満足決闘伝 鬼柳

製作者:al fineさん








はじめに

 この物語は、PSPソフト、遊戯王5D's タッグフォース4の鬼柳京介(チームサティスファクション)シナリオを作者が勝手にアレンジしたものです。変更点は有りすぎて原形を留めていませんが・・・。

・基本はゲーム基準ですが、アニメの設定が入るところもあります。漫画版?そんなものありましたっけ?
・全話構成を予定しています。
・アニメ「遊戯王5D's」、または上記のゲームのどちらも知らない方は、分かりづらい箇所が多々あると思いますが、ご承知ください。
・セリフ中心です。そのため情景描写が不足しています。読者の想像力と知識に任せます。これは手抜きでもありますが、劇中時間と実時間を近似させるための処置でもあります。
・アニメ・ゲームに登場したキャラに関しては、姿の説明を省略している場合があります。ゲームのみ登場したキャラは、姿が変更されている場合は説明文が入ります。
・作者オリカは一切登場しませんが、ゲームオリカは登場すると思われます。アニメオリカは、今のところ登場させる予定はありません。




【主な登場人物紹介】

・鬼柳京介(キリュウ キョウスケ)
 情報収集兼ファッション担当リーダー。使用デッキ【シンクロデーモン】。
 この物語の主人公。この物語の中核である『チームサティスファクション』のリーダー。
「満足」が口癖で、サテライトという閉塞された環境の中でも可能な限りの満足を追求している。
遊星、ジャック、クロウといった個性的なメンバーをまとめるカリスマ性がある。
 情に厚く、何より仲間を大切にする性格。己の命を省みずに仲間である遊星を助けたこともある。 とある事情により、「裏切り」を何よりも嫌っている。
 デュエルの腕は超一級。仲間の援護もありチームによるサテライト制覇を成し遂げるが、その後サテライトを完全に「支配」する事を目的にその力を悪用する。

・見轟紅(ミゴウ コウ)
 鬼柳の誘いにより『チームサティスファクション』に入ることになる。使用デッキは【魔轟神】。
 割と誰とでも仲良くなれる。基本的に誰に対しても敬語を使っている。一人称は「僕」。ファッションセンスは鬼柳並。
 ある事情により、いつも赤色の帽子をかぶっている。その事情は誰にも言えないが、遊星にはすぐばれてしまう。『雅』、『鉄』という両親と、『葵』という兄妹を持つ。
 紅が見た夢は確実に過去に起こっている。それを『過去夢』と呼んでいる。ちなみに、その能力をしているのは本人と葵のみ。

・不動遊星(フドウ ユウセイ)
 作戦考案兼メカニック担当副リーダー。使用デッキは【シンクロウォリアー】。
 遊戯王5D's本編の主人公。頭脳明晰で手先が器用であり、機械やコンピュータに関する高い技術を持つ。 喧嘩の腕も相当なものであり、身体能力も高い。
 普段は冷静沈着で寡黙な青年だが、その胸の奥には熱い心を秘めている。また、この世に存在する全ての人間やカードには価値があり、不要なものなど一切無いという信念を抱いている。

・ジャック・アトラス
 アジト見張り兼リアルデュエル担当。使用デッキは【ハイビートシンクロ】。
 性格はプライドが高く傲慢で、自信家かつ野心家。
戦略と話術で相手を翻弄し勝利を手にする。その人気とカリスマ性は高いものの、敗者に対しては冷淡で他者に対する思いやりは皆無に等しい。

・クロウ・ホーガン
 子守兼切り込み隊長担当。使用デッキは【BF】。
 額のMの文字のマーカーがあるのも大きな特徴。また、背は他のチームメンバーと比べると低い。
チーム・サティスファクション内では特攻隊長的な役割を果たしていた。 頭の回転が速く、売られた喧嘩は律儀に必ず買う性格。子供が好きで、サテライトを子供が平和に暮らせる場所にすることを目的に戦っている。




満足0 プロローグ前編―満足を求めて―

―――――――ドヒュゥゥゥゥゥゥゥッ!

クロウ「う・・・ぐ・・・。」


クロウLP800→0


 モンスターの魔法攻撃によって朱色の髪の少年クロウ・ホーガンはひざを崩すように倒れる。

?「ヘッヘッへ、鉄砲玉のクロウの異名も、たいしたこたぁねぇなぁ。えぇ?」

 赤を中心とした魔法使いのような衣装に身を包んだ巨体の男・鯨田(くじらだ・作者が勝手に命名)は、敗者であるクロウを見下しながらせせら笑う。その取り巻きのような2人も同じように笑う。

鯨田「おらぁ!」

 さらに鯨田は、クロウの左腕に装着されているデュエルディスクを勢いよく蹴る。

ク「ぐ・・・てめぇ・・・。」

 クロウは片目だけで、自分に蹴りを加えた鯨田を睨みつける。そんなクロウを見下しながら、取り巻きの一人・魔時田(まじだ)が口を開く。

魔時田「我らデュエルギャング『マジシャンズフォー』の島と知りながら、一人で乗り込んできたことは褒めてやるが・・・」

 魔時田の言葉を、もう一人の取り巻きの男・シャンが続ける。

シャン「この様じゃなぁ・・・不発の鉄砲玉さんよっ!」

 シャンは鯨田と同じように、クロウのデュエルディスクを蹴り飛ばす。その蹴りによって、クロウのデュエルディスクは数メートル左方へ飛ばされる。その蹴りに伴い手首を痛めたのか、クロウは右手で左手首を押さえる。
 鯨田はが後ろを振り返る。そこには『マジシャンズフォー』リーダー・黒田が立っていた。
黒田は軽く笑うと、あごだけで鯨田に合図を出す。その合図ににやけながら鯨田はうなずく。
 それを見てクロウは大声で叫ぶ。

ク「てめぇら言っとくがなぁ、鉄砲玉のクロウ様はもうはじけてるんだよ!!」

 クロウは、にやけながら続ける。

ク「へへっ、俺様のマシンの音を聞きつけて、もう仲間が着くころだ!」

 そんなクロウの訴えを聞いて、4人は一斉に大きく笑いだす。そして鯨田は、クロウの胸倉をつかんで持ち上げ、コンクリートの壁に叩きつける。

鯨「へへっ、悪いがなぁ、このアジトは最近俺たちが使うようになって、この場所を知るやつなんて誰もいねぇんだよ!」

ク「そいつはどうかな?」

鯨「へ?」

 右方からピコン・・・ピコン・・・と妙なマシン音が聞こえることに気づいた『マジシャンズフォー』の4人は、一斉に右側を見る。そこには先ほど蹴り飛ばされたクロウのデュエルディスクだけが置かれている。
 そう、このデュエルディスクこそがこの妙な音の正体だったのだ。それは妙な音と共に赤いランプが点滅している。このデュエルディスクの正体・・・それは発信機。

鯨「なっ、貴様あのデュエルディスク、発信機になっていたのか?!」

 驚きふためいている鯨田にクロウは軽いながら答える。

ク「へっへっへ、おもしれぇだろ。」

魔「お、おもしろいかよ、馬鹿野郎!」

 そんなクロウを見て魔時田は怒鳴りかける

シャ「く、来るのかよ、来るのかよぉ?!」

 シャンはおびえた様子で仲間に異を求める。


鯨「チーム・・・サティスファクションが・・・。」


ドガアァァァァァァァァァァァン!!


 それを合図にするかのように、5人の左側の壁が爆発した。その意味の分からない爆発に、鯨田・魔時田・シャンの3人はただ逃げるしかなかった。ただリーダーの黒田のみがその爆風をにらみつけている。
 少しすると、その爆風の中から3人分の影のみが見えた。しかし、外の光と爆風によってシルエットしか見ることができない。やがて、その3つの影は各方向へとすばやく飛び出した。

魔「く・・・ち、地の利はこっちにあるんだ!」

 魔時田は建物のブレイカーを落とす。それにより、建物の中は闇に包まれた。

 その闇の中で魔時田はひたすら逃げ続ける。
しかし、謎の影の華麗な動きによってすぐに回り込まれてしまった。


?「受けてもらおうか、デュエルを!」


 謎の男は左腕に着けられたデュエルディスクを起動させる。しかし、辺りが暗すぎるため、その特徴的な髪の輪郭しか見ることができない。魔時田は、再び逃げるために一歩ずつ後ろに退く。
 しかし、気づかぬ間に魔時田のデュエルディスクには、手錠のようなもの(この小説内では満足手錠)がかけられていた。その満足手錠は、自分の目の前にいる謎の男に繋がっている。

?「負けたほうのデュエルディスクが破壊される。勝負がつくまで降りることはできない。」

魔「貴様ァ・・・。」

やがて、月の光が窓から差し込まれ、眼前の男の顔が明かされた。

不動遊星「・・・・・・。」



?「受け取れぇ、クロウ!」

 チームサティスファクションの一人・ジャックアトラスが、その仲間・クロウホーガンに新たなデュエルディスクを投げ渡す。

ク「サンキュー、ジャック!」

 新たなデュエルディスクを受け取ったクロウを見て、鯨田はその場から逃げ去ろうとする。しかしそんな鯨田をクロウは逃がさない。


ガシャッ!


 そのすばらしいコントロールによって、鯨田のデュエルディスクに満足手錠がかけられる。いきなりのことにただおびえることしかできない。

ク「さぁ、デュエルの時間だ。」

 クロウは、先程のデュエルで使用した遊び用とは違う真のデッキがセットされたデュエルディスクを起動する。


 そんな中シャンはひたすら逃げ続ける。しかし、彼はまだ気づいていない。その方向に、強敵が待ちぶせていることに。

ジャック「ダチがずいぶんと世話になったようだな・・・。行儀の悪いやつでな。」

 シャンはようやくそれに気づいた。ヒッ!と、情けない声を上げ、再び逃げようとするが、もう再び逃げるには遅すぎた。

ジャ「迷惑をかけただろう。安心しろ、その分俺がたっぷりと礼をしてやる!!」

 ジャックも、ポケットから満足手錠を取り出し、遊星やクロウと同じように、眼前の敵のデュエルディスクにかけさせる。


遊・ク・ジャ「「「 デュエル!! 」」」




?「マジシャン野郎・・・お前の相手は俺だ。」

 そう言って、チーム・サティスファクション最後の一人が、黒田に歩み寄る。

黒「き、貴様は・・・?!」

 その瞬間、爆発によって壁にできた穴から一陣の風が吹く。それにより、その男の纏っていたマントが吹き飛ばされる。


鬼柳「チームサティスファクションリーダー・鬼柳京介、満足させてくれよ?」


 自己紹介が終わると同時に、黒田に向かって満足手錠を投げかける。そして、自分のデュエルディスクを起動する。

鬼「デュエルだ!」

 それに黒田は強気に応じる。彼もまた、マジシャンズフォーのリーダーなのだから。


鬼・黒「「 デュエル!! 」」



遊「『ジャンクウォリアー』でダイレクトアタック!」


―――――スクラップ・フィスト!!


魔「ぐぁぁぁぁぁぁっ!」

魔時田LP1500→0


ク「『BF(ブラックフェザー)アーマードウィング』で、攻撃ィ!」


―――――ブラックハリケーン!!


鯨「うわぁぁぁぁぁっ!」

鯨田LP1300→0

ジャ「『エクスプロードウィングドラゴン』でダイレクトアタック!」


―――――キングストーム!!


シャ「グァァァァァァッ!」

シャンLP2400→0


 デュエルの終了と共に、敗者『マジシャンズフォー』のうちの三人のデュエルディスクに電流が流れ、超小規模の爆発を起こす。しかし、その爆発はデュエルディスクが壊れるには十分である。


黒「うおぉぉぉぉ!『黒魔道の執行官(ブラック・エクスキューショナー)』で攻撃!」

 黒田の目の前に君臨する魔法使いのような格好をしたモンスターが、鬼柳の僕に突進する。
しかし鬼柳はあくまでも冷静にそれを対処する。

鬼柳「トラップカードオープン、『ヘイトバスター』!」


ヘイト・バスター
通常罠
自分フィールド上に表側表示で存在する悪魔族モンスターが攻撃対象に選択された時に発動する事ができる。
相手の攻撃モンスター1体と、攻撃対象となった自分モンスター1体を破壊し、破壊した相手モンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。


 鬼柳が自分の場の伏せカードをオープンすると、鬼柳の僕は黒田の僕に襲い掛かる。それにより双方の僕は消滅した。

黒「ぐぉっ!」

黒田LP1600→0

 黒田はその効果ダメージの衝撃によって数メートル後方へ吹き飛ばされる。そして他の三人同様、電流によりデュエルディスクが破壊された。
 数メートル後方でデュエルを観戦していた遊星、ジャック、クロウの三人は、たった今勝利したリーダー鬼柳のもとに歩み寄る。4人は拳を真上一箇所に集め、それを合わせる。

鬼「やったな、みんな。」


 鬼柳はアルファベットの割り振られたサテライトの地図の一箇所を黒く塗りつぶす。「D」と書かれた部分である。

鬼「・・・よし、これでD地区制覇だ。」

 その頃のサテライトは、デュエルに飢えたデュエルギャング達が方々でチームを組み、それぞれの地区を治めていた。彼らは元々S地区を治めていたが、デュエルギャングを倒してどんどん所有地区を増やしていた。そしてこれで5地区目。S地区も含めると既に26地区中の6地区を治めている。
 それがチームサティスファクション・・・。

―――満足することを求めて集まった集団。


「今にこいつを黒く塗りつぶせ!」


「どうやったって、俺達はサテライトから逃げることはできない・・・。だったら、ここで満足するし かねぇ。このサテライトでドデカイ事をやって、満足しようぜ!」


「満足させてもらおうじゃねぇか!」



「鉄砲玉のクロウ様は、もうはじけてんだよ!!」
子守兼切り込み隊長担当 クロウ・ホーガン



「迷惑をかけただろう。まぁ安心しろ、その分俺がたっぷりと礼をしてやる!!」
アジト見張り兼リアルデュエル担当 ジャック・アトラス



「受けてもらおうか、決闘を!!」
作戦考案兼メカニック担当副リーダー 不動遊星



「小細工なんて必要ねぇ!圧倒的力で、度胸で押しまくってやるぜ!!」
情報収集兼ファッション担当リーダー 鬼柳京介



彼らチームサティスファクションの戦いはまだまだ続く―――――


―――――満足を求めて


鬼「チームサティスファクション、いくぜ!!」





鬼柳・遊星・ジャック・クロウ「「「「 デュエッ!! 」」」」




 満足0プロローグ後編―ブラックペイント―

鬼「これで最後だ。・・・これで俺達チームサティスファクションが、サテライトを統一する。」

 小石で四隅を留めたサテライトの地図を見下ろしながら遊星、ジャック、クロウの3人に告げる。

 プロローグ前編から4ヵ月経ち、ついに残された地区は「M地区」ただひとつである。しかし、このM地区を治めている『チーム・ノンセキュリティ』。そのリーダー・具士沢という男がなかなか厄介であるという情報を鬼柳は得ていた。チームサティスファクション情報収集担当というのは、伊達ではない。・・・もっとも、「葵」という情報屋に集めてもらった情報なのだが。

 この具士沢という男は、各地区から、実力のあるデュエリストをスカウトして、自分のチームに引き入れる。それを何度もやっている。つまり、各地の強敵が一箇所に集まっているのだ。
 しかし、サテライトの完全統一を目指す彼らにとってそれは願ってもいないこと。鬼柳は地図を拾い上げ四つ折でズボンの右ポケットに突っ込む。


鬼「それじゃあみんな・・・満足しようぜ!!」



 4人は横並びになって歩き、M地区の中に足を踏み入れる。5分ほど歩いているとチームノンセキュリティのアジトらしき建物が見えた。しかし、それまでに何人も敵が潜んでいたことを4人は見逃さなかった。

鬼「出てこいよ。」

 それに反応して、建物の陰、部屋の中、屋上、樽の中など、様々な所からチームノンセキュリティの組員が姿を現す。元々はチームノンセキュリティも4人だけのチームだったが、具士沢が他からスカウトすればするほどチームの人数が増えていく。その結果、当初の4倍以上まで膨れ上がってしまった。

ク「きたねぇぞ、4対4じゃねぇのかよ?!」

鬼「ハッ、いいじゃねぇかよ。どうせ弱いから人海戦術でもしねぇと勝てないと踏んだんだろう。」
 鬼柳はあくまでも余裕の表情を浮かべる。

鬼「これくらいじゃなきゃ満足できねぇぜ・・・デュエル!!」

 鬼柳の掛け声を合図に、4人は別々の方向に散らばる。


―――今ここに、チームサティスファクションVSチームノンセキュリティの戦いの火蓋が切って落とされた。


ク「いっくぜぇ!」
 クロウは4つの満足手錠を、同時に4人のデュエルディスクに装着させる。つまり1体4のデュエルをやろうとしているのである。こんな無茶なことが平気でできるのは、チームサティスファクション内で1対複数のトレーニングを積んでいるからである。


ジャ「ツインブレイカーでゴブリン突撃部隊を攻撃!」

―――――ダブルアサルト!!

 ジャックは数人の敵と一緒に走りながらデュエルをしている。一人を倒したら別の一人。それを倒したらまた次の・・・といった感じだ。
ジャ「次はお前だ!!」


 バァン!という爆発音と共に男のデュエルディスクは破壊される。そして鬼柳が階段の下からロープを引いて階段から引きずり落とした。鬼柳は落ちてくる男を避けて階段を駆け上がる。しかし階段の上には2人の男が待ち構えていた。鬼柳はすかさず満足手錠を投げつける。
鬼「いくぜ!」


 そして遊星。
 遊星はチームノンセキュリティアジトの屋上にいる。すでに3人の男を蹴散らし、チームノンセキュリティのリーダー・具士沢と向き合っていた。

遊「お前がチームノンセキュリティのリーダーか。」

具「てめぇ・・・よくも俺様の地区を荒らしてくれたな・・・。」

遊「デュエルを汚したのはお前達だ。その落とし前はつけさせてもらう!」

 遊星は具士沢に向かって満足手錠を投げ掛ける。満足手錠にはデュエルディスク追尾システムが搭載されているため、かわすことはできない。

具「へへ・・・勝負なんざ勝てばいいのよ。勝つってのはなぁ、相手を叩きのめすことなんだよ!」

 具士沢は満足手錠をつなぐロープをつかみ、屋上の端のほうに歩く。遊星はその怪力によって引きずられていく。

遊「何ッ?!」

 具士沢は隣の建物の屋上に飛び移る。ただしロープは割りと長いため、遊星は元々の屋上にいる。
そして具士沢はさらにロープを引っ張って、遊星を屋上から引きずり下ろした。

遊「ま、まだだ!」

 遊星は満足手錠のロープを伝っていく。その先には今も屋上にいる具士沢につながっているため、最悪の事態は逃れられるだろうと遊星は読んだのだ。

 しかし、その考えは破られることになる。


具「あばよ、ぼうや・・・。」


 そう言い残して、具士沢は遊星に向かって満足手錠のつながったままのデュエルディスクを投げつけた。これによっていくらロープを伝っていっても、その先にあるのは一緒に落下しているデュエルディスク。これにより、遊星は落下という運命に身を任せるしかなくなった。

ク「!!遊星?!」

ジャ「遊星!!」

下で戦っていたクロウとジャックも遊星の落下に気づく。しかし2人の距離は遊星とは離れていた。


遊「ウワァァァァァァァァァァァァァッ!!」


 遊星は、自身の死という運命に身を委ねるしかなかった。


―――――ガチャッ!

 しかし、そんな遊星を助けようと鬼柳は屋上から満足手錠を投げかける。見事に遊星の右腕にはまり難を逃れたかに見えた。しかし、事態はこれでは終わらなかった。これから宙づりになってしまった遊星を引き上げなければならないのである。

―――――バキッ!

 さらに運の悪いことに、老朽化されていた鉄の柵が折れてしまったのである。

遊「鬼柳、もういい、離してくれ!このままじゃお前まで!」

 遊星は必死に叫ぶ。しかし、鬼柳はそれを遮るように叫び返した。

鬼「ふざけるなぁ!俺が、お前を見捨てることなんて、できるわけないだろうが!お前は、俺の・・・仲間だ!!」

遊「・・・鬼柳・・・。」

鬼「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」



 数分後、クロウの協力もあって遊星を引き上げることに成功した。遊星と鬼柳はひどく疲れた様子である。

遊「ハァ、ハァ、ハァ・・・。ありがとう、鬼柳。」

鬼「ハァ、ハァ、ハァ・・・ヘヘッ。」

 鬼柳は「気にするな」という表情で右腕の親指を立てる。
 クロウは遊星の無事を確認すると、隣の建物の具士沢を睨みつける。その頃具士沢は、その建物の屋上でジャックとデュエルをしていた。具士沢は遊星の無事に軽く舌打ちする。

ジャ「よそ見をしてていいのか?」

 ジャックのモンスターが攻撃の態勢に入る。

ジャ「『ストロングウィンドドラゴン』でダイレクトアタック!ストロングハリケーン!!」

具「ぐあぁぁぁぁぁぁっ!!」


具士沢 LP2150→0


 具士沢はジャックのモンスターの強風により、数メートル吹き飛ばされ柵へ叩きつけられる。
具士沢が気を失ったことを確認して、ジャックは拳を揚げる。3人もそれに合わせて拳を揚げる。




 鬼柳はサテライトの地図の「M」と書かれた箇所を塗りつぶす。

鬼「これで・・・サテライトは俺達が制覇した。」

 地図を見つめながら鬼柳が呟く。ついに、彼ら4人の目標が達成されたのだ。


ク「やったな!」


遊「ああ!」


ジャ「当然だ!」


鬼・遊・ク・ジャ「ハハハハハハハハハハハハハハ―――」


 4人の笑い声はサテライト内に響き渡る。


―――――こいつらは、最高の仲間だ!


 そんな風に考えたら、皆笑いが止まらなかった。

鬼「チームサティスファクション、最高だぜぇ!!」

 鬼柳はサテライトの地図を空へ舞わせる。



鬼柳・遊星・クロウ・ジャック「ハハハハハハハハハハハハ!!」


 ブラックペイント―――黒く塗りつぶされたサテライトの地図は4人を祝福するかのように天高くへと舞い上がった。




 満足1 サテライトの帝王

?(・・・今のは・・・いつの夢だろう・・・。)

 僕の名前は見轟紅(みごう・こう)。雅・鉄という名の両親と、葵という名の兄妹を持つ一人の・・・名前は多分霊術のパロディです。
僕には不思議な能力・・・のようなものがある。ただし、自発的にその能力を使うことはできない。

 この世には『予知夢』なんて言葉が存在する。『予知夢』とは、
       <見た夢が確実に未来に起こる・未来を見ることができる>
ものを指す言葉だけど、僕の場合はその逆。
    <見た夢は確実に過去に起こっている・過去に起こったことを見ることができる>
つまり、夢の中で過去の映ったビデオを再生していると言ったら分かりやすいかな?え、わかりにくい?そうですか。まぁとにかく、僕は物心ついたころからこの「過去夢」に振り回されている。

 そして今日も、いつもと同じように過去に起こったであろうことが、ビデオ再生をしたように夢として僕の中に流れてきた。今日の夢は、ここサテライトで起こったことのようである。登場人物は鬼柳京介さんの率いるチームサティスファクション・・・。


ドンッ、ドンッ、ドンッ――――――


 僕のベットのすぐ隣に取り付けられている窓を、誰かが叩いているようである。全く、一体誰だ?こんな朝早くから人様の家に・・・。僕はまだ睡眠を求めている身体を上半身だけ起こし、眠たい眼をこすってカーテンを開く。


鬼柳「おお、やっと起きたか。悪いけど入れてくれるか?」


――――どうやら僕は、相当寝ぼけているようだ。僕なんかの家に鬼柳さんが来るわけがない。今日の過去夢が鬼柳さんのものだったから、こんな幻が見えるのだろう。僕は再びベットに横になり布団にくるm―――


ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドン!!――――――


 さっきよりも叩き方が一層強くなっている。


――――――もしかして、本物の鬼柳さん?


 僕は再び身体を起こしてカーテンと窓を開ける。


鬼柳「・・・おい、今なんで見てみぬ振りをしたんだ?」
紅「いやぁ・・・なんというか・・・っていうか、鬼柳さんこそこんな朝早くから何なんですか?」
鬼「何って、お前をチームサティスファクションに迎えに来たに決まってんだろ?」

 
 いや、決まってません・・・ん?

紅「え?え?どういうことですか?」
鬼「そのまんまの意味だよ。俺達のチームサティスファクションについては知ってるだろ?」

 ただ呆然と知ってるどころか、ちょうど今日の過去夢がチームサティスファクションのサテライト制覇時のものだったため、下手すると鬼柳さんよりも鮮明に覚えています。

紅「チームサティスファクションって、サテライトにいたデュエルギャングを倒してサテライトを統 一したチームですよね?」
鬼「おお!さすがによく知ってるな!そうさ!そのチームサティスファクションに見轟紅!お前を 迎え入れようと思ってな!」

 はい?

鬼「オレと、遊星、ジャック、クロウ・・・そして紅を5人目として加えようってことだ。わかった か?」

 全然わかりません。

鬼「正規メンバーならこのお揃いのジャケットをなんだが、お前はまだ見習いだからおあずけだ!俺 を満足させることができたら考えてやらなくもないから、がんばれよ!」
紅「はぁ・・・。」

 鬼柳さんが僕の事情などお構いなしに話を続ける。正直、僕はまだ鬼柳さんの言ってる意味の半分も理解できていない。

鬼「じゃあ、そろそろ出かけるから準備しろよ」
紅「え?出かけるって一体何処に・・・?」
鬼「チームサティスファクションの用事って行ったら、デュエルに決まってるだろ!」


 なるほど。こっちが鬼柳さんの事情を理解しないと、話についていけないのか。というかまず僕はチームサティスファクションに入るなんて一言も言ってない。それなのに、既にチームサティスファクションに入るという体で鬼柳さんは話を進めている。


紅「でももうサテライトは統一したんですよね?」
鬼「まぁ、それは確かにその通りだ。だが隙あらばオレたちを倒そうと狙ってる、倒したギャングの残党どもは闇に潜んでいるのさ。チームサティスファクションによるサテライト統一を確固たるものにするためにはそういう残党を狩っていく必要があるわけだ。話は分かったか?」
紅「はい、今話していたことのほうは大方・・・。」
鬼「じゃあ・・・力を貸してくれるな?」


 正直、僕のは鬼柳さんが何を求めているのか分からない。・・・でも、


紅「わかりました。鬼柳さん、僕をチームサティスファクションに入れてください。」


 それでも僕は鬼柳さんに協力したい。どんなに小さな事だっていい。鬼柳さんの役に立ちたい。


鬼「よし、決まりだ!頼むぜ、5人目のチームメンバー(仮)!」


(仮)て。・・・まぁ、こうして僕は鬼柳さん率いるチームサティスファクションに入ることになった。まだ仮だけど・・・。


鬼「その力を見せてくれ!そして・・・一緒に満足しようぜ!」




【PM0:18 サテライト L地区・サテライト広場】

鬼「みんな、待たせたな!」


 既に遊星さん、ジャックさん、クロウさんの3人は来ていた。


ジャック「鬼柳・・・その後ろの赤い帽子のヤツは一体なんだ?」


 この人はたしかジャック・アトラス。「外国人っぽい名前だけど何人?」という質問は禁止事項です。チームサティスファクション一の長身で、金髪。本当に日本人なんですか、あなたは?


鬼「ほら、前に言っただろ?チームサティスファクションに迎え入れたい奴がいるって。それがこいつだよ。とは言っても、まだ仮メンバーだけどな。」
紅「見轟紅です、よろしくお願いします。」


 僕は帽子をかぶったまま頭を下げた。こういうときは帽子を取るのが礼儀なのだろうけど、今ここで、この帽子を取るわけにはいかない。


ジャ「そうか・・・。オレはジャック・アトラスだ。」
クロウ「オレはクロウ・ホーガン。クロウでいいぜ。よろしくな。」


 ジャックさんに続いて、気さくに話しかけてきて握手を求めてきたのが、オレンジ色の髪を青いヘアバンドで逆立てているのと、おでこの「M」マーカーが特徴のクロウ・ホーガン。この人も日本人だと思います。多分。


遊星「・・・。」


 壁にもたれ掛かって、無言のまま私を見据えているのは不動遊星。過去夢で見た時から思いましたが、特徴のある髪型です。あえて生物・・・甲殻類で例えるなら蟹ですね。この人は・・・間違えなく日本人です!よかった。やっとまともな日本人に会えた!


紅「あの・・・よろしくお願いします。」
遊「・・・ああ、よろしく頼む。」


 う〜ん・・・なんというか、やりづらいな・・・。僕もあまりしゃべるの得意なほうじゃないし・・・。


遊「お前・・・」


 遊星さんが、近くにいる僕にしか聞こえないくらいの小さな声で話しかけてくる。


紅「はい、何ですか?」
遊「・・・いや、別に・・・なんでもない。」
紅「?・・・そうですか。」


 正直、遊星さんの言いかけたことが気になるけど、どうせ考えても分からないし忘れよう、うん。






鬼「今日はここL地区でチーム・インセクトの残党を狩る。サテライト制覇は終わっちゃいない。デュエルディスク持つもの全てが、オレたちの敵だ!」


 「それって僕らも敵同士になってしまうのでは?!」とは思っちゃいけない。鬼柳さんが簡単な説明を終える。すると、クロウさんは大きくため息をついた。


鬼「ん?どうしたんだクロウ?」
ク「いや・・・別に、何でもねぇよ。」
鬼「・・・そうか。じゃあ、みんな各方面に散ってくれ。紅はまだ見習いだから俺と一緒に来い。」


 僕は言われるがままに鬼柳さんに着いて行った。




鬼「よし、まずはこの辺りから回ってみるか。」
紅「そういえば、どうやって相手を探すんですか?」
鬼「さっきも言ったろ。デュエルディスクを持ってるヤツを片っ端からぶっ倒していけばいいんだよ!いちいち細かいこと考えなくてもそれで十分だ。名案だろう?」


 確かに迷案ですね。でも、そんなこと誇らしげに言わないでください。


鬼「じゃあ、行くぜ。」




 鬼柳さんと、サテライト広場を歩き回ること十数分。先ほどからデュエリストどころか、人一人いない。これだけ広いのに、人が一人もいないとなるととても寂しい。


鬼「こうして回ってみると、なかなかいないもんだな。」
紅「そうですね。」
鬼「まぁ、デュエルギャングを一通り潰したんだから、前より数が減ってるのは当然か。」


 そうだった。チームサティスファクションのデュエルは負けたほうのデュエルディスクが爆破されるというデスマッチ。つまり、鬼柳さん達がデュエルすればするほど、デュエルディスクが減っていく。ただでさえ、デュエルディスクの供給率の低いサテライト。それなのにデュエルディスクがこうもたやすく破壊されてしまっては、当然デュエルディスク所有者の数は減っていく一方である。

 しかし、そんな時、目の前にデュエルディスクを持っている二人組みの男が通りかかった。


鬼「おっ!デュエルディスクだ。おい、お前ら!」


 二人はいかにも「柄が悪いですよ。」といった感じの青年だ。二人ともマーカーがついている。
一人は、ジャックさん並みの身長で、ドレッドヘアーの眼鏡。もう一人は、ブルドッグみたいな顔面で小太りの短髪。二人とも右頬に朱色のマーカーが付いています。


眼鏡「あん?何だおめぇら?」
ブルドッグ「オレたちが何者か分かっているでゴンスか?」


 二人組みの男たちは鬼柳さんに対して物凄く眼を飛ばしている。っていうか一人語尾が明らかにおかしいでしょ・・・。


鬼「てめぇらのことはよく知らねぇが、デュエリストなんだろ?」
眼「だってらなんなんだ?」
ブ「何でゴンスか?」
鬼「オレたちとタッグデュエルだ。」
眼「ヒャハハハハハ!本当にこいつらオレたちのこと知らねぇみたいだな!」
ブ「そうでゴンスね!そうでゴンスね!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!」


 「ゴゴゴゴゴ」って笑い方は相当レアですよね?


眼「オレの名は犬飼歩智(いぬかいぽち)!」
ブ「そして、オレの名は犬飼権(いぬかいごん)でゴンス!」


 ポチ?!そんな名前の日とはじめて見た!あなた親に犬扱いされてるんじゃないですか?!


ポチ「オレたちは巷じゃ有名なタッグ兄弟でなぁ!」


 迷宮兄弟みたいなものですね。


ゴン「狙った獲物は必ず仕留める姿からついた呼び名が・・・」



ポチ・ゴン「「ハウンドドッグ!!」」



 ださっ!!何真顔でそんなこと言ってるの?!いい年してそんなダサいあだ名使わないでくださいよ!しかも超ノリノリだし!


鬼「ハウンドドッグ・・・カッコいい・・・。」


 ええっ?!ちょ、鬼柳さんまで?!


ポ「オレたちにデュエルを挑んだことを後悔するんだな!」
ゴ「我らハウンドドッグに挑んだことを後悔するでゴンス!」


 猟犬コンビはデュエルディスクを起動させました。そうだ、僕はここに遊びに来たんじゃない。今から僕のこっちのデュエルの世界に足を踏み入れるんだ・・・。


鬼「後悔するのは・・・そっちの方だ!」


 鬼柳さんは複数人用の満足手錠を二人のデュエルディスクに投げ掛けます。


ゴ「!?何でゴンスかこれは?!」
ポ「くっ・・・と、とれねぇぞ?!」
鬼「これからオレたちがやるのは、負けた方のデュエルディスクが爆破されるデスマッチだ!」
ポ「な?!き、聞いてねぇぞ?!」
鬼「ああ、言ってねぇからな。」
ゴ「ゴ?!」
ポ「ゴン!そんなにあせるな。デスマッチだろうと関係ねぇよ!要するに勝ちゃいいんだろう?」
ゴ「そ、そうでゴンスね。」
鬼「紅、お前のデュエルディスクだ。」


 僕は満足手錠のつながっているデュエルディスクを鬼柳さんから受け取り、デッキをセットする。


紅「鬼柳さん・・・絶対勝ちましょうね。」
鬼「ああ、当然だ。」


 僕達はデュエルするに適した距離をとります。


鬼「待たせたな・・・じゃあ、そろそろ始めようか。」


 ついに・・・始まる。絶対・・・勝つんだ・・・。


鬼「そんなに緊張すんなよ、紅。大丈夫・・・お前はオレが守る。」
紅「は、はい。ありがとうございます。」
鬼「さぁ、お前ら!オレを・・・満足させてくれよ?」


鬼・紅・ポ・ゴ「「「「デュエル!!」」」」




―――――5分後。




鬼「とどめだ!『デーモンソルジャー』!」


デーモン・ソルジャー
通常モンスター
星4/闇属性/悪魔族/攻1900/守1500
デーモンの中でも精鋭だけを集めた部隊に所属する戦闘のエキスパート。
与えられた任務を確実にこなす事で有名。


ポ「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

歩智LP1150→0


 ボンッ!

紅「ヒィッ!」


 デュエルディスクの爆破音に一瞬驚いてしまった。過去夢で何度も見てきたけど、実物はやはり違う。なんかこう、突発性とかそういうのが・・・。


鬼「なんだ、全然弱いじゃねぇか。そんな半端な気持ちで入ってくんなよ、デュエルの世界によ!」


 ちょっ、鬼柳さん?!死人に鞭打ちってひどくないですか?!どっかの誰かさんの「ガッチャ」くらいひどいですよ?!


紅「でも、デュエルギャングってみんなこのくらいの実力なんですか?」
鬼「いや、こいつらは多分中の下くらいのもんだと思う。まぁ、実力あるデュエルギャングはサテライト制覇の時にみんな倒しちまったからな・・・。下手したらこいつらくらいのレベルしか残ってないかもな・・・。」


 鬼柳さんはすごく物足りなそうに満足手錠を回収する。
 それにしても・・・さっきのハウンドドッグ兄弟は本当に口だけだったな。結局僕には1ターンしか回ってこなかったもの。鬼柳さんが物足りないのもよく分かるや。アレじゃあ猟犬どころか負け犬だよ、うん。っていうか僕もさりげなくひどいよね。


鬼「よし、次のやつを探しに行くぞ、紅。」
紅「はい。」


 でも、これからの相手もアレくらいか、それより強いくらいなら、鬼柳さんの足を引っ張る心配もないかも。


鬼「おっ!デュエルディスクだ。おい、そこのガキ!」


 そんなことを考えているうちに鬼柳さんは新たな敵を見つけたようです。


子「えっ?オイラのこと?」


 見た目からして11、2歳くらいの子供のようです。


鬼「ああ、そうだ。そのデュエルディスク・・・デュエリストだな?」
子「うん!オイラ、強いんだよ!」
鬼「ほう・・・この俺に向かってそんな言葉を吐くとは、よほど自信があるみてぇだな!」


 え、まさか鬼柳さん、こんな小さな子供とやり合うわけじゃ・・・ないですよね?


鬼「ガキに見えたって、強いやつはいる。少しでも危険があるなら、その芽は積んだ方がいいな。」


 え・・・ちょ、鬼柳さん?


鬼「おい、オレとデュエルしやがれ!」
子「ええっ!?ムリだよっ!」
紅「ちょ、鬼柳さん!相手はあんな小さな子供ですよ?」
鬼「デュエルは、やってみなくちゃわからないだろ。子供だって強いヤツはいるし、大人だからって強いわけじゃない。」
紅「そ、そうですけど・・・。」


 そんな話をしてる間に先ほどの子は走り出します。


鬼「逃がすかよ!」


 ちょ、鬼柳さん、そんな子供相手にムキにならないでください!大人気ないですって!
そんなことを言ってる間に、さっきの子と鬼柳さんは、路地の方に走っていきます。・・・って、置いてかないでくださいよ鬼柳さん!MA☆TTE!


ク「おい、鬼柳!」


 ちょうど僕が鬼柳さんを見つけたと同時に、鬼柳さんはクロウさんに出会ったようです。さっきの子はクロウさんの後ろに隠れています。
 

鬼「おお、クロウか。・・・どうした、そんな怖い顔して・・・。」
ク「お前・・・こんな子供を捕まえて何をしようとしてるんだ?」
鬼「何って・・・デュエルに決まってるだろう。」


 鬼柳さんのすることって、いつもデュエルに決まってるんですね。


ク「こんな子供が、お前とまともにやりあって勝てるわけがねぇだろうが!それも・・・負けたほうのデュエルディスクが破壊されるデスマッチなんてよ!」
子「ええっ?!負けたら・・・デュエルディスクが破壊されちゃうの?!」


 えっ?!こんな子供にまでデスマッチするんですか?!・・・鬼柳さん・・・やっぱり大人気ない・・・。


鬼「デュエルは、やってみなくちゃわからないだろ。子供だって強いヤツはいるし、大人だからって強いわけじゃない。」


 鬼柳さん、さっきと同じこと言ってます。


ク「まぁ、それはそうかもしれねぇ・・・って、ちょっと待て!お前はデュエルギャングの残党狩りがどうとか言ってたんじゃなかったか?そんな子供がギャングの残党なのかよ?!」
鬼「それは・・・今はただのガキでも、将来オレに楯突くギャングになるかもしれねぇ。だから・・・デュエルディスクを持ってるやつらは全員、オレたちの敵なんだよ!」


 鬼柳さんの言ってることには一理ある。・・・だけど、何かが違うような気がする。クロウさんも何か腑に落ちない様子です。


ク「もう・・・ついていけねぇよ・・・。」
鬼「何言ってんだ、クロウ?」


 クロウさんは満足ジャケットを脱ぎ捨てて、後ろに倒れてる人・・・多分クロウさんが倒したのであろう人の着ている青色の長いコートを脱がして自分で着始めました。ってか人のデュエルディスク壊した挙句コートまで剥ぎ取るってさりげなくひどくないですか?


鬼「なんだよその格好は!チームサティスファクションのジャケットはどうしたんだよ?!そんな半端な格好で満足できると思ってんのかよ?!」


 たしかに・・・あんなかっこいい満足ジャケットを捨ててまであんなコートを着る理由が、僕には分からない。けど、クロウさんにもきっと理由があるんだと思います。それにしてももったいない。


ク「ああ、そんなダサい格好よりよっぽどなぁ!!それに・・・俺はもう決めた。」
鬼「・・・」
ク「チームを・・・抜ける・・・。」
鬼「何だと?!」


 鬼柳さんはものすごく驚いた様子です。あんなかっこいい満足ジャケットを捨てた理由はおそらく「チームサティスファクションとの決別」を意味したんでしょうね・・・。


鬼「まさか・・・冗談だよな?」
ク「・・・冗談でこんなこと言うわけないだろ。」
鬼「・・・・・・」
ク「・・・・・・」
鬼「くっ!わかったよ。・・・なら、今からクロウはそのガキと同じ、オレたちの敵だ!」
ク「なに?!」
鬼「二人ともデュエルでぶっ潰してやる!」
ク「オトシマエ・・・ってやつか。いいだろう。」
子「うわああああん!」


 さっきからあの子は鬼柳さんを見て、泣き続けている。まぁ、無理もない。そんな少年にクロウさんは同じ目線になって小声で話しかけます。


ク「泣くなボウズ。いいか・・・ありったけの力で走って逃げろ・・・鬼柳はオレが引きつける。絶対、俺が守ってやる。」
子「ぐすっ・・・うん・・・お兄ちゃん・・・ありがとう。」


 少年は、鬼柳さんとは正反対の方向に走り出します。同年代の中でも速い方なのか、間も無く、遠くへ行ってしまいました。


鬼「紅!」
紅「わひゃっ!」


 いきなり鬼柳さんに大声で呼ばれたものだから情けない声が出てしまいました。


紅「な、何ですか、鬼柳さん。」
鬼「お前はあのガキを追いかけろ!」
紅「え!?で、でも・・・。」
鬼「いいから早く!」
紅「は、はい、わかりました。」


 僕は大急ぎで少年が走った方向へ走り出します。途中でクロウさんと眼が合ってしまいました。その眼には、僕に同情しているかのような眼でした。



ク「すまねぇな・・・。」



紅「え?」
ク「・・・なんでもねぇよ。行くならとっとと行きやがれ!」


すまねぇな・・・。クロウさんは今確かにそう言った。でも、どういうことなんだろう・・・。


紅「まぁ、考えても仕方ないかな。それよりもあの子を追いかけないと・・・。」


 僕は少年の走った方向にひたすら走るのだった。




ク「・・・こっちはいつでもいいぜ。」
鬼「覚悟は・・・できたか!じゃあ、いくぜ!」


 鬼柳はデュエルディスクを起動する。


鬼「オレを・・・満足させてくれよ!」


鬼・ク「「デュエル!!」」



鬼柳LP4000

クロウLP4000


満足決闘伝・鬼柳京介 第1話  完




満足2 黒翼の鉄砲玉 クロウ

 よぉ、お前ら。満足してるか?オレはチームサティスファクションリーダーの鬼柳京介だ。元々ナレーションをやってた紅には今、さっきのガキを追いかけてもらってる。ところで、さっきのガキの名前は角井敏之っていうらしい。まぁ本当にどうでもいいことだがな・・・。
 

 そんなことより聞いてくれよ!チームサティスファクションの結成時から一緒に戦ってきたクロウが、いきなりチームを抜けたいとか言い出してきやがった!絶対にそんなことはさせねぇ!クロウには・・・これからもオレたちと一緒に満足してもらうぜ!・・・余談だが、なんか各地で「鬼柳さんって実はホモなんじゃないか?」ってうわさになってるらしい。確かにオレは女は嫌いだが、オレはチームの仲間をそんな目で見たりはしねぇ!


ク「俺の先攻!ドロー!!」


 あ!そんなこんなのうちにクロウに先攻をとられちまった。・・・まぁ、いいか。


ク「オレは『BF−蒼炎のシュラ』を攻撃表示で召喚!さらに、カードを1枚セットしてターンエンド!」


BF−蒼炎のシュラ
星4/闇属性/鳥獣族/攻1800/守1200
このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、自分のデッキから攻撃力1500以下の「BF」と名のついたモンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。
この効果で特殊召喚した効果モンスターの効果は無効化される。


 きやがったか、クロウの代名詞ともいえるBF(ブラックフェザー)!あのカテゴリのメリットは圧倒的な展開力にある。さすがクロウのモンスターだぜ!


【鬼柳】LP4000
手札5枚
モンスターゾーン: なし
魔法・罠ゾーン: なし

【クロウ】LP4000
手札4枚
モンスターゾーン: BF−蒼炎のシュラ
魔法・罠ゾーン: 伏せカード×1



鬼「オレのターン!オレは『ジェネティックワーウルフ』を召喚!バトルだ!」
ク「っ!いきなり攻撃力2000かよ・・・。」


ジェネティックワーウルフ
星4/地属性/獣戦士族/攻2000/守 100
遺伝子操作により強化された人狼。本来の優しき心は完全に破壊され、闘う事でしか生きる事ができない体になってしまった。その破壊力は計り知れない。


BF−蒼炎のシュラ、破壊。
クロウLP4000→3800


鬼「クロウ!たとえ仲間が相手でも、オレは容赦しねぇぞ?」


 そう、たとえ相手が強者であろうと、弱者であろうと、圧倒的パワーで容赦なく叩き潰す!それがこのオレ、鬼柳京介のデュエル!


鬼「オレはカードを一枚セットして、ターンエンドだ。」
ク「エンドフェイズに、トラップカードオープン、『砂塵の大竜巻』!」


砂塵の大竜巻
通常罠
相手フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する。
破壊した後、自分の手札から魔法または罠カード1枚をセットする事ができる。


破壊されたのは激流葬。さすがクロウだ。いい読みをしてやがる。


【鬼柳】LP4000
手札4枚
モンスターゾーン: ジェネティックワーウルフ(攻2000)
魔法・罠ゾーン: なし

【クロウ】LP3800
手札4枚
モンスターゾーン:なし
魔法・罠ゾーン:なし


ク「オレのターン!『BF−極北のブリザード』を召喚!効果によって蒼炎のシュラを特殊召喚!」


BF−極北のブリザード
星2/闇属性/鳥獣族/チューナー/攻1300/守 0
このカードは特殊召喚できない。
このカードが召喚に成功した時、自分の墓地に存在するレベル4以下の「BF」と名の付いたモンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する事ができる。


鬼「!そのモンスターは確か・・・」
ク「へっ!その通り、ブリザードはチューナーモンスターだぜ!レベル4『蒼炎のシュラ』に、レベル2『極北のブリザード』をチューニング!」


―――――――――漆黒の力!大いなる翼に宿りて、神風を巻きおこせ!


ク「シンクロ召喚!吹きすさべ、『BF−アームズ・ウィング』!!」


BF−アームズ・ウィング
星6/闇属性/鳥獣族/攻2300/守1000
「BF」と名のついたチューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードは守備表示モンスターに攻撃する場合、ダメージステップの間攻撃力が500ポイントアップする。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。


鬼「きやがったか!クロウのシンクロモンスター!」
ク「このままバトルだぜ!行け、『BF−アームズウィング』!」


――――――ブラックトルネード!!


鬼「ぐっ!」


ジェネティックワーウルフ、破壊。
鬼柳LP4000→3700


ク「カードを1枚セットして、ターンエンド!さぁ、お前のターンだ鬼柳!」


【鬼柳】LP3700
手札4枚
モンスターゾーン:なし
魔法・罠ゾーン:なし

【クロウ】LP3800
手札3枚
モンスターゾーン:BF−アームズ・ウィング(攻2300)
魔法・罠ゾーン:伏せカード×1


鬼「く・・・オレのターン!」


 ち・・・まさか2ターン目からシンクロ召喚によって上級モンスターを出してくるとは・・・。今のオレの手札は4枚・・・。これであのモンスターを対処できるか・・・?


鬼柳手札:ハリケーン、ガードブロック、貪欲な壺、プリズンクインデーモン


・・・情けない話だが、今のオレの手札じゃあのモンスターを倒すどころかモンスターを召喚することすらできない・・・。このドローに賭ける!


鬼「ドロー!」


・・・!こいつは・・・。


鬼「オレはカードを1枚セットして、ターンエンド。」


【鬼柳】LP3700
手札4枚
モンスターゾーン:なし
魔法・罠ゾーン:伏せカード×1

【クロウ】LP3800
手札3枚
モンスターゾーン:BF−アームズ・ウィング(攻2300)
魔法・罠ゾーン:伏せカード×1


ク「それだけか?手札事故のようだな・・・。オレのターン!オレは『BF−銀盾のミストラル』を守備表示で召喚!」


BF−銀盾のミストラル
星2/闇属性/鳥獣族/チューナー/攻 100/守1800
フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた場合、このターン自分が受ける戦闘ダメージを1度だけ0にする。


 またモンスターが増えやがったか・・・。だが、守備表示なら問題ない。問題はあの伏せカードだ・・・。


ク「いくぜ、バトル!アームズウィングの攻撃!」
鬼「リバースカードオープン!『ガードブロック』!この効果によりお前のこうげk――」
ク「甘いぜ鬼柳!トラップカードオープン!『トラップスタン』!このターントラップカードの効果は無効になる!よって、アームズウィングの攻撃はそのまま続くぜ!!」


ガードブロック
通常罠
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

トラップスタン
通常罠
このターンこのカード以外のフィールド上の罠カードの効果を無効にする。


チェーン1・ガードブロック
チェーン2・トラップスタン

ガードブロック、不発。
鬼柳LP3700→1400


ク「へへっ、どうだ鬼柳!」


 ・・・まだだ、まだ終わらない!オレはこんなもんじゃ満足できねぇ!



【PM3:41 サテライト L地区・サテライト広場】

 一方、鬼柳さんがクロウさんとデュエルしている中、僕はさっきの男の子(角井敏之)を探し続けていた。別にとって食おうなんてわけじゃなくて、ちょっと話したいことがあるから探してるだけなのに・・・。


紅「あ、遊星さん。」
遊「・・・紅か。」
紅「遊星さん、こっちの方にこのくらいの小さな子供が走ってきませんでした?」
遊「・・・いや、見てないが。」
紅「あ、そうですか。ありがとうございました。」


 僕は遊星さんの元を去ろうとする。


遊「なぁ、お前・・・」
紅「はい、なんですか?」


 いきなり呼ばれたので、僕は何も考えずに振り返る。


遊「お前――――」


 遊星さんのそれを聞いたとき、僕はひどく動揺してしまった。無意識に2、3歩後ずさる。

―――ドンッ!

紅「うわっ!」
遊「・・・どうやら当たりのようだな・・・。」

 僕は尻餅をついてしまった。それくらい、遊星さんの言ったことは衝撃的だったのだ。

―――――ばれた!




紅「角井くーん!角井くーん!」
遊「ここら辺にはいないみたいだな・・・。」


 その後、遊星さんは角井君探しを手伝ってくれることになった。僕は正体がばれてしまったという事で妙にぎこちなくなってしまっている。


遊「・・・!おい、紅・・・。」
紅「え、何ですか?」
遊「・・・アレを見ろ。」


 僕は遊星さんの指差す方向に目線を向ける。そこには角井君らしき後姿があった。それはどんどん遠ざかっていく。


遊「・・・逃がしはしないさ。」


 遊星さんは懐からお馴染みの満足手錠を角井君に投げかける。


角井「うわっ?!」
遊「オレの発明品をなめてもらっては困るな・・・。」
紅「す、すごい・・・。」

 
 遊星さんは満足手錠だけでなく、仲間内のデュエルディスクを作ったり、それを応用したデュエルテーブルなども作ったそうです。


角「うわぁ、来るな、来るなぁ!」
遊「・・・ところで、この少年を捕まえてどうしたかったんだ?」
紅「えっと・・・ちょっとお話がしたかったんです。」
遊「話?」
紅「はい。・・・角井君?」
角「な、何?」
紅「鬼柳さんが君を狙う理由はそのデュエルディスクにあるの。だから・・・取引をしない?」
角「と、とり・・・ひき?」
紅「うん。そのデュエルディスクを僕にくれないかな?」
角「ええっ?!む、無理だよ?!」
遊「紅、それはちょっと自分勝手すぎる。」


 僕は遊星さんの言うことを軽く聞き流す。


紅「なんで・・・かな?」
角「だって、友達の中でデュエルディスクを持ってるにオイラだけなんだ。それで、このデュエルディスクを持ってるとオイラはみんなに自慢できるんだよ!」
紅「・・・でも、それを持ってるとまた鬼柳さんに襲われちゃうよ?」
角「・・・」
紅「それに、友達の中でキミしか・・・ってことはそれを使う相手はいないってことだよね?」
角「そ、それは・・・。」
紅「はっきり言うとね、君が今それを持っているメリットは、限りなくゼロに近いの。」
角「そ、そんな!」
紅「もちろん、ただで渡してくれなんて言わないよ。」
角「えっ?」
紅「遊星さん。確か前にデュエルテーブルを作ってましたよね?」
遊「え?ああ、一応試作として作ってはいるが・・・。」
紅「じゃあ、それの完成品をこの子に渡してくれませんか?」
遊「いや、完成するには『モーメント』などの材料が不足している。・・・まさか?」


 さすがチームサティスファクション一のキレ者の遊星さん。僕の考えてることを理解したみたいです。

紅「そうです。この子のデュエルディスク・・・これを使えば材料的には困らないはずですよね?」
遊「・・・・・・ふぅ。しょうがないな。」
紅「!!ありがとうございます、遊星さん!」


 遊星さんは仕方ないと言う表情で承諾してくれました。・・・あとは、


紅「角井君。これは君にとっても悪くない話だよ?」
角「そ、そうなの?」
紅「うん、だってそのデュエルディスクを持っている限り、また鬼柳さんに狙われるかもしれない。けど、この取引に応じることで鬼柳さんに狙われることも無くなる。それにデュエルテーブルさえあれば、友達と今まで以上に楽しいデュエルができるんだよ?」
角「・・・・わかった。・・・約束だよ、お兄ちゃん達?」
紅「うん!ありがとう!遊星さんも本当にありがとうございます!」
遊「ああ、構わない。」


 僕は角井君からデュエルディスクを受け取って遊星さんに渡しました。


遊「しかし、おオレがデュエルテーブルを作ってる事よく知っていたな?」
紅「え?え、ええ・・・まぁ。」


 僕はつい言葉を濁してしまいました。知ってたのは過去夢で見ていたからなのですが、過去夢のことを言っても誰も信じてくれるわけがないし、好奇の目で見られてしまうため、僕は過去夢の事を誰にも話していない。


紅「えっと・・・き、鬼柳さんに聞いたんですよ。「遊星は無口だけど胸のうちはいつも熱いし、デュエルディスクとかの色々な発明品を作ってくれる最高の仲間だ!」って。」
遊「・・・そうか。」


 どうやら信じてくれたみたいです。よかった。


遊「よし、オレはデュエルテーブルの製作のために一旦アジトに戻るから、鬼柳によろしく言っておいてくれ。」
紅「はい、わかりました。」


 遊星さんがアジトの方へ向かうのを確認してから、僕は鬼柳さんとクロウさんがデュエルしている所に戻ることにした。


紅「無事でいてくださいね・・・鬼柳さん、クロウさん。」




【鬼柳】LP1400
手札4枚
モンスターゾーン:なし
魔法・罠ゾーン:なし
【クロウ】LP3800
手札3枚
モンスターゾーン:BF−アームズ・ウィング(攻2300)、BF−銀盾のミストラル(守1800)
魔法・罠ゾーン:なし


鬼「ダイレクトアタックによるダメージを受けたとき・・・このカードは手札から特殊召喚できる!こい、『冥府の使者ゴーズ』!!効果により、カイエントークンも特殊召喚だ!」


冥府の使者ゴーズ
星7/闇属性/悪魔族/攻2700/守2500
自分フィールド上にカードが存在しない場合、相手がコントロールするカードによってダメージを受けた時、このカードを手札から特殊召喚する事ができる。
この方法で特殊召喚に成功した時、受けたダメージの種類により以下の効果を発動する。
●戦闘ダメージの場合、自分フィールド上に「冥府の使者カイエントークン」(天使族・光・星7・攻/守?)を1体特殊召喚する。このトークンの攻撃力・守備力は、この時受けた戦闘ダメージと同じ数値になる。
●カードの効果によるダメージの場合、受けたダメージと同じダメージを相手ライフに与える。


冥府の使者カイエン(トークンカード)
星7/光属性/天使族/攻 ?/守 ?
「冥府の使者ゴーズ」の効果で特殊召喚される。
このトークンの攻撃力・守備力は、「冥府の使者ゴーズ」の特殊召喚時に
プレイヤーが受けた戦闘ダメージと同じ数値になる。


冥府の使者カイエン(トークン)攻?→2300


ク「ちっ、厄介なのが出てきたな・・・。カードを一枚セットしてターンエンド。」



【鬼柳】LP1400
手札3枚
モンスターゾーン:冥府の使者ゴーズ(攻2700)、冥府の使者カイエントークン(攻2300)
魔法・罠ゾーン:なし

【クロウ】LP3800
手札2枚
モンスターゾーン:BF−アームズ・ウィング(攻2300)、BF−銀盾のミストラル(守1800)
魔法・罠ゾーン:伏せカード×1


 
鬼「オレのターン!まずはその伏せカードを使わせる!手札から『ハリケーン』発動!」
ク「(・・・使わせる?何か狙いがあんのか?)リバースカードオープン!『ゴッドバードアタック』!!ミストラルをリリースして、ゴーズとカイエンを破壊!」


ハリケーン
通常魔法
フィールド上に存在する魔法・罠カードを全て持ち主の手札に戻す。

ゴッドバードアタック
通常罠
自分フィールド上に存在する鳥獣族モンスター1体をリリースし、フィールド上に存在するカード2枚を選択して発動する。
選択したカードを破壊する。


ゴーズ、カイエントークン、破壊。


・・・やっぱり、ゴッドバードアタックだったか。


ク「残念だったな鬼柳!せっかくの攻撃力2000オーバーモンスターが2体とも破壊されちまったぜ?」
鬼「いや、オレはそれが『ゴッドバードアタック』って読んでたぜ?」
ク「・・・何を根拠に?」
鬼「オレはお前の仲間だ。仲間の行動パターンくらい記憶してるぜ?」
ク「・・・言っただろ?俺はもう・・・チームサティスファクションのメンバーじゃない。」
鬼「な・・・本気なのか?今ならまだt――」
ク「しつこいんだよ!ほら、お前のターンだ!」


 くっ 本気なのか・・・クロウ?!


鬼「オレは『召喚僧サモンプリースト』を守備表示で召喚!」


召喚僧 サモンプリースト
星4/闇属性/魔法使い族/攻 800/守1600
このカードはリリースできない。
このカードは召喚・反転召喚に成功した時、守備表示になる。
1ターンに1度、手札から魔法カード1枚を捨てる事で、自分のデッキからレベル4モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは、そのターン攻撃する事ができない。


鬼「効果発動!手札の『貪欲な壺』を墓地に捨て、デッキから『復讐の女戦士ローズ』を特殊召喚!」


復讐の女戦士 ローズ
星4/炎属性/戦士族/チューナー/攻1600/守 600
このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、相手ライフに300ポイントダメージを与える。


ク「チューナーってことは・・・。」
鬼「目には目を・・・シンクロにはシンクロだ!レベル4『サモンプリースト』に、レベル4『ローズ』をチューニング!」


―――――――――頂上(てっぺん)まで駆け上がってやる!仲間と、こいつと!


鬼「シンクロ召喚!『メンタルスフィアデーモン』!!」


メンタルスフィアデーモン
星8/闇属性/サイキック族/攻2700/守2300
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの元々の攻撃力分だけ自分のライフポイントを回復する。
サイキック族モンスター1体を対象にする魔法または罠カードが発動された時、1000ライフポイントを払う事でその発動を無効にし破壊する。


ク「攻撃力2700・・・アームズウィングより上ってわけか・・・。」
鬼「バトルだ!メンタルスフィアで、アームズウィングを攻撃!」


――――――サイキック・デス・スフィア!!


アームズウイング、破壊。
クロウLP3800→3400


鬼「よしっ!さらに、『メンタルスフィアデーモン』の効果発動!ヒーリングスフィア!」


鬼柳LP1400→3700


 よし、フィールド面でもライフ面でも逆転したぜ。クロウに俺の力を見せつけてやれば、わざわざ俺の敵にまわるような真似はしないだろ。


鬼「ターンエンドだ。さあ、観念して戻って来い、クロウ!」


【鬼柳】LP3700
手札1枚
モンスターゾーン:メンタルスフィアデーモン(攻2700)
魔法・罠ゾーン:なし

【クロウ】LP3400
手札2枚
モンスターゾーン:なし
魔法・罠ゾーン:なし


ク「オレのターン!」


 !なんかいいカードを引いたみたいだな、クロウ。


ク「手札から『洗脳ーブレインコントロール』発動!」


洗脳−ブレインコントロール
通常魔法
800ライフポイントを払い、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。このターンのエンドフェイズ時まで、選択したモンスターのコントロールを得る。


鬼「甘いぜクロウ!メンタルスフィアの効果!ライフを1000支払って、サイキック族モンスターを対象とする魔法・罠の効果を無効にして破壊する!」
ク「な、何ィ?!そんなインチキ効果ありか?!」


洗脳、効果不発。
鬼柳LP3700→2700
クロウLP3400→2600


ク「しかたねぇ!『BF−鉄鎖のフェーン』を守備表示で召喚して、ターンエンド!」


BF−鉄鎖のフェーン
星2/闇属性/鳥獣族/攻 500/守 800
このカードは相手プレイヤーに直接攻撃する事ができる。
このカードが直接攻撃によって相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、相手フィールド上に攻撃表示で存在するモンスター1体を守備表示にする。


【鬼柳】LP2700
手札1枚
モンスターゾーン:メンタルスフィアデーモン(攻2700)
魔法・罠ゾーン:なし

【クロウ】LP2600
手札1枚
モンスターゾーン:BF−鉄鎖のフェーン(守800)
魔法・罠ゾーン:なし


鬼「オレのターン!」


 ちっ、『デーモンの斧』か・・・。低級モンスターを引いてれば勝ってたのにな・・・。


鬼「メンタルスフィアで鉄鎖のフェーンを攻撃!」

鉄鎖のフェーン、破壊。
鬼柳LP2700→3200

鬼「ターンエンド。」


【鬼柳】LP3200
手札2枚
モンスターゾーン:メンタルスフィアデーモン(攻2700)
魔法・罠ゾーン:なし

【クロウ】LP2600
手札1枚
モンスターゾーン:なし
魔法・罠ゾーン:なし


ク「オレのターン、ドロー!オレは魔法カード『貪欲な壺』を発動!墓地のモンスターを5体デッキに戻して、新たに2枚ドローする!」


貪欲な壺
通常魔法
自分の墓地に存在するモンスター5体を選択し、
デッキに加えてシャッフルする。
その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。


 ちっ、このタイミングで『貪欲な壺』か・・・。確かクロウの墓地には「シュラ、ブリザード、ミストラル、アームズウイング、フェーン」があったな・・・。


ク「永続魔法『黒い旋風』を発動!」


黒い旋風
永続魔法
自分フィールド上に「BF」と名のついたモンスターが召喚された時、自分のデッキからそのモンスターの攻撃力より低い攻撃力を持つ「BF」と名のついたモンスター1体を手札に加える事ができる


ク「さらに、『BF−黒槍のブラスト』を召喚!『黒い旋風』の効果により、デッキから『BF−疾風のゲイル』を手札に加える!さらにゲイル自身の効果によって特殊召喚!さらに、ゲイルの効果により『メンタルスフィアデーモン』のステータスを半減させる!」
鬼「ちっ、メンタルスフィアの効果はモンスター効果には使えねぇ!」


BF−黒槍のブラスト
星4/闇属性/鳥獣族/攻1700/守 800
自分フィールド上に「BF−黒槍のブラスト」以外の「BF」と名のついたモンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

BF−疾風のゲイル
星3/闇属性/鳥獣族/チューナー/攻1300/守 400
自分フィールド上に「BF−疾風のゲイル」以外の「BF」と名のついたモンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。
1ターンに1度、相手モンスター1体の攻撃力・守備力を半分にする事ができる。


メンタルスフィアデーモン ATK2700→1350


ク「まだだぜ!レベル4『黒槍のブラスト』に、レベル3の『疾風のゲイル』をチューニング!!」



―――――――――黒き旋風よ、天空へ駆け上がる翼となれ!



ク「シンクロ召喚!『BF−アーマード・ウィング』!!」


BF−アーマードウィング
星7/闇属性/鳥獣族/攻2500/守1500
「BF」と名のついたチューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードは戦闘では破壊されず、このカードの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる。
このカードが攻撃したモンスターに楔カウンターを1つ置く事ができる(最大1つまで)。
相手モンスターに乗っている楔カウンターを全て取り除く事で、楔カウンターが乗っていたモンスターの攻撃力・守備力をこのターンのエンドフェイズ時まで0にする。


 出やがったか・・・クロウのエースモンスターが!


ク「鬼柳!そいつがお前の切り札ってんなら、こいつがオレの切り札だぜ!」


 ダメージ量だけなら、シンクロせずに2体で攻めてきた方がダメージは大きい。けどそこを抑えてエースモンスターで向かってきやがった。全力で戦うために・・・。


鬼「それでこそクロウだぜ!さあ、来いよ!」
ク「ああ、いくぜ鬼柳!『アーマード・ウィング』で『メンタルスフィアデーモン』を攻撃!!」

 
――――――ブラックハリケーン!!


鬼「ぐあぁぁぁぁぁ!!」


メンタルスフィアデーモン、破壊。
鬼柳LP3200→2050


ク「カードを1枚セットして、ターンエンドだ!」


【鬼柳】LP2050
手札2枚
モンスターゾーン:なし
魔法・罠ゾーン:なし

【クロウ】LP2600
手札0枚
モンスターゾーン:BF−アーマードウィング(攻2500)
魔法・罠ゾーン:黒い旋風、伏せカード×1



 それにしてもやばいな。オレの手札は『デーモンの斧』と『プリズンクインデーモン』のみ。ここでモンスターカードを引かなきゃ、負ける。・・・いや、半端なモンスターで茶を濁すなんて事はできない。逆転の糸口になるようなカード・・・。けど、そんなカードが都合よく引けるってのか?


ク「・・・おい、どうしたんだよ鬼柳!もう降参かよぉ!?」


 クロウ。かつては俺の仲間だった男。こいつを倒さなきゃいけねぇのに・・・。



?「鬼柳さん!!」


 後ろの方から、俺の名を呼ぶ声がした。


ク「ジャック、それに紅か。」
鬼「ジャック・・・紅。」


 そうだ、何を弱気になってるんだオレは・・・。オレにはチームサティスファクションの仲間がいる。遊星、ジャック、それに紅。こいつらのためにも俺は負けられない!


鬼「いくぜクロウ!オレのターンだ!!」


ドロー:『BF−疾風のゲイル』


 !!そうだ、オレの仲間は遊星、ジャック、紅だけじゃない。今オレの目の前にいるクロウは、今でもオレの大切な仲間だ。いつのまにか、クロウをチームと仲間として認識しなくなっちまってたんだな。こんなんじゃリーダー失格だな。


鬼「オレは、『BF−疾風のゲイル』を召喚!」
ク「ゲ、ゲイルだとぉ?!(ここでオレに牙をむくのか・・・ゲイル!)」


●   ●   ●   ●   ●   ●   ●   ●   ●

 数ヶ月前。サテライト争奪戦の真っ只中。治安維持局より、新禁止・制限リストが発表された数日後のことである。

ク「やっぱゲイルと旋風が規制されたのは痛ぇな・・・。ミストラルの枚数増やすか・・・。」
鬼「お、クロウ、デッキ調整してるのか?」
ク「まあな。最近デッキの回りがあまり良くなくってよ・・・。」
鬼「そうか。・・・ん?クロウ、そのゲイルどうしたんだよ?」

 クロウの余りカードの中に『BF−疾風のゲイル』が置いてあった。

ク「ああ、前に制限改訂あっただろ?それでゲイルに規制がかかったからさ・・・。」
鬼「それならよぉ・・・1枚オレに分けてくれねぇか?」
ク「え?いや、別にかまわねぇけど・・・どうするんだ?」
鬼「実は遊星から『ジャンクシンクロン』、ジャックから『ダークリゾネーター』をもらってさ。なんかいい感じに両方「レベル3闇属性チューナー」じゃん?」
ク「あ、わかった!あとはオレの「レベル3闇属性チューナー」さえあれば鬼柳のデッキにはチームメンバーの「レベル3闇属性チューナー」が揃うわけだな?」
鬼「そういうことだ。」
ク「面白そうじゃん!よし、もってけもってけ!そういうことなら喜んで渡すぜ!」
鬼「サンキュ!よし、オレもデッキ調整に取り掛かろうかな。」
ク「お互いがんばろうな!」
鬼「ああ!満足できるデッキを組もうぜ!」

●   ●   ●   ●   ●   ●   ●   ●   ●


鬼「ゲイルの効果発動!アーマードウィングのステータスを半減させる!!」

アーマードウィング ATK2500→1250

ジャ「これでゲイルがアーマードウィングの攻撃力を上回ったか。これで破壊できるな。」
紅「いえ、アーマードウィングには戦闘破壊耐性能力があります。それに・・・。」
鬼「俺は攻撃せずにターンエンドだ。」


 攻撃してもダメージは与えられないし、厄介な楔カウンターを打ち込まれるだけ。ならいっそのこと攻撃しない方がいい。それが俺の考えだ。これが吉と出るか凶と出るか・・・。

【鬼柳】LP3200
手札2枚
モンスターゾーン:BF−疾風のゲイル(攻1300)
魔法・罠ゾーン:なし

【クロウ】LP2600
手札0枚
モンスターゾーン:BF−アーマードウィング(攻1250)
魔法・罠ゾーン:黒い旋風、伏せカード×1


ク「オレのターン!アーマードウィングで、ゲイルに攻撃!」
ジャ「じ、自爆特攻だと?!」


 いや、クロウのこの攻撃は立派な戦術の一つだ。アーマードウィングの効果で戦闘破壊もダメージもない。楔カウンターを打ち込まれるだけ。次のターンに楔カウンターを取り除けばゲイル倒すことができる。さすがクロウだ。何手も先を読んでデュエルをしてやがる。


ク「オレは、カードを一枚セットしてターンエンド。」
鬼「オレのターン、ドロー!!」


ドローカード:貪欲な壺

!よし、いいカードを引いたぜ!


鬼「『貪欲な壺』発動!墓地から『ジェネティックワーウルフ、ゴーズ、サモンプリースト、ローズ、メンタルスフィア』の5体をデッキに戻し、2枚のカードをドローする!」

 オレの手札は『プリズンクインデーモン』と『デーモンの斧』。ここで逆転のカードを引けなきゃ勝ち目はない。正直、どんなカードを引けばいいかなんてわかんねぇ。・・・けど、オレは勝たなきゃならねぇ。




―――――――オレ自身のために!




―――――――俺を信じてくれる仲間・・・遊星、ジャック、紅のために!




―――――――そして、今もオレの仲間であるクロウのために!





鬼「・・・いくぜ!ドロー!!」


ドローカード:アームズホール、大嵐


鬼「オレは魔法カード『大嵐』を発動!互いの魔法・罠カードを全て破壊する!」
ク「っ!!」

大嵐
通常魔法
フィールド上に存在する魔法・罠カードを全て破壊する。


黒い旋風、フェイクフェザー(伏せ)、激流葬(伏せ)破壊。


鬼「さらに、装備魔法『デーモンの斧』発動!」
ク「『デーモンの斧』?だが、いくらゲイルの攻撃力を上げたところで、アーマードウィングを倒すことはできねぇぜ?」
鬼「かまわねぇよ。」
ク「?」

デーモンの斧
装備魔法
装備モンスターの攻撃力は1000ポイントアップする。
このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、自分フィールド上に存在するモンスター1体を
リリースする事でデッキの一番上に戻す。


BF−疾風のゲイル ATK1300→2300


鬼「さらに、魔法カード『アームズホール』発動!デッキトップのカードを墓地に送ることで、デッキ・墓地から装備魔法を一枚選択して手札に加える!」


アームズホール
通常魔法
自分のデッキの一番上のカード1枚を墓地へ送って発動する。
自分のデッキ・墓地から装備魔法カード1枚を手札に加える。
このカードを発動するターン、自分は通常召喚する事はできない


ク「・・・何を狙ってやがる?」
鬼「すぐに分かるぜ。こいつが・・・勝利へのラストピースだ!装備魔法『堕落ーフォーリンダウンー』を発動!アーマードウィングに装備!!」
ク「!!そ、そのカードは!?」


●   ●   ●   ●   ●   ●   ●   ●   ●

―――――半年前。
 つまり、鬼柳が遊星、ジャック、クロウとチームを組む以前。
 この頃から既にサテライト内地区抗争は行われていたが、3人はその戦線から一歩身を引いて、子供達と平和に暮らしていた。たまに襲ってくる輩もいたが、3人のデュエルセンスはこの頃から高かったため、いつしかそんな3人に挑もうとする者はいなくなった。それどころか、そんな3人をチームに入れようとする者まで現れた。しかし、3人はことごとくそれを断わってきた。そんなある日のこと・・・。

鬼「・・・やっと見つけたぜ。不動遊星、ジャック・アトラス、クロウ・ホーガン!」

 3人の前に一人の男・鬼柳京介が現れた。

遊「・・・・・・?」
ジャ「なんだ貴様は?」
鬼「オレの名は鬼柳京介。お前らがサテライト内地区抗争から一歩身を引いてのうのうと暮らしてんのは知ってるぜ?」
ク「だったらどうだって言うんだよ?」
鬼「お前らさ、オレとチームを組まないか?一緒に戦ってサテライトを制覇して満足しようぜ!」

 そんな説明を聞いたとたん、ジャックは深いため息をついた。

ジャ「遊星・・・これで何人目だ?」
遊「・・・16だ。チームで換算すると9組目だな。」
鬼「へぇ・・・そりゃすげぇな。」
ク「・・・今の聞いて分かっただろ?オレたちはサテライト統一なんて夢物語のために、そんな争いごとに付き合う気はない。」
鬼「そうか?お前らがオレのチームに入ってくれれば、十分満足できると思うぜ?」
ジャ「しつこいぞ貴様!このジャックアトラスが“No”と言っているのだ!とっとと帰れ!」
鬼「・・・ま、そんな簡単に“Yes”の答えが返ってくるとは思ってないさ。」
ジャ「何度も言わせるな!用が済んだならとっとと出て行け!」

 ジャックは怒鳴るように言う。しかし、鬼柳はこんなところでは引き下がらない。バッグからデュエルディスクを取り出し、装着する。

鬼「なぁ、この中で一番強いのはどいつだ?」
遊「・・・誰が一番なんて事はない。オレたちの力はほぼ同等だ。」
鬼「なら、3人同時でいいか・・・。お前ら、オレと賭けをしねぇか?」
ク「賭け?」
鬼「オレが勝ったらお前らはオレのチームに入る。万が一俺が負けたら・・・どうしようかな。」
遊「・・・金輪際、オレたちに近づかないと言うならいいだろう。」
ジャ「!おい遊星、本気か?」
ク「こんなもん受ける必要はねぇだろ?!」
遊「いや・・・なんというか、こいつは今までの奴らとは違う。おそらく、OKを出すまでテコでも動かないだろう。なら、デュエルで追い出す方が手っ取り早い。」
ク「なるほどね・・・。」
鬼「よし、交渉成立だな?」
ジャ「・・・で、誰が最初にデュエルするんだ?」

 本来ならここで「じゃあまずはお前だ」などと言う所だろう。しかし、鬼柳はその予想を大きく上回っていた。


鬼「さっきも言っただろ?3人まとめてかかって来いよ!」

 3人は驚きを隠せない。ふいに「この男・・・正気か?」などと言う疑問が頭をよぎる。しかし、それと同時に「3対1なら間違っても負けることはないだろう」と言う考えも頭によぎった。

遊「本当に3対1でいいんだな?」
鬼「ああ、俺の力を見せ付けるならこんくらいしねぇとな。」
ク「・・・後悔するなよ?」
ジャ「・・・さぁ、はじめようか。」


鬼・遊・ジャ・ク「「「「デュエル!!」」」」


鬼柳 LP4000

遊星 LP4000

ジャ LP4000

ク  LP4000


―――――――オレたちが3人でまとめてかかれば、敵わない敵などいない。

 遊星たちはその時までそれを信じて疑わなかった。しかしその考えは大きく覆されることになる。


ク「くっ・・・。」

クロウ LP0

ジャ「そんなばかな・・・このオレが・・・。」

ジャック LP0

遊「なんて・・・強さだ・・・。」

遊星 LP1400

鬼「お前ら・・・そうやってのうのうと暮らしてきたから、堕落しきってんじゃねぇのか?」

鬼柳 LP2200


遊「くっ・・・まだだ!『ジャンクウォリアー』で、『デーモンソルジャー』に攻撃!」


―――――スクラップフィスト!!


鬼柳 LP2200→1800

鬼「へっ・・・遠慮すんなよ?」
遊「く・・・ターン・・・エンド。」
鬼「満足してるか?オレのターンだ。装備魔法『堕落ーフォーリンダウンー』発動!!」


堕落ーフォーリンダウンー
装備魔法
自分フィールド上に「デーモン」という名のついたカードが存在しなければこのカードを破壊する。
このカードを装備した相手モンスターのコントロールを得る。
相手のスタンバイフェイズ毎に、自分は800ポイントダメージを受ける。


鬼「この効果により、『ジャンクウォリアー』のコントローラーはオレに変わる!」
遊「何っ?!」
鬼「さて、これで・・・制覇だ!『ジャンクウォリアー』で、遊星にダイレクトアタック!!」


―――――スクラップフィスト!!


遊「ぐっ!!」


遊星LP1400→0


ク「遊星!」
遊「バカな・・・オレたちが3人がかりで戦っても勝てないなんて・・・。」
鬼「さぁ、約束だ。お前達にはオレのチームに入ってもらうぜ。」
遊「・・・なぜ、それほどの強さを持っていながら、オレたちをチームに入れようとする?お前一人でも十分に戦っていけるだろ?」
鬼「・・・お前ら。何でお前ら3人がオレ1人に負けたか分かるか?」
ジャ「・・・・・・。」
ク「・・・んなもん、実力の差に決まってるだろ?」
鬼「はたしてそうかな?」
遊「どういうことだ?」
鬼「オレとお前らとじゃ、正直そんなに実力に差はねえよ。だが、今何度お前らとやっても、絶対にお前らには負けねぇよ。」
ジャ「そんなことが何故言い切れる?」
鬼「お前らにはハングリー精神が足りねぇんだよ。」
ク「は、ハングリー精神だぁ?」
鬼「お前ら、サテライト内地区抗争から一歩身を引いて、のうのうと暮らしてる現状に満足してないか?」
遊「・・・・・・。」
鬼「正直、そんな甘ちゃんなお前らには絶対に負けねぇよ。」
ジャ「・・・・・・。」
ク「・・・・・・。」
鬼「お前ら。目標とか持ったことないだろ?」 
ジャ「そんなことはない!オレには、遊星を倒すと言う目標がある!」
遊「ジャック・・・!」
鬼「いい目標じゃねぇか・・・。オレの目標は、この腐敗したサテライトを統一することだ。」
ク「サテライトの統一?」
鬼「ああ。あらゆる地区のデュエルギャング共を倒して、サテライトを一つにする。それがオレの目標だ。」

 鬼柳は自分の荷物をまとめる。デュエルディスクを片付け、帰る仕度を終えた。

鬼「・・・まぁ、そこまで嫌ってんなら、無理にとは言わないさ。こんな現状に満足してるような甘ちゃんは俺のチームにはいらないからな。・・・無理にチームに入れようとして悪かったな。」

 そう言い残して、鬼柳はその場を去ろうとする。


鬼「(さて、他をあたるとするか。葵のヤツに他に実力のあるヤツがいないか聞いて・・・。)」
?「おい、ちょっと待てよ!」

 立ち去ろうとする鬼柳をクロウが止める。鬼柳はやや面倒臭そうに振り返る。

鬼「何か用か、クロウ?」
ク「・・・オレの目標は、このサテライトを、ガキ共が安心して暮らせる所にすることだ。」
鬼「・・・そうか。いい目標じゃねぇか。」
ク「サテライトを統一すれば、その目標も果たせるのか・・・?」
鬼「・・・それは、お前自身が考えろ。だが、俺はできると思うぜ。」
ク「そ、そうか。・・・なぁ、鬼柳。オレを・・・」

 クロウが何を言いたいか、鬼柳にはなんとなく分かった。しかし、あえて聞くことにした。

ク「オレを・・・お前のチームに入れてくれ!」
鬼「クロウ・・・!」
?「ならばオレたちもチームに入れてもらおうか。」

 鬼柳はその声のする方向に振り返る。そこには声の主のジャックと遊星が並んでいた。

ク「お、お前ら!」
ジャ「クロウ、お前が1人が仲間に加わったところで、大きな戦力強化はない。」
遊「ただし、オレ達二人が仲間に加われば、話は別だ。そうだったな、鬼柳?」
鬼「ああ!その通りだ!みんなで腹一杯、満足しようぜ!」

 先ほどまでの面倒くさそうな顔とは打って変わって嬉しそうな顔で返事をする鬼柳。こうして、4人は一つのチームとなった。

ジャ「・・・で、チーム名はどうするのだ?」
鬼「・・・やべ、考えてなかった。」
ク「はぁ・・・そんなんじゃ先が思いやられるぜ・・・。」
遊「・・・チーム名・・・。チームサティスファクションなんてどうだ?」
ク「サティス・・・何だって?」
鬼「Satisfaction(サティスファクション)って言えば、『満足』って意味じゃねぇか。」
ク「そうなのか?」
遊「ああ。チームリーダーの鬼柳の口癖である『満足』。そこから取った。」
鬼「オレはもちろん構わねぇけど・・・2人はそれでいいのかよ?」
ジャ「異議なし。」
ク「『噴水広場仲良し連合』じゃだめか?」
遊「・・・クロウ、突っ込まなきゃだめか?」


 まず、噴水広場が存在しないし、名前が長いし、そもそもダサいし・・・と、遊星は指折り突っ込みどころを数えていく。そんな姿を見て、鬼柳は思わず噴き出してしまった。それに釣られ、他の3人も同時に笑い出す。


鬼「よしっ!今日からオレたちは、チームサティスファクションだ!!」


●   ●   ●   ●   ●   ●   ●   ●   ●

ク「・・・・・・。」
鬼「クロウ、これでお前を守るモンスターはいなくなった。これで終わりだ!!」
ク「・・・(鬼柳・・・お前もすっかり変わっちまったな。)」
鬼「バトルだ!ゲイルとアーマードウィングで、ダイレクトアタック!!」
ク「(お前が昔のままだったら、こんなデュエルは起こりえなかったのにな・・・。)」

―――――――ドオォォォォォン!!


ク「ぐあぁぁぁぁぁっ!!」


クロウ LP2600→0



【鬼柳】LP2050
手札1枚(プリズンクインデーモン)
モンスターゾーン:BF−疾風のゲイル(攻2300)、BF−アーマードウィング(攻1250)
魔法・罠ゾーン:堕落ーフォーリンダウンー、デーモンの斧(対象:ゲイル)

【クロウ】LP0
手札0枚
モンスターゾーン:なし
魔法・罠ゾーン:なし



 こうして、二人のデュエルに決着が着きました。鬼柳さんの勝利で。


ク「ううっ・・・鬼柳・・・。」
鬼「ハンパな気持ちで入ってくるなよ・・・デュエルの世界によ!」
ク「くっ・・・じゃあな・・・俺はもうチームの人間じゃねぇ。」

 
 クロウさんは自分のデュエルディスクを取り外して足元に置きました。これは、『もうデュエルはしない』という意思表示なのでしょうか?


鬼「なに・・・クロウお前まだそんなことを・・・」
ク「この気持ちは・・・ただ負けたからじゃねぇよ・・・。」
鬼「く、クロウ?」
ク「つまらねぇ・・・デュエルってこんなにつまらないものだったのかよ・・・」
鬼「おいっ!クロウ!」


 それだけを言い残して、クロウさんは立ち去ってしまいました。

 
鬼「オレたちは・・・チームじゃねぇのか!仲間じゃねぇのかよ?!」
ク「・・・・・・」

ジャ「紅・・・クロウを追いかけてくる。」
紅「ジャック・・・さん。」


 ジャックさんは、小声で僕にそう伝えてから、クロウさんの元に歩み寄っていきました。


鬼「な、ジャック、お前まで?!」


 しかし鬼柳さんには、その光景がクロウさんと同じように、チームサティスファクションから去っていくように見えたようです。必死に止めようとします。


鬼「な、なぁ紅!オレたちはチームだよな?仲間だよな?!」
紅「・・・・・・はい、安心してください。僕はずっと鬼柳さんの仲間でいますよ。」


 今、鬼柳さんの心は二人がチームから抜けていったことで、大きく揺れていると思います。そんな鬼柳さんに救いの手を差し伸べられるのは僕だけ。今は・・・僕だけしかいない。


鬼「・・・オレたちの敵だ・・・なんて言っちまったけど、デュエルすれば・・・デュエルすればまたいつもみたいに笑いあえるって・・・思ってた。」
紅「鬼柳・・・さん。」
鬼「・・・クロウ・・・。」


 鬼柳さんはクロウさんを想い、空を仰いでいます。いつか・・・いつかまた5人で笑い会える日がきっと来ます・・・だから今は・・・。


紅「思いっきり・・・泣きましょう・・・。」


満足決闘伝・鬼柳京介第2話  完




おまけ1

 皆さんこんにちは。『満足決闘伝―鬼柳―』の作者のai fineです。読み方はアルフィーネですが、私の呼び方は、「al fine」でも「アルフィーネ」でも「アル」でも「フィーネ」でも構いません。
 この小説を書き始めたのが確か2009年10月頃。ほんとに書くのが遅いですね。この頃は、鬼柳さんが再登場するなんて思っていませんでした。本当に、再登場してくれて大満足です。思えばリアルでインフェルニティを使い始めたのが去年の7月頃でs


遊「おい、早く本題は入れよ。」


 はい、話が若干逸れてしまいましたね。
 さて、『満足決闘伝―鬼柳―』第1、2話はどうだったでしょうか?個人的には、自分の小説に鬼柳さんを初めとするチームサティスファクションのメンバーが出せて大満足でした。3話は現在執筆中なので少々お待ちください。デュエル内容はある程度考えてあるので、割とすぐにできると思います。


 さて、今回おまけページということで、こんな企画を用意しました。


【第一回・鬼柳京介人気ナンバーワン決定戦】


 企画の詳しい説明は以下の通りです。

・後述の四人の鬼柳さんの中から、一番好きな鬼柳さんを選んでいただいて、「小説感想用掲示板」にて、「私は○○の鬼柳ボーイが好きなのデース!」的なノリで書き込んでください。ついでに、一言でもいいので、小説の感想を書き込んでいただけると光栄です。(任意効果)

・一人一票までです。
鬼(ダークシグナー)「一人で複数のHNを使っての大量投票したヤツはくたばっちまえー!!」

・満足している方も満足していない方も、気軽に投票してください。
鬼(チームサティスファクション)「投票して満足しようぜ!」

・掲示板の都合上、他の人に投票が見えてしまいますが、割り切ってください。

・遊戯王5D's本編を知らない人のために、書くキャラの紹介文を載せておきますが、他のキャラの名前が出ることが多々あります。紹介文は『遊戯王5D'sの登場人物Wikipedia』のテンプレなのでそのキャラが何者か知りたい場合は、そちらをご覧ください。

・投票締め切りは、この小説が掲載されてから一週間後の日曜日23:59とします。


 さて、投票対象となる4人の鬼柳さんはこんな感じになっています。


エントリーナンバー1・・・鬼柳京介(チームサティスファクション時代)

 『満足決闘伝―鬼柳―』における鬼柳さん。使用デッキは【シンクロデーモン】。
【紹介文】
 「満足」が口癖で、サテライトという閉塞された環境の中でも可能な限りの満足を追求し続けていた。3年前、遊星・ジャック・クロウの前に現れ、自らをリーダーとし「チーム・サティスファクション」を結成。本来は情に厚く、何より仲間を大切にする性格だったが、チームによるサテライト制覇を成し遂げた後から変貌してゆく。 サテライトを完全に「支配」する事を目的に、無意味なデュエルギャングの残党狩りを行い続けた結果、クロウに見限られてしまう。
(ここから先の記述は、小説本編のネタバレになってしまうため、自重させていただきます。)


【鬼柳京介(チームサティスファクション時代)名言集】
「どうやったって、オレたちはサテライトから逃げることはできない。だったら、ここで満足するしかねぇ。」

「オレには、小細工なんて必要ねぇ!圧倒的力で、度胸で押しまくってやるぜ!!」

「半端な気持ちで入ってくるなよ・・・デュエルの世界によぉ!」


【人気投票について】
「オレに投票して、満足してくれよ!」



エントリーナンバー2・・・鬼柳京介(ダークシグナー時代)

 とある理由により、元チームサティスファクションメンバーに復讐の念を抱き続けた末路。使用デッキは【インフェルニティ】。

【紹介文】
 遊戯王5D's本編では、遊星と2回デュエルをする。2度目の決闘では「地縛神 Ccapac Apu」を召喚し遊星を追い詰めるが「セイヴァー・スター・ドラゴン」の攻撃を受け敗北。実は誘いを受けた時にもう1つ願いがあり、チーム・サティスファクションの「最後の決闘」をしたかったことが彼の口から明らかにされため、残忍な性格になってからも、仲間を大切にしていたのには変わりなかった模様。紆余曲折はあったものの、最後の最後で願いが叶い、安らかな表情を浮かべ消滅した。


【鬼柳京介(ダークシグナー時代)名言集】
「その行為自体がチームサティスファクションを売ったということだろうが!!」

「ハンドレスコンボの恐ろしさを貴様の骨身に染み込ませてやる!」

「カッコ悪りぃな。こんなんじゃ・・・満足できねぇぜ・・・。」


【人気投票について】
「ヒャーハハハハハ!オレに投票しねぇやつは、地縛神の生贄にしてやんよ!!」



エントリーナンバー3・・・鬼柳京介(死神時代)

 使用デッキは【インフェルニティ】。
【紹介文】
 ダークシグナーとしての記憶を思い出し、デュエルで遊星達を苦しめてしまったことへの後悔の念から、自分のアイデンティティである「満足」を忘れ、死に場所を求めるようになってしまった。
 遊戯王5D'sではデュエルに支配され荒れ果てた町「クラッシュタウン」に流れ着き、ラモンに雇われデュエルを続けていた。やってきた遊星と再び再会し、デュエルをするも、勝利への意欲もデュエルを楽しむ気持ちもなく、自分が遊星に葬られることを望んでいた。


【鬼柳京介(死神時代)名言集】
「忘れちまったぜ・・・満足なんて言葉。」

「遊星。最後の相手がお前なら、オレは満足だ。」

「これでやっと・・・デュエルから解放される。」


【人気投票について】
「どうでもいいな・・・人気投票なんて。」



エントリーナンバー4・・・鬼柳京介(サティスファクション時代)

 なんやかんやで、自身のアイデンティティである「満足」を取り戻した鬼柳さん。使用デッキは【インフェルニティ】。

【紹介文】
 遊星とのデュエル後、マルコムファミリーの策略により遊星、ラモンと共に鉱山へ送られる。遊星により強制的に作業場から脱出するも、鉱山に送られた者達の墓場を目の当たりにし、自分の行いのせいだとショックを受ける。しかし、自分を救いたいというウェストとニコの思い、彼らの父・セルジオの言葉とその犠牲に「生き様を見せてやる」「ニコとウェストを必ず守る」と決意。攫われたウェスト達を救うべく遊星とタッグを組みロットンにデュエルを挑み、勝利する。その後、ニコとウエストと共に、町を建て直すべくクラッシュタウン(サティスファクションタウンに改名)に残った。


【鬼柳京介(サティスファクションタウン時代)名言集】
「オレは再び死神に戻る!やつらを本当の地獄に引きずり降ろしてやる!」

「生きて戦うことで、俺を信じるものに答えていく。それがオレの、新たなるデュエル!」

「この町を復活させるまでは・・・まだ満足できねぇぜ。」


【人気投票について】
「投票してくれたら、サティスファクションタウンの良い土地斡旋(あっせん)してやるよ!」



・・・以上がエントリーした鬼柳さん4人です。作者はチームサティスファクション時代の鬼柳さんに一票入れようと思います。
 それでは、今回はこの辺で失礼しようと思います。『満足決闘伝―鬼柳―』第3話をお楽しみに!







紅「じゃあ、ここに置いておけばいいんですね?」
クロウ「わりぃな、わざわざ運んでもらって。」

 再度こんにちは、見轟紅です。
 今、僕は遊星さんの作った「デュエルテーブル」をクロウさんのアジトに運んでいるところです。
クロウさんのアジトには、何人もの子供が一緒に住んでいるようです。そしてその中には・・・

紅「ところでクロウさん。本当にいいんですか?」
クロウ「ああ。敏之は俺が引き取るよ。」 

 敏之・・・つまり前に鬼柳さんに襲われかけた角井敏之君は、すぐ近くで他の子供達とデュエルしています。

クロウ「それより・・・あれから鬼柳のヤツはどうしてる?」

 そうそう、鬼柳さん!
 アレから一週間。未だに鬼柳さんとは連絡が取れず、行方も分かりませんでした。
 しかし、遊星さんが、昨日デュエルテーブルのテストプレイ中に、鬼柳さんを見かけたそうです。

クロウ「それで・・・鬼柳のヤツは何をしてたんだ?」
紅「いえ・・・遊星さんが話しかける前にどこかへ行ってしまったそうです。」
クロウ「・・・そうか。」

 クロウさんはデュエルをしている子供達を眺めています。

紅「クロウさんって、本当に子供達が好きなんですね。」
クロウ「ああ、まあな。・・・オレがガキ共が好きなように、鬼柳はチームサティスファクションの仲間が大好きだった。・・・それなのに、サテライトを制覇してから変わっちまってよ。」
紅「そうみたい・・・ですね。」

 今まで何度も過去夢に鬼柳さんが出たことがあったけど、どんなときも仲間を優先してきました。前だって、自分の命を省みず遊星さんを助けたり・・・。

クロウ「今では、何か変なモンにとり憑かれたみたいに人が変わっちまってよ。そんな鬼柳に愛想を尽かしちまってな・・・。昔だったら絶対こんなことはなかったのに。」
紅「じゃ、じゃあ・・・」
クロウ「?」
紅「今の鬼柳さんが昔の鬼柳さんに戻ったら、チームに戻ってくれますか?」
クロウ「は?オレにチームサティスファクションに戻れって?」
紅「はい。遊星さんも、ジャックさんも・・・それに鬼柳さんも、クロウさんに戻ってきて欲しいと思っています。」
クロウ「・・・。」
紅「・・・それともクロウさんは・・・チームサティスファクションに戻りたくないんですか?」


クロウ「遊星とジャックとオレは、ガキの頃からつるんでる仲だった。オレたちには・・・親がいなかったからな。」

 そう、鬼柳さんも含め、4人は親の温もりというものを知らない。
 14年ほど前に起こった自然災害「ゼロリバース」。それにより両親がなくなってしまったのだ。

クロウ「親がいないから満足な教育も受けられなかったオレたちだけど、仲間達の支えがあったから今まで生きてこれた。」
紅「・・・クロウさん。」
クロウ「戻りてぇ・・・戻りてぇに決まってんだろ!」
紅「クロウさん。・・・僕が、今の鬼柳さんを昔の鬼柳さんに戻してみせます!」

 そう、昔の・・・仲間想いな鬼柳さんに・・・。

クロウ「・・・わかった。もし鬼柳が昔みたいなヤツに戻ったら・・・。」
紅「その時は、チームに戻ってきてくれますか?」
クロウ「ああ、約束する。」

子供達「クロウにーちゃん!」「あそぼうよ〜!」「クロウにいちゃ〜ん!」

クロウ「おお、今行く!・・・じゃあ、わりぃな紅。」
紅「いえ、僕も帰ります。」
クロウ「―――んだぞ。」
紅「えっ?」

 クロウさんは早速デュエルテーブルを使って、子供達とデュエルするそうです。長居は無用。僕も帰ろう。


―――――――頼んだぞ。

 クロウさんは確かにそう言っていた。・・・そうだ。僕が頑張らないと。

紅「・・・クロウさん・・・絶対戻ってきてくださいね。」

 あの時、言った本人しか聞き取れない程度の小さな声でそう呟いていた。


第3話 デスマッチと空飛ぶデュエルディスク 

鬼柳「・・・なぁ、紅。」
 
 デュエルテーブルを届けて数日後、ようやく鬼柳さんからの連絡で、チームサティスファクションのアジトに来ました。
ここは海が見えて、ギリギリ雨も防げるし、何より敵からの襲撃に素早く対応できるので、チームメンバーは皆気に入っているそうです。もっとも、ここに住んでいるのは鬼柳さんだけみたいですが。
 
鬼柳「・・・おい、紅。聞いてるのか?」
紅「あ!はい、何ですか?」

 おっと、いけないいけない。アジトの事でボーっとしてしまった。

鬼柳「いい加減そんなダサいジャケットはやめて、ノースリーブ着ろよノースリーブ!!」

 ノースリーブって・・・。セクハラです、鬼柳さん。

鬼柳「正式メンバーになったらオレ達とお揃いのこのジャケットを着てもらうんだからな!」
紅「はい、早くそのかっこいいジャケット着たいので頑張りますけど・・・。」

 ところで、ジャケット・・・つまり『満足ジャケット』って、巷じゃあまり評判が良くないみたいですね。
 実際、クロウさんも「ダサい格好」って言ってたし、遊星さんもあまりよくは思ってないみたいです。ジャックさんは「どうでもいい」そうですけど。何でいやなんだろう。こんなにかっこいいのに・・・。
 ちなみに、みんなが「ダサい格好(僕的にはすごくかっこいい)」という鬼柳さん流のファッションのことを「サティスファッション」と言うそうです。

紅「ところで、今日呼び出したのってジャケットの話をするためですか?」
鬼柳「おっ、そうだった。そんなことよりも・・・」

 やっぱり違うんですか。

鬼柳「アレから一人で歩き回ってみたんだが、オレたちを倒そうとするギャングはもう残ってねぇみたいなんだ。」
紅「へぇ。」

 鬼柳さんは「この程度でおしまいなんてつまらない連中」なんて呟いてますけど、僕は内心ホッとしています。もう無駄な争いはしなくて済みそうです。

鬼柳「そこでより大きな満足を求めて、オレは次の段階に進むことにした。」

 ヒョ?

鬼柳「俺に歯向かうギャングがいなくなったとしても、このサテライトには、まだ強大な集団がある。なんだか分かるか?」

 ・・・なんかすごく嫌な予感がしてきた・・・。

紅「わ・・・わかりません。」

 実際、予想はできましたが、できれば違っていて欲しい。そ、そうだよ。まさか僕なんかの予想が当たってるわけが・・・。

鬼柳「セキュリティの連中だ。」

 プギャ〜。当たってしまった。

紅「ほ、本気ですか、鬼柳さん?!」
鬼柳「あたりまえだろ!あいつらを潰せば、オレたちは名実共にサテライトに君臨できる!」

 だ、ダメだ、コイツ・・・早く何とかしないと!

鬼柳「そして、きっとクロウも戻ってきてくれるはずだ」
紅「!」

 クロウさん・・・。そうだ。僕がしっかりしないと。なんとか鬼柳さんを昔のような仲間思いな鬼柳さんに戻さないと。
・・・そのためには。

紅「わ・・・わかりました。」
 
 鬼柳さんと共に戦って、鬼柳さんの心中を探らないと。

鬼柳「さすが紅だ、話が分かる!さぁいくぜ、紅!」

 正直かなり怖いけど、そのためにはセキュリティに歯向かう形になるかもしれない。 

鬼柳「新たな満足を求めて出発だ!」

 鬼柳さんは屋上から飛び降りる形でアジトを後にしました。ちなみに、地面までの距離はおよそ10メートル。うん、僕は普通に階段から行こう。



【PM2:35 サテライト J地区・サテライト広場】

鬼柳「さすがに、人数も規模もギャング共とは違うからな。」
紅「あれ?本部に乗り込みに行くんじゃないんですか?」

 僕は自分でも無茶だと思うことを口走ってしまった。流石の鬼柳さんでも・・・いや、鬼柳さんならやりかねない。

鬼柳「いや、流石にそれはな・・・。」

 あ、ですよね。流石の鬼柳さんでも、そこまでは考えてませんよね。

鬼柳「確かにちょっと考えたけどさ。」

 前言撤回。やっぱり鬼柳さんは鬼柳さんだ。

鬼柳「かといって、パトロールしてるやつを片っ端から潰していくんじゃ手間がかかるしな。」

 ちなみに、セキュリティ本部とはサテライト勤務のセキュリティたちが仕事をしている所のことをいいます。
その仕事の一つ・・・というかメインがサテライトの治安を守るためのパトロール・・・という訳です。

鬼柳「効率よくやるにはどうしたらいいか・・・。」
紅「他には何か考えてるんですか?」
鬼柳「ん?ああ。その中で一番手っ取り早いのが『本部の爆破』なんだけどな。」

 は?今なんと?

紅「あの、鬼ry」

少女「ああ怖かった。」
少年「ど、どうしたの?」

 不意に子供達の話し声が聞こえたので、僕たちはそれに耳を傾ける。

少女「うん、実はね・・・。」

 あ、どうやら少女の回想シーンに入るようです。


●   ●   ●   ●   ●   ●   ●

 こんにちは、河合都です。女の子です。すごく若いです。
 そのとき猫のタマ・・・あ、シロだったかな?あ、ごめん、やっぱりエドワードで。そのフランソワと海岸辺りで遊んでたんだけどね。

男「なんだ貴様らは?!」
セキュリティ男「私はセキュリティの本田ジョージだ。」

 本田…本田…あ、この人あの本田ヒロトとの甥っ子だ。知らない人はコミックの4巻を見てね☆

セキュリティ女「それと〜、ダーリンの未来のお嫁の〜加藤愛で〜す(愛)」
男「そのセキュリティがこのオレに何のようだ?」
ジョージ「チームサティスファクションのジャックアトラスだな?お前に逮捕状が出ている。一緒に来てもらおう。」
ジャック「何ッ?!」

 ジャックと呼ばれる金髪長身で将来は優秀なニートになりそうな顔をしたお兄ちゃんが、セキュリティの人に取り押さえられちゃったの。

ジャック「やめろ!この頃のオレはまだ割と大人しいのだぞ?!」
ジョージ「何を訳の分からないことを言っている?ほら、抵抗はやめろ。」
ジャック「MA☆TTE!!」

 いきなりジャックがセキュリティの男の人の顔を殴ったの!
 けど、超合金製のヘルメットをかぶってるセキュリティに殴っても意味ないのにね。全く愚かだよ。当然殴った右手からは血がたくさん出てたよ。

ジャック「グッ・・・何をするのだ貴様ァ?!」
ジョージ「いや、自分から殴りかかってきたんだろ?」

 その後もその人たちはずっと言い合いを繰り返してたの。

●   ●   ●   ●   ●   ●   ●


少年「それで、どうなったの?」
都「うん、私も巻き込まれそうになったから、猫をけしかけて逃げてきちゃった。」
少年「ところで、将来ニートになりそうな顔ってどんな顔なの?」
都「え?う〜んとね・・・」


鬼柳「・・・おい、聞いたか?いまの。」
紅「はい。ジャックさんが危ないみたいですね。」
鬼柳「ジャックの奴・・・将来はニート・・・なのか?」

 え?着眼点そっちですか?

鬼柳「大丈夫だぜジャック!俺がお前を養ってやるからな!」

 鬼柳さん。それじゃ発想がリーダーを通り越して母親です。

紅「ていうか鬼柳さん!そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。」
鬼柳「わかってるよ。どうやらセキュリティの大規模な手入れが始まったみたいだな。」
紅「そうなんですか?」
鬼柳「おそらくな。もしかしたら、俺のセキュリティ襲撃計画が漏れちまったのかもしれねぇな。」

 セキュリティ襲撃計画・・・。つまりはさっき言ってたセキュリティを倒して新のサテライト制覇をするという計画・・・。

紅「っていうか、そんなことより早く行かないとジャックさんが!」
鬼柳「ああ、とっとと行くぞ!!」

 僕らは海岸のジャックさんの元に向かうことにした。

鬼柳「待ってろよ、ジャック!今助けに行くからな!!」
























――――――――――これが、セキュリティの仕掛けた罠であると分かるのは少し先の話である。



【PM2:55 サテライト W地区・海岸】

ジャック「クソッ! 放せっ!」
 
 海岸に着くと、セキュリティの男の方に捕まりながらも必死にもがいているジャックさんがいました。でも…なんだろう。何か違和感を感じる。

ジョージ「往生際が悪いな。おとなしくするんだ!私がお前を・・・更生させてやる!」
愛「私達だって〜手荒なことはしたくないんですよ〜。あなただって〜無駄に痛い目はしたくないでしょ〜?」
ジャック「クッ・・・」
鬼柳「ジャック!!」
紅「ジャックさん!」
ジャック「鬼柳!紅!すまん、見ての通りだ。オレとしたことが、不意を突かれて不覚を取った。」

 どうやらジャックさんはジョージという男のセキュリティ一人の力によって抑えられているようです。愛という女のセキュリティはというと・・・ジョージさんの右腕に両手を絡めています。わぁ〜、カップルっていいな…じゃなくて、あれじゃジャックさん捕らえる上で不便でしょ。

鬼柳「ジャック!!」
紅「ジャックさん!」
ジャック「鬼柳!紅!すまん、見ての通りだ。オレとしたことが、不意を突かれて不覚を取った。」
鬼柳「そこのセキュリティ共!今すぐジャックを解放しろ!」
ジョージ「そう言われても解放するわけにはいかない。」

 まぁ、そうですよね。

鬼柳「だったら、力ずくで取り返すまで!ちょうど2人ずつだし、タッグデュエルだ!!」
ジョージ「そう言われてデュエルするわけには・・・」
鬼柳「そらっ!」

 鬼柳さんは毎度お馴染みの『満足手錠』を投げかけます。流石は鬼柳さん!セキュリティ相手でも容赦ないですね。ハウンドドッグコンビの時と同じく二人分のようです。

愛「キャッ(驚)?!」

 (驚)って何ですか?

ジョージ「おおっ?!こ、このロープは?!」
鬼柳「デスマッチ用のロープだ。負けた方のデュエルディスクに大電流が流れて・・・爆発する!」

 そうなったらしばらくは動けなくなると鬼柳さんは付け足しました。流石に彼らもこれは想定外のようです。

愛「ええっ…(焦)どうしようダーリン…(恐)」
ジョージ「だ、大丈夫だよハニー。」

 だ、ダーリンッ?!ま、まさかこの二人、現在は既に絶滅したと言われていた「ダーリン&ハニー」と呼び合うカップルですか?!やばい…カメラ持ってこればよかった…。
 
鬼柳「さぁ、これでいやでもタッグデュエルにつきあってもらうぜ!」
ジョージ「くっ!なんという危険な真似を!はやまるんじゃない!」
鬼柳「オレたちが負けるかよ!病院送りになるのはそっちだぜ!準備はいいか、紅!」
紅「!はい、じゅ、準備できてましゅ!」

 やば!あまりの驚きに噛んでしまいました、恥ずかしい。・・・そうだ。クロウさんの時と違って今回はタッグデュエル。つまり僕もやるんだった。それも実力はハウンドドッグの数段上。気を引き締めて戦わないと。

鬼柳「よし、それじゃあとっとと始めようか。」

 鬼柳さんもデュエルディスクも起動しました。

鬼柳「オレを・・・満足させてくれよ!」



「「「「デュエル!!」」」」


鬼柳・紅LP4000

ジョージ・愛LP4000


鬼柳「オレのターン!オレは『ブラッドヴォルス』を攻撃表示で召喚してターンエンドだ!」


ブラッドヴォルス
星4/闇属性/獣戦士族/攻1900/守1200
悪行の限りを尽くし、それを喜びとしている魔獣人。
手にした斧は常に血塗られている。


【鬼柳・紅】LP4000
手札:5枚・5枚
モンスターゾーン:ブラッドヴォルス(攻1900)
魔法・罠ゾーン: なし

【ジョージ・愛】LP4000
手札:5枚・5枚
モンスターゾーン:なし
魔法・罠ゾーン:なし


 鬼柳さんの初ターンは『ブラッドヴォルス』のみ。効果なしで伏せカードもなくて多少心細いけど、攻撃力1900は簡単に打ち破ることはできないはず…。

ジョージ「私のターン。…よし、『剣闘獣 エクイテ』を攻撃表示で召喚!」


剣闘獣(グラディアルビースト) エクイテ
星4/風属性/鳥獣族/攻1600/守1200
このカードが「剣闘獣」と名のついたモンスターの効果によって特殊召喚に成功した時、
自分の墓地から「剣闘獣」と名のついたカード1枚を選択し手札に加える。
このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時にこのカードをデッキに戻す事で、
デッキから「剣闘獣エクイテ」以外の「剣闘獣」と名のついたモンスター1体を
自分フィールド上に特殊召喚する。


 なっ?!ぐ、剣闘獣(グラディアルビースト)?!アレって確か、希少価値こそ高くないけど、その強さから2008年度のワールドチャンピオンシップで優勝した事で有名な…?!

鬼柳「【剣闘獣】…そいつがお前のデッキってわけか。だが、攻撃力は『ブラッドヴォルス』の方が上だぜ?」

 って、鬼柳さん、それ死亡フラグですって!

ジョージ「私は装備魔法『剣闘獣の闘器 マニカ』を『エクイテ』に装備!」

 ほら、言わんこっちゃない。それで、その『マニカ』の効果は…


剣闘獣の闘器 マニカ
装備魔法
「剣闘獣」と名のついたモンスターにのみ装備可能。
このカードを装備している限り、装備モンスターは
戦闘によっては破壊されない(ダメージ計算は適用する)。
装備モンスターが自分フィールド上からデッキに戻る事によって
このカードが墓地へ送られた時、このカードを手札に戻す。


 え?戦闘で破壊されなくなるだけ?

ジョージ「バトル!『エクイテ』で、『ブラッドヴォルス』を攻撃!」
鬼柳「な?!迎え撃て、『ブラッドヴォルス』!」


―――――ブラッディ・アックス!!


ジョージLP4000→3700


ジョージ「『マニカ』の効果によって『エクイテ』は破壊されない!さらに『エクイテ』の効果発動!」

 あ!そっか、この人の狙いは剣闘獣の効果の発動!

ジョージ「『エクイテ』は効果によりデッキに戻り、その装備魔法である『マニカ』は手札に戻る。そして『エクイテ』の効果により、『剣闘獣 ムルミロ』を特殊召喚!」


剣闘獣 ムルミロ
星3/水属性/魚族/攻 800/守 400
このカードが「剣闘獣」と名のついたモンスターの効果によって
特殊召喚に成功した時、フィールド上の表側表示モンスター1体を破壊する。
このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時に
このカードをデッキに戻す事で、デッキから「剣闘獣ムルミロ」以外の
「剣闘獣」と名のついたモンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。


ジョージ「『ムルミロ』の効果!剣闘獣の効果によって特殊召喚された時、表側表示のモンスター1体を破壊する!この効果により、『ブラッドヴォルス』を破壊する!」

ブラッドヴォルス、破壊

 そう、これが剣闘獣の脅威。ただ単に通常召喚されるだけなら通常モンスターと変わらないけど、他の剣闘獣の効果によってデッキから特殊召喚することにより、恐ろしい特殊能力を発揮する。例えば今出た『ムルミロ』。バトルフェイズに破壊できなかった上級モンスターや『マシュマロン』などのやっかいな戦闘耐性モンスターを処理したりもできます。


ジョージ「再び『剣闘獣の闘器 マニカ』を『ムルミロ』に装備。カードを2枚セットしてターンエンド。」


【鬼柳・紅】LP4000
手札:5枚・5枚
モンスターゾーン:なし
魔法・罠ゾーン: なし

【ジョージ・愛】LP3700
手札:2枚・5枚
モンスターゾーン:剣闘獣ムルミロ(攻800)
魔法・罠ゾーン:剣闘獣の闘器マニカ、伏せカード×2


 さて・・・今度はいよいよ僕のターンである。ミスは許されない・・・。鬼柳さんやジャックさん。今は亡きクロウさんのためにも!(死んでねぇっての。byクロウ)

紅「僕のターン!まずは『魔轟神 ガルバス』を召喚!」

 僕の使用するモンスターは「魔轟神」と呼ばれる光属性・悪魔族のモンスター群。これらは手札に関連する効果が多いです。当然『ガルバス』も。

紅「『ガルバス』の効果!手札1枚をコストに、『ムルミロ』を破壊します!」


魔轟神 ガルバス
星4/光属性/悪魔族/攻1500/守 800
手札を1枚墓地へ捨てて発動する。
このカードの攻撃力以下の守備力を持つ、
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を破壊する。


ジョージ「甘いな。カウンター罠発動!『剣闘獣の戦車』!!この効果により、そのモンスターを破壊する!」
紅「な?!」


剣闘獣の戦車
カウンター罠
自分フィールド上に「剣闘獣」と名のついたモンスターが表側表示で存在する場合に発動する事ができる。効果モンスターの効果の発動を無効にし破壊する。


 つまりは剣闘獣専用の『天罰』…!


魔轟神 ガルバス効果、無効・破壊。

紅「ま、まだです。『ガルバス』の効果で『魔轟神 ルリー』を捨てました。よって、『ルリー』を特殊召喚!」


魔轟神ルリー
星1/光属性/悪魔族/攻 200/守 400
このカードが手札から墓地へ捨てられた時、
このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。


 もうやることはないからターンを終了させなきゃいけない。…けど、これはタッグデュエル。つまり、自分のカードをセットすれば、パートナーにそれを使わせることができる・・・。ちょっとリスクはあるけど…

紅「僕はカードを3枚セットして、ターンエンド!」
ジョージ「3枚?!」


【鬼柳・紅】LP4000
手札:5枚・1枚
モンスターゾーン:魔轟神ルリー(守400)
魔法・罠ゾーン:伏せカード×3

【ジョージ・愛】LP3700
手札:2枚・5枚
モンスターゾーン:剣闘獣ムルミロ(攻800)
魔法・罠ゾーン:剣闘獣の闘器マニカ、伏せカード×1


愛「私のタ〜ン。アハ(嬉)私は〜『白魔導士ピケル』ちゃんを〜攻撃表示で召喚しま〜す(愛)」

 『ピケル』…?って、あの『ピケル』…?


白魔導士ピケル
星2/光属性/魔法使い族/攻1200/守 0
自分のスタンバイフェイズ時、自分のフィールド上に存在する
モンスターの数×400ライフポイント回復する。


 『ピケル』といえば割とあっち系の男性が好きなカードだけど、一応女性だってこういうカードを使う人はいる。…そういうことなのかな?


愛「あ〜、ピケルちゃん可愛過ぎるわ〜(萌)」


 前言撤回。この人もあっち系の男性と一緒みたいです。いや、ある意味こっちの方が問題かも…。


愛「バトルしま〜す(楽)『ピケル』ちゃんで〜、そのちっちゃい子を攻撃しま〜す(萌)」
紅「リバースカードオープン!『聖なるバリア―ミラーフォース―』!!」
愛「や〜ん(焦)ダ〜リ〜ン、助けて〜(泣)」
ジョージ「当然だ。リバースカードオープン!『魔宮の賄賂』!」
紅「・・・。」


聖なるバリア―ミラーフォース―
通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
相手フィールド上に存在する攻撃表示モンスターを全て破壊する。


魔宮の賄賂
カウンター罠
相手の魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。
相手はデッキからカードを1枚ドローする。


チェーン1:聖なるバリア―ミラーフォース―
チェーン2:魔宮の賄賂

ミラーフォース、不発。
紅:手札1→2


 結果的に『ルリー』は破壊されてしまった。


愛「ありがと〜、ダ〜リ〜ン(喜)これからも私の可愛いピケルちゃんを守ってね〜(頼)」
ジョ「フッ、任せておけ、ハニー。君の可愛いピケルちゃんは私が守る!」


鬼柳「ちっ…これだから女って人種は嫌いなんだよ…。」

 え?鬼柳さん?

鬼柳「勝つことよりとにかく好きなカードばかりで戦う。俺はああいう半端な気持ちで勝負の世界に踏み込んでくる奴が大嫌いなんだ。」
紅「でも、女性がみんなそういう人ってわけじゃありませんよ?」

 実際この小説の作者だって、ネタデッキばっか使ってますし。(大会を除いて)

鬼柳「わかってるよ。ただそう言う人種が女に多いってだけのことさ。そうでなくても、基本的に女って人種は嫌いだけどな。」
紅「そう…ですか。」


愛「デュエル続けますよ〜?ダ〜リンのお魚さんで〜ダイレクトアタ〜ック(楽)」

 あ、デュエル中でした!
 さっきの『魔宮の賄賂』の時点で彼らの伏せカードは尽きた…。ということは、このカードが無効化されることは無い…。またカウンターカードを伏せられる前に、使えるだけ使っておこう。


紅「『ガードブロック』!ダメージを0にして、カードを1枚ドローします!」


ガードブロック
通常罠
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。


紅:手札2→3


愛「カ〜ドを2枚セットして〜タ〜ンエンドで〜す(楽)」


【鬼柳・紅】LP4000
手札:5枚・3枚
モンスターゾーン:なし
魔法・罠ゾーン:伏せカード×1

【ジョージ・愛】LP3700
手札:2枚・3枚
モンスターゾーン:剣闘獣ムルミロ(攻800)、白魔導士ピケル(攻1200)
魔法・罠ゾーン:剣闘獣の闘器マニカ、伏せカード×2


 さて、次は鬼柳さんのターン。今僕たちの場にあるのは『貪欲な壺』1枚のみ。ここで逆転の糸口を掴まないとまずいような気がします。


紅「鬼柳さん…。」
鬼柳「…大丈夫だ、紅。いくぜ、オレのターン!!」


ドロー:ジャンクシンクロン


鬼柳「……きたか。よし、まずは『ハリケーン』を発動!」
愛「残念でした〜(笑)『魔宮の賄賂』〜(笑)」


 またですか。おぬしも悪よのぉ。セキュリティなのに。


ハリケーン
通常魔法
フィールド上に存在する魔法・罠カードを全て持ち主の手札に戻す。

チェーン1:ハリケーン
チェーン2:魔宮の賄賂

ハリケーン、不発。
鬼柳:手札5→6


鬼柳「ならオレは、『サイバードラゴン』を特殊召喚!!」


サイバードラゴン
星5/光属性/機械族/攻2100/守1600
相手フィールド上にモンスターが存在し、
自分フィールド上にモンスターが存在していない場合、
このカードは手札から特殊召喚する事ができる。


 『サイバードラゴン』…!昔、プロデュエリストの「カイザー」こと丸藤亮が愛用していたといわれているカード…!希少価値はそこまで高くないのに、どんなデッキにも入る凡用性をもっている。


鬼柳「さらにオレはチューナーモンスター『ジャンクシンクロン』を召喚!」


ジャンクシンクロン
星3/闇属性/戦士族/チューナー/攻1300/守 500
このカードが召喚に成功した時、自分の墓地に存在する
レベル2以下のモンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する事ができる。
この効果で特殊召喚した効果モンスターの効果は無効化される。


 …!遊星さんのカード…!


ジョージ「なるほど。レベル5の『サイバードラゴン』とレベル3のチューナーをシンクロさせて、上級シンクロモンスターを呼ぶ気だな…。なかなかやるじゃないか…。」
鬼柳「…そいつはどうかな?」
ジョージ「何?」
鬼柳「オレは『ジャンクシンクロン』の効果により、『魔轟神ルリー』を特殊召喚!」

 僕の墓地から『ルリー』が復活しました。…つまり、こいつも素材にする…ということでしょうか。


鬼柳「見せてやるよ…オレの切り札を!レベル5の『サイバードラゴン』をレベル1の『魔轟神ルリー』に、レベル3の『ジャンクシンクロン』をチューニング!!」


 レベルは…9!!




――――――――破壊神より放たれし聖なる槍よ、今こそ魔の都を貫け!!




鬼柳「シンクロ召喚!現れよ!」





―――――――氷結界の龍トリシューラ!!





【鬼柳・紅】LP4000
手札:4枚・3枚
モンスターゾーン:氷結界の龍 トリシューラ(攻2700)
魔法・罠ゾーン:伏せカード×1

【ジョージ・愛】LP3700
手札:2枚・3枚
モンスターゾーン:剣闘獣ムルミロ(攻800)、白魔導士ピケル(攻1200)
魔法・罠ゾーン:剣闘獣の闘器マニカ、伏せカード







ーーーーーオレがこのカードを手に入れたのは、今から10年くらい前の事だ。

『ーーーーーねぇ、このカード、うけとってくれる?』

 オレがこの人生で好意を持った唯一の女性。それが彼女だ。

 まぁ女性と言っても、その時の彼女はまだ幼かったから、「女性」というより「女の子」という表現の方が正しいだろう。

 名前も聞けないまま遠くへ行ってしまったあの娘。

 このカードを手にする度、彼女がオレに対して発した最後の言葉がオレの中で反芻される。

 サテライトとシティが一つにでもならない限り、もう二度とあの娘と会う事はできないだろう。

 …だが、こいつと共に戦い続ければ、いつでもあの娘は側にいてくれる。そんな気がする。

 だからオレは戦い続ける。こいつと共に。仲間と共に。

鬼柳「さぁ、オレ達と満足しようぜ!トリシューラ!!」

 思い出のカード『氷結界の龍トリシューラ』は、オレの声に呼応するように大きく嘶(いなな)いた。


第4話 トリシューラの鼓動


紅「トリ……シューラ?」

 こんな巨大なドラゴンは過去夢でも見たことがない。確か『氷結界』シリーズのシンクロモンスターはかなり希少価値が高いはず。それに……なんで鬼柳さんがそのカードを…?!

鬼柳「いくぜ!オレは『氷結界の龍トリシューラ』の効果を発動する!」

 トリシューラの三ツ首の各口から氷が吐き出され、それぞれが金・銀・鉄の槍として形成される。


氷結界の龍 トリシューラ
星9/水属性/ドラゴン族/シンクロ/効果/攻2700/守2000
チューナー+チューナー以外のモンスター2体以上
このカードがシンクロ召喚に成功した時、相手の手札・フィールド上・墓地のカードをそれぞれ1枚までゲームから除外する事ができる。


鬼柳「歴史上のトリシューラってのは、シヴァが操る先端が3つに分かれた槍の名前だそうだ。その昔、シヴァは悪魔の都市である「金で出来た都市」「銀で出来た都市」「鉄で出来た都市」をトリシューラによって焼き尽くしたという。」

 これはなかなか有名な伝説だそうです。その後、トリシューラと呼ばれたその槍の先端は悪魔の都市の力を吸収し、それぞれ金・銀・鉄になったとかならなかったとか。『氷結界の龍 トリシューラ』もその力を持っているらしいです。


ジョージ「・・・。」

 男の方のセキュリティがチラッと女の方のセキュリティに視線を送りました。そして、2人は視線を交えました。

愛「リバ〜スカ〜ドオ〜プン。『和睦の使者』〜(楽)」
鬼柳「…ちっ、知ってやがったか。」


和睦の使者
通常罠
このカードを発動したターン、相手モンスターから受ける全ての戦闘ダメージは0になる。このターン自分のモンスターは戦闘では破壊されない。


 トリシューラの効果は効果解決時に除外するカードを決めるため、対象を取らない。つまりトリシューラの効果発動時にチェーンしなければならない。トリシューラは珍しいカードだから、こんな細かいこと知らないと思ってたけど…。


チェーン1:氷結界の龍 トリシューラ
チェーン2:和睦の使者


鬼柳「仕方がねぇ。オレは、手札からは真ん中のカードを、フィールドからは『剣闘獣 ムルミロ』を、墓地からは『剣闘獣の戦車』を除外する!」



―――――――――――トライデントブリザード!!



 3本の槍はそれぞれ手札・墓地のカード、それからセキュリティ達の場の魚を貫きました。



手札:戦士 ダイグレファー→除外
場:剣闘獣ムルミロ→除外
墓地:剣闘獣の戦車→除外
場:剣闘獣の闘器 マニカ→対象不在により破壊


愛「きゃ〜(喜)ダ〜リンとアイコンタクトしちゃった〜(喜)」
ジョージ「フフッ、アイコンタクトをしてしまったね。」
愛「ウフフ(喜)」
ジョージ「フフッ。」
紅「・・・」

 二人は先ほどの瞬間的なアイコンタクトとは比べ物にならないほど長い時間、お互いに見つめ合っています。

鬼柳「カードを2枚セットしてターンエンドだ。」
愛「ウフフフフフフフ(大喜)」
ジョージ「フフフフフフッ。」

 完全にあっちの世界へ行ってらっしゃる…。ダメだこいつら…早くなんとかしないと…。今のうちに状況を確認しておこうかな。


【鬼柳・紅】LP4000
手札:2枚・3枚
モンスターゾーン:氷結界の龍 トリシューラ(攻2700)
魔法・罠ゾーン:伏せカード×3

【ジョージ・愛】LP3700
手札:2枚・2枚
モンスターゾーン:白魔導士ピケル(攻1200)
魔法・罠ゾーン:なし


 このターンは『和睦の使者』の効果で攻撃はできなかったけど、鬼柳さんの『トリシューラ』のおかげで、大量のアドバンテージを獲得することが出来ました。…ところで、あのセキュリティの手札から除外されたカードは一体なんだったんでしょう…?

愛「ダ〜リ〜ン(悲)またあの変態野郎があたしのデッキに紛れ込んでたよ〜(泣)」
ジョージ「ムッ、またあいつはハニーのデッキに紛れ込んでいたのかい?全くあいつは・・・。でもさっきの除外効果の身代わりになってくれたと思えば少しは好感度が上がらないかい?」
愛「え〜、でもあたしにはダ〜リンだけ居ればいいも〜ん(愛)」
ジョージ「フフッ、私にもハニーさえいれば他には何もいらないよ。」
愛「ダ〜リン、ヘルメット越しでもそのパーシアス並のカッコいい顔が目に浮かぶよ〜(浮)」
ジョージ「フフ、私がパーシアスならば、ハニーはドリアードといった所かな?」
愛「ウフフ(愛)」
ジョージ「アハハ!」
紅「・・・あの、いい加減にターンを始めてくれませんか?」

 そろそろこの展開にもこりごりです。主に作者が。

ジョージ「私のターン、ドロー。スタンバイフェイズに『白魔導士 ピケル』のモンスター効果を発動。」


―――――マジカルヒール!


ジョージLP3700→4100


白魔導士 ピケル
星2/光属性/魔法使い族/効果/攻1200/守 0
自分のスタンバイフェイズ時、自分のフィールド上に存在するモンスターの数×400ライフポイント回復する。


 ピケルのライフ回復能力っ…!場のモンスターの数が少なければ脅威にはならないけれど、モンスターゾーンが埋まった状態にまで達してしまうと、その能力はバカにならない。なるべく早いうちに破壊しないと後で大変な事になりかねません…。

ジョージ「フッ、これは良いカードを引いた。さっそく発動させてもらう事にしよう。」

 何をドローしたかはわかりませんが、この状況を打開できるカードのようです。…正直、こちらの陣形は『トリシューラ』を破壊された時点でかなりヤバくなりそうですね…。除去系のカードでなければ良いけど…。

ジョージ「私は手札より、魔法カード発動。『休息する剣闘獣』!私の手札は『剣闘獣ディカエリィ』と『剣闘獣セクトル』!『休息する剣闘獣』の発動条件を満たしているので、その効果を発動!!」

 『休息する剣闘獣』…?あのカードは確か「手札の「剣闘獣」と名の付くカード2枚を手札に戻すことで3枚ドローできる」手札入れ替えの魔法カード…。けど、あくまで手札を入れ替えるだけだからそこまで脅威にはならないはず。


【鬼柳・紅】LP4000
手札:2枚・3枚
モンスターゾーン:氷結界の龍 トリシューラ(攻2700)
魔法・罠ゾーン:伏せカード×3

【ジョージ・愛】LP4100
手札:5枚・2枚
モンスターゾーン:白魔導士ピケル(攻1200)
魔法・罠ゾーン:なし


紅「…っ?!手札が…5枚に増えてる…?!」

 そんな?!効果の把握間違い?!いや、そんなはずはない!だって実質ノーコストで3枚ドローなんて強化版「強欲な壺」がありえるはずが…?!

ジョージ「フッ。そんなに不思議かい?私の手札が5枚に増えているのが…?」

 !考えていたことを読まれたのは癪だけど、今はそんなことを言ってる場合じゃない。

紅「一体…何をしたって言うんですか?」

 まさか…いかさま?!だって、この小説は「決◯学園!」じゃないから、「デュエ○スト能○」は存在しないはずだし…。

ジョージ「もちろん…「デュ○リスト○力」じゃないよ。そもそも、私はとっくに成人してしまっているからね。」

 じゃあ何で…やっぱりイカサマ?けど、それならデュエルディスクから警告音が鳴るはず…。

鬼柳「なるほど…そいつが噂に聞く<エラーカード>って奴か…。」
紅「エラー…カード…?」
ジョージ「ほぅ…サテライト住民がよく知っているな。」
鬼柳「現物を見るのはこれが初めてだがな。ある奴から話だけは聞いてたからな。」
ジョージ「物知りな仲間がいるようだな。その通り。私の持つ<休息する剣闘獣>は<エラーカード>だ。」

 <エラーカード>…!そういえば、僕も葵から聞いたことがある。
 卓上でデュエルを楽しんでいた時は確認されていなかったけど、「デュエルリング」や「デュエルディスク」といった「カードのデータを読み取る装置」の導入により発見された偶然の産物。簡単に言えばカードのバグだそうです。インダストリアルイリュージョン社はエラー修正カードとの交換キャンペーンを行っているから、今ではなかなかお目にかかる事はできないらしいのですが。そういえば、昔のどこかのプロデュエリストも「コストを支払うことが出来る<D?HERO ダイヤモンドガイ>」を使っていたとか…。

ジョージ「私の持つ<休息する剣闘獣>のエラー内容は「デッキに戻す事が任意」と言うものだ。」

 つまり、この人の使う<休息する剣闘獣>の正規テキストはこんな感じなのだろう。


<休息する剣闘獣>
通常魔法(エラー)
自分の手札から「剣闘獣」と名のついたカード2枚をデッキに戻す事ができる。自分のデッキからカードを3枚ドローする。


 一見、非エラーカードと比べたら、ただ手札が2枚余分にもらえるだけ(しかも相手プレイヤーに公開済みの「剣闘獣」限定)に見えるけど、実質ノーコストです。オマケに、通常と違ってカードをデッキに戻す必要がないから同じカードが再び手札に来てしまう心配もありません。まあ、発動条件は満たさなければいけないようですが…。

ジョージ「さて、<エラーカード>の説明はこのくらいにしてデュエルに戻ろうか。」

 そうだ、相手のカードが何だったとしても、手札が3枚増えたことには変わりないんだ!

ジョージ「私は『剣闘獣 ディカエリィ』を通常召喚!さらに『おろかな埋葬』を発動。デッキから『剣闘獣 ベストロウリィ』を墓地に送る。そして、自分フィールドに「剣闘獣」と名の付くモンスターが存在する為、手札から『スレイブタイガー』を特殊召喚。そして、『スレイブタイガー』をリリースして効果発動!ディカエリィをデッキに戻し、『剣闘獣 ダリウス』を特殊召喚!ダリウスの効果により、先程墓地に送った『剣闘獣 ベストロウリィ』を特殊召喚!!」


剣闘獣 ディカエリィ
星4/地属性/獣族/効果/攻1600/守1200
このカードが「剣闘獣」と名のついたモンスターの効果によって特殊召喚に成功した場合、このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃をする事ができる。このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時にこのカードをデッキに戻す事で、デッキから「剣闘獣ディカエリィ」以外の「剣闘獣」と名のついたモンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。

剣闘獣 ベストロウリィ
星4/風属性/鳥獣族/攻1500/守 800
このカードが「剣闘獣」と名のついたモンスターの効果によって特殊召喚に成功した時、フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する。このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時にこのカードをデッキに戻す事で、デッキから「剣闘獣ベストロウリィ」以外の「剣闘獣」と名のついたモンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。

スレイブタイガー
星3/地属性/獣族/攻 600/守 300
自分フィールド上に「剣闘獣」と名のついたモンスターが表側表示で存在する場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。このカードをリリースする事で、自分フィールド上に表側表示で存在する「剣闘獣」と名のついたモンスター1体をデッキに戻し、自分のデッキから「剣闘獣」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。このカードの効果で特殊召喚したモンスターは「剣闘獣」と名のついたモンスターの効果で特殊召喚した扱いとなる。

おろかな埋葬
通常魔法
自分のデッキからモンスター1体を選択して墓地へ送る。その後デッキをシャッフルする。

剣闘獣 ダリウス
星4/地属性/獣戦士族/攻1700/守 300
このカードが「剣闘獣」と名のついたモンスターの効果によって特殊召喚に成功した時、自分の墓地から「剣闘獣」と名のついたモンスター1体を選択し、自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、このカードがフィールド上から離れた時自分のデッキに戻す。このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時にこのカードをデッキに戻す事で、デッキから「剣闘獣ダリウス」以外の「剣闘獣」と名のついたモンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。


 結果、馬みたいなモンスターと緑色の鳥がフィールドに残りました。それにしても、増えた手札を存分に使ってモンスターの展開をしてきやがりましたよこの男。しかし、いくらモンスターを展開しようとも、攻撃力2700のトリシューラには敵わないはず。

ジョージ「私は、『ベストロウリィ』含む2体の剣闘獣をデッキに戻す。」

 2体のモンスターをデッキに戻す…?一体何を考えて…。

鬼柳「ちっ…警戒してたのにもう来やがるか。」
紅「え?」
ジョージ「警戒するだけでは意味がない。しっかりと対策をする事こそが大切なのだ。いくぞ!」

 さっきまで獣の姿だった『ダリウス』と『ベストロウリィ』が各色の剣へと姿を変えて、空高く舞い上がっていきます…!何?このアニメーションは?!

鬼柳「あいつが狙ってるのは融合召喚だ!」
紅「融…合…?」
鬼柳「ああ。『剣闘獣』は特定のモンスター2体をデッキに戻す事で、『融合』の魔法カードなしで融合召喚を行う事ができるんだ!」
紅「そ、そんな!」
ジョージ「フフッ、覚悟はいいかい?」


――――――剣闘融合(グラディアルフュージョン)!!



 空に舞い上がった2本の剣が交差し、その交点から虹色の光が放たれる!そしてその光から…


ジョージ「いでよ!『剣闘獣ガイザレス』!!!」


 甲冑を身に纏った緑色の鳥人が姿を現した!って、でか!!鳥人でか!!あと『ベストロウリィ』はともかく『ダリウス』要素がどこにも見当たりませんね。


剣闘獣 ガイザレス
星6/闇属性/鳥獣族/融合/効果/攻2400/守1500
「剣闘獣ベストロウリィ」+「剣闘獣」と名のついたモンスター
自分フィールド上に存在する上記のカードをデッキに戻した場合のみ、融合デッキから特殊召喚が可能(「融合」魔法カードは必要としない)。このカードが特殊召喚に成功した時、フィールド上のカードを2枚まで破壊する事ができる。このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時にこのカードを融合デッキに戻す事で、デッキから「剣闘獣ベストロウリィ」以外の「剣闘獣」と名のついたモンスター2体を自分フィールド上に特殊召喚する。


ジョージ「私は、『ガイザレス』の効果を発動。君達の場に存在する『トリシューラ』と中央のセットカードを破壊する!!」
鬼柳「ちっ!!」


?--??--???グラディアルブラスト!!


氷結界の龍 トリシューラ → 破壊
聖なるバリア?ミラーフォース? → 破壊


 ガイザレスの翼から放たれた突風が『トリシューラ』と僕たちの場に伏せられたカードを巻き込み、吹き飛ばしました。特殊召喚するだけでフィールド上のカードを2枚破壊できる効果だと?!インチキ効果もいい加減にしろ!…今日の僕は微妙にキャラ崩壊してますね。

ジョージ「バトル!『ガイザレス』と『ピケル』でダイレクトアタックだ!いくよ、ハニー!」
愛「いつでもいいよダ〜リン(楽)二人の愛の攻撃を見せ付けてやりましょう(喜)」

 ほざけ。

ジョージ「ラブ!」
愛「ホワイト!」
ジョージ・愛「「ストーーーーム!!」」

綺麗にハモらせなくていいですから。「わあ、息ピッタリですね♪」とか絶対言わないですから。

鬼柳「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!こ、これが、これが愛の力なのかぁぁぁ?!」

 いや、鬼柳さんも2人に合わせなくていいですから!どんだけノリが良いんですか?!

鬼柳 LP 4000 → 2800 → 400


ジョージ「バトルフェイズ終了時。『ガイザレス』をエクストラデッキに戻すことにより、デッキから2体の剣闘獣を特殊召喚する!いでよ!『エクイテ』!『ラクエル』!『エクイテ』の効果発動。墓地の『休息する剣闘獣』を手札に加える。」


剣闘獣 ラクエル
星4/炎属性/獣戦士族/攻1800/守 400
このカードが「剣闘獣」と名のついたモンスターの効果によって特殊召喚に成功した場合、このカードの元々の攻撃力は2100になる。このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時にこのカードをデッキに戻す事で、デッキから「剣闘獣ラクエル」以外の「剣闘獣」と名のついたモンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。

剣闘獣 エクイテ
4/風属性/鳥獣族/攻1600/守1200
このカードが「剣闘獣」と名のついたモンスターの効果によって特殊召喚に成功した時、自分の墓地から「剣闘獣」と名のついたカード1枚を選択し手札に加える。このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時にこのカードをデッキに戻す事で、デッキから「剣闘獣エクイテ」以外の「剣闘獣」と名のついたモンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。


 今度はさっきとは違う鳥人と炎を纏った獣人が姿を現しました。今更『剣闘獣』のアニメーションの説明をしますと、モンスターと同じ色の剣が割れてそこから放たれる光から出現する感じです。宝玉獣のアニメーションを想像していただければ少しはわかりやすくなるかな?

ジョージ「フフ、ここからはあえて言うまでもないだろう?私は『休息する剣闘獣』を発動!手札の剣闘獣2枚をデッキに戻さず、3枚のカードをドローする!!」

 セキュリティの男は手札の『剣闘獣セクトル』と『剣闘獣トラケス』をこちらに提示し、デッキから3枚のカードをドローしました。ドロー強化カードを使い回しされるのはなかなかきついですね。

ジョージ:手札2→5

ジョージ「再び手札が潤ったな。それでは…」

 セキュリティの男は手札のカードを1枚、2枚とデュエルディスクに差し込んでいきます。

ジョージ「3枚のカードをセットしてターンエンドだ。」


【鬼柳・紅】LP400
手札:2枚・3枚
モンスターゾーン:なし
魔法・罠ゾーン:伏せカード×2

【ジョージ・愛】LP4100
手札:2枚・2枚
モンスターゾーン:白魔導士ピケル(攻1200) 剣闘獣エクイテ(攻1600) 剣闘獣ラクエル(攻2100)
魔法・罠ゾーン:伏せカード×3


 う〜ん…ぶっちゃけ、冗談とか言ってる場合じゃなく、かなりピンチです。

愛「きゃああ!アタシとダ〜リンのエ〜ス達の連係攻撃が決まったわ〜(喜)」
ジョージ「フフ、決まったねハニー。これでもう彼らは打つ手なしさ!」
愛「その通りよダ〜リン!さぁ、あなた達〜!おとなしくこ〜そくされちゃいなさ〜い(楽)」

イラッ

 …そろそろ僕も我慢の限界が近づいてきたようですね。まずいですね。今はデュエル中なのに。

ジャック「落ち着け紅。憤りで自分のペースを乱してしまってはこの決闘に勝てんぞ。」

 そうだ。ジャックさんの言う通り。ここは一度精神を集中させて…ん?

紅「ジャックさん、いつの間に居たんですか?」
ジャック「ずっと居たわ!!!」
鬼柳「なぁ紅?お前、いよいよ目的を見失ってないか?」

 …あ、そっか。僕たちそもそもジャックさんを助けにきてたんでしたね。目的を見失ってましたね。完全に。

ジャック「見失うなぁ!!」
鬼柳「そうだ紅!いくら今までしゃべってなくてちょっと背景に溶け込んでいたとはいえ、仲間に大してそんな事言う奴は、たとえ仲間であろうと許さねぇぞ!!」
ジャック「一見良い事言ってるように見えるが、今お前もさりげなくとどめを刺したよなぁ?!」

 …ふぅ。ちょっと落ち着きが取り戻せました。いいタイミングでガス抜きの為に入ってきてくれたジャックさんに感謝です。

ジャック「フン!礼などいらん!お前はとっととこのデュエルに決着を付けるのだ!」

紅「そうですね。じゃあ僕のターン、ドロー!!」

ドロー:光の護封剣

 『光の護封剣』か…。劣勢の今なら悪いカードじゃないけど、結局は時間稼ぎにしかならない…。けど、『ガードブロック』と『魔宮の賄賂』でドローした2枚ドローがあるし…。

紅「手札1枚をコストに、『ライトニングボルテックス』発動!!」


ライトニング・ボルテックス
通常魔法
手札を1枚捨てて発動する。相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て破壊する。


 僕のカードから放たれた雷がこのバカップルのモンスターを襲います。

ジョージ「無駄な事だ。リバースカードオープン!『ディザーム』!手札の『剣闘獣 セクトル』をデッキに戻さず、魔法カードの発動と効果を無効にし、破壊する!!」

 またカウンター罠ですか!どうやら彼らの伏せカードの大半は自分のモンスターを守る為のカウンター罠カードのようですね…。

紅「…って、デッキに戻さず…って事は、そのカードも?」
ジョージ「その通り。この<ディザーム>もエラーカードだ。エラー内容は<休息する剣闘獣>と変わらないがな。」

<ディザーム>
カウンター罠(エラー)
手札から「剣闘獣」と名のついたカード1枚をデッキに戻す事ができる。魔法カードの発動を無効にし、それを破壊する。


 そう言って、彼はセクトルを手札に戻します。実質ノーコストの魔法無効化効果です。『マジックジャマー』が泣いています。

ライトニングボルテックス → 無効。破壊。

紅「なら『光の護封剣』を発動。さらにカードを1枚セットしてターンエンドです。」

 バカップルの周辺に光の剣が降り注ぎます。時が経つにつれて、その光は弱まっていきますが。


光の護封剣
相手フィールド上に存在するモンスターを全て表側表示にする。このカードは発動後、相手のターンで数えて3ターンの間フィールド上に残り続ける。このカードがフィールド上に存在する限り、相手フィールド上に存在するモンスターは攻撃宣言をする事ができない。


【鬼柳・紅】LP400
手札:2枚・0枚
モンスターゾーン:なし
魔法・罠ゾーン:光の護封剣(残り3ターン)、伏せカード×3

【ジョージ・愛】LP4100
手札:1枚・2枚
モンスターゾーン:白魔導士ピケル(攻1200) 剣闘獣エクイテ(攻1600) 剣闘獣ラクエル(攻2100)
魔法・罠ゾーン:伏せカード×2


愛「私のタ〜ン、ドロ〜(楽)『ピケル』たんの効果はつど〜(喜)」


――――――マジカルヒール!


LP4100→5300

愛「手札から〜儀式魔法『ドリアードの祈り』をはつど〜(喜)ダ〜リンの鳥さんをリリ〜スして〜(贄)」

 鳥さん…つまりは『剣闘獣エクイテ』がリリースされます。…ってか(贄)って何?


ドリアードの祈り
儀式魔法
「精霊術師 ドリアード」の降臨に必要。フィールドか手札から、レベルが3以上になるようカードを生け贄に捧げなければならない。


愛「『精霊賢者 ドリア〜ド』を儀式しょ〜かん(嬉)」

 セキュリティの女のフィールドにまた1体女性モンスターが増えました。この女…もしかしてあっち系な方なのでしょうか…?いや、でもちゃんと彼氏も居るみたいだし…。


精霊術士(エレメンタルマスター) ドリアード
星3/光属性/魔法使い族/攻1200/守1400
「ドリアードの祈り」により降臨。このカードの属性は「風」「水」「炎」「地」としても扱う。


愛「さらに〜『白魔導士 ピケル』たんをつ〜じょ〜しょ〜かん(大喜)。そしてバトルフェイズ〜(楽)」

 その前にまた幼女ですか。

ジョージ「ハニー。今は彼らの魔法カードの効果で攻撃できないぞ。」
愛「え〜そうなの〜?(哀)じゃあいいや〜(諦)タ〜ンエンド〜(笑)」


【鬼柳・紅】LP400
手札:2枚・0枚
モンスターゾーン:なし
魔法・罠ゾーン:光の護封剣(残り2ターン)、伏せカード×2

【ジョージ・愛】LP5300
手札:0枚・0枚
モンスターゾーン:白魔導士ピケル(攻1200)×2 精霊賢者ドリアード(攻1100) 剣闘獣ラクエル(攻2100)
魔法・罠ゾーン:伏せカード×2


愛「もうダ〜リンたら〜(笑)攻撃できないならちゃんと教えてよ(楽)」
ジョージ「フフ、すまないねハニー。」
愛「ねぇねぇダ〜リン。」
ジョージ「何だいハニー?」
愛「フフ、呼んでみただけ〜(楽)」

 イライラッ
ああ!もう!うざったいですこの二人!!

紅「鬼柳さん!絶対に勝ちましょうね!!」
鬼柳「あ、ああ。元よりそのつもりだが…。」

 絶対に勝つ!このバカップルは僕たちが絶対に倒します!

鬼柳「まぁ次はオレのターンだ!いくぜ、ドロー!!オレは手札より『死者蘇生』を発動!墓地より蘇れ!『氷結界の龍 トリシューラ』!!!」


死者蘇生
通常魔法
自分または相手の墓地に存在するモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。


 鬼柳さんのエースモンスターたる龍が地の淵より姿を現しました。スゴいぞー!カッコいいぞー!

愛「ダ〜リン、なんか出てきたよ〜(笑)」
ジョージ「大丈夫だよ、ハニー。私が君の大事なモンスターを守るよ。」
鬼柳「へっ!できるもんならやってみな!『トリシューラ』で『ピケル』を攻撃!」


――――――――――コキュートスバースト!!


ジョージ「当然、ピケルは守らせてもらうよ。リバースカードオープン!『和睦の使者』!!」

トリシューラから放たれた息吹は、あの幼女の数メートル前でバリアのようなものに弾かれました。

鬼柳「ちっ、またそのカードか・・・。オレはモンスターをセットしてターンエンドだ。」


【鬼柳・紅】LP400
手札:1枚・0枚
モンスターゾーン:氷結界の龍 トリシューラ(攻2700)、セットモンスター×1
魔法・罠ゾーン:光の護封剣(残り2ターン)、伏せカード×3

【ジョージ・愛】LP5300
手札:0枚・0枚
モンスターゾーン:白魔導士ピケル(攻1200)×2 精霊賢者ドリアード(攻1100) 剣闘獣ラクエル(攻2100)
魔法・罠ゾーン:伏せカード×1


ジョージ「私のターン、ドロー。まずはスタンバイフェイズに『ピケル』達の効果を発動。」

――――――ダブルマジカルヒール!!

ジョージLP5300→8500

 ついにバカップルのライフポイントが初期値の2倍以上になってしまいました。フィールドに『トリシューラ』を超える攻撃力を持つモンスターがいないとは言え、かなりまずいですね・・・。

ジョージ「手札から『剣闘訓練所』発動。デッキより『剣闘獣ベストロウリィ』を手札に加える。」


剣闘訓練所
通常魔法
自分のデッキからレベル4以下の「剣闘獣」と名のついたモンスター1体を手札に加える。


鬼柳「またその鳥を手札に加えた…ってことは…。」
ジョージ「フッ、その通り。私はこの『ベストロウリィ』を召喚し、『ラクエル』と融合させる!」

あの鳥ともう一体の剣闘獣からなる融合剣闘獣…つまり…。

紅「また…『ガイザレス』?!」
ジョージ「その通り!再び我がフィールドに現れろ!『剣闘獣ガイザレス』!!効果により『光の護封剣』と『トリシューラ』を破壊する!!」
鬼柳「く!『トリシューラ』が…?!」


――――――グラディアルブラスト!!



氷結界の龍 トリシューラ → 破壊
光の護封剣 → 破壊


 ガイザレスの翼から放たれた突風が『トリシューラ』とバカップルを囲んでいた光の剣を巻き込み、吹き飛ばしました。やっぱりインチキ効果ですね、こいつは。

ジョージ「さて、バトルフェイズへ移行しよう。君たちのライフは残り400。私たちの場のどのモンスターで攻撃しても、君たちのライフは尽きる。」
愛「そうだそうだ〜(笑)」

 くっ…腹は立つけどその通り。もし彼らの一撃が僕らに与えられてしまうようなら、たった400ぽっちのライフなど消し飛んでしまう。

ジョージ「せっかくだ。ハニーの溺愛する『ピケル』でとどめを刺してあげよう。」
愛「ありがたく思いなさいよ〜(笑)」
ジョージ「『白魔導士 ピケル』の攻撃!ラブ!」
愛「ホワイト!」
ジョージ&愛「「マジック!!」」



―――――えいっ!



 小娘の持つ杖から白い魔導弾が僕たちに向かって放たれました。

鬼柳「まだ終わらないぜ!!リバース罠!!『攻撃の無力化』!!」


攻撃の無力化
カウンター罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。相手モンスター1体の攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する。


 僕たちの前に次元の乱れが出現し、魔導弾を吸い込みました。デュエルディスクを見ると「メインフェイズ2」と表示されています。つまり、このターンは凌げたという訳です。

ジョージ「フフ。(…私の伏せカードは『トラップスタン』。)」


トラップスタン
通常罠
このターンこのカード以外のフィールド上の罠カードの効果を無効にする。


ジョージ「(これを使えれば罠の効果を無効にして勝利できたが、カウンター罠のスペルスピードには届かないか…。)ターンエンドだ。」


【鬼柳・紅】LP400
手札:1枚・0枚
モンスターゾーン:セットモンスター×1
魔法・罠ゾーン:伏せカード×2

【ジョージ・愛】LP8500
手札:0枚・0枚
モンスターゾーン:白魔導士ピケル(攻1200)×2 精霊賢者ドリアード(攻1100) 剣闘獣ガイザレス(攻2400)
魔法・罠ゾーン:伏せカード(トラップスタン)


 次はいよいよ僕のターンです。手札は0。伏せカードは今じゃ役に立たないカード。つまり、このドローに懸かっているという訳です。

紅「僕のターン。ドロー!」

 ドローカードを見た瞬間、思わず顔をしかめてしまいました。そのドローカードが、状況によっては大逆転への一歩として使えるカードだったからです。

ドロー:手札抹殺


手札抹殺
通常魔法(制限カード)
お互いの手札を全て捨て、それぞれ自分のデッキから
捨てた枚数分のカードをドローする。


 しかし、それは手札が複数枚ある時の話。それに対して僕の手札は0枚。今じゃ使い物にならない…。







 僕たちの…負け…?








愛「ね〜ダ〜リン〜。」
ジョージ「ん?何だいハニー?」
愛「この人達って〜なんでこんなに弱いの〜(笑)」

鬼柳「!!」
紅「!!」


 そうだ…どうして…僕はこんなに弱いんだろう…。



―――――――せっかく鬼柳さんにチームサティスファクションの仲間にしてもらえたのに



―――――――昔よりもだいぶ強くなったと思ってたのに



―――――――クロウさんに戻って来てもらいたいのに



 僕はきっと誰から見ても弱いんだろう。それは昔から変わらない。だから、強くなりたかった。強く生きたかった。それなのに…。






―――――――ああ、僕はなんて弱いんだろう。






ジョージ「フフ、違うよハニー。彼らが弱すぎるだけじゃない。僕たちの愛が強すぎるんだよ。」

・・・。

愛「そ〜だよね〜(笑)私たちの愛に比べれば〜こいつらなんてゴミくず当然だもんね〜(笑)」
ジョージ「フフ、その通りさハニー。僕たちの愛の力・・・ラブパワーは最強さ。」


・・・・・・。


ジョージ「だって」
愛「それが」
ジョージ・愛「「愛だから。」」
ジョージ「フフフフフ。」
愛「ウフフフフ(楽)」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



 …そうだ。僕は強くならなければならない。


紅「…鬼柳さん。」
鬼柳「ん?なんだ紅…って、どうした?!なんかスゴい形相だぞ?!」
紅「…このバカップル…もう仕留めて良いですか・・・?」
鬼柳「え?いや、勝てるんならそれに超した事は無いが。」
紅「じゃあ、前のターンにセットしてくださったモンスター…借りますね。」
鬼柳「え、あ、ああ。」
ジョージ「フフフ、さあ、早く悪あがきでもしてみたまえ。」
愛「ど〜せ私たちの愛の力の前じゃ無意味でしょうけどね〜(笑)」
紅「・・・。」





 何故なら…こういう間違った力の使い方をする者達を正さなきゃいけないから。





紅「…カードをセットして、モンスターを反転召喚。『メタモルポット』。」

 僕の目の前に裏側で伏せられていたカードが開かれ、そのカードのソリットビジョンから目だけが不気味に浮かび上がっている壺が出現。その目が鈍く輝き、壷から除く不気味な口が大きく開かれる。


メタモルポット
星2/地属性/岩石族/攻 700/守 600
リバース:お互いの手札を全て捨てる。その後、お互いはそれぞれ自分のデッキからカードを5枚ドローする。


ジョージ「この期に及んで『メタモルポット』?」
紅「タッグデュエルにおいて、「お互いに対しては発動する効果」の対象はターンプレイヤーとその前のターンのプレイヤー。つまり、メタモルポットの対象となるのは僕と男の方です。」

 お互いに手札は0枚だった為、手札は捨てずに僕とセキュリティの男はデッキの上からカードを5枚引く。…うん、想像通りの良手札。

ジョージ「フッ…私に手札を与えてしまったのは失敗だったな。次の私のターンが来れば、君達の行動の全てを無効にしてあげよう!」
愛「きゃ〜さすがダ〜リン〜(喜)」


 うぜぇ。


鬼柳「おい、紅。あいつらあんな風に言ってるけど、大丈夫か…?」

 鬼柳さんも若干心配そうな顔をしています。

紅「…ご安心ください、鬼柳さん。」

 僕は鬼柳さんに全力の笑顔で告げる。







紅「このターンでこのバカップルを仕留めますから。」





…さてと。それじゃあ始めますか。

紅「さっき伏せた『手札抹殺』を発動。お互いのプレイヤーは手札を全て捨てて、同枚数ドローします。」
ジョージ「!手札入れ替えのカードか。随分と神頼みだな。」

 神頼み?笑わせてくれますね。そんな事する必要は無いというのに…。

紅「まあ…神頼みと言えば神頼みですね…。」

 尤も、僕が頼むのは神は神でも魔轟「神」ですけどね。

紅「僕は『手札抹殺』で墓地に送った『魔轟神クルス』3体の効果を発動します。」
ジョージ「何ッ?!さっきの『メタモルポット』で3枚全て引き当てたというのか?!」
紅「蘇れ『グリムロ』『レイヴン』『ガルバス』。」

髪の長い女の子が光に包まれ、その光から3体の神が姿を現わす。


魔轟神 クルス
2/光属性/悪魔族/攻1000/守800
このカードが手札から墓地へ捨てられた時、自分の墓地に存在するこのカード以外のレベル4以下の「魔轟神」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。

魔轟神 グリムロ
星4/光属性/悪魔族/攻1700/守1000
自分フィールド上に「魔轟神」と名のついたモンスターが表側表示で存在する場合、手札からこのカードを墓地へ送る事で自分のデッキから「魔轟神グリムロ」以外の「魔轟神」と名のついたモンスター1体を手札に加える事ができる。

魔轟神 レイヴン
星2/光属性/悪魔族/攻1300/守1000
1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動する事ができる。自分の手札を任意の枚数捨て、その枚数分このカードのレベルをエンドフェイズ時まで上げる。このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで、この効果によって捨てた手札の枚数×400ポイントアップする。

魔轟神 ガルバス
星4/光属性/悪魔族/攻1500/守 800
手札を1枚墓地へ捨てて発動する。このカードの攻撃力以下の守備力を持つ、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を破壊する。


紅「さらに、レベル4の『魔轟神 グリムロ』とレベル2の『メタモルポット』にレベル2の『魔轟神レイヴン』をチューニング!」


 レイヴンが二つの光の輪となり、グルムロとメタモルポットを包み込みます。そして2体は6つの光の玉となり、新たな進化への準備を進める。



―――――魔界に雷(いかずち)轟し時、ヴァルハラの力を司りし戦乙女(ヴァルキリー)が姿を現す!




紅「シンクロ召喚!光臨せよ!!『魔轟神 ヴァルキュルス』!!!」

 光の輪と玉が合わさり、漆黒の翼を携えた悪魔が雷と共に姿を現した。…うん、やっぱりシンクロ召喚のアニメーションってすごい豪華ですよね。


魔轟神 ヴァルキュルス
星8/光属性/悪魔族/シンクロ/攻2900/守1700
「魔轟神」と名のついたチューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
手札から悪魔族モンスター1体を捨てて発動する。自分のデッキからカードを1枚ドローする。この効果は1ターンに1度しか使用できない。


ジョージ「シンクロモンスターだと?!」
紅「『魔轟神ヴァルキュルス』の効果を発動。手札の悪魔族モンスター1枚を捨てる事で、カードを1枚ドローします。」


ドロー:精神操作


 うわ、駄目押しの良ドロー。すなわち勝利確定。 

紅「リバースカードオープン、『貪欲な壷』発動。『トリシューラ』『ルリー』『クルス』×3の5体をデッキに戻して2枚ドロー。」


貪欲な壷
通常魔法
自分の墓地に存在するモンスター5体を選択し、デッキに加えてシャッフルする。その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。


ドロー:魔轟神クルス、魔轟神ルリー

 よし、ここで一度状況確認。


【鬼柳・紅】LP400
手札:1枚・7枚
モンスターゾーン:魔轟神ヴァルキュルス(攻2900)、ガルバス(攻1500)
魔法・罠ゾーン:伏せカード×2

【ジョージ・愛】LP8500
手札:5枚・0枚
モンスターゾーン:白魔導士ピケル(攻1200)×2 精霊賢者ドリアード(攻1100) 剣闘獣ガイザレス(攻2400)
魔法・罠ゾーン:伏せカード(トラップスタン)


 これによって完璧に準備が整った。ここからはノンストップでいきますので、効果紹介とシンクロ口上は省略します。知りたい人はページ下の拍手ボタンから飛んでください。


紅「手札2枚を捨てて墓地の『魔轟神ソルキウス』を復活。墓地へ送った『クルス』と『ルリー』の効果によって『レイヴン』『ルリー』を蘇生。レベル6の『ソルキウス』とレベル1の『ルリー』にレベル2の『レイヴン』をチューニング。破壊神より(中略)シンクロ召喚!『氷結界の龍 トリシューラ』!!『トリシューラ』の効果によって手札1枚とその伏せカードと墓地から適当に1枚除外します。リバースカード『死者転生』発動。手札1枚をコストに『クルス』を回収。『ガルバス』の効果。『クルス』を捨てて『ガイザレス』を破壊。『クルス』の効果によって『クシャノ』を蘇生。レベル4の『ガルバス』にレベル3の『ガルバス』をチューニング。聖なる(中略)シンクロ召喚!『エンシェントホーリーワイバーン』。『精神操作』発動。そこの小娘のコントロールを得ます。さらに『ミーズトージ』を通常召喚。手札2枚をセット。レベル3の小娘にレベル2の『ミーズトージ』をチューニング。魔界に(中略)『魔轟神レイジオン』をシンクロ召喚。効果で2枚ドロー。ついさっき伏せた『おろかな埋葬』を発動して『ウルストス』を墓地へ。墓地の『クシャノ』の効果。手札1枚を捨てて自身を回収。墓地に捨てた『クルス』の効果で『ウルストス』を蘇生。」


 ふう。もう一度フィールドを確認してみましょう。


【鬼柳・紅】LP400
手札:1枚・2枚
モンスターゾーン:魔轟神ヴァルキュルス(攻3300)、氷結界の龍トリシューラ(攻2700)、魔轟神レイジオン(攻2700)、エンシェントホーリーワイバーン(攻0)、魔轟神ウルストス(攻1900)
魔法・罠ゾーン:伏せカード×2

【ジョージ・愛】LP8500
手札:4枚・0枚
モンスターゾーン:白魔導士ピケル(攻1200) 精霊賢者ドリアード(攻1100)
魔法・罠ゾーン:なし


エンシェントホーリーワイバーン
星7/光属性/天使族/シンクロ/攻2100/守2000
光属性チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
自分のライフポイントが相手より上の場合、その数値だけこのカードの攻撃力はアップする。自分のライフポイントが相手より下の場合、その数値だけこのカードの攻撃力がダウンする。このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、1000ライフポイントを払う事でこのカードを自分フィールド上に特殊召喚する。

魔轟神 レイジオン
星5/光属性/悪魔族/シンクロ/攻2300/守1800
「魔轟神」と名のついたチューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
自分の手札が1枚以下の場合、このカードがシンクロ召喚に成功した時、自分の手札が2枚になるまでデッキからカードをドローする事ができる。

魔轟神 ウルストス
星4/光属性/悪魔族/攻1500/守 200
自分の手札が2枚以下の場合、自分フィールド上に表側表示で存在する「魔轟神」と名のついたモンスターの攻撃力は400ポイントアップする。


ジャック「・・・・・・」
愛「・・・・・・(唖然)」
鬼柳「・・・・・・」
ジョージ「・・・・・・」


 圧倒的静寂。けど僕にそれを破る術とする気なし。なのでデュエル続行。

紅「バトルフェイズに移行します。『ウルストス』で『ドリアード』を攻撃。」


ドリアード、破壊
ジョージLP8500→7700


紅「『レイジオン』で小娘を攻撃。」

小娘もといピケル、破壊。
ジョージLP7700→6200


紅「『ヴァルキュルス』と『トリシューラ』で直接攻撃!!」


ジョージLP6200→3500→200

 ヴァルキュルスの雷とトリシューラの氷の息吹によって、セキュリティの男は数メートル吹き飛ぶ。…ソリットビジョンでも、多少の風が起こる時だってあるんだぜ。


愛「ダーーリン(焦)!!!!」
ジョージ「……わ、私は大丈夫だ、ハニー…。」
愛「ダーリン(泣)!しっかりして!このデュエルが終わったらダーリンの大好きな卵焼き作って食べさせてあげるからね(卵)!」

 いや、こんなときに何の約束をしているんだ、この女は。

ジョージ「そうか…楽しみにしてるよハニー。」

 セキュリティの男の方はゆっくりと起き上がりました。ヘルメットで見えませんがすごい幸せそうなオーラが感じ取れる。…うぜぇ。

ジョージ「…フッ。あれだけ大きな口を叩いてデッキを回したは良かったが、計算ミスかな?君のモンスターの攻撃では私達のライフは削りきれなかったようだが?」
紅「あはは。まだ1体モンスターが残ってるじゃありませんか。」

 僕の言葉に合わせるようにまだ攻撃を行っていない『エンシェントホーリーワイバーン』が嘶く。

ジョージ「フフ…自分の出したモンスターのステータスくらい覚えておくものだな。『エンシェントホーリーワイバーン』の攻撃力は―――」



【鬼柳・紅】LP400
手札:1枚・2枚(魔轟神クシャノ、???)
モンスターゾーン:魔轟神ヴァルキュルス(攻3300)、氷結界の龍トリシューラ(攻2700)、魔轟神レイジオン(攻2700)、エンシェントホーリーワイバーン(攻2300)、魔轟神ウルストス(攻1900)
魔法・罠ゾーン:伏せカード×2

【ジョージ・愛】LP200
手札:4枚・0枚
モンスターゾーン:なし
魔法・罠ゾーン:なし



ジョージ「ゼr…って、はぁ?!2300に上昇しているだとぉ?!」
紅「『エンシェントホーリーワイバーン』は自分と相手のライフの差によってステータスが変動するモンスター。シンクロ召喚時点では8100の差があったため、攻撃力は0を指していました。しかし、今の戦闘によって僕たちが200上回っています。よって、元々の攻撃力2100に200ポイントが加わり、今の攻撃力は…!」


エンシェントホーリーワイバーン 攻2300


ジョージ「な…何だと?!」
愛「ダ〜リ〜ン、怖いよ〜(泣)」
ジョージ「だ、大丈夫だよハニー。何があろうと私が守るから。」
愛「ありがとうダ〜リン?今日の卵焼きはうんと愛を込めて作るからね(愛)」
ジョージ「何を言っているんだハニー。ハニーの料理にはいつも愛が――――」


 やれやれ。まだそんな風にイチャイチャする余裕がありましたか。仕方が無い。完膚なきまでに叩きのめしましょう。



紅「『エンシェントホーリーワイバーン』で攻撃―――すると思いますか?しないね。ここはしない。」

 僕は残された手札の内の一枚『クシャノ』ではない方を手に取ります。僕は普通に義務教育を受けているので、わざわざこんな事をしなくても勝利が確定している事くらいわかっています。


紅「僕は速攻魔法『神秘の中華鍋』を発動。『魔轟神ヴァルキュルス』をリリースしてその攻撃力3300をLPに加えます。」


神秘の中華なべ
速攻魔法
自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる。
生け贄に捧げたモンスターの攻撃力か守備力を選択し、
その数値だけ自分のライフポイントを回復する。


紅LP400→3700

 この時回復するライフポイントはリリース時点でのステータスを参照する。つまり、元々の攻撃力に加え、『魔轟神ウルストス』の効果によって上昇している400が僕のライフに加えられます。

紅「それにリンクして『エンシェントホーリーワイバーン』の攻撃力もアップします。」


エンシェントホーリーワイバーン攻2300→5600


 …でも、このバカップルを…ぶっ倒さないと!ぶっ倒さないと!!ぶっ倒さないと!!!


紅「僕のこの気持ちは収まりそうにありません…。」
鬼柳「こ…紅。」

 鬼柳さんとジャックさんが軽くおびえているように見えるのはきっと僕の眼の錯覚です。まあそうだとしても今の僕には関係ありませんが。








紅「では…死んでくださいね?僕の為に。」









 ん?今更になって気づいたのですが…。



紅「『エンシェントホーリーワイバーン』でダイレクトアタック!!」



―――――――エターナルブレイズ!!!



ジョージ「うわああああああああああああああああああああ!!」
愛「きゃあああああああああああああああああああっ!!」



ジョージ・愛LP200→0


 今の僕達ってただの悪者なんじゃ…まあいいか。



【鬼柳・紅】LP3700
手札:1枚・1枚(魔轟神クシャノ)
モンスターゾーン:氷結界の龍トリシューラ(攻2700)、エンシェントホーリーワイバーン(攻5600)、魔轟神レイジオン(攻2700)、魔轟神ウルストス(攻1900)
魔法・罠ゾーン:伏せカード×2

【ジョージ・愛】LP0
手札:4枚・0枚
モンスターゾーン:なし
魔法・罠ゾーン:なし




 バカップルのLPが0になるとともに、デュエルディスクが音を立てて爆発しました。


愛「きゃあああああーっ(驚)!」
ジョージ「ああっ、なんという…!」

 バタッ!


 バカップルは、小さな音を立ててその場に倒れ込んでしまいました。ざまあみろ。

鬼柳「紅…なんというか…流石だな。」
紅「?何がですか?」
鬼柳「いや…まあいいや。」

 ?何だったのでしょう?本気で意味が分かりかねます。…まあいいや。

鬼柳「半端な気持ちで入ってくるなよ…デュエルの世界によ!」

 セキュリティのバカップルを指差しながら「とりあえず」という感じで鬼柳さんは言い放ちました。尤も、あのバカップルは気を失っているようなので、聞こえてはいないでしょうが…。

鬼柳「ジャックを捕まえたくらいだからと少しは期待したが、不意をついたんでもなけりゃ、この程度か。」

 鬼柳さんはゴミでも見るような眼を足下のバカップルに向ける。…もしかしてさっきまで僕もああいう目で彼らを見ていたのでしょうか?

鬼柳「さてと…ジャック。今その手錠外してやるからな。」

 おっと、説明し忘れていましたが、今のジャックさんは電柱の裏側に腕をまわされ、手錠で固定されています。電柱に巻き付けられているというのでしょうか?そういう状態になっています。
 鬼柳さんは、バカップルの腰のホルダーから鍵を奪い取ってジャックさんの手錠を外しました。ってかなんで鬼柳さんは彼らの腰に鍵があるという事を知っているんですか?

ジャック「すまん、鬼柳…助かった。」
鬼柳「なに、いいって事よ。普通にやってりゃ、ジャックが捕まるような相手じゃなかったしな。不意打ちじゃ、仕方ないだろ。」
ジャック「ああ、不意のことだった…出来過ぎなくらいにな。」
紅「…出来過ぎと言うと?」
ジャック「うむ…今思うと、完全に居場所を読まれて、待ち伏せをされていたのではないか?」

 ジャックさんは何かを確認する為か、一度辺りを見渡した。

ジャック「少なくとも…たまたまここで見つかった…とは、到底思えんな。」

 確かに、すぐそこには大海原が広がっていますが、ジャックさんの居た場所は様々な建物の物陰となる場所である為、陸上からではなかなか見つけにくいと思われます。

鬼柳「…ジャックの行動も調べてあって、ある程度の準備をした上でここに来ていた…ってことか。」

 鬼柳さんが何か考えるようにしながら独り言を呟く。ぶっちゃけ、満足に聞き取れなかった。それはジャックさんも同じようで、首を傾げています。

鬼柳「オレの計画が…セキュリティに漏れている。」
紅「計画?計画って何の計画ですか?」
鬼柳「そうか。それで、チームメンバーのジャックを捕まえようと…。」

 鬼柳さんは状況分析に没頭しているのか、僕の言葉に対して何の反応も見せません。…それなら。

紅「鬼柳さんの…ファッションセンスって時代の最先端を行ってますよね!」
ジャック「紅…お前はそういう皮肉を言う男だったのか。」

 ?皮肉?僕は心の底からそう思っているのですが。ちなみに僕の魂胆は「鬼柳さんの気を引く為に世間話を振る」という物です。まあ一瞬悪口を言うか迷いましたが。僕に鬼柳さんの悪口を言うのは無理なようです。さて…鬼柳さんの反応は。

鬼柳「向こうも本気って事か。面白ぇ!この戦争…受けて立とうじゃねぇか!」

 どうやら本気で聞こえていないみたいです。ってかなんかスゴい物騒な言葉が聞こえたのですが…聞き間違えですよね?

ジャック「戦争?鬼柳…お前、一体何を…?」

 ジャックさんも同じように聞こえたようです。

鬼柳「こうしちゃいられねぇ!情報収集だ!今日はここで解散だ!じゃあな!二人とも!!」

 鬼柳さんはひとしきり言葉を捲し立てると、走り去っていきました。

ジャック「紅…戦争とは…どういうことだ?」
紅「…いえ、僕もまだ何も聞いてません。」
ジャック「…そうか。まあいい。オレももう行くとしよう。そこのセキュリティの処理はお前に任せる。」
紅「…はい。」

 ジャックさんはここを去ってしまったので、僕はもう少しここに留まる事にしました。このバカップルは…海にでもたたき落としておくとしましょう。




 ……鬼柳さんが何を考えているか…今の僕にはわからない。けど…


 何か良くない事を目論んでいる…それは明白でした。…だから、

紅「鬼柳さんは…僕が止める。」



 間違った力の使い方をする者を正す…それが僕の使命なのだから。




4,5満足 サイコデュエリストの安息  

「ふう・・・今日も無事に帰って来れた・・・か。」


 誰に向けた訳でもない独り言を呟きながら、大して重くもないリュックを下ろす。その中からここ数日分の着替えが顔を覗かせていた。オレは近くのソファに寝そべりながら、自分の左腕の小さくない傷を見つめる。

「ディバインめ・・・いきなり手術なんてしやがって・・・。」

 オレは「アルカディアムーブメント」と言う名の、社長曰く「慈善事業企業」に勤めている。ディバインとは、そこの社長の名前だ。
 

『エリア・・・。君のその力について、少し詳しく調べさせてほしい。』

 3日前にディバインが直接オレに対して言ったセリフだ。今考えれば、この時点で断っておけば良かった。



 まあ、オレは世間で言う「サイコデュエリスト」である。


 オレの能力ってのを簡単に言うと「カードを具現化」する能力だ。『ファイアーボール』を物質化して火の球を放ったり、『緊急テレポート』で特定の場所に一瞬で行ったり。まあ、他にもう一つだけ能力を持ってるんだけど・・・説明するのがめんどくせぇ。別に、大した事じゃない。妹も似たようで全く正反対な力を持ってたりするし。あと仕事の関係上、似たような力を持った奴は大勢見てきたしな。オレからしてみたら「能力を持ってない人間の方が異端」といった感じだ。

 おっと、話が逸れたな。まあディバインの一言から始まったオレの具現化能力の調査だが、別に大した事はしていない。ただ能力の持続時間や効果範囲に関する検証、あとはオレの細胞を他者に移植した場合能力の譲渡は可能か・・・とかそういった事だ。移植手術の結果は何とも言えない微妙な結果となった。まあ移植された側がカードの具現化ができるようになったから成功と言えば成功なんだけど、持続時間とか具現化可能なカードはオレに比べたらかなり劣る。特に持続時間なんか10秒も保たないらしい。まあディバインはその結果に満足してたみたいだから問題は無いか。

「それでも3日付き合わされて収穫なしってのはなぁ・・・。」

 ぶっちゃけ、オレもこの能力についてはあまり詳しくは知らなかった。だから能力の持続時間辺りはある意味収穫ではあったが、「何故こんな能力がオレの身に宿っているか」とかそういう根本的な問題の解決には至らなかった。それだけならまだしも、手術まで受けさせられるとは思ってなかったから、骨折り損のくたびれ儲けも良い所だ。

「あ、でもオレの能力が移植できるってわかったのはある意味収穫だったな。」

 そんな事を呟きながら、オレは冷蔵庫から缶ジュースを取り出し、それのブルタブを開ける。そしてオレは一杯の――――






天使の生き血を啜った。






 ・・・おっと、「戻る」ボタンを押すのはちょっと待ってもらおうか読者さん。おとなしく画面に向き直るんだ。頼むから。「天使の生き血」ってのは某大手飲料水メーカーが販売している商品の一つであって、オレが吸血鬼とかそういう裏設定は一切無い。ちなみに、その某大手飲料水メーカーの商品には「青色一号(LP400回復するアレ)」とか「ゴブリンの秘薬」ってのがある。大半の人間は「ディアンケト」(商品名だ)を好むようだが、オレは「天使の生き血」一筋である。確かに見た目こそこんなに真っ赤だが、この味わいはどんな飲料水をも凌駕するはずだ。甘くていい感じの炭酸があってそれから―――――




『♪雨の日も風の日も極寒の吹雪も灼熱の太陽も〜』




 ふと、携帯電話の早口な着信音が室内に鳴り響く。誰だ、人が良い気分で「天使の生き血」のすばらしさを熱弁しているというのに・・・。ディスプレイの名前を確認してみると、そこには妹の名前が表示されていた。

「ふぅ・・・。」

 オレは一息ついて、携帯電話の通話ボタンを押した。今の携帯電話は数十年前に比べるとだいぶ発展している。例えば、こんな感じで通話相手がソリッドビジョンで投影される(もちろん手のひらサイズだけど)。今じゃ「電話をしてる振り」なんて行為はできない。

『久しぶり。』

 今回も前例から外れず、携帯電話から妹の姿が投影されている。今は寝間着姿のようだ。水色のパジャマが何とも可愛らしい。いつもは紅い髪をポニーテールにしているけど、今は解いているようだ。

『―――おい、聞こえてる?』

 おっと、うっとり・・・じゃなかった、うっかりしてた。

「ああ、久しぶりだな、我が妹よ。そっちの様子はどうだ?」
『う〜ん・・・まあ昔よりはましになったけど、まだまだ治安が良いとは言い難いかな。』
「まあ話を聞く限りだと、今の治安を悪くしてるのは・・・。」
『・・・あはは。』

 気まずそうに目をそらしている我が妹。しかし、オレにその理由はよくわからない。

「まあそんな話はさておくとして、今日の用件は何だ?ただの状況報告ってわけじゃないだろ?」
『うん、まあね。ちょっと調べてもらいたい事があって。今の私じゃ調べようが無いからさ。』

 そう。オレは「アルカディアムーブメント」とは別件でこういった調査活動も行っている。まあ誰彼かまわずやる訳じゃなくて、家族や仲間からの用件のみ承っている。ぶっちゃけ、アルカディアムーブメントでディバインの奴にこき使われるよりも家族や友達の為に調査活動してる方が数倍楽しい。もうアルカディアムーブメント辞めて探偵事務所でも立ち上げようかな。

「それで、今回の調査内容はどんなんだ?」
『うん、あのね―――――』


そこからは誰にも言えない調査依頼の内容が語られた。その内容に関しては秘密事項とさせてもらおう。妹のプライバシーとかもあるし。



「了解。まあ内容が内容だから全てが調べれるかはわからないけど、何かわかったらまた連絡するよ。」
『うん、お願い。・・・あ、ところでさ・・・。』
「ん?どうした?」






『―――――例の女・・・白菜さんだっけ?そっちの調査の方はどうなってるの?』


・・・なんだ。あいつの事か。

「いや、相も変わらず収穫はなし。何かわかるかもしれないと思ってアルカディアムーブメント内でも調査してっけど、何も情報が無くてさ。」
『・・・そうなんだ。』

 妹はわかりやすく落胆している。

「何でお前が気にするんだよ。これはオレ・・・いや、オレ達3人の問題なんだから。」

 妹はまだうつむいた様子だ。・・・はぁ。苦手なんだよな・・・。こいつのこういう姿を見るの。

『・・・ねぇ。』

妹は顔を上げないまま呟くように言う。

『その3人って・・・』
「ああ、オレと白菜と・・・鬼柳京介だ。」

 妹は最後に出た人物「鬼柳京介」に小さく反応した。

『鬼柳・・・京介・・・。』
「え?ごめん、鬼柳がどうかしたか?なんか引っかかる事でもあったか?」
『?!え?ううん、何でもないよ!何でも・・・あはは。』

 妹は身体の前で大きく手を振る。わかりやすい狼狽え方だ。

「って、なんでそこでそんなに焦るんだよ?まるで意味が分からんぞ。」

 これに関しては本当に意味が分からない。まあ昔から「鈍感」とは言われ続けてきたが、「鬼柳京介」で慌てる理由に関しては本気で理解できない。だって・・・

「お前って鬼柳に会った事なんて無いよな?」
『え・・・。うん・・・まぁ。』

 ・・・今こいつわかりやすく目線を逸らしたぞ?・・・うん。仕方が無い。

「ちょっと待ってろ。今カードファイルから『マインドハック』のカード持ってくるから。」

 確かいざという時の為にカードファイルの中に入れておいたはずだ。いくら携帯電話越しと言えど、オレの能力をフルに活用すれば携帯電話越しでも脳内を覗く事くらい造作無いしな。

『あ!ちょ、ちょっと用事思い出しちゃった!じゃあまたね!』

  妹のソリットビジョンが消えた。アイツ、電話切りやがったな。もう一回かけ直しても良いけど、間違いなくアイツは出ないな。・・・仕方ない。鬼柳の方に直接聞いてみるか。




「まあ、久しぶりに昔の仲間に連絡してみるのも悪くないか!」



 オレは高揚した気分で携帯電話の通話ボタンを押した。




続く...




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