Happy Flower
12話〜

製作者:Kunaiさん




第12話「memory」

「あの・・・ちょっといいですか・・・・?」

「・・・えっ?」

 ボクはゆっくりと顔を上げる。

 そこには赤いランドセルを背負った、小学4年生くらいの女の子がいた。

「あの・・・ボク、何か悪いことやってしまいましたか?」

 また・・・・わけがわからない事が起こる。

 ・・・・とりあえず敬語を使おう。

 ややこしい事に巻き込まれるのは、もうごめんだ。

 ボクの答えに、少女は困った表情で返事をする。

「あっ、その・・違います・・。も、もしかして藤原くん・・・・ですか?」

 何でこの子はボクの名前を・・・?

 でも、ボクはこの子がわからない。

「うん、そうだけど・・・・・君は誰かな・・?」

「・・・・・・・!」

 少女の顔を見た瞬間、すぐに状況が飲めた。


 ・・・・・・・・これは泣きそうな表情だ。


 ボクの心の中でエコーのように響く。

(これは絶対にヤバい!!!!)

 とにかく話を続けなければ・・・!

「あっ!!ごめん!今、思い出します!え〜っと、え〜っと・・・・?」

「・・・・小さい頃、一緒に遊んだ事を覚えていませんか・・・?」

「えっ・・?でも見たら分かるとおり、ボクは高校生だよ」

 ・・・・どう考えてもわかる事だった。

 ボクは高校生、この子は小学生。

「あっ!・・・ごめんなさい・・。わたしの勘違いでした・・・」

「・・・・何かよくわからないけど、ボクで良ければ話を聞くよ」

 何か・・・・気になったので、とりあえず聞く事にしよう。

「えーっと、ボクは藤原賢治。幸花高校の1年生。君は・・?」

「わたしは・・平見幸恵(ひらみ ゆきえ)、小学6年生。間違えちゃったのは・・・・昔、一緒に遊んでくれた男の子とあまりにも似ていたからなの・・・・・」

「あ〜、なるほど。名前は幸恵ちゃんだね。覚えておくよ」

「・・うん。やっと逢えたと思ったのに・・・本当にごめんなさい・・・」

「ははは、謝らなくていいよ」

「えっと・・・藤原さん、さっきまで元気が無かったみたいだけど、どうかしたの・・?」

「は・・・ははははははは。まぁ・・・・色々あってね・・」

 明日が大会なのに、デッキを無くした何て言えない。

 でも・・・・この子になら言ってもいいかも知れない。


 ――そう思った時。


「何かよくわからないけど、わたしで良ければ話を聞くよ」

(その言葉・・・・どこかで・・・・って!)

「さっきボクが言ったセリフじゃーん!」

 少女がクスッと笑うのを見て、ボクは出来るだけゆっくりと話す。

「ははは・・・・実は明日、大会なのにデッキを落としちゃって・・・」

「デッキ?・・・デッキってもしかして・・・デュエルモンスターズの・・・?」

 へ?

 ・・・・・・・何で知ってるの?

「あの・・・これじゃないかな・・・?」

 ランドセルから取り出されたものは紛れも無く・・・・


 ボクのデッキケースだった。


「あぁぁぁ!!何処で見つけたの!?」

「え・・?今日の学校行くとき、そこの踏切で・・・」

「ふ、踏切・・・・」

 この子が拾ってくれなかったら今頃、ボクのデッキは永遠に地の底に眠っていただろう。

 ・・想像しただけでも恐ろしい。

 少女はそのままデッキケースごとボクに渡す。

「あ・・・ありがとう!!」

 あまりにも感謝でいっぱいだった。

 これで野口さんの期待を裏切らずにすむ。

 堂々と、伊吹君と戦える。

 ・・・・言葉に出来ないほどの感謝だ。

「本当は朝から警察に届けようと思ったけど・・・・。学校の集団登校で班長だったから他の子を放っておけなくて・・・・」

「でも・・・・ありがとう、ありがとう!!」

「うん、よかったね・・・藤原くん」









『絵本が見つかってよかったね、賢治』


『うん、母さんのおかげだよ』






 ・・・・・・・え?

 一瞬だけど、過去の記憶を思い出す。

 あれは・・・だいぶ昔の事だ・・・・。

 今のは・・・・・母さんだ・・・・間違いない。

 ・・・・あっ・・・・・・ダメだ!!


(思い出したくない。思い出しちゃいけない!)


 父さんも母さんもボクの記憶から早く消すんだ・・・・!


「どうしたの、藤原くん・・?」

 少女が心配したようにボクを見ていた。

 今はとにかく、少女の言葉に返事をするのが先決だった。

「いや、なんでもないよ・・・・」

「うん・・・。でも、色々ありがとう・・。もしよかったら、わたしの家に遊びに来ないかな・・?」

「え!!そ、それはさすがにマズいよ〜・・。ボクが変なおじさんだったらどうするの〜?」

「ふふっ、それは違うよ。藤原くんは・・・とっても優しい人だよ」

 ・・・・・バカな。

 そんなわけが無い。

「そんな事・・・・・どうして・・そんなことがわかるんだい?」

「えっ・・・?」

「悪いけど・・・・ボクにはわからないよ。どうして会ったばかりの人間をそんな簡単に信用出来るんだい?そんな事だと世の中で・・・・・」

「あのね・・・」

 少女は口を挟むように話し出す。

 ・・・・・今は黙っておこう。

「藤原くんは自分のことを、わたしに話してくれたよね」

「・・そう・・・だけど・・・・」

「藤原くんは何か心に大きな迷いがあると思うの」

(えっ・・・・)

「でも・・・でも、わたしに色々な相談をしてくれたって事は、思い込みかも知れないけど、少なくともわたしを信用してくれているって事じゃないのかな?だからこそ、わたしも藤原くんを信用している・・・・そう思うの」

「あっ・・・!」

 ・・・・・・・そうなのかな。

 この子はボクと何かが違う。・・・・・・何だろう。

「・・・・違う・・・かな?」


 ―――違うことなんか無いよ・・。


 この子の言うとおりだった。


「・・・・ありがとう。ボクで良ければ行くよ」

「・・うん!わたしの家、こっちだよ」

 軽いカバンを持ち上げ、少女についていく。

 会ったばかりの少女について行くのは少し気が引けたが、ボクには気になる事が数点あった。


――自分に似ている『藤原くん』の事。


――急に母の事を思い出した事。


――自分の心を見透かした少女


 ・・・色々と考え続けている間にボク達はいつのまにか到着していた。




第13話「冷たい夏のユキ」

「ここだよ、藤原くん」

 見た目は普通の家よりちょっと豪華・・と言う感じがした。

 小さい庭が必要以上に綺麗に手入れされている。

 ・・・よほど几帳面なお母さんがいるのだろう。

 恐縮しながらも、何とか玄関に入る。

「ただいま。お母さん、遅くなってごめんなさい」


 心臓が破裂しそうだった。


 ――この手の家にはアニメに出てきそうな、美人でロングヘアー、優しい人が・・・・

「幸恵、遅いぞ〜」

 ・・・・この喋り方。

 ボクはどこかで聞いたことがある。

「ん・・・?この声どこかで・・・?」

「ななななんだぁぁ!?何で藤原がここに!?!?!??!?!」

「ややややっぱり!!平見先生こそなんで!!!!!!!!!」

 言葉では表せないほど驚く・・・・。

 「!」と「?」がいくつあっても足りないほどに、ひたすら驚く。


 ・・・・・一体なぜ!?!?


「あれ・・?お母さんも藤原くんもお知り合い・・・?」

「なななななぜ・・・・なんで・・・・・!?!?」

「・・・・・・ま・・・・まぁ、とにかく上がれよ・・・・・・」

 先に気を落ち着かせたのは平見先生の方だった。

 この点ではさすが先生・・・・なのかも知れない。

「は・・はい・・。いやぁ・・ビックリした・・」

 まだ心臓が激しく鼓動する。

 ・・・今頃になって少女の言葉を思い出した。

「わたしは・・平見幸恵(ひらみ ゆきえ)・・・・」


 ・・・・迂闊だった。


「・・・まぁ座ってくれ、藤原」

 先生に言われるまま、イスに座らせてもらった。

 いつのまにか机に料理が並ぶ。一瞬、レストランに来たかと思った。

 ・・・人は見かけによらない、なんて考えたボクは失礼だ人間だ。

「ま、遠慮せずに食えよ」

「あっ・・いいんですか・・?」

「いいから出してんの」

「そ、そうですね・・・すみません」

 頭を下げ、箸を取らせてもらう。

 ・・・・最初の大会の時くらい緊張している。


 ・・・やばい。


「そういえば、何で2人ともお知り合いなの・・・?」

「ははは・・・・実はね・・」


 平見先生が自分の学校の担任の先生。

 自分が学校に来た理由は、唯一の友達だった野口に会うため。

 ・・・色々な事を先生にも話した。


「あっ・・・わたし、宿題をやらないと・・・」

「幸恵、皿は片付けておくから」

「うん、ありがとう・・・」

 そう言って幸恵ちゃんはリビングを出て2階へと上がっていった。

 先生は幸恵ちゃんが2階へ行ったのを確認し、少し真剣な様子で口を開く。

「藤原、あの子といったいどうしたの?」

 一瞬、どうすればいいかわからないので、ドキッっとしてしまう。

「実は・・・・」

 大会のためのデッキを無くし、途方にくれていた自分を助けてくれた。

 幸恵ちゃんに勇気を貰った事を正直に話した。

「なるほどね・・・。あの子らしいね・・・・・」

 先生は学校では見せない、困った表情で笑っていた。

「ところで幸恵ちゃんのお父さんはまだですか?何かボク、怪しいと思うんで・・・・」

 ボクが一番心配していた事だった。

 見ず知らずの男が勝手に上がりこんで、何か誤解が生じる可能性がある。

 ・・・・それは避けたい。

 真剣に考えていたのに、先生は呆れて言ってくる。

「もう始業式の事忘れたの・・?私は独身だっつーの」

「えっ!?それじゃあ幸恵ちゃんは・・・」

「あ〜・・・・・そう、あの子も藤原と同じで両親いないから引き取ってくれって言われたんだよ。うん。まぁ親戚の娘だからって言うのもあったんだけど、そのまま放っておくのもかわいそうだからね」

「え・・・偉いじゃないですか、先生!」

「・・・・それって今までアタシがバカって思ってたの?」

「えっ!ち、違います!滅相もないです!」

「まぁ・・・いいか。とにかく、あの子に関わるのは・・・・・やめといたほうがいいよ・・」

 少し本気な口調で平見先生が言った。

 ちょっと心配になったので、そのまま聞き返す。

「どう言う意味ですか・・・?」

「まぁ・・・あなたには言うべきだね。・・・・・。あの子は、いつ死んでもおかしくない」

「えっ・・・・!?」


 唖然とする。


 ―――人が亡くなったときの辛さと痛み。

 小学生の時の、思い出したくない記憶。

 忘れていたと思ったのに、忘れていなかった記憶。

 それらが全て・・・・思い出してしまいそうだった。

「・・・・!ごめんなさい。あんたには辛い話だった、やっぱり忘れて」

 平見先生はボクの様子に気がつき、軽く頭を下げる。

 学校では絶対に見られない姿だ。

「いえ・・・構いません。・・でも、そこまで言われると気になります。教えてください」

 先生に言うのは緊張したけど、少し強めの口調で言った。

「・・・・あの子は数ヶ月に1回、原因不明の発作が起こる。もちろん過去にも数回あった。今は大丈夫だけど・・・・これ以上続くと精神的にも身体的にも持たなくなって命を落としかねないらしい。短い命なら・・・あの子のやりたい事を出来るだけやらせてあげたいとあたしは思ってる」

 ボクは黙って聞く。

 一言・・・いや、一文字も聞き逃してはいけない。


 心からそう思い続けた。


「あの子にはあまり家事をさせたくない。子供らしく、もっと元気に遊ばせてやりたい。でも、あの子のやる事はあたしの手伝いばかり。自分の・・・・自分の・・・状況を理解しなさいよね・・・・・・・・ばか・・・・・・・・」

 先生は両手で目を押さえて、机にひじをつける。

 状況が状況だが、ボクの前で泣くのは見っとも無いと思ったみたいだ。

「先生・・・・・・・」

 ボクには黙る事しか出来なかった。

 先生を慰める言葉が見つからない。見つけられない。

 それ以前に、見つけようとしても慰める言葉が無かった。

「さっきは・・・あんな事言ったけどさ・・・。藤原がよければ、あの子のそばにいてやってくれない・・・?」

 目を逸らしながら、先生はボクに問いかける。

「えっ・・・?」

「ほら、早く行ってあげて。2階上がってそのまま左のトコがあの子の部屋だから」

 先生はボクの汚れたカバンをはたいてから渡す。

 ボクはゆっくりと取って、決心をした顔で言った。


「・・・はい!」




第14話「やくそく」

 ボクはゆっくりと階段を上る。

 先生の言われたとおりに左の方へ行く。廊下には大きな観葉植物が目立っていた。

 ――コンコン。

「藤原です。幸恵ちゃん、いるかな?」

「あっ、藤原くん・・!うん・・入ってきて〜」

 幸恵ちゃんの言葉を聞くと、ゆっくりとドアを開ける。

「あれ?これは・・・マシュマロン・・・・?」

 薄情な気がするけど、目についたのはカードだった。

 本棚の上には数枚のカードがある。どれも野口さんが強力と言っていたカードばかりだ。

「あ、『レベルアップ!』もある・・・!」

「よかったら、あげる・・・・」

「え・・?でも・・・」

「わたしには必要ないの・・・・」

 幸恵ちゃんは悲痛な様子で言う。

 聞くのはかわいそうだけど、ここは聞くべきだ。

「どうかしたの・・・?」

「なぜか・・・なぜか勝っちゃうの・・・・」

「・・・・へ?」

「わたしは・・・勝たなきゃいけないの・・・・・・」

 それは良い事じゃないのかな?

 突然だから信じられなかったけど、それは才能だと素直に思った。

「いつもわたしが勝つから周りの人は誰もデュエルをしてくれない・・・面白く無いって・・・」

 ・・・分からなくも無かった。

 でも、これは何かが違う気がする。

「負けたくても・・・わたしは負けられない。約束・・・だから・・・。わたしはもうデュエルはしたくないの・・・・」

「それでもさ・・・・」

「・・・?」

「それでもさ、ボクは君の味方・・・、仲間だよ。それなら、明日の大会のためにデッキの調整を手伝ってくれないかな?」

 ・・・・もう少しマシな励ましの言葉を考えた方がよかったかもしれない。

 でも、これはボクにとって心のこもった言葉だ。

「うん・・・・!ありがとう・・ありがとう・・」

 嬉しそうに笑いながら何度もお礼を言われる。

 なぜか・・幸せな気分になる。

 今まで孤独だった自分が情けなく思った。

 どうして今まで人を信じなかったのかな?

 ・・・・今は考えない方がいい。それが賢明な判断だ。






 幸恵ちゃんのアドバイスを受けながらもデッキを調整した。

 デッキの内容は・・・半分は幸恵ちゃんのカードだ。

 なぜか前より、デッキに触れるだけで勇気を貰える気がした。


 自分の腕時計を見ると、すでにそれなりの時間だった・・・。

 ・・・・・・ならば帰らなければ。


「・・・・・残念だけど・・・もうそろそろ帰らないと」

「え・・・帰っちゃうの・・・?」

「うん・・あまり長居するのも悪いからね・・」

 寂しいけど・・・・我慢をして部屋のドアを開ける。

「ん・・・・?藤原、帰るの?めんどくさいから泊まっていきなよ」

 泊まる・・・・?

「えぇ!?いや・・・それはちょっとまずいと思いますけど・・」

「わたしも・・いてほしいな・・・・」

「はははは・・・・まいったなぁ〜・・」

 ボクの困った様子を見た幸恵ちゃんは思いついたように言う。

「あっ、でも藤原くんのお母さんも心配するからダメかな?」

 先生もボクもピタッっと空気が止まる。

「藤原はね、幸恵と一緒でお母さんもお父さんも亡くなったのよ」

「そんな・・・!ウソ・・・・・!!・・・・ご、ごめんなさい・・・・!」

 幸恵ちゃんは申し訳無さそうに謝った。

「ううん、全然気にしてないよ。それより、ボクなんか居ていいんですか・・・?」

「・・・あたしは構わないよ。幸恵もいてほしいみたいだし。ほらほら」

 先生は微かに笑いながらボクと幸恵ちゃんを部屋に押し込み、ドアをバタンと閉めた。

 ・・・・・・だがチャンスだ。

 聞くなら今しかないだろう。

「・・・突然だけど、ボクと似ている藤原くんってどんな人なの?よかったら話してくれないかな?」

 これを聞かずにはいれなかった。いままでずっと引っかかっていた事だ。

「えっと・・・・何から言えばいいのかな・・?」

「それじゃあ、どうしてその昔から友達だった藤原くんと離れ離れになったのかな?」

 ボクの一番の疑問点だ。

 小さい頃に遊んでいた友達なら、家の場所くらいは知っているハズだ。

「それは・・・・わたしが勝手に藤原くんの前から消えちゃったの・・・。約束をしていたのに、わたしの勝手な都合で・・・」

「・・でも、何か事情があったんでしょ?え〜と、引越しとか・・?」

「そう・・・だね・・。引越しが一番近い・・・かな・・・」

「それは悪くないと思うよ。家の事情だったんだから」

(何かうまく言えないなぁ・・。と、とにかく今、気になるのはあともう1つだ)

「もう1ついいかな?藤原くんとはやっぱり仲がよかったんだよね?」

 あまり意味の無い質問だが、何か気になっていた。

「うん・・わたしは・・・そう思っていたの。同じクラスだった藤原くんは、クラスでも目立たないわたしと話してくれていたの・・・」

「そっか・・・・。わかった、話してくれてありがとう。ちょっと残念だけど、その藤原くんはボクじゃないよ」

「そ、そう・・なの・・・・?」

「うん。子供の頃、仲の良かった女の子はいなかったし、それ以前に年も違うからね・・・。でも、関係の無いボクにも・・君のために出来る事が2つあるんだ」

「えっ・・・?」

「明日の大会に絶対に勝って、君に見せてあげる事。弱いボクでも頑張れば勝てるって見せてあげる事・・・」

 一見、意味が無い気がすると思う。

 でも・・・幸恵ちゃんの探している藤原くんに少しでも似ているボクが勝てば、幸恵ちゃんもきっと元気になるはずだ。

 ちょっと遠まわしな考えかも知れないけど・・・・。

 そして幸恵ちゃんにとって重要な事が・・もう1つ。

「もう1つは・・・君の探しているもう1人の藤原くんを探してあげること。ボクでよければ、やらせてくれないかな?」

 ボクの問い掛けに、涙を浮かべながら笑顔で話す。

「うん・・・・、ありがとう!」




第15話「強くなれる日」

『父さん!!!父さん何があったの!?!?!??父さん!!!!父さん!!!!』


 あれは・・・・・ボク・・・・?


 小学生の頃の・・・・ボク・・・・?


 そうだ・・・・・これは・・・・・


『き、きみ・・・!!』


 警察の人?

 ボクがなんで・・・・・?

『藤原くん!!』

 ボクを呼ぶのは・・・・・・・誰?

「藤原くん、もう10時だよ?」

「あれ・・・・ここは・・・・!?」

 だんだんと視界が戻ってくる。

 真新しい机とベッドに綺麗に掃除された部屋。赤いランドセルと、自分の汚れたカバンが目に入る。

「藤原くん、おはよう」

 隣には昨日会った少女・・・・幸恵ちゃんがいた。

 昨日の夜はいつの間にか寝てしまっていたらしい。

 本当に泊まってしまったんだ・・・・。

 許可を取っていたとは言え、ちょっと変な感じだ。

「お・・はよう、幸恵ちゃん」

 まだ頭がボーっとする。

 今の夢は・・・・?また思い出したく無い事を・・・・。

「もう・・。お母さんは出かけちゃったよ」

「そうだ!!学校に遅刻する!!!」

 ボクは慌ててカバンを用意する。

 次は遅刻の口実を考えなければ!!

「藤原くん、今日は土曜日だよ」

「・・・?」

「どようび。だから学校は休みだよ」

 ボクはほっと胸を撫で下ろす。

「そっか・・・・ビックリした・・・」

 安心してヘナヘナと座ると、幸恵ちゃんが目をそらして話し出した。

「あの・・・・・今日は暇かな・・・?」

「え〜っと、大会が始まるまでは暇だよ。・・・・じゃあ、時間もあるしどこか行く?」

「うん!」

(ってボク、制服のままだけど・・・・ま、いいか・・)

 布団を片付け、2人で玄関へ行った。

「鍵、閉めた?」

「うん、大丈夫」

「嫌かも知れないけど、ちょっと寄りたい所があるんだけど・・いいかな?」

 昨日・・・・野口さんから聞いた情報だ。

 ・・・・・それをこの目で確かめなければならない。

「えっ?どこ・・・・?」



「・・・・・カード屋さん!」



 ボク達2人は商店街の中へ行く。

 当然だと思うけど、土曜日だから人がたくさんいた。

 商店街のちょうど中央あたりでカード屋を発見する。

 そこには『カード店』とシンプルに書かれた看板が立っている。中に入るとそんな広く無い様子で、デュエルディスクやレアなカード、最新パックのポスターが大きく貼られていた。

「くっ・・・・このパックは強力な炎属性のモンスターがいないのか・・・・!」

「はい・・・・そう言われましても・・・・」

(ん・・・?この声、どこかで・・・)

 おそるおそる、レジの近くを見る。

「あーーー!!伊吹君!!!」

「藤原・・・・!!」

「お、おはよう・・・伊吹君」

「ああ。・・・・何だ、そこのチビは?」

「あっ・・・えっ?・・・いや、この子はボクの妹さ。ね?」

 ボクは慌てて幸恵ちゃんに話しかける。

 小声でここは話を合わせて!と言い、伊吹君の方を向く。

「お前・・・・そんな趣味があったのか・・・・」

「いや、だから・・・」

 伊吹君は半笑いをしながらボクの肩をポンポンと叩く。

「安心しろ。俺は趣味の事で差別をしない」

「違う、違う、違う!」

 ハハハと笑いながら店を出ようとしている伊吹君をボクは必死で説得する。

「あの、藤原くん。カード買わないの?」

「あっ、そうだった・・」

 うっかり忘れていた。

 伊吹君をそのまま放っておいてレジに行く。

「結局・・・・お前は誰だ?」

「えっ!・・・ふ、藤原くんの友達・・・です」

「・・・・まぁいい。・・・・藤原が帰ってきたぞ」

 ボクは新しいパックを数個買って店の出口へ行く。

「ごめん、待たせちゃって」

「・・・・行こうか」


 ・・・なぜか伊吹君もついてくる。


「って伊吹君も・・・・?」

「暇だからな。とにかく俺は・・・」

 話している途中でそのまま思い出したように言う。

「そうだ・・!お前、デッキは・・・?」

「あっ、そうだった!・・・えっと、幸恵ちゃんが拾ってくれたんだ。あの時はありがとう、伊吹君」

「・・・別に構わない。・・・・・・・だが!」

 伊吹君が何か言いたそうな目で見てくる。

 その目を見たとき、何がしたいのか・・・すぐに思い出した。

「あっ・・・・」

「そうだ。・・・・決着をつけてやる・・・。デュエルだ!!」

 ・・・やっぱりそう来た。

「うん・・・わかっている」

 伊吹君はデュエルディスクを取り出し、ボクに渡す。

「部室にあった奴だ。・・・・・・行くぞ!デュエル!!」

「藤原くん、昨日の事を思い出して!」

「うん、大丈夫!!」


藤原【LP:4000】 伊吹【LP:4000】


「俺のターン・・・!手札からバーニングブラッドを発動!!」

【バーニングブラッド】 フィールド魔法
全ての炎属性モンスターの攻撃力は500ポイントアップし、守備力は400ダウンする。

「いきなりフィールド魔法・・・・!」

「UFOタートルを攻撃表示で召喚し、ターンエンドだ」

【UFOタートル】
★4 炎属・機械族 ATK1400/DEF1200
このカードが戦闘によって墓地へ送られた時、デッキから攻撃力1500以下の炎属性モンスター1体を自分のフィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。その後、デッキをシャッフルする。

【UFOタートル】ATK1400→ATK1900

「ボクのターン!コマンド・ナイトを攻撃表示で召喚する!」

【コマンド・ナイト】
★4 炎属・戦士族 ATK1200/DEF1900
自分のフィールド上に他のモンスターが存在する限り、相手はこのカードを攻撃対象に選択できない。また、このカードがフィールド上に存在する限り、自分の戦士族モンスターの攻撃力は400ポイントアップする。

「コマンド・ナイト自身の効果と、バーニングブラッドの効果で攻撃力がアップする!」

【コマンド・ナイト】ATK1200→ATK2100

「よーし、UFOタートルに攻撃だ!!」

 UFOの甲羅を背負った亀のモンスターの破壊に成功した。

(伊吹くんはわざと攻撃表示にしてUFOタートルを墓地へ送った。それなら炎属性を墓地から除外する事で特殊召喚するモンスターを出すはず・・・。それに気がついて・・・藤原くん・・・!)

伊吹【LP:4000→3800】




第16話「希望の懸け橋」

「UFOタートルの効果を発動!デッキからUFOタートルを特殊召喚する!!」

「また同じモンスター・・・?とりあえず、カードを1枚セットしてターン終了!」

「俺のターン。UFOタートルを生贄に炎帝テスタロスを召喚する!」

【炎帝テスタロス】
★6 炎属・炎族 ATK2400/DEF1000
このカードの生け贄召喚に成功した時、相手の手札をランダムに1枚墓地に捨てる。
捨てたカードがモンスターカードだった場合、相手ライフにそのモンスターのレベル×100ポイントダメージを与える。

「このカードの効果でお前の手札から一番左のカードを墓地へ送る!」

(あっ!リビングデッドの呼び声が・・・)

「罠を破壊したか・・・。俺は続けてUFOタートルを除外し、インフェルノを特殊召喚する!」

【インフェルノ】
★4 炎属・炎族 ATK1100/DEF1900
このカードは通常召喚できない。自分の墓地の炎属性モンスター1体をゲームから除外して特殊召喚する。このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送ったとき、相手ライフに1500のダメージを与える。

「まだだ!手札からサイクロンを発動!」

【サイクロン】 速攻魔法
フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する。

「っ・・・!」

 伊吹君の発動した魔法の効果でボクのリバースカードが破壊された。

「・・・・またミラーフォースか」

「うーん・・・・・」

 ミラーフォースがぁぁ・・・・。

「テスタロスでコマンド・ナイトに攻撃だ!!バーニングブラッドの効果により2体とも攻撃力が上がっている!」

【炎帝テスタロス】ATK2400→ATK2900
【インフェルノ】ATK1100→ATK1600

「うあっ・・・」 藤原【LP4000→3200】

「インフェルノでダイレクトアタックだ・・・!」


「ぐはぁぁ・・・・!!」 藤原【LP:1600】

「藤原くん、大丈夫・・・!?」

 幸恵ちゃんが心配そうに声をかけてくれる。

 心配させないようにボクは平気な顔を取り繕って返事をする。

「ふふふ、大丈夫さ!!」

 ・・・・でも、正直に言うとまずい。

「ボクのターン!モンスターを守備表示で出してターン終了!」

(幸恵ちゃんから貰ったこのカードなら・・・!)

「俺のターン。インフェルノを生贄に捧げ、2体目のテスタロスを召喚する!テスタロスが生贄召喚に成功した・・・!ならば今度は一番右のカードだ」

「こ・・今度は抹殺の使途が・・・・・」

「テスタロスで守備モンスターに攻撃する!!」

 テスタロスが炎を使って攻撃をする。フィールドにいたボクのモンスターが何とか攻撃を跳ね返し、その炎が伊吹君に直撃した。

「何だと・・・!?」 伊吹【LP:3800→2800】

「伊吹君が攻撃したのはマシュマロン・・・!」

【マシュマロン】
★3 光属・天使族 ATK300/DEF500
裏側表示のこのカードを攻撃したモンスターのコントローラーは、ダメージ計算後に1000ポイントダメージを受ける。このカードは戦闘によっては破壊されない。(ダメージ計算は適応する)

「くっ・・・厄介なモンスターを・・・。ターンエンドだ!」

「ボクのターン、ドロー!」

(来た・・・・!)

「手札からライトニング・ボルテックスを発動!手札1枚をコストに、相手フィールドの表側表示モンスターを全て破壊する!」

 天空から放たれた雷に伊吹君のモンスターは2体とも破壊された。

【ライトニング・ボルテックス】 通常魔法
手札を1枚捨てる。相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て破壊する。

「そしてマシュマロンを生贄に、サイレント・ソードマンLV5を特殊召喚する!」

【サイレント・ソードマンLV5】
★5 光属・戦士族 ATK2300/DEF1000
このカードは相手の魔法の効果を受けない。このカードが相手プレイヤーへの直接攻撃に成功した場合、次の自分のターンのスタンバイフェイズ時に表側表示のこのカードを墓地へ送る事で「サイレント・ソードマンLV7」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。

「バカな・・・・LVモンスターだと・・・・!?」

「サイレント・ソードマンLV5でダイレクトアタック!!」


 ―――沈黙の剣LV5!


「うぐっ・・・・!!」 伊吹【2800→500】

(こいつ・・・・!本当に藤原なのか・・・?)

「やった!もう少しだよ、幸恵ちゃん!」

「うん!藤原くん、頑張って!」

(いや・・・。まさかこのチビが何らかの影響を・・・?)

「ターン終了!」

「俺のターン・・・!UFOタートルとインフェルノを墓地から除外し、2体のインフェルノを特殊召喚する!!」

「2体のモンスターを特殊召喚・・・・?まさか・・・!」

「俺は2体のインフェルノを生贄にし、ヘルフレイムエンペラーを召喚する!!」

【ヘルフレイムエンペラー】
★9 炎属・炎族 ATK2700/DEF1600
このカードは特殊召喚できない。このカードの生贄召喚に成功した時、自分の墓地の炎属モンスターを5枚まで除外する事ができる。この効果によって除外した枚数分だけフィールドの魔法・罠を破壊する。

「バーニングブラッドの効果によってヘルフレイムエンペラーの攻撃力が上昇する!!」

【ヘルフレイムエンペラー】ATK2700→ATK3200

「うっ・・・・やっぱり攻撃するかな・・・?」

「当たり前だろ・・・?サイレント・ソードマンを攻撃だ!!」

 ヘルフレイムエンペラーは両手から炎の波動を放ち、サイレント・ソードマンを攻撃した。

「サイレント・ソードマンが・・・!」 

藤原【LP:700】

「お前の手札は0枚・・・どうする事も出来ないだろう。・・・・ターンエンドだ」

「ボクのターン!手札から強欲な壷を発動する!!」

(この2枚のカードで・・・!)

【強欲な壷】 通常魔法
自分のデッキからカードを2枚ドローする。


1枚目:洗脳―ブレインコントロール
2枚目:戦士の生還


(よし、ブレインコントロールを使えば・・!)

「藤原くん・・・。残念だけど・・ライフポイントが・・・・」

「どうしたの、幸恵ちゃん?」

 ライフポイント・・・・?

 ・・・・・!!

 藤原【LP:700】

(ブレインコントロールを使うには800ライフが必要・・・)

「・・・ボクは戦士の生還を発動・・。墓地からコマンド・ナイトを手札に加え、守備表示でセット・・・!ターン終了!」

【戦士の生還】 通常魔法
自分の墓地の戦士族モンスター1体を選択して手札に加える。

「・・・ここで俺がモンスターを引けば終りだな・・・ドロー!!」

ドローカード【炎を支配する者】

「・・・俺は炎を支配する者を召喚し、コマンド・ナイトを攻撃する!!」

【炎を支配する者】ATK1500→ATK2000

「くぅ・・・・!」

「ヘルフレイムエンペラーで藤原にダイレクトアタックだ!!」

「うあぁぁ・・・!」 藤原【LP:0】

(くっ・・・勝ったのはいいが・・・今のはギリギリだった・・・。藤原は確実にレベルアップしていると言うのか・・・?)

「やっぱり伊吹君のほうが強かったかぁ・・・」

「・・・大会まであと数時間ある・・」

「えっ!?まだやるの・・・?」

 ・・さすがにまた伊吹君とデュエルをするには気が持たない。

「・・・違う。そこのチビにまだ教えてもらう事があるんだろ」

「伊吹君・・・・」

 伊吹君は幸恵ちゃんが強いデュエリストって事を知っていたのかな・・・?

「大会は5時からだ。・・・・遅れるなよ」

「ありがとう・・・。伊吹君!」

 伊吹君は軽く手を振って去っていった。

「えっと・・・それじゃあ幸恵ちゃん、またお願いしていいかな・・・?」

「うん!」



第17話「J−DUEL−1」

 ボクは伊吹君との約束通り、幸恵ちゃんから様々な事を学んだ。

 そして・・・・大会の時間。

 すでに会場は1回戦や2回戦とは比べ物にならないほどの人で賑わっている。定岡先生とボク達4人は選手控え室にいた。

 野口さんも角田さんも、黙ってデッキを調整していた。出場しない伊吹君だけは立って壁にもたれていた。

(ボクはこの大会に勝たなければならない・・・。幸恵ちゃんのためにも・・・・・)

『え〜、幸花高校の選手およびJデュエルハイスクールの選手はデュエルフィールドへ集まってください』

 ついに放送が流れる。野口さんは自分のデッキだけを持ち、角田さんはデッキの入ったデュエルディスクを、伊吹君は手ぶらで、ボクはカバンごと持っていった。

 会場のライトがいつもよりまぶしい。

 ・・・・まさかここまで人が来ているとは思いもしなかった。

『それでは、藤原選手と出井選手はデュエルフィールドへ上がってください』

 いつもここで応援してくれる野口さんだが、その様子も無く、黙っている。

 まるで獲物をじっくりと狙っているような目つきだった。

 ボクはそのままデュエルフィールドへ上がる。

 さすがに早く上がりすぎたため、広いデュエルフィールドにボクしかいなかった。

 ・・・・また緊張して来た。

 このままだとヤバい。

 ちょっとでも緊張を解すため、両手を擦る。

 情けない気がしたけど、ガタガタになるよりマシだ。


 ―――――その時。


「藤原ぁぁぁぁぁぁ!!!頑張れぇえええええ!!!!」

「お、お母さん、みんなこっち見ているよ・・・」

「・・・って、先生!!何やってるんですか!?」

 平見先生が来ていた。・・・・この叫び声は間違いない。

 場所を探そうと思ったが、自分のほぼ真横の方向にいたのだ。

「暇だからに決まってるだろ〜〜!ちゃんと見てあげるから、頑張りなさーい!」

 ざわめく会場の中でもハッキリと平見先生の声は聞こえていた。

 声の小さい幸恵ちゃんの声は聞こえなかったけど、応援しているのは分かった。

(ありがとう・・・・・!)

 ついに対戦相手がフィールドへ上がってくる。

「遅くなってすまない、藤原君。私がJデュエルハイスクールの出井(でぃー)です」

「・・・いえ、こちらこそ」

 ボク達の様子を見て、審判が開始の宣言をする。

『準備OKですね?・・・・では、デュエル!!!!!』

 すさまじいほどの歓声が起こる。・・・が、やはりすぐに歓声は無くなる。会場は瞬時に張詰めた空気になる。

 デッキから5枚カードを引く。

 手札を見て、幸恵ちゃんと練習の事をしっかりと思い出した。

「ボクのターン!手札からサイレント・ソードマンLV3を召喚する!」


【サイレント・ソードマンLV3】
★3 光属・戦士族 ATK1000/DEF1000
このカードを対象とする相手の魔法の効果を無効化する。自分のターンのスタンバイフェイズ時、表側表示のこのカードを墓地に送ることで「サイレント・ソードマンLV5」1体を手札またはデッキから特殊召喚する(召喚・特殊召喚・リバースしたターンを除く)。

「さらにカードを1枚セットしてターンエンド!」

(練習通り・・・・いつも通りにやれば・・・!)

「私のターン、ドロー!まずはサイコロ・ショッカーを召喚する!」

【サイコロ・ショッカー】
★1 闇属・機械族 ATK100/DEF70
400ライフポイントを払う。フィールドに存在するこのカードを生け贄に捧げることでデッキから「人造人間−サイコ・ショッカー」を特殊召喚する。

「効果により、デッキから人造人間−サイコ・ショッカーを特殊召喚する!」

出井【LP:4000→3600】

【人造人間−サイコ・ショッカー】
★6 闇属・機械族 ATK2400/DEF1500
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、罠カードは発動できず、フィールド上に存在する罠カードの効果は無効になる。

「サイコ・ショッカーは罠無効の能力を持つ!!申し訳ないがこれは大会だ・・・!容赦なく攻撃させていただく!」

 サイコ・ショッカーはエネルギーを溜め、サイレント・ソードマンに目掛けて撃とうとする。

 ――しかし。

「攻撃はさせない!速攻魔法発動、エネミーコントローラー!」

【エネミーコントローラー】 速攻魔法
次の効果から1つを選択して発動する。
●相手フィールド上の表側表示モンスター1体の表示形式を変更する。
●自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる。相手フィールドの表側表示モンスター1体を選択する。発動ターンのエンドフェイズまで、選択したカードのコントロールを得る。

「このカードの効果により、サイコ・ショッカーの表示形式を守備表示に変更する!」

「なっ・・!罠じゃなかっただと・・・!?」

 出井さんのエンド宣言を受け、ボクはカードを引く。

「この時、サイレント・ソードマンLV3を生け贄にすることでデッキからサイレント・ソードマンLV5を特殊召喚する!」

【サイレント・ソードマンLV5】
★5 光属・戦士族 ATK2300/DEF1000
このカードは相手の魔法の効果を受けない。このカードが相手プレイヤーへの直接攻撃に成功した場合、次の自分のターンのスタンバイフェイズ時に表側表示のこのカードを墓地へ送る事で「サイレント・ソードマンLV7」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。

 巨大な剣を持った少年はさらに巨大化した剣を持つ青年へと変化した。

「そして手札から切り込み隊長を召喚!切り込み隊長の効果により、ならず者傭兵部隊を特殊召喚!」

【切り込み隊長】
★3 地属・戦士族 ATK1200/DEF400
このカードが表側表示でフィールドに存在する限り、相手は他の表側表示の戦士族モンスターを攻撃対象に選択できない。このカードが召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスターを1体特殊召喚することができる。

【ならず者傭兵部隊】
★4 地属・戦士族 ATK1000/DEF1000
このカードを生け贄に捧げる。フィールド上のモンスター1体を破壊する。

「フィールドのならず者傭兵部隊を生け贄にする事で、出井さんのサイコ・ショッカーを破壊!」

「何!?・・・サイコ・ショッカーが!!」

 出井さんのフィールドにいたサイコ・ショッカーは集団のならず者によって破壊された。同時に、ならず者傭兵部隊もフィールドから消えていた。

「サイレント・ソードマンLV5と切り込み隊長の2体でダイレクトアタック!!」

 2人の戦士は剣を構え、出井さんに目掛けて剣を降りかからせる。

「ぐほああああああああああ!」 出井【LP:100】

「ターンエンド!」

(もうすぐ・・・もうすぐだ・・・・・!)




第18話「J−DUEL−2」

「クククククククククククク・・・・・・・・・・」

 突如、奇妙な笑い方をしたのは先ほどまで冷静にしていた出井さんだった。

「ギョハハハハハ!ザコがやってくれるねぇぇ!!ドロオオオオオ!!!!手札から魔神の怒りを発動する!!!」

 乱暴に引かれたカードを出井さんが使う。

 野口さんや周りの人達はフィールドを凝視する。


 その理由は・・・・・今まで誰も見たことも無いカードだった。


「このカードはなぁぁ・・・相手モンスターを全て破壊し、1体につき1000ポイントのダメージを与える!!!!」

「えっ・・!ノーコストでそんなカードが・・・!?」

「ギョハハハハハ!残念だったなぁぁ、公式大会で禁止にされている「サンダーボルト」とは別物だぜぇぇええぇえぇ!!!」

【魔神の怒り】 通常魔法
このカードの効果は、モンスター・魔法・罠の効果を無視して適用される。相手フィールド上に存在する全てのモンスターを破壊する。その後、破壊したモンスター1体につき1000ポイントダメージを相手ライフに与える。


「うわああああああ・・・・・!!!」 

藤原【LP:4000→2000】

「クククク・・・!!カードを1枚セットしてターン終了だぜぇぇ・・」

 出井さんはエンド宣言をする。何とか体勢を整え、カードを引く。

(・・・これも幸恵ちゃんから貰ったカード、『レベルアップ!』・・・。でも今は役に立たないカード・・・・・・)

「ゴ・・、ゴブリン突撃部隊を攻撃表示で召喚!」

【ゴブリン突撃部隊】
★4 地属・戦士族 ATK2300/DEF0
このカードは攻撃した場合、バトルフェイズ終了時に守備表示になる。次の自分ターン終了時までこのカードは表示形式を変更できない。

「ギョハハハハハ!!攻撃するかぁぁ?とっとと来いよぉぉ!!」

「くぅ・・・・・」

(この試合も負けちゃう・・・・?もし・・・攻撃が通れば勝てる・・・・・。でも・・・でも・・・罠だったら・・・・・いったいどうすれば・・・どうすれば・・・どうすれば・・・・・!!)

「タ・・・ターンエンド・・・・・・・」

「ギョハハハハハハ、臆病者めぇぇぇぇ!!!俺のドローフェイズに罠カード発動、イビルヘル!!!」

「イ、イビルヘル・・・!?」

【イビルヘル】 罠
このカードは相手が攻撃宣言をした時、または自分のドローフェイズにのみ発動する事が出来る。手札を2枚捨て、デッキから「イビルマン」を特殊召喚する。

「ククククク・・・!手札のカードを2枚・・・イビルビームとイビルアローを墓地へ送り、イビルマンを特殊召喚する!!」

 フィールドには名の通り、「不吉」と言う名のモンスターが現れる。高校生のボクでも驚くほど不気味で凶悪な雰囲気をしていた。

【イビルマン】
★10 闇属・悪魔族 ATK2600/DEF2100
このカードは通常召喚できない。このカードは「イビルヘル」の効果でのみ特殊召喚する事ができる。このカードの特殊召喚に成功した時、相手フィールド上のレベル4以下の表側表示モンスター1体を破壊する。このカードは特殊召喚したターンに攻撃できない。

「ギョハハハハハ!!!イビルマンの効果によりゴブリン突撃部隊をこのフィールドから消滅させる!!」

 出井さんが宣言した時、イビルマンは全身から邪気を放ち、ゴブリン突撃部隊を完全に消滅させる。あまりにもグロテスクな光景に会場にいた小さな子供は泣き出した。

 会場はさらに暗い沈黙で包まれる。

「イビルマンを特殊召喚したターンは攻撃できない。俺様のターンは終了だ。1ターン生き延びてよかったなぁぁ、ザコ野郎ぉぉぉぉぉ!!!!」

 出井さんは完全に見下すように言う。

 こんな人・・・・絶対に許せない・・・・・・。

 ボクは不安と絶望感・・・周りの人たちは嫌悪感でいっぱいだった。

「藤原ぁぁぁ!!!!シャッキとしろぉぉ!!みんなお前を応援しているぞぉぉぉ!!」

 沈黙していた会場にただ1人叫んだのは・・・・


 やっぱり・・・・平見先生だった。


(藤原くん、頑張って!!)

「今のは・・・幸恵ちゃん・・・?」

 かすかだけど、幸恵ちゃんの声が聞こえた。間違いない・・!

 その声を聞き、勇気を出してデュエルディスクを構える。それと同時に他の人の声も聞こえる。

「そうだぞ!!頑張れ藤原選手!!!!」

「そんな卑怯者、ぶったおせーーー!!!」

「がんばれーーーー!藤原君!!」

 沈黙していた会場が突然と大騒ぎする。

 平見先生や幸恵ちゃん以外はたぶん、ボクの知らない人だろう。

 でも・・・・みんなはボクを応援してくれていた。

「賢治!!!お前はザコなんかじゃない!」

「そうだ、藤原君!!そいつに見せてやるんだ!」

「・・・君の力を見せてくれ!!藤原賢治!!」

 野口さん・・・!角田さんも定岡さんも・・・・。

「みんな・・!!」

(何だろう・・。知らない人の歓声で元気になるなんて・・・嘘だと思っていたけど・・・・体中に力が湧いてくる・・・!!)

「ボクのターン・・・・ドロー!」


(死者蘇生・・・!)


「ボクは手札から死者蘇生を発動・・・!墓地からサイレント・ソードマンLV5を特殊召喚!」

【死者蘇生】 通常魔法
自分または相手の墓地からモンスター1体選択する。選択したモンスターを自分のフィールド上に特殊召喚する。

 死者蘇生の効果により、サイレント・ソードマンLV5はボクのフィールドに蘇る。

「そして・・・手札からレベルアップ!を発動!!」

「バ、バカなぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁあ!?!??!?!?!?」

【レベルアップ!】 通常魔法
フィールド上に表側表示で存在する「LV」を持つモンスター1体を墓地へ送り発動する。そのカードに記されているモンスター1体を、召喚条件を無視して手札またはデッキから特殊召喚する。

「このカードの効果はLVモンスターを召喚条件を無視してレベルアップさせる事が出来る!!そして・・・・手札からサイレント・ソードマンLV7を特殊召喚する!」

【サイレント・ソードマンLV7】
★7 光属・戦士族 ATK2800/DEF1000
このカードは通常召喚できない。「サイレント・ソードマンLV5」の効果でのみ特殊召喚できる。このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、フィールド上の魔法カードの効果を無効にする。

「攻撃力は2800・・・・!サイレント・ソードマンLV7でイビルマンに攻撃!!」


 ―――沈黙の剣LV7!!


 サイレント・ソードマンは大剣を悪魔に大きく振りかざす。

 
 だが・・・・ボクは予想外の結果を目にする。


「ギョハハハハハハハハハハハ!!!!勝利を確信したその顔・・・・・・!!!愉快だねぇぇぇぇぇぇ!!!手札から罠カード発動!!イビルバリアァァァァァァァァ!!!!!」

 出井さんが手札から発動したカードにより、サイレント・ソードマンの攻撃は防がれ、その攻撃がボクの元へ帰ってくる。

「手札から発動する罠・・・!?そんな・・・・・!!」

「ククククククク・・・!!!ザコは消えろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

「うああああああああああ!!!」 


藤原【LP:2000→0】


「ギョハハハハハハハハハ!!!!こいつはなぁ、手札から発動出来る罠なんだよぉ・・!攻撃を無効にし、相手ライフにそのモンスターの攻撃力分のダメージを与える・・!」

【イビルバリア】 罠
このカードは自分のフィールド上に「イビルマン」が存在する時のみ手札から発動する事ができる。相手モンスター1体の攻撃を無効にし、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手プレイヤーに与える。

 会場は再び静まり返る。

 みんなが味方してくれていたボクが負けた事もあり、強力なカードを使った出井さんは卑怯者扱いされていた。

 でも・・・・ボクは結果的に負けた・・・・。


 幸恵ちゃんとの約束も・・・・。


「ククククククク・・・!!ザコが俺様に逆らった罰だなぁぁぁ・・・!ギョハハハハハハハ!!」

『しょ・・勝者は出井選手です!!これでJデュエルハイスクールが一歩リードしました!』

 審判がとりあえず宣言をしたが、歓声は全く起こらなかった。

 出井さんはデュエル開始時の様子は全く無く、デュエルフィールドから出て行った・・・・。




第19話「J−DUEL−3」

 藤原君のデュエルは終了した・・・・・・・が、やはり空気は非常に重かった。さっきから藤原君と、のぐっさんは何か喋っているが・・・・。

 ・・・・今更、俺は藤原君に何を言えばいい?

 さらに言うと、このまま黙っていたら冷たい奴だと思われる。

 隣にいる伊吹君も黙って向こうを向いたままだ。

『次は第2回戦目です!!角田選手と伊井(いー)選手はデュエルフィールドへ入場してください』

 俺の気分に容赦なく、次の戦いの放送が鳴り始める。


 ・・・・気を取り直して、藤原君に話しかけよう。そうするしか無い。


「大丈夫だ、藤原君」

「角田さん・・・・」

「初戦でJデュエルの連中をあそこまで追い詰めることが出来た。・・・・なら、2年になったら確実に勝てる」

「・・・・ありがとうございます。角田さんもいつもの調子で頑張ってください。ボクはここで応援しています!」

「ああ。のぐっさん、後は・・・・俺に任せてくれ」

「わかった。・・・でも、悔いの無いようにな・・・・・!」

 そろそろ時間なので、デュエルフィールドへ上がる。

 対戦相手はすでにデュエルフィールドへいた。


 そして・・・・・・奴は俺の知り合いだ。


「角田・・・・。久しぶりだな」

「伊井!!幸花高校を捨てたお前をここで倒してやる・・・・!」

 奴は元々、幸花高校の生徒だった。

 俺を凌ぐ、水属性のデッキを使う奴だった。・・・・だが、その才能を買われて去年からJデュエルに転校した張本人だ。

 審判が手をあげ、試合開始の合図を出す。


『デュエル開始!!!!』


 俺から先攻となったため、カードを1枚引く。

「俺のターン!!モンスターを守備表示で出し、ターンエンド!」

 奴はかなり強いデュエリストだ・・・。気を抜いた瞬間、負けが決定する・・・!

「ドロー・・・・抹殺の使途を発動する」

【抹殺の使徒】 通常魔法
裏守備モンスター1体を破壊しゲームから除外する。もしそれがリバース効果モンスターだった場合、お互いのデッキを確認し、破壊したモンスターと同名カードを全てゲームから除外する。その後デッキをシャッフルする。

「くっ・・・・」

(グリズリーマザーが除外されたか・・・・)

「さらにアビス・ソルジャーを召喚し、角田五郎にダイレクトアタックだ」

【アビス・ソルジャー】
★4 水属・水族 ATK1800/DEF1300
水属性モンスター1体を手札から墓地に捨てる。フィールド上のカード1枚を持ち主の手札に戻す。この効果は1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに使用することができる。

「がはっ・・・!!」 角田【LP:4000→2200】

「ターンエンド」

「クッ・・・、俺のターン!手札からドーピング・フュージョンを発動する!!この効果で手札から水属性モンスターを捨て、アクア・ドラゴンを特殊召喚する!」

【ドーピング・フュージョン】 通常魔法
手札からモンスターカード1枚を捨てる。そのモンスターと同じ属性のレベル6以下の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。このターン、通常召喚を行う事はできない。

【アクア・ドラゴン】ATK2250

「そして死者蘇生を発動!!ドーピング・フュージョンの効果で墓地へ送った海竜−ダイダロスを特殊召喚する!」

【死者蘇生】 通常魔法
自分または相手の墓地からモンスター1体選択する。選択したモンスターを自分のフィールド上に特殊召喚する。

【海竜−ダイダロス】
★7 水属・海竜族 ATK2600/DEF1500
自分のフィールドの「海」を墓地に送ることで、このカード以外のフィールドのカード全てを破壊する。

 フィールドには2体の海竜が現れる。どちらも攻撃力は1800以上・・・・アビス・ソルジャーを倒せる。

「行くぞ!!アクア・ドラゴンでアビス・ソルジャーを、ダイダロスで伊井にダイレクトアタックだ!!」

「くっ・・・・・」 伊井【LP:950】

「・・・ターンエンド!」

 奴のライフはあとわずか。勝機はやや此方にある・・・・!

「・・・ドロー・・・・・手札から傲慢(ごうまん)な壷を発動する」

【傲慢な壷】 通常魔法
自分のデッキからカードを2枚ドローする。相手は800ライフポイント回復する。

角田【LP:2200→3000】

「・・・・さらに洗脳―ブレインコントロールを発動する」

【洗脳―ブレインコントロール】 通常魔法
800ライフポイントを払う。相手フィールド上の表側表示モンスター1体を選択する。発動ターンのエンドフェイズまで、選択したカードのコントロールを得る。

伊井【LP:950→150】

「これでお前の海竜−ダイダロスのコントロールを得る・・・。そのダイダロスを生贄に捧げ、ネオ・ダイダロスを特殊召喚する」

「なんだと・・・・・!」

【海竜神−ネオ・ダイダロス】
★8 水属・海竜族 ATK2900/DEF1900
このカードは通常召喚できない。自分フィールド上に存在する「海竜−ダイダロス」1体を生け贄に捧げた場合のみ特殊召喚する事ができる。自分フィールド上に存在する「海」を墓地に送る事で、このカードを除くお互いの手札とフィールド上のカードを全て墓地へ送る。

「くっ・・・・・。俺のダイダロスが利用されてしまったか・・・」

「まだだ・・・・フィールド魔法、伝説の都 アトランティスを発動する」

【伝説の都 アトランティス】 フィールド魔法
このカードのカード名は「海」として扱う。手札とフィールド上の水属性モンスターはレベルが1つ少なくなる。フィールドの水属性モンスターは攻撃力と守備力は200ポイントアップする。

「アトランティスをこのまま墓地へ送り、お互いのフィールドと手札のカード全てを破壊する!!」

 ネオ・ダイダロスの効果によって俺のカードを完全に破壊された。それは伊井も同じ事・・・・。だが、ネオ・ダイダロスは奴のフィールドに残り続けている・・・!

「ネオ・ダイダロスでダイレクトアタックだ」

 ダイダロスの攻撃とは比較にならないほどの津波が起こる。

 奴の攻撃を受けてしまうと俺のライフは・・・・!
 
「ぐああああああ!!!」 


角田【LP:100】


「ターンエンドだ」

「俺のターン・・・・!!」

 このドローカードで全てが決まる・・・・・!

 ・・・・・・・俺の引いたカードは・・・・・・。



【リビングデッドの呼び声】



 ・・・・くっ・・・・・・・・・・・。

 リビングデッドの呼び声でダイダロスを蘇生させても攻撃表示だ。



 これで終わりか・・・・・・・。



 のぐっさん、藤原君、定岡先生・・・すまん。

「俺はカードを1枚セットして・・・・ターンエンド」

「ドロー・・・・・・ターンエンドだ」

「何・・・!?お前・・・」

「・・・・ネオ・ダイダロスで罠に攻撃をしたりしない。・・・だからだ」

 まさか・・・・奴は・・・。

「俺の・・・・ターン!手札から強欲な壷を発動!!デッキからカードを2枚引く・・・・!」

【強欲な壺】 通常魔法
自分のデッキからカードを2枚ドローする。

「さらに罠防御―トラップ・バリアを発動する!!」

【罠防御―トラップ・バリア】 速攻魔法
発動ターン、自分のフィールド上のモンスターは罠の効果を受けない。

「もう1枚・・・・・!フィールド魔法、伝説の都 アトランティスを発動する!!」

「・・・・・!」

「そして・・・罠カード発動、リビングデッドの呼び声!墓地から海竜−ダイダロスを特殊召喚する!」

【リビングデッドの呼び声】 罠
自分の墓地からモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。そのモンスターが破壊された時、このカードを破壊する。


「ダイダロスの効果発動!!アトランティスを墓地へ送り、このカード以外のフィールドのカード全てを破壊する!」

 ダイダロスはネオ・ダイダロスと同じように津波を起こし、ネオ・ダイダロスとフィールドのリビングデッドの呼び声を破壊する。

「罠防御の効果でリビングデッドの呼び声による破壊効果を防いだか・・・・・」

 奴の言うとおり・・・・・・それが俺の狙い。


 だが・・・・・俺は・・・勝っていいのか・・・・?


 こんなやり方は・・・・何かおかしい・・・。

 ・・・・ここで俺が負けると・・・のぐっさんはJデュエルのトップと・・・・・。


 ・・・・・・くっ!


「ダイダロスで伊井をダイレクトアタックだ!!」

 ダイダロスは俺の攻撃宣言を受け、そのまま伊井に攻撃をする。

「・・・・・・・」 伊井【LP:0】


『勝者、幸花高校の角田選手です!!ついに最後の戦いが始まります!!!!』


 俺は審判の声と観客の声を無視し、伊井に近づく。

「お前・・・どうして・・・?お前は勝っていたんだぞ!?」

「・・・・・・・・」

「・・・・いや・・・お前は・・・3人目の奴に・・・・・」

「さすがだな、角田。俺が勝つとJデュエルの代表が戦えなくなるからな・・・・。これで俺の役目は終了だ」

「・・・・わかった。だが・・・お前はいつか俺が倒す。それまで・・・・」

 俺が話している途中で伊井は軽く頷き、Jデュエルのベンチへ戻っていった。


 俺も・・・・・・戻らないとな。



第20話「J−DUEL−4」

 ついに来た。

 賢治は負けたが、角田君は勝ってくれた。

 俺は・・・・あいつと戦うためにここまで・・・・。

 覚悟を決め、デュエルフィールドに上がる。


 ・・・・・・って、忘れるところだったな。


「賢治、デュエルディスク貸してくれないか・・?家に忘れてきたんだ・・・・」

「忘れたんですか・・・・野口さん・・・」

 賢治はデッキをはずし、デュエルディスクを俺に手渡す。

 お礼を言い、デュエルフィールドに上がった時、会場は瞬時に賑わう。

 賢治のデュエルの件もあるのか、幸花高校を応援している人がほとんどだな・・・・。

 ついにJデュエルのリーダーがデュエルフィールドに現れる。

「久しぶりだな、刃金沢・・・・」
 去年・・・・俺を倒した奴だ。

「お前は去年の・・・・・。だが申し訳ない、弱い奴の名前は覚えない主義でね・・・・・・・」

 奴は相変わらず変わらない態度だった。

 間違い無い。奴は本物の刃金沢だ。そう思うとなぜか嬉しくなってくる。

「へへっ・・・野口龍明さ。そして・・・今日からお前は俺の名前を覚えることになるハズだ」

「フン・・・・・」

 審判が手をあげ、デュエル開始の合図をする。

『では・・・・、デュエル開始ーーーー!!!』


野口【LP:4000】 刃金沢【LP:4000】


「私から先攻だ。カードを1枚セットし、J−ソルジャーを特殊召喚する!ターンエンドだ」

【J−ソルジャー】
★2 光属・戦士族 ATK800/DEF100
このカードの召喚は特殊召喚扱いにする事ができる。このカードがフィールドから墓地へ送られた時、800ポイントダメージを相手ライフに与える。

「俺のターン!手札から神龍−ハリケーン・ドラゴンを召喚する!」

【神龍−ハリケーン・ドラゴン】
★3 風属・ドラゴン族 ATK1200/DEF800
このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、デッキからカードを2枚引き、手札からカードを1枚捨てる。

「このカードの効果により、カードを2枚引き、1枚捨てる」

「フン・・・。手札を確保したくらいでは私には勝てない・・!」

「さらに神龍蘇生を発動!墓地から神龍−アース・ドラゴンを特殊召喚する!」

【神龍蘇生】 通常魔法
自分の墓地のレベル4以下の神龍モンスターを特殊召喚する。

【神龍−アース・ドラゴン】ATK1500/DEF500

「ハリケーン・ドラゴンとアース・ドラゴンを融合させ、クエイクハリケーン・ドラゴンを融合召喚させる!」

【クエイクハリケーン・ドラゴン】
★7 地属・ドラゴン族 ATK2700/DEF800
「神龍−ハリケーン・ドラゴン」+「神龍−アース・ドラゴン」
このカードの融合召喚は上記のカードをフィールドから墓地に送った時のみ融合デッキから特殊召喚が可能。このカードは1度のバトルフェイズに2回攻撃出来る。

 あのキーカードが来ない以上、短期間で決着をつけるしかない。

「クエイクハリケーン・ドラゴンでJ−ソルジャーを攻撃する!!」

「罠カード発動、Jの結界!!このカードによりクエイクハリケーン・ドラゴンの攻撃を無効にする」

 クエイクハリケーン・ドラゴンが宣言通り攻撃を仕掛けが、攻撃は奴のバリアのような物によって防がれてしまう。

【Jの結界】 罠
相手モンスターからの戦闘ダメージを発動ターンだけ0にする。

「・・・ターン終了だ」

(やはり一筋縄ではいかなかったか・・・・)

「私のターン。手札からJの結束を発動!」

【Jの結束】通常魔法
自分のフィールド上に「J」と名のつくモンスターが存在している時のみ発動可能。デッキ、手札からレベル2以下の「J」と名のつくモンスターを2体まで特殊召喚出来る。この効果により特殊召喚したモンスターはエンドフェイズにすべて破壊する。

「フィールドにJ−ソルジャーは3体・・・!これら全てを生け贄に捧げ、J−ゴッド・デーモンを特殊召喚!!」

【J−ゴッド・デーモン】
★10 光属・悪魔族 ATK4000/DEF2500
このカードは通常召喚できない。「J」と名のつくモンスター3体を生け贄に捧げることでのみ特殊召喚できる。このカードは魔法・罠の効果では破壊されない。


(こいつは・・・・・去年、使われたカード・・・・!!)


「3体のJ−ソルジャーが墓地に行った事で2400ダメージだ!!」

「くっ・・・」 野口【LP:4000→1600】

「ザコモンスターに攻撃をしろ!!ゴッド・J・ブレイク!!!」

 ゴッド・デーモンから放たれる巨大なブレスにフレイムブリザード・ドラゴンは破壊された。

 やはり奴は強い・・・このままでは・・・・・。


野口【LP:1600→300】


「フッ・・・ターンエンドだ・・・。」

「俺のターン!モンスターを守備表示で出し、カードを2枚セットする!・・・・・ターンエンド!」

「ゴッド・デーモンに小細工は通用せん・・・・!手札からJ−ビーストを召喚する!」

【J−ビースト】
★4 地属・獣族 ATK1950/DEF1950
Jソルジャーの忠実なるペット。飼い主より攻撃力と守備力の高い、とっても危険な生き物。

「J−ビーストで裏側モンスターを攻撃する!」

 体にJと刻まれた醜いモンスターの攻撃で俺の裏守備モンスターが破壊された。

「この時、ドライムの効果発動!墓地から神龍−ハリケーン・ドラゴンをフィールドに特殊召喚する!」

【ドライム】
★3 光属・水族 ATK800/DEF400
このカードが戦闘によってフィールド上から墓地に送られた時、自分の墓地からレベル4以下の神龍モンスター1体を選択し、自分のフィールド上に特殊召喚する。

「もう説明するまでも無いな・・。ハリケーン・ドラゴンの効果でデッキからカードを2枚引き、1枚捨てる」

(野口め・・。ただの手札確保かと思ったが何かキーカードを待っているのか・・?)

「へへっ・・・。あんたのバトルフェイズだぜ?」

 俺は挑発的に言う。ここで奴に攻撃をさせなければならない。

「くっ・・・・ゴッド・デーモンで攻撃だ!!ゴッド・J・ブレイク!!!」

「罠カード発動、神龍交換!」

「何・・・!?」

【神龍交換】 罠
自分フィールド上の神龍モンスターをデッキに戻し、デッキから別のレベル4以下の神龍モンスターを特殊召喚する。

「このカードの効果でハリケーン・ドラゴンをデッキに戻し、デッキから神龍−ヘヴン・ドラゴンを特殊召喚する」

「小ざかしいまねを・・・!そのまま攻撃しろ!!」

 ゴッド・デーモンがヘヴン・ドラゴンを破壊すると、あたりは光に包まれる。

「な・・なんだと・・・・?」

「ヘヴン・ドラゴンは戦闘ダメージを回復に変える。・・・よって俺のライフは3300だ!!」

野口【LP:300→3300】

【神龍−ヘヴン・ドラゴン】
★3 光属・ドラゴン族 ATK1000/DEF1000
このカードが戦闘によって破壊された時に発生する戦闘ダメージを0にし、その戦闘ダメージ分だけ自分のライフポイントが回復する。

「フン・・・ターンエンド」

野口【LP:3300】 刃金沢【LP:4000】



第21話「J−DUEL−5」

「俺のターン!手札から天使の施しを発動!カードを3枚引き、2枚捨てる」

【天使の施し】 通常魔法
デッキからカードを3枚ドローし、その後手札からカードを2枚捨てる。

「手札から神龍−ブリザード・ドラゴンを召喚し、さらにリビングデッドの呼び声を発動させる!」

【神龍−ブリザード・ドラゴン】ATK1400/DEF600

【リビングデッドの呼び声】 罠
自分の墓地からモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。そのモンスターが破壊された時、このカードを破壊する。

「リビングデッドの呼び声の効果で神龍−バーニング・ドラゴンを特殊召喚し、2体のモンスターを融合召喚させる!」

「また融合モンスターか・・・!」

【フレイムブリザード・ドラゴン】
★7 炎属・ドラゴン族 ATK2300/DEF2000
「神龍−ブリザード・ドラゴン」+「神龍−バーニング・ドラゴン」
このカードの融合召喚は上記のカードをフィールドから墓地に送った時のみ融合デッキから特殊召喚が可能。このカードの融合召喚に成功したとき、相手フィールド上のモンスター1体を除外する。

「特殊召喚時、フレイムブリザード・ドラゴンは相手フィールド上のモンスター1体を除外する。俺が除外するのはゴッド・デーモンだ!!」

「何だとっ・・・!?貴様・・・!!」

 刃金沢は舌打ちをする。

 賢治は・・・・左右を見て伊吹君に質問している。

「え?え?・・・・?どう言う事かサッパリわからない・・・!」

「たしかにゴッド・デーモンは魔法・罠で『破壊』されないモンスター。だが・・・・野口はそいつを『ゲームから除外』するって事だ」

「さ・・・さすが野口さん!」

 炎と氷の力を持つ龍、フレイムブリザード・ドラゴンは巨大なブレスを放ち、ゴッド・デーモンを完全に消し去った。

「まだ攻撃が残っている!フレイムブリザード・ドラゴンでJ−ビーストに攻撃だ!!」

「ぐはぁぁ・・!」 刃金沢【LP:3650】

「ターンエンドだ!」

 奴がピクリとも動かない。


 ・・・・・・なんだ?


「フフフフフフフフ・・・・・・・・」

 刃金沢の奇妙な声を聞き、賢治がビクッとする。

「うわ・・・・!あの人もおかしな人だったのか・・・?」

 伊吹君が刃金沢の様子を見て話す。

「いや、良く見ろ・・・・・」

「え?」

 伊吹君の言う通りだ。・・・・奴は除外させる事自体を罠として張っていたのだろう。


 ―――明らかにそういう目をしている。


「君がゴッド・デーモンを『除外』してくる事は読んでいたよ・・」

(くっ・・・・やはりか・・・・・・)

「私のターン!!除外されたゴッド・デーモンを墓地に送る事で、J−キング・デーモンを特殊召喚する!!!」

【J−キング・デーモン】
★12 光属・悪魔族 ATK4400/DEF5550
このカードは通常召喚できない。このカードは除外されている「J−ゴッド・デーモン」を墓地へ送る事でのみ特殊召喚できる。このカードが相手モンスターを攻撃するとき、そのモンスターの攻撃力は半分になる。

「ハハハハハハハハ!ゴッド・デーモンを除外してくれてありがとう!お前はゴッド・デーモンを倒すのにドロー強化カードを大量に使ったハズだ・・・!」

 奴の言うとおりだ・・・。俺はドロー強化カードを使い、対処するための有効なカードを集めた。

「もはやこのモンスターを倒せるカードはあるまい!!キング・デーモンでフレイムブリザード・ドラゴンに攻撃だ!!」


【フレイムブリザード・ドラゴン】ATK2300→ATK1150


「ぐああぁぁぁぁぁぁ!!」 野口【LP:50】

「ターンエンド・・・・。貴様がどんな事をしようが次のターンで終りだ」

「・・・確かにあんたの言う通りだ。今、俺の手札に逆転の出来るカードはねぇ・・・・・・」

(このドローカードが手札増強カードでなければ俺の負けだ・・・・)

「俺のターン、ドロー!!・・・・手札から死者蘇生を発動させる!」

【死者蘇生】 通常魔法
自分または相手の墓地からモンスター1体選択する。選択したモンスターを自分のフィールド上に特殊召喚する。

「このカードで神龍−ハリケーン・ドラゴンを特殊召喚する!デッキからカードを2枚引き、1枚捨てる!」

「貴様・・・!あの時の天使の施しでハリケーン・ドラゴンを引いて墓地へ送ったのか・・・・!?」

「ご名答だ。・・・・・・だが!!」

 奴は1つ・・・・決定的な間違いをしている。

 俺はゴッド・デーモンを除外するためだけにドロー強化や神龍モンスターを簡単に墓地に送ったわけじゃない。





 ―――――このカードのためだ。





「フン・・。最後のあがきは見苦しいだけだぞ・・・・」

「いや、それも・・・・あんたの間違いだ。俺はこのカードを待っていた・・!手札から魔法カード発動、究極神龍誕生!!」

「何・・・!」

「このカードの発動時、自分のフィールドの神龍モンスター1体を生贄に捧げて効果を発動する!!」

「バカな・・・・・!」


【究極神龍誕生】 通常魔法
自分のフィールド上の神龍モンスター1体を生け贄に捧げる。自分の墓地に、「神龍−ブリザード・ドラゴン」「神龍−バーニング・ドラゴン」「神龍−ハリケーン・ドラゴン」「神龍−アース・ドラゴン」「神龍−ヘヴン・ドラゴン」「神龍−ヘル・ドラゴン」が存在する時これら全てを除外し、召喚条件を無視して融合デッキから「究極神龍」を特殊召喚する。


 究極神龍誕生を発動した時、水、炎、風、地、光、闇の6つの属性を持つ6体の神龍がフィールドに現れ、それらがすべて1つになる。

「最強の姿を現せ・・!究極神龍!!」

 すべて属性の違う6枚の翼を持つ龍が現れる。単体の時の大きさとは、比べ物にならない大きさだ。


【究極神龍】
★12 光属・ドラゴン族 ATK5000/DEF5000
「神龍−ブリザード・ドラゴン」+「神龍−バーニング・ドラゴン」+「神龍−ハリケーン・ドラゴン」+「神龍−アース・ドラゴン」+「神龍−ヘヴン・ドラゴン」+「神龍−ヘル・ドラゴン」
このカードの融合召喚は上記のカードをフィールドから墓地に送った時のみ融合デッキから特殊召喚が可能。このカードは相手のカードの効果を受けない。


「さらに俺は手札から双頭神龍を発動する!!」

【双頭神龍】 通常魔法
融合召喚によって特殊召喚した神龍モンスター1体の攻撃力を発動ターンのみ、元々の攻撃力を倍にする。

「双頭神龍の効果により、攻撃力を倍にさせる!!」

「なにぃ・・・・・!!」


【究極神龍】ATK5000→ATK10000


「キング・デーモンに攻撃だ!!ファイブ・ギガソニック・フレア!!!」

 究極神龍はキング・デーモンに全てのエネルギーを放つ。

 これで俺の目的は・・・・・!

「ぐあああああああああああああああああああああああああ!!!!!」 



刃金沢【LP:0】



 ・・・・・・・・・・・・勝った。



 緊張が一気に抜け、そのまま下へ座った。



第22話「果たされた約束」

 野口さんがデュエルフィールドから帰ってくる。

 会場はまだ歓声が巻き起こったままだ。

 野口さんと角田さんの名前や、なぜかボクの名前までコールされている・・・・・・ちょっと恥ずかしい気分だ。

 それはとにかく、ボクは走って野口さんを迎えに行く。

「野口さん、おめでとうございます!!」

「やるな、野口・・・・・!」

「のぐっさん、おめでとう!」

「野口君、おめでとう!」

『え〜、今回は優勝の候補だったJデュエルハイスクールを打ち破り、幸花高校が優勝しましたーーーーー!!!!藤原選手、角田選手、野口選手、おめでとうございます!解説は出来ませんが、デュエル・アカデミア戦にもこの私が応援させていただきます!!』


 ・・・・・ちょっと複雑な気持ちだ。

 もちろんその理由は・・・・・。

「・・・ボクだけ勝ってないんですけどね・・・・・」

 そう・・・・。ボクだけが勝ってないんだ。結局は角田さんと野口さんに頼りきってしまっていた・・・。

「・・・・そんな事は気にしなくていい」

 ボクの言葉に、誰よりも早く定岡先生が返事をする。

「藤原君が負けても、結果的に幸花高校の生徒として勝てた。・・・・それは事実だ」

 定岡先生はいつも最低限の事しか話さなかったので、少しだけ驚いてしまった。

 もちろん、ボクはすぐにお礼をした。

 会場にいた人達は満足げに退場していく。Jデュエルの連中もいつの間にか消えていた。


 しばらく時間がたって、会場には幸花高校の5人だけ残った。5人になった所で野口さんが改めて口を開く。

「・・・ありがとう。俺達はデュエル・アカデミアと戦う切符を手にした!!」

「デュエル・アカデミア・・・・!」

 全員が息を呑む。まるで大会前の緊張感だった。

 いったいどんな人が・・・。ボクにはまだわからない。それでも伊吹君は次から出場ができる。


 そうなるとボクは・・・・・・・。


「次の大会は・・・伊吹君も出られますね」

「俺は出場しない。・・・・お前が出ろ」

「え?」

 伊吹君の予想外のセリフに驚く。

 連続で負けた自分を絶対に戦わせてはくれないだろうと思っていた。

「今日のデュエルで確信した。お前なら次は必ず勝てる・・・・」

「伊吹君・・・ありがとう・・・・・」

 ボクは嬉しくて握手を求めた。・・・けど、伊吹君は手をぱしっと叩いた。

 でも、ボクにとっては十分な返事だ。

「私はデュエル・アカデミアとの戦いの手続きがある。時間がかかるから先に帰っていてくれ。・・・・・今日は本当にありがとう」

 定岡先生はそのまま荷物を持って事務室へ行った。

 野口さんも一息つけて話す。

「それじゃあ・・・・、みんな行こうか!」









 ・・・会場の外に出ると、木陰で平見先生と幸恵ちゃんが2人で何か話していた。

 野口さんもいるけど、とにかく行く事にした。

「・・・・平見先生!幸恵ちゃん!」

 不安もあるけど・・・・そのままボクは走って行く。

 野口さんと角田さんは疑問に思いながらも、歩いて来ている。

「ごめんよ、遅れちゃった・・・・」

「藤原くん・・・・デュエル、残念だったね・・・・・・」

「ごめん。頑張ったけど負けちゃった・・。約束守れなくてごめんよ・・・・」

 ボクは・・・・単純に言うと裏切り者だ。

 幸恵ちゃんの苦労も・・・・全て水の泡だ。

「ううん、約束はちゃんと守ってくれたよ。だから元気だして!」

「幸恵ちゃん・・・・」

 ・・・・思わず泣きそうになってしまう。

 ボクは・・・・・・・・





『・・・母さん、算数のテスト8点だったんだ・・・ごめんなさい・・ボクは・・・やっぱり・・・・』

『ふふっ、気にしなくていいのよ。次はいい点を取れるように勉強すればいいの』

『・・・・・』

『そんな事じゃダメよ。母さんが教えてあげるから、頑張って勉強しない?きっと次は100点よ!』

『うん・・・!ボク、頑張るよ!』

 ・・・・・・思い出した。ボク、こんな事を言ってたなぁ・・・・・。


 ・・・・・・・・・・って・・・・・・あれ?


 結局、ボクはこの後、算数のテスト100点取れたんだっけ?




 100点・・・・取れたっけ・・・・あれ・・・・・・・?





「藤原くん・・・?」

 幸恵ちゃんの声で我に返る。

「えっ?あっ、ごめん、全然聞いてなかった・・・・」

 ・・・・いつの間にか、野口さんと角田さん、ついでに伊吹君も来ている。

「そこの女の子は平見先生の娘さんかい・・・?」

 野口さんはいつもの調子で先生に話しかける。

「ま、そーゆー所かな・・・・・細かい事は気にするな!」

 ・・・・平見先生もいつものように適当に言い流した。

「・・・あの、わたしは平見幸恵と申します・・・・」

「おう、よろしく。俺は野口龍明。こっちの人が角田君で、こっちは・・・」

「あっ、伊吹君は知っています」

 野口さんも角田さんも疑問に思いながらも伊吹君を見ていた。

「まぁ・・・よくわからないけど伊吹君は知っていたのか〜」

 野口さんは理由を聞かずに納得する。

 すると、平見先生は思いついたように話し出す。

「そういえばお前たち、次の大会にも出られるんだろ?今日は私のおごりで何か作ってきてあげる。野口も角田も伊吹もあたしの授業を受けているからには強制参加よ」

 角田さんはちょっとだけ考えて返事をしようとする。

「・・・・今日は剣道部の練習が無いので、俺は大丈夫です」

「ふっ・・・・面白そうだな。暇だから俺も参加しよう」

 角田さんと伊吹君は大丈夫らしい。次に平見先生は野口さんの方向へ目を向ける。

「参加します」

 ・・・・・野口さんは棒読みで答えた。

「よし。それじゃあ、幸花橋の下の川で集合だ!!時間は7時からだ。この時期だし、花火を忘れずになーー!」

 そういえば今は7月下旬か・・・・・。

 そうなるとデュエル・アカデミア戦は夏休み中になる・・・っと思う。

 平見先生の言葉に角田さんは頷いてから、伊吹君は何も言わずに帰って行った。

「それじゃあな、賢治!」

 野口さんもそのまま帰った。

 ・・・・・ん・・・・?・・・・・あれ?あれ?あれ?

 そういえば、ボクの名前が一度も出ていない。

「あの・・・ボクも参加していいんでしょーか・・?」

「・・・言ってんの?当たり前でしょ・・・・」

 平見先生は呆れ果てた様子だった。

 でも・・・・とりあえず安心した。

「ホッ、よかった・・・・・・」

「・・・ありがとう、藤原くん」

 ありがとう・・・?

 ・・・もしかして、ボクが来るから・・・・?

 はっはっは、まさか。

「うん。幸恵ちゃんが言うならどこでも行くよ」

「・・・あたしが言ったからじゃないのか!!」

 平見先生は容赦なく、バシッと背中を叩く。

 避けようとしたけど、運悪く当たってしまった。

「痛いじゃないですか・・・・・!」

「!!」

 ギャグ漫画みたいに平見先生が追いかけてくる。追いつかれてしまうとヤバイ!!

 横でクスクス笑っている幸恵ちゃんを見て、ボクもニコっとしてしまうと、平見先生に追いつかれた。


 その後は・・・・・・・言うまでも無い・・・・っと思う。



第23話「記憶と言う名の落し物」


 ―PM7:00



 ここは幸花橋の下にある川。

それなりに大きくて距離のある橋の下には、この地域には珍しい綺麗な川がある。夏の昼には子供たちの遊び場になる場所で有名な場所でもある・・・・・っと思う。自信と根拠は無い。

 大きなカゴを持った平見先生、幸恵ちゃん、角田さん、伊吹君、ついでにボクがいた。角田さんと伊吹君の私服姿は始めて見るのでちょっとだけ新鮮な気分だった。

 それにしても野口さんが遅い・・・・。

「ははははーー!どーもお待たせー!!」

 野口さんが手を振って走ってくる。

 ・・・・全員は呆れて野口さんを見る。

「は・・はははははは。まぁ、ヒーロー・シグナルの発動が遅かったんだよ」

「・・・・?・・・ま、とにかく全員揃ったか」

 野口さんの言葉を流し、平見先生は準備を始める。

 と言っても野口さんが来る前に準備はほとんど終わっていた。

「お前たちのために特製のサンドイッチを作ってやったぞ!」

 平見先生が大きなカゴから大量のサンドイッチを出す。

 ・・・・短時間でよくこれだけの量を作れたと思う。

「夜にサンドイッチ・・・・?」

 ・・・・!!

 野口さんは言ってはいけない事を言う。

 ここで来る平見先生の反応は・・・。

「・・なら、野口は食うな」

 ・・・・やっぱり!

「な、何!!」

 野口さんは必死で平見先生に謝る。・・・・が、先生は無視して話を続けた。

「今日はとっておきの花火を用意してきた!」

 伊吹君も含めて全員が平見先生に注目する。


「じゃーん!!これが最近話題の『脅威の777秒連発花火!!』だ!」


 別の袋からガバッと取り出し、下に置く。

 ・・・・かなり大きな筒状の花火だ。

 その大きさと比例するように『脅威の777秒連発花火!!』と巨大で、しかも大げさなロゴで描かれている。

「ほんとに10分以上も続くのかな・・・?」

 幸恵ちゃんはしゃがみ込んで、苦笑しながら見ている。

 でも、プラスマイナスの誤差じゃないと詐欺になる気が・・・。

「どうなんだろう。とりあえず火をつけてみない?」

 ボクは持参したマッチで火をつけようとするが、平見先生がひょいっと花火を取り上げる。

「コラコラ!!これは最後にとっておくの!・・・・それに今時マッチなんて古いぞ、藤原!」

「そ、そんな事言われましても・・・・・」

「・・・俺も面白そうな花火を買ってきた」

 伊吹君が数十年前のようなボロボロのカバンから花火を出す。古いカバンより、伊吹君が花火を持ってくる事自体に無理があると思う。

「・・・これだ」

 背の高い伊吹君の手にある花火を見るため、背の低い幸恵ちゃんは伊吹君を見上げる。


「・・・・『超・AMERIKAN・HANABI!!』・・?すごい名前だね・・」


 AMERIKAN・・・・・?

 とても怪しい・・・。HANABIと言うのも、何かうさん臭い気がする・・・・・。


 ・・・・・・・・・・・!!


「・・・っと言うより、誰も普通の花火持ってきてないんですか!?」

 心配になって辺りを見回す。

 ちょうど角田さんと目が合う。さすがに角田さんなら・・・・


「俺も一応、持ってきたんだ。『爆音!!マグナム弾花火Vol.3』!!」


 ・・・普通じゃなかった。

 分厚い説明書の表紙には『心臓の弱い方の近くでは危険ですのでおやめください』と書かれている。しかし、花火に火をつける前にこれだけ厚い説明書を読む気になる人は珍しいと思う。

「角田さん、3・・・ですか?それじゃあ、1と2もあるんですか・・・・?」

「いやぁ、何となく『3』だけ買ってみた」

 ・・・・・・・・。

 突然、野口さんは平見先生に謝るのをすぐにやめて持ってきていた袋を取り出す。

 ・・・・それよりも、まだ謝っていたのかと全員が思ったハズだ。

「はっはっはっは!幸花高校デュエルモンスターズ総合研究部の部長でありながらも風紀委員長の野口龍明が厳選した花火を見るがいい・・・・・・じゃーん!!名づけて『THE(ザ)・野口龍明の灼熱!情熱!神龍花火』だーーーー!!」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・。

「・・・酷いネーミングセンスだな・・・・・・・」

 伊吹君がさらっと言うと時が止まったかのように静かになる。

「は・・はははは、それは気にするな!実はこれ、俺が作った奴なんだ」

 野口さんが笑いながら言うと、全員が野口さんを凝視する。

「・・・バカ!改造花火は危険だろ!!」

 平見先生が呆れながら叱った。野口さんは「フッ・・・」っとでも言いたそうな顔で説明をする。

「実は親父の友達が花火職人でさ。教えてもらって作ったんだ!」

 ・・・・・だけど。

 それにしてはデザインも悪く、思わず『危険』と書かれたシールを貼りたくなるような形の花火だった。

「賢治は何を持ってきたんだ?」

 野口さんは危険物質を地面に置きながら聞いてきた。

「ボクは、普通の花火を持ってきました」

 その名の通り、線香花火などがセットになっている花火だ。小さい花火が主に入っている。

「・・・・・あれ?どうかしました・・・・・・か?」

 野口さんも角田さんも伊吹君も平見先生も軽く睨んでいる・・・。

 嬉しそうなのは幸恵ちゃんだけだった。


 ・・・・・なぜ!?


「全く藤原は!」

「フン・・・。藤原もその程度の奴だったか」

「ちょっと期待したんだけどなぁ〜・・・・」

「見損なったぞ、賢治」

 平見先生、伊吹君、角田さん、野口さんの順で捨て台詞をはく。

「ちょ、ちょっと!!誰も普通の・・・いや、まともな花火買ってないから丁度いいじゃないですか!」

「ま・・・とにかくやろうか。まずは藤原の物から片付けよーー!!」

 平見先生が親分のように言う。

「お〜〜!!!」

 ボクと幸恵ちゃん以外は、まるでどこかの戦闘員のように声を上げた。

 小さい花火を持って伊吹君、角田さん、野口さん、平見先生、幸恵ちゃんの順でボクの所へ並ぶ。

「えっ・・・何・・・・??」

「火だ」

「・・・ってボクはマッチ係じゃないよ!」

「俺は火を持ってきていない。・・・・よろしく頼む」

 ・・・仕方が無い。それなら火をつけよう。 

 しぶしぶとやりながら、ついに全員分に火をつけ終わる。最後に自分の持っていた花火に火をつけて、ぼーっと考え事をする。


(花火か・・・もう何年もやってなかったな・・・・・)


「・・・藤原くん」

 横から声をかけてきたのは幸恵ちゃんだった。

 伊吹君と角田さんはすでに意味不明な花火の準備をし、野口さんはサンドイッチをくわえながら川を見ていた。平見先生は全員を監視しながら花火を見ている。

「藤原くんが制服以外の服を着ているのは初めて見るね」

「ははっ、そういえばいつも制服だったね。そのまま私服になっちゃいそうだよ〜」

(あっ・・・・)


 ・・・・そろそろ花火が消えそうだ。


 消える前に次の花火を用意し、火を移す。

「花火は小学生の時以来かな・・・・・・・」

「そうなの・・・?」

「嫌々ボクを引き取られた親戚達とやるのが嫌だったから・・・・・・いつも1人だった。よく考えたら・・・・随分寂しかったな・・・・・・」

「でも・・・・今の藤原くんは1人じゃないよ。野口さんも、伊吹くんも、わたしもいるよ・・・だから心配しないで・・・・!」

「ありがとう。君の探している藤原くんは必ず見つけるから・・・・」

「・・・・ううん。その藤原くんは、たぶん・・・もう・・・・」

 花火の光から微かに見える幸恵ちゃんの表情は、何かとてもつらい物を感じた。

 ボクは心配になり、ゆっくりと聞き返す。

「えっ・・・それって・・・・」

 タイミングが悪いのか、ボクの持っていた花火も幸恵ちゃんの持っていた花火もほぼ同時に火が消える。

(どう言う事か聞けなかったけど・・・・仕方ないか・・・・・)

「花火、消えちゃったね・・・・・」

 ボクは残っている花火を確認する。

 ・・・・・袋の中は線香花火が1本残っていただけだった。

「はい。これが最後の線香花火」

 ボクは線香花火を幸恵ちゃんに渡し、マッチで火をつける。



「あづーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」



 火がつくと同時にボクの背後から叫び声が聞こえる。

 その声に驚いて幸恵ちゃんは思わず花火から手を離してしまう。

「ご、ごごごめんなさぃぃ!!」

「ボクじゃないよ・・・・?」

「え・・・・・?」

 ボクは後ろの方向を見ると・・・・まだ野口さんが叫んでいた。

 何やら、『THE・野口龍明の灼熱!情熱!神龍花火』が野口さん本人の手に直撃したらしい。その悪魔のような花火は容赦なく、ねずみ花火の3倍くらいのスピードでぐるんぐるんと回りながらカラフルな火を噴いている。花火自体は綺麗だけど、回転が・・・・・。

 隣で見ていた平見先生は残酷にも思いっきり笑っている。

「あっはっは、ざまーみろ野口!!改造花火なんかしたから天罰だ!!」

「改造花火じゃないぞ!これは正当なる・・・・・」

 伊吹君も角田さんも珍しく笑っていた。野口さんのいる場所とボクと幸恵ちゃんがいる場所より少し離れた距離だったけど一応、小声で幸恵ちゃんに言う。

「野口さんのせいで最後の1本がすぐに消えちゃったね・・・。仕方が無いから先生の方へ行こうか」

「・・・・うん」

 ボクは最後の1本をゴミ袋に入れ、野口さんの方へ走っていく。

「野口さん大丈夫ですか?」

「へへっ、まあな」

 野口さんはまだ川に手を入れたまま苦笑する。ボク達が来たときには既に危険花火は消えていた。

「それじゃあ、伊吹の花火を見ようか!」

 平見先生が突然立ち上がり、伊吹君に言った。

「わかった。先生、ライター貸してくれ」

 平見先生は伊吹君にポイっとライターを投げる。


 ・・・・・ん!?


 ボクは頭の中の辞書から「ライター」を検索する。


 ライター・・・・


 ライター・・・・?


 ライター・・・・!?



【ライター】 点火器具
点火する器具。特に、タバコに火をつける小形の器具。



「あっ!!先生、火をつける道具あるんじゃないですか!」

「あっはっは、誰も持ってきてないなんて言ってないよ・・・?」

「うっ・・・それは・・・・・・・」

 ・・・・・・・騙された!いつもなら予測出来たから余計に悔しい!!

「あれ?今日はいつものお母さんじゃないような気がする・・・・」

 幸恵ちゃんは平見先生の正体を知らないため、軽く首を傾げていた。

「ははは、学校だといつもの事だよ〜」


 ・・・・・・・・・・。


(何だろう・・・幸恵ちゃんは・・・・やっぱり、死んだ母さんに似ているのかな?・・・何か・・・・何かを思い出しそうだけど・・・)

「どうしたの、藤原くん・・・・?」

「あのさ・・・来年もこうやって・・・・一緒に花火が出来たらいいね」

「・・・・・・・・」

「・・・幸恵ちゃん?」

「・・・藤原くんは・・・もう聞いたよね?・・・わたしの事・・・・・わたしは・・・もう・・・・・・・・」


 ・・・・ボクは取り返しのつかない事をしてしまった。


 やっぱり幸恵ちゃんは自分でも気がついていたんだ。


 無理に隠しても・・・・ボクだと簡単にバレてしまうだろう。


 だったら・・・心から思う事を話すしかない・・・・・・・。


「ごめん・・・・ボクは・・・・・ボクは明日から君の探している藤原君を・・・・」

「もういいの・・・・。たぶん・・・もう1人の藤原くんは・・・・・」

「・・・・言わないで、幸恵ちゃん」



 そんな事は無い。ボクは・・・・・そう信じたい。



 そう信じないと・・・・・・・。



 ・・・・・でも、これ以上の言葉が見つからない。



 ボク達の間に数秒の沈黙が続く。秒を重ねる毎に空気はどんどん重くなっていく。



 すると・・・幸恵ちゃんは突然、決心をした表情で話し出す。

「あの・・・・藤原くん」

「・・・・・・?」

「わたしは・・・もう大丈夫!だから藤原くんはデュエル・アカデミア戦を頑張ってね!」

 幸恵ちゃんの顔から悲しみは既に消えていた。

 それならボクも気にする必要は無い。


 ・・・・少なくとも今は。


「うん、ありがとう・・・・!」

 ボクに元気が戻ったのを見て、幸恵ちゃんは昨日と同じように笑ってくれた。


 でもその笑顔は・・・・・



 今後のボクにとって・・・・とても・・・とても・・・・・。




24話以降はこちらから







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