プロジェクトFT

製作者:あっぷるぱいさん




 この作品は、プロジェクトシリーズの7作目です。よって、これまでの作品が未読の場合、面白さが2.4ヘルツくらい減少するかと思われます。ご了承ください。
 なお、これまでの作品とは雰囲気が若干異なっているような感じもしますが、それはおそらく気のせいだと思うので、深く考えてはいけません。




 むかしむかし、ある村に双六おじいさんが住んでおり、その隣の村にマイコおばあさんが住んでいました。
 ある日の朝、双六おじいさんはいつものように村へ商売に、マイコおばあさんは来週から適用される禁止・制限ルールに備えるため、カードショップへお買い物に行きました。
 カードショップへ向けてマイコおばあさんが車椅子を走らせていると、前方にナイル川が見えてきました。おばあさんは気付きます。
「ほほほ。道を間違えたみたい。さっきの曲がり角は右じゃなくて左だったようね……」
 車椅子をUターンさせ、いま来た道を引き返そうとするおばあさん。その時です。
 ナイル川の上流から、それはそれは大きな『寄生虫パラサイド』が流れてくるのが見えたのです。
 おばあさんは興味津々で、川に近付いていきました。近くで見ると、パラサイドが並大抵の大きさでないことがよく分かります。全長約2メートルといったところでしょう。
「これは是非とも持ち帰って、孫たちに見せてあげたいわ」
 そう思ったマイコおばあさんは、車椅子に備え付けられていたアタッチメントを起動させ、パラサイドをヒョイッと釣り上げました。
 便利な世の中になったものです。
「カードを買いに行く予定だったけど、それはまたの機会にして、早く帰りましょう」
 早く孫たちにパラサイドを見せたいおばあさんは、車椅子に備え付けられたジェットエンジンを起動させ、超高速で家に向かいました。
 便利な世の中になったものです。





 帰宅したマイコおばあさんは、孫たちにパラサイドを見せてあげました。
 それはそれは大きなパラサイドに、孫たちの目は釘付けです。
「うわぁ〜おっきぃ〜!」
「なぁにこれぇ〜」
「きも〜い!」
 無邪気にはしゃぐ孫たちを見て、おばあさんの顔も自然に綻びます。
 しかし、事態は突如急変しました。

 ―――グシャッパカッ

「!!!」
 その場にいた誰もが驚きました。なんと、パラサイドが綺麗に2つに割れ、中から1人の少年が姿を現したのです。
「あらまぁ……。パラサイドの中から子供が……」
 マイコおばあさんは目を丸くしました。こんな光景を見たのは、生まれて初めてです。まさか、パラサイドの中から子供が出てくるとは。
「じゃあ、パラサイドから生まれた少年、ということで、この子には『パラコンボーイ』と名をつけましょう」
 マイコおばあさんは、非常にマイペースに話を進めます。もちろん少年は納得しません。
「いや、何で勝手に名前をつけるんだよ! 僕にはちゃんと名前があるぞ! パラコンボーイなんかじゃない!」
 必死に訴えを起こす少年でしたが、マイコおばあさんは聞く耳を持たず、一方的に話を進めます。
「パラコンボーイ。この村は今、鬼ヶ島からやってきたグールズに荒らされているの。だから、あなたの力でグールズを退治してくれないかしら?」
「勝手に話進めるなよ! 大体、何で鬼じゃなくてグールズなんだよ!?」
 少年は必死にツッコミますが、やっぱりマイコおばあさんは聞く耳を持たず、どこからともなく取り出したスーパーのレジ袋を少年に提示します。袋の中では、大量の黒い球がカサカサと動いているようですが……。
「な……何それ……!?」
 少年は冷や汗をかきながら、おばあさんに問いました。おばあさんはニコリとして答えます。
「これは我が家に伝わる幻の栄養食品『ゴキボール』。1個食べるだけで、攻撃力が1200ポイント、守備力が1400ポイントアップするの。いざという時のために封印していたけど、今こそそれを解く時だわ! さあ、これを使って、グールズを退治するのよ!」
「喰いたくねえよそんな物!! ふざけんな!!!」
 もっともなツッコミを入れる少年ですが、なんやかんやでゴキボールを持たされ、鬼ヶ島へグールズ退治に行くことになりました。

 ご都合主義
 (魔法カード)
 都合のいい展開でストーリーを進行させる。

「チキショオ! 何で僕がこんな目に……」
 ぶつぶつと不満を漏らしながら村を歩くパラコンボーイ。結局、鬼ヶ島へ向かおうにも、手がかりがないので、どうすることもできません。
 と、その時でした。
「オッス桃太……じゃなかった。パラコンボーイ! 手を貸すぜ!」
「え?」
 突然、パラコンボーイの前に大柄な男が現れました。彼はパラコンボーイのことを知っているようです。
「だ……誰ですかあなたは? 何で僕の名を?」
 とりあえず、質問をぶつけてみるパラコンボーイ。あぁ、パラコンボーイっていちいちキーボードで入力するのは面倒ですね。じゃあ、ここからはパラコンでいきましょう。
 パラコンは男に質問をぶつけます。それに対し、男は答えました。
「フ……俺の名は牛尾! お前のことはマイコのばーさんから聞いた! 手を貸すために参上したぜ!」
「あ、僕の仲間なんですか!」
 そう。この男――牛尾は、普段からグールズに苦しめられており、いつか仕返しをしてやろうと目論んでいました。そんな中、マイコおばあさんから事情を聞き、これは仕返しをするいい機会だと考えたのです。
「パラコン、何でも力になるぜ」
 牛尾は頼もしい口調で言いました。それを聞いたパラコンは、すかさず指示を出します。
「じゃあ、このゴキボール食べてよ」
「まず、どうやって鬼ヶ島に行くかを考えようぜ」
「!!」
 牛尾は極めて強引に話を逸らしました。何でも力になると言った牛尾でさえ、ゴキボールを食べようとは思わないようです。
 パラコンは頭を抱えました。何故なら、マイコおばあさんから「ゴキボールは絶対に残さず食べろ」と言われているからです。もし、ゴキボールを残したまま帰宅したら、何をされるか分かりません。
(仕方がない。この手を使おう!)
 何かを思いついたパラコンは、牛尾にゴキボールの入ったレジ袋を提示しながら言いました。
「ゴキボールを食べないなら、仲間に入れてやんないぞ!」
「何っ!?」
 牛尾は目を見開きました。パラコンの仲間になるには、ゴキボールを食べなければならないのです。
「う〜むむむ!」
 彼は2秒に渡り、心の中で葛藤しました。その結果、1つの答えに辿りつきます。
「じゃあいいや。1人で頑張ってくれ。あばよ」
「え? ちょっと!」
 牛尾はグールズよりもゴキボールの方が危険だと考え、退散しました。これはパラコンも予想外でした。
「くそっ! どうすれば……!」
 これからどうやって鬼が島へ行くのか。そして、どうやってゴキボールを処理するのか。パラコンの悩みは募ります。
 そんな時でした。
「よう桃太……じゃなくてパラコンボーイ。力を貸してやるぜ」
「あ……あなたは!?」
 パラコンの前に、ガタイのいい男が現れました。この男もまた、マイコおばあさんから事情を聞いて駆けつけてきた人でしょう。
「俺の名は蛭谷! 事情は聞いた。俺もあいつらには恨みがあるからな。何でも協力するぜ!」
 頼もしい味方ができました。パラコンは早速彼に指示を出します。
「じゃあさ、このゴキボール食べてよ」
「まずは、武器とかを揃えた方がいいよな。町に出てみるか?」
「!!」
 蛭谷もまた、話の流れを強引に変化させました。彼もゴキボールは食べたくないようです。
 仕方がないので、パラコンはまた同じ手を使います。
「ゴキボール食べなきゃ、仲間に入れてやんないぞ」
「何だと!?」
 蛭谷は目を見開きました。そして、0.2秒に渡って心の中で葛藤し、1つの答えに辿りつきます。
「じゃあいいや。鬼ヶ島へは1人で行ってくれ。またな」
「な!?」
 牛尾と同じく、蛭谷もゴキボールの危険性を察知したのでしょう。結局、退散してしまいました。
「く……くそ! どいつもこいつも……いや、ゴキボールを食べろっていう方が無理か……」
 パラコンは、今度仲間になってくれるような人が現れたら、ゴキボールの話はしないことにしました。
 さて、グールズを倒せとのことですが、如何せん情報が少なすぎます。まずは、町で情報収集をするべきでしょう。
「情報は酒場で集めるというのがRPGの定番だ!」
 そう考えたパラコンは、酒場へと足を運びました。





〜酒場〜

 酒場に入ったパラコンは、とりあえず、店員に話を聞くことにしました。
「あの〜ちょっと聞きたいんですけど、鬼ヶ島について知ってることってありますか?」
 単刀直入に尋ねるパラコン。すると店員は答えました。
「あぁ? 鬼ヶ島? こっからだとタクシーで片道25000円ってとこだな」
「た……タクシーで行けんのかよ!?」
 思わずパラコンはツッコミを入れました。てっきり、鬼ヶ島というのは誰も見たことのない、未踏の領域だとか思っていたのです。
「ほ……ホントにタクシーで行けるんですか?」
「あぁホントだよ。ただ、鬼ヶ島から帰ってこられた人間は誰もいないけどな」
「うっ!」
 やはり鬼ヶ島は恐るべき場所のようです。そこへ言った者は、帰らぬ者となる。パラコンはゾッとしました。
 店員の話は続きます。
「まあ、それ以前に、鬼ヶ島に行った人間は誰もいないけどな」
「なるほど……って、そりゃ誰も帰ってこないに決まってんだろ!」
 思いっきりパラコンはツッコミました。どうやら、今まで鬼ヶ島へ行った者は誰もいないようです。それなら、誰も帰ってこないことにも頷けます。
 何だかこの店員の話が胡散臭く感じてきましたが、面倒なので、パラコンはこの情報を信じて動くことにしました。
 店員にお礼を言い、酒場を出たパラコン。と、そこでパラコンは驚くべき光景を目にしました。
「ようよう姉ちゃん! 俺たちと一緒に酒飲もうぜ!」
「その可愛い手で酒を注いでくれよ」
「ついでに俺と結婚しろ」
 柄の悪い男3人が誰かに絡んでいるようです。絡まれているのは、パラコンと同い年と思われる少女でした。
 その少女を見て、パラコンは目を見開きました。
「か……可愛い女の子だ!」
 少女は、それはそれは可愛げな顔立ちをしていました。パラコンはそれを見て、見事なまでに一目惚れしてしまいます。
 しかし、その少女は男たちに絡まれています。この状況から、パラコンは1つの推測を立てました。
「なるほど! ここであの子を助ければ、あの子が仲間になるんだな! うん、間違いない! うへへ!」
 そう考えたパラコンは、ヨダレを拭いながら、男たちに近付きます。
「待て待て貴様らァ! それ以上の横暴は僕が許さないぞ!」
 勇ましい口調で、男たちに食ってかかるパラコン。すると、男の1人が振り向きました。
「あんだテメー! 部外者はすっこんでろ!」

 ―――チュドーン

「痛ぇ〜〜〜!!」
 パラコンは、男Aの放ったカメハメ波を思い切り喰らってしまいました。
「くっそ〜〜! 『遊戯王』において、暴力で物事を解決するなんて言語道断!」
 理不尽な対抗手段にブチギレたパラコン。彼も必殺の奥義を発動させます。

 ゲームをしようぜ!
 (魔法カード)
 あらゆるトラブルを、ゲーム1つで片付ける。

「やいやい貴様ら! 正々堂々M&Wで勝負だ! さあ、デッキからカードの剣を抜け!」
 パラコンは、古代エジプトより伝わる神秘の奥義・M&Wを会得しているのです。これさえあれば、怖いものなどありません。
 しかし―――
「うるせぇんだよ! ガキはすっこんでろ!!」

 ―――ドカドカドカ

「のわぁ〜〜〜!!」
 パラコンは、男Bが繰り出したゴムゴムのガトリングを思い切り喰らってしまいました。
「チキショオ! 他の漫画の技ばっかし使いやがって!」
 格闘技が相手では、カードゲームは不利だということを、パラコンはこの時初めて知りました。

 現実とはシビアなり
 (カウンター罠カード)
 相手がゲームを挑んできた時に発動!
 その挑戦は無効となる!

 でも、パラコンは諦めません。あの少女にカッコいいところを見せたかったのです。
「貴様ら卑怯だぞ! ここは『遊戯王』の世界なんだから、ゲームで勝負をつけなきゃ駄目だろうが!」
 必死に訴えるパラコン。そうです。ここは『遊戯王』の世界。この世界において、殴り合いで物事を解決することはできま―――
「黙ってろクソ野郎が!!」

 ―――ドガァァァン

「ぎょえ〜〜〜!!」
 パラコンと作者は、男Cの打った波動球を思い切り喰らってしまいました。どうやら、もう作者にも止められないようです。
「く……くそ……! あの子はどうなってしまうんだ!?」
 男たちは、少女に詰め寄ります。少女に逃げ道はありません。もうお終いでしょうか!?
 ―――と思われたその時、それまで黙っていた少女が口を開きました。
「なら、ゲームで勝負しましょう」
「何ぃ!?」
 どうやら、この少女はゲームで決めるつもりのようです。しかし、男たちがそれを受け入れるはずが―――
「へへ……。なら俺が受けるぜ。俺はこう見えても、生粋のゲーマーでね」
「あ……兄貴!?」
 男A(カメハメ波を使った人)が、少女の提案に乗りました。彼は、この3人組のリーダーのようです。
「え? あっさり引き受けた!?」
 しっかりとパラコンはツッコミました。あれほど自分がゲームを挑んだのは何だったのか、と言いたい気持ちでした。
 もう面倒になった作者は、とっととゲームを開始することにしたようです。

 ご都合主義
 (魔法カード)
 都合のいい展開でストーリーを進行させる。

「で、お嬢ちゃん。何のゲームで勝負するつもりだい?」
「ふ……。ゲームはM&Wで行なうわ。でも、ただのM&Wじゃない。これから行なうM&Wは、負けた方が着ている服を全て脱がなければならない闇のゲーム!」
 少女は、『脱衣M&W』を提案します。当然、男Aはそれに乗りました。
「うひうひ! いい度胸じゃねぇか! だが、最後に身包み剥がされるのはお前だぜ!」
「その言葉、そっくりそのまま返してあげるわ。さあ、そこのテーブルに着きなさい」
 こうして、青少年に悪影響を及ぼすようなゲームが幕を開けました。よい子も悪い子も真似してはいけません。
「おぉ、いい展開……じゃなくて、大丈夫なのか? この展開……」
 パラコンは頭を抱えました。無理もないでしょう。決闘の展開次第では、この小説の掲載ができなくなる可能性があるからです。
「あの女の子が、無事に勝利できればいいんだけど……」
 とりあえず、パラコンは少女の勝利を祈りました。
 そうこうしている間に、少女と男Aはデッキシャッフルを済ませ、ゲームを開始しました。

「「ディアハ!!」」

 少女 LP:4000
 男A LP:4000

 「『遊戯王カード 原作HP』に掲載されている創作ストーリーに登場するオリジナルキャラの名前をひたすら挙げていくゲーム」の結果、少女が先攻を取ることになりました。
「私のターン、ドロー! 私は、『魔法少女ぽぽたん』を召喚!」
「何ぃ!? 『魔法少女ぽぽたん』だとぉ!?」
「え? そんなカードあったっけ?」
 『魔法少女ぽぽたん』――聞き覚えのないカード名に、パラコンは眉をひそめました。どうやら、オリカがでてきたようです。
 少女が召喚したのは、その名の通り、いかにも魔法少女っぽいモンスターでした。具体的に述べると、そのカードには、ランドセルを背負った10歳くらいの可愛げな少女が描かれていました。
「うひょーっ! お嬢ちゃんよぉ……このデュエルで俺が勝ったら、そのカードは俺がもらうぜ!」
 『魔法少女ぽぽたん』のカードを見た男Aは、テンションを5ビットほど上昇させ、いきなりアンティルールを追加します。
「『魔法少女ぽぽたん』のモンスター効果発動!」
 男Aの言葉を明後日の方向へ流しつつ、少女は『魔法少女ぽぽたん』の特殊能力を発動させました。
「『魔法少女ぽぽたん』……一体、どんな能力を持ってるんだ?」
 突如登場した謎のオリカ、『魔法少女ぽぽたん』。その能力とは如何なるものなのか? それを知るべく、パラコンは、『魔法少女ぽぽたん』のカードテキストをよく見てみました。

 魔法少女ぽぽたん
 ★1/光属性/魔法使い族
 1ターンに一度だけ、「氷結界の龍 ブリューナク」、「ゴヨウ・ガーディアン」、「ダーク・ダイブ・ボンバー」を1体ずつ自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。
 攻 0  守 0

「…………って、何だこの効果は!! ゲームバランス無視しすぎだろうが!!」
 パラコンは目を見開きました。何故なら、『ぽぽたん』の持つ能力は、分かる人には分かる、凶悪極まりない能力だったからです。
「『ぽぽたん』の効果! 私の場に『氷結界の龍 ブリューナク』、『ゴヨウ・ガーディアン』、『ダーク・ダイブ・ボンバー』を1体ずつ特殊召喚する! 出でよ!!」
「な……何ぃぃい!!」
 『ぽぽたん』の効果が起動し、少女の場に3体のモンスター――『氷結界の龍 ブリューナク』、『ゴヨウ・ガーディアン』、『ダーク・ダイブ・ボンバー』――が特殊召喚されました。ちなみに、この3体のモンスターの能力は↓次の通りです。

 氷結界の龍 ブリューナク
 ★6/水属性/海竜族・シンクロ
 チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
 (効果は使わないので説明は割愛)
 攻2300  守1400

 ゴヨウ・ガーディアン
 ★6/地属性/戦士族・シンクロ
 チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
 (効果は使わないので説明は割愛)
 攻2800  守2000

 ダーク・ダイブ・ボンバー
 ★7/闇属性/機械族・シンクロ
 チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
 自軍の場のモンスター1体を生贄に捧げて発動。そのモンスターのレベル×200ダメージを相手ライフに与える。
 攻2600  守1800

「ちょ……おま……!!」
 男Aが何か言おうとしましたが、時既に遅し。
「『ぽぽたん』の効果で特殊召喚された『ダーク・ダイブ・ボンバー』の効果発動! モンスターを生贄に捧げることで、そのモンスターのレベルの200倍のダメージを与える! 私は、『ブリューナク』、『ゴヨウ・ガーディアン』、『ぽぽたん』、『ダーク・ダイブ・ボンバー』の全てを生贄に捧げるわ!!」
「ば……馬鹿なぁぁあああ!!」

 氷結界の龍 ブリューナク レベル:6
 ゴヨウ・ガーディアン レベル:6
 魔法少女ぽぽたん レベル:1
 ダーク・ダイブ・ボンバー レベル:7

 男A LP:4000→2800→1600→1400→0

 こうして、少女は勝利を収めました。
「ほら、さっさと服を全部脱げ」
 少女は口端を吊り上げながら、男Aに言いました。男Aは土下座をして頼みます。
「そ……それだけは勘弁してくれ〜〜〜!」
「じゃあ、有り金全部出して、とっとと失せろ。ほら、ジャンプしてみい!」
 服を脱ぐことを拒否する男Aに対し、少女は金を要求しました。男Aは有り金を全て少女に差し出し、そそくさと逃げ去りました。
「他の2人も連帯責任だ。金を置いてくか、全裸になるか、どちらかを選びな」
「すみませんでした〜!」
 リーダーが敗北したことで、男BとCも有り金を全て少女に差し出し、逃げ去っていきました。
 その一部始終を見ていたパラコンは思いました。
「どっちが悪役だっけ……?」
 一瞬考え込んだパラコンでしたが、まあ、気にしないことにしました。
 少女は、男たちが置いていった金を集め、合計金額を算出しました。
「これで67000円ゲット。鬼ヶ島に行けそうね、パラコンボーイ」
「え!?」
 突然、少女はパラコンの方を見て言いました。なんと、少女はパラコンのことを知っているようです。
「ひょっとして……君もマイコおばあさんから?」
 驚いたパラコンは、少女に尋ねます。少女の答えは、パラコンが思っていた通りでした。
「えぇ。事情は聞いたわ。私の名は鷹野麗子。私も鬼ヶ島に行くつもりよ」
「おぉ……!」
 麗子と名乗るこの少女もまた、マイコおばあさんから話を聞きつけ、参上した者でした。思わぬところで仲間を見つけたようです。
 今回はゴキボールの話を持ち出さないことにしていたパラコンは、素直に彼女を受け入れました。
「じゃあ、僕たちは仲間―――」
「あなたをしもべとして使ってあげるわ、パラコンボーイ」
「…………は?」
 麗子の口から出た、しもべという言葉。彼女にとってのパラコンは、仲間ではなく、しもべのようです。当然、パラコンは納得しません。
「ふ……ふざけるなよ! 何で僕が君のしもべなんだよ!? 理由を言え理由を!」
「ヘイ! タクシー!」
 パラコンの話には耳を貸さずに、麗子は右手を上げて、近くを通りかかったタクシーを止めました。パラコンは激怒します。
「聞けよチキショオ! 僕はお前のしもべになんかなる気はないからな!!」
 はっきりと言い切ったパラコン。それに対し、麗子はまるで答えず、さっさとタクシーに乗り込みました。
「乗れ! しもべ!」
 麗子は、パラコンの腕を思い切り掴み、車内に引っ張り込みます。腕が痛くなったパラコンは、思わず叫びます。
「痛てててててて!!! 離せ!! そんな強く引っ張るなクソッタレが!!」

 ―――ピキッ

 何か変な音がしましたが、気にしない方向で行きましょう。
「いや、気にしろよ! 骨にヒビ入ったんじゃね? これやばいよね? 運転手さん、病院―――」
「運転手さん、鬼ヶ島までお願いします」
 パラコンの言葉を遮るように、麗子は運転手に鬼ヶ島まで行くように頼みました。
「鬼ヶ島? 珍しい客がいるもんだな。じゃあ、急ぐぜ。しっかりシートベルトを着けときな!」
 運転席に乗っていた男は、ノリノリで車を走らせ始めました。
「無視すんなチキショオ!!」
 パラコンの叫びが車内に響きました。

 かくかくしかじか
 (魔法カード)
 話を短縮し、ストーリーを高速回転させる。

 かくかくしかじかで色んなことがあり、ついにタクシーは、鬼ヶ島の入り口まで来ました。
「着いたぜ、お客さん。代金は24800円だ」
 運転手が、代金を要求します。麗子は懐から25000円を出し、運転手に渡しました。
「ありがとうございます……おぇぇぇ……」
「おいおい、車酔いかい? まあ、無理もないわな」
 タクシーが猛スピードで走っていたせいか、麗子は思い切り車酔いを起こしていました。
「ダイジョウブカイ? タカノサン」
 パラコンが棒読みで気にかけました。彼は特に車酔いは起こしておらず、内心では「このクソ女がざまあみろ!」とか思っていました。
「うげぇぇぇえええ……」
 ついに耐えられなくなった麗子は、車のドアを開け、さっさと外に出てしまいました。パラコンも、200円のお釣りを受け取り、運転手に一言お礼を言ってから、外に出ました。
 パラコンが外に出ると、地面に横になった麗子が目に入りました。おそらく、立っているのも辛いのでしょう。
「鷹野さ〜ん」
 麗子に呼びかけるパラコン。しかし、完全に体調を崩してしまった彼女からは、返事がありません。ただの屍のようです。
「しょうがないな。鷹野さんはしばらく安静にしておこう」
 今、麗子が動くことは無理だと考えたパラコンは、彼女を放置して先を急ぐことにしました。





 それからパラコンは、鬼ヶ島を歩き回り、とりあえず、グールズのボスを探しました。ボスさえ倒せば、グールズの活動を抑えられるだろう、と考えたからです。
 ボスを探す最中、パラコンは、巨大な岩の下敷きになりそうになったり、湧き上がるマグマの中に滑り落ちそうになったり、頭上から墨汁が降ってきたり、いきなり顔にパイを投げつけられたり、ゴジラに踏み潰されそうになったり、ギャオスの大群に追いかけられたりと、様々な危機に直面しました。
 そんなこんなで、どうにか危機を乗り越えたパラコンは、たまたま鬼ヶ島で眠っていた巨大な亀怪獣ガメラと遭遇するのでした。
「なあなあ、ガメラ。僕は、悪事を働くグールズを退治しに来たんだ。グールズのボスのところまで連れて行ってくれないか?」
 パラコンはガメラに頼みました。するとガメラは、自らの背中にパラコンを乗せ、快くグールズのボスの場所へ向かって飛んでくれました。ガメラは子供の味方なのです。
 しかし、ガメラは高速回転しながら空を飛ぶので、途中でパラコンは、ガメラの背中から振り落とされてしまいました。
 振り落とされたパラコンは、地面に思い切り尻を打ちつけ、悶え苦しみました。
「チキショオ! 痔になるじゃねーか! 覚えてろよガメラ〜〜!!」
 尻を押さえて悶え苦しみながら、パラコンは遠くで回転飛行しているガメラに向かって叫びました。
 そして、そんなパラコンの耳に、男の声が聞こえてくるのでした。
「おやおや。まさか、見つかってしまうとは思いませんでしたよ。私の姿を見られた以上、生かしておくわけには行きませんねぇ」
 声の聞こえる方向に顔を向けるパラコン。そこには、仮面を付け、シルクハットをかぶり、スーツに身を包んだ、いかにも『マジシャン』といった出で立ちの男が立っていました。
「だ……誰ですか、あなたは?」
 尻を擦りながら、パラコンは仮面の男に尋ねました。すると、男は丁寧な物腰で答えます。
「これは申し遅れました。私、グールズの総帥を務めております、奇術師パンドラと申します。以後、お見知りおきを」
 パンドラと名乗ったその男は、懐から名刺を取り出し、パラコンに手渡しました。なんと、ガメラの背中から振り落とされたパラコンが着地した場所は、偶然にも、グールズの総帥が拠点としている場所だったのです。
 こうして、作者の趣味が丸出しになりつつ、絶望的なまでのご都合主義で、パラコンは今作の宿敵――グールズの総帥・パンドラ――と対面することとなりました。

 ご都合主義
 (魔法カード)
 都合のいい展開でストーリーを進行させる。

「さて、先ほど申し上げたように、私の姿を見られた以上、生きたまま帰すわけには行きません。覚悟していただきますよ!」
 じゃあ、名刺なんて渡してくるなよ、というツッコミをする暇も与えず、パンドラは指をカチリと鳴らしました。
「!? な……何だコレ!?」
 パンドラが指を鳴らすと同時に、パラコンの両足は、鉄のベルトでロックされてしまいました。これによりパラコンは、この場から逃げることができなくなったことになります。
 そして、鉄のベルトは、パラコンの両足だけではなく、パンドラの両足もロックしていました。
「そう、私めも……。これで互いにこの場から逃げることはできない! 今からあなたには、私――奇術師パンドラの、世紀の大脱出ショーをお目にかけましょう!!」
 パンドラが叫ぶと、両脇に大きな回転式のカッターが出現しました。カッターは猛スピードで回転し始め、それを見たパンドラは、不気味に笑いつつ言葉を続けます。
「ヒュホホホ! 今、我々の両脇に出現したのは、大仕掛けの奇術に使われる回転式のカッターです! そして、カッターが移動するレールには、数字が記されています! それはすなわち、プレイヤーのライフポイント! ここまで言えば、私が何を言いたいか、もうお分かりでしょう!」
 そこまで言うと、パンドラはどこからともなく決闘盤を取り出し、左腕に装着しました。それは、古代エジプトより伝わる神秘の奥義・M&Wによる挑戦を意味します。
「M&Wの挑戦!? あ……そうか! これからM&Wによるデュエルをして、プレイヤーのライフが0に近づくたびに、回転カッターもプレイヤーに近づいて行き……ライフが0になったら、体が切り裂かれてしまうのか!」
「そのとーり……。これは、負けた方が身を刻まれる悪夢のゲーム!! 両者の足を拘束しているベルトは、デュエルに勝つことによってのみ、外れる仕組みになっています。つまり、この場から生還したければ、デュエルに勝つしかないのです! ヒャーハハハハ!!」
 パンドラのテンションが上がってきました。対するパラコンは冷や汗をかきつつも、どこからともなく決闘盤を取り出し、左腕に装着しました。
 それは、彼がM&Wによる挑戦を受け入れたことを意味します。
「いいだろうパンドラ! お前のような奴は、この僕が成敗してやる!」
 というわけで、運命のバトルのスタートです!
 果たして、パラコンはグールズの総帥・奇術師パンドラを倒し、平和を取り戻すことができるのでしょうか!?

「「ディアハ!!」」

 パラコン LP:4000
 パンドラ LP:4000

「ならば、私の先攻ドロー! 『熟練の黒魔術師』を攻撃表示で召喚して、ターンエンドです!」
「くそっ!! 勝手に先攻取るな!!」
 いきなりパンドラに先攻を取られ、腹を立てるパラコンでしたが、時既に遅し。決闘者の世界において、「先攻・後攻はジャンケンで決める」なんて甘ったるい理屈は通用しないのです。
「ええい! 僕のターン、ドロー!」
 とりあえず、カードを引いたパラコンは、手札からモンスターを召喚しました。
「僕は『ゴブリン突撃部隊』を召喚! こいつで『熟練の黒魔術師』を攻撃だ!」
 パラコンが召喚した『ゴブリン突撃部隊』の攻撃力は2300。対するパンドラの『熟練の黒魔術師』の攻撃力は1900。攻撃力は、『ゴブリン突撃部隊』の方が上です。
 『ゴブリン突撃部隊』は、集団で『熟練の黒魔術師』に殴りかかりました。『熟練の黒魔術師』も必死に抵抗しますが、数の暴力が相手では敵うはずもなく、フィールドから姿を消しました。
「くっ……! 『熟練の黒魔術師』が破壊されましたか……!」
 『熟練の黒魔術師』が破壊されたことで、パンドラのライフが400ポイント減少します。これで、パラコンが先手を取ることになりました。

 パンドラ LP:4000→3600

「今の戦闘で、あんたのライフは400ポイント減少した! さて……あんたの言ってた世紀のショーって奴を見せてもらおうか!」
「く……! カッターの歯がプレイヤーに近づいてくる!」
 ああ、そうでした。ルールに従い、回転カッターが400ポイント分、パンドラに近づくことに―――
「……!? あれ!?」
 ―――と、ここでパラコンは、妙なことに気がつきました。回転カッターの動き方がおかしいのです。
「パンドラさん。400ポイント分しか動かないはずのカッターが、既に1000ポイント分くらい動いてる気がするんですが……」
「……………………。……え?」
 パンドラは目を見開き、カッターの方へ目を向けてみました。
 そして、未だに自分に向かって動き続けるカッターを見て、パンドラは思い切り驚愕しました。
「あああああ〜〜〜〜〜しまったぁぁぁあああああ!!! “10倍モード”をオフにするのを忘れてたぁぁぁああああ!!!!」
「え? “10倍モード”? 何それ?」
 パンドラが突如発した、“10倍モード”という言葉。それに疑問を抱くパラコン。
 その疑問に答えるかのように、パンドラは言葉を口にしました。
「説明しましょう! “10倍モード”とは、回転カッターの動く距離が、通常の10倍になるモードのことです! 例えば、400ダメージを受けた場合、本来ならば、カッターは400ポイント分しか動きません。が、しかし! “10倍モード”であれば、動く距離が10倍になるため、カッターは400×10=4000ポイント分動くことになるのです! お分かりいただけたでしょうか!?」
「なるほど……。動く距離が10倍になっているから、カッターは動きを止めないのか……」
 パンドラの説明を聞き、パラコンは納得しました。
 そして同時に、あるひとつの事実に辿り着きます。
「あれ? じゃあ、今の戦闘でパンドラさんのライフは400減ったから……その10倍で……4000ポイント分、カッターが動くんですよね? てことは、このままだと、パンドラさんの体がカッターで切り刻まれることになるのでは……?」
「……………………」
 一瞬の沈黙の後、4000ポイント分動いた回転カッターが、パンドラに襲い掛かりました。
「グギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
 パンドラの悲痛な叫び声が辺り一帯に響きました。そして、彼の体はカッターによって、上半身と下半身とで真っ二つになりました。
 すなわち、ゲーム終了です。

 パンドラ LP:3600→0

「うわあ! この人、自分で仕掛けたゲームで自滅してるし!」
 凄惨な場面を前にして、パラコンは思わず目を逸らしました。
「く……っ! まさか、この私が切り刻まれることになるとは……!」
 切り裂かれたパンドラの上半身が言いました。どうやら、切り裂かれはしたものの、死ぬことはなかったようです。
「……大量に出血してたように見えたんだけど、よく死ななかったよね」
 そんなパラコンのボヤキを明後日の方向へ流しつつ、パンドラはニヤリと笑いました。
「……なんてね! 奇術師をナメてもらっては困ります! 今から、私――奇術師パンドラによる、奇跡の超魔術をお目にかけましょう!」
 パンドラの上半身がそう叫ぶと同時に、切り裂かれたパンドラの上半身から、新たな下半身が生えてきました。
 さらに、切り裂かれたパンドラの下半身から、新たな上半身が生えてきました。
「…………は?」
 パラコンの前に立つ、下半身を再生させたパンドラの上半身と、上半身を再生させたパンドラの下半身。要するに、2人のパンドラが、パラコンの前に、確かに存在しているのです!
 こうして、新たに2人のパンドラが誕生することになりました。
「これこそ、奇術師パンドラによる、最大・最強の分身マジックです!」
 下半身を再生させた、パンドラの上半身(以下、パンドラA)が叫びました。
「観客の皆さん! 盛大な拍手を!!」
 上半身を再生させた、パンドラの下半身(以下、パンドラB)も叫びました。

 ――パチパチパチパチ!!

 そして、観客席からは、拍手が湧き起こりました。
「……って、そんなのアリかよぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!?」
 目の前で起きた、あまりに非ィ現実的な出来事に、パラコンはただ慌てふためくことしかできませんでした。
「切り裂かれて分身するとか……そんな都合のいい話があるわけないだろ!! ふざけんな!!」
 パラコンは叫びますが、2人のパンドラはスルーしました。
「さて、パラコン。分身マジックも成功したことですし、デュエル再開と行きましょうか?」
 パンドラAが言いました。それを聞き、パラコンは疑問符を浮かべます。
「え? デュエル再開って……。だって、もうデュエルは終了したじゃん。僕の勝利で」
 パラコンは、先ほどパンドラを切り裂いたカッターを指差しました。確かに、カッターは既に4000ポイント分動いており、デュエルが終結したかのように見えます。
 しかし。
「あなたの勝利? 何を言っているのですか? 我々はまだ、こうしてデュエルができる状態にあります。我々を再起不能にしない限り、あなたの勝利とは言えません。デュエルを続けてもらいますよ!」
 パンドラBが言いました。彼らいわく、彼らがデュエルできる状態である限り、パラコンの勝利とは言えないようです。
 もちろん、パラコンは納得しません。
「ふ……ふざけんな!! こんなやり方で乗り切るなんて反則だろ! どう考えても!」
「「デュエル再開!!」」
 パラコンの言葉を無視して、2人のパンドラは強制的にデュエルを再開しました。

【パラコン】
 LP:4000
 モンスター:ゴブリン突撃部隊(守0)※
 魔法・罠:なし
 手札:5枚

【パンドラA & パンドラB】
 LP:4000
 モンスター:なし
 魔法・罠:なし
 手札:5枚

 ※『ゴブリン突撃部隊』は、攻撃すると守備表示になる効果を持っています(ちなみに守備力は0です)。

「デュエルは、あなたの『ゴブリン突撃部隊』が、我々の『熟練の黒魔術師』を撃破した直後から再開します! 回転カッターも、スタート位置に戻させてもらいましょう!」
 パンドラAは、新たに生えてきた足を鉄のベルトで固定しつつ、ノリノリで言いました。同時に、先ほどパンドラを切り裂いた回転カッターが、スタート位置に戻りました。
 続いて、パンドラBも言いました。
「そして、我ら2人のパンドラは、タッグを組んで、あなたに挑むことにしましょう! ライフやフィールド、墓地や除外されたカードなどは共有することにします!」
 どうやら、パンドラAとパンドラBは、タッグを組んで、パラコンに挑むようです。また、一度切り裂かれて再生したためなのか、何故か2人のライフは4000まで回復しています。
「くそっ! 激しく自分勝手なルールだ! こんなデュエル、さっさと終わりにしてやる!」
 これ以上、こんなデュエルは続けたくない、と考えたパラコンは、パンドラBが口にした「我々を再起不能にしない限り、あなたの勝利とは言えません」という言葉を思い出しながら、1枚の魔法カードを発動しました。
「魔法カード『火あぶりの刑』を発動! このカードは、相手ライフに600ポイントのダメージを与える! あんたら2人はライフを共有しているから、2人とも600ダメージだ! 喰らえ!!」
「「何ですと!?」」
 パラコンの発動した直接攻撃系魔法により、パンドラチームのライフが600ポイント減少しました。

 パンドラA & パンドラB LP:4000→3400

「そして、ライフが減ったことで、カッターが動き出す! しかも、“10倍モード”がオンになっているから、カッターは6000ポイント分動く! そうだよね!?」
「な!? 一気にカッターを6000ポイント分動かすことで、我々の体を切り裂くつもりか!?」
 気付いた時には既に遅し。2人のパンドラは、迫ってきたカッターによって、体を上半身と下半身とで真っ二つにされました。
「「ドヒャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」」

 パンドラA & パンドラB LP:3400→0

 こうして、2人のパンドラは、ライフを失いました。が、しかし!
「パラコン! 奇術師をナメてもらっては困ります! 再び、私――奇術師パンドラによる、奇跡の超魔術をお目にかけましょう!」
 パンドラAの上半身がそう叫ぶと同時に、切り裂かれたパンドラAの上半身から、新たな下半身が生えてきました。
 さらに、切り裂かれたパンドラAの下半身から、新たな上半身が生えてきました。
「もちろん、私めも! 奇跡の瞬間を、とくとご覧あれ!!」
 パンドラBの上半身がそう叫ぶと同時に、切り裂かれたパンドラBの上半身から、新たな下半身が生えてきました。
 さらに、切り裂かれたパンドラBの下半身から、新たな上半身が生えてきました。
「…………は?」
 パラコンの目に映るのは、下半身を再生させたパンドラAの上半身と、上半身を再生させたパンドラAの下半身と、下半身を再生させたパンドラBの上半身と、上半身を再生させたパンドラBの下半身。要するに、4人のパンドラが、パラコンの前に立ち塞がったのです!
 こうして、新たに4人のパンドラが誕生することになりました。
「これこそ、奇術師パンドラによる!」
 下半身を再生させた、パンドラAの上半身(以下、パンドラA−A)が叫びました。
「最大・最強の分身マジックです!」
 上半身を再生させた、パンドラAの下半身(以下、パンドラA−B)が叫びました。
「観客の皆さん!」
 下半身を再生させた、パンドラBの上半身(以下、パンドラB−A)が叫びました。
「盛大な拍手を!!」
 上半身を再生させた、パンドラBの下半身(以下、パンドラB−B)が叫びました。

 ――パチパチパチパチ!!

 そして、観客席からは、再び拍手が湧き起こりました。
「……って、またかよぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!?」
 再び目の前で起きた、あまりに非ィ現実的な出来事に、パラコンはやはり慌てふためくことしかできませんでした。
「つーか、こんなやり方がまかり通るなんて、どう考えてもおかしいだろ!? ふざけんな!!」
 パラコンは叫びますが、4人のパンドラはスルーしました。
「「「「さて、パラコン。分身マジックも成功したことですし、デュエル再開と行きましょうか?」」」」
 こうして4人のパンドラは、強制的にデュエルを再開しました。

【パラコン】
 LP:4000
 モンスター:ゴブリン突撃部隊(守0)
 魔法・罠:なし
 手札:4枚

【パンドラA−A & パンドラA−B & パンドラB−A & パンドラB−B】
 LP:4000
 モンスター:なし
 魔法・罠:なし
 手札:5枚

 いつの間にか、パンドラチームのライフが4000に戻り、回転カッターの位置もスタート地点に戻って、デュエル再開です。
「さて、あなたのターンは終了ですか?」
 パンドラA−Bが尋ねてきます。パラコンは、頭を思い切りかきむしると、1枚のカードを場に伏せました。
「カードを1枚伏せ、ターンエンド!」
 パラコンのエンド宣言を聞くと、パンドラA−Bがターンを開始します。
「私のターン、ドロー!」
 そして、パンドラA−Bがカードを引いた瞬間、パラコンは伏せておいた罠カードを発動しました。
「リバーストラップ! 『停戦協定』! このカードは、場にいる効果モンスターの数だけ、相手に500ダメージを与える! 今、場には効果モンスターである『ゴブリン突撃部隊』が1体! よって、あんたらに500ダメージだ!! 喰らえええええ!!!」
「「「「何ですと!?」」」」
 パラコンの発動した直接攻撃系トラップにより、パンドラチームのライフが500ポイント減少しました。

 パンドラA−A & パンドラA−B & パンドラB−A & パンドラB−B LP:4000→3500

「そして、ライフが減ったことで、カッターが動き出す! “10倍モード”がオンになっているから、カッターは5000ポイント分動く! 覚悟しろ!!」
「な!? 一気にカッターを5000ポイント分動かすことで、我々の体を切り裂くつもりか!?」
 気付いた時には既に遅し。4人のパンドラは、迫ってきたカッターによって、体を上半身と下半身とで真っ二つにされました。
「「ホギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」」

 パンドラA−A & パンドラA−B & パンドラB−A & パンドラB−B LP:3500→0

 こうして、4人のパンドラは、ライフを失いました。が、しかし!
「パラコン! 奇術師をナメてもらっては困ります!」
 パンドラA−Aの上半身がそう叫ぶと同時に、切り裂かれたパンドラA−Aの上半身から、新たな下半身が生えてきました。
 さらに、切り裂かれたパンドラA−Aの下半身から、新たな上半身が生えてきました。
「再び、私――奇術師パンドラによる、奇跡の超魔術をお目にかけましょう!」
 パンドラA−Bの上半身がそう叫ぶと同時に、切り裂かれたパンドラA−Bの上半身から、新たな下半身が生えてきました。
 さらに、切り裂かれたパンドラA−Bの下半身から、新たな上半身が生えてきました。
「もちろん、私めも!」
 パンドラB−Aの上半身がそう叫ぶと同時に、切り裂かれたパンドラB−Aの上半身から、新たな下半身が生えてきました。
 さらに、切り裂かれたパンドラB−Aの下半身から、新たな上半身が生えてきました。
「奇跡の瞬間を、とくとご覧あれ!!」
 パンドラB−Bの上半身がそう叫ぶと同時に、切り裂かれたパンドラB−Bの上半身から、新たな下半身が生えてきました。
 さらに、切り裂かれたパンドラB−Bの下半身から、新たな上半身が生えてきました。
「……………………」
 パラコンの目に映るのは、下半身を再生させたパンドラA−Aの上半身と、上半身を再生させたパンドラA−Aの下半身と、下半身を再生させたパンドラA−Bの上半身と、上半身を再生させたパンドラA−Bの下半身と、下半身を再生させたパンドラB−Aの上半身と、上半身を再生させたパンドラB−Aの下半身と、下半身を再生させたパンドラB−Bの上半身と、上半身を再生させたパンドラB−Bの下半身。要するに、8人のパンドラが、パラコンの前に姿を現したのです!
 こうして、新たに8人のパンドラが誕生することになりました。

 かくかくしかじか
 (魔法カード)
 話を短縮し、ストーリーを高速回転させる。

 かくかくしかじかで、パラコンはあれから大量のパンドラ軍団と戦い続けていました。
 しかし、何度倒しても、パンドラは数を増やすばかりで、正直、キリがないといった状況でした。
 しかも、“10倍モード”が適用されているため、パラコンは400ポイント以上ライフを失うことを許されません。もし400ポイント以上ライフを失えば、その瞬間、パラコンの体は回転カッターによって切り裂かれてしまいます。
 そんな過酷な状況で戦い続けるうちに、パンドラは総勢256人の大軍団と化していました。

【パラコン】
 LP:3650
 モンスター:なし
 魔法・罠:なし
 手札:なし
 デッキ枚数:1枚
 墓地:何もなし

【パンドラA−A−A−A−A−A−A−A & パンドラA−A−A−A−A−A−A−B & パンドラA−A−A−A−A−A−B−A & パンドラA−A−A−A−A−A−B−B & …(中略)… & パンドラB−B−B−B−B−B−B−A & パンドラB−B−B−B−B−B−B−B】
 LP:4000
 モンスター:ブラック・マジシャン(攻2500),ブラック・マジシャン(攻2500),ブラック・マジシャン(攻2500)
 魔法・罠:魔法族の里,王宮のお触れ
 手札:3枚

「くっ! ここで50ポイントダメージを受ければ、“10倍ルール”が適用され、回転カッターが500ポイント分、僕に近づく……。もし、そうなったら……」
 パラコンは、すぐ目の前にある回転カッターを見つめながら呟きました。そんなパラコンを嘲るかのように、パンドラB−B−A−A−A−B−A−Bが言います。
「ヒャーハハハハ!! パラコン! あなたは既に、350ポイントのライフを失っている! “10倍ルール”が適用されたこの状況において、それはカッターが3500ポイント分動いたことを意味します! つまり、あと50ポイントダメージを受ければ、あなたはカッターによって、身を刻まれることになるのですよ!」
 そう。あと50ポイントダメージを受ければ、パラコンの体はカッターによって真っ二つにされてしまいます。彼には、パンドラのような分身魔術は使えないので、切り裂かれた時点でゲームオーバーです。
「な……何とかしないと! で……でも、ライフを0にしても勝てない相手に、どうやって立ち向かえと……?」
 今、パラコンが対峙する男――奇術師パンドラは、たとえライフを0にされても、自らの体を再生してライフを4000に戻し、挙句の果てには、自らの人数を倍にして襲い掛かってくるという、恐るべき相手です。
 こんな相手に勝てる方法などあるのか? パラコンの脳裏に疑問が過ぎります。
「さあ、あなたのターンですよ、パラコンボーイ! 最後のカードを引くのです!」
 パンドラA−B−A−B−B−A−A−Bが、カードドローを促してきます。
 ヤケクソになったパラコンは、荒っぽい手付きでカードを引きました。
「もう……どうにでもなれ! ドロー!!」
 そして、最後の最後でパラコンが引き当てたのは、彼がもっとも信頼するモンスターカードでした。

 ドローカード:ゴキボール

「……! 最後の最後で引き当てたカードがゴキボールだとは……。そうか……。お前も、僕の最期を見送りに来てくれたんだね……」
 パラコンがそんなセリフを呟くと、ゴキボールのカードが光り輝き始めました。

 ――あきらめちゃ駄目だよ!

「……なっ!?」
 どういうことでしょう? ゴキボールのカードが光り輝いた瞬間、パラコンの脳裏に声が響いてきました。
「ま……まさか……ゴキボールのカードが……僕に?」
 信じられないとは思いつつも、パラコンは、脳裏に響く声に耳を傾けました。

 ――あなたにはカードと……、もうひとつ、信じているものがあるはずだよ!

「……! そうか! そういうことか!」
 ゴキボールの言葉で全てを悟ったパラコンは、腰に下げていたスーパーのレジ袋を、パンドラ軍団に提示しました。そう。マイコおばあさんに持たされていた、あのレジ袋を。
 レジ袋の中では、相変わらず大量の黒い球(=ゴキボール)が、カサカサと元気に動いています。
「? 何の真似です、パラコンボーイ? ……というか、その袋の中身は……?」
 パラコンの行動に、眉をひそめると同時に、青ざめるパンドラ軍団。
 そして、次の瞬間―――!


「ゴキボールよ! パンドラ軍団に纏わり付け!!」


 パラコンは、レジ袋をパンドラ軍団に向かって投げつけました!
 すると、袋の中から大量のゴキボールが飛び出し、パンドラ軍団に纏わり付きました!

 ――カサカサ、カサカサ

「のわぁぁああああああ!! 大量のゴキブリがぁぁああ!! 来るな来るな来るな来るな来るなぁぁあああ!!!!」

 ――カサカサ、カサカサ

「うおぁぁああ!! スーツの中に入った!! ぬぉぉぉぉおおおおおおおおあああああ!!!」

 ――カサカサ、カサカサ

「おおおおおお!!! 口の中に……口の中にぃぃぃいいいおおおおおげぇぇえええ!」

 ――カサカサ、カサカサ

 突然の出来事に、パニックを起こすパンドラ軍団。
 しかし、彼らは皆、両足が鉄のベルトで固定されているため、身動きが取れません。よって、このゴキボール地獄から逃れることができないのです。

 ――カサカサ、カサカサ

 ――カサカサ、カサカサ

 ――カサカサ、カサカサ

「うごぉぉああああああ!!!!」

 パンドラA−A−B−B−B−B−A−A MP(メンタルポイント):4000→0
 パンドラB−B−B−A−B−A−A−A MP:4000→0
 パンドラB−B−A−A−A−A−A−B MP:4000→0

 1人、また1人と、ゴキボールに纏わり付かれたパンドラが、精神的ダメージを受けて再起不能となっていきました。
 思っていた以上に、ゴキボールが与える影響は大きかったようです。
「うわぁ……凄ぇ……」
 パンドラ軍団がゴキボール地獄で苦しむ中、パラコンは複雑な表情を浮かべながら、ただ呆然と立ち尽くしていました。
 そして、全てのパンドラが精神的ダメージによって再起不能に陥った瞬間、パラコンの耳に男の声が響いてきました。
「奇術師パンドラ――デュエル続行不可能により、勝者――パラコンボーイ!!」
 いつの間にかこの場所に来ていた審判・磯野によって、パラコンの勝利が宣言されました。
「え? 僕の勝ち!? あ、そうか! ライフを0にして勝てない相手も、精神的に追い詰めて、デュエル続行不可能に陥らせれば勝てるんだ……!」
 倫理的には問題のある勝ち方だけど、今回は相手が相手だったし、五分五分だよね、と自分を納得させたパラコンは、MPを0にされ、意識喪失状態となったパンドラ軍団の方へ目を向けました。
 パンドラ軍団は、いつの間にか、1人のパンドラに戻っていました。どうやら、奇術の効果が切れたようです。
 そして、大量のゴキボールは、既に姿を消していました。おそらく、彼らはこれから自由に生きていくことでしょう。
「ありがとう……ゴキボール! これからは自由に生きろよ!」
 勝利の鍵となってくれたゴキボールたちに対し、パラコンは感謝の言葉を口にしました。それと同時に、ゴキボールを食べるハメにならずに済んで、心の奥底でホッとするのでした。





「私の分身戦術を破ったのは、あなたが初めてですよ、パラコンボーイ。いや、しかし……、まさか、あのような形で敗北を喫するとは……」
 意識を取り戻したパンドラは、自分に勝ったパラコンに素直に敬意を表しました。
 パラコンは満足げな表情を浮かべつつ、すかさず、パンドラにグールズ解散を指示します。
「パンドラさん。あんたはゲームに負けた。だから、大人しくグールズを解散してもらうよ」
 それを聞いたパンドラは、小さく笑いながら言いました。
「ゲームに負けた以上、私に反論する権利はありません。いいでしょう。グールズは解散します……と言いたいところですが、私がグールズを解散させたとしても、すぐにグールズは復活すると思いますよ?」
「え!?」
 すぐにグールズは復活する――パンドラが口にした思わぬ事実に、パラコンは驚きを露にします。
「そ……それってどういうこと!? グールズの総帥であるあんたを倒せば、グールズは崩壊するんじゃないの!?」
 慌てた口調で訊ねるパラコン。対するパンドラは、落ち着いた口調で答えます。
「確かに、総帥である私が敗れた今、グールズは崩壊するでしょう。……しかし、“奴”がいる限り、グールズは何度でも復活する。“奴”にとっては、崩壊したグールズを復活させることなど、至極容易なこと。故に、“奴”を倒さぬ限り、グールズを壊滅したことにはならないのですよ」
 パンドラが“奴”と呼ぶ謎の人物。その人物を倒さなければ、本当の意味でグールズを壊滅したことにはならないようです。
「だ……誰なんだよ? その……“奴”っていうのは? つーか、あんたがラスボスじゃなかったのかよ!?」
 パラコンはパンドラに問いかけました。パンドラは、「誰も私がラスボスだなんて言ってませんし、地の文でも私がラスボスだなんて書かれてませんから、単にあなたが早とちりをしただけでは?」とさり気なく口にしたあとで、こう答えました。
「“奴”とは一体誰なのか……。その答えを知りたければ、実際に“奴”に会ってみるのが良いでしょう」
 そう言うとパンドラは、壁に設置されていたボタンを押しました。
 すると……―――

 ――ガタンッ

 ―――パラコンの足元に穴が開きました。
「…………!?」
 そして、パラコンは穴の中に落ちていくことになりました。
 どうやら、パラコンの足元に落とし穴が仕掛けられていたようです。
「うぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉおおおおおおおお!?!???」
 穴の中を落ちていくパラコン。30秒ほど落ちると、パラコンは地面に思い切り尻を打ちつけ、悶絶しました。
「ぐぬぅぅぅぅぅうううう!!!」
 朦朧とする意識の中で、パラコンは周囲を確認しました。
 周囲の特徴を一言で言えば、暗い暗い一本道。どうやら、トンネルのような場所にいるようでした。
「トンネル? 何なんだここは?」
 尻を擦りながら立ち上がるパラコン。ひとまず、自分が今いるトンネルらしき場所を観察しました。
 トンネルは一本道。一方を見てみると、さらにトンネルが続いているのか、真っ暗で何も見えません。しかし、もう一方は出口があるらしく、光が差し込んできています。
「とりあえず、トンネルから出てみよう」
 そう考えたパラコンは、光が差し込んでくる方へ向かって歩きました。





 光に向かって歩いたパラコンは、やがてトンネルから出ることに成功しました。
 そして、トンネルから出たパラコンは、驚くべき光景を目の当たりにすることになりました。
「な!? ここは、鬼ヶ島の入り口じゃないか!」
 トンネルを出たパラコンが見たのは、鬼ヶ島に来た際、最初に足を踏み入れた場所――つまりは、鬼ヶ島の入り口でした。
「……結局、戻ってきちゃったわけか」
 なんやかんやで、元の場所まで戻ってきたパラコン。しかし、元の場所に来てどうしろというのか? パラコンは疑問に思いました。
 すると、パラコンの横から声が聞こえてきました。
「ようやく来たわね、パラコン」
「!?」
 パラコンは、声の聞こえた方向に目を向けました。
 そしてそこには、パラコンにとって、見覚えのある少女がいたのでした。
「鷹野さん?」
 そう。彼が見たのは、鬼ヶ島に来る途中で知り合い、車酔いでダウンしたためにこの場所に放置しておいた少女――鷹野麗子の姿でした。
「残念ながら、あなたを鬼ヶ島から出すわけにはいかないわ。我らグールズに歯向かうような輩を、放っておくわけにはいかないの」
 そう言うと、麗子はどこからともなく決闘盤を取り出し、左腕に装着しました。それは、古代エジプトより伝わる神秘の奥義・M&Wによる挑戦を意味します。
 その様子を見たパラコンは、慌てた様子で訊ねます。
「ちょ……ちょっと待て! 鷹野さん今、“我らグールズ”って言ったよね!? え? もしかしてアレか? 鷹野さんもグールズの一員だったってことなのか!?」
 麗子はグールズの一員だった――そんな結論に達したパラコン。そして、麗子はパラコンの考えを肯定するのでした。
「そうよ。私はグールズの1人。そして、このストーリーのラスボスよ」
 自らラスボスであることを宣言した麗子。どうやら彼女は、ヒロインの皮を被った敵キャラだったようです。
「くっ! まさか君がラスボスだったなんて! 初めから僕を抹殺するつもりで、仲間のふりをしていたのか!? 全てを計算して動いていたって言うのか!?」
 声を荒らげるパラコン。そんなパラコンに対し、麗子は驚くべき事実を告げました。
「いいえ。あなたが車酔いで倒れた私を置いて先に進んだから、ムカついてグールズ側に寝返った。ただそれだけのことよ」
「嘘ぉぉ!?」
 なんと麗子は、車酔いでダウンした自分が放置されたことを根に持っていたのでした。あの時、パラコンが麗子を置き去りにせず、きちんとした対処をすれば、麗子がグールズに堕ちることはなかった、というわけです。
 ちなみに、今さっきグールズに寝返った分際で、崩壊したグールズを容易に復活させられるほどの実力があるのはおかしくない? なんてツッコミは受け付けません。
「死に掛けの私を置き去りにして、あなたはどこかへ行ってしまった。そして、朦朧とする意識の中、私は1人ぼっちだった。あなたに……そんな私の悲しみが分かる?」
 麗子はかなりご立腹らしく、険しい表情を浮かべながら、低い声で言葉を続けました。
「そ……それは、作者がめんどくさがって、君を置いてきぼりにして話を進めたのが悪いんだ! 僕は決して、君を見捨てたわけじゃない! 本当だ! 信じてくれ!」
 こりゃまずいと思ったパラコンは、作者に罪をなすりつけ、麗子の怒りを抑えようとしました。が、既に遅し。
「言い訳なんて聞きたくない! 私の怒りはあなたを倒すことでしか晴れないわ! さあ、決闘盤を構えなさい!」
 怒りを露にし、M&Wによるデュエルを挑んでくる麗子。
 こうなった以上、デュエルを受けるしかない。腹をくくったパラコンは、決闘盤を構えました。
「分かったよ、鷹野さん。このデュエルで君の誤解を解き、本当に悪いのは作者だってことを、必ず伝えてみせる!」
 パラコンは、何が何でも作者に罪を着せるつもりらしいです。
 とにもかくにも、ラストデュエルの開幕です。果たして、パラコンは麗子と和解することができるのでしょうか!?

「「ディアハ!!」」

 パラコン LP:4000
 麗子 LP:4000

 「『遊戯王カード 原作HP』に掲載されている創作ストーリーに登場するオリジナルカードの名前をひたすら挙げていくゲーム」の結果、麗子が先攻を取ることになりました。
「私の先攻、ドロー!」
 カードを引く麗子。そして、彼女はすぐさまそのカードを発動しました。
「魔法カード『ワン・フォー・ワン』を発動! 手札のモンスター1枚を墓地に送り、手札かデッキからレベル1のモンスター1体を特殊召喚する!」
「! レベル1のモンスター?」
 麗子は手札からモンスター1枚を墓地に送ると、『ワン・フォー・ワン』の効果に従い、デッキからレベル1のモンスターを取り出し、決闘盤に置きました。
「私が特殊召喚するのはこのカード――『魔法少女ぽぽたん』!」
「!? な……何だとぉぉぉおおおおお!!!??」
 なんと、麗子が呼び出してきたのは、まさかまさかの『魔法少女ぽぽたん』! そうです! 実はこのモンスター、レベル1のモンスターなのです!
「『ぽぽたん』のモンスター効果! 1ターンに一度、『氷結界の龍 ブリューナク』、『ゴヨウ・ガーディアン』、『ダーク・ダイブ・ボンバー』を1体ずつ特殊召喚する!!」
 早速、麗子は『ぽぽたん』の能力の発動を宣言しました。このままでは、パラコンは男A(カメハメ波を使った人)と同じ運命を辿ることになってしまいます。
「って、させるかぁぁぁ!! 手札から『朱光の宣告者(バーミリオン・デクレアラー)』の効果発動! このカードと天使族モンスター1体を手札から墓地に送り、モンスター効果の発動を無効にして破壊する!」
 パラコンの敗北かと思いきや、『朱光の宣告者』の効果により、『ぽぽたん』は効果の発動を無効にされ、破壊されました。これにより、パラコンは麗子の1ターンキルを阻止したことになります。
「あぶねぇ〜〜〜〜!! 『朱光の宣告者』がなかったら僕の負けだったよ……」
 運よく1キルを止めたことで、安堵の息をつくパラコン。そんな彼を嘲笑うかのように麗子が言いました。
「ふっ……。多少はやるようね。ま、デュエリストたるもの、この程度の1キルは防げて当然。このくらいでないと面白くないわ」
 余裕を崩さない麗子。対するパラコンは、「『この程度の1キルは防げて当然』って、お前の考え方は絶対何か間違ってるよ」とか何とか言いましたが、麗子は華麗に受け流しました。
「じゃあ私は、『UFOタートル』を守備表示で召喚! さらにリバース・カードを1枚セットして、ターンエンドよ」
 パラコンの言葉を受け流した麗子は、手札から2枚のカードを出し、ターンを終えました。
 麗子の場に現われたのは、甲羅の部分がUFOのようになった亀のモンスターが1体と、伏せカードが1枚。それを目に入れつつ、パラコンは苛立ちながらカードを引きました。
「くそっ……! 少しは人の話聞けよ! 僕のターン、ドロー!」
 カードを引いたことで、パラコンの手札は4枚。その4枚の手札を、パラコンは一瞥しました。

 〜パラコンの手札〜
 ゴキボール,ゴキボール,ゴキボール,ゴキブリ乱舞

「よし! 魔法カード『ゴキブリ乱舞』発動! 手札のゴキブリカードを全て捨て、相手プレイヤーに精神的ダメージを与える!」
「え……? 精神的ダメージ!?」
 パラコンが発動したのは、相手に精神的ダメージを与える魔法カード。これにより、麗子の気力を奪ってしまおうという作戦です。

 ゴキブリ乱舞
 (魔法カード)
 手札のゴキブリカードを全て捨てる。
 捨てた枚数×700ポイントの精神的ダメージを相手に与える。

「僕は手札のゴキブリカード3枚を全て捨てる! よって、君は2100ポイントの精神的ダメージを受けなければならない!」
「!」
 パラコンの手札にあった3枚のゴキボールが墓地に吸い込まれ、麗子の精神を蝕んでいきます。それにより、麗子の精神力が大幅に低下しました。

 麗子 MP:4000→1900

「く……! ライフが全然削られてないのに……デュエルを続ける気力が失せてきた……!?」
 精神的ダメージを受けたことで、麗子はやる気がなくなってきました。
 そんな彼女に追い討ちをかけるかのように、パラコンは言葉を口にします。
「『ゴキブリ乱舞』が墓地に置かれたことで、僕はカードを6枚ドローするよ!」
「!!?? ちょ!!? そんな効果書かれてない!!!」
 麗子の戯言を無視して、パラコンはカードを6枚ドローしました。まあ、原作ではよくあることですね。『ホーリー・エルフ』しかり『ブラック・マジシャン・ガール』しかり。
 こうして、麗子の精神力を奪いつつ、手札も補充したパラコンは、次の行動に移りました。
「悪いけど、容赦なく行かせてもらうよ! 僕は『デーモン・ソルジャー』を召喚して、『UFOタートル』を攻撃!」
 攻撃力1900の『デーモン・ソルジャー』を召喚し、麗子の場の『UFOタートル』に攻撃を仕掛けるパラコン。麗子の場の伏せカードが開かれることはなく、守備力1200の『UFOタートル』は、『デーモン・ソルジャー』の攻撃によって、あっさりと破壊されました。
 ところが、麗子は余裕の笑みを浮かべます。
「『UFOタートル』が戦闘で破壊されたことで、私はデッキから攻撃力1500以下の炎属性モンスターを1体特殊召喚できる。出でよ、『ファイヤー・トルーパー』!」
「くそっ! めんどくせえ!!」
 『UFOタートル』のモンスター効果によって、麗子の場に新たなモンスターが出現しました。これにより、麗子の場のモンスターの数に変化はありません。
 しかし、新たに出現したそのモンスターは、すぐに場から姿を消してしまいます。
「『ファイヤー・トルーパー』の効果発動! このカードが場に出た時、このカードを墓地に送ることで、相手ライフに1000ダメージを与える!」
「!? ちょ……何その効果!? 『デス・メテオ』1発分じゃねーか! 反則じゃね!?」
 慌てふためくパラコンにはお構いなしに、『ファイヤー・トルーパー』の効果が適用されました。

 パラコン LP:4000→3000

「ぐぉぉぉぉ!?」
 『ファイヤー・トルーパー』の効果によって、1000ポイントのダメージを受けたパラコン。彼は実に、初期ライフの1/4を失ったことになります。
(くそっ! 『デス・メテオ』が禁止カードなら、『ファイヤー・トルーパー』が禁止カードであってもおかしくないはずだ! 今度I2社に訴えてみよう)
 そんなことを思いつつ、パラコンは手札にあったトラップカードに手をかけました。
「僕はさらに、リバース・カードを1枚セット!」
(フッ! 僕がいま仕掛けたのは、相手の攻撃宣言がスイッチとなり、発動するトラップカード、『聖なるバリア−ミラーフォース−』! 鷹野さんのモンスターは攻撃を宣言した瞬間、全滅する運命にあるのさ!)
 自分の伏せたトラップに絶対の自信を持つパラコンは、きっちりと敗北フラグを立てた上で、自分のターンを終了する旨を告げました。
「僕はこれでターンエンドだ!」





 パラコン LP:3000→0





 パラコンがエンド宣言をした直後、彼のライフは0になりました。
「…………は?」
 一瞬、何が起きたのか、パラコンは分かりませんでした。
 とりあえず、首を上下左右に数回振って、深呼吸を30回行い、手に二次方程式の解の公式を書いて飲み込み、気持ちを落ち着かせたパラコンは、デュエルの状況をよく確認してみました。

【パラコン】
 LP:0
 モンスター:デーモン・ソルジャー(攻1900)
 魔法・罠:伏せカード1枚(聖なるバリア−ミラーフォース−)
 手札:4枚

【鷹野麗子】
 LP:4000
 モンスター:なし
 魔法・罠:グリード
 手札:2枚

「―――って、何で『グリード』ぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉおおおおお!!!???」
 麗子の場で開かれていたカード――『グリード』――を見て、パラコンは驚愕しました。
 永続トラップ『グリード』は、まさしく、今のパラコンにこそ突き刺さる、脅威のトラップカードだったのです。

 グリード
 (永続罠カード)
 カードの効果でドローを行ったプレイヤーは、そのターンのエンドフェイズ終了時にカードの効果でドローしたカードの枚数×500ポイントダメージを受ける。

「トラップカード『グリード』の効果により、カード効果でドローを行ったプレイヤーは、そのターンの終了時に、カード効果でドローしたカードの枚数×500ポイントダメージを受けるわ。よって、『ゴキブリ乱舞』の効果で6枚ドロー! ……なんていうチートドローを行ったあなたは、6×500=3000ポイントのダメージを受けたってことよ」
「ば……馬鹿な!? 『ゴキブリ乱舞』での6枚ドローが……こんな形で仇となるなんて……!! そんな……あり得ない……!!」
 信じられないといった様子のパラコン。何にしても、後攻1ターン目で早くも勝負がついてしまいました。
「パラコン。あなたの敗因は、本来テキストに書かれていないのにもかかわらず、己の欲望に負け、6枚のカードを引いたことにあるわ。人間、欲の皮を張りすぎれば、最後は自らの身を滅ぼすことになるのよ。『グリード』によって敗北したことがその証拠。分かる?」
 勝利を掴んだ麗子は、パラコンの敗因について語りだしました。
 それに対し、パラコンが「今のあんたのセリフは、『ドラゴンを呼ぶ笛』の効果で1枚ドローした海馬社長を若干否定してるよね?」と突っ込みましたが、麗子は無視しました。
「己の欲望に負けた者の末路……それは決して生易しいものではないわ。それをあなたは、今から知ることになる……」
 そこまで言うと、麗子はパラコンの背後を指差しました。
「後ろを見てみるといいわ、パラコン」
「え!?」
 麗子に言われ、後ろを振り向くパラコン。
 するとそこには……―――










 全長2メートルほどの寄生虫パラサイドがいました。
「ぬおおおおぉぉぉぉおおおおぉおおおおおおおおおお!!!???」
 突然、目の前に巨大なパラサイドが現れ、パラコンは絶叫するしかありませんでした。
 それに対して、麗子は楽しげな口調で言いました。
「パラコン! あなたはデュエルに負けた! よって、運命の罰ゲームとして、大人しくパラサイドに飲み込まれてもらうわ!!」
 麗子のその言葉に合わせるかのように、パラサイドは口を開きました。今にも自分を喰らわんとするパラサイドを前に、パラコンは全身が汗だくです。
「!!!??? ちょ!? 飲み込まれてもらうって……ど……どういうこと!? ま……まさか、僕、パラサイドに喰われちゃうぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

 ―――ぱくっ

 慌てふためくパラコンは、喋っている途中でパラサイドに飲み込まれました。
 パラコンを飲み込んだパラサイドは、満足したのか、ゲップを1つして、空へ飛び立って行きました。
 そして、飛んでいくパラサイドを見ながら、麗子は言うのでした。
「パラコン君……。君はパラサイドの腹の中で『死の体感』をすることになるだろう……。だが安心しな! それは1世紀かぎりの悪夢……幻影さ! これはボクの願いだが――君がパラサイドの一部となることで、森の昆虫たちへの『心』を取り戻してほしいのさ! そうすれば、ボクのじーさんのような本当の昆虫博士になれるはずだ!」





 かくして、パラコンのグールズ退治の旅は、パラコンがパラサイドに喰われたことにより、幕を閉じました。
 そしてその後、グールズは一時的に崩壊したものの、麗子の手によってすぐさま復活し、今もなお、村はグールズによって荒らされているということです。


 めでたし、めでたし!






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