運命の記憶―魔獣との出会い―

製作者:???ネオスさん




なぜ十悟はデッキ破壊を使うようになったのか?
その謎が今、明らかに!
ディスティニーシリーズの番外編です。





相馬十悟、小学5年生。
彼の父、相馬一輝は童実野裁判所の裁判官。
母親の相馬百恵は弁護士だ。
それゆえ、十悟は法廷に行くことが多かった。


「ねえママ!今日はパパに会えるの?」

「ええ!もう来るはずよ!」


2人は傍聴席に座った。
真ん中の席の一番前が十悟のお気に入りだ。
父に最も近い場所である。
しかしそれは被告人にも最も近い場所でもあり、母親はあまりそれが心配だった。


黒い法服を着た父が現れる。
十悟はわくわくしていた。
裁判のことはよく分からないが父のカッコイイところが見られる。
それだけで彼には十分だった。


「それでは判決を言い渡します!!!」

「被告人を死刑に処す!理由。被告人は童実野町内で無差別に拳銃を乱射し、5人を殺害。20人以上に怪我をさせた、残虐かつ卑劣な犯行であると言わざるをえない・・・・・・・人の命を奪う事は決してしてはならないことである。」


十悟には言っていることの半分も分からない。
ただ、「人の命を奪う事は決してしてはならない」この言葉はいつも父に教えてもらっていることだ。






その夜


「ただいま!」

「パパ!おかえり!ねえねえ、明日、朝子とデュエルをするのだけど、ルールが良く分からないんだ。」

「どれどれ、一緒にデッキを作ってやろうか。」


十悟は父親にいろいろルールを教えてもらいながら、デッキを作った。
カードをいくつか広げながら選んでいる。


「デッキは40枚!10×4で40だから・・・よしオッケイ!」

「手札は5枚だぞ!」

父親はニッコリ笑って書斎に入っていった。
十悟はデュエルディスクにデッキをセットした。

「十悟!もう寝なさい!」

十悟は風呂に入って寝ることにした。
明日のことを考えると眠れなかった。




次の日

「十悟!あそぼ!!」

女の子が呼び鈴を鳴らしている。
反町朝子!十悟の幼馴染だ。
十悟と朝子の母親は2人を生む時に産婦人科で仲良くなり、家も近所であったこともあり、家族のような付き合いをしてきた。


「いらっしゃい!十悟!朝子ちゃんだよ!」

母親に呼ばれて、十悟が走ってきた。
その手にはデュエルディスクが付いている。
朝子もカバンからディスクを取り出した。
2人は公園に移動した。

「さ、早くデュエルしようよ!負けないよ!」

「私だって!」


二人はデュエルディスクをあるデュエリストから譲り受けた。
詳しくは「ディスティニー・ブレイカー11章」参照



「デュエル!!」


十悟たちは初心者!
解説書を見ながら、ゆっくりデュエルをしていた。






数ターン後


相馬十悟:LP2600
場:裏守備モンスター1体
手札:3枚

反町朝子:LP6400
場:《月明かりの乙女》《エンシェント・エルフ》
手札:2枚




「十悟!何で守備モンスターばかり出しているの?もっと攻撃力の高いモンスター持っているでしょ!それでも私は手加減しないよ!『月明かりの乙女』と『エンシェント・エルフ』を生贄にして『翼を織りなす者』を召喚!」



月明かりの乙女 ☆4 光属性 魔法使い族
ATK1500 DEF1300
「月に守護されている月の魔導士。神秘的な魔法で幻想を見せる。」



エンシェント・エルフ ☆4 光属性 魔法使い族
ATK1450 DEF1200
「何千年も生きているエルフ。精霊をあやつり攻撃をする。」



翼を織りなす者 ☆7 光属性 天使族
ATK2750 DEF2400
「6枚の翼をもつハイエンジェル。人々の自由と希望を司っている。」



「『翼を織りなす者』で十悟のモンスターを攻撃!」

純白の羽根を羽ばたかせる天使が召喚された。
金の衣を身にまとい圧倒的な威圧感を見せる。


「破壊された『巨大ネズミ』の効果で『迷宮壁−ラビリンス・ウォール−』を特殊召喚だ!」



巨大ネズミ ☆4 地属性 獣族
ATK1400 DEF1450
「このカードが戦闘によって墓地へ送られた時、デッキから攻撃力1500以下の地属性モンスター1体を自分のフィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。その後デッキをシャッフルする。」



迷宮壁−ラビリンス・ウォール− ☆5 地属性 岩石族
ATK0 DEF3000
「フィールドに壁を出現させ、出口のない迷宮をつくる」



「ターンエンドよ」


「僕のターン。ドロー。ラビリンス・ウォールを守備表示に変更してターン終了だ。」

十悟はドローしたカードをそのまま手札に加えて終了した。
使えない魔法カードだったのだろう。
ブラフくらいにはなっただろうがそこまで頭が回らなかった。


「また守備モンスター?私のターン。ドロー!!やった。私の勝ち『守備封じ』発動!確かラビリンス・ウォールの攻撃力は0だったわね。攻撃!!」



守備封じ 通常魔法
「相手フィールド上の守備表示モンスターを1体選択し、表側攻撃表示にする。」



ハイエンジェルは巨大な光の光線を放った。
迷宮の壁が崩れ、その破片が十悟にぶつかった。

「うわーーーー!」

相馬十悟:LP2600→0



「ねえ、何で守備モンスターばかり出してきたの?」

「それは・・・・」

公園に女性が一人近づいてくる。
OL風の格好をしている。


「朝子!帰るわよ!あら、十悟君ごめんね。これからすぐに親戚のお家へ行かなきゃいけないのよ。」


母親は朝子を連れて帰ってしまった。
まだ、帰る時間には早かった。



「ねえ君!さっきの女の子の問いの答え、僕に教えてくれないかな?」


20代前半くらいの男性が十悟に話かけてきた。
優しそうな顔をしている。


「お兄さんだれ?」

「そうだな!デュエルが好きで好きで仕方無くて、カードのデザインや効果を考えている仕事をしているんだ。君のデュエルに興味を持ったのさ!」


十悟は少し警戒を解いて話はじめた。

「パパが、『人の命を奪う事は決してしてはならない』って言ったんだ。ライフポイントってデュエリストの命ってことでしょう?」

「ははは。そうか!そう言うことか!てっきり違う勝利条件でも狙っているのかと思ったよ!いいんだよ!ゲームなのだから。」

その男は、疑問が解けたことと十悟の純粋さに笑いがこみ上げてきた。



「他の勝利条件?命を奪わずに勝利する方法があるんですか?」

「あるとも!エクゾディアパーツを5枚手札に揃える!『終焉のカウントダウン』を発動させて20ターン経過する、とかね。それからあまり人気は無いのだけど、相手のデッキを破壊してデッキを0にするって方法があるな。」

男は実際にそのカードを見せながら説明した。
十悟は最後に聞いた「デッキ破壊」という言葉が気になった。


「デッキ破壊を使う有名なデュエリストは誰がいますか?興味があるのですけど!」

「プロデュエリストの『エックス』という者が有名かな。デッキとの絆を踏みにじるような戦いで、悪名高いといった方がいいかな。君のような少年にそんなデュエリストになって欲しくはないな。」

男は正直に自分の思っていることを話した。
十悟をなんとか説得しようとしたのだ。



「それでも僕は、相手のライフを奪わず勝つデュエリストになりたいんです!!!」

十悟は叫んだ!
自分の気持ちをまっすぐ男にぶつけた。
その時デッキから1枚のカードが地面に落ちた。

「へー『紅蓮魔獣ダ・イーザ』か。除外関係のカードは少なかったと思うけど。」

「イラストが気に入ってたんだ。初めて買ったパックでいいなぁと思って。」


キラーン

男の目が光る。
何やらメモを始めた。

「いいインスピレーションが浮かんできたぞ!!君、確か今は夏休みだったね。月曜日にもここに来られるかい?」

男は興奮しながら言った。
それに驚きながらも十悟は頷いた。

男はダッシュでその場を去った。
仕事場に向かったのだろう。








月曜日



「おまたせ!このカードを見てくれ!『氷結魔獣』に『烈風魔獣』、『邪念魔獣』と『岩窟魔獣』それから『幻光魔獣』だ。そうだな『紅蓮魔獣』のお友達だ!」


男は十悟にモンスターと数枚のカードを手渡した。


「あ、あの・・・」

「大丈夫!お金はいらないし、君の要望通り『デッキ破壊』をテーマに作ってみたんだ。い、いけないもう行かなきゃ!!1時間後には空港に行かなきゃいけないのに!!」

男はカードケースを鞄にしまうと走りだそうとした。
それを止めるように十悟は聞いた。


「遠くへ行くのですか?」

「アメリカにね。そのカードを使ってアメリカまで君の名前が届くように強くなってくれよ!そうだ君の名前は?」

男は笑顔で訪ねた。


「相馬十悟!!!」


男は軽く手を振りながら走りだした。
近くでタクシーを拾って行ってしまった。




「お兄さんの名前は聞けなかったなぁ!でも強くなるよ。アメリカまで僕の噂が届くまで」



ガッシャーン

巨大な音が響きわたる。
煙が上がっている方に十悟は走っていく。

次の瞬間、巨大な爆発が起こる。
ガソリンに引火したのだろうか?
その爆風で十悟は数メートル飛ばされた。













次に十悟が目を覚ましたのは病院のベットだった。

「十悟!大丈夫なの?」

ずっと看病していた母親が尋ねる。


「あれ?お兄さんは?タクシーに乗っていたお兄さんは?」

母親は首を横にふった。
後から聞いた話では、爆発の中心にいて即死だったという。
十悟が男に会う事は二度と無かった。

インダスト・リアル・イリュージョン社のペガサスは彼の作った魔獣シリーズを販売しようとはしなかった。すでにカード化している「紅蓮魔獣」以外は!
その代わりに十悟の持つ魔獣カードだけは公式カードとして認めることにした。
























数日後



相馬十悟:LP7400
場:《烈風魔獣バ・ムーナ》リバースカード1枚
手札:2枚
デッキ:16

反町朝子:LP8000
場:《月明かりの乙女》《エンシェント・エルフ》
手札:4枚
デッキ:1枚



「私のターン。ドロー。」


朝子のデッキ:1枚→0枚


「モンスター2体でバトルよ!いっけー!!」

2体の魔法使いが一斉に攻撃する!
その攻撃が十悟を襲う!

「カウンター罠『攻撃の無力化』発動!」



攻撃の無力化 カウンター罠
「相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。相手モンスター1体の攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する。」


エネルギーはすべて吸収された。



「そ、そんな!た、ターン終了よ。」

朝子はデッキホルダにカードが1枚も無い事に愕然としている。
無理もない。初心者にデッキ破壊に対処しろという方が無理な話だ。


「僕のターン。ドロー。僕の勝ちだね。ターン終了だ!!」

十悟は笑顔で言った。
勝利を確信してターンを終了したのだ。





朝子のターンを迎えた。

「相手がカードをドローしなければならない時にドローできない場合」
デュエルモンスターズにおける勝利条件の一つ。
命を奪わない事にこだわった十悟と魔獣の出会いこそ、本当の運命だったのかもしれない。







あとがき

何で主人公がデッキ破壊?という疑問がある方が思いましたので本作を書いてみました。
彼の戦う理由分かっていただけるとうれしいです。
「エックス」とも「北森玲子」とも違う主人公らしさが出ていればいいのですが・・・。

最後になりましたが、読んでいただき本当にありがとうございます。
本編の方もよろしくお願いします。





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