ぷろじぇくとRV(リバイバル)

製作者:あっぷるぱいさん




「プロジェクトVD」「プロジェクトGL」「プロジェクトWD」が未読の方は、まずそちらからお読み下さい。



 皆さん、僕を覚えているだろうか。
 「プロジェクトシリーズ」を読んだ人なら分かると思う。そう僕の名は……公式的には……
「パラコンボーイ」
 そう。パラコ……って誰だよ!! 邪魔すんなよ!! 何なんだよパラコンボーイって! 意味不明だよ!!
パラサイド少年。略してパラコンボーイ」
 黙ってろ!! 貴様は誰だ!! この小説の主人公は僕だぞ!!
 ……まあいい。さて、読者の中には、何で僕が主人公を続けているのか、謎に思っている人がいるかもしれない。と言うのも……


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HERO RELIEF −主人公交代−
(魔法カード)
貴様の時代は終わったんだよ! ガハハハハァ!!

 ば……馬鹿な!? 『主人公交代』だと!? 僕を主人公の座から引きずりおろすと言うのか!? せ……せっかく日の目を浴びられたと思ったのに……また脇役に逆戻り!?
「うへぁぁあ……。この魔法カードの効果により……貴様は脇役どころか、二度と登場することは無い!
 おい! ふざけんなよ!! 主人公交代どころの騒ぎじゃないぞそれ!! 酷すぎだろ!!
「罰ゲーム!! “HERO RELIEF −主人公交代−”!!」

 うわあああああああああああああああああああ!!!!!


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 ―――ってことがあったわけだしね。結論から言うと、確かに僕は、「プロジェクトシリーズ」の主人公ではなくなった。『HERO RELIEF −主人公交代−』の効果により、「プロジェクトシリーズ」の主人公は、今は鷹野さんになっている。
 では、何故僕が主人公なのか。この小説のタイトルを見てほしい。そう。『ぷろじぇくとRV』! これは「『プロジェクト』シリーズ」ではないのだ! 言うなれば「『ぷろじぇくと』シリーズ」!! 「プロジェクトシリーズ」に登場できずとも、別のシリーズで登場するのは何ら問題ない! 『HERO RELIEF −主人公交代−』の効果も、このシリーズにまでは影響していないようだしね。
 まさに、ルールの裏をついた、華麗なる戦術と言えるだろう。流石は僕だぜ!

自画自賛
(魔法カード)
俺TUEEEEEEEE!!!

 しかし、「プロジェクトシリーズ」の主人公の座を奪われたまま、のほほんとしているなんて僕にはできない。よく考えてほしい。あのシリーズの主人公は、僕にしか務められないのだ。そうだろう? そうだよね? ……そう……でしょ? うん。そうに決まってる。
 鷹野さんが主人公になったら、それこそシリアスロードを全速前進してしまうだろう。前回の「天音さん」の一件が、それを暗示している。それでは、読者が納得しない……はずだ。
 だから、何としても、僕が主人公を務める必要があるのだ。それにはやはり……

ゲームをしようぜ!
(魔法カード)
あらゆるトラブルを、ゲーム1つで片付ける。

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 ゲーム……。ここはやっぱり、決闘で決めるべきだろう。考えてみれば、僕はまだ、鷹野さんに一度も勝っていない。そろそろ勝利しなければならないな。読者もそれを望んでいるはず……だよね?
 しかし、鷹野さんは強敵だ。『うずまき』なんて壊れカード使ってくるわ、知らない間に三幻魔を揃えるわ、『サンダー・ボルト』を使われても逆転するわ……。挙げだしたらきりがない。とにかく鷹野さんは強いのだ。
 彼女に勝つにはどうするか? 簡単なことだ。もっと強いカードを手に入れればいい。だから今、僕はカード屋に来ている。「アレ」を手に入れれば、僕のデッキは完全無欠になるはずなのだ! 僕は勝つためには手段を選ばないぞ! 見てろよ鷹野麗子〜〜!!



「すいませーん。『ストラクチャーデッキ−絵空編−』くださーい」



 フフ……。『ストラクチャーデッキ−絵空編−』とは、知る人ぞ知る、最強レベルの構築済みデッキだ。これさえ買えば、鷹野さんに必ず勝てるだろう。何しろ、中身が違うもん。
 まあ、まずは手始めに『コピーキャット』をデッキに入れるとし……
「あ〜『ストラクチャーデッキ−絵空編−』は、しばらく入荷の予定がないですね……」
「!!??」

売り切れ
(罠カード)
自分は5000ポイントの憤りを感じる。

 なんてこった! もう発売してから3ヶ月くらい経つのに、まだ売り切れてんのか!? 噂には聞いていたが、恐るべき売れ行きだ……。『帝王の降臨』に匹敵する人気ぶりだな。 コナ……じゃなくて、I2社は大儲けだろう。
 仕方ない……。他の店に行こう。どこかに必ずあるはずだ。



〜1時間後〜

 甘かった。あのデッキの人気ぶりは異常だ。もう何軒店を回ったかも分からないが、とうとう、『ストラクチャーデッキ−絵空編−』は手に入らなかった。駄目だぁ〜〜! これじゃ鷹野さんに勝てな〜〜い!!
 くそ……。やはり、僕自身のデッキで、鷹野さんとの戦いに、終止符をうてということか……。う〜ん、僕自身のデッキか……。あ、そう言えば……

回収していない伏線
(罠カード)
そうそう。『ゴキブリ・ロック』のこと忘れてた。

 『ゴキブリ・ロック』……。それについては、まだ明らかになっていない。結局のところ、どんな戦術なんだろう? もしかしたら、ここに鷹野さんを攻略するための鍵が隠されているのかもしれない。『ゴキブリ・ロック』がどんな戦術なのかを知れば、きっと僕の武器になる!
 僕はデッキから『ゴキボール』のカードを取り出した。このカードとも、長い付き合いになったな。……最後まで僕と戦ってくれるか? 『ゴキボール』よ!!



ゴキ「うん! わたしがんばる♪」



 …………。
 とうとう、僕にもカードの声が聞こえるようになった。また一歩、真の決闘者に近付けた気がする。
 きっとこれなら、決闘王の武藤遊戯みたいにチート……じゃなくて、神がかり的なドローもできるだろう。何か勝てそうな気がしてきた! よし! 頑張るぞ!!




 家に帰ってきた僕は、パソコンを立ち上げ、インターネットにつないだ。ネットで調べれば、『ゴキブリ・ロック』について、何か情報が得られるかもしれない。まずは、『ゴキブリ・ロック』と打ち込んで、検索してみると……多い。多すぎる。何でこんなにたくさん記事があるんだ?
 しかし……僕は諦めないぞ! 上から順に全てのページを見てやる!!

かくかくしかじか
(魔法カード)
話を短縮し、ストーリーを高速回転させる。

 ついに見つけた!! これが『ゴキブリ・ロック』か! うん。このカードなら、僕も持ってる。今すぐに、『ゴキブリ・ロック』デッキを組めるぞ! いける! これなら鷹野さんに勝てるぞウヒャヒャ〜〜!!


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〜翌日〜

 さて、今日は日曜で学校は休みだが、僕は一刻も早く鷹野さんを倒す必要がある。できれば、今日決闘したいところだ。今日の決闘で鷹野さんを倒す→主人公の座を奪還する→明日いつも通り登校する、というのが理想的な流れだな。
 じゃあ、鷹野さんの家に直接出向いてみるか。鷹野さんの家は、前にストー……じゃなくて尾行した時に調査済みだ。さっそく押しかけてみよう。



 ……で、鷹野さんの家の前。展開早ぇよとか突っ込んではいけない。さあ、インターホンを押してみよう。
 ぽちっとな。

ぷぃぃぃーーーんぷぉぉぉおおおおろろろろろん……

 …………。
 すげえ音だな。いきなりこんな音が鳴ったらビックリするんじゃないか? まあいいや。早く出て来い、鷹野麗子!! 年貢の納め時だぜ!

 …………。

 …………。

 …………出てこない。
 いないのかな? それとも無視されたか。……さては、僕が怖くなって逃げたのか? ふん! 臆病者め! 逃がさんぞ! もう1回インターホンを押してやるわ!
 ぽちっとな。

ズンオンドンガガギイ〜〜〜〜!!

 !!!???
 ……やばい。今一瞬、三途の川が見えた。何だ今の騒音は? こんな音聞こえたら、耳が使い物にならなくなるんじゃないか? ていうか、押す度に音が変わるのか、このインターホンは?
 じゃあ、次はどんな音がするんだろう? 海馬瀬人の笑い声とかになるのか?

ガチャッ

 あ、ドアが開いた。くそっ……少しがっかりだ。もう1回インターホンを押したかったのに。……まあいいや。
 さて、どうやら鷹野さんが直々に出迎えてくれたようだ。
「あ、死に損ないのパラコンボーイ。またストーカー?」
 …………。
 ……そんな言い方はないんじゃないの? 泣くよ? まあいいや。ここで会ったのが運の尽き。
「突然悪いけど……決闘をしてもらうよ」
「決闘? ……別にかまわないけど」
 物分りが良くて助かるよ、鷹野さん。おかげでストーリーが円滑に進む。

ご都合主義
(魔法カード)
都合のいい展開でストーリーを進行させる。

コピー&ペースト
(魔法カード)
パソコンで文章を打ち込む上での手間省き技の1つ。

「中へどうぞ」
 僕は鷹野さんの家に上がらせてもらった。鷹野さんの母親に挨拶したあと、彼女の部屋に案内してもらう。……あ、よく考えたらこれ、結構オイシー展開だよね? だって、女の子の部屋に入れるんだぜ?
 で、鷹野さんの部屋。綺麗な部屋だ……。まさに才色兼備の鷹野さんの部屋……って感じだな。あらゆるものが整理整頓され、ほこり1つ落ちていない。……まあ、壁に打ち付けてあるわら人形が少し気になるが……、他は特に変わったところはない。いかにも女の子の部屋……って感じ?
「私の先攻、ドロー!」
 !!? ちょちょちょちょっと待て!! 勝手に始めるな鷹野さん! まだ僕たちのシャッフルフェイズは終了してないぜ!
「鷹野さん、僕のデッキをシャッフルしてよ。僕も鷹野さんのデッキをシャッフルするから……」
「?? ……えぇ」
 そう。ちゃんと、相手プレイヤーにシャッフルさせないと、不公平だからね。……というのは表向きの理由。実際は……。
「…………」
「…………」
 さて、シャッフルはこれくらいでいいだろう。フフ……。
「じゃあ、シャッフルも終わったし……」
「私の先攻、ドロー!」
 !!? ちょちょちょちょっと待て!! 勝手に始めるな鷹野さん! まだ僕たちのジャンケンフェイズは終了してないぜ!
「鷹野さん、ちゃんとジャンケンで決めようよ」
「…………」
 鷹野さんが苦虫を噛み潰したような顔をした。……そんなに先攻が取りたいのか?
「じゃんけん」
「ぽん」
 僕はグー。鷹野さんはパー。……僕の負けかよ。
「ワハハハハ!! 俺の先攻ドロー!!」
 あああ……。また人格変わっちゃったよ……。まあ、いいや。
 さて、僕の手札は以下のようになっている。


〜僕の手札〜
ゴキボール、ダーク・エルフ、魔のデッキ破壊ウイルス、翡翠の蟲笛、二重召喚


 『ゴキボール』はもはや説明不要だろう。他のカードを1枚ずつ見ていこう。
 『ダーク・エルフ』はレベル4で攻撃力2000を誇る、闇属性・魔法使い族モンスター。ただし、攻撃をするには1000ライフ払わないといけない。
 『魔のデッキ破壊ウイルス』は、攻撃力2000以上の闇属性モンスター1体を生け贄に捧げて発動する罠。相手の場と手札、発動後相手ターンで数えて3ターンの間に、相手がドローしたカードを全て確認し、攻撃力1500以下のモンスターを破壊するカード!
 そして『翡翠(ひすい)の蟲笛』は、相手プレイヤーにデッキから昆虫族モンスター1体を選択させ、デッキの一番上に置かせる魔法カードだ。
 最後に『二重召喚(デュアルサモン)』。この魔法カードを使うと、そのターンにもう一度だけ通常召喚を行うことができる。
 フハハハ! 完璧な手札だ! 『ゴキブリ・ロック』は完成したも同然! 何故だか分かるかい? フフ……。僕が何故、鷹野さんのデッキをシャッフルしたのか、その真の理由を明らかにしよう。
 僕は鷹野さんのデッキをシャッフルする際、あるカードを混入させておいたのだ! その名は『コカローチ・ナイト』!
 ……え? そんなカード知らないって? ↓な感じのカードさ。念の為に言っておくと、『コカローチ』とは、ゴキブリという意味だ。

コカローチ・ナイト
★3/地属性/昆虫族
このカードが墓地へ送られた時、
このカードはデッキの一番上に戻る。
攻 800  守 900

 そして、鷹野さんのデッキには、他に昆虫族カードが入っていない! これは前にストー……じゃなくて、尾行した時に調査済みだ。彼女はあらゆる決闘において、昆虫族のカードを使用していないのだ!
 つまり……この状況で『翡翠の蟲笛』を使えばどうなるか……。当然、彼女のデッキの一番上のカードは、『コカローチ・ナイト』となる!
 そこで、『魔のデッキ破壊ウイルス』を発動すればどうなる? ドローした『コカローチ・ナイト』は『魔のデッキ破壊ウイルス』で破壊されて墓地に置かれ……墓地に置かれた『コカローチ・ナイト』は彼女のデッキの一番上に戻る……。そして、またドロー……。これを繰り返せば、『魔のデッキ破壊ウイルス』の効果が切れるまで、彼女のドローカードは『コカローチ・ナイト』で固定されるのだ! まさに『コカローチ(ゴキブリ)・ロック』!!
 昨日、『遊☆戯☆王カード 原作HP』の小説感想掲示板で見つけた戦術だ。そう……これこそ『ゴキブリ・ロック』の正体!
 さあ……鷹野さん、カードを出しな! 無駄だろうけどな。
「……私は魔法カード『おろかな埋葬』を発動!」

 …………。

 …………。

 …………は?
 何それ? ぼくそんなかーどしらないよ。
「この魔法カードにより、私は自分のデッキからカードを1枚選び、相手の墓地に置く!」
「!!??」
 え? マジで!? ちょ……それって……まずくないか……? 『コカローチ・ナイト』が僕の墓地に置かれたら……!!
「……やっぱりね。こんなことだと思ったわ」
 鷹野さんは、デッキから『コカローチ・ナイト』のカードを選び、僕の墓地に置いた。くそ……バレてたのか!! やばい! 墓地に置かれたことで、『コカローチ・ナイト』の効果が発動する!!
「『コカローチ・ナイト』があなたの墓地に置かれたことで、あなたのデッキの一番上に戻る……」
 くそ……!! OCGではどう処理されるか知らないが、僕の墓地に置かれた以上、僕のデッキの一番上に戻るようだ。……何てこった。僕の『ゴキブリ・ロック』がぁぁああ!!
 これで、僕が次に引くカードは『コカローチ・ナイト』に確定した。
「さらにカードを1枚セットし、『マシュマロン』を守備表示! ターンエンド!」
 く……! 『マシュマロン』は魔法・特殊能力以外の攻撃を受け付けないモンスター! だ……だが、魔法攻撃に弱いという点を突けば……!
「僕のターン、ドロー!」
 ドローカードは当然、『コカローチ・ナイト』……。
「罠カード発動! 『無効』! ドローしたカードをお捨てなさい!」
 な!!?? ちょ……おま……!? ふざけんなよ! ドローカードを捨てろとかマジムカつくんですけど。……ていうかさ、ドローカードは『コカローチ・ナイト』じゃん? 墓地に捨てるじゃん? またデッキの一番上に戻ってくるじゃん? どういうことスか?
 『無効』とは、相手のドローカードを捨てさせる罠カードだ。くそったれが! もう我慢ならねえ!! これでも喰らえ!!
「僕は『ダーク・エルフ』を召喚! さらに魔法カード『二重召喚』を発動! この効果で、僕はもう一度だけ通常召喚を行なう! 出でよ! 『ゴキボール』!!」
「!? 一気にモンスターを2体も?」
 はははは! それだけでは終わらんぞ! 『ダーク・エルフ』は魔法使い! よって、原作ルールに従い、『マシュマロン』を戦闘破壊できる!!
「1000ライフ払い、『ダーク・エルフ』で『マシュマロン』に魔法攻撃!」
「く……!! 『マシュマロン』が撃破された……」

僕 LP:4000→3000

 よし。『マシュマロン』を撃破してやった! これで、鷹野さんの場はがら空き! 『ゴキボール』の直接攻撃が通る!
「『ゴキボール』でプレイヤーに攻撃!」
「う……っ!」

鷹野さん LP:4000→2800

 やった! 先手を取ってやったぞ! はっはっは!
「カードを1枚伏せ、ターンエンドだ!」



LP:3000
モンスター:ダーク・エルフ、ゴキボール
魔法・罠:伏せカード1枚
手札:1枚

鷹野さん
LP:2800
モンスター:なし
魔法・罠:なし
手札:3枚


「私のターン、ドロー!」
 ライフ、そして場の状況……。僕の方が圧倒的に有利! 次のドローカードが固定されているのが痛いが……。
「『魂を削る死霊』を守備表示!」
 何……? 『魂を削る死霊』だと! あれは戦闘で破壊されないモンスターじゃないか! 冗談じゃない! これでも喰らえ!
「じゃあ、僕は罠カード発動! 『魔のデッキ破壊ウイルス』! 『ダーク・エルフ』を生け贄に、鷹野さんの場と手札の攻撃力1500以下のモンスターを全滅させるよ」
「!?」
 驚いたか!! これで3ターンの間、鷹野さんは雑魚モンスターを壁にすることを許されないのだ! 本当なら、『コカローチ・ナイト』とのコンボを決めたかったのだが、まあいい。攻撃力がたった300の『魂を削る死霊』は墓地送りだ! さて、手札の方も見せてもらおうか。
「じゃあ、手札の確認を……」
「ぬぬぬぬぅぅ!!」
 何か鷹野さんが悔しがっている。まあそうだろうな。手の内をさらけ出すなんて、屈辱的だもんね。


〜鷹野さんの手札〜
地縛霊、戦士の生還、無効


 …………。
 ちょっと待て。『地縛霊(アース・バウンド・スピリット)』の攻撃力は500。よって『魔のデッキ破壊ウイルス』の効果で消滅……。まあ、これはいいだろう。『戦士の生還』は、墓地から戦士族モンスター1体を手札に加える魔法カード……。『魔のデッキ破壊ウイルス』は感染しない。……これも問題ない。
 ただ……『無効』って何だよ!! もう1枚持ってたのかよ!? 確かにイシズも2回使ってたけどさあ!!
「私はカードを2枚伏せ、ターンエンド」
 くそくそくそ!! 『無効』を伏せたな!! おのれ! だが、貴様の場のカードは、『無効』と『戦士の生還』のみ! 次のターン、『ゴキボール』の攻撃を防ぐことはできんぞ!!
「僕のターン、ドロー!」
 ドローカードは当然、『コカローチ・ナイト』……。
「罠カード発動! 『無効』! ドローしたカードをお捨てなさい!」

コピー&ペースト
(魔法カード)
パソコンで文章を打ち込む上での手間省き技の1つ。

 く……! これで『コカローチ・ナイト』は再び墓地へ……。そして、僕のデッキの一番上に戻る……。邪魔だ……。
 しかし! このターンの攻撃は止められない!!
「バトルフェイズ! 『ゴキボール』の攻撃ぃ!!」
「……っ!!」

鷹野さん LP:2800→1600

 よし! もう一息! 次のターン、『コカローチ・ナイト』を召喚し、2体で攻撃すれば勝てる! 鷹野さんの手札は0! 場には『戦士の生還』だけ! しかも、『魔のデッキ破壊ウイルス』の効果で、攻撃力1500以下のモンスターは即座に破壊できる! このまま押し切るぜ!
「ターン……エンドだ!」



LP:3000
モンスター:ゴキボール
魔法・罠:なし
手札:1枚

鷹野さん
LP:1600
モンスター:なし
魔法・罠:伏せカード(戦士の生還)
手札:0枚
魔のデッキ破壊ウイルス:あと2ターン


「私の……ターン……」
 さあ、この状況を逆転できるか!? 言っておくが、『命削りの宝札』を引けるとは考えない方がいいぞ。それはもう、前回やったネタだからな……。『天よりの宝札』は、鷹野さんは持っていないって設定だし、『強欲な壺』は……『強欲な壺』はありえそうだな。
「ドロー……」
「鷹野さん、手札の確認を……」
 鷹野さんは一体何のカードを引いたんだ……? これが攻撃力1500以下のモンスターなら、僕の勝利が確定するんだが……。さあ、手札をお見せなサーイ! マインド・スキャン!

ドローカード:…ロ……ク…………

 ん? あれ?? よく見えないな……。何でだ? モンスターカードではないようだが……何か、知らない女の子がカードの前に立ち塞がっている?? ちょ……ちょっと邪魔だよ!! どけよ!! カードが見えないだろうが!!



??「これ以上、麗子ちゃんの心の中には入らせないよ! あっち行け!」



 誰だよお前は!? つーかカード見せろよ! そういう効果なんだから!!
 今の気持ちを原作に例えると、遊戯の仲間に邪魔されてカードが見えなかった時のペガサスに似ている。
「私はカードを伏せ、ターンエンドよ」
 ほらぁ!! 結局見えなかったじゃないか!!! 誰だったんだ? あの女の子は……。
 くそ……。だが、次のターン、モンスターの総攻撃が通れば、僕の勝ちだ!



LP:3000
モンスター:ゴキボール
魔法・罠:なし
手札:1枚

鷹野さん
LP:1600
モンスター:なし
魔法・罠:伏せカード(戦士の生還)、伏せカード(…ロ……ク…………)
手札:0枚
魔のデッキ破壊ウイルス:あと1ターン


「僕のターン、ドロー!」
 ドローカードは当然、『コカローチ・ナイト』。こいつを召喚し、『ゴキボール』とともに攻撃すれば、僕の勝ちだ!
「『コカローチ・ナイト』を召喚し、鷹野さんに総攻撃だ!」
「!」
 ははははは! 勝った!!









そいつはどうかな?
(王様カード)
対戦相手及び読者はビックリする。









「……今、確か『攻撃』と言ったわよね?」
「…………!」
 何!? やばい……。罠カードを伏せていたか……?? 何てこった! 鷹野さんの伏せていたカードとは一体……??
「私の場に伏せられていたのは、敵の攻撃宣言がトリガーとなって発動する罠! 見せてあげるわ、パラコンボーイ! これが私の全力よ!! 発動せよ!! 罠カード『プロジェクトGL』!!

 …………。

 …………。

 …………え?
 今……何と言った?? 『プロジェクトGL』??

プロジェクトGL
(罠カード)
敵の攻撃宣言時に発動!
場のゴキブリカード1枚を選択する。
選択したゴキブリカードの持ち主は、
山札からモンスター以外のカードが出るまでカードを引き、
引いたモンスターを選択したゴキブリモンスターに融合させる
(モンスター以外のカードは手札に加える)。
選択したゴキブリカードは攻撃を封じられ、
ターン終了時に破壊される。

「こいつはモンスター以外のカードが出るまで、何枚でもカードをドローし、ドローしたモンスターを場のゴキブリモンスター1体に融合させるカード! 私が選択するゴキブリモンスターは……あなたの場に出ている『ゴキボール』!!」
「な……!?」
 ちょっと待て!! ふざけんなよ! そんな都合のいいオリジナルカード略してオリカを使うのってアリなの!?? つまり……僕はこれからカードをドローし、『ゴキボール』に融合させると……。
「さあ! デッキからカードの剣を抜け!!」
 くそ……。まあいい。所詮は一時凌ぎ!!
「行くぜ! 鷹野さん! ドロー! モンスターカード! ドロー! モンスターカード! ドロー! ……魔法カード……」
 ……意外と早く終わった。アニメみたいには行かないものだな。
 さて、引いたカードを確認してみよう。

〜ドローカード〜
1枚目:ゴキボール
2枚目:ゴキボール
3枚目:火あぶりの刑

 お!? 『ゴキボール』が2体いるじゃないか!! やったぜ! 鷹野さんよ……墓穴を掘ったな!! 『ゴキボール』が3体揃った時、最強のゴキブリカードがその姿を現すのだ!!
「僕の引いたモンスターは、『ゴキボール』2枚! 場の『ゴキボール』に融合させる!!」
「…………!」
 見るがいい!! これが俺の『マスター・オブ・ゴキボール』だ!! ワハハハハハハ!!! 
 融・合・召・喚!

マスター・オブ・ゴキボール
★12/地属性/昆虫族
「ゴキボール」+「ゴキボール」+「ゴキボール」
このモンスターの融合召喚は上記のカードでしか行えない。
また、このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードが破壊された時、空いている自分のモンスターゾーン全てに
「ゴキボールトークン」(昆虫族・地・星4・攻1200・守1400)を特殊召喚する。
「ゴキボールトークン」はルール上、カード名を「ゴキボール」として扱う。
攻5000  守5000

 何の問題もなく『マスター・オブ・ゴキボール』を召喚できたということは、『プロジェクトGL』による融合は、融合召喚として扱われるのだろう。やったぜ!!
 さて、『プロジェクトGL』で融合召喚したモンスターは、このターンの攻撃を封じられ、エンドフェイズに破壊される。しかし、『マスター・オブ・ゴキボール』にとっては、それは都合のいいことだ。こいつが破壊されると、僕の場の空いているモンスターゾーン全てに、『ゴキボールトークン』を出現させるのだ!!
 さて……その前に、僕の場には『コカローチ・ナイト』が残っている。こいつで攻撃させてもらおうか!!
「『コカローチ・ナイト』で攻撃」
「うっ……!!」

鷹野さん LP:1600→800

 よし……! もう一息! 僕の手札には、さっきドローした『火あぶりの刑』がある! こいつを使えば、鷹野さんに600ポイントのダメージを与えられる!
「さらに魔法カード発動! 『火あぶりの刑』! 鷹野さんに600ダメージだ!」
「!!」

鷹野さん LP:800→200

 あと200! あと200! 覚悟を決めろぉ! 鷹野麗子!!
「僕はこれで、ターン終了……」
「この瞬間! あなたのゴキブリカードは抹殺される!!」
 はいはい。そうだったね。じゃあ、破壊っと。……さあ、決め台詞と行こうか!
「鷹野さん……君はミスを犯した!」
「!?」
 僕の場のモンスターは、『コカローチ・ナイト』が1体。つまり、空いているモンスターゾーンは4つ! よって、『ゴキボールトークン』が4体出現する!!
「『ゴキボールトークン』4体を特殊召喚!!」



LP:3000
モンスター:コカローチ・ナイト、ゴキボールトークンゴキボールトークンゴキボールトークンゴキボールトークン
魔法・罠:なし
手札:1枚

鷹野さん
LP:200
モンスター:なし
魔法・罠:伏せカード(戦士の生還)
手札:0枚
魔のデッキ破壊ウイルス:あと1ターン


「『ゴキボールトークン』が……4体!?」
 ははははは! ミスったな、鷹野さん! 何が『プロジェクトGL』だよ! 僕が有利になっただけじゃないか!!
「さあ、鷹野さんのターンだよ」
「…………」
 鷹野さんはかなりショックを受けているようだ。どうやら、『マスター・オブ・ゴキボール』の存在を知らなかったらしい。
 おそらく鷹野さんが狙っていたのは、『ゴキボール』に適当なモンスターを融合させ、このターンの攻撃を無効化。そして、エンドフェイズに破壊する……というものだったんだろう。けど、『マスター・オブ・ゴキボール』の召喚により、当てが外れたわけだ。
 残念だったね、鷹野さん。僕は……ここで君を超えさせてもらうよ。
「私の……ターン……」
 ここで引いたカードが攻撃力1500以下のモンスターなら、『魔のデッキ破壊ウイルス』の効果で、即座に破壊だ! さあ! デッキからカードの剣を抜け!
「ドロー……!」
 ふふふ……。引いたカードをお見せなサーイ!

ドローカード:E・HERO バブルマン

 ははははは! 『E・HERO(エレメンタルヒーロー) バブルマン』は攻撃力800の弱小モンスター! 『魔のデッキ破壊ウイルス』の効果で破壊だぁ!!
「『バブルマン』は破壊される!」
「…………」
 くくく……鷹野さん……いよいよ打つ手がなくなったな!!
「僕の……勝ち―――」





「そいつはどうかな?」





 うお!!? まだ何か企んでるのか!!? あれ? そう言えば、鷹野さんの場には、伏せカードが残されているな……? 何だっけ?
 ………………あ。
「伏せカードオープン! 魔法カード『戦士の生還』! 自分の墓地から、戦士族モンスター1体を手札に加える! 私は、今破壊された『バブルマン』を手札に戻す!」
 し……しまったぁ〜〜〜〜!! 『バブルマン』って、確か戦士族だよ!!
「そして……手札が『バブルマン』1枚の時、『バブルマン』を特殊召喚できる! よって、『バブルマン』を守備表示で特殊召喚! さらに……『バブルマン』が場に出た時、自分フィールド上と手札に、他のカードがない場合、デッキからカードを2枚ドローできる!」
 く……っ!! 遊城十代みたいなことしやがって!! まずい……次は『強欲な壺』を使ってくる恐れが……
「2枚ドロー! 私の引いたカードは、この2枚!」
 く……! 何を引いたと言うんだッ! まさか本当に『強欲な壺』を……??

〜ドローカード〜
1枚目:宇宙の収縮
2枚目:明鏡止水の心

 …………。

 …………。

 …………!?
 ば……ばばばっば馬鹿な!!!!! 『宇宙の収縮』だと!!!?? あれは……確か……↓みたいなカードだったはず!!

宇宙の収縮
(永続罠カード)
それぞれのフィールド上に存在しているカードが
5枚以下の場合に発動する事ができる。
お互いにフィールド上に出せるカードの合計枚数は5枚までになる。

 ま……まずい! 今、僕の場は5体のゴキブリモンスターで埋まっている! 『宇宙の収縮』を使われれば、これ以上カードを出せなくなる! しかも、『E・HERO バブルマン』は守備表示! 僕のモンスターを自滅させて、カードを減らすこともできない!!
 それに……『バブルマン』の守備力は1200……! 僕の場の『コカローチ・ナイト』の攻撃力は800! 『ゴキボールトークン』の攻撃力は1200! 駄目だ……倒せない! 攻撃も封じられた!! くそ!! やばいよ……! ロックをかけられる!! チキショオ〜!! 『翡翠の蟲笛』を場に伏せておけば良かったぁ〜〜!!
「そして、場にカードを2枚伏せ、ターンエンド!」
 くそ!! 僕の場のカードを5枚のままにしたか!! やばいって!!



LP:3000
モンスター:コカローチ・ナイト、ゴキボールトークン、ゴキボールトークン、ゴキボールトークン、ゴキボールトークン
魔法・罠:なし
手札:1枚

鷹野さん
LP:200
モンスター:E・HERO バブルマン(守備)
魔法・罠:伏せカード(宇宙の収縮)、伏せカード(明鏡止水の心)
手札:0枚


 僕のターンで、鷹野さんは確実に『宇宙の収縮』を発動する……。そうなれば、僕が新たなカードを出すことは困難……!
 いや……待て。なら、ゴキブリたちを生け贄とかに使えば……! そうやって、場のカードを減らしていけばいいんだ! よし! 上級モンスターを引き当てるぞ!!
「僕の……ターン!!」
 運命のドローフェイズ! 目に見えるデッキから見えないカードを引くことの勇気!! だが……その見えないカードを信じる力が決闘者の強さ!!
 僕は自分のデッキを信じる! 僕のデッキよ!! 勝利を導けぇぇぇえええ!!!
「――――ドロー!!」
























ドローカード:サンダー・ボルト






 …………。





 いらねええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!
 敵のカード減らしたって、意味ねえんだよォォォォォオ!!!! 大体、『宇宙の収縮』使われたら、発動すらできないから!!!
「永続罠発動! 『宇宙の収縮』! 互いに場に出せるカードは5枚までとなる!」
 くそくそくそ!! もう何にもできねえよ!!
「ターン……エンド」
「私のターン、ドロー!」
 『魔のデッキ破壊ウイルス』の効果はもう切れている。よって、ドローカードの確認はできない。
「魔法カード『強欲な壺』を発動! さらに2枚ドローする!」
 …………!

自分が劣勢の時に相手が使う『強欲な壺』
(極悪罠カード)
自分は決闘を続ける気力を5000ポイント失う。

 ……もうやだ。劣勢状態で『強欲な壺』使われるとかチョーありえないんですけど。マジやる気なくしたわ……。『強欲な壺』なんて禁止カードになればいいのに。
「私は『黒魔導師クラン』を守備表示で召喚! そして、伏せておいた装備魔法、『明鏡止水の心』を『クラン』に装備!」
 ん? 『明鏡止水の心』? さっき『バブルマン』の効果で引いたカードか……。『宇宙の収縮』のインパクトが強すぎて、目に入ってなかったよ。
 『明鏡止水の心』は、攻撃力が1300未満のモンスターに装備する魔法だ。装備モンスターは、戦闘や、対象を取る効果では破壊されなくなる。

 …………。

 …………。

 …………? ちょっと待て。鷹野さん、『明鏡止水の心』を何のモンスターに装備してたっけ?
 場を確認してみよう。……装備したのは……『黒魔導師クラン』?? そいつは確か……

黒魔導師クラン
★2/闇属性/魔法使い族
自分のスタンバイフェイズ時、相手フィールド上に存在する
モンスターの数×300ポイントダメージを相手ライフに与える。
攻1200  守   0

 ……あ。じゃあ何か? 僕の場にはモンスターが5体いるから、鷹野さんのターンが来るたびに、1500ダメージを喰らうと?
「私はカードを1枚伏せ、ターンエンドよ」



LP:3000
モンスター:コカローチ・ナイト、ゴキボールトークン、ゴキボールトークン、ゴキボールトークン、ゴキボールトークン
魔法・罠:なし
手札:2枚

鷹野さん
LP:200
モンスター:E・HERO バブルマン(守備) 黒魔導師クラン(守備)
魔法・罠:宇宙の収縮、明鏡止水の心(クランに装備)、伏せカード1枚
手札:0枚


 だ……駄目だ……! 『クラン』を倒そうにも……戦闘では破壊できない!! 『サンダー・ボルト』を使おうにも、カードを出せない!! 何とか……しなければ……!! 頼む! 何かいいカード来てくれ!!
「ぼ……僕の……ターン……ドロー!!」

ドローカード:人造人間サイコ・ショッカー

 く……くくく……ふはははは! やったぞ! 『サイコ・ショッカー』を引いた! こいつは召喚するために2体の生け贄が必要! つまり、2体のモンスターを生け贄に、1体のモンスターを召喚するんだから、場のカードの枚数が5枚から4枚になる! そうなれば、『サンダー・ボルト』を発動することができる!! 勝った……!!
「よし……僕は2体のモンスターを生け贄に……」
「やっぱりね……。永続罠発動! 『生贄封じの仮面』! この罠がある限り、あなたのモンスターは生け贄にできない!」





 …………。





 ……鬼だ。絶対鬼だ! この人は絶対に鬼だ!!
 もうあれじゃん! 『クラン』の効果で負け確定じゃん!! 完全ロックじゃん!! 何だよこれ!!! もうやってらんねえ! サレンダーしてやるよ!!
「さ……流石だね……鷹野さん。サレンダーさせてもら……」
「拒否するわ。私の手であなたのライフを0にしなければ、意味がない」
 …………。
 て……抵抗できなくなった相手を……痛めつける気なのか!!?? もういいじゃん! 勘弁してよ! 負けましたからぁ!!
「さて、私のターン……『クラン』の効果でダメージを受けてもらうわ! あなたのモンスターは5体! よって1500ダメージ!!」
 うわああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!

僕 LP:3000→1500

 や……やばい……! 次の一撃で……負ける!!
「ターンエンドよ」
 お……落ち着け……。まず僕の場にあるカードを確認しよう。『コカローチ・ナイト』が1体と、『ゴキボールトークン』が4体……。合計5枚のカードが出ている。
 鷹野さんの場には、守備表示の『バブルマン』と『クラン』。『クラン』には『明鏡止水の心』が装備されているため、戦闘で破壊されない。そして、『クラン』は次の鷹野さんのターン、僕に1500ダメージを与える。そうなれば、僕の負けだ。
 だが、対抗しようにも、『宇宙の収縮』の効果によって、僕はこれ以上カードを場に出すことができない。『生贄封じの仮面』が出ているため、僕のモンスターは生け贄に使えない。
 絶対……絶命……! もう……駄目なのか……?
「僕の……ターン……」
 …………!
 手を伸ばせば届くはずのカードが……遠ざかっていく……!!
 いや違う! カードが遠ざかっているんじゃない! 僕がカードから逃げようとしているんだ……。
 僕の「恐怖心」がカードの距離を拡げているんだ!
 僕は怯えている……この最後のカードを引くことに……。

 …………。

 ……全部原作の台詞の引用じゃないか(コミックス5巻参照)。ちゃんと考えろよ作者。
 とりあえず……カードを引こう。もう無理だ。この状況を打開するカードなんて存在しないんだ。



ゴキ「諦めちゃ駄目だよ! デッキを信じて!」



 …………。
 この声は……『ゴキボール』……! お前の声なのか!?



ゴキ「信じていれば……デッキは答えてくれるよ!」



 ……そうだな。よし! 僕は……自分のデッキを―――信じるぜ!!
「僕のターン、ドロー!!」
 僕はもう……恐れない!! 信じる心が……勝利を導く!!
「僕の引いたカードは―――」

ドローカード:溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム

 …………。
 『溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム』は、相手の場のモンスター2体を生け贄にして、相手の場に召喚される、攻撃力3000のモンスター。そして、コントローラーに毎ターン700ダメージを与える効果を持つ……。
 駄目だ……。『生贄封じの仮面』で、モンスターを生け贄に捧げることは禁じられている。出せない……。
 だってほら、『生贄封じの仮面』の効果テキストは―――

生贄封じの仮面
(永続罠カード)
相手プレイヤーがモンスターを生贄宣言した時に発動!
そのモンスターの生贄は無効となり
このカードが場にある限り
相手モンスターはすべて生贄にはできない。

 …………?
 あれ? あ、そうだ。原作効果なんだっけ? じゃあさ……こういうのもアリじゃねえ?
「鷹野さん……」
「何?」
 僕は力強く宣言した。もう僕を止めることはできない!!
「僕の―――勝ちだ!!」
「!?」
 鷹野さん……君と出会った時から満たされることのなかった、勝利への飢え……敗北の渇き……。その苦しみから、僕はやっと逃れることができる!
 その苦しみを君に教えてやる!

 …………。
 また原作の台詞の引用かよ(コミックス12巻参照)。

「僕は、鷹野さんの場の『バブルマン』と『クラン』を生け贄に捧げ……!」
「何! 『生贄封じの仮面』によって、生け贄召喚は……」
 そう言うと思ったよ……。けどね―――
「そのカードには『僕の場のモンスターが生け贄にできない』って書いてある。ならば、鷹野さんの場のモンスターを生け贄に使うまで!」
「!? ……そんな……!」
 ワハハハハハ! 神よ、降臨せよ!!
「『ラヴァ・ゴーレム』を鷹野さんの場に召喚! このカードは、毎ターンコントローラーのライフを700削る! 鷹野さんのライフは残り200!」
「…………!!」
 『クラン』が消滅したことで、僕がダメージを受けることはなくなった。これで……僕がエンド宣言をすれば……終わる……!! 勝った……!!
 あとは、『ラヴァ・ゴーレム』に攻撃されても大丈夫なように、モンスターを全て守備表示にしておけば、完璧だ……!
「僕は、場のモンスターを全て守備表示にして―――ターン―――エンド―――!」



LP:1500
モンスター:コカローチ・ナイト(守備)、ゴキボールトークン(守備)、ゴキボールトークン(守備)、ゴキボールトークン(守備)、ゴキボールトークン(守備)
魔法・罠:なし
手札:3枚

鷹野さん
LP:200
モンスター:溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム
魔法・罠:宇宙の収縮、生贄封じの仮面
手札:1枚


「私の……ターン……ドロー!」
 さあ……もう君に打つ手はないはず!!
「『ラヴァ・ゴーレム』の効果により、鷹野さんに700ダメージ!!」
「!」
 原作では、バトルフェイズ終了後にダメージを与えていたような気がするが、まあいいだろう。言ったもん勝ちさ!
「これで僕の……勝ちだ―――!!」





「そいつはどうかな?」





 何!!? まだ何か隠していたのか!!?
「た……鷹野さん……一体何を……?」
「ふふ……私は手札からこのカードを発動させてもらったわ。魔法カード『痛魂の呪術』! このターンに受けたダメージを、相手プレイヤーに移し変える!」
 ば……!? 馬鹿な!!!? じゃあ、700ダメージは僕が受けることに……!?

僕 LP:1500→800

 く……そ……っ! 勝てたと思ったのに! ホントに……鷹野さんって底なしだな……。
 けど……次のターンまでに『ラヴァ・ゴーレム』を攻略されなければ……まだ―――
「パラコンボーイ……あなたはやはり甘い……」
 …………え?
 『甘い』って……鷹野さん……何を企んでいる……!?
「……勝つのは私よ。『火霊使いヒータ』を召喚!」
 !? ……『火霊使いヒータ』? え〜と……聞いたことはあるんだけど……何だっけ?
「『火霊使いヒータ』は攻撃力500のモンスター。しかし……このカードと場の炎属性モンスター1体を生け贄に捧げることで、『ヒータ』は進化する!」
 何……だと……? 進化だと!? エヴォリューションだと!? つーか炎属性って……まさか、『ラヴァ・ゴーレム』を生け贄に!?
「『火霊使いヒータ』と炎属性モンスター『ラヴァ・ゴーレム』を生け贄に捧げ―――デッキより『憑依装着−ヒータ』を特殊召喚!!」
 おのれぇ!! 『ラヴァ・ゴーレム』をこんな形で利用されるとはぁっ!! ていうか『憑依装着』? 知らないよ、そんなカード!! 攻撃力は……1850か……。
「『憑依装着−ヒータ』がこの方法で特殊召喚された場合、特殊能力を得る。……それは、守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が上回っていた場合、その数値だけ相手にダメージを与える貫通能力!!」

 …………。

 …………。

 …………え?

 貫通能力!? かんつうのうりょく!? カンツウノウリョク!? kantunoryoku!?
 ぼ……僕のモンスターは全て守備表示……。『ゴキボールトークン』の守備力は1400……攻撃されれば450ダメージ……。『コカローチ・ナイト』の守備力は900……攻撃されれば950ダメージ……。

 …………。

 ……僕の……負け……?

「『憑依装着−ヒータ』で、『コカローチ・ナイト』を攻撃!」

僕 LP:800→0



 僕の……最強を誇るデッキ……最強のしもべ……。
 僕の戦術に非はなかった……。すべてにおいて、完璧な手札が揃っていたはず……。
 だが……敗けた……。

 ……また引用だよ(コミックス30巻参照)。

「パラコンボーイ。今、私とあなたの間に器の差は存在するけど……力の差もある!!
 鷹野さんは、憐れむつもりなどないようだ。容赦がないな。実にしたたかな女性だよ。
「私は、あなたの決闘者としての実力は認めていない! けどね……これだけは言っておくわ……」
 くそ! 勝者はああやって説教する特権が与えられるからなぁ……。まあいいや。好きなだけ言えばいいさ。今は黙って聞いていてやるよ。……つーか、僕の力は認められていないんですね……。
「あなたには、私の家の規定により、処罰を下さねばならない……。デッキシャッフルの際、私のデッキに『コカローチ・ナイト』を混入したこと……。私の目を欺くことはできない……」
 そうだったね……。まあいいさ。どうせまた『主人公交代』みたいなヤツだろ? 別にかまわないよ。違うシリーズに登場すればいいんだから。
「覚悟はいいわね……」
 鷹野さんは、壁に打ち付けられたわら人形を手に取った……って何する気だオイ!
「敗者の魂は、この人形に封印されマース!! パニッシュメントゲ〜ム!!」
 !!???? 馬鹿な!!? そんな非ィ現実的なことがあってたまるか! 貴様の持つオカルトグッズなど、僕には通用しな―――――――――――――???










































●     ●     ●     ●     ●     ●     ●


 ―――――…………?
 ぼ……僕は今まで何を……? 確か、鷹野さんに罰ゲームを喰らって……そこから先は覚えていないな……。
 あれから、どれくらい経ったんだろう? 目が覚めた時、僕は見覚えのある場所にいた。ここは……確か……?
「よう、囚人番号44番……久しぶりじゃねえか」
 隣の部屋から壁越しに声が聞こえる。……あれ……!? ここってまさか……!?
「あ……あなたは……まさか!?」
「ん? 忘れたのか? 俺だよ俺。囚人番号99番!
 嘘おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?? ここはもしや、『プロジェクトGL』の時に来た牢獄!!? また捕まったよ僕!!! 何で!! どうして!? ホワイ!!!

急・展・開
(罠カード)
読者は脈拍数が1上昇する。

「で、44番よぉ……まだ『ゴキブリ・ロック』の話が終わってなかったな。どこまで話したっけ?」
 く……くそ……! それどころじゃない! まさか、鷹野さんが何かしたのか??
「ぼ……僕は……何でこんなところに!!?」
「え? 住居不法侵入の容疑じゃないの?」
 不法侵入!!?? くそ! 絶対、鷹野さんの仕業だ!! あの女ぁぁああ!! ちゃんとインターホン押しただろうが!!! 何が不法侵入だ!!
「まあ聞けよ。そこで金太郎飴をかじったジョニーが、実は相対性理論が役立つことに気付き、車を走らせたんだ。しかし、その途中で松尾芭蕉の存在がジョニーの脳裏を過ぎり、思わず彼は叫んだんだ! 『ピケル萌え』ってな……」
 くそ……鷹野さんめぇ〜〜〜!! 覚えてろよ〜〜〜!! かならず貴様をこの手で叩き潰してやるからなぁぁあああ!!!!


ゴキ「わたしたちの戦いは、まだまだ終わらないよ!」





〜Fin〜








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