Happy Flower

製作者:Kunaiさん




■物語の説明■
はるか南の島に、デュエリストを養成する「デュエル・アカデミア」高校がある。 しかしその中、デュエル・アカデミアの生徒より普通高校にも強力なデュエリストがいると噂が立つ。 立場の回復のためにも、1年前からデュエル・アカデミアと一般の高校での話し合いで1つ大会が設立されたのであった。

■キャラクター紹介■

・藤原賢治(ふじわら・けんじ 15歳・高1)
本編の主人公。過去にある事件で両親を失っている。そのせいか、小学6年生の頃から人間不信に陥る。唯一の友達である野口と同じ学校に行くために幸花(こうか)高等学校を受験した。最近は教師・生徒からも非難されていた、デュエルモンスターズ総合研究部に所属。

・野口龍明(のぐち・たつあき 18歳・高3)
藤原の先輩であり、親友関係でもある。去年の大会に出場するが2回戦目で敗退した。デュエルモンスターズ総合研究部の部長。

・定岡先生(さだおか せんせい 43歳・国語総合担当)
デュエルモンスターズ総合研究部の顧問の先生。主にやってくれるのは大会への参加手続きだけで、クラブはあまり見に来ない。妙に丸い帽子、四角の眼鏡、夏でも暑そうな服、濃いヒゲなどがポイント。





第1話「始まる物語」

―PM3:30

「ちょっとは黙りなさい、あんた達!」

 平日は嫌でも毎日聞かなければならない、黄色いロングヘアーが特徴的な、若い女の先生の声が響く。

「んったく、おめー達はガキか・・!今週2回遅刻した奴は便所掃除だぞ。・・・連絡は以上。委員長、号令よ」

「は、はい!きりーつ、礼、着席」

 委員長は慌てて号令をする。進んで委員長になったのに、この扱いはかわいそうな気がした。

「おっ、帰るのか、藤原〜!カラオケに行かないか〜!」

 見かけた時はいつも喋っているクラスメイトが話しかけてくる。正直な所、彼は苦手な人物だ。

「ごめん、ボクはクラブだから・・・」

 ボクはとにかく逃げる口実を作った。事実上、本当にクラブだ。

「ちぇっ、いつもああだよな、あいつ」

「・・あんな奴ほっといてさっさと行こうぜー」


 他人の言葉は気にしない。気にしてはいけない。


 ・・・・それがボクの心の中の口癖だ。

 いつもの調子で部室へ向かう。木の板に『デュエルモンスターズ総合研究部』と雑に彫刻刀で書かれた部屋に行く。

「あっ・・鍵が開いている。野口さんかな?」

 ボクはおそるおそるドアを開けてみる・・・・けど、誰もいなかった。

 ・・・・・その時。

「ワッ!」

「!」

 思わず背筋が真っ直ぐになる。

 そこにはボクの予想通り、先輩の野口さんがいた。赤いハチマキを巻いて、野口さんはそのままニヤニヤと笑いながら部室に入る。

「はっはっは、こんな古いネタでビックリするなよ〜」

「だったら、やめてくださいよ・・・」

 ボクは呆れながら言う。野口さんはいつもこんな調子だ。

「そんな事より、今日は暇だなぁ」

「それって、デュエルを強制的にやれって言ってるような気がします・・・」

 ボクはしぶしぶと、部室の棚にあるデュエルディスクを腕にはめる。

 野口さんもカードを5枚引き、準備OKの合図を出す。


「デュエル!!」


藤原【LP:4000】 野口【LP:4000】


「ボクから先攻、ドロー!」

(よし・・・ビッグ・シールド・ガードナーを引いた!このカードの守備力は2600。戦闘で破壊するのは難しい。そして次のターン、このモンスターを生贄に強力なモンスターを・・・!)

「モンスターを守備表示にして、ターン終了!」

「俺のターン!」

 野口さんは慣れた様子でカードを引き、2、3秒考える。

「俺は手札から、神龍−バーニング・ドラゴンを攻撃表示で召喚する!」

 ボクの目の前に、炎を全身に帯びたドラゴンが目の前に現れる。

【神龍−バーニング・ドラゴン】
★3 炎属・ドラゴン族 ATK1600/DEF400
このカードが守備表示のモンスターを攻撃したとき、その守備モンスターの守備力は0となる。

(よーし・・攻撃してくるかな・・)

「バーニング・ドラゴンで裏守備モンスターに攻撃だ!」

「ふふふ。ボクの守備モンスターは・・」

 ・・・・と、喋っている途中で野口さんが話し出す。

「この時、バーニング・ドラゴンの効果発動!」

「えっ・・!」

「バーニング・ドラゴンが守備モンスターに攻撃した時、その守備モンスターの守備力を0にする・・!」

「んぐっ・・・!」

 そんな効果、知らなかった・・・!

「守備モンスターはビッグ・シールド・ガードナーだったか・・。守備力2600は0となる!」

【ビッグ・シールド・ガードナー】DEF2600→DEF0

 ビッグ・シールド・ガードナーは、炎の攻撃によって盾を破壊され、フィールドから破壊された。

「ターンエンド」

 予想外の攻撃だった・・・。だが、ドローカードを見て思わず安心してしまう。

(聖なるバリア−ミラーフォース−・・・・!!)

「ボクはこのカードをセットし―、」

「・・・たぶん、聖なるバリア−ミラーフォース−だろ?」

「なっ、なぜ・・・?」

「いつも良いカードを引いたときに表情に出しすぎだぞ・・!それじゃあ大会では通用しないぞ〜」

 冗談交じりの言い方だったが、内容は厳しい物だった。

 ・・・・だけど、とりあえずモンスターを出さなければ。

「・・モンスターを守備で出してターンエンド・・」

 野口さんはエンド宣言を聞き、カードを引く。

「手札から神龍−ブリザード・ドラゴンを召喚!」

【神龍−ブリザード・ドラゴン】
★3 水属・ドラゴン族 ATK1400/DEF600
このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、フィールドの魔法・罠を1枚破壊する事ができる。

「――!そのモンスターは・・・!」

「そう。フィールドの魔法・罠を1枚破壊できる」

 解ってはいたけど、聞かずにはいられない。

「やっぱりですか・・・・?」

「やっぱり、だ。賢治のミラーフォースを破壊する!」

 野口さんの宣言後、地面から氷の矢の様な物がボクの罠カードを破壊した。

「2体の神龍が揃った・・・!フィールドの2体の神龍モンスターを融合させる・・!」

「た・・たしか、特定の「神龍」と名のつくモンスターの融合召喚には融合の魔法カードが無くてもフィールドから融合出来るカードでしたよね・・・?」

「当然!」

 野口さんは嫌味・・・っと言うより皮肉な笑顔で返事をした。

 ・・・・・ちょっと悔しい。

「いでよ、神龍−フレイムブリザード・ドラゴン!!」

 2体の龍は1つになり、炎を帯びた氷のドラゴンへとなった。単体の時には無かった氷の翼と炎の翼があり、その強力さを象徴していた。

【神龍−フレイムブリザード・ドラゴン】
★7 炎属・ドラゴン族 ATK2300/DEF2000
「神龍−ブリザード・ドラゴン」+「神龍−バーニング・ドラゴン」
このカードの融合召喚は上記のカードをフィールドから墓地に送った時のみ融合デッキから特殊召喚が可能。このカードの融合召喚に成功したとき、相手フィールド上のモンスター1体を除外する。

「もちろん、その守備モンスターを除外する」

「そ、そんなぁー!」

「フレイムブリザード・ドラゴンでプレイヤーにダイレクトアタックだ!」

 野口さんの龍は2枚の翼からエネルギーを蓄え、一気にブレスを放ってくる。

「うっ、うわぁぁぁ!!」 藤原【LP:1700】

「・・・まだだ!手札から速攻魔法発動、融合解除!」

 このターンは何とか助かった・・・・っと思ったら野口さんの攻撃はまだ続いていた。

【融合解除】 速攻魔法カード
フィールド上の融合モンスター1体を融合デッキに戻す。さらに、融合デッキに戻したこのモンスターの融合召喚に使用した融合素材モンスター一組が自分の墓地に揃っていれば、この一組を自分のフィールド上に特殊召喚することができる。

「この効果により、フレイムブリザード・ドラゴンを融合デッキに戻し、バーニング・ドラゴンとブリザード・ドラゴンをフィールドに特殊召喚させる!」

 1体の龍は再び2体の龍へと分裂した。

 ――また負けた。

 気がついた頃にはもう遅かった。

「これで終わりだ、ダイレクトアタァァアック!!!」

「うっ、うわぁぁぁ!!」 藤原【LP:0】

「また同じ・・・まぁいいや。とりあえず俺の勝ちだ!」

 とりあえず体勢を整え、いつものように気楽に笑う。

「ははは・・・。野口さんにはまだまだかないませんね・・」

「・・そんなこともないさ」

 野口さんは考えながら、つぶやいた。

 ボクは少し気になったけど、あえて聞かないことにした。

「ま、今日は暇だしゆっくりしていってくれよ〜」

「・・っと言われましても、やることもありませんよ・・・?」

「んぐっ・・!そろそろ角田君と定岡せんせ〜が来るはずなんだが・・・」

「せんせ〜・・・・なのか」

 ・・・・妙に丸い帽子、四角の眼鏡、夏でも暑そうな服、濃いヒゲ。校内でも非常に目立つ、巨大な先生。デュエルモンスターズ総合研究部の顧問の先生である、定岡先生がいた。




第2話「戦場へ」

「せ、先生っ!!」

 野口さんとボクはほぼ同時に同じセリフを言う。定岡先生はそのまま部室に入ってくる。

「まったく、野口君は・・・」

「ははは、どーも」

「どーも、じゃない。そういえば角田君がまだのようだが・・?」

「剣道の練習があるので、もうすぐだと思いますよ」

 野口さんが言った時、タイミング良く角田さんがくる。角田さんは剣道部とデュエルモンスターズ総合研究部に両方に所属している。あまり目立たないけど、どちらのクラブでもレギュラークラスの実力を持っている凄腕の人だ。

「遅くなってすまない、みんな」

「角田君も早く座ってくれ」

 定岡先生に言われるまま、角田さんは近くに置いてあるイスに座る。

 すると、定岡先生は手に持っていた3、4枚の束になっているプリントを野口さん、角田さん、最後にボクの順に配った。その紙には大会の事がビッシリと書かれていたけど、その中で気になったのは『デュエル・アカデミア校長の紹介』だった。

 ・・・・・でも、野口さんも角田さんも見もせずに飛ばしていたので、重要性が低いらしい。

「野口君と角田君は知ってるが、藤原君は初めてだから説明するぞ」

「今回の大会は去年とほとんど同じだ。日本全国の高校8校の参加するトーナメント式のデュエルだ」

 先生の一部の言葉に何かが引っかかる。そう、全日本なのにたった8校。

 ・・・・気になったので思い切って質問をして見る事にした。

「あの、どうして8校だけなんですか?」

「・・・それについては今後、言うつもりだ。すまないが今は言えない」

 何か訳がある様子だった。よくわからないけど、ともかく納得することにした。

「話を続けるぞ。大会はトーナメント式だから、実際に戦うのは3回だ。これらの試合にすべて勝利すれば、あの海馬コーポレーションの経営している、『デュエル・アカデミア』と戦う事が出来る」

「なるほど・・。つまりボク達のような普通高校の目標って事ですね」

「そうだ。普通高校でデュエルの名門と言えるデュエル・アカデミアを倒せれば普通高校としての知名度は上がり、学校側にとってはかなり有利なことだ。もちろん、勝てばの話だが・・」

 定岡先生は2枚目のプリントをめくり、話を続ける。

「大会のルールは学校代表のデュエリスト3人で個人戦と言う形式だ。・・・たとえば@藤原君A角田君B野口君・・・だったとしよう」

 ここら辺は重要だと思い、必死で耳を傾けた。間違えたらとんでもない事になりそうだからだ。

「1回目の藤原君が勝って、2回目の角田君も勝ったらその時点で我々の勝ちだ。逆に2敗だとそこで負けだ。1勝1敗なら3人目の学校代表者がデュエルをする。ようするに、人間が変わる、デュエル3回を行うマッチと言う事だ」

 定岡先生は、さらに3枚目をめくるように指示をする。

「現在の部員はたった3人だ。・・・分かると思うが、全員出てもらうしか無い。今の所の予定では1回目を藤原君、2回目を角田君、3回目を野口君にしようと思うのだが、どうだろうか」

 ボクは納得したように頷く。角田さんも同じ答えだった。

「よし、それで行こうと思う。大会はちょうど来月・・つまり5月25日の日曜日だ。先ほど連絡が来たが、初戦の相手は『鳥々超蝶高等学校』だ」

「・・・・・はい?」

 定岡先生の言葉を聞き逃してしまった。早口言葉を言っているのだろうか・・・・。

「鳥々超蝶高等学校だ」

 頭の中を順番に整理する。

「ちょうちょう・ちょう・ちょう・こうとうがっこう・・・ですか?」

「そう、バッチリだ」

 定岡先生は全部言い終わったのでプリントをしまう。野口さんも角田さんもプリントをそのまま半分に折りたたんだ。

「それじゃあ、後は大会当日まで頑張ってくれ。私はこれで失礼する」

 定岡先生はそう言い、部室を出る。角田さんも剣道部の練習の続きがあるらしく、あいさつをして帰ると剣道場へ戻っていった。

「野口さん。次の話は1行目から急に大会当日って感じがしますね」

 ボクは野口さんを半目で見る。野口さんになら、それくらいやっても大丈夫だ。

「んぐっ・・!そんな事・・無いと思うぞ・・・・?」




第3話「始まらなかった戦い」

「・・・やっぱり会場じゃないですか」

 ボクは前回と同じように半目で野口さんをじーっと見る。

「・・・すまん」

 野口さんはペコっと頭を下げた。それを見た定岡先生は不思議そうに見ていた。

「どうしたのだ、野口君?」

「・・・・いえ、こっちの話です」

 ボク達はすでに会場にいた。想像していた通りここは体育館のような場所だった。

 思っていたより以外に広く、上から見られる客席もあった。客席には他の学校の生徒や、暇つぶしに来ている人、客席で遊んでいる子供たちとギャラリーはたくさんいた。

 さすがに緊張する。・・・・手の震えが止まらない。・・・・武者震い、と言うものではなさそうだ。

「・・・ちょっと緊張しますね・・・」

「ははは、賢治には無理もないな。そのうち慣れるさ」

 ワハハハと言わんばかりに野口さんは言う。・・・・野口さんが特別な気がして仕方が無い。

「・・・だといいですが・・」

 その時、スピーカーから軽い雑音が流れ始め、試合の準備をするように放送が流れた。・・・・いきなりボクの試合からだ。

「頑張れよ、藤原君!」

「はははい。頑張ります」

 ボクがデュエルフィールドに行くと歓声が起こる。・・・やばい。

 人気のカードゲームだけあって、ただ来ているだけの人はほとんどいない。

 ボクのプレイングミスをバカにされそうだ。・・・・・やっぱり緊張する。

『あ〜あ〜マイクのテスト中〜。・・・・それでは第1回戦、藤原選手、英(えー)選手、デュエル開始―――――!!!」

 ざわついていた会場も静かになり、決闘が開始された。

「デュエル!!」

 藤原【LP:4000】英【LP:4000】

「俺のターン、ドロゥ!」

 先攻を勝手に取られる・・・・でも今はそれ所では無い。緊張してたまらない。

「闇魔界の戦士 ダークソードを攻撃表示で出し、ターンエンド!!」

【闇魔界の戦士 ダークソード】
★4 闇属・戦士族 ATK1800/DEF1500
ドラゴンを操ると言われている闇魔界の戦士。邪悪なパワーで斬りかかる攻撃はすさまじい。

「ボクの・・・・ターン!」

 まだ手の震えが止まらない・・・・。それどころか緊張は増していく。

「守備、ターン終了・・・!」

 何とか、守備力の高いビッグ・シールド・ガードナーを出す。

「俺のターン、ドロゥ!手札から死者への手向けを発動!!」

【死者への手向け】 通常魔法
自分の手札を1枚捨てる。フィールド上のモンスターを1体選択し、そのモンスターを破壊する。

 英さんの出したカードが発動し、ボクのフィールドのモンスターが破壊される。

「あれ・・・・?ビッグ・シールド・ガードナーは裏側に対する魔法を無効にするハズ・・・」

「・・・・君は何を行っている・・・?それ、切り込み隊長じゃないか」

「!?」

 ・・・・・・確認して見る。

 墓地には切り込み隊長がある。ビッグ・シールド・ガードナーでは無い。

(しまった・・・・!出すカードがズレていた・・・・・)

「ハハハハハ!!俺はダークソードを生贄に、デーモンの召喚を召喚!」

【デーモンの召喚】
★5 闇属・悪魔族 ATK2500/DEF1200
闇の力を使い、人の心を惑わすデーモン。悪魔族ではかなり強力な力を誇る。

 いきなり上級モンスターを召喚されてしまった。明らかにヤバイ状況だ。

「行くぞ!魔・降・雷!!」

「うわあああああ!!!」 藤原【LP:4000→1500】

 わけがわからない。・・・・・・とにかく早く逃げ出したかった。



 ―――その時。



「審判!!」

「えっ・・・・?」

 いきなり野口さんの声が響く。

「賢治、無理をするな。・・・・すみません、このデュエルは英さんの勝ちでいいですか?」

 審判の人は唖然としていたが、すぐに右手を上げて宣告する。

「・・・・・わかりました。勝者は英選手です!!」

 ボクは黙ってデュエルフィールドから出て行く。

「緊張しすぎだぞ、賢治・・・・」

 やはり野口さんには、ボクが苦痛だった事が分かっていたらしい。

「勝手な事をやってすまないな。・・・だが、あのまま続けていても苦しかっただけだろ・・」

「・・・はい」

 正直に言う。いつもの事だけど野口さんに嘘はつけない。

「気にするなよ、藤原君。最初だから誰でもそうなる」

 角田さんが話し出す。・・・本当にボクを許してくれるのだろうか。

「後は俺とのぐっさんに任せてくれ」

「角田君の言うとおりだ。彼と野口君なら必ず勝ってくれる」

「角田さん・・・・先生・・・」

 お礼を言おうとした時、審判が2回戦目の準備をするように放送が鳴る。

「それじゃあ、行こう・・・っと!」

 角田さんはデュエルディスクを準備し、会場へ上がっていった。




第4話「解放されし野獣の力」

「デュエル!!」

 2回目の戦いが開始される。藤原君が負けたため、ここで俺が勝てば後はのぐっさんが勝ってくれる。

角田【LP:4000】 美井【LP:4000】

「俺様から先攻だぁぁぁ、角田ぁぁぁ!俺様は手札から「怒れる類人猿」を攻撃表示で召喚だぁぁ!」

 フィールドには猿・・と言うより、ゴリラのモンスターが出てくる。乱暴に現れて攻撃の体制をとっている。

【怒れる類人猿】
★4 地属・獣族 ATK2000/DEF1000
このカードが表側守備表示でフィールドに存在する場合、このカードを破壊する。このカードのコントローラーはこのカードが攻撃可能な状態であれば必ず攻撃しなければならない。

(初対面でイキナリ呼び捨てか・・・)

「たぁぁん終了ぉぉ!!」

「俺のターン!」

 カードを引き、手札のカードを確認する。・・・・正直、結構良い手札だ。

「手札からアビス・ソルジャーを召喚する!」

【アビス・ソルジャー】
★4 水属・水族 ATK1800/DEF1300
水属性モンスター1体を手札から墓地に捨てる。フィールド上のカード1枚を持ち主の手札に戻す。この効果は1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに使用することができる。

「こいつは手札の水属性モンスターを捨てることでフィールドのカード1枚を手札に戻す・・!俺が戻すのは当然、怒れる類人猿だ!」

 俺の宣言と同時にアビス・ソルジャーは水の壁を作り出し、フィールドの怒れる類人猿を吹き飛ばす。

「なにぃぃぃぃ・・・!!」

「これでお前のフィールドはガラ空きだ・・!行け、アビス・ソルジャーでプレイヤーに直接攻撃だ!」

「ぬぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!」 美井【LP:4000→2200】

 美井はあまりにも大げさに叫ぶ。さすがに周りの人間もおかしかったらしく、かすかに笑い声がする。

「カードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 美井はライフを削られ、俺を軽く睨みながらスタンバイする。

「ヘヘヘ・・・俺様のターン、ドロォォー!・・・・ハハハハハハハ、手札から再び怒れる類人猿を召喚!!そして魔法カード、野生解放を発動ぉぉ!」

「野生解放・・・・!」

【野生解放】 通常魔法カード
フィールド上に表側表示で存在する獣族・獣戦士族モンスター1体の攻撃力は、そのモンスターの守備力の数値だけアップする。エンドフェイズ時そのモンスターを破壊する。

「ハハハハハハハ!攻撃力2000に守備力1000が加わる!コレで怒れる類人猿の攻撃力は3000!攻撃だぁぁぁ!!!」

【怒れる類人猿】ATK2000→ATK3000

 攻撃宣言を聞き、俺は伏せた罠カードを表にする。

「罠カード発動、ウォーター・シールド!」

【ウォーター・シールド】 罠
自分のフィールドに水属性モンスターがいた場合、このターンの相手は水属性モンスターに攻撃できない。

「ちぃぃ・・!だが俺様はまだエンド宣言をしていない!手札からマンティコアの召喚を発動させる!」

【マンティコアの召喚】 通常魔法
メインフェイズ2のみ発動可能。自分のフィールドの地属モンスターを1体を生け贄にすることで、手札から「暗黒のマンティコア」を特殊召喚する。

「これで類人猿は破壊される前に強力モンスターを残せる!!でてこい!!暗黒のマンティコアァァァ!!!」

【暗黒のマンティコア】
★6 炎属・獣戦士族 ATK2300/DEF1000
このカードが墓地に送られたターンのエンドフェイズ時に発動する事ができる。獣族・獣戦士族・鳥獣族のいずれかのモンスターカード1枚を手札または自分フィールド上から墓地に送る事で、墓地に存在するこのカードを特殊召喚する。

「ハハハハハハハ!これを貴様は倒せないだろぉぉぉ!ターン終了だ!」

 カードを引く。引いたカードを見たとき、このデュエルの結末に思わず微笑んでしまう。

「なにがおかしい・・・!」

「残念だがこのデュエルはここで終了だ!」

「手札から伝説の都 アトランティスを発動だ!」

「なっ・・!」

【伝説の都 アトランティス】 フィールド魔法
このカードのカード名は「海」として扱う。手札とフィールド上の水属性モンスターはレベルが1つ少なくなる。フィールドの水属性モンスターは攻撃力と守備力は200ポイントアップする。

「効果は説明するまでもないな・・・!この効果により、俺の手札のレベル7のモンスターは生贄1体で出せる!」

「なにぃ!?」

「アビス・ソルジャーを生贄に、手札から海竜−ダイダロスを召喚する!」

【海竜−ダイダロス】
★7 水属・海竜族 ATK2600/DEF1500
自分のフィールドの「海」を墓地に送ることで、このカード以外のフィールドのカード全てを破壊する。

 フィールドには海を支配する者・・・海竜−ダイダロスが現れる。

「そんなバカなぁぁぁぁ!」

「ダイダロスの効果発動し、フィールドのカード全てを破壊する!」

 巨大な海竜が海を操り、美井のモンスターを簡単にのみ込む。

「これで終りだ・・・!ダイダロスでダイレクトアタック!!」

 思わず、美井は逃げようとするがダイダロスの攻撃を逃れられるわけが無かった。

「ヒィィィィィィ!!!」 美井【LP:0】




第5話「蘇りし鳳凰神」

 角田君は予想通り勝ってくれた。後は俺が何とかするんだ。

「そいじゃあ、俺たちはベンチへ行こうか、藤原君。」

「そうですね。頑張ってください、野口さん」

 賢治と角田君は少し早歩きで定岡さんの座っているベンチへ行く。俺もデュエルフィールドへ急いだ。

 すでに対戦相手は来ていたため、俺は軽く挨拶をする。

「久しぶりだなぁ、鳥野君」

「そうだな。私は去年負けた屈辱をバネに特訓を重ねさせていただいた。そしてお互い3年生・・つまり最後の大会。よろしくお願いする!」

「こちらこそ・・!」

『・・・・デュエル開始ぃぃ!!!』

 審判がデュエル開始の合図をする。この瞬間から俺達の戦いの闘志に火がついた。

野口【LP:4000】 鳥野【LP:4000】

「俺から先行だ、鳥野君・・!手札から神龍−バーニング・ドラゴンを召喚する!」

【神龍−バーニング・ドラゴン】
★3 炎属・ドラゴン族 ATK1600/DEF400
このカードが守備表示のモンスターを攻撃したとき、その守備モンスターの守備力は0となる。

「カードを2枚セットし、ターンエンド」

「私のターン!」

(どう出る気だ・・・鳥野君・・・!)

「手札から大鳥獣−ポッポゥを召喚する」
 
 名のとおり、巨大なハトがフィールドに現れた。見た目は正直、情けない気がする。

【大鳥獣−ポッポゥ】
★2 風属・鳥獣族 ATK1700/DEF2750
その名の通り、巨大な鳥だ!!守備力が反則並みに高いぞ。

「大鳥獣でバーニング・ドラゴンに攻撃だ!!」

 鳥野君の攻撃宣言に反応し、すかさず罠を発動させる。

「罠カード発動、和睦の使者!!このカードの効果により、戦闘のダメージはすべて0だ!」

「さすがだな・・・。私はカードを1枚セットし、ターンを終了する」

【和睦の使者】 罠
発動ターン、戦闘によるダメージはすべて0となる。

「俺のターンだ。手札から神龍−ブリザード・ドラゴンを召喚し・・」

「フフフ、罠カード発動、龍殺輪!この効果により、バーニング・ドラゴンを破壊する!」

(くっ・・・攻撃宣言時に発動する罠じゃなかったか・・!)

 龍の形の手榴弾が並べられた鉄の輪はバーニングドラゴンの首へ飛んでいき、突然と爆発した。

【龍殺輪】 罠
このカードにチェーンをする事は出来ない。フィールド上に表側表示で存在するドラゴン族モンスター1体を破壊し、お互いにその攻撃力分のダメージを与える。

「野口君にはもはや説明するまでもないな・・」

「ああ。バーニングドラゴンの攻撃力は1600だ。お互いに1600ポイントのダメージだな」

野口【LP:4000→2400】 鳥野【LP:4000→2400】

「だがその巨大ハトを倒せるカードはあるぜ。チェーンが出来なかったが、今なら使える・・・!罠カード発動、神龍交換!!」

【神龍交換】 罠
自分フィールド上の神龍モンスター1体をデッキに戻し、デッキから別のレベル4以下の神龍モンスターを特殊召喚する。

「俺はフィールドのブリザード・ドラゴンをデッキに戻し、デッキから新たな神龍モンスター、神龍−アース・ドラゴンを特殊召喚する!」

【神龍−アース・ドラゴン】
★3 地属・ドラゴン族 ATK1500/DEF500
このカードが攻撃力3000以下の相手モンスターに攻撃するとき、そのモンスターの攻撃力を半分にすることができる。

「くぅ・・・!効果を使えば大鳥獣は破壊されてしまう・・・!」

 デッキのシャッフルを終え、デュエルディスクにデッキを戻す。

「アース・ドラゴンで大鳥獣に攻撃だ!」

【大鳥獣−ポッポゥ】ATK1700→ATK850

「ちっ・・・」 鳥野【LP:1550】

「ターンエンド!」

 ・・・・俺の勘が正しければ鳥野君は次のターン、あのカードを出してくるハズだ。

「私のターン!」

 鳥野君は思わずニヤっと笑う。

 やはり来るのか・・・?

「フフフフ・・・とうとう来た!!!!」

「・・・!」

「手札から魔法カード、鳥かごを発動する!」

【鳥かご】 通常魔法カード
自分のフィールド上にこのカード以外にカードが存在しない場合、デッキから鳥獣族モンスターを特殊召喚できる。

「そして、私が呼び込むモンスターはネフティスの鳳凰神だ!」




第6話「大地と嵐」

「くっ・・・やはり、ネフティスの鳳凰神か・・・!」

「このカードは我が高校の自慢のレアカードだ!・・・私の勝ちは確定的だな、野口君」

 会場がさらにざわめきだす。鳥々超蝶学校の生徒達は勝利を確信した顔でフィールドを見ていた。

 何もやっていない連中が勝ち誇ったような雰囲気だと、非常に腹が立つ気がする。・・・・・・だが今はデュエルに集中しようと思う。

【ネフティスの鳳凰神】
★8 炎属・鳥獣族 ATK2400/DEF1600
このモンスターがカードの効果によって破壊された場合、自分のスタンバイフェイズ時にこのカードを特殊召喚する。この方法で戻った場合、フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。

「またこのモンスターを相手にするとはな」

(去年はギリギリで倒せたんだっけな・・・。戦闘以外では破壊されないといっていい効果のモンスター・・!さらに攻撃力は2400。並みのモンスターでは倒せない)

「いけ!ネフティスでアース・ドラゴンに攻撃だ!!」

 鳳凰神と呼ばれるモンスターは大きな翼を広げ、業火と言えるほどの炎で俺のモンスターを焼き払った。

「くっ・・・!」 野口【LP:1700】

「よし・・・・ターンエンド、だ。」

「俺のターン!神龍−ハリケーン・ドラゴンを召喚する・・!このカードが召喚または特殊召喚に成功した時、デッキからカードを2枚引き手札からカードを1枚を捨てる。」

【神龍−ハリケーン・ドラゴン】
★3 風属・ドラゴン族 ATK1200/DEF800
このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、デッキからカードを2枚引き、手札からカードを1枚捨てる。

「1枚カードをセットし、ターンエンドだ」

「・・・私のターンだな。いけ、ネフティスよ!!」

 鳥野君が高らかに宣言する。すかさずセットしていた罠カードを発動させる。

「罠カード発動、聖なるバリア−ミラーフォース−!」

「・・・・!」

【聖なるバリア−ミラーフォース−】 罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。相手フィールド上の攻撃表示モンスターを全て破壊する。

 ネフティスの放った炎は逆に跳ね返され、ネフティスは自らの炎で自滅を招く。しかし―――

「少し失望したよ、野口君」

「ん・・・・?」

「ネフティスの効果を忘れたのかい?このカードは効果によって破壊された場合、私のスタンバイフェイズに復活する効果を持つ・・まさか忘れたのか・・・・!」

「いや、俺の方こそ少し失望したかな」

 わざと鳥野君と似せて言ってみる。さすがの鳥野君も驚いた様子だ。

「去年はその効果に悩まされた・・・・。だが、そのモンスターには決定的な弱点がある」

「何・・!」

「ネフティスの復活する時は鳥野君のスタンバイフェイズ。つまり俺のターンでは無防備状態というわけだ」

「!」

「くっ・・だが私は手札から魔法カード、私の鳥を返せ!!!!を発動する!」

【私の鳥を返せ!!!!】 通常魔法カード
自分のメインフェイズ2のみ発動可能。自分の墓地の鳥獣族モンスターを墓地から特殊召喚する。

「もちろん復活するのはネフティスの鳳凰神!これで君の計画もパアだ・・・!」

 フィールドに出現した巨大な鳥かごから突然、炎の壁が上がる。その中から羽根を羽ばたかせ、ネフティスの鳳凰神は蘇った。

「・・・・また戻ってきたか!」

「ターン終了だ」

「俺のターン、ドロー!手札から神龍蘇生を発動する!」

【神龍蘇生】 通常魔法
自分の墓地のレベル4以下の神龍モンスターを特殊召喚する。

「この効果により、墓地の神龍−アース・ドラゴンを特殊召喚する!」

「ま・・まさか・・・!」

「ああ。俺はハリケーン・ドラゴンとアース・ドラゴンをフィールドから融合させる・・!その姿を現せ、神龍−クエイクハリケーン・ドラゴン!!」

【神龍−クエイクハリケーン・ドラゴン】
★7 地属・ドラゴン族 ATK2700/DEF800
「神龍−ハリケーン・ドラゴン」+「神龍−アース・ドラゴン」
このカードの融合召喚は上記のカードをフィールドから墓地に送った時のみ融合デッキから特殊召喚が可能。このカードは1度のバトルフェイズに2回攻撃出来る。

「このクエイク・ハリケーンドラゴンは1度のバトルフェイズに2回攻撃が出来る!まずは1回目の攻撃だ!」

 2枚の羽根を持つ龍は全身からエネルギーをため、鳳凰神にブレスを放つ。鳳凰神も攻撃力で負け、そのまま破壊される。

「ぐはあああ!」 鳥野【LP:1250】

「これで終りだっ!2回目の攻撃!クエイクスラッシャァァァーー!!」

「ぐあああ・・・・・・!!!」 鳥野【LP:0】

 2度目の攻撃を受け、鳥野君は後ろに少しだけ飛ばされた。

 そのまま鳥野はガックリとひざまずく。悪いことをしてしまった。・・・・だが、俺は勝たなければならない。



 ――奴を倒すまでは、必ずだ。



 それと同時に来ていた鳥々超蝶学校の生徒・教師たちはすぐに準備を終え、会場を後にした。まるで、競馬の結果が出た後の競馬場のようだった。

「鳥野君・・・。良い戦いだった」

 俺は周りに気にせずに鳥野君に話しかけた。

「ありがとう・・・・私もだ。2回戦目も頑張ってくれよ」

「ああ。会場、来てくれよな」

「・・・もちろんだ」

 とりあえずデュエル・フィールドから降りる。定岡さんに報告をしようかと思ったとき、賢治と角田君は走って迎えに来てくれた。

「野口さん、さすがです」

「やったな、のぐっさん」

「ああ。なんとかな」

 色々と話していると館内放送が入る。

『次回の大会のための手続きを行いますので、幸花高等学校の部長・顧問の先生は事務室まで来てください』

「・・それでは行くか、野口君」

「了解〜っと」

(そーいえば、手続きが以外に面倒だから賢治と角田君は帰したほうがいいな・・・)

「あ〜、賢治と角田くんはもう帰っていいぞ〜。長い話だけだからまた学校で連絡するから」

 角田君と賢治は軽く頷く。角田君はそのまま学校へ剣道の練習へ、藤原は自宅へと帰っていった。




第7話「明日の光」

―PM3:30

 第1回の大会から1日後。聞きなれたチャイムが鳴り、部活の準備や自宅に帰る生徒がにぎわう時間となった。

「とっとと帰ろうぜ〜!」

「サッカー部めんどくせぇ・・・やめよ〜かな〜?お前はどう思う?」

「ぉぉぉぉぉぉ!!あのセンコー、数学の宿題でフェルマーの最終定理を解けとか言いやがって!!」

「え〜黒い羽根の募金にご協力ください〜」

「テニス部募集中でーす!今ならあの有名なコーチそっくりの講師さんがいますよー!」

 様々な会話がある中、ボクは黙々と教科書をカバンにつめ、クラブへ行く支度をする。

「ふぅ・・・それじゃあ部室に行こうかな」

 自分のカバンを持ち、教室を出る。

 廊下を歩き、部室のドアを開けてあいさつをしようとする。・・・が、すでに野口さんも角田さんも、定岡先生も部室にいた。

「あれ・・・・・・ごめんなさい、遅れました」

「・・・いや、私達も来た所だ。とりあえず藤原君も座ってくれ」

 定岡先生からプリントを貰う。プリントは前回と同じサイズだ。

「よしっ、それじゃあ始めよう」

 定岡先生はボクがプリントを見る事を確認してから話し出す。

「次の相手高校は『私立武道黒帯学園』だ」

「・・・しりつ、ぶどう、くろおび、がくえん・・・ですか?」

「そうだ」

 それを聞いた角田さんは、なぜかホッと安心していた。

「よかった・・あの学校じゃ無かったんですね、のぐっさん」

「・・・・・・ああ。そうだな」

「えっ?あの学校って何でしょうか・・・・?」

「・・・この際だから、俺が話そう」

 野口さんはいつもと違う、重い口調で話し出す。

「この大会で最も恐れられている学校・・それは『Jデュエルハイスクール』だ」

「ジェ、ジェイ・デュエルハイスクール・・・?」

 一瞬、外国の学校かと思った。

 しかし、この名は明らかに今回の大会で強敵と思わせるほどの名前だった。・・・・それはデュエル・アカデミアと同じく、「デュエル」と名乗っているからだ。

「・・・それじゃあここもデュエルを扱った学校ですか・・?」

「ああ。なんでも校長があのデュエルモンスターズの製作者、ペガサスの助手だった人らしいんだ」

 デュエルモンスターズの生みの親、ペガサスはデュエリストの間で無くとも有名な人物だった。もちろん、ボクでもそれは知っていた。

「その校長はペガサスに変わってデュエリストとしての知識を徹底的に教育している。ゲーム心理学、ゲーム戦術やら・・ま、色々だ」

「でも、普通は有名なデュエル・アカデミアに行くんじゃないですか・・?」

「どこの学校が言い出したか知らないけど、『デュエル・アカデミアには数人しか強力なデュエリストがいない。普通高校にはもっと強者がいる』・・ってな」

「それと何か・・・?」

「それを聞いたJデュエルの校長は普通高校に目をつけた。普通高校から強いデュエリストを詮索し、強いデュエリストは安い学費で自分の高校に入れてるのさ」

「じゃあ・・・最近の普通高校にデュエリストが少ないのも・・」

「そう。Jデュエルに引き抜かれているからだ。そして有名なデュエル・アカデミアを倒し、知名度を上げようってって魂胆だと思う」

「そんなの・・・その学校が明らかに有利じゃないですか・・!」

「そうだな・・。だが去年の大会ではデュエル・アカデミアが優勝している。もちろん、その大会はJデュエルハイスクールとデュエル・アカデミアが戦った。ギリギリだったが、何とかデュエル・アカデミアが勝ってな。それで今回の大会の予選にもJデュエルが来たってわけさ」

「なるほど・・・・。去年優勝したデュエル・アカデミアは、8校の中から生き残れた学校とのみ戦う・・って事ですね」

「他の高校には悪いが奴らはケタ違いの強さだ。今年の俺たちは幸い最後まで当たらなかった。次の戦いに勝てば結局は奴らと戦うことになるだろうけど・・な」

「・・・Jデュエルハイスクール・・」

「説明ありがとう、野口君。それでは次の大会の説明をするぞ」

 定岡先生は礼を言い、プリントを見ながら話を続ける。

「次の試合は基本的には昨日の大会と同じだ。角田君は油断せずに頑張ってくれ。藤原君は楽に戦ってくれてかまわん。真の勝負は2年からでも遅くない。」

「・・・わかりました」

「ポジションは角田君、藤原君、野口君の順番で行こうと思う。1ヵ月後の対戦の準備をしておいてくれ。後は各自、自分で目を通しておいてくれ。・・・えー、これで私からは以上だ。とりあえず解散!!」

 定岡先生は解散の合図を出し、部室から出た。角田さんも剣道部があるのでそのままプリントを机に置いて部活へ行った。

「賢治、このパターンだと、またか?」

 野口さんは半目でボクを見る。・・・・もちろん、ボクも同じ目をして返事をする。

「・・・・でしょうね」



第8話「欲望の恐怖」

―6月20日

 ついに第2回の大会当日となった。舞台は揃い、会場中にはたくさんの人でにぎわっていた。

 相変わらず、のぐっさんと藤原君が何か話している。

「・・・やっぱり、ですね」

「ま、当然だな・・・」

「いつも大会の時は何かやってるな、2人とも」

「どうも失礼」

 のぐっさんは軽く笑いながら謝る。一瞬だが、放送の雑音が聞こえたので誰もが館内放送が来ると感じた。

『あ〜あ〜マイクのテスト中〜〜。幸花高等学校の角田選手、死井(しー)選手はデュエルフィールドへ入場してください』

「それじゃあ行ってきます」

 のぐっさんと藤原君と先生の激励を受けて、デュエルフィールドへ行く。

 すでに対戦相手はいた。どちらも準備OKの合図を出すと、審判もデュエル開始の宣言をする。

「デュエル!!」

角田【LP:4000】 死井【LP:4000】

「わぢのターン!!2枚セットしてエンドだじ」

 モンスターを出して来ない・・?

 彼の最初の様子では手札にモンスターが無いとは思えなかった。

(警戒するのに越したことは無いな・・・)

「俺のターン。手札から強欲な壺を発動する!!」

【強欲な壺】 通常魔法
自分のデッキからカードを2枚ドローする。

「ウヒヒヒ!罠カード発動、便乗!!」

「便乗・・・・?」

 怪しい笑いだったが、それよりも効果のほうが気になる。・・・・見たことはあるのだが、全然覚えていない。

「この効果はなぁ〜、2枚ドロー出来る!」

(随分省略したものだ・・・・)

【便乗】 罠
相手がドローフェイズ以外でカードをドローした時に発動する事ができる。
その後相手がドローフェイズ以外でカードをドローする度に、カードを2枚ドローする。

「ウホホホ、これでわぢの手札は6枚!!」

「だからどうした・・・!手札からドーピング・フュージョンを発動する!この効果は手札のモンスター1体を捨て、 そのモンスターと同じ属性でレベル6以下の融合モンスター1体を特殊召喚出来る!」

 手札のキラー・スネークを捨て、俺は融合デッキからアクア・ドラゴンを特殊召喚させた。

【ドーピング・フュージョン】 通常魔法
手札からモンスターカード1枚を捨てる。そのモンスターと同じ属性のレベル6以下の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。 このターン、通常召喚を行う事はできない。

【アクア・ドラゴン】
★6 水属・海竜族 ATK2250/DEF1900
「フェアリー・ドラゴン」+「海原の女戦士」+「ゾーン・イーター」

「アクア・ドラゴンで死井君に直接攻撃だ!!」

「ニョホホホ!罠カード発動、成金バリア!!」

「な、成金バリア・・・?」

 どうやら彼のデッキは欲望デッキらしい。

【成金バリア】 永続罠
手札が6枚以上の時、相手の攻撃を無効にする。無効にした時、カードを2枚ドローする。

「早くエンド宣言してくれよ。キョヒヒヒヒ」

「・・・・ターンエンド」

 誰か助けてくれ。

「わぢのターン!成金ビームを発動する!」

【成金ビーム】 永続魔法
自分のエンドフェイズに自分の手札1枚につき相手に200ポイントダメージを与える。さらに、お互いのプレイヤーは手札枚数制限が無くなる。

「ターンエンド!!ホヒヒヒ、これでキミは攻撃できず毎ターンライフを削られる!!」

「・・・・何て意味不明な戦術だ・・」 角田【LP:2400】

 とにかく気を取り直してカードを引こう。

「ドロー!墓地のキラースネークを手札に戻し、手札抹殺を発動!!」

「なにぃぃぃぃぃぃ!?」

「手札をすべて入れ替えてもらおうか・・・」

「ヘン!だからどうした!」

 人を焦らせると愉快な気がするのはなぜだろうか・・・。とにかく、カードを引きなおした。

【手札抹殺】 通常魔法
お互いの手札を全て捨てた後、それぞれ自分のデッキから捨てた枚数分だけカードを引く。

「冗談で入れたカードが役に立ちそうだな・・・。手札からモノマネ・スライミーを発動!!」

「なんだそれ・・・!?」

【モノマネ・スライミー】 永続魔法
このカードの発動時、相手のフィールド上に存在する永続魔法または永続罠を選択する。このカードの効果はその選択したカードと同じ効果になる。

「このカードを発動した時、相手のフィールドにある永続魔法、または永続罠と全く同じ効果にする事が出来る!」

「なにぃぃぃぃぃぃ!?」

「俺がコピーするのは便乗の罠カードだ!!そして手札から天使の施しを発動する」

「うぎゃあああああああああああああ」

「・・・俺はもう引いた。さぁ、早くカードを引いてくれないかな・・?君はドローカードを大量に使ったから、もう君のデッキはあとわずかだ。 このまま無限ループが続くとどうなるかな・・?」

 ・・・・これ以上、続ける必要は無い。

 このデュエルの結末は、すでに決まっていた。




第9話「地獄炎皇帝」

 角田さんは勝利し、とうとうボクの番が来る。

「賢治、落ち着いて戦えよ」

「・・・はい。たぶん大丈夫です」

 この前に比べると、緊張は随分減っていた。

 ・・・・これが勝利に繋がったら幸運な話だ。

『え〜、藤原選手と伊吹選手はデュエルフィールドへ来てください。繰り返します・・・・』

「よしっ、行って来い・・・!頑張れよ!」

「・・・はい!」

 野口さんにハッキリと返事をしてデュエルフィールドへ上がる。

「えっ・・・!」

 ビックリして声を上げてしまう。相手の人はかなり身長だった。ボクが低いだけかも知れないけど。

「藤原君か・・・俺は武道黒帯学園の伊吹だ。よろしく」

「あ・・・どうも、こちらこそお願いします。藤原賢治です」

(よかった・・・マトモな人みたいだ・・)

 ボクが安心した瞬間、その安心と言うガケから簡単に突き落とされる。

「ここで消える奴の名前くらい聞いてやるのが優しさだ。せいぜい頑張ってくれ」

「・・・あ・・・はい。お手柔らかに・・・」

(・・・やっぱりマトモじゃなかった・・・・・・)

 お互いのデッキをシャッフルし、自分の位置へつく。先攻はボクからとなった。


「デュエル!!」


藤原【LP:4000】 伊吹【LP:4000】


「ボクのターン、ドロー!モンスターを裏守備でセット、ターン終了!」

 ボクの行動に伊吹君は軽く鼻で笑ってくる。・・・・ちょっとだけ気に障る。

「フン、初心者らしくリバースモンスターあたりだろう。俺のターン、まずはこのカードを使う!抹殺の使徒!」

【抹殺の使徒】 通常魔法

裏守備モンスター1体を破壊しゲームから除外する。もしそれがリバース効果モンスターだった場合、お互いのデッキを確認し、破壊したモンスターと同名カードを全てゲームから除外する。その後デッキをシャッフルする。

「これで君のモンスターは除外だ」

「くぅ・・・」

(・・・あれ!まてよ・・・・!)

 もう1度、守備モンスターを確認する。これは・・・

「ボクのモンスターは、ビッグ・シールド・ガードナー!!」

「何・・・!」

【ビッグ・シールド・ガードナー】
★4 地属・戦士族 ATK100/DEF2600
裏側表示のこのモンスター1体を対象とする魔法カードの発動を無効にする。その時、このカードは表側守備表示になる。攻撃を受けた場合、ダメージステップ終了時に攻撃表示になる。

「くっ・・!モンスターを守備表示で出し、カードを1枚セットする。ターンエンドだ!!」

「ボクのターン!」

(今がチャンス・・!今回は・・勝たないと・・・!)

 野口さんの言うとおり、冷静に手札からカードをデュエルディスクに置く。

「よーし、手札から鉄の騎士 ギア・フリードを召喚して・・・」

 伊吹は藤原がカードを出したとき、すかさずカードを発動させる。

「・・・罠カード発動、激流葬!」

「えっ・・!」

【激流葬】 罠
モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時に発動可能。フィールド上のモンスター全てを破壊する。

「このカードの効果により、フィールドのモンスターを全て破壊する!」

 伊吹君が使ったカードから激流が起こり、フィールド全てのモンスターを飲み込んだ。

「しまった・・・!・・ええ〜・・っと、1枚カードをセットしてターン終了」

「俺のターンだ。墓地の炎属モンスター1体を除外し、炎の精霊 イフリートを特殊召喚する!」

【炎の精霊 イフリート】
★4 炎属・炎族 ATK1700/DEF1000
このカードは通常召喚できない。自分の墓地の炎属性モンスター1体をゲームから除外して特殊召喚する。このモンスターは自分のバトルフェイズ中のみ攻撃力が300ポイントアップする。

「と、特殊召喚モンスターという事は・・!」

 焦りながら伊吹君を見る。それを見た伊吹君は軽く笑って返事をする。

「当然だ。俺はまだ通常召喚が出来る・・。手札から炎を支配する者を召喚!」

【炎を支配する者】
★4 炎属・炎族 ATK1500/DEF1000
炎属性モンスターを生贄召喚するとき、このモンスターは1体で2体分の生け贄にする事ができる。

「そのリバースカードはブラフ・・・っと思うから警戒はしない。イフリートと炎を支配する者の2体でダイレクトアタックだ!イフリートは自分のバトルフェイズ中のみ攻撃力が300アップする!!」

 イフリートは両腕から炎の壁で攻撃を、もう1人のモンスターは名前の通り、炎を支配しながら攻撃を仕掛ける。

「ぐふぅぅ・・・・!」 藤原【LP:4000→500】

「・・・ターンエンドだ」

(うっ・・・・ヤバイ・・・!)

「ボ、ボクのターン!手札から魔法カード、増援を発動!」

【増援】 通常魔法カード
デッキからレベル4以下の戦士族モンスター1体を手札に加え、デッキをシャッフルする。

「デッキからゴブリン突撃部隊を手札に加えて、そのまま召喚する・・」

【ゴブリン突撃部隊】
★4 地属・戦士族 ATK2300/DEF0
このカードは攻撃した場合、バトルフェイズ終了時に守備表示になる。次の自分ターン終了時までこのカードは表示形式を変更できない。

「くっ・・ゴブリン突撃部隊か・・」

「ゴブリン突撃部隊でイフリートに、攻撃!」

 黄色のヘルメットをかぶったゴブリンの集団はイフリートに攻撃を仕掛ける。

「ぐっ・・・」 伊吹【LP:3400】

「2枚カードをセットしてターン終了・・・!ゴブリン突撃部隊は攻撃したため、守備表示になる・・!」

「フッ・・。イフリートに攻撃をしたのは間違いだったな・・!俺は炎を支配する者を生贄に、手札からヘルフレイムエンペラーを召喚する!」

「ヘルフレイムエンペラー・・・!?」

 そこには全身が炎に覆われた足の4本ある人間型のモンスターが現れた。伊吹君のフィールドは地獄の炎と呼べるほどの炎で包まれていた。

【ヘルフレイムエンペラー】
★9 炎属・炎族 ATK2700/DEF1600
このカードは特殊召喚できない。このカードの生贄召喚に成功した時、自分の墓地の炎属モンスターを5枚まで除外する事ができる。この効果によって除外した枚数分だけフィールドの魔法・罠を破壊する。




第10話「偶然と実力」

「そんな・・攻撃力2700・・・!」

(あの時、炎を支配する者を倒しておけばヘルフレイムエンペラーが出ることは無かったのに・・!)

「おっと・・ヘルフレイムエンペラーの効果発動!俺は墓地の炎を支配する者1体を除外し、お前の1番右のカードを破壊する!」

 ヘルフレイムエンペラーが咆哮をあげると、ボクのフィールドにセットされている1番右側のカード、聖なるバリア−ミラーフォース−が破壊された。

「フッ・・・ミラーフォースだったか・・・運が無かったな」

「くうぅぅ・・・・」

(野口さんの時もそうだったけど・・・いつも破壊されてる・・・)

「俺はさらに墓地の炎の精霊 イフリートを除外し、手札から新たな炎の精霊 イフリートを召喚する!!!」

【炎の精霊 イフリート】
★4 炎属・炎族 ATK1700/DEF1000
このカードは通常召喚できない。自分の墓地の炎属性モンスター1体をゲームから除外して特殊召喚する。このモンスターは自分のバトルフェイズ中のみ、攻撃力が300ポイントアップする。

「コレで終りだ!イフリートでゴブリン突撃部隊に攻撃!」

 伊吹君は勝利を確信し、高らかに攻撃宣言をする。守備表示になったゴブリン突撃部隊はイフリートにあっけなく破壊されてしまった・・。

「ヘルフレイムエンペラーでダイレクトアタックだ!」

 ――攻撃宣言を聞き、自分のフィールドに唯一残ったカードを使う。

「速攻魔法発動、エネミーコントローラー!」

「何ぃ!?」

 予想外の展開に伊吹君は驚く。

【エネミーコントローラー】 速攻魔法
次の効果から1つを選択して発動する。
●相手フィールド上の表側表示モンスター1体の表示形式を変更する。
●自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる。相手フィールドの表側表示モンスター1体を選択する。発動ターンのエンドフェイズまで、選択したカードのコントロールを得る。

「ボクが使うのはもちろん、ヘルフレイムエンペラーの表示形式を変更!」

「ちぃぃ!」

 ヘルフレイムエンペラーは操られるように攻撃を中断させ、防御の体制をとる。

「ムダなあがきを・・・!!ターンエンドだ!」

(このドローにすべてがかかっている・・!)

 ドローしたカードを、あまり期待をせずに薄目で見る。

(・・・・・・・)

「モンスターを守備、ターンエンド・・・」

「・・・終わったな。その裏守備モンスターにヘルフレイムエンペラーで攻撃だ!」

「よしっ・・・!ボクの裏守備モンスターは、サイバーポッド!」

 ヘルフレイムエンペラーの炎にサイバーポッドは破壊されるが、同時にフィールドの全てのモンスターをブラックホールのような物に吸い込まれた。

「なっ・・!」

「ボクは・・・このカードに全てをかける!!」

(って、たしかデュエルキングの遊戯さんも同じような事を言ってたような・・・)

【サイバーポッド】
★3 闇属・岩石族
リバース:フィールド上のモンスターすべてを破壊する。お互いのデッキの一番上からカードを5枚めくり、 その中のレベル4以下のモンスターカードをすべて表側攻撃表示または裏側守備表示でフィールド上に特殊召喚する。それ以外はすべて手札に加える。

「そして今は伊吹君のターン!・・・つまり君からモンスターを出さなければならない・・!」

「くっ・・いいだろう」

 伊吹君はカードを乱暴に5枚引く。そして引いたカードを見たまましばらく沈黙する。

1枚目:バーニングブラッド 【フィールド魔法】
2枚目:バーニングブラッド 【フィールド魔法】
3枚目:テラ・フォーミング 【通常魔法】
4枚目:強欲な壷      【通常魔法】
5枚目:抹殺の使途     【通常魔法】

「・・・・・な、何だこの・・・・ふざけた内容は!?」

「次はボクの出す番だ・・!」

1枚目:戦士ダイ・グレファー ★4 ATK1700
2枚目:忍者マスターSASUKE ★4 ATK1800
3枚目:闇魔界の戦士 ダークソード ★4 ATK1800
4枚目:ブレイドナイト ★4 ATK1600
5枚目:アックス・レイダー ★4 ATK1700

「えっ!!レベル4以下・・って事は全部出せる・・・!」

「バカな・・・!!・・・・タ、ターンエンド・・・・」

 伊吹君は唖然としながら宣言をする。どうやら、なすすべも無いらしい。

「ボクのターン・・・!」

(何かよくわからないけど、とりあえず勝った・・・?)

「と、とにかく全員で攻撃!!!」

 ボクの攻撃宣言と共に、フィールドにいた戦士達は一斉に攻撃を仕掛ける。

「うおおおおおおおおおおお!!!」 伊吹【LP:0】

「やったーー、勝ったーーー!!」

 思わず飛び上がって喜んでしまう。会場も思わぬ展開に歓声と拍手が起こった。

「賢治!」

「野口さん!」

 定岡先生と角田さん、野口さんは走って来る。野口さんは肩をポンポンと軽く叩きながら言っている。

「やるなぁ、賢治!」

「ありがとうございます・・・っと言っても偶然ですが・・・」

「賢治。そういえば忘れていた」

「・・?」

 野口さんはそのままカバンに入っていたカードケースの中から3枚のカードを出す。

「これは・・・?」

「あの伝説のデュエリスト、武藤遊戯も使った『サイレント・ソードマンLV3、5、7』だ。今日の大会のために持ってきたんだけどな・・・。すっかり忘れてた」

 『LV』を持つモンスターは数が少なく、非常にレアとされているカードだ。

「どうしたんですか、こんなレアカード・・・!!」

「い、いや。俺には神龍があるからな。賢治は戦士族中心だからやるよ」

「ありがとうございます・・!」

「勝ったこと変わりは無いさ。ただ・・わかっているな。次の相手は・・ほぼ間違いなくJデュエルハイスクールだ。十分に気を引き締めてくれ」

 一変した表情で野口さんは見てくる。ボクは覚悟しながら頷いた。

「へへっ、それじゃあ次の大会の登録に行こうか!」

「はいっ!」





第11話「思わぬ悲劇」

 ――前回の大会から約1ヶ月。明日はついにJデュエルハイスクールとの戦いだ。

 ボクはいつも以上に元気を出し、登校していた。靴箱に靴を入れたとき、野口さんが後ろから声を掛けてきた。

「よっ、賢治!」

「あっ、おはようございます」

「おう。明日も頑張ろうな!」

 野口さんはそれだけ言うと、急いで自分の教室へ向かった。

 ・・・しまった。

 急いで教室へ行かなければ。・・・・走って教室へ向かう。ほとんどの生徒は揃っていた。ゆっくりと席に座ったとき、担任の先生が教室に入ってくる。

「きりーつ、礼、着席」

 クラスの委員長がいつも通りに号令をかけ、挨拶をした。先生は全員が着席をする前に話を始める。

「え〜、ここのクラスに転校生が来ることになったよ」

 どこの学校も同じなのか、ほとんどの生徒がざわめく。男子か女子か・・そんな話がぽつぽつと聞こえる。正直、ボクはあまり興味はなかった。

「武道なんとか学園から来た、伊吹君だ。入っといで〜」

(・・・・・・・ん!?)

 姿勢を整える。その光景はたぶん、寝ていた生徒が叩き起こされた感じだろう。

(・・・武道なんとか学園・・・?伊吹・・・?)

「伊吹だ。よろしく」

 教室にはあの大会・・・・・そう、ボクと戦った伊吹君本人だった。やはり身長の高さで皆は驚いていた。伊吹君の短い挨拶を聞いた瞬間、ボクの導火線に火がつく。

「あーーーーーーーーー!!キミは伊吹くんじゃないか!!!」

「やぁ、藤原君」

 伊吹君は相変わらず見下すように笑う。伊吹君とボクが知人と言う事より、普段何も喋らないボクが叫んでいる事に全員が驚く。

「あんた達・・・知ってる奴だったの?なら、ちょーどいいや。伊吹はそこ座って」

 予想通り、いきなり呼び捨てをする先生が指差した方向。・・・もちろん、空いていたボクの隣の席だった。

 ・・・それはやめてほしい。とにかくボクはお願いをする。

「んなっ・・!先生、やめてください・・」

「ほら、さっさとホームルームやるから座れ座れー!」

 ボクの気も知らず、先生はそのままホームルームをはじめる。

 ・・・・・鬼だ。

「うぅぅ・・・・!」

 伊吹君はどしんとイスに座る。ボクは納得のいかない顔で先生の話を聞いていた。

 それに気づいた先生がニヤっ笑いながら言う。・・・・嫌な予感がした。

「そうだ、藤原。昨日の日直で日誌を書くのを忘れてただろ?特別に先生から放課後、教室のモップがけのペナルティをプレゼントして、あ・げ・る・♪」

「―――――え、そんな!?」

 教室中は笑いの渦に包まれた。






 ・・・・こうして授業もホームルームも終わり、とうとうボクはモップがけを終えた。

「ふぅー・・。恐ろしい先生だ・・。この前の個人懇談の時は、『先生に出来る事があったら何でもするわよ』って言ってたのに・・・って、そんな事より早く部室行かなければ・・・」
 鍵は開いているはずなので、そのまま部室へ向かった。

 ・・・・電気がついていた。間違いない。ボロボロのドアを思いっきり開ける。

「遅かったな、藤原君」

 まるで友達を迎えるように言う。伊吹君は野口さんがいつも座っているイスに座っていた。

「伊吹くん・・!・・キミの目的はいったい・・?」

 復讐だけで転校してくるのはアニメと漫画だけだ。

 ・・・・何か理由があるはずだ。

「俺が偶然負けてしまったことを証明するために来た」

 ・・・・・実在するとは。呆れる訳にもいかないので話を続けよう。

「たったそれだけの理由で転校するなんて有り得ないけど・・・・・ま、まぁ、とにかくもう1度デュエル・・・だね」

「当然だ!!」

 僕は部室の棚にあるデュエルディスクを取り、左腕につける。

 次はカバンの中からデッキを・・・・・デッキを・・・・・

「おい・・・何をやっている・・・?」

「いや・・・デッキが・・・」

 ・・・・・まさか。そんな事があるわけが無い。

 もう1度カバンを探す。筆記用具、教科書、ノート、食券の束、大会のプリント。

 いくら探しても・・・・・



 無い・・・・。



 もう1度探そう。筆記用具、教科書、ノート、食券の束、大会のプリント。

 ・・・・・やっぱり無い。

 あまりにもショックだからヘナヘナと腰を下ろす。

「まさかお前」

「・・・・・そのまさか」

「バカかお前・・・!!明日は大会じゃないのか!?」

「は・・・はははははは・・・」

 もう終わった。全てが終わった。

 落し物が帰ってくる例はほとんど聞いた事が無い。

 野口さんから貰ったサイレント・ソードマンもデッキの中だ。

「何をくたばっている。探しに行くぞ」

「伊吹君・・・?」

「お前のデッキだ。それに勝たなければ俺はここに来た意味が無い」

「でも・・・もう手遅れだよ・・・・」

「なら俺が1人で探す。お前はここで寝てろ」

 伊吹君だけに任せてはいられない。自分のデッキは、自分自身で探さないといけない。

「待って・・・!ボクが探しに行く!!」

(野口さん達には黙っておこう・・・。余計な心配をかけさせたくない・・・)

 ボクと伊吹君は学校を出る。探そうと飛び出したとき、伊吹君がボクを止める。

「待て!!何に入ってるか聞いてなかった」

「あ、そうだった・・・。えっと、黒のカードケース。『遊☆戯☆王』ってロゴが書いてある奴なんだけど・・」

「わかった。俺は警察に行った後、学校に戻って詮索する。今は3時45分か・・・・よし、5時だ。5時にもう1度、ここに来い」

「5時に校門の前だね」

「ああ。・・・行って来るぞ」

 伊吹君は走っていく。ボクは家に帰ってから行く道を調べるようにした。


 ・・・・・長い踏み切りを待つ。時間が惜しくてたまらない。


 家に着いたが、やはりデッキは無い。ならば早く道を探そう。

 ・・・・・探している途中で時間になるかもしれない。

 普段つけていない腕時計をつけて家を出る。学校に行く道をひたすら探すが・・・・




 ・・・・・・無い。




 とうとう5時になり、校門に戻る。伊吹君はすでに待っていてくれた。

「どうだった、藤原」

「ごめん・・・。もう誰かに拾われてる可能性が・・・・」

「・・・・そうか。さっき、お前の先輩が2人帰るのを見たぞ」

「野口さんと角田さんだ・・・・」

「言わなくていいのか?」

 ・・・・・・そんな事、言えない。

 明日は大会。大事なカードも無くして、まともなデッキも組めない。

「伊吹君、もう・・・・いいんだ」

「藤原・・・・」

「大会の途中変更って出来るのかな・・・変わりに伊吹君が出てくれれば・・・」

「・・すでに本登録が終わっているから登録者以外は無理だろう」

 無理・・・・か。結局、ボクは負けていたハズだ。相手は野口さんを負かした事がある高校だ。

「ありがとう、伊吹君。後は自分で何とかする」

「・・・・勝手にしろ。だがデッキが見つかったら言えよ」

 ボクは静かに頷き、伊吹君はそのまま帰っていく。

 ・・・・とは言ったものの、行くあてが無い。探す場所は全て探した。

 ボクは意味も無く、ただひたすら途方に暮れる。・・・もう見つかりはしないだろう。

 さっきも待ったのに、また長い踏み切りが開くのを待つ。・・・さっきより待っている時間が長いような気がした。

 危険なのはわかっているのに、素直に前を向いて歩けない。

(そういえば・・・いつもボクはそうだった。肝心な所でいつもミスをする・・・。だから誰からも必要とされない。小学校の時からサッカーでも・・・バスケットでも、野球でも。みんなから「使えない奴」扱いだった・・・・)

 知らない道をぼーっと歩いていると、1つの公園を見つける。汚れた滑り台にブランコ・・・砂場には子供が忘れていったスコップやバケツがある。

 ・・・・・そろそろ歩くのも疲れた。

 すぐ近くにあった年代物のベンチに座った。



「もう・・・・終りかな・・・・はははは・・・」




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