ネフェルテムの記憶

製作者:光の戦士さん




第1話 「輝き」

〜3000年前 エジプト・王宮前〜

「おい!誰か奴を捕まえろ!」

小柄な少年1人が、王宮内を走り回る。

「まずい、あの方向に行くとファラオが!」

少年はまっすぐ進み、ファラオの元へ着く。
すると突然ファラオの腕をつかみ、その場を立ち去る。

「お前は…」
「……」

2人はある程度離れた場所で身を潜めていた。
追いかけてきた門番も、あきらめて王宮に戻ったようだ。

少年「よし、逃げたみたいだ!」
ファラオ「でもどうして…」
少年「ん?」
ファラオ「どうしてここに?ネフェルテム!

ネフェルテム「いや…お前、ファラオになったんだってな!」
ファラオ「ああ…」
ネフェルテム「おめでとうよ、アテム!

アテム「うん、ありがとう!」
ネフェルテム「1度祝いたくてさ、それだけだ。じゃあな!」
アテム「あっ、ネフェルテム!」
ネフェルテム「何だ?」
アテム「これを…受け取ってくれ!」
ネフェルテム「ん?」
アテム「それ持って、いつでも遊びにこいよ!」

〜1年後 エジプト・王宮前〜

ネフェルテム「おい!ここを通してくれ!」
門番「ダメだ!とっとと帰れ!」

門が開き、1人の男が出てきた。

門番「ファ…ファラオ!」

出てきたのはアテムではなく、セト

ネフェルテム「誰だお前!ここを通せ!」
門番「貴様、ファラオに向かってそんな口を叩くな!」
ネフェルテム「あいつはファラオじゃねぇ!ファラオに、アテムに会わせろ!」
セト「貴様…先代のファラオの名を気安く…」
ネフェルテム「先代…どういう事だ!」
セト「先代のファラオは…」

セトが話した言葉に、ネフェルテムは…

ネフェルテム「!?」
セト「くっ…」
ネフェルテム「そんな…そんなわけねぇ!!会わせろ、会わせてくれ!」
セト「ええい、帰れ!!」

ネフェルテムはその場を追い出される。そしてその光景を1人が見ていた…

???(ネフェルテム…)

ネフェルテムは1つの言葉を繰り返しながら、王宮をゆっくりと立ち去っていく。

ネフェルテム「アテム、お前は…」

「待って!」

ネフェルテム「ん?」

ネフェルテムを呼び止めたのは…

ネフェルテム「お前…マナじゃねぇか!」

マナ「……」

マナの首には、千年リングがぶら下がっていた。
マナは師匠であるマハードの魂と魔力を受け継ぎ、
新たな六神官の1人となっていたのだ…

ネフェルテム「お前…六神官に?」
マナ「ネフェルテム…」
ネフェルテム「なあ、教えてくれ!アテムは、本当に…!」

マナは少し切ない顔をして、首を下げた。

ネフェルテム「そうか…」
マナ「ネフェルテム…あなたに相談があるの…」
ネフェルテム「相談?」

マナ「この千年リングを…受け取って欲しいの。」

ネフェルテム「えっ!?」
マナ「ファラオの事については、私にもわからないの…
だから、あなたにその謎を解いてほしいの!
千年アイテムを持って、六神官としてなら!王宮内を自由に調べられる…」
ネフェルテム「でも、その千年リングは…」
マナ「私、まだ未熟者だから…私よりあなたのほうがいいと思って。」

「しかし、千年アイテムを受け取るには条件があります…」

ネフェルテム「お前は、確か…」
マナ「アイシス様!」

アイシスは、先代ファラオの頃の六神官の唯一の生き残りでもある。
首には千年アイテムの1つ、千年首飾り(タウク)が…

アイシス「千年アイテムは常人には扱えません。
あなたが千年アイテムを持つ者に相応しいかどうか、試すのです。」
マナ「でも、ネフェルテムには精霊や魔物(カー)が…」

それを聞くとアイシスは、千年タウクの光をネフェルテムに向けた。

ネフェルテム「アイシス?」
アイシス「終わりました。あなたの心に精霊を宿しました。」
ネフェルテム「オレが精霊を?」
アイシス「千年タウクの闇の力で、あなたの心に精霊が宿りました。
でもその精霊の力はおろか、姿さえも分かりません。
そしてその精霊を操れるかどうかは、あなたの心にかかっています!」
マナ「アイシス様…」
アイシス「最後に聞きます。千年リングを受け継ぐための闘いを、受けますか?」
ネフェルテム「…ああ!」
マナ「手加減はしないからね!」
ネフェルテム「当然だ、いくぜ!」

「決闘(ディアハ)!!」

マナ「いでよ、我が身に宿す精霊よ!!」

マナはいきなり精霊を召喚した。それは魔術師の娘。
その姿は現代における「ブラック・マジシャン・ガール」に類似している。

アイシス(ネフェルテムの精霊は、すぐに召喚できるとは限らない。
それに、魔物を召喚するのにも魂(バー)を消費する。
闇の力を持たない彼には…勝つ事はできない!)

ネフェルテム「オレもいくぜ。いでよ!」

ネフェルテムがそう叫ぶと、魔物が召喚された。

アイシス「ウソ…」

ネフェルテム「いでよ、『炎の剣士』!!」

燃えさかる剣を持つ戦士が、ネフェルテムの前方に現れた。
それは現代の「炎の剣士」に類似している。

アイシス「なぜ彼が魔物を…」

ネフェルテムの前髪が揺れると、そこから何かが見えた。

アイシス「あれは…」

それはウジャト眼のついた額当て…

ネフェルテム(この額当てはアイツに、アテムにもらった…
あれ以来、オレは魔物を召喚できるようになった…
まさかこんな形で役に立つとはな…礼を言うぜ、アテム!)
「『炎の剣士』の攻撃、“闘気炎斬剣”!!」

「炎の剣士」が、炎の剣でマナの精霊を攻撃するが…

マナ「返り討ちにして!」

精霊マナは杖に魔力(ヘカ)を集中させ、それを「炎の剣士」にぶつける。

マナ「“魔導波”!!」

「炎の剣士」はその攻撃をまともに喰らう。そしてネフェルテムも…

ネフェルテム「ぐわぁっ…!」
マナ(ネフェルテム…ごめん。でも許して!)「“魔連弾”!!」

魔力のかたまりを何発も受ける「炎の剣士」。辺り一面が砂煙に覆われていく…

ネフェルテム「かかったな!」
マナ「えっ?」

「炎の剣士」の剣の炎の色が、だんだんと紫色に変わっていく…

ネフェルテム「蒼炎の剣士!!」

ネフェルテム「今ので『炎の剣士』の特殊能力が発動したぜ!
『炎の剣士』は受けた魔力を吸収し、進化する!」

「蒼炎の剣士」が剣を一振りすると、辺りの砂煙が一気に吹き飛ばされる。

ネフェルテム「行け!『蒼炎の剣士』!」

炎のが突然燃えさかり、「蒼炎の剣士」がその剣で攻撃する。
相手の精霊も“魔連弾”で応戦するが、炎の剣がそれを全てはじき返す…

ネフェルテム「“装魔破散剣”!!」

マナと、マナの精霊がその場に倒れこむが、マナは立ち上がった。

マナ(今攻撃されたら、私の精霊が…!)

アイシス(勝負がつきましたね…)

誰もがマナの敗北を思ったが、ネフェルテムはとどめの攻撃をせず、
「蒼炎の剣士」は光となって、額当てに吸収される。

マナ「なんで…」

アイシス「ネフェルテム?」

ネフェルテム「千年リング…」
マナ「えっ?」
ネフェルテム「受け取れるよな!」

マナが微笑み、首の千年リングを外し、ネフェルテムの首にかける。

マナ「私の負けね…これはあなたのものよ!」
ネフェルテム「おう!」

アイシス(ネフェルテム…あなたなら、きっと!)

ネフェルテム達は再び王宮に戻っていった。
太陽の光を受けた千年リングと額当てが、輝きを増していた。



第2話 「生贄」

ネフェルテムが再び王宮に入ろうとし、門番がそれを止めようとする。

門番「貴様はさっきの男!いいかげんに帰るのだ!」
ネフェルテム「いいから通せよ。」
門番「貴様…」

アイシス「通してあげなさい。」

急いでいったネフェルテムの後に、アイシスとマナがやってきた。

門番「ア、アイシス様に、マナ様!?」

門番は2人を見るなりその場を退いた。
そしてネフェルテムは堂々と門をくぐっていく。

アイシス「ファラオ!」
セト「アイシス、マナ!その男は…」
マナ「私は六神官を辞めます。代わりにネフェルテムを神官に…」
セト「その男が六神官だと?」
アイシス「はい。ネフェルテムの実力は確かなものです。
マナに代わって神官とさせていただいても…」
セト「勝手にするがいい。」

ネフェルテム「こうして堂々と神殿を拝めるとはな…」
アイシス「ネフェルテム、早速行きましょう。」
ネフェルテム「行くって、どこへだ?」
マナ「決まってるじゃない、それは…」

〜闘技訓練場〜

アイシス「早速あなたの力を試させて頂きます。」
ネフェルテム「試す?さっきのマナとの闘いで十分だろ?」
アイシス「でもあなたは、自分の精霊を召喚できていません。
精霊を操れずにいきなり六神官というわけにはいかないのです。」
ネフェルテム「分かった。相手はどいつだ?」

闘技場の中央に、骸骨の魔物が複数現れた。

ネフェルテム「何だありゃ?薄気味悪い…」
アイシス「あの魔物を倒すのです。」
ネフェルテム「よし…まずはコイツだ!」

ネフェルテムの額当てが光り出し、魔物が召喚される。

ネフェルテム「行け、『ギアフリード』!『パンサー・ウォリアー』!」

鋼鉄の身体を持つ戦士と、鎧に見をまとった獣戦士が現れる。
それぞれ現代に存在する「ギア・フリード」「パンサー・ウォリアー」である。

ネフェルテム「蹴散らせ!」

2体の魔物は骸骨の大群を次々に切り倒していくが、
倒しても倒しても次々に再生していく。

ネフェルテム「これじゃキリがねぇ…よし!」

ネフェルテムは2体の魔物を回収し、新たな魔物を召喚した。

ネフェルテム「いでよ、『時の魔術師』!」

現代の「時の魔術師」に似た魔物が召喚された。
ただし丸い身体に砂時計が描かれており、現代とは少し異なっている。

ネフェルテム「『時の魔術師』の特殊能力、“時進の砂時計”!!」

「時の魔術師」の持つ杖の先端にある砂時計が光り出すと、
骸骨の大群は全て砂となって消滅していった。

ネフェルテム「この特殊能力は、全ての魔物が千年の時を超える!」

アイシス(あの程度の魔物なら倒せますか。ではもう少し…)

続いて召喚されたのは、魔術師の双子姉妹。
服装はだいぶ異なっているが、おそらく現代の「ヂェミナイ・エルフ」だろう。

ネフェルテム(今度は2人だけ…楽勝だぜ!)

姉の方の魔術師が、ネフェルテムの「ギア・フリード」を攻撃する。

ネフェルテム「はじき返せ!」

「ギア・フリード」が鋼鉄の手刀で魔法攻撃をはじき返そうとするが、
手刀は折れ、「ギア・フリード」も消滅していく。

ネフェルテム(くそっ!『ギア・フリード』は魔法攻撃に弱い…)
「オレは新たな魔物を召喚するぜ!『炎の剣士』!」

マナとの闘いで召喚した、「炎の剣士」が召喚される。

マナ「あの魔物は相手の魔法攻撃を自分の力にする…考えたわね。」

ネフェルテム「『炎の剣士』の攻撃、“闘気炎斬剣”!!」

「炎の剣士」は威力を抑えて、姉の方に攻撃を仕掛ける。

ネフェルテム(この程度の攻撃なら奴らの魔法攻撃のほうが上だが、
奴がそれをしたら、わざと『炎の剣士』で受け止めて、進化させる!)

ところが、“魔法で返される”というネフェルテムの予想は外れ、
妹の方の魔術師が「炎の剣士」の動きを止めてしまう。

ネフェルテム「『炎の剣士』の体が!?」

アイシス「あの魔物は片方が攻撃、片方が守備を担当している。
単体の魔物で挑んでも、守備の後に攻撃される…」

姉の方がさっきより威力を増した魔法攻撃で、
「炎の剣士」と「パンサー・ウォリアー」を両方破壊していく。

ネフェルテム「一気に破壊されちまった…」

マナ「でも、なんでネフェルテムは精霊を召喚できないの?」
アイシス「多分…あの精霊は普通に召喚することはできない。
何か特別な条件が揃わないと出せないのかも…」
マナ「人からもらった精霊じゃ、操れないんだ…」

ネフェルテム(オレの精霊…なんで出てこねぇんだよ!?)

悩むネフェルテム。そして魔術師の姉妹は気にせず攻撃していく。

ネフェルテム「『時の魔術師』の第2の能力を発動、“時封の砂時計”!」

砂時計の砂が半分落ちたあたりで流れが止まり、相手の魔物も動きが止まる。

ネフェルテム(相手の動きを止められる時間は、ほんのわずかだ!
今のうちに、精霊を召喚するしかない!でもどうすれば…)

すると、突然ネフェルテムに誰かが話し掛けている。
それは言葉ではなく、何かを通してネフェルテムに伝わった。

ネフェルテム「!!」

ネフェルテムの表情が変わった。

アイシス(まさか…精霊を!?)

ネフェルテム「行くぜ!『時の魔術師』の第3の能力を発動、“再生の砂時計”!」

下に流れていた砂時計の砂が上に戻ると同時に、
「炎の剣士」「ギア・フリード」「パンサー・ウォリアー」の3体が蘇った。

ネフェルテム「“再生の砂時計”は過去に消滅した魔物を一時的に復活させる!」

アイシス「でも、復活した魔物はやがて消滅してしまう。
少しの間守りを固めるだけじゃ勝てません…」

ネフェルテム「いや、オレの真の狙いはコレだ!」

「炎の剣士」「ギア・フリード」「パンサー・ウォリアー」が小さな光となり、
全てネフェルテムの額当てに集まっていく。そして…

ネフェルテム「3体の魔物を生け贄にし…精霊を召喚する!!」

アイシス「そうか…精霊はネフェルテムと破調が合わなければ召喚できない。
でも自らの魂(バー)を分け与えた魔物を生け贄にすれば…」

ネフェルテムが召喚した精霊は、稲妻を操りし伝説の騎士。
現代のカードゲームのとあるモンスターに類似。その名は…

ネフェルテム「『ギルフォード・ザ・ライトニング』!!」

マナ「あれが…」
アイシス「ネフェルテムの精霊!」

ネフェルテム「『ギルフォード・ザ・ライトニング』の攻撃!」

剣から出る稲妻で、2人の魔術師を同時に攻撃する。

ネフェルテム「“ライトニング・クラッシュ・ソード”!!」

妹の魔術師は必死に防御するが、姉の方が先に破壊されてしまい、
魔力が弱まった妹も、電撃によって消滅した。

ネフェルテム「よっしゃあ!今度の敵はどいつだ?」
アイシス「もうここにはいません。」
ネフェルテム「なら、合格ってわけだな!じゃあ早速…」
アイシス「いえ、もう1つあなたに頼みたい事があります。」
ネフェルテム「頼み?」
アイシス「あなたに戦ってほしい相手が、まだいるのです。」
ネフェルテム「戦うって、ここにいない奴の事か?」

マナはアイシスの言葉で何かを思い出した。

マナ「アイシス様、まさか戦う相手って…」
アイシス「はい…」
ネフェルテム「別にいいけど、ここじゃないならどこへ?」
アイシス「闘技訓練場の地下深くに、洞窟があります。
そこに行けば、“戦う相手”に会えます。行きましょう!」

3人は地下の洞窟を進み続け、広い部屋についた。

〜地下牢獄〜

そこには巨大な鉄檻があり、中には黒い影が1つ…

ネフェルテム「何だありゃ?」
アイシス「あれこそが、あなたの戦う相手です。マナ!」
マナ「はい!」

アイシス「ネフェルテム…“メンフィス”という集団を知っていますか?」
ネフェルテム「“メンフィス”?」
アイシス「過去に王宮に攻めてきた、盗賊団の名です。
彼らは戦闘用に、1体の竜を連れていたのです…」

マナは壁の中から色の違う部分を探し出すと、手で押し付ける。
すると次第に檻が開いていき、黒い影が姿を現す。

ネフェルテム「こいつは…」
アイシス「味方以外の人間を鋭く睨みつけるその紅き眼、
いかなる攻撃も受け付けない、漆黒の体を持つ…
その姿から、我々はその龍をこう呼ぶようになりました。その名は…」

「『真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)』!」

ネフェルテム「『真紅眼』・・・こいつと戦えばいいんだな!」
アイシス「はい。ですが今の『真紅眼』は戦おうとはしません。」
ネフェルテム「戦わない?どういう事なんだよ!?」
アイシス「さっきも言ったでしょう、“仲間を失った哀しみ”。」
ネフェルテム「えっ?」

アイシス「『真紅眼』の紅い眼は…死んだ仲間の血の色の象徴です!!」



第3話 「互角」

ネフェルテム「血の…色!?」
アイシス「はい…あの竜は昔、人間の仲間と共に戦っていた。
しかしその仲間を全て失い、いつしか戦う事を拒んでしまった…
だから自らの眼を絶えず充血させ、忘れないようにした、“戦わない”と…」
ネフェルテム「『真紅眼』…」

「真紅眼の黒竜」がその紅い眼で、ネフェルテム達を睨みつける。
だがやはり戦おうとはせず、じっと檻から出ようともせず…

ネフェルテム「分かった、戦うぜ。」
マナ「ネフェルテム…」
アイシス「『真紅眼』を戦いに目覚めさせる事はまずない…
ですがネフェルテム、あなたならわずかな可能性があります。」
ネフェルテム「ああ、行くぜ!!」

ネフェルテムは早速魔物を召喚する。最初に召喚したのは…

ネフェルテム「『パンサー・ウォリアー』!!」

「パンサー・ウォリアー」は召喚されると、即座に『真紅眼』を睨みつける。

ネフェルテム「『真紅眼』に攻撃だ!!」

ネフェルテムの攻撃命令で、「パンサー・ウォリアー」は攻撃をする。
「真紅眼の黒竜」も戦う気はないが身の危険を感じたのか、
炎を吐いて攻撃し、「パンサー・ウォリアー」は焼失してしまう。

ネフェルテム(『パンサー・ウォリアー』は炎攻撃に弱い…それなら!)
「次はこいつでいくぜ、『ギア・フリード』!!」

続いて召喚された「ギア・フリード」。鋼鉄の身体なら炎攻撃は効かない。
ネフェルテムはそう考えて召喚したのだろうが…

ネフェルテム「『ギア・フリード』の攻撃、“鋼鉄の手刀”!!」

「真紅眼」の顔を狙う「ギア・フリード」だが「真紅眼」は更に速い動きで、
腕を思いっきり振り下ろして、爪で「ギア・フリード」に攻撃するが…

ネフェルテム「それくらいじゃ『ギア・フリード』は倒せねぇぜ!」

すると「真紅眼」は、炎の弾丸を何発も連射し始める。
炎は壁に当たって、ネフェルテム達目掛けて落石してくる。

ネフェルテム「『ギア・フリード』!!」

大量の落石で、流石の「ギア・フリード」も消滅してしまう。
更にアイシスとマナの頭上にも落石が…

ネフェルテム「2人とも逃げろ!!」

アイシスとマナはその場を逃げ出し、落石を避けきったが、
ネフェルテムの頭上にたくさんの石が落ちてくる。

マナ「危ない!!」
ネフェルテム「くっ!」

その瞬間ネフェルテムの額当てが光り出し、「時の魔術師」が召喚される。

ネフェルテム「『時の魔術師』の特殊能力発動!」

「時の魔術師」は、特殊能力“時封の砂時計”で落ちてくる石の動きを止めた。

ネフェルテム「助かった…」

マナ「アイシス様…ネフェルテム、大丈夫なんですか?」
アイシス「『真紅眼』の力は強大です。精霊でも召喚しない限り…」

ネフェルテム「『時の魔術師』の特殊能力、“再生の砂時計”!!」

“再生の砂時計”は消滅した自軍の魔物を一時的に復活させる。
これにより「ギア・フリード」と「パンサー・ウォリアー」が蘇った。

マナ「これでネフェルテムが操っている魔物は3体!」
アイシス「生け贄を捧げる事で、精霊を召喚できる。」

城之内の精霊「ギルフォード・ザ・ライトニング」は、
魔物3体を生け贄にすることで召喚できる。だがネフェルテムは…

ネフェルテム「一斉攻撃だ!!」

アイシス「なぜ!?」
マナ「精霊を召喚しないの?」

「ギア・フリード」と「パンサー・ウォリアー」で、「真紅眼」の両腕を攻撃する。

ネフェルテム(まずはあのするどい爪を何とかしないとな…)

2体の魔物は両腕の爪を切り落とす事に成功したが、
「真紅眼」はその両腕に向かって炎を発射する。

ネフェルテム(おとりか!?)

2体の魔物はその攻撃で再び消滅してしまう。

アイシス「ただでさえ魂を消費しているのに、このままじゃ…」
マナ「ネフェルテム…」

我慢しきれなくなったマナは、突然ネフェルテムに向かって叫びだした。

マナ「ネフェルテム、精霊を出して!じゃなきゃ負けちゃうよ…」

マナは今にも泣きそうな顔をしているが、ネフェルテムは笑って…

ネフェルテム「マナ…大丈夫さ!」

マナ「ネフェルテム…」

ネフェルテム「それともう1つ、“勝つ”とか“負ける”とか今は関係ねぇ!」

アイシス「どういう事ですか?」

ネフェルテム「オレは「真紅眼」に、思い出してほしいんだ!」

マナ「……」

ネフェルテム「あいつは仲間をなくして哀しみに染まっちまったけど、
戦っていた頃は楽しく笑っていたはずなんだ!
だから戦って、その楽しさってやつを思い出させるんだ!」

ネフェルテムはそう言うと、額当てから新たな魔物を召喚した。

ネフェルテム「『ベビードラゴン』!!」

現れたのは子供のドラゴン。現代の「ベビードラゴン」と同じである。

ネフェルテム「更に『時の魔術師』の特殊能力、“時進の砂時計”!!」

アイシス「“時進の砂時計”は全ての“魔物”が千年を経過する。
そのため魔物でない『真紅眼』はこの影響を受けません。でも…」

「ベビードラゴン」は千年の時を超え、“あの魔物”に進化する…

ネフェルテム「『千年竜(サウザンド・ドラゴン)』!!」

もはや現代のカードゲームをそのまま再現したかのような光景だった。
千年の時を超え、「ベビードラゴン」は「千年竜」に進化した。

ネフェルテム「『千年竜』で、『真紅眼の黒竜』を攻撃!!」

「千年竜」の攻撃に対し、「真紅眼」も炎攻撃で対抗する。
辺りは突然爆発し、煙がなくなると2体の竜は…

アイシス「倒れたのは…」
マナ「2体とも!?」

2体の竜は互いにその場に倒れ、相打ちと言う結果に終わった。
カードゲームでも「真紅眼」と「千年竜」の攻撃力は互角。
モンスターの能力値は、過去の戦いを再現していたのかもしれない…

やがて、「千年竜」と「時の魔術師」は消滅するが、「真紅眼」は…

マナ「立ち上がった!」

「真紅眼」は大きな足音を立てて、ゆっくりネフェルテムに近づいてくる。

ネフェルテム「……」

そして「真紅眼」は、ネフェルテムの目の前に立ちはだかるが…

ネフェルテム「えっ?」

マナ「ウソ…」
アイシス「『真紅眼』が…」

なんと「真紅眼」は、攻撃はせずその場で倒れこんだ。
しかし力尽きたのではなく、相手の力を認めた印であろう。

ネフェルテム「『真紅眼』…」

そしてネフェルテムの顔を見た後、自分の背中に顔を向ける。
そしてネフェルテムは背中に乗り、「真紅眼」は大きな翼を広げ、
くずれた天井から外に出て、大空を飛び回った。

ネフェルテム「外は気持ちいいだろ、『真紅眼』!」

マナ「あの『真紅眼』に自分を認めさせるなんて…」
アイシス「本当…不思議な人ですよ。」

地下牢獄に閉じ込められてから、どれだけの月日が経っただろう。
だが「真紅眼」はそんな事を気にせず、ただ飛び回るばかり。
「真紅眼」が手に入れたものは、“地上の光”と“自由”の他にもう1つある。
それは自分が従う事のできる、新たなる“主人”…



第4話 「太陽」

〜太陽の村(日没)〜

とある酒場にて…

「や、やめろ!やめてくれ!!」
「いいから金払えばいいんだよ!」

1人の客が数人の男達に脅えていると…

ネフェルテム「なんだなんだ、お前ら!」
男「ん?」

そこに偶然ネフェルテムと、神官が現れた。
その神官の名前はヘジュ。手には千年ロッドを持っており…

男「なんだ、貴様ら!」
ネフェルテム「とっとと片付けちまおうぜ、ヘジュ!」
ヘジュ「いや、お前1人でやれ!」
ネフェルテム「ん?」
ヘジュ「お前の力がどれほどのものか、確かめさせてもらう。」
ネフェルテム「分かったぜ。来い!!」

ネフェルテムが叫んだ瞬間、突然空から「真紅眼」が現れた。

ネフェルテム「命が惜しけりゃ…」
男達「うわぁ!逃げろ〜!!」

尻尾をまいて逃げる男達。そしてヘジュに近寄るネフェルテム…

ネフェルテム「これでどうだ?」
ヘジュ「そ、それよりその竜…」
ネフェルテム「ああ、お前はまだ知らなかったのか。」

ヘジュ「レ…『真紅眼』!!」

ネフェルテム「!?」
ヘジュ「そうだ、『真紅眼』じゃないか!!」

ヘジュはなぜか「真紅眼」の事を知っていた。
「真紅眼」もヘジュに見覚えがあるようだった。

ネフェルテム「なんで、『真紅眼』の名を…」

ヘジュ「コイツは…『真紅眼』は、我々“メンフィス”の仲間なんだ!」
ネフェルテム「“メンフィス”?どっかで聞いたような・・・あっ!!」

●    ●    ●    ●    ●    ●    ●

アイシス「ネフェルテム…“メンフィス”という集団を知っていますか?」
ネフェルテム「“メンフィス”?」
アイシス「過去に王宮に攻めてきた、盗賊団の名です。
彼らは戦闘用に、1体の竜を連れていたのです…」

●    ●    ●    ●    ●    ●    ●

ネフェルテム「アンタが、『真紅眼』の仲間…
って、なんで神官のお前が王宮を襲った盗賊団なんだよ!?」
ヘジュ「あれは何年も前の話だ。オレ達は襲撃には失敗したが、
奴らはオレの力を認め、オレも改心して神官となったんだ。」

ヘジュは落ち着いていたが、次第に慌しくなり…

ヘジュ「ネフェルテム!オレの頼み、聞いてくれるか?」
ネフェルテム「頼み?」
ヘジュ「『真紅眼』を“メンフィス”の奴らに、仲間達に会わせてくれ!」
ネフェルテム「……」
ネジュ「アンタは聞いたことがあるか?“冥界の門”を…」

〜王宮(翌日)〜

マナ「冥界の門?」
ネフェルテム「ヘジュが言うには、冥界の門の門番がいるらしくて、
死んだ人間や神の魂を見張ったり、そこを守ったりしてるって…」
マナ「死んだ人達を見張るって事は…」

アイシス「その人達に会えるかもしれませんね。」
ネフェルテム「アイシス!」
アイシス「私も冥界の門については知っています。確か場所は…」
ネフェルテム「場所は…」

〜砂の洞窟〜

マナ「これが砂の洞窟…」
ヘジュ「ここにオレ達の仲間が…」
アイシス「ですがおそらく、門番は私達をここには入りさせないでしょう。
何か罠が仕掛けられているかもしれません。それでも行きますか?」
ネフェルテム「当たり前だぜ!なあ、『真紅眼』!」
真紅眼「……」

早速一同は砂の洞窟に入る。その頃洞窟の奥深く、冥界の門では…

「また悪しき人間が、ここに足を踏み入れた…」

その時、洞窟の奥が突然光り出し、一同は目をつぶってしまう。

ネフェルテム「なんだ、!?この光は…」
アイシス「クッ…」

目を開けると…

ネフェルテム「ここは…太陽の村!?」

なんと、洞窟にいたはずの一同が見たのは、外の光景だった…

マナ「戻ってきちゃったの!?」
アイシス「それにしては、人の気配がありません…」
ネフェルテム「おい、そんなハズは…」

ネフェルテムは近くの壁に寄りかかる。
するとネフェルテムの体が壁をすり抜け、壁のとなりに来てしまった。

ネフェルテム「あれ?どうなってんだ!?」

再び壁にぶつかろうとすると、すり抜けて元の場所に戻れた。

マナ「一体何なの!?」

すると、ネフェルテム達は“ひとりの声”を聞いた。

「ここは本物の村ではない…」

ネフェルテム「なんだって!?」
アイシス「これは幻想だと言うのですか?」

「そうだ…洞窟を出て、とっとと“本物”の村に戻るのだ!」

ネフェルテム「ダメだ!」

「ほう…」

ネフェルテム「オレと『真紅眼』はここに用があって来たんだ!
“帰れ”といわれて素直に引き下がるわけねぇだろ!」

「ならば、お前達の手で出口を探してみる事だな!」

アイシス「出口?」

「さっきお前が壁をすり抜けたように、この村にあるものは全て幻想。
だがひとつだけ、この世界に“本物”が存在する。それが出口だ!」

ネフェルテム「本物だと!?」

「お前達の中から誰かひとりでもそれを探せたら、
お前達を認め、冥界に入らせてやる。」

ネフェルテム「面白ぇ!手分けして探すぞ!!」

〜酒場周辺〜

アイシス「『スピリア』!!」

アイシスは精霊「スピリア」を召喚し、上空から探す。
そしてアイシスは地上を捜索する事に。

アイシス(この酒場も、店の中の物も全てすり抜けてしまう…)

〜王宮〜

マナ「どう、見つかった?」

マナは自分の精霊に問い掛けるが、相手も見つからなかったようだ。

マナ「こうなったら…“魔導波”よ!」

精霊は“魔導波”で攻撃するが、辺りの壁などはまったく壊れない。

マナ(全部幻想…一体どこに?)

〜自宅近辺〜

ヘジュ(何としても探し出して、『真紅眼』を奴らに会わせるんだ!)
「精霊召喚、『ヴァンパイア・ロード』!!」

ヘジュの精霊、「ヴァンパイア・ロード」が辺りを攻撃するが、
建物等はビクともしない…つまり幻想なのだ。

〜上空〜

ネフェルテムは「真紅眼」に乗って上空を探す事に。

ネフェルテム「どうだ、『真紅眼』!何か怪しいのは見つかったか?」

すると、目の前にアイシスの精霊「スピリア」が来た。
ネフェルテムは「スピリア」を通してアイシスに語りかける。

ネフェルテム「そっちは見つかったか!?」

アイシス「いいえ、何も…」

ネフェルテム「クソッ!一体どこに!?」

ネフェルテムの額に、汗が湧き出る。

ネフェルテム(暑い…)



「“暑い”?」



ネフェルテムは、ふと空を見上げた。

ネフェルテム(そうか、なんで今まで気付かなかったんだ…
暑いって事は…汗が出るって事は…)



「あの太陽が本物だ!!」



ネフェルテムと「真紅眼」は、猛スピードで太陽に向かって飛ぶ。

「行け、『真紅眼』!!」

再びネフェルテム達は強い光に包み込まれる。
そして目を開けると、元の真っ暗な洞窟の光景…

ネフェルテム「戻ってこれたのか?」
アイシス「幻想が…消えましたね。」

「ようこそ、冥界の門へ…」

ネフェルテム「そういやアンタの名前、まだ聞いてなかったな。」
マナ「なんて言うの?」
「オレは…冥界神、ソカリス!!」



第5話 「怒り」

ネフェルテム「ソカリスか…よろしくな!」
ソカリス「フン…行くぞ。」
ネフェルテム(何だアイツ…)

〜死者の国・阿鼻の間〜

一同は“ヘヌの船”に乗り、霧で覆われた“阿鼻の間”を渡る。
この“ヘヌの船”でないと、冥界を行き交う事ができないらしい。

ソカリス「冥界の門は、“生者の国”と“死者の国”をへだてる門。
だが罪深き生者は冥界の門を通って死者の国に入れず、
逆に死者の国に閉じ込めた死者は生者の国への出入りを封じられる。
つまりお前達の仲間に合えても、生者の国に連れ戻す事はできないぞ。」
ヘジュ「分かっている。元々連れ戻す気などない。」
ネフェルテム「オレ達は元の世界に戻れるんだろうな?」
ソカリス「まあな。」

霧が晴れると、船が浮上し次の間へと進む。

〜死者の国・焦熱の間〜

マナ「うわー…溶岩だらけだね。」
ソカリス「この辺りだと思うが…」
ヘジュ「おい、あいつらだ!」

ヘジュが指差した先にいた男達を見て、「真紅眼」も反応した。

ネフェルテム「あいつらが…」

ソカリスはその方向に船を進める。

男A「ヘジュ!『真紅眼』!!」
男B「お前ら、どうしてここへ…」
ヘジュ「偶然『真紅眼』と合ってな、せっかくだから会いに来たんだ!」

彼らは久々に嬉しそうな顔をしていた。「真紅眼」もおそらく喜んでいるだろう。

ネフェルテム(よかったな、『真紅眼』…)

男A「ところで、お前らも死んじまったのか?」
ヘジュ「まさか、オレも『真紅眼』もあの門番に頼んでここに来たんだ。
だからいずれ“あっちの世界”に戻らなくちゃならねぇ!」
男達「あっちの世界って…戻れるのか?」
ヘジュ「まあな!」

その言葉を聞くと、男達は目の色を変えた。

男C「だったら、オレ達も戻れるんだろ!」
男A「おいアンタ!オレ達を生き返らせてくれ!」

男はソカリスに必死で頼むが、当然ソカリスはそれを受け入れるわけがない。

ソカリス「ダメに決まってるだろ!」

すると男達の数人は、船に飛び乗ってしまう。

男B「さあ!早く戻ろうぜ!」
ソカリス「おい、やめろ!今すぐ降りるんだ!!」

ソカリスが男達に近づくと、男達は勢いよくソカリスを突き飛ばしてしまう。

ネフェルテム「ソカリス!!」

ネフェルテムも船から飛び降り、無我夢中でソカリスを追う。
ネフェルテムはソカリスの腕と崖から突き出した岩を同時に掴む。

ソカリス「クッ…」
ネフェルテム「大丈夫か!?」

だがネフェルテムは次第に力尽き、手が岩から少しづつ離れていく。

ソカリス(あの溶岩に落ちたら、二度と戻って来れねぇぞ!)

とうとう、ネフェルテムが手を離してしまった…

アイシス「ネフェルテム!!」

ネフェルテム「クソッ!」
ソカリス(こうなったら…)

ソカリスは手から闇のエネルギーを放出し、
クッションの役割となってネフェルテムと自分を支えた。

ネフェルテム「危ねぇ危ねぇ…」

その時、闇のエネルギーに向かって何者かが飛んできた。

ソカリス「しまった!!」

「もらったぜ…闇の力!」

ネフェルテム「誰だ!?」
ソカリス「奴の名は…バアル・ゼフォン!!」

バアル・ゼフォンは、過去に生者の国で反乱を起こした神。
ソカリスによって闇の力を失い、この死者の国に封印されていた。
だがソカリスの闇の力を奪い、力を取り戻してしまったのだ。

バアル「そうさ…いつの日かここを抜け出そうと企んでたが、
まさかこんな形でチャンスが来るとはな…」
ネフェルテム「ソカリス、どういう事なんだよ?」
ソカリス「さっきも言っただろう。奴らが生者の国に行かないようにするって!
オレが奴らを倒し、奴らの“闇の力”を封じていたんだが…」
バアル「お前から闇を生み出してくれて、それをオレが手に入れたんだよ!」

ネフェルテムは「真紅眼」の所に戻り、背中に乗り始める。

ネフェルテム「要は、あいつを倒せばいいんだろ!」
ソカリス「簡単に言うな!奴は思い通りの力を発揮できる。
門番であるオレがやられれば、逆にオレ達がここに閉じ込められちまう!」
ネフェルテム「安心しろ。行くぜ、『真紅眼』!!」

「真紅眼」は勢いよく翼を広げ、溶岩の海上を飛び始める。

ネフェルテム「“黒炎弾”!!」

「真紅眼」の炎攻撃は一直線にバアルに向かって行く。だが…

バアル「“溶岩壁”!!」

バアルは溶岩を操り、「真紅眼」の攻撃に対し炎の壁を作った。

ネフェルテム「何!?」
バアル「この力…久々にワクワクしてきたぜ!」

バアルはネフェルテムを指差すと、炎の壁がネフェルテムに向かっていく。

バアル「“焦熱地獄”!!」

炎の壁がネフェルテムと「真紅眼」を覆い隠す。するとその中から…

ネフェルテム「『炎の剣士』!『ギア・フリード』!!」

ネフェルテムは2体の魔物を召喚し、炎の壁を振り払う。

ネフェルテム「こいつらなら溶岩は効かねぇぜ!」
バアル「ならばこれでどうだ?」
ネフェルテム「何…」

溶岩の海に渦が出現し、だんだん巨大な嵐となっていく。

バアル「“熱風嵐”!!」
ソカリス「『レクンガ』!!」

ソカリスは魔物を召喚すると、それを嵐の中心に行かせる。
すると「レクンガ」が嵐を全て吸収し、消滅してしまう。

ネフェルテム「サンキュー、ソカリス!」
ソカリス「奴は気象を操る力を持ち、嵐をも生み出せるんだ!」
ネフェルテム「なるほど、意外と厄介な相手だな…」

バアル「もう一度“焦熱地獄”だ!」
ネフェルテム「それは効かねぇって言ったろ!『ギア・フリード』!!」
バアル「甘いな、『インフェルノ』!!」

炎の壁は分裂し、炎系の魔物となって召喚された。

バアル「その魔物を食い尽くせ!!」

「インフェルノ」の大群は「ギア・フリード」を囲み、
全員が離れると「ギア・フリード」はすでに消滅していた。

バアル「次は横にいる剣士だ!!」
ネフェルテム(『炎の剣士』か!)

マナ「“魔連弾”!!」

マナの精霊が、「インフェルノ」と「炎の剣士」の両方に魔導波をぶつける。

バアル「甘いな!それくらいじゃこの大群は倒せねぇし、味方にも被害が…」
ネフェルテム「甘いのはお前だぜ!『蒼炎の剣士』!!」

“魔連弾”の魔力により、『炎の剣士』は『蒼炎の剣士』に変化した。

マナ「まだよ、“魔導波”!!」
ネフェルテム「“装魔破散剣”!!」
ソカリス「『ギル・ガース』!!」

3人は魔物を召喚し、「インフェルノ」の大群を倒していく。

バアル「ならば数を増やすまで!“熱風弾”!!」

今度は溶岩から1体ずつ召喚し、ネフェルテム達に向けて発射していく。

アイシス「『スピリア』!“虹の防御壁”!!」

すると、アイシスの精霊『スピリア』がそれを全て遮断する。

アイシス「『砦を守る翼竜』召喚!」
ネフェルテム「『真紅眼』、“黒炎弾“だ!」
マナ「『魔導戦士 ブレイカー』!!」

ネフェルテム達は魔物の大群で一斉攻撃を仕掛ける。
そしてついに、「インフェルノ」の大群を全滅させた。

ネフェルテム「とどめだ!」

「真紅眼」が黒炎弾を放ち、とうとうバアルを倒した。

ネフェルテム「やったぜ!」

かと思いきや・・・

ソカリス「いや、まだだ!」

バアルの体を電流が流れ、少しづつ立ち上がっていく…

バアル「このオレを怒らせたな…」
ソカリス「まずい、逃げろ!」
ネフェルテム「逃げるだと?」
ソカリス「奴は“怒り”の感情によって、真の力を発揮するんだ!!」



第6話 「洗脳」

一同はヘヌの船に戻り、その場を脱出しようとする。
しかし一方で、ヘジュがネフェルテムの耳に何かをつぶやく。

ヘジュ「……」
ネフェルテム「…分かった!『真紅眼』!!」

ネフェルテムが呼ぶと、「真紅眼」はネフェルテムの目の前に行く。

マナ「ネフェルテム、どうしたの!?」
ネフェルテム「お前らは先に言っててくれ!」
アイシス「あなたはどうするつもりなのですか!?」
ネフェルテム「まだここに用があるんだ!」
ヘジュ「ネフェルテム、こいつを持っていけ!」

ヘジュは千年ロッドをネフェルテムに投げ渡す。

ヘジュ「そいつを持ってれば役立つかもしれねぇ!」
ネフェルテム「分かったぜ。行け、『真紅眼』!!」

「真紅眼」はネフェルテムを乗せて、バアルを避けて飛び始める。

ソカリス「あいつ、一体何を…クソッ!!」

ソカリスは魔法陣を作ると、マナ・アイシス・ヘジュの3人を囲む。

アイシス「どうするつもりなの!?」
ソカリス「お前達を生者の国にワープさせる!」
マナ「あなたは!?」
ソカリス「オレはネフェルテムの後を追う。とにかく急げ!!」

バアルの体は雷の塊と化している。今にも暴発しそうな…

ソカリス「奴が怒り出すと、手の付けようがねぇんだよ!」
マナ「…分かったわ!」

魔法陣によって、3人は生者の国にワープした。

〜砂の洞窟・入口前〜

マナ「戻ってこれたの?」
ヘジュ(ネフェルテム…頼んだぞ!)
アイシス「ヘジュ…あなたネフェルテムに何を吹き込んだのですか?」
ヘジュ「ああ、それは…」

〜死者の国・焦熱の間〜

バアル「貴様らだけは…オレが許さねぇ!!」

バアルは電光石火の如く、ネフェルテムを追尾する。

ネフェルテム「危ねぇ!逃げろ、『真紅眼』!!」

バアル「“雷弓”!!」

バアルは雷の弓矢を飛ばして攻撃する。
それはあまりに速く、さすがの「真紅眼」も避けきれず…

ネフェルテム(まずい…)
ソカリス「『ロードポイズン』!!」

ソカリスは魔物を盾にするが、その魔物は雷を受けて消滅してしまう。
当然召喚したソカリスもダメージを受け、魂は着実に削られていく。

ネフェルテム「ソカリス、大丈夫か!?」
ソカリス「ったく…船も使わないで、無茶しすぎだろ!」
ネフェルテム「ハハ…悪ぃ悪ぃ。」
ソカリス「で、一体ここに何の用があるんだ?」
ネフェルテム「ああ、それなら…」

〜砂の洞窟・入口前〜

マナ「もう1人、『真紅眼』に会わせたい人がいる!?」
ヘジュ「そうだ、さっきの奴らの中にはいなかった…
まあ、当然といえば当然かもしれないがな…」
アイシス「どういう事ですか?」
ヘジュ「その会わせたい奴っていうのは…」

〜死者の国・焦熱の間〜

ソカリス「まあ、そんな理由だろうとは思ったが…
だが危険を冒してまで、そいつに会わせる理由なんて…」
ネフェルテム「あるんだよ…特別な理由が。」
ソカリス「……」
ネフェルテム「その会わせたい奴って…」

「オレの知ってる奴かも知れないんだ。」

●    ●    ●    ●    ●    ●    ●

ヘジュ「ネフェルテム!」
ネフェルテム「どうしたんだ、早く船に…」
ヘジュ「もう1人…もう1人だけ、『真紅眼』に会わせたい奴がいるんだ…」
ネフェルテム「こんな時に!?」
ヘジュ「お前もアイシスから聞いたんだろ。
オレ達“メンフィス”と『真紅眼』が、王宮を襲撃した事があるって…」
ネフェルテム「ああ。」
ヘジュ「襲撃は失敗し、普通ならオレ達全員処分されるはずだが…」
ネフェルテム「助かったってのか?」
ヘジュ「そうだ。しかも、たった1人の少年に…」

「王子によってな…」

ネフェルテム「えっ?」
ヘジュ「オレを改心させ、仲間として認めてくれたのも王子だ。
その王子も立派な王となって、今はこの世にはいない…」
ネフェルテム「それって、まさか…」

●    ●    ●    ●    ●    ●    ●

ソカリス「そのファラオと顔見知りなのか?」
ネフェルテム「多分な…」

そうして話している内に、次の間へと着いた。

〜死者の国・衆合の間〜

次なる衆合の間は、見渡す限り針山で覆われた場所だった。

ソカリス「何とかバアルから逃げ切れたか…」

バアル「そいつはどうかな…」
ソカリス「何!?」
ネフェルテム「やっぱり来やがったな!」

バアル「オレはこの衆合の間で、真の力を発揮できるのさ!」

バアルは雷の弾丸を撃つが、ネフェルテム達はそれを避けきる。

ネフェルテム「残念だったな!」
バアル「フン!甘いな。」

雷は針山の針に命中し、針の1本1本が電気を帯びる。

ソカリス「そうか!」

電気を帯びた針は、その電気をネフェルテム達に向けて発射する。
それを避けても他の針に当たって電気を発射し、これが繰り返される。

バアル「1度電気を帯びた針はオレが操る事ができる。
つまり放っておけば四方八方から雷がとんでくるのさ!」
ネフェルテム「ならばこっちも弾数を増やすまでだぜ!」

ネフェルテムは、出せるだけの魔物を召喚する。

ネフェルテム「『炎の剣士』、『パンサー・ウォリアー』!!」

バアルの前に、2体の魔物が立ちはだかる。

バアル「面白い…」
ネフェルテム「“闘気炎斬剣”!!」

「炎の剣士」が真っ向からバアルを攻撃するが…

バアル「無駄だ、“雷盾”!!」

バアルは針からの電気を集め、盾とする。

バアル「その程度じゃオレは倒せないぞ!」
ソカリス「ネフェルテム!!」
ネフェルテム「!?」
ソカリス「こうなったら針そのものを壊すしかないぞ!」
ネフェルテム「分かったぜ、『真紅眼』!『ベビー・ドラゴン』!」

2体の竜の攻撃で、針山が焼き払われていくが…

針山は次々に破壊されていくが、雷の増殖するスピードには追いつけない。

バアル「そんなんじゃ無理だって言ったろ!“針雷”!!」

バアルは針から雷を発射するが、さっきよりも数が少ない…

バアル「どういう事だ?針の破壊されるスピードを上回っていたのに…」
ソカリス「やみくもに針を壊していたんじゃない。
雷の反射地点を予測して破壊していったんだよ!」

そう、雷が針に当たって跳ね返る方向は決まっている。
ソカリスは何手もの先に命中するであろう針山を予測し、
ネフェルテムの魔物がその場所を焼き払っていた。

バアル「ならば…」

バアルは破壊された針山に移動すると、自ら雷を受けて跳ね返した。

バアル「まだ雷の針は残っている。全弾発射!!」

全ての針から雷が撃たれ、ネフェルテムの魔物は全滅してしまう。
ところが、全滅させたと思っていた魔物が1体だけ残っていた。
いや、正確に言えば新たに召喚されたのだが…

ネフェルテム「『ギルフォード・ザ・ライトニング』!!」

そう、ネフェルテムは破壊される直前の魔物3体を生け贄に、
精霊である「ギルフォード・ザ・ライトニング」を呼び出したのだ。

ネフェルテム「今度こそケリをつけてやるぜ!」

生け贄となった魔物が受けるはずだった雷を剣に吸収させ、
「ギルフォード・ザ・ライトニング」は“それ”をバアルにぶつける。

ネフェルテム「“ライトニング・サンダー”!!」

今度こそバアルは消滅した。だがバアルは最後の力を振り絞り…

バアル「こうなったら貴様らの魂を洗脳して、操ってやる!!」

雷の塊となっていたバアルは真っ黒な影となり、ネフェルテムを襲う。

バアル「くらえ!!」
ソカリス「危ない!!」

ソカリスがネフェルテムをかばい、バアルを受け止める。

ネフェルテム「ソカリス!!」
ソカリス「ぐわぁぁ!!」

バアルはソカリスの体に入り込み、消滅した。
ソカリスはピクリともせず、その場に倒れこんでいる。

ネフェルテム「ソカリス、しっかりしろ!!」

するとソカリスが立ち上がった。しかし様子が変…

ソカリス「ネフェルテム…」
ネフェルテム「ウ、ウソ…だよな?」
ソカリス「フフフ…」

ソカリスは少し引きつった顔で笑っている。

ネフェルテム「ウソだよな、ソカリス…」

そしてソカリスが発した言葉にネフェルテムは驚愕する。

「貴様を倒す…」



第7話 「再会」

ネフェルテム「ソカリス…」
ソカリス「貴様を死者の国から出させはしない…」

バアルによってソカリスの闇の力が覚醒し、
ソカリスはネフェルテムを倒す事しか考えていない。

ソカリス「行くぞ!!」

ソカリスは以前と同じ要領で闇を生み出すと、
自分とネフェルテムを囲むように、辺り一面を闇で覆う。

ネフェルテム「これは…」
ソカリス「これで逃げられまい…いくぞ!!」

ソカリスは早速魔物を召喚し始める。

ソカリス「『ニュードリュア』!!」

「ニュードリュア」は召喚されると、即座にネフェルテムを攻撃する。

ネフェルテム(クソッ!)

ニュードリュアの攻撃をまともに受けるネフェルテム。と思いきや…

ソカリス「何!?」
ネフェルテム「『ベビードラゴン』!!」

ネフェルテムは「ベビードラゴン」を召喚し、盾にしていた。

ソカリス「やっと戦う気になったか…」
ネフェルテム(ここの門番のソカリスを倒したら、
バアルみたいな奴らが元の世界に来ちまう!)
「『ベビードラゴン』、“ドラゴンブレス”!!」
ソカリス「『ニュードリュア』、“闇の波動”!!」

「ベビードラゴン」と「ニュードリュア」の攻撃がぶつかり、互いに消滅する。

ネフェルテム「相打ちか…なら次は、『ギア・フリード』!!」

ネフェルテムは魔物を召喚するものの、攻撃はしようとしない…

ソカリス「ナメてんのか…行け、『ダークジェロイド』!!」

「ダークジェロイド」は“現代と同じ特殊能力”を持っていた。

ソカリス「『ギア・フリード』弱体化!攻撃だ!!」

弱体化し、攻撃力の弱まった「ギア・フリード」では
「ダークジェロイド」に太刀打ちする事はできず、
攻撃を受けるとすぐに消滅してしまった。
そしてそのダメージはネフェルテムにも…

ネフェルテム「クソ…」

ネフェルテムは苦しみながらも、未だに信じられないようだ。

ネフェルテム(ソカリス、元に戻ってくれよ…)

だがそんな願いもむなしく、ソカリスは攻撃を続ける。

ソカリス「『ダークジェロイド』!!」

「ダークジェロイド」のネフェルテムへの直接攻撃に対し、
「真紅眼」がネフェルテムの盾となった。

ソカリス「チッ!」
ネフェルテム「サンキュー、『真紅眼』…行くぜソカリス!」

ネフェルテムは場に新たな魔物を召喚し始める。

ネフェルテム「『炎の剣士』、攻撃だ!」
ソカリス「そうはいかねぇよ、“バーロスト・マジック”発動!」

バーロスト・マジックは、魔物ではなく己の魂を消費する事で、
自ら特殊能力を発動する事ができるというもの。

ソカリス「バーロスト・マジック、『闇の護風壁』!」

「ダークジェロイド」が闇のシールドに囲まれ、
「炎の剣士」の攻撃を受け付けなくなった。

ソカリス「これでオレは無敵になったというわけさ!
さらに追撃のバーロスト・マジック、『命の綱』!」

闇のフィールドに綱が出現し、「ニュードリュア」が現れる…

ソカリス(このバーロスト・マジックは魂を多く消費する…)
「一気にケリをつけるぞ、ネフェルテム!」

「ダークジェロイド」と「ニュードリュア」がネフェルテムを攻撃すると、
謎のマジックハンドが現れ、「ダークジェロイド」を捕獲してしまう。

ソカリス「何!?」
ネフェルテム「『マジックアームシールド』。オレのバーロスト・マジックだ!
『ダークジェロイド』は『ニュードリュア』の攻撃に対し盾となる!」

2体の攻撃がぶつかり、両者共に消滅する。
だがそれだけではなく、ネフェルテムの「炎の剣士」も消えてしまった…

ネフェルテム「な、なぜだ!?」
ソカリス「『ニュードリュア』の特殊能力、“道連れ”さ!
まだまだ行くぜ、『リバイバルスライム』召喚!!」

ソカリスはスライム状の魔物を召喚する。
ネフェルテムはもう1度「マジックアーム」を使おうとするが、
先読みしたソカリスが更にその上から発動させたのは…

ソカリス「バーロスト・マジック、『罠はずし』!」

「罠はずし」は特定のバーロスト・マジックの効果を打ち消す事ができる。
つまりネフェルテムの「マジックアーム」は消えてしまう…

ソカリス「これでお前はバーロスト・マジックを使えない!
『リバイバルスライム』で、ネフェルテムを攻撃だ!」
ネフェルテム「クソッ、『真紅眼』!!」

「真紅眼」が炎の弾丸を「スライム」に命中させるが、
水の特性を持つ「スライム」に炎攻撃は効かなかった。

ネフェルテム「ダメか…『真紅眼』、飛翔しろ!」

「真紅眼」はネフェルテムを乗せて飛翔する。

ソカリス「空中戦に持ち込むつもりか。だが無駄だぜ!」

ソカリスは更に魔物を1体召喚する。

ソカリス「『ボーガニアン』!!」

現われた「ボーガニアン」は弓矢を手にしている。

ソカリス「こいつの遠距離攻撃なら空中に逃げ込もうと無駄なのさ!」

「ボーガニアン」は「真紅眼」に向けて矢を発射した。
それに対し「真紅眼」も、「ボーガニアン」に炎をぶつける。

ソカリス「“地獄送りのボーガン”!!」
ネフェルテム「“黒炎弾”!!」

“黒炎弾”にぶつかった矢は燃え尽きてしまうが、
その横をもう1本の矢が通り過ぎていく。

ネフェルテム(2発!?)

2本目の矢が「真紅眼」に命中する。

ネフェルテム「『真紅眼』!!」

「真紅眼」は地面に墜落してしまう。

ネフェルテム「『真紅眼』…」

もはやネフェルテムには、魔物を召喚するほどの魂がなかった。
だがソカリスは容赦なくネフェルテムを攻撃する。

ソカリス「攻撃だ、『リバイバルスライム』!!」

するとソカリスに向かって1発の弾丸が飛んでくる。
それは「真紅眼」が撃ち放っていた“黒炎弾”…

ネフェルテム「オレも2発…いや、3発撃っていたのさ!」

2発の“黒炎弾”が、「ボーガニアン」とソカリスにそれぞれ直撃する。
だがソカリスへの攻撃は。「闇の護風壁」によって防がれてしまう。

ソカリス「この壁がある限り、オレは無敵だ!!」
ネフェルテム(ダメだ、もう戦えねぇ…)
ソカリス「これで最後だ!」

ネフェルテムが魔物の攻撃を受ける。だがその瞬間…

ネフェルテム「……」

ネフェルテムの額当てが光り出した。

ネフェルテム(これは…)

ネフェルテムの脳裏に、“ひとり”が現われた。

「ネフェルテム…」

ネフェルテム「お前…」

「会いに来てくれたのか。」

その声は瀕死状態のネフェルテムに語っている。

ネフェルテム「…ああ!」
ソカリス「なぜだ!なぜ『スライム』の攻撃が止まるんだ!?」

「力を貸すよ…」

ネフェルテム「ソカリス…勝つのはオレさ!」
ソカリス「何だと!?」
ネフェルテム「お前は1人、オレは…“2人”だ!」
ソカリス「……」
ネフェルテム(この額当てに、宿っているんだ!)

「行くぞ、ネフェルテム!」

ネフェルテム「ああ、力を貸してくれ…」

その人物は既に亡くなっており、今こうしてここにいた。
そして奇跡的にも、ネフェルテムと再会したのだった。

“彼”が…



第8話 「融合」

ネフェルテムの体の傷が、見る見るうちに治っていく。

ソカリス「バカな…奴の魂が回復していく!?」
ネフェルテム「こっからが真剣勝負だぜ!『パンサー・ウォリアー』!!」

颯爽とフィールドに現われる『パンサー・ウォリアー』。
ネフェルテムの魂も確実に回復していた。

ソカリス「フッフッフッ…待ちな、ネフェルテム!」
ネフェルテム「ん?」
ソカリス「貴様さっきから容赦なく攻撃しているが…
まさかオレを倒そうとしてるんじゃないだろうな?」
ネフェルテム「…当たり前だ!」
ソカリス「本当に攻撃できるのかよ、このオレを!ソカリスを!」

ネフェルテムは軽く笑う。そしてこう言い放った。

ネフェルテム「誰がソカリスを倒すって言った?」
ソカリス「何!?」
ネフェルテム「オレが倒すのはソカリスの心に巣食う、お前だ!」

バアル(何だと…)

ネフェルテム「行くぜ、『パンサー・ウォリアー』で攻撃!!」

バアル(クッ、『ボーガニアン』!)

「パンサー・ウォリアー」が「ボーガニアン」に突進していく。
「ボーガニアン」が「パンサー・ウォリアー」に向けて矢を数発放つ。

ネフェルテム「行け!!」

「パンサー・ウォリアー」が全ての矢をはじき返し、
「ボーガニアン」の体を真っ二つに切り裂く。

ネフェルテム「『パンサー・ウォリアー』!!」

「パンサー・ウォリアー」がそのままソカリスに攻撃する。
だが、無敵の「リバイバルスライム」が盾となってしまう。

ネフェルテム「またあのスライムか…」

バアル(どうした?もう降参か?)

ネフェルテム「クソッ…」

「ネフェルテム!!」

ネフェルテム「ん?」

ネフェルテムに向かってまた男の声が…

「あれは完全な無敵ではない。あくまでも魔物…物質なんだ!」

ネフェルテム(ああ。だが一体、どうすれば…)

ネフェルテムは必死で考え込む。そして…

ネフェルテム「こうなりゃ“あれ”を出すしかねぇ、精霊を!!」

ネフェルテムは、精霊「ギルフォード・ザ・ライトニング」を召喚すると言い出す。
だがその召喚には3体の魔物の生け贄が必要なのだが…

ネフェルテム(もう生け贄を用意してるヒマはねぇ!)
「オレは、精霊『ギルフォード・ザ・ライトニング』を召喚するぜ!!」

バアル(いや、確かそいつは生け贄が必要…)

天から閃光が降り注ぎ、やがて人型となっていく。

ネフェルテム「『ギルフォード・ザ・ライトニング』召喚!!」

「ギルフォード・ザ・ライトニング」は3体の生け贄を捧げる必要がある。
だがネフェルテムは“それ”を召喚して見せたのだ。

ネフェルテム(やっと出たか…)

助けをもらったからだろうか?だが、理由はもう1つあるだろう。
「ギルフォード・ザ・ライトニング」が、ネフェルテムを認めた証…

ネフェルテム「『ギルフォード・ザ・ライトニング』、攻撃だ!!」

「ギルフォード・ザ・ライトニング」は大剣を振りかざし、
「リバイバルスライム」に向かって電撃を放とうとしている。

ネフェルテム(さっきの『真紅眼』とのやり合いで、
『リバイバルスライム』が属性攻撃を受ける事は分かっている!)
「行け、“ライトニング・サンダー”!!」

“水”属性の「リバイバルスライム」が、“雷”の攻撃をまともに受ける。

バアル(残念だったな…)

ネフェルテム「何!?」

ネフェルテムの目の前には、金属光沢を放つ謎の魔物が存在していた…

バアル(こいつは『不死のメタル・スライム』!!
バーロスト・マジックで『リバイバルスライム』を“メタル化”させたんだよ!)

ネフェルテム「雷も、効かねぇのか…」

バアル(これで本当の最期だ!)

ネフェルテム「ああ、確かに最期さ…お前がな!」

バアル(何だと?何を言うかと思ったら…)

ネフェルテム「オレは『ギルフォード・ザ・ライトニング』の魔力を全て…」

ネフェルテムは倒れこんだ「真紅眼」の方を向く。

ネフェルテム(『真紅眼』…最後に力を貸してくれ!)

バアル(一体何を…)

ネフェルテム「『真紅眼』に捧げる!!」

「ギルフォード」の体が光となり、「真紅眼」が取り込んでいく。
そして「真紅眼」もまた、「ギルフォード」に魔力を捧げる。
やがて2体は1体となり、ネフェルテムの前に君臨した。

ネフェルテム「『究極竜戦士−ダーク・ライトニング・ソルジャー』!!」

バアル「何だと…だが、『不死のメタル・スライム』は攻略できまい!」

ネフェルテム「いいや違うぜ!『究極竜戦士』の、特殊能力発動!」

「ダーク・ライトニング・ソルジャー」は2つの大剣を手にしている。
片方は「伝説の騎士」も手にしていた“ライトニングクラッシュソード”。

ネフェルテム「『ダーク・ライトニング・ソルジャー』!不死の壁をブチ破れ!」

閃光を浴びる大剣が「メタル・スライム」を切り裂く。
だが「スライム」は再び結びつく事なく消滅してしまう。

バアル(バカな…)
ネフェルテム「不死の壁は破ったぜ!!そして…」

「究極竜戦士」の持つ、もうひとつの大剣。その名は…

ネフェルテム「“ダークフレアソード”!!」

闇を身にまとう大剣を振りかざす「ダーク・ライトニング・ソルジャー」。

バアル「クソッ、『闇の護風壁』!!」

またしてもソカリスの体を闇の壁が包み込む。
だが“ダークフレアソード”はその壁の力を吸収し…

ネフェルテム「闇の大剣なら、闇の壁も通じねぇぜ!
全ての闇の力を吸収して、更に威力を増す!!」

ネフェルテムが最後の攻撃命令を出す。

ネフェルテム(お前が来てくれて助かったぜ…)

その声は、なぜか2重に響いた。

「「攻撃!!」」



〜砂の洞窟・入口前〜

ネフェルテム「ソカリス!ソカリス!!」

2人は元の世界に戻っていた。だがソカリスは瀕死の状態…

ソカリス「ネフェルテム…」
ネフェルテム「おい、しっかりしろよ!お前はそんな簡単に…」

ソカリス「闇の星は、太陽の輝く時間には光を失い、決して出会うことはない…」

ネフェルテム「えっ?」
ソカリス「お前は光、オレは闇。光と闇は決してめぐり合ってはならない。
そこには争いが起こり、どちらかが傷付き、最後には悲しむ者がいる…」
ネフェルテム「ソカリス…」
ソカリス「だからオレとお前は決してめぐり合ってはならない…」

ネフェルテムは、ふと“ある物”を見つめる。それはヘジュが託した千年ロッド…

ネフェルテム「そうだ!」

ネフェルテムは千年リングを首から外すと、それをソカリスの首にかける。
そして千年リングがソカリスの記憶の一部をあるものに封印した。そう…



千年ロッドに…



ソカリス「お前、一体…」

そしてネフェルテムも、千年ロッドに自らの記憶を封印する。

ネフェルテム「お前は、この中で生き続けるんだ!
そしてオレが、お前をずっと守っててやる!」
ソカリス「……」
ネフェルテム「誰かがお前を倒そうとしたら、オレがそいつを止めてやる。
何千年経とうが、オレがお前の全てを思い出させてやる!だから…」

ソカリスは、最後に笑った。そして砂になった…

その後、2人が描かれた石盤を作ったのは、
そこに描かれたネフェルテム本人だった…



そしてこの戦いは3千年後、再び蘇る…


ネフェルテムの記憶 完



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