plus α ―貪欲な魔物―

製作者:カオスマンSPさん




※注 このストーリーは、『GX plus!』第十一話〜第十二話の間のストーリーを描いた、番外編のような物です。そのため、現行のストーリーと異なり、新エキスパートルール(リリース→生け贄)が採用されています。



第.1話 衝撃の再開

ピピピ……ピピピ……

カチャッ。

『よう、カムイ。』
「おっ、センリ。こんな時間に、いったいどうしたんスか?」
『いや、明日、このデュエルアカデミア星海校に、面白そうなレストランがあってな。……で、そこに俺とカムイの2人で行ってみようと思ってな。』
「え?2人でいいんスか?もう少し呼んだほうがいいと思うんスけど……」
『いや、絶対呼ばないほうがいいぜ。……後悔したく無かったらな。』
「あ、ああ……分かったッス。」

ピッ。



「……そのレストランって、いったい何なんスかね……。まっ、行ってみるッスか。」
 カムイは、センリの言葉を少し不可解に思いながらも、そのレストランに行ってみることにした……。





















翌日、例のレストランの前にて……

「……で、これがそのレストランだ。」
「って、このレストラン、曇りガラスが張ってあって中が全然見えないんスけど……大丈夫なんスか?」
 カムイは、センリが言っていたレストランの正体がつかめなくて、少し当惑していた……。

「まあ、大丈夫だろ。入ってみようぜ。」
 そう言いながら、センリは店の扉を開け、カムイと一緒にレストランの中に入った……。
すると……











「お帰りなさいませ!社ちょ……」
 店の中から1人の店員が、メイドの格好をして、円形のトレイを持ちながら挨拶をしようとしたが、客の正体がカムイとセンリだと知った瞬間に、突然口が止まった……。

「なっ……。」
「おいおい……。」
 挨拶をした店員と、カムイとセンリの間で、一瞬時が止まったかのような空気が発生していた……。











「ナ、ナオ……なんて格好してるんスか……?」

第.1話 完




第.2話 少年メイド

あまりの衝撃に硬直状態になっていた3人は、少し間を置いて、店の丸テーブルに座った……。

「それにしても……何で女の子の格好なんかしてるんスか?」
 カムイは、11話とはまるで違うナオの服装に、戸惑いの色を隠せなかった……。
その服装とは、頭に白いフリルのついたカチューシャとネコ耳のついたヘアバンドを着け、黒色の半袖の上着と赤いチェック柄のチョッキを着、すそに白いフリルがついていて、これまた赤色のチェック柄のスカートを履いていると言う、どこかのメイドみたいな、男の子にはとても見えない服装になっていた……。
さらに、ナオの顔つきは中性的で、髪は微妙に青味かかった黒色のショートヘアーで、身長は相当低い上に細身のため、パッと見では女の子にも見えてしまっただろう……。

「う……うるさい!ボクだって、好きでこんな格好してるわけじゃない!」
 ナオは、自分の事を知ってる人に見られたからか、真っ赤になりながら話した。

「……じゃあ、何でだ?」
 センリは、少し笑いながらナオに問い掛けた。

「……騙されたんだよ。ボクと同じ『悪魔部』の生徒にね。」
 ナオは、忌々しそうな口調で答えた。

「え!?どう言うことッスか!?」
「どうもこうもないよ!……そいつは、『楽しいバイトがあるけど、やってみるか?』……とか何とか言ったから、物は試しとついていったはいいんだけど……つれてかれたのは、このメイドカフェまがいな所だったんだよ!」
 ナオは、大きな声で話した。


「いや……ボクだって、始めは確かに面白そうだと思ったけどさ!客の反応がひどいんだよ!女子生徒達は、まるでボクのことを愛玩動物のように頭をペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ触ってくるしさ!」
「おいおい……。何回『ペタペタ』って言ってるんだよ……。」
 センリは、ナオの話し方に少々呆れているようだった……。

「男子生徒もひどいよ!ボクのことを知ってる生徒は指差して大笑いするし、知らない生徒は、ボクのことをメイド服・ネコ耳・ロリッ娘・ボクッ娘……って萌え属性が4つ揃った店員に見られてるんだよ!ボクは男だってのに!」
「そりゃあ……ひどいッスね……。多分。」
 カムイは、ナオの言葉を少し理解できてないみたいだったが、ナオが精神的苦痛を受けているらしいことを感じ取り、心配するような発言をした。









「……なあ、ナオ。この店は、普段からこんなに客が少ないのか?」
 センリは、重苦しい空気を紛らわそうと、軽い話題に切り替えた。

「いや、普段はここまで少なくないよ。……でも、今日来たのは、あそこに座っている男だけだね。」
 そう言いながらナオは、店の奥のテーブルに座っている男を指差した。
その男は、黒色のスーツを着、ニット帽を深くかぶり、サングラスをかけていると言う服装だった……。

「あの男、ホットココアを頼んだのはいいけど、一口も飲まずに、新聞ばっか読んでるんだよ。……せっかく頼んだココアが冷めちゃうのに。」
 ナオは、男のことを怪訝そうに見ていた。

「……そう言えば、センリ。オレ達が店に入った時、ナオが何か言ってたッスよね。」
「ああ、確か……『お帰りなさいませ!社長!』……だったよな。……何かおかしくないか?」
 カムイとセンリは、そう言いながらナオの方を向いた。

「……なら、何だい?……君達は、『お帰りなさいませ〜。ご主人様。』……なんてセリフ、他人に向かって言えるのかい?」
「……言えるわけ無いだろ。」
 センリは、一言そう呟いた。









「ナ〜オ〜!何ぼやっとしてるだら!早く注文を……」
 店の奥で待機していた、ナオの着ているメイド服と同じ物を着た女の子が歩いていき……突然ナオの首を後ろからつかんだ!

「なっ…何なんだよ……。別にいいじゃないか!金盛 兆(かなもり きざし)!!」

第.2話 完




第.3話 金盛 兆(かなもり きざし)

「ナオ!何で一々わての事をフルネーム呼びするだら!」
 金盛 兆(かなもり きざし)と呼ばれた女の子は、もう片方の手の平でナオの頭の天辺を力任せに撫でくり回した!
兆の髪は、肩の辺りまでの長さの黒髪で、カムイやセンリと比べてもそこまで大きな差は無いぐらいに背が高く、上級生だと言う事を暗にほのめかしていた……。

「いててっ!頭をぐりぐりするなよ!……このバイトを辞めさせてくれたら、フルネーム呼びは止めてやるよ!」
「ぐっ……お前がそのつもりなら、わてもフルネーム呼びしてやるだら!早乙女 ナオ(さおとめ なお)!」
 兆は、ナオの言葉に対抗するように、フルネーム呼びをし返した。
しかしその様子は、はたから見たら、まるで子供のケンカの様にも見えた……。











「(早乙女……?)」
 店の奥で新聞を読んでいた男は、聞き覚えのある名字を聞いたのか、少し眉を動かした。











「とにかく!お前を辞めさせるわけにはいかないだら!もっともっと稼いで……」
 兆が言葉に詰まった隙に、カムイが口を開いた。

「ん?もっともっと稼いで……って、いったいどう言う事ッスか?」
「わてが紹介したバイト1人が1時間働くたびに、わてのバイト代に100円上乗せされるだら。」
 兆は、自慢するように話した。

「……それより、何で男のナオを、ここで働かせようと思ったんだ?」
 センリは、最も疑問に思っていることを兆に質問したが……

「使えそうだったからだら。」
「は?」
 兆のあまりに呆気ない答え方に、センリは呆れてしまった……。

「使えそう……って、どう言う事ッスか?」
 今度は、カムイが尋ねた。

「そりゃあ、ナオは、そんじょそこらの女より可愛らしい見た目やし、背も低いし、ネコ耳も付けとるから、客のニーズに合うと思ったからだら。」
「ニ、ニーズって……」
 カムイも、兆の発言に呆れたような表情を浮かべていた……。

「まっ、そう言う事だら。これは、わてとナオの問題だ……」
「ちょっと待て!金盛 兆(かなもり きざし)!!」
 ナオは、兆に向かって声を張り上げた!


「な、何だら……?」
「このバイトには、契約条件があったよね!『ボクがデュエルで君に勝ったら、このバイトを辞めることができる』……って!」
 ナオは、自分の服の胸元についた名札の裏を見せながら言った。



「え?そんな契約を交わしていたんスか!?」
「じゃあ楽に辞められるじゃねえか……。」
 カムイとセンリは、ナオの言葉に驚いていた……。
2人とも、ナオのデュエルの腕は高い物だと認めているため、なぜその契約を利用してバイトを辞めなかったのかが、不可解だからだ……。



「な、何言ってるだら!お前は今、デッキを持っていないはずだら!それでデュエルが……」
「デ、デッキを持っていない!?それはどう言う事ッスか!?」
 カムイは、兆の言葉に驚き、ナオに向かって話し掛けた。

「どうもこうもないよ!この店にいる間、金盛 兆(かなもり きざし)がボクのデッキを預かっているんだよ!(あれ?さっきも、似たような言葉で質問されたような……。)」
「なっ……デッキを!?(ん?さっきも、似たような返答をされたんスが……。)」
 カムイとナオは、お互いに聞き覚えのある返答に、少し戸惑いながら答えた。



「で、どうするだら?デッキが無くちゃあ、デュエルは……」
「へへん、なめるなよ!今日のボクは、秘密兵器を持ってるんだからね!」
「秘密兵器?いったいなんスか?」
 ナオと兆の会話に、カムイが割り込んだ。
すると、ナオは軽く微笑みながら、自分の右手の人差し指でカムイを指差した……。

「なっ……オ、オレッスか!?」
「そうだよ。君の実力、見せてもらうよ。」
 ナオは、小悪魔のような笑みを浮かべながら言った。



「……まあ、別にだれでもええけど、条件があるだら。わてに負けたら、デュエルにかかったターン数×200円を払って……」
「な、何でそうなるんスか!?」
 カムイは、兆が提示した条件に驚いて、思わず口を開いた。

「そりゃそうだら。デュエルをしたら、その分バイトの時間が減っちまうだら。」
「なるほど……。言われてみれば、そうッスよね……。なら、逆に聞くんスが……オレが勝ったら、ナオはこのバイトから解放されるんスよね。」
「当然だら。」
 それを聞いたカムイは、自分のデッキケースからデッキを取り出して……



「……よっしゃー!オレの『E・HERO(エレメンタルヒーロー)』の力、見せてやるッスよ!」
と言いながら、デッキの裏側を兆に見せ付けた!











「(『E・HERO(イーヒーロー)』?)」
 新聞を読んでいた男は、先程より大きく眉を動かした。











「……契約成立だら。さあ!デュエルを始めるだら!」
 そう言いながら、兆はカムイにデュエルディスクを渡した。

「ああ!行くッスよ!」
 デュエルディスクを受け取ったカムイは、左腕にデュエルディスクを装着し、デッキをセットして……









「「デュエル!!」」

第.3話 完




第.4話 欲深い魔物

先攻は、兆(きざし)だった。

「わてのターン!ドロー!モンスターを1体セットするだら!さらにカードを2枚場に伏せ、ターンエンド!」
 兆は、1ターン目は慎重にターンを終了したように見えたが……

「(さあ……わての裏守備モンスターに攻撃するだら……。そうすれば、わての究極コンボが成立するだら!)」
「オレのターン!ドロー!手札から、『E・HERO ワイルドマン』を攻撃表示で召喚するッス!」
 カムイの場に、野性的な肉体を持つヒーローが現れた。


E・HERO ワイルドマン
地 レベル4
【戦士族・効果】
このカードは罠の効果を受けない。
攻撃力1500 守備力1600


「『ワイルドマン』で、裏守備モンスターに攻撃ッス!ワイルドスラッシュ!!」
 『ワイルドマン』は、背中の剣を抜き、兆の場の裏守備モンスター……『暗黒のミミック LV1』を真っ二つにした!

「『暗黒のミミック LV1』のリバース効果発動だら!デッキからカードを1枚ドロー!さらに、『暗黒のミミック LV1』が戦闘破壊されたから、2枚の伏せ罠カードを発動させてもらうだら!」
 兆が2枚の伏せカードを表にすると、空になったはずの兆の場に、突然3体の宝箱型モンスター……『暗黒のミミック LV1』が姿を現した!

「なっ……いったい、何をしたんスか!?」
「『暗黒のミミック LV1』が戦闘破壊されたことをトリガーにして……『時の機械−タイム・マシーン』と『ブロークン・ブロッカー』を発動させただら!『ブロークン・ブロッカー』の効果で、デッキから2体の『暗黒のミミック LV1』を……『時の機械−タイム・マシーン』の効果で、戦闘破壊された『暗黒のミミック LV1』を特殊召喚しただら!」
 兆は、笑いながら答えた。


時の機械−タイム・マシーン
通常罠
モンスター1体が戦闘によって墓地に送られた時、
同じ表示形式でそのモンスターをフィールド上に戻してもよい。
(それは召喚扱いではない)

ブロークン・ブロッカー
通常罠
自分フィールド上に存在する攻撃力より守備力の高い守備表示モンスターが、
戦闘によって破壊された場合に発動する事ができる。
そのモンスターと同名モンスターを2体まで
自分のデッキから表側守備表示で特殊召喚する。


「なるほど……。『暗黒のミミック LV1』の攻撃力は100、守備力は1000だから、『ブロークン・ブロッカー』の発動条件を満たしてるんスね……。カードを1枚場に伏せ、ターンを終了するッス。」
 カムイは、3体も特殊召喚された『暗黒のミミック LV1』に少し警戒しながら、ターンを終えた。
『暗黒のミミック LV1』の皮膚は全身生物みたいで、全然宝箱に擬態できていないが……


現在の状況
兆(きざし) LP…4000
       手札…4枚
       場…暗黒のミミック LV1×3(守備力1000・すべて守備表示)

カムイ LP…4000
    手札…4枚
    場…E・HERO ワイルドマン(攻撃力1500・攻撃表示)
      伏せカード1枚


「わてのターン!ドロー!スタンバイフェイズ時に、『暗黒のミミック LV1』は、『暗黒のミミック LV3』に進化するだら!」
 そう言うと、兆の場に並んだ3体の『暗黒のミミック LV1』の体が変化し……より擬態のうまい宝箱型モンスターに変化した!

暗黒のミミック LV1
闇 レベル1
【悪魔族・効果】
リバース:デッキからカードを1枚ドローする。
また、自分のターンのスタンバイフェイズ時、
表側表示のこのカードを墓地に送る事で
「暗黒のミミック LV3」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。
攻撃力100 守備力1000











「『暗黒のミミック LV3』……確か、戦闘破壊された時にカードを1枚ドローする効果を持ってたよな、ナオ。」
「ああ……確かにそうだけど、ドロー枚数は1枚じゃないよ。『暗黒のミミック LV1』の効果で特殊召喚された『暗黒のミミック LV3』は、戦闘破壊された時、2枚もカードをドローできるんだ。」
 デュエルを見ているセンリとナオは、『暗黒のミミック LV3』の効果を語り合っていた。











暗黒のミミック LV3
闇 レベル3
【悪魔族・効果】
このカードが戦闘によって墓地に送られた場合、
このカードのコントローラーはデッキからカードを1枚ドローする。
このカードが「暗黒のミミック LV1」の効果によって
特殊召喚されている場合はカードを2枚ドローする。
攻撃力1000 守備力1000


「(600円……全然割りに合わないだら……。)……『暗黒のミミック LV3』で、『ワイルドマン』に攻撃!ミミック・バイト!」
 『暗黒のミミック LV3』は、口を大きく開けて『ワイルドマン』に噛み付こうとしたが、逆に真っ二つにされた!

「ちぃぃっ!……まあ、ドローができるならこの程度のダメージなんて軽いだら!」(兆LP 4000→3500)
 兆は、軽く微笑みながらカードを2枚ドローした。

「次!2体目!『暗黒のミミック LV3』で、『ワイルドマン』に攻撃!ミミック・バイト!」
 2体目の『暗黒のミミック LV3』も、『ワイルドマン』によって返り討ちにあった。

「『暗黒のミミック LV3』の効果で、カードを2枚ドローだら!」(兆LP 3500→3000)



「(モンスターを失ってまでここまでドローに執着するなんて……いったい何をねらってるんスか?)」
 カムイは、兆の行動を不可解に感じていた……。

「最後は3体目だら!ミミック・バイト!」
 兆の場の、最後の『暗黒のミミック LV3』も、『ワイルドマン』の剣に散った……。

「これで……わての手札に眠る、切り札での一撃必殺の準備が整っただら……。」(兆LP 3000→2500)
「なっ……このタイミングで、いったい何を出す気なんスか!?」
 カムイは、兆が突然自分の手札のカードを右手に取ったことに驚いた……。

「来るだら!わての最強モンスター……」





















「――『トラゴエディア』!!!」



兆が、自分の右手に持った1枚のカードを勢い良くデュエルディスクに叩きつけると……兆の場に、全身黒鋼色で、下半分が蠍のような姿で、上半分は昆虫のような外骨格で覆われた不気味なモンスターが、兆の背後から姿を現した!

第.4話 完




第.5話 予想外の事態での失態

「ト……『トラゴエディア』!?始めて見るカードッスね……。いったいどんな効果なんスか!?」
「『トラゴエディア』は、わてが戦闘ダメージを受けた時に、手札から特殊召喚できるモンスターだら!その攻撃力・守備力は手札の枚数×600ポイントアップするだら!」
 『トラゴエディア』は、手札のカードから発生するエネルギーを吸収し……その肉体からどす黒いオーラを発生させた!

「なっ……今、兆の手札枚数は……」
「ターン開始時に4枚、ドローフェイズに1枚ドロー、『暗黒のミミック LV3』3体分の効果で6枚ドロー……『トラゴエディア』の特殊召喚で手札が1枚減ったで、今の手札は10枚だら!よって……攻撃力・守備力は6000だら!」
 兆(きざし)は、自分の手札を扇状にして、カムイに見せ付けた!

トラゴエディア 攻撃力・守備力0→6000


「こ…攻撃力……6000!?」
「これで終わりだら!『トラゴエディア』で、『ワイルドマン』に攻げ……」
「くっ!速攻魔法『コマンド・サイレンサー』を発動するッス!」
 そう言うと、カムイの場に突然、3個のスピーカーがついたトーテムポールが現れ……そのスピーカーが、怪音波を発し始めた!











「な、何なんだよ……カムイ。このうるさい音は……。」
「は、早く止めてくれよ〜!」
 センリは、『コマンド・サイレンサー』から発せられた怪音波に、思わず耳を塞いでいた……。
それに対してナオは、何故か頭の側面ではなくて、頭にアクセサリーとして付けていたネコ耳を、両手で押さえていた……。



「……って、ナオ……。何でそこで本物じゃない方を押さえてんだよ……。」
「あっ……。そうだ、間違えちゃった……。」
 センリに指摘されたナオは、少し頬を赤らめながら両手を頭の側面……人間の耳が付いている所に移し替えた。











「『コマンド・サイレンサー』……中々強力なカードを使うだら。そのカードの効果で、『トラゴエディア』の攻撃は無効になり……」
「オレは、デッキからカードを1枚ドローするッスね。」
 カムイと兆は、『コマンド・サイレンサー』の効果の強力さを話し合っていた……。
そう言ってる間にカムイは、デッキからカードを1枚ドローして、手札を5枚に増やした。


コマンド・サイレンサー
速攻魔法
相手の攻撃宣言時に発動。
相手のバトルフェイズを終了させて、自分はデッキからカードを1枚ドローする。


「『コマンド・サイレンサー』……攻撃封じのカードを伏せていただらか。……メインフェイズ2に入るだら!『トラゴエディア』の第2効果を発動するだら!手札の『強欲ゴブリン』を墓地に送り、『強欲ゴブリン』のレベルと同じ……4レベルの『ワイルドマン』のコントロールを奪い取るだら!」
 『トラゴエディア』は、左腕を伸ばし、尖った指先を持つ左手で『ワイルドマン』につかみかかった!
すると、『ワイルドマン』の目が突然血のような深紅に染まり……兆の場へと歩いて行った!


トラゴエディア
闇 レベル10
【悪魔族・効果】
自分が戦闘ダメージを受けた時、このカードを手札から特殊召喚する事ができる。
このカードの攻撃力・守備力は自分の手札の枚数×600ポイントアップする。
1ターンに1度、手札のモンスターを墓地に送る事で、
そのモンスターと同じレベルの相手フィールド上に
表側表示で存在するモンスター1体のコントロールを得る。
また1ターンに1度、自分の墓地に存在するモンスター1体を選択し、
そのターンのエンドフェイズ時までこのカードは
選択したモンスターと同じレベルにする事ができる。
攻撃力? 守備力?


「なっ……相手のモンスターを奪う効果を持ってるんスか!?」
 カムイは、『トラゴエディア』のさらなる効果に驚いていた……。

「カードを2枚伏せて……と、このゲームのルールでは、エンドフェイズ時に、手札が6枚になるように捨てなきゃならないだら……。」
「ああ……確か、そうだったッスよね。」
 カムイは、少しだけ残念そうな表情をした兆を目の当たりにしたが……

「……と、そんな事は、このカードを使えば、一発解決だら!永続魔法……『無限の手札』を発動だら!」
 一瞬で表情が戻った兆を見て、一気に肩を落とした……。


無限の手札
永続魔法
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
お互いのプレイヤーは手札枚数制限が無くなる。


「『無限の手札』の効果で、手札に制限は無くなるだら!ターンエンド!」
「(……とは言っても、『無限の手札』を手札から発動させたから、手札が7枚から6枚に減ってるんスけどね……。)オレのターン!ドロー!」
 カムイは、自分の手札と『トラゴエディア』の効果を慎重に確認し、何をすればいいのか考えていた……。


「(『トラゴエディア』の攻撃力・守備力は表記上は『?』なんスけど、攻撃力・守備力を『アップする』って書かれているから、実質『0』として扱うんスね……。)……手札から、魔法カード『融合』を発動するッス!手札の『スパークマン』と『クレイマン』を融合し……『E・HERO サンダー・ジャイアント』を融合召喚するッス!」
 カムイは、手札に存在する、閃光を操るヒーローと、体が粘土でできたヒーローを融合し……両手から稲妻を放つ力を持ったヒーローを呼び出した!

「『サンダー・ジャイアント』の効果発動ッス!手札1枚を墓地に送り、自身より元々の攻撃力が低いモンスター1体を破壊するッスよ!『トラゴエディア』の元々の攻撃力は、表記上は『?』なんスけど、実質『0』として扱われるッスから、破壊できるんスよ!ヴェイパー・スパーク!!」
 その言葉通り、『サンダー・ジャイアント』は、両手から稲妻を放ち、兆の場の『トラゴエディア』を、どす黒いオーラを打ち破って、粉砕した!


E・HERO サンダー・ジャイアント
光 レベル6
【戦士族・融合/効果】
「E・HERO スパークマン」+「E・HERO クレイマン」
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。
自分の手札を1枚捨てる事で、フィールド上に表側表示で存在する
元々の攻撃力がこのカードの攻撃力よりも低いモンスター1体を選択して破壊する。
この効果は1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに使用する事ができる。
攻撃力2400 守備力1500


「元々の攻撃力が低いモンスターは、いくら偽りの力で着飾っても、『サンダー・ジャイアント』の稲妻を耐えることはできないッスよ!」
 カムイは、兆を指差しながら話した。

「行くッスよー!『サンダー・ジャイアント』で、『ワイルドマン』に攻げ……」
「おっと!わても、お前が発動したカードと同じカードを発動させるだら!速攻魔法『コマンド・サイレンサー』を発動!」
 そう言うと、今度は兆の場にスピーカーがついたトーテムポールが現れ、そのスピーカーから怪音波を発生させた!











「ま、またあの嫌な音か〜!」
 ナオは、また頭の側面ではなく、自分の頭に付けたネコ耳を両手で押さえていた……。

「おいおい……また間違えてるぞ。」
「あっ。……何で間違っちゃうかな〜。」
 ナオは、あさっての方向を向き、右手の人差し指で自分の右頬を軽く掻きながら話した。

「(ナオの奴……ネコ耳のコスプレをしているせいで、心までネコになっちまってるんじゃねえのか……?)」
 センリは、11話のナオからは考えられないような行動を不可解に感じていた……。

第.5話 完




第.6話 繰り返すドロー


「『コマンド・サイレンサー』の第2効果で、カードを1枚ドローするだら!」
「ぐっ……また手札が増えちまったッスね……。……メインフェイズ2に入るッスよ!モンスターを1体セットして、カードを1枚場に伏せ、ターンエンド!」
 カムイは、兆の手札が増えたことを少し不安に思いながらターンを終了した。


現在の状況
兆(きざし) LP…2500
       手札…7枚
       場…E・HERO ワイルドマン(攻撃力1500・攻撃表示)
         無限の手札(表側表示)
         伏せカード1枚

カムイ LP…4000
    手札…0枚
    場…E・HERO サンダー・ジャイアント(攻撃力2400・攻撃表示)
      裏守備モンスター1体
      伏せカード1枚


「(確かに……『トラゴエディア』は破壊したんスけど……これで終わるとは思えないんスよね……。)」
「わてのターン!ドロー!手札から、魔法カード『精神操作』を発動して、お前の『サンダージャイアント』のコントロールをこのターンの間奪い取るだら!」
 そう言うと、『サンダージャイアント』の体に無数の糸が絡み付き、操り人形のようになって兆の場に移った!


精神操作
通常魔法
エンドフェイズ時まで相手フィールド上モンスター1体のコントロールを得る。
このモンスターは攻撃宣言をする事ができず、生け贄にする事もできない。


「だが、『精神操作』の効果で洗脳したモンスターは、攻撃させることも生け贄に捧げることもできないんスよね……。いったいどうする気なんスか?」
「だが……それ以外のことはできるだら!手札から、魔法カード……っと、その前に、手札の永続魔法『生還の宝札』を発動しておくだら。」
 兆は、何かを思い出したかのように手札のカードに手をかけ、そのまま発動した。

「『生還の宝札』……よく見かけるカードッスね。……この学校では、人気なカードなんスかね?」
「まあ、手札がほしいわてのデッキにとっては、いいサポートになるからだら。これで準備は整っただら!手札から、魔法カード『冥界流傀儡術』を発動!」
 そう言いながら兆は、さらに手札のカードを使用した。


「『冥界流傀儡術』?それは、あまり聞かないカードッスね……。」
「それはそうだら。このカードは何も考えずに使うと、明らかに割りに合わない取引になるからだら。」
 兆は、軽く微笑みながら答えた。

「このカードの効果で……レベル4の『ワイルドマン』と、レベル6の『サンダージャイアント』をゲームから除外して……わての墓地から、レベル10の悪魔族モンスター……『トラゴエディア』を攻撃表示で特殊召喚するだら!」
 そう言うと、兆の墓地から、『トラゴエディア』がはい上がってきて……『ワイルドマン』を右手で、『サンダー・ジャイアント』を左手で握り潰し、自らを蘇らせるためのエネルギーへと変換した!


冥界流傀儡術
通常魔法
自分の墓地の悪魔族モンスター1体を選択する。
合計レベルがそのモンスターのレベルと同じようになるように、
自分フィールド上のモンスターをゲームから除外する。
その後、選択したモンスターを特殊召喚する。


「ぐっ……オレから奪ったモンスターを犠牲にしたから、損失が軽くなるんスね……。」
「その通りだら!さらに、『トラゴエディア』が蘇ったから、『生還の宝札』の効果でカードを1枚ドローさせてもらうだら!」
 兆は、嬉しそうにカードを1枚ドローした。


生還の宝札
永続魔法
自分の墓地に存在するモンスターが特殊召喚に成功した時、
自分のデッキからカードを1枚ドローする事ができる。


「これでわての手札は6枚!『トラゴエディア』の攻撃力は3600にアップしただら!これだけの攻撃力があれば、生け贄無しで出てきたモンスターくらい楽に破壊できるだら!『トラゴエディア』で、裏守備モンスターに攻撃!トラジェディー・インフェルノ!!」
 『トラゴエディア』は、口から灼熱の獄炎を吐き、カムイの場の裏守備モンスター……『フレンドッグ』を一瞬で焼き尽くした!

「……『フレンドッグ』の効果発動ッス!このモンスターが戦闘破壊されたとき、墓地から『E・HERO』と名のつくモンスター1体と『融合』1枚を手札に戻せるんスよ!この効果で……墓地の『E・HERO スパークマン』と『融合』を手札に戻すッスよー!」
 カムイは、墓地に置かれた2枚のカードを取り出し、兆に見せながら手札に戻した。


フレンドッグ
地 レベル3
【機械族・効果】
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分の墓地から「E・HERO」と名のついたカード1枚と
「融合」魔法カード1枚を手札に加える。
攻撃力800 守備力1200


「戦闘破壊されるだけで手札が2枚増やせる……中々お得なカードだら。……まあ、まだわてのターンは終了していないだら!メインフェイズ2に、手札の魔法カード『貪欲な壺』を発動!墓地の『暗黒のミミック LV1』2体と『暗黒のミミック LV3』3体をデッキに戻して、カードを2枚ドローするだら!」
 兆は、また嬉しそうにカードをドローした。


貪欲な壺
通常魔法
自分の墓地に存在するモンスター5体を選択し、
デッキに加えてシャッフルする。
その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。


「カードを1枚場に伏せて、ターンエンド!」
「(って、また手札6枚でターンを終えたッスね……。手札を保つのって、本当に難しいんスよね……。)オレのターン!ドロー!」
 カムイは、『無限の手札』が今だに意味を成していないことを不可解に思った……。

「(表側表示でモンスターを出すと、すぐ『トラゴエディア』に奪われそうッスね……。)」
 カムイは、兆の場に存在する『トラゴエディア』に、少し警戒していた……。


「……モンスターを1体セットしてカードを1枚場に伏せ、、ターンエン……」
「なら、このタイミングで、伏せ罠カード『エンジェル・リフト』を発動するだら。この効果で、墓地のレベル2以下のモンスター……『暗黒のミミック LV1』を特殊召喚するだら!」
 兆は、待ってましたと言わんばかりに伏せカードに手をかけ、カムイに見せ付けた。
すると、2体の小天使が降りてきて、墓地の『暗黒のミミック LV1』を引っ張り上げてきた!


エンジェル・リフト
永続罠
自分の墓地に存在するレベル2以下のモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターがフィールド上から離れた時このカードを破壊する。











「『エンジェル・リフト』……か。だが、天使(エンジェル)で悪魔を復活させるのって、少し妙な感じだよな。例えば…………なあ、ナオ。」
「な…何を……考えて………言ってるんだい?」
 メイド服を着ているナオは、センリの言葉に少し縮こまりながら答えた。











「『生還の宝札』の効果で、カードを1枚ドローするだら!」
「なるほど……このタイミングで特殊召喚すれば、安全に進化させられるッスよね……。ターンエンド!」


現在の状況
兆(きざし) LP…2500
       手札…7枚
       場…トラゴエディア(攻撃力4200・攻撃表示)
         暗黒のミミック LV1(攻撃力100・攻撃表示)
         無限の手札(表側表示)
         生還の宝札(表側表示)
         エンジェル・リフト(暗黒のミミック LV1を対象)
         伏せカード1枚

カムイ LP…4000
    手札…1枚
    場…裏守備モンスター1体
      伏せカード2枚


「わてのターンや!ドロー!スタンバイフェイズ時に、『暗黒のミミック LV1』は『LV3』に進化するだら!」
 そう言うと、『暗黒のミミック LV1』は、より擬態がうまい宝箱に変化した!



「(あの裏守備モンスター……十中八九、『スパークマン』だら……。あのモンスターをもらったところで、わてにとっては場の足しにもならないだら……。)」
 兆は、カムイの場のカードを推測し、心の中で落胆したが……

「(……まあいいだら。)そして……面白いカードを見せてやるだら!手札から、魔法カード『強制転移』を発動!」
「なっ……『強制転移』!?」
 カムイは、兆の発動したカードに驚愕していた……。











「『強制転移』……金盛 兆(かなもり きざし)の奴、意外とえげつないカードを使うんだね。」
 ナオは、兆が発動させたカードを、腕を組みながら確認していた。

「ナオ!『強制転移』って、いったい何なんだ!?」
「あのカードは、お互いに自分の場のモンスターを1体選び、選んだモンスターを相手に渡す効果を持つ魔法カードだよ。」
 センリに質問されたナオは、『強制転移』の効果を教えた。


強制転移
通常魔法
お互いに自分フィールド上に存在するモンスター1体を選択し、
そのモンスターのコントロールを入れ替える。
そのモンスターはこのターン表示形式を変更できない。


「……ちょっと待てよ!奪われたモンスターが墓地に行く時は、持ち主の墓地に送られるんだよな!」
「そうだよ。それに、『破壊されたとき』の効果は、墓地で発生する効果なんだ。……つまり、カムイの場に押しつけた『暗黒のミミック LV3』を戦闘破壊した場合、金盛 兆(かなもり きざし)が効果を使えるんだ。」
「な、何だそりゃ!?明らかな不平等取引じゃねえか!」
 センリとナオは、『強制転移』の強さに驚いていた……。











「くっ!『強制転移』にチェーンして、伏せ罠カード『リミット・リバース』を発動するッスよ!」
「な、何だら!?」
 兆は、カムイが何もしないだろうと腹をくくって『強制転移』を発動させたが、何かしてきたことに当惑した……。

「この効果で、オレの墓地の攻撃力1000以下のモンスター……『フレンドッグ』を、攻撃表示で特殊召喚するッス!」
 そう言うと、カムイの場に、機械でできた犬が、攻撃表示で現れた。


リミット・リバース
永続罠
自分の墓地から攻撃力1000以下のモンスター1体を選択し、
攻撃表示で特殊召喚する。
そのモンスターが守備表示になった時、そのモンスターとこのカードを破壊する。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。


「そして……『強制転移』の効果を解決するんスよね。オレは、『フレンドッグ』を渡すッスよ!」
「ならわては、『暗黒のミミック LV3』をあげるだら!」
 お互いがそう言うと、カムイの場の『フレンドッグ』と、兆の場の『暗黒のミミック LV3』が引き寄せられ、場の中央で正面衝突したかと思えば……『フレンドッグ』が兆の場に『暗黒のミミック LV3』がカムイの場に移っていた!


「ぐぐぐ……『フレンドッグ』は、戦闘破壊された時に、なかなかお得な効果を発動できるだら……。お前も意外と欲深い性格してるだら!」
「なっ……兆の方が、明らかに欲深いと思うんスけど……」
 カムイは、兆の突然の一言にたじたじになっていた……。

「と、とにかく、わての今の手札は7枚だから、『トラゴエディア』の攻撃力は4200にアップしただら!『トラゴエディア』!『暗黒のミミック LV3』を焼き尽くすだら!トラジェディー・インフェルノ!!」
 『トラゴエディア』は、口から獄炎を放ち……『暗黒のミミック LV3』を一瞬で灰にしてしまった!

「くっ!ダメージ計算時に、伏せ罠カード『ガード・ブロック』を発動するッス!この効果で、オレへのダメージを0にして、カードを1枚ドローするッスよ!」
 『トラゴエディア』の放った攻撃の余波は、すさまじい威力だったが、カムイの発動させたカードの効果によって、その余波は鎮圧された!


ガード・ブロック
通常罠
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。


「『ガード・ブロック』の第2効果で、カードを1枚ドローするッス!」
「わても、『暗黒のミミック LV3』が破壊されてわての墓地に置かれたことによって、カードを2枚ドローできるだら!」
 カムイと兆は、ほぼ同時にカードをドローした。

「わての手札は、これで9枚になっただら!ターンエンド!」
「オレのターン!ドロー!手札から、速攻魔法『手札断殺』を発動するッス!このカードの効果で、お互いは手札を2枚を墓地に送って、カードを2枚ドローするッスよ!」
 『手札断殺』の効果で、カムイは残り2枚の手札を……兆は9枚の手札の中から2枚を選んで墓地に送り、お互いにカードを2枚ドローした。


手札断殺
速攻魔法
お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする。


「これで準備は整ったッスよ!さっきの『手札断殺』で墓地に送った『E・HERO ネクロダークマン』の効果発動ッス!このカードが墓地に存在する時、1回だけ手札の『E・HERO』と名のつくモンスターを生け贄無しで召喚できるようになるんスよ!この効果で……『E・HERO エッジマン』を召喚するッス!」
 カムイがそう言うと、場に鋼の刄を持った、全身金色のヒーローが現れた!


E・HERO ネクロダークマン
闇 レベル5
【戦士族・効果】
このカードが墓地に存在する限り、自分は「E・HERO」と
名のついたモンスター1体を生け贄なしで召喚する事ができる。
この効果はこのカードが墓地に存在する限り1度しか使用できない。
攻撃力1600 守備力1800


「行くッスよー!『エッジマン』で、『フレンドッグ』に攻撃ッス!パワーエッジ・アタック!」
 『エッジマン』は、全速力で突撃し、右手の甲に付いた刄によって『フレンドッグ』を真っ二つにした!

「くうぅっ!中々強力な攻撃だら!」(兆LP 2500→700)
 兆は、『エッジマン』の一撃によって発生した衝撃に少し仰け反った。

「戦闘破壊した『フレンドッグ』がオレの墓地に送られたことで、効果を発動するッスよ!オレの墓地から『E・HERO クレイマン』と『融合』を手札に戻し……もう一度、速攻魔法『手札断殺』を発動するッスよー!」
「ま、また『手札断殺』!?(……せっかく『フレンドッグ』で戻したカードをまた墓地に送ってまうなんて……いったい何をねらってるだら?)」
 兆は、カムイのさらなる手札交換に驚いていた……。


「オレは、『フレンドッグ』の効果で戻した2枚のカードを墓地に送って、カードを2枚ドローするッスね。」
「わては、(別に何でもいいんやけどな……。)この2枚を墓地に送って、カードを2枚ドローするだら。」
 2人は、またしても手札の一部の入れ替えを行った。

「(よし!これで3体目が揃ったッスね!)メインフェイズ2に入るッスよ!カードを1枚場に伏せ、ターンエンド!」


現在の状況
兆(きざし) LP…2500
       手札…7枚
       場…トラゴエディア(攻撃力4200・攻撃表示)
         無限の手札(表側表示)
         生還の宝札(表側表示)
         エンジェル・リフト(暗黒のミミック LV1を対象)
         伏せカード1枚

カムイ LP…4000
    手札…1枚
    場…裏守備モンスター1体
      伏せカード1枚


「わてのターン!ドロー!『トラゴエディア』の第2効果を発動するだら!手札のレベル7モンスター……『グリード・クエーサー』を墓地に送って、レベル7の『エッジマン』を奪い取るだら!」
 『トラゴエディア』は、自分の体からどす黒い不気味なオーラを溢れさせて『エッジマン』にまとわりつかせると……『エッジマン』は、まるで意識を失った操り人形のように、兆の場に移った!

「そして……こんな形での決着はどうだら?わての場の『エッジマン』に、装備魔法……『ハッピー・マリッジ』を装備させるだら!」
「なっ……」
 カムイは、兆が発動させたカードに驚いていた……。

第.6話 完




第.7話 悦楽の狂刃

「『ハッピー・マリッジ』……か。いつか来るとは思ってたけど、ここで使われるとはね……。」
 ナオは、見覚えのあるカードに、少し眉を動かしていた……。

「『ハッピー・マリッジ』か。始めて見るカードだな。どう言う効果なんだ?ナオ。」
「『ハッピー・マリッジ』は、自分が相手のモンスターを奪い取っているときのみ発動できる装備カードだよ。その奪い取ったモンスターの攻撃力分、装備モンスターの攻撃力がアップするんだ。」
 ナオは、センリに軽く話し掛けた。


ハッピー・マリッジ
装備魔法
相手のモンスターが自分フィールド上に表側表示で存在する場合に発動する事ができる。
装備モンスターの攻撃力は、そのモンスターの攻撃力分アップする。


「いや……『ハッピー・マリッジ』は、奪い取ったモンスターそのものに装備させることもできるよ。……と言うより、勝利のためなら、奪い取ったモンスターであっても、攻撃力の高かったり、貫通能力を持ったモンスターに装備させる方が効果的だからね。」
 ナオは、『ハッピー・マリッジ』の効果を淡々と語った……。











「『エッジマン』の攻撃力は2600……わてがお前から奪い取ったモンスターの攻撃力の合計は2600……よって、『ハッピー・マリッジ』を装備した『エッジマン』の攻撃力は、2600+2600=5200にまでアップするだら!」
 そう言うと、兆の場の『エッジマン』を覆うどす黒いオーラがさらに活性化し……金色の肉体をも黒く染め上げていった!
そして……目が不気味なほどに赤く染まっていき……両手の甲に付いた刄が、肩まで伸びるほどの長さに変化した!
長く伸びた刄を振るうその姿は、まるで、有り余る力を存分に発散できる『悦楽』――に捉われているようにも見えた……。



「その裏守備モンスター……十中八九、『スパークマン』だら!『スパークマン』の守備力は1400……わての場の『エッジマン』の攻撃力は5200……この攻撃が通れば、お前に3800のダメージを与えられるだら!」
「だが……まだオレのライフは0にならないッスよ!それでいいなら攻撃すればいいんスけど。」
 兆(きざし)は自信満々に語っていたが、カムイは全く動じず、むしろ攻撃を誘っているみたいだった……。


「何を言ってるだら!別にわては、お前から奪い取った『エッジマン』が破壊されても、関係ないだら!『エッジマン』で、裏守備モンスターに攻撃!スーパー・パワーエッジ・アタック!!」
 兆の言葉に反応し、『エッジマン』は、自らの溢れる力を余す事無く伝える刄を振るうことに悦楽し……カムイの場に存在する裏守備モンスター……『スパークマン』を、何の躊躇もなく切り裂いた!

「ぐああぁぁっ!!」(カムイLP 4000→200)
 カムイは、『エッジマン』の放った攻撃によって発生した衝撃に吹き飛ばされそうになったが、両足で床をしっかりと踏みしめ、伏せていたカードに手をかけた……。


「……かかったッスね!『E・HERO スパークマン』が戦闘破壊されたことで、伏せ罠カード……『ヒーロー逆襲』を発動するッス!さあ、兆!手札を1枚選んでもらうッスよ!」
 カムイは、1枚の手札を裏向きで兆に見せ付けた。

「な、何言ってるだら!選ぶって……何やってもその残り1枚の手札を選ぶしかないだら!」
「まあ、そうッスよね。オレの最後の手札は……『E・HERO バブルマン』ッス!」
 カムイは、残り1枚の手札を裏から表にし……兆に見せた!


ヒーロー逆襲
通常罠
自分フィールド上に存在する「E・HERO」と名のついたモンスターが
戦闘によって破壊された時に発動する事ができる。
自分の手札から相手はカード1枚をランダムに選択する。
それが「E・HERO」と名のついたモンスターカードだった場合、
相手フィールド上のモンスター1体を破壊し、選択したカードを
自分フィールド上に特殊召喚する。


「これで『ヒーロー逆襲』の効果成功ッス!この効果で『エッジマン』を破壊して……手札の『バブルマン』を守備表示で特殊召喚するッスよー!」
 カムイがそう言うと、手札から『バブルマン』が特殊召喚されて、瀕死の『スパークマン』と協力し、『エッジマン』に向かって攻撃した!
すると、『バブルマン』の放った泡玉によって、『スパークマン』が浴びせた電撃が伝わりやすくなり……『エッジマン』の全身を電気が貫いた!
しかし、電撃を受けた『エッジマン』は、何かから解放されたような表情で倒れていった……。



「『スパークマン』と『エッジマン』は、兆の戦法によって相討ちに持ち込まれたんスが……オレのヒーローは、墓地に行っても、デッキと共に生き続けるんスよ!場に他のカードが無い時に特殊召喚された『バブルマン』の効果で、カードを2枚ドローするッス!」
 カムイは、デッキからカードを2枚ドローし、自分の手札にした。


E・HERO バブルマン
水 レベル4
【戦士族・効果】
手札がこのカード1枚だけの場合、
このカードを手札から特殊召喚する事ができる。
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に
自分のフィールド上と手札に他のカードが無い場合、
デッキからカードを2枚ドローする事ができる。
攻撃力800 守備力1200


「(オレの墓地に『スパークマン』と『エッジマン』……場には『バブルマン』……そして、手札には『あのカード』……。オレの切り札を出す準備は整ってるんスが……兆の『トラゴエディア』の攻撃力を打ち破ることができないッスね……。)」
「まだわてのバトルフェイズは終わってないだら!『トラゴエディア』!『バブルマン』を地獄送りにするだら!トラジェディー・インフェルノ!!」
 『バブルマン』は、『トラゴエディア』の放った獄炎をまともに受け、蒸発してしまった……。


「(今……わての手札にも場にも、攻撃を防ぐカードは無いだら……。まあ、『トラゴエディア』の攻撃力は4800もあるから、たぶん大丈夫だら……。)わてはこれで、ターンを終了するだら。」

第.7話 完




第.8話 鏡の騎士――シュピーゲル

「オレの……ターン!」
 カムイは、デッキの一番上のカードを勢い良くドローし……少しづつ目を開いて確認した……。



「……手札から、『 キャプテン・ゴールド』の効果発動ッス!このカードを墓地に送って、デッキから『摩天楼‐スカイスクレイパー』を手札に加えるッスよ!」
 カムイは、デッキの中から『摩天楼‐スカイスクレイパー』のカードを素早く探しだし、手札に加えた。

「これで……融合素材は揃ったッスよ!手札から、魔法カード『ミラクル・フュージョン』を発動するッス!このカードの効果で、墓地の『エッジマン』、『バブルマン』、『スパークマン』、『キャプテン・ゴールド』を融合し……」











「(あいつ……『E・HERO(イーヒーロー)』を4体融合させる……?いったい、どれほどの『E・HERO(イーヒーロー)』を融合召喚する気だ?)」
 店の奥でずっと試合を見ていた男は、すっかり冷めてしまったココアを飲みながら、次のカムイの行動を確認していた……。











「来い!オレの切り札……『E・HERO キャプテン・シュピーゲル』!!」
 墓地の4体のヒーローがカムイの場で融合し……全身に、すべての光を吸収するかのような漆黒の鎧を身につけ、その鎧とは対照的に、すべての光を反射するかのように輝く鏡状になった、大振りな2本の剣を持つ騎士のようなヒーローが現れた!











「な、何だと!僕の知らない『E・HERO(イーヒーロー)』が存在したと言うのか!?」
 男は、思わず持っていたココアと新聞をテーブルに置き、立ち上がった。











「『キャプテン・シュピーゲル』の効果発動ッス!兆の場の『トラゴエディア』の効果を使わせてもらうッスよ!」
 そう言うと、『キャプテン・シュピーゲル』が2本の剣を地面に刺すと……その2本の鏡に『トラゴエディア』の虚像が移り込み……その像が、『キャプテン・シュピーゲル』に吸収されていった!


E・HERO キャプテン・シュピーゲル
闇 レベル10
【戦士族・融合/効果】
「E・HERO エッジマン」+「E・HERO バブルマン」+「E・HERO スパークマン」+「E・HERO キャプテン・ゴールド」
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。以下の効果を1つ選んで発動することができる。
●:手札から、効果モンスターカードを一枚捨てる。このターンのエンドフェイズ時まで、この効果によって捨てられたモンスターの効果を得る。
この効果は、1ターンに1度しか使用できない。この効果は、相手ターン内でも使用することができる。
●:相手フィールド上のモンスターを1体選択する。このターンのエンドフェイズ時まで、選択したモンスターの効果を得る。
この効果は、1ターンに1度しか使用できない。
●:このモンスターが破壊されるとき、代わりに自分フィールド上のカードを破壊することができる。
攻撃力3200 守備力2500


「な、何をする気だら!?『トラゴエディア』は、手札の枚数×600ポイント攻撃力をアップさせる効果を持っているだら!だが、その効果を使っても、『トラゴエディア』の攻撃力4800は越えられないだら!」
「いや……その効果は使わないッス。」
 カムイは、軽く答えた。


「なら……『トラゴエディア』を奪い取る効果を使うだらか?」
「いや、それも違うッスね。オレが使う効果は……第3効果の、レベルを変化させる効果を使うッスよ!墓地のレベル4モンスター……『クレイマン』を選択し、『キャプテン・シュピーゲル』のレベルを4にするッス!」
 『キャプテン・シュピーゲル』は、剣を構え、目を瞑り、自らの闘気を押さえ込んでいた……。


キャプテン・シュピーゲル レベル10→4


「レベルを下げる……?そんな事して、何の意味があるだら?」
「あるんスよ……。レベルを下げる事の意味は!手札から、装備魔法……『フュージョン・ウェポン』を、『キャプテン・シュピーゲル』に装備させるッスよ!」
 そう言うと、『キャプテン・シュピーゲル』の右手の甲に、電気を放つ機械が装着された!

「『フュージョン・ウェポン』!?何だら!?そのカードは!」
「『フュージョン・ウェポン』は、レベル6以下の融合モンスターだけが装備可能な装備魔法カードなんスよ!これを装備したモンスターは……攻撃力・守備力が1500ポイントアップするッス!」











「レベル6以下……?」
 男は、カムイが言っていたことに少し理解できなかったが……

「はっ!(………あの時………)」
 何かに気付いた男は、思わず声をあげた。









――「墓地のレベル4モンスター……『クレイマン』を選択し、『キャプテン・シュピーゲル』のレベルを4にするッス!」――









「(あいつ……そこまで考えて……)」
 男は、カムイの戦略に、少しだが驚いていた。











「さあ!これでオレの『キャプテン・シュピーゲル』の攻撃力は1500ポイントアップしたッスよ!さらに、手札から、フィールド魔法『摩天楼−スカイスクレイパー−』を発動ッス!」
 そう言うと、場が突然ビル街へと変化して……そのビル街の中を通る道路で、『キャプテン・シュピーゲル』と『トラゴエディア』が対峙した!


フュージョン・ウェポン
装備魔法
レベル6以下の融合モンスターのみ装備可能。
装備モンスターの攻撃力と守備力は1500ポイントアップする。


キャプテン・シュピーゲル 攻撃力3200→4700

「『摩天楼−スカイスクレイパー−』が発動している時に、『E・HERO』と名のつくモンスターが自分より攻撃力の高い相手に攻撃するとき、攻撃力が1000ポイントアップするんスよ!『キャプテン・シュピーゲル』の攻撃力は4700……」
「ト、『トラゴエディア』の攻撃力は……4800……」
 兆は、表情を強ばらせながら、剣を構え、『トラゴエディア』を斬るタイミングを見計らっている『キャプテン・シュピーゲル』を見ていた……。


摩天楼−スカイスクレイパー−
フィールド魔法
「E・HERO」と名のつくモンスターが攻撃する時、
攻撃モンスターの攻撃力が攻撃対象モンスターの攻撃力よりも低い場合、
攻撃モンスターの攻撃力はダメージ計算時のみ1000ポイントアップする。


キャプテン・シュピーゲル 攻撃力4700→5700
トラゴエディア 攻撃力4800

「これで終わりッス!『キャプテン・シュピーゲル』で、『トラゴエディア』に攻撃!……インフェルノ・スラッシャー!!」
 カムイの言葉を聞き、『キャプテン・シュピーゲル』は目を見開いた……と思った瞬間に、疾風のように消え去った!

「ど、どこに消えただら!?」
「……上ッスよ!!」
 カムイが指差した方に兆が顔を向けると……『キャプテン・シュピーゲル』が、『トラゴエディア』の背の2倍近くの高さまで、驚異の跳躍力で跳び上がっていた!
そして、2本の鏡の剣を突き出し……落下の勢いを利用し、『トラゴエディア』を頭から真っ二つにした!

「くうぅっ!わての負けだら……。」(兆LP 700→0)











「さて、約束だよ、兆。これでバイトは辞めさせてもらうよ。」
 ナオは、兆に向かって軽く話し掛けた。

「ぐぐぐ……」
 兆は、歯を食い縛って……



「……ナオ!次は、お前がデュエルするだら!それでお前が勝ったら、辞めさせてやるだら!」
と、ナオを指差しながら話した。


「なっ……どう言う事ッスか!?」
「話が違うじゃねえか!」
 兆の口にした突然の『俺ルール』に、カムイとセンリは呆れて物も言えなかった……。


「さあ!ナオ!さっさとデュエルの準備を……」
「……見苦しいぞ。」
 兆の言葉を遮るように、店の奥でココアを飲んでいた男が近づいてきて声をかけた。


「だ、誰だら?いきなりしゃりしゃりと……」
「他者との『契約』を果たすのは、プロとして当然のことだが……他者との『約束』を果たすのは、人として当然のことだ。」
 男は、そう一言言った。

「プロ……?いったい、誰なんスか?」
「ふっ……。分からないのか?」
 カムイがそう言うと、男は、自分のかぶっていたニット帽と、かけていたサングラスを取り、自分の顔を見せた。
その男は、短い銀髪で、一部の髪が目にかかりそうな髪型で、その目は、海のように深い青色で、目線は温和であるような、深い闘志を宿しているような……と、自らの隙を全く感じさせない、まさしく『プロ』としての雰囲気を醸し出していた……。


「なっ……」
「おいおい……」
 意外な人物の登場に、カムイとセンリは驚愕した。



「そ…そんな……ありえないだら……。あの御方に、わてのデュエルを見られとったなんて!」
 兆も、意外な人物の登場に、声を震わせ、腰を抜かして、床にへたれ込んでしまっていた……。

「な……何でここに来てるんスか!?……エド・フェニックス!!」

第.8話 完




第.9話 エド・フェニックス

「お…お前!エド様に向かって、なんて話し方するだら!早く頭を下げるだら!」
「え……ぐあっ!」
 兆(きざし)は、カムイの首を後ろからつかみ、カムイを無理矢理床に押しつけた……。


「おいおい……兆って、エド・フェニックスのファンだったのか?」
 突然兆の態度が変化したことに、センリはまた呆れてしまった……。


「あ、当たり前だら!彼……エド様は、プロリーグに参戦している凄腕のデュエリスト……。エド様の、『D−HERO(デステニーヒーロー)』をまるで自分の手足のように操り、要所要所で、相手を圧倒する切り札を呼び出す姿は、まさに芸術そのものだら!それに……もっとも注目すべきカードは、エド様御用達のスーパードローソース、『D−HERO ダイヤモンドガイ』、『D−HERO ディスクガイ』、『デステニー・ドロー』だら!『ダイヤモンドガイ』の効果を成功させて、『デステニー・ドロー』をノーコストで発動して2枚ドロー……普通に発動させても、墓地に『ディスクガイ』を送り込んで2枚ドロー……『ディスクガイ』を蘇生させてさらに2枚ドロー……この連続ドローを、芸術と呼ばずに何と呼ぶだら!!」
「それって……エド・フェニックスの使う、手札を増やすカードに憧れてるだけじゃないッスか?」
 カムイは、兆の長すぎる語りにたじたじだった。



「それだけじゃないだら!『名推理』、『モンスターゲート』、『デステニー・ドロー』、『トレード・イン』、『手札抹殺』、『手札断殺』でガンガン墓地に魔法・モンスターを墓地に送って、『フェニックスブレード』の効果で、手札水増し+除外ゾーンの『D−HERO』を増やして、『ディスクガイ』を『早すぎた埋葬』で蘇生させまくってドローして、要所で『次元融合』を使って除外された『D−HERO』を場に戻して、それらを生け贄に手札から『D−HERO ドグマガイ』を特殊召喚して、手札を0枚に調節して、相手ターンのスタンバイフェイズに、『ドグマガイ』の効果で相手ライフを半減させ、トドメの『マジカル・エクスプロージョン』を華麗に……」
「長くなりそうだから、そろそろ本題に移るよ。……何でプロデュエリストが、わざわざここに?」
 兆の話を遮り、今度はナオが尋ねた。


「ココアを飲みにきた。」
「そのまんまじゃねえか!」
 エドの素っ頓狂な返答に、センリは思わず声をあげた。



「……と、言いたいところだが、いいデュエルを見せてもらったから、話しておこう。……久しぶりの休暇を利用して、このデュエルアカデミア星海校の生徒のタクティクスを見極めにきただけだ。」
 エドは、そう答えた。

「……で、どうだったんスか?」
「……はっきりと言えば、中々の物だったな。タクティクスは、今年度のデュエルアカデミア本校に十分匹敵するだろう。……対抗戦には、期待が持てそうだな。」
 カムイの問いに、エドは腕を組みながら答えた。

「え?エド・フェニックスは、もう対抗戦に出ることが決まってるんスか?」
「ああ。代表決定戦には、プロリーグの都合上参加できないが、絶対本命として対抗戦への出場が決まっている。」
「なるほど……。プロって、色々と忙しいんスね……。」

 







「……っと、エド・フェニックス!対抗戦でデュエルする事があったら、よろしく頼むッスよ!」
「……それは僕からも言おうとしていた事だ。……そう言えば、まだお前の名前を聞いていなかったな。」
 エドは、少し微笑みながらカムイに話し掛けた。


「オレは……光 神(カムイ)ッス!」
「なるほど……。今度会うときは、デュエル場で……だな。カムイ。」
「そうッスね。……エド。」
 名前を聞いたエドは、軽くカムイと顔を合わせ、店の中から出ていった……。











「あ〜、もう、最悪だら〜……。絶対わての事、エド様に『がめつい女だ』って思われてるだら……。」
 兆は、床にへたれ込んで、すっかり気落ちしていた……。


「それより、カムイ……。お前……羨ましすぎるだら〜!」
「な、何をいきなり……ぐあっ!」
 兆は、突然立ち上がり、カムイの首を前からつかみかかった!

「お前……絶対エド様に好かれただら!お前ばっかりエド様と話して……わてにもまわしてほしかっただら!」
「ぐあぁっ!ちょ……首絞め…な……」
 兆は、カムイの首をつかみ、思い切りカムイの体を揺すった……。



「……で、ナオはバイトを辞められるのか?」
「ああ……もう分かっただら……。辞めさせてやるだら〜……。」
 センリの問いに、兆は力なく答え、カムイを放した……。


「よし。これでやっと辞められたぜ、ナオ。早く店から出た方がいいんじゃねえのか?」
「そうだね。……って、ちょっと待て!こんな格好で出られるか!」
 センリの言葉につられてナオは店を出ようとするが、自分がメイド服を着ている事を思い出したのか、真っ赤になって声をあげた。

「おっ……バレたか。」
「バレたか……じゃ無いよ!何なんだよ!ボクに羞恥プレイさせようとして!ボクに恨みでもあるのか!?」
「まあ……無いって言えば、嘘になるな。」
「……もう!」
 センリの一言に、ナオは少し怒っていた……。





















「(エド……あいつと、対抗戦で会えるように……もっともっと強くなるッスよ!)」


“plus α ―貪欲な魔物―”――完











後書き

 どうも、カオスマンSPです。この、“plus α ―貪欲な魔物―”を最後までお読み頂き、ありがとうございます。

 さて、今回の番外編を執筆した訳は、GXキャラの話を長期にわたって執筆していたため、主人公のカムイ、メインメンバーのセンリとナオのセリフ回しの勘を思い出すため……と言う理由もありますが、もう1つ、『GX plus!』のストーリーには、尺の関係上、いくつものカットしたストーリーが存在します……。
そのため、今後、番外編を執筆する際は、“隠されたストーリー”シリーズとなる可能性が高いのですが、ご了承ください……。

 ただ……少し、メインキャラの性格が10度程度変化してしまっていますが……それは、『番外編』と言うことで、大目に見てください。m(_ _)m(ぇ

 また、エド・フェニックスが、なぜメイドカフェまがいの店に入っていたのか……などの点が存在しますが……。
 と、妙な後書きになってしまいましたが、本編『GX plus!』もよろしくお願いします。





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