翔VS十代 〜絵札の三銃士VSE・HERO〜

製作者:ショウさん




(時期としては、小説は進級テスト前。アニメは4期目で、十代が“デュエルが楽しい”という事を思い出したちょっと後です)



前編 友好試合――デュエル・スクールVSデュエル・アカデミア

 デュエル・スクールとデュエル・アカデミア――。
 中学と高等部という、年齢差はあるが、その“デュエル”という、観点のみで、互いの学校は友好関係を結んでいた――。
 そのため、月に一度、友好試合を行う事になっていた。

 勿論、今月も行う事になっており、今回はデュエル・スクールの代表は、2年生から選ばれることになっていた。当然、成績やデュエルのレベルを考慮し、決定する。
 その理由として、友好試合ではあるが、お互いの力量を把握するという意味でも用いられており、自身の学校が強いという事の証明のためにも、勝たなければならない、というものがあるからだ。
 代表選手を決めるためにも、2年生は学年で集会を開き、1日限りのデュエル・トーナメントを行おうとしていた。これは、自身の志願で参加をし、自主性を問う大会であった。
 そこには、いつものメンバーである、翔(かける)、有里(ゆうり)、神童(しんどう)、神也(しんや)、加奈(かな)、真利(まり)の姿もあった――。

「へぇ〜。人数は、30人ちょっとか・・・。」
 翔が、体育館の辺りを見回しながら、そうつぶやく。
「今回は、友達とか、そういうのは無しよ」
 有里は、辺りを見回していた翔を捕まえ、自分の下に引き寄せると、5人全員にそういった。
「もちろん!オレが勝つけどな!!」
 神也は、自信過剰にそう言った。
「ボクも・・・、負けないよ!!」
 神童も、今回は自信を持ち、力強く望むようだ・・・。
「あ、もう始まるみたいよ」
 加奈が、体育館にある巨大な電光掲示板を見て、そう言うと、
「じゃあ、行きましょ」
と、真利が、5人に呼びかけ、体育館のステージへと向かう。


「絶対に・・・、勝つ!!!」
 翔の叫びと共に、全てのデュエルが始まる――。


 30人全員が、デュエルディスクを左腕、右腕に装着し、デッキをセット、デッキの上からカードを5枚引くと、対峙する敵を目で威圧し、デュエルを始める。



















“決闘(デュエル)”―――!!!!!!


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ボォォォォォォォッ・・・

 船の汽笛の音が、港で鳴り響く――。
 船には、今回行われたトーナメントの優勝者と、教員数名、そしてトーナメント2位の者が乗り込んでいた。目指すは、デュエル・アカデミア――。

「後、数分か・・・。」
 翔が船首で、海を眺めながら、そうつぶやいた。すぐ後ろには、有里が、苦しそうに横になっていた。翔も、海をある程度眺めると、有里の側に駆け寄り、額に置いておいたタオルの水を替えていた。

「何やってんだ?有里――」
 翔の質問に、有里が苦しそうに答える。
「いや・・・、一応、あんたの応援なんだけど・・・」
 船酔いという奴だ――。


乗り物酔い
症状
 最初はめまい、生あくびなどの症状から始まり、次第に冷や汗、動悸、頭痛、体のしびれ、吐き気といった諸症状を催す。さらに悪化した場合、嘔吐が起きる。あまりにも嘔吐を繰り返すと、極端な場合は脱水症状に陥り、点滴が必要になる場合も起こる。最悪死亡したケースもあるが、そこまでの状態になるケースは極めてまれである。
(Wikipedia 参照)


 有里の言う、“応援”――これがどういう意味かというと、翔がトーナメントの1位、有里が2位という事である。

 決勝戦で、翔と有里が戦ったのだが、最後には翔の“アルカナ ナイトジョーカー”のダイレクトアタックが決まり、翔が勝利を手にしていたのだ。
 その後、有里の願いにより、有里の1名のみが、翔の応援を許されたのだ。

 そんなことを喋りながら、翔は腕時計を確認する。
「おい。後1,2分で着くから、それまで我慢してろよ?」
 翔は優しい声で、そう言った。
 有里は、いつもの翔とのギャップに涙を流す事さえ感じてしまったが、涙は流さず、小さくうなずいた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「へぇ〜。あれが、“デュエル・スクール”から来たっていう相手か・・・」
 双眼鏡で、船の中にいる翔と有里の姿を見ながら、赤い制服を着た少年が、崖の上でつぶやいた。そこへ青い制服を着た金髪の少女が、駆け寄って来た。
「十代!もう時間よ?」
 十代と呼ばれた少年は、「もうそんな時間か!?」と驚くように立ち上がると、孤島の中心に位置する場所にある校舎、デュエル・アカデミアへと向かっていく。
 十代は、走りながらも表情は笑顔で一杯だった。

「くぅ〜っ!楽しみだなぁ!!」

 そう叫ぶと、再び走り続ける――。



「今日は、よろしくお願いします。」
 デュエル・スクールの先生が、顔が白塗りの先生に握手をしていた。翔はそんな姿を見ながらも、有里の背中をさすっていた。有里の表情が、生気が感じられないくらい、苦しそうだったからだ――。
「はいナノーネ。ではでは、こちらナノーネ」
 クロノスと呼ばれる先生が、翔と有里、そして数人の教員を誘導し、校舎へと向かっていく。このころには、有里も何とか回復し、1人で歩けるようになっていた。

(それにしても・・・、こんな孤島の中心で、デュエルねぇ・・・。最高じゃん!)
 翔の楽しみは、最高潮になっていた。
 有里は、そんな翔の表情を見て、小さくため息をついた。

 校舎に入ると、真っ先にデュエル場へ向かう。
 デュエル場へ入ると、そこには既に大勢の観客と、目の前のステージには、対戦相手が立っていた。翔は、多少の緊張を抱えながらも、デュエルディスクを左腕にセットすると、ステージに上がり始める。
「大丈夫かな〜?翔くん、緊張してそうだし」
 この先生――ものすごく生徒思いで、生徒思いすぎて、一度生活がめちゃくちゃになりかけた事があるらしい・・・。
 それを知ってか知らずか、有里は、先生に向かって、静かに喋りかける。
「大丈夫ですよ、翔なら・・・。デュエルが始まれば、きっと!」
 そんな信頼が、翔と有里の間にはあった。


「今日は、よろしくお願いします」
 緊張で小さくなった翔が、ペコリと相手に頭を下げる。
 対戦相手は、先程、崖の上にいた十代だ。

「おいおい、頭なんか下げるなよ!もっと、気楽に行こうぜ!?な!」
 十代は、翔に向かって優しく声を掛ける。

「オレの名前は、十代!遊城 十代(ゆうき じゅうだい)って言うんだ!お前は?」
 十代が、気を取り直し、名前を聞くと、翔は小さく深呼吸をし、答える。
「神崎・・・翔――!!」

「ふ〜ん、翔かぁ・・・!よし、行くぞ!!」
 十代の言葉に、翔はデュエルディスクにセットされたデッキを見て、考え始める。



(力を貸してくれ・・・、絵札の三銃士――!!)
 その後、小さく深呼吸をし、真剣な表情をする翔――。

「おう!!」
 翔の返事に、十代は大きく笑う。














―――――デュエル!!!




「オレの先攻――ドロー!!」
 翔の先攻で、デュエルが始まった――翔は、勢いよくカードを1枚引くと、そのカードをスッ――と手札に加え、手に握られた6枚のカード、全てに目を通す――。
 まず始めに、引いたカード――“ライオウ”。
 手札に、絵札の三銃士が、1枚も無い今、これが頼れるカードであろう――。
「オレは、手札から“ライオウ”を攻撃表示で召還!!カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!!」
 翔の目の前に現れたのは、雷で自身の力を象徴するモンスターであった――。

ライオウ
効果モンスター
星4/光属性/雷族/攻1900/守 800
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
お互いにドロー以外の方法でデッキからカードを手札に加える事はできない。
また、自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードを墓地に送る事で、
相手モンスター1体の特殊召喚を無効にし破壊する。


翔  LP:4000
   手札:4枚
    場:ライオウ(攻撃)、リバース1枚

 翔のターンエンドを確認すると、翔の場のモンスターを見て、少しずつデュエルをしているという実感を覚える十代――。

「おぉ〜。強そうじゃん!オレのターンだな?ドロー!!」

ドローカード:E-エマージェンシーコール

(このカードは、今は使えないな・・・)
 ライオウの効果を確認しながら、今引いたカードが使えないという事を確認すると、そのカードをそっと手札の隅に置き、今、手札にあるモンスターを召還する。
「オレは、モンスターを1体セットし、カードを2枚伏せ、ターンエンド!!」
 十代は、大きな声で、ターンエンドを宣言する。

十代 LP:4000
   手札:3枚
    場:裏守備1枚、リバース2枚


「始めのターンは、そこまでの動きは無いわね・・・。それに、十代も・・・なんだか消極的・・・」
 崖にいた十代を呼んだ少女が、ステージのすぐ横で、十代と翔の姿を交互に見ながら、静かにデュエルの状態を読み取っていた。そこに、ひょっこりと有里が現れ、少女に話しかける。
「あの〜」
 突然の有里の言葉に、少しだけ驚く少女――。
 見た事のない有里の姿に少しだけ考えると、すぐに答えを出し、質問する。
「あ、デュエル・スクールの?」
 少女がそう言うと、
「はい、私、神吹 有里(かんぶき ゆうり)って言います。よろしく」
 有里は、自己紹介をすると、スッと手を伸ばし、握手を希望する。少女は、快く手を伸ばし、握手に応えてくれた。
「私の名前は、明日香――天上院 明日香(てんじょういん あすか)よ――」
 そんな自己紹介が終わると、有里も明日香も、再びデュエル観戦を続ける――。

 ていうか、2人だけ観客席から離れてるって事は、他のGXキャラに出番は無いのか・・・?まぁ、無いんだけどねww byショウ

「ドロー!!」
 有里と明日香が話をしている間に、翔は既にカードを引き、手札に加えていた。

ドローカード:クィーンズ・ナイト

(ナイスタイミングぅ!!)「オレは、“クィーンズ・ナイト”を召還!!」
 翔は、自分の手札に来てくれた、赤き鎧を着た女の戦士を召還する――。
 それを見て、十代は再び驚く。

クィーンズ・ナイト
通常モンスター
星4/光属性/戦士族/攻1500/守1600
しなやかな動きで敵を翻弄し、
相手のスキを突いて素早い攻撃を繰り出す。

「確か、それって・・・!デュエルキング、武藤 遊戯(むとう ゆうぎ)が使ってた、絵札の三銃士の1体か!!?」
 十代の叫ぶような質問に、翔は驚きながらも、「まぁ・・・」と小さく答える。
 十代の目を見て、すぐ近くにいた明日香は、何かを感じ取る。

「あの目は・・・、ハァ・・・」
 明日香は、小さくため息をついた。
 それを見た有里は、明日香の感じ取ったその何かに気づくと、明日香の方に少しだけ目をやり、再びデュエルを見ながら、つぶやくように言った。
「同じなんですね」
 有里の言葉に、明日香は、ふと有里の方を見る。
 すると、有里は笑顔で、明日香の方を見て、答える。
「翔と十代さん――似た者同士・・・。2人とも、デュエルが楽しいって、“本気”で思える人――。」

(そう・・・、本気でデュエルを楽しいって思える人だから・・・、私は・・・翔の事を――)
 有里の表情が、一瞬だけ笑顔から、柔らかい表情に変わった――。
 それは、笑顔でもあったが、また別の感じでもある表情であった。

「“ライオウ”で裏守備モンスターに攻撃!!」
 翔の叫びに応じて、雷のモンスターは、稲妻を呼び起こし、十代の目の前のモンスター目掛けて、力強くその稲妻を落とす。
 だが、十代は微塵も動揺せず、翔の方を見続ける。
「甘いぜ!!オレの裏守備モンスターは、“E・HERO フォレストマン”!!」
 十代の目の前で、姿を現したそのモンスターは、植物の“ヒーロー”であった――。
 ヒーローは、その頑強な体で、稲妻を受け止めると、それを多少ながらも、翔に跳ね返す。
「くっ・・・!!」
 翔は、その衝撃で、少しだけ怯んでしまう。

翔  LP:4000→3900

「くそぉ!オレは、カードを1枚伏せ、ターンエンドだ!!」
 翔は、小さく舌打ちをしながらも、デュエルを楽しみ、そして十代から強さを感じていた。

翔  LP:3900
   手札:3枚
    場:ライオウ(攻撃)、クィーンズ・ナイト(攻撃)、リバース2枚


「オレのターン、ドロー!!」
 十代も同様だ――。カードを引く動作も、カードを出す動作も、敵との駆け引きも・・・、全てを楽しみ、デュエルを行っている。

「“フォレストマン”の効果発動!デッキの中から、“融合”を1枚、手札に加えるぜ!!」

E・HERO フォレストマン
効果モンスター
星4/地属性/戦士族/攻1000/守2000
1ターンに1度だけ自分のスタンバイフェイズ時に発動する事ができる。
自分のデッキまたは墓地に存在する「融合」魔法カード1枚を手札に加える。

「更に、手札から“融合”発動!!」
 十代は、手札から自分にとっての最強のカードを力強く発動する――。

 場にいる植物のヒーローと、手札の海のヒーローが、エネルギーの塊となり、勢いよく混ざり始める――。


「“フォレストマン”と、手札の“オーシャン”を融合させ、出でよ――」
 十代は、笑顔だった表情を真剣にし、カードを一気に展開する――。
 それと同時に、目の色が変わり、右目が橙色、左目が水色となる――。
 これが、十代の本気であった――。

 その本気を、翔も感じ取る。

(オレも――、楽しむんじゃなくて・・・、全力で!!)
キィッ!!
 翔も、額のゴーグルを掛け、集中力を完全に開放する――!!


「そうみたいね」
 明日香が不意に、有里の笑顔の言葉に答える。既に、ため息をしていた事を忘れているようだ。
「え?」
 有里が、きょとんとした表情で、聞き直す。
「きっと・・・、翔君や十代以上に、デュエルを“本気”で、楽しんでいる人は・・・、少ないと思う――。だからこそ、惹かれるのかも知れない・・・」
 明日香の答えが、少しだけ話題からそれており、有里はそれを「え?」と聞き返してしまう。明日香は、頬を赤くしながら、「あ、気にしないで」と焦りながら返す。

(きっと、私は・・・、十代がデュエルを本気で楽しんでいるから・・・、十代の事を・・・!)




“E・HERO ジ・アース”―――!!!


ドンッ!!!
 そのヒーローは、空から力強くやって来た――。
 力強く、翔の前に立ちふさがる――。


「これが・・・!E・HEROの・・・高速融合召還・・・!!」
 翔は、驚いていた。

 自分の周りに、これほどまでにHEROを使いこなす人物がいなかったからだ――。

 だからこそ、全力でぶつかる・・・。自分の持つ、全てをぶつける・・・!!

「行くぜぇ、翔ぅ!!」
「来い、十代ぃ!!」
 十代と翔は、大きく叫び合う。
 それに呼応するかのように、互いの目の前にいるモンスター達も、大きく叫ぶ。

翔  LP:3900
   手札:3枚
    場:ライオウ(攻撃)、クィーンズ・ナイト(攻撃)、リバース2枚

十代 LP:4000
   手札:3枚
    場:E・HERO ジ・アース(攻撃)、リバース2枚




中編 融合VS融合――訪れる決着の時

(チッ・・・、本当は“ライオウ”の効果が使えたら、良いんだけど・・・!!)
 翔は、ライオウの効果の盲点に対し、心の中で、小さく舌打ちをする。
 ライオウは、チェーンに乗らない特殊召還のみを封じる効果――そのため、融合などによる召還、つまり融合召還などの特殊召還には、対応していないのだ。

「行くぜぇ!“ジ・アース”で、“ライオウ”に攻撃ィ!!」











――――アース・インパクト!!


 地球をも守るヒーローは、その力を一気に、翔のモンスターにぶつける。
 強大な衝撃が、辺りを一気に吹き飛ばし、観客席にいる人々や、当然、すぐ近くで観戦している有里や明日香にも、その衝撃は伝わる――。

「何・・・、あのカード!」
 明日香は目を見開き、驚いていた。
「え・・・!?」
 衝撃に耐えながらも、有里は、明日香に質問する。
 明日香の驚き方が、尋常ではないからだ。
「あんなE・HERO・・・今まで、見た事無い――」
「・・・!!」
 明日香の小さな言葉をしっかりと聞いた有里は、明日香同様に驚いていた。


翔  LP:3900→3300

 モンスターが破壊された事で、翔はダメージを受けていた。
 衝撃のせいもあってか、かなり苦しそうだ。

「オレは、このままターンエンドだ――」
 十代は、冷酷にも、静かにターンエンドを宣言する――。

十代 LP:4000
   手札:3枚
    場:E・HERO ジ・アース(攻撃)、リバース2枚


(ヤバイ・・・!!)
 翔は、カードを引きながら、かすかに自らの危機を感じ取っていた。
 圧倒的な十代の力――そこからは、恐怖さえも感じ取れる。

「そのゴーグルは、見せ掛けなのか?」
 十代は、冷たい2つの瞳で、翔の方を見ながら、そう言い放った。十代の言葉を聞き、翔は掛けてあるゴーグルにそっと手を置く。
 
 その瞬間、翔の頭の中によぎる1つの言葉――。





『これが・・・、お前の“勇気”のアカシだ――』





 誰が言ったかも覚えていないほどの過去の言葉――。
 だが、その言葉を翔は現に覚えていた。そして、思い出したのだ――。
(・・・そうか・・・。オレは・・・!!)
 翔は、デッキの上からカードを1枚、力強く引き、手札に加える――。

ドローカード:キングス・ナイト

「オレは・・・!!デュエルをするために・・・、勝つためにここにいる!!!」

 翔は叫んだ――。
 本来なら、十代にだけ伝えれば良い事を、会場にいる全員に聞こえるように叫んだ――。その言葉を聞き、十代は小さく笑った。
 何故、十代は冷たく言い放ったのか――翔の目に、力強さを感じなかったから。
 翔の目――その力の無さ――十代は、過去の自分とダブらせていたからだ・・・。


 エドに負け、カードが見えなくなった時の自分と――。

 仲間を奪われ、怒りという覇王に支配された時の自分と――。

 覇王から解放されながらも、自身を信じられなくなった時の自分と――。

 デュエルに楽しみを感じなくなり、仲間との友情を断ち切った時の自分と――。


 だからこそ、楽しくデュエルをするために、翔を本気にさせるために、あえて冷たく言い放ち、“本気”のデュエルを楽しみたかった。


「じゃあ、かかって来い!翔!!」
 十代の笑顔の叫びに、翔も笑顔で、そして叫んで答える。

「オレは、手札から“キングス・ナイト”を攻撃表示で召還する!!!」

 翔の目の前に現れた戦士は、多少老いながらも、頑丈な鎧を着け、鋭い剣と硬い盾を握っていた。

キングス・ナイト
効果モンスター
星4/光属性/戦士族/攻1600/守1400
自分フィールド上に「クィーンズ・ナイト」が存在する場合に
このカードが召喚に成功した時、デッキから「ジャックス・ナイト」
1体を特殊召喚する事ができる。

「“キングス・ナイト”の効果で、オレは“ジャックス・ナイト”を――!!」
 翔がデッキを取り出そうとした瞬間、それに待ったをかけたのは十代であった。
「待て!!オレは、リバースカード――“天罰”を発動する!!」
 十代が発動したカード――それは、モンスターの効果を無効化、そしてそのモンスターを破壊してしまうカードであった。

天罰
カウンター罠
手札を1枚捨てる。
効果モンスターの発動と効果を無効にし、そのモンスターを破壊する。

 十代が、コストとなる手札のカード1枚を墓地に送ると、次の瞬間、上空に暗雲が立ち込め、そこから稲妻が老いた戦士目掛けて降り注いでくる。だが、翔は動じなかった。何故なら、自分の伏せられたカードに、今の状況を防ぐカードがあったからだ。

「甘いぞ、十代!オレもリバースカード、“盗賊の七つ道具”を発動する!!」

盗賊の七つ道具
カウンター罠
1000ライフポイントを払う。
罠カードの発動を無効にし、それを破壊する。

翔  LP:3300→2300

 不意に、老いた戦士の上空に、見えない位の薄いバリアが張られる。そのバリアは、上空より降り注いでくる稲妻を全て防ぎきり、老いた戦士を守る――。

「よって、“キングス・ナイト”の効果は適用!デッキより――“ジャックス・ナイト”を特殊召還!!」
 翔の目の前に新たに現れた戦士――。
 青い鎧に身をまとった青年の戦士だ。

 翔は、手札を見つめ、この後どうするかを考える――。
 手札にある1枚のカードを見て、決断を下す!!

(もう・・・、今しかない!!)
 意を決して、そのカードをデュエルディスクに差し込む翔。


「手札から魔法カード!“融合”を発動する!!」


ギュォオオオオオオオオオオオッ―――!!!!
 翔の目の前に聳えていた3体の戦士の姿がエネルギーの塊となり、混ざり合っていく――。
 混ざり合う姿は、美しいとはいえないにしろ、何かしらの“魅力”はあった――。


 気づいたら、そこに立っていたのは、3体の戦士ではなく、漆黒の鎧に身を包んだ、最強の戦士であった――。


「攻撃だ――、“アルカナ ナイトジョーカー”!!」
 翔の叫びと共に、漆黒の戦士はジャンプし、勢いよく目の前に聳えるヒーローの前に立ちふさがる。そのまま、両手でしっかりと剣を握り、剣道の“面”の如く、一気に振り下ろす。


―――ズバンッ!!


 素早く切り裂かれたヒーローは、静かに地面に沈んでいく――。

十代 LP:4000→2700

 だが、十代にとって、この光景は計算通りとも言えた。

「リバースカード!“ヒーロー・シグナル”!!」
 十代がカードを発動した瞬間、辺りが暗くなっていき、上空には、大きな“H”という文字が浮かび上がる。その時、十代のデッキが小さく輝き、デッキの中から、“風を司る”ヒーローが姿を現す。
「“E・HERO エアーマン”――!!」
 そのヒーローの背中には、風を起こす装置が取り付けられており、明らかに“風”をイメージするヒーローだという事が分かる。
「“エアーマン”の効果により、デッキの中からオレは、“E・HERO レディ・オブ・ファイア”を手札に加える!!」
 十代は、デッキの中から、カードを1枚取り出すと、それを翔に1度見せ、サッと手札に加える。


ヒーロー・シグナル
通常罠
自分フィールド上のモンスターが戦闘によって破壊され
墓地へ送られた時に発動する事ができる。
自分の手札またはデッキから「E・HERO」という名のついた
レベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。

E・HERO エアーマン
効果モンスター
星4/風属性/戦士族/攻1800/守 300
このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、
次の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●自分フィールド上に存在するこのカードを除く
「HERO」と名のついたモンスターの数まで、
フィールド上の魔法または罠カードを破壊する事ができる。
●自分のデッキから「HERO」と名のついた
モンスター1体を選択して手札に加える。

 翔は手札を眺め、少し考えるが、やはりこれ以上、何もすることは出来ないと考え、このままターンエンドを宣言した。

翔  LP:2300
   手札:2枚
    場:アルカナ ナイトジョーカー(攻撃)、リバース1枚


「やっぱりよ・・・!」
 デュエルを眺めていた明日香が、驚きを隠せない表情で、そう言った。
 当然、隣にいる有里にも、その言葉は聞こえるため、聞き返すように言う。
「何が・・・?」
「十代のカード――ほとんどのカードが、一度も使った事の無いHEROなのよ!!」
 驚き半分――正直、有里はそんな感じだった。
 十代という人が、今までどんなカードを使ってきたのかが、分からないからだ。だが、明日香の驚きを見て、それがどれだけ驚ける事なのか、ということは理解出来た。だからこその驚き半分である。


「よし、オレのターンだな?ドロー!!」
 十代は笑いながら、勢いよくカードを1枚引いた。
 明日香と有里の視線を多少気にしながらも・・・。

ドローカード:融合回収(フュージョン・リカバリー)

「オレは手札から魔法カード、“E-エマージェンシーコール”を発動する!!」
 引いたカードを手札の隅に置き、最初のターンで隅に置いておいたカードを十代は、発動する。

E-エマージェンシーコール
通常魔法
自分のデッキから「E・HERO」と名のついたモンスター1体を手札に加える。

「このカードの効果で、オレはデッキから、“E・HERO ザ・ヒート”を手札に加える!」
 先程、エアーマンを召還したときと同様に、デッキの中からカードを1枚抜き取り、翔に見せた上で手札に加える十代。
「更に、魔法カード!“融合回収(フュージョン・リカバリー)”発動!!」
 十代がカードを発動した瞬間、デュエルディスクの墓地からモンスターカード、魔法カードが1枚ずつガチャガチャッ――という機械音を鳴らしながら、出てきた。それを十代は、先程同様、翔に見せ、手札に加える。
 十代が手札に加えた2枚のカード――それは、フォレストマンと融合であった。

融合回収
通常魔法
自分の墓地に存在する「融合」魔法カード1枚と、
融合に使用した融合素材モンスター1体を手札に加える。

「そして、2回目の“融合”だ!!」
 十代の発動した融合によって、十代の手札にあった2体の炎のヒーローが混ざり合う――。混ざり合う事によって、炎は、より巨大な物となっていく・・・。

「出でよ――“E・HERO フレイム・ブラスト”ォッ!!!」


ドンッ!!!

 重量感のあるその炎のヒーローは、全てを見下ろした――。
 だが、炎のヒーローは、このままでは漆黒の戦士を倒す事は出来ない――。
 そのため、十代は防御を整えようと考える。

「オレは――“エアーマン”を守備表示にし、カードを1枚伏せ、ターンエンドだ」
 風を司るヒーローが、腰を低くし、風の盾を作り出した時、十代は、手札からカードを1枚選び、静かに伏せ、ターンエンドを宣言する。この宣言も、とても静かだった。

十代 LP:2700
   手札:1枚
    場:E・HERO フレイム・ブラスト(攻撃)、E・HERO エアーマン(守備)、リバース1枚

「オレのターン、ドロー――」
 翔も自然と慎重なプレイングに変わっていた。
 カードを引く手もとても慎重になっており、引いたカードを見る時間、手札のカードを見る時間も長くなっている。

(今、オレの伏せているカード――“ライジング・エナジー”・・・。これで、“アルカナ ナイトジョーカー”の攻撃力を5300にすれば、“フレイム・ブラスト”の攻撃力は2300・・・。3000のダメージで、勝てるんだが・・・!)
 やはりここで気になったのは、十代の伏せられた1枚のカードであった。
 翔の手札には、伏せカードを破壊するカードが1枚も来ていないため、そのカードに対抗する手段が無いのだ。まぁ、魔法カード、もしくはモンスターカードならば、手札にある同種類のカードを捨てる事で、無効には出来るかも知れないが・・・。



――――いや・・・!


 翔は、何を思ったかデュエルディスクにゆっくりと手を掛ける。
「オレは、リバースカード――“ライジング・エナジー”を発動する――」
 コストである手札のカード1枚を墓地に送る翔――すると、漆黒の戦士を橙色のオーラが覆いはじめ、漆黒の戦士の力が上昇していく・・・。


――――決めたんだ!


ライジング・エナジー
通常罠
手札を1枚捨てる。発動ターンのエンドフェイズ時まで、
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体の攻撃力は
1500ポイントアップする。



――――“勝つためにここにいる”――――勝つって!!!



キッ!!
 ゴーグルで集中力を増していた翔の目が、一段と輝く。


「攻撃だぁあああああああああっ!!!」
 漆黒の戦士は、剣の切っ先を炎を司るヒーローに向けると、ジャンプし、ヒーローへと勢いよく向かっていく。





























―――――ライジング・ブレード!!!






















「リバースカード発動!!!」












ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!

 十代のカードを発動する声が、巨大な爆音によってかき消されていく・・・。
 立ち込めた煙が晴れていく中で、少しずつ十代の発動したカードが見えてくる。



自縛霊の誘い
通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
攻撃モンスターの攻撃対象はこのカードのコントローラーが選択する。


 漆黒の戦士の剣が貫いていたモンスター――それは、翔の狙っていた炎を司るヒーローではなく、風を司るヒーローであった――。

「くっ、ターンエンドだ――」


翔  LP:2300
   手札:2枚
    場:アルカナ ナイトジョーカー(攻撃)

 翔は残念そうにターンエンドを宣言する。

「オレのターンだな――、ドロー!!!」
 十代は本当に楽しそうにデュエルを行っていた――翔は、そんな十代の姿を見て、羨ましさをも感じてしまう。

ドローカード:ホープ・オブ・フィフス

(よし――!!)
 引いたカードを見て、十代は確かな感触を覚える。
「オレは手札から、“ホープ・オブ・フィフス”を発動する!!」
 十代の発動したカード――そのカードの発動と同時に、十代のデュエルディスクの墓地から、5枚のHEROが、機械音と共に、出現する。

「墓地から、“E・HERO クノスペ”、“E・HERO ジ・アース”、“E・HERO ザ・ヒート”、“E・HERO レディ・オブ・ファイア”、“E・HERO エアーマン”をデッキに加え――」
 十代が喋っている最中に、翔は手を前に出し、十代に「待った」をかけ、自分の頭の中に浮上した質問を口にする。

「“E・HERO クノスペ”って、いつ墓地に行ったんだ?」
 翔の質問を聞くと、十代は5枚のカードをデッキに加え、シャッフルしながら説明を始める。
「オレが“天罰”を発動した時だ――あの時のコストで、“クノスペ”を墓地に置いていたんだ」
 十代は答えと共に、デッキをデュエルディスクに再び差し込み、デッキの上からカードを2枚ドローする。その手の動きは、とても力強いものを感じた。

ホープ・オブ・フィフス
通常魔法
自分の墓地に存在する「E・HERO」と名のついたカードを5枚選択し、
デッキに加えてシャッフルする。
その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。
このカードの発動時に自分フィールド上及び手札に他のカードが存在しない場合は
カードを3枚ドローする。


ドローカード:ミラクル・フュージョン、フェイク・ヒーロー


「来た来た来たぁ!!オレは、手札から“フォレストマン”を攻撃表示で召還する!!」
 十代の目の前に現れたのは、植物のヒーロー――だが、攻撃力は少し物足りなく、この場面で攻撃表示で場に出すのは、不自然であった。

(攻撃表示・・・!?いや・・・、これは・・・何かが!!)
 翔が、十代の考えが何かにたどり着いた時は、もう遅かった――。

「そして、“ミラクル・フュージョン”を発動ォッ!!」
 十代は手札のそのカードを空高く掲げる――。

































―――――カッ!!!



 重なる――。

 生きた魂と、死した魂が、重なる――。


 それは、天変地異を起こすかのごとく力を発揮し、重なり合い、“最強”のヒーローを生み出す――!!



「場の“フォレストマン”と、墓地の“オーシャン”を融合させ、再び現れろ!!地球を守りし、最強のヒーロー!!」







 全ての沈黙を打ち破る力を発揮し、そのヒーローは姿を現す――。






――――“ジ・アース”!!!



「そして、“ジ・アース”の効果発動!!場のモンスターを生贄に捧げる事で――、そのモンスターの攻撃力分、力を増す!!!」



E・HERO ジ・アース
融合・効果モンスター
星8/地属性/戦士族/攻2500/守2000
「E・HERO オーシャン」+「E・HERO フォレストマン」
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚出来ない。
自分フィールド上に表側表示で存在する「E・HERO」と名のついた
モンスター1体を生け贄に捧げる事で、このターンのエンドフェイズ時まで
このカードの攻撃力は生け贄に捧げたモンスターの攻撃力分だけアップする。


 炎を司るヒーローのマグマの如き灼熱の力を得たヒーローは、両手で、マグマで出来たかのような剣を握る。





―――地球灼熱(ジ・アース マグマ)!!!



E・HERO ジ・アース 攻:2500→4800


「これで、“アルカナ ナイトジョーカー”の攻撃力を上回ったぜ!!」
「な・・・!?」
 翔の完全なプレイングミスであった――。
 十代の引きが、予想を上回った、という言い方も出来るが、そこまで頭の回らなかった翔にも、ミスは少なからずあったはず。

「攻・撃!!!」


























―――――地球灼熱斬(アース・マグナ・スラッシュ)!!!


 そのヒーローは、両手で握っているマグマで出来た剣で、漆黒の戦士を勢いよく切り裂こうとする――。戦士は、対抗するべく剣を両手で握り、盾のようにするが、健闘もむなしく、戦士は切り裂かれてしまう――。


翔  LP:2300→1300


「ガァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
 ヒーローの攻撃によって発生した衝撃は、今までの衝撃の比ではなかった。全てを吹き飛ばす、最大の衝撃(ショック)――それは、翔だけでなく、観客達をも巻き込んでいく。
 翔は、デュエルディスクを盾代わりとし、衝撃だけでも防ぐようにと、何とかこらえる。


「凄い・・・!」
 衝撃に耐えながらも、有里は、十代の戦術を見て、「凄い」としか言いようが無かった。だが、明日香は、そうでもないようだ。
「違う・・・、何て言えば良いのか分からないけど、これは十代の“強さ”じゃない――!」
 明日香の言葉を理解できない有里は、首を傾けるだけしか出来なかった。


「ターンエンド――」
 十代は静かにターンエンドを宣言する。
 十代の瞳に、小さな“黒”が感じ取れた――。


十代 LP:2700
   手札:1枚
    場:E・HERO ジ・アース(攻撃)


「まだだ・・・!」
 自分にしか聞こえないくらいの大きさの声ではあったが、翔は叫ぶ――。

 心の底から――、思い切り――。



「まだだぁああああああああああああああっ!!!オレは――!」
 翔は、力強く立ち上がると、上空を見て、大きく叫ぶ。
 そして、頭の中で、1つの単語を思い浮かべる。思い浮かんだ単語は、この状況で、分かりやすい目標になるだろう――。
 翔は、それを再び大きく叫ぶ。































「“勝つ”!!!―――ドロォォッ!!」
 翔は、自身の目標を立てた後、カードを勢いよくドローする。
 この後のデュエル展開を大きく左右する1枚を――引く。




ドローカード:二重魔法(ダブルマジック)


 翔は、引いたカードと元々手に持っていた計3枚のカードを見つめ、すぐに戦略を考え、行動に移す。

「オレは手札から――“二重魔法(ダブルマジック)”を発動する!!」
 そのカードの発動と共に、翔は手札から、必要の無い魔法カードを静かに墓地へ送る。すると、十代のデュエルディスクの墓地から、大きな輝きが放たれる。
「なっ・・・!?何だ、これ!!?」
 十代の驚きに、翔はゆっくりと説明する。
「“二重魔法(ダブルマジック)”――それは、相手の墓地にある魔法カードを発動するカード――!!オレの発動するカード――それは、“融合回収(フュージョン・リカバリー)”!!」
 十代の墓地より、翔の指定したカードが抜き出されると、翔の目の前までそのカード移動し、再度輝きを発する。その瞬間、翔の墓地から2枚のカードが、抜き出され、それを翔は手札に加える。

二重魔法
通常魔法
手札の魔法カードを1枚捨てる。
相手の墓地から魔法カードを1枚選択し、
自分のカードとして使用する。

「そして、“闇の量産工場”を発動!!」

闇の量産工場
通常魔法
自分の墓地から通常モンスター2体を選択し手札に加える。


「勿論!これで、オレは“クィーンズ・ナイト”と“ジャックス・ナイト”を手札に加えるぜぇ!!」
 翔の手札に再度揃う“絵札の三銃士”と“融合”――、この状況で翔の行う事はたった1つであった。



































“融合”―――!!!










ドッ!!!

 ヒーローの時とは、また別の光と共に、漆黒の戦士が再びその姿を現す――。

 また同じ手かと思われるかも知れない――、でもそんな事はどうでもいい。
 オレには――、これが・・・、“全て”だから――!!


「“アルカナ”――“ナイトジョーカー”!!攻撃だぁああああっ!!」


バァッ!!
 先程の無念を晴らすかのように、漆黒の戦士は剣にいつも以上の力を込め、一気に振り下ろし、ヒーローを切り裂いた。
 ヒーローが崩れ去る瞬間、漆黒の戦士の表情は何処と無くやわらかくなった。


十代 LP:2700→1400


「ターンエンド――!!」


翔  LP:1300
   手札:0枚
    場:アルカナ ナイトジョーカー(攻撃)


 既に、翔の体は限界を迎えてきていた・・・。
 当然、十代の体にも――。
 今、2人を動かしているもの、それは精神――。


 だが、もう“決着の時”であった――。


 十代は、カードを引いた――ゆっくりと。




ドローカード:E・HERO ボルテック


 この状況では、一切役に立たないカードであった――。


「オレは、モンスターを1体セットし、ターンエンド――」
 十代の表情は何処かさびしげであった――。

十代 LP:1400
   手札:1枚
    場:裏守備1枚

「オレのターンだな?ドロー!」

ドローカード:アサルト・アーマー



―――オレの・・・勝ち・・・だ!!


「手札から――“アサルト・アーマー”を発動――“アルカナ ナイトジョーカー”に装備する。」
 漆黒の戦士を覆う、朱色に近い色をしたオーラ――。
「“アサルト・アーマー”の効果により、このカードを墓地に送る事で、“アルカナ ナイトジョーカー”は2回、攻撃を行う事が出来る――」
 オーラが、ガラスのようにバリィンッ――と、一気に砕けると、漆黒の戦士が握る剣の形状が、変わっていく・・・。


アサルト・アーマー
装備魔法
自分のモンスターカードゾーンに戦士族モンスター1体のみが
存在する場合に、そのモンスターに装備することができる。
装備モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。
装備されているこのカードを墓地に送る事で、このターン装備モンスターは
1度のバトルフェイズ中に2回攻撃をする事ができる。




「行っけぇえええええええええええええええっ!!!!」
 翔の喜びの叫びと共に、漆黒の戦士は2本ある内の1本目の剣で、裏守備となったモンスターを切り裂き、2本目の剣で、十代自身を勢いよく切り裂いた。


十代 LP:1400→0



 翔は、声にならない位の叫びと共に、広い空を見上げる。




『ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!』


 それと同時に、観客全員から、大きな叫びが上がる――。




後編 デッキとの絆――運命の約束と共に

 翔と有里、そして先生達は、船の上に乗っていた――。
 有里は、既に船に慣れており、船酔いになることはもう無かった。
「終わったね・・・」
 有里が少し寂しそうに言った。
 だが、翔の表情は、笑顔そのものであった。

「いや、終わってなんかいないさ・・・!」





















―――だって、“あの約束”があるから・・・。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『神崎 翔選手の勝ちナノーネ!!』
 顔前面白塗りのクロノスが、マイクを通して大きく叫んだ。クロノスのその叫びを聞き、翔は自身の勝利を本当に実感する事が出来た。その直後、ステージ上に有里と明日香が昇り、有里は翔の方、明日香は十代の方へ移動する。その移動と同時に、十代と翔はステージの中央に引き寄せられるように歩く。

「ありがとう――十代!」
 翔は手を前に出し、十代は多少のためらいがありながらも、握手を交わす。


「悪いな・・・、オレ、謝らないといけないことがあるんだ」
 十代が頭をポリポリと掻きながら、そう切り出した。
 翔は十代の言葉にしっかりを耳を傾ける準備をする。


「この観客席にいるほとんどの奴等は分かってたかも知れないけど――、今のデュエルで使ったデッキは、オレのデッキじゃないんだ――」


「・・・へ?」
 十代の言葉に、翔の目が点になってしまう。

「いや、オレのデッキなんだけど、オレのデッキじゃない・・・みたいな?なんて言やぁ良いんだ!?」
 十代が照れくさそうにしながら、どう言うかを少し考えると、十代は再び口を開く。

「今日の朝な、オレのベッドの側に、このデッキの中にある、効果を持ったヒーローのカードがあったんだ。当然、融合モンスターもな」
 十代はゆっくりと思い出しながら喋り始める。



 十代曰く、十代が朝起きたときに、効果モンスターであるヒーローのカードが、側にあったらしい。そして、そのすぐ側にメモがあり、「このカードを使って、デュエルを行え」と、書かれてあった。その後、何かに操られたかのように、そのカードでデッキを作ってしまい、デュエルを行った――という感じだ。

「じゃあ、何で今は操られていないんだ?」
 翔のもっともな質問に、十代は再び照れくさそうにしながら答える。

「翔とデュエルしててな、本当のデュエルの楽しさに気づいたんだ――そしたら、自分のデッキじゃ無い!って、気づいて、元に戻ってた。本当に・・・、嘘みたいだろ?」
 十代は、多少笑いを取ろうとしながらも、しっかりと説明してくれた。
 その説明を聞き終わると、翔は腕時計を見る。時間は午後2時――、帰るまでの船には、かなりの時間があった。

「じゃあさ、もう1度デュエルをしようぜ?」
 翔の言葉は、十代の心を揺り動かす。

「まだ時間はあるし――今回は、“特別”って事で、良いですか?」
 翔が観客全員に聞こえるように大きくそう言うと、先生達の意見を差し置いて、観客全員が大きく叫びだす。その叫びは、全て再デュエルの申し出である。
「スゲェ・・・!!」
 翔は、予想外の声の多さ、大きさに、驚きを隠せなかった。

「これが、“デュエル・アカデミア”なんだぜ!?」
 十代の言葉を聞き、翔は大きく笑った。
 その後、十代はデッキをデュエルディスクから取り出す。

「やっぱりダメだ――」
 十代は、そう言うと、デッキの中から、今朝見つけたというカードを全て抜き出す。そのカードを少しの間見つめると、投げ飛ばすように、捨て始める。
「十代!?」
 翔は、その行動を見て、大きく叫んでしまう。

「やっぱりさ!デッキは、どんなに強い効果を持ってるかじゃなくて、“どれだけ信頼しているか”――“絆”、だよな!!?」
 十代の笑顔での質問に、翔はその通りだと考え、デュエルディスクを展開しながら、大きく叫ぶ。


「あぁ!!それが――最高の“デュエル”につながるんだ!!!」

 翔のデュエルディスクの展開を見て、同じように十代も、デュエルディスクを展開する。



























――――――デュエルッ!!!



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




翔  LP:400
   手札:2枚
    場:無し

十代 LP:1350
   手札:2枚
    場:E・HERO ネオス(攻撃)


「オレのターン、ドロー!!」

ドローカード:貪欲な壺

 翔は勢いよくカードを引く。
 そのカードは、自分の望んでいたカードであり、翔は大きく笑みを浮かべ、そのカードを発動する。

「“貪欲な壺”を発動!!墓地からデッキにカードを5枚戻し、カードを2枚、ドローする!!」

貪欲な壺
通常魔法
自分の墓地からモンスターカードを5枚選択し、
デッキに加えてシャッフルする。
その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。


ドローカード:融合、キングス・ナイト


「そして、“融合”を発動!!出でよ!“アルカナ ナイトジョーカー”!!」
 漆黒の戦士が、その姿を現す――漆黒の戦士の鎧は、何度も出現したせいか、ボロボロになっており、2本の剣の刃も、既に欠け始めていた。

「攻撃!!――それにより、“ネオス”を破壊!!」
 漆黒の戦士の刃が、十代の目の前にいた宇宙のヒーローの体をとらえ、一気に切り裂いた。その後、巨大な爆発と共に、ヒーローの姿はなくなってしまった。

十代 LP:1350→50

「ターンエンド!!」

翔  LP:400
   手札:0枚
    場:アルカナ ナイトジョーカー(攻撃)


 十代は、翔からのとんでもない反撃を喰らってしまうが、怯むことなく、カードを素早く引く。

ドローカード:コクーン・パーティ

 十代も、翔と同じだ――自分の望んでいたカードが引けたことで、大きな笑みが出てきてしまう。そして、引いたカードを一気に、展開する。
「“コクーン・パーティ”発動!!――オレの墓地には、“ブラック・パンサー”と“アクア・ドルフィン”がいる!!よって!デッキから、“C・ラーバ”、“C・モーグ”を特殊召還!!」

コクーン・パーティ
通常魔法
自分の墓地に存在する「N」と名のついたモンスター1種類につき、
「C」と名のついたモンスター1体を自分のデッキから特殊召喚する。

 だが、これだけでは、十代の猛攻は止まらない!!
 十代は、更に手札から魔法カードを発動する――。

「更に手札から、“コンタクト”を発動!!場の2体の“コクーン”を生贄に捧げ、“N・フレア・スカラベ”と“N・グラン・モール”を特殊召還!!」

コンタクト
通常魔法
自分フィールド上の「C」と名のついたモンスター全てを墓地に送り、
そのカードに記されているモンスター1体を手札またはデッキから特殊召喚する。

 十代の発動したカードによって、泡のような物の中に入っていた生物が、進化を遂げ、カブト虫のような昆虫と、両腕がドリルとなった獣が姿を現す。

「まだまだぁっ!!手札から!“スペーシア・ギフト”を発動するぜ!!」


スペーシア・ギフト
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する「N」と名のついたモンスター1種類につき、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。

「オレの場に、“ネオスペーシアン”は2種類!!よって、デッキの上からカードを2枚ドローするぜ!!」
 十代の目の前にいるカブト虫と獣の体が光り輝くと、十代に2枚のカードという、可能性を与える。十代は、しっかりとその可能性を受け取ると、勝利への道筋を発見する。

「よし!“O-オーバーソウル”発動!!このカードの効果によって、“ネオス”を復活!!」

O-オーバーソウル
通常魔法
自分の墓地から「E・HERO」と名のついた通常モンスター1体を選択し、
自分フィールド上に特殊召喚する。

 死したヒーローが舞い戻る――十代の目の前に、再び宇宙のヒーローが姿を現す。

 その瞬間、3体のモンスターの体が光り輝き、共鳴を始める――!!


















――――――トリプルコンタクト融合!!!







出でよ!!




―――E・HERO マグマ・ネオス!!!



 そこに姿を現したのは、ドリルという破壊力と炎という破壊力、2つの破壊の力を手に入れた、宇宙のヒーローであった。周りには、炎を宿し、背にはドリルの金属で作られた翼のような物が取り付けられている。

E・HERO マグマ・ネオス
融合・効果モンスター
星9/炎属性/戦士族/攻3000/守2500
「E・HERO ネオス」+「N・フレア・スカラベ」+「N・グラン・モール」
自分フィールド上に存在する上記のカードをデッキに戻した場合のみ、
融合デッキから特殊召喚が可能(「融合」魔法カードは必要としない)。
このカードの攻撃力は、フィールド上のカードの枚数×400ポイントアップする。
エンドフェイズ時にこのカードは融合デッキに戻る。
この効果によって融合デッキに戻った時、
フィールド上に存在する全てのカードは持ち主の手札に戻る。


「そして、“インスタント・ネオスペース”発動!!」

インスタント・ネオスペース
装備魔法
「E・HERO ネオス」を融合素材とする融合モンスターにのみ装備可能。
このカードを装備した融合モンスターは、エンドフェイズ時に
デッキに戻る効果を発動しなくてもよい。
装備モンスターがフィールド上から離れた場合、自分の手札・デッキ・墓地から
「E・HERO ネオス」1体を特殊召喚する事ができる。

 破壊の力を手に入れた宇宙のヒーローを覆う、小さな宇宙空間――。その宇宙空間は、ヒーローを永遠にこの場で戦わせる力を与える――。


E・HERO マグマ・ネオス 攻:3000→4200

 破壊のヒーローは、全てのカードから力を吸収し、自身の力を少しずつ増していく――。
「これで・・・!終わりだぁああああああああっ!!!」


























―――――スーパー・ヒート・メテオォオオオオッ!!!



ドッ!!!!
 巨大な隕石が、漆黒の戦士を一瞬のうちに飲み込み、破壊する――。


翔  LP:400→0



 十代は、笑顔で翔の側まで来ると、3本の指(親指、人差し指、中指)を前に出し、観客全員にも聞こえるように大きく叫ぶ。



「ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!!」

 余りの衝撃の強さに、翔は地面に倒れこんでいた。十代も、決めポーズを終えると、翔の右腕をつかみ、しっかりと立ち上がらせる。翔は立ち上がると、ズボンについた埃なんかをパッパッと払い、十代の方を向く。


「流石だな、十代。やっぱり、今、オレとデュエルしたときのデッキのほうが、良いよ!」
 翔は、笑顔でそういった。

 嘘でもなんでもない――正直な、自分の気持ち。



「翔・・・!お互いに、もっともっと、強くなって・・・。その時は、また・・・、オレとデュエルしてくれるか?」
 十代は、そう言って、手を前に出す。
 翔は、その手をしっかりと握り、笑顔で答える。


「もちろん!」

 翔と十代は、共に笑いあった。
 そんな中、十代の捨てた数枚のカードが、“闇”の塊となって、ゆっくりと消滅していった・・・。だが、そんな事、誰も気づかなかった・・・。








 誰も――。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


クスッ・・・
 有里は、小さく笑うと、翔同様、夕日を見つめ、笑顔で言った。


「そうだね・・・」

「あぁ、そうさ」
 翔はそう言うと、ゆっくりと有里の肩に手を伸ばし、自分の方に引き寄せると、一緒に夕日を眺める――。


「・・・! さぁて!明日は、あいつ等にどんな話をするかなぁ!」
 翔は、照れくさく、すぐに有里から離れると、背筋を伸ばしながらそう言った。有里も照れくさそうにしながら、翔と一緒に考え始める。
 翔は笑顔を絶やすことなく、夕日を見つめ続ける。
 赤きその光は、翔を、有里を照らし、大きく輝かせる――。



――――――十代・・・!いつか・・・!いつか、きっと!!
















































































































































―――――――――――――――また何処かで、楽しいデュエルを!―――――――――――――――





〜End〜





後書き

 どうも、ショウです。今回は、この翔VS十代 〜絵札の三銃士VSE・HERO〜を呼んでいただき、まことにありがとうございます。m(_ _)m

 一応、本編と関係のある感じで書き上げましたが、実際はそこまで関連性は無く、むしろ並行世界と考えてくれたほうが、分かりやすくなると思います(本編と矛盾してても大丈夫だしね)。

 さて、何故いきなり本編を保留し、このストーリーを書いたかというと、正直“何となく”です。まず、翔と原作・アニメキャラとデュエルをさせたいなぁと思っておりまして、一番書きやすかった十代を採用しました。そして、アニメと別のデッキを使わせたいと思い、漫画GXを採用し、ジ・アース軸のデッキとなりました。最終的には、アニメのデッキを使わせるという形になっておりますが・・・。

 アニメのキャラが、十代と明日香しか出てきてないのは、正直、自分の実力不足からきたものです。他のキャラが見たかったと思ってた人、ごめんなさい。後、アニメキャラの性格が、明らかに違うと思った人もごめんなさい。って、謝ってばかりでごめんなさい。


 アレ・・・?


 よく分からなくなってきましたが、本編“神の名を受け継ぎし者達”の方も、よろしくお願いします。

 番外編は、また今後も書いていきたいと思っておりますので、もしもまた掲載されたときは、「このキャラ性格違うぞ〜!」なんて思わないで、寛大な心で、見て欲しいと思っております。それでは〜。



オマケ 十代デッキ(神者仕様)

モンスター 17枚
《E・HERO フォレストマン》×3
《E・HERO オーシャン》×3
《E・HERO エアーマン》
《E・HERO レディ・オブ・ファイア》
《E・HERO ザ・ヒート》×2
《E・HERO クノスペ》
《E・HERO ボルテック》
《E・HERO プリズマー》×2
《E・HERO ブルーメ》
《E・HERO バブルマン》×2
魔法 16枚
《H-ヒートハート》
《E-エマージェンシーコール》
《R-ライトジャスティス》
《O-オーバーソウル》
《ヒーローフラッシュ!!》
《融合》×2
《融合回収》
《ホープ・オブ・フィフス》
《ミラクル・フュージョン》×2
《フェイク・ヒーロー》
《ブルーメンブラット》
《摩天楼 -スカイスクレイーパー-》
《摩天楼2―ヒーローシティ》
《HERO'Sボンド》
罠 7枚
《天罰》
《ヒーロー・シグナル》
《自縛霊の誘い》
《アース・グラビティ》
《ヒーローバリア》
《異次元トンネル-ミラーゲート-》
《聖なるバリア-ミラーフォース-》
融合(エクストラ)デッキ 2枚
《E・HERO ジ・アース》
《E・HERO フレイム・ブラスト》





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