※このストーリーは、過去と現在を行ったり来たりするものとなっておりますが、過去の場合は、「神の名を受け継ぎし者達」から8年前、現在の場合は、「翔VS十代 〜絵札の三銃士VSE・HERO〜」の次の日です。



序章 過去――そして、今

『じゃあこれ、君にあげるよ』
 そう言って、幼いオレに、目の前の少年は、3枚のカードをくれた。そして、幼いオレも、それに応えるように、1枚のカードを渡した。
 目の前の少年がくれた3枚のカードには、それぞれ、赤き鎧を着けた戦士、頑丈な鎧を着けた戦士、青き鎧を着けた戦士が描かれてあった。幼いオレが渡したカードには、透き通ったような白い翼を背に生やした、黒くて丸い子悪魔が描かれてあった。
『でも・・・、本当に、良いの?』
 幼いオレは、そう聞いた。
 幼いオレは、相手の少年のことを知ってはいるが、少年は幼いオレのことをあまり知らなかったからだ。でも、少年は表情ひとつ変えず、笑顔のままで、こう返した。
『うん、良いよ。それが、君にとっての“大切なカード”になるのなら、だけどね』
 そう言って、少年は去っていく。そして、少年は幼いオレから受け取ったカードを、丁寧に扱って、デッキケースに入れた。







 そう――、これが・・・、オレの今のデッキのきっかけとなった出来事だ――。







翔VS遊戯 〜“絵札の三銃士”の秘密〜

製作者:ショウさん




第/章 出会い――それが全ての始まり

「それでさ〜、何とか“アルカナ ナイトジョーカー”を出したんだけどさ〜、“マグマ・ネオス”出されて、負けちゃった〜!」
 赤茶色の髪をした少年――神崎 翔(かんざき かける)は、笑いながら、そう言った。周りには、翔にとっての親友が、5人いた。
「ハァ・・・。始めは、勝ったと思ったんだけどさ〜、その時の十代さんのデッキが、実は自分のデッキじゃなくって・・・」
 翔の言った出来事を、間近で見ていた少女――神吹 有里(かんぶき ゆうり)が、ため息をつきながらそう言った。翔、かっこ悪っ、と有里はそう言って、自分の言葉を締めくくる。
「でも、十代さんって、伝説の“三幻神”に匹敵するカード、“三幻魔”を打ち破った人なんだろ?それに、“光の結社”っていう組織をつぶしたりとか、“異世界”で戦い抜いたっていう、噂も聞くしさ〜」
 翔をフォローするかのように、言葉を発した少年――橋本 神也(はしもと しんや)は、フォローしながらも、表情は笑顔そのものであった。
「そうだよ、翔。そんな強い人に、たとえその人のデッキじゃ無かったとしても、勝てたのは凄いと思うよ!?」
 ちょっと、髪が長めの少年――高山 神童(たかやま しんどう)は、神也とは違い、ある意味、全身全霊を込めて、フォローしようとしている。だが、「その人のデッキじゃ無かった」、という部分が、翔に対する追い討ちでもあり、翔の心は、傷つくばかりだ。
「それよりも、私は、こいつ(翔)如きに準決勝で負けたのが、ムカつく!!」
 そう言って、髪が腰くらいのところまで伸びている少女――晃神 加奈(こうがみ かな)は、悪鬼羅刹の如き顔をして、翔の首を両手で、ギリギリと締め始める。
 冗談だと分かってはいたものの、そんな加奈の表情に、翔は、恐怖を抱いていた。
「もう、止めなよ、加奈ぁ〜」
 加奈を必死に止めようとしている少女――明神 真利(みょうじん まり)は、加奈を止めようとしているのとは裏腹に、全く行動していなかった(座ったままの状態である)。

「――ってかさ〜」
 神也の突然の発言に、5人全員は動きを止める(しいて言うならば、加奈が動きを止めたせいにより、翔は地面に崩れてしまっており、翔だけは動きを止めた、とは言える状態ではない)。
「今まで、ずっっっと気になってたんだけど・・・」
 そう言うと、神也は、地面に倒れている翔の方を向く。
「何で、お前――“絵札の三銃士”持ってんの?」
 神也の言葉に、翔と有里を除く3人は、口を大きく開けて、それこそ石のように再び、動きを止めてしまう。

「そう言えば、そうだね・・・」
 神童は、今更気づいた自分を恥ずかしがるように、顔を真っ赤にしながらそう言った。
「考えたことなかった」
 真利は、これから考えようと思ったのか、腕を自分の前でしっかりと組み、頭を傾けていた。だが、それほどまでに真剣ではなかったため、すぐに考えるのを止めてしまう。
「確か・・・、“絵札の三銃士”って、伝説の決闘王(キング・オブ・デュエリスト)・武藤 遊戯(むとう ゆうぎ)さんのカードよね?」
 考えるのを止め、両手で頭を押さえていた真利を、左手であやしながら加奈は、そう言った。

「その通り!だから、オレはずっと、気になってたんだよ・・・」
 神也は、スッ――と立ち上がると、地面に倒れたままになっている翔の近くまで歩くと、勢いよくしゃがみ、翔の顔を見る。
「遊戯さんのカードを、何でお前が持っているかを」
 神也の言葉を聞き終えると、翔は、駄々をこねるように、大きく口を開ける。そして、その状態で、つぶやく。

「説明するの、面倒くせぇ〜」


バキッ!

 翔が、そう言った瞬間、神也の拳が、翔の頬に命中する。

「“面倒くさい”言うなっ!!」
 言うだけで済んだものの、神也は、翔を殴ってからそう言った。
「言うの、遅っ」
 有里は、大阪人もビックリするほどのグッドタイミングで、神也に突っ込みを入れる。だが、その言葉はかなり小さく、近くにいた神童、加奈、真利くらいにしか聞こえなかった。

「あぁ〜もう!!言えば良いんだろ!?言えばァアアッ!!」
 殴られた頬を手で押さえながら、翔は、そう叫ぶ。そのまま、「その代わり――」と言葉を付け足し、有里の腕をつかんで、引き寄せる。
「有里。お前も、説明手伝ってくれ」
 つかんだ翔の手と、翔の言葉のダブルによって、有里は激しく驚く。
「ハァアアア!?なんで、私が!?」
「だってぇ、オレ、結構忘れちゃってきてるし、お前も、一緒にそこにいたんだから良いだろ?」

 正直なところ、翔は、少しも忘れてなどいなかった。いや、忘れてはいけない、と自分に言い聞かせ、忘れない努力を行っていた。それほど、翔にとって、とても大きな出来事であったのだ。
 だからこそ、本来は、自分の胸の内にずっと留めておきたかった出来事でもあったため、自分からは言い難く、有里に手伝ってもらおうとしているのだ。

「じゃあ、説明するわよぉ〜・・・」
 そう言って、有里は、翔を通じながら、喋り始める。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 8年前――。

 神崎 翔:6歳。
 神吹 有里:6歳。

 翔と有里は、そのころから、既にデュエルを始めていた。当然、互いのデッキは、昔とは全く別のものであった。唯一、同じところといえば、そのデッキを信頼していたというところだろうか・・・。
 そのころの翔のデッキは、低レベルながらも、強かったり、トリッキーな効果を持ったモンスターが中心の「ローレベル」、有里のデッキは、場に出す事によって、同種族のモンスターを手札に加える効果を持ったモンスター、「ガジェット」のデッキであった。

 運命の出来事のきっかけとなった日――。

 その日は、6月30日。
 亀のゲーム屋で、海馬コーポレーションの協力の下で行われていた、「デュエリストレベル認定大会」があった日であった。
 翔と有里は、その大会に出ようと相談していたのだが、時間を間違え、14時に始まるところを、16時に来てしまっていた。

「遅れた〜!!」
 必死になって走る翔と有里。若干、翔の方が足は速く、有里がそれについていく形となっていた。そして、2人が汗だくになりながらも、亀のゲーム屋にたどり着いた時、そこではデュエルが行われていた。


『オレのターン!“ヴァンダルギオン”の攻撃!!』
 その少年の後ろで聳えていた漆黒の竜は、口を大きく開き、口の中で溜めていたエネルギーを、一気に放出する。





――――冥王葬送!!!





 その攻撃によって、少年と対峙していたデュエリストは、ライフを失い、逃げるように去っていってしまった。
 そんな光景を見て、自然と翔は、自分のデッキを強く握り締めていた。

 次の瞬間、その少年の目つきが穏やかになると、少年は「疲れた〜」とだけ言い残し、ゲーム屋に入っていった。それに続くように他のギャラリーが、ゲーム屋に入ろうとしていた。



「ん・・・?」

 そんな時、その少年は、ふと翔の方を見た。

 そして、その少年が見たもの――それは、翔が強く握り締めていたため、小さく光り輝いていたデッキであった。“それ”が見えるのは、その少年だけらしく、他の者は、一切気づいていない。それを見て、少年は小さく笑う。


「えっ・・・?」
 少年の笑みに気づいたのもまた、翔だけであった。そして、そんな笑みを見て、翔は小さく驚いてしまう。





 これが、翔のデッキを変えたきっかけとなった日――。








 この出来事によって、遠く離れていた2本の線が、ゆっくりと交わろうとしていた・・・。




第Z章 憧れる人――その人とデュエルを

 神崎家――。

 翔は、2階にある自分の部屋で、横になり自分のデッキを眺めていた。一枚一枚、丁寧に・・・。

 この日は、「デュエリストレベル認定大会」の日の夜であった。
 少年のデュエルを見た後、翔と有里は、その大会に参加しようとしていたのだが、時間をオーバーしていたから、という理由で、残念ながらその大会に参加する事は出来なかった。しかしながら、その店で、デュエルはする事が出来た。トレードもする事が出来た。
 翔としては、満足な1日であった。

 だが、唯一の心残り――。

(なんで・・・、ボクの方を見て笑ったんだろう・・・?)
 翔の心残りは、昼近くに見た少年の姿であった――。

 そんな心残りがある中、翔はゆっくりと眠り始める・・・。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ん・・・?」
 翔は、目をこすりながら立ち上がった。
 そこは、辺りが暗く、何も見えない空間であった。だが、翔は、「どうせ夢だろう?」という、子供とは思えないセリフを言うと、再び横になり、眠ろうとする。だが、そんな時であった――。

『クリクリ〜』
 可愛らしく、澄んだ声が、真っ暗な空間全てに響き渡った。翔は、その声を聞くと、飛び上がるように起き上がり、辺りを見回す。そこには、自分のデッキの「切り札」である“ハネクリボー”の姿があった。
 始めは、夢か?と思い、目を何度もこすり、自分の頬をつねったりするが、いくらやっても、ハネクリボーの姿は消えないし、痛みもあった。つまり・・・、現実。
「は・・・初めまして・・・?“ハネクリボー”・・・」
 そう言って、翔は頭をポリポリとかいた。突然、目の前に現れたハネクリボーの姿を見て、何をすれば良いのか分からなくなっているのだ。
 すると、ハネクリボーは小さく笑うと、自身の翼を大きく広げ、何かを映し出す。そこに映し出されたのは、その日の昼間に見た少年であった・・・。
「えっ・・・、どういう・・・意味・・・?」
 その時、翔の記憶とその少年の姿が、一致する――。

「この人・・・、“遊戯”さん・・・なのか・・・?」
 翔が驚きながらそう言うと、ハネクリボーは笑顔のまま大きくうなずいた(だが、ハネクリボーの体は小さく、うなずいている、というよりは、体を前に倒している、という感じだ)。
「でも・・・、遊戯さんが、どうしたんだ?」
 そう言うと、ハネクリボーは、再び翼を広げ、翔の頭の中に、ダイレクトに何かをぶつける・・・。

 自身の“思い”を――。




『戦うんだ・・・。君自身の為にも・・・』
 それが、ハネクリボーの最初の言葉であった。いや、最初で“最後”・・・か。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「うわぁああっ!!!」
 翔は、勢いよく起き上がった。そして、辺りを見回し始める。
 自分の下には、ベッドが置かれ、自分の上には布団が、ぐじゃぐじゃであったが置かれてあった。
 翔は、「夢・・・?」と、再確認するように感じてしまうが、ハネクリボーと会話をした、という出来事は、翔の頭の中にしっかりと記憶され、ハネクリボーの言葉も記憶されている・・・。「夢にしては、変な夢だな」と思いながらも、翔はベッドから降りて、1階へ向かう。

 この日は、日曜日――。
 午前中から、有里と遊ぶ事になっており、翔は、朝食を急いで食べると、すぐ隣にある有里の家へ向かった。だが、有里は、既に翔の家の前で待機していた。有里の腰には、自慢のデッキ「ガジェット」が入ったデッキケースが、有里の左腕には、翔と有里が、それぞれのお年玉全てを叩(はた)いて買ったデュエルディスク(このデュエルディスクは、GXの物ではなく、一個前の物。ようは、遊戯達が使っていた形状だ)が握られていた。
「じゃ、今日は何処行く?」
 そう言って、有里は、翔に迫る。
「う〜ん、何処に行こうかなぁ・・・。――ッ!!?」
 何処に行くか、を考えていると、翔の頭の中に、1つの場所が浮かび上がってくる。

 その場所は――・・・、





「“亀のゲーム屋”に行こう・・・!!」

 これも、ハネクリボーによるものなのだろうか・・・?
 翔は、誰かに操られてでもいるかのように、急いで亀のゲーム屋に向かった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 亀のゲーム屋――。

 翔は、亀のゲーム屋にたどり着くと、辺りを何度も見回し、“誰か”を探す。急いでここに来たため、翔はともかく、有里は、かなりの息切れを起こしていた。
「ちょっ・・・、翔・・・。速・・・いって!」
 息切れのため、有里は、満足に喋れていない。だが、翔は、そんな満足に喋れてさえいない有里の言葉も無視して、辺りを見回し続ける。


「見・・・つけたっ!!」
 翔は、その“誰か”を見つけると、有里の近くまで来て、デュエルディスクを借りると、その“誰か”に向かって走り始める。そして、走りながら、翔はデュエルディスクを左腕に装着、展開させ、自分の腰に取り付けてあったデッキケースからデッキを取り出し、デュエルディスクにセットする。

 そして、歩いている最中であったその“誰か”の前に、翔は立ちふさがった。


「“遊戯さん”・・・ですよね・・・?」
 翔は、息を荒くしながら、その“誰か”にそう聞いた。
「えっ・・・、うん、まぁ・・・そうだけど。大丈夫?」
 その“誰か”とは、遊戯の事であった。いつものように、童実野高校の制服を身に着け、首には四角錐型のパズルがかけられていた。
「すみません・・・、勝手で悪いんですけど・・・、デュエル!・・・してくれませんか?」
 翔のその言葉に、遊戯は一瞬だけ驚いてしまう。だが、遊戯は翔を見るのは初めてではない。昨日、翔の握るデッキが光り輝くのを遊戯は見ていた。そのためからか、遊戯はすんなりと承諾し、デュエルディスクを展開する。
「良いよ!それに・・・、何故だか分からないけど・・・、君の力が知りたい!」
 そう言うと、腰に取り付けてあったデッキケースからデッキを取り出し、素早くデュエルディスクにセットする。
「え・・・?え!?何!?どうなってるの・・・?」
 全く状況のつかめていない有里が、遅れてやってくる。目の前には、真剣な表情で構えている翔と遊戯の姿が。どうしていいのか分からず、結局有里は、ちょこんとその場に座った。観戦するつもりなのだろう・・・。

「行くよ・・・!もう一人のボク!!」
 そう遊戯が叫んだ瞬間、遊戯の首に掛けてあったパズルが巨大な光を出す。その光の中で、遊戯は“もう1つの人格”と入れ替わる――。





 “名も無き王(ファラオ)”と――。





「君、名前は?」
 名も無き王(ファラオ)となった遊戯は、翔にそう聞いた。翔は、突然の遊戯の変化(遊戯は、もう1人の人格と入れ替わった事で、目つきが鋭くなっている)に驚きながらも、ゆっくりと口を開く。
「神崎・・・翔・・・!!」
 ゆっくりとであったが、その言葉ははっきりとしていた。



「よし!翔くん・・・、デュエルだ!!
 遊戯の大きな叫びに、翔は、笑顔で叫び返す。

「ハイッ!!!」


 翔と遊戯、2人はデッキの上からカードを5枚引き、それを手札とする。






 デュエルが・・・、始まる――っ!!





翔  LP:4000
   手札:5枚
    場:無し

遊戯 LP:4000
   手札:5枚
    場:無し



ドクンッ――
 翔の中の何かが、ボールのように軽く、しかし勢いよく弾ける。




第з章 バーサーカー――弱きものが強きものに

「先攻は君からでいいよ」
 遊戯の好意に甘え、翔は、先攻をとり、デッキの上からカードを1枚ドローし、手札に加える。

ドローカード:ハネクリボー

(やった!!)
 翔は、今自分が引いた「切り札」に、素直に喜び、手札を確認すると、すぐにそれを召喚する。
「ボクは、モンスターを1体セット、カードを1枚伏せて、ターンエンド」

翔  LP:4000
   手札:4枚
    場:裏守備1枚、リバース1枚

 翔のターンエンドを聞くと、遊戯は小さく笑い、そしてカードを引いた。そして、自分の手札を眺め、どうするかを考え始める。
 何故なら、その手札が、あまりにも強力だからだ――。

(もう一人のボク)
 遊戯が考えていると、パズルの中にいたまた別の遊戯が姿を現す。そして、パズルの中――深層心理の中で、会話を始める。
(どうした?相棒――)
 突然の相棒の出現に、遊戯は驚き、すぐにその理由を聞き始める。
(君が、その手札で悩んでいたから――)
 そう言って、遊戯はもう1人の遊戯の手札を眺める。

遊戯 手札:デビルズ・サンクチュアリ、ブラック・マジシャン・ガール、賢者の宝石、我が身を盾に、融合

 たった1ターンで、2体の強力な魔術師を呼び出すことが出来る手札――。
 だが、相手はみるからに幼く、本気を出してしまうと、泣いてしまうかもしれない――。本来ならその手を使わなければ良いだけなのだが、この手札を見る限り、全ての手を考えたとしても、2体の強力な魔術師を呼ぶ、という手しか無かった。

 それらがもう1人の遊戯を狂わせ、「デュエルの楽しさ」が、犯されていく・・・。

(やればいいんじゃない?)
 遊戯が小さく笑って、もう1人の遊戯に言った。当然、もう1人の遊戯はそれに反論するが、すぐに遊戯はもう1人の遊戯の肩をポン――と優しく叩いて、言い返す。
(本気でやらないと・・・、“相手に失礼”なんじゃない?)
 遊戯の当たり前のような一言が、もう1人の遊戯にとっての大きな支えとなる――。

 そして、遊戯は前を向いた。
 目の前には、デュエルディスクをしっかりと左腕に装着し、凛とした翔の姿、いやデュエリストの姿があった――。それを見て、遊戯は目つきを鋭くし、デッキの上からカードを1枚引く。
「オレのターン、ドロー!」

ドローカード:魂の綱

 遊戯は、今引いたカードを手札の隅に差し込むと、自分の考える「最強の手」を始める――。

「オレは、手札から“デビルズ・サンクチュアリ”を発動――ッ!!このカードの効果で、オレの場に、“メタルデビル・トークン”が姿を現す!」
 遊戯と翔の間に、突然、漆黒の魔法陣が出現したかと思うと、そこから黒い塊が姿を現した。その黒い塊は、目を持っていないが、目のような何かで翔を見つめ、その体を象り始める。

デビルズ・サンクチュアリ
通常魔法
「メタルデビル・トークン」(悪魔族・闇・星1・攻/守0)を
自分のフィールド上に1体特殊召喚する。
このトークンは攻撃をする事ができない。
「メタルデビル・トークン」の戦闘によるコントローラーへの超過ダメージは、
かわりに相手プレイヤーが受ける。
自分のスタンバイフェイズ毎に1000ライフポイントを払う。
払わなければ、「メタルデビル・トークン」を破壊する。

「そして――、“メタルデビル・トークン”を生贄に捧げ・・・、“ブラック・マジシャン・ガール”を攻撃表示で召喚ッッ!!」

 このストーリーでは、その時代を表すため、マスタールールではなく、エキスパートルールとなっております。そのため、「エクストラデッキ」も「融合デッキ」となっておりますので、ご了承ください。 by ショウ

 遊戯の目の前に次に現れたのは、魔術師の少女であった。だが、正確には、「魔術師」ではなく、「魔術師の弟子」――である。そして、弟子は師匠を呼び出す――。
「そして、“ブラック・マジシャン・ガール”がフィールド上に存在する時のみ発動可能なカード――、“賢者の宝石”を発動する!!」
 遊戯がそのカードを発動した瞬間、魔術師の少女の目の前に、魔力を「姿」に変える宝石が姿を現した。少女は、その宝石に魔力を込め、今自分が来て欲しいと望む者を念じ、宝石をその「姿」に変えさせる――。

賢者の宝石
通常魔法
自分フィールド上に「ブラック・マジシャン・ガール」が
表側表示で存在する時に発動する事ができる。
自分の手札またはデッキから、「ブラック・マジシャン」1体を特殊召喚する。

「現れろ!――“ブラック・マジシャン”ッッ!!!」
 そして、遊戯の目の前に、黒き魔術師が姿を現した。
 先程出現した弟子の師匠である。

 遊戯は、自分の場に2体の魔術師を並べた事で、小さな「勝ち」の感触をつかんでいた。ただ、目の前の対戦相手――翔が、泣いてしまわないか、という心配もしていた。
 だが――・・・、

「すんげぇっ!!」
 翔が、2体の魔術師を見て言った感想は、「泣く」という言葉からは、遠く離れていた。そんな翔の言葉を聞いて、遊戯は少しだけホッとすると、すぐに真剣な目つきで翔を見て、攻撃を仕掛ける――。

「よしっ!!“ブラック・マジシャン・ガール”で、裏守備モンスターに攻撃だっ!!」
 遊戯は、手を前に出し、高らかに宣言する。
 その宣言を聞き、魔術師の少女は、空高く舞い上がり、右手で握っていた杖を、翔の目の前にいる裏守備モンスターに翳した。




―――ブラック・バーニング・マジックッッ!!!




 少女の魔力の前に、裏守備モンスターはなすすべもなく、消滅していった。だが、そのモンスターは、ただのモンスターではなかった――。
 翔の「切り札」――ハネクリボー。
 このモンスターは、自身が死する時、自分の主人をその最後の力で、死守する能力を持っているのだ。

ハネクリボー
効果モンスター
星1/光属性/天使族/攻 300/守 200
フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時に発動する。
発動後、このターンこのカードのコントローラーが
受ける戦闘ダメージは全て0になる。

 強力な光が、翔と2体の魔術師の間に出現し、魔術師の魔力を拒み始める――。


「“ハネクリボー”か・・・。良いカードを持っているな」
 遊戯は、翔が場に出していたハネクリボーのカードを見て、フッ――と優しい表情をとった。翔は、遊戯のその言葉に、頬を赤らめ、照れてしまっている。

(何で、照れてんのよ・・・)
 翔と遊戯のデュエルを暇そうに観戦している有里が、心の中でそう思った。
 正直な気持ちとしては、遊戯という偉大なデュエリストとデュエルをしている翔が、羨ましいのだ。

「このカードは、ボクが一番最初に手に入れたレアカードだから、大事に持ってるんです!」
 翔は、まだ慣れていない敬語で遊戯の質問に答えた。
 翔の言葉に、遊戯は再び小さく笑った。

「よし!オレは、これでターンエンドだ!」

遊戯 LP:4000
   手札:3枚
    場:ブラック・マジシャン・ガール(攻撃)、ブラック・マジシャン(攻撃)

「ボクのターン――」
 翔は、自分のデッキに手を伸ばす。
「ドローッ!!」
 そして、伸ばした手を勢いよく戻し、その時に引いたカードをサッと手札に加える。

ドローカード:神秘の中華なべ

 引いたカードを見た瞬間、翔は、額にかけてあったゴーグルをスッ――と、自分の目の部分まで下ろし、しっかりと装着する。次の瞬間、翔は、辺り一面を支配するかのごとく集中力を手にする――。

ビリビリッ・・・

 その集中力は、対峙している遊戯、そしてデュエルを見ていた有里にまで伝わる。有里は、そんな翔の集中力を何度も見ているため、何とも思っていないが、初めて見る遊戯は、多少の同様を持ってしまっている。
(な、何て凄い集中力なんだ・・・っ!)
 パズルの中に眠っていた遊戯が姿を現し、もう1人の遊戯にそう言った。もう1人の遊戯も、遊戯の言葉に賛同し、小さくうなずいた。

「よしっ!」
 翔は、そう言うと、ゴーグルを外し、元の場所である額に戻した。
「ボクは手札から、“ゲール・ドグラ”を攻撃表示で召喚するっ!」
 翔は、「子供が絶対に使わなさそう」なモンスターを場に出した。何故なら、そのモンスターは、少し気色悪い昆虫であったからだ。だが、翔は、そのカードの癖がありながらも強力な効果を好んでおり、大切なカードの内の1枚として、使っていた。
「“ゲール・ドグラ”の効果発動!融合デッキから融合モンスター――“F・G・D”を墓地に送る!」

翔  LP:4000→1000

 次の瞬間、黒色のストライプが入った緑色の昆虫の翼から、薄紫色の鱗粉が降り注ぎ、翔の融合デッキのカード1枚を、その鱗粉の毒で溶かしてしまった(表現が分かりにくいが、取り敢えず墓地に送られましたww)。

ゲール・ドグラ
効果モンスター
星2/地属性/昆虫族/攻 650/守 600
3000ライフポイントを払って発動する。自分の融合デッキから
モンスター1体を墓地に捨てる。

「“ゲール・ドグラ”・・・?あまり見ないカードだな。だが、正規の手順で召喚していない融合モンスターを墓地に送ろうが、復活する事は出来ないぜ?」
 遊戯が、目の前に聳える翔のモンスターを見て、困惑しながらも、そう言うと、翔は小さく笑って答える。
「分かってるよ。だから、融合モンスターを墓地に送った理由は、復活じゃない!」
 そして、翔は更に手札からカードを発動する。

「手札から魔法カード、“生還の宝札”を発動する!」

生還の宝札
永続魔法
自分の墓地からモンスターがフィールド上に特殊召喚された時、
デッキからカードを1枚ドローする事ができる。

 翔は、新たに手札からカードを発動すると、伏せてあったカードも力強く発動する。
「そして、リバースカードオープンッ!“リミット・リバース”!!このカードの効果で、ボクは“ハネクリボー”を攻撃表示で特殊召喚する!」

リミット・リバース
永続罠
自分の墓地から攻撃力1000以下のモンスター1体を選択し、
攻撃表示で特殊召喚する。
そのモンスターが守備表示になった時、そのモンスターとこのカードを破壊する。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。

 翔が発動したカードの効果によって、墓地に送られていたハネクリボーが、ボロボロになりながらも、再び翔の目の前に姿を現した。
「“生還の宝札”の効果で、1枚ドロー」
 そして、翔は、先程手札から発動したカードの効果で、デッキの上からカードを1枚、ゆっくりと引いた。

ドローカード:バーサーカークラッシュ

「カードを2枚伏せて、ターンエンド――」
 翔は、手札のカードを2枚選び出すと、素早くそのカードを伏せ、ターンエンドを宣言する。

翔  LP:1000
   手札:2枚
    場:ハネクリボー(攻撃)、ゲール・ドグラ(攻撃)、リミット・リバース、リバース2枚

 遊戯はデッキの上からカードを1枚引きながら、次の戦術を考えていた。
 いや、自分の戦術よりも、翔の戦術を考えている、といったほうが正しいか。
 翔の場にいるモンスターは、攻撃力の低いモンスター2体だけだからだ。
(一応、オレの手札には、“我が身を盾に”がある・・・。だから、そこまでリバースカードに警戒する必要は無いが・・・!)
 遊戯は、しばらくの間考えると、相手の戦術は分からないままだが、攻撃するべきだと判断し、手を前に出し、攻撃を始める。
「行くぜ!“ブラック・マジシャン”で、“ゲール・ドグラ”に攻撃!」
 遊戯の考え――それは、(当然ではあるが)ダメージを無効にする力を秘めたハネクリボーに攻撃しない事で、翔のライフを0にする、というものであった。だが、翔は、そんな遊戯の考えを読んでいた。
 黒き魔術師が、緑色の昆虫に襲い掛かろうとしている時、翔は、伏せてあったカードの内の1枚目を発動する――。

「リバースカード、“神秘の中華なべ”!!“ゲール・ドグラ”を生贄に捧げ、その攻撃力650ポイント分、ライフを回復するっ!!」
 次の瞬間、巨大な中華なべ(なべの下には炎)が出現し、その昆虫を焼き始める。その行為がそのまま翔へのライフに変換され、翔のライフは回復する。

翔  LP:1000→1650

神秘の中華なべ
速攻魔法
自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる。
生け贄に捧げたモンスターの攻撃力か守備力を選択し、
その数値だけ自分のライフポイントを回復する。

 翔のカード発動のせいで、黒き魔術師は、対象を見失い、辺りを見回していた。そんな魔術師を見て、遊戯は再び大きく叫ぶ。
「なら!“ブラック・マジシャン”!“ハネクリボー”に攻撃だぁっ!!」
 遊戯の叫びを聞き、黒き魔術師は、ハネクリボーの方を向き、素早くダッシュ――ハネクリボーに狙いを定め、その手に握っていた杖をハネクリボーに向ける。
 だが、次の瞬間――翔は、小さく笑って見せた。

「リバースカード――発動ッッ!!」













































































――――“バーサーカークラッシュ”ッッ!!!!
















                            ドッッッ!!!!





 ハネクリボーの体を覆うオーラが、巨大になる――。

 そのオーラに呼応するかのように、ハネクリボーの手の爪が鋭くなり、背に生えた羽も大きく広がっていく――。



「“バーサーカークラッシュ”の効果――それは、墓地のモンスターを除外する事で、“ハネクリボー”の攻撃力が、除外したモンスターの攻撃力と同じになる!!」
 翔は、墓地にあった“F・G・D”をゲームから除外しながら、そう叫ぶ。


ハネクリボー 攻:300→5000
       守:200→5000



 そして、ハネクリボーは、その鋭くなった爪で、向かってきていた黒き魔術師を勢いよく切り裂いた。

遊戯 LP:4000→1500

「くぅっ・・・!!」
 ハネクリボーの攻撃によって発生した強力な衝撃に、遊戯は腕を前に出し、デュエルディスクを盾のようにしながら耐える――。

「これが、“ハネクリボー”の真の強さだっ!!」

 翔は、拳を作り、ガッツポーズをしながらそう叫んだ。

バーサーカークラッシュ
速攻魔法
自分の墓地に存在するモンスター1体をゲームから除外して発動する。
このターンのエンドフェイズ時まで、自分フィールド上に表側表示で存在する
「ハネクリボー」1体の攻撃力・守備力は、除外したモンスターと同じ数値になる。

翔  LP:1650
   手札:2枚
    場:ハネクリボー(攻撃、攻/守:5000)、リミット・リバース、生還の宝札

遊戯 LP:1500
   手札:4枚
    場:ブラック・マジシャン・ガール(攻撃)




第ч章 絵札の三銃士――未来という名のデッキ

「オレは、カードを2枚伏せ、ターンエンドだ」
 バーサーカークラッシュの攻撃力アップは、エンドフェイズ時、つまりは遊戯がターンエンドを宣言するまで消える事は無い。一応、遊戯の場には、ブラック・マジシャンが墓地へ送られた事で、攻撃力がアップしたブラック・マジシャン・ガールがいるが、所詮は2300。5000には、到底及ばなかった。そのため、遊戯は不本意ではあるが、カードを2枚伏せ、ターンエンドを宣言する。

遊戯 LP:1500
   手札:2枚(融合、我が身を盾に)
    場:ブラック・マジシャン・ガール(攻撃、攻:2300)、リバース2枚

 ちなみに、遊戯が我が身を盾にを伏せない理由は、ライフが減ったせいで、我が身を盾にも発動できなくなったからである。

ブラック・マジシャン・ガール
効果モンスター
星6/闇属性/魔法使い族/攻2000/守1700
自分と相手の墓地にある「ブラック・マジシャン」と
「マジシャン・オブ・ブラックカオス」1体につき、
このカードの攻撃力は300ポイントアップする。


ハネクリボー 攻:5000→300
       守:5000→200

 遊戯のターンエンドにより、ハネクリボーは元の姿に戻り、攻・守も元に戻った。
「ボクのターン、ドロー!」
 翔は、素早くデッキの上からカードをドローする。
 遊戯とデュエルをしているのが、楽しくて楽しくて仕方が無いのだ。

「ボクは手札1枚をコストにして、魔法カード“ライトニング・ボルテックス”発動!」
 翔は、手札のカード1枚をコストに、遊戯のフィールド上のモンスターを破壊するカードを発動した。
 強力な雷が、遥か上空より降り注ぎ、魔術師の弟子であるブラック・マジシャン・ガールを貫いた。

 ブラック・マジシャン・ガールファンの方、ゴメンナサイ m(_ _)m あまり想像しない方が良いと思います。 byショウ

ライトニング・ボルテックス
通常魔法
手札を1枚捨てて発動する。
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て破壊する。

 だが、遊戯は死したモンスターをも信用し、新たなモンスターに、その“魂”を繋げる。――そんな事を意味したカードを遊戯は、発動する。

「リバースカード――“魂の綱”ッ!!オレのライフを1000払う事で、デッキからレベル4のモンスターを1体、特殊召喚する!!」

魂の綱
通常罠
自分フィールド上のモンスターが破壊され墓地へ送られた時に発動する事ができる。
1000ライフポイントを払う事で、自分のデッキからレベル4モンスター1体を
特殊召喚する事ができる。

 墓地に送られたブラック・マジシャン・ガールから伸びた綱が、遊戯のデッキにまで伝わり、新たなモンスターが特殊召喚される。

遊戯 LP:1500→500

「出でよ!“クィーンズ・ナイト”!!」
 遊戯の目の前に現れたモンスターは、赤き鎧を身に着けた女戦士であった。
 だが、新たなモンスターが現れる事も、翔にとっては計算通りであった。手札に残された最後のカードを発動する。



 先程のターンで、生還の宝札の効果でドローしたカードを――。






「ボクは手札から2枚目の“バーサーカークラッシュ”を発動するッ!!“ライトニング・ボルテックス”のコストで墓地に送った“アーマード・フライ”をゲームから除外し、“ハネクリボー”の攻・守は、共に2000になる!!」
 再び起きたハネクリボーの変化――。
 ハネクリボーを覆うオーラが、先程よりは小さいが、大きくなり、手の爪は鋭く、瀬に生えた羽は大きく広がっていく。

ハネクリボー 攻:300→2000
       守:200→2000








「攻・撃ッッッ!!!」


 ハネクリボーが、その鋭い爪を女戦士に向けた瞬間、遊戯も負けじと伏せていたカードを発動する。
「リバースカード!“ホーリーライフバリアー”発動!!手札を1枚捨て、このターンの全てのダメージを0にする!!」

ホーリーライフバリアー
通常罠
手札を1枚捨てる。
このカードを発動したターン、相手から受ける全てのダメージを0にする。

 遊戯は、ライフが少なくなったせいで、使えなくなった我が身を盾にを墓地に送り、強力な盾を自分の目の前に張る。その盾は、ダメージだけでなく、ハネクリボーの攻撃をも防いでしまう。
「何で?“ホーリーライフバリアー”は、“相手から受ける全てのダメージを0にする”だけじゃないの!?」
 翔が、そんな疑問を持っていると、遊戯はゆっくりと口を開き、説明する。

「“全てのダメージを0にする”――つまりは、“戦闘ダメージも0にする”という事だが、戦闘でモンスターが破壊されるのは、本来“そのモンスターの攻撃力をも超える戦闘ダメージを受けているから”なんだ。だから、そのダメージをも無効にすれば、モンスターは戦闘では破壊されない、という訳だ」
 遊戯がそう言うと、翔は「へ〜そうなんだ〜」と、遊戯の事を感心し始める。

「じゃあ、ターンエンド――」
 翔は静かにターンエンドを宣言する。
 ハネクリボーを守備表示に出来なかったのは痛かったが、まだ負けないだろう、という考えを翔は持っていた。
 それが甘かった、そう気づくのは、もう少し後だったのだが・・・。

翔  LP:1650
   手札:0枚
    場:ハネクリボー(攻撃)、リミット・リバース、生還の宝札




 そして、ラストターン(最終局面)へ――。


「オレのターンだな?」
 遊戯は、デッキの上に手を置き、勢いよくドローする。
「オレは、手札から“増援”を発動し、“キングス・ナイト”を手札に加える!そして、“キングス・ナイト”を召喚ッ!!」
 遊戯はカードをドローすると、流れるような手さばきで、カードを次々と展開していく。このとき、出現したモンスターは、少し老いたようにも見える戦士であった。
 その瞬間――、女戦士と老いた(?)戦士の力に共鳴し、遊戯のデッキより、更なる戦士が姿を現す。

「現れろ――“絵札の三銃士・最後の1人”ッ!!―――“ジャックス・ナイト”!!」

 遊戯の目の前に現れた最後の1体は、青き鎧を身に纏った戦士の姿であった。

クィーンズ・ナイト
通常モンスター
星4/光属性/戦士族/攻1500/守1600
しなやかな動きで敵を翻弄し、
相手のスキを突いて素早い攻撃を繰り出す。

増援
通常魔法
デッキからレベル4以下の戦士族モンスター1体を手札に加え、
デッキをシャッフルする。

キングス・ナイト
効果モンスター
星4/光属性/戦士族/攻1600/守1400
自分フィールド上に「クィーンズ・ナイト」が存在する場合に
このカードが召喚に成功した時、デッキから「ジャックス・ナイト」
1体を特殊召喚する事ができる。

ジャックス・ナイト
通常モンスター
星5/光属性/戦士族/攻1900/守1000
あらゆる剣術に精通した戦士。
とても正義感が強く、弱き者を守るために闘っている。


 3体の戦士――その姿を見て、翔は感動していた・・・。

 何故だか分からない・・・、ただ、3体の戦士の姿は、神々しく、翔にとって、とてつもなく大きな存在であった――。

「そして、“融合”――発動!」





 3体の戦士が静かに交わっていき、新たな戦士――絵札の三銃士を超越した、漆黒の鎧を身に纏った戦士が、姿を現した――!!

















“アルカナ ナイトジョーカー”――――









降・臨ッ!!


















 全てを切り裂く一閃が、翔を――全てを――切り裂いた・・・。








翔  LP:0
   手札:0
    場:生還の宝札

遊戯 LP:500
   手札:0
    場:アルカナ ナイトジョーカー


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「惜しかったね〜、翔!」
 翔と遊戯のデュエルを最後まで見ていた有里が、翔の肩をポンッと叩いた。
 その時、遊戯が、翔の目の前に立っており、仰向けで倒れていた翔の手を取り、しっかりと立たせる。
「大丈夫?」
「え・・・、う、うん」
 遊戯の姿は、もう1人の遊戯――名も無き王(ファラオ)の姿ではなく、元の遊戯に戻っていた。そのためか、声や表情が、どことなく穏やかになっている。


「――それにしても、凄いですよね・・・。“絵札の三銃士”――。ボクも欲しいな〜」
 翔は、晴天の空を見上げながらそう言った。



 そんな翔の言葉を聞いた瞬間であった。

 遊戯のデュエルディスクにセットされていたデッキが、小さく輝いた――いや、デッキの中に入っていた3枚のカードが、小さく輝いていた――。
 そして、それに共鳴するかのように、翔のデッキのカードも――。



(そうか・・・、君だったのか・・・。ボクを翔くんに戦わせようとしていたのは)
 遊戯は、輝いていた翔のデッキのカード――ハネクリボーを見て、そう思うと、小さく笑い、ハネクリボーの意図を掴んだ。そして、翔の言葉に答えるように、遊戯は口を開いた。

「なら・・・、交換(トレード)する?」
 遊戯が、そう切り出したため、翔は目を見開き、本気で驚いた。
「え・・・えぇええぇぇえええぇええぇええええっ!!?」
 翔の驚き方は、尋常ではなかったが、すぐに元に戻り、ゆっくりと口を開く。

「でも・・・ボク・・・、良いカード全然持ってないし・・・」
「君の“ハネクリボー”とトレードがしたいんだ」
 遊戯の言葉に、翔はピクンッ――と反応してしまう。
 それもそのはず。ハネクリボーは、今まで自分が使ってきた、「魂のカード」とも呼べるカード。そう簡単に、あげるわけにはいかなかった。

「それに・・・、ボクにはね、“カードの精霊”の声が聞こえるんだけど――。今、君の“ハネクリボー”は、世界を救うために、“新たな持ち主”の元へ行きたい、ってボクに言うんだ」
 遊戯は、有里には聞こえないように、翔の耳元でそっと言った。
 当然、始めは翔も、遊戯の言葉には半信半疑であったが、遊戯の真剣な表情に、翔は遊戯の言葉を信じることにした。

「“ハネクリボー”も・・・、それを望んでいるの?」
「うん。そして、この“絵札の三銃士”も、“未来の君を救うため”に、君の元へ行きたい、って言っている・・・」






 こうして、翔と遊戯は、ハネクリボーと絵札の三銃士をトレードすることになった。




 絵札の三銃士は、未来の翔、いや、異次元空間(アナザー・ワールド)へと行ってしまった翔を救うために、翔の下へと・・・。




 そして、ハネクリボーは―――。










 全てが受け継がれていく・・・。




 遊戯の意志は、現実世界(リアル・ワールド)、異次元空間(アナザー・ワールド)の両方を救う事に繋がっていった――。




終章 精霊の意志と遊戯の意志――未来を救う意志

「これで、納得したかぁ?」
 翔が、有里を除く、4人にそう聞いた。
「へぇ〜・・・って――」
 すると、神也が翔の首を掴み、力強く締め始める。

「納得できると思うなぁあああああああっ!!結局、何でトレードできたのかを説明してねぇだろ!!」
 神也の意見は最もであった。
 実際、翔自身も、遊戯の意図、ハネクリボー、いや精霊の意図を知らないでいる。





 【だからこそ、知らなかった――。】




 神也が翔の首を絞める姿を見ながら、他の4人は、大笑いしている。
 翔はその4人の姿を見て、「後で覚えてろよ〜」とつぶやいてはいるが、神也の攻撃のせいで、それどころではなかった・・・。



 【今から一週間後――、】






 だが、楽しかった。
 自分を含めて、6人で、こうして、楽しく遊んでいる事が・・・。




 【全く違う世界に飛ばされ――、】







 本当に――、



本当に――、






楽しくて、永遠に続いて欲しかった――。








 【その世界を救うために戦っていくことを――】









 【遊戯と精霊、2つの意志が、2つの世界の未来を救う意志であったということを――】












































































 【本当に――、本当に――、知らなかった――】







後書き

 どもども、ショウです。今回は、“翔VS十代 〜絵札の三銃士VSE・HERO〜”の続編、及び“神の名を受け継ぎし者達”に繋がっていく“翔VS遊戯 〜“絵札の三銃士”の秘密〜”を読んでいただき、まことにありがとうございます。

 こういう風に書けば分かるとは思いますが、結局、“翔VS十代 〜〜”のストーリーは、本編に繋がっています(てか、頑張ってつなげましたww)。

 さて、神の名を受け継ぎし者達も、ようやく“前編”を切り抜けたため、その流れでこの番外編を書きました。書いた理由は、“翔VS十代 〜〜”と似ているのですが、やっぱり翔を原作キャラとデュエル、及び繋げたかったからですね。それと、アニメを見ていた時に、「何でぶつかっただけで、“ラッキーカード・ハネクリボー”がもらえるの!!?」と思ったからでもあります。つまりは、十代がハネクリボーをもらった事に対して、しっかりとした理由を付けたかったからです。結果、その理由も微妙になっちゃったんですが・・・ww

 ちなみに、この番外編、第〜〜章の、〜〜の部分、変だとは思いませんでしたか?そう、数字ではなく、数字っぽく見える文字なのです!こうした理由は、好奇心、っていうのもあるんですが、大きな理由としては、本編とは別である、というところを強調させたかったからなんです。まぁ、第〜〜話って表記すればよかったんですがwwそして、これ、1章1章が、短いですが、短編集感覚で呼んでいただければ幸いです。

 前回同様、キャラクターの性格変化に文句をつけてはいけません。「遊戯が、自分のカード、相手に渡すわけねぇし!」とかも言わないでください。てか、「十代にあげてるし、交換なんだから、それよりはマシなのでは・・・?」と言い返します。

 後書きが終章より長くなってしまったので、これで閉めたいと思います。

 ノリでこれを見たそこの君!
 是非、これを機会に、“神の名を受け継ぎし者達”を見てみよう!
 まぁまぁ、面白いと思うぞ!!(??)




オマケ 翔(幼少期)デッキ

モンスター 15枚
《ハネクリボー》
《ハネクリボー LV9》
《ハネクリボー LV10》
《ゲール・ドグラ》×3
《クリッター》
《ディープ・ダイバー》×3
《アーマード・フライ》×2
《シャインエンジェル》×3

魔法 18枚
《進化する翼》
《バーサーカークラッシュ》×3
《クリボーを呼ぶ笛》×2
《神秘の中華なべ》×3
《コーリング・マジック》×2
《ライトニング・ボルテックス》×2
《生還の宝札》×3
《手札断殺》×2

罠 7枚
《リミット・リバース》×3
《激流葬》
《聖なるバリア−ミラーフォース−》
《転生の予言》
《ダスト・シュート》


ちなみに言っておきます。
翔VS十代のオマケも含めてですが、毎回オマケに出てくるデッキは、あまり構築しないほうが良いと思います。
小説のデッキを再現しただけであって、回る率は、劇的に低いと思います。
机上のデッキでもありますし・・・。





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