海馬と城之内

製作者:フィギュさん




一話 ポン骨決闘者

 城之内 克也

 王国を勝ち進み、デュエル・シティ3位と、それなりの成績を持つ決闘者。だがそんな彼のあだ名は【ポン骨デュエリスト】 実力は有る。確かに有る筈なのだが・・・・。


 チュンチュンチュン・・・・小鳥のさえずりが流れる朝の、古い団地の一室・・・・。


 ジリリリリリリリッ! 


城之内「あーもう・・・うっせぇ・・・」
城之内は素手で目覚まし時計を力強く押す。
 寝ぼけた城之内が時計を見ると・・・時計は【8時30分】を指していた。

城之内「やべ・・・・完全に遅刻じゃねぇか!」
静香「もう!お兄ちゃん!何度も起こしたのに!」
城之内「・・・あーもう・・・行って来る!」

時間割を合わせていない鞄をもって(中に入っているのはデッキと財布だけ)自転車を物凄いスピードで飛ばしていく。
城之内「本気でとばしゃあ・・・・15分で学校に着く・・・」
自転車を飛ばしていた途中に黒いマントを来た男が両手を広げ城之内の自転車を止めようとする。だが、城之内はそれを無視するかのように・・・・
城之内「あーもう・・・邪魔だぁぁぁ!」
ギィィィィィィィ!バコーン!
男「ぐわぁぁぁぁ!」

城之内「これぞ城之内流ってか!アバよ、すまねぇな!」
男「ま・・待ってください〜。」
男は手を挙げて怪我をしながらも必死に追いかけてくる。その姿勢を見たのか城之内は自転車を止める。
男「ハァ・・・ハァ・・・・」
城之内「あ・・・・お前は海馬の部下の・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
城之内は思い出そうとするが必死に沈黙が続く。
磯野「磯野です。」
城之内「あ・・・そうだ!で、何のよう?」
磯野「実は海馬様が・・・貴方様と城之内と決着を付けたいと申しておりますのです・・・」
城之内「ええ!?海馬がぁ?」
城之内は驚愕した顔で磯野を眺める。
磯野「実は学校の方も・・・遅れると既に連絡は海馬様から知らせております。早速、海馬ランドの方へいらっしゃって下さい。」
「ああ・・・・ああ。」
城之内は顔がニヤけていた。学校が有休で休める上に、上手く行けばあの海馬瀬人の悔しく驚愕する顔が見られると思ったからだ。




ー海馬ランドー
城之内「で、何処に行くんだ。」
磯野「え、ええ。こちらです。」
磯野は海馬ランドに有る一つの有る建物の前へと案内した。
「ココです。」

 その建物には【海馬 THE デュエルアイランド】と表記されていた。建物の表記はとても悪趣味で、周りには【新装開店】を表す花が添えられていた。
城之内「な・・・なんだココは・・・・。」
磯野「では・・・行ってらっしゃいませ・・・。」

バッ!
城之内は磯野から背中を押され、体が建物の中に入ってしまった。
 中は真っ暗だったが、次第に蝋燭の火が次第に灯ってゆき、アナウンスが流れる。

海馬「あー・・・あー・・・マイクテスト」

海馬「FUHAHAHAHAHAHA!良く来たな!ポン骨デュエリストよ!」
アナウンスから海馬の馬鹿でかい声が流れる。
城之内「む・・・この声は海馬・・・あのやろぉぉぉぉぉぉ!ポン骨デュエリストだとぉぉぉぉ!おい!早く俺と勝負しやがれ!」
海馬「む、いきなり俺と勝負出来るとでも思ったか?流石ポン骨・・・いや馬の骨デュエリストよ。」

城之内「う・・・・馬の骨だとぉぉぉぉぉぉ!」
城之内はもう訳も分からず、腹ただしく奇声をあげる。
海馬「モチロン、いきなりこの俺とデュエル出来る訳ではない。この俺が貴様に復讐する為に呼び寄せた5人の決闘者・・・それを倒せば俺とのデュエルが出来る・・・という訳だ。」
城之内「と・・・途中で負けた場合はどうなるんだよ・・・・」
海馬「その場合は・・・・・・・・・・」
ゴクンッ
城之内はゆっくりとつばを飲み込む。
海馬「その場合は挑戦はそこで終わり。貴様は一生ポン骨デュエリストの扱いを受け、永久に俺の開く大会に参加は不可能となる。WAHAHAHAHAHAHA!」
海馬は大きく高笑いをした。
城之内「の・・・やろぉぉぉぉぉぉ!、もう許せねぇ・・・!」
海馬「そこにあるデュエル・ディスクをつけてさぁ、その1の部屋【切り込みガリガリ】に入るが良い!」

城之内は鞄からデッキを取り出し、蝋燭の間に落ちていた決闘盤を手につけ、デッキをセットして、第1の部屋に走るのだった。



第二話 悪夢の殺人者(前編)

城之内「何だ・・・この部屋は・・・」
 その部屋はやけにオイル臭かった。下には大量のオイルが敷かれていた。

 「ぐへへへへへへぇっ、良く来たなァ・・・・」

城之内「げ・・・お前は!?」
その姿は【チョッピー】以前城之内がDEATH−Tで城之内が燃やしたその人に違いなかった。

チョッピー「痛かったぞぉぉぉぉ・・・お前のせいで20針も縫ったんだ・・・・。」
チョッパーの顔には無数の縫った後があった。そのせいか、チョッパーの顔はさらに不気味さをましていた。

チョッピー「今回はただの決闘じゃ無いぞぉぉ。負けたものは死ぬ。真っ赤になってな。」
チョッピーは何かが付いた鎖を投げつけ、城之内のデュエル・ディスクへ投げつけ絡ませた。

城之内「な・・・なんだこりゃ・・・」
チョッピー「その鎖についているのはダイナマイト・・・この部屋を良く見ろ。壁に無数の蝋燭が立っているだろう?ライフが減る度にその蝋燭に火が付いて行く。そしてこの部屋の蝋燭全てに火が灯った時、その壁から火炎放射が飛び出し、バック・ファイヤー!という訳だぁぁ。」

城之内「て・・・てめぇ!洒落になってねぇぞ!」
城之内は指をチョッパーへと指しながら言う。

チョッピー「関係ねぇぇ・・・・!決闘スタートだぁぁ。」

城之内(・・・・ま・・・負けられねぇ。)

チョッピー「先行は俺からだぁぁぁぁ!ドロー!重装武者−ベン・ケイを攻撃表示で召喚!」


●重装武者−ベン・ケイ
ATK500/DF800 ☆4 闇属性 戦士族
このカードは通常の攻撃に加えて、このカードに装備された装備カードの数だけ、1度のバトルフェイズ中に攻撃する事ができる。

  
チョッピー「デーモンの斧を発動するぞぉ!」

●デーモンの斧
装備魔法
装備したモンスターの攻撃力は1000ポイントアップする。このカードがフィールドから墓地に送られた時、モンスター1体を生け贄に捧げればデッキの1番上に戻る。

重装武者−ベン・ケイATK500→ATK1500

チョッピー「ターン・エンド!」

城之内「ドロー!良し!俺はギア・フリードを召喚!ベン・ケイに攻撃だ!」

 鋼鉄の手刀!

ギア・フリードの斜め一直線の切り裂き攻撃はデーモンの斧を片手のベン・ケイを切り裂いた。

チョッピー ライフ4000→3700

城之内「ターン・エンドだ!」

相手のデーモンの斧を無駄にし、ベン・ケイを破壊した城之内。中々快晴なスタートだ。
 と同時に、チョッパー側の蝋燭の炎が灯されて行く。

チョッピー「も・・燃えるぅぅぅぅぅ・・・・火・・・火がぁぁぁぁ」
 実はチョッパーは城之内に顔を燃やされて以来火がトラウマになっている。

城之内「どうした?どうした?情けねぇなぁ!」
城之内はチョッピーを挑発する。

チョッピー「前は俺が燃えた。今度はお前の番だ。ドロー!」

チョッピー(・・・・コイツは・・・!!後で思い知らせてやるぞ、城之内・・・)

城之内はチョッピーの表情が変わったのに気づいたのか、チョッパーに反応する。

城之内「どうした?良いカードでも引いたのか?」

チョッピー「・・・・お前を、殺してやるからなぁぁぁぁ!苦渋の選択を発動!」

●苦渋の選択 通常魔法
デッキからカードを5枚選んで相手に見せる。相手はその中から1枚選ぶ。それを手札にいれ、残りは墓地に捨てる。

チョッピー「コレと・・・コレと・・・コレと・・・・・・・・・」
数秒後、チョッパーは5枚のカードを展開した。

悪魔の口付け 悪魔の口付け 悪魔の口付け 一角獣のホーン デーモンの斧

城之内「!????全部装備カードだとぉ!!」
城之内は驚きの顔の色を隠せない。
チョッパー「どうしたぁぁ?早く選べよぉ!」
城之内(と・・・とりあえず一番効果が薄い悪魔の口付けでも選んでおくか・・・・)
城之内「悪魔の口付けだ!」
城之内は悪魔の口付けを指差しする。チョッパーは無表情で悪魔の口付けを手札に加える。どうやら判断ミスだったのだろうか。その顔色から城之内はそう伺う。
 だが、次の瞬間、チョッパーの表情は変わった。

チョッピー「いくぞぉぉぉぉぉ!ザ・キックマンを召喚!」
I LOVE KICKと表記された男が無尽蔵にフィールド場に登場する。

● ザ・キックマン
1300/300 ☆3 闇属性 アンデット
このカードが特殊召喚に成功した時、自分の墓地の装備魔法カード1枚をこのカードに装備する事ができる。

チョッピー「デーモンの斧を発動!」

キックマンATK1300→2300

キックマンはギア・フリードの顔面を上に蹴り上げギア・フリードの鋼鉄の顔を割り砕く。


・・・・・・・・・【斧関係ないじゃん】とかいう突っ込みは無視の方面で(ぁ

城之内 ライフ4000→3500
城之内「ぐっ・・・・!」
チョッピー「火が迫ってくるぞォォ。」

城乃内「く・・・ドロー・・・アックス・レイダーを守備表示・・・さらにリバース・カードを一枚セットして、ターン・エンドだ。」

チョッピー「ドロー!行くぞォォォォォ!強欲な壷を発動!さらに、凶悪犯―チョップマンを召喚!さらに、一角獣のホーンを装備!」

●凶悪犯―チョップマン
1100/500 ☆3 闇属性 アンデット族
このカードが反転召喚に成功した時、自分の墓地の装備魔法カード1枚をこのカードに装備する事ができる。

城之内(バカめ・・・俺の伏せカードはマジック・アーム・シールドだゼ)
城之内は心の中で苦笑する。

チョッピー「さぁ・・・行くぞぉ・・・俺の切札を・・・・!場のチョップマンとザ・キックマンをゲームから除外し・・・・・・」

城之内「・・・・!?」
城之内はこういう展開の時はいつもピンチになるという表情を思い浮かべながら2体のモンスターが除外されて現れるカードを眺める。
「殺人犯ーJを特殊召喚する!」

●殺人犯ーJ
 2800/300 ☆7 闇属性 アンデッド族
このカードは装備魔法カードが付いている凶悪犯―チョップマンとザ・キックマンをゲームから除外しない限り召喚できない。(装備魔法も除外される)
 除外した2枚までの装備魔法をこのカードに装備する事ができる。
 このカードが相手の守備表示モンスターを攻撃した時、その数値の半分だけ相手のプレイヤーに与える。

城之内「ヤ・・・ヤバすぎだぜこの状況・・・・!!」
 城之内は驚愕していた。かつてDEATH−Tでチョッピーと会った時と、同じ顔をしていた。



第三話 悪夢の殺人者(後編) 城之内「ヤ・・・ヤバすぎだぜこの状況・・・・!!」

チョッピー「Jでアックス・レイダーを攻撃!」

 ブラック・チェーンソー!
  
 Jのチェーンソーが黒く光り、アックスレイダーの体を切り裂く。さらにそのアックスレイダーの体が切られた部分から、さらに黒い衝撃波が城之内を襲う。

チョッピー「さぁ、ライフが削られて炎が迫ってくるぞぉぉぉぉ」

城之内 ライフ3500→2675

チョッピー「ターン・エンド!」

城之内「ク・・・俺の手札には状況を逆転できるようなカードがねぇ・・・・・ドロー!」




 その頃、海馬はその状況をモニターで見ていた。

木馬「ハハハハ、やっぱり兄様の言うとおり、凡骨デュエリストだ!」

海馬「木馬・・・・・ヤツは凡骨デュエリストではない・・・・」

木馬「え!?でも兄様は凡骨デュエリストって・・・・」

海馬「ヤツはポン骨デュエリストだ!」

木馬「・・・・・・・そうだね」


ドローカード ●希望のダイス

城之内「ち・・・このカードは単体じゃ約にたたねぇ・・・・。」



城之内「・・・へックション!」

チョッピー「どうしたぁぁ?怖気づいてくしゃみでも出たのかぁ?」

城之内「そ・・・そんな訳ねぇだろ・・・クソ・・・とりあえず・・・戦士ダイ・レクファーを守備表示・・・ターン・エンドだ。」

●戦士ダイ・グレファー
1700/1600 ☆4 地属性 戦士族

城之内(相手がもう1体モンスターを召喚してくれれば、マジック・アームシールドを発動できる・・・それに掛けてやる・・・・。」

チョッピー「ドロー!手札より、悪夢のチェーンソーを発動!」

 



 ●悪夢のチェーンソー 装備魔法カード
 場に2体のモンスターを除外して特殊召喚されたモンスターが居る時のみ発動する事ができる。そのモンスター1体に装備し、相手の場のリバースカードを全て自分の魔法・罠ゾーンにセットした後、自分の場の伏せカードを全て破壊する。破壊した枚数だけ、自分のデッキから装備魔法カードを特殊召喚されたモンスターに装備してよい。

城之内「な・・・・」

チョッピー「マジック・アーム・シールドかぁ・・・・。さらに、チョッピーにブラック・ペンダントを装備する!」

●黒い(ブラック)ペンダント
装備魔法
装備したモンスターの攻撃力は500ポイントアップする。このカードがフィールド上から墓地に送られた時、相手に500ポイントのダメージを与える。



殺人犯ーJ ATK2800→3300



チョッピー「さらに、ハンマー男を召喚!」

●ハンマー男
1500/1600 ☆4 闇属性 アンデッド族

城之内(ヤベぇ・・・ヤベぇ・・・・」


モニター室
海馬「・・・・・ふん・・・所詮この程度か・・・・」

チョッピー「Jでダイ・レクファーを攻撃!」

チョッピーのチェーンソー攻撃により、ダイ・レクファーの体が少しずつ蝕まれ切り裂かれる。

城之内「ぐ・・・・」

城之内ライフ 2675→1825

チョッピー「さらにハンマー男で攻撃!」

城之内ライフ 1825→325

城之内「く・・・・く・・・そ・・・・・」

チョッピー「ククク・・・・もうすぐで・・・もうすぐで俺の復讐が完了するぞぉぉ!ターン・エンドだ。」

城之内(・・・・もう起死回生の手は・・・・このカード・・・【希望のダイス】に掛けるしかねぇ・・・・だが、あのカードを・・・・ドローできるかどうか・・・・)

 その時城之内は、今までの海馬との走馬灯を思い出した・・・・・。馬の骨だと、凡骨だと馬鹿にされた、あの悔しさが、浮かび上がってきた。

城之内「こんなんじゃ・・・・妹にも・・・良い格好できる兄じゃなくなっちまう・・・・。勝たなきゃ・・・ならねぇんだ・・・・。」

城之内「ドロー・・・・」
 

 城之内はドローしたカードを見ないように目をつぶり、ゆっくりと目を開けていく。その目はもう、何かを確信した目だった。

ドローカード 栄光の卓上

城之内「・・・・・・きたぁ!」

チョッピー「?・・・?」

チョッピーは驚く城之内を少しおかしい目で見る。

チョッピー「今さらどんなカードが来ようが、お前の負けは決まっているんだよぉ!」

城之内「それはどうかな・・・・マジック・カード【栄光の卓上】を発動!」



● 栄光の卓上 フィールド魔法カード
 このカードは自分のライフが1000以下で相手のライフとの差が倍以上の時発動する事が出来る。このカードがある場合、手札より希望のダイスを発動する事が出来る。

フィールドに巨大な卓上が出現した。

チョッピー「?・・?」

城之内「さらにリバースカードをセットし、ターン・エンド!」

チョッピー「ただの死に際の悪あがきか・・・・とどめだ!J!」

城之内「攻撃にチェーンし、手札より速攻魔法、希望のダイスを発動!」

フィールドに、金色の光りを持った、サイコロが出現した。

●希望のダイス 魔法カード
 栄光の卓上がフィールドに存在する場合のみ発動する事が出来る。サイコロを振る前に、出た目を一つ予想する。当たった場合、場のモンスターの全てのコントロールを入れ替え、コントロールを入れ替えたモンスターの攻撃力分だけライフポイントを回復する。このカードを使用したターン、お互い通常召喚は出来ない。外れた場合、自分のデッキから10枚墓地に送る。

チョッピー「・・・・ふん、だがそんな運任せのカードで・・・」

城之内「予想は・・・3だ!」

城之内の掛け声と共に、フィールドのサイコロが動き出す・・・・。そしてサイコロが示した目は4だった。

チョッピー「ははは!外れだぁ!10枚を墓地に・・・・」

城之内「まだだ!チェーンして、トラップカード【リバース・ダイス】を発動」

リバースダイス
通常罠
1ターンに1度だけサイコロの判定を行なう効果を無効にし、サイコロを振り直す。

城之内「今度は・・・・お前に4(死)を味合わせてやるよ!4だ!」

 フィールドのサイコロが転がる。コロコロ・・・・・・示した目は・・・・・・・・・・4であった。

城之内「よっしゃぁぁぁぁ!」

チョッピー「そ・・・そんなバカな・・・・。」

城之内「これで、Jと、ハンマー男のコントロールを得るぜ。さらに俺のターン!もう・・やることなんてねぇよな・・・・。Jとハンマー男で、ダイレクト・アタックだ!」

チョッピー ライフ3700→0

城之内「よっしゃぁぁぁぁ!」

チョッピー「ヒ・・・・ヒ・・・・・・」

城之内「今度は50針でも縫ってな。アバよ。」

 壁が蝋燭の最後の炎によって脆く燃えつくされ、壁よりスイッチの入っていた火炎放射が飛び出した。

チョッピー「ギャァァァァァ!」

 城之内は赤く燃えるチョッピーを哀れに思いながら、次の階層へと続く階段を駆け上っていった。



第四話 究極の昆虫(前編)

城之内「なんだこの部屋は・・・・。」

 城之内が2つ目の部屋へ続く階段を上り終えたそこはゆったりとした森が広がっていた。この様な館の中に森があるなどと、城之内は信じられなかったが、これもまた、海馬の言う【財力】の力なのだと城之内は思った。

城之内「こんなしょーもないもん作ってるのか・・・海馬は。」

??「ヒョヒョヒョヒョヒョ」

 アーアーアーッ!

 ターザンの掛け声と共に、一人の少年が地に降り立った・・・

 ドスンッ!

かと思いきや、ロープの勢いと共に、木にぶつかってしまった。

城之内「お・・・お前は、インセクター羽蛾!」

 ロープをもって地に降り立った眼鏡の少年は、間違いなく、日本チャンピオン【インセクター羽蛾】の異名を持つ男であった。

羽蛾「ムヒョヒョ、その通り、城之内!お前との決着をつけてやる!社長が俺にチャンスをくれたんだよ!」

城之内の前に親指を出しながら言う。

城之内「第二戦は・・・お前か・・・・。何だか安心したぜ。」

城之内は力が抜け安心し、ホッと溜息をつく。だが、安心されちゃ羽蛾も溜まったもんじゃないのか、力を込めて言う。

羽蛾「むぅ、その台詞がいつまで吐けるか・・・・FLAMING ETERNITYが出てパワーアップした昆虫デッキの力を見せてやる!」

城之内「な・・・何だってー!もう新しいパックが出てたのか・・・・・。」

羽蛾「ムヒョヒョヒョ、情報が遅いようだな。デュエル・スタートだ!」

二人はデュエル・ディスクを構え、デュエルのときの真剣な表情を取り戻す。

羽蛾「俺のターン、ドロー!」

羽蛾「ムヒョヒョ・・・初っ端からこのカードが来たか・・・俺は甲虫装甲騎士を召喚!」

 ●甲虫装甲騎士(インセクトナイト)
1900/1500 ☆4 地属性 昆虫族

羽蛾「さらに、リバース・カードを一枚セット、ターン・エンドだ!」

城之内「ドロー・・・・パンサー・ウォーリアーを召喚!」

※この小説ではパンサー・ウォーリアーは☆4 攻撃力2000 守備1600のバニラとして扱ってください^^:
 強すぎですけど・・・・。

城之内「行くぜ!インセクト・ナイトにバトルを仕掛ける!」

ズガァァァァァッ!

羽蛾「ムヒョヒョ、リバース・カードオープン!虫無視キャノンを発動!」

城之内「何!?」

●虫無視キャノン トラップ・カード
 このカードは自分・または相手のバトルフェイズにのみ発動する事が出来る。このカードは自分の場に昆虫族がいないと発動する事は出来ない。場の昆虫族モンスター一体を宣言し、発動する。そのモンスターはこのバトルフェイズ中、バトルに負けない。(ダメージ計算は適用する)このカードが墓地にあり、自分のフィールド上に【インセクト・プリンセス】が存在する間、相手のモンスターは全て昆虫族となる。

羽蛾「虫無視キャノン、発射!」

ズガァァァァァッ!

インセクト・ナイトの方に乗せられた二つのキャノンによって、パンサー・ウォーリアーの体は焼き尽くされた。

羽蛾「確か・・・ダメージ計算は適用する・・・だが100ポイントごとき、痛くも痒くもない・・・。」



羽蛾 ライフ4000→3900

城之内「く・・・リバース・カードを一枚セットして、ターン・エンドだ・・・。」

羽蛾「俺は、インセクト・ナイトを生贄に、インセクト・プリンセスを召喚する。」

 インセクトプリンセス
1900/1200 ☆6 風属性 昆虫族
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手フィールド上に表側表示で存在する昆虫族モンスターは全て攻撃表示になる。このカードが戦闘によって昆虫族モンスターを破壊する度に、このカードの攻撃力は500ポイントアップする。

 フィールドに、蜂の姿をした昆虫族の【プリンセス】が登場した。

羽蛾「女王様・・・・いや、行け!プリンセスよ!

 蝶のように舞い・・・・・

 インセクト・プリンセスが宙を這い回る。

 蜂のように刺す!

 プリンセスは自らの刃になった右腕で城之内を切り付けようとした。

城之内「やっぱり・・・・無駄ピョー!ってか。リバース・カードオープン!スケープ・ゴート!」

 場に4体のスケープ・トークンが出現し、そのトークン達には昆虫の羽が生えてきた。

羽蛾「・・・ククク!お笑いだよ城之内!インセクト・プリンセスは相手のモンスターを全て昆虫族にする・・・。」

羽蛾は笑いを浮かべながら、城之内を見下す。

城之内「そ・・・それ位知ってるぜ・・・!」

羽蛾「テキストを読み忘れたのかい?プリンセスは相手の昆虫族を倒すたびに、攻撃力が500ポイントアップするんだ!」

インセクト・プリンセスATK1900→2400

城之内「な・・・・・・」

羽蛾「コレで俺のターンはターン・エンド・・・だが次のターンに、もっと面白いモノを見せてやるよ・・・・・王をね・・・・・。」



第五話 究極の昆虫(後編)

「コレで俺のターンはターン・エンド・・・だが次のターンに、もっと面白いモノを見せてやるよ・・・・・王をね・・・・・。」
−王− ハッタリである可能性は有る。だが、追い込まれた状況下にある城之内にとっては、羽蛾の一言一言が、重く、そして劣情感を齎された。
 だが、ココで散る訳には行かない。天敵はこんなヤツじゃない。海馬 瀬人・・・ただ一人!



「ドロー・・・!」
ドローカード: 天下義賊GOEMON
「このカードは・・・・」
城之内の表情変化に気づいた羽蛾が、問いただす。その眼は、まるで昆虫の如く−
「良いカードでも引いたのか?ヒョヒョ・・・・・・」
 こんな所で立ち止まる訳には行かない。城之内は目の前の敵を倒す事に専念する。
「天下義賊GOEMONを召喚!」
 キセルを持った、義賊GOEMONがフィールド上に姿を現す。その姿はまるで、あの大泥棒、五右衛門の如く−

●天下義賊GOEMON 攻撃力1600 守備800 地 戦士族 ☆4
 このカードがフィールド上に出た時、デッキから【チェーン・キセル】を手札に加える事が出来る。

 このカードが墓地に送られた時、1000ライフポイント払う事で、デッキから【重層巨人IMPAKUTO】を特殊召喚する事が出来る。

「GOEMONの効果でチェーン・キセルを手札に加え−チェーン・キセルを発動!」

●チェーン・キセル
 天下義賊GOEMONにのみ装備可能。装備モンスター1体の攻撃力を300ポイントアップさせ、更に相手の場のモンスター一体の表情形式を変更する事が出来る。

「な・・・・なに。」

「行くぜ!GOEMON、チェーンでプリンセスを捕らえろ!」
 GOEMONはチェーンキセルをクラッチさせ、プリンセスを捕らえる。身動きが取れなくなり、ジタバタするプリンセス。
 だが、そこを見逃す訳が無い。
「行け!GOEMON!波動小判!」
 GOEMONは懐から小判を取り出し、小判に炎状のエネルギーを貯め、相手に投げつける。ジタバタするプリンセスはその小判の追撃を避けきれる訳も無く、小判に燃やし尽くされる。
「プ・プリンセスゥゥゥ!」
 虫は無視したい、と思う城之内で有った・・・・・・・。

「これで俺のターンはエンドだ!」
高らかにエンド宣言をする。
「くぅぅ、ドロー!・・・!!」
羽蛾の表情が変わった。冷静・・・に。 だがその冷静な表情は、いつしか不気味な笑いへと変貌していく。ヒョヒョヒョ大魔神へと、変貌する!
●ヒョヒョヒョ大魔神 種族ヒョヒョヒョ 属性ヒョ
ヒョヒョヒョを連ねる大魔神、その怒りに触れた物は虫と化す。

「行くぞ!昆虫王子を召喚!」
●昆虫王子 功0 守0 属性 地 種族 昆虫族 ☆1
 偉大なる昆虫王の息子。いつか王になれることを信じている。

つぶらな瞳をした昆虫王子がフィールド上に誕生する。その瞳は母を殺した(?)城之内をにらみつけている。
「う・・・・なんだよ・・・・」
「怒らせちまったようだなー、城之内・・・・・俺は儀式魔法、昆虫王への通路を発動!」
●昆虫王への通路 儀式魔法カード
 昆虫王−ヘラクレス−の降臨に必要。手札を一枚捨てなければ発動できない。場に存在する昆虫王子を一体生贄にデッキから昆虫王ーヘラクレスを特殊召喚する。
「コレが俺の切札だ!いでよ、ヘラクレス!」
●昆虫王ーヘラクレス 攻2200 守備 1100 風 昆虫族
 このカードがフィールド上に出た時、墓地にいる昆虫王子一体を除外する事で、攻撃力を2000ポイントアップさせる。墓地にインセクト・プリンセスが有る限り、このカードは墓地に送られた次のターンに特殊召喚される。
 このカードのプレイヤーは毎スタンバイフェイズごとに2000ポイントのライフを支払わなければならない。このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時、インセクトマントークン(攻1200・守備0)を特殊召喚する事が出来る。このカードがフィールド上に存在する限り、このカード以外の昆虫族モンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、その数値分だけダメージを与える事が出来る。
 2000というライフコストは、初期ライフ4000で始まるこのルールでは、決して優しいものではなかった。だが、羽蛾には、そのライフを犠牲にしてまで勝つ自信が有った。


 だが、城之内は至って冷静で合った。目の前の眼前の巨大昆虫には眼も暮れていなかった。
「城之内・・・・!俺を馬鹿にしてるなぁぁぁぁ!行け!ヘラクレス・クラッシャー!!!」
 GOEMONは向かってくるヘラクレスに対してキセルで攻撃を仕掛けるが、その体重に押しつぶされてしまう。ヘラクレスのアタックは4200。生易しい物ではない。

城之内ライフ→1400
「このタイミングでGOEMONの効果発動!デッキから重層巨人IMPAKUTOを特殊召喚する!」

重層巨人IMPAKUTO 攻2800 守1900 ☆8 地 機械族
効果 このカードはGOEMONの効果でのみ特殊召喚する事が出来る。このカードがフィールド上に出た時、デッキから【んが砲】を手札に加える事が出来る。
 とぼけた顔の魔神がフィールド上に大きく誕生する。その図体はヘラクレスの何倍もあろうか− まさに巨人のごとき容姿。


「フン・・・・だが俺のインセクトマンは貫通攻撃を持っている。お前のスケープ・ゴートを破壊すれば、デュエルは終わりだ・・・・・」

インセクト・ソード!
「・・・・百列拳!」
 IMPAKUTOが突然丸い手を動かせ、インセクトマンに怒涛のパンチラッシュを喰らわせる。
「な・・・・何!!!!」
「速攻魔法、百列拳を発動させてもらった。」
 ●百列拳
 重層巨人IMPAKUTOがフィールド上に存在する時のバトルステップ時に発動可能。相手の攻撃したモンスターを破壊し、そのターン中攻撃してきたモンスターを全て破壊する。
「ひょ・・・・・」
ヒョヒョヒョ大魔神の笑いは止まる。そして、彼の顔はまさに昆虫の如き緑の顔に変貌する。
「俺のターン!行くぜ!魔法カード!んが砲発動!」
● んが砲 魔法 
 重層巨人IMPAKUTOがフィールド上に存在する時のみ発動可能。フィールド上に存在するIMPAKUTO以上の攻撃力を持つモンスター全てを破壊する。このカードを使用したターン、このカードの対象となったカードは攻撃できない。

IMPAKUTOは大らかに口をあけ、発声練習の如き大声を気へと変化させ、放出する。そのエネルギーは、ヘラクレスを一発で粉みじんにした。
「俺のライフは残り400・・・だがお前を倒すには十分なライフだぜ!グレート・アンガスを召喚!そのまま直接攻撃だ!」
 羽蛾ライフ→2100

 怒れる獣の一撃−、長い長い時間をかけて虫に、大魔神に一撃をこなす事が出来た。眼前目標を突破するには、もう、時間はいらない・・・・筈・・・・・。



第六話 昆虫・昆虫・また昆虫!

「ターン・エンド!」
 城之内は高らかにエンド宣言− やってやったという彼の表情は曇った色一つ無かった。そして、自分の実力を勘違いするのである。

「く・・・この俺が城之内に・・・・・・俺は、アルティメット・インセクトLV3を召喚、リバースカードを一枚セットし、ターン・エンド!」
 弱体化昆虫アルティメット・インセクト・・・だが悪魔でそれは【進化】していく事で経る過程。
 過程を設けなければ・・・タダの貧弱な昆虫である。ただ場にあるは、一枚のリバースカード−

「さっさと来いよ、虫野郎。」
「ヒョヒョ・・・後で思い知らせてやる・・・・」

「ドロー・・・!・・・・!!」
 城之内がドローしたカードは【真紅眼の黒竜】− あの男との友情のカード。本来なら攻撃力の高いモンスターで攻めていく筈なのだが・・・・今の城之内には過信という自信があった。
〈真紅眼・・・・俺の共はお前だけだ・・・)
「俺はIMPAKUTOとアンガスを生贄に捧げ・・・・レッドアイズを召喚!」
 放たれるは黒き黒竜。その容姿は、荒ぶり的な性格の城之内をあらわすが如く、循環した色。
「行け!レッドアイズ!」
 甘っちょろいプライドなのかもしれない。だけどこれは、城之内の決闘者としてのプライドだ。
「行け!黒炎弾!」
紅い炎が昆虫へと直進してゆく。だがこの場面で何も無かった事は・・・・無い。案の定、今回も。
「無駄ピョー!リバースカードオープン!炸裂装甲!」
 ズガァァァァ!
真紅眼の黒き鎧が、悪魔の様な姿をした【何か】に破壊される。悪鬼・・・・そんな印象が過ぎった。
だが今は、真紅眼を・・・朽ちさせてしまった事
「し・・・真紅眼・・・・」
「くく・・・やっぱりお前なんか・・・そんなレアカードは似合わないぜ。」
 黒く落ちてゆく黒い竜。出会いは特急で別れへと変わった。城之内のパートナーが。真紅眼を、またも苦しめさせてしまった。



「く・・・ゆるさねぇぜ・・・リバースカードを一枚セットし、ターン・エンドだ。」

「俺のターン!アルティメット・インセクトLV3の特殊効果発動、アルティメット・インセクトLV5!」
 昆虫の皮が大きく剥がれ大きな大昆虫が出現する。
「これが俺の第二の切札だ!ヒョヒョ・・・・」
「リバースカードオープンぅぅぅ! 覇者の一括」
  
 【覇者】ハタから見れば格好良い響きかもしれないが、逃げる事に必死だった。
 

海馬研究所(?)モニター
「フン・・・・やはりこの程度か・・・・。失望心しか湧き出てこぬわ!」
(城之内・・・・この程度なのかよ・・・)
 木馬と海馬。彼等も失望していた。



「ふん・・・・今更そんな物・・・・ターンエンドだ!」
 何もしなかった・・・とはいえ、城之内の一手は将棋で言う、囲碁で言う【逃げの一手】 勿論表情にすぐ出る城之内は、内心焦っていた。


「く・・・行くぜ!ドロー!良し・・・・悪夢の鉄折を発動!」
 フィールド上に二つの鉄折が現れ、二人のプレイヤーは鉄折へとロックされる。だがまたもや城之内が放った一手は逃げ。
「ふん・・・悪夢の鉄折・・・・か・・・。所詮数ターンだけの枷・・・・俺のターン、ドロー!」
「ヒョヒョ・・・・インセクト5の特殊効果発動!いでよアルティメット・インセクトLV7!」

 昆虫の体は舞い上がる。大きな翼は飛翔を兼ね、大空へと舞い上がる。その姿は、あの大昆虫【グレート・モス】を表しているかのような。

「な・・・なんじゃこりゃ・・・・・・」
「ヒョヒョ・・・次のターンでお前は終わりだ・・・ターン・エンド!」


 絶体絶命の状況− まさかあのヒョヒョヒョ大魔神に苦戦を強いられるとは、思いもしなかった。今の手札に、起死回生の一手は無い。と、すると、次のドローに賭けるのみ。

「ちくしょ・・・・・海馬・・・・!負けるかぁぁぁ!辿り着いてやるぜ!」
ドローカード:強欲な壷
「壷・・・・・・強欲な壷を発動!」
 二枚のカードを裏返しでドローする。手は、震えていた。羽蛾に負けるというプレッシャー・・?いや、違う。城之内はもう・・・誰にも負けたくないのだ。
「やってやるぜぇ!」
 裏返したカードを表にする・・・・そのカードは・・・・。
「よっしゃぁぁぁぁ!俺はモンスターカード、D・Dアサイラントを召喚!」
 忍者の如く颯爽と現れた剣士、DDアサイラント、その大きな剣は眼前の【インセクト7】をただ見つめるのみ。
「だがココでアルティメット・インセクトLV7の効果発動!アサイラントの攻守は、700ポイントダウンする!」

 毒リンプン!!
 インセクト7が飛翔し舞散る粉によって、DDの体を痺れさせる。


「ヒョヒョ・・・・やっぱりこの程度か。」
「まだだ!」


「行くぜ!魔法カード!フォースを発動!」
「フォ・・・・フォースだと・・・・・・。」

 エネルギー上の球体がフィールド上に出現し、アルティメット・インセクトの体から精機を奪う。その精気はフィールド上の【アサイラント】へと転移される。

アサイラント攻撃力→2300
インセクト7攻撃力→1300


「まだだ!魔法カード、ニトロユニットを発動!」
 時限爆弾状のバクダンが、インセクト7の胸に搭載される。だがそれは、悪魔で強化ではない。
 自爆への一手。

「さ、て、と・・・羽蛾・・・最後に言っとくぜ。」
 DDは貫き刃をインセクト7へ向ける。
「ヒ・・・・・」


「やっぱお前ザコだわ。」
 DDは最後の刃でインセクト7の爆弾を切り裂く。そのショックでバグダンは破壊され、インセクト7の体は大きく爆発され、機雷する。
「イ・・・インセクトォォォォォォ!」
 インセクト7の羽が羽蛾の頭にポテリと落ちた。
「ヒョ・・・ヒョヒョ・・・・・」

「文字通り羽蛾ってか・・・・お似合いだぜ。」
 海馬に会うまでは時間をとらせられない・・・・・負けられない!



第七話 外れたリミッター!

 城之内が次はどんな部屋なのかと急ぎ足で階段を上ると、そこはまるで機械で処刑をするかのような・・・・・処刑場・・・・・。
 そんな不気味な機械上のフィールドに男が足を崩して座っていた。

「良く来たな、城之内・・・・・」
「お前は・・・・キース!」
「くくく・・・あの時あのオカマ野郎から受けた鉛弾痛かったぜぇ・・・・」
 キースの顔の横にはまだ鉛球が深くめり込んでいた。 その形はとても痛々しかった・・・・。

「さ、て、と・・・・ここで勝てばよ・・・海馬コーポレーションの新レーザー手術とやらでこの鉛弾を取り除いてくれるんだ・・・・負ける訳にはいかねぇ・・・。」
キースはポケットからデッキを取り出し、デュエルディスクへ装着する。


「ああ!受けて立ってやる・・・・・」



「「デュエル!!」」




先行を示すランプはキースへと移動する。そして、キースはドローカードへと手を伸ばす。
「俺のターン・・・・メカ・ハンターを攻撃表示で召喚する!」
 キースの初手は、高攻撃力を備えたバニラモンスター・・・・初手としては相応しい1ターンである。

メカ・ハンター
1850/800 ☆4 闇属性 機械族

「ターンエンド!」

「行くぜ!ドロー!」
ドローカード:イグザリオン・ユニバース
「よし!俺は、イグザリオン・ユニバースを守備表示で召喚!ターン・エンド!」
 城之内の行動は間違ってはいない。コチラの手札には装備魔法はあれど、その装備魔法を付けられる対象の種族がいなかった・・・とすればここは悪魔で防御に徹するのが道理−


「くく・・・俺のターン・・・行くぜ・・・]−ヘッドキャノンを召喚!」 
 顔面に砲台を装備する、またもや高攻撃力のモンスターが出現した。

(あのカード・・・確か海馬も・・・・・確か合体・・するんだったよ・・な)


モニター室
「む・・・あのカードは・・・・・」
 海馬は直感づいてデッキケースを確認した・・・・・。1・・・2・・・・19・・・37・・・
「あ・・・・あの男ォォォォォォォ!」
「に・・兄様落ち着いて。このデュエルが終わった後、取りに行けば良いじゃないか。」
「くそ・・・あの男のレーザー手術は無しだ。」


「これで俺のターンは終了だ・・・・ククク・・・・」
「俺のターン・・・イグザリオンを生贄に・・・・無敗将軍フリードを召喚!」
 イグザリオンを糧に出てきたのは、ダンディー将軍フリード・・・だがダンディーなだけでなく、その特殊能力は強力。魔法を無効化にしさらに毎ターン手札へ戦士族モンスターを一体手札に加える事が出来る、優秀な上級モンスターだ。



無敗将軍(ジェネラル) フリード
2300/1700 ☆5 地属性 戦士族
このカードを対象にする魔法カードの効果を無効にし破壊する。このカードが表側表示でフィールド上に存在する限り、自分のドローフェイズにカードを1枚ドローする代わりに、レベル4以下の戦士族モンスター1体をデッキから手札に加える事ができる。その後デッキをシャッフルする。


「フリード!メカ・ハンターに攻撃だ!」
 城之内は自分で言ったことをもう忘れてしまった。X−ヘッドキャノンは、合体する・・・。だが城之内のこの読み・・・というか偶然にしては良かった。キースの手札には合体モンスターが無かったのだ。
(ち・・・・だが・・・まだ手札に手はある・・・・・)

 フリードは腰から剣を取り出し、その剣でメカ・ハンターの体を一刀両断する。メカ・ハンターは何の抵抗も出来ないまま・・・・一刀両断!

キースライフ→3550


(このカードはおいとくか・・・念のためにな・・・)
 城之内の握っていた武器は【融合武器ムラサメブレード】 本来なら無敗将軍に装備し、責めるのが道理− だが元々戦闘能力の高いフリードに装備させる事はないと思い、あえて装備させなかった。

「・・・・ドロー・・・俺の切札・・・見せてやる・・・・X−ヘッドキャノンを生贄に捧げ−ブローバック・ドラゴンを召喚する!」
 ヘッドキャノンのがソリッドビジョンにより空中回転する・・・・そこから出てきたのは−手にガンキャノンを備えたマシンガンドラゴン。 砲台の万能スイッチの標的は・・・フリード!


ブローバック・ドラゴン
2300/1200 ☆6 闇属性 機械族
コイントスを3回行う。その内2回以上が表だった場合、相手フィールド上に存在するカード1枚を選択して破壊する。この効果は1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに使用する事ができる。


「見せてやる・・・ブローバック・セカンドコイン! キースは3枚のコインをフィールド上に投げ込む・・


チャリーン・・・・チャリーン・・・チャリーン・・・・!


「ビンゴ・・・だ。」
出した目は、三つとも表だった。同時にブローバックの銃口からレーザー砲がチャージされる・・・・。

「ガンキャノンレーザー!」
 
 凶悪なレーザー攻撃により、フリードの体は消滅していく。フリードは剣でレーザーを弾こうとするが、その凶悪なレーザーはフリードの体を燃やし尽くす・・・・。

「くくく・・・!さらに、ブローバック・ドラゴン!ダイレクト・アタック!」
「ぐあぁぁぁぁ!」


城之内ライフ→1700



第八話 豪腕の巨人

 −王国での、あの事を、忘れない。 キースは、俺が初めて勝った【大物】デュエリストだった。 
俺の自信を― そして、マジック・&ウィザーズというカードゲームに対しての自信をつけさせてくれた。 如何様を犯したキースに勝った時のあの気持ちは今でも覚えている。 
 初めて、一歩遊戯に近づけた気がしたから。だが、今の局面は違った。あの頃とは違い― 追われている男の姿があった。




「ターン・エンド!」
 キースの場にはブローバック・ドラゴンが1体のみ。伏せカードは無い為、ブローバック・ドラゴンさえ破壊できれば、攻略することは容易かった。
「ドロー!」
 
 ドローカード: 時の魔術師
(時の魔術師!!・・・・・このカードは・・・・だが、コレが外れれば・・・・)
 城之内はこのカードで一度、王国で失敗した事があった。キースとの局面、時の魔術師の効果、時・魔・法(タイム・マジック)を成功させたまでは良かったが、ツメが甘かったのか―
 伏せカードによってすぐに突破策を見つけられてしまった。しかし今は伏せカードがない。いかにギャンブルカードといえど、ここは攻めるチャンスだ。


「・・・・・・」

一瞬の沈黙、だが城之内の判断は、良い方(?)へと傾いたようだ。

「男城之内、ココで行くぜ!! 俺は時の魔術師を召還!」

「時の魔術師だと・・・・」

「効果は知ってるよな・・・・あの時は失敗したが、今回はそうはいかねぇ!! 行くぜ、時・魔・法(タイム・マジック)!」

「ク・・・・・コレが成功したら・・・・・」

クルクルクルクルクルクルクルクル・・・・・・

 ルーレットが止まった・・・・・指していた目は・・・・・・×印だった。

「ヘヘへ! ついてねぇなぁ城之内」

「いや・・・・マダだ。」

ピコーンッ!!

 その狭間、ルーレットは【当たり】の方向へと移動した。

「な・・・・何ィィィィィ!」

驚愕するキースに城之内は笑みを浮かべて、人差し指を指し、こう言い放つ。

「確変ってヤツだよ。ギャンブルに溺れちまったくせに、そんな事もしんねーのか。」

 同時に、ブローバック・ドラゴンは朽ちていく。正に文明の消滅の如く。
 更に時の魔術師は自らの杖を構える。

「イクぜ!! 【クロック・マジック】!!」
 
 時の魔術師は時計の魔方陣を空中に練成し、魔方陣からレインボーのオーラーがキースへと向かう。ただその威力は微量ではあった。

キースLP→3050

「更にリバースカードをセット!!ターン終了だ!!」

 その伏せはブラフか、もしくは・・・。

「王国での恨みは忘れない・・・貴様に負けた性で・・・俺の評判はガタ落ちだ!!フィールド魔法カード、IC書き換え工場を発動!!」


フィールド魔法
 IC書き換え工場
 メインフェイズ2に、このターン相手モンスター1体を破壊したモンスター1体を生贄に捧げる事でそのモンスターを生贄に捧げデッキより☆5以上の機械族モンスター1体をフィールド上に特殊召還する。 
 ターン終了時このカードは墓地に送られ、さらに自分のライフポイントの半分を払わなければならない。


 フィールドの場に大きな工場が聳え立つ。工場のシャッターは閉まっていたが、中からはシューシューという機械の音が聞こえる。
 いかにも、何か出てきそうな雰囲気だった。だがリスクは大きい。必ずしもモンスターを破壊できなければいけない上、もし失敗すれば多大なリスクを失う。
 だが城之内の顔は、戸惑っていた。時の魔術師の攻撃力はたった500。並のモンスターにさえ破壊されてしまう上、伏せカードは自分のモンスターを護る物ではなかった。

「さて・・・今度こそそそ、行くぜぜぜぜぜ」

 何故かキースの動きが、カクカクしていた。その動きは不気味さすらも感じさせた。

「デス・マシーンを召還!!」

☆1 攻撃力0 守備力0 機械族 闇
 このカードは戦闘では破壊されない。このカードが攻撃した攻撃表示のモンスターはバトルフェイズ終了時に破壊される。このカードは毎ターン攻撃しなくてはならない。

 赤銅色の丸いボディはまるで血の如く色あせ、手に持っている武器もまた、赤銅色を帯びていた。
 不気味な、モンスターである。その目標は時の魔術師を見つめ、フシューという不気味な機械音だけがフィールドに響き渡った。

「行け!!デス・マシーン!!」

「ブラッド・クラッシャー!!」

 ズガァァァァ!!

 キースLP→2550
 
 デス・マシーンの体はまた血に帯びる。だがキースの体もまた血を帯びていた。悪魔でデス・マシーンの攻撃力は0なのである。使用者を省みない効果を、デス・マシーンは持っていた。

「ヒャヒャハァッ!! デス・マシーンを生贄に捧げ―
 いでよ!!古代の機械超人!!アンティーク・ギア・ゴーレム!!」

 巨大な巨人は静かに沈黙し、フィールドに佇んでいた。

「な・・・何だコイツ・・・・」

城之内がその巨大な容姿を見つめていると、静かに巨人の目が動き出した。

「スイッチ始動・・・・さぁ地獄が待ってるぜぇ・・・!!ターン・エンドだ!!」
 
キースLP→1275

「とりあえず防御モンスターを・・・ドロー!!」

 ドローカード:バトルフットボーラー

「とりあえず・・・バトルフットボーラーを守備表示で召還!!ターン終了だ・・・。」

城之内の手札には場を打開出来るカードが無かった。だが、相手のライフポイントは既に自分を下回っていた。相手がいくら強力なモンスターを出そうと、まだ逆転の余地はある筈―

「俺のターン・・・手札から装備魔法スキル・ガントレットを機械超人に装備させる!!」


 スキル・ガントレット 装備魔法
 このカードを装備したモンスターが相手モンスターを破壊した時、その相手モンスターの守備力分、装備モンスター攻撃力に加える。


「行け!!ギンノコブシ!!」


ドガァァァッ!


 豪腕から繰り出される一撃は、フットボーラーの体を粉々に割り砕く。更にその衝撃は城之内を襲う。

「ぐ・・・・なんだと・・・・貫通効果を持っているのか・・・」

「それだけじゃない・・・・アンティークが攻撃している間は、全ての罠と魔法の効力を無効化する!」

城之内LP1700→800

 機械超人の前に屈する。 それは、試練。 この奈落の巨人を倒せばおのずと道は、見えてくる筈だ。
 臆病者よ、逃げるな。手を差し伸べろ。そこに道があるのだから。



続く...



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