Duel Soul !

製作者:龍武さん




今回の作品は登場人物、場所共に完全オリジナルです。原作キャラは今のところ名前だけ登場させる予定です。
禁止・制限ルールは極力守っていきますが、状況に寄って多少いじると思います。ルールはアニメ(GX)基準で、表側守備表示もあると言うことで。作者は原作を読む機会があまりなくて、設定に食い違いが出ると思いますが、多少目をつむってください。




登場人物

武斬 真(たけぎり しん)
本作の主人公。高校2年生。馬鹿がつくほどのデュエル好き。性格は真っ直ぐで、仲間を信じる気持ちはとても強い。家族は父親と兄の二人で、母については幼い頃に他界している。デュエル好きと言うだけあって腕はかなりのものだが、本人は楽しいデュエルが出来ればそれでいいと思っている。デッキは六武衆中心のデッキを使う。好物は焼きそばパンとコーヒー牛乳。テンションがあがると「ッシャア!」と叫ぶ癖が有る。

武斬 弾(たけぎり だん)
本作のもう一人の主人公。真のもう一つの人格であり、気づいたときには人格が2つになっていた。このことは学校全体に知れ渡っているが、2人の内、どちらが表に出ているか分かるものは少ない。(違いは瞳の色で、真は黒だが弾は藍色である。)真面目な性格で、真にとっての良き理解者。デッキは機械族中心のデッキで、その腕は真に勝るとも劣らない。好物はうどん。(ざるうどんのみ)身体は共有だが、感覚は共有では無いため、食事時間と食費は二人分必要でそこが唯一の悩みの種である。ちなみに真より機械には強い。力持ちというわけではないが力の加えどころがとても上手なため、ある意味喧嘩は真より強いかもしれない。

飛立 竜(ひだち りゅう)
真と弾の友人で、同じ高校の同級生で真と安紀とはご近所同士。軟派な性格だが、興奮すると壊れること有り。デッキはドラゴン族が中心のパワーで攻撃するデッキ。デュエルの腕は真や弾に多少劣る物の、十分な実力者に代わりはない。逃げ足と文字を書くのがものすごく速い。パック運があまり良くなく、デッキのカードの大半がトレードや景品のカードである。

虹夢 安紀(にじゆめ あき)
真や弾、竜の古くからの幼なじみで同い年。明るい性格で、成績優秀。デッキは戦士族のデッキを使う。腕はかなりの物。買い物が趣味で、真(弾)や竜を振り回すことも多い。その小柄な体格からは想像もつかない大食漢で、二人分の食事がいる弾や真よりも食べる。夢見るお年頃である。

大原 虎(おおはら とら)
真達の住む町にあるデパート「バイタウン」の中にあるカードショップ「戦乱」の店長。みんなからは「おっちゃん」、「虎さん」などの愛称で呼ばれている。若い頃からそれなりの腕を持つデュエリストで、今も店に来た子供達の相手を時々やっている。豪快な性格の通り、獣、獣戦士族中心の速攻デッキを使う。かなりの大声の持ち主。

剛力 拳(ごうりき けん)
最初に出てくるやられ役。あっさり散っていくのに紹介がないとあまりにもかわいそうなので一様名前だけ紹介。



決闘1「ッシャア!」

武藤遊戯、海馬瀬人などの後に伝説のデュエリストと呼ばれるデュエリスト達の激闘の舞台「バトル・シティ」から20年・・・。今でも『M&W』の人気は世界中で大人気で、衰えることを知らない。この影響でデュエルアカデミアを皮切りに多くのデュエリスト養成組織が作られていった。この物語もそんな時代の中、幕を開ける・・・。

「ジリリリリリリリリリリリリリ!!!」

部屋に目覚まし時計の音が鳴り響く。その部屋の隅にあるベッドがもぞもぞと動き、そこから伸びた腕が
目覚まし時計を止めた。

真「ったく。もう少し寝かせろよ・・・。今日は日曜だろ・・・。」

少年は眠そうな目をこすりながら不満を言った。

(弾)(ダメだよ!今日は竜君や安紀ちゃんとデュエル大会に行くんでしょ!)

真「ああ、そっか、今日は安紀や竜達と・・・。zzz・・・。」

(弾)(さっさとおきないと遅刻するよ!)

そう言うと突如、少年が横っ腹をかかえて苦しみ始めた。

真「グフォ!わかった!わかった!だから横っ腹を殴るな!な、な!」

(弾)(分かればいいよ。)

殴られた少年は武斬 真(たけぎり しん)。この物語の主人公。そして、彼を殴ったのは彼のもう一人の人格の、武斬 弾(たけぎり だん)である。

その後二人は支度をし、友人の飛立 竜(ひだつ りゅう)と虹夢 安紀(にじゆめ あき)との待ち合わせである「バイタウン」通称「戦場デパート」に向かった・・・。
このデパートはスーパーみたいに様々な商品を破格の値段で売るタイムセールがあり、その時の商品を取り合う人々の戦争のような様子からこのあだ名が付いた。

10分後・・・。「戦場デパート」前。

竜「お〜い!こっち!こっち!」

安紀「はやく!はやく!」

遠くから呼ぶのは真の友人である竜と安紀である。こちらも二人については↑を参照。

真「まだ待ち合わせの時間5分前だろ?」

安紀「だって〜。大会までにお買い物もいっぱいしたいもん。」

頬をふくらませながら彼女が言った。

竜「まあまあ、さて、行きますか。」

安紀「じゃあ、最初は洋服屋さん!」

竜「つぎに・・・。」

真「カードショップだな。」

安紀「よ〜し!レッツ、ゴー!」

洋服コーナー・・・。

安紀「これもいいなぁぁ・・・。あ!あっちも可愛い!ねーねー!」

真 竜「まだ買うの?」

見ると二人の両手にはあふれんばかりの服が抱えられていた。

安紀「だって、どれも可愛いんだもん!」

真「はぁ〜・・・。これはあと2時間は固いな。」

その後二人は予想を遙かに超える3時間も付き合わされたという・・・。

続いてカードショップ「戦乱」
このデパート内のカードショップはとても品揃えが良く、この街のどの専門店にも負けないほど人気がある店で、本日の大会もここが主催で行われる予定だそうだ。3人は早速パックを買おうと売り場のパックを選んでいた。

竜「俺はこのパックを買うぜ!今度こそ出てくれよ〜『青眼の白龍』!」

どうやら、彼の狙いはドラゴン族の中でも最上級レベルの攻撃力を誇る『青眼の白龍』のようだ。

真「じゃあ俺も竜と同じのでいいや。」

「ドン!」

パックに手を伸ばそうとしたら同じパックに手を伸ばした誰かにぶつかった。

真「あ、すいません。」

彼がぶつかったのは大男だった。

大男「気をつけろ!」

大男はそう言うとパックをとって去っていった。

その後、パックを買った3人は店内のデュエルスペースで先程買ったパックを開けた。

竜「くっそ〜。「青眼の白龍」がでねぇええぇぇえええmvふhdんfvyまえgらねcな!」

安紀「仕方がないよ竜ちゃん。「青眼の白龍」は伝説のデュエリストの一人『海馬瀬人』の切り札なんだ   から・・・。あ!やったぁ!総計4568枚目の「フリード」様!きゃぁ!かっこいい!」

彼女が喜んでるそのカードは「放浪の勇者 フリード」である。彼女曰く、「フリード様は私の心の勇者
様♪」だそうで大量にコレクションしているそうだ。そんな二人のやりとりを見ながら、真はおもむろに次のパックを開けてみた。

真「まったく・・・。(お!弾、『シャイン・スパーク』やっと3枚目当たったぞ。とりあえずお前の鞄  に入れとくな。)」

(弾)(ありがとう。)

真「次のパックっと・・・。えっと、『弓を引くマーメイド』、『ワイト』と、『光の角』に、『六芒星  の呪縛』。こりゃ全然俺達のデッキにはダメだな。唯一の救いは『青眼の白龍』だけか・・・。」

真の一言で竜の耳が「ピクリ」と音を立てて反応し、瞳が一瞬にして輝き、『ケンタウロス』も驚くスピードで飛びついてきた。



ケンタウロス 通常モンスター 獣族 地 レベル4 ATK/ 1300 DEF/1550
人とウマがひとつになった化け物。走るのが速く、誰も追いつけない。


竜「真様ぁ〜。その「青眼の白龍」をぉこの僕によこしてくださいますんでしょうかぁ〜。」

『ケンタウロス』も驚くスピードで飛びついてきたと思ったら、今度は『サクリファイス』にも負けな
い気持ち悪さと日本語のおかしさを発揮してきた。

真「その気持ち悪い語尾を何とかしろ!そんなに欲しいならくれてやるから!

竜「マジッスカ!真様ぁぁぁぁぁぁ!ありがとうございますぅぅぅぅぅぅぅ!この私、飛立 竜!
  一生ついていく所存であります!」

真「わかったから寄るな、バカ!殴るぞ!」

そんな竜の相手をしていると、向こうから先程ぶつかった大男が歩いて来た。

大男「おい!お前!俺が買おうとしたパックを買った上に、「青眼の白龍」を当てやがって!そいつは
   この俺様、剛力 拳(ごうりき けん)様の物だ、さっさとよこしな!」

安紀「なによ〜。こっちの買った物なんだから、別にいいでしょ!行こう!真、竜!」

安紀は真の腕を引いていこうとした。

拳「待てよ。俺はこの「青眼の白龍」を当てたガキに用があるんだ!女は引っ込んでろ!」

拳はそう言うと、安紀を突き飛ばした。

安紀「きゃあ!」

竜「安紀ちゃん!大丈夫か!?」

竜が慌てて彼女の元へと駆け寄る。

安紀「うん・・・。大丈夫みたい。」

拳「さあ!「青眼の白龍」をもらおうか・・・。」

拳はじりじりと歩み寄ってきた。

真「てめえ・・・。絶対ぇゆるせねぇ・・・。喧嘩ってのはなぁ、1対1のの勝負だ!てめぇは俺がぶっ飛
  ばす!」
真は鞄の中の決闘盤(デュエルディスク)を取り出した。

拳「ほう。この俺と決闘(や)るってのか。いいだろう!俺が勝ったら「青眼の白龍」を貰おうか。」


真 拳「デュエル!」

真 LP8000 殴 LP8000

拳「先攻はくれてやる。」

真「じゃあ、遠慮無く。ドロー!俺はモンスター1枚とカードを3枚伏せてターンエンド!」

真の場には計4枚のカードがセットされた。

拳「俺のターンドロー!「マハー・ヴァイロ」を攻撃表示で召喚!」

拳のフィールドに静かに武器を構える青い魔法使いが現れた。

拳「さらに!装備魔法「閃光の双剣−トライス」、「秘術の書」を装備!「マハー・ヴァイロ」の
  特殊効果で装備カード1枚につき攻撃力を500ポイントアップ!よって攻撃力は2350!さらに2回攻
  撃のおまけ付きだ!」

拳「マハー・ヴァイロで攻撃!」

ズバァァン・・・・!

真「たった今破壊された「紫炎の足軽」の効果発動。デッキからレベル3以下の「六武衆」と名のつ
  くモンスターを一体特殊召喚できる。俺は「六武衆-カモン」を攻撃表示で特殊召喚!」

拳「だが!マハー・ヴァイロでもう一度攻撃!」

真「させるか!リバースカード、オープン!「攻撃の無力化」!相手モンスターの攻撃を無効化し、バ
  トルフェイ  ズを終了させる!」

マハー・ヴァイロの攻撃は攻撃の無力化によって生み出された空間に吸い込まれてしまった。

拳「チッ!ターンエンドだ!」

真「俺のターン!ドロー!ッシャア!行くぜ!俺は魔法カード「天使の施し」を発動!デッキからカー
  ドを3枚ドローし、手札から2枚墓地へ送る。俺は「六武衆-ニサシ」と「六武衆−ザンジ」を墓地
  へ送り、リバースカードをオープン!「究極・背水の陣」!」

拳「なに!」

まるで、「この場面でそのカード!」と言いたそうな表情で拳はそのカードを見た。

真「このカード、「究極・背水の陣」の効果は自分のライフポイントを残り100ポイントになるよう支
  払い発動し、墓地の「六武衆」と名のついたモンスターを自分フィールド上に可能な限り特殊
  召喚する!墓地から「六武衆-ニサシ」と「六武衆−ザンジ」を特殊召喚!」

真 LP8000→100

真のフィールド上に、二本の小太刀を構える侍と巨大な薙刀を構える二人の侍が現れた。

竜「やったぞ!これで真のフィールドにモンスターが3体並んだぞ!」

安紀「それに、まだ真ちゃんには通常召喚が残ってる!」

真「俺は手札からもう一体の「六武衆-ニサシ」を召喚!さらに永続魔法「勇気の旗印」!このカード
  がフィールドに存在するとき、自分モンスターの攻撃力をバトルフェイズ中のみ200ポイントアッ
  プ!そのままバトルだ!「六武衆−ザンジ」で「マハー・ヴァイロ」を攻撃!」」

「六武衆−ザンジ」ATK/1800→2000

「六武衆-ニサシ」 ATK/1400→1600

「六武衆-ニサシ」 ATK/1400→1600

「六武衆-カモン」 ATK/1500→1700


「六武衆ザンジ」がその手に握る薙刀を振りかざし、「マハー・ヴァイロ」に斬りかかる!

拳「馬鹿が!自爆する気か!」

真「バカはお前だ、デカブツ!リバースカードをオープン!「和睦の使者」!相手モンスターからの戦
  闘ダメージを、全て発動ターンだけ0にする!」

「六武衆−ザンジ」の攻撃は当然のごとく「マハー・ヴァイロ」にはじき返される物の、後方の和睦の
使者の方々によって、「マハー・ヴァイロ」のカウンターは止められた。

真「これにより「六武衆−ザンジ」の効果発動!自分フィールド上に「六武衆 - ザンジ」以外の「六
  武衆」と名のついたモンスターが存在する時、このカードが攻撃を行ったモンスターをダメージス
  テップ終了時に破壊する!よって、「マハー・ヴァイロ」を破壊!」

ザンジはもう一度走り出し、「マハー・ヴァイロ」を切り裂いた!

真「これでお前の場はがら空きだ!「六武衆-ニサシ」でプレイヤーにダイレクトアタック!ちなみに
  「六武衆-ニサシ」は自分フィールド上に「六武衆 - ニサシ」以外の「六武衆」と名のついたモン
  スターが存在する時、このカードは1度のバトルフェズ中に2回攻撃する事ができる!「六武衆
  -ニサシ」二体と「六武衆-カモン」で計5回の攻撃!」

それぞれがそれぞれの武器を巧みに扱い、拳に次々とダメージを与えて行く。

――六武衆合身奥義・・・烈風四連−爆炎の印!!――

拳「ぐはぁぁぁぁぁ!」

拳 LP8000→6400→4800→3200→1600→0

デュエルに決着が付くとデュエルディスクのソリッドビジョンに写っていたモンスターたちは消えてい
った・・・。

拳「この俺様が負けるだと・・・。」

真「ッシャア!おいあんた!負けたんだから安紀に一言わびてここから消え失せな!」

拳「ヘン!誰が謝るかよ!この借りはぜってぇ返してやるからな!覚えてろ〜〜!」

彼はどこぞの悪役が言いそうな捨て台詞を吐いて、逃げていった。

真「あ!まちやがれ!」
今すぐにでも追いかけようとする真の腕を安紀が掴んだ。

安紀「もういいよ。ありがとう。」

真「でもよ!」

安紀「もういいの。大会ももうすぐ始まっちゃうし。」

真「まあ、お前がそこまで言うなら別にいいけど・・・。」

それから10分後・・・。

「ピンポンパンポン♪」

店内におなじみのアナウンスが流れる。

虎「おめーら!デッキとデュエルディスクをもって今すぐ外の広場に集まりやがれ!今からカードショ
  ップ「戦乱」公認M&W大会のルール説明すっぞ!5分以内に集まらないと失格にすっぞ!」

このアナウンスから流れる「覇者の一括」並の大声の持ち主は、この店カードショップ「戦乱」の店長
である大原 虎(おおはら とら)である。

真「おい!時間ねーから走るぞ!」

竜「ああ!」

安紀「うん!」


3人はそれぞれの相棒(デッキ)と共に、トーナメント会場へと走っていった・・・。



決闘2 「ドラゴンVS勇者様」

ここはデパート「バイタウン」1階広場・・・。
今ここにはカードショップ「戦乱」公認M&W大会出場者が集まっていた。たかがデパートの大会と言ってもこの大会のレベルは結構高く、商品もなかなか良い為、人数こそ少ないが毎回結構な実力者が集まるのだ。ステージ前に集まった選手や観客達の前に店長兼、主催者である虎が立ち、電子メガホンを構えて開会の挨拶を行う。


「おめえら!今回も良くこの戦いに集まったな!今日も派手にデュエルしよーぜ!大会中はデッキの試合ごとの変更、調整はかまわないぞ。それじゃあ、トーナメント表を発表するぞ!!!」

虎のアナウンスが会場全体に響き渡り、中央にセットされたスクリーンに電源が入る。

「あ〜あ・・・。今回は上手くばらけて欲しいな〜。」

電源が入り青白く光り出した画面を前に、ため息混じりに竜が言った。

「そうだね、この前の大会の時なんて竜ちゃんと1回戦から当たっちゃったもんね。」

「それだけならまだしも・・・。」

竜にとってあまり思い出したくないことなのだろう。彼は言葉を濁らした。だが、彼のそんな心境を安紀の何気ない一言が粉砕する。

「その時は確か、私が勝っちゃ・・・ゴメン・・・。」

安紀がその時の結果を言いかける。が、途中で自分が言っていることを思い出して竜に謝る。しかし、安紀の言葉は竜のハートを傷つけるには十分すぎる威力を持っていた。

「ウグッ!大体、あの時だって『龍の鏡』引いて、『竜魔人 キング・ドラグーン』さえ出していれば・・・。ウワァァァン!」

彼は少しでも自分を弁明しようとするが、それに連れて過去の忌まわしきトラウマが彼の頭にリピートされる。その時の悲しみと共に竜はその場に座り込んで、地面に「の」の字を書き出した。

「おい、トーナメント表が全部出たぞ。」

そんな竜を完全スルーし、真はモニターの方を指さした。

  Aブロック           Bブロック

    岩岡──┐          ┌──ジョン    
        ├─┐      ┌─┤
    森林──┘ │      │ └──影中
          ├──優勝―─|
    飛立──┐ │      │ ┌──剛力
        ├─┘      └─┤
    虹夢──┘          └──武斬
             
「え〜と、俺の試合は最後で、他に知ってる奴はいないと・・・。あれ?俺の相手って、さっき俺達に絡んできた奴じゃないか?」

トーナメント表をざっと見回した真が先程であった大男の名を見つけ、驚きの声を上げる。

「へ〜、あの男、この大会にでてたんだ・・・。え〜と、俺の相手は・・・え・・・?」

取り合えず気を取り直した竜も自分の名前を探そうとトーナメント表に目を向ける。だが、自分の名前を見つけた途端に、彼の瞳は真っ白になってた。・・・まるで1ターン目の手札が全て上級モンスターの時のように・・・。

「ちょっと、竜ちゃん大丈夫!?」

安紀が心配して声をかける。それと同時に、彼女も竜が知った真実と同じ事を知ることになる。

「りゅ、竜ちゃんの対戦相手・・・また、私だ・・・。」

「運命の悪戯ってのも怖いモンだな・・・ま、まあ、当たっちまったものは仕方がないし、・・・ステージに行くか?」

真がこの空気を脱しようとフォローする。(実はあんまりフォローになってないかもしれないと作者は思うが・・・。)

「この前の惨劇が〜〜〜〜〜〜〜クゲリャベリャァァァァァァァァァァァァァァ!!」

この前の敗北がよほどトラウマなのか、謎の日本語(?)を話す竜をほとんど引きずるも同然に、3人は1回戦の会場へと向かった。会場には安紀と竜以外の全員が配置についており、2人が配置に付いた後、虎が電子メガホンを使って会場を仕切る。

「それじゃあ全員が配置についたから、最初の試合、Aブロック1回戦をはじめっぞ!行くぞみんな!デュエル、スタートォォォ!!」

虎のかけ声と共に、戦士達の戦いの火蓋は切って落とされた。

「もうこうなったらヤケだ!今度こそ勝ってやる!」

先程のいじけモードから立ち直った竜が、安紀に対して宣戦布告する。

「私も負けないんだから!」

彼女も全力の返事を竜へと返す。

「デュエル!!」

竜LP8000 安紀LP8000

「コイントスだ。俺は・・・、表だ!」

「ピン!」

彼のとばしたコインの面はクルクルと空中で回転しながら落ちてきたコインの結果は・・・。

「よっしゃ、表!先攻は俺だ!ドロー!俺は『ロード・オブ・ドラゴン−ドラゴンの支配者−』を守備表示で召喚!」

竜の場には、まるでドラゴンに近い容姿の魔法使いが現れた。背丈はあまり高くはないが、強烈な威圧感を放っている。


『ロード・オブ・ドラゴン−ドラゴンの支配者』
闇 魔法使い族 レベル4 ATK/1200 DEF/1100
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、お互いにドラゴン族モンスターを魔法・罠・モンスターの効果の対象にする事はできない。


「さらに、魔法カード『ドラゴンを呼ぶ笛』を発動!」


『ドラゴンを呼ぶ笛』 通常魔法
『ロード・オブ・ドラゴン−ドラゴンの支配者−』がフィールド上に表側表示で存在する時、手札からドラゴン族モンスターを2枚まで自分フィールド上に特殊召喚する。


『ロード・オブ・ドラゴン』の前に、龍の顔のような笛が現れる。『ロード・オブ・ドラゴン』はその笛を手に取り、独特な音色を奏でだした。

「この効果で、手札から『アームド・ドラゴンLV5』を攻撃表示で特殊召喚!」

笛の音に誘われるように、全身に武器を装備した赤色の龍が彼の手札から飛び出した。


『アームド・ドラゴンLV5』
風 ドラゴン族 レベル5 ATK/2400 DEF/1700
手札からモンスターカード1枚を墓地に送る事で、そのモンスターの攻撃力以下の相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を破壊する。このカードがモンスターを戦闘によって破壊したターンのエンドフェイズ時、このカードを墓地に送る事で『アームド・ドラゴンLV7』1体を手札またはデッキから特殊召喚する。


「ターンエンド。」

「私のターン、ドロー!私は『放浪の勇者フリード』様を攻撃表示で召喚!」

安紀のフィールドに、彼女のデッキのエースである、『放浪の勇者フリード』がフィールドに颯爽と現れた。

『放浪の勇者フリード』
光 戦士族 レベル4 ATK/1700 DEF/1200
自分の墓地の光属性モンスター2体をゲームから除外する事で、このカードより攻撃力の高いフィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を破壊する。この効果は1ターンに1度しか使用できない。  

「そして魔法カード『天使の施し』を発動!」


『天使の施し』 通常魔法
デッキからカードを3枚ドローし、その後手札からカードを2枚捨てる。


「私は手札の『サイレント・ソードマンLV3』と『ロケット戦士』を墓地へ! そのままバトルフェイズ!『放浪の勇者フリード』で『ロード・オブ・ドラゴン』を攻撃!」

『放浪の勇者フリード』は走り出すと同時に勇ましく剣を構え、『ドラゴンの支配者』へと剣を振り下ろす。

――剛撃斬!――

「・・・く・・・。だが、俺の場にはまだ『アームド・ドラゴンLV5』が残っている!」

「だいじょ〜ぶ!フリード様の効果発動!墓地の『ロケット戦士』、『サイレント・ソードマンLv3』の2体を墓地から除外して、このカードより攻撃力の高いフィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を破壊するよ!」

「ドガァァン・・・!」

先ほどまで戦闘意識全開だった『アームド・ドラゴン』は勇者の一閃によって、先程の『ロード・オブ・ドラゴン』のように破壊されてしまった。

「私はカードを2枚伏せてターンは終了だよ。」

一方、2人の試合を見ていた観客席では・・・。

(やっぱり、『フリード』を使わせたら安紀ちゃんは強いね。)

弾が今のターンの安紀のプレイングを見た感想を述べた。

「竜のやつ、前の二人のデュエルの時みたいにまた負けなきゃいいけどな。」

二人のそんな会話の横で竜のターンへと移り、彼はカードをドローした。

「ドロー!まだまだぁ!魔法カード『強欲な壷』発動!デッキからカードを2枚ドロー!」

竜のフィールドにあまり品の良くないデザインの壷が現れた。・・・確かにデザインは悪いが、このゲームにとって大切な手札を補う貴重なカードである。

「そして『仮面竜』を守備表示で召喚し、カードを1枚伏せてターンエン・・・。」


『仮面竜』
炎 ドラゴン族 レベル3 ATK/1400 DEF/1100
このカードが戦闘によって破壊され墓地に送られた時、デッキから攻撃力1500以下のドラゴン族モンスター1体を自分のフィールド上に特殊召喚する事ができる。その後デッキをシャッフルする。


「あ、待って!リバースカードオープン!『サンダーブレイク』!

竜のエンド宣言に対して安紀がタンマをかける。


『サンダーブレイク』 通常罠
手札からカードを1枚捨てる。フィールド上のカード1枚を破壊する。


「手札を1枚捨てて、竜ちゃんの伏せカードを破壊!」

「・・・ズドン!」

突然鳴り響いた雷鳴が伏せカード・・・『炸裂装甲』を貫いた。

「さらに、今捨てたカードは『ダンディライオン』!この子の効果で『綿毛トークン』を2体を守備   表示で特殊召喚するよ!」

安紀のフィールドに、かわいらしい綿毛が2つ現れた。


『ダンディライオン』
地 植物族 レベル4 ATK/ 300 DEF/ 300
このカードが墓地へ送られた時、自分フィールド上に「綿毛トークン」(植物族・風・星1・攻/守0)を2体守備表示で特殊召喚する。このトークンは特殊召喚されたターン、生け贄召喚のための生け贄にはできない。


『炸裂装甲』 通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。その攻撃モンスター1体を破壊する。


「くそっ・・・。ターンエンドだ。」

「私のターン、ドロー!綿毛トークン1体を生け贄に、『無敗将軍フリード』様を攻撃表示で召喚!」

先ほどの勇者と同一人物のようだが、前のより強い威圧感を放つ戦士が姿を現した。これこそが安紀の愛する2枚目のフリード、『無敗将軍フリード』様である


『無敗将軍フリード』
地 戦士族 レベル6 ATK/2300 DEF/1700
このカードを対象にする魔法カードの効果を無効にし破壊する。このカードが表側表示でフィールド上に存在する限り、自分のドローフェイズにカードを1枚ドローする代わりに、レベル4以下の戦士族モンスター1体をデッキから手札に加える事ができる。その後デッキをシャッフルする。

「それじゃあ、『放浪の勇者フリード』で『仮面竜』を攻撃!」

勇者の煌めく剛剣を前に、『仮面竜』はことごとく破壊されてしまった。

「この時『仮面竜』の効果で、デッキから攻撃力1500以下のドラゴン族モンスター1体を特殊召喚!俺は
 デッキから「仮面竜」を守備表示で特殊召喚!」

すさまじい爆風と共に『仮面竜』は破壊された。だが、彼のフィールドには先ほど破壊されたのと同じモンスターが姿を現し、守備体制を取っていた。

「今度は『無敗将軍フリード』で『仮面竜』を攻撃!」

「なんの!もう一度デッキから『仮面竜』を守備表示で特殊召喚!」

「ちぇっ・・・カードを1枚伏せて、ターンエンドだよ。」

攻撃が全て防がれてしまったのが悔しかったのか、安紀は少しつまらなそうに終了宣言をする。

「ドロー!(こ、このカードは・・・!)フッフッフッフッフ・・・。残念だったな安紀ちゃん!俺は今度こそ君に勝ぁぁぁぁぁつ!魔法カード「早すぎた埋葬」発動!800ライフ払い、墓地から『ロード・オブ・ドラゴン−ドラゴンの支配者−』を特殊召喚!」

自信満々な竜の声と共に、先程『フリード』に破壊された『ドラゴンの支配者−』が再びフィールドに姿を現した。

竜LP8000→7200


『早すぎた埋葬』 装備魔法
800ライフポイントを払う。自分の墓地からモンスターカードを1枚選択して攻撃表示でフィールド上に特殊召喚し、このカードを装備する。このカードが破壊された時、装備モンスターを破壊する。


「そして『ロード・オブ・ドラゴン−ドラゴンの支配者−』と『仮面竜』を生け贄に、『青眼の白龍』  を召喚!・・・ああ・・・夢にまで見た『青眼の白龍』・・・。ついに俺が使えるときが来たんだあ  あああぁぁぁぁぁグゲボビフキュリュリャリャァァァァァァァァ!!!」

(竜君、ついにぶっ飛んじゃったね・・・。)

(ああ・・・。こりゃあ負けでもしたら後が大変だぞ、あれは。)

友人の暴走に観客席の真と弾はお手上げ状態だ。


『青眼の白龍』
光 ドラゴン族 ATK/3000 DEF/2500
高い攻撃力を誇る伝説のドラゴン。どんな相手でも粉砕する、その破壊力は計り知れない。


「俺のあこがれの『青眼の白龍』・・・。だが・・・すんません!海馬様! 魔法カード『龍の鏡』発動!」

「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・。」

巨大の鏡が出現し、ものすごい重低音が辺りに鳴り響く。


『竜の鏡』 通常魔法
自分のフィールド上または墓地から、融合モンスターカードによって決められたモンスターをゲームから除外し、ドラゴン族の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)


「効果で、俺の墓地の『仮面竜』3枚、『アームド・ドラゴンLV5』、そしてフィールドの『青眼の白龍』をゲームから除外!融合デッキより、『F・G・D』を融・合・召・喚!」

巨大な鏡から大地を揺さぶるように、5つの首を持つ巨大な龍が姿を現した。その5つの首1つずつがそれぞれの咆哮を上げる。


F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)融合モンスター
闇 ドラゴン族 ATK/5000 DEF/5000
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。ドラゴン族モンスター5体を融合素材として融合召喚する。このカードは地・炎・風・闇属性のモンスターから戦闘ダメージを受けない。

「この『F・G・D』の攻撃力は5000!さらに装備魔法『巨大化』!」


『巨大化』 装備魔法
自分のライフポイントが相手より下の場合、装備モンスター1体の元々の攻撃力を倍にする。自分のライフポイントが相手より上の場合、装備モンスター1体の元々の攻撃力を半分にする。


「この場合、俺のライフの方が少ないから、攻撃力を2倍!よって攻撃力は・・・え〜と・・・。」

竜はその場で頭を抱えて考え出す。・・・かけ算のために・・・・。

「(え〜っと・・・。5000の2倍だから・・・。え〜と・・・)10000だ!そして、そのまま「放浪の勇者フリード」を攻撃!」

5つの首を持つ巨大な龍はそれぞれの首から強烈な一撃を放っていく。この攻撃が通れば彼女の負けである。

――F・G・D(ファイブ・ゴッド・デストラクション)!――

「・・・竜ちゃん・・・・・・・ゴメン!」

だが、目の前の少女は突如彼に向かって、謝りの言葉を言い放つ。そして彼女は自分の手元に伏せられた1枚のカードに手を伸ばす。


「リバースカードオープン!『強制脱出装置』発動!『F・G・D』を手札に!」


『強制脱出装置』 通常罠
フィールド上のモンスター1体を持ち主の手札に戻す。

『F・G・D』の背中に小型の装置が取り付けられた。それが勢いよく炎を吹き出し、『F・G・D』を大空の旅へと送り出す。

「嘘だぁ〜〜〜〜〜!!・・・ゴギ・ガ・ガガギゴ・・・。スイマセン・・・。フセカードヲケイカイシテイナカッタボクガイケナインデス・・・。フザケタタイドヲトッテテスイマセン・・・・。ターンエンドデス・・・ガガガ・・・」

あまりのショックに彼は謎の機械音を発しながらエンド宣言をした。

「私のターン・・・。(竜君、大丈夫かな・・・。)『無敗将軍フリード』の効果でカードをドローする代わりにLv4以下の戦士族モンスターを1枚手札に加える事が出来るんだ。私は『コマンド・ナイト』を手札に加えるよ。そして『切り込み隊長』を召喚!『切り込み隊長』の効果で手札からさっき手札に加えた、『コマンド・ナイト』を特殊召喚!『コマンド・ナイト』の効果で自分フィールド上の戦士族モンスターの攻撃力が400ポイントアップするよ・・・。」


『切り込み隊長』
地 戦士族 レベル4 ATK/1200 DEF/400
このカードが表側表示でフィールド上に存在する限り、相手は他の表側表示の戦士族モンスターを攻撃対象に選択できない。このカードが召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスターを1体特殊召喚する事ができる。


『コマンド・ナイト』
炎 戦士族 ATK/1200 DEF/1900
自分のフィールド上に他のモンスターが存在する限り、相手はこのカードを攻撃対象に選択できない。また、このカードがフィールド上に存在する限り、自分の戦士族モンスターの攻撃力は400ポイントアップする。


彼女は、たとえ目の前の友人のねじが飛んで、悲しみに染まってしまっても、決して、デュエルで手を抜かない。・・・これがデュエリストの宿命なのかもしれない。

「無敗将軍フリード」  ATK/2300→2700

「放浪の勇者フリード」 ATK/1700→2100

「コマンド・ナイト」  ATK/1200→1600

「切り込み隊長」    ATK/1200→1600

「いっけ〜!『切り込み隊長』と『コマンドナイト』でダイレクトアタック!」

竜LP7200→5600→4000

「続いて2人の『フリード』様でダイレクトアタック!」

勇者と戦士は2人で走りだし、その手に光る剛剣をひらめかせ、必殺の一閃を繰り出した!

――勇者剛撃二重剣!――

(神様・・・。結局・・・、『龍の鏡』が引こうが引かまいが結果は変わらなかったのかもしれません・・・。ガクッ。)

敗北の瞬間に彼は全てを悟った。・・・これが今後の彼の成長の糧となることを心から祈ろう・・・。
(by作者)

「ズバァァン!」

竜LP4000→1700→0

「決まったぁぁぁぁぁ!この瞬間Aブロック1回戦勝者が決定したぞ!準決勝進出者は虹夢選手と岩岡 選手だぁぁ!」

安紀の勝利と共に虎のアナウンスが会場に響き渡る。

「竜ちゃん!?大丈夫?」

デュエルが終わってすぐに安紀が向こう側から、真が観客席から竜の元に駆け寄ってきた。

「ほっといてくれよ・・・。今の俺の心の状態は『ダークゾーン』ぐらいダークなんだから・・・。あ〜あ・・・。どうせ俺なんて・・・、俺なんて・・・。」

完全にいじけモードに入ってしまい、その心を『悪夢の鉄檻』のように閉ざしながら彼は会場をとぼとぼと出て行った。

「私、竜ちゃんを追いかける!・・・元はと言えばこうなったのも私のせいみたいなものだし。それじゃあ、次は真ちゃんと弾君の出番だね。どっちが試合に出るの?」

「次の試合は弾が出る。あの剛力とか言う奴と弾はやってないからな。」

(スウゥ・・・。)

真の周りが薄く光る。光が消えると共に、彼のもう一人の人格、武斬 弾の人格が現れた。彼は表に出てくると、安紀に話しかけた。

「それじゃあ、竜君の方、頼んだよ。後、試合には時間がだいぶあると思うけど、遅れないでね。」

「うん。試合、頑張ってね。」

彼女はそう言うと竜を追って会場を出て行った・・・。

それから10分後・・・。

「選手の奴ら今からBブロック1回戦を始めるぞ!このデュエルもさっきの試合ぐらい、盛り上がっていこうぜ!いくぜ、それじゃあみんな!デュエル、スタートォォォ!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

弾の目の前には先程の大男、剛力の姿がそこにあった。

「へっ!さっきはよくもこけにしてくれたなあ!言っとくが、さっきの俺様とはひと味違うぜ。」

「デュエル!」

弾LP8000 剛力LP8000

「コイントスだ。裏!」

「ピン!」

剛力の手から名前の通り、勢いよくコインが空高くに上がる。

「カン!コロコロコロ・・・。チャリン!」

「チッ、表か!じゃあ、お前が先攻だ!」

「どうも。じゃあ・・・ドロー!僕はモンスター1体とカードを3枚伏せてターンエンド。」

「俺様のターン、ドロー!俺は『ジェミナイ・エルフ』を攻撃表示で召喚!(・・・まてよ?これって さっきのこいつとのデュエルと相手の展開が似てないか・・・?だとしたらあの伏せカードは『攻撃の無力化』のような攻撃を止めるカード・・・。なら!)俺は魔法カード『大嵐』を発動!お前の伏せカードを全て破壊する!」



彼の手にした緑色のカードから辺り一面を飲み込むような大嵐が吹き荒れる。

「ビュォォォォォ!!」


『ジェミナイ・エルフ』
地 魔法使い族 ATK/1900 DEF/900
交互に攻撃を仕掛けてくる、エルフの双子姉妹。


『大嵐』 通常魔法
フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。


「リバースカードオープン!『アヌビスの裁き』!相手がフィールド上の魔法・罠カードを破壊する効果を持つ魔法カードを発動した時に手札を1枚捨てて発動する!その効果の発動を無効化し、破壊して、さらに相手の表側表示モンスター1体を破壊し、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手プレイヤーに与える! 」

「何!」

弾のフィールドに現れたアヌビス像の魔力によって先ほどまで吹き荒れていた嵐は収まり、彼のフィールドの「ジェミナイ・エルフ」は無効化された『大嵐』共々破壊されてしまった。

剛力LP8000→6100


『アヌビスの裁き』 カウンター罠
手札を1枚捨てる。相手がコントロールする「フィールド上の魔法・罠カードを破壊する」効果を持つ魔法カードの発動と効果を無効にし破壊する。その後、相手フィールド上の表側表示モンスター1体を破壊し、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手プレイヤーに与える事ができる。


「くそっ!カードを一枚伏せて、ターンエンドだ!」

今のがそうとう堪えたのだろうか、少しイラだった様子で彼はターンを終了した。

「ドロー!僕は伏せモンスター、『融合呪印生物−光』を反転召喚!そして、リバースカードオープン!『リビングテッドの呼び声』!墓地から『アヌビスの裁き』のコストとして捨てた『プロト・サイバー・ドラゴン』を特殊召喚!その効果でフィールド上のこのカードを含む融合素材モンスターを生け贄に捧げ、光属性の融合モンスター1体を特殊召喚する!僕は『サイバー・ツイン・ドラゴン』を特殊召喚!」

彼のフィールドに銀色の装甲を纏う双頭の竜が現れた。


『融合呪印生物−光』
光 岩石族 ATK/1000 DEF/1600
このカードを融合素材モンスター1体の代わりにする事ができる。その際、他の融合素材モンスターは正規のものでなければならない。フィールド上のこのカードを含む融合素材モンスターを生け贄に捧げる事で、光属性の融合モンスター1体を特殊召喚する。

『プロト・サイバー・ドラゴン』
光 機械族 ATK/1100 DEF/600
このカードはフィールド上に表側表示で存在する限り、カード名を「サイバー・ドラゴン」として扱う。


『サイバー・ツイン・ドラゴン』
光 機械族 ATK/2800 DEF/2100
「サイバー・ドラゴン」+「サイバー・ドラゴン」
このモンスターの融合召喚は、上記のカードでしか行えない。このカードは一度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。


「このまま『サイバー・ツイン・ドラゴン』でプレイヤーにダイレクトアタック!」

『サイバー・ツイン・ドラゴン』の二つの口に眩い光球のエネルギーが集まっていく。

「させるか!速攻魔法『スケープ・ゴート』発動!自分フィールド上に『羊トークン』を4体を守備表 示で特殊召喚!これでこのターンは守りきったぜ!」


『スケープ・ゴート』 速攻魔法
このカードを発動する場合、自分は発動ターン内に召喚・反転召喚・特殊召喚できない。自分フィールド上に「羊トークン」(獣族・地・星1・攻/守0)を4体守備表示で特殊召喚する。(生け贄召喚のための生け贄にはできない)


彼のフィールド上に彼の見た目のイメージからは想像も付かないような可愛い羊たちが現れた。それと同時に『サイバー・ツイン・ドラゴン』の攻撃も止んだ。

「残念だったね。」

と、言いつつ、弾は伏せていた二枚のカードを表にした。そのカードを見た剛力の顔から一気に血の気が引いていく。

「リ、『リミッター解除』と『メテオ・レイン』・・・。」

「これで「サイバー・ツイン・ドラゴン」の攻撃力は2倍の5600。『サイバー・ツイン・ドラゴン』の 二回攻撃の効果と『メテオ・レイン』の効果での貫通ダメージでフィニッシュ!」


『リミッター解除』 速攻魔法
このカード発動時に自分フィールド上に存在する全ての表側表示機械族モンスターの攻撃力を倍にする。ターン終了時にこの効果を受けたモンスターカードを破壊する。


『メテオ・レイン』 通常罠
このターン自分のモンスターが守備表示モンスターを攻撃した時にその守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手に戦闘ダメージを与える。


リミッターが外された「サイバー・ツイン・ドラゴン」がもう一度エネルギーを貯め始めた。

――エヴォリューション・ツイン・バースト!――

剛力LP6100→500→0

(何でこんな強い奴に喧嘩売ったんだろ・・・。それに「さっきの俺様とはひと味違うぜ。」とか言っ ておきながらあんまり変わってないし・・・。)

彼は最後の瞬間に自分の行動を深く、深く後悔し、ステージの床に倒れた。

「今ので試合終了!!Bブロック一回戦を突破し、準決勝に進出するのは武斬選手と影中選手だぁぁ! これから会場準備のために1時間の休憩をとる!だからって次の試合に遅れんじゃねえぞ!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「弾君、やったね!」

試合を終え、会場を出ると出口で待っていたと思われる安紀に出くわした。

「ありがとう。ところで、竜君は?」

弾は竜の様子が心配だった。先程の安紀とのデュエルに負けて、かなりいじけていたからだ。

「竜君ならさっき見つけたときに「気晴らしに『ブルー・ポーション』買ってくる・・・。」って言   ってたから多分大丈夫だと思う・・・。」

実は、この世界ではついに魔法カード「ブルー・ポーション」の開発に成功し、栄養ドリンクとして販売されているのだ。ちなみに発売元はI2社で、効力は本物らしいがその毒々しい色と香りのせいで飲む者はほとんどおらず、3人の中で唯一、竜が飲む事が出来、好物でもあるそうだ。

「そう・・・。(アレで本当に気晴らしになるのかな・・・。)」

安紀の発言にとりあえず弾は胸をなで下ろす。

「あ、竜ちゃん帰ってきたよ!」

安紀が指さす方から想像以上に軽快なステップを踏みながら、竜がこちらにやってきた。

「よお!弾!さっき他の人の話を聞いて知ったけど、準決勝進出おめでとう!」

彼の様子は先程の試合に負けた直後からは想像が付かない程元気そうだ。これが『ブルー・ポーション』の効果なのかもしれない・・・。

「ありがとう。(よかった。元気そうで。)じゃあ僕はこれで。次の試合は真が出たい、出たいって騒いでるから。」

(スウゥ・・・。)

今度は弾の周りが薄く光を放つ。

「でも次の試合まで時間があるみたいだから、またお買い物にでも行こっか!」

そう言うやいなや彼女は二人の手を掴んで店内へと走り出した。

「そりゃないぜ〜。」

真は表に出てきてから突然降りかかった災難に思わずため息をついてしまう。・・・こうして彼らは試合開始ギリギリまで彼女のショッピングに付き合わされたと言う・・・・。



決闘3 「諦めない心」

一回戦終了後、真と竜は安紀の買い物地獄から試合開始5分前にやっとの思いで解放され、真と安紀の二人は会場へ、竜は観客席へと向かった・・・。



「タッタッタッタ・・・。」

2人は控え室までの廊下を小走りで駆けていた。

「くっそ〜!今日は開会式の時と言い、今と言い、走ってばっかじゃねえか!」

「あ!あったよ!「選手控え室」!」

安紀は目的の部屋の扉を開けその部屋に駆け込んだ。

「ガチャ、バタン!」

「ハァ、ハァ・・・。何とか間に合ったな・・・。おい、安紀!いくら買い物に夢中でも時間ぐらい見ろ よ!まったく、試合に遅れてはい、不戦敗でしたなんてゴメンだぜ。」

真は肩で息をしながら、隣で彼と同様に肩で息をしている安紀に文句を言った。

「ハァ、ハァ・・・。ゴメン、ゴメン。でも試合に結果的に間に合ってよかったじゃん。」

「確かにそうだけど・・・。」


「ピンポンパンポン♪」


「あー、あー、マイクテスト、マイクテスト・・・。」


そこに虎のアナウンスが入り、真のお説教は中断された。

「さあ!試合開始時間が迫ってきたぞ!1回戦はかなり白熱していたが、準決勝でもそれを見せてくれ  るのか〜!?準決勝を戦う4人のデュエリストの入場だ!」

虎のアナウンスが終わるほぼ同時に入場口の両端から白い煙が吹き出した。テレビなどでよく見る入場の時の演出だ。

「おっちゃん、一体どっからこんなモン持って来たんだよ・・・。」

真は多少の疑問は持ちながらも煙の中、入場口をくぐった。

「選手が出揃ったところで、まずAブロックの試合を始める!虹夢選手VS岩岡選手!入場!」

呼び出された安紀と岩岡という男がステージへの階段を上がって行き、真はステージ横に配置されたパイプ椅子に座った。

「よ、よろしくね。(ちょっと緊張しちゃう・・・。)」

安紀は挨拶をしてみるが、目の前の大男の体格の大きさに彼女は多少の緊張感を憶えた。

「ああ・・・。」

岩岡は静かに答えた。

(この人も緊張してるのかな?)

安紀もそう思うことで、少し安心した。

「じゃあ、最高の試合を期待して、行くぜぇ!デュエルゥゥゥ・・・。」

「スタァァァトォォォ!」

虎の合図に会場全体がデュエル開始を叫んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「デュエル!」

安紀LP8000 岩岡LP8000

「コイントスだよ!裏!」

彼女の思いを乗せ、コインは空へと舞い上がる・・・。

「チャリン!」

「やった!裏だ!じゃあ私の先攻、ドロー!モンスターを1体伏せてターン終了だよ。」

「ドロー。俺、モンスター1体伏せる。ターンエンド。」

「私のターン、ドロー!(う〜ん・・・モンスター1体だけ?何か狙いがあるのかな?それじゃあ、これで・・・ 。)私は『クイーンズ・ナイト』を攻撃表示で召喚!」

彼女のフィールドに赤い鎧に身を包んだ女性の騎士が現れた。


『クイーンズ・ナイト』
光 戦士族 レベル4 ATK/1500 DEF/1600
しなやかな動きで敵を翻弄し、相手のスキをついて素早い攻撃を繰り出す。


「さらにフィールド魔法『シャイン・スパーク』発動!光属性モンスターの攻撃力を500ポイントアップ!」


『シャイン・スパーク』 フィールド魔法
全ての光属性モンスターの攻撃力は500ポイントアップし、守備力は400ポイントダウンする。

フィールド全体が眩き光に包まれ、『クイーンズ・ナイト』の攻撃力がアップした。

『クイーンズ・ナイト』 ATK/1500→2000 DEF/1600→1200

「そして私はモンスターを反転召喚!『白い忍者』!」


『白い忍者』
光 戦士族 レベル4 ATK/1500 DEF/ 800
リバース:フィールド上の守備表示モンスター1体を破壊する


「リバース効果で、裏側のモンスターを破壊!そして『シャイン・スパーク』で攻撃力500ポイントアップ!」

カードから影から現れた『白い忍者』が勢いよく飛び上がり相手の裏側モンスター目掛けて手裏剣を投げつけた。


「シュッ!シュッ!シュッ!」


手裏剣はモンスターに刺さり、モンスターは破壊される。それと同時に『白い忍者』の攻撃力がアップした。

『白い忍者』 ATK/1500→2000 DEF/800→400

「破壊されたカード、『サンドモス』。効果で特殊召喚。」

彼のフィールド上に飛び散った砂が集まり、巨大な怪物となって姿を現した。


『サンドモス』
地 岩石族 レベル4 ATK/1000 DEF/2000
裏側守備表示のこのカードが戦闘以外によって破壊され墓地へ送られた時、元々の攻撃力と守備力を入れ替えて自分フィールド上に特殊召喚する。


『サンドモス』 ATK/1000→2000 DEF/2000→1000

「(これじゃ攻撃できない・・・。)カードを1枚伏せて、ターン終了だよ。」

「俺、ドロー。『サンドモス』生け贄。『地帝グランマーグ』。」


『地帝グランマーグ』
地 岩石族 レベル6 ATK/2400 DEF/1000
このカードの生け贄召喚に成功した時、フィールド上にセットされたカード1枚を破壊する。


どっしりと構えた大地の帝王はその拳で裏側のカードをいとも簡単に粉砕した。

「『地帝グランマーグ』、『クイーンズ・ナイト』攻撃。」

――バスター・ロック!――

リバースカードを粉砕した拳で今度は『クイーンズ・ナイト』をも殴り倒す。

安紀LP8000→7600

「ちょっとびっくりだけど、まだまだ大丈夫!」

彼女は自分を奮い立たせた。

「俺、1枚伏せる。終了。」

「(『地帝グランマーグ』・・・。早く何とかしないと・・・。)ドロー!(来た!)装備魔法『デーモンの斧』を『白い忍者』に装備!攻撃力を1000ポイントアップ!」


『デーモンの斧』 装備魔法
装備したモンスターの攻撃力は1000ポイントアップする。このカードがフィールドから墓地に送られた時、モンスター1体を生け贄に捧げればデッキの1番上に戻る。

『白い忍者』の腕自体が巨大な斧へと変形する。

『白い忍者』ATK/2000→3000

「『白い忍者』で『地帝グランマーグ』を攻撃!」

『白い忍者』が背後から音もなく『地帝グランマーグ』に近づき、その手の斧を軽々と振り回して斬りつる。

「ドォォォン・・・。」

「・・・。リバースカード、『パワー・ウォール』。俺、デッキのカード、任意の枚数墓地に送るその枚数×100ポイントダメージ軽減・・。」


『パワー・ウォール』 カウンター罠
モンスターからの戦闘ダメージを受けたとき発動可能。自分のデッキの上からカードを任意の枚数墓地に送る。自分が受ける戦闘ダメージは墓地に送ったカードの枚数×100ポイント少なくなる。

『地帝グランマーグ』は破壊されその破片が彼を襲うが、彼はデッキの上から6枚のカードを墓地へと送る。空中へと舞ったカードが飛んできた破片を防ぐ。

岩岡LP8000→8000

「ちぇっ。ターン終了だよ。」

確かにダメージは与えられなかったが、相手の『地帝グランマーグ』の破壊は出来たので、安紀は少し安心した。

「ドロー。『死者への手向け』。手札1枚捨てて、『白い忍者』破壊。」

カードの発動後、突如、『白い忍者』が爆破する。

「俺、墓地の岩石族モンスター6体除外。『メガロック・ドラゴン』特殊召喚。」

彼は墓地のカードを取り出し、その中から『サンドモス』、『地帝グランマーグ』、そして『パワーウォール』で墓地に送った6枚のうちの岩石族モンスター4枚を抜き取り、それをポケットへとしまう。その瞬間、大地のひび割れと共に、巨大な岩石の巨竜がその姿を現す。

『メガロック・ドラゴン』
地 岩石族 レベル7 ATK/? DEF/?
このカードは通常召喚できない。自分の墓地に存在する岩石族モンスターを全て除外することでのみ特殊召喚できる。このカードの元々の攻撃力と守備力は、特殊召喚時に除外した岩石族モンスターの数×700ポイントの数値になる。

「『メガロック・ドラゴン』の、攻撃力、除外した岩石族の数×700ポイントアップする・・・。」

「じゃ、じゃあ『メガロック・ドラゴン』の攻撃力は・・・。4200!(あんな少しのダメージにわざわざ『パワーウォール』を使ったのはこの為だったの!?)」

『メガロック・ドラゴン』召喚までの彼の計算と、突然の高攻撃力モンスターの出現に、彼女は驚きが隠せない。

「『メガロック・ドラゴン』、攻撃。」

巨大な岩石の竜はその身体を踏みならし、安紀に目掛けて巨大な岩の固まりを振らせてきた!

――メガロック・クエイカー!――

「きゃぁぁぁ!」

今の攻撃で彼女のライフポイントが大きく削られる。

安紀LP8000→3800

「ターン終了。」

岩岡はターンを終了した。・・・その表情は力強く、どこか勝利を見据えていた。

「(だめ・・・。このままじゃ負けちゃう・・・。)」

状況こそはまだ逆転できそうだが、目の前の『メガロック・ドラゴン』の圧倒的な攻撃力を前に、安紀の表情には、彼女らしくもない不安や諦めの色が出始めていた・・・。

「おい、安紀!」

突然、試合を横から見ていた真が叫んだ。その声に安紀はハッとして真の方を向く。

「おいおい!何諦めムード漂わせてんだよ!?諦めんのはまだ早いんじゃねぇのか?」

真の言葉に安紀はさっきまで考えていた自分の後ろ向きな考えを思い返す。
彼女は首を横に振ってその思いを断ち切ると、真に向かって叫んだ。

「そうだよね・・・。私、どうかしちゃってたみたい・・・!まだ勝てる確率だってあるのに勝機を見失ってちゃダメだよね!」

「ああ!思いっきりいってこい!」

真に渇を入れられ、安紀は再び立ち上がった。彼女の表情に、もう先程の不安や諦めの色はもう無くなっていた。

「ドロー!(お願い・・・来て・・・。)」

彼女は勢いよくカードを引き、そのカードを確認する・・・。

「(これなら・・・勝てる!)カードを2枚とモンスター1体伏せて、私はこのままターン終了だよ!」

「ドロー。(あいつ、目の色、変わった・・・。)俺、魔法カード『ダブルアタック』。手札の『磁石の戦士マグネット・バルキリオン』捨てる。『メガロック・ドラゴン』、このターン2回攻撃できる。」


『ダブルアタック』 通常魔法
自分の手札からモンスターカード1枚を墓地に捨てる。捨てたモンスターよりもレベルが低いモンスター1体を自分のフィールド上から選択する。選択したモンスターはこのターン2回攻撃をする事ができる。


「伏せモンスター攻撃。」

岩石の竜がその巨体を揺らし、巨大な岩を振らせてくる。

「・・・攻撃されたモンスターは『ゴブリン補給部隊』!」

『ゴブリン補給部隊』
光 戦士族 レベル4 ATK/ 600 DEF/ 800
リバース:デッキから魔法、または罠カードを3枚まで手札に加えることが出来る。そうした場合、加えたカード1枚につき900ポイントのダメージを受ける。(ただし、加えるカードは全て違う種類、違うカード名でなければならない。)

「私は、デッキから通常罠『和睦の使者』、装備魔法『早すぎた埋葬』、通常魔法『融合』の3枚を手札に加えて、デッキをシャッフル!」

彼女のフィールドから小人のように小さいゴブリンが3人飛びだし、彼女のデッキから3枚のカードを抜き去って彼女に渡す、役目を終えると彼らは墓地へと消えていった。

安紀LP3800→1100

「まだだ。『メガロック・ドラゴン』、もう1度攻撃。」

「今度は受けないもん!罠発動!『ホーリーライフバリアー』!手札を一枚捨てて、このターン私が受ける戦闘ダメージと効果ダメージを全てゼロにする!」


『ホーリーライフバリアー』 通常罠
手札を1枚捨てる。このカードを発動したターン相手から受ける全てのダメージを0にする。


光と共に現れた使者の方々が『メガロック・ドラゴン』のとばした岩を、呪文の力によって作り出されたドーム状の壁で防ぐ。

「・・・カード、1枚伏せる。俺、ターン終了。」

「待って!ターン終了時に罠カード『リビングテッドの呼び声』!墓地から『無敗将軍フリード』様  を特殊召喚!」

フィールドに安紀の最も愛するモンスター『フリード』が現れた。その威厳ある風貌は、どこか勝利への自信を感じさせる


『無敗将軍フリード』
地 戦士族 レベル6 ATK/2300 DEF/1700
このカードを対象にする魔法カードの効果を無効にし破壊する。このカードが表側表示でフィールド上に存在する限り、自分のドローフェイズにカードを1枚ドローする代わりに、レベル4以下の戦士族モンスター1体をデッキから手札に加える事ができる。その後デッキをシャッフルする。


「このまま私のターン、ドローする時に『無敗将軍フリード』様の効果発動!ドローする代わりにデッキからLv4以下の戦士族モンスター1体を手札に加える事が出来るよ!私は、『キングス・ナイト』を手札に!」

『フリード』の号令と共にデッキから、『キングス・ナイト』のカードが彼女の手札に加わる。


「さらに、『早すぎた埋葬』発動!800ライフを払って、墓地から『クイーンズ・ナイト』を特殊召喚!」

先程、『地帝グランマーグ』に破壊された『クイーンズ・ナイト』がフィールドへと舞い戻ってきた。


『早すぎた埋葬』 装備魔法
800ライフポイントを払う。自分の墓地からモンスターカードを1枚選択して攻撃表示でフィールド上に特殊召喚し、このカードを装備する。このカードが破壊された時、装備モンスターを破壊する。


「そして手札から『キングス・ナイト』を召喚!『キングス・ナイト』の効果で、デッキから『ジャックス・ナイト』を特殊召喚!」


『キングス・ナイト』
光 戦士族 レベル4 ATK/1600 DEF/1400
自分フィールド上に「クィーンズ・ナイト」が存在する場合にこのカードが召喚に成功した時、デッキから「ジャックス・ナイト」1体を特殊召喚する事ができる。


『フリード』にも負けない渋さを持つ初老の騎士が現れ、それに続くように勇ましい青年の騎士がフィールドへと召喚される。


『ジャックス・ナイト』
光 戦士族 レベル5 ATK/1900 DEF/1000
あらゆる剣術に精進した戦士。とても正義感が強く、弱い者を守るために戦っている。


「最後に、手札から魔法カード『融合』発動!フィールドの『クイーンズ・ナイト』、『キングス・ナイト』、『ジャックス・ナイト』を融合!」

3体の騎士が彼女の手にする『融合』のカードへと吸い込まれる。


「来て!今このピンチから脱するためのキーカード!『アルカナ ナイトジョーカー』、融合召喚!」

『融合』のカードが光り輝き、中から漆黒の鎧を身に纏う騎士が現れた。
その手に握る大剣は彼女の勝利を照らすように輝いていた。

「『シャインスパーク』の効果で『アルカナ ナイトジョーカー』の攻撃力は500ポイントアップ!」

『アルカナ ナイトジョーカー』 ATK/3800→4300 DEF/2500→2100

「『アルカナ ナイトジョーカー』で『メガロック・ドラゴン』を攻撃!」

彼女の意志に応えるように、『アルカナ ナイトジョーカー』はその大剣を軽々と持ち上げて前方に走り出した。

『アルカナ ナイトジョーカー』ATK/3800→4300

「お前、よく頑張った。だが、俺負けない!罠カード『魔法の筒』!」


『魔法の筒』 通常罠
相手モンスター1体の攻撃を無効にし、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手プレイヤーに与える。


『アルカナ ナイトジョーカー』の進行方向と安紀の目の前に、1本ずつ筒が現れる。

「そんな罠、怖くも何ともないんだから!『アルカナ ナイトジョーカー』の効果発動!このモンスターが罠の効果の対象になったとき、手札の罠カードを1枚を捨てることで、その効果を無効化するよ!私は手札の『和睦の使者』を捨てて、『魔法の筒』の効果を無効!」

彼女と『アルカナ ナイトジョーカー』の前の筒が霧のように消滅していく。


『アルカナ ナイトジョーカー』
光 戦士族 レベル9 ATK/3800 DEF/2500
「クィーンズ・ナイト」+「ジャックス・ナイト」+「キングス・ナイト」
このカードの融合召喚は上記のカードでしか行えない。フィールド上に表側表示で存在するこのカードが、魔法の対象になった場合魔法カードを、罠の対象になった場合罠カードを、効果モンスターの効果対象になった場合モンスターカードを手札から1枚捨てる事で、その効果を無効にする。この効果は1ターンに1度だけ使用する事ができる。


「攻撃は続行されるよ!『アルカナ ナイトジョーカー』!あんな岩石なんかやっつけちゃえ!」

『アルカナ ナイトジョーカー』の持つ大剣に光が集まりだして、その光は大剣の何倍も大きく増大していく。


――ロイヤル・ストレート・クラッシャー!――


光によって巨大化した大剣のエネルギーを地面へと叩きつけ、大地が割れるほどの衝撃波が前方へと放たれる。

「ドガァァァン・・・」

「ぐっ・・・。」

岩岡LP8000→7900

「続いて、『無敗将軍フリード』様でダイレクトアタック!」

勇者が勇ましい叫びを上げて、手にした剣を振り下ろす。

――勇者 剛撃の剣!――

「ぐわっ・・・。」

岩岡LP7900→5600

「ターン終了!」

彼女は力強く終了宣言をした。今度は先程とは逆で、彼女の方が勝利を見ていた。

「ドロー・・・。」

彼はカードをドローすると静かにその手をデッキの上へと置く・・・。サレンダーである・・・。

「・・・え?なんで!?」

岩岡の突然の行動に安紀は驚き、彼を問いただす。それに対して、彼は自分が引いたカードを静かに見せた。

「俺、引いたカード『地帝グランマーグ』。他にカード無い・・・。そのモンスター達、攻撃する、そしたら俺、負ける・・・。お前、強かった。また闘いたい。でも、その時俺、負けない。」

「うん!またあったら闘おうね!でも・・・私も負けないんだから!」

彼の決意に彼女も笑顔で応えた。そうして彼はデッキを片付けて会場を後にした・・・。

「決まったぁぁ!決勝戦進出者1人目は虹夢選手だぁぁ!」

「ワァァァァァァァ!」

彼が会場を去ると、虎が試合結果をアナウンスする。

「やったぁ!(真ちゃん・・・ありがとう・・・。)」

「さあ!この興奮が収まらないうちに、Bブロック準決勝もいってみようぜ!影中選手、武切選手!準備が出来たら、ステージに上がってこい!」

「ッシャア!やっと俺の出番だぜ!」

真はデュエルディスクを腕にはめ、立ち上がる。と、そこに試合を終えた安紀が駆け寄ってきた。

「真ちゃん。その・・・、さっきはありがとう。おかげで何とか勝てたよ!」

安紀はこちらに満面の笑顔を向けてくる。

「それじゃあ、試合、頑張ってね!」

「ああ。決勝で会おうぜ!」

そう言うと彼は、ステージへの階段を上がっていった・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「現在この会場の興奮はMAXだ!この勢いで今からBブロック準決勝を始めるぞ!」

虎の声が盛大に会場内に響く。

「次の選手は影中選手VS武切選手だぁ!」

勢いよく吹き出す煙と共にステージに真と対戦相手の影中が上がって来る。

「よろしく。楽しいデュエルをしよう。」

影中という少年は、こちらに右手を差しのばしてくる。

「ああ!元々そのつもりだぜ!」

彼の出した右手に真も自分の右手を出して、握手で応える。

「それじゃあ行くぜぇ!デュエルゥゥゥ・・・。」

「スタァァァトォォォ!」

「デュエル!」

影中と真はお互いのデュエルディスクを起動し、叫ぶ。


今、新たな戦いが幕を開ける・・・。



決闘4 「必殺!」

現在、カードショップ「戦乱」公認M&W大会準決勝。
前回、安紀が岩岡に逆転勝利し、それに負けじと真も自分の試合に臨むのであった・・・。


「デュエル!」

影中LP8000 真LP8000

「コイントスだ。表!」

影中はコインを空中へと飛ばした。その結果は・・・。

「表だ。なら僕の先攻!ドロー!『黄泉ガエル』を守備表示で召喚してターン終了。」

彼の場に小さなカエルが現れたが、その見た目はどこか頼りなさそうに見える。


『黄泉ガエル』
水 水族 レベル1 ATK/ 100 DEF/ 100
自分のスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在し、自分フィールド上に魔法・罠カードが存在しない場合、このカードを自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。この効果は自分フィールド上に「黄泉ガエル」が表側表示で存在する場合は発動できない。


「んじゃあ、俺のターンだ。ドロー!俺は手札から『六武衆−ニサシ』を攻撃表示で召喚!に『黄泉ガエル』に攻撃!」

『ニサシ』はフィールドに現れると同時に、『黄泉ガエル』の元へと走り出して一閃を繰り出す。
・・・一応、解説しておくが、『黄泉ガエル』の守備力は100。それに対し『ニサシ』の攻撃力は1400であるため、『黄泉ガエル』は『ニサシ』の一閃によって破壊されてしまった。


『六武衆−ニサシ』
風 戦士族 レベル4 ATK/1400 DEF/ 700
分フィールド上に「六武衆−ニサシ」以外の「六武衆」と名のついたモンスターが存在する限り、このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。このカードが破壊される場合、代わりにこのカード以外の「六武衆」と名のついたモンスターを破壊する事ができる。


「(伏せカードも無しにあんな低ポテンシャルモンスターを伏せた・・・?きっと何かあるな・・。)カードを1枚伏せてターンエンドだ。」

「ドロー。『黄泉ガエル』の効果発動。このカードの効果は、自分のスタンバイフェイズにこのカードが 墓地に存在し、自分フィールド上に魔法・罠カードが存在しない場合、このカードを自分フィールド上 に特殊召喚する事ができるんだ。」

彼のフィールドに先程のカエルが姿を現したがその腹にはバンソウコウが貼られている。おそらく、先程の戦闘で負った傷だろう。

「僕はこの『黄泉ガエル』を生け贄に、『サイバネティック・マジシャン』を攻撃表示で召喚!」


サイバネティック・マジシャン
光 魔法使い族 レベル6 ATK/2400 DEF/1000
手札を1枚捨てる。このターンのエンドフェイズ時までフィールド上に表側表示で存在するモンスター1体の攻撃力は2000になる。


先程のカエルが消え、代わりに帽子から服まで全てが白い魔術師が現れた。(まるで光の○社のようだ・・・。)

「そのまま『サイバネティック・マジシャン』で『六武衆−イロウ』に攻撃!」

魔術師の杖に白い波動が集まり、『六武衆−ニサシ』に向かって発射される。

――電脳魔導波(サイバー・マジック)!――

「くそっ!やっぱりか!」

『六武衆−ニサシ』は跡形もなく消され、真のライフポイントが削られる。

真 LP8000→7000

「カードを1枚伏せてターンエンド。」

「ドロー!(まずは、あの『サイバネティック・マジシャン』をどうにかしないとな・・・。)リバース カード、オープン!『六武衆推参!』」


『六武衆推参!』 通常罠
自分の墓地に存在する「六武衆」と名のついたモンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターンのエンドフェイズ時に破壊される。


「俺は墓地から『六武衆−ニサシ』を特殊召喚!そして手札から『六武衆−ヤイチ』を召喚!」

彼の場に前のターン破壊された『ニサシ』、続いて今召喚した『ヤイチ』が次々と召喚される。


『六武衆−ヤイチ』
水 戦士族 レベル3 ATK/1300 DEF/ 800
自分フィールド上に「六武衆−ヤイチ」以外の「六武衆」と名のついたモンスターが存在する限り、1ターンに1度だけセットされた魔法または罠カード1枚を破壊する事ができる。この効果を使用したターンこのモンスターは攻撃宣言をする事ができない。このカードが破壊される場合、代わりにこのカード以外の「六武衆」という名のついたモンスターを破壊する事ができる。


「さらに、自分フィールド上に『六武衆』と名の付くモンスターが2体以上いるときにこのカードが特殊召喚できる!現れろ!『大将軍紫炎』!」」

真の叫びと共に紅き鎧を纏う将軍がフィールドへと出陣する。
その全身から放たれた威圧感は、まるで燃えさかる炎を連想させるようなほど激しい物だ。


『大将軍紫炎』
炎 戦士族 レベル7 ATK/2500 DEF/2400
自分フィールド上に「六武衆」と名のついたモンスターが2体以上存在する場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手プレイヤーは1ターンに1度しか魔法・罠カードの発動ができない。このカードが破壊される場合、代わりにこのカード以外の「六武衆」と名のついたモンスターを破壊する事ができる。


「これで、『サイバネティック・マジシャン』が破壊できる!・・・っとその前に、『六武衆−ヤイチ』で伏せカードを1枚破壊させて貰うぜ。」

『ヤイチ』が弓を引き絞り、伏せカードに狙いを付ける。

――魔封弓!――

「じゃあ破壊される前に罠発動!『グラヴィティ・バインド−超重力の網− 』!フィールド上のレベル4 以上のモンスターは攻撃できなくなる!」

フィールド全体に重力の網が発生し、『大将軍紫炎』、『サイバネティック・マジシャン』、『六武衆−ニサシ』はその網に押さえつけられてしまった。


『グラヴィティ・バインド−超重力の網−』 永続罠
フィールド上に存在する全てのレベル4以上のモンスターは攻撃をする事ができない


「ターン終了時に『六武衆推参!』の効果で特殊召喚した『六武衆−ニサシ』は破壊される・・・。」

『ニサシ』がフィールド上から姿を消した。
今彼のフィールドには『ヤイチ』と『紫炎』の2体のみである。

「僕のターン、ドロー!僕は『因幡之白兎(イナバノシロウサギ)』を攻撃表示で召喚。」

小さな兎(うさぎ)のようなモンスターが現れたが、普通の兎に比べ、身体が霧みたいに薄い。


『因幡之白兎』 スピリットモンスター
地 獣 レベル3 ATK/ 700 DEF/ 500
このカードは特殊召喚できない。召喚・リバースしたターンのエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。相手フィールド上にモンスターが存在しても相手プレイヤーに直接攻撃する事ができる。


「このモンスターの攻撃力は700。到底、君のモンスターには敵わない。だがこのモンスターは『グラヴィティ・バインド』の中でも動ける上に、相手プレイヤーにダイレクトアタックができる!」

「『グラヴィティ・バインド』でこっちのモンスターの動きを止めて、『因幡之白兎』で少しずつダメージを与える作戦って訳か。」

「そう言うことなんだ。でも、そのダメージは「少しづつ」じゃあ無いんだ・・・。『サイバネティック・マジシャン』の効果を発動!手札の『髑髏顔 天道虫』を捨てて、『因幡之白兎』の攻撃力をターン終了時まで2000に!」

『サイバネティック・マジシャン』の呪文によって、『因幡之白兎』の周りを光が包み込む。

『因幡之白兎』ATK/700→2000

「そして『髑髏顔 天道虫』が墓地に送られたことによって、僕のライフを1000回復!」


『髑髏顔天道虫』
地 昆虫族 レベル4 ATK/ 500 DEF/1500
このカードが墓地に送られた時、自分は1000ライフポイント回復する。


影中LP8000→9000

光から出てきた『因幡之白兎』自体に変化がなかったが、その手に持つ杵が持ち主の身体の10倍は有に超すほど巨大化していた。

「何ぃ!攻撃力2000だって!」

突然の攻撃力の上がりように真は驚きが隠せない。・・・それにしてもこの驚き方は主人公として良いのだろうか・・・?

「いくよ!『因幡之白兎』でプレイヤーにダイレクトアタック!」

「ガツン!」

「いって〜〜〜〜〜!」

真LP7000→5000

小さな兎はその手に持つ馬鹿でかい杵で真の頭を殴りとばし、自分のフィールドへと戻っていった。

「ターン終了時に、『因幡之白兎』は持ち主の手札に戻る。さあ、君のターンだ。」

兎は、彼の手札に吸い込まれるように戻り、1枚のカードとる。

「ドロー!(よし!)俺は『六武衆−ヤリザ』を召喚!攻撃表示!」

フィールドには長い槍を持つ『六武衆』・・・『ヤリザ』が現れた。
『ヤリザ』は登場と同時に槍を構える。


『六武衆−ヤリザ』
地 戦士族 レベル3 ATK/1000 DEF/ 500
自分フィールド上に「六武衆−ヤリザ」以外の「六武衆」と名のついたモンスターが存在する限り、このカードは相手プレイヤーに直接攻撃する事ができる。このカードが破壊される場合、代わりにこのカード以外の「六武衆」と名のついたモンスターを破壊する事ができる。

「こいつは相手プレイヤーに直接攻撃ができる。さらにそのレベルは3!これなら『グラヴィティ・バインド』の影響はないぜ!『六武衆−ヤリザ』でプレイヤーにダイレクトアタック!」

『ヤリザ』はその素早さを生かし、影中に槍による必殺の突きを繰り出した。

――旋風槍!――

「くっ・・・。君もなかなかやるね。でも、まだ僕のライフのほうが上だ。」

影中LP9000→8000

「その差も後で取り返してやるぜ!カードを2枚伏せてターンエンド!」

「ドロー!魔法カード『強欲な壷』発動!デッキからカードを2枚ドロー!」


『強欲な壷』 通常魔法
自分のデッキからカードを2枚ドローする。


「もう一度『因幡之白兎』を召喚!手札の『髑髏顔天道虫』を捨てて、『サイバネティック・マジシャン』の効果で攻撃力を2000に!そして『天道虫』の効果で1000ライフポイント回復!」

『因幡之白兎』ATK/700→2000

影中LP8000→9000

『サイバネティック・マジシャン』の呪文の効果でまた杵はあり得ないサイズになっていた。

「『因幡之白兎』でプレイヤーにダイレクトアタック!」

兎はまたあのあり得ないサイズの杵を軽々と振り回し、真の頭を殴りつける。

「くっそ〜!あの兎、絶対許せねぇ!」

彼は痛そうに自分の頭をさすっている。・・・これがソリッドビジョンで有るのが不幸中の幸いだろう。

真LP5000→3000

「カードを2枚伏せてターン終了。『因幡之白兎』を手札に戻すよ。」

思いっきり殴り飛ばしたのがよほど気持ちよかったのか、『白兎』は意気揚々と手札へと戻っていった。

「俺のターン!ドロー!これから俺の逆転が始まるぜ!俺はまず、『六武衆−カモン』を召喚!次に、魔法カード『戦士の生還』発動!墓地から『六武衆−ニサシ』を手札に加える!そして手札から魔法カードサイクロン』!お前の『グラヴィティ・バインド』を破壊!」

彼の手札の『サイクロン』のカードから竜巻が吹き荒れ、『グラヴィティ・バインド』のカードを襲う。


『サイクロン』 速攻魔法
フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する。


「僕の『グラヴィティ・バインド』は破壊させないよ!カウンター罠『マジック・ジャマー』!手札を1枚捨てて、『サイクロン』を無効!」

真の足下に、紫色の魔法陣が描かれる。


『マジック・ジャマー』 カウンター罠
手札を1枚捨てる。魔法カードの発動を無効にし、それを破壊する。


「こっちもカウンター罠発動!『神の宣告』!ライフポイントを半分払って、『マジック・ジャマー』を無効化!」


『神の宣告』 カウンター罠
ライフポイントを半分払う。魔法・罠の発動、モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚のどれか1つを無効にし、それを破壊する。


真のフィールドに白いひげをたくわえた老人が現れ、その魔力で『マジックジャマー』の魔法陣を封じ込める。

真LP3000→1500

「これで『グラヴィティ・バインド』を守るカードはいなくなった!『サイクロン』で『グラヴィティ・バインド』を破壊!」

魔法陣の呪縛が解き放たれ、強烈な突風が『グラヴィティ・バインド』を跡形もなく消し去ってしまう。それと同時に、先程まで重力の網に捕らわれていた『紫炎』と『ニサシ』はその呪縛から解き放たれ、立ち上がる。

「ッシャア!これでやっと攻撃ができるぜ!『大将軍紫炎』で『サイバネティック・マジシャン』を攻 撃!」

『紫炎』は熱き炎を刀に纏い、勇ましい叫びと共に白き魔導師に斬りかかった。

――紫炎流奥義・・・『炎獄剣舞』!――

「罠発動・・・!」

彼は自分の伏せてあるカードに手を伸ばそうとした。・・・が真がその行動を止めた。

「無駄だぜ。『大将軍紫炎』の効果で相手は1ターンにつき魔法、罠カードは1枚しか発動できない!よって、攻撃続行!」

『サイバネティック・マジシャン』は最後まで己の魔力で抵抗するが、『紫炎』の刃を受けて、健闘虚しく破壊されてしまった。

影中LP9000→8900

「続いて『ニサシ』、『ヤイチ』、『カモン』、『ヤリザ』で連続攻撃!」

――弐刀十文字!――

――覇者の弓!――

――爆炎の撃!――

――旋風槍!――

『ニサシ』の小太刀、『ヤイチ』の弓、『カモン』の打竹、『ヤリザ』の槍がそれぞれの持ち味を生かして次々と影中のライフポイントを削っていく。

「うわぁぁぁぁぁ!!」

影中LP8900→7500→6100→4800→3300→2300

「さっきの兎野郎の分、しっかり返さして貰ったぜ!カードを伏せて、ターンエンドだ!」

「ウワァァァァァァァ!!!!」

真の突然の逆転劇に会場は沸き上がった。

「ドロー。僕はリバースカード、『スケープ・ゴート』を発動。僕のフィールドに『羊トークン』4体を 特殊召喚。このままターン終了。」


『スケープ・ゴート』 速攻魔法
このカードを発動する場合、自分は発動ターン内に召喚・反転召喚・特殊召喚できない。自分フィールド上に「羊トークン」(獣族・地・星1・攻/守0)を4体守備表示で特殊召喚する。(生け贄召喚のための生け贄にはできない)


だが、彼も負けじとカードを繰り出す。フィールドに、小さい羊が4体並ぶ。だが、『紫炎』率いる『六武衆』に圧倒され、縮こまってしまった。

「ドロー!俺はまず、『ヤイチ』の効果で伏せカードを破壊!」

再び『ヤイチ』は弓を引き絞り、狙いを定める。

「ならさっきと同じように罠発動!『グラヴィティ・バインド』!これで君の『ニサシ』と『紫炎』の攻撃は封じられた!これで『カモン』で『グラヴィティ・バインド』を破壊しようとしてもこのターンはしのぎきった!」

「そんなんじゃ、俺の仲間達は止まらねえぜ!罠発動!」

真はリバースカードに手を伸ばし、それを力強く発動した。

「発動したのは『風林火山』!」


『風林火山』 通常罠
風・水・炎・地属性モンスターが全てフィールド上に表側表示で存在する場合に発動する事ができる。次の効果から1つを選択して発動する。
●相手フィールド上モンスターを全て破壊する。
●相手フィールド上の魔法、罠カードを全て破壊する。
●相手の手札を2枚ランダムに捨てる。
●カードを2枚ドローする。


「このカードは自分のフィールド上に、『地』、『水』、『炎』、『風』の属性を持つモンスターが存在するときに発動できる。俺はお前のモンスター全て破壊する!!」

「ビュォォォォォォォ!!!」

彼を守るはずの羊たちは吹き荒れた突風によりことごとく破壊され、彼のフィールドはがら空きになってしまった。

「僕のフィールドのモンスターが全滅と言うことは・・・。」

そう言って彼は真の場に存在する『カモン』と『ヤリザ』を見やった。

「そう!『カモン』と『ヤリザ』の2体でダイレクトアタックで、俺の勝ちだ!行くぜ!『カモン』と『ヤリザ』の2体でダイレクトアタック!」

『カモン』が打竹を投げつけダメージを与え、その爆煙から『ヤリザ』が飛び出し、槍を彼に向かって振り下ろす!

――六武衆合身奥義・・・爆炎旋風槍!!――

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

影中LP2300→800→0

影中のライフポイントが尽きて、真の勝利が確定する。

「試合終了ぉ!Bブロックを見事制し、決勝へと駒を進めたのは、武斬選手だぁ!」

「ワァァァァァァァァァ!!」

虎の叫びと共に、会場全体に歓声が沸く。

「ッシャア!やったぜ!」

勝利を収め、真はガッツポーズを取った。

「君とのデュエル、とても楽しかった。。僕もデッキもまだまだ強化が必要みたいだ。」

ステージの反対側から影中が近づいてきて、真に向かって話しかけてきた。

「そうでもないぜ、『グラヴィティ・バインド』でこっちの攻撃をロックしながらの『因幡之白兎』のダイレクトアタックはびっくりしたぞ。」

「そうか、ありがとう・・・。それじゃあ、僕はこれで。決勝戦、頑張って。」

「ああ!」

彼はそう言うと、ステージを後にした・・・。

(いい・・・試合だったね。)

影中がいなくなると、弾が話しかけてきた。

「ああ・・・。また、アイツとはデュエルしたいな・・・。」

彼が降りていった階段を見つめながら、真はつぶやいた。

(さて、次はいよいよ決勝戦だね。相手は安紀ちゃんだから油断できないよ・・・。)

「そんなの関係ねぇ。相手が強ければそれだけ燃えるってモンだ!」





・・・・・・・・・・・・・・・・・それから5分後。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






「待たせたな、みんなぁ!これから大興奮間違いなしの決勝戦を行うぜい!選手入場!」

白い煙と沸き上がる歓声と共に安紀と真がステージへの階段を上がって入場した。

「さあ!まずは、Aブロック代表!『フリード』を巧みに使い、決勝まで着々と勝利を収めてきた虹夢選手!続いてBブロック代表!1回戦は機械族、2回戦は『六武衆』とデッキを次々と替えてきた武斬選手だ!」

真と安紀はお互いの位置に立って、向かい合った。

「真ちゃん、さっきはありがとう・・・。でも、勝負は勝負!本気で行くよ!」

安紀は真に対して、自分の決意を力強く言い切った。

「ああ!お互い全力でこのデュエルを楽しもうぜ!いくぜ!」

「それじゃあ、デュエ・・・。」

???「そのデュエル、待って貰おうか・・・。」

虎がデュエル開始を宣言しようとした時、誰かが大声で叫んでデュエルを止めた。

「誰だ!」

真が振り向いた先には・・・。





空は先程の快晴から打って変わって、どんよりとした曇り空になっていた。

「まるでこれから起こることを予想しているかのように・・・」




決闘5「もう1人の武士(サムライ)」





「誰だ!」




真が、声のした入場口の方を振り返る。・・・そこには迷彩服を着込んだ男が立って腕を組んでこちらを見ていた。年齢は20代後半ぐらいだろうか、長く伸びた黒い髪が特徴的である。
おそらくデュエリストなのだろう・・・その左腕にはデュエルディスクが装着されていた。

「お前か!俺達のデュエルを邪魔しようとする奴は!」

真がステージ上から男に向かって怒鳴る。が、男は真の叫びに1歩も動じず、前へ1歩、歩み出てきて口を開く。

「私はラムサ。君たちの大切なデュエルを邪魔したことは謝るよ。・・・でもね、私にはそれよりも大切な目的があるのだよ・・・。」

「目的?」

真はラムサの「目的」と言う言葉が気になり、即座に問い返す。

「そう。この大会の会場のどこかにあるであろう、『あのカード』を手に入れると言う目的が・・・。」

「ラムサかラクダか知らねぇが、お前、よくも俺と安紀とのデュエルを邪・・・。」




「そこまでだ!」




会場にヒーロー登場時にヒーローがよく言う台詞が響き渡る。

「今度は誰だ!?」

真は声のした方を振り返る。するとそこには先程真とデュエルしていた影中と岩岡の2人が立っていた。

「影中!どうしてお前が・・・!」

突然の登場に真ははただただ驚愕するばかりだ。

「事情は後で説明するよ!・・・それよりもラムサ!お前達に『あのカード』は絶対に渡さない!」

そう言って彼はラムサの方に歩きながら自分のデュエルディスクを起動する。

「ふう・・・。本当はこんなお遊びに付き合っている暇はないのだが・・・。」

彼は軽くため息をついて、自分のデュエルディスクを起動させる。

「デュエ・・・!」


「おい!お前!なんだか訳分かんねえが俺とデュエルしやがれ!」

影中とラムサがデュエルを開始しようとした時突如、真が2人の間に乱入した。
よく見ると真は、自分のデュエルディスクにデッキをセットし、ディスクの方も起動済みであった。

「何だね君は?」

「俺の名前は武斬 真だ!よ〜く覚えとけ!てめぇは俺が今からここでぶっ飛ばす!」

真は恐ろしいほど単純な理由でラムサに勝負を申し込む。
・・・

「ダメだ!事情を知らない君にあいつを任すことは出来ない!!」

影中が強く言い放つ。
だが、真は影中の胸ぐらを掴むと耳が張り裂けそうな声で怒鳴った。

「そんなこと知るか!俺は俺達のデュエルのために闘う、それだけだ!」

「(この目は・・・。あの人と似ている・・・。)」

真の目を見て彼の決意を悟った影中は、真の掴んだ手を離して真に向かってこう言った。


「・・・わかった、そこまで言うならここは君に任せよう。」

「そうこなくっちゃな!行くぜ!ラムサ!」

「デュエル!」



真LP8000 ラムサLP8000


「先攻は君でかまわないよ。」

「余裕言いやがって、後で後悔しな!ドロー!俺は『六武衆−イロウ』を召喚!ターンエンドだ!」



『六武衆−イロウ』
闇 戦士族 レベル4 ATK/1700 DEF/1200
自分フィールド上に「六武衆−イロウ」以外の「六武衆」と名のついたモンスターが存在する限り、裏側守備表示モンスターを攻撃した場合、ダメージ計算を行わず裏側守備表示のままそのモンスターを破壊する。このカードが破壊される場合、代わりにこのカード以外の「六武衆」と名のついたモンスターを破壊する事ができる。



フィールドに黒き鎧を身に纏う侍が現れ、身長と同じぐらいの黒い長刀を構える。

「ほう・・・「君も」六武衆のデッキを使うようだね。」

ラムサは興味深そうに言う。

「「君も」って・・・・・・まさか!?」

「おっと、私のターンだったね、私は『六武衆−ザンジ』を召喚。」

『イロウ』に対して相手のフィールドには、真の使う六武衆の内の1人、『ザンジ』が現れた。



『六武衆−ザンジ』
光 戦士族 レベル4 ATK/1800 DEF/1300
自分フィールド上に「六武衆−ザンジ」以外の「六武衆」と名のついたモンスターが存在する限り、このカードが攻撃を行ったモンスターをダメージステップ終了時に破壊する。このカードが破壊される場合、代わりにこのカード以外の「六武衆」と名のついたモンスターを破壊する事ができる。



「やっぱり・・・!お前も俺と同じ六武衆デッキだったのか。」

「その様だ。でも、同じタイプのデッキと言うことは、お互いの実力差もはかりやすい。では、『六武衆−ザンジ』で『六武衆−イロウ』を攻撃!」

『ザンジ』が薙刀を振り回し、同じ六武衆である、『イロウ』に襲いかかる。

――雷撃の一閃!――


――――ズバァァァァァン!


「くそっ!」

真LP8000→7900


「これでターン終了させて貰うよ。」

ラムサはターン終了を宣言をする。・・・その口調こそは優しそうだが、その声の裏に静かに獲物を狩る獅子のような威圧感を感じる。

(真、大丈夫!?・・・・・・まさか、あの人も「六武衆」デッキだったなんて・・・。)

弾が真を心配して話しかけてくる。
いつも落ち着いている弾でも、同じタイプのデッキの登場にいささか動揺しているようだ。

「(ああ、でもまだまだこれからだ!)・・・ッシャア!なんだか滅茶苦茶楽しくなってきたぁ!」

「あいつ、こんな状況なのに楽しんでいやがる・・・。」

真の態度にいつの間にやら観客席から出てきた竜は少々あきれ気味だ。

「でも・・・あんな時でも楽しめる真ちゃんだもん。きっと・・・大丈夫!」



「俺のターン、ドロー!」
二人が見つめる中、真はデッキから勢いよくカードをドローした。

「魔法カード『強欲な壷』、発動!」



『強欲な壷』 通常魔法
自分のデッキからカードを2枚ドローする。



「そして『六武衆−ニサシ』を攻撃表示で召喚!」



『六武衆−ニサシ』
風 戦士族 レベル4 ATK/1400 DEF/700
自分フィールド上に「六武衆−ニサシ」以外の「六武衆」と名のついたモンスターが存在する限り、このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。このカードが破壊される場合、代わりにこのカード以外の「六武衆」と名のついたモンスターを破壊する事ができる。



「そしてリバースカードを2枚セットして、ターン終了!」

「私のターン、ドロー。私は『切り込み隊長』、そしてその効果によって私も『六武衆−ニサシ』を召喚。」

ラムサのフィールドに戦士達が肩を並べる。
風貌や所属などに違いがあるが、共に闘うことへの決意から2人の戦士は意気投合しているようだ。



『切り込み隊長』
地 戦士族 レベル3 ATK/1200 DEF/400
このカードが表側表示でフィールド上に存在する限り、相手は他の表側表示の戦士族モンスターを攻撃対象に選択できない。このカードが召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスターを1体特殊召喚する事ができる。



「さらに『団結の力』を『ニサシ』に装備。」



『団結の力』 装備魔法
自分のコントロールする表側表示モンスター1体につき、装備モンスターの攻撃力と守備力を800ポイントアップする。



『六武衆−ニサシ』ATK/1400→3800


「そして『ザンジ』で『ニサシ』に攻撃。」

「・・・くそ!罠カード『和睦の使者』、発動!」



『和睦の使者』 通常罠
相手モンスターからの戦闘ダメージを、全て発動ターンだけ0にする。



「・・・これで俺と『ニサシ』へのダメージを0にする・・・。」

『ニサシ』は『和睦の使者』の力を受け、正面から振り下ろされる『ザンジ』の薙刀を刀をクロスさせる事によって受け止める。

「だが、君も知っているだろう。『ザンジ』の持つ効果によって『ニサシ』を破壊する。」

真の『ニサシ』は1度は耐えていたが、『ザンジ』のふるう薙刀によって刀が砕け、そのまま『ニサシ』は破壊されてしまった。


「私はこのままターン終了だ。」

「・・・俺のターン、ドロー!『六武衆−ザンジ』を召喚し、『切り込み隊長』を攻撃!」

――雷撃の一閃!――

真の場に現れた『ザンジ』は、『切り込み隊長』を軽く一閃する。


ラムサLP8000→7400


「カードを2枚セットしてターン終了!」

「少しはやるようだね。・・・ではこちらも追い込みをかけさして貰うよ。」

そう言ってラムサはデッキからカードをドローして、手札から1枚のカードを選び取る。

「『六武衆−ヤリザ』を召喚。新たなモンスターの召喚によって、『ニサシ』の攻撃力がアップ。」



『六武衆−ヤリザ』
地 戦士族 レベル3 ATK/1000 DEF/500
自分フィールド上に「六武衆−ヤリザ」以外の「六武衆」と名のついたモンスターが存在する限り、このカードは相手プレイヤーに直接攻撃する事ができる。このカードが破壊される場合、代わりにこのカード以外の「六武衆」と名のついたモンスターを破壊する事ができる。



『六武衆−ニサシ』 ATK/1400→3800 DEF/2300→3100


「そして、『ヤリザ』の効果でダイレクトアタック。」


――――旋風の槍!


「っぐ・・・!」

真LP7900→6900


「続いて、『ニサシ』で『ザンジ』を攻撃。」

『ニサシ』が小太刀をふるい一閃を繰り出す。真の『ザンジ』は最後まで抵抗を試みるが、一瞬の隙を突かれ、『ニサシ』の一閃を喰らって破壊されてしまった。

「ぐ・・・。」

真LP6900→4900

「さらに『ニサシ』の効果でもう1度攻撃。」

『ニサシ』が2本の刀を構えながら、こちらに突撃してくる。

――弐刀十文字斬り!――

真LP4900→1100


「これで最後だ・・・『ザンジ』でダイレクトアタック!」

ラムサの『ザンジ』がものすごいスピードで接近してくる。
・・・この攻撃が通れば、真の敗北が決してしまう。

「真!」

「真ちゃん!」
ステージ横の竜と安紀が思わず叫ぶ。
だが、2人の叫びも虚しく『ザンジ』の薙刀は真の右肩へと直撃し、辺りは爆風に包まれる。




「ぐわぁぁぁぁぁ!」




――――――。

―――――――――。

――――――――――――。



会場に流れる暫しの沈黙・・・。
爆風が晴れると、そこには真が攻撃を受ける前と同じ姿勢で立っていた。


真LP1100→2100→300


「なぜだ・・・?!確かに『ザンジ』の攻撃は通ったはず・・・!」
決まるはずであった攻撃が失敗し、ラムサの顔に初めて動揺の色が生まれた。
そんな様子のラムサを見て、真は1枚の魔法カードを見せつける。

「・・・・・・速攻魔法『非常食』!」



『非常食』 速攻魔法
このカードを除く自分のフィールド上の魔法または罠カードを墓地へ送る。墓地へ送ったカード1枚につき、自分は1000ライフポイント回復する。



「そうか・・・そのカードによってライフを回復させたと言うことか。」

「やったぜ、真!」

「このまま逆転しちゃえ!」


「私はカードを1枚伏せてターン終了だ。持ち堪えたとはいえ、今のターンで君はかなり不利な状況になってしまった。・・・できれば負けを認めてくれるとありがたいが・・・。」

「ふざけんな!俺は絶対ぇ勝負から逃げるなんて真似、死んでも出来るか!俺は負けるその時まで絶対希望は捨てねぇぜ!」

ラムサが真にサレンダーを求めるが、真はそれを気合いではねのける。
・・・どうやら彼の頭の中には「逃げ」の選択肢は存在してないようだ。
そんな様子の真を見て、ラムサは多少あきれ気味に言う。

「そうか・・・。ならば私の手でその希望を奪うしかないようだ・・・。」

「うるせぇ!俺のターン・・・!」

デッキへと伸ばす手が少し震えている。「希望を捨てない」と確かに言ったが、デッキに手を伸ばす手は躊躇いを見せていた。
・・・今のラムサのターンでモンスターは全滅。ライフポイントは残りわずか。
正直、今の真の1枚の手札だけでは逆転は不可能に近い状況であった。


「(あのカードさえ引ければ、まだ・・・!)」


確かに希望は存在するが、それもデッキのたった1枚のカード。引く確率は限りなく低い。
そんな時、真の頭に弾の声が響いた。

(・・・何か、真らしくないね。)

「(・・・弾・・・!?)」

突然の声に真は困惑する。

(いつもの真だったらさっさとドローするのに。そして「ッシャア!」って気合い入れてさ。)

弾はさらに続ける。

(そのうえそれで勝っても負けても楽しそうなんだから。・・・確かに大ピンチだけどさ、もういっそのことこの状況を楽しんじゃわない?「“結果”より“デュエル”を楽しむ」ってのが真のいつものやり方何だからさ。
そして、真の後ろには僕や竜君、安紀ちゃん達って言う「仲間」がついているんだから。)



「(「俺のやり方」、そして「仲間」か・・・。)」

真はその場で少し考え込む・・・。そして、



「・・・あ〜うるせぇ、うるせぇ!そんな余計なお節介言わなくても、最初っから分かってらぁ!」





真の口から出た言葉は感謝でも何でもなく、ただの暴言であった。
彼は豪快に弾に対して怒鳴り散らす。
・・・だが、最後に


「・・・・でもよ・・・サンキューな・・・。」


とだけ誰にも聞こえないような声で付け加える。
そんな真の顔は、少し照れくさそうだった。


「俺のターン・・・・・・ドロー!」
そして彼は真っ直ぐにデッキのカードに手を伸ばし、引く。










――――そして彼は信じ続けた『希望』を手にする・・・・・・。










真は自分の引いたカードを静かに確認する。そして

「おい!」

会場全体に響く真の叫び声で、いったん会場は静まりかえる。

「安紀、竜、そして会場のみんな!今から結果はどうあれ、俺の最高の攻撃を見してやるぜ!目ン玉かっぽじってよ〜く見ときな!」




その場に流れる、暫しの沈黙。




「ワァァァァァァ!!!」

だが、その沈黙は、歓声が破ることになる。真の一言に会場は沸きに沸いた。
みんな、「真の最高の攻撃」に胸が高鳴っているようだ。


「この状況でも楽しんだり、諦め無かったり、武斬君は本当に不思議な人間だ・・・。」


渦巻く歓声の中、影中は真の様子に少々戸惑っているようだ。
そんな彼に、安紀がこう言った。


「だって真ちゃんは昔から、“諦める”ことが大嫌いな強い子だもん。」

そう言って、彼女はステージにいる真の方を向く。




「・・・・・・まずはリバースカード、オープン!『究極・背水の陣』!」



『究極・背水の陣』 通常罠
自分のライフポイントが100ポイントになるようにライフポイントを払って発動する。自分の墓地に存在する「六武衆」と名のついたモンスターを自分フィールド上に可能な限り特殊召喚する(同名カードは1枚まで)。ただし、フィールド上に存在する同名カードは特殊召喚できない。



真LP300→100


「墓地の『六武衆』と名の付くモンスターを可能な限り特殊召喚!その強き勝機を刃(やいば)に込めて、現れろ!『イロウ』、『ニサシ』、『ザンジ』!」

真のフィールドに4人の侍が一斉に現れた。カード自体に違いがあるわけではないが、六武衆達の風貌から、決意と勝機が満ちあふれている。

「さらに『六武衆−カモン』を召喚!」



『六武衆−カモン』
炎 戦士族 レベル3 ATK/1500 DEF/1000
自分フィールド上に「六武衆−カモン」以外の「六武衆」と名のついたモンスターが存在する限り、1ターンに1度だけ表側表示で存在する魔法または罠カード1枚を破壊する事ができる。この効果を使用したターンこのモンスターは攻撃宣言をする事ができない。このカードが破壊される場合、代わりにこのカード以外の「六武衆」と名のついたモンスターを破壊する事ができる。



「続いて、手札の『大将軍紫炎』を特殊召喚!」

真の呼び声と共に熱い叫びを上げながら紅蓮の将軍が現れる。



『大将軍紫炎』
炎 戦士族 レベル7 ATK/2500 DEF/2400
自分フィールド上に「六武衆」と名のついたモンスターが2体以上存在する場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手プレイヤーは1ターンに1度しか魔法・罠カードの発動ができない。このカードが破壊される場合、代わりにこのカード以外の「六武衆」と名のついたモンスターを破壊する事ができる。



「そして、永続魔法『連合軍』発動!これで俺のモンスターの攻撃力を1000ポイントずつアップさせるぜ!」



『連合軍』 永続魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する戦士族・魔法使い族モンスター1体につき、自分フィールド上の全ての戦士族モンスターの攻撃力は200ポイントアップする 。



『大将軍紫炎』ATK/2500→3500

『六武衆−イロウ』ATK/1700→2700

『六武衆−ニサシ』ATK/1400→2400

『六武衆−カモン』ATK/1500→2500

『六武衆−ザンジ』ATK/1800→2800


「ほう・・・。攻撃力2000以上のモンスターが5体か・・・。」
 
「これで最後だ!罠カード『中央突破』を『ザンジ』を指定して発動!」



『中央突破』 通常罠
自分フィールド上に表側表示で存在する「六武衆」と名のついたモンスター1体を選択して発動する。このターンのバトルフェイズ中、選択したモンスターが相手モンスターを戦闘によって破壊した場合、自分フィールド上に存在する「大将軍 紫炎」または「六武衆」と名のついたモンスターは相手プレイヤーに直接攻撃する事ができる。



「すごいや!この攻撃が通れば真ちゃんの勝ちだ!」

「真!そのままぶちかませぇぇぇ!!!」

「ワァァァァァァァァァァ!!!」

真の逆転劇に安紀や竜はおろか、会場全体は興奮に包まれた。



「これで終わりだぁぁぁぁぁ!!!『ザンジ』で『切り込み隊長』を攻撃!」



真の指示を受け、『ザンジ』はラムサの『切り込み隊長』に刃を振り下ろす。

――雷鳴の一閃!――


『ザンジ』の一閃が『切り込み隊長』に当たる直前に、


「バラララララララララ!!」


真やラムサ達の上空にヘリコプターが現れ、その翼から爆音が辺りに響かせる。
その音を聞くとラムサは「フッ・・・。」と軽く笑い、デッキをデュエルディスクから取り出した。当然このような行為を行えば、デュエルディスクのソリッドビジョンは機能を失い、モンスター達は消滅していく。

「何!」

消えゆくモンスター達を前に真はラムサが取った行動が理解できなかった。

「『あのカード』はお前達や観客がデュエルに注意言っている間に、部下達に回収させた。そして今、『あのカード』は私達の手にある。もうデュエルをする必要もなくなったのだ。」

そう言うとほぼ同時に上空に、ラムサはヘリから伸ばされた縄ばしごの方に歩き出す。

「待ちやがれこの野郎!」


「シュッ!」


ラムサは、彼に向かって走ってくる真に向かって1枚のカードを投げつける。カードは風を切る音と共に真の元へと飛んでいく。

「何だ、これは!」

真は飛んできたカードをキャッチすると、縄ばしごに掴まったラムサに真は大声で聞き出そうとする。

「それは私がさっきのデュエルで伏せていたカードだ。・・・君とのデュエルは中々面白かったよ。
機会があればまた会おう。」

そう言い残してラムサを乗せたヘリは灰色の空へと飛んでいった・・・。

「このカードが最後のターンに・・・。」

真はラムサが最後に伏せていたと言うカードを見る。

「真ちゃん!」

「真!大丈夫か!」

安紀と竜の2人がステージへと駆け上がってきた。

「ああ・・・。」

2人の声に真は軽く答える。

「へっ!あいつめ、怖くなって逃げ出してやんの〜!」

竜がヘリが飛んでいった空の方に思いっきり文句を言う。

「・・・でもあの人、最後、少し笑ってたよ・・・?」

「ああ、それならこれが原因だ。奴が、・・・ラムサが最後に伏せていたカードだ。」

そう言って2人に1枚のカードを見せる。



『破壊輪』 通常罠
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を破壊し、お互いにその攻撃力分のダメージを受ける。



「もしあの時奴がデュエルを続けていたら、俺は確実に負けていた・・・。」

そう言って真はその場にドカッと座り込む。

「(真、どうだった今のデュエル?)」

弾がこちらに問いかけてくる。

「楽しかったに決まってんだろ!・・・・今度ヤツに会ったときはぜってぇ負けねぇぜ!」


真は手を空に掲げ、満足そうな顔で次回の勝利を誓う。




――――――。

―――――――――。

――――――――――――。




「ところで、さっきアイツ・・・えっと・・・、ラクダだっけ?」」



デパートからの帰り道、1番後ろを歩いていた竜がつぶやいた。
あの後・・・デパート関係者やら警察やらが一斉にやって来て、決勝戦は中止という形となった。
影中と岩岡に事情を聞くと、「明日、君の家で改めて説明しよう」と言われてしまった。
・・・今更だがどうやって影中達は真の家に来るのだろうか・・・?


「ラクダじゃなくてラムサでしょ。」

安紀が補足する。真といい、竜といい、一体どこからラクダの名前が出てくるのだろう

「そうそう、ラムサ、ラムサ。あいつ、結局何だったんだ?」

「今考えたって解らないものは解らないでしょ?・・・だから解らないことはもうおしまいにしよ!」

安紀が明るい声で言った。
・・・こう言うときに彼女の明るい性格は良いのかもしれない。

「そうだな。」

「ああ。」

安紀の提案に竜、真の順に同意する。

「それじゃあ、早くお家まで帰ろ!・・・・もちろん競争で!」

「おい!そんな急に・・・。」

真はとっさに思い出す。・・・安紀が「競争だよ!」と言い出すときはたいてい敗者にはジュースのおごりが待っているからである。

「それじゃあ、よ〜い・・・・・・ドン!」

真の話を聞かず、彼女は走り出してしまった。

「安紀ちゃん、待ってよ〜!」

竜も追いかけるように慌てて走り出す。

(これは負けられないね。)

弾がさりげなく真に応援の言葉を贈る。

「(そうだな。)・・・さて、俺らも行きますか!」
彼は自分を奮い立たせ、全速力で走り出した。空には先程のどんよりした雲はすでに無く、空にはきれいな夕焼けが見えていた・・・。



決闘6「動き出す瞬間」

――――『あのカード』と武斬 真の物語が、 今、動き出す。――――


AM5:20
ラムサとの戦いの翌日。



「ジリリリリリリリリリリリリリ!!!」



部屋に目覚まし時計の音が鳴り響く。その部屋の隅にあるベッドがもぞもぞと動き、そこから伸びた腕が
目覚まし時計を貫く。
目覚まし時計は「グシャ」と快音を響かせて宙を舞う。


「ったく・・・。もう少し寝かせろよ・・・。」


ブツブツ文句をつぶやきながら真がベットから起きる。
床には、先程の真の綺麗な左ストレートによって壊された目覚まし時計が無惨にも転がっていた。
真は目覚まし時計を片付け、新しい物と取り替えると、制服へと着替え出す。

「(まったく・・・毎週、毎週壊してたらキリ無いよ・・・。)」

先程の光景を見た弾が、至極当然な態度で話しかけてくる。
・・・その様子から、この光景には慣れているようだ。

「(そんなことより見ろよ!先週より見事な壊れっぷりだぜ!これなら来週頃には念願の全壊が狙え・・・。)」



――――ヒュッ、ドス!



「ぐはっ・・・・!」

真が最後まで言い終わらないうちに、弾必殺の肘鉄が真の腹部を直撃する。当然彼は声を上げるまもなく床へとうずくまる。
・・・真曰く、パワーこそ普通だが的確に急所を狙ってくる為、その破壊力はあの『青眼の白龍』の必殺技、『滅びの爆裂疾風弾』にも匹敵するという。

「(ホラ、早くしないと遅刻するよ!)」

弾に急かされて、真は急いで支度をして1階のリビングへと向かう。


AM7:30


「ごちそうさまっと・・・。」


朝食を終えた真は、2人分の食器を持ってそのまま流し台へと向かう。
・・・彼らは普段、2人で暮らしている。
両親の内、母親の方は真が幼い時に他界しており、父親の方は現在海外で仕事をしている。・・・・が去年の今頃から多忙の為かろくに連絡は取れていないが、生活費は定期的に送られてくるので生活の面と父親の安否の方は大丈夫なようだ。
一方、いい加減覚えている人もほとんど居ないだろうが、真の兄の方はマイナーリーグだが、プロのデュエリストとして一応デビューして、元気にやっているそうだ。


こうやって作者が色々と説明している間に真は食器を洗い終え、学校に行くために鞄の準備を始める。


AM7:45


「ふわぁぁぁ〜。」



真は大きなあくびと共に家を出る。空は雲1つ無く気持ちよく晴れていた。まだ、5月の初旬なので雨の心配も少ないだろう。


「あ!真ちゃん、おはよ〜!」


隣の家の方から元気の良い声が聞こえる。真が声の方を向くと、安紀が今、家から出てきたところのようだ。彼女はそのままこちらに駆け寄ってくる。

「ああ。おはよう。」

真もそれに答える。

「にしても、昨日はホント変わった1日だったな。」

「・・・でも、竜ちゃんは全然変わらないよ。」

そう言って向かい側の竜の家を見てみると外からでも分かる慌てようで準備している。
時々、中から「パリーン!」とか、「ガッシャーン!」とかの音が聞こえてくるのが妙におもしろい。


それから5分後・・・・・・。


「よし!準備完了!いや〜待たせたね〜。」

竜は勢いよく飛び出して来る。その様子は至って普通だが、ドアの隙間から見えた彼の家の玄関は恐ろしいことになっていた。

「さあ、行こうか。」

彼は『最終戦争』も軽く凌駕する後ろの光景には一言も触れず、意気揚々と先頭を歩き出した。

「あ、ああ・・・・・・そうだな・・・。」

「う、うん・・・・・・そうだね・・・。」

これが毎日の光景だと知りつつも、2人は唖然としたまま彼に付いて行くしかなかったと言う・・・。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15分後・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




AM8:05
ここは真達が通う「千得州(ちえす)高校」・・・。
近年の『M&W』による社会の変化に押され、『M&W』が授業の一環として扱われている、何処にでもある普通の高校である。
最初はM&Wの授業導入化に、教師達も違和感を憶えていたが、最近では生徒に混じってデュエルする教師もチラホラ現れており、少しずつだが認められてきているようだ。


そんな高校の廊下を歩きながら、3人は自分達の教室を目指す。
・・・だが、


――――ガラララララ!


「よう、みんな!・・・・・・こ、これは!?」

教室の扉を開いた真は驚愕する。
・・・いつもならクラスメイトがお喋りや、友達同士宿題を見せ合ったいたりするハズだ。
だが、今、目の前に広がっている教室の風景は、恐ろしいほどの緊張に包まれていた。

「なあ竜、今日って何かあったっけ・・・?」

「さ、さあ・・・?」

「何だろうね?私、ちょっと聞いてくる。」

そう言って安紀は仲の良い女子達の元へと駆け出していく。
しばらくすると安紀が戻って来て事情を話しだした。
・・・・安紀の話曰く、今日は学園物ではおなじみの「転校生」が真達のクラスに来るらしい。
そして、その「転校生」がどんなヤツか情報を待っている。と言うことだそうだ。
・・・と、その時1人の女子生徒が教室に駆け込んでくる。
その女子生徒は、全クラスメイトが注目する中、口を開く。



「みんな!転校生は男子だって!」


――――――。

―――――――――。

――――――――――――。



暫しの沈黙が教室に広がる・・・。そして、


「キャアァァァァァァ!!!!」


教室中の女子軍は歓喜に満ちて騒ぎ出し、反対に男子軍はこの世の全てを失ったように撃沈する。
その瞳には光など映っておらず、ただただ虚空ばかりが見えていた。

「(つーか、まだ男子って事しか分かってないのにな・・・。)」

真はそう言って自分の窓側の席に着く。

「(その以前に少し話が進展するとハイ、「転校生ネタ」ってのもありがちなパターンだよね。・・・全く、作者はおもしろみって物がかけてるね。」


――――グサッ!


弾の発言が作者の胸にナイフのように突き刺さる。

「もっと展開を上手く考えられない物かな?話も結構色々行き当たりばったりな所があるし・・・・・。」



――――グサッ、グサッ!




「(お、おい、それ以上言うと作者の身が保たないだろ・・・!)」

真の忠告や作者の心境もお構い無しに弾はさらに言葉のナイフを投げつける。

「最後にもう1つ言うとまだこの作品が始まってからまだ僕1回、しかも相手は使い捨てキャラとのデュエルだし、読者の方々だってもっと僕の出番欲しいだろうし・・・・・。)」


弾の危険発言の連続に、作者は深く深く傷ついている。・・・・というか泣き出しそうだ。
とりあえず作者は涙をこらえて筆を執るしか無かったという・・・・。



――――――――――――。


―――――――――。


――――――。




――――キーンチャーンラーメーン・・・・・。




AM8:25
チャイムからしばらくして、担任が教室に入ってくる。
・・・今時珍しい、「雷親父タイプ」な教師だ。
朝礼が終わると、早速ホームルームが始まる。

「さて・・もう知ってる奴だらけだと思うが、俺達のクラスに転校生が来ることになった。一応言っておくが転校生は・・・・男子だそうだ。」


――――ザッ!


この瞬間を待っていた!と言わんばかりに教室中の女子は戦闘態勢に入る。
その転校生を待ちわびる目線は、一流の殺し屋でもビックリな鋭い物だったと言う。


「男の子って言ってたけど転校生ってどんな子だろうね?」
安紀が小声で竜に訪ねている。

「俺は男なら今回はパスだぜ。(にしても男か・・・・・。ああ、遠のいていく、転校生のカワイ子ちゃんとの運命の出会い・・・・。)」
竜は興味がなさそうにするが、心の奥では相当のショックを受けているようだ。
・・・・その証拠に、彼のオーラからは早くも『ダーク・ゾーン』がにじみ出ていた。


「どうでもいいけど俺、誰がやってくるか大体分かる気がする・・・。」
真はそんな2人のやりとりを見ながら左手で頭を抱えてつぶやいた。


「それじゃあ、もう入って良いぞ。」



――――ガラララララ・・・。


担任がそう言うと、たくさんの女子達が見守る中教室の扉が静かに開く。
扉から出てきたのは少し小さめな背丈の少年だった。そのまま少年は黒板にチョークで丁寧な字で名前を書き出していく。



「影中 聖夜」と・・・。



「ねえねえ真ちゃん、ホラ!あれ、影中君だよ!」
影中の登場に安紀は心の底から驚いた様子で真に小声で話しかけてくる。そんな様子を見ながら真と弾は同時に似たようなことを考え出す。

「(やっぱりな・・・・。)」

「(予想通り、作者のアイデアは大抵ダメだね。)」


そんなことを言っている間に、影中は自己紹介を始める。


「えっと・・・、今回このクラスに転校してきた影中 聖夜(かげなか せいや)です。よろしくお願いします・・・。」


影中が一礼すると教室中が今度は男女共にざわめき出す。



「ねぇ、あの子、中々格好良くない!?」

「クソー!イケメンよりにもよって美男子かよ〜〜〜〜〜〜!!!」

「ああ、神様・・・・。そう!あの子と私の出会いは運命だったのよ!」

「ハァハァ・・・。オレタチノテキハミナゴロシダ・・・・・。」

教室中の生徒がそれぞれ勝手にしゃべり出す。これにより教室のざわめきは一向に収まる気配を見せない。

・・・・・だがそれは確実に担任の怒りを買う事へとつながる。


「・・・・お前らぁぁぁ!いい加減静かにしろぉぉぉ!!!」

教室中に担任の『サンダー・ボルト』が炸裂し、先程のざわめきは一瞬にして消え失せる。
・・・・・さすがは禁止カードと言うだけはある。その威力は計り知れない。


「もういい!ホームルームは以上だ!解散!」

教卓をバン!と強く叩き、担任は多少職場放棄気味に教室を出て行った・・・・・。




――――――――――――。


―――――――――。


――――――。






・・・・・・・・・・・・・・・・そしてその日の昼休み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





「『六武衆−ヤリザ』の効果でプレイヤーにダイレクトアタック!」

真の攻撃宣言を受け、『ヤリザ』が相手フィールド上に存在する『ギル・ガース』の間を駆け抜け、相手プレイヤーの眼前で槍を構える。



――――旋・風・槍!



「だあああっ!!」


少年A LP1000→0


「ッシャア!俺の勝ちだ!」



PM12:45
『ヤリザ』の放つ一撃が少年の腹部へと炸裂したことにより、真の勝利が確定する。デュエルに負けた少年はへなへなとそのまま床に座り込む。
ここは千得州高校の食堂兼購買部・・・。
豊富なメニューと値段の割に多い料理のボリュームのおかげか、毎日楽しく昼食を食べる生徒で大盛況している。


「へっ!俺の目が黒いうちは『焼きそばパン』絶対渡さねぇぜ!覚えておきな!」

「クッソ〜!覚えとけよ!」
デッキをしまって駆け出していく学生が居なくなった後、真は棚に置いてあった最後の焼きそばパンを持ってレジへ代金を払いに行く。
・・・・・大体の人なら分かるだろうが、ついさっき真は最後の『焼きそばパン』をかけて、よく分からないが見るからに影の薄そうな少年とデュエルしていたのだ。
真は買った焼きそばパンを持って竜、安紀、影中の待っている席へと戻る。すると、カレーライスを口一杯に頬張っている安紀が声をかけて来る。


「真ちゃん・・・んぐんぐ・・・今日も・・・もぐもぐ・・・・やったね!」


「ああ。・・・・ところで影中、そろそろお前が転校してきた訳と、昨日の事について話して欲しいんだけどな。」

そう言って真は、向かいの席に座っている影中の方を見る。
彼はわかった。と、言って、食事の手を休めて話し始めた。


「まず、僕が転校してきた理由は・・・・・。」


「な、なんだよ。」


影中が少し言葉を濁す。その様子を見て、3人は思わず唾を飲む。



「・・・・・ただの父さんの転勤だよ。」



・・・・少しの静寂。



「・・・・・影中君、それだけ?」

あまりにも簡単で信じられないのか、安紀が思わず聞いてしまう。おそらく竜や真、弾も同じ気持ちだったであろう。

「うん。それだけ。」

だが、その質問も虚しく返されてしまう。



また少しの沈黙。辺りにはどこか間の抜けたオーラが漂い始めているだろう。



「・・・・・それじゃあ、昨日の説明に入って良いかな?」

とりあえずこのどこからともなくあふれ出てくるオーラを何とかしようと、このオーラの原因の影中が話題を変え始めた。

「ああ。もう勝手にしてくれ・・・・。」

話題が変わっても、真達は少々投げやり気味になっていた。・・・・がそんな彼らを一気に現実に引き戻す出来事が影中の口から発せられる事となる。





「奴らは・・・・あの大会の優勝賞品の内の1つの、『神のカード』を狙ってやってきたんだ。」





・・・・・・少しの沈黙が3人(+弾)の間に広がる。




「へっ?(はい?)」

「WAHT’S!?」

「えっ?・・・・・・えっと、影中君、『神のカード』ってあの『神のカード』の事?」

あまりの突然な話に、上から真(弾)、竜、安紀の順に思わず聞き返してしまう。

神のカード・・・・・。それはM&Wの世界に存在する3枚の超強力レアカードの事を指す。
その破壊力や強さはまさに『神』の名前にふさわしい物である。
数年前までは初代決闘王、「武藤遊戯」が3枚とも所持していると言う噂があったが、現在は何処にあるか不明の幻のカード達である。

そんな『神のカード』に驚いている3人の様子を見て影中は、「驚くのも無理はない」といった感じで再び話しを始める。


「うん、そうだよ。・・・・最も、それで何を企んでいるかは分からないけどね。
・・・・とにかく、『神のカード』は危険な物なんだ。僕が個人的に調べた物で言えば、『神のカード』を盗み出したあるカードデザイナーが、『神のカード』の力を使ってあの有名なデュエルアカデミアで騒ぎを起こしたって事件や、ペガサス氏の助手で、ある学校の創立者が神のカードを使って何人かの他校の生徒にデュエルを挑んだ事件とかだね。」

影中の少し長めの説明が終わると、ようやくこの状況を理解したのであろう竜が口を開く。


「でもよ、下手すると無茶苦茶危険なモンが何でこんな所にあるんだよ。」

「・・・・それを説明するために、もう1つ君たちに言わなくちゃいけないことがあるんだ。・・・・実は少し前に、多分ラムサ達と同じ側の人間だと思う。そいつらがI2社に厳重に保管されていた『神のカード』を盗み出そうとしたんだ。」


「でもさ、あの人達がまだ『神のカード』を探しているって事は、その時は『神のカード』は無事だったって事だよね。それじゃあえっと・・・・・・初めて盗まれそうになったときは結局I2社はどう対処したの?」

影中の話によって新たに生まれた疑問を、安紀が・・・・いつの間に平らげたのだろうか、3杯目のカレーライスに手を伸ばしながら質問する。

「あの時は、I2社に関係する人の意見で大量の『神のカード』のコピーカードを作って世界中にばらまいたんだ。そしてそれをあちこちの大会の賞品にすることにしたんだ。・・・・・多分この時偶然『神のカード』がこの町に来たんだと思う。」

「だとしたら当然奴らは嫌でも大会に顔を出さざるを得ないと言う訳か・・・・。」

影中の発言に真が納得したように頷く。だが、それに対して影中は少し表情を曇らせる。

「・・・・だけど、凄く悔しいけど今回あいつらに捕られたのはコピーじゃ無くて本物の『神のカード』だったんだ・・・・。」

「ってことは、もうあの人達の手に1枚、『神のカード』があるって事だよね。」


「こちらも対抗策は用意していたんだ。『神のカード』をばらまくのと同時に『神のカード』を手に入れようとする奴らに対抗するための組織が作り出されたんだ。・・・・・もちろん、『神のカード』もその組織の情報も一般の人には秘密だけど。」

「って事は影中や岩岡は・・・・・。」

「その通り。僕や岩岡君は対カード犯罪組織、「Card・Hunting・Crime」、通称「CHC」としてあの大会に参加していたと言うわけさ。多分、岩岡君もこの学校に来ていると思うよ。
・・・・・とりあえず、今の状況は大体こんな感じだね。ところで、質問とかあるかい?」

影中がまるで教師のように聞いてくる。すると真が椅子から突然立ち上がり、影中に詰め寄る。

「なあ、影中。『神のカード』が後2枚あるって事は、アイツは・・・・ラムサはまた現れるってことだよな?」

「う、うん。おそらく・・・・。」

真のあまりの様子に影中は少々驚きながらも答える。

「じゃあ、決まりだ。・・・・・・影中、俺もあんたらの仲間に入らせて貰うぜ。」

「おい真、マジか!?」

「真ちゃん・・・・・もしかしてまたあの人とデュエルする気なの?」

突然の真の発言に驚く竜に対し、真の考えていることを察したのだろうが、安紀が一応確認の意味で訪ねる。

「当ったり前だ!負けっ放しじゃあ俺の気が済まねえ!・・・・良いだろ、影中。」

「いいよ。・・・・こっちも強力な戦力は多い方が助かるからね。」

影中が了承すると、真は喜びのあまり大声で叫ぶ。


「ッシャア!見てろよラムサ!次こそ俺が勝ぁぁぁつ!」


・・・・・・・・

・・・・・・

・・・・

・・



・・・・・・こうして真達3人はついに『神のカード』を巡る戦いへと足を踏み入れた。
この瞬間、物語が動き出したのであった・・・・。



決闘7「プライドに懸けて・・・・・『F・G・D』融合召喚!」

PM4:30
ある日の放課後。カードショップ「戦乱」にて。

「らっしゃい!」

久々登場の虎の威勢の良い声が店内に響く。
この日、真達3人はいつも通りのカードショップ「戦乱」にやって来ていた。

「おっちゃん、いつも通り机借りるぜ。」

そう虎に伝えた3人は荷物をデュエルスペースの適当な机へと置く。竜と真はパックを幾つか選んで買おうと売り場へと向かい、安紀は鞄から自分の財布を取り出すとそのままレジへと向った。



「虎さ〜ん!いつもの!」

安紀が言うと阿吽の呼吸なタイミングで虎が1冊のカードファイルを取り出す。安紀がそれを開くと中の全てのページは『無敗将軍フリード』と『放浪の勇者フリード』の2種類で埋め尽くされていた。安紀はそれを愛おしそうに眺める。

「で、今日は何枚買うんだ、安紀ちゃん?」

そんな安紀を見ながら虎が聞くと、安紀は自分の財布の中身と相談しながら、

「う〜んっと・・・・・・全部っ!」

そう言って安紀は財布の中から数枚の福沢諭吉を素早く取り出すのにあまり時間はかからなかった。さすがはメインヒロイン、決断力が違う。(ぇ
彼女はそれを虎に渡すと、『フリード様』のみのカードファイルを代わりに受け取とると、満面の笑みを浮かべながら自分の席へと戻った。



10分後・・・・・。



「安紀ちゃん、おまたせ〜!」

安紀が自分の席で先程購入した『フリード』を眺めていると、自分たちの買い物は終えたのか、真と竜が戻ってきた。

「2人ともどうだった?」

「まあ、オレの収穫はぼちぼち。弾の方も似た感じ。」

「・・・・・全部ハズレだぁぁぁー!畜生!」

安紀の質問に上から真、竜の順で答える。・・・・・どうやら真と弾はまあまあの戦果だったようだ。
竜が椅子の背もたれに寄りかかって落胆する。

「あれ?このカード、竜のデッキに良いんじゃねえか?」

真が彼のカードを見ていく中で、1枚のカードが目に入る。その真の言葉を聞いて竜はゆっくりと起き上がる。そして真が指さすカードのテキストをじっくりと読んでいく。そして・・・・。

「こ、これは・・・・・!」

驚愕と興奮が入り交じった表情を浮かべながら彼はデッキを取り出すと、早速デッキ構築を始める。


15分後・・・・・。


「で、できたぁぁぁぁぁ・・・・。」

デッキ完成による開放感に浸りながら竜は椅子の背もたれへと体を預ける。

「竜ちゃん、お疲れの所悪いけどこれ、ちゃんとやらないと。」

安紀がそう言って、竜に数枚のプリントと筆記用具を渡す。真も同様にプリントと筆記用具を取り出した。
そのプリントの上の端には「家庭学習用英語プリント、期限:次の授業終了まで。」と記載されていた

「はいはい分かってますよ・・・・・・。
――それにしても、何で宿題なんて面倒くさいもの出すんだよ?・・・・・ったくあの英語教師め・・・・。」

そう言いながら竜は手持ちのシャープペンシルでレポート用紙を軽くつつく。真も似たような状態でうなだれている。どうやら2人とも英語は苦手のようだ。

「でも竜ちゃん、出さないとまた前みたいに補習行き決定だよ?」

安紀の「補習」と言う言葉が真と竜、2人の胸にグサリと突き刺さる。この言葉はこの2人にとって余りよい思い出がないみたいだ。

「ハァ・・・・とりあえず始めるか・・・・。」

補習がよほど嫌なのか真と竜は渋々、安紀はやる気満々な様子でペンを取ってプリントへと向かうのであった・・・・・。




――――カリカリカリカリカリ・・・・・。




今、辺りで騒いでる子供達の騒ぎ声とペンの滑る音のみが3人を包んでいた。だが、・・・・・。



「見つけたぞ!貴様が飛立竜だな!」



と言う声で、3人の静寂は打ち砕かれることとなる。突然の大声に3人は愚か、客としてきていた子供達も一斉に振り返った。そこには1人の少年が立っていた。背は割と高く、きちっと制服を着ており、いわゆる、「優等生タイプ」みたいな少年だ。紺色の制服から、真達と同じ千得州高校の生徒だろう。そして彼の右手は、

――――ズビシィッ!

と、強くこちらを指さしていた。

「え〜と・・・・・どちらさま?」

名前を呼ばれたれ竜が、とりあえず名前を聞く。すると少年は腰に手を当て不気味な笑みを浮かべた。

「フフフ・・・・よくぞ聞いてくれたな!私の名前は、屋羅礼 躍(やられい やく)だ!飛立竜、私とデュエルだ!」

「ちょっ、何で・・・・!?」

突然のデュエルの申し込みに、竜は驚きを隠せない。

「ええい!いちいちそんなことも説明しないと解らないのか貴様は!
 まあ、仕方がない。この私が特別に説明してやろう。」

この屋羅礼少年の言動や態度に3人は「疲れる・・・・。」と本気で思った。
だがそんなことは関係ないように少年は語り出す。

「・・・・・貴様は先日のこの店主催の大会に出場したな?」

突然少年はこの前、ラムサが乱入した大会の話を切り出す。

「あ、ああ。でも、それがどうした?」

「そこで貴様はなんと言うことか、私のもっとも尊敬する海馬様の魂のカード、『青眼の白龍』を『F・G・D』(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の融合素材にしてしまった!
でもまあ、そこまでは特別に許そう。・・・・・だが貴様は『青眼の白龍』を犠牲にしたのに負けた!だから、この場で貴様に制裁を与え、『青眼の白龍』の素晴らしさを教えてやる!」

屋羅礼少年の発言に安紀と真(弾)の3人は唖然とする。

「え、え〜と・・・・・。」

とりあえず3人は事態を飲み込もうと必死になる。・・・・・大体事態を飲み込めると同時に大量の疑問が頭の中へと押し寄せてきた。



なぜインパクトがある登場の割には目的が小さいのか?

なぜ物語が動き出した今になって使い捨てキャラがいちいち出てくるのか?

なぜ優等生キャラみたいなのがこんな因縁をつけてくるのか?

なぜこの小説では『青眼の白龍』にこだわる人が多いのだろうか?

なぜこいつの台詞はこんなに長いのか?

そしてなぜ『ジャックス・ナイト』のOCGでのレベルは4ではないのか?(←関係ない。)



だが、そんな大量の疑問を前にしても後の2人と違って竜は全く動じてない。それどころか、屋羅礼少年の用に不敵な笑みさえ浮かべている。

「フッフッフ・・・・・。良いだろう。だが最初に言っておく!俺は『青眼の白龍』は素晴らしいドラゴンだとは思っているし、海馬瀬人も多少は尊敬している。だが・・・・」

そこまで言って竜は一呼吸置くと一気にしゃべり出す。

「俺のもっともリスペクトしているドラゴンは『F・G・D』だぁぁぁ!!!!
よって俺は『F・G・D』の名誉と俺自信のプライドの為にお前のデュエル、受けて立つぜ!」

そう言って机に置いてある自分のデッキを取り出す。

「ねえねえ真ちゃん、これぞ本当の決闘(けっとう)だよ、決闘(けっとう)!」

竜のデュエル宣言の間に事態を飲み込んだのか、安紀が少々はしゃぎ気味で真に話しかけてくる。

「なんだか面白いことになっちゃってるね。」

そんな時、真と安紀の間にどこから現れたのだろうか影中が会話に入ってきた。当然2人は彼の登場にかなり驚く。

「か、影中!どうしてお前がここに!?」

「この前大会参加のために慌てて来たっきりであまりこの町を見てないから見学してたんだ。そしたら君たちがいたからね。声を掛けたって訳さ。」

影中が至極当たり前のように訳を説明する。

「それにしてもこれは彼の実力を知る良い機会だね。」

そう言って影中は今まさにデュエルしようとしている2人の方を見る。

「虎さん!」

「おうよ!お前等派手に楽しく暴れてこい!」

竜と屋羅礼少年が叫ぶと虎がカウンターからデュエルディスクを2つこちらに向かって投げる。2人はそれを装着すると距離を取ってからディスクの電源を入れた。

「デュエル!」

竜LP8000 LP8000

「私の先攻、ドロー!私は『ガーゴイル・パワード』を攻撃表示で召喚!カードを1枚セットしてターン終了だ!」



『ガーゴイル・パワード』
闇 悪魔族 レベル4 ATK/1600 DEF/1200
闇の力を得て強化されたガーゴイル。かぎづめに注意!



彼のフィールドに紫の装甲に身を包んだ悪魔が現れる。その外見から、悪魔族と言うより機械族と言った方が良いのかもしれない。
そして竜のターンへと移る。

「俺のターン、ドロー!(あの伏せカードは罠か?それなら・・・!)」

竜は少し考え込んで手札からモンスターを1体選び出し、フィールドに召喚する。

「俺は『リプラニッシュ・ドラゴン』を攻撃表示で召喚!」



『リプラニッシュ・ドラゴン』
風 ドラゴン族 レベル4 ATK/1700 DEF/ 400
フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキからカードを1枚ドローする。



「『リプラニッシュ・ドラゴン』で『ガーゴイル・パワード』を攻撃!(このカードなら罠カードで破壊されてもドローが出来るぜ!)」

竜のフィールドに現れたドラゴンは体をうねらせながらものすごい勢いで『ガーゴイル・パワード』へと飛びかかる。

「フフフ・・・・。罠発動!『闇の呪縛』!」

1枚のカードが表向きとなり、そのカードからいくつもの鎖が飛び出して『リプラニッシュ・ドラゴン』を絡め取る。



『闇の呪縛』 永続罠
相手フィールド上の表側表示モンスター1体を選択する。そのモンスターは攻撃力が700ポイントダウンし、攻撃と表示形式の変更ができなくなる。選択したモンスターがフィールド上から存在しなくなった時、このカードを破壊する。



「このカードの効果によって『リプラニッシュ・ドラゴン』の攻撃は無効!さらに攻撃力が700ポイントダウンだ!」

『リプラニッシュ・ドラゴン』 ATK/1700→1000


「くそ・・・・!ターン終了だ。」

「私のターン、ドロー!私は『ブラッド・ヴォルス』を攻撃表示で召喚!そしてそのまま『リプラニッシュ・ドラゴン』に攻撃!」

屋羅礼少年の攻撃宣言と共に『ブラッド・ヴォルス』は走り出し、『闇の呪縛』によって動きが封じられた『リプラニッシュ・ドラゴン』に斧を振り下ろす。

――ブラッディ・アックス!――

「くっ・・・。」

竜LP8000→7100

『ブラッド・ヴォルス』の斧によって『リプラニッシュ・ドラゴン』は一刀両断され、竜のライフポイントが少し減少した。

「だが、今破壊された『リプラニッシュ・ドラゴン』の効果でデッキからカードを1枚ドロー!」

「そんな事など関係ない!さらに『ガーゴイル・パワード』でプレイヤーにダイレクトアタック!」

『ブラッド・ヴォルス』の攻撃に続くように『ガーゴイル・パワード』が竜に向かって光線を放つ。

――パワード・ビーム!――

「ぐぁぁぁぁ!!」

竜LP7100→5500

「ターン終了だ。どうした?貴様の実力はこの程度なのか!?」

「俺のターン、ドロー!俺は『未来融合−フューチャー・フュージョン』を発動!」



『未来融合−フューチャー・フュージョン』 永続魔法
自分のデッキから融合モンスターカードによって決められたモンスターを墓地へ送り、融合デッキから融合モンスター1体を選択する。発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時に選択した融合モンスターを自分フィールド上に特殊召喚する(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)。このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。



「デッキから、『サファイア・ドラゴン』、『ダークブレイズドラゴン』、『アックス・ドラゴニュート』、『ミラージュ・ドラゴン』、そして、『青眼の白龍』の合計5枚を墓地に!これにより2ターン後のスタンバイフェイズ時に俺の敬愛するドラゴン、『F・G・D』が降臨するッ!」

偉そうな発言をする屋羅礼少年を完全無視し、竜はデッキを取り出すと素早く5枚のカードを選び出し、墓地へと送る。



『サファイア・ドラゴン』
風 ドラゴン族 レベル4 ATK/1900 DEF/1600
全身がサファイアに覆われた、非常に美しい姿をしたドラゴン。争いは好まないが、とても高い攻撃力を備えている。



『ダークブレイズドラゴン』
炎 ドラゴン族 レベル7 ATK/1200 DEF/1000
このカードが墓地からの特殊召喚に成功した時、このカードの元々の攻撃力・守備力は倍になる。このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。



『アックス・ドラゴニュート』
闇 ドラゴン族 レベル4 ATK/2000 DEF/1200
このカードは攻撃した場合、ダメージステップ終了時に守備表示になる。



『ミラージュ・ドラゴン』
光 ドラゴン族 レベル4 ATK/1600 DEF/600
このカードが自分フィールド上で表側表示で存在する限り、相手はバトルフェイズに罠カードを発動する事ができない。



『青眼の白龍』
光 ドラゴン族 レベル8 ATK/3000 DEF/2500
高い攻撃力を誇る伝説のドラゴン。どんな相手でも粉砕する、その破壊力は計り知れない。



「ええい、貴様!またもや『青眼の白龍』をそのようなことにぃぃぃ!許さん!」

「俺は『デコイドラゴン』を守備表示で召喚!そして魔法カード、『タイムカプセル』を発動してターン終了!」



『デコイドラゴン』
炎 ドラゴン族 レベル2 ATK/ 300 DEF/ 200
このカードが相手モンスターの攻撃対象になった時、自分の墓地からレベル7以上のドラゴン族モンスター1体を選択して自分フィールド上に特殊召喚し、攻撃対象をそのモンスターに移し替える。



『タイムカプセル』 通常魔法
デッキからカードを1枚選択し、裏側表示でゲームから除外する。発動後2回目の自分スタンバイフェイズにこのカードを破壊し、除外されたカードを手札に加える。



竜のフィールド上に見た目がかわいらしいドラゴンと棺、そして裏向きのカードが1枚現れる。

「私のターン、ドロー!・・・フフ・・・ワハハハハ!!」

屋羅礼少年はドローしたカードを確認すると高らかな笑い声を上げる。さすがの竜も相手の豹変ぶりに少し引いてしまう。

「私が引いたカードは・・・・・『青眼の白龍』!私は『ガーゴイル・パワード』と『ブラッド・ヴォルス』の2体を生け贄に捧げて・・・・・『青眼の白龍』召喚!フハハー!!凄いぞ〜!かっこいいぞ〜!」



『青眼の白龍』
光 ドラゴン族 レベル8 ATK/3000 DEF/2500
高い攻撃力を誇る伝説のドラゴン。どんな相手でも粉砕する、その破壊力は計り知れない。



2体のモンスターが光となって消滅し、神々しく輝く白き竜、『青眼の白龍』が降臨する。

「そして、その忌々しい雑魚モンスターを攻撃!」

『青眼の白龍』の口に光り輝く巨大なエネルギー体が出現する。それは瞬く間に巨大化し、竜の場の『デコイドラゴン』に向かって発射される。


――滅びの爆裂疾風弾(バーストストリーム)!――

「ヘッ・・・・・・・実はお前馬鹿だろ!」

「何!私は決して馬鹿などではないっ、断じて!」

竜の突然言い出した「お前馬鹿だろ」発言を全否定する屋羅礼少年。

「いいや、やっぱお前馬鹿だ!こいつの効果も知らないなんてなぁ!『デコイドラゴン』の効果発動!墓地から『青眼の白龍』を特殊召喚して、こいつと強制戦闘!」

「な、何〜!」

あまりの突然さに屋羅礼少年は間抜けな声を上げてしまった。
そして『デコイドラゴン』と爆裂疾風弾(バーストストリーム)の間に1体の白き竜が降臨する。その竜は飛んできた光球と同じ光球で迎え撃とうとする。

「バトルするのは『青眼の白龍』同士、よって攻撃力は互角により相打ちだ!」

お互いの爆裂疾風弾(バーストストリーム)の衝突により、2体の白き竜は消滅する。
爆風が晴れる頃、小さな竜がひょっこり姿を現す。

「くそ・・・!わ、私はカードを1枚セットしてターンエンドだ・・・・。」

かなり動揺した様子で屋羅礼少年はターンを終えた。

「俺のターン、ドロー!」

『未来融合−フューチャーフュージョン』、『F・G・D』召喚まで後1ターン。

「俺は『エレメント・ドラゴン』を召喚!」



『エレメント・ドラゴン』
光 ドラゴン族 レベル4 ATK/1500 DEF/1200
このモンスターはフィールド上に特定の属性を持つモンスターが存在する場合、以下の効果を得る。
●炎属性:このカードの攻撃力は500ポイントアップする。
●風属性:このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、もう1度だけ続けて攻撃を行う事ができる。



「フィールドには炎属性の『デコイドラゴン』が存在する。よって『エレメント・ドラゴン』の攻撃力は500ポイントアップ!」

『エレメント・ドラゴン』 ATK/1500→2000

「さらにライフを800払い、魔法カード、『早すぎた埋葬』発動!墓地の『ダークブレイズドラゴン』を特殊召喚!」

竜LP5500→4700




『早すぎた埋葬』 装備魔法
800ライフポイントを払う。自分の墓地からモンスターカードを1枚選択して攻撃表示でフィールド上に特殊召喚し、このカードを装備する。このカードが破壊された時、装備モンスターを破壊する。



「『ダークブレイズドラゴン』の効果でこのモンスターの攻撃力・守備力は2倍になる!」


『ダークブレイズドラゴン』 ATK/1200→2400 DEF/1000→2000



「そしてバトルフェイズ!『ダークブレイズドラゴン』でプレイヤーにダイレクトアタック!」

――ダークブレイズ・フレア!――

「私の『青眼』は不滅だぁぁぁ!リバースカード、オープン!『正統なる血統』!」



『正統なる血統』 永続罠
自分の墓地から通常モンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。そのモンスターがフィールド上に存在しなくなった時、このカードを破壊する。



「このカードの効果によって『青眼の白龍』は墓地からまた華麗に蘇る!」

地面からフィールドに光が発せられ、その光と共に先程破壊された『青眼の白龍』が蘇る。

「攻撃は中断だ・・・・!カードを1枚セットしてターンエンド。」

「私のターン、ドロー!まずは、『カイザー・シーホース』を攻撃表示で召喚。



『カイザー・シーホース』
光 海竜族 レベル4 ATK/1700 DEF/1650
光属性モンスターを生け贄召喚する場合、このモンスター1体を2体分の生け贄とする事ができる。



「そして私は『滅びの爆裂疾風弾(バーストストリーム)』を発動!」



『滅びの爆裂疾風弾』 通常魔法
「青眼の白龍」が自分フィールド上に表側表示で存在している時のみ発動する事ができる。相手フィールド上のモンスター全てを破壊する。このカードを発動したターン「青眼の白龍」は攻撃できない。



「フハハハハハハハ!!このカードにより貴様のモンスターは全滅だぁ!」

再び『青眼の白龍』の口に光り輝く巨大なエネルギー体が出現する。それは瞬く間に巨大化し、今度は竜の場のモンスター全てに向かって発射される。その衝撃により、今度こそ竜の場のモンスターは全滅する。

「これこそ、強靱・無敵・最強!カイザー・シーホースでプレイヤーにダイレクトアタック!」

『カイザー・シーホース』が矛を振り回しながら接近し、突きによる攻撃を繰り出す。

「ぐはっ・・・・!」

竜LP4700→3000

「『滅びの爆裂疾風弾』を使ったターンは『青眼の白龍』は攻撃することが出来ない。よって私のターンは終了だ。
フフフ・・・・どうだ!貴様と私のライフの差は歴然、その上私の場にはハイステータスモンスター、『青眼の白龍』が存在する!フハハハハハハハ!!!」

――――ズビシィッ!

登場時と同じように屋羅礼少年がこちらを指差しながら高らかに笑う。



「ど、どうしよ真ちゃん!竜ちゃん、大ピンチだよ〜!」

追い詰められた様子の竜のフィールドを見て安紀が慌てた様子で真に聞いてくる。

「安心しな!次の竜のターンで『アレ』が出るからよ!」

3人はフィールドの方を再びみる。

「俺のターン、ドロー!このターン、『未来融合−フューチャーフュージョン』の効果で・・・・・・・キタキタキタキタキターーーーー!!!!!!!!!!!『F・G・D』、降・臨!」

彼のフィールドに時空の歪みが生じ、その裂け目から5つの首を持つ竜が姿を現す。



『F・G・D』 融合モンスター
闇 ドラゴン族 レベル12 ATK/5000 DEF/5000
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。ドラゴン族モンスター5体を融合素材として融合召喚する。このカードは地・炎・風・闇属性のモンスターから戦闘ダメージを受けない。



「さらに『タイムカプセル』の効果発動!2ターン前に選択したカードを手札に!」

彼の場の棺がゆっくりと開き、1枚のカードがその中から現れる。

「そして追撃&勝利への罠カード、『アンシスターズ・ヒストリー』を発動!」


「あのカードはさっきあいつが買った中の・・・・!」



『先祖達の歴史(アンシスターズ・ヒストリー)』 通常罠
種族を1つ宣言する。デッキまたは手札から宣言した種族のモンスターを裏側表示で任意の枚数除外する。除外したモンスター1枚につき1体、墓地から選択したモンスターを手札に加える



「このカードの効果で俺はドラゴン族を宣言し、デッキからカードを5枚除外!そして墓地の『サファイア・ドラゴン』、『ダークブレイズドラゴン』、『神竜−エクセリオン』2枚、そして、『青眼の白龍』の合計5枚を手札に加える!」

墓地とデッキからドラゴンたちの咆哮が聞こえ、それらはやがてカードへと姿を変えて竜の手札へと加わった。

「まだまだいくぜ!魔法カード、『融合』!今加えた5枚のドラゴン族モンスターを融合!融・合・召・喚!『F・G・D』!!!」



竜のフィールドに2体目の『F・G・D』が降臨する。

「このモンスター達の攻撃で、わ、私のモンスターが全滅だと・・・・!」

屋羅礼少年にはもう目の前の光景にただただ唖然するしかない。

「まだまだぁぁ!トドメの魔法カード、『龍の鏡(ドラゴンズ・ミラー)』!」

「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・。」

巨大の鏡が出現し、ものすごい重低音が辺りに鳴り響く。



『龍の鏡(ドラゴンズ・ミラー)』 通常魔法
自分のフィールド上または墓地から、融合モンスターカードによって決められたモンスターをゲームから除外し、ドラゴン族の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)



「この効果で墓地の『リプラニッシュ・ドラゴン』、『サファイア・ドラゴン』、『デコイドラゴン』、『アックス・ドラゴニュート』、そして『青眼の白龍』の5枚をゲームより除外!」

「う、うそだろ・・・・!」

「へ〜。これは面白い。」

「竜ちゃん、すっごい〜!」

竜の行動に、上から真、影中、安紀の順で感嘆する。

「『F・G・D』融・合・召・喚・3・連・発!」

巨大な鏡から大地を揺さぶるように、5つの首を持つ巨大な龍が姿を現した。コレにより、彼の場に存在する15つの首1つずつがそれぞれの咆哮を勇ましく上げる。

「『F・G・D』で一斉攻撃!」

――F・G・D(ファイブ・ゴッド・デストラクション)3レンダァ!――

屋羅礼LP8000→6000→2700→−2300


「わ、私の『青眼』が〜〜〜〜〜〜!!!!!」

デュエル終了によりうっすらと消えていくモンスター達の横で屋羅礼少年はがっくりと肩を落とし、その場へ座り込む。

「どうだ!『F・G・D』の力、思い知ったか!」

――――ズビシィッ!

床でヘタレている屋羅礼少年に今度は竜が指を差す。

「こ、今回は負けを認めますが、次回こそ私が勝ちます!覚えておきなさい!」

そう言って彼は立ち上がり、その場から逃げ出すように去っていった。

「(結局アイツ、何だったんだ?・・・・・まあ、良いか。)それじゃあ、デュエルには勝ったし、帰るか!」

「ああ!」

「そうだね。」

「うん!」

そして3人(+影中)は荷物をまとめてそれぞれの家路につくのであった・・・・・・。



――――――。

―――――――――。

――――――――――――。



PM11:00
そしてその夜・・・・・。
真(弾)の自宅にて。

「くっそ〜!全ッ然終わらねぇ〜〜〜〜!」

真は深夜、1人宿題に取り組んでいた。

「くっそー!今日はデュエルは出来ないし、あのぱっとでキャラの乱入で宿題も終わらねぇし散々な1日だったぜ!」

彼は大声で文句を叫ぶが、弾の方は「真の愚痴&宿題の内容を聞くのが面倒くさいから」とすぐに寝てしまっている始末である。

「グチグチいってもやらなかったら補習の可能性が・・・・・・仕方がないか・・・・。」
彼は再びペンを取り、補習回避のため渋々英語の宿題へと向かっていくのであった・・・・・。



決闘8「戦いの始まり〜前編〜」

――――キーンチャーンラーメーン・・・・・。




PM4:40
某日の放課後。

1日の授業も全て終わり、生徒達はそれぞれ、部活や家にに帰ろうとする。真もそれに習って自分の荷物を鞄にしまうと、安紀や竜の元へと向かおうと席を立つ。

「おい、帰ろうz・・・・・って、あれ?」

だが、教室に2人の姿はなかった。不思議に思って廊下に出て前後を見回すが、そこにも2人の姿はない。

「まあ・・・・・先に帰るか。」

真は何も言わずにいなくなった2人に疑問を持ったが、「あいつらにも用事があるのだろう」とあまり深く考えずに教室を後にして下駄箱へと向かった。



そして下駄箱。





――――パサッ・・・・。


「あれ・・・・・何だこれ?」

真は自分の下駄箱から靴を取り出そうとした時、何かが落ちたのに気づいた。真はそれを拾うとそれが何なのかを確認する。

「何だ。手紙か。」

それは真が言う通り、綺麗に包装された1通の手紙だった。送り主の名は書いていなかったが、裏面に「2−D 武斬 真へ」と書いてあった。

「(・・・・なあ、弾。この手紙、俺宛みたいだけど、一体何なんだ?)」

しばらく手紙を眺めていた真だが、この手紙の意味がイマイチ理解できないからか弾に訪ねる。

「(とりあえず、読んでみたら?・・・・内容によっては真に春が来るかもよ。)」

「(何言ってんだ?今は思いっきり春だぞ?)」

弾の言うことに首をかしげながらも言われた通り真は手紙を読むことにしたのか、手紙の封を開ける。

「えっと、【本日放課後、1人で体育館裏に来て下さい。あなた方のお友達もそこにいます。】・・・って・・・・・・これってもしかして・・・。」

「(と、とりあえず言われたとおり体育館裏に行ってみよう。)」

「あ、ああ・・・・。」

とりあえずこのままでは何も変わらないと言うことで真は弾の助言に従って、自分の靴を履くと体育館裏へと向かった。


――――――――――――。


―――――――――。


――――――。




そして体育館裏・・・・。部活動に精を出す生徒の声が遠くで聞こえる中、真は奥の物陰に1人の人間が立っているのに気づいた。

「俺をここに呼んだのはお前か?」

真がその人影に声を掛けると、その人間はこちらに振り向きゆっくりと歩いてくる。それに伴い、その人影が夕日に照らされてその姿が浮かび上がる。背は真より少し低いぐらいだろうか。腰ぐらいまで伸びた赤っぽい色の髪が印象的な1人の少女であった。

「ええ、あなたなら来てくれると思っていました。私は、森林 愛菜(もりばやし あいな)と言います。」

その少女は丁寧に礼をすると共に挨拶をし、自分の名前を述べた。

「まずは質問させろ。・・・・竜や安紀は無事か。」

「ええ。用件が終わり次第お返しします。この事についてはこれ以上申し上げることは出来ません。」

まだ完全に無事を確認したわけではないが、向こう側が「これ以上答えない」と言っている以上、真はとりあえず話を先に進めることにした。

「そうか・・・・・じゃあ、お前が何者なのかって事とお前の目的を聞かせてくれ。」


「『神のカード』・・・・・これだけで、私が何者なのかお解りでしょう?」


そう言って彼女は軽く微笑む。だが、そんな彼女の様子と裏腹に、真の表情に少し焦りが浮かび始める。

「(『神のカード』・・・・・って事はまさか、ラムサの仲間か!?)」

「(・・・真、とにかく落ち着いて。まだそうと決まったわけじゃない。それに行動する前にまずは相手の目的を知ってからだ。)」

「(あ、ああ・・・・。)」

相手がラムサの仲間かもしれないと思い、とっさに身構える真を弾が落ち着かせる。そして目の前の少女・・・・愛菜を見据える。

「そして私の目的ですが、ここで・・・私とデュエルして下さい。私の目的はそれだけです。」

「わ、分かった。・・・・・ってそれだけ?」

もっと事が大きくなると思っていた真は、彼女が言った予想外な目的に少し唖然とする。

「ええ。それでは、始めましょうか。」

そう言って彼女は真と少し距離を取ってデュエルディスクの準備をする。真も自分の鞄からデュエルディスクを取り出して腕に装着する。

「・・・・・ただし、『六武衆』以外のデッキでお願いします。」

「何だって!?」

相手の出した条件に真は今日何度目かの驚きの声を上げる。

「『六武衆』以外のデッキは持っているはずでしょう?今回はそれで私とデュエルして頂きたいのです。」

「あ、ああ。一応、持っているが・・・。(何が狙いなんだ・・・・?まあ、仕方がないから弾、ここは頼んだ。)」

「(OK。)」

そして真と弾が入れ替わり、表に出てきた弾が改めて弾自身のデッキを取り出してデュエルディスクを起動させる。

「準備が出来ましたか。それでは・・・・・。」

「デュエル!」

お互いのディスクにライフカウンターが表示され、2人のデュエルが始まった。

弾LP8000 愛菜LP8000

「それでは私からいきます・・・・ドロー!まずはフィールド魔法、『森』を発動します。」

愛菜がカードをデュエルディスクにセットすると同時に辺りが少し暗くなる。弾が上を見上げるとそこには自分の背丈の2倍以上は有るであろう木々が空の一部を覆い隠していた。



『森』 フィールド魔法
全ての昆虫・植物・獣・獣戦士族モンスターの攻撃力と守備力は、200ポイントアップする。



「さらにモンスターをセットしてターン終了です。」


「なら僕のターン、ドロー!まずは魔法カード『強欲な壷』を発動!デッキからカードを2枚ドロー。」

弾のフィールドに貧の悪いデザインの壷が現れる。弾がデッキからカードを弾き終わるとそれと同時にフィールドの壷が割れて消滅する。



『強欲な壷』 通常魔法
自分のデッキからカードを2枚ひく。ひいた後で強欲な壺を破壊する。



「そして『サイバー・ドーベル』を攻撃表示で召喚!」

弾のフィールドに機械の装甲を持つ犬型のモンスターが現れる。



『サイバー・ドーベル』
光 機械族 レベル3 ATK/1600 DEF/ 700
このカードが墓地に存在する限り、フィールド上に存在する『サイバー』と名のついた機械族モンスターの攻撃力を300ポントアップする。既に墓地に『サイバー・ドーベル』が存在する場合この効果は発動しない。



「バトルフェイズ!『サイバー・ドーベル』で伏せモンスターに攻撃!」

弾の攻撃宣言と共に『サイバー・ドーベル』が愛菜のモンスター目掛けて走り出す。

「この瞬間、私のセットしてあるモンスターの効果が発動します!」

「何だって!」

飛びかかって来る弾のモンスターを前に愛菜が効果発動を宣言する。
すると彼女のフィールドに、突如食虫植物のようなモンスターが現れる。そのモンスターは完全に不意を突かれた『サイバー・ドーベル』に食らいつく。

「『サイバー・ドーベル』が破壊された・・・・?」

弾LP8000→7400

『サイバー・ドーベル』が完全に口の中へと消えるとと共に、弾のライフポイントが減少する。突然の反撃に弾は驚きが隠せない表情で今なお愛菜のフィールドにいる食中植物を見やった。

「説明がまだでしたね。今のは私の『ハンティング・プラント』の効果による物です。」

そう言って愛菜は少し微笑む。そして彼女はディスクから『ハンティング・プラント』のカードを取り出して弾に向けて差し出した。



『ハンティング・プラント』
地 植物族 レベル4 ATK/1600 DEF/400
リバース:このモンスターの攻撃力をターン終了時まで400ポイントアップする。リバースしたこのモンスターが相手モンスターを戦闘で破壊し墓地に送った場合、このモンスターの攻撃力を100ポイントアップする。
裏側守備表示のこのモンスターが相手モンスターの攻撃対象となった場合、このモンスターを表側攻撃表示にすることが出来る。



「今の弾さんのモンスターの攻撃でこの子の効果が発動し、このモンスターが攻撃表示となりました。そして『森』とリバース効果で攻撃力が合計600ポイントアップして改めて弾さんのモンスターと戦闘した、と言うわけです。」

「なるほどね。これは中々厄介だぞ・・・・・。」

愛菜の説明が終わると弾が納得したように頷いた。そして読み終わったカードを愛菜の元へと返す。

「まだこれだけではありません。さらに相手モンスターを戦闘で破壊したことによりこの子の攻撃力はさらに上昇します。」

先程の戦闘で捕食した『サイバー・ドーベル』を吸収したのか、『ハンティング・プラント』の体長が少し大きく成長する。

『ハンティング・プラント』 ATK/2200→2300

「じゃあ、僕はカードを2枚セットしてターン終了だ。」

「弾さんのエンド宣言によって『ハンティング・プラント』の攻撃力は元に戻ります。」

『ハンティング・プラント』 ATK/2300→1900

「それでは私のターン、ドロー!リバースカード1枚をセットします。『ジェリービーンズマン』を攻撃表示召喚します。」

彼女のフィールドにかわいらしい豆の戦士が現れた。だが、可愛い見た目とは裏腹に攻撃力はLv3通常モンスターの中で最高クラスのカードだ。



『ジェリービーンズマン』
地 植物族 レベル3 ATK/1750 DEF/ 0
ジェリーという名の豆戦士。自分が世界最強の戦士だと信じ込んでいるが、その実力は定かではない。



「さらに『森』の効果で攻守200ポイントアップします!」


『ジェリービーンズマン』 ATK/1750→1950 DEF/ 0→ 200


「そしてバトルフェイズ!まずは『ジェリービーンズマン』で弾さんにダイレクトアタック!」

その手に光る小さな剣をひらめかせ、『ジェリービーンズマン』が勇ましく弾へと斬りかかる。


――ビーンズラッシュ!――


「ぐわっ・・・・!」

弾LP7400→5450

「続いて『ハンティング・プラント』で攻撃!」

先程『サイバー・ドーベル』を一飲みにした口が今度は弾に向かって噛み付いてくる。

「うわぁぁ!!」

弾LP5450→3350

「これで私のターンは終了です。」

愛菜がはっきりとエンド宣言をする。・・・・このターンの内に弾のライフは大幅に削られてしまった。

「痛ってて・・・・僕のターン、ドロー!」

体制を立て直しながら弾は新たなカードをドローする。そしてそのカードとお互いの状況を確認する。やがて考えがまとまったのか手札の1枚のカードに手を掛ける。


「僕は『サイバー・ドラゴン』を攻撃表示で特殊召喚!そしてそのまま『ハンティング・プラント』を攻撃!」



『サイバー・ドラゴン』
光 機械族 レベル5 ATK/2100 DEF/1600
相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在していない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。



「!・・・失礼でしょうが、このままだと『ハンティング・プラント』の方が攻撃力が上ですよ?」

弾の予想外の攻撃宣言に愛菜は少々驚きながら弾に聞き返す。

「問題ないよ。墓地に存在する『サイバー・ドーベル』の効果発動!」

「えっ?」

先程『ハンティング・プラント』の」効果で弾を驚かした愛菜だが、今度は弾の効果発動に驚いてしまった。

「『サイバー・ドーベル』が墓地に存在する時、『サイバー』と名の付く機械族モンスターの攻撃力が300ポイントアップするんだ。よって、『サイバー・ドラゴン』の攻撃力は2400!」

『サイバー・ドラゴン』 ATK/2100→2400

「それじゃあ改めてバトル!」

――エヴォリューション・バースト!――

「そうでしたか・・・・それなら!永続罠発動、『ナチュラル・トラップ』!」



『ナチュラル・トラップ』 永続罠
自分フィールド上の植物族モンスターが攻撃対象にされた時、対象となった植物族モンスターの攻撃力を1500ポイントダウンさせ、攻撃モンスターをデッキの一番下に戻す。『森』がフィールド上に存在しない場合、このカードを破壊する。自分のスタンバイフェイズに800ライフ払う。払わない場合このカードを破壊する。



「『ハンティング・プラント』の攻撃力を1500ポイントダウンして効果発動!」

そう言った瞬間、周りの植物から『ハンティング・プラント』に幾つかの根が突き刺さる。すると『ハンティング・プラント』がみるみる小さくなっていく。

『ハンティング・プラント』 ATK/1900→400

「これにより攻撃モンスター・・・・つまり『サイバー・ドラゴン』をデッキの一番下へ送ります!」

『ハンティング・プラント』の養分を吸収し、大きく成長した植物からツタが伸びる。それらは『サイバー・ドラゴン』を絡め取り、そのまま地面へと引きずり込んだ。

「(弾、大丈夫か!)」

大分押され気味の弾に真が思わず声を掛ける。そんな真の心配など無駄だったのか、弾は楽しそうにこう言った。

「(あの子は中々、いや、かなりの上手だ。これは厳しいデュエルになるぞ・・・・。)」

そして弾は手札からモンスターを1体選び出して召喚する。

「『サイバー・サラマンダ』を守備表示で召喚してターン終了だ!」



『サイバー・サラマンダ』
炎 機械族 レベル3 ATK/1300 DEF/400
このモンスターが戦闘で破壊されて墓地に送られた場合、デッキからレベル4以下の『サイバー』と名の付く機械族モンスターを1体、デッキから特殊召喚することができる。



弾のフィールドに数ターン前に存在していた『サイバー・ドーベル』と似た装甲を持つモンスターが召喚される。しかしその見た目は犬型では無く、蜥蜴に近いと言える。

「私のターン、ドロー!まずは『ナチュラル・トラップ』の維持コストととして800ライフポイント払います。」

愛菜LP8000→7200

「そして『ハンティング・プラント』を生け贄に『妖精王オベロン』を攻撃表示で召喚!」

愛菜の場の食虫植物が光となって消滅し、代わりに1体のモンスターが現れる。その瞳は碧く輝き、先程まで激闘で荒れていたフィールドに自然と凛とした空気を醸し出していた。



『妖精王オベロン』
水 植物族 レベル6 ATK/2200 DEF/1500
このカードが表側守備表示で存在する限り、自分のフィ−ルド上の植物族モンスタ−は攻撃力・守備力がそれぞれ500アップする。



「まずは『森』の効果で攻撃力と守備力がアップします。」


『妖精王オベロン』 ATK/2200→2400 DEF/1500→1700


「そして『ジェリービーンズマン』で『サイバー・サラマンダ』を攻撃!」

再び豆の戦士は剣を構えて走り出す。その剣は今度もしっかりと命中し、弾のモンスターに痛手を与えた。


――ビーンズラッシュ!――


「『サイバー・サラマンダ』が戦闘で破壊されたことにより効果発動!デッキから『サイバー・フェニックス』を守備表示で召喚!」



『サイバー・フェニックス』
炎 機械族 レベル4 ATK/1200 DEF/1600
このカードが自分フィールド上に表側攻撃表示で存在する限り、自分フィールド上に存在する機械族モンスター1体を対象とする魔法・罠カードの効果を無効にする。フィールド上に表側表示で存在するこのカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキからカードを1枚ドローする事ができる。



「まだです!『妖精王オベロン』で『サイバー・フェニックス』を攻撃!」

攻撃宣言と共に『オベロン』がなにやら呪文を唱え出す。すると地面から大量の植物の根が出現した。その根はあらゆる方向から『サイバー・フェニックス』を貫こうとその先端を鋭く尖らせて襲いかかる。


――ナチュラル・ペネトレイション!――


大量の根の前では『サイバー』系モンスターの自慢の装甲も歯が立たず、あっけなく破壊されてしまう。

「『サイバー・フェニックス』が戦闘で破壊されたことによりデッキからカードをドロー!」

弾はデッキから新たなカードをドローし、少し確認した後手札へと加える。

「これで私のターンは終了です。」

「僕のターン、ドロー!(これなら・・・・いける!)まずは手札から『サイバー・ドラゴン』を特殊召喚!」

弾のフィールドに再び機械竜が舞い戻る。

「そしてリバースカード『リビングテッドの呼び声』を発動!・・・・墓地から『サイバー・フェニックス』を特殊召喚!」



『リビングテッドの呼び声』 永続罠
自分の墓地からモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。



「そして墓地にある『サイバー・ドーベル』の効果で2体の攻撃力がそれぞれ300ポイントアップ!」


『サイバー・ドラゴン』 ATK/2100→2400

『サイバー・フェニックス』 ATK/1200→1500


「まずは『サイバー・ドラゴン』で『ジェリービーンズマン』を攻撃!」

『サイバー・ドラゴン』の口に光の粒子が集まって1つのエネルギー球体が作り出される。

「『ナチュラル・トラップ』の効果発動・・・・!」

「残念だけど、『サイバー・フェニックス』が攻撃表示の時、機械族モンスターは魔法・罠の対象になった時、その効果を無効化できるんだ。」

再び『ナチュラル・トラップ』の植物が『サイバー・ドラゴン』に襲いかかるが横にいた『サイバー・フェニックス』の叫び声によってその根は触れる直前で弾かれてしまった。

「攻撃続行!」


――エヴォリューション・バースト!――


再び告げられた攻撃宣言により『サイバー・ドラゴン』から発せられた光弾が『ジェリービーンズマン』を直撃する。爆風が晴れる頃にはモンスターの跡は無く、それに続いて愛菜のライフポイントが減少する。


愛菜LP7200→6750


「続いて、『サイバー・フェニックス』で『オベロン』を攻撃!」

『サイバー・フェニックス』は鋭い鳴き声と共に大空へと舞い上がる。

「さらに手札から速攻魔法、『収縮』発動!これで『オベロン』攻撃力を半分に!」



『収縮』 速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択する。そのモンスターの元々の攻撃力はエンドフェイズまで半分になる。



『収縮』の効果により『オベロン』の体はどんどん小さくなっていき、ついには『ジェリービーンズマン』とほぼ同じぐらいとなってしまった。


『妖精王オベロン』 ATK/2400→1300


小さくなってしまった『オベロン』に対し、『サイバー・フェニックス』は翼を羽ばたかせ翼から炎を吹き出す。それは羽ばたきの風に乗って巨大な炎の渦となって『オベロン』を襲う。


――エヴォリューション・ヒート・ストーム!――


愛菜LP6750→6550

「よしっ!(あれ?何だ・・・・?あの楽しそうな表情・・・・。)

弾がふと、愛菜の方を見遣ると、彼女はこのデュエルを楽しんでいるように微笑んでいた。弾はそんな愛菜の表情に疑問を持ちながらも気を取り直して手札のカードに手を掛ける。

「僕はカードを2枚セットしてターン終了だ。」

弾が力強くエンド宣言をする。その口調の通り状況は手札こそ向こうの方が上だが確実に弾の優勢となっていた。

「私のターン、ドロー!まずは『ナチュラル・トラップ』の維持コストを支払います。」

愛菜LP6550→5750

「私は魔法カード『おろかな埋葬』を発動します。」



『おろかな埋葬』 通常魔法
自分のデッキからモンスター1体を選択して墓地へ送る。その後デッキをシャッフルする。



「これによりデッキから『ダンディライオン』を墓地へ!」



『ダンディライオン』
地 植物族 レベル3 ATK/ 300 DEF/ 300
このカードが墓地へ送られた時、自分フィールド上に「綿毛トークン」(植物族・風・星1・攻/守0)を2体守備表示で特殊召喚する。このトークンは特殊召喚されたターン、生け贄召喚のための生け贄にはできない。



愛菜はデッキをディスクから取り出すと1枚のカードを取り出して墓地へと送った。とそれと同時に彼女のフィールドに愛らしい2体の綿毛が出現する。



『綿毛トークン』
風 植物族 レベル1 ATK/ 0 DEF/ 0
このカードはトークとして使用することが出来る。(『ダンディライオン』の効果で特殊召喚された場合、このトークンは特殊召喚されたターン、生け贄召喚のための生け贄にはできない。 )



「さらに『ボタニカルライオ』を攻撃表示で召喚します!」



『ボタニカルライオ』
地 植物族 レベル4 ATK/1600 DEF/2000
自分フィールド上に表側表示で存在する植物族モンスター1体につき、このカードの攻撃力は300ポイントアップする。このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、コントロールを変更する事はできない。



「『ボタニカルライオ』は仲間の植物族の数だけ攻撃力を上げます。『森』の効果も含めてその攻撃力は2700ポイントまで上昇します!」


『ボタニカルライオ』 ATK/1600→2700


その花びら状のたてがみを揺らしながら『ボタニカルライオ』は咆哮と共にその攻撃力を上昇させる。

「(『ナチュラル・トラップ』の為にもまずは『サイバー・フェニックス』を破壊しないと・・・・。)『ボタニカルライオ』で『サイバー・フェニックス』を攻撃!」

『ボタニカルライオ』はその外見や名が差す通り、獅子の如き勢いでフェニックスへと襲いかかる。

「『サイバー・フェニックス』は破壊させないよ!リバースカードオープン、『サイバネティック・ミラー・コーティング』!」

『ボタニカルライオ』が眼前に迫る中、表になったカードの光を受けて『サイバー・フェニックス』の全体がガラスのように透明な物となる。やがてその姿は風景と同化しながら薄くなるように消えてしまった。



『サイバネティック・ミラー・コーティング』 通常罠
自分フィールド上の『サイバー』と名の付く機械族モンスターが攻撃宣言を受けた場合、攻撃対象となったモンスターをゲームから除外することで発動することが出来る。デッキから『サイバー』と名の付くレベル4以下の機械族モンスターを1体デッキから特殊召喚し、そのモンスターと相手攻撃モンスターを戦闘させる。その後除外したモンスターをフィールドに同じ表示形式で特殊召喚する。



「これで『サイバー・フェニックス』を除外して『サイバー・ジラフ』を守備表示で特殊召喚して『ボタニカルライオ』と強制戦闘!」



『サイバー・ジラフ』
光 機械族 レベル3 ATK/ 300 DEF/ 800
このカードを生贄に捧げる。このターンのエンドフェイズまで、このカードのコントローラーへの効果によるダメージは0になる。



透明となって消えた『サイバー・フェニックス』のいた場所に代わりに1体のモンスターが守備体勢を取りながら実体化する。『ボタニカルライオ』は目標を失って一瞬困惑していたが、突然現れた『サイバー・ジラフ』へと飛び掛かった。当然、守備力が800しかない『サイバー・ジラフ』は破壊されてしまう。
そして『ボタニカルライオ』が戦闘を終了すると同時に再び『サイバー・フェニックス』が弾のフィールドへと舞い戻ってきた。

「もう少しでしたのに・・・・・これで私のターンは終了です。」

愛菜は少々残念そうにターン終了を宣言する。

「僕のターン・・・・ドロー!」

弾は勢いよくカードをドローする。そして自分の2枚の伏せカードへと手を伸ばす。

「そしてこれで終わりだ!リバースカード、『メテオ・レイン』&『リミッター解除』!」



『メテオ・レイン』 通常罠
このターン自分のモンスターが守備表示モンスターを攻撃した時にその守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手に戦闘ダメージを与える。



『リミッター解除』 速攻魔法
このカード発動時に自分フィールド上に存在する全ての表側表示機械族モンスターの攻撃力を倍にする。ターン終了時にこの効果を受けたモンスターカードを破壊する。



「これで僕のモンスターは全て攻撃力が2倍と貫通効果を得る!」


『サイバー・ドラゴン』 ATK/2400→4800


『サイバー・フェニックス』 ATK/1500→3000


何かが外れる音と共に弾の2体のモンスターが凄まじい雄叫びを上げる。

「2体のモンスターで『綿毛トークン』を攻撃!」

『サイバー・ドラゴン』はエネルギー弾を、『サイバー・フェニックス』は巻き上がる炎で小さき綿毛達を攻撃する。


――エヴォリューション・バースト!――


――エヴォリューション・ヒート・ストーム!――


『メテオ・レイン』で貫通効果を得た2体は守備力0の『綿毛トークン』を軽々と撃破し、愛菜に爆風と共にその超過ダメージを与えていく。

「きゃぁぁぁ!!」

愛菜LP6550→1550→0

爆風が晴れると共に、実体化していたモンスターと『森』のソリットビジョンが消えていき、いつも通りの夕焼けでオレンジ色に染まる体育館裏の風景が戻ってくる。


――――――――――――。


―――――――――。


――――――。


「ところで、竜と安紀は何処なんだ。」

デュエルが終わり、お互いのデッキを片付けると、いつの間にやら表に出ていた真が唐突に愛菜に言い放つ。すると愛菜はその場にヘナヘナと座り込んでしまった。

「だ、大丈夫か?」

真は座り込んでしまった愛菜の元へと駆け寄る。

「え、ええ・・・・。すいません、こういうお芝居は慣れないので終わってつい、気が緩んだみたいです・・・・。」

「芝居?一体どういう事だ?」

とりあえず彼女を立ち上がらせた真だが、彼女の言う「芝居」と言う言葉の意味がイマイチつかめないでいた。

「それでしたら後でちゃんとした説明が・・・・・・あ、ほら、お探しの方達がやって来ましたよ。」

「え?」

真が振り返るとそこには遠くの方に安紀と竜、そして影中の姿があった。安紀達もこちらに気づいたのか、手を振りながら近づいて来る。

「真ちゃん〜!どうしたの?こんなところで?」

「はぁ?おい、竜、安紀。お前ら無事なのかよ!?それに影中まで。」

捕らわれの身のはずの友人が突然登場・・・・・しかも思いっきり無事な様子に、真は思いっきりずっこける。

「無事かって・・・・何のこと?」

真の言っている意味がよく分からないのか、安紀はただただ首を傾げるばかりだ。

「それについては僕が説明しよう。・・・・今回、君をここに呼び出すようにしたのは僕なんだ。」

そんな2人の間に影中が割って入る。

「は?何でお前が、一体何のために?」

「理由は3つ。1つめは君のもう1つの力・・・・・さっきのデュエルで使ったデッキの実力を試すためなんだ。」

「そうか〜。そう言うわけだったんだな・・・・・っておい!それならもっとマシな方法無いのかよ!」

影中の説明に真はとりあえず納得して頷くが、とっさに有る疑問が浮かび上がり、ナイスなノリツッコミを決める。

「いや〜。それについては驚かせて悪かったよ。でもこういういつもと違う状況の君の実力を知っておいた方が良いと思って。」

真の多少怒りが篭もった剣幕も影中は笑いながらいとも簡単にスルーする。

「それでわたしと竜ちゃんは影中君に頼まれて隠れてたってわけなの。ゴメンね、真ちゃん。」

安紀が両手を合わせてペコリ、と頭を下げる。

「そ、そうだったのか。・・・・・まあ、一応無事だったし納得しよう。」

「それで、影中。残りの理由は?」

腑に落ちない様子の真を横目に見ながら竜が今回初めて口を開く。影中は「説明するのをすっかり忘れていた」と言わんばかりに目を見開き、そして奥でずっと美しい姿勢で立っていた愛菜の方に目を向ける。

「2つめの理由は彼女・・・・森林さんをみんなに紹介するためなんだ。・・・・・まあ、ついでに今回のデュエルの相手もしてもらったけどね。」

影中が話し終わると愛菜がこちらに歩いて近づいてくる。

「えっと、初めまして。この度、『神のカード』の護衛及び、影中さんのサポートとして配属されました。森林 愛菜と言います。これからしばらくの間よろしくお願いします。」

「あ、ああ・・・。」

「よ、よろしくお願いします・・・。」

「どうも、ワタクシ、飛立 竜と申します。以後よろしく。(キタァァァァァ!!!しかもストライクゾーン、ど真ん中ぁぁぁ!!!)」

愛菜は簡単な自己紹介が終わると丁寧にお辞儀する。あまりの様子に真と安紀の方が余計にかしこまってしまった。
だが竜は見た目こそ紳士的に振る舞っているが、突然の好みの女性の登場に内心、1ターン目に『エグゾディア』が全て揃った時並に大フィーバーしていた。

「さて、お互いの自己紹介も終わったところで最後の用件に入って良いかな?」

「影中君、それってどんなこと?」

「それはね・・・・・・。」



影中は少しの間を取る。その様子に3人はゴクリ、と唾を飲み込む。



「遂に分かったんだよ。ラムサ達の組織が狙う次の大会が・・・・。」


影中の言葉にこの場の人間全員に戦慄が走る。こうして次なる戦いへの火蓋が切って落とされたのであった・・・・。



決闘9「戦いの始まり〜後編〜」

PM5:40
愛菜とのデュエルが終わってから数分後。


「みんな揃ったね。・・・・・それじゃあ次回の大会の説明を始めようか。」

「・・・・なあ、影中。1つだけ聞いて良いか?」

影中は集まった面々を見回した後、自分の鞄から数冊の大会パンフレットを取り出して全員へと配っていく。そんな影中を見ながら、少し離れた位置にいた真が1つの質問をする。

「別にどうでもいいけど・・・・・何で話し合いの場所が俺の家なんだ?」

そう言いながら真が人数分のお茶が入った湯呑みをテーブルに置く。
そう、ここは真の自宅のリビングである。その内の大きなテーブルに、影中、竜、安紀、そして先程合流した岩岡と愛菜がそれぞれ座っていた。

「何でって・・・・ここ、広いし、他に誰もいないから。」

影中が即答する。それもそのはず、現在この家には真しか住んでおらず、話し合いには最適な場所である。


「・・・・もう、勝手にしろ・・・・。」


だが、腑に落ちない真はまだ話し合いも始まってないのに半分投げやり状態である。

「そんなことより、えっと・・・次の大会は『戦乱』の時の大会と少し違うところがあるんだ。まず1つめは、会場や参加人数の規模が以前より大きいこと。この前の大会は僕達だけで良かったけど、今回は君たち3人にも出場して貰う必要があるんだ。」

影中の説明にその場の全員が頷いて、納得する。

「そしてここが一番ポイントなんだけど、今回の大会は3人一組の団体戦なんだ。・・・・さらに詳しく言うと試合毎に3人の内2人が出場し、その2人がタッグを組んでデュエルする、そんな大会なんだ。」

「タッグデュエルって、俺達やったこと無いぞ!その上いきなり大会出ろって・・・・。」

竜が不安の声を上げる。安紀も竜ほどではないが少し困惑気味である。だが、



「・・・・・やってやろうじゃねぇか・・・・。」



そんな不安に溢れた空気も真の一言で吹き飛ぶこととなる。

「真ちゃん・・・・?」

「あいつが・・・・ラムサが来るなら、タッグデュエルだろうが何だろうがやってやる!」

真の決意の一言を聞いた影中がその言葉を待っていたかのように笑みを浮かべる。

「もう大会まで時間がねぇ!安紀、竜、今からタッグデュエル用にデッキ調整だ!」

「ちょ、ちょっと真ちゃん!」

「って、おい!そんなに押すなって!」

そう言うと真は立ち上がり、安紀と竜を押して2階に上がろうとする。

「・・・・大会は明後日の日曜日。朝8時に会場集合だよ。」

そんな真に影中は大会の日時と場所を教える。

「ああ!・・・・それと影中、テーブルの後片付け頼んだ!」

そう言って真は階段を駆け上がり、2階へと消えていった。

「・・・・武斬さん達、初めてのタッグデュエルと言ってましたが、大丈夫なのでしょうか?」

テーブルの湯呑みを片付ける手を少し止めて、愛菜が心配そうに質問する。

「大丈夫だよ。これまでずっと一緒だった彼らの絆なら・・・・。」

真らが上った階段の方を見つめながら影中はつぶやいた。


――――――――――――。


―――――――――。


――――――。


AM7:00
真の自室。

「ったく・・・・眠ぃ〜。」

いつもの通り目覚まし時計に朝一番の左ストレートを決めて、真がベットから起き上がる。どうやら昨日はかなり夜更かししたらしい。真の目の下には薄く隈ができていた。

「(だから程々にって言ったのに。・・・・どうせ今日も午後からデッキ調整するんでしょ?)」

「う、うるせーな・・・・。」

弾の小言を聞きながら真は適当に着替えを済ませ、朝食の準備のためリビングへと向かった。準備に取りかかってからしばらくして、リビングのドアがゆっくりと開いて2人の人が出てくる。



「う〜。眠いよ〜。やっぱり夜更かしするんじゃなかったよ・・・・。」



そう言ってリビングに、眠そうに目を擦る安紀と朝から既にグロッキー状態の竜が入ってくる。・・・・・実は2人はデッキ調整が煮詰まってしまい、2人は結局真の家に泊まることになったのである。

「(何で俺より早く寝たお前等が俺より遅いんだよ・・・・。)まあ、とりあえず顔洗って朝飯喰え。」



2時間後・・・・。



「やっぱりお休みだと人が一杯いるね〜。」

安紀が混雑した店内を見渡しながら目を輝かせる。・・・・・・あれから朝食と後片付けを終えた3人は、デッキに足りないカードを買いにカードショップ『戦乱』へと向かう事となった。

「うぉぉぉ!!今日の俺は大奮発だぁ!」

そう言って竜がパック売り場へと爆走し、やがて幾つかのパックを手にする。

「今までは金欠のために5パック以内だったが、今回はなんと『6パック』も買うぜ!」

「竜ちゃん、それ、あんまり変わらないと思う・・・・。」

竜がまるでこの世で最高の贅沢を味わったかの如く、買ったパックに頬ずりをする。正直、これが初めてのタッグデュエルの大会に怯えていた彼なのだろうか?
まあ、そんなこんなで3人はデッキ調整に精を出すべく、必要なカードを何枚か購入する。そして適当な机に座り、3人は自分のデッキを見直すのであった。


それから30分後・・・・。


「・・・・できた〜!」

安紀のデッキ完成を祝う喜びの声が辺りに響く。真や竜も同様に椅子の背もたれへと身を預ける。そうやって3人が少しばかりの休息を取ろうとした時、1人の青年がこちらにを振り向く。その青年はタキシードと言う何処かズレた服装である。すると彼はこちらに近寄ってきた。

「君達、デッキを調整してたよね?」

「えっとそうですけど・・・・誰ですか?」

見知らぬ&怪しい青年に声を掛けられ、安紀が困惑気味だが返事をする。

「えっと、僕の名前は極運 良(ごくうん りょう)・・・・実は僕もデッキを新しく作ってね。お互いまだテストしてないからお願いしようと思って。」

安紀は少し悩んだが、やがて

「いいよ。」

デュエルを承諾すると、自分のデュエルディスクを鞄から取り出して左腕に装着する。相手の青年と少し距離を取って、ディスクを起動させる。

「デュエル!」

安紀LP8000 極運LP8000


「それじゃあ、あたしの先攻、ドロー!『エース・ナイト』を攻撃表示で召喚!」



『エース・ナイト』
光 戦士族 レベル4 ATK/1600 DEF/1200
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合にこのモンスターの召喚に成功した時、デッキから『クィーンズ・ナイト』を守備表示で特殊召喚する事ができる。



「そして『エース・ナイト』の効果でデッキから『クィーンズ・ナイト』を特殊召喚!」



『クィーンズ・ナイト』 通常モンスター
光 戦士族 レベル4 ATK/1500 DEF/1600
しなやかな動きで敵を翻弄し、相手のスキをついて素早い攻撃を繰り出す。



フィールドに現れた光の中から2体のモンスターが現れる。一方は紅き鎧の女騎士。もう1人は黒き鎧の若き男の騎士である。

「さらに永続魔法、『連合軍』を発動!これで攻撃力を400ポイントアップ!」



『連合軍』 永続魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する戦士族・魔法使い族モンスター1体につき、自分フィールド上の全ての戦士族モンスターの攻撃力は200ポイントアップする 。



『エース・ナイト』 ATK/1600→2000


『クィーンズ・ナイト』 ATK/1500→1900


「これであたしのターンは終了だよ。」

「それでは僕のターン、ドロー。僕は『幸運の笛吹』を守備表示で召喚。」

安紀のエンド宣言を受け、極運はエレガントにカードをドローする。そして1体の小人が笛の心地よい音色を響かせながらフィールドに現れた。



『幸運の笛吹』
風 天使族 レベル4 ATK/1500 DEF/500
このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、通常モンスターとして扱う。フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。●このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、自分のデッキからカードを1枚ドローする。



「そしてリバースカードを1枚伏せてターンエンドだ。」

「あたしのターン、ドロー!手札から『増援』発動!」



『増援』 通常魔法
デッキからレベル4以下の戦士族モンスター1体を手札に加え、デッキをシャッフルする。



「デッキから『キングス・ナイト』を手札に加えて、そしてそのまま召喚するよ!」



『キングス・ナイト』
光 戦士族 レベル4 ATK/1600 DEF/1400
自分フィールド上に『クィーンズ・ナイト』が存在する場合にこのカードが召喚に成功した時、デッキから『ジャックス・ナイト』1体を特殊召喚する事ができる。



「この時あたしのフィールドに『クィーンズ・ナイト』が存在するからデッキからさらに『ジャックス・ナイト』を特殊召喚するよ!」

先程の2体の騎士に続き、初老の騎士が現れる。そしてフィールドに元々存在していた『クィーンズ・ナイト』と剣をクロスさせる。するとフィールド上に光と共に颯爽と青き鎧の若き戦士が姿を現す。



『ジャックス・ナイト』 通常モンスター
光 戦士族 レベル5 ATK/1900 DEF/1000
あらゆる剣術に精進した戦士。とても正義感が強く、弱い者を守るために戦っている。



「そして、『連合軍』の効果でまとめて攻撃力800ポイントアップ!」


『エース・ナイト』 ATK/2000→2400


『クィーンズ・ナイト』 ATK/1900→2300


『キングス・ナイト』 ATK/1600→2400


『ジャックス・ナイト』 ATK/1900→2700


「いっくよ〜!まずは『クィーンズ・ナイト』で『幸運の笛吹』を攻撃!」

攻撃宣言と共に『クィーンズ・ナイト』は軽やかな足運びで瞬く間に接近する。


――クィーンズ・セイバー・クラッシュ!――


「素晴らしいモンスター展開だ!・・・・・だが、僕のリバースでこのターンの君の攻撃を全て防ぎきってみせよう!」

そう言って極運は自分のセットされたカードに手を伸ばす。そう言われた安紀の思考に、『聖なるバリア−ミラーフォース− 』や『和睦の使者』などの強力罠カードの存在がちらつく。だが、そうこうしている内に、裏側だったカードが表側になって発動される。

「永続罠カード、『モンスターBOX』発動!」

「えっ!?」

自分の予想とは違うカードの発動に、安紀は思わず素で驚いてしまう。それもそのはず、何しろ『モンスターBOX』は2分の1とは言え、天に運を任せる言わばギャンブルカードであるからだ。



『モンスターBOX』 永続罠
相手モンスターが攻撃する度に、コイントスで裏表を当てる。当たりの場合、攻撃モンスターの攻撃力は0になる。自分のスタンバイフェイズ毎に500ライフポイントを払う。払わなければ、このカードを破壊する。



「さてそれではコイントスだ。僕は表を宣言しよう!」

2人の間にソリッドビジョン化したコインが現れ、縦方向に勢い良く回転を行いながら空に舞う。やがて、コインは地面に落ちると同時に少し転がると、そして表の面を向けて止まった。

「コインの判定は表。よって、『クィーンズ・ナイト』の攻撃力は0になる!さらに500ポイントの反射ダメージだ。」


『クィーンズ・ナイト』 ATK/2300→0


『クィーンズ・ナイト』の剣が眼前に迫る直前に、『幸運の笛吹』が突如姿を箱の中へと消す。そして『クィーンズ・ナイト』の向く方の反対側から姿を現し、笛による打撃をお見舞いする。それに伝導して安紀の頭部にもわずかばかりか衝撃が走る。


安紀LP8000→7500


「イタッ!・・・・・それじゃあ、もう1回!『キングス・ナイト』で攻撃!」

攻撃を終えた『クィーンズ・ナイト』と入れ替わるように今度は『キングス・ナイト』が『幸運の笛吹』が中に隠れたままのボックスへと走り出す。

「じゃあ、もう一度コイントスだ。今度も表を宣言しよう。」

再びコインが現れ回転をしながら宙を舞う。それは先程と同じように落ちてくると同じように表を空に向けて止まる。


『キングス・ナイト』 ATK/2400→0


「コイントスの成功によって再び反射ダメージだ!」

先程の『クィーンズ・ナイト』と同様に『キングス・ナイト』の背後に『幸運の笛吹』が飛び出し、笛による打撃攻撃を加える。


安紀LP7500→7000


「痛っい〜!も〜こうなったらみんな行くよ〜!『ジャックス・ナイト』、『エース・ナイト』で攻撃!」

左右から『ジャックス・ナイト』、『エース・ナイト』がそれぞれ『幸運の笛吹』に飛び掛かる形で斬りかかる。

「フッ、そんなに焦っちゃって・・・・・そんなんじゃあ幸運の星が逃げてしまうよ。」

極運がキザに右手で前髪を払いながら2体の騎士の前方に2枚のコインが出現する。それは空へ勢いよく跳ね上がった。

「今度も2回とも表を宣言しよう!」

空中に舞うコインに対し極運が自信満々に4度目の表を宣言する。

「お願い、今度こそ外れて・・・・!」

そんな安紀の必死の願いも虚しく、コインは外れることがあり得ない事のように2枚とも落ちた後に表の面を向ける。
その結果に応じて『幸運の笛吹』がボックスの中から『ジャックス・ナイト』の背後に出現して笛で殴打する。そしてそのまま再びボックスの中へと姿を消すと、今度は『エース・ナイト』の背後に現れて先程と同様に笛で攻撃を行う。


『ジャックス・ナイト』 ATK/2700→0


『エース・ナイト』 ATK/2400→0


安紀LP7000→6500→6000


「た、ターン終了・・・・。」

4連続でコインを当ててしまった極運の奇跡とも言える状況に安紀は唖然としてしまう。そしてこの瞬間、先程『モンスターBOX』で減少した攻撃力が元に戻る。


『エース・ナイト』 ATK/0→2400


『クィーンズ・ナイト』 ATK/0→2300


『キングス・ナイト』 ATK/0→2400


『ジャックス・ナイト』 ATK/0→2700


「じゃあ、僕のターンだ。まずは『モンスターBOX』の維持コストを支払おう。」


極運LP8000→7500


「そして僕は『幸運の笛吹』を生け贄に『ブローバック・ドラゴン』を召喚!」

『幸運の笛吹』が光の粒子となって消え、その場所から拳銃と竜の頭が1つになったようなモンスターが現れる。



『ブローバック・ドラゴン』
闇 機械族 レベル6 ATK/2300 DEF/1200
コイントスを3回行う。その内2回以上が表だった場合、相手フィールド上に存在するカード1枚を選択して破壊する。この効果は1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに使用する事ができる



「またギャンブルカード・・・・!」

「そう・・・・僕のデッキはギャンブルデッキなのさ。そして、僕の強運は僕自身が望まなくても効果が必ず発動するのさ!」

極運が多少格好付け気味なポーズを決めながら、自分の強運について語る。

「・・・・・す・・・・・」

「す?」 「す?」

突如静かになった安紀が一言、いや一文字だけ言葉を発する。その様子に極運はおろか、真や竜にも頭上に疑問符が生まれた。

「・・・・・すっっっっっご〜〜〜〜〜〜い!!ねえねえ、それってどうやって身に着けたの?生まれつき?どっかの宗教のご加護?それとも7つの宝玉集めて願ったら手に入ったとか?」

安紀が興奮と感激が入り交じった状態で、極運に質問ラッシュを繰り出す。


「そこで感激すんなよ!(ってか最後の何だよ!)」

「え〜〜。でもそんな凄い強運があったらわざわざシングルで買わなくてもパックで、しかも安値で『フリード様』が買えるんだよ〜!それに宝くじが当たればそのお金で『フリード様』が買えるし・・・・。」


「しかも、『フリード』だけかよ!もっと他に何か無いのか!?」


真の指摘に安紀は人差し指を顎に当てながら首を傾げてしばらく考え込む。


「う〜〜〜〜〜〜ん・・・・・・・・。」


そのまま本気で考え込んだ安紀に、真はダメだこりゃ、という風に肩をすくめた。

「・・・・・ええい、君たち!僕を無視するなぁ!『ブローバック・ドラゴン』の特殊効果発動!対象は『ジャックス・ナイト』!」

極運が多少怒りを露わにしながら効果発動を宣言した瞬間、『ブローバック・ドラゴン』の頭部の銃口上部分のパーツがスライドし、弾丸が装填される。その後、連なるようにコインが3枚宙を舞う。

「ハァ、ハァ・・・・。こ、このコイントスが成功したら『ジャックス・ナイト』は破壊だ!」

先程の極運の言った、「自分の強運」を証明するように3枚のコインは・・・・一体何度目だろうか、全て表を向く。

「コイントスの成功により、『ジャックス・ナイト』は破壊だ!やれ、『ブローバック・ドラゴン』!」

『ブローバック・ドラゴン』の銃口が安紀のフィールドの『ジャックス・ナイト』を捉え、そこに向かって弾丸が轟音と共に3連射される。それらは見事に命中し、『ジャックス・ナイト』を爆風を生み出しながら跡形もなく消し飛ばした。


『エース・ナイト』 ATK/2400→2200


『クィーンズ・ナイト』 ATK/2300→2100


『キングス・ナイト』 ATK/2400→2200


「さらに手札から永続魔法、『デンジャラスマシンTYPE−6』を発動!」



『デンジャラスマシンTYPE−6』 永続魔法
自分のスタンバイフェイズ毎にサイコロを1回振る。出た目の効果を適用する。1・自分は手札を1枚捨てる。2・相手は手札を1枚捨てる。3・自分はカードを1枚ドローする。4・相手はカードを1枚ドローする。5・相手フィールド上モンスター1体を破壊する。6・このカードを破壊する。



軽い地鳴りと共に巨大なスロットマシーンが出現する。

「続けてバトルだ!『ブローバック・ドラゴン』で『クィーンズ・ナイト』を攻撃!」

既に次弾が装填された銃口が今度は『クィーンズ・ナイト』を捉る。


――セミオート・ガン・ショット!――


轟音と共に銃口が『クィーンズ・ナイト』目掛けて火を吹く。弾丸が発射される度に上部のパーツがスライドし、次弾がすぐに装填されながら絶え間なく連射される。そしてその弾丸の雨は盾を構えて防御しようとする『クィーンズ・ナイト』をいとも簡単に貫いてから爆破する。


安紀LP6000→5800


『エース・ナイト』 ATK/2200→2000


『キングス・ナイト』 ATK/2200→2000


「くう・・・・・・っ。」

「最後にリバースカードを1枚伏せてターンエンドだ。」



「くそっ、これじゃあ無敵じゃねぇか!あいつ「自分は強運だ」なんて言ってるけど、いくら何でも当たりすぎだろ!絶対イカサマしてるぜ!」

今のターンを見て、極運の強運に疑問を持ち始めた真が怒鳴り声で叫ぶ。竜もそれに同意見のようだ。隣でウン、ウンと頷いていた。

「(・・・・・・残念だけどそれはほぼ無理だね。コインやサイコロ判定はソリッドビジョンを通してデュエルディスク内で行われるから。)」

だが、弾はそんな真の考えを即座に否定し、理由を説明する。

「(でもよ、そのデュエルディスクに細工したとしたら・・・?)」

「(それも無いと思う。海馬コーポレーションのシステムは完璧だ。・・・・僕も昔、遊び半分で真のデュエルディスクをちょっと細工しようとしたけど何度失敗した事やら・・・・。まったく、あのセキリュティは完璧だよ・・・・。)」

「(そうなのか・・・・。って、おい!何勝手に人のディスクに細工しようとしてるんだよ!)」

弾が少しだけ悔しそうに言ったが、それに真が即座に綺麗にナイスかもしれないノリツッコミをかます。

「(まあまあ落ち着いて。・・・・・とにかく今は安紀ちゃんを信じるしかないよ。)」

確かにそうだけどよ、と言いながら2人はカードを新たにドローした安紀の方を見遣る。


「あたしは手札から『強欲な壺』を発動して、デッキから2枚カードをドローするよ。」



『強欲な壷』 通常魔法
自分のデッキからカードを2枚ひく。ひいた後で強欲な壺を破壊する。



安紀は2枚のカードを新たに加え、その内容をサッと目を走らせて確認する。その後、チャンスを作り出すための1枚のカードを手にし、発動する。

「よしっ!魔法カード『サイクロン』を発動!あなたの『モンスターBOX』を破壊するよ!」


『サイクロン』 速攻魔法
フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する。



フィールドに一陣の竜巻が現れ、激しい風の音と共に極運の場の『モンスターBOX』に接近する。

「おっと、そうは行かないよ。ここでカウンター罠発動、『ディナイル・セレクト』!」



『ディナイル・セレクト』 カウンター罠
発動時にサイコロを1回振る。1・2が出た場合、魔法・罠の発動、モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚のどれか1つを無効にし、それを破壊する。



「まずはダイスロールだ。これで1・2の内どちらかの目が出れば、君の『サイクロン』は無効化さ!」

安紀の身長の半分はあるだろうか。そんな巨大なサイコロが出現し、それは大地を勢いよくはね回る。
やがて動きが止まるとそれは赤い1つの丸・・・・・つまりは1の面を向けた。

「ダイス判定の結果は1。これで『サイクロン』は無効!」

吹き荒れる竜巻の中に先程のサイコロが飛び込み、激しい光と共に大爆発を起こす。爆風が晴れると、そこにはもう竜巻も巨大なサイコロも存在していなかった。

「ちぇっ、残念・・・・。じゃあ、気を取り直して行っくよ〜!『放浪の勇者フリード様』召喚!」

眩い光が差し込む中、1人の勇者が召喚される。その勇者はその身に纏うマントをなびかせながら、1本の剣を抜き、敵を真っ直ぐに見据えながら正面に構える。

「まずは『連合軍』の効果で攻撃力アップ!」


『放浪の勇者フリード』 ATK/1700→2300


『エース・ナイト』 ATK/2000→2200


『キングス・ナイト』 ATK/2000→2200


「そして、墓地の『クィーンズ・ナイト』、『ジャックス・ナイト』をゲームから除外して、『フリード様』の効果発動!」



――――カァァァァッ!



効果発動の瞬間、『フリード』の持つ剣が光り輝き、その光は段々と輝きを増していき、辺りの視界が真っ白な物へとを変貌する。



――ジャスティス・ブライト!――



そんな光が視界を支配する中、突然『フリード』の叫び声と一筋の閃光が炸裂する。すると光の世界は急に消滅を始め、光が消え失せると辺りは先程までの風景に戻る。

「な、何が起こったんだ・・・・!?」

目を覆っていた右手を降ろし、極運が驚愕した表情で自分のフィールドを見る。そこには見事に横に真っ二つの『ブローバック・ドラゴン』と剣を横に払っている『フリード』の姿があった。

「『フリード様』は墓地の光属性モンスター2体をコストに自分より強いモンスターを破壊できるんだよっ!」

驚いている極運とは対照的に安紀が楽しそうに言う。そして、自分のディスクから『フリード』のカードを手に取り、『フリード』のカードを極運に見せつける。



『放浪の勇者フリード』
光 戦士族 レベル4 ATK/1700 DEF/1200
自分の墓地の光属性モンスター2体をゲームから除外する事で、このカードより攻撃力の高いフィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を破壊する。この効果は1ターンに1度しか使用できない。



「よ〜し、それじゃあ『フリード様』達3体でダイレクトアタック!」

『フリード』達3体のモンスターが剣を水平に構えがら極運に向かって走り出す。が、『フリード』達の前方に先程から安紀のモンスターを阻んでいる『モンスターBOX』が出現する。


――ブレイブ・ソード!――

――キングス・セイバー・クラッシュ!――

――エース・セイバー・プレイ!――


「『ブローバック・ドラゴン』は破壊されたが攻撃は通さない!『モンスターBOX』のコイン判定は表だっ!」

再びコインが現れ回転をしながら宙を舞う。それは先程と同じように落ちてくると同じように表を空に向ける。すると突然、『フリード』達の前方の『モンスターBOX』から緑色にデフォルメされたモグラが全ての穴から出現し、『フリード』達の斬撃をその柔らかい材質を利用してはじき返す。


『放浪の勇者フリード』 ATK/2300→0


『エース・ナイト』 ATK/2200→0


『キングス・ナイト』 ATK/2200→0


「やっぱり直接『モンスターBOX』を破壊しないとダメか〜。えっと、カードを1枚伏せてターン終了だよ。」

テヘへ、と人差し指でこめかみの辺りを掻きながら安紀は楽しそうな笑みを浮かべる。

「それでは僕のターン、ドロー!まずは『モンスターBOX』の維持コストを支払おう。」


極運LP7500→7000



「次に永続魔法、『デンジャラスマシンTYPE−6』の効果を発動。」

その瞬間、フィールド上の『デンジャラスマシンTYPE−6』の6つの文字盤が高速に回転を始める。やがて回転がスローになり、6つの文字盤全てが『3』の数字を表示して止まる。

「判定は3!よって僕はデッキから1枚ドロー!」

「さらに装備魔法、『早すぎた埋葬』で墓地の『ブローバック・ドラゴン』を蘇生!」



『早すぎた埋葬』 装備魔法
800ライフポイントを払う。自分の墓地からモンスターカードを1枚選択して攻撃表示でフィールド上に特殊召喚し、このカードを装備する。このカードが破壊された時、装備モンスターを破壊する。



極運LP7000→6200


地面に光の渦が現れ、その中から上に持ち上がるように『ブローバック・ドラゴン』が再びフィールドに現れる。

「そして『ブローバック・ドラゴン』の効果を発動!対象は『フリード』!」

極運はまたもコイントスを行う。作者がそろそろコイントスの描写に飽き飽きしてきたのだが、そんなことは彼にとって構い無しの様子みたいだ。マッタク、作者は何でこんな面倒くさいデッキを使わせたのだろうか・・・・・?と作者は今更だが、自分自身を嘆いていた。

・・・・・っと、そんな愚痴をこぼしている間に『ブローバック・ドラゴン』は頭部のパーツをスライドさせて弾の装填を始める。どうやらコイントスは成功したようだ。


「コインは3枚とも全て表!よって『フリード』を破壊!」

「やめてぇぇぇぇぇぇ!!!!」

『ブローバック・ドラゴン』の銃口が数ターン前の『ジャックス・ナイト』のように、今度は『フリード』を捉え、安紀の悲痛な叫びが辺りに響く。だが、そんな叫び声をかき消すような轟音と共に弾丸が3連射された。それらは見事に『フリード』に命中し、盾や鎧ごと木っ端微塵に噴き飛ばす。


『キングス・ナイト』 ATK/2200→2000


『エース・ナイト』 ATK/2200→2000


爆風が晴れていく中、安紀はその場に両膝を付き、『フリード』がつい数秒前まで存在していたフィールドを泣きもせず、ただその光景を眺めているだけであった。

「行け、『ブローバック・ドラゴン』!そのまま『キングス・ナイト』を粉砕しろ!」

銃口の矛先が『キングス・ナイト』に向けられる中、安紀は下を向いて俯いたままである。



――セミオート・ガン・ショット!――


休む間もなく、次は『キングス・ナイト』に銃弾が炸裂、爆破し、それと連動して安紀のライフが減少する。


『エース・ナイト』 ATK/2000→1800


安紀LP5800→5500

「・・・・・・。」

モンスターが破壊されても、ライフが減少しても、安紀は無言で座り込んでしまい全く動じない。先程までの元気な印象からの変化に、極運だけでは無く、周りで見ている真や弾も動揺の色が隠せない。

「タ、ターンエンドだ。」


「・・・・・・・。」


極運が動揺気味でターンの終了を宣言して自分のターンが回って来てからしばらくすると、安紀はスクッと立ち上がる。そしてスカートに付いた砂を軽く手で払うと、数分ぶりに口を開く。




「・・・・・ねぇ、何か・・・・言い残すことは無い?」





「!・・・・な、何だね、いきなり?」

緊迫した空気に、突き刺さるような鋭い安紀の一言が響く。顔は下を向いたままなので前髪に隠れて表情は見えないが、言っている言葉には恐ろしい威圧感と殺気に満ちあふれている。声の調子は少し冷たい感じがあるだけで、いつもの声と殆ど変わらないのでそれが余計、極運の精神に揺さぶりを掛ける。



「特に無いなら、このまま数ターン後にあの世行きだけど良い?」



「そ、そんなこと・・・・や、やれる物ならやってみろ!」


――――キッ!


「ヒ、ヒィッ!す、すいませんでした!」

安紀の予告KO宣言に、極運は戸惑いながら反抗するが、彼女の刀のような鋭い目つきと体中に感じるどす黒いオーラに、すっかり気持ちが負けている状態であった。

「魔法カード『戦士の生還』発動。墓地の『放浪の勇者フリード様』を手札に。」



『戦士の生還』 通常魔法
自分の墓地の戦士族モンスター1体を選択して手札に加える。



「そしてすぐに『フリード様』を召喚するよ。」

1人の勇者がフィールドにマントをなびかせながら再び舞い戻り、『連合軍』の効果を受けてパワーアップする。


『エース・ナイト』 ATK/1800→2000


『放浪の勇者フリード』 ATK/1700→2100


「い、今更『フリード』なんて出してもコストになる光属性モンスターがた、足りないじゃないか!」

「・・・・うるさい・・・・魔法カード、『ジャスティス・ブライト』発動。」

声や足が震えていながら必死に極運は言葉を絞り出す。だが、安紀の一言と視線で一気に黙り込んでしまった。そんな彼を軽く無視しながら安紀は静かに1枚の魔法カードを繰り出す。



『ジャスティス・ブライト』 通常魔法
自分フィールドに『放浪の勇者フリード』が存在するとき発動できる。自分の墓地に存在する光属性モンスターを任意の枚数除外する。除外したカード1枚につき、フィールド上のカードを破壊する。



「・・・・・墓地の『キングス・ナイト』を除外して、モンスターBOXを破壊。」


再び『フリード』の剣が光り輝き、その剣が放つ閃光は、極運の場に何ターンも前から居座り続ける巨大な箱を真っ二つにしてしまう。

「そしてリバースカード、『凰翼の爆風』発動。」



『鳳翼の爆風』 通常罠
手札を1枚捨てる。相手フィールド上のカード1枚を持ち主のデッキの一番上に戻す。



「これで『ブローバック・ドラゴン』をあなた・・・・いや、『フリード様』を破壊した愚か者のデッキトップに。」

フィールドに凄まじい熱風が吹き荒れ、安紀に酷いように言われながら『ブローバック・ドラゴン』がその熱風へと飲み込まれてフィールドから消滅する。

「それじゃあ覚悟しなさい。・・・・『フリード様』と『エース・ナイト』の2体でダイレクトアタック!」

安紀の攻撃指令の下、2体の剣士が同時に極運の腹部に綺麗な水平斬りをきめる。

「うわぁぁぁ!!」


極運LP6200→4100→2100


「(こ、怖ぇ〜。)」

豹変した安紀を見ながら真、弾、竜の3人は皆、これまで体験したことのない恐怖を覚える。

「あたしはカードを1枚セットしてターン終了よ。さあ・・・・さっさとカードを引いて。」

何気に口調も厳しくなって来た安紀に言われ、極運は震える手でカードをドローする。このターンで先程までの極運のペースが一気に逆転してしまった。

「『デンジャラスマシンTYPE−6』の効果発動・・・・。」

スロットが回転し、4の目で回転を止める。今回2度目のドロー判定である。

「デ、『デンジャラスマシンTYPE−6』の効果でデッキからカードを1枚ドロー・・・・・・。」

極運はたった今、『デンジャラスマシンTYPE−6』の効果でドローしたカードに目をやる。すると彼は「フッフッフ・・・・・。」と静かに笑いだし、乱れたタキシードを2秒で直すと最初の頃のちょっとキザな態度へと戻る。

「フッ!やはり運命の女神は僕に常に微笑んでくれているようだ。手札から魔法カード、『融合』を発動!」

極運の手札が輝き、1枚の魔法カードが発動される。

「手札の『ブローバック・ドラゴン』、そして『リボルバー・ドラゴン』を融合!そして・・・・『ガトリング・ドラゴン』、融合召喚!」



『融合』 通常魔法
手札またはフィールド上から、融合モンスターカードによって決められたモンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。



『リボルバー・ドラゴン』
闇 機械族 レベル7 ATK/2600 DEF/2200
コインを3回投げる。その内2枚以上が表だったら、相手のモンスター1体を破壊する。この効果は自分のターンに1度しか使えない。



『ガトリング・ドラゴン』 融合モンスター
闇 機械族 レベル8 ATK/2600 DEF/1200
「リボルバー・ドラゴン」+「ブローバック・ドラゴン」
コイントスを3回行う。表が出た数だけ、フィールド上のモンスターを破壊する。この効果は1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに使用する事ができる。



「次に『地雷蜘蛛』を召喚し、さらにカードを1枚セット!」



『地雷蜘蛛』
地 昆虫族 レベル4 ATK/2200 DEF/ 100
このカードの攻撃宣言時、コイントスで裏表を当てる。当たりの場合はそのまま攻撃する。ハズレの場合は自分のライフポイントを半分失い攻撃する。



「それじゃあ、ショータイムだっ!『ガトリング・ドラゴン』の効果を発動!」

コインが空中を舞い、その全てが表を向ける。

「やっぱり『地雷蜘蛛』を出し解いて正解だった。これでもにコインが全て表でも『ガトリング・ドラゴン』が破壊されないからね。さあ『ガトリング・ドラゴン』よ!フィールドのモンスター全てを焼き尽くせ!」

『ガトリング・ドラゴン』の砲塔が極運の『地雷蜘蛛』、安紀のフィールドの『エース・ナイト』、そして・・・・『ガトリング・ドラゴン』自身に向けられる。

「な、なぜだ!まだ『フリード』がフィールドに・・・・・な、何っ!」

極運が安紀のフィールドを見てみると、先程まで居たはずの『フリード』の姿が見えなくなっていた。


「・・・・・『亜空間物質転送装置』を効果発動前に使わせて貰ったよ。これで『ガトリング・ドラゴン』ごとフィールドが綺麗になるね。」

「な、何っ!」



『亜空間物質転送装置』 通常罠
自分フィールド上の表側表示モンスター1体を選択し、発動ターンのエンドフェイズまでゲームから除外する。



砲塔を自身に向けたまま、『ガトリング・ドラゴン』の砲塔から無情にもフィールド全てのモンスターに向けて弾丸の雨が降り注ぐ。当然、それを至近距離で受けた『ガトリング・ドラゴン』自身も他のモンスター同様に爆破し、崩れ去った。

「そ、そんな馬鹿な・・・・。」

極運の威勢は1ターンも保たずに意気消沈としてしまう。その瞬間に七色の不思議な光の中、『フリード』がフィールドへと舞い戻ってきた。

「あたしのターン、ドロー・・・・まずは『フリード様』でダイレクトアタック。」

『フリード』が走りながら接近し、極運の数メートル手前の場所で剣を抜いて、極運の胸部目掛けて突きを繰り出す。その素早さを前に極運は少し慌てた様子で手元のカードを発動する。

「リ、リバースカード、オープン!『ドレインシールド』!」



『ドレインシールド』 通常罠
相手モンスター1体の攻撃を無効にし、そのモンスターの攻撃力分の数値だけ自分のライフポイントを回復する。



「これで『フリード』の攻撃は無効となり、僕の1900ポイントライフを回復する。」

ライフが回復した事で極運の心に少しばかり余裕が生まれ、先程までのオドオドした口調も少しは良くなってきたようだ。


極運LP2100→4000


「あっそ・・・・でも、休んでる暇なんてないよ。速攻魔法、『白馬の王子様』発動。・・・・効果で『無敗将軍フリード様』を特殊召喚。」



『白馬の王子様』 速攻魔法
自分フィールド上に存在する光属性・戦士族モンスター1体を指定して発動する。指定したモンスターをデッキに戻し、以下の効果の内1つを選択して発動する。●デッキに戻したモンスターのレベル+3以下のレベルの光属性・戦士族モンスター1体を召喚条件を無視してデッキから攻撃表示で特殊召喚する。●『フリード』と名のつくモンスターを召喚条件を無視してデッキから攻撃表示で特殊召喚する。このカードの効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン効果を発動及び適用する事はできない。



『フリード』が光の渦の中に吸い込まれ、再び『フリード』が召喚される。見た目の違いは殆どないが、その名の『将軍』からなのか、先程までの『フリード』より威厳と力強さを感じる風貌である。



『無敗将軍フリード』
地 戦士族 レベル6 ATK/2300 DEF/1700
このカードを対象にする魔法カードの効果を無効にし破壊する。このカードが表側表示でフィールド上に存在する限り、自分のドローフェイズにカードを1枚ドローする代わりに、レベル4以下の戦士族モンスター1体をデッキから手札に加える事ができる。その後デッキをシャッフルする。



『無敗将軍フリード』 ATK/2300→2500


「そのまま、ダイレクトアタック!」
召喚時の勢いを殺さずに『フリード』が急速に接近し、極運の目の前で剣を横に払う。

「うわぁぁぁぁぁ!」

強烈な一撃による衝撃で極運は軽く後ろへと吹っ飛び、片膝を突いてしまう。この攻撃で先程『ドレインシールド』で回復した以上のダメージを受ける結果となった。


極運LP4000→1500


「ターン終了だよ。」

「くっ・・・・僕のターン、ドロー。ここで『デンジャラスマシンTYPE−6』の効果を発動!」

極運がよろよろと起ち上がるとデッキからカードを引き、それと同時にスロットが回転を開始する。しばらくして止まったスロットのウィンドウは全て4の数字を表示していた。今回3回目のドロー判定である。

「ダイスの判定は4。よってさらにカードを1枚ドローする。」

極運は新しく引いた2枚のカードと、元々自分の手札にあったカードを確認する。

「(今の手札は『クルーエル』、『天使のサイコロ』、『悪魔のサイコロ』の3枚・・・・。)」

今この状況で出来る最善の手を行うべく極運は思考を巡らせる。



『クルーエル』
闇 悪魔族 レベル4 ATK/1000 DEF/1700
このカードが戦闘によって墓地に送られた時、コイントスで裏表を当てる。当たった場合、相手モンスター1体を破壊する。



『天使のサイコロ』 速攻魔法
サイコロを1回振る。自分がコントロールしている全ての表側表示モンスターの攻撃力・守備力は、エンドフェイズまで「出た目×100ポイント」アップする。



『悪魔のサイコロ』 通常罠
サイコロを1回振る。相手がコントロールしている全ての表側表示モンスターの攻撃力・守備力は、エンドフェイズまで「出た目×100ポイント」ダウンする。



「(フッ!『フリード』の攻撃力は現在2500。2つのサイコロが成功したら例え他のモンスターが出てきても『クルーエル』で防ぐことが出来る!彼女の手札は0。この状況を突破するのカードは来ないだろう。)」

極運がそう結論づけると、手札のカードを全て手に取ってそれぞれのカードをデュエルディスクにセットする。

「・・・それじゃあ僕はカードを2枚伏せ、さらにモンスターを1体セットしてターンエンドだ。」

極運のフィールド上に裏側のカードが3枚並ぶ。だが、安紀はそれらのカードには目もくれず自分のターンを開始した。

「私のターン、『ミスティック・ソードマンLv2』を召喚するよ。」

安紀のフィールドに小さい剣士が姿を現し、剣を軽く何回か振る。その剣裁きにはこれからの成長を楽しみとさせる物があるように見える。


『ミスティック・ソードマンLv2』
地 戦士族 レベル2 ATK/900 DEF/ 0
裏側守備表示のモンスターを攻撃した場合、ダメージ計算を行わず裏側守備表示のままそのモンスターを破壊する。このカードがモンスターを戦闘によって破壊したターンのエンドフェイズ時、このカードを墓地に送る事で「ミスティック・ソードマン LV4」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。



「な、何故だ!何故なんだぁぁ!!何故今そのカードを引く!?」

「来ないだろう」と予想していたカードをドローされ、極運はこの日何回目か分からない動揺と驚きを見せる。そんな極運に安紀は鋭い視線を向ける。

「『無敗将軍フリード様』の効果を使ったの。それでデッキからレベル4以下の戦士族モンスター、『ミスティック・ソードマンLv2』を手札に加えたんだよ。・・・・でも、もしこのドローが偶然だったとしても・・・・・。」

安紀が口を紡ぐと『ミスティック・ソードマン』が走り出し、その小さい体を一杯に使って剣を横に薙ぎ払い、『クルーエル』を裏側のまま闇へと葬り去る。



「・・・・強運なあなたに言われたくないけどね。」



そう言って安紀が後ろを振り向く。その瞬間、『フリード』が剣を抜いて上段に構える。極運はその光景に、怯えた声を出しながら、後ろへと尻餅を着く形で倒れて逃げ出すように後ずさりをする。

「う、うわぁぁぁぁ!!」

絶叫する極運の声を聞いて安紀が、

「終わりよ・・・・・・。」

そう短く言って歩き出す。その瞬間、『フリード』の攻撃が極運を襲い、ライフポイントが0を刻む。


極運LP1500→0


――――――――――――。


―――――――――。


――――――。



「おい、安紀!ちょっと待てよ!」

極運とのデュエルが終わってから、デュエルディスクも外さずに店の外へと安紀に、真と竜が声を掛ける。呼び止められた彼女がこちらを振り向いた。その目は一瞬だけ先程までの冷たさがあったように見え、2人は少し身震いするが、

「ほえ?・・・・どうしたの、2人とも?」

いつもの様子の安紀を見て2人はホッと胸をなで下ろすのであった。

「・・・・って、あれ?あたし、デュエルの途中じゃなかったっけ?」

頭に?マークをいくつか浮かべながら安紀が首を傾げる。

「お前・・・・何にも覚えてないのか?」

「何にもって・・・・何の事?」

「い、いや何でもないよ安紀ちゃん。それじゃあ真、帰ろうぜ。」

安紀が何も覚えていないと分かると、竜は急いで話題を変えようとする。

「う、うん。」

少し腑に落ちない様子だったが、安紀は考えても仕方ないと割り切って先に歩き出した2人を追いかけるべく走り出す。





PM10:30
千得州(ちえす)町 中央ビル群。





「ラムサ様・・・・。大会の手筈、全て整いました・・・。」

とあるビルの屋上に男の低い声が響く。するとその声に呼ばれたラムサが、今まで見ていた夜景から目をそらし、男の方へ向き直る。

「そしてラムサ様がご命令なさった、『影中 聖夜』と『武斬 真』の行動の監視ですが、ラムサ様の予想通り、彼らは明日の大会に出場し、貴方の敵として再び現れる物かと・・・・。」

「そうか・・・・フッ、そうでなくては面白くない。」

「試しに戦闘員の1人、極運を接触させましたが予想外の行動を取り、武斬 真の側にいた小娘とデュエルをしてしまい、現在の武斬 真のデッキを把握するのは失敗してしまいました。」

「まあ、構わない・・・。こうなれば私自ら彼の今の実力を拝見するとしよう。そして我が最高の部下、ルセルベよ。お前に『神のカード』を与えよう。」

男の報告に、ラムサは細く微笑むと、厳重に鍵がされたケースの中なら1枚のカードを取り出し、ルセルベと呼ばれた男に渡す。

「有り難き幸せ。このルセルベ、『神のカード』とラムサ様の名に恥じぬよう精進させていただきます・・・・。」

ルセルベと言う男は恭しくカードを受け取ると、自分のデッキを取り出し、そこに『神のカード』を加える。


――――バラララララララララ!!


丁度その時、ビルの上空にヘリコプター特有の爆音が辺りに鳴り響く。

「行くぞ、ルセルベ!決戦の地に!」
ラムサとルセルベが乗り込むと、ヘリはゆっくりと上昇し、深夜の空へと飛び去って行った・・・・。



決闘10「更なる力」

AM7:58
大会当日。


ここは今回行われるタッグデュエル大会の会場、「千得州スタジアム」。・・・・元々は周りを森に囲まれた、陸上、野球などの競技場だったが、近年の『M&W』の世界的ブームに押され、大規模なデュエルリングや施設内カードショップなどの多様な設備も整えられた多目的施設となっている。


「あと2分・・・・皆さん、遅いですね・・・・・。」


そんな中、愛菜が自分の手首の腕時計を見ながら呟いた。彼女は今、スタジアム入り口前のベンチに腰掛けて、真達3人の到着を待っていた。周りには人の姿はほとんど無く、どうやら他の選手達は既に会場へと移動してしまったようだ。


「そもそも、一番張り切っていた真さんが遅れるって何か間違ってる気がするのですが・・・・・。そう思いません?」

話し相手がいないからか、愛菜は作者に話を突然振ってくる。急に振られて作者は一瞬驚くが、自分もそれには同意見である事を告げる。

「そうですよね。それに・・・・」


――――ガサッ、ガサガサ!


愛菜が作者との会話で時間を潰そうとした瞬間、彼女の位置から通路を挟んだ向こう側の茂みが揺れる。突然の出来事に愛菜は警戒する。そんな中、


「いや〜ギリギリセーフって所かな。さすが俺!」

茂みの中から1人の人間が姿を現す。


「えっと・・・・飛立さん・・・・です、よね?」


少し間が開いたが、その正体に気づいた愛菜が恐る恐るその名を呼ぶ。その声に気がついたのかその人影、飛立 竜がこちらに気がついて振り向く。

「おっと愛菜さん、おはようございます!」

彼は振り向いた直後、服に付いた木の葉や土を払いながら爽やかな挨拶を愛菜へと返す。

「飛立さん・・・・後の2人はどちらに?」

「ああ、2人なら後ろッス。」

そう言って竜は、自分が出てきた茂みを指さしながら彼女の質問に答える。するとそれとほぼ同時に、


「おいおい、もうちょっとマシな道無いのかよ・・・・・。」


「わ〜!ホントに着いたぁ〜!」


と色々とそれぞれの心境を述べながら真と安紀がそれぞれ茂みから顔を出した。大体予想できる内容だとしても愛菜はその光景に苦笑するしかない。


――――――――――――。


―――――――――。


――――――。



「あの・・・・皆さん、待ち合わせギリギリな上、何故草むらから?」



AM8:10
千得州スタジアム、選手控え室。
あれから3人は愛菜と共に、大会選手控え室へとやって来ていた。


「それはね・・・・。」

安紀が愛菜の質問に答える形で語り出す。


――――――――――――。


―――――――――。


――――――。


AM7:40
安紀の自室。



「あと、少しでっ・・・・はぁ、はぁ・・・・イケそっ・・・・なの、にっ!」



この年頃の少女らしい家具が置かれた部屋の中、安紀が椅子の上で必死に天井へと手をのばしていた。・・・・・正確に言うと天井や壁に隙間無く敷き詰められた『フリード』のカードに対してだが。

「えいっ!」

もう一度勇んで手を伸ばす。・・・・だが悲しいかなその手は、天井にはギリギリの所までにしか届いてはいなかった。それもそのはず、元々小柄な彼女にとって椅子の上と言えどその身長には限度が有るのであった。


「も〜!負けるな、あたし!1782枚目のフリード様はもうすぐよ!」


彼女は自分自身に渇を入れ、時間がギリギリと知りつつも、再び天井に向かって必死に手を伸ばすのであった・・・・。



――――――――――――。


―――――――――。


――――――。



「ホントはそれで、遅れるはずだったんだけど・・・・。」


「そこで俺の出番と言うわけですよ!今回使用した茂みから出現するルートは俺、飛立 竜の実体験を参考にしたた逃げ道でありまして――――。」

安紀の言葉に反応し、誰も聞いてないことを強引に語り出す。まあ、こういう場合、当たり前のように無視されるわけだが。


「でも凄いんだよ、竜ちゃんの近道。だって途中に雪景色とか火山・・・・そうそう!地上絵が見えたのにはビックリだったよ〜!・・・・でも、そんな所近くにあったかなぁ?」

「そ、そうですか・・・・。(地上絵が見えるって・・・・既に道じゃないですよ、それ・・・・。)と、とりあえず、今回の内容について説明しますね。」

そして感動のあまりはしゃぎ出したり、突然小首を傾げて不思議がる安紀を横目に、資料を出しながらツッコミだけはしっかりとして本題へと入ろうとする。

「まずラムサ達ですが、こちら側の調べで敵組織と思われるデュエリストが何人か大会に参加しているようです。」

「まあ、そいつ等は大会の試合でぶっ潰すとして――――。」

「はい。大変でしょうが、それしか有りません。・・・・・それより問題は試合以外の場所に居る人達です。『神のカード』自体は決勝戦開始と同時に倉庫から出すようなので、彼らが動くとしたら恐らくその時だろうと思います。」

愛菜は会場見取り図の一部を指さしながら説明を加える。

「ですからその時までは例外を除いて普通に大会に参加していて下さい。私達もそれまでは普通に参加しますから。・・・・それと私達とは決勝までは当たらないので、覚えておいてください。他にも追加の情報が入り次第、随時連絡しますので連絡手段の確保もお願いします。」

愛菜の指示通り、3人はそれぞれの携帯電話を取り出し、それらの電源を確認する。

「説明は以上です。あ、それと皆さんの1回戦は大体15分後なので、デッキの調整や施設内の把握はその間にお願いします。」

「分かった。色々サンキューな!」

真の言葉を愛菜は笑みと礼で返すと、そのまま席を立って控え室を出て行った。


「それにしても・・・・・何も無いな、ここ。」


愛菜が部屋を出てからしばらくして、部屋の風景を見渡していた真が唐突に呟く。
それもそのはず、面積は大体学校の教室の半分ぐらいで、置かれた物は「コ」の字型に並べられた長机とその周りに左右3つずつほどパイプ椅子が置いてある程度である。部屋の隅には試合観戦用のテレビが備え付けられていた。綺麗に整頓はされているが、それ以外には何もない少し寂しい部屋であった。

「確かにそうだね。・・・・・ねぇ、時間も有るけど何しよっか?」



――――――――――――。


―――――――――。


――――――。



「へぇ・・・・色々あるんだ〜。」

安紀が感嘆の声を上げる。
・・・・・・あれから愛菜が言った通り、会場施設内を見て回った3人は最後に中央ロビーへとやって来ていた。彼らの前には巨大な電光掲示板があり、大会に関する注意事項が表示されていた。



『大会規定』

・本大会の試合は全て2対2のタッグマッチ形式で行う

・本大会は1チーム3人で構成され、全16組・総勢48名のトーナメント戦である

・同じ組み合わせのタッグによる連続出場は認められず、試合毎にタッグ内容は変更しなければならない



『タッグデュエル大会特別ルール』

・フィールドは1チームにつき1つずつ

・モンスターカードゾーンは8枚まで、魔法・罠カードゾーンも同様に8枚まで

・パートナーのモンスターを生け贄・融合素材などに利用することも可能

・モンスターは自分が召喚・反転召喚・特殊召喚した物だけコントロールすることが出来る

・融合ゾーンは1チームにつき1つ(パートナーの融合モンスターも利用可能)

・墓地ゾーンは1チームにつき1箇所(パートナーの墓地も利用可能)

・LPは1チームにつき8000

・フィールド魔法は通常の2人での対戦と同じく、ひとつまで

・自分のセットしたカードならばパートナーのターンに自分で発動可能

・デッキは1人につき1つ(1チームに2つ)

・チームメンバーに対するアドバイス行為は禁止



「さて安紀ちゃん、もうすぐ試合だから戻ろ―――」

そう言って竜が振り返って歩き出そうとしたが、



「見つけたぞ!飛立 竜!」



と言う声に呼び止められる結果となってしまった。竜がその声の方に振り返ると、一人の少年がこちらに


――――ズビシィッ!


と右人差し指でこちらを強く指さしていた。

「お、お前は―――」

その力強い指差しを見て、竜がその少年の名を・・・・・


「『やられ役』!」


結構惜しいところで間違える。まあ、お約束と言えばお約束な展開だが。

「貴様ぁ!私の名前は屋羅礼 躍だ、や・ら・れ・い・や・く!」

そう・・・・彼こそは第7話に登場し、『青眼の白龍』がらみの決闘者、屋羅礼 躍(やられい やく)少年である。彼の活躍(?)についてはそちらを参照して欲しい。ちなみに今回の彼の服装は何処で入所したかは不明だが、休日にもかかわらず白い詰め襟学制服と、周りから見るととても奇妙な物であった。

「・・・・とにかくだ。飛立 竜!ここで会ったからには貴様への積年の恨み、この大会で晴らしてやる!覚悟するが良い!」

そう言って彼は再び、


――――ズビシィッ!


と右指を突き出す。

「この大会でって・・・・・お前の仲間達はどうしたんだよ。タッグデュエルだろ、この大会。」

と、そこで先程から会話に入れていなかった真が口を挟む。そんな指摘を受けても屋羅礼少年は全く動じることもなく、不敵な笑みを浮かべる。

「・・・フフ・・・ワハハハハ!!そこまで言うのならば紹介しよう!集え、我が同志達よ!」


――――ズビシィッ!


高笑いと共に屋羅礼が指さした方向には2人の人間が立っていた。1人は真の身長・・・・175pよりも少し高い大柄な男で、もう1人の青年は、タキシードと言う何処かズレた服装ではあるが、屋羅礼と並ぶには丁度良い格好なのかもしれない。

「久しぶりだなぁ・・・・・武斬ぃ!・・・・あの時はお前には散々世話になったよなぁ!」

大柄な男は直ぐにでも掴みかかりそうな勢いで叫ぶ。真自身もこの相手の様子に驚きが隠せない。だが・・・・

「(なあ、弾。こいつ誰だ?・・・・・どっかで見た気はするんだけど・・・・?)」

真の記憶からはすっぽりと抜け落ちており、竜の場合よりも酷い状態となっていた。

「(真。彼についてはページの1番上にある『キャラ紹介』を見ると分かるよ。)」

「(なるほど。こいつ、あの時の奴か。)」

弾の少し奇妙な補足のおかげで、真はようやく思い出す。イマイチ解らなかった人はキャラ紹介を読んで頂きたい。

「それで、何でお前等が組んでるんだよ?」

「簡単に言うとまあ、同じ目的を持った同志と言う奴だ。そう・・・・貴様等3人に屈辱的に敗北した私達がリベンジを臨み、あちこちの大会に3人で出場していたのだ!」

「(それ、一種のストーカーじゃないのか・・・・・?)まあ、理由は分かった。それで・・・・『あいつ』もお前達2人と同じ理由だよな?」

そう言って真は、少し離れた位置で安紀の側にいるタキシード青年・・・・・極運 良(ごくうん りょう)の方に目線を向ける。彼は今、片膝を折った姿勢で両腕を左右に広げて安紀になにやら熱く語っていた。

「あなたは、この僕の強運を前にしても、それを軽々と打ち砕いた。そう!これを神様がもたらした幸運と言わず何と言う!・・・・・つきましてはお付き合いを―――」



「ゴメンなさい!」



つい昨日に安紀とのデュエルで体験した恐怖などお構いなしに、いきない自分の胸の内を告白する極運少年だが、わずか1秒でその想いも打ち砕かれてしまった。

「え・・・・!?な、何故・・・・!?」

あまりの即答に、極運は事態が理解出来ないでその場に立ち尽くす。

「何故って言っても・・・・・私には、『フリード様』が居るからそう言うことあんまり考えたこと無いし・・・・だから・・・・・ゴメンなさい!」

そう言って彼女が頭を下げて応えると、彼はヒビが入った石像の様にその場で崩れ去ってしまう。その突然な様子の変化にさすがの安紀も驚いてしまう。

「あれれ!?ね、ねえ大丈夫!?」

今、風が吹いたら飛んでいきそうな彼の元へと安紀が駆け寄る。が、彼の心は既に空っぽであった。

「極運が消えてしまったが、まあ良いだろう。・・・・と言うわけで飛立 竜!それとついでに武斬 真!私達2人が観衆の面前で叩き潰してやるから覚悟するが良い!」


――――ズビシィッ!


そう言って屋羅礼お馴染みの指さしが炸裂する。そして


――――ピンポンパンポン♪


それと同時に会場全体に係員のアナウンスが流れ始めた。

「え〜選手の呼び出しを行います。今からお呼びする選手のチームはデュエルフィールド前に集合してください。1回戦・第一試合、武斬 真選手・・・・剛力 拳選手。繰り返します―――」


「・・・フフ・・・ワハハハハ!!まさか、いきなりとは。まあ、せいぜい無駄なあがきを続けるが良い!・・・・・それでは行くぞ、同志よ!勝利と言う名のロードへ、全速前進だ!」

そう言って高笑いと共に屋羅礼は歩き去った。剛力も空っぽになった極運を引きずりながらその後を追う様に歩き出す。結果的に真達3人はその場に取り残される事となった。

「(結局何だったんだよ、あいつら・・・・。)それじゃあ、安紀。向こうのご指名だからこの試合は控えててくれ。」

「りょーかい!それならあたし、影中君達と控え室で試合見てるから。」

真の提案を安紀は快く承諾する。

「悪ぃな!それじゃあ竜、行くぜ!」

「OK!」

試合に出るデュエリストが決定し、2人はデュエルリングへと走り出す。


「試合、頑張ってね〜☆」

そんな2人を彼女は手を振って見送るのであった。


――――――――――――。


―――――――――。


――――――。



AM8:30
千得州スタジアム、デュエルリング



「それでは、1回戦・第一試合、選手入場!」



係員のアナウンスと共に、真と竜。そしてその反対側に剛力と屋羅礼の4人が地下エレベーターによりステージ地下よりゆっくりと現れる。

「ちなみに本大会の司会をしますのは私、加々理 院(かかり いん)と・・・・・。」

ここで突然登場した新キャラ係員、加々理の声が一瞬薄らいだと思った次の瞬間。



「この俺、千得州町NO.1店長、高原 虎(たかはら とら)でい!おめぇら、今日は派手に暴れようぜ!」



マイクより突然発せられる爆音に会場はしばらく衝撃に包まれる。そう。彼こそは真達御用達の店、「〜戦乱〜」の店長である虎さんこと、高原 虎である。

「え〜それでは紹介はここまでにして―――」

「おめぇら、行くぜぇ!デュエル・・・・・・」


「「スタート!」」


観客と虎の声の見事なシンクロによりデュエル開始が宣言され、真達4人のデュエリストの戦いが始まる。


「デュエル!!」


真&竜LP8000  剛力&屋羅礼LP8000


「俺様のターン、ドロー!そして、『マハー・ヴァイロ』を攻撃表示で召喚!カードを1枚伏せてターンエンドだ。」

剛力の場に静かに武器を構える青き魔法使いと1枚の伏せカードが出現する。



『マハー・ヴァイロ』
光 魔法使い レベル4 ATK/1550 DEF/1400
このカードに装備された装備カード1枚につき、このカードの攻撃力は500ポイントアップする。



「よっし!俺のターン、ドロー!」

真は初期手札の5枚に加え、新たな1枚をドローすると手札と軽くにらみ合う。

「俺は『六武衆−ザンジ』を召喚!カードを1枚セットしてターン終了!」



『六武衆−ザンジ』
光 戦士族 レベル4 ATK/1800 DEF/1300
自分フィールド上に『六武衆−ザンジ』以外の『六武衆』と名のついたモンスターが存在する限り、このカードが攻撃を行ったモンスターをダメージステップ終了時に破壊する。このカードが破壊される場合、代わりにこのカード以外の『六武衆』と名のついたモンスターを破壊する事ができる。



そして屋羅礼のターンへと移る。

「私のターン、ドロー!『ブラッド・ヴォルス』を攻撃表示で召喚!(・・・フフフ・・・今、私の手札には上級モンスター、『エメラルド・ドラゴン』が存在する。次のターンで『ブラッド・ヴォルス』を生け贄にしてやる!)」



『ブラッド・ヴォルス』 通常モンスター
闇 獣戦士族 レベル4 ATK/1900 DEF/1200
悪行の限りを尽くし、それを喜びとしている魔獣人。手にした斧は常に血塗られている。



『エメラルド・ドラゴン』 通常モンスター
風 ドラゴン族 レベル6 ATK/2400 DEF/1400
エメラルドを喰らうドラゴン。その美しい姿にひかれて命を落とす者は後を絶たない。



「これで私のターンは終了だ。飛立!貴様のターンだ!」

屋羅礼のフィールドに一つめの巨人が出現する。その血気盛んな目からかなり好戦的であることが伺える。

「俺のターン、ドロー!俺は『リプラニッシュ・ドラゴン』を攻撃表示で召喚!」



『リプラニッシュ・ドラゴン』
風 ドラゴン族 レベル4 ATK/1700 DEF/ 400
フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキからカードを1枚ドローする。



「そしてカードを1枚セットしてターンエンドだ。」

竜の場に1体の東洋竜が出現する。その長い体を時々うねらせながら黒い装甲が黒光りする。


※今回はタッグデュエルによりフィールドの変化が激しいため、一回りする毎にフィールド状況を公開します。

真&竜LP8000
手札:3枚&4枚
フィールド:『六武衆−ザンジ』、『リプラニッシュ・ドラゴン』
      伏せカード3枚


剛力&屋羅礼LP8000
手札:4枚&5枚
フィールド:『マハー・ヴァイロ』、『ブラッド・ヴォルス』
      伏せカード1枚



「ドロー!俺様は―――」

そう言って剛力達のフィールドのモンスターが1体、光の粒子となる。そう、生け贄召喚である。

「『ブラッド・ヴォルス』を生け贄に、『暗黒魔族ギルファー・デーモン』を召喚!」

「何ぃ、貴様ぁ!」

屋羅礼の叫びも虚しく、一つめの巨人は光となって消え、1体の悪魔が降臨する。



『暗黒魔族ギルファー・デーモン』
闇 悪魔 レベル6 ATK/2200 DEF/2500
このカ−ドが墓地に送られた時、装備カ−ド(攻撃力/−500)となり、フィ−ルド上のモンスタ−1体に装備させる事ができる。



「そのまま、『リプラニッシュ・ドラゴン』を攻撃!」


――暗黒魔炎葬(ギルファーフレイム)!――


「くっ・・・・!」

『リプラニッシュ・ドラゴン』が破壊され、竜が『ギルファー・デーモン』の炎の余波により少しだけ後ずさる。


真&竜LP8000→7500


「でも、喰らいっぱなしじゃねぇぜ!手札の『先祖達の歴史(アンシスターズ・ヒストリー)』を捨てて、リバースカード『ダメージ・コンデンサー』!」


『ダメージ・コンデンサー』 通常罠
自分が戦闘ダメージを受けた時、手札を1枚捨てて発動する事ができる。その時に受けたダメージの数値以下の攻撃力を持つモンスター1体をデッキから攻撃表示で特殊召喚する。



「これでデッキから『サモンドラゴン』を特殊召喚!そしてさらに『リプラニッシュ・ドラゴン』の効果で1枚ドロー!」



『サモンドラゴン』
水 ドラゴン族 レベル2 ATK/200 DEF/300
このモンスターがデッキからの特殊召喚に成功した場合、次の自分ターンのスタンバイフェイズ時に、自分の墓地に存在するレベル4以下のドラゴン族モンスタ−1体を自分フィールド上に特殊召喚する。



フィールドに一匹の子竜が現れる。そのつぶらな瞳などから容姿は『デコイ・ドラゴン』に近いと言えよう。

「だが、『マハー・ヴァイロ』で『サモンドラゴン』を攻撃!」

「させっかよ!永続罠、『ディフェンシブ・アドバンテージ』!」

『マハー・ヴァイロ』の攻撃に割ってはいる様に真のリバースカードが発動する。



『ディフェンシブ・アドバンテージ』 永続罠
このカードは相手ターンのみ発動することが出来る。このカードがフィールドに表側表示で存在する限り、自分フィールド上のモンスターは相手モンスターとのダメージ計算を無効にする。この効果は1ターンに2度まで発動できる。次の自分のターンのスタンバイフェイズにこのカードを破壊する。その後、発動プレイヤーはカードを1枚ドローする。



――――ガキィン!


『マハー・ヴァイロ』の打ち出した魔力弾が竜のモンスター、『サモンドラゴン』を直撃する瞬間、フィールドに円形の防御壁が出現して攻撃を防ぎきる。

「真!ナイス防御!」

竜が真の方を見ながら叫び、真も小さくVサインで応える。そんな、好調な二人に対し、

「剛力ぃ!せめて生け贄にするなら目配せぐらいしろ!」

「うっせーな!『ブラッド・ヴォルス』程度より全然いいじゃねぇか!」

攻撃終了と共に屋羅礼が吠える。が、剛力も負けじと言い返す。そしてそれは大論争へと発展した。

「大体、お前は―――」

「いや!それなら貴様の方が―――」

「何だと!?ヤルのか、こらぁ!」


論争はますます激しさを増して行き、この騒動は虎の怒りの声が炸裂するまで続いた・・・・。



しばらくして・・・・。



「俺のターン、ドロー!さらに、『ディフェンシブ・アドバンテージ』の効果でさらにドロー!」

あの論争からしばらくしてから真のターンが開始される。そして真のスタンバイフェイズに入ったことにより、『ディフェンシブ・アドバンテージ』のカードと共に、防御壁が砕け散る。

「手札から『六武衆−ヤリザ』召喚!」



『六武衆−ヤリザ』
地 戦士族 レベル3 ATK/1000 DEF/ 500
自分フィールド上に『六武衆−ヤリザ』以外の『六武衆』と名のついたモンスターが存在する限り、このカードは相手プレイヤーに直接攻撃する事ができる。このカードが破壊される場合、代わりにこのカード以外の『六武衆』と名のついたモンスターを破壊する事ができる。



「そして『六武衆−ザンジ』で、『マハー・ヴァイロ』を攻撃!」

真の攻撃宣言と共に走り出した『ザンジ』が自分の太刀を抜刀し、『マハー・ヴァイロ』に斬りかかる。

「馬鹿が!リバースカード、オープン!『鎖付き爆弾(ダイナマイト)』!『マハー・ヴァイロ』に装備!」


『鎖付き爆弾』 通常罠
このカードは攻撃力500ポイントアップの装備カードとなり、自分フィールド上のモンスターに装備する。装備カードとなったこのカードが他のカードの効果で破壊された場合、全フィールド上からカード1枚を選択し破壊する。



『マハー・ヴァイロ』ATK/1550→2050


「さらに『マハー・ヴァイロ』の効果で攻撃力が500ポイントアップ!これで返り討ちだ!」


『マハー・ヴァイロ』ATK/2050→2550


「へっ!馬鹿はお前だ、剛力!リバースカード、オープン!」

新たに装備した武器の内、爆弾が付いた方の鎖を『ザンジ』目掛けて投げつける。が、真のリバース発動と同時に『ザンジ』の速度が急激に上昇する。そしてそのスピードのまま、薙刀を真横に払って『マハー・ヴァイロ』を一閃する。


剛力&屋羅礼LP8000→7750


「な、何!」

突然の出来事に当事者の剛力は愚か、屋羅礼も驚きの表情を浮かべる。そんな2人を見ながら真は今さっきオープンしたカードを提示する。

「今オープンしたカードは『六武衆・一の型−電雷(いかずち)』!」



『六武衆・一の型−電雷(いかずち)』 速攻魔法
表側表示の『六武衆』又は『紫炎』と名のついたモンスター1体の攻撃力を、ターン終了時まで1000ポイントアップする。



『六武衆−ザンジ』ATK/1800→2800

「へっ!続けて『ヤリザ』でダイレクトアタック!」

『ヤリザ』はそのスピードを生かし、『ギルファー・デーモン』の間をすり抜けて接近し、槍による一撃が剛力達に直撃する。


――旋風槍!――


「ぐわっ・・・・!」


剛力&屋羅礼LP7750→6750


「カードを1枚伏せてターン終了!」

ターン終了と共に『ザンジ』の攻撃力が元の数値に戻る。


『六武衆−ザンジ』ATK/2800→1800


「私のターン、ドロー!(くっ・・・・。剛力が生け贄にした所為で私のコントロール出来るモンスターが居なくなってしまったか・・・・ならば。)私は『トレード・イン』を発動!」



『トレード・イン』 通常魔法
手札からレベル8のモンスターカードを1枚捨てる。自分のデッキからカードを2枚ドローする。



屋羅礼は手札のカードを1枚、墓地に送ると新たなカードを2枚引いた。

「そして、『闇・道化師のサギー』を守備表示で召喚!カードを2枚セットしてターン終了だ!」

屋羅礼の場に道化師が現れ、不敵な笑みと共に守備体制を取る。



『闇・道化師のサギー』 通常モンスター
どこからともなく現れる道化師。不思議な動きで攻撃をかわす。



「俺のターン、ドロー!この瞬間、『サモンドラゴン』の効果発動!墓地から『リプラニッシュ・ドラゴン』を特殊召喚!」

「さらに手札から『タイムカプセル』を発動!」



『タイムカプセル』 永続魔法
デッキからカードを1枚選択し、裏側表示でゲームから除外する。発動後2回目の自分スタンバイフェイズにこのカードを破壊し、除外されたカードを手札に加える。



「そして、『サモンドラゴン』と『リプラニッシュ・ドラゴン』の2体を生け贄に――」

竜の眼前にいたドラゴン達が全て光の渦となって消失する。

「『フェルグランドドラゴン』を召喚!」

フィールドに金色(こんじき)の光を放ちつつ、1匹の竜が降臨する。その体は細長い形状だが、全長は大きく、力強い威圧感を当たりに漂わせている。


――――――――――――。


―――――――――。


――――――。


「凄いですね、真さんも飛立さんも・・・・。」


愛菜が真と竜に感心の声を漏らす。・・・・場所は変わって、ここは影中達が使用している選手控え室である。今行われている2人の試合を影中、岩岡、愛那、安紀は備え付けの観戦用テレビで見ていた。

「特に今の生け贄召喚みたいにお互いのモンスターの干渉がほとんど無いからそれぞれモンスターで思う存分暴れられているのが凄いよ。」

影中が今までの結果から得た結論を述べる。

「影中君。あたし達の付き合いの長さ舐めて貰っちゃあ困るよ!それに―――」

「それに?」

「それに、2日間、しかも徹夜越しで練習して来たんだから大丈夫!」

そう自信満々に言い切って、安紀は再びテレビへと目線を向けた。


――――――――――――。


―――――――――。


――――――。


「『フェルグランドドラゴン』で『ギルファー・デーモン』を攻―――」


「待ったぁ!リバースカード、オープン!ウイルスカード、『死のデッキ破壊ウイルス!』」

竜が攻撃宣言しようとした瞬間、屋羅礼のリバース発動が割って入り、フィールド一面に紫色の霧が立ちこめる。



『死のデッキ破壊ウイルス』 通常罠
自分フィールド上の攻撃力1000以下の闇属性モンスター1体を生け贄に捧げる。相手のフィールド上モンスターと手札、発動後(相手ターンで数えて)3ターンの間に相手がドローしたカードを全て確認し、攻撃力1500以上のモンスターを破壊する。



「『闇・道化師サギー』を生け贄に、貴様等のデッキを破壊してくれる!」

先程までフィールドに立ちこめていた紫の霧が竜の『フェルグランドドラゴン』を蝕み始め、真の『ザンジ』にまで迫る。

「くそっ!俺は『ザンジ』の効果で『ヤリザ』を代わりに破壊する・・・・。」

「まあ、良いだろう。・・・・さて、次は手札を見せて貰おうか!」

屋羅礼の言葉に、2人は苦い顔をする。


真の手札:『六武衆推参!』、『六武衆−カモン』、『諸刃の活人剣術』

竜の手札:『ミラージュ・ドラゴン』、『龍の鏡(ドラゴンズ・ミラー)』


「さて、それぞれ攻撃力1500以上のモンスターを捨てて貰おうか!」

真は『カモン』を、竜は『ミラージュ・ドラゴン』をそれぞれ墓地へと送った。

「くっ・・・・ターンエンドだ。」


真&竜LP8000
手札:2枚&2枚
フィールド:『六武衆−ザンジ』
      『タイムカプセル』、伏せカード1枚


剛力&屋羅礼LP6750
手札:3枚&4枚
フィールド:『暗黒魔族ギルファー・デーモン』
      伏せカード1枚

※『死のデッキ破壊ウイルス』1ターン経過。



「やるじゃねぇか、屋羅礼!それじゃあ、俺様のターンドロー!」

剛力が軽く屋羅礼を褒めてから自分のターンへと移る。・・・・どうやら、今の『死のデッキ破壊ウイルス』によって信頼も多少回復したようである。


「魔法カード『強欲な壺』を発動して2枚ドロー!!」



『強欲な壺』 通常魔法
自分のデッキからカードを2枚ひく。ひいた後で強欲な壺を破壊する。



毎度お馴染み、デザインがいまいちな壺が出現し、剛力の手札を潤した後爆発する。

「(ちっ・・・・手札がイマイチだぜ・・・・なら!)さらに、『リロード』を発動!手札4枚をデッキに戻し、4枚ドロー!」



『リロード』 速攻魔法
自分の手札をデッキに加えてシャッフルする。その後、デッキに加えた枚数分のカードをドローする。



「(来たぜ!)そして『重装武者−ベン・ケイ』を攻撃表示で召喚!」

剛力の前に大量の武具で武装した侍が出現する。



『重装武者−ベン・ケイ』
闇 戦士族 レベル4 ATK/500 DEF/800
このカードは通常の攻撃に加えて、このカードに装備された装備カードの数だけ、1度のバトルフェイズ中に攻撃する事ができる。



「そしてこいつに『盗人の煙玉』、『明鏡止水の心』、『心眼の矛』の3枚を装備!」



『盗人の煙玉』 装備魔法
モンスターに装備されているこのカードが他のカードの効果によって破壊された時、相手の手札を見てカードを1枚選択して捨てる。



『明鏡止水の心』 装備魔法
装備モンスターが攻撃力1300以上の場合このカードを破壊する。このカードを装備したモンスターは、戦闘や対象モンスターを破壊するカードの効果では破壊されない。(ダメージ計算は適用する)



『心眼の鉾』 装備魔法
装備モンスターが相手プレイヤーに戦闘ダメージを与える場合、そのダメージ数値は1000ポイントになる。



「最後に、『財宝への隠し通路』を『ベン・ケイ』に対して発動!」



『財宝への隠し通路』 通常魔法
表側表示でフィールド上に存在する攻撃力1000以下のモンスター1体を選択する。このターン、選択したモンスターは相手プレイヤーを直接攻撃する事ができる。



「そしてバトルフェイズだ!まずは『ギルファー・デーモン』で『ザンジ』を攻撃!」


再び『ギルファー・デーモン』の手に炎の球体が作り上げられ、『ザンジ』に向かって放たれる。


――暗黒火炎葬(ギルファー・フレイム)!――


「その攻撃、そっくり返すぜ!リバース発動!『魔法の筒』!」



『魔法の筒』 通常罠
相手モンスター1体の攻撃を無効にし、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手プレイヤーに与える。



真の『ザンジ』の目の前に2つの巨大な筒が出現する。一つは『ザンジ』の目の前の火球を、そしてもう一つは剛力達の方を向けて方向転換する。

「喰らいな!」

真がそう叫ぶと同時に筒の内1つが、火球を吸収し、もう一方から発射され、剛力を爆炎が襲う。


「ぐわぁぁ!」


剛力&屋羅礼LP6750→4550


「くっ・・・・。だが、『ベン・ケイ』でダイレクトアタック!」

『ベン・ケイ』の刀の一撃が真と竜の2人にそれぞれ直撃する。実際は500ポイントだが、『心眼の鉾』の効果でダメージが増大している。

「まだだぁ!『ベン・ケイ』は装備魔法の数だけ追加攻撃できる!装備魔法は3枚!3回追加攻撃だ!」

そう言うと、『ベン・ケイ』は再び走り出し、その力強い一撃を確実に喰らわせていく。そして、最初の攻撃を含め、全部で4回の攻撃が炸裂し、2人のライフポイントが大幅に削られる。


真&竜LP8000→7000→6000→5000→4000


「これで俺様のターンは終了だ!」


「くっそ・・・!俺のターン、ドロー!」

『死のデッキ破壊ウイルス』の効果によってドローカードが表示される。


ドローカード:『融合武器ムラサメブレード』


「ふん。運の良いやつめ・・・・。」

恨めしそうに屋羅礼が呟く。真はカードを改めて手札に加えた。

「よし!早速、『融合武器ムラサメブレード』を『ザンジ』に装備して、『ギルファー・デーモン』に攻撃!」


『六武衆−ザンジ』ATK/1800→2600


『ザンジ』の右腕と薙刀が取り込まれ、腕ごと刀に変化する。そして、『ギルファー・デーモン』に接近するとその首筋めがけて刀を水平に薙ぐ。

「(・・・フフ・・・かかった!!)リバースカード、オープン!『DNA改造手術』を『ドラゴン族』を指定して発動!」



『DNA改造手術』 永続罠
発動時に1種類の属性を宣言する。このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上の全ての表側表示モンスターは自分が宣言した属性になる。



『六武衆−ザンジ』 戦士族→ドラゴン族

『暗黒魔族ギルファー・デーモン』 悪魔族→ドラゴン族

『重装武者ベン・ケイ』 戦士族→ドラゴン族


「それがどうしたって―――」

真がそう言おうとした瞬間、『ザンジ』の右腕が変化を始め、右腕が元の姿へと変化し、その手に薙刀が戻ってくる。当然、攻撃力が元の数値に戻る。


『六武衆−ザンジ』ATK/2800→1800


「ど、どうした!?」

突然の『ザンジ』の変化に真は驚きが隠せない。が、『ザンジ』の攻撃は止まらずに『ギルファー・デーモン』に斬りかかる。

「・・・フフ・・・ワハハハハ!!『ムラサメブレード』は戦士族専用のカード!この、『DNA改造手術』で種族が変更されたことによって対象を失った装備魔法は破壊されるのだ!」

「『ギルファー・デーモン』!『ザンジ』を返り討ちにしろ!」

剛力の宣言と共に『ギルファー・デーモン』が迎撃態勢を取る。当然、攻撃力の減少した『ザンジ』はいとも簡単に破壊される。


真&竜LP4000→3600


「くそっ!・・・・カードを2枚セットして、ターンエンド!」

「私のターン、ドロー!・・・・貴様等に『青眼(ブルーアイズ)』を見せてやる・・・・!リバースカード、『正統なる血統』!『青眼の白龍』よ!フィールドに降臨せよ!」



『正統なる血統』 永続罠
自分の墓地から通常モンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。そのモンスターがフィールド上に存在しなくなった時、このカードを破壊する。



『青眼の白龍』 通常モンスター
光 ドラゴン族 レベル8 ATK/3000 DEF/2500
高い攻撃力を誇る伝説のドラゴン。どんな相手でも粉砕する、その破壊力は計り知れない。



「そうか・・・!さっきの『トレード・イン』の時に・・・・。」

突然の大型モンスターの特殊召喚に2人は一気に追い込まれる形となった。

「・・・フフフ・・・ワハハハハハハ!未来を切り裂け、『青眼』!」


――滅びの爆裂疾風弾(バーストストリーム)!――


『青眼の白龍』の口に光り輝く巨大なエネルギーが集束を始める。それは瞬く間に巨大化し、真と竜の2人を直撃する。


「ぐわぁぁぁ!!」


真&竜LP3600→600


「フフフ・・・・これで貴様等の場にモンスターは存在しない!次の私達のターン、貴様等にトドメを刺してやる!ワハハハハハハ!!」

屋羅礼の高笑いがフィールド全体に広がる。そのあまりの優勢からか剛力もどこか上機嫌である。

「俺のターン、ドロー!」


ドローカード:『神秘の中華なべ』


「ふん・・・とことん悪運が強いようだな。・・・・だが、貴様等の場にモンスターは存在しない。今引いたカードは役立たずだな!ワハハハハハハ!」

「この瞬間、『タイムカプセル』の効果で除外したカードを加える・・・・。」

棺の蓋が開き、中から1枚のカードが出現する。


加えたカード:『早すぎた埋葬』


「(くそっ・・・・!どのカードも発動できねぇ・・・・。)」

使用できるカードが無くなってしまった竜の表情に苦痛と焦りの色が浮かぶ。



「おい、竜!」



そんな竜の様子を見た真は、大声で彼の名を呼ぶ。竜は突然呼ばれて驚くが、真はそんなのお構いなしに続ける。


「このターンで終わらせないとヤバイけどよ・・・・こんなピンチ、俺達の力でぶち破ろうぜ!まだ、俺達にはカードとライフが残ってるじゃねぇか!」


「(真と俺の力・・・・残ったカードとライフ・・・・。まさか―――!)」

真の入れた喝に、竜は自分達のフィールドと真のやる気と自信に溢れた顔を交互に見つめる。やがてその考えは1つの結論へとたどり着く事となる。

「てめぇ何、馬鹿言ってやがる!こんな状況、そう簡単に逆転できるわけ―――」




「(真、お前って奴は・・・・。)真・・・・お前の力借りるぜ!」

「おう!」

そう叫ぶと竜は何の迷いも無く、真の伏せたカードを全て表にする。

「リバースカード、オープン!『六武衆推参!』、『諸刃の活人剣術』!」



『六武衆推参!』 通常罠
自分の墓地に存在する「六武衆」と名のついたモンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターンのエンドフェイズ時に破壊される。



『諸刃の活人剣術』 通常罠
自分の墓地から「六武衆」と名のついたモンスター2体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。このターンのエンドフェイズ時にこの効果によって特殊召喚したモンスターを破壊し、自分はその攻撃力の合計分のダメージを受ける。



「この2枚で、蘇れ!『六武衆−カモン』、『ヤリザ』、『ザンジ』!」

竜の叫びと共にフィールドに3体の『六武衆』が舞い戻る。そして、屋羅礼の場の『DNA改造手術』の効果によって種族が戦士族からドラゴン族へと変化する。


『六武衆−カモン』戦士族→ドラゴン族


『六武衆−ヤリザ』戦士族→ドラゴン族


『六武衆−ザンジ』戦士族→ドラゴン族


「へっ!屋羅礼、ありがとな!おかげでコイツが発動できるぜ!魔法カード、『龍の鏡(ドラゴンズ・ミラー)』!」


――――ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・!


竜の眼前に巨大の鏡が出現し、大地を揺さぶるような重低音が辺り一面に鳴り響く。



『龍の鏡(ドラゴンズ・ミラー)』 通常魔法
自分のフィールド上または墓地から、融合モンスターカードによって決められたモンスターをゲームから除外し、ドラゴン族の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)



「これで、フィールドの『六武衆』3体と墓地の『リプラニッシュ・ドラゴン』、『サモンドラゴン』を融合!現れろ、『F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)』!」

モンスター達が鏡へと吸い込まれ、鏡が眩い光を放ち始める。やがて、光の中から竜にとってはお馴染みの超・怒級モンスターが咆哮と共にその姿を現す。



『F・G・D』 融合モンスター
闇 ドラゴン族 レベル12 ATK/5000 DEF/5000
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。ドラゴン族モンスター5体を融合素材として融合召喚する。このカードは地・炎・風・闇属性のモンスターから戦闘ダメージを受けない。



「こ、この状況で、『F・G・D』の融合召喚だと・・・・・!」

その巨体と5つの首を、屋羅礼が驚きの表情と共に見上げる。

「へっ!こんなんでビビるなよ!魔法カード、『神秘の中華鍋』!」



『神秘の中華なべ』 速攻魔法
自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる。生け贄に捧げたモンスターの攻撃力か守備力を選択し、その数値だけ自分のライフポイントを回復する。



「俺は、これで・・・・『F・G・D』を生け贄に捧げる!」

「コイツ、正気かっ!」

光となって消えて行くモンスターを見ながら、剛力は竜の行動に驚愕する。


真&竜LP600→5600


「これでやっと使えるぜ!『早すぎた埋葬』!」



『早すぎた埋葬』 装備魔法
800ライフポイントを払う。自分の墓地からモンスターカードを1枚選択して攻撃表示でフィールド上に特殊召喚し、このカードを装備する。このカードが破壊された時、装備モンスターを破壊する。



真&竜LP5600→4800


「そして・・・戻ってこい!『フェルグランドドラゴン』!」



『フェルグランドドラゴン』
光 レベル8 ドラゴン族 ATK/2800 DEF/2800
このカードはフィールド上から墓地に送られた場合のみ特殊召喚する事が可能になる。このカードが墓地からの特殊召喚に成功した時、自分の墓地に存在するモンスター1体を選択する。このカードの攻撃力は、選択したモンスターのレベル×200ポイントアップする。



フィールドに再び金色の光が満ちあふれる。

「『フェルグランドドラゴン』の効果発動!墓地の『F・G・D』を指定!」


竜の呼びかけに、『フェルグラドドラゴン』の力強い咆哮が墓地に眠る竜の魂を呼び覚ます。その呼び声に応えるように、『F・G・D』からフィールドの金色の竜へと受け継がれる。


『フェルグランドドラゴン』ATK/2800→5200


「「こいつで終わりだぁぁ!」」

真と竜が同時に叫ぶと、『フェルグランドドラゴン』の口と両手の間にエネルギーが集束する。やがて自身よりも大きくなって、剛力達の場の『ベン・ケイ』目掛けて発射される。


――バニシング・ギガ・デストロイヤー!――


凄まじい爆音と共にその攻撃は『ベン・ケイ』を貫き、剛力達2人をも飲み込んで大ダメージを与える。

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


剛力&竜LP4550→0


「決まったぁぁぁぁぁぁぁ!勝者、武斬 真&飛立 竜選手!」


―――ワァァァァァァァ!!


実況の勝者宣言に触発されるように観客も大歓声をあげた・・・・・。


――――――――――――。


―――――――――。


――――――。


「やったね、真ちゃん、竜ちゃん!」

デュエルリングから降りてきた2人を安紀が笑顔で迎える。彼女の後ろには影中、愛菜、岩岡の3人も来ていた。

「いや〜しっかし、結構大変だな、タッグデュエル。最後のターンも結構、勘で動いたけど何とかなったし。」

「へっ・・・・・?」

腕を上に、伸びをしながら真が呆気欄干として言う。その言葉に真以外の人間と空気が一瞬にして硬直する。

「お、お前・・・・あれ全部勘だったのか・・・・?遠回しに教えてくれたんじゃあなくて・・・・?」

「ん?まあ、確かに『竜の手札が揃ってれば何とかなるかも』って思ってたけど、まさかホントになるとはなぁ・・・・。」

本当に感嘆した様子の真に、竜は呆れて小さくため息を1つすると、

「お前なぁ!」

真の肩に右腕を回し、左腕で真の頭をバシバシと叩く。



「さて・・・・それじゃあ僕達も試合に行こうか、2人とも。」

向こうでまだ組み合っている真と竜をよそに、影中が愛菜と岩岡に呼びかける。

「ええ。」

「ああ・・・。」

2人もそれに応えて影中と一緒に歩き出す。安紀はそんな3人を再び手を振って見送ると、真と竜の方へと駆け出していった。


――――――――――――。


―――――――――。


――――――。


「影中さん・・・・・次の試合はこの方達みたいです。」

デュエルリングへと歩く影中と岩岡に、同じく歩きながらの愛菜が1枚のボードを渡す。そのボードには数枚のプリントがクリップで留めたあった。

「やっぱり、ラムサ側のデュエリストか・・・・・。」

ボードに目を通した影中が顔を上げながら言った。その表情は決して穏やかではなく、むしろ険しい物となっていた。

「あの・・・・その人達はどんな人なんですか?」

愛菜の疑問に影中は、

「中々の強敵だよ。ちょっと苦しいけど・・・・でも、まだ僕達で何とかなると思う。・・・・問題はその後だよ。」

そう言って影中は紙をめくって次の項目を指さした。

「多分・・・・いや、ほぼ絶対と言っていい。僕達のいるブロックにラムサ側と思える人間が集中している。『神のカード』自体は僕達側の本部が直接監視に当たってるから大丈夫だけど。」

「そうなると・・・試合が厳しい・・・・。」

「うん。そうなるね。・・・・これは、少しは気楽に行く気持ちは捨てた方が良いのかな。・・・・とにかく、倒せるだけ倒そう。」

影中がそう結論づけると、愛菜と岩岡はそれぞれ頷きで応える。

「じゃあ、行こう!」

そう言って影中達は自分たちの試合が行われるデュエルリングへと入っていった・・・・。


「第一試合の白熱と興奮がまだ冷め切っておりませんが、第二試合、選手入場!」


実況アナウンスと共に影中、岩岡の2人がリングに立つ。どうやら今回、愛菜は控えにいるようだ。そして、影中と対峙するように相手のデュエリスト・・・・影中曰く、ラムサ側のデュエリストが2人立っていた


「貴様が、影中 聖夜か・・・・。」

そのうちの1人である背の高く、細身な男が呟く。もう1人のはやたらときょろきょろしている。背はどちらかと言えば低めである。2人とも黒いロングコートを身に着けていた。

「一応名乗っておこうか・・・・私はサンラ。こっちは今回の相方、チミッグだ。」

背の高い方・・・・サンラが名乗る。もう片方の男、チミッグも軽く頷く。

「これが指令でなければ、久々の強者と己を磨く為にデュエル出来るのだが・・・・・。だが、ラムサ様の手を少しでも煩わせたくないのでな・・・・!」

サンラが少し悲しみを帯びた目で呟く。

「ええ。とても残念です。ですが、僕も全力でやりますよ。」

その言葉に影中はデュエルディスクの起動で応える。


「「デュエル!!」」


影中&岩岡LP8000 サンラ&チミッグLP8000

4人がそう叫ぶと共に、デュエルが開始された・・・・・・。



決闘11「動き出した戦士達」

「「デュエル!!」」


影中&岩岡LP8000 サンラ&チミッグLP8000


「オ、オレのターン、ドロー・・・・オ、オレは『強欲な壺』を発動」



『強欲な壺』 通常魔法
自分のデッキからカードを2枚ドローする。ひいた後で強欲な壺を破壊する。



彼はおどおどした様子でカードをドローする。そして『強欲な壺』の効果でさらに新たなカードをドローした。

「ガ、『ガーゴイルの道化師』を守備表示で召喚」

手札を補強し終えた彼の目の前に小さな道化師が現れる。その顔に不気味な笑みを浮かべ、自身が持つその小さな翼を折りたたみ守備体制を取る。



『ガーゴイルの道化師』
闇 悪魔族 レベル2 ATK/ 800 DEF/ 600
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚された時、対象の表側表示モンスター1体の表示形式を変更する。



そのモンスターは守備表示で場に出るが、その閉じられた翼を直ぐに開いて攻撃体制を取ってしまう。それもそのはず、『ガーゴイルの道化師』の効果が自分自身に強制的に発動してしまっているのである。

「カードを2枚伏せてタ、ターンエンドだ・・・・」

チミッグが慌ててターンを終えたが、目の前の奇妙な光景とチミッグの焦りきった様子から影中の心理に一つの引っかかりが生まれる。

(攻撃力800の『ガーゴイルの道化師』を無防備にも攻撃表示。あのリバースは何かの罠か・・・・?)

「ドロー。・・・・『アステカの石像』守備表示。カードを1枚セット。終了だ」

岩岡も同じ疑問を持ったのか一瞬戸惑うがやがて思考を整理し、手札より1体の石像を場に繰り出す。



『アステカの石像』
地 岩石族 レベル4 ATK/ 100 DEF/2000
このモンスターを攻撃した時に相手プレイヤーが戦闘ダメージを受ける場合、その数値は倍になる。



「私のターン、ドロー!『幻獣ワイルドホーン』を攻撃表示でターンエンドだ」

フィールドに2本の角を頭部に備えた獣が出現する。



『幻獣ワイルドホーン』
地 獣戦士族 レベル4 ATK/1700 DEF/ 0
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。



姿を現した獣は鋭く獰猛な目線を敵へと向けて、威嚇の姿勢を取る。

「僕のターン、ドロー!『キラー・トマト』を守備表示で召喚して、ターンエンド」



『キラー・トマト』
闇 植物族 レベル4 ATK/1400 DEF/1100
このカードが戦闘によって墓地へ送られた時、デッキから攻撃力1500以下の闇属性モンスター1体を自分のフィールド上に表側表示で特殊召喚する事ができる。その後デッキをシャッフルする。



影中の前に顔がくり抜かれた真っ赤なトマトが出現し、静かに全員の1ターン目が終了した。


影中&岩岡LP8000
手札:5枚&4枚
フィールド:『キラートマト』、『アステカの石像』
      伏せカード1枚


サンラ&チミッグLP8000
手札:5枚&4枚
フィールド:『幻獣ワイルドホーン』、『ガーゴイルの道化師』
      伏せカード2枚


「オ、オレのターン、ドロー。『ガーゴイルの道化師』を守備表示にしてリバースカードを2枚セット。タ、ターンエンドだ・・・。」

「ドロー。俺は『岩石の巨兵』守備表示」



『岩石の巨兵』 通常モンスター
地 岩石族 レベル3 ATK/1300 DEF/2000
岩石の巨人兵。太い腕の攻撃は大地をゆるがす。



岩岡のフィールドに一見、ただの岩石と見間違えるほどの巨体がそびえ、腕を交差させることで守備体制を取る。

「リ、リバース発動、『エネミーコントローラー』。『アステカの石像』の表示形式をへ、変更する」

チミッグのカードが表になるとそこから少々デザインが複雑なコントローラーが出現し、岩岡の『アステカ』に接続されて、無理矢理攻撃態勢を取らせる。



『エネミーコントローラー』 速攻魔法
次の効果から1つを選択して発動する。
●相手フィールド上の表側表示モンスター1体の表示形式を変更する。
●自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる。相手フィールド上の表側表示モンスター1体を選択する。発動ターンのエンドフェイズまで、選択したカードのコントロールを得る。



『アステカの石像』表側守備表示→表側攻撃表示


「・・・・?」

表示形式を変更させられはしたが、岩岡の『アステカの石像』は表示形式がまだ変更できる。・・・・つまり、普通に考えると今のチミッグの行動はほとんど意味を成さないのである。

「『アステカの石像』、守備表示――――」

当然、岩岡も相手の行動に疑問を持ちながらも『アステカ』を守備表示にしようと手元のカードに手を伸ばす。だがその瞬間、

「リリ、リバース発動、『断頭台の惨劇』!」


『断頭台の惨劇』 通常罠
相手フィールド上モンスターが表側攻撃表示から表側守備表示になった時に発動する事ができる。相手フィールド上の守備表示モンスターを全て破壊する。


突如割って入ったチミッグの声に驚く暇もなく、影中達のフィールド上空にギロチンの刃が出現する。それは一分の狂いもなく彼らのフィールドのモンスターは、中央から真っ二つに切り裂かれて爆破する。

「ぐっ・・・!」

岩岡は爆発による光を右腕で顔を覆うことで庇いながら、ほんの少しでも油断した事を後悔する。が、それも既に遅く、彼らのフィールドは既にがら空きとなってしまっている。

「・・・・終了だ。」


「私のターン、ドロー!手札を一枚捨てて、装備魔法『破邪の大剣−バオウ』を『幻獣ワイルドホーン』に装備!」



『破邪の大剣−バオウ』 装備魔法
手札のカード1枚を墓地に送って装備する。装備モンスターの攻撃力は500ポイントアップする。このカードを装備したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した場合、そのモンスターの効果は無効化される。



フィールドの『幻獣ワイルドホーン』の手に、全体的に紫を基調とした1本の大剣が握られる


『幻獣ワイルドホーン』 ATK/1700→2200


「バトルだ!『幻獣ワイルドホーン』でプレイヤーにダイレクトアタック!」


「リバース発動、『メタル・リフレクト・スライム』!」



『メタル・リフレクト・スライム』 永続罠
このカードは発動後モンスターカード(水族・水・星10・攻0/守3000)となり、自分のモンスターカードゾーンに守備表示で特殊召喚する。このカードは攻撃する事ができない。(このカードは罠カードとしても扱う)


『メタル・リフレクト・スライム』 DEF/3000


空気を切り裂きながら突進する『ワイルドホーン』の攻撃が影中達に直撃する寸前に、岩岡の発動したカードから、槍の突撃を遮るように金属特有の光沢を放つ球体が出現してその姿を大きく膨張させる事で球状の壁へと形作っていく。

「ならば・・・・チミッグ!」

その存在に臆することなく、サンラは相棒の名を叫ぶ。叫ばれたチミッグ本人はサンラの叫びの意味を察し、その声に答えるべく手元のカードを表にする。

「わ、分かった・・・・リバース発動『ミクロ光線』!」



『ミクロ光線』 通常罠
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体の守備力は、エンドフェイズ終了時まで0になる。



『メタル・リフレクト・スライム』 DEF/3000


「攻撃続行だ。『幻獣ワイルドホーン』で『メタル・リフレクト・スライム』を攻撃!」

正しく阿吽の呼吸と言ったタイミングで発射された奇怪な光線を浴びてもなお大きいと言える壁を、『ワイルドホーン』はさらに増した加速と、その手の大剣を力強く振り回すことで壁を貫き、影中達にダメージを与える。

「くそっ・・・・!」


影中&岩岡LP8000→5800


「私のターンは終了だ」

サンラの酷く落ち着いた声が、2人に対してゲームの展開以上に精神的な焦りを生み出す。しかし影中は顔を左右に振ることでそれを払って彼はデッキから新たなカードを引く。


(落ち着け。まだデュエルは始まったばかりだ。まずはサンラの貫通モンスターを何とかしないと・・・・)

手札とフィールドのカードと交互に見比べながら、影中は反撃への糸口を探るべく思考を巡らせる。

「僕は『シャドウ・ダイバー』を攻撃表示で召喚!」

やがてこのターンの行動を決断すると、手札から1枚のカードを抜き取って、場へと繰り出した。そして実体化した『シャドウ・ダイバー』のカードから黒い影が地面を這いずるように出現し、渦巻いた角と太い両腕が特徴的な漆黒の魔人を形作る。



『シャドウ・ダイバー』 デュアルモンスター
闇 悪魔族 レベル4 ATK/1500 DEF/500
このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、通常モンスターとして扱う。フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。●自分フィールド上に表側表示で存在する闇属性・レベル4以下モンスター1体を選択して、発動する。選択したモンスターはこのターン相手プレイヤーに直接攻撃する事ができる。この効果は1ターンに1度しか使用できない。



「さらに魔法カード『二重召喚(デュアルサモン)』!」



『二重召喚』 通常魔法
このターン中もう一度だけ通常召喚を行う事ができる。



「これで僕はもう一度通常召喚することが出来る!そして『シャドウ・ダイバー』を生け贄に『サイバネティック・マジシャン』を召喚!」



『サイバネティック・マジシャン』
光 魔法使い レベル6 ATK/2400 DEF/1000
手札を1枚捨てる。このターンのエンドフェイズ時までフィールド上に表側表示で存在するモンスター1体の攻撃力は2000になる。



「バトルだ!『サイバネティック・マジシャン』で『幻獣ワイルドホーン』に攻撃!」


――電脳魔導波(サイバー・マジック)!――


魔術師の杖に白い波動が集まると共に、一筋の光線として放たれてサンラの『幻獣ワイルドホーン』を粉砕する。


サンラ&チミッグLP8000→7800


「僕はカードを1枚伏せてターンエンドだ」

光線により生じた爆風が晴れる。
影中は戦況の巻き返しに成功した実感を掴んで、心中で小さくガッツポーズを取る。



影中&岩岡LP5800
手札:2枚&4枚
フィールド:『サイバネティック・マジシャン』
      伏せカード1枚      


サンラ&チミッグLP7800
手札:4枚&3枚
フィールド:『ガーゴイルの道化師』
      伏せカード1枚

「オ、オレのターン、ドロー。魔法カード『アースクエイク』発動」

チミッグがカードをかざした瞬間にフィールド全体が激しい揺れに襲われ、影中の『サイバネティック・マジシャン』が腕を組んだ状態で片膝を付いて座り込む。



『アースクエイク』 通常魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て守備表示にする。



『サイバネティック・マジシャン』表側攻撃表示→表側守備表示

『ガーゴイルの道化師』表側守備表示→表側攻撃表示


「そして『ガーゴイルの道化師』を生け贄に、『インフェルノ・ハンマー』召喚」

チミッグの場にいた『ガーゴイルの道化師』が光の渦と共に消え去り、同じ場所から体が赤く筋肉質で頭は白骨と言う、見た目的に少々アンバランスの巨人が現れる。



『インフェルノ・ハンマー』
闇 悪魔族 レベル6 ATK/2400 DEF/ 0
このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、裏側守備表示にする事ができる。



「イ、『インフェルノ・ハンマー』で『サイバネティック・マジシャン』を攻撃!」

『インフェルノ・ハンマー』がその手に持った巨大な金槌が『サイバネティック・マジシャン』の頭部を狙って力一杯に振り下ろされる。

「そうはさせない!リバースカードオープン、『和睦の使者』!」

金槌と魔導師との間に割ってはいるように、半透明のバリアが出現し、金槌の進行を受け止めてしまう。



『和睦の使者』 通常罠
相手モンスターからの戦闘ダメージを、全て発動ターンだけ0にする。



「お、惜しい・・・・そ、それならリバースカード『拷問車輪』だ。『サイバネティック・マジシャン』を指定する」

地面より跳ねるようにして出現した、全体に牙やトゲが張り巡らされた車輪が『サイバネティック・マジシャン』の胴体を、そしてその車輪から伸びた4つの拘束具が彼の両手両足をそれぞれ固定する。



『拷問車輪』 永続罠
このカードがフィールド上に存在する限り、指定した相手モンスター1体は攻撃できず、表示形式を変更できない。自分のスタンバイフェイズ時、このカードは相手ライフに500ポイントダメージを与える。指定モンスターがフィールドから離れた時、このカードを破壊する。



(くっ・・・・これじゃあ、攻撃が出来ない上に低い守備表示のまま。しかも500ポイントダメージを受けてしまう・・・・!)

防ぎ切ったと思った瞬間の新たなチミッグの罠に、影中は心中で恐ろしさを感じる。

「タ、ターンエンドだ。」

だが当のチミッグは、そう思われているとは知らずにターンを終え、岩岡が新たなカードを引く。

「ドロー。儀式魔法『高等儀式術』発動。『ライカン・スロープ』指定」



『高等儀式術』 儀式魔法
手札の儀式モンスター1体を選択し、そのカードのレベルの合計が同じになるように自分のデッキから通常モンスターを選択して墓地に送る。選択した儀式モンスター1体を特殊召喚する。



「デッキから『太古の壺』2枚、『ポット・ザ・トリック』1枚『はにわ』1枚墓地へ」

実体化した合計4枚のモンスターが薄い緑色の光となって、フィールドの床面より現れた魔方陣へと吸い込まれていく。



『太古の壺』 通常モンスター
地 岩石族 レベル1 ATK/ 400 DEF/ 200
とても壊れやすい大昔の壺。中に何かが潜んでいるらしい。



『ポット・ザ・トリック』 通常モンスター
地 岩石族 レベル2 ATK/ 400 DEF/ 400
魔術師の命令通りに動く使い魔。あまり強くない。



『はにわ』 通常モンスター
地 岩石族 レベル2 ATK/ 500 DEF/ 500
古代王の墓の中にある宝物を守る土人形。



「『ライカン・スロープ』・・・・降臨」

岩岡が静かにそう言い放つと共に魔方陣より獰猛な銀狼が現れる。それは後ろ足で立ち上がって空に向けて咆哮を上げて両腕の鋭い爪と口に宿る鋭利な牙を観衆へと見せつけるように振り回す。



『ライカン・スロープ』 儀式モンスター
地 獣戦士族 レベル6 ATK/2400 DEF/ 800
『合成魔術』により降臨。このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、自分の墓地に存在する通常モンスターの数×200ポイントダメージを相手ライフに与える。



「そして『魔導師の力』、『ライカン・スロープ』に装備」



『魔導師の力』 装備魔法
自分のフィールド上の魔法・罠カード1枚につき、装備モンスターの攻撃力と守備力を500ポイントアップする。



『ライカン・スロープ』 ATK/2400→2900


『ライカン・スロープ』の右腕に魔力が注がれ、その鋭さと力強さを倍増させる。

「バトル。『ライカン・スロープ』、『インフェルノ・ハンマー』に攻撃」

『ライカン・スロープ』の爪から右フックの爪による攻撃が炸裂する。その爪が持つ凄まじい腕力を前に、『インフェルノ・ハンマー』の持つ、鋼鉄であるはずの金槌がまるで紙のように本体ごと切り裂かれる。


サンラ&チミッグLP7800→7300


「さらに『ライカン・スロープ』、効果で1000ポイントダメージ」

岩岡の宣言と共に『ライカン・スロープ』が今度は先程とは逆の爪による左アッパーでチミッグに追加の打撃を与える。


サンラ&チミッグLP7300→6300


「ターン終了」

再び変化したデュエルの流れに、サンラ達の方はまだ手札枚数に余裕が有るとは言え流れの変化に苦い顔をする。

「くっ・・・・私のターン、ドロー!まずは『拷問車輪』の効果でダメージを受けて貰おう」


影中&岩岡LP5800→5300


「魔法カード『デビルズ・サンクチュアリ』を発動し、『メタルデビル・トークン』を特殊召喚!」



『デビルズ・サンクチュアリ』 通常魔法
『メタルデビル・トークン』(悪魔族・闇・星1・攻/守0)を自分のフィールド上に1体特殊召喚する。このトークンは攻撃する事ができない。『メタルデビル・トークン』の戦闘によるコントローラーへの超過ダメージは、かわりに相手プレイヤーが受ける。自分のスタンバイフェイズ毎に1000ライフポイントを払う。払わなければ、『メタルデビル・トークン』を破壊する。



『メタルデビル・トークン』
闇 悪魔族 レベル1 ATK/ 0 DEF/ 0
このカードはトークンとして使用することが出来る。このトークンは攻撃する事ができない。『メタルデビル・トークン』の戦闘によるコントローラーへの超過ダメージは、かわりに相手プレイヤーが受ける。自分のスタンバイフェイズ毎に1000ライフポイントを払う。払わなければ、『メタルデビル・トークン』を破壊する。



「さらに自身の効果により『メタルデビル・トークン』1体を生け贄に、『光神機(ライトニングギア)−轟龍』を召喚!」

サンラのフィールドに、細い体を巧みにくねらせて、岩岡の『ライカン・スロープ』よりも巨大な咆哮を上げながら1匹の龍がその名の通りフィールドにその姿を轟かせる。



『光神機(ライトニングギア)−轟龍』
光 天使族 レベル8 ATK/2900 DEF/1800
このカードは生け贄1体で召喚する事ができる。この方法で召喚した場合、このカードはエンドフェイズ時に墓地へ送られる。また、このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。



「バトル!『轟龍』で『ライカン・スロープ』を攻撃!」

サンラの攻撃宣言と共に『轟龍』の特徴的な胸部に純白の光が集まり、前方へと放たれる。一方『ライカン・スロープ』もその光を両爪で引き裂きながら飛び掛かる。
やがて徐々に接近していた『ライカン・スロープ』が遂に『轟龍』の体にその爪を食い込ませて破壊するが、自身も先程からのダメージも有ってか『轟龍』が力尽きるとほぼ同時にその姿を消滅させてしまう。


「ターン終了だ」

爆風が晴れたフィールドに新たなカードを補給して、サンラのターンが終了する。


「なら僕のターン、ドロー!『不意打ち又佐』を召喚」



『不意打ち又佐』
闇 戦士族 レベル3 ATK/1300 DEF/800
このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。このカードは表側表示でフィールド上に存在する限り、コントロールを変更する事はできない。



「さらに『サイバネティック・マジシャン』の効果発動。手札を1枚捨てて『不意打ち又佐』の攻撃力を2000ポイントに!」

フィールドに音もなく現れた1人の侍に向けて、『サイバネティック・マジシャン』から放たれた白い魔力の光をその手に握る小太刀に纏わせる。


『不意打ち又佐』 ATK/1300→2000


「この攻撃で反撃だ!『不意打ち又佐』でプレイヤーにダイレクトアタック!」

『不意打ち又佐』が腰に据えた小太刀を抜刀し、サンラとチミッグに逆袈裟斬りが襲いかかる。


サンラ&チミッグLP6300→4300


「さらに『不意打ち又佐』の効果で追加攻撃!」

先程の斬撃での体勢を立て直した『不意打ち又佐』が、刃を返して今度は袈裟斬りに小太刀を振り下ろす。

「がっ・・・・!」


サンラ&チミッグLP4300→2300


「ターンエンドだ。」


影中&岩岡LP5300
手札:1枚&2枚
フィールド:『不意打ち又佐』、『サイバネティック・マジシャン』※『拷問車輪』の効果対象
            

サンラ&チミッグLP2300
手札:3枚&2枚
フィールド:なし
     『拷問車輪』※『サイバネティック・マジシャン』を指定


「オ、オレのターン、ドロー。『拷問車輪』の効果で500ダメージだ。」

そうチミッグが言うと共に先程から『サイバネティック・マジシャン』を拘束していた車輪が回転を始め、モンスターに苦痛を与え、ライフを減少させる。


影中&岩岡LP5300→4800


「ゴ、『ゴブリン暗殺部隊』を攻撃表示で召喚!」



『ゴブリン暗殺部隊』
闇 獣戦士族 レベル4 ATK/1300 DEF/ 0
このカードは相手プレイヤーを直接攻撃する事ができる。このカードは攻撃した場合、バトルフェイズ終了時に守備表示になる。次の自分のターン終了時までこのカードは表示形式を変更できない。



黒装束を身に纏ったゴブリン達が何人も飛び出し、逆手持ちの短刀を構えて戦闘態勢を取る。

「さ、さらに魔法カード『フォース』でオ、オレの『ゴブリン暗殺部隊』とお前の『サイバネティック・マジシャン』を指定する」



『フォース』 通常魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスターを2体選択する。エンドフェイズ時まで、選択したモンスター1体の攻撃力を半分にし、その数値分もう1体のモンスターの攻撃力をアップする。



「そ、そして『サイバネティック・マジシャン』の攻撃力を半分に、『ゴブリン暗殺部隊』の攻撃力を1200ポイントアップ・・・・」


『サイバネティック・マジシャン』 ATK/2400→1200


『ゴブリン暗殺部隊』 ATK/1300→2500


「バ、バトルだ!『ゴブリン暗殺部隊』でお前達にダイレクトアタック!」

『ゴブリン暗殺部隊』の面々がそれぞれの短刀で連続的に影中達を斬りつけ、ライフ差を埋める強大なダメージを与える。


「うわぁぁっ!」

「ぐはっ・・・・。」


影中&岩岡LP4800→2300


「ゴ、『ゴブリン暗殺部隊』は、攻撃した場合守備表示になる。そのままターン終了だ・・・・」

チミッグがターンを終えると、『ゴブリン暗殺部隊』は警戒した姿勢のまま相手モンスターから少し距離を取る。


『サイバネティック・マジシャン』 ATK/1200→2400


『ゴブリン暗殺部隊』 ATK/2500→1300


「ドロー。カードを1枚セット、ターン終了だ」

岩岡はドローカードを確認すると、カードを伏せるだけでターンを終了する。


「私のターン、ドロー!魔法カード『アームズ・ホール』を発動!」



『アームズ・ホール』 通常魔法
自分のデッキの一番上のカード1枚を墓地へ送り発動する。自分のデッキまたは墓地から装備魔法カード1枚を手札に加える。このカードを発動する場合、このターン自分はモンスターを通常召喚する事はできない。



「デッキの一番上のカードを墓地に送り、『早すぎた埋葬』を手札に加えさして貰おう」

『アームズ・ホール』のテキストに従ってサンラは、デッキのカードを墓地に送ると、さらにデッキからカードを1枚抜き取って手札に加えた。

「そして今手札に加えた『早すぎた埋葬』を発動!蘇れ、『光神機(ライトニングギア)−轟龍』!」



『早すぎた埋葬』 装備魔法
800ライフポイントを払う。自分の墓地からモンスターカードを1枚選択して攻撃表示でフィールド上に特殊召喚し、このカードを装備する。このカードが破壊された時、装備モンスターを破壊する。



サンラの叫びと共に『轟龍』の細長く強大な体が出現し、再びフィールド全体に威圧感をもたらすべく咆哮を上げる。

「さらに手札から装備魔法『ビッグバン・シュート』を『轟龍』に装備!」



『ビッグバン・シュート』 装備魔法
装備モンスター1体の攻撃力は400ポイントアップする。守備表示モンスターを攻撃した時にその守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手に戦闘ダメージを与える。このカードがフィールドから離れた場合、装備モンスターをゲームから除外する。



『光神機(ライトニングギア)−轟龍』 ATK/2900→3300


「この攻撃で終わりだ!『轟龍』で『サイバネティック・マジシャン』を攻撃!」


『拷問車輪』によって捉えられた『サイバネティック・マジシャン』目掛け、その全てを消し去るべく『轟龍』はその胸部にエネルギーを集束させる。

(『サイバネティック・マジシャン』の守備力は1000。この攻撃が通れば貫通ダメージで負けてしまう・・・・・!)

目の前に迫る『敗北』の予感に、影中は戦慄を覚える。だが時既に遅し、『轟龍』の攻撃が影中達目掛けて発射される。


――フォトン・ジャッジメント!――


『轟龍』の放つ光線が直撃する寸前、大量の宙を舞う『何か』が攻撃の進行を遮るように出現する。


「何っ!」

(まさか!)

突然の出来事に驚愕するサンラを横に、影中はその正体をいち早く見抜いてその出所へと目を向ける。その方には案の定、岩岡が立っており、彼のフィールドのリバースカードを発動していた。


「・・・・リバースカード、『パワー・ウォール』。デッキの上から23枚を墓地へ送り、ダメージ消滅」



『パワー・ウォール』 通常罠
自分が戦闘ダメージを受ける場合、自分のデッキの上からカードを任意の枚数墓地に送る事で、自分が受ける戦闘ダメージを墓地に送ったカードの枚数×100ポイント少なくする。



その直後、先程まで『轟龍』の攻撃を防ぎきった『何か』・・・・すなわち『パワー・ウォール』発動時に
墓地へと捨てられた計23枚のカードの立体映像が地面へと落ちる。


「ぐっ・・・・ターン終了だ・・・・」



「僕のターン、ドロー!手札を1枚捨てて魔法カード『死者転生』を発動!」



『死者転生』 通常魔法
手札を1枚捨てる。自分の墓地に存在するモンスターカード1枚を手札に加える。



「僕は墓地から岩岡君の『メガロック・ドラゴン』を手札に!」


「そうか・・・・先程の『パワー・ウォール』の時・・・・!」

影中のプレイングを前に、サンラはデュエルの終わりを感じたのか、悔しげだが一方で清々しく感じられる呟きを発する。

「そして、墓地に存在する岩石族を合計8枚除外して『メガロック・ドラゴン』を特殊召喚!」

特殊召喚が宣言されたその瞬間、巨大な地鳴りが、会場全体を下から持ち上げるような低い音となって響き渡る。
そしてその音と共に、巨大で尚かつ相当な重量を誇るであろう岩の体を震わせながら岩石の龍はその咆哮を上げる。



『メガロック・ドラゴン』
地 岩石族 レベル7 ATK/ ? DEF/ ?
このカードは通常召喚できない。自分の墓地に存在する岩石族モンスターを全て除外することでのみ特殊召喚できる。このカードの元々の攻撃力と守備力は、特殊召喚時に除外した岩石族モンスターの数×700ポイントの数値になる。


「除外したカードは合計8枚。よって『メガロック・ドラゴン』の攻撃力と守備力は5600ポイント!」


『メガロック・ドラゴン』 ATK/ ?→5600


「『メガロック・ドラゴン』で『光神機(ライトニングギア)−轟龍』を攻撃!」


――アースクエイク・インパクト!――


『メガロック・ドラゴン』が前足をゆっくりと持ち上げ、その巨体が持つ全ての重量と勢いを乗せて『轟龍』へと叩きつけるように振り下ろす。『轟龍』も持てる力の全てを一筋の光を放つことで抵抗するが、圧倒的な攻撃力と体格を前に、無念にも崩れ去る。


サンラ&チミッグLP2300→0


戦闘に敗れ沈み行く『轟龍』と共に、サンラとチミッグのライフが静かに0を示した。


「私たちの負けのようだな・・・・だが良いデュエル、だった」

サンラが手元のライフカウンターを見て呟いた。その表情は言葉通りの清々しさと満足感に溢れた物である。

「僕もそう思います」

影中も勝利を得たことで浮つくこともなく、真剣にサンラの意志に応える。

「負けた以上は私たち2人は潔くそちらに従おう。・・・・行くぞチミッグ」

「お、おう・・・・」

そう言って会場を後にするサンラ達2人を、影中と岩岡は静かに見送った・・・・。



――――――――――――。


―――――――――。


――――――。



「お疲れ様でした、影中さん、岩岡さん」

試合が終わり、デュエルリングから出てきた影中と岩岡の2人を愛菜が労いの言葉と共に出迎えた。

「それで・・・・相手の方々はどうしたのですか?」

「一応、CHC本部の人に任せたよ。・・・・これで少しでも敵の出方が分かれば良いけどね」

愛菜からの質問を返しながら影中は軽く肩をすくめる。と、その時愛菜が肩から掛けていたポシェットから長閑なメロディが流れ出した。

「あ、私の携帯ですね。ちょっと失礼します・・・・・もしもし」


そう丁寧に断ってから愛菜は薄い黄緑色の携帯電話を取り出す。そして彼女は律儀に影中達に対して背を向けて通話を開始した。

「・・・・あ、はい。わかりました。それでは・・・・」

会話が終わったのか、愛菜は携帯電話を再びポシェットへと戻し、影中達の方に向き直る。

「電話は安紀さんからでした。今から私たちの控え室に来るそうです」

「わかった。話したいこともあるし、僕達も控え室に戻っておこう」

愛菜にそう返事をすると、影中は残った2人を引き連れて歩き出した。


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―――――――――。


――――――。


「サンラとチミッグの2人がまさか敗れるとは・・・・敵も中々侮れないと言うことか」

男性の声による呟きが部屋に広がる。その声の主はラムサの部下である、ルセルベによる物であった。組織の任務として大会に参加していた彼はここ、選手控え室の内の一室で自分のデッキの最終調整を行っていた。

「ヒャッヒャッヒャッ〜!あの2人が負けちまうとは笑えねぇな〜!」

ルセルベとは対照的な物言いの男が下劣な笑い声と共に騒ぎ出す。

「調子に乗るな、サーバ。あの2人を負かすと言うことはそれだけの実力を備えていると言うことだ」

「へいへい。まっ、戦う獲物が強いのはこっちも嬉しいぜぇ・・・・!」

サーバと呼ばれた男の言動をルセルベが即座に窘めたが、彼はその態度を軽く流しながら、何戦か後の勝負に彼なりの期待感を寄せる。


「おっ〜と、ルセルベの旦那、そろそろ試合の時間だぜぇ」

サーバの言葉にルセルベは壁に掛かった時計に少し目配せする。そして先程まで広げていたカードを片付けて立ち上がった。

「サーバ。これまで敗れた同士達の、そしてラムサ様の為に、速攻で終わらせる」

「へへっ・・・・腕が鳴るぜぇぇぇ!!」

サーバも椅子を蹴飛ばしかねない程の勢いで立ち上がると、ルセルベと共に試合に向かうべく控え室を出た。



――――――――――――。


―――――――――。


――――――。



同時刻、影中達の控え室。


「影中、話って何だよ?」

真、安紀、竜の3人が部屋に入って早々、真が口を開く。


「さっきの僕達のデュエルでも見たと思うけど、ラムサ側のデュエリストをもっと見て欲しいと思ってね」

そう言って影中が控え室のテレビの電源を入れ、それに続けて画面に試合会場の様子が映る。
そこには当然の如くルセルベ、サーバ、そして彼らの試合相手の合計4人の決闘者が対峙していた。

「さあ、始まるよ」

影中が言うとおり、画面の中の決闘者がそれぞれの決闘盤を起動して、デュエル開始の宣言と共にそれぞれカードを5枚ドローする。どうやら先行はルセルベからのようだ。


『『デュエル!』』


『私は永続魔法『ミイラの呼び声』を発動し、その効果により『闇より出でし絶望』を特殊召喚!さらに手札から『ゾンビ・マスター』を召喚してターン終了だ。』

ルセルベのフィールドに次々とモンスター達が立ち並ぶ。その光景は出現したのがアンデット族と言うだけあって、不気味で重苦しい空気をあたりに漂わせていた。



『ミイラの呼び声』 永続魔法
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、手札からアンデット族モンスター1体を特殊召喚できる。この効果は1ターンに1度しか使用できない。



『闇より出でし絶望』
闇 アンデット族 レベル8 ATK/2800 DEF/3000
このカードが相手のカードの効果によって手札またはデッキから墓地に送られた時、このカードをフィールド上に特殊召喚する。



『ゾンビ・マスター』
闇 アンデット族 レベル4 ATK/1800 DEF/ 0
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、手札のモンスターカード1枚を墓地に送る事によって、墓地に存在するレベル4以下のアンデット族モンスター1体を特殊召喚する。この効果は1ターンに1度しか使用できない。



「彼の名前はルセルベ。ラムサの最も信頼する部下として、動いている強力なデュエリストだ。彼のデッキは見ての通り、アンデット族モンスターの大量展開を主軸としているんだ。」

映像を真剣に見ている影中が、真達に解説を加える。映像の中で次にサーバがカードを引く。どうやら開設の間に相手のターンが終了したようだ。
相手のフィールドには守備表示の『リバイバルスライム』と伏せカードが1枚存在していた。



『リバイバルスライム』
水 水族 レベル4 ATK/1500 DEF/ 500
このカードが戦闘によって墓地に送られた時1000ライフポイントを払う事で、次の自分のスタンバイフェイズに自分フィールド上に裏側守備表示で特殊召喚する事ができる。



『ドロー・・・・ヒャッヒャッヒャ!俺はカードを4枚伏せてターン終了だぜぇ・・・・』

サーバは不敵な笑みを浮かべながら、大量にカードを伏せるとターンを終了する。

「彼はサーバ。好戦的でデュエルの腕も相当な物だ。彼のデッキは・・・・説明するより見た方が早いかな」

サーバのターンに続いて、相手がカードをドローし、フィールドに天使の輪と小さな羽根を持つ、『黄泉ガエル』が召喚される。



『黄泉ガエル』
水 水族 レベル1 ATK/ 100 DEF/ 100
自分のスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在し、自分フィールド上に魔法・罠カードが存在しない場合、このカードを自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。この効果は自分フィールド上に「黄泉ガエル」が表側表示で存在する場合は発動できない。



ルセルベ&サーバ LP8000
手札:3枚&3枚
フィールド:『闇より出でし絶望』、『ゾンビマスター』
      伏せカード4枚


決闘者A&決闘者B LP8000
手札:4枚&5枚
フィールド:『リバイバルスライム』、『黄泉ガエル』
      伏せカード1枚



『私のターン、ドロー!『ダブルコストン』を召喚!』

ルセルベのフィールドに2つの黒い球体が細い何かで繋がった形のモンスターが現れる。それぞれの球体には顔が描かれており、それぞれが奇妙な笑い顔をしている。



『ダブルコストン』
闇 アンデット族 レベル4 ATK/1700 DEF/1650
闇属性モンスターを生け贄召喚する場合、このモンスター1体で2体分の生け贄とする事ができる。



『バトルフェイズだ!『ダブルコストン』で『黄泉ガエル』を攻撃!』

『ダブルコストン』が2つの球体を振り回すように回転しながらモンスターへと突撃する。だが、相手の決闘者も負けておらず、リバースカード、『聖なるバリア−ミラーフォース−』を発動した。



『聖なるバリア−ミラーフォース−』 通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。相手フィールド上の攻撃表示モンスターを全て破壊する。



『ならば手札から速攻魔法、『我が身を盾に』を発動!』


ルセルベ&サーバ LP8000→6500



『我が身を盾に』 速攻魔法
相手が『フィールド上のモンスターを破壊する効果』を持つカードを発動した時、1500ライフポイントを払う事でその発動を無効にし破壊する。



『これにより『ミラーフォース』の効果を無効にする!』

『まだまだぁぁ!』

ルセルベが魔法カードを発動するが、それにサーバが続いて伏せていたカードを開く。

『チェーン発動、『停戦協定』!さらに『自業自得』、『ご隠居の猛毒薬』、『連鎖爆撃』を続けてチェーン発動!』



『停戦協定』 通常罠
フィールド上の全ての裏側表示モンスターを表側表示にする。この時、リバース効果モンスターの効果は発動しない。フィールド上の効果モンスター1体につき500ポイントダメージを相手に与える。


『自業自得』 通常罠
相手フィールド上のモンスター1体につき、相手に500ポイントのダメージを与える。


『ご隠居の猛毒薬』 速攻魔法
次の効果から1つを選択して発動する。
●自分は1200ライフポイントを回復する。
●相手ライフに800ポイントダメージを与える。


『連鎖爆撃』 速攻魔法
このカードの発動時に積まれているチェーン数×400ポイントダメージを相手ライフに与える。同一チェーン上に複数回同名カードの効果が発動されている場合、このカードは発動できない。



※発動時のチェーン数 1.『聖なるバリア−ミラーフォース−』
           2.『我が身を盾に』
           3.『停戦協定』
           4.『自業自得』
           5.『ご隠居の猛毒薬』
           6.『連鎖爆撃』

『連鎖爆撃』のダメージ数=2400ポイント


『これで合計6700ダメージ、・・・・派手に果てな!』

サーバが叫ぶと共に、相手のフィールド全体を巨大な爆発が包み込み、ライフポイントを大幅に減少させる強大な一撃となる。


決闘者A&決闘者B LP8000→5600→4800→3800→1300



『そして私のモンスター達の攻撃で・・・・終わりだ』

ルセルベが静かに呟き、大小様々なアンデットモンスター達がトドメを刺すべく、相手プレイヤーに襲いかかる。


決闘者A&決闘者B LP1300→0


一方、相手決闘者はダメージに驚き、叫ぶ暇も与えられずに敗北したことに、脱力して座り込んでしまった。観客も、あまりの決着の早さに声を出すことさえ忘れ、目の前で起きた光景に唖然とするばかりであった。
司会、実況をしているはずの加々理 院も、沈黙から数秒、やっと職務を思い出したのかマイクを取る。


『き、き、決まったぁぁぁあ!圧倒的な力で試合を稲妻の如きスピードで制したのは・・・・ルセルベ選手とサーバ選手だぁぁぁあ!』



―――ワァァァァァァァ!!


今、思い出したような実況に触発され、歓声がまるでルセルベとサーバの力量を直接表すかのように、会場全体を揺るがし続けた。





続く...





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