消え行く創造者

製作者:究極竜骸骨さん




設定
この小説では、ストーリーの都合上以下の制限を公式制限としています

禁止
混沌帝龍−終焉の使者−
ファイバー・ポット
八汰烏
強引な番兵
心変わり
サンダーボルト
ハーピィの羽根箒
王宮の勅命
第六感
破壊輪
同族感染ウイルス
ブラック・ホール
激流葬

制限
カオス・ソルジャー−開闢の使者−
キラー・スネーク
黒き森のウィッチ
処刑人マキュラ
魔導サイエンティスト
悪夢の蜃気楼
苦渋の選択
いたずら好きな双子悪魔
死者蘇生
蝶の短剣−エルマ
天使の施し
聖なるバリア−ミラーフォース−
異次元の女戦士
強奪
お注射天使リリー
クリッター
混沌の黒魔術師
サイバーポッド
サウサク
人造人間−サイコ・ショッカー
月読命
ならず者傭兵部隊
ネフティスの鳳凰神
封印されしエクゾディア
封印されし者の右腕
封印されし者の右足
封印されし者の左腕
封印されし者の左足
魔鏡導士リフレクトバウンダー
マシュマロン
魂を削る死霊
魔導戦士ブレイカー
メタモルポット
押収
強欲な壺
サイクロン
スケープ・ゴート
団結の力
手札抹殺
早すぎた埋葬
光の護封剣
魔導師の力
ライトニング・ボルテックス
現世と冥界の逆転
死のデッキ破壊ウイルス
魔のデッキ破壊ウイルス
魔法の筒
無謀な欲張り
リビングデッドの呼び声
停戦協定
デビル・フランケン

準制限
深淵の暗殺者
アビス・ソルジャー
暗黒のマンティコア
強制転移
成金ゴブリン
抹殺の使徒
レベル制限B地区
グラヴィティ・バインド−超重力の網−
ラストバトル!
炸裂装甲



第一章 伝説の始まり

私立龍星高校、県内では中間レベル
どこにでもある普通の私立高校なのだが、ここには他の高校には無いある部活動があった…

「ねえ光、部活動どれにする?」

きょろきょろと辺りを見渡す二人の少女
一人は青のショートカット、もう一人は気の弱そうな金髪ツインテール

「ねえ、どうする?」

ショートカットの少女、風間 俊子(かざま しゅんこ)が言う
しかしもう一人の、ツインテールの少女、御門 光(みかど ひかり)は、既に入る部活動を決めていた

「ごめん、私、もう決めてるんだ」

光はポケットから何かを取り出す
…カードの束
茶色…と言っていいのか、よくわからない色の渦巻きが描かれ、右下にはロゴがある
『遊戯王 オフィシャルカードゲーム デュエルモンスターズ』

「それって…お兄さんの?」

俊子が聞くと、光は「うん」とうなづく
その後カードの束を裏返し、その一番上にあるカードを見る

『カオス・ソルジャー』

このカードゲームの原作となる漫画で、主人公の使用したカード
儀式魔法カードによって降臨する、儀式モンスターだ
しかしこのカード、本来儀式モンスターは青色であるはずのカードの枠が、黄色…つまり、通常モンスターの色になっている
そしてテキスト欄には「B・W・Dと同等の能力を持つ最強の戦士。」と書かれている
そう、あたかも通常モンスターのように

「でもさ、お兄さんから貰ったってだけで、それをやったことないんでしょ?」

俊子の質問に、光は再び「うん」とうなづく

「私の周りには、ぜんぜんやってる人いなかったから
でも、ここならたくさんいるからね
遊戯王カード部があるくらいなんだし」

遊戯王カード部、全国の高校でも、非常に珍しい部活動である
こういった部活動は、大抵の場合生徒からの申請で作られる
しかしここの場合この部活動は、創立当時からあるのだ
さらに学校長も理事長も、学校関係者のほとんどが、遊戯王のプレイヤーでもなければ、原作コミックのファンでもない
単なる気まぐれで作ったとしてしか考えられない部活動だ
しかし今まで廃部せずに生き残ってきたというのは、やはり遊戯王というカードゲームが人気があるからなのだろうか

「そこまで入りたいのなら止めないけど…私は嫌だよ」

俊子がそう言うと、光はしょぼんとする
それを見て、俊子は慌てて言葉を続ける

「べ、別にその部活がオタクっぽいとか、そういうのじゃないのよ
私、カードなんか一枚も持ってないし…それに、なんか、怪しいじゃない
本来学校としてあるべきではないような、カードゲームを扱った部活動が創立当時からあるだなんて…
この部活、絶対何かあるわよ!」

それを聞いて光はさらにしょぼんとしてしまう
少し、沈黙が流れる
そこで突然、光はにっこりと笑いかけた

「大丈夫、もし何かあったら、お兄ちゃんが助けてくれるから」

俊子は心配そうに口を曲げ、仕方が無く去っていった
この後、恐ろしい運命が待っているとも知らずに
そう、これから先出番が全く無くなるという恐ろしい運命に…(ぇ
だって遊戯の声優さんから取った適当な名前のキャラなんて一発キャラに決まってるじゃん(酷

そして遊戯王カード部、略して遊戯部(マテ
たくさんの入部希望者が集まっている
ざっと30人といったとこだろうか

「うっわ〜、すっげー…」

茶色のツンツンヘアーをした、体育会系の少年が目と口を大きく開けて周りを見渡している
奥の方から、黒い長髪の…ドラゴンボールのあるキャラクター、ヤムチャを思い浮かべる髪形の男が歩いてくる

「ようこそ1年ども!
俺様が部長の、海日 疫太郎(うみび やくたろう)だ!」

威張った口調で言う海日、これはヤムチャというよりベジータだろうか
光は、怖そうに身をしぼめる
どうやら、とても苦手なタイプのようだ

「クックック、これより入部テストの説明をする、しっかりと聞けよ」

やっぱり威張った口調で言う海日
入部希望者達は、入部テストなんてあるのかと驚いている

「ルールは簡単、ここにいる全員でツブしあえ
どいつとデュエルしてもいいぞ
最後まで生き残った3人が入部決定だ
ウチは弱い奴はいらねーからな
あと、勝った奴は負けた奴からレアカードを奪うことができる…」

まるで縮小版バトル・シティ
まさに遊戯部の入部テストといった感じだ
しかしその後、彼は衝撃の言葉を発す

「いや…レアカードだけじゃねえ
デッキごと頂こうか」

部室中に、どよめきが走る

「逃げ出すんなら今のうちだぞ」

そう言われて、一人、二人、三人…と次々と抜けていく
そして、半分以上が抜けてしまった
光は抜けなかった
兄が大好きだった遊戯王を、自分もやってみたいから
兄のデッキなら、どんな相手にも勝てる自信があったから

「よし、もう抜ける奴はいねーな、んじゃ、こいつを渡しておく」

海日が渡したのは、デュエルディスクだった
コナミから発売された、デュエリストのためのアイテム
かつては単なるコスプレグッズだったが、新たに開発されたソリッド・ビジョンシステムによって、モンスターの姿を映し出すことができるようになっている
まさに夢のシステムといってもよいだろう

「それじゃあ、デュエル開始だ
負けた奴はちゃんとデッキを渡せよ」

海日に言われて、早速デュエルが始まる
光は相手を探すが、誰もデュエルをしてくれない

「いでよ、エクゾディア!!!」

薄紫色の髪をした男が、エクゾ1キルであっと言う間に3人抜き
そして次の相手は、さっきの茶髪体育会系
二人のデュエルが始まった

「私のエクゾディアが…崩れ落ちてゆく…」

茶髪の勝利のようだ

「よっしゃ、デッキゲットォォォオォォォォ」

エクゾ1キル野郎から、彼のエクゾ1キルデッキと彼が奪った3つのデッキを奪い取る
そこで、茶髪はある事に気がつく

「おい、このエクゾディア偽者じゃねーか
いくら本物が手に入らないからって偽者使うのはどうかと思うぞ
つーかエクゾディアパーツは今、本体以外ノーマルで手に入るからそれ買えよ」

的確なツッコミに、1キル野郎は慌て出す

「ヒィィィィィィィィ〜!ヒ…助けて…来る来る来る助けて…来るああああ!来る…来る……来る…来る…マリク様が……」

いくらエクゾ1キルで負けたからって原作キャラのモノマネはないんじゃないのか…と、ここにいる全員が思った
光は相変わらず相手が見つからない
…と、思えば、もう一人相手が見つからず、隅で縮こまっている小柄な少年を見つけた

「ねえ、デュエル…しない?」

と、言おうとした途端に…

「よーし、これで終了だ」

さっきの茶髪男が大量のデッキを抱えて笑っていた
おそらく、光と小柄な少年以外全員のデッキを持っているのだろう
光はデュエルができなかったのは残念だが、人のデッキを奪うことがなくて残念だと思った

「おうおう、まさか三人中二人が不戦勝とはな
まあいい、とりあえず、奪ったデッキをよこせ」

茶髪は「えっ?」というような顔をする

「誰がそのデッキをやるっつったよ
奪ったデッキは遊戯王カード部の物、つまり俺様の物だ
部費みたいな物だと思え」

茶髪は怒って「なんだよ!」と掴みかかる
しかし簡単にかわされ、奪ったデッキどころか元から持っていたデッキさえも奪われてしまった

「フン、俺様の言う事が聞けないとはな…
そんな奴はこうしてやる!」

そう言うと海日は茶髪のみぞおちに蹴りを一発入れる
茶髪は倒れ、苦しそうに腹を押える

「ひどい…」

光はあまりの酷さに、涙が出る
それを見た海日はにやりと笑い、光と隣にいた気の弱そうな少年に言う

「そうだな…てめーらもデッキをよこしな
一回もデュエルをしないだなんて卑怯な真似をした罰だ」

悪魔のように言う海日
それに対し、光が立ち上がった

「いいわ、デッキをあげる
ただし、あなたが私に勝てたらね」

光はデュエルディスクをデュエルモードに変形させて構える
さっきまで泣いていた目つきは、鋭く変わっていた
そう、まるで遊戯がアテムへと変わるように…



第二章 初心者VS上級者

「勝てたら…だとぅ?」

この男は偉そうにしか物を言えないのだろうか
最初から勝ち誇った表情でいる

「やってやろうじゃねーの、後悔してもしらねーぜ」

海日は笑いながらデュエルディスクを装着する

「デュエル!」

光の先攻、カードを引き、手札に加える
そして手札から一枚のカードを選択し、ディスクに置く

「私は、レオ・ウィザードを召喚!」

レオ・ウィザード
☆5 地 魔法使い 1350 1200

しかしソリッドビジョンは表示されない

「あれ?壊れてるの?」

そう言うと同時に海日は大爆笑
まさに「バカ笑い」という笑い方だった

「貴様、レベル5のモンスターを生贄無しで召喚しやがって!!!
もしや初心者だな!ふははははははっ!ルールくらい勉強しとけ!クク…笑いすぎて腹が痛てぇ…」

バトルシティで某原作キャラも同じミスをしていたっけ…と茶髪と気弱は呆れて見ていた
…というか、いい加減この二人に名前付けてやれよ(←まだ考えてない)

「じゃあ、壺魔人を守備表示」

壺魔人
☆3 炎 炎 200 1800
リバース:フィールド上に表側表示で存在する「ドラゴン族・封印の壺」を破壊する。破壊した場合、フィールド上に表側表示で存在するドラゴン族モンスターは全て攻撃表示になる。

裏側守備表示でセットしているのだが、きっちりとモンスターの名前を言っている
海日は再び大爆笑

「よーし、それで貴様のターンは終了だな!
俺様のターン!魔導戦士ブレイカー召喚!」

魔導戦士 ブレイカー
☆4 闇 魔法使い 1600 1000
このカードが召喚に成功した時、このカードに魔力カウンターを1個乗せる(最大1個まで)。このカードに乗っている魔力カウンター1個につき、このカードの攻撃力は300ポイントアップする。また、その魔力カウンターを1個取り除くことで、フィールド上の魔法・罠カード1枚を破壊する。

もはやOCGではお馴染みの、最強クラス下級モンスターが、海日のフィールドに召喚される
そして魔力カウンターが乗り、攻撃力は300ポイントアップする

魔導戦士 ブレイカー 攻撃力1600→1900

「ブレイカーでそのザコを攻撃!」

剣による一撃で、壺魔人は真っ二つに

「カードを1枚伏せ、ターンエンドだぁ!」

いきなり強力モンスターで攻めてくる海日
光は負けじとカードをドローする

「カードをセットして、モンスターを守備表示!ターンエンド!」

海日のターン、もはや勝利を確信したような顔で、新たなモンスターを召喚する

「ブレイドナイト!」

ブレイドナイト
☆4 光 戦士 1600 1000
自分の手札が1枚以下の場合、フィールド上のこのカードの攻撃力は400ポイントアップする。また、自分のフィールド上モンスターがこのカードしか存在しない時、このカードが破壊したリバース効果モンスターの効果は無効化される。

さらにブレイカーの効果で伏せカードを破壊する
伏せカードは…零式魔導粉砕器

零式魔導粉砕機
永続罠
手札の魔法カードを1枚捨てる度に、相手ライフに500ポイントダメージを与える。

「ブレイカーでそのザコを攻撃!」

勝手にザコだと言っている…どこまで偉そうなのだろうか、こいつは

闇の芸術家
☆3 闇 悪魔 600 1400
光属性モンスターの攻撃を受けた時、このカードの守備力は半分になる。

やっぱりザコだった
レオ・ウィザード、壺魔人、零式魔導粉砕機、闇の芸術家…
ここまで来ると、もはや何がやりたいのかわからない

「ブレイドナイトのダイレクトアタックゥ!」

やっぱり偉そうにキメる海日
剣で切られるソリッド・ビジョンに、光はびっくりして悲鳴を上げる

光LP8000→6400

「よーし、貴様のターンだ」

もう、いちいち偉そうとかツッコむのにも飽きてきた

「私のターン」

光は引いたカードを見てはっとする

「モンスターを守備表示
カードを伏せてターンエンド」

海日は光がカードを引いた時の表情を見抜いていた
モンスターと、伏せカード、このどちらかがそのカードではないかと推測する

「俺様のターン、サイクロンに抹殺の使途!」

サイクロン
速攻魔法
フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する。

抹殺の使徒
通常魔法
裏側表示のモンスター1体を破壊しゲームから除外する。もしそれがリバースモンスターだった場合お互いのデッキを確認し、破壊したモンスターと同名のカードを全てゲームから除外する。その後デッキをシャッフルする。

対策も完璧である
これが上級者の実力なのか
サイクロンで破壊されたカードは、迷宮変化

迷宮変化
装備魔法
「迷宮壁―ラビリンス・ウォール」に装備し、このカードと「迷宮壁―ラビリンス・ウォール」を生け贄に捧げる。デッキから「ウォール・シャドウ」を特殊召喚する。

やっぱり最弱クラスのカード
海日が偉そうなこと以上にツッコむのに飽きてくる
そして、抹殺の使途で除外されたカードは…

ダーク・アイズ・イリュージョニスト
☆2 闇 魔法使い 0 1400
リバース:このカードがフィールド上に存在している間、指定した対象モンスター1体は永続的に攻撃できなくなる。

ふざけるのもいい加減にしろ、である
光はデッキを確認し、2枚のダーク・アイズ・イリュージョニストを除外する
…ツッコミは無しの方向で

「ククク、やはり初心者のようだな
霊滅術師カイクウ召喚!」

霊滅術師 カイクウ
☆4 闇 魔法使い 1800 700
このカードが相手に戦闘ダメージを与える度に、相手墓地から2枚までモンスターを除外する事ができる。またこのカードがフィールド上に存在する限り、相手は墓地のカードをゲームから除外する事はできない。

「3体のモンスターでダイレクトアタックだ!」

ブレイカー、カイクウ、ブレイドナイト、3体によるジェットストリームアタック
これはかなり痛い
さらにカイクウの効果で墓地の壺魔人と闇の芸術家を除外する

光LP6400→1400

「クク、次のターンでとどめだ…」

勝利を確信した海日
しかし次の瞬間…

「E・HEROエッジマンと沼地の魔獣王を融合!
E・HEROワイルドジャギーマン!」

E・HERO エッジマン
☆7 地 戦士 2600 1800
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

沼地の魔獣王
☆4 水 水 1000 1100
このカードを融合素材モンスター1体の代わりにする事ができる。

融合
通常魔法
手札またはフィールド上から、融合モンスターカードによって決められたモンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。

E・HERO ワイルドジャギーマン
☆8 地 戦士 2600 2300
「E・HERO ワイルドマン」+「E・HERO エッジマン」
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。相手フィールド上の全てのモンスターに1回ずつ攻撃をする事ができる。

「ワイルドマン」ではなく「エッジマン」、「魔神王」ではなく「魔獣王」であるところがポイントである

「ワイルドジャギーマンで3体を攻撃!インフィニティ・エッジスライサー!」

ワイルドジャギーマンの剣が、3体のモンスターを一気に破壊する

海日LP 8000→5200

「へーぇ、案外まともなカードも入ってんじゃねーの」

海日の額に冷汗が伝った…


LP 1400
場  E・HEROワイルドジャギーマン
手札 1枚(レオ・ウィザード)

海日
LP 5200
場  伏せカード
手札 2枚



第三章 かいびゃくのししゃ

「俺様のターン!」

勢いよくカードを引く海日

「強欲な壺、発動!」

さらにデッキからカードを二枚引く
本当なら喜ぶところだが、、引いたカードを見て悔しそうな顔をする

「(ショッカー、パーシアス、ザボルグ、セイマジ…
どうして上級が3枚も手札にあんだよ…)」

みなさん、シャッフルはちゃんとやりましょう

「(しかも伏せカードのスケープ・ゴートを使っても、ワイルドジャギーマンに一気に倒されちまう…)」

スケゴの意外な弱点、全体攻撃モン

「守備モンスターを出し…ターンエンドだ」

セイマジを伏せて、ターンを終了する
強欲な壺を再利用するつもりだ
どんな完璧なデッキでも、手札事故には勝てないということか

「私のターン、ワイルドジャギーマンで攻撃!」

聖なる魔術師
☆1 光 魔法使い 300 400
リバース:自分の墓地から魔法カードを1枚選択する。選択したカードを自分の手札に加える。

聖なる魔術師は破壊され、リバース効果により海日は強欲な壺を手札に加える

「エクスチェンジ、発動」

エクスチェンジ
通常魔法
お互いに手札を公開し、それぞれ相手のカードを1枚選択する。選択したカードを自分の手札に加え、そのデュエル中使用することができる。(墓地に送られる場合は元々の持ち主の墓地へ送られる)

光は強欲な壺を何の抵抗も無く奪い取る
そして海日は何の役にも立たないレオ・ウィザードを手札に加えるはめに

「強欲な壺を発動!」

光はデッキからカードを二枚ドローし、その片方を伏せる

「ターンエンド!」

完全に追い詰められた海日
ドローした天使の施しを発動させ、なんとか逆転を狙う

「頼む…来てくれ…!」

本来主人公が言うべき台詞を放ち、3枚のカードをドローする

「き…キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!」

喜びのあまりAAまで使う始末
調子に乗って捨てたカードはザボルグとショッカー
レオ・ウィザード捨てろよ
…まあ、あのカードが来た喜びでそこまで頭が回らないのだろうが

「墓地のブレイカーとブレイドナイトをゲームから除外し…
いでよ我が最強のしもべ!カオス・ソルジャー−開闢の使者−!!!」

天使の施し
通常魔法
デッキからカードを3枚ドローし、その後手札からカードを2枚捨てる。

カオス・ソルジャー −開闢の使者−
☆8 光 戦士 3000 2500
このカードは通常召喚できない。自分の墓地の光属性と闇属性モンスターを1体ずつゲームから除外して特殊召喚する。自分のターンに1度だけ、次の効果から1つを選択して発動ができる。
●フィールド上に存在するモンスター1体をゲームから除外する。この効果を発動する場合、このターンこのカードは攻撃する事ができない。
●このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、もう1度だけ続けて攻撃を行う事ができる。

OCGでは現在禁止カードの最強モンスターが、海日のフィールドに召喚される
某社長の如く高らかに笑う海日
勢いよく攻撃宣言をする

「行けぇ!開闢双覇斬!!!」

開闢の剣が、ワイルドジャギーマンを襲う…

「罠発動!老化の呪い!」

老化の呪い
通常罠
手札からカードを1枚捨てる。ターン終了時まで相手フィールド上のモンスターの攻撃力・守備力は500ポイントダウンする。

光は手札のラーバモスを捨てる
突然白い煙が出て、開闢はヨボヨボのお爺さんになってしまう

カオス・ソルジャー −開闢の使者− 攻撃力3000→2500

「インフィニティ・エッジスライサー!」

ワイルドジャギーマンの剣は、お爺さんになった開闢をあっと言う間に切り倒す
お年寄りは大切に…

海日LP5200→5100

「お、お、俺の開闢が…俺の…俺の…」

切り札である開闢を老化の呪いだなんてザコカードで倒され、放心状態になる海日
もはや自分が何をやっているのかすらわからなくなっていた

「えっと、まだあなたのターンだけど…」

光に言われ、海日はモンスターを裏守備でセットしてターンを終了した

「私のターン、魔法カード、死者蘇生!」

死者蘇生
通常魔法
自分または相手の墓地からモンスターを1体選択する。選択したモンスターを自分のフィールドに特殊召喚する。

これまたOCGでは禁止となっている強力魔法
光の墓地から、エッジマンが蘇える

「エッジマンで守備モンスターを攻撃!」

イグザリオン・ユニバース
☆4 闇 獣戦士 1800 1900
自分ターンのバトルステップ時に発動する事ができる。このカードの攻撃力を400ポイントダウンして守備表示モンスターを攻撃した時にその守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手に戦闘ダメージを与える。この効果は発動ターンのエンドフェイズまで続く。

海日LP5100→4400

「ワイルドジャギーマンでダイレクトアタック!」

ワイルドジャギーマンが海日に突進する

「リバースカードオープン、スケープゴート」

スケープ・ゴート
速攻魔法
このカードを発動する場合、このターン内は召喚・反転召喚・特殊召喚できない。自分のフィールド上に「羊トークン」(獣族・地・星1・攻/守0)を守備表示で4つ置く。(生け贄召喚のため生け贄には出来ない)

デュエル開始時とは別人かと思うような暗い声で、海日が言う
ワイルドジャギーマンの剣は、4体の羊トークンを一気に破壊した
光はカードを一枚伏せてターンを終了

「開闢ぅ…早く戻ってきてくれぇ…」

泣きながらカードを引く海日
ドローしたカードは…炸裂装甲
このカードをセットし、ターンを終了する

「うぐ…えっぐ…開闢ぅ…」

もう、まるで子供である

「私のターン…」

開闢が倒されたくらいで泣く海日に、呆れた顔をする光

「ワイルドジャギーマンでダイレクトアタック」

海日へと向かうワイルドジャギーマンに、炸裂装甲が発動する

炸裂装甲
通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。その攻撃モンスター1体を破壊する。

炸裂装甲の効果により、ワイルドジャギーマンは粉々に砕け散る

「エッジマンのダイレクトアタック!」

せっかくワイルドジャギーマンを倒したのもつかの間
エッジマンが海日に強烈な一撃を与える

海日LP5100→2500

そういえば、この小説の主人公ってどっちだっけか?
そう、海日である(ぇ
主人公といえばこの大ピンチの状況で必ずディスティニードローをする
そしてついに海日のラストターン

「ドロー!」

目をつぶって、カードを引く
このドローに全てをかける
カードを自分の目の前に持っていき、そっと目を開ける

「よ、よぉっしゃあぁぁぁぁぁ!
魔法カード、死者蘇生!
蘇えれ開闢ぅ!」

海日のフィールドに再び最強の戦士が降臨する
まさにこれが奇跡のドロー、主人公特権である

「ぶっ倒せ!開闢双覇斬!」

次こそ倒せるか、最後の一撃…

「ヒーローバリア!」

ヒーローバリア
通常罠
自分フィールド上に「E・HERO」と名のついたモンスターが表側表示で存在する場合、相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする。

一応言っておくが光のデッキはE・HEROデッキではない
一枚のバリアが開闢の攻撃を防ぐ

「ま、またしても…」

攻撃を防がれて歯を食いしばる海日
だが、次のターンがある…はずがない
ここから何行か上にきっちりと「ラストターン」と書かれている
何時海日が主人公になったのだろうか
この物語の本当の主人公は、光である
光の、本当の、ディスティニードロー!


LP 1400
場  E・HEROワイルドジャギーマン
手札 1枚

海日
LP 2500
場  カオス・ソルジャー −開闢の使者−
手札 4枚



第四章 奇跡の最終ターン

光はドローカードを海日に見せ、発動する

「魔法カード、天使の施し!」

3枚引き、のうち、モウヤンのカレーと処刑人マキュラを捨てる

「罠カード、無謀な欲張り!」

無謀な欲張り
通常罠
カードを2枚ドローし、以後自分のドローフェイズを2回スキップする。

マキュラの効果により、手札から罠を発動できる
光はドローしたカードのうちの片方を、モンスターカードゾーンにセットする

「魔法カード、太陽の書!」

太陽の書
通常魔法
裏側表示でフィールド上に存在するモンスター1体を表側攻撃表示にする。

太陽の光に照らされ、メタモルポットがリバースする

メタモルポット
☆2 地 岩石 700 600
リバース:自分と相手の手札を全て捨てる。その後、お互いはそれぞれ自分のデッキからカードを5枚ドローする。

光と海日は手札を全て捨て、デッキからカードを5枚引く
ちなみに光が捨てたカードはスパイクシードラだ

「カオスの儀式、発動!」

カオスの儀式
儀式魔法
「カオス・ソルジャー」の降臨に必要。場か手札から、星の数の合計が8個以上になるよう生け贄を捧げなければならない。

エッジマンとメタモルポットを生贄に捧げる
ひとつの魂は光を誘い――ひとつの魂は闇を導く!
やがて光と闇の魂はカオスのフィールドを創り出す!!
そして真の最強戦士が、光のフィールドに姿を現す…

「いでよ!カオス・ソルジャー!」

カオス・ソルジャー
☆8 地 戦士 3000 2500
「カオスの儀式」により降臨。場か手札から、星の数が合計8以上になるようカードを生け贄に捧げなければならない。

開闢の使者とは違う、本物のカオス・ソルジャー


本物の…


「そ、そのカオス・ソルジャーは…」

光のカオス・ソルジャーを指差して、怯える海日
光は、静かに、何かを思い出すかのように語りだす

「そう、世界に一枚しか存在しないという、本物のカオス・ソルジャー
このカードは、コレクターである私の兄がとあるルートで手に入れた物…
どうやってこのカードを手に入れたのかは、わからないけどね」

海日は口をぽかんと開けてそれを聞いていた
まさか自分が戦っている相手が本物のカオス・ソルジャーを持っていただなんて、思ってもいなかったからだ

「よ、よぉーし、このデュエルに勝利し、そのカオス・ソルジャーは俺様がいただく!」

…絶対言うと思った

「このカードだけは…渡せない!」

そう言って光は手札から一枚のカードを発動する

「強欲な壺を発動!」

あれだけドローしたのにまだドローするか
さらにもう一枚

「血の代償を発動!」

血の代償
永続罠
500ライフポイントを払う事で、モンスター1体を通常召喚する。この効果は自分ターンのメインフェイズ及び相手ターンのバトルフェイズのみ発動する事ができる。
3枚

「500ライフを払い、守備モンスターを出し、太陽の書を発動!」

悪魔の偵察者
☆2 闇 悪魔 650 500
リバース:相手はカードを3枚ドローする。ドローしたカードをお互いに確認し、その中に魔法カードがあった場合、その魔法カードを全て墓地に捨てる。

光LP1400→900

海日はデッキから3枚引き、突然変異と押収を捨てる
そして光はもう一枚

「ギャンブル発動!」

ギャンブル
通常罠
相手の手札が6枚以上、自分の手札が2枚以下の時に発動可能。コイントスで裏表を当てる。当たりは自分の手札が5枚になるようにドローする。ハズレは次の自分のターンをスキップする。

まだドローするつもりだろうか
光は表と宣言し、コインを投げる
コインは…表!
デッキから5枚のカードをドローする

「奇跡の発掘を発動!」

奇跡の発掘
通常魔法
自分のモンスターが5体以上ゲームから除外されている場合、その内の3体を墓地に戻す。

光は除外された壺魔人、闇の芸術家、ダーク・アイズ・イリュージョニストを墓地に戻す
そしてまたまたもう一枚

「苦渋の選択、発動!」

光が選んだカードは、ゲート・ガーディアン、ゲール・ドグラ、ウォール・シャドウ、世界の平定、グレート・モス
どれも最弱クラスのカードだ
海日はウォール・シャドウを選択し、他のカードは墓地に送られる

「成金ゴブリン、発動!」

成金ゴブリン
通常魔法
デッキからカードを1枚ドローする。相手は1000ライフポイント回復する。

またドロー系カード、デッキ切れが心配である

海日LP2500→3500

「融合回収を発動」

融合回収
通常魔法
自分の墓地に存在する「融合」魔法カード1枚と、融合に使用した融合素材モンスター1体を手札に加える。

墓地の沼地の魔獣王と融合を手札に加える

「魔法石の採掘、発動」

手札のウォール・シャドウと沼地の魔獣王を捨て、墓地の強欲な壺を手札に戻す
そして発動、またドロー

「二重魔法、発動」

二重魔法
通常魔法
手札の魔法カードを1枚捨てる。相手の墓地から魔法カードを1枚選択し、自分のカードとして使用する。

融合を捨て、海日の墓地から強欲な壺を取り出し、発動する

「ゴブリンのやりくり上手、発動」

ゴブリンのやりくり上手
通常罠
自分の墓地に存在する「ゴブリンのやりくり上手」の枚数+1枚をデッキからドローし、手札からカードを1枚選択してデッキの一番下に戻す。

デッキからカードを引き、ワイトをデッキに戻す

「500ライフを払い、守備モンスターを出す」

光LP900→400

「さらに太陽の書を発動!」

闇の仮面
☆2 闇 悪魔 900 400
リバース:自分の墓地から罠カードを1枚選択する。選択したカードを自分の手札に加える。

「無謀な欲張り、発動」

デッキから二枚ドローする

「ゴブリンのやりくり上手、発動」

二枚目のやりくり、デッキから2枚引き火の粉を戻す

「おろかな埋葬、発動」

おろかな埋葬
通常魔法
自分のデッキからモンスター1体を選択して墓地へ送る。その後デッキをシャッフルする。

デッキのワイトを墓地に送る

「ギャンブル発動」

光は裏を宣言、コインは裏を向く
デッキからカードを4枚引く
このドローによって、ついに光のデッキはゼロとなる

「モウヤンのカレー、発動」

モウヤンのカレー
通常魔法
ライフポイントを200ポイント回復する。

光LP400→600

「魔法除去細菌兵器、発動!」

魔法除去細菌兵器
通常罠
フィールド上の自分のモンスターを生け贄に捧げる(トークンは除く)。生け贄に捧げたモンスターの数だけ、相手プレイヤーはデッキから魔法カードを選択して墓地に送り、その後デッキをシャッフルする。

悪魔の偵察者と闇の仮面を生贄に捧げ、海日のデッキに感染させる
海日はデッキから地砕きと強奪を捨てる

「守護霊のお守りを二枚発動!」

守護霊のお守り
通常罠
モンスター1体の攻撃力は、ターン終了時まで自分の墓地のモンスター1体につき、攻撃力が100アップする。

光の墓地に眠るモンスターは、ラーバモス、E・HEROワイルドジャギーマン、処刑人マキュラ、レオ・ウィザード、E・HEROエッジマン、メタモルポット、壺魔人、闇の芸術家、ダーク・アイズ・イリュージョニスト、ゲート・ガーディアン、ゲール・ドグラ、グレート・モス、ウォール・シャドウ、沼地の魔獣王、ワイト、悪魔の偵察者、闇の仮面の17体
更にもう一枚守護霊のお守りを使ったため、カオス・ソルジャーの攻撃力は3400ポイントアップする

カオス・ソルジャー攻撃力3000→6400

「カオス・ソルジャーで、カオス・ソルジャー−開闢の使者−を攻撃…
カオス・ブレード!!」

カオス・ソルジャー同士の対決
二人の剣と剣がぶつかり合う
しかし、その攻撃力には2倍以上の差があった…
開闢の使者は必死で攻撃を受け止めるが、そのまま弾き飛ばされ真っ二つになる

「お、お、俺の開闢が…また…」

再び倒されてしまう開闢を見て、仰け反り返る海日
そしてそのまま頭が地面にごっつんこ

海日LP3500→100

「いや、まだだ」

頭が地面についたまま、海日は笑い出す

「まだ終わってねぇ…」

海日は立ち上がり、かっこつけて光を指差す

「俺のライフはあと100残っている…
そして貴様のデッキはもうゼロ…
次のターンで貴様の負けだ!
ふははははははははァ!」

大爆笑する海日に、光は強気で言う

「残念だけど、あなたの次のターンは無いわ」

最後の一枚の手札を取り出し、デュエルディスクの魔法、罠ゾーンに入れる

「魔法カード、火の粉!」

火の粉
通常魔法
相手ライフポイントに200ポイントのダメージを与える。

火の粉が飛び散り、海日のライフにほんの少しのダメージを与える

海日LP100→0

「ば、馬鹿な…よりにもよって…こんなデッキに…」

海日はうめき声を上げながら、がくっと気を失ってしてしまった

「や、やった!勝った!」

カオス・ソルジャーのソリッドビジョンが消えると共に、光の声が上がった…



第五章 バカはバカを呼びバカはバカと共に

デュエルに敗れ、一人放心状態になる海日
そんなこと気にもせず、光達3人は部室へと入る

「うおおおお!これが遊戯王カード部か!」

茶髪の体育会系…もとい、山田中太郎(やまだ ちゅうたろう)が、ぐっと拳を握り締めて言う
6人ほどの部員が、デュエルをしたりカードを眺めたり、原作のコミックスを読んでいたりと、まさに遊戯部といった感じだ

「ようこそ、遊戯王カード部へ」

1年生達の前に、一人の女性が歩いてくる
藍色の長い髪に、優しそうな瞳をした、綺麗な人

「私が、副部長の天野風花(あまの ふうか)です
これからよろしくお願いしますね」

にっこりと微笑む彼女に、中太郎は自然とぽや〜んとなってくる

「なあ武、あの人すげーお嬢様って感じだよなー」

鼻の下伸ばしながら笑ってる中太郎に、気弱な少年、神沢武(かみさわ たける)はどう答えればいいのかわからず、あははと苦笑いをした

「おーっ、一年生かー?」

さっきまでデュエルをしていた二人が、こっちに来る
一人は背が低い赤い帽子、もう一人は背の高いモヒカン頭

「俺っちは日比秀介(ひび しゅうすけ)、2年生、よろしく☆」

日比は、挨拶するかと思いきや突然ポケットから銃を取り出す
発射口は武に向けられる

「バーン☆」

やる気のない掛け声と共に、パンと音がなる
武は真っ青になって気絶していた

「あれ?脅かしすぎた?」

日比はモデルガンをくるくると回しながらぽかんとしていた
そこでもう一人が、日比には負けじとギターを取り出す

「へーイ!俺は田村拓郎(たむら たくろう)!4649!」

モヒカン頭、ヘビーメタルな服装、バンド部行けよとツッコみたい
…それにしても、酷い演奏だ
格好だけのギタリストとはこのことを言うのか
武がその演奏のせいで永遠に目覚めなくなりそうだが、そんな事には誰も気付いてはいない

「そこの馬鹿ーズには近づかない方がいいですよ、馬鹿がうつりますから」

細長いメガネをかけた男が、パソコンをやりながらキツい言葉を発する
全くこっちを見ずに、失礼な態度だ

「なんだと木之上!」
「誰が馬鹿ーズだ!」

馬鹿ーズはモデルガンとギターを振り回して騒ぎ出す
本当にバカみたいだ

「だいたい僕は木之上じゃなくて木之下ですよ、木之下健三郎(きのした けんざぶろう)」

冷静に返す木之下、それを聞いた二人はさらにバカみたいに騒ぎ出す
愉快な人達だ

「おーいバカトリオー」

ネコミミモード
☆6 闇 魔法使い 2000 1800
「月読命」+「ネコ耳族」

究極竜骸骨の地域では放送されませんでしたorz
馬鹿なオリカはさておき、突然現れたのはネコ耳娘…
この部活はどういう人の集まりなのか

「バカトリオ?あなたと馬鹿ーズを合わせて言っているのですか」

木之上はこれまた冷静にネコ耳に言う

「バカトリオ〜?
えーと、まず木之上だろ、次に…海日部長、で、最後はお前か☆」

日比は銃口をネコ耳に向ける

「日比と田村と木之上のことだよぉ」

ネコ耳はぶりっこポーズで言う
中太郎は「かわいいなー」と鼻の下伸ばしてデレデレしている
惚れっぽい性格のようだ

「僕は木之下だ…」

さっきで冷静を保っていた木之上が、急に震え出す

「川上君!ふざけるのもいい加減にしたまえ!
そのネコ耳といいその喋り方といい…
だいたい僕は木之上ではなく木之下だ!」

眉間にしわを寄せて怒り出す木之上
突然パソコンを持ち上げて暴れだす

「ウワー、木之上がキレたー!」

日比、田村、川上は笑いながら逃げ回る
こんなのが先輩なのか…

「あー、あたし川上亮子(かわかみ りょうこ)ー、よろしくー」

逃げながらのん気に自己紹介
この人本当に2年生ですか?

「お主等、静かにせい」

低く、野太い声
さっきまで暴れていた2年生達の動きが、ピタリと止まる
声の主は、床に座って読書(遊戯王R1巻)をしていた3年生
…どうせこんなことだとは思っていたが、やはり普通の人ではなかった
何故か侍のコスプレをしている

「拙者は本を読みたいのだ
騒ぐのなら他所でやれ」

格好はともかく、貫禄だけは某威張ってるだけの部長よりもずっとある
どうしてこっちが部長に選ばれなかったのだろうか

「あーあ、木之上のせいで雷先輩を怒らせちゃったよ」

日比がつまらなさそうに言う

「彼は、雷政宗(いかずち まさむね)
怒らせると大変だから、彼が本を読んでるときには静かにしてあげてね」

副部長が笑いながら言う
1年生達は笑えなかった
威張ってるだけの部長、お嬢様な副部長、モデルガン常備のバカ、格好だけのギタリスト、言う事全てがキツい眼鏡、ネコ耳モードのぶりっこ、怒ると怖いコスプレイヤー…
ここは一体何部ですか?



第六章 磁石でぴったんこ

「いっや〜、それにしても、にぎやかな部活だなぁ〜」

中太郎がヘラヘラしながら能天気に言う
その後ろを、ヒヨコのように武がついていく

「お前らー、コンテンツ募集要項ちゃんと読んだかー?」

田村がひょっこりと顔を出す

「『遊戯王に関する小説に対する注意事項』の項目の上から二つ目ー
特にボーイズラブなどと呼ばれる分野に

――ゴスッ!

鋭いパンチ、田村の体が1メートルほど飛んだ

「おーい、そこのお前」

赤くはれた手の甲をさすりながら、光に話し掛ける

「八神…光だっけ?」
「違います…」
「じゃあ、八神太一?」
「違います…」
「えーと、石田ヤマトだ!」
「違います…」

どんどん遠ざかってる
いーかげんデジモンから離れろw

「御門光です…」

やっと本当の名前を聞き、中太郎は納得したように手の甲をポンと叩く

「イテぇー!」

さっき田村を殴ってはれたのを完全に忘れていたらしい
涙を流しながら手をさする
…そんなに本気で殴ったのか?

「あんた、あのヤムチャ部長を倒したんだろ
今度は俺と勝負しようぜ」

この人が人の名前を間違うのは天然なのか、それともわざとなのか…
いや、これはわざとだろう、光のは天然だとしても

「別にいいですけど…あ、ちょっと待って」

光はカバンから、いくつかのカードを取り出す
中太郎はそれをそっと見る

「や、やめてください!」

きっぱりと言われ、しぶしぶ戻る

「ちゅーうくんのーすーけーべー♪」

――ゴスッ!

さっきとは逆の手で、日比を殴り飛ばす
先輩も後輩もありゃしない

「終わりました」

光はデッキから抜いたと思われるカードをカバンにしまい、デッキをデュエルディスクにセットする
…抜いたカードに「強欲な壺」が見えたのは気のせいだろう

「俺の先攻だ!
守備モンスターを出し、カードを伏せる!ターンエンド!!」

中太郎のフィールドに二枚の伏せカードが現れる

「私のターン
レオ・ウィザード召喚!」

…前回と同じボケ

「あ、間違えた、守備モンスターを出して、カードを伏せて…ターンエンドっ」

光の顔は真っ赤になる
やれやれ初心者は…と中太郎は軽く受け流す

「俺のターン、苦渋の選択発動!」

デッキから選んだのは、磁石の戦士α、磁石の戦士β、磁石の戦士γ、ヒエラコスフィンクス、守護者スフィンクス
光は守護者スフィンクスを選ぶ

「へへ…魔法カード、魂の解放!」

魂の解放
通常魔法
お互いの墓地から合計5枚までカードを選択し、そのカードをゲームから除外する。

中太郎の墓地から、3体の磁石の戦士が除外される

「リバースカード、オープン
異次元からの帰還!」

異次元からの帰還
通常罠
ライフポイントを半分払う。ゲームから除外されている自分のモンスターを可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する。エンドフェイズ時、この効果によって特殊召喚されたモンスターを全てゲームから除外する。

中太郎LP8000→4000

異次元の扉が開き、3体の磁石の戦士が帰還する

磁石の戦士α
☆4 地 岩石 1400 1700

磁石の戦士β
☆4 地 岩石 1700 1600

磁石の戦士γ
☆4 地 岩石 1500 1800

「さらに、岩石の巨兵を生贄に…地帝グランマーグ召喚!」

地帝グランマーグ
☆6 地 岩石 2400 1000
このカードの生け贄召喚に成功した時、フィールド上にセットされたカード1枚を破壊する。

岩石の体をした巨人が召喚され、大地が揺れる
光の裏守備モンスター、プチリュウは地割れに飲み込まれ、破壊される

プチリュウ
☆2 風 ドラゴン 600 700

「地帝グランマーグのダイレクトアタック!」

グランマーグの拳が襲い掛かる

「罠発動!ホーリージャベリン!」

ホーリージャベリン
通常罠
相手の攻撃モンスター1体の攻撃力分のライフポイントを回復する。

光LP8000→10400→8000

衝撃は聖なる槍に吸収され、ライフポイントが回復する
しかし、せっかく回復したライフもすぐに戻されてしまう

「3体の磁石の戦士でダイレクトアタック!」

3体のモンスターが光に向かって一気に突進する

光LP8000→3400

岩石族の防御型のイメージとはまるで違う、超攻撃型の戦術
ライフが減ったって気になんかしない
ただひたすらに攻撃あるのみ!である

「まだまだ!3体の磁石の戦士を合体する!」

磁石の戦士達が、変形し、合体する
場に召喚されたのは、岩石族最強の攻撃力を誇るマグネットモンスター

磁石の戦士マグネット・バルキリオン
☆8 地 岩石 3500 3850
自分の手札とフィールドに、α、β、γがいる時、この3体を生け贄に捧げれば特殊召喚可能。また墓地にα、β、γがいる時、このカードを生け贄に捧げ、3体を場に出すことができる。

「ターンエンドだぜ」

最強の岩石モンスターを召喚し、優越感に浸る中太郎

「私のターン、カードを一枚伏せ、カオスの儀式を発動!
レオ・ウィザードと闇の芸術家を生贄に捧げ――」

ついに来るか…光の最強モンスター

「カオス・ソルジャー、降臨!」

光の切り札でもあるカオス・ソルジャー
レプリカとは違う、本物の輝きは中太郎さえも圧倒する

「カオス・ソルジャーで地帝グランマーグを攻撃!」

鋭い眼差しが、グランマーグを怯えさせる
カオス・ソルジャーは一瞬の間合いを取り、一気に首を切り落とす

中太郎LP4000→3400

「これが本物のカオス・ソルジャーか…
だが、攻撃力ならマグネット・バルキリオンの方が上だ!俺のターン!」

中太郎はドローしたカードを確認し、発動する

「強欲な壺、発動!さらに、ドローした天使の施しも発動だ!」

壺施し、ここにいたふたが入れば完璧なのだがw
3枚引き、守護者スフィンクスとモアイ迎撃砲を捨てる

「マグネット・バルキリオンの攻撃!」

電磁の剣が、カオス・ソルジャーへと向かう
その力は、伝説の最強戦士さえも凌ぐ…!

「マグネット・セイバー!!」

グランマーグの仇と言わんばかりに、カオス・ソルジャーを真っ二つにする

光LP3400→2900

「ターンエンドだ!」
「わ、私のターン…」

切り札であるカオス・ソルジャーを倒され、かなりの痛手を喰らった光

天使の施しを発動し、なんとか逆転を狙う

「アームドドラゴンLV3と、処刑人マキュラを捨て…
E・HEROバブルマンを特殊召喚!」

E・HERO バブルマン
☆4 水 戦士 800 1200
手札がこのカード1枚だけの場合、このカードを手札から特殊召喚する事ができる。このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に自分のフィールド上と手札に他のカードが無い場合、デッキからカードを2枚ドローする事ができる。

バブルマンの効果で、2枚ドローする

「レベル調整を発動!」

レベル調整
通常魔法
相手はカードを2枚ドローする。自分の墓地に存在する「LV」を持つモンスター1体を、召喚条件を無視して特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは、このターン攻撃できず効果を発動及び適用する事もできない。

中太郎はカードを2枚引き、光は墓地からアームドLV3を特殊召喚する

アームド・ドラゴンLV3
☆3 風 ドラゴン 1200 900
自分のターンのスタンバイフェイズ時、表側表示のこのカードを墓地に送る事で「アームド・ドラゴン LV5」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。

「ギャンブル発動!」

中太郎の手札が6枚になって、このカードの発動条件が揃う
表を宣言し、コインを投げる
コインは当然のごとく表を向いた
光は5枚のカードをドローし、一番最初にドローしたカードを発動する

「無謀な欲張り発動!」

光は最終ターンになると連ドローをするとの伝説が…(ぇ

「モウヤンのカレー、発動」

光LP2900→3100

「ゲール・ドグラ召喚!」

ゲール・ドグラ
☆2 地 昆虫 650 600
3000ライフポイントを支払う事で、自分の融合デッキからモンスターを1体墓地に捨てることができる。

光LP3100→100

光は融合デッキの青眼の究極竜を墓地に捨てる
モウヤンのカレーによるライフ微調整…ギリギリだw

「死者蘇生!プチリュウを蘇生する!」

グランマーグの効果であっさり破壊されたザコモンスターが蘇える
…カオソル復活させろよ

「モンスターゲート発動!」

モンスターゲート
通常魔法
自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる。通常召喚可能なモンスターが出るまで自分のデッキをめくり、そのモンスターを特殊召喚する。他のめくったカードは全て墓地に送る。

ゲール・ドグラを生贄に捧げ、モンスターゲートが開く
光はデッキをめくる
零式魔導粉砕機、ラーバモス、世界の平定、鉄壁の布陣が次々とゲートに吸い込まれ、やっと引いた通常召喚召喚可能なモンスター、一眼の盾竜を特殊召喚する

一眼の盾竜
☆3 風 ドラゴン 700 1300

「竜魂の力、発動」

竜魂の力
装備魔法
戦士のみ装備可能。装備モンスターはドラゴン族となり、攻撃力・守備力がそれぞれ500アップする。

バブルマンは竜魂の力を得て、ドラゴン族になる

E・HEROバブルマン 攻撃力800→1300

「竜の鏡、発動!」

龍の鏡
通常魔法
自分のフィールド上または墓地から、融合モンスターカードによって決められたモンスターをゲームから除外し、ドラゴン族の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)

「墓地のカオス・ソルジャーと青眼の究極竜をゲームから除外し…」

墓地に眠る二つの魂が、竜の鏡に吸い込まれる
やがて二つの魂は一つとなり、究極の竜騎士が誕生する

「マスター・オブ・ドラゴンナイト!召喚!」

究極竜騎士
☆12 光 ドラゴン 5000 5000
「カオス・ソルジャー」+「青眼の究極竜」
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。このカードを除く自分のフィールド上のドラゴン族モンスター1体につき、このカードの攻撃力は500ポイントアップする。

レベル12、攻撃力5000、遊戯王界最強のモンスターが今、光のフィールドに降臨した

「乗っかっただけですけどね」

光ちゃん、そのセリフのせいで全て台無し(笑)

「究極竜騎士の効果発動!自分フィールド上のドラゴン族モンスターを背中に乗せます!」

あ、乗せるんだw

乗っかっただけ騎士 攻撃力5000→7000

「究極竜騎士の攻撃!」

バブルマンの腕につけられたキャノンから水の竜が吹き出す
一眼の盾竜の目から、鋭いビームが発射される
アームド・ドラゴンが、体のトゲを飛ばして攻撃する
プチリュウはその小さな翼から風を起こす
ブルーアイズの3つの頭が、アルティメット・バーストを放つ
そしてカオス・ソルジャーは剣を振る
全ての力が一つとなり、マグネットバルキリオンへと向かう


「ギャラクシー・クラッシャー!!」


マグネット・バルキリオンは何の抵抗もできず、砕け散った
その力の差に、誰もが騒然とした

中太郎LP3400→0

「くっそー、負けたーっ」

中太郎は悔しそうに腰を落とし、頭をかく

「山田君、ありがとね♪」

光は握手をしようと、手を中太郎に向ける

「おう!」

中太郎はビシッとかっこつけて光の手を握る
光の指がはれている部分に触れて…

「痛ェーーーーーー!!!」

人を殴るのはやめましょう
絶対自分に帰ってくるから



第七章 T・O・D(中太郎おバカですよ)

「そんでよー、その真紅眼子ちゃん物語とかいうのがすげー面白くてさー」
「へぇ…読んでみたーい」
「あはは…」

学校の帰り道、光、中太郎、武は楽しそうに話をしながら、一緒の道を歩いている

「あと、そのサイトにあるビギナーズ・カップっていう小説、すげーつまんねーよなー
本田ヒロトのキャラがわかってないし、デュエルもご都合主義ばっかだし
挙句の果てに名作パクるし
多分あのサイトで一番下手なんじゃねーの?アハハ」

話の内容についてツッコミは一切無しですよ?

「あれ?こんなところにカードショップなんてあったっけ?」

武が、右手に見えるカードショップを指差す
カードショップ「トランス」…
ついこの前まで、こんなものはなかった

「な、行ってみようぜ!」

中太郎が光たちの同意を求めずに、勝手にカードショップに入る
二人は仕方が無くついていく
…カードショップの中は真っ暗で、誰もいない

「おーい、誰かいるかー?」

中太郎が呼びかけるが、返事がない

「まだ工事中なんじゃない?」

光が辺りを見渡しながら言う
中太郎と武も、何かないか探す

「どうも、本当に工事中みたいだな」

中太郎は床に座り、腕を組む

「…あれ?この床…」

中太郎は床の材質を触って確かめる
その感触は、さっきまで歩いていた道路と全く同じだった

「一体どうなってんだ?」

立ち上がって、ぽりぽりと頭をかく
…と、そこに突然人が現れる

「いらっしゃいませ…ようこそカードショップ『トランス』へ…」

黒装束に身を包んだ男が、こっちを向いて笑っている

「おいこりゃどーいうことだ?」

中太郎が男に掴みかかる
男はデュエルディスクを取り出し、中太郎の腕に付ける

「お、おお!?」

中太郎は声にならない声を上げて驚く

「はい、あなたとあなたにも…」

男は光と武の腕にもデュエルディスクをつける

「え…これは一体…」
「おい、このデュエルディスク、外れねーぞ!」

武と中太郎はデュエルディスクを外そうとするが、がっちりと固定されていて外れない

「こんなことをして…あなたは一体何者なの!」

光が怒って前に出る
男はくっくと笑いながら、自分もデュエルディスクを装着する

「御門光さんですね…
ここで私とデュエルをしません?マッチ戦のアンティルールで…」

男は怪しく笑う
おそらく、狙いはカオス・ソルジャーだろう

「い、いいですよ、私は絶対に負けません!」

友達を救うため、光は勇気を出してデュエルに挑む

「デュエル!」

デュエルディスクの電源が入り、スタンバイモードからデュエルモードに変形する
ライフカウンターに、8000の数字が表示される
それと同時に、ライフカウンターのすぐ近くにある別のカウンターに、40:00と表示された

「あれ?こんなカウンター、普通のデュエルディスクにはないよ?」

光の質問に対し、男は不気味に答えた

「知っているかい…?遊戯王OCGのルールには、こんなものもあるのさ
マッチ戦の制限時間は40分…もし1セット中に40分が経過した場合、ライフが多い者をマッチの勝者とする…
もし第2セット中に40分を経過した場合、1セット目の勝者をマッチの勝者とする…
そのカウンターはそのルールを適用するため…マッチ戦用に作られたタイムカウンターなのさ」

中太郎と武は思った
マッチ戦用ならサイドデッキを入れる場所を作った方がいいんじゃないか…と
ちなみに光はサイドデッキの存在すら知りません

「ほらほら、こんなことをしてるうちにどんどんカウンターは進んでいくよ…」

すでにタイムカウンターは37:18を指している
光は急いでカードをドローした

「レオ・ウィザードを…」

……………………

「じゃなくてエルフの剣士を召喚!」

エルフの剣士
☆4 地 戦士 1400 1200

「ターンエンド」

相変わらずのミス、どうして毎回レオ・ウィザードが初期手札にあるのだろうか

「私のターン…
カードを2枚伏せ、レベル制限B地区を発動!」

レベル制限B地区
永続魔法
フィールド上に表側表示で存在するレベル4以上のモンスターは全て守備表示になる。

エルフの剣士はレベル制限によって守備表示になる

「…変態」

光ちゃん、そのツッコミは禁止です!
ついでにレベル制限ってのも年齢制げ(ry

「私のターンです、闇の芸術家を召喚し、ダイレクトアタック!」

レベル4以上が駄目ならレベル3以下でってこと

怪しい男LP8000→7400

「カードを伏せて、ターンエンドです」

エンド宣言と共に、怪しい男はカードを発動させる

「罠カード、神の恵み」

神の恵み
永続罠
自分はカードをドローする度に500ライフポイント回復する。

「私のターン、神の恵みの効果によりライフを500回復…」

怪しい男LP7400→7900

「魔法カード、ライトニング・ボルテックス!」

ライトニング・ボルテックス
通常魔法
手札を1枚捨てる。相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て破壊する。

怪しい男は魂の解放を捨て、光のフィールドのモンスターを全て破壊する

「罠カード、おジャマトリオ!」

おジャマトリオ
通常罠
相手フィールド上に「おジャマトークン」(獣族・光・星2・攻0/守1000)を3体守備表示で特殊召喚する(生け贄召喚のための生け贄にはできない)。「おジャマトークン」が破壊された時、このトークンのコントローラーは1体につき300ポイントダメージを受ける。

光のフィールドにおジャマトークンが召喚される

「魔法カード、地盤沈下」

地盤沈下
永続魔法
全てのモンスターゾーンから2ヵ所を指定する。指定したモンスターカードゾーンは使用できない。この時モンスターカードが存在している場所は、選択する事はできない。

光のフィールドのうちの2つ…おジャマのいない2つのフィールドが地盤沈下し、モンスターを置けなくなる

「デビル・フランケンを召喚!」

デビル・フランケン
☆2 闇 機械 700 500
5000ライフポイントを払う。自分の融合デッキから融合モンスター1体をフィールド上に攻撃表示で特殊召喚する。

「効果発動!」

怪しい男LP7900→2900

「いでよ、サイバー・ブレイダー!」

サイバー・ブレイダー
☆7 地 戦士 2100 800
「エトワール・サイバー」+「ブレード・スケーター」
このモンスターの融合召喚は上記のカードでしか行えない。相手のコントロールするモンスターが1体のみの場合、このカードは戦闘によっては破壊されない。相手のコントロールするモンスターが2体のみの場合、このカードの攻撃力は倍になる。相手のコントロールするモンスターが3体のみの場合、このカードは相手の魔法・罠・効果モンスターの効果を無効にする。

GXで天上院明日香が使用する融合モンスターが召喚される
光のフィールド上に存在するモンスターは3体、よって光の魔法、罠、効果モンスターの効果は無効となる

「ターンエンドだ…」

中太郎と武はだんだん気付いてきていた
おジャマトリオ、地盤沈下、神の恵み…明らかにロックを狙ったカード
そして謎のタイムカウンター
この戦術は、マッチの時間切れを狙った戦術、TOD(タイム・オーバー・デス)であることを
そして、自分達3人のデュエルディスクの裏に、時限爆弾が設置されているということを…


LP 8000
場  おジャマトークン、おジャマトークン、おジャマトークン、伏せカード
手札 4枚

怪しい男
LP 7900
場  デビル・フランケン、サイバー・ブレイダー、レベル制限B地区、神の恵み、地盤沈下
手札 0枚



第八章 神様は戦争に反対のようです

「私のターン」

ロックをかけられては、何もやることができない
光は何かロックを解く方法がないかと、手札を確認する
…案の定、そんなカードは存在しない

「光!早くターンエンドをするんだ!
そのディスクの裏には…爆弾がつけられている!」

中太郎の叫びに、光はディスクの裏を見る
そこには誰でも簡単にわかるように、小さな爆弾が取り付けられている。

「あーあ、バレちゃったのか…」

不気味に笑う怪しい男。
光はショックが抜けないのか、口をぽかんと開けて放心状態になっている。

「光!時間が無い!早くターンを終了するんだ!」

1ターンの制限時間である3分を切ろうとしている

「た、ターンエンド…」

慌ててターンを終了した光
怪しい男はカードを引く

怪しい男LP2900→3400

「守備モンスターを出し、ターンエンドだ」

「…私のターン、ターンエンド」

「クク…私のターン、ライフを500回復する」

怪しい男LP3400→3900

「更に、デス・ラクーダを反転召喚
デッキから一枚ドローし、神の恵みによってライフを500回復する」

デス・ラクーダ
☆3 地 アンデット 500 600
このカードは1ターンに1度だけ裏側守備表示にする事ができる。このカードが反転召喚に成功した時、デッキからカードを1枚引く。

怪しい男LP3900→4400

「デス・ラクーダを裏守備に変更し、カードをセット、ターンを終了する」

通常のドローに加え、デス・ラクーダによる追加ドロー
毎ターンライフを1000ずつ回復されては、簡単に追い越されてしまう
残り時間は30分を切った

「私のターン…」

光はドローカードを見てはっと気がつく

「魔法カード、ポルターガイスト!」

ポルターガイスト
通常魔法
相手フィールド上の罠・魔法カード1枚を持ち主の手札に戻す。このカードの発動と効果は無効化されない。

怪しい男の場の「地盤沈下」のカードが動き出し、手札に戻る
これで光の場に空きができた

「アーメイル召喚!」

アーメイル
☆3 地 戦士 700 1300

モンスターが召喚されたことにより、光の場のモンスターは4体
サイバー・ブレイダーの効果は無効化される

「魔法カード、火の粉!」

怪しい男LP4400→4200

怪しい男のライフを少しだけ削る

「リバースカードオープン!無謀な欲張り!」

デッキからカードを2枚ドローする

「これでこのロックを解除する…最終戦争、発動!!」

最終戦争
通常魔法
手札を5枚捨てる。フィールド上の全てのカードを破壊する。

光は全ての手札を墓地に捨てる
フィールドの中心で、核爆発が起こる
だが、怪しい男は逆に笑い出してしまった

「ハーッハッハッハー!
バカだ!貴様はバカだァー!
リバースカードオープン!神の宣告!」

怪しい男LP4200→2100

神の宣告
カウンター罠
ライフポイントを半分払う。魔法・罠の発動、モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚のどれか1つを無効にし、それを破壊する。

ソリッドビジョンとして現れた神様は、一瞬にして核爆発を止める
フィールドのカードは全て無事…
唯一失ったのは、光の手札だった
光は泣きそうになった

「…ターンエンド…です…」

絶望の淵に落とされた光を見て、怪しい男は悪魔の笑みを浮かべる

「私のタァーン…デス・ラクーダを反転召喚」

怪しい男LP2100→3100

「サイブレも出したし、こいつももう不要だな
再びロックをかけるために…消えてもらうよ、デビフラ」

デビル・フランケンがアーメイルに向かって体当たりする
二体の攻撃力は互角、相打ちとなる
…だが、それによって光の場のモンスターは3体に
再びサイバー・ブレイダーの能力が発動する

「デス・ラクーダを裏守備にし、地盤沈下を発動、ターンエンドだ…」

切り札の神の宣告を無効化され、もはやロックは完全なものとなる
光には怪しい男の姿が、とても大きく見えた

「光!まだライフではお前の方が勝ってる!なんとかして逆転のカードを引くんだ!」

中太郎が叫ぶが、光は答えない

「逆転のカードを引く…ねえ
でもこのターンと次のターンは引けないんだよね…」

光の使用した罠カード、無謀な欲張り
二枚ドローできるのはいいが、その先2ターンのドローフェイズをスキップしてしまう…

「ターン…エンドです…」




LP 8000
場  おジャマトークン、おジャマトークン、おジャマトークン
手札 0枚

怪しい男
LP 3100
場  デス・ラクーダ、サイバー・ブレイダー、レベル制限B地区、神の恵み、地盤沈下
手札 4枚



第九章 華麗なる勝利

「私のターンだ
デス・ラクーダを反転召喚
さらに裏守備に変更」

怪しい男LP3100→4100

「手札を一枚捨て、ターンエンドだ」

光のターン
カードを引くことはできない

「私のターンだな
デス・ラクーダを反転召喚、そして裏守備に変更」

怪しい男LP4100→5100

「手札を二枚捨て、ターンエンドだ…
やっとカードが引けるね〜よかったでちゅね〜」

馬鹿にしたような言い方で挑発する怪しい男
光はデッキからカードをドローする

「(…このカードは!)」

光はそのカードのテキストをじっと見つめている

「(もしかすると…)」

そのカードを決闘板に置き、発動する

「ヒエログリフの石版、発動!」

ヒエログリフの石版
通常魔法
1000ライフを払う。そのデュエル中、自分の手札制限枚数が7枚になる。

光LP8000→7000

しかしサイバー・ブレイダーの効果により手札制限枚数が7枚になる効果は無効化される

「あっのバカ!この状況で何ライフコストのあるカード使ってるんだよ!しかも無効化されてるし!」

中太郎が叫ぶ

「いや…光さんは…あることを確かめるために…あのカードを発動したんじゃないかな?」

「私のターン…」

いつものようにラクダ反転召喚、また裏守備に

怪しい男LP5100→6100

「打ち出の小槌を発動」

打ち出の小槌
通常魔法
自分の手札を任意の枚数選択し、デッキに加えてシャッフルする。その後、デッキに加えた枚数分のカードをドローする。

手札を3枚デッキに戻し、3枚ドローする

怪しい男LP6100→6600

「リロードを発動」

手札を全てデッキに戻し、同じ枚数だけ引く

怪しい男LP6600→7100

「ターンエンドだ」

遂ににライフポイントは相手の方が上回った
残り時間はあと6分
光は少ない可能性を夢見て、デッキからカードをドローする

「(あのカードを…あのカードさえ引けば…)」

デッキの一番上
全てをこのカードに託し、光はカードをドローする

「魔法カード、天よりの宝札!」

天よりの宝札
通常魔法
自分の手札と自分のフィールド上に存在する全てのカードをゲームから除外する。自分の手札が2枚になるようにカードをドローする。

この状況を打ち破る、最後の切り札
まさにこのカード自体が『天よりの宝札』
サイバー・ブレイダーの効果では、効果自体は無効化されても、コストは無効化されない…
光はヒエログリフの石版を使ってそれを確かめ、このカードへと繋げたのだ

おジャマトリオが異次元へと引きずり込まれていく
そして自分の場のモンスターが0体になったことにより、サイバー・ブレイダーの効果は無効化される
光はデッキからカードを二枚ドローする

「大嵐を発動!」

巨大な嵐が巻き起こる
怪しい男の場の魔法、罠が吹き飛ばされていく
ソリッドビジョンなのでスカートはめくれません、残念

「E・HEROバブルマンを効果により特殊召喚!」

デッキから2枚ドローする

「強欲な壺を発動!2枚ドロー!
突然変異とバブルマンを墓地に送り…バブルマン・ネオを特殊召喚!」

E・HERO バブルマン・ネオ
☆4 水 戦士 800 1200
このカードは通常召喚できない。自分フィールド上に存在する「E・HEROバブルマン」と手札の「突然変異」を墓地へ送った場合のみ特殊召喚する事ができる。このカードはフィールド上に表側表示で存在する限り、カード名を「E・HEROバブルマン」として扱う。このカードと戦闘を行った相手モンスターをダメージステップ終了時に破壊する。

「ゲール・ドグラ召喚!
ゲール・ドグラでデス・ラクーダを攻撃!」

デス・ラクーダは攻撃対象になったことにより表側表示に変わる
ゲール・ドグラの攻撃でソリッドビジョンが砕け散った

「バブルマン・ネオでサイバー・ブレイダーを攻撃!ネオバブルシュート!」

大量の泡がサイバー・ブレイダーに襲い掛かる
バブルマン・ネオの攻撃力とサイバー・ブレイダーの守備力は同じ…
だが、バブルマン・ネオには特殊能力がある
ダメージステップ終了と共に、サイバー・ブレイダーが砕け散った

「いよっしゃぁ!」

中太郎の喜びの声が上がる
まさに奇跡の逆転劇
怪しい男は下唇を噛み、悔しそうに手札を握り締めた

「私のターン、ドロー
魔法石の採掘を発動」

魔法石の採掘
通常魔法
自分の手札を2枚捨てる事で、自分の墓地に存在する魔法カードを1枚手札に加える。

手札を二枚捨て、墓地のライトニング・ボルテックスを手札に加える
そしてそれを発動、光の場のモンスターを全て破壊する
怪しい男は発動したライトニング・ボルテックスを墓地に送る途中で、タイムカウンターを見る

「クケケケケケ!!これで俺の勝ちだぁ!時間を見てみな!」

光は自分のタイムカウンターを見た
残り時間が1分を切った

「クク、これで俺がターンエンドをしなかったらどうなる…?」

時間は刻々と迫っていく
怪しい男はターンを終了せず、じっと待ち続けている

「せっかく…逆転したと思ったのに…」

光はまた泣きそうになった
残り時間はあと15秒
だが、ここで二度目の奇跡が!
怪しい男のデュエルディスクから、ブザーの音が

「し、しまった!」

怪しい男は急いでターン終了宣言をする
1ターン3分のルールを忘れていたようだ

「クク、助かったな…だが、このターンで貴様のライフが俺を上回らなければ、貴様は死ぬ!」

そう言っている間に、光はカードを引く

そして引いたカードを、そっとディスクに置いた

「モウヤンのカレー、発動」

おいしそうなカレーが映し出され、光のライフが回復する

光LP7000→7200

「なっ、なんだとぉ!?」

怪しい男のライフを上回った
それと同時に、カウンターが00:00:00を示す

光の、勝利だ



第十章 どどーんと一時間!幻魔の殉教者使え方教えますスペシャル!

※この章は一時間かけて読んでください

怪しい男を撃破し、光は鍵を手に取る
自分より先に中太郎と武に渡し、その後で自分のを外した

「よし!急ぐぞ!」

二人の手を引いて、中太郎が走り出す
自動ドアがだんだん開いていく
だが中太郎のスピードはそれより早く、自動ドアに顔面を…



一体何が起こったのだろうか
三人の体はドアをすり抜け、道に飛び出した

「え…?」

光は振り返るが、自動ドアは普通に開いていて、これから閉まろうとしていた

「(気のせい…だよね)」





次の日、土曜日
今日は先輩の亮子と会う約束がある
待ち合わせの時間は十一時…
が、そんな時に限ってデッキを無くしてしまうのだ

どこを探せばいいのかわからず、家の中を彷徨い続けている
そして結局、いつものカードケースにあったというオチ

やっと見つかってほっとしたのか、デッキを胸元でぎゅっと掴む
が、そうしようとした時にデッキをカードの束の上に落としてしまった
光は慌ててデッキを拾う
関係ないカードまで混ざってしまっているが、気にしない

適当に40枚(くらい)カードを集めると、それを持って走り出す



一瞬の 揺れ



何が起こったのか
光の体は宙に浮き、床に叩きつけられた
地震は一回大きく揺れただけで治まった
その大きさからすると、すぐ近くだろう
光はあまりの恐怖に、倒れたまま震えていた
が、ふと亮子との約束を思い出して起き上がる
後ろのカードケースが倒れていた
カードもばらばらに散らばっている
小学生の頃、兄に買ってもらった大切なカードケースなのだ
急いで起こし、カードをしまう
…が、当然のごとくデッキをそこに落としてしまった


そして、また地震…


さっきと同じように、たった一回の大きな揺れ
今度もカードケースは倒れ、カードが散らばってしまった
…光のデッキと一緒に
光は倒れたカードケースにつかまってブルブル震えていた
数秒経って、カードケースを起こす
カードをしまいながら時計を見ると、もう10時40分
もうバラバラになったデッキを組みなおす時間はないと、適当に60枚くらいの束を持って外に出る


相手は先輩(バカだけど)遅れては失礼だと、遅い足で必死に走る
そんな光を邪魔する者が、一人、二人、三人…
途中の公園で、小学生達が遊戯王のパックを開けている
光は気になってちらっとそっちを見ると、なんと一人の小学生が出たカードをパックごと捨てているのだ
光はいてもたってもいられなくなり、その公園に入った

「ちょっと君たち!カード捨てちゃだめでしょ!」

小学生達は鬼のような形相で睨みつける

「何だお前
お前には関係ないんだからさっさとあっち行けよ」

「カードには魂が宿ってるって…お兄ちゃん、言ってた…」

光は睨まれたせいか急に弱弱しくなる

「魂?ハァ?現実とアニメを同一視してない?
中学生で何言ってんだか」

「こ、高校生だもん…」

「ほーう、それならなおさらバカだ
幼稚園児並の脳を持つ高校生!こいつは伝説だぁ!」

小学生達は勝手に爆笑する

「と、とにかく、捨てたカードを拾いなさい!」

光はゴミ箱からカードを取り出すと、それを捨てた3人のうち一番背の高いリーダー格と思われる小学生に渡した

「ヤダね!だって見てみろよそれ!」

光はそのパックを見る

E・HEROバブルマン・ネオ、ガエル・サンデス、輪廻転生、誤作動、幻魔の殉教者(レア)

どれも全くと言っていいほど使えないカードだ

「特に幻魔の殉教者!これほどにまでクソなカードは見たことないね!何でこんなカードがレアなんだか!」

「クソなんかじゃない!」

光は激怒した
そしてパックに入っていた5枚のカードを自分のデッキに入れる

「いらないカードなんて存在しない…それを教えてあげる!」

小学生もデッキを取り出し、デュエルディスクにセットする
そして別の小学生に「あいつにデュエルディスクをかしてやれ」と言い、無理矢理ぶんどって光に渡した

「デュエル!」

デュエルディスクが変形し、ソリッドビジョンのシステムが起動する

「私のターン!陽気な葬儀屋を発動!」

陽気な葬儀屋
通常魔法
自分の手札から3枚までのモンスターカードを墓地へ捨てる。

光は手札からプチモスを捨てる

「死者蘇生を発動し、プチモスを守備表示で蘇生!」

プチモス
☆1 地 昆虫 300 200

「進化の繭を装備!」

進化の繭
☆3 地 昆虫 0 2000
手札から装備カード扱いとしてフィールド上に表側表示で存在する「プチモス」に装備する事ができる。装備した場合、「プチモス」の攻撃力と守備力は「進化の繭」の数値を適用する。

プチモス 攻撃力300→0 守備力200→2000

「ターンエンド」

1ターン目からプチモスと進化の繭のコンボを繰り出す光
しかし小学生は全く動じない
それどころか、光がなぜそんなコンボを使うのか疑問だった

「カードを2枚伏せ、ターンエンドだ!」

「私のターン!」

モンスターを出さなかった小学生
手札事故かと思った光は、ここで一気に攻めようと手札を確認する

「…あれ?」

デッキに入れた覚えの無いカードばかりが手札にある
…アニメとかじゃよくあることだけど
効果などが全くわからず、キョロキョロとテキストを読みまわす

「えーと、魔力カウンターを乗せて攻撃力アップ…?よし、これに決めた!」

光は右端のモンスターを選び、ディスクに置く
赤い鎧に身を包んだモンスターが召喚される

魔導戦士ブレイカー 攻撃力1900

「ブレイカーでダイレクトアタック!」

剣を構え、小学生に突進する

「リバースカード、オープン!グラヴィティ・バインド!」

グラヴィティ・バインド−超重力の網−
永続罠
フィールド上に存在する全てのレベル4以上のモンスターは攻撃をする事ができない。

超重力に押しつぶされ、ブレイカーは動くことができなくなる

「伏せカードに警戒しないで攻撃とはな…
しかもブレイカーという魔法・罠を破壊できるカードがあるというのに」

「え?ブレイカーの効果って攻撃力アップじゃ…」

光はブレイカーのカードを見て、後半の効果に気がつく

「あ、本当だ
でも攻撃力下がるし…まあいいや!伏せカードを破壊!」

魔導戦士ブレイカー 攻撃力1900→1600

「リバースカードオープン!強欲な瓶!」

小学生は一枚ドロー、ついでに対象を失ったブレイカーの効果は無効

「どっち狙ってんだバーカ
幼稚園児でもバインドの方破壊するぜ」

「だってこんなカード…使ったことないし…」

完全にバカにされ、また弱気になる光

「使ったことがない?最強クラスのカードだぜ
ま、こいつの強さがわからないうちはまだまだ素人ってことだな!」

小学生は自慢げに言う

「た、ターンエンド…」

「俺のターンだな
カードを2枚伏せ、ターンエンドだ」

「私のターン、プチモスを生贄に…」

小学生は何が来るのかビクリとなる
ザボルグか、メビウスか、はたまたショッカーか

「ラーバモス召喚!」

ラーバモス
☆2 地 昆虫 500 400
このカードは通常召喚できない。「進化の繭」を装備して(自分ターンで数えて)2ターン後の「プチモス」を生け贄に捧げる事で特殊召喚する。

繭を突き破り、幼虫が飛び出す
小学生は何が何だかわからなくなり、魂が抜けたかのようにへなっとなってしまった

「ラーバモスのダイレクトアタック!」

角が小学生に突き刺さる

小学生LP8000→7500

ラーバモスはレベル2、バインドの効果を受けない

「俺のターン!
く…そんなことのために弱小モンスターを出したことを後悔させてやる!」

場の二枚のカードを発動させる
どちらも永続罠カード
そしてすぐにそれとグラヴィティ・バインドを墓地に送り、手札からモンスターを召喚する

「神炎皇ウリア、召喚!」

地面を突き破るかのごとく、ソリッドビジョンの赤い悪魔が呼び出される
ウリアが一声鳴らせば、灼熱の風が吹き荒れる

神炎皇ウリア
☆10 炎 炎 0 0
このカードは通常召喚できない。自分フィールド上に表側表示で存在する永続罠カード3枚を墓地に送った場合のみ特殊召喚できる。このカードの攻撃力は墓地に存在する永続罠カード1枚に付き1000ポイントアップする。1ターンに1度、相手フィールド上にセットされている魔法・罠カード1枚を選択して破壊できる。相手はこの効果に対して魔法・罠カードを発動する事はできない。

神炎皇ウリア 攻撃力0→3000

「ウリア!あのザコを叩き潰せ!ハイパーブレイズ!」

灼熱の炎!ラーバモスは一瞬にして無へと還る

光LP8000→5500

公園の砂に敷き詰められた地面から、黒い煙が上がる

「ターンエンドだ」

「私のターン…」

ドローカードを見て、光は少ない賭けに出る

「守備モンスターを出し、ブレイカーを守備表示に変更!カードを2枚セットし、ターンエンド」

ここで、ウリアがどちらか左側の伏せカードを破壊し、ブレイカーを戦闘で破壊してくれれば…

「俺のターン!ウリアの効果発動!」

地獄の炎が一枚の伏せカードを焼き尽くす
破壊されたのは左側…まず第一段階はクリア

「守備モンスターを出し、魔法カード、太陽の書!」

小学生の裏守備モンスターは「メタモルポット」
お互いに手札を全て捨て、デッキから5枚ドローする

小学生の手札のうち2枚が永続罠…
よって攻撃力は2000ポイントアップする

神炎皇ウリア 攻撃力3000→5000

「装備魔法、メテオストライク!」

メテオ・ストライク
装備魔法
守備表示モンスターを攻撃した時、装備モンスターの攻撃力が守備表示モンスターの守備力を超えていれば、その数値だけ相手ライフポイントに戦闘ダメージを与える。

ウリアに貫通効果が備わる

「月の書を発動し、メタモルポットを裏側守備表示に変更し…
これで終わりだ!ハイパーブレイズ!」

炎の向かった先――魔導戦士ブレイカー!
ブレイカーもラーバモス同様、初めから無かったかのように消されてしまった

光LP5500→1500

「クク、次のターンで貴様は終わりだ…」

勝利を確信した小学生はそのままターンを終了する

「…私のターン」

奇跡は起こるのか
デッキの一番上、あのカードさえ引くことができれば…

「ドロー!」

デッキが光り輝く
そしてドローしたカードは――

幻魔の殉教者
通常魔法
自分の手札が2枚以上存在し、自分フィールド上に「神炎皇ウリア」または「降雷皇ハモン」が表側表示で存在する時に発動する事ができる。手札を全て墓地に送る事で、自分フィールド上に「幻魔の殉教者トークン」(悪魔族・闇・星1・攻/守0)を3体攻撃表示で特殊召喚する。

「…来た!」

光はディスク上で裏守備になっているモンスターを反転召喚する

「火霊使いヒータ、効果発動!」

火霊使いヒータ
☆3 火 魔法使い 500 1500
リバース:このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手フィールド上の炎属性モンスター1体のコントロールを得る。

炎の霊使いは呪文を唱える
ウリアの周りを炎が包んでいき、次第に光のフィールドに移されていく

「く…ウリアのコントロールを奪うだと…
だが奴の墓地の永続罠はゼロ!たとえ奪っても…」

「幻魔の殉教者、発動!」

ウリアが光の場に来たことにより、発動条件が揃う
手札を全て捨て、切り札でもある三体のトークンが場に出される
そして光の手札――5枚『全て』が永続罠!

神炎皇ウリア 攻撃力0→5000

「ちょっと待て!王宮の勅命は禁止カードだ!」

王宮の勅命
永続罠
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、全てのフィールド上魔法カードの効果を無効にする。自分のスタンバイフェイズ毎に700ライフポイントを払う。払わなければ、このカードを破壊する。

またデッキに入れた覚えのないカード
墓地に送ったカードの中に、現在禁止カードとされているカードが
光はそれを取り出し、別の場所に置く

神炎皇ウリア 攻撃力5000→4000

「く、くく…少し焦っちまったぜ…
だが、よく考えてみりゃメテオストライクの効果でダメージを受けるのは相手プレイヤー!
ウリアが攻撃すれば勝つのは俺!」

再び開き直る小学生
しかし光は思いもよらない行動に出る

「リバースカードオープン!無謀な欲張り!」

0枚の手札を、このカードによって増強する

「幻魔の殉教者トークン3体を生贄に捧げ――ギルフォード・ザ・ライトニングを召喚!」

ギルフォード・ザ・ライトニング
☆8 光 戦士 2800 1400
3体の生け贄をささげてこのカードを生け贄召喚した場合、相手フィールド上のモンスターをすべて破壊する。

雷鳴が鳴り響く
稲妻の剣を持つ、伝説の戦士が降臨する

「効果発動!ライトニング・サンダー!」

戦士は剣を高く掲げる
雷が落ち、裏守備のメタモルポットを破壊する

「げげっ…!」

驚く小学生
光は容赦せず、もう一枚の手札を発動させる

「早すぎた埋葬、発動!」

光LP1500→700

墓地からラーバモスが蘇る

「な、なんかコレ…やばくねぇか?」

小学生はだんだんビビりだす
そして手の指を使って4体の攻撃力の合計を計算する

「神炎皇ウリアの攻撃!ハイパーブレイズ!」

地獄の炎が焼き尽くす

小学生LP7500→3500

「ギルフォード・ザ・ライトニングの攻撃!ライトニングクラッシュソード!」

鋭い剣が切り裂く

小学生LP3500→700

「火霊使いヒータの攻撃!火霊術−紅!」

小さな火の玉が飛ぶ

小学生LP700→200

「ラーバモスの攻撃…」

「お、おいおいおいおい!!マジやばくないか?コレ!え?おい、ちょっと待て!」

慌てる小学生
後ろの仲間達も黙り込む

「ラーバ・トルネード・キャノン・ボンバー!」

ラーバモスが回転しながら体当たりする
角が小学生の腹を突き刺す

小学生LP200→0

「ンガ…」

小学生は公園の地面に倒れた

「じゃあ、これで罰ゲーム!ちゃんと持って帰りなさい!」

光はデッキから「幻魔の殉教者」他さっき捨てられていたカードを取り出し、小学生に渡す

「ウリアデッキだから役立つね、殉教者」

小学生がそれを受け取ると、光はにっこり微笑んだ

「ちくしょう!」

小学生は赤かくなって、カードを持ったまま逃げ出した
仲間達も、それを追って走り去っていった


デュエルに勝利し、清清しい気分になっている光は、突然忘れていたことを思い出す

「…あ!亮子先輩との約束!」

時計を見れば、とっくに11時は過ぎていた…



第十一章 ハネクリLV10てアニメでは攻撃力3000だったような気がする

「おそーい」

待ちくたびれたかのように亮子が言う

「す、すみませんでした…」

光は息を切らしながら言った

「じゃ、行こっか」

亮子に手を引っ張られて、光はふらふらしたまま連れて行かれる



人通りの多い町並み
何やらざわざわと物音がする
二人は何のことかと見に行く

…看板のようなものが倒れていて、そこから血まみれの手が生えている

「・・・・・」

さっきの地震だろうか
二人はそっと手を合わせて、早足でその場を立ち去った

しかし、まだ光は気がついていなかった
死んでいたのが、昨日の怪しい男だとは…


「さーて、ついたよー☆」

二人が来たのは、この町のスタジアム

「来週の土曜日、ここで学校対抗の大会が開かれるんだよ」

「大会?」

「この地域の高校の遊戯王カード部が集まって、デュエルの大会をやるの
うちの学校は去年優勝したんだよ」

遊戯王カード部のある高校はそんなに多いのか、と光は思った

とりあえず、それはさておき二人はスタジアムの中に入る
大会への準備のためか、デュエルディスクがいくつか置いてある
亮子はそのうち2個を勝手にパクり、片方を光に渡す

「じゃ、予行練習でも☆」

光は一瞬戸惑ったが、仕方が無くディスクを腕につける
そしてスタジアムの真ん中に立ち、デッキをディスクにセット
ソリッドビジョンが起動する

「私のターン」

光はカードをドローする

「あれ…?」

サイバー・エンド・ドラゴン
☆10 光 機械 4000 2800
「サイバー・ドラゴン」+「サイバー・ドラゴン」+「サイバー・ドラゴン」
このモンスターの融合召喚は、上記のカードでしか行えない。このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

引いたカードは、どう見ても紫色の融合モンスター

「こんなカード引いちゃったんですけど…」

光はそのカードを亮子に見せる
さっきの王宮の勅命のように、デッキがバラバラになった時に紛れ込んだものだろう
融合デッキに入れて、もう一枚ドローする
そういえば、某ヘルカイザーはデッキからキメラテック・オーバー・ドラゴンを出していたような気がする

「守備モンスターを出し、カードをセット、ターンエンド」

「あたしのターン」

亮子はデッキからカードを6枚引く
たまーにいるんですよね、こういう人
開始前に5枚引いてから後攻で6枚目を引くのが面倒で、一気に6枚引く人

「レスキューキャット召喚」

レスキューキャット
☆4 地 獣 300 100
自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードを墓地に送る事で、デッキからレベル3以下の獣族モンスター2体をフィールド上に特殊召喚する。この方法で特殊召喚されたモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。

黄色いヘルメットをかぶった、可愛いらしい子猫が召喚させる

「レスキューキャットを生贄に…イリュージョン・シープと逆ギレパンダを特殊召喚!」

イリュージョン・シープ
☆3 地 獣 1150 900
このカードを融合素材モンスター1体の代わりにする事ができる。

逆ギレパンダ
☆3 地 獣 800 1600
相手フィールド上のモンスター1体につきこのカードの攻撃力は500ポイントアップする。守備表示モンスターを攻撃した時にその守備力を越えていれば、その数値だけ相手に戦闘ダメージを与える。

「融合を発動!イリュージョン・シープとデス・カンガルーを融合し…マスター・オブ・OZを召喚!」

マスター・オブ・OZ
☆9 地 獣 4200 3700
「ビッグ・コアラ」+「デス・カンガルー」

1ターン目から攻撃力4000を超える巨大モンスターが現れる

「逆ギレパンダで守備モンスターを攻撃!」

逆ギレパンダ 攻撃力800→1300

ワイト
☆1 闇 アンデット 300 200

原作でミノタウルスにやられた時のように、ワイトの首がスポンともげる
貫通ダメージが光を襲う

光LP 8000→7000

「マスター・オブ・OZでダイレクトアタック!」

OZの拳が光の体を吹き飛ばす

光LP 7000→2800

「何があった!?」
「ん?大会は来週のはずだぞ?」

物凄い音を聞き、人が集まってくる

「ワーオ、ギャラリー登場?気合入るね〜」

亮子はそのままターンを終了し、逆ギレパンダは破壊される

「私のターン、E・HEROバブルマン召喚!」

青い体をした水のE・HEROが召喚させる

「突然変異とバブルマンを墓地に送り…バブルマンネオを守備表示!
さらに、ミスト・ボディを装備!」

ミスト・ボディ
装備魔法
このカードを装備している限り、装備モンスターは戦闘によっては破壊されない。(ダメージ計算は適用する)

バブルマンネオの体が霧と化す
これでOZの攻撃の手は止まる

「ターンエンド…」

ギャラリーはだんだんと増えていく
ワイトだのバブルマンネオだのコンセプト不明の光のデッキに、誰もが疑問を思った

「あたしのターン、ドロー」

激昂のミノタウルスをドローすれば勝てる…と思ったのだが、ドローしたのは普通のミノタウルス

「ミノタウルスを召喚」

ミノタウルス
☆4 地 獣戦士 1700 1000

斧を持った牛の怪物
どうせならワイトを倒すために使ってほしかった

「はい、ターンエンド」

ミストボディ装備のバブルマンネオには、流石に手を出せない
除去カードか貫通カードさえあればよいのだが

「私のターン!」

バブルマンネオ+ミストボディという戦闘だけなら無敵の壁がいるが、いつ除去カードが飛んでくるかわからない
ライフポイントから見ても、光の劣勢は歴然としている

「強欲な壺を発動、2枚ドロー!
さらに、天使の施しを発動」

3枚ドローし、サイバー・ドラゴンと魔導戦士ブレイカーを捨てる

「悪夢の蜃気楼を発動!」

悪夢の蜃気楼
永続魔法
相手のスタンバイフェイズ時に、自分の手札が4枚になるようにカードをドローする。自分のスタンバイフェイズ時に、その効果でドローした枚数分だけカードを手札からランダムに捨てる。

OCGでは禁止カード
しかしこの小説ではOCGとは制限が異なるため使ってもOK
ところで、どうでもよいが作者自身も何で激流葬を禁止カードにしたのかがわからない
それ書いた日に激流葬を相手に使われて酷い目にでもあったのだろうか

「カードを2枚伏せ、ターンエンド」

この時点で光の手札は0枚
蜃気楼の効果を使う準備は万全だ

「あたしのターン」

亮子のスタンバイフェイズ
光はデッキからカードを4枚ドローする

「強欲な壺を発動!」

光に続いて、亮子も壺を発動
そこで、待ってましたとばかりに最初のターンで伏せたカードを光が発動する

便乗
永続罠
相手がドローフェイズ以外にカードをドローしたら発動してもよい。カードを2枚ドローする。

亮子、光共にカードを2枚ドローする
これで自分のターンに蜃気楼で手札を捨ててもゼロにはならない

「地砕きを発動!」

地砕き
通常魔法
相手フィールド上の守備力が一番高い表側表示モンスター1体を破壊する。

地面が割れ、霧化したバブルマンネオは引きずり込まれていく

「無敵の壁も除去カードの前じゃ紙同然!激昂のミノタウルスを召喚!」

激昂のミノタウルス
☆4 地 獣戦士 1700 1000
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上の獣族・獣戦士・鳥獣族モンスターは、守備表示モンスターを攻撃した時にその守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手に戦闘ダメージを与える。

2体目のミノタウルスが召喚される
通常モンスターの方と見分けがつかない
だが、結局は激昂の効果で通常の方も貫通効果を得たのだから、どちらも全く同じと言っていいだろう

「じゃ、3体でとどめね☆」

2体のミノタウルスは斧を構え、OZはパンチを繰り出す

「クリボーを呼ぶ笛、発動!」

クリボーを呼ぶ笛
速攻魔法
自分のデッキから「クリボー」または「ハネクリボー」1体を手札に加えるかフィールド上に特殊召喚する。

デッキからハネクリボーが特殊召喚される

ハネクリボー
☆1 光 天使 300 200
フィールド上のこのカードが破壊され墓地へ送られた時に発動する。発動後、このターンにこのカードのコントローラーが受ける戦闘ダメージは全て0になる。

だが、忘れてはいけないのがOZにも貫通効果が備わっているということ
ハネクリボーが破壊されて受けた戦闘ダメージは無効化されない
…GXの第一話では何故か無効化されてたけど

「OZ!そいつを倒してとどめ!」

次こそはとOZはハネクリボーに狙いを定める
あまりの大きさの違いに、会場は静まり返る

「そうは行きません!進化する翼を発動!」

進化する翼
速攻魔法
自分フィールド上に存在する「ハネクリボー」1体と手札2枚を墓地に送る。「ハネクリボー LV10」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。

光は手札を2枚捨てる
ハネクリボーの体が輝きだす
体を黄金の装甲が覆い、小さな翼はOZさえも覆い尽くすほどに巨大化する

ハネクリボーLV10
☆10 光 天使 300 200
このカードは通常召喚できない。このカードは「進化する翼」の効果でのみ特殊召喚する事ができる。自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードを生け贄に捧げる事で、相手フィールド上の攻撃表示モンスターを全て破壊し、破壊したモンスターの元々の攻撃力の合計分のダメージを相手ライフに与える。この効果は相手バトルフェイズ中のみ発動する事ができる。

「ハネクリボーLV10の効果発動!」

聖なる光が、OZと二体のミノタウロスを消滅させる

「そ、そんな…」

亮子LP 8000→400

まさに究極の大逆転
亮子のライフに大きなダメージを与える

「私のターン、ドロー!」

手札から4枚をランダムに捨てる

「手札抹殺を発動!」

手札抹殺
通常魔法
お互いの手札を全て捨てた後、それぞれ自分のデッキから捨てた枚数分だけカードを引く。

亮子は手札を全て捨て、その枚数分ドローする
それによって便乗の効果が発動、手札がゼロだった光はカードを2枚ドローする

「レベル調整を発動!」

亮子はカードを2枚ドロー、それによって光も2枚ドロー
さらに墓地からハネクリボーLV10が蘇る

「残念だけど、攻撃力があと100ポイント足りなかったわね」

しかし光は諦めない

「魔法再生を発動!」

魔法再生
通常魔法
手札の魔法カードを2枚墓地に送る。自分の墓地から魔法カードを1枚選択し、手札に加える。

ライトニング・ボルテックスと強奪を捨て、墓地の突然変異を手札に戻す

「これが私の切り札…突然変異を発動!」

突然変異
通常魔法
自分のフィールド上モンスター1体を生け贄に捧げる。生け贄に捧げたモンスターのレベルと同じレベルの融合モンスターを融合デッキから特殊召喚する。

今までバブルマンネオの召喚のためだけに使っていたこのカード
ついにその真価を発揮する時が来た
ハネクリボーLV10は姿を変え、三つ首の機械龍となる

「サイバー・エンド・ドラゴン、召喚!」

ギャラリーから歓声が上がる
白銀に輝く体に、三つの首
攻撃力4000の威圧感は、相当のもの――

「すごい…海日部長を倒すところを見たけど…まぐれじゃなかったんだ…」

三つの口に、エネルギーが溜まっていく

「エターナル・エボリュ−ション・バースト!!」

三つの口から放たれる光線が残り少ない亮子のライフに完全なるとどめを刺す

亮子LP 400→0

「あたしの…負けね」

観客席から、盛大な拍手が送られる
大会の日を前にして、こんな素晴らしいデュエルが見られるとは誰も思っていなかったのだろう

「…大会も、がんばろっかな」
光はこのデッキが本当の自分のデッキではないことを言おうとしたが、一応先輩だし、海日のようにショックを受けるといけないのであえて黙っておいた…



第十二章 この二人は絶対にこの先三沢化すると思う

月曜日、いつものように部活動
部活動以外の場面が書かれないのはただ面倒だから
ここは決してデュエルアカデミアではない

「さーて、じゃあ俺達とデュエルでもするかな?」

日比と田村が、光と中太郎に話しかける

「タッグデュエルの公式ルールはないけど、とりあえず俺らが適当にルール作っといたから」

「じゃ、デュエル開始ね」

「…何でいきなりこんなことになったんだか…」

光&中太郎 LP8000
日比&田村 LP8000

「俺のターンだ!」

中太郎が勢いよくカードを引く

「あ、光ちゃんもカード引いて
このルールでは一つのターンに二人同時に行動することになってるから」

光も同じようにカードをドローする

「ムカムカを召喚だ!」

ムカムカ
☆2 地 岩石 600 300
このカードが表側表示でフィールド上に存在する限り、コントローラーの手札1枚につきこのカードの攻撃力と守備力は300ポイントアップする。

ムカムカ 攻撃力600→2100

「ターンエンドだぜ」

1ターン目から攻撃力2100の岩石モンスター
絶好調の中太郎に対して、光は…

手札:アイアン・ハート、クラッシュマン、ダーク・キメラ、フレイム・ケルベロス、巨大な怪鳥、密林の黒竜王

全て上級の通常モンスター
そして何故か第一期絶版
光のデッキは全く進歩を遂げていない
何のためにデッキを一度解体したのか
…いや、光が自分から解体したわけではないのだが

「ムカムカを生贄に、フレイム・ケルベロス召喚!」

炎に包まれたケルベロスが場に現れる

フレイム・ケルベロス
☆6 炎 炎 2100 1800

「ちょ…俺のモンスター勝手に生贄にすんな!」

「だって…そのモンスターは攻撃力が安定してないから…」

「お、早速仲間割れ?」

ゲラゲラ笑う日比と田村
後ろで見ている他の部員も苦笑い
…海日だけは日比と田村以上に大爆笑してるけど

「じゃ、俺らのターンね
守備モンスターを出してターンエンド」

「俺はカードをセットしてエンド」

日比が守備モンスター、田村が伏せカード
紛らわしい…

「よっしゃ!俺のターン!磁石の戦士β召喚!攻撃!」

「グラヴィティ・バインド発動!」

攻撃は完全に読まれていたのか、罠によって防がれる
中太郎は顔をしかめた

「えっと、フレイム・ケルベロスは攻撃できないから…生贄に捧げ、ボルト・エスカルゴ召喚」

ボルト・エスカルゴ
☆5 水 雷 1400 1500

「っておい、攻撃力下がってる!」

「え、でも攻撃力1500以下だから…」

「ってお前攻撃力関係ないぞ!攻撃力1500以下は『平和の使者』だっ!」

平和の使者
永続魔法
お互いに表側表示の攻撃力1500以上のモンスターは攻撃宣言が行えない。自分のスタンバイフェイズ毎に100ライフポイントを払う。払わなければ、このカードを破壊する。

小学生とのデュエルでグラヴィティ・バインド使われていたのに、既にその効果を忘れてしまっている

「ターンエンドでおk?じゃ、俺らのターン
ステルスバードを反転召喚ね」

ステルスバード
☆3 闇 鳥獣 700 1700
このカードは1ターンに1度だけ裏側守備表示にする事ができる。このカードが反転召喚に成功した時、相手ライフに1000ポイントダメージを与える。

ステルスバードは羽を飛ばして攻撃する

光&中太郎 LP8000→7000

「そして裏守備に変更!」

ステルスバードは空中へと姿を消す

「で、俺は伏せカードを出してターンエンド」

「俺…達のターン!死者蘇生を発動!墓地のムカムカを…」

「マジック・ジャマー発動!」

マジック・ジャマー
カウンター罠
手札を1枚捨てる。魔法カードの発動を無効にし、それを破壊する。

田村は手札を1枚捨てる
場に蘇ろうとするムカムカの姿が消えていく

「グラヴィティ・バインドを抜けられるモンスターを出すつもりだろうけど、そうはいかないよ」

「あ、わざわざここで死者蘇生を使うってことは手札にレベル3以下のモンスターがいないってことかな?」

中太郎は歯を食いしばる
たった一つの行動から手札を読まれてしまう――それがカードゲームの世界
光の手札にも、同じようにレベル3以下のモンスターはいない
それどころかまた上級の通常モンスター

レッド・ドラゴン
☆6 炎 ドラゴン 1700 1900

第一期絶版から第二期絶版になっただけマシか…いや、変わらないだろw

「磁石の戦士αを召喚、ターンエンドだ」

グラヴィティ・バインドにステルスバード、彼らの戦術はどうやらロックバーン
田村がロック、日比がバーンの担当だ

「俺らのターン、ステバ反転召喚、裏守備に変更」

光&中太郎 LP7000→6000

「さっらーに!磁石の戦士αと磁石の戦士βを生贄に…」

「ちょ、それ俺のモンスター」

「溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム召喚!」

溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム
☆8 炎 悪魔 3000 2500
このモンスターを召喚する場合、相手フィールド上のモンスター2体を生け贄に捧げて相手フィールド上に特殊召喚しなければならない。このカードはコントローラーのスタンバイフェイズ毎に、コントローラーに1000ポイントのダメージを与える。このモンスターを特殊召喚する場合、このターン通常召喚はできない。

マグマの腕が二体の磁石の戦士を握りつぶす
そして中太郎は鎖で吊るされた檻の中に…

「て…何で俺だけぇー!?」

「若い男女が一つの狭い檻の中に一緒に入るなんて!
健全な作家である究極竜骸骨を、某漢字一文字の作家と一緒にしないでくれたまえ!」

えーと、とりあえずゴメン

「つーかちょい待てぇ!熱いんですけど!これ猛烈に熱いんですけどーっ!」

「人生ガマンも大切だよ〜」

「そういう問題じゃねぇ!」

光はポカンと口を開けて中太郎を見ていた

「ねえ、ソリッドビジョン…だよね?」











何事も無かったかのようにデュエル再開

「じゃ、俺はカードをセットしてターンエンド」

田村は伏せカードを出す
どうでもいいけど、このデュエルでは田村がいなくてもいいような気がする
ついでに光も
普通に中太郎VS日比でよくない?
後で光と田村をデュエルさせて
まあ、ロックはTODの人(享年35歳、独身)と一度戦ってるから斬新さがないんだけど

「ナレーションうるせーぞ」

檻の外に出た中太郎が言う

「じゃ、俺のター
「私のターン!」

ターン宣言を光に奪われてずっこける

「く…さっきまでは俺がやってたのに…」

そして追い討ちをかけるかのように、ラヴァ・ゴーレムの体が溶け出す

「げぇぇぇぇえ!」

光&中太郎 LP6000→5000

ドローカードは「地帝グランマーグ」
これを召喚すれば、ステバ、ラヴァ共に除去することができる
だが、ダメージと共に田村の伏せカードが発動する

「生贄封じの仮面を発動!」

生贄封じの仮面
永続罠
いかなる場合による生け贄も行う事ができなくなる。

「ラヴァを生贄にしようったって無駄だぜベイビー」

「く…ターンエンド…」

震えが止まらない中太郎
しかし光は冷静の一枚の手札を場に出す
中太郎は喜びに満ちた表情で光の方を向く
抹殺の使途か、サイクロンかと期待を寄せる中太郎に反し、光の発動したカードは「催眠術」

催眠術
通常魔法
このカードを使用した次の相手のターン、相手はモンスターの表示形式を変更する事ができない。

巨大な振り子が現れ、ゆっくりとそれが揺れていく
その速度は一定で、見ていて何か薄気味悪いものを感じる
振り子につられ、ステルスバードのソリッドビジョンが姿を現す
そして鼻提灯を出して眠りだしてしまった

「これでステルスバードの効果は封じたよ!」

ガッツポーズで言う光に対し、中太郎は微妙な表情
1回だけ封じるくらいなら破壊してくれ、と
そしてまた日比&田村のターン
ステルスバードを反転召喚することができないため、日比はカードを1枚伏せてターンを終了
田村は何もせずにターンを終了した
ステルスバードは目を覚まし、再び姿を消す

「俺達のターン…」

光&中太郎 LP5000→4000

熱いマグマが中太郎にかかる
さらに、日比の伏せカードが開く

「仕込みマシンガン発動!」

仕込みマシンガン
通常罠
相手フィールド上カードと相手の手札を合計した数×200ポイントダメージを相手に与える。

地面からマシンガンが飛び出し、光と中太郎に弾を乱射する
光、中太郎共に手札は7枚
そしてフィールドにはラヴァ・ゴーレムとボルト・エスカルゴ
合計3200ポイントもの致命的ダメージ

光&中太郎 LP4000→800

ライフは1000を切った…
ここでターンを終了すれば、ステルスバードの効果によりライフは0になる
中太郎は何とかしてこのデュエルを勝利に導く方法を考える
このターンにドローしかカードは「手札抹殺」…

「(こいつを使えば、手札を一気に入れ替えることができ、更にこれで切り札を引く可能性もある
だが、気になるのは光の手札だ
もしもあいつの手札にこの状況を打開できるカードがあったとしたら…
いや、それはないだろう
さっきから光は下級モンスターを一体も出していない
それはつまり、手札に下級モンスターが無いと見るのが一番よいだろう
このターンに下級モンスターを引いたとしても、あいつのデッキのことだ
きっとマシなカードじゃない!)手札抹殺を発動!」

4人のプレイヤーは手札を全て捨て、捨てた枚数ドローする
中太郎の判断は正しかったらしく、光は手札を捨てた後、中太郎にそっと微笑みかけた

「あのカードは無い…か」

中太郎のドローしたカードの中には「闇の指名者」がある
このカードはタッグデュエルでは非常に強力な効果を発揮するが、あくまでパートナーを補助する効果
自分自身がキーカードを手札に加えられるわけではない
一方で、光の方もある一枚のカードを使うかで悩んでいた
手札抹殺によって引いたカード…「最終戦争」を

「(このカードを使えば、ステルスバードや他のカードを破壊することができる
でも、手札を5枚も捨てたら私の手札はゼロ、あとは中太郎くんに任せることになる…
もし中太郎くんの手札に切り札となるカードが無かったら…
日比先輩のデッキはバーンデッキ、きっと手札抹殺で引いたカードの中には800ポイントくらい簡単に削れるカードがあるはず…
このままじゃ負けちゃう…
なんとかして中太郎くんと話ができたらいいんだけど…)」

日比&田村ルールでは、パートナー同士の会話はカードの効果など特別な場合を除いてできないようになっている
だが、光にはその「特別な場合」を起こすことのできるカードがどれだかわからない――

「(このルールで会話が禁止されているのは、対戦相手に会話の内容が聞かれてしまうから…
つまり、会話の内容を聞かれないくらい小さな声で話せる距離までパートナーに近づく必要がある…
何か、そんなカードは………ある!このカード!)」

光は一枚の手札をデュエルディスクの魔法・罠ゾーンに差し込む

「エクスチェンジを発動!」

光は駆け足で中太郎の方へと来る
そして、中太郎の手札を見ると、すぐに作戦を思いついたのか、ヒソヒソと小さな声で中太郎にそれを言う

「中太郎くん、この『最終戦争』を貰って
私は『闇の指名者』を貰う
中太郎くんは最終戦争で手札を全て捨てて、場のカードを破壊する
私は闇の指名者で、中太郎くんの切り札を手札に加えさせるから」

普段と違って強気な光に戸惑う中太郎
「最終戦争」と「闇の指名者」を交換し、光は自分の場に戻る

「俺は手札5枚を捨て…最終戦争を発動!」

手札5枚の強大なコストを支払い、場に存在する全てのカードが破壊される
二人にダメージを与え続けていた「ラヴァ・ゴーレム」「ステルスバード」
そのダメージを確実なものとするための「生贄封じの仮面」「グラヴィティ・バインド」
ついでに「ボルト・エスカルゴ」

「闇の指名者を発動!」

闇の指名者
通常魔法
モンスターカード名を1つ宣言する。宣言したカードが相手のデッキにある場合、そのカード1枚を相手の手札に加える。

中太郎は一瞬ドキッとなった
まだ光には、自分のデッキの本当の切り札を見せていないのだ
光のことだから、確実に「磁石の戦士マグネット・バルキリオン」と言うのではないかと思った

「中太郎くんの手札に加えるカードは…メガロック・ドラゴン!」

中太郎はほっと胸を撫で下ろす
光でも岩石デッキの切り札くらいはわかるらしい

「よ、よーし、墓地に存在する岩石族モンスター…
ムカムカ!磁石の戦士α!磁石の戦士β!地帝グランマーグ!番兵ゴーレム!ガーディアン・スタチュー!岩の精霊タイタン!守護者スフィンクス!クリオスフィンクス!激昂のムカムカ!ガンロック!ストーン・ドラゴン!ブロックマン!ギガンテス!合計14体をゲームから除外し…メガロック・ドラゴン召喚だ!」

メガロック・ドラゴン
☆7 地 岩石 ? ?
このカードは通常召喚できない。自分の墓地に存在する岩石族モンスターを除外する事でのみ特殊召喚できる。このカードの元々の攻撃力と守備力は、特殊召喚時に除外した岩石族モンスターの数×700ポイントの数値になる。

メガロック・ドラゴン 攻撃力9800

「ダイレクトアタックだ!」

大量の岩石を吸収し巨大化したメガロック・ドラゴンは、地響きを立てながら日比と田村に突進する
いや、これは地響きというより「地震」と表した方がよいのかもしれない
あまりの揺れに動けなくなる二人
そしてメガロック・ドラゴンの巨体がそれにぶつかる

「ぐわぁぁっ!!」

日比&田村 LP8000→0

満タンだったライフが、たった一撃でゼロになる
光と中太郎の勝利だ
ところで、ロックバーンはロック担当とバーン担当に分けるより、一つのデッキに両方入れたほうが強いと思う…



第十三章 変☆態☆王

「おーい光ー。」

1年3組の教室。ショートカットの少女が、光の方へと駆け寄る。

「あ、俊子ちゃんひさしぶり。再登場おめでとう。」

俊子は黙り込む。

「…そんなことより、さ…。光の部に頼みたいことがあるんだけど…。」

「ほえ?」





「というわけなんだけど…。」

場所は移り変わって遊戯部部室。
中太郎達全員が、どう答えていいのかわからずに呆れ顔をしていた。

「つーか何で俺らが変質者の退治しないといけないんだよ!」

「俊子ちゃんは『光の部って暇そうだから』とか言ってた。」

「いや、俺らももうすぐ大会なんだけど…。」

最近、女子運動部の部室から制服や下着が盗まれるという事件が多発しているという。
そこで何故か遊戯部がその犯人を退治することになった、というわけだ。
当然、部のほぼ全員が反対。
大会を控えて変質者の相手をしている暇はないのだ。

「大会たって、運動部とは違うからそれほど練習する必要は…。」

「ミサワソスの『アン・ドゥ・ドロー』とか。」

「あれ絶対意味ないだろ。」

部室が完全に白けきったところで、扉を開けて騒がしい奴がやってくる。

「ハーッハッハッハ!話は聞かせてもらったぞ!」

やけにテンションの高い海日。
入るなり机の上に上がり、マイクを取り出す。

「俺様は変質者の退治に賛成だ。こうやって学校に貢献することで他の部から我々の素晴らしさを知ってもらえる。」

明らかに裏のありそうな言い方。
ぶっちゃけこいつが犯人じゃねーのと全員が思った。

「さて、それでは警備に当たるとしよう。何かあったら携帯で知らせてくれ。」

海日は他の部員を無理矢理押し出し、扉を力強く閉める。

「ったく、何だよ海日のヤロー!」

嫌々外に出て、各部部室の警備につく遊戯部部員9人。
海日はキョロキョロと辺りを見回し、扉を開けて外も確認する。
誰もいないのがわかると、机の中から一枚の大きな紙を取り出し、シャープペンですらすらとそれに絵を描いていく。

「フハハハハハハハハァ!!これで俺は更に新世界の神に近づいたァァ!!」

紙に描かれた開闢の使者は、海日の未来を示すかのように不気味に笑っていた…。


光と中太郎は亮子の所属するテニス部の警備をしている。
光は何でか部室の中で、中太郎は外。
しかしテニスコートの方ばかり見ていて、全く警備する気がない。

遠くからエンジンの音が聞こえてくる。
光はそれに気がついたのだが、部室の中にいるためわからない。
扉を開けようとしたのだが、外から鍵をかけられている。
中から開けることはできず、鍵は中太郎が持っている。
窓はあるが、反対側のため音の主を見ることはできない。
エンジン音はだんだんとこちらに近づき、やがて止まった。
テニス部のパンチラウォッチ中の中太郎はそれに全く気がついていない。

校門の前にバイクが止まる。
黒いヘルメットを被った筋肉質の男がバイクを降り、部室の方に向かってくる。
部室の前に立ち、素手で扉を突き破る。
それでもなお、中太郎は気づかない。

光は入ってきた男に驚き、怯える。
ロッカーを開けようとした男だが、光の方を見ると、ターゲットをそちらに変える。
男の手が光へと迫る。

「中太郎キーック!」

間一髪。男の後頭部を中太郎が蹴り飛ばす。
ヘルメットが外れ、その顔が光の目の前に現れる。

「うそ…。」

男の顔を見た光は、驚きのあまりつい声が出てしまった。

「戦士…ダイ・グレファー…。」

光達の前に現れた男。その顔は紛れも泣く遊戯王OCGのモンスター、戦士ダイ・グレファーだった。
改めて彼を見ると、その服装までもOCGと全く同じである。

「お、おい!マジかよ!何でグレファーが!?」

単なるコスプレとは思えない。かといってGXに登場する精霊なんて存在する筈がない。
グレファーは剣を抜き、中太郎の方へと向かう。
流石の中太郎も刃物相手では何もできないと悟り、後ずさりする。

「あ、あの…。」

光がグレファーに話しかける。

「乱暴なことはやめて…これで勝負しませんか?」

光はOCGのモンスターであるグレファーなら、おそらくデュエルもできるのだろうと思いデッキを取り出す。
グレファーはそれに答え、自分のデッキを取り出す。

「よいだろう…。もし貴様が勝ったのならここを去ってやる。
だが、もし俺が勝ったのなら… 罰 ゲ ー ム だ。」

恐ろしい顔で笑い、光に脅しをかけるグレファー。
中太郎が持ってきたデュエルディスクを二人はつけ、デュエルを開始する。
武たち他の部員も集まってきた。

「私のターン!エルフの剣士を召喚!」

攻撃力1400の剣士が場に召喚される。
グレファーは黙ってそれを見ている。

「では、俺のターンだ!戦士ダイ・グレファーを召喚!」

戦士ダイ・グレファー
☆4 地 戦士 1700 1600
ドラゴン族を操る才能を秘めた戦士。過去は謎に包まれている。

しかし、グレファーのソリッド・ビジョンが表示されない。
そのかわりに、グレファー本人が場に出る。
グレファーは剣を抜き、エルフの剣士へと向かう。

「グレファー・ブレード!」

エルフの剣士を真っ二つにし、自分の場に戻る。

光 LP8000→7700

「男はいらん!女を出せ!」

剣を光に向け、叫ぶグレファー。

「私のターン…守備モンスターを出して、カードをセット、ターンエンド。」

裏守備のモンスターを、グレファーはじっと見つめる。

「グレファー・アイ…我が特殊能力…。
女性の服とか下着とかが透けて見えるという10年修行して得た究極の目!
まあ、ついでに相手の手札とか伏せカードとかも見えるようになってしまったがな…。」

グレファーの目に、伏せられた守備モンスターの絵柄が映る。

「ホーリー・エルフ…。フフ、女性モンスターだな…。」

グレファーは手札から一枚のカードを場に出す。

「装備魔法、城壁壊しの大槍!」

城壁壊しの大槍
装備魔法
装備モンスターが裏側守備表示モンスターを攻撃する場合、装備モンスターの攻撃力は1500ポイントアップする。

男数人でやっと持ち上げられるほどの巨大なを、グレファーは股に挟んで軽々と持ち上げる。

「クク…ホーリー・エルフ…今俺の全てをぶつけてやる…。

グレファーは股間の槍を振りながら突進する。

戦士ダイ・グレファー 攻撃力 1700→3200

「モンスター・レリーフ発動!」

モンスターレリーフ
通常罠
相手バトルステップの攻撃宣言時に発動可能。自分のフィールド上モンスター1体を手札に戻し、その後手札からレベル4モンスター1体を特殊召喚する。

ホーリー・エルフを手札に戻し、手札から別のモンスターを特殊召喚する。

女邪神ヌヴィア
☆4 闇 悪魔 2000 800
召喚された場合、このカードを破壊する。相手が1体でもモンスターカードをコントロールしていた場合、攻撃力は相手フィールド上のモンスター1体につき200ポイントダウンする。

「いくら女でもこれは嫌〜!!」

ヌヴィアの目の前でグレファーは足を止める。
巨大なは宙に浮いているヌヴィアの真下にあった。

「私のターン、E・HEROバーストレディを召喚!」

E・HEROバーストレディ
☆3 炎 戦士 1200 800
炎を操るE・HEROの紅一点。紅蓮の炎、バーストファイヤーが悪を焼き尽くす。

「女邪神ヌヴィアで攻撃!光の砲撃!」

女邪神ヌヴィア 攻撃力2000→1800

ヌヴィアの手から砲撃が放たれる。
グレファーに当たると爆発し、後ろに吹き飛ばされる。

グレファー LP8000→7900

「バーストレディでダイレクトアタック!バーストファイヤー!」

炎がグレファーの体を焼く。

グレファー LP7900→6700

「ぬうう…バーストレディか…こいつは襲いがいのありそうな奴が出てきた…。」

だがグレファーは、むしろやる気になっていた。

「カードを3枚伏せて、ターンエンド。」

剣を振り回し、墓地のグレファーを再利用する方法を考えるグレファー。

「俺のターン、ドロー!戦士の生還を発動!」

戦士の生還
通常魔法
自分の墓地から戦士モンスター1体を選択して手札に加える。

「戦士ダイ・グレファーを手札に戻し、融合を発動!」

グレファーは手札のスピリット・ドラゴンと自分自身を融合する。
スピリット・ドラゴンはグレファーの鎧となる。

「グレファー!装・着!!」

特撮ヒーローのノリで装着するグレファー。
鎧となったスピリット・ドラゴンを装着し、突撃するグレファー。

ドラゴン・ウォリアー
☆6 地 戦士 2000 1200
「戦士ダイ・グレファー」+「スピリット・ドラゴン」
このモンスターの融合召喚は、上記のカードでしか行えない。このカードがフィールド上に存在する限り、1000ライフポイントを払う事で通常罠の効果を無効化する。また、このカードを対象にする魔法カードの効果を無効にし破壊する。

「行くぞバーストレディ!グレファー・アタック!」

ものすごいスピードで走り出すグレファー。

「ヒーローバリア!」

「無駄無駄無駄ァ!効果発動だァ!」

グレファー LP6700→5700

「じゃあアストラルバリア。」

発動したのは永続罠。ドラゴン・ウォリアーの効果では無効にできない。

「フハハハハハハ!!自ら俺に襲われることを選ぶとはかわいい奴め!それならばやってやる!」

グレファーは光に方向を変え、突撃する。
光は横に攻撃をかわし、グレファーは木に激突する。
攻撃をかわすことができて光はほっとため息をついた。

光 LP7700→5700

「おのれ…ターンエンドだ!」

「私のターン。バーストレディを生贄に…ブラック・マジシャン・ガール召喚!魔術の呪文書を装備!」

ブラック・マジシャン・ガール
☆6 闇 魔法使い 2000 1700
自分と相手の墓地にある「ブラック・マジシャン」と「マジシャン・オブ・ブラックカオス」の数だけ、攻撃力が300ポイントアップする。

魔術の呪文書
装備魔法
「ブラック・マジシャン」か「ブラック・マジシャン・ガール」のみ装備可能。装備モンスターは攻撃力が700ポイントアップする。このカードがフィールド上から墓地に送られた時、自分は1000ライフポイント回復する。

原作でも活躍した、魔法使いの少女。
しかも希少なシークレットレアだ。

ブラック・マジシャン・ガール 攻撃力2000→2700

「戦士ダイ・グレファーを攻撃!ブラック・バーニング!」

魔力の塊が炎となり、グレファーを攻撃する。
爆発が起こり、またまた吹っ飛ばされる。

グレファー LP5700→5000

「ヌヴィアでダイレクトアタック!光の砲撃!」

倒れたところをさらに吹っ飛ばされるグレファー。
もうこの人こればっかだ。

グレファー LP5000→3000

ハァ、ハァ…ウッ…。強いじゃないか…。だが、俺としても負けるわけにはいかないのでね…。」

グレファーはカードをドローし、勝利の微笑みを見せる。

「強奪を発動!」

強奪
装備魔法
このカードを装備した相手モンスターのコントロールを得る。相手のスタンバイフェイズ毎に、相手は1000ライフポイント回復する。

グレファーはブラック・マジシャン・ガールに飛びつき、自分のフィールドに持ってくる。
そして青ざめるブラック・マジシャン・ガールの胸や尻を触ったりとやりたい放題。

「クク…女邪神ヌヴィアを攻撃だ!グレファー・バーニング!!」

ブラック・マジシャン・ガールはグレファーに命令されるのを嫌がりながらも、ヌヴィアを攻撃する。

光 LP5700→4800

「ターンエンド…やっぱりブラマジガールはいいぜぇ〜…。」

ブラマジガールに抱きつき、体中を撫で回す
ヤバい。これはヤバい。そのうち掲載できないレベルまで行きそうな気がする。(←検閲済み by管理人)
遊戯王カード原作ホームページを18禁にする気満々だ。

「私のターン、カードを1枚伏せて、ターンエンド…。」

光 LP4800→5800

光もだんだん苦しくなってきた。

「俺のターン!戦士の生還発動!グレファーを手札に戻す!そして召喚!」

自分自身を場に出し、剣を抜く。

「ブラマジガール!ダイレクトアタックだ!」

光は伏せカードを発動しようかと悩む。
伏せられたカードは「武装解除」。
ドラゴン・ウォリアーはいないため発動することはできるのだが、心配なのはその先。
あのグレファーのことだ。確実に武装解除だとか言ってブラマジガールを脱がせるに違いない。
だが、ここで攻撃を受けてしまってはライフに致命的ダメージを受けてしまう。

「こうなったら…やるしかない!」

決断の末に、光は武装解除を発動する。

武装解除
通常罠
フィールド上の装備カードを全て破壊する。

強奪が破壊され、ブラマジガールは光の場に戻る。
グレファーはブラマジガールを脱がせたりはしなかった。
流石にそんなことをする暇はなかった…のかと思いきや…。

「フハハハハハハハァ!武装解除ォォ!!」

グレファー自身が脱いだ全裸にデュエルディスクと剣だけという、危険すぎる格好に。
光は手で目を覆う。
ギャラリーの皆様(一部)は携帯のカメラで写真を撮る。

「よぉしブラック・マジシャン・ガール!今俺の物にしてやる!グレファー・全裸アタック!!」

全裸のまま突撃するグレファー。
当然のごとく攻撃力では負けていて、ブラック・バーニング一発で倒されてしまった。

グレファー LP3000→2000

バカとしか言い様がない。
もう彼にとっては勝利<<<<<欲。
女を襲うことしか頭にない。

「ぬあああああああ!!ブラック・マジシャン・ガールぅぅぅぅぅぅ!!!」

全裸のまま立ち上がるグレファー。
興奮のあまり叫びだす。
つかパンツくらいはけ。

「わ、私の…ターン…。」

グレファーの方を見ないようにうつむきながら、カードを引く。

「ブラック・マジシャン・ガールの攻撃…。」

グレファーは全裸で腕を広げ、ブラマジガールの攻撃を全身に受ける。

最高に『ハイ!』ってやつだアアアアアア!!!」

変態−ネイキッド・ダイ・グレファー LP2000→0

「…負けてしまったか…。」

グレファーは敗北を認め、自分が乗ったバイクの方へと歩き出す。全裸のまま。

「さらばだ諸君。いつかまた会おう。」

さわやかに挨拶をし、バイクにまたがる。全裸のまま。
そして走り出す。全裸のまま。
最初から最後まで最低の変態野郎だ。
こいつは絶対に頭がどうかしている。
光たち遊戯部9人は、何も言わずただグレファーが去るのを見ていた…。




だが、この事件はこれで終わりではなかった。
全裸でバイクに乗るグレファーは、逮捕されて当たり前。
しかし、逮捕どころかグレファーを見たというのは誰一人いなかったのだ。



第十四章 リベンジ・開闢太郎

いよいよ明日は生徒会長選挙。
授業が終わり、光は遊戯部の部室に入った。
普段は普通の教室と変わらないのだが、今日は少し違った雰囲気を放っていた。
部屋の壁中にいくつものポスターが貼られている。
ポスターにはカオス・ソルジャー −開闢の使者−が描かれ、

「学校を荒らす変質者を退治した海日厄太郎を生徒会長に!」

と書かれている。
こいつ何もやってないのに…。

「フハハハハ!!貴様ら、俺様に投票しろよ!しない奴は即退部だ!」

いつもの様に机の上に立って言う。
光たちは呆れて物も言えなかった。


そして選挙当日。
光は仕方が無いので海日に入れる。

たった二行で結果発表。
海日 18547票
園田 0票
雑魚山 0票
どう考えても海日の投票数が生徒の人数より多いが、他が0票のため海日が会長に決定した。

「フハハハハハハハァ!俺様が会長だァ!これでこの学校は俺様のモンよォ!!フヒャァハハハハハ!!!」

マイクを持って高らかに宣言する海日。会長の演説がこれでいいのだろうか。
体育館中がまるで誰もいないかのように静まった。
海日はそれでも、ステージの上で笑い続けた…。


そしてその日の部活動。
海日は真っ先に部室に現れ、机の上に立ち笑っていた。
木之上はいい病院を紹介してあげようかと思った。
当然のごとく、全員で海日を無視してデュエルしたりしていた。
笑い声が聞こえないようにイヤホンで音楽を聴きながらデュエルする者もいた。

「貴様らァ!何故無視する!」

海日の叫び声も軽くシカトされる。
誰もが関わりたくないと思っていた。

「でぇえい!俺様の話を聞かないというのなら…御門光!俺とデュエルするんだ!」

デュエルディスクを起動させ、鬼のような形相で光を睨む海日。
無視しようにも、あれだけ恐ろしい顔で睨まれてはそうすることができず、仕方が無く机の上に置かれたデュエルディスクを手に取る。

「あの…。」

武が声をかける。

「僕とじゃ…ダメですか?」

武はデュエルする相手がいなく、困っていた。
海日はキョロリと武を見下ろす。
光はその隙に中太郎たちの方に逃げた。

「ほう…そういえば貴様もノンデュエルでこの部に入ったんだったな…。
よし、神沢武の退部をかけたデュエル、相手してやる!」

海日は人差し指を立て、武を指差す。

「あ、ありがとうございます。」

勝てるかどうかはわからない。
でも、同じノンデュエルで入部した光が勝てたのだから、自分でも勝てるのではないか…。
そんな思いを胸に込め、机の上に立つ最強の敵に決闘を挑む――。

「デュエル!」

互いにデッキからカードを5枚引く。
海日はあまりよくない手札だったのか、少し顔をしかめる。

「僕の先攻でいいでしょうか…。」

武はカードを引き、手札の真ん中辺りにあるカードを場に出す。
赤い歯車のようなモンスターの姿が表示される。

レッド・ガジェット
☆4 地 機械 1300 1500
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから「イエロー・ガジェット」1体を手札に加える事ができる。

効果によりデッキから「イエロー・ガジェット」を手札に加え、ターンを終了する。
海日は召喚されたモンスターを見て、さらに顔をしかめた。
ガジェットデッキには除去ガジェット、血の代償ガジェットなど、数多くの強力なデッキが存在する。
さらに三種のガジェットは制限をかけられていないこともあり、ガジェットデッキ――特に「除去ガジェット」と呼ばれるタイプは負けなしと言っていいほどの強さを誇る。
意外な強敵に海日の手は震えだす。
だが武の場には何も伏せられていない――つまり攻撃すれば確実にレッド・ガジェットを倒せるということ。

「俺のターン!サイバー・ドラゴンを特殊召喚!」

サイバー・ドラゴン
☆5 光 機械 2100 1600
相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在していない場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。

機械の竜が現れ、レッド・ガジェットを睨みつける。

「さらに霊滅術師カイクウを召喚!レッド・ガジェットに攻撃!」

カイクウは数珠を持ちお経を唱える。
レッド・ガジェットの体から煙が噴き出す。
ガジェットは苦しみ、地面に膝をつく。
やがて、ガジェット自身が煙となり、消滅してしまった。

武 LP8000→7500

ガジェットはゲームから除外される。
恐ろしい動きをするカイクウにひるんだ武に、サイバー・ドラゴンの口から光線が放たれる。

武 LP7500→5400

海日の強さに、不安を感じる武。だがそれ以上に、武は楽しかった。
中学の時はさほど強くもない中太郎しかデュエル仲間がいなかったのに、今はこれだけ強い相手と戦えている。
このデュエルに勝ちたい、武は強く思った。

「僕のターン!イエロー・ガジェット召喚!効果によりグリーン・ガジェットを手札に!光の護封剣を発動し、ターンエンド!」

イエロー・ガジェット
☆4 地 機械 1200 1200
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから「グリーン・ガジェット」1体を手札に加える事ができる。

光の護封剣
通常魔法
相手フィールド上に存在する全てのモンスターを表側表示にする。このカードは発動後(相手ターンで数えて)3ターンの間フィールド上に残り続ける。このカードがフィールド上に存在する限り、相手フィールド上モンスターは攻撃宣言を行う事ができない。

海日のフィールドに光の剣が降り注ぐ。
サイバー・ドラゴンと霊滅術師カイクウは攻撃を封じられ、剣に掴みかかる。
二体のパワーに押され、剣の刺さった地面ははミシミシと音を立てる。

「ターンエンドです。」

護封剣が発動し1ターン。剣が数本消える。
海日の二体のモンスターはさらに力を増す。

「イグザリオン・ユニバース召喚!」

半獣半人の魔物が場に現れる。
召喚されるや否や、槍を構えて護封剣めがけて突撃する。
3体目の重みが加わり、剣は大きく傾いた。

「僕のターン、グリーン・ガジェットを召喚!効果によりレッド・ガジェットを手札に!さらにカードを伏せて、ターンエンド!」

「俺のターンだ!異次元の女戦士を召喚!」

異次元の女戦士
☆4 光 戦士 1500 1600
このカードが相手モンスターと戦闘を行った時、 相手モンスターとこのカードをゲームから除外する事ができる。

互いにモンスターを召喚し合いつつも、攻撃はできない。緊迫状態が続く。

「僕のターン、レッド・ガジェットを召喚、デッキからイエロー・ガジェットを手札に加える。カードを伏せてターンエンドだ。」

護封剣が発動して3ターン目の海日のターンが来た。
剣の数はずいぶんと減り、四体のモンスターに潰されそうになっていた。

「キラー・トマトを召喚!カードを1枚伏せ、ターンエンド!」

キラー・トマト
☆4 闇 植物 1400 1100
このカードが戦闘によって墓地へ送られた時、デッキから攻撃力1500以下の闇属性モンスター1体を自分のフィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。その後デッキをシャッフルする。

護封剣が消滅する。海日の場の5体のモンスターは、勢い余って押し倒されてしまった。
倒れているモンスターを見て、武は今しかない、とドローしかカードを発動する。

「ライトニング・ボルテックスを発動!」

雷鳴が鳴り響く。手札一枚を雷へと変換し、5体のモンスター目掛けて一気に打ち飛ばす。
雷を浴びたモンスター達は砕け散り、あっという間に海日の場は伏せカード一枚が残るのみとなってしまった。

「3体のガジェットで直接攻撃!」

レッド、グリーン、イエロー、3体のガジェットが海日へと走る。

「ミラーフォースを発動!」

聖なるバリア−ミラーフォース−
通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。相手フィールド上の攻撃表示モンスターを全て破壊する。

一体のガジェットがバリアを殴る。
その瞬間に攻撃は跳ね返り、他の二体を巻き込んで破壊する。
あちらを全滅させたかと思えば、今度はこっちが全滅。
デュエルとは非常に厳しいもの。
だが武はこれを予測していたかのように、メインフェイズ2で手札のイエロー・ガジェットを通常召喚した。
デッキからグリーン・ガジェットを手札に加え、カードを2枚セット、ターンを終了する。

「…俺様のターン!」

ミラーフォースで武のガジェットを全滅させられたのはよかったが、こっちもライボルで全滅。
さらにはメインフェイズ2での通常召喚など、想定外のできごとばかりで焦る海日。
だが、ドローしかカードを見てニヤリ、と。

「来た来た来た来たァ!!開闢の使者!召喚!!!」

墓地のキラー・トマトとサイバー・ドラゴンがゲームから除外される。
二つの魂は一つとなり、開闢の使者が降臨する。

「そのザコを叩き切れ!開闢双波斬!!」

剣を素早く振り、イエロー・ガジェットを真っ二つにする。
倒されたガジェットは爆発し、武に大きなダメージを与える。

武 LP5400→3600

そして開闢の効果によって、二度目の攻撃が武へと向かう。
武は爆風で遮られた視界を片目で確認しながら、伏せられたカードを発動する。

「ダメージ・コンデンサー発動!」

ダメージ・コンデンサー
通常罠
自分が戦闘ダメージを受けた時、手札を1枚捨てて発動する事ができる。その時に受けたダメージの数値以下の攻撃力を持つモンスター1体をデッキから攻撃表示で特殊召喚する。

手札を1枚捨て、デッキからガジェット・ソルジャーを特殊召喚する。

ガジェット・ソルジャー
☆6 炎 機械 1800 2000

「ガジェット・ソルジャーだとぉ!?」

意外すぎる敵の登場に、一瞬敵を見失う海日。
しかしすぐに状況を把握し、開闢に命令を下す。

「そのザコを始末しろ!開闢双波斬!」

ガジェット・ソルジャーは当然のように真っ二つにされる。
大爆発を起こし、武にダメージを与えた。

武 LP3600→2400

ガジェット達のおかげでなんとか助かった武。
自分でもここまで生き残れたのが嘘のようだ。
だが相手のライフは8000のうえに、場には最強のモンスター、開闢の使者。
そしてこのターンで海日を倒すことができなければ、ほぼ負けるといってもよいだろう。

武の額を、汗が伝った。
デッキからカードを引く手が震える。
勝ちたい――こんな強敵と戦ったのは初めてなのだ。だからこそ――勝ちたい。

「次でとどめだ…ターンエンド!」

「機動砦…ストロング・ホールド!」

機動砦ストロング・ホールド
通常罠
このカードは発動後モンスターカード(機械族・地・星4・攻0/守2000)となり、自分のモンスターカードゾーンに守備表示で特殊召喚する。自分フィールド上に「グリーン・ガジェット」「レッド・ガジェット」「イエロー・ガジェット」が全て表側表示で存在する限り、このカードの攻撃力は3000になる。(このカードは罠カードとしても扱う)

巨大な砦が武の場に現れる。

「僕の…ターン…。」

手札のグリーン・ガジェットを召喚し、デッキからレッド・ガジェットを手札に加える。
次に、伏せられた「リビングデッドの呼び声」で墓地のイエロー・ガジェットを特殊召喚する。

リビングデッドの呼び声
永続罠
自分の墓地からモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。

その次は、手札の「次元融合」を発動。
ゲームから除外された「レッド・ガジェット」を特殊召喚。
それと同時に海日もトマトとサイドラを特殊召喚する。

次元融合
通常魔法
2000ライフポイントを払う。お互いに除外されたモンスターをそれぞれのフィールド上に可能な限り特殊召喚する。

武 LP2400→400

武の場に3体のガジェットが揃った。
3体のガジェットはストロング・ホールドと合体する。

機動砦ストロング・ホールド 攻撃力0→3000

ストロング・ホールドを攻撃表示に変更し、手札抹殺を発動する。
手札のレッド・ガジェットを捨て、デッキからカードを1枚引く。
ドローした強欲な壺を発動、デッキから2枚ドロー。
使者蘇生を発動し、墓地のガジェット・ソルジャーを特殊召喚。

「リミッター解除!!」

リミッター解除
速攻魔法
このカード発動時に自分フィールド上に存在する全ての表側表示機械族モンスターの攻撃力を倍にする。エンドフェイズ時この効果を受けたモンスターカードを破壊する。

武の場に存在する全てのモンスターのリミッターが外れる。
攻撃力が2倍となり、大きくパワーアップ。

ガジェット・ソルジャー 1800→3600
機動砦 ストロング・ホールド 3000→6000
グリーン・ガジェット 1400→2800
レッド・ガジェット 1300→2600
イエロー・ガジェット 1200→2400

「ストロング・ホールドで開闢の使者を攻撃!ストロング・ナックル!」

ストロング・ホールドの拳が、硬い鎧を粉々に砕く。

海日 LP8000→5000

「お、俺の開闢が!!」

開闢を破壊されたショックで海日は青ざめる。

「グリーン・ガジェットの攻撃!グリーン・レーザー!」

緑色のレーザーがキラー・トマトを貫く。
デッキからキラー・トマトが特殊召喚される。

海日 LP5000→3600

「レッド・ガジェットの攻撃!レッド・レーザー!」

赤のレーザーが二体目のキラー・トマトを破壊する。
デッキからクリッターが特殊召喚される。

海日 LP3600→2400

「イエロー・ガジェットの攻撃!イエロー・レーザー!」

黄色いレーザーがクリッターを爆破させる。
海日はデッキからクリボーを手札に加える。

海日 LP2400→1000

「ガジェット・ドルジャーでサイバー・ドラゴンを攻撃!全段発射!」

大量のミサイルがサイバー・ドラゴンに向かって発射される。
海日は手札からクリボーを捨て、ダメージを0にする。
が、サイドラ自体は破壊されてしまう。

「フハハハハハハァ!これで貴様のモンスターは全て攻撃を終えた!もう攻撃はできまい!」

机の上で高らかに笑う海日。
だが武は決して諦めない。

「僕は負けません…罠カード!地霊術−「鉄」発動!!」

地霊術−「鉄」
通常罠
自分フィールド上に存在する地属性モンスター1体を生け贄に捧げる。自分の墓地から、生け贄に捧げたモンスター以外でレベル4以下の地属性モンスター1体を特殊召喚する。

ガジェット・ソルジャーを生贄に、墓地のレッド・ガジェットを特殊召喚する。
海日はショックのあまり赤くなったり青白くなったり。

「これでとどめです…レッド・レーザー!」

海日 LP1000→0

レッド・ガジェットから放たれるレーザーが海日の胸に当たる。
海日は机から転がり落ち、頭を打ってしまった。

「う、海日部長…だいじょうぶですか…?」

武が、倒れている海日の方へと歩いていく。
海日は歯を食いしばり、目からは涙が。
そして武に触れられる前に立ち上がり、学校のデュエルディスクをつけたまま「ちくしょう!」と捨てゼリフを吐いて逃げ出してしまった…。



第十五章 開闢太郎の旅

金曜日――大会を明日に控え、部員全員に気合が入っていた。
…ように見せかけておいて、運動部ではないのでそれほど気合を入れる必要は無く、普段と同じようにだらけていた。
机の上で昼寝している日比。
自慢のモヒカンをセットしている田村。
捨てるのが勿体無くて無駄にたまった昔のジャンプを読み返してる雷。
おやつ食べてる亮子。何故かデュエルディスクばらしてる武。
適当にカード眺めてる天野。校庭で運動部に混じって暴れてる中太郎。
奇妙な声を発しながらVIPの祭りに参加している木之上。
何をしていいかわからず、ぽつんと立っている光。

…三沢のように忘れられた海日。
誰一人海日がいないことに気がついていない。
かつて、これほどまでに静かだったことがあっただろうか。



駅のホーム。そこにたたずむ一人の男。
後輩二人に惨敗し、その心は酷く傷ついた。
いっそ、死んでしまおうかと思った。
だが、ここに入るためだけに買った切符のことを考えると、どうしても勿体無くて死ぬことができなかった…。
結局彼は電車に乗った。
ドアが閉まり、電車は動き出す。
行くあてのない旅への出発。
友に、家族に別れを告げ、彼はこの町を出ることを決意した――

が、次の駅ですぐに降りた。一番安い切符だったし。
海日は出口に向かおうと歩き出す。
出口の前に来たとき、ドン☆と何かにぶつかる。
その拍子に後ろに転んで尻餅をついてしまった。
ぶつかった方を見ると、180センチ以上ある海日が小さく見えるほど背が高く、体格のいい外国人が二人、こっちを睨んでいた。
海日は頭が真っ白になり、ハイハイで逃げ出し、立ち上がって近くの電車に乗り込んだ。
丁度いいタイミングでの「駆け込み乗車はおやめください」のアナウンスと共に扉が閉まる。
海日は何やらこの電車に違和感を感じた。
やたらと新しく、きれいな車内。普通の電車には無いような設備。

どうみても特急です。本当にありがとうございました。

海日は叫びながら窓に顔を押し付ける。
外人達は親指を下に向けながら笑っていた。

海日はもうどうしたらいのかわからず、体育座りで何やら奇妙なことをつぶやいている。
ヒエラティックテキストは別の場所で読んでください。

しばらく経ち、やっと駅についた。
たった一駅なのだが、ずいぶんと遠くまで来てしまった。
隣のホームに、普通列車が止まった。
時間はかかるが、戻るにはこれしかないと思い、それに乗る。
海日はドアの近くの席に座った。
後から、どんどん人がこの電車に入ってきて、あっという間に満員となった。
早めに乗ってよかったと、激しく思った。



「あれ?海日部長は…?」

遊戯部の部室。光はやっと今、海日がいないことに気がついた。
全員が黙っていた。おそらく気づいていたのに言わなかったのだろう。
海日がどれだけ嫌われているのかがよくわかる。

「今日は海日を見てないでござるな。
生徒会の仕事をしているわけではなさそうでござるし…。
あいつが学校を休むとは珍しい。」

雷が読んでいたジャンプを置いて言った。
さっきまで読んでいたページには「プリンセス・ハオ」が見えた。

「武に負けたのがショックで自殺したとか…。」

「車にはねられて死んだんじゃなかったっけ?」

「いや、俺は病気で死んだって聞いたぞ。」

「いやいや赤い箱にされて…。」

海日の死因を楽しそうに推理する遊戯部部員達。
しかし木之上だけは、何も言わずパソコンの前に座っていた…。
一方、その頃海日は…

「おいお前、何でこのバーさんに席ゆずらねーんだコラァ!!」

優先席に座っている海日の前に、今にもコロッと逝きそうなお婆さんが一人立っている。
そしてその隣に、不良っぽい外見の中学生。
孫とかではなさそうだが、老人に対しては優しいようだ。

「アァ?あんだとコラ!俺様は心が痛んでるんじゃボケ!
体に傷のある人は優先席に座れてっ!心に傷のある人が座れねーわけがねーだろがァ!」

ムチャクチャな理論をぶつける海日。
「車内で大声を出すのはおやめください。」というアナウンスがかかるほどだ。

「とにかく俺様がどうしようと勝手なんだよ!ババァが一人死んだところで俺様には関係な…


メメタァ


顔面に中学生の拳がヒット。
海日は「ゲコ」と声を出して倒れる。
そして一つ目の駅に着き、急いで電車から降りた。
海日は息を切らせ、死んだような顔で柱にもたれかかる。
柱をぎゅっと抱きしめ、頬をすり寄せる。
近くを通りかかった子供連れの母親が、必死に子供の目を覆っていた。
あまりの変態ぶりに若い駅員が注意しようとしたが、勇気が無く海日の前で踏みとどまった。

しばらくして落ち着いたのか、海日は柱を離れる。
そこでふと、あることに気がついた。
さっきまでポケットにあった財布が無くなっている。
落としたのか、それともスリにでもあったのか。

海日は体中のポケットというポケットを、そして靴下の中やトランクスの中まで調べるが、結局財布は見つからず。
運がよかったのか、切符だけは別のポケットに入っていた。



「みなさん、海日部長を探しに行きましょうよ。」

光が言うが、中太郎達は聞こうとしない。

「木之上先ぱい!探しにいきましょうよ!」

木之上は「何で僕に言うんだ…」と言うように光を睨むと、またパソコンの方を向いた。

「みなさんは悲しくないんですか?
たいせつな仲間の一人が死んでしまって…。」

木之上ははぁ…とため息をついた。
光の方を向き、眼鏡をくいっと上げて口を開く。

「海日の一人や二人、死んだって構わないね。
だいたい僕、海日嫌いだし。」

氷のように冷たい目が、眼鏡の奥から覗いている。
冗談で言っているのではない――これは人を恨んでいる人の目だ。
光は僅かながら恐怖を感じた…。



「はぁ…財布もなしに、どうすれば…。」

さっきとは別の電車の中。
いすに座ってため息をつき、独り言。
すぐ右で酔っ払いに美女が絡まれているが、どこかのキモヲタが助けに来るだろうと思い、スルーしておいた。
今まで電車の中で酷い目にあってきたので、今度は何もかかわらないようにしている。

…何か異臭がする…。
自分のすぐ近くだ。
いや、すぐ隣にいる!
テロか、薬物か!?

いや――キモヲタだ!

一応イケメンに見えなくもない電車男とは違い、こいつは本気でキモい!
キン肉マンならぬゼイ肉マンというほどのデブ体系。全身で汗をかいている。
数年切っていないであろう髪は、頭から油をかけたようにてかっている。
顔はニキビだらけで、丸い眼鏡をかけている。
背中にはリュックサックを背負っていて、そこから丸めたポスターが出ている。
そしてとどめに電車の中で18禁コミックを普通に読み、ハァハァと奇妙な声を出している。

こんな男に助けられるくらいだったら酔っ払いに襲われ続けた方が絶対マシだろう。
まあ、キモヲタは二次元にしか興味がないらしく、酔っ払いも美女もアウトオブ眼中。
海日はあまりの臭いに耐え切れず、席を離れる。
酔っ払いと美女がいる方と反対の方向へと進もうとすると、突然酔っ払いから声をかけられる。
海日はかかわりたくないので、早足で逃げ去る。
電車の乗客からの視線が痛い。
18禁コミックに夢中になっているキモヲタ以外の全員から見られている。

「俺には関係ない。俺には関係ない。」

海日は自分に言い聞かせる。

「おいあんた、聞いてんのか?」

酔っ払いが海日に言う。
びくっとなるが、聞こえないふりをして走って逃げる。
やがて駅に着き、海日はすぐに降りた。
あれだけ遠くに行って、一個づつ乗り換えていてはいつまで経っても帰れない。
でも仕方が無いので、次の電車に乗る。
次はどんなトラブルに巻き込まれるのか、ハラハラしながらいすに座る。

優先席じゃない、お婆さんはいない、不良もいない、スリもいない、酔っ払いも美女もいない。
これなら何のトラブルにも巻き込まれることはない…。
扉が閉まって、電車が動き出した。
やっとゆっくり電車に乗れる…。
ほっとしたのか、海日はごろんと席に寝転ぶ。

「…龍星の海日厄太郎だな。」

いつの間にか鋭い目の少年が海日の前に立っている。
ああ、また変なトラブルに巻き込まれるのか…。
海日の目から涙がほろり。

「明日の大会、お前達と一回戦で当たることになった。
三十六段坂高校の儀亜(ぎあ)だ。」

学校名が意味不明なのはさておき、海日は彼に興味を示し、立ち上がる。

「三十六段坂?聞いたことがないな。万年緒戦敗退のザコかよ。」

「いや、今年テーブルゲーム部ができたばかりだ。
だが、そこらのザコと一緒にしてもらっては困る。
うちの学校中の実力者を集めた、最強の名に相応しいチームとなっている。」

自信たっぷりに言う儀亜に、海日はこちらも自信たっぷりに言い返す。

「残念だが、うちのチームは貴様らよりもずっと…。」

光、中太郎、武…生意気な新入生どもの顔が頭に浮かぶ。

「よ、弱いぞ!うちのチームの新入生は!俺よりも!ずっと!」

必死になる海日に、儀亜は強さを隠しているのだと思い、ぺろりと舌を出して笑った。

「でもそれならよかったよ…。
実を言うとうちのチーム、メンバーが4人しかいないんだよね。」

大会の参加メンバーは最大5人まで登録可能となっている。
しかし36(ryのテーブルゲーム部の部員は4人、強い者ばかりを集めた結果がこれだ。
ついでに海日が二連敗したのも強い者ばかりを集めた結果だ。
光も武も入部デュエルで一勝もしてないけど。

「海日厄太郎…うちのチームに入らないか?
お前はうちのチームに入ってこそ本来の実力を発揮できる…。」

儀亜の後ろから36(ryテーブルゲーム部の3人と、顧問と思われる中年男性が歩いてきた。

「儀亜くん、いい人みつかった?」

さっきのキモヲタほどではないが、太った体をした少年が儀亜に言う。
――こっちはいたって健康的な太り方だが。

「片刃(かたば)か。こいつは龍星高校の海日だ。
まだ決まったわけではないが、丁度いいとは思わないか?」

「海日ねえ…強いのか?龍星には雷とか天野とか、もっといいのがいるだろうに。」

サングラスの少年、出日(いでび)が言う。

「おれっちはいいと思うっすよ〜面白そうな人だし。」

特徴的なしゃべり方をするのは原明(はらあき)だ。
そして最後に、顧問の市桐(いちぎり)が海日の肩をぽん、と叩く。

「海日厄太郎…今の仲間に不満を持っていたりはしないか?」

不満はある。死ぬほどある。特に1年生に。

「あるある!ありまくりです!」

…正直すぎる。少しくらいためらえよ。

「ならば我が36(ryに来い。歓迎してやる。」

「はい先生!」

海日厄太郎 裏切りエピソード、完

もうここらへんマジ適当。
別にどうでもいい話だし。
どうせ海日だし。




「木之上せんぱい…私とデュエルしてくれませんか?」

光の腕にデュエルディスクが取り付けられている。
木之上は逆光で眼鏡を光らせ、光を見た。

「もし私が勝ったら、海日部長を探しに行きましょう。」

木之上はパソコンのディスプレイの電源だけ切り、机の上のデュエルディスクを手に取った。

「君も変わった人だ。何故海日ごときのために…。
あと、僕は木之上ではない。木之下だ!」

デュエルディスクを腕にはめ、デッキをセットする。
「デュエル!」



第十六章 三沢君の出番が増えたらイイナ!

「私の先攻!コストダウンを発動!」

コストダウン
通常魔法
手札を1枚捨てる。 自分の手札にある全てのモンスターカードのレベルを、発動ターンのエンドフェイズまで2つ下げる。

魔法除去細菌兵器を捨て、手札のモンスターのレベルが下がる。
そして上級モンスターを生贄なしで召喚する――

「レオ・ウィザード召喚!」

お久しぶり。そういや最近ギャンブル出てないね。
もう一つ出てないのがあるのは気のせいだ。

「僕のターン…手札よりサイバー・ドラゴンを特殊召喚!
さらに魔鏡導士リフレクト・バウンダーを召喚!」

サイバー・ドラゴン
☆5 光 機械 2100 1600
相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在していない場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。

魔鏡導士リフレクト・バウンダー
☆4 光 機械 1700 1000
攻撃表示のこのカードが相手モンスターに攻撃された場合、 相手攻撃モンスターの攻撃分のダメージを相手ライフに与え、 ダメージ計算後にこのカードを破壊する。

全身が銀色に輝く機械の竜と、鏡を手にした魔導士が場に現れる。
どちらも、誰もが認める強力カードだ。

「リフレクト・バウンダーで攻撃!魔鏡怪光線!」

鏡から放たれる光線がレオ・ウィザードを焼き尽くす。

光LP 8000→7650

「まだだ。サイバー・ドラゴンで直接攻撃!エヴォリューションン・バースト!」

機械の口から高圧の光線を放つ。

光LP 7650→5550

1ターンで大きくライフを削られ、ふらつく光。

「木之上…せんぱい…なんでそんなに海日部長が嫌いなんですか…?」

木之上の口がぴくんと動いた。
少しして、木之上はそっと胸のポケットから一冊の小さなノートを取り出す。

「木之下ノート、ナンバー387…。」



それは3年ほど前の話――
海日中3、木之上中2の時だ。

「海日先輩!今日は新しいパックの発売日です!一緒に買いに行きましょう!」

部活の先輩後輩であった二人は、学校の帰りに近所のコンビニに寄った。
入ってすぐに、二人が探していた遊戯王の新パックが置かれていた。
木之上は店員に頼んで一箱買った。
だが海日は金が無かったのか、一パックしか買わなかった。

海日の家――二人はそこで今日買ったパックを開けた。
木之上の一つ目…全部ノーマル。二つ目…これもノーマル。
三つ目、四つ目とレアがなかなか出てこない。
きっとレアは奥の方にあるのだろうと奥のパックを開けてみるが、これもハズレ。
その後も開けていくが、出てくるのはノーマルばかり。
ウルトラやスーパーならまだしも、銀文字レアやノーマルレアすら出る気配が無い。

結局レアは一つも出なかった。
一箱には決まった数だけレアが入っているはずなのに。
制作側のミスだろう。木之上は仕方が無い、とノーマルカードをまとめてパックの入っていた箱に入れた。

「あれ、海日先輩まだ開けてないんですか?」

「フフ、まあな…楽しみは後にとっておくべきだと思ってな。」

海日はびりっとパックを破って中のカードを取り出す。
一番初めに見えたのが、銀文字のレアカードだった。
海日は「お、ラッキー」と言って次のカードを見る。
が、その瞬間海日は固まった。
木之上も何かと思って覗き込む。

そこにあったカードは、そのパックの主役ともいえるモンスターのアルティメットレアだった。
これも製作側のミスだろう。
海日はそのカードを一番後ろに回して次のカードを見る。
…魔法カードのスーパーレア。
しかもかなりの実戦クラスと来たものだ。
海日はまさかと思ってそのカードを後ろに回す。

…さっきとは別のスーパーレア。
だんだんラッキーでは済まされなくなってきた。
海日がにやけてきたのに対し、木之上の顔が引きつってくる。

いよいよ五枚目…海日の鼓動が高鳴っていく。

・・・

・・・

ノーマルカード。二人は少しほっとしたかと思ったが、海日はふとそのカードの名前を見る。
…間違いない、リストで見た時に「ノーマルレア」の刻印を押されていたカードだ。

「フハハハハハハハァ!ラッキーだ!やっぱり俺様はついてるぞ!」

海日は調子に乗って笑い叫ぶ。
しかし木之上は羨ましいを通り越して海日に殺意が沸いていた。
一パック5枚全てがレアカードなのに対し、自分は一箱買ったのにレアカード無し。
同じ製作側のミスでもここまで違いが出るなんて…。

「ちぃくしょう!海日先輩のクソ野郎!おぼえてろっ!!」

木之上はノーマルカードばかり入った箱を持ち、全速力で海日の家を出る。
海日はそんなこと気にもせず、いすに足をかけて高笑いしていた。



「…パクリ?」

光からは当然のようなツッコミが返ってきた。

「違う!あのアニメが僕のをパクったんだ!」

あー、何言ってんだろうねーこの人。
全員から冷たい目で見られる木之上。
流石に焦ったのか、眼鏡を上げてデュエルに戻る。

「君のターンだ、カードを引け。」

右手の中指で光を指差し、命令口調で言う。
あれだけの醜態を晒した後で急にシリアスモードになっても、ギャグにしか見えない。
彼自身もそれに気づいているのか、少し震えているようにも見えた。

「私のターン、カオスの儀式を発動!
ゲート・ガーディアンを生贄に――」

場に一瞬だけ表示されたゲート・ガーディアンのソリッドビジョンが解体され、炎となって消えていく。
そしてその炎はやがて、フィールドに混沌を生む。


「カオス・ソルジャー 降臨せよ!!」


混沌から放たれる一筋の光。
黒き鎧に身を包んだ最強の剣闘士が降臨する。

「サイバー・ドラゴンを攻撃!カオス・ブレード!」

カオス・ソルジャーは眼前の機械の竜に向かって突進する。
その足は風よりも速く、一瞬にして敵の前に姿を現す。
そして剣を大きく振り上げ、一気に二つに切り落とした。

木之上 LP8000→7100

「ターン終了です。」

カオス・ソルジャーは後ろに飛んで、光の右に立つ。

「…僕のターン。守備モンスターを出し、ターンエンドだ。」

「私のターン、強欲な壺を発動。」

カードを2枚ドローする。
そして1枚を魔法・罠ゾーンに伏せ、もう一枚を攻撃表示で召喚した。

魂虎
☆4 地 獣 0 2100

攻撃力ゼロのモンスターを攻撃表示…。
木之上は何かあるなと警戒する。

「魂虎で…魔鏡導士リフレクト・バウンダーを攻撃!」

虎の魂は魔鏡導士に飛び掛り、腹の鏡に噛み付く。
牙が鏡にひびを入れ、爪を体に食い込ませる。

「そんな攻撃が効くか!死に際の魔鏡反射!」

鏡が光り輝き、魂虎は消滅する。
それと同時にリフレクト・バウンダー自身もバラバラとなった。

光 LP5500→3850

「…リフレクト・バウンダーの効果でダメージを受けないために攻撃力ゼロのモンスターで攻撃したようだが…
結局戦闘ダメージを受けているので意味はないな。これだからバカな初心者は困る。」

木之上の嫌味に反応することなく、光はカオス・ソルジャーで守備モンスターを攻撃する。

キャノン・ソルジャー
☆4 闇 機械 1400 1300
自分のフィールド上に存在するモンスター1体を生け贄に捧げる度に、相手ライフに500ポイントダメージを与える。

頭の上から剣を振り下ろされ、強力なキャノン砲は真っ二つに。

「さらぬ、黙する死者を発動!」

黙する死者
通常魔法
自分の墓地から通常モンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する。そのモンスターはフィールド上に存在する限り攻撃をすることができない。

墓地の魂虎が蘇る。
攻撃力こそはゼロだが、守備表示なら大抵の下級モンスターの攻撃を防ぐことができる。

「フン…僕のターンだ。
地砕きを発動。残念だったね、カオス・ソルジャーには消えてもらうよ。」

木之上は余裕そうに言った。

「そうは行きません!城壁を発動!」

城壁
通常罠
モンスター1体の守備力は、発動ターンのみ500ポイントアップ!このカードはターン終了後破壊される。

魂虎 守備力2100→2600

魂虎の周りに城壁が出現する。
しかしその城壁は一瞬にして破壊され、魂虎と共に割れた地面に飲み込まれていく。
カオス・ソルジャーは身代わりとなった仲間に手を差し伸べるが、それも空しく魂虎は大地の底へと消えていった…。

「城壁か…そんなカードに防がれるとは、少し悔しいな。
だが――海日の野郎にやられたことに比べればまだ大したことではない…。」

木之上は再びノートを取り出す。

「木之下ノート、ナンバー139!」




「どうです海日先輩!僕の機械軍団は。」

これまた数年前の話。
海日と木之上は公園でデュエルしていた。
木之上の場には「リボルバー・ドラゴン」「人造人間−サイコ・ショッカー」「サイバティック・ワイバーン」「迷宮の魔戦車」「機械王」と上級機械族モンスターが5体も揃い、海日は場も手札も空だった。

「俺のターン!サンダー・ボルト発動!」

「(ガーン!)」

一瞬にして木之上の上級機械族モンスター達は全滅。
あれだけ苦労して場に揃え、次のターンでこいつらにリミッター解除で一気にとどめを刺してやろうと思ってたのに。
相当のショックなのか、木之上は力が抜けてタコのようにフニャフニャになってしまった。

「ハーッハッハッハ!サンダー・ボルトって強いなぁ!」

「海日先輩の…バカヤローーーーーッ!!」

木之上はデッキの一番上の「バット」を海日に投げつけた。
そしてそのままデッキも持たずに、泣きながら走り去っていった。
もしもここで「バット」で攻撃していれば海日のライフはゼロになるはずだったのだが…。




「…やっぱりパクリ?」

「違う!あのアニメが(ry」

「木之上ー、木之上ノートばっかじゃデュエル進まないぞー。」

「黙れ!」

日々に言われてデュエルに戻る木之上。
自分はまじめにやっているつもりなのに、某アニメのパクリ”っぽい”せいでギャグにしか見えなくなってしまっている。

「守備モンスターを出してターン終了だッ!」

普段は冷静な木之上がムキになっている。
結局は自分がやったギャグのせいで…。

「私のターン、闇の芸術家を召喚!守備モンスターを攻撃!」

闇の芸術家はクネクネ動きながら裏守備モンスターに掴み掛かった。
守備モンスターが表になる。
現れたのは機械のコウモリ。
一瞬にして爆発し、バラバラに砕け散った。

バット
☆1 風 機械 300 350

「なんでそんなカード入れてるんですか?」

「君にだけは言われたくない…。」

闇の芸術家は光の場でクネクネと不思議な動きをする。
この怪しげな外見や、何のメリットも無い効果はまさに芸術的。
わざわざ半分にしなくても大抵の光属性アタッカーに倒させるところがまた芸術的。
「あまのじゃくの呪い」で守備力が上がらないところがまた芸術的。
「死のデッキ破壊ウイルス」の生贄にできるところがまた芸術的。
「死のデッキ破壊ウイルス」なのにデッキ破壊になってないところもまた芸術的。
このカードを36枚持ってる究極竜骸骨も芸術的。

…芸術ハ爆発ダー。

「カオス・ソルジャーの直接攻撃!カオス・ブレード!」

カオス・ソルジャーは剣を振り、木之上に衝撃波を飛ばす。

木之上 LP7100→4100

「僕のターン、ドロー。
どうやらこのデュエル、僕の勝ちのようだな。
メカ・ハンターを召喚!さらにリミッター解除!」

メカ・ハンター
☆4 闇 機械 1850 800

メカ・ハンター 攻撃力1850→3700

「カオス・ソルジャーを攻撃だ!ハンタートルネード!」

メカ・ハンターは回転しながら体当たりし、カオス・ソルジャーを破壊する。

光 LP3850→3150

「君の切り札は消えた。残るはそのザコだけだ。」

木之上は闇の芸術家を指差して言った。
メカ・ハンターはリミッター解除の効果によって自爆する。

「私のターン、天よりの宝札を発動!」

闇の芸術家はキョロキョロと辺りを見る。
しばらくしてやっと自分の置かれた立場に気がついた。
そして悲鳴と共に異次元へと旅立っていった。
そんな芸術家はほおっておき、光はカードを2枚ドローする。

「ゲール・ドグラを召喚!」

一匹の虫が召喚された。
光のライフはギリギリ3000を越えている。
そして墓地にはカオス・ソルジャー…。
次に来るのはあれしかない!

「ライフを3000ポイント支払い――青眼の究極竜を墓地へ!さらに竜の鏡を発動!」

光 LP3150→150

墓地に眠るカオス・ソルジャーと青眼の究極竜の魂が鏡に吸収される。
そして鏡からは最強の融合モンスターが姿を現す。

「究極竜騎士、融合召喚!」

伝説の剣闘士と究極のドラゴンの融合――
その姿は木之上を圧倒する…。

「究極竜騎士のダイレクトアタック!ギャラクシー・クラッシャー!!」

アルティメット・バーストとカオス・ブレードが合わさり、銀河をも破壊するエネルギーが木之上に襲い掛かる。

「そんな…この僕が…!」

エネルギーの塊は木之上に当たると爆発し、部屋全体を包み込んだ。
あまりの威力に、誰もが目をつぶった。





目を開けると、もう究極竜騎士のソリッド・ビジョンは消えていた。
そして木之上のデュエルディスクにつけられたライフカウンターは0を示していた。

「・・・・・」

木之上は何も言わなかった。
デュエルディスクからデッキを外し、ディスクを机の上に置くと、扉を開けて外に出ようとする。

「待ってください!」

光の呼び止めに木之上は振り返る。

「えっと、本名を教えてください…。」

そういやこいつだけ5章で本名出してなかった。
作者のミスです。すいません。

「…僕の名前は木之下…「木之上でいーじゃん。」

亮子に言われ、木之上はずっこけた。

「そうだそうだ!木之上でいーじゃねーか!」

日々と田村が言う。

「き、君たち…僕の名前は…」

木之上は慌てて言おうとするが、3バカに邪魔される。

「じゃあ、木之上先輩でいいんですか?」

「よくないよくないよくない!僕の名前は…」

「だから木之上でいいだろ。」

「よくなーい!」

「きーのうえ!きーのうえ!」

「う…木之上ってゆーなぁー!」

木之上コールに木之上は耐え切れず、泣いて逃げ出してしまった。

…そういえばこのデュエルの最初の目的って何だったっけ…?



第十七章 開闢太郎の再会

土曜日。今日は遊戯王OCGの大会の日。
光はベッドから起き上がり、耳をすます。
外からはやる気を無くすような雨の音が響いていた。


パジャマから着替え終わると、光は台所へと走った。

「あら、遅いわね。外で友達が待ってるわよ。」

母が皿に乗せられたトーストを出してくれた。
光はそれを口にくわえたまま玄関を出る。

「遅いぞ光ー。」

青い傘をさした中太郎が、壁にもたれかかって言う。
その隣には武が立っていた。

「さっき天野さんから電話があって、スタジアムで待ってるって。
僕たちは一人遅れてる御門さんを迎えに行って来いって…。」

「つーか雨の中野外スタジアムでどうデュエルしろと?カードがぬれるっつーの!」

「中太郎くんさっきからそればっか…。」

ブーブー文句を言う中太郎に、武は呆れ顔をしていた。
光は傘をさし、遅れないように雨の中を走り出す。
中太郎と武もそれについていく。
しかし、気がつけばおしゃべりタイムに…。

「つーか、何でそんなに朝遅いんだ?」

「えっと、ある一枚をどっちにするか迷ってて…。」

「遊戯みたいだね…。で、何と何で迷ってたの?」

「無限の手札とヒエログリフの石版だよ。」

二人はどう反応していいかわからなかった。

「で、どっちにしたんだ…?」

中太郎がどうでもよさそうに聞いた。

「ヒエログリフの石版だよ。無限の手札は破壊されちゃったらおしまいだし。」

やはり、どう反応していいかわからなかった。





「ヒカリンおそーい!」

「予定より20分遅れてるな。
これだから初心者は困る。」

しばらくしてスタジアムに着いた。
亮子には勝手に変なあだ名付けられてたり、木之上の言ってることに初心者関係なかったり。

「まあ、開始まであと10分あるんだからいいんじゃない?」

「いいわけないだろ。開始の30分前に集合だと言ったはずだ。」

B型の亮子にキツく言い返すA型木之上。
ちなみに亮子も10分遅れている。

「まあいい、行くぞ。」

勝手に仕切ってる木之上(2年)。
レアハンターみたいに本名不明のくせに。



スタジアム。選手達が傘をさして並んでいる。
光たちもそこに行こうとするが、突然子供の声が聞こえた。
何かと思って振り返ると、前に公園で闘ったウリア使いの小学生&仲間が。
しかし前とは一つ違う場所があった。
彼らの中心にいるのはウリア使いではなく、見知らぬ茶髪の小学生だった。

「おいそこのアンタ、この前は俺らの仲間をよくもいじめてくれたな。」

茶髪の小学生は、他の小学生と共に光の方に寄る。

「な、何だこのガキどもは!」

「えっと…前にちょっと…。」

小学生相手にビビりまくりの木之上。
そんなんじゃ海日がいない間のリーダーは勤まらない。
まあ、誰もコイツにリーダーになってくれとは言ってないけど。

「俺様の名は例亜 反太。世界最強のデュエリストだ!」

全員そろって「あー、よくいるよねー、こういうガキ」と言うかのような目で見ていた。
ただ、木之上だけは「自分の名前はまだ出てないのにこんな脇役が…」と勝手に闘志を燃やしていた。

「少なくとも俺様はここにいる高校生全員よりは強い自信があるね!
そこで俺様がアンタとデュエルしてやろうと…。」

しかし、そこには誰もいなかった。

「ちょっと待てぇ!この俺様を誰だと思ってる!」

反太と小学生たちは叫びながら係員に引きずられていった…。



「これより、第3回遊戯王OCG高校大会を開催します!」

雨の中アナウンスがスタジアム内に鳴り響く。
そして会場に取り付けられた巨大な画面に、一人の若い男が映し出された。
痩せた顔に、真っ黒な短い髪。
そして鋭い目で画面の向こうから会場全体を眺めるかのように話を始めた。

「みなさん、こんにちは。私がこの大会の主催者で、コナミ社員の烏丸黒司(からすま こくし)です。
今日はこれだけの皆さんに集まってもらえて、とても感激しています。
みなさん、互いに全力を出し合あい、すばらしいデュエルを見せてください。それでは。」

彼はにっこりと笑顔を見せる。
会場のボルテージが上がっていく中、その雰囲気をぶち壊すかのように一人の少年が手を上げた。

「すいませーん、雨の中どうやってデュエルするんですかー?」

画面の中の男はくすっと笑い、一枚のカードを取り出した。

スピリットバリア
永続罠
自分フィールド上にモンスターが存在する限り、このカードのコントローラーへの戦闘ダメージは0になる。

…男がカードを見せた瞬間、今まで鳴り響いていた傘に当たって弾ける水の音が、すぱっと消えた。
決闘者達は傘を閉じ、空を見上げる。
雨は決して止んではいなかった。
だが、それは何か見えない屋根を伝うかのように空を流れていた。
まるでこのスタジアムの上にバリアが張られたように――

「これで大丈夫だね。じゃあ、選手宣誓といこうか。」

光たちの知る限りでは、このスタジアムにこんな機能は無かった。
だがもしもこれが「スピリットバリア」のソリッド・ビジョンだとしても、雨はすり抜けて落ちてくるはず。
謎が残るまま、選手宣誓が始まった。

一人の男が、画面の前に立つ。
見覚えのある姿――
かつて自分達と同じ部活にいた、あの男…。

「三十六段坂高校、海日厄太郎!」

彼はマイクを手に取り、高らかに叫んだ。

「選手 宣誓!我々は スポーツマンシップに則り、正々堂々戦うことを誓…うわきゃねーだろヴォケーー!!」

まさかの再会の後でいきなりヴォケー…。
スタジアム中が真っ白になった。

「だいたい何だこの台本!カードゲームはスポーツじゃないのに何でスポーツマンシップに則らないといけねーんだっつーの!これ考えたヤツ頭おかしいんじゃね?つーか正々堂々戦ってどうするよこんなもんは勝てりゃいいんだ勝てりゃ!とにかくここにいる奴ら全員ぶっ倒す!そして優勝するのは俺たち36(ryだいいかわかったなもう一度言うぞ優勝するのは36(ryだもうこれでわかったろとにかくお前ら頑張らないでいいから!あ、一個訂正、36(ryのチームは頑張ってくれよ!今回の大会の優勝は36(ryだ!36(ry優勝!36(ry優勝!優勝!優勝!んで世界を俺様のモンにしてやるよつか今更だけどGXで開闢がフレイム・ウイングマンごときに倒されたのが納得いかないんだけどどう見たって開闢の方が強いでしょあんなダサカッコ悪いヒーローに俺の開闢たんが負けるわきゃねーだろクソヴォケが!あー、開闢たんカワエエ…上級なのに簡単に場に出せるとこがイイ…一度モンスターを破壊したら調子に乗ってもう一回攻撃しちゃうとこもまたカワイイし、ムカつく敵を除外してくれるとことか、墓地に行っても戦士の生還で戻ってくるとことかものすごくそそるね!同じ攻撃力3000でもどっかのブ ルーアイズとは大違いだ!そういやお前ら知ってるか?ブルーアイズの名前には『ワイト』の3文字が入ってるんだぜそれはつまりブルーアイズはワイトの仲間ってことだ!そう、ブルーアイズはワイトと同じくらい弱い!そしてブルーアイズより攻撃力の低いブラックマジシャンとかレッドアイズはワイトよりも弱い!暗黒騎士ガイアなんかは論外だ!当然ヒーローも屑だねあのザコどもにアドバンテージという言葉はないのか?いや絶対ねーよあいつらは所詮子供の十代ごっこにしか使われないザコ軍団だっつーのあんなものウルトラレアにするくらいなら開闢のサポートカードもっと出しやがれこのヤロー今俺様は丁度カッコいいオリカを考えたのだが聞いてくれ!開闢双波斬 通常魔法 このカードを発動したターン『カオス・ソルジャー−開闢の使者−』の攻撃力は2倍になり、カードの効果によってフィールドを離れない。どうだすばらしいカードだろうどっかの滅びのなんたらストリームとかくろまどーとか書いてなんたらマジックと読むやつとかたった2400ダメージしか与えられない紙よりずっと強いだろ!螺旋槍殺なんかは論外だ!あ、そういえばヒーローが十代ごっこならブラック・マジシャンは遊戯ごっこでブルー アイズは海馬ごっこでレッドアイズは竜崎ごっこで暗黒騎士ガイアは論外だな!ハーッハッハッハ!ごっこ遊びにしか使われない上級通常モンスターテラミサワソスそれと比べたら俺の開闢は…

長くなるので以下30行くらい省略。
運動部の大会だったら確実につまみ出されそうな選手宣誓で、決闘者達の闘志は完全に消え失せていった。
いつの間にか消えたと思ったら他の学校にいて、しかもバカで自己中で開闢マンセーなとこが全く変わってない。
何でこいつに宣誓やらせたのかを、誰もが疑問に思った。

「面白いことを言うね。まあいいや、ここらで解散、休憩ね。
試合開始は20分後。それじゃ。」

画面はプツンと真っ黒に戻った。
大会なのに休憩とかあっていいのだろうか。
光は何をしていいのかわからず、ただぽかんとしていた。
しかし木之上に腕を引っ張られ、連れて行かれていく
天野も、中太郎も、木之上も、みんな行く場所は同じだった。

「海日のヤロー…どこに消えたかと思えば勝手に転校しやがって…。」

木之上は怒りがのあまり拳から炎が出て、眼鏡がパリンと割れた。

「ん?よう、久しぶりだなー。」

海日は何事もなかったかのように挨拶をした。
木之上は燃える拳でブン殴ろうとしたが、雷に止められた。

「海日部長、何で36(ryにいるんですか?」

光が海日に聞く。
海日はふっと笑うと、一瞬だけ市桐の方を見て、答えた。

「36(ryが俺様の実力を認めたってことさ。
この一回戦でお前たちと戦うことになったから、楽しみに待っててくれたまえ。
あと、今回勝つのは俺だから。前のは運が悪かっただけね。
どっちにしろ俺様の新しいデッキは前のデッキより確実に強いから勝てて当然なんだけどな。」

相変わらず嫌味な野郎だと殴りかかろうとする木之上を必死で押さえる雷。

「そんなザコにかまうな。ミーティングを始める。」

儀亜が海日に言った。

「俺様に指図するな!」

海日は言い返しつつも、儀亜達の方へと向かった。

「フハハハハハハハァ!この続きは一回戦でな!」

もうこの人はダメだ。全員がそう思った。
その瞬間に、突然子供の笑い声が。

「そこのお前!この例亜反太様とデュエルしな!」

どうやって入ってきたのか…。
というか海日とキャラ被ってるよ。

「そういや光、そのデッキまだ回してないんだろ?
丁度いい相手がいるみたいだし、最終調整にでも使ってやれ。」

中太郎に言われて、光はデュエルディスクを装着した。

「じゃあ、お願いします。」



第十八章 異次元からの帰還って強いねー

デュエル開始から数ターンが経った。
光の場には巨大な迷宮が出現している。
反太は異次元の女戦士を召喚した。
女戦士は迷宮の中へと突撃する。
迷宮を歩いていると、突然壁から黒い影が飛び出す。

ウォール・シャドウ
☆7 闇 戦士 1600 3000
通常召喚されない。「迷宮変化」が装備された「迷宮壁―ラビリンス・ウォール」を生け贄に捧げないかぎり、特殊召喚できない。(この場合生け贄は「迷宮壁―ラビリンス・ウォール」1体でよい)

シャドウ・グールの体にはレアゴールド・アーマーが装着されている。

レアゴールド・アーマー
装備魔法
このカードを装備したモンスターをコントロールしている限り、相手は装備モンスター以外のモンスターには攻撃できない。

2体の攻撃力は互角、だが、お互いに破壊される寸前に異次元に飲み込まれていった。
そしてシャドウ・グールが消えたことにより、迷宮自体も音を立てて崩れていく。

光LP 20000→21000

光の場には「魂吸収」のカードがあった。
今までに何枚ものカードが除外されており、光のライフはこれでもかというほどに回復していた。

魂吸収
永続魔法
このカードのコントローラーはカードがゲームから除外される度に、1枚につき500ライフポイント回復する。

それだけではない。迷宮が消えたことにより、その奥で眠っていた繭が姿を現した。
繭は迷宮に守られていたお陰で完全に成長しきっており、今にも中の虫が飛び出してきそうだった。

「私のターン、ドロー。」

反太の場は空だった。
だが、ライフポイントは8000。
一回くらい直接攻撃を食らってもいいんじゃないかとも思った。

「進化の繭を生贄に――」

繭からミシミシと音がする。
まずは図太い腕が出てきた。反太はそれが何か一瞬でわかった。

繭を突き破り、巨大な蛾が現れた。
反太は驚愕の表情でその姿を見つめていた。
当然、驚いたのはそのカードを召喚できたことに対して。

「究極完全態・グレート・モスを召喚!」

究極完全態・グレート・モス
☆8 地 昆虫 3500 3000
「進化の繭」を装備して(自分ターンで数えて)6ターン後の「プチモス」を生け贄に捧げる事で特殊召喚する事ができる。

蛾のバケモノは反太を見下ろし、今にも強烈な攻撃を繰り出そうとしている。
だが、それだけでは終わらない。

「陽気な葬儀屋を発動!手札の処刑人マキュラを捨てます!さらに異次元からの帰還を発動!」

異次元への扉が開く。
ゲームから除外された4体のモンスターがフィールドに帰還する。

光LP 21000→10500

督戦官コヴィントン
☆4 地 機械 1000 600
自分フィールド上の「マシンナーズ・ソルジャー」「マシンナーズ・スナイパー」「マシンナーズ・ディフェンダー」をそれぞれ1体ずつ墓地へ送る事で、手札またはデッキから「マシンナーズ・フォース」1体を特殊召喚する。

マシンナーズ・ソルジャー
☆4 地 機械 1600 1500
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合にこのモンスターが召喚に成功した時、「マシンナーズ・ソルジャー」を除く「マシンナーズ」と名のついたモンスター1体を手札から特殊召喚する事ができる。

マシンナーズ・ディフェンダー
☆4 地 機械族 1200 1800
リバース:自分のデッキから「督戦官コヴィントン」1体を自分の手札に加える。

マシンナーズ・スナイパー
☆4 地 機械 1800 800
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、「マシンナーズ・スナイパー」を除く「マシンナーズ」と名のついたモンスターを攻撃する事ができない。

「マシンナーズ合体!マシンナーズ・フォース!」

コヴィントンの効果により、マシンナーズ達は一つになる。

マシンナーズ・フォース
☆10 地 機械 4600 4100
このカードは通常召喚する事ができない。「督戦官コヴィントン」の効果でのみ特殊召喚する事ができる。このカードは1000ライフポイント払わなければ攻撃できない。フィールド上に存在するこのカードを墓地へ送る事で、自分の墓地から「マシンナーズ・ソルジャー」「マシンナーズ・スナイパー」「マシンナーズ・ディフェンダー」をそれぞれ1体特殊召喚する。

「ギャンブルを発動!デッキからカードを5枚ドロー!ゲール・ドグラを召喚!効果発動!」

光LP 10500→7500

融合デッキの青眼の究極竜が墓地に送られる。

「魔法除去細菌兵器を発動!究極完全態・グレート・モス、督戦官コヴィントン、ゲール・ドグラを生け贄に捧げます!」

レーザーによって反太のデッキから3枚の魔法カードが墓地に送られる。

「異次元からの帰還を発動!」

再び異次元の扉が開く。
次に召喚されたのは、4体の機械モンスター。

X−ヘッド・キャノン
☆4 光 機械 1800 1500

W−ウィング・カタパルト
☆4 光 機械 1300 1500
1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに装備カード扱いとして自分の「V−タイガー・ジェット」に装備、または装備を解除して表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。この効果で装備カード扱いになっている時のみ、装備モンスターの攻撃力・守備力は400ポイントアップする。(1体のモンスターが装備できるユニオンは1枚まで。装備モンスターが戦闘によって破壊される場合は、代わりにこのカードを破壊する。)

Y−ドラゴン・ヘッド
☆4 光 機械 1500 1600
1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに装備カード扱いとして自分の「X−ヘッド・キャノン」に装備、または装備を解除して表側攻撃表示で元に戻す事が可能。この効果で装備カードになっている場合にのみ、装備モンスターの攻撃力・守備力は400ポイントアップする。(1体のモンスターが装備できるユニオンは1枚まで。装備モンスターが戦闘によって破壊される場合は、代わりにこのカードを破壊する。)

Z−メタル・キャタピラー
☆4 光 機械 1500 1300
1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに装備カード扱いとして自分の「X-ヘッド・キャノン」「Y-ドラゴン・ヘッド」」に装備、または装備を解除して表側攻撃表示で元に戻す事が可能。この効果で装備カードになっている時のみ、装備モンスターの攻撃力・守備力は600ポイントアップする。(1体のモンスターが装備できるユニオンは1枚まで。装備モンスターが戦闘によって破壊される場合は、代わりにこのカードを破壊する。)

光 LP7500→3750

X、Y、Zの三体が変形合体する。

XYZ−ドラゴン・キャノン
☆8 光 機械 2800 2600
「X−ヘッド・キャノン」+「Y−ドラゴン・ヘッド」+「Z−メタル・キャタピラー」
自分のフィールド上に存在する上記カードをゲームから除外した場合のみ、融合デッキから特殊召喚が可能(「融合」魔法カードは必要としない)。このカードは墓地からの特殊召喚はできない。手札からカードを1枚捨てることで、相手フィールド上のカード1枚を破壊する。

モンスターがゲームから除外されたことにより、光のライフが回復する。

光 LP3750→5250

「黙する死者を発動!V−タイガー・ジェットを蘇生!」

黙する死者
通常魔法
自分の墓地から通常モンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する。そのモンスターはフィールド上に存在する限り攻撃をすることができない。

V−タイガー・ジェット
☆4 光 機械 1600 1800

虎の頭を持った機械が場に現れる。
そしてW−ウイング・カタパルトとの変形合体。

VW−タイガー・カタパルト
☆6 光 機械 2000 2100
「V−タイガー・ジェット」+「W−ウィング・カタパルト」
自分フィールド上に存在する上記のカードをゲームから除外した場合のみ、融合デッキから特殊召喚が可能(「融合」魔法カードを必要としない)。手札を1枚捨てる事で、相手フィールド上のモンスター1体の表示形式を変更する。(この時、リバース効果モンスターの効果は発動しない。)

光 LP5250→6250

XYZとVWが揃った…そして遂に発動する!究極の五体合体!
それぞれが分離し、再び組み合わさる。
五つの機械は一つとなり、巨大なロボットとなる。

VWXYZ−ドラゴン・カタパルトキャノン
☆8 光 機械 3000 2800
【融合】「VW−タイガー・カタパルト」+「XYZ−ドラゴン・キャノン」
自分フィールド上に存在する上記のカードをゲームから除外した場合のみ、融合デッキから特殊召喚が可能(「融合」魔法カードは必要としない)。1ターンに1度、相手フィールド上のカード1枚をゲームから除外する。このカードが攻撃する時、攻撃対象となるモンスターの表示形式を変更する事ができる。(この時、リバース効果モンスターの効果は発動しない。)

光 LP6250→7250

「ギャンブル発動!カードを5枚ドローし…異次元からの帰還を発動!」

光 LP7250→3625

三枚目ときては流石に驚く反太。
だんだん頭の中で処理できなくなってきた。
異次元から現れたのはかつて迷宮兄弟の使用した三魔神。

雷魔神−サンガ
☆7 光 雷 2600 2200
相手ターンの戦闘ダメージ計算時のみ発動する事ができる。このカードを攻撃するモンスターの攻撃力を0にする。この効果はこのカードが表側表示でフィールド上に存在する限り1度しか使えない。

風魔神−ヒューガ
☆7 風 魔法使い 2400 2200
相手ターンの戦闘ダメージ計算時のみ発動する事ができる。このカードを攻撃するモンスターの攻撃力を0にする。この効果はこのカードが表側表示でフィールド上に存在する限り1度しか使えない。

水魔神−スーガ
☆7 水 水 2500 2400
相手ターンの戦闘ダメージ計算時のみ発動する事ができる。このカードを攻撃するモンスターの攻撃力を0にする。この効果はこのカードが表側表示でフィールド上に存在する限り1度しか使えない。

雷…風…水…三つの力は一つとなり、新たな巨大モンスターが召喚される。

ゲート.ガーディアン
☆11 闇 戦士 3750 3400
「雷魔神−サンガ」「風魔神−ヒューガ」「水魔神−スーガ」を生け贄に捧げなければ召喚できない。

「死者蘇生を発動!墓地の究極完全態・グレート・モスを蘇生!」

大地より巨大な羽が蘇る。

「これで最後…龍の鏡を発動!」

場に一枚の鏡が出現する。
墓地に眠るカオス・ソルジャーと青眼の究極竜の魂が融合する――

「マスター・オブ・ドラゴンナイト――融合召喚!」

光 LP3625→4625

究極竜騎士 攻撃力5000
マシンナーズ・フォース 攻撃力4600
ゲート・ガーディアン 攻撃力3750
究極完全態・グレート・モス 攻撃力3500
VWXYZ−ドラゴン・カタパルトキャノン 攻撃力3000

巨大な五つの影に見下ろされ、反太は完全にパニックに陥っていた。
足腰は震え、顔は真っ白になる。

「だ、大丈夫なんだ…俺にはまだ…このカードがある…
大丈夫なんだ…だいじょうぶなんだ…だ い じょ…うぶぶなんだぁぁぁぁぁぁ!!!ヒィィィィィィィ〜〜〜!!!」

「VWXYZの効果発動!」

反太の伏せカードがゲームから除外される。

光 LP4625→5125

反太の目の前が真っ暗になった。
もう彼を守ってくれる物は何も無い――

「ヒィィィィィィィィ〜!ヒ…助けて…来る来る来る助けて…来るああああ!来る…来る……来る…来る…マリク様が……。」

「ファイナル・ギャラクシー・クラッシャー!!」

五体のモンスターによる一斉放火。
一瞬にして辺り一帯を白い炎が包み込んだ。

例亜反太 LP8000→0

「ヒ…ヒィィ…来る…来る…助けて…。」

反太は自分の目の前で起こっていることが何かわからず、真っ白な灰となって気を失っていた。
取り巻きの小学生達も、反太の負けと光の場の五体のモンスターに驚き、一歩も動くことができなくなっていた。

「えっと…ありがとうございました。」

ソリッド・ビジョンが消え、光は深くおじぎをした。

「そろそろ時間だ。行くぞ。」

木之上が大声で言った。
光は走ってそっちへと向かった…。



第十九章 悪魔再臨

「さてさて、いよいよ読者の皆様が待ちに待った試合開始だね。」

画面に映った烏丸が怪しげに言う。
でも実際はそれほど待ってなかったりする。
それどころか消え行く創造者の更新自体、誰も待ってなかったりする。

「でも、その前にちょっとこと大会の司会と解説を紹介しようか。」

烏丸はパチン!と指を鳴らす。
奇妙な音楽が流れ出す。
一瞬辺りが真っ暗になり、一箇所だけスポットライトで照らされる。
そこにたたずむ一人の男…。彼の手にはマイクが握られていた。

「ちっちゃな頃からエロガキで〜15で痴漢と呼ばれたよ〜

ナイフみたいに尖ってて〜触る者みな…汚してた〜

あ〜あ〜わかってくれとは言わないが〜そんなに〜俺がエロいのか〜

ララバイララバイお休みよ〜グレファー★ハートの〜子守唄〜」

作詞に約30秒もかけて考えた替え歌と共にダイ・グレファーが出現する。
ちなみにメロディーは「日本むかしばなし」で。

「ワタクシがー!司会のダイ・グレファーでーす!!女子高生諸君!あとついでに野郎ども!よろしくな!!」

会場が真っ白に静まり返った。

「最悪だ…。」

木之上が頭を抱え、ぼそっとつぶやいた。

「フン…悪の変質犯罪者め!この私が成敗してやる!」

どこからとまなく響く声。
会場の人々は辺りをきょろきょろと見回す。

「あっ、あれ!」

光が何かを発見し、烏丸の映った巨大な画面の上を指差す。
月をバックに、一人の青年が腕を組んで立っている。

「とぉう!」

青年はそこからジャンプし、グレファーに飛び蹴りをかました。
そして地面に着地し、決めポーズ。

「悪を裁く正義の味方!ヒーロー仮面、ただいま参上!」

青年は全身を青いタイツに包み、目を隠すマスクをつけていた。
そして黄金のマントが煌びやかに揺れている。
それはまるで、アメコミのヒーローのような格好だった。

「あ、ちなみに私がこの大会の解説だから。」

木之上は家に帰ろうかと思った。
周りもどんな反応をしていいかわからず、しんと静まっていた。

「なんてことするんだ!痛いじゃないか!」

グレファーは起き上がってプンプン怒り出す。

「こーなったら俺とデュエルしようぜ!
貴様の正義とやらを見せてもらおうじゃねーの!!」

「…いいだろう!」

二人はデュエルディスクを手に取り、装着する。
会場の人々は呆れてる人もいれば、面白そうなデュエルが見られると燃えている人もいた。

「私の先攻だ。荒野の女戦士を召喚!」

荒野の女戦士
☆4 地 戦士 1100 1200
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、デッキから攻撃力1500以下で地属性の戦士族モンスター1体を自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。その後デッキをシャッフルする。

「カードを1枚伏せ、ターンを終了する。」

グレファーの目が輝く。
目の前には美しい脚の女戦士。
これは――襲うしかない

「俺のターン!俺自身を召喚する!」

ダイ・グレファーは剣を抜き、フィールドに現れる。
あの時と同じ、本来ならソリッド・ビジョンが現れるはずの場所に、プレイヤーのダイ・グレファーがいる。

「…さっきから変だ。」

武が小さな声で言った。
全員が武に注目する。

「あのスピリット・バリアといい、暗くなったり月が出たりする演出といい…あれは本当にソリッドビジョンなのだろうか…?」




「更に!H−ヒートハートを発動ゥ!」

H−ヒートハート
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターの攻撃力は500ポイントアップする。そのカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。この効果は発動ターンのエンドフェイズまで続く。

戦士ダイ・グレファー 攻撃力1700→2200

「うっわぁぁぁぁぁぁぁ!!カード考察でやってはいけないって書いてあったのにぃぃぃぃぃ!!!」

大量の叫び声が会場全体に響き渡る。
中にはブーイングをする者も。
グレファーはそっと耳を塞いだ。

「フハハハハハハハァ!これぞ究極の『』状態!行くぞ荒野の女戦士!グレファー・H・アタック!」

グレファーは物凄いスピードで突進する。

「リバースカードオープン!モンスターレリーフ!」

荒野の女戦士が手札に戻り、代わりに別のモンスターがグレファーの前に現れる。
物凄い勢いで走っていたグレファーはそのモンスターの前で急に立ち止まる。
グレファーの目の前には、凛々しい筋肉を持ちセクシーなフンドシ姿のウホッいい男。

E・HEROワイルドマン
☆4 地 戦士 1500 1600
このカードは罠の効果を受けない。

グレファーの体は震えていた。
ワイルドマンごとき、普通に戦闘で倒せるのだ。
だが今の自分は『』状態。
このまま攻撃すれば、確実に――

「んぬあぁっ!!!」

グレファーは悔しそうに拳を地面に打ち付けた。

「ターンを…終了する…。」

グレファーは拳を握ったまま自分の場に戻った。
拳からは赤黒い血が滴り落ちる。

「私のターン!本当のヒートハートを見せてやれ!H−ヒートハートを発動!」

E・HEROワイルドマン 攻撃力1500→2000

ワイルドマンを熱いハートが包み込む。

「ヒ…ヒィィィィィィ〜!来るな来るな来るなぁぁぁぁぁぁ!!!
俺には!俺にはそんな趣味はないぃぃぃぃぃぃ!!!」

が、結局変なことはせず、ただ剣で斬っただけだった。

グレファー LP8000→7700

「ターン終了だ。」

ヒーロー仮面は勝ち誇った顔でグレファーに言った。

「俺の…ターン!!
E・HEROバーストレディを召喚!」

炎のE・HEROが場に現れる。
グレファーがE・HEROを使ったことにヒーロー仮面は驚くが、グレファーはそんなのは知ったことじゃない。

「H−ヒートハートを発動!」

E・HEROバーストレディ  攻撃力1200→1700

「バーストファイヤー!」

紅蓮の炎がワイルドマンを破壊する。

ヒーロー仮面 LP8000→7800

「カードを1枚伏せ、ターンエンド!」

「私のターン。天使の施しを発動!3枚ドローし、手札のヒーローバリアと荒野の女戦士を捨てる!
更に、E−エマージェンシーコールを発動!」

E−エマージェンシーコール
通常魔法
自分のデッキから「E・HERO」と名のついたモンスター1体を手札に加える。

「E・HEROフェザーマンを手札に加え、召喚!
R−ライトジャスティスを発動!」

E・HEROフェザーマン
☆3 風 戦士 1000 1000

R−ライトジャスティス
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する「E・HERO」と名のついたカードの枚数分だけ、フィールド上の魔法・罠カードを破壊する。

フェザーマンが風を起こし、グレファーの伏せカードを破壊する。

「残念!二者一両損を発動!」

二者一両損
通常罠
お互いに自分のデッキの一番上のカード1枚を墓地に送る。

グレファーは「士気高揚」ヒーロー仮面は「E・HEROクレイマン」を墓地に送った。

「なら…O−オーバーソウルを発動!墓地のE・HEROバーストレディを蘇生する!」

O−オーバーソウル
通常魔法
自分の墓地から「E・HERO」と名のついた通常モンスター1体を選択し、自分フィールド上に特殊召喚する。

「そして二体を融合!E・HEROフレイム・ウイングマン召喚だ!」

E・HEROフレイム・ウィングマン
☆6 風 戦士 2100 1200
「E・HERO フェザーマン」+「E・HERO バーストレディ」
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

「バーストレディを攻撃だ!フレイム・シュート!」

フレイム・ウイングマンの竜の右手から出る炎がバーストレディを包み込む。

グレファー LP7700→6800

そして炎はグレファーさえも焼く。

グレファー LP6800→5600

「カードを1枚伏せ、ターンエンド!」

「俺のターン!E−エロスコール発動!」

微妙にカード名が間違ってるが気にしない。

「デッキからE・HEROフェーマンを手札に加え、召喚!」

変なところが隠されてるが気にしない。

「R−ロリータジャスティスを発動!伏せカードを破壊する!」

誰かさんの心の叫びみたいだが気にしない。

「O−オッパイソウルを発動!墓地のバーストレディを蘇生!」

おっぱいおっぱい

「さあさあ大人の時間だ!融合を発動!」

フェザーマンとバーストレディが融合し、フェニックスガイが誕生する。

E・HEROフェニックスガイ
☆6 炎 戦士 2100 1200
「E・HERO フェザーマン」+「E・HERO バーストレディ」
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。このカードは戦闘によっては破壊されない。

フェニックスガイとフレイムウイングマンが睨み合う。
これはまるで遊城十代とエド・フェニックスのデュエルを見ているよう…。
いや、グレファーはエド・フェニックスというよりエ・フェニックスと言った方がいいだろうか。

「フェニックス・シュート!」

フェニックスガイの爪がフレイム・ウイングマンを貫く。

「ハッハッハ!ターンエンドン!」

今度はグレファーが勝ち誇る。

「私のターン、手札よりE・HEROバブルマンを特殊召喚!効果により2枚ドロー!
強欲な壺を発動し、更に2枚ドロー!そして強奪を発動!フェニックスガイはいただく!」

フェニックスガイはヒーロー仮面のフィールドにジャンプする。

「そして手札のスパークマンと融合!シャイニング・フェニックスガイ!」

E・HEROシャイニング・フェニックスガイ
☆8 炎 戦士族 2500 2100
「E・HERO フェニックスガイ」+「E・HERO スパークマン」
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。このカードの攻撃力は、自分の墓地の「E・HERO」と名のついたカード1枚につき300ポイントアップする。このカードは戦闘によっては破壊されない。

E・HEROシャイニング・フェニックスガイ 攻撃力2500→4000

シャイニング・フェニックスガイは光り輝く体で飛び上がり、グレファーに跳び蹴りを決める。

「シャイニング・フィニッシュ!」

グレファーは顔面を蹴っ飛ばされて回転しながら吹き飛んでいく。

グレファー LP5600→1600

「バブルマンでダイレクトアタック!バブルシュート!」

倒れたグレファーを泡の弾が襲う。

グレファー LP1600→800

「ターン終了!」

二体のヒーローがヒーロー仮面のフィールドに跳んで戻る。

「俺のターン!地砕きを発動!」

グレファーは自らの拳で大地を砕き、シャイニング・フェニックスガイを割れた地面に落とす。

「魔法カード、魂吸収!そしてヒーローフラッシュ発動だ!」

ヒーローフラッシュ!!
通常魔法
自分の墓地の「H−ヒートハート」「E−エマージェンシーコール」「R−ライトジャスティス」「O−オーバーソウル」をゲームから除外して発動する。自分のデッキから「E・HERO」と名のついた通常モンスター1体を特殊召喚する。このターン自分フィールド上の「E・HERO」と名のついた通常モンスターは、相手プレイヤーに直接攻撃する事ができる。

「我が墓地に眠るH・E・R・O!すなわちエッチエロをゲームから除外する!」

グレファー LP800→2800

「フハハハハハハハァ!!行くぞ!変っ身!!」

グレファーは空高く飛び上がり、その体を光り輝かせる。
その身に纏っていた服はバラバラに飛び散り、ネイキッド・ダイグレファーが降臨する。

「おおおおおおおおおおおエレメンタルッヒーローッ!!」

グレファーの体を不思議な力が包み込む。
そして宇宙の意思を持つエレメンタルヒーローがその地に降り立つ。

  ス ! ! !」

E・HEROネオス
☆7 光 戦士 2500 2000

「ネオスだぁぁぁぁーーーーー!!!」

会場全員が一斉にツッコミを入れる中、グレファー…もとい、E・HEROエロスは腕を組んで笑う。

「ハーッハッハ!!行くぞコスプレ仮面!ラス・オブ・エロス!」

グレファーの強烈なパンチがヒーロー仮面を吹っ飛ばす。

ヒーロー仮面 LP7800→5300

エロスこそ真の正義!さあ、貴様のターンだ!」

「私のターン…魔法カード、モンスターゲート!」

モンスターゲート
通常魔法
自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる。通常召喚可能なモンスターが出るまで自分のデッキをめくり、そのモンスターを特殊召喚する。他のめくったカードは全て墓地に送る。

バブルマンを生け贄に捧げ、デッキを1枚ずつめくっていく。

一枚目:融合賢者
二枚目:バブル・シャッフル
三枚目:フェザー・ショット
四枚目:E・HEROバブルマン

「バブルマンを特殊召喚!カードを2枚ドロー!
守備モンスターを出し、太陽の書を発動!」

メタモルポットがリバースする。
お互いに手札はゼロのため、デッキから5枚ドローする。

「本当のヒーローフラッシュを見せてやる!墓地のH・E・R・Oをゲームから除外し…E・HEROネオスを特殊召喚!」

エロスとは違う本当のネオスが姿を現す。

グレファー LP2800→4800

「更に、ミラクルフュージョンを発動!
墓地のスパークマンとフレイム・ウイングマンをゲームから除外し…E・HEROシャイニング・フレア・ウイングマンを召喚!」

聖なる輝きを身に纏ったエレメンタルヒーローが降臨する。

ミラクル・フュージョン
通常魔法
自分のフィールド上または墓地から、融合モンスターカードによって決められたモンスターをゲームから除外し、「E・HERO」という名のついた融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)

E・HEROシャイニング・フレア・ウィングマン
☆8 光 戦士 2500 2100
「E・HERO フレイム・ウィングマン」+「E・HERO スパークマン」
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。このカードの攻撃力は、自分の墓地の「E・HERO」という名のついたカード1枚につき300ポイントアップする。このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

グレファー LP4800→5800

「まだまだ!ミラクルフュージョン発動!
墓地のフェザーマン、バブルマン、バーストレディ、クレイマンをゲームから除外し…E・HEROエリクシーラーを召喚!」

E・HEROエリクシーラー
☆10 光 戦士 2900 2600
「E・HERO フェザーマン」+「E・HERO バーストレディ」+「E・HERO クレイマン」+「E・HERO バブルマン」
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。このカードの属性は「風」「水」「炎」「地」としても扱う。このカードが融合召喚に成功した時、ゲームから除外された全てのカードを持ち主のデッキに戻し、デッキをシャッフルする。相手フィールド上に存在するこのカードと同じ属性のモンスター1体につき、このカードの攻撃力は300ポイントアップする。

四つの力が融合し、最強のエレメンタルヒーローが姿を現す。
ゲームから除外されたカードは全てデッキに戻る。

グレファー LP5800→7800

「フッフ〜ン、残念だったな…せっかく強力な融合ヒーローを召喚したというのに、俺のライフはもう十分に回復してしまった。貴様の勝ちは無い!」

「そいつはどうかな?エリクシーラーでエロスを攻撃!フュージョニスト・マジスタリー!」

E・HEROエリクシーラー 攻撃力2900→3200

エリクシーラーの体から発せられる輝きによってエロスの変身が解け、元のグレファー(全裸)に戻る。

グレファー LP7800→7100

「バブルマン!メタモルポット!ダイレクトアタックだ!」

二体のモンスターの直接攻撃でグレファーのライフは僅かに削られる。

グレファー LP7100→5600

「シャイニング・フレア・ウイングマンでダイレクトアタック!シャイニング・シュート!」

E・HEROシャイニング・フレア・ウィングマン 攻撃力2500→3100

光り輝く衝撃がグレファーを押しつぶす。

グレファー LP5600→2500

「これでとどめだ!ネオスのダイレクトアタック!ラス・オブ・ネオス!!」

ネオスは飛び上がり、怒りを拳にぶつけグレファーを殴り飛ばす。

「なっ…そんなバカな!そんなバカなぁぁぁぁぁあぁ!!!」

グレファー LP2500→0

グレファーは全裸のまま空高く吹き飛び、見えない天井に激突する。
そしてそのまま目を回して落ちてきた。
「正義は勝つ!」



第二十章 雷鳴轟く

グレファーVSヒーロー仮面のデュエルはヒーロー仮面が勝利し、本当の正義を見せつけて終わった。
グレファーは腰をさすりながら起き上がり、転がっているマイクを手に取る。

「えー、会場の皆様、長らくお待たせいたしましたー。
これよりトーナメント戦を開始します。」

さっきまでのおふざけモードとは違い、真面目に仕事をしている。
その異様な光景にスタジアム中に戦慄が走った。

グレファーは一枚の板を運んでくる。
さっきまで烏丸の映っていた画面に、その板が映し出された。




      龍星高校──┐             ┌──武竜学園    
            ├─┐         ┌─┤
   三十六段坂高校──┘ │         │ └──藤森高校
              ├─┐     ┌─┤
 聖ユウティカル学院──┐ │ │  優  │ │ ┌──遊星高校
            ├─┘ │     │ └─┤
      青山高校──┘   │  勝  │   └──戯円寺高校
                ├──┴──┤
プロ炭酸ハイスクール──┐   │     │   ┌──海丸高校
            ├─┐ │     │ ┌─┤
  不敗ヶ咲天神高校──┘ │ │     │ │ └──馬引高校
              ├─┘     └─┤
   冥王学園中等部──┐ │         │ ┌──瀬田学園
            ├─┘         └─┤
      飲茶高校──┘             └──人義高校



「ところでヒーロー仮面さん、そちらの予想ではどのような結果になると思いますか?」

さっきの激闘はどこにいったのやら、グレファーとヒーロー仮面は仲良く実況席に座っている。

「そうですね〜。私としては飲茶高校が狼牙風風拳を見せてくれるのではないかと期待しているのですが…。
あ、突然ですが参加者のみなさん、もしもデッキを強化したいのであればこのスタジアムから歩いて5分、カードショップヒーロー見参でシングルカードをお求めになるといいですよ。
安い値段で強力カードがたくさん手に入ります。サイバー・ドラゴンがなんとたったの800円!」

「うわぁ、なんてお安い!」

「今ならE・HEROエリクシーラーがついてくる!さあさあ早く買わないと無くなっちゃうよ〜。」

「エリクシーラーはいらんというほど在庫余ってるような気がするのだが。」

「…………サイバー・ドラゴンがすぐに無くなっちゃいますよー。」

「ってか何でいきなりカードショップの話を?」

「おおっと、四帝セットがたったの2000円!これはお買い得だー!」

「ってか聞いてねェし。」

グレファーがツッコミをしているという異様な光景に、スタジアム中に戦慄が走った。

「ねえ、中太郎くん…私、さっきから気になってるんだけど…。」

光の問いかけに中太郎が振り向く。

「あのトリマル…っていう人、自分がこの大会の主催者って言ってたよね…?
コナミ社長とかじゃなくて、ただの平社員が主催者ってあるのかな?」

「さあ?『主催者のコナミ』の社員ってことじゃね?ヒラかどうかはしらんが。」

「そうかなー…?」

画面の中の鳥丸はそんなこと知らず、会場をゆっくりと眺めていた。

「さて、それではトーナメントを開始するか!」

グレファーがマイクを手に取り叫ぶ。

「三十六段坂高校…片刃!」

少し太った少年がポテトチップスを食べながらスタジアムの中心に現れる。

「龍星高校…おーい、誰が最初だ?」

グレファーに聞かれ、龍星の部員達は困惑する。

「決めてなかったのかよ!」

「つーか決めるのはお前だろ木之上。」

「ハァ?何で僕が…。」

「木之上早く決めてよー。」

意味も無く喧嘩する二年4バカ。
そこに一人の男が立ち上がる。
雨の音に混じって鋭い雷鳴が鳴る。

「菓子を食いながらデュエルをするとは許せぬ奴。拙者が相手致そう。」

雷はデュエルディスクを腕にはめ、片刃へと歩く。

「龍星高校の雷でござる。よろしく。」

雷は片刃に手を伸ばす。
片刃のポテチ油でべっとりの手が雷の手を握る。
雷はこれ以上ないというかの力で手を握り返し、その後ティッシュできれいに油を拭き取った。
片刃は目に涙を浮かべ痛そうに手をぶらぶらさせていた。

「デュエルを始めようか…。」

スタジアムに一筋の稲妻が落ちる。
見えない屋根を電撃が這う。

「拙者のターン。サンダー・ドラゴンを手札から捨て、2枚のサンダー・ドラゴンを手札に加える!更に融合を発動!」

サンダー・ドラゴン
☆5 光 雷 1600 1500
手札からこのカードを捨てる事で、デッキから別の「サンダー・ドラゴン」を2枚まで手札に加える事ができる。その後デッキをシャッフルする。この効果は自分のメインフェイズ中のみ使用する事ができる。

2体のサンダー・ドラゴンが一つとなる。
紅い体を持つ巨大な龍がプラズマに包まれてその姿を見せる。

双頭の雷龍
☆7 光 雷 2800 2100
「サンダー・ドラゴン」+「サンダー・ドラゴン」

「エレキッズを召喚し、ターンエンドでござる!」

エレキッズ
☆3 光 雷 1000 500

片刃はにやっと笑う。
まるでもう勝ったかのような目で。
だが雷は全く動揺することなく、平然と構えていた。

「僕のターン。天使の施しを発動。カードを3枚引き、2枚捨てる。
更に死者蘇生を発動!墓地のカタパルト・タートルを特殊召喚!」

カタパルト・タートル
☆5 水 水 1000 2000
自分のフィールド上に存在するモンスター1体を生け贄に捧げる。そのモンスターの攻撃力の半分をダメージとして相手プレイヤーに与える。

カタパルトを背負った鉄の亀が大地から蘇る。

「そして!魔導サイエンティストを召喚だ!」

魔導サイエンティスト
☆1 闇 魔法使い 300 300
1000ライフポイントを払う事で、融合デッキからレベル6以下の融合モンスター1体を特殊召喚する。この融合モンスターは相手プレイヤーに直接攻撃する事はできず、ターン終了時に融合デッキに戻る。

カタパルト・タートルと魔導サイエンティスト…雷は少しずつ今の状況がわかってきた。
片刃はにやりと勝利の笑みをこぼし、ポテトチップスを口に頬張り効果発動を宣言する。
場に巨大な機械が現れ、その中から紅陽鳥が出現する。

紅陽鳥
☆6 火 鳥獣 2300 1800
「セイント・バード」+「スカイ・ハンター」

片刃 LP8000→7000

紅陽鳥がカタパルトの上に乗せられる。
そして雷に向かって射出される。

雷 LP8000→6750

「まだまだ!効果発動!」

片刃 LP7000→6000

アクア・ドラゴン
☆6 水 海竜 2250 1900
「フェアリー・ドラゴン」+「海原の女戦士」+「ゾーン・イーター」

アクア・ドラゴンも同じように射出され、雷のライフにダメージを与える。

雷 LP6750→5625

「まだまだァ!」

片刃 LP6000→5000

ソウル・ハンター
☆6 闇 悪魔 2200 1800
「ランプの魔人」+「異次元からの侵略者」

雷 LP5625→4525

片刃 LP5000→4000

ブラキオレイドス
☆6 水 恐竜 2200 2000
「二頭を持つキング・レックス」+「屍を貪る竜」

雷 LP4525→3425

片刃 LP4000→3000

有翼幻獣キマイラ
☆6 風 獣 2100 1800
「幻獣王ガゼル」+「バフォメット」
このカードが破壊された時、墓地にある「バフォメット」か「幻獣王ガゼル」のどちらか1体をフィールドに特殊召喚する事ができる。(表側攻撃表示か表側守備表示のみ)

雷 LP3425→2375

片刃 LP3000→2000

金色の魔像
☆6 闇 アンデット 2200 1800
「メデューサの亡霊」+「ドラゴン・ゾンビ」

雷 LP2375→1275

片刃 LP2000→1000

バロックス
☆5 闇 悪魔 1380 1530
「キラーパンダ」+「ガーゴイル」

雷 LP1275→585

雷はカタパサイエンのコンボにじっと耐える。
たとえ負けるとわかっていながらも。

「更に!魔導サイエンティストを射出!」

雷 LP585→435

「とどめだ!カタパルト・タートル自身を射出!」

カタパルト・タートルが雷に向かって体当たりする。

雷 LP435→0

「勝者、三十六段坂高校、片刃西燕!」

グレファーが勢いよく叫んだ。

「不覚…。」

雷は負けを認め、がっくりと屈みこむ。

「そういえば…三十六段坂高校の顧問、市桐は1ターンキル大好き決闘者として有名だ!」

唐突に出てきた新設定に全員が「な、なんだってー!」と。

「おそらく…片刃以外の3人も1ターンキルの使い手――
もしかすると…海日も…。」
片刃はポテチを食べながらのん気に笑っていた…。



第二十一章 最近の総合掲示板の雰囲気にどうしても慣れない

「第二試合!あたしが行きまーす!」

全員が1ターンキルに驚く中、亮子がすぱっと手を上げた。

「いいのか川上。カタパサイエンほどの強敵はいない。
お前も雷みたいに瞬殺されるのが落ちだ。」

そう言う木之上に対し、亮子は既に勝つ気MAXだった。

「大丈夫、あたしのデッキにはあのカードが入ってるから。」


亮子はデュエルディスクを装着し、スタジアム中央に立つ。

「君が今度の相手〜?」

さっきからポテチばっか食ってる片刃。
亮子はだんだんイライラしてきたが、自分を抑えてフィールドに立つ。

「龍星高校2年、川上亮子!実はかなりの巨乳でスリーサイズは…

「そんなことはいい!まじめに司会やれ。」

ヒーロー仮面にセクハラ発言を止められ、ショボンとなるグレファー。

「それでは、デュエル開始!」

ヒーロー仮面はかっこよくポーズを決めて、デュエルの開始を宣言した。

「あたしのターン!天使の施しを発動!3枚ドローし、2枚捨てる!
そして、怒れる類人猿を召喚!」

怒れる類人猿
☆4 地 獣 2000 1000
このカードが表側守備表示でフィールド上に存在する場合、このカードを破壊する。このカードのコントローラーは、このカードが攻撃可能な状態であれば必ず攻撃しなければならない。

「カードを1枚セットし、ターンエンド!」

1ターン目から強力な手札入れ替えカードを使い、さらに攻撃力2000のモンスターを場に出す。
なんとも調子はよさそうだが、相手が1キルとあればそうはいかない。

「僕のターンだね。魔法カード、名推理。」

名推理
通常魔法
相手プレイヤーはモンスターのレベルを宣言する。通常召喚が可能なモンスターが出るまで自分のデッキからカードをめくる。出たモンスターが宣言されたレベルと同じ場合、めくったカードを全て墓地へ送る。違う場合、出たモンスターを特殊召喚し、残りのカードを墓地へ送る。

亮子はさらっと紙を掻き揚げる。

「残念だけど、既にそっちの戦術がバレてる状態でそのカードは無意味なものね。
宣言するレベルは…カタパルト・タートルの5!亮子ちゃんの名推理!間違いない!」

片刃は「んー」と声を上げながらデッキのカードをめくる。

一枚目:遺言状
二枚目:王家の神殿
三枚目:無謀な欲張り
四枚目:強奪
五枚目:おろかな埋葬
六枚目:手札抹殺
七枚目:カタパルト・タートル

見事、推理は的中し、カタパルト・タートルと今までにめくった全てのカードは墓地に送られる。

「じゃあ、リロードを発動。」

片刃は手札を全てデッキに戻し、その枚数分ドローする。

「王家の神殿を発動。」

「残念!砂塵の大竜巻!」

砂塵の大竜巻
通常罠
相手フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する。破壊した後、自分の手札から魔法か罠カード1枚をセットする事ができる。

フィールドに現れた神殿は竜巻に飲み込まれ、一瞬にして消えてしまう。

王家の神殿
永続魔法
このカードのコントローラーは、罠カードをセットしたターンでも発動できる。また、自分のフィールド上のこのカードと「聖獣セルケト」を墓地へ送る事で、手札・デッキ・融合デッキからモンスターを1体選択し、特殊召喚できる。

「へっへーん!1キルなんてものは一度わかったら対策とるのは楽勝なのよ!」

自身満々に言う亮子。
それを聞いて片刃はおろおろしだし、持っていたポテチの袋を落としてしまう。

「う…うるさい!とにかく勝てさえすればいいんだ!カードを3枚セットして…ターンエンド!」

慌てているのがまるわかりな片刃。
雷との対戦での落ち着いた彼はどこに行ってしまったのか。

「あたしのターン。ミノタウルスを召喚!
2体でダイレクトアタック!」

二体の獣モンスターは片刃に突撃する。

「グラヴィティ・バインド発動!」

超重力の網に抑えられ、二体のモンスターは動けなくなる。
興奮して叫ぶ二体のモンスターはあまりにも哀れに見えた。

「ぼ…僕は負けないぞ。なんとしてでも1キルを成功させてみせる…。」

必死で抵抗する片刃。

「カードをセットして、ターンエンド☆」

「僕のターンだ。罠カード!強欲な瓶!」

片刃はカードを1枚引く。

「天使の施しを発動!」

3枚引き、2枚捨てる。

「罠カードリビングデッドの呼び声!蘇れ!カタパルト・タートル!
更に魔導サイエンティストを召喚!
これで僕の勝ちだ!」

片刃 LP8000→5000

片刃の場に三体の融合モンスターが現れる。

ミノケンタウロス
☆6 地 獣戦士 2000 1700
「ミノタウルス」+「ケンタウロス」

バラに棲む悪霊
☆6 闇 植物 2000 1800
「グレムリン」+「スネーク・パーム」

轟きの大海蛇
☆6 水 水 2100 1800
「魔法のランプ」+「ひょうすべ」

「カタパルト・タートルの効果…発動!」

ミノケンタウロスがカタパルトの上に乗せられ、亮子に向かって飛ばされる。

「リバースカードオープン!リビングデッドの呼び声!」

亮子の墓地から一体の獣モンスターが蘇る。

デス・ウォンバット
☆3 地 獣 1600 300
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、コントローラーへのカードの効果によるダメージを0にする。

なんとも可愛いウォンバットは、やる気がなさそうにごろんと寝転がる。

「デス・ウォンバットの効果発動!」

飛んでくるミノケンタウロスが途中で破裂する。

「く…こうなったら…轟きの大海蛇!デス・ウォンバットを攻撃!」

海蛇は大量の水で津波を起こし、デス・ウォンバットを狙う。
亮子は「はっ?」とため息の混じった笑い声を上げる。

津波は重力の網によって弾かれる。
網が魔導サイエンティスト以外のモンスターを押さえつける。

「し…しまった!」

「じゃ、あたしのターンね。」

3体の融合モンスターが消滅する。

「ダークゼブラを召喚!」

ダークゼブラ
☆4 地 獣 1800 400
自分のスタンバイフェイズに、自分がモンスターをこれしかコントロールしていなかった場合、このカードは守備表示になる。そのターン表示形式は変更できない。

「サイクロン発動!グラヴィティ・バインドを破壊!」

重力の網が消えたことにより、今まで動けなかったモンスター達が急に力を取り戻す。

「ライトニング・ボルテックス発動!」

手札を一枚捨て、片刃のモンスターを全滅させる。

「さーて、お楽しみの時間よ〜。」

四体の獣モンスターが、丸々太った肉に向かって飛び掛る。
片刃は泣きながら転がり、地面に仰向けに倒れた。

片刃 LP5000→0

「勝者、川上亮子!」

「やったー!」

亮子はバンザイしながらジャンプし、パンチラを観客に余裕で見せ付ける。

「ヒーロー仮面さん今の見ましたか?」

「はい、見ましたとも。」

「ピンクのレースでしたね。」

「ええそうですね。」

司会、解説のオヤジどもはマイクのスイッチ入ったままこんな会話を始める始末。

「おおー、いいじゃないっすかー!おれっち、あのコと闘いたいっす!」

原明が席から乗り出し、フィールドに走ってくる。

「片刃ー、お前の出番はもうお終いっす。
さっさと席に戻るっす。」

原明に言われた片刃は泣きながらとぼとぼと席に戻っていった。

「フン…片刃ごときに勝ったくらいで喜ぶとはな。
あいつは俺達の中では最弱なんだよ。
俺達の足元にも及ばないくらいのな。」

出日が少年漫画でよくある悪役グループの一人みたいな台詞を吐いて、戻ってくる片刃を煽る。

「で、亮子ちゃんだっけ?おれっちは原明転介。よろしく〜。」

ヘラヘラ笑う原明に、亮子は少し引き気味だ。
そこに、さっきまでパンチラについて熱く語り合っていた変態戦士と変態ヒーローのアナウンスがかかる。

「では、デュエルを始めるぞぉー!龍星高校、川上亮子!三十六段坂高校、原明転輔!デュエル…開始ィ!!」



「あたしのターン!」

「ちょ、ちょっと待つっす!」

いきなり原明に止められ、亮子はずっこける。

「デュエルの先攻後攻を決めるときは、ジャンケンって決まってるっす。
1キルにとっては、先攻なのか後攻なのかが非常に重要なんっす。」

「…あっそ、わかったわよ。」

「ところでだけど、おれっちはグーを出すっすよ。」

いきなり出す手を宣言され、亮子は焦る。

「(つまりこいつは、先攻か後攻か決めさせてくれるってわけね。
あたしがパーを出せば先攻、チョキを出せば後攻。
ただ、相手の『グーを出す』がウソだった場合は…。
まあウソだった場合は考えないものとして、ここで一番考えなくちゃならないのは、自分よりも相手のこと…。
もしも相手がデビフラみたいな攻撃を必要とする1キルだった場合、後攻でなければ成功はしない。
それ以外の場合は、先攻の方が成功しやすい。)」

しばらく考え込む亮子。
そしてしばらくして、勝ち誇ったように笑った。

「あたしの予想では、あんたの1キルは最近流行りのキメラ1キル!
つまり後攻でなければ成功しないわけで、あたしはチョキを出すわ!」

そう言ってチョキにした手を原明に向けた。

「あ、そう…それなら俺からでいいっすね。」

原明はデッキからカードを引いた。




数分後…。

「現世と冥界の逆転を発動っす!」

現世と冥界の逆転
通常罠
自分の墓地にカードが15枚以上ある時、1000ライフを払い発動。お互いに自分の墓地と自分のデッキのカードを全て入れ替える。その際、墓地のカードはシャッフルしてデッキゾーンにセットする。

先攻1ターン目のため、亮子の墓地はゼロ。
つまりデッキがゼロになり、亮子の敗北となった。

「勝者、原明逆太!」

「…最初にあたしが勝手に先攻を取ろうとした時に気づくべきだった…。
あいつは先攻型の1キルだって…orz」

せっかくカッコよく勝利を決めたと思ったのに、次のデュエルでなんともマトモな敗北を。
一気にどん底に叩き落され、海日や雷の気持ちが死ぬほどわかった。


「まあまあ、あとは俺に任せてくださいよ。」

デッキをデュエルディスクにセットし、中太郎が立ち上がる。
「俺のデッキにはあいつのデッキに必ず勝てるカードが入っているからな!」



第二十二章 この小説でグレファーが出てから原作ホームページにグレファーネタ増えたよね

「まずはジャンケンだぜ。」

スタジアムに立った中太郎が言った。
もう自分のデッキが相手にわかってしまっているため、原明はさっきの様な手を使うことはできず、正々堂々ジャンケンをしなければならなかった。

「ジャン・ケン・ポン!」

中太郎はグー、原明はチョキ。
中太郎の先攻だ。

「いよっしゃぁ!俺のターン!」

中太郎は勢いよくカードをドローする。

「モンスターを守備表示で召喚!さらにカードを一枚セットし、ターンエンドだ!」

「おれっちのターンっす。
打ち出の小槌を発動するっす。4枚戻し、4枚引くっす。
天使の施しを発動するっす。3枚ドローするっす。2枚捨てるっす。
処刑人マキュラが墓地に送られたっす。手札から罠を発動できるっす。
強欲な瓶を発動するっす。1枚ドローするっす。」

原明はいきなり大量にドローカードを使用する。
現世と冥界の逆転の発動条件を満たすためだろう。

強欲な瓶
通常罠
自分のデッキからカードを1枚ドローする。

「更に!振り出しを発動するっす!」

振り出し
通常魔法
手札を1枚捨てる。フィールド上のモンスター1体を持ち主のデッキの一番上に戻す。

手札を一枚捨て、中太郎の守備モンスターを手札に戻す。

「強引な番兵を発動っす。
手札を見させてもらうっす。」

原明は中太郎の手札を確認する。

手札:地帝グランマーグ、手札抹殺、ウォー・アース、スフィラスレディ

そして地帝グランマーグをデッキに戻した。
何でウォー・アースとかスフィラスレディをデッキに入れているのかは謎である。
岩石族だから…多分。

「八汰烏の骸を発動するっす。」

八汰烏の骸
通常罠
次の効果から1つを選択して発動する。
●自分のデッキからカードを1枚ドローする。
●相手フィールド上にスピリットモンスターが表側表示で存在するときに発動することができる。自分のデッキからカードを2枚ドローする。

「魔法石の採掘を発動っす。手札を2枚捨てて、墓地の天使の施しを手札に加えるっす。
そして発動っす。3枚引き2枚捨てるっす。」

原明の墓地に、15枚のカードが溜まった。

「これで…条件は満ちたっす!」

原明は手札を一枚選び、天に掲げる。

原明 LP8000→7000

「現世と冥界の逆転…発動っす!!」

辺りが不穏な空気に包まれる。
現世と冥界――デッキと墓地が入れ替わり、中太郎のデッキはゼロとなる。

「フ…勝ったっすね…。」

原明は目を閉じ、笑みを浮かべた。
そしてそっと目を開けると、そこには余裕でいる中太郎が。

「な、なぜっすか!?」

原明は思わず叫んだ。
普段のお気楽キャラからはとても考えられないような声で。

原明 LP7000→6500

「お、おおれっちのライフが減ってるぅぅ〜!?」

中太郎はデッキからカードを1枚引き、それを原明に見せる。

「『岩投げアタック』を発動させてもらったぜ。
俺はデッキの岩石族モンスター1体を墓地に送り、その後で現世と冥界の逆転の効果を処理したため、俺のデッキは残り2枚だ!」

岩投げアタック
通常罠
自分のデッキから岩石族モンスター1体を選択して墓地へ送る。相手ライフに500ポイントダメージを与える。その後デッキをシャッフルする。

「で、でもそれはどうっすかね?」

動揺した原明はまだ体が震えているが、少しずつ冷静になり、笑いながら言った。

「お前はさっきその岩投げアタックをドローした。
つまり、それはお前がドローフェイズにドローするカードということっす。
そしてそのカードでは今は何の役にも立たないっす。
それにさっきのお前の手札にはこの状況を打開するカードはないっす。
2ターン待つかおれっちがメタモルポットなり手札抹殺なりをドローすればおれっちの勝ちっす!
どっちにしろお前は負けるっす!」

無駄に長文で話す原明。
息は荒く、顔は汗だくになっている。

「あ、手札抹殺といえば、お前の手札にもあったっすね。
でもまあ、手札抹殺を除いた手札が3枚でデッキが1枚のこの状況で使っても自殺行為なだけっすね。
結局おれっちの勝ちっす!勝利っす!」

「あ、ヒントありがと。」

「へ?」

原明の体は硬直した。

「えっと、俺のターンでいいんだっけか。
ドローはもうしたから…岩投げアタックを伏せて、ウォー・アースを召喚!」

「……。」

原明は中太郎が何をやるのかがわかった。
それと同時に、「こんな手もあるのか」だとか「あの時手札抹殺をデッキに戻していれば…」だとか「最期にパンチラ見れてよかった」だとかいろいろな感情が頭の中を巡った。

「手札抹殺を発動!スフィラスレディを墓地に送り、デッキからカードをドローするぜ!」

中太郎の引いたカードがキラリと光った。

「メガロック・ドラゴン!召っっっ喚!!!!」

どこからともなく、地面が揺れるような音が聞こえてくる。
音は次第にこちらに近づき、原明の足の下で静止する。
大地は割れ、そこから巨大な岩の竜が姿を現す。

メガロック・ドラゴン 攻撃力12600

「へへ…墓地にいる岩石族モンスター全ての魂を吸収したぜ!
これでとど…め…?」

原明 LP0

しかし、原明はあまりの恐怖に気を失って倒れていた。

「お、おいおい…。」

中太郎は呆れ、ソリッドビジョンのメガロック・ドラゴンも消えてしまった。

「勝者!龍星高校、山田中太郎!」

中太郎は後ろの光たちにガッツポーズを送った。


「チッ、原明も使えない奴だ。
ここはこの俺、出日乱太が行ってやる。」

出日はサングラスをかけ、デュエルディスクを腕に付けた。

「山田中太郎…覚悟しておけ。
俺の1キルは今までの奴らとは違う…。」

デブ、お調子者と来て今度は真面目系。
雰囲気からして今までとは格が違うのが明らかだ。

「ジャン…ケン…ポン!」

パーを出そうとした中太郎に、出日は後だしのグーで頬を殴った。
中太郎は回転しながら吹き飛んだ。

「俺の負けだ。先攻はくれてやる。」

中太郎は頬をさすりながら立ち上がると、出日に罵声を浴びせてからカードを引いた。

「今回の俺は強気で行かせてもらうぜ…!
手札の磁石の戦士3体を合体!マグネット・バルキリオン召喚!ターンエンド!」

1ターン目から攻撃力3500のモンスターを召喚し、強気なところを見せつける中太郎。

「俺のターン。地砕きを発動。」

地面が割れ、マグネット・バルキリオンはそこに沈んでいく。
中太郎は「でえええええ」と声を上げながら消えていくバルキリオンの姿を見ていた。

「デビル・フランケンを召喚。ライフを5000ポイント支払い、青眼の究極竜を特殊召喚!」

出日 LP8000→3000

三つの頭を持つ究極の竜が、融合召喚されることなく場に姿を現す。
さっきのメガロック・ドラゴンにも負けぬ迫力で、中太郎を圧倒する。

「巨大化を発動!究極竜の攻撃力を2倍にする!」

巨大化
装備魔法
自分のライフポイントが相手より少ない場合、装備モンスター1体の元々の攻撃力を倍にする。自分のライフポイントが相手より多い場合、装備モンスター1体の元々の攻撃力を半分にする。

青眼の究極竜 攻撃力4500→9000

ただでさえ巨大なドラゴンは、魔法の力により更に巨大になる。

「攻 撃!」

中太郎を見下ろす三つの口から、全てを破壊する光線が放たれる。

中太郎 LP8000→0







「悪い、負けた。」

ボロボロになった中太郎が頭をかきながら木之上に言った。

「馬鹿者め。雷も川上も山田もどうしてこう…もういい!次は僕がやる。」

木之上は立ち上がり、中太郎を退けてスタジアム中央へと向かった。

「残る3人…全員を僕が倒そう。
待ってろ海日野郎…貴様はこの僕がボッコボコのギッタギタにしてやるよ…。」



第二十三章 木之下ハルトの憂鬱

「ジャン…ケン…ポン!」

出日はさっきと同様にグーで殴ろうとする。
木之上はしゃがんでかわし、逆にグーで殴り返す。
出日はそれをかわし、再びジャンケンの体制に入る。

「あい…こで…しょ!」

出日はチョキで目潰しをしようとする。
だが、それは二つのレンズにより拒まれてしまう。

「マヌケめ。このメガネが見えないのか。」

今ので軽く指の関節が折れただろう。
動揺する出日の腹に、木之上はグーを食らわせた。

「僕の勝ちだ…先攻は貰うよ。」

出日は腹を抱え、しゃがみこむ。

「僕のターン。守備モンスターを出し、カードを1枚セット。ターンエンドだ。」

出日は立ち上がり、サングラスの奥から鬼のような形相で木之上を睨みつけた。

「俺のターンだ!ハリケーンを発動!」

ハリケーン
通常魔法
フィールド上の魔法・罠カードを全て持ち主の手札に戻す。

竜巻が起こり、木之上の伏せカードが手札に戻る。
だが、木之上は無表情でいる。

「抹殺の使途!貴様の守備モンスターを除外する!」

瞬着ボマーが一瞬にして除外される。

「ハン、俺に後攻を譲ったのは間違いだったな。
デビル・フランケン!召喚だ!」

邪悪なる闇の力。
それはまるで積み込みのごとく…。

「効果発動…いでよ究極のドラゴン…青眼の究極竜!!」

出日 LP8000→3000

デビル・フランケンの体をスパークが包み込む。
体は震えだし、頭や腕からは煙が上がる。

デビル・フランケンはその口を大きく開く。
まるで異次元の扉を開けてきたかのように、その中から太く、強靭な腕が出現する。
やがて三つの頭もがその姿を現し、究極のドラゴンはデビル・フランケンから完全に分離した。

「魔法カード、巨大化!」

究極竜は大地に聳える山のごとく、この世の物とは思えない大きさにまで変化する。
これが積み込みの魔力という物か。

青眼の究極竜 攻撃力4500→9000

「ダイレクトアタックだ!アルティメット・バースト!!!」

スタジアムの枠をはみ出してまで映し出される巨大なソリッドビジョンのドラゴンは、その全ての力を一撃に籠め、三つの口から衝撃を放つ。

「粉砕!玉砕!大喝采!!!」

全てを包み込む大爆発。
ソリッドビジョンでなければ、この町は焼け野原になっていただろう。

だが、肝心の木之上は無傷で立っていた。
ソリッドビジョンだからという突っ込みは無しの方向で、本当に無傷なのは木之上のライフ。
ライフポイント8000のソリッドビジョンが、きちんと映し出されていた。

「手札からクリボーを捨てさせてもらった。
これで僕の受ける戦闘ダメージはゼロだ。」

クリボー
☆1 闇 悪魔 300 200
手札からこのカードを捨てる。自分が受ける戦闘ダメージを1度だけ0にする。この効果は相手のバトルフェイズ中のみ使用する事ができる。

完全に余裕でいる木之上。
出日の怒りはだんだんと強まっていった。

「カードをセットし…ターンエンドだ!」

「僕のターンだ。
デビル・フランケンを召喚!」

木之上の場に、出日の物と全く同じモンスターが召喚される。
出日は驚いているが、木之上のデッキは機械族デッキ、このカードが入っていても何も文句は言われない。

「そして効果を発動しよう。僕の選ぶカードは…サイバー・エンド・ドラゴン!」

木之上 LP8000→3000

木之上のデビル・フランケンの体が炎上する。
そして口を開き、三つの頭を持つ機械の龍が出現する。

「ハハハハハハ!だがライフは互角!攻撃力は究極竜の方が上だ!」

「焦るな。成金ゴブリンを発動!貴様のライフを回復してやる!」

出日 LP3000→4000

「ぬあっ!!!」

出日の表情が歪んだ。
本来ならライフを回復されて喜ぶところだが、この状況ではそうはいかない。
今まで山のように巨大だった究極竜は物凄い勢いで収縮していき、まるで子供のようになってしまった。

青眼の究極竜 攻撃力9000→4500→2250

「これでオサラバだな。リミッター解除!」

大爆発が巻き起こり、サイバー・エンド・ドラゴンは真の力を解放する。

サイバー・エンド・ドラゴン 攻撃力4000→8000

「消えろザコ。貴様のようなクズがいるせいで遊戯王の評判が悪くなる。」

三つの首から放たれる衝撃が、小さな究極竜を無へと還した…。





出日 LP4000→0

「勝者、木之上!」

グレファーがそう言うと、木之上はグレファーを睨みつけた。
そしてグレファーを指差して、言った。

「僕は木之上ではない!木之下だ!
木之下 春斗(きのした はると)だ!!」

今更本名が発覚。

「ほう、木之下春斗ねえ…。」

36(ryの主将、儀亜が足を組みながら、笑っていた。

「おい海日野郎、僕は次の相手に貴様を指名する!
さあ、出て来い!」

海日を指差す木之上の眼鏡が、キラリと光った。

「海日くん、ご指名だよ。」

ポテチを食べながら片刃が言った。

「フン、木之上ごときが俺様に挑戦とは…。
1ターンで潰してやるよ!」

海日は元気一杯立ち上がり、デッキを取り出した。

「待て。」

海日はずっこけた。

「あのメガネくんの相手は、俺がやる。
お前には1キルとは何かをまだわかっていないからな。」

儀亜が立ち上がり、言った。

「片刃、原明、出日…。
だいたい、お前達3人にはリスペクト精神が無い!
本来の1ターンキルとは、相手をリスペクトして行うことなのだよ!
遊戯王GXのカイザー亮を見習ってみろ!
彼は相手をリスペクトした上で、素晴らしい積み込みによる1ターンキルを行っている!
それが真の1ターンキル使いというものなのだよ!」

海日はぽかんとしていた。
一体何を言い出すかと思ったら、謎の説教。
しかも1キルがリスペクトだとかどうとか。

「よし、俺のリスペクト・1ターンキルを見せてあげようか…木之下春斗。」

一方で、木之上は本名を呼ばれて微妙に嬉しがっていた。

「じゃあ、デュエルといくかな。」

デュエルディスクが変形し、ソリッドビジョンシステムが発動する。

「ジャン、ケン、ポン!」

木之上はチョキ、儀亜はパーを出した。

「俺の先攻だ。天使の施しを発動!3枚引き、2枚捨てる!そして魔法吸収を発動!」

魔法吸収
永続魔法
魔法カードが発動する度に、このカードのコントローラーは500ライフポイント回復する。

「鉄の戦士ギア・フリードを召喚!」

鉄の騎士ギア・フリード
☆4 地 戦士 1800 1600
このカードに装備カードが装備された時、その装備カードを破壊する。

「死者蘇生を発動!ビッグバンガールを特殊召喚!」

ビッグバンガール
☆4 炎 炎 1300 1500
自分のライフポイントが回復する度に相手に500ポイントダメージを与える。

「そして…蝶の短剣−エルマを発動!!」

蝶の短剣−エルマ
装備魔法
装備モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。モンスターに装備されているこのカードが破壊されて墓地に送られた時、このカードを持ち主の手札に戻す事ができる。

木之上の額を、冷や汗が伝った。

「お、おいおいこれのどこがリスペクトだよ…。
まさかこいつ、リスペクト=積み込みだとか思ってるわけじゃあるまいな…。
というか、海日野郎と戦う前にこの僕が負けるだと!?」

発動と同時にライフ回復、それによってビッグバンガールの効果が発動、木之上に火の玉を放つ。
更に、ギア・フリードに装備された短剣は消滅し、その効果により手札に戻る。
儀亜はそれを再び発動し、木之上にダメージを与える。
その連続により、木之上のライフは次々と減っていった。

木之上 LP0

「……。」

「勝者、儀亜燐斗!」
木之上は何も言うことができなかった。



第二十四章 「いぬかみっ!」のキャラに親近感を覚えました

「木之上先輩、災難でしたね…。」

そう言いながら武が木之上にタオルを渡した。

「貴様…それはわざと言っているのか?」

木之上は武を思いっきり睨みつけて、そのまま席に戻った。
武はしばらく真っ青になって固まっていた。

「…こっちは最後になるけど、誰が行く?」

亮子は日比の方を見る。
日比はびくっとなって震えていた。
次は田村を見る。
田村はあえて目を合わせないようにしていた。

「じゃ、ヒカリンお願いね☆」

亮子に背中を押され、光は無理矢理フィールドに立たされた。

「龍星高校は一年の御門さんですね。
グレファーさんは以前にデュエルしたことがあるそうですが…。」

「ああ、その時は楽しかったよ。
また今度、おじさんと遊ぼうね。」

光は聞こえないふりをして、スタジアム中央まで歩いていった。

「さあ、君にも素晴らしい1ターンキルを見せてあげよう!」

儀亜はバックに薔薇の花を散らせていた。
どこがどう素晴らしいのか、光はわからなかった。
おそらく、誰もわからないだろう。

「海日、市桐師範から教わった1キル流のデュエル…よく見るといい!」

儀亜は海日を指差して言った。
海日は顧問の市桐の方をちらっと見た。

「あ、あの…1キル流って一体…。」

「私が開いたデュエルの流派だよ。
相手をリスペクトすることがこの流派の教えでね…。
1ターンキルと心が通じているから、簡単に1キルのパーツを揃えることができるのさ。
ちなみに、『1ターンキルと心を通じさせるシャッフル法』を会得しているのはこの流派でも私と儀亜だけだ。
よくサイバー流のパクリとか言われるが、GXのスタッフが1キル流をパクったのだよ。
まあ、私が許可をあげたんだけどね。
あと鮫島校長のモデルは私だから。
どうだ、なかなか似ていると思わないかね?」

普段は他人を呆れさせる立場にいる海日が、市桐の突っ込み所満載な説明に呆れていた。
片刃、原明、出日もため息をついていた。


「ジャンケンポン。」

持ち前の運のよさで、光が先攻を取った。

「守備モンスターを出し、カードを4枚セットして…魂吸収を発動、ターン終了です。」

「俺のターン!」

儀亜はカードをドローする。

「マクロコスモス発動!」

光の伏せカードが開いた。

マクロコスモス
永続罠
自分の手札またはデッキから「原始太陽ヘリオス」を1体特殊召喚する事ができる。また、このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、墓地へ送られるカードは墓地へは行かずゲームから除外される。

スタジアム全体が、宇宙へと変わる。
フィールドの中央に原始太陽ヘリオスが存在し、その周りを惑星が回っている。
光り輝く星々と巨大惑星達は、まるで本物の宇宙に来たような錯覚を観客達に与えた。

原始太陽ヘリオス
☆4 光 炎 ? ?
このカードの攻撃力と守備力は、ゲームから除外されているモンスターの数×100になる。

「く…除外デッキか!確かにそれは俺のギアフリエルマ1キルの対策にはなる!
だが、そんなカードは破壊してしまえば問題無いんだ!サイクロン!」

竜巻が巻き起こる。
宇宙全体を包み込む暗黒の風は、惑星を飲み込むブラックホールへと姿を変える。
ただし、モンスターを全て破壊する効果は無い。

「王家の呪いを発動!」

王家の呪い
カウンター罠
魔法・罠カード1枚を破壊する効果を含む魔法・罠カードの発動と効果を無効にし、そのカードを破壊する。

ブラックホールが消滅し、惑星は一気に飛び出す。
収縮した宇宙は元の姿に戻った。
発動したサイクロンと王家の呪いはゲームから除外され、魂吸収によって光のライフが回復する

光LP8000→9000

「く…!カードを2枚セット、ターンエンドだ!」

「私のターン、デステニー・デストロイ発動!」

デステニー・デストロイ
通常罠
自分のデッキの上から3枚カードを墓地へ送る。この効果で墓地に送った魔法・罠カード1枚につき、自分は1000ポイントのダメージを受ける。

光のデッキの上から、督戦官コヴィントン、マシンナーズ・スナイパー、水魔神−スーガの3枚が除外される。

光 LP9000→11000

「カオス・グリード発動!」

カオス・グリード
通常魔法
自分のカードが4枚以上ゲームから除外されており、自分の墓地にカードが存在しない場合に発動する事ができる。自分のデッキからカードを2枚ドローする。

光はデッキからカードを2枚ドローする。

光 LP11000→11500

「天使の施しを発動!」

デッキから3枚ドローし、なぞの手と牛鬼をゲームから除外する。

光 LP11500→13000

「そして…もう一枚のデステニー・デストロイを発動!」

光のデッキから、マシンナーズ・ソルジャー、コイツ、風魔神−ヒューガが除外される。

光 LP13000→15000

「原始太陽ヘリオスとマシンナーズ・ディフェンダーを生け贄に捧げ…雷魔神−サンガを召喚!」

雷魔神−サンガ
☆7 光 雷 2600 2200
相手ターンの戦闘ダメージ計算時のみ発動する事ができる。このカードを攻撃するモンスターの攻撃力を0にする。この効果はこのカードが表側表示でフィールド上に存在する限り1度しか使えない。

惑星から放たれる雷が一つに纏まり、宇宙の中心に雷の魔神が出現する。

光 LP15000→16000

「雷魔神−サンガで…直接攻撃!」

サンガは儀亜に電撃を放つ。

「そうはいくか!炸裂装甲!」

サンガの体は砕け散り、宇宙の塵となって消えていった。

光 LP16000→17000

「カードを1枚セットして…ターンエンドです。」

「俺のターン…。大嵐を発動だ!」

宇宙全体を包み込むかのように、巨大な渦が巻き起こる。
光の魂吸収と一枚の伏せカードは、一瞬にして吸い込まれてしまう。
惑星同士はぶつかり合い、消滅していく。
やがて、全ての宇宙は渦に吸い込まれていき、景色はスタジアムに戻った。

「フ…これで貴様の場はガラ空き…。」

儀亜は光のフィールドを見る。

「!!」

光のフィールドに、小さな黄金の像が出現している。

黄金の邪神像
通常罠
セットされたこのカードが破壊され墓地へ送られた時、自分フィールド上に「邪神トークン」(悪魔族・闇・星4・攻/守1000)を1体特殊召喚する。

「邪神トークンか…。だが、そんなザコはどうでもいい。
ここからが本当の勝負だ!鉄の戦士ギア・フリード、召喚!」

全身を鉄の鎧で覆った戦士がフィールドに現れる。

「魔法吸収、発動!更に、蝶の短剣−エルマ!」

儀亜 LP8000→8500→9000→9500

儀亜のライフは見る見るうちに増えていく。

「フフ…サレンダーするのなら今のうちだ。
ビッグバンガールがいないとはいえ…無限回復コンボの前ではそれしかあるまい。」

儀亜 LP15000→15500→16000

しかし光は、黙ってそれを見ていた。


やがて3分の時が経ち、儀亜のターンが終了する。

「…サレンダーはしないのか?これだけのライフを前にして…。」

儀亜 LP100000

「大丈夫です…。私には、カード達がついていますから。」

10万のライフを目の前に、光は全てを掛けてデッキからカードを引いた――。




LP 17000
場  邪神トークン
手札 1枚

儀亜
LP 100000
場  鉄の戦士ギア・フリード、魔法吸収
手札 2枚



第二十五章 注:この章はあまりにもグダグダです。読み飛ばして26章に行くことをお勧めします。

「モンスターを…守備表示で召喚。」

光は引いたカードをデュエルディスクに置く。

「魔法カード、太陽の書!メタモルポットをリバース!」

儀亜 LP100000→100500

互いに手札を全て墓地に送り、デッキからカードを5枚引く。

「次元融合を発動!」

フィールドに次元の歪みが出現し、除外されたモンスター達が蘇る。
最初に姿を現したのは、小さな壺と、それを持つなぞの手。
壺の中からは牛鬼が出現する。
その後、督戦官コヴィントンがガシンガシンと足音を立てて歩いてきた。

儀亜 LP100500→101000
光 LP17000→15000

「強欲な壺を発動!」

儀亜 LP101000→101500

光はカードを2枚ドローする。

「王家の神殿を発動!更に、カードを1枚セットし…王家の神殿の効果によりそのカードを発動します!無謀な欲張り、発動です!」

儀亜 LP101500→102000

光は更にカードを2枚引く。

「カードを3枚セットし…月の書を発動、メタモルポットを裏側守備表示に変更!
更にカードを一枚伏せ、それを発動!硫酸の溜まった落とし穴!」

硫酸の溜まった落とし穴
通常罠
裏側守備表示モンスター1体を表にし、守備力2000以下だった場合それを破壊する。2000より上の場合はそのまま裏に戻す。

メタモルポットが落とし穴に落とされ消滅すると共に、光はデッキからカードを5枚引く。
儀亜も、手札を全て捨ててカードを5枚ドローした。

「なぞの手、牛鬼、邪神トークンを生け贄に――幻魔皇ラビエルを召喚!」

三つの悪魔の魂と引き換えに、最強の幻魔が召喚される。
地面を突き破り、幻魔皇ラビエルは光の忠実なる僕となった。

幻魔皇ラビエル
悪魔族 闇 ☆10 4000 4000
このカードは通常召喚できない。自分フィールド上に存在する悪魔族モンスター3枚を生け贄に捧げた場合のみ特殊召喚する事ができる。相手がモンスターを召喚する度に、自分フィールド上に「幻魔トークン」(悪魔族・闇・星1・攻/守1000)を1体特殊召喚する。このトークンは攻撃宣言を行う事はできない。1ターンに1度だけ、自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる事で、このターンのエンドフェイズ時までこのカードの攻撃力は生け贄に捧げたモンスターの元々の攻撃力分アップする。

「クク…たかが4000ポイントの攻撃力で…俺のライフをゼロにすることはできない!」

自信たっぷりに儀亜が言った。

「そのことはわかっています。だから…!」

光は2枚目の次元融合を発動する。
次は、三体のマシンナーズがフィールドに舞い戻る。

光 LP15000→13000
儀亜 LP102000→102500

督戦官コヴィントンの指令により、マシンナーズ達は合体する。
フィールドに、巨大なマシンナーズ・フォースが降臨した。
だが二体の重量モンスターに見下ろされていながらも、儀亜は何でもないような表情をしていた。

「リバースカードを一枚発動…神秘の中華なべ!」

神秘の中華なべ
速攻魔法
自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる。生け贄に捧げたモンスターの攻撃力か守備力を選択し、その数値だけ自分のライフポイントを回復する。

督戦官コヴィントンは中華なべによって料理され、光のライフポイントとなる。
しかし、どう考えても美味しくなさそうである。

光 LP13000→14000
儀亜 LP102500→103000

「更にもう一枚…異次元からの帰還!」

光 LP14000→7000

サンガ、スーガ、ヒューガ、次にフィールドに現れたのは三体の魔神。
異次元から戻ってくるなりすぐに合体し、ゲート・ガーディアンとなった。

「手札を一枚伏せ…それを発動!ギャンブル!カードを5枚ドロー!
更にもう一枚の伏せカード…血の代償!」

光 LP7000→6500

「ゲール・ドグラを召喚!効果発動!」

光 LP6500→3500

光は融合デッキを取り出し、そこから青眼の究極竜をゲーム墓地に送る。

「カードを一枚セットし、発動!異次元からの帰還!」

続いて現れたのは紙飛行機に乗った弱そうなモンスター、コイツ。
片手で逆立ちをし、なんともやる気がなさそうに登場だ。

光 LP3500→1750

コイツ
天使族 水 ☆10 200 100
1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに装備カード扱いとして、フィールド上のこのカードを「アイツ」に装備、または装備を解除して表側攻撃表示で元に戻す事が可能。装備モンスターの攻撃力は3000ポイントアップする。守備表示モンスターを攻撃した時にその守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手に戦闘ダメージを与える。(1体のモンスターが装備できるユニオンは1枚まで。装備モンスターが戦闘によって破壊される場合は、代わりにこのカードを破壊する。)

「突然変異を発動!コイツをサイバー・エンド・ドラゴンに変異!」

青き天使は龍の頭となり、紙飛行機は龍の羽となる。
攻撃力100のザコモンスターは一瞬にして攻撃力4000の怪物となる。

儀亜 LP103000→103500

「幻魔皇ラビエルの効果発動!ゲール・ドグラを生け贄に、幻魔皇ラビエルの攻撃力を650ポイントアップ!」

ラビエルはゲール・ドグラを掴み、ボリボリと貪り食う。

幻魔皇ラビエル 攻撃力4000→4650

「ライフを500ポイント支払い、闇の仮面を守備表示で召喚!さらに硫酸の溜まった落とし穴を伏せて発動!闇の仮面を破壊し、墓地のギャンブルを手札に戻し、伏せて、発動!5枚ドロー!」

光 LP1750→1250

「ライフを500ポイント支払い、心眼の女神を召喚!龍の鏡を発動!心眼の女神と青眼の究極竜をゲームから除外し、究極竜騎士を融合召喚!」

心眼の女神
天使族 光 ☆4 1200 1000
このカードを融合素材モンスター1体の代わりにする事ができる。その際、他の融合素材モンスターは正規のものでなければならない。

光 LP1250→750
儀亜 LP103500→104000

究極竜騎士 攻撃力5000

「カードを1枚セットし、発動!DNA改造手術!全てのモンスターを機械族に変更!そして魔法カード、リミッター解除!」

DNA改造手術
永続罠
発動時に1種類の種族を宣言する。このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上の全ての表側表示モンスターは自分が宣言した種族になる。

究極竜騎士 攻撃力5000→10000
幻魔皇ラビエル 攻撃力4650→9300
マシンナーズ・フォース 攻撃力4600→9200
サイバー・エンド・ドラゴン 攻撃力4000→8000
ゲート・ガーディアン 攻撃力3750→7500

儀亜 LP104000→104500

「更に、カードを1枚セットし、発動!ギャンブルで5枚ドロー!」
2枚目のリミッター解除を発動!」

究極竜騎士 攻撃力10000→20000
幻魔皇ラビエル 攻撃力9300→18600
マシンナーズ・フォース 攻撃力9200→18400
サイバー・エンド・ドラゴン 攻撃力8000→16000
ゲート・ガーディアン 攻撃力7500→15000

儀亜 LP104500→105000












しかし、ここまできておいて究極竜骸骨はこれは書いてても読んでても楽しくないと感じた。
というわけで、今までの話は無かったことにして、いつの間にか光が勝っていたということで。

儀亜 LP0

「ちょっと待て!いくらなんでもこれはないだろ!」

ジークVS羽蛾&竜崎とか斎王VSエドのラストとか似たようなことはいくらでもあるので、これで勘弁してくださいorz


「勝者ー、ポケモンDP新主人公ヒカリー。」

次回はまじめに書きます。



第二十六章 開闢太郎大会に出る

とんでもないご都合主義により、光VS儀亜のデュエルは光の勝利となった。
儀亜が悔しがるのは当然だが、市桐はそれ以上に悔しがっていた。
市桐は戻ってきた儀亜をキラリと睨んだ。

「そんな…理不尽な…。」

儀亜は悔しさに声が枯れていた。
だが、その様子を見てほくそ笑む者が一人。
海日にとって、儀亜が負けてくれたのは都合がよかった。

「市桐せんせー…ご都合主義で負けるようなクズはほっときましょうよー。
それより、本当に俺があのデッキ使っちゃっていいんスかね?」

海日はポケットからデッキを取り出し、それを市桐の目の前でパタパタと振りかざした。

「ああ、そのデッキはお前のためだけにあるデッキだ。
その『1キル流裏デッキ』はな…。」

『1キル流裏デッキ』…その言葉にさっきまで無言だった儀亜が振り向く。

「裏デッキ!?何ですか!それは!」

市桐は無言で返答し、儀亜を睨みつけた。

「そんじゃ、行ってきますよ。」

海日は『1キル流裏デッキ』をデュエルディスクにセットし、スタジアム中央へと歩み出す。
眼光は鋭く、風もないのに揺れる長い黒髪は砂漠の狼の如し。

「御門光…今ここで、決着をつけよう。」

光は何も言わず、こくりと頷いた。
互いのデュエルディスクが展開される。

「デュエル開始ィ!」

グレファーはマイクが変形するほど握り締め、因縁の対決の始まりを叫んだ。

「ジャン・ケン・ポン!」

海日は素早くパーを出す。
少々後出し気味になってはいたが、光の出した手はグーだった。

「勝者は――俺だ!」

海日は勢いよくデッキからカードをドローする。
ディスクから放たれる眩しい閃光。

「俺は悔しかった…永久無敗の伝説を誇っていたこの俺が…たかが一年の小娘ごときに…。
悔しかった…苦しかった…辛かった…。だからこそ俺は三十六段坂高校に行き、1キル流を学んだ。
俺は勝ちたい!貴様に勝ち、再び最強の座を取り戻したい!誰にも負けない、真の最強決闘者の座を!
行くぞ御門!モンスターを守備表示で召喚!魔法カード、太陽の書!」

フィールド全体を太陽の光が照らし、裏守備のモンスターが表向きになる。

サイバーポッド
星3/闇属性/岩石族/攻 900/守 900
リバース:フィールド上のモンスターを全て破壊する。
お互いデッキの一番上からカードを5枚めくり、
その中のレベル4以下のモンスターカードを全て
表側攻撃表示または裏側守備表示でフィールド上に特殊召喚する。
それ以外のカードは全て手札に加える。

フィールド上のモンスターを巻き込んでサイバーポッドは自爆する。
しかし、現在フィールドにはサイバーポッド以外のモンスターは一体も存在しない。
光のフィールドにY−ドラゴン・ヘッドとゲール・ドグラが特殊召喚された。

「更に、王家の神殿を発動!そしてリバースソウル!サイバーポッドをデッキの一番上へ!

リバースソウル
速攻魔法
自分の墓地に存在するリバース効果モンスター1体をデッキの一番上に戻す。

海日は墓地からサイバーポッドを取り出し、デッキの一番上に置いた。

「そして成金ゴブリン!サイバーポッドをドロー!」

光 LP8000→9000

海日の手札に再びサイバーポッドが加わる。
だが、既に通常召喚は行ってしまったため再び場に出すことはできない。


「てゆーかさあ、1キル流裏デッキってただの三原式だよね。」

空気の読めない男、片刃はポテチをばりばりと貪り食いながら、市桐の目の前で言った。
市桐は一瞬びくんと飛び跳ねた。

「な、何を言ってるのかね…?あれは正真正銘、私が構築した『1キル流裏デッキ』だよ…。」

顔は笑っていたが、額に血管を浮き立たせ、今にもこのピザデブをぶん殴ろうとしていた。


「…どうだ御門。1キル流裏デッキの威力は。」

海日はフフンと笑い、手札のサイバーポッドをちらりと見せながら言った。

「はい、海日部長はやっぱり強いです!」

光はまるで動じてないかのように、元気よく答えた。

「皮肉のつもりか…?まあいい。魔法石の採掘、発動!手札を2枚捨て、墓地の太陽の書を手札に加える。」

海日はリロードと強欲な瓶を墓地に送った。

「そして…墓穴の道連れを発動!さあ、手札を見せな。」

墓穴の道連れ
通常魔法
お互いに相手の手札を確認し、それぞれ相手の手札のカードを1枚選択して墓地に捨て、カードを1枚ドローする。

光は手札を裏返し、海日に見せる。

「よし…督戦官コヴィントンを捨てろ。」

光は督戦官コヴィントンを墓地に捨てる。
そして海日も、光に手札を公開した。

「サイバーポッド!」

光は当然のように切り札を落とすことを選んだ。

「そう言うと思っていた…貴様のような初心者ならばな。」

海日はサイバーポッドを墓地に捨てる。
そして互いにカードを1枚ドローした。

「フフ…フハハ…フハハハハハハハァ!切り札を落とせば勝てる!本当にそう思っているというのか?これだから初心者は困る!
浅すぎた墓穴発動!!蘇れサイバーポッド!」

浅すぎた墓穴
通常魔法
自分と相手はそれぞれの墓地からモンスターを1体選択し、
守備表示でフィールド上にセットする。

海日のフィールドにサイバーポッドが、光のフィールドに督戦官コヴィントンが蘇る。

「太陽の書発動…砕け散れザコどもぉ!!!」

サイバーポッド自爆。
光のフィールドの三体のモンスターは一気に消滅する。
そして互いにデッキからカードを5枚めくる。
光の場にはZ−メタル・キャタピラー、海日の場には裏守備で聖なる魔術師が特殊召喚された。

「ククク…カードを1枚セットし、それを発動!硫酸の溜まった落とし穴ァ!聖なる魔術師をリバースし、破壊!効果発動!」

海日は墓地から浅すぎた墓穴を手札に加える。

「浅すぎた墓穴を発動!サイバーポッド復活ゥ!!」

光の場にもY−ドラゴン・ヘッドが蘇る。

「カードを1枚セットし、それを発動!強欲な瓶!
ドローした太陽の書を発動し、サイバー・ポッドをリバース!」

サイバーポッドの自爆によりZ−メタル・キャタピラーとY−ドラゴン・ヘッドが消滅する。
光は処刑人マキュラとなぞの手を攻撃表示で出した。

「八汰烏の骸をセットし、発動!カードを1枚ドロー!浅すぎた墓穴を発動だ!」

光は墓地から督戦官コヴィントンをセットする。
海日が選んだのはもちろん、サイバーポッド。

「(これで太陽の書を発動し、サイバーポッドをリバース。
そして手札抹殺を使えば俺の勝ちだ!
俺の勝ち…遂に俺が御門に勝てる……!)」

海日は無意識のうちにガッツポーズをとっていた。

「魔法カード、太陽の書!サイバーポッドをリバースする!」

サイバーポッドは豪快に大爆発を起こす。
フィールド全体を爆風が覆いつくし、観客達は思わず目を瞑る。
炎と風が吹き荒れ、処刑人マキュラ、なぞの手、督戦官コヴィントンは塵と化した。
光はマシンナーズ・スナイパーを攻撃表示で、海日はニードルワームとメタモルポットを裏側守備表示で特殊召喚した。

「フハハ…フハハハハハハ…これで…俺の勝ちだ!」

海日は高らかに笑い、一枚のカードを天に掲げる。
雨は一層力を増し、見えない天井を突き破るかの如く降り注ぐ。

「手札…抹殺!」

この瞬間――海日厄太郎の勝利が決定する。
市桐は黄ばんだ歯を剥き出しにしてニヤリと笑った。

「おい市桐センコー、まだデュエル終わってないみたいだぜ。」

出日が人差し指でサングラスを上げながら、馬鹿にしたように言った。
さっきまで笑っていたはずの市桐は目と口、更には鼻の穴までをいっぱいに広げ、驚きのあまり髪の毛が逆立っていた。

海日自身も、その手は震えていた。
海日の場の手札抹殺が消滅していく。

御門光に勝利する――自らの夢を、野望を遂に果たせる時が来た…興奮のあまり彼は『あのカード』の存在が目に入っていなかった。
光のピンチを幾多と救ってきた『あのカード』が…。

「処刑人マキュラが墓地に送られたことにより、手札から罠カードを発動することができます…。
私は、マジック・ジャマーを発動。手札を1枚捨て、手札抹殺を無効化します!」

最後の切り札を失い、戦況は完全に逆転した。
だが海日は、かつてのように戦意を失うことはなかった。

「(まだだ…まだ俺の手札には八汰烏の骸だって、強欲な壺だって、無謀な欲張りだってある!
魔法石の採掘をドローできれば…俺は勝てるんだ!)」

海日はカードを1枚セットし、それを発動する。
八汰烏の骸により、1枚ドロー。
強欲な瓶により、1枚ドロー。
更に強欲な瓶を使い、1枚ドロー。
更に八汰烏の骸で、1枚ドロー。
更に強欲な壺で、2枚ドロー。
そして天使の施しで3枚ドローし、2枚捨てる。

「来たッ…今日の俺は引きがいい!魔法石の採掘、発動!手札を2枚捨て、墓地の手札抹殺を手札に加える!」

再び海日の手札に切り札が蘇る。
海日は手札抹殺に手をかけようとしたが、ふとあることに気がつき別のカードに手を伸ばした。

海日の手札は8枚、海日のデッキは2枚。この状況で手札抹殺を使っても引き分けにしかならない。
手札の魔法・罠カードを伏せられるだけ伏せてから使ったとしても結果は同じだ。

だが、海日の手札にはその状況を打開するカードがあった。

「最終戦争、発動!!」

海日は5枚の手札を一気に墓地に押し込む。
既に大量のカードが捨てられた墓地ゾーンは、成仏できない魂が溢れかえるかのようにぎゅうぎゅう詰めだった。

「そうはいきません…!地霊術−「鉄」を発動!」

光はすかさず手札から罠を発動した。
場のマシンナーズ・スナイパーが墓地に送られ、代わりに墓地からネコマネキングが特殊召喚される。

「な…そんなカード…どこで!?」

海日は最終戦争のカードを急いでデュエルディスクから外すが、時既に遅し。
猫の石像は砕け散り、鳴き声と共に化け猫の呪いが海日を襲う。

「さっき、マジック・ジャマーのコストで墓地に捨てました。
これで、海日部長のターンは終了です。」

ネコマネキング
効果モンスター
星1/地属性/獣族/攻0/守0
相手ターンにこのカードが相手の魔法・罠・モンスターの効果によって
墓地に送られた時、相手ターンを終了する。

海日の心境――それはまさに、最終戦争のカードに描かれている人そのものだった。
勝ちたい勝ちたいと言いつつ、結局負ける。
自分は今まで、何のためにデュエルをしてきたのだろうか。

「海日部長…そんなに勝ち負けに拘らずに、もっとデュエルを楽しみましょうよ。
遊戯王はこんなに楽しいのに、それで人を恨んだりしたらせっかくこのゲームを作ってくれたコナミさんが泣いてしまいますよ。」

光はデッキからカードを引く。
手札は18枚。
フィールドは空。
ここから本当のデュエルが始まる――正真正銘、最初のターン。



LP  9000
場   無し
手札  18枚

海日
LP  8000
場   無し
手札  2枚



第二十七章 あのガキどう見ても全く使いこなせてねぇのに「カオス・ソルジャー」を!?開闢の使者は爆発力がある分あつかいやすいし素人から玄人まで幅広く使われている決闘者の基本カード対してカオス・ソルジャーは見た目なんかは開闢の使者とほとんど変わらねぇがあえてデュエルで使えない様に効果を持たせない分ロマンと重量をかなり増加させて勝つより楽しむことを目的とした玄人好みのあつかいにくすぎるカード使いこなせねぇとワイトより弱いただのクズカードみてぇなもんだってのに何であのガキは?

「私のターン…強欲な壺を発動、2枚カードをドローし、カオスの儀式を発動、手札の雷魔神−サンガとX−ヘッド・キャノンを生け贄に捧げます。」

二つの魂が墓地に行き、混沌の渦の中からカオス・ソルジャーが現れる。

「E・HEROバブルマンを召喚!更に黙する死者を発動!墓地のX−ヘッド・キャノンを特殊召喚!更に、バブルイリュージョン!」

バブルイリュージョン
速攻魔法
「E・HERO バブルマン」が自分フィールド上に
表側表示で存在する時のみ発動する事ができる。
このターン、自分は手札から罠カード1枚を発動する事ができる。

バブルマンはタキシードに身を包む。
そして頭に被っていたシルクハットを取り、ステッキでポンと叩いた。
中から煙と共に、一枚の罠カードが現れる。
バブルマンはにこやかなバブルマン・スマイルを見せると、そのカードを人差し指と中指の間に挟み、表に向けた。

ゲットライド!
通常罠
自分の墓地に存在するユニオンモンスター1体を選択し、
自分フィールド上に存在する装備可能なモンスターに装備する。

墓地のY−ドラゴン・ヘッドがX−ヘッド・キャノンとユニオン合体する。

X−ヘッド・キャノン 攻撃力1800→2200

「そして、バブルマンと突然変異を墓地に送り、E・HEROバブルマン・ネオを特殊召喚!バブル・ショットを装備!」

中年オヤジ体系のバブルマンは突然変異してスリムな姿へと生まれ変わる。
噂によると、本来の融合素材は「バブルマン+ヒーローキッズ」でありヒーローキッズと融合したために若返ったのだとか。
バブルマン・ネオは天から舞い降りる必殺の装備を手にし、海日に向けてキラリと構えた。

バブル・ショット
装備魔法
「E・HERO バブルマン」にのみ装備可能。
装備モンスターの攻撃力は800ポイントアップする。
装備モンスターが戦闘で破壊される場合、
代わりにこのカードを破壊し、装備モンスターの
コントローラーへの戦闘ダメージを0にする。

E・HEROバブルマン・ネオ 攻撃力800→1600

「X−ヘッド・キャノンと、Y−ドラゴン・ヘッドをゲームから除外し、XY−ドラゴン・キャノンを召喚!」

ユニオン合体されていたXとYが分離し、再び合体する。

XY−ドラゴン・キャノン
融合・効果モンスター
星6/光属性/機械族/攻2200/守1900
「X−ヘッド・キャノン」+「Y−ドラゴン・ヘッド」
自分フィールド上に存在する上記のカードをゲームから除外した場合のみ、
融合デッキから特殊召喚が可能(「融合」魔法カードは必要としない)。
このカードは墓地からの特殊召喚はできない。手札のカードを1枚捨てる事で、
相手フィールド上に表側表示で存在する魔法または罠カード1枚を破壊する。

「三体のモンスターで…ダイレクトアタック!
ハイパー・デストラクション!ネオバブルショット!カオスブレード!!」

XY−ドラゴン・キャノンとバブルマン・ネオが砲撃し、海日がよろめいた所にカオス・ソルジャーが切りつける。
満タンだった海日のライフは、一瞬にして大きく削られてしまった。

海日 LP8000→5800→4200→1200

砂埃が巻き上がる中から、海日の姿が現れる。
僅かなライフと、2枚の手札、そしてたった2枚のデッキ。
絶望的な状況ながら、海日は希望を失っていなかった。

彼には何よりも信じているものがある。

「私はライフを1000ポイント支払い、ヒエログリフの石版を発動。手札の上限枚数は7枚になります。ターン終了です。」

光の手札は7枚。これでターン終了時に手札を捨てなくても済む。

光 LP9000→8000

海日は物思いにふけるように、たった2枚のデッキを見つめていた。
自らの闘志を剥き出しにはしていたものの、本心では恐怖していた。


「(俺が本当に信じているもの…それは――。)」


既にこのデュエル、自分が敗北することは悟っていた。
だが海日は、そうやってただ負けることが一番怖かった。
全てに見捨てられ、自らの存在を否定されることが。

「俺の…ターン!」

海日はデッキからカードを引く。

「フフ…フフフ…フハハハハハハハハ!!」

高らかな笑い声と共に、海日は引いたカードをデュエルディスクに置く。
そして墓地より、サイバーポッドと聖なる魔術師の二枚のカードを取り出し、空高く放り投げた。

世界に混沌が生まれ、この世の始まりが告げられる。

「カオス・ソルジャー−開闢の使者−…召喚!」

混沌を切り裂き、伝説の戦士が現れる。
その剣から放たれる斬撃は、XY−ドラゴン・キャノンを一撃で切り倒した。

光 LP8000→7200

「こいつは――深い深い、そして暗いデッキの底で…1ターンキルに染まりゆく俺を、ずっと見ていた。
決して俺と目を合わせることなく、ずっと、ずっと…。
だがこいつは、今こうして俺の呼びかけに答えてくれた。
こうして今、この場に現れて俺を助けてくれた。
だからこそ――俺もこいつの思いに答えなければならない!
速攻魔法月の書!カオス・ソルジャーを裏側守備表示に!」

月明かりに照らされ、光のカオス・ソルジャーは裏側守備表示となる。

「行けえ!開闢の使者!魂の一撃…開闢双波斬!!」

カオス・ソルジャーとカオス・ソルジャー−開闢の使者−…。
二人の戦士は今ここに、再びその剣を交える。

裏側表示のカオス・ソルジャーが表向きになり、開闢の使者に先制攻撃を加える。
だがそれは強固な盾によって防がれる。
開闢の使者は反撃のカオスブレードで、一気に叩き切る。

カオス・ソルジャーは砕け散り、その魂は墓地に眠る。

「ターン終了だ…!」

開闢の使者は海日の場に戻り、待機の姿勢をとった。
その開闢の姿を見た光は、どこか嬉しそうだった。

「私のターン…バブルマン・ネオで、開闢の使者を攻撃!ネオバブルショット!」

バブルマン・ネオの持つ巨大な銃から水流が発射され、開闢の使者を弾き飛ばす。

「ちっ…容赦ねえな。」

海日は開闢の使者をモンスターカードゾーンから取り外し、満タンの墓地ではなく自分のポケットにしまった。
バブル・ショットは破壊され、バブルマン・ネオの攻撃力は元に戻る。

「カードを1枚伏せて、ターン終了です。」

光の伏せたカードは「刻の封印」――このカードを発動すれば、もう1ターンデュエルを続けられる。
だがそれを海日が望んでいるのかどうかはわからなかった。

「俺のターンだ!使者蘇生を発動!蘇れ開闢の使者!」

海日はポケットから開闢を取り出すと、フィールドに力強く置いた。
だが、既に海日に勝つ方法は残されていなかった。
いや、一つだけ残っている。
光が伏せされた「刻の封印」を発動することだ。

「なあ御門…俺は――強かったか?」

突然の問い掛け。
光は迷うことなく「はい」と答えた。

「それならよかった…開闢の使者の攻撃――開闢双波斬!」

開闢の剣がバブルマン・ネオを真っ二つにする。
だが、それと同時に開闢の使者までも砕け散ってしまった。

「さあ御門、俺にとどめを刺せ!」

海日は親指を立て、それで自分を指差した。

「私のターン、使者蘇生を発動…カオス・ソルジャーを特殊召喚します!」

墓地より混沌の戦士が蘇る。
既にデュエルの勝者は決していた。

海日 LP1200→0



「ねーねー、1キル流裏デッキって、もしかして開闢入り三原式?」

相変わらず空気の読めない片刃。
市桐は「フレイム・オーガ」の如く顔を真っ赤に煮えたぎらせていた。

「ねーねー、1キル流裏デッキって…。」


市桐の中の何かが切れた。


「海日厄太郎…貴様…。」

市桐は一歩一歩海日の方へと歩み寄る。

「よくもこの俺に恥をかかせてくれたなぁぁぁっ!!!」

市桐は歯を剥き出し、白目を向き、血管を浮き立たせて憤怒した。
海日はそれを完全無視し、そのまま会場を去っていった…。
1キル流裏デッキを持ったまま。

「ん…えーと…勝者、御門光…ってことで、龍星高校の勝利ィィ!!」

グレファーがマイクに向かって叫ぶ。
我々は勝利したのだ。
だが光は、この場から去っていく海日の行方だけを気にしていたのだった…。



第二十八章 開闢太郎の後悔

一回戦第八試合の瀬田学園VS人義高校の試合が終わり、ベスト8進出チームが決定した。


      龍星高校──┐             ┌──武竜学園
            ├─┐         ┌─┤
          ──┘ │         │ └──
              ├─┐     ┌─┤
          ──┐ │ │  優  │ │ ┌──
            ├─┘ │     │ └─┤
      青山高校──┘   │  勝  │   └──戯円寺高校
                ├──┴──┤
          ──┐   │     │   ┌──海丸高校
            ├─┐ │     │ ┌─┤
  不敗ヶ咲天神高校──┘ │ │     │ │ └──
              ├─┘     └─┤
          ──┐ │         │ ┌──瀬田学園
            ├─┘         └─┤
      飲茶高校──┘             └──



優勝候補の武竜学園は当然の如く勝利。
一方で、初戦敗退候補の飲茶高校はまさかの大逆転。
たとえヤムチャでもやる時はやるということを見せつけた。

そんな中、特別目を引いていたのは龍星高校の二回戦の相手、青山高校である。
一年生の王輝慎二(おうき しんじ)が聖ユウティカル学院の選手五人全員を連続で倒し、圧倒的な力の差を見せつけた。


そして迎える二回戦――。


「さあさあ始まりました第二回戦!龍星高校VS青山高校!
俺のオベリスクも興奮してギンギンうなってるぜ!」

「実況のグレファーさん、下ネタはほどほどにしてくださいとさっき実行委員会から叱られませんでしたっけ?」

相変わらず実況・解説コンビは漫才をやっているようだ。
だがヒーロー仮面自身も、亮子のパンチラに強く反応していたとこを見ると、本質的にはグレファーとさほど変わらないように思える。

「まず青山高校の選手はァー!一回戦で見事な五人抜きを見せた天才!王輝慎二ー!」

青山高校の側から立ち上がったのは、銀髪で黒い炎のような目をした美少年。
ミステリアスな雰囲気が漂っているが、龍星の面々はそれよりもリアルで銀髪の野郎を見たことの方が気になっていた。
どうせミステリアスなのもキャラ作ってるんだろ…とか思っていたりもした。

「対する龍星高校はァー!あの男が遂に帰ってきた!海日厄太郎!!」

龍星側に現れたのは、初期のヤムチャみたいな髪をバッサリ切り落とした海日部長。
意味ありげに去ったと思ったら髪を切りにいっただけという何ともマヌケな。

「おいリアル銀髪野郎!この試合、俺が勝たせてもらう。
おめーの泣き叫ぶ顔が目に浮かぶぜ!俺のターン!」

海日はカッコよくカードを引き、王輝に向かって言い放つ。
妙にテンションの高い海日と違い、王輝はまるでやる気がないようだった。
まあ、これもキャラ作りの一部だとは思うのだけど。

「あの…まだ試合開始って言ってないんだけど…。」

しかも、グレファーやその他会場の人々も完全に冷め切っていた。

「なあ、そういや御門はどこ行った?」

「え?知らないけど…。」

中太郎と武は海日の試合など完全に眼中になく、他事を話していた。
そういえばさっきから光の姿が見当たらない。




「あの……一体どちら様でしょうか…。」

スタジアムの裏、光は怪しい男に呼び出されてここに来ていた。
よい子のみんなは怪しい男に呼ばれてもついていかないように。
特に光みたいな女の子は気をつけて。

「俺の名は職梨新斗(しょくなし にいと)。
カオス・ソルジャーのカードを渡してもらおう!」

光を呼んだのは、ボウズ頭でアキバ系っぽい風貌の男。
こういう人には特についていかないように。

「えっと…ニートさんが何か用でしょうか…。」

「ニートじゃないっ!こう見えてもな、俺は結構…つーかかなり有名な会社に勤めてるんだぞ!」

光はキョトンとしていた。
しばらくして、ムキになっていた職梨は我に返った。

「…いや、それは別としてだな…。
俺はお前の持つカオス・ソルジャーのカードが欲しい。
だから俺とデュエルしろ!もし俺が勝ったらカオス・ソルジャーは俺がいただく!」

光はどうしたらいいのかわからなかった。
以前にも変な人からデュエルを挑まれたことはあったが、そんなことがあるのは原作の世界だけだと思っていた。

「さあ、俺とデュエルするんだな。」

職梨はどこから持ち出したのかデュエルディスクを光に投げつけた。
光はしぶしぶそのデュエルディスクを装着する。

「デュエル!」




「ひでぶ!」

海日 LP0

その頃、海日は王輝に瞬殺されていた。

「…カッコつけて出てくるんじゃなかった…。」

海日は本気で後悔した。

「海日さんだせぇ。次は俺だな。」

べそをかきながら席に戻る海日を、日比がからかう。

「王輝っつったなー、俺のデッキがお前を完全にぶっ潰すぜ!」

そういえば日比と田村はどっちがロックデッキでどっちがバーンデッキだったっけ?





「あべし!」

職梨 LP0

一方、職梨は光に瞬殺されていた。

「ちくしょう!覚えてろよ!」

職梨は大人気なくアカンベーをし、全速力で走り去っていった。

「結局何だったんでしょうか…あの人…。」

光は会場に戻ろうとするが、ふと地面に何かが落ちているのに気がついた。
さっきのニートが落とした物だと思い、光はそれを拾った。

拾ったのは、一枚の名刺だった。
確かに彼はニートではなかった。
それどころか、本当に有名な会社に勤めていたのだ。

遊戯王OCGをやっている人ならお馴染みの――
株式会社コナミデジタルエンタテインメント

光がその名刺を拾った瞬間、空を三匹のカラスが横切った。

何かを感じる…とても驚異的な力…。

何故コナミがカオス・ソルジャーを狙っているのか。
そしてカオス・ソルジャーには一体何が隠されているのか――。

だが、今はそんなことを考えている暇はない。
光は急いで会場に戻っていった…。



「何だお前達、何のために出てきたんだ?」

会場では海日、日比に続いて田村までもが王輝に瞬殺されていた。
4人目として王輝に挑むのは、副部長の天野。
日比田村と同様、存在自体を忘れられそうなのでここで登場というわけだ。

その姿はまるで天使。
スタジアムに咲く一輪の花。
一歩歩くだけで漂う気品は、おバカ揃いの龍星遊戯部には明らかに場違いな程だった。

今まで余裕だった王輝の面構えが変わる。
一方で実況席のグレファーは今にも飛びかかろうとしており、ヒーロー仮面に押さえつけられていた。

「あ、この試合棄権します。」

が、天野は一体何を思ったのかそう一言だけ言って、すぐに自分の席に戻った。

「うおおおおおお!オッパイ揉ませやがれェーーー!!!」

その瞬間、グレファーがヒーロー仮面を空高く吹き飛ばし、天野に向かって突進する。
中太郎が「危ない!」と叫ぶが、天野は一瞬の間合いでグレファーにビンタを繰り出す。
弾き返されたグレファーは回転しながら飛んでいく。

「あの、遅れてすいません!」

と、そこに扉を開けて光が現れる。

「グレファーローリングアトゥアーック!」

そしてそのまま回転するグレファーと激突、場外に吹っ飛ばされた。

「あ、ちっこいのもこれはこれで…(はぁと」

グレファーは嬉しそうだった。



「助けなくていいのか?あれ。
このままじゃ掲載できないことになりそうだが…。」

木之上が興味なさそうに言った。
彼にとっては光の人権とか完全無視で、掲載できるかできないかが問題なのだろう。


※その後、光ちゃんはきちんと助けられました。
いろいろ触られただけで、それ以上の変なことはされていないので気にしないでくださいね☆


「えー、会場の皆様と原作HPをご覧になっている皆様には大変なご迷惑をおかけしまして、本当に申し訳ありませんでした。心からお詫び申し上げます。」

グレファーによって天井のバリアに叩きつけられ、何か電流とか走ってビリビリ〜ってなって衣装がボロボロになってグレファーを相当恨んでるような感じでヒーロー仮面が言った。
涙目になりながらも、この変態戦士をグロー・モスの如く集団リンチしてやりたい気分を必死で押さていた。

ちなみに、グレファーは退場。スタッフからお説教を受けている。

「青山高校は、絶好調の4人抜き、王輝慎二選手!
対する龍星高校は、一年生の神沢武選手だ!」

「えっと、ボクも棄権で。」

武までもが、あっさりと負けを認めた。
二人続けて棄権に、会場全体がキョトンとしていた。
そんな中、天野は一人クスッと笑っていた…。



こうして、二回戦敗退というまさかの結果で彼らの大会は結末を迎えた――。
そして光は、新たなる戦いの予感とかどうでもよくなるくらい最悪の思い出を手に入れた…。



第二十九章 そういえば9月23日に消え創は掲載一周年を迎えていた しかし話が全く進んでいないとはどういうことか …ってなわけで、今回やっと話に動きがあるっぽいです

「それでは表彰します。優勝――青山高校!」

今までずっと巨大テレビからしか顔を見せていなかった烏丸が、初めて会場に姿を現す。
その姿は真っ黒なスーツに身を包み、腕には何故かデュエルディスクを付けていた。
デュエルディスクには、モンスターカードゾーンに二枚のカード、魔法・罠ゾーンに一枚のカードが置かれているようだが、龍星高校の列からでは何のカードだか識別することはできなかった。

青山高校は不敗ヶ咲天神高校を準決勝で、優勝候補の武竜学園を決勝で破り、この大会に優勝した。
どちらの試合も王輝一人で全員を撃破し、圧倒的な力の差を見せ付けることとなった。
他の四人の選手は王輝に文句一つ言わず、この結果に満足しているようだった。

「では優勝者にはこちらのカードを…。」

烏丸はポケットから一枚のカードを取り出し、王輝にすっと手渡す。
一瞬、白い閃光が光達の目を遮った。
雷鳴が鳴り響き、雨は更に威力を増す。


何か、不思議な力を感じる――この会場は何かがおかしい。
コナミ社員を自称する、謎の主催者。
突然現れた、見えない天井。
カードから出てきたような、ダイ・グレファー。
コナミの社員でありながら、カオス・ソルジャーを狙う男。

そういえばこの大会のプロモカードは一体何なのか。
あれを見る限りでは王輝一人がたった一枚のカードを貰っているみたいだけど、他の青山の選手や、自分達他の参加者は貰えないのか。
そもそも、この大会にプロモカードなんてあったのか。
それ以前に、学校対抗の遊戯王OCG大会なんて原作やアニメの世界じゃあるまいし、ありえないのではないか。
そして遊戯王カードを扱った部活動はそんなに多くの学校にあるのだろうか。


さっきから激しい違和感が光を襲う。
この違和感は会場に入った時からあった。
そしてそれは次第に力を増していき、王輝がプロモカードを貰った瞬間に最高潮に達した。

他の皆は気付いていないのだろうか。
この大会に絡む、よくわからない不思議な力に。

「光殿…どうしたのでござるか?」

雷に肩を叩かれ、光はビクンと飛び跳ねた。
光の体は震えていた。

「光殿も気がついていたのでござるか。」

雷と、そして武がこちらを見ていた。
どうやら、この違和感が分かるのは自分達三人だけらしい。

「ではこれにより、閉会式を終わります。」

烏丸はそう言うと、デュエルディスクに置かれたモンスターカードのうち片方をディスクから外した。
その瞬間、まるで最初からそこには誰もいなかったかのように、烏丸の姿が消えた。
それと同時に、会場全体を包んでいた謎の感覚も完全に消滅した。

光の額に、一粒の水滴がぴちょんと落ちる。
気がつけば、さっきまで矢のように降っていた雨も、すっかり止んで空には虹が出ていた。
見えない天井は烏丸が消えると共に無くなったようだ。
さっきの水滴は天井が消えて、落ちてきたものだろう。

「おさまったみたいだね…。」

武がぼそっとつぶやいた。

「あの烏丸という男――何者でござるか?」

「…わからない。でも、何だかすごく恐ろしい力を感じるよ。」


「あの、雷先輩、武くん…実は私…あの人と似た感じの人と会ったことあるよ…。」

光がそっと手を上げて言う。

「一人は、ちょっと前に変なカードショップで闘った、怪しい男の人。武くんも知ってるでしょ?
もう一人は、二回戦のちょっと前…コナミの社員のニートさん。
他にも何人かそれらしき人には会ったことがあるんだけど…やっぱりあの烏丸って人が一番強く感じる。」

「なるほどのう。それにしても、拙者と武殿と光殿の三人だけしかこの力を感じないとは…。」

空を見上げ、雷は考え込む。

「おい、お前ら三人で何話してんだ?」

困った顔で中太郎が光達の方を見ていた。
気がつけば、会場に残っていたのは龍星の面々だけだった。

「おめーら早く来ないと置いてくぞコラ。」

相変わらず偉そうに海日が言う。
そういえばこの偉そうな口調を聞くのも久しぶりになる。
ついさっきまで36(ryの生徒だったくせに。

「さて、拙者らも帰るでござる。」



無駄に長かった上にグダグダな大会も終わりを告げ、決闘者達はそれぞれのいるべき場所へ戻る。

そして王輝は――。


「烏丸様、こちらのカードは…?」

とあるビルの中。
烏丸と王輝、そしてもう一人の男が、会議室のような部屋に集まっていた。
王輝は大会で貰ったプロモカードを持っているようだ。

「今から使い方を説明しよう…。
では実験台になってもらおうか、職梨新斗。」

もう一人の男――職梨新斗は椅子に縛り付けられ、この世のものとは思えないくらいに顔を真っ白にし、ガタガタ震えていた。

「王輝君、まずはそのカードをフィールドカードゾーンに置くんだ。そしてモンスターを召喚…。」

王輝は烏丸に言われた通りに、プロモカードをフィールドカードゾーンに、それとは別にモンスターカードをモンスターカードゾーンに置いた。

その瞬間、デュエルディスクにスパークが走る。

「こ…これは!」

デュエル中でもないのに、王輝の目の前にはソリッド・ビジョンが映し出された。
それも、ただのソリッド・ビジョンではない。

「ふう…やっと出てこられたよ。で、この男をぶっ殺せばいいんだな。」

ソリッド・ビジョンはそう言うと、剣を抜き職梨の首を切り落とした。

「死体の処理は、こいつにでも任せておけ。」

烏丸は王輝に「屍を貪る竜」のカードを投げた。
王輝は一瞬のことに動揺しながらも、そのカードをディスクに置く。
屍を貪る竜は召喚されるや否や、早速職梨の死体に喰らいついた。
そしてあっという間に、血の一滴までも飲み干してしまった。
部屋は綺麗さっぱり、殺人の証拠は完全に隠滅された。

「そんじゃまあ、俺はやっと自由になれたわけで…ちょっと行きたいとこあるんで、そんじゃ。」

王輝の首を切ったソリッド・ビジョンは屍を貪る竜が死体を食べ終わるのを見届けると、窓を開けてこの部屋から出て行こうとした。

「待て!」

王輝はデュエルディスクからカードを外す。
窓に足をかけようとしていたソリッド・ビジョンは何も無かったようにすっと消えた。

「王輝君、彼を自由にさせてあげなよ。
もしかしたら何か役にたってくれるかもしれないよ。」

王輝は烏丸に言われ、仕方が無くそのカードを再びデュエルディスクに置いた。

「ふっかーつ!そんじゃ烏丸様!俺行ってきますんで!」

ソリッド・ビジョンは窓を拳で割り、一気に飛び降りた。
王輝は風の吹き抜ける窓の穴を見て、言葉を失っていた。

「……あの、烏丸様…ほっといていいんですか?アレ…。さっきの大会でも問題起こしたばっかなのに…。」

「別にいいんだよ。彼も、あれはあれで結構やる奴だから。」

窓の穴を親指で指差して言う王輝に対し、烏丸は無問題のように答えた。




「フッフッフッフッフ…大会の時は沢山のギャラリーの前だったからそうヤバいことはできなかったが…
今回は二人っきりだ!やれるとこまでやってやるぞ!ウオオオオオオ!!!」

自らの魂のエネルギーを抱えて、戦士ダイ・グレファーは疾走する。
目的地は唯一つ。
御門光の家、その場所まで!



第三十章 今年最高のアニメは間違いなく「ワンワンセレプー それゆけ!徹之進」 次点でハルヒか妖逆門

スタジアムから家に帰る途中、光、中太郎、武の三人は公園で休んでいた。
さっきまでの雨が嘘のように、空は快晴。
水溜りに太陽が反射し、小鳥のさえずりが聞こえる。

「今日の大会は本当に残念だったなー。」

「そうだよね、武くんなら勝てたかもしれないのに。」

「そんなことないよ…相手はかなり強そうだったし…。」

爽やかな風が流れる公園で、暢気に今日の出来事を話す一年生三人組。
しかし彼らはこの公園に不穏な影が近づいていることなど知る由もなかった。

光の後ろに近づく、怪しい男。
体は小太りで、丸顔に丸い眼鏡。
背中にはリュックサックを背負い、チェックのシャツをピチピチのズボンの中に入れている。
顔はニキビだらけで、常にハァハァ息を切らせた見るからに危険そうな男だった。

男は中太郎と武がいるにも関わらず、何も知らない光に手を伸ばした。
だが、彼の毛だらけの腕は光の体を逸れ、その横のデッキを掴んだ。

「フヒヒ…カオス・ソルジャーは俺の物だァー!」

男はそう言って走り出す。

「あっ!てめぇ待ちやがれ!」

やっと気がついた中太郎がばっと飛び出し、男を押さえつけた。
あっという間に捕まえられた男は、デッキを投げ捨て、中太郎を必死で振り解くと一目散に逃げ出していった。

「一体何がやりたかったんだ…あの奇妙な生物。」

中太郎はデッキを拾うと、それを光に渡した。

「カードは大丈夫みたいだぞ。
…あの生物に触られた以外は。」

「う、うん…。」

光は少し遠慮がちにデッキを受け取った。
今日は大会の結果といいグレファーといい、不幸な出来事が多い。





さっきの奇妙な生物…本名、奇喪井 汚太郎(きもい おたろう)は公園のすぐ近くの建物の裏にやってきた。
そこにはあのダイ・グレファーが煙草を口に咥え、ヤンキー座りで待っていた。

「フヒヒ…グレファーさん…任務完了しました…。それでは例の物を…。」

奇喪井はただでさえ気持ち悪い顔をにやつかせ、更に気持ち悪くした。

「まあ、そう焦るな。今くれてやる。」

グレファーはポケットから一枚のカードを取り出すと、それを奇喪井に渡した。

「フヒヒ…これでボクのコレクションの5000枚目に…!?」

奇喪井は最初は笑っていたが、そのカードを見た瞬間に笑いは止まった。

「グレファーさん!これ『吹き荒れるウィン』!
ボクの愛するウィンたんじゃない!」

「うるせー!!」

グレファーは奇喪井の顔に消臭スプレーを吹きかけ、そのまま走り去った。
奇喪井は「吹き荒れるウィン」を渡されたショックと、消臭スプレーを顔に浴びたことによりその場で気を失ってしまった。



「全く…最近は物騒なことが多すぎるぜ!
だいたい御門も本物のカオス・ソルジャーを普通に持ち歩いていること自体が問題だしよ…。」

「ごめんなさい…。」

光はしょんぼりして目を落とした。


「ハッハッハー!お嬢さん、そんなにガッカリすることはないさ!
貴方にはこのダイ・グレファーがついているのだからな!」

どこからともなく聞こえる、今一番聞きたくない声。
何時の間にやら公園の滑り台の上に、数多くの問題を起こしてきた変態が腕を組み直立していた。

「ダイ・グレファー!てめえ何しにきやがった!」

「当然、デュエルだ!」

グレファーはデュエルディスクを取り出すと、それを光に投げつけた。
そして滑り台を滑り降りると、デュエルディスクを装着し、準備万端であることを示した。

「…わかりました。」

光は地面に落ちたデュエルディスクを拾うと、それにデッキをセットした。

「では俺から先攻といこうか…ドロー!
モンスターを守備表示で召喚、更にカードを2枚セットし…闇の指名者を発動!」

闇の指名者
通常魔法
モンスターカード名を1つ宣言する。
宣言したカードが相手のデッキにある場合、そのカード1枚を相手の手札に加える。

「俺の宣言するカードは…戦士ダイ・グレファー!」

「!?」

当然、そんなカードは光のデッキには入っていない。
しかし光はルール上自分のデッキを確認してみた。

そして、そこから一枚のカードを選び出し、手札に加えた。

「御門お前…グレファーなんか入れてたのかよ!」

「こんなカード入れた覚えないよ!」

「それは当然だ。さっきの珍妙な生物に命令させてお前のデッキに入れさせたのだからな。」

光は一瞬「戦士ダイ・グレファー」のカードをビリビリに引き裂きたくなったが、何とか我慢した。

「では、ターンエンドだ。」

「私のターン、ドロー。」

手札には上級モンスターや今の状況では使えない魔法や罠ばかりが揃っていた。
いわゆる、手札事故である。
光は今手札で唯一通常召喚できるモンスターをディスクに置いた。

「戦士ダイ・グレファーを攻撃表示で召喚します…。」

光の場に、ソリッド・ビジョンのグレファーが現れた。
今自分と対戦しているグレファーと瓜二つである。

「戦士ダイ・グレファーで守備モンスターを攻撃!」

光はグレファーの裏守備モンスターが「荒野の女戦士」でないことを祈った。
1ターン目にリクルーター裏守備はデュエリストの基本戦術。
しかもあえて自分の手札に「戦士ダイ・グレファー」を加えさせたのだから、更にその可能性は高い。

「ハァーッ!」

GXとかでモンスターの攻撃時によく言われるような掛け声で、光のグレファーは裏守備モンスターを切った。
グレファーの裏守備モンスターは、何とこれもグレファーだった。

「魔法カード、暗黒の扉を発動し、ターン終了です。」

「では俺のターンだ…ブレードフライ召喚!」

ブレードフライ
効果モンスター
星2/風属性/昆虫族/攻 600/守 700
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
全ての風属性モンスターの攻撃力は500ポイントアップする。
地属性モンスターの攻撃力は400ポイントダウンする。

グレファーが召喚したのは、まさかの昆虫族モンスター。
明らかに彼の変態デッキのコンセプトとは合っていない。

「ハハハハハハハハ!行けブレードフライ!風属性の底力を見せてやれ!突風のいたずら!」

ブレードフライは前足の刃から突風を起こす。
…しかし、ソリッド・ビジョンなのでスカートはめくれない。残念。

「く…おのれ…だが更にリバースカードオープン!正統なる血統!蘇れ我が分身よ!」

正統なる血統
永続罠
自分の墓地から通常モンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターがフィールド上に存在しなくなった時、このカードを破壊する。

今度はデュエルをしているグレファー自身がフィールドに立つ。
だがその瞬間、竜巻が起こりグレファーの体力を奪った。

戦士ダイ・グレファー 攻撃力1700→1300

「ぐ…だがこれがブレードフライの特殊効果…突風のいたずらだ!
ついでに貴様のグレファーの攻撃力もダウンするぞ!」

戦士ダイ・グレファー 攻撃力1700→1300

「そして手札より魔法カード、地獄の暴走召喚!」

地獄の暴走召喚
速攻魔法
相手フィールド上に表側表示モンスターが存在し、
自分フィールド上に攻撃力1500以下のモンスター1体の特殊召喚に成功した時に発動する事ができる。
その特殊召喚したモンスターと同名カードを自分の手札・デッキ・墓地から全て攻撃表示で特殊召喚する。
相手は相手フィールド上のモンスター1体を選択し、
そのモンスターと同名カードを相手自身の手札・デッキ・墓地から全て特殊召喚する。

「行くぞーっ!」

グレファーはデッキから二体のグレファーを選択し、特殊召喚する。
光もまさかと思いデッキを確認すると…やはり二枚のグレファーがあった。


あっという間に、フィールド上に六体の戦士ダイ・グレファーが揃ってしまった。
六人全員が全く同じ顔、同じ声、同じ姿をしており、見分け方といえばデュエルディスクをつけているのが対戦相手のグレファー…ということくらいだった。

「フフ…これこそが我が必殺奥義『ドキッ!グレファーだらけのデュエル大会 ポロリもあるよ』だぁーっ!!」

六人のグレファーは全員が同時に、高らかに声を上げた。
…近所迷惑なのでやめてください。

「次はこれだ!魔法カード、強奪!これで貴様のグレファー一体をいただこう。」

グレファーの場のグレファーが光の場のグレファー一体に掴みかかり、グレファーの場に引き寄せた。
これは何とも暑苦しい光景だグレファー。

「魔法カード、エネミーコントローラー!ブレードフライを生け贄に、もう一体グレファーをいただく!」

エネミーコントローラー
速攻魔法
次の効果から1つを選択して発動する。
●相手フィールド上の表側表示モンスター1体の表示形式を変更する。
●自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる。
相手フィールド上の表側表示モンスター1体を選択する。
発動ターンのエンドフェイズまで、選択したカードのコントロールを得る。

ブレードフライが墓地に送られる代わりにグレファーの場に巨大なコントローラーが出現、光のグレファーの頭に装着された。

「コマンド入力!ABBABA上下上下!」

二体目のグレファーまでもがグレファーの物となる。
これで光の場のグレファーは一体のみ。
グレファーの場には五体のグレファーが揃っていた。
ブレードフライが墓地に送られたことにより、グレファー達も元気一杯、攻撃力は元通りである。

「あの…たとえ数を増やしても暗黒の扉の効果で1ターンに攻撃できるモンスターは一体のみです。」

光は自分の魔法・罠ゾーンに置かれたカードを指差して言った。

「まあそう焦るな。リバースカードオープン!竜の血族!そして融合!」

竜の血族
通常罠
自分フィールド上の全てのモンスターは、エンドフェイズ時までドラゴン族になる。

野獣…もとい、ドラゴンと化したグレファー達は融合し、一つの巨大な竜となる。

「見よ…これがF・G・D(ファイブ・グレファー・ドラゴン)だ!」

F・G・D
融合・効果モンスター
星12/闇属性/ドラゴン族/攻5000/守5000
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。
ドラゴン族モンスター5体を融合素材として融合召喚する。
このカードは地・水・炎・風・闇属性のモンスターからは戦闘ダメージを受けない。

平和な公園に突然として現れたのは、五つの首を持つ巨竜。
ただし、五つの顔は全てダイ・グレファーの顔。
左腕にはデュエルディスクを着けている。
ドラゴンを操る戦士がドラゴンになってどうしようと言うのだろうか。
というか近所の人が驚きます。やめてください。

「喰らえ!アルティメット・グレファー・バースト!」

かっこいいのかかっこ悪いのかよくわからない攻撃名と共に、五つの頭ではなく股間から白濁色の波動が放たれる。
…ただし、この攻撃を喰らうのは光の場のグレファーである。

光 LP8000→4700

「見たかぁぁぁぁ!!これが俺の真の力だぁぁぁぁぁ!!!!!」


LP 4700
場  暗黒の扉
手札 5枚

グレファー
LP 8000
場  F・G・D(ファイブ・グレファー・ドラゴン)
手札 0枚



第三十一章 実を言うと、究極竜骸骨はとんでもないマイナーアニメ好きである。お気に入りの作品といえば「ワンワンセレプーそれゆけ!徹之進」「F−ZEROファルコン伝説」「コロッケ!」「B−伝説バトルビーダマン」「妖逆門」「時空探偵ゲンシクン」「コレクターユイ」「電脳冒険記ウェブダイバー」「流星のロックマン」「マーメイドメロディーぴちぴちピッチ」「満月をさがして」「新星輝デュエル・マスターズフラッシュ」「冒険遊記プラスターワールド」その他もろもろ…。ここを見ている人達が知ってる作品とかあるのだろうか…。

平和な公園に突如出現した五つ首の変態竜。
その驚異的過ぎるパワーに光のライフは一気に削られてしまった。

「私の…ターン、ドロー。
強欲な壺を発動、2枚ドローし…カオスの儀式を発動。
手札の水魔神−スーガとラーバモスを生け贄に、カオス・ソルジャーを降臨!
更にゲール・ドグラを召喚し、効果発動!融合デッキの青眼の究極竜を墓地に送ります。」

光 LP4700→1700

「竜の鏡を発動!カオス・ソルジャーと青眼の究極竜を融合し、究極竜騎士を召喚!」

カオス・ソルジャーと青眼の究極竜は鏡の中に飛び込むが、ただ乗っかっただけである。
消え行く最後のやさしいハピフラ探偵部でも登場した必殺コンボだ。

「究極竜騎士でF・G・Dを攻撃…ギャラクシー・クラッシャー!」

遊戯王OCGでも最大級の攻撃力を持つモンスター同士の激しいぶつかり合い。
どこにでもあるただの公園は閃光に包まれ、烈風が吹き荒れる。
二体の攻撃力は互角。先程まで公園全体を支配していた二体の巨大モンスターは一瞬にして消滅する。
…本当、マジで近所迷惑だから、やめてくれる?お願いだから。

「カードを1枚伏せて…ターン終了です。」

究極の切り札を失ったグレファーは元の姿に戻る。
自分自身がモンスターとして戦っていることもあってか、彼の体は傷だらけだった。

「あの…大丈夫ですか?」

「フン、心配はいらないさ。」

キョトンとした顔で見つめる光に対し、グレファーはそっけない態度で返した。
何故だか妙に表情は真剣だった。

「俺のターンだ、ドロー。
E・エッチエロ バブルマンを特殊召喚!その効果によりデッキから2枚ドロー!」

ブレードフライやF・G・Dに続き、またもや変態デッキのコンセプトに合わないカード。
ヒーロー仮面とのデュエルで使用したヒーローデッキの名残だろうか。

「天使の施しを発動、3枚ドローし、2枚捨てよう。
更に貪欲な壺を発動、グレファー3体と天使の施しで捨てたスピリット・ドラゴンと荒野の女戦士をデッキに戻し、2枚ドロー!
そして更に魔法カード、バブルイリュージョン!この効果によりこのターン、手札から罠カード1枚を発動する事ができる。」

このどこかで見たことのある戦術…完全に光のパクりである。
グレファーは光の戦術を研究し、完璧にパクることに成功したのだ。

「さて…魔法カード天よりの宝札!これによって場のバブルマンと手札のネクロフェイスを除外させてもらおう!」

ネクロフェイス
効果モンスター
星4/闇属性/アンデット族/攻1200/守1800
このカードが召喚に成功した時、
ゲームから除外されているカード全てをデッキに戻してシャッフルする。
このカードの攻撃力はこの効果でデッキに戻したカードの枚数×100ポイントアップする。
このカードがゲームから除外された時、
お互いはデッキの上からカードを5枚ゲームから除外する。

ネクロフェイスがゲームから除外されたことにより、お互いのデッキから5枚のカードが除外される。
ふと光がグレファーの除外したカードを見ると、その中に「サイバー・ドラゴン」のカードが。
さっきからグレファーはブレードフライといいバブルマンといいネクロフェイスといい、自分のデッキコンセプトと合わないカードを多く使っている。
単純に強いカードだから入れている…とも考えられないこともないのだが…。

「モンスターを守備表示で召喚!更に魔法カード太陽の書!メタモルポットをリバースする!」

手札は二人とも0枚、手札を捨てずに5枚ドローする。
改めて言っておくが、この大量ドローを行っているのはグレファーである。
無我の境地の如く見事にパクっているのである。

「更に強欲な壺で2枚ドロー!
モンスター回収でメタモルポットと自分の手札をデッキに戻し、その枚数分…5枚のカードをドローする!」

モンスター回収
速攻魔法
自分フィールド上の持ち主が自分であるモンスター1体と
自分の手札をデッキと合わせてシャッフルした後、
自分は元の手札枚数だけデッキからカードをドローする。
(持ち主が自分でないカードが手札にある場合、
このカードは発動できない)

さっきからグレファーは自分のデッキに関係ないカードを使ったり、他人の戦術をパクったりとやっていることが意味不明だ。
この男に一体何が起こったのか。

「グレファーさん、貴方は何のためにこのデュエルをしにきたのですか?
単なるセクハラのため…ではないですよね?」

「ああそうさ。今の俺はただセクハラをするために来たのではない。
俺は…夢を叶えるために闘っているのだ!」

何か唐突に夢とか何とか言われ、光は言葉が出なかった。
しかもその夢というのもどうせ不純かつ下品極まりないものであることは安易に予想がついた。

「御門光…お前の持つカオス・ソルジャーを手に入れれば俺の夢が叶うのだ!
このデッキは俺にとっての『勝つためのデッキ・ガチガチデッキ』だーっ!魔法カード、次元融合発動ー!
帰還せよ!戦士ダイ・グレファー!荒野の女戦士!異次元の女戦士!コマンド・ナイト!サイバー・ドラゴン!」

グレファー LP8000→6000

グレファーはネクロフェイスの効果によって除外されたモンスター5体を場に帰還させる。
その内の一体はグレファー本人だ。

光も竜の鏡で除外されたカオス・ソルジャーと、ネクロフェイスによって除外されたモンスター3体…モリンフェン、灼熱ゾンビ、カードを狩る死神を帰還させ、元から場にあったゲール・ドグラを合わせて5体のモンスターを場に揃える。

「たとえそちらが5体のモンスターを揃えても、暗黒の扉がある限り1体のモンスターしか攻撃をすることはできません…。」

「そんなことは分かっているー!バブルイリュージョンの効果により、手札より罠カード、DNA改造手術発動ー!宣言する種族は…機械族!
そして更に…パワー・ボンド発動だぁーーーっ!!!!」

グレファーはサイバー・ドラゴンを利用し、フィールド上の女戦士達と融合していく。
そして生まれた姿は異形の機械竜。

「これぞ究極の…グレファック・オーバー・ドラゴン!」

キメラテック・オーバー・ドラゴン
融合・効果モンスター 
星9/闇属性/機械族/攻 ?/守 ?
「サイバー・ドラゴン」+機械族モンスター1体以上
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードの融合召喚に成功した時、
このカード以外の自分フィールド上のカードを全て墓地へ送る。
このカードの元々の攻撃力と守備力は、
融合素材にしたモンスターの数×800ポイントの数値になる。
このカードは融合素材にしたモンスターの数だけ
相手モンスターを攻撃する事ができる。

「融合素材にしたモンスターの数は5体!よって攻撃力は4000!
だがパワー・ボンドの効果によって攻撃力は2倍…。
更に手札よりリミッター解除を発動!攻撃力4倍だ!」

グレファック・オーバー・ドラゴン 攻撃力4000→8000→16000

「俺の夢は人間になること!
カードゲームのキャラクターとして生まれ、中途半端に命を吹き込まれ…
狭いカードに閉じ込められて召喚されなければ自由は得られない!
俺はアニメの精霊のような生易しい物ではない!
実験として作り出された愚かなソリッド・ビジョン!
あの方は言ってくれた、カオス・ソルジャーのカードを手に入れれば人間にしてくれると。
だからこそ俺は何としてでも勝たなければならない…。
喰らえぇぇぇ!グレファック・レザルト・バーストォォォ――ゴルエンダァァ!!!!!」

5体のモンスター目掛けて放たれる破滅の砲撃。辺りは黒い炎に包まれる。

「和睦の使者…発動です。」

和睦の使者
通常罠
このカードを発動したターン、相手モンスターから受ける全ての戦闘ダメージを0にする。
このターン自分モンスターは戦闘によっては破壊されない。

使者が和睦を説き、五つの攻撃はモンスターを反れる。
最大限の力を発揮したグレファック・オーバー・ドラゴンの体に亀裂が走る。

「カードを1枚セットし…ターン終了だ。」

目が潰れる程の閃光と共に、グレファック・オーバー・ドラゴンは砕け散る。
それと同時にダイ・グレファー自身にも強烈なダメージが入る。

グレファー LP6000→2000

再び元の姿に戻ったグレファーは、全身を血で紅く染め目は虚ろだった。

「あ、あの…私のターンでよろしいでしょうか…。」

グレファーは無言だった。



――人間とはよいものだ。
何かに拘束されることなく、自由に生きることができる。
大好きな女性を襲うことだってやり放題だ。
これは俺がそう思っているだけで、現実は違うのかもしれない。
だがこれがただの妄想だったとしても、俺の人間への思いは変わらない――



「リバースカードオープン、運命の分かれ道。」

運命の分かれ道
通常罠
お互いのプレイヤーはそれぞれコイントスを1回行い、
表が出た場合は2000ライフポイント回復し、
裏が出た場合は2000ポイントダメージを受ける。


――そう、これは人間になれるかという、運命の分かれ道――


「行くぞ!このコイントスに全てを賭ける!!」

グレファーはソリッド・ビジョンのコインをその手に掴み、空高く放り投げる。
コインは宙を舞い、やがてグレファーの手の中に落ちた。
一方で、光の方はソリッド・ビジョンのコインが自動的に表裏を決めてくれる。

グレファーのコインは、表。
光のコインは、裏。

「勝った!これで…!」

グレファー LP4000
光 LP700

僅かに残る光のLP。
まさかの結果にグレファーは落胆する。

「暗黒の扉を墓地に送り、非常食を発動しました。」

グレファーは全身の力が抜け、その場に膝をついた。

「5体のモンスターで…直接攻撃!」

グレファー LP4000→0


「ああ…運命の女神サマに何かした覚えはねーんだがよ…。」


LPがゼロになると共に、グレファーの体は無数の塵と化していく。
そんな中、グレファーはそっと剣を抜く。

「おいカラス野郎…てめーなんぞに殺されるくらいなら…その命自ら断とうじゃねーの。」

グレファーは剣を胸に突き刺し、一瞬にして闇へと消えた。


「一体…何なの…。」


光は何もわからぬまま、さっきまでグレファーのいた場所を見つめていた。




市内のとあるビル。
そのとある一室でグレファーの帰りを待つ烏丸と王輝に、彼からの返事が届いた。
…王輝のデュエルディスクに置かれたグレファーのカードが燃え上がり、白き灰となる。

「ダイ・グレファー…死んじゃったね…。」

烏丸は唖然とする王輝ににっこりと笑いかけた。

「さて王輝君…君の入団して初の仕事をそろそろ説明しようか…。」

悠久の闇は、今ここに――



第三十二章 初恋の二次元キャラは「こどもちゃれんじ」のみみりん。その歳で既にこっちの世界の住人でした。

「えー、今日はー皆さんに新しい先生を紹介しまーす。」

月曜日。いつものように朝礼が始まるが、今日は少しだけ空気が違った。
アイツがやってきたのである。

「女子の体育と、遊戯王カード部の顧問を務めてくださる…ダイ・グレファー先生です。」

舞台に立ったのは間違いなくあの男…幾多と光達の前に現れた、カードから出てきたような戦士ダイ・グレファー。
どうやら人間になれちゃったようです。


…さて、その日の部活動。

「諸君、今日からこの遊戯王カード部の顧問になったダイ・グレファーだ!
これからは心を入れ替え、一人の人間として、一人の教師として頑張っていくのヨロシクな!」

全員がもうこの部やめたいと思った。



そんな中、この空気に耐えられなかったのか木之上が一言。

「…そういえば海日野郎はどこに消えた?」

グレファーの衝撃で忘れていたが、さっきから海日がいない。
今日は生徒会の仕事があるわけでもないし、彼は普段なら真っ先に部室に来るはずだ。

「まあ、彼のことだから今頃元気にヤってるだろう。この俺が保障するんだ、間違いない!」

もう面倒なのでグレファーは無視しておいた…。
多分、あと3日もすればセクハラでクビになっているだろうし。





「ここ…どこ?」

一方で海日野郎は、どこだか知らない街に来ていた。

彼は、いつも通り誰よりも早く最初に遊戯部の部室に来ていたはず。
だが、気がついたらこの街にいたのである。

来たことはない、だが何処か見覚えのある街。
海日はわけもわからず走り出した。

街角のショーウインドウ。
そこぬ映る海日の姿は明らかに本来の彼とは違っていた。
…正確に言えば、彼自身であり彼ではないのだ。

絵に描かれた「海日厄太郎」。
そしてその絵を描いたのが誰なのか、彼はよく知っている。

海日は頬をつねった。
…痛い。夢じゃない。

海日は更に走り出すと、見覚えのある建物が目に入る。
見覚えがあるといっても、さっきまでの街のような漠然としたものではない。
ここが一体何なのか、彼にははっきりと分かった。

ガチャリ。扉が開き、その建物から一人の少年が出てきた。
なんとも特徴的な髪型の…赤・黒・黄の三色ヘアーとでも言うべきだろうか。

時刻は早朝、彼みたいな少年が外出するような時間ではない。
…彼の目的といえば、ただ一つだろう。
海日は壁や電柱に隠れながらその少年を後を追った。


どこかで見た街並みをしばらく進んで、やっと少年は目的地に着いたようだ。
そしてその彼を待っていたかのように、金髪の少年がそこに立っていた。
二人は何かを話しているようだが、その声は海日にはよく聞こえない。

やがて二人は、その腕に装着されたデュエルディスクと、彼らの魂を籠めたデッキでデュエルを始める。
ソリッド・ビジョンによる大迫力のモンスターバトル。大逆転の華麗なるコンボ。
目の前で繰り広げられる激しい攻防に、海日は思わず見惚れていた。




「やっぱり遊戯は強いぜ!」

「城之内くんこそな!」

やがてデュエルは終わり、二人は友情の握手を交わす。
海日ははっと我に帰り、改めて自分がどんな状況なのかを理解した。

「おい、そこで見ているお前…別に出てきてもいいぞ。」

海日はびくりと飛び上がった。
どうやら、二人には完全にバレていたらしい。

「フ…フハハ…武藤遊戯に城之内克也…まさかこんな所で会えるとは思わなかったぜ…。」

海日は苦笑いして電柱の後ろから出てきた。

「俺様の名は…海日厄太郎。世界最強の決闘者だ。」

とりあえず自己紹介。
自称事実を述べたまでなので、特に問題はない…はず。

「武藤遊戯!城之内克也!俺様とデュエルしろ!」

突然現れてこんなこと言っちゃう海日。
さっきまでここはどこだと狂いかけていた男とはとても思えない。

「フハハ…フハハハハハハ…!
こいつはラッキーだ!まさか原作キャラとデュエルできるとはな!
俺様が遊戯と城之内を倒せば、俺様が本当は最強であることが証明される!
ちょろっといただいた1キル流裏デッキのカードを加えて強化した『スーパー開闢デッキ』も試したいしな!
さあ城之内!まずはお前からだ!」

どこまでも調子のいい男と言ったところか。
ある意味グレファーよりも問題児。

「さあデュエル!さあデュエルだ!」

遊戯と城之内は顔を見合わせ、ぽかんとしていた。



そしてその様子をこっそりと見る黒い影――王輝慎二。

「御門光を連れてくるつもりが…こんなアホがかかってしまうとは…。まあいい、潰す。」




「俺の先攻、ドロー!
リトル・ウィンガードを守備表示で召喚して、カードを一枚セット、ターンエンドだ。」

リトル・ウィンガード 守備力1800

「俺様のターン!ドローッ!
何もせずにターンエンド!!!!」

「ハァ…?」

海日の手札には「冥府の使者ゴーズ」があった。
そしてそのカードを見た瞬間に、海日の目には「フン!1ターン目から手札事故か〜?」とか言いながら調子に乗って攻撃し、ゴーズが出てきた瞬間「ゲェー!そんなカードありかよー!」と言って驚く城之内の姿が見えていた。

「フン!1ターン目から手札事故か〜?
そういう時はせめてブラフくらいは伏せとくのが決闘者の常識ってモンだぜ!
俺のターン!リトル・ウィンガードを生け贄に、魔導騎士ギルティアを召喚!ダイレクトアタックだ!」

魔導騎士ギルティア 攻撃力1850

魔導騎士ギルティアは槍を振り上げ、海日に切りつける。

「ぐあ…!だが自分の場にカードが無い時にダメージを受けたことにより…手札より冥府の使者ゴーズを特殊召喚だ!」

「ゲェー!そんなカードありかよー!」

見事に予想通りの反応。
海日はついニヤリとしてしまう。

「ちょっと待ちな!お前、ゴーズの効果間違ってるぜ!」

「え?」

デュエルに割り込む遊戯。

「冥府の使者ゴーズは『冥府に続く階段』の効果で特殊召喚されるモンスターだ。
そんなことも知らずに最強の決闘者を名乗るとは、まったく呆れるぜ。」

「な…ちょ…!」

遊戯にまで呆れられる海日。

「くっそー!ゴーズの召喚条件はこれで正しいはずなのに…。
無駄にダメージ受けちまったぜ!
…だが俺のライフはまだ6150も…。」

海日 LP2150

「ギョエー!!」

初期ライフは4000。
原作ルール恐るべし。

「カードを1枚セットしてターンエンドだ!」

「く…俺様のターン!
天使の施しを発動!デッキからカードを3枚ドローして2枚捨てるぜ!
更に魔法カード押収!ライフを1000支払い…。」

海日 LP2150→1150

「何ぃ〜!?押収が消えていく〜!?」

突然、「押収」のソリッド・ビジョンが消滅する。
しかし払ったライフは戻らない。
魔法を使えるのは1ターンに一度まで。
原作ルール恐るべし。

「う…ウソだろ!何で!何で!
どーなってんだよちくしょー!
こうなったら手札よりサイバー・ドラゴンを特殊召喚だ!
更に死霊騎士デスカリバー・ナイトを召喚!」

サイバー・ドラゴン 攻撃力2100
死霊騎士デスカリバー・ナイト 攻撃力1900

「デスカリバー・ナイト!魔導騎士ギルティアを攻撃だ!
サイバー・ドラゴンでダイレクトアタック!」

デスカリバー・ナイトは剣で魔導騎士ギルティアを真っ二つにし、その後ろからサイバー・ドラゴンが火炎弾を放つ。

城之内 LP4000→3850→1750

「フハハハハァ!お返しだ凡骨決闘者!」

「誰が凡骨だコラァァァ!!」

どちらも単純でバカなためか、会話のレベルが低い。

「俺様はこれでターンエンドだ。
さあ、この状況を打開できるモンならやってみやがれ凡骨。」

「く…海馬みてーなこと言いやがって…。
俺のターン!ランドスターの剣士を守備表示で召喚して、カードを1枚セット、ターンエンドだ。」

ランドスターの剣士 守備力1200

「ザコを守備で出そうと俺様に勝つことは不可能だぜ!
クリッター召喚!サイバー・ドラゴンでそのザコを攻撃だ!
エヴォリューション・バースト!!」

サイバー・ドラゴンの口から灼熱の炎が放出される。

「リバースカードオープン!マジックアーム・シールド!対象はクリッターだ!」

マジックアーム・シールド
罠カード
敵モンスターが攻撃を宣言した時に発動 相手の場のモンスター1体をマジックハンドで呼び寄せ身代わりにする

ランドスターの剣士は盾を装備し、そこから伸びるマジックアームがクリッターを掴む。
マジックアームに引き寄せられたクリッターはサイバー・ドラゴンの攻撃を受け砕け散る。

海日 LP1150→50

「げぇぇ!!クリッターが破壊されたからデスカリバー・ナイトの効果が発動して自爆しちまう!」

「いや、デスカリバー・ナイトは通常モンスターだから。」

「それはよかったぜ!クリッターの効果発動!」

「クリッターも通常モンスターだから。」

「(´・ω・`)」

OCGではお馴染みのモンスター達も原作では通常モンスター。
悲しいことだね。

「でぇーい!こうなりゃデスカリバー・ナイトで攻撃だ!」

「魔法カード、モンスターBOX!」

モンスターBOX
魔法カード
自分の場の攻撃表示のモンスターをすべて箱に隠し敵の攻撃をかく乱する。

ランドスターの剣士は箱の中に隠れ、デスカリバー・ナイトの攻撃を回避する。
ちなみに原作のモンスターBOXは魔法カード。

「攻撃は無効にされたが…こっちには攻撃力の高いモンスターが二体もいる!
まずこのターンで負けることはねえ!
カードを一枚セットしてターンエンドだ!」

「へへっ、そいつはどうかな?」

城之内は余裕の表情で、手札から一枚のカードを出す。

「集結!ランドスター戦隊を発動だ!」

集結!ランドスター戦隊
魔法カード
自分の手札からレベル3以下の「ランドスター」という名のついたモンスターを任意の枚数分、攻撃表示で特殊召喚する。

「来い!ランドスターの騎士!ランドスターの銃士!」

フィールドに三体のランドスターが集結する。

「更に、ランドスターの剣士、ランドスターの騎士、ランドスターの銃士を生け贄に…ギルフォード・ザ・ライトニングを召喚するぜー!」

ギルフォード・ザ・ライトニング
★8攻2800守1400
3体の生け贄を捧げてこのカードを生贄召喚した場合相手フィールド上モンスターを全て破壊する

城之内の切り札でもある稲妻の戦士、今ここに降臨する。

ギルフォード・ザ・ライトニングは剣を抜き、それを天に掲げる。
雷鳴が轟き、稲妻が剣に落ちる。

「行くぜ!ライトニング・サンダー!!」

剣に落ちた稲妻は海日の場のモンスターへと向かい、二体のモンスターを破壊する。

「ゲェー!ここでギルフォード・ザ・ライトニングかよ!」

「よっしゃー!これで決めてやる!ライトニングクラッシュソード!」

ギルフォード・ザ・ライトニングは剣を構えて突進する。

「フハハハハァ!だがまだ負けん!和睦の使者を発動!」

海日は剣で切られるが、受けるダメージはゼロ。
何とか一ターン持ち堪えた。

「ほぉ〜、なかなかいいカード持ってるじゃねーか。
カードを一枚セットしてターンエンドだぜ!」

城之内の場には攻撃力2800の切り札と2枚の伏せカード。
海日のライフたたったの50。
これぞまさしく最大のピンチ。
…だが、そう簡単に諦めないのが海日厄太郎。

「俺には…最も信頼しているカードがある。
ライフ50は勝利への布石!
このドローに全てを賭けるぜ!」

ドローカード:カオス・ソルジャー −開闢の使者−

「来たっ!!
俺は墓地のサイバー・ドラゴンとクリッターをゲームから除外し…カオス・ソルジャー −開闢の使者−を召喚する!」

彼にとっての魂のカード。
開闢の使者は海日の思いに応えるかのように召喚される。

カオス・ソルジャー −開闢の使者− 攻撃力3000

「開闢の使者で…ギルフォード・ザ・ライトニングを攻撃!開闢双破斬!」

開闢の剣の前では、稲妻の戦士さえも敵ではない。
ギルフォード・ザ・ライトニングは一撃で倒される。

城之内 LP1750→1550

「すげぇ…それがお前の魂のカードか!」

城之内は切り札を倒されたものの、何故か全く動揺していなかった。

「開闢の使者!連続攻撃だ!」

開闢の使者は更に城之内に狙いを定める。

「それならこいつだ!体力増強剤スーパーZ!」

体力増強剤スーパーZ
罠カード相手から
2000ポイント以上の戦闘ダメージを受ける場合、ライフを4000ライフポイント回復してからダメージを受ける。

城之内 LP1750→5750→2750

「回復だと…小癪な真似を…!
まあいい、ターンエンドだ!」

このままで行けば、海日は確実に勝てる。
だが、唯一の気がかりは1ターン目から伏せられている城之内のカードだった。

「俺のターン、ドロー!
魔法カード、おろかな埋葬!」

おろかな埋葬
魔法カード
自分のデッキからカードを1枚選び相手の墓地に置く。

「おい海日厄太郎…お前にとって最も信頼しているカードはその開闢の使者みたいだが…
俺にもそれと同じように最も信頼しているカードがある!
リバースカードオープン!墓荒らし!蘇れ…真紅眼の黒竜!」

墓荒らし
魔法・罠カード
相手プレイヤーの墓地に置かれたカードを1枚奪いとる!!

ついに現れた城之内の魂のカード。
真紅の眼が早朝の街に煌く。

真紅眼の黒竜 攻撃力2400

「だがそいつの攻撃力では開闢の使者は倒せないぞ!」

「それならこいつだ!ロケット戦士!」

ロケット戦士 攻撃力1500

「行くぜ!無敵モード!」

ロケット戦士は変形し、開闢の使者へと突撃。
開闢の使者は腹を貫かれ、その力を失う。

「だが…攻撃力がダウンしても2500!
あと100ポイント足りない…!」

「ロケット戦士の効果でダウンする数値は攻撃力分。
つまり、1500ポイントだ!」

「何ぃー!?」

カオス・ソルジャー −開闢の使者− 攻撃力3000→1500

「行け真紅眼!開闢の使者を攻撃だ!黒炎弾!」

必殺の黒き炎。
攻撃力の下がった開闢の使者はいとも簡単に破壊される。

海日 LP50→0
「くそーっ!真紅眼か…まさかこいつに負けちまうとはな…。」



第三十三章 http://hinogw.hp.infoseek.co.jp/←究極竜骸骨の裏人格がやってるサイト(遊戯王サイトではない)みんな、来てくれよな!!

遊戯と城之内、そして海日は三人で遊戯の家に来た。

「ただいまー。」

「お、帰ってきたか遊戯。城之内くんも…。
ん、そっちは?」

「あ、ども、俺様は…海日厄太郎です。」

原作やアニメで見たのと全く同じ、亀のゲーム屋。
双六は開店に向けて朝早くから準備をしているようだ。

店内をキョロキョロと見回す海日。
原作で見たことあるようなゲームもいくつか置いてある。
そんな中でも、海日の目に留まった商品はやはりM&Wだった。

「(M&Wか…。この世界のお土産にでも買ってくかな…。)」

海日はM&Wを一パック手に取ると、それを双六に渡した。

「あ、すんません、これください。」

「んー、まだ開店前じゃぞ。
でもまあ遊戯の友達じゃし…特別にいいか。M&W一パックは150円だぞい。」

海日は財布を取り出し、150円を双六の手のひらに置いた。
当然といえば当然だが、お金はこちらの世界でも使えるようだ。

「ところで遊戯、城之内くんとのデュエルはどっちが勝ったんじゃ?」

「え、それは、まあ…。」

「フハハハハァ!当然遊戯の勝ちに決まってんだろ!
あのデュエルはメチャクチャ興奮したぜ!
つーかよー、俺ってば描かれることのなかった幻のデュエルを唯一見た存在なんじゃねーの?え?え?」

「…海日くんはずいぶんと調子がいいのう。」

空気を読まずに割り込む海日。
双六は反応に困っていた。


ガチャリ


「ちょっと邪魔するでー。」

突然店の扉が開き、一人の少年が入ってくる。
元世界2位の実力を持っていながら今のところ全戦全敗の男…ダイナソー竜崎だ。

「おーい、まだ開店前じゃぞー。」

「フン、買い物に来たんちゃうわ。
ワイは海日厄太郎…お前とデュエルしに来たんや!」

「なっ!!!」

唐突にデュエルを挑まれ、驚く海日。
しかも自分の名を知っているときた。

「あーっ!ダイナソー竜崎てめー何しにきやがったー!」

相変わらず血気の多い城之内は竜崎に突っかかる。

「今は城之内、お前の相手をしとる暇はないんや。
海日をぶっ倒さなきゃあかんからな。」

竜崎は城之内を押しのけ、海日の方に来る。

「な…何が目的だ…!」

一瞬、海日は嫌な予感がした。
海日と竜崎は共に全戦全敗。
竜崎は海日を倒し初勝利を掲げるつもりだと…。

「く…上等じゃねーか!俺は城之内相手にもう少しで勝てそうなとこまで行った男だぞ!
恐竜使いの座をティラノ剣山に奪われたお前なんかに負けるものか!」

海日はポケットからデッキを取り出す。
更に、さっき買ったパックを開き、その中に入っていた5枚のカードをデッキにぶち込んだ。

そして海日と竜崎はデッキをシャッフルしながら店の外に出る。
遊戯、城之内、双六の三人もデュエルの内容が気になり外に向かった。

店の前の道路で向かい合った二人は、シャッフルしたデッキをデュエルディスクにセットし、そこから5枚のカードをドローする。

「デュエル!」

突然始まった全戦全敗対決。
海日に緊張が走る。

「ワイの先攻や!ドロー!
エレメント・ザウルス召喚!ターン終了や。」

エレメント・ザウルス
星4 攻1500 守1200
フィールド上に特定の属性を持つモンスターが存在する場合に効果を得る
●炎属性:攻撃力500ポイントアップ!
●地属性:戦闘で破壊したモンスターの効果を無効化!

「俺様のターン、ドロー!」

竜崎の場にはわりと平凡な恐竜族モンスター。
OCGでは強力なカードばかりを集めた海日のデッキの相手ではない。

「死霊騎士デスカリバー・ナイトを召喚だ!エレメント・ザウルスを攻撃!」

死霊騎士デスカリバー・ナイト 攻撃力1900

デスカリバー・ナイトは巨大な剣でエレメント・ザウルスを切り裂く。

竜崎 LP4000→3600

「く…なかなか強そうなカード持っとるやないか。」

「まあな。俺様はこれでターンエンドだ。」

「ワイのターン、ドロー!俊足のギラザウルスを手札より特殊召喚や!」

俊足のギラザウルス
星3 攻1400 守400
このモンスターを特殊召喚扱いにする事ができる
その場合相手は墓地からモンスターを1体特殊召喚することができる

「更に俊足のギラザウルスを生け贄に、大進化薬を発動!」

大進化薬
魔法カード
恐竜族モンスター1体を生け贄に捧げる
このカードは3ターンの間フィールド上に残る
恐竜族モンスターの召喚に生け贄は必要なくなる

「行くでー!超伝導恐獣を生け贄無しで召喚やー!」

超伝導恐獣
星8 攻3300 守1400
1ターンに1度モンスター1体を生け贄に捧げる事で相手に1000ダメージを与える
この効果を発動したターンこのモンスターは攻撃できない

閃光の中から出現したのは、全身に機械の鎧を装着した最強の恐竜族モンスター。

「行けーっ!ぶっ飛ばせー!」

超伝導恐獣はデスカリバー・ナイトを踏みつけていとも簡単に破壊する。

海日 LP4000→2600

青眼の白龍を超える3300の攻撃力。
ライフ4000のスーパーエキスパートルールではその単純な一撃が致命的ダメージを生み出す。

「どやー!強そうやろー!」

「いつの間にあんなカード手に入れたんだ…竜崎の奴…。」

城之内がボソっとツッコんだ。

「ん?知りたいんか城之内ー!そんなに知りたかったら教えてやってもええでー!」

「いや、別にそこまで知りたいわけじゃねーが。」

「はぁ?すごく知りたい?土下座するから教えてくださいやて?
ま、ええで。特別に教えたるわ。
このカードはな、異世界から来た奴から貰ったんや。
お前ら知っとるか?この世界とは別の世界が存在してな、その世界にもM&Wがあるんや。
異世界のM&Wは『遊戯王』ゆうてな、ワイが使っとるのはその遊戯王のカードなんや!」

…何だか凄いことになっている。
確かに彼らから見れば異世界なのだが…。

「ほな、カードを1枚伏せてターンエンドや。」

「…俺様のターン、ドロー!
手札よりサイバー・ドラゴンを特殊召喚!更に地砕き発動だ!」

大地を砕き、超伝導恐獣は地底に落ちる。

「サイバー・ドラゴン!ダイレクトアタックだ!」

竜崎 LP3600→1500

「カードを一枚セットしてターンエンド!
どーだ竜崎!もうお前は後がねーぜ!俺様の勝ちは決まったようなもんだぜー!」

「なっ…デュエルは最期までわからんもんやろ!
ワイのターン、ドロー!究極恐獣を生け贄無しで召喚や!」

究極恐獣
星8 攻3000 守2200
バトルフェイズ開始時に一番最初にこのカードで相手フィールド上に存在する全てのモンスターに1回ずつ攻撃しなければならない。

「くらえー!サイバー・ドラゴンを攻撃や!」

究極恐獣は尾を使ってサイバー・ドラゴンを撃破!

海日 LP2600→1700

「ちっ、耐えられたか…!
だが攻撃力3000の究極恐獣の前じゃどんなモンスターもザコ同然やで!」

「フフ、そいつはどうかな?」

遊戯っぽい決めゼリフを言う海日。遊戯本人が見ている前で。

「行くぜ!俺のターン!
俺は墓地のサイバー・ドラゴンとデスカリバー・ナイトをゲームから除外し…カオス・ソルジャー−開闢の使者−を召喚だ!」

「か…開闢の使者やとー!」

突然現れた海日の切り札に驚きを隠せない竜崎。

「開闢の使者といえば異世界版『神のカード』の一枚やんか!
この世界の神のカードは三体の生け贄によって召喚されるが、異世界の神のカードは墓地の光と闇のモンスターを除外することで召喚される…!
まさかお前が神のカードの持ち主だったとは…あいつがお前を狙うのもわかるで!」

「な…開闢が神のカード!?
この世界じゃ開闢、終焉、カオス・ソーサラーは神のカードなのか?」

「その通りや。でもカオス・ソーサラーはちと違うな。
そいつは神を真似て作ったパチモンや。
だがワイに異世界のことを教えてくれた奴は、開闢と終焉の上に立つ究極の神が存在するとか言っとったで!」

「究極の神…?
まあいい、開闢の使者の効果発動!究極恐獣を除外だ!」

開闢の使者が剣を振りかざすことにより、究極恐獣は混沌の闇へと引きずり込まれる。

「これで俺様はターンエンドだ。次のターン、俺様の開闢が貴様を倒すぜ!」

「へへ…上等やないか。
だがな…ここで一つだけいいことを教えてやるで。
神の持ち主はお前だけやない…。」

竜崎はそう言ってデッキからカードを引く。

「闇のゲーム発動や!」

更にポケットから一枚のカードを取り出し、それをフィールドカードゾーンに置く。

「闇のゲームだと!?」

「ワイの闇のゲームは…マリクやそこらのとは少し違う。
せやけどその威力は絶大や…。
さて…まずは羽毛恐竜−フェザーザウルスを召喚や。」

羽毛恐竜−フェザーザウルス 攻撃力1400

「さあ、行くで…今こそ神を見せたる。
墓地のエレメント・ザウルスと超伝導恐獣を除外し…混沌帝龍−終焉の使者−を召喚や!」

二つの魂は天へと昇り、混沌として蘇る。
黒き空から出現する暗黒の翼。
カオス・エンペラー・ドラゴン、此処に在り。

「ハハハハハ!どや!ワイの終焉の使者は!
行くで!ライフを1000ポイント支払い、効果発動や!セメタリー・オブ・ファイア!!」

竜崎 LP1500→500

遥か天空にて、混沌帝龍は咆える。
全てを無に還す終焉の炎。
それは大地を焼き、あらゆる命を奪う。
朝の町に、悲痛の叫びが木霊する。

熱い。地獄のように熱い。
これはソリッド・ビジョンではない…?
みるみるうちに辺りを埋め尽くす灼熱の業火。
手札も、伏せカードも全て消滅する。

「開闢ーっ!!」

燃え行く中で、海日は叫んだ。
彼の最も信頼する“相棒”は、黒き炎に焼かれ塵と化す。

「ウソだろ…おい…開闢…。」

やがて、全ての力を出し切った終焉の使者自身も朽ち果て、無へと還った。
世界の終焉。もう何も残らない。

「おい…どうなってんだよ…ソリッド・ビジョンだろ…おい…。
何で…何でこんなにも熱いんだよ…どうなってんだよーっ!!!」

海日 LP1700→0

終焉の炎に包まれて、また一つの魂が天へと昇った。
光在る処、闇も在り。
そして世界は…混沌に包まれる――。



第三十四章 これは酷い後付け設定ですね

「モンスターで直接攻撃ー!はいっ、これでやっくんのライフはゼロねー。」

「だーっ!ちくしょーまた負けたーっ!」

「やっくん弱いよーデッキで最強がアサシン(攻撃力1700)じゃん。サンボルもブラホも持ってないしー。」

「うっせえ馬鹿にするな!」

海日厄太郎10歳。今日も彼は、幼馴染と遊戯王カードで遊んでいた。
今のところ戦績は百戦百敗。
回想でも一勝もできないとは、何とも哀れな男である。

「なあ楓ねーちゃん、俺のはにわ36枚と何かレアカード交換してくれよー。死者蘇生とかさー。」

「はい魔菌。」

「うわ、いらねぇ。」

幼馴染の楓ねーちゃんは一つ年上で、隣の家に住んでいる。
強力なレアカードをいくつも持っていて、切り札がアサシン(攻撃力1700)でモンスター除去カードを一枚も持っていない海日が勝てるはずがなかった。

「ちくしょー何で俺勝てねーんだー?
やっぱサンボルみたいな強いカード持ってないと絶対勝てねーよー。」

「んー、カードの強さだけが勝負じゃないと思うよー。
ほら、漫画みたいに、一見弱そうなカードでも信じていればきっと活躍してくれるよ。
やっぱり、デュエルの勝敗を決めるのはカードを信じる心かな。」

「カードを信じる…心…?」


――――――――――――――――――――――――――――――


終焉の炎に焦がされて、海日厄太郎の魂は果てようといていた。
だが、彼の信じる心は、決してそれを許しはしなかった。
沸き立つ煙の中で、七色の光が海日を包み込む。

「残念だったな竜崎…俺はこいつを発動させてもらった…。
罠カード、虹色の涙!さっきのパックで引き当てたカードだぜ!

海日 LP0→800

「虹色の涙が墓地に送られ、自分のライフがゼロになった時、ライフを800ポイント回復することができる…。どうだ、驚いたか竜崎!」

「な…なるほどな…。だが、それもワイの想定内や!
ワイはこのカードを発動するで!満月の宝札!」

満月の宝札
魔法カード
このカードが自分のカードの効果によって墓地に送られた時、手札が四枚になるようにカードをドローする。

「まだや!羽毛恐竜−フェザーザウルスの効果発動!デッキから鳥モンスター一体を手札に加えるで!」

羽毛恐竜−フェザーザウルス
星4 攻1400 守200
このカード墓地に送られた時、デッキから鳥モンスター一体を手札に加える。

「ワイは手札より魔法カード、二重召喚を発動や!
この効果によって、さっき手札に加えた八汰烏を召喚!ダイレクトアタックや!」

二重召喚(デュアルサモン)
通常魔法
このターン中もう一度だけ通常召喚を行う事ができる。

八汰烏
星2 攻200 守100
このカードは特殊召喚できない。
召喚・リバースしたターンのエンドフェイズに持ち主の手札に戻る。
このカードが相手プレイヤーにダメージを与えた場合、
次の相手ターンのドローフェイズをスキップする。

竜崎の場に現れたのは禁止カードとしても有名なあの八汰烏。
混沌帝龍 −終焉の使者−で場のカードを全て消し去り、八汰烏でドローを封じる。
最も恐ろしきコンボが今ここに炸裂する。

海日 LP800→600

八汰烏の攻撃を受けた海日の右足から、鮮やかな血が噴き出た。
これが闇のゲームの力。

「ぐあぁっ!!」

「ハハハ!どや!これでもうお前は何もできへんで!
ワイの勝ちは決まったようなモンやー!
そんじゃ次のターンでワイの切り札がお前にとどめを刺すで…。
魔法カード、新世界!
この効果によって、自分の墓地からカオスモンスター一体を特殊召喚や!
蘇れ!混沌帝龍 −終焉の使者−!」

大地を突き破り、終焉の使者は再びフィールドに舞い戻る。
八汰烏と混沌帝龍、OCGでは永久禁止カードとされる二体のモンスターが並ぶ姿は圧巻であった。

「更に新世界のもう一つの効果を発動!
このカードで混沌帝龍 −終焉の使者−が特殊召喚された場合、手札から罠カードを発動できる!
ワイはアルティメット・エヴォリューションを発動!
へへ…ターンエンドや。
命拾いしたな…新世界の効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン攻撃ができない…。
効果発動もワイのライフが足りんからな。だが、次のターンでお前のライフはゼロやで!」

アルティメット・エヴォリューション
永続罠カード
自分がコントロールする攻撃力3000以上のモンスターの攻撃力は1500ポイントアップし、
相手のカードの効果を受けない。

混沌帝龍 −終焉の使者− 攻撃力3000→4500

まさに原作の世界ならではの壊れカードによって、終焉の使者は進化を遂げる。
首は青眼の究極竜のような三叉となり、体色は漆黒へと変化する。
全ての終わりを告げる邪悪なドラゴンは、より禍々しさを増し海日の前に立ちはだかった。

「……命拾いした、か…。
ああ、どうやら俺は命拾いしたらしい。
虹色の涙のもう一つの効果発動!俺はデッキからカードを5枚ドローする!」

虹色の涙
魔法カード
このカードが墓地に送られ、自分のライフがゼロになった時ライフを800ポイント回復する。
この効果が発動されたターンのエンドフェイズに、自分はデッキからカードを5枚ドローする。

…ドローしたカードの内四枚がさっき買ったパックに入っていたカードだった。
「虹色の涙」を含めて、シャッフルが甘かったのか五枚全てが固まっていたようだ。
効果も全く知らないようなカードばかりで、逆転勝利は絶望的に。
しかし海日はまだ諦めず、次のドローに全てを賭ける。

「俺のターン、ドロー!」

運命のカードが、光る。

――――――――――――――――――――――――――――――――――

「はいハーピィの羽根帚ねー、はいサンダー・ボルトねー、モンスターで直接攻撃ー、あたしの勝ちー。」

「だぁぁぁぁまたかよー!」

この日も、海日は楓ねーちゃんに負けていた。
だが、この日だけはいつもとは様子が違った。

「ねえやっくん、あたし…遊戯王やめようと思うんだ。」

「え!?何で…!どうして突然!」

「引っ越すことになったの…お父さんの仕事の都合で。
あたしのデッキ、やっくんにあげるよ。
強いカードもたくさん入ってるし、ほら、あたしの切り札の真紅眼の黒竜、大切にしてよ。」

楓ねーちゃんはそう言って、ぽかんとする海日に自分のデッキを渡した。

その日以来、楓ねーちゃんとは会っていない。
引っ越す当日は一人で部屋に閉じこもって泣いてたし、新しい電話番号なんて知りもしない。
カードを貰ったお礼も言っていないままだ。



――――――――――――――――――――――――――――――――――


「(このカードは…でも、どうして…。)」

海日の引いたカードは、真紅眼の黒竜。
プロテクター無しでプレイしていたためについた大量の傷は、このカードがあの日貰ったカードであることを物語っていた。

「(レッドアイズ…デッキに入れた覚えは無いが、ここは原作の世界!こんな出来事は日常茶飯事だぜ!)」

妙に納得した海日は、この原作ならではのサプライズで勝利を確信する。

「俺は手札より魔法カード、新世界を発動!蘇れ!開闢の使者!」

新たな世界の幕開けと共に、開闢の使者は復活する。
闇を切り裂く正義の刃は、闇に染まりし竜崎に向く。

「無駄やで!アルティメットエヴォリューションの効果で、ワイの混沌帝龍はカードの効果を受けつけんで!」

「そんなことはわかってるさ!新世界のもう一つの効果!
それはこのカードで開闢の使者を特殊召喚した場合、このターン手札から何枚でも魔法を発動することができる!
俺は手札より魔法カード、古のルールを発動!来い!真紅眼の黒竜!」

新世界
魔法カード
自分の墓地からカオスモンスター一体を特殊召喚する。
この効果によって特殊召喚されたモンスターによって以下の効果を得る。
カオス・ソルジャー −開闢の使者−:このターン手札から何枚でも魔法を発動することができる。
混沌帝龍 −終焉の使者−:このターン手札から何枚でも罠を発動することができる。

古のルール
魔法カード
自分の手札からレベル5以上の通常モンスター1体を特殊召喚する。

「まだだ!魔法カード黒竜分身!この効果により闇属性のドラゴン族モンスターを三体に分裂させる!
そして魔法カード、二重融合(ダブルフュージョン)!ライフを500ポイント支払い、真紅眼の黒竜三体を融合する!」

海日 LP600→100

究極進化した混沌帝龍に対抗すべく、真紅眼の黒竜も姿を変える。
三つの頭を持つ真紅眼の究極体、真紅眼の究極竜(レッドアイズ・アルティメット・ドラゴン)!!

真紅眼の究極竜 攻撃力4200

「残念やったな…300ポイント足りんで!やっぱりワイの勝ちや!」

「何勘違いしてやがる…二重融合は二回続けて融合を行うカード…。
俺はカオス・ソルジャー −開闢の使者−と、真紅眼の究極竜を融合する!」

二重融合(ダブルフュージョン)
魔法カード
ライフを500ポイント支払う。
二回続けて融合を行う。

全ての力が集い、究極の竜と混沌の戦士は一つとなる。
今ここに、新たなる世界が誕生する。

「開闢竜騎士−ドラゴンナイト・ジェネシス!融合召喚!」

開闢竜騎士−ドラゴンナイト・ジェネシス 攻撃力5000

「なんやて!攻撃力5000やとー!」

竜崎のデュエルディスクに置かれたゼラのカード、それは心の闇の象徴。
新世界の神は、心の闇を許しはしない。

「開闢竜騎士で…混沌帝龍を攻撃!ビッグバンフレア・ソード!!」

真紅眼の究極竜の三つの頭から放たれる火炎弾と共に、開闢の使者は剣を振るう。
その一撃は終焉の使者を消し去り、心の闇を斬る。

「嫌や…まだワイは…死にたくないー!」

巻き起こるビッグバン。
早朝の町は炎に包まれた。

竜崎 LP500→0

開闢竜騎士のソリッド・ビジョンは消え、決闘の終わりを告げる。

「あれ…ワイ…生きとる…。」

竜崎は腰を抜かしていた。
ゼラのカードは何時の間にかデュエルディスクから外れ、地面に落ちていた。

「おいパイナポー竜崎…おめーもう二度と闇のゲームになんか手ぇ出すんじゃねーぞ!」

海日は竜崎の額にビシッと人差し指を突きつけて言った。
竜崎はびくりとし、腰を抜かしたまま後退した。
だが、必死で後ろに下がる竜崎の頭が何かにぶつかる。

「…やはりダイナソー竜崎では闇のカードの力を引き出せなかったか。」

竜崎が頭をぶつけたのは、王輝慎二の足だった。
王輝慎二も海日と同じように、高橋和希先生の描いた絵となり、「遊☆戯☆王」の世界の住人となっていた。

王輝は地面に落ちていたゼラのカードを拾うと、それを自分のデュエルディスクに置いた。

「さて海日厄太郎…次は俺とデュエルをしようか…。」

大会の時とは様子が違う、闇に満ちた王輝。
その様子を見た遊戯は、海日の前に立った。
千年パズルが光を放ち、闇の遊戯が姿を現す。
「待ちな、お前の相手はオレがやるぜ!」



最終章 次回作は萌え萌えキュンキュンなラブコメ書きたいっす

「ブラックバーニング!」

「ぎゃー。」

王輝 LP0

「やったー!遊戯が勝ったぜー!」

王輝が負けたことにより、海日は元の世界に帰ることができました。
めでたしめでたし。

学校に帰ってきた海日は、いきなり部員達に言いました。

「明日社会見学に行くぞー。行き先はコナミだー。」

こうして次の日、龍星高校遊戯王カード部の皆さんはコナミに行くことになりました。
光達はコナミで楽しく社会見学をしていましたが、突然コナミ社員の烏丸さんが襲いかかってきました。
実は烏丸は世界征服を企んでいたのでした。
ということで、光が烏丸とデュエルすることになりました。

「ふはははは!僕のターン!おろかな埋葬を三枚発動!
デッキからオシリスの天空竜、オベリスクの巨神兵、ラーの翼神竜を墓地に捨てる!
更にその三枚をゲームから除外し、光の創造神ホルアクティ召喚!」

光の創造神ホルアクティ 攻撃力∞

「ホルアクティで攻撃ー!」

光大ピンチ!しかし、その時仲間が立ち上がった!

「御門!実は俺は烏丸によって実体化させられたモンスターなんだ!
だから俺は烏丸の持っていたこのカードをこっそり盗み出していた!受け取れ!」

グレファーは自分のパンツの中から一枚のカードを取り出して投げる。

「実は俺の家は大金持ちで本当の名前は山田中太郎じゃなくて金剛峰寺中太郎っていうんだ!
このカードは俺の小遣いで買ったものだ!受け取れ!」

中太郎も自分の持っていたカードを投げる。

「実は僕の兄、木之下けんざぶろーは有名なカードコレクターなんだ!
兄から譲り受けたこのカード、次は君が使う番だー!」

「あたしが元カレに貢いでもらったこのカードも使って!」

木之上と亮子もカードを投げる。

四枚の「デビルズ・ミラー」のカードが光の下に集まった。
四枚の「デビルズ・ミラー」は巨大な鏡となり、ホルアクティの攻撃を跳ね返す。

「馬鹿なー!ホルアクティが負けただとー!
こうなったらこいつでどうだ!ゾーク・ネクロファデス召喚!」

だが、光と仲間達は諦めない。

「実は拙者は烏丸によって江戸時代からタイムスリップさせられた本物のサムライなのでござる!
このカードはその際に体に埋め込まれたもの!使うでござる!」

雷は刀で自らの腹を切り、カードを取り出す。
そしてそれを光に投げた。

「実は私は烏丸の部下なのよ!
でもたった今裏切ったわ!このカードを受け取って!」

天野もカードを投げる。

「正義の味方、ヒーロー仮面参上!
実は私はカードショップのお兄さんで、この前このカードを入荷したんだ!受け取れ!」

どこからともなく現れたヒーロー仮面がカードを投げる。
三枚の「スーパー・ウォー・ライオン」のカードが光の下に集まった。

しかし、スーパー・ウォー・ライオン三体ではゾークには敵わない。
そこで仲間達は更なるカードを送る。

「実は僕は烏丸によって作られたホムンクルスなんだ!
その時に烏丸から渡されたカードがこれだ!」

武は一枚のカードを投げる。

「これは俺が原作の世界に行った時に王輝が落としたカードだ!受け取れ!」

そして海日もそれに続く。

二枚のゼラのカードが光の手に渡る。
二体のゼラはスーパー・ウォー・ライオンに加勢し、ゾークを撃破する。

「ゾークがやられるなんて…ありあえない!
だがこうなったら最後の切り札だ!
今こそ光と闇は一つとなる…墓地のゾークとホルアクティを除外し、混沌の継承者−ゾーク・ホルアクティ召喚!」

ゾークとホルアクティの融合したなんだかよくわからないモンスターが現れる。

混沌の継承者−ゾーク・ホルアクティ 攻撃力∞×2

「ゾーク・ホルアクティの効果発動!
このカードの特殊召喚に成功した時、相手のデッキ、手札、墓地、フィールド、除外に存在するカードを全て焼却する!
消し去れ!インフェルノ・ジェセル!」

混沌の炎が光のデュエルディスクに放たれ、全てのカードが灰となる。

「カードが…そんな…。」

だがそんな時、突然光の前にカオス・ソルジャーが現れた!

「光…俺だ!兄ちゃんだ!俺は烏丸によってカードに魂を封印されたんだ!」

「そうだったの!?でもお兄ちゃん、灰になっちゃったんじゃ…。」

「大丈夫さ!なんたって俺はステンレス製だからな!チンケな炎じゃ燃えないのさ!」

「よかった!」

「それだけじゃない!他にもステンレス製のカードが9枚あるぜ!」

二枚のゼラ、三枚のスーパー・ウォー・ライオン、四枚のデビルズ・ミラーのカードを光は取り出す。

「今こそ俺の真の力を見せる時だ!」

カオス・ソルジャーは9枚のステンレス製カードをその身に吸収し、真の姿を現す。

「カオス・ソルジャー Infinity-]!参上!」

カオス・ソルジャー Infinity-] 攻撃力∞×10

「くらえ!インフィニティ・カオス・ブレード!」

∞×10の攻撃力の前に、混沌の継承者は滅び去る。

「馬鹿な…この僕が負けるなど…!」

敗北した烏丸は闇の中に消えていく。
光の兄はカードから解き放たれ、人間に戻った。

こうして世界は救われた。
ありがとう、龍星高校遊戯王カード部のみんな!






ご愛読ありがとうございました!
究極竜骸骨先生の次回作にご期待ください!!













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