Happy Flower
24話〜

製作者:Kunaiさん




第24話「奪われた切符」


 ―――あの花火の夜から1ヶ月。


 ついに・・・・・デュエル・アカデミアと戦う日。

 もちろん、練習もやった。

 デュエル・アカデミアの生徒に負けても悔いは無い。

 でも・・・・・。

 ボクにはあの花火の夜をどうしても忘れられなかった。

 今・・・・ボクは幸花高校にいる。

 デュエル・アカデミアには船で行かなければならないらしい。

 そのため、幸花学校の部室で全員集合だった。



 ・・・・・・・・・・・・・。



「どうした、賢治・・・・?」

「・・・・野口さん」

「最近、元気ないぞ?大会前だと言うのにどうしたんだ・・・・?」

「いえ・・・少し体調が悪いだけです。行きましょう・・・」

「・・・・ああ」

 ボクはゆっくりと部室のドアを開ける。

 そこには伊吹君と定岡先生がいた。

 ・・・・これだけだといつもの情景だ。



 でも・・・・



 ・・・・1つだけ不可解な点がある。



「か、角田君!!」

「どうしたんですか、角田さん!?」

 ボクと野口さんは同時に叫び、部室へ入る。

 そこには2日続けてケンカをしたような、ボロボロの角田さんがいた。

 角田さんはボク達が来た時に気絶をしたらしく、定岡先生が急いで保健室へと連れて行った。

「角田さん・・・!一体誰がこんな事を・・・・!?」

「・・・・これを見ろ」

 伊吹君に1枚の紙を渡される。それに気がついた野口さんもボクの横から手紙を見る。




『幸花高校の諸君、私達からの挨拶はどうだろうか?残念ながら君達をデュエル・アカデミアと戦わせるわけにはいかない。まずは角田君を挨拶代わりに消しておいた。登録済みの角田君がいなければデュエル・アカデミアと戦う事も出来ないだろう。素直に我が高校の挑戦と神の罰を受けてくれたまえ。

From.J−duel high school』




「なっ・・・Jデュエルハイスクールだと!!」

「そんな・・・!!一体どうすれば・・・!?」

 頭を抱えて悩む。

 もうわけがわからない・・・・!!

 自分が何をするかわからなくなる恐怖がじわじわと蘇る。


 小学生だったあの時も・・・そうだったように・・・・・・・。


 野口さんは部室にしまってあったデュエルディスクを取り出し、カバンからデッキを取り出す。

「行くしかないだろう・・・・」

「でも・・・・。Jデュエルの連中の挑戦なんか受けていたらデュエル・アカデミアとの戦いに間に合いませんよ!?」

「本登録が済んだ角田さんがいなければ結局は成立しない。・・・・・ならば俺達の目標を奪った連中を倒すしかない・・・・・」

「ひどすぎる・・・・!野口さんと角田さんが1年も努力してJデュエルに勝ったのに・・・!!」

「やめろ。・・・・怒っている暇は無い。早く用意をするんだ」

「・・・・・・・・はい・・・・」

 野口さんは部室のドアを閉め、廊下を渡る。階段の近くにはすでに定岡先生が待っていた。

「角田君は保健室で寝ている。・・・それより、本当に行くんだな・・・・・?」

「もちろんです」

「わかった。それならば・・・・私も一緒に行かせてくれ」

 野口さんは黙って頷き、ボクと野口さん、伊吹君、定岡先生の4人で幸花高校を出る。





 定岡先生は自分の車にボク達3人を乗せ、車を走らせ始める。

 Jデュエルハイスクールに近づけば近づくほど、どんどん不安が溜まっていく。

(神様・・・・。どうか・・・・今日だけでもいいから・・・・ボクを勝たせてください・・・!)

 でも・・・・・この時、ボクは思いもしなかった。



 ―――『神』が自分の敵になる事を。



第25話「復讐」


 ついに・・・・Jデュエルハイスクールへ到着した。


 そこに建っていたのは、校舎と言うより悪の要塞のような建物にも見える。野口さんも険しい表情をしたままだ。

 ボク達は車を降り、校内へ入る。

 全員が沈黙したまま歩いていると、急に放送が鳴り始める。

『ククク・・・・・来てくれたね、幸花高校の諸君・・・・・』

「神之崎!!貴様はいつもくだらない事を!!」

 叫んだのは普段はあまり喋らない定岡先生だった。

 声の主は定岡先生の言う神之崎(かんのざき)と言う人で間違い無いだろう。この人が野口さんと角田さんの・・・・・!

『その声は定岡か・・・・・・丁度いい』

「早くこのくだらないゲームを終わらせろ!!」

『そう焦らないで欲しい。・・・・・まずは野口君と伊吹君。君達には特別席を用意しておいた。野口君は左側、伊吹君は右側の通路を通ってくれ』

 野口さんと伊吹君は言われた通りに無言で指示に従う。ここに残ったのはボクと定岡先生だけだった。

「藤原君と定岡は2人でエレベーターに来るんだ。私が直々にお前達に罰を与えよう・・・・・・」




(――――デュエルモンスターズの『神』としてな・・・・)






――――――――――――――――――――――――――――






「なぜこんなに薄暗い・・・・・?」

 さっきから同じ道を通っている気がする。

 電気もついていない廊下をしばらく歩き続けた。

 藤原達と野口が引き離される理由は何だ・・・・?


 突然、俺の付近だけライトがつき始める。


 ・・・・・・だんだんと足音が聞こえる。

 とりあえず、左右を確認しながら誰かが来るのを待つ。

「伊吹・・・・・・!!貴様が負けなければ・・・・・!!」

「なっ・・・・あんたは神門(みかど)なのか・・・・!?」

 神門は前の高校だった武道黒帯学園の生徒・・・・つまり俺の元先輩だった。

 今頃になってなぜこいつが・・・・?

「復讐だ・・・・・・復讐だぁぁぁぁ!!」

「何を言っている・・・・?」

 神門が意味不明な事を言っていると再び放送が鳴る。


『やぁ・・・伊吹君。彼は君に復讐をしたいと願ってね・・・・。私が特別に招待させていただいた』

「何だと・・・?」

『私は君に恨みは無いが・・・・彼がどうしてもと言うのでね。この場所をもって罰を受けてくれ・・・・クククク・・・・』


 これだけを言い残すと、ぷつりと放送は消える。


「伊吹ぃぃぃ!!!デュエルだぁぁぁ!」

 よく分からないが、こいつを倒さないらしいな・・・・・。

「くっ・・・・・」


伊吹【LP:4000】 神門【LP:4000】


「ヒヒヒヒヒ・・・・・俺様はカードを1枚セットし、手札からダメージ・リングを発動し、ボーガニアンを召喚する!!!」

【ダメージ・リング】永続魔法
効果によってダメージが発生した場合、ダメージを受けたプレイヤーは1度につき500ポイントダメージを受ける。

【ボーガニアン】
★3 闇属・機械族 ATK1300/DEF1000
自分のスタンバイフェイズ毎に相手ライフに600ポイントダメージを与える。

「こいつらで貴様のライフをすべて破壊してくれる・・・!!ターンエンドだ!!」

「俺のターン・・!手札からプロミネンス・ドラゴンを召喚し、貴様のボーガニアンに攻撃だ!」

【プロミネンス・ドラゴン】
★4 炎属・炎族 ATK1500/DEF1000
自分フィールド上にこのカード以外の炎族モンスターが存在する場合、このカードを攻撃することはできない。自分のターンのエンドフェイズ時、このカードは相手ライフに500ポイントのダメージを与える。

「ハハハハハ!!罠カード発動、グラヴィティ・バインド!!」

【グラヴィティ・バインド−超重力の網−】
フィールド上に存在する全てのレベル4以上のモンスターは攻撃をする事ができない。

 ・・・・・罠カードと言う事はわかっている。このまま奴を油断させておけば・・・!

 俺はそのままエンド宣言をした。それと同時に、プロミネンス・ドラゴンは神門に炎を放ち、ダメージを与える。

「ぎゃあああああああああ!」 神門【LP:3500】

「プロミネンス・ドラゴンの効果を忘れてもらっては困る。・・・さらに、あんた自身が発動したダメージ・リングの効果も適応する」

「ぬぎゃあああああああ!!!」 神門【LP:3000】

 神門のフィールドにあるリングは自ら爆発し、ダメージを与えた。

「ハハハハハハハハ!!!ドロオオオオオ!!この時、ボーガニアンの効果を発動!!ダメージ・リングの分も同時に与えてしまえ・・・!!」

 ボーガニアンが直接、俺に向かってボウガンを放つ。

 ちょうど腹の辺りに刺さり、ダメージ・リングも同時に爆発した。

「がはっ・・・!!」 伊吹【LP:2900】

 くっ・・・・!

 この痛みは何だ・・・・・?

 腹に矢が刺さったような痛みが走る。

 今までのデュエルでこんな事は無かったハズだ。

 理由を聞き出してやりたいが・・・・こいつに聞いても答えてはくれないだろう。

「ターンエンド!!」

「くっ・・・。あんたはなぜこんな復讐をする・・・・・?」

「なぜだと・・・・?貴様には分かるまい・・・戦わずして敗北した俺の事などなぁぁぁぁぁぁあぁぁ!!!!!」

「戦わずして・・・・・・だと?」






――――――――――――――――――――――――――――






 ・・・・・・・・・・遅い!!!!






 あたしと幸恵はすでにデュエル・アカデミアとか言う学校の会場に来ていた。

 藤原達は何をやってんのよ・・・・・?

 会場の半分はデュエル・アカデミアの生徒、もう半分は一般の人が座っている。

『遅いぞ!!幸花高校の連中は何をしてるんだよ!!』

『まだ始まらないのか〜!?』

 デュエル・アカデミアの生徒や一般の人達から叫び声がちらほらする。

 さすがに何かあったのか気がついて、アカデミアの先生や生徒が捜査しているようだが・・・・・。

 さっきからウロウロしていた、青色の服を着た不気味な先生がいきなり舞台に立ちだした。

「ちょっと待ってくださイーノ!!デュエル・アカデミアの総力をかけて調べているノーネ!」

 このおっさんは何を今更?火に油を注ぐとは、まさにこの事だ。



 ・・・・・まったく、最近の教師は。



「何やってんだ、藤原のやつ〜〜〜〜!!!!」

 ・・・・・よし、気分晴らしに幸恵と話そう。

「そーいえばさ、幸恵は藤原の・・・・」

「どうしたの・・・かな・・・・藤・・わ・・く・・・・・・・・・・・」

「・・・・どうしたの、幸恵!?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」



 まさか・・・・・



 すぐに幸恵の熱を自分の手で確かめてみる。

 ・・・・・・・・やっぱり・・・・・か。

 すぐに予想はついたけど・・・・よりによって、こんな時に!!

(藤原のバカ・・・・・!野口も角田も伊吹もいったいどうしたんだよ・・・・・!!)



第26話「大地の神」


伊吹【LP:2900】 神門【LP:3000】



「戦わずして負けた・・・・だと?」

 俺には神門の言葉の意味が理解出来なかった。

「貴様が勝っていればなぁ・・・・今頃、俺はデュエル・アカデミアと戦っていたのだ!!!」


 ・・・・・・・!


 そうか、2回目の大会・・・・・・・。


 ・・・・・・俺はたしかに藤原に負けた。紛れも無い・・・・・事実だ。


「あんたは・・・武道黒帯学園の3人目の学校代表だったな。俺と死井が幸花高校に負けたせいであんたは戦わずに・・・・学校として負けた・・・・・・・」

「そうだ!!貴様に分かるか!?戦わずして負けた屈辱を・・・・!俺はデュエルをする事さえ許されなかった!!!そして貴様は負けた後、奴らの高校へ転校しやがった・・・・・俺が貴様をこのデュエルで制裁してやるぞぉぉぉぉ!!!」

「くっ・・・俺のターン!」

 俺はカードを引き、そのままデュエルディスクに差し込む。

「俺は手札からフレイムレインを発動する!!」

「フレイムレイン・・・・!?」

「自分の手札の炎属性モンスター1体を墓地へ送る事で全プレイヤーに1000ダメージを与える!!」

「ぐはああああああああ・・・!!」

「お前の発動したダメージ・リングの効果も発動する!!」
 フィールドに多数の炎の雨が降り、それに反応したダメージ・リングも起爆した。


伊吹【LP:1400】 神門【LP:1500】


「それだけじゃない・・!このカードを発動後、自分のデッキから炎属モンスター1体を手札に加える事が出来る。俺はデッキからヘルフレイムエンペラーを手札に加える。」 

【フレイムレイン】 通常魔法
手札の炎属性モンスターを墓地へ送る事で発動する。お互いのプレイヤーは1000ポイントダメージを受ける。その後、自分のデッキから炎属性モンスターを手札に加える事が出来る。

「そして俺は墓地のテスタロスを除外し、炎の精霊 イフリートを特殊召喚する・・・・!プロミネンス・ドラゴンと炎の精霊 イフリートを生け贄に捧げ、ヘルフレイムエンペラーを召喚する!!」

【ヘルフレイムエンペラー】
★9 炎属・炎族 ATK2700/DEF1600
このカードは特殊召喚できない。このカードの生贄召喚に成功した時、自分の墓地の炎属モンスターを5枚まで除外する事ができる。この効果によって除外した枚数分だけフィールドの魔法・罠を破壊する。

「このカードの生け贄召喚に成功した事で効果を発動させる!!墓地のプロミネンス・ドラゴンと炎の精霊 イフリートの2体を除外し、あんたのフィールドのダメージ・リングとグラヴィティ・バインドを破壊する!!」

 ヘルフレイムエンペラーは咆哮を上げ、フィールドを炎で焼き尽くした。

「あんたはグラヴィティ・バインドの効果に頼りすぎてボーガニアンを攻撃表示にしたままだ・・・・!ヘルフレイムエンペラーでボーガニアンを攻撃する!!」

「ごおおおおおおおおおお!!!!」 


神門【LP:1500→100】


「俺は・・・・確かに負けた。だが俺がここであんたを倒し、あんたがJデュエルにも、デュエル・アカデミアにも、そして幸花高校にも勝てない事をここで証明してやる!!俺はカードを1枚セットし、ターンエンドだ・・・・・!!」

 俺が真剣な表情で待っていると、神門が突然、笑い始める。

「ハハハハハハハハ!!!!そんなクズモンスターがお前の切り札か・・・・!!」

「何だと・・・・・?」

「もう俺はどうなっても知らねぇぇぇぇ!!!!復讐だ復讐だ復復復復複復復復復複・・・・・ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」

「・・・・・・・!」

「ドロオオオオオ!!!!!!俺は手札から神を呼ぶ者を召喚だぁぁぁぁぁ!!!!!」

「神を呼ぶ者だと・・・・・?」



【神を呼ぶ者】
★2 光属・天使族 ATK300/DEF300
このカードをフィールドから墓地へ送る事で、デッキ・手札から幻神獣1体を特殊召喚する。



「ギョハハハハハハハハハハ!!!!こいつを生け贄にする事でなぁぁ・・・・『神』を呼ぶ事が出来るんだよぉぉぉ・・・」

「何だと・・・・!?神のカードをお前が持っているわけが・・・・・・」

「いでよ・・・・オベリスクの巨神兵ぇぇえぇえぇええええ!!!!!!!!」


 神門のデュエルディスクから雷光が出る。

 驚く暇も無く、フィールド全体に雷が走り始める。

 先ほどまで辺り一面はヘルフレイムエンペラーの炎だったが、一瞬にして神の領域と化した。

「なぜだ・・・なぜ『神』がお前の手に・・・・!?」



【THE GOD OF OBELISK】
ATK4000/DEF4000
The Player shall sacrifice two bodies to God of Obelisk. The opponent shall
be damaged. And the monsters on the field shall be destroyed.



「オベリスクよぉぉ!!伊吹に攻撃だあああああああヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!」

 オベリスクが咆哮をあげて攻撃を仕掛けてくる。

 その瞬間を見計らって罠を発動させる。

「罠カード発動、破壊輪・・・・・!!神に破壊の罠が通用しないのは知っている・・・・それならば俺のヘルフレイムエンペラーを・・・・・破壊する!!」

【破壊輪】 罠
フィールド上の表側表示で存在するモンスター1体を破壊し、お互いにその攻撃力分のダメージを与える。

「神が・・・・・神があぁあぁぁぁああああぁぁああ!!!!俺は負けていないぞ!?負けてねぇぇぇ!!アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

 ヘルフレイムエンペラーに装着された破壊輪は大規模な爆発を起こし、俺と神門をフィールドから吹き飛ばした。




伊吹【LP:0】 神門【LP:0】



第27話「天空の神」




「野口ぃぃぃい・・・・・・!」



「刃金沢・・・・・お前なのか・・・・・・!」



 賢治達と伊吹君がどうなったか気になる・・・・・・だが。

 今は・・・・自分の心配をしたほうが良さそうだ。

 俺の目の前には、見るも無残になった刃金沢がいた。

 ここの校長が言っていた対戦相手は刃金沢の事だろう・・・・。

「ハハハハハ!!もう1度デュエルだ・・・・あの大会のデュエルを無かった事にしてやるぞぉぉおおおおおお!!!!」

「・・・・・・・わかった。来い、刃金沢・・・・・!」



野口【LP:4000】  刃金沢【LP:4000】



「俺のターン、ドロー!手札から神龍−アタック・ドラゴンを特殊召喚し、さらに神龍−ディフェンス・ドラゴンを表側守備表示で特殊召喚する」


【神龍−アタック・ドラゴン】
★6 地属・ドラゴン族 ATK2000/DEF1000
自分のフィールド上にカードが存在しない場合、このカードを手札から攻撃表示で特殊召喚する事ができる。


【神龍−ディフェンス・ドラゴン】
★6 地属・ドラゴン族 ATK1000/DEF2000
自分のフィールド上にカードが存在する時、このカードを手札から守備表示で特殊召喚する事ができる。


「カードを1枚セットし、ターンエンドだ」

「クククク・・・・・ドロォォーーー!!手札から魔神の怒りを発動する!!!」

「き、貴様・・・!そのカードは・・・・・・!?」

「クハハハハ!!出井が大会で使ったカードさ・・・・・もう奴はこの学校にいないがなぁあぁぁああ・・・・・!!」


【魔神の怒り】 通常魔法
このカードの効果は、モンスター・魔法・罠の効果を無視して適用される。相手フィールド上に存在する全てのモンスターを破壊する。その後、破壊したモンスター1体につき1000ポイントダメージを相手ライフに与える。


「ハハハハハ!!お前のモンスターを全て破壊し、2000ダメージを与える!!!」

「ぐはあああああああああ!!!」


野口【LP:4000→2000】


(な、なんだなんだ、この痛みは・・・・・!?)

「クククク・・・・。ここの校内は優れていてねぇぇ・・・プレイヤーにもダメージを与えるデュエルになるんだぜぇぇぇ・・・・・ハハハハハハ!!!」

 刃金沢はご丁寧に説明してくれる。


 だが・・・・・!


 お前がモンスターを破壊してくるのは読んでいたぜ・・・・。

「罠カード発動、リビングデッドの呼び声!」

【リビングデッドの呼び声】 罠
自分の墓地からモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。そのモンスターが破壊された時、このカードを破壊する。

「この効果により、神龍−アタック・ドラゴンを墓地から攻撃表示で特殊召喚する!!」

「だからどうした!?俺は手札から神を呼ぶ者を召喚する・・・・・。このカードの効果で手札からオシリスの天空竜を特殊召喚だぁぁぁぁぁ!!ハハハハハハハハハハハハ!!!!」

「なっ・・・・オシリスの天空竜だと・・・!?」



【SAINT DRAGON−THE GOD OF OSIRIS】
ATK X000/DEF X000
Every time the opponent summons creature into the field. the point of the
player's card is cut by 2000 points. X stand for the number of the player's
cards in hand.



 俺の前には・・・・三幻神の1つ、オシリスの天空竜がフィールドに現れる。

 間違いなく・・・・こいつはオシリスの天空竜だ。

「なぜ・・・・・お前が神を・・・・!!」

「クハハハハ!!ここの校長から貴様に神の制裁を与えるために授かったカードだぁぁぁぁ!!」

「・・・・・・!」

 刃金沢の話を聞き、俺が賢治に言った言葉を思い出す。





『ああ。なんでも校長があのデュエルモンスターズの製作者、ペガサスの助手だった人らしいんだ』





「まさかペガサスの助手をやっていた時に・・・・・・!?」

「そうだろうなぁぁ・・・・だが、んなこと俺は知った事じゃねぇぇぇぇ・・・・・・。それに・・・・忘れるなよぉぉぉ・・・・・オシリスの攻撃力は手札の枚数によって決定する!!俺の手札は3枚・・・・・つまりオシリスの攻撃力は3000となる!!!」


【オシリスの天空竜】ATK3000


「くらえぇぇぇえええ!サンダー・フォォォォォオオス!!!!」

「ぐあぁぁ・・・・・!!」


野口【LP:2000→1000】


「ハハハハハハハ!!ターンエンドだぁぁぁ!!」

「俺のターン・・・!」

(オシリスにはもう1つの特殊能力があったハズだ。それを注意しなければ・・・・・・・)

「俺は墓地のディフェンス・ドラゴンをゲームから除外し、神龍−プロテクト・ドラゴンを特殊召喚する」

【神龍−プロテクト・ドラゴン】
★8 光属・ドラゴン族 ATK0/DEF3000
このカードは通常召喚出来ない。自分の墓地の神龍モンスター1体をゲームから除外して特殊召喚する。このカードが破壊された時、このターンのダメージは0になる。

「ハハハハハハ!!オシリスの特殊能力発動、召雷弾!!!」

 そう・・・・、オシリスのもう1つの特殊能力は相手がモンスターを出した時、そのモンスターに2000のダメージを与える・・・そして2000以下の場合は瞬時に破壊されると言う効果だ・・・・。

【神龍−プロテクト・ドラゴン】DEF3000→DEF1000

「まだだ・・・!手札から神龍−ハリケーン・ドラゴンを召喚する」

【神龍−ハリケーン・ドラゴン】
★3 風属・ドラゴン族 ATK1200/DEF800
このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、デッキからカードを2枚引き、手札からカードを1枚捨てる。

「ハハハハハ!!もう1度、召雷弾を撃てぇえええ!!!」

 ハリケーン・ドラゴンは攻撃力が2000未満のため、神の雷によって簡単に破壊されてしまう。

「くっ・・・・!だがハリケーン・ドラゴンの効果は発動する・・!カードを2枚引き、1枚墓地へ送る。・・・・・俺はこのままターンを終了する・・・・」

「ヒヒヒ・・・・・・俺のターン!!手札から強欲な壷を発動する・・・・!!デッキからカードを2枚ドロォォォーー!!」

【強欲な壺】 通常魔法
自分のデッキからカードを2枚ドローする。

「俺は手札からJ−ネオ・ソルジャーを特殊召喚するぞぉぉお!!」

【J−ネオ・ソルジャー】
★2 光属・戦士族 ATK1100/DEF2050
このカードの召喚は特殊召喚扱いにする事ができる。このカードが相手モンスターを破壊した時、相手のライフを半分にする。

「それでもオシリスの攻撃力は4000・・・・!!ネオ・ソルジャーでプロテクト・ドラゴンに攻撃だああああ!!!」

 プロテクト・ドラゴンは弱体化していたため、ネオ・ソルジャーにすら破壊されてしまう。

「がはぁぁ・・・・・」


野口【LP:1000→500】


「へっ・・・・だが、プロテクト・ドラゴンが破壊された時、戦闘ダメージは0になる・・!オシリスで攻撃しようが俺のライフは・・・・」

「オシリスで野口龍明にダイレクトアタックだぁぁぁああ!!」

「バカな!?俺のライフは減らないハズだぞ・・・・!」

「クハハハハハ・・・・お前にダメージを負わせるのが俺の目的だ!!!神の攻撃を喰らうがいい・・・・・!!」

 次の瞬間、オシリスは刃金沢に従うように俺に雷の攻撃を加える。

「くっ・・・ぐはああああああああああ・・・・・・・!!」

「ハハハハハハハ!!!!!どうだ・・・・・神の力はぁあああああああああ!!!」



第28話「神と神」

「俺のターン・・・・!!」

 目がボヤけてきやがる・・・・!

「手札から強欲な壺を発動する・・・!デッキからカードを2枚ドロー!!俺は神龍−ヘル・ドラゴンを攻撃表示で召喚する・・・・!」

「ハハハハ!!オシリスよ、召雷弾だぁああああ!!!!!」

 オシリスの天空竜はヘル・ドラゴンに召雷弾を放つが、ヘル・ドラゴンは破壊されずにフィールドに残った。

「へへっ・・・。ヘル・ドラゴンは戦闘以外では破壊されないモンスター・・・・。いくら神とは言え、そこまで無効には出来ない・・・・・」


【神龍−ヘル・ドラゴン】
★3 闇属・ドラゴン族 ATK1300/DEF700
このカードは攻撃表示である限り戦闘以外では破壊されない。


「そして神龍蘇生を発動・・・!墓地から神龍−ヘヴン・ドラゴンを特殊召喚する!!」

「いい加減にしろぉぉおおお!!召雷弾を忘れたのかぁあああ!?!?」

「手札から速攻魔法、リフレクト・バリアを発動する!!このカードの効果は相手モンスターの効果を1度だけ無効にする・・・!」


【リフレクト・バリア】 速攻魔法
相手がモンスターの効果を発動した時に発動できる。そのモンスターの効果を1度だけ無効にする。


 ギリギリ発動に間に合い、ヘヴン・ドラゴンは召雷弾から免れる。

「俺はフィールドのヘル・ドラゴンとヘヴン・ドラゴンを墓地へ送り、融合デッキからダークヘヴン・ドラゴンを守備表示で特殊召喚する!!」


【ダークヘヴン・ドラゴン】
★7 闇属・ドラゴン族 ATK2000/DEF3000
「神龍−ヘル・ドラゴン」+「神龍−ヘヴン・ドラゴン」
このカードの融合召喚は上記のカードをフィールドから墓地に送った時のみ融合デッキから特殊召喚が可能。このカードがフィールドから離れた時、墓地の神龍モンスター1体を特殊召喚する事ができる。


 オシリスの口から再び、召雷弾が発射される。

【ダークヘヴン・ドラゴン】DEF3000→DEF1000

「・・・・ターンエンド!」

「ドロォォォオオオー!!!手札から再びJ−ネオ・ソルジャーを特殊召喚!!1体目のネオ・ソルジャーでザコモンスターに攻撃だあぁああああああ!!!!」


野口【LP:500→250】


「ダークヘヴン・ドラゴンがフィールドから離れた時、自分の墓地から神龍モンスター1体を特殊召喚する事が出来る・・・俺が特殊召喚するのはプロテクト・ドラゴンだ!!」

「貴様ぁぁあああああ!!!!オシリスよ、召雷弾だああああ!!!!!!!」

【神龍−プロテクト・ドラゴン】DEF3000→DEF1000

「へへっ・・・・そう熱くなるなよ・・・・・刃金沢ちゃん」

「黙れぇぇぇぇええ!!!!2体目のJ−ネオ・ソルジャーでザコに攻撃だ!!!」


野口【LP:250→125】


 やはりプロテクト・ドラゴンも一撃でやられてしまう。

 だかこのターン、俺のライフにダメージは無くなる。

 このターンに残った問題は・・・・・・・・・・。

「ハハハハハ!!!このターン生き延びられると思ったら大間違いだぁああああ!!!オシリスで野口龍明に攻撃だぁぁぁあああああああああ!!!!」

「耐えられたら・・・・どうする気だ・・・?」

「ハハハハハ!!!耐えられたとしてもお前に勝ち目は無い!!」


 ――ついに神の攻撃が来る。


「ぐあああああああああああああ・・・・・・・・!!!」

 刃金沢の言う通り、全身に強い痛みが走る。

 ライフに影響が無くとも俺自身にはダメージが蓄積されている。


 くっ・・・・・・・・・・。



 ・・・・・・・・・。



 ・・・・ついに・・・・・神の攻撃が終わった。


「俺は・・・・お前を倒して賢治の元へ行かなくちゃならないんだ・・・・!!」

「なにぃ・・・・!?お前・・・・!?」


(俺は賢治と約束した・・・・・!)










『なら・・・賢治が強くなるまで俺がいてやる!』










「だからお前をここで倒す!!俺のターン、ドロー!手札から神龍の盾を発動する!!」


【神龍の盾】 通常魔法
自分のフィールド上にモンスターが存在しない場合、デッキからレベル4以下の神龍モンスターを攻撃表示で3体特殊召喚する。そのモンスターは特殊召喚ターンには攻撃、生贄、融合できず次の自分のエンドフェイズまで攻撃力と守備力が0になる。


 カードの発動後、フィールドには神龍−ブリザード・ドラゴン、神龍−バーニング・ドラゴン、神龍−アース・ドラゴンが現れる。

 これら3体の神龍が出たことにより、オシリスは・・・・・!

「ふざけるなぁああああ!!!!全員、召雷弾で全滅してくれるわぁぁあああああ!!!!」

 刃金沢の言うとおり、俺のフィールドの神龍は全滅した。

「これで新たな神龍を特殊召喚する事が出来る・・・!手札から神龍−フェニックス・ドラゴンを特殊召喚する・・・!!」

 フィールドにはフェニックスのような翼を持つ龍が現れる。そしてこのカードで全てを打開出来る・・・・・!


【神龍−フェニックス・ドラゴン】
★6 炎属・ドラゴン族 ATK2000/DEF1500
このカードは通常召喚できない。自分の墓地に神龍モンスターが5体以上存在する時のみ、このカードを特殊召喚が出来る。このカードがフィールドから墓地へ送られた時、自分の墓地のレベル4以下の神龍モンスターを6体まで特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは1度だけ相手のカードの効果を無効にする。このカードがフィールドまたは墓地に存在する限り、フィールド上の魔法・罠カードゾーンをモンスターカードゾーンとしても扱う事が出来る。


「フェニックス・ドラゴンだと・・・・!?」

「この瞬間、オシリスの効果によってフェニックス・ドラゴンは破壊される!!」

 そして、フェニックス・ドラゴンが破壊された瞬間――

 それぞれの属性を持つ、6つの神龍がフィールドに特殊召喚される。

「クハハハハ!!!だがコイツらも召雷弾の餌食になるぞ!?」

 オシリスは神龍6体に1発づつ召雷弾を撃つが、全てフェニックス・ドラゴンのバリアによって無効化された。

「バカなぁぁぁぁぁぁぁ!!オシリスの効果を無効にしただと!?!?」

「これで全てが揃った・・・・!!フィールド全ての神龍を融合させ、究極神龍を特殊召喚する!!!」


【究極神龍】
★12 光属・ドラゴン族 ATK5000/DEF5000
「神龍−ブリザード・ドラゴン」+「神龍−バーニング・ドラゴン」+「神龍−ハリケーン・ドラゴン」+「神龍−アース・ドラゴン」+「神龍−ヘヴン・ドラゴン」+「神龍−ヘル・ドラゴン」
このカードの融合召喚は上記のカードをフィールドから墓地に送った時のみ融合デッキから特殊召喚が可能。このカードは相手のカードの効果を受けない。


 オシリスは究極神龍に召雷弾を放つが、ゴミをはらうように無効にした。

「究極神龍に相手のカードの効果は全て受け付けない!!」

 そしてオシリスの攻撃力と究極神龍の攻撃力は・・・・・!



【オシリスの天空竜】ATK4000

【究極神龍】ATK5000



「そんなバカなぁぁぁぁぁぁ・・・・・!!!!!」

「行くぞ・・・・!!究極神龍でオシリスの天空竜に攻撃!!ファイブ・ギガソニック・フレアァァァァ!!」

 究極神龍の攻撃によってオシリスの天空竜は完全にフィールドから消えていた。

「バカなバカなバカなぁあああああ!!!!」


刃金沢【LP:4000→3000】


「手札から速攻魔法発動、融合解除!!このカードの効果で墓地の神龍モンスター6体をフィールドに特殊召喚する・・・・・!」


【神龍−ブリザード・ドラゴン】ATK1400

【神龍−バーニング・ドラゴン】ATK1600

【神龍−アース・ドラゴン】ATK1500

【神龍−ハリケーン・ドラゴン】ATK1200

【神龍−ヘヴン・ドラゴン】ATK1000

【神龍−ヘル・ドラゴン】ATK1300


「バカなぁああああああ!!!神を使っても野口に負けると言うのか・・・・!?!?」

「たとえ偽物でも神のカードはお前などには扱えない!!扱えるのは数々のデュエルを勝ち抜いてきた、真のデュエリストだけだ!!ブリザード・ドラゴンとバーニング・ドラゴンでネオ・ソルジャーに攻撃し、残りの神龍で刃金沢にダイレクトアタックだ!!!!」

 フィールドに存在する神龍全てで一斉に攻撃する。

 ネオ・ソルジャーは全て破壊され、フィールドに激しい爆発が起こる。

「ぐあああああぁぁあぁああああぁあぁぁぁあぁぁぁぁああああああああああぁぁぁ!!!!!!」



刃金沢【LP:0】



「か・・・・勝った・・・・・のか・・・・・?」

 刃金沢は完全に気を失っていた。この・・・忌々しいシステムのせいだろう。




 また・・・・・視界が・・・・



 ダメだ・・・賢治・・・・すまない・・・・・・・・・・。



第29話「神の裁き、人の裁き」

 エレベーターに乗ってから数分・・・・。

 それほど長い時間じゃないのに、とてつもなく長い距離なような気がする。

 でも・・・・・・野口さんと伊吹君はいったい・・・・・。

 予測しようとした時にエレベーターが到着してしまう。ドアが開くと同時に定岡先生が歩き出したので、それについていくようにボクは歩く。

 そこはかなり大げさに作られたデュエルフィールドになっていた。そのフィールドは普通の2倍ほど大きく、少し薄暗い部屋だった。

 ・・・・・本当に怖い。今は恐怖心を抑えるので精一杯だ。

 何が来るかわからないから辺りを見回してみると、少しずつ奥から人影が現れる。

「クククク・・・・久しぶりだな、定岡。・・・・藤原君は初対面だね。私はここの校長、神之崎だ」

「神之崎・・・・!!お前は私が叩き潰してやる・・・・」

「フッ・・・・。お望み通りデュエルだ。2人まとめてかかってきたまえ」

 神之崎さんはデュエルディスクを用意し、デッキを入れる。

 ボクと定岡先生も同じようにデュエルディスクを用意し、デュエルの準備をする。

 ・・・・ついに、Jデュエルハイスクールとの本当に最後の戦いが始まる。

 この戦いで勝たないと・・・・全てが終わってしまう。よくわからないけど、直感的にそう感じる。



「―――デュエル!!!」



神之崎【LP:4000】 

定岡【LP:4000】藤原【LP:4000】



「先攻、後攻は自由に決めたまえ・・・・」

「ならば私から先攻だ・・・!手札から天使の施しを発動する。デッキよりカードを3枚引き、手札のドレインマシンK−1211と魂を削る死霊を捨てる」

「墓地に送った2枚は蘇生目的・・・・あるいは墓地にあるカードによって効果が発動するモンスターのためか」

 神之崎さんはわざと聞こえるに呟く。それでも今回は定岡先生も動じた様子は無かった。

「私は速攻の黒い忍者を召喚する。カードを1枚セットし、ターンエンドだ」

【速攻の黒い忍者】
★4 闇属・戦士族 ATK1700/DEF1200
自分の墓地の闇属性モンスターを2体除外することで、このターンのエンドフェイズまでこのカードをゲームから除外することができる。また、この効果は相手のターンでも使用できる。この効果は、1ターンに1度しか使えない。

「ボクのターン・・・・!」

(あの人がどんなカードを使ってくるかわからない・・・。定岡先生の足手まといにならないようにしないと・・・・・)

「モ、モンスターを守備表示でセットし、ターンエンド!」

「私のターン・・・ドロー!」

 ボクと定岡先生は息を呑む。

「私は手札からJ−ソルジャーを特殊召喚し、Jの結束を発動する」

 あのカードは・・・・・・!

 間違いない・・・野口さんと戦った、刃金沢という人が使っていたカードだ。

【J−ソルジャー】
★2 光属・戦士族 ATK800/DEF100
このカードは特殊召喚扱いにする事ができる。このカードがフィールから墓地へ送られた時、800ポイントダメージを相手ライフに与える。

【Jの結束】通常魔法
自分のフィールド上に「J」と名のつくモンスターが存在している時のみ発動可能。デッキ、手札からレベル2以下の「J」と名のつくモンスターを2体まで特殊召喚出来る。この効果により特殊召喚したモンスターはエンドフェイズにすべて破壊する。

「Jの結束により、フィールドにJ−ソルジャーを2体特殊召喚する」

「まさか・・・・刃金沢さんの使った、J−ゴッド・デーモンを・・・・!」

 あの大会で使われたゴッド・デーモンは神のような威圧感のあるモンスター。何よりも、野口さんを苦しめたモンスターを忘れるわけが無かった。

「ククク・・・・・・そう思うかね?」

「あなたがJデュエルの校長ならそのモンスターも入れているハズ・・・!」

「残念だね・・・。君の読みは間違いだ。あのカードはペガサス様には認めて貰っていない非公式のカード・・・・神の名を借りただけのモンスターだ」

「えっ・・・・?」

 神之崎さんは怪しく笑い、手札のカード1枚を見せる。



――――それは紛れも無く、『オベリスクの巨神兵』だった。



「神之崎・・・・・・貴様は・・・・・!」

「クククク・・・J−ソルジャー3体を生け贄に、オベリスクの巨神兵を召喚する!!!!」



【THE GOD OF OBELISK】
ATK4000/DEF4000
The Player shall sacrifice two bodies to God of Obelisk. The opponent shall be damaged. And the monsters on the field shall be destroyed.



 神之崎さんはカードをデュエルディスクに叩きつける。

 それに反応するようにフィールドには雷が走り、フィールド全てを覆いつくすようにオベリスクが神之崎さんの背後に降臨した。

「この瞬間・・・・J−ソルジャーが3体墓地へ送られた・・・・。よって定岡に2400のダメージを与える!!」

「ぐはああああ・・・・・!!」 定岡【LP:1600】

「さ、定岡先生!!」

 定岡先生の反応があまりにも不自然だった。まるで本当に殴られたような・・・・。

「私が開発したダメージシステムだよ・・・・。あの闇のゲームとか言うものを忠実に再現させていただいた。ククク・・・・どうだね、定岡・・・?」

「そんな事はどうでもいい・・・。だが神之崎・・・!お前は偽のカードを使ってまで勝ちたいのか・・・・!?」

 怒る定岡先生に対し、神之崎さんは見下すように笑っている。

「偽・・・?ハハハハハ、勘違いしてもらっては困る。私のデッキに入っている三幻神はすべて本物同然さ・・・・・・」

「バカな・・・・・・!!」

「あのバトル・シティで武藤遊戯の使った神ではなく、私の『神』だがな・・・・・」

「・・・・・やはり、ペガサスが三幻神を作る時に貴様も関わっていた1人なのか・・・・・!」

「ククク・・・その通りさ」

「ちっ・・・・罠カード発動、威嚇する咆哮!!」

【威嚇する咆哮】 罠
このターン相手は攻撃宣言をする事ができない。

「確かに神に破壊の罠は効かない・・・。だが攻撃を止める事は出来る!!」

「フン・・・無駄なあがきか。私は手札から魔神の使途を発動する。この効果により、藤原君の裏側モンスターを除外し、カードを1枚ドローする!ククク・・・・このドローしたカードをセットし、ターンエンドだ」

【魔神の使途】 通常魔法
このカードの効果は、モンスター・魔法・罠の効果を無視して適用される。相手裏側モンスター1体をゲームから除外する。除外に成功した時、デッキからカードを1枚ドローする。

 神之崎さんのフィールドから現れた異形のモンスターに、マシュマロンはフィールドから消滅させられてしまう。

「く・・・!ごめんよ、マシュマロン・・・・・」

 ボクのフィールドから完全にモンスターが消えてしまった。

 オベリスクは攻撃をしなかったものの、オベリスクの存在は攻撃以上の精神ダメージをボク達に与えていた。



第30話「神の声」

「私のターン!手札から死者蘇生を発動し、墓地のドレインマシンK−1211をフィールドに蘇生させる」

【死者蘇生】 通常魔法
自分または相手の墓地からモンスター1体選択する。選択したモンスターを自分のフィールド上に特殊召喚する。

【ドレインマシンK−1211】
★6 闇属・機械族 ATK2400/DEF2400
このカードの攻撃力・守備力が変化する場合、パワーアップ・ダウンの効果は逆に作用する。

「さらに手札からユニオン・アタックを発動する!」

【ユニオン・アタック】
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。このターンのバトルフェイズ中、選択したモンスターの攻撃力は、自分フィールド上に表側攻撃表示で存在する他のモンスターの攻撃力の合計分アップする。このモンスターは相手プレイヤーに戦闘ダメージを与える事はできない。また、他の表側攻撃表示モンスターはこのターン攻撃をする事ができない。

「それは・・・・モンスターの攻撃力の合計値で戦うカードでしたよね・・・?」

「その通りだ、藤原君。この効果により速攻の黒い忍者の攻撃力は『4100』となり、オベリスクを上回る」


【速攻の黒い忍者】ATK1700+2400→ATK4100


「神と言っても弱点はいくらでもある・・・。速攻の黒い忍者でオベリスクに攻撃だ!!」

 ドレインマシンK−1211のエネルギーを全身に蓄え、速攻の黒い忍者がオベリスクを攻撃した。地面が揺れるかと思うくらいの衝撃が走り、全員が衝撃から身を守る。

「すごい・・!!たった1ターンで神を倒せるなんて・・・!」

「だ、だが私にダメージは無い・・・!」 

「カードを1枚セットし、ターンエンドだ」

「ボクのターン・・・・・!!」

(神之崎さんのフィールドにモンスターはいない・・。定岡先生の作ってくれたチャンスを逃す手は無いハズ・・・・!)

「手札からゴブリン突撃部隊を召喚し、神之崎さんにダイレクトアタック!!」

【ゴブリン突撃部隊】
★4 地属・戦士族 ATK2300/DEF0
このカードは攻撃した場合、バトルフェイズ終了時に守備表示になる。次の自分ターン終了時までこのカードは表示形式を変更できない。

 ゴブリン突撃部隊はフィールドに出現し、攻撃するために神之崎さんの方向へ走った。

「罠カード発動、イビルヘル!!」

「なっ・・!そのカードも・・・!!」

 ・・・あの悪夢のような出来事を思い出してしまう。

【イビルヘル】 罠
このカードは相手が攻撃宣言をした時、または自分のドローフェイズにのみ発動する事が出来る。手札を2枚捨て、デッキから「イビルマン」を特殊召喚する。

【イビルマン】
★10 闇属・悪魔族 ATK2600/DEF2100
このカードは通常召喚できない。このカードは「イビルヘル」の効果でのみ特殊召喚する事ができる。このカードの特殊召喚に成功した時、相手フィールド上のレベル4以下の表側表示モンスター1体を破壊する。このカードは特殊召喚したターンに攻撃できない。

「クククク・・・・。そういえば君はこの前の大会でもお世話になっているな・・・。イビルマンの効果によりゴブリン突撃部隊を破壊する!!」

 大会の時と同じく、ゴブリン突撃部隊はイビルマンによって破壊されてしまう。相変わらず恐ろしい光景に吐気がしてしまう。

「この時、イビルヘルの効果で墓地へ送った魔神の宝札の効果を発動させる」

「手札から墓地へ行くことで発動するカード・・・・!」

「そう・・・。このカードが手札から墓地へ行ったとき、カードを2枚ドローする」

【魔神の宝札】
このカードの効果は、モンスター・魔法・罠の効果を無視して適用される。このカードが手札から墓地へ送られた時、自分のデッキからカードを2枚ドローする。

「何も出来ない・・・。ターン終了・・・・」

 神之崎さんはこのターンでも強力なカードを使ってくるはず・・・・。そうなるとボクは確実に・・・・。

「クククク・・・私のターン!手札から魔神の壺を発動する。デッキからカードを3枚ドロー」

【魔神の壺】 通常魔法
このカードの効果は、モンスター・魔法・罠の効果を無視して適用される。自分のデッキからカードを3枚ドローする。

「バカな・・・!!ノーコストで3枚のドローだと!?」

「クククク・・・さらに魔神の壺をもう1枚発動させる!これで私の手札は7枚。何が起こるかわかるかね・・・・・?」

「手札増強・・・そして・・・神・・・・・」

 ボクは同じことを、頭の中で壊れた玩具のように繰り返して暗唱していた。

 手札を増強し、神を呼ぶと言えばあのモンスター・・・・いや、あの・・・・・・『神』だ。

「ハハハハハ!!そう!君達の予想通りさ!私は手札から神を呼ぶ者を召喚する!!」

【神を呼ぶ者】
★2 光属・天使族 ATK300/DEF300
このカードをフィールドから墓地へ送る事で、デッキ・手札から幻神獣族を1体特殊召喚する。

「もちろん分かっているハズ・・・・・このカードを墓地へ送り、手札から降臨せよ!!オシリスの天空竜!!!」

「くっ・・・やはりか・・・・・・!」

 定岡先生の言葉と同時にフィールドは混沌の世界のようになる。

 天空から雷が舞い、オシリスまでもがボク達の敵として現れた。


【SAINT DRAGO―THE GOD OF OSIRIS】
ATK X000/DEF X000
Every time the opponent summons creature into the field. the point of the player's card is cut by 2000 points. X stand for the number of the player's cards in hand.


「私の手札は5枚・・・!よってオシリスの攻撃力は5000!!」


【オシリスの天空竜】 ATK5000/DEF5000


「くっ・・・」

「ハハハハ!!これで終わりだ!!オシリスの天空竜でドレインマシンK−1211に攻撃する!!サンダー・フォォォォス!!!!」

 神之崎さんの命令に従うように、オシリスはドレインマシンK−1211に高エネルギーを放つ。

「手札からゴッド・バリアを発動!!この効果により、私にダメージはゼロだ!!」

【ゴッド・バリア】 速攻魔法
自分が受ける戦闘ダメージを1度だけ0にする。
この効果は相手のバトルフェイズ中のみ手札から使用する事ができる。

「その場しのぎのカードか・・。だがイビルマンの攻撃が残っている!!イビルマンで速攻の黒い忍者を攻撃する!」

「ぐはあああああ!!」 定岡【LP:700】

「先生!」

「くっ・・・だ、大丈夫だ・・・」

 定岡先生はよろめきながら立つ。でも言葉とはほとんど逆の状態だった。

「フッ・・。もはや神を倒す力は残っていまい。ターンエンドだ・・・」



第31話「太陽の神」


 定岡先生は何とか自力で立ち、カードを引く。

「私のターン・・!手札から強欲な壺を発動する。デッキよりカードを2枚ドローする」

【強欲な壺】 通常魔法
自分のデッキからカードを2枚ドローする。

「手札からミスティック・スーツを発動する。このカードの発動時、デッキからレベル4以下の戦士族モンスターを特殊召喚する。そのモンスターはいかなるモンスターの効果を受け付けない・・!」

「フン・・・壁でこの場をしのぐ気か?」

「それは違う・・・・。藤原君のデッキからサイレント・ソードマンLV3を特殊召喚させる」

「えっ!ボクの・・・ですか?」

「ああ。サンレント・ソードマンLV3だ」

「・・・はい。わかりました」

 ボクはデュエルディスクからデッキを取り出し、サイレント・ソードマンLV3を探してデュエルディスクにセットする。

【ミスティック・スーツ】 通常魔法
自分のデッキからレベル4以下の戦士族モンスター1体をフィールドに特殊召喚する。このカードの効果によって特殊召喚されたモンスターは効果モンスターの効果を受けない。

「カードを2枚セットし、ターンエンドだ」

「ボクのターン、ドロー!・・・・ボクのスタンバイフェイズ時に、サイレント・ソードマンLV3をLV5へ進化させる!」


【サイレント・ソードマンLV5】 ATK2300/DEF1000


「ハハハハハ!さすが初心者の藤原君・・・・!!オシリスの天空竜の効果を発動!!」

「そ、そうだった・・・・!!オシリスの天空竜はフィールドに出たモンスターに2000ダメージを与える・・・・」

「クククク、もう遅い・・・・!召雷弾!!!!!」

 オシリスの天空竜はもう一方の口を開け、サイレント・ソードマンに雷の矢を放った。

【サイレント・ソードマンLV5】ATK2300→ATK300

「いや・・・それでいい!!罠カード、手札破壊(ハンド・ディストラクション)を発動する!!」

【手札破壊】 罠
自分の手札を全て捨て、次のターンの自分のドローフェイズから3回目までスキップする。相手の手札をすべて破壊する。

「そこまでして私の手札を全て破壊するカードを・・・・・!?お前は私が三幻神のオシリスを使うのを読んでいたのか!?」

「当然だ・・・・。貴様が挑戦状を出した時点で私は用意をしていた・・・・・貴様を倒すために作った、神を倒すためのデッキを!!」


【オシリスの天空竜】 ATK5000→ATK0


「バカな・・・・・!」

「まだだ!速攻魔法カード発動、青き瞳!!」


【青き瞳】 速攻魔法
このカードは発動後、装備カードとなる。レベル5以上の戦士族のみ装備可能。装備モンスターの攻撃力を3000、守備力を2500にする。


「このカードの効果でサイレント・ソードマンLV5の攻撃力は3000まで上昇する!!」

 定岡先生の発動した魔法が青く輝き、力の失っていたサイレント・ソードマンを覚醒させる。サイレント・ソードマンの特有の赤い眼は、鋭い青目になり、全身から蒼いオーラを放っていた。

【サイレント・ソードマンLV5】

ATK300/DEF1000→ATK3000/DEF2500

「ありがとうございます、定岡先生・・・!!サイレント・ソードマンLV5でオシリスの天空竜を攻撃!」



 ―――滅びの沈黙剣LV5!!



 ボクの攻撃宣言後、完全に力を失ったオシリスをサイレント・ソードマンは容易く真っ二つに斬る。オシリスが消滅する時、オベリスクを倒した時のようにフィールドが激しく鼓動した。

「くはぁぁ・・・・!!」 神之崎【LP:4000→1000】

「やった・・・・・!ターン終了・・・・!!」

「クククク・・・私のターン・・・手札から魔神の施しを発動!」

【魔神の施し】
このカードの効果は、モンスター・魔法・罠の効果を無視して適用される。デッキからカードを4枚ドローし、その後手札からカード1枚捨てる。

「そして死者蘇生を発動・・・!何を蘇らせると思う・・・藤原君・・・・?」

 死者蘇生・・・!?

「まさかラーの翼神竜を・・・!?でも・・・ラーの効果は自分のライフポイントを犠牲にしないと・・・・・」

「ククク・・・・蘇生させるのはオベリスクの巨神兵だ!!!」

 大地から再びオベリスクの巨神兵が現れる。大会の時にイビルマンに恐怖してしまったボクでさえもイビルマンが小さく見え、オベリスクが強大な敵に見える。

「こ、攻撃が出来ない神をなぜ・・・・・?」

「オベリスクで攻撃はしない・・・。手札から幻神術を発動する」

「幻神術・・・・?」

【幻神術】 通常魔法
モンスター1体を生け贄に捧げる。自分のフィールド上のモンスターと同じレベル・属性・種族・攻撃力・守備力を持つモンスター「幻神トークン」を2体特殊召喚する。(これらのモンスターは攻撃宣言をする事ができない)

「効果により、イビルマンを生け贄に捧げてオベリスクのトークンを2体出現させる!!!!」

 オベリスクが咆哮を上げると、左右にオベリスクと全く同じ姿のモンスターが現れる。トークンとは言え、オベリスクと姿は全く同じだった。


【幻神トークン】ATK4000/DEF4000


「攻撃力の高いモンスターが3体・・・・貴様、まさか!?」

「ハハハハハハハ!!そう!!オベリスクとトークン2体を生贄に捧げ、最上級の神を降臨させる!!いでよ、ラーの翼神竜!!!!」


【THE SUN OF GOD DRAGON】
ATK???/DEF???
???


(ラーの翼神竜・・・・!?)



第32話「a memorable incident」


「そんな・・・3体目の『神』が・・・・!」

 ラーの翼神竜は太陽のような球体の姿で現れる。神の威圧感を超えた、触れてはいけないほどの神秘的な光を発していた。

「ラーの翼神竜は千年アイテムがなければ発動しないらしいが・・・・・私は違う。ペガサス様からの知識、そしてあのバトルシティの時に得たデータからヒエラティックテキストを解読出来る・・・・・・」

「バカな・・・・・!」

 神之崎さん聞いたことも無い言葉でひたすら唱え続ける。

 その光景は本来ならば神秘的な物なハズだけど、今は恐怖の声にしか聞こえない。

「ククク・・・・さぁ、本当の姿を現せ!ラーの翼神竜!!!」

 神之崎さんの言葉通り、ラーの翼神竜は球体から姿を変える。神はためらうことなく完全に戦闘モードへと変形した。

「ラーの翼神竜は生け贄にしたモンスターの攻撃力と守備力を得る・・・」


【ラーの翼神竜】
ATK???/DEF???→ATK12000/DEF12000


「こ、攻撃力12000!?」

「まずは邪魔な奴から消す・・・・ラーの翼神竜よ、定岡に攻撃だ!!ゴッド・ブレイズ・キャノン!!!!」

 ラーから出ていた全身のオーラはさらに輝きを増し、ボクがいままでに見たことも無いほどの強大なブレスを放つ。

「くっ・・・すまない藤原君・・・もう対処は・・・・・・・・」

「せ、先生!!」

「がはあああぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・!!!!」


定岡【LP:0】


 ボクが助けようとしても近づける状況では無かった。近寄るだけで自分自身が吹き飛びそうだったからだ。

「ハハハハハハ!!これで定岡は終わりだ・・・・・!」

 ・・・・ラーの翼神竜の攻撃がついに止まる。

 定岡先生はそのままフィールドに倒れこんでいた。

「先生!!定岡先生・・・・!!!」

「クククク、死んではいないと思うよ・・・・・たぶんね」

「あなたは・・・何が目的でこんな事を!!」

 体に溜まった怒りを神之崎さんにぶつける。

 角田さんを・・・・

 定岡先生をよくも・・・・!

「神からの罰だ・・・!!私の計画をすべて奪った幸花高校に、神罰を下したのだ・・・」

「何を・・・!?野口さんと角田さんが手にしたデュエル・アカデミアと戦うための切符を奪ったのはあなたじゃないですか!?」

「何度も言わせるな・・・・私の計画を邪魔した貴様達を・・・・幸恵の全てを奪った貴様達を倒さなければならないんだ!!」

「なっ・・・・・幸恵・・・・・!?」

 あまりにも突然すぎる事だった。

 ・・・・・・どうしてここで幸恵ちゃんの名前がここで・・・・?

「君は・・・・・・幸恵を・・・・平見幸恵を知っているのか!!」

 ボクの言葉を聞いて神之崎さんの表情が一変する。

「神之崎さんこそ・・・・なぜ・・・・・?」

「・・・・・あれは幸恵が小学3年生の時だ。幸恵は車同士の衝突事故に遭った。そのせいであの子の両親は亡くなり、彼女自身もほとんど助けることが出来ないほどの重傷だった。私は幸恵の父と友人だったため、事故の事を聞いてすぐに病院へ駆けつけた。そして・・・・・幸恵を助けるために私は偽装工作を考えた」

「偽装工作・・・・・?」





――――――――――――――――――――――――――――





 そう・・・・・・。

 普通の病院では技術や設備が足りず、病院側も諦めていたのだろう。

 私はある偽装工作を使い、両親と共に幸恵も亡くなった事にして外国の病院を使って幸恵を助けることにした。

 1つは親戚達の目を欺くため。もう1つは私の自身の目的のためだった。





 そして・・・・・・・ついに手術は成功した。





 本来ならば、幸恵は今年で高校1年生になっていた。

 だが幸恵は4年間・・・目を覚ますことなく寝たきり状態だった。そのため・・・・・見た目は小学生のままだ。

 このまま高校生として通すにはあまりにも不自然・・・。小学3年生としても背が低かったから余計に・・・・・・・。

 私は幸恵を小学3年生としてもう1度、学校へ行かせてあげることにした。

 だが、私の力を持ってしても幸恵の命はあと3年・・・・・つまり今年が限界だった。それでも私は世界を周り、徹底的に助かる方法を探した。

 最終的に見つかった手術に成功する最大の条件。それは・・・・・・強く生きる意志が必要だった。

 幸恵は両親を失い・・・・そして、全てを失った。そんな子に生きる意味など見つからないはずだ。

 だから私は財力と権力を集める事にした。そうすれば毎日が豊かな生活に・・・・そうすれば生きる意味も見つかると思った。

 それから私は幸恵にデュエルモンスターズの全てを教えた。表情から手を読む方法、ゲームタクティクス、カードの種類・・・・。これらを知る事でデュエルモンスターズ全ての権力を・・・・・。そして私はそのための財力を集めることにした。

 そのためにはどうしても時間が必要となったため、幸恵の遠い親戚である、平見さんに幸恵の事を頼ませていただいた。

 平見さんはまだ新米の教師だったため、1人では寂しかったそうだ。そのためなのか、私から一銭も取らずに幸恵を引き取ってくれたんだ。私は幸恵の治療費や、これから平見さんに御礼をするために必死で努力をした。

 それに、私は幸恵が目覚める前からJデュエルハイスクールを設立していた。その時はまだデュエル・アカデミアは出来ていなかったため、全国のデュエリストが余るほど集まった。幸恵が学校に通いだした頃から私はより一層、力を入れて全国の高校から強豪デュエリストを引き抜いては集めた・・・・・・・。


 しかし・・・・・・・・・


 海馬コーポレーションからついにデュエル・アカデミアが設立された。あの有名な会社からの学校となると誰でも飛びつくだろう・・・・・。私の生徒はどんどん少なくなっていき、知名度は落ちていくままだ。

 このままでは私の夢どころか、幸恵を助けることもできない。そこで私自身で噂を流させたのだ。











『デュエル・アカデミアの生徒より普通高校にも強力なデュエリストがいる』











 予想通り、アカデミアの関係者達は高校を対象にした大会を開催してきた。


 ――それでも・・・・・去年は我々が負けた。


 ――そして今年も・・・・・・・・・・





――――――――――――――――――――――――――――





「そんな・・・・・・・」

「そう言う事だ・・・・・。最後のチャンス、幸恵の生きる意味、何もかも奪った君達に神罰を与えるために私はあの時コピーした神に願った・・・・・!この神罰のために、力を貸して欲しいと。そして今まで何の反応も起こさなかった神はついに私に味方をしてくれたのだ!!」

「それは違う・・・・!財力や権力で幸恵ちゃんの生きる意味が見出せるわけが・・・」

「私や幸恵の事を何も知らない奴が知ったような事を言うな!!!」

「でもボクは幸恵ちゃんのために・・・・もう1人の藤原くんを・・・・!」





 ・・・・・・・・・・・・・!?





『・・・・ちゃんは、たべるのがおそいからボクもまってあげるよ!』





『うん・・・ありがとう、けんじくん・・・・・』







 これは・・・・また・・・・・・・・・?







『それじゃあまたあした、お父さんとお母さんといっしょにむかえにいくね』



『うん、まってるよー!』



 あ・・・・あの子は・・・・・・!!









































『・・・・小さい頃、一緒に遊んだ事を覚えていませんか・・・?』









































 そうだ・・・・・間違いない・・・・!!もう1人の藤原くんは・・・・・・・・!

 だったら今すぐ幸恵ちゃんの所に行かないとボクは一生、後悔する事になる。

「神之崎さん・・・・・!ボクを幸恵ちゃんの所へ行かせてください!!」

「ククク・・・・何を今更!神をも操る私が悪だと言うなら、私に勝って正義を証明して見るんだ!!」

「神之崎さん・・・・・」

 ・・・・・ボクは完全に決心した。

 この戦いに勝たないと、幸恵ちゃんの所へ行けない。ならば・・・・・戦うしかないんだ。

 ゆっくりとフィールドの状態を見直してみる。

 ボクのフィールドには攻撃力が3000となったサイレント・ソードマンLV5のみ。

 それに対し、神之崎さんのフィールドには攻撃力が12000となったラーの翼神竜が1体。セットされているカードはどちらも無い。

「ボクのターン・・・!カードを1枚セットして、ターン終了!」

「私のターン・・・・・!わざわざ罠をセットしなくても攻撃をしてやるさ・・・」

「っ・・・・・!」

 気がついた頃にはラーの翼神竜は巨大な翼を広げてエネルギーを溜めていた。

「行けぇ、ラーの翼神竜!!!ゴッド・ブレイズ・キャノン!!!」

 定岡先生の時と同様、言葉では表せないほどのエネルギーがサイレント・ソードマンとボクに降りかかる。

 サイレント・ソードマンは攻撃を受けた瞬間に破壊されたが、ボクは神の攻撃を受け続けなければならなかった。

「神の攻撃に耐えられる訳があるまい・・・・・・もう私の勝ちだ!!」

「ぐはぁぁぁぁ・・・・・・・・!!!!」

 ボクは・・・・・ここで負けない・・・・負けられない・・・・・!!



 だからこのカードを・・・・・・・



 藤原【LP:0】



第33話「戦いの終結」

 神の攻撃が・・・・・・・終わった・・・?


 デュエル・・・・・・も・・・・・?


 違う・・・・・デュエルはまだ終わっていない・・・・・・・!!





藤原【LP:100】 神之崎【LP:1000】





「何だと!?なぜライフが残っている・・・・・・!?」

「ボクはライフがゼロになったとき、このカードを発動した・・・・!」


【蘇生の矢】 速攻魔法
自分のライフポイントが0になった時に発動する事が出来る。ライフポイントが0になった事を無効にし、自分のライフポイントを100にする。また、ライフが0になった時にモンスターが戦闘によって破壊されていた場合、そのモンスターを特殊召喚する。(装備カードが装備されていた場合、そのカードをモンスターに装備する。)


「蘇生の矢の効果でサイレント・ソードマンも復活し、青き瞳の効果も継続する・・・・!!」


【サイレント・ソードマンLV5】ATK3000/DEF2500


「だが・・・・私のフィールドには神がいる!!もはやどうする事も出来ないハズだ・・・・・!タ、ターンエンドだ!!」

「ボクのターン、ドロー!!」


 ・・・・・・・・・・・!


「ボクは手札からレベルアップ!を発動!!フィールドのサイレント・ソードマンLV5を墓地へ送り、デッキからサイレント・ソードマンLV7を特殊召喚する・・・・!」


【レベルアップ!】 通常魔法
フィールド上に表側表示で存在する「LV」を持つモンスター1体を墓地へ送り発動する。そのカードに記されているモンスター1体を、召喚条件を無視して手札またはデッキから特殊召喚する。


【サイレント・ソードマンLV7】
★7 光属・戦士族 ATK2800/DEF1000
このカードは通常召喚できない。「サイレント・ソードマンLV5」の効果でのみ特殊召喚できる。このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、フィールド上の魔法カードの効果を無効にする。


「このカードで全てを終わらせる・・・・・!!魔法カード、超新星―スーパーノヴァを発動!!」

「バカな・・・・・!サイレント・ソードマンLV7が存在する限り魔法の効果は無効にされるはず・・・・!」

「スーパーノヴァはモンスター・魔法・罠の効果を無視して適応するカード・・・・そして!!」

 フィールドに輝きが起こり、サイレント・ソードマンが剣を掲げると同時に、その剣には墓地に存在していた魂が集まる。

「このカードは自分の墓地に存在する戦士族モンスター全ての攻撃力を自分のフィールド上のレベル7以上の戦士族モンスター1体に加える!!そして自分のエンドフェイズに墓地に存在するモンスターの数だけダメージを受ける・・・・!!」


【超新星―スーパーノヴァ】 通常魔法
このカードの効果は、モンスター・魔法・罠の効果を無視して適用され、自分が1000ライフポイント以下の時のみ発動する事ができる。自分フィールド上のレベル7以上の戦士族モンスター1体を選択する。このターン、選択したモンスターのみが攻撃可能になり、自分の墓地に存在する戦士族モンスター全ての攻撃力を加える。発動ターンのエンドフェイズ時、このカードを発動したプレイヤーは墓地に存在する全てのモンスターの攻撃力分のダメージを受ける。


 ボクがカードの説明を終えると、神之崎さんは気が狂ったように笑い出す。

「ハハハハハハハハハハハハ!!!!やはり君は初心者・・・・!いや、算数の計算からやり直した方が良いね・・・・。確かにタッグデュエルでは味方の墓地も含むため、墓地のカードを使う事は有効な手段だ。事実上、定岡の墓地には速攻の黒い忍者が1体存在する・・・・」

「・・・・・・・!」

「だが、君の墓地の戦士族はゴブリン突撃部隊、サイレント・ソードマンLV3、LV5だ。そしてLV7の攻撃力を加えたとしても合計攻撃力は『12800』・・・・・!私の神を倒せたとしてもエンドフェイズに君のライフが0になる!!」

「それは違う・・・・!定岡先生は1度だけ、ごく自然に戦士族モンスターを墓地へ送る機会があった・・・・!!」

「何だと・・・・・・!?」





――――――――――――――――――――――――――――



『いや・・・それでいい!!罠カード、手札破壊(ハンド・ディストラクション)を発動する!!』

【手札破壊】 罠
自分の手札を全て捨て、次のターンの自分のドローフェイズから3回目までスキップする。相手の手札をすべて破壊する。

『そこまでして私の手札を全て破壊するカードを・・・・・!?お前は私が三幻神のオシリスを使うのを読んでいたのか!?』

『当然だ・・・・。貴様が挑戦状を出した時点で私は用意をしていた・・・・・貴様を倒すために作った、神を倒すためのデッキを!!』



――――――――――――――――――――――――――――





「まさかあの時・・・・・・!」

「そう・・・・・!!あの時、オシリスの天空竜を倒す布石と同時にボクのスーパーノヴァの事も計算に入れ、墓地に疾風の暗黒騎士ガイアと剣聖−ネイキッド・ギア・フリードを送ってくれていた・・・・・・よってサイレント・ソードマンLV7の攻撃力は・・・・」





【サイレント・ソードマンLV7】 ATK 17700





「い・・・17700だと!?」

「サイレント・ソードマンLV5でラーの翼神竜に攻撃!!!行けぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 ラーの翼神竜が強力なブレスを打つが、サイレント・ソードマンは尋常では無い速さで回避し、ラーの翼神竜に巨大な剣を大きく振りかざす。

「私が・・・・・・神が・・・・・負ける・・・・・・!?!?」

 サイレント・ソードマンの攻撃が神に直撃すると、フィールド全体は爆発してボクと神之崎さんは吹き飛ばされてしまった。

「がはあぁぁああああああああああああああああああ!!!」

「うわあああ・・・・・!!」




神之崎【LP:1000→0】




「神之崎さん・・・・!」

 ボクは残った力で神之崎さんの方へ走っていった。

「これで私も・・・・・・Jデュエルも・・・・何もかも終わり・・・・・・・」
「神之崎さん・・・・・」
「藤原君・・・・本当にすまない・・・・・。幸恵のもと・・・・へ・・・・・・・・・」



第34話「暖かい夏のユキ」

「け、賢治・・・・・!!」

 ボクの名前が聞こえた方向にはボロボロになった野口さんと伊吹君がいた。

「野口さん・・・・!」

「平見先生から俺の携帯電話に連絡があった・・・・・。先生の娘さんの容態がヤバいらしい・・・・!!」

「そ、そんな・・・・幸恵ちゃんが・・・・・!?」

「ああ・・・・。先生達のいる場所は幸花病院だ!」

「・・・・・藤原、デッキとデュエルディスクは俺が預かっておく。ここの後始末は俺達に任せろ」

「野口さん・・・伊吹君・・・ありがとう・・・・!それじゃあ行って来る!!」

 ボクは腕に付けていたデュエルディスクをデッキごと伊吹君に渡して、ここに来た時に使ったエレベータへ向かう。




(あの目・・・・やっと強くなったんだな、賢治・・・・・・・・・)




 ボクは少しよろめきながらも何とかエレベーターに乗った。1階のボタンを押し、そのまま壁にもたれる。



 どうして気がつかなかったんだろう・・・・



 ―――幸恵ちゃんと会って母さんの事を思い出したのも。



 ―――懐かしい感じがしたのも。



 ・・・・・・・全て理由があったんだ。








 他の考え事をしている暇も無く、エレベーターはすでに1階へついていた。

 来た時と違い、すぐに1階に着いたような気がする。とにかく急がないと・・・・・。

「うぁ・・・!足が・・・・・・・・・」

 足が滑り、倒れそうになってしまう。気がついた頃にはもう体は傾いていた。

「うわっ・・・・!」

「・・・・大丈夫か、藤原君?」

「さ、定岡先生!?どうして・・・・・?」

 倒れそうになったボクの体を受け止めてくれたのは定岡先生だった。

 定岡先生はそのままボクを背負い、Jデュエルに来た時に使った車に乗せてくれた。

「そこの非常階段から飛び降りただけだ・・・・・」

「飛び降りた・・・って、10階以上あるんですよ・・・・・・!?」

「私は大丈夫だ。状況は野口君から聞いた・・・・・幸花病院まで全力で行くぞ!!」

「・・・・・はい!」

 定岡先生は車のエンジンを起動させ、車を走らせる。Jデュエルから幸花病院まではそれなりの距離があった。

「そういえば大会は・・・・・どうなったんですか?」

「・・・・・デュエル・アカデミアの大会は規定の時間にいなかった我々の不戦敗になるハズだった。だが、デュエル・アカデミアに変わった1年生の生徒がいたらしくてな。その生徒が不戦勝なんて勝ちじゃない、正式にデュエルしたいとか言ったらしい・・・・」

「それじゃあ・・・・・・・!」

「ああ。野口君も角田君も、もちろん君もデュエル・アカデミアとデュエルが出来る・・・・!!」

「・・・・あ、ありがとうございます!」








 数分後、車は幸花病院の駐車場へ到着していた。それほど車は止まっておらず、定岡先生にすぐに車を止めることが出来た。

「私が案内出来るのはここまでだな・・・・。あとは君が自分の足で行くんだ」

「あの・・・・・・1つだけ聞いていいですか?」

「・・・・どうしたんだ?」

「最初の様子から思ったんですが・・・・神之崎さんと知り合いだったんですか?」

「・・・・ああ。私も奴も元I2社の同期の社員だった。ただそれだけさ・・・・・」

「・・・・わかりました。ありがとうございます、先生・・・・!!」

 ボクは車のドアを開け、すぐに病院に入った。受付の人を見つけると、幸恵ちゃんのいる場所を聞く。

「平見幸恵さんは4階のC号室にいらっしゃりますが・・・」

 ここでボクの傷の心配をされてはいけない。とにかく、頭を深く下げて近くにあるエレベーターへ走った。

「C号室・・・・・C号室は・・・・・・・?」

「あっ、藤原!!」

「平見先生・・・・・!」

「このバカ!!今まで何をやってたんだよ・・・・!それに・・・・その傷はどうしたの!?」

「すみません・・・・。それより幸恵ちゃんは・・・・!」

「・・・・・後で事情を聞かせろよ。幸恵はそこの奥の部屋だよ。でも幸恵はさっき・・・・」

 平見先生が話している途中だけど、ボクは走ってC号室へと行く。

「あいつ・・・・最後まで人の話を聞けよな〜・・・・・」

 白いドアを思いっきり開ける。どうやらここは1部屋1人の個室のようだ。

 ・・・・だったら都合が良い。幸恵ちゃんはベッドで本を読んでいたけど、ハッキリと聞こえるように名前を叫ぶ。





「ユキちゃん!!」





 ボクの声に反応したユキちゃんは、とても驚いた様子で見ていた。

「ごめんよ・・・・・。また・・・・遅く・・・・・なって・・・・・・・・・」

 心臓が壊れそうなくらい鼓動している。さすがにここまで来るだけでも疲れてしまった。

「藤原くん・・・・!どうしたの、その傷・・・・!?」

 ボクも野口さん達と同様、ボロボロな状態だった。

 定岡先生からタオルを借りて顔を拭いたんだけど・・・・・あまり意味が無かったのかな。

「ボクは大丈夫。それより、ユキちゃんはどう・・・?」

「うん・・・・。今は大丈夫・・・・・・」

「そっか・・・・・・。すっごく心配したよ」

 ホッと胸を撫で下ろす。

 ・・・・・・本当に安心した。

 ユキちゃんのベッドの近くに白い小さなイスがあったので、そのままそこに座った。

「あの・・・・藤原くん。今、私の事を『ユキちゃん』って言わなかった・・・・?」

「・・・・うん、言った。それがいつも君を呼んでいた名前だった・・・・・」

 ユキちゃんの表情が突然と変わる。


 嬉しいような・・・・


 悲しいような・・・・


 ・・・・・そして、なにより不安そうな表情へと変わっていった。


「ふ・・・藤原くん・・・・わたし・・・・・・・」

「君の探している『もう1人の藤原くん』は間違いなくボクの事だ。でも・・・・今までのボクは、ユキちゃんの事を何も知らなかった。だからユキちゃんが本当に探したかったのは、君の事をよく知っている、『もう1人の藤原くん』だったんだね」

 ボクの言葉に、ユキちゃんは数秒間の間をあけてから話し出した。

「うん・・・・。わたし・・・わたし、全部知っていた。でも・・・・その事を言っても、藤原くんが忘れていたら怖くて・・・・それでごまかすために、もう1人の藤原くんなんて言っちゃって・・・ごめんなさい・・・・・。藤原くんは藤原くん自身なのに・・・・・・」

「ううん、ごめん。ボクがもっと早く気がつくべきだったんだ」

 悪いのはボクだ・・・・・・。


 いつもユキちゃんに会った時、ボクは母さんの事を思い出していた。


 優しかった母さんと・・・・・同じ暖かさを持ったユキちゃん。だからボクは何となく母さんの事を思い出したんだと思う。


 そんなボク達が始めて会ったのは、小学校の終業式の後、みんなで集まった1年2組の教室・・・・・。




――――――――――――――――――――――――――――




 ボク達が小学1年生の時・・・・・・・だいたい9年前かな。

 この時、担任の先生から出席番号順に座席と名前の確認があったんだ。

「呼ばれた名前の順番で座ってね!男子1番、秋山円くん!女子1番の伊藤良子ちゃん!」

「はいっ!」

「はい!」

「それじゃあ、2人はここの前の席ね」


 ・・・・こうしてボクは自分の名前を呼ばれるのを待っていた。


 ボクの苗字は『ふ』から始まるから出席番号が最後の方だった。先生に名前を呼ばれるのをドキドキしながら待っていると、ついに名前を呼ばれたんだ。

「男子18番、藤原賢治くん!女子18番、平見幸恵ちゃん!」

「はい!」

「は、はい・・・!」

 ボク達は後ろの席で隣同士になった。この時は何も考えずに話しかけたのがきっかけだったかな・・・・。

「おはよう!ボクはふじわらけんじ。よろしく〜」

「あ・・、わたしは・・・ひらみゆきえ」

「ゆきえちゃんだね。それじゃあユキちゃん、よろしく!」

「う・・・うん!よろしく、藤原くん!」

 この時のボクは結構、明るい性格だったからなぁ・・・・・。

 今のボクなら考えられないけど、この何気ない会話が全ての始まりだった。


――――――――――――――――――――――――――――



「たぶん・・・・こんな感じだったよね」

「・・・・うん。えっと・・・・それでしばらくしてから給食が始まった時、わたしは食べるのが遅くてみんなに迷惑をかけちゃったけど・・・・藤原くんがいつも待っていてくれた・・・・・。あの時はすごく嬉しかったの・・・・今でも、ずっと・・・・・」

「は・・・はははは、その時のボクは格好つけていたのかな?・・・・そ、そ、そうだ、2年生の時は違うクラスになっちゃったけど、3年生の時にまた一緒になれたよね」



 でも・・・・・・・



「でも・・・、ボク達が3年生の時に悪夢は起きた。君にとって思い出したくない事だけど、言わせてほしい・・・・・・」



第35話「奪われた花束」

 あれは・・・・・ボク達が小学3年生の夏休みの時だった。



 ボクとユキちゃんが友達同士だった事は父さんも母さんも知っていたし、ユキちゃんの両親だって知っていた。

 ・・・・・理由まではさすがに覚えていないけど、この夏休みに海に行く事になった。

「母さん、ユキちゃん達はまだかな〜?」

「ふふっ、そんなに慌てなくてもすぐに来るわよ」

 そう・・・・ボクと母さんが言葉を交し合っていた・・・・・この時だった。





 ―――キィィィィィ!!





 急ブレーキの音が鳴った瞬間、次は大きな衝撃音が鳴ったんだ。

 物と物がぶつかる激しい、音。あまりにも大きい、音が・・・・・・。

 小学生だった頃のボクは身震いが起こった。まさか・・・・まさかと思っていた。

「えっ・・・・!?ユキちゃん・・・・・・・!?」

 ボクが心配になって走ろうとした時、母さんに手を強くギュっと握られた。

「大丈夫。大丈夫だから、賢治はここにいなさい」

「・・・・今のは結構近いな。とりあえず行くぞ・・・・・・!」

「ええ。賢治は絶対、ここで待っているのよ」

 父さんと母さんが行った後、ボクはこっそりと後をついていったんだ。

 母さんの言う事は今までずっと守ってきたけど、今はどうしても我慢が出来なかった。

 子供だったボク・・・・いや、子供だったからこそ本当に心配だったんだ。心の底から、不安と言う名の感情だけに染まっていたから・・・・。






 そして・・・・母さん達の後をつけると、目の前にはグシャグシャになった車が2つあった。

 1つはトラック、もう1つは普通の車。

 そして・・・・・その1つは見覚えのある車。白くて、小さな車・・・・・・・。

「そ・・・・そんな!!」

 ボクは我慢が出来なくて必死に走って近づいた。走っている途中で父さんに止まるように声をかけられたけど、ボクはそのまま走ったんだ。

 この目で確かめて、この手でユキちゃんを助けたい。その思いだけで必死に走った。

 車から炎は出ていなかったけど、ちょっとでも動くと爆発する危険性があった。それを知っていた父さんはすぐに追いついてボクの手を思いっきり掴んで、行くのを止めてくれた。

 でも・・・・この時は、止めた父さんを憎んでしまっていたのかもしれない。

「やめろ、賢治!!危険だから近づくな!!」

「はなしてよ、父さん!!!!ユキちゃあああああああああん!!!!!」


 その後は・・・・・・よく覚えていない。


 ・・・・・ううん、思い出せないんだ。


 ここまで思い出せても・・・・ここから先がどうしても。

 ボクは頭の中はユキちゃんの事だけだった。ずっと、ずっと泣きながら病院で待っていた。

 結果なんて言われなくても、何となくわかっていた・・・・・。

 そしてボクはこの時、あまりにも悲しくて母さんに八つ当たりをしてしまったんだ。八つ当たりをする事で、自分の気を紛らわそうとした。


「母さんのウソつき!!!ユキちゃんは生きているって言ったじゃないかぁああああ!!!バカぁぁぁぁぁ!!!!!」


「ごめんね・・・賢治・・・・・・・・」


 ボクは母さんの気持ちも考えずに、ただ怒鳴り散らした。




 ―――怒れば怒るほど、涙が止まらなかったのに。怒れば怒るほど、心の傷は深まったのに。




 そして・・・・ボクは抜け殻の状態で4年生、5年生、6年生と進級していった。でも、まだユキちゃんが亡くなった事を受け止められなくて、進級するたびにどんどん成績は下がっていった。

 6年生の時、帰ってきた算数のテストがいつもよりずっと悪かったんだ。

 放心状態になった時から悪い点数には慣れていたけど、さすがに今回だけは母さんに見せるのも嫌だった。

「・・・母さん、算数のテスト8点だったんだ・・・ごめんなさい・・ボクは・・・やっぱり・・・・」

「ふふっ、気にしなくていいのよ。次はいい点を取れるように勉強すればいいの」

「・・・・・」

「そんな事じゃダメよ。母さんが教えてあげるから、頑張って勉強しない?きっと次は100点よ!」

「うん・・・!ボク、頑張るよ!」




 これは、この前ユキちゃんと話していたら思い出した会話・・・・・・。

 この頃のボクは、とても傷つきやすかったのを母さんは分かってくれていた。だからこうやって、優しい言葉をいつもかけてくれた。

 普通の人から見たら甘やかしているだけに見えるかも知れないけど、母さんはこうやってちょっとずつボクの心から、ユキちゃんの死に対する悲しみを消そうとしていたんだ。

 それに、ボクの心の支えは父さんと母さんだけじゃなかった。2つ年上だけど、小さい頃から野口さんもボクの力になってくれた。

 野口さんは実際にユキちゃんを見た事が無かったけど、ボクのためにずっと野口さんがいてくれたんだ。

 もちろん・・・・ボクは母さんの期待に答えるために必死で勉強した。100点を取れば、ユキちゃんが天国で褒めてくれるとずっと信じていた。

 ・・・・・そしてテスト当日。

 昨日までの成果を見せるときが来た。

 テストの結果は予想外の点数・・・・・・・・



 ――100点だった。



 自信の無かった問題も合っていた。数年ぶりの100点が本当に嬉しかった。

 浮かれていたボクは終礼が終わるのをひたすら待って、クラスで1番早く教室を出た。言葉では表せないほど、ワクワクした気分で走っていたんだ。

 少しでも早く母さんにボクの実力を認めて欲しかった。幸い、父さんも今日は仕事が休みなので、1度で早くテストを見せられるから嬉しくてたまらなかったんだ。

 ちょっと長い信号を待ち、赤から青に変わると走って帰った。

 そのまま自分の家の方向へ曲がると、なぜか家の周りに人が集まっていた。



 一体何が・・・・・?



 そう思ってボクは人ごみをかき分けて、家の方向へ向かった。


 ・・・・・ボクの目の前には信じられない光景があった。




 そして、この時からボクは全てを落としてしまったんだ。




 ボクの目の先に映った光景には、父さんが血まみれで救急車に運ばれていたんだ。


 なぜ・・・・・?


 一体どうして・・・・・?


 ボクは・・・・ユキちゃんを助けようとした時のように走った。



「父さん!!!父さん、何があったの!?!?!??父さん!!!!父さん!!!!」

「き、きみ・・・・・!!」

 ボクは近くにいた警察官に止められたけど、自分でも信じられないほどの力で振りほどいた。

 父さんの方は運んでいる人が多くて近くに行けなかったから、ボクはそのまま家から運ばれた母さんの所へ行った。

「母さん!?母さぁぁぁああああああん!!!!何で!!何でみんな・・・・ボクの前から居なくなるの!?どうして!?何でだよぉぉぉ!!!???」

 ボクは服と顔・・・・手に持っていたテストやランドセルに母さんの血がついても、必死で母さんの体を揺らした。


 何か喋って欲しい・・・・・


 返事をして欲しい・・・・・


 テストを見て、「すごい」って、一言褒めて欲しい・・・・・


 全部、心から願ったんだ。


 でも・・・・そんな事が出来るわけが無かった。

 あの時の血の色と匂い・・・・。目を開けて、明らかに苦しそうに死んでいた母さんの表情が今でも忘れられないんだ。


 あまりにもつらくて・・・・ボクはどうしても忘れられなかった。もちろん、今でもその事はハッキリ覚えているんだ。

 異常なほど狂ってしまったボクは、気がついたら病院のベッドで寝ていたんだ。でも・・・・警察の人達は事情を何も話してくれなかった。今ならわかるけど、たぶんそれはボクに気を使ったからだと思う。知らせたら・・・・余計に悲しむと思ったら。

 いつの間にかボクは親戚の元へ送られて、そこで暮らす事になった。もちろん、義務教育がある以上、ボクは親戚のためにお金を稼ぐことが出来ない。

 何となく分かると思うけど、そんなボクが出来る事はただの雑用だけ。勉強や遊ぶ時間も無く、ボクの意思に関係無く、ひたすら雑用をやらされていた。

 そしてあの事件から数日後・・・・久しぶりに学校へ行くと、クラスの人達からは不幸者扱いだった。

 変に心配したり、不自然に気を使ったりされた。

 物事を決める時も、いつも暗かったボクを不幸者と言う事でボクを優先した。

 人によって感じ方は違うと思うけど、ボクは普通の人じゃ無いと思われているみたいで嫌でたまらなかった。


 ――――「大丈夫なのか、藤原?」


 ――――「大丈夫なの・・・・藤原くん?」



 「大丈夫?」だって・・・・?両親が死んで大丈夫なわけが無いじゃないか・・・・!



 でも、ボクは「大丈夫じゃない」なんて言えなかった。ボクが「大丈夫」って言えば解決する事だし、他人にボクの事を深く知られるのは絶対に嫌だった。

 親戚の家はボクの居場所じゃない。そして学校もボクの安心出来る場所じゃない。両親の死の次は、それに耐えるのがボクの不幸だった。

 学校でも、親の事を聞かれた時は精神的にいじめられている気もした。嫌で嫌で、自殺だって何回もしようとした。ボクの目に映る全ての人間が敵に見えたんだ。



 ―――でも、たった1人・・・・野口さんだけは違った。



第36話「未来に思い出を」

 野口さんは今までどおり、ボクを普通の友達として接してくれた。

 そしてこの時、野口さんのおかげで初めて全てを知ったんだ。




 ―――ボクの両親は、家に入った時に殺された。




 予想はついていたけど、死因は事故なんかじゃない。・・・・・これは殺人事件だ。

 犯人は職を失った人だった。ニュースを見ていて殺人事件なんてボクには無縁だと思っていたけど、ボクの大切な家族は被害に遭ったんだ。

 もちろん、ボクはその殺人犯を許せなかった。

 奪われたボクの父さんと母さんを帰して欲しかった。


 でも、ボクの前に帰ってくるわけがないんだ。そんな事は分かっている。




 ―――それなら




 それなら・・・・・その殺した人に復讐してやろうと思った。ボクの両親を奪った人を同じように苦しませて、同じように殺して、地獄の底へ叩き落としてやる・・・・。

 ボクの心にあるものは、怒り・・・悲しみ・・・そして復讐の感情だけだった。





「賢治・・・。俺、この町から親父の仕事で幸花町に引越しするんだ・・・・・・」

「そんな・・・・・!?龍明くんまでボクを・・・・・!!」


 やっぱり・・・・・人間なんて信用出来ない。


 信用していた野口さんでさえも、ボクを裏切った。


 やっぱり、ボクに残された事はただ1つ。両親を殺した人を・・・・


「聞け、賢治!!!!」


「・・・・・!?」

 野口さんは叱るように叫んだ。ボクが今までに聞いたことも無い、心の底からの声で。

「俺は親の都合で引越しをする・・・・。賢治も高校生になったら義務教育じゃなくなるから、嫌な親戚の連中から逃げてこっちに来てくれ!!俺の親父は俺が説得して住む場所は何とかするし、俺が高校生になったらバイトもして賢治の生活費のために働く・・・・!!」

「龍明くん・・・でも・・・・・・・・」

「俺は賢治の父さんから、いつも正しい事を教えてくれた。だから・・・・お前が人を殺すなんて・・・・・」

「龍明くんは何もわかっていない!!!ボクには父さんも母さんもいない・・・・だからボクは復讐をするんだ!!!」

「復讐をしたらどうするんだ?それでお前は全て満足なのか?お前にとって生きる価値も無いような奴を殺して、お前自身の手で自分の人生を狂わせるのか?賢治の父さんや母さんが殺されたようにお前も人間を殺すのか・・・・?」

「そうだよ、殺すのさ!!!ボクのこれからやる事のいったいどこが悪いんだよ?それに龍明くんの言う通りさ!!そんな奴はボクにとって生きる価値なんか存在しないんだ!!だからボクはその犯人にも同じ苦しみを、同じ痛みを、同じ殺し方・・・・いいや、それ以上のやり方で虐殺してやるんだ!!!!」

「・・・・・俺は賢治の母さんから優しさを学んだ。仮にその殺人犯を殺すことが他の人にとって正しい事でも、お前が人を殺して母さんが喜ぶと思うのか・・・・?」

「い・・・生きていたら喜ばないだろうね!!!でも母さんはこの世にはいないんだ!!だからボクはもう生きるなんて嫌だ!!それに龍明くんも・・・・もうボクと関わらないほうがいいんだよ!!!そうじゃないと・・・・・そうじゃないと今度は龍明くんが死んじゃうよ!!!だからもう、早くボクの前から消えたほうがいいよ!!」

「なら・・・俺は賢治が強くなるまで俺がいてやる!それが賢治の父さんと母さんに対する、俺からのお礼だ。それに・・・・俺は絶対に死なない。俺は賢治が強くなるまで、何があっても俺は死なない!!だから賢治が本当の自分を見つけ出すことが出来るまで、俺に全てを頼ってくれ!!だから・・・・・そんな奴を殺してお前の人生が狂うなら、俺にお前の人生を修正させてくれ!!!」

「くっ・・・・!でもボクは・・・・・・」

「頼む・・・・!!これから起こるお前の障害は、俺が出来る範囲で消してやる!!お前はそんな事で人生を捨てるべきじゃないんだ!!だから・・・・・頼む!!!」

 そう言って・・・・・野口さんは土の地面に思いっきり頭を下げた。

 野口さんが顔を上げた時、砂のついた野口さんの顔を見て・・・・・・ボクは思ったんだ。

(何で龍明くんはこんな事を・・・・・?ボクが殺そうとしていたのは野口さんには無関係の人・・・むしろ、ボクの父さんと母さんは野口さんにとって大切な人だったのに・・・・・どうしてそこまで・・・・・・・?)

 全然わからなくて・・・・自分の体から復讐や怒りの熱が無くなっていくのがわかった。ただ、今やっている野口さんの行動が不可解なだけだった。

「龍明くん・・・・どうして・・・・・あんな奴を助けたいの・・・・・・?」

「違う・・・!!俺だって賢治の父さんと母さんを殺した奴が憎い・・・!だがな、何が起ころうが復讐なんかで自分の人生を捨てるべきじゃない!!自分のする行動の後をよく考えるんだ!!!奴を殺して殺人犯として生きていくのか、ここは我慢をして、楽しい事や嬉しいことのためにこれから生きていくのかを!!だから・・・・・だから俺達でこれからやる事を考えよう。な・・・・?」

「・・・・・・・・!ごめん・・・・・ごめん、龍明くん・・・・・ごめん・・・・・ごめんよ・・・・」

 野口さんの言葉を聞いて、ボクは必死で謝った。あんなに野口さんに怒っておいて・・・・それなのに野口さんはボクを助ける事だけを考えていたんだ。だから自分が本当に情けなく思って・・・・・。

「分かってくれたか・・・・。でも、今は時を待つんだ。賢治が高校生になったら幸花町に・・・・必ず来てくれよな!」

「ありがとう・・・・ボクは絶対、龍明くんと同じ学校へ行くよ・・・・・!!」


 ボクはこの時から、野口さんだけは絶対に信用すると誓ったんだ。何があっても、絶対に。

 約束通り、ボクは幸花高校の生徒になって幸花町に来た。1人で住む事になったけど、野口さん以外に友達がいないボクには丁度よかった。嫌いな親戚の連中もいないし、幸せを見つけられる絶好のチャンスだった・・・・・・でも・・・・・・・・。





『父さんと母さんが同じ人間の手によって殺された』





 何が起きても、この事実は変わらない。

 だから、どうしても他の人が信用出来なくなってしまった。高校に入っても、新しい友達は出来なかった。

 いや・・・・ボクが作ろうとしなかったんだ。話しかけられても暗い様子で振り払って、心の回りのシャッターを使って、ボクの心の中に入れようとしなかった。

 それでも、野口さんはそんなボクの考えもちゃんと尊重してくれた。

 最初の頃はデュエルモンスターズ総合研究部の顧問の先生、定岡先生や2年生の角田さんにもずっと警戒し続けてしまっていたんだ。

 野口さんは両親がいないと言う事は一切言わずに定岡先生と角田さんに事情を説明してくれた。そしてボクもだんだん、心のシャッターは無くなってきたんだ。

 だからこそ、ボクの心の中から復讐の感情はほとんど消えていった。でも、やっぱり両親の死はボクにはあまりにもショックが強すぎた。


 この時の悲しみ・・・・怒り・・・・復讐。


 そんな感情が重なりすぎて、ユキちゃんの事を忘れていたんだ。

 絶対に忘れてはいけない事なのに・・・・ボクは忘れていた・・・・・・・。

 確かにユキちゃんが亡くなった事の悲しみは忘れたかった。でもユキちゃんと一緒に遊んだ楽しかった日々も、『悲しい記憶』の1つとして一緒に忘れてしまっていたんだ・・・・・・。








――――――――――――――――――――――――――――








「ご・・・ごめんなさい・・・・・・」

 ボクの話が終わると、ユキちゃんは本当に申し訳無さそうな顔で謝った。

「わたし・・・ずっと自分の事が・・・・不幸だと思っていたの・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

「藤原くんが、わたしの事を忘れていて・・・・・とても悲しかったから・・・・だから、あの花火をした夜も・・・・あの時の藤原くんは、わたしの前には帰って来ないと思って・・・・・・」

「そっか・・・・・」

「ごめんなさい・・・・。わたしより、ずっと辛い思いをしたのは・・・・・藤原くんだったのに・・・・・」

「ええっと・・・・そんなこと無いよ。何て言うか・・・うーん・・・・・・」

 ボクが言葉に詰まっているっと、部屋のドアから急に人が入ってきた。

 このタイミングで来るのはたぶん・・・・。

「あっはっは・・・・!鈍感と言うか、その態度はさすがに男として惨めだよ、藤原!」

 ・・・・・やっぱり平見先生だった。

「先生・・・・・」

「そろそろ神之崎さんが野口と伊吹を連れて来るって。あと・・・・・もう本格的な治療をして大丈夫なの、幸恵?」

「うん、私は大丈夫だよ。今度は絶対・・・・」

「よし、ならオッケーね。あたしは病院の駐車場であいつらを待っているから、満足したら降りてこいよ〜」

 平見先生はボクがいるのに、とても純粋な笑顔でドアを閉めた。

「ユキちゃん・・・・神之崎さんに聞いたんだけど、治療のためには・・・・・・」

「うん・・・・。ちゃんと、強い意志を持つ事だよね。設備やお医者さんの事を考えると、海外で受ける事になるの・・・・。でも、私の意志が半端だったから治療を受けても絶対に失敗するって・・・・・・。だから下手に治療は受けられなかった・・・・・」

 なるほど・・・・。だから神之崎さんは、今回の大会で幸花高校に負けた事が・・・・。彼も昔のボクと同じ、悲しさや憎しみと言う感情に動かされていたんだ。

「でもね・・・・でも、藤原くんは帰って来てくれた・・・・。だから、わたしはこんな事で死にたくない。これから元気になって、また一緒に何か・・・・」

「もう何も言わなくてもわかっているよ、ユキちゃん。それに、そのためにボクはここに来たんだから」

「藤原くん・・・・・」

「さすがにボクも海外へ行くわけにはいかないけど・・・・・ボクはずっと待っているよ」

 そうだ。

 さっきの平見先生の言葉・・・・。確かにここで何もしないのは惨めだ。

「あっ・・・・・」

 ボクは黙ってユキちゃんの肩を自分の肩へ寄せてみた。信じられないほどドキドキしてしまっているけど、その鼓動は大きさはユキちゃんも同じだった。

「ボクがユキちゃんの事が好きなんて、言わなくてもわかっているよね・・・・?だからボクが言えるのは・・・・・」


 とっても単純な言葉だけど・・・・・大切な一言。


「いってらっしゃい、ユキちゃん!」

 ユキちゃんは、あの時の約束をした時よりずっと元気な笑顔でこう答えてくれた。

「うん・・・・!」




37話以降はこちらから







前へ 戻る ホーム 次へ