「く……くそ……! 俺のターン!」
 仕方が無い。カードは後で拾いに行くことにして、まずはカードを引かなければ。
 今、俺の手札は0。場はがら空き。ここで何かを引き当てなければまずい!
「ドロー!!」
 頼む! いいカード来てくれ! 俺は心の中で冷や汗をかきながら、ドローしたカードを目に入れた。

ドローカード:天よりの宝札

 ……!! よし! 『天よりの宝札』は、互いに手札が6枚になるまでドローできる魔法カード! まだチャンスはある!
「魔法カード『天よりの宝札』発動! 互いのプレイヤーは手札が6枚になるまで、カードを引く! 俺の手札は0! よって6枚ドローだ!」
「何! この状況でドロー強化カードを引いただと!?」
 くくく! さっきは手札を全て失ったが、おかげで6枚ドローができるぜ! さあ、カードを6枚ドローだ!
 俺は『天よりの宝札』のカードを墓地に置くと、デッキからカードを6枚ドローした! 勝利よ、俺の手に舞い込めぇ!!

〜ドローした6枚〜
雷帝ザボルグ,氷帝メビウス,炎帝テスタロス,地帝グランマーグ,風帝ライザー,邪帝ガイウス

 いらねええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!
 何だコレは!!? 引いた6枚が……全部上級モンスターだとぉぉおお!!
 俺がドローしたモンスターは全て『帝モンスター』だ。『帝モンスター』は、生け贄1体で召喚可能な攻撃力2400のモンスター群で、どのモンスターも生け贄召喚に成功した時、何かしらの効果が発動する。
 だが……生け贄が無い状態では、壁にもならない『ワイト』以下のカードと化す。これはどんな上級モンスターにも言えることだ。

雷帝ザボルグ
★5/光属性/雷族
明るく無邪気な幼児体型の女の子。ちょっとおっちょこちょい。
実は他のみんなより1つ年下だったりする。
怒ると電光石火の速さで暴れまわるぞ!!
攻2400  守1000

氷帝メビウス
★6/水属性/水族
クールで美人な女の子。しかも頭脳明晰でスポーツ万能。
知的で大人っぽい魅力を放つ彼女はクラスのマドンナだ。
冷静沈着な彼女の前では、敵の策は無と化すぞ!
攻2400 守1000

炎帝テスタロス
★6/炎属性/炎族
喧嘩っ早いヤンキーな女の子。でも優しい一面も持っている。
先生と仲が悪いので、学校にはあまり来ない。
喧嘩相手がお金を持っていると、奪うのではなく焼いてしまう!
攻2400  守1000

地帝グランマーグ
★6/地属性/岩石族
のんびり屋の癒し系女の子。いつも眠たそうにしている。
彼女の安眠を妨害する者は痛い目に遭う。
とても目がいい彼女は、隠れた相手を見つけるのが得意!
攻2400  守1000

風帝ライザー
★6/風属性/鳥獣族
元気いっぱいで勝気な女の子。男勝りな部分がある。
今の悩みは、好きな人の前で素直になれないことだ。
彼女のビンタは、一晩かけても痛みが治まらないことで有名!
攻2400  守1000

邪帝ガイウス
★6/闇属性/悪魔族
普段は大人しい女の子。でも怒らせると怖い。
愛さえあれば、どんなことでも許されると思っている。
彼女が愛した者は、永遠の愛の空間に幽閉されてしまう……!
攻2400  守1000

 ……ちょっと待て。何だコレは!? なんか↑のテキストおかしいぞ! 勝手にカードのテキストを捏造するなよ!! 『帝モンスター』は女の子カードじゃないんだぞ!!

ネタテキスト
(魔法カード)
読者に不意打ちをかける。

 と……とりあえず、だ。俺の『権力デッキ』は完全に手札事故を起こしている。もはやどうにもならない。モンスターも出せない。伏せカードも出せない……。くそっ!
「ターン……終了だ」
「何もしてこないだと……? 手札事故か? 僕のターン、ドロー! 僕は『ムカムカ』を召喚する!」
 マリクは新たなモンスター『ムカムカ』を召喚してきた。
 『ムカムカ』の元々の攻撃力は600と低い。だが『ムカムカ』は、持ち主の手札の数だけ攻撃力・守備力を300ポイントアップさせる能力を持っている。
 今、マリクの手札は6枚ある。つまり……『ムカムカ』の攻撃力は1800ポイント上昇し―――

ムカムカ 攻撃力600→2400

 一気に2400ポイントまで上がった! マジかよ!? 一気に俺の『帝モンスター』と同等の攻撃力を得るとは!!
「バトルフェイズ! 『ムカムカ』でプレイヤーに攻撃する!」
 ちぃ……っ! ダイレクトアタックを受けたことで、俺のライフは大幅に削られた!

俺 LP:4000→1600

「僕はカードを2枚伏せ、ターンを終了する!」
 マリクがカードを2枚伏せたことで手札枚数が減り、『ムカムカ』の攻撃力が600ポイントダウンした。

ムカムカ 攻撃力2400→1800



LP:1600
モンスター:なし
魔法・罠:なし
手札:6枚(全部上級モンスター)

マリク
LP:4000
モンスター:ムカムカ(攻1800),リバイバルスライム
魔法・罠:3枚
手札:4枚


 俺のターンに移る。このターン……何かアクションを起こさなければ、俺の負けだ! 俺は手札を持っている方の手で、デッキのカードに触れた。
「俺のターン、ドロー!!」
 今、俺の心臓は破裂するのではないかと思うくらいに、激しく鼓動していた。俺のデッキよ――答えてくれ!!

ドローカード:異次元の生還者

 引いたカードは『異次元の生還者』。モンスターカードだ。こいつの攻撃力は1800。 とりあえず、『ムカムカ』と相打ちに持ち込めるな。
 どうせこのまま攻撃を受け続けるぐらいなら、奴のモンスターに一発、攻撃をかましてやる!
「俺は『異次元の生還者』を―――」
 ―――召喚……しようとしたところで、俺はふと気付く。今、俺の左手はハンドルを握っている。そして右手は手札を握っている。この状態で、デュエルディスクにカードを置くのって結構面倒臭くね? もう1本腕が必要だぞ……。
 だが、ちょっと待て。それはマリクも同じはずだぞ! なら奴はどうやってカードをデュエルディスクにセットしていたというんだ!?
 俺はマリクの手元を覗いてみた。しかし、奴は手札を持っていないようだ。なんでだ!?
 いや……奴は手札を持っていないわけじゃない! よく見てみろ! 奴は手札を口に挟んで固定しているんだ!
 なるほど、ああやって手札を固定しとくのか! なら俺も、手札は口に挟んでおこう!
 俺は手札7枚を口に挟んで固定し、その中から『異次元の生還者』のカードを右手で取って、デュエルディスクにセットした。
「『異次元の生還者』を召喚! 『ムカムカ』に攻撃する!」
 口にカードを挟んだまま喋るのは困難を極めたが、どうにか俺はそれをやってのけた。さあ『ムカムカ』よ、消え去るがいい!
「甘い! 永続罠『ディフェンド・スライム』! 全ての攻撃は『リバイバルスライム』が代わりに受ける!」
 何!? マリクが罠カードを発動した!? くそ……! あの罠がある限り、俺のモンスターの攻撃は、『リバイバルスライム』にしか当たらない……!
 『異次元の生還者』の攻撃は『リバイバルスライム』に命中し、『リバイバルスライム』を撃破する。しかし……。
「『リバイバルスライム』は再生能力を持つ! よって場に復活! この瞬間、伏せておいた永続魔法『生還の宝札』を発動! モンスターが蘇る度に、僕はデッキから3枚カードを引く!」
 な……! ドロー強化魔法だぁ!? これで奴の手札は……7枚!!

ムカムカ 攻撃力1800→2700

「そして僕のターン、ドロー! 僕の手札はこれで8枚! しかしM&Wでは、プレイヤーが持てる手札枚数に限界がある。そこで……伏せカードオープン! 永続魔法『無限の手札』! このカードがある限り、僕が持てる手札枚数に限りはなくなる!」
 !! マリクは『ムカムカ』の攻撃力を際限なく上げていくつもりらしい。くそっ! 俺には打つ手がねぇ……!
「この場に揃った5枚のカードこそ、究極のコンボ――『ムカムカ・ファイブ』!! 完全無欠にして無敵! 攻略不可能な『ムカムカ』の領域が完成したのさ!!」
 マリクは上機嫌で自分のコンボを説明した。奴め……最初からこれを狙ってたのか!!



LP:1600
モンスター:異次元の生還者
魔法・罠:なし
手札:6枚(全部上級モンスター)

マリク
LP:4000
モンスター:ムカムカ(攻3000),リバイバルスライム
魔法・罠:ディフェンド・スライム,生還の宝札,無限の手札
手札:8枚


 駄目だ……! このターン、『ムカムカ』に『異次元の生還者』を倒されれば1200ダメージ……。さらに『リバイバルスライム』の直接攻撃を受けて1500ダメージ……。俺の負けだ!!
 俺は敗北を認め、口に挟んでいた手札を右手に移動させた。……さすがはバトル・シティ大会2位の男……。マリク、お前は強敵だったぜ……。
「行くぞ! 『リバイバルスライム』を攻撃表示に変更し、バトルフェイズ! バトルフェイズ! 『ムカムカ』の攻―――」
 マリクが攻撃宣言し、デュエルが終了する―――と思われたその時、後方から声が響いてきた。


「そこの危険運転してるバイク2台! いい加減に止まれ!!」


 何!! いつの間にか白バイが追いかけてきている! やっべー! 警察じゃん! デュエルに夢中で気が付かなかった!
「しまった! 見つかったか!」
 マリクはブレーキをかけ、バイクを止めた。俺もそれに倣い、バイクを止める。白バイも動きを止め、警官が俺たちの方へ向かって歩いてきた。
「全く、危険な運転をするヤツらだ! バイクに乗りながらカードゲームしてる奴なんて初めて見たぞ!! 大人しく署まで来い!」
 警官はご立腹のようだ。まあ当然だろう。しかし、もう刑務所生活はまっぴらだ。俺は更生した! そして決めたんだ! 将来警察官になって、悪のいない平和な世界を作るのだと……!
 せっかくここまで更生したのに、それをここで終わらせるわけにはいかない。俺は考えた。この状況を回避する方法を―――。
 そして―――閃いた。俺はデュエルディスクからデッキを外し、それを白バイ警官に向けて言った。そう……俺はこのカードを発動することに決めたのだ!

ゲームをしようぜ!
(魔法カード)
あらゆるトラブルを、ゲーム1つで片付ける。

 俺は『遊戯王』原作キャラの誇りを胸に、白バイ警官に挑戦した!
「おい、デュエルしろよ。俺が勝てば、今日のことは全てなかったことにしてもらう!」
「大人をからかうんじゃない!!」
 空気読めよキサマァ!! この小説が何の二次創作だと思ってんだ!!!

現実とはシビアなり
(カウンター罠カード)
相手がゲームを挑んできた時に発動!
その挑戦は無効となる!

●     ●     ●     ●     ●     ●     ●


 ……で、あれから数時間後。結局俺らは牢獄にぶち込まれた。くそっ! またここでの生活が始まるのか……。
「牛尾……すまない。バイクに乗ってデュエルしようなどと、僕が提案したばっかりに……」
 隣の牢獄から、マリクが申し訳なさそうに言ってくる。俺は危うく「ああホントにその通りだ。そもそも俺は初めっからおかしいと思ってた。バイクに乗ってデュエルなんてどう考えたって危険だろ! お前どうかしてるよ!」と言いそうになったが、どうにか堪えた。
「気にすんな。応じた俺も悪いんだ。俺があの時止めていれば、こうはならなかった」
 俺はそう返しておいた。こいつも悪気があったわけじゃないんだ。一方的に責めるのは酷というものだろう。
「本当にすまない……。いつか君には、改めてデュエルを挑みたいよ」
 あ、そう言えば、こいつとのデュエルは勝敗が決していないんだったな。こりゃあ、いずれきっちりと決着させたいところだ。……え? 俺は負けそうになってたって? 何の話? ぼくそんなことしらないよ?
「そうだな。俺たちのデュエル、中断されちまったからな。いずれ、勝負をつけようぜ」
「あぁ。僕は負けないぞ」
「それはこっちのセリフだ」
 こうして、俺たちの間に友情が生まれた。『遊戯王』とは、ゲームを通して友情を育んでいく作品なのだと、俺は改めて実感した。



 再び戦える日を待ってるぜ―――友よ!


〜完〜








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