浦島アテムの正論

製作者:伊達幸村さん







※本作をご覧になるにあたり、文字と文字とのあいだにある、わずかな余白にご注目する読み進めかたをお勧めいたします。
 あと手前味噌になりますが、終わりかたにはすごい自信があります。嘘です。




 浦島壱 禁句

 昔々、武藤遊戯という名の浦島太郎が浜辺を歩いていると、『カタパルト・タートル』がグールズのレアハンターに虐められていました。
「お前も『エクトプラズマー』とおなじだー!」
「モンスターを発射して玉砕させているなんて悪いヤツなのだ! マリクさまに言いつけてやる!」
「そうですそうです! 論破たのちぃー!」
 レアハンターは『カタパルト・タートル』を囲み、言いたい放題蹴り放題です。
「……や、やめなよきみたち……」
 耳元を密着させても聞こえないような小さな声で、遊戯は仲介を試みました。しかし、もっともいじめに積極的だった仮面の男パンドラが、断固反発します。
「なんですか!? ヒトデみたいで変な髪型の武藤遊戯! あなたの言い訳なんか聞こえましぇ〜ん。わたしたちは正しい事を言っているま――」
「罰ゲーム!」
 遊戯は闇の人格に目覚めました。レアハンターたちを指差して叫びます。
「俺の髪型を突っ込むな! 腐ってるぜ貴様!」
 浦島弐 そして竜宮城へ

 見事見事、遊戯の罰ゲームでレアハンターはいなくなりました。レアハンターが色々な意味でいなくなり、いなくなり、『カタパルト・タートル』は守られました。レアハンターはいなくなりました。
 遊戯に守られた『カタパルト・タートル』は謙虚な口調で言います。
「遊戯さん遊戯さん! あなたはわたしに助けさせてもらいました。どういたしまして! わたしへのお礼として、竜宮城にいってください! わたしの背中に乗ってください!」
『カタパルト・タートル』の言葉は口調こそは謙虚だけれども、ニュアンスがみょうに上から目線でしたが気にはせず、その背中に遊戯は乗りかかります。
「助けさせてくれて――」
「進路クリアー、発進なのーネ!」
『カタパルト・タートル』はSF映画などでよく聞くようなアナウンスを発し、背のカタパルトを起動させました。
 遊戯はスペースシャトルよろしく、天空へと射出されます。
「ありがとうだぜ――『カタぷぁるぁっっ』!」
 遊戯は大気圏を超え、月を突き破りました。そして宇宙というソラの、冥王星という元惑星にある竜宮城の天井のシャチホコの口に、髪型の頂点が突き刺さりましたとさ。
 浦島参 宴

「うひょひょひょーい!」
 竜宮城では『エリア』たちに囲まれ、遊戯は楽しい宴にふけていました。
 そこにそれは現れましたとさ。
「遊戯! 俺さまが海馬瀬人だ!」
 浦島四 ディスデュエル

「フン! 海馬瀬人だ!」
 現れたのは海馬瀬人という遊戯の永遠のライバルもどきでした。
 遊戯は飛び出し、海馬に向かって突っ走ります。
「じーちゃんのカタキぃいいいいッ!」
「海馬瀬人だ! デュエルで決着だ!」
「よくもじーちゃんの『ブルーアイズ』をぉおおおッ!」
「デュエルだ遊戯!」
「腐ってるぜ貴様ぁあああ!」
「デュぐあああっ!」
 海馬は遊戯にデュエルディスクで殴られました。
 遊戯は床に突き刺さる海馬を見下ろし、言い放ちます。
「おい、デュエルしろ!」
「なにを言っているのかよく聞こえんが断る! デュエルだ遊戯!」
「断る事を断るぜ!」
 遊戯は拒否の拒否を拒否しました。
 さすがの海馬も折れます。
「……さすがに拒否の拒否を拒否するなんて惨めな事はできん。カプセルモンスターズチェスで勝負だ遊戯!」
「受けて立つぜ海馬!」
 カプモン対決が始まりました。
 海馬はスマートフォンに向かい、「磯野! ガチャポン!」と叫びます。
 3秒後、磯野は城之内の天井――すなわち竜宮城の城内の天井を突き破って落下し、ガチャポンを持ち込みました。そし磯野はガチャポンを置き、「っとぉ!」と叫んで宇宙のそとの、レアハンターたちがいる場所へと帰還しました。
 浦島伍 ワハハハ

 海馬が得意げに語ります。
「俺さまの自慢の駒では、勝負が見えている。ゆえに、互いこのガチャポンを交互に回し、引き当てた駒で対決する! いいな? まずは遊戯、貴様から引け!」
 海馬は遊戯に先攻を譲ります。
 心の中でほくそ笑みます。
 ――クックックッ……。
 このガチャポンには細工が仕掛けられている。先攻は必ずレベルの低い雑魚駒ばかり当たるようにな……。
 さすが、俺だ……。このトリックは俺の弟でカプモンの達人でもある、モクバさえ思いつかなかろう!
「断るぜ。海馬が先に引きな」
 遊戯は拒否しました。
 海馬は激しく動揺します。
「……こ、ここここ断る!」
「断る事を断るぜ!」
「……ぐっ……! 断る事を断る事を断る!」
「じゃあ、俺が先だぜ!」
「クククそれでよい……」
「フッ――! かかったな海馬!」
「なっ――!?」
「今までのは、俺が先攻を奪うための罠だったんだぜ!」
「こ、こここの俺さまを引っかけるなど許さん許さん許さんんっ! ええい、俺が先だ!」
「いいぜ! 海馬が先だぜ」
「……あ……」
 とうとう海馬は万策尽き、たまらず挙手し、ついに使うはずもない丁寧語まで使います。
「くっ……ここここ断ります! やはりカプモンはやめて、デュエルで勝負だ遊戯!」
「断る事を断るぜ!」
「断る事を断る事を断る!」
「……くっ……、さすがに拒否の拒否の拒否を拒否するなんて惨めな事はできない。いいぜ……」
「ワハハハ」
「デュエルだ海馬! お前に世界は支配させない!」
「フン! 望むところだ遊戯!」
 こうして、二人のデュエルが始まりましたとさ。
 浦島六 口車

 遊戯対海馬のデュエルが始まりました。

【第1ターン】

 先攻・遊戯のターンです。

‐メインフェイズ‐

「手札から『天使の施し』を発動! デッキからカードを3枚引き、2枚墓地に送る!」
「ブワハハハハー!! はなから『天使の施し』だと! 手札事故かぁぁああ!」
 すぐさま大笑いする海馬は無視し、遊戯は血走った目で『天使の施し』発動したあとの手札を凝視します。内容は――
『冥府の使者ゴーズ』レベル7
『冥府の使者カイエン』レベル7
『バスター・ブレイダー』レベル7
『オシリスの天空竜』レベル10
『オベリスクの巨神兵』レベル10
『ラーの翼神竜』レベル10
『エクトプラズマー』フィールド魔法
 遊戯はずっこけました。

【第2ターン】

「ワハハハハ! 俺のターン!」
 後攻・海馬のターン。

‐メインフェイズ‐

「ワハハハハ!『ロード・オブ・ドラゴン』を――」
「あせるなよ! デュエルはまだ始まったばかりだぜ、海馬!」
「クックック! 確かにその通りだ」
 海馬はモンスターの通常召喚を中止し、違う手札のカードを出そうとします。
「『未来融合』――」
「あ、ああああああせんなよ! まだ始まったばかりだ! まだ駄目だ! チキショウ!」
「なにか企んでいるようだが、そんな見え透いた策にかかる俺様ではない。ここは退いてやろう。ターンエンドだ!」

【第3ターン】

 遊戯が引いたカードは『天使の施し』でした。

‐メインフェイズ‐

「『天使の施し』を発動だぜ!」

 再び、遊戯はデッキからカードを3枚引き、2枚を墓地に送りました。さて、新しくなった手札は?
『グレムリン』レベル5
『暗黒魔族ギルファー・デーモン』レベル6
『闇紅の魔導師』レベル6
『バスター・ブレイダー』レベル7
『オシリスの天空竜』レベル10
『オベリスクの巨神兵』レベル10
『ラーの翼神竜』レベル10
『エクトプラズマー』フィールド魔法
 ……まさに焼け石に水でした。
「海馬ぁあああああ!」
 悔しさのあまり、遊戯はジュラルミンケースを振り回し、海馬に八つ当たりしました。

【第4ターン】

「ぐぇっ――ワハハハハ!」
 海馬のターンです。

‐メインフェイズ‐

「『ロード』――」
 海馬がカードを発動しようと瞬間、遊戯は左右の手のひらを正面に向け、さえぎります。
「フッ、待てよ海馬……」
「――なんだ遊戯? 貴様のつまらんハッタリなど、聞く耳持たん。で、なんだ遊戯? 早く言え。気になってムシズが走るわ!」
「『回転』を英語でなんというか、知ってるか?」
「フン、愚問だな。『回転』は英語で『ターン』だ」
「『終了』は英語でなんという?」
「『エンド』、だ!」
「『回転』と『終了』の英語を合わせて言うと――?」
「……『ターンエンド』、だ!」
「俺のターン!」
 浦島七 逆転劇

 戦況は互いにLP4000、手札7枚で場のカードは無しです。
 遊戯のターンのはじまりはじまり。

【第5ターン】

「ドロー!」
 遊戯は『天使の施し』を引きました。

‐メインフェイズ‐

「『天使の施し』発動!」
 みたび、遊戯はデッキからカードを3枚引き、2枚を墓地へ送ります。そして遊戯の手札は?
『ハネクリボー』レベル1
『闇紅の魔導師』レベル6
『オシリスの天空竜』レベル10
『オベリスクの巨神兵』レベル10
『ラーの翼神竜』レベル10
『封印の黄金櫃』魔法
『進化する翼』速攻魔法
『エクトプラズマー』フィールド魔法
 遊戯は心の底でうなづきました。やったぜ! 主人公でよかったぜ!
「“ハネクリボー”を守備表示で召喚!」
 元気よくカードをデュエルディスクに並べていく遊戯です。
「さらに“進化する翼”もといリバースカードを1枚セットだぜ!」
 しかし、『ブッブー』とおとが鳴ります。遊戯のデュエルディスクから鳴る警告音でした。
「そ、そうか……!? このデュエルはスーパーエキスパートルール! 魔法のは1ターンに1枚までで、発動かセットのどちらかしかおこなえなかった……!」
「ククク! そんな凡骨でもせぬようなルールミスとは、『浦島太郎』の称号も堕ちたものよ……」
「くっ……負けろ海馬!」
 遊戯と海馬の視線が交わった瞬間、海馬はきびすを返しました。
「フン、いいだろう……」
 海馬はサレンダーし、宇宙のそとの、レアハンターや磯野のもとへと撤退しました。
 遊戯はほっとして胸を撫で下ろします。
「よかったぜ、ダメもとで言ってみて……」
 浦島八 禁断

 楽しかった宴も終わり、遊戯は帰り際に、巫女の『ディアン・ケト』さんから『封印の黄金櫃』をもらいました。
 竜宮城から浜辺に戻った遊戯は早速『黄金櫃』に手を伸ばしました。
『ディアン・ケト』さんは「あけるなよ。絶対にあけるなよ」といってましたが、そういわれたくなるとあけたくなるものです。そりゃ人間ですから。
 パカッと『封印の黄金櫃』をあけるとモクモクモクと煙が湧き出てきました。そして遊戯は老人になりましたとさ。
 最終浦島 始まりの人が善悪を知る木の実を口にしてからそのあと

 昔々、あるところに遊戯おじいさんと杏子おばあさんがいましたとさ。
 生きているだけでハッピーなのです!
 レアハンター(1)がいいました。
「めでたしめでたし」
 パンドラがいいました。
「めでたしめでたし」
『カタパルト・タートル』がいいました。
「めでたしめでたし」
 ツチノコがいいました。
「めでたしめでたし」
 以下省略。
 すべてのデュエリストとヒューマンにさちあれ。

‐めでたしめでたし‐




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