走れネオス

製作者:仁也さん




 前書き:この作品は遊戯王GXが放映されない、あるいは放送が遅れてる地域の人たちに十代とネオス達の関係を説明する為に企画されたものです。
 しかしこの計画にはひとつ誤算がありました。
 それはこれを書いたヤツもGXを観てないということです!!

 はじまりはじまり。





「ネオス、お前死刑」
 ある日、この国の王様、ダンディライオン王が言いました。割とあっさりと。
「待ってください王様! 何故私が死刑なのです」
 もちろんネオスは猛反発しました。
 王様は、暇だから誰か死刑にしてみんべぇと思った、とは言えないのでまともな理由を考えました。即席で。
「いや、なんかお前生かしておくと危険そうだから」
「何故私が生きていると危険なのです!?」
「まずそのウルトラマンみたいな頭だな。著作権とかそこらへんがすごく危険だ」
「(;゜ Д゜)!?」
 ネオスは反論できませんでした
「しかし王様、私は妹のバーストレディの結婚式を祝いに行かなければならないのです。どうか結婚式が終わるまで死刑を待ってくれないでしょうか?」
 ネオスは必死に頭を下げました。
「でもお前そんなこと言って逃げるつもりだんべ?」
 しかし王様は無情にもそんなわけわからんなまでネオスの言葉を切って捨てます。
 ネオスは王様を闇討ちしたい衝動を必死に抑えます。
「では、王様。私の親友アクア・ドルフィンを人質に捧げますから。どうか結婚式が終わるまで待ってくれませんか」
 ネオスは譲歩して、再度頭を下げます。
「う〜し、わかった。じゃあ3日だけ待つぞ。それまでに戻ってこなかっらおみゃあの代わりにアクア・ドルフィンが死刑になんべからな」
 王様はやはりよくわからん訛りで了承しました。


「実はかくかくしかじかなんだアクア・ドルフィン。俺がバーストレディの結婚式を祝ってる間、人質になってくれないか?」
 かくかくしかじかで人質にされたのはネオスの親友アクア・ドルフィンです。
 彼女は男勝りな性格で、喋り方も少々男っぽいところがありますが立派な女の子です。
 アクア・ドルフィンはネオスの元カノで、今もときどき恋愛相談などに乗ってもらってる間柄です、ってそれ滅茶苦茶いいヤツだなオイ!!
「わかったわよ。まったくネオスはアタシが居ないとダメなんだから」
 溜息をつきながらアクア・ドルフィンは承諾しました。
 アクア・ドルフィンもネオスが情けない男だというのはよくわかっているのです。
 こんなとんでもない話もあっさり受けてくれるあたりアクア・ドルフィンの器の大きさは計り知れません。


 そしてネオスは妹が住んでるスカイスクレーパー村に向かいました。
 もちろん、妹の一生に一度だけの晴れ姿を祝う為です。ってか一生に何度もあって欲しくないと願いたいものです
 妹の婚約者はフェザーマンといって、ピケルに戦闘で負けてしまうヘタレなHEROです。
 しかしフェザーショットによって攻撃回数を増やすことができるのです。
 しかし元がザコなので攻撃回数が増えてもたいしたことありません。
 ネオスはこんなヘタレが結婚相手で大丈夫なのかと兄として心配もしたものです。
 しかし、幸せそうな二人が「子供は男の子だったらフェニックスガイ、女の子だったらフレイムウィングマンと名付けよう」と微笑ましく会話をしているのを見てそれも杞憂だったのだなと思うことにしました。
 ちなみに幼馴染のスパークマンは光源氏気取りで早くも二人の子供を狙っています。ってか産まれてきてもいねぇよ!!
 そんなスパークマンにフェザーマンは「お前なんかに娘はやれん! お前には沼地さんちの魔神王あたりがお似合いだぜ!!」と言いながら唾を吐き捨てたら、スパークガンで撃たれました。
 しかしそこはフェザーウィンドで防ぎました。フェザーマンは魔法・罠を封じることができるのです。
 でも魔法・罠を使うまでもなく素手でボコられました。やっぱりヘタレはヘタレなのです。
 まあそんなことは置いといて、その村ではネオスにとって予想外の出来事が待っていたです。


 実は結婚を間近に控えたバーストレディはクレイマンと浮気をしていました。
 クレイマンは言いました。
「どうしてもダメなのかバーストレディ。俺と結婚はしてくれないのか?」
「ダメよ。もう周りは私とフェザーマンが仲のいい理想的なカップルだって信じてるわ。今更別れるなんてできないわよ。それにアナタと幸せになって子供ができたって、みんなは認めやしない。K●NAMIにも冷遇されるだけよ」
 バーストレディは自嘲気味に吐き出します。
 どこまで子供の夢を壊すHEROなのでしょうコイツラは。
 しかしフェザーマンも馬鹿ではありません。
 バーストレディの浮気には薄々勘づいてました。
 そして名探偵バブルマンに浮気調査を依頼していたのです。
 名探偵バブルマンは見た目は中年太りしたおっさんみたいですが、バブルショット型麻酔銃でプロたんさんを眠らせ、バブルイリュージョンで声を変えて名推理を披露する筋金入りの探偵なのです。
 ってかこいつも著作権とかそこらへんが危険そうなのでダンディライオンの国に居たら死刑にされてたと思います。
 そしてバブルマンとフェザーマンは浮気現場に突入しました。
 二人で力を合わせればダイレクト・アタックだって楽勝なのです。
 でも一人じゃなんにもできないあたりフェザーマンはやっぱりヘタレなのです
 そこでバブルマンは凍りつきました。自分のかつての交際相手だったバーストレディとクレイマンの二人と鉢合わせです。
 バブルマン節操無さ過ぎです。
 その後、修羅場はありましたが4人は色々話し合った末に和解したのです。
「なるほど、俺が居ない間にそんなことがあったのか」
 話を聞いてネオスが納得します。
「それであの全身タイツの変なのが出てきたわけだ」
 ネオスは遠い目をします。
「そんなことより、兄さんもそろそろ身を固めたほうがいいわよ」
 お節介にも妹はそう言います。自分は浮気してた分際で。
「う〜ん、そう言われてもなぁ」
 ネオスは煮え切らない様子です。
「兄さんは飽きっぽいから、女の子と交際コンタクトしてもすぐ融合デッキに戻っちゃうもんね」
「俺は一人の女に縛られるなんて柄じゃないのさ。将来は一夫多妻制の国に引っ越してウッハウッハな余生を送るのが夢なんだ」
 ネオスはもうだいぶダメ人間っぽいです。
 ふと、ネオスの頭に親友のアクア・ドルフィンの顔が浮かびました。
 実はネオスは国には帰らないつもりでした。
 帰っても死刑にされるだけ、しかし帰らなければアクア・ドルフィンが殺されてしまいます。
(アイツも俺の性格はよくわかってるはずだ。今頃自力で逃げ出してんだろ)
 アクア・ドルフィンは既にネオスと3回も別れてるのです。お互いの性格はよくわかってました。
「そんな風に飽きっぽい兄さんにずっとついてきてくれる人なんて居るのかしら」
 溜息交じりのバーストレディの台詞が横から聞こえてきました。
「お前なぁ、俺だって……」
 反論しようとして、ネオスははっとしました。
 今まで何人もの女性を渡り歩いてきたネオス。
 大抵の彼女はネオスの飽きっぽい性格に呆れて、別れたあとは二度と相手にしてくれなかったのに3回も付き合ってくれたのはアクア・ドルフィンだけでした。
 急にネオスはアクア・ドルフィンのことが気掛かりになりました。
「悪い、バーストレディ。俺今から国へ帰る」
 ネオスは走り出しました。


 野を越え、山を越え、ネオスは必死に走りました。
 3日目の日暮れ、それまでに帰らなければ人質となったアクア・ドルフィンは殺されてしまう約束なのです。
 タイムリミットは目前でした。全力で走っても間に合うかきわどい時間です。
(なんでだ? アクア・ドルフィンなら俺のことなんて待たずに逃げ出してるって。わかりきったことだろ? なのになんでこんなに気になるんだよ……)
 そしてネオスは国に辿り着きました。
「ネオス!!」
 そこでは、まさに処刑される準備が着々と進められていたアクア・ドルフィンが驚きの表情でネオスを迎えました。
 ネオスはその予想もしていなかった光景に動揺を隠せませんでした。
「アクア・ドルフィン、なんで逃げなかった? 俺の性格を考えたら帰ってくるわけないのに……」
「わかってる。普通に考えたらネオスが戻ってくるはずなんかないって。でも……」
 アクア・ドルフィンは頬に熱い涙を流しながら、それでも心からの笑顔を浮かべながら言葉を紡ぎます。
「アタシは普通じゃなくて“特別”になりたかったのよ……」
 ネオスは胸が熱くなるのを感じました。
 飽きっぽくて情けないこんな自分のことをここまで想ってくれたヒトは今までいませんでした。
 ネオスが戻ってこなければ殺されるはずだったのに……、それでも彼女はネオスが自分のことを想っているかどうかに命を賭けたのです。
 ネオスはさっきまで戻らないつもりでいた自分を恥じました。
 そしてこんなにも自分のことを想ってくれている人がずっとそばに居たのに、3回も彼女を傷つけて……。
 今まで彼女がどんな想いで自分と付き合ってきたのか、どんな想いで別れてきたのか、どんな想いで他の女と付き合ってる自分の姿を見てきたのか、どんな想いで再び付き合ってくれたのか、それは想像するには計り知れないものがあります。
 ネオスの心はもう決まっていました。
「アクア・ドルフィン、結婚しよう……」
「ネオス……」
 アクア・ドルフィンは歓喜に震えながらネオスを見返します。
 そしてネオスは王様に向き直ります。
「コンタクト融合! アクア・ネオス!! どうだ王様、これでもうウルトラマンなんて言わせないぞ! 俺を死刑にする理由はなくなったはずだ!」
「くっ、どうせ飽きっぽいネオスのことだ。すぐに融合デッキに戻るに決まってるわ」
 王様は言い返します。しかし、
「そんなことはない! 俺たちはこれからネオスペース村へ行く! ネオス一族の間に伝わる伝説、その村で式を挙げた夫婦は永遠の絆で結ばれるという。俺はもう大切な人を手放さない!!」
 こうして、二人はネオスペース村へ引越し末永く幸せに暮らしました。
 めでたしめでたし。





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