Entrance to Neo Dimension

製作者:孝野平さん




※この小説はアニメ「遊戯王デュエルモンスターズGX」の世界から数年経った時代を舞台としております。
カードの効果はオリジナルの物を除き、OCGに準拠しており、遊戯王のキャラも少し出てきます。
尚、この小説はフィクションであり実在する人物・団体とは一切関係ありません。




登場人物紹介

如月朔夜(きさらぎ さくや)
主人公。高校一年生。主に闇属性や悪魔族関連のカードを使う。
桜とは親友。
1月24日生まれ。

大和桜(やまと さくら)
高校一年生。刹那という人物を捜している。
護身術などの格闘技を習得。
8月22日生まれ。

春日撫子(かすが なでしこ)
高校二年生。光属性や天使族主体のデッキを使う。
美樹とは血縁者。
4月9日生まれ。

浅山美樹(あさやま みき)
高校二年生。水属性主体のデッキ。
数学や科学に詳しい。
6月3日生まれ。



序章 遭遇と発見

 ある晴れた日の事、一人の高校生がカードショップに訪れた。
その高校生はカードを買いに来たらしく、商品の置いてある棚をしばらく見ている。
店員のバンダナを被ったじいさんが声をかけようとすると、その客の方から声をかけて来た。
「すいません。『Entrance to Neo Dimension』の在庫はありますか?」
『Entrance to Neo Dimension』とはこの世界で最近発売されたばかりのパックである。
発売されて間もないのにも関わらず、あちこちで売り切れが続出している。
「う?む、残念じゃが、そのパックの在庫は今ないんじゃ。来週になったらまた発注したやつが…」
と、そのとき店にもう一人入って来た。黒いフードを羽織った爬虫類のような目をした男である。
この男も棚を見た後、店員のじいさんに高校生と同じ質問をした。答えももちろん同じである。
「そうか…ではまた来るとしよう。」
そう言って黒いフードを羽織った、街の雑踏の中でも隠せない爬虫類のような目をした男は出口にむかう。
「では私も…あ!」
その高校生は床に一つだけ落ちている『Entrance to Neo Dimension』のパックを発見した。
「なにぃ!!まだ一つ残っていたのか!?」
さっきの男がものすごい勢いで戻って来た。
「お、おい!そのパックを賭けて私とデュエルしろ!」
男はものすごい顔だ…店員のじいさんもびっくりしている。
「べ、別にいいですけど…」
突然の申し出だが、男の勢いに押されて承諾してしまう。
「ではディスクを構えろ!デュエルだ!」
「は、はあ…デュエルですか…」
二人は店の外にでた。店員のじいさんも気になるらしく、見に来た。
「あ、いかんいかん。じいさん。デュエルディスクを貸してくれないか?会社に置いて来てしまったんだ。」
デュエルディスクとは、簡単に言うとデュエルモンスターズで遊ぶときに使う立体映像投影機の事で、通常は腕に装着する。
デュエルモンスターズがプロリーグまでできるほど人気になった要因の一つでもあり、
最近ではデザインも多様化してきている。
「古いやつじゃが勘弁しとくれよ。」
 店のじいさんは初期のデザインのディスクを持って来た。
「いや構わんよ。それにしても懐かしい…」
 感傷に浸ってる場合ではないと思うが。
「そうだった…表だ」
「私は裏です」
男はコイントスをした。コインは裏を向き、男の手の甲の上にある。先攻は高校生からだ。
「デュエル!!」
「私のターンです。カードを2枚セットし、モンスターをセットして、ターン終了です。」
「私のターンだ!ドロー!」
男は自分の手札を見る。

封印されしエクゾディア 闇の量産工場 闇の量産工場 闇の量産工場 高等儀式術 覚醒戦士クーフーリン

…以上6枚である。

(ククク…見事な初手じゃないか…これは勝ったも同然!!)

封印されしエクゾディア 闇 ☆3 魔法使い族 ATK 1000 DEF 1000
このカードに加え、「封印されし者の右足」「封印されし者の左足」
「封印されし者の右腕」「封印されし者の左腕」
が手札に全て揃った時、デュエルに勝利する。


 確かにこの手札ならばエクゾディアの効果で勝つ事はできるだろう。
しかし、勝ったも同然!という状況は使い捨てのキャラにとっては負ける状況である。この男にしてもおそらく例外ではない。
「手札より魔法カード高等儀式術を発動!デッキから4枚のエクゾディアパーツを墓地に送り、クーフーリンを儀式召喚!」

封印されし者の右足、左足、右腕、左腕:通称エクゾディアパーツ。全てレベル1の通常モンスター。

高等儀式術 儀式魔法
手札の儀式モンスター1体を選択し、そのカードとレベルの合計が
同じになるように自分のデッキから通常モンスターを選択して墓地に送る。
選択した儀式モンスター1体を特殊召喚する。

覚醒戦士クーフーリン 光 ☆4 戦士族 ATK 500 DEF 1000
儀式・効果
「覚醒の証」により降臨。
自分の墓地に存在する通常モンスター1体をゲームから除外する。
次の自分のターンのエンドフェイズ時まで、
このカードの攻撃力はこの効果によってゲームから除外した
通常モンスターの攻撃力分だけアップする。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

「さらに闇の量産工場を発動!」

闇の量産工場 通常魔法
自分の墓地から通常モンスター2体を選択し手札に加える。

「この効果で墓地からエクゾディアパーツを手札に加える!」
「待ってください。闇の取引発動です。」

闇の取引 通常罠
相手の通常魔法発動時に1000ライフポイントを払って発動する事ができる。
その時相手が発動した通常魔法の効果は「相手はランダムに手札を1枚捨てる」となる。

高校生LP8000→7000

 男の魔法カードの効果で高校生の手札からカードが1枚捨てられた。それは…
「『暗黒界の軍神 シルバ』の効果発動です。」
高校生の場に銀色の悪魔型のモンスターが現れた。
(く…だ、だが!まだ私の勝利は確定している!)
「あ、シルバの効果で手札を2枚デッキに戻してください。」
「ヘっ…?」

暗黒界の軍神 シルバ 闇 ☆5 悪魔族 ATK 2300 DEF 1400
このカードが他のカードの効果によって手札から墓地に捨てられた場合、
このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。
相手のカードの効果によって捨てられた場合、さらに相手は手札2枚を選択し、
好きな順番でデッキの一番下に戻す。

シルバの効果で男の手札から闇の量産工場2枚がデッキに戻っていった。
「くそっ…のこったモンスターをセット!ターンエンドだ!」

「私のターンです。セットされたモンスター『ブロン』を反転召喚です。」

暗黒界の狂王 ブロン 闇 ☆4 悪魔族 ATK 1800 DEF 400
このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、
自分の手札からカードを1枚選択して墓地に捨てる事ができる。

さらに、手札から魔法カード『暗黒界の雷』を発動して、セットされたモンスターを破壊です。」

暗黒界の雷 通常魔法
フィールド上に裏側表示で存在するカード1枚を選択して破壊する。
その後、自分の手札を1枚選択して捨てる。

「それから、手札からシルバを捨てて、墓地でシルバの効果を発動です。」
高校生の場には次々と悪魔が現れてゆく。一方、男の場には攻撃表示で儀式召喚した戦士が一体のみ。
先ほどセットされたモンスターは当然ながら「封印されしエクゾディア」であった。
「バトルフェイズです。ブロンで覚醒戦士を攻撃です。」
「ブロンの効果は発動しません。シルバ2体で直接攻撃。」
 悪魔達の攻撃が次々と男に向かって放たれてゆく。男は合計5900ポイントものダメージを受けた。
「ヒィィィィ…!こ…こんなあっさり負けるなんて…」

男LP2100

「あ、あれ?なんでライフポイントが残ってるの?最初のライフポイントは4000じゃなかったか?」
「少し前にルールが変わって8000になったんじゃ。」
男の疑問に店のじいさんが答える。
「そうだったのか…説明ありがとう。」
「あの…ターン終了ですけど。」
高校生のターンが終わり、男のターンである。
「ド、ドロー!」
ライフが残っているとはいえ、状況はかなり悪い。
その状況でも男はデッキから引いたカードを引く。その目には少しばかりの光が宿っていた。
「『強欲な壺』を発動!デッキから2枚ドロー!」

強欲な壺 通常魔法
自分のデッキからカードを2枚引く。
引いた後で強欲な壺を破壊する。

男の目には完全に光が戻った。
「フハハハハ!逆転のキーカードを引いたぞ!!『エクゾディアの契約』を発動!!」

エクゾディアの契約 通常魔法
自分の墓地に「封印されしエクゾディア」「封印されし者の右足」
「封印されし者の左足」「封印されし者の右腕」「封印されし者の左腕」
全てが存在している時に発動可能。
手札から「エクゾディア・ネクロス」を特殊召喚する。

「いでよ!!エクゾディア・ネクロス!!」

エクゾディア・ネクロス 闇 ☆4 魔法使い族 ATK 1800 DEF 0
このカードは「エクゾディアとの契約」の効果でのみ特殊召喚が可能。
このカードは戦闘と魔法・罠の効果によっては破壊されず、
自分のスタンバイフェイズ毎に攻撃力が500ポイントアップする。
このカードは自分の墓地に「封印されしエクゾディア」「封印されし者の右足」
「封印されし者の左足」「封印されし者の右腕」「封印されし者の左腕」
のいずれかが存在しなくなった時に破壊される。

 男のフィールド上に黒い巨大な人型のモンスターが姿を現した。
「反撃開始ィィィ!!ネクロスでブロンを攻撃ィィ!!エクゾディアクラァッシュ!」
黒い巨人はその太い腕を振り下ろし、高校生のモンスターを吹っ飛ばした。
「フフフ…攻撃力は互角でもこのエクゾディアは戦闘で破壊される事はない!ターン終了だ!」
「わ、私のターンです」
一転、高校生が窮地である。
(…魔法、罠、戦闘では破壊されない、かあ…)
「カードをセットして、モンスターを守備表示で出し、シルバでネクロスに攻撃です。」

男LP2100→1100

「く…貫通ダメージは仕方あるまい。」
「ターン終了です」
「私のターン!ドロー!エクゾディアネクロスの攻撃力上昇!シルバに攻撃ィ!!!エクゾォォォドォォォ!!クラァァァシュ!」
さっきよりもかなりテンションが上がっている。
「伏せカードの和睦の使者を発動します。」

和睦の使者 通常罠
このカードを発動したターン、相手モンスターから受ける
全ての戦闘ダメージを0にする。
このターン自分モンスターは戦闘によっては破壊されない。

「チックショォォォ!オレの攻撃をォォォ!まあいい!ターンエンドだ!」
「私のターンです。あ。」
「フィールド上の3体のモンスターを生け贄に捧げ…」
(三体の生け贄だと!?)
「邪神ドレッド・ルート召喚です。」

邪神ドレッド・ルート 闇 ☆10 悪魔族 ATK 4000 DEF 4000
このカードは特殊召喚できない。
自分フィールド上に存在するモンスター3体を生け贄に捧げた場合のみ通常召喚できる。
このカードがフィールドに表側表示で存在する限り、
このカード以外のフィールド上のモンスターの攻撃力・守備力は半分になる。

 フィールド上に巨大な人影が現れる。それは禍々しく、見る者全てを恐怖で支配する、神。
それまで場を支配し、相手を見下ろしていた黒い巨人の大きさは半減した。
自らを見下ろすその姿に怯えているようにも見える。
「破壊は出来ないけど、攻撃力を半減させる効果は問題なしです。邪神ドレッドルートでネクロスを攻撃です。」

ネクロス ATK2300→1150

その巨大な「神」は拳を繰り出した。黒い巨人も負けじと拳を繰り出すが、圧倒的な力の差。
黒い巨体は拳の勢いに負け宙を舞い、そのまま男に向かって飛んでゆく。
「く、来る!来る来る来る来る来る!助けてェ?!ヒィィィヤアアア!」
男は回避しきれずそのまま吹っ飛んで来た巨体の下敷きに…は、ならない。ただの立体映像だから。
男LP1100→0
こうして、パックはその高校生のものとなった。
「まいどありじゃ。」
黒いポニーテールをなびかせ、その高校生は去っていった。



第一章 邂逅と傾向

ここはとある市立高校の化学準備室。そしてここに四名の女子が机を囲んで座っていた。
「確認するまでもないけど、全員集まったわね!では、これよりカードゲーム同好会の例会を始めます」
 椅子に座り、議長役を務めるこの少女は大和桜。高校1年生。
ストレートのセミロングに、ツリ気味の眼、運動をしていてスタイルはまあまあ良く、身長は平均的。

「今日の議題はまず、新パック『Entrance to Neo Dimension』のお披露目からかしら?」
その桜の真向かいに座っている少女は春日撫子。
とても長いストレートの髪、整った顔立ち。スタイルもよく、背も高い。
俗に言う、美人。

「…それと、来週に控えた大会の事。」
その隣に座っている少女は浅山美樹。
ショートヘアで色白気味、背は低く、スタイルは悪くはないものの、撫子とは対照的である。
「希少価値だ!」とか叫んではいけない。

「じゃあとりあえず、購入したカードを見ていきましょうか」
そして、如月朔夜。
黒のポニーテールに黒目がちの大きい眼。スタイルと身長は桜と似たり寄ったり。
顔立ちには多少幼さが残る。

 鞄の中からカードケースを取り出し、購入したカードを見せる。もっとも全員1パック分しか持ってなかったが。
「五店回ってようやくこれだけ見つけたわ。」
「あちこちの店を駆け回ってこれだけ…」
「…ネットで必死になって予約して、本日の朝に届いた。」
「四軒回った上に、デュエルを挑まれて、ようやく手に入りましたよ…」
数は今ひとつだったが、あちこちで売り切れが続出していることを考えると、手に入っただけでも十分と思われる。
「バックアップガードナー、朱雀の陣、etc…専用カードが多いわね。」
「…女神の聖剣 エアトス…おそらくガーディアン・エアトスもあるだろう」
「植物族モンスターもありますね。自分のデッキに合うカードは少ないですけど。」
「私のは…あら、『ガーディアン・エアトス』」
現実世界において未だOCG化されていないヒロインカードの出現に全員が注目した。

「…とりあえず聖剣要るだろうから…はい。」
美樹がエアトスの召喚条件となるカードを、引き当てた撫子に渡す。
「ふうん、効果はなかなか…大会用のデッキに入れるの?撫子。」
効果を覗き込んだ桜が質問する。
『ある程度エアトスに特化させないと難しいわね。」
しばらく考え込む撫子。それを見て今度は朔夜が発言する。
「活用法は後で考えるとして、練習試合はどうですか?」
と、提案する。
「じゃあ私、朔夜とやりたいんだけど、いいかしら?」
撫子はさっそく申し出る。
「あ、いいですよ。前回の弱点も修正して来ましたし。」
「…前回は…と、確かエンジェルO7にやられたか…」
美樹は前回のデュエルを思い出している。
「じゃあ、私が審判やるから。デュエル開始っ!」
桜が合図すると、朔夜と撫子はお互いのデッキをシャッフルし、デュエルディスクにセットする。そして互いに距離をとった。

「「デュエル!!」」
「私の先攻ね。ドロー。」
先攻になった撫子はフィールドにモンスターをセットし、ターンを終了した。
「自分のターンです」
後攻になった朔夜は、リバースモンスターを警戒していた。
(あれが効果モンスターだったら、後続のモンスターを呼ばれるかな…)
「死霊騎士デスカリバーナイトを攻撃表示で召喚します。」

死霊騎士デスカリバー・ナイト 闇 ☆4 悪魔族 ATK 1900 DEF 1800
効果モンスターの効果が発動した時、
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを生け贄に捧げなければならない。
その効果モンスターの発動と効果を無効にし、そのモンスターを破壊する。

朔夜の場に剣をもった骸骨の騎士が出現する。
攻撃力も高く、モンスターの特殊効果を封じる効果を持つ厄介なモンスターである。
「ナイトで攻撃です。」
 剣がセットされたモンスターに振り下ろされる。しかし、そのモンスターはジェルエンデュオ。

ジェルエンデュオ 光 ☆4 天使族 ATK 1700 DEF 0
このカードは戦闘によっては破壊されない。
このカードのコントローラーがダメージを受けた時、
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを破壊する。
光属性・天使族モンスターを生け贄召喚する場合、
このモンスター1体で2体分の生け贄とする事ができる。

双子の天使のヴィジョンが表示され、剣士の攻撃を受ける。
しかし、戦闘破壊は出来ないためか、剣は天使達の間をすり抜けて空振りに終わった。
「カードをセットして、ターン終了です。」
「私のターン。」
 今度は撫子が仕掛ける。
「勝利の導き手 フレイヤを攻撃表示で召喚!」

勝利の導き手フレイヤ 光 ☆1 天使族 ATK 100 DEF 100
自分のフィールド上に「勝利の導き手フレイヤ」以外の天使族モンスターが表側表示で存在する場合、
このカードを攻撃対象に選択する事はできない。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
自分フィールド上に存在する天使族モンスターの攻撃力・守備力は400ポイントアップする。

 フィールドにチアガールの様な天使が現れる。
(えっ?)
「さらに効果で攻撃力上昇ね。」
ジェルエンデュオATK 1700→2100
フレイヤ   ATK 100→500
「ジェルエンデュオでナイトに攻撃し、フレイヤで直接攻撃。」

朔夜LP8000→7800→7300

「カードをセットして、終了。」
朔夜は上級モンスターを生贄召喚するものと思ったのか、この攻撃は意外だったようだ。
「わ、私のターンですよね…」
朔夜はドローしたカードを見る。
「え〜っと。モンスターをセットして、カードを1枚伏せます。ターンを…」
「伏せカード『砂塵の大竜巻』を発動!今セットしたカードを破壊するわね。」

砂塵の大竜巻 通常罠
相手フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する。
破壊した後、自分の手札から魔法か罠カード1枚をセットする事ができる。

風が舞い上がり、セットされたカード『死のデッキ破壊ウイルス』が吹き飛ぶ。
複数の効果を持ち、それが持続する厄介な罠だ。
「砂塵の大竜巻の効果で1枚カードを伏せるわね。」
「うう…ターン終了です。」
フィールドは撫子が優勢だ。
「手札より、光神機-桜火を生贄無しで召喚。」

光神機-桜火 光 ☆6 天使族 ATK 2400 DEF 1400
このカードは生け贄なしで召喚する事ができる。
この方法で召喚した場合、このカードはエンドフェイズ時に墓地へ送られる。

 その名の通り、薄い桜色の四足歩行する獣のようなモンスターが出現する。
「え?えっと、『奈落の落とし穴』で除外します!」

奈落の落とし穴 通常罠
相手が攻撃力1500以上のモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚した時、
そのモンスターを破壊しゲームから除外する。

「あら…裏目に出ちゃったわね。」
撫子のその発言に、朔夜はほっとする。
「裏目に出た」という事はつまり、失敗したということだ。
「『奇跡の光臨』で桜火を特殊召喚。」

奇跡の光臨 永続罠
除外されている自分の天使族モンスター1体を選択し特殊召喚する。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。

「えっ…『裏目に出た』のは自分の罠ですか?」
「そうね。桜火で守備モンスターを攻撃!」
桜火が光線を放ち攻撃する。守備モンスターの『暗黒界の番兵 レンジ』はあっさり砕け散った。

暗黒界の番兵レンジ 闇 ☆4 悪魔族 ATK 100 DEF 2100
暗黒界随一の強靭な身体を誇り、「鉄壁レンジ」として暗黒界の人々から親しまれている。
彼の守りを破れる者は少ない。(通常モンスター)

まるで電子レンジに入れられた卵の様に。
「残る二体で直接攻撃!」
朔夜LP7300→5200→4700
「バトルフェイズを終了し、カードを1枚セット。ターン終了よ。」
一方、観客と審判はこの試合を分析している。

「相変わらず撫子の読みは的確ね。」
「…確かに。だが、逆転は可能か。」
「そうね。朔夜もやられっぱなしじゃないだろうし。」

「自分のターンです。」
 ドローカードを見ると、朔夜の表情が変わった。
「よし。モンスターをセット、そして強制転移発動です。」

強制転移 通常魔法
お互いが自分フィールド上のモンスターを1体ずつ選択し、
そのモンスターのコントロールを入れ替える。
選択されたモンスターは、このターン表示形式の変更はできない。

撫子は光神機-桜火を選択した。
「桜火で守備モンスターを攻撃です。」
(これで…)
「罠カード『強制脱出装置』!光神機-桜火を手札に戻すわね。」

強制脱出装置 通常罠
フィールド上のモンスター1体を持ち主の手札に戻す。

「あ…」
 逆転の一手になる筈だった攻撃を思わぬ罠で回避されてしまった。
「た、ターン終了です。」
撫子にターンが移る。
「私のターン。ドロー。」
「裏守備モンスターを生贄に捧げ、光神機-桜火を召喚。」
 フィールド上に先ほどと同じ、桜色のモンスターが出現する。
ちなみに裏守備はメタモルポッド。先ほどの戦闘が成立していたら手札を補充でき、状況は一変していたはずなのだ。

メタモルポッド 地 ☆2 岩石族 ATK 700 DEF 600
リバース:自分と相手の手札を全て捨てる。
その後、お互いはそれぞれ自分のデッキからカードを5枚ドローする。

「フレイヤの効果で攻撃力上昇。」
桜火ATK2400→2800
朔夜の場には1枚もカードがなく、手札は2枚。ライフは4700。
一方、撫子の場には3体のモンスターがおり、手札は4枚。
ライフは8000のままである。
「直接攻撃!」

朔夜LP4700→1900→0

「え、えっと…撫子の勝利。」
 圧倒的に強い。ギャラリー二人も、対戦した朔夜も、撫子本人も驚いていた。
「あら…勝っちゃった。」
「前回よりも格段に強くなってますね…。上級天使全く出してませんし…」
「そうね。私のライフも全然減ってない。」
 すると美樹が解説に入る。
「…プレイングのせいだ。上級モンスターの対策として
朔夜が最初に伏せたカードを『奈落の落とし穴』だと見破り、利用した。」
「マジですか?」
「一応マジね。ジェルエンデュオを見てカードを伏せた時点で見当がついたわね。
前前から気になってたんだけど、朔夜って考えてる事が表情に出やすいみたいね。」
 その後も対戦はしばらく続き、四人はデッキの最終調整をすませてゆく。

「あ、そうそう。実は二人に頼みたい事があるの。」
 調整がほぼ完了した頃、撫子が唐突に切り出した。
頼みたい事とは、試合当日に自分が作った服を着て欲しいというものである。
「まあ、別にいいわよ。」
「自分も構わないです。」
「なら、服は当日…あ、いけない。今日はバイトが入ってたんだった。」
 そういうと足早に出口へ向かい、ドアを開ける。桜と朔夜に「また明日。」というと、そのまま帰ってゆく。
美樹も撫子と同じバイトがあるそうで、帰りの挨拶をすますと小走りで帰っていった。
例会は、メンバーが二人だけになってしまったのでなし崩し的にその場で解散となった。

「で、大会は明後日の日曜日だったわよね?」
その帰り道。
「うん。桜も私も上位に入れるといいね。」
「まあ入ると思うけどね。朔夜も結構強いしさ。」
「う〜ん。そかな。さっきはぼろ負けだったけど…」
「あれは撫子が強過ぎるだけだから、あんまし気にしなさんな。」
 二人は仲良くおしゃべりしながら帰っていた。

そして大会当日。
桜と朔夜は待ち合わせ場所に決めておいた駅前にいた。
「う〜んと、この辺にいるって言ってたけど…」
「あ、あれじゃないかな、桜。」
「本当だ。お〜い、美樹!なでし…子?」
 それらしき人影を見つけて、桜が声をかけるが…
「え…?」
「………え!?」
 あまりにも予想外の光景に二人揃って驚いていた。



第二章 今日は驚愕の日

魔法使い族に可愛い女の子モンスターが多いのはひとえに「魔法少女」というアニメジャンルに由来するんじゃなかろうか。
そんな事を考えながら桜は現在の状況を整理していた。
デュエルアカデミア、オシリスレッドの寮の前にいるというこの状況、それも学園祭真っ最中の。

 事の起こりは今から約2時間ほど前。駅前で待ち合わせていた時の事。
「………なんで…そんな…格好…」

桜と朔夜の目の前には、紺色のミニスカート、フード付き長袖マント、淡い緑色の上着、腰に水色のポンポンを付けた茶色のベルトをまき、リングの髪留め、おまけに肩にはギゴバイトと思しき小さなぬいぐるみを乗っけている、要約すると水霊使いエリアの格好をした撫子がいた。
 それだけでなく、その横には撫子とお揃いのフード付きマントに、眼鏡、スパッツを身につけ、デーモンビーバー(ドングリ付き)のぬいぐるみを肩に乗せた美樹がいた。

「………」

まともな思考をぶっ飛ばすには十分すぎる破壊力だった。
「おはよ。桜、朔夜。早速でわるいんだけどこれに着替えて来てくれないかしら?」
そう言って撫子は桜と朔夜に紙袋を一つずつ渡す。中身はだいたい想像がつく。
数分後には霊使いが4人に増えていた…

「いそいでいそいで。電車に遅れちゃう。」
そして撫子さんに促されるがまま、着替えた桜と朔夜は電車に乗り、数駅離れた駅で降りる。
その駅は港が近く、撫子は皆を埠頭に誘導してゆく。

「あんた…もしかして船に乗るつもり?」
ようやく思考力が戻った桜は撫子を問いつめる。格好は案の定ヒータだった。
肩には可愛らしいきつね火のぬいぐるみを乗っけている。
「うん。向こうに見えるあの船に乗るの。」
撫子は埠頭に停泊している一艘の船を指差す。しかしその船は…
「貨物船の様に見えますけど…というか、一体どこに行く気なんですか?」
風霊使いウィンの格好の朔夜が問う。肩に乗っけているプチリュウのぬいぐるみが風になびいている。
ちなみにマジックテープで止めてあるから飛んでいったりはしない。
「デュエルアカデミア島。今日なら学園祭やってるわね。」
撫子さんはさらっと答えた。
「じゃ、じゃあ大会ってのは…」
「学園祭名物のコスプレデュエル大会。乱入で。」
「………」
しばし間を置いて

「えええええええええ!?」
桜と朔夜はまたしても驚愕していた。

「飛び入り参加自由で、撫子の実家からそんなにはなれてない所で、
なおかつデュエルディスク使用有りの非公式の大会って言ってたじゃん!それの…」
「全てがこの大会の事。ちなみに実家はここのすぐ近くで、
アカデミアはここから船で行くとそんなに遠くには感じないのよ。」
「ああ、そうかい!」

「…さて、さっさと乗ってしまおう。見つかるとまずい。」
桜と朔夜は動揺しっぱなしだが、撫子と美樹は至って冷静。
計画したのはこの二人で間違いなさそうだ。
そして船、正確には船の中に積まれている貨物の上に四人は乗り込んだ。

「しっかし、なんでまたこんなことを…これって密航じゃないの?」
首尾よく船に乗り込んだ桜が撫子に小声で話しかける。
「デュエルアカデミアといえばデュエリスト養成機関でも最高のレベル。
この程度の危険は犯してでも戦う価値はあると思うけど?」
「それはそうだけどさ…」
「それに、もしかしたら刹那って人の手がかりが…」
「………その話はしないでくれない?」
桜は少々気分を害したようだった。
「あ…ごめんなさい。」

撫子が謝罪した後、美樹がこの潜入計画を説明し始めた。
「…普通の日は食料を初めとする様々な資材は専門の業者が厳重な警備でまとめて持って来るが、
学園祭の期間中、出店などに使う食材だけは一般の業者が持って来る。
…このとき警備には隙ができ、このように密航可能。コスプレデュエル大会もあるから、
遊戯王のモンスターに扮してしまえば一般人が紛れ込んでも生徒と区別がつきにくくなる。
…さらに幸いな事にこの日は朝と夜の二回にわたって食材を運ぶ業者の船が入り、
行きと帰りの足も手に入る。」
「つまり、コスプレしてれば学園祭期間中だけこっそり潜入し、帰れるわけですね。」
「…そう言う事。バレぬ様、注意して行動する様に。」
「万一の場合はこの封筒を開ける事。ただし、危険だから取り扱いには注意して。絶対になくしたらダメよ。」
そういって撫子は封筒をひとつずつ渡した。何の変哲もないただの封筒に見える。
「危険って…爆弾でも入ってるんですか?」
「まあ、爆弾といえば爆弾かしらね。」
撫子は意味深な発言をしてニヤリと笑う。そんなこんなで船は港に付き、話は二章の冒頭に戻る。

「さて早速乱入してしまいましょうか。」
四人は屋根が赤く塗られたプレハブの建物、即ちレッド寮に向かう。
そこではコスプレデュエル大会がやってるはず…なのだが、人は少ない。
「どうかしたんですか?」
朔夜が会場にいる一人の生徒に声をかけてみる。
返事をしようとした生徒をはじめ、その場にいる生徒達全員が霊使い四人衆を発見し…

「「えええええええええ!?」」

またしても驚愕。

その後も多少の混乱があったものの撫子が上手く話をまとめ、
四人は(撫子と美樹の)当初の計画どおり、大会に乱入していた。




「ところで桜、やっぱりこれって不法侵入だよね?」
「確認するまでもなくそうね…。こりゃ同好会の活動停止も覚悟しとかんと。」
「撫子さんはそこら辺どうする気なんだろうね?」



第三章 スパイと失敗 その1

「先にお祭り見ておきたいんだけど、ここ任せていいかしら?」
撫子は実に楽しそうだ。笑顔がまぶしすぎる。
「はあ…。もう何でもいいわ…。」
それとは反対に桜はかなりダメージを負っていた。
「分かったわ。じゃあよろしく〜♪」
そして現在時刻10時。撫子と美樹はさっさと行ってしまった。

「さて…言いなりになるのはしゃくだけど、早速やりますか!」
そう言ってディスクを構えるヒータ(桜)。

「じゃ、じゃあ。まずオレから!」
赤い制服を着た男子生徒が前に出て来た。

「それじゃ…デュエル!」

ヒータ(桜)VSオシリスレッド1年の少年A

「先攻は私から!ドロー…あっ!」
ドローしたカードと手札を見るなり、ぎょっとするヒータ。
「か、カードを2枚セットし、ターン終了!」

「オレのターン!ドロー!」
「手札からグランド・ドラゴンを攻撃表示で召喚!」

グランド・ドラゴン 風 ☆4 ドラゴン族 ATK 2000 DEF 100
このカードは自分フィールド上に他のモンスターが1体でも存在する限り召喚できない。
また、自分フィールド上にこのカードを除くドラゴン族モンスターが存在しなければ
このカードは攻撃宣言を行えない。

「さらに魔法カード『友を呼ぶ風』発動!」

友を呼ぶ風 通常魔法
1000ライフポイントを払う。自分フィールド上に表側表示で存在する
レベル4以下の風属性モンスター1体を選択し、そのモンスターと同じ攻撃力の
風属性モンスター1体をデッキから特殊召喚する。

少年A LP8000→7000

「オレはグランド・ドラゴンを選択して、デッキから同名のモンスターを特殊召喚だ!
当然攻撃力は同じ!」
緑の鱗の巨大なドラゴンがフィールドに2体出現した。

「これでお互いに他のドラゴン族がいなければ攻撃できないというデメリットを
打ち消し合い、高い攻撃力での攻撃ができるぜ!
グランド・ドラゴンでヒータにダイレクトアタック!」

「伏せカード発動!ディメンション・ウォール!」

ディメンション・ウォール 通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
この戦闘によって自分が受けるダメージは、かわりに相手が受ける。

突進して来たドラゴンはヒータの前で突然消え、
かわりに相手に向かって突進していた。

「うわっ!」
少年A LP7000→5000

「だが、グランド・ドラゴンはもう一体いるぜ!攻撃!」

「こっちももう1枚伏せカード発動!ディメンション・ウォール!」

「ええ?」
少年A LP5000→3000

「た、ターン終了だ。」

「じゃあ私のターン!」
「相手のモンスター2体を生け贄に、溶岩魔人ラヴァ・ゴーレム特殊召喚!」

溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム 炎 ☆8 悪魔族 ATK 3000 DEF 2500
このカードを手札から出す場合、相手フィールド上のモンスター2体を
生け贄に捧げて相手フィールド上に特殊召喚しなければならない。
このカードはコントローラーのスタンバイフェイズ毎に、
コントローラーに1000ポイントのダメージを与える。
このカードを特殊召喚する場合、このターン通常召喚はできない。

今度は溶岩でできた巨大な魔神が少年Aの場に出て来る。
「なんじゃこりゃー!」
そして少年Aは檻に閉じ込められた。

「さらに洗脳―ブレインコントロールを発動!」

ヒータ(桜) LP8000→7200

洗脳―ブレインコントロール 通常魔法
800ライフポイントを支払う。
相手フィールド上の表側表示モンスター1体を選択する。
発動ターンのエンドフェイズまで、選択したか−ドのコントロールを得る。

魔神はヒータ(桜)の場に戻り、彼女の忠実なしもべとなる。
「そしてラヴァ・ゴーレムで直接攻撃!ゴーレム・ヴォルケーノ!」

「うわああ!」
少年A LP3000→0

「よっし!勝利!」

ガッツポーズを決めるヒータ(桜)。
この速攻勝利に対し、あちらこちらから強いなあ。と声が上がり始める。
当の本人も嬉しいらしく、楽しげな雰囲気で次から次へと挑戦を受けていた。

「ウィンは風属性じゃないとダメなの!」
「いいや!悪魔っ子というギャップがいいんだ!黒髪だしな!」

ウィン(朔夜)の側では、「悪魔族を使うウィン」
について生徒達が激しく議論し合っていた。激しく好みが分かれてるらしい。

「あの〜。デュエルしないんですか?」

「いえいえしますとも。手加減しない悪魔っ子ウィンになら負けても本望…。」
「いやむしろ徹底的にオレを攻撃してくれ!」
そんなこんなでけっこう人が集まっていた。

一方、撫子達はというと…

「…過去アカデミアにおいて発生した事件に関しての資料、生徒名簿、ジェネックス参加者、
いずれにおいても刹那なる人物の情報は皆無。」
アカデミアのコンピュータールームにいた。

「無駄足だったかな…プロデュエリストのリストにも載ってないし。
にしても、桜ももうちょっと情報くれないものかしら。
刹那の事はデュエリストって事以外まるで教えてくれないのよね。
知っている様ではあるんだけど…」
アカデミアのデータを盗み見しながら撫子が愚痴をこぼす。

「…おそらく、知られたくない事なんだろう。…私たちの事と同様に。」
そう言いつつ、調査を続ける美樹。
画面にはレーザー衛星の誤作動事件についての資料が表示されていた。

「そか…。ならもう少し調べたら、またお祭り見に行きましょうか。出店も見て回りたいし。」
くすっと笑いながら撫子は美樹に話す。
「…そうだな。しかし、」
とそのとき、コンピュータールームのドアが開いた。

「忘れ物〜忘れ物〜は何ですかナノ〜ネ〜!」
変な自作の歌を歌いながら、青い服を着た金髪の教員が入って来た。
(しまった!)
撫子、美樹はその教員、クロノス・デ・メディチとはち合わせてしまった。
(まずい。不法侵入だとバレたら…)

「シマッタナノ〜ネ!『人に聞かれてしまった!』のしまったナノ〜ネ!」

しかし、自作の変な歌を聞かれて恥ずかしかったのか、彼は冷静な判断ができなかった様だ。
慌てた様子であたりをキョロキョロと見回すと、
「この事は他言無用でお願いするの〜ネ」
と二人に小声で伝えてきた。

「は、はあ…」
とりあえずうなずく美樹と撫子。
どうやら正体がバレる心配はしなくて良さそうだ。

「あ!そうだ、先生。デュエルしませんか?」
と、撫子が突然切り出す。
何か言い出しかけた美樹の口を塞ぎ、小声で耳打ちする。
「さっき調べたんだけど、この人は実技担当の先生で、実力主義なの。
だから、ここでそれなりの実力を見せておけば後々役に立つはず。」

「何ナノ〜ネ?」
「あ、いえ。で、デュエルはいかがですか?」

「別に構わないノ〜ネ。しかし…」
そう言ってエリア(撫子)とアウス(美樹)を観察すると、

「コスプレのまま校内を歩き回るノ〜ハ、ノ〜ンセンス!気をつける様にナノーネ。」
注意をした。

「では、デュエル会場に行きましょうか。」


デュエル会場 AM11:30
「な…じゃなかった、エリアさん、アウスさん。お帰りなさい。意外と早かったですね。」

「うん、実技担当の先生とデュエルする事になっちゃって。」
エリアさん(撫子)は困った顔をしながらも、やはり楽しそうだ。
「…ところでさ…いや、ヒータは?」
「向こうです…」
ウィン(朔夜)は指さした。

「これで15連勝だぞ!?強すぎるぜ!」
「姉御!次はオレと!」

「さあさあ、遠からんものは音にも聞け!我こそは…」
すっかりノリノリである。

「あらあ。ずいぶんと楽しそうね。」
楽しそうな桜を見て微笑む撫子。朔夜は逆に不機嫌そうだ。
「目立ち過ぎだと思いますけどね。」

「…ヒータ(桜)は強いから、嫌でも目立つ。
…まあ何にしてもどいてくれなきゃ困るわけで。」
そういうと、アウス(美樹)はぐいぐいと割り込んでゆき、桜を引っ張って来た。

「ああ。エリア、アウス。お帰り。教員とデュエルすんだって?」
桜は若干ヒータのような話し方になってる。

「…ああ。私がやる。」
アウス(美樹)がデッキをセットし、フィールドに立つ。
『撫子がエリアだから自分が戦う』らしい。

「それじゃ、私らは観戦してよっか?ウィン」
「…うん。」

クロノス教諭の方もデュエルの準備が整ったようだ。
観客らもこの突然のイベントに注目し始めた。

「じゃあ。アウス(美樹)VSクロノス・デ・メディチ。デュエル開始っ!」
撫子が審判のポーズで開始を宣言した。



4章 スパイと失敗その2

「…以上の報告をふまえまして、バルペント及び兵隊5名で十分と考えます」
「それだけか…後の一人は?」
 アカデミアからかなり離れたとある場所。モニター越しに二人が話している。
一人は女性。もう一人は仮面で顔を隠した男。
「万一の事を考え、フェイを選抜します。」
「分かった。ではその様に伝えておく。早ければ一週間でセブンスターズとして活動可能だ。」
画面向こうで女性が「承諾した。」と返信する。
「尚、この計画では三幻魔の奪取を最優先とする。それ以外は後回しにして構わん。」

「了解」
また、画面の向こうで女性が応えた。


そんな不穏な会話がなされる数時間前のアカデミア。
アウス(美樹)とクロノス教諭のデュエルが始まった。

「「デュエル!」」

二人はディスクを構え、デッキから初手5枚の手札を引く。

「ではワタシの先攻。ドロー!」
クロノス教諭は手札のカードを見て、戦術を考えている。
「まずは、永続魔法古代の機械城を発動するノ〜ネ!」

古代の機械城 永続魔法
フィールド上に表側表示で存在する「アンティーク・ギア」と名のついた
モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。
モンスターが通常召喚される度に、このカードにカウンターを1つ置く。
「アンティーク・ギア」と名のついたモンスターを生け贄召喚する場合、
必要な生け贄の数以上のカウンターが乗っていれば、
このカードを生け贄の代わりにする事ができる。

「さらに、古代の機械騎士を攻撃表示で召喚!」

古代の機械騎士 地 ☆4 機械族 ATK1800 DEF500
デュアルモンスター
このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、
通常モンスターとして扱う。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いで
再度召喚する事で、このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●このカードが攻撃する場合、
相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

古代の機械騎士ATK1800→2100

 フィールド上に古びた機械の騎士と城が出現する。
「機械城にはカウンターが乗り、効果で騎士はパワーアップ!ターン終了ナノ〜ネ。」
後攻、美樹のターン。
「…ドロー」
(…今現在デッキは34枚。)
「…フィールド魔法『伝説の都 アトランティス』」

伝説の都 アトランティス フィールド魔法
このカードのカード名は「海」として扱う。
手札とフィールド上の水属性モンスターはレベルが1つ少なくなる。
フィールド上の全ての水属性モンスターは攻撃力と守備力が200ポイントアップする。

フィールドは海へと変化し、美しい海底の都が姿を現した。
「…ギガ・ガガギゴを召喚する。フィールド魔法によりよりレベルは4となり、
生け贄は不要、攻撃力も上がる。」

ギガ・ガガギゴ 水 ☆5 爬虫類族 ATK2450 DEF1500
(通常モンスター)
強大な悪に立ち向かうため、様々な肉体改造をほどこした結果
恐るべきパワーを手に入れたが、その代償として正義の心を失ってしまった。

ATK2450→2650
DEF1500→1700

「シカーシ!古代の機械城にもカウンターが乗るノ〜ネ!」

「…古代の機械騎士を攻撃せよ」
グウウウ…とうなり声を上げながらギガ・ガガギゴは拳を繰り出し、機械の騎士を吹き飛ばした。

クロノスLP8000→7450

「…カードを2枚伏せ、ターンを終了。」

「ワタシのターン!ドロー!」
「カードを1枚セット。そして古代の機械城の効果を発動!
キャッスルに載せられたカウンターの数は2コ。
よってワタシはキャッスルを生け贄に手札からアンティーク・ギアゴーレムを召喚するノ〜ネ!」

古代の機械巨人 地 ☆8 機械族 ATK3000 DEF3000
このカードは特殊召喚できない。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
このカードの攻撃力が守備表示モンスターの守備力を超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
このカードが攻撃する場合、
相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

 クロノス教諭の場に巨大な機械の兵隊が出現した。
彼の切り札であり、彼はこのカードを召喚したデュエルにおいてほとんど負けた事はないらしい。
レアリティもかなりのもので、美樹もこのカードの実物を見るのはこれが初めてである。

「…伏せカードを発動。『ダメージ=レプトル』」
でもデュエルにレアリティはあまり関係ない。美樹は冷静に対処していた。

ダメージ=レプトル 永続罠
爬虫類族モンスターの戦闘によってダメージを受けたとき、
そのダメージの数値以下の攻撃力を持つ爬虫類族モンスター1体を
デッキから特殊召喚できる。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

「ナルホドナルホド。アンティークギアの攻撃の前に発動しておけば、問題ナッシング。
でも、攻撃はかわせないノ〜ネ!
アンティ−クギアゴーレムで攻撃!アルティメットバウンド!」

美樹LP8000→7650

 アウス(美樹)の眼鏡が一瞬光った様な気がした。口元も少し笑っている。
作戦通りだ。とでも言いたげな表情だ。
「…ダメージ350ポイント=ギゴバイト。ダメージ=レプトルの効果でギゴバイトを特殊召喚。」

ギゴバイト 水 ☆1 爬虫類族 ATK350 DEF300
(通常モンスター)
今はまだおだやかな心を持っているが、邪悪な心に染まる運命を背負っている…

ギゴバイトはガァッと元気よくカードから出現した。水属性なのでアトランティスの効果を得る。

ギゴバイトATK350→550
     DEF300→500

「…さらにエンドフェイズに蘇りし魂を発動し、ギガ・ガガギゴを蘇生。」

蘇りし魂 永続罠
自分の墓地から通常モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターを破壊された場合もこのカードを破壊する。

「…そして私のターン。ギガ・ガガギゴを攻撃表示に変更。
ギゴバイトを生け贄にサイレントアビスを召喚。」

サイレントアビス 水 ☆7 爬虫類族 ATK2000 DEF1500
このカードが戦闘によって破壊されて墓地に送られた時、
フィールド上に表側表示で存在する水属性モンスター以外の
モンスターを全て破壊する。

サイレントアビスATK2000→2200
        DEF1500→1700

「…サイレントアビスの攻撃。テイル・オブ・ジ・アビス!」
 技名はゲームのタイトルと引っ掛けたダシャレである。

「そうはいかないノ〜ネ!リバースカード『重力解除』!」

重力解除 通常罠
自分と相手フィールド上に表側表示で存在する全てのモンスターの
表示形式を変更する。

 突如重力が失われフィールド上の全てのモンスターはバランスを崩し、
膝をついて守備体勢を取る。
必然、サイレントアビスの攻撃はキャンセルされてしまった。蛇に膝はないが。

「…罠か」
アウス(美樹)はわずかに顔をしかめ、状況を再確認する。
手札は現在2枚。デッキは32枚。墓地は1枚。フィールド5枚。
若干厳しい状態ではある。
「…ターン終了」

「ワタシのターン!ドロー!」
それに対してクロノス教諭の手札は現在5枚。フィールドは上級モンスターが1体。
ライフポイントもまだまだ余裕が有る。

「早すぎた埋葬を発動するノ〜ネ!」

早すぎた埋葬 装備魔法
800ライフポイントを支払う。
自分の墓地からモンスターカードを1体選択して攻撃表示でフィールド上に
特殊召喚し、このカードを装備する。
このカードが破壊された時、装備モンスターを破壊する。

クロノスLP7450→6650

「古代の機械騎士を蘇生召喚!さらに騎士を生け贄に古代の機械工兵を召喚ナノ〜ネ!」

古代の機械工兵 地 ☆5 機械族 ATK1500 DEF1500
このカードを対象にする罠カードの効果を無効にし破壊する。
このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで
魔法・罠カードを発動できない。
このカードが攻撃したダメージステップ終了時、
相手フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する。

「さらに装備魔法アンティーク・ギアハ〜ンド!」

古代の機械掌 装備魔法
「アンティーク・ギア」と名のついたモンスターのみ装備可能。
装備モンスターと戦闘を行ったモンスターをダメージステップ終了時に破壊する。

「ハンドを装備した古代の機械工兵でサイレントアビスを攻撃!ドリルハンドブレイク!」
グローブがロケットの様にアビス向かって飛ぶ。工兵はドリルを構え突進するが、
ドリル攻撃はアビスの身体には通じずドリルは弾かれてしまう。

クロノスLP6650→6450

「…まずい。破られた。」
 が、その台詞の通りサイレントアビスはグローブに捕らえられ、
工兵のはじかれたドリルの先には蘇りし魂のカードが突き刺さっていた。

「古代の機械掌と工兵の効果で、モンスターと罠を破壊ナノ〜ネ!」
 モンスターと罠カードが吹き飛ぶ。サイレントアビスの効果もカードの破壊では発動しない。
さらに蘇りし魂のカードがフィールドから消えた事でギガ・ガガギゴも消え去った。

「アンティーク・ギアゴーレムで直接攻撃!アルティメット・バウンド!」
巨人の拳がアウス(美樹)を直撃した。
ソリッドヴィジョンの為、攻撃にはかなりの迫力がある。アウス(美樹)は思わず顔を覆う。
見た目の迫力もさることながら効果音も凄まじく、空気がビリビリと震える。

アウス(美樹)LP7650→4650

「フゥ〜ム。ターン終了ナノ〜ネ!」
1ターンで相手フィールド上のモンスターを、効果も発動させず破壊する。
そして大きくダメージを与えるとは流石、アカデミアの教師といった所か。

「…ドロー」
先ほどの戦闘でモンスターが全て破壊され、
大きくライフを減らされた今の状況は美樹にとって中々厳しい。
(…流石にがらりと変える事はできないか。なら強引にこじ開けるか)
「…ナーガ召喚。アトランティスの効果を受ける」

ナーガ 水 ☆4 爬虫類族 ATK1400 DEF2000
表側表示のこのカードがフィールド上からデッキに戻った場合、
レベル3以下のモンスター1体をデッキから選択し自分フィールド上に
特殊召喚する。その後デッキをシャッフルする。

ATK1400→1600
DEF2000→2200

下半身が蛇のモンスターが現れ、そのままドリルを持つ兵隊に絡み付く。
「…古代の機械工兵に攻撃。」

クロノスLP6450→6350

何事もなく工兵は破壊されて戦闘は終わり、美樹はターン終了を宣言した。

「ゴーレムで攻撃ナノ〜ネ!」

アウス(美樹)LP4650→3250

「…ダメージ=レプトルの効果でナーガを守備表示で召喚。」

「ターンエンドナノ〜ネ。」
クロノス教諭の手札は3枚に増えたがそれ以外特に進展はない。

「…私のターン。ドロー。」
このドローで美樹の手札は3枚。
(…これで私の最強モンスター召喚は可能になった。)
大きく深呼吸をし、手札をセットする。
「…魔法カード『黙する死者』」

黙する使者 通常魔法
自分の墓地から通常モンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する。
そのモンスターはフィールド上に存在する限り攻撃をする事ができない。

「…ギゴバイトを蘇生。そしてギゴとナーガを生け贄に、ゴギガ・ガガギゴを召喚。」

ゴギガ・ガガギゴ 水 ☆8 爬虫類族 ATK2950 DEF2800
(通常モンスター)
既に精神は崩壊し、肉体は更なるパワーを求めて暴走する。
その姿にかつての面影はない…。

「…アトランティスで強化!これで攻撃力は古代の機械巨人を上回る!」
ATK2950→3150
DEF2800→3000

「…攻撃。ギガス…クロウ!」
ゴオオオオ!とすさまじいうなり声を上げつつ、巨人に向かって腕を振り下ろす。
その一撃は機械の巨人をたたき割り、あっという間にスクラップに変えてしまった。
「マンマミ〜ア〜!ワタシのアンティークギアゴーレムが〜!」

クロノスLP6350→6200

「…これでターン終了。」

「ムムム…ワタシのターン。ドロー!」
美樹のモンスターに対して、対抗策を考えている。
「カードをセットしてターン終了ナノ〜ネ!」

「…私のターン。ガガギゴ召喚。」

ガガギゴ 水 ☆4 爬虫類族 ATK1850 DEF1000
(通常モンスター)
かつて邪悪な心を持っていたが、
ある人物に会う事で正義の心に目覚めた悪魔の若者。

ATK1850→2050
DEF1000→1200

今度はギイイイと若干低めの声でうなっているリザードマンが出現する。
「…ゴギガ・ガガギゴで直接攻撃。」

クロノスLP6200→3050

「ウォトト!この瞬間、ダメージ・コンデンサー発動ナノ〜ネ!」

ダメージ・コンデンサー 通常罠
自分が戦闘ダメージを受けた時、手札を一枚捨てて発動する事ができる。
そのときに受けたダメージの数値以下の攻撃力を持つモンスター1体を
デッキから特殊召喚する。

「いでよエメス・ザ・インフィニティ!」

エメス・ザ・インフィニティ ☆7 光 機械族 ATK2500 DEF2000
このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送る度に
このカードの攻撃力は700ポイントアップする。

「…むう、攻撃は無理か。」
美樹は残り1枚の手札を見る。バーン対策に入れておいた、現状では役に立たないカードだ。
「…カードを1枚伏せターン終了。」
しかし一応ブラフで伏せておく。これで美樹の手札は0枚。

「ワタシのターンドロー!」
ドローカードを見たクロノス教諭は少し表情が緩んだ。
「エメスに巨大化を装備するノ〜ネ!」

巨大化 装備魔法
自分のライフポイントが相手より少ない場合、
装備モンスター1体の元々の攻撃力を2倍にする。
自分のライフポイントが相手より多い場合、
装備モンスター1体の元々の攻撃力を半分にする。

現在のクロノス教諭のライフは3050。
200ポイントと若干ながらも美樹のライフを下回っている。

エメス・ザ・インフィニティATK2500→5000

「エメスでガガギゴに攻撃ナノ〜ネ!!インフィニティプリシャス!」

美樹LP3250→300
美樹のライフは2950ポイントと、大きく削られたが、美樹は冷静にカードの効果を使う。
「…ダメージ=レプトルの効果で、攻撃力2950ポイントのゴギガ・ガガギゴを召喚」

「フムフム。これでエメスの元々の攻撃力は半分になるノ〜ネ。」

エメスATK5000→1950

「さて、ワタシはまだ通常召喚してないノ〜ネ!ソ・コ・デ!古代の機械砲台を召喚!」

古代の機械砲台 地 ☆2 機械族 ATK500 DEF500
このカードを生け贄に捧げる。相手ライフに500ポイントダメージを与え、
このターンのバトルフェイズ中はお互いに罠カードを発動できない。

「砲台を生け贄にささげ、500ポイントダメージナノ〜ネ!」
砲台からエネルギー弾が発射され、アウス(美樹)に向かって飛んでゆく。

「…決め手を防ぐとは…痛魂の呪術」
「ナヌッ?」

痛魂の呪術 速攻魔法
相手がコントロールするカードの効果によるダメージを1回無効にして
その数値のダメージを相手に与える。

セットされていたカードが表になり、薄い障壁を作りだす。
エネルギー弾は障壁に弾かれクロノス教諭に向かった。

クロノスLP3050→2550

「マサカそんなカードを…カードを伏せてターン終了ナノ〜ネ。」

 そして美樹のラストターン。
「…ドロー」
 引いたカードは効果モンスターカード。召喚し、効果を使えば勝利は確定する。
「…ゴギガ・ガガギゴでエメスを攻撃!」
しかし、召喚はしない。

 そしてクロノス教諭は予想していたと言わんばかりに伏せカードに手を向ける。
「速攻魔法『非常食』を発動すル〜ノ!巨大化を墓地に送るノ〜ネ!」

クロノスLP2550→3550

 巨大化がフィールドを離れた事でエメスの攻撃力は効果も併せて3200となり、
美樹のモンスターの攻撃力を上回った。
「…しまった」

美樹LP300→250

「………対抗策は…ないか。もう1体のゴギガ・ガガギゴを守備表示時にし、ターンを終了。」
「ドロ〜!」
クロノスのラストターン。
「強欲な壺を発動!デッキからカードを2枚引くノ〜ネ!そして『古代の機械工場』発動!」

古代の機械工場 通常魔法
手札から「アンティーク・ギア」と名のついたモンスターカード1枚を選択する。
選択したカードの2倍のレベルになるように墓地の「アンティーク・ギア」
と名のつくカードをゲームから除外する。
選択したカードはこのターンに限り召喚時に生け贄は必要なくなる。

「手札の古代の機械巨人を選択し、墓地からエ〜
古代の機械巨人、古代の機械騎士、古代の機械砲台、それと
ダメージコンデンサーのコストで送っておいた古代の歯車を除外するノ〜ネ!」

古代の歯車 地 ☆2 機械族 ATK100 DEF200
自分フィールド上に「古代の歯車」が表側表示で存在する時、
手札からこのカードを攻撃表示で特殊召喚する事ができる。

「コレデ合計レベルは16。古代の機械巨人のレベル8の2倍ナノ〜ネ!
古代の機械巨人を召喚!」
またしても巨大な機械の兵隊が出現した。

「エメスでゴギガガガギゴに攻撃!そして、古代の機械巨人でダイレクトアタックナノ〜ネ!」
 またしても巨人のパンチが美樹に当たる。

「くっ…」
美樹LP250→0

「あらら。勝者クロノス先生!」
そのとたん会場からはブーイングの嵐。
「手加減してやれよクロノス先生!」
「最後のゴーレムはやりすぎだぜ!」
「そうそう!ちっちゃい女の子には優しく…」

「…ちっちゃい?」
 と、今度はその言葉を引き金にアウス(美樹)の雰囲気が変わった。
「わたしは!小学生じゃなーい!」
火山が噴火したかの様に怒り出し、その言葉を発した生徒に突進するが。

がっ!ずるっ!どしゃっ!

小石につまづいて転んでしまった。
「う…痛い」
「だ、だいじょぶ?」
 すこし涙目になっているアウスにエリア(撫子)が駆け寄って頭をよしよしと撫でる。
すると今度は歓声の嵐。
どうやらちびっ子アウスとお姉さんエリアという組み合わせがウケたらしい。
たちまちアウスとエリアは辺りの生徒を虜にしてしまった。

「なんなんでしょうかね。あれ。」
「…ここは任せて、行っちゃっていいんじゃない?」
 一方、すっかり蚊帳の外となっているヒータとウィンはあきれ果てていた。
さっきまでのヒータ、ウィン人気はどこへ行ったのだろうか。
「じゃ任せた」と二人に一言告げて学園祭を見にゆく。


「アノ〜。ワタシは一体…?」
でもってクロノス教諭は完全に忘れられていた。



第五章 桜はクラクラ ピケルが化ける?

 桜と朔夜はイエロー寮とブルー寮をひとしきり見て回り、
それなりに楽しんでいる様子。
「他所様の学祭見てまわんのってめちゃくちゃ面白いわ!」
「うん。ふぉうふぁふぇ(そうだね)」
口一杯にものをほおばりながら会話する朔夜。
 学園祭の出し物はイエロー寮が屋台、ブルー寮が喫茶店、その他
有志ステージ(本校舎)、購買、等結構多い。デュエルで勝つと割引してくれるお店もあり、
朔夜と桜はデュエルに挑み大量に食料をせしめ、知らず知らずのうちにファンも増やしていた。

「しっかし、森が多いねえ。森林浴もできて健康には良さそうだけど、
何かいそうでちょっと気味悪いわ。」
 桜はそう言いつつ、イエローの屋台で買ったフランクフルトをかじる。
二人は人の少ない島の裏手の方で、少し遅めの昼食をとっていた。
「確かに色々いそうだよね。お化けとか。幽霊とか。」
「………」

 話題が幽霊の事となると、桜の顔色は少し青ざめた。
「あ、そういえばお化けとか苦手だったね。ごめんごめん。」
 軽く謝り、朔夜はDA名物のドローパンの包みを開けて一口食べる。
「うえっ…けほっけほっ…何これ?」
ところが、中身はすりおろしワサビで朔夜はむせて咳をする。
それを見た桜は笑ってしまい、朔夜は拗ねてしまった。
「ごめんごめん。ははは…っと、こっちはどうかな〜っと。」

桜はもう一つドローパンを取って口に運ぶ。今度は激辛唐辛子。
「なんでこんなのっ…あんのよ?口ん中…げほっ、辛い。」
「わわわ、水!水水!ってもう空?!」
さっきのワサビパンのせいで二人は買った飲み物をほとんど飲み干していた。
とそこへ、通りすがりの女の子がペットボトルに入ったお茶を桜に手渡す。
「あ、ありがと…助かったわ。」
「いえ。こちらこそ。道に迷って困っていたんです。」

 道に迷っていたというその少女は玖蘭光(くらん ひかり)と名乗る。
身長は桜や朔夜とさほど変わらず、栗色のややクセのある長い髪が目立つ。
大きめの瞳が特徴的で、小動物系のかわいさが見え隠れする。
制服を着ているので、アカデミアの生徒とすぐに分かった。

「道に迷ったって、海岸沿いに歩いていけば本校舎か何かにたどり着くと思うんだけど…」
朔夜が疑問を述べる。デュエルアカデミアがある島は初めて来る朔夜や桜にも
それほど広いとは感じられない。
ここで生活している生徒ならばある程度島の地形なども分かっているであろうから、
迷うとは少し不思議ではある。
「私方向音痴でして、一人で行動するとすぐに迷っちゃうんです。
今日はなるべくだれかと一緒にいる様にしてたんですけど…ついさっきはぐれてしまいまして。」
一応、納得がいく理由なので警戒心は少し緩む。
「そりゃまた大変ね。で、その連れは大丈夫なわけ?」
桜が軽く同情する。過去に道に迷った経験があるようだ。

「はい多分。地形に詳しいですし、ここは食べ物も多いですから
万一の場合でも1週間くらいは…」
「っておい、待て。その連れ何者だよ?」
 一週間くらい放置されるとは話がおかしいのでこの質問は当然だ。
「ネコさんです。お話ししている途中で野ネズミを追いかけて行ってしまって。」
「えっと…ネコと話してた!?」
ますますおかしい。

「はい。あ!あそこです。あそこにいます!」
玖蘭光が森の中を指差した。
その先にはのんきににゃ〜とあくびをしている太ったトラネコがいた。
ちなみにこのネコ。名前はファラオと言うらしい。

「よかった〜。迷子になってたらどうしようと…」
光はファラオに駆け寄ってほおずりをする。

桜と朔夜も後から付いて来る。
「しゃべるんですか?これ」
「ええ。錬金術についてちょっとした知識を色々と。」
「錬金術ねぇ…」
桜はヒョイとファラオをつまみ上げ、しげしげと眺める。
しゃべるのかどうかかなり疑っているようだ。
「額に三日月模様でもあればまだ信じられるんだけど…」

『それって美少女戦士セーラームー○のルナですかニャ?』
と、突然どこからともなく声がした。
慌てた桜が辺りを見回すと、人魂のような光る球体が浮いていて…

「って本当にでたーーーーっ!!!!」

 桜は本物の人魂を見て驚いて、そのまま気を失ってしまった。
残った二人も桜ほどではないにしても、驚いていた。
そんな中光球は続けてしゃべり出す。
『驚かせてすまないニャ。でも私は幽霊じゃないニャ。
大徳寺と言ってファラオの元飼い主で元レッド寮寮長ですニャ。』

「は、はあ…」
『正体知ってる生徒のほとんどが卒業しちゃってて
話し相手がいなくて寂しかったですニャ〜。でも最近はこっそりじょ…』
と話し始めたとたん、
ファラオがぱくっとその大徳寺とか名乗る光の玉を飲み込んでしまった。
 こっちにも驚きだったがこれ以上突っ込んでみてもどうしようもないので
ひとまず桜を介抱する事にした。

「う〜ん、う〜ん」
 それからしばらく桜はうなされ続けていた。桜は小さい頃は霊感が強かったらしく、
本物のお化けを見た事があるのが原因らしい。

「しかし、困ったな。桜がいないとこのご飯運べないや。」
先ほど大量に買いあさった食料が裏目に出た。玖蘭に手伝ってもらおうとも考えたが、
桜も運ぶとなると人手が足りない。
「目覚めるのを待つしかないですね。となるとすこし時間が空きますから…
デュエルしませんか?」
突然の申し出。しかし断った所で何も得する事はない。
「え、はい。別に構いませんよ。」
朔夜は了承し、デッキをディスクにセットする。
玖蘭光もディスクを取り出し、デッキをセットした。
お互いに「お願いします」と挨拶をして、デッキをシャッフル。
先攻後攻を決めて距離を置く。

「「デュエル!」」

先攻は玖蘭から。
「ドローです。」
手札からカードを選び出し、ディスクに置く。
「まずは踊る妖精を攻撃表示で召喚します。」

踊る妖精 風 ☆4 ATK1700 DEF1000
このカードが自分のフィールド上に表側守備表示で存在する限り。
自分のスタンバイフェイズ毎に自分は1000ライフポイント回復する。

「さらに『友を呼ぶ風』を発動。ライフを1000支払って踊る妖精と同じ攻撃力の
モンスターを特殊召喚します。この効果でもう一体踊る妖精を特殊召喚。」

玖蘭LP8000→7000

玖蘭光の場には二体のモンスターが並ぶ。どちらも可愛らしい妖精3人が踊っている
モンスターだ。妖精3人で1体のモンスターと数える。
「カードをセットしてターン終わりです。」

「自分のターンです。ドロー!」
「永続魔法『生還の宝札』を発動し、暗黒界の取引を発動します。」

生還の宝札 永続魔法
自分の墓地からモンスターがフィールド上に特殊召喚された時、
デッキからカードを1枚ドローする事ができる。

暗黒界の取引 通常魔法
お互いのプレイヤーはデッキからカードを1枚ドローし、
その後手札から1枚捨てる。

「取引の効果で手札から暗黒界の軍神シルバを捨て、シルバの効果で自身を特殊召喚。
さらに、生還の宝札の効果で1枚ドローします。」

着々と手札を稼ぎ、相手とのアドバンテージを広げる。
「そしてシルバで踊る妖精を攻撃します。」
その宣言とともに銀色の悪魔がナイフを構え攻撃態勢をとる。

「その攻撃に対し、伏せカード『重力解除』!表側モンスターの表示形式を入れ替えます!」
朔夜のシルバと玖蘭の二体の踊る妖精は守備表示となる。

「う〜ん中々やるなあ。カードをセットしてターン終了です。」

「じゃあ私のターンです。スタンバイフェイズなので踊る妖精の効果でライフ回復し、

玖蘭LP7000→9000

手札から白魔導士ピケルたんを攻撃表示で召喚します。」

白魔導士ピケル 光 ☆2 魔法使い族 ATK1200 DEF0
自分のスタンバイフェイズ時、自分フィールド上に存在する
モンスターの数×400ポイントライフポイントを回復する。

玖蘭の場に出現したピケルを見て朔夜は目を丸くした。
なにしろ、
上は白い襟のセーラー服に赤いネックタイ。下は紺色のミニスカートにオーバーニーソックス。
靴は黒。背中には羊のキーホルダーが付いた赤いランドセル。
と、どこかの小学生にしか見えない格好のピケルがいたのだ。

さらに、そのピケルがどこからともなく宝石の付いたアクセサリーみたいなものを取り出し、
高く掲げて「へんし〜ん!」と叫ぶ。

 ピケルの体は光に包まれ…え〜某魔法少女ばりの変身シーンを展開。
そしてキーホルダーの羊が頭に乗っかりフードに変形し、
最後にピケルが「白魔導士ピケル参上!」とポーズをとる。

「な、なんなんですか…それ…」
朔夜は思考が半ば停止していた。わけが分からない。
本日2回目いや、3回目の驚愕。
「えっと…これは白魔導士ピケルのアニメがありまして
そのDVD第一巻の初回限定特典カードなんです。
この特典カードに限って特殊な召喚演出が入るんです。」

「そ、そうですか…」
朔夜は、はっきり言って引いていた。
(この子オタクなのか。こんな可愛いオタク初めて…いや、
撫子さんもオタクだから二人目か。
……ダメだ、どっちにせよついていけない。)

「さらに装備魔法『王女の試練』をピケルたんに装備です。」

王女の試練 装備魔法
「白魔導士ピケル」「黒魔導師クラン」にのみ装備可能。
装備モンスターの攻撃力は800ポイントアップする。
装備モンスターがレベル5以上のモンスターを戦闘によって破壊したターン、
装備モンスターとこのカードを生け贄に捧げる事で
「白魔導士ピケル」は「魔法の国の王女-ピケル」を
「黒魔導師クラン」は「魔法の国の王女-クラン」
を手札またはデッキから1体特殊召喚する。

ピケル ATK1200→2000

「ピケルたんでシルバを攻撃です。」
 ピケルが「え〜いっ!」とかいいながら杖をシルバに向け、
杖先から攻撃力2000の光の玉を打ち出す。
『白・魔・導・爆・裂・破!!』
 特に変な演出もなく、ピケルの攻撃でシルバは破壊された。
「そして王女の試練の効果を発動です。ピケルたんは魔法の国の王女に成長します!」

魔法の国の王女-ピケル 光 ☆4 魔法使い族 ATK2000 DEF0
このカードは通常召喚できない。このカードは
「王女の試練」の効果でのみ特殊召喚する事ができる。
自分のスタンバイフェイズ時、自分フィールド上に存在する
モンスターの数×800ライフポイントを回復する。

 特別版の王女ピケルはまだ発売されていない5巻の特典だそうで、
この特殊召喚に妙な演出はなかった。

「カードをセットしてターンを終わります!」

玖蘭 光 手札1枚 LP9000
フィールド
魔法の国の王女-ピケル 踊る妖精×2
伏せカード1枚

如月 朔夜 手札3枚 LP8000
フィールド
生還の宝札 伏せカード1枚



第6章 ピケル、頑張る

 (愉快というか、面白い戦術を使ってくる…ピケルには驚いたけど)
朔夜はそんな事を考えながらデッキからカードを引き、落ち着いて場を見る。
「カードをセットしてモンスターもセットし、ターン終了です。」

「ドロー!」
玖蘭光はカードを見ると、すぐにディスクにセットする。
「速攻魔法『武装再生』!この効果で墓地の『ピケルージュロッド』をピケルに装備!」

武装再生 速攻魔法
墓地の装備魔法カード1枚を自分フィールド上に表側表示で
存在するモンスター1体に装備する。このカードを発動する場合、
このターン自分はモンスターを通常召喚する事はできない。

ピケルージュロッド 装備魔法
「ピケル」と名のつくモンスターにのみ装備可能。装備したモンスターの効果によって
1600ポイント以上ライフポイントが回復した時、自分はデッキからカードを1枚ドローする。
このカードを装備したモンスターは戦闘で破壊されない。(ダメージ計算は適用する。)

 ピケルの持っていた杖が、赤い石がはめ込まれた、装飾の豪華な杖に変化する。
無論それだけでなく、戦闘破壊を防ぐ効果と条件付きドロー効果という二つの効果が
ピケルに追加される。
(さっきの暗黒界の取引のときに捨ててたのか。
それに装備魔法はメインフェイズに発動するのに、効果はスタンバイフェイズにならなきゃ
使えないっていうタイムラグまで消してる。)

「スタンバイフェイズ、踊る妖精の効果発動です。キュアウィンド!」

玖蘭光LP9000→11000

「さらにピケルたんの効果発動。マジックヒール!
ライフを2400回復。そしてピケルージュロッドの効果で1枚ドローします!」

玖蘭光LP11000→13400
手札1→2枚

「ピケルたんで守備モンスターに攻撃! 白・魔・導・爆・裂・破!!」

 光の玉は守備モンスターに命中するも、今度は一部がはね返る。
守備モンスターは暗黒界の番兵 レンジ(DEF2100)。

玖蘭光LP13400→13300
「ではターンを…」
 
「あっ、じゃあエンドフェイズに速攻魔法暗黒界に続く結界通路を発動して
墓地からシルバを蘇生します。」
 玖蘭がターンを終わらせる前に、朔夜はカードを使用し、
フィールド上に先ほどピケルに破壊された銀色の悪魔を蘇えらせる。

暗黒界に続く結界通路 速攻魔法
このカードを発動する場合、自分は発動ターン内に召喚・反転召喚・特殊召喚できない。
自分の墓地から「暗黒界」と名のつくモンスター1体を特殊召喚する。

「でもって生還の宝札の効果で1枚ドロー。」
「じゃあ改めて、ターン終了です。」

「私のターン、ドロー。」
 朔夜は玖蘭のセットしたカードを一瞥する。
(あの伏せカードが気になるんだよなあ。使うか、使わないか…よし。)
「死霊騎士デスカリバーナイトを攻撃表示で召喚し、レンジ(ATK100)を生け贄に
セットしておいた死のデッキ破壊ウィルスを発動!」

死のデッキ破壊ウィルス 通常罠
自分フィールド上の攻撃力1000以下の闇属性モンスター1体を生け贄に捧げる。
相手のフィールド上モンスターと手札、発動後(相手ターンで数えて)3ターンの
間に相手がドローしたカードをすべて確認し、攻撃力1500以上のモンスターを破壊する。

それと同時に玖蘭も自分の伏せカードをめくる。
「リバースマジック発動!『我が身を盾に』!」

我が身を盾に 速攻魔法
相手が「フィールド上のモンスターを破壊する効果」を持つカードを発動した時、
1500ライフポイントを払う事でその発動を無効にし破壊する。

玖蘭光LP13300→11800

 玖蘭の体から光が放出され、人のような形を成す。
それは朔夜のカードから発生したウィルスを全てその身を盾にして受け止めた!

『ピケル様はやらせませヌ!!』
 人というよりは執事姿のヒツジに見えたが、朔夜はもう何もツッコマないことにした。

(とにかくウィルスは無効にされた…と。でも伏せカードはないし、まだ攻撃はできるから)
「デスカリバーナイトとシルバで踊る妖精2体を攻撃しますね。」
 骸骨の騎士と銀色の悪魔が可愛らしい妖精に切りかかる…と見せかけ、
ヒョイッとつかみあげてセメタリースペースにそっと置いた。
『さすがに可愛らしい妖精が切られたり砕けたりするのはマズイ』とでも開発部が考えたのだろう。

(もうツッコまない…ツッコまないぞ…)
「とにかくこれでターン終了です。」

「うーんと、じゃあ…」
玖蘭はカードをドローし、ためらわず2枚ディスクにセットする。
このまま何もしなければピケルの効果が自動で発動し、
それをデスカリバーナイトが自動的に無効にしてピケルを破壊してしまうのだ。
「魔法カード『スケープ・ゴート』!チェーンして『死者への供物』!」

スケープ・ゴート 速攻魔法
このカードを発動する場合、自分は発動ターン内に召喚・反転召喚・特殊召喚はできない。
自分フィールド上に「羊トークン」(獣族・地・星1・攻/守0)を4体守備表示で特殊召喚する。
(生け贄召喚のための生け贄にはできない)

死者への供物 速攻魔法
フィールド上の表側表示モンスター1対を破壊する。次の自分のドローフェイズをスキップする。

 死霊騎士は何もせず破壊され、ピケルの周りには彼女を守る様に
四匹のぬいぐるみの様なヒツジが出現する。
「そしてスタンバイフェイズにピケルたんの効果発動!ライフ4000回復です!」
玖蘭LP11800→15800

「さらにロッドで1枚ドロー!」
手札1→2枚

「よし…ピケルたんに装備魔法『団結の力』を装備しますっ!」

団結の力 装備魔法
自分のコントロールする表側表示モンスター1体につき、
装備モンスターの攻撃力と守備力は800ポイントアップする。

魔法の国の王女-ピケル
ATK2000→6000
DEF0→4000

「いきます!ピケルたんの最大攻撃魔法!」
 フィールド上の全ての羊達がピケルに力を分け与え、彼女の持つ杖が輝きを増してゆく。
羊の攻撃力は0なのにピケルの攻撃力が上がるメカニズムは謎だが。

『双・聖・爆・裂・疾・風・弾!!』
 そんなこたさておき、破壊力はバーストストリーム二発分に相当するエネルギーが
朔夜の場のシルバに命中。シルバは木の葉の様に軽々と吹っ飛び、
ついでに朔夜のライフも半分近く吹っ飛んだ。
「つっ…!」

朔夜LP8000→4300

「ターン終了です!」

「えーっと、ドロー。」
 朔夜の手札はこのドローで4枚。
(その場しのぎになるカードしかないか…)
「モンスターを裏守備で、カードをセットしてターン終了です。」

「私のターンです。ええと、死者への供物の効果でドローはスキップされます。
でもピケルたんの効果で回復し、ロッドの効果でドロー。」

玖蘭LP15800→19800
手札1→2枚

「ピケルたんで攻撃!」
 またしてもピケルの杖が輝き、光弾が放たれる。
『双聖のバーストストリーム!!』
 後半の爆裂疾風弾はバーストストリームと読むらしい。

「わっ、罠カード『邪悪なるバリア-ダーク・フォース-』発動!」

邪悪なるバリア-ダーク・フォース- 通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動することができる。
相手フィールド上の守備表示モンスターを全てゲームから除外する。

 朔夜の守備モンスターの前に一カ所ヒビが入った黒い障壁が出現した。
光弾が衝突すると障壁がその一部を跳ね返し、羊トークンを消し去る。

魔法の国の王女ピケル
ATK6000→2800

 だが、ヒビが障壁全体に広がってバリアは粉々に砕け散り、
結局ピケルの攻撃は威力が減少したものの守備モンスターに命中。ベージを破壊した。

暗黒界の尖兵 ベージ 闇 ☆4 ATK1600 DEF1300
このカードが他のカードの効果によって手札から墓地に捨てられた場合、
このカードを墓地から特殊召喚する。

「う、うーん。では、モンスターをセットしてターン終了です。」

「じゃあ、ドローして…手札抹殺。」

手札抹殺 通常魔法
お互いの手札を全て捨て、それぞれ自分のデッキから捨てた枚数分
のカードをドローする。

 朔夜は手札のシルバと魔法カードを1枚を捨て2枚引く。
玖蘭はモンスターを捨て、1枚。
墓地から効果でシルバが守備体制で蘇生し、朔夜は生還の宝札の効果でさらに1枚引く。

「シルバは守備表示で、それからカードを1枚伏せて終了にします。」

「私のターン。ドロー。ピケルの効果で回復し、ロッドの効果で1枚引きます。」
玖蘭LP19800→21600
手札2→3枚

 玖蘭のライフはとうとう20000を越えてしまった。
「うーんと、セットしておいたスケルエンジェルを反転召喚し、効果で1枚引きます!」

スケルエンジェル 光 ☆2 天使族 ATK900 DEF400
リバース:自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 ドローしたカードはどうやらお目当てのカードだった様子。喜々としてカードを置く。
「手札より、早すぎた埋葬発動!この効果でさっき墓地に置かれたマーズを特殊召喚!」

玖蘭LP21600→20800

力の代行者 マーズ 光 ☆3 ATK0 DEF0
このカードは魔法カードの効果を受けない。
自分フィールド上に「天空の聖域」が存在し、
自分のライフポイントが相手のライフポイントを超えている場合、
その数値だけこのカードの攻撃力・守備力がアップする。

「さらに、手札から地獄の暴走召喚を発動し、マーズをデッキから2体攻撃表示で特殊召喚!」

地獄の暴走召喚 速攻魔法
相手フィールド上に表側表示モンスターが存在し、自分フィールド上に攻撃力1500以下のモンスター1体の特殊召喚に成功したときに発動する事ができる。その特殊召喚したモンスターと同名カードを自分の手札・デッキ・墓地から全て攻撃表示で特殊召喚する。相手は相手フィールド上のモンスター1体を選択し、そのモンスターと同名カードを相手自身の手札・デッキ・墓地から全て特殊召喚する。

「えっと、私は墓地とデッキからシルバを1体ずつ守備表示です。生還の宝札で、ドロー。」

 玖蘭の場には赤い天使が3体。透明な天使が1体。
団結の力で攻撃力6000を維持している魔法の国の王女ピケルが並ぶ。
 最後に彼女は手札の1枚をデュエルディスクのフィールド魔法スペースに置いた。
「そして最後のキーカード『天空の聖域』です!」

天空の聖域 フィールド魔法
天使族モンスターの戦闘によって発生する天使族モンスターの
コントローラーへの戦闘ダメージは0になる。

 フィールドは雲の上の聖なる領域へと姿を変え、力の代行者達は水を得た魚の様に力を増してゆく。
現在二人のライフポイントは20800対4300。その差16500ポイントが代行者達の力となる。

力の代行者 マーズ ATK/DEF0→16500

(い、一万六千五百…しかもそれが3体ってどんだけなの?)
 朔夜が驚くのもごもっとも。攻撃力8000の機械竜も、4500の究極竜も真っ青の攻撃力。
おまけに代行者達には魔法が効かないときている。

「マーズでシルバに攻撃です!」
 その宣言とともに、3体の代行者達が聖域から異物を排除せんと銀色の悪魔に襲いかかる。
「あの、ほんとすいません。罠カード『魔法の筒』」

魔法の筒(マジックシリンダー) 通常罠
相手モンスター1体の攻撃宣言を無効にし。
そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手プレイヤーに与える。

 悪魔達と天使達の間に突然二つの筒が出現する。
飛んで来た代行者の一人は急な障害物の出現に対応しきれず現れた筒に吸い込まれ、
もう一方の筒から元々の主である玖蘭に向かって放たれた。

「………え?」
玖蘭LP20800→4300

 一瞬で15000ポイント以上のライフが吹き飛んだ。音もなく。
ライフポイントの差が0になった為、全ての代行者達の攻撃力も0となる。
「ピ、ピケルで攻撃!」
 しかしピケルの攻撃力には全く影響はないので、先ほど蘇ったばかりのシルバはまた
6000の攻撃を受けて墓地へ送られた。
「ウーん、聖域があるからまだ大丈夫かな。ターン終了です。」
 玖蘭はライフポイント差が無くなった事には驚きはしたものの、聖域の戦闘ダメージ消去能力を
信じてターンを終了した。
 
「えーっと、ドロー…あ。」
 朔夜はドローカードを見つめ、発動した。
「もっと早く使いたかった、ハリケーン発動!」

ハリケーン 通常魔法
フィールド上の全ての魔法・罠カードを全て持ち主の手札に戻す。

 突風が巻き起こり、ピケルが装備していた『団結の力』『ピケルージュロッド』、
マーズの『早すぎた埋葬』にフィールドの『天空の聖域』、
朔夜の『生還の宝札』がそれぞれの手札に帰還する。

「よしっ。シルバ2体を攻撃表示に変更!力の代行者マーズ2体に攻撃!」
 自らの力の源である聖域を失った天使に悪魔が襲いかかり、
その余波はプレイヤーを直撃する。
 ほんの1ターン前の攻防とはまるっきり正反対の構図である。

玖蘭LP4300→2000→0

「「あ、ありがとうございました。」」

 デュエル終了後二人はお互いに一礼し、デュエル後の感想戦を行う。
「うーん、最後の暴走召喚が敗因ですねえ。発動しなければもう少し私のライフは残ってたはずですから。」
「うん。でも前半の重力解除は上手かったよ。踊る妖精とか、ピケルのサポートができてたし。
結果は私が勝ったけど、総合力はそっちの方が上じゃないかな。」
 感想戦中桜も無事目覚め、そのまま三人で感想戦を続けた。
もちろん生徒じゃない事は隠していたが。

「さーってと、そろそろエリアとアウスんとこ戻んないと。玖蘭ちゃんも案内するからついといで。」
「あ、はい。ありがとうございます」
「あ、荷物荷物。」
 そして一行はレッド寮に向かって戻っていった。



今日の最強カード!

玖蘭「今日の最強カードはピケルージュロッド!」

ピケルージュロッド 装備魔法
「ピケル」と名のつくモンスターにのみ装備可能。装備したモンスターの効果によって
1600ポイント以上ライフポイントが回復した時、自分はデッキからカードを1枚ドローする。
このカードを装備したモンスターは戦闘で破壊されない。(ダメージ計算は適用する。)

玖蘭「ピケルたん専用の杖で…」
桜「こらこら勝手に紹介すんなよ…ってピケルじゃねーのかい!」
玖蘭「今回活躍したのは王女の方で、白魔導士は前回ですから。
それにドロー効果がある事を考えて…」
朔夜「限りなく唐突な最強カード紹介ですいません…えーまた次回。」



第7章 結局、驚愕

 降り注ぐ午後の日差しの中、撫子はMr.シャークと名乗る、帽子を目深にかぶった
男とデュエルで戦っていた。

撫子LP2200 手札1枚
フィールド
ジェルエンデュオ(守備) 
セットカード2枚

Mr.シャークLP3000 手札4枚
フィールド
サイバー・オーガ・2

サイバー・オーガ・2 地 ☆7 機械族 ATK2600 DEF1900
「サイバー・オーガ」+「サイバー・オーガ」
このカードの融合召喚は、上記のカードでしか行えない。
このカードが攻撃を行う時、攻撃対象モンスターの攻撃力の半分の数値だけ
このカードの攻撃力をアップする。

 そして今は撫子のターン。撫子はモンスターを召喚する。
「ジェルエンデュオを効果によって2体分の生け贄にし、光神機-轟龍を召喚!」

光神機-轟龍 光 ☆8 天使族 ATK2900 DEF1800
このカードは生け贄1体で召喚する事ができる。
この方法で召喚した場合、このカードはエンドフェイズ時に墓地へ送られる。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、このカードの攻撃力が
守備表示モンスターの守備力を超えていれば、その数値だけ
相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 轟龍の名の示す通り、巨大な白き竜が現れる。
「轟龍でサイバーオーガ2に攻撃!轟龍咆!」

 サイバーオーガ2は轟龍の口から放たれた熱線により破壊され、
プレイヤーにも僅かながらもダメージを与えた。

Mr.シャークLP3000→2700

「さらに罠カード『亜空間物質転送装置』発動。轟龍を除外するわね」

亜空間物質転送装置 通常罠
自分フィールド上の表側表示モンスター1体を選択し、発動ターンの
エンドフェイズまでゲームから除外する。

 撫子のフィ−ルド上から巨大な白い竜が姿を消し…
「このタイミングで除外?一体何を?」
「さらに『奇跡の光臨』で除外された轟龍を特殊召喚!」
 …再びその姿を現す。

「特殊召喚した轟龍でもう一度攻撃!轟龍双咆!」

Mr.シャークLP2700→0

「む、むう。まさかここまでの強さとはいやはや…」
 その男はそのまま本校舎の方へ去る。きっと正体はあの人に違いない。

 そんな校長を撫子が見送っていると、森の方から桜、朔夜、光の三人が
軽く談笑しながら戻って来ていた。丁度戻って来た三人は撫子を発見し目を丸くする。

「……………!!!!!」
 というのも、撫子がデーモン・テイマー(海外版)の格好をしていたから。
ご丁寧に鞭を持って、顔には紫のラインまで入れている。
「あ、あのでは私はこれで…あ、これ道案内のお礼ですので。」
 玖蘭光はそう言いながら朔夜に小さな包みを渡し、
本能的に撫子の危険性を感じ取ったかの様にそそくさとその場から立ち去った。

「デーモン・テイマーのリバース効果発動!悪魔っ子ウィンのコントロールを得る…なんちって」
 突如、撫子がもの凄く楽しそうに宣言する。

デーモン・テイマー 地 ☆3 戦士族 ATK800 DEF700
リバース:相手フィールド上に表側表示で存在する悪魔族モンスター1体のコントロールを
エンドフェイズまで得る。

「さらに『堕落』発動!ヒータのコントロールをゲット!なんてね。」

堕落(フォーリン・ダウン) 装備魔法
自分フィールド上に「デーモン」と名のついたカードが存在しなければ
このカードを破壊する。このカードを装備した相手モンスターのコントロールを得る。
相手スタンバイフェイズ毎に、自分は800ポイントダメージを受ける。

 あっけにとられてる隙を見て、即座に二人の腕を掴み、引っ張る撫子。
「コスプレ第二弾いくわよー!!」

 でもって更衣室に引っ張られる朔夜と桜。
「ちょ、第二弾ってまだあんのかい!800ダメージ与えるぞっ!こら、離せー!」
「と、とりあえずエンドフェイズになったら解放してくれません?」

 で結局そのままずっと撫子のターン。
ヒータを生け贄に灼眼のシャ○。ウィンを生け贄に初○ミクが召喚される。
○ャナ(桜)「よくこんなのあったわね…。デュエルとは全く関係ないのに」
ミク(朔夜)「それ以前に、これが何のキャラなのかすら分からないよ…」

 その傍ら、美樹と撫子は二人セットでレイとアスカの格好に着替えていた。
早乙女レイと天上院明日香ではなく、綾波とラングレーの方のレイとアスカ。
美樹は白、撫子は赤のパイロットスーツ(プラグスーツと言うらしい)を身に纏い、
腕にはそれぞれのキャラが乗る機体と同じカラーリングのデュエルディスクを装着する。

 ここまでくると『コスプレデュエル大会』が単なる『コスプレ大会』になりそうではあったが、
学園祭の運営委員の人から「コスプレはデュエルモンスターズに関係がある物だけにしてください」
との注意を受け結局取りやめになった。

「うーん、残念。よく似合ってたし、ネギとメロンパンも用意したのに…
ま、でもモンスターでいくつか良さそうなのを見繕って…」

「まだやるんですか…撫子さん。じゃ、自分は桜と一緒にデュエル会場に行ってますので」
 朔夜は話をそらし、そそくさと更衣室を後にする。
その後も四人はアカデミアの生徒達を相手にデュエルを楽しんだ。
(尚、ネギとメロンパンはこの後皆でおいしく頂きました)



 そんなこんなで午後5時を回った頃だろうか。美樹がこっそり港に向かうよう連絡して来た。
「…そろそろ帰りの貨物船が出る時間」だそうだ。
「できればもう少しデュエルを楽しみたかった」と思いながらも四人が港へ向かうが、

「貨物船が…えっ、ちょっと!出てる!?」
桜が驚愕し、取り乱す。乗る予定だった貨物船は既に港を離れ、小さくなりつつある。
密航だから手を挙げて「のりまーす!」なんて言えるわけがない。つか言っても聞こえない。

「…出航が早まったのか?いや、そんなはずはないなず…そのはず。
1時間も早く出航するなんて…」
美樹さんはかなり混乱し、目にはうっすら涙さえ浮かべている。

「これは困ったわね」
 一方の撫子さんは何故か落ち着いている。
(なんで落ち着いていられるんだろう…?)
 次いで、若干反応が鈍い朔夜は撫子の様子が気になるようで、平静さを失っていなかった。


『アーアー。緊急連絡、緊急連絡ナノ〜ネ!』

 と、そこへアカデミア島中にクロノス先生の声でアナウンスが入る。
『アカデミアに不審人物数名が侵入したノ〜ネ!生徒全員は直ちに捜索にかかって欲しいノ〜ネ!
なお、不審人物を捕らえた者ニ〜ハ!賞品を出すノ〜ネ!』

「不審人物?まさか私たちのことじゃないでしょうね…?」

『その不審人物は霊使いの格好をしているノ〜ネ!頑張って捕まえるノ〜ネ!』
 やっぱりか…全員が思った。「さて、どうする?」
 よくあるパターンの様だが、いざ実際に直面するととても困る。
だが、撫子は困った様子もなく、きわめて冷静だ。
「選択肢はあるわよ。このまま捕まる、泳いで逃げる…」

「…どっちにせよできない選択。とすると、船の中でお前が渡したあの封筒…か?」

さっきまで涙目になっていた美樹が意見をだす。
「Yes!でも、中身はなるべく教員に見せたほうがいいわね。」
「つうことは生徒達をかいくぐってあの本校舎にたどり着けば言い訳ね!」
 桜は要点が分かると急に元気になる。

「じゃあ…行くんですね?成功する可能性は低いですけど。」
「「とーぜん!」」
で、この後なんやかんやバトルがあるのだがそれはどーでもいーので割愛する。



第8章 種明かし

「不可能じゃないわ。この作戦」とか
「そっちへ逃げたぞ!追えー!」とか
 スパイものの映画の様なやり取りがあったかどうかは置いといて、

 -現在の状況-
四人は校長室にたどり着き、撫子から渡された封筒を開封。

-中身を見た四人の反応-
朔夜と桜:唖然としている
撫子:笑いをこらえている
美樹:撫子め…!と思っている



 四人が開けた封筒の中身には「ドッキリ大成功!!」とでかでかと書かれていた。
早い話が、最初から仕組まれていたドッキリだったのだ。

 仕掛人は春日撫子。ターゲットは桜、朔夜、美樹の3人。
協力者は…おそらく学校関係者全員。

「いやーご苦労様。ここまで上手く行くとは思ってなかったわ。」
 朔夜らにお茶を出しながら撫子が言う。
最初っから上機嫌だったのは仕掛人だったからのようだ。
「…私までたばかってたのか。帰りの船の出港時間もわざと1時間まちがいて…」
 美樹は自分まで騙されていた事にかなり怒っている。
「……………」
 完全に騙されていた桜と朔夜はまだドッキリである事が理解できないようだった。

「私の知り合いにこのデュエルアカデミアで働いている人がいるのよ。
その人が校長先生に頼み込んで、私たちがこの学園祭に来られる様にしてくれたの。
最初はゲストとして来る予定だったんだけど、それじゃつまんないからって事で
急遽このドッキリ企画を持ち込んだって訳。」

 サラッと説明する撫子。ちなみにその「知り合い」とは
「あらぁ!撫子ちゃんじゃないの〜!しばらくぶりねえ〜!すっかりべっぴんさんになっちゃって!」

 ちょっと小太りな購買のおばちゃん、通称「トメさん」である。
撫子曰く、鮫島校長は彼女にゾッコンらしく、今回のドッキリも彼女がいなければできなかった。
とのことらしい。
 朔夜と桜がようやく落ち着きを取り戻すころには
撫子と鮫島校長と、トメさんとの談笑に花が咲いていた。
「いやあ、こっそり手合わせしてみましたが負けてしまいましてね。いやはや、新しいデュエリストの成長をつくづく実感しましたよ。ところで、撫子君と言ったかな。アカデミアに転入してみる気は…」
「いえいえ、滅相もない。私は…」
「そうよお〜そんなに無理に進める事ないじゃないの。」

 校長は「優秀な生徒(この場合朔夜達)に学校を紹介してあわよくば転入も」とも考えていたようだ。
しかしながら撫子はトメさんを味方につけてお世辞や冗談を交えつつ、やんわりと断っていた。

「あの社交性、凄いなあ、撫子さん。」
「うん、朔夜。対応が大人ね。あそこまでの話術とコネの生かし方…
社会人になったらどんだけ大物になるんだろ」
 余計な事だが、この日を境にして朔夜および桜の中で「人を見た目で判断してはいけない」
という認識が産まれたという。

 鮫島校長は朔夜や桜、美樹にも学校案内し寮等の施設やクラス分け、
卒業後の進路についてまでも色々と説明をしてくれた。転入生はあきらめてないようだ。

それから四人は明日学校がある為、そのまま帰る事となった。
帰りは高速艇でアカデミアから港に向けてまっすぐに帰る。

「いきはよいよい、帰りはこわいとはこの事ね…ドッキリで無駄に驚いちゃったわ」
帰路の船の中、桜は朔夜に愚痴をこぼす。
「まあね。でもアカデミアの生徒と対戦できるなんてそうある事じゃないし、
いい経験にはなったよね。ドッキリには私も驚いたけど。あ、そう言えばさ
今日の昼に玖蘭って子から貰ったお礼なんだけど、これ。」

 貰った包みの中にはカードがいくつか入っていた。
シリーズもバラバラで、おそらくは元々持っていた物をいくつか包んだだけ。
「あ、包みの裏に何か書いてある。」
「うん?」

 と、そこへ美樹が現れた。
「…撫子の事で気を悪くしたならすまない。ああ見えてあれは素直に感情表現できない。
ドッキリや悪戯を仕掛けるのはあれにとって気を許しているって意味だから。」
「いや、私は別に気にしてないよ。デュエルもさせてもらったし。」
「はい、自分にもいい経験になりましたし。」

「…そうか。私がこの事を話したって事は内緒で頼む。それと、これからも
ドッキリとかあるだろうけど、よろしく。」
美樹は撫子のフォローに来たらしい。過去にもこんな事があったのだろうか。

 それから間もなくして、船は最初に来た港に停泊し、
四人は電車に乗って待ち合わせした駅まで戻り、そこで解散した。
美樹と撫子は一緒に帰り、桜と朔夜は駅で元々来ていた服に着替える。
「あ、あのさ、朔夜。」
 着替え終わりさあ家に帰ろうと言う所で、桜は言うのが恥ずかしいのか、
ちょっとどもりながらなにか話を切り出す。
「何?桜」
「いや、今晩さ…私の家に泊まる気ない?弟とか遅いし、親は出かけてるし。」



第9章 そして事件は起こった

「え、あーそっかそっか。うん。いいよ。」

 なぜ桜が家に泊まって欲しいと言ったのか。朔夜はすぐに分かった。
その理由は『オバケがこわいから』である。
元々結構苦手である上に、本日はアカデミアで本物を見ているので
護身術を身に付けていようとも、おうちにひとり、暗い夜道をひとり、では流石にこわい。
ついでにこの歳にもなってオバケがこわいのはちょっと恥ずかしいとの事。

「にしてもお化けとか幽霊とか苦手だよね〜。桜は」
「うん!」
 思わず力強く肯定してしまう桜。
「あ、いや、でも昔よりはちょっとマシになったかな。」
「じゃあ昔って今よりもっと恐がりだったの?」
「うん…。暗い道なんてさ、両手でがっつり(しっかり)しがみついてた位だもん。」

 ちなみに現在。桜の片手は朔夜の袖をがっっっつり(相当しっかり)握っている。
彼女の手のひらは汗ばんでいて、怖がっているのが見え見えだった。

 桜が実は相当な恐がりさんだった事はさておいて、二人は朔夜の家に着く。
というのも、朔夜の家によって明日の学校の支度をし、
朔夜の親に泊まる事について了承をもらう必要があったからである。

「まあ、昔何回か泊まった事あるから了解取る必要はそんなにないけどね」
 それからまた少し歩き、桜の家にたどり着く。桜の家は結構古い和風の平屋で結構広く、
暗いせいもあるのだろうが、夜中に一人でいるのははばかられる気がする。

 鍵を開けて家の中に入ると二人は居間に座布団をぶちまけて寝っ転がり、
とっても疲れた本日の愚痴をこぼす。
「ほんっっと疲れた!」
「うん、ほんとに色々あったもんね」
「しばらく寝てたい〜って今何時だっけ?」

 桜は寝返りをうち、半回転してテレビのリモコンを取りつつ
そのまま華麗にテレビの電源を入れて画面右上の時刻を見る。
時刻は午後9時半をちょっと過ぎた所で、テレビではタイミング良く
新パックのコマーシャルが始まった所だった。

(CMのフレーズ)
歴史は繰り返す…
星々は闇を誘い、光と闇が激突する。
そして世界は…終焉と、開闢の時を迎える!
オフィシャルカードゲームデュエルモンスターズ!
ブースターパック『Entrance to Neo Dimension』
好評発売中!

新たな世界の 扉を開け!

「あ。今のCMで思い出したんだけどさ、玖蘭光ちゃんからもらった包み。
これ見てくれない?」
 朔夜は荷物の中から、あのカードの包みの裏を見せる。
「どれどれ、歴史はくりかえす…ってCMのフレーズじゃん」
「あ、いや、その下。」
「えーっと『Entrance to Neo Dimension』の真の意味を解き明かせ…か」
 意味深長、謎めいた一文だった。




-数十分後-
 二人は『真の意味』とやらについて考えていたものの、
いつまでもそうしていることはできないので寝室に布団を敷いて就寝準備を整え、
今はある部屋にてゆっくり身体の疲れをとっていた。

「Entrance to Neo Dimension。
直訳すると新しい次元の入り口。で、それの本当の意味。う〜ん。」
「他にヒントほしいとこだよね。これ」
桜達は頭をひねり、まだ悩んでいた。

「それにしても弟くんたち遅いね。もう十時になるのに。」
「部活で隣町の大会に参加するって言ってたけど確かに遅いわね。
遅くなるなら連絡寄越しなさいって言っといたのに、まったく」
 桜は遅くなってる事に対し、心配しているというよりは怒っている様だ。

カタン!カタカタ

 するとそのとき、玄関の方で戸を開けようとする音がした。
「おっと、噂をすれば…かな。先に上がってるわね。
そうそう、バスタオルとドライヤーは洗面所の所に置いとくから。」
 そう朔夜に告げると、桜は戸を開けて玄関の方に向かう。
インターホンの音も鳴り、「はいはい!今開けるから!」と桜の声と足音も聞こえた。

 桜が行った後、朔夜はそこで一人で考え始めた。
「エントランストウ…ネオディメンション。なにか引っかかるんだよなあ」

 ふと目をやると、湯気で曇った鏡が見えた。
何となく朔夜は指を使って文字を書いてみる。

Entrance to
Neo
Dimension

「!……あ!分かった!」
 引っかかっていた違和感が消え去り、そう叫ぶとそのままの格好で部屋を飛び出し、
玄関に向かう。途中でちょっと転びそうになったが、気にせずまっすぐに桜の所に行った。
「分かった!分かったよ!桜!」
 桜は朔夜を見るなりぎょっとした。
「な、何が!?」

「Entrance to Neo Dimensionのっ…大文字の部分だけ読むとっ…ENDになるんだ!」
朔夜はかなり急いで来たようで、息を切らせている。

「そ、それよりあんた…その格好…」
桜に言われて、朔夜は初めて自分の今の格好に気がついた。

「あ…」



 さて、ここでちょっと状況を整理してみよう。
桜達がさっきいた部屋には湯気でくもった鏡があり、
そこから出た後はバスタオルとドライヤーを使う。
 そして朔夜は、その部屋からそのままの格好で玄関に来た。
ちなみに今玄関には、帰って来たばかりの桜の弟と妹もいる。



 つまり……だ。
 良い子は絶対に想像しないでください。
以上。




-大和家の玄関がちょっと大変な事になっているそのころ-
「ではこれにて連絡を終わります。」
『分かった。引き続き報告を頼む』
 自室に戻った撫子はパソコンのモニター越しに誰かと会話していた。
「定時報告終わり!っと」
 連絡が終わるとパソコンの電源を切り、布を取り出し繕い物を始める。
「さて、いよいよこれから…かなあ?」
 そして繕い物をしながら、撫子はニヤリと笑った。



第10章 3+3=6、デュエリスト+デュエリスト=無限大

一夜明けて


 朔夜と桜は全速力で学校に向かっていた。
「だあー!!っっとにもう!!盲点だったー!!なんで今朝になって気がつくー!!」
「きふぉおふぉうふぉひひふひへへは…(昨日の内に気付いていれば…!)」

 どうして全力で登校しているかというとだ、朔夜の制服を持ってくるのを忘れていたからである。
教科書と鞄は昨日桜の家に持って来ていたのだが、服はそのまま置いて来てしまっていた。

それゆえに学校とは逆方向の朔夜の家に戻るという大幅なタイムロスを強いられてしまったのだ。

「ひぇへへいふぇはふーふぁふひょーにあへば…(せめて家が通学路上にあれば…)」
 ちなみに朔夜は食パンをくわえて走るという、遅刻しそうな女子生徒にはある意味
お約束のシチュエーションをやってのけている。

「食べちゃえよそれ!絶対曲がり角で誰かにぶつかるって!」
 もっとも女子生徒は一人じゃないからシチュエーションは初めからブチ壊しなのだが。


〜時は流れて放課後〜

「…で結局遅刻した、と」
「ええ、まあ…」

 朔夜は根城…じゃなくて部室にしている化学準備室で浅山美樹に
今朝の出来事を話していた。
桜は体調を崩し、今は保健室で寝ているので部室には今朔夜と美樹しかいない。

「…桜は体力系っていうイメージがあるせいか、珍しく感じる」
「実を言いますと、桜は昨日ほとんど寝てなかったので。」
「…昨日?」

「ええと…」
 朔夜は昨日の…そう、風呂からあわてて出て来た時以降の事を思い出した。
(あーそうそう、大変だったなあ…タケルくん(桜の弟、中一)に身体を見られたのは別によかったんだけど。5,6年前に一緒に風呂入った事もあるし。うん。問題はそれから…)

「桜の家に泊まったんですけどね。桜が一人で寝るのは怖いからって。
桜の布団で一緒に寝たんですけど…結局朝まで怖くって寝付けなかったんですよね…
自分はそこそこ眠れたんですけど」

 美樹は湯のみを口につけ、一口すするとまた言葉を続ける。

「…寝不足の上に朝からそんな全力疾走…。体調を崩すわけか。
しかし、奇遇。私も寝不足。…デッキの調整してたらすっかり遅くなって。」

「大丈夫ですか?」

「…まあ、授業中にこっそり寝てたから今は…。だが、夜更かしはやっぱりやめた方が良い。」

 そんな感じの他愛もない会話してると、突然ドアが勢い良く開いた。
「たのもーってあれ?こっちじゃねーな」
 隣の理科実験室の。

「あらためてたのもーっ!!」
 引き戸を開けて入って来たのは美樹達と同じ2年の男子生徒。高校生にも関わらず、
渋いオジサンのような雰囲気をしている。
名前は姿銀三郎(すがた ぎんさぶろう)というのだが、通称

「…赤い人って呼ばれている」
「言うな!!」

「で、その赤き彗星の先輩がどんな用事ですか?」
 とりあえずノリについていけてない朔夜は相手の用件を尋ねる。

「彗星は余計…いやいや。ちょっと、タッグデュエルを申し込みに来たんだが。」

「…タッグデュエル?」
 話を聞く所によると、今度タッグ専門の大会があるので、その調整をしたいのだそうだ。
ルールはというと、

自分&見方VS相手A&相手Bの場合で考えた場合、
・墓地、フィールド、除外カード、ライフポイントは味方同士で共有。手札、デッキ、融合デッキは別。
(手札コスト、デッキからカードを選ぶ場合も自分のものから)
・ターンは自分たちが先攻の場合、「自分→相手A→見方→相手B」と巡る。
尚、先攻1ターン目は攻撃はできない。
・非ターンプレイヤー(相手プレイヤー)は直前のターンにターンプレイヤーであった者とする。
自分のターンが終了した場合でも、次の見方のターンが回ってくるまでは場にいなければならない。
・デッキや手札にカードが戻る場合は、その時のプレイヤーのデッキ、手札に戻す。
相手Aのカードでも相手Bが場に立っている場合は相手Bのデッキ、手札に戻る。

 多少表現がややこしいが、タッグフォース等のゲームのルールと同じである。

「タッグですか…自分はやった事ないですね」
「…前に撫子と組んで以来…だな。ああ、撫子は今用事があるとかで職員室に行っている」

 少し話し、結局朔夜と美樹とでタッグの対戦をする事なった。
「あれ?そう言えば、彗星先輩のタッグパートナーは?」

 朔夜がその質問を切り出すと、廊下からすすり泣くかの様な声が聞こえて来た。
「最初からいたよぉ〜。ボクいつまでたっても会話に参加できな…」

 この三沢…もとい影の薄い人は東屋銅五郎(あずまや どうごろう)。
普段はござる口調で青い人と呼ばれているらしいが、美樹は全く知らなかったそうだ。
「拙者の紹介これだけでご…」


「ま、まあ、とにかくデュエルだ!行くぞ!」

「「デュエル!!」」

朔夜&美樹 LP8000
銀三郎&銅五郎 LP8000

 コイントスの結果、ターン順は銅五郎→美樹→銀三郎→朔夜の順となり、
四人はそれぞれ手札五枚を構えた。
「拙者の先攻!ドロー!
まずはモンスターを1体セットし、カードを1枚伏せてターン終了でござる。」
 「ござる」口調ですっかり元気になった銅五郎の場に2枚のカードが出現する。

 続いて美樹のターン。
「…ドロー。ガガギゴを召喚し、守備モンスターに攻撃する」
美樹の場に出現したガガギゴは、ギイイとうなり声をあげると相手の守備モンスターを切り裂く。
「だが、拙者がセットしておいた悪魂邪苦止の効果が発動するでござる!」

悪魂邪苦止(おたまじゃくし) 水 ☆1 水族 ATK0 DEF0
自分フィールド上に存在するこのカードが戦闘で破壊され墓地へ送られたとき、
自分のデッキから「悪魂邪苦止」を手札に加える事ができる。その後デッキをシャッフルする。

 赤と黒の少々きつい色合いのオタマのカード2枚がデッキから手札に移り、デッキがシャッフルされる。
美樹はメインフェイズ2でカードを2枚伏せるとそのままターン終了を宣言した。

 そのまま、相手の赤い人のターンになる。
「ではオレのターンだ。ドロー。」
「オレは銅五郎が伏せていたリバースカード『エンジェル・リフト』を発動!
墓地から銅五郎の悪魂邪苦止を特殊召喚!」

エンジェル・リフト 永続罠
自分の墓地に存在するレベル2以下のモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。
このカードがフィールドに存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターがフィールド上から離れた時このカードを破壊する。

「さらにバトン・グレネードを使わせてもらう!」

バトン・グレネード 通常魔法
自分フィールド上の攻撃表示モンスター1体を選択し、選択したモンスターを
戦闘による破壊扱いで破壊する。

 フィールド上に黒いオタマが蘇り、すぐに手投げ爆弾で爆破された。
「悪魂邪苦止よ…お前の犠牲を決して無駄にはしないぞ…。
オレは今破壊された悪魂邪苦止の効果を使い、デッキから「悪魂邪苦止」を3枚手札に加える!」

 銀三郎はデッキから3枚の悪魂邪苦止を取り出して見せる。
銅五郎、銀三郎はどちらともデッキに悪魂邪苦止を3枚ずつ入れており、
銀三郎(赤い人)のデッキにはまだ3枚入っているので、そのまま手札に加わる。

「…悪魂邪苦止を手札に加える枚数に制限はない。タッグで二人が同名のカードを3枚ずつデッキに入れ、名称だけの指定を利用したコンボか」

「フ…この程度で驚いてもらっては困るでござるよ。
拙者と銀三郎はタッグで強力になるカエル系コンボを搭載したタッグチーム!
強力なコンボはまだまだ残っているでござる!」

「そしてこのタッグ戦術こそ名付けて…
『かえるぴょこぴょこみぴょこぴょこ!あわせてぴょこぴょこむぴょこぴょこ』戦法!」

 一息で言い切るには結構練習しなければできないネーミング。
ちなみにこの名称の由来は『お互いのデッキにカエルを3体ずつ入れ、タッグで合計6体になるから』
ということから来ている。

「…ぶっ」

「あ、あの、すいません。ちょっとまってくれませんか?」
「なんだ?言っておくが、いまさら『待った』はなしだぞ。デュエリストの戦いはデッキを組む時から既に始まっているのだからな。」
 赤い人は何やらカッコイイ台詞で朔夜に返す。

「あの、そうでなくて。美樹さんがひとりで爆笑してるんですけど…ほらあれ」

 朔夜が指差した先では美樹は床の上でおなかを抱えて笑っている。
かえるぴょこぴょこ…がそうとう面白かったようで、銀三郎のカッコイイ台詞は全く聞いていない。

 仕方ないので美樹の笑いが収まるまで一旦デュエルを中断することにした。


五分後
「ええい、オレは手札を1枚伏せ手札抹殺を発動。オレは手札を7枚捨て、デッキから7枚引く!」
美樹は手札3枚を捨て、捨てた枚数分ドローする。

「オレは悪魔ガエルを攻撃表示で召喚!」

悪魔ガエル(あまがえる) 水 ☆3 水族 ATK1200 DEF800
このカードの攻撃力は、自分の墓地に存在する「悪魂邪苦止」の枚数×300ポイントアップする。

「墓地の悪魂邪苦止の数は4体。よって悪魔ガエルの攻撃力は2400となる!
ガガギゴに攻撃だ!」
 悪魔ガエルは口から水鉄砲を飛ばして攻撃して来た。

「…ダメージ=レプトル発動。」

美樹&朔夜LP8000→7350


「…ダメージ550ポイントをモンスターに変換し、ギゴバイトを守備で特殊召喚。
…200ポイントオーバーか。」
  攻撃力の差550ポイントがライフから引かれガガギゴは破壊されたものの
美樹はモンスターを残し銀三郎はターンを終わる。

「えっと、ドロー…あれ?」
 朔夜はドローしたカードを見て「?」マークを浮かべる。
ドローしたカードは自分がデッキに入れた覚えのない地属性のモンスターカードだった。
(それはともかく、あの悪魔ガエルを倒せるカードはないか。)
「生還の宝札を発動!それからモンスターとカードを1枚ずつセット。ターン終了します。」

美樹&朔夜LP7350
手札:3枚 3枚
フィールド
モンスター:セットモンスター1体 ギゴバイト(守備)
魔法・罠:セットカード2枚 ダメージ=レプトル 生還の宝札

銀&銅LP8000
手札:5枚 6枚
フィールド
モンスター:悪魔ガエル(ATK2400)
魔法・罠:セットカード1枚

 一巡目から赤と青のカエルタッグが有利にデュエルを進める。

二順目。銅五郎のターン。
「ドロー!拙者はグラスファントムを召喚!そして召喚成功時に、連鎖破壊を発動でござる!」

グラスファントム 水 ☆3 植物族 ATK1000 DEF1000
このカードの攻撃力は自分の墓地に存在する
「グラスファントム」の枚数×500ポイントアップする。

連鎖破壊(チェーン・デストラクション) 通常罠
攻撃力2000以下のモンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚されたら発動する事ができる。
そのモンスターのコントローラーの手札とデッキから同名カードを全て破壊する。
その後デッキをシャッフルする。

 銅五郎はデッキから2枚のグラスファントムを墓地に送る。
グラスファントムとは…蓮だろうか。よくわからないが見た目は植物のモンスターだ。

「グラスファントムの永続効果で攻撃力増加でござる!
墓地のグラスファントムは今の2体と、先ほどの手札抹殺で墓地に置かれた1体!」

グラスファントム
ATK1000→2500

(墓地が共有される事を利用してのコンボか。他のカードでも応用ができそう。
神竜エクセリオンとか、チェインスラッシャーとか…封魔の伝承者とかも)

 相手の戦術を観察する朔夜。天然の様で結構しっかりしている。

「さらに拙者は手札断殺を発動!」

手札断殺 速攻魔法
お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする。

「拙者は悪魂邪苦止2枚を墓地に送り、2枚ドローでござる」
 墓地の悪魂邪苦止は6枚になり、悪魔ガエルの攻撃力は3000になる。
朔夜も手札を2枚墓地に送り、2枚引く。

「これで拙者の手札は5枚でござる。では拙者の…あ、あれ?」
 銅五郎のターンはバトルフェイズやメインフェイズをすっ飛ばし、いつの間にやら終わっていた。
「あ、今の手札断殺で捨てたこのカードの効果だね。」

ネコマネキング 地 ☆1 獣族 ATK0 DEF0
相手ターンにこのカードが相手の魔法・罠・モンスターの効果によって墓地に送られた時、
相手ターンを終了する。

「断殺は『墓地に送る効果』、ネコマネキングは発動したのでござったか。迂闊…」
 銅五郎は何もできずに終了を宣言した。

「…私のターン。ドロー。魔法カード『スネーク・レイン』発動!」

スネーク・レイン 通常魔法
手札を1枚捨てて発動する。
自分のデッキから爬虫類族モンスター4体を選択し、墓地に送る。

 美樹は手札を1枚墓地に送り、デッキから「ゴギガ・ガガギゴ」2体
「ギガ・ガガギゴ」「サイレントアビス」を1体ずつ墓地に送る。

(…デッキは残り25枚。手札は2枚か。)
「…手札からナーガを攻撃表示で召喚し、カードを1枚セット。そして朔夜がセットしたモンスター『メタモルポッド』を反転召喚。」

 メタポの効果によって相手の銅五郎は5枚の手札を捨て、美樹と銅五郎は5枚ずつドローする。

「…ギゴバイトを攻撃表示に変更し、魔法カード『思い出のブランコ』発動!」

思い出のブランコ 通常魔法
自分の墓地に存在する通常モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。
この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターンのエンドフェイズ時に破壊される。

 思い出とともにゴギガ・ガガギゴが蘇る。『オレは力が欲しかった…そう力さえ有れば…』
…彼の過去に何があったのかは聞かない方がいいだろう。

「…生還の宝札の効果で1枚ドローする。
攻撃力はカエルは3000か…なら、ゴギガ・ガガギゴでグラスファントムに攻撃!」

銀三郎&銅五郎LP8000→7550

 ガガギゴは植物のモンスターを弾き飛ばし、相手にダメージを与える。
美樹は『チャンス!』とばかりに朔夜のセットカードを開き、攻撃を仕掛ける。

「…追撃の速攻魔法『エネミーコントローラー』発動!ゴギガ・ガガギゴを生け贄に捧げ、
コマンド、←、→、A、Bを入力し、悪魔ガエルのコントロールを得る!」

エネミーコントローラー 速攻魔法
次の効果から1つを選択して発動する。
●相手フィールド上の表側表示モンスター1体の表示形式を変更する。
●自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げて発動する。
相手フィールド上の表側表示モンスター1体を選択する。
発動ターンのエンドフェイズまで、選択したカードのコントロールを得る。

 カエルに奇妙なコントローラーが接続され、美樹がコマンドを入力すると『悪魔ガエル』は美樹の場に移動し、攻撃態勢となる。
「…バトルフェイズ中である為、悪魔ガエルで追加の直接攻撃!」

銀三郎&銅五郎LP7550→6350

 コントローラーの墓地の『悪魂邪苦止』の数だけパワーアップするため、
悪魔ガエルの攻撃力は1200に下がっている。
「…攻撃力下がってたのは知ってた。さらにギゴバイトとナーガとメタポの直接攻撃!」

銀三郎&堂五郎LP6350→6000→4600→3900

「……よし、カードをもう一枚伏せてターン終了。」
 美樹の場には3枚のセットカードが並ぶ。
そしてエンド宣言により、悪魔ガエルは相手の場に戻り攻撃力も3000となる。

「オレのターン。ドローフェイズに速攻魔法『手札断殺』!
手札の黄泉ガエルとグラスファントムを墓地に送り2枚引く。
そしてスタンバイフェイズにたった今捨てた黄泉ガエルの効果発動!」

黄泉ガエル 水 ☆1 水族 ATK100 DEF100
自分のスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在し、
自分フィールド上に魔法・罠カードが存在しない場合、このカードを
自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。
この効果は自分フィールド上に「黄泉ガエル」が表側表示で存在する場合は発動できない。

 フィールド上に小さな黄色いカエルがふわりと舞い戻る。
攻撃力こそ貧弱だがその名のごとく何度でも蘇る力を持ち、その力故にデッキに1枚までしか入れられない。

『ならテキスト後半の発動制限は意味ないだろ』とか思っちゃいけないよ?

「墓地には先ほどのメタモルポッドの効果でもう1枚、拙者の黄泉ガエルが墓地に置かれているで
ござるが、この制限により蘇生はできないでござる」

「オレは黄泉ガエルを生け贄にデスガエル召喚!」

デスガエル 水 ☆5 水族 ATK1900 DEF0
このカードの生け贄召喚に成功した時、自分の墓地に存在する
「悪魂邪苦止」の枚数分まで、「デスガエル」を手札またはデッキから特殊召喚する事ができる。

「墓地には6体もの「悪魂邪苦止」がいるため、オレはこの効果により、デッキから2体のデスガエルを特殊召喚!
さらにカエルデッキ最強の破壊兵器〜『死の合唱』〜発動!」

死の合唱(デス・コーラス) 通常魔法
自分フィールド上に「デスガエル」3体が表側表示で存在するときに発動する事ができる。
相手フィ−ルド上に存在する全てのカードを破壊する。

 フィールド上に三匹の緑色のカエル達が出現し、ゲロゲロゲロ…と合唱を始める。
すると辺り一面にオタマジャクシ…じゃなくて音符が出現し、朔夜達のフィールドに移ってゆく。

「…リバースカード発動。強欲な瓶」

強欲な瓶 通常罠
自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 美樹が素早く瓶の効果を使うと、オタマジャクシ達は一気に爆発。
ナーガ、ギゴバイト、メタモルポッド、ダメージ=レプトル、生還の宝札、セットされていた
痛恨の呪術、さっき美樹が伏せた聖なるバリア-ミラーフォース-
強欲な瓶の合計8枚を吹き飛ばした。

「…むう。」
「やはり攻撃を封じる罠を張っていたか。さあ行くぞ!まずはデスガエル3体で直接攻撃!」
 緑のカエル達が一斉に飛びかかってゆき、美樹にダメージを与える。

美樹&朔夜LP7350→5450→3550→1650

「とどめ!悪魔ガエルの攻撃!」
 悪魔ガエルはピョーンと美樹に向かう。しかし、

「…ネクロガードナー!効果発動!」
ネクロ・ガードナー 闇 ☆3 戦士族 ATK600 DEF1300
自分の墓地に存在するこのカードをゲームから除外して発動する。
相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする。

 朔夜の墓地から戦士の残像が飛び出し、悪魔ガエルはそれに攻撃を阻まれてしまう。
「さっきの手札断殺の効果でネコマネキングと一緒に墓地に置いておいたんです!」
 朔夜は小さくガッツポーズをする。

「…なかなかいい。朔夜。」
 それに対し、左手の親指を立てて「ナイス!」と返す美樹。

「仕方ない。オレはカードを1枚伏せ、ターン終了だ」

「ドロー。」
 朔夜のターンに移る。朔夜の手札は現在4枚。
「モンスターをセット。カードを1枚伏せてターン終了します」

美樹&朔夜LP1650
手札5枚&2枚
フィールド
モンスター:裏守備表示1体
魔法・罠:セットカード1枚

銀三郎&銅五郎LP3900
手札:2枚&5枚
フィールド
モンスター:悪魔ガエル(ATK3000) デスガエル×3
魔法・罠:セットカード1枚

 お互いのライフが大きく減った二巡目も終わり、三巡目の銅五郎のターン。
「拙者のターン!決着をつけるでござる!悪魔ガエルで守備モンスターに攻撃でござる!」

「よし…このタイミングで発動!『闇よりの罠』!」

闇よりの罠 通常罠
自分が3000ライフポイント以下の時、1000ライフポイントを支払う事で発動する。
自分の墓地に存在する通常罠カード1枚を選択する。このカードの効果は、
その通常罠カードの効果と同じになる。
その後、選択した通常罠カードをゲームから除外する。

美樹&朔夜LP1650→650

 暗き墓穴から罠カードが現れ、その姿を表してゆく。
「選択するのは『聖なるバリア-ミラーフォース-』!」

聖なるバリアーミラーフォース- 通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
相手フィールド上の攻撃表示モンスターを全て破壊する。

 悪魔ガエルは聖なる光の壁に行く手を阻まれ、はねカエル。
さらに、バリアからエネルギーが放出し、全てのカエルを蹴散らしていった。

「そ、そんな。カ…カエルモンスターが、ぜ、ぜんめつめつめつめつ…でござると!?」

  愕然とする銅五郎。思っても見なかった逆転。しかし、すぐさま冷静になり体勢を立て直す。
「な、ならばメインフェイズ2で戦力を強化するでござる。魔法カード『イキカエル』!」

イキカエル 通常魔法
手札の水族モンスター1体を捨てて発動する。
自分の墓地から水族モンスター1体を特殊召喚する。

 銅五郎はスター・ボーイを捨て、墓地から悪魂邪苦止を攻撃表示で蘇生する。
「続いて未来融合!デッキからデスガエル3体を墓地に送って、2ターン後の未来に
ガエルサンデスを特殊召喚するでござる。」

未来融合ーフューチャー・フュージョン 永続魔法
自分のデッキから融合モンスターカードによって決められたモンスターを
墓地へ送り、融合デッキから融合モンスター1体を選択する。発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時に選択した融合モンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。(この特殊召喚は融合召喚扱いとする。)
このカードがフィ−ルド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。

「さらに手札から魔法カード「貪欲な壺」」
貪欲な壺 通常魔法
自分の墓地からモンスターカードを5枚選択し、デッキに加えてシャッフルする。
その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。

「墓地から『悪魂邪苦止』5枚をデッキに戻し、2枚引く。続いてバトン・グレネードを発動!」
 再び悪魂邪苦止が手投炸裂弾によって破壊される。

「お主の犠牲は無駄にしないでござる!悪魂邪苦止の戦闘で破壊された時の効果により、
デッキから悪魂邪苦止5枚を手札に加える!」

銅五郎手札:3枚→8枚

「魔法石の採掘!手札の悪魂邪苦止を2枚捨て、手札断殺を加え、発動!
悪魂邪苦止2枚を捨て、2枚引く!」

魔法石の採掘 通常魔法
手札を2枚捨てて発動する。
自分の墓地に存在する魔法カードを1枚手札に加える。

銅五郎手札:5枚

「モンスターを守備表示で出して、ターンを終わるでござる…はあ…しゃべりすぎて疲れた…」
 メインフェイズ2で実に6枚もの魔法を使用した銅五郎。でも手札は4枚と結構残っている。
 でも残念ながら彼に次のターンは回ってこない。

「…では私のターン。ドロー………!」

「…朔夜のモンスターを生け贄に捧げ、ギガ・ガガギゴを召喚。守備モンスターに攻撃。」

 守備モンスターは白黒半々のカエル。イレカエル。

イレカエル 水 ☆1 水族 ATK100 DEF2000
自分フィールド上に存在するモンスター1体を生け贄に捧げる。
自分のデッキから「ガエル」と名のついたモンスター1体を選択し、自分フィールド上に
特殊召喚する。このカードがフィールド上に存在する限り、「ガエル」と名のついた
モンスターは戦闘によって破壊されない。

 この戦闘では特に何も起こらなかった。
「…(次のターンにおそらく仕掛けてくるはず…ならば)カードを5枚セット。ターンエンド。」
 ありったけのカードを伏せて美樹はターンを終えた。

「ならば、オレのターン!ドローだ!
オレも貪欲な壺を発動!墓地からデスガエル5枚をデッキに加え、
2枚引く! よし、デスガエルを引いた!」

「さらに銅五郎のエンジェル・リフトを発動!墓地からイレカエルを蘇生し、
イレカエルを生け贄にしてもっかいデスガエルを生け贄召喚!」

 緑のカエルは再びその姿を現し、仲間を呼ぶかのように鳴き始める。
「デスガエルの効果により、墓地の悪魂邪苦止の数までデッキからデスガエルを召喚できる!
墓地の悪魂邪苦止は5体。オレのデッキには4体のデスガエルがいる!
オレはデッキから4体のデスガエルを特殊召喚だ!」

「…させない。奈落の落とし穴!同じタイミングで特殊召喚されたカエルを全て除外!」
「甘いわ!伏せカード発動!次元融合!」

次元融合 通常魔法
2000ライフポイントを払う。
お互いに除外されたモンスターをそれぞれのフィールド上に可能な限り特殊召喚する。

銀三郎&銅五郎LP3900→1900

 4匹のデスガエルおよびネクロガードナーは異次元の穴に落るも
すぐに次元の狭間をこえて戻り、フィールド上には5体のカエルが集結する。
マーチを唄いながら。

いざ進め〜ポコペン侵略せ〜よ〜♪
(中略)
〜ぼつかれさん!!

「……!?」
 しかし色がちょっとおかしい。緑、黒、赤、黄色、桃色とどこかの戦隊ヒーローの様な
カラーリングでとてもカラフルだ。
でも青はいない。

「なんだこのマーチは…まあいいか、魔法カード地砕き!
最も守備力の高いギガ・ガガギゴを破壊する!」

地砕き 通常魔法
相手フィールド上の守備力が1番高い表側表示モンスター1体を破壊する。

「…な、なら和睦の使者を発動。…このターン戦闘で私はダメージを受けなくなる。」

 銀三郎は心の中で舌打ちした。
このターン、カエルの一斉攻撃によってこのターンで勝てると思っていたのだ。
「むう…ならば残る1枚の手札を伏せ、ターンを終える!」

 銀三郎が伏せたカードは『フロッグ・バリア』。
フロッグ・バリア 通常罠
自分フィールド上に表側表示で存在する「ガエル」と名のついたモンスターが攻撃対象に
選択された時に発動する事ができる。
相手フィールド上に存在する攻撃表示モンスターを全て破壊する。

(ふっ…防御も完璧。次のターンで銅五郎が攻撃できればこちらの勝ちだな)
 銀三郎(赤い人)は勝利を確信する。

 しかし残念ながら、このデュエルのラストターン。朔夜のターンとなる。
「えっと、私のターン。ドロー!」
ドローカード:皆既日蝕の書

 朔夜は今の手札3枚を見る。
朔夜の手札:皆既日蝕の書、二重魔法、暗黒界の雷
そして今現在朔夜のフィールドに伏せられている3枚のカードは
早すぎた埋葬、非常食、ハリケーン

二重魔法(ダブルマジック) 通常魔法
手札の魔法カードを1枚捨てて発動する。
相手の墓地から魔法カード1枚を選択し、自分のカードとして使用する。

皆既日蝕の書 速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て裏側守備表示にする。
このターンのエンドフェイズ時に相手フィールド上に裏側表示で存在するモンスターを
全て表側守備表示にし、その枚数分だけ相手はデッキからカードをドローする。

非常食 速攻魔法
このカードを除く自分フィールド上の魔法または罠カードを墓地へ送る。
墓地へ送ったカード1枚につき、自分は1000ライフポイント回復する。

(使える魔法カードは6枚。まるで詰めデュエルの様な…まてよ)
 朔夜は手札のカード、墓地のカードを確認する。
そして小さくガッツポーズをした。

(行ける…!)
「魔法カード!皆既日蝕の書!さらにチェーンして非常食!
皆既日蝕の書を墓地に送り、自分は1000ポイントのライフを回復し、
全てのモンスターを裏守備に!」

朔夜&美樹LP650→1650
 五体のカエルとネクロガードナーが裏側表示に戻り、朔夜たちのライフカウンターも変動する。
「何!?攻撃する気か?」
 朔夜がモンスターを守備表示に変更したのを見て銀三郎が言う。

「いえ、まだです。伏せられた魔法カード『早すぎた埋葬』でサイレントアビスを蘇生!」
朔夜&美樹LP1650→850

「続いて、ハリケーン!」
 朔夜の手札に早すぎた埋葬、銀三郎の手札に未来融合とセットされたフロッグ・バリアがもどる。
「そして今戻った早すぎた埋葬を発動!今度はゴギガ・ガガギゴを蘇生します!」
朔夜&美樹LP850→50

「さらに!手札の『暗黒界の雷』をコストに『二重魔法』!」

「俺たちの墓地の魔法を? ま、まさか…」
「はい!二重魔法の効果でコピーするのはあなたの墓地にある『バトン・グレネード』!」

バトン・グレネード 通常魔法
自分フィールド上の攻撃表示モンスター1体を選択し、選択したモンスターを
戦闘による破壊扱いで破壊する。

「このカードでサイレントアビスを破壊します!戦闘による破壊扱いなのでこの効果は有効!
あなたの命を使わせていただきます!テイル・オブ・ジ・アビス!!!」
 サイレントアビスは爆発したかと思うとフィールド上に水の様に広がり、黒い池を作る。
ゴギガ・ガガギゴは平然としているが、裏守備になったカエル達とネクロガードナー
はずぶずぶと沈んでいき、破壊された。

そして、フィールド上にはゴギガ・ガガギゴと、彼の命をつなぐ早すぎた埋葬のみが残される。

「サイレントアビスの効果では『表側表示の水属性』のモンスターしか生き残れない。
つまり、水属性でも裏守備なら破壊できます!」
「そして私のバトルフェイズ!ゴギガ・ガガギゴで直接攻撃っ!」

銀三郎&銅五郎LP1900→0

「ふう。よし…勝てた!」
 朔夜は額の汗を拭い、一息つくとそのまま感想戦を行う。

「…最後の次元融合はオーバーキル。余計な発動だったが、
タッグの特徴を生かしたカエルコンボは凄いと思う」
「ええ。自分もそう思います。あの攻撃力の高さや手札確保は凄いですね」
「そ、そうか?オレとしてはまだ魔法、罠への対処がしにくいと思うんだが」
「…ならアビスソう、失礼。『アビスソルジャー』辺りを」
「それなら、『サンダーブレイク』もいいと思いますね。割と汎用性高いですよあれ」
「除外対策としては『異次元よりの埋葬』か『王宮の鉄壁』はいかがでござ…」
「…それはいらないな。次元融合で十分」

 感想戦は朔夜達にとっての習慣であり、デュエリスト同士の意見を交換し合える場でもある。
こうした場は技術の向上や新しい戦術の発見にも一役買っている。
「なるほどな。ではもう少し調整を施し、再戦といくか」

 その後も何度か上記の様な対戦を行い、銀三郎らは満足して帰っていった。

「すいませーん。あっ、となりか…あの玄関ってどちらでしょうか?」
 すると丁度入れ違いに、一人の女の子が入って来た。この高校の制服を着ている。
朔夜とさほど変わらない身長に、栗色のややクセのある長い髪が目立つ。
加えて大きめの瞳と、小動物系のかわいさが見え隠れする…

「ほ、方向音痴の…ええと、玖蘭…光ちゃん?」

「え、ええと、もしかして黒髪ウィンたん!?」

 そして戸惑う二人の声が重なった。
「「な ん で こ ん な 所 に !!??」」



〜今日の最強カード!!〜

玖蘭「今日の最強カードは『バトン・グレネード』!!」

バトン・グレネード 通常魔法
自分フィールド上の攻撃表示モンスター1体を選択し、選択したモンスターを
戦闘による破壊扱いで破壊する。

玖蘭「そのまま使うと2枚の損。でも戦闘で破壊されると効果を発揮する
カードとの組み合わせで…」

美樹「…それ以前にあなたは誰?」

玖蘭「それは次回以降のお楽しみ!
最後に、墓地へ行くモンスターへの敬意を忘れない様にね!」





おまけ(※分かる人のみお楽しみいただければ幸いです)

「グフ、グフ…グフフフフ…我が輩達もついにデュエル小説に進出であります。
あとは我が輩達の華麗なるデュエルで読者を魅了すればこの小説の侵略も!」

「ぐんそーさん、ぐんそーさん!!」

「ん?どしたの?まさか次回から我が輩が主役でありますか?」

「ク〜クックック…そんなわけね〜だろ〜?常識的にいってよぉ〜
今回で俺たちの出番終了だぜク〜クックッ!!」

「ええ!?ちょっとぉー!!出番こんだけー?」

おまけ終わり




第11章 朔夜と奇妙な再会 その1

「え、ええと…アカデミアの生徒じゃなかったの?」
 困惑しながらも、光に聞いてみる朔夜。

「えーと、その…あ、禁則事項です」
 それをネタで返す光。元ネタを知っていたならウケただろうけども、あいにく朔夜は一般人。

「禁則事項ってなんですか?」

 思いっきり滑った上、彼女を余計に困惑させてしまった。

「…私が仕切ってもいいか?空気が痛い」
 流石に見ていられなかったらしく、美樹が仕切って双方の話を簡潔にまとめた。

 朔夜側のアカデミアにいた理由
1,春日撫子という先輩がアカデミアで働いている人の関係者。
2,そのコネでアカデミアの学園祭を見学できる事になる。
3,そこで昨日の休みに、朔夜たちは見学に行っていた。

 嘘はない。学園祭自体は本当に開催されていて、招かれていた事も事実。
しかし、撫子がそれを朔夜らに教えず、ドッキリに利用した事は黙っている事にした。

 玖蘭光がアカデミアにいて、今日は学校にいる理由
1,玖蘭光はインダストリアルイリュージョン社(略称はI2社)と個人的なつながりがある。
2,謎の組織がデュエルアカデミアに封印されている三幻魔というカードを狙っているらしい。
3,その計画を阻止する為に彼女はI2社から依頼された任務でアカデミアに潜入していた。
4,でも普段は一般の女子学生なので学校に通っている。

「なるほど〜、そう言う事だったんですか。」
 ホワイトボードにまとめられた説明を見て、朔夜は納得する。
謎の組織等、指摘するべき所も多いと思うのだが。

「私もびっくりしましたよ。作戦が…ほぉおあ!!」
 一方光は、納得したか、と思ったらいきなり素っ頓狂な声をあげ、驚く。

「さ、作戦が…アカデミアの生徒さんにカードを渡す計画がっ…だ、台無しにぃ!!」

 I2社の作戦概要
1,現状、情報不足なので光の上司たちは謎の組織についての情報が欲しい。
2,ならばアカデミアに乗り込んで来た敵を取り押さえよう。
3,でも下手に動くと警戒されてしまう。
4,ならば倒した後に相手をふんじばってしまえばいい。
5,万一ものすごく強い相手が来た事を考え、密かに生徒のデッキを強化する。

 光の任務
6,玖蘭光はアカデミアに潜入。生徒と接触し、その生徒の力量を判断。
7,組織と戦える力量があると判断される生徒には強化に有効なカードを渡す。

「な、なるほど…それで私にカードをくれたんですか。」
「ええ、まあ。ウィンたんレベルなら大丈夫だと思ったので、
暗黒界との相性が良い皆既日蝕の書やネコマネクング等を。」

 作戦内容も理路整然としており、彼女の話は本当のようだ。

つまり、
「部外者の朔夜は意図せずして玖蘭光の作戦妨害をしてしまった」
という事である。
嗚呼、何たる不幸。

 「あ、その、大変申し訳有りません…大事な作戦を妨害してしまって。
あっ、カードはお返しします。」

「そっ、そんなお気になさらず。こちらも作戦活動中に確認してれば…
あー、カードは道案内のお礼ですから…」

「えっと、でもやっぱりなにかお手伝いします。カードのお礼って事で。」

「ええと、いいんですか?」

 と、玖蘭光は朔夜と美樹を見比べ、すこしの間じっ、と見つめた後、いきなり二人を抱きしめた。
ガシィッというよりはひしっという効果音。

「ありがとうございますっ!」

「あ、あのちょっと…」
「ありがとうございますっ!ありがとうございますっ!」
「いや、う、後ろ見てよ、後ろ!」
「え?」

 ズゴゴゴゴゴ…


 入り口には、何やらすさまじい怒りのオーラをまとった撫子さんが、満面の笑みを浮かべた
凄まじい怒りの形相で仁王立ちしておりました。

「美 樹 に な に を し て お い で で ?」

 どうやら光さんは産まれて初めての修羅場に
遭遇できてしまったようです。


「こっ、これはっ…そのっ…」

「…スキンシップの抱擁だから。撫子、落ちついて」

「あら、そうなの?それは失礼。」
 スキンシップで抱擁する事は日本ではあまりないが海外、
とくにヨーロッパ系の国では結構普通である。
とはいえ、主に親しい間柄や友人同士ではあるのだが。


 撫子にも事情等を説明すると撫子は多少驚きこそ
したものの、最初の険悪そうな雰囲気からは信じられない程
すっかり打ち解けてしまった。

「ごめんなさいね、怖がらせてしまって。
帰って来てみたらいきなりハグしてる現場を目撃しちゃって…」
「いえいえ…ところで、アカデミアでデーモンテイマーの格好をしてらっしゃいませんでした?」

「ああ、そう。あれ私!ちなみに、水霊使いのコスプレもしたわね」
「おお!すごい!っと言う事はこちらの浅山さんがアウスを?」

「Yes! 霊使いそろい踏み!あ、写真もケータイにあるから。ほらこれ」
「Guret!! Wonderful!!スバラシイ!!
でもこれならダルクさんの方が似合うと…」
「…うるさい」

 どうもコスプレイヤーの撫子とオタク気質の光はかなり波長があうらしい。
美樹も会話に加わり出し、話題は途中からどんどんアニメや
ゲームの濃ぉ〜い話になって、
一般人の朔夜にはさっぱり分からないような単語が続出しだした。

(コスプレの時のネギといい、やはりディープすぎる…。
東方とかバルサミコ酢って…何?)

 一時間ほど経って、復活した桜がやって来た頃にようやくお互いの血液型や出身の話になった。

「へえー。それじゃあ、撫子さんはフランス人の血を引いてるんですね。
私はイギリス系のクオーターなんです。この赤い髪も遺伝で、1年くらい前まではイギリスに…」
「イギリスかあー。私と美樹は倫敦にしか行った事ないんだけど…」

「海外旅行か…行ってみたいなあ。」
「うちは国内旅行ですら危ういけどね。横須賀の米軍キャンプは見たことあるけど」

 スキンシップとしての抱擁に二人とも慣れていたのは、
双方ともヨーロッパに言った事があるかららしい。
 そして夕方になり、下校時刻になった頃。

「じゃあ、これから歓迎会も兼ねてみんなでカラオケ行かない?」

 ………あれ?

「え?バイトとか大丈夫なんですか?」
「…今日はシフトが入ってないから」
「私、駅前のカラオケボックスのなら、割引券持ってるけど?」
「じゃっ、そこにしましょう!」
「ありがとうございます!」
「いや、騒ぎたいだけだから。みんな」


 ………ところで、デュエルはしないのだろうか?

「「「「「!!」」」」」

 どうやら全員すっかり忘れていたらしい。

「そういえば、ピケルを使ってましたよね?」
 以前に対戦した朔夜が、戦術を思い出したようだ。

「なら、私としない?昨日はなんか迷惑かけちゃったし」
 すると戦術を聞いた桜が名乗りを挙げた。

「…バーンVS回復か。好カード。」

「O.K!審判は私がやるから、美樹と朔夜は支度お願い。
ああ、ルールは、マスタールールでいいわね?」

「ああ。あの新しいやつね。了解!」
「私も了解です!」

 桜と光はお互いのデッキをディスクにセットし、構える。



超ダメージデッキ使い。アカデミア15人切りの猛者!
大和 桜
VS
可愛らしいピケルたん使い。ライフ20000突破の癒し系!
玖蘭 光

「…って何これ?」
「かっこいいと思いませんか?」
「……………まあいいわ。」


「「デュエル!!」」

 コイントスの結果、先行は光から。

「では、踊る妖精を攻撃表示で召喚し、カードを1枚セット。ターンを終わります。」

踊る妖精ATK1700 DEF1000

「私のターン!」

 桜はドローしたカードを一瞥すると、即座に3枚を手に取る。

「デビルズ・サンクチュアリ発動。メタルデビルトークン召喚!さらに
メタルデビルトークンをレリーズし、エネミーコントローラーの第二効果発動!」

デビルズ・サンクチュアリ 通常魔法
「メタルデビル・トークン」(悪魔族・闇・星1・攻/守0)を
自分フィールド上に1体特殊召喚する。
このトークンは攻撃できない。
「メタルでビル・トークン」の戦闘によって発生する
コントローラーへの戦闘ダメージは代わりに相手プレイヤーが受ける。
自分のスタンバイフェイズ毎に1000ライフポイントを払う。
払わなければ、「メタルデビル・トークン」を破壊する。


エネミーコントローラーの第二効果:
自分のモンスター1体をリリースすることで
相手モンスターのコントロールを得る。

 まずは相手モンスターを奪う桜。
デビルズサンクチュアリを使う事でエネミーコントローラーを
手札コスト1枚のブレインコントロールの様に使う。

「その第二効果で踊る妖精をコントロールを得て、
さらにレリーズ!
炎帝テスタロスをアドバンス召喚!!」

炎帝テスタロス 炎 ☆6 ATK2400 DEF1000
炎族・効果
このカードの生け贄召喚(アドバンス召喚)に成功した時、
相手の手札をランダムに1枚墓地へ捨てる。捨てたカードが
モンスターカードだった場合、相手ライフにそのモンスターの
レベル×100ポイントダメージを与える。


「テスタロスの効果が発動する!誰そ彼(タソガレ)。」

 炎の帝が左手の指を指すと、その指先より小さな炎がゆっくりと放たれ、
命中した光の右端のカードを焼き尽くす。
レベル6のモンスター『マテリアルドラゴン』を焼き尽くした火は
光に軽いダメージを与える。

光LP8000→7400

マテリアルドラゴン 光 ☆6 ATK2400 DEF2000
ドラゴン族・効果
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
ライフポイントにダメージを与える効果は、ライフポイントを
回復する効果になる。
また、「フィールド上のモンスターを破壊する効果」を持つ
魔法・罠・効果モンスターの効果が発動した時、
手札を1枚墓地へ送る事でその発動を無効にし、破壊する。


「続いてテスタロスの直接攻撃。暁(アカツキ)!」

 今度は真っ赤に燃える炎の鳥が帝の右手より放たれた。

光LP7400→5000

桜はそれからカードを2枚伏せ、ターンを終了する。

「では私のターンですね。ドロー!」

「死者蘇生を発動します。私はマテリアルドラゴンを選択!」

「ならチェーンしてリバース罠、火霊術-「紅」を発動!炎帝をレリーズし、
2400ポイントのダメージを与える!」

死者蘇生 通常魔法
自分または相手の墓地からモンスターを1体選択する。
選択したモンスターを自分のフィールド上に特殊召喚する。


火霊術-「紅」 通常罠
自分フィールド上に存在する炎属性モンスター1体を
生け贄に捧げる(リリースする)。
生け贄に捧げたモンスターの元々の攻撃力分の
ダメージを相手ライフに与える。


光LP5000→2600

 チェーン処理により、光にダメージが与えられたのち
光の場に金色に輝くドラゴンが出現した。

「あの、桜。」

「…何?デュエル中の助言はダメだし、人のターンに待ったはかけないもんよ?」
「いやそうじゃなくって、さっきから「リリース」っていうところ
が全部「レリーズ」になってんだけど」

「え?『レリーズ』じゃなくて『リリース』なの?レリーズだと思ってた。」
「英語苦手だもんね桜は。意味はおんなじだからいいけど」


「私はむしろレリーズ推奨ですね(ネタ的な意味で)。
あ、デュエルに戻りますね。さらにシャインエンジェルを召喚!」

シャインエンジェル 光 ☆4 ATK1400 DEF800
天使族・効果
このカードが戦闘によって墓地へ送られた時、
デッキから攻撃力1500以下の光属性モンスター1体を
自分のフィールド上に表側表示で特殊召喚することができる。


 光の場には金色に輝く奇麗なドラゴン、白い翼に白い衣の
天使が降り立つ。

「マテリアルドラゴンで直接攻撃!カタリスト・フレア」
「んじゃ、ディメンションウォール!攻撃を跳ね返す!」

「ほえ?」

玖蘭LP2600→200

「ふお、危ない…ぎりぎりセーフ。
では、シャインエンジェルで直接攻撃します。」

桜LP8000→6600

「カードを1枚セットしてターンを終わりますね。」


「マテリアルドラゴンか、厄介ね…ドロー!」
 桜は手札を確認すると、モンスターを守備表示で出し、
カードを1枚セットしてターンを終了する。

「えーっとでは、ドロー。
白魔導士ピケルたんを攻撃表示で召喚します。」

 彼女のデッキの中でもっとも派手な召喚エフェクトを持ち、
切り札アイコン設定されている彼女の
ウルトラマイフェイバリットモンスター
 それがピケルたん。

「さあ、ここから反撃に転じます!ライフ3桁は逆転フラグ!
マテリアルドラゴンで守備モンスターを攻撃します!
カタリスト・フレア!」

 黄金に輝く竜は裏守備モンスターに攻撃を仕掛ける。

「おっと、魂を削る死霊だから戦闘では破壊されないわよ!」

魂を削る死霊 闇 ☆3 ATK300 DEF200
アンデッド族・効果
このカードは戦闘によっては破壊されない。
魔法・罠・効果モンスターの効果の対象になった時、
このカードを破壊する。このカードが相手プレイヤーへの直接攻撃に
成功した場合、相手はランダムに手札を1枚捨てる。


「うーん。ではターンを…」

「終了する前に死霊ゾーマを発動!」

死霊ゾーマ 永続罠
このカードは発動後モンスターカード(アンデッド族・闇・星4・
攻1800/守500)となり、自分のモンスターカードゾーンに
守備表示で特殊召喚する。
このカードが戦闘で破壊された時、このカードを破壊した
モンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。
(このカードは罠カードとしても扱う)


「ではターン終了です。」

玖蘭 LP200 手札2枚
【モンスターカード】
白魔導士ピケル マテリアルドラゴン シャインエンジェル
【魔法・罠カード】
セットカード2枚

桜 LP6600 手札0枚
【モンスターカード】
魂を削る死霊 死霊ゾーマ 


「私のターン!ドロー!
死霊ゾーマでシャインエンジェルを攻撃!」

光は2番目に伏せておいたリバースカードをめくった。
「罠発動!スピリットバリア!私への戦闘ダメージは0になります!」

スピリットバリア 永続罠
自分フィールド上にモンスターが存在する限り、
このカードのコントローラーへの戦闘ダメージは0になる。


「シャインエンジェルは戦闘で破壊されますが、その効果により
モンスターを呼び出します。ユーフォロイドを召喚!」

ユーフォロイド 光 ☆6 ATK1200 DEF1200
機械族・効果
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
デッキから攻撃力1500以下の機械族モンスター1体を
表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
その後デッキをシャッフルする。

「なんでユーフォロイド?」


「すぐにわかりますよ。私のターン!」
「スタンバイフェイズにピケルたんの効果を発動!
ライフを1200ポイント回復です。」

玖蘭LP200→1400

「魔法カード発動!強制転移!」

 光はユーフォロイド、桜は死霊ゾーマを選択し、入れ替わる。
「さらに、ピケルたんに王女の試練を装備!」

ピケルたん
ATK1200→2000

「ピケルたんでユーフォロイドを攻撃です!」

『聖・魔・導・爆・裂・破!!』


桜LP6600→5800

 ユーフォロイドはレベル6なので王女へ成長する条件は満たされ、
それと同時に効果で後続のモンスターを召喚し、
ピケルの効果の発動を補助する事が可能。

「ユーフォロイドの効果で、フリントロックを特殊召喚です!」

フリントロック 光 ☆4 ATK1500 DEF800
機械族・効果
フィールド上に表側表示の「フリント」が存在する場合、
このカードに装備させる事ができる。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
また、このカードが装備している「フリント」1枚を、
フィールド上に存在する表側表示モンスター1体に装備させる事ができる。
このカードが装備できる「フリント」は1枚まで。
このカードが「フリント」を装備している限り、
このカードは「フリント」の効果を受けず、戦闘によっては破壊されない。


「バトルを終了し、メインフェイズ2に入ります!
レベル6のモンスターを破壊してますから、
ピケルたんは魔法の国の王女様に成長します!」

 異様なまでに派手なエフェクトで、ピケルが王女様に変身する。
どうやらピケルたんのアニメDVD第5巻は本日発売だったようだ。

「これでターン終了します」


 続いて、桜のターン。
「えーっと、まいったわね…戦闘ダメージも効果ダメージもシャットアウトか。」

打つ手がないのか、モンスターを1体セットし、ターン終了する。


「では、私のターンです! スタンバイフェイズにピケルたんの効果発動!
私の場のモンスターは4体なので、3200ポイント回復!」

光LP1400→4600

「メインフェイズに入ります。手札より、魔法カードアームズ・ホ−ルを発動!」

アームズ・ホール 通常魔法
自分のデッキの一番上のカード1枚を墓地へ送り発動する。
自分のデッキまたは墓地から装備魔法カード1枚を手札に加える。
このカードを発動する場合、このターン自分はモンスターを通常召喚
する事はできない。

「デッキトップの…ええと、ライトニングチューンを墓地に送り、
デッキからフリントを手札に加えます。
あなたの魂を削る死霊に装備です!」

フリント 装備魔法
このカードの装備モンスターは表示形式の変更と
攻撃宣言ができなくなり、攻撃力が300ポイントダウンする。
装備モンスターが破壊された場合、
フィールド上のモンスターを1体選択し、
そのモンスターにこのカードを装備する。


「装備カードはモンスター1体を対象にするから、
死霊は破壊される…!」

「そして、装備モンスターが破壊されたことにより、
『フリント』は私の場のフリントロックに装備。
マテリアルドラゴンで守備モンスターを攻撃!」

「おっと、守備モンスターは素早いモモンガだからね!ライフ回復!」

桜LP6600→7600

素早いモモンガ 地 ☆2 ATK1000 DEF100
獣族・効果
このカードが戦闘によって墓地へ送られた時、
自分は1000ライフポイント回復する。
さらにデッキから、「素早いモモンガ」を
フィールド上に裏側守備表示で特殊召喚する事ができる。
その後デッキをシャッフルする。


「さらに効果により、デッキから2体のモモンガを守備表示で特殊召喚!」
「ありゃ…ターン終了です」


「よし、しのいだ…!ドロー!」
 桜はドローしたカードを見ると、即座に伏せる。
「ターン終了っ!」

「では、ドローします。まず、ピケルたんの効果…」

「…を封じさせてもらう!スキルドレイン!」

スキルドレイン 永続罠
1000ライフポイントを払う。
このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上に
表側表示で存在する効果モンスターは全て効果が無効化される。

桜LP6600

「…!」
「とっておきなんだけどね…本来は。」

 光はピケルの回復効果を封じられた上、
フリントロックもフリントの効果を受けるようになる。
光は素早いモモンガをピケルとゾーマで破壊。

 戦闘で破壊され墓地で発動するモモンガの効果に関しては
スキルドレインの専門外なので桜のライフは2000回復し、
その後桜はマテリアルドラゴンの直接攻撃を受けた。

桜LP8600→6200


「私のターン!魔法カード名推理!」

名推理 通常魔法
相手プレイヤーはモンスターのレベルを宣言する。
通常召喚可能なモンズターが出るまで自分のデッキをめくる。
出たモンスターが宣言されたレベルと同じ場合、めくったカードを全て墓地へ送る。
違う場合、出たモンスターを特殊召喚し、残りのカードを墓地へ送る。

 光はレベル8を宣言する。スキルドレイン発動下、特殊召喚する意味のある上級は
少ないが、攻撃力の高いモンスターを予想したようだ。

1枚目:死皇帝の陵墓
2枚目:火霊術ー「紅」
3枚目:溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム(通常召喚不可能)
4枚目:絶対服従魔人

「絶対服従魔人のレベルは10!よって特殊召喚!」

絶対服従魔人 炎 ☆10 ATK3500 DEF3000
悪魔族・効果
自分フィールド上にこのカードだけしかなく、
手札が0枚でなければこのカードは攻撃できない。
このカードが破壊した効果モンスターの効果は無効化される。


 桜の場に赤く、巨大な人形のモンスターが出現する。
これぞ桜デッキ最強にして、
彼女の切り札たるレベル10の炎の悪魔。

「」

「スキルドレイン発動中なら、攻撃を禁止する効果も無効。
マテリアルドラゴンの効果も消えている以上、
ゾーマのダメージ効果も有効!!」

「いくわよ!死霊ゾーマに攻撃!!」

『我に、服従せよ!!』


「リバースカードを発動します!アストラルバリア!」

「…は?」

アストラルバリア 永続罠
相手モンスターが自分フィールド上モンスターを攻撃する場合、
その攻撃を自分ライフヘの直接攻撃にする事ができる。


「アストラルバリアが攻撃をプレイヤーに向け、
スピリットバリアがプレイヤーのダメージを0にする。
それでモンスターを戦闘で破壊する事もできなくなって
プレイヤーとモンスターを守る鉄壁の防御ね」

「…よく使われるディフェンスコンボの一つ。
さらに光の場にはピケル、フリントロック、マテリアルドラゴンもいる。
スキルドレインさえなければモンスターの効果破壊、効果ダメージをも防ぎ、
フリントロックの効果で相手のモンスターの身動きも封じる事が可能。
そして、ピケルの効果でもってライフを回復し続けるという絶対防御の陣形。
…例外はあるとしても、通常はここまでになる前に手を打つ。」

「くっ…」

 魔人の一撃はアストラルバリアの効力により光へ向かう。
しかし、その一撃はモンスターのスピリットにより阻まれ、霧散。

「そして私のターン!死者への供物でその魔人を破壊!
ゾーマ、マテリアル、そして…ピケルたんで直接攻撃っ!!」

桜LP6200→4400→2000→0

「あ、あれ?」

 桜、敗北…

「…マテリアルドラゴンとスピリット&アストラルの2枚バリアは
流石にきつかったかなー」

「どーすりゃえーっちゅーんじゃーって感じですよね、普通なら。」

「エネミーコントローラーをを温存しとけば、対処できたんだけど…
でも、ユーフォロイドをピケルに破壊させて王女にしつつ、
フリントとフリントロックのコンボを決めるってのは中々良かったわね」

「フリントとフリントロックは防御と、詳しくは教えませんけど、
あるコンボの要でもありますから。」

「なるほど、無駄がないわね」

 そして感想戦終了後、
「ではっ!玖蘭ちゃんの歓迎会として、カラオケ行きましょう!」

「「「おー!」」」





その日の深夜

「緊急の連絡失礼します。」

『何か問題でも起こったのか?』

「はい。敵対組織の一員とおぼしき人物と接触しました。
しかし幸いにも全くの偶然であったので、
相手にこちらの正体は気づかれておりません。支障はないかと」

『そうか。支障はないか。なら、その人物から
我々の敵対する組織の情報は得られないのか?』

「難しいでしょうね…おそらくは末端でしょうから。
しかし、今後また任務が与えられるとすれば…あるいは。
泳がせるのが得策かと存じますが」

『成程。分かった。少し人員を回すとしよう。』

「ありがとうございます。それと、この人物を拘束する場合は、
私にご命令を。」

『また、何故?』

「私には、私なりのやり方があるんです。」

『…分かった。ではその場合は必ずそうしよう。
通信はこれで終わるが、よいか?』

「はい。では失礼いたします」

 彼女は、そういうと公衆電話の受話器を置いた。
「違う時に会っていたら、きっといい友達になれただろうなあ…」

 長い髪の女は帰路につき、またつぶやいた。
「そうだ。そろそろ完成するあの衣装でもプレゼントしてあげよう」
 そうして彼女、春日撫子の姿は闇の中に消えた。




第12章 朔夜と奇妙な再会 その2

 私はレアハンター。本名は……今かっこいいのを考え中だ。
かつてはグールズというレアカード窃盗団に所属していた男だ。
今は自分で会社を立ち上げ、自由気侭な生活を送っている。

「フフフ…やはりな。」

 さて、今、私はとある動画共有サイトにはまっている。
面白い動画が多いのでよく見ているのだが、
つい最近、その中に注目すべきものがあったのだ。

 『オレンジ』

 この名前のアニメキャラをご存知だろうか。遊戯王のキャラではないので
知らない人もいるだろうから簡単に彼の経歴を説明しよう。

 主人公の敵として華麗に登場。
主人公の親友を痛めつけ、序盤の敵と視聴者に思わせる。

あっさり主人公にやられ、その際に迷言を残す。
その後、物語からはフェードアウト。

視聴者の人気が高かったので再登場。

 まあ、この後の事は大人の事情で黙っておかねばならないのだが、
最終的に勝ち組になるのだ。

さて、どうだろうか?読者諸君。
なんだか私と良く似た経歴ではないだろうか?特に迷言を残すあたりとか。

つまり、である。このアニメの流れからゆくと…

「私も最終的には勝ち組になるのだ! フハハハハハ!!!!」




-十分後-
「ふう、危なかった」
 どうやらすばらしい発見をした事で舞い上がり、思わず路上で声に出してしまっていたらしい。
周りの嫉妬や、国家権力の犬(警察)によって勝ち組の座を奪われかけたが、
あいにくと私は勝ち組になる事が運命づけられている身。
この程度のピンチにかまけている暇などないのだ。

「む!あれは…」

 そんな私の視線の先には黒髪のポニーテールの少女の姿があった。
そう、この小説の記念すべき序章で私が破れた少女。すなわち、主人公!

「ククク…ゆくぞ!」

 そう言うや否や、私は駆け出した。私自身の輝かしき未来のために!

「ここであったが百年目!我が敗北の汚点を消し去るため、
今一度私はそなたにデュエルを申し込む!」



「……………」



 決まった!自分でもほれぼれするぐらいカッコイイ台詞だった!!
突然彼女の前に現れた私は、彼女にリベンジの意を告げるべくそう言った。

「あの、どちらさまでしょうか?」


 クッ、何と言う事だ!私は彼女に覚えられていなかったのだ!
しかしまあ、オレンジも再登場時はたぶんこんな感じだったに違いない。

「覚えていないとな?ならば、思い出させてやろう!我が剣と力にて!!」

 そして私はディスクを構える。この台詞もカッコ良く決まった!



「いや、あの…人違いでは…」

 この期に及んでまだしらばっくれるつもりだろうか。
すると、彼女の隣にいたセミロングの活発そうな女の子がしゃしゃり出て来た。

「あんた!何なのよ!!」

「いや、私はリベンジに来ただけで…」

「朔夜は知らないって言ってるでしょ!!」

「いや、彼女が忘れているだけであってだな。私とデュエルする事で…」

「怖がってるでしょうが!いい加減にしないと…」

 彼女はそういいながら、上着の裾をまくり出した。
どうやら拳で決着をつけようという魂胆なのだろう。

「私とデュエルすれば納得してくれるみたいだから、いいよ…そこまでしなくても」

 と、ここで朔夜と呼ばれた主人公が前に出て来て、ディスクを腕に付けて構えた。
話の分かる主人公で助かった。
 私の輝かしき未来へのロードは拳ではなく、デュエルで切り開きたかったからな。
拳にはあんまり自信がないのでね。
さて、これでやっと…

「「デュエル!!」」

 コイントスの結果、先攻は彼女からだ。

「ええと、モンスターをセットし、カードを2枚伏せます。ターンエンドで。」

 妥当な一手である。おそらくはエクゾディア封じのカードだろう。
「私のターンだ!ドロー!」

 手札にはまだ封印されし者の左腕1枚しかない。
だが、私の戦術ならば高速で揃える事ができる!

「冥界の使者を攻撃表示で召喚!」

冥界の使者 闇 ☆4 ATK1600 DEF600
悪魔族・効果
このカードがフィールド上から墓地に送られた時、
お互いに自分のデッキからレベル3以下の通常モンスター1体を
選択し、お互いに確認して手札に加える。
その後デッキをシャッフルする。


 フフフ…まずは手札にパーツを揃える為の布石だ。
「冥界の使者で守備モンスターを攻撃!」

 冥界の使者は破壊されたときに効果を発揮する。
どうせだからここは攻めるに限る。

がしかし、その攻撃は大きなオレンジ
のグローブをはめた悪魔によって跳ね返された!

「暗黒界の番兵 レンジの守備力は2100なので、
500ポイントの反射ダメージです!」

レアハンターLP8000→7500

 私のライフは少し減った。だが、問題はそこじゃないのだ。



「おっ、おおおおおおお、オレンジだとォォォォォォ!!!!!」


さて、今私は何回「オ」といったでしょーか?
そんなことより、私の輝きしき勝ち組人生への第一歩はいきなり躓いた。
…そう『オレンジ』は既に主人公の仲間になっていたのだ!
しかも、主人公を守る立派な壁として!

 なんたることだ…これじゃ私の立場が、いやまてよ!
 あれを倒せばイインジャナイカ?


 すぐに冷静になった私は手札の2枚の永続魔法を発動した。
これしきの事でいちいち慌てるほど私は愚かではない。

「カードトレーダーとデーモンの宣告を発動する!」

カードトレーダー 永続魔法
自分のスタンバイフェイズ時に手札を1枚デッキに加えてシャッフルする事で、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。この効果は1ターンに1回しか使用できない。

デーモンの宣告 永続魔法
1ターンに1度だけ、500ライフポイントを払い、カード名を宣言する事ができる。
その場合、自分のデッキの一番上のカードをめくり、宣言したカードだった場合手札に加える。
違った場合はめくったカードを墓地へ送る。


「ライフを500払い、宣告の効果を発動!」

レアハンターLP7500→7000

 私は息を吸い込み、右手をデッキの上にかざし、意識を集中する。


「キィエエエエエエエエーーーー!!」


 別にマリク様が来たとかそんなんじゃないから安心してくれ。
私はカード名を宣言する。

「はあはあ…私はサンダー・ドラゴンを宣言する!」

デッキトップのカード:サンダー・ドラゴン

サンダー・ドラゴン 光 ☆5 ATK1600 DEF1500
雷族・効果
手札からこのカードを捨てる事でデッキから別の
「サンダー・ドラゴン」を2枚まで手札に加える事ができる。
その後デッキをシャッフルする。この効果は自分の
メインフェイズ中のみ使用する事ができる。


 私はめくったカードを確認させた後、手札に加える。
 なぜサポートもなしにデッキトップのカードを当てられるのか、
勘のいい読者ならすぐに気がつくだろう。


 そう…
私はデッキトップのカードが分かる特殊コンタクトを着用しているのだ!
私はこのコンタクトにより、確実にデッキットップのカードを把握!
そして500ライフを払うだけで手札を1枚増やせるのだ!


 礼を言うぞ作者よ!私の為にこのようなすばらしいコンボを思いつくとは!
これならば毎ターン私のドロースピードは倍になり、
エクゾディアを全力で揃えられるのだ!

 あ、さっきのは何なのかって?
フフフ、それは勿論相手に特殊コンタクトの事を気づかせない為の
カモフラージュというやつなのだ。

「実は私は修行の末、デッキからドローできるカードを直感によって予知できる様になったのだ!」

 つまり、こういう言い訳で相手に怪しまれても追求を逃れられるのだ。
そういえば、GXにもこんな事言うキャラがいたなあ…たしか、大山だっけ?

「す、すごい!」
「本当にそんな人間いたんだ」

 って信じちゃったよ。そんなことはさておき、
「サンダー・ドラゴンを捨て、デッキからサンダー・ドラゴン2枚を手札に加える!」

 これで私の手札は5枚。デッキは残り31枚となる。
「カードを1枚伏せて、ターン終了だ!」

「えっと…カードをもう1枚セットしてターン終了です」


 私のターンになり、私はカードをドローする。

ドローカード:シールドクラッシュ

「ククク…良いカードを引いた!だがその前にトレーダーの効果を発動。
サンダードラゴンをデッキに戻し、1枚ドローする…
メインフェイズでサンダー・ドラゴンを捨て、
デッキからサンダードラゴン1枚を
手札に加えるとしよう…」

 今のトレーダーのドローで封印されし者の右腕を引いた!

「デーモンの宣告の効果を使用する!」

レアハンターLP7000→6500

「ヒィイイゲェエエエエエーーーーー!!!(髭)」

 精神を集中するとどうしても声が出てくるんだよなあ…

「はあはあ…宣言するのは『ダーク・バースト』だ!」

デッキトップのカード:ヴォルカニック・バレット

 宣言したカードではなかったので私はバレットを墓地に送る。
私は特殊コンタクトでデッキトップのカードは
分かっていたので、もちろんワザとだ。

「墓地の『ヴォルカニック・バレット』の効果を発動!
ライフを500払ってデッキから2枚目のバレットを
手札に加える!」

ヴォルカニック・バレット 炎 ☆1 ATK100 DEF0
炎族・効果
このカードが墓地に存在する場合、500ライフポイントを
払う事でデッキから「ヴォルカニック・バレット」1体を
手札に加える事ができる。
この効果は1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに
使用する事ができる。 

レアハンターLP6500→6000

「さて、ようやく『シールドクラッシュ』のお出ましだ!
オレはオレンジをぶっ壊す!!」

シールドクラッシュ 通常魔法
フィールド上に守備表示で存在するモンスター1体を選択して破壊する。

 ククク…このカードは守備表示ならばたとえゲートガーディアンであろうとも
たちどころに破壊できる強力なカードなのだ!

嘘じゃないぞ!実際に破壊してる奴見たもーん!!

「なら、チェーンして罠を発動!レンジをリリースして、死のデッキ破壊ウィルス!!」

 何っ!これは海馬瀬人が使った事もある強力なウイルスカード!
まともに喰らえば手札の強力モンスターはすぐに破壊され、戦力は激減するのだ!
 くそう、オレンジめ。強力な壁としてだけでなく、
強力な罠の布石にもなるとは!!
だが、

「私にその程度の罠は通用しないのだ!盗賊の七つ道具!」

盗賊の七つ道具 カウンター罠
1000ライフポイント払う。
罠カードの発動を無効にし、それを破壊する。


 フフフ、このカードは私の天敵とも言える連鎖破壊、光の封殺剣。
彼女が前回使った闇の取引をも無効にできると言う凄いカードなのだ!
持っている人はデッキに入れておく事をオススメする。
ライフ1000はちょっと痛いが、かなり強力だ。


レアハンターLP6000→5000


「さて、これでジャマなオレンジは消えた!冥界の使者で直接攻撃だ!」

「速攻魔法月の書を発動します!冥界の使者を守備表示に変更!」

月の書 速攻魔法
表側表示でフィールド上のモンスター1体を裏側守備表示にする。


「では、メイン2で冥界の使者を攻撃表示に変更させてもらう。ターンエンドだ。」

 ククククク…状況は私にとって有利!
手札交換、ドロー強化、サーチ、と揃っている以上、
エクゾディアパーツは続々と手札に集まって来る!

「私のターン!手札から魔法カード、暗黒界の取引を発動!
お互いに手札を1枚引いて、1枚捨てます。
そして、墓地に捨てたシルバの効果!墓地より蘇生します!」

 おっと、ここで暗黒界お得意の蘇生コンボだ。
ちなみに、暗黒界にはお互いにドローさせるカードも少なくないので
さっきのデッキ破壊ウイルスを無効にしていなかったら、
私の手札は手札抹殺とかでボロボロになっていた事だろう。

 なかなかに強かな女だ。好感がもてそうだぞ、フフフ…。
さて、私は封印されし者の右足を引き、サンダー・ドラゴンを捨てる。

「さらに死霊騎士デスカリバーナイトを召喚し、攻撃します!」

 攻撃力1900の剣が冥界の使者を一刀両断にする。

レアハンターLP5000→4700

「だが、冥界の使者の効果は発動!」
「ならこちらもデスカリバーナイトの効果を発動!魔封剣!」

 おっと、冥界の使者の効果は封じられてしまったか。
だが、まあいい。手札交換カードは私の場に

「シルバの直接攻撃!」

レアハンターLP4700→2300

 くっ、思考中に攻撃を仕掛けて来るとは…
やはり強かな女だ。

「カードを1枚セットしてターン終了です。」


 私のターンである。ドロー。
今のところ、私の手札は6枚。内3枚はパーツカードである。
やはり高速で手札を交換できるこのデッキは強い!
きっと馬の骨とかはもとより、海馬や遊戯なぞ
とっくに私の足下にすら及ばなくなっているに違いない!

 ククク…私がオレンジとなり、勝ち組になるのももはや時間の問題だ!

「まずはカードトレーダーの効果だ!バレットをデッキに送って1枚ドロー!」

ドローカード:黒いペンダント

 フフフ…このドローカードは後々の伏線なのだが、まずは手札を補強だ。

「墓地のバレットの効果!ライフを500払ってデッキからバレットを加える!」

レアハンターLP2300→1800

「そしてライフを500払ってデーモンの宣告を発動!」

LP1800→1300

 精神を集中して!大きな声で!みんな一緒に!さん、はい!


「ギョヘエエエエエエエエーーーーーー!!!」


 周囲の人間は驚いてこちらを見ている。
それはそうだろう。何しろ、本当にデッキのカードを透視していると
思っているのだから。
もっとも、私がそう思わせる為の演技をしているから
そう思っているのだろうが。

 しかしこうも毎回叫んでいると喉が痛くなってくるな…

「ゼイゼイ…こ、今度はアステカの石像だ。」

アステカの石像 地 ☆4 ATK100 DEF2000
このモンスターを攻撃したときに相手プレイヤーが
戦闘ダメージを受ける場合、その数値は2倍になる。


 ドローカードは当然それ。よって手札に加えて、
即座にフィールドに守備表示でセット。
この時点で私の手札は7枚なので黒いペンダントでも
セットしておくとしよう。

「カードを1枚セットし、ターンしゅ…」

「リバース罠…シルバをリリースし、セカンドウイルス…
魔のデッキ破壊ウイルスを発動!」

魔のデッキ破壊ウイルス 通常罠
自分フィールド上の攻撃力2000以上の闇属性モンスター1体を
生け贄に捧げて(リリースして)発動する。
相手のフィールド上モンスターと手札、発動後(相手ターンで数えて)
3ターンの間に相手がドローしたカードを全て確認し、
攻撃力1500以下のモンスターを破壊する。


「…え?なんだそのカードは?」
「死のデッキ破壊の対象が逆になったバージョンですけど?」

「な、なんだと!? 」
 し、しまった!カウンター罠はない!このウイルス汚染は止められん!

「ば、バカな…。わ、私のエクゾディアが…崩れてゆく…」

 私の手札から3枚のパーツカードが、ヴォルニックバレットが葬られる。
フィールドにセットされたアステカの石像も例外なく墓地へ行く。
そして残った2枚のカード、異次元からの埋葬と闇の量産工場は
白日の下にさらされる。

 もうおしまいだ…く、来る!来る来る来る来る来るマリク様が…








…と言うとでも思ったかあ!

 この程度で私の勝利は遠のくハズがないのだ!
そう!私はレアハンター!オレンジとなり、勝ち組になる男なのだ!
いままで幾多の困難を乗り越えて来た私には、
この程度のピンチなど屁でもない!

「ターンエンドだ!」

「えーっと、ドローします…
うーん。あの伏せカードが確認できなかったんだよなあ…
なら、デビルズサンクチュアリを発動し、メタルデビルを特殊召喚。
さらに、メタルデビルトークンをリリースして、
バイサー・ショック召喚!」

バイサー・ショック 闇 ☆5 ATK800 DEF600
悪魔族・効果
このモンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、
フィールド上の全てのセットされたカードを持ち主の手札に戻す。

 相手のモンスター効果で私の「黒いペンダント」は手札に戻る。
そして私は直接攻撃を受け、ライフは500にまで減ってしまった。

レアハンターLP1300→500

「カードを1枚伏せてターン終了です」


 そしてとうとう迎えた私のラストターン。
私の手札には壁を増やして時間稼ぎができる程度のカードしかなく、
しかもウイルス効果によってドローカード及び手札は筒抜け。
 ライフは500対8000。
相手の手札は0枚。
 極めつけに相手の場には上級モンスターがいて、
伏せカードはおそらく攻撃モンスターを破壊するものだろう。
と言う、まさに究極のピンチ!

 さて、この状況下で引くカードと言えば何だろうか。
当然逆転のキーカードだ。

 私は右手をデッキの上に乗せ、勢い良く引いた!

「ドロー!」




ドローカード:混沌の黒魔術師

「フフフフフ…強いカードは強いデュエリストの手の中に
集まってくる物なのだ!
…ってなぜだああああああああー!!!
こういうときは逆転のカードがくるもんだろうがあ!!!」

 周囲の人間がまた驚く。そのリアクションで私は思い出した。
「いや、まだだ!まだカードトレーダーの効果がある!」

 私は手札の異次元からの埋葬をデッキに戻し、
正真正銘のラストドローを行う。

「ドゥゥゥゥルォォおおおお!!!!!」

ドローカード:大逆転クイズ

「ハーッハハハハハ!やったぞ!カードを1枚セットし、大逆転クイズを発動!」

大逆転クイズ 通常魔法
自分の手札とフィールド上のカードを全て墓地に送る。
自分のデッキの一番上にあるカードの種類
(魔法・罠・モンスター)を当てる。
正解したら、相手と自分のライフポイントを入れ替える。


 手札の2枚のカードと、フィールド上の『黒いペンダント』を含む全てのカードが
墓地に置かれる。

黒いペンダント 装備魔法
装備モンスターの攻撃力は500ポイントアップする。
このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、
相手ライフに500ポイントのダメージを与える。


 ククク…これぞ我がデッキ最大にして最後の砦!大逆転クイズ!
さて、私の今のライフは500。
黒いペンダントの効果は大逆転クイズの処理の後に発動する!

 そう、大逆転クイズで正解すると、相手のライフは500になって
黒いペンダントの効果で相手のライフは0になる!

そして私にはこの特殊コンタクトがある!
デッキの一番上のカードを外すことはない!

「ククク…まさに大逆転だな!」

 私はデッキの一番上のカードを見る。
これで私もオレンジに、そして勝ち組になれるのだ。

「デッキトップのカードは…な、なぜだ!?見えない!」

 どうした事だろう。本来なら見えるはずのカードの絵柄が見えてこない。
「く…こ、こうなったら、勘だ!ま、魔法カードだ!」

 デッキトップのカードをおそるおそるめくった。

デッキの一番上のカード:封印されしエクゾディア

「!!こ、これは!!」
 そう、このカードは封印されしエクゾディア。

 あの遊戯とのデュエルの後に破かれた偽物エクゾディアの代わりに
苦労して手に入れて、デッキに入れておいた本物!!
特殊なインクなど塗られているわけなどなく、見えるはずもない。

「ああ、そうか…」

 私は自分がどれほど愚かな事をしていたのか気がついた。
そもそもこのカードは私がエクゾディア使いであったからこそ
苦労して手に入れたカード。

 勝ちたいが故にこんな卑怯なコンタクトに頼ったあげく、
自ら信頼するエクゾディアを裏切るかのように
大逆転クイズを使って勝とうとしてしまった私はデュエリスト失格だ。

「私の…負けだ」

 私はそう言うと、デッキの上に右手を乗せた。
投了の意志を示す、サレンダーカード。
私はそのままガックリと地面に膝をついた。

「あの、大丈夫ですか?」
 対戦していた少女が心配そうに駆け寄る。
よく考えたら、勝利のことばかり考えていた私が
相手をリスペクトする彼女に勝てるはずもなかったな。

「問題ない…それと、色々すまなかった」

 そう伝えると彼女は安心し、友人の元へ戻っていった。

 私はそれを見届けると地面に大の字に寝そべった。
ああ、私はオレンジではなく、腐ったミカンのままだったのか…


 どこからともなく、甲子園の試合終了時のような音が流れて来た。
ああ、次こそは正々堂々と戦おう…
 そういえば彼女、朔夜と言ったか。
前回とは戦法が全くといっていいほど違ったな。
もしかしたら本当に他人のそら似だったかもしれんな…











 その後彼は、通報を受けてパトカーで駆けつけた警察官によって
不審者として連れて行かれたという。




第13章 暗躍

 さて、話はレアハンターと戦うすこし前にさかのぼる。

「お仕事を手伝って欲しいんです!」

 金曜日の放課後、今日の放課後なのであるが、
光は皆にこう切り出した。

 彼女が言う「仕事」とは彼女が所属しているところから与えられたもので、今回の任務は「人探し」であった。

「ええっと、顔の特徴は、片眼鏡に、あご髭、使うデッキタイプは戦士族。名前は、『グリモ』。童実野町付近に住んでいると思われる……」
 光が見せた資料と写真を見て、撫子は探し人の特徴を上げる。

「…この『グリモ』って人を探す理由は?」

「えーっと、この人はKCグランプリが開かれるちょっと前に、
ある事件に巻き込まれ意識不明に陥った事がある、
その事件の参考人の一人。だ、そうです」

「えっと、ちょっといい?」

 興味を持ったのか、桜は美樹の質問に答えている撫子から資料を
貰い、覗き込む。

「その事件ってさ、あれでしょ?名前忘れたけど、どっかの会社が海馬コーポレーションを乗っ取ろうとして、立体映像のやつをいかれさせた〜とか言うやつ」

 桜が話しているのは、かつてドーマと呼ばれていた組織(表向きはパラディウス社という大会社)が起こした事件である。
 一般にはKCグランプリ後の報道規制や情報操作などで上記の様な認知をされているらしい。

「えーっと、その通りです。その事件に関していろいろ聞きたいことがあるそうなので、探してほしいんだそうです」

 人探しならば人数が多い方がいいだろうし危険も少ないだろう、という理由でみんな参加した。
そしてその捜索中にレアハンターと遭遇したのが、前回である。


 そしてデュエルの後。
 朔夜、桜、光の一年生三人組は噴水がある広場にあるオープンカフェで一休みしていた。放課後だからか、周囲には童実野高校の制服を着た生徒も数人いる。

「あーっもう、変なやつに時間とられちゃったわね。で、いた? そのグリモってやつ」
 桜は光に質問するが、光は首を横に振った。

「うーん、やっぱりそう簡単にはみつからないかぁ。やっぱり、なるべく早く見つけた方がいいんでしょ?」
 今度は朔夜が光に声をかける。
「あ、そうですね。でも時間には余裕があるので……」

「なら、ちょっといい? 光ちゃんに聞いておきたい事があったんだけど」
 ここで朔夜は話を切り出した。

「なんですか?」

「Entrance to Neo Dimensionの真の意味って何? 大文字の部分だけ読むと『END』になる事と関係あるの?」

 光から貰った紙に書いてあった事。そして自分がお風呂場で思いついた事を光に聞いてみた。

「え? そうなんですか?」
 玖蘭光は、メモ帳に走り書きし、おおと驚いた。

「これは私も知りませんでした! 上から聞かされた話ですと、ここ数日の調査で分かった、敵組織の最終計画の名称らしいんです。なんでも世界を再生するとか……どうとか……」

 変な宗教みたいね、それ。と桜が感想を述べる。光はそうですねと軽い同意を示していた。
(Entrance to Neo Dimension……世界の再生……それから、END?
……あれ、何だろう。何か引っかかってるんだけど、出てこない。何か重大な事を忘れている様な……)

 対して、朔夜は光の説明に何か違和感を覚えていた。


-同時刻、童実野埠頭-

 美樹と撫子。
二年生のコンビは朔夜たちとは別の場所で捜索し、その内の一人、撫子は今、ある一人の人物と相対していた。髭にモノクル、黒い服を着た中年の男。
 光が探してほしいといった男、グリモである。だが撫子は光に連絡を入れようとはしない。
彼女はこの男を捕らえる気なのである。目的はおそらく光の妨害であろうか。

「あなたがグリモさんね?」

 撫子は口元こそ笑ってこそいるが、目は全く笑っていない。
「そうだが……汝は何者だ?」

 質問された男、グリモは目の前の少女にとてつもなく大きな威圧感を感じて気圧されているようであった。

「春日撫子と申します。以後お見知りおきを。以後があれば……の話ですけど。まあ、早速本題に入らせていただきますね。」

 撫子は鞄からデュエルディスクを装着すると、構えてデッキをセットする。その行動から、グリモは相手の意図を察したようだ。
「デュエルを申し込むというのか?」

「はい。その通りです。拒否する事はできませんので。それと、」

 一度息をつくと、撫子は続ける。
「敗者は、勝者の言う事を1つ聞いてもらいます。王様ゲームみたいですよね」
 撫子は、先ほどから変化しない作り笑いを崩さずそう言った。

「汝の、目的は?」
「貴方がデュエルに勝ったら教えて上げますよ」

「くっ……わかった」
 相手の正体が分からないとはいえ、ここで勝てば。そう考えた男は、昔から愛用している青緑色のデュエルディスクを構えてデッキをセットする。彼のディスクはカードをセットする部分が鎌の刃の形をした、今では珍しいタイプである。

「では……いきましょうか」
 撫子は微笑う。

「「デュエル!!」」

グリモLP8000  VS 撫子LP8000

 コイントスを行い、グリモが先攻を取る。

「モンスターを裏守備で場に出し、ターンを終了する!」
グリモは相手の様子を見るためか、相手に気圧されたからか、まずは防御の姿勢を見せる。
 続いて撫子のターン。
手札
ガード・ブロック ジェルエンデュオ 魂の解放 コーリング・ノヴァ
強制脱出装置 奇跡の光臨

(さあて、こちらも様子見としますか)

「モンスターをセットし、カードを2枚伏せてターン終了ね」
 撫子は『コーリング・ノヴァ』を伏せ、罠を2枚伏せる。こちらも防御の姿勢である。

 再びグリモのターンが回って来る。
「魔法カード『強制転移』を発動! 私の場の裏守備モンスターとそなたのモンスターを入れ替える! さらに『切り込み隊長』を召喚し、効果で『DDアサイラント』を特殊召喚!」

切り込み隊長 地 ☆3 ATK1200 DEF400
戦士族・効果
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
相手は表側表示で存在する他の戦士族モンスターを攻撃対象に
選択する事はできない。このカードが召喚に成功した時、
手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する事ができる。

D.D.アサイラント 地 ☆4 ATK1700 DEF1600
戦士族・効果
このカードが相手モンスターとの戦闘によって破壊されたとき、
そのモンスターとこのカードをゲームから除外する。


「フィールド魔法『ガイアパワー』を発動し、さらに『Hーヒートハート』をアサイラントを選択して発動!」

ガイアパワー フィールド魔法
フィールド上の地属性モンスターの攻撃力は500ポイントアップし、
守備力は400ポイントダウンする。

Hーヒートハート 通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して
発動する。選択したモンスターの攻撃力は500ポイントアップする。
そのカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手に
戦闘ダメージを与える。
この効果は発動ターンのエンドフェイズまで続く。

D.D.アサイラント
ATK1700→2200→2700
DEF1600→1400

切り込み隊長
ATK1200→1700
DEF400→0

「『D.D.アサイラント』で守備表示のモンスター『荒野の女戦士』を攻撃!」

 相手が攻める前に先制し流れを掴む。その為に隊長と女暗殺者を召喚し、攻撃を仕掛ける。攻撃対象となるモンスターも、自分が有利になる効果をもった物を送りつけてある。

荒野の女戦士 地 ☆4 ATK1100 DEF1200
戦士族・効果
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
デッキから攻撃力1500以下で地属性の戦士族モンスター1体を
自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
その後デッキをシャッフルする。


(戦闘が成立すればフィールドカードの影響で守備力が400下がって、貫通効果でさらにダメージが増加する。ならば)
「強制脱出装置を発動し、アサイラントを手札に戻すわね」

「む……! 『切り込み隊長』で守備モンスターを攻撃だ!」

 切り込み隊長が女戦士の剣を弾き飛ばし、破壊する。敗れた女戦士は応援を呼び、すかさず次の戦士を呼ぶ。

「女戦士の効果により、『切り込み隊長』をもう1体召喚し、直接攻撃を仕掛ける!」

(一気に攻めて来たわね。なら、ここは出端を挫いて流れを止めさせてもらいましょうか)

「ガード・ブロックでその攻撃を防御!」

ガード・ブロック 通常罠
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。


 切り込み隊長の攻撃は撫子に当たる直前で防がれ、撫子は手札を補充した。

 グリモの先制攻撃は手札の大量消費に見合わぬ戦果であった。
相手のダメージは0。相手の消費した手札枚数は2枚。
 しかし切り込み隊長2体を揃え攻撃を封じる事には成功し、グリモは自分のターンを終える。

状況
グリモ 手札2枚
LP8000
【モンスターカード】
切り込み隊長×2 裏側守備表示モンスター
【魔法・罠】
ガイアパワー

撫子 手札4枚
LP8000
【モンスターカード】
なし
【魔法・罠】
なし

「では私のターン。ドローしますね」

ドローカード:エネミーコントローラー

(切り込み隊長を2体残しておいたのは、ちょっと困ったかな)
「リクルーター転移を利用して、切り込み隊長2体のロックを簡単に作ったのはなかなかですよ。
けど崩しますね。ジェルエンデュオを召喚し、戦士族と判別できない裏守備モンスターを攻撃」

 裏守備モンスターはさきほど撫子が伏せたコーリング・ノヴァ。
戦闘によりノヴァは破壊されるも、自身の命と引き換えにシャインエンジェルを新たに生み出した。

「速攻魔法エネミーコントローラーを発動ね。たった今攻撃したジェルエンデュオをリリースし、切り込み隊長のコントロールを得ます」

「な……何っ!?」

 グリモの場の切り込み隊長は撫子の配下となり隊長2体によって形成されていたロックは崩される。

「コントロールを得た切り込み隊長で切り込み隊長を攻撃し、相殺。シャインエンジェルで直接攻撃!」

 グリモの場の隊長は相殺し、天使の攻撃はグリモに命中する。撫子は宣言通り、攻撃封じの陣形を打ち崩した。しかも、モンスターを破壊する魔法も使わずに。

グリモLP8000→6600

「カードを1枚伏せて、ターンを終了します」

状況
グリモ 手札2枚
LP6600
【モンスターカード】
なし
【魔法・罠】
ガイアパワー

撫子 手札3枚
LP8000
【モンスターカード】
シャイン・エンジェル
【魔法・罠】
伏せカード1枚


「わ、私のターン……」

 グリモは、たった1ターン、わずか2枚の手札で戦況をひっくり返されたことに動揺していた。
「再びD.D.アサイラントを召喚し、シャインエンジェルに攻撃……」

D.D.アサイラント
ATK1700→2200

 暗殺者とシャイン・エンジェルとの戦闘は成立し、撫子は僅かだがダメージを受ける。

撫子LP8000→7200

「では、効果で『勝利の導き手 フレイヤ』を召喚します」

勝利の導き手 フレイヤ
ATK100→500
DEF100→500

「タ、ターンエンド」

 そして再度撫子のターンがめぐって来る。
「ドロー!」
ドローカード:ハリケーン

「光神機―桜火をリリース無しで召喚。フレイヤの効果で攻守は上昇!」

光神機―桜火
ATK2400→2800
DEF1600→2000

「桜火でD.D.アサイラントを攻撃!」

グリモLP6600→6000

「でっ…D.D.アサイラントの効果!
戦闘で破壊された時、このカードと、戦闘を行ったモンスターを除外!」

 桜火はD.D.アサイラントが残した次元の穴に吸い込まれる。しかし、

「……奇跡の光臨」
再び光臨する。フレイヤの影響により、攻撃力2800を維持したまま。

「なっ……! ア、アサイラントの効果を逆手に……!」

「3ターン目に手札に戻した時から利用させてもらう予定だった。って言ったら、さらに驚きます? さて、フレイヤ、桜火で直接攻撃!」

グリモLP6000→5500→2700

「桜火はリリース無しで召喚した場合、エンドフェイズに墓地へ行く。でもこの桜火は奇跡の光臨で特殊召喚されたものだから墓地へは行きません。だからこれで、ターンエンド」


「くっ、ドロー」 
グリモは完全に狼狽していた。2枚の手札からモンスターを全滅させてダイレクトアタック、D.D.アサイラントの効果を逆手にとった連続攻撃、どちらも完全にグリモの上を行く戦術。理解の範疇を超越していた。
「モ、モンスターを守備表示で出し、カードをセット。ターンエンドだ」

「では、私のターン。ドロー」
ドローカード:女神の聖剣―エアトス

 撫子は桜火で守備モンスターを攻撃する。攻撃されたモンスター、荒野の女戦士は自身の効果で後続のモンスター、ジュッテ・ナイトを攻撃表示で特殊召喚し、フレイヤの直接攻撃をどうにかしのいだ。

ジュッテ・ナイト 地 ☆2 ATK700 DEF900
戦士族・チューナー/効果
1ターンに1度だけ、相手フィールド上に表側攻撃表示で存在する
モンスター1体を表側守備表示にする事ができる。

ジュッテ・ナイト
ATK700→1200
DEF900→500

 撫子はそのままターンを終了し、グリモのターンになる。

「ドロー……よ、よし。まずはセットした罠カード、輪廻独断を発動する。私は戦士族を宣言だ!」

輪廻独断 永続罠
発動時に種族を1つ宣言する。
このカードがフィールド上に存在する限り、
お互いの墓地に存在する全てのモンスターの種族は
自分が宣言した種族になる。

「戦士の生還を発動し、切り込み隊長を手札に戻す!」

戦士の生還 通常魔法
自分の墓地の戦士族モンスター1体を
選択して手札に加える。

「切り込み隊長を攻撃表示で召喚して効果を発動。手札からデーモン・テイマーを召喚!」

 グリモの場には、切り込み隊長、デーモン・テイマー、ジュッテナイトと3体のモンスターが並ぶ。内一体はチューナーで、3体のレベル合計は8。


「よ、よし! レベル3切り込み隊長と、レベル3デーモン・テイマーに、レベル2のチューナー、ジュッテ・ナイトをチューニング!」

 ジュッテ・ナイトは2つの星となり、隊長とデーモン・テイマーを包み込む。
包まれた切り込み隊長とデーモン・テイマーもまたそれぞれ3つの星になり、
合計8つの星となった。
 その中から新たに巨人の戦士が誕生する。

「集いし星が古の巨兵の魂を呼び覚ます!
シンクロ召喚、いでよ、大いなる巨人の戦士!ギガンテック・ファイター!!」

ギガンテック・ファイター 闇 ☆8 ATK2800 DEF1000
戦士族・シンクロ/効果
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードの攻撃力は墓地に存在する
戦士族モンスターの数×100ポイントアップする。
このカードが戦闘で破壊され、墓地に送られた時、
墓地に存在する戦士族モンスター1体を選択し、
自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。


 シンクロ。簡単に言ってしまえば、儀式召喚をより簡単にした特殊召喚である。
チューナーとは儀式魔法を内蔵したモンスター。
シンクロモンスターとは手札ではなく、エクストラデッキから特殊召喚される儀式モンスター。
置き換えるとすれば、こんな所だろうか。

 さて、その召喚儀式によって男の場には3メートルはあるだろうか。巨大な戦士が呼び出された。

「巨人兵はお互いの墓地の戦士の魂を受け継ぐ!
我が墓地には6体の戦士、汝の墓地の3体のモンスターも輪廻独断の効果により戦士となった!よって攻撃力は900ポイントアップし、
オベリスクの巨神兵にも匹敵する3700となる!」

「へーぇ、こっちの墓地も利用したのね……」

「ギガンテックファイターの攻撃!ギガントマキア!!」

 墓地の戦士の力も加わってより巨大になった巨人の攻撃に、桜火はなす術もなく砕け散り、撫子も900ポイントのダメージを受けた。

撫子LP7200→6300

「汝の墓地に新たにモンスターが置かれた事により、巨人兵の攻撃力は
3800にアップする!ターンエンドだ」


(攻撃力ならオベリスクの巨神兵にも匹敵する…か。
手札は、ハリケーン、魂の解放、女神の聖剣―エアトスの3枚。
これは……ちょっとしたピンチね。)

「では私のターン、ドロー!」
ドローカード:ガーディアン・エアトス

 撫子はドローカードを見て、手札の3枚を見ると小声でつぶやいた。

「こらえ性のない女って嫌われるわよ…エアトスさん?」

「まあ、いいわね。装備魔法『女神の聖剣―エアトス』を、フレイヤに装備」

女神の聖剣―エアトス 装備魔法
装備モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。
このカードのカード名はフィールド上に表側表示で存在する限り
「蝶の短剣―エルマ」としても扱う。
このカードが墓地に存在する場合、墓地の「ガーディアン」と
名の付いたモンスター1体をデッキに戻す事でこのカードを
デッキの1番上に戻す事ができる。


「続いて魂の解放。私の墓地の、シャインエンジェル、コーリングノヴァ、光神機-桜火、ジェルエンデュオの4枚を除外。」

魂の解放 通常魔法
お互いの墓地からカードを5枚まで選択し、ゲームから除外する。

「さて、これで私の墓地にモンスターはいなくなり、彼女を呼ぶ準備は整った……」

「彼女……?」
 グリモは首を傾げるが、すぐにあるモンスターに行き当たった。かつての同士、ラフエールが使った、かのデュエルキング、武藤遊戯をさえ一度は倒したモンスターに。

「清廉なる墓地。女神の聖剣。その両者が揃いしとき、天の守護者は降臨する」

「―ガーディアン・エアトス―」

ガーディアン・エアトス 風 ☆7 ATK2500 DEF2000
天使族・効果
このカードは「女神の聖剣―エアトス」が自分のフィールド上に
存在する場合のみ召喚・反転召喚・特殊召喚可能。
自分の墓地にモンスターカードが存在しない場合、
このカードは生け贄なしで召喚する事ができる。
このカードに「女神の聖剣―エアトス」が装備された時、
以下の効果を発動する。
●相手の墓地に存在するモンスターカードを全てゲームから
除外する。このカードの攻撃力はこの効果で除外した
モンスターの数×800ポイントアップする。
エンドフェイズにこの攻撃力は元に戻り、このカードに
装備されている全てのカードを破壊する。

「フレイヤの効果にてエアトス様の攻撃力は上昇。ハリケーンを発動し、女神の聖剣を一度私の手の内に戻す! そしてもう一度発動し、真の持ち主エアトス様に装備!」

ガーディアン・エアトス
ATK2500→2900→3200

「聖剣を得たエアトス様はその力を発動する。精霊のオペラ――」

――精霊は歌う――
――大いなる力 すべての万物を司らん――
――その命、その魂、そしてその骸さえも――

 グリモの墓地に眠る6体の戦士の魂はエアトスの剣に導かれ、彼女の力となる。
それと対照的に、巨人の身体はみるみるしぼんでゆく。

「エアトス様は戦死した勇士たちの力をその身に受け、力を増す。あなたの墓地にいた勇士は6体。1体につき、800ポイントのアップ。さらにフレイヤ、聖剣の効果も加わるから……」

ガーディアン・エアトス
ATK2500→8000

「はっ、8000だと!?」

「それとギガンテック・ファイターは墓地の戦士が消えた事により、攻撃力は2800に戻るわね。
さて、私のバトルフェイズ……禁じられし福音」

 エアトスは、閃光となった剣を構え、巨人兵に切り掛かる。

『フォビドゥン・ゴスペル!』

 放たれた閃光は、ギガンテック・ファイターを両断し、その余波はグリモにも及んだ。

「ぐああああああ!!!!!」

グリモLP2700→0

 グリモのライフカウンターが0を示し、デュエルは終了する。

「ふう、滅多な条件なんてつけるもんじゃないわね。負けるかと思っちゃった。
しかし、この男を探す価値……分かんないわ。話を聞くなら、ほかにも人がいるでしょうに」

 撫子は倒れた男を素早くロープで拘束すると、携帯電話を取り出し、番号を打ち込む。

「目的の人物を捕獲しました。至急保護をお願いします。場所は童実野埠頭の倉庫街、29の倉庫の前で。では、失礼いたします」

 撫子は電話を切ると周囲を見回し、捕縛した男以外に誰もいない事を確かめると足早に埠頭を去って行った。

(目的の男は私が捕まえてしまったから、玖蘭ちゃんは当面の間グリモを探しだす仕事にかかりきりになる。朔夜も、桜もおそらく同じ。
あとは、アカデミアでの作戦が成功する事を祈るのみ。)

「最も、私が玖蘭ちゃんから聞いた事は全て上に報告してあるから、失敗は100%あり得なくなったんだけど……ね」

『アカデミアにI2社の人間が潜伏し、三幻魔を奪いに来た者達を捕らえる。』
 玖蘭光は偶然出会った朔夜を信じてそう語り、その場に偶然、玖蘭の敵であるはずの撫子が居合わせた。
 その偶然が、世界の終わりを進める結果になるとは、まだ誰も知らなかった。




続く...



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