8章 小さな運命


ノディ
LP 2350
海竜−ダイダロス
攻撃表示
攻2600
守1500
クレイジー・フィッシュ
攻撃表示
攻1600
守1200

伏せカード



勇者アトリビュート
攻撃表示
攻2900
守1800
城之内
LP 800

「勇者アトリビュートの攻撃力は2900…。ダイダロスに攻撃だ!」

 アトリビュートはその手に持つ剣に力を込める。

 みるみるうちに剣は炎に包まれていく。

「行くぜ、アトリビュートの攻撃! エレメントソード!」

――ズガアァァン!

 燃え上がる炎の剣は、海竜の装甲をも切り裂いた。

「ダイダロス――撃破!」

 ダイダロスは炎に包まれ消えていった。

 ノディ LP 2350 → 2050

「こ、この…!」

「さて、今度はてめえが守る番だぜ…! それとも、もう勝負を諦めたかぁ?」



「オ、オレのターン!」

 ノディは怯みながらも、デッキからカードを引く。

 ドローカードは――伝説の都アトランティス。

(運命はオレを弄んでいるのか…?)

 そして、今、ノディの場に伏せてあるカードは――死者蘇生。

「オレは…」

 ためらいがちに口を開く。

「オレは…! 2枚目のアトランティスを発動!」

 だが、そのためらいを振り切るように宣言する。

 そして、辺りは再び深い海の中。都市の残骸が僅かに煌いている。

「アトランティス…」

「さらに…リバースカードオープン! 死者蘇生! これでダイダロスを蘇生させる!」

「……!」

ノディ
LP 2050
海竜−ダイダロス
攻撃表示
攻2800
守1700
クレイジー・フィッシュ
攻撃表示
攻1800
守1400
伝説の都アトランティス
水属性モンスターの
攻守+200
水モンスター1レベルダウン


勇者アトリビュート
攻撃表示
攻2900
守1800
城之内
LP 800

「再び惨劇を…見せてやる…!」

 狂気じみた顔でノディは言う。

 しかし、城之内は動じない。

 ダイダロスの津波攻撃は、攻撃力の数値を無視して、全てのカードを破壊するのにもかかわらず。

「運命は変えられない…!」

 ノディは呟きはじめる。

「運命は変えられない…運命は変えられない…」

 半ばうわ言のようにノディは呟き続ける。呪文のように繰り返す。

 直後――覆っていた海水が消え、都市に活気が戻る。

「終わりだ、城之内! お前の…絶望に満ちた魂をいただく…!」

 辺りは夜になり、遠くから波の音が聞こえてくる。

「…だから、絶望なんか微塵も感じちゃあいないって言ってるだろ!」

「何…?」

 波の音は大きくなってきている。

 津波は確実に迫ってきている。

 だが城之内は自信溢れた表情で言う。

「アトリビュートは属性を極めた剣士――全ての属性攻撃は通用しない! つまり、津波攻撃は効かないぜ!」

 そして、アトリビュートの目にも恐れや絶望は感じられない。

「だが、運命は変えられない…!」

 津波は目前まで迫って来ている。あと少しで都市は海に沈んでしまうだろう。

「行け! 勇者アトリビュート! 津波を切り裂け!」

 それと同時にアトリビュートは空を斬る。

――スパアアァァン!

 目前まで迫った津波は縦にまっぷたつに割れる。

「……! 津波が、割れた…!?」

 二つに切られた津波は、都市を僅かだけかすめ、そのまま消えていった。

 ……夜が明ける。

 人々は、何事もなかったかのように、生活を始める。

「津波攻撃は、無効化したぜ! 残るはその――でかい海ヘビだけだ!」

「…嘘だ。」

「へ…?」

「運命は…変わらない。神には…抗えない。」

 ノディは半ば放心状態である。

「お、おい! ノディ…!?」

「いや、違う。これは、あくまでオレが作った運命。神が創った運命ではない…!」

「てめえ、しっかりしやがれ!」

「――オレは神ではない、運命も変えられない。……だから、救えない。」

「おい!!」

「救えないなら、オレはもう…生きる資格はない…」

「え?」

 ノディはデッキの上に右手を添える。

 サレンダーカード――降参である。



 その瞬間、重苦しい空気は消えた。

 都市も人も勇者も海竜も全て消えた。

 そして、デュエルディスクも消えた。

――バサバサバサ…

 ディスクにセットされたカードが無造作に散らばる。

 ノディが右手に持っていた手札もそれらに混じった。

 ノディはそのまま前に倒れていく。

 城之内は散らばったカードを拾うより早くノディの体を支えた。

 そのまま、その体を揺するが、やはりノディの意識はなかった。

「バ、バカヤローが…!」

 城之内は拳を作り、それをそのまま壁に叩きつけた。

 壁に叩きつけた反動で手がじわじわ痛んだ。



 辺りはすっかり元に戻っていた。

 地面やホラーハウスの外壁など、濡れていたり、傷がついていたりすることもなく、元のままだった。

 そして、静寂。

 ここで闇のゲームが行われたことなど、微塵も感じられなかった。



 城之内克也 vs ノディウス・プロメス(ノディ)

 勝者・城之内克也




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